第013回国会 労働委員会 第16号
  公聴会
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昭和二十七年六月十二日(木曜日)
   午前十時三十一分開会
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 出席者は左の通り。
   委員長     中村 正雄君
   理事
           安井  謙君
           波多野林一君
           村尾 重雄君
   委員
           上原 正吉君
           木村 守江君
           九鬼紋十郎君
           一松 政二君
           早川 愼一君
           菊川 孝夫君
           重盛 壽治君
           堀木 鎌三君
           堀  眞琴君
  国務大臣
   労 働 大 臣
   厚 生 大 臣 吉武 惠市君
  政府委員
   労働省労政局長 賀来才二郎君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       磯部  巖君
   常任委員会専門
   員       高戸義太郎君
  公述人
   専売公社中央調
  停委員会委員長  小林 直人君
   信州大学文理学
   部教授     岩垂  肇君
   東京都総務局長 金原  進君
   私鉄経営者協会
   常務理事    別所安次郎君
   旭化成工業株式
  会社常務取締役  宮崎  輝君
   神奈川県経営者
   協会事務局長  森田 安正君
   国鉄職員局労働
   課長      中畑 三郎君
   郵政省人事部長 八藤 東禧君
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  本日の会議に付した事件
○労働関係調整法等の一部を改正する
 法律案(内閣提出、衆議院送付)
○労働基準法の一部を改正する法律案
 (内閣提出、衆議院送付)
○地方公営企業労働関係法案(内閣提
 出、衆議院送付)
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○委員長(中村正雄君) 只今より会議を開きます。
 本日の公聴会に入ります前に御報告申上げる点がございます。先般の打合会で決定いたしました公述人のうち東京都人事委員会委員長内原君並びに東京都交通局長渡邊君は都合によつて出席できませんのでその後任として東京都の総務局長金原君を採用いたしました。なお国鉄仲裁委員会の委員長の今井一男君がこれ又所用のため出席不能でありますので専売公社中央調停委員会委員長小林君に変更いたしましたから御報告申上げます。
 これより三法案に対しまする公述に入るわけでありますが、公述人の諸君に一言申上げて御了解を得たい点があります。公述人の発言は問題の範囲を越えないようにお願いいたしたいと思います。なお日程の都合上お一人の発言時間は約二十分に制限いたしておりますので御了解願います。最後に公述人の発言につきましては成るべく前の公述人と重複する部分は避けるようにお願いいたしたいと思います。以上お願いいたしまして直ちに公述に入ります。
 最初に小林君にお願いいたします。
○公述人(小林直人君) これから労働三法につきまして私の経験から得たところの意見を申上げます。
 最初に労働関係調整法の一部を改正する法律について申上げ、次いでこの法案にある通りに公労法につきまして、その最後に労働組合法について申上げたいと思います。
 最初労働関係調整法の改正、この中には私どもの多年希望しておりました点も含まれておりますので私どもとしては有難いと思う点もございます。その点を申上げます。第八条の次の一条を加える、第八条の二となつておりまして、特別調整委員の定めが詳しく出ましたのですが、これらの規定は現在中央労働委員会が手不足に困難しております際に大変結構な規定であると思います。それから又次いで仲裁の規定がずつと整備されまして、従前の規定によりますと、例えば中労委が二十一名の委員で、三者構成のままで総員の決議によつて仲裁をするような規定になつておりましたので折角仲裁という規定があるにかかわらず全然利用されることなく、事実又利用の方法がないのでありまして、二十一名のそれぞれ見解を異にする、而も三万からの利害を持つ代表者によつて一つの結論を出す、そういうことは個々に当事者の意向を御酌して逐次進める場合には調停なら或いは何らかの可能性もあろうけれども仲裁をする、裁定をするという場合におきましては全然結果を見ること不可能な規定と言わなければならなかつたわけでありますが、今回は労働委員会による労働争議の仲裁は、仲裁委員三名から成る仲裁委員会を設けて、これで行うと、こうなりましたのですでに公共企業体仲裁委員会で経験済みの機構というふうに変つて参りました。これならばまあ実際の上で仲裁を行うことも、仲裁が申請されても稀には可能になるだろうと、こういう見込を私どもは抱くわけでありまして、これら数条に亘る仲裁に関する規定の改正につきましては私は結構だと存ずる次第であります。
 以上私は今回の改正について時宜に適したものと思うところを申述べたわけでありますが、これから申上げる点につきましては私が多分に危惧の念を感じ、有体に自分の考えを申上げますと、現行法をむしろ改悪することになりはしないかと、こう思う点についてこれから申上げます。
 その第一は第十八条二項を加える点であります。これは公益事業の争議の場合に調停申請を関係者がした場合に、その申請を却下することができるという規定であります。これは現在の法規によりますと十八条に労働委員会は左の各号の一つに該当する場合に調停を行うとありまして、その三号に公益事業に関する事件について関係当事者の一方から労働委員会に対して調停の申請がなされる、労働委員会が調停を行う必要があると決議したときと、こうなつておりますのを今度の改正法によりますと、関係当事者の一方から調停の申請がなされたときと、こういうふうにここを押えまして、そうして労働委員会が調停を行う必要があるもの、なお決議することを省いてしまつた代りに十八条の二項を設けまして、労働委員会は前項一号から三号までの規定によつて関係当事者から調停の申請がなされた場合に申請をなした関係当事者による事件の自由的な解決のための努力が著しく不十分であると認めたときは申請を却下することができると、前項の規定により調停の申請が却下されたときは三十七条の規定の適用については申請がなされなかつたものとみなすと、こういう新たなる規定が法案にあるわけであります。私はこういう事項は、こういうその申請の却下権限というふうなものを新たに設ける必要が実はないと感ずるわけであります。それは現行法を巧みに引用いたしますと、未熟な申請がありましても、労働委員会が調停を行う必要があるか否かということを審議するわけであつて、なかなかその決議には到達しないわけであります。現に私ども中労委の席上で公益事業の争議が申請された場合におきまして、これは熟しているかどうかということは、総会の問題になるのでありまして、総会は決して無批判にこれを受付けておるわけではありません。併しその未熟の原因が非常にまあ長期に亘るといつていいかも知れません、冷却期間がありまして、その間は争議はできないことになつておるので、この争議ができない相当期間の間は、使用者側でも真剣にならない、まあ言をいろいろに託しまして、結局あしたは争議が始まるぞというふうな情勢に立至らない場合におきましては、なかなか真剣な斡旋もできなければ、両者の歩み寄りもできないというのが今までの弊であつたわけであります。この弊を除くためには、こういう規定では公平な措置ということができなくなります。どつちかと言えば、これは組合側で未熟なままで申請をしたのじやないだろうかと私どもは解しておるわけであります。未熟のままで出すのではなくて、熟して出したいのであるけれども、何としても門前でいざこざがあつて中へ入れない。そうこう遷延しておりますうちに、すでに一、二カ月は経過しますので、今度は時期の上で何としてもいたしかたがないというので、そのままの状態で調停申請がなされる、こういうふうな実情をむしろ経験上私どもは感じておるわけであります。そういう点から申しますと、申請却下ができますと、そういうふうな原因で未熟であるものが熟さないままで何度でも繰返され、非常にこれはクーリングタイムを経なければならない規定になつております。そうした調停申請に対しましては、酷に亘る結果になる、そういうふうに考えますので、現行法の解釈、運用は十分賄える事柄をわざわざ改正する必要はない。こういうふうに考える次第であります。成るほど反対論者は労働委員会が決議を揉んでおりますと、それによつて調停が開始されるのは遅れるけれども、併し争議権を発生するのは最初の申請のときではないか、だから未熟のままで争議権が発生してしまえばそれだけ困るではないか、こういう御意見があるのでありますけれども、併し真実の実情というのは争議権は発生してから初めて真剣な交渉が始まるのであります。争議権が発生しましても、その団体交渉が廻りついておつて、或いはその調停が真剣に継続中であるならば、現在の主たる労組の諸君が一方においてそういう真剣な交渉を調停の経過を顧みずに実力行使をあえてするという事例は私は経験しておらないわけであります。私どもが就任前にはそういうことがあつたかに伝えられておりますけれども、ここ両三年、私が経験しておりますところによりますれば、そういう事例は全然ないわけであります。労働委員会が適正に調停を継続している限りにおきましては、調停委員長の希望によつて労組が適当に自粛自戒して調停の進行を協力する、妨げないということは極めて顕著な喜ばしい慣例になつておるわけであります。この慣例が破られるような弊風というふうなものが起つて来たわけではないのでありますから、この十八条二項を加える改正につきましては、私は現状の下では反対であります。
 それからその次は緊急調整の問題でありますが、法案によると「第四章の次に次の一章を加える。」、第四章の二緊急調整とされまして、第三十五条の二として「労働大臣は、公益事業に関する労働争議又はその規模が大きいため若しくは特別の性質の事業に関するものであるために公益に著しい障害を及ぼす労働争議につき、これを放置することにより国民生活に重大な損害を与えると認めたときは、緊急調整の決定をなすことができる。労働大臣は、緊急調整の決定をなしたときは、直ちに、その旨を、公表するとともに、中央労働委員会及び関係当事者に通知しなければならない。」、それから三十五条の三「中央労働委員会は、前条第二項つの通知を受けたときは、その事件を解決するため、最大限の努力を尽さなければならない。中央労働委員会は、前項の任務を遂行するため、その事件について、左の各号に掲げる措置を講ずることができる。一、斡旋を行ふこと。二、調停を行ふこと。三、仲裁を行ふこと。四、事件の実情を調査し、及び公表すること。五、解決のため必要と認める措置をとるべきことを勧告すること。」、三十五条の四として「中央労働委員会は、緊急調整の決定に係る事件については、他のすべての事件に優先してこれを処理しなければならない。」それからなおそれに関連しまして第三十八条「緊急調整の決定をなした旨の公表があつたときは、関係当事者は、公表の日から五十日間は、争議行為をなすことができない。」、一応それだけに切りまして、これだけの規定が緊急調整の規定として明らかに設けられようという法案になつておられますが、私はこれに対しても極めて疑義があるのであります。というのは、現行法の十八条の第五号に「公益事業に関する事件又はその事件が規模が大きいため若しくは特別の性質の事業に関するものであるため公益に著しい障害を及ぼす事件につき、労働大臣又は都道府県知事から労働委員会に対して一調停の請求がなされたとき。」請求調停を行わなければならないという規定が設けられております。この現行法の規定とその緊急調整の規定とは、争議を調停し、争議を解決するという見地から眺めますと少しもプラスするところがございません。この法案における権限規定を眺めますのに一つ、斡旋を行うこと。二つ、調停を行うこと。三つ、仲裁を行うこと。四つ、事件の実情を調査し、公表すること。五つ、解決のために必要と認める措置をとるべきことを勧告することとありますが、これだけの事柄は全部現行法の請求調停でできるのであります。なぜそういうことを私が申上げるかと申しますと、この二つ目の調停を行うことということができるのはこれは一見明白でございますばかりでなく、調停ができますならば、第一の斡旋を行うことは当然調停行為の中に数限りなく含まれる事柄でありましてこれは当然できる。それから事件の実情を調査し、公表することということも当然調停の中で適当にできます。解決のために必要と認める措置をとるべきことを勧告すること、これも当然にできるのであります。明文を待たないわけであります。ただ仲裁を行うことができるかどうかというと、これは調停ではできないのでありますけれども、法案における仲裁を行うことというのは第三十条各号に該当する場合に限りとあるのです。これは現行法の仲裁のできる範囲に限るわけであります。そういたしますと当事者の合意があるときは仲裁をすることになります。当事者の合意が成立したときに仲裁することであるならばあえて法案の改正を待たないわけであります。結局この規定は全部現行法の請求調停で賄うことができるのであります。従つて三十八条というこの改正法案のこの五十日間は争議を行うことができないという規定を設ける必要がない。なぜないかと申しますと、現在のここ両三年の中央労働委員会における重要な争議の調停に要した期間というのは約五、六十日でございます。二月以内でございます。この範囲内はどの労働組合もみずから進んで争議行為を行わずに調停がそのぐらいの時間を要するであろうということを十分斟酌して、その中で争議解決を待つておる慣習があるわけであります。この慣行に対して法規でかような規定を設けることはただ刺激するばかりであつて実情上何にもプラスにならない。大体争議というものは当事者双方の円満な妥結でなければ内攻してしまつて外見的な解決は少しも実質上の解決になりませんですから、それから行きまして現行法十八条五号を十分活用する余地があるのでありまして、何も加える必要はないと思います。制限時間が参りましたのでこれから先私が申上げたかつた点だけを項目だけを申上げて終ります。改正法はこの公益争議の罰則の規定を従前の団体責任と申しますか、機関責任の見地の規定から外しまして、全部個人責任に切替えられました。これは大変な変更であつて、私ども機関責任の理論が労組法施行法適用上最も妥当なものであると考える者にとつては身の毛のよだつような改正であります、何とも言えない。労働関係の実際の経験をその方面の学説判例の進行に対して全然逆流するところの規定であつて、私は全然これはとるべきものではないと考える次第であります。
 それから公共企業体労働関係法につきまして第八条の団体交渉の範囲を善意の改正を加えられたことにつきましては深甚な謝意を表する次第であります。一切の労働条件がこれによつて団体交渉の範囲になり調停及び仲裁の対象になるということが明確にされましたので、従前実際起りましたところの数々のその点の解釈の食い違いはこれによつて一掃されると信ずるわけであります。但しこの現公共企業体労働関係法案の思想の中には、この公労法の中から不当労働行為関係の規定を一切なくそうという思想があります。第五条を削除する、これはそうなりますと公共企業体の職員及び今度公労法の適用になるところの現業官庁の職員は、公務員法によるところの不利益行為に対する審査請求権もなくなつてしまうし、一般労働組合法による不当労働行為の仲裁申立権もございませんし、それから公労法上に僅かに残されておつたところの不利益扱いの禁止の規定もなくなつてしまつた。余すところは苦情処理の規定によつて両当事者の合意の下に救済の規定を設けるより仕方がないというところに落込んでおるわけであります。これは明らかに不手際であるというか、立法趣旨をどつちかに一定しなければならない。公労法の適用下の労働者が一般労組法の適用を受けて、不当労働行為に関する限り労働委員会の管轄を受けるとするものであるか、そうするならば現在の公労法三条の規定を幾分表現を修正すればすぐできます。そういうふうにしても事態は少しも損われない、大変結構なことになりはしないかと察する次第であります。若しそうやらないならば、現在の法案のような考えを進めるならばこの苦情処理機関、この苦情処理機関の制度をもつと真剣に読みこなして、現在の苦情処理では両当事者の機関が同数ずつの委員で苦情処理機関を設ける、それが三審制で進行して来る、一番てつぺんへ行つても二対二で多数決の結論が得られないときには、苦情処理問題の案というものが一件々々皆廃案になつてしまうことになる、そのあとが現行法の規定ですと、調停申請が解釈上行えることになつておりましたのを、今度の法案によりますと、調停申請の道がすつかり削除されてしまつております。こうなつて来ますと、折角このように苦情処理の機関ができて来るのは大変結構なことであるのでありますけれども、それが最後に第三者の裁定に服して首尾一貫するところがないというために無効になるわけであります。このところを直して頂きたいのでありまして、これを直すためには当事者の苦情処理機関で解決の得られなかつた問題はこのまま仲裁委が管轄して仲裁裁定でこの結論を出す、こういうことになりさえすれば簡単に処理が又つくわけでありまして、三十三条の仲裁委員会の裁定の範囲というものが当事者間で解決のつかなかつた苦情処理事項、こういうものをもう一つ加えて頂きたいわけであります。一般労組法の不当労働行為に持つて行くか、さもなくばこの仲裁裁定の範囲をもう一つ拡充して頂いて当事者間で解決のつかない苦情処理を解決する、こういうふうにして項きたいのであります。
 以上申上げまして終ります。
○委員長(中村正雄君) 続いて岩垂君にお願いいたします。
○公述人(岩垂肇君) 先ず労働関係調整法の改正案に対して意見を申し述べます。
 最初に労働関係調整法第三十七条の公益事業の争議に関する冷却期間の問題でありますが、現行の三十日から十五日に短縮しましたことに対しましては賛成であります。けれども更に理想を申しますならば予告制度にすべきではなかろうかと、こういうふうに考えます。その理由を申述べます。この十五日は従来の冷却期間がそうでありましたように、公益事業の労働争議もそれだけ現行においては三十日でございますが、その三十日だけ長引かせ且つ解決を困難にならしめるという結果になると思いますし、又一旦冷却期間を経過してしまえば何時でも争議行為ができるのでありますから、結局公益事業の抜打ストから公衆を守るという本条の目的を達し得ないからでございます。かかる意味からむしろ冷却期間制度を廃して予告制度に改たむべきであると考えます。まあ予告期間は二、三日でよかろうと考えておるわけでございます。
 次に緊急調整の制度について意見を申述べます。法案の内容については先の公述人が詳しく読まれましたからそれは省略いたします。問題点は緊急調整の決定がなされますと五十日間争議行為が禁止されることであります。この規定は労働者の争議権を制限することになるのでありますけれども、公益事業又は公益に著しい障害を及ぼす労働争議について放置すれば、真に国民生活に重大なる損害を与えるような危険がある場合というものは、即ちいわゆる少数者の生存権のために多数者の生存権が脅やかされる場合でございますから、もとよりこれは真にそのような危険のある場合でございますが、この場合に本来自主交渉を建前といたしまする労働争議ではありますけれども、国の機関であります中央労働委員会が当事者の間に入つて自主的解決を促進せしめるということは必要であります。そのためには争議権の行使を公益のために、公共の福祉のために一時制限をするのは止むを得ないことと考えます。ただ問題はこの規定の運用如何によりましては不当な争議権の抑圧になる危険が多分にございます。この弊害を少くするためには緊急調整の決定を労働大臣とせずに、中央労働委員会としたほうがよくはなかろうかと考えます。労働委員会のほうが比較的政治性が少い。労働大臣とすることは自主的解決を本義とするところの労働事件に政府の干渉が入る余地があり、不当であると思います。併し私はこの法案第三十八条違反罪、即ち五十日の争議禁止に違反してストをやつたというこの三十八条違反罪は、本質的には三十七条違反罪と異ならないのであると考えておりますが、この法案を見ますというと、その処罰の手続が違つているように思います。これは私が法案を読み違えておるのか知れませんが、私の見るところによれば処罰請求の手続に関して違いがあるようです。両者の犯罪の間には本質的に違いがありませんから、三十七条違反と同じように労働委員会、もつと具体的に申しますならば公益委員会の決定によつて労働委員会が検察庁に請求する、つまり労働委員会の請求を待つて論ずるのが妥当だと思うのであります。尤も手続の迅速性ということについては別に工夫すべきであろうと思うのです。で、先の公述人が申しましたように、今度のこの犯罪は団体責任でなくて、その行為をなした者ということになつておるので、尤もこの解釈は従来もまあいろいろな解釈があつたのでありますが、若しそのような個人責任、それに参加した者がみんな罰せられる、恐らくそういう解釈は無理かと思うので、やはり争議行為を指導した者が事実上責任を負うということになるだろうと思うのでありますが、とにかくそういうような点も併せ考えまするというと、現在の処罰方法では労働者にとつて或いは不利なことになるのではないか。即ち原案のままでは三十八条違反の疑いがあれば直ちにこの労働委員会の請求を待たないで、直ちに検察当局が活動を開始し得るというふうに考えられます。従つて第四十二条の規定を以上のように修正すべきだと思うのであります。次に緊急調整の手続の終了の時期について申上げます。一つの緊急調整に対しまして五十日のスト禁止が建前であるようですが、五十日たつても争議が依然解決しない場合は、その緊急調整の手続は五十日の経過を以て終了するものと見るべきであるかどうか、若し仮に五十日で終了するものと見るならば、一つの争議行為に対し第二、第三の緊急調整の決定が繰返しなされることが可能となり、従つて五十日の禁止は幾らでも更新されて行くことになります。かくては労働者の争議権の不当な制限となる虞れがある。で、この点本案では明確になつていないようです。これも私の理解が足りないためかと思いますが、緊急調整終了の時期を明確にして置く必要はないであろうか。これは労働者の利益のためにも、又公共の利益のためにも必要だと思うのであります。
 次に調停申請却下の規定について意見を申上げます。結論から申しますと、この規定は毒にも薬にもならない規定であり、削除するのが適当だと考えます。その理由を申上げます。
 先ず第一に冷却期間の制度を一方に認めております以上労働者としては一日も早く争議権を獲得して対等の交渉力を回復したい、その上で自主的な交渉をしたいというのが人情であります。従つてときに自主交渉の不十分又は調停の時機の熟さない調停申請のあるのは避けられないのであります。即ちこの規定は冷却期間制度の下では誠に可能性の少い規定でございます。更にもう一つの理由は自主的交渉が不十分であるかどうかの認定ということは極めて困難でございます。実は私も労働委員会の会長をやつたような多少の経験もありまして、その経験に徴して見ましても、これはむずかしいのであります。先のかたが申しましたようにまだ調停の時機が熟しておるかどうかという判断は誠に困難でございます。而もこの決定は労働委員会の労働者の代表委員の出席いたしまする三者構成の労働委員会の総会において行うのでございますから、却下の決定を見るというようなことは先ず実際にはめつたにあるまいと思います。又実際においてかかる決定をあえてなし得る勇気を現在のすべての労働委員会に期待できるかどうか、この点甚だ失礼でありますが、私は甚だ疑問であると考えるのであります。で現行法の解釈論からしましても、まだ調停の時機が熟さないものを却下できるというような解釈も可能であるのでありますが、あえて却下したというような事例も私どもは余り聞かないのであります。以上の理由によりまして、私はこの却下の規定はたとえ入れて見ましても実際には却下ということは殆んど行われる可能性がなく、徒らに労働者の感情を刺戟するだけであつて、何の役にも立たない、恐らく空文と化するであろうと思います。削除したほうがましだ、かように考えるものであります。労調法の改正案の主要部分についての私の意見は以上でございます。
 で、以上の部分のほかはいずれも現行法施行後の実績に徴してすべて改正の必要を痛感されていたした部分でありまして、そういうものが多く原案に賛成であります。おおむね妥当な改正案と言えると思います。
 次に労働基準法の改正案は妥当であり、原案に賛成であります。
 最後に公共企業体労働関係法の改正案、地方公営企業労働関係法案に対して現業公務員に団体交渉権を認めたことは漸進的ではありますけれども、労働者の権利伸張の方向に一歩前進したものであり、現業公務員の業務の特殊性から見て改正案は妥当である、こういうふうに思います。ただ仲裁裁定が地方公共団体の理事者を拘束するものであるということを法規上明確にすべきだ、こういうふうに思います。
 以上を以て私の考えを申述べました。
○委員長(中村正雄君) 続いて金原君にお願いいたします。
○公述人(金原進君) 私金原でございます。実は労働委員長からお話がございましたように、東京都の公述人といたしまして他の職員が出席いたしまして公述をするという予定でございましたのが、急に変りまして、実は正直なところ今朝御通知を受取つたというような実情でありまして、公述人といたしまして出頭いたしまして甚だ準備もできておりませんので誠に恐縮に存ずるのであります。只今公述をお求めになつておる三つの法案のうち、最も地方公共団体に関係の深い地方公営企業労働関係法案について申上げますれば、御承知のようにすでに国家公務員といたしまして国鉄、専売等におきましては公営企業団体等の労働関係法がすでに昭和二十三年から施行されておりまして、その実積に徴しましても今回政府の御提案になりました地方公営企業労働関係法案が全体から見まして私は適当じやなかろうかというふうに考えておる次第でありまして、これにつきまして逐条御意見を申上げれば、実はプリントがございますが、一応朗読で済みますので、全体から申しましで結論は只今申上げました通り原案に私どもは賛成をいたしておるということでございまして、なお御質問によりまして、又それぞれの条項でお答えを申上げたいと存じます。
○委員長(中村正雄君) 続きまして別所君にお願いいたします。
○公述人(別所安次郎君) 今回の労調法、労組法改正につきまして簡単に意見を申述べたいと思います。労調法におきましては、第八条の二として特別調整委員の制度が設けられましたが、これにつきましては、特別調整委員を設けましても、これを実際に運用することは困難ではないかと思うのです。例えば現在の斡旋員名簿があつて、斡旋員が登録されているのでありますが、実際は、例えば中央労働委員会において申しますと、現在の中央労働委員会の公益委員が主となつてこの斡旋に当るというような実情にありますので、特別調整委員というものを設けても、特別調整委員が労働委員会の総会に出ない限りは、委員会のいろいろな模様が十分にわからないということもあつて、運用されないのではないかと思います。現在の調整については、臨時調停委員のような制度がありますのですから、こういう制度をもう少し活用すれば十分ではないかと思います。仲裁委員会が新らしくできますのについては、仲裁委員についても臨時調停委員のような制度を設ければ足りるのではないかと思います。こういう非常に重重しい任命手続を経て、調整委員を任命するという必要はむしろないのではないか、現在若し委員が不足であるために予備員と言いますか、或いは特別委員と言いますか、そういうものを置く必要があるとすれば、むしろそれは判定機能を掌る委員が必要なんでありまして、この判定の問題は、一件ごとの審査の期間が非常に長いために、公益委員は非常に多忙であるというのが実情であります。若しもそういう制度を置くことができるとすれば、むしろ判定機能を担当する特別の委員が置かれるような制度のほうが必要ではないかと思います。
 それから次に、調停の申請を却下することができるという問題について申上げたいと思いますが、これにつきましては三十七条の三十日間の期間を、十五日に改めるということと一緒に関連があると思いますので、二つを一緒にして申上げたいと思います。私の考えは、現在の三十七条の冷却期間の制度というものは、実はその立法の目的から言いますと、現状はむしろ無用の制度になつておる。この期間の間に調停を進行して、それによつて問題を平和裡に解決して成るべく争議を避けたいという目的から言いますと、逆にこれは組合が争議の準備をするウオーミング・アツプの期間になつていると思います。従つて、これを仮に十五日に変えて見ても実情は変らないのではないかと思います。それから又十五日では、実際三十日でも調停の期間としては不十分でありまして、現実には最近ここ二年ほどの統計は、調停だけの期間が約五十日くらいかかつておるのでありますから、三十日を更に十五日に縮めるということは一層無用ではないかと思います。そこで、十五日については、今私が申上げた通りでありますが、これを更に却下するという問題でありますが、先ほども公述人から御意見がありましたように、これを却下するということは、三者構成の委員会としては、実はそういう制度を置いても現実には実施しがたいのではないかと思います。結局そういう申請がなされれば、これを受けてしまうということに現状ではなり勝ちではないかと思います。現在の労働委員会におきましても、去年の電産のときでありましたか、一度却下はしませんでしたが、交渉未熟であるという理由によつて、これを当事者間の団体交渉を再開するという勧告をして戻したことはあります。ですが、これを却下するということになると、非常に実は困難ではないかと思います。従つて、申請がなされれば必ず受付けられるということになるのではないかと思います。若しも冷却期間の制度を置き、それから置くとすれば、むしろ三十七条の「調停を申請をなしその申請をなした日」というのを決議のあつた日というふうに、十八条三号には決議があつた日ということになつておる、それと併せて決議になつた日ということに変えたほうが、むしろ三十七条をそのまま置くとすればそのほうがいいのではないかと思います。そこで三十七条をどうするかということになりますが、私はむしろ予告制度をとつて、それで十分ではないかと思います。ただ私は、一般に言われます予告制度を簡単に、そのまま申上げようというのではなくて、予告をするときに、組合員の全体投票或いは代議員の投票にかける、そうして予告をするという制度にしたほうが現状よりはベターになるのではないかと思います。それは、組合は最近は、例えば要求案を大会で決定しますときに、ストの期日を大よそきめてしまう。そこできまつたその争議のスケジュールに従つてずうつと進めて行くというのが実情であります。従つて、実際に争議をする一月とか或いは半月とかいうところに来ますと、調停或いは斡旋というものが途中になつて、或いは自主交渉によつて、双方が相当に交渉を進捗さして、最初ストを決定したときの状態とは非常に状態が違つておるというのが実情であります。従つて、予告をするときに、ストをする、例えば十五日以前には必ず予告しなければならんという制度にすれば、その予告をするときに、全体の投票に問うということにすれば、最初にストを仮に大会で決定しても、今度予告をするときに、必ずしも同じ結論が出るとは限らないのではないか。むしろそのほうがストを避けるという意味においては効果があるのではないかと思います。そういう意味において、予告をするときに、その予告について全員或いは代議員の投票にかけるという制度にしたいと思います。
 それから、次は緊急調整でありますが、緊急調整の制度は、十八条の五号がそのまま置かれているから、緊急調整は下必要であるということには必ずしもならないと私は思います。それは、争議のいろいろな今までの態様から申上げますと、例えば十八条五号の適用をすべきような事態と、それから例えばゼネストのような、或いは治安立法ででもこれを律すべきではないかというふうな争議との間にもう一つ段階があつて、この緊急調整で挙げていますように「これを放置することにより国民生活に重大な損害を与へる」というふうなそういう事態のあり得ることが今まで一の経験から実際にあるんであります。そこで私は緊急調整については、十八条五号をそのまま置いてもなお緊急調整によつて争議を停止させるという必要は十分あると思うのです。例えばその例を申しますと、昨年の十一月から十二月にかけての電産の争議のように、或いは十一月の二十何日でしたか、東京電力の組合と電産の組合とが同じ目に重なつてストをやる、電源を切るという事態がありました。で、実際は労働委員会の勧告によつて東京電力の組合がストを中止しましたから、東京は暗黒にならないで、或いはサイクルが下つたりするというような事態が起らなかつたのでありますが、若しもそういうことになるとやはり争議をとめなくちやいかんという事態は十分現状においても起り得ると思うのであります。そこで緊急調整としては当然そういう事態を予想してこれをきめる必要がある。ただその場合に「これを放置することにより国民生活に重大な損害を与へると認めたとき」という表現で十分であるかどうかということになりますと、多少問題があると思いますが、例えばこれを、このままでありますと、この緊急調整の規定を、まあ濫用でもないでしようが、しばしば宝刀を抜かれるということによつて争議権の弾圧があるということもあるでしようが、同時に企業の面から見ましても必ずしもこれをしばしば適用されるということは望ましいことではないと思うのでありまして、少くとも国民生活に重大な損害を与える緊急且つ現実の必要あるというふうな、もう少し絞つた表現が必要じやないかと思います。それからこの緊急調整の決定をする決定権者でありますが、これが例えば内閣総理大臣とか或いは労働委員会という意見もいろいろあると思うのでありますが、労働委員会がこれを決定するということは三者構成の現状では殆んど実際において不可能ではないか、或いは少くとも現実の事態の緊急な必要に即さないんじやないかと思います。それから内閣総理大臣が決定するというのも、この事態において緊急を要する場合に必ずしも時間的にも十分でもないんじやないかと思われます。やはりこの原案のままのほうがいいんではないかと思います。
 それから労組法でありますが、労組法につきましての今度のこの改正につきましては、別に新らしく申上げるところはありませんが、ただこの改正の機会に現在の労組法の十七条、十八条の労働協約の一般的拘束力或いは地域的な拘束力、これの条項を削除するということは願わしいと思います。それはこの十七条そのものの狙つているところは、未組織労働者の保護であるか、或いは組織労働者の保護であるかというふうな点に現在も必ずしも判例なり学説が統一されておるわけでもありませんが、それほど非常に問題が多い。又組合自体が団結権を保障され或いは団体交渉権を保障されているんでありますから、組合自体が自主的に決定すべきものが法律的に自動的に決定されるというふうな点にも問題があると思います。又四分の三の労働者の数によつて決定されるということは、その数の異動によつて労使間の関係がいつも不安定であるということになると思います。それから十八条につきましては、地域的に拘束するということは組織労働者の例えば過当な保護というようなことにもなるでしようし、或いは経営について十分な考慮がなされないで、むしろ一方的な受働者の保護に偏するというふうなことにもなると思います。又その適用の例も少いのですから、この際削除したほうがいいと思います。これで終ります。
○委員長(中村正雄君) 以上によりまして午前の公述人の公述は一応予定通り終了いたしました。これに対しまする各委員の御質問に移りたしと思います。
○堀木鎌三君 小林さんに承わりたいのですが、小林さんにお伺いしたい点は、専売公社の調停委員長をしておられて公共企業体の調停に関して何らの御感想も承わることができない。その点について公共企業体の労働関係法のほうで調停に関してどうお考えになつているか、これが第一点でございます。それから実は不当労働行為について小林さんの御見解が述べられたのですが、私どもの承知しておるところでは、今度の改正案によりますと、公共企業体のほうの不当労働行為についても労組法の適用を受けるというふうな考え方なんですが、先ほど違つたお考えをお述べになりましたので、実はその点の条文をずつと申上げたいと思うのですが、この点について従来公共企業体労働関係法のうちで、第三条につきましては従来は「(第七条、第八条及び第十八条から第三十三条までの規定を除く。)」とこうなつておりましたのですが、この問題の第七条は第一項但書だけを除いてやつている、全文を除いていないわけだと思うのです。そうなつて参りますと、この不当労働行為の条文が除外されていない。つまり労組法の関係になるのだと、こう解釈しているのですが、その点について御見解がありましたらお伺いしたい。この二点を先ずお伺いしたいと思います。
○公述人(小林直人君) 只今の堀木委員の御質問に対しまして申上げますが、先ず不当労働行為が関係で私が申上げましたのは、六法全書で見ますと、第三条、現行法によりますと、公共企業体労働関係法第三条には労働組合法の定めるところによるとありますところに括弧が入りまして、第七条、それから十八条から三十三条までの規定を除く、こうあります。そうしますと、七条が不当労働行為の規定で、それから二十五条、二十七条というところでその救済手続の規定があるわけであります。いずれも取除かれてあるわけであります。それで改正法のほうでその点がどうなつているかを拝見しますと第三条中公共企業体を公共企業体等に改めるとあるだけでありまして、今の削除規定の更に削除がございませんので私はこの点を疑問としたわけでございます。これだけの私の手持にある資料で見ますと、公共企業体労働関係法の適用を受けるところの全職員の職務についてはすでに公務員法を外されているので公務員法による不利益取扱処分の救済を受けられない。同時に、又この第三条に括弧の中に削除規定がありますので、一般労組法による労働委員会の不当労働行為救済手続にも参加できない、こういうことに読めるわけでございますが、如何でしようか。そのように不当労働行為の点を自分の手持の資料で解釈しておるわけでありますが、で甚だ困ると思うのでございます。公労法の現行の三十六条という規定がありまして、これは今度の法案でも生きる規定でありますが、仲裁委員会の指示権が規定してある、「仲裁委員会が第五条違反の行為があると決定したときは、その公共企業体に対しその行為の取消を命ずることができる」、こういう規定が現行でありまして、これを今度改正のほうで見ますと、五条が削除になりますので、五条の代りに労組法七条が入る、そして行為の取消を指示又は命ずることができると、こう改められておりますが、私はこの仲裁委員会の指示、若しくは命令権という三十六条の規定が頗るわからない規定なんでございます。又実際の当該仲裁委員会が発動することもできなくなつておるわけであります。なぜというに三十三条に仲裁をする範囲というものが規定してあります。これが仲裁委員会の権限である、この権限の中には不当労働行為の指示、若しくは命令権が規定してない。それで三十六条で卒然として指示権があるわけでありますから、これが権限規定であるとするならば、その救済手続規定が何にもない。一般労組法では労働委員会中の公益委員が準司法的機能として裁判に準ずるような詳細な手続によつて不当労働行為の有無を判定するわけでありますが、その手続が少しも存在しないのでありますから、現実の公共企業体仲裁委員会というものは何らの不当労働行為を調べる権限がない。併し権限がなくて命ずる権限だけあつても実際それは立往生であります。それから若しこれは積極的に解釈していいのだということになりますと、仲裁委員会は籔から棒に当事者の審問も何もせずにいきなりその嫌疑だけで以てこの行為は取消したらよかろう、こういうふうに言わなければならなくなる、そのようなことは一般労組法との均衡上到底解し得られないことでありますから、それを何としても率直に解するわけにも行かないわけであります。そうして見ますと、私は消極的に考えますのに、つい先般行われましたレツド・パージの際に、これは事実国鉄でも専売でも多数のレツド・パージがありました、それに対して不当労働行為の申立ができませんので、苦情処理にかかりました。事実そういう経過を辿つたわけであります。苦情処理の結果これは労使委員が二対二でありますので、どんなに詳細な手続を経ましても最後は意見が二対二に分れまして、意見の一致を見ないそうすると苦情処理の処理案というものが成立しないわけであります。そういたしますとこれで廃案なんだ、もう苦情処理の手続は終つたから一切は終つたのだという使用者側の主張が出て来る可能性があり、又組合側ではそんな馬鹿なことがあるか、これは仲裁裁定ができんと、こういうふうに主張されたわけであります。現行法によりますと仲裁委員会は苦情も管轄できますので、その二十条に頼つて管轄したわけでありますが、それが今度は調停が受諾されないときに仲裁委員会に管轄権があるかどうかということが最も危ぶまれたわけでありまして、非常に当惑したところでございます。かような案でございますからどつちみち苦情処理の労使混合委員会が或る結論が出せないときに第三者によつて仲裁判断を受けるということはこれは常識であります。常識だが、労働協約で当事者間で成立している場合はよろしうございますけれども、成立していない場合にはこれは仲裁判断ですから仲裁委員会に管轄権ありと、こういう法案改正の機会に御規定願いたい、こういうふうに思うわけであります。若し今堀木委員のおつしやるように一般労組法の適用ありというならば、それは又それで結構なことでございます。それから公共企業体関係の調停について所感はないかというお言葉でございました。先ほど時間がございませんでしたので一言も触れませんでしたが、実は国鉄調停が仲裁になつての第一号の仲裁がその後実施されずに裁判問題になりまして、近く最高裁の判決が下る段階にありますのですが、ところが最高裁は突然としまして他の事件について労働組合は個々の組合員たる労働者の賃金請求権について、労働組合みずから訴訟手続を行う当事者権能がない、こういう裁判を大法廷でこの四月突然に下されました、本法案が御審議になつたのちにそういうふうな実情になつて来ましたので、最高裁の大法廷でありますので、これはまあ訴訟関係では一般に拘束力を持ちますので、こうした関係の組合が当事者になつております訴訟の全部職権却下を見ようとしておるわけであります。そうなりますと、全く第一号仲裁は国鉄のあれは三十五億ですか、四十億の仲裁判断によるところの裁定の効力というものが裁判権による審査も受けないで廃案になる、こういうふうな結末になつておるわけでありまして、私、尤も争議権を奪つてその補償として公正な仲裁委員会による決定によつて仕事を処理する、こういう事柄がこういう結末になることについて深甚な遺憾を表するわけであります。ですからこれはどこに急所があるかと申しますと、公労法というものは大体が労働関係法規でありますけれども、その十六条というとろに財政法規が含まれておる、十六条を除く他の法規は公共企業体関係の労働法規なんです。殊に労働協約に関する法規が多いわけであります。それで仲裁裁定は労働協約と同一の効力があるということになります。そういたしますと、当事者の間の談合が不成立で仲裁裁定が下つたときには仲裁裁定が下されたと同時に両者の間に労働協約同様の法律関係が設定されておるわけであります。労働法的には設定されておるわけであります。然るに予算が伴つておりませんので実施ができないという、履行能力がないということになるわけであります。その履行関係を、それは国会の財政審議権を奪うわけに行きませんので、政府が、つまり公共企業体の理事者が予算をつけて国会に提出して御審議を願うという段階があるべきであります。それが十六条におきまして明確を欠きますので十六条の規定はその労働協約なり仲裁裁定なりの有効、無効そのものを決定審議するところの権能を持つかのごとくなつておるわけであります。この点明らかに根本観念の混淆がありますので是非とも十六条につきましてはすでに世論もございますことですが、適当な法案改正を願いたいわけでありまして、この法案におきましてはただ公共企業体等と、こう改めることになつておりますが、是非理事者を拘束するのであることと、理事者若しくは政府は予算を添えて国会に提出しなければならない旨と、それから国会で否決されたときに初めてそれは履行能力がないのでありますからその労働協約、若しくは仲裁裁定はそこで拘束力を奪われることになるのだ、というふうに当事者間に議論のないように明確に規定をして頂きたいわけであります。いろいろ十六条につきましては改正意見も諸党派にございますように仄聞いたしておりますが、それらのお考えをおまとめ願いまして是非とも十六条の難問を解いて頂きたいと思います。これが解かれますと仲裁の権威が遥かに増大いたしますし、仲裁が強くなりますと調停で解決がつくようになるわけでありまして、現在は徒らに機構を増し加え、増築をしますけれども、国家のその点の費用が無駄に使われるという結果になるわけであります。
○堀木鎌三君 もう少し不当労働行為の点は研究して見たいと思うのですが、実は今お手許に政府原案が行つておると思うのですが、政府原案の中の第三条、十一頁でございますね、第三条中公共企業体を公共企業体等に、次に第七条第一号但書と、つまり第七条を今までは全文適用除外にしておつたわけでありますね。ところが今度は第七条の第一号の但書、即ちユニオン・シヨツプの点だけにしてしまつたわけです。それで第七条が全部適用するということになつたはずなんであります。
○公述人(小林直人君) わかりました。その点私の誤解があります。
○堀木鎌三君 ただ手続の点ですね。手続の点と今御指摘になりました、結局仲裁委員会が指示を取消すことができるという単純な規定であつたのを修正いたしておる点は少し問題があると思うのです。併し公共企業体の仲裁委員会で若しも不当労働行為を取消す権限があるとすればそれに伴う手続は仲裁委員会自身が作り得るのじやないですか、現行法の建前では……。その点は如何ですか。
○公述人(小林直人君) 仲裁委員会が規則制定権がありますので三十三条の規定と、今私読み違えておりましたが、この七条というのは労組法七条の意味であつたのですね。
○堀木鎌三君 そうです。
○公述人(小林直人君) 労組法の七条がかくのごとく改められたとしますならば、仲裁委員会が手続規則を新たに設けることによりまして殆んど解決される面がございます。
○堀木鎌三君 小林さんにはそれくらいにしまして、岩垂さんにお聞きしたいのですが、クーリング・タイムを予告期間にしたほうがいいという御説明、それから別所さんもその点では予告制度が御賛成のようだつたと、こう思うのでありますが、ただ岩垂さんのお話では予告が二、三日くらいでいいだろうというお話なんでございますが、一体このクーリング・タイムを設けました一つの理由に予告的な機能を持たせようということが一つの目的であつたことは確かです。その間に冷静に労働者が考えるということと、一般公衆に抜打的なストが行われないという二つの目的があつた。併しその点について前段のほうはともすれば実際上は効力がなかつた、予告になりますと少くとも公益事業に関するようなものにつきましては相当の期間周知徹底させるだけの配慮が組合側としてもあつていいじやないか。果してこの大きな公益事業なんかに二、三日の予告で社会的に妥当性がありと認められるか、その点は如何でございますか。
○公述人(岩垂肇君) 予告期間にしたほうがいいという私の趣旨といたしましては、先ほど申述べましたように現行法の狙いは、三十七条の趣旨というものは三十日の間にできるだけ労働委員会の調停によつて解決させると、それから二番目には公益事業の抜打ストから公衆を守るという二点にあるわけですが、併し結局その冷却期間というものは徒らに争議を延ばすのみならず却つてかれこれしておるうちに問題の解決を困難にせしめるということになつておる、これを短縮したということは、これはその意味において賛成である。併し理想としては予告期間、予告制度にしたほうがいいということを述べたわけですが、予告期間を只今二、三日と試みに申したわけでありますが、もとよりこの期間はもつと長くすべきではないかということも考え得られるわけでございますけれども、併しそれを延ばすということは労働者側にとつて少し酷ではないかというふうに考えたから短く二、三日ということを申上げたわけであります。予告期間の制度、予告期間を一週間とか、或いは五日とかいうふうにしましても結局その予告期間というものを自主的な解決に役立たせると、そういうことに役立たせるということは先ず不可能だと私は考えますのでまあ二、三日というところをとつたわけなんです。
○堀木鎌三君 別所さんから、若しも予告期間だつたらどういうふうにお考えになつておるか。
○公述人(別所安次郎君) 私は予告制度をとりますと、実は現状の組合はスト宣言という形で予告のつもりではありませんが、実は予告のようなことをやつているわけでありますが、やはり一般の大衆にこれを周知徹底せしめるためには少くとも半月とか二週間という時期はあつたほうがいい。それから例えば経営者側としましても少くとも争議による一般大衆の損害を最小限度にとどめるだけの準備は必要である。そうしますとやはり相当の期間はなくちやいけないのじやないかと思います。例えば去年の電産の争議のように電産の封筒戦術によつて会社側が山の奥の発電所を切るのについてそれの防止にいろいろ準備をするというふうなことも実際あつたのでありまして、相当なやはり期間をおいて公衆に対する損害を最小限度にとどめるだけの余裕を与えてやるという必要もあると思います。
○堀木鎌三君 それから岩垂さんに伺いたいのですが、緊急調整の場合の違反でございますね。それの手続が違うんじやないかという点についてお話になつたわけですが、この改正案を見ると三十七条の場合と同じように私は労働委員会の請求を待つてという規定があつたように記憶しておるのですが、四十二条に「第三十九条の罪は、労働委員会の請求を待つてこれを論ずる。」こう書いてあると思うのでありますが、何か手続について三十七条の場合とクーリング・タイムの場合と違つた何があるのでございましようか。
○公述人(岩垂肇君) 現行法四十二条には「第三十九条及び前条の罪は、労働委員会の請求を待つてこれを論ずる。」こういうふうにございます。それをこの改正案においてはそれの中の前条というのを削除するということになつておりますから、従つて法案においては結局四十二条は「第三十九条の罪は、労働委員会の請求を待つてこれを論ずる。」こういうことになつておりまして、三十九条の罪というのは三十七条違反であるわけです。つまりクーリング・タイムに違反してそうやつたということである。ところがこの五十日間のスト禁止を破つたというのは三十八条なんでございますから、三十八条のことは四十二条には何も言つてないので、従つてこれは労働委員会の請求を待たなくとも直ちに検察当局が活動を開始し得ると、こういうふうに解釈したのですが、或いはどつかに読み違えがあるかも知れません。
○堀木鎌三君 いや、わかりました。もう一つ伺いたいのですが、別所さんの考え方ですと、予告期間ができて而も緊急調整を或る程度絞ればいいと、こういう考え方のようなんですがね。その中央労働委員会の何か決議を経ることは三者構成上事態に合わないと、こうおつしやるのだと、労働大臣が一方的にきめちやつたほうがいいという考えに近いように思うのです。一体中労委を長くしておられて中央労働委員会がそういうものについて或る程度の自主的な判断なしに第三者から請求されるというふうなことは中央労働委員会の機能から考えてもどうかと思うのですが、その点についてそういう責任を負いたくないと、まあ露骨に言えばですね、そういう考え方がおありになるのかどうか、その点をはつきりさして頂きたい。
○公述人(別所安次郎君) 実は緊急調整については労働委員会の議を経て決定したほうがいいという意見は実は労働法令の審議委員会でもたびたび意見が出たのでありますが、これについては実は労働委員会は三者構成でありますために、例えば今の調停の却下をするというふうな場合にもなかなか労使の利害が対立して一致を見にくいのであります。で、緊急調整をやる場合には勿論そういつたふうな緊急の事態でありますから労働委員会として自主的にそういう問題の決定ができるのが当然であり、又できるとは思いますが、ただそういつたふうな緊急の事態に対処して早急にその決定を見るということは、これは争議の制限という問題とからんでおりますために非常に困難じやないかと思います。そういう意味で実は労働委員会が自主性を放棄するようにとれるかも知れませんが、実はまあ緊急の事態には合致しないのじやないかと思うのであります。
○村尾重雄君 小林さんに一点はつきりさして頂きたい。只今の公述のうちに第八条の二項にある団体交渉の範囲という問題ですが、政府の改正案で非常に結構だと、賛成だと、賛成の上になお言葉の表現を伺つておりますが、今までの経験上これで十分だという表現があつたように私は受取つたのでありますが、御承知のように現行法八項目に分かれておるものをば明確を欠くという点と、それから重複をしておるとかう点があるというのでこれが五つに絞られております。その点で従来の国鉄、専売公社以外に電信電話公社が一つ殖えました。又附帯事業としてアルコール、国有林、印刷庁、郵政事業、造幣庁という工合に相当広範囲に対象が殖えたわけであります。その点でこの五つに絞られた団体交渉の範囲というものは間口が狭くなつたという意見があるのでありますが、それは抜いて非常に間口が広くなつたような表現のように思つたのですが、その御意見をもう少し伺つておきたいと思います。
○公述人(小林直人君) その点を申上げます。従前の八条二項の規定がこれは限定列挙であるか、例示であるかということで極めて当事者間及び学説上深刻な論争がありましたのです。ところが今回のこの規定は数は一、二、三、四、五になつておりますが、私が拝見しますところによると、第四号のところに前各号に掲げるもののほか労働条件に関する事項、こういう規定があるのです。これは一般包括的な規定でございます。これによつて他の一、二、三は例示である、その他一切の労働条件は団体交渉の対象になるのだということが明確化したと信ずるのでございます。で、労働条件ということがですな。これは一般基準を示す労働条件も労働条件でございますし、それから個別的な或る特定の人間が解雇されたというような問題も、個別的な労働条件という趣旨にとることができますので、私はこの規定がある限りは、新らしく入られる企業体その他のかたがたにもとにかくすべての一般的、個別的労働条件は団交の対象となり、仲裁裁定まで行くことができるということになつたと読めるんじやないかと思うわけでございます。それは私も理想を言つて慾を言えば希望はあるのでございます。それは現行法にもないことであり、今回の法案にもございませんが、企業体と労働組合との間の事項、いわゆる労使関係の基本関係事項の苦情処理に関する事項もその一つでございますが、例えば専従者協定とか或いは非組合員の範囲をどこに置くとか、或いはシヨツプ制とか、こういつた規定について一項目設ければもつと結構なんでございます。それを労使の基本関係に関する事項とか何とかいつて一項目設けますと、もうそれで完璧と思うのでございますが、それがなくても一般労働条件が全部入るとすれば、何とか間接的な労働条件として処理できるのではないか、こういうふうに私は感ずるのでございます。
○村尾重雄君 もう一点あなたの今までの経験上これの対象にならんという管理、運営の点で例えば運営ですが、管理はまだ外して、運営の問題では、御承知のように従来の団交に入る前提となつて、この運営の問題が相当時間を取つておる、そういう点から当然どの条項にしてもこの運営がからみ合つて来ると思うのでありまするが、今までの経験上これについてどうお考えになるでございましようか。対象にならないという管理と運営の面で……。
○公述人(小林直人君) 今まで八条一項のほうに、管理、運営は対象とならない。それから八条二項が続いてありましたので、八条二項に列挙された事項に関しましては、たとえそれが管理に関係し、運営に関係しましても、なお且つ団体交渉の対象としてよろしいのだ、こういう解釈が各調停委員会としては通説であつたよりに感じております。外部の学者はいろいろに論じたかたもあります。そういうふうに運用して来たわけでございます。
○菊川孝夫君 最初に労調法の特別調整委員を置く点について小林さんが非常に賛成の御意見でございましたが、実際にこれを運出する画になりまして、正規の労働委員である人とこの特別調整委員と違うような資格でやるというようなことは却つてこれはなかなかむずかしい問題じやないかと思うのでございますが、むしろ中労委が人員が足らんのでございましたら、今の二十一名を三十名にするとか、それのほうがむしろいいんじやないかと我々は考えるのでございますが、この点についてちよつと資格の違う、名前の違うのを二つこしらえるよりも、むしろ中央労働委員の数を殖やす、こういう行き方のほうがいいと思うのですが、この点について一点と、もう一つ公共企業体関係も、或いは地方公営企業の労働関係もすべて統一するためにおきまして、それの中で又小委員会等も設けられるようにして運営されるということにして労働委員会ですべてが一緒に捌く、こういう行き方をしたほうがいいんじやないか、私はこういうふうに考えるのですが、この二点について先ずお伺いしたいと思います。
○公述人(小林直人君) 理想と言いますと、一個の中央労働委員会があつて、そこに公共企業体関係とそれから今までの中労委の管轄分と全部が包括されることは望ましいことだと思います。併し諸般の事情で今度審議される法規がこういつた形になりましたので、殊に公共企策体関係の全職員に対して争議権を復活させるということも、なかなか実現困難のようなふうに見受けましたので、現行法に成るべく文句を言わないとい、考慮の上から、現在の公労法の管轄と中労委の管轄とが二つになるということについて私は主張しないわけであります。ですからこれが全部一つになれば私はそのほうが望ましいということは肚の中に持つております。それから特別調整委員と言いますのはそれは実は中労委から来られた別所委員も疑義を持たれたようなわけで、私が非常に賛成してしまつたということで、これは同じ中労委でおかしいじやないかというお考えだと思いますが、私はこれは反対しないでもいいと思つておるわけでありまして、それというのは現在斡旋者名簿がありまして、斡旋をお願いしておるわけですが、斡旋に関しましてはこれがもつと広範囲も最も適当ないろいろなかたに、もう少し広範囲に何らかの資格がきまつておつてお願いができたらどうか、こういう考えがあつたものですからそれでその賛成を申上げたわけであります。
○菊川孝夫君 その点について重ねてちよつとお伺いしたいと思いますが、現行法でありますが、実際問題として斡旋員が今まで有効に働いたことがあるかどうか。我々新聞紙上その他ラジオの報道等を聞いて各種の争議の進み方、解決の仕方を見ておりますと殆んど労働委員がやつぱりやつておられるので、斡旋員でうまく行つたというようなものはあの名簿をこしらえてある中で実際あるのかどうか、この点も関連すると思いますので、御質問申上げます。
○公述人(小林直人君) 斡旋は目立ちませんけれども、殆んど中労委の委員が斡旋する場合と中労委の事務局員に斡旋せしめる場合とがありまして、従つて事務局の首脳部に斡旋をかなりさせておるわけであります。やはりこれは人手が足りないものですから、そういうようなことになつているのだろうと思うわけであります。
○菊川孝夫君 今のところ斡旋員は中労委の事務局の連中がやつておるという程度でございますか。
○公述人(小林直人君) 極く稀にしかないわけです。
○菊川孝夫君 斡旋してやるという法律の解釈からいつたら、学識経験者とか世の中のすべての経験に富んでいる人、常識の非常に備わつた人というのを委嘱して、その人を斡旋員にお願いするというのが法の建前だろうと思う。中労委の事務局員を斡旋員に使うというのは、決してあの法の建前でないように思うのですが、その本質のほうは余り活用されていないというような実情でございますか、率直に言つて……。
○公述人(小林直人君) 率直に言つてそういう実情ですね。
○菊川孝夫君 それからもう一点、公労法のあの五条削除ですが、これは大分小林さんからも今お話がございまして、問題があると思うのであります。従つて五条とあとの仲裁の裁定、三十六条で五条違反の行為があると決定した場合には、それを取消すことを命ずることができる、こういう関連を以て両条が関連しておるわけでございますが、さて五条を今度削除するということになつて参りますと、如何にも意識的に組合から脱退することを雇用条件としてもいいというふうに反対解釈が成り立つことになつて来ると思うのでありますが、そこで私はこういう問題は今後も団体交渉で、労働協約ではつきりきめておきまして、そうしてそういうことはしないというふうに団体交渉がうまく行けばよろしいし、そうしてそれに違反だと認めてどちらからでも仲裁委員会に提訴して、その裁定が下された場合には、必ず服従するという協約をはつきり結んで置かん限りは、この条文が廃止になつた場合には非常にむずかしくなつて来ると思うのですが、而も三十六条のほうでは別に取消を命ずることができる、現行法でも命ずることができるが、命じても必ずこれを聞かない場合もあり得る。まあ最終決定として服するのだということになつておりますけれども、だからといつて服さない場合には法的に処罰するという規則はないわけですな。そういうことから考えましてこれは労働協約でしつかりと、もう一旦裁定が下つたら少くとも資金上、予算上の問題は別としましても、五条違反については、裁定が下つた場合には必ず服従するのだ、これは双方とも服従するのだという労働協約でも結んで置かないと、これは大変なことになると、私はこう思うのでありますが、この点について小林さんに一つお伺いします。
○公述人(小林直人君) 申上げます。第五条が削除されました点は第三条で労組法の七条の一号の規定が但書を除いて生きて来ますので、ほぼ同じ規定が実際は適用され得るということになるように見受けます。ところが、仲裁委員会の不当労働行為の是正措置ですが、この三十六条は一般労組法の二十七条の不当労働行為の救済と違つてその間接調整の制度を書いておりますので、いよいよそれを命じて後に聞かないときに実施せしめるという段階において、大変困難な問題を持つておるということを認めます。
○菊川孝夫君 そういたしますと、この三十六条によつて命ぜられたけれども聞かないような場合には、これは民事訴訟に持つて行く以外にはないのでございますか。三十六条で決定して企業体に対してその行為の取消を命じたところが、なかなか実行されないというような場合には、一体これは民事訴訟に行くより仕方がないのでありますか。
○公述人(小林直人君) この仲裁委員会の命令というものが牽制力を持つかどうかという問題になると思います。牽制力を持つた命令であつて、その命令によつてすでに例えば解雇者の解雇を取消すといつた場合、仲裁委員会が解雇を取消すということになりますと、使用者のほうで取消さないでおつても、仲裁委員会の命令次第でもう解雇は取消されたのだと、こういうふうに解することができるならば、そうすると裁判でそれを争うということが可能なんです。併しその牽制力があるかないかが法規上明白でありませんので、そこのところは非常に難問になるわけであります。結局現行法も改正法も不備であると私は信じます。
○委員長(中村正雄君) それでは午前の公聴会はこれで一応終了いたしまして、暫時休憩して、午後一時三十分から再開いたします。
   午後零時二十四分休憩
   ―――――・―――――
   午後一時五十二分開会
○委員長(中村正雄君) 午前に引続きまして再開いたします。
 午後の公述人のかたに申上げる点がございます。一人の公述の時間は二十分に日程の都合上制限いたしておりますから、御了解願います。公述人の発言は問題の範囲を越えないようにお願いいたします。問題は前以て通知いたしておりますように、労働関係の三法案であります。公述人の発言は成るべく前の公述と重複する部分は避けるようにお願いいたしたいと思います。以上お願いいたしまして宮崎君からお願いいたします。
○公述人(宮崎輝君) 先ず労働関係法改正に関する我々の基本態度を申上げまして、次に各法律に対する所見を述べたいと思います。
 世上には終戦直後に労働組合法が制定せられたときには、すべてのものに労働三権が付与せられた、それがその後の占領政策の変更によつて公務員その他に漸次労働三権が制限又は剥奪せられたということがあるから、それで占領終結の現在、その本来の正しい姿に帰るべきであるという議論をするものがあります。これは一見尤もらしく響きますが、全く反対であると思います。と申しますのは、占領政策の初期には、どうしても日本の国情をつまびらかにしなかつたという点があること、それから何と言つても膺懲的な気持が抜けなかつたということであります。従つてアメリカ自身にないような行過ぎの点を日本に実行さしておる、例えば米本国においては、すでに公務員には争議権がないにかかわらず、日本においては争議権を与えたというようなことであるとか、或いは他の追放その他諸法令においても、この膺懲的な色彩がわかるわけであります。これが漸次世界の情勢の変化と相待ちまして、助長政策に変つた結果、正しい労働法規の姿に漸次修正して行つたものであることは間違いないのであります。併しながら、まだ行過ぎの点が十分に是正されないうちに占領が絡結しましたために、我々はその行過ぎの分を更に修正を求めておるのでありまして、これが特に基準法の改正に対する我々経営者の態度になつて現われております。そうでありますからして、我々は漸く正しい姿に帰りつつあり、なお且つまだ不十分であるものを是正せんとしている現在において、これを誤まれる元来の終戦直後の姿に復帰するというがごときことは以てのほかだと、こう考えております。これが我々の労働法規に対する基本態度であります。この態度から先ず労調法に関する我々の所見を述べます。
 先ず問題になつております却下制に対する所見であります。これは御存じのように、従来公営企業の場合には、三十日の冷却期間がありますが、これはおおむね争議権を獲得する手段として、単に調停の申請をして徒らに三十日間経たしてしまうというのが現情であります。私企業におきましても、これは平和条項がありまして、斡旋調停を経るにあらざれば争議行為に訴えることをしないという平和条項に基くために、ちやんと初めからスケジユールを作つて置いて、そうして何月何日には調停にかける、何月何日に争議行為に入るというようなことがよく行われるのでありまして、この意味において従来の団体交渉というものは十二分に議を尽さざるの憾みがあつたのであります。この意味において、この欠点を除去するために本制度が考えられたということは大いに意味があると思います。併しながら果して十二分に議を尽されなかつたかどうかの基準が先ずむずかしいということと、第二には、労働委員会のこの三者構成の性質上なかなか簡単に結論が得られないという二つの理由から、この実際の発動については多分の疑いなきを得ないのであります。併しながら、こういう制度は新らしい構想としてこれを試みてみることはいいのじやないか、少くとも却下制度が行われるということによつて、却下を恐れるがために十分に団交において議を尽すであろうということは確実に期待できるのであります。こういう意味において私はこの制度に疑義を持つことはありますけれども、運用において……、疑義を持つことでありましても、これは採用していい制度であると思います。その意味において、この冷却期間の三十日を十五日に短縮するということには反対であります。と申しますのは、従来から公営企業において三十日で調停案が出た例はありません。七十日以上もかかつておるのがその実情でありますから、それで三十日から七十日の間の期間は争議権が発生するのでありますが、事実上は徳義上争議行為を行わないということが慣行として行われております。従つて三十日ですら不足である現在、これを更に短縮することは、これは現在の実情に合わないと思います。しかのみならず、この三十日を十五日にした結果、請求調停ではなしに、十八条の四号、五号による職権又は強制調停の場合もこの三十日の起算が十五日に短縮されるのであります。これは職権調停の場合だからといつて調停案が早く出るわけではないのでありますから、調停案が出るのに、特に公営企業において、料金の認可制度のある電気又はガス、鉄道というようなものについては、これは明らかにその調停案が出るのに時間がかかるのは予想されることでありますからして、はつきりと従来の欠点を除去するために考えた制度であるならば、従来の三十日で不足する上になお且つその三十日は意味がないということにおける欠点を除去するのであるならば、三十日にプラス却下制を採用すべきものと考えます。従つて十五日に短縮するのは意味がないと思います。
 それから緊急調整に関する所見を次に述べます。これは世上大いに騒がれておりますが、誠に鬼面今を驚かすの制度でありまして、内容は誠に大して騒ぐほどのことはないと思います。と申しますのは、私はこの制度に対して四つの点から考えたいと思います。先ず第一は、対象の事業はどういうことかということと、第二は、緊急調整の決定権者が労働大臣又は運輸大臣で妥当かどうかという点、第三は、緊急調整は争議行為の前に発動されるものか、後に発動されるものかという点、第四は、五十日の期間に関する是非の問題であります。第一の対象事業としては、これは先ず質的に条件を厳格にしております。と申しますのは、これを放置すれば国民生活に重大な損害を与えると認めるときということを従来の強制調停の条項に追加しております。つまり条件を厳格にしておるのであります。第二には、決定権者を従来は地方道府県の知事にも認めたのでありますが、今度は労働大臣又は「運輸大臣。以下同じ。」として、労働大臣、運輸大臣のみに限つておるということは、単に府県内のみにおける小スケールの公益事業等についての緊急調整はできないとしておるのでありまして、これはその意味におけるスケールの面から見た条件の厳格化であります。この意味において対象事業としては、これはよく考慮されておると思います。第二の決定権者、これはいささか疑義があります。これはインジヤンクシヨンそのものではありませんので、緊急調整の決定をすれば法律の結果として争議行為が停止されるということでありますので、インジヤンクシヨンそのものではありません。併しながら、それはインジヤンクシヨンの同一効果を生ずるものであると思います。そしてインジヤンクシヨンの場合は、外国の立法例を見ましても行政大臣にその権能を与えた例はありません。米国においては大統領の請求によつて検事総長にこれを命じ、検事総長は所管の裁判所をしてインジヤンクシヨンを発動させるということになつております。併しながら多少この制度に髣髴たるものは、英国の強制調停の制度であります。この英国の強制調停の制度は、労働大臣がナシヨナル・アービトウレイシヨン・ツライブールに事件を付託いたしますと、二十一日間は争議が停止されます。禁止されます。これは旧法でありますが、新法も類似のもので存続しておりますが、この制度に髣髴たるところがあります。従つて例がないわけではありませんが、ただ労働大臣が決定した結果提示せられるということよりも、私は英法に倣いまして、労働大臣その他適当な人がその事件の解決を労働委員会に付託するというような規定の体裁がより望ましいのではないかと思います。この場合に、然らば労働大臣が妥当や否やということにつきましては、私は総理大臣のほうが適当であると思います。と申しますのは、こういうような緊急調整の事態については、労働行政の立場ではなしに、通産行政の立場或いは法務庁その他の治安的な立場をも考慮した総合的な立場からこれを決定するのが適当であるという意味において申すのであります。なお総理大臣が労調法の中において公益企業の指定のところにおいて、総理大臣にその指定権を与えておるのも一つの考え方であると思います。然らばこれが事前であるか、事後であるかにつきましては、これは争議行為と書かないで労働争議と書いてあることからして、労働争議はそういう争議行為の発生する虞れのある状態を含むということからして、事前にも発動し得るものと私は解釈いたします。それで事前でありますならば、これは経営者というものは、事前であるならば多少譲歩しても解決をすると思います。併し一旦争議行為が発生しますと、腹をきめてしまうのでありまして、経営者は断固として闘う。現在の組合の財政的状況又は労働者の本質たる働きたいということからいたしまして、よほど経営者の施策が拙劣であるか、又は初めから不合理な点を持つていない限り、争議が起つた場合には現在の日本の経営者というものは争議に負けるものではありません。従つて事前に解決するほうが労使両方にとつて望ましいと思います。併しこれはそもそも労働大臣の要請は、争議行為に至らずして平和裡にものを解決することが狙いでありますから、私はこれが事前に発動ずることこそ最も至当であると思います。併しながら、これが事後に発動される場合には、すでに斡旋調停を経て不調に終つたものが更に緊急調整に入るわけでありますから、その場合には恐らく解決の途が容易にないと思います。すでに条件が双方いずれかの拒否によつて決裂した場合でありますから、これは解決することは甚しく困難でありまして、これに対してこの法律は穴がありまして、如何にしてこれを解決するかということの方法がありません。先ほど申しましたように、一たび決裂した場合には、経営者も断固として闘うということから解決は非常に困難だと思います。だから私はそういうような緊急調整を争議発生後に発動し、これが五十日をも経過してなお且つ解決しないという場合の法律として、私はこの場合はすでに経済的な領域を離れた場合がおおむね多いと思いますから、その場合を考えて治安立法が必ず必要ではないかというふうに考えております。期間の問題につきましては、これは米国法は八十日であります。五十日というのは私は短かいと思います。冷却期間を従来の三十日を据置いても、漸く八十日として米国法並になるに過ぎないということで、世上これを短縮するがごとき議論をなす者がありますが、以てのほかであると考えております。現在五十日においても短か過ぎる、むしろ五十日以上において解決しない場合に、而も調停案がその間に出ない場合の方法を私は考えるのでありまして、調停案を急いで五十日内で出すことによつて拙劣な解決策をとるよりも、そういう場合は調停案が出るまでなお争議行為を延ばされる、提示が延ばされるという方途が考えられていいのじやないか。ただその場合に、徒らに遷延をするために法律はそれを考慮しまして、他の如何なる事件にも優先してこれは取扱うべきであるということを考えておるところは、この思想を現わしておるものと思います。
 然らば一般の私企業と緊急調整及び却下制度の関係でございますが、これは現在の労働法の改正は、私企業の立場から見ると殆んど意味がありません一団体交渉権の点については大きな譲歩をしながら、私企業の一般世上行われる直接我々に利害関係のある争議には殆んど関係のない労働立法の改正であります。そういう意味におきまして、私は一般争議の場合か、斡旋調停によつておる場合には争議行為を禁止するという条項を、これは従来慣行として認められておりますが、最近組合の態度が変りまして、憲法によつて争議権を保障されておるのであるから、斡旋調停は単にサービスである、従つて争議行為をなし得るのだという声が盛んに出ておる現在として、私は少くとも事前の斡旋調停が行われておる間争議行為は禁止するという条項を置くべきであると思います。
 それから不当労働行為につきましては、これは虚偽の証言又は虚偽の証拠が提示された場合に対する救済があれば、これは私どもは過去において苦い経験をしたのであります。過去においては、労調法四十条によつて正当ならざる争議行為をなした場合には、これを解雇するには労働委員会の同意が要るのであるという説が行われまして、違法争議であることは明白な場合であるにかかわらず、これを解雇し得なかつたということがあります。そのために労働法規を改正されたのでありますから、私はこれは明白なる虚偽の場合の証言における手は、これは不当労働行為としないという但書きを附することは、この際極めて肝要なことだと思います。その他いろいろ不当労働行為に対する労働者の不当労働行為制定の希望がありますが、それは省略します。
 その他改正案施行に対する所見として、少くとも従来の労調法三十六条に対しては、設備に対して著しく危害を及ぼす場合或いはビスコース人絹であるとか、或いは罐詰のように、ストライキをしたためにその物自体が腐つてしまつたような場合に対する救済規定を考えるべきではないか、そういうようなことと、一般の争議にも予告制度をとるべきではないかという考えを持つております。
 労働法関係についてはいずれあとで詳細なるお話があると思いますから省略いたします。私はただ地方公務員法における保留されたる財政法に基く地方公営企業の分のみの地方公労法として規定すれば十分ではないかというふうに考えております。
 最後に基準法であります。規準法については、これは三者構成の委員で決定した案でありますので、誠に泰山鳴動して鼠一匹でありまして、殆んど実効の見るべきものはありません。併しながら少くとも現在提出せられた議案のうちで、この三つの点について考慮すべきものと思います。というのは、女子の深夜業につきまして、これは審議会の議を経て行うということになつておりますが、審議会の議を経る必要はないということに考えます。
 それから次には女子の非工業的労務に対する残業を少し緩和したのでありますが、ただ一週間六時間というのを、単に二週間十二時間というふうにした程度でありまして、誠にこれは実効がありません。而も決算店卸の入に限定したのでありますから、これは少くとも工場等における工賃の計算その他一般の決算等以外の場合日において、店卸等の場合にも特に十八歳以上の女子の就業時間をもつと緩和するように改正すべきであつて、これはやはり女子に対する保護をなくするのでもなく、女子そのもののむしろ就職の機会を与える程度の改正ではないかと思つております。
 それから坑内労働ですが、十六歳以上の男子の技能者養成の場合に限り坑内労働を認めたのでありまするが、このほかに少くとも軽労働、例えばトロツコを数えるというような、そういう仕事に対しては、十六歳以上であつたならば坑内労働は認めるべきではないかというように考えております。
 又そのほかに、本法案の改正案には出ておりませんが、基準法としての根本問題は、法律が事業のスケールを考えておらないということであります。従来の労働基準法ができる前には、一定の使用者の数による事業のスケールというものが考慮されておりました。而もこの基準法は工業及び非工業的業務の差別をしておりません。そういう意味におきまして、私は少くとも基準法を適用し、これを厳格に押すことが無理であるような中小企業に対しては、現在の基準法とは違つた別個の中小工業に対する基準法を制定して、そして行い得る条件を課し、且つこれを励行せしめるという方法をとるべきではないかというふうに考えております。まあ要するに、私は全体を通じまして今度の改正法案は、世間で組合がストライキを賭けてまで闘うと言うのは、誠にその内容を十分に調べておらないかどうかでありまして、私は公労法関係の団体交渉権を与える等の大きな譲歩をしているその代償として、単に緊急調整や却下制が採用せられたということは、この法案全体の趣旨から見まして、特にこの私企業に対する何らの規定がないということからいたしまして、私は経営者として誠に不満ではありますが、併し少くとも却下制度又は緊急調整の制度は日本としては最小限度必要な制度である、少くとも米国の制度と比較して遥かに緩やかな制度でありますから、多少技術的な修正を加えることによつて本案が通ることを私は切望いたします。
○委員長(中村正雄君) 引続きまして森田君にお願いいたします。
○公述人(森田安正君) 只今の公述された宮崎さんと成るべく重複いたしませんように……。併しながら或いは敷衍する意味で抽象的な重複があるかも知れません。
 先ず改正に関する経営者の態度として、第一番には、今日の段階において労働関係法は大幅の改正をすべきでないということが第一であります。第二は、今日労働組合運動が漸次政治性を濃厚に持つて来たというようなことから、今後起り得るところの労働問題に、労働法の枠内では到底処理でき得ない事態が発生するであろうことを考えますときに、そのような事態に対しては治安の面から法的な措置が講ぜらるべきである、これが第二であります。第三といたしましては、公益事業等の問題でありますが、労使問題の解決というものは、労使の自主性というものが大いに尊重されることについては何ら異議がございません。併しながら近来客観的な情勢、そのようなことから考えましたときに、従来よりもより多く労働組合の責任と自主性、そのようなものが期待されなければならない段階にあると考えますので、公共の福祉との調和が特に図られなければならない、こういうような措置が講ぜらるべきであるという、以上のことが第三点であります。
 次に、このような基本的な態度について考えますときに、先ず私は労組法について申上げたいのであります。不当労働行為の問題でありますが、従来から経営者としては常に主張しております労働者側の不当労働行為に対しては、直ちに経営者側が提訴できる、このような労使対等の原則がすでに七年を経過した今日においては取入れられて然るべきものである、この主張であります。殊にそのような場合に一体どういうことが経営者側から提訴されるか。この問題について具体的に申上げますと、私が経験しただけでも先ず吊上げがある、軟禁がある。そういうことが或いは刑事事件として警察その他或いは検察庁に告訴されたからといつて、労働問題というものはタイムリーにその問題が処理されない限り、その解決は極めて適切を欠くということになるのであります。そのほかに団交の拒否もありましよう。或いは労働協約の違反事項もありましよう。そういう意味から言つて、そうしたことが経営者側から提訴されることによつて一体如何なることが今後出て来るかと申しますと、そういうことによつて初めて日本における正当なる組合活動の範疇というものが、一年も経ち、二年も経つうちにはつきりと実績として出て来るのであります。なお今日においても吊上げがあり、軟禁がある現状において、余りにも労働者のみが優遇されることは、却つて今後の労使関係を健全にしない、公正を欠く状態に持つて行く嫌いがあり、その可能性が十分あると申上げて差支えないのであります。
 次に、例のいわゆる労働争議調整中の発言或いは不当労働行為の申立及び審査中の発言、このようなものについて今回不当労働行為が加わつたわけでありますが、皆さん御承知かも知れませんが、労働委員会は嘘をついてもいいところであります。極言いたしますと、そのようなことが言える。特に法廷においては宣誓をいたします。併しながら労働委員会においては宣誓がない。だから及ぶ限りの嘘がつける。全く悪意に満ちた、故意に行われるそのような発言さえも、なお且つ不当労働行為の救済の手段になるとは……。恐らくこうした意味において私は労使対等の原則が極めてこの際必要であるということを強調したいのであります。特にその提訴期間が、申立期間が一年になつておりますが、私ども経営者の間には三カ月で結構だという説もある。併しなが一応六カ月が妥当であると私は主張したいのであります。一体首を切られた、或いは不利をこうむつた、そのようなときに六カ月以上も過ぎてから持出して来るようなことが果して妥当な申立であるかどうか、これをお考え願いたいと私は考えるのであります。殊に或いは今後又そういう傾向が出て来るかも知れませんが、一部破壞分子に至つては第一波、第二波、第三波と、このような形で不当労働行為の提訴を持つて来る、仮に第一波において、和解によつて幾らかでも多くの退職金がとれた場合、又第二波が来る、その次には第三波が来る、まさに提訴権の濫用であります。そのようなことが一年も行われるとすれば、このことによつて企業のあらゆることに、そういう関係のエネルギーというものはそういうことに無駄に費されてしまう、そこまで労働者の保護的な性格を露骨に出す必要はなかろう、こういうのが私の主張であります。そのような提訴が一年の間に二回も三回もなされる、人が違つてなされる、而も私どもから見れば、まるでそこらの暴力団が、やめる行きがけの駄賃に少しでも金をふんだくつてやろう、このような態度がはつきりととれるのであります。だからこそ、そうしたものは六カ月でたくさんだ、こういうことを主張したいのであります。
 次に労調法であります。冷却期間は飽くまでも三十日、これを主張いたします。従来の経験に鑑みてそのことを主張するのであります。又却下制度が附随しておりますが、先ほど宮崎さんから言われた団交がより以上に、今までよりか尽されるであろう、交渉がより多く、そして煮詰まるであろうということのほかに、私はこういう狙い、こういうような効果がありはせんかと思う、例えば具体的に言いますと、電産の九州地区においては、東北や北海道が出しもしないのに、出していてもそれほど強く主張しないのに、電産の九州地区のほうで冬営手当をしきりに要求し、それを見込んで先ず争議権を獲得しようとする、そのようなことが恐らく牽制されるであろうという効果を期待する意味において是非この却下制度は必要である、このことを又賛成であるということを申上げるのであります。
 次に緊急調整の問題であります。現在の法律で行きますと、公益事業以外はおおむねその争議が国民の生活を脅かし、その他極めて不自由を与えたとしても、これを阻止することができない、こういう現状であります。今回このような緊急調整制度が設けられたことは、私どもとしては最小限の要請である、最小限の要請であるという意味において賛成するのであります。殊にこの際緊急調整制度について申上げたいことは、決して私どもはこのようなものが濫用されることによつて労働運動を不当に圧力をかける、労働運動を不当に抑える、そのようなことがあつてはならないと考えます。と同時に、又その発令条件が極めて厳格にすることによつて、全くまれにしかこれが使用できない、このようなことであつてもいけないと考えるのであります。従いまして、このような措置はいわゆる常に臨機に適切にこれを発令し、処理できる、そのような形において緊急調整制度は極めて私どもとしては賛成するのであります。
 最後に、今申上げました緊急調整制度によつても、勿論この日数については五十日間、この点については大きく賛成しておるものであります。その五十日の緊急調整期間といえども、なお解決を見ない経済ストさえもあるのであります。併しながら、そのような長い期間に亘つて解決を見ない経済闘争というものが仮にあつたとすれば、これは殆んどと言つてもいいほど政治的目的を持つておるものである、こう申上げても差支えないのであります。又そのような政治的目的を持つものに対しては、いわゆる労働法以外の治安的な面からこれを禁止するということに行かなければならないのでありますが、曾つての二・一スト或いは官公労のゼネスト、こういうものは勿論治安の問題として初めから禁止せらるべきものであります。殊に英国あたりにおいて、曾つて一九二六年に行われました炭鉱の経済スト、これに対して同情ストがあつたのでありますが、これに対しては裁判所は勿論これに対して禁止の発令をいたしますし、又政府としてもこれに対してそのような形をとつて来たのであります。併し経済ストと申上げても、先ほど申上げたように経済ストを装うところの争議があるのであります。そうしてその争議が国民の生活或いは国民経済を危殆に瀕せしめるというような効果が出て来て、場合によつては政府の施策或いは内閣の退陣、或いは又延いてこれが革命へと行つたようなことを考えますときに、これに対しては当然治安対策的な考え方が行われなければならない、こう考えるのであります。
 最後に、最近起きております政治ストについて、私ども経営者は少なからず損害をこうむつております。これによつて勿論先般の労働省からの指示も拝見いたしましたが、解雇もできる、或いは損害賠償の請求もできる、併しながらその後尾のほうに、これに対する抗議ストの問題は労調法の問題である、こういうようなことで、考え方によつては却つて労使関係をより混乱せしめるような状態が考えられるのであります。私どもとしては民事上の手続によつて、或いはその他の手続によつて、この収拾をしなければならないのでありますが、併し完全なる仲裁というものは到底期待し得ないのでありますから、私たちの主張として、このような政治ストはいわゆる実体法上の違法である、具体的に申上げますと、ゼネスト禁止法といつたような、そういう治安立法を以て事前にこうしたストが阻止されることを切望して、又これが私どもの主張であるのであります。一体憲法上で団体行動を保障されておるとは言いますが、労働者のそうした争議権、特にスト権に至つては経済闘争に関する限りのものであるということを私どもは信じ、それが一般市民権以上に労働者のみが持つ特権であるかのごとく考えて、政治運動の分野にまでこれを専用することは明らかに違法である、こう申上げたいのであります。労調法の上に言うところの争議行為としても当然当らない、こういうことが言えますし、又私どもは特に国会の皆様に申上げたいのでありますが、あのこと自体国会を無視しているのじやないか、国会の権威を蹂躙している、今日あのような問題は単に労使だけの問題ではなく、むしろ政治の問題である、政治の問題であるということを皆様にお聞き願いたいのであります。常に労働者は口に民主主義の先達を誇示しながら、而もあのような政治ストによつて国会を無視し、そうすること自体は自分自身の手で、みずからの手で民主主義の牙城を破壞しておる、而もその行為こそは日本国民の幸福を奪い去つて行くのだ、その道こそファッシズムに到達する危険さえある、こう申上げても決して過言ではないと信じておるのであります。殊に若しそのようなことがやりたければ、ほかに方法はある、飜つて家へ帰れば他の保守政党を支持し、それに投票をしているようなことである、そういうようなことであるから、今日のような問題が出て来たということを申上げても差支えないと、こう思うのであります。私は決して、曾つて東京新聞に掲げられました選挙で国会が盲になつたなどと、そのような酷評をして、又しようとも思つておりません。今日のごとく脆弱な経済機構しかない日本において、ああしたパラツク建の中であのような無茶なことが行われることに匹敵するあの政治ストというものが今後行われ、続けて行われて行けば、一体日本の経済はどうなる、考えて頂きたい、脆弱なる経済の下にああしたことが果して適切な、そしてそれが民主主義の行き方であるかどうか、本当にこの日本を再建しようとするためにも、あらゆるところにおいて或いは又公共の福祉という言葉の中から出て来るあらゆる与えられた権限の掣肘は免れざるものである、こう考えましたときに、是非このような政治ストに対しては、治安の面から治安立法的な策が講ぜられることが喫緊の問題であるということを重ねて申上げて、私の公述を終る次第であります。
○委員長(中村正雄君) 引続きまして中畑君にお願いいたします。
○公述人(中畑三郎君) 今回の改正法案につきまして、三点ばかり意見を申述べたいと存じます。
 第一点は、公益事業の争議状態が発生いたしましたときの取扱いに関する問題でございます。争議が発生いたしましたとき、労使の関係当事者がこれを自主的に解決をするということが最も正当ではございますが、自主的に解決をし得ないような場合において、この公益事業を利用いたしておる国民一般、又はこの公益事業に事業上深い関連を有するさまざまな企業といつたような、国民一般並びに関連産業の利益というものが尊重されなければならないだろうと思うのでございます。当事者間のあらゆる努力にもかかわらず、公益事業等の争議が解決し得ない場合において、国民一般並びに関連産業の利益を擁護すると、こういう意味において何らかの立法が必要であると考えるのでございます。で、そういう意味におきまして、今回の改正法が緊急調整制度を労働関係法の中に規定されましたことの適否は別としまして、調整制度のような何らかの立法措置が必要である、そういう意味において賛成をいたしたいと思います。
 それから第二番目の問題としまして、現業公務員の取扱いに関することでございますが、改正法の第四十条を拝見いたしますと、現業公務員は依然として国家公務員の地位におりながら、その労働条件の全部ではございませんで、一部について公共企業体等労働関係法の適用を受けるような形になつておるようでございます。で、実際その結果が具体的に労働関係の問題として処理される場合を考えて見ますと、非常に複雑な、又労働関係としまして安定を得まして、それぞれの企業の能率を増進をするという上におきまして、いろいろな矛盾が生ずることが予見されるわけでございます。そういう意味から考えますと、改正法案の第四十条の考え方というものは極めて不徹底なものであつて、あいまいなものではないかと思うのでございます。で、若し現業公務員に団結権或いは団体交渉権を与えることがよろしいと、こういうことでございますれば、もう少しずつきりした立法で以てこれを明らかにする必要があるのではないかと思うのでございます。今回の改正法案第四十条のような行き方でございますれば、いろいろ実際上の支障を生ずると考えますので、その点において異論を持つておるわけでございます。
 それから第三番目の問題としまして、公共企業体労働関係法規の問題でございますが、この法律の持つております実際適用上のいろいろな運用の上における矛盾というものは、今回の改正法案によりまして、かなりの修正を加えられましたという点において賛成をいたすものでございますが、最も問題のございました、而も解釈上さまざまな紛争の因となりました現行法第十六条と第三十五条の改正について、法案が取上げておりませんことが非常に残念に思う次第でございます。予算上、資金上不可能な支出を内容といたしておりますところの協定につきましては、現行法上の取扱いはまだしもといたしまして、裁定については、その履行を保障いたしますために、もう少し明確な規定をして頂くことが適当ではないかと思うのでございます。例えば裁定の履行を保障いたしますために、公共企業体の労働関係の当事者のみならず、政府も又拘束される、裁定の履行は、国会の承認、不承認によつて決定されるという程度の保障が裁定の効力に与えられてもよろしいのではないかと思うのでございます。
 甚だ大ざつぱでありますが、以上三点が私の意見でございます。
○委員長(中村正雄君) 続きまして八藤君にお願いいたします。
○公述人(八藤東禧君) 郵政省人事部長の八藤でございます。労働関係法規改正法律案に関しまして、意見を申述べろとのお指図でございますが、極めて広汎な問題でございますが、この際すでに多数の学識経験者の公述人のかたもおいでになつたことでございまするし、郵政省の一職員としての私の立場等を考えまして、申上げる範囲を公企労法改正に関する程度にとどめさせて頂きたいと存じておるのでございます。
 今般の労働関係調整法等の一部を改正する法律案によりまして、私ども郵政事業に従事いたしまする職員は、農林、造幣、印刷等のいわゆる企業官庁の公務員が団体交渉権を法律上認められまして、勤務条件などにつきまして、団体協約によりこれを定めることができるようにするという御改正の点は、所管事務の民主的な、又能率的な運営を増進する、或いは多数の職員の社会的地歩の向上に資するというような見地からいたしまして、誠に適切な御処置だと信ずる次第でございます。よく国家組織の統一的性格と行政秩序の維持という観点から、国家公務員はその身分、職責に即応した特別の労働関係に置かれるべきであつて、すべての公務員は国家の統一的制度の中に包括されるべきものであり、単に現業という理由のみによつて別個の労働関係に置換えることは、公務員の管理、国家の業務の運営上支障を来たすのみならず、国家の統一的性格を乱すものであるという趣旨の反対論がしばしば私どもにも聞えて参つておる次第でございます。私をして率直に申させて頂きまするならば、この反対論は現実の国家公務員の制度を無視し、或いは国家公務員法の趣旨、精神というものを誤解しておられるのではなかろうかというふうに考える次第でございます。即ち国家公務員は身分をそれぞれ均しくしてはおりまするものの、その勤務の実態、職務の内容におきまして極めて多種多様であります。法憲七十三条第四号の国家公務員に関する事務を掌理する基準を専ら定めるという意味における国家公務員法第一条に高らかに謳つておりまするが、その国家公務員法は明らかに根本基準を定める法律であると申しまして、みずから強力な統一性を明文に麺つてはおりますものの、決して絶対的な画一性というもの、或いは単一立法というものを闡明しているものでないことは御承知であろうと思います。むしろ国家公務員法は率直に附則第十三条におきまして、職務と責任の特殊性に基き、公務員の特例を規定することができる法律、又は人事院規則により規定することができると率直に明らかにしております。のみならず、例えば職員の団結権又は団体交渉等につきましても、その条文の中におきまして治安関係公務員に対しましては、例外的な制限を定めていることは皆様御承知の通りでございます。
 今般労働関係調整法等の一部を改正する法律案によりまして、いわゆる現業公務員に対しまして、国家公務員法の特例を認めようとしていることは、現業公務員の身分職責に即応した特別の労働関係を明確にするに過ぎないのであります。国家公務員法が予測しておつたことであり、あえて申しまするならば、反対論の言うところの特別労働関係一般の勤労者に対する特別労働関係というお言葉だとは思いまするけれども、その特別労働関係という概念を国家公務員法上より一層精密具体化したにほかならないと思う次第でございます。いわんや国家の統一的性格を満たすとは全く考えられないのでありまして、若しも果して然りとするならば、先ほど申述べました治安職員の団結権及び団体交渉に関する禁止的、制限的特例は、これ又すでに反対論の言うところの国家の統一的性格を満たすことになつておるのではないかと申しても、あえて誤まりでないと思う次第でございます。私は今次改正法案が日本国憲法或いは国家公務員法その他一連の民主的法律、我が国の現実に即しつつ一歩々々具体化を考えて確立して行く正しい方向を歩むものとして解釈されなければならないと信じてやみません。立法技術の観点からいたしまして、国営企業、現業職員を公企労法の下に純粋公共企業体職員と同一的に規律することは、現業国家公務員が国家公務員の身分を保有し、国家公務員法の大部分の適用を受けつつあることからして不適当である、純粋公共企業体職員とは別個の単独法を以てすべきではないか、或いは国家公務員法を全面的に現業国家公務員に対する適用から排除すべきではないか等の所論或いは意見、方法等も考えられておることは、私は承知しておるのでございますが、そのいずれの方法をとるにいたしましても、それはそれぞれこれが具体化、立法化につきましては、現実の問題として、なお今後若干の期間等を必要とすることは疑いないところでありまするので、かかる技術的な考慮のために原町的改革が一日でも遅れてはならない、遅れることは避けなければならないと私は考える次第でございます。
 他面我が国における労働関係法令が、むしろ複雑多元的に過ぎるとの批判が学界その他において力強く称えられておることも見逃せん事実だと思う次第でございます。公企労法全般の批判といたしまして罷業権の欠如ということが一つの大きな課題とされておりまするが、この問題は民間一般の労働者に対しまする社会保障制度或いは職業安定、生活安定、各種の方策というこちらの極端と、一方における一般国家公務員に対する国家公務員法上の身分保障又は生活安定等のこちらの極端、両極限の動向に即応しながら、同時に他面公共企業体等の事業の公益性と公共企業体等における労働組合運動の実態、自主性というものに対する国民の判断等により今後回答が与えられて行く筋合いのものと思つております。
 さて、郵政省の郵政事業運営上の立場におきまして、今次の法案の運用等につきまして見解を申述べさせて頂きますには、私どものほうは公企労法等の運用の実績を欠いておりまする現存、申上げることが予測の範囲を出ない次第でございますが、先ず第一に、すでにどなたか先ほど御指摘がございましたけれども、本法案或いは現に国会において御審議中と承わつておりまする電信電話公社法案その他行政改革に関するところの法律案等の成立、施行を見ますると、私どもの郵政省が労務管理上甚だ複雑な立場になることは間違いございません。国家公務員法の全面的適用を受ける職員、それから公企労法と国家公務員法との双方の適用を受ける職員、これらを直接管理いたしますと同時に、間接的に公共企業体である電通公社職員の労働問題をも取扱うことになるわけであります。併しながら管理上の多様性、困難性を忌避せんがために、今次改正法案に反対するがごとき気運は郵政部内に全く存在しておらないと私は信じております。
 第二点といたしまして、すでに国鉄、専売等において経験済のことでございますが、団体交渉の範囲に関する第八条の規定につきまして種々問題が生ずることがあろうと考えております。第八条第一項の「管理及び運営に関する事項」というこの言葉の概念、そのボーダー、ラインがどこに存在するか、元来この問題はひとり国営事業又は公共企業体のみにとどまりませんで、あらゆる民間企業におきましても共通する問題でございましよう。又経営協議会制度等曾つて大いに論議せられたこともありまするし、これらとも関連いたしまして国内の政治的、社会的、経済的全般の通念の帰趨点を一層明文化して頂く、例えば同条第二項の団体協約締結事項程度に明らかにして行く方法はないものであろうかというふうに考える次第でございます。
 第三点は、第十三条に定められておりまする交渉単位制度の問題でありますが、例えばアメリカにおきまするごとく職種、職業別組合が強力な国情においてはいざ知らず、我が国の殊に現在の公共企業体等における組合組織の実情に照らしますると若干疑問なきにしもあらずというところでございます。時には組合運動の不当な分裂等を誘起するモメントとなる危険性も或いはこの条項に内包せられていないかという点も考えられる次第でございます。
 第四番目に、苦情紛争の調整につきまして、国家公務員法並びに公企労法両法の両面的な規制の下に立ちまする私ども現業公務員につきましては、国家公務員法と公企労法との二系列の処理が並行的に存在する部分があり得ると考えられますが、これらは実際上の処理或いは団体協約慣行などで一応処置はできると思うのでありますが、さてその実際的な処置につきましても、法理的に究明して行く場合百に、これらの事実上の処置が下安定である。で、やはり或る程度の紛乱を来たすこともあり得るかというようなことも考える次第でございます。
 第五点といたしまして、先ほどもお話がありましたが、仲裁委員会の裁定に関しまする三十五条但書の運用でありますが、すでに国鉄、専売等公共企業経営体におきましてすら種々批判が行われておるのでございますが、国営企業官庁となりますると、問題が一層厳しくなり、そうして当該国営企業官庁にとどまらず、政府部内の各省間におきましても、本条と第十六条の運用が恒常的な難問となりまして、折角の改正法案の趣旨が若干でも損われるというようなことがあつてはならん。これは管理当局と組合相互間において妥当な慣行を確立するということもあり得ましようし、或いは近き将来におきまして、国会におきましてより明確な改正を行なつて頂くことが企業管理当局といたしますれば極めて望ましいことなのであります。少くとも郵政省に関しまして郵政事業特別会計、簡易生命保険及び郵便年金特別会計等の会計法の運用、或いは予算、決算の編成実施上につきましても、今次改正の趣旨が没却せられざるはうに格段の努力を必要とし、且つ各位の御配慮をお願いする次第でございます。
 第六番目に、政治活動の制限についてでございますが部内の組合方面におきましては、この撤廃を強力に主張していることは事実でございます。この問題は根源を尋ね、或いは流れ行く先を尋ねて行きますれば、現在白熱的な論議になつております政治ストの問題にまでも結局は遠い連関を有して行く問題でございます。これを経済と政治との限界、或いは政党と組合との関連、或いは国家公務員と政治というような形におきまして問題を取上げる場合には、これはもう必ずしも今日の問題ではなしに、すでに古い問題であるのでありまするけれども、古いながらに而もいろいろな立場或いは学説等からいたしまして、いろいろ結論等が提出されているのであり、決してどれが最も支配的、決定的であるというふうにはなつていない問題なのであります。結局その時代及びその条件等におきまして具体的な解決が今後生み出されて行くほか途がないことだろうと考えます。併しながら現在公共企業体職員がすでにこれらの制限は緩和せられておる一方、現業国家公務員が公企労法の規制下におきまして、国家公務員法の規制も受けておるという双面的な性格を持つておりますので、これらの公共企業体職員との差異が際立つて出て来るであろうということは予想せられる次第であります。
 なお申上げたいこともございますが、時間の関係がございまするので、最後にただ一点だけ極めて事務的と申しまするか、お願いがある次第でありまするが、今次のこの法案を見まするというと、法案の二条に公共企業体と職員に関する定義が挙げてあるのでございまするが、この中に第二条第二号、「左に掲げる事業(これに附帯する事業を含む)を行う国の経営する企業」、(イ)といたしまして、「郵便、郵便貯金、郵便為替、郵便振替貯金、簡易生命保険及び郵便年金の事業」としてありますが、一方目下御審議になつておられますところの郵政省設置法の一部を改正する法律案におきまして、同じような条文におきまして、「郵政省は、左に掲げる国の事業及び行政事務を一体的に遂行する責任を負う行政機関」といたしまして、郵便云々、こうあつた上に第二項に「郵政省は、前項の事業及び事務の外、左に掲げる業務をつかさどる。」「一 前項の事業に附帯する業務」、それ以下に二、三、四といたしまして電信電話公社、国際電信電話株式会社、放送協会から委託された業務、委託業務を普通業務から分けて規定する法案が出ております。一方こちらのほうでは、附帯する業務といたしまして、同じ言葉を使つていながら、これらの委託業務を設置法案とは別な意味に使われておる、これはいろいろな便宜上から言いまして、法律用語の統一的な見地からばかりでなしに、実際上からも不便でございますので、この際これを明確にして頂けば結構だと思う次第でございます。
 以上甚だ簡単でございますが、この程度で終ります。
○委員長(中村正雄君) 以上で予定されておりました公述はすべて完了いたしました。通告に従いまして各委員の質疑を許します。菊川君。
○菊川孝夫君 森田さんにちよつとお伺いしたいのですが、議論をするというわけではないのでございますが、例えば組合側の調停委員会における発言、或いは証拠等の提出の際に虚偽の申立をする場合に、経営者側はそれによつて非常に不利な取扱を受けることになる、それに対する救済の処置がないというような点をお洩らしになつたのでございますが、これは如何でございましようか。双方に虚偽の申立というのが……労働委員会では何を言つてもいいのだということを言われましたが、これは双方ともやはり何を言つてもいいのだということを言い得るだろうと思うのでありますが、あなたのお話では、労働者側は嘘を言うのだ、経営者側は全然嘘を言わないのだというふうにもとれるのでありますが、これは曾つての日本の歴史を見ましても、両方ともなかなか相当なもので、嘘言うときには言うことになるだろう、あなたの所属しておられる団体はそういうことはないかも知れませんが、よそにはそういうことはあると私は思うのであります。従いまして虚偽の発言、或いは証拠の提出に対しては、やはりこれに対して反証を挙げてその委員会において争うべきではないか、かように考えるのでありますが、この点について一つお伺いいたします。
○公述人(森田安正君) 只今の点につきましては、例えば具体的に例を挙げて申上げますと、共産党系の労働者、このようなものの発言になりますと、全く只今菊川さんがおつしやつたようなそういう程度ではない、もつと極めてわかり切つた故意の悪質の発言をする、こういうことは審査、尋問に当つてみないと恐らくおわかりにならないと思います。と言つても、そういうことを反証を挙げるにも挙げられないというようなことさえもあるわけであります。ですからそういう意味で、殊にこの書状なんかの場合、それから履歴書等について、労働委員会に提出する履歴書と会社に出ておる履歴書とが違つておるにもかかわらず、本人はそれについて何ら説明もしないといつたようなことさえもある。そういうことから考えて見ますと、少くとも、成るほど嘘をついてもいいのだというようなそんな極端なことにはならんかも知れませんが、余りにも著しいそうした故意の悪質の発言等については、労働委員会のほうで何らかの処置が講ぜられるべきものである、こういう意味で申上げておるわけでございます。
○菊川孝夫君 次に、今回の労闘のストは政治ストであるとかそうでないとかいうので、議論になつているが、これを議論するのは避けるといたしまして、政治ストを法律によつて規制することを森田さんが非常に強調をされたのでございますが、併しなかなかその団体の政治活動そのものを法律のみで規制してしまおう、そうして而もその保護を受けよう、それがためにこの労働法はどちらかというと、あなたの今のお話では、労働者側を守り過ぎて資本家側に不利益を与えるというふうにとられたようでありますが、資本主義社会においてはどうしても労働者のほうはこれは不利な立場にある、それを保護するというのが私は労働法の基本的な観念でなかろうか、こういうふうに思うのであります。従いましてこの資本主義社会においては、どちらが力が強いかということになると、究極においては私はやはり資本家側が強いのじやなかろうかと思います。日本の終戦直後の混乱時代と申しますか、虚脱時代はいざ知らずといたしましても、今後これを保護するという立場で以て立法をして行かなければならない限りにおきましては、勢いこれはどうしても団体活動そのもの、即ちストライキやその他の行為、団体交渉等の行為がむしろ何と申しますか、尖鋭化して参りまして、特に日本の目と鼻の先までは共産主義勢力が伸びておりまして、国内における目に見えない冷い戦争というものは、私は実に熾烈なものだと思うのです。従つて味方を敵の方へ追いやる、即ち民主主義者を共産主義者にしてしまう、塗り替えてしまうということは極力避けなければならない問題だと思う。それに森田さんの先ほどからの、労働組合とは何でも戦うのだ、こういう強力な態度でそれを法律で規制して行けというような御論調で行つたならば、むしろそれを尖鋭化さすことに油を注ぐことになるのじやないか。引続いてあなたのあとで証言されました中畑さんにいたしましても、八藤さんにいたしましても、これはどちらかと申しますと、官僚といつて差支えない。今の日本の政治の、政治と言いますか、行政の中心に携わる新進官僚とも称すべき人だと思うのであります。この人たちの証言を聞きましても、なかなか資本家階級のあなたがたのお考えになるような工合にはこれはそう動かない思想を持つているということはよく酌み取れたのじやなかろうかと思うのであります。従いましてこういう進歩的と申しますか、極めて穏健な考え方を持つている連中までもむしろ向うに廻してしまうというような行き方は私はどうかと思うのであります。そこで結論としてお尋ねいたしたいのは、いわゆる法律で幾ら縛つてしまつてもなかなか……治安立法だということを強調されましたけれども、共産党のことをあなたは言われましたが、共産党の人たちは現状否定の立場に立つのでありますから、法律を幾ら設けましても、これによつて被害を受けるのはむしろ共産党員ではない人だと思うのであります。従つて法律で以てそれを解決しようというのはむしろ無理であつて、それよりも慣行、そうして、長い間の訓練、こういうことに重点を置くのが正しいのじやないか、こういうように基本的に考えるのでありますが、あなたのほうのお考えは成るべく法律によつて保護されよう、それで以て安心だと言われるが、法律ができたから安心だということは到底言えないのじやないかと思うのでありますが、この点について一つお考え方をお伺いしたいと思います。
○公述人(森田安正君) 私は最初の問題については、労資対等の原則から申上げておるわけであります。特に労働者を保護するという点については、今日資本主義社会において労働者が非常に弱い存在であるということは、これはもう常識であります。併し余りにもその取扱が偏頗であるということが、却つて今日の労資関係というものを複雑にしてしまつておる。こういう意味で原則的には申上げております。又労働者を保護するという点において最も強調されなければならない問題は、労働基準法であり、すでに労働基準法においてそのようなことが大きく打出されておるし、勿論労働組合法自体においてもそのようなことは或る程度考えられなければならない。併し日本の労働組合のいわゆる組合活動というものは、私に言わせれば国際的にはナンバーワンだと思う。だからそういう意味でも経営者側が、先ほど私申しましたようなことのほかに、自分でそういうつるし上げだとか軟禁だとか、極めてすれすれの暴力行為をしていながら、而もその解雇には反対だからそういうことをやるわけなんですが、それならばそれで労働委員会に提訴すればよい、しないでいて現にやつさもつさ撰んでそういう憂き目に会う中小企業は実にみじめなものだと思います。だからそういう場合に、それでは現在の法律によつて会社側に弁護士を立てて解雇確認の本訴でも起せばいいじやないかということになるのでありますが、先ほど申上げましたような時期ということがあるわけです。時期を失した場合には、この問題は大体消えて行くのです。そしてそれは大体黙認された形になつてしまう。だからそこらに経営者側が、こういう不当な組合活動があるのだ、これに対してむしろ労働者側の不当労働行為として使用者側が、経営者側が救済されるようなそういうことが今日すでに考えられ、そして実施されてもいいのじやないか。一方又警察だとか、いわゆる検察庁に持つて行つても、傷跡でもつかない限り取上げない。こういう実情を考えますときに、かたがた労資関係の中における正当なる組合活動と同時に公正なる労資関係のあり方というものをそこに積上げて行く意味からいつても、私は私自身が主張するほどの多くの事項を書加えないにしても、何らかのそういうことの考え方が必要じやないか、こういう意味で申上げております。それから政治ストでありますが、政治ストにつきましては、只今法律ではどうにもならん。それでは一体どうすればいいのですか。それを慣行で、又一つのそのような或る程度の期間をかした訓練によつてこれを是正して行く、こう言つておられるのでありますが、今日日本の共産党の戦術からいつても、総評の中心部に日共のイニシアをとらない限り、又そうしたことが最も大事なことなんだというような指令に基いてかなりそうした動きがある。観念的には割切つておる総評の幹部も、実際にやることは私どもから見れば極めて破壞的な行動が多い、こういうことを考えますときに、それじや政治ストをこのままで、あなたのおつしやるように一定の期間を設けてどうということで行つた場合に、今後出て来るいろいろな、この国会内において、而も選良として出て来られた皆さんの手によつてのみ審議されるべき民主化におけるこの議会というものを一体どういうふうにして守つて行くか、こういうことを経営者と労働者という、実は経営者なんというのは間接的にしかそれが処理できないわけです。私たちの直接の利害関係によつて出て来ておる問題じやないわけです。だから是非こういう点については治安的な面から一つの立法措置をやつて頂きたい、こう言わざるを得ないわけです。
○菊川孝夫君 八藤さんにちよつとお尋ねしたいのですが、政治活動制限の条項について、どうも賛成であるとも反対であるとも、これは御意見がはつきりしなかつたのでありますが、まあ時代が解決するのだ、そのときどきによつて解決される問題だ。ところが公共企業体の職員が、即ち今度電電公社ができればその公社の職員も政治活動が自由にやれる。すると同じ屋根の下におる連中はたくさんあるのだから、これは非常に複雑になつて来るわけであつて、従つてそのくらいの政治活動を許してもいいのではなかろうかという御意見か、それとも又現状では今の原案のような方法は止むを得ない、こういうお考えですか、どちらですか、この点を一つ……。
○公述人(八藤東禧君) お説のように人事院規則で国家公務員の政治活動に関する規則が出ております。あれも非常に精細に複雑に規定しておるようでありますが、いざ具体的な問題になると非常にむずかしい。例えば一般的な政治問題と言われるような問題につきまして集会がある。職員が個人としてそれに参加する場合においてはこれはよろしい。組合の名において参加する場合においては、これは明らかに違反になるというような事例がその辺に出ておると思うのでありますが、これは政治活動という概念だけで以て実際に律しきれないのじやないか。私は首鼠両端を持しておるようなことかも知れませんが、問題自体がそうじやないか、あらゆる経済問題が政治問題になつている、あらゆる政治問題が政治ストになているのじやないかと思います。そこで現在は国家公務員法の規則によつて或る程度までは基準が示されておりますが、今度の法案におきましても、あれがそのまま適用になつておるようでございます。さてそうだからといつて、それではその規則それ自体の運用がどうかということは、今後の現実によつて肉をつけられ、或いは賛肉を削られて行くのじやないかという考えでございます。私この際どうということをはつきり申上げるだけの自信は持つておりません。
○菊川孝夫君 結論的にいつて、あの国家公務員法の適用は今度の原案で相当外してもらえますね。あの条項を外した場合、人事部長として非常に今後の人事管理がやりにくくなつて困るかどうか、この点だけイエスかノーかお答え願いたい。
○公述人(八藤東禧君) それはお答えをそらすわけではございませんか、その問題を外すことによつて、他の方面のいろんな問題に対して影響が大きくなつて来る。例えば国家公務員としての地位を保持せしめるかどうかというような問題になつて来るのであります。現実に電信電話公社になつて来るのであります。では保険、貯金等のごときは公社になり得るのじやないか。或いは郵便事業それ自体は、世界各国どこを探しても公営だから、日本において新らしいところで公営にしたらどうかという議論が出て来る。いささか複雑な問題を含んでおりますので、その一点だけについてイエスかノーか申上げることはお許し願いたいと思います。
○菊川孝夫君 それは何もあえて証言を求めようといたしませんけれども、これは複雑であるとは思いますが、ただ郵政におけるあの国家公務員の枠だけを外したからといつて、ほかのほうの公務員法によつて保護されているのに、あの条項だけは外すということは非常な悪影響を及ぼすかどうかということについて、私はそういう心配はないと思うのですが、終戦直後の混乱時代のような考え方で以て律してはいかないと思うのです。従つて現在少くともそんな常軌を逸した方向には走る心配は私はないと思うのです。
○公述人(八藤東禧君) だからこの点はつきり申上げておきます。先般の行政整理等いろんな問題におきまして、職員の組合がいろいろ国会の先先がたに陳情を申上げ、御説明を申上げております。で、結局参議院においていろいろ御説明になつて、私のほうの郵政省に関する限りでも若干御修正があつたという事実があつたのでございます。戦後に一部のジャーナリズムにおきまして官僚政治の復活という言葉を使われたが、私はその批判は当らないと思う。成るほど国家公務員という言葉を官僚ということに読み替えることを許されるならば、或いはどうか知れませんが、それは実態を著しく見誤まつた考えではないかと思います。この点だけ特に申上げてこの程度でお許しを願います。
○委員長(中村正雄君) 質問される際に、質問者に御注意申上げますが、問題は労働関係三法案でありますので、問題の範囲を逸脱しないように御質問願いたいのと、質問も答弁もできるだけ簡単に願いたいと思います。木村君の発言を許します。
○木村守江君 私は経営者代表と目されまする宮崎さんにちよつとお伺いしたいと思います。私は先日九州において、又昨日と本日はこの部屋におきまして、或いは労働者代表或いは使用者側の代表のかた、或いは公益者と目される人又は学識経験者と言われるようなかたがたに、今回の労働法に関する法案つきましていろいろな御意見を拝聴したのですが、私はこの国会に提出されました労働法案というものによりまして、本当に労資協調が保ち得まして、而して日本の産業に寄与するというのが本筋の目的であると考えるのであります。ところがこの三回の公聴会におきまして、誠に残念でありまするが、全く相対立した非常に相反したところの御意見を聞かざるを得なかつたのであります。このことにつきましては、実は労働者代表にもお聞きしたい、又学者の有識者のかたにもお聞きしたいとは思うのですが、本田はおりませんので宮崎さんにお聞きしたいと思うのですが、いわゆる経営者代表のかたがたといたしましては、今回提案されましたこの労働関係の諸法案のほかに、なお治安維持に対するような法案までも出さなければいけないのだというようなお話であります。ところが私はこのいわゆる労働三法というような法案が国会に提出されるようになりましてから、或いは公聴会の議論、或いは国内の議論を聞いておりますと、これはいわゆる皆さんがたのような議論をなさる人は極めて少い。而も極めて消極的であるということを私は否定することができ得ないのであります。そういう点から第一番目にあなたがたがこういうような法案を出さなければいけない、このほかに又より以上の強力な法案を出さなければいけないというような御信念はどの程度の御信念であるか。まあどうでもいいのだ、併し我々はこう考えておるのだというような程度であるかどうか、この点についてお伺いしたいと思うのです。かようなことを私が聞きまする理由というものは、労働者側におきましては、今回のこの労働法案に対しましては、或いは実力行使までいたしまして、そうしてこの法案を葬り去らなければ我我労働者は生きて行けないのだというような強力な態度を以て闘つております。ところ経営者代表のかたがたにおきましては、ここではそういう話を聞いておりますが、未だ曾つていわゆる世間に訴え、世間の輿論を喚起するというような方向には私は行つていないのじやないかと思うのです。私がそういうことを申上げまするのは、一体こういうような問題を大きく叫ばれることによつて、全くこういうような問題に無関心なかたがたは本当にその大きく叫ばれる労働者側の意見がよいのではないかというようなことを考えさせるところの大きな理由になるのじやないか。若しもそれが本当によくて、いわゆる日本の産業にプラスになるのでありましたならば、私は何ら差支えありませんけれども、若しもそれによりまして皆さんが言われまするような日本の産業にマイナスになるというようなことでありましたならば、これ又大きな問題であつて、皆様がたの大きな責任ではないかということを考えまするので、この点につきまして御意見をお伺いしたいと思います。
○公述人(宮崎輝君) 経営者がなぜ騒がないかとおつしやるのは、これは今度出されたような労働立法の改正は余りにも当然であつて、騒ぐほどのことでないのです。これが第一点です。それから組合側が騒ぐからそれで彼らが非常に問題にしているのだろう、我々は騒がないから、どういう信念を持つているのか、信念を聞きたい、こういうことだろうと思いますが、これは非常に大事なことだと思うのです。というのは、皆さん御存じのように、アメリカのタフト・ハートレー法で組合側は断固として反対をした。併しながらこのタフト・ハートレー法の個々の条項を別々に分けて聞いて見たら賛成者が非常に多かつたというこの事実ですね。つまりこれは日本の労働運動の指導者が、いろいろな目的から、或いは違つた他の目的から非常にこれを鼓吹しておるのであつて、果して労働大衆が具体的に緊急調整とは例えばどういうものかということをよく知つて心の底から騒いでおるかというとそうではない。我々の組合も今度ストライキをやろうと言うておるが、いろいろな事情を聞いて見ますと、昼間だけやらしてくれ、或いは日曜と振り替えさしてくれ、併し聞かないとどうしても工合が悪い、こういうような、内部は実は我々と相通じておることがたくさんあるということ、だから本心からやりたいという人は、一体日本の大騒ぎしておる労働運動で事実何人あるかということを非常に知りたいと思う。我々経営者は非常に忙しい。労働者が忙しくないとは言わないが、我々は戦後の経済をここまで持つて来て、そうして又遅れた経済を回復するために全力を挙げておる。そういうときに労働問題の改正で大騒ぎをするということはできないのです。例えば緑風会の幹部のかたに来て頂いて内部的にいろいろ話をするとか、或いはいろいろなチャンスを利用して話をするというようなことしかできない。若しも組合のするようなストライキをやることによつてアツピールするというようなことがいいならば、例えば社会党の左派でも内閣をとつて、そうして労働法を我々に悪いように改悪する場合に……我々経営者がそういうことが許され、ロック・アウトがいいというならばロック・アウトをやりますが、併し我々はそれは許されないと思う。国会を通じて、手ぬるいようだけれども我々の意見をとつてくれるような議員を選んで彼らに労働法を改正してもらいたい。そういうようなれつきとした道を歩きたい。心の底から、我々は現在の労働法規というものは行過ぎの点もあるし、改正しなければならんということはもう心から思つております。
○委員長(中村正雄君) 御注意いたしますが、余り長く言わないように……。
○木村守江君 私はなぜ騒がないのだというようなことを言つておるのじやないのです。私は本当に必要であるならば、それは当り前で、何とも言わなくてもいいのだというようなことはどうしても納得でき得ないのであります。我々が終戦後の日本の労働運動というものを振り返つて見まするときに、これはどうしても日本の終戦後の労働運動は或る程度行過ぎなところがあるということは認めざるを得ないと思うのであります。その労働運動が行過ぎたことの一つの大きな原因と目していいのは、日本の資本家が余りに労働者に対してこれは温存主義であり、いわゆる余りに仕方がないのだという諦め、主義であつたことが一つの大きな原因になつて来たのではないかということを私は考えるのであります。そういうことを考えますときに、現在のいわゆる労働三法に対する労働者階級の実力行使の問題等は、これは何にも心の底からやつているのじやないのだ、我我経営者とも納得ずくでやつている、いわゆる八百長なんだということを言われましたが、本当にこれが八百長であるということを知つている人が何人あるかということを考えますときに、私の所にはこの法案に対する反対の陳情が二百通ほど毎日参ります。併しこの陳情を寄越す人々は、この法案がどういう法案だかということを私は理解せずに寄越す人が相当多いと思うのです。そういうことを考えたときに、特に終戦後の日本の労働運動の経過を考えましたときに、私はどうしてもこれは本当に日本の産業のためにあなたがたが必要と認めるのであるならば、もつとこれは強力な方法で国民の納得の行けるような線に進んで行かなければいけないのじやないかと思うのですが、それに対する御意見を伺いたい。
○公述人(宮崎輝君) 誤解を受けるとおつしやいますが、はつきりしておきますが、八百長であるということは八百長を申出でるところがあるという意味ですね。それからこれは結局同じことを繰返えすようになりますが……。
○委員長(中村正雄君) 簡単に願います。
○公述人(宮崎輝君) 我々経営者がこれは少し違いますが、我々経営者というのは、現実に労働問題の解決の当事者であつて、役人とは少し違うのです。役人や学者のように批評しておる人とは違うのです。我々は現実にぶつかつてこの問題を解決して行かなければならないという立場にある。ですから誰よりもこの労働問題に対しては切実に考えているのです。従いましてこの労働法改正に対しては、日経連では数年かかつて研究しております。私もそれに関係しておりますが、あらゆる角度から研究して、それはいろいろな方法でいろいろな方面に配つております。併し国会の人にどういうことを言つているか、それは私どものやり方が不十分かもわかりませんが、それは今後やらなければならん。これは職業的に仕事をする人がやらないで、日経連というようなそういう方面からやらざるを得ないのですね、非常にアッピールした点は少いのです。併し切実にやつていることは事実です。
○委員長(中村正雄君) それでは通告者は終りましたので、質疑はこれで終ります。公述人は御退席を願いたいと思います。
 それでは本日はこれを以て労働委員会の公聴会を散会いたします。
   午後三時三十一分散会