第005回国会 本会議 第10号
昭和二十四年四月六日(水曜日)
   午前十時十二分開議
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 議事日程 第九号
  昭和二十四年四月六日
   午前十時開議
 第一 國務大臣の演説に関する件(第三日)
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○副議長(松嶋喜作君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。
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○副議長(松嶋喜作君) これより本日の会議を開きます。
 この際お諮りいたしますが、昨日赤松常子君より理由を附して決算委員辞任の申出がございました。許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(松嶋喜作君) 御異議ないと認めます。つきましては、その補欠として吉川末次郎君を指名いたします。
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○副議長(松嶋喜作君) 日程第一、國務大臣の演説に関する件(第三日)、昨日に引続き順次質疑を許します。木檜三四郎君。
   〔木檜三四郎君登壇、拍手〕
○木檜三四郎君 私は、簡潔に吉田総理大臣に向つて行政整理について質問をいたしたいと存じます。
 行政整理という言葉は、毎々唱えられているが実効の挙らぬ、いわゆる官僚の常套語である。この度吉田総理において行政整理断行を発表せられておりますが、これを從來のごとく官僚に任せて置いたのでは、実行は困難だと思うのであります。政府の整理の方針だと言つて新聞の報道するところによりますと、本年一月一日現在、官吏は百六十四万五千人、このうち整理が三十四万五千人、欠員が九万人、差引二十五万人を整理すると新聞には記されております。併しこの政府の御方針が実際に当つておるかどうかは存じませんが、併しこの行政整理は、整理の整理であつてはならんと思うのです。どこまでも能率主義で冗員で整理するのでなければならぬと私は思う。(「その通り」と呼ぶ者あり)而してこれが効果の挙がるも挙がらないのも、総理みずから下僚に方針を授けて執行せしむるのでなければ、行政整理はいわゆる官僚の常套語に終つてしまう。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)この点、総理の確乎たる方針を伺いたいと思うのであります。
 次に、私は吉田総理の見識を以て、戰爭中できました便乘主義の役所を廃止して貰いたいと思うのです。戰爭中できた便乘主義の役所というものは、そのまま今日存続しておるのであります。これは誠に怪しからんことでありますから、いわゆる吉田総理の見識の下に、戰時中できました便乘主義の役所は全部廃止して頂きたいと、こういうことを要求するものであります。そこで、ここで実例の一つを挙げて申すならば、彼の郡役所復活、即ち地方事務所設置のごときは、万人の認めて無駄な役所と言つておるものであります。郡役所廃止は大正十三年で、爾來十数年間、町村役場は直接に縣廳と交渉いたしまして、事務も円満にできておつた。それを突如昭和十三年の戰時中に郡役所を復活いたしまして地方事務所と称し、縣廳と町村役場の間に手数のかかる足溜りの役所ができたのであります。かようなものは、日本復興の途上におきましては全く無用なものであります。然るに官僚万能でありました惰性は、官僚の足溜りである地方事務所さえも廃止する勇氣がない。かようなわけでありますので、かかる役所のごときものは、官僚の手では絶対に廃止ができませんから、吉田総理のごとき独自の見識を持たるる政治家にして、初めて戰時中できました無用の役所を廃止することができると思うのです。(「そうだ」と呼ぶ者あり)この点吉田総理の御意見を伺いたいのであります。
 次に、今日公務員にしてその職務を果さざる者がどうも沢山あるように見受けるのであります。かかる公務員は、よろしく法に照して免職するのが当然であると私は思うのです。芦田内閣の時に、逓信省役人の或る者が発表いたしますところによりますと、全逓の公務員にして労働運動にのみ沒頭する者が五千人あると言われた。私はそのときに、何故こういう者を免職せぬかと質しましたところ、労働運動は許されているから免職はできないのだと言われた。公務員にしてだ、労働運動にのみ活動するがごとき者は、今日においては、國家公務員法がございますから、これで免職ができるわけであります。然るにその労働運動にのみ沒頭している、当時言われた五千人のごとき者は、そのまま今日その職にあるように見受けられます。これのみではありません。ともかくも本然の職務を空しうして労働運動にのみ働くごとき者は、國家公務員法に照して嚴重に処分して、範を天下に示して貰いたいと思うのです。この点に対しましては、特に総理の御手腕を示して貰いたいと思います。
 それから、昨年四ケ月間日本に滯在いたしまして日本を指導して帰られた米國の心理研究家のフローレンス・パウダーメーカー女史の言うところによりますと、民主主義というものはそれぞれの國の特性に應じたものでなければならぬ。こういうことを言われて新聞にまで出ております。誠にこれは至言であると私は思うのであります。労働法規のごときは日本の特性に副うようにして初めて労働界も活氣ずくと存じます。即ち我が労働法規のうちで日本の現状に副わざる法規は、女史の意見のように、よろしく日本の國情に照して改正案を提出し、以て日本再建のために、生産増殖の方針に副うように願いたいと思います。昨日も労働大臣から、労働法規の改正の一端を言われたが、私は今日現われておる労働法規、いわゆる旧憲法時代にできた労働基準法のごときものでもです。すべて日本の國情に副うように改正することが今日一番大切であると思うのです。この点に対しまして総理の御意見のあるところを伺いたい。
 次に、現在日本のように公務員の多い國は世界一で、事務の挙らんのも世界一だと聞いております。面積の廣い米國は、一九四〇年には人口が一億五千万人で、官吏は百一万人である。然るに面積の狹い面も貧弱な日本は、二十二年の人口が七千八百万人に対して、本年一月一日の官吏は百五十五万人です。かような次第でありますから、我が國民は公務員の月給拂いのために多額の負担をしておるということは確かであります。そこで今日、日本の現在は、繁雜なる役所と公務員が多いために却つて事務が挙らぬのであります。それ故に或る公團のごときは、委員会において述べるところを聞くと、上級官廳への報告表だけでも十数通に上り、これがために人員を要することが莫大である、こう言われております。かような次第でありまするから、今日ではどこまでも官廳事務を簡素にすることが一大急務であると私は思うのであります。それには第一に各省の数を減らすことが大切であると思う。この点に対しまして総理の御所信を伺いたい。
 又近來の大臣はです。多くは官僚のお手盛案に盲判を押し來つたものが多いのでありますから、役人が増すばかりで冗員淘汰ができなかつたのは当然であります。今回吉田総理は國民の信任を得て議会に絶対多数の同志あり、從つて組閣に際しましても総理の思う通りの閣僚がお揃いになつたことは、國家民衆のために喜ぶものであります。つきましては、総理大臣の手腕を以て日本再建の実が挙るように、行政機構の簡素化を断行して貰いたい。かくして戰時中できました便乘主義の役所を全部廃すると共に、行政機構の簡素化を実行いたして下さるならば、無駄な役所は廃止され、これに伴つて事務の簡素化となり、人員淘汰もできるのであります。從つて國民負担も軽減ができるのでありますから、この点に対しまして総理の御親切な御意見を伺いたいと思うのであります。
 次に、農林大臣にお伺いをいたします。それは國本安定の急務についてであります。これについて森農林大臣にお伺いをするのでありますが、農は國の本なりと昔の人が言つておりますが、この言葉は現在でもその通りであると私は思う。殊に食糧を外國から援助を受けておる今日においては特に然りであると思うのであります。これがためには先年自作農創設特別措置法まで拵えまして、農民の安定と増産を図つたわけであります。而うして從來の田畑所有者には、北海道は四町歩、内地は一町歩又は八反歩以上は保有せしめない。こういうことにいたして、他は政府が全部買上げて自作農を拵えたわけであります。同時に小作料の穀納を禁止して金納に改めて、その小作料金は法の委任によつて農林大臣が決定して、昭和二十一年から実行いたしたのでありまするが、昭和二十一年に実行した小作料金は米一石が七十五円、それから二十一年のお米の公定價は一石五百五十円であります。昨年の米の公定價は一石三千五百九十五円であります。大麦の二十一年にお決めになつた小作料は一石二十四円三十銭、昨年の公定價は一石が一千五百十六円二十二銭で、小麦は一石の小作料が四十四円四十三銭、昨年の小麦の公定價は二千二百四十七円七十五銭、大豆は一石の小作料が四十三円八十八銭、昨年の公定價は一石が三千四百五十一円です。かように申上げるだけでも、小作料が余り安いために、多数の地主及び家族は日々の主食に苦しんでおるわけであります。だから主食を得ようとするには闇値でなければ、極く少しだけでも土地を持つて小作に貸した人は食べることができない。農林大臣に小作料金の決定を委任したゆえんは、大臣は公平なる見地に立つて小作料金を定めるものとの意味から法律委託と相成つたわけであります。然るに不公平な、ただのような安い料金は何としてもお氣の毒でありますから、それに対して第一回國会以來、私は第四國会まで五回に亘つて小作料金の改正すべきことを力説いたしました。ところが政府は冷然と構え込んで、小作料は一度決めれば一定不動のものであつて動かすべきでないと言われた。それは通貨が安定して物價が平準を得ておる時代ならばそれでもよろしいが、二十一年以來物價は鰻上りに上り、賃金ペースは二十二年の千八百円から二千九百円、三千七百円、六千三百七円と上つておりますのに、小作料だけ米一石七十五円、大麦一石二十四円三十銭というように、ただのような安い値に決め置きましたことは、如何にも不公平であると思います。然るに政府は頑としてこれを改訂することに同意しない。そうして政府当局は余の再度の質問に対して、小作料は地代であるが故に動かすべきでないと答えた。又地主は食べることができなければ、生活保護法によつて救助するとまで答弁した。生活保護法はかようなものに適用すべきでありません。然るにこういう馬鹿げた答弁までいたしておるのであります。そうしてどこまでも地主をいじめておる。その政府当局が昨年は地代及び家賃の値上を命じた。然るに小作料だけは釘付にいたしまして更に動かさない。一般の物價は上つた。この点も偏頗の甚だしいものである。憲法十四條によりましても、すべて國民は差別待遇しては相成らんということまで規定しております。又二十九條には、財産権はこれを侵してはならんとあるに拘わらず、地主にのみ差別の扱いを敢行して恬として顧みない。これは確かに一方から見れば憲法違反であり、又民主主義に背くものであると私は思う。これは一種の官僚の地主いじめであります。かくのごときは町村における健全なる農家を破滅に陷れつつあるのであります。從來町村における健全農家は町村の自治運営の中心であります。そういうものが今日沒落しつつあります。最も國家としては考えなければならん。そうですから、小作料を納める者も、如何に規定とは言いながら小作料が安過ぎるというので、田畑に対して不安を抱いておる。從つて田畑を貸しておる者は所得は一文もない。逆に赤字に苦められております。この実情を見て、田畑所有は恐るべきものであるとの観念から、田畑所有に不安を持つように相成つたのであります。蓋し二十一年から二十四年の今日まで、農林省の農政局長のごときは、足掛四年一貫して地主いじめと民主政治の基礎たる町村自治破壊にのみ沒頭しておつて、更に公平なる頭を持たない。いわゆる民衆の公僕として誠に公平なる頭を持つべき人が偏頗な頭を持つておつたからであります。各耕作者の過剩米を出すにしても、公定價の三倍くらいで納めております。即ち一石について三千五百九十五円の三倍、一万七百八十五円で納むるのに対して、小作料は相変らず一石七十五円であります。かようなことでありますから俵代にも及ばぬ。政府が眞に民主主義の実を挙げて町村農民の健全な発達を図りたいと思うならば、田畑に対する愛着心を起させるようにしなければ農村は滅びます。農村が滅びて國家再建ができますか。それ故に農政局長のごとき偏頗な公僕に任せて置くことを止めなければ農村は発達いたしません。小作料は法律の委任により農林大臣の権限で決定するようになつているのであります。そこで農林大臣は大臣独自の見識を以て速かに小作料を改訂いたしまして、公正なる位置に直すということにして貰いたいと思うのであるが、この点に対する農林大臣の御意見を伺いたい。即ち小作料を公正に改め、地主、小作人、いずれに対しましても平等なる取扱をいたしまして、田畑所有に対する愛着心と安心感を與うるように仕向けることが農村復興の最大急務と私は思うのであります。この点に対しましての農林大臣の御意見を伺いたいと思います。(拍手)
 第三に総理に伺いたいのは、日本再建第一の急務は水害を防ぐことにあると思う。敗戰後の日本を復興するには何といたしましても水害が一番恐ろしいのであります。それ故に治山治水の根本策を思い切つて実行するのでなければ、年々水害に襲われまして、その都度多額の國費を費すのであります。一度水害に侵されますと上下を挙げて騒ぎはいたしますが、その熱が冷めると根本策を決めることを怠つて來るのであります。御承知のように一昨年九月の水害は正に東京都まで侵されんとして大騒ぎをしたのであります。その一昨年の水害の復旧さえもできないうちに昨年又水害に襲われております。かような次第でありまするから、この水害に対しましてはどこまでも根本策を講じないと、如何に妙案対策があつても防ぐことはできません。いやでもこの水害に対する莫大な費用は復旧のために投じなければならないのでありまして、私は去んぬる三日、一昨年関東の平野を浸したあの水害の根源である赤城山の奥に入りまして溪谷を見た。二十二年の時よりは二倍若しくは三倍に溪谷の山崩れはひどくなつております。若しこれを根本的に溪谷の砂防をいたしませんと、本年のような氣候不順の年には、あの一昨年のごとき水が出れば一昨年以上の莫大なる災害が参ります。その根本を治めないと、如何に節約と申しましても、昨日も岡本君の質問に対して答弁がありましたが、五ケ年計画というようなことで根本を忘れておりますというと、莫大なる災害費で一切は烏有に帰することになりますから、この点を私は最も総理において考慮をして貰いたい。そうして上流に、大河川などにおいては國家が上流に緩和の工事を施し……
○副議長(松嶋喜作君) 時間が経過いたしました。
○木檜三四郎君(続) 又山においてもその災害の影響の大なるものについては、國家が永久安定の砂防工事を施すようにして、世のいわゆる人氣取り的な姑息な工事は却つて災害を大にするだけで、國費はこれがために増大するばかりでありまするから、日本再建のためには、如何なる名案がありましてもそれは第二にして、水害対策、いわゆる水害防除の策を講ずるということが、これはGHQであろうとも、この災害に対しては御同意下さるだろうと思う。今日はいろいろ経費を割かれております。公共事業も割かれておる。今日は全日本災害復旧同盟までできて、東京都を初め各府縣が集まつて、この災害復旧費だけでも……政府は口だけで実際の支出ができません。その故に総理大臣においてこの点について十分な御考慮を願いたい。いわゆるこの際國民の信望を担うた総理大臣の憂國愛民の至誠を以て、治山治水と造林育成の根本策について、これが方針に思切つて國費を支出するようにして貰いたい。若しこれをやらないにおいては、ただ彌縫策で、いよいよ水害となれば、お互いが苦難に苦しまなければならぬのでありますから、この点を私は特に吉田総理の政治的手腕によつて、更にGHQにも交渉して……災害復旧は一昨年から名ばかりで金は出ておらんのです。そうですから、ともかくも他のものは一切烏有になりますから、GHQにも談判をして下さりまして、日本再建の第一急務はこの水害防除にあり、この点に御考慮を願いたいと思うのであります。時間がありませんからこれだけの質問をいたします。特に以上は至つて平凡なことでありますが、この平凡なことが実行せられないから、私は國家民衆のために質問をいたしたわけであります。どうぞ御諒察を願いたいと思います。
   〔國務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
○國務大臣(吉田茂君) 先ず岡本君の昨日の御質問に対して答弁漏れをいたしましたが、尚御質問の問題について、私長く病氣をいたしておつたものですから、最近の情勢等について多少自信のないことがありますので、只今も外務省に命じて資料を集めさせておりますから、明日まで答弁をお延ばしを願います。お許しを願います。
 只今の木桧君の御質問に対してお答をいたしますが、行政整理につきましては私は最も関心を持つておるので、組閣早々一應岩本國務大臣を主任大臣として行政整理に着手いたしたのであります。これはお話の通り、從來日本の行政制度は、永年の間の官僚、と申すのもなんでありますが、永年の間の思想の結昌であつて、そのために積り積つて今日の行政制度ができておりますので、これを改めるためにはお話の通り違つた観点から行政制度を研究する必要があると考えて、特に政党出身の岩本大臣にその主任大臣を依頼したわけであります。又岩本大臣は衆議院の副議長になられましたものでありまするから、その後を更に本多國務大臣に依頼をして主任として調査を今進めておるわけであります。これも同じく政党出身の大臣から從來と違つた観点から行政制度を研究して貰いたい、こういう考えからであります。只今お話の戰爭中に便乘してできた官廳等についての整理、これは無論必要であります。更に敗戰後において便乘してできた役所も多々あるのであります。この整理も考えなければならないので、これは本多國務大臣のところで以て熱心に今調査を進めております。で、その結果どれだけの人が整理ができますか、これは今尚調査中でありますから、その予想については新聞はどう報道いたしておるか存じませんが、未だ確定した数は私は報告を受けておらないのであります。少くとも私は未だ確定案を持つておらないわけでありまするが、併しながら行政整理は徹底的にいたすべきものである、いたさなければならん事態になつておるときに、差迫つておる予算にも行政の簡素化を図り、よつて以て財政の縮小を図るということは、これは必要な、今日においては最も必要なことでありまして、この点につきましては、政府といたして十分の関心を持つてその整理に当つております。又國家公務員にして労働運動に沒頭している者、これはお話の通り職務を曠廃するものでありまして、官吏といたして、又行政の上から申して、うつちやつて置けない問題で、これは各官廳においてデモ行進等があつた場合には常に報告を求めて、そうして公務員にしてその職業を放つて、そうしてデモ行進その他に從事している者の取締調査を十分進めております。又行政の事務の簡素化についてのお話がありましたが、これは誠に御同感であります。職員が多いために、役人が多いために却つて事務を煩瑣ならしめるということは事実であります。又同時に制度が惡いために、行政の制度が惡いために、或いは規則が惡いために、例えば税制が惡いために、從つて税務が複雜になり、又そのために余計納税者としては苦しむということはこれは事実であります。これは又人によるばかりでなく、制度も簡素化いたさなければならんのでありますから、行政制度、公務員の数を減らすと共に、行政の簡素化を図ろうといたして、最も熱心に、最も愼重に調査を進めているのであります。
 水害、治山治水についてのお話がございましたが、これは御尤もであります。政府といたしましても決してうつちやらかして置くわけではないのみならず、從來と雖もこの点に十分関心を持つているのでありまするが、併しながら何分財政窮乏のときでありますから、御希望の通りに十分これために費用を支出いたしておらないか知れませんが、併しながらこれは財政の余裕の生ずるごとに、この間も申したように、臨時議会等において十分補正をいたすつもりでおります。これを以てお答といたします。(拍手)
   〔國務大臣森幸太郎君登壇〕
○國務大臣(森幸太郎君) 木桧議員にお答いたします。小作料の問題について、現在のような石当り七十五円では甚だ不公正であるという御意見であつたわけであります。農地調整法が実行せられる途中におきまして小作料が石当り七十五円に引上げられたのであります。当時我々もこの決定額については相当意見を持つておつたのであります。ところが当時の政府の方針といたしましては、今農地調整を断行いたしている途中であつて、この場合に小作料等の異動は非常にこの農地改革の進捗に混乱を生ぜしめる、こういう氣持があつたのだろうと想像いたしますが、とにかく六十円が七十五円に訂正せられて、そのまま持続されて参つたのであります。今お述べになりました通り、その当時とは農産物の價格も非常に向上して参りました。而して農地改革は、昨年末におきまして百八十五万町歩を政府は買收いたしまして、百七十四万町歩を賣渡して、殆んど大体この農地改革の目的が完了いたしたと考えていいと思うのであります。この上は土地の交換分合によりまして、この農地改革のでこぼこを修正いたしたい、こういう段階に入つておるのであります。この場合に、私といたしましては、この小作料金の修正は是非行いたいと考えております。七十五円の標準で参りますと、從來小作米が標準になつておりましたがために、一反当り二俵或いは二俵半というくらいな小作料に平均されておりまするから、一反当り金納にいたしまして七十五円、或いは八十円、百円までの小作料になつておるのであります。地主の立場におきましては、到底このくらいな小作料を取りまして公祖公課等の負担もでき得ない。況んや生活の資に供することは到底でき得ないのでありまするが、米穀の公定價格から見ますると、漸く一斗か一斗五升の米を持つて行けば小作料が完納できる、こういう情勢にあるのであります。私は今日の農村の状況を見ますると、自作農となるより、むしろ小作になつておつた方がいいというような氣持が一部には行われておるのであります。今日、日本の農地改革をいたしまして、そうして日本の生産力を高め、農村の堅実化を図る上におきましては、自作農の創設でなければならんのであります。自作農こそ本当にその土地と自分とが一体になつて國土を愛する氣持から、自分の土地を自分の本当の土地として愛撫して行く、そこで生産力が興つて行くと考えるのであります。ところが、今この場合において、小作した方が却つていいのだというような規則を仮に拵えるならば、それはこの農地改革の目的に副わないことになるのであります。私は今日適当な小作料の修正をいたすべく目下檢討を加えておるのであります。近く二十四年度の小作料金より修正をいたしたいと、かように考えておることを申上げて、お答といたしたいと思います。(拍手)
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○副議長(松嶋喜作君) 平岡市三君。
   〔平岡市三君登壇、拍手〕
○平岡市三君 敗戰後の日本経済は、これを一言にして評しますならば、インフレの波に乘つて、ぬくぬくと自分の足を食つていたのであります。勿論米國の援助にも大いに依存いたして参りましたが、とにかく、かようなインフレは一刻も早く收束せしめなければならないことは、國民のすべてが要望いたしていたところであります。米國の援助にいたしましても、貿易資金特別会計の中で曖昧に消費され、これがインフれと相俟つて企業活動の実質的收益性が見失われ、その経済的責任が不明にされて、企業の自主性と我が國経済の独立にとつて極めて不健全な環境を形成して來たのであります。かかるときに米國政府から経済九原則が指令されたことは、むしろ当然と考えるのであります。(「ちよつと困つたろう」と呼ぶ者あり)又九原則に則つたドツジ公使の予算編成内示案なるものも、新聞紙上で拜見したところでは、これ亦妥当な措置と思考するのであります。從つてこの内示案を基礎として編成された本予算案に対しては、それ編成当局者の苦心と努力に敬意を表すると共に、これが支援を表明するものであります。なぜならば予算案の基礎をなす九原則なるものは、資本主義経済の法則に從つて一貫性を有しておると考えられるからであります。併しながら我が國の経済を一挙に安定せしめんとして急激なブレーキを掛けることになりますと、その影響するところは相当深刻なものがあると推測せられるのであります。問題はこの打撃に耐え得る程、日本経済の病体が回復しておるかどうかの診断に関することでありまして、甘やかされた病室の療養生活から人並の生活に帰つても大丈夫かどうか。その惡い影響を如何に最小限度に喰止め得るかの方策如何にかかつておると思考するのであります。私はこの観点に立つて以下少しく質問を試みたいと思うのであります。
 経済九原則と今年度の予算案の実施によつて生ずる新事態につきまして、國民の予感しておるものは、極度の金融梗塞と不景氣と失業等であります。予算案に予定せられておるがごとき厖大な税金、なかんずく所得税を徴收することは極めて困難であると思われるのであります。本年度予算案においては、所得税は前年度の一・七倍でありまして、勤労所得税が二倍になつたとすれば、事業所得税は一・五倍の増徴であります。企業整備や行政整理によつて失業者と廃業者が続出せんとする現在、否、二十三年度の徴税強行そのものによりまして廃業者が現に現われていますときに、かかる厖大な税收を國民の生活を脅威することなくして果して挙げ得る自信がおありかどうか、大藏大臣にお伺いいたしたいのであります。尚シヨーブ博士の來朝を待ちまして、かかる重税に対する軽減措置が講ぜられるであろうことに、政府も一縷の希望を繋いでおるようでありますが、若し所得税の軽減が実現し、少くとも昨年程度の負担となるならば、その收入減は何によつて賄うおつもりでありますか。若し腹案がありますればお聞かせを願いたいのであります。尚新らしい財源に関し、一昨日國有財産の拂下につきましてお伺いいたしたのでありますが、拂下を予定いたしておる財産の種類、帳簿價格、並びに時價による総額、及び本年度の賣却見積額と、その予算計上額をお示し願いたいのであります。又不動産の拂下につきましては、その賣却を迅速にし、管理費及び賣却費を節約するために、民間の機関、例えば信託会社等に委託することが良策ではないかと考えられますが、この点について大藏大臣の御所見をお伺いいたす次第であります。
 尚ついでながらお尋ねいたしたいことは、徴税方法が相も変らず天下り的、強権的で、帳簿を実情もろくろく調査せずして、いきなり割当決定をしておる点であります。これでは正当な納税をするためには、闇取引をするか初めから課税額の一部を隠蔽して置くより外に方法がないのでありまして、申告それものが無意味になり、又正直者は地を拂つてなくなるてありましよう。大藏大臣はよろしく末端の実情をよく把握せられまして十分な指導監督をなすべきでありまして、この機会に國民の代つて篤と御注意かたがたお願いいたして置く次第であります。
 次に予算案に盛られた行政整理の規模は如何なるものでありますか。又実際の具体的な規模は若し決定しておりますならば併せてお尋ねいたしたいのであります。若しこの両者に差違がありますならば予算上の変動も生ずるのでありますから、この場合に処置を考えておられるかどうか。これ亦大藏大臣の所見をお伺いいたしたいのであります。
 次に安本長官に伺つた方がいいかと思うのでありますが、一本爲替レートが設定されれば、從來これ以下のレートで輸出して來た商品の生産者は相当儲かるわけでありまして、この利潤を何らかの方法で吸い上げる考えがあおりであるかどうか。若しそうだとすればその資金を何に御使用になられますか。腹案がありますればお伺いいたしたいのであります。次に單一爲替レートが三百三十円前後で近い將來において設定されるであろうということは、今や國民の常識となつておりますが、この辺のレートで果して本年度輸出計画として傳えられます五億五千万ドルの輸出が可能とお考えになりますかどうか。この点は商工大臣にお尋ねいたします。今日すでに三百億円の輸出品滯貨が存在すると傳えられるのに、今後採算割れとなるべき商品群を考慮に入れるときは、憂慮せざるを得ないのであります。特に全輸出額の六分の一程度を占めると考えられる生糸の輸出は困難となり、製糸業のみならず養蚕農家にも大打撃を與えることが予想せられるのでありますが、これに関し如何なる対策をお考えであるか。商工大臣並びに農林大臣の所見をお聽かせ願いたいのであります。
 輸出増進については、能率第一主義による、いわゆる集中生産をする必要があることは申すまでもありませんが、極度に合理的に集中生産を行わんとしますならば私的独占となる虞れがあるのであります。例えばアルミ工業において、その原料たるボーキサイトが日本軽金属会社ほか二社に割当配給せられておりますが、その生産コストは、日本軽金属は他の二社に比して二割近く安いと聞いております。然るに日本軽金属のみに生産を行わしめますれば私的独占となるために、今日三社をして行わしめておるのであります。政府は今後私的独占禁止と合理的集中生産とを如何樣に調整せられる御意思がありますか。私的独占禁止法をこれに應じて改正する意図がありますかどうか。青木安本長官にお伺いいたします。次に輸入でありますが、三百三十円のレートが適用され、年間九億五千万ドルの輸入として、その輸入品の價格が現行公定價格によつて賣却されるとしますれば、幾何の輸入補給金を必要といたしますか。安本長官にお伺いいたすのですが、この額は一千億を遥かに超えるものと考えられるのであります。然るに予算案においては輸入補給金は、八百三十五億でありますから相当の不足となり、この分は輸入品について公定價格の補正が必要となると思われるのであります。勿論これらは第二次及び第三次製品に吸收される構想のように承わつておりますが、現に輸入食糧の値上げのために、近く主食の消費者價格を一割強値上げすると傳えられております。又米の生産者價格も昨年のパリテイ指数一三二に対し今年四月一日には一四三となつているとのことであり、且つ七月一日に改訂すべきところを、單一レート設定前に早期値上げするやに聞いております。かくすればますます以て主食の消費者價格の値上は必至と考えられるのであります。そこで、いつ頃、幾ら値上げするお考えでありますか。この辺の心組みを農林大臣及び安本長官にお伺いいたしたいのであります。
 又旅客運賃、郵便料金、家庭向ガス料金、地租、家屋税、住民税等の引上が実現すれば、相当に國民生活を圧迫することは必至であります。
   〔副議長退席、議長著席〕
 今、國家公務員の生活費を勘案するに、恐らく百分の五以上高騰するものと思われるのであります。從つて近い將來、人事院から政府に対し給與ベース改訂の勧告がなされるものと予期せられるのであります。そこで政府がかような勧告を受けた場合に、給與ペースを改訂して給與を支拂う心組みでおりまするかどうか。この問題は予算にも物價体系にも亦賃金安定の問題にも重大な関係がありますので、確たる御答弁を大藏大臣から伺いたいのであります。
 次に労働大臣にお伺いいたします。行政整理及び企業整備によつて、幾何の失業者が発生するお見込みでありますか。又輸出産業部門の振興によつて如何程を吸收し得ましようか。私見を以てすれば、一部輸出産業の採算割れ或いは合理化によつて整理せられる人間の方が、他の輸出産業に吸收され得る人数を相当超過するものと考えられるのであります。失業保險又は退職金によつて失業者を曲りなりにも養い得るのは六ケ月乃至九ケ月の程度であり、失業対策費は大幅に削減され、公共事業費も極めて乏しく、從來公共事業に從事いたしておる者の中からさえ失業者を出さんとしておる状況において、百四五十万人にも上ると予想せられる失業者群に如何にしてその生活を保証せんとするおつもりでありましようか。以上の諸点に関して御所見を承わりたいのであります。
 かく見て参りますと、國民経済の前途は必ずしも明るいとは申されません。ただ一つの光明は援助資金見返勘定の使用にかかつておるわけであります。併しながら援助費見返勘定は一千七百五十億円で、この勘定から五百億円が産業長期資金に廻されるとのことでありますが、四千億円と言われる産業資金需要の中、その残余はどこから融通されるのでありましようか。産業資金計画の全貌を安本長官にお伺いいたす次第であります、今後市中銀行の金融に占める比重は極めて大きくなると考えられますが、市中銀行の資金は收益性を目指して動くものでありまして、國民経済上喫緊の事業には流れにくいものであります。これは政府が一般金融機関の協力を求めるだけでは実効は挙らないもので、安本長官も必要な資金の規制について実情に即した措置を講ずると申されましたが、その計画なり腹案なりをお示し願いたいのであります。特に石炭鉱業に対し見返資金勘定から幾何の融資が予定せられておりますか、お聞きいたしたいのであります。赤字融資が認められない今日、税金も、賃金も、資材の代金も、支拂不能又は困難の炭鉱が続出しておることは周知の事実でありまして、これら限界コストに近い炭鉱業の経営は危殆に瀕しているとき、果してよく四千二百万トン出炭の要請が充足される確信をお持ちになるや否や。商工大臣の所見を伺いたいのであります。
 以上経済上の困難を指摘して参つたのでありますが、これに僻易して、世上、間々新教育制度の六・三制を放擲して六・二制に切替えんとする議論をなすものがありますけれども、私は絶対にこれに反対するものであります。折角一貫した教育制度を確立した矢先に、これを崩すがごとき無定見は切に愼しまなければならないと信ずるものでありまして、六・三制の維持及び充実に文部大臣の一層の御奮鬪をお願いする次第でありますが、差当つての問題とするところの六・三制のための予算は如何相成つておりまするか。その経過並びに現状を文部大臣からお伺いいたしたいのであります。又我が國の文教政策より見たる私立学校の重要性に鑑みまして、私立学校に対する貸付金の問題につきましても併せてお聽かせ願いたいと思います。(拍手、「八百長御苦労さん」と呼ぶ者あり)
   〔國務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
○國務大臣(池田勇人君) お答え申上げます。
 御質問の第一点は、所得税徴收見込額が相当多額に上つておる、これを遂行すれば非常な金融の逼迫を起すのではないか、又所得税がそれだけ徴收できるかというお話であつたと思います。御承知の通り昭和二十四年度におきましては、各会計を通じまして絶対的な均衡的な予算を作成いたします関係上、三千百億円の所得税を見込んだのであります。現行所得税制の下におきましては、給與所得につきまして昨年非常な増加をいたしましたのと、又事業所得につきましても物價の値上り等を勘案いたしまして、大体徴收し得る見込でございます。尚、税金を五千百億円も徴收いたしましたならば非常に金融逼迫が起るだろうということはお説の通りでありまするが、均衡予算を作りました関係上、財政が一般金融界に及ぼす惡影響はなくなりました。而も又一般会計より既発の復金債券を三百億円も償還いたしました。又今貿易会計におきまして三百億円の債務を負つておるのも、今年度において、これは一般会計から充足することにいたしております。又先程お話の米國の援助見返資金会計もできまして、これより相当産業資金を出し得ると思うのでございます。從つて金融逼迫という場面は起らないように努力いたす考えでおります。
 次に國有財産の賣拂見込額につきましての御質問でございまするが、先般施政演説におきまして総理からもお話がありましたように、今現在の國民負担の状況を考えまして、できるだけ國有財産の賣拂に努力いたしております。只今予算に見込んでおりますのは雜種財産の賣拂が大体三十億円足らずでございます。尚又財産税或いは戰時補償特別税で物納になりましたものの賣拂見込が十二億円程度、合計四十億円に上つております。尚又終戰処理賣の経費から買上げておりまする物品につきましても努めて賣却する計画を立てまして、相当の金額を計上いたしております。尚又予算には計上いたしておりませんが、今後賣拂い得るものをどしどし調査いたしまして、適当に買手の見付かりましたときには、これを賣拂う所存でいるのであります。
 第三に、徴税方法についてのお話がございました。誠にその通りでございまして、昨年來申告納税制度を採用いたしました関係上、営業所得或いは農業所得につきまして相当の摩擦があつたことは誠に遺憾でございます。我々といたしましては、できるだけこの摩擦を少くするように、そうして又納税者の方々からも誠実な申告をお願いするように努力いたしているのであります。何と申しましても今の税制は今の経済機構に適合しない点もございますので、最近の機会に税制の根本的改正をいたしますると同時に、税務機構を改善いたしまして、徴收の円滑と万全を期したいと考えております。
 次に行政整理について御質問でございましたが、行政整理につきましては、大体非現業官廳におきましては三割、現業官廳につきましては二割を目途として整理案を立てているのであります。これによりまして予算を編成いたしました。各官廳をおきまする機構並びに人員の整理はまだはつきりいたしておりませんが、大藏省で見込みました行政整理案よりも違つた結果が出まするならば、將來予算を変更することがあり得ると思うのであります。
 次に、地方財政につきまして、地租引上或いは果物に対する課税等がございますが、國税につきましては増徴いたしません関係上、地方におきましては、或る程度新税を設けたり或いは増徴するようでございます。御承知の通り地租につきましては賃貸價格が非常に低いのでございます。御承知のごとく昭和十一年に改訂いたしまして、その当時基本となりました米價は一石二十円五十銭程度で土地賃貸價格を定めました関係上、今の状態から申しまして、或る程度地租には負担力があると考えます。地方財政の窮迫を補うために上げることといたしたのでございます。
 次に、安本長官への御質問でございますが、今後産業資金をどうするかという問題がございました。援助資金特別会計千七百五十億円とも関係いたしますので、便宜上私からお答え申上げます。千七百五十億円の米國の援助見返資金特別会計の使途につきましては、只今決まつているのは鉄道、通信両特別会計の建設資金に見てまする二百七十億円だけでございます。從いまして残りの千四百八十億円につきましては全然決まつておりません。西ヨーロツパの諸國におきまして、このアメリカからの援助資金は、イギリスにおきましては殆んど全部國債の償還に充てております。フランスにおきましては長期産業資金にその大部分が持つて行かれております。又イタリーにおきましてはフランス同様、長期産業資金のみならず、住宅建設資金等にも使われている関係でございまして、これは一にアメリカと援助を受ける國々との協約によつて決まつているのであります。我が國は只今占領治下でございまして、こういう協約はできませんのでございますが、この使い方につきましては、政府においては國民全体の福祉になるような使い方を考えているのであります。大体関係方面と折衝いたしまして、金融が逼迫しておればその方面、又長期産業資金で事業計画遂行上必要ならば固定資産に、いろいろな使い方があると思うのでありますが、これはその場合々々によつて適切な使い方をいたしたいと思うのであります。産業資金四千億円というお話でございますが、これは今度の予算が決まりまして、そうして私は具さに將來の我が國の金融事業等を考えまして、計画を立てて行く予定でおります。(拍手)
   〔國務大臣青木孝義君登壇、拍手〕
○國務大臣(青木孝義君) 只今の平岡議員からの御質問にお答いたします。先ず第一の御質問でありまするが、只今のところまだ為替レートは本格的な設定の段階に参つておりませんので、輸出差益についてこの徴收をどうするか、決定的な方針を定めるまでに至つておりません。そうしてこれを放任するか否かということは、結局どれだけの差益が生ずるかということによつて決すべきものでありまして、今後の事態の推移と睨み合せまして決定したいと考えておる次第であります。
 それから第二点の私的独占禁止と企業の集中合理化とをどうするか、こういう御質問でありますが、この第二点につきましては、御承知の通り私的独占禁止法は、外資の導入ということと証券の民主化というようなことに見地から改正する意向でありまして、関係方面とも只今折衝中でありますが、幸いにして漸くその緒について参りましたので、今國会に提出する予定になつておる次第であります。
 それから第三点でありますが、今回の價格体系は、企業の大幅な企業努力と合理化ということを期待するということから、基礎資材につきましてはその企業合理化を目指しまして一應價格を据置くということに相成つておりますし、又第二次、第三次製品の企業について、基礎産業と同じように大幅の企業努力を期待すべきものであるという観点から、基礎資材の價格は据置であり、又安定帶物資の消費者價格も引上げられないということでありますので、來年度におきましては全般的に操業度の上昇を期待いたしまして、この輸入原料の値上りは、やはり二次、三次の製品の段階で、企業の合理化によつて当然吸收せらるべきものと解釈をいたしております。その限りにおきましては、健全なる合理化に努力する企業を不当に圧迫するというようなことにはならないという確信を持つておる次第でございます。
 それから第四番目でありまするが、これは昨年主食の價格を決定いたしまして以後の農業バリテイ指数が或る程度上昇しておりますので、その分につきましては從來通り追拂の措置を採つて、消費者價格については右のこの生産者價格の値上り分だけ四月中に値上げする、この額については目下檢討中であります。尚、輸入食糧につきましては全額輸入補給金を出すことになつておりますので、輸入面から消費者價格が値上りすることはないと信じております。
 それから第五点の御質問でありますが、これは只今大藏大臣からも一應お答えがあつたと存じますが、援助見返り勘定の使途につきまして今のところ明確な見通しがございませんので、只今計数としてはお示しする段階に至つておりません。ただこの際基本的なバツク・グラウンドの特徴等につきまして若干申上げますれば、第一に復金の業務縮小、それから健全金融の徹底に伴いまして、金融の基調は経済九原則が第一義的となつて参ります。第二には資金供給力としては、インフレの安定に伴いまして貯蓄の名目的な金額は恐らく伸び悩むだろう。他面、財政面から償還がありまするのみならず、援助見返り勘定からの放出も期待されますので、資金量としては必ずしも極度の不足を告げるということにはならぬと存じておるのであります。第三には、併しながら、この右申上げました金額の大部分は市中金融機関を通じて流れる。そこでこれを長期資金として融通されるか否かという問題であります。この点については問題があるのでありますが、一体どうして設備資金を調達するか、これは施策の大きな重点になると存じます。通貨事情は金融情勢を反映して、むしろ收縮氣味を呈するということは認められることであります。こういう状況の下にありますので、目下資金計画の策定につきましては種々檢討を重ねておる状態でありまして、特に援助見返り勘定の使途につきましては関係方面とも篤と連絡をいたしまして、この間の事情を十分明確にして参りたいと存じておる次第でありまして、どうかこの点については一應御賢察の程をお願いたして置く次第であります。
 それから第六番目でありますが、御承知の通りに復金の業務縮小に伴いまして、金融は大部分市中金融機関が行うことになりますので、財政の償還金等の関係もありますし、又手許も若干潤沢になる見込でありますから、その資金をどうして経済復興或いは生産増強のために操作し活用するかが極めて重要な事項になります。とにかく從來と異なりまして、國債、復金債等の財政所要資金を市中から調達する必要はなくなつたのでありますから、今年度の融資規正の狙いは、重要産業の設備資金の確保、貿易手形、公團認証手形等の緊要な運轉資金の供給が円滑に行われ、短期國債消化の点等が問題になつて來るのであります。そこでこれと同時に、又我々は日銀の金融操作ということの問題がどうしても実情に即して行われなければならん、從いまして、この点は一つ適切に運営を行なつて、金融の安定正常化を期したいと存じておる次第であります。この具体的の内容につきましては只今折角考究中に属しておりますので、これは明確になり次第、漸次御報告ができると存じております。以上を以ちまして平岡議員の御質問に対するお答といたします。
   〔國務大臣稻垣平太郎君登壇、拍手〕
○國務大臣(稻垣平太郎君) 平岡議員の御質問に対してお答を申上げます。
 第一問は、レートが三百三十円に決まつた場合において、予定されておるところの輸出が可能であるかどうかということであつたように存ずるのであります。先程安本長官からお話がありましたように、まだ爲替のレートがいつ決まるか、又その金額はどうなるかという問題は未定でありますので、ここに、はつきりしたことは申上げにくいのでありまするが、仮に平岡さんの御仮定のように三百三十円にレートが設定されたと、こういう場合を予想いたしまして、現在の價格、そして輸入には補給金を出すが輸出には補給金を出さないという建前を考えて見ますと、大雜把に申上げまして、現行においては五七%だけ輸出が可能であつて、あとは輸出が困難であると、かように想定されるのであります。併しながらこれにつきましては、我々といたしまして、できるだけこれが予定の輸出量を完遂したいという目的の下に種々工作いたしておるのでありまして、これがために御承知のように四月一日からその準備工作といたしまして、四百二十五円以上のものについては四百二十五円を限度としてこれを承認するということにいたしまして、價格の引下を考えておるのでありますると同時に、一方先程から問題になりました企業の合理化或いは集中生産方式によりまして、コストの引下に努力いたしたいと、かように考えておる次第であります。
 それから第二の御質問は、仮に三百三十円の場合に生糸の輸出ができるか、できないかということであつたと存ずるのであります。そして又これに対して何らかの処置を考えておるかどうかということであつたと思いまするが、まだレートも設定いたしておりませんので確たることは申上げかねるのでありまするが、生糸が輸出品の中で非常な重要なる部分を占めておることは御承知の通りでありまするからして、これについては適当に考慮して行きたいと考えておる次第であります。
 それから第三には、石炭の本年度の予定四千二百万トンの生産が可能なりや否やという御質問であつたように存ずるのであります。御承知のように二十三年度におきましては三千六百万トンを予定いたしまして、三千四百七十一万トン、大体九七%近くの生産を挙げたのでありまするが、三月の生産量は大体において三百四十六万トンの予定に対して三百五十二万トンの成績を挙げております。又採炭夫につきましては、一人当りが戰前の基準より生産能率が上つておる。採炭能率が上つておるのであります。今日各炭鉱業者は経営の合理化について種々工作をいたしておりまするし、又石炭に関するメモランダムに指摘されておりますように、坑内夫と坑外夫の割合を六と四というような、坑内夫六、坑外夫四の割合に、今後三ケ月くらいの間において急速に実施する予定に相成つておるのであります。それから換算いたしまして、採炭夫の生産量が戰前の率まで達しておりますのでありますからして、採炭夫の人数を殖やし、坑内外夫の入れ替えを行う。こういうことによつて四千二百万トンの生産については目標をどうしても完遂いたして行きたいと、かような考えを持つておりますことを御報告申上げます。(拍手)
   〔國務大臣森幸太郎君登壇、拍手〕
○國務大臣(森幸太郎君) お答いたします。生糸の問題についてでありますが、只今商工大臣がお答えいたしました通り、若しも三百三十円というレートが決まりますれば、非常に生糸の輸出に障害を來すのであります。絹織物の方においては相当に緩和される点もありますけれども、生糸につきましては、民承知の通りの今日の情勢でありまして、三百三十円ということが確定されますと非常な打撃を蒙むるのであります。現在のパリテイにおきまして考えますると、生糸の少し掛目が高いのではないかというようなことも考えられるのでありますが、御承知の通り蚕糸業五ケ年計画を確立いたしまして、製糸機械設備でありますが、これは、ほぼその五ケ年計画が完成いたしたのであります。然るに食糧等の事情によりまして、繭の生産が増加いたしません。漸く製糸の要求いたしまするところの六割余りのパーセントしか生産されておらないのであります。ここに日本の製糸業の経営に甚だ不利な点を発見するのであります。今後繭の生産につきまして、できるだけ生産原價を切下げるという方面に力を盡して行きたいと考えておるのであります。例えば現在の繭の生産は桑園反当りにしまして八貫目から九貫目程度でありますが、これが戰前蚕糸業の隆昌を來した当時におきますと、十三、四貫の生産額があつたわけであります。桑園に対する肥料の増配等も考えまして、又抜術の協同経営等も考えまして、繭の生産費をできるだけ安くするということによつて、この掛目の変更に対処するように考えて行きたいと思います。又製糸企業の上におきましても、今日のように機械設備と原料との不調和のために、非常に企業上生産を割るというような情勢でありますので、この方面においても業者の自発的な企業合理化を図つて行きたいと、かように考えておるわけでおります。取敢えずにおきましては爲替のレートを四百二十円ということにいたしまして、暫定的に維持しておりまするが、若し三百三十円ということに決定いたします場合においては、今申しました点におきまして、できるだけの施策をいたしまして、そうしてこの輸出の三割以上を占めておりまする生糸類が輸出貿易に頓坐を起さないように努力いたしたいと、かように考えておるわけであります。
 尚米の價格をいつ定めるかという御質問でありましたが、先程安本長官から米の消費者價格を近く変更するという御説明でありました。これは多分四月のうちに改正されることと思うのでありますが、今日パリテイが一四三になつているのであります。昨年は一三二でありましたが、一四三に上つておりまするので、このパリテイによりまして消費価格を決めて行きたい。この生産者の價格と言いますのは七月と十一月であるのであります。この四月に若し消費者價格が向上いたしました場合において、生産者に対してはどういう処置をとるかという問題でありますが、これは安本長官も申しました通り、麦に対しましても米に対しましても、その値上りに対してこれは還元するということを從來通り行うつもりであります。從つて二十四年米穀年度における生産者の價格は、この七月において、そうして十一月において、これは從來通り当時の一四三というこのバリテイ指数を以て生産者價格を決めて行きたいと、かように考えておるわけであります。この消費者價格の向上によりまして、生活費に非常な影響を及ぼすがという心配をされる向もあるようでありますが、今日の調査によりますと、左程大して生活費に対しての影響を蒙らしむるものではないというような見方もあるようであります。生産者の價格は今申しましたように、從來通りこの七月と十一月において決定するということを御承知を願いたいと存じます。(拍手)
   〔國務大臣鈴木正文君登壇、拍手〕
○國務大臣(鈴木正文君) 平岡議員の御質問にお答いたします。
 失業者の数の問題でありまするが、これは爲替のレートの問題、それから行政整理の最終的の決定等もありますので、現段階において不動の数字は予測できませんけれども、從來しばしば発表して参りました百四十万乃至百七十万という数字を現在は労働省は推定の基礎としておるわけでございます。これに対しまして民需産業の方面からの雇傭量の増加は、大体四十万ぐらいではないかという推測をいたしております。そのうちお尋ねになりました輸出関係の方は、その半分の二十万前後ではないかという推定をしておるのであります。爲替のレートの決定によつて、輸出産業自体の中でいろいろな変化はありましようけれども、五億五千或いは六億ドルの輸出が政府の輸出振興を中心とする新らしい政策によつて達成し得られるならば、出入りはありましようけれども、この程度の雇傭量の増加というものが期待し得るのではないかというふうに考えているわけであります。そういたしましても尚相当数の失業者が残る。これは翌年度以後の國民経済の拡充による雇傭量の増加によつて最終的に吸收して行かなければならないのでありますけれども、その中途の段階におきましては、失業保險なり或いは失業対策事業などによつて措置して行く。これは誰が考えてもそうなのでありまして、失業保險の保險経理は幸いに健全を示しておりますので、場合によつては七十万前後の包容力も持つているのでありまするけれども、併し政府といたしましては大体四十万前後の準備をしているわけであります。それから現在政府が行なつておりますところの直接的な失業対策或いは職業補導、これらの二つを併せまして、大体十万前後を暫く收容して行くことができるというふうに計算して参りまするというと、最終に直接的な失業対策事業によつて処理しなければならない数というものは、これも明確不動なものは算定できませんけれども、三十万前後になるのではないかと思うのであります。これに対しまするのがいわゆる直接的な失業対策でありまして、お説のごとく、予算面におきましてこれに対する措置は未だとられておりませんけれども、これは一度にどつと出て來るのではなくして、上半期末から下半期にかけて出て來ると予想されますので、時期を遅らさないように予算的措置をとる、或いは臨時國会等をも通じまして、適宜な予算措置をとりまして、適当な都市を中心とし或いは知識階級の失業をも加えましたところの失業対策事業を、現在政府部内にありまするところの失業対策審議会の活動とも俟ちまして、これを樹立いたしまして、誤りなくこの間の情勢に処して行きたい。そういうふうに考えておる次第でございます。(拍手)
   〔國務大臣高瀬荘太郎君登壇、拍手〕
○國務大臣(高瀬荘太郎君) 平岡さんの御質問にお答えいたします。
 我が國民主化の基盤であり文化國家の根源を培う義務教育の完成に非常に重大な関係を持つております六・三制建築費國庫補助の予算につきましては、現在尚関係方面と極力折衝中でありますが、未だ見通しが付かない状態でありまして、非常に憂慮しておる次第であります。尚今後におきましても、臨時國会その他あらゆる機会を捉えまして、これが計上増額に努力いたしまして、財政的原因から参ります教育上の欠陥に対しましては、これを極力最小限度に止めるために全力を盡す考えでおります。次に我が國教育界における私学の重要性を考え、又私学の復興経営が現在非常に困難な状況にある点に鑑みまして、私学貸付金につきましては、文部省としてこれを極めて重要視し、相当額の予算計上を図つたのでありますが、遂にこれが実現されないことになつたのであります。併しこれにつきましては何らかの方法を以ちまして善後措置を講じたいと考え、極力研究中でありますから、御了承を願いたいと思います。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(松平恒雄君) 小川久義君。
   〔小川久義君登壇、拍手〕
○小川久義君 私は新政クラブを代表し、將又全國から集まりました農民代表の血の叫びを休しまして、吉田内閣の施政演説に対する質問をいたしたいと存じます。第三次吉田内閣は去る一月の総選挙における民自党の勝利に基いて成立したのでありますが、民自党の勝利は、必ずしも首相が演説の冒頭において主張せられたごとく國民が保守政党を支持して生じた結果であるとは言えない。それは片山、芦田二代内閣に対する失望という消極的條件と、あわゆる民自党の公約に対する期待という積極的條件とが、民自党進出の二大條件をなしたのであり、決して健全なる保守政党支持というような抽象的な根拠に由來するものとは考えられないのであります。而して前内閣に対する國民の失望という消極的條件に対しては、民自党内閣は責任を負う何らの責もないのでありますが、民自党の公約に対する期待が選挙の結果を支配した事実に対しては、政府は嚴粛に責任を自覚すべきであります。(拍手)而して政党政治の信頼を擁護する義務を負うべきであります。然るに施政演説によつて示された政府の政策は、総選挙当時の民自党の政策的な性格乃至公約とは著しく変質しておることは極めて明瞭であります。首相は、今回提出した予算案は九原則並びにドツジ氏声明を了承し、政府の責任においてこれを具体化したものであると言つておるのでありますが、九原則はすでに選挙前に示された原則であります。民自党はこれを確実に把握するところなく、民自党的解釈をして公約を振りましたのであります。ところが施政演説を承わりますと、公約はいつの間にか退却して、九原則の盾の蔭に隠れてしまつたのであります。(「うまいぞ」と呼ぶ者あり)首相は公約は漸を追つて実現して行くと、公約の公約をしておるのでありますが、(笑声、拍手)いつのことか分らないのであります。(「その通り、その通り」「何の公約だ」「股ぐらこうやくだ」「うまいうまい」と呼ぶ者あり)漸を追つて実現すると言うのでは、具体的な公約は徒らに大衆を欺くための餌になつてしまいます。取引高税の撤廃のごときも、税制審議会を設けて調査するというのでは、公約の欺瞞性を端的に示すものと言われても仕方がないと存じます。(笑声)而してかかる政策の変質は、客観性の変化によつて招來されたというよりも、民自党の政策的な感覚の無責任さと放漫さに由來するものであります。(拍手)首相は、國民経済安定のためには速かに旧弊の切開手術が必要であると強調されたのでありますが、最も速かな手術が必要なのは外ならぬ民自党の政策自身であることを自覚すべきであります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり、拍手)私は、総選挙の結果を支配した公党の公約が、予見し得なかつた新たなる事態に基かずして実現し得ない場合、内閣は総辞職すべきが政党政治の原則であると思うが、これに対する首相の所見を承わりたいのであります。(「うまいぞ」「ゆつくりやれ」と呼ぶ者あり、拍手)
 次に時間の関係上、質問の内容を重点的に限定いたしまして、專ら農村対策についてお尋ねいたします。戰爭中、又それ以來今日にかけて、日本経済がしばしば危機を傳えられながら、その崩壞を免れて來たのは、農民経済の犠牲的負担が大きな支柱となつて來たことは爭われない事実であります。これに対して政府は、從來農民経済力の培養と農業再生産確保のために、どれだけの誠意を示し、その実現を図つて來たか、甚だ疑わしいものがあるのであります。今回明らかにせられた政府の政策並びに予算案は、かかる傾向を一層強く感ぜしめるものでありますが、我々は農業対策に関して、次の諸点について関係各大臣の誠意ある明確なる答弁を願います。
 第一に、米價を初め農務物の價格政策についてであります。農民経済にとつても國民生活全般にとつても極めて重大な影響を持つ米價の決定について、現行のパリテイ方式は、技術的に最も安易な方法を選んでおるのであり、生産費並びに再生産費の算定その他の難問題を回避したものであります。
 政府は妥当なる米價を決定するため審議会のごときものを作り、農民代表をもそれに加える意思があるかどうか、先ず承わりたいのであります。今日主食の供出價格と配給價格との開きは余りにも大き過ぎるのでありますが、農家に対する還元米までも高い消費者價格を適用しておるのであります。政府はこれを改善する用意を持つているかどうか伺いたい。又パリテイ方式が採られる限り、我々の努力によつて、昨年実現した米價調整金は、当然の措置として供出制度の存続中は継続すべきであるにも拘わらず、巷間、大藏大臣はこれを廃止する意図があるかのごとく傳えられているが、その眞否を伺いたいのであります。尚輸入食糧の價格関係は、國家財政上、國民経済上、重要問題であると同時に、將來の日本農民経済にとつて重大関心事でありますので、最近の石当り價格と、輸入爲替レート決定後の米麦等がそれぞれ一石当りの價格が幾らであつて、現在の供出價格との差額が何程であり、如何に処置されておるか、又將來について見通しがどうであるかを明確にお示し願います。
 第二は供出制度についてであります。供出制度は、食糧確保臨時措置法によつて事前割当制が確立し、追加割当は行わない建前になつているが、現に二十三年産米について超過供出の強制的な割当が行われたので、農民は完納せんとすれば自分の飯米が足らなくなる、納めなければ威かされるので、幾夜ともなく相集まつて涙に暮れる実情が各地に見受けられるのであります。(拍手)政府は如何なる法的根拠と如何なる事情に基いたのであるか、先ず承わりたいのであります。更に供出完了後の自由販賣を主張して來た民自党の手によつて、皮肉にも追加供出の法制化を行う予定と聞くが、その眞否と根拠を承わりたいのであります。
 第三に災害対策について伺います。終戰後年々頻発している災害は農村に重大なる脅威を與えていることは申すまでもありませんが、すでに発生した災害に対する処置についても、今後の予防措置についても、今回の予算額では事業の遂行に支障を來し、從來からの継続事業をも打切らざるを得ない虞れがあるのであります。政府は今後如何にして災害に対処されんとするか、又すでに完成した工事に対する負担金を、どうしていつ支拂いするか、確実な日限をお示し願いたいのであります。一例を申上げますれば、富山縣の昭和二十二年度の災害は、國庫負担額二億二千四百七十余万円に対し、その半額にも足らない四八%の一億八百八十余万円しか交付されていないのであります。又同二十三年度分は、総額十億四千余万円に対し、ただの九・八%の一億二百余万円しか交付されていないのであります。かような状態で、地方廳は塗炭の苦しみをしている実情であります。これは單に富山縣の実態でありますが、全國殆んど同樣であると考えられますので、速かな対策を確立するよう強く要望いたします。
 第四に土地改良の問題であります。元來経済力の乏しい農民が、供出の強化と租税並びに價格政策によつて過重の負担に苦しんでいる今日、みずからの経済力によつて土地改良事業を実施することは到底できるものではありません。政府は食糧並びに農村対策の重要なる一環として、責任を以て全額國庫負担で実施すべきでありますが、これに対して農林大臣の対策を伺います。
 第五に、農村金融問題について伺います。大藏大臣は財政演説において、長期資金の供給については、復金が從來の融資方式を廃止することとなつたため、この方面の資金供給に対する一般金融機関の積極的活動を促進すると共に、農林金融、中小企業金融等の資金の供給に遺憾なきを期したいと述べておられるが、その詳細なる具体案をお示し願います。
 第六に、農業團体である農業協同組合等が池経済活動をなす場合、許可等を極端に制限し、或いは不自然な統制を行い、農村生活の実情に反する場合が少くないのであります。一例を挙げますと、農業協同組合等が組合員各自の自家用の味噌醤油等の麹を共同製造せんとする場合、米を原料とするものは一切許可しない。米以外の原料を使用する場合も不当に困難な條件を設けて農村生活の実情を無視した取扱をなし、一般業者との間に差別待遇が行われている実情でありますが、農業協同組合等の発展上、かかる不自然な取締や差別的取扱を廃止する意思があるかないか。大藏大臣にはつきりお伺いいたします。
 第七に農業課税について伺います。現在重税によつて生活を脅かされているのは廣く國民各方面に亘つて共通の事実でありますが、農民に対する課税は技術的にも問題があつて、農民経済への重圧となつているのであります。政府は農民経済の実情を考えて、農業所得税に対し基礎控除額を大幅に引上げるか、又は農業從事者ごとに基礎控除を認めるか、いずれかによつて税の適正を図る意思があるかどうか。次に藁その他中間生産物を所得に計上することは明らかに不当であり、これを廃止すべきである。又必要経費の算定に当つても、作業設備、農耕牛馬及び農機具、その他の償却の見積り、必要資材の実効價格等を檢討して、再生産に支障なきよう措置する考えがあるかどうか伺います。
 最後に、農村に取つても、否、國民全体に取つて最も大きな影響を受けるものの一つである教育予算について、首相、藏相並びに文相に伺います。從來と雖も教育は予算の上では常に冷遇されて來たのでありますが、今回の予算案は全く新教育制度の危機を孕む予算であると言わざるを得ないのであります。國民は耐え難きを忍んで新教育制度に順應協力し、國が必ず支拂つて呉れると信じて多額の金を立替え、又は多額の寄附を負担し、或いは市町村有の財産を投げ賣つて今日に至つているのであります。吉田内閣はこれを未完成のままに放置せんとするものであるか、或いは何らかの教育制度改正を企図するものではないかと、國民ひとしく成行きを重視しているところであります。吉田首相は第四回國会の施政演説において、新教育制度の実質的完成を約束したのであるが、その考え方が変つたかどうか承わりたいのであります。若し変つていないとすれば、実質的完成の詳細なる内容と具体策を明確に答弁願います。この内容については、六・三制の問題と共に特に農村において政府予算の関係で危機に瀕している定時制高等学校についてもお示し願います。私の質問はこれで終ります。(拍手)
   〔國務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
○國務大臣(吉田茂君) お答をいたします。吉田内閣は公約の実行については緩急を図つて漸次実現するつもりであります。從つて総辞職をいたす決心はないのみならず、進んで國家の再建復興のためにますます努力する考えであります。又教育についても重視いたしていることは、私の施政方針にある通りであります。財政の緩急を図つて実行いたすつもりであります。(拍手)
   〔國務大臣森幸太郎君登壇、拍手〕
○國務大臣(森幸太郎君) いろいろ御質問がありましたが、或いは聞き漏らしのようなことがあつたら又御注意願います。
 農産物の價格決定につきましては、農産物價格審議会というものを設けまして、これは民間團体、関係者等が集まりまして、適正な價格を決めることにいたしているのであります。尚、裸供出に対しまして、還元米を消費者價格の高いもので賣付けているということでありましたが、実はこの還元米をせなければならないという供出の方式は相当考慮せなければならないのではないかと考えているのであります。現在の供出方式を合理的に変更いたしまして、そうしてこういう裸供出をせなければならないというようなことのないように適当な時期に改めて行きたいと、かように考えているわけであります。
 尚、次にお尋ねになりました追加割当供出でありまするが、これは昨年決定いたしました食糧確保臨時措置法によりまして、事前割当をいたした後は決して割当はしないということに法制化されているのであります。ところが昨年の作柄の事情等から食糧の事情の將來を考えて見まして、超過供出に対して、自主的と申しまするけれども、相当の数を確保せなければならないという立場になりまして、これに関係方面からの注意もあつたわけでありまするが、各府縣に割当てまして、これだけは何とか自主的に出して貰いたい、こういう政策を現在とつているわけであります。併しこういうふうなことをやつておりまして、アメリカから食糧を輸入して貰つている國の現状といたしましては、甚だアメリカに対しても申訳がないのであります。それで今回食糧確保臨時措置法の一部を改正いたしまして、その年の作柄と、その年の食糧事情によりまして、事前割当を更に変更するような法制化をせなければならないということになりまして、近く皆樣の御審議をお願いいたしたいと考えている次第であります。(「自由販賣はどうした」と呼ぶ者あり)こういうふうなことは現在の供出方式が不完全であるとも考えられるのでありまして、これはその方式を根本的に変えまして、そうして、こういうふうなことなくして食糧の供出に心から協力して貰えるような政策をとつて行きたいと、かように考えているわけであります。
 尚、災害に対する土地改良の問題でありまするが、これは非常に予算が限られまして、非常に自分らの考えておりまする計画を遂行することが十分に行かないことを残念に考えるわけでありますが、今日に許された予算の範囲内におきまして、できるだけその効率を挙げますように耕種方面についても改良を加え、そうしてこの土地の改良を実現し、災害の復旧に対しましても、この金融問題についても考慮いたしたいと考えておるのであります。昨年九月から起りました農林水産復興金融につきましては、中央農林金庫を通じて漸く六十億の枠を貰つたのでありますが、実際は二十一億万円を融通いたしたのであります。併しこの金融につきましては非常に農村において要望せられまして、すでに十億、二十億という申込も現在受けておるようなことでありまするので、政府といたしましては、この農林水産復興金融の途を將來においても是非実現いたしまして、農村の金融面を緩和いたして行きたいと、かように考えておるわけであります。
 尚、協同組合の自治化についてお尋ねになつておりまするが、協同組合は御承知の通り農業者自体の組合でありまして、政府は全然これを指導し監督することは許されないのであります。今までの農業会でありますると、政府がこれを指導し監督する立場にあつたのでありまするが、この協同組合の組織の上から申しまして、全然これは農業者自体のための農業者の組合であつて、政府がとやかくこれを指導することは許されないのであります。併しながら今日の段階におきまして、まだ各種協同組合が設立して間もないことでありまするが、いろいろこの協同組合の意思に副いまして、政府はあらゆる施策を以て相談に應じて行きたいと、かように考えておるわけであります。
 尚、輸入食糧の問題でありまするが、詳しいことの御要求がありましたならば、数字に亘ることでありまするから、又別に表にして差上げたいと存じます。
○議長(松平恒雄君) 青木國務大臣……只今青木國務大臣の名前を呼びましたが、大藏大臣が答弁せられるそうであります。大藏大臣。
   〔國務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
○國務大臣(池田勇人君) お答え申上げます。第一の御質問は、私がパリテイ引上げによりまする既供出者に対しましての追加支拂をやらないということを言明したかどうかというお尋ねでございまするが、そういう考えは持つておりません。パリテイが変つて來れば追加支拂は当然でございまして、食糧管理特別会計から出すべく準備いたしております。第二に農村金融の問題は、只今農林大臣のお話になつた通りでございます。從來は四半期ごとに復興金融金庫から十五億円の融資を考えておりました。併し昭和二十四年度から復金の貸出は原則として停止する考えでございます。從つてこれが対策といたしましては、預金部その他を通じまして農業金融の円滑を期すべく考えております。次に農林所得につきまして課税方法についての御意見でございました。只今は所得の基礎控除につきましては、所得者一人といたしております。併し農業という特殊の業務を考えて参りますると、やはり戸主のみならず、妻も或いは長男も農業所得を得ることに相当貢献しておられます実情を考えまして、今後の所得税の改正につきましては、戸主のみならず農業所得に貢献しておられる妻或いはその他の方についても基礎控除的の恩典を與えるべく考えております。尚、減價償却等につきましては、他の所得と同樣な考えで課税の適正を期しておる次第でございます。
   〔國務大臣高瀬荘太郎君登壇、拍手〕
○國務大臣(高瀬荘太郎君) 我が國における新教育体制の実施が、現在の財政的原因によりまして甚だ困難な事態に立ち至る虞れのありますことは事実でありますが、私としてはあらゆる努力を傾けましてこの困難を克服して新体制の完遂に邁進したいと考えております。(「ちつとも具体的じやないぞ、答弁が」と呼ぶ者あり)尚六・三制建築費の國庫補助予算の削除或いはその大幅な削減が地方農村に與えます深刻な影響につきましては、誠に憂慮に堪えないところであります。これがために内閣といたしましても今後あらゆる機会を捉え、又あらゆる手段に訴えまして、これに対する財源の獲得に努めて、地方行政当局及び地方民衆の教育に対する絶大な熟意と犠牲に対しまして應えなければならないと考えております。(拍手)
○議長(松平恒雄君) 議事の都合により午後二時まで休憩いたします。
   午後零時十八分休憩
     ―――――・―――――
   午後四時開議
○議長(松平恒雄君) 休憩前に引続きこれより会議を開きます。
 参事をして報告いたさせます。
   〔宮坂参事朗読〕
本日議員から委員会審査省略の要求書を附して左の議案を提出した。
 阿波丸事件に基く日本國の請求権の放棄に関する決議案(佐藤尚武君外七名発議)
     ―――――・―――――
○議長(松平恒雄君) この際、日程に追加して、阿波丸事件に基く日本國の請求権の放棄に関する決議案(佐藤尚武君外七名発議)(委員会審査省略要求事件)を議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(松平恒雄君) 御異議ないと認めます。本決議案につきましては、佐藤尚武君外七名より委員会審査省略の要求書が提出されております。発議者要求の通り委員会審査の省略することに賛成の諸君の起立を請います。
   〔起立者多数、「反対」と呼ぶ者あり〕
○議長(松平恒雄君) 過半数と認めます。よつて本決議案は委員会審査を省略することに決しました。これより発議者に対し趣旨説明のため発言を許します。佐藤尚武君。
    ―――――――――――――
   〔佐藤尚武君登壇、拍手〕
○佐藤尚武君 諸君は阿波丸事件を御記憶のことと思います。阿波丸は日本郵船会社の船でありまして、連合國側の俘虜及び抑留者に宛てられた米國からの救恤品を積んで、昭和二十年二月十七日南方諸地域に派遣されました。この救恤品の輸送は米國政府からの要請に基いて行われたのでありまして、連合國から安導券を與えられていたものであります。阿波丸はその使命を果した後、二千四名の乘客及び乘組員を乘せまして、三月二十八日シンガポールから帰途についたのであります。ところが四月一日眞夜中、台湾海峽におきまして一米國潜水艦によつて撃沈せられました。救出せられたのは一名の乘組員のみでありました。聞くところによりますと、この事件に関しては、政府は戰時中から又終戰後も引続き米國政府と折衝を重ねていた由であります。併し未だ解決に達してはいなかつたというのであります。併しながら終戰後の事態は一変いたしました。主たる占領國として、米國は、我々を眞の民主國家として立直らせるために、又飢及び疾病の防止、産業及び通商の回復その他総じて戰爭によつて荒廃した我が國経済の再建を助成するために、常に先頭に立つて盡力を惜しまないのであります。又我が國は、我が國民の引揚のため米國船舶の貸與を受けて参つたのみならず、その促進のためにも同國から多大の好意的援助を受けているのであります。しかのみならず、米國議会は日本の救済及び復興のために巨額の資金の支出を決定しておりますることは、夙に諸君の御承知の通りであります。占領費並びに日本の降伏のときから米國政府によつて日本國に供與せられた借款及び信用は、日本國が米國政府に対して負つている有効な債務であることは勿論でありまするが、米國の好意を物語るかくのごとき数々の証左に直面して、我々としては、これに比較すれば甚だ少額の阿波丸事件の賠償請求をいつまでも固執するということは、米國國民の感情を考慮することから言つて当を得ないことであると感ずるのであります。よつて私はこの際この事件に関するすべての請求権を放棄すべきこと、そして又政府は、米國政府との間に、右の趣旨にて事件の円満なる解決を図ると共に、國内措置として本件犠牲者を慰藉するために適当な手段を講ずべきものなることを提議するものであります。この目的のために、私はここに成規の手続を経て本院の決議案を提出いたします。これはすべての日本人の純粹なる感情を反映するものであると確信する次第であります。(ノーノー」と呼ぶ者あり)
 以下右の決議案を御紹介いたします。(「二億円の内訳はどうした」「聽け」と呼ぶ者あり)
  阿波丸事件に基く日本國の請求権の放棄に関する決議案
  わが國は、連合國の同情ある理解により、今や戰爭の荒廃から脱却して、平和と自由及び民主主義の高遠な原則の具現を目指す新らしい生活に乘り出している。
  米國は、主たる占領國として占領政策の設定と実施に当つて主導的な役割を果して來ており、わが國民としては、米國政府及び米國民がわが國の恢復及び復興のために與えた多大な援助に対して深甚なる感謝の念を抱くものである。
  よつて本院は、政府に対し次のように措置するよう要請する。
 一、わが國は、昭和二十年四月一日発生した米國海軍艦艇による阿波丸撃沈事件に基くすべての請求権を、自発的に且つ無條件に放棄すること
 二、政府は、速かに、連合國最高司令官のあつせんを得て、米國政府と商議を開始し、前記請求権の放棄を基礎として、本事件を円満に解決すること
 三、政府は國内措置として、本事件の犠牲者を慰藉するため適当な手段を講ずること
 四、政府は、本決議案に基いて執つた措置の結果を、速かに本院に報告すること
  右決議する。
 決議案は以上の通りであります。ついては議員諸君におかれましては、今述べました提案の理由を十分御考慮の上、殊に米國から莫大な援助に現に受けておるという事態を特にお考えになつて、本決議案に対し御賛成あらんことを切望するものであります。
○議長(松平恒雄君) 本案に対し討論の通告がございます。金子洋文君。
   〔金子洋文君登壇、拍手〕
○金子洋文君 私は日本社会党を代表しまして本決議案に反対をいたします。(拍手)米國政府及び米國民が、我が國の民主化に対して、又我が國の復興のために與えた絶大な御援助に対しましては、我々も諸君とひとしく深甚の、感謝の念を抱いているものであります。(拍手「その通り」と呼ぶ者あり)併しながら(「賛成したらいいじやないか」「問題が違うと」呼ぶ者あり)今日突如として阿波丸撃沈事件に基くすべての請求権を自発的且つ無條件に放棄するということについては、合理的にも合理的にも甚だ首肯し難いのであります。(「その通り」「異議なし」と呼ぶ者あり)而もこのことたるや世界にも類例を見ない重大な問題であり、(「よく聽けよ」と呼ぶ者あり)他にもいろいろな問題があるのに、今この事件についてだけ急いで議決する理由も必要もなく、又適当の時期でないと我々は考えるのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)甚だ簡單でありますが、以上の理由を以て本決議案に反対するのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)(拍手)
○議長(松平恒雄君) 堀眞琴君。
   〔堀眞琴君登壇、拍手〕
○堀眞琴君 本員はこの決議案に反対を表明するものであります。先ず第一に、國際法の侵犯に基く請求権と、アメリカから我が國民に対して與えられたところの援助とを一緒にして考えることが間違いであるということであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)御承知の通り國際平和は、各國が國際法規を正しく守ることによつて初めて貫徹されるものであります。(「聽いたか」と呼ぶ者あり)單に請求権に基くところの費額が極めて小さいという理由だけで我が國が持つところの請求権を無條件的に放棄するということは、決して当を得たものであるとは考えることができないのであります。それ故に先ず第一に私は本案に反対を表明するものであります。
 それから第二には、本件は本來政府がその責任においてこれが折衝を開始しまして、そうして國会の承認を得べきものであります。このことは憲法第七十三條の第二号によりまして明らかなところであります。然るに政府におきましては本件の折衝を放棄しまして、國会にこれが決議案として上程することを求められたということにつきましては、私は本末を顛倒するものである(「憲法違反だ」と呼ぶ者あり)ということを言わなければならないと思うのであります。
 それから最後でありますが、國内措置としまして犠牲者に対する慰藉の手段を講ずべきことは言うまでもないのでありますが、併しながら戰爭によつて犠牲を蒙つた者は外にも多数あるのでありまして、これらの多数の犠牲者に対する慰藉の方法と勘案いたしまして本件を國内的措置として十分に考えなければならぬと思うのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)然るに本件におきましては、その他の犠牲者との関係が何ら考慮されておらぬという点につきまして、私は反対せざるを得ないのであります。以上の三点の理由からして私は本決議案に対して反対を表明するものであります。(拍手)
○議長(松平恒雄君) 中野重治君。
   〔中野重治君登壇、拍手〕
○中野重治君 日本共産党はこの決議案に反対であります。その理由は金子、堀両者の述べられたところにも明らかでありますが、更に私共の考えを簡單に述べたいと思います。
 この問題を明らかにするために必要なことは、この事件の本質を我々が明瞭に理解することであります。この事件の本質はどこにあるか。それは決定的に負けつつある侵略主義國に対して、決定的に勝ちつつある民主主義國が、己れの非を世界の前に公然と認め、賠償の問題を公然と採り上げたというところにあるのであります。それは交戰諸國が、その勝ち負けに拘わらず、それを越えて一樣に服すべき國際正義に対して忠誠を示したというところにあるのであります。即ちこれは、勝てば官軍、負ければ賊というあの方式に対する、全き対立が出されたということであつて、(「違う」と呼ぶ者あり)勝ちつつ尚この忠誠が示されたということは、單に義務の面にのみかかわるのではありません。我が過ちを過ちと認めることは又民主主義本來の権利なのであつて、ここにこそ侵略主義、独裁主義の到底持つことのできない民主主義の誇りがあるのであります。(拍手)然るにこの案を見ますと、これは、この誇りある民主國の権利、國際公法をば民主的に守ろうと確約した相手國の権利行使を、こちらから犯そうとするものである。(「その通り」と呼ぶ者あり)これを侮辱しようとするものであります。而もこれを占領せられ管理せられている状態の下においてなそうとするこの案は、物的援助を得たさに正当の権利をも放棄しようとする醜い精神に貫かれているのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)その根柢を探れば、明らかに、負けたからには正当の権利をも放棄しようとする卑しい心根が見えるのであります。これは事柄の理非曲直を問わないで、ただ力の勝ち負けにかけようとする暴力第一主義の裏返しの現われであります。これこそ軍國主義の名残りである。御承知のように極東軍事裁判の際に、日本の國内には、勝つた者が負けた者を裁くのは不当であるという言説が流布されました。今この案の性格を見ると、かくのごとくに誤まつた言説を日本國内から絶滅させようとしないで、却つてこれを保護して温存させようとする性格を明らかに持つているのであります。(「ノーノー」「そうだ」と呼ぶ者あり)自己の権利を不当に放棄しようとするものは、必ずその義務をも不当に放棄しようとするものである。世界に向つて公然とその非を認めたアメリカの態度をこそ我々は学ばなければならぬのであつて、そのためには、相手國の民主的義務、権利の行使を本当に心から尊重することを以て、これを学ぶ第一歩としなければならぬのであります。賠償の額が何程かということを今我々は明らかにしませんが、たとえその額が如何程小さくあろうと、その量の上の多寡に拘わらず、その性質、性格を明らかにして、支拂うべきものは如何なる場合にも支拂い、受取るべきものは必ずこれを受取ることこそ、國際正義に対する民主的忠誠の道であります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)これこそ連合諸國の我が國に対する好意に正しく應える道であります。(「その通り」と呼ぶ者あり)我々は今委員長の説明の中にあつた言葉を借りるならば、極く僅かのものを請求しようとすることによつて偉大なアメリカ國民の感情を害するであろうというふうな言葉があつたように記憶しますが、我々はアメリカの民主的人民がかくのごときものとは考えないのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)即ちこの問題をかく正しく扱うことこそ連合諸國の好意に應えるゆえんであり、即ち阿波丸の問題は、その性質上正しい手続において講和会議に委ねらるべきものと考えるのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)若しここに一人の息子が極道に身を持ち崩して準禁治産に処せられ、そうして座敷に軟禁せられておるとしましよう。その者が保佐人に向つて、お前のおれに対する借金は、おれの方からこれを俸引きしてやろうと宣告するとするならば、これは滑稽ではないでしようか。おこの沙汰ではないでしようか。おこの沙汰の限りである。(「その通り」と呼ぶ者あり)而も只今衆議院でこの問題が議せられたとき、当時の賠償額二億円の具体的内容について質問を受けたところが、岡崎外務委員長はこれに対して何一つ答えることができなかつたのであります。これは問題を國内の問題として処理する場合にも、あの事件によつて犠牲となつた人間に対するよりは、船会社に対する配慮が大きなウエートを持つておるのではないかを十分に疑わしめるものであります。(「そうだ」「そこが問題なのだ」と呼ぶ者あり)被占領中にあつて、すでに國際正義を破ろうとするものであることを世界に表明し、國会をばそれを合理化するための道具に使おうとするこの案件は許すべからざるものであります。この案はよこしまであつて、人間の道にかなわない。國際公法にもかなわない。今言いましたような点からも極めて疑わしい性質を持つておる案でありますから、これは断じて否決されねばならぬものであります。そして、このことこそ阿波丸の犠牲者の遺族をも含むところの民主的全日本人和の意想であり、要求であると我々は考えるのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)この点を諸君が自覚せられて、発議せられた人々も自己の責任の重大を自覚して、明らかに態度を飜えして頂きたい。(拍手)そうして我々と共に満場一致、この忌わしい、恥ずべき決議案を葬つて頂きたいと、こう考えるのであります。日本共産党のこの問題に対する反対の理由と、更に諸君に対する痛切な要望をここで述べます。(拍手)
○議長(松平恒雄君) これにて討論の通告者は終了いたしました。討論は終局したものと認めます。これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を請います。
   〔起立者多数〕
○議長(松平恒雄君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。(拍手)
 只今の決議に対し政府より発言を求められております。この際許可いたします。吉田外務大臣。
   〔國務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
○國務大臣(吉田茂君) 参議院が長期間に亘る本懸案の解決のために発言せられましたことは、誠に欣快に堪えないことであります。政府は直ちに本決議を実施に移し、合衆國政府と商議を開始し、その結果につきましては、速かに本院に報告すると共に、然るべき國内措置を講ずる考えであります。(拍手)
○議長(松平恒雄君) 本日はこれにて延会いたしたいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(松平恒雄君) 御異議なしと認めます。次会は明日午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。日本はこれにて散会いたします。
   午後四時二十六分散会
     ―――――・―――――
○本日の会議に付した事件
 一、常任委員辞任及び補欠の件
 一、日程第一、國務大臣の演説に関する件(第三日)
 一、阿波丸事件に基く日本國の請求権の放棄に関する決議案