第016回国会 本会議 第33号
昭和二十八年八月四日(火曜日)
   午後六時四十七分開議
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 議事日程 第三十二号
  昭和二十八年八月四日
   午前十時開議
 第一 電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律案の中間報告
 第二 戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第三 らい予防法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第四 法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第五 所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第六 租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
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○議長(河井彌八君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。
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○議長(河井彌八君) これより本日の会議を開きます。
 この際、新たに議席に着かれました議員を御紹介いたします。議席第二百十一番、地方選出議員、青森県選出、笹森順造君。
   〔笹森順造君起立、拍手〕
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○議長(河井彌八君) 議長は、本院規則第三十条により、笹森順造君を経済案定委員に指名いたします。
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○議長(河井彌八君) 日程第一、電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律案の中間報告。
 委員長の報告を求めます。労働委員長栗山良夫君。
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   〔栗山良夫君登壇、拍手〕
○栗山良夫君 只今、議長より、電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律案につき中間報告を求められましたので、労働委員会における今日までの審査の経過について御報告申上げます。
 本法律案は、諸君が御承知の通り、第十五国会に前吉田内閣より提出され、衆議院におきまして、改進党提案により期限付立法とする旨の一部修正がなされた上、可決され、本院に送付されたのでありますが、本院におきまして審議中、衆議院の解散によつて審議未了となつたものであります。今国会に至り、改めて、前回衆議院におきまして修正可決された法律案と同一の内容の法律案が、去る六月十四日内閣より提出、即日衆議院労働委員会に付託され、衆議院におきましては七月十一日可決をみて、同日、本院労働委員会に付託されたものであります。
 先ず本法案の内容を簡単に御説明申上げますると、本法案は三カ条から成つておりまして、第一条におきましては、「電気事業及び石炭鉱業の特殊性並びに国民経済及び国民の日常生活に対する重要性にかんがみ、公共の福祉を擁護するため、これらの事業について、争議行為の方法に関して必要な措置を定めるものとする。」として、本法案の趣旨を述べております。次に第二条におきましては、「電気事業の事業主又は電気事業に従事する者は、争議行為として、電気の正常な供給を停止する行為その他電気の正常な供給に有接に障害を生ぜしめる行為をしてはならない。」として、いわゆる停電スト、電源スト等を正当ならざる争議行為として禁止する旨を明らかにし、次いで第三条におきまして、「石炭鉱業の事業主又は石炭鉱業に従事する者は、争議行為として、鉱山保安法に規定する保安の業務の正常な運営を停廃する行為であつて、鉱山における人に対する危害、鉱物資源の滅失若しくは重大な損壊、鉱山の重要な施設の荒廃又は鉱害を生ずるものをしてはならない。」として、いわゆる保安要員の引揚げ等の行為を違法なりとして規定しているのであります。
 更に、本法案の提案理由として政府の説明するところによりますると、要するに、「昨冬行われました電産、炭労の両ストライキは、非常に大規模なもので、国民経済と国民の日常生活に与えた脅威と損害とは実に甚大なものであつた。労使関係の事項については、法を以てこれを抑制規律することはでき得る限り最少限とし、労使の良識と健全な慣行の成熟に委ねることが望ましいことは言うまでもないが、政府としては、かかる基本原則のみを固執し、徒らに手を拱いて当面の緊急問題に対して必要な措置を怠ることは許されないと考えるので、種々検討の結果、この際は、いわゆる基礎産業中、最も基幹的な重要産業であり、而も昨年現実に問題となつた電気事業及び石炭鉱業につき、争議権と公益の調和を図り、以て公共の福祉を擁護するため、両産業における争議行為の方法につき必要な限度の規定を設けることとした。これが本法案を立案し提案するに至つた理由である」と、かように申しておるのであります。
 本委員会といたしましては、七月十三日、小坂労働大臣より提案理由の説明を聴取し、同十五日、本法案審査のため議員派遣要求書及び公聴会開会承認要求書提出を決定し、翌十六日以降連日に亘り委員会を開いて質疑を行い、なお、その間、十八日から二十一日の四日間は、各委員が九州、福島、北海道の三班に分れて、現地の実情調査を行うと共に、本法案に対する労使及び学識経験者、消費者代表の意見を聞く懇談会を催し、その報告を二十二日に行いました。二十三日及び二十四日の両日は、本院において公聴会を開いて、労使双方並びに学識経験者、一般消費者代表の意見を聞き、更にその後は、日曜といえども休むことなく、連日委員会を開いて、熱心な審査を行なつて来たのでございます。このことは、本法案が基本的人権と公共の福祉に開通する憲法上の重大問題を含んでいる重要法案でありまする以上、当然なことでありますが、委員会といたしましては、更に、本法案の成行きが国民一般から多大の注視を寄せられている実情にも鑑み、本法案の審査に当つては、特に参議院独自の立場において当初から慎重審議を尽すことを全会一致を以て決定して臨んだ次第であります。従つて、委員会におきまする質疑応答も多岐に亘つた次第でありますが、詳しくは速記録によつて御了承願うことにいたしまして、ここではその主なる点を御報告するにとどめたいと存じます。
 先ず本法案を政府が提案した経緯並びに意図に関し、田畑委員より、「本法案立法の由来は、去る一月三十日、第十五国会休会明け本会議における吉田総理の施政方針演説の中で、昨秋の電産、炭労の争議の影響に鑑みて、かかる争議の制限立法をなすべき旨を述べたことに端を発していることは明らかである。自由党としては、首相が本会議において発言した以上、大幅の制限立法を提案すべきだと主張したのに対し、労働省事務当局としては、前年の労闘ストの苦い経験に鑑み、小幅の制限を主張し、政府と真正面から衝突したが、遂に鶴の一声で決したと聞いている」。
 この間の事情に関しては、去る七月二十三日の公聴会において、公述人として出席した電産労組の神山委員長は次のごとく述べている。
 (前略)今年の二月上旬スト規制法案が閣議で決定をする前に、私ほか二名の幹部が労働省に招致せられた際、面接したのは、当時の労働事務次官、現参議院議員の寺本広作氏であつたが、同氏からは次のような発言がなされた。即ち、「政府筋から電産のスト制限法の作成を催促されて、労働省は弱つている。争議も解決したし、輿論も平静化して来た際、自分はこのような法案作成にはどうしても積極的になれない。そこで、この機会に、電産は今後一カ年一切のストライキをやらないと声明したらどうか。若し組合がそれをやつてくれたならば、自分は一身を犠牲にしてでも法案作成を阻止する覚悟である」。更に、法案作成の経緯について同次官は、「昨年の電産ストが各方面の反響を呼んでいたために、特に側近からの注文で、首相の施政演説に政府の考え方として入れることになつたと聞いている。労働省には事前の連絡はなかつた。併しいやしくも首相の施政演説に言われた以上、放つて置けないという意見が強くなつた」云々と述べている。
 これに関し、委員会の席上、田畑委員から、この証言は重要な陳述であるから、寺本委員に真偽の説明を求めたところ、追つて速記録を熟読した上でとの答弁があつたまま、速記録はすでに数日前でき上つておりますけれども、未だに何らの答弁はないのであります。
 又、本年二月六日、朝日新聞の「記者席」欄に掲載されました記事によりますると、「公共事業に対するスト制限立法で、五日、労働省寺本次官らが自由党と話し合つた。何分、首相が施政演説で公言した以上、大幅スト制限をやれというのが与党の意向。労働省側は小幅制限論で対立。事務当局は、昨年の労闘ストで手を焼いて消極的になつている節もあるが、寺本次官がステツプ・バイ・ステツプと言つているところをみると、次の国会あたりで、もう一段の制限を加えたいようである」、この記事の真偽につき、同じく寺本委員に質しましたところ、氏は、「ステツプ・バイ・ステツプというのは、さる政府要人の言つたということを語つたので、自分がそう言つたのではない」と答えられました。が、同記事の他の部分については否定はされなかつたのであります。続いて田畑氏から、「寺本氏の言う政府部内のさる人とは、実は吉田首相であるということが、当時の情報から明らかにされている。故に、本委員会に吉田総理の出席を得て、直接これを質したい」との要求があつたが、その後、数日に亘り出席を要求いたしましたが、遂に首相は一回も出席しなかつたので、この問題に関しては未だに明らかにされていない状態でございます。
 又、同じく田畑委員から、「本法案が閣議において議せられたとき、制限は大幅か小幅か、或いはステツプ・バイ・ステツプで拡大するという意向があり、更に、提案理由説明中にも――公共的性質を有する産業はひとり電気事業及び石炭鉱業に限るものでないことは申すまでもないところでありますが、今回は云々――という字句があるところを見ると、この法律を他産業に拡大適用するのではないか」との質問があつたのに対しまして、小坂労働大臣は「自分が労働大臣として職に在る限り、職を賭してもそのようなことはしない」と言い、或いは又「仮定の問題には答えられないが、自分としては他産業労働者の良識に期待する」と申しました。これに対して一部の委員は、このような、あいまい且つ動揺した答弁では満足できないから、総理大臣の責任ある答弁を聞くか、又は改めて閣議に諮つてからもう一度答弁せよとの声が強かつたのであります。この問題の審議と、総理の答弁、閣議の方針も、未だに残つている未解決の問題でございます。
 次いで憲法上の問題といたしまして、「本法案の内容からすれば、憲法第二十八条が保障する勤労者の団体行動権、なかんずく争議権を不当に侵害するものではないか、憲法違反ではないか」という質問がありました。これは各委員によつていろいろな角度から同じ内容の質問が幾たびか繰返されたのでありますが、これに対して政府は、「憲法第二十八条に規定された労働者の諸権利といえども、同じく憲法第十二条にある――国民は、これを濫用してはならない、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任がある――という規定から来る制限を免れないものである。本法案は、憲法二十八条にいう労働者の権利と、十二条にいう公共の福祉との調和を図つたもので、決して憲法における労働者の権利を侵害するものではない」という、同じことを繰返し繰返し答弁されたのであります。各委員はこの答弁に満足せず、重ねて労働者の基本的権利と公共の福祉との関係を追究し、「公共の福祉の名において、労働者の唯一の権利とも称すべき争議権を抑圧してよいものかどうか。現に、本法案の第二条、第三条によつて、電気産業並びに石炭鉱業に従事する労働者は、争議権に重大な制限措置が加えられ、殊に電気労働者にとつては、事実上、完全に争議権を剥奪されるに等しい結果になるではないか」という質問もありました。これに対して政府からは、「基本的人権と公共の福祉の関係は、両者同格で、どちらが重い軽いというものではないが、具体的事情に即して、真に止むを得ざる必要最少限度の制限は、公共の福祉という国民全体の立場からみてあり得ることだ。又、本法案は、争議権を抑圧するものでなく、電気、石炭両産業における争議行為の中で、従来とも違法とされ、或いは違法とまでは明確でないが、社会通念上、正当な争議行為とは認めがたいという、そうした争議行為の方法のみを規制しようというのであつて、第二条、第三条によつて、電気、石炭両産業における争議がすべて禁止されるものではない」という答弁がございました。
 こうした政府の答弁に対しましては、「違法であり、不当である争議は、公共の福祉のために制限されても止むを得ないというなら、法案の名称を、争議行為の方法の規制等と言わずに、なぜもつとはつきり表現しなかつたか。又、正当な争議行為なら差支えないというが、それなら労働組合法第一条第二項にある正当性の限界をどう考えているか」という質問も出たのでございますが、政府はこれに対して、「不当にして違法な争議行為の範囲を明確にし、解釈を明らかにすることが、この法案の目的である。又、正当性の限界については時の社会通念を判断の基準とするが、最終的には裁判所の認定によつて決定される」旨の答弁がなされたのであります。この答弁に関連して、これは電産関係の出身の議員で、かかる問題に精しい藤田委員からの質問でありますが、「停電ストは作為的行為だから違法だということは言つていた。併し、電源ストや給電指令所の職場放棄、即ち労務不提供は、従来合法であるというのが通説であり、政府並びに最高検もそのように説明していた。少くとも電源ストは違法なりという解釈はなかつた。政府の解釈は一体いつから変つたか」と尋ねたのに対しまして政府からは、「電源スト等は、従来とも社会通念として違法ではないかという疑いがあつたのであるが、昨年のストライキの結果、これが違法であるとの社会通念が成熟したのである」という説明がございました。又これに関連して、昭和二十七年七月三日の東京高等裁判所の判決などを引例して、「作為的行為についてすら争議行為として合法的であるとの判例が多い。然るに裁判所の認定を尊重するという政府が、かかる判決理由を無視して、只今のような解釈をあえてとるとは一体どういうわけか」という吉田委員の質問に対し、政府は「未だ最高裁判所のこの点に関する判例がないから、社会通念上、現在において正当でないと考えるものを本法案に列挙したのである」として、ここでも抽象的な社会通念云々を以て答弁に代えられたのであります。(「主観論だ」と呼ぶ者あり)
 そこで、社会通念の成熟という問題につき、堀委員と労働大臣並びに法務省政府委員との間に、「社会通念の成熟の根拠はどこにあるか。単に消費者がストに反対しているとか、自由党が選挙によつて圧倒的勝利を得たとかいうだけで、社会通念が成熟したと言うことができるか」という質問に対して、労働大臣は、「社会通念、一般的な法意識が成熟したものと考える」というのみで、何ら明確な返答を行わず、然るに法務省政府委員の答弁では「単に消費者の一部が賛成したからとか自由党が選挙で圧倒的勝利を得たということだけで、社会通念が成熟したと考えることは早過ぎる」ということで、政府部内の意見の不一致を見た次第であります。なお、この点に関連して、昨日、堀委員から、「社会の利害は対立しているのだから、統一的な社会通念などというものはあるはずがない。自由党の第一党は金の力によるものではないか」という質問に、労働大臣は、「私は学問がありませんから素朴な意見しかできません」という答弁がございました。(笑声)
 続いて吉田委員から、「我々は法律解釈をめぐつて大事な法案の審議をしている。社会通念などという漠然としたものを基にして、本法案のごとく憲法違反の疑いある法案を作るとは怪しからん」という発言があつて、昭和二十六年、電産川崎分会の事件で、横浜地裁がスイツチ・オフは違法ではないという判決を下した例を引き、「自由党の社会通念から見てスイツチ・オフなどは不法だから本法案を出したのか」という質問がありましたが、これに対し政府委員からは、相変らず、「労組法第一条第二項に照らして正当ならざる行為と思われるものを明文化したわけで、正当か正当でないかは裁判によつてきまる」という答弁がなされたのであります。
 ところが、その前に、緑風会の梶原委員から、「仮に本法案が成立しなかた場合でも、電源ストは違法と考えると説明したと思うが、その通りか」という念押しの質問がありましたのに対しまして、労働大臣は、「行政解釈としてはその通りだ」と答弁されたのであります。
 そこで、これは委員長からの質問でありましたが、「政府は電源ストは違法であつたと説明しておる。併し、最終的な解釈は、行政府において違法であると考えられる場合であつても、最高裁の認定によるべきである。それはよいが、裁判の結果は大体において違法でないという判決が下りておる。とすると、政府は裁判の結果を尊重しないということにならないか」と質問いたしましたところ、政府委員は私の問に対して、「下級審の判例はいろいろ出ておるが、最高裁の判決はまだ下りていない」と申されたのであります。私は更に、「それならば最高裁の決定を待つて本法案を提出すべきではないか」と労働大臣に迫りましたところが、政府委員から、「最高裁のこの問題に関する判決はないが、昨年末の石炭、電気のスト以来、社会通念が成熟し、かかる争議行為は世論も又違法と認めて来たので、本法案を出した」という答弁がございました。そこで私は重ねて、「政府は電源ストは従来から違法であつたと言つているが、今まで電産労組に対して、かかる争議は違法なりと警告を発したことがあるか。子供が過ちをしたという場合でも、一度は頭を撫でてやるのが社会通念というべきものではないか」と反問したのでありますが、これに対し政府委員は、「電産の場合、昭和二十一年このかた、しばしば電源ストが行われて来たのは事実である。併し、争議中かかる勧告をすることは、政府が争議に干渉することになるので、しなかつた。併し、炭労の場合、保安要員の引揚げなどは明らかに違法だから、当時警告も発した」という答弁でございました。そこで私は、「保安要員の引揚げでさえ不明確だからこそ警告声明を発したのではないか。労働省の考えは突然変異したと思うがどうか」という言葉で更に質しましたところ、今度は小坂労働大臣から、「突然変異ではなく、昨年の争議により一歩一歩成熟したので、進化論的である」という、そういう答弁があつたような次第でございます。(笑声)
 更に電産の場合について、多くの委員より、「残されているスト手段に何があるか」という質問に対し、労働大臣は、「事務スト、集金ストその他のものがある」と答弁されたのであります。更にその点を追及されますると、「直接という字句が使つてあるので、間接に停電するごときストは許されている」とも答弁されておるのであります。又、犬養法相の答弁の中にも、「電産、炭労の労働者といえども、自己の持つている労働力を提供しないというストは許されており、不作為のストは合法だ」という答弁もあつたわけで、少くとも電源ストの合法違法の限界と解釈につきましては、労働、法務両大臣の答弁に、大きな食い違いがあるわけであります。
 なお、この電源ストの違法性の問題に関連してこういう質問もあつたのであります。それは緑風会の梶原委員からでありましたが、「電産の場合、単に争議行為の方法を規制すると言いながら、これはスト権の全面的禁止だと申してよい。集金スト等が残つているというが、これは附けたりで、相手に痛痒を与えないようなストは、ストとしての価値がない。又、ストは本来不作為の行為だと言われている。然るに停電ストは作為的行為だから違法だというわけだが、電源ストのような純粋に不作為の行為を社会通念で以て規制することには疑問がある。即ち、本法案によれば、不作為の行為を違法だと言つて、働くことが強制されている。働かなければ公共事業令八十五条によつて罰せられるという点、憲法第十八条の――その意に反する苦役に服させられない――という規定に違反するものではないか。」というのが質問の趣旨でありました。これに対し政府の答弁は、「電気の正常な供給を阻害する行為だけは遠慮してくれというのであつて、争議の禁止ではない。あとに残された争議行為はいろいろある。集金ストは効果がないというが、長期にやれば経営者に大きな打撃を与える。又、不作為の行為であつても、公共の福祉を著しく阻害するような場合、制限されるのが当然である。憲法第十八条との関係は、労働者は、雇傭契約によつて、いわば経営者との間に労働力の売買をしているわけで、意に満たぬ取引があつても、退職の自由があるのだから、奴隷労働ではない。従つて憲法違反と言うのは当らない。」そういう説明をしたのであります。この政府答弁に対し、同じ質問者は声を励まして、「では念のためもう一度お尋ねするが、不作為の行為であつて、而も何ら実害を伴うような影響はなかつた、例えば電源ストの場合、会社が代替労働力を以てこれを補つた、スキヤツプを入れたということでもよろしい、そうした場合でも、なお且つ本法の違反に該当するのかどうか」という質問に対し、政府は、「たとえそういう場合でも明らかに違反になります。なぜなら、本法は行為の結果如何を問うものではない。これこれの行為はいけないというふうに、行為の方法を規制の対象にしているからだ」と答弁されたのであります。
 本法案に対するこうした政府の考え方に対しましては、更に梶原委員から、「例えば小さな発電所で一分間の停電をやつた、それも電圧がちよつと低くなつだ程度のもので、一般国民の日常生活に与えられた影響は少かつた、そういう場合でも、なお且つ公共の福祉に反するという理由で基本的人権を奪うほどの罰に価いするのか。若しそうだとすれば、政府はまさに公共の福祉を濫用しているということにならないか」という質問に対して、政府は同じ意味の答弁を繰返されたのみであります。而して、同じ趣旨の質問が炭鉱の場合を例に引いて尋ねられたこともありましたが、そのときの答弁も又同様でありました。
 こうした政府の答弁は、昨年の電産、炭労の二大争議が、国民経済並びに国民の日常生活に甚だしき脅威と損害を与えたから、それ故に本法案のごときものが立案されたという提案理由の説明に述べられた趣旨と矛盾するわけでありまして、この点につき、各委員から質問も集中されたのでありますが、これに対し、政府から何らこの間の矛盾を氷解するに足る答弁がなされなかつたのであります。
 又、藤田委員から、「政府は、何故に、かかる憲法第二十八条違反の疑いのある労働者の基本権を剥奪せんとする、懲罰的な、而も不備欠陥の多い法律を提案し、且つ性急にこれを通過せしめんとするのか。聞くところによれば、今春の総選挙において自由党は電気事業経営者連合会から一千万円の献金を受けたというが、ここにその関連があるのではないか」という質問がありましたが、(「その通り」と呼ぶ者あり)それに対し、「そのようなことはないと思う」との答弁がございました。
 以上、委員会における質疑の大要を御報告申上げたのでありますが、次に、七月十八日から二十一日にかけての北海道、福島、福岡の各地の議員派遣に関し、各委員から報告が二十二日の委員会においてなされましたので、簡単にその大要を御報告いたします。
 先ず第一班北海道班は、藻岩、簾舞、江別の三発電所、札幌給電指令所、苗穂変電所を視察し、石炭関係では、三菱美唄鉱業所にて坑内の施設を視察し、東幌内炭鉱において保安要員等について詳しい説明を受けました。なお現地において聞いた声によりますと、電産ストの影響は少かつたようでありますし、又、保安要員の引揚げはあり得ないとの声、この法案の必要がないとの声が強かつたのであります。その間、七月十九日には札幌市民館において、本法案に対する各界の意見を聞く懇談会を開いて、労使それぞれ三名、学識経験者二名、消費者代表二名、合計十名の出席者から意見を聴取いたしました。その結果、使用者側は賛成、労働者側は反対、学識経験者は二名とも反対、消費者代表は、費成一名、反対一名でありました。
 第二班福島班は、七月十九日、福島市労働会館において、本法案に対する各界の意見を聞く懇談会を開きまして、労使それぞれ三名、学識経験者一名の出席者合計七名から意見を聴取いたしました。その結果は、使用者側は養成、労働者側は反対、学識経験者は反対でありました。次いで電気関係では、猪苗代湖発電所、日和田給電指令町を視察し、石炭関係では常磐炭鉱の君崎坑の坑内を視察いたしました。なお湯本において労使と共に懇談いたしました。
 第三班福岡班は、電気関係では、九州電力会社の名嶋、港、両発電所、九州電力本社内の中央給電指令所を視察し、石炭関係では、三井三池鉱業所の四山、三川両坑内の施設をつぶさに視察いたしたのであります。その間、七月十九日、県庁内副議長室において、本法案に対する各界の意見を聞く懇談会を開いて、労使それぞれ三名、学識詮験者二名、合計八名の出席者から意見を聴取いたしました。結果は、使用右側は賛成、労働者側は反対、学識経験者は二名とも反対でありました。更に、発電所、炭鉱を視察した際に、労促とそれぞれ別個に懇談をいたしました。
 なお、各地における学識経験者の意見の要旨は次の通りでありました。
 先ず北海道大学教授小林己智次君の意見は、私的独占禁止法の一部改正案は憲法第二十九条に基く財産権に対する公共の福祉に基く社会的制約の緩和であるが、本法案はこれと対蹠的に、憲法第二十八条に基く労働基本権に対する制約の強化である。争議行為は自主的解決が最も望ましいが、自主性尊重の名の下に労使双方がストを長期化し、第三者に迷惑を及ぼすことは、厳に慎しむべきである。併し、今日の段階においては、一片の法律を以て労使双方の紛争を解決するのは時期尚早である。むしろ調停制度の活用を図るべきであり、若し必要とすれば現行労働法規を修正すべきである。
 福島県地方労働委員会会長片岡政雄君の意見は、本法案は労働者の団体行動権と公共の福祉との関連性に基いているが、労働争議は労使の自主的解決が本旨であり、本法案は公共の福祉に名をかりて争議権を制約するものである。本法案は労働組合に対する弾圧法規となる虞れが十分にある。労働争議は短期間に而も自主的に解決を図ることが重要であるが、この法律は、官憲の力によつて争議を解決せんとする意図が十分見られ、法律万能主義の思想の現われである。而もこの法律では争議の解決方法をきめていないから、犯罪人を製造する可能性がある。この法律によらなくても現行法規で十分である。緊急調整制度の活用もできるし、将来これによつて不可能なる場合には仲裁制度を設けることによつて解決できる。労使の自主性によつて解決するという慣習を付けるべきである。
 又、九州大学教授井上正治君の意見は、本濃案は今日作成すべきものではない。理由は、科学的研究が十分されていない。社会に利害の対立のないときには公共の福祉を法律の対象にできたが、利害の対立が現われると、公共の福祉という抽象論を以て法の世界を律し得られない。抽象的観念によつては法律の勝手な解釈が行われる。電気事業の独占、貯蔵できないなどの特殊性を以て、スト規制の理由とならない。生活権を守るスト権が禁止されると、今後労働運動がどのような彩で発展するか不安がある。鉱山保安法、労調法の解釈がまちまちであると言うが、すべての法律の解釈はまちまちである。一方的に立法しても、それでは解釈の統一にならない。慣行に法律がついて行くことが通常である。十分双方が力を尽した上で作るべきである。あいまいな概念のあることは立法技術としてまずい。重要性、特殊性をもつと明白にする必要がある。こういう工合でございました。
 次に、本法案の重大性に鑑み、七月二十三日及び二十四日の両日公聴会を開き、労働組合、事業主の各代表者、学識経験者、消費者代表等二十四名の諸氏を招き、意見の陳述を聞きました。各公述人は、皆、本法案に大きな関心を持ち、それぞれの立場より意見の陳述がございました。そのうち主なるものを一、二御紹介して、御参考に供したいと思います。
 先ず消費者代表として、母を守る会理事長の小笠原嘉子君は、折角、新憲法によつて認められた労働者の基本的権利が制限ざれるのは残念であるが、これは労働運動の行き過ぎの結果で万止むを得ないところである。昨年のあの三カ月に亘る苦しい不快な記憶は脳裏に焼き付けられて忘れられない。最低生活に喘いでいる母子寮の親子たちが、ろうそく代が嵩み、それが内職の金より嵩んで、本当に米が喰べられなくなつた。ガスが出なくて子供が御飯を喰べずに眠らなければならなかつた。労働組合の方々は自己の権利を守るための運動ができるけれども、それのできない大衆のため、このスト規制法を出されることを切望しますと述べ、
 又、同じく消費者代表である評論家石垣綾子君は、昨年の電産、炭労の争議において一番大きな役割をしたのは事業家である。あのとき事業家が労働組合をしてどうしてもああいう争議をやらせるような方向をとつたのではないか。事業家のほうはあの頃相当に儲かつていて、それまでの赤字から五十四億の黒字になつていたように新聞で見ました。それにもかかわらず、労働者の交渉にはなかなか応じなかつた。ストライキは起すほうでも、決して、すき好んで起すものではない。若し事業家が最初から労働者の言うことに耳を傾ける態度をとつていたら、あんな大きなストライキにはなつていなかつたろうと思われる。又、中労委がもつと早く中に入つて話をまとめるようにしなかつたことは遺憾である。今回のストライキ制限法が通過すると、他の産業も次々に同じような枠にはめられることになり、延いて全部の産業労働者のスト権が奪われることになるだろうから、私はこれに反対するものである。憲法による労働者の団体行動権は基本的な人権の一つであります。私たち主婦として、電気が切れていろいろ不便はしましたが、そういう一時的な不便より、労働者の権利や生活の安定が破れるという害のほうが大きいと思う。ストライキ権のある国は文化的に高い国であると言える。それを一部でも抑えることにより、逆の方向に日本が進むことになるのではないか。(拍手)そうすると、又、必ず暴力とか又戦争というような恐ろしいことが起るのが予想されるので、反対であると述べました。
 次に学者として、国学院大学教授北岡寿逸氏は、停電ストが如何に国民生活を脅威し、日本産業を麻痺させるかを、我々は、つぶさに経験した。炭鉱の保安要員引揚げは、石炭という国民の最も大切な資源を半永久的に破壊しようとするもので、まさに自殺的行為である。これは、いわば相撲の封じ手のようなもので、その許されないことは国民の常識であるから、一体こんな法律を作ることがおかしいくらいだが、今後言やると言つておるのであるから、そんな常識のない組合幹部に任せておけないので、遺憾ながら法律で禁止するに至つたものである。今日こういう破壊的な争議権を労働組合若しくはその少数の幹部に与えることを、国会が若しこれが合法的であるというならば、それは、暴力革命、共産革命の途を開くようなものである。又、スト権の制限が憲法第二十八条の違反であると、或る種の労働法学者は言うのであるが、そんな馬鹿なことはない。警察や消防、船員にその例がある。憲法というものは国家の利益のためにあるのだから、公共の福祉のためにどんな権利でも制限されるのは当り前である。この法律はスト権を奪うのみで、代るべき生活保障の途が講ぜられていないから片手落ちではないかという議論もあるが、元来、電気をとめたり炭鉱を水浸しにする権利はないのだから、禁じても決して片手落ちではないとの趣旨で、養成論が述べられました。
 次に東京大学助教授磯田進君は、電源ストをやる、電気がとまると社会が迷惑する、だからストライキを禁止してもよろしいと簡単に考えられることは、新憲法以前的な考え方である。つまり、お前がストライキすると自分が迷惑する、だからストライキを禁止するというようなことが若しできるとしたら、結局それは奴隷労働である。電気労働者は社会に便益を供給するための奴隷に等しいものだという考え方に通じるのである。これをいささか法律的に申せば、公共的福祉を理由として法律上どんなことができるかということになる。奴隷社会と異なり、憲法十三条によつて、すべて国民は個人として尊重せらるべきのもので、労働者も同じく尊重さるべきである。この際、量り比べられるものは、一方は社会的便益、つまり便益であり、一方では労働者の生存であり、又その意に反する労働を強制されることがないという要請である。これは絶対的な要請であり、これが前提となるべきものであつて、その逆であるべきではない。人命の安全、健康等のための必要な限度に電気の供給を命ぜらるべきことは、労調法の第三十六条に明記されており、その限りにおいてこの法案の必要はない。又、この法案が成立すると電源ストもできないと言うのだが、私は、本法第二条で発電所の労務不提供を禁止したものと読めるかどうか疑問があると考える。仮にこれらすべての争議方法が禁止されるとなると、実質上、電産労働者はストができないに等しいことになる。争議権を事実上剥奪しておいて、それに代るべき何らの代償も与えていないことは、驚くべきことである。更に、常識的には労働者の賃上げ要求のストライキと社会の便益がぶつかるのだと考えられているのであるが、この断定は一方的である。というのは、電力会社は相当儲けている。労働力をもう少し高く買うことは可能であるにかかわらず、あえてしないことによつてストライキになるのであるから、むしろ社会の便益は電力資本家の便益とぶつかつているのではないか。要するに、今日の労働法の見地から言えば、ストは労働者のみの責任であるという考え方は到底成り立たない一方的独断である。(拍手)そうして、社会の迷惑を理由としてストを禁止するのは、法律を以て資本のために利潤を確保してやることを意味するのである。故に、法案第二条は憲法二十八条及び同二十五条に違反する。これは生存権を規定した条項でありますが、この二十五条に違反し、更に何ら代償を設けないで争議権を剥奪する点で、憲法第十八条にも違反する。これは何人も不任意の労働に服させられないという条文である。本法案は憲法のこの三つの条項に違反する途方もない悪法であると私は考えます。次に炭鉱の問題ついては、人命のことは労調法第三十六条にすでに規定されてあるので、又、鉱害は付けたりであるから、結局、第三条は石炭産業において資本を守るということに帰着する。故に、社会に迷惑を与えるという電気の関係よりも更にひどい規定であると申さねばならない。憲法第十八条違反の強制労働の優たるものであろう。七月二十二日の朝日新聞を見ますと、常磐炭鉱の視察記が出ている。この中で次長というかたが、この法律ができると、保安要員として、排水、通風は勿論、地盤崩れを防ぐためカツペ採炭の要員も、又自然発火を防ぐためには運搬要員も、すべて必要であるという意見が述べられた由である。この法律が恐ろしく広汎に解釈される危険性はすでに顕著であると申さなければなりません。最後に蛇足ながら申し添えたい。憲法違反ということについての感覚の問題であるが、私は、憲法は革命に対する防波堤である、(拍手)安全弁であると考える。憲法の規定に違反してストライキ権をだんだん締め上げて行つて、それで収まるものではない。労働者階級をして、人権も生活も踏みにじられ、どうにも仕方がない、法律の枠を踏み破らなければ、生きる途がないという気持にならないという保障があるであろうか。かような意味において、憲法は十分に尊重されなければ、事態は危険であると私は申上げる。衆議院の公聴会では、五人の労働法学者、東大の石井教授、有泉教授、一橋大学の吾妻教授、早大の野村教授、和歌山大学の後藤教授、日本労働法学界のオールスター・キヤストであるこの五人が、ことごとく本法案に反対の意見を述べておるのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)私の知る限りの労働法学者で本法案に反対の意見を持たない人は一人もございません。そのような法案が、それにもかかわらず成立するということは、容易ならざることであります。これは、今日の政治或いは今日の立法の状態に対する危険信号ではないだろうか。立法における良識を代表する参議院として、申すまでもないことであるが、憲法を尊重するということについて、厳粛にお考えを頂きたいものでありますとの趣旨を述べられたのであります。(「よく聞け」と呼ぶ者あり、拍手)
 以上が七月十一日に電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律案が労働委員会に付託されましてから八月三日に至るまでの委員会における審議の経過であります。
 かくいたしまして、昨三日午前十一時より委員長及び理事打合会を開催し、今後の審議日程につき隔意なき意見を交わすために協議したのでありますが、各派の意見がまとまらないままに、十二時、一旦、委員長及び理事打合会を打切り、午後一時から委員会を開いて質疑を続行し、委員会散会後、改めて委員長及び理事打台会を開催して、更に審議日程を協議することに意見の一致を見たのであります。その結果、かねて委員より出席要求のありました総理大臣並びに通産大臣、法務大臣の御出席が、病気その他の理由で得られなかつたのでありますが、これ以上審議の遷延は許されないとして、午後二時五十分、委員会の開会を宣して、労働大臣に対する質疑を開始したのであります。
 たまたまその折、丁度四時五十五分頃でございましたが、相馬委員より、議事進行に関する質問として、先ほど来、議院運営委員会において、本法案に関する委員長の中間報告を求める動議が自由党より提出されている事実を述べられ、「この状態は労働委員会にとつて事頗る重大であると思うが、委員長はこの事実を承知かどうか。又、委員長はこのまま委員会の質疑を続行する気かどうか」という意味の発言があつたのであります。これに対し委員長は、自由党からさような動議が出ていることは「うわさ」程度に聞いておつたが、議長からも、又、他の誰からも正式に聞いてはいなかつたので、その旨を答えました。更に、又、委員会の質疑をこのまま続行するかどうかについては、「続行すべし」ということに決定をみて、引続き労働大臣に対する質疑が行われていたのであります。
 ところが、その矢先に本院の議長より委員長に対し、議運の小委員会に出席して見解を述べよとの要請がありましたので、その旨を委員会に諮りましたところ、「単に委員長の見解を述べるということならよろしかろう」という決定がありましたので、そこで委員会を暫時休憩し、直ちに議運小委員会に出席して、当日まで委員会がとつて参りました本法案に対する審議方針並びに審議経過の概略を述べ、併せて委員長としての見解を説明したのであります。その結果は、議長におかれまして、更に動議の発議者と御相談の上、改めて議運に諮り、中間報告を求める動議の取扱を決定するとのことであつたのでありますが、結局、本日ここに本会議の席上、中間報告をいたすこととなつた次第であります。
 もともと本法案は、去る七月十一日、衆議院において可決せられ、即日、当委員会に付託となり、同十三日、労働大臣より提案理由の説明を聴取して以来、殆んど連日に亘つて委員会を開催し、その間、二、三調査案件の審査はいたしましたが、圧倒的大部分の時間が本法案の審査に当てられたものでありますることは、すでに御報告申上げた通りでございます。私は、委員長として、当初から、本法案の重要性に鑑み、且つは衆議院における本案審議の内容に不十分の点のあつたことを思い、当委員会におきましては、参議院の権威のためにも慎重審議を尽すべきものであるとの考え方から、(拍手)その旨を委員会に諮り、同時に、委員長として、会期末の七月三十一日までには本案に対する何らかの結論を議院に報告する義務のあることを申述べ、この点も併せ全会一致の養成を得まして、七月末日までこの大原則に基いて慎重審議を続けて参つたのであります。
 然るに、その先月二十七日頃より、自由党委員においては質疑打切りの気配が見え、その結果、二十九日でありましたが、自由党の委員から委員長に対し、「会期も余すところあと二日に迫つたので、質疑を打切られたい」との申入れがあつたのであります。又、その頃には、会期の切迫と共に、委員の間に若干意見の食い違いが生じておつたことも事実でありますが、これとても、委員会として先に決定を見ております審議の大原則を覆えすほどのものではなかつたのであります。否、むしろ委員会としましては、三十一日に討論採決を行い、即日、本会議に報告、議決を求めることに決定しておりました折も折、突如、会期延長説が流され、そのために質疑の進行が阻まれ、やがて会期延長が事実となつて現われ、今日に至つたというのが真相であります。
 従いまして、委員会といたしましては、只今申上げましたような若干のいきさつはありましたが、大勢として、終始円満なる話合いのうちに、当初の申合せ通り慎重審議を進めて参つたわけでありますが、昨日に至り、突然、委員長に中間報告を求めるの動議が提出されまして、本会議において決定されましたが、そのことは私として了解に苦しむところであります。(拍手)と申しますのは、審議の大原則が確認されており、而も所定の手続を経てなされておりまする委員の質問のうち、時間がないままに未だ全然質問がなされずに残つておる向きがあり、なお、一応の質問は終つたものの、関係大臣の御出席がないままに留保されておる部分が多々あり、更には、政府の答弁に食い違いのある点乃至は不明確なままに他日改めて答弁されることを約束されていた事項など、多々問題点が残つているのであります。而も会期は昨日今日終りになるというのではありません。(「その通り」と呼ぶ者あり)委員長といたしましては、以上のごとき委員会の審議経過に鑑み、極力、出席要求のある大臣の御出席を督促すると共に、各委員の意見の調整を図つて、会期末までに何とか結論を得るよう最善の努力を払つて参つた次第であります。(拍手)
 特に委員長といたしまして、この際、重視いたしましたのは、左の三点であつたのであります。
 即ち、その一は、本法案が、昨年の電産、炭労の争議の結果提案されたと政府答弁にありまする以上、徹底的に、両争議の内容、性格を調査する必要があり、そのために三十種に及ぶ資料の要求があり、その結果、資料は委員会に提出されていたのでありますが、未だそれについて殆んど質疑がなされていなかつたのであります。
 第二点としましては、本法案の内容が極めて抽象的あいまいな表現を以てなされておるため、拡大解釈の行われる余地が十分あると思われる点。
 更に第三点としましては、本法において労働者の権利を制約しながら、その半面、何ら救済の措置が講じられていないという点。
 少くとも以上の三点につきましては、これを残る五日間の会期中において、できる限りの審議を尽して、六日討論採決、七日本会議に結果を御報告する方針を以て臨んでいたのであります。然るに昨日、突如、委員長に対し中間報告を求める動議が可決されたのであります。
 国会法第五十六条の三にいう中間報告に関する事項は、大体次の事態ある場合に限り議院において委員会に要求されるものと委員長は考えております。
 即ち、第一の場合は、委員会の審議が著しく混乱をして収拾が付きがたい状態に陥つたとき。
 その二は、委員長の審議の取扱が公平を欠き、一方的に偏するか、又は委員長に委員会を整理する能力がないという場合。
 その第三は、日切れの法案であるため、特に緊急止むを得ないという場合。
 この三つの場合が想定されるのでありますが、果して、当委員会の今日までの審議状況において、又、委員長たる私の取扱において、はた又、法案の性質において、以上三つの場合に該当するものがあつたでありましようか。この点、委員会の責任者の立場において、到底、私は承服しがたいものであるということを、特にここで明らかにしておきたいと思うのであります。(拍手)
 而も、この委員長に対し中間報告を求めるという事例は、曾つてその前例がないのであります。繰返して申上げます。この委員長に対し中間報告を求めるという事例は、曾つてその前例がないのであります。第一回国会以来、成立した法律案件は恐らく千数百件にも上るでありましようが、そのうち国会法第五十六条の三の規定に基き中間報告のありましたのは、調査事件で僅か数件、いわゆる吉村大尉事件、徳田球一要請事件及び大橋武夫君が関係したと言われる二重煙突事件を数えるのみでありまして、法案の審査に関しては一件だにその例がないのであります。(拍手)而も、前述の調査事件の中間報告の場合も、委員長においてみずから自主的立場においてなされたものであつたのであります。
 これを要しまするに、本法案に対する委員会の審議には、以上申上げました慎重審議の大原則が一貫、堅持され、毫もその間に違背があつたとは思わないのであります。
 かくして七月二十五日に至り、爾後の質問時間の要求を求めましたところ、各委員よりなお合計八十四時間の要求がありましたので、委員長理事打合会で、第一回として一応一廻りの質問を行う予定を以て十八時間に短縮したのでありますが、その十八時間のうち去る一日までに終了した分は僅かに十時間という状態であります。
 会期があと残つていないというならば止むを得ません。又、中間報告を求められるに該当する事故があつたというなら、それも又止むを得ないと思うのであります。併しながら会期はあと五日間残つておるのであります。審議の状態、委員長の取扱に何ら不当と認められる点はなかつたと私は信ずるのであります。(拍手)然るに、なお且つ中間報告を求めるの動議が可決せられて、ここに急速御報告申上げる次第となりましたことは、返す返すも遺憾に存ずるものであります。(拍手)私は、衆議院の行き過ぎを矯め、参議院の権威を保ちつつ、慎重審議を以て国民に奉仕しなければならぬ参議院の権威を根底から覆すものであると申さなければならぬと思うのであります。
 以上を以て委員長の中間報告を終ります。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(河井彌八君) 只今の中間報告に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。菊川孝夫君。
   〔菊川孝夫君登壇、拍手〕
   〔「労働大臣が来るまで待て」と呼ぶ者あり〕
○菊川孝夫君 私は只今……(発言する者多し)議場を整理して下さい。
 私は、只今労働委員長栗山良夫君から報告されました電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律案の審議の中間報告に対しまして、二、三質問をいたしたいと存じます。
 先ず第一点は、四日間の会期を残しながら、昨日、院議を以て中間報告を要求されたことに対しまして、委員長から縷々心境を披瀝されましたが、これは、国会法の五十六条の三の第一項によつて、中間報告を求めることができるというので求めたのでございまするけれども、その裏には、単に中間報告を求めてそれから態度を決定しようという中間報告の求め方ではなくして、もろ労働委員会において審議をさせない、本会議でやろう、こういう意図を以て中間報告を求めて来ておるものであることを、労働委員長は十分御承知の上で、議院運営委員会において証言をされたかどうかという点を第一点にお伺いいたしたい。(拍手)又、委員長は、こういう中間報告を求める要求が出されるということを察知せられましたときに、輝いたときに、議院運営委員会において聞かれましたときに、これを労働委員会に報告されました場合に、各委員から、どういう意図を以てこういう中間報告要求があつたか――明らかに申しまして、これは短刀を突きつけて、お前たち、どうするんだと、こう出て来た中間報告の要求であります。言葉を換えて申しますならば、労働委員会に対しまして、委員長ではない、労働委員会そのものに対しまして、院議を以て大きな意思表示をしたのです。私は、言葉を避けまするけれども、重大な意思表示をしたものとしてお受取りになつたかどうか。労働委員会はお受取りになつたか。この点について、はつきりと御答弁をお願いいたしたいと思うのであります。そういう観点に立つて、報告をまとめるに当つて御協議になつたかどうか。この点をお聞きいたしたいと思います。
 第二点は、現地調査の結果を、今あなたは、客観的にいろいろの証言があつた、或いは現地の模様を御報告になりましたけれども、これを各地へ派遣されました議員諸君から、どのように取りまとめるか、どのようにこの状態を把握するかという点について、おまとめになつたかどうか。この点を一つ御答弁願いたいと思います。
 第三点といたしまして、公聴会におきまするところの代表的な労働法学者からは、憲法違反であるという、真向から憲法違反論を振りかざしての反対証言を、如何に労働委員会の委員諸君がこれをお受取りになつたか。この点が私は極めて重大だと思います。第一国会以来、たびたび証人として、学者或いはその他の知識階級の、これこそは意見を聞くべき人であるという方方をお呼びいたしまして、意見を拝聴することになつておる。公述人或いは参考人として意見を聞いておるのでありますけれども、これらの意見は、単なる形式的に聞いたのでは意義はないと思うのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)それをどのように捉えて一つ扱つて行こうということを協議されましたかどうか。ただ単に聞き放しでは駄目だと思う。どういうふうに取扱おうかという点について御協議になつたかどうか。この点をお伺いいたしたいと思います。
 それから第四点といたしまして、冒頭に申上げましたように、これは短刀を突きつけられた院議の重大なる労働委員会に対する意思表示であつたのでありまするが、労働委員会として審議はそのように順調に行つておらなかつたものかどうか。あなたの御報告を聞いておりますると、極めて順調に行つて、而も会期一ぱいには、何らかの、反対、養成は別といたしまして、何らかの結論が十分に出るところの計画が立つていたということではございませんか。それにもかかわらず、これは、このような短刀を突きつけられた重大な意思表示を受けましたけれども、それぞれ各会派から選ばれました労働委員の諸君が、その会派において、私は、これがこういう意思表示をされる前に、何らかの会派における意思表示があつて然るべきだ。而もその経過、各会派におけるところの審議の経過、いわゆるこれに対する態度を決定するに当つての経過というものは、労働委員長に当然報告されて、それらの報告を総合して、労働委員会としては打つべき手はあつたのではないかと思うのでありまするけれども、どのような報告がなされたか、これを聴取になつたかどうかという点について、一つ御答弁をお願いしたいと思います。
 次に、総理大臣の出席をたびたび要求されましたけれども、未だに総理大臣の出席がなかつたというのであります。この法律案は、成るほど条文そのものは三カ条でありまして、極めてわかり易い。条文をそのままに受取る場合にわかり易いのでありまするけれども、その裏に潜むところの精神、今後の労働政策というものは、極めて重大な意義を持つておると申して過言ではございません。これに対しまして、政府の最高責任者であるところの吉田総理大臣から、十分にその持つているところの意図、即ち、裏には何も隠しものはないのだ、これだけであるというふうに答弁を受けるか、これ以上のことはやらないのだと来るか、或いは、事と次第によつては、このような法律は政府は出したくないのだという意図で、併しやむを得ないとして出して来たのか、それとも何らかの意図を以て強行しようとして出して来たのかというような点、総理大臣の答弁を十分聞いておく必要がある。又、必要によつては、仮にこれは否決される或いは可決されるという場合に、政府はどういう態度で以て臨むかということも、私は極めて重大だと思うのであります。これらの総理大臣の労働政策そのものに対するところの基本的な考え方を十分に聴取する必要はあると思います。曾つて私も労働委員会に所属いたしておりましたときに、たまたま緊急調整の問題を労働委員会において審議した際、総理大臣に向つて、今後あなたは、若しも、これと同じよな労働法のいろいろの改正、重大な改正がある場合には、当然、労働委員会に出て来て、十分あなたの考えているところを披瀝して、そして我々の質問に答える用意があるかということを衝きましたところが、笑つて、必ず出て参りまして皆さんと共に語つて重大な労働問題を審議したいと答弁している。これは、はつきりと速記録に載つているのでありますが、その総理大臣はどういう理由で労働委員会に今日まで出席されなかつたか。この点、理由はどうなつておつたか。それから、委員長はどのようにこれが督促をされたか。これらの点について、一つ、はつきりと御答弁をお願いいたしたいと思う次第であります。
 次に、委員の質問の通告はまだまだ残つておつたようでありまするけれども、委員の中に、まだ全然、質問通告をしておりながら、質問を一回もしておらないというような委員があつたかどうか。そうすると、その人は委員会において一回の質問も許されないままに本会議に持ち込まれる、そして本会議において質問の機会が与えられればいいが、与えられないとするならば、労働委員としての使命を全然尽すことができないことになると思うのでありますが、そういうようなことがなかつたかどうかという点について、御答弁をお願いしたいと思います。
 最後に、私は、この法律案と政治献金について御調査になつたかどうかということであります。(拍手)この点については、現在の内閣は石炭内閣だと俗に言われておりますように、我々の同僚議員であるところの緑風会の西田隆男君が、緒方副総理をつかまえて、あなたは金田中で以て炭鉱業者と会つて食べた御馳走代を払つたかといろ質問をしたのに対して、緒方副総理は顔を赤らめて、答弁がはつきりできなかつた。よくわからなかつた。このように、石炭業者と政府がみつちりと結んでいるということを先ず調査しなければならんと思うのであります。(拍手)又、開発銀行の帳尻を調べましたときに、一番大きな、たくさん融資を受けているのは石炭業者であります。三井鉱山を筆頭に石炭会社は最も莫大な融資を受けているのでありますが、開発銀行の資金というものはどこから出ているか。みんな我々の税金から出たところの金であり、見返資金もみんな我々のふところから、国民のふところから出た金でありますけれども、一般金利は一割以上にもなつているのに、この石炭鉱業に対しては六分そこそこの低金利でどんどん廻しているのであります。これらの低金利の融資を受け、そうして政府を御馳走して、今度は首切りをやろうとして、現に現われているのでございますが、儲かるときには黙つて低賃金で使つておき、ちよつと景気が悪くなつたというと、直ちに首を切らなければならん。首を切るということになりますると、労働者は立ち上つて闘います。その闘いを抑えるために、今回の、おどかしのスト規制法を出させたのだ、金の力にものを言わせて出させたという(「そうだ」と呼ぶ者あり)跡はなかつたかどうかということを、十分にお調べにならなければならんと思うのであります。(拍手)なお又、今回の国会におきまして、我々は反対をいたしましたるにもかかわらず通過いたしました特別減税国債二百億のうちの百二十億が、全部これは、電源開発会社、麻生さんが社長をやつておられるところの九州電力、或いは白洲さんの社長の東北電力等の電源会社に殆んどが廻されるのである。而もこの減税国債というものは一割から一割二分の金利を国民が払うことになるのでありますが、それを開発銀行には六分五厘くらいで貸してやる、そして、それを開発銀行は一分くらい頭をはねて、七分五厘くらいで貸すのでありまして、結局、国民が高い利息を払つて借りた金を安い金で以て電力資本家に貸してやるのであります。こういう法律案を通しておいて、而もこの法律案が通つた暁には、当然、この間の選挙の際の各政党に対する政治献金を報告されたのを見ましても、電気事業者と石炭鉱業家は最も莫大な献金を自由党並びにその他の保守政党に行なつておるのであります。(拍手)その代償として、是が非でもこれは、面子にかけても、この法律案をおみやげと、てこの国会において通さなければならないという(拍手)政府に一つの義務がある、いわゆる義務付けられて出して来たというような意図があつたか、なかつたか。こういう点を労働委員会において調査しなければならぬ。幸いにいたしまして、石炭業者の裏面を十分に知つておる我々の同僚議員西田隆男君が緑風会に健在しておられまして、過般も、政府と石炭業者の醜関係について、みずから立つてこれに一矢を酬いておられたことは、労働委員長もよくおわかりの通りでありますが、これらの点についても御調査になつたかどうかという点を一つ明確に御答弁をお願いいたしたいと思います。
 次に、諸外国の立法例を調査されたかどうか。それから諸外国の輿論が一体どういうふうに向いて来るか。今、日本だ、何と申しましても外国へ物を輸出して、貿易立国、貿易経済によつて立国しなければならんということは、誰でも、三歳の童子でも知つておる。その日本の品物を阻むものは、いわゆる低賃金によるところの日本の労働力の出血輸出だということを長いこと言われて、ソシアル・ダンピングとして、日本商品に対しては世界各国からボイコツトを食つておつたのでありますつましてや、こういろ労働組合に対する弾圧、而も、学者もいけない、労働組合も反対しているような法律を、今、仮に国会が通すということになると、国会において審議されている、衆議院を通過したということが外国に伝わつた場合には、当然これには、いい反響は私は絶対に来ないと思うのでありますが、これらの点についても御調査になり労働委員会において十分御検討になつたかどうかという点を、一つ明らかに御答弁願いたいと思うのであります。
 以上数点を御質問申上げまして、私の質問といたします。(拍手、「自由党声なし」と呼ぶ者あり)
   〔栗山良夫君登壇、拍手]
○栗山良夫君 只今の菊川君の御質問にお答えを申上げます。
 第一点の御質問は、労働委員会の審議半ばにして、議院運営委員金の議を経て本会議の意思として中間報告を求める動議が成立したことは、委員会の審議権というものに非常な制約を加えたことではないか、こういうことについて縷々お述べになりましたが、私といたしましては全く同感でございます。第一国会以来、いわゆる国会法が新らしく制定されましてからの我が国両院の法律案審議の中心は、常任委員会にあるわけであります。従いまして、常任委員会は付託された案件につきましては責任を以つて審査をし、結論を出し、本会議にこれを報告する義務があるものと私は考えるのであります。又、各委員会は、それあるが故に熱心に審議を続けておられると思うのであります。然るに、かような状態で、先ほども御報告を申上げましたように、順調に審議が進んでおるにもかかわらず、途中で或る意図を以てこれを取りやめまして、本会議の議に移すというがごときことは、これは将来の国会の運営に非常に悪い先例を作ることではないかと私は信ずるのでああます。(「そうだ」「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)特に、昨日今日の動きを見ておりまするというと、私は参議院の民主的運営について心から一つの憂いを持つものであります。自由党の小林英三君は、動議発案の(「動議濫発者だ」と呼ぶ者あり)レコードを打ち立てんと、盛んにやつておられるようでありますが、(笑声)それも結構でありますつ結構でありまするけれども、少くとも参議院におけるこの言論の府において、如何に動議を以たしても制限することのできない言論というものがあるはずであると思うのであります。(「然り」「その通りだ」と呼ぶ者あり)例えば、討論然り。又、答弁然り。本日、参議院の役員である労働委員長は、その発言を一時間に制限をせられました。こういう馬鹿げたことがおよそあるでありましようか。国会の役員が院議を以て発言の制根を受ける。若しこれがだんだんと制約を受けて参りまして、委員長の発言が五分になり或いは十分になつたら、一体どうなるでありましようか。私は、かような意味を以ちまして、中間報告を求められたことについて、スト規制法案の審議が半ばにしてめちやくちやになるということについて、非常に遺憾に思いますると同時に、第二には、これが先例となりまして、委員会中心主義を以て熱心にあらゆる法案を審議して行こうという参議院の高い権威を踏みにじつて、そうして特定政党の欲するままにすべての案件が本会議に持ち出されて、赤子の手を捻じるがごとく多数の力によつて処理されて行きますることは、まさに日本の将来にとつて悲しむべきことであると言わなければならんと思うのであります。(拍手)
 第二に、現地調査の件でございます。現地調査の結果は、先ほども申上げましたように、名班から多数の資料を添えまして委員会へ報告になりまして、今度の審査に非常に役立つたのでございます。特に、石炭におけるところの保安要員というものは一体どういうものであるか。北海道におきましても、福島におきましても、私どもが参りました九州におきましても、千尺を超える切羽の所まで参りまして、つぶさに視察をして参りました。そうして、今度のスト規制法案のあの抽象的な文章を以ていたしましては、保安要員の何たるかを的確につかむことすらできない、こういう状態にあることをキヤツチいたしております。又、停電ストにいたしましても、同様でございます。併しながら、そういう貴重なる現地の結果を、菊川誰が、この審議の過程においてどう取上げたかというお尋ねでございまするが、甚だ遺憾でございまするが、当委員会はまだそこまで実は力が及びません。それをやろうと思つて努力をしておりまする途端に中間報告を求められましたために、当労働委員会としては、まさにお手あげという方を入れてくれというところでございます。
 次に公述人の陳述でございまするが、これも全く同様でございます。ただ、参議院で行いました公聴会におきましては、労使の代表をそれぞれ同数呼びましたから、賛成、反対同数でございます。又、消費者代表も同じように、賛成、反対同数に呼びました。ただ、私どもが一番この公聴会で期待をいたしましたのは学識経験者でございました。この学識経験者に対しましては、与党側から三名、我々野党側から三宿、合計六名、賛否を個数にして選ぶことに約束をいたしました。大体、教授グループをこれに充てようという下打合せをいたしまして、私どもといたしましては、この両方から出て来る諸公述人に対して厳正な選択をしたのでございますが、野党側から出されましたのは、有名な労働法学者ばかりでございましたりところが与党側から出されました方はどうかと申しますと、労働法学者は一人もございません。而も私どもが期待いたしましたのと違いまして、学者は、二人、一人は弁護士でございました。要するに学者を三人揃えることが困難なような事情にあつたようでございます。それでもまあ止むを得ませんので認めましたところが、次に、成蹊大学の町田信夫君が都合で出られないということがありましたときに、自由党のほうから、是非一つ野田君の代りに、代りの者を入れてくれないかというお話がございましたから、私は、プロフエツサーならば誰でもよろしい、こういうことを申しましたところが、実は教授ではないんだ、一つ労働研究所の桂さんとかいう話がありましたから、これは私は、お断わりをいたしました。労働研究所にもピンからキリまでございまして、資本家のほうから金が出て労働組合対策の研究をしている労働研究所もございます。又、労面組合側に立つて研究している研究所もございますが、そういう性格が明らかになりませんというと、学識経験者として述べられる陳述としては不穏当なる慮れがありますので、お断ありいたしまして、記述を以て代えられたような次第でございますが、そういうような工合な状態であつたのでございます。この取上げ方につきましても、先ほど現地調査の結果を取上げることができなかつたのと同様な状況にあることにつきましても、誠に遺憾でございますが、事実はそうでございまするから、どうかさように御了承願いたいと思います。
 四番目の、委員会の審議の状態であります。順調に行つておつたかどうか。――私は順調に行つていたと申すよりほかはございません。私はここに詳細な記録を持つておりまするが、七月十三日にスト規制法案の審議を始めましてから今日まで、休みましたのは八月一日まで一回もございません。又その審議の状態も大体順調に進んでおりまするが、ただ委員長及び理事打合会において若干時間を取つたことばございますが、これは委員長の念願と違いまして、与党側から、この法律案は三条の法律案であつて、殆んど内容をそんなに深くチエツクする必要もなかろう、早く結論奇出すところへ持つて行つたほうがよかろう、現地調査も必要でない、公聴会も日にちを少くしたらよろしかろう、質疑も早く打切つたらよかろう、そういう工合にときどきいろいろと動議らしいものが出されまして、それで委員長理事打合会で揉めて、議事の進行に相当障害になつたことは認りまするけれども、それ以外には殆んどない。私は順調に行つておつたものと、こういう工合に御返答申上げるほかございません。
 第五点といたしまして、各大臣の出席の模様はどうかと申しまするが、総理大臣は遺憾ながら一回もまだお顔をお見せになりません。小坂労働大臣のお話によりますと、ワンマン吉田総理大臣というのは、決して独裁吉田総理大臣という意味ではなくて、日本にはなくてはならないただ一人の総理大臣である、(笑声)そういう偉い人であるという御答弁がありまして、速記に載つております。(笑声)そういう偉い人でありまするから、到底労働委員会などには御出席頂けないと私は諦めておつたような次第でございます。又、通商産業大臣は、これは誠にお気の毒でこぎいますが、一時間四十分ばかり御出席になりました。併し、通商産業大臣は、御出席になりまするや、四十度の高熱を確かに出しておられた。私のすぐ横にお坐りになりましたが、その息づかいのほども誠にお気の毒でございました。併し、極めて丁寧に、極めて懇切に御答弁がありましたことにつきましては、私は敬意を表しております。従つて、若し今後の委員会におきましても、通商産業大臣が御病気で出られないということでありますれば、私は政務次官でも委員諸君に御喚問を願わなければならん、こういう工合に考えるわけでございます。又、法務大臣も若干御都合が悪かつたようでありますが、二、三日、都合して出て頂きました。小坂労働大臣は主管大臣でありまするから、委員会に出席ざれることは当然であむます。そういうわけでございまするので、大体今度の本法案の審議について各大臣の出席状況は、小坂労働大臣を除きまして、他は委員長といたしましては良好であるとは認めがたいのであります。又これが委員会の審査に非常に障害になつておる、議事進行に非常に障害になつておるということも事実でございます。
 それから第六番目の、委員の質問を通告した者は全部終つたかというお話でございますが、これは七月の二十八日の日であつたと思いますが、委員長及び理事打合会を開きまして、会期末も非常に迫つて来た。従つて一応会期末までの日程を組もうではないかという議が起りましたときに、いろいろと相談をしたのでございますが、そればとても全部というわけには行かない、二十八日、二十九日の両日に一つ一廻りするようにしようではないかという話が付きまして、各委員価からの通告時間を寄せてみますると八十四時間にありました。八十四時間ではとても二日の間に終りませんから、そこで十八時間に圧縮をいたしまして、その十入時間で一廻り終らせるようにしようではないかとい方ので促進を図つたわけであります。この十八時間につきまして、会期延長その他いろいろなことがございまして、今日まで十時間をちよつと超えるところまでしか行つておりませんので、そこで、まだ質問通告をされて、全然質問をなさつていない方は、改進党の寺本広作君、無所属クラブの堀眞琴君、純無の市川房枝君、この御三名でございました。
 次に菊川君は、政治献金と本法律案との因果関係について調査をしだかというお話でございましたが、当委員会は、遺憾ながらこの点については、只今菊川君が御指摘になつた以上の詳しい調査をいたしておりません。これは私は、政治献金は、正式の手錠を経ておるものはすでに新聞紙上を通じて発表せられておりまするので、法律的には何ら問題にならないと思いますけれども、人情といたしまして、そういう多額の献金を受けた政党というものは、やはり、そういう贈られた団体に対して、贈られた会社に対して、何らかの義理合いをお感じになるということば当然であろうと私は考えるのであります。若しそういう義理合いをお感じにならないようなことがあるとするならば、これはいささかどうかと考えるものであります。(笑声)
 第八といたしまして、諸外国の立法例はどうかということでございますが、これは、遺憾ながら委員会といたしましては、まだ審議するところ雪で参つておりません。資料の要求はいたしておりまするが、参つておりません。
 それから修正意見等の問題があつたと思いまするが、これは委員会の審議の過程においては全然話題になつておりません。委員の中で個人的にさような意見をお持ちになつておつた方が二、三あるやに、うわさ程度に私は伺つておりましたけれども、全然、委員会の表へはさようなことは出ていないのであります。
 以上お答えいたします。(拍手)
○議長(河井彌八君) 松浦清一君。
   〔松浦清一君登壇、拍手〕
○松浦清一君 私は只今の粟山労働委員長の、電産、炭労等のスト規制に関する法律案について、労働委員会における審議の中間報告に対し、若干の質問を行いたいと存じます。労働委員長は、みずから求めざる中間報告をさせられて長時間に亘る御報告の後、大変お疲れだろうとは存じまするが、私は全部で七点の御質問を申上げまするので、メモをとつてお書きとめを願いまして、残らずお答えを願いたいと存じます。
 先ず第一点は、吉田内閣の基本的な労働政策につき、本国会初頭におきまする吉田総理の施政方針演説におきまして、我が国の経済自立を達成するためには、産業協力者としての労働省の人格と権利とを尊重しなければならないと言われたことは、速記録によつて明らかなところであります。労働委員会におきましては、この基本的な労働政策につきまして、只今の御報告によりますと、吉田総理は、委員長のたびたびの要請にもかかわらず、ただの一回も出席されなかつたということでございますが、閣僚に誰かから如何に解明をせられたか。又は、この基本的な労働政策を、施政方針演説後において変更されたというような御説明がなされたかどうかということについて、お伺いをいたしたいのであります。
 第二点に、憲法第二十八条において保障されておりまする労働運動の自由というものは、日本の民主化にとりまして大きな支柱となるものであります。法律によつてこれを制限するということは絶対に避けなければなりません。この法案は、適用労働者の基本権に重大な制約を加え、憲法第二十八条の精神に反するものでありますが、只今の御報告によりますると、政府側からは、委員会が十分理解できるような解明がなされなかつたということでございますが、
   〔議長退席、副議長着席〕
 この点、基本的人権に関する非常に重要なポイントでございますから、この審議の経過及び政府の答弁の内容を、いま少しく御説明を願いたいのであります。
 第三に、この法案は、公共の福祉に名をかる、労働者の基本権を蹂躙する内容のものでございまして、政府は、その提案理由並びに本国会開会初頭の本会議におきまする一般質問等に答えられまして、労働争議の解決は労使双方の協力によつて解決することが最も望ましいと言つておられますが、これは極めて当然の常識でございます。併しながら、労使のいずれかの一方に又は双方に無理があつて、平和な協議によつて解決できない時が問題であります。この法案は、そのようなときの無理は常に労働者側にあると規定して、一方的に労働者の自由なる権利を圧殺しようというのが本当の政府の目的のようであります。従つて、公共の福祉と労働者の福祉をも含めたものでなければ真の意味での公共とは言えないと思いますが、政府側は、労働者の生存権は公共の福祉の外にあるというような考え方が委員会において表明されたかどうか。又、電産、炭労等の労働者の生存権を守るにはどのような方法でやるかということについて、委員会においてはどのように解明せられたか、お伺いいたしたい。
 第四に、労使間に起つた労働争議を解決するには、現行労働諸法規の命ずるところに従い、中央労働委員会が大きな役割を演じて来たことは、過去の実績により、世間周知の事実であります。この法案のごとく、法律でストライキを直接弾圧するような、不合理にして非民主的な方法を講じなくても、中央労働委員会の運用に足らざるところがあるとすればこれを改正し、その運用に重点を置いて、労使の理解と協力を求めることにより、権力によらない合理的な解決を図るべきであると思います。国民多数の世論に反し、あえて政府がこの法案の成立を強行するということは、その反動的政策の上に却つて労働組合側の争議行為を激発せしめる結果となると思いますが、この点については、労働委員会において委員側からどのように質問をされ、政府はどのように答えられたかを御説明願いたいのであります。
 第五に、昨年の炭労ストの際、政府は声明を発しまして、国家の重要資源たる炭鉱を破壊するがごとき行為は、労調法第三十六条の争議行為の禁止事項であつて、違法行為であると明言をいたしておりますが、この考え方は、現行労調法で不法な争議行為は十分取締ができるとの視点に立つていると思うのですが、この法案と労調法第三十六条との関連について、委員各位はどのように質問され、政府はどのように答弁されたかを、御説明を願いたいと思うのであります。
 第六に、この無謀なる反動法案が、政府と与党の合作によつて本国会を通過するようなことがありますと、将来、私鉄、海運、ガス産業等の重要産業に対しても、同様にその考え方が波及する虞れがあるということであります。政府はその提案理由の説明におきまして、「公共的性質を有する産業はひとり電気事業及び石炭産業に限定されないが、今回は、いわゆる基礎産業中最も基幹的な重要産業であり、昨年問題になつた電気石炭ストによつて規定した」と申されているのでありますが、現内閣のごとく極めて反動的な性格で判断をして行きますと、あらゆる基礎産業、あらゆる公益事業は、国民生活の上に重要でないものはないのでありますから、次から次にストライキ権の行使が禁止或いは制限される慮れがあるのであります。この点について、今日までの委員会における審議の経過を、もう一遍詳しく御説明を願いたいのであります。
 第七に、只今の労働委員長の御説明によりますと、この法案の審議は、その重要性に鑑み、極めて慎重に審議を進められ、会期一ぱいを月俸として非常なる努力を払いつつあるが、なお、この法案が昨年の電産炭労等のストライキに起因して立案されたものである実情に鑑み、このストが、労働者の基本権を蹂躙してまで法律の制定を強行しなければならないほど、そのよつて来たる原因や経過がそれほど非合法であつたかどうかという、基本的な問題等の重要部分が十分解明されておらないとの説明でございましたが、若し与党諸君の強行により、委員会における審議が不徹底のままで本会議を通過するようなことがあつた場合、この法案制定後の運用の面にまで悪い影響を及ぼすと考えますが、この点について栗山委員長としてはどのように考えておられるかをお伺いいたしたいのであります。
 最後に、この法案は、前国会以来最も重要にして、与野党攻防の頂点にあり、民主主義擁護のために関心を持つすべての国民の注目の焦点に置かれておる法案でございます。働く者の弱い立場が憲法によつて守られ、憲法の下に最低生活を守ろうとするすべての労働階級の強い反対の中に、反動勢力の手によつて今まさに強行されんとする重要法案でございます。従つて、委員会は申すに及ばず、政府も又全力を挙げて、会期のある限り慎重に審議すべきであると考えますが、本日ここにあえて中間報告を求められました労働委員長としての心境を、答弁の形において更に詳しく国民に周知せられんことを希望いたしまして、私の質問を終りたいと存じます。(拍手)
   〔栗山良夫君登壇、拍手〕
○栗山良夫君 松浦君の御質問にお答えをいたします。
 第一点は、吉田内閣の基本的な労働政策というものを吉田総理大臣から聞いたかどうか、こういう御質問であつたと存じます。先ほど来、申上げておりまするように、委員会といたしましては、甚だ残念でございますが、吉田総理大臣に委員会へおいでを願いまして、そうしてその基本的な労働政策を伺うところの機会に今日まで恵まれていないのであります。ただ、吉田総理大臣の出席を繰返し繰返し促しするというと、小坂労働大臣は、自分が吉田総理大臣から労働政策のことについては任されておるのであるからして、従つて自分の答弁が即ち吉田首相の言う労働基本政策である、こういう工合に述べられたのであります。ところが、その労働基本政策が、委員諸君が了解しがたいというので、今日なお吉田総理大臣の出席が執拗に求められておる。特に法務大臣或いは通商産業大臣との間に相当な食い違いがあります。吉田内閣として一体であるべき内閣の閣僚においても意見の食い違いがあるということでは由々しいことでありまするから、そこで、どうしても総理の出席を求めなければならない。こういう状態にあるのでございまして、私は、当委員会の審議を更に進めまする意味において、賢明なる議員諸君に訴えまして、願わくはこの中間報告をお開き取り頂きまして、委員会の審議の実情はよく御理解を願つたと思いまするので、いま一度、労働委員会にこのスト規制法案の審議を戻されまして、そうして委員会において結論が出されまするように、中途半端になることなく結論が出されますように、御協力を心からお願いを申上げてやまないものであります。(拍手)
 第二点は、憲法第二十八条に関して、いわゆる労働運動の自由に対してどういうような審議がなされたか、政府は労働者の生存権は公共の福祉の外にあるような考え方を表明したかどうかということでございます。これにつきましては、政府のほうの考え方は極めて常識的でありまして、労働権と、そして公共の福祉の名を以て制限し得るところの、この公共の福祉というものとは、車の両輪のごとくに、いずれが上、いずれが下、いずれが高い、いずれが低いというものではなくて、これは同じようなものである。これを相互に調整をいたしまして、そして国民の幸福を図らなければならない。こういうような極めて常識的な答弁を一歩も出てないのであります。併し、この答弁に対しまして、緑風会の梶原委員が非常に敬服する議論を述べられまして、政府もその答弁に窮したことを、私は只今も覚えておるのであります。その言葉は、憲法が保障をして国民に与えました権利というものを、公共の福祉という名によつてこれに制圧を加えようとする場合には、公共の福祉が堪え得られる限度においてこれを行うべきである、こういう非常に明快な意見を開陳しながら質問を展開せられましたことについては、私は敬意を表するものであります。而もその立場はどういうことであるかと申しますと、例えば、先ほど委員長報告の中にもこれを申し添えておきましたが、只今政府の考え方では、どんな山奥の小さな発電所でも、これを停電ストをやりますというと、この法律案によつて取締を受ける、労働三法の庇護を受けない、こういうことになるのでありますけれども、そういう山の中の発電所が一つとまりても、正常なる電気の供給を阻害するということにはならんではないか。若干仮に少し規模が大きくなりまして、電気の供給が若干不円滑になりましても、電気の明るさが若干暗くなうても、公共の福祉を著しく阻害するということにならんではないか。公共の福祉という名前を以て国民に与えた基本の権利を制限する場合には、そういう考えではよくないではないかというような意味のことをおつしやつたように記憶するのであります。私は、これは同僚議員の御発言でありまするから、若し間違つておるといけませんので、間違つておりまする場合には、速記録が正しいのでございまするから、私の本会議における発言はいつでも訂正をいたす用意を持つものでございますが、さような意味の御発言があつたやに記憶するのであります。ところがこれと政府のほうの答弁とも食い違つております。かような意味を以ちまして、今日までの審議を通じましては、今、松浦君が御質問に相成りました点は、いずれも、つまびらかになつていない、こういう工合に申上げるよりほかございません。
 又、中央労働委員会が、どの程度、労使間の紛争に対して役割を演じて来たか、今後この法律を以てストライキを弾圧するようなことをやつて参りますというと、却つていろいろな紛争が陰性になつて、そうして社会不安を醸成する元にはならないかというような御質問であつたと思うのであります。その第一点の、中央労働委員会が過去にどんな役割を果して来たかということについては、これは政府側の答弁は極めて明瞭でございました。成るほど重要な幾つかの仕事を中央労働委員会はして参りましたけれども、これは日本の労使が好んで中央労働委員会の仕事に服して来たのではない。占領中は、中央労働委員会の上に占領軍というものがございまして、この占領軍の代弁者の役のごときを中央労働委員会が勤めて、労使に無理に或る種の解決を迫つて来たのである。ところが、今や日本は占領から解放されて独立国になつたのであるからして、中央労働委員会というもの、そのものを再検討しなければならぬ。こういうことが言われたのであります。そうして中央労働委員会の、いわゆる仕事をする中核体である中立委員には人を得ることができない。資本家の好むような中立委員を得ることができない。極端に言えばそういうことであります。そういうような表現を以て言われましたのでございます。私は、根本的に物の考え方が相違をいたしておるのでございまして、平行線を迫るような議論になつて参つたわけであります。又さようなわけでありまするから、私は、今後この委員会の質疑の内容は、速記録をどうか御覧を頂きたいと思いまするが、今、松浦君から御質問頂きましたような点については、やはり相当な論議が交わされまして、そうして労働委員会のあり方、或いは強制仲裁制度或いは斡旋制度等につきましてもいろいろと御議論が出たのでございます。
 それから労調法第三十六条との関係如何ということでございますが、この問題につきましては、松浦君のよく御承知のことでございまして、人命の保護を優先して行うのか、或いは財産の保護といろものを併せて行うのかということが、考え方の分れ道になつて来るのでございますが、この点も基本的には、やはり委員会においては明らかはせられておりません。
 又、他産業に累を及ぼすと思うがどうか、今日までの審議経過を通じて説明せよということでございますが、これは非常に面白いことがございました。小坂労働大臣は、ステツプ・バイ・ステツプの原理を以て、電産と炭労のストに制限を加えたあとにおいては、必ず私鉄とか日通とかその他の公益事業に枠を拡げて行くのではないか、こういう議員諸君の質問に対しまして、「小坂労働大臣ある限り断じて拡張をしません」と、こういう一言でございました。余り心強いものですから、他の議員諸君が更に根掘り葉掘り質問を続けて参りますると、現段階においては、ということであります。更に掘り下げて参りますというと、日通なり私鉄が、今日くらいの争議行為をやつている程度ではよろしいけれども、更に争議行為を激しくやるというよ方なことになりますれば、或いは考えなければならんのではないか、拡大しなければならんではないかということが、言外の意味に大きく含まれておつたことを見逃すことができないのでございます。而も、去年の炭労、電産のストを見まするというと、あれは会社側に解決の熱意が乏しくて、どちらかと申しますると、会社側のほうが、この際は、あの炭労、電産のストを激しくいたしまして、組合そのものを、一つこの際、思い切つて弱化せしめよう、こういうよらな意図があつたのではないかとすら思おなければならんような、誠に残酷なる処置に出たのでございますが、将来、私鉄なり日通なりがそういうような状態に出て、そうして組合が非常に苦境に追い込まれて、自動的にストライキを強く打つて行くという場合に、こういう拡大をせられて行くということでありますれば、これは重要見逃すことができない問題ではないかと考えるのでございます。
 更に、最後の問題といたしまして、委員会の審議が不徹底のまま本会議を通過した場合、この法案の制定後どういうことが起りますか、悪影響を及ぼすことはないかという御質問でございますが、私は非常にたくさんの問題点があると思うのでございます。第一に、この法律案が行政的に運用せられました場合に、その文句が余りにも抽象的でございまするから、従いまして、私は、労働組合のほうはこれで違法でないと思つてやり、会社側或いは政府のほうは違法である、こういう工合に、境界線が極めて不明確でありまするから、ここに徒らな摩擦を起すことになるのではないかと思うのであります。例えば保安要員という定義にいたしましても、先ほど中間報告で申上げました通りに、現実に私どもがこの目で炭坑を見て参りまして、いずれも区切りの付けにくいものでございます。ただ一口に保安要員と申しましても、誰と誰と誰が本当の意味の保安要員なのか、争議期間が一週間の場合と二カ月の場合と、期間においてすら変つて行くのであります。そういうようなものを何ら細かい規定をしないで、そうして、こういう大まかなものでやることについては、誠に恐ろしい次第である。発電所におきましても、「直接正常なる供給を阻害する」と申しまするが、間接はよろしいというのであります。然らば間接というのは一体どういうことか。いろいろの議論をしまして、この間も技術問題が出ました。技術の問題について私は追及をしましたところ、通産省のほろの役人、労働省の役人は答えないで、そのままになつておりまするけれども、非常に不明確である。成る公述人として来られたところの学識経験者の人に、「こういうようなあいまいな抽象的な拡大解釈が思い通りにできるような法律というものは最近ありますか」と、こういう質問をいたしましたところが、「それは以前にもあつた。戦争前にも、たしかあつた。併し、人を規制する法律というものは、拡大解釈が絶対できないように、成るべく内輪めに規制をしておかなければならん。戦争前にそういう法律が全然なかつたというわけではないけれども、例えば治安維持法のような悪法の例があるだけであります。」こういう工合に述べられたのであります。如何にこのスト規制法案というものがまだ未成熟な、研究の足りない、余りにも杜撰な法律案であるかということは、これで御理解願える。而も悪い影響を将来相当与えるであろうということも御理解願えたと思うのであります。
 松浦君に対する御答弁に代える次第であります。(拍手)
○副議長(重宗雄三君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
     ―――――・―――――
○副議長(重宗雄三君) 小林英三君外一名から、賛成者を得て、只今労働委員長から中間報告があつた電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の擬制に関する法律案を国会法第五十六条の三の規定により本会議において審議上ることの動議が提出されております。よつて本動議を議題といたします。
 質疑の通告がございます。順次発言を許します。吉田法晴君。
   〔吉田法晴君登壇、拍手〕
○吉田法晴君 私は、日本社会党第四控室を代表して、只今の電気事業及び石炭鉱業における争議行為の規制に関する法律案を国会法第五十六条の三の二項後段によつて議院の会議で審議するという動議の提案者の代表小林英三君に質問をするものであります。
 質問の第一点は、同条第二項後段に言う「特に緊急と認める」という事態がどこにあるかということであります。(「どこにもないよ」と呼ぶ者あり)国会法五十六条の三、この二項を適用いたしまして、議院の会議において審議するという事例は、曾つて法律案については前例がございません。調査案件について三件あつたということでございますが、それは委員長みずからの発意によつて中間報告がなされたものと聞いております。「特に緊急と認める」ということでございますが、その特に緊急と認めるという理由は、自由党の解釈或いは自由党の党利では許されません。国権の最高機関としての国会がこれを認めるかどうかということでございますから、客観的に何人もこれを認める条件でなければなりません。会期は御承知の通り八月七日まで、昨日から計算をいたしますと、まる四日間、昨日を含めて五日間、今日から計算いたしますと三日乃至四日でございます。委員会は会期一ぱいに慎重審議をするという原則で終始して参りました。昨日のごときも、労働大臣の衆議院における出席を許しますために退席を認めた時間を除き、午後、夜に至るまで質疑を続けたのでございます。
   〔副議長退席、議長着席〕
 どこに一体特に緊急と認むべき事態があるか。委員長は「或いは特に緊急を要すると認められる、予想される事例」として、三つを挙げたのでありまするが、これらのものを一貫して、特に会期との関係、これは耳切れ法案の場合でありましようとも、或いは委員会が混乱をしたとか、或いは委員長に能力があるか、ないかといつたような点が考えられるといたしましても、それは特に会期との関係において特に緊急であるかどうかということは判断せらるべきものだと考えるのであります。然るに、委員会は終始真剣に会期末を目指して慎重審議をして参つた。併し又、委員会自体においていろいろ議論がございましたけれども、とにかく審議を続けて参つたのであります。真剣に審議を続けて参つたのであります。どこに特に緊急と認むべき事態があるか。具体的に承わりたいのであります。与党の委員の諸君は質疑も本格的になさつておりません。審議打切りに汲々とし、その焦慮が、審議日程の打合せをする委員長理事打合会その他に相当の時間をとつた原因となつております。与党の労働委員の諸君の審議能力の欠如と、審議打切りの焦慮、自由党の早く上げたいという党利が、法文に言うところの「特に緊急と認める」という理由なのかどうか、第一点としてお伺いするのであります。
 第二は、動議の提案者は、委員会の審議が長引いた理由の一半が、或いは大きな原因の一つが、総理大臣初め、通産、法務両大臣と関係大臣の不出席にあり、特に、総理大臣は一画も出席せず、政府各大臣、各省の間にこの法律に対する意見の食い違いがあり、委員会継続の必要があるということを知つておられるのかどうか。この法案を作るに当りまして、労働省の前労働事務次官と労働省の事務当局においては、この法案に反対であつたということを言われた。これは、委員会における公聴会の席上、公述人の神山電産委員長からも速記に載つている事実として指摘せられました。私どもも現に昨年この耳で聞いて参りました。然るに、内閣総理大臣或いは閣議においてこの法案を提出する要請別強くなされた。これを推進した力については先ほど来の質疑答弁で明らかでございますが、その際、ステツプ・バイ・ステツプという言葉を使つて、その範囲についてもいろいろ意見があり、或いはもつと強く規制をすべきであるという意見もあつた。或いは二つの産業に適用するのは、それは橋頭堡だ、ステツプ・バイ・ステツプに更に他の産業に拡大して行くのだという意見も表明せられたということを、これは労働省の公式の機関からも発言をされたし、或いは新魔その他にも報ぜられたところであります。これは法案ができますいきさつについての問題でございますが、このことは、単にいきさつであるばかりでなく、この法案が他の産業にも適用せられるかどうかという極めて重要な法律の問題でございますが、これについては、労働大臣は、「この際は」と直されてもかまわんと言われましたけれども、いずれにしても、説明には、「公益事業にはいろいろあるけれども、いろいろ検討した結果、今回は、或いはあとで、」同じでありますが、「この際或いは今回はこの二産業に限定をして出すのだ」、逆に言いますならば、提案理由の説明の中からも、今後の事態によつては他の産業にも適用するかも知れんという意図が客観的に現われておりますが、労働大臣は、この点についての質問に答えて、少くとも私は吉田内閣の労働政策の担当者として、私の職に在りまする限りは絶対に他の産業には及ぼしませんと言明されましたが、それは「個人の資格で」と最初言われ、後に取消されて、「それは吉田内閣の方針だ」と言明せられましたけれども、その点については、従来私どもが知悉いたしました総理なり吉田内閣の態度とは違つていると確認をし、或いは総理大臣が閣議の決定を経てその点を明らかにせられたいと申して参つた点であります。或いは電源ストが合法であるか非合法であるか。――通産省公益事業局長は、電源スト等が合法であるということは、過去においても現在においても考えているという答弁であるし、労働大臣は、この点を否とする、或いは非合法であるとする社会通念が成熟したとし、行政解釈としては現在においても過去においてもそうであると言明して、通産省と労働省との間の意見の食い違いを暴露せられました。鉱山保安の範囲にいたしましても、労働省と通産省鉱山保安局長の間には意見の食い違いがあります。或いは、この法の基礎になつたと言われる世論と法意識の点についても、法務省と労働省との間には意見の食い違いが暴露せられて参りました。こういう事実について、こういう事実を問い質すべき、明らかにすべき委員会の必要があつたということを、提案者は御存じであるかどうか。或いは委員にして質疑をまだ終らざる方があるということも明らかになつて参りましたけれども、これらの点についても十分御存じであつたかどうか。これを第二にお尋ねをいたします。
 最後に、参議院の任務は、抑制機関として、今日においては憲法を守つて参るべき重大な任務があると考えるのでありますが、その参議院の使命は、法案の審議に当つては、常任委員会制度を中心に行われているということは各位御了承のはずであります。然るに、中間報告に関連して、議院の本会議場で審議するということで、前例を破り、なお今後こういうことを続けて参りますならば、この常任委員会制度を否定し、行政権のために参議院の任務を放棄するに至るであろうことを心配せられますが、あえてかかる暴挙を自由党の都合においてなざれようとするのか。これをお尋ねするのであります。中間報告の例は、調査報告において三件あつた、法律案についてはなかつたと、先ほど来、明らかになりましたが、どんな法律でも、或いは与党が、或いはこれに協力せられる諸君が、通すために中間報告を求めて本会議で審議をするという態度をとつて参りますならば、常任委員会制度は事実上無視せらるるでありましよう。スト規制法は行政解釈の法であり、本質は行政法であるということ、或いはそれには違憲の疑いが十分にあるということも、それぞれ明らかにせられて参りました。労働省が労働者の弾圧省になるかどうかという点にも問題がございますが、行政権に追随するために、中間報告に名をかりて、常任委員会を無視し、参議院の抑制機関たるの使命を放棄し、翼賛国会とする気なのか。第三点として提案者にあえて質問をするゆえんであります。
 特に、民主主義的な権利を一つ一つ奪つて行こうという、こういう情勢の中において、国民の前途を憂え、参議院の権威を守り、その使命を達成するために、提案者の良心に訴えての答弁を望む次第でございます。(拍手)
   〔小林英三君登壇、拍手〕
○小林英三君 吉田君の質疑にお答えをいたしたいと思います。
 先ず私が御答弁申上げる前にお断わりいたしたいと思いますことは、只今の栗山委員長の報告でございます。栗山委員長の御報告は、これは委員会の諸言に諮る必要もなかつたでありましよ与し、栗山委員長の自由に御報告になりましたことであります。(「余計なこと言うんじやない」と呼ぶ者あり)私は吉田君の御質問になりましたるいわゆる緊急の事態という問題についてお答えをいたしたいと思います。
 栗山君の御報告には、委員会が七月の十一日に衆議院から本案が回付されまして今月までの間において極めて熱心に毎日休みなく慎重審議をいたしたのであるという御報告でございました。併しこの御報告には、私どもの党派からも五人の労働委員が現に出ておるのでありまして、私どもは栗山委員長のこの報告には全面的には賛意を表するわけには行かないのであります。即ち、労働委員会が衆議院より回付されましてから今日までの二十数日の間において、栗山君の言われるように、果してこの議案を努力して通過させようということを考えておられましたでありましようか。(拍手)例えば、二十五日から今日までの間におきまして、一日平均、労働委員会においてこの重要法案を審議されました拝聞は二時間と四十分であります。(拍手)一日に二時間と四十分であります。(何を言つておるか」と呼ぶ者あり)こういうような客観情勢におきまして、又、今日、各新聞は、(「自由党何をしておつたんだ」と呼ぶ者あり)労働委員会においてはこの規制法案を握り潰しにするということは全部の新聞の論調でありまするが、私どもは必ずしも新聞のこの論調を信ずるものではございませんけれども、今日までの労働委員会の審議におきまして我々が見ておりました関係におきましては、誠意を以て、熱意を以てこの重要法案を通過させようと努力したとは考えておりません。(「余計なことを言うな」「黙つて聞け」と呼ぶ者あり)而も、今日、労働委員会におきましては、(「重大問題だ」と呼ぶ者あり)僅かに只今から会期末まで中二日しかないのであります。然るに、今日この審議の日程さえも作つていない状態であるのであります。(「その通りだ)と呼ぶ者あり)我々は、この客観的情勢におきまして、(「自由党何をしておる」と呼ぶ者あり)栗山君の中間報告を聞きました直後におきまして、このまま委員会に返してしまうということは、果して重要法案が通過するかしないか、審議未了に陥るということを憂うるものであります。従いまして、私は今日、参議院の重大なる意味におきまして、我々は最も重大なる緊急性あるものといたしまして、この動議を出したのであります。
 それから第二の点でありまするが、(「緊急事態がどこにあるか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)第二の点でありまするが、これは、私がそういうようないわゆる法案のいきさつについて知つていようが知つていまいが、動議を出しますことについては関係がございませんから、ここでは申上げません。(「緊急事態がどこにあるか、具体的に例を挙げて言え」と呼ぶあり)
 又、参議院の使命の問題であります。常任委員会の制度に重きを置くかどうかという意味の御質問でございまするが、私は常任委員会制度に対して全面的にこれに重点を置きたいと思います。併しながら、今日のこの栗山君の御報告にありましたような、重要なる法案、而も日本全国民に関係のありまする(「その通り」と呼ぶ者あり)重要なる法案につきましては、今日の客観的情勢におきましては、どうしても本院においてこれを上げるためには、(拍手)参議院の本会議において審議することが、夢議院の任務なりと考えている次第であります。(拍手)
○議長(河井彌八君) 相馬助治君。
   〔相馬助治君登壇、拍手〕
○相馬助治君 只今議題となつておりまする小林英三君外何名かの提出にかかる動議が仮に成立いたしたといたしまするならば、本院に新たなる一つの先例を作るものであり、事は極めて重要でありまするが故に、私はこの際、発議者に向つて、以下六点に亘つて質問をしたいと想うのであります。
 その前に私が申上げたいと思いますることは、只今小林君の、同僚の質問に対する答弁を聞きまするというと、新聞を見て、両派社会党を中心として握り潰しの傾向が明らかであつた、(「その通り」と呼ぶ者あり)だから、この動議を出すのだというような意味合いを申したのでありまするが、問題は、労働委員長の中間報告を聞いて自由党の諸君は如何に考えたかということでなければ筋道は立たない。そこで私は率直に申上げまするならば、諸君は栗山君の報告を聞いてこの動議を出したのではなくて、この動議を出すために栗山君の(「その通り」と呼ぶ者あり)報告を聞いたという、この事実は、(拍手)蔽うべくもないことであろうと思うのであります。(拍手)そこで小林君に尋ねたい第一点は、一般原則論として、五十六条の三の規定は如何なる場合にこれは適用することが正しいと存ずるか。(「明確に答えろ」と呼ぶ者あり)即ち、現在の労働委員会の審議状況は中間報告を求める場合に価いすると思料した第一の要件は何であるか。
 質問の第二点は、七月三十一日の会期末には何らの措置をせず、諸君は中間報告を求めるというようなことを考えずにおつて、会期が延長された現在、未だ本日を加えれば四日もある。その場合に中間報告を聞きたいというのは、正気の沙汰と思えない。(「その通り」「そうだ」と呼ぶ者あり)五十六条の三の規定の「緊急の必要があると直とい、りことには断じて当もないと本員は了解するのであるが、小林君のこれに対する見解如何。(笑声)
 質問の第三点は、粟山君の中間報告を聞くならば、慎重に而も真剣に審議が継続されていたことは歴然たる事実である。(「そうだ」と呼ぶ者あり)而も又、栗山君は、この参議院において誇るべき、まじめな議員であることは、諸君の認めるところである。(「その通り」と呼ぶ者あり)さように考えて参るというと、今、中間報告を求めるということは、労働委員会の審査を妨害する以外の何ものでもないと思うのであるが、一体小林君はこれに対して何とお考えになつたのであるか。而も、このまま労働委員会に任せておけば会期中には審査は終了し得ないものと思料されたのであるかどうか。(「勿論だ」と呼ぶ者あり)このことをお尋ねいたします。
 質問の第四点は、常任委員会制度の本質からすれば、常任委員会の審査は飽くまで尊重するということが建前であります。而も新憲法下におきまする国会の制度は、衆議院、参議院を問わず、第一読会、第二読会というような制度を廃しまして、それぞれ常任委員会を作り、請願並びに陳情、議案、これらは全部その常任委員会に付託することを建前とし、これに該当しないものが現われたときには特別委員会を作つて審議を委ねる。この常任委員長は、議長、副議長と並んで本院の役員であることは、諸君御承知の通りである。これは取りも直さず常任委員会中心主義ということがここに確立されておるのでありまするが、この際「五十五条の三の規定を利用いたしまして中間報告を聞き、而も直ちに本会議でこれを審議するということは、常任委員会制度の破壊であり、与党である諸君がみずから掛けた「わな」に将来引つかかることがないかどうか、(「その通りだ」と呼ぶ者あり、拍手)このことを私はお尋ねいたしますると共に、若し仮に常任委員会で会期中にうまく行かなかつたと一応考えるにいたしましても、なぜ五十六条の三の前段の、常任委員会の審査に期限を附するという程度にとどめなかつたか。それを一歩乗り越えて、常任委員会から一旦付託したところの法律案を取上げるということをやつた小林君の真意奈辺にありや。(拍手)私はこのことを現実にこのハウスの権威を守るためにお尋ねしたいと思うのであります。
 第五点は、本法案の内容から申しまして、直ちに以てこの法律案が必要なような社会情勢が今日現出しておるかどうか。ここ十日或いは一カ月くらいに日本の国が引つくり返るような石炭山のストがあるとでも思つているのか。又、電源ストがここ十日か十五日のうちにあると思つていらつしやるのか。私の見解を以てすれば、さような状態にはない。逆に申しますならば、緊急の必要性は、この法案を内容的に見ても私は断じてない。こういうことが緊急の必要であるんであるなどということが、むしろ一部の労働組合の中にある間違つた人たちを挑発するものであると思うのであるが、一体その辺はどう考えているか。而も基本的人権に関する事柄というものは、飽くまでその法律の立法に当つては慎重を期さなければならない。十分に検討されなければならない。そうするならば、常任委員会において、とつくりと審査し、とつくりと御検討してもらわなければならない。栗山君の報告を聞いても、実地調査に行つた結論をまとめてまだ立法に反映する段階に至つていないと言つている。学識経験者の見解を聞いて、委員会においてこれをまとめて立法上の参考にする段階に至つていないと言つている。なお、同僚議員寺本君、それから市川房枝君、それからどなたでしたか、もう一人、堀眞琴君、これらの諸君は持ち時間の審議を終つていないという。御三君の胸のうちを考えまするというと、(笑声)誠に同情に堪えない。これらのことを考えてみまするというと、要するに、この段階において一挙に本会議に取上げることは、どう考えても私は納得が行かないのであるが、とつくりと、ここの辺の状況を聞かしてもらいたい。(拍手)この私の質問に対しまして、若し私が納得するならば、私どもの会派は小林英三君の動議に欣然参加するであろうことを附け加えて、特にこの辺は、はつきりお聞きしておきたいと思います。
 第六点は、中間報告を聞きまして私は全く驚き入つた。栗山委員長の心中察するに余りある。何かと申しますると、政府の答弁は全く矛盾しておつて、明らかでない。第一、その辺で政務次官の政府委員が野次つている。そろそろ政府に攻撃の手が向いたから野次るのであるが、黙つて一つ聞いてもらいたい。それは何であるかというと、提案の経緯に関する真相が明らかになつていないそうである。同僚田畑君の質問によつて、そこに列席せられておりまする寺本さんも引合いに出されて大層御迷惑であろうと思うが、あなたも、さきの次官である。そうしておつしやつたことは政府の意図を体しておつしやつた。そのことについて尋ねたところが、速記を調べてから答えるとおつしやつた。そうして未だに答弁は聞き得ないと、栗山君は残念に満ちた表情を以て本院に報告しておる。このことを以て、本法案を出すに至つた経緯は未だつまびらかでないし、政府自身これをつまびらかにするという善意の意思を持つていないことは余りにも明瞭である。電源ストに関する行政解釈と判例との食い違いを解決していない。即ち、政府の提案理由を私はこの質問をするので大急ぎで読んだのでありますが、「従来も違法であつたものを、この際、新たに法律に規定して明確化するのである。今まで違法でなかつたものをこの法律によつて違法と言うのじやないのだ。」こういうふうに説明をしておる。ところが、それでは同じところのこの問題に対して地方裁判所はどのような判決を下しておるかというと、電源ストは違法でないと言つておる。政府は、違法なものを法律的にただ明文化するだけだという。裁判所は、違法でないという判決を下しておる。これを同僚藤田君に追及されて、政府は目玉を白黒してその答弁に窮したことは、速記録において明らかである。(「そうだ」と呼ぶ者あり)
 又、諸君、憲法二十八条の規定によつて労働者の団結権、或いは団体交渉権、或いは団体行動権というものは明らかに確保されている。この問題について同僚議員が政府に質して、「本法案は憲法の精神に抵触するのではないか」と言つたところが、「抵触しない、電産からストライキを取上げても、まだ事務ストが残つている。集金ストが残つている」というような、茶番狂言に類するような答弁をしておる。「集金ストがストになるか」という畳みかけての質問に対して、「長きに亘つて集金ストをやれば、これもストライキになる」と、こういうことを言つておる。こういう、一体、見解が、果して吉田内閣の一貫せる見解であるかどうかは、未だ明らかではない。
 かように幾つも並べて参りまするというと、質問の時間がなくなつてしまうからやめますが、要しますに、このような政府の見解の不一致、若し仮に労働委員会の審議が渋滞しておつたとするならば、原因はまさにここにある吉田首相が出なかつたことにある。(「そうだ」と呼ぶ者あり)こう考えて参りますると、政府与党である自由党の小林君を含む何人かが、かかる動議を出したことは、何とも了解に苦しむ。過ちを改むるに憚るなかれ。そこで、この動議を取下げればよろしい。取下げないとするならば、懇篤丁寧なる答弁をされて、不肖、相馬は、小林君の動議に養成し得るまでの説明を、この際、求めたいと存ずるものであります。(拍手)
   〔小林英三君登壇、拍手〕
○小林英三君 相馬君の質疑にお答えをいたします。
 先ほどの答弁のうちで、新聞紙云々ということがありましたが、私は、先ほど御答弁のとき申上げましたように、各新聞紙にもそういうことが書いてあつたということだけを申したのであります。それによつてやつておるのではないのであります。
 それから、第一の、原則的には国会法第五十六条の三の規定は如何なる場合に適用するのであるかという御質疑でございまするが、これは国会法の五十六条の三の後段に書いてございまするように、議院が特に緊急左要するものと認めた場合に該当いたしておると思つております。なお、只今の労働委員会の状態が中間報告云々ということがありまするが、中間報告の問題につきましては、昨日私の動議の際に一緒に答弁してございまするから、今日は触れません。
 第二の、七月三十一日の会期末には何らの措置もせず、まだ会期が三日もあるのに中間報告を聞くのは云々ということでございまするが、これは多分、この動議を本会議において審議をするという、この動議のことだろうと思いますが、七月三十」日の会期末には、私どもはあらゆる努力をして、各法案の審議のために努力して参りましたことは申すまでもないのでありますが、今日の只今の委員長の中間報告のありました段階におきまして、私どもは、この法案を本院において議了いたしますには、どうしても本会議に持つて参つて、そうして本会議の各議員の最も公平なる審議によつてこれを終了するのが一番よいということから持つて参つたのであります。
 第三の、委員会は真剣に審議を抵抗されておると思うが云々ということでございまするが、栗山君の委員長報告によりまするというと、先ほど申しましたように極めて真剣にやつておられるということでありまするけれども、私は、そう……真剣ではあつたでありましようが、これを本当に委員会において採決をして、本会議にこの会期中に廻し得るとは考えておりません。現に、先ほどの栗山君の報告の中にもありましたように、六日に委員会を上げて、七日の本会議においてこれを採決をして決定するということでありまするが、会期の延長がまだきまつておりません、いわゆる三十一日の九時頃に会期延長が決定したのでありまするが、その当時におきましても、栗山君の委員長をいたしておりまする労働委員会は、本案については何ら決定していなかつたのであります。それから、委員会の審議中におきまして、自由党或いは緑風会、改進党の委員諸君が、社会党の一部の委員に対しまして、最後まで、質疑をしてもらいたい、質疑をしてくれということを申しておるにもかかわらず、最後まで質疑に応じないような場面が多々あつたのであります。それから、現に最近の労働委員会におきましては、社会党の委員の御質問の中には、しばしば同様のこと、同じ質問を重複されまして、労働大臣の答弁におきましても、それは昨日の委員会においても答弁いたしましたが、或いは先ほども答弁いたしましたが、先回の委員会においても答弁いたしたところでありますが、という枕言葉を入れたような答弁を重複しておるような状態であるのであります。こういうような状態でございまして、委員会が二十数日の審議期間を持つておるにもかかわらず、僅かに二十数時間、一日の平均の審議時間は二時間数十分でございまして、こういう重要法案が今日こういう状態において審議されておるということは、私は、僅か二日しか中を置いてないところの今日の会期末におきまして、どうしても本会議においてこれを審議するということが最も重要なる問題と思うのであります。(拍手)
 第四の、常任委員会制度の破壊と思うがどうかということでありますが、これは先ほどの吉田君でございましたかの答弁にも申上げましたように、私は決してそうは考えておりません。同じく国会法にこういうような条項が設けられております以上は、やはり国会法のこの条項によりまして緊急なるものと認めまして、(「どういうわけで緊急なのかを聞いているのだ」と呼ぶ者あり)この動議を提出した次第であります。
 第五は、現在このような法律を必要とする争議の発生はない、基本的人権に関する法律案は慎重を期さなければならんと思うがどうかということでございますが、私は、基本的人権に関するような、而も憲法の十二条並びに二十八条に亘りまする解釈の調整をいたしまするような、こういう重要法案につきましては、極めて慎重審議をいたしたいと考えております。(「きまつておる」「もういいよ」「答弁になつておらん」と呼ぶ者あり)その他の問題につきましては答弁の必要がないと思いますからやめます。
   〔相馬助治君発言の許可を求む〕
○議長(河井彌八君) 相馬助治君。
   〔相馬助治君登壇〕
○相馬助治君 小林君の答弁は、悪意に満ちたところの気分は仮りにないとしても、多くの錯覚に満ちておる。そこで開きたいのでありますが、三十一日十時に至つても、栗山委員長の下においては本案の審議が完了する段取に至つていないとおつしやつているが、どこからそれを聞いたか。私の知つておる限りにおいては、自由党の井上理事を加えて、ルールはちやんとできていたと聞いておるが、それについて再答弁をお願いしたい。
 次に、会期末までに上げたいとするあなた方の気持はわかるが、その際においても、五十六条の三の二項の前段を引用すべきではなかつたか、即ち審査の期限を付するというところに最終的にとどめるべきではなかつたか。然るにもかかわらず、常任委員会から本法案を取上げるというこの緊急性というものは奈辺にあるか。
 以上二点について再質問をし、その答弁を求めるものであります。
   〔小林英三君登壇〕
○小林英三君 只今の相馬君の質問でございまするが、理事会におきましては、そういうことを決定いたしたそうでありまするが、それを実行しなかつたということを申上げたい。(発言する者多し)
○議長(河井彌八君) 静粛に願います。静粛に願います。
   〔栗山良夫君発言の許可を求む〕
○議長(河井彌八君) 栗山良夫君、どういうことでありますか。
○栗山良夫君 只今発議者として答弁に立たれました小林英三君の発言中、労働委員会の審議の経過の事実と相違する点がございまするから、私は訂正を求めたいと思います。
○議長(河井彌八君) 栗山君の発言を許します。御登壇を求めます。栗山良夫君。
   〔栗山良夫君登壇、拍手〕
○栗山良夫君 先ず最初に、吉田法晴君の質問に答えて、小林英三君は、その中で、本日、労働委員長がいたしました中間報告の内容は、委員会として承認がしていない、こういう発言がありましたが、これは事実と相違いたします。先ず最初に申上げますが、自由党の井上清一君を発議者といたしまして、緑風会の田村文吉君まで入れて六名が賛成者になつておりました。電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律案の委員長の中間報告に当つては、参議院規則第百五条の趣旨に鑑み、委員長は委員会審査の経過を簡明に報告されることとし、その内容は委員長に一任します、こういう文書の申入れがありました。それで、而もこれだけではなお自由党の議員諸君の了解を得られないというようなことが後日あつてはならんというので、自由党の委員諸君の強力なる養成を要請いたしまして、本日、中間報告の全文ができ上りまするや、労働委員会を開きまして、正式の労働委員会において速記を付けて全会一致で承認を得たのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)特に、その賛成の発言をしたのは、そこにおる田中啓一君であるが、田中啓一君が最も熱心に養成したのである。小林英三君の発言は全く違う。(「答弁せい」と呼ぶ者あり)訂正せられたい。
 第二点は、先ほど相馬君の質問に対する答弁中、当労働委員会は七月三十一日になつても本院へ結論を報告するような態勢になかつたということを先ほど述べた。抗いて更に、理事会においてはさまつていたそうだという答弁でありました。いずれも違います。いずれも事実と反する。よく聞いてもらいたい。英三君、聞き給え。(笑声)七月の三十日の委員長及び理事打合会において、いよいよ会期は七月三十一日に迫つた、どうするかということを種々論議をいたしました。そのときにどういうことがきまつたかと申しまするというと、私はノートに全部書いてありますから読みます。一、質問通告のうち、第一回の一応の質問持ち時間十八時間の残り十時間については、質問を続行して二十九日中に終了する……いや、三十日中に終了する、七月三十日中に終了するということであります。第二は、七月三十一日に吉田首相を迎えて、そうして総括質問を午前中に終る。(「実行してないぞ」と呼ぶ者あり)よく聞け。七月三十一日の午後一時から討論に入る。(「実行しないぞ」と呼ぶ者あり)よく聞きたまえと言うんだ。話がわからんじやないか。何だ、君は……。(「政務次官、何だ」と呼ぶ者あり)この間においては絶対に動議は出さないという、この四つのことを、各会派の出られました理事諸君は一応理事会としては認めて、併し各会派へ持ち帰つて相談をしなければならん。いずれも保留いたしたのであります。そうして各会派へ持ち帰つてそのままになつたのでございまするが、夕刻になつて再開をいたしましたところ、再び委員長理事打合会を再開いたしましたところ、会期の延長がほぼ確実に見通しが出て来たのであります。そこで或る委員は、会期の延長はまだ決定したのではない、然らば会期の延長は絶対しないのかと言いますと、するかも知れんと言い、いずれも明白でありませんが、ただ何となく会期は延長されそうだという空気だけは、誰も否定することができなかつたのであります。そこで、そういう諸般の情勢を考慮して只今言われたいろいろな情報の材料を有力なる参考資料として、そして只今のこの問題については、七月三十一日に、絶対に会期は延長にならないという前提の下において、これの結論を出そうではないかということになつたのであります。そうして七月の三十日以後の議事に入ろうといたしましたところが、夕刻になりまして、もう大体間違いない。然らばこの申合せも一応御破算にいたしまして、そうして七月三十一日からは新たな段階に臨む態勢としての議事日程を組もろではないか。こういうことになつたのでございまして、七月三十一日に会期が絶対に延長にならないということが確定いたしますならば、各会派ともこれによつて決定することに大体間違いはなかつたのであります。小林英三君の発言は全くでたらめであると申上げるよりほかはございません。御訂正を願います。(拍手、「でたらめを取消せ」「答弁の要なし」「議事進行」と呼ぶ者あり)
○議長(河井彌八君) 堀眞琴君。
   〔堀眞琴君登壇、拍手〕
○堀眞琴君 小林英三君らによつて提出されました動議に対しまして、私は以下数点について質問をいたしたいと思うのであります。
 先ず第一は、先ほど吉田君によつて質問された五十六条の三の第二項の後段におけるところの、緊急を要すると認めるという問題について、明確な回答がまだ行われておらんのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)何が果して緊急の必要ありと認めしめたか。小林君の回答によりまするというと、この会期も余す日にち中二日しかない、そのため緊急が、こういうような回答でありますが、併しながら、我々労働委員会におきましては、七日の最後の日までに必ず結論を出して本会議に報告するということをきめておるのでありまして、あなたは何によつて緊急を要するものと認められたか。この点について具体的に説明を願いたいと思うのであります。
 それから第二点であります。この法案の重要性につきましては、先ほど来、各質問者からも述べられ、小林君もそれを認められておるのであります。従つて、この法案につきましては、慎重にこれを審議する責任が、参議院としては勿論、又、労働委員会としても当然の義務であると思うのであります。ところが、この法案を審議するに際しまして、政府の見解が或いは矛盾を来たし或いは一致を見ないというような点が多々あるのであります。この点に関しましても、先ほど相馬君からも指摘され、吉田君も触れられておつたのでありまするが、このような政府の見解が矛盾を来たし或いは不一致であるというような状態において、果して十分にこの法案の内容を理解し、或いはそれに必要なるところの我々の審議を重ねることができるだろうか。例えば、先ほど来も問題になつておりまするところの電源スト等に関する労働省と通産省との意見の不一致、或いは社会通念の成熟に関する労働省と法務省との見解の矛盾、その他数え上げれば限りがないほどたくさんあるのでありまするが、このような政府の見解の矛盾や不一致の下に、果してこの法案を慎重に審議することができるかどうか。而もこれを委員会から本会議に移して、切詰められた時間においてこれを審議しようとするのであります。果してこれで慎重な審議ができるかどうか。このことを第二にお伺いしたいのであります。
 それから第三にお伺いしたいのは、常任委員会を軽視するものではないかという問題であります。これも吉田君によつて質問されたのでありまするが、小林君は、常任委員会制度は尊重いたします、こう答えられておるだけでありまして、その根拠、或いは、あなたが動議として出された本会議においてこれを審議するということが労働委員会を無視する結果になるのではないか。このようなことが憂えられるのでありまするが、あなたは果して常任委員会制度を尊重されておるのかどうか。新らしい国会制度において、その審議の中心になるものは言うまでもなく常任委員会であります。読会制度ではありません。この常任委員会制度を無視して本会議においてこれを審議するということは、取りも直さず常任委員会制度の存在の意義を失わせるものである。こう申さなければならんと思うのであります。この点をお尋ねいたしたいのであります。
 それから次にお尋ねいたしたいのは、このような動議を提出することは、私は、極言するならば、多数党の横暴の結果であり、延いては議会政治を否認することになりはせぬかということを恐れるのであります。(「ノーノー」「そうだ」と呼ぶ者あり)言うまでもなく、議会政治に対する批判は二十世紀の初め以来世界の学者によつて行われております。いわゆる議会政治の危機であるとか或いは近代国家の危機であるとかいう言葉がそれを示しているのであります。私どもはこの議会政治を飽くまでも守らなければなりません。併しながら、若しこの議会政治が多数党の横暴によつて歪められんとするならば、我々は果してどこに最後の解決点を見出すべきでありましようか。学者は、議会主義の批判の立場から、直接民主主義の立場を取入れまして、国民投票制度等を、いわゆる議会主義を補うものとして主張いたしておるのでありまするが、日本の新憲法も、憲法改正或いは地域的な立法等に関して一種の国民投票制度を認めております。我々は併しながら、一方、直接民主主義を尊重すると共に、この議会主義を飽くまでも守つて行かなければならんのでありまするが、そのためには我々は多数党の横暴に対して飽くまでも反対をしなければならんし、多数党の諸君は、むしろ野党や或いは少数党の意見に対して十分の寛容の精神を以て臨まなければ、この議会政治というものは、いずれの日にか亡びるときがあるだろうということを私は憂えざるを得ないのであります。(拍手)若し小林君が真に議会政治を思うならば、このような暴挙をあえてすることは、多数党の横暴の結果ではないか、延いては議会政治の否認になるのではないかということをお尋ねいたす次第であります。(拍手)
   〔小林英三君登壇、拍手〕
○小林英三君 お答えいたします。私に対する四つの質問がございましたが、先ず第一と第三の問題が関連がありまするから、これについて先に答弁をいたします。
 先ず緊急性という問題でございまするが、私が先ほどからたびたび申上げておりますように、労働委員会におきましては、二十数日の審議中におきまして、労働委員会を開いて本当にこの法案を審議いたしましたのは、二十八日の七時間、これが最高でございます。そうして、これを日曜を除けました日で割りますというと、僅かに二時間四十一分であります。こういう重要法案を審議するに当りまして、こういうような僅か二時間数十分で一日平均審議いたして、果してこれが熱意を持つて熱心な質疑が行われているということができるでありましようか。而もその前には(「それ一点張りか」と呼ぶ者あり)予備審査の時間もあつたはずであります。予備審査の時間もあつたはずであります。(「熱心でなかつたということか」と呼ぶ者あり)理事会はそのほかに十八時間と五十二分の理事会をやつておりますけれども、これは理事会でありまして、労働委員会の審議の時間は極めて少かつたのであります。で、私は、社会党の委員の諸君が、或いは大臣の出席がないとか或いはいろいろなことを言つておられますけれども、本当に、まじめにこの法案を上げるということでありますならば、これは努めてあらゆる質問をして、そうして熱心にこの法案を上げなくちやならんと思うのであります。審議も、我々が客観的情勢から見ましても、如何にしてこの法案を引き延ばししようかということを努めておられた傾向が多々あると思うのであります。そういう意味におきまして、この法案をこのままの状態において労働委員会に付託しておきまするならば、これは本会期中に上らない。どうしても中二日置きましたこの機会におきまして本会議に引取つて、ここにおいて審議をして本案を上げることが最も重要だと思つた故でございます。従いまして、私は委員会を決して軽視はいたしておりません。(「良心に恥じぬかい」と呼ぶ者あり、その他発言する者多く、議場騒然)
 それから各大臣め見解が不一致であるということでございまするが、これは私は見解の相違であると思うのであります。
 なお第四番目に、多数党横暴ということがございまするが、私はむしろ、参議院が始まりましてから今日までの間において、少数党に多数党があらゆる機会において譲歩しております。むしろ私は少数党横暴であつたと信じておるのであります。(拍手)
   〔発言する者多く、議場騒然〕
○議長(河井彌八君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
 本動議に対し(議場騒然)討論の通告がございます。順次発言を許します。藤田進君。
   〔発言する者多く、議場騒然〕
○議長(河井彌八君) 静粛に願います。
   〔栗山良夫君発言の許可を求む〕
○議長(河井彌八君) 栗山君、どういうことですか。
○栗山良夫君 只今の小林英三君の発言中、労働委員会の審議の経過に関しまして事実と相違する点がありますので、訂正を求めるのであります。
   〔「必要なし」「必要あり」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し〕
○議長(河井彌八君) それでは、議長はすでに質疑の通告者の発言は全部終了したことを宣告いたしましたが、只今栗山委員長から発言を求められましたので、更にそのことを、発言を許します。(「名議長」と呼ぶ者あり)
   〔栗山良夫君登壇、拍手〕
○栗山良夫君 只今小林英三君の堀君に対する答弁中、参議院労働委員会の本法律案の審議の時間を指摘せられましたが、これは事実と相違いたします。従つて私は、七月十三日、スト規制法案を労働委員会で取扱いまして以来の八月一日までの審議の時間を、委員部並びに専門調査員の両方において記録いたしました権威あるものの数字を発表いたします。(「よろしい」と呼ぶ者あり)
 先ず七月十三日……委員会だけ申上げます。七月十三日、二十分、十四日には他の調査案件と合併いたしておりましたので、スト規制法案だけに費やした時間はわかりませんが、これを含めて百二十分、十五日には百八十分、十六日は百七十五分、十七日には三百六十分、それから七月十八日から二十一日までは現地派遣でございまして、時間はわかりませんが、七月二十二日、百十八分、七月二十三日、三百五十七分、七月二十四日、三百四十七分、七月二十五日、百八十分、二十六日、百八十六分、二十七日、三百三分、二十八日、百六十七分、二十九日、二百五十七分、三十日、一分、三十一日、百三十八分、八月一日、百二十四分、それから理事会のほうは、七月十三日、百四十五分、七月十四日、二百五十五分、七月十五日、百十分、七月十六日、七十分、七月二十五日、百五十九分、七月二十七日、五十五分、七月二十八日、六十分、七月三十日、百六十八分、七月三十一日、五十五分、八月一日、五十五分、以上合計いたしまして、委員会の時間が四十七時間三十二分、委員長及び理事打合会が十八時間五十二分、こういうことであります。
   〔「どうだ」と呼ぶ者あり〕
    ―――――――――――――
○議長(河井彌八君) 改めて通告順によりまして発言を許します。藤田進君。藤田進君の登壇を望みます。
   〔藤田進君登壇、拍手〕
○藤田進君 私は日本社会党第四控室を代表いたしまして、只今の動議に反対するものでございます。
 先ずその第一は、先ほど来、発議者に対する質疑を通じてわかりますことは、終始、その提案の論拠、基盤が、全く根拠のない、でつち上げられた誤謬に基いているという点であります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)即ち、委員長報告に対しまして、これを殊更に一方的に曲げまして、そうして委員会の審議が極めて不まじめであるとか或いは又これを握り潰すものであるとか、いわば恐怖病に取り憑かれて、この恐怖の下に出されていると断ぜざるを得ないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)即ち、国会法第五十六条の三を見まするときに、「特に緊急の必要あると認めたとき」、この「特に緊急の必要ありと認めたとき」いう緊急性の存在について、各会派からの質問に対して全く触れていないのであります。この点は要するに、さような現実についてこれを説明するところの事実が、全く発議者においても持ち合せがないことを証明いたしております。(拍手)およそ国会法に明定されておりまする精神をここで申上げるまでもなく、第四十二条に定めまするごとく、本来ならばおのおの担当いたしておりまする委員会において審議を継続し、その結了を待つて本会議がこれに対する結論を出すのであります。このことは明確に国会法第四十二条に定められております。然るに五十六条の三を持ち出しまして、全く緊急の必要性、これについて、以上申上げたことく、論拠もなし、無論、事実に立脚しない、空論の下に出しているというこの動議は、まさに国会法第五十六条の三の濫用であるということは明白であるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)
 更に第二の点は、中間報告を求める五十六条の三の必要性についての御答弁は、握り潰しをするかも知れないという、この恐怖の下に出されているという点であります。本来ならば、小林発議者は、速やかに医師の手によつて診断の上で、私が鑑定をいたしたいと思うのでありますが、大よそ国会法第五十六条の三は、さようなことを予想しての条文ではありません。即ち、天災地変その他特に緊急性の存在する場合、国会会期中を待たないで、あの第二項の、本会議において期限を附するか、或いは又直接審議するか、これは、あの精神がはつきりと条文化されている緊急の問題であると考えるのであります。従いまして、握り潰されるかどうかという、この恐怖心に基いた予想の下に、ここに取上げるということは、全く筋を踏みはずしているところの濫用であることが第二点としても指摘できるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)
 更に第三点といたしまして、私どもは冷静に而も正しきに就いて事を決し、民主主義をみずから否定するということは国会においては特に許されないことだと考えております。近代フアシズムは民主主義という言葉のヴエールを被つてしばしば頭をもたげているのが特徴でございます。只今の提案を見まするときに、国会法四十二条、このシステムで以て、一旦、労働委員会に付託され、爾来、労働委員長の報告にもありまする通り、極めて民主的且つ熱心に審議が継続されております。なぜこのような横暴まで犯して本会議においてかような動議が出されなければならないか。この点を指摘いたしたいのであります。私は、幾多の質問によつて未だ明らかにされておりませんけれども、本法案のそもそも提案されましたところの動機、要因は、長期に亘る衆議院並びに本労働委員会におきまして審議を続けました経過に徴しまして明らかなことく、公共の福祉と社会通念の成熟である、こういう表向きの説明はいたしておりまするけれども、一例を挙げてみますると、今日の電気事業の実体を、つぶさに調査いたしまするときに、この電気事業は、一国の公共事業としての実体は更になく、一部特定政党のための電気事業になつているという事実であります。更に石炭産業について見ましても、同様、一部特定政党にのみ支配され、一国の財政投資は、不正のままにこれら産業に流されているという事実を見逃すことができないのであります。即ち、特に政治資金の問題などを指摘されておりまするが、この問題を一つ取上げてみても、或いは、電気事業における首脳者の人事を取上げてみましても、今日、特定政党、即ち自由党の支配下に完全に置かれ、これが自由党の選挙資金、このドル箱になり下つてしまつているという点を指摘せざるを得ないのであります。(拍手)電気事業のデの字もわからない白洲次郎氏は東北電力の会長に就任いたしました。又、東京電力の会長には、その当時、新木栄吉という人が池田当時の大蔵大臣の推薦によつて就任いたしました。又、九州電力の会長麻生太賀吉氏についても然りであります。立派な自動車と、秘書と機密費と、手当をあてがわれて、電気事業を食いものにしているのみならず、全政党を挙げて自由党はこれら重要産業を食いものにしているのであります。(「そうだそうだ」「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)あえて国会法五十六条三の緊急性と言えば、日経連や、これら産業資本家が、若しも審議未了になつた場合には君たちは如何なる責任をとるかと問い詰められ、胸中、緊急度苛烈なものがあつたであろうことは容易に想像し得るのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)今日、本会議におきまして、幾多の誤謬と更に政府自身の御答弁の食い違いを明らかにいたしますことは、極めて不的確であり、適切でないと考えるものであります。即ち、労働大臣の委員会における御答弁を承わりましても、本会議においては紋切り型になるので委員会において十分論議をしたいとも言つております。更に、本会議におきまして紋切り型の質問に対する的はずれの答弁は、その後は、大きな紐の付いている多数の諸君によつて数で押切つてしまうという、こういうやり方こそ、国会の委員会制度、この委員会の論理、延いては民主主義の論理を覆えしてしまつて、多数の横暴、暴力を許すことになるから、私は絶対に本動議に対して賛成ができないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)
 更に若干の点を指摘いたしますと、委員会の審議の段階は、すでに会期は、あと本日を含めて四日を控えまして、いよいよ昨年の炭労電産の争議の実態が、果して労使いずれに、両者均等に、或いはいずれかの一方だけあの責を負うべきであるかどうかについて、鋭意、メスが入れられる段階に相成つているのであります。この段階におきましては、具体的事実が指摘せられて、昨日の場合も若干指摘されておりますが、いよいよ自由党と本スト規制法の関連が白目の下にさらされる段階になつて参つておるのであります。さような状態を知つて、ここに国会法五十六条三の濫用をあえていたしまして、一挙に、我が会派におきましても、本法案に対する本動議が可決されたならば、僅かに七十分、討論は僅かに四十分、申訳の質疑や討論をさせて、一挙に押切らんとする野望から生れた動議であるのであります。従いまして、私は、日本の法秩序を守つて行くためにも、濡れぬ先こそ露をもいとえ、濡れぬ先こそ露をもいとえ、本当に日本の国民に遵法の精神が消え失せたならば、もはや民主国家としての形態は事実上なくなつてしまうことを憂うるものであります。その遵法の精神を培うためには、民主主義の原理、少数の意見はこれを尊重し、いやしくも国会自体が権利や法の濫用をすることなく、実に誠意とそうして民主主義の原理を本当にわきまえて審議をするところに、初めて遵法の精神も立派に維持できるものと考えるものであります。従いまして、静かに考え、眼をつむつて考えて頂いて、母の気持になつて本動議に対する態度を期待いたしたいのであります。すでに国会という収容所の中に放り込まれているという、大きな金づるの紐の下に、国会の、収容所に放り込まれているあの捕虜の状態を、若し国民が……。
○議長(河井彌八君) 藤田君、時間が過ぎました。
○藤田進君 (続)これを思うときに、法の秩序は維持できないことを、ここに予言いたしたいのであります。かかる理由によつて本動議に対しては反対をいたもものであります。(拍手)
○議長(河井彌八君) 上條愛一君。
   〔上條愛一君登壇、拍手]
○上條愛一君 私は、本動議に反対をいたしまして、簡単にその理由を申述べたいと存じます。
 第一に、労働委員会の審議の状態であります。申すまでもなく、参議院は、二院制の本領に基きまして、本法案のごとき全日本の労働階級に重大なる影響を有する重要法案に対しましては、時間の許す限り十分慎重に審議いたしまして、その妥当公正なる内容を有するや否やを明白にする責務を有していると存ずるのであります。而うして、本法案は僅か三カ条に過ぎないのでありますが、その内容は複雑でありまして、違憲の疑いも存し、又、幾多の不備を有するものであります。然るに、審議の過程におきまして、吉田総理大臣は一回も出席なく、委員長報告にもありまするがごとく、通産大臣も病気の故を以て出席少く、幾多の質疑を残したままであるのであります。小林議員は労働委員会における審議が遅々であつたと申しているのでありますが、その原因の一つは、総理大臣を初め関係者大臣が出席して顔を揃えることが少いことにあるのであります。又、この審議の過程におきましては、関係各大臣に関連を有する問題がありますので、それらの大臣の食い違いに対してこれを質す機会が少かつたことに原因していると言わざるを得ないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)又、小林議員は、労働委員会においては本法案を上げるために熱意がなかつたと申しまするが、労働委員会に与えられたる権限は、単にこの政府提出の法案を通過せしめる責務だけではないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)公正にその内容を審議いたしまして、若し本法案が妥当でないといたしまするならば、これを葬るべき責任も又あると考えざるを得ないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)又、十分にその内容をつまびらかにせず、十分に正当であるか否やを明らかにする時間がないといたしまするならば、これを継続審議にする途も存しておると言わざるを得ないのであまりす。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)又、労働委員会におきましては、労働委員長の報告にもありましたるごとく、満場一致を以てその審議方法を決定し、十八時間の各委員の持ち時間で審議することに決定いたしたのでありまするが、各大臣の出席のないために、今日なお数時間を存しております。而も要求いたしました議員の中には、先ほども委員長が報告せられましたごとく、市川委員、堀委員、寺本委員の三名を残している現状であります。従つて、会期が延長せられたのでありまするから、この延長をせられたる時間を以て、委員会においてはこれらの諸君の論議を十分に尽さしめて、然るのちこの法案の賛否を決定するということが、これが当然であると私どもは考えるのであります。
 第二には、本法案の内容に関する問題であります。これは委員長からも御報告になつたと思うのでありまするが、例えばそのうちの一つでありまする電源スト、停電ストが、従来違法であつたか否かという問題であります。労働大臣はこれを、従来違法であつたが、正確を欠いているから、本法案を提出してこれを明確にするのが本旨であると述べているのであります。然るに、一方、最高裁においては未だ判決はありませんけれども、地方裁においては、電源スト、停電ストは違法ではないという判決を下しているのであります。(拍手)通産省におきましては、これらの判決によつて、これらのストは違法でないがごとくであるという極めてあいまいなる答弁をいたしておるのであります。従つて委員会においては、本問題については、労働省、通産省、法務省それぞれ打合せの結果、統一したる明確なる答弁を出してもらいたいという要求をいたして、そのままであります。若し関係各省大臣において統一したる答弁ができない場合においては、政府を代表して総理大臣みずからがこの問題について委員会に対して明確なる答弁を願いたいと要求をいたしましたが、この問題はその実現を見ずに今日に至つておる現状であるのであります。
 なお、更に本法案の拡張解釈につきましての問題でありまするが、先ほど委員長も報告せられましたごとく、労働大臣は、自分が大臣である以上は他産業には及ぼさないと答弁をいたしておるのでありまするが、その労働大臣の答弁の根拠が極めて薄弱であるということであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)第一の理由は、電産、炭労のストは、公共の福祉に反したから、本法案を出したというのであります。併し、労働争議において、大規模に長時間に亘つて行われまするならば、いずれの産業といえども、程度の違いはありましても、公共の福祉に影響のないストライキは皆無であると言わざるを得ないのであります。若し労働大臣が、本法案を提出した理由の重要な一つが、公共の福祉を害するから本法案を提出すると言うならば、公共の事業でありまするガス、水道、私鉄のごとき事業において、今回のような大スト、長期のストが行われますならば、必ず労働大臣は、本法案を、電産、炭労のストの結果によりて提出したと同様な趣旨において、当然その場合においては公共事業に拡張するということは、これは明白であると言おなければならないのであります。(「そうだろう、小坂どうだ」と呼ぶ者あり)それから第二には、労働大臣は、他産業においては、電産、石炭のごとき大規模の公共の福祉を害するようなストライキは、労働組合の良識に訴えてそのようなことのないことを期待するから、他産業には及ぼさないという理由を言うておるのであります。併し、申すまでもなく、労働争議は労働組合のみの責任ではないのであります。大規模、長時期に亘るストライキは、今日の日本の経営者のごとく頑迷にして反動的の態度を以て労働組合に臨みまするならば、労働組合は、その労働条件の公正なる保持のために、この頑迷反動的の経営者に対しましては、その許されたる唯一のストライキ権を行使しなければならない時期が来ないと誰が断言し得るでありましようか。(拍手)我々はこの立場から申しまして、労働大臣は他産業には断じて本法案のごときを拡張実施する意思がないと申しておるのでありまするけれども、その理由において、我々が委員会において審議をいたしましたところによりますならば、その労働大臣の言を信用するに足るところの具体的の事実が皆無であると言わざるを得ないのであります。(拍手)これらの点につきましては、なお我々には、幾多、本労働委員会において論議を闘わして明確にしなければならない重大なる一つであると言わなければなりません。
 なお、第三条のごときに至りましては、鉱山保安法が存在しておる今日、なお、かくのごとき屋上屋を架す法案が必要であるかどうかという点については、未だ論議を進めておらない現状であります。又、よし本法案が必要であるといたしましても、ストライキ中において、どうして保安要員の範囲と定員を決定するかという機関については何ら触れておらないのであります。又、保安炭と申しまして、ストライキ中に切羽を掘つて行かなければ、自然発火や落磐を防ぐことができないのでありまするから、本法案が実施せられまするならば、鉱山においては当然出炭を継続しなければなりません。出炭を継続して出した炭は、これを運搬しなければ自然発火をいたします。然るに、この掘り出した保安炭を経営者が他に販売することを禁止するというがごとき具体的の事項は何ら存在いたしておらないのであります。
 かくのごとく、この法案の内容を見まするときに、なお労働委員会におきまして、これらの疑点を明白にし、公正妥当であるやどうかという問題を委員会において慎重に審議をすべき時期にあると、私は断ぜざるを得ないのであります。(拍手)然るに会期は延長せられました。会期が延長せられましたにかかわらず、労働委員会においてこれらの審議を尽す時間を与えずして、突如、本動議を提出いたしまするがごときは、これは民主主義に反した国会の運営なりと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)我々は、今日までの労働委員会の審議の経過に徴し、又、本法案に盛られたる内容の幾多の疑点を質す立場からいたしまして、なお残されたるこの四日間を、委員会において我々が全力を注いで明確なる審議をいたしまして、然る後に、我々が、全労働者、国民に対して本法案が妥当であるという確信が得られました後に、本法案を委員会を通過せしめて、本会議に提出する。これが我々に許されたる責任であると考えまするが故に、かくのごとき無謀なる本動議に対しましては、以上の観点から私は断じて反対の意を表する次第であります。(拍手、「自由党の諸君、文句あるなら少しおつしやつたらいいじやないか」「緑風会は討論しないのか」「良心があれば討論に参加するわけだよ」と呼ぶ者あり)
    ―――――――――――――
○議長(河井彌八君) 堀眞琴君。
   〔堀眞琴君登壇、拍手〕
○堀眞琴君 私は小林英三君らの提出にかかる動議に対しまして反対をいたすものであります。
 その第一点は、この動議が国会運営に悪例を残すばかりでなく、参議院の性格を無視するものだということであります。国会の運営は国会法並びに参議院規則によつて規定されております。勿論、国会法の五十六条の三によつて中間報告を求めることができることは、すでに御承知の通りであります。併しながら、この中間報告そのものは、止むを得ざる必要のある場合に限るのでありまして、実際の例に徹しても、法案についてただの一度もこれまで中間報告を求められたことがないのであります。こういうわけ合いでありまして、我々としては、こういうような国会法の五十六条の三に規定したからというので、その必要もないのに中間報告を求め、そうして更にそれに続いて第二項の規定によつて委員会かちその審議を本会議に移すということは、取りも直さず国会の運営に悪例を残すものだ、このように考えなければなりません。而も本案の性質から見まして、参議院はこれを十分に審議しなければなりません。参議院は、申すまでもなく、衆議院に対しまして、その足らざるを補い、その行き過ぎを是正するということが本来の任務であります。若し参議院が衆議院と同じようにこれを政争の具に供したり、徒らに会期が迫つたからといつてこれを打切ろうとするがごときは、参議院の本来の使命から申しまして許されることではないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)従つて我々は、小林君らの動議に対しましては、単に国会の運営に悪例を残すばかりでなく、参議院の本来の使命に悖るものだと申さなければならんのであります。
 次に、この動議は多数に名をかりての民主政治の破壊を行うものだという点で反対せざるを得ないのであります。民主政治は、言うまでもなく、公開性と討議牲をその原則といたすものであります。公開性というのは、公開の席上において何人もの目の前において議論を行うことであり、討議性ということは、自由にその言論を発表することが認められることであります。即ち、公開性と討議性、この原則の上に立つてこそ初めて民主政治は行い得ると思うのであります。」近代の民主政治がこの原則の上に立つだからこそ今日のような覧展を見たのでありまするが、ところが、多数党は、ともするというと討議性というものを無視しがちであります。これは或る学者が引用しておるのでありまするが、最近の議会政治において、特に多数党は、いわゆる幹部専制に陥り、陣笠等はこれに対して十分意見を発表することができないということを指摘いたしているのでありまするが、(拍手)ともすると自由党の諸君はこの討議性を無視しがちであります。これでは到底正しい民主政治に行われ得ないのであります。而も多数党はその数によつて押切ろうとするのであります。いわゆる多数決の原則は我々としても十分尊重しなければなりません。併しながら、多数決によつてきめられた事柄の内容が常に必ずしも社会的に正しいものだということはできません。多数決によつてきめられたものの内容と、それから、その社会的な妥当性というものは、必ずしも一致するものではないのであります。これは即ち多数決の原理に内蔵するところの矛盾でありまして、近代の政治学者がこの点に重大な関心を持ちまして多数決原理に関して研究を進めているのが今日の情勢であります。社会的な正しさは多数決によつてきめられるものとは限らないのであります。ましてや今日の自由党の諸君のごとくに、多数の横暴を以て押切ろうとする場合に、そこに現われるところのものが必ずしも社会的に妥当なものと言えるでありましようか。我々はこのような意味合いにおいて、諸君の提出されているところの動議が、多数に名をかりての民主政治の破壊であるということを申さなければならんと思うのであります。(「そうだ」「その通り」と呼ぶ者あり)この意味において我々は反対するものであります。(拍手)
○議長(河井彌八君) これにて討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。
 これより電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律案を本会議において審議することの動議の採決をいたします。本動議の表決は記名投票を以て行います。本動議に賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上御投票を願います。氏名点呼を行います。議場の閉鎖を命じます。
   〔議場閉鎖〕
   〔参事氏名を点呼〕
   〔投票執行〕
○議長(河井彌八君) 投票漏れはございませんか……投票漏れないと認めます。
 これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。
   〔議場開鎖〕
   〔参事投票を計算〕
○議長(河井彌八君) 投票の結果を報告いたします。
 投票総数百九十三票。
 白色票百二十七票。
 青色票六十六票。
 よつて電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律案を本会議において審議することに決しました。(拍手)
     ―――――・―――――
   〔参照〕
 賛成者(白色票)氏名 百二十七名
   佐藤 尚武君  小林 武治君
   小林 政夫君  岸  良一君
   北 勝太郎君  上林 忠次君
   加藤 正人君  柏木 庫治君
   加賀山之雄君  井野 碩哉君
   赤木 正雄君  森 八三一君
   村上 義一君  溝口 三郎君
   三木與吉郎君  三浦 辰雄君
   早川 愼一君  中山 福藏君
   豊田 雅孝君  田村 文吉君
   館  哲二君  竹下 豐次君
   高橋 道男君  高瀬荘太郎君
   高木 正夫君  杉山 昌作君
   島村 軍次君  深水 六郎君
   横川 信夫君  雨森 常夫君
   木村 守江君  安井  謙君
   伊能 芳雄君  青柳 秀夫君
   高野 一夫君  西川彌平治君
   石井  桂君  井上 清一君
   関根 久藏君  川口爲之助君
   吉田 萬次君  酒井 利雄君
   佐藤清一郎君  剱木 亨弘君
   森田 豊壽君  谷口弥三郎君
   宮本 邦彦君  長島 銀藏君
   長谷山行毅君  宮田 重文君
   瀧井治三郎君  田中 啓一君
   大矢半次郎君  石川 榮一君
   石原幹市郎君  植竹 春彦君
   岡田 信次君  松岡 平市君
   大谷 瑩潤君  西郷吉之助君
   中川 幸平君  左藤 義詮君
   寺尾  豊君  中山 壽彦君
   中川 以良君  吉野 信次君
   重宗 雄三君  大屋 晋三君
   津島 壽一君  大達 茂雄君
   青木 一男君 大野木秀次郎君
   愛知 揆一君  小滝  彬君
   古池 信三君  榊原  亨君
   大谷 贇雄君  宮澤 喜一君
   高橋  衞君  横山 フク君
   西岡 ハル君  重政 庸徳君
   小沢久太郎君  鹿島守之助君
   木内 四郎君  藤野 繁雄君
   石村 幸作君  青山 正一君
   秋山俊一郎君  入交 太藏君
   仁田 竹一君  松平 勇雄君
   加藤 武徳君  上原 正吉君
   郡  祐一君  山本 米治君
   西川甚五郎君  小野 義夫君
   徳川 頼貞君  中井 太郎君
   川村 松助君  堀  末治君
   白波瀬米吉君 池田宇右衞門君
   島津 忠彦君  松野 鶴平君
   小林 英三君  草葉 隆圓君
   泉山 三六君  黒川 武雄君
   石坂 豊一君  井上 知治君
   笹森 順造君  石川 清一君
   最上 英子君  三浦 義男君
   鈴木 強平君  深川タマヱ君
   武藤 常介君  寺本 広作君
   紅露 みつ君  八木 幸吉君
   有馬 英二君  堀木 鎌三君
   菊田 七平君  鶴見 祐輔君
   一松 定吉君
    ―――――――――――――
 反対者(青色票)氏名  六十六名
   高良 とみ君  梶原、茂嘉君
   奥 むめお君  近藤 信一君
   永岡 光治君  藤田  進君
   大和 与一君  湯山  勇君
   栗山 良夫君  秋山 長造君
   阿具根 登君  海野 三朗君
   永井純一郎君  大倉 精一君
   河合 義一君  岡  三郎君
   田中  一君  白井  勇君
   成瀬 幡治君  小林 亦治君
   森下 政一君  小酒井義男君
   重盛 壽治君  江田 三郎君
   小林 孝平君  久保  等君
   田畑 金光君  松澤 兼人君
   森崎  隆君  安部キミ子君
   矢嶋 三義君  岡田 宗司君
   山口 重彦君  堂森 芳夫君
   吉田 法晴君  中田 吉雄君
   藤原 道子君 小笠原二三男君
   菊川 孝夫君  若木 勝藏君
   山田 節男君  東   隆君
   内村 清次君  松本治一郎君
   三橋八次郎君  荒木正三郎君
   羽生 三七君  千葉  信君
   山下 義信君  後藤 文夫君
   市川 房枝君  須藤 五郎君
   戸叶  武君  赤松 常子君
   松永 義雄君  村尾 重雄君
   鈴木  一君  加瀬  完君
   千田  正君  相馬 助治君
   長谷部ひろ君  木村禧八郎君
   上條 愛一君  松浦 清一君
   棚橋 小虎君  堀  眞琴君
     ―――――・―――――
○議長(河井彌八君) 電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
     ―――――・―――――
   〔寺尾豊君発言の許可を求む〕
○議長(河井彌八君) 寺尾豊君。
○寺尾豊君 本日はこれにて延会せられんことの動議を提出いたします。
○杉山昌作君 私は只今の手尾君の動議に養成いたします。
○議長(河井彌八君) 寺尾君の動議に御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。よつて本日はこれにて延会することに決しました。次会は明日午前十時より開会いた七ます。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後十時五十九分散会
     ─────・─────
○本日の会議に付した案件
 一、新議員の紹介
 一、常任委員の指名
 一、日程第一 電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律案の中間報告
 一、労働委員長から中間報告があつた電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律案を国会法第五十六条の三の規定により本会議において審議することの動議
 一、電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律案