第016回国会 予算委員会 第20号
昭和二十八年七月二十二日(水曜日)
   午前十時五十一分開会
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  委員の異動
本日委員石原幹市郎君辞任につき、そ
の補欠として上原正吉君を議長におい
て指名した。
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 出席者は左の通り。
   委員長     青木 一男君
   理事
           西郷吉之助君
           高橋進太郎君
           小林 武治君
           森 八三一君
           中田 吉雄君
           松澤 兼人君
           堀木 鎌三君
           木村禧八郎君
           三浦 義男君
   委員
           石坂 豊一君
           泉山 三六君
           上原 正吉君
           大谷 贇雄君
           小野 義夫君
           佐藤清一郎君
           白波瀬米吉君
           高橋  衛君
           中川 幸平君
           宮本 邦彦君
           吉田 萬次君
           井野 碩哉君
           柏木 庫治君
           岸  良一君
           新谷寅三郎君
           田村 文吉君
           中山 福藏君
           岡田 宗司君
           亀田 得治君
           小林 孝平君
           佐多 忠隆君
           藤原 道子君
           三橋八次郎君
           湯山  勇君
           加藤シヅエ君
           棚橋 小虎君
           戸叶  武君
           武藤 常介君
           松原 一彦君
           杉原 荒太君
  国務大臣
   内閣総理大臣  吉田  茂君
   外 務 大 臣 岡崎 勝男君
  大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君
   厚 生 大 臣 山縣 勝見君
   農 林 大 臣 保利  茂君
   通商産業大臣  岡野 清豪君
   郵 政 大 臣 塚田十一郎君
   国 務 大 臣 安藤 正純君
   国 務 大 臣 緒方 竹虎君
  国 務 大 臣 大野木秀次郎君
   国 務 大 臣 木村篤太郎君
  政府委員
   内閣官房長官  福永 健司君
   法制局長官   佐藤 達夫君
   法制局次長   林  修三君
   総理府恩給局長 三橋 則雄君
   保安庁次長   増原 恵吉君
   公安調査庁長官 藤井五一郎君
   公安調査庁次長 高橋 一郎君
   大蔵政務次官  愛知 揆一君
   大蔵大臣官房長 森永貞一郎君
   大蔵省主計局長 河野 一之君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       野津高次郎君
   常任委員会専門
   員       長谷川喜作君
   常任委員会専門
   員       正木 千冬君
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  本日の会議に付した事件
○昭和二十八年度一般会計予算(内閣
 提出、衆議院送付)
○昭和二十八年度特別会計予算(内閣
 提出、衆議院送付)
○昭和二十八年度政府関係機関予算
 (内閣提出、衆議院送付)
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○委員長(青木一男君) これより委員会を開きます。
 内閣総理大臣に対する質疑を継続いたします。
○中田吉雄君 議事進行について……。去る十七日の衆議院の行政監察委員会におきまして、小笠原大蔵大臣の同居人の土地の問題につきまして疑惑が起きまして、それをどうするかということがいろいろ論議されましたが、昨日の二十一日におきましては、十分疑惑があるというので行政監察委員会で取上げることに決定いたしました。これから総理大臣に対しまする一般質問のあとを受けまして、九千六百余億の本年度予算の審議の中心は大蔵大臣だと思うわけであります。若しそういうようなことがありますならば、九千六百余億の国家予算をお預けするにはふさわしくない。従つて我々がこれから審議をいたしますためには、どうしても早急にその疑惑を解いて頂くことが何よりも必要だと思いますので、綱紀粛正の折でもありますので、総理大臣におかれて至急にこの問題の黒白をはつきりされまして、疑惑を解いて頂くことを要望するものであります。これに対する総理大臣の御所見をお伺いいたしまして、今後の予算審議に備えたいと存ずる次第であります。
○国務大臣(吉田茂君) 私は今の御質問の経過をよく存じませんから、大蔵大臣に聞いた上で以てお答えいたします。
○中田吉雄君 それでは大蔵大臣がおいでになりましてからにしまして、そうして総理に対する御所見をお伺いしたいと思います。これはやはり国家予算九千六百余億をお預けし、且つ審議するのに非常に重要な問題だと思いますので、不問に附せずに、この問題をはつきりして頂きたいということを発言しまして次に移ります。
○井野碩哉君 私は昨日政府に対しまして、この狭き国土におて人口が年々百十万人ずつ殖えて行くという重大な事実に対して政府はいかなる政策を持つかということを伺い、又それに対して産児制限はとるに足らず又移民も期待できないということになりますれば、どうしても食糧増産を計画的にしなければならないということを申上げ、総理の大体の御了承を得たつもりであります。又統制問題についても、主食については今統制を外すべき時期でないということを申上げ、大体これも総理の御了承を得たと私は了解しておるのでありますが、これに関連しまして、食糧増産の見地から最もやはり大切であるいわゆる農民の増産意欲を高揚し、且つ農村の福祉を増進する米価の問題につきまして又消費者の立場から見ましても、極めて重大な米価の問題につきまして本日は御質問申上げたいと思うのでありますが、先ずそれに入ります前に、このたび衆議院において修正になりました予算の中で、供米完遂奨励金の問題が過日来この議場でも問題になつておるようであります。この点に関して一応政府の御所見を伺つておきたいのでありますが、大蔵大臣は昨日ここで、供米完遂奨励金は従来の供米完遂奨励金と同じだと、供米を完遂しなければその奨励金を出さない趣旨であるという御答弁があり、又過般この委員会から衆議院が三派共同で修正されましたその修正者の代表者として、参考人でありますか、改進党の三浦政策委員長を呼んでここで聞きました際には、衆議院としては、これは供米を完遂しなくても、供米をすれば、それに全部この奨励金を出すということに了解しておると答えておるのであります。大蔵大臣は衆議院において、この問題については意見が一致しておるから、自分もそのつもりで処して行くのであるというお答えでありましたけれども、法律上の解釈が今申したような意味での真の供米完遂奨励金でないように考えられるのであります。そこでこの予算委員会としましても、提案されました議委が二つの内容を持つようでは、これはどちらに賛成していいかわからないのであります。そこでこの見解は統一して頂きませんと、予算の質問も進められないわけでありますが、結局今日の政治情勢から見て、この予算は一日も早く成立さしたいことは我々も希望するところでございますし、折角衆議院でいろいろの政治折衝の結果、ともかく三派として、改進党の或る程度の意見を容れて、供米完遂奨励金を、供米完遂しなくてもその供米にやるというふうに申出た、それに応諾しておられるのでありますから、政府としてもその気持を買われて、そうしてその解釈で行くのであるということにおきめ頂かないと、この審議がなかなか進まないと思うのであります。これは私が予算を早く成立さしたいと、今後質問のために長く時間をとりたくないという意味におきまして、大蔵大臣にもう一度この点についてはつきりお答えを次ぎたいと思うのであります。
○国務大臣(小笠原三九郎君) お答えいたします。私どもはこれは完遂の奨励金でございまするから、完遂されたものに対する奨励金なりと考えており、又それでございませんと、例えば免税措置をとるというようなこと等が、普通の供米にはこれは免税措置をとつておりません。今度は完遂奨励のものであるから免税措置をとることになつている等の事情がありますので、私は完遂奨励金なりと考えております。
○井野碩哉君 今大蔵大臣は、免税措置があるから完遂奨励金は完遂しなければいけないのだというお話でありますが、改進党と自由党との折衝の経過を聞いておりますと、結局米価を改進党は千円上げてくれということに対して、八百円で折合いましたのも、免税措置があるからそれで折合つたように私どもは伺つておるのであります。でありますから免税措置ということは何も奨励金の実質問題ではない、ただ農民に幾らの金が入るかということから来る問題でございまして、従つて改進党と自由党との交渉の上におきまして、そういうふうに話がきまつておるものを政府として変えるということになりますと、ここに徒らに審議が遅延することになると思うのであります。でありますから、ここは一つ大蔵大臣も大乗的見地から、その点ははつきり一つ両派がきめた趣旨に割うて政府もやるのであるということをお答え頂いたほうがいいと思うのであります。それで私はただ大蔵大臣に、いじめる意味で申上げるのではなく、そうしたほうが早く審議が進むのではなかろうか、これは僅かの金の問題であり、主義の問題としてもそう大した問題ではないと思いますから、そういうふうにお取計らい願つたほうがいい。それでなければこの修正案が二つの内容を持つた案として参議院に送られたことになりますので、我々も審議のしようが実はないのであります。そうなりますと、もう一度又三浦君を呼んで一ついろいろな意見を聞かなければならんということにもなつて参りますし、どうせこれは政治的にはきまらなければならん問題であつて、そうして将来これをきめるということになりますと、農民としても非常にこれが大事な問題であつて、早くこれがきまれば今度の植付から収穫までの間に非常な増産意欲を起すことになりますから、やはり将来にきめるというよりは、この際はつきり政府としてもおきめ願つておくことのほうがいいのではなかろうか、これは増産を熱望いたします私といたしまして、特に大蔵大臣に申上げて御反省を頂きたいのであります。
○国務大臣(小笠原三九郎君) 御意向はわかります。よくわかりまするが、私どもとしては完遂奨励金であるということで、そういうことで当時の農業のことを代表された改進党の竹山氏とそういう話合になつておる。こういうふうに私は承知いたしております。併し御意向の点はよくわかりますので、よく考えます。
○井野碩哉君 予算の技術の面から申しましても、昨年この供米完遂奨励金は行政費で一般会計の目に組んであつたように思います。本年度はこれを食管でお組みになりましたのでありますが、食管にそういう目を御設置になるのでありましようか。その点主計局長から一つ。
○政府委員(河野一之君) 私からお答え申上げます。昨年は御承知のように項といたしまして一般会計から食糧特別会計に繰入れるという項を組んでありまして、今年度は食管会計、今度の修正案におきまして食管会計の食糧買入費という中に目を設置してする考え方でございます。これは昨年も農産物食糧買入費の中にそういう目をあいておるし、供出奨励金、超過供出奨励金だとか、早場米供出奨励金も同じような項の中に入つておるのであります。
○井野碩哉君 昨年はこれが行政費であるから一般会計に設けて、供米奨励金であるとか、その他の奨励金は特別会計に設けてあるということから考えて見まして、これを今度特別余計の目の中にはかの供米奨励金と同じように設けるというのでありますからすでにそこにおいて多少考えをお変えになつてもいいのではないか。昨年の供米完遂奨励金と同じものである。要するに完遂しなければ奨励金は出さないのだというのではなしに、むしろ政治的にこれはいろいろ歩み寄つてできたものでありますから、三派が共同して修正した、この修正権を持つものの解釈を執行者としてはおとりになるほうがよいのではないか。又これは実は大蔵大臣がこの執行の責任を持つておられるかどうかこれは疑問でありまして、むしろ農林大臣が執行の責任を持つておられるのじやないかと思うのであります。大蔵大臣からこの説明をお聞きすることが私はおかしいような気もしたのでありますが、昨日大蔵大臣がそういう御答弁をなさいましたから、私は大蔵大臣にお伺いするので、農林大臣からもう一度これに対する解釈をはつきりお聞きしておきたいのであります。
○国務大臣(保利茂君) 衆議院で八百円の奨励金を付けられるというその趣意は、いろいろ米価問題にも無論からんでおりまするけれども、根本的の配慮は、三党において本年の出来秋の供出を如何にすれば確保できるかという政治的配慮の上から修正が行われていると存じているのであります。そこで私どもは三党間の話合の過程において参画いたしておりませんから、そのでき上りましたいきさつは承知いたしておりませんけれども、でき上りました修正の表現につきましては、三党閥の多少見解の相違があるようであります。併し完遂奨励金として謳い出すということについては三党において何らの相違はない。従いまして、その完遂奨励金という建前において予算の修正措置も講じられておるという上から行きますと、大蔵大臣が申されておるように、これはやはり完遂した場合における奨励金ということに解すべきであるとは存じますけれども、同時に実施の責任者といたしましては、どうしても割当供出の完全な供出を得られるように、一人漏れなく完全供出ができるように指導して、そうしてそれにこの予算を執行して行くというように考えて行かなければならんじやないか、私はそういうふうに考えております。
○井野碩哉君 農林大臣も供出完遂を完うするために、できるだけこれを有効に使つて行きたいというお考えでありますれば、どうしても今この植付から出来秋までの前に、農村にはつきりこの問題は政府はこうするのだということを示されないと、増産意欲の上にも、供出の上にも非常な影響が大きいのであります。ですから今日ここまで来ておるのでありますから、政府とせられましても、三派修正の通り、即ち三浦政策委員長がここで説明せられました通りに解釈するとはつきりおつしやつて頂いたらどうでございましようか。この点はそうして頂きますと、予算審議の上にも非常に進捗するのでありますが、そうでない、今申したようなお考え方と二つの内容を盛られた予算案になつて来るのでありまして、法制局長官は、修正権を持つものが結局これが解釈権を持ち責任を持つというのであつて、修正したものが三派の一致した意見でありますから、大蔵大臣の意見のほうがむしろとられないということになるかも知れませんけれども、併し私は憲法の建前から申しまして、やはり参議院にこの予算案を提出するのは政府だと思つておりますから、政府のやはりお考えをはつきりしておいて頂きたいと思うのであります。
○国務大臣(小笠原三九郎君) 私は完遂奨励金は完遂されたものの奨励金であると存じております。併し運用において、これは実際的になるようにやることは十分考慮いたします。
○井野碩哉君 そうすると、大蔵大臣は表面の字句の解釈はそうなつておるけれども、運用においては三派共同できめた行き方でよろしいと、こういうふうに私は了解いたしますが、よろしうございますか。
○国務大臣(小笠原三九郎君) そういうふうに御了解下さつては困るのでありますが、運用について注意をいたします、こういう趣旨であります。
○小林孝平君 関連でありますから、簡単にお伺いいたしますが、この予算の費目にどういうように使つてもいいというような金が二百億円もあるということは、一体こういうことでいいのですか。二百億円もこういう莫大な経費が、完遂したものに出すのか、完遂しないでも、そういう人にも出すのかという二つの解釈があつて、今後これは、或るときは政府の意見では参議院できめて下さい、或るときは今後運用に注意して何とかやる、こういうようなことを言つて、何に使うかわからない金が二百億円も宙ぶらりんにあるということは、一体こんな予算の審議ができると思つているのか。若しそういうことであれば、今政府の提案されました一般会計、特別会計並びに政府機関のこの会計の厖大な経費の一つ一つが、そういう経費がこれは予算の項目に載つている経費以外に使われる性質のものが含まれているかどうかということを一々検討しなければならんと思うのです。二百億円もそういう何に使つてもいいということは困ると思うのです。大蔵大臣の明確なる御答弁を願いたい。
○国務大臣(小笠原三九郎君) この点は先刻来申上げております通り完遂奨励金でございます。
○小林孝平君 先般参考人としてお呼び願いました改進党の三浦政策委員長は、はつきりとこの完遂奨励金は、これは完遂奨励金という名前であるけれども、全部に出すということを三派を代表して御説明になつておるのです。先般の大蔵大臣が答弁、説明されました昭和二十八年度予算についての衆議院における修正の概要というものは、これは政府が出されたのか誰が出したのかわかりませんけれども、大蔵大臣の説明と改進党の三浦代議士の説明は全然全く同様なものです。ただ一点違うところは、この完遂奨励金を大蔵大臣は完遂奨励金と言い、三浦氏はこれは全部に、こうなつておるけれども全部に出すと、こう言つておるのです。従つて私はここに三浦氏を再びお呼びして十分に意見を聞かなければならないと思うのです。それから最近は麦の価格の際においても、その担当の責任である農林大臣の知らないうちに麦の価格がきまつたというので農林大臣は辞職されておるのです。今回のこの三派の共同の提案も、大蔵大臣は知らないけれども、自由党の幹部と他の両派との間で完全なる意見の一致があつたのじやないかと思うのです。たまたま大蔵大臣がつんぼ棧敷に入れられて知らなかつただけで、実際ははつきりと了解されておる、こういうことになつておるのじやないかと思うのです。従つて十分大蔵大臣は党と相談されまして、明確なる解釈をここにして頂きたいと思うのであります。この点大蔵大臣の御意見を伺います。
○中田吉雄君 関連して……。一緒に答えて下さい。只今井野議員が申されましたところは実に重大な問題でありまして、供米完遂奨励金は、只今大蔵大臣では完遂した者に出すというふうにとられていますが、我々がこの間三浦先生から受けました説明では、完遂を奨励するための、完遂させるための奨励金で、全部に出るようになつているのだ、供出完了した者に、完遂した者に出すのではなしに、供出を完了させるために、完遂させるために全部に出すというふうに理解していますので、只今の井野議員の発言は基本に触れる問題でありすまので、一つその点をはつきりお願いいたします。
○国務大臣(小笠原三九郎君) 私どもは完遂奨励金として従来のごとくに、これはこの前の完遂奨励金もそうでありますが、過去における完遂奨励金、これまでの完遂奨励金のごとくに、完遂された者に出す奨励金なりと了解して、了承して、その下に今申上げた通りに、完遂されたものであるから、免税措置等もこれに対する分であるからと、ただこういうことにいたしておる次第でございます。
○小林孝平君 私の質問にまだ答えてないのです。
○委員長(青木一男君) 小林君のと両方一括してお答えになつたと思いますが……、もう一遍述べて下さい。
○小林孝平君 大蔵大臣は、こういうふうに二百億円の宙ぶらりんの経費がある、従つて、こういうことでは、他の費目も予算の全費目に亘つてこういう経費があるのじやないかということを私は心配し出したのです。というのは、最近政府の御答弁を見ると、選挙違反をやつて、二千円くらいの買収費は何でもないというようなことを外務大臣が言われる。又首相も僅か数千万円の、数億円の金を軍備というのは世界で笑われると、こういうことを……。これは非常に金を軽視されている、今度の二百億円もその手で、二百億円くらいなら何でもいい、これは完遂したものでも、しなくても、どつちに出してもいい、こういうような思想が政府の中に彌漫しておるのではないか、だからこういうことでは、この全費目に亘つて、一々こういうことになつておるかなつていないかということを確めて見らければならないのでありますから、これを大蔵大臣にお伺したい。
○国務大臣(小笠原三九郎君) 予算の費目にはさようなあいまいなものはございません。はつきり私は申上げておる通り、完遂奨励金として我々は了承してある次第でございますので、そんなあいまい模糊たる費目はなもう何に使つてもいいという金は一切ございません。
○小林孝平君 今そういうことをおつしやいますけれども、三浦政策審議長ははつきりとそういうことを言つておられる、而もその説明の最後には、我々が参考人として呼んだにもかかわらず三浦さんが非常に心配され、慎重審議願うとまで附加えられておる。私は三浦さんは、人格の高潔な三浦さんはそういうでたらめを言われる人ではないと思つておる。従つてどうしてもこの点はもつとはつきりしてもらつて、そうして三浦さんにここに出て頂いて、改進党の三派修正案の発議者の代表として三浦さんから、来て頂いてその意見を開かなければならないと思う。もう一つ首相にお尋ねしたいのは、首相はこの予算の修正は非常に不満であるけれども、これはともかく納得したと、こういうことで、そうしてこの予算の執行については三派の協力を得て執行すると、こう言われておる。これが今のような状態では、この発議者の代表の意見を全然無視するような、改進党の面目を蹂躙するような御答弁では協力を得られないと思う。この点を首相はどういうふうにお考えになるか、関連して御質問いたします。
○国務大臣(小笠原三九郎君) 政府としては完遂奨励金はこれまでの完遂奨励金なりと了承しておることは今繰返し申上げた通りであります。発議者のお考えについては、これは発議者にお聞き願うほかはございませんが、政府としてはそういうふうに了承して、あの費目に計上しておる次第でございます。
○井野碩哉君 いろいろこの問題について、はつきりここで態度をきめて頂くためにはもつと深くお伺いしなければならないが併し成るべくこの委員会を早く上げたいという私の気持から申しましても、これは委員会のあります聞に一つよく政府内部においてこの問題の態度をはうきりして頂きたいのであります。総理大臣も折角政局の安定を望んでおられて、保守連携によつて政局は乗り切つて財界の安定を見て行こう、こういうお気持を持つておられるのでありますから、改進党が折角自分のほうの重大な政策としてそういう主張を似つて了解をしておるものを、又三派の相談においてもそういうふうにきまつたというふうに我々も了解しておるのでございますので、そこはよく一つ政府内部においてその気持をお酌みとりの上御決定頂きませんと折角総理が御心配になつておるような政局の安定ということも望めなくなつて来るのでありますから、この点は私としても重大に考えておるものでございますのでこの予算委員会が終りますまでに、どうか一つその態度をはつきりきめて頂きたい、そうしないと、二つの案の内容を持つておるものに対して、この委員会としてどつちに賛成をしていいかわからない状態でございますので、その点はくれぐれも一つそれまでに御考慮を願いたいと思うのであります。
○国務大臣(小笠原三九郎君) お話の点は考慮いたします。
○井野碩哉君 次に消費者米価の問題でございますが、今度の修正案によりまして四百億のうち二百億は将来一般会計から補給する、取りあえずは食管から四百億を食糧債券を以て賄なつておいて、将来は、将来と申しましても、勿論近き将来と思うのでありますが、一般会計から賄う、そのうちの百億は米価の引上によつて一般会計の損失のないようにするというような御説明が、実は自由党の政務調査会長が緑風会に来られたときの説明にあつたのであります。やはり政府もそういうふうにお考えになつておられるのでございましようか、その点をお伺いしたいのでございます。
○国務大臣(保利茂君) お答えいたします。政府といたしましても、只今お話のようにこの奨励金、今年産米に附加すべき奨励金、石八百円については、二十八年産米にはこれを食い込まない、ただそのうち四百円に相当します一般会計から、将来繰入れるべき百億円についてはこれは行政負担として、残る四百円の分については後年度の米価状況を勘案して考えるというように政府としては理解をしております。
○井野碩哉君 勿論今回の米価の予算上の問題は、予算米価でありますから、これを以てすぐ米価がかくのごとく決定したとは私ども考えておりませんが、併し予算を修正した際にその財源の一部を消費者に転嫁するということがある、なしということと、それからこれは全然しないということとは大変そこに政府の方針として違いが起つて来るわけであります。そこで今日米価の高騰ということは、米価を上げるということは一般給与ベースの問題にも触れて参りますし、一般給与ベースは又物価の水準にもなり物価が高くなれば輸出貿易の振興もできんというようなわけで、循環作用をして来るものでありますから、消費者米価というものはできるだけ私は動かすべからざるものと自分は考えておるのであります。従つてこういつた問題について消費者転嫁ということは極力避けて行かなければならんと思うのでありますが、改進党の修正者としての考え方もそこにあつたようでありますが、この点も三派の間ではつきりしない点があるのではなかろうかと思うのであります。でありますから、この点も一つ政府とせられまして、はつきり三派の意見をお聞取りになりまして、そうして三派修正の趣旨に合うよう今後善処をして頂きたいのでありますが、この点について農林大臣はどうお考えになりますか。
○国務大臣(保利茂君) この修正せられました石八百円の奨励金と消費者米価との関連は、さつき申しました通り了解をいたしておりますが、その他の要素に関しまして、新らしい新米出廻り期における消費者米価をどう決定するかということは、大体御趣意のような消費者家計に著しき負担を起さないようにという従来のやり方を無論踏襲して参りますが、その際におきまするところの要素を検討して決定をいたすということについては、三党間においてもそういう了解はあるということを承わつております。
○井野碩哉君 二十八年度の米価については今のお説で大体わかりましたが、二十七年の米を買上げます際に、超過供出と特別集荷制度によりまして、相当食管に赤字が出るわけであります。この負担を消費者にさせるか、或いは一般会計で持つかということがまた二重米価の根本問題になつて来ると思うのでありますが、勿論これは米価審議会で米価決定はきまるのであまりすけれども、政府としてもこれについてどう処するかということを恐らくお考えになつていると思うのでありますが、その点について農林大臣は、これを昨年度のつまり二十七年の米の特別集荷及び超過供出金の食管の損失を一般消費者に負担さぜなければならないかどうかということの御答弁を頂きたいのであります。
○国務大臣(保利茂君) 昨年の二十七年産米の消費者米価決定に当りましても、早場米供出奨励金と超過供出奨励金、これは消費者に負担を願うという建前で消費者価格は決定しておるように私は承知しておるのであります。それが早場米供出も当初の見込よりも多く出ておる、超過供出も当初の見込よりも多く出ておる。そこに早場及び超過供出による国庫の負担がそれだけ多くなつて来ておる。それをそのままそれでは次年度の消費者価格に持つて行くことがいいかどうかということは、これは消費者家計に及ぼす影響が果して妥当な結論になるかどうかということで、それをそのまま消費者価格に持つて行くという考え方は必ずしもとるべきものではない。要しまするのに、新消費者米価決定時における財政の状況と消費者負担の家計の状況と見合つて、いずれにしても今日までやつて来ておりまする適正なる消費者価格を決定するという方式で考えて行くはかなかろう、こういうふうに考えております。
○井野碩哉君 そうしますると、今農林大臣のお考えでは、結局二重米価ということはやむを得ないというお考えでございましようか。結局集荷しましたために要したいろいろな費用、特別の費用、それは消費者に負担させないで、一般会計なり、或いはその他の財源等でこれを負担するということが、これが二重米価の根本なんであります。緑風会も、従来から米に関してだけはこの二重米価を是非政府としてもとつてもらいたいということを主張して来ておるのでありまして、改進党が今度二重米価制度を政策の看板に掲げましたが、考え方は、政府の政策であるから、これを支持するというのではなく、米の運用上どうしてもそうして行かなければ、日本の経済を持つて行く上において、消費者にこれをどんどんと転嫁すれば結局賃金ベースの引上げになりますから、どうしても二重米価をとらざるを得ない形になるのであります。外米についてはもうすでに二重米価をとつておるのでありますし、麦についても十六億円赤字を負担しているということは一種の二重米価でありますから、ですから余り字句にとらわれないで、そういつた考え方で進んで行くということをはつきりなすつたほうがいいと思いますが、今お話のようですと、二重米価をお認めになつたように思うのですが、如何でございますか。
○国務大臣(保利茂君) これは井野さんもよく御承知のように、昨年の二十三億計上いたしておりました石百円の供出完遂奨励金も、やはり米の確保の手段として行政府において負担をいたしました分で、この分は消費者米価に入れておりません。従いまして行政府の負担にかかる分を消費者米価にかけないから二重米価であるという御見解であれば、これはもうその御見解に従うほかはないと思うわけですけれども、これはどうも表現の問題になつて来ておるような気がいたします。
○井野碩哉君 結局解する人のいろいろの見方でその名前も違つて来ると思うのであります。でありますから、政府もそういつた二重米価制度であるとか、そういつたことにとらわれずに、実際に農村に対しては生産費の償えるような米価で買上げてやつてそうして成るべく消費者の家計を動かさない、生産費に影響のあるような変更をしないで、そうして政府としては進んで行くのである、こういうような態度をお示し頂きたいのでありまして、二重米価というような論争にとらわれますと、とかくすべての問題がごまかしが出て来まして、今言うような供米完遂奨励金でも、これはごまかして来るような気持がするのであります。これを米価に入れれば何でもないのであります。税金を免除しようとすれば、それだけ米価を高くすれば、農村としては米価で買つてもらえばそれで一遍に勘定が付くのであります。又供出完遂奨励金というようなことになると、県庁を通して二重の手間が要るのであります一折角政府がいろいろの施策をする上において、余りに理屈を唱えますために農民は却つてそこに煩雑性を感ずるということになりまするから、その点は農林大臣も一つ今後の施策の上に十分御考慮願いたいと思うのであります。私もまだいろいろ食糧問題についてお伺いしたいこともあるのでありますが、総理に対する与えられた時間も迫つて参りましたので、次の問題に移りたいと思うのでございますが、貿易問題はこれは二十分でいろいろお伺いしたいのでありますけれども、これは他日関係の各大臣に伺うときに譲りまして、最後に三の問題の戦犯問題について一言お尋ねなり、又お願いもして見たいと思うのであります。これは私は戦犯という言葉は実は嫌いで、もうすでに国内においては犯罪人ではないという気持を持つておるのであります。でありますから、戦争受刑者という言葉を使わして頂いて、これからの質問をいたして参りたいと思いますが、戦争受刑者の現在巣鴨におります数は七百数名であり、又在監中絞首刑になり、或いは病死した者が九百九名でございます。これに対して政府としては今までアメリカの占領下にあられましたから、思い切つたいろいろの寛大な処置もとられませんでしたが、そのために遺族は非常に困つておりますし、又留守家族も非常に困つておつたのであります。総理は最近において非常にこの問題に深い御理解を頂いて、だんだんといろいろな点に法務大臣を通じ、又外務大臣を通じて改善はされて来ております。併しここに残された問題が二つあるのでございます。それは今入つております在監者は恩給をもらえないという点であります。これはすでにもう国内の犯罪者じやないのだ、一般人と同じだという見方を国民も持つておりますし、議会も又全面釈放で許してやれという決議までしておるのでございますから、政府のお取扱いとしても普通の者と同じように、せめて恩給だけはやれるようにしてやつて頂きたいということと、それから獄死者と、刑務所内、拘置所内で病死しました者、これの家族に対しても、これを公務死と見ないために恩給が殆んど行かない者が相当数あるのであります。これも公務死と見るのは、今の恩給法上解釈は私もなかなかむずかしいと思います。ですから軍人遺家族援護法によりまして、できるだけこれを救済してやるという気持で一つお進めを頂きたいと思うのでございます。この点については、実は緒方副総理から、曾つて総理にお目にかかつてよく申上げたらよかろうということがありまして、その機会を実は待つておつたのであります。総理がお忙しくてとても御面会の機会がないので、こういう席上を以ちまして総理に御質問なり、又御意見を伺つておきたいと思うのであります。
○国務大臣(吉田茂君) お答えいたします。戦争受刑者、この問題は数年以来関係国との間に交渉をいたした問題であります、関係国と言いますか、進駐軍。併し当時は日本に対する戦後の反戦も相当あり、又誤解もありまして、交渉は我々が希望するがごとく進捗をいたさなかつたのでありますが、最近においてはよほどこの点については関係国の理解が進みまして、戦争受刑者の釈放、減刑等については、話は漸次まとまりつつあり、最も困難であつたオランダ関係についても最近話が進みつつあるようであります。併しお話の問題は、現に巣鴨に拘禁されている人、若しくは獄死したというような人の手当の問題、これは厚生大臣からお答えいたします。
○井野碩哉君 更に現在入つております者が、もうすでに実は講和発効のときに釈放されるというふうな期待を持つておつたのであります。それが全然日本の政府の手で何らの恩典に浴さなかつたということについて、当時はいろいろ不満を持つて、実は中で騒動まで起きそうな形勢であつたのですが、これは我々も世話会を作りまして、いろいろ面倒を見まして、その点は収めて参つたのでありますが最近これは非常な総理なり、外務大臣のお力で、フイリピンの全面釈放もでき、又マヌス島の戦犯者も帰つて来る。戦争受刑者も帰つて来る。戦争受刑者も帰つて来るというような、こういう状態でありますので、昨日の新聞を見ますと、ロンドンのUP通信でございましたか、ドイツの戦犯を全面釈放をするために、三国外相会議で決定をして、そうしてその方法について委員会を作るなり何なりして、速かに全面釈放をすることに決定したという報道が新聞に出ておりました。そういつたようなわけで、世界全体もだんだんとこの問題については非常に考え方を変えて来ておるのでありますから、この際一つ政府としては全面釈放に一層の御尽力を頂きませんと仮釈放のために一つ一つの書類を作りまして一アメリカの三人委員会にその書類を出しておりましたのでは、なかなからちがあかないのであります。中におる者は、犬養法務総裁はマヌス島の連中が帰つて来るようなことになれば、対外関係も非常によくなつたのであるから、あの高い塀は取除いてやるというようなことまで言われて、中の者はそれを期待しているのであります。でありますから、どうか総理におかれましても、この問題は一段の熱意を以ちまして、全面釈放に御解決に御尽力頂きたいことをお願い申上げまして私の質問を終えます。
○中田吉雄君 吉田総理が老齢なお矍鑠として日本の国事に努力して頂いている点は深く敬意を表するのであります。併し動きつつある日本の情勢を見ますると、ヒルテイの表現を以てしますれば、シュラフロー・ゼネヒテ、眠られぬ夜を迎えなくては我が国の情勢は考えられない、こういうような情勢にあることも明らかであります。私は日本社会党左派の立場からいろいろな点をぶちまけまして、吉田総理と四つに組んでいろいろな御質問をいたしたいと思うわけであります。是非十分な敬意を持つて御質問申上げるわけでありますから、総理におかれても、そのような用意を持つて一つ御答弁して頂くことをお願いするものであります。
 先ず第一に、私はこの際対米外交を或る程度是正転換されることが必要ではないか、こういうことについてお尋ねいたしたいと思うわけであります。目下MSAに関しまする援助協定が進行中であります。若しこの協定が成立いたしますならば、日本はアメリカと新たなる国際関係ができまして、どのような弁解をいたしましても、新たな従属関係が私は生れると思うわけであります。MSAの交渉に対しまして、私はむしろその前に、講和、安保両条約及び行政協定によつて我が国の立場が非常に不利になつている、先ずこれを是正いたしますことが、根本的な改訂をいたしますことがMSA援助の協定に先立つべきではないか、これなしに新たな協定を次々に結びますならば、私は長きに亘つてアメリカとの友好関係を結ぶことが困難ではないかというふうに考えるわけであります。そういう点からいたしまして吉田総理は講和、安保両条約及び行政協定に対しまして、これをどうお考えであるか、これについて改訂の交渉をされる御用意をお持ちであるかということを先ずお伺いいたしたいと思います。
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。対米関係の是正ということについては如何なる点を是正しなければならんかということを私は第一にお尋ねをいたしたいと思うのであります。今日は日米の関係は曾つて見ざる親善の関係であります。これを従属関係とおつしやるかも知れませんが、従属であるか、従属でないかということは意見の立て方でありますが、親善関係をいたすことが従属関係と言えば別問題でありますが、今日まで御承知のごとく戦後或いは講和条約後の日本の状態を御覧になると、戦後においては非常な破壊を受けて、国民食糧の欠乏から考えましても非常な危険な状態に陥つたのであります。ともかく米国の食糧援助によつてその危機を切抜けることができた。現在はしばしば指摘せられるように、日本の外国貿易は米国の特需その他によつてバランスが合つているというような状態であります。これは従属関係でも何でもない。親善関係と私は了解いたすのであります。これなくしては日本の貿易のバランスがとれて行かないのでありますが、とにかくこれによつてバランスがとれて参つておるのであります。このために日本の経済破壊ということも災難を免かれつつあります。この関係もこれを正常貿易化するということは当然努めなければならないことでありますが、直ちに正常貿易に返せと言われても、戦後の荒廃せられた日本の国力として直ちに正常関係に入るということはむずかしいのであります。日本が資源も持ち、又日本の社会組織、行政組織が破壊せられた今日において、直ちに正常関係に入れと言つてもこれはむずかしい話で、正常関係に入るためには幾多のルートを経なければならん。先ず日本の物価を引下げ、国際水準まで物価を持つて行くこと、これも決してたやすきことではないのであります。幾多の方法、工夫をいたさなければならないことであつて、今直ちに正常関係に入れと言つたつてこれはむずかしいのであります。又正常関係に復さなければならないのでありますが、これは国民を挙げて協力してこの点に持つて行くより仕方がなない、多少の時間がかかることは仕方ないのであります。又の交渉の結果、日本は非常に従属関係が増すであろうというお話のように聞きますが、そうなるかならないかは、これは今後の交渉の結果であり、日本が独立国としての体面を汚し、若しくは国際上の地位を失うようなことがあれば、これは当然受諾のできないことであります。如何なることを米国政府が希望いたすか、これは交渉後でないと、ここにあらかじめどうということは申すことはできません。又安全保障条約、行政協定、これは必ずしも完全なものとは私も申しませんが、併しながら現在のところ、集団攻撃に対して集団防衛の方法をとる以外に国防、国の安全、独立を守る方法がないのでありますから、安全保障条約の期待するところ、私は現在の日本の必要に応ずるだけのことをいたしておると思います。又行政協定についてはいろいろ議論がありますが、これもできるだけの改訂をいたしたいとは考えておりますが、直ちにこれを廃棄しようという考えは持つておりません。
○中田吉雄君 我が国の置かれました事情につきましては、只今総理の御答弁もありまして、十分了承できる点もあるわけであります。まあその前に我が日本社会党といたしましてのアメリカに対する基本的な態度でありますが、我が日本社会党左派といたしましては、平和を維持し、探求することについてはアメリカと協力いたすことに少しもやぶさかではないわけであります。併しアメリカのとります世界政策のうちで、戦争の要因を含む政策に対しましては、我が日本社会党は鋭く対立する立場を先ずとつておるということを申上げておきたいと思うわけであります。只今総理は講和、安保両条約、行政協定について申されましたが、私は困難であろうとは存じますが、この条約の改訂について十分な努力を払いませんと、私は今後対米関係がなかなか困難ではないか思うわけであります。先般日本に参りました共和党のダークセン氏もMSA援助のアメリカの、上院の討論におきまして、日本を訪問した際に、吉田総理に対日講和条約は日本が実行できないと自分は思つておるということを吉田総理に申上げたという討論をやつておる速記録を私は入手いたしております。ダークセン氏すら対日講和条約は困難である、その実行が困難である、そうしてそれを吉田総理に申上げたと言つておるわけであります。外国人ですらそう言つておるわけでありまして、そういう点から私は困難がありましようとも、多くの努力を払うことが対米関係を大東亜戦争の前に持つて行かない必要な手段だろうと思うわけであります。若しそういう点から、具体的にそれでしたら先ず領土の問題に関して千島列島、歯舞、色丹、北緯二十九度以南の南西諸島等の我が国の旧領土に対する今後の総理のお考えはどうでございましようか。アメリカのウィルソンは一九一七年の六月九日に、アメリカはちつとも領土的な野心を持つものではない、又賠償を要求するものではないという無賠償、無併合の原則を確立いたしまして、第一次大戦後の世界に対して訴えたわけであります。そういう点から考えますると、潜在主権があるのだとか、日本の領土主権は眠つておるのだということを以て、沖縄その他に対する祖先墳墓の地に対する民族的な要求を私は無視することはできんと思うのですが、こらの侵略戦争で奪つたものでない領土に対して、どういうお考えをお持ちでありますか、それらについてどういう折衝をせられ、今後どういうふうに対処されて行くお考でありますか、その点についてお伺いたしたいと思います。
○国務大臣(吉田茂君) お答えしますが、上院議員の何と言いましたか。
○中田吉雄君 ダークセンです。
○国務大臣(吉田茂君) ダークセン……とにかく今お話のような上院議員の如何なる人からも、講和条約の実行はむずかしかろうというような質問を受けた記憶はございません。又歯舞、色丹その他の問題については、これは政府として絶えず復帰を要求いたしておりまして、又交渉をいたしております。けれども、これはソヴィエトの関係でありまして、ソヴィエトと日本との間は今日国交断絶と申していいような状態におるものでありますから、交渉する方法がありませんので、これは国連を通じて交渉する以外に方法はないのであります。それから西南諸島については、これも絶えず米国政府と交渉いたしております。但し主義においては何ら異存がないのでありますが、ここに問題になるのは軍事上の必要、軍事上の懸念、米国政府としては軍事上の懸念、太平洋の防備の上から未だ打ち解けない一、二の点があるものでありますから交渉が成立いたしておりませんが、日本政府としては、その当該地方の島民その他の希望に応じてできるだけの交渉はいたしております。私はこれは米国政府も了解して適当な解決を見得るであろうと確信いたします。
○中田吉雄君 旧領土に関する総理の基本的なお立場はお伺いしたのですが、外務当局としての事務的な折衝、見通し等につきまして岡崎外務大臣の御所見をお伺いしたい。
○国務大臣(岡崎勝男君) 歯舞、色丹等は、今総理のおつしやつた通りであります。併し我々としては、もうすでに占領中からこれらの領土の如何なるものであるかということについては、連合国に十分な御説明を加えております。西南諸島、小笠原とか南西諸島とかにつきましては、これは今総理のおつしやつたような筋で事を運びつつありますが、その中にも軽重の差がありまして、一時に全部同じような解決というわけには参らんと思います。差当りはできるものから解決して行くという方法をとつておりますが、又従つてその中では、例えば郵便をどうするとか、或いは貯金をどうするとか、学生をどうするとか、学校をどうする、道路をどうする、いろんなことがありますが、それと同時に、その一部についてでも行政権が日本に戻るように努力をいたしております。
○中田吉雄君 それではその問題はその程度にいたしまして、行政協定の改訂につきまして政府のお考えをお伺いしたいと思います。
 去る十五日に米国議会におきまして、北大西洋の駐兵協定の問題が批准されたわけでありますが、この行政協定の第十七条には、それが批准された場合には日本の刑事裁判権の管轄権の改訂についての規定があるわけでありますが、新聞紙の伝えるところによると、政府としてはすでにこれに対する具体的な案というものをアメリカに示して御折衝のように伝え聞いているのですが、我が日本社会党としては、行政協定には根本的に反対でありますが、是認するという立場をとられている吉田内閣におかれても、この問題については選挙当時にも御発表もありましたし、すでに準備がとられていると思いますが、刑事裁判管轄権の改訂についてのお考え並びに具体的な案ができて、すでに折衝をされつつあるということでございますが、その真偽、若しそういたしますると、その内容はどんなものであるかということをお伺いする次第である。
○国務大臣(岡崎勝男君) これはNATO協定がアメリカで批准されるといこうとを諸般の情勢から予想いたしましたから、去る四月十四日のアメリカに対する公文を以てこの点を申入れました。申入れたと申すのは、要するに行政協定の中には批准ということはないのですが、いわゆるNATO協定がアメリカについて効力を発生してときは、日本側の選択によつて行政協定の中の刑事裁判権をNATO協定のように変える、こういう意味になつております。そこで第一には日本の選択権が必要であります。そこで四月の十四日の公文におきましてまだNATO協定は批准されておりませんでしたけれども、とにかく批准されることを予想して、その場合にはこれが日本の選択権になるというふうに了解するようにという申入れをいたしておりますから選択権はすでに行使したということになるわけであります。但しそれは批准がすんでからのことであります。併しながら実際にこの改訂が行われますのは批准の後ではなくて、効力の発生したときであります。効力の発生しますのはアメリカほか三カ国が少くとも批准書を供託してから三十日たつてから効力を発生するということになつておる。他の三国は、フランスとかベルギーとか供託しておりますから、アメリカが供託すればそれで三十日たつと効力を発生いたします。その前に恐らくアメリカ側も批准が行われますれば、これに対する交渉に応ずるであろうと君えております。すでにそれを予想しての案は作つておりまするが、最近或る種の留保がついております。この留保については的確なるまだ解釈が示されておりませんが、これを研究いたしました上に更に具体的な案を作るつもりでおります。
○中田吉雄君 私も実はその十五日にアメリカの本会議で通過しましたなんで、NATOのこの協定について、附帯決議がついておるわけであります。それによりますと、米国の憲法の保障が十分得られない場合には、相手国に対し裁判権の移譲につき好意的な考慮を要請するという決定になつておるわけである。若しそういうことになりますと、世論の反対を恐れて刑事裁判権の管轄権を日本に移譲したということにしておきながら、アメリカ憲法の保障するところのものが日本で保障されないというようなことから、アメリカの申出によつて自発的にこの裁判管轄権を放棄させられると、事実上は現在と変りのないようなことになるではないかというようなことを一番心配しておるわけですが、そういう点についてはどうお考えですか。
○国務大臣(岡崎勝男君) 私は法律の専門家でありませんから正確なお答えにはならないかも知れませんが、私の研究したところでは、日本の憲法なり、或いは刑法なり、刑事訴訟法なりについては、アメリカの憲法が保障しておるようなものは殆んど全部含んでおると考えております。従いまして実質的にはお話のような心配はないと思いますけれども、これは重要な問題でありまするから、正確に一つ調査をいたしまして十分誤りのないようにいたしたいと考えております。
○中田吉雄君 行政協定の改訂に際しまして、日米合同委員会に関する条項の改訂について折衝される御用意はありませんでしようか。そのことをお伺いしたいと思うわけである。行政協定によりますと、外務大臣とアメリカ大使と、たつた二人の委員会で七百数十カ所に及ぶ基地の問題その他一切を処理するということに対しましては、これはなかなか問題があるので、我が党の立場は別にいたしまして、是認するという立場からしても、合同委員会は新たなる見地から再検討する必要があるではないかというふうに考えるわけですが、この点についてはどうお考えでありますか。なお裁判管轄権だけの改訂で、物資の調達とか或いは駐留軍の労務者の労働条件等いろいろ問題の起きますようなことは今回は取上げず、将来に譲られるお考えでありますか。その点をお伺いしたいと思う。
○国務大臣(岡崎勝男君) 合同委員会の委員につきましては、これは日本側とアメリカ側と一人ずつになつておりますが、これを数名にするかどうかということは当初から議論があつたのでありますが最終的の決定をするのにはやはり一人のほうがよかろうということで一人にいたしたのであります。併しお話のように非常に広汎ないろいろな問題をきめるのでありますからその下に分科委員会のようなものを非常にたくさん設けておりまして、農業であるとか、或いは運輸であるとか、或いは通信であるとか、いろいろの問題については、おのおの専門家を出しましてその委員会で討議をすることにいたしております。で、今までのところは、合同委員会の議事の進行状況については、私はその内容は別としまして、合同委員会の議事の進めかた等については特に改訂を必要とするものはないように考えております。ただ実際上、おつしやるように多数の、又多岐なものを取扱うのでありますから、その分科会等については十分考慮をし、これはいくらでも必要に応じて殖やすこともできることになつております。
 それからその他の問題でありますが、労働関係等につきましては、御承知のようにいろいろ問題があります。例えば人事条項であるとか、その他問題がありますが、これも研究しておりますけれども、行政協定の文面を変えただけで、解決ができるというようなふうには、どうも考えられないのでありまして、無論執行の面が非常に必要じやないかと思つております。併しこの点もほかにも行政協定で研究すべきものはあるのでありまして、そういう点はずつと研究を続けております。必要があれば更に話合いをいたそうと考えております。
○中田吉雄君 これは私国会で今買つてきたのですが、タバコ専売に関する臨時特例で、アメリカ進駐軍だけに許したものが、これをみますると、フリー・オブ・タックス、そうしてオンリー・オブ・US・ミリタリー、アメリカ進駐軍オンリーで許すということで、これが許されておるのですが、国権の最高機関である国会ですら、こういう行政協定その他に基く法律が守られないというところに、対米関係について多くの不信が起ると思うですが、大蔵大臣は一体どれだけこれが日本に流れて、専売収益に影響を及ぼしておると思われるのでありますか、それから外務大臣はこれに対してどういうふうな措置をおとりでありますか、関連しましてちよつとお伺いしておきます。
○国務大臣(小笠原三九郎君) これは大蔵省のほうとしましてはよく監督をいたしております。従いましてそう流れておるということは私は信じておりませんが、併しお話のようなものもある、今後とも厳重に処理し、又数量はそういう具合なので、よく私どもでもわかりかねております。
○国務大臣(岡崎勝男君) これはアメリカの当局も、日本側も、当初から非常に注意をした点でございまして、つまりアメリカの駐留軍用として輸入されるものが、無税でタバコのみならずほかのものも入つて来る、それを日本人が頼んで買つてもらうと無税で品物が入るという危険がありますので、これは非常に数量等を厳重にしまして、本当に駐留軍に足りうるだけの量でなければいかんということで、当初大蔵省とも話合いまして、いろいろやつたのでありますが、そういうものが出て来ることは甚だ面白くないのでありまして、国会のほうにもお願いして取締りをして頂きますが、我々のほうも早速そういう注意はいたします。
○中田吉雄君 この質問はやめますが、私、専売局長から聞きますと、百億ぐらい流れておる、日本の専売益金は五、六十億は損をしておるということが言われておるわけであります。こういうことでは、アメリカのデモクラシイ、アメリカの精神というものは日本で死んでしまつておるのです。こういうことが対米感情に非常な大きな影響を及ぼすものですから、一つそういうことのないように措置をされることを希望しておきます。
 次に、これは総理にお伺いいたしたいのですが、対日援助費の処理につきましての総理の最高の方針をお伺いいたしたいわけであります。二十億前後と称せられますところの対日援助費がどう処理されるかということは、今後の日米関係に対して重要な影響を及ぼすものではないかと思うわけであります。この処理如何によつては反米感情に澎湃として起らないということを誰も否定することは私はできないと思います。国民の多くの人は殆んど大部分アメリカの贈物として、プレゼントとして、これはもらつたものだと大体理解して、多くの感謝を捧げできたのですが、これに対しまして昨年末占領中に与えた援助の返還に、その清算についての申出がありましてから、国民の間にいろいろの感情の起こることを否定することができないわけであります。そこで総理は、これに対しまして、そういう基本的なお考えをお持ちであるか、並びに当局のかたに援助費の総額と内訳、その性格、国際法上どういう性格を持つものであるか、そうしてこれは終戦処理費と相殺できないものであるかどうかというようなことを、ハーグ条約その他との関連においてお答え願いたいと思うわけであります。
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします、日本が終戦後ガリオァ等の援助によつて食糧の不足を救済されたという事実は、認めなければならないのであります。又日本国民として援助によつて、慈悲というのもおかしいが、アメリカの救済によつて助かつた、それをそのままにしておくということは、私は日本の国民の自負心がこれを許さないことである将来のためによくないと考えておりますから、原則としてはこれを支払う、又ドイツ、イタリー等においても、相当の援助物資に対する金額を払つております。日本もこの線に漏れることはよろしくないから、日本としては援助物資に対しては、相当額これを払い戻すということにしたいという考えを持つております。併しどれだけ払うかということは、今後の交渉に持つより仕方がないのであります。その内容等については関係大臣からお答えいたします。
○国務大臣(岡崎勝男君) 対日援助の内容につきましては、いわゆるガリオアとかイロアとかというようなものと、それから余剰放出物資と言つておりますが、SIPというサーブラス・インセンチイヴ・プロパテイ、それから払下物資、これはQ・Mと言つております。それから余剰物資、サーブラスプロパテイ、こんなものが考えられるのであります。その額につきましては、これはまだ両方で話合いもいたしておりません。数字もつき合せておりませんから、正確なことはむろんわかりません。一般に言われておりますのは、多い勘定にしますと二十億余り、少いほうの勘定にしますと十六億ぐらいあるのじやないかというように、一般には言われております。併しこれは今申上げた通りわかりません。これをどう考えるかというのは、今総理がお話になつた通りであります。更に終戦処理費はどのくらいあるか、これは相当の額がある筈でありますが、これは例えば対日援助がなされなくて、戦争の結果日本を占領する軍隊が来たといたしますれば、国際法上これは占領軍の費用は、実は一切賄うというのが普通の原則であります。従いまして対日援助費の相殺というようなことは、法理的には私は成立たないものだと思います。又日本は平和条約の十九条で請求権の放棄ということも言つておりますから、条約上もこれはちよつと成立たないことじやないかと考えております。
○佐多忠隆君 関連して……。総理は対日援助を債務とする、従つて返済をしなければならない、そういう考え方で、而も外務大臣は交渉をしておられる、こういうふうな御報告だつたと思うのですが、そういう債務であるという国家意思をいつ決定されたのであるか。それからそういう国家意思を決定されたことを前提にされて今のような交渉をしておられるのか、その点を。
○国務府大(吉田茂君) 私は債務と考えているということは、申したことはないのであります。併しながら日本は、これは支払うべきものであると考えている、未だ債務と考えておりません。債務にするかしないか、債務として認めるか認めないかということは、今後の交渉に待つのであります。未だに交渉は開始いたしておりません。
○木村禧八郎君 関連して……。今、総理大臣は非常に重要なことを言われたと思うのです。これまで何回も池田大蔵大臣当時から政府はこれを債務と心得ると何回も言われておる、これは速記録を御覧になればわかります。ところが総理は債務とは心得ておらない、併し自発的にこれを返すつもりである。これはこれまでの御説明と非常に違つておるのです。債務と政府は心得ると言つておる。そこで今佐多氏がそれでは債務と心得るためには国会がこれを債務であるかないかを判定しなけりや債務と言えないのに、これまで債務であると心得ると言つておつたので、これはそういうことは言えないのではないかというので問題になつておつたのです。その食い違いですね、伺いたいのです。
○国務大臣(吉田茂君) 従来の説明が今お話のような債務と私は政府も言つておらないだろうと思います。併しながら債務と心得るとか、或いは債務として考えるとかいうようなことは言つたかも知れないが、債務と言うはずはないと思います。何となれば債務になつておらないのでありますから……。
○木村禧八郎君 それは別に怒られる必要はないと思います。そうでないものを債務と言つて来たので問題になつて来たのです。そこで疑義が生じたから、やはりそういうことを正確にしておかなければならないので伺つたわけです。これ以上私は特に答弁を求めません。
○中田吉雄君 大蔵大臣にお尋ねしますが、債務と若しいたしますには、いろいろ財政法上その他の条件が必要だと思いますが、それにはどういう条件が必要でありますか。
○国務大臣(小笠原三九郎君) これは債務額が確定する、或いは支払い条件等が確定する、それによつて国会の承認を得ることが必要であると存じます。
○佐多忠隆君 それならばまだ債務として確定してないし債務と心得えてもおられない。従つて予算においてはこの問題を計上し、或いは考慮するということは絶対にあり得ないということになると思いますが、そういうふうに了解してよろしうございますか。
○国務大臣(小笠原三九郎君) 正式な債務、或いは確定した債務とは何ら心得えておりませんけれども、併し今後交渉によつてそういうことが債務となる場合もありましようから、予算のうちには、あいまいなと言つちや言葉は悪うございますが、そういうことも予想してあすこに見ておりますので、それにはそれは何ぼ振り向けるのであるかというようなことは書いてございません。
○中田吉雄君 外務大臣にお尋ねしますが、講和条約が国会に出ました際に、この問題があつた際に、これはたくさんの国からの賠償の要請を防ぐ一つの後楯としてというようなこともあつたように思つたのですが、そういう要請を防ぐためにこれは優先順位に置いて他国との賠償問題を有利に解決する一つの手段としてこういうふうにするというようなこともあつたと思うのですが、その関係はどうですか、
 それから国際法上はこういうものは賠償とどつちが優先順位を占めるべきものであるかという点並びに私いろいろガリオアの算出方法その他を調べてみると返済の規定がないのですが一体こういう関係はどうなんでありましようか、その点お伺いしたい。
○国務大臣(岡崎勝男君) 講和条約の当時でも、これをほかの債務と言いますか、賠償等の義務を有利に解決するためにというようなことは政府として一回も申したことはないと思いまするし、又仮にそういう下心があるとすればそういうことは言うわけがないと思います。
 なお国際法上確定した規定はありません。ありませんが、例を過去のことにとつてみますれば、例えば第一次大戦のあとのような時代の場合、ルール等の占領軍に対する費用は優先的に支払われたと記憶しております。
 なおこれは何と申しますか、総理がたびたびおつしやつておるように、アメリカから援助を受けて当時の窮乏を凌いだということは事実でありまして、これに対して日本国としてただ援助を受けてもらい放しにすることは国民の矜持からも許されないから、できるものならばこれは払いたい、従つて債務と心得て努力する、こういうつもりでおるのであります。
○中田吉雄君 この終戦処理費なんですが、大蔵省からお出しになつています国の予算の二十七年度分だと思いますが、それによると、終戦処理費をドルで換算いたしますと四十七億ドル、対日援助費の倍以上を負担する勘定になつているわけであります。私はアメリカ国会で対日援助費が議題になつた際の陸軍次官補のこれに対する答弁の記録を東京銀行協会から出しておられるのを読んだことがある、この対日援助費について非常な反対がある、併しそれに対する陸軍省の当局は、成るほどこれだけ要るが、併し日本に兵隊を持つて行かなんだからアメリカ国内で負担すべき軍隊の費用を終戦処理費という形で日本に負担さしているんですから、差引勘定は遥かに得だから一つこの対日援助費というものを通過さしてくれ、こういう答弁もやつて、なかなかその辺は勘定高い議論が取交わされているわけであります。こういう問題はやはりいろいろ政治的な考慮を払われる必要があると思いますが、少くとも我々が知らなくてはならんことは、この権力、強力的な考え、強い力と弱い者との関係で起きました終戦処理費というようなものは、このハーグの陸戦の法規慣例に関する条約等のいろいろな関係からこれを請求することができないようにはなつていますが、併し第一次、第二次大戦等の、この国際正義の観念からしてだんだんそういうことも一方的に取計ろうことが許されないようにだんだん変り来つつありますので、私は総理がこの問題に当られる際には少くとも終戦処理費は倍以上を日本が負担しているのであるという観点に立つて一つ御折衝頂くことを希望いたしておきます。
 もう一つは、私はこのアメリカの対日援助費が新たに採上げられるのは、再軍備費、或いは自衛力漸増に関してそれを負けてやるから自衛力を漸増するスピードを高める、そういうことに使われるのではないかというふうに考えるわけでありますが、外電もそういうことを伝えていますが、この点についての総理の御所見をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(吉田茂君) 今の御推測は御推測であつて、私としてはそういうことは考えておりません。
○中田吉雄君 午前中はこれくらいにして午後に一つ、午後は一つここに地図を掲げてもらつて、総理とじつくりと戦略論争を一つやりたいと思いますので、一つ地図を、大分前から要請しておりますから。
○委員長(青木一男君) 暫時休憩いたします。
   午後零時十九分休憩
   ―――――・―――――
   午後二時四分開会
○委員長(青木一男君) 休憩前に引続き会議を開きます。
○中田吉雄君 劈頭お伺いしたのですが、大蔵大臣にということでございましたのでお伺いいたしますが、衆議院の去る十七日と二十一日の行政監察委員会で小笠原大蔵大臣に関しまする物件の異動についての問題が出ていましたが、清廉潔白な小笠原大臣にはそういうことはないだろうと思いますが、一兆億近いところの予算をお預りして頂く大蔵大臣としては、みずから予算審議にも支障を来たしますので、率先してこの関係を一つはつきりして頂くことが必要ではないかと思いますので、これに対する詳しい質問は後刻に譲りまして、一応の見解をこの際お伺いしておきたいと思います。
○国務大臣(小笠原三九郎君) 中田さんにお答え申上げます。
 このたび私が取締役をしておる太平洋海運及び本町興業の両会社に民事訴訟が起つたことにつきまして、新聞紙上に原告側の人々の話したことを載せた記事がありまして、そのために私のあり方にも何か面白からん点があつたかのような印象を与える結果と相成つております。今仰せになつたように御心配を頂いておる次第で、誠にこの点は恐縮でございまするが、事実は私がいま次のごとく申す通りでございまして、決して御懸念に及ばんことでございます。又行政監察のこともこれはまだ何にも承知いたしておりません。
 先ず問題の土地は昭和二十七年九月六日の契約書で松本喜三郎氏、新聞に喜一氏と書いてあるのは間違いだといますから太平洋海運へ売渡し、更に昭和二十八年二月思二十五日の契約書で太平洋海運から同社の子会社であり、この土地の利用等を目的として特に設立し、善三郎氏をも株主とせる本町興業へ売渡したものであるのでありますが、談にはこの契約の存在を疑つたことが書いてあります。これは多くを言う必要はございません。立派な契約が現存しておつて、殊に代金のうち、すでに一部の支払いをしてあることはこれは原告の談の中にも十分にこれを知つて、そういうことを話をしておるのであります。松本吾三郎氏名義の土地を本町興業に移転登記を申請するに際しまして、「三月七日附の売買であり、売買契約書がないから申請書一通を副える」と記載して申請したことを取上げておりまするけれども、売買契約は前記のごとく松本氏から太平洋海運へ、又太平洋海運から更にその子会社たる本町興業へと行つたのでありまして、松本氏から本町興業への直接の契約ではない。太平洋海運と松本氏との契約書に太平海運又はその指定人に移転登記をすることが取りきめてあり、その契約に基いて本町興業へ移転登記をしただけのことである。
 談は、時価四千万円云々と言つている。土地の価格は昨年からでも又よほど上つたのだから、今日では或いは二千万円以上くらいはするかも知れん。併し太平洋海運との売買契約代金一千六百三千七万八千五百円、一坪当金十五万円は契約当時十分慎重を期し、特に三菱信託銀行不動産部の意見をも徴して協定した額であつて、当時の時価としてはもとより極めて公正なるものであり、松本氏も感謝せられたくらいである。
 談は、松本氏の死亡町刻の違いのことについても臆測を遅しくしているようであるが、医師の死亡診断書の様式には死亡時刻の欄に、午前を上に、午後を下に二つ重ねて小さな活字で印刷してあり、そのいずれか一方を消すようになつているが、その下を消すべきものを誤つて上を消し、従つて死亡時刻を午後として一旦戸籍に記載せられるに至つた由である。そのことは医師が家庭裁判所で明らかに証言しているところであり、その旨の記載は本紙の記事にもあります。
 松本氏の印鑑証明書を三月十日付でとつた経緯は左の通りに聞き及んでいる。即ち売買契約書によると、契約後六カ月内、つまり三月六日までということに相成りますのに、地上物を取払つて更地として引渡すと同時に登記することになつていたが、三月七日ようやく取払いができたので、早速引渡しを受けると同時に、三月七日、死亡の前日に会社の事務員が松本氏の印を持つて代書人の事務所へ行き、登記申請の依頼をした。然るに先に松本氏から受取つてあつた印鑑証明書は日付が古くなつていて間に合わんというので事務員は十日朝、松本氏が急死したことなどはもとより知らず、改めて新らしい印鑑証明書をとる手続をして、それを代書人に渡し代書人も勿論死亡のことは知らずして十一日登記せられるに至つたとのことであります。
 事実は概略以上の通りで、要するに会社はすでに松本氏との間に立派な契約を持つているのだか、松本氏が死亡したらしたで、その相続人との間に相互に契約の履行をしなければならんことは当然であり、何もその間に小策を弄して余計なことなどをする必要は全然なかつたのであります。
 相続人は松本氏の登記義務を承継することは、これは申すまでもございません。故に、今の登記を抹消したらしたで、又直ちに更に登録税も持つて行つて、会社移へ転登記をしなければならんことはわかり切つておるのに、何のために本件のような訴訟を起したのであろうか、実に解しがたく思つておる次第であります。私は、松本氏の土地を太平洋海運に売る当時のことについては話をしたこともございますが、爾来昨年十月の総選挙当選、間もなく農林大臣に就任、引続き通商産業大臣兼経済審議庁長官に転任等で多忙を極めておつて、親しく会社の仕事もしておりませんし、従つて、該土地の移転登記なぞについては、何らこれは関与いたしておりません。ここに、私は今会社について調べた事実を申上げまして、皆様の御安心を願う次第であります。
 なお、ついでながら申上げておきますが、私は、松本氏とは昭和六年頃以来の知り合いでありまして、松本氏は、前には大正精糖の監督役などして、相当もののわかつた人であります。私との交際が親しくなるに従い、万事につけて私を頼りにし、松本家の財産処理その他一切を挙げて私の指導に待つべき旨を明記し、私の同意なくしては何事もできぬように証書を作成して、同氏のほか、右原告両人の父母、即ち同氏の姉マキ及び姉婿君藏氏を初め、その他親族の者も連名調印をしておるのであります。同氏は、けだし自分の病気及び死後のことをも慮つて、親族に対し連名でこうした証書を作られたのであろうと思います。私としては、同氏の特別の負託に対し、常に同氏を守り、同氏の意思に副うべく誠心誠意事に当り来つた次第であります。
○中田吉雄君 その問題はいずれ衆議院の委員が決定するでしようし、裁判所でも判決があると思いますので、聞き置く程度にして、次に移りたいと思います。
 朝鮮休戦協定は、やがて成立すると思いますが、そうらしい情勢に絡みまして、日本にありますアメリカの軍事基地に大きな変化が当然起るべきだと思いますが、朝鮮の休戦協定と基地の関係はどうであるか、朝鮮の休戦協定の成立は日本の基地の減少を伴うものであるか、或いはアメリカの戦略的な要請から却つて殖えるものであるかどうか。朝鮮休戦協定に絡む基地の一般的な問題について、先ず総理の所見をお伺いすると共に、岡崎大臣には、軍事基地の数、総数幾らあつて、その総面積は幾らであるか、それを時価に評価すると、一体どれくらいアメリカに貸与しておるかという問題について、先ずお伺いしたいと思う。
○国務大臣(岡崎勝男君) アメリカの駐留軍の目的は、直接には朝鮮の問題と関連ありませんので、直ちに朝鮮の休戦が国内の施設とか区域に影響するとは考えられません。併しながら、朝鮮の休戦の結果、世界の平和というものが大きく動いて参りますれば、その場合には又変更のある場合もあるかも知れませんのでありまするが、只今のところはそういう点は予測できないのでありまして、一に休戦の結果、及び政治会議の結果等によることと考えます。併し、理論的には直接関連がないことは先ほど申した通りであります。
 なお、米駐留軍に提供しておりまする施設とか区域とかの数は、これは大小非常にたくさんありまして、一つで非常に大きな面積のものもありますればただ一軒の小さな家或いは小屋のようなものもありますが、これを全部ひつくるめますと、現在約七百三十五くらいの数になります。この総面積は、これも正確に細かく何坪までとは申上げられませんが、約十四万町歩くらいと考えております。その中には山林もありまするし、原野もあります。或いは農地、宅地等もありまして、いろいろ差違がありますが、従つて、この価格等の推定の方法はちよつと今立ちませんので、どのくらいの値段になるかということはちよつと申上げられません。
○中田吉雄君 そうしますと、政府としては朝鮮の休戦協定があつても、これに対していろいろ問題を起しておりますが、基地の数を減らしてもらうというような折衝をされる用意は現在のところないのでございましようか。その点……。
○国務大臣(岡崎勝男君) 只今施設や区域を決定いたしますのは、合同委員会の下部における分科会等で慎重に検討いたしまして、そうして適当と認めらるるものは閣議にかけて、その上で当方において承諾をいたしております。従いまして、これは必要の最小限度に限つておるのでありまするから、只今のところ直ちにこれが減るというようなことは考えられませんけれども、併し、原則的には米駐留軍側でも必要のないものは常に返還といたしておりますので、これは殆んど毎月々々返還されておるものも発表いたしております。なお、必要の最小限度ということでありますから、今後も事態に応じまして、必要のないものは勿論返還をすることになると思います。
○中田吉雄君 この七百数十カ所の基地は、ただ日本を消極的に共産主義の侵略があるかも知れんという防衛のような、消極的なものであると思われますか。私の見るところによると、あの海を境として、海は何十個師の安全保障にも当るわけであります。そういたしますとこの基地というものは消極的な防衛よりか、安全保障条約にもありますが、極東の平和というようなアメリカの世界政策、アジア政策を推進するための積極的な、或いは攻撃的な意味を持つたものではないかと思うわけであります。特に私は調べて見たのですが、大東亜戦の前の日本が、アジア全土を席捲したときの日本のいわば基地として計算いたしますならば、師団、旅団、連隊、海軍鎮守府、その他一切合計いたしまして二百カ所を出ないわけであります。日本がアジア全土を侵略したときのそういう旅団、師団一連隊、海軍鎮守府を一つ一つ数えても、七百の三分の一くらいしかないわけであります。更に、百年間阿片戦争以来侵略されていた中国の租界とかというようなものを全部拾い上げても二百カ所を出ないわけであります。そういうことを考えますと、海で以て安全が保障されている日本では私は消極的に防衛するよりか、アメリカのアジア政策を推進する極めて危険な要素を含む基地であると思いますが、この点についてどうお考えでありますか。
○国務大臣(岡崎勝男君) アメリカの駐留軍は日本の防衛のためにここにおりまして、その意味において必要な施設や区域を保持しております。勿論、日本の安全ということが東亜の安全に至大な影響があり、又従つて世界の平和に大きな影響を持つものでありまするから、アメリカが世界的な平和を維持しよう、特に東亜の安定を維持しよう、その意味で日本の安定を考えていることはこれは当然であります。併しながら、その施設とか区域とかいうものは日本の防衛のために設けられておるものでありまして、現在の飛行機、その他の非常に進歩しました現在、海があるから安全だと、こういう御議論にはちよつと私どもには承服できない点がございます。
○中田吉雄君 そうしますと、日本がアジア全土を席捲したときの基地は、いわば日本の連隊その他は二百カ所を出ないが、その三倍の七百数十カ所を貸しておれば、安全度は更に高いというふうにおとりでありますか。
○国務大臣(岡崎勝男君) 日本がアジア全土を席捲したときとおつしやいますが、その当時は朝鮮にも台湾にも満洲にも、或いは中国本土にも、更にフイリツピン、インドネシア、その他各地に非常に大きな又数多くのいろいろの施設を日本の陸海空軍は持つておりました。この数をお勘定になれば、とても二百とか二百五十とかいう数でないことは勿論であります。
○中田吉雄君 そういたしますと、今後の基地は減少しないということになつて、私はこれが日本の、延いてはアジアの危険を招来するものがあるという考えを持つわけでありますが、そういうような際に例えばイギリスのような強国ですらイースト・アングリアから……、貸してある軍事基地から原爆をソ連に叩き込む際にはイギリスの了解なしにはしないというような決定がありますが、そういう基地が積極的な攻撃的な要素を持つて日本を渦中に入り込まさせないためには、イギリスがとつたような、チャーチルがわざわざアメリカまで行つて、イースト・アングリアの基地から原爆を積んだ飛行機が立つ際にはイギリスの許可なしにはさせないということによつて、アメリカだけの一方的な意思で危険に追い込まれないような安全措置をとつておりますが、そういうような措置もとつておられますか。
○国務大臣(岡崎勝男君) 第一に申上げますが、アメリカ駐留軍の今使つておりまする施設や区域が減らないとは、決して申しておらない。今でも減りつつありますということを申しております。又今後も必要最小限度にとどめることには双方で了解がなつておりますから、今後の世界情勢等によりましては又更に大幅に減る場合もあり得るのであります。なお今のお話は、何か日本の地域から積極的によその国を攻撃するような計画を持つておられるように印象されるのでありますが、先ほどから繰返して申しておりますように、米駐留軍の日本における施設や区域を持つ目的は日本の防衛でありまして、積極的によその国を攻撃するために使うのではないのでありますから、この点は誤解のないようにお願いをいたします。
○中田吉雄君 それなら日本には海で境がされておるのに七百カ所くらいもあるが、レニン・グラードのすぐ傍にあるフィンランドでは、四百万くらいな僅かな人口ですが、北大西洋条約にも加盟せず、外国の軍事基地もなしに、なお安全を保障されていますが、なぜ日本はそうなつたのでしよう。
○国務大臣(岡崎勝男君) 日本の国の情勢とよその国の情勢を直ちにお比べになりましても、これは非常に違う場合がありますから、一律には申されません。併しながらフィンランドにおきましては、ソ連との休戦協定の結果、首都の極く近所におきましても非常に大きな軍事基地を割譲されております。又ペツッアモという、北のほうにおきましては非常に大きな地域をこれ又ソ連によつて保有されております。
○中田吉雄君 併しアメリカやイギリスの基地もなしに、なお1安全が保障されているのに、なぜ日本ではそういうふうにせざるを得ないという点なんであります。
○国務大臣(岡崎勝男君) これは他国のことを余り申したくないのでありまするが、ソ連がヘルシンキ附近の非常に大きな地域を保有しておりますことは、実は軍事的には相当フイランドにとつて死命を制せられるようなところまで行つておるのじやないかと想像されるくらいであります。
○中田吉雄君 併しです、御承知のようにフイランドは第一次大戦にはカイゼルにだまされて、ドイツにつけば安全を保障してやると言われて、間髪を入れずひどい目に会い、第二次大戦にはそれにも性懲りなしにリツペントロツプにだまされて、もう第一次大戦のようなことはないから一つ軍事基地を貸せということで貸して、独ソ戦争が起きたら直ちに対ソ宣戦の布告をやつて、そうして安全が脅かされて、もう外国に安全の保障を頼むべきものでないという二度のにがい経験からフィンランド民族はそういう立場をとつて、アメリカの要請にもかかわらず北大西洋条約にも加盟をせず、なおそれで安全が保障されている点は、私は十分考えなくてはならん点ではないかと思うのですが、その点はどうでしよう。
○国務大臣(岡崎勝男君) これは実情をよく御研究願いたいと思いますが、安全が果して完全に保障されておるかどうか、少くとも首都の極く附近に大きな地域をソ連が保有いたしまして、ソ連の軍隊がその後に駐屯しておるのであります。この事情を十分お考えになればフィンランドの国民が非常に勇敢に、又決断を以つていろいろ努力いたしておりまするが、その首都の附近に大きなソ連の軍事基地があるという事実は、これは誰も否定できないことであります。
○中田吉雄君 そういたしますと岡崎大臣は、日本がそれだけ貸しておればアメリカに安全が保障される、アメリカは少くとも原爆を三百、ソヴェトもその十分の一くらい持つた。その米ソの間にある日本が、そういう基地を貸して刺戟するほうが一層安全が保てると思いますか。我が日本社会党としてはむしろ逆な立場をとつていますが、原爆が、革命的な兵器である原爆がある際に、こういう安全保障が果していいかどうか。私はMSAを受ける際には十分日本の地政学的な観点からしてもう一遍そういう問題を振り返つてみて、その上でいずれが安全保障に役立つかという立場を考えねばならんと思いますが、米ソ両勢力が原爆を持つており、アメリカの原爆の独占が破られた、こういう際に、果してこういうような基地をたくさん貸すことが安全になると思われますか。
○国務大臣(岡崎勝男君) 原爆を幾つ持つておるかということは私も知りません。恐らく今正確に知つておる人は少いだろうと思います。併しそういう問題は別といたしまして、総理も今朝申されましたように、この只今の国際情勢におきましては、我々は、少くとも政府は、集団的な安全保障によらずんば国の守りは十分でないと確信をいたしております。従いまして施設や区域を余計貸すから安全だというのじやありません。日米安全保障条約に基いて日本の安全を守るという以外に、その他の方法に考えられない、これが政府の考えであります。
○中田吉雄君 では見解のの相違になりますから……。一つ紹介しておきますが、ブラッケツトという人が恐怖、戦争、爆弾という本を書いています。これはイギリスの大学のプロフエツサーで、日本の湯川さんよりか先に原子学の研究でノーベル賞を取つたわけなんです。その人がどういうことを書いておるか。それは米ソ両勢力の間に挟まれた日本やイギリスのような国が、前進基地としての軍事基地をアメリカに貸す際には、あたかも将棋盤の上に配置されたアメリカの王将を守る将棋の駒のようなものである。そういうことを書いて、そしてそういう駒になることはよつぽど人のいい民族でもそういうことはとらないであろう、これは一点批判の余地のない軍事的なる論議だ、こういうふうに言つて、よつぽど人のいい民族でないと原爆の基地を米ソ両勢力に挾まつた国としては貸すべきでない、国際的な危機が高まれば高まるほど米ソ両勢力から中立的な立場をとることが必要である。それが最大の安全保障だということを言つておるわけであります。一つそういうことは水掛論になると思いますから、MSAの交渉に際しても、ブラッケットというような第二次大戦のイギリスの対独作戦を指導した知名な、而もノーベル賞をもらつたような学者でさえもそういうことを言つておるわけであります。十分お考え願いたいと思うわけであります。
 そこで、こういうふうな侵略があるかも知れないという予防駐留というものは、国連憲章に違反しないものであるかどうかということをお伺いしたい。
○国務大臣(岡崎勝男君) 私は予防駐留という言葉は今初めて伺うのですが、そういう言葉がどういう意味を持つものか実は知らないのであります。併しながら只今の日米安全保障条約は国連憲章には決して違反いたしません。
○中田吉雄君 それは侵略があるかも知れないから、それを予防するための駐留なんです。実際国連憲章から言いますると、現実にその危険が発生した際、そういう脅威が現実的に起つた際に初めてやるというのが国連憲章を流れる基本的な精神であろう。それは講和条約にもいろいろなこと書いて或いは安全保障条約にも書いて、地域的な取極の問題を弁護しておりますが、少くとも国連憲章を流れるものは、そういう予防駐留の、形を変えた新たなる占領は国連憲章の違反であるというふうに考えるわけであります。そういう意味の予防駐留というのです。
○国務大臣(岡崎勝男君) 占領などということは私どもは夢にも考えておりません。これは占領というのは、相手方の意思如何にかかわらず、兵を以て一部の地域をいわゆる占領するのでありますが、我々のは合意の上に行われたものでありまして政府としては、又国会といたしましても圧倒的な多数でこれは承認されたものでありまして、これを占領などということだとは私どもは夢にも考えておりません。
○中田吉雄君 それでは時間がありませんので急ぎますが、今度は吉田総理にお尋ねいたします。我が日本社会党も共産党とは一線を画する立場をとつているわけであります。併し共産党のいろいろな政策に対応するためにはいろいろな方法があると思うわけでありますが、吉田総理は、中国はなぜ共産化したか、私は中国が共産化した歴史的な反省の上に立つことが最も適切な共産主義対策ではないかと思いますが、吉田総理は、なぜ中国は共産化したか、これについてどういうふうにお考えになりますか。
○国務大臣(吉田茂君) 私は中国について議論をいたすことは差控えます。
○中田吉雄君 それでは中国の問題を別にいたしまして、共産主義一般に対する、その共産主義を自由世界から防衛するという立場でアメリカと提携しておられるのですが、その有効適切な対策は吉田総理は何であるというふうにお考えでありますか。
○国務大臣(吉田茂君) それは日米安全保障条約といたします。
○中田吉雄君 我々は共産主義というものは原子爆弾や軍備によつては対抗できないものである、こういう立場をとるものであります。私は中国を共産化したものは、アメリカの対中国政策であるという立場をとるものであります。なぜかと言いますると、アメリカは二十世紀になりましてから太平洋を自分の湖として安全保障するためにとつた立場というものは、ソヴイエトが東漸して来ます際には日本を援助して、そして日本を後盾として、そしてそれによつてソヴェトの東漸を防いだ、日露戦争をきつかけにして日本が強くなつた際には、アメリカは今度は中国を教唆扇動いたしまして、中国を対日戦争に追い込んで来て、背後から日本にあいくちを刺さして、そしてそれは日本の誤まつたアジア政策もありますが、遂に中国と日本が戦つてこういうふうになつたわけで、私はアメリカが太平洋の安全を保障するために曾つてとつた、ソヴイエトを抑制するために日本を援助したと同じような立場を中国をしてとらしたことが、遂に国土が荒廃し疲弊して共産主義の乗ずるところになつたわけであります。ところが今度は中ソ両国が強くなつたから、もう一遍日本に蒋介石の役を果させようというのが、アメリカのアジア政策なんであります。そういう政策に我が国が応じておりますならば、遂に我が国は第二の中国の轍を踏まないということを私は誰も否定し得ないものであると思うわけであります。私は吉田総理が現在のような、曾つて中国がとつたような立場を、蒋介石のとつたような立場をとられますならば、やがて第二の蒋介石の轍を踏まないということを歴史的な反省の上に立つて保証し得ないと思いますが、アメリカのアジア政策の反省の上に立つて、吉田総理はそういう心配はないというふうにお考えでございますか。
○国務大臣(吉田茂君) アメリカのアジア政策についての批評は私としては差控えるが、ただ一言申しますことは、私は蒋介石の轍を踏まない決心であります。
○中田吉雄君 その決心が決心としてだけ終らないことを希望いたしまして、それではその問題はやめたいと思います。
 そこで私は、我が国が再び戦争の渦中に入らない、そうして世界の平和のために寄与するということが大きな任務ですが、そういう際に私たちが考えて見なくてはならんのは、なぜ日米戦争が起きたかという、日米の開戦を研究してみることが非常に必要ではないかと思いますが、吉田総理は、日米戦争の責任を一体どちらが負うものであるか、そして日米戦争に際してアメリカが日本にはめましたABCDラインという包囲政策というものが、日米開戦に対してどういう意味を持つたかということについて御所見を承わりたいと思います。
○国務大臣(吉田茂君) お答えしますが、私はABCDラインなるものをよく言われることでありますが、果してそういうものがあつたかどうか、当時私は政局に立つておりませんから存じない、こうお答え申上げます。(「日米戦争の責任は答えないのか」と呼ぶものあり)
○中田吉雄君 それはあとで御質問しますが、一体日本民族の立場に立つて、日米いずれにより多くの責任があるか、この問題について総理はどうお考えでありますか。
○国務大臣(吉田茂君) これは歴史家の研究問題でありましようが、ここで私があなたと議論してもこれは殆んど尽きませんから、いずれ学界その他において討論をいたすことと思います。
○中田吉雄君 総理とされては対米折衝その他で十分慎重であらねばならんという立場はよくわかりますが、いずれにいたしましても、アメリカとの友好関係を長く保つためには、再び日米の間に過ちがないということが大切だと思いますが、政府におかれてこの日米開戦の原因を探究いたしまして、そして過ちのないようにするという御用意はございませんか。
○国務大臣(吉田茂君) いずれにいたしましてもアメリカも我々も平和を希望いたしておるのであつて、日米開戦のごときは夢想だもいたしておりません。
○中田吉雄君 私はアメリカにおきましてはパール・ハーバー爆撃の合同調査委員会というものを作つて、日米開戦はどのような原因で起きたかということを歯に衣を着せず、忌憚なく研究して、過ちのない態度をとろうとしておるわけでありますから、私はそういうことだけではいけませんので、あの際にどういう態度をとつたならば日米開戦は回避できたかというようなことを知つて、再びあの轍を踏まないためにもそういうことが必要だと思いますが、委託研究費その他でも出して、そして我が国の外交政策の指針を得るというような御用意はないものですか重ねてお伺いいたします。
○国務大臣(吉田茂君) これは学者或いは専門家、戦術家等が常に研究いたしておるところであろうと考えますが、この際特に政府としては日米戦争の起つた原因を調査するという必要ありや否や、又その必要ありとしてこの財政窮乏の際に特にこういう調査費を設置することがいいかどうか、これは財政全体の問題もありましようから、ここでお答えは差控えます。
○中田吉雄君 それでは、私は、アメリカの世界政策というものは、太平洋戦争の前と後では殆んど同じ政策をとつているというところに多くの憂慮と心配を持つものであります。それは総理がどんなに重要な立場から慎重であられるにしても、日本にはめましたABCDという包囲政策が戦争になつた多くの原因であるということは、アメリカの学者がすでに論証しているところなんです。ところが現在ソヴィエトにはめられているコンテイソメント・ポリシー或いはロールバツク・ポリシーというものは、殆んど日本にはめられたABCDラインという政策と何ら変りがない。私はこのソヴイエト封じ込み政策の手をずつと締め上げて行きますことは、やがて日本にはめたABCDラインというものが、遂に日米の破局になつたようなことに行かないかどうかということを心配するわけでありまして、そういう点から対ソ包囲政策の一環としてのアメリカの政策に乗つかつて行くことは、非常に危険ではないかと思うわけでありますが、吉田総理はソヴィエトにはめられている包囲政策がABCDラインの轍を踏まないという確信をお持ちですか、お伺いいたします。
○国務大臣(吉田茂君) 私は現在お話のような危険があるということは痛感いたしておりません。
○中田吉雄君 実は昨年、私のところの和田会長のところに、アメリカのケナン氏から「アメリカ外交の五十年」という、ソヴィエト封じ込み政策の原本が来た際に、それをつぶさに検討をいたし、そして最近岩波から翻訳が出ておりますが、この封じ込み政策が平和のためでなしに却つて戦争になるということは、ハンソン・ボールドウイン或いはその他の多くの軍事専門家が共通して、この封じ込み政策の強行は第三次世界大戦への道である、こういうことを言つている。例えばフランスのル・モンド誌などは、だから封じ込政策に協力しないことは、世界の平和みを保つことであるということを言つてすらおるわけであります。特に私が最近丹念に調査いたしました資料によつても、ビアード博士、日本に来ましたビアード博士或いはグルー大使、モーゲンスタン、センシルというような人は、殆んど共通して、封じ込み政策というものが日米開戦になつたのだということを言つているわけであります。吉田総理はそういうことについて何らの危惧をお持ちでありませんか。特に私は、日本が講和発効後においては、改めて対米関係を、反省の上に立つてナチス外交に追随したようなことがないようにすることが大切だと思いますが、吉田総理は何らの危惧がないとお考えでありますか。
○国務大臣(吉田茂君) お答えいたしますが、現在かかる危険があつて、そうして日本が甚だ危険な状態に陥つておるという感じはいたしません。而してアメリカの封じ込み政策というお話でありますが、これはアメリカの政策を批評いたすことは、私の地位において差控えます。
○中田吉雄君 まあ大変慎重ですが、そういう多くの共鳴と支持を得るアリメカの外交政策の批判があるということを一つ念願に置いて頂きたいと思うわけであります。
 次に吉田総理にお伺いしたいことは、朝鮮のこのたびの悲劇から我が国は何を学び取るべきかということについて御所見をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(吉田茂君) 非常にお話が漠然といたしておりまして、むしろあなたから御意見を聞かせて頂きたい。
○中田吉雄君 それは、私は朝鮮の悲劇の多くの責任は、朝鮮民衆自体の中にあると思う。それは明治以来一貫して、朝鮮の支配者というものは、自分たちが大衆の喜ぶ政策を打立てて朝鮮の支配者になるよりかも、外国勢力と絶えず結び付いて、そのうしろ楯の下に指導権を権立しようとしたわけであります。日本と結んで清国とロシアに対抗し、清国と結んでロシアと日本に対抗し、こういうふうにして絶えず外国と提携してやつたところに、多くの悲劇があるわけであります。第二次大戦後においても、やはりそいうような関係からしてヤルタ秘密協定があつたにしても、南鮮の李承晩はアメリカに、北鮮の金日成は中国とソ連に結び付いて、それぞれ外国の力を借りて自分たちがヘゲモニーを握ろうとしたところに、一辺倒外交の悲劇がそこにあるわけであります。朝鮮の悲劇は軍備がなかつたからではないわけであります。全く外国勢力一辺倒のところに悲劇があるわけであります。私は、若し現在のようなアメリカ追随の外交政策をとつて行かれますならば、李承晩の二の舞を日本が踏まないという保障がないではないのではないか。アメリカとの関係をもう少し撚りを戻して行くということを朝鮮事変から学び取るべきではないかということを考えるわけでありますが、吉田総理はどうお考えでありますか。
○国務大臣(吉田茂君) 朝鮮の攻策が果しておつしやる通りであつたかどうかは私は批評はいたしませんが、併しあなたのおつしやることは、我々はアメリカ追随外交であるとおつしやるのでありましようが、我々の主観的観念から申せば、独立した日本は追随外交はいたしておりません。
○中田吉雄君 李承晩の二の舞を踏まれぬことを希望しておきましよう。(笑声)
 次に、我が国の安全を保障するために、日本を取り巻く利害関係国を調整して日本を中立化する、言わば不可侵条約を多辺化したようなものは安全保障としてどんなものであるか。この点について吉田総理の御所見をお伺いしたい。
○国務大臣(吉田茂君) 不可侵条約の過去について考えてみますると、これくらい当てにならない条約はないのであります。日本も曾てソヴィエトと不可侵条約を結び、ドイツもソヴィエトと不可侵条約を持つておつたのでありますが、これが戦争になれば一片の反古になつてしまつたのであります。条約を尊重しない国が出て参りますれば、それが一片の反古になるのでありますから、不可侵条約を結んだから、それで国は安全なりということは言えないと思います。観て朝鮮の王様が、中立という機械でありますか、何かあるそうで、どうか輸入したいと言つた話がありますが、それは若し中立によつて保護ができるような機械があつたら輸入したいと思いますが、条約だけでは国の安全は守ることはできないと思います。
○中田吉雄君 その問題は、私は日本とソ連との不可侵条約というものでなしに、日本を取り巻く利害関係国との調整の上に立つた日本の中立化、こういうことを言つているわけであります。ただ日本とソヴィエトが不可侵条約を結んでおるのに破つたということを申されましたが、総理もよく御存じと思いますが、併し日本にも多くの責任があるということを私は最近知つて、びつくりしたわけであります。それは、日本が日ソ不可侵条約を結んでおきながら、独ソ戦争が起きたので、直ちに御前会議を開きまして七月二日に近衛文麿公主催の下に開いて対ソ作戦を準備するという決定を御前会議でやつているわけであります。私はこれを見て愕然としたわけであります。それは、こういう決定をしているわけであります。「独ソ戦に対しては、三国枢軸の精神を基調とすると共に、暫くこれに介入することなく、秘かに対ソ武力的準備を整え自主的に対処する。そして独ソ戦争の推移が帝国のために有利になつたら、武力を行使して、北辺の安定を確保する」という重大な政策を決定しているわけである。これは独ソ戦争が起きたあとの七月二日の御前会議の決定がこういう決定をやつているわけであります。そのようなことから直ちに総理の考えを引出されるということは、若干前提において考慮すべきではないでしようか。私は、安全保障というものは相対的なものであつて、絶対的な安全保障というものはない、そういう際には、アメリカに一辺倒した安全保障よりかも、むしろ日本を取巻くところの諸外国との協定による日本の中立化による、米ソ両勢力に対して無害なような立場における中立政策をとることが、より安全度が高いのではないか、こういうふうに考えるわけでありますが、くどいようでありますが、総理の御所見をお伺いします。
○国務大臣(吉田茂君) 私は、御議論としては伺いますけれども、中立を以て国を守るということができるかできないか。併しそのためには、日本を利害関係のある国と喧嘩をしろと申すのではありません。善隣友好の関係ができるということは、常に我々の望んでおるところでありますが、お話のような中立条約でありますか、というような構想で国が守れるかどうか、これは私において疑問といたします。
○中田吉雄君 その次に、日本の安全を保障するためには、イデオロギーは違つても隣に敵を作らないということが大切だと思いますが、その点から、何よりも、日本の自衛力を漸増するよりかも、中ソとの関係を国交調整することが最大の急務と思いますが、吉田総理はこれについてどういう御見解でありますか。
 この点に関して更に外務大臣にお尋ねしますが、日本は講和条約が発効したのですから、日本自体で中ソ両国との国交調整をなす外交権を持つと思いますが、国際法上この点をどう御理解になりますか、その点を総理の一般的な考えのあとにお伺いしたいと思います。
○国務大臣(吉田茂君) 私はイデオロギーが違つておるかうその国とは交際しないとかいうような考えは持つておりませんが、併し中ソ両国は、日本を現に敵国の扱い……中ソ友好条約ですか、という条約があつて、日本を現に敵国視している国とは、話合いをすることはむずかしいと思います。先ず両国が日本を敵国関係に置かないというところから友好関係は生ずべきであつて、イデオロギーが違うからその国とは交際しないというような、けちな考えは持つておりません。
○国務大臣(岡崎勝男君) 戦争後におきまして平和条約ができない場合にはまだ戦争状態が継続しておる、そうして、その戦争状態の際において一時占領されまして、その占領したほうの国の一つにまだ国交旧復しない国があるという場合には、法理的にはいろいろな議論があると思います。先方から言えば、まだ占領の継続であるというような議論も法理的には全然立たないというわけにも行かんでありましよう。併しながら、実際問題としましては、日本は又世界の非常に多くの国と国交を回復して独立いたしておりますから、実際上は日本がイニシアティブをとつて国交の回復に努めることについて何ら差支えはありません。
○中田吉雄君 総理は、中ソの同盟条約があつたりして、敵対関係敵対的な政策をとつてるからということを申されましたが、私、先般李承晩氏の履歴を調べてみましたら、このくらい反目的な、明治以来一貫したきびしい反日政策をとつている人ですが、それとすら友好関係をとろうとされている現在でありますから、むしろ、そういう交渉をすることによつて中ソのその条約を日本に無害にするような措置をとることが、むしろ必要ではないかと思います。その点は如何でしようか。
○国務大臣(吉田茂君) お答え申上げますが、只今申した通り何も中ソと始終喧嘩することが我々の外交の基調ではないわけでありまして、中ソ両国が日本と親善関係に入ろうとするならば、イデオロギーが違つたからと言つて拒否する理由はないと思います。又、李承晩大統領については、現に私に、自分は日本に対して友好感情を持つているとおつしやられているのであります。過去を問えば、いつまでも過去の歴史に拘泥いたしているならば、日本もアメリカとは友好関係に入らんわけでありますが、それも一時、これも一時、政策が違えば、友好関係は結んでも差支えないと思います。かくすることによつて世界の平和を一層増進するということに我々は努むべきであろうと思います。
○中田吉雄君 特に我が国が中国やソ連の状況を知らずして、孫子の兵法ではありませんが、相手を知らずしていろいろな対策を立てるということはできないので、そういう点から言つても、私はむしろ中国やソ連と国交を調整して、そして相手の事情をよく知つて対策を立てること、そういうことの意味もありまするし、第一、世界が、現在私の計算いたしたところによると、五十七、八カ国がソヴィエトと外交関係を結んでいる。中国とも二十六カ国が国交を調整している。現に、日本と中国が友好関係を結ぶことを、それを嫌うアメリカ自身がソヴイェトにボーレン大使を派遣しているわけであります。これが若しアメリカの意を忖度して、アメリカが嫌うであろうからというようなことでこの調整をやりませんと、アメリカはレーニン政権ができてから十何年もソヴイェトとの関係を調整せず、非常に問題を起しましたが、特に隣国としては、アメリカとはもつと違つた関係があるので、私は中ソとの国交調整が、日本の安全を保障するためにも、極東の平和を維持するためにも、非常に必要だと思うわけでありますが、吉田総理は、アメリカの意を甘受して、やられないのですか。今はその時期でないというような考えから、おやりにならんのですか。そういう点についてお聞きいたしたい。
○国務大臣(吉田茂君) 日本がアメリカに追随せざる以上は、アメリカの意思を付度する必要はないのであります。而も日本は独立したのでありますから、アメリカの意思を忖度して外交を左右することはございません。先ほど申した通り、中ソは日本に対して敵対関係を持つ条約を持つております、故に日本は中ソと飽くまでも戦争するとは申しておらないのでありまして、若し相手国にその気があれば、我々は敢えて国交を調整するに反対いたす理由はないと先ほどから申しているのであります。
○中田吉雄君 次に、アメリカとこういう関係の安全保障の形態をとられる用意はないか。
 それはアメリカが硫黄島や或いは太平洋諸島その他に撤退した形における日本との安全保障の形、私は、いろいろな日米交渉史を調べて、特に有田八郎先生なんかも、外交よろしきを得たら、アメリカは日本にいることは好まぬのだから、国務省は太平洋諸島のほうに後見人として撤退して、それを見ることによつて、十分安全の保障ができたが、アメリカ軍部の強い要請、なかなかおつてみると居心地いい、帰りたくないという、いろいろな要請で、外交的な交渉よろしきを得ないために、そういうことになつてしまつたというような記録を見たこともありますし、長く日本に駐留すると問題が起きますので、私は、太平洋の安全保障によつて十分守られるのであるから、アメリカが太平洋諸島に後退して、その後から後見人としてじつと見ていると、こういう形で安全保障ができると思いますが、吉田総理はその間の機微はよく御存じだと思いますが、そういう形でありましたならば長く友好関係が保てると思うし、いいと思いますが、ソヴィエトも刺激しないし、そういう考えはどんなものでしよう。
○国務大臣(吉田茂君) 御意見としては伺つておきますが、これに対して私は、批評を加え、若しくは反対、賛成する両方のまだ論拠を持つておりませんから、主管大臣からお聞きを願いたいと思います。
○国務大臣(岡崎勝男君) これは先般のMSA交渉の第一日に当りまして、アリソン大使も申しておりましたが、随時、従来もアメリカ側ではその意見を発表いたしております。つまり、できるだけ早く日本から兵を引きたいのだという希望を持つております。但し、よく、たとえに言われますように、町の中で一軒の家が火の用心を怠れば、ほかの家が皆迷惑するのであります。いずれにしても、戸締り、火の用心は十分にしなければならんわけでありまして、日本のほうに国を守るだけの十分の備えがあれば格別、そうなれば、もうアメリカは、一刻といえどもここに留つて、日本の安全を守る必要も義務もなくなるわけであります。
○中田吉雄君 いろいろありますが、時間がありませんので、吉田総理に自衛力の漸増計画について構想を御発表願いたいと思うのであります。それは、アメリカの相互安全保障に基く対外援助の討論におきましても、アメリカは長く日本に駐留するわけに行かない。只今外務大臣も申されましたし、恐らく吉田総理は、日本の自衛力を漸増することによつて順次アメリカの兵力を少くして行くと、そうして、やがて日本が完全に自力で自衛できるという形にスライドして行かれる立場だと思う。そういう点から、保安庁長官の責任問題等とは別にして、少くとも何十年ということをアメリカの駐留を予期してはおられまいと思うし、大体どの程度自衛力を漸増したならば、それとスライドして、いつ一体アメリカは撤退できるか、こういうことが一国の総理とされては十分あると思いますが、大体そういう構想はどんなものですか。それについて所御見をお伺いしたい。
○国務大臣(吉田茂君) 漸増計画も日本の国力に相応すべきものであつて、日本の国力としては現在の保安隊等の防衛が最も適当な計画であると考えております。この際どれだけの漸増をしたらよかろうか。その漸増計画は何年後に完成ができるかと言われることは、結局日本の国力の充実如何によることであります。これは国力の充実せざる間は現在の計画で参りたいと考えております。
○中田吉雄君 そういたしますと、大体の見当が付かないわけですか。永久基地というようなことがありますが、第一、アメリカはフィリピンを四十八年も占領したこともありますし、我々としましては、やはりそういう立場は認めないのですが、認められる立場からしても、国家財政を組まれる立場からしても、スライドする立場を改進党もとつておられるようですが、自衛力をどれだけ漸増したら、どういうスピードでアメリカが後退して行くのかという、こういう計画は、こういう安全保障を認める立場からもなくては、到底日本の国政をおあずけすることにはならないと思うのですが、そういう大体のスライドできる目途というものが大体ありそうなもんだと思うのですが、一つ、いつ頃になつたらアメリカは撤退するのだ。その際にはどれくらいな規模であつたら、兵器の発展段階、日本の置かれた国際情勢というようなものから、どの程度にしたらそのスライドで帰つてもらえる、こういう構想について一つ総理の御所見をお伺いしたい。
○国務大臣(吉田茂君) これは重ねて申しますが、日本の国力が現在において、現在で止まるとは私は考えておりません。即ち日本の国力の増進とともに日本の防衛計画を立てべきものである。然らばその計画は何かとおつしやられても、それは輸出の条件にかかつております。即ち国力の増進又一方においては、お話のように、国際の関係、環境もあります。内外の環境を前提として考えるべきものであつて、道路工事と違いまして、これから何年経つたらこれだけのことをするということは、これは申しにくいのであります。
○佐多忠隆君 総理にお尋ねしますが、保安隊は、よく言われておりますように、我が国の平和と秩序を維持する任務を持つておりますが、総理は今度MSAとの交渉或いは受けるというような場合に、この保安隊の任務を拡充して直接侵略に対抗し得るような目的を持つものに変える御意思があるかどうか、或いはそういう任務を持つ自衛軍とでも称すべきものをお作りになるお心得があるかどうか、直截に御答弁願います。
○国務大臣(吉田茂君) 私は現在の規模で以て進んで参りたいと思います。又米国側の希望或いは要請などがあるかも知れませんが、そのときはその要請は考えますが、現在日本の政府としては、現在の規模で一応進めて行きたいと思うのであります。
○佐多忠隆君 それならば、外務大臣並びに保安庁長官にお尋ねしますが、MSAの交渉或いはこれを受けるに際しては、今、私が申上げましたような保安隊の目的の拡充或いは昨日の外務大臣のお話によれば、改進党の称しているところの自衛軍というようなものを創設せざるを得ないことになるだろうというような御答弁だつたかと思いますが、そういう答弁、そういうお心持と、今、総理がはつきり否定された考え方とは、非常に喰違つて来ると思いますが、これらの点をどういうふうにお考えですか。両大臣にお尋ねいたします。
○国務大臣(岡崎勝男君) これはアメリカ側でも言つております。つまり、正確な言葉は今おぼえませんが、この十五日の第一回の会合のときにアリソン大使は、日本を窮極的に守るためには現在の規模では足りない、併しながらその漸増の計画とか態様とか、すべては日本政府の決定するもので、アメリカ政府は関与はしない、こういうことを言つております。従いまして、今総理の言われましたように、国内の経済状態その他の条件、或いは国際情勢、こういうものを考慮に入れまして日本としては、もう安保条約にもありますように、漸増ということは考えても、これは漸増をいつやるか、どういうふうな格好でやるかについては、これに政府が一にきめることであります。
○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。一体、独立国家となつた以上は、自分のみずからの手で目分を守るという体制を一日も早く私はとらなくちやならんと考えております。併し現在の段階においては、日本の財政は勿論のこと、又国民の意思が一体どうであるかということを考慮に入れますと、これはなかなか容易なことではないと考えております。只今の段階においては、とにかく保安隊をして日本の国内の平和と秩序を維持し、アメリカ駐留軍の手によつて直接侵略に備える、両々相俟つて日本の平和と秩序を維持して行こうということでありますと。併し今外務大臣が申されましたごく、アメリカ側においては徐々に駐留軍を引揚げたいという気持、これは十分察せられるのであります。それに如何にマッチすべきかということは今後の我々に与えられた課題であろうと、こう考えております。差当りのところでは、只今の保安隊を以て国内の平和と秩序に当りたいと、こう考えております。
○委員長(青木一男君) 関連質問はその辺で……。
○佐多忠隆君 それでは別の機会に留保いたします。
○中田吉雄君 吉田総理にお伺いしますが、二百余名の自由党の少数内閣では何らかの他党との連繋なしには行けないと思いますが、自由党と改進党とが連繋される際に、吉田総理が、憲法は改正しない、保安隊は増強しない、こういうような従来の自由党の政策を死守した場合における他党との連繋協力をお求めになるのであるか。改進党の線までやはり立場をお変えになつての連繋を考えられますか。その際に従来の立場を吉田総理とされては死守されると思いますが、他党との協定によつて基本線が崩されるというようなことはないものでしようか。その点をお聞きしたい。
○国務大臣(吉田茂君) 政治は生き物でありますから、相手方の交渉によつて、国家のために利益になると考えれば、従来の方針を死守もいたしますれば、又修正もいたします。
○中田吉雄君 それは非常に重要だと思いますが、自衛力の漸増方式というものを放棄されて、若し改進党の自衛戦力は合憲であるという立場で自衛軍を創設するというようなところに切替えられて行く虞れがあるではないかということを憂慮するわけであります。講和条約の際に吉田総理は、有利な取極めをされようとした際に、芦田氏は自衛戦力合憲説を唱えて、ホイット二ー将軍に日本の再軍備計画を出し、鳩山さんは追放中にもかかわらずダレス国務長官に会つて、吉田さんはうしろで足を引張られて、かなり対米交渉において不利になつたことがありますが、私は、そういうことが再び起つて、日本の再軍備問題、自衛力漸増問題が、ずつと一歩アメリカの要請のほうに引きずり込まれるのではないかということを心配するわけですが、吉田総理はこの点についてどういうお考えを持たれますか。
○国務大臣(吉田茂君) 私が足を引張られたと申しますが、私は引張られた経験はございません。(笑声)又将来改進党がどういう交渉をせられるか私はまだ存じておりません。仮定の問題についてはお答えをいたしません。(笑声)
○中田吉雄君 それでは一つ希望を申上げておきます。吉田総理のお父さんは竹内網先生であります。これは明治の志士として日本の不平等条約改正の先頭に立たれて、保安条例に引つかかつて、そのために二年半も刑罰を受けられたということを聞いております。その際に吉田総理はおできになつたということを聞いている。(笑声)ところが吉田総理は、そのお父さんが引つかかつた保安条例と同じ破防法をお作りになつて、そういうことをやられますと、不肖な子ができたもんだというふうに、(笑声)私はそういう点がありますので、殊に、非常にこの問題は、どのような線で他党との協力を求められるかということは我が国の安全保障にとつて大きな問題です。明治四年に戸籍制度を作り、明治五年に徴兵制度を作つて、遂にそれが我が国を亡ぼしたことを思うと、この際、吉田総理が死して生くる途をとられないと大変なことになると思うから、もう一遍一つ他党との協力をどういう立場をとられるかという決意のぼどをお伺いしたい。
○国務大臣(吉田茂君) 私は過去の歴史上の事実についてあなたの誤解を正します。私の親父が不幸にして(笑声)つかまつたのは、西南戦争の関係であります。保安条例の関係ではありません。(笑声)又改進党の出方について私は存じません。これは改進党の主張を聞いた後でなければ決定ができないのであります。これは正直なことを申上げます。(笑声)
○中田吉雄君 次にお伺いしておきたいことは、太平洋には四つの安全保障がやがてできるといわれる。米韓防衛協定を含めて四つの安全保障が個別に結ばれていますが、これがやがて太平洋軍事同盟へのきつかけになると思いますが、吉田総理は将来この問題が起きたらどういうふうにお考えになるか。これは安全保障としていいと思われるか。これに参加される要請があつた際にどういう立場をとられるか、お伺いしておきたいと思います。
○国務大臣(吉田茂君) しばしば太平洋軍事同盟というような話を聞きますが、政府としてはまだ公式の交渉を受けたことは一度もございません。又軍事同盟と言われても、日本には軍隊がないのでありますから、軍事同盟に入る資格はないと思います。これは将来のことでありますから、ただ現在の事情を申述べます。
○中田吉雄君 時間がありませんので、それでは、そういう太平洋のNATOになぞらえたような機構に対してはまだ態度が未定であるというふうに理解すべきでしようか。
○国務大臣(吉田茂君) さようであります。
○中田吉雄君 それでは角度を変えまして綱紀粛正の問題に絡んで、交際費や不要不急のビルディング、外廓団体等に対して、吉田総理はどういうお考えをお持ちでありますか。あとでおお手許にお渡しいたしますが、地方議会、私の調査でも、昭和二十七、八年に、各県の知事、各県の議長は、数億に上る交際費を計上したりしておりますが、これについて吉田総理は、地方財政多難な折、どういうふうにお考えでありますか。この資料を見て一つ……。
○国務大臣(小笠原三九郎君) この今お示し頂きました資料におきましても、地方の交際費その他のものが多額に上つていることは、私ども率直に申しますれば、最近では少し目に余るものがあるような感じをいたしております。従いまして中央におきましてもさような経費を節することに努めて先に四十億を節約いたしましたほか、更に今後約百億、保安庁を含めますと、もう少し増加いたしますが、節約することに了承いたしましたのもその点からでございます。又いわゆる地方財政平衡交付金その他の増加について申出がある際にも、これは私どものほうでも、中央地方を通ずる財源の按分等に対する税制の措置もいたしまするが、同時に、今の地方制度調査会の結論、これも八月中にはでき上るのでありまして、それを待ちまして、又一方にはこういつた費用の節減方、自粛方につきましては、私ども絶えずこの点を申しているのでございます。
○中田吉雄君 大蔵省の事務当局にお尋ねしますが、法人は大体どれくらいな交際費を使つているというふうにお考えでありますか。
○国務大臣(小笠原三九郎君) 法人がどのくらい使つておりますか、ちよつと私、資料を持ち合しておりませんが、先に御承知のごとくに、いわゆる交際費その他に対して一定以上のものには課税すべきであるというような議論もありまして、その節一応取調べたのでございますが、担当巨額に上つている会社もございましたが、最近におきましてはこれは会社の事情もございましよう、よほど自粛的な傾向が見られていることは、私は大変よい傾向と存じております。従いまして、又その分配が非常に困難な点もございまするので、今度の税制におきましては、これらの処置は特にとらないことに改めましたが、交際費その他の費用の節減方については、今の税制の措置をとろうとしたときの感情も伝わつておりまするから、よく会社のほうでも自粛いたしておるものと私は考えております。
○中田吉雄君 主計局長は、一体、法人はどれくらいな……、営業報告からお調べだと思いますが、大体どれくらい交際費を使つているか……。
○政府委員(河野一之君) 法人の所得は約五千億ということを言われておるのでございますが、そのうち交際費がどの程度でございますか、或いは主税局のほうではわかるかも知れませんが、いろいろ限界もございまして、的確な数字は覚えておりません。
○中田吉雄君 大体私の調査では八百億くらいになるのではないかという話も聞いているのですが、その額は法人所得に比べて少な過ぎると思われるか、多過ぎると思われるか。更に吉田総理にお伺いいたしますが、本年度の知事の交際費が一億一千一百万です。全国の議長の交際費が七千三百万、一県の知事として千五百万くらいな交際費を持つているのがあるわけであります。これは一体妥当な額だと思われますか。こういうことについてどういうふうにお考えでありますか。吉田総理の所見をお伺いします。
○政府委員(河野一之君) 交際費というものがどの程度の額が適当であるか、これはいろいろ地方団体における知事の千五百万円とか千万円とかいうことは、我々の国の会計における感覚からしますと、私どもとしては率直に申上げれば相当多いだろうと思います。国におきましては、一般会計の交際費の総額は当初約四億一千万円でございますが、それが今回修正で一割ほど節約されましたので、三億数千万円になりますが、そのうち大部分は在外公館における交際費でございますので、一般の各官庁における交際費は七千万円程度であります。そういう点から比較いたしますれば、私ども率直に申上げますれば多いであろうと思います。
○国務大臣(吉田茂君) 地方の財政が放漫であるということは私も常に認めております。これをどういうふうにして改正するかということは今日苦心をいたしておるところでありますが、現在の制度においては中央が地方を監督する権限がないものでありますから、これはいずれ適当な方法を講じたいと思います。決して現在の地方財政のやり方がいいとは考えておりません。甚だ以て不都合だと私は考えております。
○中田吉雄君 私は、外資の導入を考える際に、日本の資本蓄積からどれだけのロスがあるかということを計算して、そのロスを少くすることが最も大切ではないかという見地に立つて御質問しているわけであります。例えば昭和二十五年から七年までの大ビルディングの建設が、三年間に二千八百億あるわけであります。それが遊興関係だけにしましても二百億以上のビルディングが建つたり、二千億のビルデイングが三年間に造られているのです。更に地方税である遊興飲食税の百七十数億から計算いたしますと、そういう遊興費が二千億に及んでいるわけなんです。そういうことを考えると、私は外資を導入する前に、日本の生産された富の中からそういう莫大なロスのあることを防ぐことが最も大切である。それを防げば数億の有用な財政投資ができると思うわけである。私はこの点で是非交際費税を先ず起すべきであると、課税をすべきであると考えますし、とにかく数千億のものが……、遊興飲食額が二千億にも及んでおる、不要ビルディングが三年に二千億近くも建つておるという状態で外資を導入すると言つてもできませんし、私はこういう関係に先ず手をつけることが必要であると思う。而も、外郭団体というものが何百とある。私の調査では、本行の外郭団体で五千万の金を持つておるような外郭団体があつて、公共事業費一千億、それから遊興飲食税、交際費というようなものが一体となつて、日本が今弛緩し切つておるのはここにあると思うわけである。吉田総理には是非この点について、綱紀粛正の点から考えても、交際費の問題、遊興飲食の問題、外郭団体の問題、その他を解決されることを強く要望するものですが、この点に対して、最後に総理の、アメリカに行かれるという話ですが、そういう交際費を、遊興飲食をたくさん使つたり、不要ビルディングを建てておるようなところから来ても、しないというようなニュースさえ伝わつておるわけであります。数千億の資本の中からロスがあるという点をお考えになつて、これに対して勇断を振われる御用意があるかどうか。更に交際費について課税をされる、法人税の改革をされる用意があるかどうかということをお伺いしたい。
○国務大臣(小笠原三九郎君) 先に世界銀行のガーナー氏が参りましたときにも、日本の資金が正当な方面に割合に流れること少くして、ややもすればビルディングその他不要不急の方面に流れておるということを遺憾といたしておりました、その節に私どもも痛切にそれを感じましたので、爾来、銀行金融業者その他にはそういうことを努めて指導的に、そういう方面に資金が流れないように、日本の一策的な重要としておる産業に資金が流れて行くように指導して参つており、最近ではややそれは減つておると考えておりますが、併し今お示しになつたように、このビルディングの建築等が相当多かつたことは、これは事実であります。このことは私は日本のために大変遺憾に存じます。ただ私どもとしては、往年のごとき資金調整法といつたような資金統制の権限を持つておりませんので、ただ勧奨して、これらの金融業者の自粛に待つと、努力に待つと、こういうので、そういう方面に指導いたしております。なおその指導の方法としては、御承知のごとくに、例えば甲乙丙丁というような順位をつけて、それぞれ資金の使用方について勧奨いたしておりますことは御承知の通りでありますが、今後とも一層この点に対する注意を怠らぬようにいたしたいと存じております。
 先に交際費の課税の問題等につきましては、これは御承知のごとく、会社の一定限度を越したるものは、これは交際費と認めずに現在でも課税いたしております。けれども、その認めておるものも一体は相当多いのではないかと、これは私ども数字を的確に掴んでおりませんが、例えば日本の法人が使つておるものも、さつき中田さんは八百億ぐらいとおつしやつたが、或いは法人所得の一割以内と見ても三百億か四百億に達するのではないかと普通言われております。さような金がもつと効率ある方面に使われることは非常に望ましいことでありますので、今度の税制では、いろいろな査定その他の問題もありまして盛り込みませんでしたが、遅くとも八月一日には発足いたします中央地方を通ずる税制の改正調査会には、これは是非そういう事柄も併せて付議をいたしたいと考えておるのであります。いずれにいたしましても、今日の日本の財界は各方面共これは自立に向つてお互いが最大の努力をすべきところであつて、資金の効率的使用については各人最もその心掛けを努めなければならん時期であると考えております。
○中田吉雄君 その点、交際費に課税をするという当初考えられたような案をもう一遍再検討される御用意はありませんか。
○国務大臣(小笠原三九郎君) 今度のこの八月一日くらいから発足いたしまする中央地方を通ずる税制改正調査会には、さような問題なども併せて付議したいと考えております。
○中田吉雄君 それでは、この自由党と改進党との両党で話の付きました奨励金の八百円が消費者に転嫁されてしまうのではないかというようなことが大きな問題になつておるのですが、私は、むしろ生産者に転嫁されて、事実上は等級の格下げによつて全部それがネグレクトされてしまうのではないかということを考えますが、この点は食糧検査の規格と併せてそういうことは起らないというふうにお考えでありますか。その点お伺いいたします。
○国務大臣(保利茂君) お答えしますが、御質問の趣意は、上級米を殊更に検査で下級米に格落して、そうして生産者に実際は余り行かないようにしようというような検査方法を考えておるのではないか━━さようなことは毛頭考えておりません。今日までいたしております通りであります。
○中田吉雄君 それが非常に問題なんです。私、供出制度が始まつてから、どういう格下げがなされておるかという調査をやつて、若しそれがそうでなかつた場合に百姓が受け得べき利益を計算してみました。ところが驚くべき格下げによつて農民は大変なことになつておるわけであります。それは、例えば昭和二十四年には、二等米が一二・二%、一割二分二厘あつたわけであります。ところが昭和二十七年、昨年は二・九%で二等が一〇%も低くなつており、更に三等が昭和二十四年の五九・七から四一・六に下り、更に四等が二五・六%から五四・三と二倍下つて、非常にこの格下げによつて農民は不利益を受けておるわけであります。そこで私は、昨年の供出、昭和二十七年の供出いたしました六千三百余万俵の検査が、若し昭和二十四年並みに等級がなされたとしたならば、百姓の収入は一体どれだけ余計あつたかという計算をやりしまたところが、驚くなかれ四百四十四億六千九百万という、四百億の等級の格下げによつて不利益を受けることになつておるわけであります。これはもう昭和二十四年から五、六、七と三年間に一千数百億の百姓は不利益を受けておるわけであります。これは非常に百姓に対して大きな問題であります。ですから、只今食糧庁の最高地位におる人がこの格下げをやつた際に、その責任者であつた人が参議院に立候補をした際に、格下げをやつた責任者だというので、百姓がなかなか投票せなんだいというほど非常に重大な結果で、私はこれは誤まりではないかというので、もう一遍計算をしてくれというのでやり直したわけなんです。ですから、私は改進党が折角この二重米価をされた際に、消費者に転嫁されるという問題があると同様に、生産者の等級を厳重にして、二等より三等、三等より四等に格下げをすることによつて掛比が不利益をする。少くとも、二十七年度で四百四十四億という等級の格下げによつて莫大な不利益を受けておるわけであります。私は天候その他でいろいろ調査いたしました一井野先生も申されましたが、最近は天候が非常によろしい、産米改良もよくできているというのに、こういう状態だから、百姓の国民所得が、人口は四割三分くらいあるのに、一割七、八分しかないということになるわけであります。この等級の格下げについて、そういうことは今後起らない、更にこれを是正される御用意があるかどうかということをお伺いしたい。
○国務大臣(保利茂君) いずれにいたしましても、等級を殊更に格下げするような検査方式は絶対にとらないようにいたします。ただ問題は、全生産量を全部買取るというような組織になつておりますれば、これは問題ございませんけれども、とはかく一定割当の中から農家は供出されるわけですから、供出数量を農家としては早く達成したいために、そのためには今の実際いろいろな事情から、等級は落ちても量目が早く達成されるということを希望せられる向きもあるだろうと思います。そういうことで、それは検査を殊更に落して格付をしておるというように私は理解しておりませんけれども、併しそういう御議論がありまする以上は、十分気をつけて参るようにいたします。
○中田吉雄君 それは非常に問題なんです。例えば供出制度が始まつた当初には、一等が三〇・五%もあつたのです。三割くらいもあつたのです。それが殆んど今一等がなくなつている。これは大東亜戦争の際の、食糧事情の非常に悪いときでも、一等が三割五分、二等が四割五分、三等が少しというふうであつたものが、もう最近になつて食管の赤字等を作らないために私は意識的にやられていると思う。それは食糧検査員がサシを入れて肉眼でやるのですから、ちよつと上のほうから指令されると、二百億くらいは、或いはあれを新らしい款項目を起してやると、財政審議権の違反というようなことでなしに、実際、等級を厳重にすればこれだけ浮くという見地から糧券を発行されているというふうにとられても、これはあながち無理な解釈ではないということになるわけであります。この点は、折角改進党のかたがやられているのが、消費者に転嫁されることがないかどうかということと同様に、格下げによつて転嫁されることがないかということをやることが非常に大切なわけであります。これがなかつたら二重米価の問題は両方から崩れてしまう。四百四十何億ですから二百億くらい一遍に吹つ飛ぶのです。この点は十分一つお考え願いたいと思うのですが……。
○国務大臣(保利茂君) これは先ほど申しますように、決してそういうことで細工をして、国会の修正せられた御意思を蹂躙するというような考えは毛頭持ちません。御忠告、御意見もありますから、十分注意をいたして参りたいと思つております。
○中田吉雄君 それでは時間がありませんから、これは詳細に各省に対する質問のときに申述べますが、とにかくドツジ政策がとられるようになつてから急速にこの検査が厳重になつて、非常に格下げをされて、とにかく百姓は一年間に四百億の損を受けているということが非常に重大ですから、私はこの点については、一つ今後改進党のかたもおいでになつた際にも、消費者米価にも転嫁されず、生産者のほうにも転嫁されないようなぎりぎりの線を確立することを望んでおきまして、今日はこれで私の質問を打切りたいと思います。
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○加藤シヅエ君 私は同僚中田委員のあとを引受けまして、僅かな時間を頂きまして、社会党右派の立場から若干のことを総理大臣並びに外務大臣に承わりたいと存じます。
 今日は今朝ほど白山丸が入港いたしまして、モンテンルパに長いこと囚われの身であつた方々が日本に帰国をされましたので、このことは国民一同が非常に喜んでおることでございます。殊に私どもは、あのキリノ大統領が、自分の家族の方々が日本兵の手にかかつて殺されたというような、こういうような堪えがたき憎しみの感情を超えられまして、このたびのこういうような取計らいをなされましたという、このことが、総理大臣も、曾つてサンフランシスコの講和会議のときに、フィリピンを代表されましたところのロムロ代表がどのような日本に対しての憎しみの心持をこめた発言をなさつたかということを、よもやお忘れになるまい、このことと、今日のこの国民がひとしく心の中で喜ぶような、こういう日を迎えまして、総理大臣といたしましては、この日比親善のために、先頃国会では決議文を作りまして、国民としての感謝の意思を一応発表いたしましたけれども、こういうような機会に、特に総理大臣として、政府を代表して、フィリピンの政府当局並びに国民の方々にどのような親善な感情を御発表なさいますか。又更に何か田比親善の具体的なお考えでもおありになりましたら、この記念すべき日に承わりたいと存じます。
○国務大臣(吉田茂君) フィリピン政府の好意については、政府として、種々の面において、この間、両院議員にも直接感謝を表しておきました。又大統領にも謝電を送つておきました。そして私も、フィリピン政府か今度とつた処置、これは誠に好意ある処置であつて、日本国民として感謝するのは勿論でありますが、関係家族等或いは関係者、その友人、親戚、家族において非常な満足を以つて迎えたということは、今日も報告を受けております。これに対しては国民としては、フィリピン政府の好意は飽くまでも記憶いたしたいと考えますが、同時に、これに対してどういう方法において報いるか、これは先般賠償問題その他において十分考慮いたしたいと考えて、その意思は常にフィリピン政府に伝えております。いずれにしても誠意ある謝意を表したいと考えております。
○加藤シヅエ君 次に承わりたいことは、只今政府当局がアメリカ当局と相互安全保障法に基きますところの援助を受けるために、だんだんと回数を重ねて御折衝をなされているということは承わつておるのでございます。ところが、この相互安全保障法に基く援助を日本が受けるということは、私ども女性をも含めました日本の国民にとりましては、これは非常に大きな問題であると考えます。ところが、事柄が外交の問題でございますし、なかなか私ども女性には事柄の内容がよく理解ができないうちにどんどんと交渉が進められて行くというような状態でございます。殊に新聞を通じまして、国会における質疑応答、或いは政府の方々の御所見の発表等を見ておりますと如何にも日本が何か今大変に経済的に窮屈で困つておる、不景気である、失業者或いは半失業者というようなものが農村に都会に満ち満ちておるというような状態にMSAで援助を受けることによつて、何かこういうような景気の回復があるとか、或いは経済的に日本が長期に亘つて自立をするこれが一歩であるというような印象を受け勝ちでございます。ところが、ひとたび、このMSAという略称を、よくよくこの法律の本当の名前をもう一度読み返して見ますと、国際的な安全保障を強化するような友好国に援助を与えることによつて、合衆国の外交政策を伸張させて、且つ合衆国の安全と福祉とを図るための法律、こういうような名前になつておりまして、この名前がよくその法律の内容を現わしておるであろうということが、アメリカにおける国会の質疑応答の有様などを聞きましてもわかるのでございます。それで私どもは、ただ自分の国の一方的に自衛力が増進されたらば国が護られて安心であろうとか、或いは域外買付その他の経済的面において潤いがあるというような、こういうところに囚われてしまつて、只今中田委員もいろいろと申されたのでございますが、この相互安全保障法に、一たびこの援助を受けることによつて、とにかく好むと好まざるとにかかわらず、アメリカ合衆国の外交政策というものと日本というものが切つても切れないような関係に結ばれるのではないかということを考えるのでございますが、このアメリカ合衆国の外交政策と日本を自衛するというようなことが万一利害が相反するようになつた場合に、この援助法を受けた日本としてはどういう立場に置かれるのでございましようか。この点を承わりたいと存じます。
○国務大臣(岡崎勝男君) アメリカの外交政策は、御承知のようにずつと前にはいわゆる孤立主義というようなものが盛んに言われたことがあるのであります。併しながらだんだんやつてみますると、世界の国々が相寄り相助けなければ、アメリカだけが幾ら安全を保とうとしてもこれはできないことだということになりまして、いわゆる集団安全保障、自由主義諸国がお互いに助け合う、これがアメリカの安全に結局寄与することだということになりまして、それでこの援助法もできて、各国の安全を保つことが即ちアメリカの安全を保つことになるのだから、各国を援助しよう、こういうことになつたわけであります。日本といたしましても、従来の考え方は、自由主義諸国との提携を強化することによりまして、これで以て日本の安全と世界の平和を維持すべきである、こういう結論に達しておりますから、この点において、何ら、アメリカの考え方と日本の考え方、或いはイギリス、フランス等の考え方と、この点では違わないのであります。従つて、我々もこの大きな目的のためにアメリカの援助を受けたいと考えておりますが、これはその国防等を仮りにやりますると、或いは何と言いますか、保安隊の武器等が来ましても、これでアメリカの安全を守るための、アメリカの雇い兵になるんだという、よく宣伝がありますが、そうじやないのでありまして、日本の安全を少しでも余計保ち得るということが、これが世界の平和維持に大きな寄与をするからして、結局アメリカの安全にもなる、だからアメリカは、慈善事業じやないのだ、自分の安全の保障にもなるから、よその国を助けるんだということになりますが、決してそれはアメリカのためにやつておるのではない、この点は十分御了承願いたいと思います。
○加藤シヅエ君 私も、日本がアメリカの雇い兵になるというような、そういうような言葉は決して使いたくないと思つておりますけれども、私どもは日本が現在の十一万の保安隊程度で、それ以上をこれからどんどんと武器その他を援助されまして、或いは軍事的ないろいろ訓練を受けたりして、だんだんとこの保安隊が大きなものに育つて行くというようなことを海外電報その他でいろいろと聞きますので、そういうようなことになつて参りますと、どうもこれが日本の安全のためにそんなにたくさんの兵力を持たなければならないというような必要があるということが納得ができない。殊にこのロイターの電報などでも、すでにアメリカからオーストラリアの当局に対して、将来、日本が自衛力の漸増という形で兵力を十一万から三十五万に殖やすというようなアメリカの提案に対して、反対をしないというようなケーシー濠洲外相の言明というようなことも新聞に報ぜられているのを見ますと、アメリカのほうではすでにこういうように三十五万に殖やす長期目的を持つているというようなことが考えられると思うのであります。そういたしますと、私どもは、今まで保安隊というようなものが、これは志願制度のもので、国内の治安を維持するとか、或いはまさかの場合に、日本が外国から侵されるというような場合に、これを受けて立つ、この程度だというふうに思つておりましたが、三十五万というようなことになつて参りますと、なかなか志願制度というようなことで、そんなにたくさんの兵隊さんを、兵隊という言葉を使つてはいけないのかも知れませんが、保安隊員を殖やすことができないので、そのときにはどうしても憲法を直して徴兵制度に変えなければならないのではないかというようなことを、特に私ども女性は非常に心配いたしておるのでございます。それで、こういうような三十五万に殖えるというようなことがもう今日すでに問題になつているのかどうか。又そういうような場合には今の志願制度で間に合うというような建前でお考えになつていらつしやいますか、どうでございますか。この二点をお答え頂きたいと思います。
○国務大臣(岡崎勝男君) 日本が防衛力を漸増したいということは安全保障条約でも明らかに言つておるのであります。ただ、それは、いつできるかということは、これは別問題であります。併しながら十一万で日本の安全は完全に保たれるという御議論でありますれば、日米安全保障条約によつて、アメリカの駐留軍がここにいる必要はないのであります。ここにいると申しますのは、つまり今の十一万の保安隊では日の安全は十分に保てないと考えますが故に安全保障条約を作つておるわけであります。ところが一方アメリカ側としては、できるだけ早い機会に日本の安全は日本で守つてもらつて自分たちは引揚げたい、こういう希望は持つておるわけでありますから、しじゆうそれがいろいろの新聞等にその記事が出て来るわけであります。そこで総理も前に申されましたように、究極的には、いつの日かには自分の国は自分で守れるというようにいたしたい、こういう考えは当然あるわけでありますが、それがいつどういう形でできるかということは、これはまあ未来のことでありまして、日本の経済力、或いは国際情勢、いろいろなものに関連があるのでありましよう。只今のところはそういう事情が許しませんから、不十分でありますが、十一万の保安隊を以て、同時にアメリカの駐留軍にここにいて日本の安全を守つてもらつておる、こういう状況であります。そこで、将来或いは殖えた場合にどうなるか、徴兵制度になるかどうか、これは私の担当でありませんのでお答えはいたしにくいのであります、ここに保安庁長官がおられますから、そのほうから……。
○加藤シヅエ君 保安庁長官の御答弁をお願いいたします。
○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。大体、只今外務大臣から御答弁の通りであります。そこで、保安隊員を増員した場合に徴兵制度でやらなくちやならんじやないかというような御質問のようでありますが、大体我々の計算におきますると、志願でこれを採用し得る限度がおのずから明らかになつて来ます。それは一年において約十二、三万だろうと思います。ニカ年制度でありますから、我々といたしましては、まあ限度が二十万、志願でやれば。それ以上であれば、これは何としても徴兵制度ということより仕方ないのであります。我々の考えといたしましては、まあ徴兵なんというようなことは考えておりません。現在におきましても、御承知の通り保安隊員は全部志願制度でやつておるのであります。志願制度について、とかく士気の問題が論ぜられるのでありまするが、志願制度におきましても、隊員の士気は、私がすでに申しまするように、旺盛であります。いわゆる日本の平和と秩序を守り抜くという精神力においては決して何人にも劣らず一生懸命やつておる次第でございます。
○加藤シヅエ君 只今の質問に続きまして保安庁長官に伺うのでございますが、長官は、このMSAの受諾につきまして、だんだん自衛力漸増という意味で今日の保安隊がだんだん大きく育つて行くという将来をいろいろ考えて、そうして二十一日、新聞記者との会見におきましては、「今はその時期ではないけれども、将来において、保安庁法の第四条の任務の項ばかりではなくて、四章の行動を規定した条章も改正せねばなるまい」、こういうような談話を発表していらつしやるのでございます。この談話が若し誤りがないといたしますならば、この行動を規定した条項というのは、この保安庁法の第四章のどれをお指しになつていらつしやるのでしようか、承りたいと思います。
○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。保安隊は申すまでもなく我が国の平和と秩序を維持するために設けられたのであります。御承知の通りアメリカ駐留軍においては成るたけ早く引揚げたいということは、これは申すまでもないところであります。或いはこれは察するに余りあるところであります。そこでアメリカの駐留軍が全部一時に引揚げるということは我々は想像いたしておりません。これは徐々に引揚げられるものだろう、こういう希望だろうと思います。その空白をどうして埋めて行くかということは、今後我々は大いに考えなければならない問題であろうと思います。その場合に保安隊の性格が或いは変るかも知れない。任務が或いは変るかも知れない。その場合には保安庁法の改正も必要となつて来るのではないか、これは私の考えでありますが、それで、そういう場合にどういう変り方をするかと申しますと、今の保安庁法第四条における任務の変り方、それから、それに基いての行動の変り方、この二つが考えられる、そういう意味であります。
○加藤シヅエ君 只今の保安庁長官の答弁によりますと、その変り方というのは憲法の改正も必要としない変り方でございましようか。
○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。勿論そうであります。憲法を変えるというような考えはないのであります。現在の憲法下においての問題であるのであります。
○加藤シヅエ君 それでは、この保安庁の行動及び権限を規定いたしました第四章の六十一条第三項の中に「内閣総理大臣は、前項の場合において、」━━保安庁の出兵のところでございますが━━「不承認の議決があつたとき又は出動の必要がなくなつた場合には、すみやかに保安隊又は警備隊の撤収を命じなければならない。」、こういうふうに、保安隊の出動ということは国会に付議しなければならないという条項があるのでございますが、これは飽くまでも保存しておこうというお考えでございましようか。
○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。私はその規定は置いておいて差支えないと思います。ただ行動は、これまでは、大体において従来の警察予備隊時代の観念でやつて行く、従いましてこの刑事訴訟法その他の関係があります。それらの点を睨み合せて、我々はこれを改正する必要があるのじやないかと今考えておるのであります。
○加藤シヅエ君 木村長官は、せんだつての参議院の選挙で選出をされまして、まだ六年間ございますので、まあ只今は、まだいろいろと御自分もご意見を自由に発表なさつても大分間があると思いますけれども、次の選挙のときには、やはり婦人の投票というものを、余ほど御考慮にお入れになりまして、この辺をよく考えて頂きますようにお願いをいたしておきます。(笑声)
 次に岡崎国務大臣が、MSAの交渉などが済みましたら、東南アジアのほうに御旅行をなさるというような新聞記事が出ておりましたのでございますが、こういうような御計画がございますでしようか。
○国務大臣(岡崎勝男君) 東南アジア諸国との友好関係を増進したいというのは、前からの私の念願でありますが、私が参れるかどうかは、ほかのいろいろな用務の関係もありますので、全然まだ決定はいたしておりません。
○加藤シヅエ君 私ども、日本が御近所の国と友好関係と更に深めて行くということが如何に大切なことであるか、これはただ外交上深めるのでなくて、貿易の面で、大いに今後親善関係を増進して参らなければならないと存じますのでございますが、御承知のように、アジア及び太平洋地域の国々は、それぞれの特殊な感情を日本に対して持つておると思うのでございます。殊に日本が今度MSAの援助を受けるというようなことになりますと、その受け方がどういうふうであるかというようなことが、これらの民族の或る国の人々には、特にこれが感情的にいろいろな影響があるのではないかということが考えられるのでございます。そこで、外務省の条約局が発表なされました表を見ますと、アジア及び太平洋地域の十五カ国の国が、それぞれ何らかの形におきまして、MSAの援助を受けたことがあるか、又は現在受けつつあるのでございますが、そのうちで軍事援助を受けている国が十二カ国ございます。そうして、その十二カ国の軍事援助を受けている国の中の六カ国は、有償援助というのを受けているということがこの表で示されているのでございます。その有償援助を受けている国は、オーストラリア、ビルマは一回だけでやめてしまつた。それからインド、インドネシア、マレー、ニュージーランド、パキスタン、こうなつておりますが、無償で受けております国は、台湾政府と仏印の三国、朝鮮とフィリピンと、タイ国と、こういうことになつているのでございます。そこで、将来日本が、アジア及び太平洋諸地域の国と、いろいろと折衝を重ねて参ります上に、どうも無償の援助を受けているというようなことが、何か日本がえらくアメリカに依存をしているように、そうして有償で援助を受けている国々と交際をいたしますときに、何か日本がこう非常にアメリカからえらく世話になつている国だというような民族感情がそこに起りはしないかという心配があるのでございますが、こういう点を外務大臣はどうお思いになりますか。又この有償援助というようなものを、日本では全然今度の交渉の場合にはお考えにならないのか、その点を承わりたいと思います。
○国務大臣(岡崎勝男君) これはまだ今後の交渉によりますので、今からどちらかということは申上げられませんが、私は今のところは無償で受けるほうが宜しかろうと考えております。
 なお東南アジアの諸国のことをお話になりましたが、ヨーロツパのイギリスとか、フランスとか、まあいわゆる大国と称せられる国なども、非常に多くの国々が無償でかかる援助を受けておりますので、この点は、別段有償であるからどう無償であるからどうという心配は要らないのじやないかと考えております。
○加藤シヅエ君 大変私の持ち時間が少いので、この問題はここで打切りまして、昨日、緑風会の委員の議員が総理大臣に人口問題についての御質問がおありになつたようでございましたが、私があいにくそのときほかの委員会に出ておりまして席をはずしましたので、総理大臣の御答弁は、二、三の新聞紙上で拝見をいたしましただけで、誠に残念でございましたが、それを拝見いたしますと、総理大臣の、この日本の今日の人口の負担過剰、人口の圧力というようなものに対する御認識は、どうも誠に失礼でございますけれども、今から五十年ぐらい前の政治家が持つていた意見を、今日まだお持ちになつていらつしやるというような印象を受けたのでございます。それで、今日は御承知のように、この人口問題について考えておりますのは、何も日本が敗戦国で貧乏だからこの問題をどうこう言つているような、そういう狭い問題ではございませんで、これはもう世界の問題になつておりまして、最近アメリカの或る人口問題研究所の発表によりますと、世界中で一時間に七千人の人間がどんどんと生れつつある。こういうようなことになりますと、どんなに今後科学が発達するかわかりませんけれども、只今のような状態でございますと、将来は太陽と空気と水だけで人間が生きなければならないような時代が来るというような、そういう心配さえもあるというような考え方から、この問題をいろいろと心配いたしておるのでございます。従つて、日本も特に地球上で最も人口の密度の高い国であるというようなことから、この問題については、特に科学的に真剣に総理大臣としても国策をお立てになつて頂かなくてはならないと考えます。殊に言田総理大臣は、まあ非常に民主的な、世論に副うて政治をしたいというようなお考えを始終お述べになつていらつしやるので、ちよつと御参考までに申上げたいのでございますが、只今毎日新聞の人口問題調査会が、一昨年と昨年の二回に亘りまして、四十九才以下の妻を持つた夫婦三千五百組につきまして、非常な科学的な世論調査といたしました。全国に亘つていろいろと、こういう選ばれた夫婦へ質問を発しまして回答を得ましたところ。その九〇%が回答を与えまして、その回答の中の七割というものは、政府が何らかの人口対策をしてもらいたい、こういうことを述べているのでございます。七〇%がこういうことを述べているということは、これは世論がこれを支持していると見て差支えないと思うのでございます。殊にこの実行を必要とするという理由が、総理大臣は、問題を国内移民とか、或いは生産の増強によつてこれを解決すればいいとおつしやいますけれども、将来は、そういうことは確かに解決の方法ではございますけれども、現在においてすでに失業者に対しては、今度の予算にも十七万人の失業対策費を当てなければなりませんし、生活保護費のほうは、二百五十五億というこうなものが予算の中に盛られておるのでございます。こういうようなことを考え、又総理大臣が今後行政整理ということを非常に熱心にお考えになるのでございますが、結局この行政整理が成功できないというのも、日本に人間が多過ぎるところに一番の隘路があるというようなことをお考え下さいましたら、どうかもつと科学的にこの人口問題の研究をして頂かなければならない。勿論、総理大臣は、そのために厚生省に人口問題審議会を今度作るとおつしやるかも知れませんけれども、たつた八百万円ばかりの予算を組んだ、こういうような審議会というものはなかなか本当の科学的な調査をするのにはこれでは誠に不十分でございますので、こういう点もとくとお考えになつて頂いて、この輿論に応えるという意味で、この問題をもつと真剣に、いろいろと予算措置もこれは大蔵大臣にお願いいたしておきますが、来年度は予算措置も、もつともつと十分なものをここに盛り込んでこの問題と真剣に取組んで頂きたいと思います。殊に私は女性の立場から総理大臣に特に申上げておかなければならないのは、今日この家族計画、産児制限というような言葉が今日では家族計画という言葉にまで発展いたしておるのでございますが、この家族計画運動の必要性が非常に叫ばれているにもかかわらず、厚生省のその対策としての準備も誠に不十分であり、要用も甚だ貧弱であるために、その結果といたしまして日本の多くの母親が誠に道徳的にも衛生的にも好ましくない妊娠中絶というようなことをいたしておるのでございます。それで、この厚生省の発表を見ましても、この妊娠中絶をする数が年々実に驚くほど殖えて参つております。昭和二十四年度には二十四万、それが二十五年度には五十万に殖え、二十六年度には六十三万に殖えて、そうして昨年度には八十万に殖えている。これだけは合法的に届出でをしてこういうことをしているのでございますが、届出でをしないものを入れたならば優に百万人以上の日本の婦人たちがこの妊娠の中絶をしているというようなことが、道徳的にも衛生的にも、又民族の将来を考えましても、実に由々しき問題でございますので、総理大臣は特にこの問題についてお考えになつて頂きたい。殊に総理大臣は最も親しくお交わりになつていらつしやると承わつております田中最高裁判所長官、このお方から或いはこういうような問題についていろいろ御意見をお聞きになるのではないかと思いますが、この最高裁判所長官は私も古くからよく存じ上げて、最も尊敬しておるかたでありますが、このお方は或る宗教的な立場からこういうようなものを非常に反対していらつしやる。この宗教の問題から反対をなさるということは、これはそれぞれのお立場で御自由でございますけれども、これは今日国策としても又社会政策としても、又この婦人に対する大きな問題としても、政府当局として、どうしても、もつと真剣に考えて頂かなくてはならない。これを厚生省につきまして、いろいろ私は絶えず厚生省当局にもつと一生懸命にやつて頂きたいということをお願いするのでございますけれども、どうしても総理大臣がこれに対して非常に積極的であられるか或いは消極的であられるかというその御意見によつて、厚生省に非常に大きい影響力を持つておりまして、今日のところ総理大臣が余りこの問題について積極的であられないということが、すべてこれが消極的に影響いたしておりますので、この際、私は大変長々と意見を申上げまして恐縮でありましたけれども、今日こういうような輿論の上に立つておる問題であつて、科学上の問題であるという見地から、総理大臣にもう一度御所見を承わりまして私の質問を終りたいと存じます。
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたしますが、政府としても決して人口問題をなおざりにいたしておるのではないのであります。又失業問題も同じようなことでありますが、併しこの人口問題は実は日本だけの問題ではなくて、世界の今日悩みになつておるところでありまして、又国際的にも考えなければならん面もあると思います。厚生省においてこの問題を決してなおざりに考えておるとは思いません。又殊に厚生大臣においていろいろ意見も持つておられるようでありますから、委細は厚生大臣からお聞きを願いたいが、田中最高裁判所長官は何とこの問題について考えておられようと、私は意見を聞いたことはありません。又宗教に熱心に関係しておられることは承知いたしておりますが、宗教的見地から人口問題を私に言われたこともなし、お尋ねしたこともないのであります。委細は厚生大臣からお聞きを願います。
○加藤シヅエ君 私の質問は終りました。
○木村禧八郎君 関連して、簡単ですから……。(「進行」と呼ぶ者あり)
○委員長(青木一男君) あなたの番のときやつて下さい。
○木村禧八郎君 いや簡単です。
○委員長(青木一男君) じや一分間……。
○木村禧八郎君 先ほど加藤さんの質問に対して岡崎外務大臣から、MSA援助は有償或いは無償は余り変りがないというお話を承わりました。今後私がMSA援助の質問をする際の参考に承わつておきたいと思うのですが、有償の場合は五百十一条の(a)の規定を受ける、無償の場合には五百十一条の(b)の規定を受けるのではないかと私は思います。有償のときには(a)の規定を受けるといろいろな義務があります。無償のときには(b)でありますから余り義務がない。こういうふうに私は承知いたしていたのでありますが、その点、私の理解が足りないのかどうか、その点、参考に聞いておきたいのです。
○国務大臣(岡崎勝男君) いや私の申したのは、東南アジア諸国の日本に対する感触が、日本が有償で受ける無償で受けるということについてそれほど変化がないであろうということを申上げた。というのは自分の国をできるだけ自分で守ろうという趣旨でありますから、これは独立国として当然のことでありますから、これに対して無償であるからいいとか有償であるからいかんとかいうことはないであろうと思います。
○木村禧八郎君 有償と無償は違うわけですか。その点はどうですか。
○国務大臣(岡崎勝男君) それは違います。
○委員長(青木一男君) 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時十七分散会