第007回国会 予算委員会 第7号
昭和二十五年三月四日(土曜日)
   午前十一時四十一分開会
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  本日の会議に付した事件
○理事の補欠選任の件
○昭和二十五年度一般会計予算(内閣
 送付)
○昭和二十五年度特別会計予算(内閣
 送付)
○昭和二十五年度政府関係機関予算
 (内閣送付)
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○委員長(山田佐一君) それでは只今から委員会を開会いたします。
 先ずお諮りいたしたいことがあります。先日高橋啓君が委員を辞任なされましたので、理事の補欠選挙をお願いいたしたいと思います。つきましては先例により委員長において指名いたしまして御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(山田佐一君) 御異議ないと認めます。ではさように委員長から指名いたします。岩木哲夫君をお願いいたします。(拍手)
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○委員長(山田佐一君) それではもうじきに大蔵大臣がお見えになると思いますから、その間速記を停止いたします。
   〔速記中止〕
○委員長(山田佐一君) 速記を始めて。それでは只今から大蔵大臣に対する質疑を開始いたします。先ず内村君から発言を求められております。これを許可いたします。
○内村清次君 大蔵大臣及び吉田総理大臣は、一月の二十三日の施政方針及び財経の方針演説におきまして、日本経済は安定をした。こういうような非常に楽観的な演説をされまして。この日本の経済の安定、而もそれはディス・インフレーションの形において今安定をしたというような、非常な断言的なお言葉を言われておるのでありまするが、併しながら現在の日本の産業及び経済の状態は、首相及び蔵相の演説どは全く相反した状況であつて、我我が常に指摘しておりまするようにデフレ経済になつており、不況が深刻になつておるという状態であつて、而もそれが各企業及び各個人に対して見ますると、これは非常に悲惨事が相当起つて、而もこの悲惨事に対して政府の温かい指導を要望しておることは、これはひとしく国民が体験しておる実態でありまするが、にも拘らずいわゆる三月一日のあの冷酷なる蔵相の談話に対しまして、恐らく全国津々浦々の中小企業の方々は非常な失望と同時に、政府のいわゆる何がないところの指導に対しまして、大きな反響を呼んでおることはこれは実際であります。昨日も全国の中小企業の各代表者の方々の切実なる訴えを聞いたわけでありまするが、これに対しまして参議化におきましても、昨日同僚議員から蔵相及び通産大臣としてのいわゆる対策につきまして、相当突込んだ質問があつたに拘わらず、要約して見ますると、蔵相及び通産大臣としてのあの答弁に対する要旨からいたしまして、私達が聞き逃しのできない言を二、三点挙げまして、この点について御質問したい。
 それは第一点は、日本の経済をいわゆる自由党が考えておりまする自由経済に引直して行く。勿論戰時中の統制経済につきましては、これは我々といたしましてもこの点については賛成であります。どうしても民主的な計画経済を我々は要望しておるのでありまするが、併しながら自由党が考えておりまする即ち自由経済、すべて無計画的な、即ち弱肉強食的な経済、こういうような経済につきましては、現在の日本の経済を再興させて行く、復興させて行くという観点については、我々はこの点につきましては反対でありまするが、併しそういうようなこの統制を全部自由に外して行く過程におけるところの経済界の波瀾に対しまして、そうしてこの波瀾をいわゆる恐慌にならないように指導育成して行く。これが大きな務めでもありましようし、又通産大臣といたしまして特に現在の電気産業の問題、或いは又鉱工業の問題、こういうようなすなわち日本の基礎産業に対するところの重大なる問題が今提起されておる。こういう問題を一つ一つ解決して恐慌をなくして、これは蔵相といたしますならば、いわゆる民自党の即ち政策に従うところの自由経済に持つて行こうというようなことにお考えでありましようが、そういうような特にドツジ・ラインによりますると、この日本の自由貿易、即ち貿易の自立を図つて行くような大きな問題、こういうような即ち通産大臣管下におけるところの指導監督の任にあるような大なき仕事、この仕事と、一方においては税制を改革して行く、或いは日本のインフレ経済を、財政を、これを処理して行こうというような特に大きな又大蔵大臣としてのお仕事、こういうような即ち大きな仕事、この二面を一つにこれを持つて行くというようなお考え、この考え方は昨日の答弁を見てみますると、何ら御反省もなくして、やはり死ぬまでこれを続けて行くというような御発言でありまするが、これは少し無理ではないか。同時に又ああいうような御発言をされた即ち底意は、これは蔵相自体の性格に現われておるものである。これは私達が本会議におきまするところの国鉄裁定の問題のときにおける御答弁においてもつくづく今回は感じたわけでありまするが、そういうような冷酷な御性格からいたしまして、そうしてこの日本の中小企業者、こういうような人達を救つて保育して行こうというようなことは、もう通産大臣としての即ち御資格は私達は辞退された方がいいのじやないか、かように存じておるのでありまするが、この点につきまして、尚蔵相はやはりこの大きな両面的なものを一緒に職務を遂行して行くお考えであるかどうか。この点を一つ先ず御質問いたします。
 それから次には中小企業の金融及び機構に対しまして、それから特に又徴税の面に対しまして御発言があつたようでありまするが、大体日本の中小企業の整理期間は十月までに完了するであろう。その間に即ち弱肉強食的に整理されるものは整理されてもこれはいたし方がない。インフレの過程においての即ちそういうような企業、放漫な企業は整理されてもいいだろうというような御発言もあつたようでありますが、併しながら実際において中小企業はこれは何と申しましても、金融や又この徴税というこの両側面から阻まれて、そうして本当にこれは政府の温かい手を差延べて貰わなければ更生できないというような状態は当然のことであります。それに対しまして何ら対策を示していない。この点につきましては、あとで大蔵大臣に、対策の問題につきましては御答弁をお伺いいたしましてから、又更に再質問をいたすわけでありまするが、こういうような十月までに整理をされてしまうが、併し今回の即ち自分の発言を転機として対策を考えて行くというような御答弁があつたでありまするがこれに対しまして、如何なる対策を考えておられるのか、その点をお聞きいたしたいのであります。先ずこの二点をお聞きいたしまして、再質問を更に続行したいと思います。
○国務大臣(池田勇人君) お答え申上げます。統制経済、悪性インフレ経済の下に、我が国の経済は正に崩壊せんといたしておつたのでありまするが、幸い超均衡予算によりまして、漸く安定の道を迫るようになつたのであります。この期間におきまして、いろいろな困難が出て来ることは私は予想いたしておりまするし、又この点は何人も考えておられたと思うのであります。而してその困難が克服し得るかどうかというところに問題があるのでありまするが、幸い安定の軌道に順調に乘つて参りましたので、私はこの困難は克服し得ると確信いたしておるのであります。而してその転換期において、恐慌の起らないようにいろいろな施策を講ずべきであるというお話であります。勿論我々はこの点については同感でありまして、ここで例を申しますると、石炭の統制撤廃の際におきまして、大企業はよろしうございまするが、中小の炭鉱には可なりの困難さが来たのであります。併し私はこういう移り変りのときに、小企業、小炭鉱が、非常に苦しくなつて、破滅に陷るようなことがあつては相成らんと思いまして、あのとき当時十億円余りの融資をいたしまして、漸く今日まで持つて来ておるのであります。従いまして、石炭事情は日に日によくなつて参り、炭鉱関係の收益も非常によくなつておる状況であるのであります。こういうふうなやり方によつてこの移り変りをやつて行こうとしておるのであります。而して何と申しましても、転換期におきましては、誰も皆困難でありまするが、困難な点はやはり一番中小企業に重くかかつて行くのがこれは経済の実情でありますので、中小企業に対しましては非常にお困りの金融の問題、或いは税の問題につきまして、できるだけの措置を講じたいと考えておる次第であります。お話のように十月までは整理期ということを言つたと、勿論十月という言葉は使つたのでありまするが、私のあのとき申上げた意味は、最近殊に纖維関係におきまして非常に投売りが起つております。これは一つの原因は、政府が輸出滯貨をどんどん放出して行くことから起つたのであります。従いまして転換期におきましては、そういうちよつとしたことがありましても非常に先不安にかられまして、そうして投売り等が起るような現状は今街頭で見る通りであるのであります。これは先行き不安によつてそういうことをなさる方は成りべく少くしたい。それには経済の復興、安定の見通しを付けることが必要だ、そういう不安にかられて普通の経済行為でないようなことをなさるのは極く短期間である。私は一日も早くそういうことがないことを望んでおるという話をいたしたのであります。私は新年度になりまして、直接需要も殖えて来、そうして経済がますます安定の度を加えまするならば、困難な中小企業対策も円滑に行くだろうし、又私としては是非ともこの困難を克服して行かなければならんと努力いたしておる次第であります。
○内村清次君 今の蔵相の御答弁では、私はいわゆる十月までにおける整備期間におきまして、又談話を転機として如何なる中小企業に対しての具体的な金融対策、及び又減税、及び又この企業の保育をやるかというそれを示しておらん。そういうことを質問しておりますが、それにつきましては、又税制の問題についての具体的なお話もされていない、その点を先ず……
○国務大臣(池田勇人君) 私の一身上についてここで申上げることは如何かと思います。御承知の通り今の内閣制度は総理大臣の任命であるのであります。私は総理大臣に兼務を命ぜられまして、その任ではないと思つたのでありまするが、この際粉骨碎身両方の行政に努力して行きたいと考えておるのであります。総理大臣の任命でありますので、この点は総理大臣にお聞き頂きいたいと思います。
 次に今回の談話を機会としてと、こういう御質問でありまするが、私は今までも中小企業に対しましては努力を続けております。従いまして、こういうことを言つたから特にどうこうするというのではありません。やはりこの経済が安定の度を加えて来ると同時、に、そのしわはずつと縮まつて参りますので、そういう意味において今後一層努力すると申上げておるのであつて、今回談話をしたからこういう対策を講ずる。そういう意味ではないのであります。今までも、昨年の八月以来いろいろな手を盡しておるのであります。而してこの一―三月危機と言われておるこの論拠は、結局は政府の一―三月における資金の引上超過ということが一つの原因であると思うのであります。従いましてこれにつきましては、政府の金を極力民間に流すように努力いたしておるのであります。
 昨年の暮に百億円を出し、又先般公団の滯貨金融、或いは未收入金の決済等に預金部資金の金を百五十億使うことにいたしましたこと、又復興金融金庫にありまする八十億円を民間に、特に中小企業に出すようにいたしましたこと。又昨日か、一昨日に新聞にありました政府の金を中小企業にできるだけ廻るように、百億円出しましたこと等であるのであります。而して今御審議を願つておりまする興銀、勧銀、或いは商工中金、農林中金等に出資を見返資金からいたしまして、長期債券を発行して長期資金の調達等を今公表いたしておるのでありまするが、その他につきましては、できるだけ政府の余裕金を民間に流すように心掛けておる次第でございます。税につきましては、これは税の改正によりまして今年度からは中小商工業者に相当の減税になることは皆さん御承知の通りであるのであります。而して国税においては減税になるが、地方税においてどうこうという議論がありまするが、地方税におきましても減税になる、全体として減税になることは明らかであるのであります。この地方税におきましても、特に中小企業のことを考慮して、附加価値税のみならず不動産、固定資産税につきましても特に考慮を図るようにいたしたいと考えておる次第であります。
○内村清次君 この金融問題につきまして、中小企業が非常にこの滲透がないという状態は、いわゆる日銀で中小企業に対する政策を考えておられるようですが、いわゆる見返資金の四半期までの放出は僅に三億である。三億でしかない。而もそれは直接この中小企業に対するところの、即ち回転資金及び運転資金として出しておられる、やはり銀行を通じておられますが、日本銀行はやはり現在の機構において各企業の計画性及び又は情実、こういうものが優先され、勿論計画はこれは当然考えなくちやならんが、情実それだけが優先して、そうして一つも正業、まじめな業に対するところの融資が届かない。こういうような現状でありまするが、特に又大蔵大臣はそういう問題に対して今後はどういう具体的な方策を以てやられるのか。同時にこの中小企業の協同組合又は信用保証組合、こういう問題に対しまして、中小企業の協同組合に対する直接融資、こういう点についてどういうお考えを持つておられるか、この点で非常にいわゆる滲透計画といたしましては密接な計画と思うのでありまするが、こういう点に対する対策の先ずお考えをお聞きしたいということが一つと、それから減税の問題でありまするが、これは今回の税率にも現われておりますように、即ち税率が五十万円以上のものは皆五五%で止つておるというような問題、こういう問題に対する高額所得者に対しての減税率が非常に大きいということと、それから基礎控除の額が何ら考えられておらない。いわゆる中小企業に対するところの税関係に対してはそれがない、こういう点に対して何も考えておらないに拘わらず、即ち勤労所得よりも尚且つ中小企業の人達は減税をされておると言う、而もこれは昨日の答弁によりますると、具体的にそれは表を以つて示してもよろしいというようなことまでも昨日答弁されておつたようですが、これを一つ表によつてでも、或いは又表に代る直接詳しい減税の比率を示して頂きたい。この点を特に質問いたします。
○国務大臣(池田勇人君) 見返資金の使い方でございまするが、今お話の点の四半期三億円というのは、今年の一月から動くことになりました中小企業への長期資金の問題だと思うのであります。これはお話の通りに大体月一億円の予定で行つておるのであります。而して半分は銀行、半分は見返資金、そうして銀行が優先的に回転いたします。又その取扱つた銀行には一定の手数料を出すことにいたしておるのであります。施行当初でございまして、まだ十分動いておりませんが、一月から始めまして只今まで、即ち二月の末までに五千数百万円出ております。三月になりまして以後四、五日でございますが、その上に二千数百万円加わつております。これはどんどん動き出しまして、月一億以上になると思います。又月一億以上になればどしどし出して行く考えでおるのであります。又別に私は通産省並びに府県で調べました中小企業者の長期資金で非常に推奬すべきもの、これが七十億とか或いは四十億とか言われておりまするが、この四十億に対しましてもできるだけ早い機会に出すように、只今通産、大蔵両省間におきまして打合せをし、各特殊の銀行、特殊の銀行というのはございませんが、長期資金融通になれておる銀行からいろんな手を盡して見たいと考えておるのであります。又別方面から協同組合、信用保証協会、これも私といたしましては十分育成して行きたいと考えておるのであります。尚中小企業の問題といたしましては無盡等もございますので、最近は預金部の金、政府資金の金を融通いたしまして、できるだけ中小企業金融に無盡が積極的に動くように資金を供給いたしておるような次第であります。
 次に今度の税制改正によりまする中小企業の負担が勤労階級と比べてどうなつているか、又最高五五%の税率は大納税者に非常に軽くなるのではないかというお話でございます。シャウプ勧告案では三十万円超五十五と相成つておつたのでありますが、この三十万円から最高率税というのは少しひどすぎるというので、五十万円までシャウプの勧告を改めたのでありますが、この五十万円超が五十五にいたしますると、住民税が御承知の通りに所得税に対しましてかかつて参りますから、住民税を加えますと六六・七%に相成るのであります。而して又別に富裕税がございまして、資産に対して相当の所得があるといたしますると、六十六というパーセンテージは七十五なり或いは八十に上る場合があるのであります。この税率は住民税並びに富裕税と関係してお考え願えれば、大体この程度のものが至当ではないかと考えております。次の中小企業に対する他の場合との軽減の割合につきましては、政府委員から答弁さすことにいたします。
○政府委員(忠佐市君) 只今地方税改正が最終的に確定しておりませんので、まだ国会に提案されておりませんために、確定的な数字を申上げることは困難でございますけれども、一応仮に試算をいたして見たというようなところで数字を申上げて見たいと思います。問題といたしましては、附加価値税が新設いたされまして、事業税との負担が如何よりになるかという点が問題となつております。従いまして、この点も一応呑み込んで数字を御覧になつて頂きたい、かような考えで申上げることにいたしたいと思いますが、大体中小商工業者といたしまして、昭和二十五年の所得が二十万円と仮定いたします。現在の国税の負担が大体四万四千円ということに相成ります。それから地方税の関係におきまして三万三千円、合計七万七千円ということに相成りますが、その他に尚地方税が一万三千円ほどでございます。これが扶養親族の数が三人、そういう家庭の状況を想定いたしまして計算いたしますと、所得税が今年は三万六千円に相成ります。それから地方税が一万三千円と減つて参ります。合計が四万九千円、それが本年から新らしく專従者控除も認められますので、先ず專従者が一人ございますれば、その国税は三万一千円に減ります。地方税は一万三千円でございまして、合計が四万四千円、このように七万八千円に対しまして扶養親族が三人の場合の專従者がない場合は四万九千円、そこで二万八千円ほどの減額が出て参ります。扶養親族が同じ場合に尚專従者が一人おるという場合には更に四千円ほど減つて参る、かような計数になつております。この外尚取引高税と附加価値税との計算が非常に困難でありますが、これを物品販売業と想定いたしまして、先程現行の税では一万三千五百円程度と申上げました。これを或る仮定計算で附加価値を計算いたしますると、物品販売業は一万八百円に減る、かような計数が出ております。これを試みに給與所得者、俸給生活者と比較いたして見ますと二十万円の所得金額の計数が出ておりませんので、十五万円というところで申上げますわけですが、これは勤労控除をいたしません前の税込みの收入金額が十五万円というわけでございます。国税は現行法で計算いたしますると、二万七千円、その外に地方税が、千円余ございまして、合計が二万九千円ということに相成つております。これは多少家族数が違いまして、夫婦と子供二人でございますから、扶養親族が二人の場合と多少先程申上げました中小商工業者の例と親族数が異りますが、扶養親族数二人の場合、これが二十五年度におきましては国税が一万七千円、それから地方税が七千円合計二万四千円、まあかようでございまして、差引き五千円程度の減でございます。これは扶養親族の数、家族の数によつて異りまするが、只今申上げましたような結果によりまして、相当のその間の事情の変動がお分りになると思います。尚先程申上げましたように附加価値税の計算におきまして、附加価値の程度と、所得の程度とが非常に違いまするので、その間に負担の波動等が生ずることがございまするが、只今概算いたしました数字を申上げまして御了承願いたいと思います。
○委員長(山田佐一君) 岩間正君。
○岩間正男君 三月一日の蔵相の談話は非常に喧々囂々と非難を浴びたようでありますが、私はむしろ池田蔵相は非常に正直だというので褒めたいと思うのであります。というのは、現在の吉田内閣の政策を考えて見れば当然蔵相のような言葉が出て来るのじやないか。ドツジ・ラインによるところの集中生産をあのようにやつて行きまして、更にその結果として、企業整備がものすごくされてそれが中小企業者に大きく負担されておる問題であります。更に国内の金融操作の問題、又貿易問題、こういうような一連の関連においてこの問題を見るという、むしろ吉田内閣の政策を端的に物語つておる。あの談話はこういうふうに見るのでありますが、これに対して蔵相はあの談話そのものについて現在もそういう意見を持つておられるかどうか。この点について先ず伺いたいと思います。
○国務大臣(池田勇人君) あの談話が新聞に出ただけでは私の真意が伝わつてないということは認めまするが、大体あらゆる施策を講じまして、一人の落伍者もないように私は努めて行きたいというのが真意であるのであります。従つてその結果として万一そういうふうな者があつたとした場合にどうするかという問題でありまするが、私はないことを目標にやつておる、若しあつたときにはこれはもう残念ながらいたし方ないという気持を持つているのであります。
○岩間正男君 その後蔵相の心境が幾分変化されたように見るのでありますが、基本的な点においてはどうも我々は未だこれに対して了解することができないと思います。問題はこの現状認識の問題だと思いますが、過般のしばしば繰返されました衆参両院の説明によりますと、経済は安定しておる、そうして大衆の生活の現実では何が起つておるかというような問題について蔵相は認識が欠けておるのじやないか。こういうふうに思われます。殊に今問題になつています中小企業の面におきまして、果してこれはどのような事実が起つておるか、これは大掴みでいいですが、蔵相の現状認識について私は聞きたいと思います。
○国務大臣(池田勇人君) 先程来申上げましたように、一部の物品につきまして値下りが起きておる、そうしてその値下りをひどく喰わないうちに早く処分しようというような、いわゆる投売りも一部には起つておるのであります。又金詰りその他によりまして、経営がうまく行かないという場合もよく承知しておりまするが、日本の経済全体といたしましては、生産も殖え、経済も安定し、通貨も安定して、安定の軌道を踏んで行つておると考えます。
○岩間正男君 安定論の論議は私は余りここでやらないでいいと思います。時間はこれからありますから。その問題は保留しますけれども、今の大体の説明によりますと、非常に現状認識が欠けているのじやないか、これは私はまあ一例として挙げたいのであります。最近の二月のこれは二十四、五日だつたと思いますが、我々参議院の予算委員会におきましては、現在中小企業の破壊相が最も端的に現れておるところの群馬、栃木の方面の機業地帶を見学したのであります。そのときの様子を簡單に報告して、ここで蔵相の参考にしたいと思いますが、例えば桐生の例でありますが、こういうことが起つておる。これは向うの業者と我々は会い、又税務署なんかにも行きまして、その実体をできるだけ詳しく調べたのでありますが、例えば桐生の例におきましては、自転車経営という言葉がこれが殆んど常識的に流行しておる、これは蔵相分りますか。自転車経営。非常に面白い言葉、(「その通りだ」と呼ぶ者あり)これは恐らくお分りがないだろうと思いますから説明します。こういうわけです。つまり自転車はペダルを踏まなければ倒れる外ない。それで今もうとても休業するような態勢までもとつている余裕がなくなつて来た。従つてどこまでもこれはまあ操業して行かなくちやならない。仮に原価を割つてしまおうが、それからもう立行がなくても、手形を果すために、或いは又税金を納めるためにやつて行かなくちやならない、実にこれは破壊への道を進んでいるんだけれども、何とも今や早坂をビール樽を転がすような恰好で、止めることはできない、こういう深刻な状態になつているのであります。而も休業者がどんどん一方で出ておりまして、例えば伊勢崎市のごときは最近まあ三百軒ぐらい休業しておる、そこで納税の方も非常に悪くなつておるので、あすこの市の財政におきましては、もう一部支拂停止をやつておる。桐生におきましてもすでにそういうような傾向が現われておる。そうして教育費のごときは支拂停止になつておる。こういう形が起つておる。業者は全くこれは現在のような方式が進められて行つたとするならば、もう自滅を待つ外はない、こういうような状態に追い込まれているのであります。こういうような状態に対して、蔵相は果して実体を掴んでおられるかどうか、掴んでおられるとすれば、一体あのような言葉が出るのであるかどうか。まあこの点についてちよつと尋ねて見たいと思います。
○国務大臣(池田勇人君) 昨年秋以来政府の輸出滯貨の物資を拂下げることをいたしましたので、纖維製品に対しまして、特に多大の影響を與えたのであります。そのうちにおきましても絹織物、人絹織物に対しましての拂下げが行われましたために、生糸の暴落を来し、又機業地において自粛休業ということが起つておることは存じておるのであります。而して先ず生糸の値下りの場合、製糸業者に対しまして三億円ばかりの融資をいたしました、又福井並びに桐生方面の機業地につきましてもこの機業の対策につきまして金融措置を講ずるように、今計画を進めておる次第であるのであります。併しその原因が政府の輸出滯貨の急激なる処分ということに相当の力がありますので、只今関係方面より、三月中に滯貨の処分を実行すべしという覚書が来ておりまするが、私は暫く今の情勢を見て、滯貨の一掃は延期したいという気持で折衝を重ねております。幸か不幸か、絹織物を三十億円ばかり出すことにいたしまして、契約をいたしたのでありまするが、支障が起つて参りまして、これは出さないことにいたしました。こういうことはやはり絹織物の値下りに対しまして、相当の好影響があるかと考えております。
○岩間正男君 三億くらい今まで機業地帶に融資されたというのでありますが、こういうような融資で以て一体止まるような状態と蔵相は考えていられるのかどうか。若し考えていられないとすれば、どれくらい一体必要だと考えておられるか。それから更にこのような金融措置だけで以て、金繰りだけで以て一体今日の中小企業の危機というものを果して救い得るかどうか。我我の見解では、どうしてもこれと関連した貿易政策の問題、更に国内需要をどのように高めるか、こういうような一連の政策の問題と連関しなければ、当然この問題の根本的な解決はあり得ない。従つて單なる機業に対する金融というようなことでは、現情では燒け石に水になつて、食い潰しを起すだけに過ぎない。こういういうように考えるのですが、その点蔵相はどう考えられるか。
○国務大臣(池田勇人君) 只今の三、四億円というのは、製糸業者の場合では、業者と大蔵、通産打合せの上に決めたのでございまして、製糸に関しましては、この程度で只今のところよいと考えております。その他の分につきましては先程申し上げましたように、今計画を進めつつあるのであります。お話の通りに、こういう個々の問題ばかりに專念しておつて、経済の立て直りはできるわけではございません。これはもう我が国は貿易に依存しなければならんことは当然でありますので、私は通産大臣といたしまして、貿易振興につきまして、できるだけの努力をいたしておるのであります。
○岩間正男君 これと連関したいろいろの政策の点について問題があるのでありますが、これはまあ先の問題としまして、次に税の問題でありまするが、これも我々は桐生でその実態を見て来たのであります。池田蔵相の新聞談によりますというと、どうも部下を責めるわけではないが、事務当局が私に附いて来ないと、事務当局のやり方について非難をされておるのです。併し我々は、最も典型的な税務署長を実は桐生において発見した。桐生に参りますというと、我々のところに業者の代表が何人か参りまして、そうして徴税の樣子についていろいろ訴えられた。併しこの人達が帰り際に何と言つたかというと、我々がここに来たということについては、これは絶対言わないで呉れ。若しもこれが知れた日には大変なことになる。実におどおどとしておる。その中には桐生市の市会議員をやつておるというような地位の人もありますけれども、併し現在の情勢におきましては、この税務署の署長の持つておる権限というものは実に莫大なものになつているわけです。そういうような形でありまして、いわば恐怖政治である。もう税務署とそれから銀行ぐらい怖いものはない。警察なんかとても問題にならん。(笑声)警察の何十倍今日においては税務署が怖い。この業者の戰々兢々たる有樣を見まして、これが民主主義を口にするところの日本の、そして吉田内閣の治下にあるところの政治の状態かということを我々は実に痛感したのです。更に後になりまして、この税務署長に会つて実情を聞いた。どのように民主的に運営されておるか、このような実情が把握されておるか。ところが現状の把握については丁度今蔵相の言われたような程度であります。幾分最近の状態では苦しい目に遭つておるようであるけれども、併しそういうのには起つていない。これはまるで現状と違つたことを言つておる。これは恐らく知つていないのか、或いは知つていても頬被りをしておるのです。そうでなければ、あの苛酷な税金を取り立てることはできない。そういう形でありますからして、そういうようなつんぼ棧敷に入つて頬被りでやつておる。而もその税務署長が曰くには、私は今の日本の官吏として飽くまでこの業務を遂行する、仮にこれによつて戰犯として追放されても敢えて悔ゆるところはない、このように申しておるのであります。このような苛烈な態勢におきまして、桐生においてはものすごい恐怖が行われておる。例えば今まで申告に対して更正決定が来る、これに対して異議の申立をする、そうしますというと、反対にこれに対する懲罰的な意味か何か知りませんが、却つて苛酷な多いところの税金が来る、こういう形でありますからして、今の政府が言つておるところの税金を緩和するなどということは末端まで行われていない。そうして私は又そのとき言つてたのでありますけれども、一体これは税務署長が悪いのであるか、政府が悪いのであるか、この点をはつきり我々は考えなければならない。今のごまかしに乘つて、口先で、国会で、そうして政府の声明におきまして、そういう立場におきましては税金を緩和する、中小企業に対する対策はとつておる。併しながら果して末端でそれが行われておるような情勢になつておるかどうか。金融の面についてもこれは言いたい。担保の問題、それからいろいろな操作の問題、手続が煩雑だというようなことで、政府の融資した金がなかなか直ぐには渡らん、急場には間に合わないという情勢になつておる。その他同じような形で政府の中央において声明したものが末端まで何ら行つていない。そうして末端におきましては、これはどういう関係になつておるか分りませんが、相関関係はここで審かにしないのでありますけれども、口先では緩和しろと言つておりながら、一方では飽くまでも公務員法によるところの官吏の業務は遂行しろと、つまりこの二重の板挟みになつておるのが税務署長ではないかと、こういうふうに考えられる節があるのであります。果してこの問題の原因は政府にあるのか、税務署長にあるのか。私は一地方の税務署長を吊し上げてみてもこの問題の解決はないということを見て来たのであります。併しながら本当に緩和するならば、このような方策が末端まで遂行されて、そうしてそれについてどのような対策がとられておるか。実に現状において見ますと、桐生においては税務署長は悪代官の役割をしておる。今までの古い封建時代のあのような恐怖が起つておるということを見て来たのでありますが、これについて蔵相は末端まで即時滲透し得る、即時使えるような方策について弁明が願いたい。
○国務大臣(池田勇人君) 税務署長は税法の規定によつて行政をするより外にございません。如何なることを申しましたか、私はその事実を知らないので、ここで御返事するわけには行かないのであります。今の経済事情から考えまして、又経済事情如何によらずとにかく税は法律の命じましたところを施行しなければならないのであります。私といたしましては、常に行過ぎのないように、税法通りやつて行くように指令しておるのであります。実際問題といたしまして、いろいろな税法の施行の上におきまして、問題があると思うのでありまするが、それは税務署長の良識によつてやつておると考えます。
○岩間正男君 今の税法通りにやつておつて、果して現状における中小企業の窮状を救うに足ると考えておられるどうか。つまり、緩和というものはどういうものかはつきりしない。はつきりしないというのは、私がはつきりしないだけではなく、税務署長もはつきりしない、こういうところに追い込まれておるので、税務署長の良識によつてやるなんということは、実に末端において混乱を起しておる。(「その通り」と呼ぶ者あり)従つて、桐生と足利においては、まるで課税のやり方が違つておる、対象が変つておる、こういうような実に不平等なことが行われておるのであります。蔵相は果してこれを掴んでおるかどうか。この点について答弁を願いたいと思います。
○国務大臣(池田勇人君) 税法に規定してあることに違反してやることはできないのでございまして、税法の趣旨に則つてやつておると考えております。足利税務署と桐生税務署とのやり方の相違につきまして、私は今材料を持つておりません。私といたしましては、多年経験ある税務署長でございますので、そう不権衡のないようにやつておると考えております。若し不権衡ありとすれば、これは関東、信越国税局長に事情を聞きまして、是正をさすにやぶさかではございません。
○岩間正男君 どうもやはり依然として曖昧な答弁たることには変りはないと思うのであります。一体税の緩和というものはどういうことを意味するか、税法通り飽くまでこれは遂行させるというようなことで果してこの緩和ができるかどうか。併しこの議論は後に保留しましよう。
 次に蔵相の談話を見て我々が非常に奇怪に感じたことは、問題を個人的に落していることであります。池田蔵相談話なるものを新聞から掴んで見ますというと、例えば経営方法が悪いとか、それから金詰りは経営者の方法が悪いのでその責任だとか、それから事業拡張の資金が少いからといつて金詰りとは言えない。これはやはり個人の経営の方式が悪いとか、或いは最も問題になるのは、困つていて自殺までするなら、するような状態になつたら自分になぜ相談に来なかつたのだとか、この問題はまあむし返しになると思うから余りひどく追求しませんけれども、一体こういう個人的な操作もこれはできると思うかどうか、苛くも一国の蔵相が……一税務署長さえこれは今日なかなか一人々々に面接してということはしないわけです。果してそうような問題で何が解決されるか、これは或いは人情的に蔵相はちよつぴりそれを出されたのかも知れませんけれども、こういう考え方、個人的な考え方そのものに問題がある、ここにやはり問題の本質があると我々は見なければならないのであります。蔵相はこの前の、殊にこれは一人々々そういう問題を自分に訴えればいいというようなことについては今日どういうふうに考えておらるれか。これについて一つ……
○国務大臣(池田勇人君) 金詰りは経営者に責任があるというのは、それは言葉が足りなかつたのでありまして、それは政府の施策に責任があることも勿論でございますが、銀行の方にもあります。而して常に話題になるのは銀行が貸し澁る、銀行が出さないというふうなことが言われましたので、経営者側におきましてもやはり幾分の責任のある人もあるんだということを申上げたのであります。それから死ぬ程税金に困つておるというような人がある、そういうふうな人をどうするか、これは私としては税務行政と携わつておる大臣としまして、暇があればいつでも相談に応じ、自分としてはできるだけそういう人の声を聞きたいのだという心構えを言つたのであつて、九州からの証人の旅費を出すとか、北海道から来る人の旅費を出すとかいうような御質問がありましたが、そういう気持ではないのであります。大蔵大臣として、死ぬ程お困りの方につきまして、殊にそれが私のやつております税金のことについてであるならば、私としては欣然として会う用意がある。このことは自分が会えなければ、国税庁長官にしても祕書官にしてもできるだけの手を盡したいという心構を申上げたのであります。
○岩間正男君 この問題は余り突つ込んで見ても大した問題でないかも知らんから、これは保留します。
 次に大体現状認識の問題とも連関して来るのでありますが、この池田談話なるものが出されて、これで非常に喧喧囂々たる非難の声が起つておる、これは院内外から起つた。そういうことで蔵相が、これは大分今までのような勇敢な態度……今日なんかも御答弁を聞いておると、大分違つておるようでありますが(笑声)こういう点で……それから現状認識の点から言いまして、今まで堅持された安定論が根底から覆つた、こういうふうにこれは考えざるを得ない。これは論拠をその外にいろいろ挙げますと、例えば貿易の最近の行詰りの状態、それから外貨資金が不足であつて、例えば今度六千七百万ドルしかなかつた、それからポンドが五百万ポンドしかなかつた、こういうようなことで最近非常にこれは行詰つておる。それから一方では今、問題になつておりますところの、国鉄裁定、專売裁定、更にこれと関連したところの賃金ベース、こういうような問題で国内の有効需要というものは非常にこれは減つている。こういうところで今やどうもならないところに追い詰められているのが現状である。従つてこの安定論の根底は覆つた。尤もひと頃池田蔵相が言われるほど勇敢にこの安定論はその後続けられないようでありまして、衆議院の方に行くと、低い安定だ、非常にこれは弱い安定だというので、大分緩和された面もあるのでありますが、更にこういうような一つの問題を契機として安定論というものはもう根本的に覆つた。こういうふうに思うのです。従つてここに、これは單なる金融だけの問題として考えないで、基本的な吉田内閣の諸政策というものをここで徹底的に改正、改革する、こういうような方法なしにはこの問題を解決することができない、こういうふうに我々は考えるのでありますが、従つてこれと連関して蔵相の今堅持しておる、殊に吉田内閣におけるところの財政金融の責任者であるところの蔵相は、当然こういう現状に立てば進退を決すべきところに来ておる、こういうようにはつきり思うが、これに対して蔵相はどう考えておられるか、一つ……
○国務大臣(池田勇人君) 私は財政演説のときに申上げたよりも、もつと強い意味で安定論を唱えたい気持であるのであります。(笑声)十一月の生産指数、滯貨状況と最近分りました十二月の生産指数、滯貨の状況は私の自信をますます深めたのであります。今のお話にポンド地域との貿易の問題で今頓挫しておる、将来駄目だとおつしやいますが、なぜ一、二月においてポンド地域との貿易が一時上らなかつたか、この原因を調べて見れば直ぐ分るのであります。これは伸びる前の屈折だつたのであります。従来日本がポンド地域に対して非常に輸出超過だ、貿易協定のときに日本は早く買つて呉れ、それからポンド地域では日本の方がこんなに輸出超過になつては買控えをしよう、こういう方針をとつおつた。それが余り強く利き過ぎて、日本が非常に向うに対しての輸出を増加したから向うが買控えをした、こういうようなことが原因となつていつたが、今後は向うから日本のものを買うことが多くなつて、日本は輸入した滯貨がありますから、それを生産して出すことになつて来るのであります。そういう一ヶ月かそこらのものを見て、日本の貿易がどうだこうだということを論ずるのは私は早計であると考えておるのであります。全般の施策としては、私はやはり安定の一路を進んでおると考える次第であります。
○岩間正男君 私の時間が余りありませんから、その点については全然反対の我々は材料を持ち、それから反対の意見を持つておるものでありますが、この点の論議は止めましよう。ただです、私は今池田蔵相というものをここで浮彫りにして見ると、こういうことになつて来る。(笑声)曾て池田蔵相はドツジ・ラインが日本政府に示されたそのとき、その前に蒼ざめておののいたのではなかつたか、こういうように思う。そうして個人としては非常にこれは問題を持つておつたと思う。併し現在は逆に強硬にその政策を自分で先頭に立つて、神憑り的に宣伝している。正にこれは神憑り的と言わなければならない。そこに、これは日本の我我がここだけに立つて国内だけの樣子を見ていちや分らんけれども、一度もつと対外的なものに目を転じて行けば、そこに大きな変革をなさなければならない要因があるのではないか。つまり現在において池田蔵相はそういうような意味におきまして、この国際的な独占資本というものの番兵的な役割をしておる。或いはこれを大きく宣伝するところのちんどん屋になつておる。そうしてそういうような形が現実をいつも忘れさして、そうして現実から離れた点において、これは飽くまでもそういうような性格を以てそうして現在の国政に臨んでおるのではないか、こういうふうに考えるのであるけれども、蔵相のこれに対する見解を一つ。
○国務大臣(池田勇人君) 私は外国資本のちんどん屋ではございません。(笑声)日本国民のために経済再建に邁進しておりまする一人の国務大臣であります。
○委員長(山田佐一君) 木村禧八郎君。
○木村禧八郎君 只今大蔵大臣は、日本の経済はますます安定の方向に向つておる。安定論をますます強調して行きたいというお話でありましたが、これについては我々反対の意見を持つておりますが、この機会には御質問しないとしまして、非常に問題になつています三月一日の……
○委員長(山田佐一君) 非常にお忙しいのでして、簡潔に一つお願いいたしたいと思います。(「又呼んだらいい」「今日はこれで止めようや」「簡潔なんて……」「散会しよう」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
○木村禧八郎君 重大な問題ですから、このためにわざわざ……
○委員長(山田佐一君) それですから、成るベく簡潔にお願いいたします。
○木村禧八郎君 三月一日の新聞記者との会談ですね。あの問題ですが、私はあれは大蔵大臣が急に通産大臣になりまして、日本の中小工業の問題のあり方をどこに問題があるのか、又政府がどういう中小金融対策を取つておるか、これに対する認識が全くないところからこれは来たのだと思うのであります。そこでこれは大臣はこういうような認識でおられたならば、今後の日本の中小工業というのは大変なことになる。中小工業ばかりでない。日本の経済が大変なことになる。そこで御質問申上げるのでありますが、先ず第一に、三月一日に新聞記者と会談された、それで新聞に発表されましたあの内容は十分に意を盡していない。こういう昨日の本会議における御答弁でありましたが、あれは事実と違うのでありますかどうか。先ずこの点について。
○国務大臣(池田勇人君) 大蔵関係の新聞記者と会談したことは事実であります。併しあれに載つておる以外のことも言つたのであります。
○木村禧八郎君 あの新聞記事に出ていることは、あの通りに言われたことか、又その通りに報道されておるかどうか。
○国務大臣(池田勇人君) 私が新聞記者と会談いたしました一部分が載つております。
○木村禧八郎君 それではあれは真実を伝えておるものと、その分についてはそういうふうに了承して御質問申上げます。あの新聞記事を見ますと、大蔵大臣は、この財政政策をやつて行くためには五人、十人の者が倒産し、自殺してもこれは止むを得ないというふうに言つておりますが、これは人命を非常に軽んじた考え方であつて、こういうような考えでこれで国政をやられて行つたならば、これは日本の民主化に非常に反すると思う。日本経済再建はただ再建したらいいのではなくて、民主的な日本経済を再建しなければならない。憲法第二十五條を御覧になれば御存じの通り、「すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」とあつて、その次に何とあるかといえば、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衞生の向上及び増進に努めなければならない。」こういうふうになつております。そこで国の政策の犠牲になるといつて倒産、自殺してもよいという私はあれはないと思う。これは非常に人命を軽んじた非民主的な言い方であつて、こういうふうな考え方であつたとすれば、これは又軍国主義的なフアッショ的な道に通ずると思う。これは人命を軽んじた御発言とお考えにならないかどうか。
○国務大臣(池田勇人君) 十人や五人は自殺してもしようがない、こういうことだけならばそういう疑いを起されるのも無理ないかと思いますが、私はあらゆる施策を講じまして、憲法二十五條の健康にして文化的な生活を営ましむるよう努力をいたしておるのであります。而してその努力をいたしましても、尚且つ廃業者が出るときには、これは外の社会保障制度やいろいろなところで救つて行かなければなりません。これは当然のことであるのであります。それを私は前にあらゆる努力をして一人もの倒産者もないようにする、そのように努力しておるのだ、こういうことを言つておるのであります。
○木村禧八郎君 ところが先程岩間君の質疑に対しまして、最近の中小企業者の窮状については政府にも責任があるということを言われておる。最近の中小企業者の窮状は政府に責任があるのかないのか。私の見解によれば、政府の、ドツジ・ラインに基く超均衡予算に基く政策から来ておる。そういうふうに考えるのでありますが、この点についてはどうお考えですか。
○国務大臣(池田勇人君) 勿論政府は財政経済政策に十分なる責任を持つてやつておるのであります。これは当然のことでございますので、私はあの場合においても言つてはおりません。これはもう政府の責任であることは動かすべからざる前提の要件であると思います。
○木村禧八郎君 私がお伺いしておるのはそうじやない。中小業者の窮状、或いは五人、十人が倒産したり自殺するその原因について、政府に責任があるかどうか。
○国務大臣(池田勇人君) 中小業者のみならず、公務員その他の生活の困窮等につきましては、全部政府に責任があるのであります。
○木村禧八郎君 政府の責任によつて中小業者が自殺したり或いは倒産したりする、これは救わなくてよろしいのですか。そういう政府の間違つた政策は止めなければならないのじやないですか。政府の責任においてそういう事態が起つておるのに、政府がこれを飽くまでも遂行して行けば、これは非常に政府は国民怨嗟の的になり、これは非常に悪政をやつておることになるが、それでよろしいのですか。
○国務大臣(池田勇人君) 政府としては全体としてそういうことの起らないような施策を取つておるのであります。而して政府の如何なる政策によつてこれがこうなつたかということになりますと、その場合は全体として考えなければなりません。自分の思惑でどうこうしたために失敗した、これも或る程度の原因は経済界の金詰り、或いは日本経済の再建に原因しておるかも知れません。そういう場合に国が緊縮政策を取つたからこの人は破産した、政府の責任だということは言えんと思います。
○木村禧八郎君 それでは通産大臣としてお伺いしますが、最近の中小業者の窮状或いは自殺したり、倒産したりするその原因はどこにあるのか、具体的にはお調べになつたかどうか。
○国務大臣(池田勇人君) 私はまだ自分でそこを調べてはおりません。これは施策の万全を期するために調べなければならん問題と考えております。
○木村禧八郎君 それならば、先程の御答弁は非常に不用意だと思いますが、実情が分らないで五人、十人の倒産があつたり、自殺したりする人が出て来る。それについて政府の政策の結果によるのかどうか分らない。政府の責任であるかも知れない。現に私が通産省においてこの中小企業庁で調査したものはちやんとここにあるのです。どうして中小業者が金詰りになつているか、どうして中小業者が窮状に陷つているかのちやんと調査した資料があるのです。これに基けば、第一に売行の不振が一番の中小業者の窮状の原因になつている。第二に税金です。第三は金融関係、第四は問屋その他の親工場その他の賃金の遅配欠配、支拂の遅延。とこういうことが原因になつている。売行不振はどこから来ているか、税金の問題、銀行、これはみんな政府の財政金融政策から来ているんじやありませんか。従つて五人、十人の中小業者が倒産したり自殺するということについては、政府の現在の間違つた超均衡予算、均衡予算に何故戻さないのか。超が付くところに問題があるのです。インフレ政策をやるというのではないのです。そこに原因がある。大蔵大臣はここに原因があるということをお認めにならないのですか。
○国務大臣(池田勇人君) 只今の均衡予算は、国民経済再建に最もいい方法であると考えておるのであります。そこで均衡予算をやつて行きます場合において、インフレ時代のあの状態と比べまして、売行不振があることはこれは止むを得ないのじやないかと思います。いつも商売すれば儲かるというのはインフレ経済、こういう経済がよくないということは木村さんも御存知であろうと思う。均衡予算を施行して行きました上において、前よりも苦しくなる部分は相当あります。これは再建への途上の当然踏まなければならん自然の途と私は考えておるのであります。
○木村禧八郎君 それについては意見があるのですけれども、他の機会にいたします。こういうような中小業者やそれから労働者、農民にこんな苦しい思いをさせなくても、今の国の物資の状態、この状態において物動的に考えても、アメリカの援助は無論前提としてでありますけれども、こんな無茶な経済の建て方をいたさないでも済む政策がある。それをやらない。何故やらないかと言えば、日本経済再建のしわを中小業者とか農民とか労働者に寄せよう。そこにしわ寄しておるからそういうことが起ると思う。大蔵大臣は五人や十人の倒産、自殺とお考になつていますが、最近の中小業者の倒産或いは休業、そういうものをどの程度あるというふうにお考ですか。到底五人や十人じやありません。
○国務大臣(池田勇人君) 成るべくそういう方々を少くして再建しようといたしておるのであります。人数につきまして私は資料を持つておりません。
○木村禧八郎君 それではですね、大蔵大臣は最近通産大臣におなりになつたのですから、分らないと思いますが、これもやはり中小企業庁において調査したものがあります。昨年の十月末現在で三十八都府県について調査した中小企業事業場の整理状況、これを見ますと、集計可能の二十八県で閉鎖したもの、事業閉鎖をしたものは千三百三十七件で三割六分、事業休止したものが三百四十八件で九%、事業縮小したものが二百三十件で五・五%、而もこのうち従業員三十人未満の事業場が六〇・五%、半分以上を占めておる。五人や十人の問題ではないのであります。今の日本の中小企業はです。この調査に見るように三割六分も十月において閉鎖しておるのです。その状況が更にますます深刻化して、一―三月の危機はこういうところに来ておる。大蔵大臣がさつき言われたようにただ財政の引上げ超過、これに対して引上げ超過でそうして通貨が縮小するとか、そんなようなことで問題になつて来ておるのではない。これは政府が資金を撒布すれば緩和されるであろう。問題は中小企業者がこのように倒産して行くということに問題がある。大蔵大臣が五人や十人……そういう簡單な問題ではないのであつて、この日本の今の中小企業の現状についてどういう御認識を持つておるか。
○国務大臣(池田勇人君) 中小企業庁の調査につきましては、まだ見ておりませんし、検討を加えて見たいと思います。而してこの中小企業の現状についてどう思うかという御質問でありますが、先程来申上げておりますように、インフレ時代からデイスインフレに入つて来ますので、その間の困難さは免かれません。併しそれをです、我我は財政経済施策によつて切り拔けて行こうといたしております。その一端は今年度からの減税、或いは金融のいろいろな方策を御審議願つておる状態でお分り頂きたいと思います。
○木村禧八郎君 その政府の言われる金融政策とか、減税、政府の言われるそれでは中小企業対策になつておらんと思う。私は今度は政府の中小企業対策について御質問申上げますが、政府は一体中小企業対策をお持ちであるか、それから中小企業者というものはどのくらい中小企業者があるか。それをお答え願いたい。中小企業はどのくらいありますか。
○国務大臣(池田勇人君) 中小企業をどういう形で見るかと申しますると、大体我々のところでは二百人くらいの従業員を有する工場以下のものを言つております。お金で言うと、三百万円程度以下のものを中小企業ということを考えて処理いたしておるのであります。数におきましてはこれは見方もございましよう。商工業いろいろな見方もございましようが、或いは九十万とか九十五万とかいうように考えております。併し営業税のかかるものはもつとそれ以上であるので、どの辺までを中小企業と言うかということにつきましては、なかなか定義が困難だと思います。
○木村禧八郎君 それですから、やはり大蔵大臣の中小企業観が間違いがあるのです。二十万とか何とかそんな数字じやないのであります。蜷川中小企業庁官は日本の中小企業の数は九十六万七千と言つております。そのうちの四人以下の中小企業は、零細企業は、八割せ占めておる。そんな二十万とか三十万の問題ではないのです。九十六万約九十七万の企業があるのです。そういう御認識であるから簡單に日本の中小企業の問題を考える。日本の中小企業が潰れればその人口は農村に行く。農村では御承知の通り約一千万人の農村は收容能力があると言いますが、最近農村では收容能力がなくなつて来ておる。中小企業が潰れれば失業者が出て、そうして労働者の賃金の引下げにこれが拍車をかける。日本経済全体の問題で大きな問題なんです。これを今の通産大臣は單なる二十万人とか勘で言つておる。勘の問題じやない(「いや九十万と言つているよ」と呼ぶ者あり)
○国務大臣(池田勇人君) 九十五万と言いました。
○木村禧八郎君 それならばよろしいです。よいのですが、そういうような重大な問題であるのですから、そう簡單にこの対策を考えるべきでない。九十五万とお答になつたらそれでよろしいと思います。ただそのうち四人以下の企業が八割を占めておる。政府はその八割の企業者に対しての対策をお立てになつておるかそれをお聞したいのです。
○国務大臣(池田勇人君) 九十五万と申上げましたし、又この中小企業を昔の営業税或いは営業收益税のかかつた人員まで入れますと土地によつて違いますが、百三、四十万になることもございます。この四人以下の人が八割を占めるということも私は大体想像が付きます。そこでまあ中小企業と言えば、金融的には三百万円の金額以下のものとか、或いは工場にしたら二百人以下、こういうふうにやつておるのであります。中小企業につきましてもぴんからきりまで……言葉は悪うございますが、二百人程度の工場も中小企業に入つております。又小さい企業も入つておる。そこで中小企業の中でも大きい方は大企業のように可なり信用もありますし、途も付くのでありますが、非常に小さい方の分は、実際問題としまして大銀行或いは地方銀行に直接の関係も持ちにくい点もございます。従いまして通産省といたしましては、企業協同組合を育成発達せしむると同時に、片方では信用協同組合を拡充する、或いは又既存の分を強化して行く、こういうような方法をとつております。又特別に市を單位に信用協同組合を育成しております。この頃の金の流し方は、大銀行を後廻しにいたしまして、まず無盡会社とか信用組合、それから商工中金、農林中金、或いは今までの長期資金の流れておる勧業銀行、それから大銀行というふうに金をやるようにいたしておるのであります。そこでやはり日本の中小企業、殊に商工業におきましては協同組合的の制度によつてやるより外にないと思います。保証制度、お互いに助け合うという相互扶助の観念を起して金融を付けるのが一番よいに思います。対策といたしましては、今後はそういうふうにマッチするような金融機関の拡大強化を図つて行きたいというふうに考えておるのであります。
○木村禧八郎君 政府の中小企業対策はそれで分りましたが、ところで今際の中小企業の問題として一番重要な問題になつているのは、政府がいろいろなお金を出しても、それはペイィング・ベーシスでなければ金は貸さない、例えば欠損を見た場合に損失を負うという形では金を貸さないわけです。ですから幾ら沢山のお金を出しても、それが行くところは大体決まつているのであつて、そうして例えば資本金二百万円とか、従業員は二百人程度であつて、あとの零細企業には廻らない。そこで零細企業に対する対策は何かというと、政府には一つもない。国民金融公庫や市街地信用組合にお金を貸したつて、そのお金は零細企業には廻つて来ない。だから零細企業に対してはどういう対策をお持ちか、ペイィング・ベーシスでなくて損失が出てもお金を貸す御意見があるのかどうか。
○国務大臣(池田勇人君) 極く小企業に対しましては、今の信用保証制度等を活用して行くより外にございません。問題は政府がそういうふうな金融の尻拭いをするか、補償をするかという問題がございますが、私は只今のところそういう考えは持つておりません。やはり業者間におきまして極力お互いに信用を付け合う程度で進んで行きたい。ただ見返資金を中小企業に出しておりますが、これは或る程度補償の意味をなしております。銀行で抱き合せて貸しまして、銀行の方が先に取ることになつておりますから、この意味におきましては補償ということも考えられるのでありますが、全般的に中小企業、殊に小企業者に対して、政府から特殊の損失のあつた場合の補償をする制度は、只今のところ考えておりません。
○木村禧八郎君 政府の中小企業対策の焦点は分つて参りましたが、今中小企業対策で一番騒いでいるのは、政府がお金を流して、お金を借りられる人じやない、金を借りらけない人が即ち九十六万幾ら、その中の八割を占める中小業者、ペイィング・ベーシスじや金は借りられない。そういう中小業者が自殺したり倒産して行くわけであります。そういう中小業者に対する対策は、政府は何らない、こういうように考えていいわけですか。
○国務大臣(池田勇人君) 信用協同組合とか信用保証協会等を拡充強化いたしますと共に、無盡とか或いは市街地信用組合を使つて行こうといたしているのであります。あなたは何と申しますか、中小企業金融に直接に金が行かなければ救済にならんというお考えでございますが、私もそれに越したことはございませんが、個々の銀行に、皆に平等に割当てて貸してやれということはできないのであります。だからできるだけ資金を流して、資金の枯渇の起らないように資金を流して全部を潤おす方法をとる、而してその足らざるところはできるだけ有望のものに貸して行く、有望でない場合におきましては、特にいろいろな保証協会等でやつて行くこういうより外ないと思うのであります。
○木村禧八郎君 それは意思は分るのです。大きいところに出して、それが段々滲透して行くだろうという御意思は分りますが、ところが中小企業庁で振興部公報課ですか、これが出した調査を見ましても、政府がそうやつても金融は付いて来ないというところに悩みがある。この点をどこかで政府は打開しなければならないと思います。今の金融機構ではペイィング・ベーシスを元にするということでは駄目だ、市街地信用組合でも、或いは無盡でも、或いは国民金融公庫でも、ペイィング・ベーシスに乗らなければ金が貸せないわけであります。それから金銀行に貸しても、それは滲透して行かないから問題が起つている。そこが問題である。それには私はどうしても中小企業者自体を自活できるように持つて行く外ない。それには中小企業庁振興部で調査したものによれば、中小企業の一番の苦しみの元は売行き不振にある。これを直さなければならない。売行き不振を直せば、私は金融をやらなくても自然に立ち直つて行く。今のは金融をやつても売行き不振では立ち直らない。売行き不振を立ち直すには今のデフレ政策を直すより外ない。超均衡予算を直すより外ない。もう一つは、中小業者に対して中小業者自身が資金が蓄積できるようにすべきである。金詰りの中小業者から税金を取つて、その税金を以て旧債の償還をする、旧債の償還をすれば、大銀行に金が行つてしまう、中小業者の蓄積になる金は、むしろ旧債償還を通じて大銀行に行つてしまう、大銀行に行けば、中小業者は借りられない、中小業者は二重の金融難に陷つている。この二つを打開しなければ、今一番問題になつている九十六万七千といわれるその中の八割を占める零細企業者は立ち行かない。この点は單なる国会における応答だけでなく、真劍に中小業者の問題点はどこにあるか、資本金二百万円、従業員二百人、そういうようなことでなく、いわゆる三十人未滿の零細企業はどんどん潰れて行く、そういう人達の問題点はどこにあるかというと、結局景気です、売行き不振、それは税金の問題である。この問題に政府が手を打たなければ、これは本当の中小企業対策にならないと思います。この点について大蔵大臣はどういうようなお考えですか。
○国務大臣(池田勇人君) 問題の核心に触れて来られたのでお答えいたしますが、これは今の中小企業或いは勤労階級の要望に応えて、そうしてものがどんどん売れる状態を現出することは考えられます。併しそれをやつたならば、前のインフレになるのであります。我々は国民は飽くまで経済再建のためにできるだけ今の消費を節約して、そうして自立経済の道を歩んで行かなければならないのであります、当分の間は……。そこで私は生活水準を徐々ではありますが上げながら、而も将来援助のなくなつた場合を考慮しつつ経済の再建をやつて参つておるのであります。今売行きが非常に不振であるから、売れるように政府がどんどん金を出してやれということは、私は採らない策であります。而して今お話のように大銀行に持つて行つたら、小企業者には行かない、こういう問題は今後やはり金融機構を改正して行くべきであるのであります。その点は、今商工中金、農林中金の拡充強化を強力に図りまして、向つて行こうといたしておるのであります。
○木村禧八郎君 一番重要な問題でございますから、もう一度御質問申上げたいのですが、その売行きをよくしてやるということがもとのインフレになるという意味はどうしても分らない。この点が私はドツジ・ラインに基く今の政府の政策の間違いだと思うのです。例えば物動的に見ましても、昭和五―九年平均よりも人口はまあ殖えております。併しながら今もう軍事費というものはないわけです。(「どんどんやれやれ」と呼ぶ者あり)例えば銑鉄の生産を例にとつて見れば、昭和五―九年の銑鉄需要は二百万トンである、ところが軍事費はその中どのくらいを占めておつたか、六割を軍事費は占めておつたといわれる。それから昭和十一年が三百十万トンの銑鉄需要、この中六割が軍事費です。そうしますと、この軍事を除いた今の物資生産といいますと最近は、事変前の大体十年、十一年の八割、九割になつておるわけです生産が、併しながら一般国民の生活水準は六割程度なんです。軍事費を除けば事変前に対して八割、九割の生産水準というものは大体人口が二千万殖えたとしましても、事変前くらいの生活はできる生産になつておるんです。にも拘わらず国民生活水準をうんと低めてあるから滯貨が出て来、過剩生産になる。勿論その中には戰爭で破壞された設備の復旧その他をしなければなりませんから、機械的には言えませんけれども、とにかく今の物動的に見ても、無論アメリカの援助を前提としてはおりますけれども、もつと生活水準を高めることができるのに、それだけの生産水準になつて来ておるのにそれをやらないから再生産がうまく行かない、滯貨が多くなつて来てそれで経済が混乱して、そのために中小企業者の売行きが不振になり、倒産したり自殺したりしておる。労働攻勢が起つて来たり社会不安が起つて来ておる。この私は財政経済政策が、最近における生産事情その他が根本的に変つて来ておる、そういうことの基礎に基いてこの超均衡予算を直す、バランスド・バジエットにすればいい、シューパー・バランスド・バジエットにする必要はない、そこに問題がある。折角物が殖えて来て、生活水準を高め得るのに、わざわざ財政金融政策で生活水準を上げないようにしておる。ここに私は一番の今の中小企業の問題でも、それから大蔵大臣の失言の一番の根本問題は私はここにあると思うが、その点についてもう一度質問します。
○国務大臣(池田勇人君) インフレから安定へ行きます場合に、均衡予算をとつたことは御存じの通りであります。而して安定の見通しが付きましたから、復興へ行かんといたしておるのであります。銑鉄或いは鋼材の生産も殖えて参りました。で国の方でも公共事業費その他を増額いたしまして、今鉄のお話がございましたが、鋼材が昨年は二十一万トン政府の方で使うのを二十五年度は三十五万トンに増加しております。それから又セメントにいたしましても、百万トン以下のものを百五十万トン使う計画でおります。木材にいたしましても、千五百万石を二千万石を使わんといたしておる。こういうふうに徐々に国内需要を殖やして行つております。而して又鋼材につきましても銑鉄につきましても、銑鉄は二百万トンを越える計画を立てておる。併し適当な鋼材を、軍艦は造りませんけれども、外社へ輸出して我々の食糧その他を稼がなければならんのであります。そこで鋼材が殖えたから直ぐこれを以てどんどんやれというわけには行きません。超均衡予算とおつしやつても我々が、今前の債務を償還しておる分は若しアメリカの援助がなかりせば我々が飢餓輸出で稼がなければならん金である。それが五年も六年も期待できない、或いは一九五二年でなくなろうというときに、今の援助分は一つは減税に充て、一つは債務償還に充てて将来に備えるのが政府としてのやり方と思います。而も又国民生活水準が下つておるかというと、下つていない。CPIを御覧下されば分ると思います。
○木村禧八郎君 只今の御答弁に対していろいろ私もまだ反対の意見があるのですが、例えばアメリカの援助がなかりせば、これは飢餓輸出しなければならないと言いますが、その一方において終戰処理費というものがあるのですから、それとも見合において考えれば必ずしもそうは言えない。その他いろいろまだ御質問申上げたいところがございますが、與党の諸君が折角の大事なこの委員会において盛んにあれされておりますから私はこの程度にして……
○池田宇右衞門君 午餐のため一時休憩の動議を提出します。(「ノーノー」と呼ぶ者あり、発言の許可を求むる者多し)
○内村清次君 只今池田君から動議が出て休憩を宣しておられるようですが、昨日この委員会で決定いたしまして、大蔵大臣のこの談話に対しては国民ひとしく重大問題であるからというようなところで、今日はもう是非委員会で片付けるというような根本で来たわけです。而も各委員の方々もそういうような趣旨を以ちまして、そうして各答弁、或いは又質疑の問題につきましても決してこれを長くしようというような考えでやつておるのではない。而も又大蔵大臣も次の行程があるということは十分考えて、そうして我々晝食も食わず休憩もせずに、そうして大蔵大臣の今後の職務遂行に対しても考えてやつておる。それに與党議員はたつた二人しか来ておらない。外の人達は誰も来ておらない。そういうような即ち考えを以て、我々がそういう考え、委員会の考えを以てそうして野党の方々は又こうやつて熱心に来ておられるに拘わらず、休憩動議を出してその動議の期間中やはりまだあとに残つた三人の方々、いわゆるこれは各党の殆んど代表的に一人々々の人達がこの問題で言おうというような考えで処理しておる。それに休憩動議を出されるということは私は不可解に堪えない。この動議に対しては反対です。続行をお願いします。
○委員長(山田佐一君) それでは動議に対して決をとりたいと思います。
○石坂豊一君 議事進行の動議を敷衍します。今の御発言は尤もです。私はこの質疑応答を中断しようとも何とも考えていません。又そういうことができるものではございません。但し我々は正午から一時までは食事の時間として常識的に皆それを考ておる。それを妨げるということは国民の基本的人権を侵害するものである。(笑声)それですから、これはちよつと休憩して下さつて、食事の時間だけ與えて頂きたいということです。決して我々はこれでよすというのではない。そういう意味をどうか善意に解して頂きたい。我我の同僚の多数欠席しておるのも、一時からの他に日課があるから休んでおる。どうぞ採決して頂きたい。
○木下源吾君 私は緊急に今大蔵大臣に質問をしようと思つておるからお諮りを願いたい。私は国鉄裁定を国鉄が総裁の権限において、判決によつて今施行しようとすることを団体交渉の行われている場合に、政府がこれを横から阻止しておるような実情で非常な今問題になつておるのであります。従つて今この場合大蔵大臣に緊急質問をしたい、こういう考えを持つておりますので、これを許して貰うように一つお諮りを願いたい。
○岩間正男君 木下君の今の御発言は尤もでもありますけれども、実は皆緊急質問をやつておるわけです。而も今朝七人もの質問の通告があつて、くじ引きまでやつてやつたわけです。ですからそれはこれを終つてからにして頂きたい。
 それからもう一つは基本的人権の問題がありましたが、併し今まで予算の緊急な問題に対しては、そういうときには日曜を休まないこともあるし、それから深夜に亘つてやることもある。而も今度の問題は非常に重大であつて、これは全国民がこれに対して非常な注目を持つている問題ですから、当然この発言がこういうふうに皆熱心になるわけです。而もあと三人予定されておるわけですから、それを是非継続されて、そうして終つて頂きたいと思います。
○委員長(山田佐一君) それではお諮りいたしますけれども、重大問題ですから、一つ腹が減つてどうにもならん人は御自由におやり下さいまして、御継続を願つたらどうですか。
○池田宇右衞門君 私も晝食だけの問題で言つておるので、誤解しないようにお願いいたします。
○委員長(山田佐一君) 木村君に発言を許します。木下さんのは賛成者がありませんですから……
○木村禧八郎君 大蔵大臣がおられる中に最後に一つだけ質問が残りましたから、簡單にお答え願いたいと思います。大蔵大臣も御承知の通り三月一日の対日理事会でホジソン英連邦代表が、日本の産業経済、金融各界の八割は旧財閥によつて作られた八大銀行によつて牛耳られている、こういう発言があつたのです。これは中小企業が相当倒産に当面しておる際に若しこれが事実であるとすれば、これは私は重大な問題だと思うんです。これに対してて大蔵大臣はこの発言に対してどういうお考えを持つておるか、政府はこれに対してどういう態度を取られるか。この点一点だけ最後にお伺いして置きたいと思います。
○国務大臣(池田勇人君) 人お話のように対日理事会におきまして、或る国の代表者より日本の銀行の経営並びに状況についての質問があつたということは誰からか聞いております。従いまして私の方から外務省を通じまして、八大銀行の状況を資料は提出したと聞いております。私は正式にそういうことを聞いておりませんので、内容は今言われるように外務省及び大蔵省とから資料を出したのは実情であります。
○木村禧八郎君 大蔵大臣の見解を一つ。
○国務大臣(池田勇人君) とにかくその資料を出しておるということだけで、御発言の内容は私聞いておりませんので、見解を申上げる段階に至つていないのであります。とにかく八大銀行のことについては話があつたので、資料を外務省へ持つて行くということは聞いております。
○木村禧八郎君 それもそうですが、僕のお伺いしたいのは、この日本の産業、経済、金融各界の八割が旧財閥によつて作られた八大銀行により牛耳られている、この事実について大蔵大臣はどういうふうにお考えですか。
○国務大臣(池田勇人君) 牛耳られておるということは見方でございまして、私は貸付金とか或いは預金の高から言つて牛耳るというところまでにまだ行つていないと考えております。牛耳るとかいうことはなかなか困難でございます。早い話が八大銀行の株主の構成を見ましても、旧財閥の人は殆んどないのであります。前の三菱銀行とか、三井銀行とか安田銀行の株主構成とは全然違つておるのであります。私は牛耳るとかなんとかいう問題はないと思つております。
○木村禧八郎君 私は決して議論するのじやありませんが、それでは対日理事会でホジソン英連邦代表の言われたことは、大蔵大臣は事実として認めがたい、牛耳るとか或いは支配しておるとか、日本の経済の民主化に反することなのですが、そういうことはない、こういうようなお考えなわけですね。
○国務大臣(池田勇人君) 私は対日理事会の代表者の意見を否定するとか、どうこうという意味で言つておるのではございません。大蔵大臣としてその代表者がそういうふうに言われたかどうか、而もその言葉も私ははつきり知らないわけでございます。否定するとかどうこうというわけじやありません。あなたの質問に対しまして、牛耳つておるかと言われたときには、牛耳つてはいないとお答えしておるわけであります。
○委員長(山田佐一君) 堀越儀郎君。
○堀越儀郎君 今度の蔵相談話についていろいろ承りたいと思いましたが、重複する点がありますし、時間がありませんので、ただ一点だけ大臣に、お伺いしたいと思います。あの談話は一日の記者談会見の談話を新聞で出されたのでありますが、その後昨日の参議院の本会議における同僚議員の質問に答えて、あれは自分の話したことが全部載つていない、一部分載せられたのであるから全部載れば真相が分る筈である、こういうふうに述べておられるのであります。そうすると、新聞というものは自由を守り、真実を伝える使命のものでありまするが、あなたの話をされた中の真実の何をオミツトされておるのか。又それを補充する他の委員会、或いは本会議において後から答弁せられたことは別として、当日新聞記者に語られた点で新聞記事に抜けておる点のどれを補充し、どういう点を補充すれば国民が疑惑を招かないで済むのか、この点を一つお伺いしたいと思うのであります。更に又若しそうすれば、あの記事は大蔵大臣の話された全部でなくて一部である。全部自分の話したことが載れば決して中小企業者も驚かない、又一般国民の疑惑も招かない。又民会においてこのような問題が起らないで済むという御態度からすると、後に又こういう陳弁をしておられるのであります。自分の表現のし方が悪かつたから、今後は愼重にしたい、そうすると、先程の自分の述べたことが全部新聞記事に載れば決して誤解を受けないというこの御態度ははつきりしている。自分の態度に間違いがないという確信をお持ちのようでありまするが、後に陳弁しておられる多少表現のし方に軽率の点があつたと言つておられる点と非常に矛盾するのであります。これは私は国民の代表として公平に與党、野党というような立場でなしに、国民の疑惑を解く意味においてはつきりと蔵相があの質問に答えて、答弁せられ、更に新聞によつて国民の疑惑を解かれんことを希望するのであります。
○国務大臣(池田勇人君) お答え申上げます。言葉が足りなくて私の真意が盡されてなかつたこともございますし、又表現のし方の悪かつたのもございます。又新聞によつて違つたところもあります。どの新聞にも載つていないところもあるのであります。私は先程質問がありましたが、事務当局が十分動かないというようなことを申しますのは、端的に申したわけじやないのでございます。金の流し方につきましてよく注意しなければならんと私が考えまして、昨年の十二月に預金部の金を出したように、預金に比例して出すようなことはよくないということはもう事実が示しております。それをやはり銀行の預金に比例して出すような案でございましたから、こういうことは止めなければならん。先ず無盡とか、信用組合の方に出す、勧銀、農中、商中へ先へ沢山割当てる、そうして地方銀行にも割合を多くする、こういうふうなやり方に変えよう、こういうふうに中小金融についてもやつて見たらということを申したのであります。こういうことがどつかに載れば、私はそう中小企業をすげなく取扱つておるようには感ぜられなかつたろう、或いはすげなく取扱われたとお感じになつても努力しておる跡は見て下さるであろう、こういう気がいたしましたので全部載つていないと言つたのであります。勿論言葉も少かつた点もありましようし、表現の下手な点もありましよう。又自分としましては愚痴かも分りませんが、全部載つていない点もあるのであります。
○委員長(山田佐一君) 藤田芳雄君。
○藤田芳雄君 今までの質問者が述べましたのと重複する点がありますから、その点を除きましてお伺いしたいと思うのであります。
 先ず第一番目に蜷川中小企業庁長官は三月に中小企業の危機が来るということを発表したために、内閣においては政府の方針に反する者であるというので、これを罷免したのであります。然るに先日来三月一日の蔵相の談話並びにその後の質問経過を考えますと、大蔵大臣であつた池田さんはいわゆる通商産業大臣としても、この三月にとにかく危機が来ておる、恐慌が来ておるということを言われておるわけであります。そうすると同じ内閣の中に二つの違つた考え方がある。一つは三月危機が来ると言うただけでもこれは内閣の方針に従つておらないというので職を罷めさせられた。同じ閣僚の一人は来ているということを認めており、いずれが正しいのか、我々は予算審議に当つてはその点相当考えねばならん問題があると思うのでありますが、どちらの言を信ずればいいのか、その辺をお伺いたしたいのであります。
○国務大臣(池田勇人君) 私は大蔵大臣としまして、又通商産業大臣といたしまして、三月に危機は来ていないし、又来ないと考えております。
○藤田芳雄君 然らば先日の発言の中で、五人や十人の倒産者が現われるとか、或いは自殺者があるということを口にされたのは、あれはそれを認めたから言つたのではないかと思うのですが、認めないでああいうことを言われたのですか。その点を御説明願いたい。
○国務大臣(池田勇人君) これはあつた場合にどうするかという問題についてのお答であつたのであります。而して新聞の報ずるところによりますると、自殺者もあつたように考えておりまするが、これは何が原因であるかということはまだ調査いたしておりません。
○藤田芳雄君 どうも聞いておりますと、耳を掩うて鈴を盗むような返答で了解に苦しむのでありますが、新聞の報ずるところが或るときには真実であつたり、或いは或るときには真実でなかつたりというような印象も受けるのでありますが、新聞だけでなしに、実際現状はもうすでに恐慌が来ており、先程もどなたかのお話のように、中小企業は大挙その実情を言つて陳情しておられる。或いは又予算委員会としても先程岩間委員の言われたように、桐生、足利方面の実情を調査するに、すでにそういう事態が現われておるということを認めておりますが、一人蔵相のみがこれを認めない。或いは耳を掩うて鈴を盗むような発言のある点についてはちよつと納得が行かんと思いますが、併しこの点は一応保留いたします。
 次に先程木村委員からも指摘されたのでありますが、政府として今まで中小企業のために相当資金を流しておる。ところが実際におきましてはその資金が末端へ流れて行つておらない。どこにあるかというと、これは先日も予算委員会の公聽会で明らかにされたのでありますが、いわゆる大金融機関の手許に取られまして、そうしてその公聽会における公述人のごときは、明らかに今の財政は政府や大蔵省の手になくて、いわゆる金融業者の手に主導権を握られておるということまで明らかに証言しておるのであります。先程も指摘されましたように、新聞面によりますと、対日理事会で或る代表から八大金融機関といいますか、それにいわゆる金融が独占させておるという疑いがあるような発言があつたのでありますが、その点は政府に対して言つて来ているのではないから分らんというようなお話もありましたが、併し先程の公述人の言からしても、これは一応或る事実を言つておるのではないかという感がするのであります。その意味からいたしましても、政府として一体そういうことがあり得るかどうか。その点を今一度お聞きして置きたいと思います。
 今一点は、中小企業の末端の融資のためにこれから行おうとする事柄は、先日来お聞きしておりますと、信用組合を通ずること、無盡業者を通ずること、或いは市街地の信用組合を通じてやるというようなことが今度考慮されているようでありますが、恐らくはこれは又途中で抑えられることだろうと思うのであります。で先頃中小企業庁で発表されました数を木村委員が言われましたように、今の中小企業の危機は第一の原因が購買力がなくて物が動かんという点にあることを挙げられたのであります。結局は今は融資をするというよりも、むしろ少しでも手持の物が動くように購買力を増してやるということが何よりの融資になる。いわゆる救済の途であると思うのであります。そうしますというと、何か以前のインフレ高進時代のように物価と賃金の追つ馳けつこになるというような只今の御説明もございましたが、実情及び現在言われているような賃金、或いは人事院の勧告の賃金ベースというようなものにいたしましても、決して物価が上つてインフレを来たすということではなく、而も政府の機関であるところの物価庁では、人事院勧告の七千八百七十七円にベースを変えても尚七%物価が高いということを発表されている。そういう点からしましてもインフレを助長するというところまでは考えられない。併しながらそれがために恐らくは先程来問題にされているところの零細企業の救済には最も役立つ、而も端的に役立つ方法だと思うのであります。そういう点について蔵相は今一度考慮するお考えはないか。その点をお伺いいたします。
○国務大臣(池田勇人君) 公聽人におきまして、或る方が金融資本家、即ちまあ銀行家という意味でございましようが、それが日本の財政経済を握つているというお話があつたそうでございますが、私はそうは考えておりません。
 第二段の、もつと購買力を殖やして、何と申しますか、景気政策を取つたらどうかというお話でございますが、私はできるだけ資本を蓄積し、或る程度の購買力を殖やすために昭和二十五年度の予算をそういう目的で作つているのであります。併し一度に購買力を殖やしたりいたしますると、まだインフレの懸念が全然なくなつたわけではないのでございますから、徐々にやつて行かなければならんと考えまして、予算を編成いたした次第でございます。
○藤田芳雄君 今の購買力を増す最も重要な方法としてのベース改訂の問題につきしては、只今の説明ではちよつと納得が行きませんので、いずれ別な機会に保留いたしたいと思います。
○委員長(山田佐一君) 岩木哲夫君。
○岩木哲夫君 成るべく重複を避けたいとは思いますけれども、先程来の各委員の質疑に関連いたしまして、我々におきましては、ますます合点の行かない点等もありまするので、多少重複をわきまえずお尋ねいたしたいと思うのでありまするが、我々は憲法第二十五條を今更ここへ持出さなくても、凡そ政治は人道を離れてある得ない。同時に人道というものを究極基盤として、あらゆる経済政策、文教政策、社会政策その他が行われるのであります。それで政府は先の臨時議会におきましても、今回の議会におきましても、この点につきまして極めて強調しておるわけであります。又こうした吉田内閣の責任ある政策というものはしばしば宣伝されておるのでありますが、然るにあの三月一日の蔵相兼通商大臣声明なるものは全くこの吉田内閣のそうした施政演説の方針とは極めて矛盾背反したことを言われておる、で私は仮に中小企業の味方となつて申上げるならば、池田国務大臣があの暴言を吐かれたということに対して、或いは失礼かも分りませんが、聊かこれに対しまして抗議を申さざるを得ないことは、しばしば先程来各議員が言われておるのでありまするが、いずれにしましても、あの記事は全部ではないが、仮に一部にしてもその通りであるということを是認しておるということになりますれば、誠に由々しきことでありまして、五人や十人の中小企業が倒れるとか死ぬとかいつた問題のみでなく、十月に至れば大体整理がついて、じたばたする人間は少くなるだろう。こう言つておるのであります。一方日銀の一万田総裁は十月を以て全面危機と強調して、今より大いに中小企業に対して策をめぐらさざるを得ない、打たなければいけない。誠に金融当局として当然あるべき声明をいたしておるのに反して、池田国務大臣は、十月には大体整理する、そうしてじたばたする人間が少なくなるだろう。こういつた言葉を使われておることは、誠に池田国務大臣の意図が、十月頃ですか、丁度一万田総裁が裏から声明されておられたこの十月の全面危機には中小企業の大部分が倒れ、大部分でなくても相当程度倒れて、じたばたする人間が少くなるだろう。こういつたような残忍極まる考え方に基いて声明をされておる。談話を発表されておるということは、誠に人道に立脚しなければならない政治生活、特に多数党を持つておる吉田内閣が、絶対多数を擁しておる吉田内閣がそのようなことを言うておるということは、普通の場合と私は全然違うと思う。こうした方面に対しまする大きな道義観的な政治責任というものは、吉田内閣全般が免れないことでありますが、特に池田国務大臣としては、この点は痛切なる責任感がなくてはならんと思うのでありますが、この点につきましては、再三の各議員のお尋ねでありますが、重ねてお伺いします。
○国務大臣(池田勇人君) 私の心境は、本会議並びに本委員会で申上げた通りであります。重複するところは避けたいと思いますが、とにかく自分といたしましては、この困難な試練を国民と共に切拔けたいという考えでおるのであります。尚誤解があつていけませんので申上げまするが、外の機会でも、衆議院の予算委員会でも話したのであります、私はじたばたという言葉は、実はその頃投売りしたり、何かしたりする場合があるというようなことを言うたのであります。相場で申しますると、だぶつくと申しますか、経済行為において現実に副わない投売りをする、損をする者もありますが、徒らに不安感にかられて見通しの付かないやり方をやられるようなことを言うておるのであります。従つて只今投売りとかいろいろな問題がありますが、これは先行き不安のつもりでやつたと思うのでありますけれども、今度の予算が通つて、金融政策を実行して行きますれば、私はおのずと安定に至つて行く、十月とか九月とかという問題でありません、実は私はもうそんな十月、九月を待たなくてもますます安定して行く。こういう見方でありますので、一万田君の言う言葉は知りませんが、私はこの財政金融的に見まして、二月、三月、及び四月は可なり困難な状態でありますが、もう五、六月頃になつたら、段々この財政の危機も少くなります。そうして均衡予算の執行によりまして、段々よくなつて行くと考えております。実は今日も十二時から、一万田君以下各銀行家が来まして、十月以降のことを聞いたり、金融業者に対して私の意向を伝えて、金融の安定を期そうと考えておりましたが、その機会はありませんが、一万田君の心境は分りませんが、私は今申上げたように、十月とか九月とかに財政危機があるということは毛頭ありません。今この金融安定のために、いろいろなことをやつておりますが、これは三月を切り拔け、七月、八月になつたら、いよいよ均衡予算を執行することになれば、必ず安定して来ると考えております。
○委員長(山田佐一君) 大臣は外にお忙がしいから……
○岩木哲夫君 もう一点でありますから、衆議院の本会議で、民自党の経済政策は古今を通じて誤らんということを言明している。それでこのデイス・インフレの状態をデフレだと言う者は、ためにする議論である。こういうことを言つておるのでありますが、どうも今日の現況から見まして、これが果してためにする議論であるか、古今を通じて誤らん民自党の政策か、吉田内閣の政策であるとするならば、古今を通じて誤らん政策が、即ち五人や十人が死んでも倒れても、十月には整理ができても構わんということを言われているのであるが、この点につきましては、余りにも独善過ぎた、多数横暴れ政治の理念がこうした場面に現れているということは、由々しき次第だと思いますが、もう一度。
○国務大臣(池田勇人君) 悪性インフレを克服する場合に、いろいろな手がありますが、従来は平価の切下等、非常手段を以つてこれを克服した例が多いのであります。併しそれはもう仕方のない、我々のとるべき策でない策であるのであります。それが悪性インフレの原因が不均衡予算である場合においては、均衡予算によつてやつて行くのが私は常則であると思います。かるが故にかく申したのであります。而してデフレということにつきまして、これは定義にもよりまするが、私は今の状態はインレフからデイス・インフレへの状態であると考えております。これは長くなりますから、別の機会にいたします。而して又今のお話の五人や十人出ても止むを得ないという場合の前に、私は極力このデイス・インフレ政策、安定政策に行きます場合に、極力努めるということを前提に考えておるのであります。十月には危機が来るということは、先程の答弁で申しましたように、十月に危機が来るとは毛頭考えておりません。
○岩木哲夫君 池田大蔵大臣は、日本の産業は中小企業の振興にあるということは同感であるということは、先程の誰かの議員の質問に対してお答えになつておるのであります。ところが、今回ああした暴言か失言か知りませんが、或いは真意かも知らないが、世間に取上げられたためにあわてて自由党が政策を今朝の新聞に発表し、追いかけていろいろのことを、あの手、この手を打つておりますが、これは先程木村議員が言われた通り、本当の盡を衝いておるものではないのであります。やはり当面する現在の企業対策、中小企業対策といたしましては、どうしても実効需要を盛んならしめ、税金に対しまする特別の措置といつたものだけが優先いたしまして、或いはこれに対する金融対策も附属する問題でありますが、政府が現在あわてて取られた問題は金融対策のみの感じがございまして、実際の本質的な問題を裏に政府はとつておらない。で、二十五年度の今回の予算を見ましても、この点はすでに現れておるのみならず、今朝の安本の見返資金の投資内容におきましても、六百二十五億のうち中小企業に対する予算は、僅か十二億しか計上しておらない。然るにその他の大資金、大企業に対しましては、厖大なる見積りを、予定計画をいたしておるというような点は、今大蔵大臣が中小企業に対して大いに努力をすると言つたような問題と著しく前後相矛盾があるし、納得ができないわけでありますが、これに対して重ねて御意見を伺いたい。
○国務大臣(池田勇人君) 先程来申上げましたように、安定から復興への施策は昭和二十五年度予算におきまして、できるだけ盛込んでいるのであります。即ち金詰りに対しましては、金融機構の改革をいたします。そうして税の負担につきましては、中小商工業者に相当の減税をいたしておるのであります。而して予算面において今の一般会計以外におきまして、見返資金につきましても、十分活用を図つて行きたいと考えておりますが、今日の新聞に出たとおつしやいます安本の見返資金使用計画は何ら権威のあるものではございません。閣議にかかつた問題でもございません。私も事前に聞いたものでもございません。予算に載つておりますのには、一応公企業に四百億、私企業に四百億、債務償還五百億、こういうふうに載つておると考えておるのであります。
 で、まだほんの事務当局の試案だと思うのです。私は目を通しておりませんし、権威のある数字ではないと思います。
○委員長(山田佐一君) 大蔵大臣、非常にお忙しいようですから……
○岩木哲夫君 もうほんの二三点……私も相当質問いたしたいのでありますが、大臣は危機は来ないし又来ていないと、こう言つておるのでありますが、凡そ中央、地方の報道機関、新聞或いは雑誌等におきまして、現在中小企業はもとより全般的の経済危機というものは深刻であり、とりわけ中小企業につきましては、すでに来ておるし、又来つつあるわけであります。こうした問題に対して池田大臣のみが来ないのであるとか、来ていないとか言つたところで、世間の万人はこれは了承できないのでありまするが、どういう考えで、どういう感覚で来ないし、来ていないと言われるのか。先程来大臣は、当然こうした復興につきましては、多少のしわは止むを得ないということを言つておる。多少のしわを中小企業に持つて来ておるような感じを受けるのでありますが、こういう重大なる一般世上、特に経済界の意見は百人が百人共一致したこの危機が来つつある、将来ますます深刻ならんとする憂いを唱えておるに拘わらず大臣はそれは来ないのである。来ておらないのであるというような、余りにも矛盾した観点を唱えることは、どうしても了承できないのですが、どういうわけでこういう意見を強調せられるのでありますか。お伺いいたしたい。
○国務大臣(池田勇人君) 危機が来るということにつきましても私はその理由を聞いておりませんので、反駁はできませんが、只今のところ生産も殖えて行つておりますし、物価も安定しておりますし、そうして貿易も昨年よりも良くなる見通しも付いております。経済諸般の情勢は私は安定し、そうして復興へ向いつつあると考えておるのであります。予算におきましても二十四年度の予算よりも二十五年度の予算が余程国民経済の実態に副う実効予算であると考えておりますが故に、九月とか十月に危機が来ないということを申上げておるのであります。
○岩木哲夫君 生産が増強されておると申しますが、これは需要の伴わない生産は徒らにストックするばかりでありまして、これが延いて資本を食うダンピングとなつて、本当に正しい生産が現在において将来増強されるような状態であるとは如何ように見ましても、特殊需要を除いてはあり得ないのであります。又貿易の振興を唱えましても、これは過去における惰力におきまして或いは特殊の貿易は一、二興つておりましても、全般的経済界を潤おす貿易の振興とはどうしても受取れないし、物価の安定につきましても、現在あらゆる角度から見ましてもこれは全くデフレの状態でありまして、一時の過度のインフレは或いは鎭靜いたしましたが、それがむしろデフレの状態に深刻横這いしつつあるという実情は、政府の言うディス・インフレの考え方とは、凡そ実情は全く異つておるわけでありまして、何を申しましても事実の物語るこの経済界の不況、この売行きの不振、貿易の不振、生産は増強されると言つてもそれは一、二のものを除く外は殆んど増強されておらない。この実態をどういうわけで大臣は、言葉が悪いか知りませんが、歪曲されて、そういうことを言われるのでありますか。事実は事実としてこういう事実に対し大臣としては、政府としては、こういう対策を考慮しておるのだと言うことこそ親切な大臣であるし、方針の立つ大臣ではなかろうかと思うのですが、もう一度この点をお聞きしたい。
○国務大臣(池田勇人君) 生産、物価或いは通貨の状況、貿易関係につきまして、別の機会に資料を出してもいいと思いますが、私は不安だとか非常なデフレだという議論に対しましては賛成できないのであります。併しいろいろ資料を見ましてもこれがデフレだとか、これがディス・インフレだというようなことは、これは結局見解の相違になると思うのであります。私は経済諸資料を見まして、これがディス・インフレであり、安定から復興への経過的時期であると考えておるのであります。
○岩木哲夫君 中小企業に対する要諦としましては、中小企業庁で先程木村議員が言われた通り、これは我々におきましても、実効需要の伴う或いは税金の軽減等が優先するにも拘らず、こうして実効需要が上るような措置を取ることについては反対だということは、結局中小企業に対しましての本当の政府の振興策が真意がないということが一点、更に課税の問題におきましても、特に中小企業のみを軽減するという措置はないのでありまして、今回の予算におきましても、国民所得の推定におきましてはこの悲境、この悲惨な状態の中小企業に対しましても、やはり国民所得は前年度より増大の見積りをいたしておる。この増大の見積りの上に課税をいたしておるということは、中小企業に対しまする振興策の一番要点である需要の増進対策、或いは軽減対策というものが全く大臣の言と裏腹の実情であると思うのでありますが、これは飽くまでも大臣はそのような対策はとらないと先程言われましたが、もう一度この点は確認を得たいと思います。
○委員長(山田佐一君) 岩木さんに申上げますが、大臣非常にお急ぎでありますから、退席せられると言いますから、もうお帰りになつてもよろしいですか。(「そんな委員長独断なことを言つてよいか」と呼ぶ者あり)
○岩木哲夫君 いやもう一点。何とか早く……
○国務大臣(池田勇人君) 中小企業者に対しましても、減税措置をとつております。そうして予算におきましても建設的の予算を組んでおるのでありまして、従いまして、私は生産も国民所得の増加の示しまするごとく殖えて行くと考えております。
○岩木哲夫君 私はまだ沢山お聞きもいたしたいし、且つ意見の食違う点も沢山あるので、多少の資料もお願いしておるので、お聞きいたしたいと思いますが、委員長の御命令でありますから、本委員会におきましては、御趣旨に従いまして質問を打切りたいと思いますが、ただ一点、最後にこれだけお尋ねいたしたいのでありますが、今回のああした三月一日の談話に対しまして、大臣はかような心配がない。又政府におきましてもそのようなことはない。大臣もさようなことはないと言われておりますが、併し事実は蔽うべくもないのでありまして、院内外におきまするあらゆるこうした問題に対します非常な憤激、非常な不安、こうしたことで将来中小企業が日本産業の基盤であると政府は言つておるに拘わらず、こうした中小企業に対しまする多数の人々に非常な不安と憤激を與えたということにつきましては、大臣は先程それを認められておるのでありますが、併しこれに対して陳謝の意は大臣から一言もまだ聞いておらないと思いますが、大臣は陳謝の意を表する御意思がありますかどうか。これを承りたいと思います。
○国務大臣(池田勇人君) 言葉が足りなかつたり、表現がよくなかつたりしていろいろな問題を起しましたことにつきましては、私は遺憾の意を表しておるのであります。陳謝ということが遺憾とどう違いますか、とにかくこれは遺憾だということは、これは本会議で申上げた通りであります。
○委員長(山田佐一君) これを以て散会いたします。
   午後二時十三分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     山田 佐一君
   理事
           内村 清次君
           岩木 哲夫君
           高橋龍太郎君
           田村 文吉君
           堀越 儀郎君
           岩間 正男君
           木村禧八郎君
           岩男 仁藏君
   委員
           木下 源吾君
           羽生 三七君
           森下 政一君
           淺岡 信夫君
          池田宇右衞門君
           石坂 豊一君
           小林米三郎君
           團  伊能君
           平岡 市三君
           深水 六郎君
           安達 良助君
           小林 勝馬君
           鈴木 順一君
           深川タマヱ君
           赤木 正雄君
           飯田精太郎君
           西郷吉之助君
           伊達源一郎君
           玉置吉之丞君
           藤野 繁雄君
           松村眞一郎君
           川上  嘉君
           藤田 芳雄君
           小川 友三君
  国務大臣
   大 蔵 大 臣 池田 勇人君
  政府委員
   大蔵政務次官  水田三喜男君
   大蔵事務官
   (大蔵官房長) 森永貞一郎君
   大蔵事務官
   (主計局長)  河野 一之君
   大蔵事務官
   (主税局調査課
   長)      忠  佐市君
   国税庁長官   高橋  衞君
   通商産業事務官
   (大臣官房長) 永山 時雄君
   通商産業事務官
   (中小企業庁振
   興部長)    記内 角一君
   経済安定事務官
   (財政金融局
   長)      内田 常雄君