第001回国会 労働委員会 第6号
  付託事件
○職業安定法案(内閣送付)
○勞働基準法の適用除外規定設定に關
 する陳情(第二百五十二號)
○失業手當法案(内閣送付)
○失業保險法案(内閣送付)
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昭和二十二年九月二十日(土曜日)
   午後一時六分開會
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  本日の會議に付した事件
○職業安定法案
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○委員長(原虎一君) それではお待たせいたしました。只今から委員會を開催いたします。前囘までに質疑應答をいたしましたのは、第二章の殆んど全體が終了する近くにまで行つたと思いまするが、尚幾分殘されておるようでありますから、本日は第二章を少しの時間を費したいと思います。どうかその積りで御質問を願いたいと思います。
○山田節男君 この第九條を適用の公共職業安定所の職員の問題でありますが、これは今度議會に出されておる國家公務員法、これはまだ法律になりませんけれども、七十五條、七十八條、いわゆる休職という場合特例として、心身障害、長期の休養を要する。或いは刑事事件に關し起訴された場合、こういつたように今度できる國家公務員法というものは可なり廣くそれが決つておるようであります。この點をどういうように適用せられるかということ。それから私これは過日横濱に行つて痛切に感じたのでありまするが、職業安定所の人員、スタツフの中で非常に囑託が多い。本官が少くて囑託が非常に多い。私は實はこれはなにか特殊の技術家を囑託にしておるのであるかと質問しましたところ、そういうのじやなくて、豫算の關係上定員がないので、それで囑託ということにしておる。成績の好い者は漸次本官に任用する、こういうような實状でありまするが、この勞働省から示されましたこの全國的の公共職業安定所の人員、これは定員が示してありまするけれども、この人員が補充できないというので、豫算の關係からしまして、自然的に囑託制度が殖えるのじやないか。いわゆる公務員法で申しますると、臨時的任用と申しますか、そういつたようなものを、これは職業安定所の仕事のサービスの特性とといたしまして、或程度まではこれは勿論必要でございまするけれども、本法案の第九條の一項、二項、これに對して現實は必ずしもそうでないのじやないでしようか。こう實際上私は視察いたしまして、懸念を抱いておる者であります。この點を政府委員におきまして一つ明かにして頂きたい。
 尚第八條に關しまして、御承知のように大都市におきましては公共職業安定所と同時に、いわゆる日雇と申しますか、カシユアル・レーバーエンプロイメント的の勞働安定所というものがありまするが、この中には全然そのことは謳つていない。而も公共福利から申しますと、こういう不規則勞働者、カシユアル・レーバー、未熟練工を主としまして、この職業安定所の事業はそういつたような勞働者の、殊に未熟練勞働者の道徳的、或いは體力的な生産意欲というものを育成するにも多分に意義を持つておるものであると思います。この點につきまして政府當局はどういうようにして行うのか、そのお考を一應これを明示して頂けば結構だと思います。
○政府委員(上山顯君) 職業安定法によりまして職員の身分等に關しまする規定と公務員法との關係でございますが、それでこの職業安定法はこの附則に書いてございますように「法律施行の期日は、その公布の日から六十日を超えない期間において、政令でこれを定める。」ということにいたしておりまして、大體の豫定といたしましては十一月一日から施行したいと、かように考えております。そのことに關しまして國家公務員法におきましては一つの特別の事項は早く施行されますが、原則的には昭和二十三年七月一日からこれを施行するということになつておるわけでございます。それで國家公務員法が施行になりますまではとにかく職業安定法の規定が適用されることになる、こういうことになるわけであります。それでその後の關係でございますが、それにつきましては國家公務員法の附則の第十四條に規定がございまして、この法律の施行になります際に、現に效力を有しておるところの政府職員に關する法令の規定の改廢及びこれらの規定の適用を受ける者にこの法律の規定を適用するについて必要な經過的特例その他の事項は法律又は人事院規則でこれを定めるこういうことになつておりまして、そのときに職業安定法の規定を生かすことにいたしまするか、或いは國家公務員法の規定を公法として優先させますか、そういう點、法律なり人事院規則で解決をする、かように相成つておるような次第でございます。
 それから第二の點の公共職業安定所の職員に囑託が多いという點でございますが、本來といたしましてはむしろ專門的な特別な經歴を持つておるような人を入れるのにふさわしい者でありますのは、現状といたしましていろいろな定員の關係その他の關係で、むしろ本官に入れますのが適當なような人を囑託に入れておるような點もあるかと思うのでありまするが、そういう點、定員の關係等もございまして、今一擧に本來の趣旨通りに改められますが、若干懸念がございますが、できるだけ本來の仕事に從事いたしますものは本官とし、特別の者を囑託にいたすというふうに將來運用上努めて參りたいと存じます。
 それから勞働安定所のことでございますが、これは第八條の第四項がそれに關連する規定でございまして、いわゆる勞働安定所と申しておりますものも、この法律上では全部公共職業安定所なのでございます。ただその公共職業安定所の中で日雇を主としてやつておりますようなものを特に勞働安定所の名稱で呼んでおるということになつておるのでありまして、公共職業安定所の位置なり、管轄區域を勞働大臣が決めますと共に、その名稱なり事務の取扱の範圍も勞働大臣がこれを定めるということなつております。名稱として何々勞働安定所、取扱う事務の範圍としまして日雇勞務というような、そういう定め方に現在相成つておるわけでございます。それで將來必要によりましては婦人專門の安定所、或いは先般山田さんからも御指摘がありましたような年少者の職業紹介の特殊性に鑑みまして、假りに年少者の特別の專門の安定所を拵えますような場合、その場合事務の取扱の範圍としましては年少勞務者の職業紹介というようなことになりまして、名稱が場合によりましては何々年少者職業安定所というようなことがあり得るわけだと思つております。以上のような次第であります。
○山田節男君 そうしますと、今の御説明によると、やはり公共職業安定所、或いは公共勞働安定所のいわゆる人的の陣容の事情でありまするが、囑託制度というものは、やはり從前と變らず、相當のパーセンテージを占めて、この職業安定のことをやる方針なのでありますか、と申しますのは、この間横濱の職業安定所を見、現在のあそこの職業安定行政上、最も欲するのは何かと申しましたところ、あそこで四點を擧げております。その第一は何といつても豫算を増加してくれること、これが第一。御承知のようにこれはレーバー・エクスチエンジと申しますか、雇傭エクスチエンジというものは、眞にサービス業である。殊に私現場を見まして、甚だ失禮でありますけれども、殊にすべてのエクスチエンジ交換所と申しますると、極度にこれは資料や數字にしましても、これはあくまで極秘にやらなければならん。然るにこれはアメリカの使節も指摘しているようでありまするけれども、依然としてすべての求職者或いは求人者の整理が綴込式である。いわゆる大福帳式である。英米におきましては、レービング・カード、ダイビング・カード、これは必ず區別します。それは正確な統計は、全國的には分つております。然るに現在の状況を見ますというと、全く大福帳式であります。例えば紹介所の葉書をやりましても、これは雇傭主が決まつた場合には、郵送することになつておりますけれども、今日五十銭を要するためになかなか送つてくれない。果して求人がそこで合致したものかどうか、分らない。こういうことが多分にありまして、いわゆる職業安定サービスというものが現在の日本の失業者、或いは職種別の失業者というものが非常に不正確であります。この點が私は今度の職業安定行政の一つの癌になつておるように思うのであります。この點は一つ嘱託制度を是非少くして頂いて、雇傭の安定のない者は眞面目に仕事をやりません。これは私の經驗からいいますと……。そういつたような點から現在の職業安定行政の事業が非常に安定していない、安定サービスをやる者自身が安定していない。こういう極めて矛盾した一面から申しますると極めてプリミテイブな、慈善事業的なエクスチエンジが随分ある。又これは能率の上からも、又失業者のためにも、國家産業の興隆につきましても、非常に遺憾だと思います。その意味におきまして、私はこの第九條の第一項、第二項につきましては、特に御了承願いたいのであります。甚だ失禮でありまするが、この次の第十二條のいわゆる中央職業安定委員會、それから都道府縣の職業安定委員會、特別地區安定委員會がありますが、これは御承知のように勞働省に婦人少年局ができて、各國の立法例を見ましても、必ず中央はいざ知らず、都道府縣におきまする職業委員會若しくは郡と申しますか市町村し申しますか、それに一人以上の婦人を安定委員に入れなければならん、これは今日の常識であります。然るに本條におまましてはそのことが書いてない、男女平等である。又同一價値の勞働に對しては同一賃金を拂う。こういう立前からしましても職業安定委員會には一人以上の婦人を委員に入れるということを法律に挿入すべきであると思います。これは何故省いたか、その點を政府委員の御意見を承りたい。尚各中央から職業安定委員會の委員は勞働大臣がこれを命ずる。併しながらそれで選擧した勞働委員長はどういう地位であるか、これを謳つていない。これは實際の勞働安定或いは職業安定所におきまして民主的な職業安定行政をやるにはこの安定委員會というものは最も重要性を持つている。而もそれを統御をして行きます委員長というものは、これは可なり重要な職務であります。そういうわけで私は、今はありませんが、曾て方面委員制度がありまして、これは各府縣或いは市町村におきまして必ず委員長というものを選擧して、これに何と申しますか委員會に關する限りの權限を持たしておる。そういう意味におきまして私はここに、委員長は必ずこれも勞働大臣が任命する。こういうふうにすべきであると私は思うのであります。尚又それで都道府縣職業安定委員會、特別地區職業安定委員會及び地區安定委員會は一ヶ月に一囘以上、中央職業安定委員會は三ヶ月に一囘以上これを招集しなければならんことを明記しておるのであります。そうするとこれは厚生省に現在行つております職業安定所或いは公共勞働安定所の地理的分散状況を見ましても、この名譽職というか、むしろ國家の勞働行政の末端の法規上の委員であるからには、これに對して旅費、日當その他の雜費等、これは當然法律で補助すべきであるのであります。アメリカにおきましてもこれは明らかであります。何故省いたかということを承りたい。尚一、二ありますが、これは餘り長くなりますので次に讓ります。
○政府委員(上山顯君) 最初の職員の地位安定をいたしまして、こういう業務に專心させなければならんということにつきましては、御意見は誠に私同感であります。やや内論話になりますが、最近職業安定機關の機構がたびたび變りましたり、それから基準局でございますとか、いろいろ新な勞働官署ができましたために人事の異動が甚だ激しかつたこともございまして、若干氣分が落付いてなかつた氣味が見えました點を私達非常に遺憾と思つているのであります。今度安定法によりまして職業安定所というものもはつきりしたものになつた次第でございまして、この際本當に落付いた氣持で勉強して貰いたいということを地方の職員にも要望している次第であります。御趣旨の點は十分氣を付けたいと思います。
 それから委員會に婦人を入れるという點でございますが、事實問題といたしまして、そういう點は今後十分氣を付けて參りたいと存じます。ただ法律の上におきまして少くとも一人以上と書くのもどうかというようなこともございまして、法律の上には書いてございませんが、運用によりまして十分氣をつけたいと思つております。
 それから委員長の點でございますが、實はこの安定法全體といたしまして、相當こまごまむしろながながと法律の中に書いてくるような次第でございまして、只今の委員長の點等につきましては、實は政令の方で規定をいたしたいと、かように考えているわけであります。
 それから委員會の實費辨償の點でございますが、實は中央職業安定委員會、都道府縣職業安定委員會、特別地區職業安定委員會、これにつきましてははつきり置くということになつておりますので、近く帝國議會に提出になりまするところの追加豫算におきましても、或程度の豫算をこちらへ取ることに相成つております。それから地區の安定委員會につきましては本年は追加豫算で緊急止むを得ないものだけということになつておりまして、實は今度も追加豫算では只今のところでは十分に考えられていないのでございますが、今後におきましては地區職業安定委員會につきましても十分の豫算を取りまして、是非實費辨償等については遺憾のないようにいたしたいと思います。
○委員長(原虎一君) この際お諮りいたしますが、栗山委員から第五章罰則について特に刑事局長の出席を求められて、その答辯を願うことになつておりますので、第二章はこの程度にお願いいたしまして、五章の罰則に關する問題を主として質問願うことにしたいと思います。御異議ありませんか。
○深川タマヱ君 二章につきましてもう一つ質問いたしたいと思いますが、如何でございますか。
○委員長(原虎一君) 二章について深川委員のほかにございますか。
○山田節男君 二章にあります。
○委員長(原虎一君) それではどうか深川委員。
○深川タマヱ君 第二章第六條に關係する質問でございますが、勞働省職業安定局長は勞働大臣の指揮監督を受けて失業對策の企畫及び實施に關する事務をおとりになることになつているのでありますが、今日平常な時におきまして社會で自然に行われております求人、求職等の斡旋は、これは別にいたしまして、最近政府の政策に基いて相當大勢の勞働者の方々が企業整備から失業することになつているはずでありますが、凡そ一體どのくらいの方がどういう産業の方から整理せられて來て、そうしてその人達を凡そどういう方法によつて救濟なさろうとする對策を立てておいでになるか、こういうことは私達としては相當はつきり知つていなければならないはずなのが極めて漠然といたしております。これについてお分りになつているところを少し具體的に詳しく伺いたいと思います。
○政府委員(上山顯君) 政府の施策のために出ます失業者の見込數又救濟對策という點でございますが、これにつきましてはいわゆる企業整備等につきましてどれだけ失業者が出るかというような點を中心にいたしまして、安本でございますとか、産業省におきましてもいわゆる計數をはじいてやつているわけでありますが、ただ御承知のように企業整備にいたしましても、いろいろ新らしいこういうものに影響いたします要素も出て參りまして、例えば經濟力集中排除法案がどんなふうになるかということがはつきりしない關係もありまして、企業整備で果してどの程度になるかという點につきましては、まだ具體的に十分の申し上げるだけの資料がないのでありまして、その點私たちといたしましても非常に遺憾に思つておるわけであります。さような實情でございますことを御了承頂きたいと思います。
○山田節男君 例の第二十條の問題でございますが、この間原委員からも質問があり、又私もそれを補足する意味において質問したのでありますが、大臣は御退席になつた後でありまして、大臣から直接御囘答を得なかつたという意味と、まだ議論が盡されたわけでありませんから一應お伺い申し上げます。大體原委員竝びに私がこの二十條の第二項について御質問申し上げましたことは、これはアメリカのように非常に大きな一貫作業の行われておる國でありますならばこれは私はいいと思います。併しながら日本は財閥解體、殊に一千萬か二千萬以下の、中小工業化しようというのが占領軍の根本方策であります。そういう意味と、それから現在の組織勞働というものは固より幼稚でありますけれども、將來勞働省としても組織勞働というもの、いわゆる團體交渉、これを極力啓蒙して團體交渉を最も有效的に效果的に使うということに指導しなくてはならないと思う。そういう當然の結果といたしまして一つの工場内におきまして一つのブランチと申しますか、デパートメントとデパートメントが別個に爭議行爲をすることは實際問題として極めて少ない。例えば川崎の或工場におきまして、鐵管或いは造船、これは一つの連合體をなしております。造船部門でストライキをやれば、これは鐵鋼部門に對しても爭議の應援……或いは日本の法律では同情ストライキというものを非合法にしておる。そういう意味から申しましても、私はこの第二項はアメリカなどではいいかも知れませんが。日本の産業の將來、それからこれから進んで行く組織勞働の發展というものを展望しますときに、むしろこの第二項は組織勞働の健全にして自主獨立の勞働組合の發達を阻害する、こういうことを信じて私は疑わないのであります。なぜここにこういつたようなことを殊更お謳いになつたか、勞働省で監察される第二項の適用の實際について上山局長からもちよつと伺いましたけれども、尚不明瞭な點がある、この點について大臣の御明答を煩わせば甚だ結構と存じます。
○國務大臣(米窪滿亮君) 第二項を設けた理由は、職業紹介は經営者の利益にも偏重しない、又勞働者側の要求にも偏らない、こういう、いわゆる職業紹介事業の中立性を保持するために第二項を掲げたのでございまするが、日本の勞働爭議の實情から見て、私も山田さんの疑念とされる點も必ずしも現實的でないとは思はないのでありまして、これは一つの委員會において皆さんの御意見に從つて行きたい、こういう工合に考えております。若し強いて言うならば、この部門別に職業紹介をするかしないかということを分けずに、或いは事業別ぐらいに分けて行くことが現状に即したことかも分りませんが、一應はこういう工合にはつきりと、或部門においては爭議が起つており、他の部門において爭議の起り得る情勢でないと職業紹介所が判斷した場合においては、職業紹介事業の中立性から言つても、こういう規定を設けることがいいと思つて入れたのでございまするが、皆さんの御意見によつて日本の今日の勞働運動の實情、或いはその他の現實性から考えて、そうしてこの第二項を入れることが、現實的に見て甚しく危險であると、こういうことであるならば、政府といたしましてもこれに對して何ら原案に對する支持を強く主張するものでないとこういう工合に申し上げたいと思います。
○山田節男君 若し今大臣が仰しやられるような御意向でありますならば、實際問題として不介入という意味は、惡くすると、勞働基本權、いわゆる團體交渉權、或いは未組織を組織化する、或いは場合によつてはストライキの權利も否認するという事實になる虞れが多分にあると存じます。先程申し上げましたように我が國の産業の興隆の將來、そのスケールから、組織勞働の發展というものを、極めて樂觀的に考えまするときには、これは必要ない、いわゆる業務の部門別の爭議が起つても、これは單獨でそういつたような爭議行爲を繼續して行くということは、事實上不可能だと、こういうように私は考えますので、若し勞働大臣において先程のような御意向があるならば、これは憲法で保障された勞働基本權に、これは危害を加えるというような斷定的には申しませんけども、ますます行政上そういう虞れがある。これは今日の中央勞働委員會、地方勞働委員會の立場から見ましても、同じような……。職業安定所におきましては、あれは同じ一つの基準を以てやつて頂くということが、實際上やりいいんじやないかと、こういうように感ずる次第であります。
○松井道夫君 只今二十條が出ましたので、豫て疑問と思つておる點をお尋ねしておきたいと思います。この規定は爭議行爲に對する不介入という建前でできておりますので、一見無理もないように思えるのでありますが、更に深く考えて參りますと、爭議行爲の發生している部門或いはその發生する虞れがある部門には、求職者を紹介しないということは、いささか觸らぬ神に崇りなしといつた氣分でございまして、これが正常的の勞務者の紹介を、特に爭議行爲があるからしないということは、この業務の運行というものを阻害いたしまして、却つて爭議行爲に對する干渉の形になる場合があると存ずるのであります。將來この爭議行爲の形態が、どういう工合になつて參りまするか、これは豫斷を許さないことでありますが、或いは同盟罷業というようなこともありましようし、或いは勞働組合側で業務の擔當をやつて行くといつた形で行く場合も想像できるのでございまするが、いずれにいたしましても、特に智的の勞働者のその職業があるといつた場合に、急にそれを紹介しないといつたような例を考えて見ますれば、却つてこれがそういうことに對する干渉というふうにも考えられる場合があると存ずるのであります。中立的立場を維持するといいますことは、これはいろいろに理解されることでございましようけれども、特別の利益を與え、特別の不利益を與える、さようなことをしないという意味合に解釋すればそれでいいのではないかと存ずるのでありまして、特に業務の運行を阻害するような場合でも、よく求職者を紹介しないというのは、これは行き過ぎではないか。先程申しました、觸らぬ神に崇りなしといつたような、臆病な態度ではないかと私はそういうようにも考えるのであります。でありまするから、要するにここで職業安定所は、勞資のいずれの立場にも立つものではない。爭議行爲がある場合には、それに對して特別の不利益、特別の利益を與えるようなことがあつてはならないといつたふうの彈力的の規定の方が却つて宜しいのではないかというように存ぜられるのであります。その點についての御意見を煩わしたいと思います。
○國務大臣(米窪滿亮君) これは先程山田さんにもお答えしたと同じ考えを政府は持つておりまして、いわゆる問題は職業紹介事業がどの一點で中立性が破られるか。又職業紹介を行なつた結果が、例えば違つた部門に紹介をしたその求職者がスキヤツプになるような危險が起り得るかどうか、こういうことであります。この點は日本の經營者の常識、或いは經營の運用、勞働者のやはり認識、心構えということがはつきりしておれば、この二項を置いておいても差支ない、私はそう考えます。ただ先程から問題になつておるのは、日本の勞働運動、或いは狹く言えば、勞働爭議が起つた實情において、果して經營者が違つた部門に紹介をした同じ事業所において、違つた部門に紹介した者を、爭議の起つておる部門に、これを爭議のいわゆる裏切者と言いますか、つまり休んでおる者の代りにこれを使うようなことが果してあり得るかどうかという、その認定によつて決するのでございます。從つてこれはそういうことが起り得ないという場合においては第二項はここに置いておいてもなんら障碍にならない。併し日本の今までのやり方から見て、そういう危險が起り得るという場合になるというと、第二項は、これをここへ設けることが問題になる。こういう工合に私共は考えております。政府はいわゆる職業紹介の勞働爭議に對する不介入性というものと、そうして勞資双方への不偏性というもの、即ち中立性というものを維持する上において、明らかに爭議をしておる部門と、爭議をせざる部門とがはつきりしておる場合において、爭議せざる部門に職業紹介をしてもいいではないかという意味において入れたのでありますが、皆樣におきまして、これが現實問題として、いわゆる障碍を起すと、こう御認定になれば、政府としても皆樣の御意見に從う考えであります。
○松井道夫君 只今私の質問のし方が惡かつたと見えまして、私は二項の問題を御質問申し上げたわけじやないのでありまして、第一項の原則について、いささか疑問があるのではないかということをお尋ねしたのであります。繰返して申し上げますと、これは簡單に申し上げます。要するに第一項の「求職者を紹介してはならない。」ということに相成つておりまするが、「求職者を紹介してはならない。」ということが、却つて爭議行爲に對する干渉になる場合があるのではないか。それでこれを「求職者を紹介してはならない。」というまでに行かないで、勿論求職者を紹會することが、特別の利益不利益を爭議の當事者に與えるという場合には、勿論紹介してはならないのでありますが、それを含めまして、更に彈力性があるように、特別の利益不利益を爭議行爲の當事者に與えるようなことはあつてはならないという趣旨に規定した方が宜しいのではないか。さような意味で質問いたしたのであります。
○國務大臣(米窪滿亮君) 第二十條の第一項についてしては、ならないというのは行き過ぎであると、そういう規定はしない方がよい、こういう御質問ですね。
○松井道夫君 そういうことなんです。
○國務大臣(米窪滿亮君) これは政府としては、憲法によつて團結權が認められ、又罷業權が認められているという、その精神から見て、明らかに爭議が起つており、且つ又爭議が起らんとする虞れのある部門に職業紹を介するということは、結果から見て、これはどうしても爭議を彈壓することになる、こういう具合に我々は解しておる。なんでそうなるかというと、やはりそれは爭議をする目的、いわゆるそこに働いている人達が一丸になつて、自分等の要求を通すために、彼等に與えられたところのこの社會的權利といいますか、戰術というものによつて、その示威を示すのが目的であるのでありまして、これが破れれば、もう本質的に爭議權を剥奪するということになる。それではどういう場合に破られるかというと、働かないことを申し合わせた所へ、働く意思を持つた者を供給するということは、これは明らかに爭議を折角しておるものを、爭議をなくするということになる。いわゆる爭議の中斷行爲になる。これは明らかに爭議權を國の公共事業であり、又中立の立場に立たなければならん職業紹介所というものが爭議を彈壓するという、經營者側の利益を提供することになる。こういう具合に解釋いたします。
○松井道夫君 私は純粹の中立の立場にあることを明らかにして、更に質問を進めたいと思います。成る程ここに爭議行爲があつて、同盟罷業をやつている。その時にその同盟罷業をやつている勞働者に入る意味におきまして、多量の正常的でないこの勞働力を、今の公共職業安定所を通じて與えるというようなことは、勿論一方にこれは特別の利益を與える行爲でありますからして、そういうことを禁じたいということは、私も同意見なのであります。併しながら先程も申し上げましたが、將來爭議行爲の形態がどういう形を取るか、それは豫斷を許さないのでございますけれども、假りに勞働組合側におきまして、その經營を擔當するという形で爭議行爲を行つて行くという場合を想像いたしますると、これが企業の經營に必要な、正常的な勞務の紹介もできないのであるということになりまするというと、これは勞働者側から見ると、爭議行爲に不當な不利益を受けるということに相成ります。それでありますからして、そういう場合には、むしろ正常の、例えば、月に十名づつのものが假りにあるとすれば、そのままやはり月に十名づつのものを紹介して行く。或いは季節的の勞働が大切な事業には、やはり例年季節的に、五百名なら五百名を紹介するならば、やはり五百名なら五百名のものを紹介して行くということで、これこそ却つて爭議行爲に申立の立場をとるものであつて、却つてそういう場合に五百名の質的勞働を紹介しないということは、爭議行爲に對する、私の爭議行爲と申しますのは、勞働爭議が發生しておる、これは勞資の間に爭議行爲がある、こういう意味であります。その爭議行爲、勞資の爭議行爲に對する不當な對象と相成るのではないか、これは現状から言いまして、同盟罷業なら同盟罷業という爭議形態が多いということでございまするならば、これは勞働者の立場から言いまして、この規定は必ずしも惡くない結構な規定であると存じますが、これが勞働者の方で今後經營を擔當して行くという爭議行爲の形を考えて參りますと、これが非常な不利益になる場合がありやしないか。要するに純粹に中立の立場から考えまして、この職業求職者を斡旋するに當りましても、特別に爭議行爲の當事者に利益を與える、或いは不利益を與えるような、そういうような行爲を職業安定所としてはしてはならないのであつて、そうでない正常的のものは何も禁止する必要はないのではないか、さように考えるのであります。この點につきまして更に御答辯を煩わしたい。
○國務大臣(米窪滿亮君) 現に爭議行爲が發生しており、又その次が問題なのですが、爭議行爲が發生する虞れが多分にあるこの状態において、經營者側からして求織を若し求めて來るということは、明らかに爭議が發生しておるときは、それによつて爭議行爲を壊滅せしめよう、爭議行爲を休止せしめようという意圖の下にそれに代つて勞働するものを求めて來る、こう政府は解釋しておるのです。爭議行爲發生の虞れある場合は、大體そういう前提の下に求職者を經營者は求めて來る、こういう工合に考えております。それで御質問の中に生産管理の場合のようなことが考えられるようなお尋ねがございましたのですが、この場合においては爭議がすでになくなつてしまつて、即ち私は生産管理が妥當である。勢い合法的であるかどうかということは別問題ですが、假りに經營者が無警告にロツクアウトした、或いは賃金を支拂わない、こういつた動機によつて生産管理を行われた前例があるのです。そういう場合は經營權が經營者側にあることについては私は異論はございません。勞働者側には經營權はない。經營に參加する權利はあつても經營權は持つておらない。從つて勞働者がこの商法或いは民法によつて與えられざる權利を行使して、勞働者が、早く言えば工場を占據したという場合においては、これはその瞬間から現實的には爭議行爲がなくなる。從つてこの場合に私は爭議というものは現象的に見てなくなると思うのです。であるからこの場合はここのお尋ねの範圍に入つて來ない、こういう工合に考えております。そこで飽くまでもお尋ねのこの點は、經営者と勞働者が對抗して片方は經營を續けて行こう、勞働者は經營に反對して、即ち工場を休止状態にしようといつて爭つておるときに、經營者は休職を求めて來ることは明らかに勞働者と對抗する意思を持つて休職を求めて來るのでございまして、この場合に經營者の休職に應ずるということは勞働者の利益に反するという行爲が明らかである。そこで職業事業をやつておるものとしては、いわゆる爭議の不關與性というものを守りたい、この意味でこの第一項を決めたのであります。
○山田節男君 今の大臣の御説明を了解するのでありますが、この二十條は法文としても極めてまずい。この點を一つ勿論第一項、第二項、いわゆる爭議に對する不關與の件、中立の態度、これは不要であると存じますが、即ち少くともこの業務の部門ということは非常に間違い易いと存じます。何か誤解のない法文を冠する方が將來のためにいいのじやないか、こういうように私は考えております。
○國務大臣(米窪滿亮君) 第二十條の表現方法につきましては、若しそういう点があれば委員会において然るべく一つ明瞭なる表現方法をお考えを願いたいと思います。私としては併しこれで相當明らかだと思うのであります。即ち爭議行爲における中立の立場を維持するため、「現に爭議行爲が發生していることが明らかな」というこの「明らかな」ということは必要でございません。「現に爭議行爲が發生している業務の部門、」こうしても差支ありません。「又は爭議行爲の発生する虞があることが明らかな」この場合の「明らかな」は必要だと思いますが、最初の「爭議行爲が發生しておる業務」こうした方がいいということになれば差支ないと思います。
○松井道夫君 結局二十條の一項に對する所の質問ですが、只今米窪大臣のお話によりまして大體分つた積りでおります。併しながら更に念を押して置くのでありますが、この第一項の爭議行爲という中には、ちよつと生産管理とか業務管理とか、經營管理とかいろいろいわれておりますそういつた爭議形式は入らないものであるか、さようなことに伺つて宜しいのでございますか。爭議行爲はないものであるというお話でありましたが……。
○國務大臣(米窪滿亮君) 職業紹介に關係のある點においては生産管理或いは業務管理をして、つまり經營者が退陣をして勞働者がその工場を占據して經營を續けて行くというときには一應は形式的ということをさつき申し上げたが、現象的にはそういう行爲はない、こういう具合に認めておりますが、この際には第二十條は適用しない、こういう具合に考えております。
○平岡市三君 私はこの二十條の趣旨は結構だろうと思うのでありますが、この議論の岐れることは業務の部門というこの部門に我々は非常に疑いを持つために議論が岐れると思うのであります。即ち一つの事業のオーガナイゼーション、組織というものの中から部門というデパートメントを引出して見ますと、たとえば例を擧げて見ますと、鑄物工場におきまして模型部があり、鑄造部があり、組立部、仕上部がある、これが即ち一つのオーガナイゼーションの中の部門なのであります。そこで一つの建物の中にいろいろの部門がありまして、鑄型部で以て勞働爭議が起きているときに一つの建物の中の部門、即ち仕上部とか、或いは組合部に爭議が起らんということはちよつとあり難いことであろうと思うのであります。そこでこれが部門という言葉が工場別とかいう言葉に變るならば、相當疑問は避けられるだろうと思います。たとえば實際問題として凸版印刷會社の東京の工場は勞働爭議をやつておるにも拘わらず、富士の工場の方では平穩無川に事業を續けておりまして、而も新らしく人員を採用する、こういうようなことをやつて現實におるのでありますからして、一つの會社が勞働爭議をやつておる場合にはすべての部門、工場の新規採用は許さんとするならば、これは趣旨に反するわけであります。でありまするからして、結局この部門という言葉、デパートメントという言葉は非常に議論があるのではなかろうかと思うのであります。この字句が或いは適當な工場別とかいう言葉に變るならば、條文の趣旨は明らかになつて議論も起きないのではないか、こういうふうに察せられるのでありますが、皆さんの御意見を一應お伺いいたします。
○國務大臣(米窪滿亮君) 大體政府も一應はこういう具合に書いたのですが、皆さんの御意見が部門という言葉が非常にいろいろの疑義が起るということであれば、業務の部門というこの五字を事業所ということに直すことに付ては異議がございません。そうした方がはつきりするということであれば、そういうことに何ら異議はありません。
○栗山良夫君 第二章の中で、これは理論的な問題ではありません、運用の問題でありますが、極めて關心を持つておる問題でありますので御質問を申し上げるわけであります。即ち職業安定という、この言葉でございますが、これは勞働大臣もたびたびおつしやつておりますように、勞働省關係の機關は極めて民主的に勞働省に繋りを持ち得るように形態を取つておる、こういうことを仰しやつておりましたが、その中でも特に先ずスタートになる運用機關の名稱、職業安定所、こういうような名稱が果して先ず勞働者或いは求職者に親しみを持ち得るかどうか、人口に膾炙し得るかどうか、こういうような點につきまして私はこの法案を見た時から非常に疑問を持つておつたのであります。不思議を持ちながら私の關係しておりまするいろいろな勞働組合の人達の意見を、職業安定所というものはどういうことであるか、この言葉だけで分るかというようなことで質問をしておりますが、殆んどの人がこの字の表現だけではこの法案が持つておるところの内容を掴み得ない状態にあります。小くとも今までの法案はその名稱だけを見れば、その名稱によつて法案が持つておる内容の大體アウトランは類推できる形になつておつたと思います。こういうような形になつたことは過日政府當局からも若干の御説明があつたようであります。それは戰時中に使われたところの職業紹介に對するような、例えて申しますならば、紹介所或いは動員署、或いは勤勞署、そういうような名前は一應は避けて、新らしい名前で行きたいというようなことが今度の職業安定という名稱が生れた一つの理由になつておるように伺つたのでありますが、言葉は極めて生硬であると存じます。ただ今までの名稱を避けてこの名前が立案決定に至りましたまでの過程といたしまして、どのような外の名前をお考えになつたか。そうしてその中でこの名前が最も適當であるとどうしてお決めになつたか。そういつた點をもう少しお伺いいたしたいと思います。そうして最後にこの名前が極めて只今申上げましたように求職者に對して親しみのない官廳用語の燒直しの名前であるということが確認された場合に變更される用意ありや否や、如何かということについて伺います。
○國務大臣(米窪滿亮君) これもこの法律を起案する際に考えられた名前は、從來の通り職業紹介法とすべきか、職業安定法とすべきか、大體二つの案があつたのであります。その他に別に思いついた案がなかつた。そこでなぜそれでは職業紹介法を職業安定法に直したか。職業紹介法というのは職業を紹介するという手續の經過を示す、そういつた表現効果が多く現れておる。職業安定というのは究極において職業を紹介することによつて、それが字句の問題でありますが、ともかくも或期間職業を安定する、ともかく究極の目的を狽つて、そうして目的本位にいわゆる表現方式を採用したのであります。それ以上に餘り深い意味はございません。即ち職業紹介というのは職業紹介所は職業を紹介してやるという意味であるのですが、この職業を紹介した結果各人の職業が安定する、併しながらそれが六ケ月であろうが、一年であろうが職業が安定するという、その目的の方に重きを置いた職業安定法、こういう工合にしたわけであります。
○栗山良夫君 そういたしますと、今この適用を受ける人々が非常に親しみ易いということが確認された場合、又適當な、もつと分け易い、而もこの安定法の内容をうまく表現し得るような名稱を各委員でお考えになつた時には、政府はこれを變更される用意があるかどうかということを伺いたい。
○國務大臣(米窪滿亮君) まあ問題としては、餘程不似合な、餘り人の人口に膾炙しないという名前で、全體職業安定法は現在どういう法律か分らないような印象を與えるならば、皆さんからよい智慧をお借りして宜いと思います。大體職業安定所が從來の職業紹介所であるという、若し一般國民にそういう認織を與えるものならば、これはこの職業安定法ということでお認めを願いたい。これは關係方面においてこの點を強く主張しておると聞いております。從つてこれに代るべき何かいい名前でもあつて、その方が非常に効果的であるということ、竝びに職業安定法というのは全體何の法律であるかということが、職業安定法という五字を聞いただけでは分らないという疑いが強ければ格別でございますが大體私共としては、職業安定法というものは、職業を紹介することによつて國民生活が安定するというように誰でも解釋するだろう、こういう意味でこれをお認めを願いたいと思います。
○委員長(原虎一君) この際お諮りいたします。第二章につきましては、大體質疑應答は終了いたしたかの感がいたしますが、第三章に移りまして御異議ございませんか。
○山田節男君 第二十條はこれはまだ何もしていませんから……。
○委員長(原虎一君) これは質問が終りまして、あとは會議において我々の委員會の意思が決定できるものと思いますから、御質疑の點は大體終了したのじやないかと思います。二十條につきましては、政府當局も今までの御質問者の意思によつて皆さんの御意見が一致すれば改めること、或いは修正することについて敢えて原案を固執するものでないという御意見もありますから、二十條の問題はこの程度で打ち切りたいと思いますが宜しうございますか。
○委員長(原虎一君) 第三章に移りたいと思いますが、先程申し上げた刑事局長が出席になつております。お諮りいたしますが、刑事局長の出席を求めて先程から出席になつておりますが、五章の罰則の方を先にいたしたい、こういう豫てから申出がございましたが、御異議ございませんか。
○委員長(原虎一君) それでは第五章の罰則の方に移ります。
○栗山良夫君 第五章の停則の中、特に六十三條、六十四條、六十五條の刑量の點について、政府の御考えを伺いたいと思います。申すまでもなく犯罪に對する罰則というものは、その犯罪を防止するという至高な目標を以ちましてするところの國民的な制裁でなければならんわけであります。罪を憎んで人を憎まない、この人道的な理想の下に、罪自身に對して飽くまでも令嚴な制裁を加えなければならないとこう思うのであります。それにつきまして、この六十三條、六十四條、六十五條を通覧して見ますると、この體刑の方は各委員の御意見もあろうかと思いますが、少くもこれに均衡を取りますところの下の罰金刑の方のことについて申し上げますならば、六十四條、六十五條も一貫しまして、現在のインフレの状況において果してこの程度の金額で、この程度の犯罪を犯した者に對するところの犯罪防止を目的とする制裁の効果か擧げられるかどうかということについての御質問を一つ申し上げたい。それからもう一つは、六十三條はこの職業安定法の中でも最も重要なる部分を占める、いわゆる今までの基本的人權を侵して勞働者の搾取をせられたところの、そういう人々に對してのこれは制裁であるわけであります。從いましてこのようなものは關係先の御意向もすでにはつきりしておりますように、最も冷嚴なる制裁を加えるべきものだと私は考えるのであります。それにも拘らずこの六十四條、六十五條は同じ一年、或いは六ケ月の懲役に對して、罰金刑の方の最高は一萬圓、五千圓、こういうような額に相成つております。然るに六十三條の方は、體刑の最高は十年になつておるにも拘わらず、罰金刑の方の最高は三萬圓ということで打ち切られております。六十三條の犯罪を若し構成するような人々に對して、現在のこの貨幣價値の低下しておりまする現在、三萬圓というような輕少なる金額で以て、果して制裁の効果が擧げ得るやどうかというような點も甚だ疑問なきを得ないのであります。從いまして私は以上二點につきまして政府がどういうような根據で以て、こういうような刑量を立案せられたか、その點を伺いたいのであります。
○委員長(原虎一君) ちよつとお待ち下さい。今特別に速記の問題について米窪大臣から發言を求められております。速記をちよつと止めて下さい。
○委員長(原虎一君) 速記を始めて。
○政府委員(國宗榮君) お答えいたします。只今の御質問につきまして、どうしてこういうような徑路を取つたかという點を先ず御説明申し上げます。大體この職業安定法は御承知の通りに勞働基準法と非常に密接なる關係にあるものと私共は考えておるのでありまして、而も本法の規定をいろいろ見て參りまするというと、勞働基準法に似た點が多分にあるのでありまして、或いはこれと表裏一體をなすような規定も見出し得るのであります。それで本法の罰則というものは、大體勞働基準法に先例を求めまして、從前の職業紹介その他の規定と睨み合せまして、その刑を定めたのであります。他の法例との權衡、それから又現在の經濟事情等から見まして、罰金刑が非常に低過ぎるとは考えていないのでございます。殊に現在のこの物價が實は非常に變動しておりまして、金刑を定める場合におきましては非常に考慮を要するのであります。從いまして大体勞働基準法を先例といたしまして、これによつてこの刑を定めた。こういうふうに申し上げるのでありますが、御承知の通りに勞働基準法の最高刑は、同法の百十七條によりまして本法と同じように一年以上十年以下の懲役、又は二千圓以上三萬円以下の罰金でございます。でこの六十三條の規定が、内容が非常に重要であるということは御承知の通りでありまして、この罰金の定め方におきましても、從來の定め方は大體この最下刑というものが定めておりませんで、上の方だけ定めまして、例えば三萬圓以下の罰金に處すというような體裁を参つておるのでありまするが、勞働基準法と、本法に限りましては最低を限りまして二千圓以上三萬圓、こういうふうに規定を設けておるのであります。勞働基準の點から申しまするというと、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身體の自由を不當に抱束する手段によつて、勞働者の意思に反して勞働を強制する使用者を處罰し得るのでありまして、本法ではやはりこれと同樣な手段によりまして、職業を紹介して勞働者を強制勞働に服せしめるような趣旨のものでございますが、從つて勞働基準法の關係におきまして、この法律だけに刑を重くするということは、凡そ體系から見まして餘り面白くないとも考えておつた次第でございます。更にこの本法の元の舊法でありまする職業紹介法の罰則を考えて見まするというと、これはこの法律の目的とし、趣旨とするところが根柢から考えが變つて參りましたので比較にはならんと存じまするけれども、舊法は最高刑が六ケ月以下の懲役又は五百圓以下の罰金という低いものに相成つておつたのであります。この點を法の目的と法の精神とに照しまして、六十三條のような規定にいたした次第です。更にこの金刑の方で考えまするというと、例えば經濟上の利得、これを剥奪することを先ず一つの目的といたしておりまする一般の經濟統制諸法令、これらと考え合せまするというと、本法の金刑の最高刑は低いのじやないか、こういうような御議論もあり得ると思うのでありまするけれども、本法の違反は、勿論或程度この利益の剥奪も考えましようけれども、それを窮極の目的といたしておるのではございませんし、本法によりまするところの利得というものを、經濟統制法令等によりまする利得と考えますれば、そう大きななのじやない。假りに利得がありましても、大體罰金刑の範圍内で賄えるのではないか。こういうふうに考えておりまして、而も事案が重大でありまして、重大でなくても甚だ面白くないという事案でありますれば、體刑を以て臨むことができるのでございまするから、以上のような考えからいたしまして、本法に規定いたしました罰金刑はこのくらいで適當であろうというふうに考えた次第でございます。尤もこの物價が安定いたしました状態におきまして、もう一遍考え直して見なければならん點も起つてくるかと思いますが、これは全般を通じまする罰金刑、金刑に對しまする刑罰全體の問題といたしまして、今日檢討中でございます。一應この法律におきましてはこれを以て妥當と考えた次第であります。
○栗山良夫君 その六十三條、六十四條、六十五條の罰金刑の横の均衡の問題について、まだ御囘答がなかつたようでありますが……。
○政府委員(國宗榮君) これも大體勞働基準法の先例に倣つたのでありまして、六十三條は、これはもうこの職業安定法の違反といたしましては、實質的に惡質なものであるというふうに考えるのでありますが、二號の「公衆衞生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で、職業紹介、勞働者の募集若しくは勞働者の供給を行つた者又はこれらに從事した者」、これは一號とは多少違いますけれども、こういうものも實質的には一番重いところの刑を以て臨んだら宜しいというので、六十三條にこれを掲げてある次第でございます。六十四條、六十五條の規定は……。
○栗山良夫君 質問申し上げた點がまだお分り頂いてないようでございますが、六十四條で體刑事、それから罰金刑で最高一萬圓ということになつておりますね。それに對して六十五條では體刑が六ケ月、罰金刑も丁度半分になつておる。大體ここのバランスが取れておるのに、體刑の方で六十三條は十年ということになつておるのに罰金刑の最高が極めて低いじやないか。このバランスがどうしてこういう工合になつて來たかということを質問申し上げたわけです。
○政府委員(國宗榮君) これはそういう意味合で、この六十四條に一年以下の懲役としまして一萬圓以下の罰金。六十五條で六ケ月以下の懲役としまして半分の五千圓以下というように、こういうバランスで以て六十三條を考えたのではないのでございます。先程も申し上げましたように六十三條の規程も、勞働基準法で強制勞働をこういうような手段方法によつてやります場合に、その刑罰規定が一年以上十年以下、二千圓以上三萬圓と、こうなつておりますのでこれと比較いたしまして勞働基準法の方がより重要なものではないかというふうに考えられたのでありまして、從つてこの職業安定法ではやはり六十三條のそれに類似しました規定におきましても、この程度に止めたが宜しいと、こう考えたわけであります。この體刑と金刑とのバランスを各條によつて考えたわけじやございません。
○栗山良夫君 私の只今の質問に對する政府の方の御囘答は、まあすべての根據を勞働基準法にお取りになつておりますけれども、これは非常にその點は了解しかねるのであります。即ち勞働基準法が假りに又近々施行になつたものにいたしましても、すでに現行の法律がかくあるが故に今後のものもこうしなければならないと、こういうような理由で以て只今の御説明を終られようとする點については、非常に了解しかねるのであります。これは根本的な方針の問題を申し上げておるのでありまして、若し私が申し上げていることが正しいといたしまするならば、當然勞働基準法の罰則も變更せらるべきものである。こう考えるのであります。今までのいろいろな體刑、刑罰、刑量の各法律に對するバランスの問題その他の均衡の問題もございましようけれども、私が伺つているのはそういう問題ではないのであります。例えば最高一年の體刑でいい者に對して一萬圓の罰金が金刑としてかかつているのに、十年も體刑を課さなければならないような性贊の犯罪に對して、罰金刑は最高三萬圓でいい、そういうようなどうしても了解し得ない矛盾をどう解決するかという理論的な問題を伺つておるわけであります。
○政府委員(國宗榮君) 只今法律の體刑のバランスからいろいろ申し上げましたが、御質問の趣旨によりますると、十年の刑に處さなければならないのに、一方は三萬圓、一年の刑を處するに一方は一萬圓、甚だその點において面白くない、根本的な問題として檢討しなければならん、こういう御質問と思いますが、この六十三條の、行爲の中には非常に情状惡質のものとそうでないように見られるものと、いろいろ處罰の對象となる行爲の段階があろうかと考えるのでありまして、その段階に適應いたしまして、體刑は幅は廣くもつている、而も六十三條は主として體刑が適用されるのじやないか、かように考えたわけでありまして、殊に「暴行、脅迫、監禁その他精神又は身體の自由を不當に拘束する」、こういうような行爲につきましては、刑法の規定からいいましても、特にこの點から考えましても自由刑は相當重くしなければならない、こういう點に對しまして一年以上十年以下というような點を考えたのであります、更にこの罰金に處すべき場合におきましてもこれは自由刑を課さずに罰金に處した方がいいというふうに考える場合でありまして、多くは六十三條で適用を受ける場合は罰金刑に處せられるのは犯情の輕い者であるというふうに考えます。この犯情の輕い者につきましては三萬圓までで罰すれば宜しい、三萬圓を超えて罰しなければならんような、そういう者につきましては、これは勿論體刑を以て臨まなければならない、かような考え方からこういう規定を設けたのであります。六十四條、六十五條におきましては、これは場合によりますというと、罰金刑で以て處断するのが妥當と思われるものが多くあろうかとも思うのであります。從いまして罰金の價格を懲役刑の割合におきましては相當高く上げておる、こういう觀點で考えたのでございます。その點御了承願いたいと思います。
○栗山良夫君 只今御囘答を頂いた中で更に二點について私了解し得ない點がございますが、その一つは罰金刑は現在貨幣價値が變動しているからこの程度で、將來貨幣價値が安定すれば適當であろう、現在では適當でないかも知れないけれども、將來を見越して先ず妥當だと思うというような趣旨の御囘答かと伺つたのでありますが、若しそうであるとするならば私は根本的に過りだと思うのでありまして、この法律は通過すれば直ちに施行されるものであります、從つて現在の貨幣價値によつて十分に効果を擧げ得るような金額に決めまして、將來貨幣價値が安定いたしまして、若しこの金額を下げなければならないということになるならば、そのときに變更すべきであつて、只今そういう趣旨でお述べになつたとするならば了解いたし兼ねる點であります。
 それからもう一つは六十三條の場合でも、このような犯罪によつて利得する經濟的な利益というものは大體そう大したものでない、こういうような趣旨のことをお述べになりましたが、これも甚だ私共法律の專門家ではありませんが、常識的にこういうことを考えまして了解し得ないことは、即ち今まで六十三條の第一號のような或いは第二號のようなことでどれだけ多くの人人が泣かされて來たか、人權を蹂躙されて苦しい勞働に甘んじて來たか、これをお考えになるならば、單に經濟的な利益、そういうものだけで評價すべき輕々の問題でない、こういう工合に考えるのであります。若し現在の司法當局がお考えになつておる罰則の根本的なあり方というものが今お述べになつたような考え方からスタートしておるとするならば、私はもう少しいろいろな點において討論を盡す必要があるのじやないかと考えるのであります。
○政府委員(國宗榮君) 貨幣價値の變動しておる問題を申し上げましたが、貨幣價値が變動しておりまして、現在如何なる罰金刑を盛るかということは非常に困難である。直接今日の物價情勢に當てはまるような罰金刑を考えることが非常に困難である。將來安定しましたらそれに對して處する、今日の情勢においてはこの程度でいいのではないか、かように申し上げたのでございます。
 尚第二點は、經濟上の利益が少いから罰金刑はこれで宜しい、かように申し上げたのでございまするけれども、趣旨は經濟統制法令との比較において申し上げたのでございまして、勿論これは本來は六十三條の一號に該當するようなもの罰金刑を以て處斷すべきものでは本質的にはないのでございまして、ただ多少のここに利益關係が伴うので、罰金刑で處す場合も考えられる、從つて利益があるないという問題でないのでございます。本質的に罰金も處罰であるという考え方から出發いたしましたので、經濟的利益を考慮してこの刑を定めたのでないという趣旨を申し上げたのでありまして、その點御了承願いたいと思います。
○深川タマヱ君 簡單な質問でございますけれども、犯情の重い者には罰金を澤山かけて、犯情の輕い者には罰金の刑も少いと思いますけれども、體罰の場合などは何人といえども苦痛を感ずる程度がよく似ておるのでございましようが、罰金の場合は各人の財政状態、經濟状態によつて苦痛を受ける程度を餘程異にいたしまして、無一文者にとつてはたとえ二千圓の罰金といえども非常に大きい苦痛でございましようけれども、巨萬の財を持つておる人は何の苦痛も感じないと思いますが、罰金の取扱についてどういう御考慮を……。
○政府委員(國宗榮君) お答えいたします。罰金を課す場合におきましては、やはり犯情ということが中心になることは勿論でございますけれども、犯情と申しまするのは、その人の生活状態、非常に澤山金を持つておるか、或いは非常に貧乏であるかというような點におきまして實際上の運用におきましては考慮いたしておるのでございます。一概にただ客觀的な犯罪事實だけによりまして罰金刑を算定しておるのではございませんです。併しながらそうは申しまするものの、罰金にはこのように法律にも限度を設けてあるのでございまして、從つて金持の方が犯罪を犯されまして犯情正に罰金に相當するという場合におきましては最高額をやつても苦痛でないようなものもございます。そういうような場合におきましては事案を考えまして、刑の效果というものを考えまして、罰金を選擇せずして自由刑を以て臨むというような場合もあるのでございます。そこはその運用が裁判所に任された義務だと思つております。
○委員長(原虎一君) お諮りいたします。罰金の問題につきましては一應この程度にいたしまして第三章の質疑に入りたいと思います。
○姫井伊介君 三十五條と三十六條でありますが、通勤のできる地域云々とありますが、これは交通事情によつて非常に違つて、徒歩でしなければならんところもあるし、又電車の便のあるところもありますし、非常に操作が厄介じやないかと思うのであります。むしろこういう場合にはこの挾い範圍の中における勞働者募集につきましては、やはり募集者より職業安定所に對して通報するという制度をお取りになつてはどうであるかということが第一であります。それは勞働力の需給調査の上から、或いは統計の上乃至はその安定所と附近の事業場との連絡、この前も申しましたように勝手に縁故採用をやつて安定所には知らさないといつたようなことがあるのでありまして、人の動きは安定所に全部知らせるようにしたらよいのぢやないか、これは必ずしも大した手數ではないのでありますから、この兩方の條項ともやはりそういう通勤のできる範圍の者は、共に通告をせしめるといつた方にした方が法の精神に合致するのではないかと考えるのであります。この點を御尋いたします。
○政府委員(上山顯君) 只今の御質問になつた點でありますが、實はそういう點につきましては私達もいろいろ研究いたしまして、すべての求人關係を安定所で皆見るようにしてはどうかというようなことも實は考えてみたのであります。唯この法律の全體の建前からいたしまして、弊害のあるものは思い切つて嚴罰にも處し、又非常に嚴しい制限をする。例えば勢務供給業というものは認めておつたが、これは弊害があるから勞働組合でやる以外は全然禁止するというようにしなれけばならんというような嚴格な方面がありますと共に、若干もつとやらせるのがいいかも知れん、若干弊害があるかも知れんというようなものにつきましては、大きく見まして、できるだけ自由にしよう、こういう考え方でこの法律ができておるようなわけであります。それで只今の點、通報させますればそれで公共職業安定所としては事情がよく分るわけでありますが、通勤區域のものでありますれば、就職先の事業内容でありますとか、勞働條件等も大體分かるのでありまして、そう弊害もないのではないか、そうすれば唯公共職業安定所ができるだけ様子を知つて置きたいというようなことだけのために、それだけの手數を事業主に掛けるのはいかがであろうか、殊に戰爭中に御承知の勞務統制のやかましいときにおきましては、これはすべてのものを實際當時の紹介所が抑えておつたわけでありまして、全部が計畫配置になつたわけで、その場合には全部許可ということが必要なのでありますが、今囘におきましては、成るだけ自由にさすという考が一面にあるわけでありまして、そういう趣旨からいたしますと、そうまでしなくてもいいのぢやないかというようなことも考えて、いろいろ議論もあり、檢討いたしました結果、こういう結論になりました次第でございます。
○赤松常子君 昨日御質問したことと關連しておりますが、三十七條の委託募集のところは、紡績などの募集人制度の復活を申請して參りましたならば、大臣の許可さへあればその古い形態というものも認められるのでございましようか、それともう一つは「報償金を與えようとするときは」云々とございますけれども、一體こういうような條文を作つても實際にこれを行われないと私は考えておりますが、その邊のところはどういうふうにお考えになつてこういう案をお作りになつたのでありましようか。
○政府委員(上山顯君) この點も今お答えいたしましたところと同じ趣旨で、少しでも弊害の虞れがあれば、全部何でも禁止しようという考えでなくて、できるだけ一面は自由の行爲と事業の側でも認めようという建前からいたしまして、監督は十分にいたすが、弊害がないと認められる場合には、認めてもよいじやないかと、こういうような考え方でございます。從いまして、被用人をして募集いたさせます以外のこういう委託募集のものにつきましても、十分審査をいたしまして、弊害がないと思えば許可をする場合も方法として擧げております。こんな積りでございます。それから報償金のことでございますが、これは御意見の通り、いろいろ實施上面倒な問題もあると思うのでございますが、私達といたしましては、許可を受けました以外の報獎金を得ておるというようなことがありますれば、嚴罰にもいたしまするし、許可の取消もいたします。十分そういう取締をいたしまして、又實際問題といたしましても、あの會社から願い出たものは始終違反しているということになりますと、その會社のものは將來は當分の間は許可をしないというようなことも考えられる。弊害の内容には氣をつけていながら、途だけはあけて置きたい、こんな考えであります。
○栗山良夫君 四十五條について御質疑申し上げます。凡そ民主主義の立場とは縁遠いところの組織、言い換えまするならば、組織の極めて弱い自由勞働者を主とした對象といたしますところの勞働者搾取のような形を取られる勞働者供給事業というものが禁止を今度されたということは、非常に人權の尊重上喜ばしいことであります。その拘束されるのが四十五條であります。この四十五條はそれを表面からこのまま解釋すれば、成る程勞働者供給事業というものは民主的になるわけであります。併しながらこの條文の裏を潛つてなし得るところの事柄は、若し一歩を誤りまするならば、從前の勞働者供給事業と何らの變りのないところの形態が採り得るのであります。その點もう少し具體的に申し上げまするならば、假に現在勞働者の供給事業をやつておる事業主が、その配下にありますところの勞働者をして、自主的に勞働組合を結成させまして、そうしてその勞働者の中から委員長を選出させて、自分はその組合の書記局の一書記として、その組合の傭人として入りまして、そうして嘗つての從屬關係からいたしまして、その專門書記なるものが事實上の組合の委員長であり、組合の差配を握り得る立場に立ちまして、そうしてその組合員から高額な、不當な組合費を徴收いたしまして、そうしてお手盛の專門書記の報酬を手に入れる。こういうような形が十分豫定せられる。既に私の承知しておるところによりましても、長野縣下において、そういうような、これと同種であるかどうかちよつと伺つておりませんが、そういつたような見解の下に、極めて高額な組合費を割當てまして、縣の勞働委員會はその組合を、組合法による組合と認め難いというような態度に進んでいるということも聞き及んでおります。この點について組合法とも關係はございまするが、勞働省として、四十五條がそのままで本當に勞働者供給事業を禁止し得るかどうか、實質的にお考えになつておる點、竝びに禁止できないとすればどういうような方策をお採りになるか、この點を御説明して頂きたいと思います。
○國務大臣(米窪滿亮君) これは御意見御尤もと存じます。從來この供給事業の弊害というものは、もう私が詳しく言うまでもなく、ボス的な組織の下に、勞働者をいわゆる無辜の勞働者を搾取する、こういう所にあつたことは言うまでもない。これに鑑みまして、政府は供給事業というものは原則としてこれを民間にやらせない、こういう建前を一應とつております。ただ勞働組合だけは自主的に、いわゆる營利的でなくて、この供給事業を續ける建前において、勞働大臣が認める場合には、勞働組合に限つては供給事業を許すことができる。ところが今のように表面は御指摘のように表面は勞働組合でありながら、いわゆる事業者の御用組合というようなものを拵えて、そうしてやるような危險はないか。これは私は絶對ないとは思えない。ただこの條項においては、勞働組合法による勞働組合にはやらせるということはあるのであります。勞働組合法で決められている所の勞働團體というものを、嚴格に勞働省がこれを監視しまして勞働大臣が、苟もこの勞働團體は形式はともかく、實質において勞働組合法に基かざる勞働團體であるという正體が分つたときには、勿論これに對しては假令勞働組合としての認可は受けておつても、これに對して勞働供給事業を禁止し得る場合があり得るということを御承知置き願いたいと思います。
○栗山良夫君 そういたしますと、こういう工合に了解して宜しゆうございますか。と申しますのは、この法案が可決決定されまして、施行になりました以後におきましては、若し四十五條の實施について疑問が起きた場合には、勞働省は中央、地方の勞働委員會を介しまして、新らしく無料の勞働者供給事業を行うための勞働組合ができました場合には、或いはできる場合には、嚴重な調査、竝びに監視を進めて行かれる、こういう工合に了解して宜しゆうございますか。
○國務大臣(米窪滿亮君) 第四十五條は、勞働組合法による勞働組合は、すべて供給事業ができるとは了解しておらないわけです。ここに「勞働大臣の許可を受けた場合、」とこうあるのでございまして、一に勞働大臣が栗山さん御指摘のような勞働組合であるか否やということをここに勞働大臣が決めて行くわけであります。そういうことが明らかな場合は、許可をしない積りであります。
○山田節男君 ちよつと中座いたしまして、或いはさつきの姫井さんの御質問と重複するかも存じませんが、例の三十五條、三十六條の通勤地域内においては文書により、或いは文書以外の方法によつて自由募集ができる。募集の自由が保障されているわけでありますが、これは私は最初に申し上げましたけれども、勞働者の、殊に日本の今後に失業者が非常に殖える、こういう見込の下におきまして、職業安定所のなんと申しまするか、勞働者の配置、或いはどういうふうに分布しておるかということが非常に重要になると思うのであります。横濱の職業安定所を見ましたときにも、先程申し上げました第一にこの豫算を殖やしてくれということを申して、更に第二にはどうもこの自由募集というものは、安定所の仕事の上におけるなんと申しまするか、統計上の仕事を非常に妨げておる。それから又職業安定所の權威も、權威というと語弊があるかも存じませんが、職業安定所の權威を傷つけている。こういうのがありまして、是非通勤地區から募集する場合にも、職業安定所に通報するようにということを希望しておりましたのですが、實際この點は私は考慮さるべき點だと思います。殊に文書により、或いは文書以外の方法によつて、通勤地域内における自由募集というものが、勞働者におきましても自由勞働者、この場合は割合に弊害もないと存じまするが、併し家事勞働者、家事手傳人、そういつたような不熟練勞働者の自由募集というようなことを通勤地區内においては、これを認めるということは本法の趣旨にも非常に悖るものと思うのであります。どういう理由で三十五、六條において通勤地區内において自由募集ということを認めたか、その實際的の理由を一つお示し願いたいと思います。
○政府委員(上山顯君) 先刻も申しましたように、通勤地區内でございますと、只今の状況として、列車を利用して、一時間半とか、とにかく通勤できまするような地區でございますれば、大體そこの工場の内容でございますとか、というようなことも比較的よく分るのでございまして、それからそこへ參りまして、自分の考えておる所とは違つておつたということになりましても、又直ぐ他へ轉ずることもできるのでありまして、これが遠い所からやつて參りまして、必ずしも騙されたじやなくて、自分の思いと違つておつたという場合には非常に困るわけでありますが、通勤地區ならばそういう困るような場合は少いじやないか。そういたしますと、結局利害得失のバランスの問題になると思うのでありますが、成るべく弊害がないと思うようなものはできるだけ自由にやつていきたい。こういう氣持からいたしまして、第三十五條、第三十六條によりまして、通勤地區につきましては、相當自由を認めておるようなわけなのであります。それで安定所を御視察になりまして、いろいろ現地でお聽き頂きました點も私達感謝に堪えない所でございますが、私達安定所を指導監督いたします者が、今申しておりますことは、安定所は戰爭中はすべての勞務配置を一手に引受けまして、殊に徴用等の國家的權力を背景にしましての人の動かしをやつて參つたわけでございます。それで今後はそういう氣持を全部捨てまして、殊に今度の安定法におきましては、單に安定所だけが國の職業紹介機關でございませずに、それ以外にも無料の紹介機關を認めることにもなつており、又募集等につきましても、戰爭中は殆んど認めてなかつたのが、今囘は相當自由な範圍が廣くなつておるということになりまして、いわば今までの獨善的な地位がなくなつたわけでございます。從いまして安定所としましては、前のような氣持を續けておりますれば、非常に頼りない、物足りないという感じがあると思うのでございます。そういう気持ち洗い流しまして、むしろいわゆる競爭相手と申しまするか、同じような仕事をする人ができれば結構だ、自分達はそれに構わずに一層安定所が、いわば繁昌いたしまするように、大勢の人に喜ばれるようにしなければいかんじやないかというようなことを地方の者に申しておるような次第でございまして、横濱の安定所でどういう御意見がございましたか、どういう意見を申しましたか、又その意見を申しました者の氣持がどういうことであつたかは存じません、それを申すのじやありませんが、一般的の私共の氣持といたしましては、今までのように、お前達だけが……。獨善と申しますが、自分達だけの專賣というような氣持を捨てまして、サービス本位で、サービスでほかに負けないようにして、而も安定所がいわば繁昌するというのでなければいけないじやないか。こういう氣持で第一線の機關に話をいたしておりますので、そういう點もお含みの上で、私達の趣旨を御了承頂きたいと思つております。
○山田節男君 只今の上山局長のお話、勿論諒とするのでありまするが、この本法案の十六條に、いわゆる非常に通常の勞働條件に比べて著じるしく不適當である場合には、その申込を受理しない。ここに私先日申し上げましたいわゆる前職よりか著じるしく不良な勞働條件で雇傭されない、就職しないということを保障されておると、そういう大臣竝びに上山局長からの御説明を了解しておるのでありますが、これはただ私だけが想像で申し上げるのでなしに、先に申し上げましたように、横濱職業安定所、可なり大きくやつている、而も大都會、横濱、川崎、東京の大建設地帶における實情を見まして、これは職員の實際です。これはもう非常に困つておるということが明らかであります。それとこの第十六條におけるいわゆる勞働條件の監督ということまで、この職業安定所の任務とするからには、自由募集ということを、而も大都會の建設地において、文書或いは文書以外の方法において認めるということは、非常に私は今日の勞働供給の過剩な折から、不良なる勞働條件に陥れ、而もそれがフリーに決める勞働においては、或場合にはなんと申しますか、家内工業、家事手傳人等は搾取、壓汗作業、或は壓汗、汗をしぼる就職雇傭になり易いという危險を非常に私も恐れる者であります。そういう意味におきまして、私はなにも戰爭中までの勞務動員、或いは強制配置、こういうような意味でなく、職業安定所の當然の私は任務、殊にこの數字的統計、これは私は日本に折角職業安定所を通じて正確なものができなかつた場合には、職業安定事業の適切な運用、それから能率が非常に阻害されると思うのであります。そういう意味におきまして先程の上山局長のお話は、自由に非常に民主主義的に見えますけれども、行政上においてそこまで確保する必要はない。殊に現在の或いは今後の勞務の需給状況から見ますと、これは是非自由募集は安定所に通報する。そうしてその勞働條件を維持監督するということは、これは私決して民主主義機構に悖るものでないと思うのであります。この點の見解、これは相違かもしれませんが、私それを實際見て、そういう希望に堪えないのであります。
○理事(栗山良夫君) 只今委員長がちよつと要件がありまして、席を立たれたので、私が代理いたします。第三章一應……。
○岩間正男君 この第三十二條の意味ですが、第一項の担書の「美術、音樂、演藝その他特別の技術を必要とする職業に從事する者の」云々、それが特に有料を許可するというような根據ですね。それから更にそれらの範圍、この範圍はこれは先に行つて詳しく、又特別な施行細則などで決められるのだと思いますけれども、大體今考えておられる範圍ですね。どの邊に一線を引くか、例えば活動小屋の看板書でも、それからひろめ屋のような者、それから演藝のアッシスト、エキストラのような者、こういう者はどういうような所に入るか、こういうところにこれは相當問題であると思いますが、これらの二點についてお伺いしたいと思います。
○國務大臣(米窪滿亮君) これはこういう特殊の知識、技術、そういうものを持つておる人達の職業紹介は、極めて稀な場合であり、且つ一般の職業紹介所で、なかなかこれを、就職を斡旋することも困難でありますから、その場合に、こういう藝術、技藝、そういう人達の属している協會とかそういつた所へ職業紹介所が頼んで、就職斡旋して貰う。こういうことに實際はなると思います。從つてその場合は、無料ということも實際困難な場合もあるので、これは勞働大臣が決める額の、いわゆる社會情勢に鑑みて、非常に高くない程度の手數料を拂う。こういう精神がここにあるのであります。從つてその範圍はどういう範圍であるかということは、成るべく特殊な、そういつた藝能や才能を持つている人達に限る。今御指摘のような、映畫館の看板書というようなものは含まない。これについては政令で愼重に決める積りであります。
○岩間正男君 活動のエキストラなんかもですか。
○國務大臣(米窪滿亮君) そういうようなものは考えておりません。
○理事(栗山良夫君) 皆さんにお諮りいたしますが、第三章は一應御質疑も盡きたようでございますので、第四章に進みまして、若し時間が、もう三時になりましたができますならば、第四章全部一應終れば非常に今後の進行上好都合と思いますが、如何でございましようか。
○赤松常子君 ちよつと一つ第三章で、私たびたび繰り返して申し上げるようでありますが、從來の生絲や石炭、紡績の募集制度がどんな悲劇を釀したかということをここに申し上げるまでもないのでありまして、これに對して三十七條、各事業に關する施行細則については、特別にその會社側から報償金等の申請が參りました場合に、嚴重に審査をして頂きたいということと、それからこの報償金に關しますことでも、その邊のところがどうも私は、それは勞働組合が監視すればいいということになつておりますけれども、こういうように一應法律で謳われておりますならば、幾らでも潜る途があるわけであります。金を澤山やつて、人を集めればいいというだけでいる。とにかく集めて、そうして會社の門を潜らせれば、あとは知らん顔をしている。今までの數々の例を考えて、どうも問題がこれから起るように思いますから、こういうようなことも施行細則に嚴重にしたいと思います。
○政府委員(上山顯君) 只今の點はよく了承いたしました私達の方でも、雇入れ後の職業補導といような意味で氣をつけまするし、勞働基準法の施行に當る者といたしましても、いろいろ責任を負つているわけでありまして、寄宿舎なりその他も、自治的に運營しなければならんといういろいろな規定があるわけでありまして、そちらの方面とも十分協力いたしまして、御心配のないように十分努力いたしたいと思います。
○理事(栗山良夫君) 實は皆さんにお諮り申し上げたことを決定いたさないうちに、赤松さんから御發言がありましたが、實はお諮りしたことを決定しまして、大臣の方の御都合を一遍伺つて見ようと思つておりましたが、丁度三時から用事があるというので、大臣がお出かけになりましたので、そのことも含めまして、第四章をどう扱うか。
○山田節男君 大臣御出席の時に繼續したい、こう思います。やはりこれは雜則でございますが、大事なことであります。
○理事(栗山良夫君) 山田委員から今第四章の質疑に對して、大臣御出席の席上でいたしたい、こういう御發言がございましたが、いかがでございましようか。
○理事(栗山良夫君) それでは本日はこれで一應散會いたしたいと思います。どうも有難うございました。
   午後三時十三分散會
 出席者は左の通り。
   委員長     原  虎一君
   理事
           堀  末治君
           栗山 良夫君
   委員
           赤松 常子君
           山田 節男君
           平岡 市三君
           紅露 みつ君
           深川タマヱ君
           奥 むめお君
           早川 愼一君
           姫井 伊介君
           松井 道夫君
           岩間 正男君
  國務大臣
   勞 働 大 臣 米窪 滿亮君
  政府委員
   勞働事務官   上山  顯君
   司法事務官   國宗  榮君