第001回国会 外務委員会 第4号
  付託事件
○沖繩の日本復帰に関する陳情(第十
 七号)
○賠償実施公團設立に関する陳情(第
 百四十三号)
○米國渡航に関する陳情(第百七十五
 号)
○沖繩の日本復帰に関する陳情(第三
 百二十三号)
○北海道附属諸島の日本復帰に関する
 陳情(第三百三十六号)
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昭和二十二年十月十四日(火曜日)
   午前十一時四十二分開会
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  本日の会議に付した事件
○米國渡航に関する陳情(第百七十五
 号)
○賠償実施公團設立に関する陳情(第
 百四十三号)
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○委員長(佐藤尚武君) それではこれから委員会を開きます。第一に陳情書第百七十五号、米國渡航に関する陳情、廣島縣の光島太郎という人から提出されたものでありますが、これに関して外務省の総務局長から御説明を得たいと思います。つまり原子爆彈で傷害を受けた人であつて、その結果学術上の研究資料として自分自身アメリカに渡つて、そうしてその途の人たちの参考に供したいというのが陳情の趣旨でありますが、こういう問題に関して米國に渡航するということが、今現在の状態において果してできるかどうか。それから又聯合國と日本との関係においてどういう影響を與える問題かということについて、何か御意見があれば伺いたいと思います。
○政府委員(太田一郎君) この日本人の外國渡航の問題でございますが、それにつきましては、原則といたしまして、講和條約が効力を発揮して、そうして終局的に日本人が渡航を許されるというときが來るまで、今のところ渡航は許されておらないということになつております。ただ今日まで特に聯合國政府の方から、こういう人に渡航証明書を発給してくれと言つて指示が参りました場合は、発給しておる例もありまするが、それは特別の例外の場合でありまして、それ以外には先程申しましたような原則が適用されるのじやないかと思います。
 それから第二点につきましては、私共といたしまして別に意見は持つておりません。
○島清君 過般植村女史が渡來をされたことがありますが、植村さんが渡來をされたときの手続はどういつたような形式で……。
○政府委員(太田一郎君) その際の具体的のことについては、今私よく存じておりません。ただ二三ケ月前に或る一定の形が指示されまして、それに基きまして從來の旅券というものとは多少性質が違いました渡航証明書というようなものを作りまして、それを発給して差支えない人にそれを出して行く、それを出す前にはこういう人に出せという指令があるわけです。
○板谷順助君 ブラジルのバラ州ですか、その州政府から日本の移民を、まあ約五百万人と私は聞いておりますが、それを送つて貰いたいということを、向うから言つて來たそうであります。目下GHQの方に交渉中だという話を昨日私は聞いたのですが、外務当局として何かそれについてお聞きになつたことはありますか。
○政府委員(太田一郎君) その問題につきましては、あちらにおる人からこちらに当てました通信等で聞いておりますが、只今お話になつたようなことについては全然聞いておりません。
○板谷順助君 まだこの問題について外務当局に何か申入れはなかつたのですか。
○政府委員(太田一郎君) 全然聞いておりません。
○板谷順助君 それから尚参考のために伺いますが、ドイツが講和條約締結以前でも海外に移民を許されておるということを聞いておるのですが、その点について何かお調べになつておりますか。
○政府委員(太田一郎君) まだ調べておりませんでございます。
○専門調査員(坂西志保君) それはアメリカ側から特殊な要求がございまして、例えばフランスの建設のために、フランスの或る地区の建設のために、特別の人をドイツから選んでそうして渡して欲しいとか、或いはイタリーから何万人の人を或る期限を限つてフランスの建設のために寄越して呉れというふうなことは國聯を通して欧洲ではやつておるのでございます。それからアメリカでは講和條約の結ばれる前から、特殊な人に限つては政府の要求によつてどこからでも交戰國から招くことができるということをはつきりといたしておりまして、例えばドイツの再建のために技術者と科学者を数十名選んでアメリカに連れて來ております。或る者はもう帰りましたけれども、まだ残つておる者もございます。同じようなことが日本においてもできるのであるから、何とかしてその方面にも力を入れて欲しいということをアメリカの科学動員総本部に申出ておりまして、その総長をしておりますパーヌネバゥアーフツシが、これは國務省ともはつきり打合せをして、どういう形式で以て日本の科学者、技術者をアメリカに連れて來て、数ケ月なり数年なり、訓練するということにするか研究してみると言つております。それから今まで日本からアメリカに渡つた人で、私の知つておる範囲では、或る潜航艇の艦長をしておりました人で、名前はちよつと失念いたしておりますけれども、海軍の中佐がワシントンに呼ばれて行つた例と、それから最近は植村環さんですが、これは両方ともアメリカ側からの要求でありまして、これらは單に形式的に渡航の許可を與えただけであります。私の知つておりますことをちよつと申上げます。
 尚この問題について私の調べたのでは、この光島太郎さんとおつしやる方は廣島縣の人でありまして、本年二十一歳なんであります。陳情書は七月十一日の日附になつておりまして、七月二十八日にこちらで受付けておるのでありますが、履歴書とそれから身分証明書と医者の診断書が附けてあります。光島さんは学校の代用教員をしておりまして、公務のために廣島に行きまして、二十年の八月六日中心地から八百メートルの地点で爆彈に会つたのであります。その後火傷で非常に苦しんでおりましたが、手当が行届かないで困難しておりまして、本年の二月の初旬に廣島の赤十字病院で顔面の整形手術を九回受付けましたが、結果がよくないのであります。それで自分でももう財政上にどうにもならない境遇にあるし、両手の指が殆んど利かなくなつております。それから顔面の三分の一が蟹状の瘢痕と申しますか、肉が段段段々と盛り上つて來て、それが全面的に癌みたいに拡がつて來るのでありまして、耳の形もなくなつておる。自分はこういう不幸に遭遇して、治したいということだけでなく、若しアメリカで科学の進歩のために自分を使つて呉れるのであつたならば、是非渡航して、自分の不幸を民衆の、人類のために何とか捧げたいという考えでこの陳情書を書いております。この光島さんは加州のカイオテ市に伯父さんがおりますから、若し渡航ができるならば、向うに渡つた後はその人が多分いろいろな点で世話して呉れるから、外の人に迷惑は掛からないだろうというのであります。これにつきまして資料を探つてみましたところ、吉川清という、長崎で原子爆彈にあつた人が、アメリカから來た専門の医者に見て貰い、又彼らの話を聞いた記事がタイムの八月十八日のに出ております。それから毎日新聞の十月一日に出ております。これにつきましても各方面の意見を聽いたのでありますが、すでに向うからも調査に來ているし、渡航ということは望みないのではないかということでございました。
○星野芳樹君 大体報告でよく分りましたから、討議に入つたらどうかと思いますが、いかがでしようか。
○理事(岡田宗司君) 今星野委員より本問題に関する討議に入ることの動議がございました。それではこの問題につきまして取扱い方について御意見をお伺いいたしたいと思います。
○星野芳樹君 僣越でございますが、この問題は非常に特殊的な氣持を以て陳情して來た、極めて同情に値いする問題でございますけれども、問題を公式な外務委員会として取扱うには余りにも個別的な問題であり、むしろこれは外務委員長なりの添書を以て各方面に、専門委員なりが御奔走下さつて、米軍の側にこのことに認識して頂いて、向こうからお招びになるという御便宜をお図りになるという点に御助力すべきであつて、問題として外務委員会として採択するには、余りに問題が個別的だと私は考えるのでございますが、皆さんいかがでございましようか。
○田中耕太郎君 大体私も星野委員が言われた通りに考えております。米國渡航の動機はいろいろありますが、必ずしも原子爆彈問題ばかりでなく、いろいろな動機から個人が米國に渡航したい。それについてはつまり平和主義、或いは世界人類の文化に貢献するという意味において希望しておる個人が沢山あると思うのであります。この問題もやはりそういう意図から出ておるのであります。動機においては十分敬意を拂うべきであると思うのでありますが、併しながらその個人自身よりもその問題についてベターな人があるかどうかということも考えられますし、さような意味におきまして、本委員会においては採択して本会議に上程するというような処置は採られないことを私は適当と考えます。
○高良とみ君 私はこれは陳情を伺つて分つたのでありますが、委員ができるだけ人道的な立場から、治療の方面に対して、國立病院或いは厚生省を通しまして米軍の医寮機関等に御相談しまして、全治はできないまでも、人道的な治療ができもすように、その方のお世話をして上げるようなことが、これは委員会としてでなく、できることを希望いたしまして、委員会としてこの請願に対するお取扱いは、今星野委員のおつしやつたことに賛成であります。
○理事(岡田宗司君) 只今星野、田中高良各委員から本陳情は委員会として採択しない方がいい、こういう御意見がございました。この御意見につきまして外に御意見はございませんでしようか。
○理事(岡田宗司君) それではこの陳情は本委員会におきましては採択いたさないことに決定いたします。
 次に賠償実施公團設立に関する陳情が出ております。右につきまして、外務省より島津賠償部長がお見えになつて、賠償実施公團に関する御説明がございますので、これをお伺いすることにいたします。
○政府委員(島津久大君) 賠償実施公團に関する陳情がございますそうでございます。私共が取扱つております賠償実施の実情を一應御説明申上げます。賠償の実施に関しましては、從來から、関係各省と協議をいたしまして、一應の態勢が今日できておるのであります。ところが、この態勢は御承知の通り賠償の全般の計画がなかなか確定いたしませんのと、それに関聯いたしまして、ごく一部の前渡しというものが最近に開始されますことになつております。賠償の全般を進行するにはどういう態勢がよいかというところまで実は研究が進んでおらないのでございます。大体二、三週間中に開始されることになつております、一部の取り方、これに対処する態勢ということに御承知を願いたいと思います。これにつきましては賠償施設の所管が各省に分れておりまして、軍工厰関係のものは大藏省、民間工場は商工省、又造船関係は運輸省、そういうようなふうに賠償施設の所管が分れておるのであります。この撤去作業ということになりますというと、やはりその所管の官廳が一番事情も知つておりますし、人員もございますしいたしますので、その所管の役所が作業の責任を持つということに決めてございます。今回の取立てが大藏省所管でございますので、大藏省の所管で今回の前渡しを処理するということにしてございます。そこで大体政府の方で作業の責任を持ちます恰好になつております、実際作業に当ります者がどういう者が適当であるかということは、この初期の取立てにつきましても種々研究いたしました。その間陳情のような公團が必要じやないかというような点も十分研究いたしました。
 今回の取立てにつきましては、政府と実際の業者との間に公團のようなものを考えないことにしております。その理由といたしましては、先程來申上げますように、規模が大きくないことが第一でございます。又もう一つは、この取立てに関しまして、今年の七月の末に司令部から詳細な具体的な指令に接しております。作業のやり方、例えば荷造りの仕方というようなことにつきましても、極めて詳細、具体的な指示が参つておるのであります。そういうような点から考えますというと、実際仕事に当ります者と政府との間に大きな機構を設ける必要がないというような点もございます。そういうことで大体大藏省で請負業者を選定いたしまして、適格者を選定いたしまして、それに競爭入札をさせる、そういう建前で考えております。勿論入札に当りましては、適格者を先ず選ばなくちやなりませんので、これにつきましては関係各省十分協議をいたしまして、例えば賠償協議会というものが中央並びに地方ブロック、府縣單位と三つの賠償協議会ができております。関係の各省並びに民間委員というものが入つております。これで適格者の枠を決める。その枠の範囲で主管省の大藏省関係で競爭入札をさせる。この入札につきましても作業の大体の予定の價格というようなことも決めまして、司令部の指示されました具体的な方法に準拠して仕事をするということにいたしまして、その間不当な利益を取らせるというようなことが絶対にないように十分の配慮をしてあるのでございます。大体現在はそういうようなことで、政府と業者との間に公團のようなものを考えないということで第一回の取立てに対処するわけでございます。
 ところが第一回の取立ては予定施設のごく一部でありまして、大体極東委員会で決めました予定施設の分量、これは重量にいたしまして概算約三百万トン、この中の三割撤去ということが決まつておりますが、この三割と申しますと大体百万トン、その三割の中のごく軍工厰の一部ということでございまして、これがトン数にしまして約十万トンということになつております。規模から申しましても相当小さいものでございます。今後軍工厰の一部の撤去に続きまして、民間の工場、鉄鋼でございますとか、工作機械、火力発電いろいろな民需関係の工場が対象になつております。これが軍工厰に引続いて動くことになるかも知れない。そういうことになりまして、非常に大きなものが一度に動きますということになりますと、或いは政府と業者との中間に一種の機関を設け、これが政府の代行的な役割をするというような必要が出て來るかも分らない。いずれにいたしましても、今度の第一回の撤去は、あらゆる意味でテストにもなろうかと考えております。ただ今回の撤去につきましては、先程申上げましたような態勢が先ず最善と考えまして、決定しておるようなわけであります。
 今後公團というようなものも尚研究の余地が十分あると存じます。ただこの公團と申しましても、賠償関係の公團では他の公團と多少違つた面もあるように思われるので、生産関係とは全然関係がないのでありまして、すべてこれは政府の支出によらなければならない。又公團というものが大きな機構になりまして、その下に業者を使わないで、公團自身が全部隅から隅までやるということになりますとよろしうございますが、そうでなくて公團もある、その上に政府もある。又公團の下に業者を使うということになりますと、余程公團が有効に活用されませんことには、徒らに政府の支出を多くするということになる虞れもございますのでなかなか賠償関係の公團編成ということは簡單な問題ではないように考えるのであります。勿論性質としては十分研究の余地があるというふうに考えておるのであります。
 概略御参考までに御説明申上げました。
○理事(岡田宗司君) 只今賠償部長の方から、賠償実施公團に関する御説明並びに御意見がございました。これに対して御質問ございませんか。
○伊東隆治君 時間も大分経過いたしましたので、議員の数も非常に少いのでありますが、この賠償公團の問題につきましてはやはり各委員二三質問、政府の御意向を伺いたい点もあろうかと思いますので、次回に延期されたらいかがかと思います。
○理事(岡田宗司君) 只今伊東委員より本陳情に関する質疑のある点を次回の委員会に延べる、こういう御意見がございましたが、いかがいたしましようか。
○理事(岡田宗司君) それでは皆さん異議のないように見受けられますので、次回に延会することにいたしまして差支えございませんか。
○理事(岡田宗司君) それでは次回に延会いたすことにいたします。
   午後零時十三分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     佐藤 尚武君
   理事
           岡田 宗司君
           伊東 隆治君
   委員
           島   清君
           堀  眞琴君
           板谷 順助君
           淺井 一郎君
           大隈 信幸君
           高良 とみ君
           伊達源一郎君
           田中耕太郎君
           細川 嘉六君
           星野 芳樹君
  政府委員
   外務事務官
   (総務局長)  太田 一郎君
   外務事務官
   (終戰連絡中央
   事務局賠償部
   長)      島津 久大君
   專門調査員   坂西 志保君