第013回国会 本会議 第49号
昭和二十七年六月九日(月曜日)
   午前十時五十六分開議
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 議事日程 第四十八号
  昭和二十七年六月九日
   午前十時開議
 第一 水産業協同組合法の一部を改正する法律案(木下辰雄君外五名発議)(委員長報告)
 第二 兒童福祉法の一部を改正する法律案(内閣提出)(委員長報告)
 第三 農業災害補償法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第四 農業災害補償法臨時特例法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第五 農業共済基金法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第六 道路交通取締法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第七 公共工事の前拂金保証事業に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第八 群馬県境郵便局庁舎建設に関する請願(委員長報告)
 第九 長野市古牧地区に無集配特定郵便局設置の請願(委員長報告)
 第一〇 埼玉県皆野郵便局庁舎新築に関する請願(委員長報告)
 第一一 長崎県調川局の昇格に関する請願(委員長報告)
 第一二 熊本県緑ヶ丘簡易郵便局の昇格に関する請願(委員長報告)
 第一三 茨城県大田村に特定郵便局設置の請願(委員長報告)
 第一四 大阪市此花郵便局庁舎建設に関する請願(委員長報告)
 第一五 高知県高石村に特定郵便局設置の請願(委員長報告)
 第一六 岩手県一方井郵便局を集配局とするの請願(委員長報告)
 第一七 簡易生命保險および郵便年金積立金運用再開に関する請願(百六十五件)(委員長報告)
 第一八 野戰郵便貯金拂戻に関する陳情(委員長報告)
 第一九 徳島県横瀬郵便局庁舎新築に関する陳情(委員長報告)
 第二〇 簡易生命保險および郵便年金積立金運用再開に関する陳情(四十九件)(委員長報告)
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○議長(佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。
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○議長(佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。
 この際、日程に追加して、戰犯在所者の釈放等に関する決議案(大屋晋三君外六十三名発議)(委員会審査省略要求事件)を議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。本決議案につきましては大屋晋三君ほか六十三名より委員会審査省略の要求壽が提出されております。発議者要求の通り委員会審査を省略して、直ちに本決議案の審議に入ることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発議者に対し趣旨説明の発言を許します。岡部常君。
   〔岡部常君登壇、拍手〕
○岡部常君 先ず決議案文を朗読いたします。
   戦犯在所者の釈放等に関する決議案
  講和が成立し独立を恢復したこの時に当り、政府は、
 一、死刑の言渡を受けて比国に拘禁されている者の助命
 二、比国及び濠洲において拘禁されている者の速やかな内地帰還
 三、巣鴨プリズンに拘禁されている者の妥当にして寛大なる措置の速やかな促進のため、関係諸国に対し平和條約所定の勧告を為し、或いはその諒解を求め、もつて、これが実現を図るべきである。
  右決議する。
 次に趣旨の説明をいたします。先般平和條約が効力を発するに当り、政府は、この国家的慶祝を一般受刑者に及ぼし、広い範囲に亘つて恩赦を行なつたことは、誠に機宜を得た措置でありました。そのとき、いわゆる戦犯受刑者として巣鴨プリズンに拘禁されていた者九百余人ありまして、その他、比島モンテンルパに百十一人及び濠洲マヌス島に二百六人拘禁されておる者があります。これらの人々は、この千載一遇とも言うべきこの時に当つて、或いは内地送還を、或いは釈放を期待し、これを希つたのであります。然るに講和成立後月余に及ぶも、なお、これらの人々に対しては何らの措置もとられず、暗澹たる悲しみに沈んでおるのであります。而も恩赦の問題として考えまするときは、いわゆる戦犯も一般犯罪と実質的には何ら異なるところなく、ただ関係各国との関係において一種の制約を受ける点が異なるに過ぎないのであります。されば、この際、時期を失わずに、能う限り恩赦と同様の措置を講ずべきであると思うのであります。而もこれらの人々の拘禁の状態を観察いたしまするに、よく法規を遵守し、謹愼の実を示し、現在に至るまで殆んど反則というべきものもありません。まさにこの種拘禁施設においては世界にも曽つてその類例を見ぬ稀有の好成績を示しておることは、あまねく周知の事実であります。釈放された者も又今や民主国家日本の健全なる一員としてまじめに生活し、一人として事故を起した者もない現状であります。他方その家族は、一家の支柱を奪われ、国家の庇護もなく、経済的に極めて困窮しておるのみならず、子女の教育その他家庭生活の上に重大なる影響をこうむり、仔細にその実情を見るときには、殆んどその全部が非常に悲惨なる状態にあることがわかるのであります。かような次第で、これら被拘禁者の心情を思い、家族縁者の念願を察するとき、これらの人々に対する助命、帰還、赦免、減刑等の一日も速かならんことを祈るの情のおのずから切なるものがありまするが、それは今日においては全国民一致の願望となつておるというも過言ではないと思います。
 今や戦争は完全に終結したのでありまして、当事国はここに憎悪の心を去つて友好の関係を回復すべきときであります。さればこそ、今日までの戦争の歴史においては、いわゆる講和による大赦が行われ、一般犯罪は別としましても、戦争による犯罪の処罰を続けることがなかつたのであります。殊に況んや今般の平和條約は和解と信頼とを基調として結ばれましたのでありまして、戦争の悪夢をことごとく洗い去つて、まさに美しき新世界となさんとすることは、必ずや全世界人類共通の念願と言わなければなりません、(「美辞麗句だ」と呼ぶ者あり)ここに今耳よりなことは、日華平和條約の発効と共に、中国関係の軍事裁判により刑の言渡しを受けた者の取扱が全面的に日本側に任されることの了解が成立し、不日釈放せられるやに灰関することは、極めて喜ぶべきことで、切にその実現を祈る次第であります。(拍手)中国関係九十一人の人々が近く何らかの喜びに接し得るとしても、爾余の者は依然としてこの恩典に浴せず、なお囹圄の苦しみを続けなければならないのでありますが、まして比島、濠洲等の外地にある人々は、家族にも会えず、いにしえの遠島にも類する悲惨な状態にあるのであります。今や平和條約の発効を契機として、関係国との友好関係は急速に進展しつつあります。国際情勢の展開に応じ、全国民の願望に応え、いわゆる戦犯処刑に対し終止符を打つことは、もはや世界の勢いとなつておるわけで、巣鴨プリズンにある者については、平和條約所定の手続により、赦免、減刑、仮釈放をなし、外地にある人々については外交交渉により助命及び内地送還を図ることが刻下の急務であると存ずるのであります。
 以上を以て決議案の趣旨説明といたしますが、満場の御賛成を得たいと存じます。(拍手)
○議長(佐藤尚武君) 本決議案に対し討論の通告がございます。順次発言を許します。岩間正男君。
   〔岩間正男君登壇、拍手〕
○岩間正男君 日本共産党はこの決議案に対しまして遺憾ながら反対せざるを得ないのであります。(「何だ日本人か、それでも」「お前こそ日本人か」と呼ぶ者あり)
 若しも日本が徹底的に民主化され、そうして平和を飽くまでも推進し、平和を推進するための世界の大きな力として、ポツダム宣言の線によつて日本がその政策を推し進めておる態勢の中でありますならば、我々もこの釈放に対しましては進んでこれに賛成し、飽くまでその努力をいたしたいと思うのであります。ところが現実はどうかと言いますと、全くこれは、当初、敗戦後日本が掲げましたところのこのような悲願にも似た希望に対しまして、全然反対の方向に動いておるのではないか。現に日本の現状を見れば、ここで多く論ずる必要もないほど、すでに日本はアメリカの防共基地として、いや基地としてというよりも、日本自身がすでにそのようなアメリカの戦争の手先として全面的に編成され、あらゆる軍需生産は復活されようとしており、国内の至る所に軍事基地が設けられ、更に警察予備隊の名をかりましたところの再軍備は着んと推し進められ、これが現在の態勢から更に十八万乃至は三十万、而もこういうような計画も、最近におきましては警察予備隊の募集がなかなか思うように行かない。当然ここに起るのは徴兵の問題、強制徴兵のような形が次の当然の課題として上せられるような立場に行つておるのであります。経済体制を見ましても、あらゆる面から考えまして、まさに日本が敗戦後当初企図したところの意図というものは、完全に、現在の二つの講和或いは行政協定を受諾した態勢の中では、刻々軍国的な画編成の方向に動いておる。こういう中にありまして、戦犯の釈放というものがどういうことになるか。これは明らかにこういう態勢の中に利用される。(「ノーノー「そうだ」と呼ぶ者あり)こういう形を持つておるのであります。而も現在囹圄にありまして苦しんでおるところのこれらの同胞に対して手を伸べるというような、これは非常に必要なことではあるでありましようけれども、これがどういうふうに利用されるかと申しますと、今申しましたところの日本再軍備化に利用される方向にこれは迫られるのであります。こういうことというものは我々としては許すことができない。こういうような愼重な問題でありまして、又国際的にも多くの影響を持つ問題であります。現在の日本のこの再軍備体制に対しましては、東亜の諸国はこれに対して期せずして反対しておる。而もこの第二次大戦によりまして最も大きな犠牲を受けましたところの隣国の中国におきましては、この戦争を通じましてその損害は約一千万である。而も多くの財産が失われ、国内は長い間の戦争によるところの惨禍にさらされて来たのであります。従いまして、こういう人たちとの全面的な協力、外交方面から言いますならば、これらの今までの戦争参加国、これと全面的に国交を回復して友好を結び、そうして飽くまで平和を推進する、こういう態勢の中においてこのような問題が初めて十全に取扱われ、(「その通り」と呼ぶ者あり)而もその効果を発揮することができると思うのであります。ところが、先ほど申しましたような、まるでこれと反対のような態勢をとつておる中において、この戦犯だけの釈放について、末梢的な、お涙頂戴式の、或いは選挙対策的のこういう政策が行われたとしても、これは根本的に問題を解決することにはならない。(「ソ連に行つてやれ」と呼ぶ者あり)我々は、先ほども申しましたように、これら囹圄にある人に対しまして、飽くまで国内の態勢を十全に、ポツダム宣言の指向する方面に、或いは日本の平和を守り民族の独立を守る方面に編成して行つて、その中に入つて頂いて、この中で十分な協力を願うというのが、我々の大きな政策でなければならない。このような、つまみ食い的なやり方を以て問題のありかをはぐらかし、問題の真実に触れないで、表面的な欺瞞的なやり方によつて問題の解決をするということは、我々は考えられないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)そのような欺瞞的な方式に対しまして、(「欺瞞政策は共産党じやないか」と呼ぶ者あり)我々は根本的な立場を十分考えるのが、政治の方向であり、外交である。こういうことから考えまして、残念ながら反対せざるを得ないのであります。而もこの手続を見ますというと、これは一部の間でいつの間にか推し進められまして、突如として今日ここにかけられておる。こういうやり方をやつておる。議運なんかにも十分諮られていない。そうして抜打ち的にこういうようなことがやられておる。こういうようなことは、私は問題の性質上非常に重要であり而も国際的に影響するところが多い点を考えますときに、こういうやり方を今後国会がとることは、私は国会の自殺的行為だと思うのであります。我々はこの決議案に対して遺憾ながら反対せざるを得ないのであります。(拍手、「日本の国家では通用しないぞ」と呼ぶ者あり)
○議長(佐藤尚武君) 大野幸一君。
   〔大野幸一君登壇、拍手〕
○大野幸一君 私は只今上程されました岡部議員からの決議案に対して賛成の意思を表示するものであります。(拍手)
 本決議案が本会議場に上程されるまでの動向を見ておりまする間におきましては遺憾な点がございました。或いは一部超国家主義者が戦前戦後の自己の行動をややもすれば正当ずけんとするような意図も現われたのであります。我々はこれを警戒しておりましたが、幸いに賢明なる我が参議院の法務委員会と外務委員会は、この精神を一擲いたしまして、ここに上程されましたる決議案は、実に私は妥当を得たるものと考えまして、賛成の意思を表示するものであります。(「その理由は」と呼ぶ者あり)
 先ずその理由を申上げまするならば、日本社会党は曽つて新憲法草案を発表いたしましたときにこれを天下に公表いたしました。その一つに、死刑はこれを廃止する。こういう要綱を発表したことを御記憶になつておるかたがございましようと思うのであります。そもそも人間の生命を人間が奪うという権利はない。これは、神、仏のみが奪うという宗教的観念からだとも言われますけれども、又これは一に人道主義に基いておるのであります。従つて戦争による罪悪を避けるために我々は戦争の防止を叫んでおるところのものでありますし、たとえ戦争の結果、戦争が終つて裁判の形式を以てするとしても、私たちは、成るほど裁判では一旦死刑を宣告されたけれども、賢明なるマツカーサー元帥は死一等を減ぜられるのではないかと社会党の立場から凝視いたしておりましたが、そのことがなかつたのは当時残念でありましたけれども、まあこういう意味におきまして、第一項に掲げられましたる「死刑の言渡を受けて比国に拘禁されている者の助命」、こういうことに対しては、満腔の同意の意見を表明したいと思うのであります。そこで私たちが警戒しなければならんことは、先ほど申上げましたように、罪を憎んで人を憎まず、そういう考えから、そういう思想から、我々の同胞、この人たちばかりの罪ではありませんでした、いわば日本国民全体の犯した罪を我々はこの僅かな戦犯者のみに着せようとするものではありませんから、ここにおきまして我々は、我々の罪を一半をこの人たちに対しても負うというところの考えから、今や講和ができ、すべての大赦、恩赦が行われまして、国内法によつては随分これに恵まれた人があります。不幸にして今やまだ囹圄に呻吟されておるところの我が同胞の人たちに対しても、この同じ気持の世界の人たちが講和を祝福する意味におきまして、恩恵を垂れられんことを希望するという趣旨を今岡部議員から趣旨弁明として申されましたことに対して、我々も同感の意思を表示するものであります。(「疑問ですね」と呼ぶ者あり)併しながら、戦犯、或いは残虐なる行為によつて、過去に、他国、隣国、特に近きアジアの人民及び国民に対してなした我々の過誤というものに対しては、これは我々は全く悔悟と改俊の意思を表示しなければなりません。(「その通り」と呼ぶ者あり)これなくして我々が他国に対して我々の同胞に寛大を求めるということはできないと思うのであります。この意味におきまして私たちは、この悔悟の情を、天下に謹んで、世界に謹んで表明すると共に、再びこういう過誤は日本国民として絶対に犯さない、犯すことをしないという誓約をなしつつ、私たちはこの決議案に対して賛成の意見を表示したいと思うのであります。(拍手、「全面講和以外にありませんよ」と呼ぶ者あり)
○議長(佐藤尚武君) 平林太一君。
   〔平林太一君登壇、拍手〕
○平林太一君 現に上程せられました職犯在所者の釈放等に関する決議案に対しまして、ここに自由党を代表いたし賛成の意見を述べるものであります。
 思うに、我が国が独立国となつて国際社会に復帰できるように相成りました現在において、なお且つ我々の同胞が戦犯の名において苦役を続けておりますることは、誠に痛恨の極みであります。このよつて来たるゆえんは、いわゆる平和條約第十一條によるのでありましよう。即ち、拘禁されておる者の赦免、減刑、仮出獄等の権限は、各事件について刑を課した一文は二以上の政府の決定及び日本国の勧告に基く以外に行使することができず、且つ極東軍事裁判所が刑を宣告した者については、この権限は、裁判所に代表者を出した政府の過半数の決定及び日本国の勧告に基く場合のほかは行使できない旨の規定があるからだと承知せざるを得ません。併しながら日本が国際社会に復帰した今日の喜びの裏に、依然、死刑或いは無期又は長期刑として処罰されておるこれらの人々の心境、その心事は、果してどんなでありましよう。若しそれ、その留守家族の人々の苦悩悲嘆を思うとき、我々は深刻なる感慨を以て戦争の惨禍をそのまま味い続け、悪夢にも似た戦争が如何に我々国民に大きな打撃を與えたかを感じさせるのであります。我々は、今悲しみに泣く戦犯者とその家族の身の上に思いをいたすとき、そぞろに涙なきを得ないのであります。断腸の思い切々として胸に迫るの感に堪えません。
 職争の責任は全国民がひとしく負うべきものでありましよう。我が国を敗戦に導いた責任者がそれぞれ糺明され処罰されることは止むを得ざりしことといたしましても、現に今なお服役中の戦犯者は、すでに反省し、刑の執行を悲痛裡に受けて今日に及んでおるのでありまして、今や人類相愛の精神によつて速かに解放救援されて然るべきにはあらざるやと、ひそかに思わざるを得ません。思えば、これらの人々は、数年来或いは十有幾年のこのかた遠く肉親と離れて、今異境万里の地に服役の身となり、忘れもしない昭和二十年八月以来今日まで七年有余の間、牢獄に呻吟しておるのであります。ために、一家の支柱を失つた残されたる家族は、長きに亘る生活の困窮極度に達し、悲惨の状態目を蔽うに忍びざるの有様であります。加うるに精神的にも肩身を狭くいたしておるの実情にさえ置かれておるのであります。今や我らの日本が独立国となつた今日、これら戦犯者家族の衷心からの悲願であり、むしろ当然の希求であるべき戦犯者釈放実現のために、渾身り努力を捧げることは、我々の現に当然の使命として、立つてこれが実現に全力を注ぐべき極めて緊急の事柄であります。(拍手)本決議案の上程せれたる深遠なる理由又深くここに存するものと信ずるのであります。(「再び戦争するなよ」と呼ぶ者あり)
 目下拘置中の戦犯者の数は、私の調査によれば、去る六月五日現在において、巣鴨に九百二十五名、比島モンテンルパに百十一名、濠洲マヌス島に二百六名、計千二百四十二名でありまして、その内訳は、死刑五十九名、無期刑三百八十九名、長期刑七百九十四名であります。まさにこれらの人々の心情に思いをいたすとき、誠に慄然として膚に粟を生ぜざるを得ません。私はこの際、各位と共に、これらの悲惨なる戦争犠牲者をこれ以上長く放置するに忍びがたきものあり、真に断腸の思いに堪えないのであります。
 政府は今や一日も早く平和條約の規定に基き関係各国との懇請折衝乃至交渉を開始すべきであると思います。現に這般調印された日華条約では、戦犯者に関する條項ぱ国民政府が放棄しております。ために、この条約が批准さるれば、これら関係戦犯者が即日釈放せらるることに相成つておるのは、誠に公正なる措置として、妥当と申さざるを得ません。更に本日調印の運びに至るやに承知いたしておりまする日印條約においても、インド政府が進んでこの條項を放棄することに相成つておることを承知するのであります。それにつけても思うは、昨春乃至一昨年末前後の当時、関係当事国間における対日平和集約草案検討に際し、特に第十一條を削除し得ざりし当時と比較して、その後如何に世界の各国が、正義と人道に即して、歴史上比類なき戦争犯罪者として勝者が敗者を裁くという不合理性に目ざめたかを如実に立証するものではないかと思わざるを得ないのであります。(拍手)政府はこの機会においてこれらの趣旨を勘案考慮し、速かに米国を初めとする濠洲、フイリピン等に対して極力これらの途を取運ぶべきものであると信ずるものであります。
 私は最後に、ここに改めて戦犯者の助命釈放の速かなる措置に出でられんことを、当時戦犯法廷において我を裁きたるこれら関係法廷の、関係各国の、或いはこれらの国民の正義と人道に訴え、加うるに国際連合の静かなる精神に鑑みられるところあり、あえて理解と同情を求めて止まざるものであります。
 政府はこの際、本日只今、内閣総理大臣吉田茂の名において、静かに事態を考慮勘案するところあり、深く決意するところあり、本決議案に対する誠意と温情ある態度を披瀝せられんことを強く要望いだすものであります。
 以上本決議案に対する賛成の趣旨弁明といたします。(拍手)
○議長(佐藤尚武君) 一松定吉君。
   〔一松定吉君登壇、拍手〕
○一松定吉君 諸君、私は改進党を代表いたしまして、本決議案に賛成の意思を表明するものであります。
 元来、戦犯というものそれ自体が、我が国の国内法からすれば犯罪人ではないのです。ことごとく国を思う至誠の至り、或る一部の者の相談決意によつてこういう大戦を惹き起したということは、これは私が論ずるまでもなく事実であることは皆さん御承知の通りであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)そういう際に、国家のために身を犠牲にして戦線に立つた者が、敗戦の結果、戦犯の汚名を受けて、今日囹圄に苦しんでおる事実は、これは間違いのない事実である。こういうときに当つて、本当に私どもがそれらの人に対する態度というものは、全部これらの人は愛国者である、国の犠牲者である、そういうような人が、敗戦のためにこの憂き目を見ているということについては、国民の一人として誠に相済まぬという考えを持つばかりではなく、実にお気の毒千万であるという感じを持つておるのであります。(「勝てばよかつたというわけですね」と呼ぶ者あり)そういうふうなときに、今、戦争は済み、平和條約は成立し、日本が独立国家となつた今日において、なお且つ囹圄に坤吟しておるというその状態は、本当に気の毒千万であります。これらの人の家族、親族、友人等が、これらの犠牲者に対して寄せられたその心痛は、真に思いをいたすときにおいて、我々は夜も眠られないくらいにお気の毒に感じておるのであります。こういうときに、このいわゆる平和條約成立と同時に、我が国は大赦令を発して、そうしていろいろな国家の治安を乱したような人にさえも恩典に浴せしめて、或いはその刑を減軽し、或いは免除し、そうして今日我が国の平和になつたことの喜びを国民に分つておるときに、これら国家の犠牲になつた人々を一日も早くこれを救い出したいということは、国民誰一人反対する者はありますまい。(拍手)こういうようなときに、又これらの人々を拘禁しておりまするそれらの国々の人におきましても、それらの者に対して処刑をするということが、それらの国にどういう利益があるかということを考えてみましても、国交回復した今日において、日本国と親密に交際する上からいたしましても、こういう人をでき得べき限り救つてやりたいという感情を持つておることは、私は拝察するに余りあると思うのであります。(拍手)こういう際でありまするから、我々は進んで何らかの手によつてこれらの人を救助したい、救い出したいと考えておることは、これはもう当然のことであり、国会の中の人がそうであるのみならず、今、聞くところによると、全国にこれら救命の運動が行われておつて、助命運動のために各地において署名を取つておるというような事柄も、これは当然の事実であります。政府も定めしこういう点に思いをいたされまして、何らかの手によつてこれを救い出したいと考えておることであろうと思うのでありまするが、幸いに平和條約の第十一條によつて、いわゆる政府の勧告によつて、これら関係国の同意を得ればこれを救出することができることになつておりまするから、政府はこの国民の総意を体しまして、一日も速かにこれが決議案を十分に心して実行して、これらの哀れむべき国家の犠牲者を救い出すことに御盡瘁あらんことを特にお願いいたしまして、この決議案に賛成するわけであります。(拍手)
○議長(佐藤尚武君) これにて討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。
 これより本決議案の採決をいたします。本決議案に賛成の諸君の起立を求めます。
 (賛成者起立〕
○議長(佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本決議案は可決せられました。(拍手)
 只今の決議に対し法務総裁より発言を求められました。木村法務総裁。「
   〔国務大臣木村篤太郎君登壇、拍手〕
   〔「余り反動的なことを言うな」と呼ぶ者あり〕
○国務大臣(木村篤太郎君) 只今御可決になりました決議案に対して政府の所信を申述べたいと思います。
 現在戦争犯罪に問われまして内地に服役されておるかたが九百二十四名、外地で服役されておるかたが三百数十名であるのであります。これらの人々は、長きは十数年、短かいものでも五年以上家郷を離れ、戦時中軍人又は軍属として公務に盡されたのでありまするが、不幸にして戦争犯罪に問われまして、その心中を察しまするときに、誠に同情を禁じ得ないものがあるのであります。殊に、長い間一家の支柱とも言うべき人が不在であつたため、精神的にも経済的にも多大の苦痛を受けておられるこれらのかたがたの家族のことを思いますると、全く涙なきを得ないのであります。外地にある戦犯者の内地送還及び助命につきましては、専ら関係国の決するところでありまするので、政府は、外交折衝によりまして関係国の好意ある措置が実現せられ江まするよう、今後も極力努力を拂う所存であります。
 又平和條約の発効によりまして、これら内地にある人々の赦免、減刑及び仮出所の道が開かれたのでありまするが、これらの措置は、日本側が勧告し、関係国がこれに同意の旨を決定して行うことができることとなつております。政府におきましては、先般国会の御審議を経ましたこれらの勧告の手続に関する法律を中和発効の日に公布施行いたしまして、直ちに関係国に対し、この勧告の方式に同意を求むるよう申入れをいたしておる次第であります。同時に、勧告の際、相手国をして速かに同意せしめるよう、これらの人々に関し、酌量すべき諸般の事情を収集するために目下調査を開始いたしまして、今日までに仮出所に関する二百数十名の調査がほぼ完了いたしております。今後、赦免、減刑に関する調査を続々と進める所存であります。政府におきましては、今日まであらゆる機会をとらえまして、公式或いは非公式に関係国の好意ある取扱を得べく努力を拂つて参りましたが、今後もこの努力を続けて参りまして、仮出所は勿論のこと、赦免又は減刑につきましても調査の上、正式に勧告を行いまして、この不幸な事態を一日も早く解消せしめまして、今日御可決になりましたこの決議に対して全くこれに応ずる覚悟である次第であります。
     ―――――・―――――
○議長(佐藤尚武君) 日程第一、水産業協同組合法の一部を改正する法律案(木下辰雄君外五名発議)を議題といたします。
 先ず委員長の報告を求めます。水産委員長木下辰雄君。
   〔木下辰雄君登壇、拍手〕
○木下辰雄君 只今上程されました水産業協同組合法の一部を改正する法律案につきまして、委員会における審議の経過並びに結果を御報告申上げます。
 先ず提案の理由を申上げます。この法律案は、水産業協同組合が連合会を作る場合の制限規定を撤廃しようとするものであります。現行法第八十九條によりますると、連合会は、その地区が都道府県の区域を超えてはならないこと、又はその所属員たる組合の数が三百を超えてはならないことになつております。然るに、諸般の情勢から見まして、速かにこれらの制限を撤廃いたしまして、協同組合系統組織を十分に活用して、水産業の振興を図ることが、極めて緊要な事態に立ち至つているのであります。よつて水産業協同組合法の一部を改正して連合会の規模の制限を撤廃しようというのが本案の要旨であります。
 本件につきましては、昭和二十三年に本法案が制定されまして以来、関係漁民団体からしばしば同様の趣旨の請願陳情がありまして、本院におきましても、その都度これを採択いたしておるのであります。水産委員会といたしましても十分検討を遂げておる問題でありまするので、委員会におきましては、別に異論もなく、討論を省き、採決の結果、全会一致を以て可決すべきものと決定いたした次第であります。
 以上御報告いたします。(拍手)
○議長(佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○議長(佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。
     ―――――・―――――
○議長(佐藤尚武君) 日程第二、児童福祉法の一部を改正する法律案(内閣提出)を議題といたします
 先ず委員長の報告を求めます。厚生委員長梅津錦一君。
   〔梅津錦一君登壇、拍手〕
○梅津錦一君 只今上程ざれました児童福祉法の一部を改正する法律案につきまして、厚生委員会における審議の経過並びに結果を御報告申上げます。
 今回改正せんとする要点の第一は、児童相談所において一時保護を加えている児童が、児童の福祉をそこなう虞れのある物を所持しているときには、児童相談所長は、当該児童の福祉のために、その児童に対して一時保護を加えている間、その物を保管することができることといたしているのであります。即ち、従来はこの規定が欠けていたのでありますが、児童相談所が一時保護を加えた児童のうちには、犯罪行為又は不良行為に深い関係を有する物を所持している者が多い現状でありますので、当該児童の福祉のためにこれを保管することといたし、その物が当該児童以外の者の所有に属するときは、できるだけ速かにその物につき返還請求権を有する者に返還することとし、その物が当該児童の所有に属するときは、一時保護を解除するとき、その物を当該児童に返還することにいたしているのであります。なお、その物が当該児童以外の者の所有に属し、而も具体的にその所有者を知ることができないときは、公告をなし、そのまま一年経過すると、その物は都道府県に帰属するものとして、物の帰属関係を明らかにしているのであります。又これと関連いたしまして、一時保護を加えている間に児童が逃走した場合等に遺留物があるときは、右とほぼ同様の方法によつてこれが処理をいたそうとするものであります。
 第二点は、児童の福祉を阻害する行為として、深夜、道路その他これに準ずる場所において児童に物品の販売や靴磨き等を業務としてさせること、及びカフエー、キヤバレー等の風紀上児童にとつて好ましくない場所等に児童を出入させて、花売りその他物品の販売を業務としてさせることを禁止いたしていることであります。従来はこれらの行為は労働基準法に基く労働関係にない場合にはこれを禁止する規定がなく、従つて、保護者その他の大人が深夜に児童を使つて街頭労働をさせたり、又は、児童をカフエー、キヤハレー等に出入させて、いわゆるいたいけなさを利用し、酔客等に対し花や菓子等を売らせて来たことが、間々見受けられたのでありまするが、それらの雰囲気が児童の心身に及ぼす悪影響は測り知れないものがありますので、今回児童福祉の見地から、かかる行為をさせることを禁止しようとするのであります。
 第三の改正点は、児童の福祉を阻害する行為の禁止規定の罰則について新たに両罰規定を創設しようとするものであります。以上がこの法案の概要であります。
 厚生委員会は四回に亘り開会いたしまして、愼重審議を重ねたのであります。即ち、先ず厚生当局より本案の提案理由の説明を聴取して後、熱心なる質疑応答を交わすと共に、労働省及び文部省の関係官、並びに参考人として警視庁少年防犯課長、中央児童福祉審議会委員長及び中央社会福祉協議会児童部長等の出席を求めまして、本改正案に関する意見を聴取して、審議の参考に資した次第であります。
 次に、委員会における質疑応答の主なるものについて申上げますと、先ず「年少者の労働問題については労働基準法によつて十分取締れると思うが、特に児童福祉法を改正してこれを取締ろうとする理由はどこにあるか。又街頭労働を取締るだけでは児童福祉の増進にはならない。却つてその生活を脅かす結果になると思うが、これに対しては如何なる措置を講ずるか。」との質問に対しまして、厚生大臣より、「雇用関係にある年少者の労働については労働基準法で取締り得るが、雇用関係のない者については取締り困難である。よつて児童福祉法を改正して、これら雇用関係のない児童を酷使より保護し、その福祉の増進を図るのが狙いである。又取締だけでは勿論児童福祉の増進にはならないので、一面においては職業補導を強化して、正常な職業に就かしめると共に、他面、生活保護法の適用に遺憾なきを期する一旨の答弁がありました。次に、「今回の改正措置が一般社会に及ぼす影響は重大である。法の運用については万全の措置を講ずる必要があると思うが所見如何」との質問に対しましては、「法の実施については関係方面緊密なる連絡を保ち、特に児童福祉司、児童委員等の活動を強化促進して、趣旨の徹底化を図る」との答弁でありました。なお「児童の福祉を増進せしめるには、児童措置費を速かに平衡交付金より国庫補助金に復元する必要を痛感するが、所見如何」との質問に対しまして、厚生大臣は、「明年度の予算編成の際は必ずこれが実現するよう努力する」と言明されたりであります。
 右のほか、なお幾多の重要な質疑応答が交わされたのでありますが、その詳細は速記録に譲ることといたします。而して今回の改正は一見簡単のようではありますが、その実、社会的に重大な影響を及ぼすものであり、更に詳細にこれを検討する必要を認めましたので、これが審議を小委員会に付託いたしましたのであります。
 小委員会におきましては、愼重審議の結果、本案に対して修正を加える必要を認め、修正案を決定して、山下小委員長より報告を受けた次第でありますが、修正案の要点は、第一に児童福祉司に関する点であります。即ち児童福祉法第十一條によりますと、「都道府県に、児童福祉司を置く。」と相成つておりまして、その身分関係、殊に児童相談所長との関係が明確を欠いているのでありますが、これを、児童相談所には必ず児童福祉司を置き、その身分関係も児童相談所長に直結して、その命を受けて職務を行うこととすることであります。第二に、施行期日の点であります。この法律は公布の日から施行することに相成つておりますが、第三十四條第一項の改正規定、即ち児童の街頭労働の取締は昭和二十七年九月一日から、附則第四項の規定、即ち地方財政法の改正規定は昭和二十八年四月一日から施行することとすることであります。第三に、地方財政法第十條第七号を改正して、児童福祉施設並びに里親に要する経費に対しても、国がその経費の全部又は一部を負担することとすること、換言すれば、来年四月から児童措置費を平衡交付金より国庫補助金に切り換えることであります。以上の三点でありますが、右のうち地方財政法の改正の件につきましては、特に岡野国務大臣の出席を求めて、その所見を質しましたところ、同大臣は、「児童措置費を平衡交付金から国庫補助金に復元する問題については、趣旨において賛成であり、その実現に努力したが、止むを得ざる理由のため実現を見るに至らないのは甚だ遺憾に思う。目下地方財政税制制度を根本的に解決するため鋭意検討中であるから、本問題も近々解決を見ることと思う。暫時猶予願いたい」旨の答弁があつたのであります。而して厚生委員会といたしましては、右小委員長報告の修正案を全員異議なく承認いたした次第であります。
 かくして質疑を打切り、討論に入りましたところ、中山委員より、小委員長報告の修正案並びに修正を除く部分については政府原案にそれぞれ賛成する旨を述べた後、次のような附帯決議の動議を提出されました。即ち、今回第三十四條を改正して児童の街商に制限規定を加えることにしたのは、これによつてその福祉を増進しようとする趣旨であつて、禁止そのものが目的でないことは勿論である。よつて政府は、法の実施にあたつてはよくこれを周知徹底せしめ、一面それらの輔導又は生活の扶助等万全の方途をつくし、福祉の実に欠くることのないよう努めなければならない。
 というのでありまして、山下委員はこの動議に対し全幅的の賛意を表したりであります。かくて討論を終結いたし、採決いたしました結果、全会一致を以ちまして本案は修正可決すべきものと決定いたし、併せて附帯決議案も承認することに決定いたした次第であります。
 以上御報告申上げます。(拍手)
○議長(佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。委員長の報告は修正議決報告でございます。委員長報告の通り修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○議長(佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて本案は全会一致を以て委員会修正の通り議決せられました。
     ―――――・―――――
○議長(佐藤尚武君) 日程第三、農業災害補償法の一部を改正する法律案、
 日程第四、農業災害補償法臨時特例法案、
 日程第五、農業共済基金法案、(いずれも内閣提出、衆議院送付)
 以上三案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。農林委員長羽生三七君。
   〔羽生三七君登壇、拍手〕
○羽生三七君 只今議題となりました農業災害補償法の一部を改正する法律案、農業災害補償法臨時特例法案、農業共済基金法案の三法案について農業委員会における審査の経過並びに結果を御報告いたします
 これらの三法案は、いずれも農業災害補償制度に関する法律案でありまして、相関連いたしておりますので、委員会におきましては、これら三法案は一括審議を行うことを適当と認め、一括審査を行いましたので、従つて審査報告もこれを取りまとめて行うことにいたしたいと存じます。
 先ず只今の法律案の内容についてその概略を御説明いたします。
 最初は農業災害補償法の一部を改正する法律案についてでありまして、本法律案は政府原案に対して衆議院で修正が加えられて本院に送付せられたのでありますが、政府原案は現行法に対して大要次のような改正を行わんとするものであります。即ち第一は、現行法は、その第十二條において、農業共済組合が支拂うべき水稻、陸稻及び麦等の食糧農作物を共済目的とする農作物共済に係る共済掛金の一部を食糧管理特別会計が負担することとなし、而してその負担金を食糧の消費者がこれを負担するように食糧の売渡価格を定めなければならないことに規定いたしておるのでありますが、併しこの規定は、農業災害補償制度創設以来、毎年臨時的立法措置によつてこれが適用が除外せられ、食糧の消費者負担を取りやめて一般会計において国庫が負担して来たのでありますが、かような経緯に鑑み、これを恒久化して、今後は一定の率によつて国庫が負担することとなし、なお蚕繭を共済目的とする蚕繭共済並びに牛又は馬の死亡廃用共済にあつても、その共済掛金について、これが一定率を昭和二十四年から昭和二十六年までの期間を限つて国庫が負担することに規定せられているのを、これ又今後恒久的に国庫が負担することになさんとするものであり、第二は、農業共済団体の役員は総会においてこれを選挙することになつているのでありますが、農業共済組合の役員については、農村の実情に即応して、定款の定めるところによつて、総会外、即ち町村内の適当な所に投票所を設けて選挙することができることとなさんとするものであり、第三は、農業共済団体の役員の任期は一ヵ年を原則とし、定款で定めたときは二年以内とすることができることになつているのでありますが、役員の能率の発揮に資するため、三年以内において定款で定めることとなし、その任期を延長することとなさんとするものであり、その第四は、農業共済団体の業務又は会計に対する行政庁の検査は、従来は所定の條件によつて、組合員から請求があつた場合、又は農業共済団体の業務又は会計が法令等に違反している疑いがあると認められるときに限つてこれを行うことができることとなつているのでありますが、業務の健全な運営を期するため、随時これを行うことができることとなさんとするものであります。かかる政府の原案に対して、衆議院において、農業共済団体に対する行政庁の検査は、政府原案による随時検査ばかりでなく、毎年一回常例検査を行わなければならないこととなし、又農業共済団体において組合員に対して行う国庫が負担する事務費以外の事務費の賦課についてこれを規正せんとする修正を加えたのであります。
 次は農業災害補償法臨時特例法案についてでありますが、本法律案の提出の理由については、現行農業災害補償法においては、水稻及び麦の農作物共済は、耕地の名筆ごとに引受けて、各筆ごとに三割以上の被害があつた場合に補償が行われる建前になつておるのでありまして、このやり方においては、農家全体としては平年作であつても、一部の耕地が三割以上の被害があれば補償が受けられるのでありますが、併しその半面、病害虫等によつて全体として相当な被害を受けた場合でも、各筆の被害がそれぞれ三割以内であるときは共済金の支拂を受けることができないような不合理がありますので、将来は農家単位に引受け、農家單位に補償する共済方法にすることが制度の趣旨に鑑みて必要ではないかと考えるわけでありまして、かような事情に鑑み、水稻又は麦にかかる農作物共済を行う全国の農業共済組合の中から一定の基準の下に約五%の組合を選定し、この組合について、従来行われている耕地一筆單位の共済と異なる、いわゆる農家単位の共済を一定期間試験的に実施し、この実施成績を検討の上、農業災害補償制度の根本的な改正を図ろうとするものであると述べられておるのであります。
 而してその実施方法を規定せんとするのが本法律案の趣旨でありましてこれが内容とするところは大要次のいうであります。即ち第一は、共済金額と共済金についてでありまして、これは水稻及び麦につきそれぞれ収穫物の石当り価格の八〇%を標準として石当り共済金額を定めて、この石当り共済金額に平年作における収量の八〇%を乗じた金額を各農家の共済金額とし、各農家の共済事故による耕地ごとの減収量を合計したものがその農家の平年における収量の二〇%以上となつた場合に、石当り共済金額にその二割を超えた数量を乗じた金額を共済金として補償することとなし、第二は、共済掛金でありまして、農家單位の共済を行なつた場合には共済金が減り、又共済掛金の支拂も減少するものと予想されますが、併しこの点の資料がありませんので、組合単位では、一応現行通りの掛金額を積み、現行通りの保険料を連合会に納めることとなし、而してこの間における農家負担の調整と、試験の実施を奨励する意味合いにおいて農家負担掛金の二分の一に相当する額の補助金を国庫から当該農家に対して交付することとなし、又会計を区分して、実験期間中に農家単位共済から生じた剰余金は実験終了後に当該農家に拂い戻すことになつているのであります。
 次は農業共済基金法案についてでありまして、農業災害補償制度は長期均衡の観念を基礎として成立している制度でありますから、短期間について見、れば、保険金の支拂責任額が当該年度の手持保険料の額以上に上り、不足金を生ずる事態が発生するわけでありまして、この不足金に対して資金を融通することは本補償制度運営上欠くことのできない措置でありまして、而してかかる融資については、災害発生の都度応急対策を講ずるにとどまらず、恒久的対策として制度化せらるべき問題と考えられ、国の再保険金支拂については、過般農業共済再保険特別会計法の改正によつて基金勘定が設置せられたのでありますが、農業共済組合連合会については、受信能力においても、又金利負担能力においても極めて乏しいにもかかわらず、従来これら資金供給のための制度を欠いておりまして、罹災農民に対する共済金の支拂が遅延し、本補償制度の円滑な運営に支障となつていた経過に鑑み、連合会に保険金支拂のための準備基金を設け、共済金の迅速且つ円滑な支拂を制度として保証せんとするのが本法律案を提案するに至つた理由とされております。
 而してその内容は大要次のようであります。即ち先ず本基金の出資金でありまして、基金の出資金はこの際当面必要限度の三十億円にとどめ爾後必要の場合には財政資金の導入等によつて基金の運用に遺憾なきを期したいと述べられております。而してこの基金の出資は、木補償制度の性格から見て補償体系の一環として国がその責任のすべてを負担すべきものとも考えられますが、併し他面、国の財政の現状並びに連合会が基金制度の受益者たる地位にあるとの理由によつて、政府と連合会の半額ずつの共同出資とし、なお連合会の出資の支拂は五カ年以内において分割拂込によることとなしてあるのであります。その他、基金の設立、会員、運営及び監督等について規定し、会員は農業共済組合連合会を以て強制加入とし、役員は理事長一人、理事三人、監事二人であつて、いずれも総会において選任して農林大臣の認可を受けることとなし、理事長の諮問機関として、会員代表八人、学識経験者五人からなる運営委員会を置くこと等が明文化されているのであります。
 委員会におきましては、農業災害補償制度を現行のように強制的な制度とするか、或いは任意的な制度とするか、その適否、農作物共済にかかる共済掛金の国庫負担額算定方法の当否、新規導入家畜に対する死亡廃用共済掛金の軽減、建物共済の現状、建物共済のあり方及び建物共済をめぐる農業協同組合と農業共済組合との競合の調整、臨時特例法案による農家單位共済の施行は、農家単位共済を実施することを前提として、これがため必要な資料を得ることを目的とするものであるか、或いは一筆單位共済と農家單位共済との得失を比較検討するためのものであるか、その真意。本試験はこの程度の規模及び年限を以て果して信をおくに足る成果を収めることができるか、農業共済基金法案について、基金なる特殊な機関を新たに設けることの要否、資金の必要額、資本金額の適否及びその不足対策、並びに今後における増資方針、資本金の半額を農業共済組合連合会の出資とすることの可否及びこれが拂込の能否、農業共済組合連合会の出資金の各連合会に対する配分方法の適否、資金の貸付方法、出資金に対する配当、農業共済組合連合会における事業不足金の現況及び今後の措置、その他の問題について真摯な質疑が交わされたのでありまして、これが詳細については会議録に譲ることをお許し願いたいのであります。
 而してその中でも、関心は、特に、基金なる特殊な機関を新たに設けることの要否、資本金の必要額、資本金の半額を農業共済組合連合会の出資、延いては農家の負担とすることの可否に注がれたのでありまして、「連合会の保険金の支拂いに必要な資金の供給を潤沢且つ円滑にすることは、農業災害補償事業の運営の健全を期するため極めて肝要なことであるが、併しかような資金は、農業災害補償制度の性格に鑑みて、その必要額の全額を国の責任において融通すべきものであつて、本法案に見るように、その半額を農家から出資せしめることは、その趣旨において妥当を欠くものであり、更に農家経済の現況において、かような資金を農村から吸い上げることとなさんとするがごときは無謀の措置であつて、我が国農業に対する政府の認識を疑わざるを得ない。而も基金というような特殊な機関を新たに設けることは、出資を増大して資金コストを引上げる結果となり、適正な措置とは認められない。なお三十億円程度の資本金では所期の目的が達せられるか疑わしい。よろしく政府は全額国庫の負担で十分な資金を用意し、農業共済再保険特別会計或いは既設金融機関を利用してコストの低い資金を融通することとすべきではないか」との趣旨の質問に対して、政府当局からは、「十五億円の出資は、農家にとつては容易ならざる負担と思われるのであるが、基金は農業共済組合連合会の事業不足金の融資が目的であつて、現行農業災害補償制度は、いわば国と農家との共同事業となつており、その制度の一環として連台会段階の基金を考える場合、基金の出資も国と農家が共同で分担するということも考え得るのではないかと思われる。尤も農家経済に及ぼす影響並びに農家の負担を勘案して、政府の出資は設立と同時に一度に十五億円を拂込み、農家の出資十五億円は五カ年以内に分割して拂うことといたしてある。更に又、今回水稲の料率改訂に当つて、従来行われて来た安全割増が廃止された事情をも考え合せたのである。資本金三十億円は少額であると言わざるを得ない。近い将来において数十億円の資金が必要となる事態も起り得ると考えられる。併しこれは将来における災害如何によることであつて、断定しかねるが、今後漸次国の負担を増して基金の内容を充実したい。而して農家の出資を期待する関係上、資金の取扱は特別会計等によることは適当でないと認められ、今回計画した基金制度という新たな機関を設けることとしたい」という趣旨の答弁がなされたのであります。
 かくて質疑を打切り、続いて討論採決の運びとなりました。
 先ず農業災害補償法の一部を改正する法律案について衆議院送付案を議題に供し、討論に入りましたところ、島村委員から、「現行農業災害補償制度に関する各方面からの批判に鑑み、徹底的検討を加え、抜本的対策を講ずること、及び建物共済に関して農業共済組合及び農業協同組合両団体の関係を調整すること」等の希望を付して賛成があり、続いて採決の結果、多数を以て衆議院送付案の通り可決すべきものと決定し、
 次に農業災害補償法臨時特例法案を議題に供しましたところ、別に発言もなく、採決の結果、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定し、
 続いて農業共済基金法案を議題に供しましたところ、討論に先立ち、島村委員から、本法の運用について次のように政府に対し申入れることについての動議が提出せられ、全会一致を以てこの動議は成立、直ちに政府に申入れを行なつたのでありますが、その申入れの要旨は次の過りであります。
  農業共済基金法の運用に関する申入
  農業共済基金法が成立し、これが実施せられる場合において、その運用に当つて特に次の事項について遺憾なきを期せられたく、右申入れする。
 (一) 今後農業共済基金の資金の増加に努め、しかして増資は政府の出資の増加を以てこれに充て、全員の出資の増加はこれを避けること。
  なお、資本金の増額に至る過程における連合会の事業不足金に対しては、政府において遺憾なく融資の措置を講ずること。
 (二) 会員出資金の拂込並びに農業共済組合及び組合員のきよ出金の徴収については、農家の経済及び災害の状況等を勘案して、拂込又はきよ出の時期及び金額を斟酌し、農家経済に困難を強いる結果を招来しないよう適当な措置を講ずること。
 これに対して、出席の廣川農林大臣から、「努力以て御期待に副うようにいたしたい」旨の言明が行われたのであります。
 次いで討論に入りましたところ、修正発議者を代表して島村委員から、「本基金法案が規定するように連合会が出資金の一部を負担することは忍びがたいことであるが、又止むを得ないことかとも考えられる。併し拂込期間や第一回の拂込総額の最低額を法律で規定することを取止めて定款に委ね、基金自身が自主的な判断の下に適正な処置を講ずるようにすることが適当である」との趣旨による修正案が提出され、小林亦治委員から、先の申入れの実現に対して政府の努力を求められて賛成があり、岡村委員から、本法律案において見られるように、かかる資金を農村から吸い上げるという考え方に対しては反対であるが、併し今後農業の保護に対して政府における万全の対策を期待し、且つ本法律案作成に対する各委員の努力を多として賛成があり、池田委員から、政府における農業政策の確立と、先の申入れに対する努力を要望して賛成があり、飯島委員から、建物共済をめぐる農業協同組合及び農業共済組合両団体の関係の速かなる解決を望んで賛成があり、かくして討論を終り、採決の結果、全会一致を以て、政府原案に対して、島村委員が代表して提案せられた修正を加えて、可決すべきものと決定した次第であります。
 右御報告申上げます。(拍手)
○議長(佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより三案の採決をいたします。
 先ず農業災害補償法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○議長(佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。
     ―――――・―――――
○議長(佐藤尚武君) 次に農業災害補償法臨時特例法案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○議長(佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて本案は全会一致を以て可決せられました。
     ―――――・―――――
○議長(佐藤尚武君) 次に農業共済基金法案全部を問題に供します。委員長の報告は修正議決報告でございます。委員長報告の通り修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○塾長(佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて本案は全会一致を以て委員会修正通り議決せられました。
     ―――――・―――――
○議長(佐藤尚武君) 日程第六、道路交通取締法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
 先ず委員長の報告を求めます。地方行政委員長西郷吉之助君。
   〔西郷吉之助君登壇、拍手〕
○西郷吉之助君 只今議題となりました道路交通取締法の一部を改正する法律案について、地方行政委員会における審査の経過並びに結果を御報告申上げます。
 本法案は、交通秩序の現況に鑑み、道路交通の円滑を図り、併せて交通事故の発生を可及的に防止するため、凡そ次の諸点について改正を加えるものであります。
 即ち、第一に、自動車中、命令で定める総排気量等を有する原動機を用いるものを、原動機付自転車として自動車の枠から外し、これに対する運転、資格の規制を簡易化し、通行順位を一般自動車の次位とすること。第二に、軌道車の中に含まれている無軌條電車の定義を明かにし、これに対する運転用法に関する規定を新たに設けるほか、軌道車一般についても運転用法に関する規定を加えること。第三に、自動車並びに今回新たに無軌條電車も含めて、その右折方法に例外規定を設けること。第四に、原動機付の自転車の運転資格の規制に関する規定の新設に伴いまして、関係事務の手数料の徴収に関する規定を設けること。第五、都道府県会安委員会の行う運転免許及び運転許可に対して必要な経費は従来国庫で負担しておつたのを、当該都道府県の負担に移すこととし、これらの事務に関する手数料は従来国庫の収入であつたものを今回改めて都道府県に納めなければならないことにすること。第六に、前項の経費負担と手数料収入の主体の変更に伴いまして、従前もつぱらこれらの事務の用に供せられていた国有財産の都道府県移管に関する規定を設けること。第七、原動機付自転車に関する規定の改正に伴い、罰則に改正を加えるほか、細部の点につき若干の改正を行うこと。
 以上が今回改正の主要な点であります。
 地方行政委員会におきましては、五月十二日以降数回に亘りまして委員会を開き、政府委員との間に質疑応答を重ねましたが、以下その主なるものを御紹介いたします。第一、「いわゆる対面交通については世上反対意見もあるようであるが、今回の改正においてこの点に触れなかつたのはどういうわけであるか」との質問に対しましては「対面交通の問題は歩行者に対して多年に亘る左側通行の慣習に反して右側通行を強いる点にあるようであるが、経費と技術上の困難から、車馬のほうを右側通行に改めがたい事情にあつたことを諒とされたい。歩行者に対しては対面交通の訓練に努力したい」旨の答弁がありました。次に、「第七條の無謀運転に対する第二十八條の罰則は、三箇月以下の懲役又は五千円以下の罰金になつているが、情状によりこれでは重過ぎる場合があるから、幅を拡げて科料を加える必要はないか」との質問に対し、政府委員より、「罰則の適用については、いわゆる親心を以て苛酷な処罰にならないように注意している。若し科料を加えることになれば、現在警告の程度で穏便に済まされている違反に対して、却つて処罰が重くなるという逆の結果を招くことを恐れる」旨の答弁がありました。
 委員会におきましては、特に数名の参考人より、以上の質疑に現われました意見を聴取する等、慎重に審議を重ねた後、討論に入りましたところ、原委員より次の修正案が出されました。即ち、
  道路交通取締法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。
  第二十六條の四の改正規定の次に次の改正規定を加える。
  第二十八條中「懲役又は五千円以下の罰金」を「懲役、五千円以下の罰金又は科料」に改める。
 これに対しまして岡本委員より、この修正案の趣旨は、「現在罰金以上になつている違反のうちで情状の軽いものを科料程度に緩和しようとするもので、現在以上に処罰が重くなるというがごとき政府側の心配は全く思いもよらないところである」旨を明らかにして賛成意見を述べられました。かくて採決の結果、右修正案及び修正部分を除く原案は、いずれも全会一致可決すべきものと決定した次第であります。よつて内閣提出、衆議院送付にかかる本法案は、以上をもちまして全会一致を以て修正可決すべきものと決定した次第であります。
 以上御報告いたします。(拍手)
○議長(佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。委員長の報告は修正議決報告でございます。委員長報告の通り修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○議長(佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて本案は全会一致を以て委員会修正通り議決せられました。
     ―――――・―――――
○議長(佐藤尚武君) 日程第七、公共工事の前拂金保証事業に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
 先ず委員長の報告を求めます。建設委員長廣瀬與兵衞君。
   〔廣瀬與兵衞君登壇、拍手〕
○廣瀬與兵衞君 只今議題となりました公共工事の前拂金保証事業に関する法律案について、建設委員会における審議の経過及び結果を報告いたします。本法案は、国、地方公共団体等の発注する公共工事に関する前拂金保証事業の健全な発達を図り、以て公共工事の適正な施工に寄與することを目的とするものであります。提案説明によりますると、公共工事は全建設工事量の半ば以上を占めるのでありますが、最近、請負業者はこれらの公共工事の着工資金の調達に甚だしく困難をしておる現況であります。その原因を見ますると、民間工事にあつては、発注者は前拂金を支拂うことが通例でありますが、公共工事については一部の例外を除き前金拂をしないことが原則であります。然るに、建設業者は一般に自己資本が簿弱であるために、着工資金についても、金融機関に全面的に依存せざるを得ず、金融難は極めて深刻であります。この結果は、公共工事の工期の遅延、工事費の増大等を来たし、延いては公共工事の適正な施工を阻害する実情であります。従つてこれに対しては公共工事についても前拂金制の円滑なる運用を図る要があり、それには前拂金に関する発注者の危険を保証する制度を確定することが必要であります。
 本法案の提案理由はここにあるのでありまして、その大綱は、(一) 本法の対象となる公共工事は、国、日本国有鉄道、専売公社、地方公共団体その他の公共団体の発注する建設工事のほか、資源の開発等の重要工事で建設大臣の指定するものを含んでおります。(二) 前拂金保証事業を営む者は登録を必要とし、これには資力信用と共に、適正な事業計画等、一定の要件を具えることを要します。(三) 保証事業会社の業務については、公正健全な運営を図るために、保証約款の承認、保証金の支拂、責任準備金、保証基金及び支拂準備金に関する規定のほか、保証事業会社は、請負業者の公共工事の運転資金について債務保証をすることができることとしております。(四) 保証事業会社の監督に関する各種の規定と共に、保証事業会社、請負業者が前拂金を当該工事に使用しておるかどうかを厳正に監督すべきことを規定しております。
 委員会においては、本案の重要性に鑑み、関係業者の代表及び発注者側の証言を求めて、直接利害関係を有する業者の意見と共に、前提金を支拂う発注者側、財務当局の意見を徴したのであります。なお、これらの証言に関連して、国有鉄道経理当局及び大蔵省主計当局の意見も聞いたのでありますが、特に大蔵省当局に対しては、地方公共団体の前提金文拂に関して、国庫補助その他国庫から地方公共団体に交付すべきものをでき得る限り速かにする点についても質した次第であります。委員会においては、法案の内容と共に、保証事業会社の業務の運営について、業界の実情に対応して多くの質疑応答がありましたが、詳細は会議録によつて御承知を願います。
 主なる質疑は、一、保証事業会社の設立見込、差当り東京と関西の二社となる場合、保証業務がよく全国に行き亘ることができるか。保証事業が、中小企業者の利用が不十分となり、大業者の壟断するところとならぬか。二、保証約款。三、保証基金の積立と拂戻し。四、工事の分割は本制度の効果を減殺するが、大いなる工事も一括請負とするよう措置するか。五、ダンピング工事の場合の認定と取扱。六、前拂金の使途監査の方式、大業者と中小業者の資金繰りにおける実情の違い、これに対応する監査の方法等に関するものであります。かくて質疑を終了、討論を省略、採決の結果、全会一致原案通り可決すべきものと決定いたしました。
 以上御報告いたします。(拍手)
○議長(佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○議長(佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて本法案は全会一致を以て可決せられました。
     ―――――・―――――
○議長(佐藤尚武君) 日程第八より第十七までの請願及び日程第十八より第二十までの陳情を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。郵政委員長岩崎正三郎君。
   〔岩崎正三郎君登壇、拍手〕
○岩崎正三郎君 只今議題となりました請願及び陳情につきまして、郵政委員会における審議の経過並びに結果を御報告申上げます。
 先ず長野市古牧地区内に無集配特定郵便局設置の請願、長崎県調川局の昇格に関する請願、熊本県緑ケ丘簡易郵便局の昇格に関する請願、茨城県大田村に特定郵便局設置の請願、高知県高石村に特定郵便局設置の請願、岩手県一方井郵便局を無集配局とするの請願でありまするが、これらはいずれも関係地域の発展に伴う郵便施設の改善方につきまして郵政省の措置を要望する請願であります。郵政当局より、「特定郵便局の新設は、予算関係等から差向き困難ではあるが、簡易郵便局の設置ならば実現せしめたい。又簡易郵便局の昇格、無集配郵便局の集配事務開始については、予算関係と睨み合せ善処いたしたい」との答弁があり、次に、群馬県境郵便局庁舎建設に関する請願、埼玉県皆野郵便局庁舎新築に関する請願、大阪市此花郵便局庁舎建設に関する請願、徳島県横瀬郵便局庁舎新築に関する陳情は、いずれも局舎が老朽狭隘であるから、速かに新築せられたいというのでありまして、郵便当局も、「その必要は認めており、今後の予算状況によつて措置したい」との答弁でありました。又野戰郵便貯金拂戻に関する陳情でありますが、これは「現在拂戻を留保せられておる一冊に付き一千五百円の預金は、在外公館の借入金にも等しいものであるから、拂戻を行われたい」というのでありますが、郵政当局も、「これが拂戻をなすべく取運んでおるのであるが、在外資産等との関係もあり、未だ実現の運びに至らない」旨答弁がありました。最後に、簡易生命保険及び郵便年金積立金運用再開に関する請願(北村一男君紹介)ほか同趣旨のもの百六十四件、同趣旨の陳情四十九件、これは「簡易生命保険及び郵便年金積立金の運用権を速かに郵政省に復元せられたい」というのでありますが、本件は、過日、本院におきまして、全会一致の決議を見ましたことは御承知の通りでありまして、これに基き、政府は簡易生命保険及び郵便年金積立金の運用に関する法律案を提案せられ、目下委員会において審議中のものであります。
 以上申述べました諸件につきまして、委員会におきましては、愼重審議の結果、いずれも願意を妥当と認めてこれを採択し、議院の会議に付して内閣に送付すべきものと全会一致を以て決定した次第であります。
 右御報告申上げます。(拍手)
○議長(佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。これらの請願及び陳情は委員長の報告の通り採択し、内閣に送付することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○議長(佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつてこれらの請願及び陳情は、全会一致を以て採択し、内閣に送付することに決定いたしました。
 本日の議事日程はこれにて終了いたしました。次会の議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時三十七分散会
     ―――――・―――――
○本日の会議に付した事件
 一、戰犯在所者の釈放等に関する決議案
 一、日程第一 水産業協同組合法の一部を改正する法律案
 一、日程第二 児童福祉法の一部を改正する法律案
 一、日程第三 農業災害補償法の一部を改正する法律案
 一、日程第四 農業災害補償法臨時特例法案
 一、日程第五 農業共済基金法案
 一、日程第六 道路交通取締法の一部を改正する法律案
 一、日程第七 公共工事の前拂金保証事業に関する法律案
 一、日程第八乃至第十七の請願
 一、日程第十八乃至第二十の陳情