第026回国会 外務・農林水産委員会連合審査会 第1号
昭和三十二年五月十五日(水曜日)
   午前十時三十九分開会
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 委員氏名
  外務委員
   委員長     笹森 順造君
   理事      佐野  廣君
   理事      鶴見 祐輔君
   理事      曾祢  益君
   理事      梶原 茂嘉君
           鹿島守之助君
           黒川 武雄君
           重宗 雄三君
           杉原 荒太君
           津島 壽一君
           永野  護君
           野村吉三郎君
           海野 三朗君
           加藤シヅエ君
           佐多 忠隆君
           竹中 勝男君
           森 元治郎君
           吉田 法晴君
           石黒 忠篤君
           佐藤 尚武君
  農林水産委員
   委員長     堀  末治君
   理事      重政 庸徳君
   理事      藤野 繁雄君
   理事      東   隆君
   理事      清澤 俊英君
   理事      河野 謙三君
           青山 正一君
           秋山俊一郎君
           雨森 常夫君
           佐藤清一郎君
           柴田  栄君
           下條 康麿君
           田中 啓一君
           仲原 善一君
           堀本 宜実君
           前田 久吉君
           安部キミ子君
          小笠原二三男君
           北村  暢君
           小林 孝平君
           鈴木  一君
           羽生 三七君
           上林 忠次君
           千田  正君
           北條 雋八君
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 出席者は左の通り。
  外務委員
   委員長     笹森 順造君
   理事
           佐野  廣君
           鶴見 祐輔君
           曾祢  益君
           梶原 茂嘉君
   委員
           黒川 武雄君
           重宗 雄三君
           杉原 荒太君
           永野  護君
           野村吉三郎君
           加藤シヅエ君
           森 元治郎君
           吉田 法晴君
           石黒 忠篤君
           佐藤 尚武君
  農林水産委員
   委員長     堀  末治君
   理事
           藤野 繁雄君
           東   隆君
           清澤 俊英君
           河野 謙三君
   委員
           青山 正一君
           秋山俊一郎君
           雨森 常夫君
           佐藤清一郎君
           柴田  栄君
           下條 康麿君
           田中 啓一君
           堀本 宜実君
           安部キミ子君
          小笠原二三男君
           北村  暢君
           上林 忠次君
           千田  正君
           北條 雋八君
  国務大臣
   内閣総理大臣
   外 務 大 臣 岸  信介君
   農 林 大 臣 井出一太郎君
  政府委員
   外務政務次官  井上 清一君
   外務省アジア局
   長       中川  融君
   外務省欧亜局長 金山 政英君
   外務省条約局長 高橋 通敏君
   農林大臣官房長 永野 正二君
   水産庁長官   岡井 正男君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       渡辺 信雄君
   常任委員会専門
   員       安楽城敏男君
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  本日の会議に付した案件
○北太平洋のおっとせいの保存に関す
 る暫定条約の批准について承認を求
 めるの件(内閣提出、衆議院送付)
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   〔外務委員長笹森順造君委員長
席に着く〕
○委員長(笹森順造君) これより外務、農林水産委員会連合審査会を開会いたします。前例によりまして私が連合審査会の委員長の職を勤めさせていただきます。
 それでは、北太平洋のおっとせいの保存に関する暫定条約の批准について承認を求めるの件を議題といたします。質疑のおありの方は順次御発言を願います。
○千田正君 ただいま議題となりました北太平洋のおっとせいの保存に関する暫定条約の批准に関しまして、総理大臣並びに兼任の外務大臣としての岸総理にお伺いいたしたいのであります。
 このオットセイの条約は、戦後顧みますと、われわれとしては非常に遺憾な点があったということは、御承知の通り、オットセイ条約は明治四十四年に日米英露の四ヵ国条約があって、そうして十五カ年間の一応の基準のもとに条約が結ばれておったのであります。昭和十五年において日本側においてこれを破棄して、そして戦争中はこれに従事しておったところの漁民はほとんど総力をあげて戦争に協力しておる。終戦後になってからさらにマッカーサー元帥のもとに米軍が日本を占領して以来、占領治下において強制された一つの法律が日本国内において行われたということに対して、われわれ当時の参議院の水産委員会としましては、日本にいわゆる生息しないところの動物に対して、日本側がそれを捕獲禁止しなければならないというような法律を、われわれが甘んじてこれに承服するということはでき得ない。かつての条約というのは、いわゆるその国の領土に生息しておるところの動物であるから、その資源を保護するためにやるというので、当時の明治四十四年の条約はアメリカあるいはイギリスあるいはロシア、日本と、この四ヵ国が自分の領土に生息しておるところのオットセイの資源の保護のために条約を結んだのでありまするが、戦後におけるところの日本は、われわれのかつての領土であったところの海豹島はすでに失われておる。失われておるところのこのオットセイに対して、日本側がなぜそれを国内の漁師がこれを捕獲することを禁止しなければならないか、そこにわれわれは多大なる疑問を持ったのであります。しかも一方においては、この沿岸漁業の資源保護のために資源保護法という法律を作って、そうして魚族の資源の保護をわれわれはやらなくてはならないという法律を作りながら、一方においてはこの魚族を食い荒すところの海獣と称せられるところの、海のギャングであるところのオットセイに対しては捕獲をすることを許さない。こういうことをアメリカの強力なる力のもとにわれわれはこれを甘んじて受けなくちゃならないということはどうしても承服でき得ない。こういうので参議院のかつてのいわゆる第一回の国会から水産委員会におきまして、この問題に対して相当慎重に審議をし、またアメリカ側にも抗議をしたのであります。しかるに大勢いかんともすることなく、ついにわれわれは涙をのんで国内におけるところのラッコ、オットセイを捕獲禁止するという法律をのまなくてはならない。しかもその法律の内容を見ますると、このオットセイを捕獲した者に対しては漁具、漁船のみならず、あるいは重罰を付せられ、特にひどい場合は罰金その他いわゆる拘束して一つの刑罰を付せられるというような、過酷な刑罰の法律が残存しておるのであります。そこで私はあえて質問したいと思いますのは、日本で生息しないところの動物に対して、われわれはそれを捕獲を禁止しなければならないというその理由はどこにあるのか。たとえば、当時われわれは非常にこの論争の中心になりましたのは、ことにこの三陸沿岸から北海道にかけまして、潮流に乗じましてやってきますところのオットセイの数は、今もって的確な数字になっておらない。この間の委員会におきましては百六十万頭という、あるいは三百万頭と称せられる。かりにただいま動物園に養われておるところのオットセイの一日の食糧を計算しましてみても、一日一貫匁の魚類を食しておるのであります。かりに百六十万頭のこのオットセイが千葉県の沖合いから北海道の沖合いにかけまして浮遊しておる場合において、食糧とされるものが一頭において一貫匁食べるとするならば、毎日百六十万貫という魚族というものは、日本の沿岸の資源が荒されていくというような状況に置かれてあるのであります。かように一方において魚族が食い荒され、一方においては日本では魚族資源保護法という法律を作らなくちゃならない二つの矛盾した面において、この条約が進められるという点に、われわれ漁業に深甚なる注意を払っておる者にとっては簡単に承服することがで上さないというのが、今までの委員会の審議の中心であったのであります。そこで私はここでお尋ねいたしまするのは、これは国際条約であって国際信義に基くのだからやむを得ない、かような立場でおそらく政府は御説明になるでありましょうが、しからばこれに対して被害をこうむる漁民があるとするならば、それに対しては十分なる措置をしなければならないと思いまするが、日本の国内措置としてはどういう一体方法をもってこうした漁民に対する方針を立てるか、この点をはっきりここで明言していただきたいと思うのであります。
○国務大臣(岸信介君) 国内漁民の、これによってその生業を失うとか、あるいは損害を受ける漁民に対しましては、この条約によって、要するに得られたオットセイの皮をこの条約国に分けるという、日本の取り分が約十五億くらいになるわけでありまして、その中の一部をもって漁民に対するいろいろな補償その他の措置を講ずるということになっておりまして、詳しいことは農林大臣から御答弁いたします。
○千田正君 配分の問題はあとから詳しくお尋ねいたしますが、総理大臣にお伺いするのは、大体私が今まで述べたうちで、特に重点となりますのは、この日本の国に、領土に上陸もしなければ、生息もしないという動物に対して、何ゆえに日本がその動物を捕獲してはならないか。しかも公海の自由と称せられる漁業においてさえも禁止ができるものであるか。なおこうした動物が自由に浮遊して、しかも日本の沿岸に生息するところの魚族を食い荒すところの海獣と称せられるところのオットセイに対して、何ゆえに日本が国内措置をしてかような過酷な国内法律をもって日本の漁民を処罰しなければならないか。その点は私はどうしてもふに落ちないのであります。その点についてお伺いいたしたい。一方においては魚族資源保護法という法律を国内においては作っておる。しかもその魚族を食い荒すところの、日本に生息しないところの動物に対して、日本の国内において過酷なるところの、海上捕獲に対する捕獲禁止法という法律をなぜ作らなくちゃならないか、この点をお伺いいたしたいのであります。
○国務大臣(岸信介君) この条約はオットセイの捕獲について、捕獲を最も合理的にやるのにつきまして、どういう方法がいいかということを調査するための条約でございまして、今お話のように、一体オットセイを捕獲するのに、陸上で捕獲した方が一番適当であるか、あるいは海上で捕獲することがいいのか、いろいろな点について調査をする基礎になる条約だ、こういうふうに私は了解しております。
○千田正君 それでは暫定法律であるとするならば、しからば、国内にあるところの、今までのいわゆるアメリカ側の強圧のもとに施行されておるところの法律は、解除してもいいじゃないですか。その点はどうですか。
○国務大臣(岸信介君) ちょっと千田君の御質問の実質が私自体了解しかねますので、ちょっと農林大臣に伺っておりますから、その上に御返事いたします。
○国務大臣(井出一太郎君) それじゃ私からお答えをいたしますが、いわゆる水産資源保護法とは別に、明治四十五年でございますか、臘虎温肭獣猟獲取締法というものがございます。これはそのまま生きておるわけでありますが、今回のこの条約に加盟をいたしまして、ある期間調査をするということになりまするので、その結果に基きまして、従来の猟獲取締法をどうするかということを今後の研究課題にいたしたい、このように思っております。
○千田正君 今農林大臣のお話の一九一一年、明治四十五年に結ばれた条約が生きておるというのですか。
○国務大臣(井出一太郎君) 法律です。
○千田正君 国内法が生きておるというのですか、国内法は、昭和二十二年に新しくマッカーサー司令部の指令に基いて作った法律に対して私はいうのであります。私の今質問したのは、総理大臣は、ただいま議題になっておるところの法案は、すなわち暫定措置としての、調査期間におけるところの海上猟獲等に対する問題をテーマとした暫定法についての議題であるからという、私の質問についてのお話だったのであります。暫定法であるならば、国内の取締り法というあの法律は、終戦後においてアメリカ側に阿諛追従して作られた法律であるから、この取締り法規は一応御破算にしてはどうかという私はお尋ねをしておるのであります。暫定法であるならば、一応国内の問題は別個にあらためて考えるべきではないか。強圧されたところの、こうした屈辱的な法律はむしろ廃棄すべきだというのが私の主張なのでありますから、その点を誤解のないように一つお考えおきを願いたいと思います。
 参考までにちようど農林省の官房長が見えていますが、農林省の永野官房長は、当時、国内の取締り法規を決定するときの担当官でありましたから、そのいきさつを一応ここで御説明願います。そうすれば、大臣も総理もおわかりになると思います。
○政府委員(永野正二君) ただいま御質問のございましたオットセイに関します国内法規の関係でございますが、これはずっと沿革がございますので、私から御説明をさしていただきたいと思うのでございます。
 千田委員からお話がございましたように、戦争前四カ国で結んでおりましたオットセイの条約を、わが国は戦争の始まります前に、条約の成規の手続に従いまして、これを廃棄して、この条約の関係から離脱をいたしたのでございます。従いまして、わが国といたしましては、日本の近海に参りますところのオットセイを海上で猟獲することもできることに相なりましたので、当時、先ほど申し上げました明治年間にできました古い法律でございますが、その法律を改正をいたしまして、オットセイの海上猟獲を許可制にいたしたのでございます。その後、戦争の終結とともに占領下に入りまして、オットセイの資源を保護するために、海上猟獲をこのまま続けてはどうかということでございまして、占領下でございましたが、このオットセイの資源を保護いたしますために、日本の近海におきまして日本の漁民が無制限に海上猟獲をやるということは、生息場がアメリカ、ソ連その他の領土にわたっておりますこのオットセイの資源について、非常に悪影響があるということで、強い慫慂がございまして、このオットセイの資源を保護いたしますための科学的根拠に基いた条約が、日米両国間に締結せられるまで、その間の暫定措置といたしまして、日本の近海におきます海上猟獲を禁止をいたしますという約束をいたしたのでございます。これはもちろん、ただ一方的に永久に日本の漁民に海上猟獲を許さないというのではございませんで、いずれ平和が回復をし、日米間にオットセイの猟獲について科学的根拠に基いた公正な条約が締結されるという前提でございまして、従いまして当時水産庁といたしましては占領下でございましたけれども、特にこの条約の締結のために、海上のオットセイの資源あるいは海上猟獲がどういう程度の影響があるか、あるいはオットセイの食べておりますえさの関係、このえさが日本の重要な漁業に大きな影響を及ぼすほどのものであるかどうか、というような諸点を中心にいたしまして、占領中からこの科学的な調査を開始をいたしたのでございます。日米間の平和条約が発効いたしました後も、日本といたしましてはアメリカ側及びカナダ側と共同いたしまして同様な調査もいたしたのでございます。これらの調査に基いて、今回御提案になっております条約案が、長い間の折衝の結果でき上ったのでございます。この条約に基きますと、三条に規定してございますように、一定の場所を除いて海上猟獲は禁止されることになっておりますので、これらの関係の規制も先ほど申し上げました、非常に古い法律でございますけれども、この臘虎温肭獣猟獲取締法の運営によってできるわけでございます。従いましてこの法律は今直ちに廃止するという考え方は持っておりません。なお諸般の事情を十分研究をいたしまして、新しい法律を作る方がよろしいということになれば、その立案を進めたい、こういうことに考えておるわけでございます。
○千田正君 ただいま農林省の永野官房長から御説明がありましたが、さようなわけで皮の配分をめぐる問題もあとから出てきますが、アメリカとしましてはわれわれの考え方からいいますると、皮の独占をやろう、モノポリーをやろう、こういうのが当時から一貫して流れた考えであるとわれわれは想像するのであります。なぜならばラッコ、オットセイの皮は世界の市場において、いわゆる毛皮としては最高のものとして、アメリカとしてはあくまで維持したい、アメリカにおいては単なるわずかの一社、これを取り扱う会社は一つの毛皮会社一社だけがあるのであります。そしてソビエトロシヤの分も、カナダの分も、イギリスの分も、日本の分もその一社が取り扱っておるという、そういう関連からいうとわれわれはアメリカの一社の皮会社のために、国内におけるところのわれわれの漁業者の漁業というものも拘束して、こういう国内法を作らなければならないのかということにも、われわれは非常な矛盾を感じておったのです。今後といえども、この間の日・米・カ・ソのこのラッコ、オットセイに関する会議におきましても、アメリカ側が強く主張しているのは陸上猟獲である。皮は全部アメリカ側が寄託を受けて、そしてそれを販売して、そしてその配分の金をあなた方に分けるからだまってついて来い、これが今までの会議の内容であります。こういうことにわれわれはだまって追従していくのかという点に、残念ながらわれわれはあまり賛意を表したくない。なぜならばさっきも言いました通り、日本の国内に生息しない動物に対してまで、われわれは国内の漁民を圧迫して、しかもとったならば財産を没収する懲役は何ヶ月だ、こういうような過酷な法律を国内において取り締りをしてまでも、アメリカの一皮会社をもうけさせなければならないというそういうことに対して、私は非常にこの国際法に対する矛盾を感じているのです。総理大臣としてはこういう問題に対してどういうふうにお考えになりますか。かりにこの問題については、かつてわれわれ委員会のこの席上においても盛んに論じたのでありますが、それならば、アフリカのライオンでもあるいはインドの象でも日本には生息していないのだが、やむを得なく海外からの圧迫の場合においては、そういうものをとってはいけないという法律を国内でやらなければならない。飛躍した論理になりますけれども、そういうようなはなはだ矛盾した法律だと私は思いますので、この点をはっきり一つ総理大臣から、日本の国は自主的外交でいかなければならない、しかも国内がせばめられて、いわゆる食糧資源を持っているにすぎない今日において、あくまで農民漁民というようなこの原始産業に携わる人たちに対しては、国内的に保護していかなければならない。こういうような観点で少くともわれわれ農林水産委員は毎日論議しているのでありますから、その点について私の方としましてはどうしても納得いかん点がありますので、この矛盾に対する明快なる回答をお願いしたいと思うのであります。
○国務大臣(岸信介君) この条約は、将来オットセイの捕獲につきまして最も合理的な方法、どういうふうにやったらいいかということを調査するという科学的な根拠を、これに基いて調査するということを内容としているものでありまして、今千国委員の御指摘になりました、国内における取り締りの法規につきましては、先ほど来その主務相である農林大臣等からお話がありましたように、この調査の結果に基きましては、あるいはこの取り締り法規を改正するという問題も、将来起ってくることもあり得ると考えるのでありますが、いずれにしてもこのオットセイの今お話になりましたような考え方、御意見、これは日本の水産業としてそういう主張をしなければならぬということであるならば、やはりその科学的根拠になる調査というものを持って日本側は主張しなければならない。こういう立場から申しましてもこの条約に加盟して、そしてその調査を進めていくということは私ども最も適当な方法じゃないか、かように考えております。
○委員長(笹森順造君) 千田君簡単に願います。
○千田正君 そこでただいまの御答弁で首相のお考えもわかりましたが国内においてそれならば取り締り法を今後ともこれをあくまでしいていくとするならば、おそらく、この条約の法律によりますると六月一日から海上猟獲ができない。できないとするならばやはり国内におけるところの対処方針をはっきりしなければならない。そしてこれに従事しておったところの漁民の諸君の安定する方法を考えなければならない、われわれはこう思うのであります。そこでかつて一九一一年において、四ヵ国条約を締結した場合における、国内の漁民に対する保護的な措置を当時の政府が講じたのは、五十五隻に対して百十万円の下付金をもって当時の漁民諸君を一応納得さした。当時の百十万円といいまするとかりに千倍とするならば十一億円、五十五隻という当時の数でありますが、今日においては百六十七隻、こういうような数に上っておりますので、そういうような数字的な根拠も十分勘案しながらこれを実施してもらわなければ、密猟を防がなければならないこの法律だとするならば、これを真剣になって考えていただかなければならない。しかも国際信義を守らなくちゃならないという国際法の立場から言うならば、あくまで密猟を防ぐためのあらゆる手段を講じて、この漁民をして別な漁業なり、あるいは何らかの生活の経営する方向に報いるだけの方法を考えなければならない。これに対するところの完全なる準備が一体できているのかどうか。この点だけを特に私はお尋ねいたしまして、一応私は質問を終りたいと思います。
○国務大臣(井出一太郎君) この条約を完全に実施いたしまするためには、オットセイ回遊地帯における、猟銃をもって猟獲をいたしておりますイルカ漁業者の全面的な協力を得まして、海上猟獲禁止を効果あらしめなければならないと思うのでございます。これがためには、ただいま御指摘のごとく、いかにしてこれらの業者の転換をはかるか、その補償をどのようにするかという問題に相なるわけでございますが、これは農林水産委員会においても御答弁を申し上げて参りましたように、モウカザメはえなわ漁業にこれを転換せしめるという方向で指導をし、またこれがための助成措置を講ずる必要があろうかと思うのであります。まあその船の隻数等につきましては、この一部は試験船に用いるというふうなことも考えてはおりますが、大部分はやはり転換をしなければならぬわけでございまして、この助成措置につきましては、皮の配分を受けまする、先ほど総理から申し上げましたような金額のうちで、大蔵当局とも鋭意折衝をいたしまして、その結果、総額にしまして五億円程度というものが支出せられる予定に相なっておりまするので、これをもって大体御期待に沿えるような方向にいけることが可能かとこう考えております。
○小笠原二三男君 千田君が大綱的な質問をしましたので、大して質問しようと思われる諸点はないのでありますが、ただ、今までの答弁の範囲で、はっきりしない点についてお伺いしたいのですが、この条約の承認を求める理由としまして、大局的に見て、わが国の利盛にも合致するという政府側の所見でありますが、ただ暫定条約とはいいながら、こういう結果にはなったとしても、日本側として各種の主張がなされて、それがいれられあるいはいれられないで、こういう条約の結果を生んだのだろうと思う。で、このオットセイ問題に関しては、わが方としてはどういう主張を主眼としてなさったのであるか、今後においても、この暫定条約を本条約にします際においても、何を主眼として主張せられてわが方の立場を明らかにしようとしておるのか、この点が明確ではない。われわれからいえば、先ほど来申し上げているように、日本側としては、あくまでも海上捕獲が主張せられなければならぬと思うのでありますが、どういう主張の結果、いれられるものがいれられ、そして主張のいれられないものがいれられないという結果になったのであるか。日本側としてはどういう点に不満があるのであるか、全然不満はないのであるか、この点を明らかにしていただきたい。
○国務大臣(岸信介君) 日本側といたしましては、従来この海上捕獲をいたしてきておりますから、これをやはり続けていくということを日本側の立場としては主張したのであります。しかしこれに対しましては、とにかく日本の従来やっておる海上猟獲が、アジア系と言われておるオットセイの資源に、どういう影響を持つかということの影響につきまして、いろいろな議論があり、これが非常に悪影響を及ぼすのじゃないかという主張もありまして、とにかく調査して科学的の根拠を明らかにしていく、そしてこの問題の将来の何をきめようということになったわけでありますが、われわれとしては、先ほど来千田君もお話がありましたように、また従来の沿岸漁民等が海上捕獲に従事しておるわけでありますから、その生業の立場から、海上捕獲を続けていきたいという主張を従来も主張してきておりますし、また将来においてもそういう主張を持っておるわけであります。
○小笠原二三男君 そういう主張であったがこの際はいれられない、しかし調査の結果は、制限はされることがあっても、海上猟獲は絶対主張が通る、こういうお見通しでありますか。
○国務大臣(岸信介君) これは、今後のこの条約によるところの調査の結果を待たないと、はっきりしたことは言えないと思います。
○小笠原二三男君 では、今次暫定条約を結ぶに当って、日本側代表は長きにわたって調査しておって、海上猟獲の必要である裏づけとなる資料も持つことなしにお出かけになったのですか。
○国務大臣(岸信介君) 詳しい調査の資料等は、その専門の水産庁等から御返事してもいいと思いますが、日本としては、従来のこの調査の結果、相当な自信を持ってわれわれの主張をしたわけでございます。
○小笠原二三男君 そういう状態であったが、しかしこういう暫定条約の結果を生んだ、しかもその際に当って、わが方に対しては、陸上猟獲による配分として一五%のそれが渡ってくる、こういう結果をみたというのですが、この一五%の配分というのはどういう根拠により、どういう理由で、どういうことのために日本側に渡るということになったのですか。その性格は何でありますか。
○国務大臣(岸信介君) なかなか配分の率をきめることにつきましては、いろいろな議論があったようでありますが、一応とにかく一九二年の先例に従って一五%ときめたと、かように承知いたしております。
○小笠原二三男君 その率を聞いているのではないのであります。一五%でも、二〇%でも、条約国としての日本側にそれだけのものを渡すというその根拠、理由、配分されるものの性格は何であるか、その点をお伺いする。日本国に利益の配分をするということで、国富であるということで、ただ渡してよこすというものであるかどうか。海上猟獲を禁止するに当って幾多の障害がある、それらの措置に対して、この配分されるものが適正な利用が行われて、国際信義が保たれるようにという趣意等もあるのかないのか。交渉の過程においてそういう趣旨で、この種のものの配分がきまったのか、この点を伺っておく。
○国務大臣(岸信介君) この条約に加盟しますと、今暫定的でありますけれども、調査のために、従来われわれが海上で捕獲しておったものが制限を受けるということになります。それに対するいわば補償といいますか、これを償う意味において、陸上で捕獲したもののうち、ある部分をこれに参加する国に分ける、それが一五%になったというのは先ほど申し上げましたような根拠であります。
○小笠原二三男君 非常に明確な趣旨をお伺いして、そうであろうと私もその趣意には賛成するものであります。で、そういうことであれば、先ほど千田君のお話になりました百六十七隻かのイルカ漁業に従事しておるもので、戦時中解放せられておるときに、国策として日本特有の海上猟獲の技術をもって、技術をみがいてやってきた諸君に対して、全然これを暫定的であるけれども、やめさせなければならない。弾痕のあるものが将来において発見されるというようなことになれば、これは日本側の責任になる、国際信義にもとる、そういう諸点等もあるのでありますから、十分なそれは措置を講ぜられることがどうしても必要であると、私もその点は強く要望いたします。
 ただ、農林大臣の御説明にありましたように、大体十億程度の配分があるにもかかわらず、五億程度のそれで完璧に転換できるものであるかどうかということは、つぶさにわれわれもこれを検討しなければなりません。また将来に問題を残す点があるかもしれません。しかしその際においては総理大臣にお聞き願いたいのですが、国際信義がどうであれこうであれ法律では禁じておる。従って、禁じておるものに対して補償などということは、これはよけいなことであるというふうな大蔵当局の財政一本やりの考えのために、関係当局が鋭意努力せられることが水泡に帰す。そして徹底を欠くというようなことが起ってくることをおそれるのであります。その際においては総理大臣としましては関係大臣、関係当局の間において、やはりこの種の条約を結んだ限りにおいて、適当な調整を加えられて、関係漁民等にいやしくも国際信義にもとって、発砲せざるを得ないような、そういう状態に追い込まないようにだけは十分な配慮をこの際お願いしておきたいと思いますが、所見はいかがですか。
○国務大臣(岸信介君) 今小笠原委員の御意見の通りに私も考えますから、将来その調整につきましては十分に意を用いるつもりでございます。
○小笠原二三男君 もう時間がありませんからあと二点だけ。そうなりますが、しかし暫定条約ですから、将来海上猟獲が行われるということを日本側として期待し、主張するはずであります。海上猟獲解禁ということになっても、これはある制限つきの海上猟獲になるでしょうが、その際に猟獲に当る当事者として、やはり今日まで実績を持ち経験のある技術を持っておる、しかも政府が補償せざるを得ないような状態で漁業転換をさせるというようなこういうものに対して、優先的に海上猟獲の許可を与えていく、というような措置をとられるのが常識ではないかというふうに一応考えますが、関係当局いかがですか。
○国務大臣(井出一太郎君) ただいま仰せられましたように、この業者は特殊な技術を持っている、しかも地域的に申しますれば、岩手県の大槌町でございましたか、その辺に集中をしている。こういうふうなこともございまするので、今の御趣意のような点について考えたい、かように存じます。
○小笠原二三男君 最後に、先ほど取締り法規の問題について質疑がありましたが、この取締り法規上の刑罰の内容等については、これは国際間で一応の基準をおきめになられるのでありますか。それとも国内法として自由に、あるいは重くあるいは軽くというふうに不均衡、徹底を欠くような状態でこれが行われるのでありますか。またそれに関連しまして、現在の国内法規は、これは改正する意思はないという官房長の答弁でありましたが、国際間のこの種の取締り法規、刑罰等から見て、日本の国内法はどういうふうな関係になっているのか、この点を一応あわせて御答弁願いたいと思います。
○国務大臣(岸信介君) 今の刑罰、取締りの問題はこれは別に条約上の問題じゃございませんし、国際的な問題じゃなくて、純粋に国内法の問題としてこれを定めるべきものである、かように考えております。ただ、今御質問になりました、諸外国においてこういう同種のものに対する取締りと、日本の取締り上の刑罰等の関係がどうなっているかということは、ちょっと今わかりかねます。
○委員長(笹森順造君) 補足説明をさせます。
○政府委員(永野正二君) 国際条約に基きます国内法規の取締りにつきましては、条約の規定によって、関係各国がお互いにおのおの措置を検討する、という条文の入っている条約もございますが、ただいま提案になっておりますオットセイの条約につきましては、そういう規定がございません。従いまして、日本政府といたしましては、自主的な立場でこれに罰則を設け、取締りをしていくということになっているのでございます。従いまして、現行法の臘虎温肭獣猟獲取締法の罰則というもので十分である、こう考えております。
○委員長(笹森順造君) 本日の連合審査会はこれにて散会いたします。
   午前十一時二十七分散会