第007回国会 建設委員会 第19号
昭和二十五年四月十九日(水曜日)
   午後二時十九分開会
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  本日の会議に付した事件
○首都建設法案(衆議院提出)
○建築士法案(衆議院提出)
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○委員長(中川幸平君) それでは只今より建設委員会を開会いたします。
 首都建設法案を議題に供します。質疑のおありのお方は順次御発言を願います。
○安部定君 もう質疑は前回も随分あつたようですが、外にもうないのじやないか、打切られたらどうですか。
○委員長(中川幸平君) 安部さんの質疑打切りの動議に御異議ございませんか。
○赤木正雄君 ちよつと懇談に入りたいと思いますので、速記を止めて頂きたいと思います。
○委員長(中川幸平君) ちよつと速記を止めて下さい。
   〔速記中止〕
○委員長(中川幸平君) 速記を始めて。別に御発言もございませんようですから、御質疑は尽きたものと認めて御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(中川幸平君) 御異議はないと認めます。それではこれより討論に入ります。御意見のある方はそれぞれ賛否を明かにして順次御発言を願います。
○赤木正雄君 この法案に対しては相当論議いたしました。今日の国家情勢において、果してこれがいいか悪いかは十分検討する点もありました。併しこの際これを通すといたしまして、一つの仕事をするのに相当年限ということも重要なことと思います。その観点からして或いはこれを五年とか、或いは十年とか、年限を切るということも一つの考え方とは思います。併しいろいろな関係もございますから、これは少くともそういう年限を考えてやるべきものだ、こういうことを提案者の方でも十分お考えの上、特に修正しなくても、年限は修正したと同じような効力を持つということを私は十分お考えを願いたいと思います。或いは五年でできないものなら七年でも結構です。特にそのことを強くお考えの上この法案が活きるようにして欲しい、私はこう思います。
○石坂豊一君 私はこの法案に対して種々の考を持つておるのでありますが、段々調べて見ますというと、首都建設の遅々として進まざる理由は首都たるが故に、各種の官庁その他の機関が多く輻輳しておりますために、一々それの了解を経る、交渉を重ねるということのために、荏苒歳月を経過しておるということに大なる癌がある。かくのごとき大所高所から、国家の力を以て建設に一段の努力を払わなかつたならば、我が国の首都としての体面は長く保つことができないということに意見が到達したのであります。私共はこの場合において、首都の建設を極めて文明各国に劣らざるように建設し、且つその速度も余り長く、徒らに歳月を費すということのないように当局者が責任を負うて促進をさして貰うという意味において、本案を必要な法案なりと確信いたしまして、党を代表いたしまして本案に賛成するものであります。
○委員長(中川幸平君) 他に御意見もないようでありますから、討論は終了したものと認めて御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(中川幸平君) 御異議ないものと認めます。直ちに採決に入りたいと思います。本法案を原案通り可決することに賛成の方は挙手をお願いいたします。
   〔総員挙手〕
○委員長(中川幸平君) 全員賛成と認めます。よつて本案は全会一致原案通り可決すべきものと決定いたしました。
 尚本会議における委員長の口頭報告の内容は、本院規則第百四條によつて予め多数意見者の承認を経なければならないことになつておりますが、これは委員長において本案の内容、本委員会における質疑応答の要旨、討論の要旨及び表決の結果を報告することとして御承認願うことに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(中川幸平君) 御異議ないと認めます。それから本院規則第七十二條によりまして、委員長が議院に提出する報告書につき多数意見者の署名を付することになつておりますから、本案を可とされた方は順次御署名をお願いいたします。
  多数意見者署名
   赤木 正雄  石坂 豊一
   大隅 憲二  佐々木鹿藏
   安部  定  久松 定武
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○委員長(中川幸平君) それでは次に建築士法案を議題に供します。質疑のおありの方は順次御発言を願います。
○北條秀一君 この前に私は質問いたしたのでありますが、重複するので誠に恐縮でありますが、もう一度念を押したいのであります。即ちこの附則の2の五の十五年の問題と同附則3の五の十年、これはいづれにいたしましても今回は建設大臣が選考するわけでありますから、選考するに当つてこれほど厳重な條件をつけるということはどう考えても合理的でないと考えるのです。でありますから、これは一級建築士の方は十年、二級建築士の方は五年で、それで十分選考を受け得る資格があるということにすることが、現在の日本の実情に最も適するということは前に申上げた通りでありますが、先程田中さんは、衆議院においてもそういう意見があつたのだという話だつたのですが、これが結局修正にならずにこうなつた。これはどうしても直さなければならんと私は考えておりますが、十年、十五年にしようと考えられるならば、結局十五年、十年になつたというその間の事情を、述べ得るだけもう一度述べて頂きたいと思います。
○衆議院議員(田中角榮君) 北條さんにお答えいたしますが、御質問の趣旨は十分了解できるのでありまして、私達自身も本法律案の立案に対しては経験年限という問題に対しても非常に深く考えたのであります。併し原案によりますと、この実務の経験というものが除かれておつたのであります。これは御承知の通り、測量法が前の議会で両院を通過いたしまして、現在法律になつておるのでありますが、尚第一回の試験の告示が現在行われております。この測量法に対しまして現在の日本の実情に即さないというので、当然本法案を提出いたすと同時に、並行いたして一部改正を行いたいという考を持つておつたのであります。いわゆる測量法は私が申上げるまでもなく、官庁の測量を行う非常に高度の技術を必要とするものでありまして、いわゆるあのように厳密なる條件が要求せられたのでありますが、現在東京都あたりで以て、現に官庁の測量に従事しておる人々二千数百人の中、実際にあの規定を適用せられた場合に、二百数十人乃至三百人くらいしか有資格者がないというような実情がありましたので、これが改正ということに対しまして、改正案を提出いたす予定で、関係各方面と折衝をいたしておつたのであります。併しその結果、測量法に対しましては高度の技術を要求せられる測量に対して、その資格を緩やかにするということはよろしくない、而も緩やかにするというよりも、緩やかにし過ぎるではないかというようなお考があつたようでありまして、遂に今国会に提案することができなかつたという状態であります。併しその測量法とこの法律案を比べますときに、測量法で以て改正を狙つた程度まで緩和をしておるのであります。勿論この法律案に対しましては、一級、二級建築士という制度を作るもの自体においてもちよつとしたおかしさがありますが、この問題も現在の日本の現状ということを考えて、本法律案の目的を達する高度の技術保持ということに逆行しない程度に、而も現状をよく把握して落伍者のないようにということを考えましたために、この條文になつたような次第であります。建築士法案は、日本のみならず、各国においてもうすでに法制化されておるのでありまするが、アメリカ等においては一級建築士、二級建築士というがごときものに分けられておりません。日本においても当然一級、二級というものが高度の技術水準に達した場合、この段階というものが取除かれて、俗に建築士という名称にならなければならないのでありまするが、現在の状態ではそこまで一遍に飛躍をすることは実情に即しない。併し本法律案の目途とするところの高度の技術ということを考えまするときには、現実面と調和しながら而も一級建築士になり得る道を拓くということに対して、緩に過ぎず厳に過ぎずというので、現在のように十年、十五年ということになつたような次第であります。尚、この十五年ということに対しては、十二年案、十年案というものも当初私達においても考えられたのでありまするが、この五項の挿入に対しても相当なむずかしさがありましたので、現在の状態ではここに記載してある十年及び十五年で止むを得ないというふうに考えておるわけであります。
○北條秀一君 問題はこの年数と実務の経験という二つの條件が問題だと思いますが、只今のお話で後の意見は別に保留いたしまして、次にこの一級及び二級の建築士の選考委員を置くことになつておりますが、この選考委員はどういうふうな範囲から選ばれるのか。即ちこれは関係官庁の職員と、それから学識経験者ということになつておりますが、この学識経験者というのは実は曲者なんで、学識という字がついて経験となると、どうも学校出ばかりを選んでいるという弊害が歴然たるものであります。従つてこの選考委員をどういうふうにして選ぶかという問題が非常に重要な問題になつて来ると思いますが、これについて提案者は何らかのお考を持つておられますか。
○衆議院議員(田中角榮君) お答えいたします。試験委員、選考委員については、その業務の重要性に鑑みまして、人選についても、建設大臣が審議会その他各方面の意見を斟酌いたしまして十分慎重に決定せらるべきものと考えております。尚概ね建築士又は従来建築士としての経験の深い人々の中から選ばれる、こういうふうに考えております。当初の建設省で作りました当時の原案としましては、大体第一回目はこの法律が公布せられておりますので、第一回目の法案が終らない場合に建築士というものができないので、大体この種法案の選考委員が普通選ばれておりますように、官庁職員を主軸とした学識経験者というものを考えておつたようであります。私達はこの案には相当難色を持つておりまして、当然現在法制の裏付けがなくとも建築士として立派に業務を行い、その実績を挙げておる方々があることは御承知の通りであります。而もこの建築士法案の目的を考えますときに、これが選考委員に対しては、当然建築士が選考委員に当ることが至当である、こういうふうに考えておつたわけであります。第一回目の選考が終りまして、第二回からの試験委員に対しましては、勿論建築士ができますので、この建築士から殆んど試験委員が選考せられることはこれは当然でありますが、第一回目のこの選考委員を委嘱する場合は、現在建築士をしておられる方々、而も当然本法案が公布せられた暁は十分その有資格者として選考され得る人達の中から試験委員は選ばなければならない、こういうふうに考えておるわけであります。尚その中で只今御質問になりました通り、学識経験者というのがありますが、これは地方等におきまして建築士が全部出揃わないという場合があるのであります。その場合特に学識経験者、而も社会に明るく、而も何人が見てもこの選考委員に適当であるという者が少数選ばれて選考委員になることも支障はないと、この枠を非常に厳密に限定いたしました。その試験を行うところの選考委員等に対しましても非常にむずかしい問題が起きて来ますので、多少そこに幅を持たしたわけであります。
○北條秀一君 この建築士法案と建築業法との関係について、ちよつと承りたいと思いますが、建築業法によると三十万円以下の軽微なるところの仕事は登録建築者がやらんでもよい。尤も三十万円というものは法律上はありませんが、軽微なる仕事は登録建築業者はやらんでも宜しいということになつておりますが、そういたしますと、この建築士が一級建築士はどういう範囲を基礎にするか、或いは二級建築士はどういう範囲を基礎にするかということと、……理窟を言うと、極く山の中で多数の人間が集会するような家を建てる、例えば木曾の山の中で木材の非常に安いところで建てる、東京で当然五十万円かかるところが向うは二十万円ぐらいでできる。而もそれが公共の集会所である、そういう場合に、そういう山の中に一級建築士がいないということになると、これはわざわざ費用をかけて岐阜の山の中から岐阜市に出て来て、そこで一級建築士を雇つてやるということになつて、現在都市におる建築士に田舎はいつも貢をするということになつて来るのですが、そういう点についてはどういうふうにお考えになつておりますか。
○衆議院議員(田中角榮君) お答えいたします。実際的に考えますと、そういう事例も起り得ると思うのでありますが、これは北條さんの御意見に反駁するわけではありませんが、こういうものは非常に少いのではないかということを考えておるのであります。前にも御説明申上げましたが、一級建築士の目的としておりますのは、大体鉄筋コンクリートで作る特殊な構造力学その他の基礎知識を必要とする、いわゆる高度の技術を必要とするものに限つておるのでありまして、先程申されましたように、建築業法による即ち三十万円以下……これは五十万円というような案もあつたのでありますが、三十万円以下というような工事は当然この建築士法によらなくてもできるのでありますから、この法律案施行によつて建築に支障を来たすということは先ずなかろうということは考え得ると思います。もう一つは、この木曾の山の中で以て特殊な建物を造るというような場合に、集会所、映画館、学校その他になつておるのでありますが、そういう大きなものを造るということになると、公共的な性格も非常に起きて参ります。特に高度のよい技術というものも当然要求せられるのでありまして、その中には今まで各府県の、特に山の中にあるところの三階建の族館というようなものが考えられておつたのですが、これは次に出ますところの建築基準法でも相当その問題が論議されたのでありますが、やはりこういうように公共性を帯びた且つ高度の技術を要求せられるものでありながら、こういう制度がなかつたために、都市の大工さんだけがこれを行なつておつたことは幾らかあるかというと、それは非常に少いのでありますが、たまさか大きなマイナスを起す。そういう事例を考えますときに、こういう特殊なものに対して、多少の犠牲があつても本法によるところの建築士の設計、業務監理を受けた方が将来に対するマイナスを事前に防止でき得るという観点から言つて至当ではないかというように考えておるのであります。而もその場合考えますことは、多少これが設計監理に対して費用が嵩み、工事費というものが多くなるとは言いますけれども、そういう懸念は多分にありますから、これは建物のいわゆる安全性、質の向上という面から見たときには、そういう多少の犠牲を払われても、具体的には大きなプラスになるのではないかと、こういうように考えておるのであります。
○北條秀一君 それは今の田中さんの御意見は私は反対なのです。そういうふうに本当の経験者が今日まで日本のあらゆる公共物を建築して来たのでありますが、これらの経験者の建てられた公共物は、どちらかというといわゆる学校出の建てた家よりも遙かに事故が少なかつた事実が世の中にはあつたのではないか。つい先だつての東京都庁の土砂の崩れによつて八人か七人かの人間が死にましたのは、あれは決して従来の方法でやつてたのではなしに、学校出やその他立派な人がやつたのであります。そういうところから行くと、今の田中さんの御説と逆行しておるのではないかと思いますが、それはさて措きまして、今手許に配布されました建築士法案第三條の規定による建築士でなければ工事監理をしてはならないという法律案の條文がありますが、これはどういう関係にあるでしようか。
○衆議院議員(田中角榮君) お答えいたします。これは私が手許に持つておるものと同じだと思うのでありますが、一級、二級の建築士でなければ行うことができないという基準に対しましては、これは本法律案を提出いたします当初の事情を簡単に御説明申上げますと、市街地建築法を廃し、現在のバラツク令、臨時建築制限令その他を統合いたしまして、建築基準法という抜本的な基準法律案を提出いたしまして、それと表裏一体の姉妹法として提出を準備いたしておつたようなわけでございます。然るに建築基準法が極めて遅れましたので建築士法を現在別に審議を煩わしておるわけでありまするが、大体において建築基準法の中にこういうものを織込むというふうに考えております。併し建築基準法が本国会に提案せられないというような場合には、別に基準に対しては単行法で以てなされなければならないということを、当初提案理由の御説明の当時に申述べたような状態であります。
○北條秀一君 それから建築士法案の第三條の二項に基いて、別に法律で定める、法律で定めるというのはこれですか。
○衆議院議員(田中角榮君) 案です。
○北條秀一君 これですね。
○衆議院議員(田中角榮君) はあ。
○佐々木鹿藏君 私もお尋ねして見たいのですが、建築士を置く場合に試験したとき間に合うだけの建築士が直ちにできるか、これが一点。それから二点が、例えば十二坪の家を建てるときに、建築士に要する費用は幾らかかるか。それから会社において建築士を社員として採用した場合に差支ないか。それから建築士の月収は何程を適当と思つておるか。建築士がおるために工事が遅れる虞れはないか。この五点について御質問いたします。
○衆議院議員(田中角榮君) 佐々木議員にお答えいたします。現在、第一問の現在建築士法を制定した場合、必要な人員が直ぐできるかというお問いでありますが、これに対しましては、現在大体一級建築士、本法案を施行いたした直後の一級建築士が一万人、二級建築士が三万人というくらいに推定いたしておりまするので、現在の状況から考えましては、この法律公布直後に不足を来たすということは考えられないと、こう考えます。それはもう少し具体的に申上げますと、現在はこの法律案が通りましても、経過規定を設けておりまして、その経過規定の狙うところは、現在この業務を、現に完全に遂行しているものは、その選考から漏れることのないようにという実情に即したと考えられる経過規定を設けられておりますので、現在事業を行なつておられる方々は無試験で拾い上げられるということになりますから、現在の人員より減るということは殆ど考えられないというような状態であります。
 第二には、十二坪に対する問題でありますが、勿論本法律案は高度の技術を必要とするものについて限つて一級、二級建築士でなければ工事を設計並びに業務監理を行うことができないというのでありますから、大体において、現在十二坪、十五坪、二十坪、三十坪とか、現在の建築制限令で以て許可せられているようなものは、法律案ができましても、当然今までと同じく、誰でも設計できるのでありますから、この法律案を施行することによつて、経費がかかるということはありません。
 第三番目は、建築士を傭い入れてよろしいかということでありますが、これはいずれで傭い入れましてもよろしいのでありまして、或る一つの会社が建築士を傭いまして、それに設計を行わせ、且つ業務監理をさせるということは、現在各会社が建築専門家を営繕係としてこれを雇傭し、事業の代行をせしめているということと全然変りはありません。
 建築士の月収でございますが、これはまあ資格に対して制限を設けておりますが、建築士そのものは自由営業でありますので、現在の建築事務所と同じでありまして、一人当り幾らということは算定できにくいと思いますが、大体現在の建築事務所で設計を行い、監督を行い、業務監理を行うという程度でもつて、総施行額の何ぼということが、現在の建築士会の規定になつておる通り、二分のところがあり、二分五厘、三分、高度のものは四分のところもあるのでございますが、これは現在とそう違わないと思いますが、違わないというよりも、現在は法律的にこの設計料というがごときものの取締規則がありませんので、場合によつては特殊契約を結んでいるところのものは、高度な設計料を徴収するという場合も起きて来るのでありますが、この法律案が施行せられますと、審議会において最高限度という大体の基準額が決められますので、俗に言う施行主と設計者の間にあこぎな真似をすることは法律において禁じられておりますので、工事監理を沢山行い、工事設計を沢山行つたものは必然的に収入が多くなるわけでありますが、それも現在とはさして変りはないというふうに考えております。
 第五番は、これは非常に重要な問題であろうと思います。この従来統制……ちよつと考えると統制というような感じが起るのでありまするが、多少現実的に工事が遅れるのじやないかということは、これは非常に考えられる問題でありますし、法律案ができると何でも遅くなるということは当然であります。私達もこれが普通の統制のための統制であり、これが実際の施行という面に対してマイナスが起るということは時間的な問題でありまして、これは非常に私達も考えた面でありますし、重要な御質問だと思うのでありますが、現在の建築士というものを法制化したというくらいな状態でありますので、尚、その上に相当な責任と同時に権限も付与せられておりますので、そして又一面自由な営業でありますから、実績を挙げるという意味から考えても、特に偏狭であり且つ特別なる性格の持主でない以上、自分の業務に精を出すということでありますので、現在の建築士というものが行なつておる以上に、本法律案を出すことによつて、施行することによつて、工期がうんと遅れるということはちよつと考えられないと思います。ただ先程北條さんが御質問になられましたように、特に今までは地元の大工さんだけでやつておつたものが、山の中でとにかく建築士に相談しないと図面ができ上らんというような面を考えますと、多少そこにある特種な環境にあり、特種な條件を具備した建築に対してだけ、現在よりも時間的に多少遅れるということはあると思いますが、併しこれは建築士というものが、投げやりではなく、自分の設計をし、工事をしたものに対しては、あらゆる責任を持たなければならないという関係上、工事に着工する場合、直ちに工事竣功までの全計画書を作るだろうと思いますから、その意味においては、多少着工が遅れるとしても、工事を竣功までの期間を通算した場合に、私はむしろこれが軌道に乗れば、早くなるのじやないかということも考えられておるような次第であります。
○佐々木鹿藏君 私の質問はまだ二、三ありますが、意見は相当これに対して持つておりますが、又意見を述べることにいたします。
○委員長(中川幸平君) 住宅局の建築指導課長が説明員として参つておられますからどうぞ。
○赤木正雄君 この法案の目的は、今までややもすると建築される方が粗雑な仕事をなさる、そういうことがあるからして、成るべく目的をよく把握して、合理的な計画工事の監督、そういうことをさせるというような大体目的のように思いますが、そうですか。
○衆議院議員(田中角榮君) そうです。
○赤木正雄君 それに対しまして、試験制度の問題でありますが、先程申す通りに、試験の目的に対して、ますます専門の知識を深めて行く、そういう点からこの法案が成立するならば、それも一段の進歩と思います。そこでお尋ねしたいのは、その試験のことに対して、建築と土木は場合によつては同等のように認められているように思います。例えて申しますと、正規の建築に関する課程を修めた者、今提案者の言われるように、建築と土木を、今まではどうか知りませんが、建築そのものの位置を高めて行こうという場合に、いろいろのことを土木と建築とはおのずから学校の課程において違いやせんか、こう思のですが、この試験に対して土木を出た者も、建築を出た者も同じに取扱う。これはどういうことですか。
○衆議院議員(田中角榮君) 赤木さんの御質問にお答えいたします。受験資格に対しまして、土木、建築を同等に認めたという問題に対しても、本法律案を起案いたします当時から非常に考えたものであります。勿論建築士法でありますので、当然これが対象は、学歴を言うならば建築の課程を修めた者ということを当初考えたのでありますが、現在の日本の現場関係におられる方々を考えますときに、大体土木出の方々も土木の課程を修めておりながら建築の実務も修めておる、建築の実務も修めた方々が土木をやつておる。日本のいわゆる建設部門の実態を見ます時には、特殊なものを除いては大体土木と建築とが渾然一体になつておるようであります。而もこの受験資格につきましては、学歴を重点とした面に対しましては、土木を専攻し、建築を専攻する、いずれの専攻者においても、基礎学科というものは大体同じものを修めておるわけであります。これは赤木先生もよく御承知だと思いますが、土木出身の方々は、一年二年で建築の一般構造から全部御修得になつておりまするし、建築として専門課程を終えられた人達も、一年二年の課程においては土木の基礎学科を全部修めておられる。現在の状態ではこれがもう少し時間的に経ちまして、この法律案施行後五年、十年というものでもつともつと高度な技術というものを要求せられるという場合になつて、本法案の根本の目的が達せられるような時期が来ました時には、もつと強度な試験ということが要求せられるかも知れませんが、現在の日本の実情において考えますときには、大体学歴という面を対象にする場合は、土木と建築卒業者を殆ど同等に考えても大した間違いではないというふうに多数の意見が決つたわけであります。尚併し無試験でこれを通す場合、それから受験資格に対しても土木の卒業者は建築の卒業者よりも多少年限を、いわゆる実務年限を延ばしてはどうか、延ばすのが至当ではないかという意見もあつたのでありますが、この條文に記載いたしました通り、土木の技術者、土木の過程を終えられた人も建築の実務経験何年ということに規定いたしましたので、土木を終えられても建築の実務を、本法案に規定するだけ取つておるならば、当然建築の課程を終えて直ちに受験するという方々と同等に考えても殆んど大差なしというふうに結論づけたわけであります。
○赤木正雄君 今日の建築界といいますか、土木界と申しますか、なるほど土木をやつた人も建築の一部門を修めておりましよう。併しややもいたしますると土木をやつた人で建築にあまり深い知識のない人が建築の仕事をやるために、たまたまいろいろな災害も起つて来る。そういう観点も考えるならば、先程北條委員が言われたように、場合によつては学校を出なくてもいわゆる宮大工というような者はとても今日の大学を出た者よりも立派な建築をしますから、そういう方面に重点をおいたならば、殊に建築そのものをもつと向上させようというお考があるならば、むしろ応用学科の方から言えば建築は建築だけ御採用なさつて、今日のなるほど現状においては土木をやつた者も建築もしなければならんといいますけれども、それはそこに欠陥がありますから、そこをはつきりなさつた方がよくはないでしようか。
○衆議院議員(田中角榮君) 赤木先生は土木出身であり、尚且つこういう御意見を拝聴するのでありますから誠に有難いのでありますが、どうも日本の現状におきましては原案はそのように考えておりまして、尚民間各種団体の意見も徴しましたし、現在の官庁の意見も、各種専門技術家の意見も徴したのでありますが、現段階において土木と建築を同等に論じても大過なしという結論でありましたので、私もそう考えたのでありますが、これは土木、建築というよりも何故機械工学、電気工学というような附帯設備工学の技術も入れなかつたかという議論も又第二には出るのでありまして、そういう意味から、むしろこの限度の最小に喰止めたということでありまして、これを土木を除くということになりますると、この法律案がなかなかスムースに成立しないというふうに考えておるのでありまして、以上になつたような次第であります。
○赤木正雄君 提案者のおつしやつた通りに、土木を入れるならば、何故電気を入れないか、もつとこれに類したものを何故入れないかというふうに言いたくなるのです。本当に建築そのものを向上させようというお考ならば、建築だけの方がむしろ今日の情勢においては、多少そぐはない点があるかも知れませんが、建築そのものの向上という意味から言うならば、建築を主として土木その他のものは特に経験のある人、そこに重点をお置きになつた方がよいように考えます。この点の質問は終ります。
 それから試験官の問題でございますが、十八頁に「一級建築士試験又は二級建築士試験に関する」云々とありまして、これは今それぞれ建設省でその試験官を命ずるようでありますが、どういうような人を試験官に委嘱するか、これは小さい問題のようでありますが、これによつて非常に実際問題として違つたことになる、これはどういう御構想をお持ちですか。
○衆議院議員(田中角榮君) 先程も北條委員の御質問に述べました通り、大体建設大臣が指名いたしませんと非常に不統一になるということも考えられますので、建設大臣がこれを指名し、又は委嘱するということにいたしたのでありますが、この試験委員の主なものは建築士を殆んど全部当てる。これは原案は官庁の職員三分の一、建築士三分の一、学識経験者三分の一というふうでありましたが、私共の考では当然これは全部建築士でなければならん。まして土木工学者その他は建築士になり得るというのでありますから、そういう建築士を以て試験委員に任命することが至当であるというふうに考えております。尚経過規定によるところの第一回の試験委員は、当然本法案施行後建築士になり得る……現在法律的裏付はありませんが、現在の建築士等の中から試験委員が選ばれるというふうに考えます。特殊の地方等におきまして、その地方の特殊性を十分入れ
なければならない、そういう特異な場合に限つてだけ、少数の学識経験者、いわゆるその持殊な問題に関する造詣の深い学識経験者を以て当てることができるというふうに規定いたしたのであります。
○赤木正雄君 これは政府委員にお尋ねしますが、今試験官は大体どういう範囲の人か分りましたが、それでこういうものの試験方法なんでございますが、今まで大体試験と言えば、皆口述試験とか或いは筆記試験とかというので、銘々各自がやつておりますが、どういうような形で試験を行うか、そこまでお考えになつておりますか。
○説明員(内藤亮一君) 試験の方法につきましては、法案の第二十九條にもございますように、地方には地方建築士審議会がございまして、試験の方法につきましては、建築士審議会の意見を十分聴きますことが一つと、それから田中代議士からお話がございましたように、試験委員も建設大臣が任命いたしまして、その試験委員の意向も十分拝聴いたしまして、結局は建設大臣の責任で行うのでございますが、官僚的、一方的な試験でなくて、中央建築士審議会の各委員の方々、或いは試験委員の方々の御意見を十分承つて、具体的にはやつて行きたい。かように思つておるのでありますが、一つ試案を申しますれば、最近人事院における採用試験のような、ああいう非常に科学的と申しますか、個人的の主観の入らない試験の方法、それも一つの試験の方法でございますが、相当技術的な部面もございまして、ああいうような試験だけでは不十分ではないかとも思つておるのでありますが、普通の筆記試験、従来の入学試験とか何かのような、ああいう筆記試験になりますと、どうしても試験委員の主観が入り易いということが欠点とされておるように、私も聞いておるわけでございますが、まあそこらの点を十分建築士審議会の意見なり、試験委員なりの皆様方の意見を承つて、最も妥当であるというような試験の方法でやつて行きたい。かように思つております。
○赤木正雄君 先程土木建築のことを言いましたが、この法案は、これは建設省の方でも予めお打合せになつたものですか、どうですか。
○衆議院議員(田中角榮君) お答えいたします。この法律案は率直に申上げますと、建築基準法と姉妹法といたしまして、建設省で当然出したいということを考えておられたようであります。衆議院の建設委員会でも、この建築士法案というものに対しては、約一年ばかり前からずつと研究いたしておりまして、各方面の意見を徴したりして、基礎資料の蒐集を行なつておりました。丁度建設省からそういうお話がありましたので、建設省の原案を見せて頂いたのでありますが、建設業法を私達が審議いたしましたときに気付いたように、統制のための統制にならないかという惧れがあるのじやないかというようなことが多少考えられましたので、こういう法律案というものは、これは完全に民意の反映によつて、而も技術立法であるだけにもつと違つた面からも、いろいろな角度からものを考えて、実際に法律案の目的を達成できるような法律案に直さなければならんというので、いろいろな意見を聴きまして、相当全條文を通じての問題は、試験委員の制度とか、それから審議会の性格とか、それから受験資格に対して、経過規定に対してというように、この法律案の根本的の線に対しては相当大幅な修正と申上げますか、建設省案よりも現在提案いたしております案の方が非常によろしい。こういう自信を持つて出したわけであります。併し建設省とも十分連絡を取つて現在に至つておるわけであります。
 尚アメリカその他のこの種法案に対しましての比較も考えたのでありますが、大体現在の日本の実情においては、こんな程度ではないかということも考えられて、御審議をお願いしたのであります。
○赤木正雄君 第十四條の四に「建設大臣が前各号と同等以上の知識及び技能を有すると認める者」こういうふうで、大臣が前各号以上の知識及び技能を有すると認める者は当然該当するのですが、これも併し非常に漠たるもので、その間に具体的なものがありません。殊に建築土木は技術でありますから、技術である以上は相当の尺度がなければならん。ただ大臣が知識技能ありと認めると、何だか漠たるものである。この間にもつと確然たる規定をお決めになるお考はなかつたのですか。
○衆議院議員(田中角榮君) お答えいたします。この問題も私達が非常に研究いたしたのでありまして、特に建設大臣、いわゆる官僚統制にならないか、いわゆる府県知事が、建設大臣がという問題は非常に強いのでありまして、私達は議院立法においてはこういう字句は全面的に削ろう。だから建設大臣が試験委員を命令するというようなことは、当然委嘱するくらいにしなくてはいかん。こういうことを細かく研究したのでありますが、この全條文を通じますと、試験委員の任命、試験の案文り作り方、それから罰則を適用する場合、全部民間から出たところの建設審議会の意見を徴して、その聴問会等のあらゆる筋道を通つた後で、そこで決つたものを建設大臣がただ建設大臣名において、府県知事が府県知事名においてこれを行うという程度に、相当考えたつもりでおります。併しこれは條文から見ますと、建設大臣がという、主格が建設大臣になつておりますので、当然主格を建設大臣にする場合は、建設大臣は各審議会の意見を徴し何々と書けばいいのですけれども、この全條文を通じまして、特にこの種今まで内閣提案の立法から比べまして、こういうものを非常に神経質に考えましてここまで持つて来ましたので、特にここに審議会の議を経てとか、それから何々をしてということを書かなくても、当然それがもうこの法案を一貫して流れる規則でありますので、書かなくても当然であるというふうに考えたのであります。而も建設大臣が前各号と同等以上の知識というのは、これは大体外国の技術学校を出ました者ということを、日本の法律案に余りはつきり書いておるような法律はありませんので、大体こういうふうに書いておるようであります。併しこれは厳密に申上げますと、卒業証明があるか何があるかということはむずかしいのでありまして、こういう者に対しては本人の言うことを信用すると同時に、予めこれが真実であるかというくらいな勿論調査を行うと同時に、予備試験のごときものも行なつて見るということによつて、まあうまく認め得る者は前各号と同等と認めたいということを考えておるわけです。
 尚もう一つ、日本の学校に対してもこれは考えておるのでありますが、学校を出ておる。建設でしたら建設科を出たという人は、この法律案によつて試験の受験資格を与えられるのでありますが、三年のところを二年半で中退してしまつた。殆んど同等以上という学力を認められながらも、実際に今までの杓子定規の感覚から言えば、そういう者は資格がない。まあとにかく一歩下がつた資格で受験せなければならなかつたのですが、これは実情を考えるときに、この條文を入れておくことによりまして、特に実情において卒業者と何ら変りないということが認められる場合、先に申上げました通り予備試験等の適切な処置によつてこれを登用する途を開くことが妥当であるというふうに考えたわけであります。ただそういうことをはつきり書いておらない條文を広義に解釈しまして、いわゆる緩やかにし過ぎる嫌いがあると考えられるのでありますが、この法律の主目的が非常に明確になつておりますので、尚各種の専門者の意見を徴し尚且つ審議会の議を経て行うのでありますから、その懸念は本條文においては起らない、こういうふうに考えております。
○赤木正雄君 また先程の問題に帰るので恐縮いたしますが、やはり審議会の方も無論建築プロパーの方もいらつしやいますし又土木を出て建築に入られた方もあろうと思います。それで今の問題が起りますので、先程も申した通りに正規の建築又は土木に関する課程を修めて卒業した後、建築に関して二年以上の実務の経験というのがありますが、建築学科をやつた人も二年以上土木学科をやつた人も二年以上、これを同等に考えるのはその間土木をやつた人は四年以上とか経験を増して、建築プロパーの場合と土木をやつた人の場合は多少相違があつて然るべきことと思いますが、どうでしようか。
○衆議院議員(田中角榮君) お答えいたします。これは私も当初におきましてはこれが一年乃至二年と経過年数を余計にすることが至当であるというふうに考えましたが、先程申上げましたように、大体現在この法案で規定しているような受験資格に対しましては、相当高度な試験を行うのでありますし、まああまり厳密に言つて能力者がありながらこれが受けられないというふうにするよりも、大体こんなところでいいじやないかと考えたわけであります。それは私自身として考えましても、一年二年は当然余計でなければならんというのが順当な考のようであります。併しまあ御提案したような状況にありまして、これに対しましては学界からもこういうような要望があります。
○赤木正雄君 これと同じ要望ですか。
○衆議院議員(田中角榮君) 同じ要望があつたようでありますが、これはもういろいろな角度から考えまして、この條文に落付くまでは殆んど四五ケ月かかつたと思います。そうしていろんなものでやつて、まあ大体あらゆる者も拾えるし、現状にこれが一番即しておるだろうという状態でやつたのでありまするが、而もこの次に出る、現在民間団体では長いこと考えておる、いわゆる建築士に対応して土木技術者に資格を与えるというような場合も、大体建築と土木に対する学課を修めた人は大体同等に土木学界でも考えておられるというようなお考でありましたので、こういうふうになつたのでありますが、まあ専門の赤木先生がおられますから、土木の人達はそう建築は分らないというのでありましたならば、一つ私達ももつと考えたいと思います。
○赤木正雄君 それで質問しているのです。恐らくこの建築士法案では、今はこの土木士法案そのものはないと思うのですね。恐らくそういう時期が来れば……そういう場合にやはり建築、土木というのは或る程度まではつきり区別した方が日本の技術を向上する上にいいとこう思うものであります。でありますからして今日の情勢ではこれが適当かも知れませんが、これより日本の技術を向上させる見地から言うならばもう少しこれは考えなければならない。まあ併し今日はこれ以上私は質問しません、考えてこの次に質問します。
○委員長(中川幸平君) 質疑は次回に続けることにいたしまして今日はこれで散会いたします。
   午後三時四十四分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     中川 幸平君
   理事
           赤木 正雄君
   委員
           石坂 豊一君
           大隅 憲二君
           佐々木鹿藏君
           安部  定君
           久松 定武君
           北條 秀一君
  衆議院議員
           田中 角榮君
  政府委員
   建設政務次官  鈴木 仙八君
   建設事務官
   (都市局長)  八嶋 三郎君
  説明員
   建 設 技 官
   (住宅局建築指
   導課長)    内藤 亮一君