第019回国会 本会議 第29号
昭和二十九年四月五日(月曜日)
   午前十一時十九分開議
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 議事日程 第二十九号
  昭和二十九年四月五日
   午前十時開議
 第一 原子力国際管理並びに原子兵器禁止に関する決議案(八木秀次君外二十六名発議)(委員会審査省略要求事件)
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○副議長(重宗雄三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
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○副議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。
 日程第一、原子力国際管理並びに原子兵器禁止に関する決議案(八木秀次君外二十六名発議)
 本案は発議者から、委員会審査省略の要求書が提出されております。発議者要求の通り、委員会の審査を省略し、直ちに本案の審議に入ることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。よつて本案を議題といたします。これより発議者に対し、趣旨説明の発言を許します。八木秀次君。
   〔八木秀次君登壇、拍手〕
○八木秀次君 先ず初めに決議案を朗読いたします。
   原子力国際管理並びに原子兵器禁止に関する決議
  本院は、原子力の有効な国際管理の確立、原子兵器の禁止並びに原子兵器の実験による被害防止を実現し、その人類福祉増進のための平和的利用を達成する如く国際連合が速やかに適切な措置をとることを要請する。
  右決議する。
   〔拍手起る〕
 以上であります。続いて提案の趣旨を申述べます。
 戦争におきまして毒ガス又は細菌を使いますことは、非戦闘員にまで惨害を与えるところの非人道的戦法として国際的に禁止されておるのであります。ところが先の第二次世界大戦におきましては、大小多数の都市に焼夷弾を雨と降らせて焼打ちを行い、又絨毯爆撃というような大爆撃をやりまして、数十万の非戦闘員、市民を殺傷することが行われました。殊に我が国の広島、長崎には恐るべき原子爆弾が投下されまして、歴史上実に空前の無慙な殺戮が行われたのであります。
 戦後、連合国を代表して我が国に来られましてキーナン主席検事は、戦勝国が敗戦国民を懲罰するという態度をとらず、文明の名において裁判するのだという立派なことを宣言されました。然るに原子爆弾を用いてやつた大量虐殺が文明の名において裁かれたことを未だ聞いておりません。(拍手)我が国は、世界でただ一つの原爆を体験した国であります。今日世界中の平和な生活を求めている各国民は、原爆、水爆が盛んに使われるような大戦争の起ることを恐れて戦々兢々としているのであります。現在原子爆弾を製造する能力を持つところの二、三の大国が、原子兵器を使わないと決意しますなら、世界中の幾十億の人間の心の上に現に強くのしかかつているところの不安と圧迫感とが取除かれることは極めて明瞭であります。(拍手)
 先頃、日本の漁船が原爆実験によつてできました放射性の灰を浴びまして、誠に残酷な目に会つておりますことは痛恨の極みであります。平和にその生業に従事しておりました何の罪もとがもない人々が恐ろしい害を受けまして、その家族や周囲の人たちはもとより、国内の諸方面に大損害を与え、深い恐怖に陥らしめておるのであります。これは憤慨に値することでありますが、単に憤慨するだけで済まされることではありません。すでに国際的に禁止されておりますところの毒ガスに比べまして、放射性のガス、霧、煙というものは更に恐るべきものでありまして毒ガス以上のものであります。高く上空へ吹き上げられましたこの恐るべき放射性の物質は、上空の強風に運ばれて地球の周りを廻るのであります。伝えられるところによれば、先日の実験よりも遙かに強力な水素爆弾の実験が近々行われるとのことであります。広島、長崎に使われました原子爆弾の数百倍、数千倍強い爆発力を持つている、その上に、更にビキニ実験の灰のように呪うべき放射性物質を多量に遠方まで飛散させるような原子兵器を使用するのは、まさに文明の破壊であり、(拍手)人間がみずから人類の破滅を企てるものと申さなければなりません。
 他方におきまして、原子力はこれを平和的に利用すれば、人類に多大の幸福をもたらし得ることがわかつておるのであります。そこで我々は、原子力が有効に国際管理の下に置かれて、もつぱら平和的利用のため国際的協力が行われることを希望するのであります。そうして原子兵器は、毒ガス、細菌ガスと同様に、その使用が厳禁されるようになることを望むのであります。原子力の国際管理と原子兵器の使用禁止とを促進実現し得るものは、国際連合でなければならんと考えます。我々は、今この決議を以て世界の輿論を喚起し、国際連合に向つて強く日本国民の要望を表明し、特に原爆製造力を持つている強大国の考慮を期待するのであります。
 正義と人道に立脚しましてこの我らの切実な要請を表明しますことは、皆さんの全面的御賛同を得られますことと固く信ずるものであります。(拍手)
○副議長(重宗雄三君) 本案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。團伊能君。
   〔團伊能君登壇、拍手〕
○團伊能君 私は自由党を代表いたしまして、只今提案されました原子力国際管理、原子兵器禁止の決議案に賛成するものであります。
 原子エネルギーの研究が、仮説の時代から今日実在の力として存在するに至りましたことは、只今提案者から縷々御説明があつた通りであります。この厖大な破壊力から見ても、人類史を変換せしめるに足る重大な問題であることは皆さん御承知の通りであります。殊に最近の実験におきまして示されましたように、その破壊力が太陽の熱に等しいものを生み、又UPニュースが伝えるところによりますると、太平洋において行われましたこの実験の結果は、米大陸を横断し、大西洋岸のボストンの工科大学の実験室においてその放射能が発見されたという事実があり、その他世界の諸方においてこの影響の事実が発見されております。これから考えると、この影響は、地球の表面を覆う非常に広大なる影響が現われていることが今日明らかになつたのでありまして、ますます全人類の深刻な思慮を促すものであります。
 殊にこのたびの実験は、旧来知られておりましたものに比して非常に大きなものでありまして、恐らく水素爆弾と思われますが、この力は米国側の発表によつて見ましても、広島に投下された原子爆弾の数百倍に及ぶということであります。この原子力の破壊力の研究は、ますます進められ、ますます強大となることは、すでに確認されているところであります。
 この原子力の出現に至りまして旧来の戦争におきます武器の観念は全く適用できなくなつたわけでありまして、もはやこの力は地球の一部を破壊するものとさえ考えられるのであります。で、今日も兵器の発達には、各国がその力を注いでいるところでありますが、常に新兵器が現われましたとき、国際法、国際道徳は、兵器に先を越されまして、それが使用されたあとから、これに対する規正の方法が考えられているのであります。先ほど提案者から御説明になりましたが、毒ガスについては、すでに一九〇年頃から、その災害についていろいろ論ぜられ、へーグ宣言のごときがありましたが、事実第一回欧州大戦におきまして非常な多量殺戮が行われた結果、二十四年にジュネーブ議定書となりまして初めてその使用が規正されているのであります。今日、先ほどの御説明にありましたように、航空機から投下される盲爆、長距離砲における無防備都市の破壊等種々な問題が、なお微妙な国際関係の上におきまして、この規正方法が決定されないままに等閑に付されていることは甚だ遺憾とするところであります。
 我々は今日この原子力が、真に完全な国際立法が行われ、その管理が、何人にも幸福であるように実現されてこそ、今日の進歩があり、今日の哲学があると考えるのであります。勿論私はすべての点において、この原子力の出現を否定的、悲劇的な観測の上にのみ立つものではありません。これが平和的利用に応用されるならば、又非常に我々人類の進歩を早めるものであることは言を待たないのであります。併しこのたび三月一日のビキニ環礁におきます実験に限定して見ましても、実際上この日本漁船第五福龍丸の船員の被害、その他近接地区におけるいろいろな影響、漁獲の被害等におきまして、我々はこれに規正さるべき国際的処置がなお不十分なるものと考えます。例えば国連憲章八十二条による信託統治区域の戦略地域の規定、或いは各国軍艦が公海において実弾射撃をするときの立入禁止区域等の法律の規約を以て、この爆弾の実験に適用することにつきましては多大の疑惑を有するものであります。これらの点におきまして、我々は非常に力強く政府におかれては国連及び軍縮委員会に提案されて、若し国連においてその非加盟国に発言権がない場合におきましても、日本は、その過去の歴史に鑑みましても、十分なる理由と権利を有するものと考えますので、この国連委員会におきまして進んで発言を求め、これらにつきまして将来国際管理の上に、又これらの平和的な処理の上に、政府として強き態度を以て処理せられんことを切に希望するものでありまする
 これを以ちまして私の賛成演説といたします。(拍手)
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○副議長(重宗雄三君) 奥むめお君。
   〔奥むめお君登壇、拍手〕
○奥むめお君 只今説明されました原子力を人類福祉のために平和的利用に役立たせるように、その有効な国際管理の確立と原子兵器の絶対禁止を参議院の決議として国際連合に要請することに対し、緑風会は双手を挙げて賛成いたすものであります。(拍手)
 原子兵器を禁止せよということは、今や世界の良心の叫びでございます。世界で最初の原爆を受けて、数十万の生命を奪われたばかりでなく、生々しい原爆の傷をその肉体に受けて、悲しくも生きて病んでおります多数の同胞を持つております我々日本の国民が、原爆競争の鎬を削る米ソ両陣営の真只中におりましてこれを叫びますのは、全くこれは血のにじむ、命をかけた悲願であるのでございます。(拍手)政府におきましては、この立場から強い発言と交渉をしてもらわなければならないと思うのでございます。(「さよう、さよう」と呼ぶ者あり)
 原子力を平和のために役立たせるならば、病気をなおすことができ、生活を豊かにする動力源ともなると聞くのに、これはまだ私たちのものとなりませんのに、三月一日の太平洋の南で行われました原爆実験の結果は、当事者のアメリカでさえも、その予想外の威力に驚いたというのでございます。
 最近の新聞報道は、ソ連には、もつと強力な破壊力を持つところの窒素爆弾の作成にも成功したらしいと伝えられます。その真偽のほどはともかく、今後ますますそれ以上に惨害をもたらすものが次々と製造されるに違いないことは明らかでございます。強力な原子爆弾の保有によつてのみ平和は確保されると考えるのは、これは驚くべき錯覚であると私は考えます。(拍手)製造過程の実験においてさえも、大なる被害が見えざる、知れざる所で、どんなに多くの無辜の民を大量に殺戮しておるかわからない。又多くの人々が不安の底に投げ込まれておるということは、現に我々の周囲を見ても明らかなのでございます。遠く危険区域外にいた我が漁船さえも、持つて帰つたまぐろが、ビキニの死の灰をかぶつておつたために、土の中に埋められたり海の遥かあなたに投げ捨てられた。而もその漁師たちは、放射能のために生命が危ぶまれまして治療医学の実験台上で、今、全国民の深刻な祈りと注視の的になつているのでございます。次々と帰国する遠洋漁業の船に、原子反応がありはしないか、それから持つて来る魚が大丈夫か、こういう不安は海に囲まれた日本の港々で大変な問題になつているのでございます。まぐろを一番多く迎えております三浦三崎の港の町は、今や死の町と化して、町民は毎日、海岸でビラを撒いて訴え、そうして自分たちの生計の途を失うことを歎いているのでございます。風の便りに灰が舞い落ちても、ビキニの灰ではないかと恐れ、広い太平洋のすべての魚にも不安を抱いて食べることさえも心配だというこの態度は、それが一概に非科学的なものだと非難しきれないほど、科学の極を行く原爆の被害というものは人智をこえるものがあると私には考えられる。日本のように四方に海を持つて、栄養として蛋白源をますますこれから魚によりたいと、一生懸命に政府も力を尽して、国民も魚をもつと食べなければならないと考えているときに、牛乳や肉や卵、それらの加工品をまだ十分に食べられない今日の日本といたしまして、食べ慣れたこの魚が心配で不安で食べられない。一体日本の栄養問題はどうなるか。これは重大な国民栄養の問題ともなります。又この魚に海のあなたの不安を抱かせた原子爆弾は、今や世界の不安となりまして、日本から輸出するまぐろ罐詰類の先行き不安が伝えられていますのは、又これは日本の水産業全体に大きな問題を投げかけているのでございます。今後危険水域をもつと拡げて実験するんだ。或いは又秘密保持の必要もあるらしく、実験後も長く放射能の危険が残る虞れもあるらしくて、期間を長く設定しようということが伝えられておりますが、これではますます漁獲の領域と期間を狭めることになり、それによつて立つているところの漁民乃至水産関係業者の将来の問題は、何としてもこれは日本の国家の重大問題だと言わなければならんと思うのであります。人智の限りを尽して原子力実験の被害を防止すべきは当然でございますが、それ以上に、原子力兵器の実験を禁止することさえも、私は人道の名においてこれを要求したいのでございます。(拍手)
 一日も早くこの願いが国際連合によつて取上げられまして、原子力が人類の平和と幸福のためにのみ用いられることを祈つてやまないものでございます。
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○副議長(重宗雄三君) 佐多忠隆君。
   〔佐多忠隆君登壇、拍手〕
○佐多忠隆君 ここに上程されました原子力の国際管理、原子兵器の禁止に関する決議案に対して、私は日本社会党を代表して賛成の意を表します。
 我々日本人が、人類として初めて広島において、又長崎において、二度も原爆による大量殺戮の憂き目をみたことは我々の絶対に忘れ得ないところであります。(拍手)この日本人がつい数日前に、又もや水爆の実験による災害を受け、全国に亘つて死の灰の恐怖に捲き込まれ、おののいております。原爆、水爆の非人道的惨害を身を以て経験をいたしました我々日本人こそは、原子兵器の禁止、原子力の平和的利用、それらの国際管理を率先し、力をこめて世界に呼びかけなければならぬ義務があると共に、権利のあることを痛感いたします。(拍手)本日ここに、政党政派を超えて日本国民挙げての声としてこの決議案が上程されたことに対して、私たちは双手を挙げて賛成をするものであります。(拍手)
 それにつけても、我々は先ず何よりも先に今度の水爆事件に対するアメリカ側の日本に対する陳謝、責任者の処罰を要求するものであります。(拍手)アメリカが信託統治協定によつて設定できるのはいわゆる閉鎖区域であります。公海の広い範囲に及び、長期に亘つていわゆる危険区域を設定することは明らかに国際法違反であります。(拍手)岡崎外務大臣は、この危険区域は国際慣習として海軍演習に倣つたものだと弁護をしておりますが、若しそれならば、十分な警戒措置と、著しく公海の自由を妨げない配慮がなされなければならないのに、それが何らなされておりません。国際法に違反する危険区域を設定し、而も水爆の爆発力の測定を誤まり、危険区域外にいた日本漁船漁夫に対して不慮の災害を与え、日本国民全体を死の灰の恐怖に陥れていることを思いますならば、この水爆実験の責任者の処罰とアメリカ当局の陳謝を要求するのは当然であります。(拍手)
 更に、我々は損害の補償の請求をいたします。今度の水爆実験による被災者の医療や家族の生活援護、船体の損傷回復等については勿論のこと、これに関連をして生じたその他の漁業者や魚屋の間接損害に対しても、十分の補償措置を先ず日本政府が講じ、それを速かにアメリカ政府に要求しなければなりません。而も、それはアメリカの恩恵に縋る態度ではなくして、日本側の当然の権利として提出すべきものであります。(拍手)これらの点について岡崎外務大臣は、どこの国の外務大臣かわからないような言動を弄しております。我々はこの隷属外交を徹底的に糾弾をいたします。(拍手)
 又、アメリカの責任ある当局者が、日本人はスパイのために実験区域に来たと考えられないことはないとか、漁夫の受けた負傷は大したものでないのに誇大に報告されているとか、断片的な談話から被災船体は危険区域内にいたとか、悪意に満ちた言明を公然としている態度に対しましては、我々は痛憤を感ぜざるを得ないのであります。(拍手)そこで私たちは、将来再びかかる災害が起らんような保証をアメリカに要求をいたします。それには、先ず国際法に違反して設けられた南太平洋における危険区域の撤廃を要求いたします。(拍手)太平洋はアメリカの湖ではありません。それは歴とした公海であります。而も我が日本が最も大きな利害関係を持つ海であります。この太平洋において、広汎な公海を一国が勝手に、而も戦争の演習のために占有することは絶対に許せません。太平洋はその名のごとく平和の海でなければなりません。(「その通り」と呼ぶ者あり)危険区域の撤廃は、同時に兵器としての原爆や水爆の実験そのものの禁止を必要といたします。今回のビキニ実験によれば、水爆の爆発力は、科学者たちの予想の数倍に及び、実験はもはや実験の域を越え、一瞬にして万物を吹き飛ばし、その灰は想像も及ばないくらい広範囲に降り注ぎ、放射能を撒き散らし、とても手に負えないものになりつつあります。我々はインドのネール首相やインドネシアのサストロアミジヨヨ首相と共に、兵器としての原爆、水爆の実験そのものを中止するように、アメリカに対してもソ連に対しても強く要求をいたします。ここに上程をいたされました決議案が、この点について何ら触れておらないのは誠に遺憾に堪えません。
 兵器としての原爆や水爆の威力は測り知るべからざるものがあります。ソ連には窒素爆弾すら発明されたと昨今は報ぜられております。今や、アメリカやソ連等の大国の間に一たび戦争が起るならば、直ちに原子兵器が飛び出し、人類の大量殺戮と、あらゆる都市の野蛮な破壊が行われ、人類と文明の破滅がもたらされることは火を見るよりも明らかであります。我々がかかる事態を避けようとするならば、原子兵器の使用と製造を禁止し、その貯蔵を廃棄することを保有国に要求するのは当然でありましよう。それは同時にその半面においてこの原子力の平和的利用を促進することであります。そのためには原子力に関する秘密を公開いたし、研究の国際的交流を推し進め、ウラニウムその他の原子物質を国際的に管理をし、世界の原子力専門家を動員しなければなりません。国際管理が必要になるゆえんがここにあります。これによつて工業や農業や、運輸の飛躍的進歩、医薬の発展、多くの分野に亘る技術の完成、科学の革命的展開がもたらされるでありましよう。原子力は、人類殺戮、文明破滅の武器から、人類の福祉、文化の繁栄の器具に転換するでありましよう。
 我々は原子兵器の禁止、原子力の平和的利用、その国際管理が、全般的な軍備縮小、軍備の撤廃に推し進められ、非武装日本がその先頭に立つてイニシアチーヴをとりながら、戦争を廃止し、世界の恒久平和を達成することを誓つて、決議案に賛成をいたすものであります。
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○副議長(重宗雄三君) 鶴見祐輔君。
   〔鶴見祐輔君登壇、拍手〕
○鶴見祐輔君 私は改進党を代表いたしまして、本決議案に賛成の意を表するものであります。
 この決議案を前にして、我々日本国民は、厳粛な悲愴な感慨を持つものであります。それは戦前戦後の国会において提出されましたる幾百の決議案と異なる特異性を本決議案において我々は感得するからであります。これは八千七百万の日本国民の情熱によつて支えられる国民的の要望でありまして、我々はただ一片の決議案としてこれを終らしたくない。これを契機として世界の輿論が結集されて、本決議案に提唱されるような時代がこの世界において到来せんことを思う日本民族の悲願の現われであります。
 今日におきましては、本決議案は、一九二六年のバルツク決議案が国連に提出されたるときとは、根本的にその事情を異にしておると私は思うのであります。即ち、今や人類は、この原子兵器の発達の結果、平和か死かの二者択一の関頭に立つておるのでありますから、我々は初めて原子兵器によつて非人道的な惨害を受けたる日本民族として、権威を以て世界の良心に呼び掛けることができると思うのでありまして、これによつて初めて広島と長崎において非業の死を遂げたる幾十万の同胞が空しき死でなかつたということを立証できるからであると思うのであります。(拍手)
 殊にこの水素爆弾の実験によりまして、この兵器の使用が全世界の姿を変えたことは、今日アメリカ自身において周章狼狽の状態を呈しておるのでも明らかでありまして、従来の民間防空施設が殆んど画餅に帰せんとする状態を以ても明白であります。もはやこの原子兵器の禁止ということは、外交取引を許さないほど厳粛なる問題となつておるのであります。
 今、日本がこれを提案するに当りましては、国際連合の一員でもなく、戦争によつて兵力と財力を失つたる微力なる国ではありまするが、併しながら、一見不可能と思われるようなこの決議案も、私は昨年インドに招かれまして、聖者ガンジーが、あの老いて而して貧しき人が、その薄身の誠実とその非凡の政治力とを以て、一見不可能と見えましたインドの独立を達成し、四億の民を救いましたる姿を見て、人間の誠実によつて支えられるところの事業は、必ず達成が可能であると信ずるものであります。私は、この決議案によつて世界の輿論が結集される機縁たらんことを祈るものでございまする。殊に本決議案においては、禁止という消極的な面のみならず、進んでこれを世界の人類の幸福達成のために利用せんとする建設的な面を持つておるのであります。
 曾つて只今から二十一年前にアメリカにおきましてハワード・スコットと申す人がテクノクラシーの議論を唱道したときにおいては、原子力には及びもつかないような水力、電力、火力ですらも、アメリカの機械力を動員して、アメリカ人の必要なる物資だけを生産して、徒らなる物価組織と賃金組織による競争をいたさないならば、アメリカ人は一日二時間の労働で、一年の収入は二万ドルを確保することができるという細かい数字を発表して、米国に大きな刺激を与えたのでありますが、それには当時の社会制度を根本的に改革する必要があるという理由で、アメリカの世論の排撃をこうむつてこの案は葬られましたけれども、若しこの原子力が人間の殺戮のために使用されないならば、人類の長い間の夢であつた筋肉労働から人類を解放しで、より高尚なるところの文化のために生存できるような時代を作ることができるはずであるのに、これを徒らなる人類の全滅のために使おうというようなことを考えるとき、人類の知性に対する叛逆であると私は思うのであります。(拍手)故に私は、この原子力を高尚なる目的のために使うことができないというならば、人間が誰にも相談しないで自分だけが万物の霊長であると一人ぎめにしたその結論自身が、謙虚なる態度を以て反省されなければならないと思うのでありまする。若し我々が、かくのごとき高尚なる発明を人類殺戮のために使わなければならないということであるならば、かくのごとき社会制度に対して、私は深い反省をすら強要されていると思うのであります。(拍手)私はこの原子力が長期且つ永続的な世界的運動の点火点となつて、との被害を受けた日本民族からこれが全世界に呼びかけられる一つの機縁となるために、本決議案が、満場一致、本議場において可決せられ衷心より祈るものであります。(拍手)
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○副議長(重宗雄三君) 大山郁夫君。
   〔大山郁夫君登壇、拍手〕
○大山郁夫君 議長並びに議場の皆さん、私は無所属クラブからここに送られて参りまして、我々の審議に委ねられた決議案に対する賛成意見を述べようとしているものであります。
 只今参議院に議席を持つておられる各政党政派の代表者が、皆あの決議案に賛成された。あの決議案に示されていること、即ち原子兵器の禁止並びに原子力の平和的利用ということを出発点として、原子力というものを国際管理に委ねようとしているこの提案というものが、如何に日本の国民の大多数者の意見を反映しているものであるかということを証明しているものと思うのであります。そうして多くの政党政派の代表たちが、この決議案に対して述べられたことには私は皆賛成しております。すべての論点が言い尽されたようでありますが、併し私はこの決議案は、如何に今日の日本の国民が原爆の問題、水爆の問題に関して持つているその意思というものを、非常にはつきりと代表したものであるかという点に、一言だけ触れさせて頂きたいと思うのであります。私たちは多年平和運動において大衆に接している。殊にビキニのあの水爆の実験がありましてからこのかた、殆んど日々のように各種の大衆と接してこの大衆の意思をしつかりと知ることができたのでありますが、今日大衆は、平和問題に対してさまざまの要求を掲げているが、それらのさまざまの要求のうちにおいて殊に二つの要求が非常に顕著に目立つているということを私は見ます。その一つの要求というのは何であるかと言えば、国際間の紛争というものは、戦争によつて解決するのではなくて、平和的な話合いによつて解決すべきであるという、こういう考えに基いた要求であります。他の一つの要求は、これはやはりあの原子兵器の禁止ということ、即ち原爆、水爆、細菌爆弾であるとかナパーム弾といつたような、こういう非常に悪質な、非人道的な大量殺人兵器というものの使用を禁止しなければならないというこういう要求、この二つの要求が大きな響きを以て叫ばれているのでありますが、これらの要求が、いわゆる世界平和運動を指導している先覚者たちの頭の中から割出されたのではなくて、そういうことではなくて諸国民の実験の中から生み出された、殊に第一次世界大戦、格段の、第二次世界大戦に捲き込まれた諸国民の非常に悲痛な経験の中から生まれて来た要求であります。殊に国際紛争というものは、これは話合いによつて解決されなければならないという原則が打出されたことに対しては、お隣りの朝鮮の民衆が非常に大きな貢献をした。一九五〇年の六月から七月にかけてあの国連軍の名を帯びた侵略軍が朝鮮へ行き、そうして朝鮮の民衆をもう一週間、二週間のうちに屈伏せしめるというような意気込を以て、あの朝鮮戦争は開始せられた。その後無数の朝鮮の民衆が殺戮されてそうして朝鮮の山河は鮮血に彩られた。併し朝鮮の民策は屈伏しなかつたのであります。三年間の英雄的な闘争によつて彼らは朝鮮というものは決して亡ぼされるものではないということを世界に教えた。即ち今日のような世界情勢の下において、一体民族の独立ということに目ざめて闘つているような国民というものは、世界の最大の帝国主義国が用い得るあらゆる武力と軍事力と兵器を以てしても、これを屈伏せしめることができないということを朝鮮の民衆が教えたのであります。それであのブダペストの世界平和協議会の総会はこの問題をとり上げて、あの平和を愛する世界の大衆の要求として掲げた。それから又原子兵器の禁止ということに関係しては、世界において唯一の原爆の犠牲者であるところの日本国民の経験から割出されて、丁度五年前のあの世界平和協議会のイニシアチーブの下に、ストックホルムのアッピールが出されました。将来の戦争においてこの大量殺戮兵器というものを用いることを禁止しようという案が出されてから、全世界がこれに呼応している、今日世界の要求となつている二つの要求でありますが、併しあのビキニの水爆の実験がありましてからこのかた、この二つの要求が日本国民の頭の中には一つの要求になつて、つまり合体して一つのものとなつて現われるような傾向が、今まざまざと現われているのであります。即ちあの水爆というものの破壊力の如何に大きいかということは、ほかの諸君が十分に申し述べた。私たちが読んだところによると、今日の水爆の破壊力というものは、広島、長崎で用いられた原爆の二千六百倍ほどもあるということを聞かされている。或いは又四発あれは日本の国土を粉砕する力を持つていると教えられた。最近アメリカから来た報道を見ると、それどころではない。原爆というものの破壊力というものは幾らでも増加することができるものであつて、今日の状態の下においても、二発の水爆があれば、日本の国土全体を粉砕することができるというようなことが言われておるので、非常に恐ろしい話がたくさん伝わつて来ておるのであります。
 これまで再軍備の議論がこの国会において闘わされた。そうして或る人たちは再軍備をすることによつていわゆる自衛隊を作ることによつて、日本の民族の生存と独立が守られるというようなことを言われておつたのでありますが、併し今日において、ただ四発或いは二発の水爆によつて、その大きな軍事機構を持つておる日本を、軍事機構を込めて日本全体が忽ち粉砕されるというようなことがはつきりされるようになつたなら、再軍備なんという問題は全然その姿を変えなければならない。あの再軍備が日本の独立を救うものであるというふうに考えておつた再軍備論者の見解というものが、如何に近視眼的であつたかということも、(拍手)あのビキニの一発の爆発によつて証明されたのであります。
 それから日本の国民は、さつきここでも盛んに叫ばれた国際法上の問題から、あのアメリカが水爆を実験するということ、そのことさえすらも禁止しなければならないということを主張するようになつて来ております。我々のあの公海の自由に関する観念の中には、水爆を使つてはいけないとか、原爆を使つてはいけないとかいうことが書かれておらないように思うけれども、併しながらそういうような観念ができたのは、まだ水爆、原爆以前であつたのでありますが、併しそういうような兇悪な武器は禁止されなければならないという精神は、すでに国際法上に認められておつた。ダムダム弾を使つてはならないとか、或いは毒ガスを使つてはならないとかいうようなことは、もう世界の国際人の常識となつておるので、この精神を拡張すれば、それ以上の大きな災害を全世界に与え、全世界に測るべからざる不安を与えるような水爆の使用どころか、水爆の実験をまでも、これを禁止しなければならないということを、日本の大衆はだんだんと要求するようになつて来ているのであります。(拍手)
 それからもう一つ、もつと重大なことは、我々は今大衆と共にこういうことを問題にしております。あの水爆の実験というようなことは、国際連合憲章の中にある信託統治の精神にすつかり違反しておるものである。(拍手)この見解から、大衆はこの問題を見ようとしております。あの国連憲章の第十二条に信託統治の規定がある。そうして信託統治の基本目的というのは、第七十六条、そこにはこういうことが書いてある。この信託統治というものは、信託統治区域の人民の社会的、経済的、政治的、それから教育上の進歩を促進するということを眼目としなければならない。住民の幸福、これが至上命令である。そうして又信託統治を行う国は、その信託統治区域の特殊事情とか、或いはその区域上の住民が明らかに示した願望によつてそういう住民がだんだんと自治を獲得し、独立を獲得することができるように、これを輔導し、これを助成しなければならないということも書いてある。又その次には、それどころではない。こういうことが書いてある。この信託統治というものは、これは例の性別とか或いは人種、言語、宗教、こういうような差別を超越して人道的に行わなければならないし、殊に各人の基本的の自由と基本的の権利を、これを保障する、尊重する、その精神の上から行われなければならないということが、輝かしい文字で書いてあるのだが、今度のあのアメリカの水爆の実験というものは、すべてこの信託統治の基本的目的というものをすつかり蹂躪しておるものであります。勿論ビキニは、戦略区域であろうが、戦略区域の場合でも、あの七十六条に書かれておるところの信託統治の基本的目的に背反してはならないということが明文を以て示されておるのであります。併しこの水爆実験のために、あのビキニの島民とか或いはマーシャル群島の島民が、どれほどのえらい損害を受けたか。日本の漁夫どころの騒ぎではないのでありますが、そうして一つの島さえも飛んだと言われておるが、こういうことを考えるときに、あの水爆の実験というものが、国際連合の信託統治の規定というものを脚下に蹂躙しておるということは極めて明白でありますが、こういう国際連合の憲章に対する違反ということが許されるならば、あの国際連合はもはや世界の平和を維持する機関となることはできません。……
○副議長(重宗雄三君) 大山君、時間が過ぎております。
○大山郁夫君(続) こういうようなことから、日本の国民は、ただ日本の……
○副議長(重宗雄三君) 大山君、時間を過ぎております。過ぎております。
○大山郁夫君(続) そういう考え方から、大衆はこの水爆実験の禁止を盛んに要求しております。この意思をこの決議案が極めてよく代表し反映しておるが故に、私は国民の名において、この決議案が満場一致で採択されることを希望し、且つ期待しておるということを申上げて、私の御挨拶を終る次第であります。(拍手)
○副議長(重宗雄三君) これにて討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。
 これより本決議案の採決をいたします。本決議案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○副議長(重宗雄三君) 総員起立と認めます。よつて本決議案は、全会一致を以て可決せられました。(拍手)
 只今の決議に対し、外務大臣より発言を求められました。岡崎外務大臣。
   〔国務大臣岡崎勝男君登壇、拍手〕
○国務大臣(岡崎勝男君) 只今採択されました御決議は、我が国として誠に当然且つ痛切なるものがあると考えられます。政府といたしましては、この決議の速かなる実現のため、あらゆる措置を講ずる決意であります。
 御承知の通り、本問題は国連を中心としてすでに数年に亘り関係国の間に討議されて来た案件であります。もとより簡単に実現されるべきものとは考えられません。政府としましては、従いまして長期に亘るとも、忍耐と努力を尽して、あらゆる機会を捉え、あらゆる国と連絡して、これが実現を図りたき所存であります。国会におかれましても、政府の今後の措置に対して十分なる支持と鞭撻を与えられんことを切望いたす次第であります。(拍手)
     ―――――・―――――
○小林亦治君 私はこの際、造船疑獄に関連する海運局員の自殺に関する緊急質問の動議を提出いたします。
○藤田進君 私は、只今の小林亦治君の動議に賛成いたします。
○副議長(重宗雄三君) 小林君の動議に御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。小林亦治君。
   〔小林亦治君登壇、拍手〕
○小林亦治君 日本社会党を代表しまして、運輸大臣、法務大臣並びに緒方副総理に対し御所見を伺いたいと存じますが、只今議事部からの御報告によりますと、緒方副総理は行方不明なんだそうであります。(「どうした」と呼ぶ者あり)速記録によつて次回の本会議において、この席上から明瞭に御答弁を願いたい。
 去る三月二十九日午後八時頃、丸の内の運輸省の五階と六階の間の窓から飛降り自殺を遂げたところの同省海運局課長補佐の雛田英夫氏は、当日あたかも東京地方検察庁に、いわゆる造船疑獄に関する重要参考人として喚問された直後の出来事だけに、一般の注目はもとより、各新聞も一斉にこのことを三面のトップに飾つたのであります。これに関するところの巷間の臆説は、同人は造船疑獄に関する極めて重要なる鍵を握つておつたために、同人に対する上層官僚の圧迫が加わり、その結果雛田某氏は自決を迫られたと伝えられておる。或いは気の小さい同人は、上司に対する司直の鉄鎖の加えらるるを忍びず、上司の犯罪についてやがて宣誓の上に証言をせしめらるる等の苦痛に堪えかねて相果つるに至つたとの風評さえ頻りでございます。いずれにしても、四十二歳という分別盛りのまじめな男が、主観的にのつぴきならん事情から死なねばならない窮地に追い込められたのかも知れませんが、ともかく非業の死を以て今日ごうごうたるところのこの造船疑獄を飾つたということは、真相を糺さんとするところの国民にとつて、誠に遺憾な出来事と申さなければなりません。造船疑獄は、計画造船の割当に関する贈収賄と、利子補給法案の通過を狙つた政治献金、この二つの組合せからでき上つておるのでありまするが、その原因は、一見党利私欲に走つたところの個個の政治家の偶発的なる堕落のようには見えるが、なおその根底には、官僚、資本家、保守政治家一団によるところの国家資金を食い物にせんとする本質的なる根深い魂胆が横たわつており、これが端しなくも今回暴露せられたものと考えておるのであります。(拍手)東京地方検察庁は、本年二月九日以降、連日に亘つて、昼夜兼行裡に疑獄捜査の焦点を運輸省関係に絞り上げて、一連の貧官汚吏と目さるる醜類を狙上にのぼせ、今日すでに壷井官房長に対する起訴が断行せられ、更に岡田海運局長ほか幾多の課長階級が喚問せられておるが、おおむね知らぬ存ぜぬで罷り通つておる。かかる徒輩から見ますれば、自殺をしたところの雛田氏は或いは泥中の蓮であつたかも知れません。ここに見えておるところの石井運輸大臣も、疑惑渦中の人物としては例外ではない。(笑声、拍手)誠に遺憾である。巷間の云うるところによれば、造船割当に関して百万円の金を収受したと伝えられておるが、御本人の大臣は、これを否定せられております。個人の刑事責任は、法律によるところの社会的責任であります。それは飽くまでも確定判決を待つて本人の進退が決せられ、それまでは何人も無罪の者として取扱わるることには、何人もこれは異論はありません。併しながら政治的責任は、全くこれと異なつております。殊に一国の重要ポストをあずかる者の政治道義の責任は、常に廉正、公平、清浄にして一点の曇りなきことが、その地位に対し、常に担保となり、何らの疑惑あるを許されないのであります。然るに判決がなければ責任はないという態度で以て、国家の要職に坐り入んで司直の疑惑を受け、国民の怨嗟を浴びてもなお情として恥じざることは、免がれて恥なき徒とか、盗人猛々しいと申すのほかございません。(拍手)時の官僚、時の支配階級のすでにかくのごとき状態は、往々にして左の暴力革命を刺激し、右翼のテロを誘発するところの最大の機縁になりやすいことは歴史の教えるところであります。
 そこで運輸大臣に伺いますが、雛田氏は犠牲を強いられて自決したと伝えらるるが、これらの真相について、大臣は如何なる調査をし、どのような報告をお受取りになつておるか。
 次に運輸省内は、今や疑獄のメッカの観を呈するに至つておる。(笑声)今後同省内の重要官僚に、どしどし召喚、逮捕或いは投獄という事態が発生するであろう。さようになつても、なお且つ国民のための国民の運輸行政をこれらの一連の醜類によつて担当して参る御決意かどうか。この点が第二点。
 最後に、先ほども申上げましたが、人格の御高潔であるはずの石井運輸大臣が、百万円収受という抜き差しならないところの疑惑を投げられておる。これに対して同大臣の名誉のためにも、本席上から国民に向つて、絶対にさような事実なしという御公言が頂けるかどうか。これを伺いたい。
 以上三点を運輸大臣にお尋ねしたい。
 次に犬養法務大臣に伺いたい。
 被疑者を取調べる場合、これは参考人も同様なんです。この場合に、親切丁寧を旨とし、あとう限り肉体的、精神的の圧迫を取調べられる者に感ぜしむるがごとき態度を以てしてはならんということは、法の精神でもあり、健全なる世界の司法慣習の要求するところであるが、調べられたばかりの当日、而も時間にしては十時間を出でず、その間に分別のある常識もある男が、飛降り自殺をしなければならなかつたということは、何かこの取調の間に、それらの事態を惹起せしめやすいような取調条件があつたかどうか。これについてどのような調査をし、如何なる御報告を受取つておるか。これが第一点。もう一つ、これは極く重要なんだ。今後各種疑獄において殆んど重要なる参考人が連日召喚せられ、連日取調べの対象になるに相違ない。かかる場合に、その重要なる参考人、重要なる被疑者、これらが自殺をするとか或いは逃亡する、逃亡の場合はこれは言うに及ばず、かような場合、重要証拠の散逸するところの証拠の保全について、この段階に臨んだ法務大臣として、如何なる対策を考えておるか、この点を明瞭にして頂きたい。
 最後に、緒方副総理にお尋ねする番でありますが、先ほども申しましたように、行方不明なんだ。万事この通りです。そこで、速記録によつて近い将来、あさつて本会議なら是非とも明後日、本壇上から御答弁を願いたい。吉田内閣は、我執が強く独善であり、世論輿論に鈍感であることにおいては、歴代稀に見る内閣として定評がある。殊に政治的責任においては、鈍感というよりも、むしろ横着なんだ。今回幸いにも、国民にとつて幸いにも、造船資本家と吉田内閣の腐れ縁というものはぱつと明るみに出た。閣僚中にすらも、なお数名の疑惑者があり、自由党内の重要人物にして、すでに逮捕せられた者又数名に及んでおります。内閣の率いるところの重要官僚にして投獄せられ、起訴を断行せられた者、これ又数名、今後幾人出るかわからない。かような場合に、内閣が一体政治責任を考えないのかどうか。一体、今後何十名の重要官僚が、何名の大臣が召喚せられたならば、責任をとるつもりか。或いは自殺者が、疑獄の過中にあるところの疑惑者が一体何名自殺したならば、責任を感ずるのか。吉田総理の神経痛ということは承わつておりますが、この辺で一つ吉田内閣の神経状態を国民に御発表願いたいと存じます。
 以上、私の質問を終ります。(拍手)
   〔国務大臣石井光次郎君登壇、拍手〕
○国務大臣(石井光次郎君) お答えいたします。
 第一に、巷間伝うるところによれば、雛田君の自殺は、犠牲を上司からと申しますか、どこからか犠牲を強いられたのではないかというお尋ねでございますが、これは私は聞いてびつくりいたしておるわけでございます。一体誰が、こういう場合に雛田君に対しまして犠牲を強いるなんということが考えられるでありましようか。私はそういう噂の出ておることも今日初めて承わるのであります。又役所の中において上司が、そういう立場にある雛田君に同情をして労わりこそすれ、それに対して犠牲を強いるなどということは想像だも及ばんことでございます。私は、断然そういうことはないと思つております。
 第二に、今のような黒雲の覆い被さつている運輸当局の中で、局課長でもいろいろ問題にされておる連中を、相変らずその連中によつて運輸行政を担当して行くかという問題でございます。問題になりました人、そうしてそれが司直の手によつて調べられまして、そうしてその人が、問題がはつきりいたしませんけれども、とにかく起訴されたという人たちにつきましては、順次、公正適正なる行動のとれる立派な人と思う人を求めまして、省内省外から人を得まして、順次、この補充をいたしております。順次と申しますのは、官房長と監督局長の二人のことを申したのであります。又それからその次の調整部長の後任については、目下慎重に相談を進めておる状態でございます。私どもは、運輸行政がどんなに重要であるかということの根本義を考えまして、そうしてそれには、仰せのごとく国民から信頼されるものでなければならんということも当然だと思います。併しあれやこれやと、ただ噂さされただけで、片端から人を変えて行くということは、これは私は適当な方法とは思わないのであります。慎重に考えまして、そうして立派な人事行政をちやんとやつて、そうして運輸の立派な行政をやつて行きたいと思つております。
 第三に、私自身の問題でございますが、利子補給、計画造船に関連いたしまして、石井光次郎は、何らやましいことはいたしておりません。百万円の声を揚げただけで、すぐ私に引つかけるのは、どういうわけで言えるのでありましようか。ただ言うたものは言うた、だけで、それが当然明らかになることは、余り時を要せずしてこれは明らかになると私は確信いたしております。
 それだけお答えをいたします。(拍手)
   〔国務大臣犬養健君登壇、拍手〕
○国務大臣(犬養健君) お答え申上げます。
 運輸省海運局海運調整部総務課長補佐の雛田英夫氏が御指摘のように不慮の死を遂げられたことは、深く哀悼に堪えません。その経過につきまして申上げ、且つ御質問に答えたいと存じます。
 総務課長補佐の雛田英夫氏につきましては、三月二十九日の昼頃約三十分余に亘りまして、詳しく申しますならば、零時二十分過ぎから五十分過ぎくらいに亘りまして、東京地方検察庁におきまして、前田検事が取調を行なつたのでございますが、雛田君自身は一つも容疑はないのでございます。この容疑につきましては、海運局海運調整部長の国安誠一の被疑事実でございまして、その被疑事実も、ここで申上げますならば、国安部長の会食、饗応でございますか、それについて雛田君が記憶があるかどうか、こういうことの尋ねをしたわけでございます。従つて金のことなどでも記憶があるかどうかの聴取をいたしたわけでありまして、言換えますならば、全く参考人として取調を行なつたものでございます。前田検事もそういうわけで、見ますと大変おとなしい内気な人のように見えますので、努めて気持を何と言いますか、圧迫するような感じを与えないようにしまして、煙草も奨めたそうですが、何だか沈んでいて、到頭煙草はのまなかつたそうでございます。そこで饗応の事実について聞きましたら、どうも場所や金円について、はつきりしない点がございますので、それじや今日はこれで、御苦労さんですと、又お出で願うかも知れませんが、それまでに店の名前と金額を何とかして思い出して頂きたい。こう言つてお返しをしたわけでございます。これは直接伺つたわけではございませんが、運輸省のかたの御報告を伺いますと、帰られて何となく落着かない顔をしておられたので、同僚が検察庁で調べられました内容を伺つて、それならば、君安心だ、余り気にしないがいいと言つて、むしろ激励したそうです。六時過ぎに、そんなに心配なら、弁護士のところへ行つて聞いてみたら気持が静まるんじやないかと言つて出て行かれて、七時過ぎに帰つて来られたそうです。そこで八時二、三分過ぎから五分過ぎの間に御指摘のように窓から飛び下りて非業の最期を遂げられたわけであります。誠にこの点はお気の毒、何とも言葉の尽しようがないのでありますが、状況を仔細に私も責任を以て調べましたところ、右ようのほんの参考人でございまして、而も問いました内容が、むずかしい問題でなく、会食関係の金円と店の名前についての記憶喚起でございますので、どうも只今までのところでは、圧迫したということはどうも思えないのでございます。併し御注意もありまして、参考人というものはよほど気を付けないと、人権蹂躪になりますので、これは誠にこういうことが今後繰返されては、私どもとしての責任でございますから、今後とも十分に参考人に対しては、名誉を重んじて極秘を守り、且つ待遇も丁寧にいたし、只今申上げたように煙草も奨めるとか、いろいろして気持の点でも尊重して行きたいと思います。それからこういう場合もございますので、証拠保全ということは、検察庁も専門でありまして非常に気を付けております。その詳細については、ちよつと公開の席では申上げにくいのでありますが、私もその点について下僚に詳しく問合せました。証拠保全については、先ずく私は責任を以てお答えができ得ると存じます。
 以上、お答え申上げます。(拍手)
○副議長(重宗雄三君) 緒方国務大臣の答弁は他日に留保されました。
 本日の議事日程は、これにて終了いたしました。次会の議事日程は、決定次第公報を以て御通知いたします。
 本日は、これにて散会いたします。
   午後零時四十二分散会
     ―――――・―――――
○本日の会議に付した事件
 一、日程第一 原子力国際管理並びに原子兵器禁止に関する決議案
 一、造船疑獄に関連する海運局員の自殺に関する緊急質問