第010回国会 労働委員会 第8号
昭和二十六年三月一日(木曜日)
   午前十時四十七分開会
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  本日の会議に付した事件
○労働者災害補償保險法の一部を改正
 する法律案(内閣送付)
○労働行政の実情に関する調査の件
 (労働基準法の施行状況に関する
 件)
 (中央労働委員会の機構に関する
 件)
○教育公務員特例法の一部を改正する
 法律案に関する件
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○委員長(赤松常子君) それでは開会いたします。
 本日は労働行政の実情に関する調査として、かねてから労働基準局関係の問題を取上げることになつておつたりでございますが、すでに公報によつて御承知のように昨二十八日労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案(閣法第五十二号)が参議院に予備審査のために送付せられ本委員会に付託となりましたので、先ずこの法案の取扱に関し皆さまにお諮りいたしたいと存じます。法案の審議方法については、いろいろ御意見もあろうことと思いますが、参考までに私の考えを申上げますと、労災保険法の一部改正案の審議に関連のあります議員派遣などの都合を考慮し、本日は労働大臣並びに政府委員より提案理由の説明だけをお聞きし、その後の質疑等に関しては、理事のかたがたと御相談の上、追つて決定いたしたいと思いますが、如何がでございましようか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(赤松常子君) 御異議ないものと認めましてさよう取計ることにいたします。それでは本日は先ず労働大臣並びに政府委員より、労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案に関し提案理由の説明だけを求めることにし、その後で労働基準関係の調査等順次審議いたすことにいたします。
 保利労働大臣より提案理由の御説明をお願いいたします。
○国務大臣(保利茂君) 労働者災害補償保險法の一部を改正する法律案を提案いたしたのでございますが、その提案理由について御説明いたしたいと存じます。労働者災害補償保険法は、労働基準法の裏付けとして、昭和二十二年九月一日から施行せられました。業務上災害をこうむつた労働者に対して的確に且つ公正な災害補償を行い、労働者の補償を受げる権利を擁護すると共に、他面保険方式により事業主の経済的負担の分散軽減を図ることを目的といたしまして、施行以来三年有半、よく所期の成果を收めて参つたのでございます。併しながら産業災害の発生状況は増加の傾向にありまして、これが本法の運営に相当の影響を与えている状況に鑑みまして、この際現行の労働者災害補償保険法第二十七条において定めておりますいわゆるメリット制が、過去五年の実績により発動し得るよう規定せられたおるのを、三年の実績によつて行い得る工うに改め、以て本法の運営を一層円滑容易ならしめんといたそうとするものでございます。その理由の第一は、本制度の実施により災害防止に努力を払い、災害件数を寡少ならしめた事業主に対しましてはその負担の軽減を図ると共に、災害を多発せしめたその事業の事業主に対しては、これによる負担をすべて他の事業主に転嫁せしめることなく、或る程度その負担を加重することにより保險料の分担の公平を図らんとするにあります。
 第二は、本制度を早期に発動することによりまして、事業主をして災害防止に対する関心を深ういたし、以て産業における災害の減少を図らんとする点にあるのでございます。
 何とぞ御審議の上可決せられるようお願いをいたす次第であります。
○委員長(赤松常子君) それでは、先ほどお諮りいたしましたように、この法案に対する質疑は、又理事のかたと御相談いたして決定することにいたしまして、今日はかねて予定いたしておりました日程について進めたいと存じます。
 先ず労働行政の実情に関する調査のうち、基準法施行の状況について中西労働基準局長から御説明願います。
○政府委員(中西實君) 基準法の施行の概況につきまして御説明申上げます。
 基準法は施行以来すでに二年有余を経て参つたのでございまして、その間労働条件の改善、なお各企業の労務管理の合理化に貢献いたしましたこと、又労働事情に対しまする国際的な信用を高めまして、国際貿易上も寄与して参りましたこと、大体世間一般に認められておるところと存ずるのでございます。施行後三年になりましたので、この跡を検討いたしてみますると、大体先ず監督を実施いたしました事業場の数が昭和一十三年におきまして約十九万、昭和二十四年におきまして約四十万、昭和二十五年におきまして約二十四万に及んでおります。右の監督をいたしました結果、基準法違反を発見されました事業場が、極く軽易な形式的な違反まで含めますと、昭和二十三年、二十四年におきましては、その実施いたしました事業場の約九割までが違反があつたのでございますが昭和二十三年におきましては、監督事業場の約五割に減少いたしておるのでございまして、このことは各業態におきまして基準法の趣旨が相当徹底し、又基準法の実施に慣れて参つたということが言えるのじやないかと考えられます。監督の実施に当りましては、処罰主義ということは極力避けまして、違反を是正させるというところに重点を置いてやつております。特に形式的な違反は、勿論余り問題にせず、実質的な悪質なものについてのみ監督を実施するというふうにやつておる次第でございます。極めて悪質なものということで、司法事件として処理いたして参りましたのが、昭和一十三年におきまして二百四十件昭和二十四年におきましては千九十四件、昭和二十五年におきましては九百五十四件ということになつております。そのうち最も多い事案は、やはり賃金の未払いに対する事件が最も多いのでございます。基準局といたしまして法の運用上重点を置いております点は、昨年以来賃金不払いの解消という問題と、それから産業災害の防止ということ、それと女子、年少者の保護、この三点を重点事項といたしまして、大体の機能の精力をこの点に注いでおるのでございます。賃金不払いにつきましては、昭和一十四年の初め以来、基準行政機構におきまして取扱つて来たのでありますが、それ以来賃金不払い事件は昨年末までに把握いたしましたものが四万三千件ございます。金額にいたしまして約二百二十億に及んでおるのでありますが、このうち件数にしまして八割八分、金額にいたしまして約九割五分が解決いたしております。殊に昨年十二月におきましては、それまで溜つておりました約二十億の不払いの賃金が一挙に十二億に下つておりまして、順次不払いの減少を見ております。次に災害防止の点につきまして、これは労災保険の関係とからみまして、最近におきまして我々として最も重点を置いてやつておる点でございます。併しながら遺憾なことに、二十四年に比べまして二十五年は二割乃至二割の大害の増加がございまして、そのために労災保険におきましても相当経済不安定を来たしておるのでございます。これにつきましては労使双方に広く呼びかけまして、極力災害の防止に努めておるわけでありまして、来年度におきましては、労災保険特別会計におきまして四百三十万円ばかり、一般会計からは二百二万円ばかりを特に計上いたしまして、今後災害防止に更に一層努力して参りたいと存じております。
 次に女子、年少者の労働条件の保護につきましては、施行当時は相当の違反もあつたのでございますが、だんだん是正されまして、最近におきましてもなお一部には遺憾な事例もございまするけれども、おおむね法の所期しておりまする労働条件を確保いたしまして、違反件数も漸次減つておるような状況でございます。なおこの基準法の問題におきまして、一番各方面で批判のありますのは、結局この法の運営に当る職員についての批判が大きいのでございます。この点私どもとしましても最も戒心をいたしておりまして、特に今年度からは監督官の研修所を設置し、なお来年度におきましては、今年度の予算の倍額計上いたしまして職員の研修、教養訓練に十分力を盡して行きたいというふうに考えております。すべてこの基準法の運用は單なる警察取締的な態度では、絶対に所期の目的を達成することができませんので、円滑なる運営をいたしまするには、どうしても高度の知識と常識を必要といたすのであります。この点につきましても、最も我々としまして注意をして力を入れて参りたいと、かように存じております。
 以上大体基準行政官庁といたしましての重点事項について御説明申上げた次第であります。
○委員長(赤松常子君) 只今の御説明並びにこの予定表にも書いてございます経済自立態勢と労働法の関連などにつき、又第二項の最低賃金制の問題等につきまして広く御質疑ございましたら御発言願います。
 なおこの問題につきまして御質疑ございませんようでしたら……
○波多野林一君 今御説明になりましたが、非常にうまく行つているようなお話でございましたが、併し実際はこの基準法が行過ぎであるということで相当末端に行きますと困つておるように伺いますが、これは講和会議後においては改正される御意向があるのですか。
○国務大臣(保利茂君) 先ほど基準局長から申上げましたように、基準法の施行以来の実際の現場に即しての事情について、事務当局において十分検討をいたしております。基準法を改正するか、特に又講和会議後においてこれを改正するかどうかというお尋ねでございますけれども、只今実施の跡を検討して研究をいたしておりますけれども、まだいずれとも結論は出ておりません。今日のところは申上げる段階にはないと思います。御了承願います。
○堀木鎌三君 労働大臣が出ておられますので、一言お聞きしたいことがあるのです。教育公務員特例法の一部を改正する法律案が今出ておるわけなんですがこれによりますと何んといいますか、教員は学区別にと申しますか、まあ端的に言えば、市町村別に給与待遇の条件勤務時間その他勤務条件について單位組合を作り、そうして県別に連合体を作る、こういうふうになつておるわけなんであります。ところがこれらの教員については、実は殆んど県当局が人事権を持つておるわけなんです。そうすると給与、待遇その他に関しましても、県当局でなければ実際のところ勤務条件自身についての解決を図る能力がないわけであります。市町村は御承知の通り国家財政からの配分を受け、教育費については殊に県当局ではどうにもできない、県だけでなく地方の市町村ではどうにもできないのであります。殊に町村ではそういう状態であります。こういうことになつておりますと、むしろ端的に県單位の連合体を作らせて、そうして交渉させたほうが団体交渉能力のあるところと直ちにやれるこういうふうな状況になつて労働条件の改善については却つて紛争を何んと申しますか、早急に解決することができる、こういうふうに考えられるわけであります。そういうふうに考えますと必ずしも職員の連合体によつて初めて県とやれる、こういう段階を経ないほうがいいのじやないかまあこういうふうに考えるのでありますが、この点につきまして労働大臣はどうお考えになつておるか、こういうことなんですが……。教職員の勤務条件は、これは文部大臣の所管でございますが、ですが、こういう教職員のそういう何んと申しますか、勤労条件を、給与、待遇の条件を緩和して行くやり方そのものについては労働大臣が御指導なすつたほうがいいのじやないか、こう考えますので、実はそうでないと各職種によつて団体交渉の形式ができて来ては困る、こういうふうに私考えるので特にお聞きしたわけでありますが、実はこういうことをお聞きするのには理由があるのです。この問題につきまして、今現に参議院では修正案が、修正をしようという考え方で以て修正にかかつておる分があるわけであります。文部委員会で修正しようという意見と、修正しないで行こうという意見の両方があるので、労働委員会としても実は相当重要な問題というふうに考えますが、御用意がございませんでしたら別ですが、若し御用意があつたらおつしやつて頂きたい、こう思うのであります。
○国務大臣(保利茂君) 実は私のほうでは、労働省といたしましては無論関連は十分にございます問題でございますけれども、一応併し政府のそれに対する考え方は、ほかの委員会なり或いはほかの機会において文部大臣から所見を発表されていると存じますから、文部大臣の御所見を以て政府の意見として御了解をお願いするほかは、私としてはちよつとそれ以上のお答えはいたしかねると思います。
○堀木鎌三君 労働省には教育公務員特例法の一部を改正する法律案について、殊に給与、勤務時間、その他の勤務条件という問題をきめるに当つて御相談はありませんでしようか。
○政府委員(中西實君) この点につきましての実は相談を受けておりませんのでございます。
○堀木鎌三君 それでは重ねてお聞きしますが労働省はそういうことはもう全然タツチをなさる気はないのですか。どういう労働条件でよその省が自己の従事員について勝手にきめて行つてもいいのですか。
○政府委員(中西實君) 国家公務員につきましても、一応基準法の趣旨に反しない限りは適用になつておりますので、権限はございませんけれども、給与をきめますような場合、それからいろいろ時間をきめますような場合、常に連絡はとり、相談はしつやつております。それで府県におきましてもやはり出先の機関と、それから県庁との関係、常に連絡はしつやつているような状況でございます。
○堀木鎌三君 私はこの給与が幾らにきまるかとか何とかという、そういう問題について言うのではなくて、団体交渉の単位のあり方、そういう問題については、労働省としては十分御関心を持たれるはずの事柄だと、こう思うのですが、又その団体交渉の単位がいろいろになつておつでは、あなたがたが労働行政をなすつて行く上において意味がないんだ、だからそういう点は特にお考えにならなくちやならないので、とかく労働省はこの頃よその省に起つておることは、おれは知らないというふうな感じが強くて、狭い労働省の立場だけをお守りになる、労働問題というのは国政一般に通ずる問題である、又そこから判断されなければならんと思います。そういうような点から考えまして、もう少し御関心を持つて頂きたい、こういう意味でこういう御質問をわざといたしました。多分御用意がないだろうということを考えながら、今の労働省のお役人のおやりになることでは多分御用意がないだろうということを予想しながら、こういう質問をせざるを得ない。労働委員会自身も、委員長に特に申上げたいのはこの問題は本来言えば文部委員会だけできめる問題じやないのです。もつと労働条件がどうしてきまつているかというふうな、民主的なあり方はどこにあるかということでものがきまつて行くのです。だから労働委員会としても、文部委員会に、最近にきまりそうですが、至急その点は一応お話合い願わないと、前の地方公務員法のときでしたか、この労働委員会を抜きにしてやつてしまうというような問題があつたから、特にお考え願いたいと、こう思うのであります。
○委員長(赤松常子君) 今の御注意有難とうございました。早速関連ある問題でございますから、連絡をとつてやつて参りたいと思つております。
○堀木鎌三君 あとは、ほかに御質問なければ続けてようございますか。……では今度の問題は直接関係があることなんですが、先ほど賃金の遅欠配の問題が非常に成績よく片付いて来た。殊に十二月に片付いて来たというふうなお話がありましたのですが、これの月別の状況の資料をお出し願いたい。それからもう一つ特にこの間お願いしたことであり、又ここで御答弁願える用意がございましたらして頂きたいのですが、私どもこの間現地調査をいたしましたときに、賃金の遅欠配は実は中小企業、スモール・スケールの工場作業に多い。ところが労働基準局は今の皆さんのやり方では、お気の毒ですがそこまで手が廻らない、それで大体従来わかつた分の解決ですね、そういうものに努力しておられるということが考えられる。そういう点について労働省はどう考えておりますか、これが第一点、それから第二点は、災害補償の関係というものは、これはおつしやる通り最近非常に殖えて来ておる。労働基準局へ行つて細かに説明を求めるのですが、実はその原因についての的確な把握力が足りないのです。一方からは労働者に対するオーバー労働だという、一方から言えば機械設備なりその他が老廃して来たからだという、又一方から言えば最近の経営者の作業の管理の方法が未熟だという点から起つて来たという、皆これは本当でしよう、私はこの三つとも嘘だとは思わない。ところがその災害の起つた統計を本当にトレースして行つて、時間別に起つておるか、作業の実態から勤務条件と結び付けてどうして起つて來たか、そういう立体的なトレースが足りない。私ども工場災害についてはやや研究した者の一人ですが、よほど御研究なさらないとただ観念的な現象が多いからということだけで皆努力しろ、努力しろとおつしやつてもこれはなかなか直らない、そう私は考える。そういう点について一体事務当局はどういうふうになつておるのか、どう考えておられのかというふうな原因別の推定ですね、そういうものについて皆さんのほうで御用意があるなら御答弁願いたい。それから女子、年少者の分でありますが、保護育成について努力しておられる、これもこの間実は実地に各方面を拝見したところが、実際のところ今のところこれを担当しておられるかたの人数、労働基準法から見まして、基準監督署自身が手が足りないで困つておられますが、中でも女子年少者については本当に保護育成に努めると言える程度の事柄が大きく言えないのがある。実際のところから見てその仕事をしておられるのか。どうかそれについて事務当局はどうお考えになつておるのか、以上二点だけ一応お聞きします。
○政府委員(中西實君) 一番初めの御質問の賃金未払いの問題でございますが先ほど申しましたように暮に非常にいい結果に向つておりまして、減少の傾向にあるのでありますが、御指摘の通り統計上も大企業よりは中小企業に未払いが多くなつて来ておる。件数のパーセンテージで見ましても中小に多くなつて来ておる。而もその未払いの期間がだんだん長期になりつつあるという現状でございます。これは第一線の監督官としまして一番苦慮しておる、又処置のしにくい問題でございまして、もうない袖は振れんということで出られますと、どうにも処置がつかない。第一線の監督官にしましても、最も取扱つて嫌な問題であるということでこぼしておるのであります。この問題は單に労働行政だけからでは到底解決し得ない問題であります。併しながら労働基準監督署ででき得るだけのことはやる。例えばできるだけ金融の斡旋のほうにも余力があれば当るというようなことで、解釈を図つてやつておるような事態もないことはございません。併しながら今の監督官の実情からしまして、常にそういうようなことができるとは限りません。極めてこの問題は処理のむずかしい問題であります。併しながらとにかく賃金債務最優先の原則でできるだけ払わせるように努力いたしております。第二の災害の原因でございますが、先ほど堀木さんのお挙げになりました原因、すべて私のほうも言いたかつた原因ですが、そのほかに個々の災害につきまして、更に突込んでどういう原因で災害が殖えているか。これを私どもとしましては、昨年以来特に災害の多い事業場、これを選定いたしまして特別指導をいたしておるのであります。それで災害の起る原因は、極めて簡單な不注意から起ることが多いので労災の関係の資料としてお渡ししました、お手許にもあると思いますが、本人の行動による災害がパーセンテージを見ましても最も多いのでございます。それで結局は本人のちよつとした不注意というのが多い。又本人の性格上、その職場においてはどうしても怪我をしがちであるというものが非常に多いのでありまして、そういうものにつきましては、これは教養、訓練をするよりは、その職場を転換させるということのほうが、却つて抜本的な災害を減らす手段にいいのでありまして、こういうようなことも個々の事業場につきまして特別の指導をやつております。それで今年度特に災害の多い事業場につきまして、そういうふうに特別指導をいたしましたところが千人以上の特に災害の多い事業場の指導によりまして、大体一五%くらいの災害の減少を来たしておるのであります。注意次第では更に減少が行なわれるというふうに存じております。今後ともそういうふうに具体的に個々の産業個個の事業場についての、又個々の職場についての災害防止の方途を労使ともどもに一緒になつてやつて行きたい。これによつて災害の相当の減少が期待されると我々は信じております。
 それから女子、年少者に対する監督でございますが、御指摘のごとく、現在大体第一線で監督行政に当つております監督官の数は千五百人くらいでございまして、とてもしらみ潰しに調べて廻るということは不可能でございます。併しながら労働者側の告発その他によりまして、特に悪質なものにつきましては、大体今の監督官におきましても一応つかんでおるのではなかろうか。更に隠れた違反というようなものも或いはあるかと思いまするけれども、何分にも今の人員の状況から行きますると、今以上には実は行きかねる。大体適用事業場七十万もございますけれども、今の状況で行きますと大ざつぱに言いまして、二年に一度事業場に廻われるという計算になりまして、それでも悪質のものはおのずから我々のほうにも上つて来るのじやないかというふうに考えております。
○堀木鎌三君 実は中西局長から伺う程度のことは私も大体知つておるのです。金融の斡旋をなさるところがあるというのですが、私もこれは労働省のお世話で地方を廻つたのですから労働省の事務官も来てついて歩かれたことでおわかりになつておると思いますが、現在各府県では賃金の遅欠配が見ていられないというので、地方で特殊な金融措置を講じてあるのです。これは内容は詳しく申上げなくても、あなたのほうは御承知の通りです。こういうものについて地方がやつているのだからいいんだということで、中央で何もお考えにならないのかどうか、この問題なんです。労働省としては、それは地方財政の許すところは一千万円ぐらいのところを資金にしまして、それで応急的措置として貸してやつておるのですが、そういう問題について労働省のほうは、中央からそれについての何らかの援助をしておやりになる必要がありはしないか、その処置が執られてないのじやないか。こういうことについて折角私労働省の関係機関に執筆しろと言われて、あなたがたのお目にとどまるだろうと思つて、安い原稿料を我慢してお書きしたのですが、(笑声)そういう点についてあなたがたのほうは何とお考えになりますか、それが一点です。
 それから実は女子と年少者についてはもう労働省は手を上げてしまつて、機構も縮小し、予算も縮小して、お止めになるのかと思つたら、基準局長は三大重要項目としてお挙げになつたのです。そうするとそれが予算的にどう処置されているのか、その点について、先ほど人間の少いことだけ例を挙げて、あなたも大体御同感なさつているようです。実情を御覧になつたらそれはとても問題にならないのですが、予算的な処置でどうお考えになつておるか、これだけ御説明を願いたい。
○政府委員(中西實君) 今の賃金未払につきまして、御指摘通りに地方庁におきまして相当県費で出してやつておつたり、或いは信用組合を作りましてやつておる。大阪、岡山その他でやつておることは御承知の通りでありますが、私どもとしましても、毎月この賃金未払いの状況の月報を作つておりまして、この状況は逐次大蔵省や通産省に連絡をいたしておりまして、それでこういう状況だから、できるだけ中小金融の枠を殖やしてもらいたいというようなことにつきましては、実は連絡を常にやつておるのでございます。勿論全体の額に制限がございますので十分とは行きませんが、我々のほうの立場といたしまして相当な推進はいたしておるのでございます。
 それから女子、年少者の関係につきましてこれは実は監督業務でございますので、殊更予算のほうの措置は我我のほうとしては考えておりませんので、監督いたします場合に、そこに重点を置いてやつておる婦人少年局におきましては、向うの啓蒙宣伝の意味におきまして、相当の予算はございますが、監督業務といたしましては特別な予算は考えておりません。
○堀木鎌三君 余りこれ以上申上げるのはどうかと思いますが、ともかくも金融斡旋について大蔵省と御連絡になつたつて大蔵省というところは、あなたがたもしみじみお考えになつておるように、そういうことに、金をなかなか出せばしないでしよう。あなたがたの言うことを聞いて……現に四十億ときまつたら四十億の枠の範囲でやるのです。若しも実際あなたがたの言うことを聞いて府県別の割当がはつきり出たところがあつたら教えて頂きたい。これは出つこありません。そう言つては悪いですが……、ですからこれらについては何らかの方策をお講じになる必要があるのじやなかろうか、併し全体として一般経済界の情勢に伴つて、全体としては非常に減つて参りましたことは、これはお互いに喜ばしいことだと考えておりますが、併し今後の経済情勢を見ますと、必ずしも従来の半年ぐらいの実例で楽観を許しません。これは別なところで今後の経済問題について議論しようと思いますが、楽観を許さないと思います。ですからこの点については十分お考えを願いたい。それから労災保険のほうは、もつと統計が出ましてから私議論してもようございますが、無論おつしやる通り、これは労働省だけの力ではできませんので、労使双方が各事業所について自分自身でやることが第一義だと思いますが、併しそれにいたしましては、今の統計というものは、原因別に、月別にするのには足りないようです。ですからこの点は十分お考えを願いたい。
 それから実は女子、年少者は、これも本当におやりになるならば今の態勢、これは監督行政だから費用が要らないとおつしやいますが、それにしても余りにも僅少であることは確かなんです。ですからそれらについて特にお考えを願わなければならない。特に独立して国際的に、この労働問題について日本が独立国として扱うようになりますと、この女子、年少者等の問題は国際的な注目の的になつて、それが労働基準局へ行つてどの程度の人数と、どの程度の人がやつておるのか。それから更にその基準局の下の役所に行つてどの程度やつているかということを見ますと、実際のところ中西さん、ここではいろいろおつしやるだろうが、御自身でも恥かしい次第だろうと思うのです。(笑声)最近基準監督局長におなりになつたばかりだからやや気がお楽なのかも知れませんが、もう一年もたつたらそういうことは言うことはできない、是非お考え願いたい。こういうふうに考えます。
 これだけ甚だ失礼なことを言つたのですが事実はもつと失礼なことを言つてもいいと思うので、この程度でやめた次第ですから、どうぞそれをおくみ取りになつて御努力願いたい。お願い申上げます。
○委員長(赤松常子君) ほかに御質疑ございませんか。
○原虎一君 今日は労政局長は見えていないのですか。
○委員長(赤松常子君) 賀來局長は見えておりません。
○原虎一君 労働大臣に一つお尋ねいたします。簡単に申しますれば日本の自立経済というものが非常に叫ばれ、早くそれを実現されなければならん。自立経済におきましていろいろ他の必要なる要素は別としまして、やはり労使間におきます紛争というものを極力少くし、願わくばなくして行くということが必要なんです。そこで問題は私は労働委員会の現状がこのままでいいのであるかどうか、自立経済を樹立するために労働大臣は労使間の紛争を極力少くするために如何なる手を打たれ、如何なる方針をお持ちであるかという点をお伺いしたいと思うのであります。
○国務大臣(保利茂君) お説のように自立経済を達成して参ります最大の要素として、労使関係の調整安定ということがもう最大の要素であろうということにつきましては全く御同感でございます。そこで労使調整の機関として労働委員会のあり方が現状を以てよろしいか、或いは相当改善の余地があるのではないか。御承知のように最近労働委員会に対して各方面の意見の発表もぼつぼつ出ておることは私も承知をいたしておるのでございまして、労働省といたしましても労働委員会の機構が現状を以てよろしいかどうか真剣に研究をいたさなければならん段階に来ている、折角事務当局において只今研究をいたしておりますが、まだ研究の結論を申上げる段階には達していないのでございますけれども、或いは相当の改革を必要とするのではないかということについては、私もそういう線において考慮いたしておるところでございます。
○原虎一君 今日は労政局長がお見えになつておりませんから余り細かしいことはどうかと思いますのですが、折角大臣の御答弁を戴いておるのですから、今の御答弁から察しまして、今労働委員会に対する各方面からの意見、批判と言いますかそういうものに対しての是非を大臣から私はお伺いしようというよりも、簡単に申しますれば、労働委員会、殊に中央労働委員会が今日のままで自立経済の樹立に対応して、その役目を果し得る機能を持つているかどうか、こういう点に相当私は疑いを持ちますので、大臣の所信をお伺いしておるわけであります。一応私の考えから行きますれば、今日中央労働委員会というものは、社会からの認識からだんだん離れつある。言葉を換えて申上げますれば社会的信用から離れつつあるんではないかということを懸念する一人としてお伺いしておるわけです。この点大臣の所見をお伺いしたいのです。
○国務大臣(保利茂君) 私は現在の中央労働委員会の機構を以ていたしましても、労使の中労委に対する完全な認識を頂きますならば現組織を以てしても必ずしも目的を達することは困難ではない、かように考えております。
○原虎一君 私が懸念いたしておる点はその点であります。これはちよつと横道に外れますが、ここに私の持つております週刊労働、これは御承知のように労働省の中に編集部がありましてそして編集されております。従つて或る意味においては労働省の責任において編集されておるといつても過言ではないと思います。それがその記事に責任を問うわけではありませんが、一般ら深く信ぜられる、こういう週刊労働という新聞が、先般の石炭争議の記事を書いて、御承知のように十一日間に亙る罷業のために延二百八万人が罷業をやつたことになる。で八十万トン以上の減産を来たしております。この争議をこういうふうに書いております。「第三者を交えない労使の自主的解決という争議の慣行を確立したことは今後の争議の在り方を示すものとして注目すべきであろう、」、而もこの見出しは「自主解決の慣行確立」「労使関係漸く正常化す」と、こう書いております。成るほどこれは中労委のお世話にならずに解決したということから、その一点のみを取上げれば、自主的解決で、この見出しの通りに自主解決の慣行を確立したという、こういう大きな三段抜き四段抜きの初号活字で書くだけの価値があるかと思いまするが、これは私に言わせれば皮相なる観察ではないか、成るほどストライキになつた、そうしてストライキになつたから中労委も介在しないで労使が直接交渉で解決したことは自主的解決だ、而も今後の争議のあり方に大きな示唆となるというような書き方をしておる。これは一般の商業新聞でもこういう書き方は皮相だと私は思う。これは私はストライキを十日もやらないで自主的解決が行われたならば、これ以上な全面を潰して書くべきだと思います。二十万人の炭鉱労働者が十日間もストライキをやつて、八十万トン以上の減産を来たして、そうして労使双方直接交渉して解決している。第三者の中労委が入らなかつたということは余りにほめるべきことではない。これは権力が発動されてストライキを彈圧したりなんかしたらけしからんことであります。そうでなくてストライキをやつて、労使が直接交渉をやつて解決付いたのは当り前のことであります。それが今後の争議のあり方に大いに新らしい道を開いたというような意味の書き方をすることは、労働省としてはそれはどうかと思う。労働省としてはやはり依然として、私は争議、ストライキに移る前に中労委にかけるべきものをなぜ掛けなかつたかというと、労働省としては私は検討されるべきだと思う。私どもは先般数回に亙つて労働組合側と資本家側との代表者の出席を求めてここで経過の陳述を聞いたんでありますが、その我々の聞く点は、あれが十日間のストライキであの条件で解決付くものが、何故にストライキに入らなければならなかつたのであるかということが、我々労働委員としては重要なる問題でありまして、その経過においてどちらがいい、悪いという問題は、これは他の者が然るべく批判し、検討して批判されるべき問題であります。その聞きました結果から見ますと、一昨年の争議のときにおけるGHQの示唆によりましてストライキをやめさせられた。そうして中労委にかけた結果が面白くなかつたということは何人も申しておる。で組合側の主張を聞きますれば、ストをやらなければ会社側は誠意を以て妥結条件を出さない。例えば妥結条件においては五十何円、六十円からの賃上げをいたしておりますが、その最初において、何十回か交渉している間においては五円、十円程度しかの賃金引上げを会社側は出して来ない。であるからして我々はもうストライキをやらなければ、会社側は誠意ある妥結条件を出さないんだ。そこでストをやらざるを得なかつたのだ。然らばなぜその場合に中労委に調停を申請しなかつたかという質問に対しては、中労委に対してやつても、同様にストをやらなければ会社側は恐らく六十円に近いところの賃上げを出して来ないということは見えすいておつたのであります。要約すればそういう陣述でありました。それから資本家側の意見は、レッド・パージが行われて民主的労働組合の幹部は組合員から非常な強い批判を受けておつて、戰う民同としての威力を示さなければならんのであるから、今度はどうしてもストライキをやるのであるという観察をしておつたという解釈ができる陣述であります。そしてこれは言葉の裏を言えば、どうしてもストライキをやるのであるからストライキは必至であるから、最初のうちに妥結条件を出さないでストライキをやつた後に妥結条件を出して、そうして解決しようという肚だつた、こう言われても仕方のない陣述だと私は思います。こういう状態においてこそ初めて私は中労委が、権威を持つた中労委としてストライキに至らずしてこの調停をやるということが必要である。労使双方とも今度のストライキでは中労委の世話になりたくないという考えを持つてストライキを……資本家側の陳述から推察しますと、ストライキは必至だからやらせろ、やらしてから解決のできる案を出そう。労働組合のほうはやらなければ会社側は誠意のある案を出さないからやつてしまえと、こういうふうになつておつたと、私は陳述から見て考えられるのであります。そこで私はいわゆるこの新聞の書き方で、中労委というものに対する……中労委の任務というものが如何に重大なものであつて、これの機能を拡充して権威あらしめるものにしなければならんという考え方は、少くとも私は週刊労働の編集の部にはない。ストライキはやらなければならんのだ、やつてから自主的に労使が解決したのだから、これは誠に結構なものだという書き方はどうか。先ほど私が大臣にお伺いした現在の中労委を以てしてその機能を十分に発揮し得るということは、責任の地位にある労働大臣としてはいま少し御検討を願う必要があるのではないか。地労委も勿論必要でありますけれども、中労委は御承知のような基本産業の根幹をゆさぶるようなストになるのでありますから、自立経済を確立するために非常に中労委の任務というものは必要だと思う。勿論顧みまして中労委を権威あらしめるために人を以てしたという感じはありますが、私は今日はそれも必要でありまするけれども、機構それ自体が全く充実して、そしてここの判定は間違いないのだということを社会に示すだけの実力を持つ中労委にしなければならんのではないか、こう考えますのでお伺いしたわけであります。
○国務大臣(保利茂君) 御所見につきましては大体私どもも御同感でございます。今回の炭鉱ストライキに対しまして週刊労働へ御指摘めような記事が掲載された、私はストライキ自体が、とにかくストライキを未然に防止することができなかつたということは、労使双方としても、又政府若しくは中労委としても極めて遺憾に存じております。でき得べぐんばストライキに突入せざるその前の段階において解決せられることを、私どもとしては心から望んでおるのでありますけれども、併し過去の、終戰後の大争議跡を振返つて見まして、今回の炭鉱ストライキは、今後の我が国の労働運動と申しますか労働争議と申しますかこれに対していろいろの多くの教訓を残している。成るほどストライキを始める前に中労委に持込むように中労委の権威を高からしめるということについては、全く同感でございますが、併し事態は必ずしも、今回のストライキが過去の炭鉱労使の関係と全然無関係であつたかというと、そうでもない。いろいろのいきさつがあつて、今回はストライキに、そういう中労委の介在を排除して、ストライキに突入をされた。突入された後の状態については、私どもも、勿論産業全般に及ぼす影響の極めて大きい産業でございますから、重大な関心を払つて速かな解決を望んでおつたのでございますが、これは十日以上かかつたということについては、いろいろ御意見もあると存じますけれども、併しながら日本産業全体に対してさしたる影響を与えることなしに、労使の良識によつて妥結を見ましたことは非常に結構なことであつたと思います。ただこれに関連して、中労委と今回のストライキの関連において検討を加えなければならんということについては大体原委員の通りに存じておりますわけでございますけれども、これを以て、然らば中労委の権威が失墜しておるのか、或いは信頼を労使双方から失つているかということについては、私は必ずしもそうは考えていないのであります。その点は多少御意見が或いは違うかと思いますが、中労委を何とかしなければいかんじやないかというようには、私は今回のストライキの跡を以てしては考えられないのであります。
○原虎一君 大臣は今回のストライキを以て、私がすぐ中労委を律しているように、そういうふうにおとりになるように説明いたしたかも知れませんが、今回の炭鉱ストを機会に私は言つているのでありまして、中労委のあり方というものについては、殊に中労委と申します、労働委員会全体を指しますが、中労委自体のあり方につきましては相当に検討を要するのではないか。例えば暫く私は中労委に直接関係をいたしませんけれども、調停をなすべき対象になる産業に対して、絶えずこれが必要なる資料を收集し、その労使間の実態を把握しておるかどうか、そういうことがなし得るだけの予算を持つているかどうかということになれば、非常に私は淋しいものがあるのではないか。中労委を強化するということは、やはりその方面におきましては経済参謀本部、と申すのは適当でないかも知れませんが、或る意味におきましては絶えず常に相当な調査が行われ、各方面から検討されておるということが必要なんでありまして、調停を申請されてから、今回のような炭鉱ストを仮に調停するとしても、その実態調査のために一月も二月もかからなければならんというようなことでは、やはり権威が疑われると思うのであります。少くとも中労委は公益事業の或いは強制調停もしなければならない場合があるのでありますから、対象となるべき産業に対しての実情というものを絶えず把握するだけの機構を持つておるかどうかということになりますれば、私は非常に疑わしいものがある、こう思うが故に申上げておるのであります。
○委員長(赤松常子君) ほかに御質疑はございませんでしようか。……ございませんならばちよつと私中西基準局長にお尋ねしたい一二の点がございますのですが、最近の賃金問題に関する中央賃金審議会の活動状況はどうなつておりますか、御説明願いたいことが一つと、それからこれは昨年末来の問題でございますが、紡績繊維工業が持つております女子労務者の寄宿舎問題でございますが、特需関係からいろいろと問題が起きております。例えば非常に婦人労働者を急激に收容いたしておりますので、基準法で定められた以外の人数を收容している所がございましたり、そういうことがございますが、これについてはどういう御措置をおとりになつていらつしやるか、又進んでこういう寄宿舎規則などの改正をお考えになつていらつしやるかどうか、その二点をお伺いしたいと存じます。
○政府委員(中西實君) 中央賃金審議会は、昨年の十一月発足いたしまして、労使、公益委員各五名で委員会を構成いたしまして、以来毎月定例の審議会を開催いたしておりまして、審議会の委員の皆さんの御意見によりまして、会社側からの諮問をすぐ受けることなく、先ず最低賃金についての基礎の勉強をしようじやないかという御意向がございましたので、最初日本の戰前、戰後、殊に最近の経済事情がどういうふうな動きになつておるか、更に賃金の状況がどういうふうな推移を来しているかということにつきまして、十分に我々のほうからも説明いたし、審議会の委員のかたがたも勉強されたのでありますが、それに続きまして更に最低賃金につきまして、各国の立法例がどういうふうになつているか、それからその立法例ができたときのその国の経済基盤がどうであつたか、それから又それが施行されたあとどういう影響を来たしているかというようなことにつきましての勉強がしたいということで、これも我々のほうでできるだけの資料を提供いたしまして御勉強を願つているわけでございますが、何分資料あたりも厖大でございますので、三月の十六日に次の審議会を開くのでありますが、この際にその厖大な資料を基にいたしまして、更に検討を続けて参りたいということになつております。そういつた基礎の勉強をいたしまして、初めて最低賃金の日本におけるあり方ということがはつきりして来るのじやなかろうか。この基礎勉強、研究が済みますれば更に審議会の委員のかたがたの意向によりまして次の段階に進んで行くということに考えております。それから次の寄宿舎の問題でございますが、最近特需等の関係で、特に繊維方面で急に労働者を殖やす。それで現在工場の持つております寄宿舎施設では若干規格に足りないというので、業者も苦慮しておる向きがあるのでありますが、我々としましては、今の寄宿舎規則というものは、一応寄宿舎の最低基準だから、これの遵守は是非お願いしたいのだということで進んでおるのでありますが、特に極く短期間、寄宿舎を建設するまでの間、極めて短期間につきましては、今の寄宿舎規則の第一寄宿舎という特例の規則でございますが、これに一応該当すれば、而も実地に調査いたしまして、まあ短期間なら、このくらいなら大丈夫だろうという見当がつきますれば、一応それでもいいということにいたしまして、併しこれはほんの臨時でございまして、勿論寄宿舎の本建築をするということを前提に私ども認めております。それはまあ便宜措置として今の日本の事情からしまして止むを得ないと存じております。
○委員長(赤松常子君) もう一つ寄宿舎条令などの改廃について……。
○政府委員(中西實君) 寄宿舎規則は基準法に基礎の規定がございましてこれに基いて省令が出ております。工場法の時代から、やはり工場法に基礎を置いて寄宿舎規則が出ておつた。これの改廃でございますが、内容的にはこの寄宿舎規則に限りませず、安全、衛生、更に女子、少年者に関する規則その他の規則も相当再検討の必要な点もございますので、改正の点がございますれば併せて考えて行きたいと思つておりますが、現在におきましては、寄宿舎規則に基きまして、特に内容的に変えたいというところは今のところ考えておりません。
○片岡文重君 細かいことで恐縮ですが、今現下の事情から、何ですか、言葉は当分の間ですか、短期間とおつしやる。この短期間ということであれば止むを得ないというお話でしたが、これは私も止むを得ないと思います。併し、であるからこそ、その短期というと一体どの程度の基準を持つて考えておられるのか、それを一つ……。
○政府委員(中西實君) 規則で六カ月以下ということになつておりますので、それで六カ月待ちませんでも、私のほうとしましては大体二月か四月ぐらいで是非やつてくれということでやつております。
○片岡文重君 それからちよつとこれは遅れたと思うのですが、先ほどの堀木委員の質問の中に御答弁があつたのですが、補償保険のほうで考えていたのですがこれはやはり基準法に関係しますから……、先ほどの説明のところでちよつと私腑に落ちないところがありますのでお尋ねするのですが、この災害原因の表を拝見いたしますとここに掲げてありますように動力運転、作業行動、特殊危險災害、雑原因となつておりまして、何と言いますか、基準法関係から見た防災施設の有無による災害、こういつたような調査が全然なされておらない。で、むしろ私どもの知りたいと思うことは、こういう資料ではなくて、そういつた施設の有無によつてどういう災害が起されておるかということが知りたいと思うのです。特に作業行動災害ということで七六%近くも占めておるように書いてありますが、これとても防災施設が完備しておるならば、仮に工員の過失があり、或いは作業行動に手落ちがあつたとしても、防げるはずで、こういう数字にならないと私は思いますが、そういう点についての調査が若しありましたならば出して頂きたいしないとおつしやるならば、至急にこれをやつて頂いて提出して頂かなければならんと思います。御用意なければ今日でなくても結構ですが、その点如何でしよう。
○政府委員(中西實君) 今すぐに手許にございませんので、調べましてわかりますればお吊しいたしたいと思います。安全規則に準拠してやつておりましても、それ以外の原因での災害が非常に多いので、例えば作業行動災害の中のでありますが、この取扱運搬災害というのは比率におきましても非常に多いのでありますが、これは基準法に基く安全規則とは関係なしに起つて参りますので、それは本人の不注意、或いはそのときのいろいろな状況でここまで細かくはとても規則では行けませんので、やはり安全に対する労使の関心そういう方面から行きませんとなかなか災害の防止はむずかしいのではなかろうかと、かように存ずるのであります。
○片岡文重君 それはちよつと何と言いますか、本当に或るものをつかむことはむずかしいとしても、やはり或る程度私はつかめると思うのです。例えば今例に取られた取扱運搬災害のごときは、運搬する工具だとか、床だとかいうだけをお考えになつて、おつしやるのでしようが、例えば照明度の関係、照明が若し十分でなかつたならば、これはやはり或る邪魔物があつても、それはわからないでぶつかるとかいうようなことであつて、やはりこれは基準法に非常に大きな関係を持つと思うのです。ですからそういう点について、今何かこれからお調べになるようなふうにちよつと考えられたのですが、そうだとすればこれはやはり一応関係者としては非常な手ぬかりではなかつたかと思うのです。十分に一つ御調査を至急にやつて頂きたい。そういうことのほうが必要だと思うのでお願いいたしたいと思います。
○政府委員(中西實君) この原因は大体労災の請求にも出ておりますので、調べればすぐわかるのでございますが手許に今ございませんので……。
○一松政二君 関連質問ではなく、意見になるかも知れませんが、今片岡さん、さつき堀木委員が言つておりましたが、この災害の原因ですね、どんな設備をしましても、設備をすればするほど細かい注意が要るわけなのです。ところがこれは、疲れている、不注意であつたとか、或いは不注意ということではなく、いわゆるはずみというか、何というか、私どもも随分経験があるが、これほど恐ろしいものはない。どんな設備をしてあつても、どんな注意を与えておつても、何がのはずみというのか、魔がさすとよく日本では言うがあとから考えれば何故あんなことに気がつかなかつたかということのために不慮の災害を起しておる例が非常に多い。炭鉱の爆発その他にしましても、ちやんと機械器具を備え付けてあつても、それをなおざりにしておつて、これくらいはよかろうと思つてひよつとたばこを吸うたりすることが大変なことになる。而もたばこを吸うことは嚴禁されているような場合でも、そういうことがひよつとある。これは一人に一人ずつの注意者が付いておるわけには行かんのですから、これは先ほど基準局長からお話がありましたが、注意力、この注意力が私は災害を未然に防止する最大の要件だと思う。どんなに保安設備等がありましても、細かくやればやるほど、それには細かい注意が必要なんでありまして、私はもう多くの災害の原因は不注意にあると思う。不注意だけはこれは防ぎようがない。結局教育と訓練といいますか、殊に日本のいわゆる民度というものがまだそこまで行つていないのか、私はそういうことを痛感しておりますから、その点は一つ今の基準局長にも、丁度片岡さんからのお話もありましたが、自動車の交通傷害、あれによつて死亡者が非常に多いのですがあの大部分は不注意である。何らか基準の規則がありましても、何か設備がありましてもあれほどの事故が今日でもあり、多数の人間が、戰争によつて死亡するよりも、あの自動車事故、交通事故によつて死亡する人間のほうが遥かに多いはずなんです。その大部分が不注意である。それで私は災害の原因をお調べになるときに、單に機械設備なり、或いは規則なりによつてこれが防げるものではないいうことだけを申上げて置きたいのであります。
○片岡文重君 私は一松委員がかねてからこういう関係について御研究なさつておられると伺つておりますし、かねがね敬意を表しておつたのですが、勿論私今聞きようが悪いと思うのです。不注意が災害の原因ではないというお言葉だろうと思うのですが、極端なことを申上げれば、例えば自動車の事故があつたとしても、これは若し踏切へ来たならば、自動的に自動車が停まる、或る一定の重量のものが来れば自動的に遮断機が降りるというような設備があれは、よしんば不注意があつたとしても防げるはずなんです。殊に現場の工場なりに行つて見ればおわかりになる通りに、不注意であるばかりが事故の原因ではなくして、不注意が原因の一つをなすに過ぎないのです。だからその不注意があつても防災できるような設備を施すことこそ必要ではなかろうかと私は考えろ。そういう観点に立つて、防災施設が十分であるかどうかお調べ願いたいと、こういうわけなんです。殊に事故の起る時間ですね。時間的に調査をして見ても、やはり疲労から来るということが時間的にも出て来るわけですね。特に今日の労働者の生活というものは、もう申上げるまでもなく、御承知の通り、全く身体は職場においても頭の中には家計をそろばんに入れておるような事態に隆つているわけですね。これは止むを得ない事態ですからして、そういう事態に置かれておつても、なお且つ災害が防げるような方法を講じてやることこそ、資本家の務めであつて、労働者としても又それに協力して事故のないようにして行くことが望ましいことではなかろうかと考える。そういう意味から、私の言いようも悪かつたかも知らんけれども、防災施設という点だけを申上げて、不注意ということを申上げなかつたのですけれども、私はこの点を例として申上げたのですが、本人が不注意があつても防げる施設が必要であるということと、それからできるならそういう不注意にならない労働をさせて行くことが必要である。まあ誰だつて労働者に怪我をさせようというものはないのですから、余り議論をしてもいけませんけれども、そういう意味で原因別に調べて下さい。
○一松政二君 あなたのおつしやることはよくわかる。だからそういう点も無論ある。あるけれども、それのみによつて防げない。多くは間違いですよ。やはり一つの間違いが原因になるわけですから、その点も大いに考えて置かなければならんということだけなんです。
○委員長(赤松常子君) まだ公報に議題として掲載いたしておりました案件及び前回に予定いたしておりました職業安定局長からの説明の問題もございますが、本日は時間も経過いたしておりますから、これにて散会することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(赤松常子君) それでは都合により来る八日は委員会を開会いたしませんので、次回は追つて通知することにいたしまして、本日はこれにて散会いたします。
   午後零時十六分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     赤松 常子君
   理事
           一松 政二君
           原  虎一君
           波多野林一君
   委員
           片岡 文重君
           山花 秀雄君
           早川 愼一君
           堀木 鎌三君
  国務大臣
   労 働 大 臣 保利  茂君
  政府委員
   労働政務次官  山村新治郎君
   労働省労働基準
   局長      中西  實君
  事務局側
   常任委員会專門
   員       磯部  巖君
   常任委員会專門
   員       高戸義太郎君