第013回国会 法務委員会 第57号
昭和二十七年六月十六日(月曜日)
   午前十一時一分開会
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  委員の異動
本日委員鬼丸義齊君及び一松定吉君辞
任につき、その補欠として紅露みつ君
及び松浦定義君を議長において指名し
た。
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 出席者は左の通り。
   委員長     小野 義夫君
   委員
           加藤 武徳君
           左藤 義詮君
           玉柳  實君
           長谷山行毅君
           岡部  常君
           内村 清次君
           吉田 法晴君
           片岡 文重君
           紅露 みつ君
           羽仁 五郎君
  国務大臣
   法 務 総 裁 木村篤太郎君
  政府委員
   法制意見長官  佐藤 達夫君
   法務府法制意見
   第一局長    高辻 正己君
   刑 政 長 官 清原 邦一君
   法務府特別審査
   局長      吉河 光貞君
   法務府特別審査
   局次長     関   之君
  事務局側
   常任委員会專門
   員       西村 高兄君
   常任委員会專門
   員       堀  真道君
  説明員
   最高裁判所長官
   代理者
   (事務総局人事
   局長)     鈴木 忠一君
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  本日の会議に付した事件
○理事の補欠選任の件
○破壞活動防止法案(内閣提出、衆議
 院送付)
○公安調査庁設置法案(内閣提出、衆
 議院送付)
○公安審査委員会設置法案(内閣提
 出、衆議院送付)
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○委員長(小野義夫君) これより委員会を開きます。
 先ず理事の補欠互選についてお諮りいたします。理事一松定吉君が委員を辞任されましたので、理事の補欠選挙を行います。つきましては互選は成規の手続を省略して、委員長において指名いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(小野義夫君) 御異議がないと認めます。理事に松浦定義君を指名いたします。
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○委員長(小野義夫君) 次に前回に引続き破壞活動防止法案、公安調査庁設置法案、公安審査委員会設置法案、以上三案を便宜一括して議題に供します。先ず政府におかれて保留されました質疑に対する答弁をお願い申上げます。
○国務大臣(木村篤太郎君) 一昨日ですか、羽仁委員からの御質問に対しての御答弁が保留になつているそうであります。私より答弁いたします。
 先ず第一に、近頃特審局の偽局員が出て、スパイのようなことをしているようなことがあるが、今後続発したときにはどういう責任をとるつもりかというような御質問であります。お尋ねのような事実が最近起つているということは極めて遺憾なことであります。これらに対しましては十分今後取締つて行きたいと考えます。そうして法に触れまするようなことがありますれば、断固たる処置を私はとつて行きたいと考えております。その原因は幾つもありましようが、これはいずれの方面においてもさような事実があるのであります。事特審局に関する限りこれは極めて重大だと考えております。将来さようなことのないように、又あつた場合には今申しましたような法規に基きまして断固たる処置をとる考えでおります。さように御了承をお願いいたしたいと思います。
○羽仁五郎君 その点につきましてはよく御了解下すつていると存ずるのでありますが、戦争前に非常に偽刑事が続発したことがございます。それで例えば神戸で出ておりますジヤパン・クロニクルというイギリス人の新聞が、日本における偽刑事続発ということは非常に危険な現象だ。これは刑事に対して国民が手も足も出ないということから来ている。その根本原因は日本の警察責任者、最高責任者が、刑事が国民の人権を蹂躙することについて何ら責任を負わないことから来ている。だから偽刑事を幾ら縛つてもそれは駄目だ。むしろ警察なり内務省自身が根本的に反省してその責任をとらなければ駄目だということを切々と訴えていたことがございます。私の一昨日お願いしましたことも、偽特審局員を捕えてそれを罰するということも勿論必要ですが、それには特審局なり公安調査庁なりのやり方に、国民が公安調査庁の調査官だと言えば、もう手も足も出ないのです。こういうような人権蹂躙による恐怖心というものができておる場合には偽局員が続出すると思いますので、偽局員が続出する場合には、公安調査庁の長官自身が責任を感じて頂くことが必要じやないか、やり方がますいためにその偽局員が出るのじやないかという点をお考え下さるかどうかという点、これは勿論程度問題ですが、併し余りに続発している場合はそういう点をお考え願うべきじやないかと思う。
○国務大臣(木村篤太郎君) 今の御議論は御尤もであると存じます。そこで我々ば考えなくちやならんことは、いずれにいたしましても、警察官にしても特審局員にいたしましても、これは国民の協力を私は待たなくちやならんと考えております。根本はそこであろうと思います。如何に権力を持つておつても、国民の協力がなければ、その権力というものは本当に公正に行われん。又は曲つて法が用いられるということになるのであります。一言で言えば愛せらるべき警察官であり又調査官でなければならん、こう考えております。それにつきましては我々は今後十分に注意を払いまして、少くとも国民の支持を得られるように取計つて行きたいと、こう考えております。今後におきましては、我々は全力を挙げてそういう方向に持つて行きたいと、こう考えておる次第であります。
○片岡文重君 ちよつと関連して。今の問題で関連をして私お尋ねしたいと思うのであります。この破壞活動防止法案は、政府としてはいつ頃から実施を希望しておられるのか、もとよりこの本院で可決された直後に、成るべく早い機会にということを考えられるのでありましようが、いつ頃から実施をされるお気持を持つておられるか、その点を一つお伺いしたい。
○国務大臣(木村篤太郎君) 御承知の通り只今機構の改革の案が出ております。それで機構の改革と同時に相待つてこれも発足いたしたいと、こう考えている次第であります。
○片岡文重君 そうすると機構改革が行われてこの法律を実施をするという機会、時期、それの見通しは大体いつ頃になりますか。
○国務大臣(木村篤太郎君) 今年の七月一日であります。
○片岡文重君 七月一日から実施をしたいという御希望でありますと、今日はもう十六日ということになりますと、このあと何日も百がないと考えられますが、それについて今までの法務総裁並びにその他の政府委員各位の御答弁を伺つておりますと、極めて熱心に、無事の民衆に被害を与えないように努力したい、特に法務総裁は愛される特審局にしたい、愛される警察にしなければならん、誠に私は同感であります。そこでその愛される特審局、愛される警察となるためには具体的にそういう指導がなされなければならないと考えるわけですが、すでに日にちもない今日としては、当然この公安調査庁の係官が末端に至るまでの指導方針というもの、或いは指導の要綱と言いますか、いろいろな具体的な執務要領といいますか、そういうものがすでにでき上つておるのではなかろうか。つまり法務府令その他の規則がもうすでにでき上つているのではないかと考えられますが、それができておるのかどうか、その点一つ。
○国務大臣(木村篤太郎君) あらゆる点から我々は相当考慮いたしておりまして、それらの点について今着々と準備をしておる次第であります。
○片岡文重君 そのあらゆる方面について準備しておられる、勿論そうでありましようけれども、そういう問題は、私どもとして承知いたしたいのは、具体的にではどういう規則ができておるのか、その点できておるのかできておらないかを一つお尋ねしたい。
○政府委員(吉河光貞君) まだ案文はできておりません。この法案に関する当委員会の御審議に現われた各種の要望なり御注意というようなものも検討いたしまして、これは執務要領或いは職務規範というようなものに盛り込んで行かなければならない。これは法案成立の暁には、先ず重点としてはそういう点に全力を挙げて整備をし、職員の指導訓練という点に力を注ぎたいと考えております。
○片岡文重君 御説明はよくわかりますし、政府委員各位のお考えになつているところ、希望しておられることはよくわかりますが、すでに旬日に迫つておるこの法実施の今日に当つて、ただそれだけの抽象的な御説明ではちよつと私は納得いたしかねるのですが、当然委員会における、或いはその他の委員会における意見等を御斟酌なさつて規則は作られるものと思いますから、この法案ができ上つた上でなければ規則はできないというふうなお考えも一応は納得できますけれども、併しながらもう期日もないことでありまするし、法案立案の趣旨に従つて作られるというのでありますから、それは当然私はできていると思うのですけれども、差支えがあつて御発表できないとおつしやるなら別としまして、あるかないか、その点。
○国務大臣(木村篤太郎君) 我々はこの法案の実施に伴いまして要綱はすでに作成にかかつておるのでありまして、その要綱に基いて各位の御意見を十分織り込んで急速にやろう、こういう段取りになつておる次第であります。
○片岡文重君 すでに伊藤委員からそういう御質疑があつて、政府のほうでこの法案審議のうちにそういう規則を御提示頂けるというお約束があるそうでありますから、それを信じまして、成るべく早い機会に御提出されることを要望いたします。
○委員長(小野義夫君) その次。
○国務大臣(木村篤太郎君) その次のお尋ねでありまするが、公安調査庁長官の人選についてどう考えておるかということでありますが、勿論この公安調査庁の長官というものは重要な職責を持つものであります。この長官の人選については、いずれの面からいたしましても納得の行くというような人を持つて行きたいと考えております。即ち識見、力量等、これは人間のことでありまするから、いずれの人にいたしても多少の批判はありましようが、とにかくこの人なればというような人を選びたいと考えておりまして、目下それについての考えを練つておる次第であります。
○羽仁五郎君 その点について特にお願いいたしましたのは、法務総裁が一昨日私にお答え下さいました通りに、この法だけで治安を維持するとはお考えになつていらつしやらない。他面においては社会政策の適正なる実行、それから又一般新聞などの活發なる活動というものと相待つて本法はその正当なる運用をなすことができるということをお答え下さいました。その点で特に例えばアカハタが日刊で仮に百万出ておるといたしましても、朝日、毎日、読売が日刊で一千万出ておる、そうすればアカハタでこういうことを書いても、朝日、毎日、読売でそれについて十分な批判をされておるというような点についても御理解になることを長官に望む。私のお願い申しましたことは、長官の法律上の資格という意味ではございません。内容上の意味で、第一には社会政策などにおける御理解もあり識見もおありになるとか、それから第二には特に新聞の、新聞政策というと少し全体主義的になつて誤解を招きますが、この新聞などの問題における十分な識見と経験とをお持ちになつておるかた、特にこの二つの点を重点的にお考えを願うことが非常に望ましいのじやないかという点を申上げたのですが、その点については十分お考え下すつておることと思いますが、如何ですか。
○国務大臣(木村篤太郎君) 十分御意見のあるところを一つ考慮に容れて処置いたしたいと思います。
○委員長(小野義夫君) 次の問題。
○国務大臣(木村篤太郎君) 次に公安調査庁においてはいわゆる祕密活動をするのかどうかという御質問のようでありますが、この調査庁で行われる事務は、勿論この法律にきめることが必要であつて、且つ相当な限度において公正に行われることを必要とするのでありまして、この祕密活動なんというこの意味は私にはちよつと解しかねるのでありまするが、或いはこれは政治活動でもするのじやないかというようなお気持じやないかと、こう受取れるのであります。さようなことは断じていたさんつもりであります。公正にやつて行きたい。
○羽仁五郎君 その点について法務総裁の御答弁は、いつも我々に或る程度まで安心を与えられておるのですが、例えば中山委員からの御質問、即ち密告を取上げるかという御質問に対して、法務総裁は断じてかようなことはしない、そういうことをすると日本の社会に再び暗い感じを与えるようになるから、断じてそういうことはしない、こういうようにおつしやつた。ところが他の機会に他の委員の御質疑に対して特審局長から、必要に応じて尾行、張込みをやるというお答えがあつた。この二つの間に多少の、場合によつては誤解を生ずる虞れがあると思いましたので、私の質問の要点は、例えば犯人の捜索とか或いは犯罪の捜索とか、行政又警察、又は調査で、必要にして止むを得ない、眼前の危険を前にしての活動というものに対して私どもは議論をしようと思つておるのじやない。そうでなくして、もう少し広汎にいわゆる予防とか或いは情報とかいうことで祕密活動が行われるということになつて来ますと、これは昔の特高と実質上非常に似たものになつて来る虞れがある。で、問題は破壞活動をなすかも知れん団体をこの法によつて規制します場合に、恐らくは潜り、非合法的な活動に移つてしまう者が非常に多い。従つて直ちにそれを政府機関が追跡して、自分も潜つて行くというような意味における祕密活動というものをする気持があるかどうかということを伺つたのです。大体特審局長からもその犯罪の捜査或いは犯人の追跡というような程度におけるいわゆる祕密の活動というものを除いて、それで今言つたような相手が潜つたからこつちも祕密活動を始めるというようなことは許さるべきではないというふうに考えるというお言葉がありまして、なおその点については法務総裁からお答え下さるということでありましたので、今のお答えもそういう御趣旨のものであろうというふうに伺いたいと思うのであります。これは実際学者、文化人或いは芸術家、日本美術会の安井曾太郎画伯が署名して本法に対して反対をしておられますけれども、要するにそういう祕密活動を政府がされるということに対しての恐怖から来ますので、必ずしも本法に対する誤解ばかりでもないので、そういう点を明らかにして頂きたいと思つて伺つた次第であります。
○国務大臣(木村篤太郎君) 誠にその通りでございます。さようなことは断じていたさせません。
 それから最後に大衆団体等の槍のついておる旗が凶器となるかどうかという御質問……。
○羽仁五郎君 一応簡単に私の申上げた点を申上げますが、いわゆる武力を以て活動する団体の旗には槍がついていないのが原則であります。国旗とか軍旗とか……、そうして武力を持たない団体の旗というものには槍がついておる。これは日本ばかりではございませんで、世界全体の長い伝統に基いておる。従つていわゆる組合旗或いは学校の旗、その他平和な団体の旗には槍がついておる。このことについては歴史的にも、又法律を超えた慣習の上からも、深い伝統があり、又その意味があり、これは尊重せらるべき理由があると思うのであります。その旗を持つておる旗手がその団体を指揮し、その旗手の下に団体行動が平和に行われる。若しこれが尊重されないとなりますと、団体交渉で誰と交渉していいかわからないということになります。議会などで、最近などは裏門で旗を持つて入ると、一々その旗を調べる。従つて細いひよろよろしたよう竿に旗をつけて来るよりしかたがない、こうなると旗が尊重されず、団体活動の秩序が失われるような虞れがある。又組合旗なり校旗なり、団体旗の先についておる槍を凶器として使用するということは、良識ある団体はなさないところでありましようし、従つて政府の原則としてのお答えとしては、その組合旗、学校旗、団体旗などの先についておる槍というものは凶器とみなさるべきでないというようにお答え頂いておくことが、この団体活動又団体交渉などが常に正常に保たれる、原則的な意味において願わしいことではないかと思うのであります。これは余談に亘つて恐れ入りますが、御承知のように封建時代の日本の女性が懐刀というものを持つた。これは凶器というものには決してみなしていないのであります。これは凶器として用うるならば用うることもできるでしようが、併しお互いにそれは凶器とはみなさない。ただ最後に自己の節操を守るために懐刀を持つておる。これはなかなか高く意義があると思うのでございまして、これは如何なる法の上にも立つところの尊い慣習である。これを法の下に置かれるということは納得しがたいと思いますので、その点高邁なる識見を伺つておきたいと思つたのであります。
○国務大臣(木村篤太郎君) 凶器の定義につきましては、すでに只今の最高裁判所の前身でありまする大審院において下されておるのであります。そこで旗についておる槍、これが凶器になるかならないか、もとよりこの大審院の判例そのままを見ますると、これは凶器という定義を下すよりほかにないのであります。併し今羽仁委員の仰せになりましたように、凶器であつても、それが直ちに人を殺傷するとは限らないのであります。只今仰せのように、昔の婦人がいわゆる懐刀を持つて、常に自分の節操を守つておるという、このようなものはそれ自体凶器でありましても、その使用方法について何ら凶器の役をしないのであります。今の旗竿の問題でありましても、普通団体が行進或いは学校その他の団体の象徴旗として持つ分においては、直ちにそれのみを以て私は凶器であると言うことはできないと考えております。本来の姿そのものについては凶器であるかと考えます。併しその使用方法については、凶器としての取扱いを受けるべき対象にはならないと、私はこう考えております。
○羽仁五郎君 その点については、なお一般の団体活動の取締の場合に、一一その旗を調べて、先に槍がついておれば外させるというようなことが間々行われておるようでありますが、只今の法務総裁の御答弁が徹底すればそういうことがなく、法の上に立つ長い尊い習慣というものが尊重せられるであろうと確信して満足するものであります。なおその他の点につきまして、土曜に伺いました点で、政府委員から一応の御答弁がございました。或いは私としてはその点についても総裁から更に重ねてお答えを頂けるかと思つた問題もあるのでありますが、今のお言葉ですと、只今の旗竿の槍の問題が最後のようでございますが、そうでしようか。
○委員長(小野義夫君) 何か残つておりましたか。
○羽仁五郎君 それでは簡単に申上げますが、さつきお答え下さいました中に、祕密活動はやらせないというお言葉がございました。それに結付きまして、いわゆる機密費の問題について伺つておいたのでありますが、これは特に大内兵衛教授のような財政学の権威から私などに向つて特にこの点の政府の所見を明らかにしておいてほしいと言われます。これは御承知のように、戦前には内務省の機密費というものが実に害悪を流しました。従つて政治警察というものが恐るべき威力を発揮しまして、節操ある政治家が進退に窮せられるということにまでなつた。その端緒を作つてはいかん。特に大内先生は、藤井蔵相や高橋蔵相とかいうようなかたが、軍の機密費のために命を落された、ああいうことをどうか繰返さないでほしいということを含めまして、今後公安調査庁の予算というものについて、どうか機密費の端緒となるものを開かれないように万全の努力をして頂きたいということであります。これについてのお答えを頂戴したい。それに結付きまして、公安調査庁が、仮に本法が成立いたしまして発足された第一の仕事として、特審局時代にとかく新聞その他世論の批判を受けられたような活動、人権蹂躙をしたのではないかというような、或いは偽特審局員が九州大学に侵入したというような事件、それからもう一つは、特審局の予算について非常に私ども不愉快な事件を耳にしております。一々名前を申上げませんが、場合によつては前法務総裁の名前なんかも出たりいたしました。それらを我々は公安調査庁設置法案の審議で、本来でありますれば祕密会にでもして頂き御説明を伺うべきはずなんでありますが、時間も切迫してういうようなことを許して頂くことも不可能かとも恐れますので、そこでお願いとして、第一には今申上げたような機密費は絶対にこしらえない。第二には、過去における特審局の活動について、又予算について問題のあつた点については必ず調査をなさつて、その原因がどこにあつたかを明らかにせられ、将来にそうしたものが再び起らないように努力をするということをお約束して頂ければ有難いと思います。そういうお願いをしたのでありますが、如何でございますか。
○国務大臣(木村篤太郎君) 只今のお言葉私も至極御尤もと思います。こういう仕事をする上において徒らに世間の疑惑を招くようなことがあつては相成りません。私は自分の在職中に限りましてはさようなことは一切なにしないということをここで断じてお誓いいたします。将来に向つては国民の信頼を得なければならない、これは大事であります。特審局の方面において国民の信頼を失うということは一番慎まなければなりませんから、これらの点については十分な私は注意をして行きたい、こう考えております。
○羽仁五郎君 そうすると、お述べになりました機密費の端緒となるようなものを発生させない、それから又過去において特審局の活動に関し、又特審局の予算使用の実情について、世間の批判があつたものについては十分の御調査を下さるというふうにお約束下さつたというふうに伺います。
 それから次の問題は、極く簡単に申上げますが、共産党の問題なんですけれども、一言で申上げますと、共産党というものを、何ら直接の関係のない犯罪事件というものと結付けてこれを解散する、これを非合法化するということが本法によつてなされるのではないかということが一般に一つの不安を感じさせている。これは御承知のようにナチスが政権をとりまして、最初にやつたことが共産党員の一人を買収したか強制したかしまして、国会議事堂に火をつける、そうしてそれを以てナチスが国会を破壞しようとしているものとして、ヒツトラーが共産党を弾圧し、それから社会主義者などを弾圧し、やがては民主主義者をも弾圧するというようなふうな実例が一九三三年にありまして、これが国際的な問題になつているだけに、この法律をそういうように使うという気持がどこかにあるのじやないかという不安感でございます。その点について法務総裁に答えて頂きたいと思いますのは、共産党であれどういう政党であれ、その政党に直接の関係のない犯罪事件を結付けて、そうしてその政党なり、組合なりを解散するというようなことは絶対に許されない。これは特審局長からお答えございましたが、そういう御答弁がございましたが、法務総裁からもその点を確認しておいて頂ければ有難いと思います。
○国務大臣(木村篤太郎君) この法案は繰返して申しました通り、その団体の性質如何を問わず、日本の国家の基本秩序を破壞せんとするような暴力主義的破壞活動をなす団体を規制して行
 こうとするのであります。目的はもうすでにはつきりいたしているのであります。それ以外の目的を以て如何に活動しようともこの法案の対象となるべきものでは絶対にないということを申上げておきます。
○羽仁五郎君 それからもう一つは、
 これは常に言われていることでありますが、共産主義、共産党に対する恐怖心というものが、とかく共産党に対する対策を誤る点において恐るべきものがある。共産党を余りこわがつてその、ために却つて民主主義のいろいろな習慣や又原則を破壞してしまうという虞れが多分にある。従つて本法の運用の上におきましても公安調査庁長官は勿論のこと、各調査官も、いやしくも恐怖心に動かされて活動をしないということを是非文字の上で明らかにされまして、そうした恐るべき活動が防止されますようにお願いしておきましたのですが、これも法務総裁は恐らくそのようにお取計い下さることと思うのです。
 その問題と関連しまして、殊に労働組合関係の議員からの御質疑の点につきまして、組合の中で祕密のフラクシヨンが活溌に活動して、その結果破壞活動が起る。ところが秘密のフラクシヨンは容易に捕えることができない。その場合に祕密のフラクシヨンを捕えることができないからといつて合法的な組合のほうに調査の手を伸ばすというようなことが行なわれますと、組合活動が非常に不安になり、正常な組合活動もつぶれてしまうというような虞れがあるので、そこでこの際法務総裁からもはつきり答弁して頂きたいと思いますのは、そうした場合にこの祕密フラクシヨンによつて破壞活動がそこで活溌に行なわれる、その祕密フラクシヨンを捕えることができないからといつて合法的な組合の活動、又その組合員に対して調査活動を行なつて、正常な組合活動に不安を与えるということは許さるべきでないという点についてお答えを頂いておきたいと思います。
○国務大臣(木村篤太郎君) 組合の活動と祕密フラクシヨン活動とは私は別のものと、こう考えております。フラクシヨン活動においていわゆるこの法規の対象となるような活動が行われますと、そのフラクシヨンが規制されて行くわけでありまして、本体の団体そのものには何ら関係ないのでありまして、今仰せになりましたフラクシヨン活動についての実体を捉えることができない、その結果本体の団体についての調査をやつて迷惑をかけるようなことはないかという疑問でありますが、私はその間においてはつきり区別すべきものであると考えております。フラクシヨン活動の結果本体たる団体がそれがために規制されるというようなことはこれは私は断じてないものである、こう考えております。
○羽仁五郎君 今の問題と関連しまして、この機関紙に対する規制と、それから集団示威行進、集会に対する規制の問題でございまするが、この点について私の質問の要点は、これは六カ月以内ということになつておりますが、併しこれは六カ月とか三カ月とか一カ月とかいうようにかなり長期の規制がされますると、それが憲法に違反するのではないかという問題が起つて来ると思うのでございます。で本法で言われておりますのは、本文にも書いてありますように、必要にして最小限度を超えてはならないというように言つておられますのも、憲法違反の危険を除く御意思がそこに現われておる。そこでこの法律の意味するところは、その集団示威行進や集会なり或いは機関紙なり、今眼前で行われようとしておる集団行進なり或いは今眼前で発行されようとしている、発行しているところの機関紙、それを差止めるということが私は先ず第一にとられることで、これは今の憲法違反という問題もよほど起つて来る可能性は少いと、行政上の責任をとつておられる政府の行為として許されるということが言えるのではないかと、その点を主とせられて、これで目的を達せられない場合に更に或る程度の期間そういうものに対する措置ということをお考えになるというようにこれは了解してよろしいのであろうか、それともかなり容易に六カ月或いは三カ月或いは一カ月というふうにお考えになつているかという問題について伺いまして、政府委員の御答弁としては、建前としては、それが今眼前に危険を、破壞活動の虞れのある集団行進、集会或いは機関紙、それに対する規制というものが主として眼目となるべきであつて、長期のほうにいきなり考えて行くということは許されないし、又憲法違反の問題も起つて来るという点に同意されたんでありますが、法務総裁もその点について御所見をお持ちであろうというふうに思いますので、この点について伺わせて頂ければ大変有難いと思います。
○国務大臣(木村篤太郎君) 眼前危険でありまする集団示威運動とか或いは機関紙の発行、これが対象となることはもとよりでありまするが、それ以外についての規制は、いわゆる必要最小限度でありまして、それは具体的の事案をとり上げまして、いやしくも集会或いは出版の自由を不当に制限しない範囲内において、必要最小限度においてやる建前になつておる次第でございます。
○羽仁五郎君 最後の問題ですが、今の問題は、それはこの規制が例えば集団行動を規制する、或いは機関紙を制限するため更に進んで団体を解散してしまう、ところがその問題があとで裁判で無罪になつた場合の問題ですが、これは簡単に申上げますが、憲法で保障されておる……我々の見解によれば制限されることのできない基本的人権、意見長官の御意見でも、制限されがたい基本的人権、これの制限をしてしまつて、それであとから裁判でそれは無罪であつたという、これに対して職権濫用に関する責任をとる、又国家補償についての補償の措置がとられるというだけでは、その重大な基本的人権の制限が理由なくして行われたことについての問題は解決していないと思うのでございますが、これは一般の行政法にそういうことがあるように意見長官も言つておられますが、この法における只今の問題は、特に重大な言論、集会、結社の自由制限でありまするので、誤つてその理由がないのにこれらの制限が行われた場合には、この責任はどうしても政府がとつて頂かなければならないのではないか、で私は場合によつてはこの内乱の危険というものは、政府がみずから退いて、政府が後退することによつて、或いは総選挙等によつてそういう内乱の危険を防止できる場合もあるという点も考えまして、今の点は特に重大でありまするので……、只今申上げましたような重大な基本的権利の制限がなされて、それがあとに裁判によつて理由のないものである、無罪のものであるということになつた場合には、私は総理大臣が責任をとられるべきだというふうに思いますけれども、そこまで行かないにしても、公安調査庁長官が責任をおとりになるということは、私は本法の建前上必要じやないかというふうに伺いました。大体政府委員からも同意の御答弁がございましたのですが、法務総裁としてはどんなふうに御覧になつておられますか、その点。それからいま一つは、この問題と関連しまして、この間まで本院において我々の同僚でありました細川前参議院議員に対する処置でありますが、とれも検事局でそういつた犯罪の根拠なしというふうになつたのでありまして、然るにその間に参議院議員たるの地位を失つた。若し政府が真実誠意を以て国民に向つてこの民主主義を、投票によつて議会を通じてやる、これ以外に方法がないと考えるならばどうか投票によつて自己の代表者を選び、それによつて自己の政治上の望みというものを実現するということをせよという、この国民の投票権を飽くまで尊重せられるということが、政府の真実の誠意であるというふうに私は信ずるのですが、又私自身もそれを非常に深く願うものなんです。従つてそれが折角国民が数十万の投票、而も我々の同僚松原一彦君の述べられたところによれば、恐らくこの細川君に対するところの投票には買収とか不正という投票は少い、却つていろいろな圧迫に屈せざる貴重な投票が多いのじやないかというふうにまで考えられますので、私は特に共産党議員に対して弁護しようとするものではないのでございまして、国民の投票権は飽くまで尊重して行きたいというように考えます。でこの点につきましても、もうすでに済んだ問題であり、或いはマツカーサーの命令である、その命令にそういうかたが何されたという程度の御答弁ではなく、この問題についてはなお慎重にお考えになる御意思があるべきではないかと思うのでありますが、以上二つの点について伺わせて頂きたい。これは私の最後の質疑でございます。
○国務大臣(木村篤太郎君) 只今団体規制について、裁判所で無罪の判決を言つた場合において調査庁長官の責任の問題の御質問でありますが、これは一に調査庁長官の政治的見解に基くものであろうと私は考えております。要は立派な調査庁長官を選任するということに帰着するのではなかろうかと、こう考えております。
 第二点の問題につきましては、実は私は細川君の追放のことについては、事実その当時当局者でありませんからよくわかりませんが、あとで聞き及んだところによりますと、これはメモランダム・ケースとして司令部の処置に出たもの、こういうことであります。仰せのごとく細川君は多数の輿望を担つて代議士に当選されたので、その地位を尊重すべきはもとより当然であります。私といたしましては、今後日本が独立国家となつたのでありまするから、議員の地位、これは最も尊重すべきものであると考えております。従いまして今後におけるさような問題につきましては、断じて細川君のようた轍を踏まないようにいたしたいと、こう考えております。
○吉田法晴君 ちよつと質問を始めます前に御都合を伺うのですが、先ほどのお話では法務総裁は午前中……こういう委員長のお話でありましたが……。
○委員長(小野義夫君) 速記とめて。
   〔速記中止〕
○委員長(小野義夫君) 速記始めて。
○吉田法晴君 それでは第一点はこの法案についての根本的な態度でありますが、その後学界或いは宗教界等を含めまして、この法案に対する反対の意向は更に拡まつております。で実は今日も関西のほうから私の恩師も出て頂いて、全然中立な学者として、学徒として、この法案について濫用の必然性を感じ、この法案に反対をせざるを得ない、出直しを願わざるを得ないという御意見を持つて来ておられます。或いは御承知であるかと思いますけれども、九大はもとよりのこと、西南学院というようなミツシヨン・スクールにおいてさえも先生それから学生共に反対の決意をいたしております。それらの決議或いは主張を聞いておりましても、この法案の成立の過程が或いは不十分であり、それから出て参りました法案についても、私ども研究すればするほど濫用の必然性を持ち、国民の基本的な権利、義務、特に思想の自由或いは学問の自由、或いは信教の自由さえも制限するのではないかと考えられるのであります。参議院の審議もだんだん進んで参りましたけれども、法務総裁として英断を以てこの法案を撤回すると申しますか、或いは練り直す御意思はないか。私は輿論に鑑み、そして中正な意見を持つておられるかたたちの心配と意見とに鑑みて、これだけの反対があるのにかかわらず、国会がそのまま無理をして通すということは、これは政治或いは国会に対する信頼に関係するということを考えまして、その点を更にお尋ねをするわけでありますが、法務総裁の従来通りの一片の御答弁でなくて、深い考慮からする御答弁をお願いいたしたいと思うのであります。以上であります。
○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。私は現下の情勢に鑑みまして、この法案は絶対に必要であるという確信を持つております。従いまして撤回の意思は毛頭ございません。いろいろの方面からこの濫用の点についての御議論がありまするが、それでは如何なる点について濫用の虞れがあるのか、もう少し具体的に各方面の私は御研究に相成つて然るべきものであろうと考えております。今申されましたところは、社会が全部反対というようなことでありまするが、私の見るところではさようではありません。これに対して相当な必要性を強調しておられた人もあるのであります。我々の手許においてさようなことを言つて来る者が多数あります。従つてこの法案の必要なることについてのもう少し具体的事情がわかつて来れば、只今反対されているかたがたも恐らくその必要性は認識されることであろうと、私はこう考えております。この法案によつて、学問の自由なり思想の自由が圧迫されるという懸念があるというようなことを申されましたが、さような点がどこにあるのであろうかと私は不思議に思うくらいであります。断じて学問の自由、思想の自由をこの法案によつて抑制しようというようなことはないのであります。ただただ現下の治安情勢に鑑みまして、殊に日本の憲法に規定されました、国家の基本秩序を維持し、或いは刑法に規定されました兇悪犯罪をなそうとするような暴力主義的団体を規制しようというのでありまして、決して学問の自由なり思想の自由なりを抑制しようというような意図もなければ、又この法案によつてさような結果を生み出されないということを私は深く信じておるわけであります。さような次第でありまして、この法案を撤回する意思は毛頭もないということを私は申上げておきます。
○吉田法晴君 例えば学者につきまして、或いは学徒について、どこに濫用せられる虞れがあるのか、勉強せられるならば理解せられるであろうと、こういう御答弁でありますが、その中身は詳しく申上げる必要は私はないと思うのであります。先般法務委員と学校の先生がた、或いは総長を交えて行いました懇談会の内容についても、出席された政府委員から聞かれたと思うのです。これは或いは憲法をやり或いは刑法、行政法をやつておられる専門家のかたたちが具体的に指摘をして論述になつたのであります。その後或いは国会に文書等を以て申出られておる点もあると思う。併しこれは国会の、或いは参議院の院内の空気からいたしまして、少くともこの点はこう直してもらわなければならんという意見でありますけれども、併し破壞活動防止法案がこのままでいいという意見は殆んどございません。これは学術審議会の速記録を見られても明らかでありますけれども、或いは東大の先生がたにおかれましても、学術審議会で意見を吐かれることはとにかくであるけれども、破壞活動防止法については反対であるという点は、これは名前は挙げませんけれども、東大の諸教授にしてもそうであります。意見の出し方については、何と申しますか、非常に遠慮をし、或いは礼儀を以て国会なり或いは政府当局に言つておられることは、これはお認めになると思うのでありますけれども、法務総裁の今のお言葉は、これは或いは学者諸先生についてはその言い分を強いるものだと考えるのであります。賛成をしておる者もあるというお話でありますけれども、先般の公述から見ましても、賛成を無条件的にしたという人は極めて稀であつたことは、これも御承知の通りであります。議論はいたしませんけれども、今の法務総裁の御答弁では、深く考えそうして反省をするという点がない点に極めて私は遺憾の意を表したいのであります。この点につきましてはこれは論議になりますから省略をいたしまして、私は法務総裁の善意は信頼いたしますが、更に一層の御反省を切にお願いをいたしたいと考えるのであります。
 それから二点は、この破壞活動防止法関係法案のほか、いわゆる治安立法として出ておりますものが現に集会、示威行進の秩序保持に関する法律があり、或いは労働法につきましても、緊急調整制度を含みます治安維持の観点からする労働法の改正が考えられておる、或いは国会に法律法が出ておるという事実がございますが、更にいわゆるゼネスト禁止法、それが非常事態に即応する法律といつたような構想で考えられておるということでありましたが、このいわゆる治安立法における破壞活動防止法以外の構想についてこの際承わつておきたいと思うのであります。
○国務大臣(木村篤太郎君) ちよつと今の御質問の趣旨が受取れませんが、今政府におきましては警察法の一部改正と集団行進の秩序保持に関する法律案を提出いたしましてすでに両案は衆議院を通過いたしまして、只今参議院に回付されておるような次第であります。この二法案もいずれも我々といたしましては必要欠くべからざるものとして提案した次第であります。ただ破壞活動防止法案とは関連性はありません。前々からかような法案の必要性を我々は認めておつて、その作成に努力しておつた次第であります。
 又労働法の改正につきましては、これは現下の労働関係から、労働省においては是非必要であるという観点から立案されたのでありまして、破壞活動防止法案とは何らの関係はないということを申上げたいのであります。なおこの労働三法の改正は、必ずしも治安の維持のみを目的とするものではないと私は考えております。いわゆる労働関係の調整ということが主なる点であろうと考えておる次第であります。
○吉田法晴君 一点御答弁が落ちましたが、いわゆる治安立法として従来ゼネスト禁止法という名前で呼んだものにつきまして、木村法務総裁は、新聞その他で、或いは本会議の答弁でも、私の質問に対しても、そういう法律を制定する用意をしておると、こういうお話であります。その後新聞の伝えるところでは、戒厳令と申しまするか、或いは非常事態に即応する法律のような構想を以て立案されておる、こういう御意見或いは御意図が発表せられておりましたが、そういう点についてなお御答弁を願います。
○国務大臣(木村篤太郎君) このゼネストによつて一般国民の経済並びに生活が不安に陥れられる場合に対しての処置についての法案、これについての一応の立案はしております。併しながら今申されましたような一般的の非常事態に対処するべき法律案、そういうものは考えたことはありません。ただいわゆる世間で言うゼネストに対する法案そのものについては、構想を持つて立案しておる次第であります。
○吉田法晴君 曾つての治安維持法が存在しました時代に、この種の法律として治安維持法或いは治安警察法或いは新聞紙法、或いは出版法、或いは陸軍刑法もございましたが、軍機保護法等が揃つてこの役割を果したのであります。破壞活動防止法の中身においては若干の違いはございますけれども、その治安立法たるの性質、或いは破壞活動防止法の対象が左右を問わずと言われますけれども、法務総裁の説明を以てしましても、イデオロギーに関連する破壞活動云々ということで、共産党を目標にした法案であることは、これは従来はつきりはしておりませんけれども、殆んど常識で考えられるように表明をされて参りました。大体治安維持法と本質的には同種類のものであると考えられます。それから集会、デモの秩序保持に関する法律は、或いは臨監ではないかも知れませんけれども、集会等を解散し得る臨監にひとしいものが復活するという意味において、或る意味においては元の治安警察法を復活する役割を果すのではないかと考えられる。先に刑事特別法で以て軍機保護法に代るべきものが復活をしたのであります。残つておるものは新聞紙法或いは出版法が残つておるだけだと、こういうことさえも考えられるのでありますが、出版或いは新聞紙に対する政府或いは法務総裁の御所見を承わりたいと思います。
○国務大臣(木村篤太郎君) 只今吉田君のお言葉によりますると、この破壞活動防止法案が如何にも治安維持法と類似のようなふうなお言葉であります。これは私がしばしば申上げましたように本質的に異つておるのであります。十分両者を御検討下さればその間の根本的に差異があることが御了解願えると私は確信して疑いません。
 警察法の問題でありますが、この警察法の一部改正は、決して昔のいわゆる警察の一本化を考えておるのじやありません。ただ最終的の治安についての責任者、これは先ず総理大臣でありまするから、総理大臣と警察を実際に取扱つて行く者との関係を明らかにするために一部を改正したものでありまして、決して今申されたような立場においてこの警察法一部改正は立つものじやないということを申上げておきます。又政府におきましては出版法、新聞紙法その他についての処置はどう考えておるかということでありまするが、只今の段階におきましてはさようなことについてはまだ構想を持つておるわけではありません。
○吉田法晴君 治安維持法と破壞活動防止法案の差異と同一性についてここでは論議はいたすべき場合ではないと思います。ただ反駁がございましたので一言申述べますが、行政処分が中心になつておるが、刑罰規定もある。初め治安維持法の場合に、これは刑事特別法であつたことは間違いございません。併しながらその使命とするところが治安立法と申しますか或いは治安警察を復活するということは、これは法制意見長官、木村法務総裁同席の下において認められたのであります。先ほど法務総裁の言葉を引いて、イデオロギーに繋がる破壞活動を対象とする云云ということで、その点についてもこれは同一性を法務総裁みずから認められたものだと私は信ずるのであります。細かい議論は省略をいたします。
 お尋ねをいたしたい第三点は、曾つて私は警察予備隊或いは海上保安庁の警備隊が軍隊であるかどうかという問題に関連して、木村法務総裁のこれは個人的な御注意を喚起したことがございますけれども、現在十一万の警察予備隊が更に或いは五万とか八万とか、将来三十万に増大するという計画さえも伝えられておりますが、仮に只今の警察予備隊の人員が十一万といたしまして、その中で旧士官或いは旧将校と申しますか、一万二千程度の幹部を養成して参りますならば、この旧士官がその人間性において、或いは指揮能力、或いは戦術の面において他を圧して指導権を握ることはこれは誰の目にも明らかであります。そうしてこの警察予備隊の中における士官が一つのグループ、或いは一つの力を持つならば、これは或いは政府や或いは木村法務総裁個人の善意にかかわらず、旧軍部の復活が行われるであろうし、或いは旧軍部でなくても、その中の人たちが警察予備隊なり、今後増強して参る自衛力を引摺つて行くということは、これは設置した人、或いは政府の意思如何にかかわらず、引摺られて参るということを申上げたことがございますが、ここで警察予備隊と旧軍部の復活について申上げようというのではございませんけれども、この同じような危険性を治安警察を担当する部門において、言い換えますと今の特審局、将来の公安調査庁においてお考えにならないかという点をお尋ねいたしたいのでございます。警告を発する意味において申上げたいのであります。
 特審局がどうしてできたかということは私が今更申上げるまでもございません。この特審局が共産党の八幹部の逮捕困難によつて増大をいたしました講和後の治安維持と申しますか、使命遂行のためにここに五百名程度でありまするけれども増大をいたそうとしております。破壞活動防止法案の中にも、或いは公安調査庁と警察と協力をする、こういうことによつて予算もこれは殖えて参りましよう。或いは四億程度の庁舎の新築その他の必要も認められてるわけでありますが、だんだん殖えて参りますというと、例えば最初目的にいたしました破壞活動の取締という名目によつて共産党の破壞活動を取締るという先ず目的を持つておられるかも知れませんが、或いは治安維持法の場合に当時の特高警察が共産党の幹部を挙げて行つたら、だんだん周辺に及んで行つて、或いは労働運動をやつておる者、或いは雑誌「労農」に立籠つておる人たち、或いは企画院の役人に及び、或いは治安維持法の提案理由の説明をせられた若槻礼次郎氏をも例外なしに、こういう比較的リベラルな人たちまでもこの法案によつて間接に規制して行つたという過去の事実から考えましても、或いはこれは昔のことでありますけれども、飯の種にするために次々に仕事をこしらえて行くという傾向がございました。一つの機構を作り、そうして拡大して参りますならば、こういう弊害はこれは弊害にとどまらず、必然性を持つて転げ出して参ります。軍隊の時に申上げましたけれども、転び出した雪だるまは途中で、これは木村法務総裁等の善意にかかわらず、とめることができない、こういうことになる危険性はこれは十分お考えになることだと思うのでありますが、この危険性について法務総裁としてどういう工合にお考えになつておりますか、これは根本問題でありますが、明快に一つ御答弁をお願いいたしたいと思います。
○国務大臣(木村篤太郎君) 私は吉田委員の今のお考えは思い過ぎではないかと考えております。我々も第一にこの法案の作成に当りまして十分に意を用いたのは、この調査官に強制調査権を持たせなかつた点であります。これによつて相当の濫用性は防止できると、今でもこれは確信は動きません。そのほかに委員会の制度を設けた点その他の点から見まして、この法案は十分濫用を防止し得るものであろうと、私はこう考えております。それから人員の増大でありますが、これは必要止むを得ざる程度において増員を図つたのでありまして、これがためにこの機構が厖大になるということは考えておりません。繰返して申しましたごとく、本法案につきましては、先ず第一に調査庁の機構について十分な考慮を払い、そうしてこれを運用する面におきましても慎重に取計つて行きたい、こう考えておりまするから、昔のような弊害は私は起る余地はないものと考えておる次第であります。
○吉田法晴君 ないものと考える或いは信ずるというお話でありますけれども、過去の歴史は日本だけでなしに、世界的に見ましてこういう種類の機関、或いはこれを治安警察或いは思想警察と申上げてもいい点は、これは従来認められて来たのでありますが、そういう機関がだんだん大きくなつて行く、そして弊害を生ずることは、これは歴史の示すところでありますが、強制調査権を持たんから、それだけで弊害、濫用は起らん、こういうお話では納得が行かないので、もう少し具体的に、こういう方策を講ずるから、或いは法文の上にこういう措置を講ずるからだんだん大きくなつて行くことがない、或いはそれによつて濫用が起ることはないと、こういう明確な答弁を頂かない限り、法務総裁の善意だけでは私ども安心をするわけには参らないのであります。特に今の御答弁を聞いておつて思い出しますけれども、これは前任者のことで恐入りますけれども、前法務総裁大橋氏は、幾ら骨抜きにされても橋頭堡をこしらえておくならば今後の何と申しますか、修正案或いは改悪は易々たるものであるという意向を漏らされましたことは、これは御承知のところであると思います。恐らくこの法律を実施してみて都合が悪ければ、或いは調査権の問題にいたしましてもその他の問題にいたしましても変つて参る。このことは前法務総裁だけでなしに、木村法務総裁といえども、今まで木村法務総裁の言われて参りました、或いは私どもの質疑と討議に対して答弁せられましたものは、善意に大半は認めます。木村法務総裁が善意に基いて答弁をしておられることは認めるのでありますけれども、細目に亘りましてはこれは特審局の意見以上には出ない、具体的な方策については特審局の意見以上には出ないと考えます。従つて法務総裁の善意が今後どれだけ保証されるか、これは法案の中に、或いは法案の本質の中にはつきり出ない限りこれは保証し得る限りではないということは私ははつきり申上げることができるので、自分の目の黒いうちはそういうことはいたさない、こういうお話でございますけれども、木村法務総裁が何十年も法務総裁をやつておられるわけではございませんし、恐らくできました機構は、或いはできました法律は一人歩きして参りますが、その一人歩きをして参ります法律について、或いは機構について、それはただ絶対にさせないんだ、これだけでは何の御答弁にもならんと考えます。具体的にその点を法案のほうでどうするか、或いは機構のほうでどうするか、この点を承わりたいと考えるのでございます。
○国務大臣(木村篤太郎君) 私はしばしば繰返して申しましたように、この法案自体が昔の思想警察を復活させるようなものでは断じてないということを申上げました。その理由は、この法案において規制する団体は如何なる団体であるかということをはつきりさせておいてあるのです。これは三条を御覧下されば極めて明瞭であります。いわゆる日本の国家、基本秩序を破壞せんとするような暴力主義的団体及び刑法に所定されておりまする兇悪犯罪を目的とするような破壞活動団体、これを規制しようとするのでありまして、そのほかに意図はないのであります。簡単に申上げますれば、その思想の右たると左たるを問わず、いやしくも暴力を行使して日本の基本秩序を破壞するというような団体を対象とするのであります。それ以外に人の思想を取締るというようなことはこの法案のどこにもないのであります。この点において十分に我々は考慮を払つたのであります。いわゆるこの法案の対象を絞りに絞つてここへ持つて来たのであります。曾つて考案されたような法案とはおよそかけ離れたものであろうと我々は考えております。而もこの法案の実施につきましては先刻来申しましたように、調査官については強制調査権を持たせない、そうして行政的に最後的段階は極めて民主的に行わるべき委員会制度を設けることによつて決定させるという手立てをとつておるのでありまして、我々は昔の治安維持法なるものとおよそ本質的又具体的にその内容を異にしておるものと、こう考えておる次第であります。
   〔委員長退席、岡部常君委員長席に着く〕
○吉田法晴君 法務総裁の善意にかかわらず、今までの質疑或いは憂慮による発言というものについて法務総裁が考慮を払われなかつたことについて極めて遺憾の意を表するものであります。第三条に規定されておるところのものは、或いは内乱であるとか騒擾であるとか、木村法務総裁の言葉を以て言いますならば、危険中の危険の行動を規制するだけである、こういうお話でありますけれども、今までの質疑応答の中で明らかなように、この法律によつて地下に潜りました共産党に何らこれは手を触れ得るものではないだろう、これは政府みずから認めておるところであります。言い換えますならば、答弁のお言葉によれば破壞活動の事前段階で規制する、これがこの法律の主な目的である、条文について言いますならば、三条の「イ」そのものが問題でなくて、「ロ」、「ハ」が、これは政府の説明によつでも一番動くところであります。或いは二号にいたしましても、「イ」から「チ」に至ります法務総裁の言われる騒擾、放火、殺人或いは強盗を危険中の危険の行動ではなくして、その最後にあります「ヌ」の予備、陰謀、教唆、扇動、政治的目的を持つた「イ」から「リ」に至る行動の予備、陰謀、教唆、扇動が主として対象になることはこれは明らかであります。そうしてこの中味に入りますと話が長くなりますけれども、衆議院の答弁等から見ましても、その点は明らかになるし、今法務総裁の否定にもかかわりませず、学問の自由等が影響を受ける点はこれは明らかであります。
 そこで関連いたしまして一応具体的な例を挙げますけれども、これは或る学説或いは事実の紹介とそれから意思という問題について衆議院で、これは古島義英議員の質問に吉河局長が答弁しておられるところでありますけれども、こういうことが書いてあります。「文書に書かれた内容が執筆者の意見として発表せられているということが内容である」。「自己の意見として現実に日本において革命が行われることの正当なことや、あるいは必要なことを主張した文書を印刷し、その印刷物を受取つて頒布したりするようなことは、一切この罰則に触れる行為である」、こういう御説明があつて、例えば歴史学或いは政治学を取扱つておられる学者のかたがたが西欧の歴史を書けば、これはフランス革命の必然性にも触れなければならないし或いは人権宣言の内容にもこれは触れなければならない、或いはアメリカ独立の経緯にもこれは触れなければならない。そういう事実の列挙或いは社会の変化の必然性について書くことがこの法律に触れるのではないか、こういう心配に対して、これは再び繰返しませんけれども、衆議院で述べられました質疑と応答の中にもその危険性がはつきりこれは見得るのであります。あとの吉河さんの答弁をここで更に繰返すことはいたしませんけれども、この点については私が指摘しましたように、衆議院での質疑、そしてその中に自由党の議員の諸氏の質問に答えては、単なる紹介或いは事実の報道といえども、その中に意思があるかないか、こういうことで若干拡がつて参つておる印象を答弁の中から窺うのでありますが、今までの政府の答弁を聞いても、この点については心配がないと、こういう工合に更に確言をせられますかどうか、更に木村法務総裁重ねてお答えを願います。
   〔委員長代理岡部常君退席、委員長着席〕
○国務大臣(木村篤太郎君) 政治学者或いは歴史学者がフランス革命なり或いはアメリカの独立戦争なんかについてその正当性を論ずることは決してこの法案の対象とするものじやありません。要するにこの法案は第三条ロにおいて明らかにしておりまするように、「この号イに規定する行為の実現を容易ならしめるため、」「実現を容易ならしめるため」、こういうことになります。いわゆるこの日本の基本秩序を暴動によつてこれを顛覆させようというその具体的の行為の実現を期するためにこれをやる場合にするのでありまして、外国の実例を言つて、その内乱、革命の正当性を説いたところで、具体的に日本の基本秩序を暴力によつて破壞しようじやないかというその目的で或る種の意図を文書によつて発表しない限りはこの法案の対象にならんということは極めて明瞭であります。
○吉田法晴君 それではもう一度ここで読上げることは省略したほうが適当かと思いますけれども、衆議院における吉河さんの御答弁によると、今の法務総裁が言われる暴動と申しますか、或いは別な言葉で言えば破壞活動という行動でありますが、それからいつて意思だけが述べられております。或いは最後に、「意見をまた紹介する。援用支援するような紹介は、一括して、主張になる」ということが述べられておりますが、この答弁は取消されますか、法務総裁としてここで取消すということをはつきりおつしやり、或いはそれらの点を第三条の解釈としてか、或いは明文の上ではつきりせられますならば了承いたしますけれども、衆議院での答弁を以てするならば、その点については食い違いがあるか、或いは不十分であるということは明らかであります。
○政府委員(吉河光貞君) 私の名前が出ましたので私から簡単にお答えいたしたいと思います。衆議院におきまする答弁でありますが、衆議院におきましては、私といたしましては、その実現の正当性又は必要性を主張した文書、その内容が論議になつております。で、主張したということは、この文書の執筆者が自己の意思として意見として述べたことである。その実現の正当性又は必要性とは、日本において現実に内乱が行われること、又は行うことの正当なことや必要なことを述べたことである。外国の革命或いは外国の歴史等を単に紹介するというようなものはこの条項には当てはまらない。外国の革命の歴史的事実を利用いたしまして、これを援用して日本において現実に革命が行われること又は行うことの正当なことや必要なことを主張した場合においてはこの文書の内容になる、かように答えているのであります。従いまして単に外国における革命の歴史的事実を説明するというような問題は当然この文書の内容にはならない、かように考えておるわけであります。
○吉田法晴君 大体吉河局長の答弁の趣旨でこれは答弁せられたものだと了解することについては一応私どもも了解しないことはないのでありますが、速記録に載りましたところではその点は明らかになつてはおりません。で、特に紹介をしたものがどうなるのだ、こういう意味において自由党の鍛冶委員の重ねての質疑に対して、だんだん譲歩せられたと申しますが、後退せられた感じがそこでするわけであります。もう一遍読んでみます。「この実現の正当性、必要性を主張した文書を頒布する、あるいは印刷するという場合には、そういう行為者に革命が実現されることを容易ならしめる意思がなければなりません。」、その場合に、今の御答弁のような、日本において内乱、その中において朝憲紊乱だけでなくて暴動という行為も含む、こういう点は入つておりません。「革命が実現されることを容易ならしめる意思がなければなりません」。そこでここでの吉河さんの御答弁を聞いておりますと、朝憲紊乱の目的、主観的な要素が中心になつて、そして言われるような暴動或いは殺人、傷害等の行為、或いは兵器の使用、こういつたような行動は少くとも答弁の中には出ておりません。なお最後には意見を紹介するという点がこの破壞活動防止法の適用をせられるかどうか、こういう自由党の議員のかたの質問に答えて、「援用支援するような紹介は、一括して主張になる」と、こういう御答弁になつております。従つてこの衆議院での答弁だけを見ますというと、内乱の中にも朝憲紊乱或いは革命の実現されることを容易ならしめる意思という言葉でありますけれども、これではフランスの例或いはアメリカの例等から、そういうものが必然であるということ、それが今の御答弁によると、日本において必然或いは必要である、こういうことにならなければというお話でありますけれども、その辺があいまいになつておつて、一応引用することが、或いは歴史的な事実を挙げることが意思と考えられる、或いは紹介をすることが使用援用になると、こういう解釈にとられる、少くともその速記録そのものを読めば虞れはこれは何人といえどもお認めになると思う。お手許に速記録もあるようですが、少くともその速記録では不十分であるということはお認めになることと思う。これは法の運用の本質的な問題でありますが、木村法務総裁に申上げるのは、この法律の解釈が行政機関によつてやられるということも大きな心配の一つでありますけれども、それに持つて来て今のような御答弁があつたのでは、外国の事実或いは意見の援用が日本においてその必然性或いは必要性を主張した文書として取扱われる危険性があると私どもが考えますのが、それが単なる杞憂であるかどうか、これは法務総裁お考えになつて明らかだと思います。それらの点に基いて御質問をしておるわけでありますが、重ねて一つ御答弁をお願いいたします。
○政府委員(吉河光貞君) なお私から少し補足いたしたいと思うのでありますが、この私が衆議院で答えておる、古島委員の質問に対しまして、「この実現の正当性、必要性を主張した文書を頒布する、あるいは印刷するという場合には、そういう行為者に革命が実現されることを容易ならしめる意思がなければなりません。」、これはこの文書の内容について論じているのではございませんので、そういう文書を頒布したり印刷する者自身に、日本において現実に内乱が行われたり、行うことを容易ならしめる意思がなければならないという点を指摘したものでございます。それからなお古島委員の御質問に対しまして、私といたしましては、文書の内容につきまして、文書全体の趣旨からそういうことの必要なこと、或いは正当なことがはつきりと打出されている、又紹介については、これを利用するというような紹介は単なる紹介ではなく、一括して主張になるものと考えております。かように答弁申上げているのであります。
 これを要するに、眼目は、単に外国における革命の歴史的事実を説くと、或いは説明するというような点はこういう文書の内容にはならない。飽くまで眼目は、日本において現実に革命が行われ或いは行うことの必要なこと、或いは正当な自己の意見として打出すというものでなければならない。この場合に外国の革命の歴史的事実を利用したりするような場合には、一括してこの文書の内容になるというようにお答えしているはずであります。
○吉田法晴君 法務総裁の御答弁も要求したのでありますが、特審局長から事前の御説明がございましたが、今私は手許に速記録全文を持つておりませんけれども、吉河局長に重ねてお尋ねをする。この答弁で不十分であるという点はお認めになるかどうか。
 それからもう一つ、意思の問題でありますが、その意思を何によつてこれは判定されるのか。恐らく文書なら文書で判定せられるしがなかろうかと思うのでありますが、その意思の判定の方法をお伺いしたいのであります。
○政府委員(吉河光貞君) お答えいたします。これは結局具体的な事実認定の問題になると思うのであります。すべて行為者が持つている目的を何によつて認定するか、具体的な各般の証拠に基きまして社会的に合理的な判断がなされなければならない。具体的な場合におきしていろいろな証拠がここに採用されるものと考えております。
○吉田法晴君 具体的に合理的にというお話でありますけれども、これはもつと具体的に講義をしなければ明らかにならんと思うのでありますが、今の例を、これは例をとつて法務総裁にお尋をしたのでありますが、法務総裁は先ほどの私の質問に答えて、法務総裁の言われる内乱とか殺人とか、そういう危険中の危険の行動だけを対象としているので問題はないという御答弁でありましたけれども、今の話を聞かれましてもそういう心配は絶対にないと言われますか、重ねて伺いたいと思います。
○国務大臣(木村篤太郎君) 私はないと確信しております。今吉河政府委員から論じましたように、この条文の解釈からいつて、これを拡張解釈できる余地はないのであります。要するに内乱を具体的に発生せしめることの容易ならしむるような文書を頒布する場合でありまして、決してその人の思想がどうであるかこうであるかというふうにまで立入る問題ではないのであります、その点から見て、私はこの法案の趣旨を十分理解下されば、濫用の虞れはないということは申されると考えております。
○委員長(小野義夫君) ちよつと速記をとめて。
   〔速記中止〕
○委員長(小野義夫君) 速記を始めて。
○羽仁五郎君 先ほど法務総裁の懇切な御答弁を頂いたのでありますが、その際にちよつと政府側の御意見を伺つておきたいと思いますのは、土曜日に政府委員から御答弁を頂いたのと、それから本日法務総裁から御答弁を頂いたのとは、矛盾する場所はないというふうに私は思います。それでよろしいかどうか。その点は、若し土曜日に御答弁を頂いたのが、本日法務総裁の御答弁によつて覆えされているのだということが若しありますと、私はその点について更に又伺わなければなりませんので、そういうことはないというふうに確信してよろしうございましようか、如何でございましようか。即ち土曜日に政府委員からお答え下すつた御答弁は、本日法務総裁の御答弁によつて確認されたのであつて、覆えされたものではないというふうに了承してよろしうございましようか、如何でございましようか。
○委員長(小野義夫君) 私もその通りと思います。
 それではこれを以て休憩いたします。
   午後零時三十九分休憩
   ―――――・―――――
   午後二時十五分開会
○委員長(小野義夫君) 休憩前に引続き委員会を再開いたします。片岡君に発言を許します。
○片岡文重君 これは意見局長官に一つお尋ねしたいと思うのですが、聞くところによりますと、この破壞活動防止法案並びに附帯されている二法案に対して労働組合の諸君が反対をいたしまして、世論の喚起に努めております。この反対運動に対しまして選挙管理委員会から、これは政治運動であるから、政治資金規正法による届出をすべきである。それをしなければ同法で定める違反として処罰をするということが強く示達されまして、大阪、北九州等においては非常に困つているということを聞いたのでありますが、これに対して意見局としてどういうふうにお考えになつておられるか。
○政府委員(佐藤達夫君) 私もそのことを新聞で見まして、こういう見解もあるかと実は考えたわけでありますけれども、それだけでありまして、我々は公けの立場において協議を受けたこともありませんし、意見を徴したこともありませんのですが、帰趨をます見守つておつて今日に及んだというのが正直なところでございます。その程度でございます。
○片岡文重君 そういたしますと、こういう問題に対して意見局として、公けに意見を表示するということはできないということになるわけですが、その点よくわかりませんので、はつきり一つ御教示を頂きたいと思います。
○政府委員(佐藤達夫君) 私どものやつております仕事は、大体各省から、国の官庁から意見を、解釈上の意見を求められまして、それに対するお答えをするという立場でおるわけでございます。
○片岡文重君 そういたしますと、この委員会に御出席の際に、私なら私がこれに対して意見局としてどう考えておられるかということをお尋ねすることに対しては、官庁ではありませんけれども、公式に意見を表明して頂くということはでき得ないのでありますか。
○政府委員(佐藤達夫君) 申すまでもありません、政府委員たる立場においては、お尋ねがありますれば承知いたしております限りはお答えしなければならんと心掛けておるわけでございます。只今のお尋ねは別に選挙管理委員会当局者の意向を確かめたこともございませんし、又連絡をしたこともございませんので、この場でお答えすることは差控えたいと思います。或いはあとで研究してお答えしてもよろしうございます。
○片岡文重君 それでは大変お忙しい折で恐縮とは存じますが、至急一つお調べを頂いて、その事実がありやなしや、ありとすればこれに対してどういうような措置をとるのが妥当であるか等、これに関連した点についてなるべく早く御回答を頂きたいということをお願いしておきます。
○吉田法晴君 私の本来の質問に入ります前に、今のに関連して一言意見を申上げて、政府の御反省を願いたいのですが、この破壞活動防止法に対します意見の表明或いは労働組合としてなし得る最後の方法として実力行使による反対の意思が表明せられているわけでありますが、それに対して、政府として或いは労働省を通じて、このストは政治ストである、或いは政治ストは非合法であると申しますか、或いは法の保護を受けないのだ、こういう政府の通牒を出されましたり、或いは今のように、これは別の機関でありますけれども、選挙管理委員会から、これは政治活動として、政治資金処理の届出をしろ、こういう通牒があつたわけであります。これは或いは法制意見局としては知らんということであるかも知れません。或いは法務府としても知らんということになるかも知れませんけれども、全体として政府の態度或いは意向が、それぞれの機関を通じて明らかにせられておることは間違いがないと存じます。そして、その結果は、これは労働組合にいたしましても、こういう意見を表明することを制限しようとする意図ではないか、或いは活動を制限しようとする意図ではないかと考えているので、そうしますと、残されている方法はそれでは何か。午前中も法務総裁に質問をいたして参りましたけれども、民主主義的に許されている表意の方法は、破壞活動防止法案についての反対の意思表示をすることが、合法的に許されませんならば、これの勢いの動きますところは或いは合法、非合法のすれすれのところと申しますか、或いは時には枠を踏み外すようなことにこれはならんとは保しがたいと思うのであります。そういう点で甚だこういう措置については遺憾の意を表します。問題は民主主義的にやつて行けるかどうかという基本的な問題に関連して参ると思うのであります。そういう点から私はこういう措置はやめてもらいたいと考えるのでありますけれども、法務総裁はおられませんがどういう具合に考えられますか。意見長官代理で結構でございますから一つ御答弁頂きたい。
○政府委員(佐藤達夫君) お尋ねの趣旨が多少はつきりいたしませんように思いますけれども、只今片岡さんからお尋ねの点或いは又今吉田さんからのお尋ねの点、この法律的の問題としては、これは先ほどもお答えしましたが、我々としてなお研究したいと思います。その実際上の運用の問題として、今の正当な途を閉ざすと言いますか、その意思の発現を制限するような手段をというお言葉でございましたが、これは例えば今の選挙管理委員会の法律解釈が間違つておればそれはそういうことになると思いますけれども、これは政府のやつていることは一応法律の解釈上正しいという前提においてやつていることでありまして、法律を越えて制限しようというようなつもりでやつていることでないことは、これはおわかり願えるかと思います。ただ法律の解釈の問題として、これが正しいかどうかという問題が残るというふうに考えております。
○吉田法晴君 多少意見長官では御無理かと考えます。と申上げますのは、問題は政治的な問題だと思うからです。政府としてそれはそれぞれの機関からではありますけれども、表意をせられるその客観的な意味が政治資金規正法なら政治資金規正法で妥当なものかどうかという問題もございます。それは研究して答弁しようということなんですが、それを越えて、そういう措置を講ずることが、政治的に今日において許されている表意の方法をとろうとする努力に対して、これを抑えることになるのではないか、民主主義的な途を抑えるということになりますならば、その結果は合法、非合法の枠を踏み越えるという結果になり、これは政治的にそういうふうにならざるを得ないというふうに申上げて、政府の反省を促すわけでありますが、それについての政治的な御答弁を実はお願いしたい、こういう具合に申上げているのであります。
○政府委員(佐藤達夫君) 正当に保護せられておりまするものを制限するということは、これは法律の枠を越えた措置にならざるを得ないと先ほども触れました通りに考えているのであります。従いまして、そういうことはあり得ませんことだと思いますし、又将来あつてはならないことであると私は信じております。
○吉田法晴君 その点は法理問題……、以上は法務総裁に御答弁頂くというそれよりほかにございませんが、問題点だけを指摘するにとどめたいと思います。
 なお午前中に法務総裁に質疑を申上げておつて、途中で終つたのでありますが、それに関連しまして、これも法務総裁に質問をしなければならん点かと思いますけれども、一点だけ関連して御質問をいたしておきたいと思うのでありますが、法律を知らない、法案を知らない人たちの反対の意見ではなくして、法律を勉強をし或いは刑事法について或いは行政法について専門的に研究をしている人たちを含めて、研究け結果反対をせられる意見に対して、十分の考慮が払われない、或いは時間の都合もありましたけれども、答弁を留保せられて打切られた態度に対しては、これは私のみならず傍聴をしておつた人々においても不満の意を表され、甚だ残念に思うのであります。で、問題は、その中の具体的な問題になつて参りますが、衆議院の速記録を引いて意見或いは歴史を紹介して、そして述べた事柄が、革命の必要性或いは正当性を論述することになるかならんか、第三条なら第三条に関連するかどうかという点を、もう一度、これは意見長官なり或いは特審局長に伺いたいのでありますが、先ほどのような紹介或いは事実の論述は、法務総裁或いは特審局長は、日本の場合に関係がなければ、これはこの法律の対象とするところではない、こういう御答弁がございました。併しながら論述は天上昇の問題として論議せられるのではなくして、人間界の或いは社会の問題としてこれは論述をするわけであります。そのことは必然的に、フランスではどうであつた、或いはアメリカはどうであつた、中国ではどうであつた、日本の場合においてもこういう破壞活動防止法ができて、言論、集会、出版の自由が制限せられて参る。憲法の基本的な人権が蹂躙せられる、或いは憲法の基本的な原則までもこれは変更せられるのではないかということで、反対をするけれども、これについて政府も或いは国会も十分世論の反映をなさない、こういう状態の下においては、曾つてフランスにおいて或いはその他においてあつたように革命的な情勢が来る必然性がある。こういう論述をされたといたしますならば、これは日本の場合にも関連が出て参ります。全然日本の問題を考慮せずに論述せられるということは……人間の社会の或いは日本の中で論述せられます場合には当然関連性が出て参ると思うのでありますが、そういう場合にもこれは全然この法の対象となるものではない。こういう工合に断言せられるのでありますかどうか。その点重ねて一つ……。
○政府委員(吉河光貞君) 御質問の場合につきましては、革命と申しますか、内乱の必然性を持つておるという内容であろうと思うのであります。ここで規定しておりまする内容は、実現の正当性又は必要性を、主張したということでございまして、必然性は入らないというふうに考えております。
○吉田法晴君 正当性、必要性と必然性とは関係がないと、こういうお話でありますが、必然性を論述し、或いは意見を紹介する、それと援用、支援との関係でありますが、先ほど申上げましたような、こういう日本の政治のあり方では、よく言われますように、議論を以て、議論ではなくして、力で以て議論を押えて行くというようなやり方をするならば、この法律の趣旨とするところとは違つて、社会の或いは行動を伴いますところの革命の必然性があるという論述をいたしましても、それは正当性或いは必要性を主張したことにはならん、或いは教唆にも扇動にもならん、こういう御答弁であつたと思うのでありますが、その通り解してもよろしゆうございますか。
○政府委員(吉河光貞君) さようでございます。
○委員長(小野義夫君) なお吉田君にちよつと申上げますが、これは先ほどのお約束で法務総裁の代理に意見長官も来ておられるのですから、意見長官の答弁で不満足という点があればそれは保留しおきますから、どんどん御遠慮なくあなたの持ち時間には縦横無尽のことを御質問になつて然るべきと思いますからどうぞ……。
○吉田法晴君 そうすると、今の必然性と、それから正当性、必要性或いは扇動ということの区別について、これはもつとはつきりしてもらわんと困るのであります。それは速記録にとどめて、あとの法の運用についての参考にはなると思います。併し例えば裁判の場合には、弁護士によつてそういうあれが援用せられる可能性も相当ございますけれども、公安調査官が法を運用いたします場合に、そういう保障について案ぜられるのでありますが、その保障の具体的な方法を御構想があるならば一つ承わりたいと思います。
○政府委員(吉河光貞君) 必然性を説くことと内乱の扇動をすること、或いは内乱の実現の正当性又は必要性を主張することとの違いはどうかという御指摘がありました。これまでたびたび御説明申上げている通り、扇動とは、内乱を例にとりますれば、内乱をする実行の決意を生ぜしめたり或いは既存の決意を強固ならしめる、刺戟を与える行為である。飽くまで実行の決意に作用する行為であると考えるのでありまして、実現の正当性又は必要性は、内乱が実際に日本において行われ又行なうことの正しいこと、又は必要なことを主張するということでありまして、客観的に、単に客観的な必然性を説くというのとはおのずから異なるものと考えております。
○吉田法晴君 そのへんに問題があると思うのでありますが、私は結果責任についてお尋ねいたしましたところ、結果責任は問わんと、こういう御答弁を頂いておりますが、例えば学校で、先ほど申しますような他国の例からして、日本の場合の革命の必然性と申しますか、政府交替或いは社会の基本組織ということになるかも知れませんが、その必然性とそれからその必要性という点は、実は紙一重ではないかと考えるのでありますけれども、その講義をした。ところがその学生の中に、その講義に刺戟せられたと申しますか、そして行動に移つた、こういうことがありますならば、これは第三条口の項目で以てその責任を問われるのではないか、こういう疑問が起つて来るのでありまして、それが結果責任は問わないと、こういうお話でありますが、そうすると、講演なり或いは講義の内容それ自身になつて参る。それが必然性を説いたか或いは必然性から更に必要性を説いたか、これはその結果によつて動いたものじやなくて、その内容自身を判定せられます場合に如何なる証拠によるか、これは講義の内容云々ということになつて参るかも知らんと思いますけれども……。そこで講義の内容を日頃から調査せられるというところに学者の心配が出て来るわけでありますけれども、これを裁判所なら裁判所ではつきりするということであるならば、これは若干の合理性或いは客観性を信じますけれども、それが行政機関で特に調査官の調査に待つということになつて参りましよう。そうすると必要性と或いは正当性と必然性との間について、やはりあれは必然性のみにとどまらずして、必要性或いは正当性に亘つた、こういう認定をしたとしても、これはなかなかそれから先に覆すということは容易でなかろうと考えるのでありますが、これらの経緯の中において今の御答弁が十分に保障せられ、具体的な措置或いは法律の上での手続、措置を一つお示しを願いたい。
○政府委員(吉河光貞君) 御質問のロの場合でございますが、これは文書に記載せられた内容であつて、従いまして文書によつて客観的に只今御指摘の実現の正当性又は必要性を主張したことが現われていなければならないと考える次第でございます。
○吉田法晴君 今挙げましたのは文書じやなくて講義を問題にしたわけであります。
○政府委員(吉河光貞君) ここでロの場合におきましては、その「文書又は図画を印刷し、頒布し」と……、で、やはり文書が中心になつて動きますので、客観的にその文書の内容が問題になる…。
○吉田法晴君 正当性、必要性という文句を使いましたから、口ということにおつしやるのは当然だと思うのです。その場合にはビラによるとか、或いは講義ならば講義に、或いは本ならば本、こういうことになるかと思うのでありますが、それと若干質問は混同いたしましたけれども、講義がロに該当するかどうかという問題の場合は、文書にようないで、ほかのものによるかと思うのでありますが、両方にまたがつても差支えございませんが、先ほどの質問に具体的に一つお答えを願いたい。
○政府委員(吉河光貞君) 抽象的な一例でありますが、学校の教壇から、講師が或いは教授が講義を名として内乱の扇動をやつたというような場合におきましては、これは結局捜査なら捜査の端緒としてどういうふうにしてそういうことが現われて来るかという問題になるのではないかと考えられます。あらかじめこういう先生の講義は内乱の扇動に亘るであろうというようなことを臆測しまして、その先生の内容をウオツチするというようなことは許されない。実際にそれでは講義を仮装した内乱の扇動がどういうふうにして現われて来るか、捜査や調査の端緒としてはいろいろな場合がある考えるのでありますが、実際にそういう端緒が発覚されなければならないと考えておるわけであります。
○吉田法晴君 その端緒というところに結局やはり結果責任が出て来るのじやないですか。
○政府委員(吉河光貞君) 犯罪の端緒、刑事訴訟法におきましても犯罪の端緒を握れば、それによつて捜査をいたしまして、犯罪の有無、容疑の有無を明らかにするということになりまして、結果責任を負わせることにはならないものと考えております。
○吉田法晴君 今の御答弁の中で講義がこの第三条ロに該当しはせんかということも調査をすることはしない、こういう御答弁だつたと思うのです。許されないという言葉でこれを否定されました。そうするとこの心配されておりますような革命の必然性その他を、或いは政治学なり或いは歴史で講義をするということがウオツチされるのではないか、こういう心配に対して、講義を調査するということはしない。そうすると端緒の問題になりますけれども、一つの行動が現われた、この場合には、内乱の予備陰謀或いは幇助ということになろうと思うのでありますが、そういう事実が行われた、そうすると、その行なつた人はどこで影響を受けたどういうところでそういう決意をするに至つたか。そうすると、たまたまあすこの学校で講義を聞いて、フランス革命或いは中国革命の例等から、日本のこういう政治のあり方ではこれは政治のやり方を変える以外にないという話があつて、私はそこで、じや、やらなければいかんということを決意いたしました。こういう話になつて、講義の内容がそれから調査される、こういうことになるんじやないか、こう考えたわけであります。それが結果責任を問うて行くということになるのじやないかという御質問を申上げたのでありますが、それについて結果責任は負わぬというお話でありますけれども、そうすると、どうしてこういう問題については対処せられるのでありますか、伺いたい。
○政府委員(吉河光貞君) お答えいたします。仮にでございます、学校の教壇におきまして学校の先生が講義を仮装して内乱の扇動をやつたというような事実につきまして、これは今日におきましても、一般の新聞の取材活動等におきましても、こういうふうな事実がいろいろなルートを暴露されないことはない、絶無であるとは言えないと考えるのでございます。いろいろな点からそういうことが実際に若し行われたとすれば、捜査の端緒はいろいろな面から現われて来るのではなかろうか。私どもといたしましては、あらかじめこういう先生はその講義に仮装して内乱の扇動をするのじやなかろうかというような予断を抱いてその講義を監視するというようなことはいたしませんと申上げたのであります。それから又実際の捜査におきましても、殺人事件なら殺人事件が検挙されますと、それの動機、原因等の捜査が行われまして、結局その背後に教唆犯があつた場合におきましては教唆犯に及び、そうして真実に教唆したものなれば検挙される場合もあります。又幇助者があればその幇助者が暴露されることもあります。併し必ずしも、実際に殺人が行われて、その殺人の実行、正犯の捜査から教唆、幇助に及ぶという鉄則はないわけでありまして、別な半面から教唆犯が捜査されることもあります。いろいろな、捜査には順序なり経過というものがあるかと思うのでありますが、併しながらいずれにいたしましても、実際に教唆していないものを教唆したのだというふうに教唆の責任を負わせることはできないということは、これはもう刑事事件取扱の鉄則であろうと考えておるわけであります。
○吉田法晴君 学内の講義について調査はしないと、こういう明言でございますが、事実は身許調査その他で、これは特審局じやないかも知れませんけれども、警察で従来やられて来たわけです。そこにも問題が一つございます。そうすると、この法律ができるならば、調査活動としてそういうことが大つぴらにやられるのではないか、これが一点……。
 それは、やらないと、はつきりおつしやるわけでありますが、内乱の扇動を学校の講義ではやるはずがない、これは私どももそう思います。ところが問題は、三条のロならロの問題を、特審局長が認定をおやりになるわけじやなくて、一番最初は末端の調査官がする、こういうことになると思うのでありますが、そこで問題はりその講義とそれから意図という問題になつて参る。その意図の証明をどういう工合にしておやりになるのか、その点がはつきりいたしますならば心配は解消いたしましようけれども、その意図が調査官によつて一方的にきめられるのじやないか。行政機関でありますしそれから従来の例から言いますならば、これは捜査の場合は警察官でありますが、警部補級で或いは巡査部長級でそういう認定がなされて来た。それが調査官によつて今後なされるならば、その意図にしても一方的に解釈せられるのではないか、それが問題の焦点なのであります。これは「世界」の七月号であります。久野収氏、御承知のように共産党員なり或いは共産主義者ではありませんが、「治安維持法の教訓」という一文の中にこの点について疑問が提出されております。今の疑問に関連いたしますので、読み上げて一つ更に御答弁を頂きたいと思いますが、読み上げます前に、その前から申上げて参りますが、「治安維持法違反被告事件に問われて、そうして警察の取調べに当つて自分の一代記を書かせられた、そうしてその一代記の書き方にはちやんと枠があつて、共産党の綱領を知つておる、或いは共産主義に共鳴しておるということを、直接非合法文書で見ておらぬ場合には新聞で見ておるじやないか、或いは共産党の検挙があるということを新聞で見ておるだろう、それによつて共産党の綱領を知つた云々……、こういうことを書かせられることを強制せられた」云々……から参りまして「そこに意図或いは思想というものが強制をせられる。これは過去の事実であつたが、今度の破壞活動防止法も、」これからが本文でありますが、「今度の破壞活動防止法案も教唆や扇動を罰しようとしていますが、これは拡張解釈と濫用の輝かしい伝統を持つ法律慣行の支配下では、前の場合とあまり違わない結果をもたらすのではないかと思われます。なぜならば宣伝や扇動には意図の問題が必ず介入し、かかる意図は外部から解釈すればいかような解釈も若し強制しようとすれば許されるからであります。例えば本人は研究や証明のつもりで語つているにしても、他人がその研究や証明から深い感激と激励を受けてこの行動に出たと供述した場合、これは結果であります。実際そうでなくて単にそう供述するにすぎなかつた場合でさえ、本人は教唆扇動したと外部によつて解釈される理由が生ずるのであります。従つて、この点からして、この法案は国民の言論及び思想の自由に非常な危険を及ぼす法案であるといわなければなりません。」こういう、私、先ほど問うて参りましたような問題の提起が書かれているのでありますが、この意図を証明する証拠によつて云々ということでありますが、その証明の方法が、こういう心配に対して、或いはそういう法の危険性に対して然らずとせられますならば、具体的に一つ御説明を願いたいと思います。
○政府委員(吉河光貞君) 治安維持法の運用の例をお引きになりまして御質問がございましたが、御尤もな点であると私考えております。治安維持法につきましては、先般来申上げた通り、結局その行為の違法性はその目的にある。目的の内容を認識して、その目的の実現のためにする行為というようなことをやれば、一切の行為が犯罪と見做され、犯罪となる。従いまして結局その目的、結社の目的を認識しておつたかどうかということが要点になる。つまりさような自白の追及が行われたような事態があり得ると考えるのでありますが、この法案におきましては、教唆と申し、扇動と申し、すべて客観的に、その行為自体は外に現われた行為であります。又次に実現の正当性又は必要性を主張した文書の印刷頒布にしても外部に現われた行為であります。さて、その行為に基いて本人に内乱の実現を容易ならしめる意図があつたかどうかということは、やはり客観的な諸般の証拠資料によつて認定されなければならないと考えるのであります。今日御質問のような自白の追及が許されない建前になつていることは申すまでもないのであります。公安調査官の調査にいたしましても、任意の調査を前提として客観的な証拠を集める建前になつているわけでございます。
○吉田法晴君 前段の点については御答弁頂きましたが、前段の点を問題にしているわけじやない。その意図との関連について、今度の破壞活動防止法に関連して、教唆扇動を処罰することになつているから、その教唆扇動と、それからその意図、それからその研究や証明のつもりで語つていることにしても、他人がその研究や証明から深い感激と激励を受けて或る行動に出たと供述した場合云々という点についてお尋ねしているわけであります。この点については、治安維持法の問題でなく破壞活動防止法の問題としてお尋ねしているわけであります。
○政府委員(吉河光貞君) 特定の個人を例にとりまして、その個人が内乱の予備行為をする、或いは内乱の陰謀をやる、そういう実際の行為をやる原因につきまして考えると、いろいろな原因がそこにあるだろうと思います。他人の話を聞いてそういう決意を持つた、或いは他人の話を聞いてそういう刺激を受けたということが原因になる場合もあるかもしれません。併しながら、ここでは他人の話全部が教唆なり、扇動になるというのでは絶対にない。やはり教唆は先般来申上げたような他人をして犯罪の実行を決意せしめるに足る行為をしなければなりません。扇動についても先般来その内容につきまして御説明した通りの内容の行為をしなければならないというふうに考えておりまして、その辺は、結果が、結果と申しますか、実行正犯の形が現れたからといつて、すべて実行正犯がその原因、実行正犯をするに至つた原因として考えられる行為はすべて、他人の言説はすべて教唆なり扇動になるというわけでは絶対にないと考える次第であります。
○吉田法晴君 すべてなるとは申上げておらんのであります。それはお話の通り、例えば内乱の予備陰謀があつた場合に、或いは内乱の予備陰謀をやつた本人の家庭の事情もあるかも知れません。或いは社会的に自分の周囲に社会悪があつた、こういうこともあるかも知れません。そういうものを一々問題にされるとは考えておりませんですが、只今挙げましたようなその行為によつて、講義或いは研究や証明から深い感激と激励を受けて或る行動に出たと供述した場合に、これは供述したかせぬかということが問題になるけれども、仮りにそういうことがあつたとして、講義に遡つて責任が問われる。それは問わないというお話でございますけれども、これはその供述をしない場合にも、供述したと若し調査官において認定されるならば問題が生じます。或いは供述した場合においても、その行動とそれから講義との間にそういう必然的な因果関係があるか、これが問題になるでありましよう。そうしてこれは講義なら講義の内容ということを証拠によつて云々と、それは具体的な内容は云々という御説明はわかるのでありますが、根本的にその講義によつて必然性、或いは必然性に若干の正当性或いは必要性が加わつた場合に、調査官において一方的な認定はしないと、こういう御説明でございますけれども、それを法上保障する方法がない限り、過去の何と申しますか、運用というものは、破壞活動防止法の中に出て来る心配がある。この久野さんの言葉で言いますならば、拡張解釈と濫用の輝かしい伝統を持つ日本の法律慣行の支配下では云々という事態が生ずる虞れがございますので、その法上の保障を具体的に一つお示しを頂きたいと思います。
○政府委員(吉河光貞君) これは結局捜査の問題にもなり、公安調査官の調査の問題にもなると思います。教唆の概念、扇動の概念を具体的に明確に徹底させる、捜査官、調査官に徹底させるということが第一番に必要ではなかろうか。で、又これが公安調査庁におきましては、最後の段階におきまして審理を受ける当該団体側からの弁明を十分に聞くと、それが公安審査委員会におきまして公正な判断を受けるというような手続になるものと考えております。で、私どもといたしましては、この教唆なり扇動なりの概念というものを、十分明確に一般の調査官及び犯罪捜査に従事する司法警察官に徹底させるということはかねがね申上げておる通りでございまして、この方面に十分に努力を払いたいと考えておる次第でございます。
○吉田法晴君 このことについて法制意見局長官の意見を承りたいのですが、法制意見局長官も或いは法制局長になられまして、或いは今後教壇に立たれるということはないということは保上難いのでありますが、そういう場合に歴史を講義され、或いは法制史を講義され、研究されることはあり得ると思うのであります。そうしますと、今のような問題、或いは心配が起つて来ないかということは、これは立場を変えられますとすぐにおわかり頂けるかと思うのであります。その点について法上の保障がない。この点を私ども指摘して意見を求めておるのであります。具体的な法上の保障について、今の局長の御答弁では、或いはそれは、審査或いは審理の対象になる。こういうことでは、濫用なり、或いは拡張解釈の範囲が甚だしい日本の歴史の中においては、それだけでは保障は困難だと思います。法制意見局長官として、どういう工合にお考えになりますか。或いは法上の保障についてどうしたらよいかということについて御意見を伺います。
○政府委員(佐藤達夫君) 曾つては私は長い間教壇に立つておりましたし、近い将来是非又教壇に立ちたいと、そのほうを望んでおるわけでありますが、おつしやつたような点につきましては、少くとも今の根本の条文でありますところの、第三条の口と申しますか、ハと申しますか、この点については、この文理上の問題として、私は、裁判所がこれを見ましても、只今特審局長の答えたように判断できると思います。従いまして、この点については安心をいたしております。それから濫用に亘る問題は、これはもとより心配されることは当然でありますけれども、先ほど来のお話にも出ておりますように、行政執行法等もすつかり変つてしまいましたし、今の刑事訴訟法等もすつかり変つてしまいましたし、憲法自身も変つておる世の中でありますから、私はその点の保障は外部的にできておると思います。あとは個々の実地に当る人たちの良識ある運用に待つ、又良識ある運用をしてもらうように、当局者に十分希望したいと考えておるわけであります。
○吉田法晴君 今の御答弁の中にもございましたように、裁判になれば明らかになるだろう云々、こういうのでありますが、裁判によつてこの扇動なら扇動の具体的な観念が、この種の問題について明らかになつて行くならば、或いは一つの、これは法上の保障の問題になるかと思うのであります。御承知のように、第六条の一号、二号ということになりまするならば、これはいきなり発動をするわけです。三号の場合には第四条の団体の規制の処分を受けて、更に暴力的破壞活動を行う、こういうことでありますが、一号、二号はいきなり……。そうすると、只今のロに関連して、刑罰規定の問題の際にこれを論議いたしましたけれども、団体の規制の場合にしても同様なことが言えると思います。そこで今の御答弁の中から、例えば裁判において云々ということでありますならば、破壞活動なら破壞活動というものが具体的に裁判によつて明らかになる、こういう方法ならば若干の濫用を防ぐ制度にはなり得ると思います。御答弁の中にそういうことが出て参りましたから、一応その点について御意見を承わりたいと思います。
○政府委員(佐藤達夫君) 私の申上げたことは、この法案の立案にも全然関係のない第三者であるところの裁判所が、これを御覧になりましても、この条文の表現から言つて、只今説明いたしましたような趣旨に読み取つてくれることは明らかであろうということを申上げたわけであります。今の規制の措置につきましては、申すまでもありません、事前の段階の措置がございます。併し、これも先般来申述べておりますように、十分なる慎重な手続を繰返してとつて、最後の結論を得るような建前になつておりますからして、この条文自身があいまいであつては大変でありますが、条文がはつきりいたしております以上は、不当な結果を生ずることはないと考えるわけでございます。
○吉田法晴君 条文がはつきりしておるから心配がないんだというお話でありますけれども、実は条文がはつきりしておらないので心配をせられるのであります。そこで、もう一遍関連いたしまして、条文の話になりますが、これは佐藤意見局長官がおいでにならないときに若干質疑をいたした問題でありますが、七十七条の朝憲紊乱と、それから暴動という点になつて参りますが、この間再軍備をやるべきである、こういう主張をなして、そして、その主張だけではなしに行為があつた場合どうか。或いは再軍備をすべきではないと、再軍備反対のいろいろな表意の方法を尽すけれども、御覧の通りに政府においては一向馬耳東風である。或いは今の警察予備隊が軍隊ではない、だから自衛力を増強することは何ら憲法違反ではないとして、どんどん増強を進められる。こういう事態を黙視することはできない。ほかの方法がなければ、或いは政府に対して堂々とこのストライキを以てしても阻止しなければならない。或いはストライキを以てやつても一向反省するところはない。それではというので、或いは例が悪いのですけれども、メーデーの場合にもありましたが、その後、宮城前広場使用に関連して、ああいう事態が起つた。
   〔委員長退席、左藤義詮君委員長席に着く〕
 そうすると、単に再軍備反対という主張のみにとどまらずに、若干の暴動も起つて参るわけでありますが、それらの一連の関連の中において、この朝憲紊乱ということと再軍備或いは再軍備反対ということをどういう工合にお考えになるか。特にその場合に、ただ朝憲ということでなくして、それは朝憲紊乱と結びついておる国の基本組織だけではなしに、基本組織を暴力を以て破壞するという、こういう言葉を述べられて逃げられたのでありますが、朝憲の中に軍備或いは再軍備反対、こういう問題が入るかどうかということは御答弁がなかつたのであります。佐藤意見局長官の意見を一つ……。
○政府委員(佐藤達夫君) 何分にも古い言葉でございまして、いろいろな御疑問が生じますのは御尤もと存じます。ただ我々の考えておりますところは、先に引例いたしましたか存じませんが、たしか昭和十年であつたと思いますが、大審院の判例に、朝憲を紊乱するというのは、国家の政治的基本組織を不法に破壞することということで判決をしておるのであります。文字から申しましても、私は、朝というのは、「まつりごと」をする機関と申しますか、組織体をいつておると思いますので、それの根本のほうの憲法ということに繋がつて、これがやはり政治的基本組織というものを示しておると考えております。従いまして、この政治の運用のほうの方針という面は、ここの問題には入つて来ない。即ち憲法の中には国の、一口に根本法と申しておりますけれども、憲法の中には、国の政治の行われる基本組織を定める面と、その「まつりごと」の運用についての基本原則を定める面と、両方の面を持つておると思いますが、この朝憲と申しますのは、その前者、即ち組織の面を捉えての問題であると存ずるわけであります。従いまして、再軍備の可否の問題というようなことにつきましては、これは朝憲の紊乱の中には入らないというふうに考えております。
○吉田法晴君 刑法七十七条その他が明治時代の刑法で、旧憲法の下における概念だということは今もお認めになつたのであります。君主主権、天皇主権の下における刑法であつた朝という言葉を今もお引きになりましたけれども、この朝或いは朝憲という中には天皇制との結びつきなしには考え得ないので、或いは政府にしましても、天皇の親任せられた政府、こういう概念はこれが基本的に結びついている。それが新憲法の下においては古いために、新憲法の概念の下では、そういう朝憲といつたような概念では現われないものだとこれはお認めになるのじやないかと思うのでありますが、今も昭和十年、旧憲法時代の判例になるところの神兵隊事件を引かれたが、これも旧憲法時代だと、神兵隊事件のごとき、これは殺人行為によつて政府を顛覆しようということだけれども、その政府顛覆という点は問わないで、殺人だけが問われた。これは当時の右、右翼に対する思惑と申しますか、或いは刑事の観念から出ていると思います。その旧憲法或いは明治時代にで言た刑法の概念を持つて来られるから、今の憲法の基本原則である軍備或いは再軍備反対、こういう問題が朝憲に入らぬと、こういう御答弁になつて参ると思うのであります。これはこの前のとき首を捻られましたけれども、意見局長官であつたと思うのでありますが、憲法の基本原則は朝憲の概念の中に入るという御答弁を曾つて頂いたように私は考えております。新憲法の基本的な原則は何といつても民主主義或いは平和主義だと思うのであります。それは条文の中だけでなしに、或いは前文或いは勅語その他憲法が出て参りました環境と申しますか、この憲法の成文と、それから成文にまつわります客観情勢からしてこの点は明らかだと思うのであります。それを憲法九条に関連する戦争放棄の問題或いは平和主義或いは非武装主義というものが、憲法の基本原則或いは朝憲と何ら関係がない、これは全く恐れ入つた議論と申しますか、佐藤さんにしては甚だどうも突拍子もない議論だと思うのでありますが、重ねて一つ……。
○政府委員(佐藤達夫君) 申すまでもありませんが、先ほど私の触れましたように、憲法というものの性格は、政治の根本組織をきめる面と、政治運用の根本原則をきめる面と両面あります。これは大体それこそ古今東西を通じての憲法の中身になつていると思います。旧憲法時代におきましても、そういう両面がありました。又新憲法におきましても、今お話にありましたように、そういう両面を持つているのであります。そこで、この新憲法、旧憲法を通じまして、この朝憲という言葉はその二つの中のどつちを持つているのか或いは両方を含んでいるのかということであります。これは、よその国の憲法においても私は考えられることである。それについてこれは政治の根本組織のほうの面を捉えての言葉であります。それは旧憲法におきましても、政治の根本組織というものは問題になつたのであります。只今の憲法においても新らしい形に変りましたけれども、政治の根本組織というものはさまつているわけであります。そういう意味で、中身は変つております、いわゆる天皇主権説から申しますと、すつかり統治権の根源が変つて来ております。おりますけれども、憲法のきめておる根本組織というものは、これはものは違いますけれども、中身は違いますけれども、もの自身はあるわけであります。それが朝憲という言葉に当てはまるというふうに私は考えております。
○吉田法晴君 佐藤意見局長官ともあるべき方が、これは甚だ失礼でありますけれども、屁理窟を言われて甚だ意外に思うのであります。組織と運用に分けられて、再軍備或いは非武装という問題は、組織の問題ではなくて、運用の問題だといわれる。ところが旧憲法の下においては、これは統治権の中に軍令大権という機能がございましたが、それは或いはそれを運用と言われるかも知れない。統治権の一つの運用だと言われるかも知れない。それに基いて軍隊というものがあつた。或いは参謀本部なり、軍の組織というものがあつた。その基本方針に従つて組織というものができた。現在は軍隊組織はございません。併しそれは組織に関連のないことではございません。消極的な、否定的なものであるかも知れませんけれども、旧憲法と現在の憲法を考えました場合に、只今軍隊を持つか、持たぬかということは、組織の問題には関係なくして、運用の問題だ、これは甚だどうも恐れ入つた、佐藤意見局長官にも似合わね迷論だと思うのでありますが、組織は関係ないと又いわれますか。
○政府委員(佐藤達夫君) そういうふうに仰せられますというと、警察の組織、これも、警察力というものと、それから警察の組織というものは、これは観念上違う。警察組織というものは勿論そこにあるということになつて参りますれば、人事院の組織といい、或いは法務府の組織といい、いろいろ出て参ると思います。私の考えておりますことは、そういうたくさんの組織の中で、先に触れましたと思いますが、国会制度であるとか或いは内閣制度であるとかというような、裁判所制度とか或いは天皇制度もいわれましたけれども、そういうものを憲法上の基本組織として考えているというふうに考えてのお答えになるわけであります。
○吉田法晴君 議論になりまして、恐縮でありますけれども、例えば民主主義の基本原則に基いて、国会というものが新憲法においては作られている。それは旧憲法においても議会はございました。ございましたけれども国会の意味が全然違つております。これは私が申上げるまでもない。若しも国の基本組織として或いは憲法の基本原則として国会を設けないという憲法があつたとしますならば、その憲法の原則を否定して、そうして国会を作る、民主主義を守るという制度を作つたとしまするならば、憲法の基本的原則或いは基本的な組織に関連して来ますことは間違いございません。恐らくこの新憲法の下において国会制度を否認する、これは今の基本組織に関連する、こういうことになると思うのであります。本質においては私は同じだと思うのでありますが、運用と組織と、こう二つに分けて、この問題を逃げられることは、これは佐藤さんらしくもないと申上げるのでありますが、国会制度を支持するか、支持せぬか、或いは軍隊を置くか、置かぬか、これは決して国の基本組織に関係しない問題では私はないと思うのでありますが、重ねて一つ……。
○政府委員(佐藤達夫君) 事柄自身がむずかしい問題でありますからして、たびたびお尋ねがあり、たびたびお答えしなければならんというのもこれは当然のことだろうと思うのでありますが、最後にこの七十七条の趣旨を一体考えて見ますと、それが基本組織といい、運用の原則といいますけれども、実は基本組織のほうが、この七十七条の対象としては非常に根本のものと考えている。例えば邦土の僭竊という言葉があります。とにかく俗な言葉で言えば、四国で一つ共和国というものを作ろうじやないか、或いは九州帝国というものを作ろうじやないかというようなこと、まさか日本全土ということも考えられませんけれども、そういうようなことで、自分がそこで政治の実権を握つてしまうということが本来内乱というものの本体であろうと思う。それから政治の実権を握つて、それから、その政治をどういうように運用するかということは、むしろ第二義的な問題であるという考えが、この七十七条の中の根底となつていると思います。従つて政府を顛覆とか、邦土を僭竊とか、言葉がありますが、千切れ千切れには考えられないことであり、朝憲紊乱とかその他全部引括つている。その大きなことを私は見なければいけないのではないかというふうに考えているのでありまして、今の狙いは、例えば今の四国共和国とか九州帝国というようなことでお考え願えば、大体おわかり願えるんじやないかというふうに思つているわけであります。
○吉田法晴君 お話を聞いておりますと、憲法の基本的な原則、九条を変更するかどうかは、これは憲法の修正でなくて憲法そのものの存立に関する、憲法の修正ではなくしてそれは基本的な変革だという議論がございますが、それはとにかくとして御意見は、再軍備論をしてまわるについて、憲法を改正して再軍備をやつて行こうという政府の意図を弁護するために、再軍備或いは再軍備をしないということは、それは憲法の基本的な原則ではない。或いは組織の問題のほうが朝憲の問題であつて、再軍備するとかせぬとかいうことは運用の問題であつて、これは朝憲には該当しないと思う。こういう何と申しますか、政治的な含みのある御答弁、でなければ、白ばくれておられるという以外にございませんが、甚だどうも佐藤意見長官の言葉としては遺憾に存じます。或いはこれから先は議論になるかも知れませんが、一応御答弁を……。
○政府委員(佐藤達夫君) さびしいことを承わつてどうも残念でございますが、その政治的のなんとかというようなことはこれは一つ願い下げして頂きたいので……。この内乱の中にはそれが入りませんでも、この法案ができますれば、第二号の政治上の主義又は施策の推進のほうには、これは再軍備の問題なんかは私は入り得ることであると思いますからして、今内乱についてのお尋ねでありますから、それについて良心に従つてお答えしただけなんです。ほかのところには又入る可能性がありますから、その点をお含みおき願います。
○吉田法晴君 その点で、この再軍備或いは再軍備反対という問題と、政治上の主義、施策、炭鉱国管その他政策の問題と同じように考えられる点に遺憾の意を感ずるのでありますが、朝憲紊乱という、その朝憲というのは、特に国の基本的組織云々ということで、運用はその中には入らぬというお話ですが、曾つて私はさつき目頭に申上げましたように、憲法の基本的原則はこれは朝憲の中に入るという御答弁を頂いておるように思いますが、その点はどうですか。否定されますか。
○政府委員(佐藤達夫君) そういうふうにお聞き取り願いましたら、それは私の発言が間違つておつたかも知れません。さようにお答えしたつもりではございません。只今のお答えの通りに御了承願いたいと存じます。
○吉田法晴君 憲法九条の問題或いは戦争放棄をするかどうか、軍隊を放棄するかということを、運用の問題として、或いは政策の問題として逃げられることに、これは新憲法を作られた、最近毎日新聞に苦労話が載つておりますが、生みの苦しみをやられた佐藤意見長官とは思えません。甚だ残念に思うのでございます。その点は基本的なこれは意見の違いであつて、私は、そういう憲法九条或いは武装、非武装の問題を軽々に扱われることについて反対であり、それからこれは国民と共に納得しがたい原則であるという点を申上げて、これから先はもう議論になりますから先に進んで行きます。
 同じく朝憲の問題で、今も御答弁の中に出て参りましたが、天皇制の問題であります。今も破壞活動防止法の問題について、関西の立命館大学の私どもの恩師でありますが、板木先生と傍聴のあと懇談をしておつたのでありますが、これは申上げるまでもなく、共産主義者でもなければ共産党員でもない。いわゆる左傾した人でも右傾したという人でもありません。その先生が今の問題にたまたま触れてのお話でありますが、民主主義の徹底したものとしては、これは天皇制ではなくして、象徴としての天皇制であろうと思う。天皇制でなくて共和制が本当である。こういう議論が、これは議論として現にございます。或いは相当広くあるのではないかとさえ私は考えるのであります。そういう考え方、或いは思想が述べられます場合にも、これは朝憲に関連すると、こういうようにお答弁になつたかと思うのでありますが、そうでありますかどうか。重ねてお聞きしておきます。
○政府委員(佐藤達夫君) 先ほども申上げたのでありますが、憲法上できめた組織を基本組織ということから言いますれば、国会制度或いは内閣制度、天皇制度というものも入り得るものと考えております。
○吉田法晴君 この天皇制の問題について、一番最初はどなたであつたかちよつと記憶をなくしましたけれども、私が質問を申上げましたときには、国会制度或いは内閣制度、おしまいには人事院制度という言葉も出たと思うのでありますが、同様な意味において憲法上の制度である。学問上は佐々木先生の言葉を引いて、先生の御意図とは別に、新憲法の下においては天皇制という学問上の制度はなくなつた、こういう点をお認めになつておる。そのときに、特審局長は首をひねつておられたのですが、ところがその後緑風会の岡本さんからの御質問がございましたときには、天皇制の意義が私の質問に対する御答弁よりも大分明らかになつて参つたという印象を受けております。これは憲法の原則の如何なるものが基本的な原則であるかという、これも議論に関連をして参ると思うのでありますが、新憲法が、或いは民主主義が一番大きな基調になつておるということ、これはもう御否定になるわけには参らんと思うのであります。そうすると、天皇主権説によりますところの、統治権の本来の所属が天皇にあつたという意味における天皇制がなくなつたことは御承知の通りであります。そういう意味においては天皇制というものがなくなつた、これはお認めにこの前なつたところのものであります。その後の御答弁によると若干違つて参つておりますので、その点をもう一度明確に一つして頂きたいと思います。
○政府委員(佐藤達夫君) 思い出しましたが、天皇制と申しますと元の統治権の総攬者としての天皇をすぐ連想する言葉に誤解されやすいので、私はたびたび最近においては天皇制度という言葉を使つておるわけであります。即ち国会制度、内閣制度等と対立しての天皇制度という意味で申上げておるわけであります。
○吉田法晴君 新憲法の下における天皇制度の意味が象徴としての天皇であり、神様としての天皇でなくて人間としての天皇だ、こういう建前から参りますならば、学問上の意味においての天皇制はなくなつております。民主主義の基本原則、国民主権が中心になつておるということは言うまでもございませんが、そうしますと、朝憲の中において、先ほど申しますような民主主義の徹底した姿としては共和制が妥当であるという議論が出て参つたとしても、それが刑法の最初所期しました朝憲という問題、国の基本的な組織と、これは憲法の解釈に関連いたしますけれども、言われるような憲法、或いは国の基本的な政治組織として、朝憲紊乱と関連いたしますけれども、関連する意味においての朝憲としては天皇制という問題は問題にならんのではないか、こういう工合に考えるのでありますが、重ねて一つ御答弁をお願いしたいと思います。
○政府委員(佐藤達夫君) 憲法に上つておりますとにかく天皇という国の機関、これの仕事というものはあるわけであります。国会の召集とか或いは衆議院の解散とかずつと七条に並んでおります。そういう点はやはり国の組織、政治の組織の上では基本的な役割をそこで負担させられておるという意味で、先ほどのように国会なり内閣なりと並べてそれを申上げておるわけであります。
○吉田法晴君 議論を続けてもしようがございませんけれども、今の逆コース的な気分、或いは吉田首相のことに言及してあれでありますけれども、こういう問題について論議をいたしますならば、内容の如何を問わず、或いは論理の如何を問わず、それが不敬であるかのごとき印象を持つておられる。或いは思い過ごしかも知れませんけれども、そういう逆コース的な空気の中においてこの問題をあいまいにしておきますならば、これは不敬罪はなくなりましたけれども、それを破壞活動防止法によつて補つて行こう、こういう動きが出て参ることはこれは当然だと思います。そういう危険性を感じますだけに、今のこれは国会解散と一緒にせられましたが、この点は佐藤意見局長官の論理の混淆だと思うのですが、先ほど運用じやなくて制度云々と言われましたけれども、混淆だと申上げるのでありますが、この内乱罪に関連いたしまして朝憲紊乱の議論にならないという保証を一つお与えを頂くことが私は望ましいと考えるのでありますが、これは解釈の問題として明らかにする以外にはないかと思いますけれども、その点をもう少し明確にして頂きたいと思うのであります。
○政府委員(佐藤達夫君) 私たちの立場について御了解を願つておきたいのは、私たちはここで勝手なことをしやべつておるわけではございませんので、常にこれが裁判上の問題になることはこれは目に見えております。将来の問題としては裁判所がどういう判決をされるだろうか、それを我々が裁判官になつたつもりで常にあらゆる角度から考えてその答えをしておるわけであります。従いまして只今のお答えにつきましても、私はさような見地から、僭越ではありますけれども、私の考えでは、裁判官が裁判をなさるにつきましても、この過去の先例は、旧憲法時代とは申しますけれども、これはやつぱり一つの先例として、ものを言うのでございますからして、それらを勘案いたしまして、さように解せざるを得ないだろうというお答えをしているので、又これは人間のことでございますから、吉田委員は違うお考え、これも成り立つことでありましようが、又他の考えを私は排斥はいたしませんけれども、私たちはかように考えておるということだけを申上げておるのであります。今解散につきましても、解散は運用でございますけれども、その解散は誰の命令でやるかという、その受持の機関としては天皇がそれに当つておるという意味で申上げておるのでございます。
○吉田法晴君 この問題については、最後に民主主義の徹底した姿では共和制がこれは理論上当然であろう云々という議論、それだけについては刑法七十七条或いは八条、九条或いは破壞活動防止法三条の問題には該当しない、この点はどうですか。はつきり御承認願えるか。
○政府委員(佐藤達夫君) これはもう申上げるまでもないことでありまして、治安維持法の時代には御承知の通りに正当な手続による共和制の主張も行われず、又請願におきましてもこの憲法の改正の請願そのものが禁ぜられておつたのでございますから、その時代におきましては別でございますけれども、今日においては、正当な手続において正当なる主張をされることについて何ら妨げとなるものはないはずであります。
○吉田法晴君 ちよつと別の問題に移りますけれども、法務総裁の代りに御答弁を願えるということでありますが、現在、講和発効前についてもそうでありますけれども、昨年でありましたが、レッド・パージに関連していわゆる便乗追放というものがありました。これは社会党員にして便乗追放を受けたものも相当ございます。甚だしきに至つては経済的な要求で労働組合がストライキをやつた。これは普通の賃金よりも八〇%に切下げるというときにストライキをやつた。その責任者がレッド・パージに便乗して全部首切られた。そういう際に、私どももその非を鳴らし取消を願つた所もあります。或いは名前を挙げてもいいのですが、当時GHQの労働課の課長補佐をしておられましたブラツテイ氏にそういう所に廻つてもらつて御注意を願つたこともございます。ところがそういうものが事実上取消されないで行われて参りますというと、完全に就職ができません。これはレッド・パージを受けた諸君についても同じことだと思うのであります。この破壞活動防止法の運用によつて破壞活動を適用せられた。或いはこの適用の結果は、通俗的に言いますならば、あれは赤だと、こういうことになるかと思うのです。あれは非国民だと、こういうことになるかと思うのであります。恐らくそういう運用がなされるだろうと思うのでありますが、その結果は職業安定法違反のような事実が起つて参るのであります。完全にその人の生活を奪うということに相成るのでありますが、そういう点についてどういう工合に政府として考えておられるのか。今後のこれは運用の面になるのであります。過去に関連して一つお尋ねをしておきます。
○政府委員(吉河光貞君) この法案におきましては、規制処分によつてその活動を制限されたり或いは解散される団体員が、経営、企業に就職することを制限したり禁止するような立て方をいたしておりません。この点は御了承願いたいと思います。レッド・パージにつきましては現在裁判所において最高裁判所の判例等が逐次なされつつあるような状況でございまして、この判例によつて最高の解釈が大体きまるのではないかと考えておる次第であります。重ねて申上げますが、この法案におきましては、破壞的団体として規制を受けた団体の役職員なり構成員が一定の企業或いは経営に就職することを制限するような規定は設けておりません。
○吉田法晴君 この法律に就職を禁止するような規定があるかないかということは、これは見ればわかるのであります。この点を問うておるのではなくて、従来の運用について事実上就職が制限せられて来た、こういう事態をどうするか。それから、この法文の中にも、同じ就職の問題についてはございませんでしたけれども、マツカラン法のように、この法律によつてこうこうこういうことをするわけではない。言い換えますならば、この法律によつて就職の制限をすることは罷りならん、こういう規定の方法をとりまするならば、その点の救済はできるかも知れませんけれども、事実上或いは警察なり或いは破壞活動防止法を適用された云々ということで、職業安定法の違反でありますけれども、企業の間で名簿が廻る、こういうことが実際に行われまするならば、法に書いてはなかろうと、或いは特審局でこういうことをやるつもりはないということになりましても、これは実際問題として救済はできません。その事実を、今後も考えられる弊害と申しますか、就職の事実上の禁止を、どういう工合に救済されるおつもりか、或いは法的な措置をどういう工合に講ぜられるかという点を、法務総裁はおられませんが、若し代理でできますならば御答弁を一つ頂いておきたいと思います。
○政府委員(佐藤達夫君) 契約自由の原則という建前からの問題に結局触れる問題になると思いますけれども、この関係の人のリストを作つて、そうして雇傭者側のほうに廻してそれの制限をするような方向に持つて行くということのあり得ないこと、又ないことは申上げるまでもないことでございます。あとは雇傭者側のほうの良識に待つようにしなければならんということは、私はこれは事柄の性質上むずかしいと思いますけれども、雇傭者側の良識に待つより仕方がないということを申上げるわけであります。
○吉田法晴君 良識に待つと言われますが、その良識は便乗追放についても就職を禁止するような行為が行われておる。これは役所から廻つているのか、経営者団体で廻つておるのかわかりませんが、恐らくは後者であろうと思いますが、それは職業安定法で禁止しておる。併し事実は行われておる。そうすると、この破壞活動防止法が今後動き出して参るということになると、同様な方法が講ぜられることになる。そうなれば、制限の規定はないと言われますけれども、先ほど申しましたような、この法律によつて就職を禁止するものではないと言うが、就職の選択の自由を制限するものではない、こういう条文を謳うことは、これは私は不可能ではないと思う。法上にそういう措置を講ぜられるということが、私は現実から考えまして立法者の責任だと思うのでありますが、そういう具体的な条文を入れる、或いは別にでも規定する意図があるかないか、この点をお尋ねしておるわけであります。
○政府委員(吉河光貞君) 御質問のレツド・パージにつきましては、先ほども申上げました通り、すべて、殆んど大部分が裁判で争われておる。又最高裁判所の判決等も近くまとまるものと考えておるわけでありまして、これは飽くまで被傭者対経営者の間の問題といたしまして裁判所においてその理非を明らかにすべき問題だと考えております。
○吉田法晴君 この問題に長くかかわりたくないのでありますが、裁判所の問題というお話でありますけれども、裁判の問題になるかならぬか、追放の問題についてはそれは裁判管轄権がないとしても、大部分において拒否されたことはこれは御承知だと思うのであります。そういう裁判の問題である云々ということで逃げられるのは甚だ心外であります。私はそういう点をお尋ねしておるのではなくて、法上に、この法律は就職制限をするものではない、或いは職業選択の自由を制限するものではないといつたような条文を設けることによつて、事実関係を救済するという意図があるかないか、この点を伺つておるのです。
○政府委員(吉河光貞君) 裁判によりましてもその該当者でないかたが該当者に捲き込まれて、便乗追放と申されますが、そういうふうな犠牲を受けられた場合においては、十分に争い得る問題ではないかと考えております。この法案運用につきまして、いろいろな点につきまして消極的に、こういう面には規定しない、こういう面には規定しないといような点を規定したらばどうかという御指摘でありますが、政府といたしましては、そういう面については規定すべきものではないと考えております。
○吉田法晴君 これは事実を挙げてまでその救済の具体的な方法を挙げたのでありますが、そういう規定をする意思はないということですが、それでは先ほど申上げましたようなこの法律による事実上の就職制限と申しますか、或いは就職不可能な状態が起つて参ることは、これは今までの事例からいたしまして考え得ることだと思うのであります。その点は一つ重ねて研究と申しますかを要請をして、次に移りたいと思います。ここは考慮する余地が今のように全くないというお話でありますが、これはこの法律で謳うか、或いは別に謳うかということは別として、研究の必要があるとお考えになりますか。その点を一つだけ伺つておきたいと思います。
○政府委員(佐藤達夫君) この法の中に民間相互の関係における事柄についてお示しのような言葉を入れることは、私はそういう言葉を条文に入れるまでもなく当然のことであろうと存じますから、ここに文章に書き込むということについては考慮する余地はございません。ただその後の、先ほど触れましたような実際の運用といたしまして、最初数回他の委員からも御質問がございましたように、この法律でただ断圧するだけで一体目的を達するのか、一般の社会政策なりその他の角度からの裏付けが必要ではないかというお言業たびたびありましたが、それらとむしろ関連して考えられるべきものでありまして、その方向で政府としては十分考えたいということを申上げておきたいと思います。
○吉田法晴君 今の御答弁はちよつと的が外れておりましたが、その問題はあとにいたします。
 最高裁判所の鈴本人事局長においでを願つておりますので、この前残しました鈴本人事局長に対する御質問を若干お許し頂きたいと思います。この前の時には、新憲法の下においては中央集権的な警察制度をやめるとともに、行政裁判についても特別に裁判所を設けないで司法裁判所にやらせるという建前をとつておる、ところがこの法律によつて事実上行政裁判をやる機関ができるのではないか、それを好ましいと考えるかどうか、こういう点をお尋ねいたしまして、一応最後的には行政裁判に行くのであるけれども、好ましいかどうかということについては好ましくないといつたような御答弁を頂いたように思うのでありますが、もう少し具体的にお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、例えば本案二十七条においては「公安調査官は、……調査のため必要があるときは、検察官又は司法警察員に対して当該規制に関係の為る事件に関する書類及び証拠物の閲覧を求めることができる。」と、そして二項には「検察官又は司法警察員は、事務の遂行に支障のない限り、前項の求に応ずるものとする。」、こういう規定がありまして、これは直接裁判所には関係ございませんけれども、行政権とそれから司法権との関連する事項が起つて参ります。或いは立案者が検事さんであるというようなことのために、その点、今のところ、その辺の調和が可能であるというように便宜的に考えられるのかも知れませんけれども、行政権と司法権との関連からいたしますならば、この二十七条は現在の建前を一応壞す危険性はないか、或いはこの二十七条なら二十七条が望ましいかどうか、或いはなくても実際にこういう協力関係ができるならば、条文にこういうことを謳わなくてもいいじやないか、こういう点について裁判所側としてどういう工合にお考えになりますか。御意見を承わりたいと思います。
○説明員(鈴木忠一君) この法律による処分を、裁判所でなくして行政官庁たるところの公安審査委員会というのが一応処分の形でやるということ、これについては、この前そういう形で行うことが司法裁判所の権限を侵すのではないかという御質疑がありましたのに対して、私は侵すものとは考えられないという趣旨のことを申上げました。そうして、これは結局立法の技術の問題となることでありますから、最初から裁判所へ持つて来るということも可能でありましようし、この法案のように最初行政処分として、裁判という形でなくして、処分という形で行政庁にやらせることも、これも一つの行き方で、この法律の目的としているところが裁判所の権限を侵すものであるというふうには考えられないということは、この前申述べた通りであります。そうしますと、この立法の体裁として、行政官庁であるところの公安調査委員会というものに処分の権限を持たせるということになる。そうしてその調査の必要があるためには、公安調査官というものに対して或る程度の事実の審査、調査の権限を持たせるということが、即ち公安調査委員会の処分を客観的に基礎ずけるために必要ではないか、こう思うのであります。でありますから、こういう権限を与えることが好ましいか好ましくないかということよりも、その前提問題として、こういう処分が司法裁判所の権限を侵すものでなく、立法の行き方としては場合によつて止むを得ない。更に或る場合には好ましいかも知れないというような前提をとれば、こういう調査権を公安調査官に認めたということについてはおのずから結論が出て来るのではないか、こう存じております。
○吉田法晴君 この前の最後に述べられました鈴木さんのお言葉と今の御答弁とは若干食い違いがございます。ちよつと問題の点を読上げますと、「それから、言われました通り、行政裁判所というものを廃止しましたので、そうして行政庁の裁判は終審となることができないと、こういうことになつておりますので、憲法の建前としては、前審であつても行政裁判所としての機能を営むようなことを、仮に終審でなくても営むような裁判所を設けるということは、これは憲法の精神に違反していると思います。ただこの事件でやるところの委員会の決定というものが、果して前審としての、而も行政裁判所としての裁判であるかどうか、というような点については、議論がわかれるところだと存じますが、建前としてはおよそ前審であつても行政裁判所を復活せしめるような機構としては憲法に反するのじやないか、こう思います。」と、こういう言葉が書いてございます。記録に残つております。今のお言葉とは若干、これは言葉のニユアンスでありますけれども、違うように思うのであります。問題は、前審的なものであるかどうかということにかかると思うのであります。事実上前審的なものであるということは政府側の答弁からも出ておるのであります。それから、そのときにも申上げたかと思うのでありますけれども、これは特審局長であつたかも知れませんが、我々が調べてそうして審理をしたもの、或いはそして審理官の審理にかけ、審査委員会の審査にかけたものは、おのずから裁判所においてもそれが認められるであろう、こういう御答弁もございました。これは立案者が検事さん自身である結果であるかとも考えますけれども、そうしますと、事実上審理官で審理されたものが、審査委員会においても恐らく通るだろう、大部分認められるだろう、そしてそのことは裁判所に参りましても、恐らくそれは裁判所の実質的の判断に任せられることであるけれども、事実問題としては大部分認められるだろう、これは書面審理でありますし、最初の調書というものが大きく左右することは間違いございません。そういう関係になりますと、これは事実関係から言いましても、審査、或いはこれは審理が行政措置としては最終的なものでありますが、それが前審的なものになるという点はこれは否定ができないかと思います。おまけに、裁判にかかりましても、行政事件訴訟特例法で仮処分なら仮処分をしようといつてもそれは駄目で、恐らく最近の事例から考えましても、恐らくこの行政事件訴訟特例法の十条二項の但書ですか、発動になることだと思うのでありますが、そうすると事実上公安審査委員会の決定というものが前審的なものになるんじやないかと、かように考えられるのでありますが、そういう構想の下で、なおそれを裁判所としては好ましいと考えられるだろうか。これは憲法の原則は申上げるまでもございませんけれども、私は新憲法の下においては、英米式と申しますか、行政国家主義に対して司法国家主義ということはできなくても、司法権の地位というものは相当高く位置付けられている。それをこの法律によつて崩すかどうか。こういう重要な問題をこれは含んでおりますだけに、鈴本人事局長の答弁ということになりますけれども、これは裁判所としても、公式であろうと非公式であろうと、私は掌理せられるべき問題であろう。具体的にその間の正式な判断はこれは個々の事件によつて裁判でなされることだと思いますけれども、こういう司法権の地位を低めるような法律が望ましいかどうか。この点になると、私はお答えはおのずから明らかではないかと思うのでありますが、前言と今の答弁との間には少くともニユアンスの間において違いがございますが、重ねて御答弁をお願いいたします。
   〔委員長代理左藤義詮君退席、委員長着席〕
○説明員(鈴木忠一君) この前の只今お読み上げになつた私の答弁は、行政裁判所を復活するということが好ましいか好ましくないかということについ抽象的にお問いになつたように私は存じましたので、その点について行政裁判所を復活させるというようなことは勿論好ましくないと申上げたつもりであります。殊に、この破壞活動防止法案による公安審査会の処分が前審になるか、前審にならないかという点についても、御疑問があるようにそのをきも拝聴いたしましたし、殊に只今伺いますと、前審になるということは疑問がないように述べられましたけれども、私はその点についても前審という意味をどういうように御解釈になつておられるか、そういうような疑問がそのときもありましたし、現在もあります。私が解釈する私の解釈に従えば、この法案によつて公安審査委員会がするところの処分は、これは通常の裁判所に対するいわゆる前審という意味ではないと私は解釈いたしておるのであります。飽くまでこれは行政庁の処分であつて、この裁判が一審、二審と審級が続くという意味で、専門的に申せば前審という意味ではないと私は解釈しております。ただ処分がされて、それが裁判の対象になるのだ、而も処分が効力を生じてそれが裁判の対象になるのだという実質的の意味に着眼なさつて、恐らく前審という言葉をお使いになつておるだろうと存じます。その意味では確かに処分がきまつて、そうしてその当否が裁判所によつて審査されるという意味において、実質的の意味から言えば、一度行われた処分をその当否を審査するという意味で前審というようなことが言われるかも知れませんけれども、専門的な意味では前審ではないわけです。それから、こういう行き方が裁判所として好ましいか好ましくないかということを言われますけれども、若しそういう行政庁の処分をすべて今吉田委員が言われるような意味で前審だと解釈して、そういう前審的な今言れるような意味で前審的な作用を行政庁にすることが好ましくないということになりますと、これは行政庁の本来の作用というものをかなり制限をしたものになつてしまうのじやないか。只今同じような行政庁の処分が原則として裁判所の裁判の対象となつておりますが、その中には、今同じようなすでに処分を受けて、そうして更にそれに対して異議の申立てをするとか、不服の申立てをするとかというような行政庁の処分を経た、再考を経た上で更に裁判所へ来るような建前の場合が幾つもございますので、そういう点から比べてみて、このために裁判所の権限が特に侵されたのだ、裁判所がそれでいいのかとまで言わなくてもいいのではないか。勿論、行政庁の処分にしろ、私人間の争いにしろ、当事者がその法律的な適否を争う場合には、原則として裁判所の判断に委ねられますけれども、一方において裁判所がみずから行政処分を、実質的な行政処分を裁判の形においてやるということも裁判所としては遠慮をしなければならない。これはもう三権分立の上から申しましても当然なことなのであります。若しここに問題になつておるような処分を裁判の形式でやるといたしましても、実質は私は、やはりそれは行政処分ではないだろうか。そういう点から見て裁判所がやはり自分の職分を、憲法の規定するところの自分の職分を十分意識して主張すべき場合には主張すべきであるけれども、自分の職分を実質的に逸脱するような虞れのある場合にはやはり反省をして、そうむやみに手を下してはいけないんじやないか。本来裁判所が自分の職能に属すべき場面の作用をする場合に出て、活動をして、初めて裁判所の本来の職分を尽せるのではないかというように考えておるわけであります。
○吉田法晴君 議論を申上げたくないのでありますが、新憲法の七十六条の精神から言いましても、或いは三十二条の精神から言いましても、裁判を受ける権利を奪われることはないというのは、国民の権利義務の制限は裁判によつてのみこれは受ける、こういう国家権力の制約を謳つたものであつて、行政裁判所によつて国民の権利義務が勝手に制約せられるならば、これは曾てのような行政専制、或いは国民権利義務の制約がどんどんできて参る、こういう意味で、三十二条にしても七十六条にしても私は設けられておるものだと思うのであります。それを行政機関で行政処分をやつて、そうしてそれには裁判所のような手続で審理をする、そうしてその処分は裁判にかけることはできるけれども、その裁判所に持つて行つた場合に、行政権から異議を申立てて、その裁判権の行使をストツプすることもできる、こういうことにすることが新憲法の精神に反するかどうか、反するのではないかというのが議論の趣旨であります。なお先ほど申上げましたように、前審であるというはつきりした断定ではございませんけれども、事実上の前審的なものになるという点もございます。それから事実上恐らくそれは裁判所で認定をせられて認められるところであろう、こういう機構の下で、果して裁判所としては新憲法の下における裁判所の地位或いは権能というものについて侵されるということまで行くかどうかわかりませんけれども、憲法の精神からして望ましいかどうか。この点は私は当然望ましくないとおつしやるのだと思つておつたんですが、意想外な御答弁を承わりますが、そういう一般的なものもあり、特に行政事件訴訟特例法第十条二項但書は問題のあるところだと思います。これはその間の事情をよく知つておられる参議院の法制局長も平野事件がなかつたならばああいつた条文は入らなかつただろう。こういうことを言つておられるところから言つても、あの行政事件訴訟特例法第十条二項但書というものは新憲法の下において望ましいか望ましくないかと言えば、これは明らかだと思うのです。それからもう一つ具体的に申上げますと、刑事訴訟法二百五十六条六項、これは訴訟法に比べると、私は申上げるよりも皆さんのほうがよく御承知だと思うのでありますけれども「起訴状には、裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞のある書類その他の物を添附し、又はその内容を引用してはならない。」こういう精神から言いましても、調書なり或いは公安審査委員会の決定の請求書及び証拠等が出されてこの二百五十六条六項の精神にも反するのではないかという気がいたしますし、それから破防法二十四条三項の裁判のこれは進行については、他の訴訟の順序にかかわらず、速やかに百日以内に裁判をするようにしなければならん、こういうこれは法律によつて裁判所が動くんだと言えばそれまででありますけれども、事実上は行政機関の行動について裏付けをせよと申しますか或いはその方向に裁判所が動くというこれは条文だと思うのでありますが、こういう点についても、これは裁判所の自由心証主義と申しますか、或いは裁判の自主性というものが何ら影響せられるところなく、新憲法の下に与えられた裁判権の地位を重からしめるものであつて好ましいものであるとなお言えますかどうか、二三具体的な例も挙げて御答弁をお願いいたします。
○説明員(鈴木忠一君) 裁判所の本来の使命は当事者の権利義務を制限をしたり、裁判自体によつて制限をしたり、権利を与えたり、権利を奪つたりするものではなくして、本来の裁判の使命というものは、権利の存否或いは行為の適否というようなものを判断するのが本来の裁判所の裁判の使命であります。勿論裁判所が現在行なつておるものの中には、或る場合に当事者の権利を制限をしたり、禁止を命じたりすることもございます。例えばその最も著るしい例は、仮処分の場合に当事者に一定の作為を命じ、或いは不作為を命ずるというようなこと、これは結局当事者の権利を直接制限し、行為を制限したりする結果になりますけれども、これはむしろ裁判所としては例外なことでございます。むしろ裁判所の本来の使命は、権利、義務の存否、何が法律に適合しておるか、しておらないかということの宣言が本来の使命であります。そういう点から言つて、この破壞活動防止法案で予定しておるところの処分というようなものも裁判所でやればより公平ではないかと恐らく言われるのでありましようけれども、その実質は、先ほども申しました通り、むしろ裁判所によつて行政行為を行うのだということになる点、それからそういう法律の目的としておるところの、そういう処分を裁判の形ですることが果して迅速に行われるか、而も裁判ですることが更に的確に行われるか、その的確と迅速という点のところを考えると、むしろやはり行政処分の形でやつたほうがいいのじやないか。立法者は恐らく考えたのでありましようし、それを特に頭から否定するわけにも、やはり理論上参らないのじやないかとも、こう思うわけであります。従つてこれも行政事件訴訟特例法によつて、結局においては裁判所の問題となつて、裁判所が裁判をすることになるだろうと思います。その場合に只今のような資料の点から言いますと、行政庁のなしたるところの処分、その他の証拠関係が、むしろ裁判所に対して有力に働きかけるのではないかというようなことを予想されて、その点についての意見も求められておるわけですけれども、理想といたしましては、裁判所における訴訟の場合には、できる限り当事者を平等の地位に置いて、その攻撃防禦の手段、機会等もできるだけ平等に置くのが建前であるわけであります。そういう点から言いますと、場合によつて、この行政事件の場合には、当事者の平等の地位ということは、若干通常の事件に比して事実上害されるかもわかりません。これは併し、私は一方において国家の権力を以て一つの処分をする場合でありますから、国家的なやはり権力と言いますか、国家的な正確さというものの裏付けがなければならないわけなのでありますから、通常の民事訴訟に比べて攻撃防禦の点において若干対等の地位が失われるのではないかという虞れは、恐らくこれは実際家としては肯定せざるを得ないと思いますけれども、そこはやはり今言いましたような点からして、事物の性質上若干仕方がないのじやないか。その仕方がないといつて、然らば裁判所がそれにそのまま聴従をするかと言いますと、これはさつきも御指摘になりましたように、やはり裁判官が事実を認定するに当つては自由な心証によりましようし、そうして本来行政特例法によつて行政官庁の処分も原則として裁判所に持出して争えるのだという精神を裁判官が忘れないで訴訟の指揮をすれば、形式上、形の上で、被告たる行政官庁の持つておる優位な面が、実際上は必らずしも優位に働かなくて済むのではないか。これはまあ一つは裁判官の実際の訴訟指揮に際しての心がけにもよりましようし、本来、従来の旧憲法時代に例挙主義をとつて、行政官庁の処分というものは原則として争えなかつたのだという原則を私人の行為と同様に争わせる建前、精神を、裁判官が強く認識しておれば、その間の均衡がとれるのじやないか、こういうように考えておるわけです。それからもう一つは、行政事件訴訟特例法の十条の二項についての疑問もございましたが、これは裁判所が、裁判所の立場から申上げれば、只今も申上げましたように、行政事件をも全部原則として裁判所の管轄に置いて、裁判所の裁判を、判断を受けさせるという建前にした以上は、その必要がある場合には、裁判所が自由に処分の執行をも停止をする。そうして、それに対して総理大臣などは異議を述べ得ない。こういうようにして頂くのが、裁判所の立場からしては望ましいことであるのは言うまでもないのであります。従つて、これは只今も御指摘になりましたように、この立法の際の特殊な事情等の影響もあつて、総理大臣の異議というような、かなり変則的な条項を入れられたのでありますけれども、これが望ましいか、望ましくないかという点に対しては、勿論裁判所としては望ましくないわけであります。併しこれは立法上かようになつておりますから、好ましくないにせよ、裁判所のほうとしては仕方ないものとしてやつておるわけでございますが、正直なところを言えば、好ましくない立法であるわけであります。で、ただこれが、この破防法が仮に実施されるときに、一体どの程度まで総理大臣の異議というものを活用するか、これは必らずしも私どもまだ十分な予想を持つておりませんけれども、恐らく実施されるとなれば、十条は全面的に活用されるわけでありますから、裁判所もときに停止をいたしましようし、総理大臣もそれに対して異議を申立てるということになることは、理論上想像ができることと存じます。
○吉田法晴君 これから先は議論になると思いますけれども、新憲法の下において裁判所に大きな期待がかけられ、そうしてこの国家組織の上において相当高い地位が与えられておる。裁判所にようなければ国民の権利義務は制限せられないのだ。こういう期待を国民が持つておる際に、行政権だんだん大きくなつて参りまして、或いは立法権の関係においてもそうでありますけれども、司法権の関係においても大きくなつて参ろうとする今日、そうして特に破壞活動防止法によつて、その第一歩が踏み出されようとするときに、好ましいか好ましくないかという問題について、行政事件訴訟特例法第十条二項但書は好ましくないと申されますけれども、その他のものは仕方がない或いは攻撃防禦の点についてもアンバランスがあるだろうけれども、行政処分を国がやるというのに法律で作られれば仕方がない。こういう御説明では国民の司法権に対する期待というものは私は大きく今後減殺されて参ると思うのであります。問題は、単に一つの行政処分の問題だけでなくして、行政権と司法権との憲法上におけるバランスがこれから破れて来るということを非常に虞れて御質問を申上げるわけでありますけれども、その点についての深い御考慮の欠けたことは極めて残念に思うのであります。行政処分にいたしましても、営業であるとか或いは会社の解散であるとか、そういう問題とは違いまして、会社の解散は或いは多少営業問題より大きくなるかも知れませんけれども、これだけ国民の権利義務に大きく関係のあります法律、そうしてそれが行政権よつてどんどん処分されて参る、そうして事実上司法権の判断を求める、或いは司法権による救済を求める道というものが残されておつても、それが事実上制限されて参るときに、司法権としてはどう考えられるか。こういう御質問を申上げているときに、この憲法の民主主義の原則、或いはそれから来る司法権の地位というものについて何らの大きな、何と申しますか、自負と、それから憲法に与えられている権限の確保というものについて御努力のない点について、甚だ残念に思うのであります。御答弁について或いはそれ以上求めることはできないかも知れませんけれども、大きな不満を国民の名において私は裁判所に申上げておきたいと思うのであります。曾て違憲訴訟の問題について、これは鈴木さんであつたかどちらか忘れましたが、裁判所にお尋ねしましたときに、その後の実際の成り行きとは違う御答弁を頂いて失望いたしましたが、幸いにして最高裁判所の明断によつて違憲訴訟の問題が進められていることを、私どもはせめてもの慰めと申しますか、期待が背かれなかつたという点の喜びをここで表明しておきたいのでありますけれども、希望いたしますところは、司法権の与えられた地位の確保に努力して参られることについては今後とも強く要望して参りたいと思います。これは立法権についても、これだけ反対しているものに国会が十分の考慮を払われなければ、立法権について、或いは政治というものについて、国民が信頼を失う危険性があるということを、これは常識のある人たちが強く申されているところでありますが、私は裁判権についてもそのことは言い得ると思うのであります。裁判権について現在ではまだ大きな信頼と期待をかけておりますけれども、今後こういつた法律がどんどんできて参るということになりますれば、或いは新憲法の下において国会なり司法権の制限のような事態が今後起つて参る、そうした法律制定の場合に当つて、そういう御答弁では、新憲法の精神から申しましても、国民の期待から言つても残念だという点だけを申し述べて、質疑は終りたいと思うのであります。何か御答弁が頂ければ……。
○説明員(鈴木忠一君) 新らしい裁判所に対して非常な御期待を持つていて下さり、そうして激励をして下さる点は常に感謝しているわけでございますが、裁判所も国民の期待に副うべく努力は勿論いたしていることは言うまでもないわけでありますが、ただ今日御質問になりましたこの問題について、当初から裁判所の管轄にすべきか、それとも行政処分としてやるべきかということは、先般も申上げましたように、かなり行政と司法との混淆をしておる境目の問題であるわけです。それで、事の実質やその他のことを考えると、理論上も極めて微妙な問題もあるところであるし、境界線の問題でありまするので、裁判所本来の使命から考えると、おれの領域なんだ、おれの所へ持つて来いというだけの自信がないわけです、正直のところ。立法でそういう問題を解決して当初から裁判所に持つて来る場合に、おれのほうは知らんということは勿論申しませんけれども、立法最中で、こういう法案が出ておる最中で、理論的に見て本来自己の領域に属さないのではないかという疑いがある問題にまで裁判所が手を差延べて、おれのほうに最初から持つて来いというのは、やはり国会を無視し、行政権を無視し、或いは無視とまで言わなくも、侵犯、犯すというような虞れがあるのではないか、そういう点も考慮いたして正直なところを陳述しておるわけですよ。別に勇気がないとか、(笑声)なすべきところをなさぬと言つてお叱りを受けるのはどうも少し叱られ過ぎるのではないかというふうに感じておるのです。
○吉田法晴君 これは良心的な御答弁だということでありますけれども、疑問が残る。これは限界というお言葉でございましたけれども、こういう法律がどんどんできて参りますならば、或いは、前進、事実上の前進ということが議論になりましたけれども、こういう制度が更に前進して参りますならば、これは方向をはつきりとしておると思う。或いはこの法律で企図いたしました方法が更に前進をして行くということになりますれば、これは裁判権として、或いは裁判所として問題だということは、これは当然お考えになつておると思うのであります。で、そういう情勢の中において、この具体的な破壞活動防止法のこういうやり方、或いは制度について、好ましいか、好ましくないかを伺つて参つたのでありますが、只今の御答弁以上に頂けないと思いますので、これ以上の答弁はお願いをいたしませんけれども、これのみにとどまりませず、今後の行政権の司法権に対する優位というものがだんだん前進するのではないか、こういう心配の下に御質問を申上げた点は了承を頂きたいと思います。
 それから第三条の問題に若干入りますが、これは法文の中にはございませんけれども、提案理由の説明、それから吉河特審局長のお言葉にございましたが、国家社会の基本秩序という言葉がございましたが、これは先ほど法制意見局長官のお言葉によると、朝憲という意味と全く同じのような御説明がございました。ところが、従来私どもが印象を受けて来たところでは、三条の一号だけにかかるのではなくて、二号にもかかるのではないかと、或いは国家の基本秩序というものは曾ての国体という概念と若干通ずるものがあり、或いは社会の基本秩序というものは旧治安維持法では私有財産制度の云云と、こういう問題と若干の繋がりが、或いは考え方として繋がりがあるような感じがいたして参りましたけれども、国家社会の基本秩序というものをどういう意味でお使いになつて参つたのか、それを法文の上で一つ御説明を頂きたいと思います。
○政府委員(関之君) お答えいたします。説明の用語といたしまして、国家社会の基本秩序を破壞するというような言葉を使つたのでありますが、要するにこれは第三条第一項に掲げるような、かような暴力主義的な破壞活動、こういうものが考え方の基本になるわけであります。第三条の一項の一号は内乱、そして二号のほうは、かような「政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対するため」、にイからリまでに掲げてあるようなかような暴力的な行為をすること、かようなことがこの法案の具体的な内容になるわけであります。で、これらを通じて、これを統一して一つの言葉で御説明いたしますならば、結局国家社会の基本秩序が非常に維持される、そのことを図るために寄与する、かようなことに相成るわけであります。
○吉田法晴君 そうすると今の御答弁では、国家社会の基本秩序というものは一号も二号も両方入るのだと、そうすると政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又は反対するため、その各号に掲げる行為、これも国家社会の基本秩序を維持するための方策、こういう御答弁で、国家社会の基本秩序と、それから「政治上の主義若しくは施策を推進し、」或いは反対するということも同じだと、こういう御答弁に結果として相成るかと思うのでありますが、そうでしようか。
○政府委員(関之君) 結果としてはお尋ねの通りに相成るわけでありまして、一号二号にいろいろと、ここに並べてある、これらのものを通じて御説明いたしますならば、結局国家社会の秩序が平穏に行われるように、そういうことに寄与するためにこの法案が考えられた、かようなことに相成るわけであります。
○吉田法晴君 今手許に提案理由の説明或いは答弁の速記録がございませんけれども、国家社会の基本秩序が平穏に維持される、こういうようなお言葉では述べられなかつたと思うのであります。国家社会の基本秩序を破壞するものと、こういう表現であつたと思うのです。そうすると、一号、二号に分けて、両方引被せて国家社会の基本秩序、こういう御説明になりますと、これは一号、二号に分けて或いは搾つたという説明等もなさつたのでありますけれども、国家社会の基本秩序というものは何でも入ると、こういう感じがいたします。少くとも法律の趣旨を説明する或いは法文を解釈する上に、国家社会の基本秩序というような言葉は極めて包括的で、そうでなくてさえ第三条第一号二号を包括的なものに持つて行つて、それが別の言葉でいえば国家社会の基本秩序、こういう表現で用いられますならば、極めて広範に、何でも引つかかつて来る、こういう感じがするのでありますが、こういう言葉は私は法文の説明としては適当ではないという工合に考えるのでありますが、佐藤意見局長官如何でしようか。
○政府委員(佐藤達夫君) 国家社会の基本的という言葉を除けまして、国家社会の秩序と仮に申上げたとすれば、今お尋ねのような疑問が続々と出て来るだろうと思います。例えば衛生関係の秩序、風俗関係の秩序、営業関係の秩序と、これは秩序の問題を言いますれば、いろいろ問題がたくさんあります。併しここで只今御説明いたしましたように、もつと深いそれを壞わすものである、こういうふうに御了解願うべきものであると思います。
○吉田法晴君 細かい文字にとらわれて議論をするようでありまするが、国家社会の基本秩序という言葉の使い方にこの法律の濫用の危険性を私ども感ずるのであります。こういう説明をしないで、なぜこの通りに説明をしないか。両方合せて基本秩序、その基本秩序は何かというと、別に説明はどこにもないのであります。而してそういうことになりますと、この運用のために、別の国家社会の基本秩序という、何ら限定されない或いは規定されない説明を持つて来て、そして大きく引被せよう、こういう意図でしかないように私どもには感ぜられるのであります。重ねて実定法に基く御答弁をお願いしたい。
○政府委員(関之君) お尋ねの実は国家社会の基本秩序という、大きな、何というか漠然とした大きな言葉を頭に被せての説明では甚だ……、というようなお言葉は、これは私もお気持はよくわかるわけであります。ところで、この法案におきましては、第一条に「もつて、公共の安全の確保に寄与することを目的とする。」というふうに、法律の目的を第一条に掲げてあります。そこでこれには「公共の安全の確保に寄与すること、」勿論公共の安全と申しますのは、これはこの法ばかりでなく、その他、万般の国家の施策によつてそれが保持されるわけであります。この法案もその確保に寄与するその一部の足しになるという意味合において、第一条の目的を明らかにいたしたわけであります。然らば公共の安全とは一体何かということになりますと、今申上げたような国家社会の基本秩序が平穏に維持されること、従つてこの法案としては、かような行政措置と刑事的な措置によりまして、そういうものが破壞されることを防止することに寄与する。而してその具体的な内容は、第三条に掲げてあるような、かような内容であります。結局これらの個個的な一号、二号、そして二号にはいろいろな面からイからヌまでありますが、かような個々的なものを通じて御説明申上げますと、やはり国家の基本的な秩序を平穏に、破壞されることの防止に寄与するというようなことになる。それでさような御説明をいたしておる次第であります。
○吉田法晴君 それでは三条を越えて、その上に国家社会の基本秩序という漠然とした概念があつて、それによつてこの法を解釈して行くという意図は毛頭ございませんと、これだけは一つ御答弁して頂きたいと思います。
○政府委員(関之君) さような考え方は毛頭ございません。厳格に第三条、第四条の説明の具といたしましてさような言葉を使つたようなわけであります。
○吉田法晴君 多少内容の意図について心配をしたのでありますが、その点は明言を得ましたのでやめます。
 先ほど憲法九条の武装、非武装の問題について、今も専門員からも御注意、御疑問が出ておりますが、政治上の主義施策については関さんの御答弁を五月二十四日に頂いて、それから文書で政治資金規正法の解釈とせられまして、郡さんの名前による説明書の抜萃を頂いているのでありますが、この政治上の主義或いは施策の説明としてなされましたごとく、或いは炭鉱国管、軍事公債の利払い停止といつたような政治上の施策については、比較的具体的な、臨時的な独自な方策を有している云々という説明からいたしますならば、平和主義がそういうものに入るかどうかということについては、これは大きな疑問を誰も考える。先ほどのような御説明で国民が納得するかどうか、おのずから明らかだと思うのでありますが、重ねてもう一度法制意見局長官の名答弁を一つお願いいたします。
○政府委員(佐藤達夫君) 今の平和主義という点から申しますれば、明瞭にこの政治上の主義というものに入ると思います。
○吉田法晴君 或いは資本主義、社会主義、共産主義、議会主義、無政府主義と、こういうものと憲法の平和主義というものが同じであるといつた御説明は、これはそれが通るか通らぬか。その佐藤さん自身にお伺いを申上げます。
○政府委員(関之君) この政治上の主義若しくは施策という問題でございまするが、これはすでに文書によつてお配りしたのでありますが、要するに今の平和主義でありますが、平和主義という一つの主義、これはいろいろな問題に関連して考えられるでありましようが、さようなことを一つの主義といたしまして政治上の行動の基準とするということになりますると、この法案の解釈からいたしましては一つの政治上の主義とは見るべきものではないかと考えるのであります。
○吉田法晴君 共産主義、社会主義と平和主義が同じで、いわゆる一つのイズムであるというような御答弁が通るか通らぬか、これは聞きとられる皆さんに御判断願つても明らかでありますが、問題は、憲法の原則として九条なり或いは前文その他にも謳つておりますけれども、平和主義といつたその平和主義が、憲法九条に表現せられておる戦争の放棄、或いは武装の放棄、或いは武力行使の放棄、これらのものをひつくるめて九条には謳つておりますけれども、前書きなり或いは憲法全文に跨がつておる大きな精神であることはこれは明らかであります。それで、何と申しますか、いわゆる政治上の主義として掲げられたようなイズムと、或いは憲法上の基本原則であるかどうか、この点になると、もう議論は明らかだと思うのであります。今のような御答弁では、これは国民ばかりでたくて、誰が聞いてもはつきりしている問題だと思うのであります。いわゆる刑法で言いまする基本的な国家統治と申しまするか、或いは朝憲の概念になることは明らかだと思うのでありますが、これは朝憲なり或いは憲法の基本的原則でなくて、それは単なるイズムであると、こういう工合に御答弁になりますか。
○政府委員(佐藤達夫君) 言葉を重ねますけれども、やつぱり古い言葉でいえば国憲を重んじ、国法に従うという言葉がありますけれども、国憲という文字とこの朝憲という文字と違うのではないかと、どうも存ぜられるのであります。朝憲というのは、朝という字があらわします政治の機関を言つているのではないか。その政治の根源を扱つておる機関を覆すという効果を狙つて内乱罪というものができておる。一九五一年のドイツの刑法にも内乱罪ということが出ておりますけれども、やはり政治上の基本組織という言葉を使つている。政治上の組織の破壞の関係を規定しておるわけでありますけれども、内乱罪という点から言うと、どうもそうではないか。これは裁判官ではございませんから、はつきりしたことを押付けがましく申上げることはできないですけれども、どうもそういう気がしてならないのであります。
○羽仁五郎君 この朝憲についての問答の繰返しが絶えないと思いますので、この際はつきり簡単にしておきたいと思います。平和主義というのは、今あなたのおつしやる政府機関の中に、戦争を目的とする機関を設けないということなのです。いわゆるおつしやるように、平和主義というものは、朝憲に関係している。朝憲の中にそういう戦争を目的とする機関を置かない。置かないということにその意味があるのだろう。それから、この朝憲の場合に絶えず旧憲法時代の解釈を引用されるのですが、これは意見長官が一つ十分御研究下すつて、現在における意見長官の御意見、政府の御意見というものを一つ示して頂いて、明朗な気持になりたいと思うのです。朝憲の問題になると、いつも旧憲法時代に戻りまして、甚だ残念です。若しそうなら刑法の改正から行かなければ、破壞活動の審議もできないということが、衆議院に出たのも尤もです。第一に、朝憲の第一に挙げられるものは主権在民だと固く信じておる。これが国家制度や何かに現われておると思うのです。それを、いつまでも朝憲紊乱で、主権在民ということは出たことがない。わずかに国家制度ということにちよつと出るくらいのところで、我々の感覚とちよつと違うので、残念に思うのですが、次回に御答弁になるときは、第一に主権在民というふうに挙げてもらいたい。
 それで平和主義ということは国権に属することであつて、我々の政府機関の中に、戦争を目的とする機関というものの権力というものを絶対に置かないという、不作為の、そういうことをなさないという意味において、国権に属することと、そういう点に、新憲法の、我々の日本国憲法の劃期的な、国際的な意義があるのに、何を好んでそれを又抹殺されようとしておるのかどうか。今はあれですけれども、次回ではその点はつきりお答えを頂きたいと思うのであります。
○政府委員(佐藤達夫君) 主権在民のことを仰せられましたが、我々は空気のようにこれは当り前のことと思つておりますので、空気の存在についてはつきり申さなかつたと御解釈下さい。平和主義ということは主権在民とは違うように思つておるわけです。
○羽仁五郎君 金森先生の話にも、四本の柱が民主主義と平和主義を先ず第一に挙げておられる。形式的には政府にある機関のいずれか知りませんけれども、併し反対に政府にそういう機関がないということを意味しておる。そういう点では、私はその朝憲に属するという考えでおります。丁度、昔、国体とか何とかというふうに言われておるものは、国法のほうじやなくて、朝憲のほうでしようから、天皇の神聖というような意味が昔は言われていたわけです。今度は主権在民の神聖それから平和主義の神聖というような意味が述べられることがこの際特に必要じやないかと思うのですが、まあ御研究頂きたいと思います。
○吉田法晴君 あと特審局の活動、これは将来公安調査庁になつて、この法案の運営の中心になるわけでありますが、その点と、それから、この法案の事実上の前提になりました現実的緊急の危険という点で、メーデーの騒乱事件についてお尋ねをいたしたいと思うのであります。時間がどうかと思いますけれども。
 それからもう一つ、その質問に入ります前に、機関誌の独立性について思想が入るかどうか。
 それでは、この特審局の活動の点については先般祕密会を開いて御聴取願つたということでありますが、或いは速記を止めて御答弁を願つても構わないのでありますけれども、一応御質問をして参りますから、一つ御答弁を頂きたいと思います。
 それは、私ども考えますのに、現在ある特審局の活動、それから、これはどの程度まで関連があるかわかりませんけれども、警察の活動がございますので、その一部については私も申上げて参りましたけれども、それらがこれらの法律が通りますというと、はつきり法的な根拠を持つて公然と行われて参る。或いは更に大規模に行われて参るという点から、実体的に今までの活動を問題にしなければならんと考えるのであります。そこで、先ほど羽仁委員からもちよつと言及されましたけれども、先般九大に偽スパイという事件がございました。偽であるかどうかわかりません。と申しますのは、あの田中という男が捕われましたときに、福岡市警から、人身を拘束をして長くなるならば実力行使もやむを得ない、こういう電話がかかつて参つたということであります。そうしますと、ただあれが泥棒で特審局の委託調査費をもらつてやつておつたかどうかは知りませんけれども、もつと警察との繋がりがあつたかのように考えざるを得ないのであります。ああいうものをお使いになつておるかどうか。これは直接特審局に関係が或いはないかも知れません。警察の人間であつたかもわかりません。但し二日市に女があつて、そこでとつて来た学生の鞄等を質に入れたことも明らかになつております。併しながら、捕まつたあとで、警察のほうから、いつまでも拘束をしておるということであるならば実力行使もあえて辞せない、こういうお話があつたことは、これは何らの関係がないとは考えられないのであります。そういうものをお使いになつておるかどうか。或いは一般的な問題になるかも知れませんけれどもお伺いしたいと思います。
○委員長(小野義夫君) 一昨日そのことについては御答弁があつたのです。ちよつと速記をとめて。
   〔速記中止〕
○委員長(小野義夫君) 速記を始めて。
○吉田法晴君 それでは九大の田中という問題については具体的には了承いたしました。ところが、その委託調査のやり方が具体的にどういうやり方でやつておられるか、それをもう少し詳しくお話を頂きたいのでありますが、或いは従来から言いますとCICならCICの何といいますかこれは委託員であつたかも知りませんが、そういうような者がおりまして、警察でもない。特審局でもない。ところがこれは前の特高時代に追放を受けたような諸君が事実上使われておる。そういうものを特審局で委託調査ということでお使いになつておるということはございませんか。
○政府委員(吉河光貞君) これはこの間の祕密会で……。
○委員長(小野義夫君) 速記をとめて。
   〔速記中止〕
○委員長(小野義夫君) 速記をつけて。
○吉田法晴君 それから特審局が委託調査をせられるであろうと考えられるものの中で、或いは昔の共産党員で、今から言いますと共産党くずれということになるかも知らんと思いますが、そういうものを通じて委託調査をせられておるというようなことはございませんか。
○委員長(小野義夫君) 速記をとめて。
   午後四時五十六分速記中止
   ―――――・―――――
   午後五時二十三分速記開始
○委員長(小野義夫君) 速記を始めて下さい。
○吉田法晴君 警察官との協力関係ですが、二十七条とか二十八条とかの関連になりますが、これは事実問題として、従来警察に捜査二課と申しますか、こういつた思想と申しますか、或いは組合活動と申しますか、そういうものを調査しておつた、或いは捜査というのかも知れませんけれども機関があつた。それとこの二十七条と二十八条との関連はどういうことになりますか。
○政府委員(吉河光貞君) 捜査一課、捜査二課でございますが、こういう立て方をしている警察もないわけではないと考えております。私の聞き及んでいるところによりますると、捜査一課は強力犯の捜査に当つておつたと思います。捜査二課は涜職犯とか知能犯、その他の犯罪の捜査を担当しておつたと思うのであります。私どもといたしましては、特にどの警察の捜査一課或いは捜査二課に連絡するというような立て方はいたしておりません。現在におきましては中央並びに地方におきまして、検察庁、それから自警、国警というものに特審の支局の者が出まして、その首脳者が出まして、情報の交換とか判断だとかいうような事務連絡の打合せとかいうようなことはいたしております。それ以外に常時必要な情報の交換ということは、その情報を必要とする部局に連絡するようにしております。でありますから、特に捜査二課というようなものとだけ連絡しているわけではございません。
○吉田法晴君 従来捜査二課と申しますか、或いは一課、二課と分れていないところがあるかも知れませんけれども、警察において今の知能犯と申しますか、その活動の範囲の中に入るかも知れませんけれども、ひとり団体等規正令関係だけでなくて、最近のいわゆる思想調査と申しますか、或いは組合活動なり旧特高がやつておつたような仕事をせられておる部面があることは、これは否定できないと思います。先ほど、今日じやありませんが、ずつと前に自治体の所轄内に国警が入つて来て、そうして破壞活動防止法の反対演説をやつた人を家なり職場まで行つて調査をしたという事実を申上げました。そういう役割をする人が警察にあることは、これは現在事実として私ども認めざるを得ないと思う。そうするとそれと特審局との間に常時委託関係と申しますか、或いは関係ができて参るのではないかという疑問が残るのであります。組織上についてはそういうあれはなくて、個々の報告について情報の交換をやる、こういうお話でありますけれども、今あります二課なり或いはそういう担当をしている人たちと公安調査庁との間に組織的な連関ができるのじやないか、或いは二十七条、二十八条で、公安調査庁から先ほどのような委託調査費が出て参るのじやないか、こういう多少想像も入るかも知れませんけれども、運営上において予想せられるわけでありますが、そういうことはないというお話でありましようか、その辺一つ承わりたいと思います。
○政府委員(吉河光貞君) 警察内部の組織上のことは私も全然詳しいことはわかつておりません。誠にどうも申訳ありませんが、私どもとしましては、一つの情報を得た場合に、それが犯罪の捜査上利用さるべき情報であれば、その捜査を担当する方面にこれを出す、或いはこれは警備上必要な部面でありますれば、その方面に出すというような立て方をいたしておりまする私どもといたしましては、警察の特殊な部門を公安調査庁の下部組織みたいにして行くような考え方は持つておりません。
○吉田法晴君 考えをお持ちになつておらんでも、警察にそういう任務を持つておる人があり、そうして情報の交換というようなことで、定期であるか随時であるかは知りませんけれども、つながりがたび重なつて出て参りますと組織的な連関になるんじやないかという感じがいたします。その点を一つお尋ねいたしたい。
 それからもう一つは、この警察の情報収集なり何なりについて情報交換という言葉を使われましたが、それに委託調査費か補償費か知りませんけれども金銭的な授受の関係ができるのか、その点をお尋ねしたいと思います。
○政府委員(吉河光貞君) 第一の点につきましては、飽くまで警察というものを単位にして相互の連絡をして行きたい、協力をして行きたい、犯罪捜査から得られました資料とか情報とかいうものは、当然これは私どもの参考になる部面もあり、又警備上から得た情報につきましても参考となるものもあるので、特に一つの部面から情報を得るというようなことは適当ではないだろう、警察を単位として連絡をして行きたいと考えております。
 それから国警は別としまして自治体警察につきましていろいろな情報、資料の提供を受けました場合につきまして、余分な費用がかかつて来るというような場合につきましては、この実費を弁償するという意味で資金を差上げるということはいたしております。
○吉田法晴君 そうしますと、現に特高警察的なものが復活しつつあるという現実から考えますならば、警察全体を相手にしているということでありますけれども、すりやどろぼうを相手にしている或いは捜査一課といいますかそういう人たちが組合に参つて情報をとるというてもこれは事実上困難でありましよう。そこでどうしても捜査二課のようなものの中に組合を専門に、まあその途中でそれは現行犯が間につかまるということは当り前の話でありますけれども、主として思想警察を任務とする警察官ができて参るということは、現実からいいましても将来の展望から見てもこれは必要じやないかと思います。国警の点は今お触れになりませんでしたけれども、自警などについて補償費であるか委託調査費であるか知りませんけれども給与せられるということになりますと、その面で組織的なつながりができて来る、これは当然であると思います。そうすると今までの情報活動の弊害、或いは警察の場合に、旧来の場合は警察から直接つながりがあつたかどうかは知りませんけれども、警察官等が自治警の範囲内に入つて情報活動をやるということ、或いは特高警察的な活動をするということは、これは防げないばかりでなくますます助長して参ると思う。そしてその運用については警察のことだからというので皆さんも責任をお負いにならないという結果が出て参つて、私どもの心配しますような特高警察の復活或いはその運営について昔の或いは今までありましたような運営が行われて行くということは、これはどうも今の御答弁を以てしても措置困難だということになるのではないかと思います。これについて先ほどのような弊害阻止の具体的な方法についてもつと承わらないと安心ができて参りませんが如何ですか。
○政府委員(吉河光貞君) この問題についてお答えいたしたいのでありますが、第一は、警察が特高化しているのじやないかという御指摘でございますが、私は現在の警察が特高化しているということはないのではないかと考えております。ただ先般来御指摘の追放八幹部の所在調査につきましては国警も自警も相当努力されておりまして、この面で相当活動をされておりましたが、特高警察ができたというふうには考えていないのであります。
 第二の点につきましては、只今も御指摘がありましたが、公安調査庁が必要とする情報、資料は成るべく自分の手で賄つて行きたい、警察はやはりそれ自身で情報活動を必要とすると私は考えています。警備活動をするにいたしましても、犯罪捜査をするにいたしましても、これは情報活動いわゆる広い情報活動は絶対に必要ではなかろうかと考えております。その面を逸脱するような情報活動はこれは好ましくないと考えております。私どもとしては公安調査庁といたしまして破壞活動防止法案の運用に必要且つ相当な限度においては、これはやはり情報活動は絶対に必要だと考えておりますが、その必要のために警察が本来なすべき情報活動以上の情報活動を私のほうからさせるようなことは絶対に慎みたいと考えております。
○吉田法晴君 警察が全部を上げて特高警察になつているということを申上げておるわけではございません。その警察の中に特高的な或いは思想調査をやるような人と申しますか或いは部面ができておる。これは先般参議院に東大事件に関連して五名の警官を呼んで調べましたときにも、ほかにも廻つておるというお話でありますけれども、その日常活動の大部分が東大の中に入つて警察予備隊員募集にこと寄せ先生の身許調査をやつておつた、これは初めは否定せられましたけれども、しまいには職務上やつたということを認められておつた、そういうようなことが偽証の問題と関連して真実を述べられた、これは否定することはできないと思う。又地方の例を引かれましたが、国警などにそういう任務を担当している人がそこにできておる。恐らくこれは今後といえども警備情報の活動上必要であるということになりますと、先ほど申上げますようにすりやらどうぼうやら強盗をつかまえる人が組合に行つても話はわからんから、結局多少学校を出たような少くとも中学というか或いは高等学校ぐらい出た者をそれに専属につけるということは、これは当然言い得ることだと思うのです。そうするとそれは捜査二課であるか、捜査の二課の中であるかは知りませんけれども、そういう担当者、言い換えると思想警察を担当する人ができて来る、現にできておる事実は否定するわけには参らん。それと特審局との間の二十七条、二十八条があればつながりができて来る、それは特審局としては必要最小限度にとどめたい、それから直接やりたいというお話であつても二十七条、二十八条があり、そしてそのために特審局から警察に金が出ると、こういうことになれば、今の警察の中にあります特高的な部分を育てて行くということは阻止するわけには参らんと思う。而もお話のように警察の点についてお話申上げると、警察のことはおれの範囲ではないとこう言われますが、その警察の活動は窮極においては公安調査庁の調査活動の線において警察に特高的な部分ができ、そして一律に働くこういうことになる。それは成るほど給与その他は国警なり自治警から出るでしよう。併しその活動は特審局の或いは公安調査庁の線に従つて動くということは当然のことになつて参るじやないか。そしてその警察の活動の中に行過ぎがあつたとしても、ここでやつてみてもそれはおれの範囲ではない、こういうことになつて、先ほど来挙げましたような弊害については何ら補償をやらない、恐らく今後といえども一々そういう問題について私ども責任を負いません、こういう御答弁になると思うのです。そういう意味から言えば或いは二十七条とか二十八条を削つてしまつて、公安調査庁が自分でやられるのだ、これでやるならその弊害は防ぐことができるかも知れません。二十七条二十八条を除いておいて、そしてその活動についてはどの程度であるかはとにかくとして、金も行つておるということになると、その弊害はこれは救済すべくもない。或いは私どもが抑えようとしても抑えることができない、これは当然だと思う。如何なる名案をお持ちでありますか一つ承わりたい。
○政府委員(吉河光貞君) 吉田委員の御質問は、特審が思想調査をやることを建前としている、その結果警察にもこういう思想調査をさせているのじやないだろうか、或いはそういう警察が若しやつているとすれば、そういう思想調査の情報でございますか、というようなものを非常に歓迎するのじやないだろうかというような御前提に立つた御質問ではないだろうかと思うのでございます。私のほうは警察にこれまで思想調査を頼んだことは絶対に一回もありません。で又そういうことを私が好ましいこととして助長するようなことをしたこともありません。今後といえども警察に思想調査をやらせてその成果を頂戴するというようなことは絶対にすべきではないと考えております。
○吉田法晴君 思想調査をやらせないと大みえを切られましたが、警察の活動については先ほど来申上げましたからこれは繰返しません。それから公安調査庁は破壞活動の調査をやられる。この建前であることもこれは承知をいたしております。併し公安調査庁が治安警察であるという点はお認めになつて参りました。治安警察の活動が破壞活動防止法の対象になる破壞活動を調査して廻るというときに、思想調査には絶対になりませんというこういうお話でありますけれども、その点はこれは大きな疑問が残つております。この点についてはこれは調査庁自身の問題かも知れませんが、今公安調査庁自身の問題を問題にしているのではなくて、警察において先ほど申しましたような身許調査をやつたり、或いは破壞活動防止法反対の言辞を吐いた者を調査して廻る、こういう活動をしている警察と今後とも連絡をし、そして二十七条、二十八条と、それから金をやるということによつて、そういう警察の動向をこれは助長することにはなつても決してやめさせることにはなりはせんじやないか。これは二十七条、二十八条が、金をやるということと、それから思想調査はやらんということでも、その思想調査の前段の、前段というか或いは後段かも知れませんが、破壞活動の三条の一号ロ、ハ、それから二号のヌの活動を調査することになりますと、思想活動調査と破壞活動調査との間には私は紙一重しか間はないと思うのであります。それは現にやつている警察の活動をとめるわけにはなかなか参りません。それをとめる方法を具体的に一つお示しを願いたい。
○政府委員(吉河光貞君) 私といたしましては、これは仮定の問題でございますが、警察が思想調査、思想統制に亘るような取締を実現するために思想調査をやるということは決して好ましいことではない。仮にそういうことをやつておれは、むしろそういうふうなことをやらないように仕向けることが適当、妥当ではないかと考えております。で、公安調査庁の運営といたしましては、飽くまで警備或いは犯罪捜査から現われて来る客観的なやはり情報なり資料なりを頂戴する。こういうふうな思想統制に亘る取締を実現するような思想調査というようなことについては、こういう警察にその協力を求めたり或いは警察にそういうことをやらせたりするようなことは絶対に慎まなければならない、かように考えております。公安調査庁としては、そういう行き方をすべきではないだろうかと考えております。
○吉田法晴君 思想統制をおやりにならないという表現をお用いになりましたけれども、思想統制を直接やられるとは考えておりません。併し身許調査というのは、初めは警察予備隊にでも行かれるということで調査したというふうならば、大学の先生が警察予備隊に行くわけでもなければ、或いはおよめさんをもらう、警察の厄介にならなければならないようなおよめさんをもらうという話でもないことは明らかであります。身許調査といわれているのは、それでは何か或いは学校の先生が、この間戒能先生も言つておられましたけれども、破壞活動をやられるということではない、戒能さんあたり或いは羽仁先生も言つておられたけれども羽仁先生がやられるとは思わない、人によつて身許調査をやる、そうするとそれは思想調査以外に何があるか。それから例えば破壞活動防止法反対と言つた人間の家庭に行つていろいろ話をされる或いはそれは思想調査でないかも知れない、思想統制でないかも知れません、併しそれは何です。犯罪をやつたか、何も犯罪をやつてはしない。破壞活動防止法反対、これは国民の権利、義務を侵すから、破壞活動防止法は通すべきではないという、これは許された民主的な意見の発表だと思うのです。そうしてそれをその家に行つて話をし或いは職場に行つて上司に会つていろいろ動向を聞く。それは思想の調査でないかも知れない、或いは動向の調査かも知れません、併しそれを我々は概括的に見ますれば思想調査になるというのです。或いは前の特高にしても思想を直接調査したかどうかわかりません。それは或いはどういうことを考えているか、或いは共産主義を支持しているか、支持しておらんか、そういう調査はやつてはおりません。どういうことをやつているかという調査をしたに過ぎませんが、併しそれらを私どもは思想警察だと言い或いは思想調査という言葉で呼んでいるのであります。
 それから破壞活動防止法の一号のロ、ハ或いは二号のヌ、こういう問題になりますと、質疑せられましたけれども、学校の先生の講義がどういうものであるか調査しないというお話でございますが、警察がそれでは今までやつて来ておつた活動というものはその人の言動或いは講義の内容というもので恐らくあろうと思う。或いは先生が破壞活動防止法の講演会に出られたか、出られんか、そのような調査をすることと考えるのであります。そういう警察の活動を情報活動としてとる、或いは破壞活動防止法の調査ということで情報の交換或いは調査を委託せられるということになれば、警察の活動をこれは助長はしても、とめることには私はならんと思う。
○委員長(小野義夫君) 速記とめて下さい。
   〔速記中止〕
○委員長(小野義夫君) 速記始めて下さい。
○吉田法晴君 そこで今警察の活動、これは法で許されている問題でありませんけれども、身許調査その他でやつているわけです。それが二十七条、二十八条で裏付されて公々然とこれからやられるのじやないか。そこで問題は公安調査庁の側として、申上げるような弊害をどういう工合にして防ぐか、その具体案を一つ伺いたい。二十七条、二十八条を削られれば私は問題はないと思うが、削られなければどうしてその点を防がれるか伺いたい。
○政府委員(吉河光貞君) 只今御質問のような身許調査をさせるような情報交換とか或いは調査委託というようなことはさせません。こういう面におきまして防いで行きたいと考えております。
○吉田法晴君 させませんということで今の場合了承する以外にないかと思いますが、問題は二十七条、二十八条に関連して現実の事態から心配せられておる点でありますから、その点について単に言明だけでなくて、もつと公安調査庁の今後の動きについて、或いはその具体的な方法を今思いつきませんけれども、もう少し具体的な方法を講じてもらうということでなければ、ただいたさせませんということだけでは私どもは安心いたすわけには参らんのであります。
○政府委員(関之君) 口を代えまして私から今の問題につきましてお答えいたします。吉田委員の全体としての御心配のような点は、私どもとしてもやはりこの法案のかような団体規制という事務の運営の上において最も大きいものであるから、そこで公安調査庁などというものを警察と切り離して別に作つた、先ず第一に大きな狙いはそこにあります。これが警察と合体いたしますれば或いはお尋ねのような旧の特高というものが全くそこに復活すると考えられるのであります。それでこれを全くとめてしまつたということがお尋ねのような点を組織的に切り離すという考え方の基礎に立つておるのであります。これは十分おわかりのことと思うのでありますが、さような前提の上に立つて私どもといたしましては、現に団体規制の第三条は暴力主義的破壞活動取締の必要の範囲内にすべての事務を限定する、勿論警察のさような悪い面を私のほうで助長するということは厳に慎み、すべての面において公正な必要な相当な範囲において行うだけの立派な役所としての運営をして行きたいという、かような趣旨方針に則りまして、特に御指摘のごとくに、警察との悪い結びつきにつきましては確かに絶対に組織的なものは生じないと私ども断言できないのでありますから、その点については法案の趣旨目的に則つてやつて連絡を密にして、さような悪い結びつきが生じないように私どもはもとより部下の者にも戒心させて、厳重に運用して行きたいとかように考える次第であります。
○吉田法晴君 お気持はわかりましたが、我々具体的に思うことでありますが、先ほどの特審局長の言葉の中にありました、特審局或いは公安調査庁から警察に金をやるということをやめたらどうなんですか。
 それからもう一つ二十七条、二十八条はこれによつて予算を獲得しようという、予算条文であるという酷評さえあるのですが、この二十七条、二十八条がなくても私は今の次長の言葉を借りて言うならば、公安調査庁が自分でやるという建前を本則にいたしますならば、それの事実上の連絡はともかくとして、条文がなくてもやつて行けると考えるのですが、その二点はどうですか。
○政府委員(吉河光貞君) この二十七条は、事件に関する記録及び証拠書類の閲覧でございまして、これはどうしても規制をいたしまして、これは或いは検察庁、裁判にもあらわれる記録であります、或いは証拠物であります。二十八条はいい面、積極面も考えて行きまして、非常に少い公安調査庁の職員が活動するのでありまして、そうして警察及び国警、自治警等の方面における悪い情報でなくて警備上出て来る情報、犯罪捜査上出て来る情報をこちらにおいて利用すべきものは頂戴するという建前でありますから、只今関政府委員からお答えいたしましたように、基本原則に立つてこれを運用する上におきましては弊害を除去することができるものと確信しておる次第であります。
○吉田法晴君 二十七条は或いは書類の問題だから云々ということですが、それでは二十八条にしぼつてもかまいませんが、先ほどお尋ねいたしました、まあ特審局はなくなり公安調査庁になりましようが、公安調査庁から警察に金をやるということはやめたらどうなんですか。
 もう一つ二十八条でなくても事実上の関係でやられる分はともかくですが、そういう条文等を残しておけばやはり若干の心配が残るんですが、削つたらやつて行けませんか。或いはやめたらいけませんか。
○政府委員(吉河光貞君) これは警察法にも国家警察並びに自治体警察は相互に協力するものとするという一つの精神を持ち出した規定がございます。公安調査庁が国警並びに自治警と互いに協力してやつて行くという面は、相互の協力によつて治安を保持して行くという立て方として必要な規定であると考えております。なお自警方面に対する報償費その他につきまして、御質問の趣旨に則りましてでき得る限りこれをしぼつて行きたいと考える次第でございます。
○委員長(小野義夫君) ちよつと速記をとめて下さい。
   〔速記中止〕
○委員長(小野義夫君) 速記を始めて下さい。
○吉田法晴君 公安調査庁と審理官の関係でありますが、公安審査委員会に対する請求は公安調査庁長官がやるという建前になつておりますが、実際の手続をお伺いするのでありますが、第一線におります公安調査官が調査をしてそうして審理官の審理を経ると、こういうことになつておりますと、公安調査庁長官が名目的に書類を見るだけであつて、実際には末端の公安調査官が調査をして、そうして例えば福岡で言いますと、そこの審理官の審理にかけ、それから公安調査局の局長まで見られるかどうかはわかりませんが、実際は審理官の審理で以て書類ができ上がると、こういうことになるのじやないかと思われるのですが、その辺の実際の手続の運営をもう少し具体的に承わりたいと思います。
○政府委員(関之君) この法案におきましては、審理官は調査庁長官によつて任命されまして、責任を持つて意見、弁解を聞きまして、その責任において調書を作り、証拠を調べ、相手方の弁解を十分に聴取して一切のものを整理するわけであります。請求は公安調査庁長官がいたすわけであります。そこで審理官は、自分の調べた意見弁解を聞いた一切のものを長官に提出いたしまして、長官がこれを判断いたしまして請求すると、こういう二とになるわけであります。併し官庁の事務といたしますれば、公安調査庁は、一人の長官の下に以下多くの次長或いは部長或いは各調査官というような補佐官がいて一体となつておる一つの役所でありまして、長官は一々自分が見ることはもとより不可能でありましようから、自分を補佐するそれぞれの部局の者に見させ、そうして最後に自己の責任においてこれを判断して請求をすると、かような実際の事務の運用に相成るものと思うのであります。
○吉田法晴君 今一体という言葉がありましたが、一体という場合に、その検事一体の原則なるものが働くかどうかという質問が過去において伊藤委員からなされておるのでありますが、実際問題としては、審理官で調書をこしらえると、あとは本局と申しますか本局あたりで書類を見られるかも知れませんけれども、今のお話のように名目はともかくとして実際には長官がそこで調書を作り直す云々ということではなくて、長官の名前で用意してある請求書に判を押して出すと、こういう実際になるのではないか。そうすると、調査官と、調書を作成するのは審理官が作るということになりましようが、実際の書類の整理は審理官のところででき上つて、あとは形式だけではないだろうかと、こういう感じがするのでありますが、そうでなくて、もつと調書にしても本局で作り直すという手続をとられるのかどうか、その点を一つ。
○政府委員(吉河光貞君) 長官につきましては、いやしくも請求するような場合におきましては、その証拠物並びに調書並びにその他の書類を検討しまして、自己の高まいな判断、高まいというと語弊がございますが、判断において、責任においてやはりやるべきものと考えております。
○吉田法晴君 そうすると、長官が手許に参りました調書、証拠等について補正をするというか或いは書換える、そういうことがあるのですか。
○政府委員(吉河光貞君) さようなことはいやしくもできた調書を勝手に書換えるというようなことはありません。
○吉田法晴君 そうすると事実上調書、証拠は審理官のところからそろつたものを持つて来て処分請求書を長官が書く、長官の実際には幕僚と申しますか、本局の部長であるか部員であるか知りませんが、そこで書いて出される、こういうことになるのでありますか。
○政府委員(吉河光貞君) 最後に請求書類が長官のところに参ります前にも、長官は随時部下から報告は受けると思うのであります。そういたしまして最後に長官が証拠物並びに調書等を検討されまして、これは請求すべきでないと判断した場合におきましては勿論不請求、規制処分を請求しないことに決定されるものと相成ります。これは請求すべきものと自己の責任において判断した場合におきましては長官の責任において請求をするという、こういう建前になるかと思うのでございます。
○吉田法晴君 そうすると処分請求書の中味がどういうことになるか知りませんが、最初考えましたのは、きまつた処分請求書の印刷されたものがあつて、それに判だけおして出すかのように感じたのでありますが、そうじやなくて、処分請求書にしても、まあ判決文じやありませんが、起訴状のようにずつと書いて行く、その中には調書そのままでなくて、調書の内容或いは証拠をとり入れて書直すという何ですが、新たな判断も加わつて処分請求書を書く、こういう構想なのですか。
○政府委員(関之君) この問題になりますのはどういう事実、どういう証拠によつて規制すべき原因、第四条、第六条の事項に該当するや否や、如何なる証拠によつて認められるかという問題であると思うのであります。この証拠は客観的なものでありまして、長官或いはその長官の下にある部員が偽造するとか勝手に作り直すということはできないのでありまして、さような客観的な証拠、そういうものを基礎といたしまして如何なる事実が如何なる場合にこれが認められるか、そうしてそれによつてそれならば四条の請求にするか、六条の処分の請求にするかという問題が出て来るわけであります。かような経過をたどつて判断をいたしまして、そうして処分の請求書を作成し長官の責任において最後の決定をいたしてこれをなす。そこに印刷してある紙を勝手に便宜使つてそうして安直にやるということは考えられないのであります。およそ団体規制という重大なことでありますからして、長官も若しこれが間違えば、先ほどもお話が出たような何らかの責任も考えなければならんというような問題さえ加味される問題でありますからして、慎重にその全責任を持つて判断されて処理されるということに相成ると思うのであります。
○吉田法晴君 これは過去の実例から考えられることでありますが、過去の実例というとそれは治安維持法その他法の体系が違うということになるかも知れませんけれども、実際問題として調書をこしらえましたならば、その調書をこしらえる際に本人に認定をさせる、認否を求めそうして書上げましたものがこれが一番大きな審理或いは決定を左右する要素になると思う。
 それで今承わりますと調書のほかに処分請求書を書くということによつて調書の選択なり、或いは証拠の選択等は長官が処分請求書の中で任意やるのだということで、調書なり証拠というものが処分請求書の段階で相当動くかのようなお話でありますけれども、実際になればなかなかそれは困難じやないか。それで調書をこしらえる際にも勿論証拠の選択があるでしようが、その調書によつて殆んど全体の運命がきまるのじやないか。こういう感じがいたしますが、その点については治安維持法の経験とそれから教訓という言葉はあれでありますが、板木郁郎氏が治安維持法の場合の経験からして破壞活動防止法の眼前の事態についての意見を述べておられますが、その際に今の調書、証拠或いは処分請求書或いは審理官の決定というものの中でこの調書が殆んど事実認定をきめてしまうのじやないか。そうしてあと処分請求書も、それから審理の場合も極めて動かしがたいものになるのではないかという心配をいたしますので、今処分請求書の内容に関連してお尋ねをするわけでありますが、調書の内容が処分請求書を書く場合にどの程度動くのか。
 それから二点は調書が処分請求書の内容をも相当決定し、或いは審査委員会の審査も事実上動かしはしないかという疑問に対してどういう工合に考えておられるか、或いはその過去における弊害を直すにはどうする御構想であるか。
○政府委員(関之君) この吉田委員の今お尋ねの調書というこの言葉は本法案におきましては第十六条に調書というものが書いてあるわけであります。そこでお尋ねのこの調書がこれに当るのかそれとも広い意味において、まあ過去の治安維持法などにおける聞き取り……。
○吉田法晴君 この調書です。
○政府委員(関之君) それならば私どものこの法案について考えておるところは吉田委員の今のお尋ねの点とは少し違つているように思うのであります。と申しますのは、この法案におきましては一切の団体規制の証拠、これは事実を証明する証拠でありまするし、その証拠は公安調査庁長官が責任を持つてこれを収集するということに相成るわけであります。そこで二十六条以下のこの規定によりまして各種の調査をいたしまして、第十一条に基いてどうもこの四条、六条の規制処分の請求をしなければならないのではないかと、こういうふうに一応疑いを持つわけであります。それを持つには持つだけのすでに十分相当なる証拠を持たなければならないわけであります。四条、六条によりましてかような破壞活動をする明らかな虞れが十分に認められるというようなさような程度に至るまでの確固たる一応の証拠をここに収集していなければならないわけであります。この証拠は団体の発行した各種の文書であるとか、或いは新聞とかいろんなものが証拠になるでしようし、大体それに準じた客観的な、誰が見てもこの疑いが十分明瞭であるという証拠をここに持つわけであります。そうしてその証拠があつてどうもこれは規制処分請求をしなければならない疑いがあるというふうに考えるので、そのときまでに今申上げたような証拠を長官が持つておるわけであります。そうしてかような次第で十条以下の規定に基きまして相手方の弁解を先ず聞く、それで弁解を聞くときに十条以下の規定に基いて相手方の団体のものに出て来てもらつて、そうして請求がありますならば自分の持つておる手持の証拠を全部向うに出しましてそうして弁解を聞く、その弁解の一切の経過をこの調書に作るわけであります。そうして調書はもとより書いたことは委員会におきまして判断の資料とは相成ると思うのでありまするが、むしろ問題は長官が集めたその基本となる証拠というようなものが基礎になるわけでありまして、それでこれらは調書にはその反証とかいろんな経過が出て来るわけであります。そこでその点におきましては調書はむしろ相手方のそこに有利な弁解とか一切が出るという意味におきまして一却つて相手方の団体に極めて有利にこれを利用される、そうしてこの調書を見て、そうして成るほど相手方の弁解その他が成り立つということになりますと長官は請求しないということに相成るわけであります。実際の運びはさようなことに相成るかと思うのであります。
○委員長(小野義夫君) ちよつと速記をとめて下さい。
   〔速記中止〕
○委員長(小野義夫君) 速記を始めて下さい。
○吉田法晴君 今の御答弁ですと、審理官の審理は、前に長官が事実なり或いは証拠についてそろえて云々というお話ですが、法文を読んで参りますと、調査官が事実と証拠を集めてそして審理官の審理にかける場合にはそれを提出する、それを調査官のほうからも出す、それから本人の意見、弁解も聞く、或いは反証もするならば認める、或いは弁護も認める、そこで調書を書き上げる、そして審理官の作りました調書と証拠とが長官の手許に届いて、そしてそこで処分請求書を書いて、これに調書、証拠を附加えて公安審査委員会に出す、こういうように私には了解をされたのですが、ちよつと食違いを来しておりますが、それは大したことではない。お尋ねをいたしておるのは審理官なら審理官の段階で作りました調書というものは長官のところへ行つても殆んど動かんじやないか。或いは公安審査委員会の審査にかけて、それが事実上中心になつて審査を決定する方向に行くのじやないか。そうすると、これは警察それから検事局、裁判所と三つか、四つかの段階を経ておりますが、一番最初の警察官なら警察官のときの調書というものがあとの検事の場合、予審判事の場合、或いは裁判所の場合にも相当拘束したように、審理官の調書というものが事実上相当ものをいうことになるのじやないか、こういう点を申上げてその調書の事実上の効果について疑問を挾み、或いは公安審査委員会の審査が中心になるというならば、或いは更に裁判を求めることができるというならば、そういう調書をやめたらどうかと、こういう意図を含めて調書の問題について調書がどういう工合に動いて行くかという点をお尋ねしておるわけです。
○政府委員(関之君) この調書は第十六条以下の規定に基いて公安調査庁の審理官がなし、相手方の意見、弁解を聞き、その手続の公正を担保するものであります。その期日に出て来て当該団体の代表者又はその代理人がどういう意見、弁解を述べどういう陳述をしどういう証拠を提出するか、それらの全部を一切審理するわけでありまして、それが公正に全部できるわけであります。それがそのまま委員会に送られるわけでありますからして、委員会ではその全部の実情を明らかにして、そうしてそれを審理の対象として判断をいたすということになるわけであります。で、私どもといたしましては、この調書は今申上げたように審理官の意見、弁解を聞き、その手続の公正を担保する上において極めて必要なものである、又有効なものであるというふうに考えておるわけであります。
○吉田法晴君 これは全体の規制の手続をどこに重心を置いてやつて行くかという点と関連をいたしておるので、公安調査庁調査官の審理を中心にする原案と、それから衆議院で修正になつた公安審査委員会の審査を中心にする考え方と、それから裁判によるべきだという場合の裁判中心の考え方と、考え方によつてどこに重点を置くか、従つてそれがその結論である、或いはその基礎である調書をどこで整理すべきかという議論と関連をするのでありますが、例えば公安審査委員会の審査を中心にするといつたような衆議院の修正なり考え方を以てしても、調書の内容をなします審理官の審理というものが中心になるという考え方をお捨てにならん限り、今のような御答弁になるかと思いますけれども、それでは折角衆議院のような修正をしても、或いは裁判の途をあけるというても、実際問題としてはその審理官の審理の調書というのは、その後の審理なり或いは裁判の極めて中心的な役割を演ずるのじやないか、こういう意見を含めて申上げるのであります。
 御答弁にかかわらず、一度作つた調書というものは、それが審理その他を含むといたしましても、或いは意見、弁解なり、或いは弁護なり、或いは反証を含んだといたしましても、調書の発言力と申しますか、これは決定的なものじやないかという点は否定ができないように思うのですが、この点はどうですか。
○政府委員(関之君) この法案の立て方は団体規制処分を行政の処分として立てておるわけであります。御指摘のごとくどういうふうにしてこれは立てるかという問題とも関連して来る問題でありまするが、行政処分としてこの法案は立てまして、そして公安調査庁長官が一切の責任を持つて証拠資料を収集して委員会に請求するという立て方をとつておるわけであります。そのようなこの法案の基本的な考え方の下におきましては、かような審理手続をいたしまして、そして相手方の意見、弁解を十分聞いてその経過を調書に明らかにするというふうに運び、そしてさようにやることが最も公正を担保する措置であり、相手方の弁解の趣旨を委員会に最もよく反映させる途である、かように私どもは考えておる次第であります。
○吉田法晴君 基本的に意見の食い違いがありますから余りもうこの問題について申上げませんが、審理の手続の内容にも関連をいたしますけれども、公安調査庁の審理が中心になるか、或いは公安審査委員会の審査が中心になるか、この点に関連して公安審査委員会で決定をするということになるならば、公安審査委員会の審査が中心になるであろうし、或いは書類を作るとしても十六条に書いてあるのは、これは法的に調書の根拠を持つわけでありますが、そういう法的根拠を持つ、或いは法的意味を持つ調書であるならば、十六条のところでなくて、もつとあとで考うべきが適当じやないか。或いは更に裁判によるべきだという議論になりますと、その裁判の公正を確保する意味において、調書らしいものを前の段階において作ることはこれはやつぱり遠慮をする、こういう議論になつて参ると思います。その点は基本的な意見の食い違いがあるということで打ち切るほかないと思うのですが、一応衆議院の修正を前提にいたしますならば、むしろ十六条の審理の場合に調書を作るのじやなくて、あとの公安審査委員会の場合に調書を作るといつたほうが修正の趣旨に合うのじやないか。この点はどういう工合に考えますか。
○政府委員(関之君) 先に御説明いたしたようなそういう基本的な考え方からこの法案は建前を立てた次第でありまして、団体規制に対する証拠の収集と請求は公安調査庁長官において行う、委員会においてはこれらを元にいたしまして、審査のために必要な補充的な取調をしてそうして決定をなす、かような建前をこの法案は考えておるわけであります。従いましてこの法案の建前上、やはりこの調書は第十六条において、審理官のなすそれの公正を担保するという意味において、ここの規定は必要なものであると考えておるわけであります。
○吉田法晴君 今の御答弁を以てしても、公安審査委員会の審査が補充的なものであるということで、事実上は公安調査庁の審理官の審理が本質的なものである、中心的なものであると、こういう御答弁だろうと思うのです。そうすると決定はどこでするかというと、公安審査委員会でやる。そうすると調書が中心的なものになるということになりますれば、行政処分の決定がどこでなされるかという問題と関連して、御答弁のような審理官の審理の段階で調書を作るということが中心になるべきではないかということが言えると思うのですが、法文の建前とそれからその中における調書の意義からいいまして、これは矛盾があるように思うのですがどうですか。
○政府委員(関之君) 十六条において審理官が、弁明の期日における一切の経過を調書に明らかにするということは、この法案の建前上どうしても必要な事項であると私は考えておるわけであります。委員会におきましても審査のために必要な取調をすることができるわけであります。それはこの法案の建前といたしますれば、審査のために必要な範囲、程度においていたすべきもので承ります。これは吉田委員とは何といいますか基本的な考え方の差に基くものでありまして、この法案のごとく行政の処分というふうに考えて参りまして案が立つて参りまするとどうしても、さような方法が最も正当なものであるというふうに考えざるを得ないのでございます。
○吉田法晴君 今のような御説明であるならば、審理官の審理が中心になりそうしてその経過を記しました調書が決定的なものになつて、公安審査委員会の審査は附け足りになつてしまう、補充的なものになつてしまう。これはお認めになつたことだと思うのでありますが、その点は衆議院の修正とそれから最初の立て方との矛盾だという点も指摘をいたしまして、意見の相違になりますからこれから先はもう議論になると思いますので一応終ります。
 それから昔の治安維持法の適用、これは判決がなくて釈放されているようでありますが、その場合の経験から考えまして、昔の押収物件、今度の場合には証拠ということになるだろうと思うのでありますが、久野さんが証拠物件として一台のバスに一ぱいになるように書物を持つて行かれた、その中には非合法文書はただの一冊も入つていなかつた。ところがそのバスに一ぱいになるような書物が持つて行かれたので、自分の学者としての研究活動はこの押収によつて殆んど全く不可能になつてしまつたということが書いてございます。そこで今度の法律では、これは証拠として云々ということになると思うのでありますが、証拠の廃棄の点については先般伊藤委員から御質問がございましたけれども、取つてしまつてからあとの問題じやなくつて持つて行くときの制限の問題であります。そういう点について明文がございませんならば、任意に全部持つて行くということになりますと、これは学者の場合には研究活動が不可能になつてしまう、或いは団体の場合にはその活動が不可能になるという点が出て参りますが、証拠としてまあ押収という言葉を使うことが正しいかどうかわかりませんけれども、制限をする点について何らかの法文がなければその弊害を除去することはできないと思うのでありますが、これについて明文化する必要はないかどうか、その辺の心組を伺いたいと思います。
○政府委員(関之君) この二十六条以下の法案の調査の事項に関する限りにおきましては、すべて相手方が御提出になればそれをお預かりしておくという建前に相成つておるのでありまするからして、お尋ねのような強制的に持つて行つてしまうという点はないわけであります。むしろその問題は刑事訴訟法の関連に相成ることかと思うのでありまするが、その刑事訴訟法におきましても必要の範囲というふうにそれは限定さるべきものでありまするから、新刑訴の人権を保障する各条章に従つて適切に運用されるものと私どもは信じているわけであります。
○吉田法晴君 そうすると、任意提出ということでことわりができる云々という建前だということで、そういう弊害というか過去における行過ぎは是正せらるるというべきでありますが、その点についてはこれは任意ということでありましても、実際の運用の場合に相当の危険性を私ども感じていますときに、これは運用の面になるかと思いますけれども、今の御答弁のような趣旨の運用を強く要望をいたしまして、この問題については重ねて御質疑を申上げることはとりやめます。
○羽仁五郎君 前の治安維持法時代にも任意提出ということでどうも持つて行つたようですね。ですから刑事訴訟法が新たになつてそういう点はよほど厳格になつて来ていることは問題ないのですが、この法律案で、かなり文化人が治安維持法時代に何から何まで持つて行かれたことの不安ですね、それを感じているかたが多いのですから、中の職務規律というか何というか、そういうふうな文書の上にその点を任意提出という口実で以て、いろいろな文書いろいろなものを持つているということは絶対にやつてはいかんということを書いて頂いたほうがいいのではないかと思いますがどうでしよう。
○政府委員(関之君) 御趣旨御尤もでございまして、いやしくも相手に強制するとか強要するというような点は厳に慎みますように、この点明らかにしたいと思います。
○吉田法晴君 これらの点に関連いたしますが、この三法律の中心はどこにあるかと申しますと、私ども破壞活動防止法を一生懸命に審議しておりますけれども、むしろ事実上の中心は公安調査庁設置法にあるんで、公安調査庁がどういう工合に運用せられるか、むしろこの点に問題が事実上はあるのではないか。そこで特審局のような、或いは特審局に関連をして警察が行なつて来たような運用であるならば、この法の運用も非常に心配せられるということになつて参るのでございますが、公安調査庁については特審局時代とは全く違つて運営をするんだ、こういう御答弁でございますが、それは御答弁だけではどうも安心ができかねるのでありますが、いわば公安審査委員会に対して原告側と申しますか、或いは検察側的な役割を果されるわけでありますが、訴訟の場合には検察官の任用については適格審査委員会を設ける、或いは検察審査会を設けてその運用について監視をする、こういう制度が設けてある、公安調査庁の中に監察制度を設けるというお話でありますけれども、その監察制度を検察官適格審査委員会なり或いは検察審査会のような、この民間人と申しますか或いは第三者を入れて監察制度を民主的にする、その運用が国民の権利義務に関しますだけに、検察官同様の私は監察制度の管理が必要ではないかと考えるのでありますが、これらの点について具体案を示してお尋ねをいたしますがどういう工合に考えられますか、この点を伺い、たいと思います。
○政府委員(関之君) 監察制度につきましては、只今私どもが持つておる案といたしましては、直接長官の下に一切他の部局の牽制を受けない独立なる一つの地位を持つた職員を置きまして、そうして各部について厳重な監察をして行きたいと、かように考えているわけであります。お尋ねの検察官の適格審査、これはもとより極めて立派な有効な制度でありまして、私どもも大変結構なことと考えているわけであります。併し何と申しましても相当の大規模な予算といろいろなことを必要とするわけでありまして、今お尋ねの特別、調査庁のそれにこれと同じような考えをとるかどうかという点は相当問題があるだろうと思います。
 なお第三者を加えるかどうかという点でありますが、この点につきましては私どもとしては、法務府の人権擁護局にありまする人権擁護委員に、特に総裁のほうから特審局員の行動について厳重な監視をして頂くようにとくとこの点はお願をいたしまして、そのほうからの監視、そうしてお気付きの点があれば率直に長官のほうにお申出願いたいというように特にお願いいたしまして、第三者的の意味の御批判を率直に外から受けて行きたい、かように考えておる次第であります。
○吉田法晴君 法制意見長官に伺いたいのですが、この法の立て方として、検察官について今のような制度があつて、検察官の検察権の濫用について防止する法的な機構がちやんとできておりますが、人権擁護委員云々ということで若干の構想は了解いたしましたけれども、法文の立て方として、これだけ問題になり或いはこれだけ国民の権利義務について危険があります法の運用について、なぜそういう点まで構想はなかつたか。これはむしろ私どものほうで不思議に思うくらいでありますけれども、そういう点についてお気付きにならなかつたのか。或いは気が付いておられたのだけれども、故意にそういう点を、これは詳細にここに謳うわけには参らんかと思いますけれども、これを準用すると申しますか、或いはこの法の中ではそういう表現方法しかできないかも知れませんけれども、そういう御構想をなぜおやりにならなかつたかということについて伺いたいと思います。
○政府委員(佐藤達夫君) 今の例にお出しになりました検察官の適格審査委員会と、それから検察審査会でありますか、これは検察の建前から来ておる制度でございまして、只今のお話の筋からは実はちよつと違うのであります。これは又後に御説明申上げたらいいかと思いますが、そのものはこの場合の例にはならないと思つておるわけであります。ただその一般的の御懸念は私は誠に御尤もだと思います。何とかして違法、不当の職権活動がなされないようにという保障の面から申しますならば、只今関君から御説明申上げましたような方法も勿論ございます。又一つには公務員法の建前から申しますと、その点には更に又人事院が監視をしておる建前になつております。この法の運用において、私は新たなる機構を作りませんでも動くのではないかと考えております。
 これは余計なことでございますけれども、実は御同様の心配から、人事院の或る当局者に、本属長官が一向動かない場合に、人事院としては本属長官に対して懲戒権の発動を求める規定がありまして、又本属長官が懲戒権を発動しない場合には人事院みずから代つてやるという条文すらあるわけであります。それで一体運用上どうなつておるかということを聞いたことがございます。ただ実際にそれを適用した例はないそうでありますけれども、直接人事院のほうに被害者と申しますか害を受けた人から人事院のほうに申告して来るのが相当あると言つておりました。それで私は或る程度は実は安心したのでありますが、そのほうの調整の機能を活用されれば相当のところまで客観的な公正なる判断ができるのじやないかと思つておりましたので、横道かも知れませんけれども私は一応そういう点までもふみこんで考えたということだけを申上げておきたいと思います
○吉田法晴君 そうすると今の、筋が違うからそういうことについて考えなかつたという理由はどういうことですか。
○政府委員(吉河光貞君) 私は終戦後検察庁法を作るときに少し関与したのでありますが、検事は御承知の通り一人一人が独立の国家機関になつております。一人の検事は当該事件について全検事を代表するというような立て方にもなつております。併し起訴、不起訴というような重大な権限を持つて、及びその犯罪捜査に関する権限につきましては非常に権限が重大であります。のみならず検事は身分保障の制度がございまして、普通の一般の行政官とは格段の違つた待遇保障の途がそこにあるわけであります。そういう検事につきまして検察民主化のラインに沿いまして、検察官適格審査委員会というような制度を設けまして、立派な公正な検事を養成して行くという立て方でああいう制度が作られたものと考えております。
 お尋ねの公安調査庁の調査官の問題でありますが、私率直に申上げますと、公安調査庁というものに非常に一つの立派な性格を築き上げる、全体としてその気風の下にこの公安調査官が公正な職務の運用をやつて行くということが非常に大事だろうと思います。こういう面につきましていろいろな御要望、御忠告を賜わりまして、こういうラインを生かして行きたい。これにつきましては職員の研修にも格段の努力を払いたい。なお職員の個々の行動につきましても、長官の監督権に基きまして監察制度も事実上内部的に設けて行きたいというふうに考えているわけでございまして、その公安調査官の行う職務は任意調査でございますが、その影響するところが決して少くないという点に鑑みまして、十分そういう点につきましては内部的にもしぼつて行きたい。更に人権擁護の部局にも、お願いいたしまして十分にそういう面につきまして行き過ぎのないように御協力を願いたいというような気持でおるわけでございます。
○吉田法晴君 この公安調査庁として全体の気風と申しますか、或いは規律と申しますか、そういうものを確立して参りたいというお気持はわかりますけれども、先ほどもちよつと触れましたけれども、公安調査庁の長官なり或いは本局におられます責任者の吉河ざん、関さんあたりがどういう役割を果されるかわかりませんけれども、皆さんについては審査についても、それから或いは運用についてもそう心配をしなくてもいいかも知らんと思いますけれども、これからふやして行かれる、或いは現在これから調査官に任命せられたり審査官に任命される人がどういう人であるかという点を考えますと、伊藤委員との質疑等もございましたけれども、七級以上というのですか、その身分と申しますか或いは人柄、素質等についてもこれは心配をせざるを得ないのであります。そこで実際の運用について、調査官或いは審理官の素質がどういうものになるか、何らの法上の保障もないから、検事の場合に起訴、不起訴、或いは検事を代表してそれらの決定をなされる重要性から適格審査なり、或いは審査会がある、こういう必要性は調査官なり審理官の場合に私は同様にあると考えるのであります。従つてそういう構想をこれは形式ではなくして実質的な点からどうしてお考えにならなかつたかということをお尋ねをしたわけであります。或いはこれから任用せられます調査官なり審理官というものがお二人のような人柄である、或いはせめて副検事程度の人であるというならば別でありますけれども、例えば伊藤委員が心配せられましたように、警部補級の人であるということになりますならば、私は過去の実績から考えて、警察の警部補級の人についてはこれらの問題について全然信用することができないように思うのであります。その保障を身分或いは給与の上でできなければ、制度の上でする以外にないのじやないか。そこで制度の点については監察制度、或いは人権擁護委員会、或いは今人事院についても言われましたけれども、それは一般の人にとつて例えば人事委員会への訴えと申しますか、こういう点はこれはなかなか普通の人には困難であります。でその点が例えばこの法律の中にはつきりしておりますならば、これはその救済とかいうような遂について直ぐ国民もできるでありましようけれども、それが法文に謳われておらないというとそういう方法が困難である。従つて制度の上に折角監察制度を設けるというならば、それに更にはつきりした法上の保障を与えるということが必要じやないか、こういう意味で申上げておるわけであります。もう少し具体的に発展した御答弁が頂けるかどうか。
○政府委員(関之君) この職員のほうの問題でありまするが、これは総裁からも御答弁申上げたごとく、結局私どもとしましてもこの法案が仮に成立した暁において、これを運用するには問題は人にあるということは私ども重々一番問題はここにあるということはきもに銘じて考えておるのであります。従いまして今まで申上げたような各種のいろいろな方法をここに併用いたしまして職員の素質を向上し、そして厳重なる監督をして、日常の業務についても厳重なる監督をして過ちなきを期したい、ほんの形ばかりの私どもの気持でなくて、私どもは本当にかように思いまして、あらゆる努力をここに傾注いたしまして御趣旨にそうように運用をいたしたい、かように心から私どもは思つておるのであります。
○吉田法晴君 法務総裁或いは特審局長、次長それらの御列席になつたかたがたの今までの審議の過程からする御決意はわかります。併しながらそれが制度の上に或いは法上の保障として現われて参りませんと、いつまでも木村さんが法務総裁でおられるとも思いませんし、或いはお二人もいつまでも公安調査庁の幹部としておられるということは考えられませんので、それでは法上の制度として保障の確立を願いたいということを申上げておるのであります。その点についてもう少し御考慮が頂きたい。そして具体的に御構想を願いたいということをお願いをしておく次第であります。
 もう一つそういう法上の保障の問題でありますが、権力の濫用が間髪をいれず確実に処罰せられるという保障が必要なことは何人も主張して参つた点でありますが、職権濫用罪について特別公務員の職権濫用罪を適用云々という御意見は、伊藤委員から或いは一松委員等からもお話がせられて参りましたが、更に国家賠償法の適用が受け得るのだ云々という御答弁でありましたけれども、問題は故意、過失に関連をいたしまして、実際の国家賠償法の適用が困難だという点を考えますならば、単に国家賠償法の適用が受け得るのだという原則的な問題でなくつて、或いは国家賠償法の適用を二週間以内に適用するとか或いは国家賠償法の適用について仮執行をし得ることができるとか、これはまあ一例に過ぎませんけれども、そういうもつと具体的なこの法律の濫用によつて起つた事態について間髪をいれず確実に処罰し得る法的な規定が必要だと考えるのでありますが、これらの点について法制意見局長官どういう具合にお考えになりますか承わりたいのであります。
○政府委員(佐藤達夫君) これも先ほど来の吉田委員のお言葉に出ております通りに、裁判所というものは絶大なる信頼を持つておるわけであります。従いましてこの最後の人権擁護のとりでとなつておりますところの裁判所におきましてはそれらの点をも考慮せられまして、できるだけ迅速にそれらの手続を進められることと思うのであります。但しもとよりこの結末というものは正義、公平に合しておらなければなりませんから、その点から或る種の止むを得ない時間的の必要性というものが出て来るわけであります。さような点から裁判所の最も適正なる処理ということに待つごとがむしろいいのではないかというふうに考えておるわけであります。
○吉田法晴君 午前中の法務総裁の答弁を承わつておりましても、或いは午後の皆さんの御答弁を承わつておりましても、これだけの良識ある国民の反対或いは心配に対して、十分これを聞きそして反省をするという点が少いことを極めて残念に思うのであります。出きた法律案が最上のものである、何とか答弁を済ませて時間をかせげばいいという、言葉は少しひどくなるかも知れませんけれども、意見について十分考えるという態度の足りませんこと、ないとは申しませんが、足りませんことを極めて遺憾に思うのであります。その点はもう少し政府或いはお三人ならお三人にしても、法務総裁についても再考をお願いをいたしたいと考える。
 それから最後にこれは時間も遅くなりましたから、十分の質疑を尽すことができるかどうかわかりませんが、この三法律の前提になりました事実、特にこれは共産党ということは言われなかつたようでありますけれども、破壞活動の実態については先般も秘密会を開いて御説明或いは質疑が行われたと承知をいたしておりますが、これらの前提になる諸事実の中で何といつてもメーデー後の宮城前広場の事件は、政府において相当政治的に破防法成立の要素としてお使いになつたことはいなめないと思うのであります。この点について私は本会議で治安維持に名をかる政府の諸施策について緊急質問をするという形で御質問を申上げたのでありますが、その際は新聞に主としてよつたので、或いは宮城前広場で射殺をされた人のピストルの弾が後から入つて前に抜けておるといつたような事実については、あとで聞いてこの委員会等で質疑をいたしたいと考えたのでありますが、その後出ました新聞雑誌特にこの両三日読みましたのは、御覧の通り別に政治的な意図がある書物ではございません、雑誌「世界」なり或いはこれは御承知のように昔の雑誌「労農」の人たちなり、或いは労働組合諸君も加わり、私の名前も連ねておりますが、実質的には余り寄与するところはございませんけれども、メーデー事件の真相として特に編集をいたしましたものを読みましても、或いはニュースを先週この参議院で再度に亘つて見たりいたしましたけれども、これらのものを総合いたしましても、政府の国会で法務総裁からせられました報告は事実と相当違つておるということを私承知をいたすのであります。馬場先門から入りましたデモの人たち、その中には相当何と申しますか一般の会社員なり、追随者があつたようでありますが、それは宮城前のあの二重橋際まで行つて、そして立ちどまつたところに待機をしておつた警察官が警棒を持つておどりかかつてそれからあの事件が起つたという点が、ニユースの上にも或いは見聞をいたしました人の記録に見ても明らかのように思うのであります。そうするとこの破壞活動防止法成立のために利用されましたメーデー後の宮城前の広場の事件等も、前提として使い得るものでないということを考えるのでありますが、これらの点について如何ように考えておられますか。私ども新聞なり或いは特に法務総裁の報告によつて、何と申しますかかような感じがするのでありますが、
   〔委員長退席、長谷山行毅君委員長席に着く〕
 法務総裁はおられませんけれども御三人のかたでどういう工合に考えておられますか、承わりたいと思います。
○政府委員(吉河光貞君) お答えいたします。破壞活動防止法案ほか二法案は御承知の通り、メーデー暴動事件以前に立案されまして国会の御審議をお願いしたのでございまして、私どもがこの法案立案の根拠となる現実の事態の説明につきましても、メーデー暴動の事件の内容はこれを引用いたしておりません。従いまして私どもはあの事件をこの法案の成立に政治的に利用するというような気持は毛頭もございません。事件につきましては東京地方検察庁並びに東京警視庁におきまして目下刑事事件として捜査中でございます。必ずや近き将来裁判所の公判を通じましてその真相が明らかになるのではないか。先般法務総裁が国会におきましてメーデー暴動事件の内容につきまして御報告申上げた内容は、東京地方検察庁、東京警視庁並びに私どもにおきまして一応の調査、捜査として発表して差支えないアウトラインを総合いたしまして申上げたものであります。総裁も決してそのときに事件の真相すべてを尽すものではない、これはいずれ裁判所の公判によつてすべてが明らかになるというふうにお述べになつておつたように承わつておるのでございます。御了承を願いたいと思います。
○吉田法晴君 これは公刊をせられておる雑誌でありますし、法務総裁がおられるならば法務総裁に見てもらいたい。これは一つは雑誌記者、新聞記者が現地で見た見聞記であります。或いは名前を出すと今後睨まれるかも知れないと考えたか考えないか知りませんけれども、A、B、C、D、Eというような表現がしてございますが、私はこの内容が匿名であると否とにかかわらず真実を伝えるものだと考えるのであります。それから雑誌「世界」に載つております「私は見た」という記事を書いておられる人も第三者であり、その中に画家も入つておりますけれども、決して、ためにする記事であるとは考えません。現に或いは二重橋外において、或いはあの広場の周囲で見られた人もいようかと思うのであります。問題はメーデー事件後の宮城前広場の事件は、破壞活動防止法の前提として使つた、或いはこれを政治的に利用したことはないというお話でございますけれども、先般の祕密会の御報告の中にもメーデー後の事件についてもお話があつたと思いますし、それからそのほかについてもいろいろお話があつたこと、或いは破壞活動の実態として上げられたことは、これは間違いのないことだと思うのでありますが、その一つ一つについて私どもここで論議する間はございません。ございませんけれどもメーデー事件一つをとつて見ても政府の説明とそれから見聞者の報告を聞いてそこに大きな食い違いがあるということを知りますと、他の事件についても同じようなことがあるのではないか。そこで頂きました「平和と独立」ですか、資料についてはこれは文字によつて私どもは承知いたしますけれども、それとこれでは言われておるような破壞活動との間にどれだけのつながりがあるのか、これははつきり断定は下されませんけれども、関連があるような説明の下にこれほどの破壞活動があつておるのだから、そこで破壞活動防止法案その他を早急に作らなければならぬ、そういう建前になつておることは明らかだと思うのであります。それの前提となります事実が一々問題にすることはできぬかも知れぬけれども、メーデー事件一つをとつて見てもそういうことを考えざるを得ない今日においては、破壞活動防止法を必要とするこの破壞活動の実態、そして破壞活動防止法制定の緊急性については私どもにわかに承認するわけには参らんように思うのであります。これらの点については個々の事件を取上げて究明することはできませんけれども、一つのメーデー事件を手許にあります資料からして私は反省を求めたいと考えるのであります。どういう工合に考えられますか、これは特審局長になりますか法務総裁になるか知りませんけれども一応お伺いをいたしたいと思います。
○政府委員(吉河光貞君) 先般祕密会でメーデー事件につきまして御報告した内容は、メーデー暴動事件が背後の団体組織によつて強力に指導推進された疑いがあるという点につきまして、客観的に現われた文書資料の一端を読みまして御説明申上げたに過ぎないのであります。メーデー事件は相当広範な地域に亘つて行われておりまして、私もちよつと現場を遠くから見かけました。その後いろいろなニユースの映画も拝見いたしました。結局事件の本当の真相は目下刑事事件としては裁判所の公判によつてその全貌が明らかになるだろうと考えております。決して私どもがあの事件を政治的に利用してこの法案の成立を促したり、或いは審議促進に利用したというようなことは毛頭もございません。
○吉田法晴君 それは特審局長は御利用にならなかつたかもしれませんけれども、客観的に見ますと利用せられたと、これは直接の目撃者ではございませんけれども、各社その他においても認められておるところでありますが、客観的に見て私どももそう考えます。或いは外国新聞等においてもそれらの点は判断がなされておると思うのでありますが、例えば宮城前の事件について「宮城前に行こう」「人民広場に行こう」ということは、これはニユースを見ておりましても或いは録音の中に入つて来ることでありますが、その点についてはこれは否定するものではありませんけれども、それを破壞活動として或いは騒擾事件として企図されたかどうか、この点になりますと、これは甚だ疑いなきを得ない。この目撃者の中にも暴徒はむしろ警察側にあるのじやないが、こういう極論まで出ておるわけであります。これらの点に関連してこれはメーデーだけではございませんけれども、いわゆる破壞活動のよつて来たるところのものがもつと検討をせられなければならんという感じがいたすのであります。その点は依然として破壞活動が統一的に計画せられてそれが或いはメーデー事件に現われ、或いはその他の事件に現われたとやつぱり考えておられるのでありますか、重ねて承りたいと思います。
○政府委員(吉河光貞君) 実際に行われましたメーデー暴動事件の背後にある疑いの事態につきまして先般ごく簡単にその一例を御説明いたしました。私どもといたしましてはやはり現下の事態に鑑みまして、この法案の成立を必要となさしめるような団体組織による暴力主義的破壞活動の展開があるものと考えております。
○吉田法晴君 この点については中味に入りますとあれでありますから、持つて参つております資料について後刻提出をして御意見を承わりたいと思います。大変遅くまで恐縮でしたがまだ残つておりますけれども質疑を一応打切りたいと思います。
○羽仁五郎君 今の点については、おととい私はあの政府に伺つたときにはは、この現在日本に存在しておるそれらの団体の中で、本法に述べてあるような破壞活動を計画し又は行なつている疑いがあるということを証言することはできるけれども、併しそれに対して確実な確証というものを持つているわけじやないというお答えがあつたのですが、これはたびたび私は念を押して法務総裁そのほか政府委員の各発言の場合に、常にその線は一貫して守られていたと思うのですが、今吉田委員に対する御答弁では、少しその線をお出になつたのじやないかと思うのですが、そのお出になつたとするならばその理由はあるだろうと思うので、お出になつたのじやないということであればこのまま了承しますが、そうでなく出たのだとすればその証拠を見せて頂きたい。
○政府委員(吉河光貞君) 従来の申上げた筋におきまして、疑いはあるという材料として秘密会で御説明申上げました。
○委員長代理(長谷山行毅君) では本日はこれで散会いたします。
   午後七時二十一分散会
   ―――――・―――――