第024回国会 本会議 第36号
昭和三十一年四月十六日(月曜日)
   午前十一時三分開議
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 議事日程 第三十六号
  昭和三十一年四月十六日
   午前十時開議
 第一 日本製鉄株式会社法廃止法
  の一部を改正する法律案(内閣
  提出)     (委員長報告)
 第二 公共企業体等労働関係法の
  一部を改正する法律案(内閣提
  出)      (委員長報告)
 第三 防衛庁設置法の一部を改正
  する法律案(内閣提出、衆議院
  送付)     (委員長報告)
 第四 自衛隊法の一部を改正する
  法律案(内閣提出、衆議院送付)
          (委員長報告)
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○議長(松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
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○議長(松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。
○亀田得治君 私はこの際、検察権並びに警察権の不当行使と人権侵害に関する緊急質問の動議を提出いたします。
○寺本広作君 私は、ただいまの亀田君の動議に賛成をいたします。
○議長(松野鶴平君) 亀田君の動議に御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よってこれより発言を許します。亀田得治君。
  〔亀田得治君登壇、拍手〕
○亀田得治君 私は、目下問題となっておる京都五番町の傷害致死事件、以下京都事件と言いますが、この事件を中心として、検察権、警察権の不当行使並びに人権侵害問題について鳩山総理以下に質問いたします。
 京都事件とは、御承知のごとく昨年四月十日夜、木下治、当時二十才なる者が、路上で傷害を受け、間もなく死亡したのであります。警察並びに検察当局は、本件の宋ほか三名、計四名の少年を犯人とにらみ、これを取り調べ、起訴し、京都地方裁判所において公判を続行してきたのであるが、今年四月四日、真犯人佐藤なる者が自首して出たので、今までの警察、検察の行動は、全く見当違いであったことが明らかになったのであります。検察、警察の首脳部はさっそく真相調査に着手されましたが、この際、その全貌について法務大臣及び大麻国務大臣より発表を希望するとともに、特に以下の五つの点につき、それぞれただしたいと思います。
 その第一点は、本件は結局四人の少年でなく、第五の人物が真犯人として出たのであるが、もし警察、検察当局の取調べが慎重であれば、もっと早く真相をつかめた事件のように思うが、法務大臣は大麻国務大臣はこの点どのように見ておられますか。
 質問の第二点は、本件については明らかに京都西陣警察署の拷問があったようであるが、この点に関し大麻国務大臣より左の三つの事項を明らかにしてもらいたい。一、四人の少年を取り調べた西陣署の警官の数及びその氏名、二、拷問の有無の調査に当り、四人の少年の言い分をどのように聞いてやっておるか、三、今日までのところ、結局拷問の有無につきどの程度明白になったか。
 質問の第三点は、本件に関連し、京都地方検察庁は、公判廷において村松証人らが検察側に不利な証言をしたので、村松を逮捕し、さらに西村を教唆で逮捕した点であります。真相を語った証人を偽証だとして逮捕するようでは、真実を知っておる人でも、今後裁判所に向ってはっきりものを言わなくなってしまうおそれがあります。この点につき法務大臣に対し、特に次の四つの事項をお尋ねしたい。一、村松証人らを逮捕した検察官の氏名、二、検察官は証人を逮捕し、公判廷の証言を翻させようとしたようであるが、その真相、三、法務当局は本件の調査に当り、逮捕された証人側の言い分をどの程度聞いておるか、四、法務当局は、本件は検察側の重大なミスと考えておるかどうか。
 次に第四点は、本件四人の少年の跡始末であります。四人の少年には他の罪名もくっついておるので、それらの点について引き続き追及する方針もあるやに聞くのでありますが、私は、はなはだ無情な仕打だと思うのであります。四人の少年は、今日まで無実の殺人犯人として長い間苦しんできたのであります。今日それが明白になりました。国家は、彼ら少年の傷ついた心の痛みを、あたたかくいやしてやる工夫をこそしなければならないのであります。私はこの意味で、ちっぽけな余罪にこだわらないで、そうして措置するのが正しいと思うのでありますが、法務大臣の見解を承わりたい。
 質問の第五点は、本件の責任について法務大臣及び大麻国務大臣にお聞きしたい。すなわち第一には、少年を拷問した西陣署の警察官及び証人を逮捕した検察官の処分をどのように考えておるか、第二には、責任はこれらの直接の関係者だけにとどめてよいかどうかという点であります。すなわち、当時の西陣署長、京都府警の最高責任者及び京都地方検察庁の検事正、これらの監督指導の責任をどう考えておるかという点であります。
 以上、法務大臣並びに大麻国務大臣に対する質問でありますが、最後に私は、鳩山総理にお尋ねをいたしたいと存じます。御承知の通り、日本国憲法は、人権の尊重を重く見、特に刑事手続関係の各種の規定をわざわざ明記しております。しかるに、現在でも警察の拷問等が跡を断たぬばかりでなく、逆行の傾向すら見えます。京都事件で世間が警察、検察に対し、疑惑の目を向けているそのときに、兵庫県の新世紀殺人事件の被疑者小林少年が四月十三日釈放されましたが、この事件についても、被疑者は警察における拷問の事実を訴えておるのであります。このような傾向を改めるために、私は鳩山総理に次の四点を一つ質問したいと思います。
 その第一点は、総理は検察権、警察権の不当行使を少くし、人権を擁護するためには、何が一番大切だとお考えでしょうか。個々の官吏を戒めて、彼らが自制するようにすることも必要でしょうが、最も大切なことは、時の政権担当者の心がまえだと私は思うのであります。政府並びに与党は、たとえば今国会においても民主主義に逆行する数々の悪法を出し、世論の非難をも顧みず、形式的多数をもってこれを押し切ろうとし、しかもそのためには、あるいは議長の交代を策し、あるいは慎重審議しようとする委員長の更迭をはかるようなことをしておりますが、結局このような態度が末端に私は影響を与えるのであると確信します。政府与党のこのようなやり方は、権力さえあれば何でもできる、こういうことを思っておる時代おくれの一部検察官、警察官の考えと同じであります。これは私はこういう意味で鳩山総理のお気持を聞きたい。ただ口先だけで人権擁護を説いても何にもなりません。政府の首脳みずからが反省して、民主主義に徹することが私は根本問題だと確信しておりまするが、鳩山総理の率直な御心境を伺いたいのであります。第二点は、今度のような重大な人権じゅうりんがあった場合には、鳩山総理は、検事総長、警察庁長官まで何らかの責任を負わせるようにすべきであると思います。もちろん責任のとり方にはいろいろあると思いますが、全然これらの人々を放置しておいてもよいということには私ならないと思いますが、いかがでしょう。
 それから第三点は、旧自由党の憲法改正草案要綱によると、憲法の刑事手続に関する規定の一部を刑事訴訟法に譲り、自白の効力並びに黙秘権行使の限界につき再検討する、こういうことが書かれておりますが、現在の憲法のもとにおいても、先ほど申し上げたように、検察権、警察権の不当行使が行われておるのであって、もし憲法の規定を改めて、その一部を削除したり、あるいはその一部を刑事訴訟法に持って行く、こういうふうなことをすれば、結局検察側の力のみがますます強大となり、人権じゅうりん事件が一そう起るということは私当然予見できる、私はそういう考え方を持つことは、はなはだ人権問題の立場から見て危険だと思っておりますが、この点につきまして、特に旧自由党から出ている憲法改正草案に関連して鳩山総理の見解をお聞きしたい。
 最後に、第四点として、今回の事件で真犯人が自首して出た動機、これは彼が映画「真昼の暗黒」を見て自責の念にかられたからであります。ところがこの映画については、それが裁判中の事件から題材をとった、こういうことで、そのことがいいか悪いか論議されておりますが、とにもかくにも、たくさんの警察官や検察官が国のお金を使って動き回っても、真相がつかめない。結局この映画がむしろ本件というものを明るみに出してくれているのです。それによって四人の少年の人権を守った。私はそういう意味では理屈は別に、最高裁の圧迫、妨害を排除してこの映画を作り上げ、結局はこの尊い人権を守ってくれたこの映画に対して、私は鳩山総理はどうお考えになるか。あなたの部下が人権を侵害をする。ところがあなたの関係者がこの映画の妨害をやった。この関係をあなたはどういうふうにお考えになるか、こういう意味において一つ第四番目にこの点の御見解をお聞きしたいと思います。
 なお、若干時間がありますから、答弁によりまして私の再質問をいたします。(拍手)
  〔国務大臣鳩山一郎君登壇、拍手〕
○国務大臣(鳩山一郎君) 亀田君の御質問にお答えをいたします。
 最高責任者についてお尋ねがございました。お尋ねの事件につきましては、法務省において係官を現地に派遣いたし、各般の調査をいたさせましたが、検察庁の責任の有無に関しましては、なお調査を要する点があります。さらにその点の調査を継続させていますから、その調査の結果を待って考慮いたしたいと思っております。
 なお、この際、政府みずからが民主主義に徹底することが必要じゃないかという御質問がございましたが、もとよりそうであります。政府みずからが民主主義に徹するということは、もとより必要なことと考えております。
 映画についてお話がありましたが、映画というものが、犯人にある種の影響を与えるということは考えられることでありますが、特定の映画の批評にわたるようなことは差し控えたいと考えます。
 なお、自由民主党の憲法改正草案に、刑事裁判手続の簡易化について再検討すると言われておるが、人権尊重の十分でない今日におきまして、かかる改正は不当であるという御質問がございました。政府としては、現在憲法に規定する刑事裁判手続をどのように改正するかにつきましては、具体的な腹案を持っているわけではありません。この点については、必要があれば憲法調査会でもって慎重に検討が加えられてほしいと思っております。(拍手)
  〔国務大臣大麻唯男君登壇、拍手〕
○国務大臣(大麻唯男君) お答え申上げます。
 犯罪の捜査に当りまして、警察といたしましては慎重な配慮と綿密な注意のもとに、何よりも人権を尊重することに努め、少しでも人権を侵害するようなことがあってはならぬと、かように考えております。そうしてもっと合理的な方法をもって、捜査の効率を合理的に発揮することに努めなければならぬと考えております。
 ただしかしながら、御指摘になりましたような京都事件につきまして、あるいはその方針にそぐわぬような点があったのではないかと懸念されますので、ただいま厳重に取調べ中でございます。事態が明らかになりましたならば、それに応じた処置を十分にいたしたいと考えておる次第でございます。
 なお、今後におきましては、この種の不祥事件が絶対に起らぬように期しておる次第でございます。京都の事件につきまして、その詳細は、今厳重取調べ中でございまするので、判明次第に処置をいたすつもりでございます。
 これだけお答え申し上げます。(拍手)
  〔政府委員松原一彦君登壇、拍手〕
○政府委員(松原一彦君) 法務大臣が病気中でございまするので、かわってお答え申し上げます。
 お尋ねの事件につきましては、法務省におきましても、直ちに刑事局の横井刑事課長をば現地に派遣いたしまして、詳細に取調べをいたしまして、一応の報告を得ておりますが、実は非常に複雑でありまして、まだ最後の決定をいたすまでの資料を得ておりません。重ねてなお続けて調査中でございますことを最初に申し上げておきます。なお、このお尋ねの責任の検察官は、京都地検の森島検事でございます。
 証言をどう聞いたかということにつきまして、これが非常に複雑で、場所等に非常な違いがあり、現地についてなお詳細に調査いたしておりますから、このことを御承知を願っておきます。
 ミスと考えるかということにつきましては、私どもも深く反省いたしております。こういうことで世間に疑いを持たるることは、今後の影響も大きゅうございまするので、取り調べておりまするが、この点につきましても非常に複雑であります。この宋という少年が、これは朝鮮人でありまするが、これが非常な複雑な、現地に二度もぶつかっておりまするので、この点を詳細に調べて、いずれ委員会において調査に参りました者から御報告申し上げたいと思います。
 すべてを明らかにした上で、法務省は責任をとるつもりでおります。(拍手)
○議長(松野鶴平君) 亀田得治君。
  〔亀田得治君登壇、拍手〕
○亀田得治君 私から、きわめてお答えができやすいようにと思いまして、事柄を分けて、そうして質問したのですが、結局明快な答弁が得られません。いたし方なく再びお尋ねいたします。
 私は京都の竹中議員とともに、この事件が起りましてから、現地にも行き、調査をして参りました。関係の少年等にも会って参りました。私が非常に不満としておるのは、警察庁においては、直接人を派遣して、そうしてこれらの非常に気の毒な目にあった人、その人から直接事情を聞き取ろうとしない。これが一番の欠点、私はこまかいことは言いません、材料はいろいろありますが。そういう態度だから真相がつかめない。法務当局の方は若干、刑事課長を派遣してやっておりますが、まあこまかいことは委員会に譲ります。
 そこで私は総理に一つ、もう一度聞きたい。民主主義に徹する、このことは肯定されましたが、しかし今のままの態度で民主主義に徹していると言えますか。もし私の言ったことを肯定されるのであれば、あなたが今やっておられることは改めなければならぬと思う、いろいろな意味で……。改めなくてよろしいと、そういう確信でしょうかどうでしょうか、それを私はお聞きしたい。この一点だけ。
 それから大麻国務大臣には、はなはだこう、あいまい模糊な答弁ですが、私どもが短時間調べただけでも、拷問者の人間もわかってきている、ある程度。全部がわからぬからお尋ねしておる。たとえば権藤、岡本、広瀬、こういったような刑事は、もう明らかに少年をなぐったり、髪の毛を引っぱったり、腹を突いたり、うしろ手錠をかけたり、正座をさせて長時間やって、そうして、からだがくずれるとなぐったり、こういうことをやっておるのですよ。この少年だけじゃなく、たくさんある、時間がないから一々申し上げませんが。そういう明らかなことに対して、先ほどのような答弁ははなはだ不満だ。あなたは、私がわかっているようなことすら、まだわからないとおっしゃるのかどうか、はっきりここで言って下さい。もしそういう大臣であれば、大臣の値打ちがないですよ、こんな明らかなことがわからぬのでは……。
 それから最後にもう一点は、これは法務大臣に聞きたいのですが、おられないから、総理大臣に聞きますが、結局この事件は、検察、警察の大きなこれはミスなんです。しかも、われわれの調査によれば、第五の人物があるということは、この被告人になった少年が留置された最初に述べておるのです。その調書を私見てきました。最初にその第五の人物の名前が出ておるのですよ――名前じゃない、人柄が。それを警察は無視して、拷問によってそれを取り消さしているのです。決してここで第五の人物が突如として現われておるのじゃない。私も現場に行くまでは、そうかと思っていたんですが、そうじゃない。私はそういう意味で、これはもう明らかに拷問の典型的なものです。これは私はこの点で、総理大臣はこういう事件は、はっきり国民の前に陳謝すべきものだと考えるのですが、私は、あなたがどういう意見をここで述べられるかということによって、全国の検察官、警察官のやはり心境に影響すると思う。あなた自身が、あれは悪かったと言えば、それは気をつけるでしょう。あなたがあいまいな答えをされれば、依然として警察官は、まあまあというような態度になりますよ。その点を含んで、一つ責任のあるお答えを願いたいと思います。(拍手)
○議長(松野鶴平君) 総理大臣は、自席において答弁することを許可いたしました。
○国務大臣(鳩山一郎君) 議長の許しを得まして、この席から答弁をいたします。
 先刻申しました通りに、ただいま責任の有無については調査中でありまして、(「だめだめ、そんなあいまいな事件じゃない。はっきりした事件だよ」と呼ぶ者あり)調査を要する点がありまするので、その調査を継続させているのであります。調査の結果によって考慮をいたしたいと先刻申しました。ただいまも、その通りに答えるより仕方がございません。ただ抽象的に、民主政治というものを成立させるのには、政府当局がすべてみな心を一にして、民主主義というものがどうしてできるのだというような事柄について深く考えを持たなくてはならないという抽象論について、御同意を申し上げたのであります。詳細の点については、調査の結果を待たなければ御返事はできません。
  〔議長退席、副議長着席〕
  〔国務大臣大麻唯男君登壇〕
○国務大臣(大麻唯男君) 先ほど申し上げました通りに、警察といたしましては、人権を尊重するということは犯罪捜査の過程において最も注意しなければならぬことと、かねて言うてあるわけであります。かかるがゆえに、今の世の中に、仰せのような拷問があるなど私どもは考えておらぬのであります。しかしながら、何といっても今度のやつは間違ったに違いございませんから、その責任は感じております。もし取調べの結果、拷問等がございましたならば、厳重に処置をするつもりでございます。と同時に、警察当局は平気でおるような仰せでございましたけれども、決してそうではございません。近畿管区の警察局の刑事部長をさっそく現地に派しまして、今厳重に取調べをいたしておる次第でございます。それで、私といたしましては、警察当局者を初めから疑ってかかる気はございません。しかし間違いがあった者は厳重に処置いたします。決して拷問などいたしておらぬと思いますけれども、とにかく間違ったことは事実でありますから、それについての責任は十分感じておる次第でございますから、ただいま特に近畿管区局から人を派しまして、そうして厳重に調べておりますから、取り調べましたその結果の判明次第に処置をとるつもりでございます。
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○副議長(重宗雄三君) この際、日程に追加して、電波監理審議会委員の任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。
 内閣総理大臣から、電波法第九十九条の三第一項の規定により、丹羽保次郎君を電波監理審議会委員に任命することについて本院の同意を得たい旨の申し出がございました。
 本件に同意することに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○副議長(重宗雄三君) 総員起立と認めます。よって本件は、全会一致をもって同意することに決しました。
   ――――・――――
○副議長(重宗雄三君) この際、日程に追加して、日本放送協会経営委員会委員の任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。
 内閣総理大臣から、放送法第十六条第一項の規定により、阿部清君を日本放送協会経営委員会委員に任命することについて本院の同意を得たい旨の申し出がございました。
 本件に同意することに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○副議長(重宗雄三君) 総員起立と認めます。よって本件は、全会一致をもって同意することに決しました。
   ――――・――――
○副議長(重宗雄三君) 日程第一、日本製鉄株式会社法廃止法の一部を改正する法律案(内閣提出)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。商工委員会理事西川彌平治君。
  〔西川彌平治君登壇、拍手〕
○西川彌平治君 ただいま議題となりました日本製鉄株式会社法廃止法の一部を改正する法律案につきまして、商工委員会における審査の経過並びに結果について御報告申し上げます。
 御承知のように、日本製鉄株式会社の第二会社である八幡、富士の両製鉄会社は、日鉄法廃止法附則第五項及び第六項の規定により一般担保制度が認められておりますが、両社の財団組成が完了していないところから、この附則は昭和二十七年に改正され、昭和二十九年には、さらに企業担保法の制定を理由として再び改正され、今日に至っているのであります。政府は、今年またまた期限が到来いたしましたので、三たびこの附則の改正を企図し、今回は八幡、富士両社の一般担保制度の有効期限を「当分の間」としており、実質的には企業担保法が制定せられるまで延長することを内容とする改正案を提出したのであります。
 本商工委員会におきましては、本改正案と密接な関係を持っている企業担保法について、経済団体連合会、日本興業銀行等の代表者を参考人として招致し、企業担保法案の立案進捗状況、同法案の内容、日鉄廃止法との関係等について意見を求める等、慎重に審議いたしましたが、その詳細はすべて会議録に譲りたいと存じます。
 次いで、討論に入りましたところ、阿久根委員より修正案が提出されました。修正案は、原案が八幡製鉄及び富士製鉄両会社の一般担保制度の有効期限を「当分の間」としているのに対し、これを二カ年に限定しようとするものであります。この修正理由は次のごときものであります。
 その第一は、両社の一般担保制度は、日鉄法廃止の経過措置として、両社に財団組成のための猶予期間を認める暫定的法規に基因しており、廃止法の本旨より、このような措置を無期限的に延長することは妥当でなく、二カ年の期間を切って、その間において改めて財団組成のための準備工作を推進せしめるべきと考えられるからであるということであります。第二点といたしましては、一般担保制度を一般法として各種企業に及ぼそうとする企業担保法の構想は、一応原則的に支持せらるべきものとしても、これの早期制定を促すために何らかの対策を必要とするので、日鉄法廃止法附則に一定の期限を付することによって、一種の努力目標を政府当局に与えることが適当と思われるからというのであります。なお、同委員より、修正理由の説明に付言して、「本改正案の従来の経緯より見て、あくまで工場財団の組成と企業担保法案の制定とは別個の問題である、従って企業担保法制定の有無にかかわらず、この二カ年の間に、両社は工場財団組成のための努力を尽すべきである」との発言があったのであります。次いで、白川委員より、「企業担保法の早期制定促進のために、本改正案に一定の期限を付する修正には賛成であるが、両社の工場財団組成は企業担保法案の立案進捗状況を勘案しつつ実施すべきである」と、阿具根委員提出の修正案並びに修正部分を除く原案に対し賛成の意見が開陳されたのであります。次いで、河野委員より、「八幡、富士の両製鉄会社がいまだに特権意識を持ち、政府もまたこれを容認しているかのごとき印象を与えるのは遺憾であるので、二カ年のうちに企業担保法案の制定とは別個に、両社は工場財団組成を完了すべく努力しなければならない」と、同じく修正案に賛成、修正部分を除く原案に賛成の意見の開陳があったのであります。
 以上の討論を終り、採決に入りましたところ、阿具根委員提出の修正案及び修正部分を除く原案は、全会一致をもってそれぞれ可決され、よって本改正案は、修正議決すべきものと決定した次第でございます。
 右、御報告申し上げます。(拍手)
○副議長(重宗雄三君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。
 本案全部を問題に供します。委員長の報告は、修正議決報告でございます。委員長報告の通り修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○副議長(重宗雄三君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって委員会修正通り議決せられました。
   ――――・――――
○副議長(重宗雄三君) 日程第二、公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律案(内閣提出)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。社会労働委員長重盛壽治君。
  〔重盛壽治君登壇、拍手〕
○重盛壽治君 ただいま議題となりました公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律案につきまして、法案の要旨及び委員会における審議の経過等に関し御報告を申し上げます。
 公共企業体等労働関係法は、申し上げるまでもなく、いわゆる三公社及び五現業の職員の労働条件等に関する紛争の調整をはかるために、その労使関係等を規制した法律でありますが、今回の改正法案は、この法律が占領下に作られたものであるがため、わが国の実情に沿わない点があるというので、次に申し上げる諸点につき必要な改正をして、その不備、欠陥を是正いたそうといたしておるのであります。
 改正点の第一は、公社職員の範囲に関してであります。すなわち、現行の法律におきましては、公社職員とは、公社に「常時勤務する者であって、役員及び二箇月以内の期間を定めて雇用される者以外のもの」と規定されておったのでありますが、今回の改正では「役員及び日日雇い入れられる者以外のもの」で、公社に雇用される者はすべて公労法上の職員として取り扱われ、この法律の規制を受けることといたしております。ただし、各公社法上の身分の取扱いは現行と同様で変りありませんから、各公社法と公労法とでは、そのいうところの職員の範囲が一致しない面が生ずる結果になっております。
 第二点は、団体交渉を行うための手続を改め、いわゆる交渉単位制を廃止したことであります。公共企業体等における労使間の団体交渉の手続は、民間で一般に行われておる慣行と異なり、交渉は原則として公共企業体等とその組合等との協議により定められた単位を代表する交渉委員によってなされておったのであります。しかしながら、交渉委員制と交渉単位制の関係は、法律上必ずしも明確でなく、かつ交渉単位に関する規定はわが国の実情に沿わない制度であったので、これを廃止し、団体交渉は公共企業体等と労働組合とが当事者となり、その代表である交渉委員を通じて行うことにいたしておるのであります。
 第三点は、公共企業体等労働委員会を設け、下部機構を整備する等、従来の委員会制度を全面的に改めたことであります、すなわち、現在の制度は公共企業体等仲裁委員会、中央、地方の調停委員会の十一の委員会があるのでありますが、今回はこれを併合して公共企業体等労働委員会を設け、その下部機構として、地方における調停事務を分掌する地方調停委員会及び事務局、事務局支局等を置くこととするとともに、仲裁の開始等に関する規定を整備いたしておるのであります。公共企業体等労働委員会の委員は、公益委員五人、労使それぞれ三人、計十一人をもって構成することとし、公益委員のうち二人以内は常勤とすることができるようになっております。また、公益委員の任命は両議院の同意を得て内閣総理大臣が任命することにしております。
 改正の第四点は、仲裁裁定の実施に関するものであります。公労法第三十五条は、仲裁裁定は最終的決定として当事者双方ともこれに服従しなければならない旨定められておりますが、今回の改正は、これに「政府は、当該裁定が実施されるように、できる限り努力しなければならない。」旨をつけ加え、政府の裁定に対するあり方を規定することにしております。ただし、従来から問題のあった予算上資金上不可能な支出を内容とする事項について裁定があった場合の法的関係は現行法と変りありません。なお、仲裁裁定の実施に関連して、各公社法等における給与準則、給与総額の規定を改正いたしております。
 以上、改正のおもなる点について申し上げたのでありますが、去る三月七日、本法案が付託になりましてから、社会労働委員会は慎重に審議を重ねて参りましたので、次に、法案の審査に当って行われたおもな質疑についてその要旨を申し上げます。
 まず、政府が今回法案を提出するに至った理由等に関するものであります。すなわち、「公労法は占領下早急の間に立法されたもので、わが国の実情に沿わず、公共企業体等の労使関係、特に仲裁の出たあとの措置について無用の紛争を招いていると政府は言っておるが、紛争の原因は、政府が仲裁裁定を無視する態度に出たことに基因するのではないか、また、今回の改正は、今後公労法を根本的に改正する含みのあるものであるかどうか」という質疑がありました。これに対し政府は、「過去の裁定二十件については、実績としてまずまず尊重してきたし、また、現在の公共企業体をそのままにする限り、この程度の改正でよいと思っている」旨答弁がありました。次は、「三公社五現業と同種の事業であって、しかもその公益性においては民間事業の方がはるかに重要と思われるものがあるのに、三公社及び民間と同種の現業公務員は公労法その他の法律の適用を受けて、争議権その他団体行動権が奪われているのは不当であるので、この際、民間事業におけると同様に取り扱うべきではないか」という質疑がありましたが、政府はこれに対し、「これらの部門の職員は、使用者が政府及びその関係機関であり、公法人であるから争議権その他を認めることは妥当でない」旨の答弁がありました。次は、「今回の改正では、日々雇い入れられる者を除いて二カ月以内の期間を定めて雇用される公社の臨時職員は、公労法の適用を受けて争議を行えなくなった。しかるに、公社法上では同法の職員としての身分取扱いを受けず、何の保障もされないこととしたから、結局争議権を取り上げるだけの結果になり、労働行政を行う者の立場から見て、まことに不手ぎわではないか」という質疑がありまして。これに対し政府は、「労働の実態が同じものは、身分関係でも同一に取り扱うことは趣旨として賛成であるが、臨時公労法審議会でも公社側の異論のあった点であり、また、臨時職員も他の職員と労働運動が一緒にできる点では利点もある」旨の答弁がありました。次は、予算上資金上不可能な支出を内容とする協定の取扱いに関する公労法第十六条と第三十五条の問題であります。すなわち、「労使間の紛争が最終段階にきて仲裁手続にかかり、それについて委員会の裁定が出ても、裁定の実施が予算上追加支出を要する場合は、この十六条の規定にひっかかり、常にこれが原因となって新しい紛争を引き起すことになってきた従来の経緯から考えて、この際これを改正し、かような場合には、政府が必要な予算を付して国会に提出するような手続に改めることが妥当であり、これによって、国会の予算の審議権を侵害することはないではないか」という質疑がありましたが、政府はこれに対して、「政府及び関係者に良識があれば、現行規定下でも事態の円滑な処理は可能であるから、要は運用の問題ではないかと思う」との答弁がありました。次は、五現業職員の政治活動の問題であります。すなわち、「同じ公労法の適用を受ける職員でありながら、公社職員は政治活動ができ、五現業職員はこれができないのは何ゆえか」という質疑がありましたが、これに対しては政府は、「身分が一般職の国家公務員である以上、政治活動を認めることはできない」旨答弁がありました。
 次は、本法案で新しく設けることになりましたところの公共企業体等労働委員会の公益委員に関する問題であります。まず、任命手続についてでありますが、「今回の改正案で、公益委員は労使委員の意見を聞いて国会の同意を得、内閣総理大臣が任命することになっているのは、労使の意見を反映するという点で、仲裁委員は労使を代表する選考委員の選定した者について総理大臣が任命するという現行規定よりはるかに弱く、常勤委員制の運用と相待って委員会を官僚化するのではないか」という質疑がありましたが、「これは臨時公労法審議会の答申を受け入れたものであり、また、国会の同意が任命の要件になっているから、さらに労使の同意を要するということは当を得ないし、実際問題として、労使の反対を押し切って委員を任命しても紛争の解決に役立たないから、運用上善処する」旨答弁がありました。また、「公益代表のうち二人以内を常勤にすることができるということになっているが、これは、日ごろから公共企業体の実情に明るい者を作って、企業本位の裁定を出させようとする意図から出たものでないか」との質疑がありましたが、これに対し政府は、「公共企業体の実態を初め一般国家公務員の給与、経済全体の状況等、日ごろからよく調査して、迅速妥当な結論を出すためには常勤者が必要である」との答弁がありました。さらに公益委員に関し、「公益委員と労使委員のそれぞれの定員の不均衡の問題について、あるいは各労使代表を公益委員と同数にすべきでないか、あるいは消費者大衆の利益等も考慮して、公益委員は労使合せた数と同数の六人にすべきでないか」と、それぞれ質疑が行われたのであります。
 以上、質疑のおもな点について、その大略を申し上げたのでありますが、このほかにも種々活発な意見の交換が行われたのであります。
 かくて四月十三日、質疑は終局いたしましたが、社会党の平林委員ほか五名の委員から修正案が提出されたのであります。この修正案について申し上げますと、第一点は、公共企業体等の職員でない者でも、公労法の規定に基く労働組合の組合員またはその役員になることができるように改めること、第二点は、公共企業体等労働委員会の委員は、公、労、使各五人の委員をもって構成するように改めること、第三点は、公益委員の任命は、国会及び公共企業体等労働委員会の労使委員の同意したものについて総理大臣が行うように改めること、第四点は、改正案にある公益委員の政党所属に関する要件の規定を削ること、第五点は、公益委員はすべて非常勤とすること、第六点は、いわゆる予算上資金上不可能な資金の支出を内容とする協定がなされたときは、政府は、協定実施のため必要な予算上資金上の措置案を付して国会の承認を求めるように改めること、以上であります。
 平林委員は、この修正案について提案理由の説明を行い、「公共企業体等労働関係法は、かつて国鉄労働組合の抑圧を意図して、その目的のために占領軍が作ったものであり、また、法の運用が時の政府の都合のよいように運用されてきたため、従来無用の紛争を招いてきた経緯から考えて、他日、本法の根本的な改正ないし同法の廃止を再検討すべきであるが、ただ当面の問題とし、臨時公労法審議会の答申を尊重して、職員でない者も組合員になり得るようにするとともに、仲裁裁定の公正な判断を期し、また、その実現をより一そう容易ならしめるため、政府原案を修正する必要がある」旨述べたのであります。
 かくて、修正案に対する質疑を終り、両案について討論に移ったのでありますが、まず、自由民主党の高野委員から、「政府提出の原案は、公共企業体等とその職員の意思の疎通をはかり、かつ、労働委員会の機構の整備、運用の迅速化をはかったもので賛成であるが、修正案は、その点弊害があって賛成できないので反対する」旨の意見が述べられ、緑風会の田村委員からは、「労働裁判所等を作って、民間の労使紛争を平和的に解決すべきことの必要性を強調されるとともに、修正案の趣旨は、法の運用をもっても実現可能なことであるから、政府原案を修正するほどの必要はなく、政府原案に賛成、修正案に反対である」との意見を述べたのであります。次に、社会党の久保委員からは、「修正案に賛成、政府原案に反対」の意見を述べられましたが、その要旨は、修正案に対する提案理由と同趣旨でありますので、これを省略いたします。
 以上をもって討論を終り、採決に入りましたが、まず、公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律案に対する修正案について諮ったところ、賛成者少数のため否決され、次いで、公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律案は、多数をもって原案通り可決されたのであります。
 以上、御報告を終ります。(拍手)
○副議長(重宗雄三君) 本案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。久保等君。
  〔久保等君登壇、拍手〕
○久保等君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律案に対して、反対の討論を行うものであります。
 公共企業体等労働関係法は、昭和二十三年十二月、当時きわめて強い世論の反対を押し切って制定せられたものであり、特に労働者の基本的権利である争議権を奪ったことは、憲法の認める労働基本権たる争議権を抹殺するものであります。憲法に定められた基本権の行使は、公共の福祉という面から一定の制限を受けることがあり得ましょうとも、基本権そのものが全面的に否定ないしは剥奪されるということは、とうてい許され得ないものであります。しかるに、公労法第十七条は、基本権としての争議行為を全面的に禁止しているのでありまして、明らかに憲法違反と言わざるを得ません。このように、争議権を奪った日本の公労法のごとき悪法は、世界にその例を見ないところであります。従って、政府が真に公労法を改正せんとする熱意を持つならば、悪名高きこの法律の廃止をこそ提案すべきものであります。
 今回出されて参りました改正法案は、臨時公労法審議会の答申を尊重して立案されたと政府は説明しているのでありまするが、臨時公労法審議会そのものは、本年一月十四日に発足し、わずか二十六日目の二月八日には、早くも答申を行わざるを得なかった事情から、根本的な問題について十分審議が尽され得なかったことは、答申書の中で、公労法自体の存否並びに公社及び企業官庁のあり方の問題を含めて、これを徹底的に検討した上で改正を行うことが望ましいのであるが、短時日の間に関係者の錯綜する利害を調整しつつこれを行うことは至難であるので、後日の検討に期待すると述べている点から明らかであります。政府がかように取り急ぎ改正法案をまとめて国会に提出した真のねらいは、公労法の改正そのものにあらずして、本年の総評を中心とした春季賃上闘争に対する思慮深き対策から出たものであるとも一般に言われておるほどでありまして、政府の真の意図がいずこにあるのか、理解に苦しむところであります。
 次に、改正案の主要な点について、その反対理由を申し述べまするならば、まず第一に、職員以外の者の役員または組合員からの排除の問題についてであります。すなわち、「公共企業体の職員でなければ、その公共企業体等の職員の組合の組合員又はその役員となることができない。」という第四条第三項は、労働組合法との均衡上からも当然廃止さるべきものであります。従来から政府は、民間労働組合が労働協約の締結に当り、組合員は従業員でなくてはならないということを、経営者が協約中に挿入することを強要するならば、それは組合内部への干渉であり、いわゆる不当労働行為であるとの見解をもって指導してきておりながら、何ゆえ公企体の組合員のみを職員に限定するのか、さらに、審議会もまた、これを廃止すべきであると答申しているのにもかかわらず、何ら取り上げなかったのはいかなる理由によるのか、まことに不可解と言わなければなりません。
 第二は、仲裁委員会の裁定に関してであります。今回、第三十五条の改正案においては、「政府は、当該裁定が実施されるように、できる限り努力しなければならない。」と、特に政府の努力義務を明文にあげておるのでありまするが、「ただし、公共企業体等の予算上又は資金上、不可能な資金の支出を内容とする裁定については、第十六条の定めるところによる。」として、従来と全く同じく、予算上または資金上不可能な資金の支出を内容とするいかなる裁定も、政府を拘束するものではないという態度を依然として堅持しているのであります。公労法中最大の問題とガンは、実に今日までこのことにあるのであります。今まで仲裁委員会によって裁定をされたものが、仲裁委員会の裁定に対しては、当事者双方とも最終的決定としてこれに服従しなければならないという第三十五条の規定そのままに厳正に実行せられたことは、ほとんどないのであります。労働組合は、裁定内容に幾多の不満を感じながらも、常に第三十五条の規定をまじめに厳格に守って裁定を受諾いたしましても、政府は一方的に十六条の規定をたてにとり、単に裁定そのものを国会に付議して、受諾せざることについての承認を国会に求めるという、まことに誠意のない態度をとり、ために無用の紛糾を招いて、事態の迅速円満なる解決をはばんで参ってきておりますることは周知の事実であります。憲法に保障せられた労働基本権たる争議行為が、不法にも剥奪せられている公企体労働組合に対して、せめて仲裁裁定こそは例外を認めざる最終的紛争解決の場とし、また機会とするために、政府が予算措置を行うための十六条に改正すべきであります。「公共企業体等の予算上又は資金上、不可能な資金の支出を内容とするいかなる協定も、政府を拘束するものではない。」という第十六条をそのままにしていることは、それこそ「政府は、当該裁定が実施されるように、できる限り努力しなければならない。」と第三十五条で規定しながら、具体的裁定については、大手を振って裁定を無視することのできる抜け道が作られているわけであります。従来から種々な問題と強い批判のある仲裁裁定に関する規定こそは、まず第一に根本的解決の必要が痛感されるものであり、その中心規定である十六条の改正に手をつけなかった政府の態度は、いかに弁明しようとも、仲裁裁定に対する誠意と努力の欠如を雄弁に物語っていると思うのであります。
 第三は、公共企業体等労働委員会の問題についてであります。従来の調停委員会並びに仲裁委員会を統合して公共企業体等労働委員会一本となるのでありまするが、本労働委員会は、特に罷業権を持たない公企体労働組合にとって紛争解決をはかる通常最後の機関であります。従ってそれだけこの委員会は構成の面においても、また運営の面においても公平かつ厳正なものでなければならないと同時に、当事者双方にとって何らの疑念も不信も抱く余地のないものにしなければならないと思うのであります。特に強調いたしたいことは、この当事者に満足され、信頼される委員会でなければならぬということであります。かりに公平厳正なものでありましても、当事者に信頼される委員会、納得される委員会でなければ、本労働委員会はその本来の機能を発揮することはできないものであります。ところが、このたびの改正法案によりますると、公共企業体等労働委員会の構成は、労使それぞれ三名に対し公益委員は五名となっているのであります。さらに、公益委員は委員候補者名簿のうちから、五名について国会の同意を得て内閣総理大臣が任命することになるのでありまするが、その際、作成される候補者名簿に記載せられる委員候補者は、単に労働大臣が労使それぞれの委員の意見を聞くにとどまり、その同意を必要としないことに改められているのであります。調停委員会における公益委員は、労使それぞれを代表する委員の同意を得て内閣総理大臣が任命することになっているとともに、仲裁委員会における仲裁委員は、中央調停委員会の委員長が推薦した者の中から、労使それぞれを代表する選考委員によって選定が行われ、その選考せられた者について内閣総理大臣が任命することになっている現行任命制度に比べれば、労働大臣の権限が著しく強化せられることになるのであります。しかも、かくして任命せられた公益委員五名中、二名までを常勤とすることができる等の点から考えますると、本労働委員会、とりわけ仲裁委員会の政府への隷属化を強く感ずるものであります。加えて、公益委員はまた政党人たることも許されることになっていることは、さらに独立性を堅持し、厳正公平なるべき公益委員をして、政党の干渉、支配をも許す危険を持つものであります。かように、時の政府や政党によって重要なる公企体等労働委員会の中立性が侵害せられる危険に対しましては強く反対いたすものであります。ただいま申し上げました労働委員会の構成並びに常勤制度につきましては、政府の諮問をしたと言われまする審議会におきましても、何らこれに対しまして審議会からの答申が出ておらないことをつけ加えておきたいのであります。
 最後に申し述べたいことは、職員の範囲についてであります。すなわち二カ月以内の期間を定めて雇用される者についても、本法改正案において第二条第二項第一号で「日日雇い入れられる者以外」を公労法上の職員として扱うことに改正しながら、本法附則において、日鉄法、電電公社法、専売公社法の条文をそれぞれ書き改めて、そこでは二カ月以内の期間を定めて雇用せられる者は職員の範囲外として扱っている点であります。従ってこれらの者は、公労法上の職員となりながら、何らの身分の保障は与えられないことになっているのでありまして、同じ公労法の適用を受けている五現業の現業庁とも均衡を失しているのであります。公労法上の職員と公社法上の職員とは、すべて同一範囲のものとし、従来身分の保障がなされていない二カ月以内の雇用者についても身分の保障を与え、その根本的解決をこの際はかるべきであります。職員の範囲がことさらに公社法上と公労法上とでは異なるものとしたことは、理論的にも実際的にも納得し得ないところであり、ここでまた政府の本法改正に当って根本的解決をたな上げにして、こそく的な条文いじりに終った結果、首尾一貫性を欠いた改悪となっている点を強く指摘いたしまして、私の反対討論を終るものであります。(拍手)
  ―――――――――――――
○副議長(重宗雄三君) 高野一夫君。
  〔高野一夫君登壇、拍手〕
○高野一夫君 私は、ただいま議題となりました公共企業体等労働関係法の一部改正案に対して、自由民主党を代表して、きわめて簡単ながら賛成の討論をいたしたい次第であります。
 今さら私があらためて申し上げるまでもなく、三公社五現業の企業は、国家公共的の性格を持って、国民の日常生活に直接重大なる影響を与えるものであって、その運営は、国会の承認する事業計画と予算によってなされ、すなわち政府が運営の元締めに当っておって、しかも五現業の職員は国家公務員であり、三公社の職員は国家公務員に準ずるものであること、また労使関係にしても、企業体側は、民間企業の資本家的立場とは異なるものでありますから、公共企業体の労使問題は、民間企業体の場合とは同一に論じがたいものであることは言うまでもないことであります。しかしながら、この公共企業体の労使問題は、直ちに民間企業の労使問題に大きな刺激と影響を与え、また一般公務員の組合活動にも密接不可分の関係を持つ次第でありますから、この公共企業体の労使問題を健全かつ適切に処理することがいかに大事であるかということについて、関係当事者が常に深く考慮しなければならないものと考えます。
 しかるに現行法律は、先ほど来報告がございました通りに、占領下に制定せられたものであって、すでに六回の改正を経ましたが、今なお日本の実情に適しない点が多々発見せられたのであります。従って、かような不備、不完全なる現行法であることが相わかりました以上は、すみやかにこれを改正して、実情に適合せしめ、適正なるあり方にあらしめたいということは、おそらく何人といえども異存のあるべきものではないと考えまするが、今回の改正の政府原案は、これらの欠陥を相当に是正した案であると信ずる次第であります。
 労使関係については、民間企業の場合でも、双方がよく話し合って、相互の理解を深めることによって解決せられるものと考えまするけれども、公共企業体においては、特に労使双方ともが基本的には同じ立場にあると言ってもいいのでありまして、民間企業の場合よりも話し合いがつきやすい状態にあるはずであります。そこで、まず第一には、その話し合いをつけやすい方式をとることを考えなければならない。たとえば団体交渉にいたしましても、現行法では、単位制度の交渉委員を選ぶことになっておって、労働組合は、組合としては締め出しを食ったような形になっていることは、交渉を円滑ならしめるゆえんではないと考えられます。今回の改正案によって、組合の指名する交渉委員がその当事者になることに相なっておりますが、これは話し合いをつけ、交渉を円滑に進める上において、従来よりも非常に役立つ方法かと期待が持てるのであります。従って、一部で議論されておりまするような、解雇された者とか、またはその企業体の職員でない者が、その組合に参加しても差しつかえないではないかというような主張に対しては、私どもは同意ができがたいのであります。あくまでも同じ企業体の中でお互いに働き合って、その企業の本質、実情をよく理解し合っている者同士としての話し合いが望ましいと考える次第であります。
 本改正案におきましては、また委員会を整理して、公共企業体等委員会といたしまして、簡素化、能率化をはかった点もわれわれの共鳴するところであります。ことに、その委員会の公益委員に関する規定がきわめて重要なる点と考えますが、もともと争議権が与えられないかわりに仲裁裁定の方法がとられて、従って、そこに重大なる意義を持つものでありますから、委員会を構成する使用者委員、労働者委員並びに公益委員の二者がお互いに、先ほど久保さんのお話もございましたが、お互いに信頼され、尊敬される人物であることが特に大事なことであります。もしもこれらの三者委員が互いに信頼されないということになりますれば、委員会の運営は、円滑に行くはずはないのであります。本改正案において、使用者委員は公共企業体の推薦によって総理が任命する、労働者委員は組合の推薦によって総理が任命する、と同時に、特に公益委員につきましては、労働大臣が使用者側からも労働者側からも、双方の意見を十分に聞いた上で推薦をして、そうして国会の承認を求めて総理任命ということになっている次第でありますが、国民各階層、各地域の代表者の機関であるところのこの国会において、委員として適材であるかいなかを慎重に吟味した上で任命するということは、調停、仲裁の公正妥当を期する上において適切な方法でもあり、権威ある委員会が構成される結果となるものと信ずるのであります。公益委員五名のうち二名を常勤とすることにも、多少の反対もあるようでありまするが、三公社五現業の企業が大規模であること、または問題の重要性にかんがみまして、臨時に出てくるような非常勤の委員のみでは、とうてい処理しかねる点が多々あると考えられますので、この点の改正案も妥当なものと認めたいのであります。
 なお、公益委員については、委員のうちの一人がすでにある一つの政党に所属している場合には、他の委員の一人がその同じ政党に新たに入った場合、そういう場合は、その委員はやめさせるということに定めてあります。なおまた、ある政党があって、これまでその政党には、委員の何人も入っておらなかったけれども、その政党に、同時に二人以上の委員が新たに入党したような場合がありますれば、一人をこえるものについては、国会の同意を得た上で、いずれかの委員をやめさせることに定めてある。このことは、公益委員が特定の政党に偏しないようにするために、特に適切必要な改正案であると考えるのであります。かように、委員の構成について改正されると同時に、仲裁裁定を尊重する上において、なお、不十分ではあるけれども、給与準則、給与総則の制度にも弾力性を持たせた措置が行われたこと、このことも適切な措置であると思わざるを得ない次第であります。
 本改正案では、各条項にわたって大幅に条文の整理が行われているのでありまして、このことについて私は一言触れたいと思います。すべて法律の条文に対しまして、解釈上に見解の相違があったり、または解釈を誤まらしめやすいようなことは、実例としてしばしば見受けるところでありますけれども、これは極力避けなければならない。ことに本法律のごとき性格を持った法律においては、このことは、特別に深い注意を払わなければならないものでありますが、今回の条文の整理によりまして、少くとも本法律に関する限りは、解釈に相違があったり、誤まった解釈がなされたりしまして、法律がかえって紛議のもとになるというようなことが避けられるものと考える次第であります。以上は、要点のみを取り上げた次第でございまするが、本改正案の作成に当っては、労働省の説明によりますれば、労働省が設けた審議会において、大体において双方が同意した点を取り上げて改正案を作成したということでございまするので、各方面大方の御賛同を受くべきものではなかろうかと期待してやまない次第でございます。
 最後に、私は一言つけ加えたいことは、公共企業体と民間企業とを問わず、特に公共企業体においてはしかりでございますが、すべての職場に働く職員が、国民として、人間として同じ立場に立って、そうして安心して仕事ができるように、みずからかせいだ給与によって、できるだけ仕合せな幸福な生活を送ることができるように、使用者側であるところの政府並びに公社においても、また国会においても十分の考慮を払っていただきたいのであります。一方労働者側においては、この企業の本質、実態を十分に認識されて、特に国会が承認を与えてできた事業計画、予算というものについて深い関心を持たれんことを、理解を持たれんことを祈ってやまない次第でございます。かくあるときは、おそらく団体交渉の必要も次第に薄らいで参りましょう。また団体交渉をいたしましても、調停、仲裁に持ち込まなければならないような機会もなくなり、従って、この法律もだんだん必要がなくなる、そういう時代が必ず到来するに違いない、私は、そういうような時代がくることを政治家の夢として描きたいのである。そうしてこの夢が実現することを待望いたしまして、私の討論を終りたいと思います。(拍手)
○副議長(重宗雄三君) これにて討論の通告者の発言は、全部終了いたしました。討論は、終局したものと認めます。
 これより本案の採決をいたします。
 本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○副議長(重宗雄三君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。
 これにて、午後一時三十分まで休憩いたします。
   午後零時十九分休憩
   ――――・――――
   午後二時四分開議
○議長(松野鶴平君) 休憩前に引き続き、これより会議を開きます。
 日程第三、防衛庁設置法の一部を改正する法律案
 日程第四、自衛隊法の一部を改正する法律案(いずれも内閣提出、衆議院送付)
 以上、両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
 まず、委員長の報告を求めます。内閣委員長小柳牧衞君。
  〔小柳牧衞君登壇、拍手〕
○小柳牧衞君 ただいま議題となりました防衛庁設置法の一部を改正する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案につきまして、内閣委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 まず、防衛庁設置法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 本法律案は、現下の情勢に対処し、国力に応じて防衛力を整備充実するため、防衛庁の職員の定員を一万九千百九十三人増員して、現在の定員十九万五千八百十人を二十一万五千三人に改めようとするものでありまして、この増加分のうち、一万七千四百十三人が自衛官で、残りの千七百八十人が自衛官以外の職員であります。自衛官の増加分は、一万人が陸上自衛官、三千三百二十五人が海上自衛官で、残りの四千八十八人が航空自衛官であります。この増員された自衛官は、陸上自衛官にありましては、混成団一の増設その他に充てる要員であり、海上自衛官にありましては、艦艇の増強等に伴う要員であり、航空自衛官にありましては、航空団の新設等のための要員であります。また、自衛隊が日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定に基く教育訓練等の援助を受ける便宜を考慮して、同協定付属書G第二項による日本国政府の現物提供に関する事務は、労務提供に関するものを除き、防衛庁がこれを行うことを適当であるとして、所要の規定の整備がなされております。
 次に、自衛隊法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 本法律案は、陸上防衛力の整備のため、東北地方北部に、陸上自衛隊の長官直轄部隊として混成団一を新設するとともに、航空自衛隊については、既存の航空団一に加えて、さらに一航空団を増設することとした点がおもな改正点でありまして、このほか、自衛官の募集等の事務を行なっている地方連絡部の長は、従来、自衛官をもって充てることとなっておりましたのを、その事務の性質にかんがみ、事務官をもって充てることもできることとし、なお、自衛隊の飛行場に自衛隊の航空機以外の航空機が着陸した場合におきましては、一定の条件のもとに、便宜所要の燃料を無償で貸し付けることができることとし、また、駐留米軍と自衛隊とが隣接して所在する場合におきましては、自衛隊は、米軍に対し、一定の条件のもとに、必要に応じ給水その他の役務を適正な対価で提供することができるよう所要の改正をいたしております。
 内閣委員会は、前後九回にわたり委員会を開きまして、この間、鳩山内閣総理大臣、船田防衛庁長官その他防衛庁政府委員の出席を求めまして、この二法案の審議に当りましたが、鳩山総理大臣及び船田防衛庁長官の答弁によって明らかになったおもな点を申し上げますと、その第一は、自衛権の限界いかんという問題でありまして、「わが国に対し、他より急迫不正の侵害が加えられ、他に防衛の手段がないとき、その不正の侵害を排除するに必要な限度の実力行使をすることが自衛権である。従ってわが国に対して急迫不正の侵害が行われ、その侵害の手段として、わが国土に対し誘導弾等による攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨だとはどうしても考えられない。この場合、そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置をとること、たとえば誘導弾等による攻撃を防御するに他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは理論上は自衛の範囲に含まれ、可能であると思う。しかし、かような自衛権の発動は、限られた例外的場合を想定しての法理論であって、実際上は、わが国が他より不正の侵害を受けた場合には、日米行政協定第二十四条に基いて、日米両国間においていかなる措置をとるかを協議し、その結果、米国はわが国を防衛すると同時に、わが国は憲法及び国内法の規定の範囲内において自衛権を行使し、また同時に、時を移さず国連に提訴することになると思う」旨、鳩山総理及び船田防衛庁長官より答弁がありました。なお、この問題に関連して、船田長官より「実際上は、政府はこのような場合、一切海外出動をなさぬ決意である」旨の言明がありました。その第二は、自衛隊増強と憲法第九条との関係につきまして、船田長官より、「現在の自衛隊や将来の増強計画による程度の自衛隊は、他国に脅威を与えるような戦力ではなく、自衛のための必要最小限度の実力に過ぎぬものであるから、憲法第九条の戦力には該当せず、この点、従来の政府の説明と何ら変更はない」旨の答弁がありました。その第三は、防衛六カ年計画に関する点でありまして、「防衛六カ年計画は、政府案としていまだ確定しておらないが、防衛庁の試案としては、六カ年計画の最終年度の昭和三十五年度においては、陸上自衛隊では陸上自衛官十八万人、海上自衛隊では艦船十二万四千トン、航空機百八十機、航空自衛隊は航空機千三百機、なお、自衛隊全体で予備自衛官二万人を目標として、防衛力の増強を期したいが、来年度より昭和三十五年度までの年次計画は今まだきまっていない、そしてこの防衛六カ年計画の最終年度の防衛費は、国民所得の二%強であって、この程度の防衛力は、他国に脅威を与える程度のものでもなく、また国民に大なる負担をかけるものではないと思う」旨の船田長官より答弁がありました。その第四は、「第十九国会において、自衛隊の海外出動をなさざることに関する当院の決議がなされたが、鳩山総理はこの決議を尊重するか」との問いに対し、「海外出動は考えたことはない」旨、鳩山総理より言明がありました。
 このほかに、自衛隊の防衛出動に関する諸問題、自衛隊員の応募状況と徴兵制度に関する点、米国顧問団の現状と将来の見通しの点、オネスト・ジョン、ナイキ等の兵器に関する点、艦船、航空機、武器等の米国よりの供与及び国産化の現状と今後の見通しの点、防衛産業の育成に関する政府の方針の点、自衛隊増強に伴う米駐留軍撤退に関する点、防衛庁費と防衛分担金との関係の点、防衛庁費の経理運用の現状と不当支出に関する点等につきまして質疑応答がなされましたが、その詳細は委員会会議録に譲りたいと存じます。
 去る十三日分委員会におきまして質疑を終りましたので、討論に入りましたところ、日本社会党を代表して田畑委員より、「第一に、再軍備体制を強化せんとする本二法案は憲法違反であること、第二に、自衛隊はアメリカの傭兵的性格が濃厚であって、国民生活を破壊するものであること、第三に、内外諸情勢よりみて、現在は再軍備体制を強化する時期でないこと、以上三つの観点より、本二法案に反対である」旨を、次いで緑風会を代表して島村委員より、「わが国の防衛体制を整備することは、独立国家として当然の措置であるが、政府は防衛体制の整備に対する国民の十分なる理解と協力を得るよう、自衛隊の運営等についても、国全体に不安なからしむる措置をとるとともに、政治優先・主権在民の建前を堅持し、戦前の軍隊の持っておった弊害を台頭せしめぬよう深く慎しむべきであること、さらには、自衛隊員は公務員の本旨に徹し、国民奉仕の観念をもって任務を遂行するよう政府において万全の措置をとること、以上三点の希望を付して本二法案に賛成する」旨、次いで堀委員より、「第一に、本二法案は憲法を侵害するものであること、第二に、自衛体制はアメリカとの関係において隷属的関係にあること、第三に、自衛隊の増強は最近の国際情勢に逆行するものであること、第四に、自衛隊の増強が民生を圧迫すること、以上四点を理由として本二法案に反対である」旨、最後に、自由民主党を代表して野本委員より、「本二法案には賛成である」旨、それぞれ発言がありました。
 討論を終り、直ちに本二法案について採決をいたしましたところ、本二法案は多数をもって原案通り可決すべきものと議決せられました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
○議長(松野鶴平君) 両案に対し討論の通告がございます。順次発言を許します。木下源吾君。
  〔木下源吾君登壇、拍手〕
○木下源吾君 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題に供されております自衛隊法の一部を、また防衛庁設置法の一部をおのおの改正する法律案に対して、反対の討論をいたします。
 この法律案は、ただいま委員長からの説明のように、防衛庁の定員を一万九千百九十三人ほど増加して、二十一万五千三人に改める。こういうような定員の増加を内容としているものであります。そしてこのうち約一万人は陸上自衛隊を増員し、一個混成団と特科三個大隊の新設を行います。また、海上自衛隊は約三千三百人を増員いたしまして、艦艇七隻の建造、航空機また四機を新たに購入するとか、米国からも艦船を借り入れたり、航空機の供与を受ける、こういうようなことで充実するという意味であろうと思うのでありますが、いずれにしても、このたびの三千三百人の増員は、海上自衛隊としての増強であります。航空自衛隊は約四千余名を増員して一個航空隊の新設を行うほか、なお米国から飛行機の供与を受け、さらに新しく飛行機を調達する。いずれも陸海空の各自衛隊の増強をはかるものであります。
 よって、これに反対いたします第一の理由は、憲法違反であるし、そうして本格的軍隊を作る地ならしをするものである、これが第一の理由であります。第二には、アメリカの傭兵、そうして国土を守るという建前の目的を持っている。がしかし、実際は本土は危険にさらされる、これが第二の理由、第三の理由は、平和への逆行であるということであります。第四は、予算の乱費、国民生活の圧迫、大体以上のような理由、これで反対するのであります。
 第一の違憲であるということは、今までしばしば論議されておるところで明らかではありますが、政府みずからも確信を持って、これは憲法に沿っておるものであるということをなかなか言っておらない。それは今日までの経過を申し上げればわかりますように、昭和二十一年六月の吉田総理の時代においては、憲法第九条二項において、一切の軍備と交戦権とを認めない結果、自衛権の発動としての戦争も、また交戦権も放棄したものであります。従来、近年の戦争は多く自衛権の名において戦われたのであります。満州事変しかり、また大東亜戦争しかりであります。こういう吉田総理の答弁から始まりまして、鳩山総理は、三十一年の三月八日の参議院予算委員会において、私は憲法の成文には、自衛隊を持つということは合致しないと思います。この疑いがある。こういうように申されております。ところが自衛隊法が通過したというので、三十一年三月の九日、参議院の予算委員会で、これは鳩山総理大臣は、自衛隊法ができたからして、国会を通過したから違憲だとは私は思わない、こういうことを言っております。また、第二十二国会では、鳩山総理は、自衛のためということは国土を守るということでありますから、国土を守る以外のことはできないと私は思うのであります、飛行機でもって飛び出して行って攻撃の基地を粉砕してしまうということまでは、今の条文ではできないと思いますと、こういうことを言っております。ところが今回、ただいま委員長報告にありますように、敵基地をたたくことができる、こういうことを言っております。また委員会において、わが党の委員から追及されまして、今回は、実際はそういうことはやらない、こういうようにまた取り消しておるわけであります。
 で、この成り行きを見ればわかりますように、全く支離滅裂であります。これは何よりの憲法に違反しておるという証拠であります。で、このような憲法違反、そうして今のような状態を毎年々々繰り返して参りましてですね、どこまで行ったらこれが完成するものやら、ますます迷路に入って行くようなわけでありまして、国民の不安は増大の一途をたどっております。委員会におきまして、わが党の委員から、一体本年度のこの一万九千何ぼの増員というものの根拠を明らかにしてもらいたい、こういうように追及いたしましても、これは一向に明瞭にならぬわけであります。何か六カ年計画があるかのごとく、ないかのごとく、次年度にまたどれだけのものをやるということも、これは明らかにならない。三十五年度にはこうなりますというようなことを言っておる。で、これでは国民は何を信用してこの政府におまかせしておくことがいいのか悪いのか、判断することができない。われわれも全く法案の審議は無用であるかのごとく考えたんである。で、こういうわけでありまして、政府がやっておることは、一口に言うならば全く自主性はありません。独自性はありません。で、そういうことを追及いたしますと、自主性も独自性もあるという御答弁でありますけれども、真実は、この自主性も独自性もないというのがほんとうであります。
 当初、警察予備隊ができましたのは、朝鮮戦争のあの勃発した結果でありまして、これは明らかに当時のマッカーサーの要請によってできたのであります。その後これに便乗して、わが国の軍国主義者の衣鉢をうけておるようなそういう人々から、どんどん再軍備の気勢があおられてきた。政府はこれに便乗して、次々と軍備を拡張をして行く、どこにも根拠がない。で、先にはこういうように軍備を拡張して、自衛隊などを拡張していっておることは、アメリカの軍隊に早く帰ってもらうためだというようなことも申しておりましたが、昨今ではこれを拡張していって、どこまで行ったならばアメリカの軍隊に帰ってもらえるか、そんなこともはっきり答弁しません。で、かかる状態でありまして、国民は非常に不安を感じておる。しかし意図するところは大きい軍隊を完成するための地ならしを、一歩々々既成事実を築いていって、国民の目をごまかし、そうして憲法を踏みにじって、そうして実際には軍備を拡張して行く、再軍備を完成しようという意図にほかならない。かかる意味で、第一の理由、いわゆる違憲であり、地ならしであるということで反対を表明するものであります。
 かかる自衛権の限界を混乱せしめて、国民に多大の不安と危惧の念を抱かしめているのがこの実情でありまして、先般委員会におきましても、わが党の委員から、一体どういうときにこの自衛権を発動するのであるか、自衛隊法の七十六条によってやるように言っておりますが、自衛隊法七十六条には、侵されるようなおそれのあるというようなきわめてあいまいな文句があると、わが党の亀田委員から指摘されまして、この解釈をはっきりせいと言いましても、なかなかそれははっきりできない、これも不明瞭のまま、委員会で明瞭にできなかった。でありますから、私どもは、この法案は何といっても、目的なしに、アメリカの要請によって、そのつどそのつど増強して行っておるものということを断ぜざるを得ないのであります。現在この日本は条約や協定の示すように、従属的関係が強いということは、これは鳩山総理大臣が完全な独立を唱えておるということだけでも明らかであります。それでありますために、今後行政協定二十四条で、事あるときは相談をすると、こう言いますけれども、これはアメリカの支配的な力が強いのでありますから、この相談は当然アメリカの意図するようにきまるということは想像される。想像じゃない、もうそれにきまっておる、きまっておるのだ。でありますから、そういうように二十四条で相談するんだから、今そんな心配は国民は要らぬと、こう言われましても、なかなかそういうわけにいかぬ。なぜなれば、これもわが党の委員から追及されたのでありますが、日本の自衛隊は、日本の憲法や法律に従ってやるんだから、決して間違ったことはやりませんと、こう言っているけれども、アメリカは、日本の憲法を守る必要はありません。一緒にやっていて、そうしてアメリカがどんどんと敵を攻撃する。必ずここには報復的な爆撃があるということは当然であります。日本の軍隊は日本の区域内においてのみ云々、こう言って、今このことをやっておりますけれども、実際問題にぶつかれば、アメリカそれ自身は、まあ、やりなら穂先の方で、日本の軍隊はもとの方で、一本であります。もとの方は日本の国土におっても、やりの穂先の方は向うへ行っておる。向うは危険だから、これを防ごうとする。日本の報復爆撃は当然であります。こういうようなことがわが党委員によって追及されましたけれども、やはり日本の国土を守るんだと一点張りで、何もこれに対して明らかな答弁が行われておらない。日本の国土を守るということが看板である自衛隊が、逆に日本の国土を危険にさらす導火線になるという状況に置かれておる。こういう点は、私どもどうしても明瞭にならないので、この法案がますますもってわれわれは賛成ができない。
 第三の理由は、平和の逆行である。これは一昨年七月、ジュネーヴの話し合いでヴェトナムの戦争が休戦になりました。このことは非常に歴史的に平和を愛好するものにとっては愉快な事実であります。ところが、また昨年の七月はふたたび巨頭会談が行われまして、ますますこの平和への波が高まって参ってきた。自来、世界の空気は平和という平和共存への方向が、次々の具体的な事実によって強まって参っておるのであります。かかる際に、日本だけがどうして一体平和憲法を踏みにじってまでも、こういう軍隊の増強をしなければならないかという理由は明らかになっておりません。原水爆を禁止してくれという声は全世界に満ちております。軍縮もやらなければならぬ、軍備縮小もやらなければならぬという声は、いつでも世界のすみずみから起きているではありませんか。なぜ一体、日本だけがこういうことをやらんならぬか。すでに封建的天皇の軍隊は滅びたのである。そういう軍隊は滅びたのである。これをゆり起してみたところが、もとのものにはならない。歴史はそういうところに逆転はいたしません。アメリカは、今や資本家を守るために、資本主義を守るための一切の軍備を持っておるかもしれません。日本の実情は、アメリカとは違うではありませんか。でありますから、陸軍だけ、封建的な軍隊だけを適応する場所で使おうとする意図にほかならないのであります。私どもはかかる世界的な平和の高まりが大きいときに、日本だけがこの軍隊を増強するということは、意味をなさないばかりではなく、封建的な軍隊もまた育成しようとする、そのむだを、これはほとんど後世の歴史家から見たならば、ほんとうに笑われるような状況にならないか。先般、船田長官に対して、わが党の委員から、いわゆる戦争の性格、防衛の本質を追及しました。大東亜戦争はあなたはどう考えておるかということに対して、船田長官は、あれは悪い面もあったが、いい面もあったというようなあいまいな答弁、後世の史家のみがこれを評価するであろうと、暗に大東亜戦争をあたかも理論化したような御答弁がありましたが、私はかかる日本の指導者、今日まで日本に与えておる創痍というものに対して、損害というものに対して、何らの反省もない指導者によって指導されておる国民は、まことに残酷ではなかろうかと思うのであります。まだ戦争の創痍はいえておらないばかりでなく、未帰還者はたくさんおります。それで今、ここにふたたびそれを繰り返そうとするようなたくらみは、国民あげてこれに反対しなければならない。わが党はその先端に立って本案に反対しておるゆえんであります。
 昨今、北洋漁業の問題が非常にやかましく言われておる。これはもちろん当面は魚族の保護ということでございます。日本のとり方が、国交回復しておりませんから、往年のように沿岸で定置的な漁業が行われない。昔は定置的なカムチャッカの沿岸で漁業を行なっておって、そうして産卵のために上るサケ、マスは、その川の一定区域だけを禁漁しておった。従って幾らとりましても、魚族の保護というものは、これは完全に行われておった。ところが、今日どうでありますか。あの母船には五百という大きい独航船がついて行っておって、一々の独航船が延長二里にわたる網を持っております。向うに言わせると、エブリ・デイ、エブリ・ナイト、毎日毎晩、千里の網があの産卵にくるサケ、マスを遮断してしまっておる、こういうことをはっきり向うは報告しておるではありませんか。話し合いによって国交を回復すれば、往年のような漁業ができまして、なお漁獲量も今よりは、昨年よりももっとたくさんとれるではありませんか。しかるにそうではなく、政府の方針によって必然的に、これは漁業者が悪いのではない。政府の方針によって、公海の略奪的乱獲をやっておるというのが今日日本が当面しておる非常なこの困難な漁業問題ではありませんか。平和共存の話し合いによって解決して行こうという道が開け、そうして進めば必ず解決するに違いがないけれどもが、何のために一体これをなさないか、そうして漁業家を苦しめ、漁民を苦しめておるか。私はここにも、いわゆる平和に逆行するわが日本政府の政策がこれをここに至らしめておると断言せざるを得ないのである。どうか諸君、本法案を葬ることにおいて、平和をかち取る右手で握手を、手を長くして求めようではありませんか。そして、左手に隠しておる劔は直ちにこれを捨てることをしたらどうでありますか、国民の利益のために。
 第四は、予算の乱費と国民生活の圧迫であります。防衛費は、御承知のように逐年増大の一途をたどっているに反しまして、社会保障費、民生関係費は、これに比例いたしまして次第に圧迫されておる。よく政府は若干の増額をせられておると言っておりますが、対象が増大しておることを隠してそういうことを言っておるにすぎない。実際において民生関係費は非常に圧迫されておるのであります。総理大臣が第二十四国会の施政方針演説で、国民の経済は安定した基盤のもとに拡大発展の方向をたどって喜びにたえません、こういうことを言っておる。また大蔵大臣も、これを裏づけするがごとく、三十年度は前年度よりも鉱工業生産が増加しておることを指摘したり、輸出の貿易が増大しておることを指摘したり、国民所得の大幅の増加を指摘して、そうして三十一年度予算を組んでおるのであります。ところが、ほんとうに国民の側の経済が安定しておるかどうか。私は安定しておらない証拠を二、三申し上げてみたい。
 すなわち、労働省の本年一月三十一日、閣議に報告した資料によりますると、完全失業者が昨年一カ年平均六十七万人に達しておるのであります。これは前年の同期に比べて二五・五%を増加していることになっておる。また職安の求職申込者の数は、同じ期間において百三十万人に上っておって、一一・七%前年の同期からふえておる。不就労労働者の数も百五十万人で、同じ期間において三五・九%の増加を示しておるのである。日雇労働者は、昭和二十五年の平均四百七十四万九千人から、同じ三十年の十一月には七百五十八万人に急激な増加をしておるのであります。一方においては生産性向上の運動や、合理化政策、オートメーション、いろいろこういう政策によって労働が強化され、賃金の相対的切り下げが行われているし、現在潜在失業者の数は一千万をこえると言われておる。かかる政策は、政府は大資本の利益を擁護する政策を勇敢に行なっておるが、その遂行の途上において、労働者や中小企業者を圧迫、苦しめておる政策を行なっておるにほかならない。中小の業者の不渡り手形の状況をみまするというと、過去一カ年間の件数は、金額においても、あるいは手形の数においても五〇%の増加を示しております。すなわち百二十五億円に上っておるのであります。不渡り手形が。しかも、大資本家はますます利潤を増大して安定しておるというのが実情であるのであります。
 かかる現象は、政府は防衛産業は勇敢に育成強化をいたします。大資本を擁護しております。しかしながら、平和の産業、こういう方面に対しては、きわめて冷淡である。中小企業に対する対策も、労働者に対する対策も、労働者の昇給昇格からベース・アップの問題は、しばしばここで論議されたのでありましょうが、過去数年間くぎづけであるし、全くこの待遇というものは政府によって何ら考えられておらない。なお、防衛費の乱費、汚職、明確な分だけでも四億円に達しておる。予算の不正当支出については、すでに本国会の予算、決算、内閣委員会において取り上げられていたところであるが、審議をすればするほど、国民の血税が乱費されている実情には何人も憤りを感じないものはないのであります。この点は、再軍備に賛成される諸君、また反対する者にかかわらず、与党、野党を問わず、たれ一人としてこの実情に対して重大な関心を持たない者はない。しかも、これが過去のこととして捨て去ることができるならばよろしいが、今後なおこれが完全に是正されるという確証はどこにも見当らない。二十九年度の会計検査院の批難事項に対して、防衛庁当局のとった処分のうちで、免職はたった一人、責任者たる幹部は平然としてなおその職にとどまっておるし、国会の答弁さえ乗り切れば、あとは何ら恥るところがないという態度であるのであります。はなはだしきに至っては、検査院の批難事項も、必ずしも全部がそうであるわけではないなどと反駁しておる者があるのです、これでは、防衛庁から汚職をなくすることは百年河清きを待つと同じであります。
 これを要するに、本案は自衛隊の任務である平和と独立、国土を守る、いずれも達成することはできないばかりでなく、これを阻害しておるものである。かかる意味において、わが党は断固本案に反対し、断固反対する国民とともに、議場のすみずみまで国民の声を盛り上げ、そしてかかる法案を粉砕することにわれわれは決意を持っておるのであります。伺とぞ満場の諸君も、国民を真に思うならば、御賛成あらんことを真にお願いするものであります。(拍手)
  ―――――――――――――
○議長(松野鶴平君) 諸君に一言申し上げます。
 傍聴席に、中華民国立法院長張道藩先生以下各界代表からなる同国訪日親善使節団の御一行が見えられました。
 諸君、拍手をもって歓迎の意を表されんことを望みます。
 〔拍手起る〕
  ―――――――――――――
○議長(松野鶴平君) 野本品吉君。
  〔野本品吉君登壇、拍手〕
○野本品吉君 私は、ただいま議題となっております防衛庁設置法の一部を改正する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案の両案に対しまして、自由民主党を代表し、若干の所見を述べて賛成の意を表します。(拍手)
 委員会における審議途上におきまして、いろいろと言われた問題につきましては、委員長報告並びにただいまの木下議員の発言によって、大体おわかりいただいたことと思います。さらに私は私の議論を進める上におきまして、その他の点について、まずもって触れておきたいと思います。
 日本国憲法は、自衛権は認めるが、自衛力を持つこととその行使は許されないということ、それからわが国の防衛力は、安全保障条約に基いて米軍がこれを担当するのでありますから、自衛力などを持つ必要がない、自衛隊の漸増は、平和共存、軍縮の声の起っておる現代の傾向に逆行しておる、自衛力を持つことは、持つこと自体が日本を戦争に巻き込むおそれがある、自衛隊所要経費の増高が国民生活を圧迫することになる、海外派兵と東南アジア機構に参加する前提であると、これらの事柄が言われておるのでありまして、このことを総合をして考えますると、要するに、これは現実離れのいたしました平和憲法擁護論と無防備中立論の上に浮んでくる問題であり、議論なのであります。
 私はこれら個々の問題について反論する時間を持ちませんが、二、三の点につきまして、私どもの所見を述べ、反対論にこたえたいと思うのであります。
 言うまでもなく、戦争のない世界、軍備を必要としない世界、それは全人類が求めてやまない理想の世界であります。戦いは避けなければならない、これは普遍的な政治原理であります。従って、われわれは平和を愛好し、心からこれを冀求する点においては、社会党の諸君に劣るものではありません。しかしながら、世界の現実は、われわれの、あなた方の希望図とかなりかけ離れていることをどうすることもできない。かように理想としての平和と反平和の現実を前にいたしまして、われわれは国力、国情に応じた必要最小限度における自衛力の増強が、独立国日本として絶対必要であり、しかもそれは何ら憲法に違反するものでないという信念の上に立ちまして、さらに安全保障条約の定める国際信義といたしまして、これを実現しようとしておるのであります。
 しかるに、社会党の諸君は、わが国の自衛力を否定する一方、わが国土の防衛を安全保障条約に基く米軍の保障に求めつつ、しかも他方におきましては、その安全保障条約に基く基地問題等に対しまして、われわれの見るところをもってすれば、必要以上に反対し、抵抗し、なお米軍の全面的撤退を求められておるのでありますが、かりに諸君のこの希望が通ったそのときは、それは日本が国土防衛に対して真空状態になるときであります。このとき、この真空地帯を中心にいたしまして、思わない旋風が巻き起らないという確実な保証ができるかどうか。社会党の諸君は、また他の機会におきまして、日本、米国、中共、ソ連邦の集団安全保障の中に、世界の平和と日本の安全を求めようとしておるということを言っております。これはまことに文字通り、高いそして遠い理想論を説かれておるのでありますが、諸君は本気で、責任をもって、日本国民にこの高遠な理想の夢を抱かせて、長く春の眠りを続けさせようとするのでありますか、それが現実政治の面で可能であると考えておるのでありますか。私はこのような点につきまして、責任のある具体策の解明なくして、いたずらに声を大にいたしますところの諸君の平和論に対し、今や良識ある国民は、平和のオブラートに包まれている諸君、社会党薬局の処方について不安を持ち、その内容についての吟味検討を必要とする段階になっておると思っております。
 さらに言いたいことは、自衛体制の整備は独立完成への道であると信ずるのであります。講和条約の成立によりまして、独立国となってここに四年、わが国はいまだに祖国の安全を、駐留米軍によって保障されているという悲しむべき事態に置かれておるのでありますが、かような状態の永続は、われわれ日本人が独立の気魄と自信を失い、長く隷属国家、被支配民族の悲しい運命をたどらざるを得ないことになるのであります。これはわれわれの断じて忍び得ないところであります。自衛力の漸増は、これに応じて外国軍隊の撤収を促し、国民を自屈萎縮から解放して、独立への勇気と希望に燃え立たせる道であると考えます。駐留軍撤収後における現地住民の声が、最も雄弁にこの間の消息を語っておるのであります。私はかような意味におきまして、近く撤収を予定されております米騎兵部隊四千、海兵部隊三千、空挺団四千、合せて一万一千に上ります米軍将兵を、喜んで海のかなたに送り帰したいと思うのであります。
 自衛隊に対するいろいろの論議の中で、私の耳を疑わせましたのは、自衛隊法第三条に明示されておりますわが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対し、わが国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に努めるための自衛隊を、資本家階級の番犬であるかのごとき所論であります。それであるから自衛隊は不必要であり、それであるからこの法案に反対だと言われているということになりますと、それはまことにわれわれといたしましては、おそれ入った考え方と申さなければならないのであります。すなわち、今の日本は資本主義であるから、その社会体制の中に置かれている自衛隊は、社会主義を奉ずる者にとっては無縁のものであるばかりでなく、むしろ社会主義の敵であるというようなことになるのでありましょう。「青年よ、銃をとるな」というその呼びかけが、かような考え方から出るものといたしまするならば、それは日本を階級的分裂の状態に導くおそるべき暴言であると私は考えます。(拍手)われわれは、山紫水明のわが国は資本家のためのものでもなければ、また、社会主義者のためのものでもなく、それは絶対に日本人のためのものであります。わが民族のためのものであると確信するものであります。お互いは資本主義者であり、社会主義者である前に、日本人として生まれてきたというこの事実を忘れてはならないと思うのであります。(拍手)これから生まれてくるわれわれの子孫もまたそうであります。すなわち生まれてくるわれわれの子供は、われわれの次の世代をになう日本民族共同の宝であり、われわれが育ってき、また、今後子供が育てられるわれらの国土も、また民族共有の国土であると考えなければなりません。すなわち、われわれの子供、われわれの国土は、イデオロギーや階級を越えて、力をあわせてこれを守り、これを育てなければならないものである点に、何ゆえにお気づきにならないのでありましょうか。資本主義といい、社会主義というも、しょせんは国土と民族の上に咲く花なのであります。この国土の防衛という共同の問題を、主義や立場の相違から反対されるのは、あまりに偏狭であり、階級的利己主義であると言われてもいたし方ないと思うのであります。(拍手)
 われわれ九千万国民は、その職種、生活において千差万別、これをしさいに検討すれば、きわめて複雑な競争対立があり、同じ職種、同じ境遇に置かれておる者の間にも、恩愛怨恨、相錯綜いたしまして、微妙複雑な個人的関係に支配されておるのであります。われわれはそこに、ただ一つの共通一致の点を見出したいのであります。それは日本人であるという自覚と、祖先以来協力して守り続けてきたこの国土に住んでおるのであるという事実であります。自衛隊は、絶対に資本家を守るためのものではなくて、われわれの国土と九千万の国民を守るためのものであります。私は国民のすべてが偏見と我執を捨て、階級を乗り越えて、われらとともに自衛体制の整備に協力されることを熱望してやまない次第であります。(拍手)
 なお、その他の点につきましても、るる申し上げようと思いますが、最後に、私は自衛力の増強は、必然的に財政支出の激増をすることにより、極度に民生を圧迫し、社会保障、教育文化の進展向上など望むべくもないと言われるのでありますが、われわれの考える自衛体制の整備は絶対に、社会党を初め、一部の諸君の言われるような、バターか大砲かのバターの大部分を大砲に回してしまうような非常識、無謀なものではないのであります。国力、国情に応ずる範囲におきまして、逐次これを整備するものであることを、政府もわが党も、はっきりとこれを国民に約束しているのであります。しかもなお、こうした意見を認めることができないということは、それはためにせんとする悪意以外の何ものでもないと、かように考える。われわれといえども、無理な重税で国民生活を圧迫すれば反自衛隊思想が起る、反自衛隊思想の拡大は、防衛力の弱化を意味するぐらいのことは十分心得ておるのであります。言うまでをなく、自衛力は教育、科学、生産力の向上、国民生活の安定、政治の安定、さては国民思想の健全等々の総合的な国力そのものでありまして、これらの諸要素の平衡のとれないところに、真の防衛力などは生まれてくるものではありません。従って、まじめに防衛の問題に取り組もうとする者は、絶対に国民生活を犠牲にしたり、圧迫したりするような愚をあえてするものではないということをはっきり言いたいのであります。これを事実について見ますと、社会党の諸君は、社会保障費が足らないとか、教育文化の費用が足りないとか言われておるのでありますが、ところが、一方防衛支出金におきましては、昭和二十九年度以降、合計百八十五億円の削減を見ているのであります。このことは、自衛力の漸増に伴って逐次米軍が撤退していることを示しているのであります。社会保障費は前年度千三十三億に比し、今年度は千百四十三億円となり、これを昭和二十九年度に比べますというと、実に百八十億の増額となっているのであります。
 かように見て参りますと、過去三年間の予算の比較、対照に現われて参ります数字は、防衛費において八十億、社会保障費において百八十億、文教費において百億の増となっているのでありまして、社会保障費の増加は、はるかに防衛費の増加を上回っているのであります。いわゆる自衛力を偏重して、社会保障や教育を軽視しているなどという非難は、この数字を見る限りにおいて当らないものであるということができるのであります。われわれが民生教育の圧迫を避けるため、常に国力、国情との見合いにおいて、いかに慎重に、しかも計画的に自衛体制の整備に当っているかということが、この一事をもってもわかっていただけると思います。もっとも、防衛費を極度に削減すれば、公務員の二千円ベース・アップもできるし、米価を石当り一万二千五百円にすることができるという社会党の諸君の考え方だといたしますならば、これはまだまだということになるかもしれませんが、その結果としてのインフレヘの逆転、それからくる経済不安、アメリカとの絶縁に伴う外交的、経済的不安等、幾多予想される現実、具体の問題をどう処理されようとするのでありますか。われわれは国民大衆とともに、責任ある解明を求めたいと思うのであります。幸いに拡大均衡を目ざすわが党の堅実な経済計画は逐次進行いたしまして、近時わが国経済に対する国際的信用は著しく高まり、国内における生産、経済、国民生活も安定向上の一路をたどっておりますことは、国民のひとしく認めるところであると思うのであります。かくのごとくして慎重に進められるわれらの自衛力の漸増に対しまして、国民諸君は何らの不安を感ずることなく、われらの施策に理解と協力を賜わることを切に希望する次第であります。
 以上、若干の所見を述べまして、私はここに重ねてこの二法案に賛成の意を表する次第であります。(拍手)
○議長(松野鶴平君) 堀眞琴君。
  〔堀眞琴君登壇、拍手〕
○堀眞琴君 私は、ただいま議題となっておりまする防衛関係二法案につきまして、無所属クラブの諸君のお許しを得まして、反対の討論をいたすものであります。
 ただいま野本君から賛成論に関しまして若干の所見が表明されました。その所見の中の全般について、私は野本君の蒙を啓きたいと思うのであります。野本君は、社会党の平和論、軍備反対論は現実離れのした平和論であり、理想と現実との関係について、社会党はきわめて遺憾な考え方をしているというのが、野本君の平和論の趣旨であります。しかしながら、理想と現実、あるいは理論と現実というものを、野本君はどのように考えていられるのでありましょう。もちろん理想なり理論なりは現実を基盤にして、その上に秩序づけられたものが理論であり、理想である。しかしながら、その理論と理想をかざしてこそ、初めて現実を進展せしめることができるのであります。平和論についても同様であると申さなければなりません。あるいはまた自衛隊の問題に関しましても、特にアメリカの軍隊が撤退すれば、日本は完全な独立を獲得することができるような御意見であります。しかしアメリカと日本との間には、安全保障条約があり、MSAの協定があり、行政協定があり、これらの諸条約を廃止することなしに、単にアメリカの軍隊が撤退したからといって、それで日本の完全な独立は得られるものではありません。サンフランシスコ体制を、われわれがこれを撤廃するなり、あるいは修正するなりということなしには、日本の完全なる独立を得ることができないのであります。私は野本君がその所見の中に述べられたことに対しまして、数々の不満を持つのでありますが、時間が限られておりますので、そのあとは私の反対論の中に織り込んで申し上げたいと思うのであります。
 私の反対論の第一は、憲法に違反する法案であるということであります。もちろん憲法が自衛権を否定したものでないことは、私もこれを認めるのであります。しかしながら、自衛権と自衛権の内容、その行使につきましては、憲法ははっきりと制限を設けております。すなわちその内容につきましては、陸海空の一切の戦力を持つことをみずから憲法は放棄しております。あるいはまたその自衛権の行使についても、第九条第一項のように、国際紛争の解決の手段としては武力を用いないということと、さらにまた国際法上の交戦権を持たないということを憲法第九条は明確に規定しているのであります。従って自衛権の内容、その自衛の手段として考えられるところのもの並びにその行使については、私どもはこの憲法の規定を尊重しなければならぬと思うのであります。もちろんわれわれは自衛をするについての権利を持つわけでありますから、従ってわれわれとしては、日本の安全とそうして生存を保つためには、「諸国民の公正と信義に信頼」する、そうして日本の独立と安全を期待するという趣旨であることは、これは憲法の前文に明らかであります。こういう観点から申しまして、今度の防衛関係二法案が憲法違反であることは申すまでもありません。しかも鳩山首相は、自衛隊の設置は、かつては憲法違反の疑義を自分は持っておった、しかしながら、その後国会において防衛関係法案が多数によって承認された、従ってその後においては、憲法違反の疑義は解消された、こう述べております。しかし、この鳩山氏の発言は、憲法違反の法律を認めたことであり、法律によって憲法解釈を歪曲したものであると申さなければならぬのであります。
 それからまた自衛の問題に、もう一度戻るのでありますが、自衛隊法は、外部からの武力の攻撃を受ける、その場合においては、防衛出動をすることを自衛隊法は認めております。その場合の出動は、あくまでも受け身であり、現実に武力攻撃が行われたことを前提としているのでありまするが、しかし自衛隊法は、同時にまた武力攻撃のおそれのある場合、言いかえれば、現実の武力攻撃が行われない場合においても、これを出動することを認めているのであります。これは、いうところの先制攻撃をも予定したものと申さねばなりません。しかし、防衛出動によるところの戦闘行為を認めるとするならば、この先制攻撃を予定したことも当然だと申さなければなりますまい。最大の攻撃が防衛である、こう言われているのは軍事科学上の常識であります。ですから、防衛の立場にあっても積極的戦闘行為によって主動的な立場を確保する、これが近代戦争の要諦であると申さなければなりません。もしそうだとするならば、鳩山首相の言うところの急迫不正の侵略があり、日本は自滅を待つままであるという場合には、敵の基地の攻撃も行い得るのだという考え方は、その意味においては全く正しいとしなければなりません。しかるに政府は、これを理論的にはあり得ても現実にはあり得ない、起り得ないと強弁をいたしているのであります。これは申すまでもなく、第九条の第一項に抵触するところからの強弁でありまして、しかし、その強弁の中にこそ、憲法違反をみずから暴露しているものと申しても差しつかえないのであります。
 私の第二の反対理由は、防衛関係のこの二法案は、アメリカの要請に基くところの再軍備であり、何ら自主性を持たない再軍備であるという点であります。で、アメリカの対日政策が占領当時から今日まで一貫していることは、私がここでくだくだしく申し上げるまでもないと思います。対日方針の初期のものが、アメリカの脅威とならないように、天皇を含む政府の機関を利用して日本を隷属化するという点にあったことは、皆さんもすでに御承知であろう。しかもサンフランシスコ条約が成立して、一応形式的には独立したものの、日本の軍事化、日本の全土の軍事基地化は、アメリカの対日政策の基本方針をなしておったのであります。日本の再軍備も、この方針に基いて行われました。自衛隊の前身である警察予備隊ができたのは、ちょうど朝鮮戦争の始まった年の夏であります。マッカーサー元帥からの書簡によって警察予備隊七万五千が設定されました。その後の今日までに至る日本のいわゆる自衛力の漸増方式は、アメリカの要請に基き、アメリカの極東防衛政策の一環として、それに組み込まれて参っているのであります。たとえば昨年のダレス・重光会談におけるところの防衛問題に関する話し合いを見ましても、それが最も明瞭に現われているのであります。従って、日本の自衛力漸増の方式は、何ら自主的な立場において作られたものではなく、向う側の要請に基いての方式であると申さなければなりません。その上、日本側では防衛六カ年計画の最終年度において地上軍十八万を整備しよう。しかし、アメリカ側におきましては、昨年のダレス・重光会談においても現われておりまするように、三十数万の地上軍を日本に要請しているのであります。おそらくこの三十数万と十八万との数字は、今後の調整にまかされる問題だろうと思います。ドイツにおきましては、御承知のように平和条約に伴いまして、徴兵法の問題が出され、アメリカ側の要請に基いて、これが国会に提出されたのでありまするが、あのような反対運動が全国的に巻き起っているところの事実に徴しましても、われわれの国における再軍備問題が、今日国民の深い関心、国民の全般的な反対の中において、政府がこれを強行するということに対しまして、私は全く日本の政府は、どこの国の政府であるかということを申し上げたいのであります。(拍手)しかも、一たび外国軍隊が、外国の武力が日本に対して侵略をいたします場合におきましては、安保条約第一条、行政協定第二十四条によりまして、日米間に共同防衛の措置がとられることになっております。米軍はその際実際に主導権を握り、戦争を指導することになるのは明らかであります。どこに日本の自主的な軍隊ないしその出動ということが考えられるでありましょう。私はこの点から反対せざるを得ないのであります。
 第三には、最近の国際情勢に逆行するものであるということであります。昨年のジュネーヴ会談におきまして、御承知のように、ヨーロッパの問題、軍縮問題、安全保障等の問題が四巨頭によって話し合われました。軍縮問題につきましては、それから一カ月後に、国際連合の軍縮小委員会において具体的にこの問題が論議され、それから安全保障の問題につきましては、いわゆるジュネーヴ精神として、国際紛争は話し合いにおいて解決しようという方向が明示され、最近の国際情勢は、この紛争を平和的に話し合いで解決する、軍縮をできるだけすみやかに実現するという方向に参っております。もちろん今日、局地的な戦争の危険の全然なくなったということは言うことができないかもしれません。特に中近東の問題等、われわれとしても非常に憂慮にたえないものを持っているのであります。しかしながら、第三次大戦の危険がますすま遠のきつつある、むしろ世界の情勢は、平和に向って一歩でも二歩でも前進しようとする情勢にあるということは明らかだと思います。軍縮の問題につきましても、本年になりまして、米英仏ソ、それぞれ自国の最も適当とする軍縮の具体案を軍縮小委員会に出しております。早晩この軍縮問題等についても、国際連合において適当の措置がとられる空気が非常に強くなってきておることは、今さらここに申し上げるまでもないと思うのであります。むしろ力の政策が、今日国際的に孤立化しつつあるということを、私どもはその反面において認めざるを得ません。たとえば最近のセイロンの総選挙が、ヨーロッパにおいても、アメリカにおいても非常に大きな関心をもって見られているというのも、この力の政策が孤立化し、平和地域というか、あるいは平和勢力というか、その戦争をあくまでも回避しようとする勢力が非常に世界的に強まりつつあることの証左だと申し上げなければならぬのであります。この点から申して、日本が十八万を目ざしての地上軍、その他海軍、空軍等の増強をやるということは、全く逆行的だと申さなければなりません。
 最後に、私はこの二法案が民生安定を阻害するものであるということを申し上げなければならぬのでありまするが、時間が参りましたので、この点は説明を省略いたします。
 私は、以上の論点に立ちまして、この防衛関係二法案に対しまして、反対をいたすものであります。(拍手)
○議長(松野鶴平君) これにて討論の通告者の発言は、全部終了いたしました。討論は、終局したものと認めます。
 これより両案の採決をいたします。両案全部を問題に供します。
 両案の表決は、記名投票をもって行います。両案に賛成の諸君は、白色票を、反対の諸君は、青色票を、御登壇の上、御投票を願います。
 氏名点呼を行います。議場の閉鎖を命じます。
  〔議場閉鎖〕
  〔参事氏名を点呼〕
  〔投票執行〕
○議長(松野鶴平君) 投票漏れはございませんか。……投票漏れないと認めます。
 これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。
  〔議場開鎖〕
  〔参事投票を計算〕
○議長(松野鶴平君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数 百二十七票
  白色票   八十二票
  青色票   四十五票
 よって両案は可決せられました。
     ―――――・―――――
  〔参照〕
 賛成者(白色票)氏名      八十二名
      梶原 茂嘉君    村上 義一君
      溝口 三郎君    廣瀬 久忠君
      早川 愼一君    野田 俊作君
      豊田 雅孝君    土田國太郎君
      竹下 豐次君    高橋 道男君
      島村 軍次君    佐藤 尚武君
      小林 武治君    後藤 文夫君
      武藤 常介君    松原 一彦君
      井上 清一君    伊能 芳雄君
      青柳 秀夫君    佐藤清一郎君
      酒井 利雄君    有馬 英二君
      関根 久藏君    吉田 萬次君
      白川 一雄君    菊田 七平君
      岡田 信次君    中川 幸平君
      田中 啓一君    榊原  亨君
      藤野 繁雄君    木島 虎藏君
      宮田 重文君    一松 政二君
      三浦 義男君    石原幹市郎君
      寺尾  豊君    鶴見 祐輔君
      青木 一男君    泉山 三六君
      津島 壽一君    苫米地義三君
      佐野  廣君    小幡 治和君
      宮澤 喜一君    大谷 贇雄君
      石井  桂君    雨森 常夫君
      西川弥平治君    白井  勇君
      横山 フク君    高橋  衛君
      松平 勇雄君    深川タマヱ君
      長島 銀藏君    最上 英子君
      寺本 廣作君    青山 正一君
      石村 幸作君    剱木 亨弘君
      高野 一夫君    横川 信夫君
      松岡 平市君    野本 品吉君
      川村 松助君    堀末  治君
      堀木 鎌三君    杉原 荒太君
      吉野 信次君    笹森 順造君
      黒川 武雄君    木村篤太郎君
      石坂 豊一君    三木與吉郎君
      新谷寅三郎君    重政 庸徳君
      小柳 牧衞君    川口爲之助君
      木内 四郎君    井上 知治君
      山縣 勝見君    重宗 雄三君
    ―――――――――――――
 反対者(青色票)氏名      四十五名
      高田なほ子君    久保  等君
      清澤 俊英君    山本 經勝君
      加藤シヅエ君    安部キミ子君
      岡  三郎君    海野 三朗君
      河合 義一君    永井純一郎君
      三橋八次郎君    竹中 勝男君
      山下 義信君    木下 源吾君
      野溝  勝君    栗山 良夫君
      市川 房枝君    羽仁 五郎君
      堀  眞琴君    成瀬 幡治君
      長谷部ひろ君    千田  正君
      亀田 得治君    矢嶋 三義君
      片岡 文重君    小林 亦治君
      重盛 壽治君    大和 与一君
      加瀬  完君    藤田  進君
      湯山  勇君    千葉  信君
      近藤 信一君    田畑 金光君
      大倉 精一君    永岡 光治君
      阿具根 登君    天田 勝正君
      松浦 清一君    棚橋 小虎君
      羽生 三七君    松澤 兼人君
      岡田 宗司君    小酒井義男君
      戸叶  武君
   ――――・――――
○議長(松野鶴平君) 本日の議事日程は、これにて終了いたしました。次会の議事日程は、決定次第公報をもって御通知いたします。
 本日は、これにて散会いたします。
   午後三時四十分散会
   ――――・――――
○本日の会議に付した案件
 一、検察権並びに警察権の不当行使
  と人権侵害に関する緊急質問
 一、電波監理審議会委員の任命に関
  する件
 一、日本放送協会経営委員会委員の
  任命に関する件
 一、日程第一 日本製鉄株式会社法
  廃止法の一部を改正する法律案
 一、日程第二 公共企業体等労働関
  係法の一部を改正する法律案
 一、日程第三 防衛庁設置法の一部
  を改正する法律案
 一、日程第四自衛隊法の一部を改
  正する法律案
   ――――・――――