第012回国会 平和条約及び日米安全保障条約特別委員会 第17号
昭和二十六年十一月十三日(火曜日)
   午前十時二十二分開会
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 出席者は左の通り。
   委員長     大隈 信幸君
   理事
           楠瀬 常猪君
           一松 政二君
           曾祢  益君
           加藤 正人君
           堀木 鎌三君
   委員
           秋山俊一郎君
           石川 榮一君
           泉山 三六君
           大屋 晋三君
           北村 一男君
           徳川 頼貞君
           平林 太一君
           岡田 宗司君
           佐多 忠隆君
           永井純一郎君
           波多野 鼎君
           吉川末次郎君
           片柳 眞吉君
           楠見 義男君
           杉山 昌作君
           高橋 道男君
           伊達源一郎君
           木内 四郎君
           櫻内 辰郎君
           一松 定吉君
           羽仁 五郎君
           堀  眞琴君
           兼岩 傳一君
  国務大臣
   法 務 総 裁 大橋 武夫君
   農 林 大 臣 根本龍太郎君
  政府委員
   法制意見長官  佐藤 達夫君
   法務府法制意見
   第一局長    高辻 正巳君
   外務政務次官  草葉 隆圓君
   外務省條約局長 西村 熊雄君
   大蔵省管財局長 内田 常雄君
  事務局側
   常任委員会專門
   員       坂西 志保君
   常任委員会專門
   員      久保田貫一郎君
  説明員
   通商産業省通商
   局次長     松尾泰一郎君
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  本日の会議に付した事件
○平和条約の締結について承認を求め
 るの件(内閣提出、衆議院送付)
○日本国とアメリカ合衆国との間の安
 全保障条約の締結について承認を求
 めるの件(内閣提出、衆議院送付)
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○委員長(大隈信幸君) 只今より委員会を開会いたします。
 最初に、岡田委員から御要求がありました北太平洋漁業のための国際條約、アメリカ、カナダ及び日本の三国の国際條約について外務省から説明を聞きます。
○政府委員(草葉隆圓君) アメリカ、カナダ、日本の漁業協定は先般御質問について御答弁申上げましたように、條約の第九條にありまする点から、條約発効前ではありますが、成るべく速かに国際間の漁業の問題についての了解点に達する意味におきまして、協議を進めて参つておる次第でございます。今月の五日から協議を始めまして、目下三国間において話を進めておりまするが、お手許にお配りいたしましたようなアメリカの試案が出まして、これについての説明並びに質疑応答が一応終了いたし、これら三国間においてのこれに対するいろいろ話合いを進める段階に只今参つておる次第でございます。
○岡田宗司君 この條約案は今後インドネシア或いはオーストラリア、中国、朝鮮、その他、日本との漁業のいろいろ関係のある所との交渉の上に先例となるものでありまして、非常に重大なものであることは申上げるまでもないところでありますが、この條約案を拜見しておりまするというと、結局日本が北太平洋のカナダ、或いはアメリカ寄りの公海において全然漁業ができない、こういうことになつて、日本の漁業が北太平洋のアメリカ寄りの方面においては締め出されてしまうという結果になる、こういうふうに私どもは見ておるのでありますが、このアメリカ側の草案の通りになるとすればそうなるものかどうか。外務次官にお伺いしたいと思います。
○政府委員(草葉隆圓君) 発表になりました、又お手許に差上げておりますアメリカの北太平洋漁業のための国際條約案、これは原案ではないのでありまして、アメリカの考え方が発表になつた一つの試案に過ぎないと存じます。従いまして、一応これについてのアメリカの考え方というものが話題に上つて、今後更に或いはカナダ、或いは日本という考え方が発表されまして、これによつてまとまつて来るものだと考えるのであります。お話のように、この案によりますると、只今のようにこれが一つの基準になつて来るというのは、十一條の中に出ておるのでありますから、従つてこの案が若しや仮にこのままでありますると、お話のように進んで参ると存じます。又恐らくそうじやなく考えましても、アメリカ、カナダ、日本の今度の会議は、やはり将来の国際漁業の一つの基準になつて来る行き方を示すという意味において重大性を持つておると考えるのであります。
○岡田宗司君 この案は試案であるというふうに言われたのでありますけれども、少くとも先ず討議の資料にといいますか、先ず討議の一つの材料になつたことだけは誤まりがない。そうして同時にアメリカ側がすでにこういうふうな案を持つて臨んで来たということは、この案を基礎にして、この案に盛られた精神を今度の会議で貫徹しようという考えであることは明白であろうと思います。單に試案として示したものではない。私は、やはりアメリカ側がそういうふうな考えを持つて公的に示して来たものである。そういうふうに考えるのですが、單なる参考案でないものと政府は考えているのか。それとも單なる参考案として見ているのか。
○政府委員(草葉隆圓君) お話のようにアメリカの考え方を発表されたものだと考えております。
○岡田宗司君 この案はカナダとすでに協議をして、カナダと話合いをした上で両国の案を大体まとめて来たものと思いますが、どうでしようか。
○政府委員(草葉隆圓君) その点につきましては、日本政府は、はつきりとこの案の成立の経過を存じませんから、御答弁申上げることを差し控えたいと存じます。
○岡田宗司君 併しすでにこの案が提出されまして、そうして何日かの会議においてこの案が討議されたとすれば、カナダがこれに同調しているかどうかということはおわかりになつているはずだと思う。勿論外務次官自身おいでになつておらんから、直接お知りになつておらんかも知れませんが、これくらいなことは、すでにおわかりになつていると思いますが、どうでしようか。
○政府委員(草葉隆圓君) カナダのほうも質疑応答等は相当しておられたのではないかと思います。お話の通り、私、出席いたしておりませんから、実際の状況は不明であります。
○岡田宗司君 これに対しまして、一体政府はどういうふうな態度を持つているのか。今日の新聞紙の伝えるところによりますというと、十四、五日頃日本案なるものが提出されるというふうに聞いておるのでありますが、十四、五日頃に会議に日本案が提出されるとすれば、すでに日本案の原案なるものはできていると思うのですが、日本はどういう具体的な態度を以て臨むのか。これをお示し願いたい。
○政府委員(草葉隆圓君) これはまだ実は日本案としての代表、全権と申しまするか、団において検討を進めている現状でございます。先般もお答え申上げましたように、今回の漁業関係は直接これに携わつておる人、或いは国民の全体の総意というものが相当強く日本の将来の漁業に関係いたしますので、従いまして或いは全権、或いはアドバイザーというような形において、総意を汲みながら、十分その日本案の検討等も進めて行くという態勢をとつておりますから、この点は御承知を頂きたいと思います。
○岡田宗司君 全権とか、或いはアドバイザーとか、いろいろなものがあつて、それが相談しているということは、勿論あなたに言われないでもわかつているのでありますけれども、問題はどういう態度を以て臨むかというその態度の内容をお聞きしている。すでに会議が進められて、本案に対する質疑も行われているとすれば、日本側の態度というものは、すでにきまつておらなければならんわけです。大体の心がまえはできていると思う。それをお伺いしたい。
○政府委員(草葉隆圓君) 日本側としまする立場は、これは全権団長が挨拶に述べました一つの公海の自由というのを原則にしながら、この只今お話になりましたようなこの試案に対する態度、或いは具体的な案というものにつきましては、これらの代表全権、或いはアドバイザー、そういう方面におきまして、具体的に話を現在進めて検討をいたしておる段階でございます。
○岡田宗司君 十四、五日頃に日本案を提出するという本日の新聞記事は、これは事実でありますか。
○政府委員(草葉隆圓君) これは案がまとまりまして、まとまり次第に、やはり会議中でございますから、成るべく早く進むような段取りにいたして参りたいと考えております。
○岡田宗司君 それは無論のことですけれども、十四、五日頃という期日にこちら側の案を提出するというのは事実かどうか、それをお伺いしておるのです。
○政府委員(草葉隆圓君) まあ一応この情報部から発表いたしておりまするような会議の進行状況になつておりまするから、十四、五日と申しますと、明日、明後日ということになります。具体的に申しますと、成るべくそういう機会までには案をまとめたいというので、今検討をいたしております。
○岡田宗司君 十四、五日頃に出すとすれば、大体具体的の内容はすでにきまつておるはずだと思う。その十四、五日頃に出されるものについての内容の概略を本委員会に御発表になれないのか、なれるのか。それをお伺いしたい。
○政府委員(草葉隆圓君) まだ具体的に実はまとまつていないのです。目下、申上げますると協議を進めております。従つてこの根本方針は先ほど申上げましたような行き方をとつておりまするが、いろいろ具体的になりますると、アメリカの試案にもありまするような各種の問題が起つて参りまするので、これはよほど愼重に検討をしてかからなければならないことでありまするから、従つて十分検討をいたしておる状態でございます。
○岡田宗司君 十四、五日頃にお出しになる準備を進められておるならば、相当進んでおると思う。今なお聞きしておるというと、どうもそれはまだ検討中で、御発表になりそうもないのですが、それでは若し十四、五日頃にまで、或いはもう一日二日延びるといたしましても、この條約の審議中に日本側の具体的な態度というものがきまり、そうして、その日本側の提案を具体的になさることになるのですが、その際にはこれを本委員会にも御発表になつて頂きたいと思うのですが、如何ですか。
○政府委員(草葉隆圓君) 只今申上げましたように、成るべく早く日本の試案と申しますか、いうようなものも決定いたしまして、協議の話題に上ぼせて来るという段階になつて参るのであります。従いまして、この試案につきましては十分検討をいたして参らねばなりませんので、或いは只今申上げました十四、五日頃までに、つまり今日中に話を進めて、明日までにでき上るかどうかということに、まだ現在のところでは、はつきり申上げる状態には実はなつておらないのであります。今日も盛んに検討をいたしておる状態です。従いまして、これが発表等につきましても、これはいろいろ会期の関係もございますので、十分各国と相談した上で了解の下に進めて来なければならないと存じますから、御希望の点は十分了承いたしまして、これらの会議の進行と睨み合せて、各国間の相談とも睨み合せまして、進んで参りたいと存じます。
○岡田宗司君 この会議は、そういうふうにアメリカ案が出て、更に日本案が出て進められて行くわけですが、すでに開かれてしまつておるのでありますから、仕方がないのでありますが、そもそも本條約のごときは実際に平和條約が効力を発生いたしましてからあとに当然会議が開かれ、かかる條約締結に行くのが適当ではないかと思う。今これも安保條約と同じように批准が行われ、まだ條約の効力が発生しないうちにこういう会議が行われておるということは、成るほどアメリカ側、或いはその他のほうの発表によりますると、これは平等の立場で行われておるのだというようなことを言われてはおりますけれども、私どもの受ける印象、或いは実際上のいろいろな関係からいたしまして、これは平等の立場に立つて会議が行われ、平等の立場から討議されておるというふうな工合に受け取れないのであります。それで、この会議は一体いつまで続くものか、或いは途中でこの会議が意見がまとまらないような場合には一応打切られて、更に適当なときに、或いは條約の効力が発生したあとに再開されるというようなことにならぬか。そういうような点について……。
○政府委員(草葉隆圓君) お話の通りにこれは大体平和條約の効力が発生しましたあとにおきまする国際間の漁業の問題の協定でございますから、従つて国際的に考えましても、独立したあとの平和條約の発効後が適当ではないかという御意見も一応御尤もと存じます。併し発効後になりますると、本年の二月七日に吉田総理とダレス氏との間に交換しました公文によりましても、その後の国際漁業に対する取極のない期間においては、或いは委員会を作る、或いは一九四〇年に操業していなかつた漁場では自発的措置を取らねばならんというがごときいろいろ新らしい問題が考えられて来る。従いまして、願わくば発効と同時にこの国際的な漁業の円滑なる進行をして行く方法がとられて来るということが最も適当でありますので、それが国際漁業間の何ら取極のない状態で独立をいたしますると、大変今申上げましたような手続等も十分とつて来なければならないという、こういう関係から、その事前の方策といたしまして只今会議を進めておる次第であります。又この会議が成立しない場合には勿論何回もやらなければなりませんが、併し現在のところでは成立することを念願しながら、又恐らく三カ国、ほかのアメリカ、カナダもその心持を持つて十分誠意を盡しながら、一致点に到達するということを予想いたして進めております。
○岡田宗司君 勿論この條約の審議が円滑に進んで、そうして適当なる妥協点が発見されて成立するということになれば、私どもも必ずしも反対するものではないのですけれども、どうも予想されるところ、日本側が、非常に不利な立場に置かれることは明白のように思われるのであります。で、日本側として若しこの條約の中で、アメリカの或いはカナダの方面に接近するといたしまして、一体どの程度まで日本側としては進出するというその線を、大体考えておられるかと思われるのでありますが、一体日本側としてはどの程度の所まで行ければよろしいということをお考えになつておるのですか。
○政府委員(草葉隆圓君) これは大変大きい問題でございまするから、政府だけでも将来いろいろ実際上の問題についての案件もありまするし、又国民全体の意見という点もありまするから、従つて政府及び民間関係者並びに国会の水産委員会というようなものの意見を十分反映してやつて行くという態勢で、先ほど申上げましたような行き方で進んでおります。従いまして日本政府だけがこの限度だ、この線だというのでなく、皆それぞれの総意を一つにまとめて、それによつてこの相談を進めて行くということでやつておりまするから、今ここで、このぎりぎり一ぱいが交渉の線だという線を引いて進んでおりませずに協議を進めております。この点を御承知を願いたいと思います。
○岡田宗司君 農林大臣がおいでになつたので伺います。只今漁業條約の問題についてお伺いしておつたのでありまするが、今、私は草葉政務次官に対しまして、この條約で一番問題になるアメリカ洲の沿岸への接近の問題で、日本側では一体どの程度まで進出して行くということをお考えになつておるのか。勿論領海の線までではないと思いますけれども、その点についてすでに農林大臣としてお考えがあろうかと思うのでありますが、それをお伺いしたい。
○国務大臣(根本龍太郎君) 日本、アメリカ、カナダの漁業協商は今目下進行中でございまして、この点についてはいろいろと論議が鬪わされることだろうと存じますが、我々といたしましては、普通公海における自由平等の原則は堅持して行く方針でございますが、その方針に従いまして今後の折衝に入る段階だと考えております。どの程度までが領海であるかどうかということについてはいろいろ各国の意見もあるようでございまするけれども、この点については、ここまで行かなければならないというような態度で交渉する気持は持つておりません。
○岡田宗司君 先ほど草葉次官にやはりお伺いした点ですが、本日の新聞の伝えるところによると、十四日、十五日頃に日本側の案ができて提案されるように伝えられておつたのでありますが、その点並びにそれの大体の内容をお示しを願いたい。
○国務大臣(根本龍太郎君) この問題は今代表団で検討をいたしておるのでありまして、まだ成案を得ていないようであります。
○岡田宗司君 それは、やはり十四、五日頃にできて提案される見込みですか。
○国務大臣(根本龍太郎君) 大体それを目途といたしておるようでありまして、実は私は名誉議長という名の下に委員に委嘱されておりますが殆んど出ておりません。專ら外務次官が中心になりまして、それに專門のスタツフが附いて検討いたしております。
○岡田宗司君 本條約が、まだ平和條約の効力を発生しない前に論議されておる、そしてそれまでに締結されることが目途とされておるように承わつておるのでありますが、先ほども草葉次官にお伺いしたのでありますが、これは日本としては非常に不利な立場で交渉することになるのではないか。成るほど平等な立場ということは言われておる。併し実際上においては今日平等の立場での交渉とは考えられない。そこで、これが意見の相違が非常に大きくなつた場合、この会議が或いは一時中絶されるようなことが起るかも知れないし、又それが相当長くかかつて講和條約の効力の発生後になるような事態も、或いは起るようなことも考えられるのではないかと思うのでありますが、政府としては、やはり平和條約の効力の発生しない以前にこの條約を成立さして、そうして講和條約の効力の発生と同時に漁業條約のほうの効力も発生させたいと、そういうふうにお考えになつておるのですか。
○国務大臣(根本龍太郎君) お答えいたします。現在の協商が、シーボルド外交局長が明言したごとくに、日本が完全なる独立したと同様のいわゆる平等の立場において交渉することについて了承しておる旨のメモランダムが出ておりますので、政府としては何らこのために不利になるとは考えておりません。アメリカ、カナダも平等の立場において交渉されると思いますので、その点で話が進むと同時にまとまるものと考えております。
 なお漁業條約は、批准後完全に独立が回復した後正式な漁業條約が締結されるものと考えております。
○岡田宗司君 この條約の問題は、例えばインドネシア、或いはオーストラリア、或いは朝鮮その他との、今後いろいろ漁業問題についての交渉等の先例をなすことになるのでありますが、すでに他の国々から日本との漁業の問題について何か言つて来ておりますか。そして又それについて政府としては、やはり交渉を開始する予定になつておりますか。
○国務大臣(根本龍太郎君) 他の国々から正式に漁業協商をするということについてはまだ申込みを受けておりません。従いまして今のところ政府がこの三国漁業協定のほかにプログラムを持つていない次第でございます。
○岡田宗司君 そういたしますと、條約の効力発生と共にマツカーサー・ラインが廃止されることになる。そうなつた場合に、朝鮮或いは東支那海、或いは赤道に近い方面の漁業の問題、それはどういうふうになるのですか。これは自由に日本がどんどんやるのか或いは農林大臣のお考えでは、何か自発的にですね、これを制限して行くというような考えでおやりになるつもりなのか。それをお伺いしたい。
○国務大臣(根本龍太郎君) 独立回復と同時にマツカーサー・ラインが解消されることは当然でございます。従いまして原則として公海における漁業の自由権を我々は得ておるものと思いまするので、その方針は堅持することができると思います。
 なお、これに関しましては、吉田総理大臣とダレス氏との書簡において、一九四〇年に行つていない所においては日本は自発的にそちらに行かないということになりまするので、このダレス・吉田書簡の趣旨は守るべきであると考えております。
○岡田宗司君 私の質疑はこれで終ります。
○曾祢益君 農林大臣に第九條に関連いたしまして少し御質問申上げたいと思います。私、只今岡田委員の御質問に対する農林大臣のお答えの中で、正式の漁業條約は平和條約の効力発生後にする、かように言つておられたと思うのでありまするが、それは只今交渉しておる日米加の條約は、これは正式なものではなくて別に正式な漁業條約を結ぶと、こういう意味でございまするか。その点を御説明願いたいと思います。
○政府委員(草葉隆圓君) 効力発生は、條約効力発生と同時或いはその後という意味になつて来る点でございます。その点を只今農林大臣がお話したのでございます。
○曾祢益君 そういたしますると、只今のできんとしつつある條約の効力の発生が、平和條約の効力の発生と同時若しくはその以後にするように調整するという意味であつて、別に正式の漁業條約を作り……、今作つているのが若し條約になつても、それは正式の條約でないというような意味ではないと、こういうことですか。
○国務大臣(根本龍太郎君) そうです。
○曾祢益君 それでわかつたのでありまするが、然らば何故に、現在実質的に漁業條約ができんとしているのに、その効力発生を平和條約の効力発生と同時若しくはその以後にするというような人為的な調整をなぜなさるのであるか、その点を伺いたいと思います。
○政府委員(草葉隆圓君) これは勿論その前からでもいいわけでございましようが、併し原則としては現在は占領下にあり、すべてその占領政策下にあるわけであります。従つて完全主権の回復は平和條約の効力発生によつてでき上るので、従いましてこの漁業協定におきましても、国際的な立場から考えますると、全体的な意味から申上げましたら、平和條約の効力発生というものが一つの前提になつて来ると考えます。併しこれは三国間の話合いによりまして、この以前からでも効力発生は勿論できると思います。
○曾祢益君 そうしますると、効力発生は、批准によつて効力を発生するのでありまするから、條約そのものの調印は平和條約の効力発生の前におやりになる、そういう意味でありまするか。
○政府委員(草葉隆圓君) 今回のこの日米加の協議によりまして條約ができますると、それによつて正式な署名が行われると予想いたしております。従いまして大体におきましては、この條約は恐らく、批准條項を含む條約になつて来ます場合におきましては、それを国会の御承認にかけまして、それによつて効力発生の手順といたして参ることになります。
○曾祢益君 そういたしますると、結局日米安全保障條約と同様に、この條約の効力発生は、平和條約の効力発生と同時にする。或いは同時以後にする。條約としての正式に固まるとき、この案文が確定する。即ち署名はやはり占領中にやる。こういうお考えであるかどうか。この点をお伺いします。
○政府委員(草葉隆圓君) これはまだ実はそこまではつきりきまつておる次第ではございません。従つて三国間の話合いの順序によりまして、そういうふうになりまするか、根本的な原則が一致しましてその上で他の適当な機会にいたしまするかは、今後の話合いの結果によつてきまつて来ると思います。
○曾祢益君 そういたしますと、先ほどの農林大臣の言われた正式の條約の効力発生は、平和條約の効力発生と同時、若しくは後ということとは、どういう関係になるか。例えば占領中に正式の署名をしない、併し今度の会議で話が進んでいよいよ大体のこれでいいという案文ができたならばそれはどうする。例えば仮調印でもしておいて、そうして改めて平和條約の効力発生と同時、若しくは後に改めて正式の署名をして更に批准をする、かような手続を取られるのであるか。そうでないと先ほど農林大臣が言われたことと実質的に食い違いが生ずるのであります。はつきりお示しを願いたい。
○国務大臣(根本龍太郎君) 只今曾祢委員から言われたようになるのが当然だと考えております。
○曾祢益君 どつちになるのですか。
○国務大臣(根本龍太郎君) 現在の協商がまとまつた場合には、御指摘のように仮調印というような形になりまして、そうして批准が終りまして完全に独立しましたときに、正式な條約としてサインされる、かように考えます。
○曾祢益君 それで大体その手続がわかつたのでありますが、只今の交渉によつて実質的の協定が両政府の間にできた場合に、取りあえず仮調印をしておく、そうして本調印は平和條約の効力発生と同時、同時といつても同時以後になるでしよう、そのときに改めて正式の調印をし、更にその批准をする、かような順序になるかどうか。その通りに解釈してよろしうございますか。
○政府委員(草葉隆圓君) 正式の、今度はまあ一応仮調印いたしておきまして、正式の署名は平和條約の効力発生前か後かその点はまだはつきりいたしておりませんが、取りあえずこの吉田・ダレス会談にもありますような状態でありまするから、平和條約発効後に備えた方法で、最も有効的な時期を選んでやつて行く、こういう状態であります。
○曾祢益君 どうも最後のところが少しぼやけちやつて……、農林大臣の言われたことは非常に明確であり、仮調印をして本調印は平和條約の効力発生と同時にやる、或いは同時以後にやる、その後で更に批准をやる、こういうふうに承わつたのですが、まあ、その点については外務省のほうが主管でありましようから、外務次官のお話を一応前提とすると、最後につまり仮調印の後に正式調印が、平和條約の効力発生の前か後かわからない、必ずしもわからない、これは一体どういうわけですか。後にするというのならばこれも一つの意味をなすのでありますが、なぜ然らば、今日この会議において、仮調印ができる、仮調印ができる状態で一応仮調印しておきまして、平和條約の効力発生と共に正式調印するというならば、とにかくかような條約は飽くまで対等の立場でやるべきであるという原則から、実質的には、現状からかような話をして行くことが外交上必要であるというお考えから、さような措置をとられるということは一応わかる。然るにそうでなくて、仮調印しておいて、一応延ばしておいて、本調印は然らば平和條約の効力発生と同時に、若しくはその後かと思うと、必ずしもそうではない。なぜ然らばさような厄介なことをされるのであるか。仮調印をしてもう一遍本調印をするならば、仮調印と本調印との間に時期を置くことに何らかの狙いがなければならない。従つて平和條約の効力発生後まで待つというような、仮調印と本調印との間に時間を置くなら話がわかるが、そうでなく、徒らに時間を延ばして、平和條約の効力発生の頃になつて、同時にするか、あとにするかきめようということは、これは、いやしくも嚴粛なる国際條約締結の責任のある政府の立場としては私は受取れない。いずれが本当であるか、はつきり示して頂きたい。
○政府委員(草葉隆圓君) 実は今度の日米加の漁業條約は相当大きい條約であると存じまするから、恐らくは批准條項を含んだ條約になると思います。又アメリカの試案によりましても、十二條において批准條項を考えておるようである、従いまして問題の中心は批准による効力発生という問題になつて来ると思います。これは十分御承知のように、署名或いは仮調印という問題よりもそれが中心の問題である。現在はいわゆる全権団とは申しましても、この署名の権限を持つて話合いができまするまでは相当の時間がかかります。而も集つておりまするメンバーは、或いはそれぞれ專門家である、或いはカナダの漁業代表というような状態でありまするから、話がまとまりますると、一応それで話のけりを付けまして、いわゆる仮調印をして、そうして適当な機会に両国がこれに基いた正式の全権という立場においての調印をする、そうして批准により効力を発生する、こういう段階をとつて来るという、極く技術的な、そうして内容が漁業という專門的な問題でありまするから、こういう形式を進めて参つた次第であります。
○曾祢益君 どうも直接のお答えになつていないのですが、只今おつしやつた点から行きますると、いま一つの疑問が起るのであります。申すまでもなく、仮調印というものは、やはり両国の政府を代表いたしまして、これ以上字句の修正をしないという一つの国際的な約束と言いますか、慣例になつておると思うのです。技術的な部面が多々あることは我々も承知しておりますが、併し技術家だけに任し得ない非常に大きな日本の生存権の問題に関連する問題でございますので、従つて私は只今こちらに来ておられるアメリカ、カナダの代表のかたがたが、特に技術的に優れたかたであることは、只今外務次官が言われた通りと思いますが、その技術的に優れた技術会議の結果仮調印されて、そうして仮調印されたならば、あとは正式全権を両方から出しましても、これはいわば形式的な問題になつてしまう。そこで技術会議においてきまつたことが、正式の全権の会議においてそのまま承認されることになります。仮調印した以上……。私はさように考える。でありますから、それは甚だおかしいのであります。技術的な問題を含んでおるから先ず技術家だけの会議を開く、これには私は反対でございません。当然にそれは予備会議としておやりになればいい。その会議の結果、関係国の政府をいやしくも拘束するような国際的な取極、即ち仮調印というふうなことがあつたのでは、二段階に、技術会議といわゆる政治会議の二つに分れて、いずれかがなくなつてしまう。何故にさようなことをされるのか。技術家の会議、結構でございますが、当然それは予備会議である。予備会議の結果が少くとも道義的に相当の拘束力を持つといたしましても、対外的の拘束力を持たないような予備会議で一応けりを付けて、その後政府のお考えになつておるように……、かようなことは大きな政治問題であるから、日本が正式に独立した後に、或いは独立した途端に正式の会議を開いて立派な国際條約を作る。なぜかような普通の恰好をおとりにならないのか。その点をお聞きします。
○政府委員(西村熊雄君) 今行われておるのは、予備会議でございます。
○曾祢益君 予備会議の結果に必ずさような仮調印するということが普通であるか、その点を伺います。
○政府委員(西村熊雄君) 会談の結果イニシアルをするまでに話がまとまれば仮調印になると思います。現在のところ、今後の話合いによつて見通しを付ける外ない次第でございます。又曾祢委員は、仮調印すれば、もう最後的の拘束力を持ち、動かせないもののになるようにお考えのようでございますが、必ずしもそうではないのでございます。仮調印は、場合々々によつて性質が違つて参ります。一応かかる文書ができたという意味において、公的に証拠を残す意味において、イニシアルをする場合もあります。曾祢委員の御質問の点は、今後の三国会談の成行を見ませんとはつきり見通しを付けて、御答弁できない次第でございます。
○曾祢益君 国際慣例について十分御承知になつておる條約局長がそう言われますけれども、いやしくも仮調印である以上は、ただ單に会議の議事録にイニシアルをする、私はそれ以上の意味を持つておるのが通常の仮調印であると思う。会議の議事録が正確ならば、それはイニシアルをして正確なることを証拠として残すのは当り前であります。それ以外に、只今農林大臣からお話を承わつたように、一応仮調印をして、そしてそれは技術家の会議だから、もう一度政治家の会議を持つ、そういたしますと、この仮調印というものは、やはり通常言われるように相当関係国政府を拘束する性格を持つた仮調印になると思います。従つていろいろ弁解をなさいますが、私はなぜさようなことをされるのか。技術家の会議なら技術家の会議を開いて、その予備会議において或る程度のところまで検討されて、そこで一応打切つて、それから正式の交渉を始める、殊に正式の交渉はいろいろ……最後のところは少しゆとりをおいて話合つておられるようでありますが、やはり正式な会議並びに正式な條約の署名というものは、平和條約の効力発生後にやるのが、これを何といつても正しいのであるから、そのようにやるべきである。然るに政府は、まあ外国からの圧力によつてだろうと思うのでありますが、技術会議の恰好で漁業協定なり條約の実質的な交渉をやる、そうしてその結果を、事実上、形は別の会議に改めるけれども、事実上それによつて拘束されてしまうというようなことをやるのではないか、私はそういうようになるように殆んどきまつていると思うのです。そこで、かような形をとつて、技術問題であるという形をとられますが、この問題は非常に重要な日本の自活、経済自立に直結する問題であることは当然でございます。そこで、この問題の内容について、アメリカ側の提案が出ておりまするので若干御質問申上げたいのですが、これは農林大臣からお答えを願いたい。先般水産庁の次長にもいろいろ質問したのでありまするが、水産庁次長の御答弁、並びに外務次官の御答弁から私はかようなことをはつきり承わつたのであります。即ち日本としては飽くまで公海の漁業の自由の原則は讓らない、そうして、それがただ單に抽象的な原則として確認されるだけでなくて、公海において一定の、何と申しまするか、沿岸国の保護地域的なものを認めてはならない、さような意味の公海における例外的な漁獲の制限ということが仮にあるとしても、一国の沿岸に続くところの公海において保護地域的なものを設定し、それを沿岸国の独占的な漁場としてとつてしまうというようなことは、日本として到底認めるべきでないし、そういうつもりはない、かようにはつきり承わつたと思うのであります。然るにこのアメリカの提案を見ますると、もとよりこれはまだ推敲されたものでないかも知れませんが、一応技術会議で提案されたものによりますると、この附属書においてはつきりと、日米加三国はそれぞれ一定の地域についての公海漁業権を放棄することが、これが地域的に明らかになるような仕組になつておるのが、この條約の附属書にはつきり現われております。そういたしますると、これは政府が言つておられるところの保護地域設定の原則は認めない、この原則に明瞭に反しておるではないか、かように考えるのでありまするが、果してその点はどうであるかを承わりたいのであります。
○国務大臣(根本龍太郎君) 御指摘のように、日本政府といたしましては、公海自由の原則は、原則のみならず実体もその原則に副うことも我々は強く要請しておるのであります。従いまして或る一定の国が自分の沿岸の公海について特別なる権益を設定し、他の国国はそれに対しての権利を放棄すべしというようなことについては、日本側としては了承しかねる提案であると我我は考えております。
○曾祢益君 それでは農林大臣は、このアメリカの提案による附属書に盛つておるような、この第一條からの結果として、附属書のような、恐らくこれは一定の地域を限つての立入禁止という考えでありまするが、このアメリカの提案には公海自由の原則から反対である、こういう御意向であるかどうかを明らかにして頂きたいと思います。
○国務大臣(根本龍太郎君) 只今私、実はその内容を見ておりませんが、私が申上げたのは、日本側の基本的態度として申上げたのであります。アメリカの提案の個々の問題については検討の上御答弁申上げたいと思います。
○曾祢益君 農林大臣、非常にお忙しいことは私もよく承知しております。殊に最近特にお忙しようでありまするが、(笑声)これは漁業会議のいやしくも議長であられるのであつて、又必ずしもテキストを見なくともどの新聞にも相当大々的に報道されておるわけであります。私は非常に率直に申上げまするが、このアメリカの提案、これを、案文そのものを見て、この提案が絶対的に保護地域設定方針になつておるとは私は申しません。そうであるかどうかわからないのです。かような、併し重大な問題が技術会議の形において提案されており、その中には保護地域設定的な考えがあるのじやないかと思われるような、我々から見て、我が国民から見て非常に危險な要素を含んでおる。必ずしもこの提案そのものが直ちに保護地域設定式になつておるとは申しませんが、若しそういう趣旨であつたならば、農林大臣はこの提案の詳細を御研究にならなくても、日本政府の主管大臣とされて当然にこの交渉に当るべき、基本方針はできておるはずである。即ち公海における漁業自由の原則、これは我々の自治団体である日本海員組合からも切々たる、而も嚴重なる政治に対する警告が発せられたことも農林大臣御承知の通りであります。我々の死活の問題である。そこでこの原則から見て、若し保護地域設定的なものであるならば、そのきらいがあると思います。それならば、さような提案には日本政府の主管大臣として断じて応じない、この御決意であるかどうかをはつきり承わりたい。
○国務大臣(根本龍太郎君) 曾祢委員の言うごとく、アメリカ、カナダが自分の国の沿岸に対して保護区域を設定し、明確に日本だけをシヤツト・アウトするというような條項であるならば、我々はそれには同調いたしません。
○曾祢益君 はつきり伺つて結構でありました。それから先だつての水産庁次長との質疑応答におきまして、今一つ科学的な検討を加えた結果、魚族の保存のために、或いは公海におきましても或る種の魚族の保護のために、この漁護の制限をするというふうなことは、原則的には考えられる。併しその検討は飽くまでも科学的なものでなければならない。殊に日本はこの点においては非常に今まで、占領下にありますし、外国と言つては悪いのですが、公海でもマツカーサー・ラインを外れたところの漁場の実情なんかも知らない。従つて若しさような特定な地域に関連した特定な魚族の保護のために、保護することが必要であるか否かということについては、一方的な、アメリカなりカナダなりのような、十分それらについての研究なり何なりを持つておられる国と完全な平等の立場でない。それらの資料の信憑性についてはあえてこれを疑うものでないが、併し日本は日本で十分なる検討を加えて、一方的に押付けられることのないように、飽くまで、真に平等な立場で科学的な検討を加えた上に、漁獲制限をするとすればそれに応ずる、それだけの態度を以て当る。かように言つておられましたが、その点は農林大臣も同感であるか。即ち一方的な資料によつて軽々に漁獲制限に対する約束はしない。飽くまで日本は日本の立場に立つて十分なる科学的な検討をして、平等なる立場でこれを検討の結果、当事国の意見に合致したときに初めて特定の漁獲制限をやる、この原則に農林大臣は、はつきり賛成であるか。その点を伺いたい。
○国務大臣(根本龍太郎君) その通りでございます。
○曾祢益君 そこで、それは專門家の片柳委員からのお話だつたと思いまするが、かような漁獲の制限を例外的にやる場合におきましても、特定の魚族について、特に沿岸国が養殖しておるような場合は十分に考慮する、併し他の魚族についてはさような制度を加えないということを、或いは漁獲の制限の方式についても、この期間で限る、或いは漁撈の方法で限るとか、或いはいわゆる稚魚を保護するといつたようないろいろな方法があると思うのでありまするが、詳細を伺うつもりもありませんが、特定な漁場に対する包括的な権利放棄みたいなことは軽々にやつてはならないのではないか。若しそういうことをやるならば、先刻岡田委員も言われましたように、問題はただ單にこのアメリカ、カナダとの問題だけではなくて、同様な問題をオーストラリア、ニユージーランドからインドネシア、フイリピン或いは中国、朝鮮に対してまで尾を引く関係にあるから、それらの点については何でも一括的にこの漁業制限、漁場の制限というようなことにならぬように十分に注意をする必要があるのではないか。この点を最後の私の質問として質疑を打切ります。
○国務大臣(根本龍太郎君) 曾祢委員の御指摘の点は、私ども実務に携わる者としては是非その原則を貫いて、我が国の漁民並びに漁業界の発展のために万全を期したいと思つております。
○委員長(大隈信幸君) ちよつと申上げますけれども、農林大臣は知事会議に行かれますので、まだ御質疑の通告がありますけれども、極く簡單にやつて頂きたいと思います。
○兼岩傳一君 農林大臣は数日前に私が尋ねたときには、今日と同じような答弁をやつておられるのですが、ここに我々の受取つているこの條約の案の第一條のここにある「公海漁業資源の漁獲の権利を放棄する」というのであり、但しアメリカとカナダは放棄しないというふうに明確になつているのですが、この今我々の受取つている漁業條約のアメリカ案というものに対しては、今曾祢委員に対するあなたの答弁から言えば、こういうものは、てんで認められないのだと、こういうことなんですか。
○国務大臣(根本龍太郎君) アメリカ、カナダがおのおの独自の見解で草案を出していることは向うの態度でありましようが、我々はそれをそのまま呑むという立場に立つているものではないのであります。先ほど申しましたように公海自由の原則に立ちまして、平等の立場において今後折衝をいたすわけでありまするので、我々はアメリカの草案をそのまま呑むというものではありませんので、内容につきましては今後の折衝においてきまり得るであろうと存じます。
○兼岩傳一君 そうすると、この資料をお出しになつたのはどういう意味ですか。これは委員長がお答えになるのですか。それとも農林大臣ですか。
○委員長(大隈信幸君) 私からお答えいたします。これは岡田委員の御要求によつて外務省から出して頂いたのであります。
○兼岩傳一君 そういう対等の立場だとか国際信義、友愛の精神という美しい言葉を使つておる間は無難ですけれども、実際出て来たものがやはりそうでなかつたというように、せいぜい御努力になることを希望して……、私のお尋ねしたいと思つている次の質問なんですが、今農林大臣の非常な自信満満たる、公海漁業の自由を貫かされそうですが、さて国内にあるいわゆるマツカーサー・ライン、二十数カ所の漁業禁止区域、米軍の実彈射撃その他の演習場、これによつて厖大な区域の沿岸漁業の阻害が行われているが、これに対する態度は如何なものですか。これは私は本会議で総理に対して質問したけれども、何らの答弁がなかつた。これに対して農林大臣の明快な答弁が頂きたい。
○国務大臣(根本龍太郎君) お答えいたします。現在連合軍の演習の結果、漁業が一時的に停止するということは確かにあります。このために非常に我我も漁民に対してお気の毒に思つております。できるだけ漁業に影響のない所でやつて頂くように折衝をいたしたいと思います。なお又万止むを得ず行われたために損害が出た場合におきましては、これについてはできるだけ賠償その他の保護を加えたいと思います。
○兼岩傳一君 あなたは最近大臣になつたばかりで、えらく呑気なことを言われるのですが、成るべくとか、何か架空に近いような答弁をされますが、現実の問題として二十数カ所あつてその区域が非常に厖大なものであることは、私は漁業委員でもあるし、我が党の調査においても十分調査しているし、且つは全日本の国民の大きな関心を持つた重大な千葉県の九十九里浜の問題等は誰でも知つている大きな問題なんです。有名な漁業の中心地がさびれてしまつた。それから私自身が最近静岡県の伊東へ行つて調査して参りましたが、あの伊東の沖合地域は広袤厖大な区域で、その水域で一年間に水揚げされる魚は八億円と言われておる。これはほんの一、二の例ですが、こういう例が二十数カ所あつて動きそうもないじやありませんか。或いは何かこういう演習が、あなたの答弁によるとたまたまちよつと演習があつて、一時的に二日か三日禁止されるというような印象を與えるような答弁をされているけれども、そうでなくて半永久的に演習区域が厖大な区域に亘つて行われ、遠洋漁業が極めて不振であるために、国内漁業の大きな七割、八割を占めている状態において、その国内漁業の圧倒的部分をこれが阻害しておるという事実、これに対してどういうふうに打開するかという点をもう少し明快にされなければ、これは漁民が納得できぬですね。
○国務大臣(根本龍太郎君) この演習場の問題につきましては、御指摘の通り非常に漁民が困難を感じておるわけであります。政府といたしましても、できるだけ日本漁民にさほどの影響のない所に演習場を設置して頂くべく要請をしておりまするが、占領下におきましてなかなかその問題が漁民の要望通りに行かないことは遺憾でございます。なお、この演習の結果、漁業ができなくて非常に困つている者については、できるだけ政府も補償の措置を講じたいと思つておる次第でございます。
○兼岩傳一君 あなたは日本を遠く離れて太平洋の向うのほうに行くと、対等な立場で国際信義と友愛の精神で、日本国の前途は洋々であると、虎のような龍のような答弁をしておられますが、話が一度日本のすぐ沿岸の伊豆諸島の沖合の話になると、猫のように或いは鼠のごとき答弁になつて、成るべくどうするとか……、どうですか。これは対等の立場で、国際信義と友愛の精神でこれをはつきりなくするのだということを明言できませんか。あなたは太平洋の向うのほうばかりに空威張りしないで、これは空威張りであるということは、じき、すぐ数字の上で、はつきりして来ると思います。せめてこの席で口の先だけでもはつきりさして下さい。(笑声)どうされますか。何の独立ですか。何の平和ですか。
○国務大臣(根本龍太郎君) 申上げた通りでありまして、軍の演習は占領軍がやつておるわけでありまして、独立後におけるところの問題については、恐らく安保條約の行政協定で、そういうところで問題になるだろうと思います。その点については私から申上げかねる次第であります。
○兼岩傳一君 あなたは農林大臣で、その職を汚している以上、(笑声)実際あなたは汚しているのですから、(笑声)そういう態度は汚していると言つてもたくさんです。口惜しかつたら汚していないという証明をしなさい。私の答弁に対して……。つまり日本の人口の約半ばが農民です、その半ばの農民の約三分の一が漁撈をしているではありませんか。その漁場がそういうふうなのに、あなたは口の先で一時的のような口吻で言うけれども、永久的或いは半永久的の状態において実に漁民が困難を極めておる。それに対して明確な方針でこれに対して努力するのだということを明快にされなければ、大臣の資格ないじやないですか。何の農林大臣ですか。これは一つ明快にして下さい。原則はないのですか、これに対しては。太平洋の向うのほうでなければ原則がないのですか。日本の沿岸に対しては日本の独立の原則、日本の平和の原則ということを以て、そうして日本国民の自活する原則というものを打出せませんか、ここで。
○政府委員(草葉隆圓君) この問題につきましてはお話のようにこの演習区域についての漁民の関係がいろいろと生じて参りまして、従つて特に影響のひどい所もあります。こういう点につきましては、実は十月の初めに関係官庁集りまして、関係方面に今後のことにつきましても十分連絡をとり、又今後の設定等につきましても、只今農林大臣から御答弁になりましたように、漁民の影響を十分考慮して進んで行くという方針を決定して、進んで行くことにいたしておるのであります。従いまして今後におきましては努めてかような現象は減少することと存じております。
○兼岩傳一君 そういう抽象的な、努めてとかせいぜい善処するとかというような生やさしい問題でなくて、これは原則として一掃さるべきものということは言えないのですか。こういうものはお断わりするということを政府は言えないのですか。
○政府委員(草葉隆圓君) 従つて今後の設定の場合に当りましても、こちらのほうと連絡を保つてもらいますと同時に、たまたまそれによつての影響等がありまする場合は、十分両方の間で相談を進めて行こうということで話合いをつけておる次第でございます。
○兼岩傳一君 そうすると、この問題は平和條約と一緒にこれからまあ我々が審議いたします安保條約の行政協定に関する内容だという、先ほど農林大臣の答弁がありましたが、若しもそうだとすれば、私はこの問題は安保條約のほうに持越してもいいと思います。委員長、如何でしようか。問題は非常に重大だと思いますから、国内のこの漁業禁止の問題は安保條約において明確にすると、それまでもう少し、農林大臣もほかに忙しいそうだが、最近は特に……(笑声)もう少し勉強して、内容を具体的に答弁する準備がして頂きたいと思う。そんな抽象的な美辞麗句を我々求めるものではないのですから、一つ農林大臣もその行政協定に対する政府の腹案その他を具体的に、僕も具体的な資料を持つてお尋ねいたしますから、具体的に一つお答えの準備をお願いしておきたいと思います。そういう意味で一応この問題は、この平和條約としては、これは、これでおいてもいいと思います。委員長がそういう僕の質疑のあれを承認して下さるなら……。如何でしよう。
○委員長(大隈信幸君) 了承いたしました。では永井君。
○永井純一郎君 この前、農林大臣がお見えになるというのでお待ちしておりましたが、代りに事務当局のほうからお見えになりまして、はつきりしない点もありますので、それらについてお尋ねをしたいと思います。
 私が一番先にお伺いしたいのは、この條約の前文にも書いてありますが、国連憲章の五十五條、五十六條、この関係で、特にこの前文のところにも、「日本国の法制によつて作られはじめた安定及び福祉の條件を日本国内に創造するために努力し、」ということが書いてあります。で、これに最も関係があるのは私は農林大臣であると思うのであります。で、農民、漁民の関係が当然出て参りまするし、又賠償のところにも存立可能なための経済というようなことが書いてあります。この存立可能な経済を維持する基本がやはり食生活になつて来ると考えるのであります。で、私はこの條約を読んでおつて、農林大臣のはつきりした御答弁を国民が頂かないと、この條約になかなか賛成しがたいということになると考えるのでございます。
 で、第一点は、この第九條の漁業関係の協定を結ぶ場合、私が考えまするのは、今御承知の通り沿岸漁業それから沖合漁業、それから公海遠洋等の漁業、これらは別々のものではなくして相関連しております。で、先ほど来、質問にもありましたように公海等の漁業が十分に行かない。それからマラインはなくなつたとしても、実際上は、これが実質上の制限が実際はあつて、このほうも、うまく行かないというようなことになつて参りますると、今沿岸漁業は特に御承知の通り非常に数年来の不漁続きで、漁民は全くその生活に困難を来たしておる実情でありまするが、これらの沿岸漁業等の減船や何かもやつておるようでありますが、そういう問題を整理すると、そこだけ整理したのでは整理がつかなくなつて来ることはもう当然でございます。そこでこの條約を政府が賛成をして行くからには、私は特に第九條の関係でここに示されておるような漁業協定を結んで行くならば、同時に沿岸漁民或いは沖合等の漁業が完全に而も順次今後十分に振興して行けるような政策を同時に農林省は立てなければ了解ができないと思うのであります。この條約のほうは條約のほうで賛成をして行くならば、そういうふうに国内の漁村の対策、漁業の対策というものが併行して行かないと、漁業者の生活の安定、福祉の條件を作つて行くということとは当然相反する矛盾が起つて来ますから、農林省はこの條約と同時に私はそういう国内の漁民の或いは漁業の政策を作つて、アメリカ合衆国にも強くその態度で私は折衝すべきものである、そういう政策があるのかというと、これは今ないようであります。私はいろいろ調べてみましたがない。このことについてはすでに我が国の漁業の困難な点を、今度も来ておるが、ヘリングトン氏だと思いますが、あの人が司令部におつたときかに四つか五つの重要なポイントを示しておると思いますが、ああいう問題の解決は、当然この條約とからんで私は政府が要求すべきだと、こういうふうに考えるのでございますが、そこで農林大臣は必ずこの條約を結んで行くと同時にそういつた漁業対策或いは漁民の生活安定の具体的な対策を今後お持ちになるのかどうか。その上でこの條約を我々に審議せよと言われておるのかどうか。先ず伺いたいと思います。
○国務大臣(根本龍太郎君) お答えいたします。御指摘のようにポイント政策が示されておるのでありまして、これの実現のために今いろいろ施策が必要でありますが、今回予算化いたしましたのは、濫獲漁業を防止するという意味におきまして、瀬戸内海その他における減船整理と、もう一つは取締の強化ということを実施しております。この次には資源の維持培養という問題でありまして、これは主として淡水魚とそれから鮭鱒の問題でありますが、その他の資源培養についてはまだ科学的結論が出ておりません。これは検討させておる次第であります。なお、これに伴いまする金融の問題その他の問題もありますが、これは漁業証券の交付を速かに実施すると共に、これが政府買上げ償還を実施して参りたい。なお又農林漁業資金融通特別会計の資金を充実して行く。これによつて現在やつておりまするのは、冷凍製氷の設備で、折角取つたところの漁獲物が鮮度が落ちるために非常に価格が暴落するのを防ぐということをいたしております。なお又漁船保險制度の確立ということがこれ又重要でありまするので、これについては目下法案の検討をいたしておる次第でございます。御指摘のように戰時並びに戰後において孤立的な立場に置かれたために、今まで遠洋漁業が極く少数でありました。従いまして殆んど沿岸漁業に集中した結果、沿岸の魚族が殆んど壞滅的な濫獲をいたされておるのであります。これに対しましては、御指摘の通り重点的に施策を講じなければならんと思いまするが、政府全体の予算の均衡の建前から、これが一挙に実現できないのは遺憾でありまするが、漸次予算的措置を講じまして、御指摘の点を実現して参りたいと考えております。
○永井純一郎君 まだそういう具体的な政策が今のお答えでは立つていないようでありますが、その次にもう一つ進んでお伺いしたいと思いますが、それは存立可能な経済の中心が私はやはり食糧になると思いまするが、そこで問題なのは食糧の輸入の点であります。私どもの計算では、今大体我が国の人口は千人について三十人近くが昨今まで殖えつつありましたが……、二十何人かであつたと思いますが、これをいろいろ技術的或いは医学的な措置を相当徹底して講じて行くならば、千人について十五、六人ぐらいの人口増にすることは可能だということを專門家が言つておりまするが、併し例えば千人について十五、六人の増でありましても、内輪に計算をいたしましても、昭和二十九年乃至三十年頃には九千万人近くになつて参るのであります。そういうふうになりました場合に、この條約が一応できて一番心配になりますことは、今日の状態の農業生産以上に、今日の政府のような農業政策をとつておつたのでは、食糧の生産の増大を来たすことは非常に困難であります。若しこのままで推移いたしまするならば、どのくらいの食糧が昭和三十年頃には不足して参るか、そうして、それを確実に輸入し得る先は一体どこから輸入し得るのかということがはつきりいたしませんと、存立可能な経済とかいろいろなことをこれに書いておつても、これは非常に訳のわからないことになりまするので、その見通しを農林大臣から伺いたいと思います。
○国務大臣(根本龍太郎君) 非常に広汎な問題になるようでありますが、政府といたしましては、食糧政策の最大の重点は国内の自給度を増すということであります。従つて、そのために生産増強という点が第一の重点になつておるのであります。併し御指摘のように、人口の増も著しいものがございまして、すぐに輸入食糧を全部とめて、国内で生産するものを以て賄うということは、なかなか実際上困難でありまするので、漸を追いまして国内自給度を増さなければならないと考えておるのであります。すでにこういう観点からいたしまして、北海道開発、これが公共事業費も相当ありまするが、主として農地造成という方面並びに土地改良に重点を置いております。それからもう一つは、やはり国内農地の造成並びに生産の大きな余地を持つておるのは東北地区でございます。これを、土地改良並びに小規模の耕地整理とか、そういうことを実施いたしまして生産力を高める。これには二毛作田になし得る所も相当ありまするので、このために寒冷單作地帶に対する特別措置法も制定しておるわけでございます。なお、低生産土地に対するところの土地改良、明年度は特に畑地灌漑等も考えておるわけでございます。漸次土地造成と土地改良による増産効果を高めて行く。それから毎年これは起ることでございまするが、折角農民の努力にもかかわらず病虫害によつて損失するところの食糧は実に甚大でありまして、大体平均して一年一割程度はやられていると思いますので、これは本年度から特に農薬を備蓄いたしまして、病虫害が発生したならば直ちにこれを防遏するという制度を作つておりまするが、これを強化して参りたい。なお又技術振興その他のためには農業改良普及員の活躍を活溌にいたしまして、試験研究の結果出た新たなる技術を農民の末端まで徹底せしめてその実現を図りたい。かように考えておる次第であります。
○永井純一郎君 私は、この條約と同時に、今申上げるような人口増を見通しての国内の自給度の問題と睨み合せての食糧の輸入計画というもの、その見通しというものを数字的にも或いは政策としても具体的に農林省が同時に持つておるべきだということを考えるのであります。それについての具体的な見通しをお伺いしておるのでありまするが、余りはつきりしないお答えのようであります。私は更にそれでお聞きしたいわけでありまするが、今自給度を増すことが先ず第一だというふうに言われましたが、これはまあ非常に大切な点であると思いまするが、そうであれば、昨今まで食糧の統制の撤廃の問題でむりやりに政府はこれを強行しようとして非常に失敗をしておるようであります。一銀行家に過ぎないドツジ氏に指摘されて、あれだけ宣伝をし強行をしようとして来た日本の今経済の基本をなしておる食糧の問題が一遍に変つてしまうという重大な失敗をしておられると私どもは考えるのでありまするが、これと非常に関係して来るのでありまして、若し自給度を中心に考えて行くというのであるならば、あれを自由にしようという宣伝を政府がし始めたと同時に、農民は水田をも、それから麦作をも有利作物に転換しようということを盛んに今考え、実際その計画を現実に進めておる。そういたしますると、米麦の自給度というものは必ず大幅に年々減つて行くことは、これはもう明かであります。ですから、どうしても計画的な生産計画と、その上に立つた外国食糧の輸入との関連においての計画的な食糧の供給というものとが一緒になつて、こういう生産と供給との計画的な措置がいろいろな日本の経済の基礎になつていなければならんと私どもは考えるのでありまするが、今あなたがおつしやる自給度の向上と統制撤廃をするということは、まるで逆の方向に行くと私は思うのであります。そうなりますると、この條約に言うところの存立可能の経済という点、或いは国民の大部分であるところの消費者の問題、或いは生産者である農民の安定と福祉の條件を創造して行くということを考え合せると、非常に理解しがたい問題にぶつかつて参る。この点は、なお、それでも統制を撤廃したほうがいい、こういうふうに農林大臣は、やはりお考えになるかどうか、お伺いしたいと思います。
○国務大臣(根本龍太郎君) 政府が統制撤廃するということについて、いろいろ御議論があるようでありますが、我々は全然これを野放図にするというわけではありませんけれども、我々の構想といたしましては、御指摘のように外国食糧の問題が現在日本の食糧問題において非常に大きなウエイトを持つておりまするが、これについては全部政府が管理するという建前でございます。そうして生産者に対しては価格支持政策をとり、消費者につきましては需給並びに価格の操作によつてその生活を安定するようにと、こういう構想でありまするので、全然自由放任するという建前ではありません。これで我々は国民の生活の安定を期するという点であります。ただこれについてはいろいろの議論の点があると思いまするが、今ここでその議論をする段階にはないと私は存じます。
○委員長(大隈信幸君) 永井委員に申上げますが、農林大臣が知事会議にお約束がありますから、簡單にして頂きたいと思います。
○永井純一郎君 それではたくさん議論がこれに関係して……、私が一番先に申上げましたように、私は農林大臣と議論しておりますといろいろ出て参りますが、今のお答えでそれでは一つだけ念を……、知事会議に行くそうでありますから、押しておきますが、成るほど野放図に統制を外すものではない。それから生産者に対する支持価格制度、それではその支持価格がどういう程度になるかということで、これが又非常に問題になつて参る。消費者のほうにはやはり統制制度をやるのだというような考えはわかりまするが、併しながらその支持価格制度の価格の如何によるのでありまするが、そういつた程度のことをすることによつて、本当に米麦の生産がそれではこれから増大して行くか。生産が増大して行くとお思いになつているのかどうか。この程度では、やはり米麦の生産は減少して行くだろうと思つておられるのであるか。それだけを一つ念を押しておきます。
○国務大臣(根本龍太郎君) 我々はそれによつて生産を増大せしむると考えるのであります。
○永井純一郎君 これでやめますが、それはただ増大せしむるという考えだというお答えではお答えにならないと思うのでありまするが、結局併しそのことは、有利作物との関係と、主食の生産者の価格との関係、結局支持価格制度の価格の標準の問題等になつて参りまするので、ここでその議論を專門的にしておるわけにも行かんと思いまするが、私は最後に申上げたいのは、各省が、この條約に関して関係ある各省が、これと密接に結び付いて、これに関連する基本的な、是非ともしなければならない政策というものを別に立てるのではなくて、ばらばらにただやつておるということを明らかに今日までの各省の大臣等からの答弁を聞いておつて感ずるのであります。誠に杜撰極まる連絡のないものであるということを申上げて私の質問を終りたいと思います。
○委員長(大隈信幸君) 次に大蔵省管財局長が見えておりますので、昨日岡田委員からの要求の連合国財産の補償法案について簡單に説明を聞きたいと思います。
○政府委員(内田常雄君) 平和條約の第十五條でございますが、十五條(a)項は、日本にある連合国の財産は、この平和條約の効力が発生したときから一定の期間内に一定の手続で返還する、その返還ができなかつた場合、又は返還ができても、その財産が戰争の結果損失又は損害を受けていた場合には、日本はその損害の分を補償するということが大意であります。その條文の中で、補償の仕方については、「日本国内閣が一九五一年七月十三日に決定した連合国財産補償法案の定める條件よりも不利でない條件で補償される。」こういう補償の仕方、手続を、條約自身で定めないで、他の日本における法律等に讓つた形をとつているのでございます。この連合国財産の返還及び補償のことは、ひとり日本の平和條約に規定があるばかりではなしに、先例のイタリアとの條約、或いは同時にできましたブルガリアとの條約、ハンガリア、フインランドの條約、皆同じ規定があり、更に遡つてはヴエルサイユ條約の中にも同種の連合国財産の返還に関する規定があるのでありますが、それらの條約におきましては、非常に長たらしく補償の仕方が條約自体の中に規定してございます。初め日本との平和條約におきましても同じような方式で、條約の中に長たらしく規定することが計画されておつたようでありまして、後には條約の中から外して或いは附属書の形できめるというようなことも研究されておつたようでありまするが、併しこの條約を関係国多数との間にできるだけ早くまとめて、締結を促進するためには、條約自身は成るべく簡單であつて、手続的の事項は他の方法によるほうが適当だということに両国間の話合いの方向が向いましたために、他の国との間の條約に見られましたような事項の一部を、国内法の形に讓りまして、別に政府は連合国財産補償法というものをこの国会に提出いたしまして、御審議を願つております。そこで、この條約の十五條には、ただ補償に関する原則だけが謳われてありまして、あとの手続は別に日本国政府の定める連合国財産補償法できめるということになつたのでありまして、原則といたしましては財産が開戰時、即ち一九四一年十二月七日に日本にあつた財産に限ること。又その損害は戰争の結果受けた損害を補償するものである。而もその補償の仕方は日本政府が先方に提出した閣議決定の補償法案よりも不利な條件ではきめない。こういう原則だけがございます。
 これを受けましての補償法の内容でありますが、今回提案いたしておりまする補償法案は、割合にこれも簡單なものでございまして、全文二十五條から成つております。そのうち大体三つのことを規定しておりまして、第一のことが條約十五條における補償の原則を敷衍いたしまして、條約だけでは必ずしも明確でないところを定めております。それから第二の法律の規定事項は、補償をいたしますについて、損害額の算定の仕方、これを各種の財産につきまして比較的細かく規定を設けております。それから第三番目には、補償金の出し方を法律で規定いたしております。
 これらの法律の規定を通じまして、條約を補いまして、はつきりさせました点は、第一には連合国財産を補償いたします場合に、連合国人のすべてに対して補償を與えることはしない。その連合国人の中においても補償を受ける主体となり得るものは、原則として、戰争中に、日本政府側がそのものの身体又は財産について逮捕、監禁、抑留とか、或いは押収とか、処分とか、敵産管理、そういう日本人一般には適用しなかつたような、いわゆる戰時特別措置を行なつたことのある連合国人だけが原則としてその種の補償を受ける。又損害の原因でありますが、條約には「戰争の結果」とありまして、読み方によつて非常に広く読めるのでありますが、現にイタリアの平和條約等におきましては、同じ「戰争の結果」という言葉が使つておりますために、大変いろいろ議論があつたようでありまして、その結果イタリア側と連合国側との間に相互に意見を出し合つた結果が、非常に広い範囲に解釈され、決定されて、結果から見てイタリア側は不利益をこうむつておるようであります。さようなことを避けますために、我が方の法律案では「戰争の結果」という原因につきまして、これを分析しまして、でき得る限り狹くなるようにしております。尤もその主体となりますものは、結局両国軍の戰鬪行為の結果、受けた財産の損害は入るのでありますが、でき得る限り戰争に基く間接的な損害は補償しないで済むように、この法律の中で原因を限定いたしておるのであります。
 更に補償の仕方につきまして、イタリア等の場合は、イタリア側が進んでその種の補償をする義務を持ちまして、挙証責任であるとか、計算の仕方であるとかということにつきまして問題があるようでありますが、我が方の場合には、この補償は、補償を受ける資格のある連合国人の一定の期間内の請求を待つて初めて論ずる、その請求の際必要な補償その他の書類は連合国人側に提出の義務を持つてもらう、日本側は受身の立場でそれらを処理いたしまして、一定の期限内に損失補償の請求がなかつた場合は、請求権を放棄したものとみなされるというような形をとつております。つまり、このいろいろの補償をするについての或いは原因について、或いは時期について限定を幾つかこの法律において設けたことであります。
 それから補償金の支拂い方でありますが、これが例えば十四條その他の関係、賠償関係等では必ずしも明確になつておりません。十五條の関係においても條文のままでは必ずしも明確ではありませんが、これは賠償等と違いまして、大体この戰争中に敵産管理したものがどのぐらいあるか、敵産管理以外に、日本人には適用しなかつた、いわゆる戰時特別措置として連合国人の財産に手をつけたものがどのぐらいあるかという計数が政府側にわかつております。又一般の戰争損害の大数的な調査或いは特定のものについてのサンプル調査等によりまして、大体どのくらいの損害で、それを時価に換算するとどのくらいになるかということがわかつておるのであります。尤もこれらも先ほど申しましたように連合国人側の請求挙証を待つて論ずるのでありますから、我々の今の見方は或いは違つておるかも知れませんが、一応大体二百億円乃至三百億円くらいの程度で補償を完全に済まし得る、こういう見方になつておるのでありますが、それにいたしましても、その支拂い方につきまして、この法律が二、三の規定を置いております。その第一は、原則としてこれは日本国内で円で補償をする。それらを連合国人が外国に向つて送金をする必要がある場合には、すべて日本における為替管理に関する法令の規定によらしめる。日本側としては円の補償を以て最終的にするということが一つであります。尤も例外的に連合国人自身の財産が外貨建であるもの、例えば外貨債であるとか、或いは外貨で実施契約がされた特許権であるとか、或いは外貨建の金銭債権、こういうものにつきましては補償も又外貨でなされることになつておりますが、この外貨による補償につきましても特別な規定を設けまして、建前は外貨で補償するが、その支拂い方は、日本の為替状態の許す最も速かな時期において、外国為替に関する法令の規定に従つて、請求権者に補償金の外貨による支拂いの可能な措置を講ずるというような規定の立て方をいたしておりますし、更に又日本の外貨債等によつては必ずしも外貨による補償が速かに受けられない場合には、請求権者のほうが、現在の三百六十円の換算率で、円による計算をして、円貨の補償だけすることができる。こういうような規定を設けまして、できる限り外貨の補償はなくしまして、円貨の計算を以て済ますという規定を設けてございます。
 更に又補償金の総額は大体二百億、三百億程度で、そう大きな額にはなりませんが、それでも他の、例えば賠償に関する條項であるとか、或いは外貨債の支拂いとか、その他敗戰国といたしまして他の負担も重なることでございますから、連合国側と打合せの結果、如何なる場合においても一会計年度に百億円以上の補償金は現実に支拂わない、こういうことを規定いたした條項も法律の中に織込んでございます。
 大体の構成は右の通りでございます。この法律案は、冒頭にも申上げましたように、当初は條約自身の中に規定するつもりでありましたために、そのものを法律の形に移すに際しましても、連合国側と相談をいたしました上で、敗戰国の義務として、我が方が最小限に忍ばなければならない点は私どもも潔く受けることになりましたが、連合国側においても、日本の立場を理解して、この法律技術の許す範囲において、できる限り日本の立場を有利にするような面も呑んでくれました。その結果、この條約に引用してある閣議決定の法律案は、双方の意見のまとまつたものでございます。
 なお、本国会に提出いたしました連合国財産補償法案は、この條約における閣議決定案よりも不利でもないし、有利でもない。大体二、三の言葉遣い等を改めましたほかは閣議決定案と同じものを提出してございます。お含みおき願いたいと思います。
○委員長(大隈信幸君) お諮りいたしますが、これに対する質疑は休憩後にいたしたいと思いますが、如何でございますか。……それでは一時まで休憩いたします。
   午後零時八分休憩
   ―――――・―――――
   午後一時十五分開会
○委員長(大隈信幸君) 休憩前に引続き会議を開きます。
 連合国財産の補償に関する質疑はあと廻しにいたしまして、第六章以下第七章議定書、宣言を問題に供します。
○曾祢益君 第六章の紛争の解決に関連いたしまして、御質問申上げたいのですが、この第二十二條の規定は、この條約の解釈に関する、或いは実施に関する紛争が生じたときには、要するに国際司法裁判所に提訴ができるようにして行くということにあると思うのでありますが、例えば御承知のようにこの領土の問題につきましても、條約第二條の歯舞、色丹、二條には直接出て来ないのでありますが、二條に関連いたしまして、歯舞、色丹等をソヴイエト・ロシアがこれを占拠しておることについては、我々としては、政府も勿論そうであると思いまするが、これは千島に含まない。従つてこの平和條約に規定された日本の領土に属すると解釈されておるわけなのでありまするが、この歯舞、色丹等の問題は、この二十二條の規定によりまして、国際司法裁判所に提訴できるのかどうかという点を御質問申上げたいのであります。
○政府委員(西村熊雄君) ソ連邦はこの平和條約に署名いたしませなかつた関係上、二十二條の規定は日ソ両国の間には、適用が当分問題にならないわけでございます。で、第二十二條から離れまして、考えまするに、日ソの間に千島の範囲に関する紛争を裁判所に提訴し得るためには、ソ連邦のほうでヘーグの裁判所の規程によりまする一般的裁判管轄権を受諾しておりますと、そこから可能性が生れて来るわけでございます。ところがソ連邦は、裁判所の規程の当事国ではございますけれども、規程にあります義務的裁判管轄権の受諾宣言をまだやつておりませんので、これ又だめであります。結局裁判所に付託するということについて両国間に合意ができない限りは、裁判所に提訴する途がないことになります。でございますので、日ソの今日の関係が続く限りにおきましては、その問題を裁判所に提訴する実際的の途がないという結果になるかと考えておる次第でございます。
○曾祢益君 只今の政府の答弁によりますると、先ず第二十二條は連合国と日本との間の條約に関する紛争問題の処理方法をきめてあるのである。然るにソヴイエト連邦はこの條約の当事国でないから二十二條が適用できない。こういうことと、いま一つは、二十二條にも書いておりまする、いわゆる義務的裁判管轄権の受諾をソヴイエト連邦がしておらないから、日本が平和條約によつて、この国際司法裁判所の義務的管轄権を受諾しても、相手国側がそうでないから、日ソ間に特別の合意がない限りは国際司法裁判所に提訴できない。かような御解釈のようでありまするが、併しこのソヴイエト連邦と日本との間の紛争ということにも勿論なるわけですが、一方におきまして、日本の領土権の確認に関する提訴とでも申しましようか、いずれの国がこれを占拠しているか、それに対して裁判所にどうしてくれというような問題とは一応切離しまして、このたびの平和会議においても、関係国の代表者がさようなことを言つておられたと思いますし、その他いろいろな機会においてダレス氏のごときもこの歯舞、色丹等に関する日本の主権の合理性を認め、かかる場合においては国際司法裁判所に提訴する途があるではないかというようなことは言われておつたのであります。従いまして、二十二條の解釈をさように狹く必ずしもする必要はないのであつて、ソヴイエト連邦との連合国対日本の紛争ということにならなくとも、この平和條約の解釈に関する日本側の領土権確認に関する提訴というようなことをやる余地はないのか。この点についていま一応御見解を伺いたいと存じます。
○政府委員(西村熊雄君) 千島列島の範囲につきましては、日ソの間には或いは見解の相違があり得るかと存じます。けれどもソ連邦以外の連合国と日本との間にはその点について紛争というものはない次第でございます。裁判所につきましては、当事国の間に或る紛争がある場合に、それに対する裁定を合意の上で裁判所に求めるという建前になつておりますので、現在の規定の上から見ますると、歯舞、色丹の問題を裁判所の裁判に提起する技術的方途はちよつとないように考える次第でございます。併し曾祢委員も御指摘の通り、最近にも、ダレス代表の意見として、新聞報道では、この問題はへーグの裁判所に提起して解決できるのではなかろうかということが伝えられたようでございます。どういう趣旨でそういう意見が発表されたか、事務当局といたしても、研究してみたいと思つております。今日までの私どもの研究の結果は、現在の裁判所の規程の上ではどうも途がないという結論が出ておる次第でございます。今後なお研究いたしたいと思います。
○曾祢益君 只今條約局長のお認めになつているように、この問題は勿論法律問題でございまするが、非常に大きな政治的な問題でもあるわけであります。そこでアメリカの代表であつたし、而もこの條約のいわば生みの親とも言うべきダレス氏、このかたは勿論法律家でもあるわけなんですが、この人が現に相変らず歯舞、色丹問題について国際司法裁判所に提訴の方法をサジエツシヨンしておる。この事実に鑑みますると、條約局長の御解釈は或いは極めて正確な解釈、いやしくも紛争がないのに、紛争と言えば一方は日本であり、他方は、やはりはつきりした対象がなければならん。然るに他方は連合国でもない。従つて連合国と日本との間に紛争もないのに国際司法裁判所に訴えることはおかしい。技術的には裁判所の裁定の目的というものは紛争が前提である。そうして紛争というものは特定の国と国とがわかつておる。かような場合に裁定が行われるのが当然であるから、歯舞、色丹問題については技術的にちよつと無理ではないかというふうに、非常に良心的にお考えになる点もわからないではないのでありまするが、前提に申上げましたように、ダレス氏のこの問題に関する重要なる地位、役割ということを考え、更に又日本から見るならば、今の條約局長の御説明のように、これと実質的に同様の條約がソヴイエト連邦と日本との間に近く行われるという可能性は相当薄いのである。又そうなりますると、その間、何ら法律的に歯舞、色丹の問題が確定するに至らない。更に又ソヴイエト連邦がこの実質的な條約で調印した場合には、我々が希望しているような千島、樺太の問題がむしろ永久的に日本の領土権からはつきり放棄されたことに更に確認される。こういう状態において初めて歯舞、色丹の問題が国際司法裁判所にやつと提起することができるというような解釈になることは、若しそれが法理的には相当な理窟があるといたしましても、さような窮窟な法理解釈だけでこの問題を処理すべきではないと、かように考えるのであります。従つて只今御検討中のようでありまするが、必ずしもさような解釈でなく、私は法律家ではございませんが、日本の歯舞、色丹島に関する領土権の正式の確認は、成るほどサンフランシスコ会議における招請国側の発言等を見ると、一応は確認されたような形にはなつている。それは決して法律的な確認でない。若し法律的な確認ならば、條約の中にそのことをはつきり積極的に謳うべきだ。政府はその努力をされておらない。そうして一方において主催国の代表であるダレス氏が、国際司法裁判所に提訴の途があるということをサジエツシヨンしているにおいては、これをとらえて、まあ法律的には余り正確な組立て方でないかも知れませんが、私をして言わしめるならば、歯舞、色丹島に対する日本の領土権確認に対する提訴というものを速かに国際司法裁判所に付すべきである。これが外交上私は必要だと思うので、どうぞその点におきまして、只今のお話のような、ただ法律論と先例にのみとらわれないで、もう少し大きな視野から積極的な手を打つて頂きたいということを私は申上げておきたいと思うのであります。
 次に第二十三條について伺いたいと思いますが、第二十三條の(a)項によりまして、この平和條約が十一カ国中の六カ国以上、その中にはアメリカ合衆国も含めてでありますが、この批准が得られる見通しが現在においておありであるかどうか。おありであるとすれば、いつ頃それが得られるとお考えであるかどうか。この点についてお示しを願いたい。
○政府委員(草葉隆圓君) このアメリカを含めました十一カ国の過半数の批准の見通しでございますが、最近の情勢から考えますると、相当近い機会に見通しが付き得る情勢にあると存じます。多分明年の春頃にはそういう情勢になり得るのではないかという見通しを持つております。
○曾祢益君 それで、その場合、政府の只今の見通しでは、何カ国くらい批准をするとお考えであるか。
○政府委員(草葉隆圓君) 何カ国ということは、はつきりは申し上げかねまするが、過半数は批准をする状態になつておるだろうと思います。
○曾祢益君 次に(b)項について伺いたいのでありまするが、この(a)項のいわゆる十一カ国のうちのアメリカを含む過半数の批准が不幸にしてないような場合でも、日本の批准書寄託後九カ月に達したならば、平和條約を批准した国は、その国と日本との間にこの條約の効力を個々に発生させることができるという規定になつておりまするが、この場合は、字句から言うならば、アメリカ合衆国の批准は問題になつておらないように考えるのであります。従つてさようなことはないとは思いまするが、仮にアメリカ合衆国の批准がまだない場合でも、例えばフランスならフランスが批准しておる。そうすると、フランスと日本だけの間で効力を発生することができるのであるかどうか。この(b)項の趣旨を御説明願いたい。
○政府委員(草葉隆圓君) 御意見のように、條約文上からは、さようなことが可能であり得ると考えます。
○曾祢益君 條約文上からはと言われる意味は、アメリカ合衆国の批准が遅れる、まだできておらないということは、実質的に政府としては想像できないことであるけれども、併してこの條約の規定は儼として、アメリカ合衆国の批准の有無にかかわらず、(b)項の規定によれば、一国と日本との間にも効力を発生することになつておるんだと、この点を確認されておるわけなんですか。
○政府委員(草葉隆圓君) さようでございます。実際上は恐らくさような段階にはならないと存じまするが、なりました場合におきましても、効力は発生し得ると考えております。
○曾祢益君 次に二十五條でございまするが、この二十五條の規定によりますれば「この二十一條の規定は留保の下に、この條約は、この連合国でないいずれの国に対しても、如何なる権利、権原、又は利益も與えるものではない。又日本の如何なる権利、権原又は利益も、この條約の如何なる規定によつても連合国の一国でない国のために減損され、又は害されるものと見なしてはならない。」かようになつておるのでありまするが、この規定は、例えば日本が南樺太、千島を放棄することになつておるのでありますが、で、この條約にソヴイエト連邦が現に加わつておらない。そういたしますると、ソヴイエト連邦はこの南樺太及び千島に関しては、何らこの條約に基く権利を主張できない。連合国でないから、一切日本の法規というものはソヴイエト連邦に対しては何らの発言権を與えることにならない。かように解釈して差支えないのであるかどうか。伺いたいと存じます。
○政府委員(西村熊雄君) 曾祢委員御解釈の通りだと存じます。
○曾祢益君 この二十六條におきましては、この條約に参加しなかつた国との間に、日本は同一の又は実質的に同一の條件で二国間の平和條約を結ぶ用意が向う三年間なければならない、こういうことになつておるのでありまするが、然らば三年以後におきましては、日本としてはさような義務はなくなるわけでありまするが、例えば第二十五條との関係におきまして、一例を先ほどの例にとりまするならば、向う三年間に日本とソヴイエト連邦との間に個別的な、この條約と実質的に同じ平和條約ができない限りは、ソヴイエト連邦は千島、樺太に関しては永久に何らの権原を持てないことになるというふうに解釈して差支えないか。この点を御回答願います。
○政府委員(西村熊雄君) 永久にという御言葉にちよつと疑念を持つわけでございますが、日ソの間に平和克復について協定ができるまではという意味において、御意見に賛成でございます。
○曾祢益君 そういたしますると、三年後においては、日本はもうこの條約と同一の若しくは実質的に同一の個別的平和條約を結ぶ用意の義務は解消するわけです。併し勿論日本としては、その後におきましても、この條約に加わらなかつた国との国交調整に努むべきことは間違いありません。そこで、仮にできたといたしまするならば、その條約の内容によつていろいろこの問題がどう処理されるかは、その條約の内容に待たなければならない、併しこの平和條約の條項に関する限りは、三年以後においては日本には何ら義務を生じないもの、如何なる解釈をしても差支えないというふうに解釈できるのではないか。例えばこの二十六條にありまするように、「日本国が、いずれかの国との間で、この條約で定めるところよりも大きな利益をその国に與える平和処理又は戰争請求権処理を行つたときは、これと同一の利益は、この條約の当事国にも及ぼされなければならない。」つまり利益を與えたならば、その利益には、この條約の当事国である連合国が均霑するということになつておりまするが、併し日本に利益な解決をするということは一向差支えないわけです。この点から言いますると、そこで日ソ間に如何なる解決ができるかは別といたしまして、南樺太、千島に関するソヴイエトの請求権というものは、この三年以内にやらないと一応消えてしまう。そうして日本は平和條約に拘束されないで日ソ間の取極をして差支えない。かように解釈していいのかどうか。
○政府委員(西村熊雄君) 大体同様に解釈いたしているわけでございます。この二十六條によつて、日本がこの平和條約と同じ又は実質的に同じ條件でないと、二国間平和條約を結んではならないという関係は、條約発効後三カ年にして解消するわけであります。この三カ年の間に、日本は二国間の平和條約を結ぶ場合には、その條件はほぼこの平和條約の條件と同一でなければならない、仮に、より有利な條件を相手国に與えた場合には、他の連合国に均霑させなければならないという義務を持つているわけであります。その半面、この平和條約よりも日本にとつて有利な條件で平和條約を結ぶ場合にはそれは無論当然できることでありまして、これは申すを待たないところであります。それで三カ年たつたあとは、今申しましたようなそういう條約の拘束が解消されるわけでございますので、この平和條約の條項にとらわれることなく両国間の平和條件を協定できるし、その協定の結果、仮にこの平和條約に含まれている條件よりも有利な條件を或る国に対して日本が與えました場合にも、それをこの平和條約に署名している連合国に均霑させなくてもよろしいという結果になるわけであります。大体考え方は曾祢委員と同じだと思います。
○曾祢益君 つまり二十六條の解釈は、この平和條約と同一若しくは実質的に同一の條件による平和解決を日本が義務付けられるのは向う三年間に限つて、その以後においては條件は変つても差支えない、かようなことが明らかにされていると思うのであります。そうして後段にある但書も、日本が若し個別解決の場合にこの條約に定める以上の利益を一カ国に與えたならば、そのことはこの平和條約の当事国にも均霑させなければならないという規定も、いわゆる向う三年間の義務期間のみに限つているのであつて、その以後はこの規定の適用を受けない。日本は拘束されない。かような解釈で間違いないか。もう一遍確認いたしておきたいと思います。
○政府委員(西村熊雄君) 甚だ恐縮でございますが、ちよつとこちらで相談をしておりましたので聞き落しましたので、もう一度……失礼いたしました。
○曾祢益君 第一の点は、はつきりしていると思うのですが、つまり第二十六條に言つておりますように、日本がこの平和條約と同一若しくは実質的に同一の條件によらなければ個別的な平和はやつていけないということは、向う三年間に限つているので、その三年の期限が完了した後には日本としてはこの條約と実質的に異なる個別交渉をやつても差支えない、そのような平和交渉をやる義務もなければ、内容においても制限を受けない、この点が第一に明らかにされなければならん点。
 それに関連いたしまして、第二十六條の但書、つまりこの條約よりも有利な待遇を個別解決の場合に與えたならば、平和條約の当事国にもこれを均霑させなければならない。この規定もいわゆる三年間の枠内の話でありまして、三年以後の場合には適用がない、これが外務省の解釈だというふうに承わつたのですが、もう一遍その点を確認して頂きたい。
○政府委員(西村熊雄君) 第一点でございますが、第一点の意味は、この平和條約が効力を発しましたあと三カ年は、この平和條約に署名していない国から、この平和條約と同一の又は実質的に同一な二国間平和條約を結ぼうとの申出があつたときには、これに応じなければならないという意味でございまして、その応じた結果でき上る平和條約がこの平和條約と全く同一内容のものでなければならんという意味はないのであります。それは但書と対照してわかりますので、この平和條約よりも有利な條件を相手国に與える場合には、その待遇を他の連合国に及ぼせばよろしうございましようし、又相手国がこの平和條約よりも日本にとつて有利な條件を申出た場合には、無論この平和條約としてそれを阻止する規定は含まれていないわけであります。ですから、第一点は、相手国から申出があればこれを締結する用意がなくてはならない。日本としてはこれに応じて締結するよう努力しなければならん。その交渉をした結果でき上る平和條約は、必ずこれと同一内容でなければならないという義務は含まれていないということでございます。
 第二点は、但書にありますこの平和條約よりも有利な條件を相手国に與えました場合に、その利益をこの平和條約に参加している連合国に均霑させなければならん義務は、無論曾祢委員御指摘の通り発効後三カ年にして解消いたすと考えております。
○曾祢益君 そういたしますと、私が今さつき伺つたと思う解釈とちよつと違うと思いますが、つまり向う三年間の日本の義務というものは、この平和條約と同一若しくは実質的同一の條件で日本と平和條約を結ぼうという申出があつた場合は、この交渉に応ずる義務がある。但しその交渉に応ずることは、必ずしも結果においてこの平和條約と実質的に同一でなくてもいい。従つてこの三年間といえども日本はこの平和條約と実質的に違う個別的な平和條約を結ぶことができるのだ。日本の持つている唯一の義務は、例えば中国を代表する政府が実質的同様の條件で結ぼうじやないかといつたときに、それを頭から拒否できない。その交渉には応じなければならない。併し交渉している結果実質的に違つた場合がある。むしろそれは但書が予想している。併し但書に書いてあることは、日本が日本にとつて不利な條件を與えた場合、相手国に有利な條件を與えた場合には、向う三年間はただ單にその国に與えるのみでなくて、この條約の当事国全部に均霑させる必要がある。併し逆に言うならば、日本が日本に有利な條件で交渉した結果、日本に有利な條件で個別的な條約を作ることもできる。それは二十六條には何ら禁止しておらん。そのことは、私がさつき解釈したように、向う三年間という期限が過ぎてから初めて生まれる日本の権利ではなくて、この三年間といえども一応は同一な條件でやろうと言つて来たときには交渉には応ずる。結果は日本の働き次第によつては、平和條約よりも実質的に日本に有利な條件を獲得するのを何ら二十六條は妨げておらない。かような解釈になつてよろしいのかどうか。もう一遍お答え願いたい。
○政府委員(西村熊雄君) 大体曾祢委員の御意見に同感でございます。ただ一つ留保いたしたい点は領土処分の関係でございます。領土処分につきましては、第二條と第三條の規定によりまして、日本といたしましては、第二條に掲げられている地域については原則として領土権の放棄を確約いたしておりまして、それがこの平和條約の発効と同時に、確定いたします。領土権放棄という一方に、この事態と矛盾する條項を二国間平和條約において約束することは、これは條約一般の原則から言いまして、日本といたしてはできない事柄でございます。第三條についても同様なことが言えます。この一点を留保いたしまして、他は曾祢委員の御意見と同様に考えております。
○曾祢益君 大体私の解釈だけではないのでありまするが、解釈が一致したと思うのですが、ただ、今最後に領土條項だけは、この日本に有利に改訂できないということを言われたのですが、私はその点は、政治的の問題は別といたしまして、法律的、條約的に言つたならば、今の局長の一般的な態度から見ておかしいのではないか。例えば第三條につきましては、事が、勿論全連合国の関心があることであることは疑いありませんが、元来この第三條の小笠原、沖縄に関しては、何と言つても最大の関係者はアメリカと日本であります。従つてこの條約に加わつて来ない例えばソヴイエトなり、中国と日本との間に、アメリカの関係を無視して、仮に小笠原、沖縄等は日本の領土権を認めるということをやることは、これは全く日本としては人格の分裂になる。さようなことは政治的にも道義的にも恐らくできないことでありましようし、法律的にもこれはできないでしようし、小笠原、沖繩でなくて、南樺太、千島のほうについては、これは領土権の放棄であるので、従つてこの点に関しては、まだどこの国に行くということがはつきり書いてない、第二條の現状から言うならば……。実際のこの條約に加わるべくして、加わらなかつた国、必ずしもソヴイエト・ロシアばかりではなくて、仮に中国であろうが、インドであろうが、それらの国がその必要なしというので、さような、日本が領土権を放棄しないということをやつても、理窟から言うならば、第三條の場合と違つて、さようなことはできるのではないか。只今の條約局長の御議論は、第二條については、これは政治論であつて法律論じやないというふうに考えるのですが、如何でございますか。
○政府委員(西村熊雄君) 大体同意見でございます。しかし突きつめれば、まだ、幾分意見の相違はあると存じます。具体的に今南樺太の問題をおとりになりましたから、私も南樺太を例としてとりましよう。南樺太に対しまして、第二條によつて日本は領土権を放棄いたすわけであります。平和條約が発効いたしますれば、四十八ケ国との関係におきまして領土権放棄の事実は完成いたします。この南樺太につきまして、日本が結ぶ二国間の平和條約において、南樺太に対する領土権を放棄しないという趣旨の規定を設けることは、南樺太という領域に対する国家の意思が分裂を来たす結果になりまして、これは條約理論として、認めることができないと考える次第であります。ただ二国間平和條約において、南樺太に対する領土権の放棄に触れない平和條約を作ることは、可能であると考えます。これは可能であると思いますが、放棄しないという條項を含む二国間平和條約を作ることは、日本としてできないことであると考えるのであります。その点だけはちよつと違いますが、他は同意見でございます。
○曾祢益君 大体わかりましたが、ただあとからできる條約でありますので、仮に二カ国間にあつても、必ずしも私は人格の分裂にはならない。先ずその條約を、そういうようなものが仮にできるとすれば、それは作つたあとで、平和條約そのものが何らかの形で四十八カ国との間に修正されるということは、これは技術的には私は可能である。法律的には決して人格の分裂にならないと考えておるのであります。
 最後に私が一つ伺いたいのは、平和條約の審議に当りまして、政府はこの平和條約と附属議定書並びに二つの宣言については、この條約と一括して御審議の上、速かに、何と申しますか、御採択でしたか、御承認を願いますと、こういうふうに言つておられるのであります。これは文書もそうなつておるのでありますが、一体、議定書並びに宣言というのは、国会に対する正式の承認を求めるお考えであるのか。或いは平和條約に伴うところの一つの何と申しますか、参考資料的なものを出す、そういうお考えであるか。若しも参考資料ならば、何故に一括御審議の上御承認を願います、この承認は平和條約だけではなくて、明らかに議定書や宣言をも含んでおるように思うのですが、その点はどういうふうな解釈でありますか。伺いたいと思います。
○政府委員(西村熊雄君) 政府といたしましては、平和條約のみならず、議定書も二つの宣言書も一括して国会の御承認を要請いたしておる次第でございます。その意味におきまして、国会に提出します関係文書の起案にも注意いたしまして、平和條約の締結に対して承認を求めるの件というふうにいたしてある次第であります。技術的に申しますれば、平和條約の批准について承認を求めるの件と言えば極めてわかりやすいのでございますけれども、附属議定書は批准條項が入つておりませんので、そうして、その建前が、平和條約が実施されると同時に署名国間において実施されるという建前になつております関係上、この三種の文書を含めて御承認を得る意味において、平和條約締結に対して御承認を求めるという方式をとつたわけでございます。
○曾祢益君 そういたしますと、この議定書と二つの宣言は、憲法第七十三條に基いて、国際條約の国会における事前承認という意味でお出しになつたように、或いは宣言と議定書は事後ということになると思いますが、この七十三條に基く、條約に対する国会の承認として国会にお出しになつたのか。
○政府委員(西村熊雄君) 御意見の通り、七十三條によりまする條約に対する承認を求めるものとして提出した次第であります。議定書にいたしましても、宣言にいたしましても、平和條約が効力を発生いたしまして初めて効力を発生する関係にございますので、実質的に一体をなすものとして事前承認を求めておる次第でございます。
○曾祢益君 最後にこの宣言の中で、日本におきまする連合国人の墓地、記念碑等に関する問題があるのでありまするが、これは外務政務次官に伺いたいのでありまするが、私は墓地については、これはよくわかるところでありまして、戰争後も、平和回復後も、日本にある連合国人の軍人の墓地等について、これを永続的な形で保存して行きたいという連合国側の気持は、これに対応する日本側が、宣言の最後におきまして、日本側としても、連合国の領域にある日本人の戰死者の墓地等について同様な取扱をしてもらいたいという一方的な希望を述べておられる。これは極めて当然と思うのですが、一つ問題になりやせんかと思うのは、記念碑というやつです。で、本当に平和関係が回復したのちにおきまして、如何なる記念碑が日本に置かれるか、これはよほど愼重に考えなければならない。この記念碑の持つ性格という意味でありまするが、たとえて言うならば、第一次世界大戰が終つて、その終る前にコンビエーニユの森におきまして、ドイツの全権をあすこに呼び付けて、そうして行政協定を連合国がドイツに押し付けた、そのコンビエーニユの森に記念碑が残つておるのであります。その記念碑は、劔が鷲を突きさしておる、「ここで傲慢なる、」はつきりしたことは覚えておりませんが、「ここにおいて傲慢なるドイツ帝国の野心が粉碎された」といつたような記念碑をコンビエーニユの森に置いてあるのであります。かようなことが果して真に第二次大戰を起されないような平和のための記念碑であつたかどうかということを考えるのであります。私は第一次大戰と第二次大戰の間の時期に、現にコンビエーニユの森でその記念碑を見た当時、ドイツと戰つた日本人の気持から言つて、果してかような記念碑を置くことが賢明であるか、ドイツから見れば堪え得ざる屈辱の記念碑に違いない。さようなことは、話が横道にそれましたが、政府がこの連合国軍人の墓地等のために、連合国の委員会との交渉に応ずるという宣言をされたのは当然だと思うが、その中に入つている記念碑という意味については、一体如何なるお考えを持つておられるのか。さような戰争を思い起させるような、或いは屈辱的な記念碑を日本領土内に置くことは万あるまいと存じますが、その点に関して如何なるお考えであるか伺いたい。
○政府委員(草葉隆圓君) ここに考えておりまする中心は、戰死者の墓なり、戰死者の墓地なり、記念碑も考えております。現にありまするこれらのものを考えております。従いまして、曾つて第一次欧洲大戰の起きましたような、いわゆる戰争全体を将来に残すような記念碑ということは一応考えておらない次第でありまして、従つて今後これらの当該国といろいろな話を進めて参りまする委員会なり、代表団との間におきましても、このように考えて進めて参りたいと思います。
○委員長(大隈信幸君) 法務総裁が来られましたので、第五章について永井委員の留保している質問を許します。
○永井純一郎君 法務総裁に質問をいたしますが、先日の私のほうの吉川君から義勇軍の点についてお尋ねをいたしましたが、はつきりいたしておらない点がありまするので、私はこの義勇軍の点について究明いたしまして政府の考え方をはつきりしたい、こう思います。
 この前の答えのときに、日本人がいずれかの国の軍隊に義勇軍として純粹に個人的に応募することは、直接新憲法に違反にならないというようなことでありました。私どもは、先ず政府の、総裁の憲法の解釈が、特に第九條の解釈を殊更歪めて解釈をしておられるということを、国民が非常にそういうふうに今日感じております。と申上げますのは、第九條を読みますと、第一項におきまして、先ず日本国民は武力行使を永久に放棄するというふうに書いております。そうして二項で以てこれを受けて、従つて国は戰力を保持しないし、又従つて国の交戰権を認めないというように、二項は一項を受けて書いておるのでございます。そこで、もう一つ考えられますことで、私はこれも総裁に明らかにしてもらわなければならないと思いますが、戰力についてこの前も説明がありましたが、私どもは戰力の單位は、戰力を構成する根本になる單位は、やはり個々の人、即ち国民であると考える。人が武器を携える、武器を操縱するのでありまするから、戰力の單位は国民であると思います。その国民は武力行使を永久に放棄するということを第九條の第一項で謳つておるのであります。これは日本の平和憲法、非武装憲法がいわゆる主権在民の精神を貫いておりまするから、第九條の非武装憲法の一番先に、日本国民は放棄するというふうに謳つておる。こういうふうに考える。こういうふうに考えますれば、明治憲法のように、国家主権或いは天皇に主権があるとかいうような逆の立場をとつた憲法である場合には、国が交戰権を認めないという規定がある場合にでも、国民がその国と関係なしに純粹に個人的に武器をとるというようなことがあるかも知れませんが、先ほど言うように、主権在民の民主憲法の場合には、それがこの第九條から言うと言えない。従つて総裁が言われるように、純粹に個人的に応募する場合に、義勇軍というものはあり得るということは、非常に事を曲げてわざわざそういうふうに食つ付けて解釈をしておるというふうに私は考えるのであります。従つてその憲法の第一項と第二項との関係と、それから戰力の單位は国民であると思うが、その点はどうかということを先ず明らかにして頂きたいと思います。
○委員長(大隈信幸君) 永井委員に申上げますが、今、私が申上げましたのは、第五章の賠償の関係で保留されておる永井委員の御要求について、法務総裁が昨日御出席がなかつたので、その点について申上げたのであつて、今の問題は、この前も皆様のお申合せで、これは安保條約のときにやろうじやないかというお話になつておるわけです。
○永井純一郎君 いや、僕が一昨日の朝か、あなたのほうから連絡があつて、質問しようと言つたのは、このことについて質問しようということを申出ておいた。それが順序が遅れて法務総裁が早く帰られて、最後まで待つたのだができなくて、この点をもう一遍するからということを……。
○委員長(大隈信幸君) 安保條約のときにおやりにならないで、今おやりになろうというわけですか。
○永井純一郎君 そうです。安保條約というよりも、これはこの前の義勇軍のことを吉川さんがしたときからの関連です。
○委員長(大隈信幸君) 第五章はよろしいわけですね。
○永井純一郎君 ええ、いいです。
○国務大臣(大橋武夫君) 義勇軍のことにつきましての、前の私の答えにつきまして、何か殊更に事を曲げて解釈しているのではないかというようなお話でございますが、私自身といたしましては、この解釈については事を曲げてまで解釈しなければならん必要はないと思います。ただ率直に第九條の解釈を申上げたつもりでございます。そこで第九條の「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戰争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」ここにありまする通り、日本国民というものは個々の国民個人が一人々々そういうことの意思表示をした意味ではなかろうか、こういうふうな御質問の御趣意でございますが、元来この日本国憲法におきまして、日本国民と申しまするのは、これは日本国憲法の趣旨が、国民というものが主権者である、その日本国民、主権者である日本国民がこの憲法を制定するのである。こういう趣旨で、この日本国民という言葉が使われておると、私は解釈いたしております。従いまして、ここにありまする日本国民というのは、個々の、個人の一人々々を指すのではなく、主権者として組織されましたところの一つの組織体としての日本国民、主権者たる日本国民、こういうものを指しているわけであります。この主権者たる国民が、日本国憲法の前文にもありまする通り、政府の行為によつて再び戰争の惨禍が起ることのないようにすることを決意して、この戰争放棄の第九條の規定をいたしておるという趣旨でありまするから、この場合におきまして戰争を放棄するというのは、これは主権者たる日本国民、即ち日本国民という主権者によつて支配される日本国乃至日本国の政府というものが、この軍備を放棄するという趣旨をここに謳つてある。こういうふうに理解いたしておる次第でございます。従いまして、国民たる個々の個人が、職業として外国の軍隊に雇われて義勇軍として従軍するというような事柄は、これは憲法第九條とは関係のないことであるというふうに理解いたしておる次第であります。
○永井純一郎君 今のお答えは、私から申上げますると、明治憲法と今日の憲法を、何か混同して、観念を混同して、こんがらかして答えを出しておられるのではないかという気がするのでございます。で、今のお答えのように、政府の、或いは国の行為によつて戰いが起らないようにするための、そういう意味の主権者としての国民の考え方だというようなお答えですが、そうでなくして、この九條は、主権者である国民が国の交戰権を認めない、国の戰力を保持することを国民が認めないという積極的な意図であつて、国民と別個にその国が戰争を行うようなことがないようにするというような建前では私はないと考えるのが、主権在民の憲法としては当然であるというふうに、私は解釈せざるを得ないと思うのです。若しあなたの今おつしやるようなことを推し拡げて行くならば、全国民がとは言わなくとも、日本の国民の青壯年の大部分が、それでは生活等が貧困になつたために困つて、外国の軍隊の義勇軍……全国民と言わなくても、大部分の青壯年がそういう義勇軍に応ずるというような事態が起ることも、これはあなたの答弁から推して行けば考えられるわけでありまして、そういう場合にも、なお、そういう状態の下における国家というものと国民というものとは別々であつて、純粹に個人的の意思によつて集まつた何千万か何百万かの青壯年の義勇軍があるというようなことが果して認められるかどうかということになつて参りまするが、この点、そういうことも今の解釈から言えばあり得るということになるのか。お答えを願いたいと思います。それから先ほど申上げました戰力の單位は私は国民であると思うのでありまするが、その点お答えがなかつたので、これも一応明らかにしておいて頂きたいと思います。
○国務大臣(大橋武夫君) 外国の義勇軍の問題は憲法第九條の問題でないというふうに私は考えております。勿論それでは憲法に関係ない事柄であるというので、日本国民の多数の者が外国軍隊に従軍をする、その結果、延いては日本国自体が戰争に巻き込まれるというような虞れもあり得るではないかという御質問でございまするが、これは極端な場合を想像すればそういうことも無論あり得ると思います。併しその場合におきましては、日本といたしましては戰争に巻き込まれないために、日本国民が外国の義勇軍に従事するということを法律によつて制限するということは、無論可能なわけでございまして、制限すること自体も憲法九條と関係のない事柄であります。併しそれは決して実際上必要な……、そういうことをしてはいけないわけでありません。無論国家として必要ならば、そういうことも十分に考え得るわけでありますから、従つて今の御引例になりました事柄について、そうい事柄の結果、日本が戰争に巻き込まれるというような虞れを防止する方法は、憲法九條ではなく、そのときの日本の国内の政府の政策として考えるべき問題であろう。こういうふうに私といたしましては考える次第であります。
 次に戰力というものは、その根本は国民ではないかという御質問でありまするが、もとより個々の国民の力というものは、これは戰力を組織いたしまする一つの要素ではあります。併しながら個々の国民がそのまま戰力というものではないのでありまして、それが一つの力に組織されまして、戰力をなす場合もあるというふうに存じます。
○永井純一郎君 総裁の御答弁を伺うと、非常に本末を顛倒している答弁のように考えられて仕方がないのでありまするが、先ほども政府の行為によつて戰争の起らないようにするというようなことでありました。これは私が先ほど申上げた通りに、第九條は、主権者である国民が、戰争することを国家に、政府に許しておらないということが、私はむしろ本旨であると思うのであります。従つて国民の大部分の人が義勇軍に応じて、日本に義勇軍というものの相当な部隊ができるようなこと、そういうことがそのときの情勢によつて政策としてまずいときには、政策として禁ずるのだということでありまするが、これは本末顛倒であります。そういうことが起らないことのために、憲法の第九條が平和憲法、非武装憲法としてあるので、これは本末をまるで顛倒いたしまして考えておられる。従つて憲法九條の解釈を殊更に曲げて解釈をしておられる。従つてあなたの御説明を国民が聞く場合には、義勇軍というものを日本の中において作らなければならないような状態になりつつあるのではないかという危惧の念を持つと私は考え、又そういう意味で国民が当然この憲法の九條に対する法務総裁の意見を、説明を耳をそばだてて私は聞いておる、こう考えるのであります。今の御答弁からすれば、結局日本の国内において義勇軍、或いは言葉を換えれば傭兵制度というものを認めるのだ、憲法の解釈上それができるということになる。私はこう考えますが、そのように理解してよろしいのかどうか、お伺いいたします。
○国務大臣(大橋武夫君) 政府といたしましては、現在殊更に義勇軍を作る考えもございませんし、又国民が義勇軍となることを希望いたしておるわけでもございません。むしろ現在の段階におきましてさような事柄は望ましくない、こういうふうに考えておるわけであります。従いまして九條の解釈において、義勇軍の禁止の問題とはこの規定は関係はないのであります。私の言つておりますることは、これは九條の趣旨が義勇軍を禁止するという趣旨ではないということをただ説明いたすだけであります。それであるから義勇軍に出るべきである、出ることが望ましいというようなことを考えておるわけでなく、むしろ政府といたしましては、現在さようなことは望ましくないことである、こう考えております。併しそれを禁止する規定としては、九條の規定はそこまで規定したものではない、将来必要があれば政策として他の法律を以てそういう定めをなさなければ、憲法九條だけでその目的を達することは不可能である、法律的に不可能である。こういうふうに考えておる次第であります。
○永井純一郎君 若し今日義勇軍というようなものを作る、或いは傭兵制度を認めるということが、政策上政府が望ましくないと思つておるならば、先ほども総裁が答えられたように、政策としてまずいと思うときには別途法律を以て禁ずるというようなことを言われましたが、今日のこの情勢においても、若し日本の立場、或いは政策上から、義勇軍というものは好ましくないと思つておるならば、政策の上から言つても、まあ政策の上から言つて憲法の解釈を云々するという意味ではないのですが、私がこういうような素直な第九條の解釈をすることによつて、政策上好ましくないという……政策の上からも大変工合が悪いことになると思うのでありますが、それをあなたのような説明をしておると、義勇軍だとか傭兵制度とかいうものは憲法上認められるんだということにならざるを得ないことになるわけであります。法理論としてはそうならざるを得ないことになりまするから、私はそのこと自体が政策上大変工合が悪いということになると考えますが、併しこの点を確かめれば又同じことを答弁されると思いまするから、それでもう一つ進んでみたいのでありまするが、それは憲法上義勇軍というものが可能、法律上可能であるということになれば、行政協定の内容に義勇軍のことを規定することも法律上は可能になるのかどうか。その点をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(大橋武夫君) 先ほど来、私、義勇軍ということで申しておりますのは、申すまでもなく、日本国自体が義勇軍を組織するという問題ではない。外国の義勇軍として日本の国民が外国の軍隊に従軍するという場合を取上げて申上げたつもりでございます。そうして、その事柄は憲法が認めているというよりも、憲法が明らかに禁止している事柄ではない、こういうことを申したわけでございます。次に御質問になりました安全保障條約に伴いまする行政協定において外国の軍隊、即ちこれはアメリカの軍隊だろうと思いますが、アメリカの軍隊に日本国民が義勇軍として参加をすることが可能であるかどうかという御質問であつたわけでございまするが、行政協定におきましてはそういうふうな事柄が実際上問題となるものとは想像いたしておらないような次第でございます。
○永井純一郎君 実際上想像しているということでなしに、私が言うのは、法律論として、そういうことを行政協定に、憲法で禁止しておらないということであれば、法律的にはそういうことも例えばできるかということをお伺いいたしたいのであります。その意味でお答えを願いたいと思います。更にもう一つは、南西諸島等は信託統治地域にこの平和條約によつてなりますが、この点については條約局長にも、この前、国連憲章八十四條との関係と併せて質問をしておりますが、研究して答える、多分法務総裁と相談をして答えるという意味だつたんだろうと思いますが、まだその回答を得ておらないのであります。これも一緒に回答を頂きたいと思いますが、その第一点は、南西諸島等では、例えば沖繩の島民のかたがたは、自分たちが軍隊に取られ、或いは軍事行動に従事することを非常にいやがつております。そうして又、これらの島民のかたがたが日本憲法第九條を守りたいということを熱心に言つておられる。そこで私どもはこういう質問をするのでありますが、南西諸島等が信託統治になる場合には、合衆国は強制的に日本人の軍隊を信託統治地域では作ることができるかどうか、法律的に……。これは私が言うような第九條の日本憲法の解釈をすると、私は信託統治地域では日本に主権があると言つているのでありますから、できないと思う。ところが法務総裁のような解釈で行くと、それができるということになりはしないかと私は考えます。この点について、この前、條約局長は、アメリカは日本の憲法を尊重いたしまするから、恐らくそういうことはいたしますまいというような答弁でありました。法律的に、法律論としてはどうかという私の問いに対して、そういうふうに、まあ、ぼやけた政治的な……いつもアメリカの立場を忖度する立場にはないと言われながら、このときまあ忖度してアメリカはそうしないだろうというふうに答えられましたが、この点、日本人の軍隊を信託統治地域に米軍が強制的に作ることができるか、法律的にそれが可能かということを明らかにして頂きたいと思います。
○国務大臣(大橋武夫君) 御質問の第一点は、行政協定において日本国民が米国の義勇軍となるようなことを定めることが法律的に可能かどうか、こういう点でございまするが、この行政協定の性質は、安全保障條約にあります通り、米軍の配備の條件を定めることに相成つているわけでございます。御指摘のような問題は行政協定において処理すべき性質の事柄ではないと考えますわけであります。そういう意味で、行政協定でその問題を取扱うことは行政協定の性質から見て不可能であろう、こう考えるのであります。
 それから第二点は、南西諸島においてこれらの諸島の島民諸君が従軍させられる場合があるかどうか、これは日本憲法の上からどうかという点でございまするが、これらの諸島におきまして、あの條約の文面によりまするというと、行政、立法、司法につきましては、当分の間、米国が行うことになつているわけでありまして、米国の行動につきましては、法律論といたしましては日本国憲法の支配するところではない、こう考えます。
○永井純一郎君 第三條には立法、司法、行政の権限を合衆国が持つように後段のところで書いてありまするが、そのことは、これは政治的な意味も含めての答弁でもよろしいと思う。或いは純粹に法律論としてでもいいのですが、その場合、併し信託統治地域に今言われているように日本の主権を認めるという形の信託統治地域にするということとどういうふうにそれはなるとお考えですか。一つお答えを願いたい。
○国務大臣(大橋武夫君) 信託統治或いは信託統治前におきまするアメリカの立法、行政、司法の権限を行使する時期、この時期におきまする南西諸島というものに対する日本国の主権というものはいわゆる潜在主権であります。この潜在主権というものにつきましては、現実の立法、司法、行政ということは考えられません。従いまして日本国政府の立法、行政、司法についての基盤でありまする円本国憲法の適用という問題は、その限りにおいては考える余地がないわけであります。
○永井純一郎君 そう言われると思いまするので、政治的な意味を含めての含みを持つてでもということを私は附加えましたが、そうでなくして、やはり今のような答弁ですと、結局南西諸島におきましては、日本人の軍隊というものが、合衆国を施政権者とする下においては軍隊を作れるという結論だと思います。で、もう一つは更に国連憲章の八十四條にもやはり義勇軍を利用することができると書いてあります。私どもは、若し合衆国が日本の、信託統治地域にはするのであるが、日本の主権を非常に尊重するという建前をとるならば、従つて我々が日本の国内においても第九條の憲法の解釈を嚴格に解釈することを主張し、その主張を通すならば、私はこの憲章の八十四條の義勇軍にいたしましても、日本の国籍を有する島民を義勇軍に使わない、そういう苦しい従軍をさせないということができはしないかというふうに思うのでありまするが、恐らくこの八十四條の解釈も、総裁をして答弁せしめたならば可能だということをおつしやると思います。これは答弁をあとで願いたいと思いまするが、もう一つは、それでは更に進んで第三條の信託統治、合衆国が信託統治提案をするときには如何なる提案にも同意すると書いてあります。この中にはこの八十四條の規定なり或いは信託統治地に日本人の軍隊を作ることもできるというようなお考えでありまするから、信託統治提案にそういう内容の提案がされるかどうか知りませんが、如何なる提案にも同意するという中に、今、総裁が答えられたようなことをはつきりするために、日本人の義勇軍或いは傭兵というようなものの規定がこの提案の中になされるということも法律的には可能であると思いまするが、そうお考えになるかどうか。その点も一つお伺いいたしたい。
○国務大臣(大橋武夫君) さような計画は聞いておりません。
○永井純一郎君 計画でなしに、あなたが今憲法第九條の解釈からずつと来て、南西諸島の問題或いは憲章の八十四條の解釈等から自然と義勇軍なり傭兵制度なりというものを認め得ることにならざるを得ないわけでありますから、従つてそういつた計画があるかどうかは知らないが、如何なる提案にも同意するというのであるから、信託統治提案の中にそういうことが法律的には提案されることが可能かどうかということを伺つておるのであります。
○国務大臣(大橋武夫君) 私の先ほど来申上げておりまするのは、義勇軍が認められる、或いはそういうものができるであろうということを申上げておるのではないのでありまして、そういう事柄と日本国憲法とは如何なる関係があるかというので、それは無関係である、こういう趣旨を申上げたのであります。そのことは決して義勇軍を認めるという趣旨ではなく、又そうした計画を容認するという前提の下にかような條約ができておるという意味でもないわけでございまして、その点は憲法とは関係のない事柄であるというふうに御理解を願います。
○永井純一郎君 甚だ答弁が要領を得ないと思うのであります。憲法と関係がない……。国民が純粹に個人的である場合には、そういう純粹の個人的の集団というものができるというようなことが、先ほど来想像はできるというお話でありましたが、法治国においてそういつた状態があり得るはずがないと思うのであります。で、この点はよほど注意深くこの九條の解釈が説明をされ、且つ政策的にも、あなたがおつしやられるように、先ほど、今日、政策としても義勇軍というようなことを置くことは適当でないという考えを若し政府が持つならば、もう少し物事をよく十分に考えて説明されるべきものだと私は思うのでありますが、あなたの今までの答弁を総合して法律論としてやつて行くと、そういうことになつてしまうのではないか。そういうことを国民が心配しているのであります。そういう意味で私は質問をいたしておるわけでありますが、恐らくこれから議論をしておると並行線の議論になつてしまうかと思いまするが、私はここで一応この私の保留しておいた質問を打切りたい。
○委員長(大隈信幸君) この際、午前中に大蔵省から説明を受けました連合国財産 法案について御質疑のあるかたは御発言を願います。
○兼岩傳一君 僕はそれがあるのですけれども、この前の法務総裁に対する質問が、急がれたために若干残つておるのですが……。
○委員長(大隈信幸君) それでは簡單に。
○兼岩傳一君 この前、私が永井委員と同じ性質の質問をいたしましたけれども、丁度十二時半になりましたので、私はあとに保留して、一応憲法に対する解釈の論議を打切つたのでありますが、ここでその点をもう一度明らかにしておきたいと思います。只今永井委員から言われるように、信託統治になれば、これは明確に島民が義勇軍、便益、援助は勿論、義勇軍の義務までも持たなければならないということは明確になつて参りますが、さて、そこで憲法の改正が、この前、要らないという御説明が……時間の関係もございまして非常に不十分でございましたが、この点を一点。まだたくさんありますけれども、これは場合によれば安保條約のほうで展開してもいいのでありますから、今日は極く短かく、憲法を改正する必要がないという法務総裁の見解について一、二質したいのであります。この前の点、ずつと発展して参りました論拠は、一言にして言えば、法務総裁は一方において潜在主権があるからいいのだ、他方において領土に関するそういう変革に対することを憲法がどうとも規定してないから、即ち憲法を改正する必要がないというようにおつしやいましたが、そこで問題を成るべく簡潔に明確にする意味で、一問一答の形でお尋ねしてみたいのでありますが、この潜在主権を持つて、そうして義勇軍になるまでの義務を負うところの百万の同胞諸君が、あなたの言われるように潜在主権を持つといたしましても、これは明らかに領土の割讓と認められると考えられますが、領土の割讓ということと、今問題になつております問題と、どこが違いましようか。
○国務大臣(大橋武夫君) 領土の割讓の場合におきましては主権は完全に放棄されまして、或いはそれが第三国に移転される。併しこの信託統治の場合におきましては、これらの関係地域に対しまする日本国の主権というものは依然として存在しておる。ただその上に受任国の事実上の権力が行使されることによりまして、主権は現実には発動を停止され、いわゆる潜在の形をとる、こういう点が根本的に違うと存じます。
○兼岩傳一君 然らば、それは條約の上でそういつた一時的に主権が停止され潜在するけれども、にもかかわらず、それはやがて立ち返つて来るから、一時的なものであるから、これは割讓でないと言われますが、然らばいつ立ち返つて来るかという、権利としての、或いは條件的な規定は條約のどこにあるのでしようか、これがなければ潜在主権ということは一片の空語ではありませんか。
○政府委員(西村熊雄君) 第三條に予定されております信託統治制度を解除されるとき、即ち日本の主権は完全に本然の姿に返るのであります。国家の主権は絶えず本然の姿にあろうあろうとしておるのでございます。これに対する制約が解除されれば、即時に本然の姿に返るのでございます。
○兼岩傳一君 ちよつとお尋ねしますが、條約局長は何か宗教家にでもなられたのでございますか、政治的な問題として明確に、一億に近い人口を持つ日本の立場、一億五千の立場を持つアメリカと、現実的な、且つ法規的な、且つ科学的な私は答弁を求めておるのであつて、法務総裁が一方において潜在的である、これは一時的にサブマージしたのである、やがて浮き上つて来るということを言われる。その論拠として或いは法律論、憲法論を展開するならば、当然その前提として、私は、いつ、どういう期間で、これが如何なる條件で立ち返つて来るかということが明確に條約にない以上、そういう論拠は出せないはずだと考えるのです。一つお坊さんの立場をやめて、再び條約局長に立ち返つて、法務総裁がこういう憲法論を主張する以上、この点を明快にして頂きたい。
○政府委員(西村熊雄君) 第三條はこの平和條約の効力の発生を以て実施されるわけであります。第三條が発効いたしまして、日米間の話合いによつて実施されました上での結果を見なければ、兼岩委員が御要求になる、いつ如何にして本然の姿に返るであろうかの見通しは立ちかねるわけでございます。
○兼岩傳一君 あなたは條約に多年従事した專門家として、何ら明記されていない権利というものを認めることはできますか。
○政府委員(西村熊雄君) 国家の国際法上の権利は、文書に明記されなくても国家として当然有するものでございます。国家間におきましては、條約によつて相互同意の上国家の権利は制限を受けることになるわであります。
○兼岩傳一君 そうい詭弁を弄してもらつては困りますね。あなたは明確に、奄美大島その他の百万の人たちが、これによつてあらゆる便益と援助、義勇軍までの、命をもこれに捧げるという義務を負うのですよ。そうして一方において法務総裁は、日本人である、ただ主権が一時的に潜在した、こう言つておる。つまり、あるべき本然の国民の権利がこのように、生命をも、財産は勿論、生命をも捧げなければならないという義務を特別にこの際負う以上は、而も法務総裁がこれを以て潜在的であり且つ一時的であると言つておる以上は、これは復帰する條件が明確でなければ、さような潜在的であるとか一時的であるとかいうことはどうして言えますか。
○政府委員(西村熊雄君) 三條の規定の仕方それ自体が過渡的な制度であることを明らかにしておるわけであります。義勇軍の性質について兼岩委員には誤解がおありのようでございます。国際連合憲章にいう義勇軍とは、個人がその自由意思によつて軍役務にはいるものを指すのでございます。いわゆる志願兵制度を見ておるものでございます。これは強制兵役というような考えではないのであります。八十四條から申しまして、施政権者は信託統治地域の住民に対して強制兵役を課することは予期されていないところであります。
○兼岩傳一君 あなたは義勇軍の説明でぼかさないで下さい。あなたがそういうことを言われれば、私は義勇軍についてだけでも一時間ぐらいあなたと論議する十分な用意を持つております。けれども、そういうただ言葉の上で義に勇むと書いてあるから義に勇むんだろうというような、そういうばかばかしい、政治を離れた……、それでは特攻隊とは何である、或いは現在韓国軍においてはどういう形で義勇軍が集められておるか等々幾らでもやれますよ。だから、そういう枝葉に亘らないで、重大な命に関係するところの義務まで負うところの、而も日本の、日本国憲法の適用を離れるところの百万の人たちが、どういう将来に対してめどを持つか、いつ解除されるか、その期限及びその解除に対する権利は第三條の第何字目のどこにあるか、はつきりして下さい。
○政府委員(西村熊雄君) 私は過日来法務総裁の御答弁を聞いておりますが、南西諸島における日本の憲法の適用が全面的に中止するということを言つておられないのでございまして、第三條の適用の結果、合衆国の権限が行使される範囲内において、日本国憲法の適用は排除されると説明しておられたように思います。でございますから、第三條から来る合衆国の権限の行使による制限が解除される場合には、日本の憲法は当然本然の姿に返つて適用されるわけでございます。
○兼岩傳一君 それがいつ返るかということがないじやありませんか。
○政府委員(西村熊雄君) それは第三條の適用をみた上で初めて確たる見通しができることであるのでございます。この三條はまだ適用にもなつておりません。今、いつ第三條から来る日本の主権の、憲法の適用に対する制限が解除されるか見通しを言えとおつしやるのは、それは御無理でございましよう。
○兼岩傳一君 それで明確になりましたよ。一つ法務総裁登場して下さい。いつ、いつですよ。いつ、その……、日本国憲法の適用されるかわからないということを今條約局長が專門家の立場で明確にしたのだ。いつ、されるかわからないことに対して、無期限な、そして何らそれに対して権利の保護のないことに対して、どうしてあなたは潜在主権などという言葉で、日本人だ、領土の割讓はしないのだということを、どこを根拠として主張されますか。
○国務大臣(大橋武夫君) 潜在主権が回復される場合におきまして、あらかじめ期限が約束されておる場合もあります。例えば九十九ヵ年の期限を予定されたところの租借地は、條約等におきましては、これは一応潜在主権が完全なる主権に回復されるべき期限が條約自体によつて予定されておるわけであります。併し第三條におきましては、條約においてその信託統治の終期なるものを予定してないわけでありまするから、そこで條約局長から期限の予定がないと言われるのはこれは当然なのでございます。併しながらそのことが決して潜在主権がないということを意味するのではないのでありまして……。
○兼岩傳一君 なぜです。
○国務大臣(大橋武夫君) 例えばこの領域は日本の領域であり、又ここにおりまする国民は日本国民として、日本の国籍をその地域に有する。これらはいずれも潜在主権の効果としてさようになるわけであります。
○兼岩傳一君 全然憲法の適用のない、国籍だけある。而もそれがいつ解除されるか、期限に対しては全然規定もなければ、それは見通しもない。九十九年でさえも植民地である。百年としては工合が悪いから、九十九年だと規定はしても、実はこれは無限大を現わすのだということは世界の歴史です、この際は、それはもつとはつきりしておる。何ら期限の規定もない。これを言葉の上で日本人の国籍があると、そうすると国籍はあるが憲法は適用されない。そしてその期限は未定である。こういうふうの場合に、これを少くも非常な讓歩をして一時的な割讓……、一時的な割讓と見ることは正確ではありませんか。又これに対して一時的な割讓と見ることを、而もいつ返つて来るかわからないという條件の、一時的ですよ。一時的割讓ということをあなた承認される必要があると思いますね、法務総裁として……。
○国務大臣(大橋武夫君) これは一時的な割讓でなく信託統治であります。
○兼岩傳一君 これ以上押問答いたしましても時間をつぶすだけですから……、日本人だそうで、日本の憲法を適用されなくとも日本人だそうですし、それからいつ返つて来るかという何らの保障がなくても日本国だそうですから、これはもう我々雲の上でない下界の人間には全くわからないことですから、この領土の問題については、それではつきりいたしたと思いますから……、はつきりしないのは、あなただけで、実ははつきりしておるけれども、そう言つておられなければ、大臣が勤まらんからそう言つておられるだろうと御推察申上げます。これは第一……。
 それでは第二に、この百万の日本人は、憲法第十八條によれば、何人も奴隷的拘束は受けないとありますけれども、明らかに奴隷的でないという保障の何もないところの信託統治の国民に移つて行く。ただ国籍だけはあるそうですが、実質上日本人でないところの、従つて実質上日本人の受けるところの保護は受け得ないところのこの人たちに対して、この憲法十八條に違反するとは考えませんか。憲法十八條に対して、ここに百万の人たちに対して除外例が発生して来たということを認めるわけには行きませんか。
○国務大臣(大橋武夫君) 南西諸島が信託統治に相成りまする結果、南西諸島には合衆国の立法、行政、司法の権限が行われる範囲において、日本国の憲法が事実上停止されるわけであります。併しながらこれはただ土地的にさようになるだけでありまして、そこの住民に対して人的にそういう事態が発生するのではないのでありまして、これらの日本国籍を持つた南西諸島の住民、即ち日本人も、日本国憲法の施行区域におきましては、当然に日本国憲法による日本国民の権利義務を持つことは申すまでもないのであります。そうしてただ信託統治区域は、日本国憲法が停止される範囲において、憲法の規定は当然に適用にならないわけであります。併しながらそのことが決してその土地におきまする住民に対する各種の基本的人権が一切停止されるということにはならないのでございまして、これは国連憲章第七十六條によりまして、信託統治制度の基本目的というものが定められておる。これによりまするというと、その初めには、「人種、性、言語又は宗教に関する差別のない、すべての者のための人権と基本的自由とを尊重することを獎励し、且つ、世界の人民の相互依存の認識を助長すること。」とかような事柄もはつきりいたしておるわけであります。決してこれらの地区においては、奴隷的拘束が日本国民を支配するというようなことは考える余地のない事柄であると存じます。
○兼岩傳一君 アメリカの憲法が適用されるというふうな言葉遣いから、あたかもこの百万の同胞諸君が奴隷的な待遇を受けることの心配がないようなふうの説明をされますが、あなたの引用されたこの七十六條は、私が前にこの問題を十分に質疑いたした條項でありまして、そもそも信託統治にするということは、そういうことをあなたが言われるならば、これは全く自己矛盾の中にあなたが落込んで行くわけで、この七十六條こそは奄美大島及び琉球、小笠原がすでに独立国として、明治、大正、昭和、八十年のこの長い間の、ここにありますように「政治的、経済的、社会的及び教育的の進歩」を十分逐げて、自治の能力があるだけでなくて、すでに自治の生活を歩いて来た。そういう地域を信託統治にすることは許されない。この七十六條を以て……。そうでなくして植民地又は半植民地、未開発の地域にこれは適用さるべきもので、従つて奄美大島の百万の諸君が、すでにこういつた能力を持ちながら、これから全くそういう歴史から押し曲げられて、昔に引戻されて、そうして植民地、半植民地にのみ適用されるような、そういう信託統治の中に入つて行くのでありますから、憲法十八條の、何人も奴隷的拘束を受けることのないというこの憲法の保障が外されて、明らかに不当な奴隷的の拘束を受けるようになるということは、これはまあ歴史上に眼を向けなくとも、あなたのいと大切にしておられる法律解釈の中でだけでも、これは非常に明確なことでありませんか。この信託統治は、植民地、未開発な植民地に適用される、そうしてあなたの引用されたこの七十六條にこういうふうな信託統治の過程を通つて「自治又は独立に向い住民が漸進的に発達」して行くということが書いてあることによつて極めて明らかではありませんか。これによつてあなたの今申されたような説明で、この百万の同胞諸君が現在ある立場よりも、より奴隷的な拘束を受ける立場に落込んだということは、極めて明瞭ではありませんか。即ち当然憲法十八條をこのままにしておいては、この信託統治は認められないではないですか、如何ですか。
○国務大臣(大橋武夫君) 先ほど来申上げておりまするごとく、信託統治区域につきましては、受任国の権限が行われるわけでございまして、その限りにおきまして法律的には憲法の規定は及ばないということになるわけでございます。これは憲法外の問題になつて来るわけでございます。その憲法外において、それならば事実上奴隷的な拘束がないということを何によつて保障できるか、こういう点が問題になるわけでございまするから、そこで私といたしましは、国連憲章七十六條の根拠を指摘いたしまして、その趣旨から見ても、さような心配はないということを申上げたつもりでございます。
○兼岩傳一君 この趣旨から見て明快じやありませんか、この趣旨から見て明快だと考えざるを得ないじやありませんか。この趣旨から見て、どうしてこの同胞諸君がこの日本国憲法第十八條の保障しているような、何らの奴隷的拘束を受けないということがどこに保障されておりますか。よく読んで一つ見て頂きたいと思います。この七十六條の(ろ)でしよう。
○国務大臣(大橋武夫君) 私先ほど(は)と申しましたので、人種、性、言語又は宗教に関する差別のない、すべての者のために人権と基本的自由との尊重がこの地域においては獎励される。従つて御懸念のような心配はなかろうということを申上げた次第であります。
○兼岩傳一君 それは(ろ)を前提として(は)を読まないと、(ろ)と(は)と切離してしまつて、ただその一行だけの字句で基本的自由という字があるとか、それから差別のないというような言葉があるとか言う、そういうことは非常に迷惑な話で、これは基本目的として、(い)(ろ)(は)(に)とあつて、あなたは(は)だけを勝手に都合のいいときにちよいと挙げられますけれども、それは(ろ)を前提としての(は)であつて、そうするとあなたは(ろ)と切離された(は)というお考えですか。
○国務大臣(大橋武夫君) 信託統治におきましては(い)(ろ)(は)(に)とありまするこの如何なる條項も独立に適用があるわけでありまして、どれも適用のないというわけではない。それぞれのその地域の人文の発展の段階に応じまして、どれも独立に適用があるものだから、(ろ)と切離して(は)だけ適用になるということもあるわけであります。(は)は適用がないというふうなことは考えられません。
○兼岩傳一君 お尋ねしますが、奄美大島は、今問題にしている具体的な場合には、(ろ)から切離された(は)でいいのですか。(ろ)ということはもう根本的な問題じやありませんか。信託統治の根本條件じやありませんか。根本條件を外して、それから派生して来るところの問題だけを取上げて来て、弁護しようというのは弁護にならんじやありませんか。だからお尋ねしましよう。(は)に適用され、(ろ)は適用されないのですか、今日本で事実問題になつているこの信託統治には。
○国務大臣(大橋武夫君) 信託統治の基本目的の一つでありますから、信託統治地域には(い)も(ろ)も(は)も(に)も適用になる、こう考えます。
○兼岩傳一君 それだから適用になれば、当然僕の、十八條の違反になるということはここで認められるわけですから、これ以上押問答いたしましても意味がないので、第三点として憲法二十九條の、私はこの信託統治の同胞諸君は、以上申述べましたような、もう繰返しませんけれども、信託統治地域の法律及ば秩序の維持のためには、この便益及び援助を提供しなければならない。即ちそうして義勇軍まで及ばなければならない。然るときに憲法二十九條の財産権が侵される可能性はもう明らかなのです。ところがあなたはこの場合に日本国憲法の保障から離れるこれらの人たちに対して、この二十九條が適用できなくなる、完全に適用することができなくなるという事実、これを承認されるかどうか。
○国務大臣(大橋武夫君) 信託統治地域におきましては、事実上憲法の適用は停止されるわけでございます。この趣旨で御理解を願いたいと存じます。
○兼岩傳一君 その趣旨とおつしやると、一向わからないでもわかつたことにして置けという御趣旨ですか。(笑声)
○国務大臣(大橋武夫君) 日本国が立法、行政、司法を行うことが事実上停止されるわけでございまするから、従いまして日本国政府の立法、行政、司法についての法的基準でありまする憲法が適用される余地はないとこういうわけであります。
○兼岩傳一君 以上一、二、三点を、財産権は侵される、それから奴隷的拘束は受ける、それから領土は一時的、僕は一時的でないと思いますけれども、割讓される。そうしてこれらに対して法務総裁の法律的解釈によれば、何ら憲法を改正する必要がない。こう言つておられる。僕はこれの改正する必要があるという信念の下に質問を二回に亘つて続けておるわけなんですが、然らばこれは今後他の同僚議員諸君もまだ他の部分の、私は憲法違反に関する問題はこのほかにこの際明確にして置く必要があると思いますのが、今の信託統治……、私は憲法違反に対する問題は、この信託統治、つまり日本国の憲法の適用を受けない地域ができるという、この信託統治が一点。第二点として第五條のあらゆる援助、兵隊を出せ、軍事費を負担しろと、あらゆる援助を約束するという、これが憲法違反の第二点。第三点として行政協定によつて国会の権限を無視して白紙委任状を出せという、この少くとも三点あると思う。他の二点については、これは安保條約のときに十分理解できるところまで時間の制限なしに十分この点は問い質する必要があると考えておりますけれども、今は取りあえずその三点のうちの一点につきましては、もうこれで私の質疑は終るつもりだから、最後的な、この信託統治に関する憲法違反の問題につきましては、最後的なだめを押して置きたいのですが、そうすると法務総裁は條文としてこの憲法を改正する必要なしという横車を押しておられるわけですが、仮にそれは将来の問題として、この問題は保留して、論点を明らにしたいという程度にとどめて置いて、以上を総括してお尋ねしたいのは、そうすると日本国憲法と、この條約というものとどちらが優先するか。これはいずれ明日一松その他の先輩諸君がやられると思いますが、以上私が質問いたしましたけじめの意味でお尋ねして置きたいのですが、あなたの以上の説明からしても、憲法を改正する必要がないという純法律的技術論を離れましても、條約が日本国憲法に優先するということはあなたはここで認めざるを得ないと思いますが、如何ですか。
○国務大臣(大橋武夫君) 憲法と條約とどちらが優先するかという問題でございまするが、これは国際的にはともかくといたしまして、国内法といたしましては憲法が優先するという考え方を持つております。その論拠といたしましては、特に憲法につきましては我が国は硬性憲法の建前をとつておりまするので、特別な丁重なる手続によつて憲法の改正をしなければ憲法は改正できない。こういう手続に比較いたしまして、條約は国会の承認があればよろしいということに相成つておりまするから、当然国内法といたしましては、條約が憲法に違反いたしました場合においては、その違反する限度において当然憲法が優先的に国内法としては適用を受ける、こういう考えをいたしております。
○兼岩傳一君 その法律論は、もうすでに先日、一松委員とあなたとの間、それから他の委員と三かたにおいて十分拜聽して、その二元論的なそういう立場では何も解決できないどころか、あなたは恐らく説明し得ざる所へ私はその法律論議だけについても落ち込まれると僕は思うのですが、僕は今は、その問題は恐らく明日展開されるでありましようし、又その場合において、私もその問題はその場合に讓るといたしまして、今お尋ねしているのはそういう抽象的一般論でなくして、今、私がずつと問題にして来たこの信託統治について、この百万の島民が事実上憲法で保障されておる領域にありながら、その憲法十八條の奴隷的な拘束を受ける、二十九條の財産権というものが実質上、事実上この日本国憲法から離れることによつて犯されて来る。つまり明らかにこの百万の同胞は、この條約の通過、この発効と同時に、日本国憲法の通用を受けなくなるのです。これは事実なんです。意見でなくて事実なんです。これはあなたも認めておられる。日本国憲法の適用を受けないところのこの国民ができて来た。ところがあなたの法律技術論によれば、これは法の改正はできないということを先ほどから突張つておられるが、日本国憲法の適用を受けない日本国民ができて来た。何から出て来たか。これは條約から出て来るでしよう。即ち條約が憲法に優先しておるということはここで明々白々でしよう。何らの議論の余地がないでしよう。これを承認されたらどうですか。
○国務大臣(大橋武夫君) 北緯二十九度以南の南西諸島におきましては、すでにポツダム宣言受諾以来今日まで我が国の一般の領域とは違つた状況が存在いたしておつたわけであります。今回の條約は我が国の他の領域と同じ状態にあつたところの一部分について、新らしい法律関係を制定するという意味ではないのでありまして、ポツダム宣言受諾以来今日までありましたものを一応かような形によつて整理するというような趣旨でできておるわけでございます。特にこの際において日本国憲法の改正というような問題を主張する余地はない。こういうふうに考えております。
○兼岩傳一君 何もそういうふうに廻りくどく、(笑声)言つている本人も僕はわかつていないと思います。なお、いわんや聞いてる我々もはつきりしない。そういう高級な法律論を展開しないで、率直に、この生きる人間として、極めて現実的に、ここに明らかに日本国民でありながら、これはあなたの主張ですよ、あなたが潜在主権において日本国民であり、且つ国籍があり日本国民であると言われる。然るに一方においてこの日本人は日本国憲法を完全に適用されない、こういう事実が、ここに、この條約が効を奏すればそういう事実が生れるということは承認されるわけですね。従つて明らかにここで憲法よりも條約が優先するということは、この事実が明確に語つておるところではありませんか。これを承認されるや否や。
○国務大臣(大橋武夫君) 只今御指摘のような事態は條約によつて新らしく生じた事態ではないのでございまして、現在の日本国憲法が制定される当時から、即ちポツダム宣言受諾当時以来今日まで、事実上そういう状態が我が国としてはあつたわけであります。それで、それをこの講和條約におきまして一応法律的に整理をするという趣旨でございまして、これは、この條約によつて憲法を改正するというような趣旨とは考えておらないわけであります。私どもは憲法改正という問題を生ずる余地はないと考えております。
○兼岩傳一君 憲法を改正されるかされないかという、することがどうかということは、もうあなた、聞いてないのですよ。僕はこの事実を承認するかどうか。もう一遍繰返してよいのですが、日本国民にして日本国憲法の適用を受けないところの国民が百万ここにできる。従つて、これが條約によつてできると言つて悪ければ、條約によつてそのことが明確に確認されると言い直してもいいですよ、あなたが非常に気にしておられるようでありますから。(笑声)この條約がこれを習慣的に、形式的に、内容的のみならず形式的に、事実上のみならず法律的に、国内的のみならず国際的にこれを承認する。これを承認する結果としてこの日本の憲法を適用されない日本人ができる。即ちこの事実を承認される限りは、條約が日本国憲法に優先するという事実を同時に認めなければならんでしよう。そうでなければあなたの事物に対する認識を疑いますよ。
○国務大臣(大橋武夫君) 何度申しましても同じ説明に相成るかと思いますが、今回の講和條約は、従来ありました事実上の関係について一つの法律上の結論を付けたわけでございまして、これによつて新らしい出来事が起つた、即ち二十九度以南のこの領域について日本国憲法はもともと完全なる適用はなかつたわけであります、それをそのまま引続き承認するというのでありまして、これによつて新らしくそういう事態ができ上るという趣旨ではない、こう思うわけであります。
○兼岩傳一君 これは占領を継続されるということですね。それでは、あなたから注意を受けて非常に短かくやろうと努力して、大体十五分ぐらいで片付けようと思つておりましたが、大橋法務総裁が非常にああいう答弁をされる限り、時間が非常に延びて来たのであります。
 僕はもう一点お伺いいたすのでありますが、これも成るべく短かくやります。これは一般質問において総理へ質問をしたところが、木で鼻をくくつたような答弁さえもなかつた部分なんです。(笑声)そこで僕はそれを明確にしなければいけないと思います。これは私の義務だ。それは朝鮮の戰線に対して日本がどういう援助を従来して来、且つ現在しているかという問題について私は首相にお尋ねしたわけなんです。従来はしていない……、現に十月十九日の衆議院條約特別委員会で、我が党の米原議員が質問いたしましたところ、そこにおられる西村條約局長は、「朝鮮において日本が與えております物質的援助は、すべてコンマーシヤル・ベーシスで行われております。」こういうことを、こう、そらぞらしく答えておるんです。そうして同時にですよ、「文書の意味は、いわゆる占領軍に対する日本の分担すべき経費として負担しておるもの以外のものは、全部米国によつて負担するという趣旨でございます。」と、こういうことを言つておられる。ところが私が一般質問で明らかにしたように、この西村條約局長の非常によく知つておられる、僕の十倍ぐらいよいよ知つておられるこの吉田、アチソン交換公文によれば、「日本国は、施設及び役務を国際連合加盟国でその軍隊が国際連合の行動に参加しているものの用に供することによつて、国際連合の行動に重要な援助を従来與えてきましたし、また、現に與えています。」ということをはつきり言つているじやありませんか。あなたのように條約に精通したエキスパートが、どういうわけで衆議院でこういう、その事実と異なつた答弁をされたか。一つ詳細に明快に御答弁願いたいのです。
○政府委員(西村熊雄君) その点の説明でございます。現在朝鮮の軍事行動に参加いたしておりまする連合国加盟政府の軍隊のために、日本政府は或る種の施設便益を提供しておることは事実でございます。物資の購入以外に、例えば病院における療養、休養所の施設の使用等のごとき、然りでございます。併しそれらの使用に対しましても、合衆国の場合は占領軍でございますから、終戰処理費によつて日本が提供いたしておりますが、米国以外の国連加盟国の軍隊の兵員につきましては、対価を受けて提供いたしておるのでございます。コンマーシヤル・べーシスと全部を言つてしまうのは正確でないかも知れませんが、私は事実を曲げて御説明した次第ではございません。
○兼岩傳一君 語弊があるなどと言つてごまかさないで、コンマーシヤル・べーシスで行われているということは、これは商行為ですから、これは今問題の外です。問題は、交換公文によつて国際連合の行動に重要な援助ですよ、援助を従来與えて来たし、又現に與えていると、この点を、これは條約局長で若しこの点が不明確なら、私は委員長を通じてここでお願いしたいと思います。この交換公文において重要な援助を従来與えて来たし、現に與えているという、この内容の提示をこの委員会でお願いできるかどうか。場合によれば次官から拜聽したい。これをして頂かないと審議に差支えると思うのです。総理と相談して来ぬでもいいですか。いつも直ぐ立つじやないですか。立たんでもいいとき立つ。(笑声)
○委員長(大隈信幸君) 兼岩委員にお答えしますが、よく研究しまして善処いたします。
○兼岩傳一君 研究、そうすると、この答弁なしにはこの平和條約の逐條審議が終らないということを委員長が証明して下さいますか。
○委員長(大隈信幸君) いいえ、そういう意味ではありません。
○兼岩傳一君 では、どういう意味ですか。
○委員長(大隈信幸君) 政府と連絡をとつてその上で御返事を申上げます。
○兼岩傳一君 その返事によつてきまるというわけですね。そうすると、その返事に基いて、私がそれに対して更にこの見解、私は若干の準備をしておるのです。明らかに援助しておられるという事実について、私のほうでも調査が若干できておりますが、それは非常に不備なんです。従つて完全な資料を一つ御提示願いたいと思うわけなんですが、それじやその返事は保留いたしましよう。いつ返事が頂けますか。
○委員長(大隈信幸君) 至急に。
○兼岩傳一君 至急に。そうして、その返事を頂かないうちに一般質問になつたり、それから安保條約に行くということはないですね。
○委員長(大隈信幸君) その御返事も申上げます。
○兼岩傳一君 それも保留ですか。
○委員長(大隈信幸君) ええ。
○兼岩傳一君 それはですね、それじや、まあ少し困りますけれども、(笑声)一応委員長なり、草葉次官の非常に愼重な態度に免じて、返事を聞くまで僕の態度も保留いたしますが、それではもう一つあるんです。
 やはりこれと同様に重要な問題があるのですが、それは昨日、一昨日でしたか、楠瀬理事があなたの留守中に委員長をしておられたときにお願いし、且つ了承を得た問題なんですが、通産大臣が病気であり且つ御老体、御高齢、それで僕は高齢なる大臣を煩わさなくてもいいから、信用のできる政府委員をということをお願いいたしましたところ、一政府委員が出て来られまして、僕の非常に丁重な、問題点を非常に明確にした二つの質問に対して、二、三の数字を、例えば一七・五%だとか、一九三ミリのスチール・パーがどうしたとかというような、二、三の瑣末な数字を挙げて、何ら僕の質問に答えなかつたのみか、こういう一七・五%の問題であるとか、一九ミリ・バーの問題などについて資料を提出して欲しいということをお願いし、且つこれは楠瀬委員長代理がそれを了承して、明確によろしいと言われましたが一向その資料が出て来んのでございます。それが出て来ないと、私は通産大臣及び安本長官、できれば総理のほうがいいんですが、ずつとその前から一般質問以来問題を提起しておつた、中国との提携なくして東南アジアの開発が果してできるか、日本の経済的な独立ができるかという、この平和條約の根本的な質問、審議ができんわけですが、これに対して答弁を頂きたいと思います。先ず。
○委員長(大隈信幸君) その問題はたしか昨日の委員会で、どなたでしたかな、御発言があつて、通産大臣が来られて御説明になつておりますから、一応速記録を兼岩委員においてお調べを願いたいと思います。
○兼岩傳一君 速記録の問題じやないのです。通産大臣の最も信頼のある代理者と称して、僕は非常にそれは疑問だと思うのです。ああいう僣越な態度、ああいう非科学的は、国会議員を侮辱するような態度に対しては徹底的に糾彈する必要があると僕は考えておりますが、ああいう僣越な且つ独断的な政府委員に対して、然らば君の言うところの一七・五及び一九ミリ・バーの四万六千円、それから四万円、その数字の計算の根拠を出せ、いい、よろしい、出させますと委員長代理が明確に答弁されたけれども、今日まで待つていても一向出ないのはどうしたことかということです。
○楠瀬常猪君 その資料はまだ通産省から出て来ておりません、資料としては。
○兼岩傳一君 これは代理でない本当の委員長にお尋ねするのですが、(笑声)これを出して頂かんと、通産大臣の指名で大臣に代るべき説明員として出された政府委員の僕に対する、或いは国会に対する義務を果していないと思うのです。だから、これを出して頂かないと平和條約の審議が完結したものと認めがたいのです。逐條審議はこれも合せて御承認願えましようか。
○委員長(大隈信幸君) それでは直ちに連絡をとります。
○兼岩傳一君 それから、その次にもう一つ、それは更に重要な点なんですが、それは東京新聞のこの坂井特派員が挙げている九月二十七日ホワイトハウスの国家安全保障会議のレポート、これに基く報告がワシントンから来ておる。それに対して同じ政府委員は実に独断且つ傲慢な答弁をしておる。そんなものは嘘だ、こういう意味の……私は今そのときの速記を、政府委員の答弁を今記録部のほうに求めておりますから、それによつて更に明確になりますが、そんなことは、私はアメリカに八月までいたけれども、私ほど日本人でよく知つておる者はないというので、そういう神様みたいな顔をして、こんなものは嘘だという意味のことを述べておる。だとすれば、而もこの問題は、日本が将来、今日のような状態を続けていると、中国が、中華人民共和国がソ連ブロツクの中に供給を求めるようになつて、日本は中共の市場を、中国の市場を永久に失うのではないかということをもうすでにワシントンでも心配し始めている。こういう問題であつて、この問題はそういう一政府委員が傲慢不遜な態度で、このレポートは嘘だろうなどというような一片の独断を以て言うべきものでなくて、これは日本の経済政策の根本に触れる問題であり、安保條約の五條の問題の審議も、これを明らかにしなければ盡されないわけなんです。従つて若しこれが嘘であるとすれば、私は何も東京新聞を特別に弁護すべき何らの理由もないのですが、併し新聞が若しもこのような重大な一国の運命にかかわるような問題で、而もワシントンのホワイトハウスの正式な安保会議のレポートを、日本の政府委員が嘘である、真実でないという意味のことを公式の委員会で述べている以上は、この問題を明確にする、若しもそれが事実であれば、これは東京新聞はプレス・コード違反である、真実に違うところの報道であるのであるから、東京新聞は責任をとるべきである。若しもこれが事実でないならば、その政府委員会はこれに対して責任をとるべきである。どちらか責任をとり、且つ国民の前にこの中国との貿易関係についての重大なこのバトル法の内容、これに日本の及ぼす関係を明確にして欲しい。これも又先ほどと同様に委員長がこれを承認しておられたわけなんです。これは、この問題は私一人の問題でなく、恐らくどの会派のかたもこれは非常に重大な問題として考えておられることと思いますので、私はこの点も委員長がどういうふうに善処して下さるか。これを善処して下さらなければ、平和條約の逐條審議は終えないものと私は考えざるを得ないということを申上げて、委員長の一つ御答弁を得たいと思うのです。
○委員長(大隈信幸君) ちよつと速記をとめて下さい。
   〔速記中止〕
○委員長(大隈信幸君) 速記をつけて……。
○羽仁五郎君 ちよつと議事進行について……。
○委員長(大隈信幸君) 先ほど連合国財産の問題を問題にしたとたんに、兼岩さんの法務総裁の御質問に変つたわけですが、前に戻りまして……。
○羽仁五郎君 今の問題に関連して議事進行について発言を許されたい。第三條についての大橋法務総裁の御答弁を伺つている間に、この議事進行上非常な疑義を生じてしまつたのですが、この第三條の信託統治という北緯二十九度以南の南西諸島等に対する「合衆国を唯一の施政権者とする信託統治制度の下におくこととする国際連合に対する合衆国のいかなる提案」というものについては、先日来この外務当局からの御答弁では、これはできるだけ最小限度のものにとどめられるものと了解していいという御答弁があつた。で、本日大橋法務総裁の御答弁を伺つておると、これは最大限度に解釈せらるべきものであるような判断をせざるを得なくなつてしまつた。これは政府のこの條約に対する、殊に第三條に対する態度の非常な不統一として、我々はこの審議に大いなる不安を感ずるのであります。言うまでもなく條約の條文でありますから、嚴格に法律的に解釈しなければならないけれども、その法律的な嚴格な解釈が如何ように適用されるかについては、これは政治的な見地というものが無視されることはできないだろうと思うのです。この点については、政府は何らかの機会に一度明確に打合せられて、しつかりした御答弁を願いたいと思うのです。この第三條の條文をそのまま解釈すれば、大橋法務総裁が言われるように、最大限の適用というものを認めることになる。それで無限に眠つておるところの主権というものしかないということになるのですが、併しこの間から外務省局からの御答弁では、これについてはいろいろな交渉の経過もあり、できるだけその限度は必要にして欠くべからざる限度、事によれば信託統治にわざわざ御面倒を願う必要もないんじやないか。従つていかなる提案という中には、ノー・プロポーザル、何らの提案をされないということも含んでおるのではないかというように実は内々甚だ頼もしく伺つておつたのですが、今日の大橋法務総裁の答弁を伺うと、これは、やはり法律の條文通り嚴格に適用される、今度は「いかなる提案」というのは、あらゆる提案というものになつてしまう。何らの提案をなされる必要がないかも知れないというところと、どんな提案をなされるかということは、大変な不安です。この点は、一体、政府はどちらの態度の上に立脚されるのか。これは明確にならないと、我々はこの第三條というものについて、どう判断していいのかわからない。ですから、この点について一つしつかり御答弁に相成つて、はつきりしたところを一遍お答え願いたいと思うのです。これは内容的にも実際今申上げたことは、單に事実上の問題ではなくして、第三條というものが如何に言葉を飾つても、要するに占領の継続であろう。そして日本の民主主義が確立するか否かということを監視しているものだろう。即ち日本に侵略主義なり、軍国主義なり、何なりが再び起らないということを監視することを目的としているだろうと判断するよりほかに、如何なる判断も可能じやないです。従つて日本が真に民主化され、侵略主義、軍国主義、或いは警察国家主義、或いは予備隊の軍隊化というような心配が全くなければ、これはノー・プロポーザル、何らの提案がなされないことになる。併し眺めておれば、大橋法務総裁の御答弁で、大橋法務総裁の下における警察予備隊は、結局パラ・ミリタリーからピユーア・ミリタリーなものになつて行くし、警察国家は徐々に準備されつつあるところにもその形を現わしつつあるし、日本民主化というものは全くこれは信ずるに足りない。ただフールだけが、ばか者だけが日本民主化を信ずるのでしかないと国際的に言われるようになつて来れば、これは如何なる提案というのはあらゆる提案である。つまり日本が侵略主義になるかも知れないということに対して、非常に嚴格なここに監視をしなければならないということになるのだろうと思う。だから、これは單に解釈を統一されるということだけじやなく、現在の政府がその点において日本民主化というものに対する確乎たる態度を立てられて、そうして従つてその上に第三條が適用されるということ、その交渉の上においてもはつきりした自信のある態度をとられなければ、さつきの御説明のように、場合によつては何らの提案もなされないのかも知れない……。我々が、兼岩委員ばかりじやありません。これは大橋さんだつて、大橋さんの弟さんでも琉球の島にでもおられれば、もつといろいろ御心配になるだろうと思うのです。(笑声)そういう切実な心配が事によると全くないのかしらと思うというのと、そうじやなくて、非常にあるのじやないかという二つの両極端の判断を我々に與えておかれて、この審議を終了せよということはできないと思いますので、今の点について政府が十分お考え下さい。そうしてただ言葉の上でそれを統一するというようなことをなさらないで、今申上げたように、この問題の本質的な点は、日本民主化を進行させる上の政府の決意、又政府の態度というものがはつきりきまらなければ、これをどういうふうに政府は考えて行くかということはきまらないのです。これは私は恐らくどなたが聞いて下すつても正論だろうと思う。日本民主化というほうをぐらぐらさせておけば、このあらゆる提案はぐらぐらしてしまう。だから日本民主化のほうをしつかりして、それでこのあらゆる提案というものに対する日本の政府の態度というものをはつきりして頂きたいということを希望するのであります。
○国務大臣(大橋武夫君) 私は西村條約局長乃至は草葉外務次官からの御説明を承わつておりませんでしたので、或いは私の申上げた趣旨と、かなり感じとしての食い違いがあつたかも知れませんが、私の申上げた趣旨は、これは條約の案文の法律的な説明をいたした次第でございます。この法律的な説明といたしましては、一応あらゆる提案が可能であるという條文になつておるわけでありまして、そういう意味で合衆国の権利が規定いたしてあるわけであります。併しながらこの権利を合衆国が如何に行使をするかということは、これは法律論を離れました実際上の合衆国としての政策的な問題となるのでありまして、この点につきましては、外務当局として條約の締結に当りまして実際接触せられました上から、いろいろな含みについての或る程度立ち入つた根拠ある推測もあるわけでございましよう。その点につきましては論外としての法律的な説明をいたしたわけであります。併しながらいずれにいたしましても、この問題についての御心配の点は審議の上において極めて重要な問題であると存じますから、なお外務当局の答弁も十分調べまして、又外務当局と十分打合せをいたしました上で、その辺についての御疑念を一掃するような答弁を他日に準備いたしたいと思います。
○羽仁五郎君 今大橋法務総裁のほうからお答えがあつたのですけれども、外務省のほうでも十分考えて頂きたいと思うのです。それで具体的な問題として、例えば法務総裁もその点十分認識して頂きたいと思うのですけれども、警察予備隊が持つ武器というようなものは單に国内的な問題だけじやないと、どうしても思うのです。これはあなたも明敏な頭脳をお持ちだから御了解になると思う。警察予備隊がバズーカというようなものを持つのは、国内的な問題だけではなくて、これは直ちに国際的な或る種の判断を導いて来ます。それで、それがパラ・ミリタリーというふうに理解されれば、日本は事によると再び軍隊を持ち、侵略主義になるかも知れない。そうすれば小笠原より、琉球に相当の軍事基地を置いておいて、日本がちよつとでも軍国主義、侵略主義になれば、直ぐ潰せるようにしようというふうに考えるのはこれは当然だと思う。ですから、日本の国内態勢が、警察の問題にせよ、予備隊の問題にせよ、或いは団体等規正法案その他ゼネストとか、そういうものについて一々あなたが、勿論今日も單に国内問題としてではなく、国際的な影響も十分考慮されておると思うのですが、併し具体的にそこに一つの或る特徴が現われて来れば、これは直ちに南西諸島における信託統治の蔭にかなり嚴格な信託統治がそこに及ぼされ、そこにおられる百万なり何なりのかたがたに対しては、相当にシヴイアな信託統治というものが来るのだ。それは南西諸島だけじやない。日本全体の、日本国全体の地位に対して相当シヴイアなものが来るのだ。このことは極めてデリケートな関係があるということを十分御承知になつているでありましようが、そういう点からも、今の第三條の場合ですね。いわゆる潜在主権或いは米国合衆国からの如何なる提案というものに対して、政府が今まで特に全権並びに首席全権のとつて来られたところの態度というものと、それからなかんずくそういう治安とか、警察とか、予備隊とか、そういうものと関係のある、つまりパラ・ミリタリーな問題と関係のある大橋法務総裁とが十分な連絡をとられ、折角一面において民主化ということをやつているようであつて、他面においてその軍国主義、侵略主義の復活という疑惑を招いて、従つてこの第三條のアメリカ合衆国のなすところの提案というものが、日本にとつて極めて苦痛に満ちたものにならないようにすることが必要だと思いますので、特に今の点を十分御考慮下さつて、只今法務総裁のお答え下さつたように、本條約の審議の過程において、我々がもつとはつきりした根拠を持つて判断をなすことができるようにして頂きたいと思うのであります。
○委員長(大隈信幸君) では連合国財産補償法案につきまして御質疑のあるかたは御発言願います。但し本案は大蔵委員会で只今審議中でございますから、その辺をお含みの上で御質問を願います。
○羽仁五郎君 この連合国財産補償法案については、先日これと本平和條約第十九條との関係において私は質問をしたのでありますが、そのとき政府の御答弁は極めて形式的な御答弁であつたので、そのときの御答弁は、大蔵大臣が、日本は戰争に負けたのだから理窟を言つても仕方がないというような御答弁であつたと思うのです。こういう戰争に負けたのだから理窟を言つても仕方がないという考え方は、戰争に勝てば何をやつてもいいという考え方とも連絡して、国際法の近代的進歩も何もありはしない、実に野蛮な御答弁で驚き入つたのですが、我々はそういうことで、この第十九條についても、それから連合国財産補償法案についても態度を決することはできないのです。これは先日も申上げましたが、本委員会が参考人からの御意見を伺つたときにも、名古屋大学の山下教授がこの点について特に所見を述べられたのです。これは第十九條のほうでは、日本の例えば東京なり何なり、日本国において無差別爆撃或いは原子爆撃というものによつて、国際法で以て正当な戰争の対象として爆撃が行われている場合ではない場合に生じた損害、これに対しては無差別爆撃を行なつた国、即ち第十九條の場合にはアメリカです、アメリカに対して、日本の国民或いは日本国が、その無差別爆撃によつて受けた損害の賠償に対する請求権を放棄するということが書いてある。そして、これを放棄するということは、普通の今日の国際法の常識からは考えられないことなんだが、併しこれは日本が戰争を始めたということにおいて極めて広汎な解釈をとつて、この第十九條の(a)項には「日本国は、戰争から生じ」という極めて広範囲の言葉を使つて、その中で無差別爆撃に対する国際法上の規定、又それに伴う責任というものを、ここで戰争責任というものによつて蔽つてしまつている。これは私は果して、第十九條が、折角我々の先輩国が粒々辛苦して実現して来た国際法上の進歩というものに対して、第十九條がその進歩というものを無にしてしまうものであつては、日本が関係する限り、そうして又我々が関係する限り、許されることのできないことだと思うので、そこにも一つ問題がある。
 ところが、この問題が一層その難解な問題になつて来るのは連合国財産補償法案であります。こつちのほうになつて来ると、今度は、日本において特定国の例えばAならAという国の行つた無差別爆撃に伴つて生じた損害の補償というものが、その無差別爆撃を行なつた国であるAという国に向つてではなく、その無差別爆撃をこうむつた日本にその責任が来るということになつて来る。そうすると、これは、もはやこの第十九條との関係から今の連合国財産補償法案というものの関係に来ると、これは我々がいわゆる国際法の進歩というものから考えて来る考え方は、いろいろな点において極めて理解の困難なものになつて来るのじやないか。而もこの條約の中で、内閣が決定し、まだ国会にもかけられない、従つて国会がこれを可決するか否決するかわからないその法案が引用されて、そして、それが基準とされているというような問題をも含んでいる。
 以上の大体重点は三点あると思うのですが、この十九條で、それから、それとの関係における連合国財産補償法案、それからこの連合国財産補償法案という、閣議で考えられていた程度であつて、国会にまだかけられていないものが平和條約の中に入つて来るというこの点、この三点について政府の見解を伺いたいと思います。
○政府委員(西村熊雄君) 第一点だけは外務当局のほうから御答弁申上げたいと思います。第十九條の(a)によりまして、羽仁委員が御指摘になりましたように、従来の戰争法規から見ますれば日本に賠償請求権を発生させますような戰争行為から生じた日本国又は日本国民の請求権が放棄させられたことは遺憾に存じます。何と申しましても現在の人類の文明の段階におきましては、戰争のあと勝者と敗者との間に全く相互的に平等な、同等に人道的な原則によつて和平解決が行われるところまでは、まだ到達いたしておりません。でございますので、敗戰国の立場としては、如何に公正、如何に寛大な平和條約といたしましても、国民といたしまして、又政府といたしまして苦痛と感ずる点が数多あることは、これは否めないと思います。第十九條の規定のごときもその一つでございまして、政府といたしましてはこういう規定が入らないことを希望いたしはいたしましたけれども、ヴエルサイユ條約の規定、対イタリアその他四国の平和條約におきましても、やはり戰敗国といたしましては、戰勝国に対し、戰争から生れる国又は個人の賠償請求権を放棄させられて来ておるのでございます。日本もこれを容認せざるを得なかつた次第でございます。その点は御諒察願いたいと思います。残りの二点につきましては、大蔵当局のほうから御答弁申上げます。
○政府委員(内田常雄君) お尋ねの第二点についてでありますが、アメリカ即ち連合国の無差別爆撃等によりました連合国財産の損失を日本側が負担することは、如何にも公正でないようにも感ぜられます。この点につきましては、第一次大戰のヴエルサイユ條約のときにもドイツ側からいろいろ問題が出たと聞いておりますが、敗戰国といたしまして、その敗戰国自身の軍隊が與えた損失のみならず、その交戰国の與えた損失も敗戰国が補償するということでヴエルサイユ條約ができておるのでありますが、更に下つて一九四七年のイタリア條約、ブルガリア、フインランド、あのときにできました第二次大戰後の処理におきましても、同じことが再び問題になつたようでありますけれども、結局におきましては、それらの第二次大戰後の條約におきましても、敗戰国側が交戰国の戰争行為による損害も補償をすることになつております。それを受けまして、我が国との平和條約におきましても同じような形がもたらされたのでありますが、ただ私どもといたしましては、イタリアその他の條約と同じ建前をとるにいたしましても、その損害の補償の範囲、或いは補償の原因等をでき得る限り限定いたしまして、究極において補償を要する額を成るべく狹める。こういう方法をとることに努力をいたしました結果、別に提案いたしておりまする連合国財産補償法案におきましては、人に関する限定、戰争損害の原因に関する限定、その他損失額と補償額というものを観念上違えまして、損失額からいろいろな理由の立つ金額を差引いたものを補償額とするというような規定を設けまして、その間でき得る限り我が国の負担を小さくするように努めて処置を講じております。
 このイタリアの條約、これは他のフインランド、ルーマニア、ブルガリアと皆同じ恰好でありますが、この先例になつておる條約におきまして、補償の原因になる戰争損害につきましては、この條約の規定上必ずしも明確でないのでありますが、連合国側からイタリアに示されましたその解釈の規定が我々の記録にあるのであります。それを御参考までに申上げますと、イタリアその他の国が連合国財産について補償しなければならないものは、イタリア政府によつてとられた一切の原因、並びにイタリアとの一切の交戰国の行動によつてとられた原因、並びに一九四三年九月三日の休戰に関連してとられた一切の行動に基因するもの、並びにイタリアとの間に戰争があつたことに基因してとられた一切の作為若しくは不作為に基く損害のすべてをイタリア側が補償する。こういう解釈がイタリア側に示されておるのであります。私どものほうは、それを連合国財産補償法案の第三條及び第四條におきまして、今回の交渉の相手方であるアメリカ側と随分長い間の打合せをいたしました結果、だんだん限定を付けまして、損害の原因は第四條に明確に挙げ、又損害の補償を受け得る者は連合国人一般としないで、連合国人の中で身体が逮捕又は抑留せられたり、又財産を沒收されたり、処分されたり、いわゆる戰時特別措置、即ち日本には適用せられなかつた、敵国人を対象とする特別措置の適用を受けた連合国人に原則として限るというような規定を置きまして、事実上この間の調整をとつた次第であります。
 お尋ねの第三点の、條約の中に法律を制定する、こういう約束をしておることでありますが、これは羽仁委員も御記憶と存じますが、平和條約の草案が三度ばかり変つております。私どもが第一に示された條約の草案は七月十三日の案でありまして、それが七月二十日案という第二次の修正案になり、更に八月の十五日に平和條約の案という、その「案」の字がとれまして、九月八日に調印された。同じ形のものがアメリカ側から送られて参つたのでありますが、この三つとも皆発表をせられておりますが、第一回、第二回までの草案におきましては、只今承認のためにこの国会に出されておるこの十五條の書き方とは少し変つておりまして、日本国は、「日本の国会が一九五一年何月何日に法律第何号として制定されたその法律手続に従つて連合国財産を補償する。」こういう書き方になつておりまして、月日の欄と法律の番号が空けられておりました。このことは、更に遡つては、これは午前中に申上げたのでありますが、補償に関する規定は、イタリア條約その他の條約と同じように、條約自身の中に相当長い規定を置くことが予定せられておつたようでありますが、相手国が数十カ国あり、且つできるだけ早く各国の足並みを揃えて調印を促進するという立場から、手続的な事項はむしろ條約から削つてしまつて一時は附属書のような形も研究されたのでありますが、それにしてもこの條約の一部分をなすものでありますが、條約及び附属書から削りまして、日本の国内法を以てきめるという形がとられることの打合せが付いたのであります。その国内法につきまして連合国側と打合せができまして、その打合せができたものが七月十三日の閣議できめた案ということで、その第十五條に示されておるものであります。即ちこの案自体は條約自身の中に入るべきものであつたわけであります。そこで、それを法律といたします際に、條約が調印せられる前に国会が補償に関する手続法を制定公布するということは、條約との間にかなり疑義のあることで、日本側の内閣といたしましては、調印前にさような法律を国会に提案することも適当でないと考えましたし、又連合国側におきましても、少くとも調印前に、條約の内容に織込まれるであろう原則を前提とした補償の手続法を、日本が先に作つてしまうことは不適当だということになりましたために、最初の二つの案が、最後になつて條約の確定案が発表せられまして、今後日本側が措置を講ずる。その措置の講じ方は、七月十三日に示された閣議の決定案よりも不利でない内容を持つべきものである。従つてこの関係は、嚴密に法律的に申しますと、十五條はそういう法律を作るという書き方でなしに、閣議できめた要綱の内容よりも不利でない補償の措置をとる手続を進める、こういう書き方になつておるわけでありますが、事柄が補償の内容を持つ手続法でありますから、法律として條約と同時に国会に提案して、立法の措置をとることが適当であると政府は考えましたし、又過去の経過から申しまして、法律として政府、国会一致の手続によりましてこれを公布するということが、連合国に対する安心を與える措置でもあると考えますので、このような法律にして提案したわけであります。
○羽仁五郎君 只今の御答弁で、私のさつき伺いました三点について、三点とも日本の政府当局としては極めて遺憾であるというように考えておる、そういうように判断してよろしいのかというふうに考えるのでありますが、そういうような遺憾な状態が発生して来たということについて、政府に今一層深く考えて頂かなければならない問題がここにあるのじやないかと思うのであります。この平和約の案がサンフランシスコ会議で提案された当時に、アメリカを代表されてダレス氏が、或いはトルーマン大統領もそういうことを言われたかと思いますが、この條約は大変よくできた條約であるというように、御自分で御自分のお作りになつた條約を褒めておられた。普通論理上は、自分でこしらえたものを自分で褒めるという場合は、実は余りよくできていないということを論理的には判断されることになるのじやないか、本当によくできておればそういうことを言われる必要もなかつたのじやないかと、客観的に考えられるわけなんでありますが、それは我々には関係しない問題でありますから批評しないとして、我々の問題として政府に十分考えて頂くべきであつたということは、和解と信頼というような言葉を以てこの條約を形容して、そうして日本国民にそういう印象を與えて、そうしてこの実際の個々の條文においては、極めて嚴格な、只今も西村條約局長も率直にお認めになりましたように、国際法の進歩には一致しない極めて苛酷な、そうして苦痛な、従つて決して和解と信頼ではないところの事実を以て臨まれるということは、実際上において平和條約が今後国民に與える影響というものも恐るべきものがあると思うのであります。これは私は第一次大戰後に、ヨーロツパ特にドイツにおりまして、当時これらの問題について事ごとにドイツ国民がヴエルサイユ平和條約を要求した国々に対する深い怨恨の感情というものを抱いていたことを日日に実見したのであります。その結果がドイツ国内においてナチズムというものを発生させたのであります。これは今回ダレス氏も、そういうことを繰返してはならない、そういう意味でこの平和條約を和解と信頼の平和條約だというふうに呼ばれておるのでしようが、いわゆる「ばら」は如何なる他の名前によつて呼んでも、やはり「ばら」であるというように、信頼と和解の條約であるというふうに呼ばれても、各項目において苛酷な内容を含んでおることは、国民が今後の世界の平和体制に復帰して行く上に、又日本の民主主義が確立されて行く上に、非常に問題があるのではないか、その点が第一。従つてむしろ、そういう意味では和解と信頼という形容詞は有難く辞退して、そうして第二に、日本は戰争責任というものをはつきり明確に、国民としても、国としても認めたほうが、遙かによくはなかつたか。本日法務委員会で法務総裁がお述べになりました戰争犯罪についての御見解も、法務総裁は非常に注意深く述べておられたのでありますけれども、併しそれに対して質問を行なつておられる議員なり、或いは脇から傍聽しておりますかたが、あたかも法務総裁が、ニユールンベルグなり、東京において行われた国際軍事法廷において確立された戰争責任の原則というものを十分にお認めにならないかのような感じを受ける虞れがあつたのではないかと思うのです。私は法務総裁がそういうお考えの上に立つておられるとは思わない。法務総裁はこの国際軍事法廷によつて規定されたところの戰争犯罪というものは、国内法の関係ではないというふうな御答弁を、繰返し愼重に言つておられたようですけれども、併しその間に、或いは国民の中に、ニユールンベルグなり東京において確立された戰争犯罪に対する国際法上の明確な規定というものをあいまいに考えることを、或いは許すような危險があつては大変だと思うのです。その意味で戰争犯罪についての明確な……現在の国際法の進歩から戰争犯罪として客観的に、そうして又国際的に、日本国民として明確に認むべきもの、それから認むべからざるものは、はつきりして置いたほうがよいのではないか。これをはつきりしておかないと、むべからざる戰争責任というものを認めるということになり、又はつきり認めなければならない戰争犯罪というものまでも、認めないというような危險が生じて来る虞れがあるということを、政府当局もお認めになるだろうと思うのです。我々がニユールンベルグなり、東京裁判において明確に認めなければならない戰争犯罪或いは戰争責任というものと、それから平和條約の中の、例えば十九條において現われて来るような、十分議論の余地のある、そうして政府御自身も甚だ遺憾である、それは率直に言えば認めることはできないというような戰争責任とが混同してしまいますと、折角多大の流血、又深刻な悲惨というものを以て確立せられた戰争犯罪及びその責任の個人的追及ということに対する原則までが、我が国民の間に妥当に理解されない、或いは認識されないという虞れを生ずるのではないか。こういう問題は現在事実我々の間にしばしば起つております。例えば二、三週間前だつたと思います。東京日日新聞に、大宅壯一君の「地方の蛙の声」という随筆の中で、地方を旅行して民衆に向つて話をしていたときに、民衆から武者小路実篤というかたは戰争責任というものから特定の処分を受けておられたかたですが、而もその特定の処分、メモランダム・ケースというか、かなり重大な処分を受けられておつたわけです。ところが、その処分が解除されたと同時に、直ちに文化勲章というものを受けられる。これは国民がこの事実を目の前に見て、一体どういうことなんですかということを、大宅壯一君に向つて質問をしておる。大宅君は率直に、自分はこれに対してはつきりした答弁をすることができなかつたと言つて嘆いておられるのです。かかる一つの事例を見ましても、戰争犯罪或いは戰争責任というものが、現在平和條約というものを政府が締結しようとしている際に、この戰争責任について、国際的に客観的に、我が国、我が国民としても明確にこれを認めなければならないものと、それからそうでないものと混同を生ずるということは、私は非常に大きな問題だろうと思うんです。これは、この平和條約の締結そのものの本質に関係する本質的な問題であろうと思うのです。何故に政府は、和解と信頼というような形容詞のほうを頂載することではなくして、この平和條約において明確に、国際的にも、そうして客観的にも、理論的にも、又我が日本国民としても認めるべき戰争責任というものを認め、従つて認むべからざる戰争責任というものは認めないという明確な態度をおとりにならなかつたのか。この点について政府の態度の御説明を頂きたいと思うのであります。
○政府委員(西村熊雄君) 平和條約におきまして、明確に日本の戰争責任を認めるべきではなかつたろうかという御意見のようでございます。私どもこの條約作成に参與をいたした者といたしましては、條約に日本の敗戰の事実乃至戰争についての責任に言及されることがないことを熱望いたした次第でございます。責任を明確にいたしますれば、自然内容には懲罰的な條項が入ることになるのは自然の結果でございましよう。私どもといたしましては、終戰以来すでに六年、降伏文書によつて誓約いたしましたことを忠実に履行いたしまして、サンフランシスコで多数の連合国代表が言いましたように、すでに平和愛好国の一として国際団体に復帰を許される資格ができておる、すでにそういう時期に来ておる、こういう見地に立つておるわけでございます。そういう平和愛好国になり切つた日本と平和條約を結ぶという考えで、この平和條約が作られたことを、むしろ愉快に存じておる次第でございます。御指摘のように、和解と信頼の條約とは申しますけれども、その内容に日本国民として苦痛に感ずる点があることはこれは否めません。吉田全権もサンフランシスコでその演説の冒頭で率直に申されたことでございます。日本の立場から言えば苦痛である條項乃至は理由がないと思われる條項も入つております。併しこれは第二次世界戰争のような大きな戰争のあとの平和解決に際しまして、五十以上に及ぶ関係国のそれぞれの主張を調整しまして、敗者、勝者の差別のない理想的な和解の平和條約を作ることは、如何に超人的努力を以てしても、現在人間が到達しておる文明の段階では不可能であろうと思うのでございます。我々としては、ダレス全権その他がこの平和條約におきまして、日本に課せられる負担が軽くなるよう努力された次第を熟知しておりますので、羽仁委員の持たれるような感じは持ち得ない次第でございます。
○羽仁五郎君 政府委員は私の質問の意味を取り違えておるようですが、この認めるべき戰争責任は認めるということをしなかつたために、認むべからざる戰争責任を認めなければならないような事態に立ち至つてしまつたのではないか。そうして、その認むべからざる戰争責任というものを、国民に認めさせるということは、非常に困難だというのです。それで、しばしば政府は敗戰国であるから止むを得ないということを言つておられますが、今日の国際法的な観念から言えば、敗戰国であるから筋の通つていない問題でもこれに屈服しなければならないということは、私は妥当じやないと思うのです。それで、現在いわゆる敗戰国であるからとおつしやるならば、あなたはニユールンベルグなり東京の裁判はいわゆる勝者の法廷であつたというふうなお考えに、まさか、ならないだろうと思うのです。そうでないとするならば、そこで確立されたものは、いわゆる昔の勝者の法廷に代つて、今日国際法の理念による法廷というものが確立して来たのだと考えるほうが正しいと思う。従つて我々としても、そういう国際法上の進歩に伴つて国際的に認められるところの戰争責任というものについては、日本国としても、これを認めることは、名誉でもなければ不名誉でもない、当然のことであつてて、そして、それを明らかにすることによつて、却つて、国際法の最近の進歩によつて認めるべきではないとされておる戰争責任を我々が認めなければならないという、苦しい状況に立至ることを防ぐことができたのではないか。やはり何と言つても條理に合わない條項を受諾するということは、どうしても国民の間に反感が発生して来ることは、あなたもお認めになるだろうと思うのです。そして筋の合わない條項を無理に受諾させられることから来る国民の反抗或いは反感或いは不満というものが、いわゆる非民主主義的な方向に行く危險の多分にあるということは、あなたもお認めになるだろうし、サンフランシスコ会議に参加された国国の多数もお認めになることだろうと思うのです。却つて表面上において……、さつきあなたが名誉という言葉を取消されましたが、表面上において快いような体裁を作るために、個々の條項においては、これは第十九條だけではありませんけれども、併し第十九條においてもそうですが、実際においては、国際法的に、客観的に、又国民としても認めることは無理であるような戰争の責任を、国民に負せるということになる。なつているじやないか。そして又、その結果には恐るべきものがありはしないか。さつきから政府はヴエルサイユ平和條約或いはイタリア平和條約の場合を頻りと言われますが、日本の場合は特に原子爆撃に関する問題もある。この原子爆撃の問題につきましては、当時トルーマン大統領自身が、この原子爆撃について全責任は自分が負うという態度をとつておられる。この問題につきましては今日まだ国際法的に解決には立至つていないのです。併しその過程において結ばれる日本に関係するこの平和條約というものについても、我々としてはその問題についての考慮というものを持たなければならないと思うのです。それで、実際に戰争に責任を持つ、或いは戰争に直接の関係のある者に対する戰鬪行為というものと、それから戰争に直接の関係のない人々或いは物件に対する戰鬪行為というものが、今日では原子爆撃などにおいて特に非常に大きな問題になつて来て、従つて原子爆撃というものは国際法的にも禁止せらるべきであるという考え方が有力になりつつある。こういう問題とも関係して来て、この第十九條なり何なりは非常に重大な問題を含んでおるのであります。従つて我々としては、或いは日本としては、明確に、理論的にも国際的にも、又日本国民としても、常識的に率直に認めるべき戰争責任というものを認めることによつて、却つて、あいまいな或いは客観的に認めるべきでない戰争責任というものを、強いて承認させられるという非常に不幸な事態を引起すことを避け得たのではないか。それが先ほどの私の質問の趣旨であつたのであります。この点については恐らく政府もお認めになるべきではないか。私は、戰争責任というものを、特に日本として認むべからざる戰争責任というものを強いて認めさせられるということから生じて来るさまざまな有害な影響というものを、政府がまさか認識しておられないのではないと思う。そういう意味で今の点を伺つているのであります。
○政府委員(西村熊雄君) 羽仁委員の御意見は、この平和條約におきまして、日本が戰争責任を明確に認めまするならば、連合国において、平和條約において日本に課す責務、例えば十四條による賠償責任、十五條による連合国財産に対する補償責任、十九條による対連合国請求権の放棄というような面におきまして、軽減されることができたのではなかろうかとの前提に立つておられるようでございます。私どももそれは望みますけれども、実際の話の経過から見ますれば、連合国の一部におきましては、対日平和條約において日本の戰争責任を明確にすべしという主張をした国があることを知つております。又そういう国が考えておりました対日講和の條件は、この平和條約に比べて遙かに苛酷なものであつたということも知つておるわけであります。でございますから、羽仁委員の立論の前提が成り立たないと思う次第でありまして、日本といたしまして、日本の戰争責任、それから来るところの贖罪的行為は、降伏文書と、そのあとの過去六年以上に亘りまする日本国民の経過した苦難によつて十分果されていると私は存じます。その事実の上に立ちまして、連合国は和解と信頼の精神の上に立ちましてこの平和條約を作つてくれたと考えておるわけであります。この平和條約から来る財的責任が重い面があることは、私は率直に認めます。併しながらそれは、平和條約におきまして日本の戰争責任を明らかにすべしという立場をとつた連合国の考えていた平和條約から比べれば、極めて軽くなつている、日本に寛大になつていると御答弁申上げたいと思います。
○羽仁五郎君 私の言うのは、この問題に限らないのですけれども、この十九條なり或いは連合国財産補償法案にしても……、連合国財産補償法案については、さつき大蔵省のほうから、日本政府としてはできるだけこれを最小限度にとどめるために非常な努力をされたということを、イタリアの場合と対比されて御説明になつた。その点、大いに諒とするのですが、この平和條約の各條項が実施せられるときに、これは、さつきの信託統治の場合なんかでもそうですが、各條項が実施せられるときの交渉といいますか……こうした日本国民に対して客観的に理由のない苦痛が與えられることからは恐るべき影響が生ずるのですから、その客観的理由のない苦痛を與えることを最小限度にとどめるためには、一定の理論的な根拠というものがなければならないじやないかというのです。だから、戰争責任を何にも認めないというような、裸でそういう交渉をやつて、それでとにかくいわゆる信頼と和解だというようなセンチメンタルな気持では、その交渉を合理的な根拠の上に立つてやつて行くことはできないだろうと思う。ですから、それらの交渉をやつて行くときに、日本としては、先日も條約局長が高邁な識見をお述べになりましたが、国際法上の最高の原則というものを絶えず楯にとつてそうして交渉して行くということがいいのじやないか。従つて和解と信頼というふうな国際法上の最高の原則というようにまだ必ずしも確立されていないものでなく、戰争責任については国際法上確立された最高の原則というものがあるのです。だから、そういう理論的な根拠の上に立つてこの條約の交渉をやり、或いはその実施に当つて交渉して行くということが、根拠のない苦痛が国民に與えられ、従つて国民が根拠のない反感を抱いて来るという危險を防ぐ最善の方法ではなかつたかというように伺つておるのであります。
○政府委員(西村熊雄君) 残念ながらその点については見解を異にいたします。
○委員長(大隈信幸君) 途中でありますけれども、先ほど羽仁委員からの御質問に対して保留されておりました大橋法務総裁の御答弁があります。
○国務大臣(大橋武夫君) 先ほど南西諸島に対しまする信託統治に関する米国の提案の範囲、程度につきましては、條約の文面におきまして「いかなる提案にも」、こういうふうに書いてありまして、無制限に拡大するような感じを與えておる。この点についての御質問があつたのでございまするが、條約の文面にありまするところは、先ほど私の述べた通り、法律上の権利としては相当大きな権限が合衆国に認められておると存じます。ただ併し、合衆国としてこの権限を行使いたしまして現実に信託統治を行う際におきましては、でき得る限り日本国民の希望に副うてその施政を行われる。従つて従来の施政のいたし方につきまして不必要な非常に大きな変化が出て来るという心配はないと思うのであります。ただ併し、この合衆国の施政のやり方というものは、住民の風習、希望、慣行、或いは日本国民の希望というものを尊重するという見地に立つての米国の政策的な考慮に基いて行われるものでありまして、條約上の権利といたしましては、合衆国には文面に掲げられたごとき権利が條約によつて行われる。従いまして、そこで仮に従来の日本の統治のやり方が或る程度まで尊重され、現実に行われるといたしましても、それは合衆国の自主的な意思に基いて行われるのでありまして、日本憲法の法的効果として行われるものではない、こういうふうに考える次第でありまして、この点につきましてはなお外務当局から補足して説明があるはずでございます。
○政府委員(西村熊雄君) 第三條の意義につきまして、法務総裁は御質問に答えられまして純粹に法律的の見解をお述べになりました。外務当局といたしましては、交渉の経過を念頭に置きまして、同條の実施に当つては、同地域が日本の領土の一部として残され、その同條の規定の下において許される範囲内で、できるだけ日本国民の要望に副う実際的措置が両国政府の話合いによつて案出されるであろうと思う次第を述べた次第でございまして、純法律問題としての法務総裁の見解と異なる見解を持つものではございません。
○羽仁五郎君 只今のような御答弁があるのじやないかというように心配して、先ほど少し失礼に亘るぐらいに念を押しておいたのですが、実際問題としてこの南西諸島に我々の同胞がおる。その同胞の現実の苦悩というものを考えるときに、これが最小限度にとどめられ、或いは何らの提案がなされないということを希望するということは、これは政府もお認めになるだろうと思うのです。今のような御答弁で我我が満足するということは、ちよつとこれも甚だ御無理じやないかと思うのですね。それで、私はさつき申上げたのは、何故に信託統治が行われるのかというその理由ですね。それを我々が、又政府当局がはつきり認識することが、この信託統治を最小限度にし、願わくば信託統治が行われないという幸福な結果をもたらす唯一の方法じやないか。そうしてこの信託統治の目的が日本民主化の監視にあるということが明瞭であるならば、政府は日本民主化に対する明確な決意、そうして態度というものを立てて、それを楯にとつて、この信託統治が最小限度にとどまり、或いはこれが行われないように要請するという御決意はないかということを伺つたのです。その点において政府の御答弁が統一せられることを希望したのでありますが、只今のような形式上の御統一では問題は解決していないと思いますので、なお一つこの本條約の審議中に我々をして審議に十分なる根拠を與えられんことを希望いたします。
○岡田宗司君 連合国財産補償法案につきまして大蔵省管財局長に若干お伺いしたいと思います。この補償法案は今大蔵委員会で審議されることになつておりますが、そこに出されました資料を見てみますと、大体補償見込金額といたしまして、建物十六億円、動産八十七億円、株式百十四億円、預金一億円、債権五千万円、工業所有権五十億円、合計二百六十九億円となつておるのであります。これは恐らく大蔵省が日本側の推定に基いて作成した数字だろうと思う。まだ他国からの要求として出されたものではない。この日本側が推定いたしました数字と連合国側のほうから要求される数字との間には恐らく評価に相当食い違いがあるのじやないか。日本側といたしましてこれをできるだけ低く見積るという御努力をなされたに違いないと思うのでありますが、連合国側から若しその要求があつたといたします場合に、大体その推定はどれくらいになるものか。先ずお伺いしたいと思います。
○政府委員(内田常雄君) 資料として配付をいたしましたこの補償見込額の二百六十九億という数字は、お尋ねのように全くこれは私どもの側における現在の肚積りでありまして、多少上にも下にも動く可能性は十分あると考えます。この数字の出し方はお配りした表の一番上にも載つてはおるのでありますが、大体この法律の構成上補償の義務を日本側が持ちますもののうち、中心になりますものは、当時の、昭和十六年の敵産管理法によつて連合国人の財産を管理処分した、さような原因によるものに戰災が加わつたものが中心でありますから、敵産管理された財産がどのくらい当時あつたかということを、戰争中の敵産管理委員の報告書を集計いたしまして、一応求めまして、然る上、一旦日本人たると連合国人たるとを問わず極めて大ざつぱの大数観察ではありますが、建物なり、動産なり、その他の財産が法律に掲げておるような原因でどのくらいの割合の損害を受けておるかということを見まして、更に若干の連合国財産につきましてモデル調査をいたしましたものを噛み合せまして、さようにしまして、その結果を、戰争当時のこの敵産管理財産の価格と、その後の物価の変遷、再取得価格の変遷というようなものを噛み合せまして、一応見当で作つた数字でございます。お尋ねのように、又この法律の仕組みが、この補償は日本側が当然の義務として、手続上先方の要求がなくてもやつて参ることはしないで、法律案の第十五條にありますように、向うからの請求を待ち、それの立証、又必要なる書類は連合国人側に用意をさせまして、それをこちらが受けて立つ、こういう仕組でございますから、上にも下にもこれは動くことがあると考えるわけであります。尤もこの数字そのものにつきましては、これは連合国側と何も打合せしたものではございません。この法律案そのものは、初めにも申上げましたように、條約案の内容の、或いは條文にもなつておりましたものを外したために、この法律案といたしましては十分打合せを遂げましたが、この法律案でやつた場合にその補償金額がどのくらいになるか、日本側は二百六、七十億円と思つても、連合国側はその範囲で満足するかどうかという打合せは全くやつておりませんから、先方の評価の仕方、或いは請求の出し方……、殊にこの補償の問題は、この法律案の第三條にもあるのでありますが、先に連合国財産で日本側が管理処分をしたものは、それを先ず第一に返還をして参る。連合国人はその返還を受けて、返還の結果、損失のあつたものを補償請求をする。その際に返還の請求がなかつたものは補償の請求権は放棄したものとみなすというような規定も置いてあるのでありまして、先ず返還してかかつて来、その返還された物について損害をどう見るか。更に損害を彈いたものからこの法律案の随所にありまするいろいろな控除金額等を引いて、どう補償額を見るか。その間、返還を期限内にしないでしまつたものも多少は出て来るかも知れないし、その返還の関門は通つても、補償の期限から補償の利益を失う場合も出て参りましようし、その辺十分動く可能性はあると存じます。一応大体の見当で申しまして、そう大きくは開くまいと考えております。なお又、この法律案の十九條におきまして、総体の金額が幾らになるかにかかわらず、日本の財政負担の関係もありますので、一会計年度においては百億円以内だけを予算に計上して、その範囲で何年かにずらして補償すると、こういう仕組にもなつておりますので、この辺、財政の関係との調整も得られるかと存じます。
○岡田宗司君 只今のお話でありますというと、これは純然たる日本側の計算であつて、これは上に動くか下に動くかわからん。どうも数字が下廻るようなことはないのでないか。すでにこういうものが発表されまして、又連合国側の個人の要求がまあ連合国に参りまして、それから連合国のほうからまとめて要求して来るものと思うのでありますが、恐らくこれでは済まないのではないか。こういうふうな感じを受けるのであります。こうなつて参りますというと、これは非常に不確定な金額になつて参る。で、我々は賠償にいたしましても、或いは連合国財産の補償の問題にいたしましても、或いはそのほか講和関係のいろいろな今後計上されるべきものが不確定であるということは、今後の財政経済、国民の負担の上に非常な問題が残されることになると思うのであります。何を急いでこういう不確定なものを、その支拂法律案を急いできめなければならんかということから、お伺いしたいと思います。
○政府委員(内田常雄君) この法律案は、連合国財産の損失に対して総額を何億として補償すると、それを以て免責し得ると、こういうことを主として規定したものではないのでありまして、先ほど来御説明いたしておりますように、補償についての手続的事項をまとめておるのでございます。なお、これにつきましても、すでに御説明申上げましたように、他の條約すべてそうでありますが、このような手続的事項に類する事項がかなり長々と條約本文の中に規定されて来ておるのであります。日本の場合にも、通常であつたならば同じように手続的事項が長く條約に織り込まれて規定されたのでありましようが、講和の促進をできるだけスムースに持つて参りたいという、アメリカ側及び日本側の希望が合致いたしまして、手続規定等につきまして長長と條約の文章の中に入れますことが各国の足並みを急速に揃えにくいかも知れないということのために、手続的の部分を別の形にして外した次第であります。従つてこれは手続的規定でありまして、別に資料でお出しいたしたものは、決して私ども発表のためにお出ししたものでもありませんし、連合国側に通報いたしているものでないことは先ほども申した通りでありまして、ただこの手続規定だけでは国会の御審議に当つても如何にも不安定と存じまして、動くことは動くと先ほど申上げました通りでありますが、大体算術的に或いは物理的に計算して、そう大きくは狂わないだろうと思われる我我の肚積りを、極く内々に国会の御審議のために提出したものであることを御了解願いたいと思います。
○岡田宗司君 只今純然たる手続的な事項をきめたものである、こういうふうにおつしやつているのでありますけれども、この補償法案の第十九條では、「日本政府は、支拂うべき補償金額の合計額が一会計年度において百億円を超過するときは、その超過額に相当する補償金は、翌会計年度において支拂うものとする。」ちやんと金額が、総額はきめておらんけれども、とにかく一会計年度において拂う金額がすでにきめられている。こういうふうにいたして見ますというと、これをただ單に手続法というだけには解釈できないのであります。この毎年計上いたします百億円が、他の講和関係の諸費用と関連して考えられますときには、果してこの百億円というものを先ず最初に支拂わなければならないということを法律できめてしまつてもいいものかどうか。存立可能の経済を日本に與えるという問題は、單に賠償だけの問題ではない。この賠償並びにその他の講和関係費用を合せてそれを支出いたしまして、而もなお、存立可能の経済が保たれるようにならなければならん。私はこの点において、すでに百億円というものがここに計上されているという事実からいたしまして、單に手続規定ではなくて実質的なものを含んでいるものと考えるのですが、その点はどうですか。
○政府委員(内田常雄君) 只今の御質問のような趣旨におきましては、この十九條は実質的の規定と或いは解することもできるかとも存じますが、十九條はその前の十五條のあたりから、請求権者が請求を提出すべき期限、それに応じて日本側が支拂うべき支拂の手続等がずつと規定されて参つておりまして、従いましてこの手続規定に従いまして連合国人が請求を一時にして参る場合には、一時に多額の補償金を支拂うような事態が算術的には起き得るのであります。従いまして今御質問のような條約の他の條文におきまするところの負担等の調整の関係において、一時に補償負担が時間的にたくさん参るということになつては、日本の財政的見地からも却つて不利益であると存じまして、相手側の了解を得て仮にこの補償金額が百億円を超えるようなことがあつても、一会計年度においては百億しか拂わない、あとは順次ズラす、こういう趣旨で、むしろ我が国の財政負担を緩和する趣旨を以ちまして、手続規定に補足をして入れたものでありまして、百億以上を支拂う、こういう実体的の約束を目的とした規定ではないと考えております。
○岡田宗司君 それではお伺いいたしますが、この補償のためにここに一会計年度最高限百億円は、何年の会計年度から計上されるのですか。
○政府委員(内田常雄君) この法律案の十五條に、連合国側が請求できるのは、日本との間の平和條約の効力が発生したときから十八カ月以内に請求書を出さなければならないことになつております。講和條約の発効が、批准書の寄託等の関係もありまして、仮に本年度内、来年の一月とか二月とかいう時期に発効いたしますと、或るものは十八カ月以内といたしまして、本年度内に請求書の提出があるかも知れません。尤も先ほど申しましたように、この請求をするためには、先ず平和條約の第十五條の(a)項の前段にありまするように、九カ月以内に返還の請求を先にいたしまして、その返還の請求を受けまして、この法律案の第三條には、返還の請求をしたものでなければ補償の請求ができないことを明らかにいたしておりますために、或いは本年度内には補償金の支拂請求書は出されないかも知れません。併し万一本年度内にその請求をして来るものがありました場合におきましては、本年度におきましては、別途補正予算に御審議を願つておりまする平和回復善後処理費百億円、この百億円は全然違つた数字でありますが、百億円載つておりまして、その中から何十万円か何百万円か、仮に請求がありましても出し得る態勢になつております。あと、本格的には、この時期の計算上、二十七年度以降になろうと思いますが、二十七年度予算を国会に提出いたしました場合に、百億円以内の金額を織込むことになる。又二十八年度以降も同様な金額が計上されて、国会に出されることと考えております。
○岡田宗司君 只今お伺いいたしましたところは、すでにこの支拂に充てるために補正予算に一部金額が計上されておる。来年度の、二十七年度の予算においては、百億円が更にこれに基いて計上されておる。二十八年度においても然り。そういうことになつて参りますというと、これは單なる手続法でないことは明瞭だろうと思う。そういたしますと、要求が不確定である、それの計算ができないのに、すでにそれに対する支拂の額をきめておる、而もその予算に組まれておるものは、他の講和関係の賠償その他の費用との睨み合せができておらん、こういう点になつて来るのでありまして、私どもとしては、そういうようなことは非常に誤つた方針でこの問題の処理に当られようとしておるのではないか、そういうふうに考えるのであります。勿論私どもは、補償しなければならんといたしますれば、その連合国に出ましたところの損害についての請求が出揃い、それについての審査をいたしまして、そうして全体の額が決定いたしまして、日本と連合国側との話合いによつて額が決定いたしまして、然る後に予算に計上しなければならんものであると、こう思うのであります。それがなされておらない。何も急いでこんなものを私は出す必要はないと思う。その点についての御見解をもう一遍承わりたい。
○政府委員(内田常雄君) これが手続法であるか、或いは單に手続のみを含めるものでなしに予算の実体まできめるものであるかという点につきましての御意見のようでありましたが、私は、これは手続法であるということは、手続だけをきめてしまえば済むということではないのでありまして、第十五條の連合国財産補償に関する義務の原則を受けまして、その原則を実施に移すための手続をきめてあるのでありまして、従いまして、この手続の目的が、現実に連合国に対しまして、損失補償をいたすことを目的といたしておることはお説の通りであります。ただ、他の十四條その他の、條約に基く義務といささか違いますことは、この連合国財産補償の規定は、国と国との間の金額の取極を目的としておるものではないのでありまして、この点が十四條の賠償関係と違うと存じますが、現実に戰争損害を受けた連合国人、個人、私人の申請によりまして、その申請のあつたものを現実に順次に拂つて参る。ただ私人から勝手に請求書を出されることを防ぎますために、相手側の政府を経由して一件ごとに出させるのでありますが、私人に対する弁済の履行である、こういう建前から、或る国の分を全部審査を終つて、何億円になるか計算をした上で予算に載せるということができないわけであります。それらの事情にも応じまして、この百億円という制限規定を置きまして、他にいろいろな負担関係のあることも考えまして、この連合国財産補償の実行は、他のことも考えますから、百億でとめる、こういう趣旨で、むしろ御心配のような日本の財政上いろいろな負担が重なることをこの件につきましては緩和する、こういう極めて善意の趣旨を以ちまして織込んだものでございます。
○岡田宗司君 どうも緩和するようには思われないのでありますが、それは見解の相違かも知れませんが、とにかくこの法律によりまして、日本がこの條約の効力発生によつて負う債務のうち、どうもこれが優先的に支拂われるようになる。すでに金額も計上されておる。ほかのものにつきましてはまだ金額等の計上はない。これが真つ先に、その総額はきまらないけれども、毎年の支拂額がきまつて行くというようなことになつておる。そういたしますというと、これは他の講和関係の、講和條約に基く日本の支拂わなければならんうち、これが真つ先に、つまり優先的に支拂われるという建前をおとりになつてこの法律案をお作りになつておられるのでありますか。
○政府委員(内田常雄君) 他の條約上の負担に比べて優先的という趣旨ではございませんが、これは申請に応じましてケース・バイ・ケースに処理いたします関係上、時間的には他の十四條その他の條文に基きまする国の負担の実行よりも先に出て参ることは、御質問の通りだと思います。
○岡田宗司君 他のものよりもケース・バイ・ケースで先に出て来る。そうして而も法律においては真つ先に出されて、金額までもほかのものがきまらないうちにこれがきまつて行つた、これは優先的におきめになつたのだ、こういうふうに考えて間違いないじやないですか。どうなんですか。
○政府委員(内田常雄君) その意味は、この百億円その他補償の総金額を支拂つた後でなければ、この十四條の賠償の履行をしない、こういう意味ではないと、かよう意味で申しておるのであります。
○岡田宗司君 先ず百億円を計上なさつてお拂いになるようにきめてしまう。そうして今度は賠償の問題について幾ら御計上になるか、私どもはまだ全然わかつておりませんが、一体まあどうも管財局長にこういうことをお伺いすることはどうかと思うのですが、恐らくこうなつて参りますというと、毎年計上されます賠償額、或いは外債の償還の額などというものがそれぞれ百億円より下ることを得ないように私どもは思う。そういたしますと、いろいろな費用を計算いたしますと、相当たくさんの額になるのでありまして、こういうことを先におきめになつたために、他の額との睨み合せがきかなくなつて、財政上の負担が増加するということを、この法律をおきめになるときに、この法律案をお作りになるときにお考えにならなかつたのかどうか。その点、伺いたい。
○政府委員(内田常雄君) むしろ、お尋ねの点を考慮いたしましたが故に、当時から私ども、十五條の執行による補償総額は大体二百億乃至三百億円の見通しがついておりましたが、それらのものが二百億乃至三百億円でありましても、それをまとめて一年に支拂うような事態が起つたならば、ほかの弁済能力との関係も生ずるであろうということを考慮いたしまして、百億以内で毎年予算に組む。これは請求書の出され方によりまして、第一年度は或いは五十億で済むかも知れません。或いは第二年度、第三年度という具合にずれるかも知れませんが、むしろ他の負担との重複を考慮いたしまして、この限度はできるだけ低く、或いはこれは年度内五十億円以内で拂うと、なお掲げればよかつたかも知れませんが、先ず百億くらいであれば、他の債務と競合した場合においても、何とか凌ぎ得るのではないかというようなことで、この規定を入れたわけであります。むしろこのほうが財政の都合の利益のために入れたわけであります。
○岡田宗司君 これによりますると、やはり何年間かに支拂うということになつて参りますが、これは百億が妥当であるかどうかということについては、どうも私どもは、ほかのものと睨み合せなければ、これが妥当であるかどうかは見当が付かないのであります。大蔵省のほうではむしろ百億が妥当である、これは小さい額であつて、ほかのものを支拂うのに何ら差支えないという御見解のようでありますが、これはまあ見解の相違で何とも仕方がないと思うのでありますが、次にお伺いしたいのは、一体この第一條に、「戰争の結果生じた損害に対し、補償を行うことを目的とする。」とありまして、その戰争の結果の問題につきまして、この第四條の一に「日本国又は日本国と戰争し、若しくは交戰状態にあつた国の戰鬪行為に基因する損害」と、こうなつておるのであります。勿論間接の戰争による損害ということを除くために、直接的な戰鬪行為というものに限定するために作られたものと思うのでありますが、この戰鬪行為というものの範囲を先ずお伺いしたいと思います。
○政府委員(内田常雄君) これも先ほど私が申述べたところで或る程度御承知と存じますが、イタリアの場合、フインランド、ブルガリア等の條約の場合の補償の原因としては、戰争の結果生じた損害ということは條約自身にありまして、これをくだいた施行法のようなものはないのであります。ただイタリアの條約の場合は、戰争の結果生じた損害ということと、いわゆる戰時特別措置に基いた損害、こういう二本建になつておるのであります。殊に戰争の結果生じた損害ということにつきましては、連合国から文書をイタリア側に送られておりまして、その文書によれば、先ほども読み上げましたが、非常に広い範囲になつておるのでございます。イタリアの政府によつてとられた一切の行為とか、或いはイタリアの交戰国によつてとられた一切の行為、或いは休戰に関連してとられた一切の行為、或いは戰争が存在したために生じた作為又は不作為に基く行為、これらに基く損害を戰争の結果生じた損害とするというふうな文書を突きつけられております。このことは、私どもが法律案と申しますか、條約の一部をなすべき手続上の條文につきまして交渉をしておりますときに、いささか研究によつて知り得ておりましたために、かようなイタリアのような極めて広い範囲の原因を引出されないように、特にこの法律の四條に、四つの事項を制限的に列挙いたしたのであります。只今御指摘の第四條第一号の戰鬪行為というのはあと二、三、四、五の各号と関連して読むべきものでありまして、従いましてこれは全く狹い範囲の戰鬪行為の物理的な損害を指しておるのであります。それから波及するところの原因につきましては二、三、四、五、この範囲で読み切れる範囲というふうになつておるのであります。例えば得べかりし損害、戰争行為を間接の原因とする損失は賠償するという建前になつております。
○岡田宗司君 この第一号の戰鬪行為の中に入るかどうかでお尋ねいたしますが、連合国が日本に対しまして苛烈なる戰鬪行為をなし、その際猛烈な空爆をやりました。いわゆる無差別爆撃によりまして日本側の都市その他が非常なる損害を受けた。その際に連合国財産で燒失したものがいろいろある。そういう無差別爆撃により生じた損害にまで、そのまま日本といたしましてはこれを国民の負担において補償しなければならんのか。その点についてお尋ねいたします。
○政府委員(内田常雄君) これも先ほどから何遍か申上げておるのでありますが、連合国人のすべてに補償を與えるのではないのでありまして、原因が仮に第四條の各号に掲げる原因に当てはまつておりましても、その連合国人が日本政府、或いは日本政府の公権力を代表いたしますものによりまして逮捕、監禁、抑留されたり、或いはその資産を敵産管理にかけられたり、或いは工業所有権戰時法というような法律によりまして取消されたり、專用権を設定されたり、特に迫害されたものに限るのでございます。従いまして無差別爆撃が、さような日本政府又はその代表者によつて痛められたものに当る場合は、結果といたしましては補償することになります。無差別爆撃そのものは一般的な補償原因にはなつておりません。要するにこの三條、四條という規定は、先ほど羽仁委員からの御質問にも関連するのでありますが、放つておけば、イタリアその他の国と同じように極めて広い範囲で、又後になつていろいろ争いを起すことを含みながら日本側は補償の立場に立つことになつたものと存じますが、たまたまこの補償の実施に関する條項が條約から外されて、別の形になつて、それについて連合国全部が必ずしも審議に参画しないで、アメリカ側と日本側とが打合せをいたしました際に、アメリカ側のかなりそれについて同情のある気持、これにも限度がございまして、私どもはそれもやはり和解と信頼の一つの現われだつたと思いますが、かなり親切な立場から、この実施法のうちにいろいろな制限を置くことをアメリカ側は強調してくれました。従いまして今年の八月何日でございましたか、朝日新聞に英国の業界を観測する記事として、英国は、何か日本とアメリカ側がこの講和條約十五條の補償の内容を至る所に拔け穴を作つて、非常に換骨奪胎して、余り補償が取れないようにしておるのは怪しからんという不安が英国側にあるという記事が朝日新聞に載つておりました。これは必ずしも、私どもは決して英国側をごまかすつもりはないのでありますが、さような不安さえ作つた原因の一つがその辺にあつたと思います。その後、これはアメリカ側の希望によりまして、さような不安もあるから、その限界がはつきりするように、日本政府とアメリカ政府とで発表しようということになりまして、確か八月の二十八日でございましたか、日本及び連合各国で発表いたしまして、あと動かせないというような仕組がとられたところでございます。いろいろ読み方もございますし、又結果から見て補償の責任を免れたことにはなつておりませんから、だんだん御質問頂きますると、私ども正直に申して痛い所がございますが、全体といたしましては、さようなことも申し得るような段階を経まして作られておることを御了承を得たいと思います。
○岡田宗司君 イタリアとの平和條約の比較についていろいろお話があつたのでありますが、イタリアの平和條約の第七十八條の四項(イ)の所、「連合国民がイタリア国に在る財産の損傷若しくは損害によつて損失を被つた場合には、右国民は、支拂期日に同様の財産を購入するために、又は被つた損失を償うために必要な額の三分の二の限度までリラ貨で、イタリア国政府から補償を受ける。」こうなつておる。日本の場合におきましては全額のように思うのでありますが、勿論この補償法案を作ります際には、イタリアの平和條約は参酌されたと思いますが、何故にこの三分の二という、このイタリアの平和條約に定められたところの線をこれに実現することができなかつたのか。
○政府委員(内田常雄君) その点十分研究はいたしたのでありまして、日本との補償についての條文の建て方におきましても、勿論いろいろなことを主張いたしました。ところが結果から申しますと、その点は不幸にして認められなかつたのであります。その理由とするところは、只今お読み上げになりましたイタリア條約の前文でありますが、前文に、イタリアは戰争を起して連合国側と戰つた、併しイタリアは無條件降伏したあとに、「右休戰の後に、イタリア国の政府の武裝軍隊及び抵抗派の武裝軍隊が、ドイツ国に対する戰争に積極的に参加し、又イタリア国が、千九百四十三年十月十三日にドイツ国に対して宣戰し、それによつてドイツ国に対する共同交戰国となつたので、」云々、こういう規定があるのでありまして、イタリアは初めは連合国に敵対しておつたけれども、途中で降伏して、その軍隊をドイツに向けて戰つた、こういう條項があるのだ、……主としてこれはアメリカ側から大変親切に同じようなことを考えたかつたようでありますが、他の国で、その関係を持ち出しまして反対をする国がございましたために、その点はまとまりせんでした。これは正直に申上げるところでありますが、その結果、むしろ損害の原因とか、或いは補償を受け得る連合国人の範囲とか、或いは法律案の随所に見られますように、損害額を算定した後、いろいろな金額を引き去りまして、補償すべき金額をきめるというような、交換條件と言つてはおかしいのでございますが、そういう規定をいろいろ置おことによつて救われているのでございます。先ほどいろいろな御質問がありました一会計年度に百億に限るということもそうですし、更に又イタリアと非常に違いますところは、イタリアの場合は主権を喪失した地域、割讓地域、或いはトリエストのような所にある連合国の財産が、戰争の結果損傷を受けましたものにつきましても、イタリアが補償の責任を負うのでありますが、日本の場合には、これも御審議を願つております連合国財産補償法にありますように、戰争の結果日本が主権を回復した地域にある連合国財産に対する損失のみを補償する、主権喪失地域、朝鮮、台湾、樺太その他の地域における連合国財産については日本は補償しない、こういう規定になつていることを、これ又イタリア條約と対照して御承知のことであろうと思います。なお又これは何度も申述べましたが、イタリアの場合は、連合国財産の返還及び補償を通じまして、イタリア側は自発的の、当然の義務といたしまして、期限等のきめ方が、日本とかなり違つております。日本側のほうは、連合国側の一定の期限内の請求を待つて初めて論ずる、それを過ぎたらば請求権は放棄されたことになる、こういうことになつている所がイタリア側と違つております。それらの点、併せて御了解を願つておきたいと思います。
○岡田宗司君 只今のお話ですと、イタリアの場合には、イタリアが降伏した後、連合国に参加したというような事情その他がある、こういうことでありますが、まあ日本の場合を見れば、すでに六年たつている、それからいろいろな事情で和解と信頼の條約だとするならば、こういう点についてもイタリア並みの考慮くらい拂われてよかつたのではないかと思うのですが、これは、まあ、どうも止むを得ぬことといたしまして、今、管財局長の言われました点は第二條の三項でありますが、「この法律において、「本邦」とは、本州、北海道、四国、九州その他平和條約により日本国の主権が回復される地域をいう。」こう書いてあります。「その他」の問題でありますけれども、例えば沖繩等にありました連合国人の財産等につきましては、これは補償しないのであるか。
○政府委員(内田常雄君) 大変微妙な問題でありますが、先ほどの羽仁委員からの御質問に関連する法務総裁と外務省側の御見解にも関連すると思いますが、その補償法案では、主権の回復する地域と書いてありますから、従つてこの補償の利益を受けるためには、平和條約の第三條の文章のまま読んで、完全な主権が日本にない場合には、私どもは補償はしないものとして進めたいと考えております。これは二十九度以南の地域に対して日本側の主権がないということを、この補償法の関係から裏書する意味ではございませんので、少しでも利益になる、理屈の付くことは補償を免れる、こういうことでやつて参りたいと思つております。なお現実の問題といたしましては、これらの地域においては、この法律案の第三條に該当するような連合国人、米英蘭というものの財産は、先ず殆んどあるまい、現実の利益になるまいと考えております。
○岡田宗司君 こういう点は非常にあいまいな点が出て来るのでありまして、これはまあ條約局長とお話になつての御答弁であつて、まあ食い違いのないように御答弁されたものと思うのでありますけれども、併し今後いろいろな條約、いろいろな国内の法律案ができます場合に、この主権の問題、いわゆる潜在主権、若しくは眠つている主権というような問題が至る所に矛盾を起すのではないかというふうに私は考えているのでありますが、むしろこういう点については、もつとはつきりとした規定を、今後こういう法律案等にもお定めになつたほうがいいのじやないかというふうに思うが、その点はどうでしよう。これは條約局長にお尋ねしたほうがいい。
○政府委員(内田常雄君) 只今の御意見に従いまして、事態がはつきりしますし、又その実益が生じた場合におきましては、その連合国財産補償法案の第二十五條に、「この法律の実施に関し必要な事項は、政令で定める。」という委任規定もございますから、事態によりましては、又その利益の在するような、実益があります場合は、御指摘の点、政令等で処置することもできようかと存じております。
○岡田宗司君 では私の質問これで終りました。
○委員長(大隈信幸君) 兼岩委員に申上げますが、通商局次長の松尾さんが見えておられまして、先ほどの兼岩委員の御質問に対する御答弁があります。
○説明員(松尾泰一郎君) 先般私どもほうの通商監からお答しました件につきまして、改めて御説明申上げます。十一月六日付の東京新聞におきまして、「日本とソ連圈貿易」という記事がありまして、その中に、日本の場合は、九月二十七日付のホワイト・ハウスの国家安全保障会議の報告が最もいい参考になろうということで、その報告の概要として若干記述されているのでありますが、これの真僞についてのお尋ねのようであります。今、手許にあるそのときの、九月二十七日付の国家安全保障委員会のレポートを照し合せてこれを見ますると、或いは私どもの手に入れましたレポート以外にこういう事項があるかと思うのでありますが、多分この九月二十七日付、同じ日付の国家安全保障委員会のレポートでありますから、これ以外にそういう新聞にありますような事項があるかないか、今はつきりいたさぬのでありますが、一応手許に手に入れておりまするこの報告から見ますると、この新聞に記述されておりまするようなことは書いてないのであります。御参考までにその一端を御披露いたしますと、いろいろなことが書いてあるのでありますが、結局のところ、日本が一九五一年の六月以降、ソ連ブロツクに対しまして、戰略物資は輸出しなかつた、併し若干の例外がある、つまり或る消費物資を除いては戰略物資は輸出しなかつたというふうな書き振りになつているのであります。消費物資、コンシユマー・タイプ・グツドとなつているのでありますが、まあ消費物資で考えますと、その消費物資は、それの生産に必要な原材料の供給が非常にシヨートであるために、いわゆる供給不足のために、アメリカのいわゆるポジテイヴ・リストと申しますいわゆる戰略物資品目表でありますが、それに掲げられているのだということでありまして、要するに若干の例外はあるが、おおむねソ連地域に対しては戰略物資は輸出していなかつた。併しながら今申しますように、一部のその原材料の供給が非常に少いためにポジテイヴ・リストに入つておつたような消費資材についてはやはり輸出をしている。従つて広義の戰略物資には、勿論戰略物資を輸出しておる恰好に相成るのでありますが、従いまして国家安全保障委員会におきましては、日本に経済的及び金融的な援助を停止するかどうか、又アメリカの安全のために、日本への援助を続けるかどうかを決定しなければならなかつたというような書き振りがその次にしてありまして、先ほど申しますように、日本がソ連ブロツクに対して輸出したこれらのものは、ノン・ミリタリー、或いはノン・ストラテイジツク・タイプ以外のアイテムであり得ないというような非常にむずかしい言い方がしてあるのでありますが、いわゆる非軍事的、非戰略的物資以外の物資であり得ないということで、非常に間接的な書き方があるのでありますが、とにかく一部といえども日本はソ連地域に戰略物資を輸出した。併しその量は非常に少量であることも明らかである。そこで今後日本に対してアメリカの援助を打ち切るかどうかの問題でありますが、若し日本に対しましてアメリカの残つておる援助を停止するということは、日本におけるアメリカの責任の正当な実施も矛盾するし、又日本におけるアメリカの計画を満足に遂行するということにも有害になる。そこで、以上の観点から考えて、国家安全保障委員会は、アメリカの安全利益のために、いわゆる問題になつておりますこの法律の千三百二條を日本に適用しないことに決定したというような書き方がしてあります。最後に、併しながら国家安全保障委員会としては、その專門委員会に対して次のことを指令をして、それは日本とソ連ブロツクとの間の通商を今後嚴重にエグザミネーシヨンをコンテイニユーするという書き方でありますが、監視を続けるというようなこと、それから第二点といたしましては、アメリカの国家安全利益と一致するように日本からソ連地域への戰略物資の流れを防止するための追加的な手段を探究し続けるのだ、こういうような内容でありまして、その他にも若干、委員会がどういう目的、法律の目的とするところ、それから、その他の條項はありますが、今申上げたようなことが大体国家安全保障委員会の決議の大要に相成つておるのでありまして、そういう事情でありまして、この問題になりました新聞の記事は、我々の手に入り得ない記事なのか、その辺のところはわかりませんが、今申上げたようなのが大体委員会の報告でございますので、我々といたしましては、こういう新聞に載つておるような記事は多分なかつたのではなかろうかと想像しておるような次第であります。
○兼岩傳一君 その報告は何字詰であつて何頁くらいのものですか。あなたはそのうち、どの程度今報告されたのですか。
○説明員(松尾泰一郎君) 勿論相当大部に亘りますが、今は日本と琉球に関した報告の一部を申上げたのでありまして、私のここに持つておりますものは三頁くらいのものでありますが、勿論全体のレポートはもつと大部なものかとは思いますけれども、結論は今申上げたようなことだと思います。
○兼岩傳一君 何頁のうち……三頁ですか。
○説明員(松尾泰一郎君) 全体のレポートを遺憾ながらまだ入手しておりませんので、お答えできませんことを遺憾に思います。
○兼岩傳一君 全体のレポートが問題で、それがないならばわからないじやありませんか。私の今問題にしている中国との貿易を、いわゆるソ連ブロツクとして、これを今のような状態でやつて行けば、中共市場が日本経済にとつて永久に喪失するのだとすれば、これは極めて重大であるということを言つておる。そうして、それについて鉄鉱石、それからコークス用の石炭、落花生、樟脳、肥料用加里、大豆の問題までずつと触れておるのでありまして、これが数日前の通商監の答弁のごとく、これは多分いい加減の報告であるということは、今あなたの報告をちよつと聞いただけでも、全く間違いであるということは明確になつた。而もこれは平和條約の第五條の(a)の(iii)のつまり「国際連合が防止行動又は強制行動をとるいかなる国に対しても援助の供與を愼しむこと。」という、この中国及びその他のアジア大陸との、ソヴイエト、北鮮その他の貿易を禁止する問題で、この問題を明らかに九月二十七日の国家安保会議のホワイト・ハウスのレポートが載つけておるという意味において、これは非常に重要であり、この点は十分私は全部検討したい。又すでにそのくらいの検討は通産省なら当然しておられるものと考えて質問したのでありますが、意外な答弁を得た。ところが今日になると、又それがあるというふうにぽつと出て来られるので、我々は通産省の当局に対して、非常な国会に対する軽視、又は私の質問に対する不誠意を感ぜざるを得ぬので、従つて簡單にあなたの一片の答弁によつて私は信用することができないのです。そこで、詳細に、私は十分の権威を以てお尋ねするのですが、一体このレポートの、あなたの持つておられるのは、このレポートのうちのどの部分に当るか、そのどの部分に当るうち、あなたが今三頁に亘つて紹介されたのはどの部分であるか、これが私の質問に対する明確なる答弁であるかどうか。この三点をお尋ねしたいのです。
○説明員(松尾泰一郎君) むずかしいお尋ねでありますが、我々といたしましても、全体のレポートをできるだけ早く入手いたしまして、果してこういう記事が載つているかどうか検討いたしたいのでありますが、取りあえず我我の手許に入つておりまするレポートから見ますと、今申上げたような程度であります。今後できるだけ早く全体のレポートを取寄せまして研究をしたいと思います。
○兼岩傳一君 僕はそういうことを聞いているのじやなくて、全体のレポート、あなたの持つておられるその書類が全体とはどういう関係を持ち、又あなたの書類を持つておられるうちに、あなたが僕に報告して下さつた三ページは何を意味するか。これを先ず明確にして頂きたい。
○説明員(松尾泰一郎君) 全体のレポートは遺憾ながら手に入れておりませんので、今申しました三ページのレポートが、どの部分のどういう関係に当つているかということはちよつと申上げかねるのでありますが、この新聞に出ているような事柄は、まあ今私が申上げましたレポートの中には全然書いてないわけであります。
 それから今私が申上げましたような意味は、要するにこのアメリカのバトル法の精神から見まして、一言に申せば、日本は戰略物資の一部は輸出したらしい。併しながらアメリカと日本の全体の関係から見て、何と申しますか恕すべき点があるので、今回は日本に対し本法の適用をしない。今後はソ連圈との貿易関係を嚴重に監視するという意味でありまして、それ以上に別段意味と言われましても、ちよつとお答えのしようがないのであります。
○兼岩傳一君 僕のお尋ねしたいのは、九月二十七日のレポートではない。前の政府委員は、この記事は信憑するに足りない、多分嘘であろうという意味のことを言つておるのであります。それに対して今あなたが、改めて書類を持つて出て来られた。その書類が、今問題になつているレポートとどういう関係があるかということを明確にして頂かなければ、何ら答弁にならないと思うのであります。
○説明員(松尾泰一郎君) 今申上げましたのは、この新聞に出ておりまする九月二十七日の国家安全保障委員会の報告の一部でございます。
○兼岩傳一君 どういう部分ですか。それがわからない……。
○説明員(松尾泰一郎君) 日本と琉球に関する部分でございます。
○兼岩傳一君 それは大体全体として何頁あるのですか。あなたの持つておられる日本と琉球に関する部分は……。
○説明員(松尾泰一郎君) 三頁、先ほど申上げた通りであります。
○兼岩傳一君 あれが全部ですか。
○説明員(松尾泰一郎君) そうです。
○兼岩傳一君 今こうして僕から請求されて、そういう草卒の形で出されるということは、非常に僕として迷惑なことで、大体私はどういう意味でこの質問を、総理並びに通産大臣等に、一般質問以来問題にして来ているかということは、あなたは御存じですか。承知の上での答弁ですか。
○説明員(松尾泰一郎君) 大体お察し申上げております。
○兼岩傳一君 どういうのですか。僕は答弁になつていないと思うから、明確にして、そうして、その部分を明らかにしたいと思います。どういうふうに理解して答弁しておられるのですか。
○説明員(松尾泰一郎君) 多分各種の委員会で言われますところは、中共貿易の重要性を強調され、今後中共貿易を大いにやらなければいかんのではないかというふうな意味で、いろいろお尋ねがあつているのだろうと、こういう意味に察しておるわけであります。
○兼岩傳一君 それでは困りますですね、そういう質問ではないのです。私の質問は……。それは私が総理大臣に対する本会議における質問、それから又総理に対する総括質問の速記を一つ、全部読んで、且つその資料を日本文に直して、明日でも御提出願いたいと思います。そうしなければ、これ以上私は、議員が熱心に問題を明確にして出している節に、政府委員はそれをお察しするというような、そういう態度でおられる以上、僕は国会議員として飽くまでこの問題を明確にし、僕の質問に対して政府は正確に答えなかつたという点について、僕は徹底的に鬪う決心を持つております。従つて僕は、官吏として政府委員としてそういう不まじめな不徹底な態度でなくて、僕が総理に対して質問し、通産大臣に対して質問している全部を読んで、そうして、それとの関連においてこの問題の資料を……、それを、すつとタ方出て来て、委員も皆疲れている、そういうところへすつと出て来て、そうして日本語だか何だかわからんような、そういうような言葉で答弁した。僕はこれは委員長がそういう不まじめな政府の答弁に対して、答弁と認めないと注意を與えて、この問題を明確にして頂きたい。そうでなければ、僕は初めから総理と大臣に対する全部の質疑の要点を全部これから繰返しますよ。これから一時間かかつても、二時間かかつても。それでいいですか。もとより質疑は大部分は速記になつておりますし、最後の部分も飜訳はできているのですから、それを政府委員は大臣を始め責任のあるかたがよく見られて、これは日本の運命に関する、経済的な独立なくして政治的な独立があり得ないのだから、そうして、果してこういう政策で、こういう安保條約と第五條の(a)の(iii)のこういうやり方で以て日本が経済的に独立できるかどうかという私の深刻なる質問に対しては、愼重な且つ科学的な態度で御答弁願いたいと思うのです。だから、今でなくてよろしいですから、明日でも結構ですから、僕の質問の論点を明らかにし、且つこれに対する資料を取揃えて頂きたい。その点はあとで、これから問題にされるならば、又そのときにしてもいい。例の十九ミリのスチール・バーですね、それから一七・五%の問題は、委員長はどういうふうにこれから扱つて下さるのでしようか、その点も関連してお尋ねします。
○委員長(大隈信幸君) 今のあとの点は、先ほどお手許に、あなたからの御要求の資料は通産省から出ていると思いますが、お受取りになつていると思います。
○兼岩傳一君 それもちよつと僕は見ましたけれども、何らそれらの数字の前提が明らかにされていない。それから、それらの数字に対してどういうふうにそれを計算して来られたかという計算の操作が全然わからない。而も私の質問に対して、一つはバトル法の問題、それから一つはそういつた原価ですね。一切の工業の基礎となる鋼鉄の価格、それから一切の化学工業の基礎となるところの塩の問題、少くもこの鉄と石炭及び塩のこの問題だけは明らかにしてもらいたいという僕の質問に対して、前提を明らかにしないたつた二枚のガリ刷りで、而も僕に一部だけ持つて来て、ほかの委員諸君に一つも渡さないたつた二部持つて来て、委員長と僕に一部ずつ、而も夕方電気がついて、薄暗くなつて来てからちよいと持つて来て、これでよかろう、これはどういう態度ですか。それが国会議員に対して、僕の質問に対して答えるゆえんでしようか。それじや委員長にお尋ねします。あなたは僕の質問を聞いておられて、そんなものをもらつて、これに対して何らの説明もなくて、それで政府委員の責が果されたと委員長はお考えでしようか。若しそうでないとすれば、ここでこの問題も含めて今のバトル法の正確に日本語に訳されたものをプリントにし、又このプリントも、十分、それがどういう根拠で、そういうような一七・五%、これは併し非常に大きい数字だと思います。鋼鉄の価格が一七・五、約二割に近い値段で以て、これからアジアの市場で各国と対抗して行く。そうして日本の経済的独立を維持し、日本の産業を維持することは非常に困難だ。ところがこれは他の合理化のほうでやればいいじやないか、合理化すれば、労働者の賃銀の切下げになつて来る。然からば政府は経営者の立場と同時に労働者の立場、双方から見る。ところがそのことの資料が一つも出ていない。こんなものを説明もなしに持つて来て、そういう一七・五%という鉄鋼の値段、そういうものをいや応なしにアメリカから買つていれば、東南アジア一帶において続々と敗北を喫して来る。これは日本の労働者だけの問題だけでなく、資本家も含めて、これは自殺の道を歩いているとしか考えられない。これに対する証明をして欲しいというのがこのガリ刷についてなんです。あなたといえども、他の委員諸君といえども、こんな不完全な二枚の紙切れを、ふつと夕方渡したことによつて、この重大極まりない、私がこの間の本会議以来繰返しあらゆる角度で質問している日本の経済的復興の問題そうしてこの復興の基礎の上に日本の全国土が再建されて行くという問題に答うべきものだと考えることができるでしようか。
○政府委員(草葉隆圓君) この点は私からお答申上げて置きたいと存じますが、総理なり、通産大臣が従来しばしば申上げております通り、中共貿易は相当な比重を持つておるのではないか、その比重に対する考え方の問題で兼岩委員のほうから再三御質問が出ておつたのであります。これに対しまして、一両日前に通商監のほうから答弁がありましたが、更にそれは不十分でありましたので、本日松尾次長から縷々お話があつた。結局このバトル法のいわゆるケム修正法と申されておりまする問題によつて、これを以て考えて見ましても、お話のように或いは鉄鉱石なり、石炭なり、塩なり、大豆なりという問題は、先般通産大臣が言われましたように輸入先行主義をとつている中共であるから、従つてこちらのほうからの輸出が、向うが考えておるような重要物資、戰略物資でない限りには、これに即応した輸入先行主義はとらないだろう。併し日本の貿易は中共に対しては、纎維類は全面的に解除になつているから十分出せるけれども、これは恐らくこれらの問題とバランスをとつた場合には、重要資材を先方から日本に輸入するということにはならないだろう。こういう点についての論議から発展した問題だと存じます。従いましてバトル法乃至はケム修正法というのが説明になりましたようなことで出て参りましても、これは直接に大して影響のない問題と考えております。
○一松政二君 議事進行について……、今兼岩さんからいろいろ御意見が出ておりますが、おおむねこれは御意見のようでありまして、私は本平和條約に関する委員の質疑は大体終了しておるものと考えますから、この辺で一応この逐條審議はお打切りを願いたいという動議を提出いたします。
○岡田宗司君 平和條約についての審議が大体終了した……、何を以て一松さんは大体終了したといふうにお考えになるのか、私どもにはわからないのであります。まだ平和條約につきましては、なお質疑を続けなければならん点はあるのであります。これは私ばかりではない。曾祢委員にいたしましても、或いは堀木委員にいたしましても、同じであります。私は今一松さんがこの審議を非常に急がれまして、そうして今日ここで以て質疑打切りの動議を出されたことは非常に遺憾に思う。こういう議事進行の問題につきましては、今まで大体において理事会でもつていろいろと相談をいたしまして、そうして我々もその線に沿つてやつて参つたのであります。ここでもつて逐條審議を打切る、打切らないかという問題につきましては、これは一応各派の理事がお揃いになつた上で、そこで以てお話合いになつてこれをどうするかということをおきめ願いたいのであります。與党のかたからのそういう御発言は、特に私どもに対しましては審議を抑えるように受取れるのであります。従いまして私といたしましては、今の打切りにつきましては、委員長といたしましてはこれを理事会に移して、明朝理事会を緊急にお開きになつて、その上で御討議になつて、そうしてこれを打切るかどうかをおきめ願いたいと、こう私どもは考えるのであります。
○楠瀬常猪君 私は只今の一松君の動議に賛成いたします。
○委員長(大隈信幸君) 一松委員からの動議は賛成者を得て成立いたしました。
○岡田宗司君 そうすると、これは採決するのでありますか、動議は……。
○委員長(大隈信幸君) 成立して反対ならば採決をせざるを得ません。
○岡田宗司君 反対です。
○兼岩傳一君 反対です。
○委員長(大隈信幸君) そうすると採決せざるを得ません。
○岡田宗司君 退席いたしましよう。数に足りませんよ。過半数ありません。
○兼岩傳一君 過半数ありませんよ。
○委員長(大隈信幸君) ちよつと速記をとめて下さい。
   午後五時五十二分速記中止
   ―――――・―――――
   午後六時三十八分速記開始
○委員長(大隈信幸君) 速記を始めて下さい。
○一松政二君 私の動議を提出いたしましたあとに、いろいろ懇談会を開きまして、いろいろ意見を交した結果、議事を円満に進行させる意味において私は動議を撤回したほうがいいと考えますから、私の動議を撤回いたします。
○委員長(大隈信幸君) 委員長から申上げますが、懇談の結果、明朝九時半に理事会を開きまして今後の運営をきめるということに決定いたしましたから御了承頂きたいと思います。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後六時三十九分散会