第002回国会 文教委員会 第2号
昭和二十三年六月十五日(火曜日)
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  委員の異動
六月十一日(金曜日)委員羽仁五郎君
辞任につき、その補欠として藤田芳雄
君を議長において選定した。
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  本日の会議に付した事件
○教育勅語の失効確認に関する決議案
 に関する件
○教科書の発行に関する臨時措置法案
 (内閣送付)
○日本学術会議法案(内閣送付)
○学校教育法及び義務教育費國庫負担
 法の一部を改正する法律案(内閣送
 付)
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   午前十時四十二分開会
○委員長(田中耕太郎君) それでは文教委員会を開会いたします。今日の議事日程は、教科書の発行に関する臨時措置法案(予備審査のための議案)、日本学術会議法案(予備審査のための議案)、学校教育法及び義務教育費國庫負担法の一部を改正する法律案(予備審査のための議案)、初めに御報告なり、又お諮り申上げたいことがございます。それは教育勅語の失効確認に関する決議案は、如何にして本会議に上程するかという問題でございまして、この点につきましては前回の衆議院との関係もあるし、委員長で以て然るべく取計らうようにということでございます。いろいろ考えまして、衆議院の方では各派共同提案の形で以て行くようでございます。從つてこちらもさようにいたしたらどうかと思います。発議者をどういうふうにいたしたらよいかということでございます。私自身の考えましたところでは、文教委員の方方全部が発議者になつて頂くのが適当ではないかと存じます。この問題は、委員会自体として審議して参つたわけではございません。そのために打合会の形式を取つて参つたのでございますが、実質上は、この問題については委員の方々が一番詳しいのでございまして、從つてさような意味で発議者になつて頂く、ただ併しその中から各派の会派の内部で以て賛成演説をされる方が出て來るだろうと思いますし、又委員の方々が一番賛成演説をなさるのにも適当だから、自然にそういうことになりはしないかと思われます。さような場合には、発議者と賛成演説をされる方とは、これを兼ねることができないわけでありますから、この発議者の中から除くというふうにいたしたらどうかと思つております。如何なものでございましようか。
○左藤義詮君 発議者は何名必要なんですか。
○委員長(田中耕太郎君) 別に制限はないように思います。
○左藤義詮君 各派一名じやいけませんか。
○委員長(田中耕太郎君) 少いのもございますし、多いのもございます。
○左藤義詮君 各派一名でいけませんか。
○委員長(田中耕太郎君) 各派一名に限るかとおつしやるのですか。
○左藤義詮君 そうすると賛成演説のときに便利ですがね。誰が賛或演説するか党へ持ち帰らんと決まりませんです。
○委員長(田中耕太郎君) 発議者は一人でもよいそうです。
○左藤義詮君 委員長一人で如何ですか。
○委員長(田中耕太郎君) 各派共同提案ということになりますと、やはり発議者は少くとも各派網羅するというようなことで……。
○左藤義詮君 各派一名くらいにして置きますと、演説するときに便利ですね。そうでないと各派へ持ち帰つて決めなければならん。今日決まりませんね。
○委員長(田中耕太郎君) 実は印刷の都合からいうと早く印刷しなければなりませんので、発議者の中から賛成演説者を又訂正で以て除くという不便があるのです。かような点で若しここで決めて頂けば非常に都合がいいわけであります。併しこれは各派のやはりその内部でお決めになるのが、各派共同提案の趣旨からいつて適当と思われますので、ただ大分事を急いでおりますから、一應そういうふうに願つて、後で賛成演説をなさる方を除くというのは、印刷の訂正等を要しますので困りますけれども、さようにしたらどうかと考えた次第であります。
○左藤義詮君 その手続さえお厭いにならなければ私は異議がありません。
○委員長(田中耕太郎君) それではさように進行いたすことにいたします。
 次に、本日の議事日程に入りまして、先ず教科書の発行に関する臨時措置法案(予備審査のための議案)につきまして、文部当局の提案理由の説明を求めます。
○國務大臣(森戸辰男君) 教科書の発行に関する臨時措置法案について御説明申上げます。
 文部省におきましては、本年一月以來教科用図書委員会を設けて教科書制度の民主化の方途を種々研究して参りましたが、その具体的第一歩として今年より教科書の檢定を実施することになつたことはすでに御存知のことであります。教科書の檢定は教科書として教科用に適するということを認めるものでありまして、それ以外に及ぶものではありません。從つて檢定を受けた教科書の発行は、各発行者の責任において自由に行えるのであります。併しながら現在の用紙事情その他の経済事情は極めて窮屈でありまして、檢定教科書の発行を各発行者の自由に任せるときは、一般図書のごさく教科書が都市に集中するとか、各地方によつて値段が異なるとか、いろいろ教育上不都合な事象が生ずると予想されるのであります。
 現在出版されております教育上有益適切な参考図書や教材は極めて乏しいのでありまして、教科書の重要性はこうした現状においては、特に大きいと言わなければなりません。從つて自由に選んだ教科書の供給が期待を裏切らず、確実に教師、生徒の手に渡るようにすることは、極めて重要でありまして、教科書の檢定が実施せられた今、速かに適切なる措置を取る必要があるのであります。これがこの臨時措置法を提出いたしました理由であります。本法は教科書の展示会、需要教の集計、発行の指示、発行義務、定價の認可を骨子といたしております。詳しくは関係官に説明いたさせますが、何とぞ教科書の檢定制度を意義あらしめるため、是非この法案の必要性を認められて、速かに御賛成下さることをお願いいたします次第であります。
○委員長(田中耕太郎君) それでは尚細目の点につきましては、政府委員稻田教科書局長の説明を聽取したいと思います。
○政府委員(稻田清助君) それでは本法案の内容につきまして、概略御説明申上げたいと存じます。この法律の目的といたしますところは、只今提案の理由の説明に述べられましたごとく、教科用図書の需要供給の調整を図り、発保を迅速、確実にし、且つ又價格の適正を維持するという点にあるのでありまして、この目的は法案第一條に掲げてあるのでございます。只今申上げました目的のうち、教科用図書の需要供給の調整の点でありますが、御承知の通り、先に中等学校以上の教科書が自由檢定制度を採り、自由出版されました当時におきましては、非常に各出版者におきましては競爭に熱心でありまして、いわゆる見本の洪水ともいわれる程、各学校に対してそれぞれ見本本を多数に送り付けて競爭をいたしておつたような状態であつたのであります。今日のこの紙の状況から見ましても、亦新たに検定制度を開きまして、その健全なる発達を念願するというような点から考えましても、こうした見本本について紙を多量に使用する、或いは又業者の間において激甚なる競爭を招くということは、極力回避しなければならない、こういうような趣旨に立ちまして、需要供給の調整を考えたのでありますが、それに関しまする規定は、大体第四條から第九條に至ります間に規定されておるのであります。 即ち先ず教科用図書を発行しようとする業者は、文部大臣の指示する時期に文部省にその発行の書目を届出る。これから始まるわけであります。これは第四條の規定であります。
 次に、第五條におきまして、各都道府縣知事は、文部大臣の指示する時期に各都道府縣において、教科用図書の見本展示会を開かなければならないということにいたしておるわけであります。第六條の規定によりまして、文部大臣は届出でを受けました教科書の書目を目録に調製いたしまして、これを都道府県を通じて各学校に送付いたすのであります。各学校当事者は、この目録によりまして、明年度如何なる教科書をそれぞれの学校において使うかということを、大体の見当をつけるのでありますが、更に教科書の内容、体裁、実質を十分檢討いたしまして、その選択ができますように考えましたのが、今申しました見本展示会の制度であるのであります。都道府縣知事が開催いたしまする見本展示会に対しましては、各出版者は教科書の見本本を送り付けることができるのであります。各学校の校長その他教員の方は見本展示会に出まして、新しく教科書を一覽して、それぞれの学校で使います教科書を決めまして、教員数、生徒数に即した需要数を添えて縣廳に申込むわけであります。縣廳におきましては、第七條の規定によりまして、教科書の需要数を集計いたします。それを文部省に送りまして、文部省においては、第八條の規定によりまして、各教科書毎に需要数を計算決定いたすわけであります、そうして用紙の事情と睨み合せまして、それぞれ発行部数を発行者に対して指示いたします。かくのごとき方法によりまして、一方学校の側におきましては、自分の教育方針に則りまして、好める教科書を選択する自由が與えられますし、又これに対しまして、用紙の事情に即して無駄のない紙の割当ができ、需要供給の調整が図られるというような趣旨の規定を設けたわけであります。
 第九條の規定を設けましたわけは、この需要数の集計から発行数の指示に至ります間において、多少調整を必要とすることがあり得る。例えば需要数を集めたところが、余りに少くて、発行するのに非常に経済的に不利であるために、発行者において辞退するというような、それぞれの場合を考慮いたしまして、発行数の指定を別の発行者にすることを考慮いたしたのでありますが、これも、飽くまでも需要者の希望に即した方法を以ていたすことにいたしておるわけであります。
 次に、第一條の目的の中にあります発行を迅速確実にするという点でありますが、一般の図書と異りまして、賣れるところで賣つてしまうというのではいけないので、発行者におきましては、山間僻地の学校と雖も、所要数を確実に所要の時間までに供給しなければならない責務を持つべきであるというような趣旨からいたしまして、第十條の規定を設けました。発行の指示を受諮した者に、教科書を発行する義務、供給する義務を負わせておるわけであります。更にこれを確保する意味におきまして、第二十條以下の規定があります。つまり、発行者から一定額の保証金を文部省が取りまして、義務違反の場合においては、この保証金を没收することによつて、その責務を確保いたしておるわけであります。更に又教科用図書が一般の図書と異りまして、教育上非常に必要欠くべからざるものであるというような点から考えまして、その定價につきましても、第十一條の規定によりまして、文部大臣の認可を受けしめることにいたしておるようなわけであります。
 以上の諮規定を綜合いたしまして、ここに今日の用紙の困難な情勢下において、檢定制度実施の趣旨に即し、教科書の自由選択の十分行い得るような目的の下に、この法規を整備いたしたようなわけであります。
 只今申上げましたように、これは今日用紙について割当制度があり発劵制度があるというような状況下に、止むなく講じた手段でありますので、飽くまでも、これは臨時的の性質を持つたものであるというような観点からいたしまして、これを臨時措置法といたしたような次第でございます。以上概略この法律の性格及び内容を御説明申上げました。尚御質問によりましてお答え申上げたいと思います。
○委員長(田中耕太郎君) 只今の提案理由なり細目の説明につきまして御質疑が……。ちよつとお諮りいたしますが、尚外の法律案につきましても、一應提案理由の説明を聽き、それから質疑に移りますか、それともこの教科書の発行に関する臨時尊置法案につきましての質疑に入りますか、如何でありますか。
○柏木庫治君 一つずつの方がよいと思いますね。何回も説明を聽いておると、どれを聽いていいか分らなくなつて來る。
○木内キヤウ君 私は他の委員会の関係もあるので、ずつと初めに伺つて置きたい。
○岩間正男君 これは今日大体概略のことを聽いて審議に当るわけでありますね。そういう関係から、纏めて先に伺つてあとに質問したいと思います。
○柏木庫治君 沢山説明を聽きますと、頭の特別によい人は別といたしまして、これだけの法案一つでもあれだと思いますから、私は説明を一つずつして、一つずつ片付けて行く方が、実際親切なやり方であると思います。それでこの法案はこの法案だけで聽くところは聽き、それから又次に移るというふうにして頂きたいと思います。
○委員長(田中耕太郎君) 外に御意見はございませんか。
○藤田芳雄君 法案の説明を只今直ぐ聽きまして、直ぐに質問する程頭がよくないので、一應説明を聽きまして、それを本にして尚法案をよく研究してから質問に移つた方がいいかと思いますので、大体三つばかりだから概略法案の説明をお聽かせ願つて、あとはもう少し研究の後質問に移る方が妥当だと思うのです。
   〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
○委員長(田中耕太郎君) 討論をやつて今日片付けるという意味から、一つ一つやつてもよろしうございますが、併し大体文部当局の方でもこれが概略の説明だけの意味で出席しておられるのでございまして、私自身今後大体さようなつもりであるので、今日議題に書いたのも一應の説明というような趣旨で……。
○柏木庫治君 結構です。
○委員長(田中耕太郎君) そういうつもりですが、ではさようにいたします。次に、日本学術会議法案(予備審査のための議案)につきまして、文部当局の説明をお聽きしたいと思います。
○國務大臣(森戸辰男君) 日本学術会議法案について提案理由を御説明申上げます。
 本法案の規定いたしまする日本学術会議は、内閣の所轄に属することが予定されておるのでありますけれども、設立の準備事務を文部省に委託されましたので、その関係から私が御説明をすることになつておるのであります。 さて、敗戰後の我が國が貧困な資源、荒廃して産業施設等の悪條件を克服して、文化國家として再建すると共に、世界平和に貢献し得るためには、是非とも科学の力によらなければならないことは申すまでもございません。従來我が國の学界を顧みますと、個々の研究においては優れた成果が必ずしも少いとは言い得ないに拘わらず、その有機的、統一的な発達が十分でなく、全科学者が一致協力して現下の危機を救い、更に科学永遠の進歩に寄與し得るような体制を欠いていたことは、科学者みずからによつて指摘せられていたところであります。ここにおいて我が國從來の学術体制に再檢討を加え、全國科学者の緊密な連絡協力によつて、科学の振興発達を図り、行政、産業及び國民生活に科学を反映滲透させる新組織を確立することが、科学振興の基本的な前提となるであります。言い換えれば、科学者の総意の下に、我が國科学者の代表機関として、このような組織が確立されて、初めて科学による我が國の再建と、科学による世界文化への寄與とが期し得られるのであります。この法案制定の理由は、右のような役割を果し得る新組織、即ち科学者みずからの自主的團体たる日本学術会議を設立するにあるのであります。
 次に、この法案の内容を申上げますと、先ず日本学術会議設立の趣旨を明らかにいたしますために、只今申上げましたような前文が附せられているのであります。次に本文に入りましては、第一章に日本学術会議を法律により設立することを明記し、その目的とするところを掲げました。第二章におきましては、日本学術会議が政府の諮問的、審議的機関としての性格を有するが、その活動は飽くまで科学者の自主性、独立性に基いて行われることを明記して、その職務及び権限を謳いました。第三章、第四章及び第五章におきましては、日本学術会議は、一定の資格を有する全國の科学及び技術の研究者によつて選挙される会員を以て民主的に組織されること、その他日本学術会議の構成、その会議等について規定いたしました。次に第六章以下におきましては、日本学士院を碩学優遇の栄誉機関としての性格を明らかにして、日本学術会議に含ましめること、学術研究会議は、その機能が日本学術会議に吸收されるから、これを廃止すること等を示しました。
 以上本法案制定の理由、性格並びに内容の概略を御説明申上げたのでございますが、この法案は、我が國の新学術体制の立案、企画を目的として、昨年八月全國科学者の民主的選挙によつて選出された委員百八人を以て結成せられました学術体制刷新委員会におきまして、約七ヶ月に亘り愼重審議を重ねて成案を基といたしまして、殆んどこれを変更することなく、政府において立法化したものであります。この意味におきまして、本法案は我が國科学者の総意を反映して民主的に立案された眞に歴史的なものと称し得るのでありまして、日本学術会議の成立は、全國科学者の切望するところであると信じます。何とぞ愼重御審議の上、御協賛あらんことをお願い申上げる次第でございます。
○委員長(田中耕太郎君) 更に本法案の細目につきまして、清水科学教育局長の御説明を聽取いたしたいと思います。
○政府委員(清水勤二君) 只今大臣から大体の提案理由の御説明がございましたが、尚補足する意味におきまして、從來の経過と重要なる点とを御説明申上げたいと思います。
 終戰後、日本の学術振興の團体といたしまして、帝國学士院、学術研究会議、日本学術振興会と三つの團体が残つたのでございましたが、これらの團体を終戰後最もよい形に改組するということが各方面から提議されまして、文部省といたしましても、改組準備委員会を設けまして研究いたしておつたのでございますが、総司令部の方面から、日本の学者には相当有力な人がおりながら、どうも成果が十分に挙がらないということは、結局制度が悪いのであろう、何とか民主的な、そうして若い人も隱れた学者も、すべての人が学術上に十分研究し得ろ制度を作りたい。こういう意向が強く反映されまして、長い討議に結果、昨年八月二十五日に学術体制刷新委員会というものが生れました。これに対しましては米國から学術顧問團の派遣がありまして、学術体制の刷新に対して忠言を與えられたのであります。爾來大臣の御説明のごとく七ヶ月以上、総会を開くこと八回に及びまして、本法案の骨子が決定されたのでございます。学校体制刷新委員会そのものも世話人会を設けまして、全國から科学者の代表者を選挙いたしまして、選挙の結果によつて百八名を選びまして、民主的な形においてこの学術体制の刷新を協議いたしたのであります。その結果生れましたのが本法案でございまして、この法案に盛られました内容は、日本学界の最高の審議機関又諮問機関といたしまして、日本学術会議を設け、又日本学術会議が学界の代表機関として内外に臨むことにされたのであります。その所管は内閣総理大臣の所轄となりますけれども、日本学術会議自体は自主的にその職務を行うことが規定されておるのでありまして、科学に関する重要事項は本会議を通して行われることになつておるのであります。
 その組織といたしましては、会員は全國の科学者から選挙によつて選ばれるのでありまして、その会員たる資格について規定してあり、又選挙方法について規定があるのであります、学術の部門を七つに分けまして、各部門三十人ずつ二百十人を以て構成することになつているのであります。この会議が日本学界の代表機関であり、最高の審議機関及び諮問機関であるという性格から、從來存しました團体はその会議に包括し、或いはその中に発展解消いたしまして、この日本学術会議一本を以て学界のことを処理して行くというように規定されておるのでありまして、從來の学術研究会議は、その性格が全く同一でありますので、その中に発展解消し、日本学士院は碩学優遇の府といたしまして、日本学術会議の中に含めて置くことになつたのであります。この点につきましては、日本学士院の会員の選挙等について多少問題はございますけれども、本法案が、全國から選ばれた科学者の総意であり、日本学術体制刷新委員会において決定せられたところでありますので、その総意を尊重いたしまして、学術体制刷新委員会の決定の通りに法案が提出されておるのであります。
 尚本法案が國会を通過いたしますれば、直ちに選挙に着手いたしまして、日本学術会議の設立は、來年一月二十日に創設される予定になつているのでございます。尚細かいところにつきましては、御質問に應じましてお答えいたしたいと思います。
○委員長(田中耕太郎君) 次に、第三の議題でございますが、学校教育法及び義務教育費國庫負担法の一部を改正する法律案(予備審査のための議案)につきまして、文部大臣から提案理由を伺いたいと思います。
○國務大臣(森戸辰男君) 学校教育法及び義務教育費國庫負担法の一部を改正する法律案について提案理由を大略御質明いたします。
 第一條は学校教育法の一部改正であります。先ず「大学設置委員会」を「大学設置審議会」に改めましたのは、國家行政組織法の施行に伴いまして、「委員会」なる名称は会議制の行政機関を意味することになり、諮問的又は調査的なものは審議会又は協議会等と呼ばれることになつたからであります。從つて諮問機関としての大学設置委員会の名称を大学設置審議会に改めた次第であります。第八十六條を削除いたしましたのは、地方自治法の施行に伴うものであります。第九十三條及び第九十六條第二項中、「勅令」を「政令」に改めましたのは、新憲法の施行に伴うものでありまして、いずれも当然の改正であります。第九十三條の改正は、盲学校及び聾学校の小学部の第一学年の義務制施行に関する規定であります。
 盲学校、聾学校及び養護学校における就学義務等の施行期日につきましては、学校教育法第九十三條但書の規定によりまして勅令で定めることになつておりますが、この規定に基きまして、去る四月七日の政令第七十九号で、盲学校及び聾学校の小学部の義務制が施行されたのであります、併しながら校舎、設備の整備、教員の養成、学年進行等の関係から小学部六学年の義務制を一挙に実施するこが困難でありますので、ここに学校教育法第九十三條を改正いたしまして、本年度においては、小学部の第一学年のみを義務制とし、明年度以降におきましては政令でこれを定めることにいたしましたが、明年度以降義務制は一学年ずつ逐年的に進行させたいと考えておる次第であります。
 第二條は義務教育費國庫負担法の一部改正であります。
 改正の第一点は盲学校、襲学校の義務制の施行に伴いまして、都道府縣において要する教員の俸給等の半額を國庫において負担することとした点であります。
 第二点は、從來都道府縣に対して予算上の措置としての補助をいたして参りました扶養手当及び勤務地手当につきまして、その半額を國庫において負担することを法律に明記いたした点であります。
 第三点は、從來主として市町村負担でありました退官退職手当、日直手当及び宿直手当の額が最近非常に増額され市町村に対し過重な負担となつておりますので、別に御審議をお願いいたします市町村立学校職員給與負担法により、都道府縣の負担に改めると共に、その半額を國庫において負担することとし、地方財政の負担の軽減を図ることとした次第であります。
 次に、國庫負担の対象となる学校職員の範囲、定員及び給與の額を政令で定めることといたしまして、定員定額制を採ることを明示した次第であります。
 最後に附則におきましては、この法律が四月一日に遡つて適用されることを明らかにいたしましたが、大学設置委員会の名称変更のみは、前に申上げました理由で、國家行政組織法施行の日から施行することといたしました。何とぞ愼重御審議の上速かに議決下さるようにお願いいたす次第であります。
○委員長(田中耕太郎君) 予定せられました二つの法案につきましての提案理由の説明なり、又その補足につきましては以上を以て終りまして、次にこれらの法案を如何にして審議して参りますかということにつきましてお諮り申上げたいと思います。と申しますのは或いは小委員会を設けてやるか、或いは又本委員会で以て直接に処理するかというような点でございますが、さような点につきまして御意見を承わらして頂きたいと思います。
○堀越儀郎君 別に小委員会を設けず、この委員会で審議を進めて行かれるようにしたら如何でございますか。
○委員長(田中耕太郎君) 堀越君から御意見がございましたが、その点につきまして如何でございますか。
○岩間正男君 今会期もあと延長がありましても半ヶ月しかないような情勢になつていると思います。大体政府の提出法案の内容について事前にもう少しいろいろ聞きまして、その上にやはり今後の審議の方法を立てて置かないというとうまくないのではないかと思いますから、その点で若しできましたらもう少し御説明を伺いたいと思います。
○委員長(田中耕太郎君) と申しますのは非常に法案の数が多いということであれば……。
○岩間正男君 予定された法案の数が多いと、果してこれを並行的に本委員会だけでやつて行けるかどうかという見当が付かないと思います。
○委員長(田中耕太郎君) その点につきまして、今会期中において提出されるような法案は大体どのくらいの数になりますか。又部当局に伺いたいと思います。
○左藤義詮君 その前にちよつと……。本院運営委員会ではこの間法制長官と呼びまして、大体六月十日までに提出されなかつた法案については審議の責任を負わないということを決めてあるのであります。この法案はすでに六月十日を越えて今日出されておるのでありますが、その点について文部省としては政府にちやんと釘が差してあるのでありますからして、どういうふうにお考えになつておられますか。審議未了になつていいと思つておられるのか。只今の御説明の中には遅れたことについての御説明はなかつた。その点を明らかにして頂きたい。今岩間委員からもお話があつたように、外の法案との関係もありますので、地方教育委員会法とか、私立学校法とか、重要なものについて、いつお出しになるのか、或いはこの國会にお出しにならんのか、その点についても併せし御説明願いたいと思います。
○委員長(田中耕太郎君) 六月十日までに法案は提出しなければならないという運営委員会の決めがあると思うのであります。さような点との関係、及びその他の点について……。
○政府委員(稻田清助君) 只今文部省関係における提出見込の法案についてお話がございましたが、差当り今手続を運んでおりますのは、教育委員会法案と教育公務員法案、それから文部省設置法案の三つでございまして、いろいろな関係がございまして手続が運びつつあるような状態でございますから、御了承を願います。
○委員長(田中耕太郎君) それでは比較的大きな法案としては三つだけですか。
○政府委員(稻田清助君) 今度提出いたしますのは三つだけでございます。学術会議法案は十日までに出しております。
○岩間正男君 今後の提出予定ですね、これについて承わりたい。
○政府委員(稻田清助君) 速記を止めて頂きたい。
○委員長(田中耕太郎君) 速記を止めて。
   〔速記中止〕
○委員長(田中耕太郎君) 速記を始めて。
○左藤義詮君 六月十日というのは会期延長の期限を政府かつ申出があつたときに、運営委員会で、お出しになることは政府の勝手だが、それ以後にお出しになつたものについては、審議の責任を負わないということにしてあるのでありますから、その点閣僚としての文部大臣に、今お出しになつた法案、或いは今後にお出しになる見込の法案に対して、どういうような所見をお持ちになつているか伺つて置きたいと思います。
○國務大臣(森戸辰男君) お答え申上げます。法案の提出につきましては運営委員会のお話は承つておりました。私共最善の努力をいたしまして、その期日に間に合うように努めておつたのでありますけれども、いろいろな事情でその期日に提出ができない事態にあつたのであります。この点については甚だ遺憾に存じております。が、併し問題になつておりまする法案は、いずれも極めて重要な法案でありまして、私共の予期するがごとき期日に提出できませんでしたけれども、この点は甚だ遺憾に存ずておりますが、法案の重要性に鑑みまして、私共は國会におきましても事情御了承の上御審議頂きたいと念願いたしておる次でございます。
○左藤義詮君 教育委員会法に関連いたしまして私立学校法というものをお出しになる御意思があるかどうか、それとの連関を考慮しなければ、教育委員会法というものの審議が十分できないと思うのでありますが、その点について政府の御所見を承つて置きます。
○政府委員(剱木亨弘君) お答え申上げます。私立学校法につきましては本議会に提出する予定を以ちましていろいろ研究を進めておつたのでございますが、只今のところ本議会には到底間に合わないかと存じておる次第でございます。ただ教育委員会法との関係におきましては、私立学校法が後に出ますれば、これによりまして私立学校に関する行き方を徹底するつもりでございまして、その点は教育委員会法とは関係なく私立学校の方は独自の法律で考えてよいのではないかと考えております。
○左藤義詮君 私立学校は独自の法律でいいというお話でありますが、聞くところによりますと、私立学校も地方の教育委員会の管理の下に置こうという文部省が原案を持つておられるのでありますが、さようにいたしますと私立学校総連合などで考えております行き方と大分違つて來るのであります。教育委員会法だけを先に決めてしまつて、私立学校法はそのときにできた教育委員会の管理の下に加えるということについては、相当考えなければならん点が多いのでありまして、これは両方勘案しなければ、私は審議ができないと思うのであります。教育委員会法だけ先へお出しになつて、私立学校法は別になさるということについて、私共は審議の上において非常な不便を感ずると思う。まあ出た案を見なければ分りませんが、私共そういうことを心配いたすのであります。その点について仮にお出しになる時期が遅れるにしても、私立学校法というものの輪郭を明らかにして教育委員会法の審議のときに十分御説明になられるか、その御説明が將來お出しになる私立学校に対する責任を以て、筋の通つた後から変更のない方針ができておるかどうか、その点を先に承つて置きます。
○政府委員(剱木亨弘君) お答え申上げます。お尋ねの御趣旨の通り、私立学校法と学育委員会法とはできるだけ同時に提出したいというつもりで準備をしておつたのでありますが、只今私立学校法の内容につきまして、私立学校総連合とお打合せをいたしておるような次第でありまして、この議会に間に合わないようになつたのであります。ただ一應教育委員会法におきましては、私立学校の方は外してあるのでありますが、この私立学校と教育委員会との関係につきましては、十分私立学校の立場を考慮いたしまして、將來私立学校法で決めて参りたい。ただ暫定的にはこの私立学校は、教育委員会法だけが出まして、私立学校法が出ませんと、所管の点が不明瞭になりますので、暫定的には教育委員会との関連が出て來ると思いますけれども、成るべくこれは速かに私立学校法を設けまして、その点は十分調整いたしたいと考えておる次第であります。
○岩間正男君 さつき文部大臣の説明がありましたのですが、大体議院運営委員会では十日というようなことを一應の念を押しておるのでありますが、文教委員会におきましても、大体そういう意向を持つておるのだと思います。今の政府側の説明の点は了承できますけれども、この前の教育基本法を審議されましたとき、これは帝國議会中でありますけれども、僅か二時間幾らくらいしか審議時間を持たなかつたということを聞いております。あれだけの重要な法案が二時間くらい……そういうような轍を踏まないように、殊に政局が混沌としていて、いつどんな政変があるか分らないという情勢の中におきまして、この法案は非常に不明瞭な形で決定されるようなことが起ると非常にまずいと思いますから、相当責任を持つてその提出を急いで貰いたい。それから今日以後の時間を十分に予定されないというと、こつちとしてはどうしても責任が持てないのではないかというふうに思うのです。結局最後の責任は文部省で一應持つて貰うより外仕方がないと思うが、この点を一つ明確にして頂きたいと思いますが、如何でしようか。
   〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
○柏木庫治君 さつき三つの法案の説明がありまして、そうしてそれに対して質疑をするかどうかということで、今日の委員会は私は開かれたと思うのでありますが、今の十日まで運営委員会云々、私立学校が云々ということは、次の委員会にするとか何とかいたしまして、若し個人的のお話ならば結構でありますが、外にも委員会を持つておりますので、一應それでは委員会を打切つて、後からにするとか何とかここで切りをつけて貰いたいと思います。もう一つは十日まで持つて來なければ責任は負わない。又文部省の説明を聞きますと、実際十日にできておつても、いろいろな事情でできないことでありまして、日本においては國会が権威を持つておりますが、運営委員会で十日より後はやらないと何ぼ申しましても、実際はその通りには参らないのでありまして、このことを認識しての氣持で私は進めて行かなければならんと思うのであります。だからこの委員会は委員会らしく結末を付けるか、委員長においてお計らいを願いたいと思います。
○堀越儀郎君 ちよつと速記を止めて頂いて……。
○委員長(田中耕太郎君) 速記を止めて下さい。
   〔速記中止〕
○委員長(田中耕太郎君) では速記を始めて下さい。それでは問題になつております三つの法案につきまして、先程お諮り申上げましたが、小委員会を設けてやるかどうかという点に、堀越委員からその必要はないだろうという御意見が出ました。岩間委員からは今後の法案の趨向に、又審査期間等にもよるからという御意見が出ましたので、この点につきましてどういうふうに変更いたしますか、尚御意見がおありになる方は御発言願いたいと思います。
○堀越儀郎君 重ねて私の意見を申述べますが、非常に日にちも迫つておりますことで、できるだけ愼重に、早い期間内に審議したいと思いますが、小委員会に掛けますと、定足数が足らんということが從前の例からよくあつたのであります。委員会を開く度ごとに定足数が揃うように進めるのには、どうしても小委員会を設けないで、このままで委員会を進めた方が私はいいと思いますので、できるならばそのようにお取計らいを願いたいと思います。
○委員長(田中耕太郎君) 只今堀越君の御発言に対しまして、御異議はありませんか。
   〔「異議なし」「賛成」と呼ぶ者あり〕
○岩間正男君 実際問題として、あと三本の法案が出て來て、六本をこの委員会で並行してやつて行くということは事実不可能であると思います。それで当分は、我々はこの本委員会でやつて行つて、情勢によりまして、重要法案については小委員会を作るということをここで建前にして置かないと、事実不可能だと思いますが如何でございますか。六本の法案をここで掛けて、何時間時間があるかどうか分りませんけれども、実際はやり切れないと思うのであります。そういう点で今の堀越議員の御話に一應賛成をしまして、尚先きに重要法案が出たならば、その重要度によつて小委員会を作るということもそれに附加えて置きたい。こういうふうに思うのです。
○柏木庫治君 私は露骨に申しますと、いずれでも結構であります。若し皆で小委員を会議して決めますならば、小委員会で決まつたことはこの文教委員会では是認するという前提がなからねば……第一回のときに小委員で決まつたことを、ここで根本的に壞しまして、又改めてやりましたので、時間が二重に掛かつたのであります。岩間君の提案甚だ結構でありますが、然らば小委員会で決まつたことは、本委員会はそのまま是認するという一つの條件がなからねば、徒らに時間を重複するだけで、先例から申しますと、岩間君の目的とは逆になると思いますので、このまま進めるか、小委員会を決めれば、小委員会で決まつたことを文教委員会で是認するという前提の下に、いずれでも決められたいと思います。
○鈴木憲一君 今柏木さんの言われたのは、私としては少し無理だろうと思うのです。小委員会で決めたことを、全体委員会で異議なく是認することを前提としてやるということはどうかと思います。やはり岩間君が先程言われたように、出て來るものについて、その重要度によつて、そのときに委員会で小委員会を設置するかどうかということを協議したらどうかと思います。取敢えずここに出ましたものについては、別に小委員会を作らずに、どんどん審議を進行したらどうかというふうに、堀越委員の初め言われたように、私は賛成するものであります。ただ重要法案が後に出て來た場合におきましては、これを中途で停止して、そちらの方を進行するか、或いは小委員会に移すかというようなことを、改めてその際に協議したら如何かと思うのです。それまではどんどんこれを進められることを希望します。
○堀越儀郎君 先程岩間君が提案されましたように、現在出ましたこの法案を全体の委員会で進めて行つて、そうして情勢によつて、更に小委員会を設ける必要があれば設けるということにして、現在のところではこのままで進んで行かれたら如何かと思います。
○委員長(田中耕太郎君) 今堀越君が最後に御発言になつた点は、どなたもそれに関する限りは御異存はないと思います。大法案で、特に小委員会を設けて審議する必要がある、又小委員会の決議の結果を本委員会でどういうふうに処理するかというような問題は、これはそのときに更に又御檢討願うことにいたしまして、当分、少くとも今出ておりますような三つの法案につきましては、小委員会を設けないで、早速質疑なり又討論に取り掛かるということにして進めたいと思いますが、それでよろしうございますか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(田中耕太郎君) それではさような方針で進行いたしたいと思います。これで今日の委員会を散会いたしたいと思います。
   午前十一時五十四分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     田中耕太郎君
   理事
           柏木 庫治君
           岩間 正男君
   委員
           梅津 錦一君
           小泉 秀吉君
           若木 勝藏君
           左藤 義詮君
           中山 壽彦君
           木内キヤウ君
           仲子  隆君
           安部  定君
           岩本 月洲君
           鈴木 憲一君
           堀越 儀郎君
           藤田 芳雄君
  國務大臣
   文 部 大 臣 森戸 辰男君
  政府委員
   文部事務官
   (学校教育局次
   長)      剱木 亨弘君
   文部事務官
   (科学教育局
   長)      清水 勤二君
   文部事務官
   (教科書局長) 稻田 清助君