第002回国会 司法委員会 第6号
昭和二十三年三月二十五日(木曜日)
   午後二時十五分開會
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  本日の會議に付した事件
○輕犯罪法案(内閣送付)
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○委員長(伊藤修君) これより司法案員會を開會いたします。本日は輕犯罪法案を本委員會に豫備審査のために付託されておりますから、この法案を上程いたします。先ず法務總裁よりこの法案に對する提案理由の説明をお伺いすることにいたします。
○國務大臣(鈴木義男君) 只今上程になりました輕犯罪法案の提案理由を御説明申し上げます。
 この法律案は、警察犯處罰令に代わるべき法律を制定する必要があるため、提案するに至つたものであります。警察犯處罰令は、明治四十一年現行刑法の實施と同時に制定施行され、違警罪即決例と相俟つて、警察權行使の裏付けに使用されると共に、國民生活に深い關係を持つて參つたのであります。昨年五月新憲法の實施と共に、違警罪即決例は、新事態に適合しないものとして全く廢止され、警察署長の即決處分に付されていたような事件は、擧げて新設の簡易裁判所において取扱われることになつたのでありますが、警察犯處罰令の方は、準備の都合もあり、直ちにこれが改廢をする運びに至らなかつたのでありまして、日本國憲法施行の際現に效力を有する命令の規定の效力等に關する法律により、先ず昨年末まで法律と同一の效力を有するものとされ、その後同法の一部を改正する法律によつて、更に法律に改められたものとされると共に、本年五年二日までに必要な改廢の措置を執らなければならないものと定められたのであります。それで、これに照應する措置として、この法律案が、準備されたわけであります。
 立案に當りましては、各方面の意見をも徴し、警察犯處罰令の規定を檢討整備すると共で、若干の新規定をも收めることにしたのでありますが、その方針と致しましては、この法律には、日常生活における卑近な道徳律に違反する輕い罪を拾うことを主眼とし、特殊の行政目的遂行のための取締規定的のものについては、それぞれの行政法規に必要最小限度の罰則を定めるべきで、ここにこれを取入れることは好ましくないという考え方をとつたのであります。
 警察犯處罰令と比較して異つたところを大づかみに申上げますと、先ず第一點として犯罪の種類を整備したことであります。警察犯處罰令には合計五十八個の罰號がありましたが、この法律案では、それが三十四個になりました。その中には新設のもの五個、その他新設同樣のものも一、二あります……。その他新設同樣のものも二、三あります。即ち新設のものとしては、第一條第二號の危險な器具を携帶する罪、同條第三號の邸宅等に侵入用の器具を携帶する罪、同條第十七號の古物の賣買等に關する帳簿に不實の記載をさせる罪、同條第二十三號の浴場等を秘かに覗き見る罪及び同條第二十九號の他人の身體に危害を加えることを共謀した罪がこれであります。新設同樣のものとしては、第一條第五號の公共の娯樂場や乘物等の中で、入場者や乘客に迷惑を掛ける罪、同條第十三號の公共の場所で多數の人に迷惑を掛け、又は公共の乘物等を待つている人等の列を亂す罪、同條第十四號の樂器等の音を異常に大きくして近隣に迷惑を掛ける罪等がこれであります。これらの罪はいずれも新しい事態に應じ必要とされるに至つたものであります。又、警察犯處罰令から受繼いだその他の罪に關する規定も用語を平易にし、且つ最近の事態に適合するように手を加えてあります。
 尚警察犯處罰令に規定されていた罪で、この法案に盛られなかつたものは、入札妨害罪等のように、すでに刑法の一部改正により刑法の中に取入れられているもの、流言浮説の罪のように新憲法の趣旨に副わない嫌いのあるもの、道路交通關係や、食品衞生關係の罪等のように、道路交通取締法、食品衞生法等最近の新立法に取入れられたもの、賣淫罪などのように他に特別の法律が立案されつつあるもの、その他他の法令の改正に讓るを相當とするもの、社會教育の普及や個人の自覺に俟つを相當とするもの、實益に乏しきもの等であります。
 第二點といたしましては、罪の種類により刑に差別を設けることを止めると夫に、すべての罪について情状により拘留と科料との併科を認める反面、廣く刑の免除ができるものとしたことであります。何分、輕い犯罪で、刑の種類も拘留、科料だけでありますから、その間、刑の差別を付ける實益も乏しく、警察署長の即決處分がなくなつた今日では、却つて刑の裁量の範圍を廣くし、具體的妥當性は裁判所の量刑に一任した方がよいと考えられたからであります。又刑の免除を全部の罪について認めたのは、拘留、科料には刑の執行猶豫の制度が定められていないことにも照應するものであります。尚、立案の途中拘留、科料の刑だけでは輕過ぎるから、或る程度の額の罰金刑をも科することができるようにしたらどうかという意見も出ましたが、拘留、科料という刑は、現行刑罰體系の中に現存するものであり、從來正にこの種の罪こそ、これらの刑に相當するものであると考えられて來たところでありますし、違警罪即決例が廢止された今日でも、拘留、科料の刑と罰金の形とでは、法律效果上尚若干の差異もありますのみならず、罰金を加えよとの意見は、結局科料の額が現在の經濟状態に適應しなくなつたことに端を發するものと考えられたので、この刑種の點は、他日刑法の全面的改正の際改めて根本的な研究をすることとし、當面の措置といたしましては、別途罰金の額と共に科料の額を引上げることを至急考えて見たいと思つておる次第であります。最後に法律の名稱でありますが、警察犯處罰令に附著した特殊の臭を洗い去り、新らしい感じを出したい考えで、種々の名稱が話題に上りましたが、結局簡明で、國民に親しみ易いものとして輕犯罪法となつたのであります。
 以上で簡單ながら提案理由の御説明を終えることにいたしますが、何率愼重御審議の上、速かに御可決あらんことを望みます。
○委員長(伊藤修君) 尚法案の内容について、概略政府委員の御説明をお願いいたしたいと思います。
○政府委員(國宗榮君) 輕犯罪法につきまして概括的な御説明を申上げたいと思います。
 本法の立案の方針でございますが、これは日常生活におきまするところの卑近な道徳律に反する輕い罪を拾い集めることを大體の眼目にいたしまして、その外特殊の行政目的を遂行するための取締規定的なものにつきましては、それぞれの行政法規に讓つた方がよろしいというので本法には取上げなかつた次第でございます。で、そういたしまするというと、或いは刑法中に全部これを取込んだ方がよろしいのではないか。こういうような考え方も出るかと存ずるのでありますが、今囘は先ず警察犯處罰令の失效に伴いまするところの措置を講ずるこをろ差當つての目的といたしましたので、單行法の形を取つた方が便利だろうと考えまして、根本的なそういう問題につきましての檢討は、刑法の全面的改正の際に利害得失を篤と考えて見たい。かようなふうに考えまして、輕犯罪法という單行法にいたしたのであります。
 更にこの輕犯罪法という題名でございますが、この點につきましても、御承知のように犯罪につきましては、重罪、輕罪、違警罪、かような三つの考え方があるのでありまして、學問上さように分けておる人もありまして、輕犯罪法に規定されておりますところの犯罪は、正に違警罪法に當るのではないかというふうに考えられますので、これを違警罪法という題名にした方がよろしいのでございましたが、警察犯所罰令によつてこれまで運用されておりました實體それ自體が、非常に警察という臭味が深く附いておりまして、何か餘り面白くない印象を與える、こういう觀點からいたしまして、題名をいろいろ考えた末に、輕犯罪法をいうふうにいたした次第でありまして、別に重罪とか、輕罪とか、或いは違警罪という學問的な區別に從つてかような名前を附けた次第であります。
 それから大體この法案の全般に亙りまして、一應簡單に共通する點につきまして御説明申上げたいと思いますのは、法文を見ますというと「正當な理由がなくて」とか、或いは「みだりに」とか、こういう字が使つてありますのと、全然さようなものが書いてないのとごいますが、「正當な理由がなくて」ということと、「みだりに」ということは大體同じ意味に使つておりまして、違法性を現わしておるものと考えまして、かようなものを入れたのでございます。これがないのは、この法文自體によりまして當然に違法性の窺われると、こう思われるものにつきましては、かような記載をいたさなかつた次第であります。「正當な理由がなくて」と「みだりに」と使い分けをいたしましたのは、これは法文の使い場所によりまして「正當な理由がなくて」と書いた方が分りいいという場合はその字を使いましたし、「みだりに」と書いた方が分りいいという場合にはさような字を使つたのであります。その間に深い區別はないものと御了承願いたいと思います。
 それから更に全般的の用語の問題といたしまして、例えば一條二號に「正當な理由がなくて刄物、鐵棒その他人の生命を害し、」という場合がありますと同時に、又三號にも「ガラス切りその他他人の邸宅」とありますし、それから五號にも「ダンスホールその他公共の娯樂場」と、こうありますのと、八號のごとく「風水害、地震、火事、交通事故、犯罪の發生その他の」と、かような用語がありまして、「その他」と單に切つてある場合と、「その他の」と使つてある場合がございますが、この「その他」と申します場合には、上に例示してあるものと限定されないで、ただ繋ぎの意味で「その他」と使つた趣旨になつております。「その他の」と申します場合には、上に例示になつております例えば「風水害その他の變事」、かようにいたしまして、風水害に準ずるような異常緊急な事態の場合を指すように、上に例示したものを受けまして限定する意味を、「その他の」で現わしたつもりでおります。
 それから尚全般的に通ずる用語の問題でございますが、八號にございますが、公務員というものがあります。「正当な理由がなく、現場に出入するについて公務員苦しくはこれを援助する者の」云々とありまして、更に十四號にも「公務員の制止をきかずに、」云云とございますし、それから更に十六號にも「虚構の犯罪又は災害の事實を公務員に申し出た者」、こう公務員というものがここにございます。それからその他にもまだございます。十八號にもございます。かように公務員という言葉が各所に使つてありまするが、この公務員は、當該公務員という趣旨でございまして、例えば八號で申しますれば、「風水害、地震、火事、交通事故、犯罪の發生その他の變事に際し、正當な理由がなく、現場に出入するについて公務員」とありますこの公務員は、この取締或いは救護、それらにつきまして權限を持つておる當該公務員、こういう趣旨でございまして、各條によりまして、その公務員の内容は變るものと考えております。大體全般に通じましての用語の問題といたしましては、かようなものがあるのでございます。
 それから各條につきまして簡單に御説明申上げたいと思います。第一條の第一號は、「人が住んでおらず、且つ、看守していない邸宅、建物又は船舶の内に正當な理由がなくてひそんでいた者」、かように相成つておりますが、これは公共の安寧の保護を目的とした規定でありまして、人が住んでもおりませんし、又看守もしていない邸宅、建物又は船舶の内にひそんでおる行爲は、刑法の住居侵入罰にならないのでありまするけれども、かような行爲は、尚それ自體不穩でありますのみならず、いろいろの悪の機會を與えるものでありますから、これを防遏する必要がありまするので、かような規定を設けた次第であります。ひそむといいますと、人目を避けて忍び隱れておるということを現わしておりまして、元の警察犯處罰令の第一條第一號を受け繼いだものであります。ただ用語の正確を期しまして、且つそれを言葉を柔かにいたしたのに過ぎないのであります。
 更に第二號は公共の安寧の保持を目的とする規定でありまして、正當な理由がないのに殺生に使用されるような器具を隱して携帶しておるということは、それ自體でやはり不穩であると言わなければなりませんので、かような規定を設けたのであります。現在銃砲、刀劔類につきましては銃砲等所持禁止令というものがございまして、これによりますると、銃砲類を刃渡り五センチ以上の短刀等の所持を禁止しておりまして、その罰は三年以下の懲役又は五千圓以下の罰金という相當に重い處罰規定ができておるのであります。更にこの銃砲火藥類取締法及びこれに基くところの府縣令等があるわけでありまするけれども、これだけではまだ十分でないというので、本法の規定を設けたのであります。まあ最近の事態に對處するためにも必要でありまするし、人間を尊重いたしまして暴力を否定するという新憲法の精神とも一脈通ずるものであろうと考えるのであります。警察犯處罰令にはなかつた規定でありまするが、このたび新らしく右申上げたような趣旨によつて規定いたしたのでございます。
 次は第三號でありますが、これも公共の安寧の保護を目的とする規定でありまして、正當な理由がないのに邸宅等に侵入するのに使用されるような器具を隱して携帶しておるというそのこと自體がやはり不穩であると、こう言わなければならないのでありまして、殊に最近の世相を顧みまするときは、かような行爲を防遏することが必要であることは極めて大きいものがあるのではないかと考えるのであります。これも舊警察犯處罰令にはなかつた規定でありまして、新たに設けた規定であります。
 次に第四號でありますが、本號は警察犯處罰令の第一條の第三號の規定を受け繼いだものでありますが、いわゆる浮浪罪に關する規定でありまするが、從來この規定は非常に濫用された傾向がありまして、甚だ論議が多かつた規定でありまするが、最近の住宅や職業の事情等を考えまして、公安維持の必要と人權の保障とを調和させるように條件を嚴格にいたした次第でございます。從いまして處罰令に規定してありまするよりも非常に狹く相成つておる規定になつております。
 次は第五號でありますが、これは處罰令の第二條の十四號を受け繼いだものでありまするけれども、かような本號の形になりまするというと、殆んど新設の規定といつても差支ない状態に相成つております。公共の娯樂場や公共の乘物等入場者や乘客の保護を圖ると共に、かようなる場所におきまする公衆道徳の維持勵行を目的とするものでありまして、「公共の會堂」と申しまするのは、公衆が會合の目的のため使用する建物でありまして、公會堂等がその代表的なものであろうと考えております。迷惑を受けるところの入場者や乘客は一人であつても差支ないことになつております。尚本號は後に述べまするところの第十三號前段の場合と違いまして、人が或る場所に結びつけられる度合が相當強く、從つてその場所におきまするその人を一般外部の場合よりも厚く保護して、延いてはその場所全體の秩序を圖ろうとする趣旨でございます。尚十三號をちよつと讀み上げますと、前段は「公共の場所において多數の人に對して著しく粗野若しくは亂暴な言動で迷惑をかけ」、かように規定してありまして、五號の場合と或る場合に重複する場合が生ずるのでございます。併しこの五號の場合におきましては、只今申上げましたように人が或る場所に結びつけられる度合が非常に強い。從つてその場所におきまするその人を一般外部の場合よりも厚く保護しまして、その場所全體の秩序維持を圖ろう、こういう趣旨でできたものでございます。「粗野」と申しまするのは、これは躰がないとか、或いは場所柄を辨えないとか、それ相當の禮儀を守らないというような觀念でありまして、「著しく」と申しますのは、一般の人から見まして、そういう状態で放つて置けない、そういう言動は放つて置けないというような程度のものをいうと解しております。併し刑法の暴行又は脅迫の程度に至らんものでありまするから、若し暴行脅迫の程度に至りますれば、當然刑法の規定に觸れるものと考えております。本號の規定も文化國家を目指しております新日本としまして、社會道徳の勵行を確保するために必要な規定と考えております。
 次は六號でありますが、これは交通の安全を保護しようとする規定てありまして、警察犯處罰令の第二條第二十八號を受け繼いだものでありまするが、舊規定では本號の後段が常燈、常に點いておる燈りとなつておりましたのが、本號におきましては單に「燈火」といたした點がやや舊令よりは廣くなつておるというに過ぎないものでございます。
 次は第七號でありますが、これは水路の交通の圓滑安全を保護しようとする規定でありまして、水路とは本號の性質上公共の水路をも意味しております。警察犯處罰令の第二條第十二號を受け繼いだものでありまするが、陸上交通關係だけは省いております。それは陸上交通關係につきましては道路交通取締法で規定しておりますので、それで賄いますから、本號からは削つたのであります。それ點だけ舊令とは變つておる次第でございます。
 第八號でありますが、これは警察的罰令の第二條第二十七號を受け繼いだ規定であります。風水害その他の變事の際のような非常緊急の場合におきましては、各人が協力し合いまして、その危難を救わなければならない組織的な活動の妨害や、混亂に乘じまして悪事を働くことがないようにしなければならない。本號はこれらに對處せんとするものでございます。「その他の變事」とは、騒擾とか難破とか噴火等がこれに當るものと考えております。「公務員」とは先程も少し申上げましたが、かような變事に際しまして取締とか或いは救護等の職權を持つた公務員を指すのでありまして、警察官とか警察吏員の外に救護等に當つておりまするところの市町村吏員、或いは又特別な、さような公共團體の吏員も入るものと考えております。公務員を「援助する者」とございますが、この「援助する者」とは公務員から現場の整理につきまして依頼を受けまして、現場でこれを援助しておる者といいまして、公務員の依頼もなく單に一方的に手傳つておる者はこれに含まれないとしてございます。本號の前段におきまして「指示に從うことを拒み、」後段によりまして「これに應じなかつた者」と書きまして、後段から「傍觀シテ」というのを削つた點が、警察犯處罰令と比べましてやや廣くなつている點でございます。
 次に第九號でございますが、本號は延燒の危險を防止しようとするものでありまして、警察犯處罰令の第三條の第五號を受繼いだ規定でございます。「相當の注意をしないで」とは、その當該した場合におきまして、通常人として拂うべき當然注意をしないということでありまして、特に行動の注意義務を要求しているわけではございません。この點は本號以下第十一號まで同樣でございます。舊規定には山野において焚火した者とございましたが、これは廣過ぎますので、これを削つた外、舊規定と本號との趣旨は變つておりません。
 次は第十號でございますが、本號は警察犯處罰令の三條の四號を受繼いだものでございます。鉄砲、火藥類その他の爆發物類は公共に危害を及ぼす危險が頗る多いのでありまして、かかる物品の所特や使用につきましては周密な取締規定が設けられておるのであります。例えば銃砲等所持禁止令、或いは銃砲火藥取締法、狩獵法、爆發物取締罰則等があるのでありますが、尚これでも不十分と考えられましたので、本號を設けてその取扱いについて萬全を期した次第でございます。
 次は第十一號でありますが、本號は公衆の身體又は物件の安全を保護するための規定であります。例えば道路に向つて濫りに物を投げたり、或いは水を注ぐなどの行爲を對象とするものでございます、これは警察犯處罰令の第二條三十二號をそのまま受繼いだもので文言を平易にしたに止まるのでありまして、別に實質的な變更を加えたものではないのでございます。尚用語の問題といたしまして「投げ」と申しまするのは、發射以外の方法で物を投げることでありますし、「注ぐ」というのは流動物に關する場合でありますし、「發射」と申しますのは何か器具を用いまして固形物を放ち射るもの、かように解しております。
 次は第十二號でありますが、本號も公衆の身體又はその使用する家畜などの安全を保障する、保護する規定でありまして、急險な動物を自由な状態に放すことは公衆に危害を與える危險が極めて大でありますので、丁度十一號の規定と同じ趣旨に歸著するわけであります。これも警察犯處罰令の三條第十三號をそのままここに移したわけでありまして、文言を平易且つ明確を期するために若干改めたのでありますが、實質的には變更はないと思つております。
 第十三號でありますが、これは公衆の日常の社會生活の秩序を保護する規定ということができるかと思います。殊に公衆が自由に利用できるような公共の場所、若しくは公共の施設の利用、物資の配給のため必然的に作られるところの行例の秩序が保護さるべきことは、正常なる社會生活のためにどうしても必要でありまするし、又かような機會にとかく秩序は紊れ易いのであります。殊に最近の世相を見まするのに、人心が荒び勝ちで且つ利己的に動き易い、ここに規定するような行爲は我々が到る處で見聞するところであります。その意味で相當重要な意義を持つ規定だと信ずるのであります。從來はかような點につきましては警察犯處罰令の第二條第十五號で「雜沓ノ場所に於テ混雜を増すノ行爲」ということでこれを罰しておつたに止まるのでありますけれども、本號はこれをも含めてもつと廣く公共生活の妨害を規定することといたしました。この規定を大別いたしまして、前段即ち公共の場所における多數人の保護と、後段即ち行列の秩序の保護とに分かれると存じます。いずれも多數の人に迷惑を及ぼす行爲を對象としておるのでありまして、その點におきましては一人の人間の迷惑をも保護しようとする第五號の規定とは異つておるのであります。但しいずれも公共生活の保護を究極の目的とする點におきましては同じであると考えております。用語の問題といたしましては公衆の列に割り込み、若しくはその列を亂した者」とございまして「列に割り込み」といいますのは、列を作つておる者の同意を得ずしてその間に入ることを「割り込み」というふうに表現いたしました。それから「列を亂した者」とは、これは順序を亂したり或いは又その列を全然解消さしてしまうような行爲を、解かしてしまうような行爲を現わすために「列を亂した者」と、かようにいたした次第であります。尚「公共の場所」と申しますが、これも公衆の利用し得るような場所、公園とか停車場などはその中に入るのだろうと思いますが、かような公衆の利用し得る場所という意味で「公共の場所」という字をここに使つております。
 次は十四號でありますが、これも公衆の生活を保護するものでありまして、特に本號では生活環境の靜穩を保護するということができるであろうと思います。この問題も私共が日常しばしば體驗することでありまして、取締の必要につきましては多く言う必要はないと存ずるのでありますが、警察犯處罰令におきましては、第二條の十一號で「公衆ノ自由ニ交通シ得ハ場所ニ於テ喧噪シ」云々とありまして、これを取締るに止めておるのでありますが、本號はこれよりも場所を廣く、場合を廣くいたしまして、一般的の公共の靜穩を害する場合を規定することにいたしました。但しその解釋が廣きに過ぐることにならんように、例えば公務員の制止、音の異常に大きいということ、現に近隣に迷惑掛けたことなどの要件を明らかにいたした次第であります。
 次は十五號でありますが、本號は大體におきまして警察犯處罰令の第二條の二十號の規定をそのまま移したものでございます。規定の目的はここに揚げられましたような資格、稱號若しくはこれらのものを象徴いたしまする標章の信用を保護するということでありまして、併せて詐欺の行われ易い危險を未前に防止しようといるところのものと解してよろしいと思います。從來の規定と比べますれば本號では舊規定が限定的であるものを、一般的に規定いたしました點でやや廣くなつております。舊規定にあつた「爵」が除かれておることは、これは言う迄もないことと存じます。
 次は第十六條でございますが、これは一口で申しますると、いわゆる狂言強盗の届出を、非常の際に嘘の報知をすることなど對象といたしたもので、かような場合には公務員は時に敏速的確に事を處理しなければならんのでありますから、その際に、殊更に進んでその行動を誤らせるような行爲は嚴重に取締る必要があるのであります。それがこの規定の目的なのでありまして、從つてその申出でた事實は虚構、即ち作り事でなければなりませんし、又本人が進んで申出た場合に限ることに注意されたいのであります。その點は處罰令の二條の二十一號に非常に廣く、不實の申告をし、又は申述を肯じない場合を罰することになつておつたのでありますが、これでは自白の強要を禁止する憲法の規定にも違反する慮れがありますので、これを本號の中に明らかに限定して規定したのでございます。
 次は十七號でありますが、これは新らしい規定でございます。古物商又は質屋自身が帳簿に虚僞の記入をする行爲につきましては、それぞれ質屋取締法、古物商取締法によりまして、罰則が定めてありまするが、賣主とか又は質入主等につきましては、罰則は從來は大體府縣令に規定されておつたのでうります。こころが本年の一月以降これらの府縣令が失效いたしましたので、これに代るものといたしまして、ここの規定した次第であります。この十七號を新らしく設けましたのは、各地よりのいろいろの要語がございましたので、それに基きまして規定いたしました。最近盗犯の増加が驚くべきものでありますので、その點に鑑みまして、この規定の新設をする必要があろうと考えて設けた次第でございます。
 次は十八號でありますが、これは警察犯処罰令の二條の十號の一項と同じ趣旨の規定で、その狙いとしますところは、一面では刑法の遺棄罪と同樣、扶助を要する者の保護でございまするし、一面では公衆衞生及び犯罪捜査の必要の目的であります。扶助を必要とする者が自己の支配内にいる場合には、それが直接保護の義務はないものといたしても、これを公務員に屆出すべきことは當然でありまするし、又死體につきましてもこれを屆出て然るべき處置を促すことは、公衆衞生保持及び犯罪の端緒の發覺のためにも一般人の義務とされていると考えなければならない。こういうふうに思いまして本規定を設けた次第であります。
 次は十九號でありますが、これも公衆衞生及び刑事司法の必要のための規定でありまして、警察犯処罰令の十號二項を受け繼いだものでございます。犯罪捜査のためにはいわゆる現場の保存が必要でありまするし、妄りにこれを變更されたために、捜査に重大な支障を來したことは一再ではないのであります。又公衆衞生の面から見ましても、今日では必要があります場合には監察醫が檢束、解剖することになつておりまして、そのためにも現場の保存は必要である。こういう觀點からここに採入れた次第でございます。
 次は二十號でございますが、本號は公衆の風俗、感情を保護するための規定でございます。警察犯處罰令の第三條の二號にいわゆる「袒裼、裸ていという有名な文句がございますが、これに當るものでありまして、要するに場所柄も辨えずに身體の一部を露出することは風俗の健全性を害しますし、公衆の感情を害するのでそれを取締ろうとする趣旨でございます。特に御注意を願いたいのは、同一の行爲、それから同一の部分の露出でありましても、所によりまして、又時によりまして又はその人の如何によりまして、本號に該當するかどうかが分れることでございます。從いまして本號の適用の有無は、全く社會通念によりまして決定されるわけでありまするが、これはこの規定の性質上當然であろうと考えております。用語の問題でございますが、「けん悪の情を催させるような仕方」とございますが、これは健全な風俗、感情を害するような仕方と、こういうふうに解釈しております。「公衆の目に觸れるような場所」とございますが、これは不特定又は多數人の目に觸れることの可能な場所を言うものと解しております。
 次は二十一號でございますが、これは動物保護の規定ということができるのでございます。文明社會におきましては、動物の虐待も亦人に對しますると同樣、それ自體が一つの反道徳的な行爲だと觀念してよかろうかと存ずるのであります。ところで、警察犯處罰令の第三條の十四號が「公衆ノ目ニ觸ルベキ場所」というとこになつておりまして、この公衆の目に觸るべき場所での虐待だけを處罰していたのを改めまして、人が見ておると見ていないとに拘わりませず、虐待それ自體を罰することにいたした點に本號の特色があるのでございます。尚、本號では虐待の概念が明確を缺く嫌いがありますので、その方法の例示を置いて、成るべくこれを具體的にしようといたした次第であります。從いまして毆打とか、或いは酷使するとか、飲食物を與えない。こういうようなやり方で虐待をした場合に本號のいわゆる虐待と見てある次第であります。警察犯處罰令と非常に違いますことは、虐待それ自體を罰するのでありまして、虐待をしておるのを見ておる人に嫌悪の感情を催させる、それを保護するのではないのでありまして、この點につきまして警察的處罰令とは非常に變つた規定でございます。
 次は二十二號でございますが、「こじきをし、又こじきをさせた者」とございますが、乞食を罰するということは警察犯處罰令の第二條の二號と變りはないのであります。これにつきましてはいろいろな議論も相當あるのでありまして、殊に初めに方の乞食をするということにつきましては、これをも罰するかという非常に疑問がございまするけれども、社會上救護を要する者に對しましてはいろいろな保護の方法もございます。例えば生活保護法の救護という點もございましようし、いろいろな方法もあるのでありまするし、ただ徒らに公衆の憐れみに訴えまして、金品を乞うような、そういう行爲は文明國におきましては、やはり社會道徳上排斥すべき行爲ではないか。こう見なければならないと考えまして、本號はそのまま例の第二條の二號と同樣にここに設けた次第であります。尚ここに「こじきをさせた者」とありますが、この場合乞食の教唆の場合は含まないものと解しております。それは第三條によりまして、當然に教唆のものは正犯と同じように處罰を受けますので、この場合は間接正犯的なものを考えております。
 次は二十三號でありますが、本號はこれは新らしい規定でありまして、人の私生活の秘密、特に肉體を人に見られないという權利は、これは厚く保護されなければならないのでありますから、妄りに他人の隠すべき肉體の部分を覗き見るということは、この權利を侵しますし、私生活の平穩を害するものである。そこでこのような規定を設けることにいたしました。この罪は性的犯罪の一種だと見ることができようかと思います。用語の問題でございますが、「通常衣服をつけないでいるような場所」、こういうのがございますが、これは全く裸、裸體のみならず、通常隠しておる肉體の一部を露出するような場所をも含む趣旨でありまして、例えば醫者の診療室であるとか、或いは手術室であるというようなものがこれに含まれるものと思つております。それから「ひそかにのぞき見た者」とありますが、これは覗き見られる方の本人に知られないように物の間から窺い見るというようなことを「ひそかにのぞき見た者」というふうに解釋いたしております。
 次は第二十四號でありますが、「公私の儀式に對して悪戯などでこれを妨害した者」という規定でございますが、儀式を行うことは社會生活の要求でありまして、人の本能に根差しておるということもできるか、と思います。これが國家によりまして保護せらるべきことは言うまでもないことでありまして、濫りに公私の儀式を妨害する行爲は、やはり取締らねばならないというのが、本號の趣旨でございます。この種の規定は、警察犯處罰令の第二條の九號にありましたが、それには祭事、葬事又はその他の行事となつておるのを、今度は廣く公私の儀式といたしまして、一般的に、これを取締ることにいたしたものでありますが、その趣旨におきましては、從來もあつた規定でありまして、特に新らしいものではないのでございます。公私の儀式でありますから、その公私の儀式の中には、宗教上の儀式もありましようし、又冠婚葬祭の儀式もありましようし、或いは卒業式とか表彰式、かようなものが全部含まれる趣旨と解しております。尚「これを妨害した者」とありまして、妨害は儀式の圓滑な進行が妨げられる、或いは儀式の嚴肅性を害されるということが妨害という趣旨に解しております。尚これは結果犯でありまして、やはり進行を妨害されたとか、或いは嚴肅性を害されたという結果が發生しまして、本號の適用があるものと考えております。
 次の二十五號でありますが、本號は水路の流通阻害によるところの溢水の危險及び衛生上の危險を豫防するための規定でありまして、刑法の溢水に對しまする罪の補充の規定たる性格を持つておるものでございます。これは警察犯處罰令の第二條第二十三號にあつた規定でありまして、そういう意味合から申しますると新らしいものではないのでございます。
 その次は第二十六號でございますが、これは警察犯處罰令の第三條の第三號にあつた規定でありまして、勿論風俗竝びに衛生上の觀點からして、これらの公益を保護するために設けられた規定でございます。「街路」と申しますのは、市街地の道路を言いまして、それは路面ばかりでなく、路面に沿つた「どぶ」、「みぞ」、橋なども含む趣旨でございます。空地、野原のような道路でないような場所は含んでおりません。又山道とか野道とか畦道というようなものは街路とは考えておりません。市街地は、都市は勿論、田舎でも人家の連つておる所を言うものと解しております。尚道路は、行政上の縣道とか、或いは村道というものには關係はないのでありまして、人家が連つた場所なら街路に當るものと解しております。これも文明社會におきまして、「たんつば」をそういうような場所で吐いたり、或いは大小便をしたり、若しくはこれをさせるようなことは好ましくない行爲でありまして、これらを取締る趣旨にできております。
 次は二十七號でありますが、「公共の利益に反してみだりにごみ、鳥獸の死體その他の汚物又は發物を棄てた者」とありまして、これは主として衛生上の理由によつてかような規定を設ける必要があると考えたのでございます。本號の「公共の利益に反してみだりに」と、こうございますが、甚だ重複した觀念でありまして、「みだりに」だけでも十分に「公共の利益に反して」という趣旨を現わしておるものと思うのでありまするけれども、尚一層「みだりに」の意味を分り易くするために「公共の利益に反して」という字句を書いたのでありまして、もつと大きく申しますると、「公共の利益に反して」という點にも同じような意味が通ずるものと存じております。具體的に申しますると、「公共の利益に反してみだりに」ということは、一般の考えから申しまして、一般の人の觀念から申しまして、棄てるべからざる所に棄てる、こういう趣旨に解しております。本號は、警察犯處罰令の第三條の十號に當るものをここに持つて來たわけでございます。
 次は二十八號でありますが、これは警察犯處罰令の第二條の三十一號に當るものでありまするが、それよりももう少し詳しくなつておるのであります。警察犯處罰令と趣旨におきまして何らの變更はございませんが、ただ規定を分り易く表現したに過ぎないのでありまして、身邊に群がつて立ち退こうとせず」という行爲は、處罰令の下では「立塞り」の中に當然に入れて解釋されていたわけであります。今度の輕犯罪法では、これを群集によるものとして別に表現しましたから、自然「立ちふさがつて」は單身のものを防ぐことになつたわけでございます。又後段の「不安若しくは迷惑を覺えさせるような仕方で」ということでなくても、當然「つきまとう」という言葉の中に出ておるのでありまするけれども、やはり一般に分り易くするためにかような形容句を入れたわであります。從いまして、舊令の場合と本號の場合とにおきましては、趣旨においては變りはないのでございます。
 次は二十九號でありますが、本號の趣旨は、暴行又は傷害の共謀者の中に……この二十九號は多少讀みにくい規定だと思いますが、一應讀んで見ますと、「他今の身體に對して害を加えることを共謀した者の誰かがその共謀に係る行爲の豫備行爲をした場合における共謀者」とありまして、輕犯罪法の各號の中で、何か非常に分りにくい表現の方法でございます。併しこれは暴行又は傷害の共謀者の中の一人又は數人がその豫備行爲を行なつた場合に、共謀全員にその豫備行爲についての責任を問うこととしてあります。例を擧げて申しますると、暴行又は傷害をしようと共謀いたしました五人の者の中の一人が、その傷害の豫備のために勝手に棍棒等を用意した場合等におきまして、共謀者全員がその責任を問われる、こういう趣旨の規定でございます。この場合におきまして、生命に對しまして害を加えることを共謀した場合を含めていないのでありまして、さような場合におきましては、刑法の百一條の殺人豫備の規定によつて處斷されてのでありますから、その場合は含んでいないと、かように御了承願いたいと思います。かような規定を設けました根本の趣旨は、最近の世代に徴しまして、集團犯が特に危險な行動に出る、又は集團犯が非常な社會不安を釀成しておりますので、それに對しまする取締を非常に早い段階においてしたがよろしいのではないかというふうに考えまして、かような規定を設けた次第でございます。從いまして、本號は警察犯處罰令には規定のなかつた新らしく設けた規定でございます。
 次は三十號でありますが、「人畜に對して犬その他の動物をけしかけ、又は馬若しくは牛を驚かせて逃げ走らせた者」、これは警察犯處罰令の第三條の十二號に該當するものでございまして、全く舊令と變つていないものでございます。勿論これも人體の危險に對しまする保護を目的といたしておるものでございます。
 次は三十一號でありますが、三十一號は警察犯處罰令の第二條の五號に當るものをここに移したのでありますけれども、舊令の二條の五號は「悪戲又ハ妨害」となつておりましたのを、本法では「悪戲などでこれを妨害した者」と改めたのでありまして、警察犯處罰令におきましても、刑法の業務妨害罪との關係上、いわゆる妨害は悪戲に類する輕微なものと解されて參りましたので、又そういうふうに解しなければならなかつたのでありますが、新法はその點を明らかにいたしまして、いわゆる妨害は悪戲に類するような輕微なものである。そういう悪戲などの方法で妨害の結果を發生した場合に本法を適用するという趣旨で、ただ警察犯處罰令の五號の規定を分り易くした次第でございます。ただここで問題になりますのは、刑法の二百三十四條との關係でございますが、これは業務妨害罪でありまして、刑法におきましては、威力又は僞計を用いとありまして、かような特殊な手段を必要とすることになつておりますが、本號の場合におきましては、威力又は僞計というような特殊の方法を用いる必要がないのでありまして、刑法上の僞計と申しますと、相當複雜巧妙な方法を指すのでありますが、本號の手段はいたずらでもやはり一種の技巧を用いる場合もございますけれども、遥かに僞計よりは單純素朴なものを指しておる趣旨であります。これは複雜巧妙になりますと、或いは僞計となり、或いは威力となる場合がございますが、さような場合になりますと、刑法の二百三十四條の適用を受けることになつて參ります。從いまして例を申しますれば、極く經い行僞でありまして、舞臺に出ようとするところの役者の背中に貼紙などをするとか、或いは講演者の前に「こしよう」を振掛けまして、くしやみをさせるような、その程度のいたずらを豫想いたしまして、そのことによつてその人の業務の執行が相當阻害される、かような場合を考えまして、本號の規定を設けた次第であります。
 次に三十二號でありますが、これは警察犯處罰令の第二条の二十五號、竝びに第三條の十七號を大體合せて纒めたものでございます。「入ることを禁じた場所又は他人の田畑に正當な理由がなくて入つて者」となつておりまして、入ることを禁じた場所に正當な理由がなく入つた場合、非常に廣い意味の住居侵入になりますけれども、一般的に廣く禁じた場所に入つてはならないという規定であります。それから「他人の田畑に正常な理由がなくて入つた者」、これは舊令では「通路ナキ他人ノ田圃を通行シ」とありますが、それは餘り意味がありませんので、單に「他人の田畑に正當な理由がなくて入つた者」と、かようにいたした次第であります。尚場所に入ることを禁ずる方法は、これは立札でも貼紙でも繩張でも、この他何でもよろしいが、何か標示がしてあることが必要だろうと考えております。又かような標示をする禁止權者は、土地の所有者は勿論でありますが、管理權のある者であれば差支ないと考えております。尚警察犯處罰令におきましては「牛馬諸車を牽入レタル者」、こういうことがありますけれども、牛馬車を牽入れるにつきましては、當然その人もついて入りますので、これは贅文と考えましたので本號からは削つた次第であります。大體この規定は財産或いは業務の保護を目的といたしておるものということができると考えております。
 次は三十三號でありますが、これは警察犯處罰令の第三條の十五號に當るものでありまして、これよりも多少擴めた點があるのであります。「みだりに他人の家屋その他の工作物にはり札をし、若しくは他人の看板、禁札その他の標示物を取り除き、又はこれらの工作物若しくは標示物を汚した者」とございまして、他人の家屋の中には勿論公有の物も私有の物も含んでおるわけであります。更に舊令におきましては「貼紙」とございましたが、ここでは「はり札」と改めまして、單に紙ばかりでなく板などを貼りました場合もこれに該當するように相成つております。その他の大體は舊令と同じ趣旨と解してよろしいと思つております。
 次は第三十四號でありますが、これは警察犯處罰令の第二條の六號に當るものでありますが、「公衆に對して物を販賣し、若しくは領布し、又は役務を提供するにあたり、人を欺き、又は誤解させるような事實を擧げて廣告をした者」、これは舊令の場合よりももう少し具體的にいろいろな行爲をはつきりさせまして、不當な廣告を取締ることにいたした次第であります。廣告によりましていろいろな社會上の秩序が紊れる場合がありますのでかような規定を設けまして個人の財産竝びに業務を保護する趣旨に出たものであります。この場合は詐欺罪とも關連が起つて來るのであります。詐欺罪の場合におきましては相手方が特定しておる場合でありますが、本号の場合におきましては相手方が特定していないのであります。尚不當な誇張や虚僞だけがここでは違法視すべきものと考えております用語の問題でありますが、「販賣し」とありますのは、有償且つ多少反復的な意味合を含めまして「販賣し」という言葉を使つております。「頒布し」と申しますのは無償で配ることでありまして、一囘でもよろしいという趣旨に解しております。「役務」と申しますのは身體的なものもありますし、精神的な勞務もございます。兩方含めまして「役務」という言葉を使つております。
 以上第一條の各罰號につきましては、極く粗雜でございますが、申上げた通りであります。
 次はこの第二條でありますが、第二條は「前條の罪を犯した者に對しては、情状に因り、その刑を免除し、又は拘留及び科料を併科することができる」。この點につきましては提案理由で大體御説明申上げた通りでありまして、從來は各罰號によりまして刑を階段的に分けておつたのでございまするけれども、經犯罪法に規定いたしまするところの各種の犯罪は、すべて拘留、科料に當るような極く經微な犯罪でありまするので、全部拘留、科料の刑を以て臨むことにいたしました關係上、同時に又拘留、科料の刑につきましては、執行猶豫の制度もございませんので、情状によりましては、その刑を免除する。又は場合によりましては拘留及び科料の刑を併科する。こういう兩方の刑を經くする場合、刑を免除する場合、又この情状によりまして悪いものに對しましては多少兩方を併科しまして刑罰の効果を擧げる、かように裁量の範圍を廣くいたしましたのが第二條の規定でございます。大體ここに擧げてありまするところの犯罪は、嚴格に取上げますれば日常茶飯事に起つてま凍ことでありまして、この運用は非常に戒心しなければならないものとこう考えておりまするが、假に取上げられましても、多くの場合におきまして情状をよく見まして、その時、その場所、その人についていろいろな點を考えまして、刑の免除の規定を十分に活用し得るように考えまして第二條の規定を設けた次第であります。
 第三條は、「第一條の罰を教唆し、又は幇助した者は、正犯に準する」。これは御承知のように刑法の六十四條によりまして、かような拘留、科料の罰に當るものにつきましては、教唆、從犯の規定は適用はないのでありますが、從來の警察犯處罰令におきまして、これを「本令ニ規定シタル違反行爲ヲ教唆シ又ハ幇助シタル者ハ中本條ニ照シ之ヲ罰ス」とこういうふうな規定がございまして、教唆又は幇助の場合におきましても、本條に照しましてこれを罰するという規定がございましたが、これと同じ趣旨をこの第三條に規定したのでありまするが、舊法の表現法によりますと、從犯は、刑法の六十三條の適用によりまして、刑を減經されるのか、それとも刑法總則の適用を排除する趣旨なのか、この點がはつきりいたしませんから、新法ではこの點を明らかにいたしまして正犯に準ずるということにいたしました。從つて明白に六十三條の適用は排除されまして、その刑は減經され得ない、こういうふうにいたした次第でありまして、ただ舊法の場合をもう少しはつきりさせただけに過ぎないのでございます。
 次は附則でありますが、これは「公布の日から起算して三十日を經過した日から、これを施行する。」、警察犯處罰令は、これを廢止する」。併し御承知の通りに、警察犯處罰令は、本年の五月二日まで法律と同様の效果を持つておりまするけれども、五月二日を經過いたしますと、警察犯處罰令は全部廢止になるわけでございます。尚この經過規定を特別に設けなかつたのでございますが、その點につきましてちよつと申上げて置きたいのですが、警察犯處罰令の施行當時の、その處罰令に該當した行爲は經過的に見まして、輕犯罪法施行後はどういうふうになるか、こういう點でありますが、輕犯罪法が施行になりますと、舊法時の行爲は、新舊いずれの法によりましても、等しく罰せらめるものにつきましては、舊法時の行爲に新法を適用する、この場合刑の輕重のあるものは、輕きに從うことは、これは刑法の第六條の原則によるのでありまして、新法を適用するという原則をこの場合も採るわけでございます。刑の輕重のある場合につきましては、刑法の六條の原則による。それから尚舊法時に處罰されるものであつたものが、新法によりまして全然罰せらない、放任されるようになつたものは強いてこれは罰するにも當らないものといたしまして、この點につきまして經過規定を設けなかつた次第であります。尚、舊法時に處罰をされなかつたものが、新法によつて處罰されるという事態が發生いたしますれば、これは當然法律の不遡及の原則によりまして、舊法時に罰せられないものであるものにつきましては、罰し得なこことは當然と考えております。いずれにしましても非常に輕微な犯罪でありますから、特別に舊法の時代におきまする行爲につきましての經過規定を設ける必要がないと認めて設けなかつた次第でございます。非常に粗雜でありましたが、一應説明をいたしました。
○委員長(伊藤修君) ではこの法案に對する質疑は、明日午後二時からいたしたいと存じます。本日はこれを以て散會いたします。
   午後三時二十八分散會
 出席者は左の通り。
   委員長     伊藤  修君
   理事
           岡部  常君
   委員
           齋  武雄君
           中村 正雄君
          大野木秀次郎君
           水久保甚作君
           鬼丸 義齊君
           來馬 琢道君
           松井 道夫君
           松村眞一郎君
           宮城タマヨ君
           星野 芳樹君
           西田 天香君
  國務大臣
   法 務 總 裁 鈴木 義男君
  政府委員
   法務廳事務官
   (檢務局長)  國宗  榮君