第018回国会 予算委員会 第3号
昭和二十八年十二月六日(日曜日)
   午前十時二十八分開会
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 出席者は左の通り。
   委員長     青木 一男君
   理事
           西郷吉之助君
           高橋進太郎君
           小林 武治君
           森 八三一君
           中田 吉雄君
           松澤 兼人君
           堀木 鎌三君
           木村禧八郎君
           三浦 義男君
   委員
           石坂 豊一君
           伊能 芳雄君
           小野 義夫君
           鹿島守之助君
           佐藤清一郎君
           白波瀬米吉君
           高橋  衛君
           瀧井治三郎君
           中川 幸平君
           宮本 邦彦君
           吉田 萬次君
           岸  良一君
           高木 正夫君
           村上 義一君
           江田 三郎君
           小林 孝平君
           佐多 忠隆君
           藤原 道子君
           三橋八次郎君
           湯山  勇者
           天田 勝正君
           加藤シヅエ君
           永井純一郎君
           寺本 広作君
           武藤 常介君
           平林 太一君
  国務大臣
   内閣総理大臣  吉田  茂君
   法 務 大 臣 犬養  健君
   外 務 大 臣 岡崎 勝男君
  大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君
   文 部 大 臣 大達 茂雄君
   厚 生 大 臣 山縣 勝見君
   農 林 大 臣 保利  茂君
   通商産業大臣  岡野 清豪君
   運 輸 大 臣 石井光次郎君
   郵 政 大 臣 塚田十一郎君
   労 働 大 臣 小坂善太郎君
   建 設 大 臣 戸塚九一郎君
   国 務 大 臣 緒方 竹虎君
  国 務 大 臣 大野木秀次郎君
   国 務 大 臣 木村篤太郎君
  政府委員
   法制局長官   佐藤 達夫君
   自治庁次長   鈴木 俊一君
   保安庁次長   増原 恵吉君
   経済審議政務次
   官       深水 六郎君
   大蔵政務次官  愛知 揆一君
   大蔵省主計局長 森永貞一郎君
   農林大臣官房長 渡部 伍良君
   食糧庁長官   前谷 重夫君
   通商産業大臣官
   房長      岩武 照彦君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       野津高次郎君
   常任委員会専門
   員       長谷川喜作君
   常任委員会専門
   員       正木 千冬君
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  本日の会議に付した事件
○昭和二十八年度一般会計予算補正
 (第2号)(内閣提出、衆議院送
 付)
○昭和二十八年度特別会計予算補正
 (特第2号)(内閣提出・衆議院送
 付)
○昭和二十八年度政府関係機関予算補
 正(機第1号)(内閣提出・衆議院
 送付)
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○委員長(青木一男君) これより予算委員会を開きます。
 政府に対する質疑の発言を許します。小林武治君。
○小林武治君 私はこの際、吉田総理に対しまして極く平凡なことを平凡にお尋ねいたします。気楽にお聞きとりの上、端的に且つ率直にお答を願いたいのであります。
 現在我が国で自衛のための戦力を持つか、又これがために憲法の改正をするかということは、国を挙げての重大問題であるのでありまするが、これにつきまして、総理は一貫して再軍備はしない、憲法の改正もしないと言明されておるのでありまするが、併しこの言明は、果して今日まで政府の行なつて来たことを本当に裏付けするものであるかどうかということを、私どもは疑つておるのであります。即ち吉田総理は或いは国民をごまかしておるのではないか、ごまかしておるという言葉が若し不適当であるとするならば、少くとも国民に真実を語つておらないのではないかということであるのであります。即ちどこをどう繕つても、池田特使が軍備の話をされ、又ニクソン副大統領が再軍備への強い示唆をされたということは紛れもない事実であるのであります。国民はこの点に極めて重大なる関心を持つておるのであります。どうぞ総理大臣には、この際本当のことを語つて頂きたいのであります。過般鳩山自由党と自由党との合併につきまして、再軍備と憲法改正とについて了解が付いたということが言われておるのでありまするが、今回の衆議院の総理の答弁によりましても、さような申合せはないと言われておるのであります。この点につきまして、国民は誠に迷わざるを得ないのでございます。事実を曲げるためには、或いは戦力なき軍隊などという新らしい言葉までもお作りになつておるのでありまするが、戦力を持つということは好ましいことではないかも知れませんが、国家の必要とあれば、或いは又止むを得ないことであろうと存ずるのであります。どうぞ政府はその態度をその場限りのないないずくしで、これを片付けないで、あるべき事実、又将来の方向を明示して頂きたいのでございます。これこそ真に私は政府が国民と政治を共にすることだと思うのでございます。近き将来の歴史が、吉田総理は国民を偽つた、或いは少くとも真実を語らなかたというような誹りを受けることがないようにして頂きたいのでありまして、この際私はあえて重ねてこの点に関する総理の明快なるお考えをお伺いいたしたいのでございます。
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。私はごまかしたり、或いは又国民を迷わせたりというような考えは毛頭ありませんで、終始一貫同じことを申しておるのであります。これが私の信念であります。再軍備はしない、従つて憲法は改正しない。未来永久にと申すわけではありませんが、差当りはする必要がないというのが私の信念であります。又仮に再軍備をするとしても、今日軍備をなすには非常な金がかかるので、その莫大な費用をこの敗戦後の日本の国民に負担せしむるということは、これはできないことであります。若しすれば、共産党を防ごうとして、勢い共産党が生ずるというような事態になりますから、これはしないのが本当であり、するだろうと考える国民のほうが、若しありとすれば、これは間違つておると思うのであります。人の言うことを信ずればよし、信じざるもよし、多分嘘だろうというような考えで聞かれれば、幾ら言を費しても無駄でありますが、私はそういうような考えで申しておるのではないのであります。再軍備をして、そして巨額な費用を、蔵出を膨脹せしめて、そしてこれを国民の負担に転嫁せしめた場合には大事件が起る、これは政治を考え、又日本の復興を考えるものが考えるべきことではないと確信いたしますからそう申しておるのであります。
 それから鳩山君との間の話についてよく聞かれますが、これは鳩山君と私とは従来考え方において何にも変つておらない、相違いたしておるところはないのであります。故に長年の友人であり、又長年の親交を重ね来つたのであります。それが偶然に分れて、偶然のことから帰つて、鳩山君自身も本意でなかつたということで、偶然なことで分れたのですから、それが一緒になるについては条件も何もあつたものではないのです。もう帰つて来たらよかろう、帰ろう、こういうぐらいな程度のものであります。で、軍備について、それから憲法改正について、それは鳩山君の意見もあるでありましよう。住し私はその鳩山君の意見は十分尊重し、又鳩山君は無理なことを考えておる人でないことは確信いたしますから、あえて条件というようなむずかしい点で話を付けたわけでは毛頭ございません。
○小林武治君 その点につきましては、私ども意見があるのでありまするが、この上これを申上げることを差控えるものでございます。
 次に、私どもは予算の不正使用ということは、誠に国家的の罪悪ともいうべきものであるのでありまして、これらの点につきましては、前国会の本委員会におきまして、特にこれらの不正防止のための決議までしたのでありまするが、その後におきましても、新聞等におきましては、頻々としてこれらの不正が報ぜられておるのでありまするが、それにつきましては政府におきましては、その後なんらかの具体的な措置を講じ、且つ又講ずる用意があるかどうかということをお伺いしておきたいのであります。
○国務大臣(小笠原三九郎君) 予算の不正使用については、この委員会の御決議ございますので、行政監査の方面から、非常に監査をいたしました。その一部は昨日あたり新聞に出たのもあります。又大蔵省におきましても、全財務局を動員いたしまして、いろいろ監査を行なつている次第でございますが、なお立法的措置をとるために、目下大蔵省と法務省との間に相談をいたしております。従いまして、これは通常国会には成案を得て提出し得ると存じております。
○小林武治君 この点につきましては、今後格段の政府の御努力をあえて霊願い申上げておきます。
 次に、私がお尋ねいたしたいことは、国家予算の膨脹ということは、誠に憂えるべきものがあるのでありまして、可能な限りこれが緊縮を図ることは政府の最大の課題になつていると思うのでありますが――それにつきまして、政府は明昭和二十九年度におきまして、相当の行政整理をやる、こう言われているのでありますが、私どもとしましては、願わくばこれらの政府の意図が又再び口頭禅に終わらないことを希望するものでありますが、同時にその方法としまして、単に天引、こういうふうな方法によることは不適当であると思うのであります。即ちいつの行政整理におきましても、きまつて大きな被害を受け、行政能率を低下せしめられるものは、本当に必要な事務でありまして、却つて不急な事務、或いは無用な機構というものは温存されるというような事実があつたのでありますが、これは取りもなおさず、天引というような悪平等な方法によつて、行政整理をするからであるのでありまして、これでは再び弾力性のある行政能力を麻癒せしめる結果を招くと、私は思うのであります。行政整理というものは、真にこれは難事中の難事であるのでありまして、これにはどうしても、恰も各省長官であるような各大臣にお任せしておいてはできない、かように思うものであります。現在ややもいたしますれば、行政官庁の力が非常に強すぎるきらいがありまして、ときには事務が政治に優先するのではないか、こういう向も見られるのでございます。国務大臣の各位におかれましては、この際、各省長官というようなものに堕することがなく、真に問題につきましての大局的検討を望んでやまないものでありますが、一方又我々国会側といたしましても、各省の出先機関ではないかと言われるようなことのないようにしたいものであると考えているのであります。行政整理につきましては、真に総理大臣の勇断と強い政治力とを期待するものでありますが、この点につきまして、改めて総理の御決意を伺つておきたいと思います。
○国務大臣(塚田十一郎君) 私から代りましてお答え申上げます。行政整理につきましては吉田内閣の第一次以来ずつと熱心にやつて参つたのでありますが、第五次吉田内閣における整理に際しましては、総理の強い御支持を受けまして、目下鋭意検討いたしております。御指摘のように、このたびの整理におきましては、天引整理に陥るということのないようにということで、整理の順位を先ず第一段に事務の整理に注意を向けて、次に機構の簡素化に注意を向ける、そうして事務の整理、機構の簡素化を頭におき、更に一般行政能率を上げる、行政事務の処理能率を上げるというこの三つの点を頭におきまして、その観点から各省の現行機構、人員、そういうものに検討を加えて、真にどこに無駄があるかということを、今人員整理を数の上において検討いたしておる段階であります。従つてそういう形において結論を出します以上、決して天引きというようなことには、必らずしもならないであろうと思いますし、結論が出ました上は、国会の御協力を得まして、是非このたびは実効の挙る整理を断行いたしたいと考えておる次第でございます。
○小林武治君 お話のように是非お願いいたしたいのでありますが、特にこの点につきまして、政府としましては、整理を受けるものの受入態勢というようなものにつきましても十分の考慮を払つて頂きたいということを申添えておきます。
 次に、私は国の行政に関連しまして地方行政についてお伺いしたいのであります。国家財政の膨脹はさることながら、地方財政の膨脹というものは誠にすさまじいものがあるのであります。即ち二、三年前までは、地方財政の全額はほぼ国家財政規模の半分に過ぎなかつたのでありまするが、今年度では遂に国家財政規模全体に匹敵するような金額に上つておるのでございます。これは無論当事者のほうの運用の不用意もあるのでありまするが、同時に制度の欠陥から来るものでもあるのであります。即ち機構を著るしく細かく分けたということと、複雑化せしめた結果であるのでございます。地方財政を緊縮せしむることは、どうしても占領中の機構いじりの行き過ぎを、この際是正しなければならんと私は確信するものであります。それにつきまして、政府におきましては、果して現在経常的にも又その機能発揮の上にも幾多の欠陥のございまする警察制度を、この際改正する御意思があるかどうか、又その意思があるとすれば、その時期はいつにするかということをお伺いしておきたいのであります。
○国務大臣(吉田茂君) 地方制度については幾多の問題があることは、お示しの通りであります。これはやや占領当時の事情に遡つて申上げないと十分の意味が徹底しないであろうと考えますが、占領当時、この占領軍の立法に当つた人の考えは、日本は軍国主義国である、国家主義国である、中央集権の国である。解放と言いますか、進駐軍としては、日本に来て解放を与えるのであるというので、一応従来のあつた制度を、政治制度、行政制度を改めて、そうして地方分権というような考えが非常に強く支配して、そうして現在の地方制度ができたのでありますが、この行き過ぎはその後において進駐軍の当事者も気が付いたのであります。又指摘することにおいて我々は十分の注意を払つた結果と思いますが、又やつてみたのちの結果をだんだん調べて、進駐軍もこれは行き過ぎだということを考えて、その行き過ぎた地方制度を是正しようという話がつきつつあつたときに、マッカーサー将軍が、司令官が更迭になり、そうして後任者においては事情を十分知らないということもあつたでありましよう。又前任者の制度を急に改めるということも心苦しいというようなことで、独立したのちにおいて直して参りたいというような話合いができて、そうして講和条約になつて今日に至つたのでありますが、御指摘の通りであります。
 然らばどう改めるか、又警察制度も同じことであります。中央としては、地方の警察に対して指揮権もなければ監督権もないというようなわけで、そうして地方においても、県々ごとに警察は独立して連絡がないというような状態になつております。かくのごとくして犯人の捕縛さえもむずかしいということになつている状態でありますから、これは如何にしても改めなければならんと思います。又警察制度は軍備のない日本として、そうして警察に相当の人員を養わなければならんという考えから、現在の警察制度はできたのでありますが、すでに保安隊があり、又将来この保安隊を増強するということであるならば、警察制度の、地方警察の人数も減らしてもいい筈だと思います。かたがた改めることはたくさんあるので研究いたしておりますが、詳細については塚田大臣からお答えいたします。
○国務大臣(塚田十一郎君) 私も地方財政が年々非常に膨脹して行くということは、国の財政の膨脹と同じように、非常に注意しなければならないことは、特に考えているわけであります。そうしてその原因が只今小林委員からも御指摘のように、制度自体にもあるということも考えられますので、一体どういうふうに改革したらいいだろうかということを、政府においてもいろいろ検討いたしているわけでありまして、先般地方制度調査会に諮問いたしましたその結論が、今当面の改革すべき点だけは答申を得たわけであります。併し当面の問題以外に、私どももなお根本的に考えなければならん面があると思つているのでありますけれども、それは引続いて今御審議を願つておりますので、今度の通常国会には、先般答申を得ました当面の問題についてだけは、それらの面で是正すべきものがあれば、全般的に是正し、そうしてその面から来る財政の膨脹というようなものを極力抑えて行きたいと考えております。なお、又制度自体から来るものだけでなしに、いろいろ他の面から来るものもありますので、これはやはり制度と税財政のあり方、そういうものを全面的にやはり検討しなければなりませんので、それらの問題も今併せて検討し、鋭意立案を政府において急いでいる最中であります。
○小林武治君 今私お尋ねいたしたいのは警察制度はどういうふうに、方法につきましては大体の結論があると思うのでありますが、これをやられるかどうかということを一つ是非伺つておきたいのであります。
○国務大臣(犬養健君) 私が賛任大臣でございますから、私からお答えいたします。警察制度が今のままではどうも不適当であるということは、これは殆んど全部の方の一致した御意見だと思います。それをどう変えるかということについては、相当幾種類かの御意見があります。又そのほかの事情といたしまして、今総理大臣から申されましたごとく、保安隊の漸増という形がどういう最終の帰趨を得るか、この問題とからみますので、実は警察制度の改正の手段、方法、時期につきましては、かなり慎重に当局において研究いたしているわけでございます。従つて保安隊というものがどういうふうになるか、これを見守る、保安隊の漸増或いは保安庁の改正ということが、昨年になかつた事情が今日加わつております。それだけに慎重の度を増しているということが実情でございます。この点、御説明申上げる次第でございます。
○小林武治君 私はこれらの改正がむろん慎重を要することは、よく承知いたしているのでありまするが、要は実行の問題でありまして、政府が真に一つ肚をきめておかかりにならなければ、これらの問題はできないと思うのでありまするが、この点につきましての御勇断を重ねて私は希望しておくのであります。
 なおこれと関連いたしまして、私は町村の教育委員会のことについてお尋ねをいたしたいのでありまするが、現在町村教育委員会というものは、恐らくこれは無用なものであるばかりでなく、町村行政の一元化というものを妨げ、又町村の総合的運営を害しまして、無用の出費をあえてせしむる虞れもあると思うのでありまして、御承知のようにすでに全国の町村会におきましては、決議を以ちましてこれが全廃を要望しておるのであります。私は自由党政府がこの町村教育委員会を実施したということにつきましては、その悪政の一つであるとさえ信じておるものであります。政府はどうぞ率直に、地方当局並びに地方の大衆が真にこの教育委員会の廃止を希望しておるというこの声をお聞き下さいまして、速かにこれを廃止する意思がないかどうかということを改めてお伺いしておきたいのであります。
○国務大臣(大達茂雄君) 市町村の教育委員制度につきまして、いろいろその存廃について議論のありますることは、私もよく承知をしております。殊に地方制度調査会におきましては、この点についての意見の答申があつたのであります。私といたしましては、この答申につきましては、できる限りこれを尊重して十分検討いたしたいと存じておるのでありますが、併し教育委員会は戦後に新らしく発足した我が国の教育制度の基本機構でありまして、まだ発足して一年になるかならんかということもありますし、これが十分その機能を発揮し得ない、又他の機構との間に摩擦を生じておるというようなことは、これは我が国として初めての機構であり、又発足聞もなくで慣れておらん点もありましようし、又予算その他において十分に行渡つておらない、いろいろの原因があろうかと思いますので、これらの点につきましては、十分今後行届かない点は是正をすることにいたしまして、この制度を育成して行きたい。小林君の御意見では、全く無用の長物であるかのごとくお考えのようでありまして、又同じ考えを持つておられる方々もおられると承知しておりますが、私どもとしては、さようには考えておりませんので、これは重大なことでありますから、できるだけ育てて参る、そしてその功罪は、これは十分その機能を発揮した上で、その功罪を検討したい、このように考えます。
○小林武治君 私は遺憾ながら、この点につきましては、文部大臣と意見を異にするものでありまして、今後におきましても、私は教育委員会は廃止すべきものなりということを確信いたしておることを申上げておきます。
 なお次に、地方における各種委員会等の整理或いは地方議会の議員の定数を減少する等のことにつきましても、この際、私は政府として思い切つて勇断を奮うということは、この際における地方財政の私は唯一の又救済策であると思つておるものであります。これらの点につきましても、私は政府の格別の御決意を希望いたすのであります。要は実行の問題であるのでありまして、徒らに左顧右眄しておる限りはジリ貧を招き、遂に地方財政は救うべからざるものになると、かように考えておるものであります。占領中の各種の政策の行過ぎ是正は、一部の人からは、ややともすれば、これは時代逆行であるとか言われ、或いは反動であるとか言われておるのでありまするが、真に日本の実情に適するように正しきに導く、こういうことであるならば、私は政府としても徒らにこれらの言葉に恐れることのないことを希望するものでありまして、重ねて私はこれらの点についての政府のはつきりした所信を伺つておきたいのであります。
○国務大臣(塚田十一郎君) 各種委員会、それからして議員定数、それらにつきましても、先ほど申上げました地方制度調査会の答申には一言言及してあるようであります。答申の表面におきましては、議員定数は現状のままというようになつておりますが、審議の内容についているく伺つてみますと、非常に微妙なところで、まあ現状維持ということになつたように考えられますので、これは両方にいろいろな意見があるというように承知をいたしておるわけであります。従つて今後答申のされましたいろいろな事情を頭におきながら、政府においていろいろ検討して結論を出したいと考えております。なお、全体につきましては、国の行政機構改革に非常な熱意を持つておると同じように、私は自治庁長官として、同じ考え方で地方制度というものにつきましても、この機会に改革を考えておる次第でございます。
○小林武治君 私は塚田長官の勇断に特に期待しておるものでありますが、どうぞ長官におきましては、我々の期待にそむかないように、是非この際して頂きたいということを固く念を押しておきたいと思います。
 次に、私は陳情政治の問題について申上げたいのでありまするが、我が国の地方団体というものは、地方自治法によりまして自治体ということに言われておるのでありまするが、これは殆んど名ばかりであるというても過言ではないのでありまして、県のごときはその固有の財源というものは全歳出額の一割にも満たないものが多いのでございます。これがために全国を通じまして、陳情隊の横行というものは実にすさまじいものがあるのでございまして、町村は県庁に行き、県庁は政府に来る、更に最近におきましては市町村それみずからが直接国に陳情をいたしておるような有様でありまして、国内を挙げて、言わば陳情に寧日なき有様であるのでありまするが、これらの陳情による経費或いは時間或いは労力の浪費というものは誠に計るべからざるものがあるのでございます。正に私は陳情亡国の感がするものではないかと思うものでありまするが、これにつきましては、政府も地方団体も、又国会側としても、大いに反省するところがなければならんと思うのでありまするが、これらにつきまして、政府に果して妙案があるかどうかということをお伺いしておきたいのであります。
○国務大臣(塚田十一郎君) 地方財政の今日の立て方が、御指摘のように陳情を激発しておるという傾向は、たしかに否まれないと私も思うのであります。それは平衡交付金制度、それから地方税財政の制度全般と、それからして公共事業費の配分、各種事業に対する補助金というようなものの、今の立て方が非常に大きな原因をなつておると思うのであります。従つてこれらの関係を直して参りませんと、なかなか直らないのでありますが、私の所管の平衡交付金制度、それから地方税財制度につきましては、私も小林委員と同じ考え方で、今現在の状態について検討を加えておるわけであります。ただ先般の地方制度調査会の答申では、その考え方が十分に盛られておらないように、自分としても考えられるのでありますが、ただ非常に困難なことは、地方自治団体に対して独自の財源を与えるといたしましても、なかなか適当な税種が見付からない、こういうことになりますので、止むを得ず更に平衡交付金の制度、その他還付税の制度というものを続けるといたし“ますならば、陳情によつてこれが左右するということのないように、従つて自治庁なり行政官庁の自主裁量の余地を成るべく少くして、法律の規定によつて、もうぴちんときまつてしまう、又時期も長い時間かかつて決議決定でおることのないように、成るべく早い時期に決定してしまうというような措置をいたしまして、成るべくそういうものを少くしたしれこういうように考えております。
 なお、この機会に、陳情政治全体につきましては、先般内閣におきましても、成るべくそういうものをなくするように、書面によつて申請して来たものを、先んじて取上げる、先議するというようなことを一つ決定しようじやないかという方向で、今検討し話合をいたしておる最中であります。
○小林武治君 それでは次の問題に移りますが、本年の供出が順調に行われておるということを承わるのでありまして、誠に結構であるのでありますが、一方私は本年の供出割当が少し甘きに過ぎる嫌いがなかつたかどうか、こういうことを疑つておるものであり腐す。即ち本年の凶作はもとより紛れもない事実であるのであります。而も食糧当局は、不作の声に怯えて、しつかりした見通しもなくて、ずるずると府県の主張に引きずられたのではないかということを疑うものでありまして、例えば、地方当局にほめ讃えられるような食糧当局であつては、私は頼もしいとは思わないのであります。日本では消費者のほうがむしろ数は多いのでありまして、消費者と生産者とが平等に犠牲を負担してこそ、私は真の食糧政策であると、かように信ずるものであります。私は、農林当局はもつと信念を持つて事に当つて頂きたいと、かように希望するものであります。米価の問題についてもそうであります。今年は供出数量が僅かに千四百万石、こういうふうな僅少なものであり、而も食糧管理特別会計の含み資産三百億余円を食い潰しをいたしまして、ともかく今年度だけは政府提案の値上げの程度で私は済もうかと思うのでありますが、来年度は果してこれでどうなさるつもりか、こういうことをお聞きしたいのであります。政府は、口を開けば、インフレを防止したいと、こう言われておりますが、来米穀年度には、恐らく消費者米価を大幅に引上げないことには、私はやつて行けないと思うのでありまするが、この点につきまして政府の御見解を承わつておきたいのであります。
○国務大臣(保利茂君) お答えいたします。今年の供出割当が、義務供出が千四百七万石というような非常に少い割当になつておりますために、確かに小林さんのお話のような感じを受けられておるかたが多いと思います。私もそういう感がしないわけではございませんが、あり態に申しまして、近来の豊作と言われました昨年で、義務供出が二千三百万石に達していない。二千三百万石といたしましても、超過供出、その他農家の保有に残される分は四千三百万石あるわけであります。で、今年は五千三百万石という数字を示しておりまして、千四百万石の割当をいたしますれば、四千三百万石に見合う本年の残りというものは三千九百万石、これはもう供出の運営につきましては、私は必ずしも現状に満足をいたしておりませんけれども、御承知のように、戦争中或いは終戦後、いずれにいたしましても、この供出というものはかなり無理を重ねてやつて来ておつた。これが独立になりまして、こういうふうな強権的な匂いがなくなつて、純経済行為としての供出に変つて来ております。県側のほうから報告をされておりまする数字は、実に四千四百万石、私どもの統計調査部で抑えておりまする五千三百万石に隔ること千万石というような大きな隔りを持つて供出折衝に当らなければならん。これは一方的に政府が妥当と信ずるころによつて、客観的に見まして、そうしてこれこれでやつて頂きたいというような制度でありますれば、非常に楽なことでございまするけれども、御承知のように、県知事さん及び県の農業委員と相談をしてきめなければならん。一万四千四百万石という数字を持つて来られ、五千三百万石という数字を以て相対して、そうしてぎりぎりやりましたのが千四百万石、併しそれは言訳でざいますから、決して私はこれを以満足しておるとは申しません。そういうことで強権的供出から今日のような供出状態になつて、これで今後国が食糧管理をしておる方式として一体十分であるかということにつきましては、私は多大の疑問を持つております。従いまして食糧問題でございますから、混乱を引き起すようなことは、これは絶対に避けなければなりません。従つて二十八年産米につきましては、只今とつております方針を以て参りますけれども、二十九年産米からは、何とかこの改善をしなければならんじやないかということにつきまして、只今いろいろ研究をいたしております。何らかの改善策を立てたい、かように考えておるわけであります。消費者米価の関係でございますが、とにかく消費者の米価も安いに越したことはございませんけれども、同時に又今後の日本の食糧問題を本当に解決をするという上から言いますれば、私はここで本当に考えなければならんじやないかと思いますのは、結局三度三度の食事を米で解決をするということは、これはもう私は絶対不可能だ、どうするのだと言えば、これはどうも麦類に中心を置いたむしろ食糧政策を確立して行くことが必要ではないか。それでは麦を従来のように、と言うことは語弊がありますけれども、価格政策で価格を引上げて麦の増産をして行くということはやはりとるべきではない。麦はやはり大衆生活を守る安全弁として、できるだけ安い価格にしておく。米は私はむしろあるべき姿において米穀の価格というものは再検討さるべき必要があるのではないかと、こういうふうに考えております。これらも併せまして一つ十分検討したいと思います。明年一月から七百六十五円という消費者米価を決定したいと考えておりますが、御承知のように今年度義務供出が千四百万石、我々の期待いたしております超過供出は七百万石、而も早場米奨励金等をかなり大幅に引上げ、且つ期間の延長をいたしておることでございますので、かなりこの食糧買入れに要する経費が当初よりも非常に嵩んで参つておる。そこでこれを而も凶作係数という、凶作加算というような異常の価格措置もとらなければならないという事態に立至りまして、本来これを消費者に直接的に負担を願うということになりますれば、たびたび申しておりまするように、今年の米は十キロ当り八百九十円にいたしましても、なお償い得ない状態にございます。併しこれは到底今日の大衆家計の耐え得るところではないと私どもは判断をいたして、そこで家計の耐え得る範囲、即ちそれはそのために、米が上つた、物価が上る、賃金を上げなければならんというような結果にならない限度においての、いわゆる家計米価の中に吸収せられる限度において消費者にも御負担を願う、そういう考えと、一つは食管に繰越して参つておりました利益と申しますか、三百四億というものがあるわけであります。これは昨年産米の超過供出等によります損金が十六億ほどございます。麦による損失が二十四億ほどそれに入る。その他澱粉、切干等に使います損失見込みを四十億ほど見なきやならん。その八十億ほどの損失と合わせまして二百二十億くらい、今年産米の損失を負担することによりまして、消費者米価を辛うじて家計米価の範囲内においてとどめ得る。これ以上若しも引き下げるということになりますれば、これは御承知のように、消費者米価十円違いますれば、二十二、三億の開きを生じて参るわけでありますので、到底扱い得ないところでございます。経済全体の上から行きまして、先ず消費者において今日負担し得られると思われる内輪のところできめましたようなわけで、いずれにいたしましても、二十九年産米からは相当の改善を要する問題を残しておるので、十分検討いたして参りたいと考えております。
○小林武治君 私は食糧統制というようなことにつきましては、この際真に根本的に考え直さなきやならんということを考えておるのでありまするが、要するにこれらの点につきましても、農林当局も是非一つしつかりした肚を持つて事に当つて頂きたいと、こう思うのでありまして、国民は政府が言明したことは、とにかく実行されると、こういうことがあつて初めて信用し得るのでありまして、大事なところで腰砕けをするというようなことがあれば、信用できないということになるのでありまして、単に食糧問題に限らないと思うのであります。私は今年の供出につきましても、ほうぼうで思つておるより軽かつたと、こういうことを言われておるのをよく聞くのであります。どうぞ、私は、食糧当局もそうほめられるようなことばかりを考えられないでやつてもらいたい。悪口を言われるところに真の行政がある、かように考えておりますので、重ねてこれらのことをお願いしておきます。
 次は、我が国の会計年度についてお聞きいたしておきたいのでありますが、会計年度は四月一日に始まり、翌年三月に終るのでありまするが、この制度は我が国のように南北に非常に長い、殊に東北、北海道と積雪地を持つ地帯におきましては、勿論この四月から始まる会計年度は不適当である、こういうふうに考えておるのであります。私は、由来財政年度というものは、会計支出上の実際の必要よりは、むしろ我が国の初期における国会の、議会の開会、こういうような便宜から恐らく定められたものであると思うのであります。従いまして、現在のような国会の制度におきましては、会計年度を四月とすることに、私は固定をしておく必要はない、こういうふうに考えられるのであります。即ち繰り返して申しますれば、東北、北海道、或いは信越、北陸等の積雪地帯におきましては、各般の公共事業等も殆んど半年しか、六カ月しかこれをやる期間がないのでありまして、四月に成立した予算では、その執行上幾多の難点があるのであります。又予算の使用上の効率も著しく私は減殺されると思うのでありまして、殊に本年のような八月に本予算が成立するというような状態におきましては、殆んど事業の執行は不可能である、かように考えられるのでありますが、私は真にこの日本の実情に適するよう、政府はできますならば、英断を以ちまして、歴年と会計年度とを一致させると、こういうことにされたならば、私は予算の使用効率が非常に上昇する、かように考えるのでありまするが、この際、私はこの点についての政府の御意見を伺つておきたいのであります。
○国務大臣(小笠原三九郎君) この問題は従来いろいろ議論もありまして、結局、明治十九年からですか、今日まで約六十年間、まあ今の四月━━三月という会計年度でやつて来ている次第であります。それでまあ長くやつて来ておるものであつて、特にこれを変更しなけりやならんという点についてのいろいろ今小林さんの議論もありますが、従来の例から見ますと、こういうようないろいろな点が考えられておるのです。予算の編成及び国会の審議期間との調和、それから効果的に予算を執行する関係で、年度の開始時期は税収等の関係から見て国家の富裕時に該当するということ、四番目には衆議院解散が行われたような場合選挙活動及び投票に便宜な時期に当る可能性の多いことなどの見当がこの辺にある。その次には年末年始における国庫支出と一般金融との調和、その他国民生活と社会活動との調和、こういうような点がいろいろ考慮されて砦のであります。いろいろ今お話の歴年制にするとか、或いは七月━━六月というのも以前にはあつたのでありますが、そういうことも一長一短がありまして、実は全くどれが最上のものか結論することができないのであります。最初に申上げましたが、もう六十年も長い間これでやつて来ておりますので、或いは今お話のように特に本年の何はちよつと例外でございますが、八月に本予算が通るということは例外でございましたが、そういつた場合地方に不便のあることはよく認められますけれども、今いろいろの状況を考えてみますると、この六十年間やつて来たことを、ここで特に変えなければならんというほどの強い点もないように考えられますので、まあこうやつておる次第でございますが、更にいろいろな点から研究してみたいと存じておるのであります。
○小林武治君 最後にもう一つお伺いいたしたいのでありますが、奄美大島の復帰の問題であります。私は過般参議院の院議によりまして、各派の代表と共に奄美大島の調査に派遣されたのでありまするが、親しく現地を見るにおきまして、如何に日本復帰を熱望しておるか、誠に感銘を深くいたしましたと共に、八年の空白によりまして奄美大島が如何に疲弊困憊しておるかを日のあたり見まして、同じ同胞として誠に同情を禁じ得なかつたのでございます。特に昨年八月ダレス長官言明の後は、奄美の行政は殆んど放任されておると言うても差支えないのでありまして、我々派遣に当りましては、日本復帰は十二月一日であるとか、或いは遅くも十五日であると言われたのでありますが、その後の状況は未だに目鼻のつかない状況であるのであります。島民は本当に文字通り一日千秋の思いでその決定を待ち焦れているのでありますが、果して復帰はいつになるか、この際政府当局のお答えを願つておきたいのであります。
○国務大臣(岡崎勝男君) いろいろの事情で遅れていまして、私も非常に心苦しいと思つておるのでありますが、殆んど連日のようにアメリカ側と話をいたしております。主としてB円と申しますか、通貨のこと、それから刑を受けた者の取扱いと、今裁判中になつておる者をどうするかという問題、それから沖縄等における奄美大島の出身者の待遇の問題、こういうようなものにだんだん要約されて参りまして、今、日取りをここで申上げるまでになつておりませんけれども、今の話合いの行き方から申しますれば、遅くとも年内にはできる、こう確信をいたしております。
○小林武治君 とにかく私は政府の最大の努力を以てできるだけ早くお願いしたいということを申上げておきますが、なお復帰につきまして二、三の問題についてお伺いしておきたいのであります。即ち、日本に復帰した後は、現実に琉球に出稼ぎをしておる奄美大島出身の者は約五万人おるそうでありますが、これらを大島に帰還せしめる、こういうふうな噂さがあるのであります。そうでなくとも、奄美大島は人口過剰で誠に容易ならん問題となつているのでありますが、これらの人々を引続き琉球に滞留せしめるというようなことの外交交渉ができないものかどうか、こういうこと、又現に琉球政府に勤務をいたしておる大島出身の公務員が三百数十名おるそうでありますが、これらも復帰の後は離職させられる、こういうことが言われておるのでありますが、これらにつきまして、私は政府の善処を熱望するものでありまして、その点についての御意見を伺つておきたいのであります。
 なお、もう一つ、奄美大島には現在自治警察に該当いたすものはありません。ところが同島の名瀬市は人口が三万以上あるのでありまして、丁度内地の自治警を持つ市に該当いたしておるのであります。この名瀬市におきましては、いろいろの理由からして一復帰の後も自治警察は絶対持ちたくない、こういうことを申しておるのでありまするが、これらの希望を実現させるということにつきまして、政府において何らかの特例をお設け下さるかどうか。この三つの点をお伺いしておきたいと思います。
○国務大臣(岡崎勝男君) 私どもで調べましたのでは、奄美大島の出身者で沖繩におります者は二万五千乃至三万ぐらいおるのではないかと思つております。それと、それから公務員の今お話の問題でございますが、これが話合いの一つの題目になつておつたことは、先ほど申した通りでありますが、我々は勿論現状のままにいたしておきたい、こう思つておりまして話をいたしておるのでありますが、今のところ特にそれに対して強い反対もないようでありまするから、今まだ決定はいたしておりませんが、現状のままずつと引続き向うに行つて職を持つておるということになり得るものと大体信じております。
○国務大臣(犬養健君) 警察のことに関してお答え申上げます。小林さんの御指摘のような事情を通知を受けておりまして、経済状態その他から見まして、尤もな点もございますので、当該地の住民の人々の気持を尊重する線に沿つて目下至急研究立案中でございます。
○小林武治君 外務大臣の只今のお話は是非さようにお取計らい下さるものと存じまして、これで私の質問を終ります。
○小林孝平君 総理大臣は、国力の許す範囲において自衛力の漸増を図ると、しばしば言つておられます。これは十分よくわかりましたが、この漸増の過程において、一体どこで戦力になつたのか、或いはなるのかということは、一体誰が判定するのかということをお伺いいたしたいと思います。
○国務大臣(吉田茂君) 戦力については、大分議論を本日まで闘わして来ておりまするが、誰が判定するかということは、これは結局国民が判定することになると思います。何方から戦力であるとかないとかという議論ではなくして、その実際に持つ保安隊の性格なり力なりというものが、国民が見て、これが戦力である、或いはないという国民の判断が、結局これを決定するものであり、政府がこれだけは戦力であるとかないとか言つてみても、これは議論の種になるだけの話でありまして、国民が納得行くような力を、納得の行くような解釈を政府はとろうと考えております。詳細は主管大臣から……。
○小林孝平君 国民が判断するとおつしやいますけれども、今のような政府のやり方でありますれば、漸次漸増して行く、いつまでたつても、これは戦力でない、こういう考え方の下に漸増して行く結果、国民がこれはもうすでに戦力であると考えておつても、どんどん事態は進んでしまう、すでにそれは憲法に違反しておるという事態にまでなつても、仕方がないという状態になるのではないかと思うのであります。只今総理大臣の御説明によると、そういうことになる。この点は如何でございますか。
○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。この戦力になるかならんかという問題、今総理が答弁されたように、結局は国民が判断するのであります。一体政府が自衛力を漸増いたしましても、勝手にできるわけではないのであります。国会の承認を経て、これはすべてやることでありますから、一応これは戦力にならんという見解の下に政府がすべて案を立てる。そうしてその案を国会の審議を経て、これはやるということであります。国会においてこれは戦力にならんということであれば、恐らくそれは御承認になる。繰返して申しますれば、一応は政府でこれを戦力にならんか、なるかということの判定をいたし、そして次に最終的には国民によつてこれを判断する、こういうことになると思います。
○小林孝平君 今長官は、これは戦力であるかないかという判定を国会に仰ぐと言われますけれども、現在我々は、これは戦力であるというふうに言つておるにもかかわらず、何ら具体的に━━これは戦力であるかないかという判定を国会の決定を待つと言われるが━━手続をおやりになつておられないが、どういうふうにおやりになるか。
○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。一種の計画を立てて、これはすべて国会にかけるのであります。例えば我々は今防衛計画を立てておる、これは計画を立ててこれを直ちに実行に移すわけではないのであります。国会において議決をされるわけでありますから、国会の議決の下に我々はこれの執行の任に当る。防衛計画を立てても、それは戦力になるかならんかということは、結論としては国会において判断をするわけであります。即ち国民の判断によることになるわけであると考えております。
○小林孝平君 この問題は、納得が行きませんけれども、後ほど又やることにいたします。
 次に、先般吉田首相は重光総裁と会見されまして、従来の態度を一働されました。保安庁法を改正いたしまして、保安隊を直接侵略にも対抗できるように改正しようと、こういうふうに言明されたというのであります。その結果は、今までの保安隊と性格は変りまして、米駐留軍と共同して、日本の国土防衛に当ることになるわけであります。こういう新たなる事態になりますと、日米共同の戦略戦術の一環として保安隊が行動するということになると思うのであります。こういう段階になれば、すでに保安隊というものは、その装備の如何を問わず、戦力になつたものと解さなければならないと思うのでありますけれども、この点、総理大臣はどういうふうにお考えになりますか。……私は総理大臣にお尋ねをいたします。
○国務大臣(木村篤太郎君) 所管大臣でありますから、私のほうから答弁するのが適当であろうと考えます。憲法第九条第二項の戦力の判定は、これは日本の国自体において、どういう実力を持つかどうかという判定であります。これは他国の軍隊と総合的にこれを判断すべきものではないので、従いまして、仮にアメリカの駐留軍と日本の保安隊を総合して考えてみても、日本自体のこの実力が憲法九条二項の戦力に該当するかどうかということを判定するのであります。外国のもの、つまり日本に駐留しておる実力と総合して、これは判断して行くべきものではない、こう考えております。
○小林孝平君 長官は保安隊の長官であるにもかかわらずそういう認識すら持つておらないと困ると思う。日米共同して戦略戦術の下に行動する際に、日本軍は戦力でない、アメリカ軍は戦力である、こういうことが成立つかどうかということは、あなたよくおわかりであろうと思う。わかつていて、そういう答弁をされておる。それはどうなんですか。そういうことができるかどうかわかると思う。
○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。日本の憲法の九条二項に規定されておるこの戦力の保持という規定を、どこで判断するか、これは日本の国自体の実力が戦力に該当するかどうかということになる、結局判断されるのである。アメリカの軍隊と日本と併せてどうするかということで判断するのではないのであります。これは日本の憲法の九条二項の解釈上そういうことになつておるのであります。日本の国自体の実力を以て判断するのであります。
○小林孝平君 これは少しも答弁になりませんです。いやしくも軍隊というものが、而も駐留軍が日本におつて日本の国土防衛に当る、日本が今度は保安庁法を改正して直接侵略に対抗できる、こういうことになれば、揮然一体となつて戦略、戦術というものは行われなければならん。こんなものは常識じやないですか。それを日本軍だけ抽出して、これが戦力であるかないかと、こう(うことを言つては問題にならんですよ。もう一度はつきりこの点はして頂きたいと思うのです。全然従来と情勢が変つておるのですから……。
○国務大臣(木村篤太郎君) 申上げましよう。アメリカの駐留軍が戦力になるかならんかということは別個の問題であります。日本の憲法第九条第二項の規定は、日本の国自体の実力が戦力になるかならんかということであります。これを併せてこれを戦力になるかならんか、これは別個の問題であり、我々は憲法第九条第二項の戦力というのは何ぞやということの解釈から来るのである。それは日本の持つておる実力が戦力になるかならんかということです。アメリカの駐留軍と併せてこれは論ずる問題じやないと考える。併し実際の問題といたしまして、アメリカの駐留軍の実力が戦力になるかならんか、それは別個の問題であります。日本の憲法第9条第二項の解釈から行くと、日本の国の持つている実力がどうであるか、こういうことになるのであります。これは観念論として、別個の問題として取扱うものと考えており申す。
○小林孝平君 長官は今アメリカの軍隊が戦力であるかないか、それは別個である、そんなことは、戦力であることは明らかじやないですか。あなたはだんだんつまらんことを言つて論旨を曲げて来るからいかん。
 それから今憲法の解釈は、これは保安隊が従来の性格であつたときはあなたのおつしやる通りなんです。これが保安庁法を改正して自衛隊となり、直接侵略に対抗できる、こういう性格になつたときば、日本に駐留しておるアメリカ軍と同一の性格を以て、外敵の直接侵略に当ることになるので、だから当然これは同一の性格であります。あなたのような説をなすれば、アメリカの軍隊の中でも、通信部隊はこれは戦力でない、衛生部隊はこれは戦力でない、他の部隊、航空部隊は戦力である、こういうことと同じじやないですか。アメリカ軍は一体となつて、これは戦力であるということは明らかだ、これと同じ性格を持つて、同じ行動をやるのが戦力であることは、当然じやありませんですか。あなたはもう十分承知して、そういうとぼけたような答弁をしておるのじやないですか。
○国務大臣(木村篤太郎君) 私は決してとぼけて答弁はしておりません。まじめに答弁しております。あなたの考え方は私は全然我々の考え方と反しておると思う。一体戦力になるかならんかということは、その部隊の目的によつてきめるわけじやないのであります。これは政府は一貫して前からとつておる、いわゆる客観説をとつておる。あなたは恐らく主観説をとつておる。戦争を目的とするような部隊であれば、これはいわゆる戦力でないか、こういうお考えのようでありますが、これは目的が何であろうと、たとえ自衛のためであろうと、これは大きな近代戦を遂行し得るような部隊であれば戦力になる。目的の如何にかかわらず、戦力というものは別に考えらるべきものである。今の保安隊が、これが仮りに自衛隊に変つて、外国の侵略に対処し得るようになつて来ても、今のままでは戦力にならない、これは厖大なものになつて、近代戦を遂行し得るような編成装備をなすようになれば、或いは戦力になるかもわかりません。今のままでは、目的の如何にかかわらず、これは戦場ではないのであります。これは従来政府がとつておる見解であります。いわゆる客観説であります。
○佐多忠隆君 関連して。厖大な近代戦を遂行し得るものだけが軍隊であるというように定義をされたのですが、若しそれならば、長官は現在いろいろな種類の軍隊を各国が持つておると思いますが、長官の判定によれば、どことどこの国が近代戦を有効に遂行し得る軍隊なのか、そしてインド同等の小国が持つておる軍隊は軍隊であるのかないのか、その辺を明確に一つ規定をして頂きたい。(「委員長」「違う違う」「長官だ」と呼ぶ者あり)
○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。これはしばしば申上げておる通り、その与えられたる地理的環境以いは時代、いわゆる空間的、時間的り判断に待たなければならない。要するに日本の国、或いはあなたの言われるように或いはインドの国、或いはど
 そこの国と、その国を標準にして言うのであつて、これは抽象的に、どこまですれば戦力になるかならんかということは言える問題じやないのであります。我々は今の日本の国を土台にいたしまして、これを考えるべきであろう。而して時代においても、昔は戦力であつたものが今戦力でないことがありましよう。昔は少しの軍隊でも、或いは今の情勢から解釈すれば、これは戦力にならん。それから土地の環境、それから、一般に総合してこれを戦力であるかないかということを判断すべきものであつて、具体的に言うべきものではないと思います。
○小林孝平君 長官の御説明は先ほどからされておるが、私の誤解であるというように言つておられますけれども、それは今までの議論では、あなたは近代戦の本質を知らんのではないかと思う。あなたは剣道の達人であるといつておるけれども、近代戦は全然別なんです。アメリカ軍と日本軍が渾然一体となつて作戦をしなければ、この近代戦に対抗できないことは明らかではありませんか。私たちはあなたたちと立場は違いますけれども、仮にあなたたちの立場を認めたとしても、渾然一体となつて作戦をやらなければならない、その際に、日本の実力だけ抽出して、これが戦力であるとかないとかということは言われないのです。アメリカ軍が戦力である以上、これと渾然一体となつて働く日本軍が戦力であることは明らかではありませんか。その点もう一度明確にして下さい。
○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。これは議論がです、非常にごつちやになつておると思つております。憲法第九条第二項の戦力の問題の判定について、私は今まで言つておるのです。そこでそれを抜きにして、何が戦力であるかということになれば、あなたのお説のようなことになる。日本の警察、微々たる警察でも、アメリカの陸海空軍と一緒になつて働けば、これは或いは戦力になるかもしれない。併し我々は憲法第九条第二項の戦力論を言つておる。日本がどれだけの戦力を保持することはできないという解釈を私は言つておる、これはアメリカの駐留軍と一緒に併せて論ずべき問題ではない。これは日本の部隊を中心にして、それが戦力になるかならんかを考えるべきものである。アメリカの駐留軍と一緒に併せてこれを論ずべきものではないと私は言つておる。
○小林孝平君 あなたは私が先ほどから言つておることを少しも理解しておらんから、そういうことを答弁しておる。私は今までの保安隊と性格が変つて、今度は自衛隊となつて直接侵略に対抗できるという段階になつたから、新たな問題として私は言つておるのです。警察はどうとか━━警察は直接侵略に対抗できないのです。そういうあなたは、人の質問の本旨を曲げて、とんでもないところに議論を持つて行くから困るのです。私は違うことを開いておるのです。それに対して答弁をしてもらいたい。
○国務大臣(木村篤太郎君) 私は、決して曲げて言つておるわけではない。今もあなたの御質問に対して答弁しておる。というのは、この一体戦力とかどうとかという問題は、その目的を以て論ずべきものではない。我々は、政府は前から一貫して客観説をとつておる。これは保安隊が保安庁法を改正して直接侵略に応ずるようにすれば、それを以て直ちに戦力になるのじやないかという御議論であるが、そうではないのです。目的はどうであろうと、戦力というものは客観的に考えるべきものだということを私は言つておるのであります。繰返して申上げますれば、今の保安隊が保安庁法を改正して、直接侵略に対抗させるようになつても、今のままでは決して戦力にならん。(「そんな馬鹿なことはあるもんか」と呼ぶ者あり)
○小林孝平君 そういう抽象的なことを言われては困るのです。例えばアメリカ軍の駐留軍が漸次引揚げて行く。近代装備を持つたアメリカ軍が引揚げて、その人員が引揚げて行き、そのアメリカの兵隊の代りに日本の自衛隊がその装備を利用してやるときは、日本の軍隊だけ抽出することはできないじやありませんか。あなたそれをできるのですか。
○国務大臣(木村篤太郎君) アメリカの駐留軍がどれだけ引揚げるかわかりません。私はアメリカが只今東洋に持つておる、殊に日本において周辺におるところの、或いは空軍、海軍、日本の地上部隊全部を総合してみれば、これは日本の憲法に照しても戦力に該当するかも知れません。併しアメリカは恐らく日本に駐在しておる地上軍も空軍も海軍も全部引揚げようとは言わないであろうと思います。我々の聞き及んでおるところによれば、地上軍の幾らかが引揚げたいということであるのであります。それを日本が保安隊を増強して幾分それをカバーするにしても、それを以て直ちに私は戦力となるものでない、こう言つたのであります。
○小林孝平君 長官の答弁はさつぱり答弁になつておりませんよ。これはのちほど又お尋ねすることにいたします。
 日韓会談について総理大臣にお尋ねいたします。首相は本会議の冒頭の演説において、日韓会談について双方公正なる互譲の精神の上に必ずや打開の途が見出されると言つておられるのであります。我々も全く同感であります。ところが政府の現在とつておられる態度は、首相のこの言明と相反するような印象を国民に与えておるのではないかと思うのであります。即ち李ライン問題を首相の言われるような方向で日本が全力を挙げて外交交歩で解決するという方法をとるのではなく、逆にこの問題を再軍備の問題に結付けて、かかる紛争を実力を以て解決しなければならないというふうに国民に印象付けておられるように考えるのであります。この点総理大臣の所見を承わりたいと思います。
○国務大臣(吉田茂君) お答えいたします。政府の方針は私の施政演説に述べた通りで一向変つておりません。併しながら現地において漁民漁船等に保護を与えることは別でありますが、併しながら飽くまでも日韓の間においては外交交渉によつて始末しようと考えるので、実力を用いて云々ということはできもしなければする考えもありません。
○小林孝平君 首相は演説にもそういうことを言われ、今もそういうことを言われましたけれども、閣僚のうちの木村長官のごときは、衆議院の予算委員会においてそういうような答弁をされておるのであります。現在漁船が韓国に拿捕されておる、こういう状態だからこちらの自衛力を漸増しなければならん、而もこの日韓両国の装備が相当隔つてそういうことはできないのじやないか、こういう質問に対して、保安隊の士気は極めて旺盛である、まるで帝国憲法下における国会の答弁のようなことを言つておられる。この点は首相の今の御答弁と相当隔りがあると思う。この点如何ですか。
○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。私は日本の現在持つておる警備隊の任務からいつておるのであります。不法に他国に対してこの船が拿捕され或いは生命の危険にさらされるような場合においては、我々警備隊もこれに対して保護を加えなければならん。これを言つておるのであります。決して日韓会談について私は言つておるわけではありません。
○中田吉雄君 関連質問。木村保安庁長官にお伺いしますが、衆議院の辻政信氏が内閣委員長の了解を得て保安庁長官のいずれ便宜供与もあつたと思うのですが、李ライン内に入り込みまして韓国の警備船の乗組員と会談した際に、韓国の警備隊の諸君が、日本に対して漁船等にああいう行動をとつておるのは、アメリカの指令によつて日本に対して敵対行動をとつておるということを「辻参謀」に言つたということを文芸春秋の十二月号にはつきり書いておる。これは極めて「辻参謀」はこれありなんことだと言つておる。只今小林委員が質問されたような日本の再軍備の世論を喚起する一つの手段としてああいうことがとられておるのではないかということに、あたかも符合を一にするわけですが、長官は辻政信代議士がお帰りになつてからつぶさに報告を受けられたことがありますか。又文芸春秋の最近の号を責任のある国民代表の一人として、辻政信氏の論説をお読みになつたか、その間の消息を承わりたいと思います。
○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。この際中田君に申上げたい。辻君が我々の了解の下に行つたように言われましたが、さようなことは断じてございません。我々にとつては了解を求められたこともなし、了解を与えたものでもございません。辻君の行かれたことは全然私の庁には関係ないことをあらかじめ申上げます。辻君がどんなことを言われたか私は知りません。又辻君から報告も受けておりません。
 なお文芸春秋に辻君が李承晩ラインがどうとか言う記事があるということは聞いておりますが、私はまだその記事は読んでおりません。
○小林孝平君 韓国側が若し日本が巡視船或いは監視船を出せば砲撃すると言つております。その際に長官一体どうされるのですか、そういうふうにあなたが徒らに巡視船を出し、士気極めて旺盛であるというようなことを言われる。そういう態度こそは徒らに紛争を拡大し、そして不側の事態を生ずる虞れがあるのであります。この点長官はどういうようにお考えですか。
○国務大臣(木村篤太郎君) よほど私の言つたことを誤解されておる。よく読んで下さい。私はその場合には慎重に考慮をすると言つておる。又慎重に考慮しなければならんと思う。一国の漁船が不法に他国から脅かされ寧捕され、漁民の生命財産を危険にさらされるようなことがあつては我々も考慮しなければならんと思う。その点をどうするかということを慎重にやつておる。こういうことを我々は言つておるのであります。具体的にどういうことをするということは言つておりません。
○小林孝平君 いや具体的に聞いておるのです。あなたは巡視船、監視船を出す。それに対して韓国はそういうものを出せば砲撃する。砲撃をされたらどうなる。それがやがて不測の事態を生じないかということを我々は心配しておるのです。あなたは徒らにはりきつて士気極めて旺盛であるなんとか言つておるということは、非常に国民は心配しておるのです。却つてそういうことがこの日韓両国の間を悪化させるのじやないかということを心配しておる。あなたの軽卒な行動をみんなが心配しておるから聞いておるのです。少しも誤解しておりません。
○国務大臣(木村篤太郎君) 私の言動に対して御批判は御勝手ですが、国民の全般はさほどに軽卒だとは思つておりません。私は慎重に考慮する。又慎重に考慮しなければならんのであります。小林君はどう考えるか知らんが、我々としては真剣に考えなければならん。
○小林孝平君 私も真剣に考えておる。批判は勝手だと、そういう勝手なことを言つちや困ります。我々は国民代表として、あなたの行動に対して批判をしておるところの国民の全般はそういうことを考えておる。あなたは何の基礎に立つてそういうことを言う。それは非常に不謹慎じやないか。我々は国民の代表として聞いておるのです。多数の国民が心配しておるのです。それをあなたが勝手にそんなことはないと言うのは何を基礎にしてそういうことを言うのですか。
○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。あなたは何を基礎にして国民の全体が言つておるという……。
○小林孝平君 全体とは言いません。
○国務大臣(木村篤太郎君) 言われました。私も国民を代表して……。わしも国民を代表しておる。決して国民の代表でないわけではない。わしも国民の代表でないわけではない。私も国民の代表である。
○小林孝平君 長官は何でそんなに興奮して言つておるのですか。私は国民が心配しておる、こういうことを言つておるのです。あなたが国民を代表していないとかしているとかちつとも言つていない。もう少し冷静に答えてもらわないと困ると思う。あなたも一国の長官でありませんか。
 次は防衛費の問題についてお伺いいたします。今いろいろ防衛力増強の計画は考えられておりますけれども、首相は国力の許す範囲内において自衛力を漸増するとしばしば言つておられます。これは十分言つておいでになることはわかりましたが、そこで一体国力の許す範囲というのはその目途はどこに置かれるのですか。どういう目途でおやりになるかということをお尋ねいたしたいと思います。
○国務大臣(木村篤太郎君) それは具体的に申上げることができませんが、国家の財政その他全面的に亘つてこれを慎重に考慮してこれはどうするかということを判断すべきであると考えております。
○小林孝平君 それは保安庁長官は、ただあなたは漸増したいという計画をお立てになるに過ぎないのであつて、私はこれは総理大臣から一つとくとお聞かせを願いたいと思います。総理大臣は何遍もこれは国会でお話になつております。そのお話になつておることはよくわかりましたが、どういう目途でおやりになるのかということをお尋ねいたしたいと思います。
○国務大臣(吉田茂君) 只今木村大臣の説明が即ち私の考えておるところであります。
○小林孝平君 今回家財政の見地から云々と言われましたが、大蔵省は一体国家財政の見地から防衛費の限度というものはどのぐらいが妥当であるとお考えになるかお尋ねいたします。
○国務大臣(小笠原三九郎君) 勿論自衛力漸増というのは、国力の増加するにつれてやるべきものであると考えておるし、国力の増加というものは、これはそのときの事情によつて違います。ただ現在昭和二十八年度のところでは、過日皆様に御協賛を願つている千二百数十億のところが丁度適当であると考えております。なお来年度はどうかということになりますれば、来年度は国民所得も若干殖えるが、併し他に災害その他いろいろな点もあるので、どの程度かということは今財政の点からいろいろ考慮検討しつつある次第であります。
○小林孝平君 もう少し具体的に大蔵大臣としてはお答え願わないと困ると思うのです。国力の増加につれて、どういうことを一体目標にして言われるのか。
○国務大臣(小笠原三九郎君) 只今具体的に実は申上げたのです。本年の国民所得が大体五兆七、八千億であつたから、従つて千二百数十億のところが日本の各種のいわゆる防衛予算として適当である、国力に合ついおるというので皆様の御協賛を願つた。然らば来年度はどうか。こういうお尋ねがあれば、明二十九年度は国民所得は私どもは六兆二千億見当に殖えると思うけれども、小林さんもよく御承知の通り災害等がありまして災害予算等が相当殖えて来るから、来年度はそれらとのことを合せ考えなければならぬから、只今幾らということはお答えができない。これ以上どうも具体的に申しようがないと思います。
○佐多忠隆君 関連して。我々の新聞等で察知するとこるによれば、その点こそ池田特使その他がアメリカに対しているくと御説明になつた点であると思う。その説明の内容、その意見が妥当であるかどうかは後ほど質問をしたいと思いますが、一応少くともアメリカにすらお示しになつたような、アメリカですら御説明になつたようなことならば、ここでその前に先ずもう少し、更に詳しく御説明になることこそ国会を尊重される態度だと思う。それを是非やつて頂きたい。
○国務大臣(小笠原三九郎君) 池田特使が総理の個人使節として行かれてどういうふうな説明をされたかわかりませんが、実はその説明の内容はことごとく私はまだ聞いておりませんけれども、日本が自衛力漸増をするということは方針としてきまつておりまして、その自衛力の漸増が国力の充実に伴うものであるということもきまつておるのであります。従いまして私が今申したのは、昭和二十八年度では千二百数十億、昭和二十七年度では千八百余億だつたが、この昭和二十八年度ではこう、だということを申したのであります。更にそれでは二十九年度はどうかと言いますると、私どもは国民所得の面から見れば大体六%くらい増加して六兆二千億くらいになるであろう、その点のみから見ればもう少し国力が充実しておるように見えるけれども、又若干増加するように見えるけれども、併しながら一方災害その他の問題があつてそれをどういうふうに予算等を按配すべきかという問題があるから、そこでそうどれだけ程度が盛れるかということは昭和二十九年度予算を全部やつてみないとわからない。その間の骨格だけは多少は殖えると思いますけれども、それでその意味を申上げておるのでありまして、なかなか数字的にそれを今出すということは、二十九年度予算をやらんと、佐多さんがどう仰せになつても出しようがないと思う、これはよくおわかりのことと思う。だから国民所得はこうなる、所得だけのことなら一本で出るけれども、そう行かないのは日本の今置かれておる立場です。今年のような異常な災害があつて、その災害に対する対策等を盛らなければならない、又その因を絶つために治山治水等に対する対策を盛らなければならん。それと釣合いを保ちつ付くにはどういう程度がよいかということは全体の財政計画を立てなければなりませんから、私はここで申上げられない、こういうのであります。
○小林孝平君 木村長官にお尋ねいたしますが、現在の保安隊の現有装備をね聞きいたしたいと思います。全体の現有勢力はどのくらい、そのうち米軍から貸与を受けておるものの維持費はどのくらいかかつておるか。それから一体その貸与はいつまで借りておるのかということをお尋ねいたします。
○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。保安隊がアメリカから借りておる貸与品の品目につきましては……。
○小林孝平君 現有装備をお尋ねいたします。
○国務大臣(木村篤太郎君) 繰返して申します。今保安隊が持つておる現有装備はアメリカの借物であります。アメリカから借りた物の品目その他についてはここでしばしば申上げておる、恐らくあなたのお手許にもこの前配付されたと考えております。その貸与の期間につきましては別に定めていません。ただ御承知の通り、船、フリゲート、LS、これにつきましては船舶貸与協定によつて期限が付けられています。五カ年であります。更に五カ年間更新し得るようになつておるのであります。船についてはそうであります。陸で使つているものについては期限は定めてありません。なおこの借りた物についてはこちらの負担は何もありません。部分品も向うからもらい受けて、そうしてこれを日本で使つて修繕するという建前になつております。
○小林孝平君 その貸与を受けた物の代金はあとからどういうふうになるのでありますか。
○国務大臣(木村篤太郎君) 代金も何も要らんのです。代金は何も払わない、ただ借りただけです。
○小林孝平君 長官は勝手に簡単にそういうことを言われておるけれども、これは最近ガリオアの例もある。我々は、又国民と言うとあなたが文句を言われるかもしらんけれども、少くとも我々社会党に所属しておる者は、このガリオアは贈与だと思つておつたのです。非常に感謝しておつた。ところがいつの間にかこれは債務である。こういうことですべてに優先して支払わなければならんということにいつの間にかなつた。あなたの今の答弁もそんなことじやないですか。
○国務大臣(木村篤太郎君) はつきり申上げます。何らそれに対してこちらから代金とか或いは貸与料ということの支払の約束はありません。無償ということになつております。
○小林孝平君 あなたはそう言われますけれども、ガリオアの問題なども外務大臣は、我々は乞食でないのだからもらい放しということはないのだ、これは払うのが当然であるというように答弁されております。言明されております。そうしますと、これは木村長官がおやりになつておることは、やがて我々日本国全体として、外務大臣によると我々は乞食の状態に陥つたということになる。どうです、答弁が食い違つております。外務大臣と木村長官の御答弁を求めます。
○国務大臣(木村篤太郎君) この武器の貸与については、日本の防衛が世界の平和に通ずるのであります。即ち日本の防衛がアメリカの防衛にもなり、又極東の防衛にもなり、更に進んで世界の平和に寄与するということになつております。そういう観点からアメリカは今日本に対して保安隊の現有装備を貸してくれておるのであります。さような次第であつて、我々といたしましては、将来これに対してアメリカに使用料を払うというような考えもなし、又そういう義務付けも少しも受けていないのであります。
○国務大臣(岡崎勝男君) 社会党のかたはもらつたものとお考えになつておつたかも知れませんが、我々は初めから債務と心得ておりました。
○小林孝平君 あなたはその説明に当つて、我々は乞食でないから返さなければいかん、こういうことをおつしやつております。今木村長官は、これは全然無償である、こういうことをおつしやつておるけれども、やがて外務大臣の考え方によるとこれも返さなければならないような状態になるのじやないか。それでお尋ねいたしているのです。その点如何ですか。
○国務大臣(岡崎勝男君) 只今貸与を受けておるものは、初めから了解でこは無償ということになつておるから、これを無償で受けれも一向差支えないわけであります。他方は債務と心得ておるものでありますからこれを踏み倒すことはいかんと考えております。
○中田吉雄君 木村長官にお尋ねしますが、成るほど今はそうだと思いますが、第二次大戦におきましてアメリカがソビエトに対して厖大な武器貸与をやつております。而も無償だつた。併し米ソの対立が激しくなつて最初の約束を破つて、アメリカはソビエトに貸与武器の返還を強力に要請いたしまして、昨年から問題が起きています。私はこの日本に対する武器貸与も、木村長官が今理解されておるのは、アメリカの極東戦略の一環として、そういうことに追随する限度においては、それはやはり無償でありましよう。併しながら日本が高度な自主性を保つて行くようになるとこれは別個な又問題が起きて来ると思いますが、只今のような発言で確言されることは非常に多くの問題を含むのではないかと思いますが、特にソビエトの武器貸与に関しては私はそういう感を深くするのですが、その点と関連しましてどういうふうに御理解になつておりますか。
○国務大臣(岡崎勝男君) ソビエトに対するもの、ほかのものもそうでありますが、レンドリーズの規約を御覧になれば、不必要になつたならば返還するという条項があります。従いまして不必要になつた場合に返還するのは当然のことだと思いますが、いつ不必要になるかということは当事者の考えであります。我々のほうの問題も、若しこれが不必要になつた船などの場合は返還することになつておりますが、今の借料とかいう問題になると別問題であります。
○木村禧八郎君 先ほど外務大臣は最初からこれを債務と心得ていたというお話ですが、これは私は正確を欠いていると思う。債務と心得ていると言い出したのは、池田大蔵大臣が前の国会で言い出したのが初めになつて来ておるので、その前の国会で出した予算説明書を御覧になればおわかりになります。最初から債務と心得ておるのではないのであります。或る段階から債務と心得るようになつたのです。そのいきさつは私は詮索いたしませんがアメリカと政府の折衝において債務と心得なくなつた事情があると思います。その間の事情の変化を本当は国民に明かにすべきです。予算説明書を見れば最初日本では終戦処理費を負担してその代りにアメリカの援助があるというふうに我々は承知しておつた。我々は四十九億七千万ドルに達するものをアメリカに税金として納めて来ているのです。それに対してアメリカから約二十億ドルの援助があつた。而も相殺しても我々の負担しているものが多いのです。だから単に乞食みたいにもらつているのではないのです。従つて我々の払い分が多い。その間において事情が変化して来ている。最初からではない。その変化の事情を我々は明かにすべきだと思うのです。
○国務大臣(岡崎勝男君) 木村君のような非常に国際法にもお通じのかたがおつしやるのは非常におかしいのです。占領行政というものの性質と国内における援助費用とうものは別個であつて、これを相殺にするとか多いから余つた分はこつちへ戻せというような問題でないことは、占領行政の従来の国際慣習から御覧になればわかるのです。何千億円出しましても、これはそのときの情勢によりましようが、第一次欧州大戦後のルールの状況を御覧になつても同じことであります。占領行政費を被占領国が負担することは国際慣例で止むを得ないことであります。これ以外にガリオア等の問題がよく我々の、当時の政府の、これは社会党内閣でも同じでありましたが、私は外務次官をしておりましたからよく知つております。そのときでも強く司令部に要請をいたしまして援助を受けたのであります。これをいつ債務と心得るということを国会ではつきり申したかは、これは別問題でありますが、国会で申さなければ世務と心得ないかと申すとそうじやなくて、やはり債務と心得ておつたのでありまして、ただそれを国会で申したのがいつであるか、こういうことになろうかと思います。
○木村禧八郎君 それは二つ問題があると思うのです。成るほど国際慣例とか或いは占領放棄とかそういうものについて我々も全然理解ないわけではないのです。併し前から政府はそういうふうに説明して来たのです。大体大蔵省の予算説明書のずつと厚いのが出ておりますから過去のを繰つて御覧になれば、大体国民にはそういうふうに説明して来ているのです。ですから国民は、我々は終戦処集費はたくさん、四十九億七千万ドルも払つて、而も同じアメリカからそれに対して援助があつたように説明して来ているのです。そのほうは別としてそういう……。ですから皆もらつたように国民が考えるのは当り前である。それからもう一つ、債務と心得ると国会で言つたからこういうふうになつたといいますけれども、このガリオアの返済費を予算に組まざるを得なくなつた、予算に組むようになつた、そこで債務と心得ざるを得なくなつた。これは防衛問題と関係があるのです。賠償とガリオアの返済とこの再軍備の問題とは密接な関係があるものなんです。こういう点はもつと本当は国民に明かにすべきだと思う。日本に率直に言えば再軍備をさせる意味においてこれをアメリカが債権と見ないと、日本にこれを我々から見れば押付けることができないので、アメリカは債権を確保して、そうして日本が再軍備しなければこれを返せ、極端に言えばそういうようなプレツシユアをかける道具にするためにこれを債務とさせるようにアメリカがだんだんにやつて来たので、そうして日本政府が債務と心得ると言わざるを得なくなつたのではないか、率直に解釈すれば。これは私の独断かも知れません、知れませんが私はそういう解釈をしているのです。なお違つていたらその点御答弁願いたいと思います。
○国務大臣(岡崎勝男君) 予算書等のことをおつしやいましたが、私は大蔵省で出しました予算書にこれが贈与であるという明言をいたしたことは一度もないと記憶をいたしております。なおそのあとのことは再軍備とかそれに引つかけてどうとかいうことは、私は木村君の邪推に過ぎないと考えます。
○小林孝平君 この問題はいろいろ重要な問題を含んでおりますので別の機会にお尋ねいたしたいと思います。
 次に総理大臣にニクソンアメリカ副大統領の言明に関してお尋ねをいたしたいと思います。去る十一月の十九日に日米協会主催の昼食会においてニクソンアメリカ副大統領は、終戦後アメリカが日本の軍備を解体したのは間違いであつた。日本は自衛できる水準まで再軍備すべきだ、米国は援助を惜まないという内容の演説を行なつておられるのであります。これは憲法に関連して一九四六年の誤りを公式に言明しまして、日本は憲法を改正して再軍備すべきであるというアメリカ側の意向を率直に述べたものであると考えられるのであります。ダレス長官もこのニクソン言明を支持する旨の談話をアメリカにおいて発表しておるのであります。これは極めて重要な発言であると思うのであります。日本をアメリカの従属国であるかのごとき態度をとつているのは我々としても到底承服しがたいところであります。我々のこの日本の今後歩むべき道は日本自身が決定する事柄であつて、日本の主権を無視するがごときこのニクソン副大統領の発言は我々としても甚だ迷惑千万であると思うのであります。吉田総理大臣といえども内心は恐らく非常に御不満であろうと思うのであります。そこで、この問題について総理大臣はどういうふうにお考えになつているのか、こういう発言をされつぱなしでいいのかどうかという点をお尋ねいたします。
○国務大臣(吉田茂君) ニクソン副大統領の演説は直接に聞かないから知りませんが、併し私はニクソン副大統領との直接会つた感じは、決して日本に対して悪意を持つて、或いは干渉というような考えで演説せられたものでないと確信いたします。而してニクソン副大統領若しくはダレス長官の言明に対して、とやかや私はくちばしをさしはさむことは、過日参議院の本議場においても申上げましたが礼儀の上から差控えます。
○小林孝平君 大蔵大臣にお尋ねいたしますが、先般税制調査会が答申をしております。それでこの前大蔵大臣にもお尋ねいたしましたけれども、この調査会の答申の減税について、これに従つてあなたはどういう具体的、どういう減税の構想を持つておられるのかということをお示し願いたいのであります。それについてお尋ねに当つて申上げておきたいのは、あなたは過日の新聞にこの問題に関連しまして、答申が実行できるかどうかは歳出の削減ができるかどうかによつてきまると言つておられますが、歳出規模の原案は蔵相であるあなたがきまるものであるのであります。それを何かよそ事のように人がきめるような発言をされておる。これは大きい誤りであると思うのです。そこであなたはそういう立場でなく本当に大蔵大臣として、この調査会の答申に対してどういうふうに考えられ、具体的に減税の構想をどういうふうに持つておられるかということをお尋ねいたします。
○国務大臣(小笠原三九郎君) 最初に小林さんに申上げておきますが、歳出規模を大蔵大臣のみが決するのではないので、これは現内閣が決するわけでありまして、各省それぞれの要求が出ておりその要求というものが、実は防衛費その他ああいつたものを除いて一兆八千数百億に達し、これらを仮に今年通りとみましても二兆円以上になつておるので、これをどの程度に圧縮すべきかで違う、こういう意味を申上げたのでありまして、私が一人で歳出の件をきめ得るなら誠に楽でありますが、日本の制度はそうは相成つておりません。このことを申上げておきます。
 それから今の点でありますが、税制調査会、これは小林さんも御覧下さつたと思いますが、非常に熱心に調査されまして非常な筋の通つたよい答申が出ております。けれども現在あのままを行うということは日本の今の歳出が増加している財政ではむずかしいのではないか。そこで私が申しておるのは調整減税という言葉で申しておるのでありまして少額の所得者等に対する減祝をしてみたい。併しその少額所得者に対する分もたとえて言いますと、あの中には基礎控除とか扶養家族に対するいろいろな控除とかいろいろなものが盛られております。これをどういう程度にすべきか。又或いは率で加減すべきかという問題等も残されております。従つてまあいわば控除を基礎控除にすべきか、或いは扶養家族の控除もそれに加うべきか、更に率も変えるべきかという問題もございまして、これは今事務的に検討いたしておる次第であります。更にあの中には法人税その他のものについていろいろ申されておりますが、このものは少しできれば、といいますのは、先ほど申しました歳出の点が削減できれば、できるだけその線に副いたいと思つておりまするけれども、只今のところはいわゆる私が申す調整減税の程度くらいであろうと考えておるのであります。併し少額所得者には是非やりたいと、こう思つております。
 それから一方そうやりましたときに歳入不足その他が参ります。この間二十九年度予算を衆議院の予算委員会で話しましたときに、来年度は大体一兆七百億円くらいの歳入がある見込である、こういうことを私は申したのでありますが、一兆七百億円くらいのところへ大体財政規模を置くといたしますると、よほど圧縮いたしましてもそう大きい余地が出て来ないのではないかと思います。思いますが、少額所得者のほうは是非調整減税をやりたいという意味合から、例えば奢侈税的なものどか或いはその他のものに若干新税を作つたり、或いは増税をするというようなものも出て参りますが、全体といたしましては若干でも減税をしたい、こういうふうに考えております。ですから繰返し申しまするが、少額所得者に対する分は是非一つ減税をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
○小林孝平君 その答申の中にいろいろ重要なことが述べてありますが、その一つとして農業課税について超過供出奨励金等、この等というのは超過供出奨励金、早場米奨励金、完遂奨励金のこの三つだと思うのでありますが、この超過供出奨励金という各種奨励金の免税措置の廃止をこの答申では言つておるのであります。これは非常に重要な問題であります。そこで影響するところは大でありまするから、こういうこの答申のこの部分についてはあなたはどういうふうにお考えになりますか。これを実施されるわけですか。
○国務大臣(小笠原三九郎君) これは小林さんも知つておられる通り、農業所得については随分今まで各種の点から課税が低くされておりまして、現在所得税が施行された当時に比べれば昨今の農業者の納税というものは恐らく十分の一くらいになつているのではないかと思われます。併しながら今お話の点は答申にもありましたように、私は相当これは考えなければならんと思つておりますが、どの程度実行すべきかは一つだけでは考えにくいものですから、ほかのほうのそういつた点も合せ考えて何らかの形で措置いたしたいというふうに考えております。
○小林孝平君 そうすると大蔵大臣は各種奨励金、超過供出奨励金と、この早場米奨励金、完遂奨励金を場合によれば免税措置をやめようということを研究もし考慮もされておる、こういうふうに解釈していいのですか。1
○国務大臣(小笠原三九郎君) 検討中でございますからやはりやるともやらんともその点ははつきりいたしませんが、そういう答申についてはよく申しておる通り非常に筋の通つた話であるから、財政の切盛りはできるだけ税制調査会の答申を尊重したいというのが私の根本の考えであります。
○小林孝平君 先般衆議院において昭和二十九年度の予算の骨格について大蔵大臣から発表になりました。我々も新聞でこれを拝見したのでありますが、これに非常にいろいろの問題があると思うのであります。そこで現在のこの過半数を擁していない現政府はこれを通過させるということは相当困難だろう、こういうふうに考えるのであります。そこで総理大臣にお尋ねいたします。この際いわゆる政局安定のための構想はどういうふうな構想をお持ちになつておるのか。更に積極的に改進党とか鳩山自由党に働きかけられる御声息があるかどうかという点を、この昭和二十九年度の予算の取扱方に関連して御意見を承わりたいと思うのであります。
○国務大臣(吉田茂君) 政局安定は今日国民の要望いたしておるところでありますから、成るべく我が党と政策を同じうしている党派と、これは改進党と限らないのでありますが、政策を調整して、そうしてその協力を得たいと考えております。これは予算に関係なく進めます。
○小林孝平君 この人事院勧告及び仲裁裁定に関して総理大臣にお尋ねいたしますが、今回のこの補正予算の編成に当りまして、政府は人事院の勧告及び仲裁裁定の結果を誠実に実行しなければならないのでありますけれども、全くこれを無視しましてその不完全実施を決行しようとしておられるのであります。その結果として官公労の当然の反撃を受けて現在のような紛糾せる事態に立至つているわけであります。首相は先般の演説でも労使協調して互いに最もスムーズに話合いがつくことを希望している。又労働者も使用者側も互いにその立場を尊重してただ一方の立場のみ強調しないでもらいたいとこう言つておられるのであります。これはまあ当然なことでありますが、併し政府こそ一方的に法律を無視し、憲法の精神を蹂躙し、自分の立場のみ私は主張されいおるのではないかと思うのであります。国会の公聴会における各公述人は一斉に、政府のこのたびの態度は遺憾であり法の精神を踏みにじつている、不完全実施の結果起る紛争の責任は当然政府が負うべきものであると述べておるのを見ても明らかであります。そこでこの際首相はこの現在の事態を円満に解決するために、勧告及び裁定の完全実施について更に特別の考慮を払われるところの御意思はありませんかどうかということをお尋ねいたします。
○国務大臣(小坂善太郎君) 代つて御答弁を申上げます。政府と官公吏或いは官公労諸君との関係というものは、いわゆる一般的な意味における労使の関係とは異なつておるかと思うのであります。即ち政府というものは国民全体の立場に立つて国民の信託を受けた納税の上に立つての行政を行うのでありますから、その財政措置については特に一般の資本家が労働者に対して考えるということと又別な意味の、国民の信託に副うという非常に重要な又公正な立場に立つてやらなければならん責務があると考えるのであります。
 今年の財政状態というものは御承知のごとく相次ぐ風水害或いは凶作等のために多額の財政支出を要したことでもありますので、昨夜衆議院を通過した予算の中に盛られております、又只今ここに御審議願つておるこの政府の只今のお話の勧告並びに裁定に関する措置というものは、最大限の努力を払つたものであると考えるのであります。そこでそうした建前から始終官公労の諸君にもお話をし、その良識ある行動を期待しておる次第でありますが、漸次政府の意図はこの方々にも納得されつあるやに考えておるのであります。又公聴会の話を言われたのでありますけれども、新聞の社説等が現わしておりますところのものは、政府の今回の処置についてはおおむねこれは妥当なものである、こういう説が多いように私は承知しております。
○小林孝平君 政府は新聞の報道についてはいつもおれは知らないと言うけれども、都合のよいときはそういうことを例にとつて言われておる。労働大臣のおやりになることは大体そうなんです。今回のこの仲裁の取扱についても初めから誠意をもつて実施しようという意思はなかつたのじやないか。一律にこれは給与総額の枠を超過するからできません、こういうような理由を三公社五現業の裁定につけておられるのであります。この給与総額を上廻ることは当然です。給与総額を上廻らない仲裁などということはよほどの例外でなければやらないわけであります。現員現給で予算が組んである以上は当然これは上廻る、そういうことをたてにとつてそうしてこれが実施できませんというような態度は、初めからもうあなたはこれは実施しないという意思でやつておられるからそういうことになるのです。そこで政府は今回あの程度で押切ろうとされておるけれども、現在のこの紛糾した事態を収拾するために更に特別の努力を払つたらどうかということをお尋ねしておる。簡単にお答え願いたい。
○国務大臣(小坂善太郎君) 予算にございまする給与総額というものをその後に出た裁定が上廻るのでありますから、これは予算上質金上その当時は不可能であります。そこで政府としては誠意を以て検討いたしましたる結果、今回補正予算を提出して、この限度において裁定を実行して頂きたいということを国会に御審議を願つておるわけであります。これは公労法の示すところであります。何らあなたのお考えのような法に反するというような点はないのでありまして、今申上げたように政府の最大限の誠意を示し、又国民の良識ある御理解を得て、又官公吏の諸君にも納得してもらいたい、こう考えております。
○小林孝平君 これは法律論をやろうとは思わないけれども、この給与総額を上廻るということはこれはあらゆる場合に当然起きて来るのです。仲裁を忠実に実行しようと思えば給与総額というものはもうやめなければならん。やめなければ如何なる場合でもこの裁定の結果は給与総額を上廻る、こういうことになるのであるから、初めからこういう給与総額などというものを設けておくのは、これは初めから仲裁などを無視してかかるという考え方だからこういうことになつておるということを私は申上げたいのです。私はこれに対して法律論をする今時間もございませんし、ここでやろうとは思わないから申上げませんが、そういうことを申上げておる。労働大臣は本当に誠意を以てこの紛争を速かに解決する御意思があるのかどうかということをお尋ねしておるのです。
○国務大臣(小坂善太郎君) 予算の中にありまする給与に何か増額を期待して、将来のことを予想して予算を組むということはできない。そこで今補正予算を出して御審議を願つて、そうしてこの金額において増額をしてこの問題を円満に解決したい、こういう誠意を以てお願いをし、努力をしておるわけであります。
○委員長(青木一男君) 漸次休憩いたします。午後一時半より開会いたします。
   午後零時二十九分休憩
   ―――――・―――――
   午後一時四十六分開会
○委員長(青木一男君) 休憩前に引続き会議を開きます。松澤君。
○松澤兼人君 第一に総理大臣にお伺いいたしたいことは、最近予算の編成が非常に困難になつて参りまして、大蔵大臣は来年度予算の見通しなどにつきまして、衆議院で大体の見当だけは申されたようであります。こういう予算の編成が困難であるということと同時に、又国会におけるいわゆる与党勢力と申しますか、予算を成立せしめる側の勢力というものが非常に不安定な状態にあるのでありまして、この問題はこれから開かれます通常国会及び予算の編成については非常に危険な状態に逢着するのではないかと考えております。従つてお伺いいたしたいことは、来年度予算を成立せしめるために、総理大臣としてはどういうお考えを持つておられるか、政局を乗り切る方策と申しましようか、或いは心がまえと申しますか、これを第一にお伺いいしたいと思います。
○国務大臣(吉田茂君) これは予算のみならず、政界安定のために、如何にしても政策を同じうする同志を糾合して参りたいと考えております。又今日政界安定ということは国民の要望でもありますから、各政党も我々に同調してくれるものと推測しております。
○松澤兼人君 只今糾合という言葉をお使いになつておるのでありますが、これは言葉尻をつかまえるわけでも何でもございませんが、どういうふうにして政策を同じうするものを糾合するかという点であります。勿論これは改進党、その他の政党に対しても呼びかけるわけでありますが、これは何を中心としておやりになるか、政策を中心としておやりになるということであれば、どの程度までの政策というものを自由党としては、はつきりこれを持つて呼びかけられるのか、政策の基本となるべきものをお示し願いたいと思います。
○国務大臣(吉田茂君) 議論は別といたしまして、結局予算案に盛られている政策、それが、我々と協力のできる政党の綱領の基本となるものと考えます。
○松澤兼人君 勿論政府としては予算を中心としい政策の問題を掲げて、他の政党にも呼びかけるということになるだろうと思うのでありますが、そうしますと当然問題となつて来ますことは、いわゆる保安隊の増強の問題であります。及び或いは保安庁法の改正の問題であります。こういう問題につきまして、まあ漸増の方式をとつておられることはよく承知しておりますが、来年度におきましてこれがどの程度になるかという点が予算に盛られる内容として最も大きな問題ではないか、こう考えるのでありますが、来年度における保安隊の増強の程度というものはどの程度のなのでございますか。
○国務大臣(吉田茂君) 保安隊増強の程度については只今主管大臣において折角研究中であります。予算案を御覧になつて御研究を願いたいと思います。
○松澤兼人君 予算が出て参れば当然まあわかるわけですが、今我々が知りたいことは、この第二次補正及び二十九年度予算の規模ということでありまして、一応その辺のところを伺つておかないと、今後予算を審議する場合において非常に困るのではないかと、こう考えておりますので伺つておるわけであります。
○国務大臣(小笠原三九郎君) 先ほどお答え申しました通り、来年度の予算規模は大体におきまして歳入の面が一兆七百億円ぐらいになりますので、その辺のところでやりたいというふうな考えをいたしております。従いましてさつきも申しました通り、まだ実は保安庁、よく言われております増員その他の問題もまだきまつておりません。きまつておりませんが、日本の国力に応じた、実力に応じたものをやらなきやならんのと、その財政のうちから按配をしたものを割振らなきやならんので、どの程度にこれがやり得ますかということはちよつと申上げる段階に行つておりませんが、本年の千二百三十三億でしたか、合計……、これに比べて若干殖える、こういうふうに私どもは考えております。その若干と申します意味は、私は余り多くは実はできないのじやないかと思いまするのは、これは松澤さん御承知のように、さつき申しました災害その他各種の、来年度にどうしてもやらなきやならんものも含まれておりますので、やはりこれは普通に言いますと、国力に応じてと言いますると、いわば何と言いますか、国民所得に応じてということになるのですけれども、こういつた異常な年のあとを受けて、而も災害ですと来年度に一番余計盛らなければならん等の問題もありますので、只今のところどのくらいかということについては、実はまだはつきりいたしておらないのであります。十分何した上で予算化いたしたいと考えております。
○松澤兼人君 保安庁費も若干殖えるということでありますが、その若干という言葉は何百億という程度でありますか、或いは何千億、実際に何百億というような意味でございますか、もう少し近い数字が出ないのですか。
○国務大臣(小笠原三九郎君) 実はどうも率直に申上げれば、まだその数字を申上げる段階に参つておりません。今保安庁におきまする計画等につきましても折角検討しておりますが、これは財政規模と睨み合せての問題になりますので、ただ仰せになつたような線というような問題、これだけははつきり申上げておきますが、そんな大きなものじやございませんが、例えば一口に言いますと二千億も出るとか、そんな大きなものでないことは申上げますか、それじや百億か二百億かと、こういうようなことについてはちよつとまだ申上げるところに行つておりませんので、悪しからず御了承願います。
○松澤兼人君 じやこの問題はそれとしまして、池田・ロバートソン会談の問題はこの前の国会においていろいろ論議されておりました。池田君が吉田個人の特使であるということは承わつたわけであります。併し申すまでもなれこの問題は東京会談というふうにあとを引いて来る問題でありますので、一応池田・ロバートソン会談というもりの内容について、丁度愛知大蔵政務外官も帰つて来られたことであります。総理大臣としても、その会談の内容ということについては詳しく報告を人けられておると思うのでありまして、差支えない範囲内においてお話願えれば幸いだと思います。
○国務大臣(吉田茂君) 池田・ロバートソン会談は結局相互の立場を説明し合つたものであります。又池田特使にも日本の財政経済その他の立場をよく米国政府の理解の行くように説明してもらいたいというのが主たる要務であります。そしてその内談の内容についはコミニユケにも書いてあります。その内容は即ち会談の内容であります。
○松澤兼人君 先日池田君が衆議院におきまして或る程度の話をされたということを聞いております。それについて保安隊の増強の問題についても数字を示して話をされておるようであります。これが若し真実であるとするならば、単に相互の事情を話合つたという以上のものがその会談の中にあつたのではないかということを私は考えるものでありますが、実際保安隊の人員等について先方から要求があつたのか、或いはこの程度のものは日本にとつて必要であるというようなことを言われたのであるか、その点を承わりたいと思います。
○国務大臣(吉田茂君) 池田・ロバートソン会談の内容について、相互において話合つて発表したものが即ちコミユニケであります。それ以上お話をするということは私としては差控えたいと思います。何となれば相手との間で話をして、この程度に発表しようといつてきめたコミユニケでありますから、それ以上に話をするということは私差控えたいと思います。
○松澤兼人君 総理大臣としていろいろの立場上、それ以上お話することが困難であるというお話でありまするので、それでは愛知大蔵政務次官に伺いたいのでありますが、池田・ロバートソン会談に終始同行して会談に出席されておりました愛知君が、差支えない範囲における会談の内容についてお話願えれば結構だと思います。
○政府委員(愛知揆一君) 只今総理からお話がございましたごとく、又先般私が衆議院の予算委員会におきましても申しました通り、私は九月十一日でしたかの閣議の決定によりまして、アメリカ初め欧州諸国の財政経済その他の実情を視察すること、並びにそれらの国々と日本との関係のある問題につきまして、できるだけ各方面のかたがたと非公式に意見を交換する、かような命令を頂きまして出張して参つたわけであります。この私に与えられました使命を達成いたしまするためには、吉田総理の個人的な特使として派遣された池田氏と緊密な連絡をとりまして、相互に助け合つて参ることが最も適当と思いましたので、例えばいわゆる池田・ロバートソン会談にも出席をいたしました。その池田・ロバートソン会談のことでございますが、これは十月の三十日に両方の関係者の間で取り作りまして発表をいたしました共同新聞発表に詳細にその内容が出ておりまするが、それ以外のことは、只今総理からもお答えになりました通り、会談自身が非公式の問題でもございまするし、誰がどう言い、こちらがどう言つたとかというようなことは、国際的な信義上からも詳しく申上げることは差控えたほうが適当と考えます。
○松澤兼人君 会談そのものは非公式のものであり、又私的のものであると思います。併しこの会談の結果というものは、やがて東京においてこの続きが公式に行われるということは当然想像ができるのであります。又愛知政務次官は、政務次官として出席されているのでありますから、或る程度のことはこの予算委委員会において明らかにすべきではないかと、こう思うのであります。従つて会談の内容について重ねて差支えのない範囲において、いろいろの事情等を説明して頂きたいと、こう考えます。
○政府委員(愛知揆一君) 先ほども申上げました通り、この会談の内容につきまして細かいいろいろのことを申上げることは差控えたいと思いまするし、同時に大綱的なことは、三十日の新聞発表に発表いたしました通りでございます。併し同時にこの新聞発表に現われておりまするところは、すでに御承知の通りと思いまするが、日米両国にとつて共通の関心のある問題であり、且つ相互に関連した諸問題について隔意のない意見の交換をいたしたわけでありまするから、その内容といたしましては、例えば共同新聞の発表にもありまするように、例えば日本の防衛力の増強や、これに対する米国の援助、或いは又米国の終戦後の対日経済援助の処理の問題、又対日投資、又中共貿易というようないろいろの問題に及んだわけでございまして、私といたしましては、この新聞発表にもありまする通り、何らの取極というようなところに入つておりませんし、非公式の会談でございますから、議事録その他のものを取極めたものもございませんから、そういつたような点について、いわゆる東京会談というようなものについて、私どもとしてその基礎として何ら約束をしたというようなものもございませんわけであります。これはこの会談の性質上当然のことと考えます。ただ重ねてのお尋ねでございまするから、この会談なり或いはその会談以外を通じての私の印象を申上げますならば、例えば防衛の問題にいたしましても、米国の関心の深い向きにおきまして、例えば一部の人たちが日本の防衛について非常に心配もし、又理解も持つて、大体こういう程度の軍備があつたならば、国防或いは防衛という観点だけから考えますならば、非常に望ましいことであるというような意見を聞き得たことも事実でございます。その中には新聞にもいろいろと数字などが伝えられているようでありますが、それらの人たちの、一部の人の意見といたしまして新聞に伝えられているような数字を聞くこともできたわけでございますが、これとても、米国側として、全体としてこれを要請するとか、強制するとか、或いは政府全体の意向として我々にこういうことを頼んで来たというような筋合いのものでは全然ございません。私どもといたしましては、今後の日本の政策のいろいろの樹立の面におきまして、両国間の理解を促進することが一番必要でありまするから、我々の見た偽わらざる日本の実情を、あらゆる観点からできるだけ客観的に、できるだけ率直に説明することに努めたのでありまして、この点はあえて財政の問題に限らず、当然その他一般の政治情勢や、或いは社会問題について私どもとしての考え方も主張するに努めたわけであります。従つて防衛の問題等につきましても、私どもの説きます事柄等については、相当に先方の理解も深めさせたと考えるわけでございます。なお又この防衛の問題に対するアメリカ側の援助の問題、或いは日本の経済自立を促進する上においてどういうような例えば援助が期待できそうであるか、或いはその程度がどのくらいであるかというような点につきましても、できるだけ先方の考え方も聞くことに努めたわけでございます。こういうふうな点につきましては、くどいようでございまするが、大体の両方の話合いの筋金と、その基調になつております点は、共同新聞発表に明白であると思うのであります。
 私といたしましては、帰りましてから私のそういつたような調査を基にいたしまして、今後の政策をいろいろ立てて参ります上に、政府全体としての参考にしてもらえれば非常に仕合せである。こういうような状況にあるわけでございます。
○永井純一郎君 私は先ずちよつと総理にお伺いしたいのですが、松澤委員のほうから質問があつたのに対して、総理は、この池田・ロバートソン会談は、日本並びに米国の両者の立場をそれぞれ話合つたものだ、その程度のものであるから、又国際慣例等から見ても、ここで報告をすることをしないというふうに言われた。又、今愛知さんの答弁等考え併せまして、私が総理に関連してお伺いしたいことは、私どもがここで総理にこの点をはつきりお伺いしたいということは、それは取りも直さず国会の審議権を十分に有効ならしめんがために、これを聞かなければ予算の審議ができないから、ということは、例えば今愛知君が言われました共同コミユニケの新聞発表と言われまするが、あの中に、例えば防衛の問題、或いは教育の問題、或いはインフレの問題について触れております。例えばインフレの問題につきましても、これはインフレを十分に警戒して抑えなければならんということに意見が一致したというふうに書いてありまするが、これはアメリカが考えるインフレ防止論と、我々がこの国会で審議権の下に物事を考える場合のインフレの防止論とは根本的に違う。そこでアメリカはインフレを防止するためにどういうふうなことを言つたか。又日本の代表はインフレを防止するのにはどういうことが必要だと言つたか。その立場立場が違うと言われましたが、その立場々々で話合つた事柄を報告することぐらい私は当り前だと思うのです。それを聞くことがなければ、我々は国会の審議権に基いて十分に審議をすることができない。例えばここで論議しておりまする第二次補正の主要問題である米価、給与、これらの国民生活に根本的な基礎をなすこの問題は、あの共同コミュニケの中にあるインフレ論と密接に結び付くのです。こういう点を考えずに、ただ立場だけを話合つて理解するために話したのだから報告をしないということには納得できないし、それは審議権を行使できないようなふうにするのと同じことです。従つてそういう意味てインフレ論についてアメリカはどう言い、我がほうはどう言つた。教育問題について、愛国心とアメリカが言つたその愛国心とはこういうことを言う、我がほうはこういうふうに言つたという、ありのままの報告は当然だと私は思う。何もそのことが取極でないのでありますから、政府が言う通り取極までに至つていなかつたならば、なお更国会の審議権に対してそれが当然私は報告しなければならない、こういうふうに考えるのであります。そういう意味で我々は報告をすべきであるということを言つているのでありまするから、少くとも私は大蔵政務次官からは、正式に委員会に、こうこういう話合いをしたいということを私は報告すべきだと思う。そうでなければこの第二次補正予算案を初め、来るべき通常国会の二十九年度予算案などは審議権の対象にすることはできません。
○委員長(青木一男君) 関連質問は、永井君、簡単に要旨を述べて下さい。
○永井純一郎君 その点を総理大臣にお伺いいたします。
○国務大臣(吉田茂君) 私の答弁は前言の通りであります。
○委員長(青木一男君) 永井君、関連質問ですから簡単に願います。
○永井純一郎君 わからなければしようがない。
○委員長(青木一男君) 関連質問で余り長くやることは許しません。あなたの順番のときにやつて下さい。
○永井純一郎君 総理は今、取言の通りだということでありますが、私の今聞いたことについて、それでは一つもわからないじやありませんか。国会の審議楯をどういうふうにお考えになつているのか、先ず伺いたい。
○国務大臣(吉田茂君) 国会が審議権を用いられることについては御自由でありますが、政府として発表する限りは、コミユニケにおいて池田・ロバートソン両氏が相談して、この程度に発表しようというコミユニケ以上には私としては発表することはできません。(笑声)
○委員長(青木一男君) 永井君その程度にしておいて……。
○木村禧八郎君 関連して……、先ほどの永井君の質問に対して、やはり愛知君がもう少し具体的に御答弁される必要がある。それについて私はその御答弁如何によつて簡単に三項目ばかり質問したいことがあるのです。
○委員長(青木一男君) 木村君に申上げます。あなたの質問時間がありますから、そのときに……。
○永井純一郎君 理事会の申合せじやありませんか。理事会の申合せ通りにやつて下さい。関連質問は許して下さい。
○委員長(青木一男君) 余り長い関連質問はいけませんよ。(「委員長、そう心配をしなくても議事は運びますよ。」と呼ぶ者あり)
○政府委員(愛知揆一君) 私は国会の審議権云々ということを申上げておるわけではないのでありまして、先ほど輝々申上げましたごとく、これは相手との間の信義上の問題でもございますから、誰がこう言い、誰がこう言いというようなことは私としても申上げるわけに参りませんと、こう申上げたわけであります。
○木村禧八郎君 それでは共同コミュニケを我々が読んであれは非常に抽象的でわからんところがある。併しほかの向うの新聞雑誌、それからこちらの新聞雑誌を見てもいろいろに伝わつておるわけです。今私の持時間ではありませんから簡単に三つ伺いますが、ガリオア返済については大体向うから二億ドルという数字や返済期限や利率の問題が出たということでありますけれども、そういう内容について伺いたい。
 それから第二、小麦援助の五百五十条についてはいろいろな解釈があります。これについて詳細にその内容を伺いたい。あれは決して援助という形にならない、外貨援助にならんと思いますが、五百五十条の小麦の「援助の関係、これをもう少し具体的に示してもらいたい。それからMSAの性質については、池田勇人氏は、これはデフエンス・サツポート・エイドがあると思つたところが、ミリタリー・エイドだけであるということが向うと話合つた結果わかつたと言つているが、MSAの性質というものはどういうものであるかということを、話合いの結果わかつた点を説明して頂きたい。
○政府委員(愛知揆一君) 私は話合いの結果についてコンメントを申上げるのではなくて、私の印象を申上げることにいたしたいと思います。ガリオアの返済の問題につきましては、先ほども申しあげましたごとく、共同新聞発表の中に、米国の終戦後の対日経済援助、ガリオアの処理というような問題についてもいろいろの話合いを行なつたということは書いてございまして、この問題につきましては更に本件の処理に関する合意に到達し得る目途として、互いに近い将来日米両国の代表が更に会合することが適当であろうということに意見が一致しただけでございます。只今二億ドル云々というお話がございましたが、さような数字は私は聞いた覚えはございません。
 第二に、五百五十条の問題でございますが、これも私はこの新聞発表で相当明らかになつておると思うのでありまして、相互安全保障法第五百五十条の規定に基いて、日本に供給すべき物資の額は五千万ドルを目途とすることが適当であるということに意見の一致を見たわけでございます。これに伴いまして日本に供給される農産物の日本国内における売上代金たる円貨は、ということは円で買うということでございますが、その円貨は域外買付及び投資の形において日本の防衛生産及び工業力の増強に使用せられるようにすることが適当であろう、こういう両方の意見でございます。この五百五十条のこれを実現に移しまするための所要の事項と、並びにこれに関連する防衛支持援助のいろいろのこういう取引等に関しては、必要な諸取極が結ばれることが適当であろう、こういうふうな程度に両方の話合いというか、意見が一致いたしましたので、こういう問題については、別に御承知のごとくMSAにつきましては両国の正式なチャネルにおいて交渉がすでに進められておるわけでありまするから、その線の上にこういう話合いが当然両方から具体的に出て来るものと私は期待しておるわけであります。
 第三の、MSAの問題でございますが、これは木村さんも御承知の通り、最近のMSAのやり方といたしましては、アメリカとしては純粋の軍事援助ということに原則的に限定をするという考え方が現在のアメリカにおきましては支配的のように見受けられるわけでございます。従いましてその他の経済援助、或いは技術援助、或いは防衛支持援助というようなことを日本側が欲するといたしますならば、何らかの別の工夫が必要ではなかろうか、協定の恰好としてはそれ以外の諸取極が必要ではなかろうか、こういうふうに私は考えております。
○松澤兼人君 総理大臣にお伺いいたしたい。吉田・重光会談の際にもこのことは言われていたようでありますが、最近憲法改正の問題が非常に大きく議題となつて来ているようであります。そこで政府として何らかの形において、政府部内において憲法改正の問題を近くお取上げになるお考えがあるかどうか、これが一つ。或いは総理大臣が総裁であります自由党として、この改正の問題について積極的に調査研失するというようなことになつておりますかどうですか。それからもう一つは、国会に対して、憲法改正の問題について政府から何か近く申入をされるようなお考えがありますか、この点を承わりたい。
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。しばしば申します通り政府としては今日憲法改正という考えは持つておりません。従つて今お話のような申入はいたしませんが、併しながら憲法の問題は重大な問題でありますからして、党として希望するならば、憲法の問題については絶えず研究する、委員会をこしらえるはずになつておると考えております。
○松澤兼人君 最近における人事院の勧告及び仲裁裁定の問題でありますが、これは細かいことは又今後質問いたしたいと思いますが、法律ができておりまして、この法律の下におきまして公務員のかたがたは或る程度まで憲法で保障されている労働権というものが制限されているわけであります。従つて法律が悪い、或いはいいという問題は別として、法律において仲裁裁定は協約と同じ効力を持つているということが誰つてあります以上は、政府が公務員に対してこの法律による公務員のベース・アップをすることが当然である、こう考えるのであります。政府が法律をいろいろに解釈して公務員に対して十分な保護を与えてやらないということが、現在見られるような官公労のいわゆる年末攻勢ということになつているのではないか、こう思うのであります。この点についてこの前の国会において私は重大な段階に到達するかも知れないということを申上げたわけでありまして、この人事院勧告及び仲裁裁定を尊重するという点において政府はどういうお考えを持つておられるか承わりたいと思います。
○国務大臣(小坂善太郎君) 代つて御答弁申上げます。仲裁裁定並びに勧告を尊重するという、そういう建前から財政の許す限度においてこれを実行する、そういう建前を以ちまして一月から実施するということになつておりまするわけであります。私どもとしましてはこの民主的な社会におきまして、やはり民主主義の建前を守つて行きたい、即ち特に一部の考えが全体の考えに優先しないようにということが建前であろうかと思うのであります。国民の信託を受けております政府の予算を編成する権利並びに国民の信託を受けて国会において予算を審議せられる権利、この権利は優先すべきものと考えております。
○松澤兼人君 私はそういう点ではなくて総理大臣としての気持を聞きたいと、こう考えておつたのでありまして、恐らく総理大臣におきましても大臣が答えた通りだということになると思うのであります。私はただ政府の気持と言いますか、或いは親心と申しますか、こういう点を十分に考えて頂きたい。この点だけ希望申上げまして私の質問時間が終りましたから……。
○堀木鎌三君 私は補正予算に関連いたしまして総理大臣を中心に御質問をいたしたいと思います。総理大臣は経済問題が非常にお嫌いでして、経済問題になるととかく大蔵大臣にお譲りになる傾向がございますが、併し極く方針的なものをお尋ねいたしまするから、特に総理大臣から御答弁を努めてなさるように御努力を願います。先ずお聞きしたいことは、実は私この二十八年度の第二次補正予算を拝見いたしましてやや驚いたのであります。従来とも総理大臣の品から通貨の安定でありますとか、経済の安定でありますとかということが最近強く主張されておる、又私もこの品場でしばぐ総理大臣、大蔵大臣にこの点に関してよほどの施策をなされなければ依然としてインフレはとまらないのだ、そして日本の通貨価値はいよいよ下落いたして参りまして、国際価格の鞘寄せどころではなしにその開きがだんだん大きくなるでありましよう。今にしてこの問題は考え直されなければ日本経済は崩壊するのみであるということすら申上げたのであります。で、総理大臣も為替レートは変更するつもりはない、又そういう方向については全く同感だとおつしやつたのでありますが、併しこの三十八年度の補正予算を拝見して一体そういう方向に向つているものと御覧になりましようか。率直に申して従来の予算編成方針の踏襲だけであります。例えば国家公務員の給与にいたしましても、或いは公共企業体の給与の仲裁裁定の問題にいたしましても、ただ時期を遅らせ、そうして一部の何と申しますか、ほかの財源と睨み合せて尊重したごとき形において予算を編成され、又米価の改訂にいたしましても、従来の通り一部消費者価格を食管会計の剰余金において補填しつ或る程度の生産者米価と消費者米価をお上げになつて参つて来られた、而もその結果は席に繰返しておりますように、鉄道運賃の値上げになつて現われる、又郵便料金の値上げになつて現われているのであります。で、これがお互いに循環をいたしまして、又同じようなことを繰返して来る、これは吉田総理の内閣としては常になさつて参つております方向であります。で、私は率直に私の考え、感情を申上げるならば、如何に私どもがまじめにこの問題と取組もうと思つても、そのときは私どもの考えに御同感なさるにかかわらず、おやりになることは従来の経済の傾向と何ら変りがないのじやなかろうか、こういうことを本当に心配いたしますので、この点に関しての総理大臣の御見解を伺いたいと思います。
○国務大臣(吉田茂君) 先ず第一にお答えいたしますが、私が経済知識のないという弱点につけ込んで攻撃なさろうと思うならばこれはおやめを願いたい。又自分自身も経済知識に富んでいるという自負はないものでありますから、そういう問題については大蔵大臣その他の経済大臣に的確なお答えをいたすようにと考え、あえてみずから当らない次第であります。私の気持はよく御了承願いたいと思います。
 そこで現在の御指摘のように予算編成その他の問題でありますが、これは側と言いますか占領後と言いますか、敗戦後と言いますか、日本の経済は非常な変動を受け、又その間に機構等についてもいろいろな変遷を経来つたのであります。この中には日本の経済再建にふさわしからざる法制制度も織込まれたように考えるので、これは独立仮において一応再編成をしなければなりない時期に到達いたしておるとかねて考えておりましたが、その時期が到達いたしておるのにもかかわらず、快々の希望するがごとき断然たる処置かとり得なかつたことは事実であります。然らば今後なお今のような方針で踏襲するか、これは是非とも改めたいと考えております。又大蔵省当局においてもそう考えておりますが、さて新らしい方針なり、組織なり、編成なりいたした場合に、それがいいか悪いか、適当であるかどうかということは御批評を願いたいと思いますが、とにかく今のままではいけないということは私も同感であります。又この時期において建直すべきであると痛感いたしております。
○堀木鎌三君 私吉田総理の御誠意を疑うわけではないのです。併し今おつしやつたようなことは、総理大臣として確かな方向について本当におやりになる気なら、ここで先ほど大蔵大臣が二十九年度の予算はすでに各省の要求が一兆八千億に及んでおると言つてここで嗟歎をされた。私は大蔵大臣の勇気のないこと自体についても率直に申して非常に何と申しますか、御責任の地位のかたとしてそれが二兆になりましようが三兆になりましようが、それは大蔵大臣の御職責としてどの程度にこれを収めるかということは当然勇気を以てお当りになるべきだと思う。と同時に、総理大臣自身がその方向的なものについては、総理としての御英断がなくてはならない、それでなければ今率直な感想をお漏らしになつた、いつまでたつても同じようなことになるのじやなかろうか。で今総理大臣の御答弁をつくそれ考えておりますと、総理大臣は過般来国会が予算を増額修正する、或いは議員立法によつて歳出の増加が伴うということを、制度というお言葉の中にはそういうものも含んでいるのだろうと思うのでありますが、実はこの病根はなかなか日本においてほ私はひどいと思う。率直に申しますと各省大臣が一体今の日本の経済をどう見るかということを本当に考えるならば、大蔵大臣に先ず二兆に近い予算の要求をなさるはずがないのであります。率直に言えば官僚、何と申しますか各省大臣が、あなたの閣僚そのものがすでにこの日本経済をどう抑制して行くかという考え方がない。それから大蔵大臣を中心にする大蔵省は、これは率直に言えば予算を編成するときにインフレ傾向で自然増収で収まつて参りまするのが一番予算の編成のしやすい方法である。それから無論国会自身も、国会議員もよほど考えないと陳情その他によつて予算を増額して参るほうが議員として楽であります。併しそれじや今挙げたものだけであるか、私はそうでないように思うのであります。今のままで行きますれば率直に申せば金融資本家は日銀の信用膨脹に依存いたしておりまするならば、通貨価値が減つて参りましても差当り利益が出て参る。それから産業資本家も正当な資産の再評価をいたしませんでそうしてインフレが上つて参りますと、労働攻勢に会いながらこれをじよろじよろ逃げながら、そうして労働者には三月遅れでやつと物価と比例したような賃金を与える。そうして自分の資本、会社は利益ができ配当ができるような形になつて行く。もう一つ申上げると、労働者自身も名目的な賃金を常に追つかけている、こういう形であります。その結果どうなつて参りますかと申上げるならば、日銀の信用膨脹なり政府の財政投融資を受けるところの大きな企業は、それはその上にこのインフレの影響を受けながらも利益を儲けているが、これに反するものはいよいよインフレの影響を受けて転落して参る。中小企業もそうであります。又労働者の階級を眺めて見ましても、大きなユニオンを持つておりますものは三月遅れにしでも或る程度の実質的賃金の低下を防いで参ります。併し現に大きなユニオンに属している労働者と、そうして未組織なりその他の労働者、消費者階級は無論のこと、これらはますますその困窮の度を増して社会的にいよいよその差が甚だしくなつて参る。そういうふうな状態はひとり経済的のみならず社会的にも国民の間に甚だしく不均衡を来たして参り、かたがた国際的な物価はいよいよ国際的に物価が下る情勢にあつてひとり日本だけが上つて参る、貿易は振興しない、雇用量の増大どころではない。世界各国と比べますとひとり日本だけそういう状況になつている。私はここで率直に申上げるならば、これらに対してもつともつと強い決心を全閣僚及びお互いが持たなければなりませんが、差当り政府の責任の地位にある人自体が国民に映るようにその決心をしなければいけないのだ、そうしてそれに欠くるところがあるのじやなかろうか、こう考えるのでありますが、如何でございましようか。
○国務大臣(小笠原三九郎君) 只今堀木さんが言われた点は誠に御同感の点が少くないのでありますが、ただ今度の補正予算編成に当つて、この補正予算をどうも即インフレ予算のごとく見られる点に何か少し誤解があるのじやないかと思いますから、少しくこの機会に申述べさせて頂こうかと思うのであります。
 御承知のごとくに仲裁裁定というものは、さつき総理のお言葉の中にもございましたが、現在の法制の下ではこれは予算化し資金化し得ざるときのみ仲裁裁定を実行しないでいいのでありますが、若しこれを資金化し予算化し得るときには仲裁裁定を実行しなければならない法の拘束を受けているのであります。この法律がいいとか悪いとかいうことは議論いたしません。併し現在その法律があるのでありまして、而も私どもが本年十一月二日、この前の補正予算、先月でありましたか、第一次の補正予算を出す前のときには、これは明らかに当時は予算の総額がございませんから予算化し得ないということが言えたのでありますが、今回〇・五等の問題等もあつてこれは予算を変えなければならん。而もそのときに各企業体の内容に立到つて見ると、更に人事委員会等で各省の大臣がたびたび答弁している通り、予算化し資金化し得るということを一部言つているのであります。そこで私どものほうも大蔵省として厳重に調べましたところが、本年度に関する限りにおいては予算化し資金化し得るのであります。従つて法の建前を遵守して、この法は私ども従来占領行政下の遺物だと思いますが、法の建前を遵守して、それで一月以降でき得るから、でき得る点につきましてこの裁定を実行することにいたしたのであります。裁定を実行いたして見ますると、このいわゆる公労法の適用を受ける者以外に、例えば印刷局でも或いは造幣局でも皆そうでございますが、こういうところの課長以上というものは、これは公労法の適用を受けないのでありますから、この公務員のほうが低くなつてしまうという部分がたくさんできて来るので、やはり国家のなにをお預りしておる以上は、公務員との釣合いということを考慮の中におかなければならんのでございます。公務員といわゆる公労法の適用を受ける者との関係を考慮におかなければならんので、そこで然らばこれをどうするかというときに……、又丁度人事院の勧告というものが、これはできるだけ尊重するのが人事院のできた趣旨から見て当然であります。併しこれも予算化し得る程度においてのみ尊重するということは、これは又政府に与えられた予算編成の権限でございますので、そこで取調べました結果、なし得る最大限度が来年一月からであるというところからやつたのでありますが、併し一万五千四百八十円のベースは人事院の言う通りにやるけれども、併しそれは三月を基準として一・三九%を上げるということが基礎になつておつたが、その後における昇給等の問題もあり、又その後の各種の関係等もありまして、これを予算化するに当つてはこの議院でも長い間の問題であつた。例えば中だるみ是正という問題があります。中だるみ是正の問題は、それ自身をやるだけでも三十五億円ぐらいの予算を必要とするのであります。この点をも一つこのときに併せて考えようという。これは当然考えるべきでございまするから併せ考える。又地域給をこれはできるだけ、いわゆる五段階を三段階なり四段階に縮めたいということは、これはへ事院の総裁も絶えず申しており、政府もさような意図を持つておりまするから、この機会に一段階減らそう、こういうことにいたしまして、地域給の五段階を四段階にるす等の措置をとつて、これも言葉を換えて言えば財政上措置し得る点で公務員といわゆる公労法の適用を受ける者との釣合い関係等を考慮しつやつたのが、このベース・アップなんでございまして、これは現在の法制から見れば、この法制がよいか悪いかは、先ほども出た通りでありますが、止むを得ざる措置でありまして、これを以て政府は健全財政政策とか或いは通貨の価値のことについてかれこれこれを動かすというような考え方を持つたものでないことは、法に縛られておる建前で止むを得ざをものてあるのでありまして、而もそれすら社会党の諸君からいうと、なぜこんなことをやるか、なぜ完全実施せんかというのでありますが、そういうような点をかれこれ苦慮してやつた。これはこの際私は堀木さんに御了承を願いたいと思うのであります。私どもは飽くまで健全財政、健全通貨の点で以て行くことはこれは確固不動の方針であります。従つて二十九年度予算に当つては、私は骨格を申上げるに当つてその意味を衆議院でも強く申上げておるのであります。
 それで只今仰せになつたような点が、例えば米の問題であります。もう一つ仰せになつた米の問題について申上げますと、私どもは現在の米の価格は、御承知のごとく本年の米の価格は、世界で最高の米の価格です。よく社会党の諸君は、一石七千何百円ときめるがけしからんと言いますが、そんな米の相場はきめてありません。今一石一万三百三十五円です。これははつきりと、今後とも御引用になるときには、日本の米の政府買上価格は一万三百三十五円だと、これは安い高いという議論はよろしいが、そういう七千何百円、七千何百円という基本米価のみをとるのは、これは間違つておりますから、この機会に申上げておきますが、それで一万三百三十五円の一石の米を、消費者そのものにそのコストでやつたらどうなるか、こう申しますると、これは実に十キロ八百九十円で行かなければならんことになるのであります。然らば十キロ六百八十円が八百九十円でよいか、こういう問題が出るのでありますが、而も本年のごとき異常なる米の、こういう凶作のときに、こういうことはめつたにあるものではございませんし、豊凶係数等の最大のものを盛ることもございますまい。各種の点を考慮して米の、丁度米穀特別会計に黒字が三百四億円あるから、そのうちの大部分を先ず一つこれに充当しよう、その分が今度の七百六十五円であります。あと十億ほど残ります。それにいたしまして、一応一つ特別会計で処理しよう、あとの点は家庭米価等のことを参酌して平均〇・八六六%の点だけを皆さんに忍んで頂こうというので米価を定めた次第であります。余り弁解がましくなるといけませんからこれ以上は申述べませんが、これらをお考え下さるならば、私どもは少くともいわゆるインフレ的に持つて行こうというような考えはない、又健全財政を貫く点において堀木さんと全然所感を同じくしていることはよくわかります。堀木さんもそういうお考えはないだろうが、現在の法制というものをよくお考え下されば、これは法律が変つてしまえば、私どもよくやりいい点が出るのでありますが、現在の法制下においては、これが最善の私ども予算案であり、これがインフレに持つて行かない最善の予算案である、こういうことを固く信じております次第で、この機会に私の所信の一端を申述べさして頂いて答弁に変える次第であります。
○堀木鎌三君 実は大蔵大臣からだんだんお教えを頂きまして、これを先ずお礼を申上げます。併し実は私は労働問題につきましては、大蔵大臣からお教えを頂かなくても、終戦以来末弘博士と中央労働委員を三年間しています。そうして仲裁委員もいたして参つたのであります。で、私は人事院の勧告、それから仲裁裁定そのものが立派だということを否定するものではありません。併し人事院の勧告なり、仲裁裁定は、どうして労働者の実質賃金を今後維持しようかということについて、重大な関連のあります物価政策なり、或いは税金の政策なりというものは、考える範囲外の問題であります。で、それこそが大蔵大臣なり、労働大臣なりが、閣僚としてお考えになることであつて仲裁裁定そのもの、人事院勧告そのものについての小さな御批判よりも、大きくどうやつて行くのか、そうしてそれが結局労働者の幸福でもあり、国民の公平の原則にも立つて参るところの問題を解決して行く途でありませんか。それに考えが及ばれない。私は公労法十六条なり三十五条は、私は未だに忘れずに各条文を知つておりますが、そういう問題をここでお引きになるのは、これは仲裁裁定の委員なり勧告の人にお任せになり、大臣は大臣としてのおのずからの私は方途があると思うのであります。
 それから米価問題にいたしましても、実際今の供出制度を率直に見ますると、自由党と改進党の生産者米価、消費者米価の争いは、供出制度が今のような、そうしてこの価格の割当が今のようでは、飯米農家とその他の差はますます大きくなつて参つておるのであります。で、先ず併しそういうことをここで大蔵大臣と私は喧嘩するのが目的でございません。大蔵大臣の今言われましたように、二十九年度に尾をいずれ引くところの経費……、二十九年度だけ切離して経済はあるわけではないのであります。過去から繋がつた経済であります。一連の経済をするときに、二十九年度からとおつしやつても駄目なんです。かたがた二十九年度には、あなたもよく御承知のように、又さつきも他の委員が例を引きますときにお挙げになりましたように、防衛費の問題もありましよう、或いは軍人恩給の問題もありましよう、又災害費の問題もありましよう、幾らおつしやつたつて相当の、大きく見積れば二千億近い、少く見積つても千数百億近い既定歳出の増があるのであります。そういうものと睨み合して今こそお考えになるときであつたにかかわらず、そうして池田君のときには十五カ月予算というものに立つて財政方針をおきめになつているにかかわらず、こういうこま切れの予算をお出しになつて本当におやりになることは、私は財政面からは当を得たものだとは思いません。かたがた先ほどから委員とのやり取りを聞いておりますと、一番重要な防衛費の枠すらまだここで御答弁を回避されておる。而も防衛費の問題は、これはロング・レインジにおいて計画をお立てになるということははつきりした御方針であるはずであります。これらの重要な要素を抜きにして、そして三月だけおとりになつたのも国会の要請だと言つてお逃げになると思いますが、三月だけ切つてお出しになるのならば、率直に言つてそれと併せての見識のある大蔵大臣の答弁こそ今まさにさるべきときでなかろうか。ああいう衆議院でお出しになつたようなものでなしに、そういう重点的な見通しの上に立つてすべてをおきめにならなければ、通貨の価値の維持をお説きになつても、現実はますます国際価格との差を開いて行くというのが日本の現状であります。あなたのおつしやつている方向と現実は全く反対の方向に向つて行つているという事実そのものをお認めにならなければならないと思いますが、如何でありますか。
○国務大臣(小笠原三九郎君) 堀木さんの御意見の中には傾聴すべき点が多いのであります。ただなぜ十五カ月予算を組まなかつたかという弁解がましいことをあえて申すわけじやありません。申すわけじやありませんが、この二十八年度予算は御承知のごとく過去の蓄積を少々使つたり、又いろいろいたしておるのでありまして、これが二十九年度予算になりますと、ちよつともうそういうような安易な考え方を私はやりたくないと、こういうのでありまして、いわばこの財政に関する一つの方針の転換期であると、こういうふうに考える。この点は堀木さんも私と感を同じくされておると思う。従つて二十八年度の続きの分については当面に必要なものだけ、今申上げたように米の問題が起つておるから米の問題、待遇の問題が起つておるから公務員の待遇の問題、それだけに限つておるのであります。従つて二十九年の予算につきましては、これはまだ未定な分が相当多いのではつきりは申上げないが、併し、いわゆる骨格予算というものにつきましての概要のお話をいたしまして、丁度御指摘になるような点が、例えばこれが今の恩給その他にしても二百二十億ほど殖えて行く、又行財政整理を徹底いたしませんと、今度の分でも、はね返りを除いて、二百億くらいの公務員の給与等が殖えて参ります。その他例えば各種船舶のこの間うちの補給金等がありまして、これも五十億円ほど増加しておる。増加するものは災害その他を別にしても、いわんや三、五、二というような割合で出すときには、今のままの仮に数字で行くならば、相当大きな経費が要るのでありまして、従つて、これは各種の今言われる行財政整理、行政整理のことはさつきちよつと或いは申したかも知れませんが、申しておれば重複しますが、今度のベース・アツプをきめるところの一つとして、行政整理として一割以上の人員整理等を含んだ行政整理を二十九年度において予算化することということを閣議決定をいたした上で処置いたしておるのでありますが、勿論行政整理はこの吉田内閣、この現内閣が成立して以来の強い一つの政治的な政策でもございまするので、これは是非実現して参りたい。私は行政整理のみでなく、財政整理を特に行いたい。今各般に亘つておる補助金、こういうものについては相当徹底した新たな観点から見直して、一つ日本の財政整理……そこで私がいつも行財政整理と言つておるのはその点でありますが、そういうこと等を実行して参ろう。ただ、今丁度話がありまして、さつきもお話がありました通り、相当困難な点がありますので、この二十九年度予算こそは異常なる決意と覚悟とが必要であると考えております。併しこれは日本の経済なり財政なりのいわゆる興亡の分れるところであるから、如何なることがあつても日本をインフレに持つて行かないように措置するという強い考えでこれに臨むという覚悟を持つておる次第でございます。
○堀木鎌三君 少し話が何と申しますか、細かいかも知れませんので、方向的なものでありますが、総理大臣は、何と申しますか、御答弁を求めないで参ります。
 最後に私もう時間がないそうでありますが、最後に一点だけ、これは総理大臣がほかの委員にも御答弁なすつております。だから私自体も総理大臣からの答弁を期待していい問題だと思います。先ほど同僚の各委員から、要するに問題は政局の安定を如何にして図るかというふうな点を御質問になつて、総理大臣も、内外のこれは世論もあるし、支持もあるから是非やりたいと言われております。併し、と同時に単純な頭数をお揃えになることが政局の安定でないことは、これは吉田総理みずからが一番私はよく知つておられると思う。従来とも吉田首班の下に絶対多数をお持ちになつたことは十分ある。要するに総理みずからも極く簡単な言葉で言われますように、政策について志を同じうする者ということが一句入つておるのであります。私はこの政策を同じうする者ということは確かに一つの大きな要素であります。ただ不幸にして防衛力漸増についても、日本の課題でありますところの防衛力漸増につきましても未だ国民にあなたがたからお示しになる具体案はできておりません。又経済の安定につきましても、実際申せばまあ三月々々、場合によつては一年々々の従来の形でおいでになつて、本当に総合的などうしたらよいかという施策をみずからお作りになつて国民に御発表になつていない。現にここで食糧政策、一番国民の生活と繋がるところの食糧政策についても、農林大臣は根本的にこれから、二十九米穀年度から考えるというふうな余裕のある御答弁をなすつておる。私は政党が協力いたしますには、無論政策と日本の国の現在国際的に立つておるところの立場を十分理解して、而も政策を同じうすると同時に、虚心坦懐、己を捨ててこの難局を何とかして行こうというお互いの意思と感情の結び付きでなければならん。そういうものはそう簡単にできるものではありません。いわんや政策自体が十分国民にお示しになるものがなくてどうして私は政局が安定するかということを考えるのでありますが、総理大臣の御所見を伺つて私の質問を終りにいたそうと思います。
○国務大臣(吉田茂君) 只今のお話を承わつておりますと、内閣は殆んど政策がないようなふうにお考えのようでありますが、例えば財界安定の政策はこうだといつて掲げたものはないかも知れませんが、内閣としては、経済安定のために、或いは又保安隊増強の問題にしても、防衛の問題にしても、こま切れではありますかも知れませんが、絶えず所見は明らかに発表いたしております。それを総合せられれば、我々の内閣、或いは自由党の政策いずこにありやということは、自然におわかりになるであろうと考えますし、現にこの政策を基本として、いわゆる政策を同じうするものが一緒になつて行こうじやないかという相談も受けております。我が内閣の政策が不明朗と言われますけれども、相当理解せられておる面もあるかに私は存ずるのであります。いずれにしましても、我が党の政策と協力して行こう、国の安定を図り、国の信用を図るために脇大して行きたいという政党があれば、喜んで協力して参りたいと、こう考えておるのであります。
○堀木鎌三君 一言だけ。もう申上げますまいと思いましたが、総理大臣、そういう政治の本当の協力関係というものは国会の答弁と違います。あなたのお考えになつておられるのも、又ここでお述べになりましたことも、私は嘘だとは申しません。併しやはりそういう小手先でできるものではない。真に、何と申しますか、皆がこの日本の臨んでおる現状を憂えるというものが本当に出て参らなければならんし、為政者みずからが謙虚な心持を持つておやりにならなければ、真のものは私はでき上らないという確信も私は持つておるのであります。余りそれらについて詳しく政局を分析することはやめますが、ただそういうことを総理大臣が特に心に銘ぜられんことを希望いたしまして、これで終ります。
○木村禧八郎君 只今堀木さんから、非常に重要な健全財政に関する質問がございましたので、丁度私もこの財政の健全性の問題について質問しようと思つたので、この点について総理大臣に先ずお尋ねしたいのであります。
 総理大臣も今度の施政方針演説で、政府の一貫せる方針は日本の経済自立にある。経済自立を達成する上において、やはり健全財政を堅持して、それで通貨の価値を安定して、そうして日本の経済を自立化さして行く、こう言つておるわけです。大蔵大臣も健全財政を今強調されましたが、非常な大きな声で強調されましたが、それでは私は、併し如何に主観的に健全であると考えても、客観的にこれが健全でなければ、これは意味をなさない。従つてその健全性の基準をどこにおくか。健全財政、健全財政と言つておりますけれども、どういう財政が健全であるのか、その健全の基準をどう考えておられるか。私は先ずこれを総理大臣にお尋ねしたいのであります。
○国務大臣(小笠原三九郎君) ちよつと総理に代つて御答弁申上げますが……。
○木村禧八郎君 総理大臣の施政方針演説について質問している。
○国務大臣(小笠原三九郎君) それはあとから総理大臣から申上げるかも知れませんが、一応私から簡単に申上げます。
 私どもが健全財政というのは、現在の日本の段階においては、健全財政とは、特に、時によつて違いますが、現在の日本の段階においては、総合的均衡財政でなければならん。総合的な均衡財政でなければならん。又日本の現在の段階では膨脹する予算であつては相成らん。いわゆる緊縮財政であるべきである。こういうふうに考えております。
○木村禧八郎君 総理大臣。
○国務大臣(吉田茂君) 大蔵大臣の意見の通りであります。(笑声)
○木村禧八郎君 大蔵大臣は今非常に重要なことを言われたんです。緊縮財政ということが一つの重要なる要件になつておる。それから総合的均衡と言われました。私はこの今の段階において、健全財政の条件は二つあると思う。条件は二つ、一つは、今大蔵大臣の言われた総合均衡と緊縮財政、もう一つは、内容的に見て日本の経済自立に役立つ予算でなくちやならん。日本経済自立というのは、御承知のように貿易の拡大、均衡、生活水準の向上、これに伴つたものでなければならん。そういうものを促進する予算である、内容的にはですね。そこで大蔵大臣は今健全財政ということの内容を言われましたが、緊縮財政と総合均衡と言われましたが、大蔵大臣が時によつて違うと言われましたが、二十八年度予算の予算編成方針はやはり今言われた通りでございますか。
○国務大臣(小笠原三九郎君) まあ多少過去の蓄積をなにしておる点から言えば、厳格な意味から言えば、多少のなにはないとも言えませんが、これを通じて達観的に言えば、均衡財政であるということが言えると思います。
○木村禧八郎君 今大蔵大臣は均衡財収、健全財政と言われなかつたのですか、それはやはり健全財政という意味ですね。
○国務大臣(小笠原三九郎君) その通りであります。
○木村禧八郎君 そうしますと、我々に配つて頂いた二十八年度予算、第十六国会の時のを見ますと、予算の説明書にはつきりと「財政規模を極力圧縮し、一般会計の予算総額を九千六百八十三億円にとどめた。これは、前年度に比し三百五十七億円の増加となるが、国民所得に対する比率においては前年度よりやや下廻つている。」そうして大蔵省は御承知のように苦心惨憺して、国民所得に対する二十八年度当初予算の比率を、これを二十七年度の比率より低くしたことに努力したことは御承知の通りです。そうして本来ならば、前年度の当初予算と比べるべきものを、前年度の最後の補正予算と比べて如何にも財政規模を圧縮されたごとく言われまして、そうして国民所得に対して不成立予算は一六五%、こういう予算を組んだ。ところがこれが、今度の第二補正によつて国民所得に対して一七・七%に膨脹しておるのであります。二十七年度予算は国民所得に対して一七・四%。二十七年度予算よりも殖えておるんです、事実において。即ちこれは膨脹予算です。緊縮圧縮予算ではない。今大蔵大臣は極力緊縮圧縮財政、緊縮財政ということが今の健全財政の一つの要件であると言われましたが、そうなつておりません。従つて、時によつてと大蔵大臣は言われましたが、今度の予算説明書を見ると、極力圧縮ということは言つておらない。膨脹を極力抑えるというだけであつて、二十八年の当初予算に示した財政規模を極力圧縮する方針はここで変えられておるんです。従つて私はこの二十八年度予算の予算編成方針は一貫しておらない。最初は財政規模を圧縮すると言つて、今になつて膨脹を極力抑制すると言つている。この点大蔵大臣は一貫しておりません。従つて今のこの補正を含めた、二十八年度第二次補正を含めた予算は一七・七%、二十七年度よりも殖えておるんです。これでほ健全財政ではないではありませんか。
○国務大臣(小笠原三九郎君) 議論をすれば、そういうことが言えるかもわかりませんが、御承知のごとく本年は……
○木村禧八郎君 事実です。
○国務大臣(小笠原三九郎君) 事実は災害という大きなものがあつて、何人もこれを予想しなかつた、あなた方でも何かの時に天災その他のことは避けがたいことを、そういう不時のものを捉えて政府の方針が変つたと言われるのは、正直に言うと非常に私は心外である。こういう大きな災害、而もあなた方はもつと災害費を出せ出せとこの間要求したばかりではありませんか。(笑声)大きくしろ大きくしろと言つて要求しておいて、今度はなぜ災害費を出したかという御議論には、私は承服しがたいのであります。
○木村禧八郎君 そんなことで予算編成方針を貫くことはできますか。前の向井大蔵大臣はそれで辞めたのではないのですか。大蔵大臣は本当に断固として二十八年度の緊縮財政を貫くとすれば、不急不要のものを削るべきである。今の段階においては、防衛費はどうしてこれは必要なんですか。又アメリカさんから要求されていたし方ないから又殖やさなければならない、従つて、そうした情勢の変化をいたし方ないと言つたら、いつまでたつても健全財政はとれない。健全財政を具体的に今実行しようとすれば、どうしても予算規模を緊縮しなければならないということは、前に私は強調し、大蔵大臣も同調された。これを守るか守らんか。災害が起きたらすぐ崩れるような、そんなことでは健全財政は堅持できない。若し必要ならば国民に耐乏生活を要求すべきである。そういうふうな政治をやるべきです。一方において厖大な不生産的な防衛費を組みながら、又世界の情勢は平和的な、戦争危機がないのにそういう予算を組みながら、災害が起きたから止むを得ないというので膨脹財政……、理窟から言えばそうだというが、現実がそうじやありませんか。ですから二十八年度の本予算編成方針は、健全財政と言うけれども、健全財政ではない。数字がはつきり示している。
○国務大臣(小笠原三九郎君) 私は飽くまで健全財政なりと考える。あなたのように、保安庁費とか、その他防衛費はみんな削つてしまえという、防衛費無用論者では議論にならない。最初からそういうものを見ていない。(「そこが問題だ」と呼ぶ者あり)そこが私どもは災害が起つた年は、これは異常な年として考えなければならない。それで方針を変えたものではないと言うのだ。ただ一時のちよつとしたものをつかまえて災害予算を組んだ、こうしたじやないかと言うのは、議論をするための議論だと言うのです。
○木村禧八郎君 そういうお考えだから、本当の健全財政は口先だけなんです。一旦健全財政の方針として二十八年度予算編成をやつて、財政規模を極力圧縮した。あんなに苦心したじやないか。それがすぐ、最初一六・五%に組んでおつて今一七・七%じやありませんか。それで健全々々だと言う。これは口先だけですよ。子供だつてこのような予算を組みます。そこが財政当局の苦心の要るところです。世界の情勢を達観して、今戦争がない時に防衛費を削るのは当り前じやありませんか。更にお伺いしたいことは内容についてです。健全財政の内容を、これはどうしても日本の経済自立に役立つものでなくてはならないと思う。そこでこの財政が日本の経済自立に役立つものかどうか、この点大蔵大臣に。これはもう総理大臣にお伺いしても御答弁ないと思いますから。
○国務大臣(小笠原三九郎君) お話になつた通り、経済自立ということは、これはもう当然日本が独立後やらなければならん最大の使命で、日本の一切の政策はそこに集中していると言つてもよいかと思います。従つてそういう目的の下に、又そういう意図の下に予算は編成してあります。
○木村禧八郎君 意図の下に編成されても、現実はそうなつてはいないと思う。貿易を御覧になればおわかりと思う。本年度の輸出は十二億二千万ドルぐらいと言われております。輸入は二十一億七千二百万ドル、昨年度よりも輸出は減るのであります。今後の輸出の情勢を見ても減る傾向にあるわけです。それでこの輸出減退の大きな要因としては、いろいろあります。いろいろありますが、大きな要因としてやはり日本物価の国際的な割高がこれは相当大きな要因だと思う。これは何から来ているかと言えば、結局これはインフレから来ていると思う。大蔵大臣はインフレを起さないように、起さないようにと努力していながら、健両財政を組んでいると言いながら、現実に物価は上つているのです。物価指数を御覧になると物価は下つておりません。物価は上つておるのです。国際的に割高はだんだん大きくなつている。あとで御質問いたしますが、アメリカの景気は来年度は相当悪くなると思います。従つて割高はますます高くなる、大きくなります。これでどうして、こういう予算を組んでおいて物価を下げることができますか。
○国務大臣(小笠原三九郎君) これは日本の物価は国際的に割高であることはこれは事実であります。従いましてこの国際的に割高である物価を如何にして下げるべきかということに我々は努力を払つておるのでありまして、それがために各基幹産業等に重点的にいろいろ財政資金の投融資を行ねつてそうしてコストの引下げについて努力をしておる。現に最初に初めた石炭産業のごときは相当下つておることは、あなたが御承知の通りです。こういうようにして漸次基幹産業等のコストの引下げに努力をしておる。更に又朝鮮事変等のあのあとに起つて来た一時的なブームのために、比較的工場の近代化、設備の合理化等が遅れておるので、この点に対する機械の輸入等にも相当努めて、現に本年のごときは、五十万ドル以上のそういつた合理化機械寺を輸入することにいたしておるのであります。又今後とも必要なものはそういうことにやつておる。つまり政府としてはそういうことに努力をしておQのでありますが、又日本経済というものがなかなかそこまでの、あなた方が机の上で考えていられるような段階に至らん点は、これは誠に遺憾に思う。併し事柄は内閣が変つたら一朝にすぐそう行けるというものではありませんよ。やはり長い間の努力が営々と実を結んでそれができて行くのであつて、ただ今年の貿易をちよつとつかまえてそういうことを言われるが、それだから、政府はそれがために最大の努力をしておるわけです。この努力の結果がだんだんと出て来るでありましよう。又貿易の逆調を直すためには、例えば輸入につきましても、従来は物が足らなかつたからというので輸入金融等について随分寛大の措置をしておつたのを、本年十月から、輸入金融等に対する措置を改めて、今日は不要不急品等の輸入は勿論、各種の点について、いろいろな輸入に対する、勿論重要な原材料、これは特別でありますが、又日本が貸越勘定になつておるようなもの、インドネシア等から入つて来るようなものは別でありますが、その他のものに対しては、相当こちらのほうでも思い切つた処置をとつておることは、あなたも御研究になつておる通りであろうと思う。つまり政府の政策は、一貫して輸出貿易の増進と輸入を抑制することに置かれておるのであります。けれども、数字的にすぐ実を結んで来る、半年間に実を結ぶ、三カ月間に実を結ぶ、こういうわけにはなかなか参らないことは、経済というものはこれはあなたもよく御承知のごとく、やはりいろいろな段階を経て行かなければなりません。このことはやはり政策としてそういうふうにやつておるという点と矛盾するように見えて、何ら矛盾するものではないと私は考えるのであります。
○木村禧八郎君 大蔵大臣は非常に一応いろいろな理由を述べて御答弁なされますが、実は本当に政府で研究的に作業をしておることを見ると、そんな甘いものではないと思う。経済審議庁で作業をしておるのを見ると、今後の貿易情勢はそんな甘いものではない、これはちやんと政府も知つておる。それで知らない国民に一つの安易な感情を与えるためにそういう御答弁をするならいいが、我々もそういう資料を頂いて見ておる。例えば東南アジア貿易について、総理も施政方針演説で触れられておる。又今後の日本の輸出貿易は当然東南アジア貿易が一番重要だと言つておる。併し経済審議庁で調査しておるこの東南アジアの貿易の将来の見通しについてはどうであるか。又この間我々は中国へ行きました帰りに香港に寄りましていろいろ聞きましたが、岡崎外務大臣が東南アジアへ行かれた結果は非常に悪い。香港においての新聞はどの新聞でもあれについて好意ある評論をしたものは一人もない。台湾系の新聞でさえあれに対して非常な非難をしておるということを私は聞いたのです。従つてそんな甘いものではない。従つて先ず東南アジア貿易の見通しについて、これに非常に重点をおいておるのですが、確信があるのか。その点一つと、それから仮に均衡予算を組んでみたところで、それで物価が上らんというわけじやないと思う。今大蔵大臣は合理化をやつたやつたと言いますけれども、成るほど石炭のコストは下つたかも知れませんが、価格は下つていないのです。生産費は下つても物価は下つていません。いわゆる独占利潤がそこで大きくなるだけであつて、輸出のコストもちつとも下つておりませんよ。ですから物価はやはりどんどん上つて行つておる、そうして国際的な割高は解消していないのです。併し予算面から見れば、基本的に政策的な支出がたくさんあるから、如何に表面的には均衡のとれたように見えても、今度の給与ベースの引しげを仮にやつても、これはほかのいろいろな自然増収から賄つたようにしたところで、財政規模を圧縮しなければ防衛費と競合関係になるのです。競合関係の防衛費を崩さないで、その上に給与改訂の予算を積み上げれば、これは競合関係になつて、結局それはインフレ的に作用するだけなんです。ですから財政規模の圧縮というものは絶対に必要なんです。そういう意味で私は質問しておるのですよ。この二点についてお伺いしたい。
○国務大臣(小笠原三九郎君) 財政規模を圧縮すると、この点は全く同感でありまして、最初から私はそういうふうにお答え申上げておる通り、今後ともこれに努める方針であります。
 なお東南アジアのほうの貿易関係でございますが、これもあなたも御承知の通り、まだその正常なる通商航海条約が結ばれていない。で、やはり先立つものは賠償その他の問題を取極めて、そこで両方の間に通商航海条約ができるということでございましよう。ところが賠償問題等は、先に岡崎外務大臣が向うに行かれて一応だんだんと目鼻がつきつつあるように私は考えます。例えば沈船引揚げ等についても、すでに調印が終つたものもフイリツピンとかインドネシアとか、或いはヴエトナムにはありまして、そういうふうにだんだんと実行されて行くのであります。従いましてこういうところから、普通の通常の貿易関係が結ばれる素地である外交関係が成立つて来ないとこれは一時には多くは求められません。つまりものはなかなか気には行かない。併し東南アジアは日本にとつて市場でもありまするし、今後ともこれに対して努めて行くのは当然でありますけれども、何しろ独立後一年そこそこで、そういうかぎの手が十分まだ結ばれておりません。併しこれらはやはり貿易関係を進めて行くことになりますので、もう暫らくお待ちになれば、その間に政府の諸施策が実を結んで来ると思います。なお石炭について、これは石炭そのものが値下りしておることは御承知の通りであります。併しこれが生産費に及ぼす影響はどうかはつきりしませんけれども、現に鉄道関係におきましては、相当これがために余力を生じておることは、これ又御承知の通りであります。各産業においても、石炭が安くなつて来たために相当なこれがためにコストが下つて来ておることも事実であります。
○木村禧八郎君 東南アジアの問題については、私もそれを調べたのがありますが、まあ時間がありませんから遺憾ながら省略します。次にお伺いしたいのは、来年の防衛費の問題です。この予算説明書でも、来年度予算等を考慮して編成しておると、こう言われています。来年度予算の一番重点は、やはりMSA援助を受けることによつて防衛費が膨脹して来るということ、時間がありませんから端的に伺いますが、今の日本の保安隊がアメリカから援助を受けておる武器の価格は大体二億ドル、こう言われております。外国の雑誌なんかを見ると大体二億ドルである。今のMSA援助は大体一億二千万ドルぐらいであると言われております。そうしますと、一億ドルくらいのMSA援助を受ければ、大体今の保安隊の半分くらいのものを増強するというスケールになる。いわゆる六万乃至七万、そうして二十九年度予算においては大体防衛費として七百億くらい殖えるのではないか、こう思うのです、七百億くらい。その点如何ですか。
○国務大臣(小笠原三九郎君) まだMSAの内容についても、来年度のいわゆる保安庁の計画等についても、まだ何ら最後のまとめた決定を見ておりません。従つてどの程度かということは申上げる段階に行つておりません。
○木村禧八郎君 外国の雑誌を見ますと、非常に詳細に報道しております。そうして又実際の現実の今の日本の保安隊を作ることについて、いろいろなデイスカツシヨンが行われ、日本の又政府当局がいろいろ意見を持つていることが詳細にここに述べてあるんです。非常に遺憾なことは、外国の新聞などには日本の官辺では相当の細かいことを話しております。こういう数字が出ております。日本の国会においてはちつともそういうことが示されておらない。今の保安隊の持つている武器が大体一億ドルであるということもちやんと書いてあります。そういうことから推算すれば、大体七万人の増強ではないか。従つて七百億くらいではないかということが推算で出て来る。併しそれがわからないから二十九年度の十算が編成できない。そうすると日本の財政の自主性、自主性と言つておりますが、自主性はどこにあるか。アメリカのMSA援助の関係によつて防衛費なんかきまつて来る。その防衛費がきまらないから二十九年度予算がわからない。こういうことではちつとも自主性がない。従つてそれでも自主性があるというかどうか。
 それからこれは保安庁長官に私は伺いたいのです。もう時間がありませんから、私はあとで数字をお見せしますが、アメリカにおいては今の具体的な東京会談でやはり前提となる数字が示されて、又日本の官辺でもそういうことが話され、数字が出ておるのです。従つて私はもうその程度のことはこれは国会でお話になるのが当り前だと思う。ここでできたら発表して頂きたい。
 それから最後に伺いたいのは、今後の世界景気の問題です。これは今度の予算を編成するについても、二十九年度の予算を編成するについても重要でありますから、この点については最後に伺つておきたいのです。最近コーリン・クリークも、御承知のようにマンチエスター・ガーデイアン十一月十一日号でアメリカの来年度の恐慌を予想しております。これは一九二九年のアメリカの恐慌を予想した人ですが、大蔵大臣御承知だと思う。又ソ連のヴアルガなどもアメリカの恐慌を予想しておる。又最近のアメリカのUSニユースなどを見ても、アメリカの来年の景気のダウンワード、不況を相当予想しております。やはりアメリカでは来年度は相当不況は来る。その程度についてはいろいろ意見がありましよう。前に大蔵大臣は、その点心配ない、そういう一部の人もあるということを言われましたが、最近ではそういう人は余りなくなつて来ております。そうすると世界的な恐慌段階に来年は入つて来るのではないか。にもかかわらず、日本でこういう基本的な形においては均衡がとれたようでも、内容的には不健全な、非生産的な支出が相当あつて、物価がじりじりと高くなつて来るような予算を組んでおつたんでは、日本の経済は重大なデツド・ロックに乗上げて来ると思う。最近もそういう傾向はありますが、従つて来年の世界経済、もう最近そういう傾向にありますが、世界経済の見通しと予算編成について最後にお伺いいたしたい。
○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。日本の防衛計画について、アメリカの雑種にいろいろ載つておるというようなお話ですが、私はアメリカの人たちに未だ曾つて日本の防衛計画を話したことはありません。はつきり申上げます。而して、只今保安庁においては慎重に日本の防衛計画がどうあるべきかということについて、資料を各方面から検討中であります。従つてその結果はまだ出ておりません。なお、大蔵省との間の折衝も結末に至つていないという状況であります。
○国務大臣(小笠原三九郎君) 今木村さんの言われたような雑誌等を私はまだ読んでおりません。ただ私も丁度九月アメリカに行き、又その後はいろいろな人々からも、又愛知政務次官も行きまして、いろいろな情報も聞いておるのでありますが、大体においてそれは自動車その他を始めとして、もうストツクが過剰状況にあることは事実であります。併しながらこれは共和党としてもこのままで行くというわけにも参りかねるので、いろいろ処置をとる、政策を新たにするように聞いております。私の極く達観した見方は、あなたが言われる恐慌とかそういうものが来るのでなくして、いわゆる下向き横這い、横這いだが、大体傾向は下を向いておる、こういうようなところで来年のアメリカの状況は行くのではないか。又従つて世界の経済の主力になつているアメリカの経済がそういうふうになつて行けば、各国とも結局これに伴つてやはり下向き横這いという程度で行くのではなかろうか。日本も大体において横這いである。日本は最近のところはまだ、お話になつたようにむしろ物が上つておるような傾向でありますが、一般的に申せば、二十九年度は下向き横這いの傾向を辿つて行くのではないか。その下に予算を編成すべきである。私はごく達観すると、さように考えております。なお何かお読みになつた有益な意見は私にお知らせ下されば誠に結構です。
○木村禧八郎君 最後に簡単に、来年の世界景気については、若しアメリカの景気が悪くなり、相当又深刻になると、イギリス、フランスその他で通貨の切下げが行われるかも知れないという問題が一つ起つて参る。或いは通貨の切下げが行われなければ、輸入制限を相当しなければならんのではないか。こういうこともクラークなど言つています。そうなると、日本の貿易というものは非常に重大な段階に入ると思う。従つて、さつき大蔵大臣が言われましたが、予算は均衡財政、健全財政健全財政と言つておりますが、先ほど言われたような意味の健全財政では駄目だと思う。ただ膨脹の程度を防いでいるという意味が、大蔵大臣の言われる健全財政、やつぱり最初の二十八年度予算を編成した時に示したところの財政規模の圧縮と、これをやらなければ本当の健全財政になりませんし、日本の物価は、如何に表面的に予算の均衡がとれてもこれは下らない。そういう点を私はもつと率直に、立場が違うからと言つてすぐ喧嘩ごしであれするようなんでなく、もう少しこれは率直に研究される必要があると思うのです。最後に私意見を述べまして、これで終りといたします。
○加藤シヅエ君 総理大臣にお伺い申上げたいのでございますが、私は主に予算と民生の安定というようなことについて御所見を伺いたいと存じます。
 或る新聞に出ておりましたので、私はその真偽のほどはわからないのでございますが、総理大臣は毎日新聞をお読みにならないというようなことが出ておりましたのですが、(笑声)大臣はお忙しいのでございますが、やはり毎日新聞はお読みになつていらつしやいますでございましようか。それをちよつと伺いたいのでございますが。(笑声)
○国務大臣(吉田茂君) 読んだり読まなかつたりであります。
○加藤シヅエ君 お読みになつたりお読みにならなかつたりでございましたら、いろいろの社会面に出ている問題なんかは余り目に入らないかも知れないと思いますけれども、私どもはやはりこの立法府にある者といたしまして、毎日の新聞の社会面に現われておりますこの問題は、直接政治に非常に大きい関係がございますので、こういうような問題をおろそかにしないで、ここにやはり温かい心を以てそれぞれの対策というようなことを本当に総理大臣が中心になつてお考えになつて頂くということが、今の場合非常に大事なのではないかということを心から考えております。それでこれにつきまして私が今日特にお伺い申上げたいと思いますのは、いわゆる社会保障制度審議会の勧告案が出ましてから、すでにニカ年を経過いたしておりますのですけれども、未だに私どもの見ております予算には、この社会保障制度に対して少しも前進を示しているというような姿が現われて来ないということは、非常に遺憾だと思つております。総理大臣は恐らく社会保障制度と言えば、すぐ厚生大臣のほうに御答弁をお廻しになるだろうと思いますけれども、細かいことは所管大臣から伺うといたしましても、私は総理大臣として、特に今日本でいろいろな問題が錯綜して上つております。防衛の問題は特に中心になつておりますけれども、この防衛の問題を考えますときに、民生が安定していないところに防衛費をたくさんにかけて、幾ら防衛の問題にお力をお入れになりましても、これは本当の国家の防衛にはならないということは、これは総理大臣も閣僚の皆様も御同感かと思うのでございます。こういうことを考えますときに、私は英国のあのビーヅアリッチ卿の御研究なり、提案されましたところの完全なる社会保障制度を英国が実施したときのその考え方というものを、総理大臣はもう一度考えて頂きたいということを特にこの機会にお願いいたしたいと思います。社会保障制度というのは、決して枝葉末節の、貧乏で困つている人をちよつと救い上げてやるというような、そういうようなものではなくて、現段階における一つの革命であるというような考え方を持つて保守内閣がこのビーヴアリツチ案に手をつけており、そうして労働党内閣がこれを実施した。これは実施するのが自由党であろうと社会党であろうと、私はそれはかまわない。どの内閣でもよろしうございますから、一日も早くこういうような大きな考えを持つて、今の世界歴史のこの段階において一つの革命を断行するというような考えで、弥縫策でない社会保障制度の実施ということは真剣に考えて頂きたいと思うのでございます。こういう意味におきまして、審議会の勧告案というものが、来年度の予算にどの程度お盛込みになるというような御予想がおありになるか。その御信念を先、ず総理大臣に伺いたいと思います。
○国務大臣(吉田茂君) 社会保障制度につきましては、主管省において真剣に考えております。委細は主管大臣からお答えいたします。
○国務大臣(山縣勝見君) 只今総理から御答弁がございましたが、社会保障制度審議会は、両三回に亘つて答申されておるのであります。社会保障制度審議会の答申は、社会保険の面、或いは公衆衛生の面、国家保障の面、それらに対して答申をいたしておりますので、その答申の中にも、やはり国家財政との見地をも勘案するという点も触れておりますから、例えば社会保険の面につきましては、御承知の通り国民健康保険の面において国庫負担を実現いたしております。なおその他社会福祉の面におきましても、或いは母子福祉の面、或いは生活保護の面等においても、殊に又公衆衛生の面におきましては、結核の高率負担その他におきまして、年々相当予算を組んで財政の許す範囲において努力をいたしておるつもりであります。
○加藤シヅエ君 只今の厚生大臣の御答弁は、現内閣がこの社会保障制度というものに対する御理解、御態度、その面から少しも出ていないように思いまして、私はその点を非常に遺憾に思うものでございます。例えば今の社会保障制度と厚生大臣は申されましたが、生活保護費の中に現に二百五十六億なるお金を出していらつしやる。私どもの考えからいたしますと、この生活保護法というものは、本当の意味の社会保障制度ではないと思うのでございますが、本当の意味の社会保障制度というものは、国家の責任におきまして、国民全般の協力に基きまして、個人の収入というものを保証するところから始つておるのであつて、個人の収入が保証されないで、貧乏の線に転落してしまつた者を食うや食わずの点に救い上げるというような、こういう意味の社会保障制度というのは、これは一種の救貧制度であつて、この考え方は私は非常に古い考え方だと思います。現にこういうような生活保護法に、この恩恵にかかつているかたがたの生活を見ておりますと、全く明日の希望も持てない生活でございます。現にこの間の新聞で、今度の軍人遺家族の手当をもらつたために、今まで受けていたかたが生活保護費を削られてしまつて、そのためにその未亡人が子供三人を連れて心中した、こういうような一つの事実を見ましても、この生活保護法というようなものは、決して個人の収入を保証するという建前に立つている社会保健制度ではないと私は思います。厚生大臣は、もつとそういうことでなくて、個人の収入を保証するという意味の社会保障制度について、積極的にもつと次の予算において大蔵大臣にたくさんの御要求をなさるというような案をお持ちになつていらつしやいませんでしようか。
○国務大臣(山縣勝見君) お答えを申上げますが、生活保護に関して、これは社会保障制度ではないというお話でありましたが、社会保障制度審議会の答申の中にも、社会保険或いは国家扶助或いは公衆衛生等と分けまして、社会保障制度の中の重要な一部分として答申をいたしておるのであります。なお只今お話の、援護法による弔慰、金等をもらつた場合においては、却つてそれによつてそれらの受給者が困難な立場に追込まれておるというお話がございましたが、この点につきましては、弔慰金等は引いてありません。なお又殊に最近そういうふうな問題もありまするので、さような弔慰金或いは年金を支給いたします際においては、特にその家族の急に収入が減りますることがないように、又それらの点については生活の更生或いはその他に対し十分に民生委員その他が指導する、そういうふうな混乱事態にならんように申しておるのであります。なお又只今お話の、単に救貧ではなくてもつと積極的な防貧的な政策をとるべしというお話に対しましては、全く同感でありまして、従つて厚生省といたしましては、社会保障の各面に亘つていわゆる救貧というよりも防貧というほうに将来方策を転換すべきである。従つて例えばいろいろ御心配になつておりまする売春等の関係、或いは人身売買等に関しましても、職業の補導とか、更生という面に関しても、むしろ今後予算を使うべきではないか、各般につきましてそれらの面において折角研究をいいしております。
○加藤シヅエ君 厚生大臣もいろいろお考えになつていらつしやいますようでございますから、厚生大臣からいろいろ来年度の予算について御要求がございましたときに、大蔵大臣はどういうような御用意がおありになりますか。特に私が伺いたいと思いますのは、社会保障制度を完全に実施をしております国々の状態は、非常に民生が安定しておるということは御承知の通りだと思います。特に例を挙げて申しますなら、英国が国家の予算における社会保障制度の割合が一九%、フランスが一七%、濠州においては四三%というようなものを予算の中に占めている。特に日本と同じような立場にあつて戦敗国である西ドイツでさえも三七%というようなものを社会保障制度のために予算の中からこれを割いている。こういうようなことを見て参りますと、日本が今まで八%以下というようなことは今後増大するであろうと思う防衛費との釣合いにおいて、これは私どもは防衛費の殖えるということを決して賛成いたしておりませんけれども、いわゆる自衛力の増強という広い面から考えましても、自衛のためのお金と社会保障制度のお金というものは、予算の面で釣合いのよいバランスをちやんと占めて行かなければならないと思います。それが本当の国家の防衛であると私どもは信じておりますので、大蔵大臣は日本の社会保障制度の費用はどのくらいの割合を占めるように二十九年度の予算において考えるべきか、という御所見を伺いたいと思います。
○国務大臣(小笠原三九郎君) 昭和二十八年度においては、今仰せになつたように、たしか七百三十六億を社会保障制度に組んでおるのでございますが、日本の現在の財政ではこの程度がまあ止むを得んということであつたと存じます。明年度然らばどうするかということでございまするが、明年度は本年の異常災害等がありましてそれらのことや、一方自然に増加するもの等のこともございまするので、社会保障制度の極めて大切なることは私ども認めておりまするが、どの程度に金額を按配し得るかということは、やはり財政全体を睨み合せて閣議決定等に持込まなければならんので、只今のところどの程度かということはちよつと申上げにくいのでございますが、御趣旨の点はよく私どもわかるのでございますから、十分考えたいと存じております。
○加藤シヅエ君 私の時間がございませんので、最後に申上げますが、大蔵大臣は、新聞で拝見いたしますと、各閣僚からたくさんの予算の御請求の中で孤軍奮闘していらつしやいます形は、私は蔭ながら御同情いたしまして、殊に大蔵大臣は、補助金というものは甚だ拙劣な政策で、補助金をやめるということは非常に大事なことだというお言葉は、私も非常に敬意を表するのでございますが、どうか補助金を極力割いてこれを社会保障制度の面に廻すということが、これが国家的に本当に正しい予算の組み方であるということの希望を申添えまして、私の質問を終ります。
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○委員長(青木一男君) これにて内閣総理大臣に対する総括質疑を一応終了いたしました。
 引続き一般質疑に入ります。
○伊能芳雄君 インフレ抑制の問題は各方面から力強く推進されまして、政府の施策におきましても着々と実行に移されるという大蔵大臣の非常な強い御言明に対しまして、敬意を表するものでありますが、このインフレの財政面からする一つの因子である補助金問題について、先ず私は緒方副総理の御決意を伺いたいと思うのであります。
 勿論補助金はそれぞれの使命を持つて行われているものであり、従つて相当の効果をもたらしておることは当然であります。中にはだんだんこれが弊害の面ばかり大く出して参りまして、弊害のほうが多いというようなものもないではないと思うのであります。これを個人の場合に考えますというと、これによつて依頼心を助長し、卑屈の念に陥らしめ、自主独立の気風を失わせしめるというような結果になる。余りに小さい零細な補助になりますというと、中間取扱の団体などで消化されてしまつたり、或いはそれらの団体における横領事件というような刑事事件を起した例も乏しくないというような実情にあるのであります。又団体が受ける場合にいたしますというと、受けるほうはどうしても経理に関して無責任になりがちであり、濫費の弊に陥り、いわゆる公用族の横行の大原因をなしておるということは、しばしば言われておる通りであります。これを一家の例にとつて見ますと、或る家で屋根が漏つて手入をしなければならない、これを一番先にやらなければならんと思つておる。次には娘の靴を何とかしてその次には買つてやらなくてはならん。次には茶の間の畳がぼろぼろになつておるので、その次に何とか経済の都合ができたら畳を入替える。こんなふうに肚積りをしておるところに、予算の獲得戦術等によつて成功したところの補助金が、外套の裏地をやるから外套をこしらえたらどうだというようなことを言つて来ますというと、二、三年先に見送つてもいいと思つた外套を、裏地がもらえるなら裏地をもらつて外套をこしらえよう、雨が漏つても、茶の間の畳が亘れても忍んで、まだ二、三年辛抱できる外套をこしらえると、こういうようなことになる例が多々あるのであります。こうした点を考えまして、緊縮財政と言われる大蔵大臣のお考え、これに対しましては又閣内においてはこれらの予算を持つ各閣僚諸公におきましてもなかなか収まりがたいものがあると存じますが、この際重点的に大方針を立てられまして、その他の細かい補助金を思い切つて整理する御意思はありませんか、伺いたい次第であります。
○国務大臣(緒方竹虎君) 経済自立を達成いたしまする今の段階におきまして、先般総理大臣から施政演説の中にも申上げましたように健全財政、財政規模の圧縮ということが今日ほど緊切な場合はないと考えます。殊に今年は御承知のような非常な不幸な災害の多い年で、来年度の二十九年度の予算におきましては災害の復旧、その根源をなしまする治山治水、それから止むを得ざる防衛の費用というようなもの以外には、現実の問題といたしましても殆んど新規要求というものは予算の面に盛れないような事態になつておるように考えます。そういう意味からも又政府が第一次吉田内閣以来基本方針として持つて参りました建前から申しまして、原則として補助金というものをこの際一切抑えると、こういう財政規模の圧縮を絶対的要請としておりまする際には、先ず以て補助金を廃するということが一番最初に考えられることであろうと思うのでありまするし、政府としてもその方針で二十九年度の予算を編成するつもりでおります。
○伊能芳雄君 これらの補助金の中でもかなり惜しいものもあると思いますが、これらは又世話をしたり、技術指導をすることによつて、却つて補助金というようなものを出すよりは更に効果の挙るものがあることを十分御研究下さいまして、是非補助金の打切りについて英断を下されることを希望いたしましてこの問題はこれだけにいたします。
 次に地方団体がみずから行うところの補助政策につきまして塚田自治庁長官に伺いたいと思います。地方自治体におきましても国の行うような補助金に準じ、又首長の公選制の弱点に乗じましてかなり補助金の濫費が行われておることは否めない事実だと思うのでありまして、或る県或いは或る市町村で関係者或いは議員がこの首長は割合に弱いというようなことを見込をつけて補助金の獲得運動、これが成功しますというと、これを突破口として必ずこれが他の府県に及び、これが他の市町村に伝染病のごとくに蔓延して行くというのを通例といたすのであります。まあ何のことはない祭の寄附金のようなものが出るということであります。その著しい例を一つ申上げて見ますと、今県単位に社会福祉事業協議会という事業団体ではない協議的の団体があるのでありますが、これに補助金を出せということは早くから唱えられておつたのであります。これは明らかに憲法八十九条に違反するのであります。ところが或る弱い所でこれをうまく工夫させられまして、事業委託の名で補助金を出すことになつた、一県でそれがあればすぐそれが伝播しまして、逐次他の県に及びまして、恐らく全国の相当多くの県が今日明らかに憲法違反だと思われるところの補助金を出しておるのが実情であります。この団体は事業をやらない団体でありますから、職員の旅費や会議費に使われてしまうことは当然であります。これは一例でありますが、こういうように、地方自治体におきましても、今日のこの公選知事の時代においては、なかなかこういうものがとめられない。公選知事制に対する強い批判もこんな面からも現われていると存ずるのでありまして、こういう問題につきまして、自治庁といたしましては何らか抑制の方法を考えておいでにならないかどうか、この点を伺いたいと思います。
○国務大臣(塚田十一郎君) 私も地方自治団体の財政の事情の中に御指摘のような事情があるということをよく承知いたしておりのでありますが、これをどういう工合にするかということは、今度の地方制度の改革と併せて検討いたしたいと考えております。勿論その中に憲法その他の法律に違反するものがあれば、これは全部やめるといたしまして、そうでなくても地方自治体の財政運営上適当でないと思うものは、然るべき方法によつて勧告を発するなり何なりによつて今後是正して参りたいというふうに考えております。
○伊能芳雄君 次に私は文部大臣に国体の問題で、やはりこの補助金に関連してお伺いいたしたいのであります。スポーツの奨励、誠に青少年の心身の鍛練のために、又リクリエーシヨンの意味において、私も大いに賛成するものではありますが、あの国体は戦前におきましては神宮競技と言つた時代には、ともかくも選手自身それが所属するところの団体、或いは学校でともかくもあの選手を出せたのでありますが、戦後は経済情勢の非常な変化から、折角あの立派な国体を行いますというと、到底選手が目分の費用を自分の所属する団体、学校では負担し切れない、そういう実情にありますので、各県はなかなか容易ならん負担をしてあの選手を送つておる実情であります。これまでしてやらなければならないかと思うほどのものでありますが、併し国体がやられる以上は、恐らくこれはなかなかこの補助というものはとめるわけに行かないと思うのですが、スポーツの奨励という問題と、この財政面の調和点において、あの国体を今後とも毎年継続してお認めになるお考えであるか伺いたいと思います。
○国務大臣(大達茂雄君) 国体は御承知の通り年々盛んになつて参つております。戦後の非常に荒廃した心身に明朗闊達な精神を鼓吹する面から見ても、又国家の象徴である陛下がいつも御臨席になつていらつしやるのでありますからして、この国家の象徴である天皇を中心として、誠に親和の空気が醸されるという点から見て、これは誠に私どもとしては結構な催しであり、今後もこれを続けて参る。かように考えておりますが、経費といたしましては御指摘の通り相当地方に負担をかけておる。国といたしましては年々本経費の補助をいたしておりますが、本年度七百万円、地方においては非常な熱意を以て私どもがむしろ期待しておるより以上の経費を支出しておるのが現状であると思います。将来続けてやつて参りたいということを希望しておりますが、それにいたしましても、余り地方に多額の濫費をかけるということでありましては、これは永続させる意味から申しましても、これが余りにお祭り騒ぎになるということでも面白くないと思いますので、競技種目を適当に整理をするとか、こういう点について国体の協会がありますが、その方面とも、地元とも相談いたしまして、余り非常な経費の負担にならんようにということを折角考えておりますが、国体そのものは大変いろんな面においていい、殊に今日のような社会情勢におきまして誠にいい効果を挙げておると思いますが、これは是非続けて参りたい。ただできるだけ経費を余り地方にかけないようにしてもらいたい、かように考えております。
○伊能芳雄君 私も国体そのものには毛頭反対のものではありませんが、今申上げますように、普通の場合において各府県恐らく数百万円の旅費を出しておるということを頭に置かれまして、今後の運営に当らせるように御指導願いたいと思います。
 次に先ほど地方団体の補助金の問題について触れましたが、この地方団体の会計経理につきまして、自主性という陰に隠れてかなり放漫なものがあるということを認めざるを得ないのであります。この点から地方自治体が多少住民の信頼を失つておるということも事実であると思います。これは一つの会計検査の制度の不十分な点があると思う。これは行政管理庁の長官としてお聞きを願い、お答えを願いたいと思うのでありますが、会計検査院の及ぶ範囲は国費の補助の行つた限度にあることは当然であり、又建設省、大蔵省等が検査をやる場合でもその限度にしか及ばない。地方監察局というものも大体その限度にある。地方費のものは大体監査委員というようなあれの監査になつておりますが、これ又極めて無力であるというのが実情であります。私は一昨年岡野現通産相、当時の自治庁長官と同行いたしまして知事を代表いたしまし、イギリスの地方行政をかなり精細に調査、研究して参つたのでありますが、その中で地方庁の会計監査に対してあの民主主義の進んだイギリスが非常に厳格な会計監査をやつているということを発見して、得るところ少からざるものがあつたと思うのであります。四通りの監査をやつております。
 先ず内部監査におきましては、日本の出納吏というよりはもつと権限の広い、その内容にまで立入つた会計の検査を常時やつておるのであります。これが内部監査。次には、カウンシラー、議員とは少し性質が違いますが、一応日本の議員と考えて、その議員の監査がときどきある。三番目には、民間の優秀な会計士を雇入れて、年に一回ずつ会計の経理の検査をして、上級内務省に報告しなければならん。第四番目には、これが又相当思い切つたことをやつておりますが、日本の会計検査官に大体相当するものでありますが、多少内容的に違う点もありますが、つまり非常に独立性のある身分保障されたものであり、会計検査に際しましては関係者を召喚する権限も与えられておる。これが一年に一回ずつ廻つて来まして、あらかじめ日時、場所を公示して、納税者は何人といえどもこれに入つて傍聴できるばかりでなく、自由に質問ができる、こういう制度ができておる。こんなふうでありますから、非常に住民の自治体に対する信頼度が高いという事実を見たのであります。ただ私はこの間に自治体をこういうように扱つては自主性を害するという多少非難はないかと質問しましたところが、納税者を保護することにおいて何の民主主義に反することがあるか、納税者を保護することこそ民主主義の基本ではないかと言われまして、英国のあの議会制度も、そうして又あの民主主義も納税者の保護から発達して来たことを思いまして赤面した次第でありますが、私も今日の日本の地方自治体の会計経理につきまして、もう少し突つ込んだ会計検査を納税者保護のために行うべきである、こう信ずるものであります。この点日本においては余りにも納税者の保護が閑却されてはいないか、会計監査を厳密にやる、そうしてその報告を或る程度まで納税者に、即ち住民に知らせるというような方法を講じたならば、国と言わず、地方自治体と言わず、納税者から、即ち国民から遍かに大きな信頼を受けるに至るだろうということを固く信ずるものであります。どうかこれらの点につきまして、行政管理庁におきましては十分なる御検討を遂げられ、会計監査をもつともつと厳重にすることによつて納税者を保護し、国、地方自治体の信頼を高める努力を希望したいのありますが、この点につきまして行政管理庁長官の御意見を伺いたいと思います。
○国務大臣(塚田十一郎君) 国におきましても同じような問題が実はあります。私が行管の長官といたしまして行政監察というものの仕事をお引受けしております立場上、国の状態を最近いろいろに検討いたしております。いろいろ監察の手で以て監察いたして見まして、相当これは又厳重にしなければならないということを考えておるわけでありますが、御指摘のように同じ考え方は確かに地方団体にもあると思います。ただ地方団体が自治体であるという考え方からいたしまして、国の行政監査というようなもので処置をするというわけには恐らく行かないだろうという考え方から、従つて只今いろいろ御意見を承わりましたような方法を考えまして、自治体自体に国と同じような監察の強化をする機構というものを考えて、しつかりとこれを取締つて行きたい。勿論国の行政監察におきましても、自治体に対しましては会計検査院と同じように、国から補助金、負担金などの行つて曲る範囲においては監査をいたしておるのであります。殊に本年度は災害地には災害復旧費の関係を監察いたしまして、その面においても実に紊乱目に余るものがあるというふうに考えて、痛感しておる面が多多あるのでありまするので、今回の地方制度の改正と併せて十分その点検討を加えたいと考えております。
○伊能芳雄君 時間がたつてしまつて、まだ実は質問したい点がありますが、ちよつと時間をお借りして建設大臣に、この前の国会におきましてあの高額な、高率な災害復旧の補助を議決した場合、工事監督を厳重にすべきであるという決議を参議院でいたしております。これに対して、どういう処置をとられたか。私にはまだこれに対しまして多少の腹案もあるのでありますが、それを申上げる時間もありませんので、何かの機会に私の意見を申上げたいと思います。私はこれを以ちまして、質疑を打切ります。
○国務大臣(戸塚九一郎君) お答え申上げまするが、前議会で御決議を頂きまして、誠に御趣旨は御尤もに存じておるのであります。災害復旧の従来のやり方は、机上査定というのでやつておりまして、自然ルーズになるというのがあつたのではないかという点も懸念されます。今回は非常に件数も多くなつておりますけれども、できるだけ全部実地の査定をいたしたい、かように存じまして、目下全力を挙げて査定を実行いたしておるのであります。只今までのところ、約六割程度まで……、全部実地ではありませんけれども、査定を終つておるような状況であります。なお成るべくこの年内に全部の査定を終了したいという意気込みで、只今実行をいたしておるのであります。なお御趣旨もありますし、中間の検査とか、或いは竣工の検査というようなことにも、十分手を尽しまして、万遺憾なきを期して参りたい、かように考えております。
○委員長(青木一男君) 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時十二分散会