第004回国会 法務委員会 第1号
昭和二十三年十二月二十四日(金曜
日)
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  本日の会議に付した事件
○檢察及び裁判の運営等に関する調査
 の件(本庄事件に関する件)
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   午前十一時十分開会
○委員長(伊藤修君) それでこれより法務委員会を開きます。檢察及び裁判の運営に関する調査事件中本庄事件について証人の証言をお聞きいたします。
○委員長(伊藤修君) 渡邊健吉さんですね。証言をお願いする前に宣誓書の朗読を願います。
   〔総員起立、証人は次のように宣誓を行なつた〕
   宣 誓 書
 良心に從つて眞実を述べ、何事もかくさず、又、何中もつけ加えないことを誓います。
        証人 渡邊 健吉
○委員長(伊藤修君) 先日呼出しを差上げましたが、御出頭にならなかつたのはどういう理由ですか。
○証人(渡邊健吉君) 先日は出頭命令は何も受けておりません。
○委員長(伊藤修君) 通知が行つてなかつたのですか。
○証人(渡邊健吉君) 昨日初めて私は拜見いたしました。
○委員長(伊藤修君) 郵便が着かかなかつてのですね。
○証人(渡邊健吉君) 着きませんでした。
○委員長(伊藤修君) 昨日初めて知つたのですか。
○証人(渡邊健吉君) そうです。
○委員長(伊藤修君) それで今日出頭なさつたのですね。
○証人(渡邊健吉君) そうです。
○委員長(伊藤修君) あなたは本庄町にお住いですね。
○証人(渡邊健吉君) いえ、井泉村です。
○委員長(伊藤修君) 井泉村字……
○証人(渡邊健吉君) 北袋です。
○委員長(伊藤修君) 本庄にはお住いでなかつたのですね。
○証人(渡邊健吉君) 住んでおりません。
○委員長(伊藤修君) 波商賣は。
○証人(渡邊健吉君) 縫製加工業の從業員です。
○委員長(伊藤修君) あなたは關口重太郎さんを御存じですか。
○証人(渡邊健吉君) 私の義理の兄になつております。
○委員長(伊藤修君) 朝日新聞の記者をやつておられる杉山喬さんという者を知つておますか。
○証人(渡邊健吉君) 知つております。友人です。
○委員長(伊藤修君) あなたは關口重太郎さんから、田口檢事と共に刑事事件の非疑者でうつた荒井八郎方に宿泊して、酒食の餐應を受けたということを聞いたことがありますか。
○証人(渡邊健吉君) 聞きました。
○委員長(伊藤修君) どこで。
○証人(渡邊健吉君) 關口の家の、何か私のちよつとした用事で行つたときに、緑先で聞きました。
○委員長(伊藤修君) 關口という人の家はどこですか。
○証人(渡邊健吉君) 井泉村の藤上組です。
○委員長(伊藤修君) いつですか。
○証人(渡邊健吉君) はつきりした記憶は残つておりませんけれども、八月上旬頃だつたと思います。
○委員長(伊藤修君) 今年の。
○証人(渡邊健吉君) はあ。
○委員長(伊藤修君) 上旬頃の朝ですか、夜ですか。
○証人(渡邊健吉君) 多分午前中ではなかつたかと思いますが。
○委員長(伊藤修君) どういう用事で行かれたのですか。
○証人(渡邊健吉君) それは私の記憶に残つておりません。
○委員長(伊藤修君) 立話で聞いたのですか。
○証人(渡邊健吉君) 立話ではなかつたですね。
○委員長(伊藤修君) 用件があつて行かれて序でにその話を聞いたのですか。
○証人(渡邊健吉君) そうです。
○委員長(伊藤修君) そのとき關口さんがおつしやつたことを詳しく言つて頂けますか。
○証人(渡邊健吉君) 私が關口の家を訪れたときに、その話を聞くときの、当時のことはよく私は記憶に残つておりませんけれども、それだけははつきりと耳の底に残つておる、それだけです。荒井八郎氏宅に泊つたということを聞いたことだけは私の記憶に残つていて、その外にこれということは残つておりません。
○委員長(伊藤修君) どうしてそういう話が出たのですか。
○証人(渡邊健吉君) ですから先程申上げましたように、どうして出たかということについては私は記憶に残つていないのです。
○委員長(伊藤修君) 何かそういう摘発の話か、或いは檢察官に対する話とか、何か関連がなければそんな話は出て來ないでしよう。
○証人(渡邊健吉君) そうですね。それから私は縫製加工業に從事しておりますから、その話から進んだのだと思います。
○委員長(伊藤修君) その聞いたことをあなたは杉山さんに話をしたのですか。
○証人(渡邊健吉君) しました。
○委員長(伊藤修君) それはいつ頃どこで。
○証人(渡邊健吉君) 八月十七、八日頃ではなかつたかと思います。
○委員長(伊藤修君) どこで。
○証人(渡邊健吉君) 私の事務所で話しました。
○委員長(伊藤修君) どこにありますか。
○証人(渡邊健吉君) 警察裏です。羽生村上七生二百七番地です。
○委員長(伊藤修君) そこに杉山さんが訪ねて來たのですか。
○証人(渡邊健吉君) 私の事務所には杉山さんの親友がおりますから、親友のところに遊びに來たときに私がそれを話しました。それで私としては、当時は忍町の隠退藏物質について杉山記者が摘発をやつておつた、摘発に田上檢事と一緒に行つておつた。その時に私としては、私個人の考えで、檢察官として、当時まだ公判が始まらないうちから、業者の家へ泊るということは非常に不明朗な問題があるのじやないか、そういうふうに私は考えまして杉山さんに話しました。それだけの理由で私は話した。
○委員長(伊藤修君) そうするとその話はそのときは眞実の話だと、こう思つたのですね。
○証人(渡邊健吉君) 無論そうです。
○委員長(伊藤修君) 關口さんは嘘を言うような人じやないですね。
○証人(渡邊健吉君) 私は嘘を言わないと思いますね。
○委員長(伊藤修君) 關口さんはどうしてそれを承知したということを言わなかつたのですか。
○証人(渡邊健吉君) 何ですか。
○委員長(伊藤修君) どうしてそのことを知つたということを言わなかつたのですか。
○証人(渡邊健吉君) それは田上さんと同行されたということだけを聞いたと思います。
○委員長(伊藤修君) 關口さんが同行されたのですか。
○証人(渡邊健吉君) はあ、そういうふうに聞きました。
○委員長(伊藤修君) それで同行した。それからそういう事情が分つておるのですね。
○証人(渡邊健吉君) 無論そうだと思います。
○委員長(伊藤修君) あなたは佐山支局長宛に手紙を出されておりますね。
○証人(渡邊健吉君) 出しました。
○委員長(伊藤修君) 小生は昨日關口重太郎から、八月上旬田上檢事に同伴されて忍町荒井八郎氏宅に行き馳走を受け、田上檢事が一泊したということを聞き、これを御社杉山記者に話しました、正義が不正を裁く建前から、このような事実に対して正否を質すべきだ……との字が落ちておりますが……だと信じますというような手紙を出しましたね。
○証人(渡邊健吉君) はあ。
○委員長(伊藤修君) これはどういうわけで出したのですか。
○証人(渡邊健吉君) どういうわけつて……そこに結論として結んであります。
○委員長(伊藤修君) 話ただけなら……。
○証人(渡邊健吉君) それは証拠にならないと思います。話ただけでは……。
○委員長(伊藤修君) 杉山さんに話しただけでは証拠にならないから、更に手紙を出したのですか。
○証人(渡邊健吉君) そうです。杉山さんに話したということを証拠付けるためにそれを書いたのです。
○委員長(伊藤修君) 杉山さんに話したのですか。
○証人(渡邊健吉君) そうです。
○委員長(伊藤修君) そのときに話したときに渡したのですか。
○証人(渡邊健吉君) いえ、その後です。
○委員長(伊藤修君) その後に……。手紙で出したのですか、杉山さんに渡したのですか。
○証人(渡邊健吉君) 杉山さんに渡したのです。
○委員長(伊藤修君) それはあなたの自発的意思から……。
○証人(渡邊健吉君) 無論そうです。何も強要された覚えは一遍もないです。
○委員長(伊藤修君) 強要というよりも、向うから求められたわけでもないですか。
○証人(渡邊健吉君) ええ、そうです。
○委員長(伊藤修君) それから關口重太郎という人が、杉山喬さんですね、その人に酒と現金を提供して、それで杉山さんがそれを断つたということ御存じですか。
○証人(渡邊健吉君) 私はそれは知りません。私の関知したことじやないのです。
○委員長(伊藤修君) 関知したことじやないけれども、あなたは御存じない……。
○証人(渡邊健吉君) 私は知りませんです。
○委員長(伊藤修君) 聞いたこともないですか。
○証人(渡邊健吉君) そうですね。話としては聞いたことがありますけれども……。
○委員長(伊藤修君) ありますか。誰から聞いたですか。
○証人(渡邊健吉君) 杉山さんに聞きました。
○委員長(伊藤修君) 關口さんからは。
○証人(渡邊健吉君) 別に聞きません。
○委員長(伊藤修君) それは現金というのはどのくらいですか。
○証人(渡邊健吉君) ですから、私はそういうことについては全然知りませんです。けれども、ただ話として聞いただけであつてですね。
○委員長(伊藤修君) 話を聞いたのだから、結果として……。
○証人(渡邊健吉君) ですからね、その内容については別に聞かないのです。その事実だけを聞いただけです。
○委員長(伊藤修君) どこで聞いたのですか。
○証人(渡邊健吉君) 私の事務所でですね。
○委員長(伊藤修君) 最初見えたときにですか。事務所へ再三やつて來たのですか。
○証人(渡邊健吉君) 先程申上げましたように、私の親友が、杉山さんの親友に当つておりますから、私の親友のところへ遊びに來たときに私は聞いたのです。
○委員長(伊藤修君) すると最初あなたが先に話した後ですか。
○証人(渡邊健吉君) 無論そうです。
○委員長(伊藤修君) どのくらい経つてからです。
○証人(渡邊健吉君) そうですね……。それについて記憶はないです。
○委員長(伊藤修君) 一箇月も、二箇月も経つてからですか。
○証人(渡邊健吉君) そのくらいは経つていたのじやないでしようか。
○委員長(伊藤修君) 外に御質問ありませんか。
○大野幸一君 あなた何か政党に関係していられるですか。
○証人(渡邊健吉君) 全然ありません。
○大野幸一君 全然ないですか。
○証人(渡邊健吉君) はい。
○委員長(伊藤修君) それではどうも御苦労さんでした。
○証人(渡邊健吉君) 私から今度一つ申したいことがあるのですが、いいでしようか。
○委員長(伊藤修君) どういうことですか。
○証人(渡邊健吉君) この本庄事件は、私の考えとしては、日本民主化の一つの縮図だと思うのです。それをこの参議院の院内において取上げるようなところまで來るということは、非常にこれは情ない現象じやないかと思うのです。なぜこれがもつて早く短時日のうちに、町内そのものによつて解決しなかつたかということを、私は非常にそれを残念に思う点であります。ですからこの事件の一日も早く円満な解決を見ることを私は望んで止まない次第です。
○委員長(伊藤修君) 御苦労樣でした。
   〔証人關口重太郎君着席〕
○委員長(伊藤修君) 關口重太郎さんですか。
○証人(關口重太郎君) はあそうです。
○委員長(伊藤修君) 証言をお願いする前に宣誓書を朗読して頂きたいと思います。
   〔総員起立、証人は次のように宣誓を行なつた〕
   宣 誓 書
 良心に從つて眞実を述べ、何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。
        証人 關口重太郎
○委員長(伊藤修君) お掛け下さい。御承知でしよすが、宣誓をなさつた以上は、これからお述べになることに嘘がありますれば僞証の制裁がありますから、御注意申上げて置きます。
 本月の二十一日にあなたに來て頂くように当院より呼出を出しましたのですがね。御出頭にならなかつた理由は……。
○証人(關口重太郎君) 公務のために出張でありました。
○委員長(伊藤修君) そんならば公務の出張の証明書かなんか附けて次席届を出して頂かないと、理由なくして出頭をなさいませんと、一年以下の禁錮、一万円以下の罰金に処せられますですがね。
○証人(關口重太郎君) こちらへその旨御通知申上げたのでありますが……。
○委員長(伊藤修君) 証明が附いていませんですがね。
○証人(關口重太郎君) 証明は附けませんでした。
○委員長(伊藤修君) 又公務ということも理由に附いていなかつたですね。
○証人(關口重太郎君) 公務というのを、都合が惡いというように書いたのであります。
○委員長(伊藤修君) だからできないという理由が明確でないですね。
○証人(關口重太郎君) その理由が明確に記してありませんでした。
○委員長(伊藤修君) それは私の方であなたが出頭せられないことを理由にして告発しますと、只今申上げたような刑罰に処せられるのですからね。あなたの方も御迷惑だし、こちらとしてもお氣の毒なことを手続しなくちやならんという結果を招來するのですがね。
○証人(關口重太郎君) 後から証明書をお届けいたしたいと思つたのですが、都合が惡くというように書いたのであります。
○委員長(伊藤修君) 送ろうという意思はなかつたのじやないですか。それに附けてあるあなたの手紙を見ますと、「小生証人として出張すること、勉強もあつて忙しく参れません。いつぞや申上げた通りでありますから、二度とかような時間空費的なことはしないで下さい。万止むを得ざることでありましたなら、こちらへ來て下さい。失礼なことを申上げるようですが、私は本務以外は時間空費はいたしません。よろしく。」とこういうのですが、どういう趣旨ですか、それは……。
○証人(關口重太郎君) それは私が間違いでありました。それは私文書でありますから……。
○委員長(伊藤修君) いや、私文書でも、この文書に附けてこういうことを言つて参られますならば、不参の理由の内容をなしているとこちらは考えますが……。
○証人(關口重太郎君) 私の非常に至らなかつたところでありますから、お許し願います。
○委員長(伊藤修君) こちらへ御出頭願うことも國民の義務であると思いますが、我々としてもやはり國家の仕事をよかれと思つてやつているわけですから、時間的空費でもないと存じますが、どうですかね。
○証人(關口重太郎君) その通りであります。
○委員長(伊藤修君) 遊戯的にやつておるわけじやないのですから、あなたが勉強なさる暇があるか存じませんが、やはりそれ以外の國のために盡すという義務もあると思いますから……。
○証人(關口重太郎君) 分りました。
○委員長(伊藤修君) 又こちらへ來てくれということも侮辱していると思うのですね。
○証人(關口重太郎君) その通りであります。
○委員長(伊藤修君) あなたは官吏であるのでしよう。お勤めになつているのですから、そのくらいの常識はお有りになることと存じますが、日本の法律がどういう法律からできておるかということも御存じでしようし、あなたが市井の人ならともかくいも、官吏でいらつしやるのですからね。そのくらいのことはお分りにならん筈はないと思うのですが、これは議院を侮辱する御意思なら御意思で、そういうように伺いますが……。
○証人(關口重太郎君) そういう意思はありません。
○委員長(伊藤修君) あなたは何をお勤めになつていらつしやいますか、現職は何ですか。
○証人(關口重太郎君) 経済調査官です。
○委員長(伊藤修君) 前は何をやつていらつしやつたんですか。
○証人(關口重太郎君) 前は兵隊です。
○委員長(伊藤修君) 兵隊から直ぐに調査官になられましたか。
○証人(關口重太郎君) その前にちよつと遊んでおりまして、警察へ入りました。
○委員長(伊藤修君) 警察はどのくらい……。
○証人(關口重太郎君) 埼玉縣です。
○委員長(伊藤修君) どのくらい勤めていましたか。
○証人(關口重太郎君) 一年、正確なことは分りません。
○委員長(伊藤修君) 何をやつてたんです。巡査ですか。
○証人(關口重太郎君) はあそうです。
○委員長(伊藤修君) 巡査までですか、部長になりましたか。
○証人(關口重太郎君) いや警部補でございます。
○委員長(伊藤修君) 学校はどこまで行つてらつしやつたんです。
○証人(關口重太郎君) 師範学校です。
○委員長(伊藤修君) 経済調査官にいつから就職されましたか。
○証人(關口重太郎君) 九月一日であります。
○委員長(伊藤修君) 今年の。
○証人(關口重太郎君) ああそうです。
○委員長(伊藤修君) 現在はどこの官廳に勤めておりますか。
○証人(關口重太郎君) 中央経済調査廳であります。
○委員長(伊藤修君) あなたは埼玉縣の経済防犯調警察官、防犯官という職務をやつておるのではありませんか。
○証人(關口重太郎君) 前にそこにおりました。
○委員長(伊藤修君) いつ頃です。
○証人(關口重太郎君) 調査官になる前であります。
○委員長(伊藤修君) そうすると警部補時代ですか。
○証人(關口重太郎君) ああそうです。
○委員長(伊藤修君) 警部補時代のことですか、それは。
○証人(關口重太郎君) ああそうです。
○委員長(伊藤修君) すると縣の方ですね、それは。
○証人(關口重太郎君) はあそうです。
○委員長(伊藤修君) その職務の内容はどういうことですか。
○証人(關口重太郎君) 経済警察の面を担当しておりました。
○委員長(伊藤修君) そうすると摘発とかそういうこともやるんですか。
○証人(關口重太郎君) 私は余りそういうことはやつたことはありません。
○委員長(伊藤修君) 隠退藏物資の摘発や何かで出張せられませんか。
○証人(關口重太郎君) 私は主として企画に当つておりました。
○委員長(伊藤修君) 企画にね。
○証人(關口重太郎君) はあ。
○委員長(伊藤修君) そうすると第一線に出て行かないんですか。
○証人(關口重太郎君) 出て行きません。
○委員長(伊藤修君) あなたは荒井八郎という人を知つていますか。
○証人(關口重太郎君) 知りません。
○委員長(伊藤修君) 知らない、全然知らないですか。
○証人(關口重太郎君) 話とか或いは顔は見たことはありますが……。
○委員長(伊藤修君) 話したことはありますか。
○証人(關口重太郎君) 話したことはありません。
○委員長(伊藤修君) ないんですか、その家へ行つたこともないですか。
○証人(關口重太郎君) ありません。
○委員長(伊藤修君) あなたは隠退藏物資摘発のために、田上檢事と荒井八郎方に赴いたことがあるんではありませんか。
○証人(關口重太郎君) ありません。
○委員長(伊藤修君) あなたは田上檢事だけ行つたことを知つているんですか。
○証人(關口重太郎君) 詳しくは承知しておりません。
○委員長(伊藤修君) 承知していない、詳しくは承知していない。少しは知つているんですか。
○証人(關口重太郎君) いや、元へ、承知しておりません。
○委員長(伊藤修君) 全然知つてないんですか。
○証人(關口重太郎君) はあ。
○委員長(伊藤修君) あなたは田上檢事が一人でか、或いはあなたと共にか、荒井八郎方で宿泊して饗應を受けたということを知つておるのではありませんか。
○証人(關口重太郎君) ……。
○委員長(伊藤修君) どうですか。
○証人(關口重太郎君) 知りません。
○委員長(伊藤修君) あなたは渡邊健吉という人は御存じですか。今日一緒に見えた渡邊健吉という人は。
○証人(關口重太郎君) 深くは知りませんが、顔だけは知つております。
○委員長(伊藤修君) 渡邊健吉はあなたの宅へ今年の八月の上旬頃訪ねたことがあるのですね。
○証人(關口重太郎君) ええと、……忘れました。
○委員長(伊藤修君) あるのですか、ないのですか。
○証人(關口重太郎君) 忘れました。記憶にありません。
○委員長(伊藤修君) 相当あなたはこれは問題になつておるのですから、記憶にないということはないでしよう。あなたは御存じのことをお隠しになると処罰されますのですよ。
○証人(關口重太郎君) いや、記憶にちよつとないのであります。
○委員長(伊藤修君) ちよつとないということは。
○証人(關口重太郎君) ちよつとないと……、間違いました、記憶にありません。
○委員長(伊藤修君) あなたは渡邊健吉に、田上檢事が荒井八郎の所に隠退藏物資の摘発に行つて、泊つて饗應を受けたという話をしたのではありませんか。
○証人(關口重太郎君) ……そこのところが非常に問題になつておるのですが、私記憶にはつきりしていないのであります。
○委員長(伊藤修君) はつきりしていないというのは、すでにこれは問題になつておりますし、恐らく再三あなたたちは打合せをしていらつしやつたと思いますが、渡邊健吉はあなたから聞いたということをはつきり言つておるのです。渡邊健吉としては義兄と言つておるのですが、何か姻戚関係があるのではありませんか。
○証人(關口重太郎君) 義兄になつておるのでありますが、私はあまりよく知らないのであります。何かうちの構成が複雜になつておつて、よく分らないのであります。
○委員長(伊藤修君) 続柄はどうでもよろしいのですが、少くとも渡邊健吉に話をしたということは、あなたもそういう職に携つていらつしやつたんだから、常識的にお分りになると思いますが、警察官がね、涜職に関することだから軽々しく口にすべきことでなし、そんなことはね、記憶に薄れることではないのですよ。日常茶飯事のことではないのですから。事実は事実としておつしやつて頂かなければ困りますですね。その影響をいろいろ考慮されて、あなたがそこで默止されますれば、我々としてもだね、取るべき方法を取らなければならんという結果が招來しますからね。
○証人(關口重太郎君) そういう意味のことを話したことがあると思いますが、ちよつと記憶に正確にありません。
○委員長(伊藤修君) お話になつたのですね。
○証人(關口重太郎君) はあ、話したことはあると思います。
○委員長(伊藤修君) 要するにもう一遍復習いたしますと、渡邊健吉に、八月上旬訪問を受けた際、田上檢事が隠退藏物資摘発のために荒井八郎方に赴いて、そこに宿泊し、そうして饗應を受けたという趣旨の話を、渡邊健吉に話したことがあると、こう伺つていいのですか。
○証人(關口重太郎君) 上司の職にある者は余程注意せねばいかんという意味のことを話したのです。
○委員長(伊藤修君) いやいや、附加えの言葉は後で聞きます。今私が申したような趣旨の話はなさつたのですか。先ずそれから決めて行きます。
○証人(關口重太郎君) そういう意味のことを申上げました。
○委員長(伊藤修君) そうして今おつしやつたように上司にあるものは、余程氣をつけなくちやいかん、こういう趣旨の言葉を附加えたわけでありますか。
○証人(關口重太郎君) そうであります。
○委員長(伊藤修君) それは間違いないですね。
○証人(關口重太郎君) そうです。
○委員長(伊藤修君) そうするとあなたが話された根拠はどこから出ておるのですか。
○証人(關口重太郎君) 正確に記憶にないのでありますが、誰かそのときにおつたのではなかつたかと思いますが、ちよつと私その辺のところは記憶にないのでありますが……。
○委員長(伊藤修君) 他におつたとは。
○証人(關口重太郎君) 誰か外のものがおつて、或いは私がそのとき誰か外の人から聞いたことを話したのじやないかと思いますが……。
○委員長(伊藤修君) そこでですか。その場でですか。その場に誰かおつたのですか。
○証人(關口重太郎君) その場所でもありませんが、私の家は……。
○委員長(伊藤修君) 他のところで他の人から聞いたのですか。
○証人(關口重太郎君) そういう意味になります。
○委員長(伊藤修君) あなたは警察官をやつていたのですから、曖昧の言葉を使わずにはつきりおつしやつたらどうですか。あなたはその職務にあつたのじやないですか。
○証人(關口重太郎君) 正確に記憶にないのであります。
○委員長(伊藤修君) あなたが警察で取調べるときにあなた自身どうしますか。傳聞したなら傳聞した、どこで傳聞したとか……。
○証人(關口重太郎君) じや傳聞しました。
○委員長(伊藤修君) 私の言葉に便乘しては困る。(笑声)
○証人(關口重太郎君) 誠に言葉をお返し申すようで恐縮なんでありますが、記憶にないのでありますが……。
○委員長(伊藤修君) 記憶にないと言つても人のですよ、田上檢事とすれば一生を棒に振るか振らんかの問題です。殊に官職に当るものは涜職ということは死刑に該当します。そういうことをあなたが他の人に述べられる場合に、そうかるがるしく述べられる事項じやないかと思いますが……。
○証人(關口重太郎君) 根拠の薄弱なことを申上げました。
○委員長(伊藤修君) それが一年や二年もたつたというのでなくて、ついこの間で、而も本庄事件としてはあなたがおしやべりになつたことは新聞に出ておるし、而も世間にも流布されておるから、記憶を忘れるというよりもますます喚起されるのじやないか、ああしまつたことをしやべつたとあなたも恐らく悔悟しておると思いますが、記憶が薄れる問題じやない。あなたの念頭から去らない問題だと思う。恐らくあなたが一生通じて失言というようにあなた自身思つていらつしやるのでしよう。恐らく今日において後悔しておると思いますが、記憶が薄れるような問題じやないと思いますが、我々からしますと、この事件に関する証言は皆出て來ないのです。申合せたように出て來ない。我々としてはその点も疑う。あなたといい、荒井氏といい、田上氏といい、渡邊健吉氏といい何だかんだと理由をつけて出て來ない。その点からしても我々はこの事件についてあなた方が蔭で工作しておるように思います。
○証人(關口重太郎君) そんなことは絶対にありません。
○委員長(伊藤修君) なければよろしいのですけれども、これは記憶の薄れるような問題ではないですよ。相当新聞でそれは刺戟されたことではないですか。
○証人(關口重太郎君) ……。
○委員長(伊藤修君) あなたがその事実を述べられたとおつしやつておるのだから、してみればその根拠は傳聞ですか、誰からどこで、いつ聞いたのですか。
○証人(關口重太郎君) 非常に言葉を返すようで申訳ありませんが、余り私に関係があるといえばあるのですが、直接私の任務に関係したことではなかつたものですから忘れてしまつたのであります。
○委員長(伊藤修君) それはあなたが同行して知つた事実か、或いは誰かから聞いた事実ですか。
○証人(關口重太郎君) 聞いた事実であります。
○委員長(伊藤修君) 聞いたとするとどこで聞いたのですか。
○証人(關口重太郎君) 何回も言葉を返して申訳ありませんが、どこで、いつ、誰から聞いたかということは忘れてしまつております。
○委員長(伊藤修君) 所も、時間も誰かということも忘れたのですか。
○証人(關口重太郎君) 渡邊君に八月上旬に話したということもちよつと余り記憶にない、家でそういうことを話したということも記憶に正確にないのであります。とにかく義兄ですから家には來ると思います。
○委員長(伊藤修君) 前に言われたことも亦取消すのですか。
○証人(關口重太郎君) 取消すわけではありませんが、正確な記憶はありません。
○委員長(伊藤修君) 正確か記憶がなくても、先程私が申した趣旨のことは言つたとおつしやつたのではないですか。
○証人(關口重太郎君) 申上げました。
○委員長(伊藤修君) それは確かなんでしよう。
○証人(關口重太郎君) そうです。
○委員長(伊藤修君) 自分が立会つたのでない、傳聞したのだけれども、聞いた人と場所、時は記憶にない、こういうわけですね。
○証人(關口重太郎君) ……。
○委員長(伊藤修君) あなたは何か作つて答えようとしますね。あなたの態度からそう窺われますが……。
○証人(關口重太郎君) そんなことはありません。
○委員長(伊藤修君) そんなら率直に述べられたらどうです。
○証人(關口重太郎君) 実際問題として私には直接関係ない。
○委員長(伊藤修君) あなたは人の身分のことを、死生のことをしやべられたのですよ。あなた自身のことを聞いておるのですよ。
○証人(關口重太郎君) それは分ります。
○委員長(伊藤修君) あなた自身の体驗を聞いておるので、あなたに判断を求めておるのではありません。
○証人(關口重太郎君) 分りました。
○委員長(伊藤修君) 諄いようですが、その点はどうです。
○証人(關口重太郎君) もう一度正確に申上げます。非常に曖昧なような言動でありますが、田上氏のことをそういうふうに話したと、その意味は、上司にあるものき氣を附けねばいかんという意味のことであつたと思うのですが、実際問題として、私にはそれ程関係がなかつたことで、價値のないことなので、記憶が薄れておるのだというふうに思つておるのです。
○委員長(伊藤修君) あなたは先程経済の防犯に関係しておる職務にあるというのでしよう。関係ないことないでしよう。重要に事項ですよ。あなたの職務からいつても、あなたの職務の範疇に属することですよ。現実に法律の執行に当つておるわけですから、あなたは非常に自分の職務の執行がどういうふうに行われるかということは、重要な事項じやないですか。関係にないことでないでしよう。正に関係のあることです。或いは姦通事件だとか、或いは労働事件だとかいうならば、あなたの関係がない、経済関係でないから、それは強力犯の方でやるべきことで、俺は関心を持たないともいえましよう。事苟くもあなたの職務の範疇に属することに関しての、上司の人がその執行に当つての違法行爲ですから、それを述べて見えるのですから、正に関係があるじやないですか。これ程関係のある重大なことはないですよ。どうです。
○証人(關口重太郎君) その通りでありますが……。
○委員長(伊藤修君) 関係があるんじやないですか。どうもあなたの考え方は少し違つておるのですね。
○証人(關口重太郎君) ……。
○委員長(伊藤修君) あなたがそういうことを述べられた。渡邊健吉に言われたところの出所をおつしやることはできないですか。
○証人(關口重太郎君) 実際問題として、どうも記憶がないんですがね。
○委員長(伊藤修君) 何が記憶がないのですか。どの点が記憶がないのですか。聞いた人が記憶にないというのですか。
○証人(關口重太郎君) ……。
○委員長(伊藤修君) 記憶にないというのはどの点が記憶にないのですか。
○証人(關口重太郎君) ……。(三分間沈默)
○委員長(伊藤修君) どうですか。記憶になければないでよろしい。はつきりおつしやつて下さい。私の方から始終言わせずに。
○証人(關口重太郎君) まあ私としては、非常に重要な関係のある問題であるわけでありましたですが、私自身としては余り関心を持つていなかつたのであります。どういう席でどういうことを言つたんだか、又誰から聞いたか、いつどこで聞いたかということも実際正確な記憶がないのです。
○委員長(伊藤修君) 一遍注意しておきますが、どういう席で言つたかということは、先に決つておるじやないですか。言つたことははつきりおつしやつたじやないですか。今聞いておるのは、どこから聞いたかということを聞いておるんですよ。前提にはもうあなたが言つたことだけは決つておる、確定しているんじやないですか。
○証人(關口重太郎君) 分りました。
○委員長(伊藤修君) その点も記憶がないというのですか。又取消ですか。
○証人(關口重太郎君) それは結構です。
○委員長(伊藤修君) それはいいんでしよう。そうすると、あなたが渡邊健吉に言つたことは明らかなんでしよう。
○証人(關口重太郎君) ええ。
○委員長(伊藤修君) それだから、その言つたことを誰から聞いたか、聞いたとするならば、どこでどういう場合に聞いたかということをお尋ねしておるんです。
○証人(關口重太郎君) 分りました。
○委員長(伊藤修君) その点に対するお答えを願いたいと思います。
○証人(關口重太郎君) 分りません、分りませんじやない、忘れました。
○委員長(伊藤修君) 記憶がないですね。
○証人(關口重太郎君) 記憶ありません。
○委員長(伊藤修君) 少くともあなたは見たわけじやないですね。
○証人(關口重太郎君) はい、そうであります。
○委員長(伊藤修君) 田上檢事と同行したのでもないですね。
○証人(關口重太郎君) はい、そうです。
○委員長(伊藤修君) あなたは、田上檢事とはどのくらいの親しさを持つておるんですか。
○証人(關口重太郎君) 全然ありません。
○委員長(伊藤修君) 全然ない、会つたことはないですか。
○証人(關口重太郎君) 会つたことはあると思います。
○委員長(伊藤修君) 何回くらい会つたんですか。
○証人(關口重太郎君) 会つたといつても、直接、間接十回くらい会つたかと思います。
○委員長(伊藤修君) どこで会つたんですか。
○証人(關口重太郎君) 縣とか、或いは檢察廳とか、そういう所で会つております。
○委員長(伊藤修君) それはどういう関係で。
○証人(關口重太郎君) いろいろな職務上のことだと思います。
○委員長(伊藤修君) 職務上以外のことでは会わないのですか。
○証人(關口重太郎君) 職務上以外も会つておると思います。
○委員長(伊藤修君) どういう要件で。
○証人(關口重太郎君) 職務上以外といつても職務上……、田上さんと会つたのは今年ですが、三、四月時分ですから、職務上でありますね。
○委員長(伊藤修君) 職務上みたいなものですね。職務上若しくは職務に関連したことで会つておる。
○証人(關口重太郎君) そうです。
○委員長(伊藤修君) それは、十回くらいはいつからいつまでの間です。
○証人(關口重太郎君) 昨年の中頃から今年の三、四月頃までです。
○委員長(伊藤修君) 三、四月以後は会つていませんか。
○証人(關口重太郎君) 三、四月以後は別に会つていないと思います。
○委員長(伊藤修君) 別にじやなく、はつきりおつしやつて下さい。会つているか会つていないか、前提で聞いておるんです。
○証人(關口重太郎君) 正確にちよつと分らないのですが。
○委員長(伊藤修君) あなたはまだ本庄事件の範疇に属することで、問題になつておることについて携つていらつしやるのじやないですか。して見れば、あなたもそのことは御記憶のある筈でしよう。今日喚ばれたことはその事項であることは大体分つておる筈ですが、三月までですか。
○証人(關口重太郎君) そう正確に言つても……。
○委員長(伊藤修君) 正確じやない、何月頃までと、正確なことを言つていないんですから。いつからいつまでの間十回くらい会つておるということは聞いておるんですよ。十回という数字が出て來るんですから、その十回があなたが記憶があればこそ出て來るんでしよう。そうしたら何月から何月までということはすぐ答弁ができそうなものじやないですか。
○証人(關口重太郎君) 何か私が田上さんの所へ会いに行つたという日があると思うのですが、いつごろになつておりますか、ちよつと記憶にないのですが、それはずつとあとになると思います。
○委員長(伊藤修君) 何月になるかということを聞いておるんですよ、日にちを聞いておるのじやありません。
○証人(關口重太郎君) あれが何月になるかちよつと分りませんが、九月頃までになると思います。
○委員長(伊藤修君) 今年の九月。
○証人(關口重太郎君) そうです……。
○委員長(伊藤修君) 初めは……。
○証人(關口重太郎君) 去年のなかば頃です。
○委員長(伊藤修君) 去年のいつ……。
○証人(關口重太郎君) なかば頃です。
○委員長(伊藤修君) 去年の六、七月頃から今年の九月頃までの間に十回ぐらい会つておるということですね。
○証人(關口重太郎君) 正確なところはちよつと記憶にありませんが……。
○委員長(伊藤修君) 月に一度ぐらい会つておるわけですか。
○証人(關口重太郎君) そういう意味ではなく、何か忍事件があつた時分にはずつと続いて会つておつたときもあつたと思います。非常に散発的であります。
○委員長(伊藤修君) 大体職務上はどんなような用事であつたのですか。何々の事件というように伺つてもよろしいし……。
○証人(關口重太郎君) 別に何々事件というようなあれではなく、警察と檢察廳ですから互いに協力……、指揮系統からいうと向うが上司の関係になるのでそういう関係で……。
○委員長(伊藤修君) 職務上のことですね。
○証人(關口重太郎君) そうです。
○委員長(伊藤修君) 要するにどの事件という取上げてのあれはないけれども、職務上の上司の関係上、いろいろな指揮系統の関係で会つておるというわけですね。
○証人(關口重太郎君) はあそうです。
○委員長(伊藤修君) あなたは田上檢事から頼まれて杉山喬に何か書面を託されたことがありますね。
○証人(關口重太郎君) ありました。
○委員長(伊藤修君) その書面は御覽になつたこともあるでしようし、写眞を御覽になつたこともあるでしよう。
○証人(關口重太郎君) はああります。
○委員長(伊藤修君) それはどういう趣旨のものですか。
○証人(關口重太郎君) 内容は正確に記憶はないのであります。
○委員長(伊藤修君) 百十八丁、それに相違ありませんか、この手紙ですね。
○証人(關口重太郎君) はあ分りました。それは日にちはいつになつておりましようか。
○委員長(伊藤修君) 日時は入つておりませんが……。
○証人(關口重太郎君) はあそうですか。
○委員長(伊藤修君) これは本年の九月上旬頃だそうですね。
○証人(關口重太郎君) それも正確に記憶にありませんのですが、本庄事件が始まつてからでありますから……。
○委員長(伊藤修君) これはどういう趣旨であなたはこの手紙を杉山に渡すべく頼まれたのですか。
○証人(關口重太郎君) その最後に協力して解決しよう、お互いに本庄事件は朝日の直接の事件であるし、又その第六項か第七項かにそんなことが書いてありますが、自分としても非常な疑惑の中で仕事をすることはできないから協力してやりたい、まあそういう意味であると思うのであります。
○委員長(伊藤修君) 第一大石和一郎、二は小此木ですね、それから宴会、個人の涜職、三は小此木、銘仙の闇、四は河野組関係、それから註として織物工業、大ボス大石、子ボス石川、石川というのは参議院議員の石川でしよう、そうですね。青柳、これは衆議院議員の青柳でしよう。それから五として軍政部の下命の大場、飯塚両名に対する濱職ですか。六、朝日新聞と相協力し事件の解決を図らん。この六項目ですね。
○証人(關口重太郎君) はあ、そうであります。
○委員長(伊藤修君) まあ本庄事件の全部ですね。
○証人(關口重太郎君) はあ。
○委員長(伊藤修君) これをどうしようというのですか。
○証人(關口重太郎君) その問題について協議しようというのではないかと思います。私正確な内容は分らないのであります。
○委員長(伊藤修君) あなたは田上檢事から託されて、封書でないのですから、こういうメモみたいなものですから、開封のものを託されて、そうして杉山との仲立ちをしたのでしよう。
○証人(關口重太郎君) はあ、そうであります。
○委員長(伊藤修君) 仲立ちをしたのだから、仲立ちの趣旨はあなたが傳言を受けておるはずですね。
○証人(關口重太郎君) 仲立ちの趣旨はこういう意味なんです。私としては田上氏も上司関係になるわけですな。私深いことは知らない、田上さんという人はどういう人であるかということについては、まああの辺の上席檢事かなんかになつておる人であり、苦労しておる人であるから……杉山氏は私の確か学校の先輩だつと思いますが、近所でありまして、新聞社に入つておるので、折角朝日新聞というような立派な新聞社に入つておるので、立派に成功して貰いたい、そういう氣持で両者が完全に協力して、或いはお互いに切瑳琢磨し合つて向上できるように、そういう意味で、両者が仲が惡くなつておるというような形勢もあつたので、これはよく話合うことが大事ではないのですか、そういうことを話したわけでございます。そうしたら田上さんもその通りだ、そんな考えでよこされたのではないかと思います。
○委員長(伊藤修君) どういうことをそのときおことずけを受けたわけですか。若しくはどういう話をされてこの手紙を持つて行くことになつたのですか。
○証人(關口重太郎君) 何かその時分田上さんも非常に惡い評判があつたわけですが、そういう中で仕事もできない、だからよくお互いに話合つてやろうというような意味じやないかと考えております。
○委員長(伊藤修君) 惡い評判とはどういうことですか。
○証人(關口重太郎君) ちよつとその辺のことはよく記憶がありませんですが。
○委員長(伊藤修君) あなたの今の御趣旨のことは、ここに書いてあることはさつぱり分らんですね。ここに書いてあることは、話はなかつたんですか。
○証人(關口重太郎君) 私、本庄事件については本質的な問題を知らないんですが……。
○委員長(伊藤修君) 本庄事件のことは知らなくてもよろしい。ここに書いてあることを、ボスとか青柳ボス、石川ボス、大石とか、折茂とか、こういうボス関係のことを片ずけようとか、片ずけることではないが、銘仙の闇とか、小此木、こういうように一々事件が列挙してあるんですが、これをどうしようというんです。それを聞くんですよ、私の今聞いているのは。
○証人(關口重太郎君) そのことは分りません。
○委員長(伊藤修君) けれども、お使いするんで、これは而もあなた封筒に入れて行つたわけではない。メモ式のものをあなたが持つて、そのことで使いに行つたんでしよう。二人の間でこのことが解決するのかどうか、あなたのさつきおつしやつたことは、協力しようということは、これに対する摘発を協力しようという意味か。
○証人(關口重太郎君) 私何だか、非常に、ちよつとここであれを中止して貰つて、私弁解を少しやらして頂きます。
○委員長(伊藤修君) いや、あなたは……。
○証人(關口重太郎君) よろしうございますか。
○委員長(伊藤修君) よろしい。
○証人(關口重太郎君) 自分の言動に対して信念のないようなあれに來てしまつておるんですが、実際問題として知らないんです。まあ非常に委員長さんが感情を害されるようで、申訳ないんですが知らないんです。内容的なものを……。
○委員長(伊藤修君) 私は別に感情も何も害しておりませんよ。あなたはそういうように感じているかも知れませんが。
○証人(關口重太郎君) さようなら結構であります。
○委員長(伊藤修君) 感情は害さない。私はあなたが行なつた事実だけを聞いているんです。
○証人(關口重太郎君) はあ、結構であります。それは知りません。
○委員長(伊藤修君) あなたの解釈とか、あなたの智慧を拜借しているわけではありません。
○証人(關口重太郎君) はあ、分りました。
○委員長(伊藤修君) 事実だけ、あなたがこの手紙を持つて行かれたんでしよう。その時にどういう言葉があつたかということを聞いているんです。
○証人(關口重太郎君) 忘れました。
○委員長(伊藤修君) 忘れた。
○証人(關口重太郎君) ええ。
○委員長(伊藤修君) あなたはちよつと捨鉢におつしやるけれどもあなたも警察官をされておつて、公務についておつて、これは新聞にも出ているんでしよう。このことは相当問題になつているんですが、その中心になつていることを忘れてしまつたと言つと通りますかな。あなたは職務に携つていらつしやるんですが、そう自分のしたことを直ぐ忘れるようでは職務ができますか。
○証人(關口重太郎君) ちよつと恐縮ですが、言葉を返すようですが、委員長さん、事実を申述べてくれと言われたから、私忘れたから忘れたというような事実をお答えしたんです。
○委員長(伊藤修君) いや私はあなたに注意しているんですが……。
○証人(關口重太郎君) はあ、分りました。実際私はその本質的な問題は何も知らないんです。
○委員長(伊藤修君) いや本質じやない。本質を聞いているんじやない。あなたは、この手紙をことずかる時に、どういう言葉を聞いたか、どういうことをことずかつたかということを聞いているんです。子供じやなし而もあなたは部下として、片つ方は檢事で、あなたが警部補でしよう。それをあなたに託して、この手紙を杉山に渡して呉れという場合において、ただお使いしただけでなく、そこを仲立したとあなたはおつしやつた。その仲立ちはどういうことかと聞いたら、あなたは、両者は協力して、事件を解決しようとおつしやつた。その事件を協力して解決しようという趣旨は、そうするとここに書いてあるこの六項の問題についてだね、解決とはどういうことをするんだということを聞いているんですよ。
○証人(關口重太郎君) 嚴正な解決を図りたいという意味なんです。
○委員長(伊藤修君) そうすると、嚴正な解決を図りたいとおつしやるんですね。そうすると新聞記者の一人を煩わして、嚴正な解決を図りたいということはどうするんですか。
○証人(關口重太郎君) そうですな。その辺ちよつと私記憶がないんですが、誠に恐縮ですが。
○委員長(伊藤修君) とにかくあなたが仲介されたんだから、單にこの手紙のことずけじやないんですから、これの内容については、了承して行かなければ、杉山君にだね、なにも話ができないと思いますがね。だから少くとも田上檢事から、どういうことだと、こういうメモ式に書いてあるから、内容をあなたは、言葉は聞いているはずです、常識的に考えれば。だからどういう解決をするんだということを聞いているんです。
○証人(關口重太郎君) それが、その辺はポイントでありますが、私実際記憶がないんですがね。
○委員長(伊藤修君) 簡單に言えば全部うやむやに葬つてしまおうじやないかということに解決の方法を持つて行くのか、それとも起訴する方に解決の結果を持つて行こうとするのか。これだけの事項について、どういう処置をとろうということを杉山君と相談しようとするのかですね。
○証人(關口重太郎君) その辺がちよつと記憶がないんですが、何か嚴正な解決を図るために、お互いに協力して行こうと、そういう意味であつたと思います。だから朝日としても、直接の事件であるから、力を貸して呉れと、そういう意味だと思います。
○委員長(伊藤修君) そういう抽象的なあれでは、こうやつて具体的に書いている以上は……。
○証人(關口重太郎君) 個々の事件についてどういうふうにやろうと、そういうあれがあつたんだと思いますが……。
○委員長(伊藤修君) その時はそういう話を聞いたんですね。それじや聞いたことは聞いたけれども、忘れたとおつしやるんですか。
○証人(關口重太郎君) そうですね、そういうような御質問を受けましてもですね。何ら記憶はないんでございますが……。
○委員長(伊藤修君) 聞いたことも記憶がない。
○証人(關口重太郎君) はあ。
○委員長(伊藤修君) 頼りないですね、あなたは、折角あなたに頼んでも実際頼りないですね。
○証人(關口重太郎君) 実際頼りないんです。
○委員長(伊藤修君) その結果どうなつたんですか。
○証人(關口重太郎君) 結果もどうなつているのか私……。
○委員長(伊藤修君) 知らないんですか。あなたが杉山さんにこれを持つて行つて、そうしてその結果はどうだつたんですかと言うんです。
○証人(關口重太郎君) 私それを届けてやつた、それだけだと思うのですが……。
○委員長(伊藤修君) 表からほうり込んだのですか。
○証人(關口重太郎君) あれは……。
○委員長(伊藤修君) 杉山さんに手渡したんですね。
○証人(關口重太郎君) 手渡したのです。
○委員長(伊藤修君) そのとき何か話をしたんですか。
○証人(關口重太郎君) はい。
○委員長(伊藤修君) その結果をどうだつたかと聞いているんです。
○証人(關口重太郎君) 直ぐ翌日の場所をどこに指定したかちよつと記憶しておりませんが、どこかで会う約束にはなつていたんです。
○委員長(伊藤修君) それで会つたんですか。
○証人(關口重太郎君) そうですなあ、私その方のことはよく知りませんが、会わないようになつたのではないかと思いますが……。
○委員長(伊藤修君) そのときはどこで会うという申入れをしたんですか。あなたの方で……。
○証人(關口重太郎君) 別に申入れはしなかつたのですが、田上さんからどこかでゆつくり話せるようなところで話合いたいというような話だつたと思います。
○委員長(伊藤修君) だからこういう事項について解決を図りたいから、どこそこで会いたいとか、或いはその仲立ちをあなたが持つて帰るか、どつちかにしなければならん。折角あなたをお使いに出した趣旨が立たんではないですか。あなたがその間を仲介して話合いをするのか、或いは会うということになるのか、結果はどこかになければならないということになる。
○証人(關口重太郎君) 二人とも、田上さんと杉山さんと両者で会うという約束でありました。で場所はどこに指定したかそれがちよつと記憶にないんですが、どこかでゆつくり話合える所で協議しようと、そういうふうに記憶しております。
○委員長(伊藤修君) それはあなたなどが申入れたんですか。
○証人(關口重太郎君) 田上さんから言われたんです。
○委員長(伊藤修君) 田上さんから言われたやつをあなたが傳えたわけですね。
○証人(關口重太郎君) はい。
○委員長(伊藤修君) それで会うということになつたんですか。
○証人(關口重太郎君) その後のことをよく私存じませんですが、会わなかつたのではないかと思います。
○委員長(伊藤修君) そうすると杉山から拒否して來たんですか。
○証人(關口重太郎君) そうですね。その辺の経緯はちよつと私知らないのでありますが……。
○委員長(伊藤修君) お使いしつ放しなんですか。
○証人(關口重太郎君) そうです。
○委員長(伊藤修君) あなたは今私のお尋ねした問題について、東京の高等檢察廳に出頭して、その経緯を述べたことがありますね。
○証人(關口重太郎君) あります。
○委員長(伊藤修君) そのときにはどういうふうに述べたのですか。
○証人(關口重太郎君) 今の只今委員長さんからお尋ね頂いたようなことだつたと思いますが、そのように答えたと思います。
○委員長(伊藤修君) どうしてそういうことが調べの中心になつていることだと思いますか。
○証人(關口重太郎君) 私もまあ警察官ですから分りますが、私が事を無責任に結論を出さなかつたということが一番まずかつたということであります。
○委員長(伊藤修君) 結論とは何の結論を……。
○証人(關口重太郎君) 両者が、私の狙いはこの檢事さんは私の上司である、それから杉山氏は私の先輩である、二人の人が互いに切瑳琢磨して、そうして立派になるようにと、そういう意図で仕事もうまく行くようにと、そういう考えでまあ自分の少い時間を割いて、そこへ二人の人に会つたんだと思いますが、それが私の考えているように行かなかつたんではないかと思います。
○委員長(伊藤修君) だからあなたの今のお言葉から聞くというと、田上檢所と杉山氏の間が疎通していないから、うまく取持つて、そうして喧嘩せずに本庄事件というものを解決して行くようにと、そういう努力をされたんですね。
○証人(關口重太郎君) そうでございます。
○委員長(伊藤修君) 斡旋しようと思つたわけですね。
○証人(關口重太郎君) そうであります。
○委員長(伊藤修君) それに相違ないか。
○証人(關口重太郎君) そうです。
○委員長(伊藤修君) して見ますれば、あなたがそれだけ自分自身からそういうことをお考えになる以上は、この事件のここに掲げた内容というものが、どういうふうに解決するとか、どういうふうに話合うとかということを知つておつてこそ初めてそういうことが言えるのじやないですか。
○証人(關口重太郎君) まあそうなんですな。
○委員長(伊藤修君) して見れば、今まであなたは何も知らん知らんとおつしやることは変だ、記憶ない、記憶ないとおつしやるのは……。
○証人(關口重太郎君) 実は私はただ委員長さんにもう一度、何か私の言つておることがおかしなふうに聞えたようですが、もう一度よく申上げますが、両方共よく立てて行かなければいかん。そういう考で私結論的なことは見なかつたのですが、尢も見る余裕も、その時分警部の試驗とか調査官の試驗ということで、今年の一月頃から高文の受驗の問題とかそんなことをやつておりましたので、あれですが、結論的なことまでもは考えずに、ただ両者が話合えば分る、そういうような私は意向を持つておつたので、檢事さんも是非そうして貰いたい、そういうような話があつたのでございますが……。
○委員長(伊藤修君) それだから諄く言うようですけれども、それだから事件の内容を御存じなければそういう話にはならんじやないかとこういうのだ。知つてこそ初めてだね、両者を取持つ。凡そ人の話を取持とうという場合には、両者の言分というものは大体自分において了承できなくちやならんじやないですか、頭に入つておらなくちやできないじやないか。あなたが円満に行こうと思えば、どこに齟齬があるかということを自分が認識してこそ、初めて円満に持つて行こうということが出てくる結論ですね。
○証人(關口重太郎君) そうでございますね。
○委員長(伊藤修君) だからこの事実というものは十分あなたが承知していらつしやらなくちやならんと思うのですが……。
○証人(關口重太郎君) そうでございますね。
○委員長(伊藤修君) ところが今までお尋ねすると、皆知らん知らんです、だから変じやないかというのです。
○証人(關口重太郎君) ちよつとも変じやないのです。私のは何も知らんでそういうふうにしたのです。
○委員長(伊藤修君) 知らずにやつたというのですか。
○証人(關口重太郎君) そうです。
○委員長(伊藤修君) 飛躍しておるですな、話が……。何にも知らずに飛込んで、そうして円満に話をつける……。
○証人(關口重太郎君) 非常にその辺が論理的に行つておりませんが……。
○委員長(伊藤修君) いや論理的じやない、話の頭だけを掴んで直ぐ尻に持つて行こうという話では、眞中の肝腎なところを知らんと言つて拔けてしまうですね。
○証人(關口重太郎君) 私は何らそういう考えはないのです。
○委員長(伊藤修君) 考えはないと言つても、田上檢事と杉山氏との間が齟齬しておるというなら、齟齬しておる事項は何かということを知つてかかるべきものじやないか。而もあなたがことずかつた手紙の中には、そのことが全部一から六まで書かれておる。これについて実はこうだが、これについて一つの杉山君の了承を求めて貰いたいというのか、どういうような話だつたかというとだね。それでは知らないとおつしやるのじやないですか。肝腎の所だけはいつも知らん知らんとおつしやるのですね。まあよろしい。
 あなた高檢に行くときに一人で行つたのですか。誰か一緒に行つたのですか。
○証人(關口重太郎君) 一人でありました。
○委員長(伊藤修君) あなたこの杉山と何か飲食を共にしたことがあるのですか。杉山と酒食を共にしようと誘つたことがあるのですか。
○証人(關口重太郎君) そうですね、併しそう聽かれてもですね、私は一緒にしたことがあるかないか……ちよつと……。
○委員長(伊藤修君) 記憶にないのですか。
○証人(關口重太郎君) 記憶にありませんですね。
○委員長(伊藤修君) お金をやろうとしたことはありませんか。金をやろうとしたことはどうですか。
○証人(關口重太郎君) 金ですか。
○委員長(伊藤修君) どうですか、金をやろうとしたことはどうですか。ありませんか。
○証人(關口重太郎君) いや、ありませんね。
○委員長(伊藤修君) ない、全然ないですか。
○証人(關口重太郎君) ありません。
○委員長(伊藤修君) ないのですか、記憶にないのですか、どつちですか。
○証人(關口重太郎君) いや記憶にも何もありませんです。
○委員長(伊藤修君) やろうとしたことですね、やつたことではありませんよ、やろうとして杉山が拒絶したということはありませんですか。
○証人(關口重太郎君) そういうことはありませんです。
○委員長(伊藤修君) あなたは、今までお話を伺つておると、田上檢事とは相当頻繁に往復していらつしやるのですね。上司で、事ごとに上司々々とおつしやるのですが、どうですか。
○証人(關口重太郎君) お会いしておることは……。
○委員長(伊藤修君) 十回ぐらいとおつしやつたけれども、恐らくそれ以上でしよう。相当田上檢事とは親しくお附合になつておるのでしよう。
○証人(關口重太郎君) まあ、親しくと言われても私……。
○委員長(伊藤修君) 親しくじやなくてもいいけれども、少くとも接触は多かつたということは想像できますね。
○証人(關口重太郎君) そうであります。
○委員長(伊藤修君) 上司ですね、尊敬をしているでしよう。尊敬していないのですか。
○証人(關口重太郎君) まあ尊敬しているというか、していないというか……まあそう言われてもちよつと困りますのですが、普通であります。
○委員長(伊藤修君) そうですか、尊敬できないのですね。
○証人(關口重太郎君) まあ、何というか、いわゆる役人は浮草でございますから、向うへ行けと言えば向うへ行く、こちらへ行けと言えばこつちへ行く、そのまま上の役目人であれば……、その程度であります。
○委員長(伊藤修君) 上の役人という程度でありますか。
○証人(關口重太郎君) そうであります。
○委員長(伊藤修君) 少くともあなたが上司という言葉を使われる以上は、上司としての尊敬は持たれなければならんわけですね。
○証人(關口重太郎君) それは持つております。
○委員長(伊藤修君) あなたの下僚じやないのですから……。
○証人(關口重太郎君) そうですね。
○委員長(伊藤修君) その上司の人の身分に影響するようなことをおしやべりになる以上は、併し何か相当の根拠がなくちやしやべれん筈でありますね。
○証人(關口重太郎君) そうでありますね。
○委員長(伊藤修君) そうですね。どうですか。
○証人(關口重太郎君) その通りであります。
○委員長(伊藤修君) それは、あなたの言葉に責任がある筈でありますね。
○証人(關口重太郎君) そうです。
○委員長(伊藤修君) そういう責任を持たなくちやならない言葉を世間に発表せられる以上は、出どころというものはしつかりしていなければならん筈ですね。
○証人(關口重太郎君) そうです。
○委員長(伊藤修君) それは、どうしても記憶にないのですか。
○証人(關口重太郎君) 私としてはそれはそれ程重大な問題であるとして話したわけではなかつたのです。上司たるものは非常に注意をしなければいかん、そういう意味で話したいと思います。
○委員長(伊藤修君) そうすると被疑者の家で酒食の饗應を受けたり、被疑者の家へ泊るということも重大でないのですか。あなた警察官をやつておつて、そのくらいのことが分らんのですか。あなたは法律学を勉強して高文を受けようとおつしやるのですが、それで法律が分るのですか。
○証人(關口重太郎君) まあ委員長さんの言われる通りであります。
○委員長(伊藤修君) 通りだが、重大でないのですかと聽いておる。
○証人(關口重太郎君) 重大です。
○委員長(伊藤修君) 重大な問題ならば、その言う言葉を吐かれる場合には、相当出どころをはつきりしていなればならん筈です。それにも拘わらず、記憶はないのですかと尚確かめておるわけであります。記憶ないですか。
○証人(關口重太郎君) 記憶ありません。
○委員長(伊藤修君) 今日の証言についてはあなたは責任を負わなければなりませんよ。
○証人(關口重太郎君) すべて責任を負います。
○委員長(伊藤修君) 外にお尋ねになることはありませんか。
○大野幸一君 荒井八郎さんの家はどこにありますか。
○証人(關口重太郎君) 荒井さんは忍町じやないですか。
○大野幸一君 そこが本宅ですか、店ですか。
○証人(關口重太郎君) 私は余りよく存じておりません。何か一度報告を受けたとき、全部そういうものを檢討したことがありますが、どこであつたか、今見当つきません。
○大野幸一君 家は知つておるのですね。その当時、家は知つておるのですね。
○証人(關口重太郎君) 家は知つております。
○大野幸一君 どこの家ということを、行けば分るという……。
○証人(關口重太郎君) 行けば分ります。
○大野幸一君 あなた聞いたことは誰から聞いたか知らんというのですが、話したことは、自分が同道されて荒井さんのところへ行つたということを健吉さんに話したのですね。それは聞かなくとも、経驗した事実じやないですか。同道されて行つたということを言つておる。そこはどうなんですか。
○証人(關口重太郎君) そこは私の間違いであります。
○大野幸一君 どつちが間違いなんですか。
○委員長(伊藤修君) 同道したことも間違いだというのですか。
○大野幸一君 行かなかつたというのですか。言つたことが間違いだというのですか。
○証人(關口重太郎君) そうです。
○大野幸一君 当時同道したとは言わなかつたのですか。
○証人(關口重太郎君) そう私は言わなかつたように思つておりますが、実際問題としてどんな場所で私は渡邊君に……、そういうことははつきりしないのですが……。
○大野幸一君 あなた経済警察官として人をお調べになつたことがありますか。
○証人(關口重太郎君) あります。
○大野幸一君 取調べて調書を作つたようなこともありますか。
○証人(關口重太郎君) あります。
○大野幸一君 それを檢事局に送つたようなこともありますか。
○証人(關口重太郎君) あります。
○大野幸一君 あなたの取調べた被告が本日在廷していたら、あなたどう思いますか。本日ここにあなたの供述を傍聽していたら、どういう感じがしますか、自分の今日の証言を……。その國民に済まないと思わないですか。我我はその國民を代表した者としてここに來ておるのです。あなたは將來官吏として継続して行くつもりですか。心境はどうですか。
○証人(關口重太郎君) まあ自分の一生の不覚でありましたが、私は継続さして頂きたいというふうに考えております。
○委員長(伊藤修君) 重ねて最後に念を押して置きますが、あなたのこの言葉は田上檢事の職責にも影響するし、延いては日本檢察官の鼎の軽重を問われる問題でありますから事は小さくても……。且つ又併せて参議院議員の荒井八郎氏の身分にもかかわることです。それ程の重要な結果を招來するのですからね。あなたが不用意に述べられたことが眞実に基いて述べられたか、あなたの虚構に基く放言であるか、無責任な傳聞を他人に流布したか、いずれにしてもあなたは責任はあるのですよ。それをむしろ、はつきり事実を事実として指摘された方がいいのではないかと存ずるのですが、殊更に曖昧模糊として、何とかして逃げよう、ということは卑怯ではないか。
○証人(關口重太郎君) その通りです。
○委員長(伊藤修君) その通りというのはどの通りですか。
○証人(關口重太郎君) 私の態度が卑怯です。
○委員長(伊藤修君) そうすると何か包んでいらつしやるのですか。
○証人(關口重太郎君) いや包んではおりません。卑怯のように私とられても仕方がないのです。その当時、事実現在も記憶に殆んどないのです。それ程簡單なことだが、役人として上に立つて行くについては注意しなければならん、こういうことを言われておるからというように思つておるので、そういうように述べております。
○委員長(伊藤修君) あなたたち取調の官吏の人が、人の身分のことを新聞にぼんぼん発表するという癖がついておるのではないか、無責任に……。
○証人(關口重太郎君) いや自分としては、まあ私の家は非常に複雜な家でありますから渡邊を知らんというように答えたかも知れませんが、私は知らないのです。事実はそういう間柄だつたのですけれども、義理の父から話されてその席で自分自身に言い聞かせるように話したように記憶しております。
○委員長(伊藤修君) いずれにしてもあなたの口から外に意思表示された以上、それは自分のものじやないのですから、それによつていろいろな問題を生ずるのですから……。
○証人(關口重太郎君) 分りました。
○委員長(伊藤修君) どうしてもその出所は分らないですね。
○証人(關口重太郎君) 分りません。
○委員長(伊藤修君) 出所のさつぱり分らないことを述べたことになるわけですね。
○証人(關口重太郎君) そうです。
○委員長(伊藤修君) それが事実であるか事実でないかも分りませんか。
○証人(關口重太郎君) それも分りません。
○委員長(伊藤修君) 非常に無責任ですね。
○証人(關口重太郎君) 非常に無責任です。
○委員長(伊藤修君) 法律上の制裁は仮に免れるとしても、如何にもあなたは道徳上の責任は重大なものじやないかと思います。
○証人(關口重太郎君) 無責任極まるものであります。
○委員長(伊藤修君) あなたの今日の証言によつて田上檢事は免れるかも知れないけれども、あなたは良心に問うて恥じやないと思わないですか。
○証人(關口重太郎君) 非常に無責任極まるものであります。
○委員長(伊藤修君) 今日ここでお述べになることは、要するに八千万國民にあなたは誓つてお述べになつておるのですよ。
○証人(關口重太郎君) その通りです。
○委員長(伊藤修君) 新らしく將來官途にお就きになろうとすれば少しは眞面目に述べられたらどうですか。
○証人(關口重太郎君) 私は只今申上げたことは眞実に相違ありません。
○大野幸一君 親切に注意して置きますが、この委員会が結論を出すまでに、若しあなたが良心に何して、誓つて良心に從つて、今日言つたことは取消して本当のことを言いたかつたら直ぐおいでになることを勧告して置きます。
○委員長(伊藤修君) それでは御苦労樣でした。これで一旦休憩いたします。
   午後零時四十六分休憩
   ―――――・―――――
   午後一時五十七分開会
○委員長(伊藤修君) では午前に引続きまして開会いたします。杉山喬さんですか。
○証人(杉山喬君) はあ。
○委員長(伊藤修君) では宣誓をお願いいたします。
   〔総員起立、証人は次のように宣誓を行なつた〕
   宣 誓 書
 良心に從つて眞実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。
        証人 杉山 喬
○委員長(伊藤修君) 僞証の制裁がありますから御注意しておきます。あなたは昨年の初め頃は何をやつておりましたか。
○証人(杉山喬君) 昨年の初め頃は本社の政治経済部の記者をやつておりました。
○委員長(伊藤修君) それから。
○証人(杉山喬君) それから昨年の十一月に浦和支局に轉任になりました。
○委員長(伊藤修君) それ以來ずつて浦和の方ですか。
○証人(杉山喬君) そうです。
○委員長(伊藤修君) あなたは田上檢事を御存じですか。
○証人(杉山喬君) 知つております。
○委員長(伊藤修君) 何回ぐらいお会いになりましたか。
○証人(杉山喬君) 十回か二十回会つたと思います。
○委員長(伊藤修君) いつ頃からいつ頃まで。
○証人(杉山喬君) 三月頃、熊谷檢察廳が忍の被服の隠退藏物資の摘発がありまして、その間私は浦和から取村に行きまして、そこで田上檢事としばしば会いました。
○委員長(伊藤修君) 最後は。
○証人(杉山喬君) 最後は、本庄事件で、印鑑盗用の被疑者として初め喚問されまして、その後告訴が出まして、それで田上檢事の取調を受けたわけです。
○委員長(伊藤修君) 關口重太郎氏は御存じですか。
○証人(杉山喬君) 知つております。
○委員長(伊藤修君) それはいつ頃からいつ頃までです。
○証人(杉山喬君) 昭和十年頃でしようか。私が当時師範学校に在学中、私より二級か三級くらい下の後輩でした。当時顔だけは覚えていたわけです。
○委員長(伊藤修君) それから最後は。
○証人(杉山喬君) 最後は、田上檢事について、いろいろ私が取材上のことで關口君を訪問しましていろいろ話を聽いたのが、九月末頃だつたのじやないかと思います。
○委員長(伊藤修君) 渡邊健吉さんは……。
○証人(杉山喬君) 知つています。
○委員長(伊藤修君) それはいつごろですか。
○証人(杉山喬君) それは去年の夏頃でしようか。私の友人が羽生で被服加工業をやつておりまして、渡邊君はそこの從業員になつておりまして、しばしばそこに行つておつた。渡邊君もそばにおりまして、いろいろ話したことがあります。
○委員長(伊藤修君) その際ですか、渡邊健吉から、田上檢事が忍町の荒井八郎氏宅に隠退藏物資摘発のために行つて、その被疑者の家に泊つて御馳走になつたという話をお聞きになつたのですか。
○証人(杉山喬君) それは大分後になりまして今年の八月の中頃だつたのじやないかと思います。丁度田舎の旧盆で帰りまして、郷里に帰つたときに渡邊君に会つてその話を聞いたのです。
○委員長(伊藤修君) そのときにそういうような今申上げたような内容の話でしたか。
○証人(杉山喬君) そういうような話でした。關口君と田上檢事が同行されて荒井八郎氏の家に行つて、そこで酒を飲んで一泊した。そういう話でした。
○委員長(伊藤修君) それは渡邊君から聞いたのですか。
○証人(杉山喬君) 渡邊君からも聞きましたし、關口氏自身からも直接聞きました。
○委員長(伊藤修君) それは渡邊さんの所に行つたときにお聞きになつたのですか。
○証人(杉山喬君) それが初めてです。
○委員長(伊藤修君) そのときに關口はおつたのですか。
○証人(杉山喬君) おりませんでした。
○委員長(伊藤修君) そこに誰がおつたのですか。
○証人(杉山喬君) そこには私の友達の全然関係はないのですが、杉山という男がおりました。
○委員長(伊藤修君) 杉山なんというのですか。
○証人(杉山喬君) 杉山力。
○委員長(伊藤修君) どこの人ですか。
○証人(杉山喬君) 羽生の人です。ここは私の郷里なんですが、渡邊君も羽生に勤めておりました。
○委員長(伊藤修君) 羽生に住つていらつしやるのですか。
○証人(杉山喬君) 杉山ですか……。
○委員長(伊藤修君) ええ……。
○証人(杉山喬君) そうです。
○委員長(伊藤修君) その人は今あなたが渡邊君から聞いた話を聞いておるのですか。
○証人(杉山喬君) 聞いております。その後もしばしば会いましたなら聞いております。
○委員長(伊藤修君) 今あなたのお話のあつた關口さんから聞いたとおつしやつたのは、それはどこで……。
○証人(杉山喬君) 渡邊君から聞きまして、これは当然新聞記者としてニュースになるという立場から、その問題を確認しに行つた。確認するために關口君の家へも行きましたし、それから事務所でも会つて、それで事実かどうかということを聞いた。彼は事実だということをすつかり詳しく話したわけなんです。
○委員長(伊藤修君) 關口さんがあなたに話した内容をおつしやつて頂きたい。
○証人(杉山喬君) それは忍町の摘発がありまして、荒井八郎という人は非常に有力な業者です。それで關口君は國警本部から当時摘発に協力しておつた。それで檢事局が主体になつてやつておつたのですけれども、熊谷檢察廳と國警本部が協力してやつたわけです。その当時朝日新聞で忍町に隠退藏物資が非常に沢山あるという記事を書いたわけなんです。それは戰時中の処理に当つた將校の話を元にして書いたのですが、安本で摘発をやつても出ない、それから衆議院の不当財産委員会、あの頃隠退藏委員会でしたか、あれが來たが出ないというわけで、他の新聞などが忍町を隠匿の町だと言つたのは、誰かという非難の眼が向けられた。朝日としては檢察廳がやつても出ないという場合には、新聞の信用を失墜する、だから檢察廳に一つやつて貰おうじやないかという意氣込があつたわけです。
 当時私も遊軍として取材に行つたわけです。そのときに田上檢事といろいろ話をした。そのときは初対面でした。丁度それは今年の三月だつたのです。それで田上檢事から君も何か情報を知つているようだつたら出してくれないか、一つ協力を願いたいというわけで、私も知つている限り出しましようというわけで、私の郷里は足袋の産地で非常に被服業者が多いのです。その中に一人に話したら協力しましようというわけで、これは現物を押えても駄目だ、被服の書類を押えなければ何にもならない、こういう書類があつて、隠匿書類だからこれを摘発すれば出るだろうと言うので、書類を出してくれたわけです。それを田上檢事に提供したわけです。田上檢事がその書類を元にして摘発をして、新マル公で八百万円出たのです。その人に言わせると三千万円あるという、ミシン一台について一万円の隠匿物資を配分している。それはミシン一台につき一万円の割だから、業者のミシンが三千台あつて、三千万円あるということだつたのです。田上檢事が途中から非常に摘発の手を弛めて來た、我々が見ておつてそういう感じがしたのです。摘発のやり方が、自主的に供出しろというような、非常に寛大といいますか、なまぬるい処置に轉じて來たわけです。当時その摘発された中に、荒井八郎氏も入つておつたわけです。そのときに荒井八郎氏の宅へ、田上檢事と共に私が記者として同行したのです。そこで田上檢事が荒井氏のうちへ入つて行くと同時に荒井氏が自宅の方から出て來たのです。門のところで擦れ違いまして、荒井氏が外へ出る、我々は中へ入る、擦れ違つた途端、丁度私が國会の記者をやつていまして、荒井さんの顏を知つていましたので教えたら、ああそうかというわけで、呼び止めて、そうして倉庫その他の帳簿を見せて貰いたいということになつたのです。それが田上檢事と荒井八郎氏の初対面であつたわけです。その前に荒井八郎氏と田上檢事が知つているということはなかつたのです。
 それでいろいろ協力してやつて來たわけですけれども、段々我々が見ていると摘発のやり方というものが非常に微温的になつて來た。そこで田上檢事は玄関口に入つたばかりだ、まだまだであるということを言つておりながら、非常に摘発が緩漫になつて來た。その間に非常に田上檢事が業者に飲まされているとか、揉消し運動が盛んに行われているとか、現場に警察官に踏込まれて逃げたとかいう噂が頻々として立つたのです。私たちも非常に田上檢事に信用をおけなくなつたし、又そういうことに対する或る程度の事実というものも熊谷の通信員も聞いておつたわけです。そのうちに關口君が國警本部の立場から当時も來ておりまして、田上檢事と協力しておつたところが、確か關口君の休みの日だつたと思うのですが、八月の末だと思うのです。たまたま休日に行田の町を歩いておつた、そうしたら田上檢事と道でばつたり会つた。これから飲みに行かないかと言うので、どこへ行くのですかと關口君が聞いたら、默つてついて來いと言うのでついて行つたのです。そうしたら驚いたことには摘発している被害者である荒井八郎氏宅へ行つた。そこで酒を随分飲んだ、それから聞いている程に、藝者を呼んだという話を聞いたのです。そこで田上檢事と二人して一泊した、自分は呆れて翌日帰つて來たけれども、田上檢事は帰らずその後も引続いて泊つていたらしいということを、關口君が私に話したのです。話というのは、最初きつかけを作つたのは渡邊君の話です。渡邊君の話からその事実を確認しに行つたときに、關口君がその話を私に話したのです。そういう事情です。
○委員長(伊藤修君) その話をしたのはどこでやられたのですか。
○証人(杉山喬君) 關口の自宅に行きました。
○委員長(伊藤修君) いつ頃ですか。
○証人(杉山喬君) 八月に聞きまして、八月の十五日から本庄事件が始まつたのです。本庄の方へ行つてしまつたものですから、両方の事件に手をつけるということができなかつたのです。本庄から帰りまして、關口のうちへ行つたのですから、八月の下旬か九月の初めだと思います。
○委員長(伊藤修君) そこには誰もいなかつたのですか。
○証人(杉山喬君) おりませんでした。併し關口君とはその後も何遍も会つております。一度はうちの社会部の記者がおりまして、關口君に私にもその事実をもつと詳しく発表してくれ、我々も新聞に書きたいと言つた。社会部の記者も同席しましてその話を聞いたことがある。そのときにやはりそういう事実を認めていました。
 それからもう一つは、支局に朝早く關口君の方から訪ねてきて、丁度本庄事件の何といいますか、朝日新聞で頼んだ湯本という弁護士があつたのです。その弁護士がおるのを知らずに私とその話をしたのであります。そうして關口君は非常に口を濁したのです。そうしたら湯本君は、あなたは杉山君に話したそうじやないか、荒井の家へ行つたのは本当かどうか、荒井の家へ泊つたということを言つておるけれども本当かどうかということを、關口君はそれを否定しなかつたのです。その弁護士も嘘ならば嘘ということを、全然否定しないでおるということは事実に相違ない、心証は十分だということを言つておりました。
○委員長(伊藤修君) そのときは、最初に關口君の家へ行つてお聞きになつたことは一回ですね。それからそのときにはあれですか、社会部の記者が立会つたのですか。
○証人(杉山喬君) そのときは私一人で行つたのであります。
○委員長(伊藤修君) そのときに社会部の記者が立会つたというのは……。
○証人(杉山喬君) それは数日後でした。
○委員長(伊藤修君) それはどこですか。
○証人(杉山喬君) 浦和の何といいますか、「玉ずし」というところがあります。朝日の連中がしばしば会を開くところなんであります。そこでたまたま朝日の会があつたわけであります。会が終りまして社会部の記者が、關口君と自分も会いたい、自分から頼んで行つて見ようと思うから会わしてくれというので、僕は、關口という人は態度がぐにやぐにやだ、会つても無駄だといつたら、自分から頼むというわけで關口君をそこへ連れて行つたのです。そこでその席でいろいろ事実を認めたわけです。
○委員長(伊藤修君) 關口君がついて來たわけですか。
○証人(杉山喬君) 來たのです。
○委員長(伊藤修君) その社会部の記者は何といいますか。
○証人(杉山喬君) 西村というのです。
○委員長(伊藤修君) 西村何というのです。
○証人(杉山喬君) 名前は忘れましたけれども……。
○委員長(伊藤修君) それは本社詰ですか。
○証人(杉山喬君) 本社の社会部の記者であります。
○委員長(伊藤修君) それから弁護士の人が立ち会つて聞いたのは……。
○証人(杉山喬君) その後です。
○委員長(伊藤修君) その後、前後通じて三回お聞になつたわけですね。
○証人(杉山喬君) 三回聞きました。或いはそれからもつと聞いておると思うのですが……。
○委員長(伊藤修君) 少くとも三回くらい……。
○証人(杉山喬君) 五回くらい聞いておると思います。
○委員長(伊藤修君) 少くとも三回くらいは明らかだね。
○証人(杉山喬君) はあ。
○委員長(伊藤修君) それから渡邊君から一番最初に聞いておる、四回は確かに聞いておるわけですね。
○証人(杉山喬君) はあ。それだけでなくて、その前に關口君から僕に言つたことがあるのです。國警本部から被服が摘発された、隠退藏の被服が摘発されて熊谷檢察廳が大量に摘発した、それを埼玉縣の國警本部の制服にしたい、だから貰つて來て欲しいというので、關口君が田上檢事と会つているのです。そのときに田上君が料理屋へ連れて行つて、そこで業者を紹介した。そこで一緒に飲んだ、そこで關口君から、実に驚いた、田上君という人はぐうたらで、こういうところで業者と引合わせた、自分が摘発している業者と引合せたということは、怪しからんと憤慨しておつたのです。杉山さんの新聞に書くなら書いて下さいという話を聞いたことがあるのです。ずつと前であります、私が聞いたのは……。
○委員長(伊藤修君) それはどこの料理屋です。
○証人(杉山喬君) 料理屋の名前は分らないのであります。料理屋は熊谷市にございます。
○委員長(伊藤修君) 話は前に戻りますが、あなたが田上檢事と荒井八郎氏の家に行つたときは、どういう人が行つたのでありますか。
○証人(杉山喬君) 田上檢事と私と新聞社の人が一人づつ行つたのであります。あつちこつち行つたものだから、荒井氏のところに誰が行つたか記憶ありません。檢察事務官も行つておりましたが、誰が行つておつたかちよつと思い出しません。
○委員長(伊藤修君) そのとき荒井八郎氏とどういう話をしたか記憶ありませんか。
○証人(杉山喬君) あなたのところに摘発に來たと言つて、捜索令状を見せたのであります。今出かけるところで困る、今休みで工場に誰もいないというので、田上檢事が荒井八郎氏を連れて行つて、ここが金庫、ここが倉庫というように封印をしたのであります。その日は調べずに引揚げたのであります。
○委員長(伊藤修君) そこまではあなたが行つたのですね。
○証人(杉山喬君) 見ておりました。
○委員長(伊藤修君) 泊つたというのはその後のことですか。
○証人(杉山喬君) その前であります。摘発されまして、さつき申上げましたように、八百万円というものが、あそこのところから……。要するに同業組合になつており、その同業組合の、有力業者の一人が荒井八郎です。同業組合全体として摘発したのが八百万円、そうして……。
○委員長(伊藤修君) 泊つたのは。
○証人(杉山喬君) 泊つたということは、それは摘発されてなんといいますか。取調といいますか、取調が始つたのは大体五月か六月それが起訴されて判決があつた。この事件が大体田上檢事が始めたのは八月十日頃、七月の下旬か八月の上旬じやないかと思います。
○委員長(伊藤修君) 從つて關口から話を聞かれたのは、その後のことですね。
○証人(杉山喬君) そうです。
○委員長(伊藤修君) 泊つたという話は。
○証人(杉山喬君) そうです。業者に紹介されて飲んだのはその前であります。恐らく六月頃じやないかと思います。
○委員長(伊藤修君) 田上さんが關口の家に泊つたという……。
○証人(杉山喬君) 泊つたというのは、八月のことなんであります。
○委員長(伊藤修君) 關口から聞いたのですね。
○証人(杉山喬君) そうです。
○委員長(伊藤修君) そこに藝者も呼んだのですか。
○証人(杉山喬君) いたと言つておりました、關口君は。
○委員長(伊藤修君) 渡邊健吉から佐山支局長宛の手紙を御存じですね。
○証人(杉山喬君) 知つております。
○委員長(伊藤修君) これは渡邊健吉から支局長に出したのでありますか。
○証人(杉山喬君) その後に責任問題が起きたわけであります。実は本庄事件で以て、非常に問題がこんがらがつて來た。その間に、檢察廳が、田上檢事が中に入つていろいろ策動しておる。田上檢事と特に親しい読賣、毎日新聞が朝日新聞記者をひつかける、田上檢事が印鑑盜用なんという事件がありまして、その事件でこれの記者を呼んで、そこにおいてひつかけるという意味のことを、当徳御存じのように、新聞が二つに割れまして、朝日と読賣、毎日、埼玉、というものが対立的に本庄事件を書いておつたから、これらの支局長を田上檢事が熊谷に呼んだ、そうして明日朝日新聞をひつかける、だからこういうふうに書いて呉れ、書きましようというので、拔打的にうちの記者が書いた。田上檢事が参劃してやつておるということを、私が読賣の記者からじかに聞いたのであります。読賣の記者の中に正義感を持つたのがおりまして、それに支局長が出たと言つておる。で檢察廳がボスなれば本庄事件は現地だけで解決できない。檢察廳自体がそういう問題に関して曲つた取調をし、且つボスを擁護しておる。殊に熊谷の檢察廳には、問題の大石という男が檢察事務官みたいなことをやつておるというので、檢察廳自体も摘発しなければならんという立場に追込まれたわけであります。そこで田上檢事に前に聞いたあれがありまして、それを材料にして檢察廳もボスとして叩こうというので、支局の方針が決つたわけであります。
 そこでそのことを支局に入れまして、支局長から本社に連絡があつて載せる段階になつて、載せる一歩手前の段階になつた。ところが先程話した通り本社の記者と会つたのちに、あたしが会つたときも、關口の態度は確かに事実は事実として認めて、荒井八郎氏の言つたことを認める。出るところへ出れば証言はひつくりかえす、私は新聞に書かせる以上は、認めなかつた……、事実は確かに事実だ、若し新聞に書かれたならば、田下檢事の名誉毀損ということが起つた場合は、これをひつくりかえす、それでは關口の態度が危い。若し新聞で書こうとしても、檢察廳が名誉毀損とか、何とか、朝日新聞をひつかけて來るだろうということで、確証を握るまでは書けない。たまたま私の支局に入る情報は非常に信憑性がない、君の言うことはでたらめだという非難が起つておるのであります。私は關口を庇うという事情があるのです。私の後輩でもあり、町の人間でもあるし、同郷でもあるということで關口自体を庇つてやる、今にして見れば非常に不徹底だつたのです。同時にそういう氣分にほだされたのであります。外の記者が非常に本庄事件が不利になつて來た、確かそれを書くという必要に迫られ、それで私は書く書くとはいいながら実際は書きたくなくて拒否して來た。君の言うことは全然嘘なんじやないかという責任問題が起きたのであります。支局長とこつちの本社で以て部長などがそういう問題を論じられ、そこで私が絶対そういうことはない、渡邊の聞いた確かな話だということを、渡邊君に会つたときに実はこういう問題が起きておるという話をしたが、その渡邊君が確かにしやべつたのだから兄貴の問題だけれども言う、あなたも勇氣を出してやれということで支局長に手紙を書こうと書いて呉れたのであります。
○委員長(伊藤修君) それから關口から田上檢事の手紙ですか、メモですか、あなたのところへ來たことがありますか。
○証人(杉山喬君) あります。
○委員長(伊藤修君) それはこういうような文書ですか。
○証人(杉山喬君) 覚えております。見んでも覚えております。
○委員長(伊藤修君) そのときにこれを持つて來て關口は何といつたのですか。
○証人(杉山喬君) その前日最後の会談をしたのです。我々としては本庄事件というものは本庄だけでは片付かない、檢察廳自体が非常にこれによつて圧力を加えておるのだ、それに読賣、毎日各社が便乘してやつておるので、我々としては檢察廳そのものを反対勢力の一角から切落さないことにはとても駄目である、檢察廳自体がボスである、それを叩く意味で君の材料を勇氣を持つて出して呉れということを言つたのであります。關口は非常に困るということで田上檢事と会つて來るという、だからあんたの証言は、言葉は、田上檢事と会わないでこそ價値があるのだ、会つたら何にもならないということを言つたんです。いや何が何でも会いたいということで物別れになりまして私は家に帰つたのであります。翌朝どうも昨日のことが氣にかかりますので起きまして朝早くに、關口君に止めろということを言いに行つた。そうすると彼はすでに一番の汽車を出発したというので、私は支局へ行つて自分の仕事をしていた。そうすると三時頃家の女房から電話がかかつて來て、關口さんが会いたいと言つて來ておる、どこで会うのかといつたら國道の方から歩いて來る、僕もこちらから歩いて行こう、二人で歩いて來て眞中で会つた。浦和に学校がありまして学校の庭を行つた。どういう要件だ、実は田上君に会つて來た、それで実は田上檢事には恩義があるのだ、実は恩義を受けたのは、自分は戰爭中陸軍のパイロットでB二九の邀撃隊長をやつて來た、その部下が京都の方で殺人未遂をやつた、そうして傷害事件を起しまして今刑に服するかどうかということで、それは丁度四月か五月頃でした、それをその仕事の関係でしよつちうやつておる田上檢事に話した。それでは俺が紹介状を書いてやろうと弁護士の紹介状を書いて呉れた。そうしてポケットから五千円の金を出して渡した。それは自分は非常に金を貰うということはいかんとこんな感じがした。併し部下を救いたい一心でこれを貰つて京都に行つて、裁判にその弁護士が出ましてやつてくれた。これはそういうことはやるべきことではないとは思いましたが、部下を救いたい一心でそういう恩義を受けてるのだ。ここで田上檢事を賣るということはできない。だからどうか止めてくれというつもりで、あなたの非常に怒つておる氣持は田上檢事に傳えた。杉山君はどうしても田上檢事のことをやるということを言つたけれども、実は田上檢事には恩義がある。行田の隠匿物資を摘発して成績が挙つた。それで警察から表彰を貰つた。それでたまたま本庄事件で自分の方が感情的である、非常に感情的である、我々としてもやるつもりはあつたのだ。併し今の段階では本庄事件の内容はこういうふうに考えておる。こういう取調をしたかつたのだと言つてメモを書いて呉れた。そのメモの内容が……、岸、大石ちよつと……。
○委員長(伊藤修君) 大石、岸……。
○証人(杉山喬君) それは大石と岸君との暴行事件というものはこれは許すことができない。だから大石を体刑まで持つて行くつもりがあるのだ、こういうことだつたのです。
○委員長(伊藤修君) 第二は小此木宴会の内容ですね。
○証人(杉山喬君) それはですね、小此木町議の銘仙の闇事件が摘発されまして、その事件を徹底的に追求して、それを毎日の増野記者に頼んで小此木の闇事件揉消を新聞に出さないようなことをやつておる。こういうことに関して大場副檢事もそれに出ておつたから、そういうことに対して個人の涜職が成立するという見込で以て取調を進める、こういうのです。
○委員長(伊藤修君) 第三の小此木の銘仙の闇。
○証人(杉山喬君) 小此木銘仙の闇事件そのものを徹底的に調べる。
○委員長(伊藤修君) 第四は河野組関係、それで註書きして、折茂「中ボス」大石「小ボス」ですか、石川、参議院の石川でしようね。
○証人(杉山喬君) そうです。
○委員長(伊藤修君) 大ボスとしてあります。青柳これは代議士、青柳これも大ボスとしてありますね。これはどういう意味です。
○証人(杉山喬君) これは本庄事件について大石がボスと言われておるが、それは本庄町の表面に出ておるのは小ボスだ。それの糸を引く者として折茂という中ボスがいる。更に大ボスは実は青柳、石川である。だから青柳、石川の関係を洗つて不正があれば徹底的にやる、現に青柳代議士を摘発しまして、その摘発を以て本庄事件の眞相は青柳の隠匿事件だと、朝日の暴力事件を故意に外らしたことを知つてるのだ、朝日は非常に憤慨しておつた。隠匿事件に持つて行つて、そうしてその本筋を外らかして、それで他の新聞に発表しておる。それで本庄事件の内容は、青柳の隠匿物資で、大石の暴力関係を他へ持つて行つちやつて、事件を外らしにかかつた。その関係を朝日が非常に怒つていたものですから、非常に大ボスがあるから青柳、石川のその関係を洗つて若し不正があればやつつける。
○委員長(伊藤修君) 参議院の石川の大ボスというのは何ですか。
○証人(杉山喬君) それは特別説明を聞かなかつたのです。
○委員長(伊藤修君) 折茂中ボスというのは何ですか。
○証人(杉山喬君) それは折茂が警民協会のあれをやつておりますし、始終警察の貰い下げなんかをやつている。そういう関係で言つたのだと思います。
○委員長(伊藤修君) これをどうしようというのですか。
○証人(杉山喬君) 勿論不正を見つけてやつつけるということです。
○委員長(伊藤修君) そうすると小此木関係についてこれだけのものを取調べよう、こういう意味ですか。
○証人(杉山喬君) そうです。それでそれだけのことを自分はやるつもりでした。
○委員長(伊藤修君) それから次に第五として、軍政部下命の大場、飯塚両名に対する涜職ですね。大場、これは副檢事ですが、それから飯塚事務官を指すのですか。
○証人(杉山喬君) そうです。それは豊受の招宴事件というのは多分に臭い、揉消の疑いがある。それを調べて、それが若し揉消であつた場合には涜職罪が成立する。その問題を徹底的に調べろという命令も軍政部から來ておる、だからそれをやるつもりだつた、こういうのです。
○委員長(伊藤修君) 第六として朝日新聞と相協力し、事件の解決を図らんということですが。
○証人(杉山喬君) ですからそれは以上のようなことでやるつもりだ、それで朝日新聞は一体どこまでやつたら承知するか、自分は朝日の意見を聽きたい。だから明日の三時の忍町のどこそこで会いたいということを言つて來た。僕は会う氣がなかつたから忘れたけれども、何とかいう家ですが、それで言つて來たのですが、關口君がいやそんなことを言つても朝日新聞で承知しない。あなたのことを全面的に信用していない、こう言つたのです。だから若しそういう氣持があるならばそれを書いてくれというわけで、それでは書こうというので朝日新聞と協力して云々ということを書いた。それで最後に署名して一遍出たのだそうですが、又帰つて來て署名だけでは困る、印鑑を一つ押してくれというわけで、印鑑を押してそれを持つて來たわけです。
○委員長(伊藤修君) そうすると關口君はこの第一項乃至第五項までのメモ書のことを田上檢事とよく話して……。
○証人(杉山喬君) そういう説明は聞きました。田上檢事がこういう意向だ、これを傳えてくれ……。
○委員長(伊藤修君) そうしてその意向をあなたに傳えた……。内容をよく存じておりますね。
○証人(杉山喬君) 私がしやべつたことだけは關口君は知つておるわけです。
○委員長(伊藤修君) だから理解しておるわけですね。
○証人(杉山喬君) そうです。
○委員長(伊藤修君) 尚念のために田上檢事の署名捺印を取つたわけですね。
○証人(杉山喬君) そうです。
○委員長(伊藤修君) 余程愼重な態度に出たわけですね。それであなたはそのときにどういう回答をしたわけですか。
○証人(杉山喬君) それで私は一個の記者である、支局で使われて編集方針に從つて仕事をしておる。だからそういうことだつたらそれを持つて來て考えて見ようというわけで、それを支局長に相談したわけです。相談したら支局長が怪しからん、朝日新聞としては何も協力して云々とか、どういう意向だとか、そんなことを言う必要はない。ただやるだけのことをやつてくれればいいじやいか、だからそんなところへ行く必要がない、こういうことでした。僕も行くつもりがなかつた。それを本社に持つて來て檢討して、本社でそれ自体が非常なニュースだということを言つたのですが、併し本庄事件が非常にこじれて來まして、当時各新聞が全く反対の事実を書いておるとい非常に苦しい段階にあつた。それ以上拡大するということは、全然收拾がつかなくなる。こういうわけでそれを高等檢察廳に持つて來て、熊谷の檢察廳はすでに本庄事件を調べる資格はないという、一つの資料にして、高檢自体から熊谷の嚴正なる取調を要望して貰う、こういう処置を取つたのです。
○委員長(伊藤修君) これは第一項から、第六項は別として五項までは全く檢察廳の仕事ですね、これをあなたの方に相談に來るという趣旨をどういうふうに取つたのですか。
○証人(杉山喬君) 私自身は、その前に私の印鑑盗用事件というのがありまして、それで私に言わせればひつかけて來たのです。それは殆んど本庄は取材活動が困難でありまして、しやべつたことは翌日脅かされてひつくり返してしまう。例えば河野組がこういうことをやつたということを被害者がしやべつた、それを取るというと、翌日脅かされてひつくり返してしまうのです。そういうことが始終ありまして、五人くらいの記者が会つておるのに、全然会つたことはないということを言われたりする。で私が豊受招宴事件、その宴会を調べたいということで、岸君と二人で豊受に行つたのです。当時その問題は檢察廳に言つてあるが、二十日町民大会が済んでも、この豊受招宴の闇の揉消だという事件に対しては、全然檢察廳が調べようとしいない。我々の手で事件を究明する。で毎日新聞は、あれは織物業者の招宴でも何でもない、あれは警察の懇談会だ、あれは公安委員の連絡協議会だ、こういうことを盛んに書いた。併し織物業者は自分が招待したという立場に立つておるから、本元に行つたら、分るだろうというので二人で行つて話して、そうして靜米門という人に会つて話を聞いたら、あれは織物業者の招待だ、こういうことを言うのです。で本庄警察で何か懇談するというが、どんな懇談をするか、何か毎日の記事を見ると、原料が本庄警察に押えられるが、正規の物が押えられては困るから、押えられないようにする懇談だと言つておるが、それは事実か、押えられたことがあるかと言つたら、そんなことはない、あれは單なる織物業者の招待だということで、それ自体が今までの事実をひつくり返す、つまりあの宴会は正当なものだ、公安委員会とか協議会とかはあとで附けた名前です。そういう弁解を全部ひつくり返してしまう言葉を靜米門がしやべつた。私はそれをメモに取つておつたから、原稿用紙で四枚くらいだが、それを靜氏に見せて、あなたの言うことはこういうことか。そういうことだ。では一つ署名か何かしてくれないか、我々は始終記事をひつくり返されて困る。いや、個人の名前が出たら困る。それでは自分がここに來た印でもいいから、卓上にあるスタンプでも何でもいいから捺さしてくれと言つて、捺して帰つて來た。
 ところが田上檢事がこれを聞込んで、これは印鑑盗用だと言つて、すぐに豊受付に行つたのです。行きまして豊受付の宴会の本筋など一つも調べないので、僕のやつた印鑑盗用事件を專門に調べて、そうして翌日ですが、翌々日ですか、私を檢察廳へ呼付けると、それと同時に各新聞社で、朝日の記者が印鑑盗用被疑事件で引張られた。そういう檢事と新聞の連絡の下にそういう拔討的の記事を発表したのです。それは私が田上檢事と前に会つたとき、実に關口の口からも、野上檢事が荒井の家へ泊つたということを聞いておる。田上檢事に謎をかけたらぼろが出るのじやないかという、ちよつと記者的のはつたりから、野上さん、あなた行田の方へ行つて泊つたじやないか、こういうことを言つたことがある。そうしたら野上檢事がちよつと狼狽しておつたが、いや、そんなことはないということに言つておつた。
 併しこれは、これから私の推測ですけれども、田上檢事は、そのときにすでに行田の事件、荒井の饗應事件その他を私に握られて、朝日新聞が前々からマークしていたということから、田上檢事からは印鑑盗用事件で私を引張る。引張つて両方の問題を相殺する。こういう意図ではなかつたかと思います。これは勿論測です。
 その後どうしても我々としては、印鑑盗用を起訴されようと、それからそれがどんな問題に発展しようとも、印鑑盗用は印鑑盗用として、若しこつちに惡いことがあつたらどんどんやつてくれ、併し我々の方では、熊谷の檢事局のボス事件は究明する、こういう態度に出た。それで關口が田上の所に事実を告げた。で田上があわてて、まあその問題は内々にしてくれという、そういう意味の覚書をよこしたと思います。
○委員長(伊藤修君) 結局一口に言うと、田上檢事が宿泊して饗應を受けたという事実と、明日が熱心に摘発しようとしておる一項乃至第五項のことについて、いわゆる本庄事件の実体を成すものですね。それと相殺するという考え方なんですね。
○証人(杉山喬君) 朝日の考えですか。
○委員長(伊藤修君) いや、田上檢事の考え方。
○証人(杉山喬君) 私にはそう取れるのです。それ以外にはちよつと考えられない。
○委員長(伊藤修君) 協力して解決しようじやないかということは。
○証人(杉山喬君) で翌日会つて話したいというのは、それを含んでおるのじやないか。私はそれが嫌で、それを拒否したわけなんです。
○委員長(伊藤修君) それからその後あなたのところに關口が何か酒を持つて來たようなことがありますか。
○証人(杉山喬君) あります。
○委員長(伊藤修君) それはどういう事情ですか。
○証人(杉山喬君) それは關口は、いよいよ駄目なら駄目でよい、我々はたとえ負けてもどこまでもやるという氣持になつたわけなんです。それは社として私もたまらなくなつてしまつたわけです。非常に卑怯だと、みんな岸君やなんかも、非常にあらゆる労力を割いてやつておるじやないか、あらゆる犠牲を拂つておる、君だけが個人的な理由で、一人の人間を庇うというのはけしからんという声が高くなつて來たのです。
○委員長(伊藤修君) あなたのことを……。
○証人(杉山喬君) そうです。当時私も非常に支局内で嫌になつてしまいまして、やろうという氣持になつたわけです。併しただやるわけには行かんというので、關口に会いまして、君はそういうのならよいと、当時關口はその前に高檢に呼ばれまして、その朝日新聞の経緯は全部高檢に入つておりますから、それを高檢に提出しまして、高檢からいろいろ調べられた。そのときに、君は杉山君に脅迫されたのだろう、或いは何か君は杉山君に弱い尻を掴まえられておるのじやないかということを言われて驚かされたろう、そこで高檢の方で、いろいろ關口の事務所へ行きまして調べたり、或いは忍町辺りへ行つて、關口の素行を洗つた。君はそこまで高檢に馬鹿にされても、尚且つ起上れないのかと、僕はこういつたわけです。僕は君を脅迫したという事実はないじやないか、君がぐずぐずしているのならそれでよろしいということを私は通告をしたのです。そうしたら翌日になつて、關口君があわてて僕のところへ來まして、どうか止めてくれと、こういうわけなんです。それで実はお母さんからだと、これを受取つてくれといつて、何か紙に包んだものを出すのです。僕は金だと思つたのですが、何も貰う必要はないから冗談じやないと言つて言下に撥ねつけたのです。そうしたらすごすご引下つたのです。しばらくすると、翌日の朝でしたか、私の家を商店みたいにして貸しているのですが、その貸しておるところの男が、これは關口さんから頼まれた、あなたに届けてくれというので酒を持つて來た。それで私は丁度浦和に帰るところでして、それを返す暇もなかつたものですから、これは絶対手をつけちやいかんと母に言つて、渡邊君が勤めておるところがあるから、そこへこれを届けて關口に返してくれというわけで、それを返したのです。
○委員長(伊藤修君) その後關口にお会いになつたのですか。
○証人(杉山喬君) その後は……、二回くらい会つております。
○委員長(伊藤修君) 今日はたまたまあなたがここに傍聽しておいでになつて、先程關口の供述をお聽きになつたわけですが、全体を通じて大分違つておりますですな。
○証人(杉山喬君) 全然違つております。
○委員長(伊藤修君) それでは關口君の言うことは違つておるのですか。
○証人(杉山喬君) 違つておるというよりも隱しておるというように。
○委員長(伊藤修君) 間違つておる。事実を言わないのですね。
○証人(杉山喬君) そうです。
○委員長(伊藤修君) 隱しておるとお思いになるわけですね。
○証人(杉山喬君) 事実を伏せておるという感じ……感じといいますか、明らかに伏せております。
○委員長(伊藤修君) 要するに關口君が言わない半面は、今あなたがお述べになつたことで全部分りますがね。併し關口君としては相当に頭を悩ました問題ですね。
○証人(杉山喬君) 關口君としては田上檢事に対する義理ということを非常に考えたのじやないでしようか。彼は特攻隊に行つたことがありまして、自分は腹を切るとか、直きに言う男です。私も初めは信用しましたが、今は信用しておりませんが、直ぐに腹を切ると、こう言うのです。そういう方だけに非常に考えも封建的であつて、田上檢事に対する義理を多分に感じておるのじやないか。
 もう一つは、事件が徹底的に明るみに出れば、自分自身が饗應罪に問われるのじやないかというような、自分を擁護するというような氣持もあると思います。私自身が關口の口から聞いたことを新聞の材料にするということは、記者としては若干無理があるのじやないかということを氣にして、本庄事件をどこまでも解決するという意味においては、どこまでもそれは眞実は眞実として、そういう義理とか、何とかを殺してやらなければならん。こういう結論に來ておるわけです。
○委員長(伊藤修君) 外に……。
○大野幸一君 田上檢事が読賣新聞、毎日新聞の埼玉縣の記者を呼んで、今度朝日の記者の印鑑盗用事件をやる、こういうことを言つた。それを読賣新聞の記者の中でも正義な人があつたが、記者が事前に話してくれたというのですが、その記者の名前は何と言いますか。
○証人(杉山喬君) それはここで言わなければならないでしようか。
○大野幸一君 あとからでもよろしい。
○証人(杉山喬君) 読賣新聞の記者を退場さして頂けば……。
○大野幸一君 それではあとでよろしうございます。それからそれを新聞に書くというようになれば、恐らく今言つたことを否認してしまう、こういうような態度でやつたというのですかね。
○証人(杉山喬君) 態度じやない。はつきり言つたのです。口で言つたのです。
○委員長(伊藤修君) 外に……、それでは本日はこれで散会します。
   午後二時四十七分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     伊藤  修君
   理事
           岡部  常君
   委員
           大野 幸一君
           齋  武雄君
           遠山 丙市君
           深川タマヱ君
           來馬 琢道君
           松井 道夫君
           松村眞一郎君
           星野 芳樹君
  証人
   縫製加工業
   (從業員)   渡邊 健吉君
   中央経済調査廳
   調査官     關口重太郎君
   朝日新聞記者  杉山  喬君