第017回国会 電気通信委員会 第1号
昭和二十八年十一月十日(火曜日)
   午前十時四十一分開会
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 出席者は左の通り。
   委員長     左藤 義詮君
   理事
           島津 忠彦君
           久保  等君
   委員
           寺尾  豊君
           石黒 忠篤君
           新谷寅三郎君
           小林 孝平君
           山田 節男君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       後藤 隆吉君
   常任委員会専門
   員       柏原 栄一君
  説明員
   公共企業体等仲
  裁委員会委員長  今井 一男君
  参考人
   全国電気通信労
   働組合中央執行
   委員長     鈴木  強君
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  本日の会議に付した事件
○公共企業体等労働関係法第十六条第
 二項の規定に基き、国会の議決を求
 めるの件(日本電信電話公社)(内
 閣送付)
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○委員長(左藤義詮君) 只今より委員会を閉会いたします。
 公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基き、国会の議決を求めるの件、日本電信電話公社関係を議題といたします。
 これより今井仲裁裁定委員会委員長に対する質疑を行います。質疑のおありの方はこの際御発言を願います。
○久保等君 今井仲裁委員長にお尋ねいたしたいのですが、先般本会議で、実は緒方副総理が、従来の仲裁裁定についての政府としてとつた態度について、まあ仲裁裁定が曾つて今日まで六回ばかり出されたのですが、それについて政府は全面的に仲裁裁定を実施しなかつたということはないので、五回ばかりは仲裁裁定の実施をしなかつたということがあつたけれども、そのうちの一回は仲裁裁定を実施したというようなことが本会議の席上でも言われておつたのですが、併しまあ少くとも、私ども従来の政府の仲裁裁定に対する態度というものは、結論的に言えば非常に無誠意だつたといいますか、甚だ仲裁裁定というものを軽視している態度について遺憾に思つておりますが、只今申しましたように、一回は仲裁裁定を実施したということも、これも相当曲げられた形といいますか、完全に実施したということは確かになかつたと思うのですが、従来の仲裁裁定に対する政府の扱い方については、仲裁委員会としても本年の春頃でしたか、政府に対して仲裁裁定の実施方について相当強い意思表示をされておつたというようにも記憶いたしておりますけれども、こうした政府の弁明乃至は態度というものについて、仲裁裁定を最終的な決定として少くとも実施させて参ることが非常に大きな意味で重要な意義を持つておるし、又労働組合側としても、いろいろ問題があつても仲裁裁定というものについては、とにかく涙を呑んでこれの完全実施というようなことについて、仲裁裁定が出たからには、非常にこれの実施方について強い要請をしているのにもかかわらず、従来のそういつた政府の態度に対しては誠に遺憾に思つておるのですが、仲裁委員会として、このような点についてどのようにお考えになつておりますか。それから過去六回の仲裁裁定に対する扱い方について、政府は一回は実施したというようなことも申しておるのでありますが、そういつたことについての今までの終緯について若干一つ御説明を願いたいと思うのですが。
○説明員(今井一男君) 過去十回の裁定の経過を記憶によりまして申上げますというと、十回ともに全部賃金に関する問題でございますが、そのうち三件は金額の小さかつたせいもございますが、国会へ提案に至らずして実施されている例が三つばかりございます。それからあと七つは全部国会に提出されまして、そのうちたしか二つは、提案されてから後政府が撤回されまして、全部実施された。あとの五つはまあ一部実施、こういう形になつているのが過去の実績かと思います。
 それからなお先ほどお言葉にございましたこの春の問題と申しますのは、今年の二月に全国の地方調停委員会の委員長会議が持たれまして、その際に公労法に関する調停、仲裁手続というもの全般を通じまして、関係者の総意といたしまして関係方面にそれぞれ建議書と申しますか、そういつた意味合いのものを出したことがございます。
○久保等君 まあ今度も裁定が実は八単産に出されているのですが、この問題も非常に政府自体としても総花的に出たということについて、まあ労働省あたりも早くも仲裁裁定の将来扱い方について根本的に再検討したいというふうなことも労働大臣が言明したとかいうようなことも言われておりますし、そういう点で、今度の仲裁裁定というものがいろいろな意味で非常に大きな波紋を今後描いて行くということも考えられるのですが、差当つて仲裁裁定というものを、少くとも国会としてもこれは勿論全面的にこれの実現方について私ども努力をして参らなければならんとは思つているのですが、まあいろいろ裁定の問題については、結論として、果して企業能力があるかないかというようなところが問題の実施に当つて一番中心になつて参るんじやないかと実は思うのですが、まあ電通の場合については、先般の電通委員会の席上で委員長から、先ず先ずまあ中か中以上くらいのところに位するんじやないかというようなことが表現として言われておつたようですが、まあ少くとも健全な企業能力の而から考えて、今般出た一万五千円の仲裁裁定というものが、とにかく十分に実施し得る確信を持つて仲裁裁定としては出されたものだと私ども信じておるんですが、ただ増収の見込とか云々のところでは、先般の郵政大臣あたりの御説明によると、若干いろいろ見方によつて必ずしも納得できないというような御説明もあつたんですが、まあ果してこれをいろいろ客観的に眺めた場合には、そういう意見もあり得ると思うのですが、私は、まあ併し少くとも仲裁委員会としては、仲裁を出されるまで公社当局、特に公社当局の本社の方々のいろいろな御説明なり事情をお聞きになつて、とにかく最終的な肚を固められたと思うのですが、まあそういう点でこれをあえて反駁しようという立場に立てば、郵政大臣の言われたようなことも或いは成立つかも知れませんが、併し仲裁委員会としては、私は自信を持つて出された仲裁裁定だというふうに理解をいたすわけなんですが、そういつた点から五現業、三公社の中でも中以上の状況の中に置かれておるんじやないか、比較的よい条件の中にあるんじやないかというような仲裁委員長のお話だつたわけですが、もう少し私は、だから仲裁委員会としては十分にこれを実施し得る能力ありというふうにまあ判断したというふうに理解してよろしいのかどうか、そのあたりを一つ。先般中以上じやないかという程度の大分まあ抽象的な表現だつたのでありますが、この点を一つ若干御説明を願いたいと思います。
○説明員(今井一男君) 御承知の通り、責任のある当局といたしましては、いつ如何なる場合でも予算の見積りというのはとかく消極的になりやすいものであります。これは私の過去の経験からも、自信を持つて申上げられますし、又事実普通の場合に、国の予算が決算におきまして、歳入が見積りに達しなかつたというような例は非常に希れであります。どうしても入るほうは内輪目に見る。又出すほうは万一を慮つて、とにかく安全率を見る。これは私どもそういう衝に当りますと、止むを得ない立場じやないかと思います。しめて見ますというと大抵の場合に若干は歳入超過があり、又支出におきましても剰余が残る。勿論その程度は違いますが、一般的にはそういうことはもう勿論官庁におきましては常識となつております。そういつたことも私ども含みまして、当局の説明を中心に判断を加えますと、若しこれが仮に中労委等で行われた調停案等の場合におきましたならば、完全に支払能力あり、こういう判定の下るケースである、こういう立場で私どもの認定と申しますか、資料に基きましてこういつた結論を出した次第でございます。当局のおつしやることに多少のプラス・マイナスは加わつておるとお考え頂いて結構でありますけれども、併しそのプラス・マイナスというのは、常識から言つて、我々のほうの立場として申せば、むしろ加えるべきプラス・マイナスである。関係大臣等のお立場になりますというと、常にそういつたときには安全率を見られるのは普通でありますけれども、併しそういつたこと自身は、私どもとしてはそのまま完全に、文字通りそれに敬意を表するわけにも参らん、やはり過去の経験に基くところの若干のプラス・マイナスを加えますならば、繰返して申し上げますが、支払い能力があるという断定を、主として民間と権衡をとりますならば、差支えない、こういつたのが仲裁委員会の結論であります。
○久保等君 仲裁委員長に重ねて御質問しますが、この仲裁裁定がどのように今後発展して参るか。まだいろいろ国会としても審議を今後十分に重ねて行かなければならないような状態にありますが、同時にこの問題についての帰趨について非常に最重要な関心を持つておるのは、何といつても従業員であるわけですが、これについて少くとも第三者といいますか、仲裁委員会がこういつた結論を出したことについて、仮にこういつた問題が実施されないというようなことになつて参るとするならば、勿論従業員の非常な失望というものはこれは測り知れないものがあるので、そういつた場合に今後非常に重要な年末期を控えて、従業員のやはり事業に対する意欲というものが非常に低下をして行く。或いはそのことの発展の如何によつては非常に重要な事態を起さないともこれは断言できないと思うのですが、そういう場合に、昨年の例を見ますと、国鉄の場合においても、ああいつた馘首というような問題、実質的には馘首に等しいような組合幹部に対する処罰というようなことが行われておるのですが、これも又客観的に眺めた場合に、成るほど確かに若干事業上に支障を及ぼしたという点だけを現象価的に考えるならば、従業員のやつたことが、実質的なサボタージュであるとかないとかいうような問題もあると思うのですが、併し又半面、少くとも仲裁裁定というものが、仲裁委員会そのものが、十分に実施し得る能力ありと判断したことについて、政府乃至は公社当局として、能力なしということで実施しなかつたという、この問題も、私はやはり公労法上極めて重要な問題だと考えるわけです。従つてその場合に、やはり違法性という問題で、政府並びに公社当局の違法性とう問題が、労働組合自体の若干犯した、仮にそういつた事業上の問題、そういつたようなものと考え併した場合に、従来の措置というものなんかが非常に片手落といいますか、偏頗的な結果になつておると思うのですが、こういつた点については、私は仲裁委員会としては全然実は圏外の立場として実は無関心たり得ない極めて具体的な例だと思うのですが、何らかの形で政府なり公社当局のそういつた公労法に対する極めて、私どもから申しますれば、違法的な政府の扱い方、公労法の精神なり公労法の規定というものを無視したかのような態度について、何らかの形で政府の反省を求め或いは公社当局の反省を求めなければならんと考えますが、そういつたことについて、仲裁委員会として私はただ漫然とこれを見送つておるということでは、何か仲委裁員会としての立場からいつて若干もの足りないのじやないかというふうにも考えておるわけですが、こういつた点について仲裁委員長としてどんなふうなお考えを持つているか、非常にむずかしい問題なんですけれども、私ども常に弱い者が泣寝入をするのだという結果になつておるきらいが多分にあるので、こういつた点についても仲裁委員会としての御所信を、若しお持ち合せであれば承りたいのですが。
○説明員(今井一男君) 個人的には勿論感想も意見もないわけでもございませんが、御承知の通り仲裁委員会というのはすべて受身の立場に立つて紛争に対しましての結論を出すということがその任務とされておりまして、職権によりまして斡旋等の立場に乗出すことは、法律的にも禁止といつては何ですが、できない形になつております。で、調停委員会はそれと違いまして積極的にそういう事態が起りましたならば、あらゆる場合に自己の判断によりましていろいろ紛争の斡旋に乗出せるような規定になつておるのでありますが、私ども公労法の制度によりましてできました仲裁委員会であります以上は、やはり公労法の建前で動くことがそれによるゆえんであると考えまして、只今お話になりました点も確かに労働問題として考えますと非常に大きな問題点だと思いまするし、又現に現在の公労法のいろいろな点におきまして幾多の不備がある。例えば公社職員の中でも特殊な職員、即ち二カ月以内の期間という雇用契約に基く者は、これは縛られない。従つてこの諸君はストをやることは勿論立派にできる。合法的にできる。又只今の労働基準法との兼合いから一方におきまして超過勤務拒否なんということは、これも全然問題にならない法律で認められたことであります。そういつたことから公共事業に対する影響というものは完全に生じ得る法律上の建前になつております。と同時に、昨年のように具体的には影響のなかつた問題が又法律的には条文で引つかかりまして、馘首という問題を生ずる、こういう一体公労法というものは何を所期し、何を狙つてできておるのかということにつきましては、十分その検討の余地はあるだろうということは私ども考えられるのでありますけれども、それかと申しまして、仲裁委員会というものが、仲裁委員会の立場においてこういつた問題に積極的に乗出すということはむしろ適当ではないのではないか。我々としてな、我々に与えられた結論を出しましてその結論を結局現在の法律では、国会の御審議に待つ以外に、我々の法律上の立場はそれ以上のものを申上げることは出過ぎてはおりはしないか、かように感ずるものでありまして、お答えにならないかも知れませんが、一つ御了承願いたいと思います。
○新谷寅三郎君 私は公労法で我々国会のほうに課せられている仕事というものは、予算上、資金上できるかどうかということでございますから、別に仲裁案、これを批判するような気持でお尋ねするわけではないのですが、ただこの仲裁の理由書を拝見しますというと、二、三私どもに不明瞭な点がありますので、その点だけ明らかにして頂きたいと思います。
 一つは、労働政策上の問題でございます。この理由書に書いてありますように、組合側と公社側とで労働生産性を測定する基準も違うし、考え方も違い、仲裁委員会としては公社側の数字のほうが事実に近いように思われるというようなことが書いてあるわけです。これは資料として頂ければなお結構なんですが、組合側で主張しております労働生産性についての試算と申しますか、試算の根拠になる数字、それからそれに対して、公社側で主張しておられます数字、それの根拠、これは恐らく仲裁委員会のほうで両者を比較検討されただろうと思いますが、それを若し差支えがなければ私どものほうに資料として頂ければ結構でございますし、なおそれについて委員長から総括的にもう少しこの間伺いましたよりも詳しい説明が伺えれば結構かと思います。
 それからもう一つの問題は、こういうふうに公労法で仲裁をおやりになります場合に、勿論各企業、各事業の実態から見まして、それぞれの事業特有の要素も織込んで仲裁をされることが勿論であると思いまするが、一方から申しまして、その事業が非常に収益の多い事業であるから、従つてここまでは出そうと思えは出せる、従つて、この辺の賃金水準はやつても差支えないというような意味では、これは非常に仲裁委員会としてはまあ考慮に欠けるところがあるのじやないかという気がするのであります。そこでやはりこの全体の同様な種類の賃金水準というものを一応頭において、全体の物価水準或いは他の公務員の賃金水準というようなものも一つの大きな考慮としてお考えになる必要があると思うのであります。ここではそういつたことも十分考慮に加えられておるように書いてございますが、伺いたいと思いますのは、同様の種類の民間の賃金水準が一体どの辺に来ておるか、それがこの一年の間にどういうふうに向上したかということでございます。ここには公社の出した資料として、民間賃金は最近一年間に一五%乃至一六%程度上昇しておるという事実を上げておられますが、これは恐らく同種というよりも、標準になる民間企業全体を平均しての賃金水準のことじやないかと思うのであります。例えば電信電話事業について申しますると、他の例えば外勤の工事関係の人たちについて言えば、電気会社の人たちとも非常に同様の種類と考えられましようし、又この電信電話の屋内の作業につきましては、例えば新聞社とかいうような所とも比較のできる点も多いように思います。或いは保守要員について申しますると、一般の電気通信のメーカーの仕事とも大分類似するように思えます。いろいろな種類がありまするけれども、そういう似通つた展開事業との貸金水準を比較して見るということも、非常に重要な考慮の要素にならなければならんのじやないか。そういつた問題について仲裁委員会のほうでは、十分お調べになつて資料を整理されましたかどうでございますか。若しそうであれば、そういう資料を提示して頂くと非常に結構かと思います。その二点を。
○説明員(今井一男君) 第一点の生産性の関係は、組合側の出しました数字も全部根拠は当局発表の数字によつたものであります。当局は勿論御自分の数字をつかんでこれを組合せる場合、恐らく電信電話公社におきましては、その電信電話事業というものの労働生産性は何で計ることが一番よろしいかといつたことは、細かに申しますというと非常に議論の尽きない問題かとも考えるのでありますが、一般の製造工業の場合は、最終の生産物の物量で計ることが、労働生産性の問題として正しいといたしまするならば、やはり公共サービスであります電信電話事業におきましても、最後の生産物でありますところの電話の通話の量並びに電信の量というものによることが一番まあそれに近いのじやないか。組合のほうも恐らくそういつたような立場で考えられたのだろうとは想像できるのでありますけれども、資料をあわててといいますか、急いでこしらえさせましたために、特に生産性という問題を、組合としても今年初めて取上げた問題であります等のために、却つて複雑な方法をとつてその実質を捕まえる方法としては、これは七つの物差というのが却つて妥当でないのじやないか。ただ電話の通話数にいたしましても、市内電話と市外電話をどういうふうにして組合せるか、電報というものも、字数の長さ等をどう見るかというような細かい問題もあると思いますので、これも議論して参りますというと、非常にいろいろの見解が出て参るだろうと思うのでありますが、結論的には、やはり最終生産物でありますところの当局の物差のほうが簡明であろう、こういつた式に私どもとしては判断をいたしたのであります。その間の数字につきましては、私どものほうにまとめてございますから、後ほど整理いたしましてお手許へお届け申上げます。
  それから第二点の問題でございますが、非常に誇張しますと又誤解を生じまして私どもの本心ではないのでありますけれども、やはり一つ一つの企業につきまして労使がお互いに主張を交換して、そうしてその主張の食い違いの部分が私どもの所へ参りまして、私どもはそれに対してこう譲れと、君のほうの意見はこの点は正しいが、この点はおかしいじやないかというようなことで歩み寄りを願いまして、どうしてもできない部分に対しまして我々のほうで独自の見解を加える。こういう形をとつて参るのが、私どもとしては公労法の建前と考えますので、そうなりますというと勢い似たような産業、或いは公務員等に対しましても多少の食い違いが出て参ることはこれは止むを得ないと思うのであります。当局そのものも、やはり考え方といたしまして非常に勉強いたしまして理路整然と言われるところもあれば、余り不勉強であつて組合のほうの主張にたたみ込まれたところもあり得るわけでございまして、而も労使の問題でございますので、当局のほうでここまで譲つてよろしいと言われました場合に、私どものほうから、そこまで譲るのはあなた方行き過ぎじやありませんか、もう少し厳しくせられたらどうですか、こういうことを私どものほうから言うべき立場でもないと思うのであります。従つて今ののような制度をとります限りにおきましては、若干の食い違いができることは、これはどうも私どもとしては止むを得ないと考えるのでありますが、それにいたしましても、当局は皆政府の方針に従つて一応動かれておるわけですから、その間公務員との権衡ということも十分頭に置いた上でものを言われます。その辺の甘い辛いという点も極めて僅かなものではなかろうか。従いまして私どものほうから、その意味からも余計な口出しはする必要もないのではなかろうかということが一つと、それからもう一つは、私どもの立場の弁解になりますが、とにかく八つの案件を僅かな、結局延べまして八十日ばかりの間に処理いたしたことになるんでございますが、それぞれの少しずつ食い違いました意見をそれぞれその意見に従いまして話を聞き、議論を交してやつて行くためには、而も全部三人の委員だけで、僅かな十人ばかりの事務局員を督励いたしましてやりますためといたしますと、こちらが積極的に資料を集めるというような余裕はまあ殆んどないと申上げるのが実情でございます。又その労働問題の紛争と申しますのは、まあ私どもの率直な感じを申上げれば、科学的な真実というよりも、むしろ両当事者の納得という線に要するに強くあれを置くべきではなかろうか。まあ毎年々々繰返すことでありまして、従つて一度や二度多少の足らない場合或いは行き過ぎの場合がありましても、いずれ長いうちには調整され、長いうちには落着くべきところへ落着くという意味も含めまして、やはり拙速をとるということが建前にもなつております関係もございまして、特に貸金を出す方法にはいろいろございますので、その方法のうちで甲の途、乙の途、丙の途、両者共に今年は乙の途をとろうという場合に、私どものほうで乙の途をとつてはいけません。甲の途をとりなさい。こういつたこともこれは言いかねる面がございます。理論的に申しますと、我々が自由な立場で賃金論をいたします場合におきましては、只今御指摘のように、同じような職種のものを組合せまして、そうしておつしやいますように、保守の人はそういつた電力会社と権衡をとるとか等々というような要素を加味いたしまして組合せて行くのが、私どもも理論的に一番近いものではなかろうかとは感じます。その点は御意見の通りだと思うんですが、ただそれにいたしましても、現在の民間賃金と申しますのが、すべて企業ごとの支払能力に或る程度チェックされておりますので、それで非常に景気のよろしい所へ勤めておるところの一人の電話交換手を考えましても、このほうの賃金は相当高い。又景気の悪い所へ勤めておる電話交換手はこれ又賃金が低いというようにこれは勢いどうしてもそうなる現象がございます。従いましてこれが民間の場合ですと同じような産業が幾らでもございますから、その同じような同種産業の業態を横に並べまして、更に職種別に組合せて行きますとより合理的なものができますけれども、電信電話事業のように、全く独占的でありまして、而もこういつた規模のこういつたことを専門にやつております産業といいますと、他に類例がございませんので、その点から只今おつしやいましたような職種別の組合せをいたしましても、最後にやはり調整という問題が起るのじやないか。そういつた感じは持つているわけでございますが、ただ今回の労使の紛争の主張の根本は、生産性を中心とされたものでありまして、公社のほうでは、いずれかと申しますとそのほかに一般民間賃金、これは今御指摘の通りむしろ全産業、日本全体の民間賃金が一年間にどれだけ上つているかと、こういつたことを中心にいたしまして御判断になつたのが一つと、それから更に生産性等の問題を加味されたこと等がお考の基礎になつているようでありますが、まあ公共性のある企業におきましては、お話のように、私ども、如何に仮に好景気になりましても、非常に偶然の結果からして非常に金が余るようなことがございましても、そのために非常に高い賃金を払うということは、これは決して妥当でないと思います。それは公共性のある事業としては、これはもう控えなければならんことでありまして、恐らく当局のほうもその点は十分含んでおられることであろうと考えます。同時に、そういつた企業の偶然的な景気不景気に左右せらるべからざる性質を持つております公共企業でありますだけに、又その反対の場合に、如何にそれが支払能力が窮屈でありましても、それがそのままに比例しちやうというのも妥当でないのであります。従つて多少の差はつきますけれども、その差というものは民間産業に比べれば非常に小さな差である。併しながらやはり企業別に組みます以上は、或る程度の差はこれはどうしても止むを得ない。そういつたところに一応の目安をおきまして、話を固めて行くのが順序じやなかろうかということが、私どもが従来からとつて参りました基本的な考え方であります。
 なお、一般民間賃金の上り方と申しますものは、これは御参考までに申しますというと、時期の採り方によつていろいろ数字が出て参ります。当局の御主張の中に、一五―一六ということをおつしやつておりますが、その後だんだん数字が固まつて参りますと、これは少し大き過ぎるのであります。一四―一五ぐらいのところが大体当つているようであります。
○新谷寅三郎君 よくわかりましたが、もう一つ伺いたいと思いますのは、電信電話のサービスは、これはまあ非常に労働としましては特殊なものであります。又それが直ちにサービスに影響する性質のものでありまして、いわば国民全体にそれが響いて来るというものでございますから、賃金をきめます場合には、そういう点が十分に、賃金を通じてやはりそういう特殊性が発揮されるようにきめておかなければならんと思うのでありますが、ここで私から申上げるまでもなく、御承知のように、例えば電信のごときは非常に深夜業が多い。電話でもかなりそういうものがございますけれども、特に電信なるものは深夜業が多いのじやないかと思います。その場合に、従来我々が痛感しておりましたのは、いわば例えば超過勤務手当が非常に少い。本来もつと深夜業をさして、そうして夜のサービスをやらせなければならんのにかかわらず、超過勤務手当が原資が非常に少いために無理やりにそれをカットしなければならんというような例が過去においてはたくさんあつたようで、この裁定の案文を拝見しますと、一応両者が納得をした調停案、この前の調停案々基礎にしているのだから、まあそういう労働の特殊性というものは或る程度十分織込まれているわけだという御見解のように考えるのです。今度の仲裁に当りまして、そういう電信電話の持つております労働の特殊性というものについては十分考慮されたかどうか。ただ前の調停案ということになりますと、多少これは私も意見があるのですが、まだ公社になつてから日が僅にしかならない。従つて一回両方で調停案に近いものを実施したわけですが、その中に果して電信電話の労働の自主性というものが十分に織り込まれたかどうかにつきましては、それは相当疑問があると思うのであります。これは事業の発展のためにも、又公社の問題についても、そういう特殊性が十分織込まれたような賃金でないと非常に結果としては困つた結果になるのじやないかと考えますので、これは必ずしも賃金を高くしろというのじやありませんが、高くする部分もあるし、又一つはそうなつて然るべき部分もあると思う。そういう特殊性が十分織込まれて賃金の支給し得るような前提でお考えになつておりますかどうか、その点もう一遍伺つておきたいと思います。
○説明員(今井一男君) 確かに特殊性があることは私ども認めるのでありますが、まあこの裁定の中に書きました中で、結核の罹病率等は、特に電信電話事業が高いというほどにも認めがたいと思うのであります。神経系統の特殊性、それから今おつしやいましたような二十四時間勤務の特殊性等はこれはどういうふうなもので、どういうふうな方式に従つてどの程度織込むかという技術的問題は、これは非常にむずかしい問題でありますけれども、観念的には、何と申しましても考慮しなければならないことにつきましては、私ども別に異存があるわけではございません。そこで若し時間的な余裕がありますならば、私どもこちらの肚の納得の行くところまで掘下げたい問題であることはむしろ御指摘の通りでありまして、その点異存はないのでありますが、併し又一面考え方によりますというと、この問題もずつと以前から要するに電信電話事業にもくつついて来ている基本的な問題でございますので、私どものここにおおむね織込み済みと解すべきであろう、と申しますのは、又これを裏を返しますと、恐らくこの中にはこれじや足らない部分もあろう、こういつた考えも……、裏を返せばそういうふうに御解釈頂いて差支えないのでありますが、まあ併しそのほかにもいろいろな角度からやると、先ず先ずというところが拙速を尊ぶ我々のほうの今回の結論でございまして、こういつた問題は、到底我々のほうが中に入りまして専門的にいろいろと、何と申しますか、御斡旋なり、あれを申上げることはいささか困難かと思いますので、むしろ労働科学的な検討等、労使の間で、特に当局のほうで御勉強頂きまして、そういつたことの身体に与えるいろいろの具体的なデータをお集めになりまして、長期間かけまして、他のそれに似たようなものとの間にどういつた開きがあるというふうなことから確実な科学的な資料に基きまして、将来ぴつたり割切れることを心ひそかには実は望んでおる次第でございます。
○小林孝平君 ちよつと御参考までにお伺いいたしたいのでありますが、この八つの裁定のうち、先般の委員長の御説明では電電等の公社は、経理上から考えて実施の線は中の上くらいという、こういうようなお話でございましたけれども、この八つの正確の順位というものはないかも知れませんけれども、大体どういうふうに、非常にたやすいのはどう、むずかしいのはどうというようなことをちよつとお知らせ願いたい。
○説明員(今井一男君) 私の申上げます意味は、企業的という意味で一つおくみ取り願いたいのでありまして、今の予算の枠という意味ではございませんが、で、まあ申しますれば、やつぱりアルコール、印刷、林野、造幣なんというようなこれは電通以上に楽ではないかと、企業的に問題がないのじやないか。殆んどそのために他に影響というのも絶無とは申せませんが、努力如何によつては全然ないとも言えるものであります。まあその次くらいが電通でありまして、とにかくちよつとの狂いで三月末までの自然増収というものも相当大きな差が出て参りますから、私どもといたしましては、さつき久保委員にお答え申上げましたように、当局の言い分というものはそういつた安全率は十分見てあるのが……まあいき物でございますから、或る程度のプラス・マイナスはいたしておりますが、これは特殊な事情が起ります場合、或いはそうでない場合も起りますし、又おおむね災害の時期も済みましたけれども、そういつたことも将来百パーセント皆無とも申上げかねます。併し私の率直な感じを申上げますれば、若し電信電話公社において、これだけはやる代りに労働組合のほうに、その代りこういつた面の物件費なり何なりは節約してくれ、こういつた声を掛けられれば、恐らくそういつたいろいろの心配は相当消して行けるのではないか。それでそれによつて消し飛ばして解決できるところの困難性を除いてかかる程度と、かように、変な言い方でありますが、そういう感想を持つております。
○小林孝平君 その他の国鉄、専売、郵政というのはどの程度のものを言うのですか、見るのですか。
○説明員(今井一男君) そうでございますね、専売は企業的に申すと、やはり電通よりはちよつと、もうちよつと余裕がございますね。従つて中の上と申上げたいが、そうなるとまあ中の中ということになると思います。
○山田節男君 僕はもつと根本問題としてちよつと今井委員長の御所見を伺いたいが、実はこの公共企業体等労働関係法を二十三年に私が労働委員長として立法の任に当つた責任者として特にお伺いしたいと思うが、当時今井君は大蔵省の給与局長をしておつた。この立法についても相当いろいろ御意見を伺つて作つたのですが、爾来もうすでに足掛け五年たつて、毎年仲裁裁定というものが労働争議の、むしろこれは何といいますか、突破口になつておる。立法の趣旨に反した形になつておる。この種の、悪く言えば仲裁委員会はもうまるでトラブル・メーカーのように言う人もあるが、併し私は立法者の立場から、いろいろ五カ年間の仲裁裁定の扱いの政府、それから企業の当事者、それから国会それから一般輿論、この立場で見ると、やはりどうも公共企業体等労働関係法の第十六条とそれから第三十五条、ここに私はこの法の矛盾があるように、私はこれは恥しい話だけれども、結果から見ると感じるのですが、殊に三十五条の前半の趣旨、それに後半の但書、それと例の第十六条の「公共企業体等の予算上又は資金上」というもの、皆これは今日まで仲裁委員長として数々の裁定を行なつておるが、で、私は立法者としてお聞きしたいが、あなたは仲裁委員長をされて、その十六条とそれから三十五条をこれを一体どう考えますか。その点をお伺いしたいと思う、概念的でよろしいから。
○説明員(今井一男君) 立法の趣旨を中心にしてものを考えますと、三十五条によりまして、労使共に拘束を受けるという意味は、これによつて組合側としても再建を図ると、こういうふうに解するほうが少くとも立法の建前から言えば正しいのじやないか。併しながら事、国の予算に関係いたしますが故に、予算上の問題を解決することは、これは国会の議決を経なければできません。そういつたために十六条の第二項というものが加わつたのである、極めてあつさり申しますと私どもはそう理解するのが一番精神に副うゆえんである。従つてそれまで国会の議決を、若しこれが民間の場合でありますならば、もう裁定が下りましたならば、それに基きまして執行力をとりまして差押えでも何でもできる仕組みに一応なるわけでございます。ところが国の関係しておる企業の場合は、そういうようにしたのでは困る。少くとも予算制度というものに影響がある。従つて予算につきましては国会の議決を経なければ、修正はできない。そこで国会の議決が要る。ところが法文がたまたま裁定そのものを国会にかけるような形になつてしまつたものでございますから、そこにいろいろと疑問を生ずる余地が残つた。併し恐らく立法者、特に当時の総司令部の考え方は、その辺は、非常に細かにものを考えませんから、向うの連中は御承知の通りでありますが、従つて大ざつぱにそういうその予算的措置を講ずるというところに、たまたま裁定をそのまま出すような、ああいうアグリーメントなんという言葉を使つたことが問題を生じたのではないか。現行法の解釈如何は一応別といたしまして、私どもといたしまして概念的に考えますと、そういう建前にして、ただそれまでは企業側におきましても、普通の民間の場合ならば抗弁権にならないものが、国の予算という制度の建前からいつて、これはまだ国会の御承認がないからして我々は払えませんぞ、こういつたことを言い得る、こういつた抗弁権を与えたものと解することが一番趣旨にはかなうだろう。これは殊に私は国鉄の第一次の裁定の場合にこういつた見解を国会でも申上げましたけれども、その基本的な考え方は今でも変つておりません。併し現行法といたしましては、その後給与総額なんというものができましたために、現行法解釈としては、私どもの今の基本的な考え方がちよつと無理になつたような感じはいたします。併し立法精神は恐らくそこにあるだろうと、まあさように推察しておるのでございます。
○山田節男君 実は公共企業体等労働関係法を作るときに、私は労働大臣がようしないので、GHQのレーバー・セクシヨンの民事局長と再三折衝した。そのときの私が一番中心問題としたのは、この第三十五条の仲裁裁定は絶対的のものだ。併しこれは労働争議と関連した問題であるからして、仲裁委員会の裁定を若し当事者が聞かない場合、最後の裁定は、従うべき政治的な裁定は誰が行うかと言えば、これはこの法律では国会になつておる。このとき私は例えばアメリカのナシヨナル・レーバー・リレーシヨン・ボードの仲裁、この場合にはこれは大統領が最後のこれに対する裁定権を持つているわけです。カナダの例をとつた場合に、カナダの場合においては、これはあそこの総理大臣とかでなくして、これはもうむしろその結果を、仲裁案、調停案というものを公表して、そうして一般の輿論に訴える、こういうやり方でやる。アメリカでも州によつてはそういうことをやつておる。ところが国会の裁定が別に行われた場合には、仲裁は変更し得るということは、これは私は非常にそこが、あの当事GHQがこれを非常に主張したというのは、日本の政局は非常に不安定である。成るほど日本ではアメリカの大統領に匹敵するものは総理大臣であるから、総理大臣が持つべきだ。ところがGHQとしては、日本の内閣と申しますか、内閣制度をああいうふうにして見たが政局は安定しない。それを日本のまだ政治、文化の余り発達していない所でこれを最終的に利用した場合に、むしろこれは労働者の利益を非常に阻害する。殊にレーバー・セクシヨンのほうの関係はそれを非常に恐れたわけなんです。そこで私が質問申上げたのは、国会の裁定によつては仲裁裁定というものは変更し得る。例えば十六条を見ましても、公共企業体の予算上、資金上、これは不可能な場合においては政府はそれを、そういうものを内容とする協定には拘束を受けないということになつた。これは一面私は非常にいいことだと思いましたが、併し第十六条の後半、第二項、それから三十五条の後段、これが、むしろ私は国会にそういう最後の裁定をさせるということが非常に悪かつたのじやないか。むしろ総理大臣、当時の行政の首長が裁定を行うほうが、よかれ悪しかれそのほうが最後的に早く物事が決定するのじやないか。例えば八つの公社の裁定について、何ら最後的の解決が行われぬ場合には、八つの公社というものは、この年末にかけて一種のサボタージュ行為を以て非常に何といいますか、公共企業体等労働関係法を制定した趣旨に反する結果になつて来る。この点があなたは仲裁委員会の委員長とされて、裁定の主体は国会のほうがいいか。或いは総理大臣がいいか。その他何かいい方法、名案があるかどうか。この点を一つあなたの過去の御経験から、これ又率直に一つ何ら束縛されない気持で意見を承わつておきたい。
○説明員(今井一男君) これは山田先生がお詳しいことで、私どもは実はこの公労法のできましたときの沿革、交渉等は全然タッチしておらないのでありますけれども、ただ私の当時聞いておりましたところ、並びに当時の司令部の考え方等と結び付けて、更に又日本における官公労働というもののあり方から考えますと、お言葉ではございますが、総理大臣に最終決定権を与えるということは適当ではないと考えます。日本の大体この公労法ができました立法の一番の動機は、御承知の二十三年の一月のマ書簡でございますので、二・一ストまで日本の官公労働はあらゆる労働運動の主導権を持つておつた。又事実当時は一切のことを団体交渉できめておりました。で、団体交渉をやりますというと、これはいずれかと申しますれば、このほうの予算を削つてもこちら側へ廻せるじやないかという議論をせざるを得ません。如何に政治的になるなと申しましても、予算問題に口を出さざるを得ません。これは二十三年の夏頃が一番甚だしいのです。予算そのものを団体交渉できめろ、こういうことをはつきり言つた組合側の代表さえおつた現実であります。それでそういつた趣旨から申しますれば、やはりそれを内閣打倒、そういつた運動と正面からかみ合せるという立場はまずいのじやないか。ところが国会というものを尊重するという考え方は、これは民主主義の浸透と共に相当日本にも徹底していると思うのであります。で、その意味から申しますと、過去におきまして或いは裁定が出ますと、すぐ政府のほうでこれはできないとか、できるとかいう式の行き方はむしろ好ましくないのじやないか。率直に申しまして、内閣打倒運動なんていう労働運動はございますけれども、国会打倒運動なんていうのはこれはないというようなことから申しましても、又国権の最高機関として日本に新らしい国会制度ができました意味からも、国会にお任せするのが少くとも日本としては適当ではなかろうか。その意味におきまして、今の制度は私必ずしも悪いとは思いません。ただ工合が悪いと申しますのは、裁定そのものがかかるという仕組であります。これは賃金問題のようなのは、見方によりまして答えは幾らでも出ます。私どもは私どもの裁定が決して正しいものとも、一審妥当なものとも、それほどのうぬぼれも持つておりません。併しそれにいたしましても、拙速を尊んで、とにかく紛争を早く処理するというのがこういう制度の狙いであります。そのために公労法によると、ほかの緊急案件、総理大臣の指名の次くらいに緊急性をもつて、国会の開会後五日以内に出せというような、こういうむずかしいことまできめられている。そういつた場合に裁定をもう一度リフアーするというようなやり方はやはり三十五条との関係からいつてまずいのじやないか。飽くまで国会へ出す予算の関係というものは、予算の変更というものが妥当であるかどうか。一つの企業体だけとして考えた場合にはそれは妥当でありましても、それに対しまして、ほかの政策から加味いたしまして、国会のお立場で、国家財政なり国民経済の立場から、予算にこれだけ追加して枠を殖やすこと自身に対して御判断があるということは、これは国営企業の建前からいつてどうしても止むを得ないじやないか。ただその建前が、従来は公社だけでありましたからして、公社というものは申すまでもなく国家と違つた一つの独立法人であります。従つて公社における団体交渉、公社総裁対組合という関係というものは、決して直接政府対組合という関係ではございませんでした。ところが、昨年の公労法の改正によりまして、五現庁が入りましたので、そこでその点非常に観念的にまあいわば不明確になつて参りました。又公社の予算でありますれば、何もこれは憲法上国会へかける必要はないものであります。ただ財政法上の原則によつてかけるだけの話であります。ところが、これが五現庁が入りますと、五現庁はこれは憲法上特別会計としては国会へかけなければならないという意味合いから、そこに色彩的に変つたものが出て参つたことは私どもも感じますし、従いまして、法の具体的な解釈としては、従来より変つた解釈をしなければ現行法と辻棲が合わないような面も若干出て参つたようにも思うのでありますが、併しまあ要しまするに、少くとも今の日本の現状から申しますれば、やはり国会で予算的な御処理についての御判断を頂くという建前が一審筋であり、それが、その結果、理由がありまして、国会がおきめになつたことならば、これは国民としても止むを得ないという、こういう納得が得られるのじやないかというように、全体を通じますと私どもは感じておるのであります。
○山田節男君 今井委員長が言われたことは、理論としては正しいのです。ただ私は飽くまで現実の問題としてこれを考えると、国会へ出すと一つの政治問題化するのですよ。それから今日の憲法からいつても、要するに国会、特に下院の、衆議院の多数党が内閣を作る、これは原則なんです。そうすると、行政府と行政府の首長とそれから国会における勢力分野というものは、連立内閣でない限りにおいては大体同じなんです。ただ、今一番問題にしているのは、国会でやるとすると、理論的に言えば、最高の国権の府として国会で裁定を下すのが一番正しい。これは理論的に言つて尤もなんです。ところが現実の問題として、日本の政党政治はまだ非常に低調なんです。私は国会において議員としてそんなことを言うのはお恥かしいのだけれども、国会内においてもこういう一種の労働問題に対する常識は発達しない。国会議員は、まあ日本で言えば社会党のほうが極度に主張する。併し保守的な政党は、イギリスやアメリカに比べて、労働問題に対する理解がないとは言わぬけれども、非常に低級なんです、そこにアメリカやイギリスとか、まあイギリス程度のものだつたら、これは労働問題としてかなりフェアーな問題として、フエアーにこれは解釈し得る公算が多いわけです。ところが日本においては、現実問題として国会においてこういう政治問題についてごちやごちやして、いつまでも片がつかない。これはもう過去あなたがここへ数回お出しになつて毎年体験されていることなんです。理論上では国会でやる、これは今の憲法上一番正しい。実際問題として、それならばむしろ国会でごたごたするよりも行政府の首長が責任を以てやる、そういうことになれば国民はこれに対して批判します。私はむしろそのほうが、実際的に言えば、仲裁裁定を最後決定をするのは行政府の首長がやつたほうがよく、国会の裁定ということはむしろ迂拙である。こういうあなたは体験上感じを持つておられやしないかというので質問申上げたんですが、まあこういう委員会で速記を付けてお話しておるので、あなたもそう深いことは言えないかも知れないが、私はどうもあなたが毎年この裁定問題で苦労されて、国会自身もこれがために徒らに紛争を来たし、会派の対立になるということになつて来て、誠に私は遺憾に思うのですが、これはまあ私はあなたの過去の経験から生んだ一つの御意見を率直に承わりたいと思つたんですが、それ以上言われなければそれ以上追及いたしませんが、次にお伺いしたいことは、今の第十六条の資金上の問題について、これは政治的にあなたは算盤をはじいておるのでこういうものが出た。特別会計であるから予算は国会の承認を経なくちやならん、これは現行法上止むを得ない。この予算上、資金上という予算ですね、予算上というこの部分に対して、制度上はこれは現行法上止むを得ません。止むを得ませんが、併しこれはなくしたほうが、むしろ仲裁裁定が最後的な結果に行くより早い途じやないか。これは非常に変な表現ですが、私の申上げるのは、予算制度を、国会が承認云々というようなことを、否認するんじやございません。ここを何とか調整して仲裁委員会の裁定を最後的なものとして権威あらしめるという方法はないかと思うのですが、この点について何かお気付の点があれば参考に伺つておきたい。
○説明員(今井一男君) 妙な例でございますが、例えば公社なり或いは現業庁なりが、予算がないのにかかわらず、仮に物を買うような契約をしたとします。如何にいたしましてもこれは債務が残りますし、予算がないということを以て別に取引先に抗弁権は成立しないのは常識であります。私どもはまあ自分たちの立場がそうであるせいかも知れませんが、仲裁裁定のできましたあの制度の根本はやはりそこにあるかと思うのであります。ただそれがそうなつては困るからして、そうなつては困るから、やはり政府は拘束しないという意味におきまして、それが抑えられる。予算の枠を変える場合に、又国会で予算を付けて頂かなければやれないと、こういつたような十六条の二項というものができたのは、ともかくも立法の動機であることは私間違いなかろうと考えられるのです。従つてその予算というものは、国会の承認を経るということが一番重点があると考えまするが故に、第一次国鉄裁定の場合にやかましくなりました、例えば大蔵大臣がいいと言えば、流用は認められるから可能である、或いは悪いと言えば、流用が認められないから不可能である、こういつた議論が第一次裁定の場合に行われました。併しこれは私の観測でありますが、政府のほうでもその解釈はやはりまずいというふうにお考えになつたようでありまして、その代りでき上つたものが只今一番大きな引掛りになつております給与総額という枠でございます。給与総額という枠は、これは私どもに批判を許されるならば、従来特別会計で公労法の適用のない場合にはそういう枠はなかつた。特別会計が公労法の適用になるというと、そういう枠が出て来るということは、これは何と申しましても独立採算制企業の能率発掘という点からみてこれはおかしいと思うのです。予算全体の枠そのもの、千億とか二千億とかという枠そのものは、これはどうしても国会の承認を経なければならん問題でありますが、私ども公社につきましてならば、現業庁と違いまして、憲法上国会へ出す必要のない予算でございますからして、私どもはむしろもつと変つた角度の事業計画的なものを国会へ出すことによりまして、公社につきましては、そこを相当に何といいますか、改書する余地があるのじやないか。即ち大体まあ電信電話公社で申しますれば、幾らの通話数、幾らの電信通数、こういつたものに対して原価計算として幾らでやれ、それで勿論これは或る程度事業分量が殖えますれば、正比例して経費を殖やす必要は恐らくあるまいと思います。それは恐らく殖やします場合におきましては、百なければならんものが予定数以上を示した場合には、百は九十五になつてよろしいとか、九十六でよろしいとかいうふうな一定の率はあるかと思うのであります。そういつたことに関します限りにおきましては、とかく一定の収入が見合うのでありますからして、そういつたことを枠にいたしまして計画的に国会の承認を経る、そういつたようなルールが若し実現できますれば、公社に関します限りにおきましては、恐らく国会のそう御厄介にならないでやれるという仕組が成立し得るのじやないか。但し現業体につきましては、何と申しましても憲法上これは国会を経なきやならんからして、そういつたような方法はこれは不可能であります。公社だけは、私は一番簡単にやれる方法にして、又各公社それぞれの性質から申しましても何千億の枠というようなことは余り大したウェイトはないのでありまして、要するにこういつたサービスをこれだけの規模、これだけの経費でやる。そうしてその標準が一番大きな国会で御判断頂く中心になるのじやなかろうかと考えますからして、そんなような思い付きだけは持つているのであります。
○山田節男君 もう一つ私はお伺いしておきたいことは、これは今井委員長もこういう裁定案を作られるまでに参考にされたと思うのですが、こういう八つの公社の公共企業体等労働関係法の適用を受けるものがあるのですが、これは御承知だろうと思うけれども、電信電話公社法は、殊にこの第七十二条ですが、給与総額の問題を謳つておりますが、これは我々立法当時、国鉄、専売公社仲裁裁定についての問題で毎年トラブルを起しております。何かいい方法はないかということをいろいろ考えております。御承知のようにこの委員会は各界の代表でおのおのイデオロギーを異にしている会派の代表ですから、最大公約数でこれは衆議院も遂に呑んでくれたのですが、この七十二条は、成るほどこれははつきりは謳つておりませんが、併しながらこれはインフレーシヨンとか、その他の天変異変、こういう災害等を考えますれば、給与総額に対する一つの伸縮性を持たした立法措置を講じておるわけでありますが、私はこれは成るほどあすこに示してある金はたしか二億だつたと思いますが、これは最大公約数ですから、こういうベース・アツブの問題なんか、又これはああいう根本法に隠れているものでもないしするが、第七十二条はこれは専売公社、国有鉄道公社法にもない条文を謳つておるわけであります。そこで今井委員長としてこの八つの裁定案を作られる場合において、今小林委員の質問に対して順位を付けておられるが、この電信電話公社法の第七十二条を、この給与のベース・アップに対してどの程度考慮に入れられたか、入れられなかつたか。それから給与総額に対する第七十二条の解釈を、べース・アップまではこれは入れられない。何となれば予算上、資金上、要するに第十六条の第一項の規定からして、これはもう考慮のウエイトを持つた条文とはなれないとこれはお考えになつてこの仲裁裁定を作られたかどうか。この点を承わつておきたい。
○説明員(今井一男君) まあ私実は不勉強と言えば確かに不勉強でございますが、仲裁裁定は成るべく少いほうが望ましいという観点もございまして、具体的に問題になりますまでは、事前に勉強するようなことが余りしておらないのでありますが、併し七十二条につきましては、一応立法の沿革等は当局側から御説明を伺いまして私も承知いたしております。で、この条文というものを初めに書入れました趣旨は、私ちよつと窺い知ることはできませんが、只今の予算総則のいろいろの扱い方等とからみ合わせますと、これをいわゆる普通のベース・アップの場合に適用することはどうもむずかしいのではないかというような感想を、まあ深く検討したわけじやございませんが、一応いたした次第でございます。従いまして今回の裁定に当りましても、考慮に入れたかどうかというお尋でございますが、こういう点は、まあ殊に今度の予算の関係でもたしか二億でございますか、そういつた数字でもございますので、全体といたしましてはこのウエイトは余りに小さい関係から、まあ具体的にはむしろ考慮に入れなかつたというふうに申上げたほうが実態に近いと思います。
○山田節男君 これは今回の電電公社の裁定案は、資金上可能なりという判定であります。併しこれは不幸にして資金上これは不可能だ、こういう裁定を下さざるを得ないという場合に、例えば資金上不可能だ、こういう場合に、この第七十二条は、そういうあなたが一つの裁定案を作られる場合に、この第七十二条というものが、何と申しますか、ものを言うかどうか。その意味はわかりますか。この七十二条というものがあなたのそういう裁定案を作られるについての成る種のウエイトを持つている条文として考えられるかどうか、資金上不可能な場合。これは今回は資金上可能としての裁定だと思うのでありますが……。
○説明員(今井一男君) 私どもはまあ先ほど申上げましたように、成るべく民間企業と同じような立場でものを考える。民間で支払能力がありというような判断を中労委等で下すような場合におきましては、こちらもありという判断を下す。形式上十六条の二項に該当して国会の御厄介になるかならんかということは一応枠外において、こういうような考え方で出しているのでありますが、併しながら民間であつても、この場合ならばこれは避けるべきだ。むろん特殊事情の調整は或る程度ありますけれども、そういう場合において、こつちとしては支払能力にチエツクするという原則を頭の隅つこにおいてものを判断するように心がけておりますが、従つて今回の電信電話のケースは、金額から申しましても、この七十二条の金額には該当しない関係から、この額を考慮に入れなかつたということになつたのでございますけれども、若しこれがそうでなくて、非常に何か別の一般的な物価の騰貴、或いは一般的な民間賃金の騰貴というような、而も相当な率、一割とか一割五分というような率でない、そういつた場合におきましては、この二億という特別な、電信電話公社特有の額が活用される場合はこれは起り得ると思うのであります。この二億ということをどういう基準できめられたかはちよつとわかりかねますが、二億の額から、経済事情の変動その他予期することのできないというような意味合いを逆に解釈しなければならんというような形にもなりますけれども、併しこの二億も恐らく腰だめだろうと拝察いたしまして、全体の給与総額に比べますると極めて微々たる金額でございますが、併し又公務員の場合は一応五%ということを基準にいたしまして、これは国家公務員法でございます、五%以上動いたならば改めて国会で御審議頂く、そういう建前から申しましても、その程度までをこれにこめるというのもちよつと無理じやないか。やつぱりそれまでの以下の問題であつて、而も電信電話公社の弾力的な活動に必要な予測外の経費というような場合、これは今回はこれに当てはまりませんでしたけれども、私どもは将来はこういつたことがありまするが故に、電信電話公社関係だけは国会のお世話にならないで解決できるようなケースは起り得ると思います。
○山田節男君 まだ質問がありますが、他の委員の質問もありますから……。
○新谷寅三郎君 これに関連してのことなんですが、これは質問と申上げるよりも、当時の立法趣旨を明かにしておく必要があると思うので申上げたいのですが、今山田君の指摘されました公社法七十二条、これに関連する条文としては四十三条があります。これは但書が問題になつていると思うのですが、経済事情の変動その他予測することができない事態に応ずるため、成る金額をきめて、それで郵政大臣の認可を受け、更に国会の承認を得て給与総額以外にこれを使うことができるというのであります。これは各派の意向も考えまして私から修正案を出して、これは通過したのであります。まあ当時は例えば各地にいろいろ台風やら災害があつて、それにその給与総額が縛られておるので、応急の復旧事業をやるにしても、給与面に縛られてしまつて勤務手当も十分出せない。そういう場合があると、非常に事業全体としても困るということで、こういう提案をしたのでありますが、各会派の御意見もあつて、例えば非常な経済事情の変動があつて何らかの手当のようなもので一時を糊塗しなければならんというような場合が生じたときには、これは国会も開かれていない、補正予算を出す時間的余裕もないというような場合には、この承認を受けた金額の範囲内で応急の手当をしておこうということでありますから、これを一般のベース・アップなんかのときにこの金額を活用してやろうということは、当時から立法趣旨としては含まれていなかつた。私たちもそういう意味で立案したわけじやないんです。その点は或いは国会のほうがそういう意見も持つておつたかのごとき印象を与えるといけないと思いますので、これは速記録にちやんと書いてございますから明瞭なことなんでありますが、その点質疑応答を聞いておりまして、多少明かにしておかなければならん責任を感じたものですから申上げたいのですが、従つて今何億円かの或る限度内の金をどういうふうに使われるか、或いは使おうとされるか、これはまあ電電公社についてこれから尋ねなきやならんところだとは思つておりますけれども、ベース・アツプの問題とは一応立法当時から別の問題として考えておることを今井委員長にも申上げたいと思います。
○小林孝平君 関連してお尋ねいたしますけれども、政府の提案説明によりますと、「これらの経費は、昭和二十八年度政府関係機関収入支出予算に含まれておりませんので、給与総額につきましては、予算総則第二十三条の金額を超過することは、明らかでありますから、これを支出することは、予算上不可能であります。」、こういうような説明になつておる。こういうことを原則的に政府は絶えず言うということになれば、これは裁定を常に如何なる条件があつても実施できないというように考えられるのです。それで委員長としては、この提案理由の説明についてどういうふうにお考えになりますか。
○説明員(今井一男君) 形式的に申上げますというと、どうしても国会へ出さなきやならんということになるといろ政府のおつしやる通りに相成るのじやないかと思います。と申しますのは、二十四年、丁度私どもが第一次国鉄裁定並びに第一次専売裁定を出しましたときまでの予算には給与総額ということがございませんでした。従つて私が当初申上げましたように、予算全体の枠、千億なり千五百億なりという枠内で処理できるものであります限りにおきましては、国会の御面倒をお願いしなくても処理できる仕組になつておつたのであります。但しその場合に、先ほどちよつと山田委員にお答え申上げましたように、大蔵大臣の流用承認不承認ということが予算上可能か不可能かという議論はそのときございましたけれども。ところが二十五年度から予算総則に給与総額というものが入りまして、予算総則といえどもこれだけはつきり書かれてありますというと、これは他の公務員の場合とはすつかり趣を異にしておりますので、この御修正がなければ処理はできない。但し国会の手続を経なければ支出ができない。即ちこれは十六条の二項の予算上不可能という言葉に該当する。但し予算上不可能という十六条の二項の文字が、立法のときの文字と意味が変つた、こういつたことにまあ相成らざるを得ないのでありまして、その意味から申しまして、政府がそういう理由で国会に出しますことの形式的な法律論としては、私全くその通りだと思います。ただまあそういたしますというと、事、給与総額に関する限り、もう普通の場合でありますれば、まあ急に職員の数を減らしてよろしいなんという場合は先ず普通ございませんからして、まあそういうことがありますれば、ベース・アップいたしましても給与総額の枠内でやれるというようなケースは絶無じやございませんけれども、普通の場合には起り得ませんからして、従つてお言葉の通り、常に国会へ出すことが原則に相成つて参ります。そろいつたことがいいか悪いかという批判をいたしますれば、これは先ほどもちよつと触れましたように、当初はなかつたことであり、更に電信電話公社が公社になります以前、即ち電通省で処理されております以前におきましては、こういつた給与総額というものを相当流用するということが政府限りで許されておつたのであります。ところが公社になりまして、むしろ公社総裁というものに相当自由な活動の余力を与えて、そうしてできるだけいいサービスを安く国民に提供させるというためには、時と場合によりますならば物件費を大きくして人件費を少くする、又反対に人件費を大きくして物件費を少くする、乃至は人件費にいたしましても、安い月給の者を多く使つて人数を殖やす、或いは高い月給の者を数少く使うといういろいろの腕のふるいどころこそ、公社というものを作つた立法の趣旨でなかろうか。それが特別会計として国の直営事業であります場合は、政府限りで国会のお世話にならないでやれたものが、公社となりますというとそれが逆になるということは、私どもまあ少し出過ぎた言い方かも知れませんが、若し感想なり批判なりを許されれば、そういつた感想は持つのであります。
○小林孝平君 私今の質問に関連しまして、今の「予算総則第二十三条の金額を超過することは、明らかでありますから、」とありますけれども、明らかである場合でも、この但書によつてこれはもうやれる場合がある。それから但書によつてやれない場合でも、やれない場合は、もう政府のこの提案理由の説明によれば、国会の承認を求める、絶えずこの原則によつて超過するからということで以て始終裁定に従わないという態度をとり得ると思うのです。現に今回はそういう態度をとつておるわけです。こういうことになれば、幾ら裁定をやつても政府がこういう態度をとる限り意味がないじやないか、こういうふうに思うのです。これは政府にお尋ねするのですけれども、委員長としてどうお考えになるか、こういうわけであります。もう一度繰返しますが、二十三条のこの金額を超過する場合でも、二十三条の但書によつてやれる場合があるわけです。それからやれない予算は新たに組まなければならないというような場合は、国会の承認を求めるけれども、その場合、政府の提案理由の説明によりますと、ともかく予算総則のこの金額を超過していることは、これは明らかでありますからお断りいたしますと、こういうことなら、これはもういつもあなたがいろいろ裁定をおやりになつても、何ら意味がない、こういうふうに私は考えるのですが、委員長はどういうふうにお考えになるか。これは後ほどよくお尋ねいたしたいと思います。
○説明員(今井一男君) 二十三条、二十二条でございますと、お話の通り、国会の御面倒をお願いしなくてもできる場合があるわけでありますが、併しその場合は、例えば事業分量が百のものが百五に殖えたので、五の分の人件費を必要とする場合、或いは又扶養手当なら扶養手当が六百円と四百円にきめましたものが子供が余計にできた、こういう関係から金が足らなくなつたというふうに一定の枠がございますので、それ以外の場合、例えば普通のベースをいじる場合はそれ以外の場合に該当することに相成ると思うのですが、そういつた場合に給与総額の枠外に出ますので、郵政大臣限りでは処理ができないことに相成りまして、給与総額は三百三十五億という数字を国会で御修正頂くという手続がとられない限り、予算ができない、こういう問題にどうしてもぶつかつて参るようでございます。そうなるというと、裁定ということが意味がなくなりはしないかという、こういつたお尋ねに対しましては、私ども意味がなくなるとまでは思いませんけれども、ただ先ほどちよつと触れましたように、予算全体の枠が千億なら千億という予算全体の枠が動かない限りにおいては、而も予定通り国会で御承認を受けました何通話、或いは電話をどれだけの増設をする、どれだけの通話数を扱う、こういつた事業計画というものを遂行いたしまして、而もそれが全体がその予算の枠内でやれるといつたような場合におきましても、なお細かに仕切りを付けるということは、これは面白くないのじやないか。少くとも公社の仕組としては、国の事業の場合に行政府限りでやれたものが、公社となつた場合に行政府限りでやれないというのは少し矛盾ではないかと、こういう感じを持つのであります。
○小林孝平君 私の説明の仕方が不十分でございますので、ちよつとおわかりにくかつたかと思いますけれども、私は今御説明になつたことは十分了承いたしましたけれども、そのほかのもう一つ政府の説明が、予算総則の二十三条の金額を超過することは、明らかであるから、これを支出することは予算上不可能である。これはもうわかり切つたことを言つておるわけでありまして、こういうことを理由にするようでは、私は仲裁の裁定が意味がないのじやないか。こういう明らかであるけれども、更にここを、今度新たな予算を組む力があるかないかということを政府が検討して、それがないとか何とかというのならわかるけれども、こんなことはわかり切つたことであつて、金額を超過することは、明らかであるから、支出はできないというようなことでは、まるで問題にならんじやないか。それで委員長の御意見を、どういうふうにお考えになるかということをお尋ねしております。
○説明員(今井一男君) 昨年の公労法の改正の場合に、参議院で特に何かむずかしい御議論がおありだつたようで、その後両院協議会で話合いの結果、十六条の条文が変つたようでありますが、で、従来より変りました点として、政府の自由意思という言葉が附加えられたのでございますが、自由意思という意味でありますが、少くとも我々関係者としては、国会を尊重するということは立場上当然でありましようが、自由意思ということが今お話のように極く形式的なことにとどまるという点は物足りない感じは確かに持つものであります。
○山田節男君 さつきの新谷君の発言に関連してちよつと私誤解があると困りますから申しておきますが、電電公社法第七十二条のベース・アツプの問題云々、これは新谷君が言われた通りでありますが、私の問題にしたのは、専売公社法、国鉄公社法の給与総額は、予算総則によつて制約される。例えば今度の物価騰貴のインフレ、或いは天変地異があつて、それに対して財政負担をしなければならんというような場合の準備規定である。これは私もその通りだと思う。私の申上げたいのは、これは電電公社法に関しては、給与総額というものに対してはそういう一つの伸縮性を持たせたということが他の公社法にはないのであります。ですから仲裁委員会の委員長である今井さんとしては、そういう他の公社法と違つた給与の総額に対する手心を加えておるということを考慮に入れるべきであるということを申上げたのであつて、ベース・アップ云々ということは、何も第七十二条には規定もされていないし、経済事情の変動とかいうことの解釈は、これはもう如何ようにも解釈できます。けれども、立法の趣旨はインフレーシヨン、或いはその他の経済上の変動ということを規定したのであります。これは新谷君が言われた通りであります。私の申上げたのは、この公社法における予算総額に対する特別の取扱を仲裁委員会としては考えなければならん、それがどういう立場になるか、仲裁裁定の場合にどういうことになるか、これは仲裁委員会委員長の責任においての解釈如何にある、そこを私は何も示唆したわけではない。この点は一つ誤解のないように願いたいと思います。
 最後に、いろいろ問題がありますけれども、時間も経過し、私ばかり質問するのもいけないと思いますから、ただ一点だけ申上げておきますが、最初に私が申上げたように、公共企業体等労働関係法の第十六条と三十五条との関係から考えて、何とか仲裁裁定というものを権威あらしめることは、これは実は立法のときに頭を悩した。それで現行法としては、今井委員長が言われるように、これは国会の裁定に従うのだ。政府も国会の裁定に従うよりほかないのだ。これは責任のなすり合いのようになつてしまつた。これは若し昔のような天皇制度があつて、天皇の裁可ということになれば、これは何人も文句を言わない。そういう制度があればこれは一番よいのだと思う。これは先ほども申上げたように、アメリカの大統領がこれを最後にきめる。カナダのような、非常に民主的な常識の発達しておる国においても、これを世の中に訴えて世論の裁定に待つ。こういうやり方もある。併し日本では今の大統領に比すべき天皇が行政に参画することはできないという憲法の規定である以上は、天皇はこれに対する発言権も、何ら行政行為も行うことはできない。而して今の国会の現状然り。国会と内閣というものは、憲法によつて衆議院における多数党が行政権者としての責任を持つわけです。で、私はそういう立場を現行の制度上からみて考えておるのですが、先ほど今井委員長が、結局は納得によつてやるよりほかないという言葉があつたのですが、この点で公社の仲裁裁定の場合には労働組合も折れ、それから経営者側である電電公社の総裁も、資金上可能であります。で、国会の裁定さえあれば、それに従います。こういうことを言つているのです。而もこれが国会というものに引つかかつて公平な仲裁裁定というものが実現しない。それがためにこの公共企業体等労働関係法第一条に謳つてあるこの苦情なり、或いは紛争の平和的な調整をする団体交渉の慣行を確立するということは、今までの経験によるとむしろ逆の結果になつている。ですから私はもう一遍お伺いしておきますが、これはあなたの立場として、法律に従わぬということは勿論できないわけでありますが、あなたの過去の御経験からいつて、日本のこれは労働組合も然りでありますが、或いは経営者のほうにおいても、まだこの団体交渉というものに対する、いわゆる欧米式の民主的な団体交渉というものに馴れておりません。馴れておらんために、経営者が悪いとか或いは労働組合が悪いとはこれは一概に言えない場合が多いと思う。而も国会、政府というものが関連しておる事項として、あなたはやはり今までの経験から見られて、国会の裁定が、これは現行法より別の観点から考えて、国会がやはりやるほうが政府の責任者が裁定を下すよりもいいというお考え、見解であるかどうか。この点を一つお伺いしておきたいと思います。
○説明員(今井一男君) まあ他のお二人の委員の意見を代表するわけにはちよつとこの問題行きませんが、私の今までやつて参りました四年間ばかりの経験によりますと、少くとも現段階におきましては、行政府で最終決定を願うよりは国会で最終決定を願うほうが、同じ結果になるといたしましてもなおよろしい。これはもう私としては相当検討し抜きました私の今の判断であります。山田委員のお考えとは大分食い違つているようでありますが、私の過去の経験から申しますと、将来はわかりませんが、現段階では、とにかく徒らな政治運動化する点をより少くする意味におきましてもそのほうがよろしい。これは現行法を全部離れまして私の頭はそういうように現段階では固まつております。
○山田節男君 これは非常な苦しい御答弁ですが、国会の衆議院の分野と政府、多数党が政府を取つている。むしろ行政府の首長、総理大臣の裁決でやれば、若しそれが国民、これは労働組合関係者だけという、そういうセクシヨナリズムの観点ではなくて、国民の一般が見て、これはどうも無理だ。それから政府のやつていることが、労働組合はこの裁定が少しよ過ぎる。それから政府のやつたことが、これは少し酷だというような批判を国民に訴えさして、それが次の政権に影響するわけなんです。そうなつて来れば、例えば現在で言えば、吉田総理がこれはいかんというのでこの裁定を許可しないという場合には、これは国民が批判すると思う。これは単なる労働者、労働階級ではなくて、国民一般がこれを真剣に考える。若しこれが吉田首相の裁定が妥当でないと言えば、次の選挙においては又政治的な分野が変つて来ることによつて、或いは革新政党が政権を握るかも知れん。そうなれば革新政党が握れば、今のような法律も改正するでしよう。そうして今のあなたの意図されている点もスムースに行くようになるかも知れん。だから実際的にものを考えて見れば、私はどうも総理大臣が裁定をするほうが、外国の例を見ても、妥当のように思うのですが、やはりあなたは国会がいいと言われるのですか。
○説明員(今井一男君) 私もことを好んで異議を申上げておるわけではございませんが、少くとも現段階におきましては、国会は仮に私どもの最も望まない、裁定が一部なり否認されるような結果に終るようなことがございましても、国会でお取上げ頂き、御論議になりますというと、とにかくガラス箱の中でオープンに議論を展開された上でお話がきまります。ところが行政府内で行われる場合におきましては、どうもそれが議論を尽すという段階にいつも行かないのでございます。それを直せというなら、これは又別でございますけれども、それはちよつと今の行政組織では私ども無理だろうと思います。で、少くとも国会議員、国民を代表された方が、私どもとしては実は裁定そのものに対する御批判は余り有難くないのでございますけれども、それにいたしましても、そういつたことに対する御批判を受ける。それぞれ国民から直接選ばれました方々がそれに批判を与えて下さる。ところが行政府の場合ですというと、実際は大臣の方々が直接問題をお取上げになるのではございません。実は課長或いは局長諸君がこそこそと問題をお取上げになるのが実際でございます。それで大臣のほうは結局盲判を押すというような形に実際問題として相成ります。そういつた形で闇から闇に葬られる形における同じ結果というものは、より労働組合の納得性を少くすると思うのです。その意味から申しまして、多少揉まれ方は、私どもとしては実は国会へ出まして、いろいろな方々からいろいろな御批判を受けることは実は非常な荷物でございます。実際一人でしよい切れないほどの荷物でございますが、それにいたしましても、そういつた形でオープンに両院で御論議頂きますこと自身が、結局私どもとしては反省すべきところは反省しなければならんと同時に、又労使ともその点は心の底までわかつてくれるのではないか。従つて将来は、私別にこの席では頑張りませんけれども、現段階においては、とにかくこのほうがよりベター、これは私別に苦しくて申上げておるのではございません。私の殆んど現段階においては信念的に固まつておるところでございますので、御了承願います。
○山田節男君 一応了承しましよう。
○委員長(左藤義詮君) 速記をとめて下さい。
   〔速記中止〕
○委員長(左藤義詮君) 速記を付けて下さい。
 次に、全国電気通信労働組合中央執行委員長鈴木強君に参考人としておいでを願つておりますので、この際質疑のある方は御発言を願います。
○久保等君 今委員長から組合側の鈴木強執行委員長に御質問があればというお話だつたのですが、それよりも、むしろ或る程度簡潔にまとめて頂いて組合側のお考え、仲裁裁定に対する考え方というものを一応御説明願つたほうがいいんじやないかと思いますが、委員長に一つそういう形で御発言を願いたいと思います。
○委員長(左藤義詮君) それでは組合のお考えを簡潔にお話願いたいと思います。
○参考人(鈴木強君) 電電通の鈴木でございます。国会が休会中であるわけですが、特に本委員会が私ども日本電信電話公社に従事する十七万の職員と、更に公労法適用下の百万に近い労働者が極めて当面切実な、而も重要な要求として掲げております仲裁裁定の問題につきまして御審議を頂いておりますことにつきましては、私ども心から敬意を表する次第でございます。なおこの機会に、特に国会の中で私どもの従事しております電信電話の事業につきましても、いろいろと今日公社が発足して一年有余になりまして、たくさんな問題を掲げておりますが、絶えず国会の中で国会議員の立場から御指導と御鞭撻を頂いておりますことにつきましても、この機会に御礼を申上げたいと思います。なお今日は補助説明的に、私どもの中央執行委員の山本君もこちらに来ておりますので、その辺も一つ、後ほどいろいろ御質問の際に御答弁等をやつて頂くことになりますので、その点は御了承願いたいと思います。
 さて、今議案になつております仲裁の問題について政府の出しております件でございますが、我々電電通の労働組合としましては、すでにお手許にも御配付になつておりますように、本年の三月の臨時全国大会で、最近の労働生産性の向上の現況に鑑みまして、少くとも我々電通の労働者の賃金というのは戦前に復帰して頂きたい、復活して頂きたいという根拠の下に、一万八千五百三十二円というベースをきめまして、公社当局に私どもが要求をしたわけでございますが、その後団体交渉が、昨年の皆様方の御協力を得て行政措置として実施いたしました調停案を実施してまだ日も浅いし、更にその後の物価の状況等を見ましても、べース・アツプをする必要はないというような最終的な公社の態度でありましたために、団体交渉が決裂いたしまして、その後公労法に従つて我々は調停の手続をとり、更にその出された調停案につきましても種々検討いたしましたが、我々はこれを不満として仲裁に提訴をした次第でございます。そうして二ヵ月有余仲裁委員会に慎重なる御討議を頂きまして出しましたのが、今お手許にあります問題になつている電通の仲裁裁定でございます。その内容は調停案と全く同じでございまして、特に我々この問題については非常に検討を加えましたが、とにかく実施時期が、調停案では四月以降になつておりますが、仲裁では八月になつておるというような点等いろいろ不満はございました。併し我々が日本の法治国家の国民として、又公労法に不満であつても左右されておる労働組合としては、これらの不満はあるとしても、やはり出された仲裁というものは承服しなければいけないという態度で、私たちは仲裁裁定の実施を決定した次第でございます。その後政府に対しても、或いは公社に対しても、いろいろと私ども仲裁定が実施できますように交渉も持ちまして、そこで我々が仲裁裁定が出まして公社とのいろいろと交渉の中で明確になりましたことは、公社としてもいろいろと検討を加えた模様でございますが、結論としては、仲裁が妥当だということを認めまして、すでに補正予算の手続も、仲裁裁定を基礎にした補正予算を出しまして、政府にもいろいろかけ合つたようでございますが、政府が御承知の通り公労法十六条二項によつて、予算上の問題で実施できないという態度に出ておる次第でございます。これは先ほどからもいろいろと御質疑がありましたように、極めてナンセンスな話でありまして、当然予算的な措置を講じなければ出せないということは当り前なことであつて、ならばなぜできないかという理由を明確に付して出すべきにかかわらず、ただ単に仲裁委員会から出された裁定と、その理由書だけを付して今国会に承認の件ということで出しておる。こういう態度について我々は全く不満でございます。少くも公労法というものができました経緯は、先ほどからも御論議がありますように、いろいろ経緯をとつておりますが、この二十三年の七月に例のマ書簡が出まして、少くとも我々がストライキ権を奪われた。労働組合が基本的な争議行為というものを奪われて、その代償として公労法というものができたわけです。それがいわゆる仲裁の制度であつて、我々ストライキのない労働組合としては、この仲裁裁定というものは法理的に申しても、最終的には両当事者が完全にこれに服して紛争が解決できるというものであるというように私どもは確認して、いわゆる公労法第三十五条というものが立法の大精神であるというふうに考えておるわけですが、たまたま十六条の二項というような条項がありまして、これがいわゆる問題になつておることはすでに御承知の通りでして、こういう点がいわゆる日本の公労法上の一番これは欠陥であつて、予算上、資金上で実施できないということになつて、折角出された仲裁というものが実施できないということで、過去五年余りいろいろとこの問題は毎年年中行事のように問題になつておる。少くも我々は労使間の紛争が、最終的に仲裁で決定して、裁定が出たならば、お互いにもう働け働けで一生懸命仕事に精進して、そうして国民の皆さんに満足なサービスができるようにという形に持つて行くのが公労法の精神であるにかかわらず、日本では仲裁裁定が出てから労働組合の闘争が激しくなるというような馬鹿げた私は今の労働情勢を見まして、非常にまあ残念に思うわけですが、こういつた点は一つ公労法の大精神から考え、当然なことでもあるし、法の運営等については是非とも国会の皆様方がよろしく一つ御配慮を願いたいと私どもは思つておるわけでございます。
 もともとこの仲裁の制度に対していろいろ今日批判が出ておるのですが、我々はむしろこういつたふうな蛇の生殺しのような、そうしてこれがどこで解決するのかちつとも見当がつかないような公労法であれば、これはむしろ撤廃して、そうして基本的に我々に憲法で保障されたところの争議権というものを与えて、そうしてその中で対等に労使が要求を解決して行くほうがずつとましだと我々はつくづく考えざるを得ないわけであります。特に我々も昨年八月に公社になりまして、公社当局もいろいろと考えておるようでございますし、我々は特に今日あらゆる角度から、専業に対する批判もありますので、何とかして我々は事業を国民の皆様の要望に副うようにということで、労働組合がむしろ積極的に事業の再建闘争ということを取上げて、今日定員も不足でありますし、職場の環境も悪いし、あらゆる悪条件の中でも我我が事業と共にとつ組んでやつておるというような立場にあるだけに、本当に公社になつて、何とか一つここでいい妙味を発揮できるだろうという期待を持つて発足した公社が、昨年の調停案にしても然り、又今回最初に出された仲裁というものがこういう形で葬られるとするならば、十七万の職員というものが働く意欲というものをなくしてしまうであろうというふうに私どもは、極端でございますが、考えております。それでこれはちよつと先ほど山田先生からもアメリカの例が出されたようですが、先般ILOのアジア会議が東京で開かれまして、私もたまたまそこに日本代表顧問で出席する機会を得ましたのですが、その際ビルマ代表の方々とお話したことがあるのですが、ビルマは公務員といえども争議権があるそうであります。併しやはりこの日本の仲裁制度と同じような制度がございまして、そこで最終的に労使の紛争が判定される。それはもう直ちに法律で両当事者が拘束されて、それが最終の解決の場として実施されておるので、まだ曾つてストライキ権を行使したことがないというお話を私は聞きました。ビルマは第二次世界大戦後に独立した国でありますし、そういつた短い歴史の中でもなお且つ労働組合と経営者側との慣行というものはそういうふうに明確になされておつて問題が解決されるということを聞きまして、日本の公労法なんかを考える場合には、誠に私は残念のような気がしてたまらないわけであります。こういう経緯を考えてみると、少くも公社当局が一万五千円の補正予算を組んで、郵政大臣を通じ大蔵省に要求をしたことは実施できるという肚が明確にあるわけです。ところがそれに対して政府が、まあ十把一からげのような形で、八つの裁定を十六条二項という、この例外的な条文を盾にとつて、予算の補正もしないという恰好で出されたところに、我々としては政府のこういう態度に対して誠に心の中から憤激を感ずるわけでございます。従つて我々はこの仲裁が示された後、私は電通の公社の経理状況はどうなつておるのかということについても、組合は組合としていろいろと検討をしてみましたが、仲裁の理由書の中にも書いてありますように、資金的には今後労使の協力があるならば十分できると考えられるというふうに謳つてあるわけですが、御承知の通り、昭和二十七年度の公社決算書も漸くでき上りましたが、それを御覧になつて頂いても、昨年度当初予算から比べて百億程度の増収を上げておるわけです。而もいろいろ支出を考えて差引計算してみますと、四十三億円というものが明らかに昨年度利益金として、これはあるわけです。こういつたことは勿論私ども先ほど申上げたように、我我も経営者の諸君と協力をして再建闘争を積極的に推進している過程で、例えば昨年の事業計画の中で電話の加入増設、こういつた点、或いは市外回路の増設等を見ましても、当初予定しておりました加入電話の増設等も十二万九千個でありましたが、十八万二十個というような数字まで我々は実績を上げております。更に市外回線増設予定についても、官制九万キロの予定に対して十二万四千キロというような実績を収めていることもこれは又事実でございまして、こういつた点、更に我々が一つの工事をする場合でも、その工事計画に対して、いわば従業員が突貫工事的に仕事に従事して、予定の工事日程から早めた完成をしておるということで事業の収入を得ておるという点もございます。勿論これは最近事業の機械化とか、いろいろ工夫をこらしておるために、我々が全部働いたから儲けたのだというような私は極端なことは言いませんが、少くともこの四十三億というものが、そこに働く十七万の労働者の積極的な事業に対する協力があつて、それと経営者の諸君の努力というものが一体となつて現われたこの利潤の四十三億であるというふうに考えておりますが、こういつたとにかく利潤を上げておりますので、我々としてはまあこの四十三億というものを、非常に我々ベース・アップする場合の大切な財源だというふうに考えております。ただ我々としてはどうも納得できないのですが、あとから聞いた話ですと、四十三億儲けた中ですでに十九億というやつを昨年の八月に公社に移行する場合に政令で以て固定資産に繰入れられておるということを、私どもはあとで聞きました。これは以てのほかで、経営者のやることで、事業の管理運営であるから労働組合は像を容れることはないと言われればそれまでかも知れませんが、少くとも十九億というものを我々が全然知らん間に固定資産に繰入れられておるというような措置がとられたことは、非常に我々としては不満です。死んだ子の年を数えるようなもので、止むを得ませんが、それにしても四十三億のうちから十九億を引いても、二十四億というものは利益金がどこかの銀行に積み立ててあるという勘定になるわけです。それから私ども今年になりまして、先般の料金改訂の問題等も国会で御審議を頂き決定して頂いわたけですが、第一・四半期分どの程度の収益があるかということで非常に期待を持つておりましたが、決算によりますと、本年度の第一・四半期すでに十八億の利益金を出しております。更にこの仲裁の理由書にありますように、今後我々が本当に努力して行けば、我々は今年度五十億程度の少くも組合側の見積りで行けば利潤を積み立てて行くことができるであろうという判断をしております。まあすでに東京、大阪、名古屋、こういつたところも電話の準則時化ということも完成しておりますし、我々が今後積極的に今申上げたような事業に対する努力をすれば、その程度の利潤は我々としてもできるのではないかという考え方を以ちまして、仲裁裁定に必要な資金としましては、基準内賃金が約二十五億五千万円になります。それから更に基準外賃金として年末手当の一カ月分のこのベース・アップに伴う増加の分と、そのほか夜勤手当とかいろいろな諸手当がございますが、そういつたようなものを大体組合としては約十五億九千万円に踏んでおります。そうすると、その合計が四十一億四千万円になりますので、当然この仲裁裁定というものは完全に実施ができる。従つて公社には資金上から言いますならば、当然仲裁裁定を実施する能力があるのだということを明確に確認できますし、このことは、先ほど申上げますように、公社当局がすでに補正予算の中で一万五千円の補正予算を出しておるということとぴつたり合うわけでございまして、どうもこういう点から行くと、今回政府のとつた承認を求める件については、我々としてはどうも納得できない。やはりこれは明らかに政府が打出しているところの統一賃金的な問題、いわゆる私どもが上ることによつて一般の公務員の問題、或いは地方公務員の問題、こういつた関連性の上で機械的に十六条の二項というものを出して来たのだというふうに我々は考えざるを得ないわけであります。
 ただここで資金的な面で我々も心配になる点は、先般の国会で料金の改訂をして頂きましたが、その際建設資金として不足額が約二十五億あることは皆さん御承知の通りでありますが、公社のほうはこういつた点がはつきり見通しがつかないので、この儲けた中から二十五億円をというような気持もあるのじやないかと思いますが、これは私どもどうしても納得できないので、少くとも前の料金改訂の場合には、この二十五億の赤字については、国会ではその措置をとるという決議もされておるのでありますから、そういつた点は是非今後皆様の御協力によりまして、先般久保委員から塚田郵政大臣にも御質問があつたようでありますが、実は私も傍聴いたしておりましたが、どうか次の国会におきましてこの二十五億の補正をして頂くように、これは是非御努力願いたいと思います。
 そのほか支出の分として公社が考えておるのは、御承知の通り、電信電話事業も先般の水害によりまして相当被害を受けました。今見込まれておるのが、復旧費として約十四億五千万円程度が考えられておりますが、これはまあ増収分から補填するというのが公社の考え方ですが、あえて我々はこれについては反対いたしません。併し少くとも二十五億の不足分については、是非一つ、前国会の議決事項でもありますので、次期国会において第二補正として国会の補填をお願いするのでありますが、こういうものを引いても完全に実施できるというのが公社の資金計画、これがまあ組合側の見た公社の経理状況でございます。
 それからこの機会に是非申上げて御協力頂きたいのは、公社の定員問題でございます。この点は、仲裁の裁定理由書の中にもありますように、従来これは電通省当時からも非常に問題でありましたが、御承知の通り、公社の、或いはその当時の政府の考え方として、事業の実態に即した定員の配置ということがなかなかできませんでして、機械的に定員法というものができて、五分なら五分、一割なら一割というものを切られておつたということで、我々の事業実態に合つた定員措置というものがなされておりませんでした。そのために、仕事が日に日に拡充されて行きますので、何といいますか、姑息的な手段として賃金支弁の用員という者を抱えておるのが実態でございます。そういう観点から、特に本年の四月そういつた人たちの身分が社員に切替えられたために、給与総額全体から見ますと、きめられた給与総額の中で、入つて来た賃金支弁の人たちが給与総額を食つて行くというような恰好に実はなるのでして、そういう点で非常に我々は困つているわけですが、今回仲裁委員会でもそういつた点はやはり是正しなければならないという趣旨を理由書の中に述べられておりますから、こういう点一つ是非とも今回の仲裁裁定を契機にしてすつきりして頂きたいと思います。そういつた点から、組合としては、予算定員と実在定員の差約八千七十一名というものを予算定員の中に組入れて頂きたいという考え方を持つておる次第でございます。
 最後に申上げておきたいのですが、以上申上げましたように、我々は少くも民生的な労働組合運動を基調にしまして今日までいろいろと努力をして参つておりますが、先ほどもお話に出ましたように、国鉄の先例もございます。併し今日まじめな全電通の労働組合の組織の中に入つている組合が考えていることは、仲裁が出て、その仲裁が、公社は大体まあ仲裁書にもあるように、資金的には可能だと、而も公社がその補正予算の措置をとつたことも、これは全職員が知つております。従つて、公社にそういう能力があるということを仲裁委員会が認め、而も公社がその意欲に燃えて独立企業としての運営をして行こうというのにかかわらず、政府が一括した立場で不承認の態度に出て来ることについては非常に憤激をしております。で、私どもは、お話のありますように、年末を控えてこれをどういうふうに収拾して行くか、組合幹部としても非常に悩んでおりますが、若しこの仲裁裁定というものが不実施ということに不幸にしてなるならば、これによつて生ずる不測の事態というものは、私どもとしては絶対に保障することはできません。我々としても相当な決意を固めて、今年は法律を遵守し、而も仲裁裁定というものを活かして行きたいという考え方から、非常な決意を以て闘いを進めて行きたいということも率直に考えております。今日我々は法律を守ろうという意欲に立てば立つほど、下からの組合員の盛上る力というものを抑えることができません。ですから、去年に増した困難が当然予想されるという考え方を持つておるだけに、是非とも電気通信事業に対しては、深い理解を以て今日までいろいろと御指導して頂きましたこの電通委員会において、慎重に公社の経営状態についても一つ御審議を願つて、是非とも我々の最終的な争議の解決の場として出された仲裁裁定を実施できますように、格段の御助力をお願いしたいということを申上げまして、私の陳述を終ります。どうも有難うございました。
○山田節男君 今鈴木中央執行委員長からの陳情の願意はわかつたのでありますが、私も手許に受けていない。或いは出されたかも知れませんが、組合として一万八千円のペースを算定した基礎ですね、これは例えばマーケツト・バスケツト方式を入れたのかどうか。その算定の何があれば……、芳しお出しになつていなかつたら次の委員会までに、組合としての一万八千円を調停委員会に出された書類の抜萃でもいいから出して頂きたい。
○委員長(左藤義詮君) ようございますね。
○参考人(鈴木強君) その点よろしうございます。
○委員長(左藤義詮君) ちよつと速記をとめて。
   〔速記中止〕
○委員長(左藤義詮君) 速記を付けて。
 本日はこの程度にいたしまして、明日は政府、公社当局並びに全国電気通信労働組合中央執行委員長鈴木強君を参考人として御出席を願うことにいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(左藤義詮君) 明日は午前十時から開会いたします。
  本日はこれにて散会いたします。
   午後一時三分散会