第002回国会 議院運営委員会 第37号
昭和二十三年五月二十四日(月曜日)
   午前十時二十三分開会
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  本日の会議に付した事件
○政治資金規正法案(衆議院提出)
 (右法案に対し証言あり)
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○委員長(木内四郎君) これより委員会を開会いたします。
 本日は政治資金規正法案につきまして御意見を承わりますために、証人といたしまして、淺尾新甫君外五名の方々に御出席をお願いいたしたわけでございますが、皆様方におかれましては、御多用中にも拘わりませずお繰合せ御出席下さいましたことを、厚くお礼申上げたいと思います。本委員会といたしましては、現在衆議院を通過して参りました政治資金規正法案につきまして審議をいたしておるのでありますが、その審議の方法といたしまして、藤井委員を委員長といたしまして小委員会を設けまして、小委員会において愼重審議をしておるのでございますが、この際皆様方の御意見を十分拝聽いたしまして、委員会の審議の参考にいたしたいという趣旨を以て、本日御出席をお願いいたしたような次第でございます。何とぞ皆様方の自由な御意見の御開陳をお願いいたしたいと存じます。尚時間の関係上、成るべくお一人二十分以内で御意見をお述べ願いたいと存じます。又各証人に対する質疑は、原則としてすべての証人の証言が終りました後に行うことにいたしたいと思います。
 それでは順次御指名を申上げたいと存じますが、議院における証人の宣誓及び証言に関する法律第三條並びに参議院規則百八十五條の期定があります関係上、宣誓書を皆様の御手許に配付いたさせますから、宣誓御署名の上に御発言をお願いいたしたいと思います。先ず淺尾新甫さんにお願いいたしたいと思います。
   〔証人淺尾新甫君は次のように宣誓を行なつた〕
   宣誓書
  良心に從つて、眞実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。
        証人 淺尾 新甫
○證人(淺尾新甫君) この政治資金規正法案に関する問題につきましては、恐らくこれはもう皆さんどなたもお考えになつておる通り、不正な資金が入つて來て、それが政治の混乱を來してはいけない、この目的についてはどなたも異議がないところと考えております。ところで、これにつきまして最も問題になるのは、余り細かい期定を設け過ぎて政治の活動を阻害しやしないかどうかという点にあると思います。そこで一應この法案を読んで見ましたが、私にちよつと分らない点がありますが、その分らない点は御質問して差支えございませんか。自分の意見だけを述べるのですか。法案に分らない点があるのですが……。
○委員長(木内四郎君) 御意見だけを伺うことにしております。
○證人(淺尾新甫君) ああそうですか。そういたしますと、この第三條の最後のところですが、「若しくはこれに反対する目的を有するものをいう。」と、この点が千代つとはつきりしないのですが、若しこの協会或いは團体が本來の目的をこういうことをする目的を持つておるものか、或いはそういう資金を出す場合には直ぐにその目的を有するものであると解釈するのであるかどうか、この点について千代つとはつきりいたしませんが、若し本來の目的を持つてないものが資金を出す場合にもこの法律の適用があるのだということになりますと、非常に窮屈になると思います。それでありますから、若しこれを解釈せられるならば、私の意見としては、本來の目的、こういうふうな目的を持つておるものというふうに狭く解釈せられたならばどうかという意見であります。更にこの金額について見ますと……。
○委員長(木内四郎君) 尚この際御参考に、質問は原則として認めないのですけれども、極めて簡單な点について、一應御参考のために、余り分りにくい点はちよつと法制部長から申上げて置きたいと思います。速記を止めて……。
   〔速記中止〕
○委員長(木内四郎君) 速記を始めて……。
○證人(淺尾新甫君) それでは第三條の点につきましては、私はこれは狭義に解釈いたしまして、本來目的を持つておる團体だけに適用すべしと、こういう意見であります。更にこの金額について申しますと、千円とか五百円ということになつておりましたが、これは私只今のようなインフレ状態の時代におきましては、千円とか五百円とかいうものは余り小さ過ぎるからこれはもう少し金額を大きくしたら如何かと、こういう意見を持つております。それ以外の点につきましては特別の考えを持つておりません。これで私の意見は終りといたします。
○委員長(木内四郎君) 次に近藤銕次君を指名いたします。
   〔証人近藤銕次君は次のように宣誓を行なつた〕
   宣誓書
  良心に從つて、眞実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。
        証人 近藤 銕次
○證人(近藤銕次君) 私意見としてお尋ねがございますならば、只今淺尾先生の丁度御質問と申しますか、御意見と全く同じでございまして、ただこの法律が大変に政治資金についてとかく近年と言いますか、最近いろいろ問題を起こしております際に、かような法律ができまして、非常にはつきりして参りはしないかと考えまするので、法律そのものの目的については非常に賛成であります。ただ自然法律になりますれば、かような点まで行かなきやならないのでありましようけれども、非常に複雑、又從つていろいろ疑問の点などがありまして、政治の公職としての選挙を民主的に行うについて禍いを招來するようなことがありはしないかということを概括的に思えるのでありまするが、併しながら法律にしますれば、かようなことに相成ることは止むを得ないかと考えまするが、もう少し簡明に、成るべく條項を少くして、要領を得るように御盡力下さることを願つていいのじやないかと考えまする。ただ三條につきましては、今の淺尾さんのやはり考えておられますような点につきまして、私もさよう小範囲と言いますか、極限した解釈に解釈して行くのか至当じやないかと存じます。そのほか淺尾先生の御意見と大体同じでございますから、別に申上げることもございません。以上私の考えを申上げました。
○委員長(木内四郎君) それでは次に吉村正君を指名いたします。
   〔証人吉村正君は次のように宣誓を行なつた〕
   宣誓書
  良心に從つて、眞実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。
        証人 吉村  正
○證人(吉村正君) 実はこの法案についての意見を求められまして出て参りましたのでありますが、この法案についての意見を確信を持つて申上げることは実に困難を今感じておるのであります。それは一つは私の不勉強にもよりまするが、一つは私の考えによりまするというと、こういう法案について意見を申しまするのには、この背景をなすところの材料を必要とするように思うのであります。と申しますのは今までの政党において、政党の資金はどういうふうな工合に大体出て集まつているか、又どういう寄附から成立つているか、又どういう工合に支出されているかという、正確でなくても、大体の材料があつて、それに基きましてこの法案というものの是非を判断する必要があると思うのであります。実は我が國につきましては、そういう材料を私は寡聞にして知らないのであります。又集める時間もありませんでして、そういう材料を全くなしにこの法案だけを見まして判断を下すのはどうも甚だ下しにくいのであります。併しながらこの問題につきましては、諸外國には例があることでありますので、止むなく日本の実情とは多少違いますが、諸外國の実例等を多少見まして、判断を下さざるを得ないとこう思うのであります。
 政党の資金につきまして國家がこれに対する態度は三つあると思うのでありまして、一つは第一次世界大戦後にドイツ共和國において行われましたが、大体において全く自由放任する方法だと思います。いま一つはイギリスのやり方でありまして、選挙費用についてだけ法律を以つて統制をする、取締りをするというやり方でありまして、いま一つはアメリカに行われておりますところの収入並びに支出両面に亘つて法律的な統制を加える方法であるとこのように思うのであります。その目的は言うまでもなく第一條にありますように、政治活動の公明を図り、選挙の公正を確保し、以て民主政治の健全な発達に寄與することにあるのでありますが、先程お二人の証人の方のお話がありましたように、いま一つ是非考えなくちやならんことは、こういうことをなすことによつて、政党が政党としての本來の性質を失わんようにするということは非常に大切なことだと思うのであります。アメリカあたりでもこの問題につきまして、実施した結果そういう点についての心配なり、從つて警告なりが出ておるのであります。政党は元來、いろいろな政党については定義もありますし、政党の本質についていろいろ述べておりますが、私の考えているところによりますと、大体五つばかり重要な政党としての特徴を持つておると思うのであります。
第一は政党というものは自発的な、ヴオランタリイな人々の集まりだということであると思います。任意的な一つの集まりでありまして、給料なしに働いておるところの人々によつて、一定の給料なしで働いておるヴオランタリイな人々によつて作られているものである。これが第一の特徴であると思うのであります。こういう特徴がこういうことによつて損なわれるようなことになりましては、折角こういうものを作つて健全なる民主主義の発展を図られる、その民主主義のうちにおきまして最も重要なる役割を演ずるところの政党が萎沈滞するということを招いてはならないのでありまして、そういう点につきまして、一つこの法案を作るに当つて一つの角度を以て見ることが必要であると思うのであります。そういう角度から見ることが必要でございます。
第二には政党の特徴は会員組織であります。この会員というものは経済状況の変化と共に変つて参るのでありまして一定不動ではありませんが、メンバー・システムになつておるということが政党の特徴であります。政党の柵の中にどうしても任意的な、先程申しましたように團体と申しますか、会員組織と申しますか、政党の組織内に留まるということを統制するようにはできないと思うのであります。それから政党は主義政策を綱領とするということは申上げるまでもありません。
第四に政党というものはやはり政治を支配しようという希望を持つておるものでありまして、全然政権を把握して政治を支配する希望なきものは政党ということはできないと思うのであります。もう一つ最後に公職についてのいろいろな選挙に携わり、推薦したり、指名したり、支持したりするようなことであります。大体そのことが政党の特徴と思うのでありまして、ここに掲げられております第三條に定義が載つておるのでありますが、これにつきまして、これでもよいようでありますが、何か少しこれでは物足らんじやないかというような氣がいたすのであります。そういう工合に政党が特徴を持つておりますので、その政党が公正な活動をすると同時に、政党が政党たるの性質、意義を失わないようにして行かなくちやならんということが大切なことであると思います。
 それで大体この法案を拝見して見ますと、アメリカが採用しておりますやり方を大体採つておるようでありまして、アメリカではこういう工合に、一本の法律として規定されないで、いろいろな法律がでております。尤も州によつて違いますが、いろいろな法律が出まして、そうして大体日本の法案に盛られておるように今日なつておると思うのであります。それでアメリカの方法でございますと、収入並びに支出の両面について統制を加えておるのでありますが、尚日本の法律と違つております点は、支出の方から申しますと、支出につきまして合理的なものと非合法的なものと、或る州に置きましては列挙主義を採つておるのであります。何が合法的であるか、何が非合法であるかということを列挙しておるのでありますが、この法案で見ますとそういう点がありませんので、支出する場合において選挙の管理者、或いは政党の方で多少不便を生ずるのではないかと思うのであります。それからこの期定はまだ私詳しく法文は読んでいないのでありますが、これを檢閲いたします方法でありますが、これはただ一般に任せておくのかどうか、公告されたものをどういう工合に檢閲するのであるかという点についての規定が何かはつきりしていないように私は思うのであります。それからアメリカの先程申述べました合法的支出は三分の二の州がこれを列挙しております。大多数の州が列挙しておるというふうになつておるのであります。二十四條の寄附のところでありますが、この寄附の條項に、候補者自身の支出も含まれておるのかどうかということが問題でありまして、この規定だけでは、外に規定があるのかも知れませんが、どうもはつきりしないように思うのであります。それらの点につきまして、私はひつくるめて申しますと、この期定だけではどうも如何なる寄附について制限が加えられておるのか、又如何なる支出がいけないのであるかという点が十分明らかになつていないように思うのであります。そういう点をもう少し、他の法規で、選挙法案等で選挙に関することは決まつておると思いますが、併し寄附なんかについて、もう少しはつきりして置く必要があるのではないかと、こういう工合に考えでおるのでありまして、その三点につきましては、先程申しますように、私はこういう法律をどうしてもやらなくちやならんという程強く熱望も感じませんが、又やつていかんということも考えないのでありまして、如何に法律でやりましても、やはり逃げ道があると思うのであります。アメリカあたりでもいろいろな法律を作つてやつておりますが、結局その報告に漏れるところの収入があつて、政党の収入がどのくらいあるか分らんということは、多くの学者がそれを言つております。結局は法律を作りましても漏れるのであります。イギリスのごときは、法規はありません。併しながらイギリスにおきましては、収入や寄附については余り問題が起つておらないのであります。これはイギリス人の政治的な意識が、水準が高まつておるからかも知れません。併しながら一般的にいいますと、こういう法規を作つておる國におきましては、選挙費用が割合に少くて済みます。全然持つておらないような、第一次大戦後のドイツなどにおきましては、選挙費用が非常に余計掛かつておる、そういう点からいいますと、こういう法規を持つことによりまして若干の利益はある。若干の目的を達成することができる。こういうように考えるのであります。併しこの法規だけによりまして、政党が必ず非常によくなると、そうして民主主義が達成されるというわけには参らないのでありまして、一に法規の運用の仕方によるのでありまして、この法規の運用を過つならば、却つて冒頭に申しましたように、ヴォランテイアな團体たる政党の活動を阻害するというようなことになる虞れがあるのであります。そういう点につきましては、実は材料を以ちましてお話を申上げなければ確信のあることを申上げることができないのでありますが、そういう材料がないために、甚だ曖昧なことを申上げたようでありますが、私の意見は以上のような次第でございます。
○委員長(木内四郎君) 次に江口泰助君を御紹介いたします。
   〔証人江口泰助君は次のように宣誓を行なつた〕
   宣誓書
  良心に從つて、眞実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。
        証人 江口 泰助
○證人(江口泰助君) 江口であります。この法案につきましては、この法案そのものが目途としておりまする基本的な目標に対しましては、私達労働組合も勿論賛意を表しておるのでありますが、併し從來の選挙とか政治活動などに纏わるところの金品のいろいろな疑惑というものは、非常に國民に対して不審を抱かしておるのでありまして、この法案だけで、今吉村先生もおつしやつたように、選挙の公正が期せられるということは、私達は十分な期待は持てないのであります。それからいろいろ噂にも上つておりますが、現行選挙法の大幅の改正、これと一連の関係を持つて、そうして本当にこの法案が目途としておる目標が、完璧にまで達せられて、政治が公明になされるようにして頂きたい、これは我々の心からの念願であります、内容の点につきましては、併し私達労働組合に取つて非常に関心を持つて是非これは修正して頂かなければ困るというような点がございます。それは全経済團体の方面のお方からも指摘なされてありましたが、第三條に関することです。第三條の二項によりますと、「政党以外の團体で政治上の主義若しくは施策を支持し、若しくはこれに反対し、」とありますが、この政治上の主義若しくは施策を支持し、若しくはこれに反対するというこの原文は、非常に曖昧で、大体この法案そのものが難解で曖昧な点が沢山ありますが、特にこれはその適用に当つて重大なる問題を起す程の條文であります。それで一方的にこれが解釈されて、將來においても不明確なものを残しておくということは、法律としてはとるべきものではないと思われますので、この條項は削除して頂くように御努力を願いたいと思います。尚今の労働運動というのは、御承知の通り、その目標が、殆んどといつていい程、政治的な性格を持たないものはないのでありまして、特に我々官業労働者の労働組合は、全部といつていい程、それが政治目標、政治的性格を持つており、言い換えたならば、一方的にこれは政治目標を持つた團体であるということに解釈できるわけでありまして、卑近な例を挙げて見ますと、私達は教職員組合としまして、六・三制の完全実施、それから新聞等にすでに発表になりました地方教育委員会法案等に対しては、これは我々の身分の問題、地位の問題と非常に大きな関連がありまして、その修正等を考慮して頂くように関係方面に要望しておりますが、こういうふうに我々の目標そのものでさえ、政治的に解釈されて、政治目標であると取られるならば、我々労働組合は直ちにこの法に触れることになるわけであります。それで労働組合ばかりでもなく、他の農民組合とか経済團体としても、そういうふうな点は多々あるのではないかと考えられるのであります。尚先刻法制部長さんから御説明がありましたが、「政治上の主義若しくは施策を支持し、若しくはこれに反対する、」というのは、これを目的ばかりじやなくて、行為までこれを考えておるということですが、これは又一つ重大な点であります。私達は、この目的というのは、全部四つともかかつておるものと了解して法文の解釈をしておりましたが、その行為まで捉えるということになりますと、又重大なことになるわけであります。
 次に第三番目といたしましては、三條の一番最後に、「若しくはこれに反対する目的を有するもの」とありますが、どの労働組合でも、農民組合でも、或いは経済團体でも、その他の文化團体でも、目的というのは、或いは最終的な目的は一つかも知れませんが、その段階的な目的、それがおのおの幾つかあるわけであります。その幾つかあるところの目的の中の一つを取つて、例えば十の目的が羅列されておつて、その中の一つを取つて政治的な地位の向上とでもあつたならば、それも目的にこの團体は副つておらんというので、その團体そのものを、この政治資金規正法で拘束して行くということになる虞れが多分にあります。それで私達は、これを單なる目的にしないで、主たる目的、主目的とするというふうに、是非改めて頂くよう御考慮をお願いいたしたいと思います。
 以上三條につきまして三点お願いいたしましたが、それと同じようなことなんですが、第八條中に、「その他の政治活動」と、こうあります。これ亦極めて漠たる表現でありまして、三條の初めの「政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、若しくはこれに反対する」というような、あの表現よりも、もつと廣い意味に取られる。それでこれは第三條のあの削除と共に、連関して必然的に削除せらるべきものであるということをお願いいたします。その他第九條、それから第二十四條等におきまして、細微の金額に至るまでも、面倒な手続を経なければならないということになりますというと、事実上各種團体においては、政治活動というのが全く禁止されるということになるわけです。以上簡單でありますが、私の証言を終ります。
○委員長(木内四郎君) それでは次に重盛壽治君を指名いたします。
   〔証人重盛壽治君は次のように宣誓を行なつた〕
   宣誓書
  良心に從つて、眞実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。
        証人 重盛 壽治
○證人(重盛壽治君) 私はこの法律を制定することは、この法律が民主政治の健全な発達に寄與するということを謳われておりますが、目前より一歩の前進であるかも知れませんが、眞の日本民主化のためには、將來非常な障害を來たすのではなかろうかということを考える者であります。先程吉村さんの言われましたように、我々共は政党人でないために、今日の政党の財源の裏面の状態が如何になつておるかということを把握いたしておりませんので、その点に関してもう少し知識があるならば、突込んだ御意見も述べられると存じまするが、今日このような法律を設けて、この法律によつて日本の政党選挙が行われなければならんというような現実をむしろ私は悲しむ者であります。從つてこの法律を全般的にいうならば、かような法律を設けずして、かようなことは当然でき得るような態勢にならなければならんので、他の或いは選挙法というようなものの若干の改正の中に織込んで行くというような程度でいいのではないかというふうに私は考えます。從つて現れましたこの法律の面で行きますならば、我々は全般的にいろいろなことを申上げませんでも、今までの皆様方も申されましたが、今江口君も指摘せられましたように、第三條であります。かような曖昧な政治上の政党と或いは協会その他の團体というような、こういう労働組合或いは農民組合、そういつたものがどこの所で区別できるか分らんようなむずかしい條文によらずして、もう少し明確に言い現わす方法を一つ考えて頂きたい、ということは労働組合はこの法律の第三條の「その他の團体」というものには入らないのだ、明確に言うならばそういう解釈を持ちたいし、さようにして頂きたい。これは今江口さんがいろいろ例を申上げましたが、今日労働者はただみずからの生活の安定ができればよろしいというのではなく、大多数を占める勤労者というものは、この勤労者の力によつて國家の再建をしようという目的の下に労働運動が行われております。從つて労働組合法に規定されましたところの運動以上に幅廣い運動を展開しなければ今日現実の労働者の生活の向上も期し得られないと同時に、國家産業の再開というような重大問題の目標が遂行できない。その場合に労働者が一つの要求を出し闘争をする場合に、只今申上げますように賃金値上という埒内で済まない、賃金の反対には税金の問題が先ずありましよう。或いはこれらの運動を遂行することのために労働組合法の改正というような問題もありましよう。目的が國家再建ということに中心を置く限りにおきましては、すべてその政治的関連性なくしては行われないものになつて参りますので、その場合、先程の御説明の中にあつたように、労働組合が或る種の要求をし、その中に皆様方御承知のように勤労所得税の減免或いは撤廃、労調法の改正反対というようなものが当然含まれて参りますが、これらを以てして政治活動という見方で、この三條によつて拘束を受けるということは好ましくないように考えるのであります。この点をどうか一つ明確にやつて頂きたいということであります。それから前申上げましたように、かような法則で拘束しなければ不正ができたり、贈賄ができたり、収賄ができたりするかは知れませんが、労働者が例えば一つの闘争をする、闘争という言葉は余り参議院の皆さんにぴんと行かない言葉かも知れませんが、今申上げます通り、産業を再開するため、國家を再建するためには、先ず我々の生活の安定を期するために闘争を展開しなければならない。その場合は、組合員から一人々々十円とか百円とか、五十円とかいう闘争資金というものを取り、その闘争資金を取り、その運動の中に先程申上げましたような、政治に関連するようなものが織込まれておる、その場合に、これは政治活動とみなされるということであるならば、労働組合の運動は、ここにおいて抹殺されてしまいます。これらの点がどういうふうになつておりまするが、詳細に調査してございませんが。この法律と関係なくやり得るような態勢にして置いて頂かなければならん。從つて先程どなたか申されたと思うんですが、今日の貨幣價値から行きますと、千円、五百円というようなことは小さいじやないかということを言われましたが、労働者の意見としては、大体それに近寄つておりますが、人数が多数のために、今申上げますような、五十円、百円というような闘争資金等を集めまして、それによつて一つの目標達成のための運動をする。それを一々お届けしなければならんというような複雑煩瑣な法律ができることは好ましくありませんので、若しこれはどうしても拵えなければならんということになれば、百円未満はこの限りでないというようなことをどこかに謳つて頂かなければならんのじやないかというように考えております。
 その他全般的に、今申上げますように、労働者の頭から見ますと、法律というものは、なかなかむずかしくできておりまするが、この法律によつて、本当の各政党々々の持味を生かすことができるかどうかという点に、私は疑義を挟む者でありますから、どうか、この点も十分一つ、専門家の議員の皆様で御研究の上に御決定を願いたいと存ずるのであります。大体余り研究をしておりませんので、以上私の意見をいたさせて頂きます。
○委員長(木内四郎君) 宮澤君は、ちよつと都合で遅れますので、この際如何でしようか、宮澤君のお出でになるのを待たないで、ここに御臨席の各証人に対して、委員の方からお質疑を願つたら如何でしようか。御異議がなければさよう取計らいたいと思います。どの証人に対してなされても結構と思いますが、御質疑のある方は……。
○藤井新一君 吉村証人にお尋ねいたしますが、この第三條の政党についての定義を陳述されましたが、これでは、まだ不完全であるという御説明であつたと聽きましたが、我が國においては、政党の定義というものは、殆んど文献に現われていないのであります。併し外國の書物の中には、政党というものについての定義は散見されるのですが、あなたの今までの御研究についての、英米における主なる学者の政党に関する学説、或いは定義は、どういうものであるかを、ちよつと御参考に陳述して頂けば非常に結構だと思います。
○證人(吉村正君) 大体まあ政党の定義もいろいろありますが、二つに分けられると思うのでありますが、一つは、政党というものは、非常に理想的に考えた定義でありますし、一つは、政党の現実面というものを、非常に重要視する定義でありまして、政党というものを非常に理想的に考えて、定義を下したのは、有名な英國のエドマンド・バークの定義でありまして、これはこういうのであります。或る特殊の原因について、同意せる人々が、彼らの共同の努力によつて、國民的利益を増進せんがために結合せる一國である。言葉を換えて言えば、主義政策について、同意した人々が、國民一人々々でなく、國民的な共同の力によつて、國民全体の利益を増進せんがために、主義政策について、同意した人々が結合した團体であるというように解しておるのであります。これに対しまして、現実面を非常に重要視しまして、そうしてこの定義を下しているのが、いろいろありますが、要するに、政党というものは、或る特殊な市民團の、或る特殊の國民層の利益を政治上に実現せんがために結合しておるところの團体である。つまり階級的な考え方、階級という程でもありませんが、階級的な考え方が入つたものがあります。その中の、階級という程の特殊の意識はないが、併しながら或る國民層の利益を代表しておるものであつて、國民全体の利益を代表しておるのではないという考え方と、二つある。而してあとの方にも、政党というものは、或る利益からは分れまして、あとの方も、現実的な方が、或る市民層の利益を政治上に達成せんとする團体だというものと、闘争をする團体である。こういうように考えているのと分けることができると思うのであります。
 それで、私の定義を求められれば、大体この眞理は中間にあると思います。それで、デモクラシーというものは、元來、私の考えによりますと、デモクラシーというのは、國民共通の、人間としての共通の利益があるという仮定の上に立つておるのでありますからして、必ずしも政党の現実面だけを見て、そうして或る特殊の階級なり、市民層なりの利益を追求するものを政党というのは、どうも政党としての定義としては、少し狭過ぎる。やはり理想面を民主主義でありますから、民主主義のそういう仮定に立たなければ、民主主義は成立たんと、私は思うのでありますから、やはりその点から言えば、エドマンド・バークの言うような定義の仕方も、或る程度取入れていいんだと思いますが、併し必ず、然らば政党の現状は、皆そういう要になつておるかというと、そうでもないのでありまして、そこで私は定義の付け方として、非常にむずかしいのでありまして、定義を付けるということは、私はどうもむずかしいので、先程申上げましたように、政党の本質というものを考えまして見たら、一番いいんじやないかというので、先程政党の本質、或いは特徴と称するものを五つ挙げたのでありますが、それを適当に織込んでここに作ると……。
○委員長(木内四郎君) 御質問の最中でありますが、宮澤俊義君がお見えになりましたから、宮澤俊義君を御指名いたしまして、同君の所見を伺いたいと思います。
   〔証人宮澤俊義君は次のように宣誓を行なつた〕
   宣誓書
  良心に從つて、眞実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。
        証人 宮澤 俊義
○證人(宮澤俊義君) これは、あの委員長、一般について何か申上げるのですか。
○委員長(木内四郎君) 特に一般について先ず伺いたいと思います。
○證人(宮澤俊義君) そうですか。遅くなりまして申訳ありません。私実はちよつと甚だ申訳ございませんが、取込みがございまして、十分準備して参りませんでした。從つて甚だ不十分なことを申上げるに止めたいと思いますからお許しを願いたいと思います。
 この法律案全体につきましては、いろいろ御意見があつたと思いますが、根本の問題といたしまして、非常に大きな問題があるのじやないかと思います。何と言いましても政党の運営、選挙の運営というものは非常に金の掛かるものでありまして、これはもう先ず否定できない事実だろうと思います。その点いろいろな方法で少くするということは考えられますけれども、或る程度金が掛かるということは到底避けることができない現実だろうと思います。問題はその金を誰に負担させるかということ、又その金がどこから出て來るかということだろうと思うのであります。この法律は恐らくその金の金額と、それから出所、出所をはつきりさせる、そうして主として世論その他によるコントロールに資せしめようというにあろうと思うのであります。でその趣旨は極めて妥当とせらるべきものでありまして、その点は恐らく余り議論はないかと思います。ただ問題はその金の高、金高をはつきりさせる、どの政党はどのくらい金を使つている、どういうことにどのくらい使つておるということをはつきりさせること、この点は余り問題はないと思いますが、どこから金が出て來るか、誰が金をだしたかという問題になりますと、或いは少し問題の点があるのではないかという氣もいたします。例えばその匿名の寄附といつたようなものを禁じておるようでありますが、それはその金の出所をはつきりさせるという趣旨であろうと思います。金の出所をはつきりさせるということは非常に重大なことでありますけれども、同時に又今の選挙などで秘密投票というような制度を採用しておる趣旨を考えますと、或る人間が或る政党を支持するということを必ずしも常に公表するということが適当でない場合があるということを予想しておるのだろうと思います。そこで選挙人がどの政党を選挙で支持したかということを秘密にするということが認められておるわけで、この点まあ選挙における各國を通じての原則で、長年の経験の結果それがよいということになつておるのだろうと思いますが、そういう趣旨と合せて考えますと、この点多少問題があるのではないか、ただ私としましては、であるから出所を明らかにさせることはよろしくない、秘密投票と同じような意味ですべて秘密にした方がよいということを考える程の自信もございません。たしかに明らかにすることは必要だと思いますが、同時にそういう面も合せ考える必要があるのではないかということを感ずる次第であります。それからその全体としましては、趣旨に異論はないのでありますけれども、ただ何といつても根本の問題は、本法で規定しておるようなことが現実に可能であるかどうかということであろうと思うのであります。如何に金の高を明らかにし、如何に出所を明らかにすることが必要であるとしましても、果たしてこの法律の規定するように完全にはつきりさせることが可能であるかどうか。まあ、これが根本問題であると思うのであります。つまり外の言葉でいえば、こういうことができましても、結局大々的な闇が行われるのではないかということであります。併しこれも考えようでありまして、一般の統制法規の場合などのように、或る程度闇が行われても、併し取締り法規はある方がよいという考え方も十分成立ちますから、必ずしもこれが無駄であるということは言えないと思いますけれども、その点は十分に考えまして、できるならばこの法律が本來の目的通り成るべく多くの程度において実現、実行せられるということを考え、手続、その他が余りに理想に走り過ぎて現実の見地から煩瑣に過ぎるというようなことがないようにすることが必要ではないかと、こういう感じを持つております。まあ、全体としまして私が感じましたところはほぼそんなものかと思います。
○委員長(木内四郎君) それでは質疑を続行いたします。
○藤井新一君 宮澤教授にちよつとお伺いいたしますが、二十一日の東京新聞であなたの所見を拝見いたしましたが、誠に結構とぞんじましたが……。
○證人(宮澤俊義君) 何新聞ですか。
○藤井新一君 東京新聞です。
○證人(宮澤俊義君) ああ、そうですか。
○藤井新一君 その中に、政治はだれてはいかない、活發にせなければいかんというような意味であつたと思いますが、そうすると、今度の政治資金規正法の第三十七條によると、匿名の寄附をしてはいかんとか、本人の名義でなければいかんというようなことになると、自然そこに政治活動が鈍つて來て、政治の活發性が萎縮さるるような氣がいたしますが、その点をどういうようにお考えになるか、ちよつとお聽きいたします。
○證人(宮澤俊義君) 私も同様な懸念を持つておりまして、先程も申上げましたこともそれと多少関連があると思いますが、結局余り取締りが嚴重になりまして、動きがとれなくなり、うつかり政治に手を出さない方がよかろうというので、一時選挙取締りが非常にやかましかつた頃のように、皆一切手を出さんというようなことになりますと、善良な市民の政治的な熱意というものが冷却する虞れがあるのではないか、私共も趣旨におきましては、極端に申せば、多少の食い違いがあつてもむしろ政治的の熱意が昂揚するような傾向に選挙なり、政治一般なりが運営される方がよいのではないかというふうに考えております。
○藤井新一君 宮澤教授にもう一つ聽きますが、この法案の題名でございます。政治資金規正法という題名でございますが、この「規正」という意味を法的にちよつと御説明願いたいと思うのですが、我々の委員会においてはこの「規正」ということについて非常に困つて居るわけなんですが、一つあなたの御意見を御発表願えればお互いに参考になるのではないかと思います。
○木下辰雄君 今宮澤証人は一般的の御発言がありましたが、内容的な御発言がありましてその後においての質問がよいのではないかと思います。宮澤証人の発言はあれでもう終りなんですか。内容的な御意見は何かないですか。
○證人(宮澤俊義君) 細かいこともないでもありませんけれども、余りまあないつもりで申上げたのでございますけれども、或いは字句の問題とかそういうことでも申せというお話であれば……。
○木下辰雄君 それではありませんが、第三條あたり何か御意見ありませんか。
○證人(宮澤俊義君) 例えば政党の定義とか、そういう点でございますか。私は、法律における定義は別に学問上の定義と関係はありませんから、その法律の目的とするところに必要な定義であれは、一般の学問上から見ておかしいというようなことがありましても、それは少しも構わないと思つております。この法律の趣旨から言つて、この定義がいいか悪いか、字句などが適当かどうかは、或いは問題かも知れませんけれども、実際にこの法律の趣旨を遂行して行く上に、この程度の定義で余り弊害もないのではないか、これで行くのではないかというような氣持で読んでおりましたが、先程も申上げましたように、十分研究してないものですから、或いはもつと研究したならば又違つた考えが出るかも知れません。今のところそういうように考えております。
○委員長(木内四郎君) 木下委員如何でしようか。宮澤君は大体証言が終つたということですが、何か御質疑がありましたら、御質疑としてお願いいたしたいと思います。
○證人(宮澤俊義君) 先程の藤井さんのお話の規正ですが、どうもこれは特に私意見ございません。何となくぴつたりしない感じがしないでもありませんが、さればといつて外に何かうまい字があるかというと、どうもそれも考えておりません。まあこの辺でもいいのではないかというくらいなところでございます。
○竹下豐次君 吉村さんと宮澤さんにお尋ねいたしますが、この法案によりますというと、政党と政党以外の政治團体、それからその外に経済團体と普通に目されるものも或る場合に法の適用を受けるということになつておるようですが、経済團体などの場合は別といたしまして、政党と政党以外の政治團体とを二通りに分けて取扱う必要があるか、或いは政党を含めた意味の政治團体という一本で取扱つた方がよろしいのであるかという、その点につきまして御両人の御意見を伺いたいと思います。
○證人(吉村正君) そうでございますね。この三條を見ますというと、結局、「政党とは、政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、若しくはこれに反対し、又は公職の候補者を推薦し云々」と、こう書いてあります。それから政党以外につきましても、大体同じことが書いてあるのでございます。ですから、これは一本でいいような氣がいたすのでございます。と申しますのは、ここに政党と申しますのは、何何党と言わなくても、「政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、若しくはこれに反対し、又は公職の候補者を推薦し、支持し、若しくはこれに反対することを本來の目的とする團体をいう。」というだけにいたしますと、本來とか、主たる目的とする團体と申しますと、それでいいように思うのでございます。先程お話のありましたように、少しでもそういう目的が入つておりますと、政治上の主義を推進するということが一部でも入つておると、それは政党と同じにみなされるということになると、ちよつとこれは外の團体、例えば労働組合でも何でも皆政党と同じことになりまするから、やはり主たる目的とするものということにする方がよいように私は思うのであります。そうなりますと、二つくつ付けて一つで私は用が足りるように思います。
○證人(宮澤俊義君) 私がこの法律案を拝見したところでは、区別して書いてあるということは、そう重要な意義的な問題ではなくて、立法技術的な問題ではないかと了解しておるのです。後の規定を見ますと、政党ではどう、それから協会その他の團体ではどうとちよつと使ひ分けをしておるところがございますから、そういうときに区別するためにこういう区別をしてあるだけではないか。それからそのときに政党ではどう、協会その他の團体ではどうという区別をする必要があるならば、立法技術的にはこういうふうに書き分けて置いても差支えないのではないか、立法技術的の問題ではないかと私は思いました。
○竹下豐次君 私のお尋ねいたしたい要点は、別々に取扱う必要が実質的にあるかということについて先ず御意見を伺いたい。それがあるということになれば、それぞれ定義を下して技術的に書き分けなければならんということになりますから、その実質的な問題につきまして御意見を承わりたいと思います。
○證人(宮澤俊義君) この中で余り大して区別をしていないのではないかと思いますが、例えばちよつと私氣が付きましたので、第十二條の第一項第一号で、「政党にあつてはすべての寄附及びその他の収入、協会その他の團体にあつてはすべての寄附」と、ちよつとそういう使い分けがあります。実際的には大して問題ではないかも知れませんが、或いはこういうときに、協会その他の團体は、政党のような目的を主たる本來の目的としておるわけではないのですから、外の目的を主としてやつておるわけですから、協会に政党プロパーと同じようにすべての寄附その他の収入まで報告させる必要があるかどうかというようなところでこういうふうに区別してあるのではないかと思いまして、この程度の区別はまああつてもよろしいのではないかという感じを持つております。これはそう区別したことによつて何か非常な弊害でもあれば別だと思うのでございますが、まだよく拝見はしておりませんが、それ程この区別をしたことによつて、特に取扱上協会その他の團体に対する取締りがそういうふうに区別されては不都合だというような点は余りないのではないかと、若しなければこの程度の区別はあつてもよいのではないかと、こういうふうに考えております。
○木下辰雄君 ちよつと宮澤さんにお尋ねいたしますが、先に第三條の第二項の点についての江口、重盛両証人の御発言は、殆んどこれはもう削つたらよいだろう、普通の経済團体、労働團体、農民團体までも拘束する規定であつて、こういうものはないがよいというような御発言がありましたが、宮澤さんのお考えは如何でしようか。
○證人(宮澤俊義君) そうでございますね。併し本來の目的とする政党についてこれだけのやかましい取締りをするとすれば、その趣旨を貫徹させるためにはやはりこの第二項のようなことも規定する方がよいのではないでしようか。そうしませんと、本來のそれを目的をする團体であるかないかという点で区別が困難なことがあるのではないか、この点あつてもよいのではないかと思います。
○木下辰雄君 今の問題はそれで私よろしうございますが、ちよつと淺尾証人にお尋ねしたいと思いますが、先に千円、五百円は非常に過少であるという仰せでありましたが、淺尾証人はどのくらいの額を規定したらいいというお考えですか。
○證人(淺尾新甫君) 別に自分の考えはないのですが、ただ五百円や千円じや少な過ぎやしないか、どの程度がいいかという自分の考えはないのであります。
○岩間正男君 宮澤さんにお尋ねしたいと思いますが、さつき木下委員の方からもお話がありましたが、第三條の政党とか團体の規定、定義的なところですね、これは單に労働組合側だけでなくて、経済團体の方も言つておりますが、これに対してやはり定義的なものは非常に複雑過ぎる。それからもつと簡明なことが必要じやないかというようなことを述べられておるのでありますが、その述べられた趣旨というものを今まで聞いた限りにおきましては、現段階では例えば労働組合の場合ですと、いろいろな組合の活動をやつておる範囲内に、当然その活動の段階が政治的なものに繋ついて來る。経済闘争だけじやなくて、やはり政治闘争というようなものに絶えず連関を持つて來る。更に労働組合なんかの場合ですと、その現在の組合活動の一番重要な点としては、経済再建、産業再建、生産復興というような点について闘つておるが、これが非常におおきな重要な任務である。從つて当然その活動が経済活動の範囲を殆んど抜けて行く部面もあるだろう。ところがそういうようなことを始終現段階においてはやつて行かなければならないのですが、併しそうするとその度にこれを届けて行くというようなことになると非常に煩瑣で、却つてこういう規定のために運動そのものが制約されるような面が非常に多くなるのじやないか。これは或る意味で、労働組合とか経済團体の現在の政治活動が、そういう元來持つている活動から発展し行つて、政治活動が非常に規正される面が多いので、その点については不明瞭だから、そういうような点を削除して欲しいというような要求があつたように思いますが、これは今あなたのお話を伺つて見ますと、匿名の寄附はやはり認めないというような点については、非常に現在の政党の活動を萎縮させる点があるのじやないか。それから余りいろいろ細かな規定でやつて行くというと、どうも現実にこの法を適用することは、非常に可能性が薄いのじやないかというような御趣旨のような伺つたのでありますが、そういう点から伺いますというと、今経済團体、労働組合あたりから出ました意見が、むしろ現実的にはお説のような点と趣旨に副うように考えられるのでありますが、そういうような現実的な問題が連関されまして、今まで各証人から陳述されたわけでありますが、その点についてもう一度御意見を伺いたいと思います。
○證人(宮澤俊義君) それは私は全体として今最後にあなたのおつしやつたような趣旨であります。ですからこの第三條第二項に関する限り、今のお説のように少しそういう運動、團体の活動を鈍らせるというか、冷やすという方向に行き過ぎやしないかという懸念は確かにあるのであります。ただ私が申しましたのは、それは第一項の政党についても同じことじやないかという氣がするのであります。若し第一項の政党プロパーについてこれだけやることも、政党の活動を相当冷却させるというか、阻害させる虞れが非常にあるのじやないか。政党についてもこれだけやる以上は……。そこでその第二項の方は全然やらないということになると、本來の政党政治活動を大いにやるべき方は非常に制約を受けて、どうも動けなくなつてしまつて、そうでない協会、團体の方は自由に活動できる、そつちの方からやると、第一項の取締りということ自体が完全に行われないようになるというようなことになるのじやないかという意味であります。ですから問題はむしろ、第二項でそういう團体の運動を冷やすことになるのじやないかというのと同じことが、第一項にしても考えられるのじやないか。政党についてそれだけ取締るということがむしろ問題になるので、それをやる以上は、そこで区別するということはどうか、こういう趣旨であります。
○岩間正男君 経済團体、それから労働組合が懸念しておるような政党の場合ですと、政治活動というものははつきり明らかだと思うのであります。この範囲、それから程度、それからさつき当院の法制部長の説明を聽きますと、こういうような政治活動的な行為が或る程度継続する場合には、これを適用するという御説明がありましたけれども、継続する場合というものをどういうように解釈したらいいか。実質的にこの法案を適用する場合に、非常に主観が挿入される虞れがある。こういう点で現在において、いろいろな経済團体、労働組合なんかの政治活動の限界が非常に不明瞭になるので、そこからいろいろな混乱が起る。それからこれが逆に惡用された場合には、そこからこの法案とは全然趣旨にそぐわないような結果を來すのじやないか、こういうような懸念があると思います。そういうような点につきまして、そういう不明瞭なものを残したくないというような意向のように私は聽いたのであります。その点についてお伺いいたします。
○證人(宮澤俊義君) そういう実際的な不便は十分考えられることと思います。ただ併し、その限界の不明瞭ということになると、本來の政党と、そうでないものとの限界というようなことも、非常に明瞭とは言えないのじやないか。そうすると本來の政党だけこういう特に嚴重な取締りをして、そうでないものは全然これを取締らないということにしてしまうと、そこで何か却つて脱法的行動というようなものが盛んになるような虞れがあるのじやないか。むしろ第二項のような趣旨はこのまま認めて、そういう只今のお話のような危險を防ぐためには、第一項全体の本法の取締り自体をもう少し柔軟ならしめるというような方向の方がいいのじやないかという氣がしますが……。
○竹下豐次君 淺尾さんと近藤さんにお尋ねしたいと思います。お二人の御意見によりますと、第三條の第二項を削除する。言い換えれば、経済團体等にこの法律の適用をしないということにすることが望ましいという御意見のように承つたのでありまするが、今宮澤さんからちよつと御意見が出ましたように、それを全部除外するということになると、この法の目的を達成するのに甚だ不十分な場合が予想せられるのじやないか、私もそう思います。併し一方又経済團体等の立場におきまして考えて見まするというと、余り大したことでもないことまでいろいろ届をしなければならないというようなことになつても、非常に御迷惑なことになる。一方この法の目的を達する上からしても、そこまでしないでもいいというようなこともある。そうすると或る程度にやはりこの法律の適用を受けるのだということのお考え方も一つあります。つきましては具体的にお尋ねいたした方がはつきりすると思いますが、経済團体が選挙に関係する場合、例えば候補者を推薦するとか、或いは候補者にその運動費用を支給してやるとか、そういうふうに選挙に関係する場合、もう一つは政治團体に寄附する、政治資金を寄附するというような場合、特殊な場合だけを制限して、その場合には同様にこの法律を適用するのだということにするということも一つの方法ではないかと思います。この案で見るというと非常に漠然としておりますので、不安な状態に置かれる、御迷惑が多いかと思います。限界をはつきり決めるということもなかなか困難な事情もありましようけれども、或る程度にそういうふうな例で以て適用の範囲を決めていくということにしたら如何なものでしようか、その点は御都合……。経済團体の御都合なり御希望なり……。
○證人(淺尾新甫君) ここに第三條には「目的を有するもの」とはつきり書いておりますから、経済團体には最初からそういう目的はないわけでございますから、だから候補者を推薦し、支持し、又或る場合にはそういうことをするかも知れない、併しそれは経済團体の元來の目的ではない。だから元々一部そういう目的が或る場合には適用はあつても、或る特定の場合に特殊のときに支持し又は反対する。こういうことはこの條項には入らん、適用は受けない、こういうことになれば、私はそれでいいと思うのであります。
○竹下豐次君 候補者を推薦するとか、寄附するとかいうようなことは本來の目的ではないのであります。第一項に当らないことは明らかでありますが、先程法制部長の説明によりましても、或る場合にはそれが第二項の團体として取締りを受ける場合もある、こういうことになると思うのであります。或る場合というのは選挙の度に寄附され、候補者を立てられるならば、その都度ということになります。その他又例えば税制の整理の問題について意見を発表した、それについて批評をするというような場合なども行われると考えられるのであります。そこまで行くというと余程御迷惑ではないかと思うわけであります。
○證人(淺尾新甫君) 或る場合と申上げましたのは、それが継続的にならないということが前提になつていることが必要だろうと思うのであります。毎選挙、毎選挙に必ずこういうふうな政策を支持する人を必ずその人に選挙費用を出すのだということになれば、経済團体と雖も目的があると見られますが、それが何も継続的にないということになればそれは目的に全然ないことでありますから……。
○竹下豐次君 法制部長如何ですか、お尋ねいたします。この立案の趣旨というのは、一度立つて、やはり候補者を推薦したりされるような場合には適用があるという趣旨ではないのでありますか。
○委員長(木内四郎君) 法律は、解釈の問題は別問題だと思うのでありますが、勿論衆議院の解釈も参考に過ぎないと思うのでありますけれども、衆議院の法制部長が來ておりますから……。
○佐々木良作君 今の問題なんですがよろしうございますか。
○委員長(木内四郎君) 今途中ですけれども連関しておりますか。
○佐々木良作君 今の問題です。
○委員長(木内四郎君) どうぞ……。
○佐々木良作君 今の問題はこれまでの運営委員会で一番焦点になつた問題になつておることなんであります。そうして各委員の方に誤解もあるようですから、もう一遍私繰返しますが、淺尾さんの言われたように、これが解釈をせられておるのならば、少しも問題はないと思うのであります。それから宮澤さんの場合にちよつと誤解があるのじやないかと思うのであります。この目的ですね……。これは飽くまでも第一項に対するものであり、この目的というものは、殆んど廣義に解釈しているのであります。この解釈上解釈していいように説明しておるのであります。つまり本來の目的は労働組合の場合には当然にその労働組合員の経済的、社会的地位の向上を目的とする團体である。経済團体の場合もその本來の特別の目的があるわけであります。その本來の目的を有しない労働組合なり経済團体なりが、例えば六・三制反対というスローガンを掲げるなり、或いは大衆課税の反対というスローガンを掲げて、そうして一定の行動をする、その行動がここに掲げるところの政治行動でもない。経團連なら経團連が労働組合法の改正を必要とする、こういう運動を起される、それは当然にこの法により該当する。一番廣範囲に解される場合にはそういうふうに解するというように、あの二項の解釈方法なんか説明もせられておつたのですが、それは労働組合なり経済團体なりそういつたものが本來目的を有しない。本來の目的でないけれども、そういう行動をする場合に、常に第二項に該当するという場合には、非常にこれは行動を制約され、又実際問題として行動を制約されるだけでなくて、取締りの方法なり帳簿を出すとか出さんとかいうことが不可能な場合が非常にあるんじやないかということが一番懸念の対象になつておるのであります。竹下委員の言われておるのはそこだと思います。私共同感であります。それで問題は、実質的にはそのような労働組合或いは経済團体が、本來の目的でない、労働組合の場合ならば大衆課税反対、六・三制完全実施という要求スローガンを掲げて出しますとか、或いは、経済團体ならば、團体と言つてはおかしいですが、労働組合法改正という一定の行動をするとか、そのことを政治行動としてこれに該当するような恰好で取締る必要があるとかないかという実際上の問題ですね。それから仮にそういう必要があるとしても、そういう行動の仕分けをどういうようにしてするか、これは政治行動であると言い、或いはこれは政治行動でないという仕分けが実際問題としてできないのじやないかという、この二つがあるのであります。それは竹下委員の言われたのと同じことだと思うのであります。証人からお伺いしたいと思います。
○竹下豐次君 私の今日まで立法の趣旨を承つておるところによるというと、一度でも候補者を推薦された経済團体があるとすれば、やはりこの法の取締りを受ける。のみならずやれ税制整理等の問題については、こんな案を作られては困ると言つて経済團体で意思を表示をされる、こういう場合にも適用があるというようなふうに私承つておるわけであります。余り度過ぎてもお困りだろうし、或る程度には適用を受けてもお困りでない場合もあろうし、全体を通じて必要である場合もあります。特に近頃の新聞なんかを見ましても大きな團体なり商人あたりから政治資金を何百万円も出されておるようなものを全然適用しないということになりますと、この法の目的を達成するに非常に弱い、欠陷が出て來るのではないか、一應折衷的のことを私考えて見ましたので、その点について御意見を承わりたいと、かように考えておるわけなんであります。労働組合の問題につきましてもやはり同じように私は考えております。
○佐々木良作君 同じです。
○證人(淺尾新甫君) 最初から「目的を有するもの」とはつきり書いてあるのですけれども、本來何がしか目的がなくちやならんですよ。或る行為をしたからそこで目的が生れたというふうに、そういうことはこれらの條項に入らんと私は解釈したのでありますが、そういう解釈であるならば私は賛成であつて、一つの行為をする、その行為をするときに大きな協会や團体の目的が生れたからこの適用がある、こういうことになつては困るというのが私の意見であります。
○委員長(木内四郎君) 近藤さんから……。
○證人(近藤銕次君) 今のお話ですが、私は商工会議所としてここに出ておりますが、商工会議所などでは意見書、経團連には私関係しておりますが、意見書でありまして、意見書が政治運動なりや否やという問題でありますが、そうして今淺尾さんが話されましたけれども、実は経團連にしても、それから日産協にしましても、勿論それは商工会議所にしましても、その会議所なら会議所、経済團体なら経済團体の目的がはつきりしておりますね。殊に商工会議所のごときは政治に干與すべからずということを今日までは非常にやかましく言われております。政治というものの意味がさきから非常に問題になつておりまして、この法律で決められる協会或いは政治的團体、政党というふうな解釈が私などにはよく分りませんのですが、要するに皆それぞれ決めております。狙いは、意見として無関心ではおられないから意見を出す。併しながら政治運動ではないという主観的の考えから今日までやつております。若しこれを今お話が委員の中からありましたけれども、つまり行政方面から見てこれは政治運動だと若し解釈されるような場合には、御注意があつて然るべきだ。行政問題じやないかと思うのでありますがね。併しこれは偽つてやつておるのじやない。皆政治には直接干與してはいけない。政治には政治の機関があるから、それを通してむしろ我々の念願なり希望を上申する、若しくは聞いて頂く、こういう意味でやることは大いに薬局つておりますわけでありますが、若しこれを今度の法律によりまして、そういうことが政治運動だと解釈されるようなことになりますと非常に迷惑でありまして、又産業の発達から行きましても非常に困ることがありますから、その点を若しこれを廣く解釈されることになるというと非常に國の産業のために心配だと思います。又恐らくは今淺尾さんが言われましたけれども、実際には選挙に出る方々を推薦するなどということはあり得ないと思います。事実は……。少くとも経團連におきましても、参議院若しくは衆議院の候補者に対して推薦するというようなことは事実あり得ないし、又綱領にございませんから、若しそれをやるような場合には会則として成立たないことになりますから、できないと思います。
○門屋盛一君 今社團法人でできておる商工会議所の場合は、いろいろの規約もありましようが、この法律で第三條の「その他の團体」というものは、社團法人にまでなつていないところのいろいろの組合とか、團体を含めていないから、それはあり得ないとのことですが、大いにあり得ると思うのでありますが、その場合で解釈なさらないと、大分淺尾証人の方も、近藤証人の方も、この法の適用範囲を樂観的にお考えになつておるようでありますが、大分影響するところが多い。商工会議所ばかりでなしに、実業界の代表では外の團体のところをお考えになつておらんと、適用されるところが非常に多いのです。例えば昨年の國会で石炭鉱業会が炭鉱國管反対運動をやる。こういう場合にも、これは直ちに適用される。又或る場合には適用した法がいいかも知れないというような場合において、お考えになる場合が必要だと思うのです。
○竹下豐次君 どうでしよう委員長。もう晝ですが、この適用の範囲も委員の納得の行くために、意見を承わりたいと思いますが、休憩して午後に又お開きになつては如何でしようか。
○委員長(木内四郎君) それでは午前はこの程度で休憩いたしまして、午後一時からこの会議を引続いて開きます。証人の方は御迷惑でもお願いたします。
   午後零時五分休憩
   ―――――・―――――
   午後一時十四分開会
○委員長(木内四郎君) それでは午前に引続いて会議を開きます。
○竹下豐次君 午前中の委員会におきまして、証人各位の証人としての御証言は大体承わることができたと思いますので、委員会はこれでお閉じになりまして、懇談会に入つて、又ゆつくり細かい点についてもお伺いすることができたらどうかと思います。如何なものでしようか、お諮り願います。
○委員長(木内四郎君) 竹下君の御意見、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(木内四郎君) 御異議ないものと認めます。証人各位におかれましては、公私極めて御多忙の折柄にも拘わらず、長時間に亘りまして有益な御意見を御開陳頂きまして誠に感謝に堪えません。委員会を代表して厚くお礼を申上げます。証人各位から御意見を伺うのはこの程度にいたしまして、証人の御喚問の目的は達したのでありますが、各界の権威者の方々がお集まりになつておりまするので委員会はこの程度にして閉じまして、証人各位との御懇談をお願いいたしたいと思います。よろしくお願いいたします。それでは委員会はこれを以て閉じます。
   午後一時十六分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     木内 四郎君
   理事
           藤井 新一君
           河井 彌八君
           竹下 豐次君
   委員
           天田 勝正君
           島   清君
           塚本 重藏君
           松本治一郎君
           淺岡 信夫君
           黒川 武雄君
           左藤 義詮君
           大隈 信幸君
           門屋 盛一君
           櫻内 辰郎君
           梅原 眞隆君
           木下 辰雄君
           鈴木 憲一君
           徳川 宗敬君
           堀越 儀郎君
           岩間 正男君
           佐々木良作君
  事務局側
   参     事
   (法制部長)  川上 和吉君
  衆議院事務局側
   参     事
   (法制部長)  三浦 義男君
  証人
   日本郵船株式会
   社社長     淺尾 新甫君
   東京商工会議所
   副会頭     近藤 銕次君
   早稻田大学教授 吉村  正君
   日本教員組合法
   制部長     江口 泰助君
   日本労働組合総
   同盟副会長   重盛 壽治君
   東京大学教授  宮澤 俊義君