第028回国会 外務委員会 第17号
昭和三十三年四月十七日(木曜日)
   午前十時五十一分開会
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 出席者は左の通り。
   委員長     寺本 広作君
   理事
           井上 清一君
           鶴見 祐輔君
           森 元治郎君
           石黒 忠篤君
   委員
           鹿島守之助君
           笹森 順造君
           杉原 荒太君
           永野  護君
           岡田 宗司君
           加藤シヅエ君
           羽生 三七君
           佐藤 尚武君
           安部 清美君
  国務大臣
   外 務 大 臣 藤山愛一郎君
  政府委員
   外務政務次官  松本 瀧藏君
   外務省アジア局
   長       板垣  修君
   外務省条約局長 高橋 通敏君
   外務省国際協力
   局長      宮崎  章君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       渡辺 信雄君
  説明員
   郵政省郵務局次
   長       曾山 克己君
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  本日の会議に付した案件
○千九百五十七年十月三日にオタワで
 作成された万国郵便条約及び関係諸
 約定の締結について承認を求めるの
 件(内閣提出、衆議院送付)
○国際情勢等に関する調査の件
 (国際情勢に関する件)
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○委員長(寺本広作君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 千九百五十七年十月三日にオタワで作成された万国郵便条約及び関係諸約定の締結について承認を求めるの件を議題とし、前回に引き続き、質疑を続行いたします。質疑のおありの方は、順次御発言をお願いいたします。
○森元治郎君 日本国内のアメリカの軍事郵便局は、だんだんアメリカ軍が撤退をしてきたので、ことに一番人数の多い地上部隊がほとんど撤退し、また、近く海軍、空軍の方も撤退をしていくので、この際、行政協定に規定されている軍事郵便局を廃止して、これをこの条約による国際郵便の取扱いにする考えはないかどうか、もうそういう事態にはなってきたと思うのです。ことに、行政協定の二十八条の改正条項にも、そういうことがあった場合にはしかるべき機関を通じてやることができるということが書いてあるので、今できている百米合同委員会の議題にするには最も適当なものであり、時期であると思うのですが、外務当局の御意見を伺います。
○政府委員(松本瀧藏君) この問題に関しましては、まだ特にこれをシングル・アウトいたしまして議題になったことはございませんけれども、外務大臣も総理もいつも申しておりますごとく、時代が変って参りまして、事態もいろいろと変化してきておりますし、従いまして、行政協定の中の一部分改正等あたりはもちろん考えて、合同委員会等あたりの準備工作を進めておりますので、いろいろ研究いたしました上で、一つこの問題を取り上げる必要があれば一つ取り上げたいと存じます。
○森元治郎君 必要があれば取り上げるというが、私の伺っているのは、その必要が目の前にきている。この安保条約の改訂とか、行政協定の改訂とかいうことを、総括的、一般的なことだけでやろうとすることはなかなかむずかしいので、こういうきわめて可能な業務的な問題から、改訂の方向に持っていくというのが絶好の問題であろうと思うのですが。
○政府委員(松本瀧藏君) この問題に関しましては、郵政省等あたりのいろいろな意見もあると思いますので、いろいろと相談いたしました上で、一つ態度をきめたいと思います。
○森元治郎君 私は、先ほど申した通り、機も熟しているし、問題としても、非常に穏やかな問題であるし、相手も納得する問題でありますから、行政協定改訂という、安保条約改訂という政府のこれまでの政策を実行するしにおいてもきわめて適切だと思うので、すみやかにやることを希望します。
○井上清一君 万国郵便条約の第八条に、「限定連合、特別取極」の問題がございます。その第一項に「連合加盟国又は、その国の法制に反しない限り、その郵政庁は、限定連合を設立することができ、また、国際郵便業務に関する特別の取極を締結することができる。」という項目があるわけでございますが、こういう例がアメリカなりあるいはまた、ヨーロッパにありますかどうですか、伺いたいと思います。
○政府委員(高橋通敏君) ただいまの限定連合の例でございますが、わが国に関する限りは別にございません。ただ、それはスペインの連合、北欧連合、アフリカ連合というような事例がございます。
○井上清一君 相当諸外国にこうした例があることは今の御答弁でわかりましたが、日本と東南アジアの諸国――まあ韓国等も含めまして東南アジア諸国、また、東南アジア諸国相互間にこうした限定連合とか特別取りきめというようなことが私は将来必要じゃないかというように思いますが、これらの点について御見解を承りたいと思います。
○政府委員(高橋通敏君) ただいま御指摘の点でございますが、現在のところ、わが国といたしましては、いかなる限定連合にも参加していない次第でございます。また、そのための特別の取りきめもいたしておりません。しかし、ただいま御指摘の通り、アジア地域の連合の創設につきましては、将来これを検討したいと考えておる次第でございます。
○石黒忠篤君 今回の国会の承認を要求されたのは六億の約定でありますが、二個の約定が除外してあるようでありますが、その理由はどういうことなんでありますか。
○説明員(曽山克己君) お答えいたします。今御質問のありました八つの条約及び約定のうち、二個の約定につきまして日本が加入していない理由でございますが、まず、一つの現金取り立てにつきましては、現在、戦前と違いまして、日本におきまして集金郵便という制度をやっておりません。従って、外国の業務と合わないという点がございまして、これに加入しましても事実上実効がないというところから加入しておらないのでございます。
 それから第二の新聞紙及び定期刊行物に関しまする予約に関する約定につきましては、ドイツやベルギー等と違いまして、官でなく、民間で日本の場合にはこの業務をあまねくやっておりますので、今ここで官がこれを施行することになりますと、その方面に対する影響もございますし、かつまた、外貨の獲得、そういう面におきまして包括的に民間でこれを取り上げまして実施する方が好都合であるというような面がありまして、ただいまのところ、民間にまかしておる次第でございます。従って、これに加入していないのでございます。
○石黒忠篤君 取り立て郵便の制度が行われておった時代において、この国際条約はなかったのでありますか。
○説明員(曽山克己君) ございました。ございましたが、もう一つ申し上げ忘れましたけれども、為替管理の関係もございまして、実はこれは現金をあとで為替で送付するというような仕事もございますので、内国でやっておらない仕事をやることのほかに、為替管理上の諸問題もございますので、さしむきは一応やらないという線で加入しておらないのでございます。
○石黒忠篤君 為替取り立て郵便のあった時代に条約があったにかかわらず、入っておらない、戦後制度がなくなったがゆえに入っておらないということは、私はその理由は、今回御提出になった理由にならぬと思うのです。そこで、為替管理のつけ加えられた理由がおもな理由であると思うのでありますが、いかがでありましょうか。
○説明員(曽山克己君) 実は間違ったことを申し上げましてまことに失礼でございました。戦前におきましても現金取り立ての条約には入っておりません。従って、先生が今御質問になりました内容としましては、為替管理の関係もきわめて大きな要素をなしておるのでございます。
○石黒忠篤君 取り立て郵便の制度があったときに入っておらなかった理由は、どういう理由ですか。
○説明員(曽山克己君) お答えします。当時集金郵便の制度はございましたのでありますけれども、実際上当時これは入るか入らないかをきめました場合に、きわめて実例が当時におきましては少いというところから、当時入らなかったように聞いております。
○石黒忠篤君 条約に関係のないことでありますが、集金郵便の制度は、私は非常に便利な利便を広く与えていると思いますが、何ゆえに政府は、この制度をすみやかに復活なさらないのでありますか。
○説明員(曽山克己君) おっしゃるように、きわめて利用者の方々からは便利な制度であるという声も聞いておるのでございますが、また、私の方としましては、一日も早くこの制度の復活につきまして努力いたしたいと思っておりますが、きわめて言いわけになって恐縮でございますけれども、集金郵便と申しますと、現実に各戸々々に参りまして金を郵便配達人が集金することになるのでございます。現在集金等につきましては、貯金、保険、その他の郵政省のやっております仕事についてやっておるじゃないかという御質問があろうかと思いますけれども、内部的には郵便の配達人がそれをやるということになるのでありまして、郵便の配達人につきましては、きわめて定員が窮屈でございまして、そこまでただいまのところ手が及ばない、もし定員が十分にとれるという暁におきましては、これが実施をすみやかに開始したいと思っております。
○石黒忠篤君 非常に利便と思われており、必要だと思われるならば、この方に十分に力をお尽し下さらんことを私は希望いたします。
 次に、伺いたいのは、定期発刊物に関する件については、民間がやっておるから、それに対する影響も考慮して云々という理由で入らないことになっていると御説明になっておるのでありますが、オタワでもって新たに制定された貯金の国際業務に関する方も、これは為替銀行が十分やっておるのであります。それに影響のないことは私はないと思う。にもかかわらず、それに入られるのは、推察するというと、これに関するオタワの会議で委員に日本がなったから入るという理由以外にないように思うのでありますが、どうでありますか。
○説明員(曽山克己君) ただいま先生から御質問があり、また、この前の委員会におきまして石黒先生から御質問のありましたことにつきまして、貯金局次長からお答えがありましたように、この新しく創設されましたところの国際貯金に関します約定につきましては、現実に情報の交換その他有効なる意義がある、成果が上るという意味におきまして、また、さらに、現在の為替管理のワク内におきましても何がしかの効果があるという意味におきまして入ったことと同時に、先生が今御指摘になりましたように、世界でも有数な貯金業務を施行しております日本といたしまして、委員に選ばれました以上は、これに対して加入をしないということにつきましては批判もあろうかと思いますので、加入したという工合にこの前お答えがあったと思います。
 なお、私どもの郵務局関係の定期刊行物及び新聞紙に関しまするところの約定に入っておらないのは、その間際貯金に関する場合、つまり銀行送金の例がある場合に入っておるにもかかわらず、やっておるのと合わないじゃないかという御質問かと思うのでありますけれども、この点につきましては、決して民間側から官業に対して反対があるという意味ではないのでありますけれども、多年たとえば丸善とか教文館とかあるいは紀伊国屋という、具体的な例をあげるのはいかがかと思いますけれども、そういう民間業者が実績をあげておりますし、今早急に官がこれを施行しましてもあまり実績はなかろう、また、むしろその方が先ほど申しましたように、包括的に為替の許可なんかをとっておる関係なんかもありまして、それで一々大蔵省と相談して折衝してやるよりもその方が便利だろうという意味におきまして、実は加入しておらないのであります。
○石黒忠篤君 私は御答弁十分だとは思いませんが、この程度で。
○説明員(曽山克己君) 先生から不満足であるというお言葉がございましたので、一応陳弁申し上げますが、ただ、これにつきましては、次の大会議を待たずとも加入できるようになっておりますので、もし非常に要望が高くて、かつそういう業務を開いた方が国民のために便利であるということがございますれば、私どもといたしましては、これに加入することはやぶさかでないつもりであります。
○委員長(寺本広作君) 他に御発言もございませんようですから、本件に対する質疑は、終局したものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(寺本広作君) 御異議ないと認めます。
 それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。――別に御意見もないようでございますが、本件に対する討論は、終局したものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(寺本広作君) 御異議ないと認めます。
 それではこれより採決に入ります。
 千九百五十七年十月三日にオタワ下作成された万国郵便条約及び関係諸約定の締結について承認を求めるの件を問題に供します。
 本件を承認することに賛成の方の挙手をお願いします。
  〔賛成者挙手〕
○委員長(寺本広作君) 全会一致でございます。よって本件は、全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 なお、本院規則第百四条による本会議における口頭報告の内容、第七十一条により議長に提出すべき報告書の作成その他事後の手続につきましては、慣例によりこれを委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(寺本広作君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。
 それから報告書には、多数意見者の署名を付することになっておりますから、本件を承認することに賛成された方は、順次御属名をお願いいたします。
  多数意見者署名
    鶴見 祐輔  井上 清一
    鹿鳥守之助  笹森 順造
    杉原 荒太  永野  護
    石黒 忠篤  安部 清美
    加藤シヅエ  森 元治郎
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○委員長(寺本広作君) ちょっと速記をとめて。
  〔速記中止〕
○委員長(寺本広作君) 速記を起して下さい。
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○委員長(寺本広作君) 次に、国際情勢等に関する調査を議題とし、藤山外務大臣に対して質疑を行うことといたします。質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
○森元治郎君 モスクワの漁業交渉についてお伺いしますが、今朝のラジオ放送なんかで聞くと、大体オホーツク海の出漁は一船団で、その他の漁獲高十万トン、それからオホーツク海の来年以降の出漁については、こちらから自粛する、赤城代表の責任において、そういう約束をして、共同調査をする、こんな点で妥結したというふうに聞いておりますが、間違いありませんか。
○国務大臣(藤山愛一郎君) まだ昨日の会談の結果につきましての公電が入っておりませんので、正確なことを申し上げかねるわけでありますけれども、オホーツク海の問題については、一船団というソ連の相当強い主張がございます。それからオホーツク海立ち入りの問題につきましては、日本側としては共同調査の結果を待つ、そうして立ち入りの問題をあらためて検討するという態度を実は主張しておるわけであります。その意味において、あるいは共同調査の済むまで自粛するという問題もあり得るかと思うのでありますけれども、まだ公電が入っておりませんから正確なことは申し上げかねます。
 それから総漁獲量の問題についても、十万トンということは、ある程度確保できると思いますが、その数量が若干ふえるかふえないか、まだ最終的には、申し上げたように公電が入っておりませんのでわかりませんが、十万トンは確保できる、まあ十二万トンを、去年並みということをわれわれ主張しておりますが、それが歩み寄れるかどうかということは若干疑問のように思います。
○森元治郎君 きょう、高碕代表がこれからお帰りになるが、その報告を何か特殊な期待されるものを持ってこられるのか、この段階においては単なる報告であって、向うの交渉経過を見てそれでよろしいという訓令を出す段階に来ておるのか、まあ私は来ておると思うのですが、その点、どうですか。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 高碕代表が十四日に出発されておりますので、その後、昨日のイシコフ・赤城会談等もございます。従って、交渉は進展しておりますから、高碕代表が来られた結果を待って、その間の事情を聞いて、何か特に赤城代表に訓令することがあるかないかということは、私ども申し上げかねるのでありますけれども、高碕さん帰ってこられれば、大体の経過を伺うということになるのではないか、こう思っております。
○森元治郎君 今のお話しを聞くと、総漁獲量の十万トンがもっと上るかもしれぬ、あるいは上らないかもしれぬというだけで、大体オホーツク海の共同調査まで出漁自粛、一船団、この線がまとまる線だというふうに大臣のお答えから伺えるので、もし、これでいいというならば、訓令を出すのか、もうそれは赤城さん一存で向うにおいてやれるのか、請訓が来ているのか、どういうふうになっているのですか。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 最終的には政府の訓令を待つ、さらに最終決定のときには訓令を仰いでもらいたいという電報は前から打っております。従って、公電が着きまして、そういうことについての昨日の会談その他が決定して、その交渉のいかんによっては、最終的訓令を出す段階に入るかもしれないと思っております。
○森元治郎君 きわめて妥当な、落ちつくべき線だと思うのですが、もう一ペん伺います。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 十分交渉をされておりますししますので、私ども、今最終的なことを申し上げかねますけれども、赤城代表としては、十分の努力を尽され、もしそういう点で得るならば、相当ソ連側も日本側の事情をその点認めてくれたものだというふうに考えております。
○森元治郎君 ここで私伺いたいのは、オホーツク海の問題ですが、これは何としても、例の河野・イシコフ間の会議録か速記録か、あるいは口約束か何か知らぬが、河野・イシコフ約束、取りきめ、そういうものが災いをしておると思う。赤城さんの、モスクワからの新聞社等の国際電話でも、やはりこれが何か障害になっているということを言っておる。ここで河野さんが、やはりオホーツク海から下るのだということを約束をいたしたことが災いしておるので、領土問題でも河野・ブルガーニン会談とか、河野・フルシチョフ会談録というものを向うが利用する、日本政府はどういうものかこれを見ようとしないで避ける、向うはそれを利用して、あなたの方の有力なる国務大臣がこういうことを承諾しておるじゃないか――当時の農林大臣、今の企画庁長官、こうやってちらつかせられてはびくびくしているので、それで向うで、御希望ならば見せましょうと言われると、また、こっちは逃げる、そういうことが大へん災いしておるので、この際、政府として、そういうものがあるなら出せとどうして見ないのか。重光さんは向うでごらんなさいと言われては逃げた、今度は高碕さんも、そういうものはあるはずがないと言って、向うへ行ってちらつかされると、結局高碕さんも、どうもあるらしい、何かあるらしいと言って逃げておるが、これが災いのもとだから、政府は赤城さんに訓令して 一体どういう約束があるのか、あるなら見せろ、それが約束がないなら約束はないと天下に声明するならば、今後の交渉の上に非常に明朗になると思うし、また、わが国の権益を守ることになると思いますが、そういう措置をとるお考えがあるか。
○国務大臣(藤山愛一郎君) この問題につきましては、河野氏がしばしは言明されておりますように、そういう文書もないし、約束もないと言われているわけであります。われわれは、それを信じているわけであります。むろん河野氏は、日ソ漁業条約のできます以前に、ソ連といろいろな意味で話し合いをされたわけでありますから、そういう話し合いの際にいろいろな問題について広範に議論をされたことだろうと思います。しかし、漁業条約以前に、そういう問題が個人的に話をされましたとしても、それが漁業条約以後の情勢に対して全く変化をしているということは当然のことでありますし、そういう程度のことでありますれば、こちらから特に申し入れをする等の必要はないと私は考えております。
○森元治郎君 そうすると、長く日ソ間に密約らしきものがいつまでも低迷しておるということは 今後とも非常にいけないことだと思う。ですから漁業交渉がまとまった機会にはっきりすることが大事だと思うのですが、重ねて伺います。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 御意見としては承わっておきますが、政府は、別に今そういうふうには考えておりません。
○森元治郎君 それでは時間がございませんから、簡単にどんどん進みますが、沖繩の土地一括払いについて大へん藤山さんは御熱心で、例のムーア長官の十一日の声明は、アメリカの協力を得たものだというふうに判断をされていると私は思っているのであります。私が見るところでは、いつも選挙前にアメリカは助け舟をよく出します。助け舟にすぎない。それはもちろん見当はつくでしょうし。しかし、これは選挙前の助け舟と解釈するのですが、大臣のお考えは少し甘過ぎる、こういうふうに思います。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 土地一括払いを停止して、そうしてこの問題を再検討しようということは、われわれの通報を受けている限りにおきましては、国務省と国防省との間に了解を得て、そうしてムーア長官をしてその発言をなさしたということになっております。従って、われわれとしては甘く考えるというお言葉もあるわけでありますが、また、私はいつでもいろいろな問題に甘く考え過ぎるかもしれませんが、まあしかし、善意にそういう問題を取り上げてくれたという立場から、われわれとしては、再検討するということを信じまして、そうしてそれに対して日本側がこうもしてもらいたい、ああいう方法もとってもらいたいということをこの際、その言明の基礎の上に立ってできるだけ申し入れをし、沖繩の実情等を申していくことが必要だと思うのでありまして、意図がどうあろうと、われわれとしてはそういう意味でできるだけこれを利用して参りたい。こう考えます。
○森元治郎君 話を日中貿易協定に進めますが、外務大臣は、中共の国際貿易促進の主席の声明に対して、誤解があるようだというような記者会見かどこかでお話ししているように記憶しておりまするが、誤解があるならば、どういう解かれる努力をされるかどうか。一方官房長官は、これがだめなら勝手にしろというような捨てぜりふを述べておるけれども、はなはだけしからぬことで、やはり大臣が言われるように、誤解があったら解くと、どういうふうに解かれるつもりか。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 南漢宸氏の談話というものは、相当私も誤解がある点があるのじゃないかというふうに考えております。従ってわれわれとしては、われわれの立場を変更するわけには参らないわけでありますが、しかし、もし日本の立場について誤解があるならば、三団体等を通しても、また、十分その説明をする必要があると思います。しかしながら、国旗の問題については、累次われわれが説明しているところでありまして、特にこの際、説明をしなくとも、十分過去のいきさつから見まして了解をし、また、三団体が参りましたときにも、すでに池田団長からそういう問題については、十分日本の真意を知らせておりますので、私はあの声明だけから見れば誤解があると思えるのでありますけれども、しかし、何らかの形でそういうものを今特に説明する必要はないかと、こう考えております。
○森元治郎君 この問題をこじらせたのは、われわれとしては、愛知官房長官の談話というものであろうと思うのであります。ああいう趣旨のことは、もう三団体の代表、それから自民党、池田さん、社会党一致して向うに行って十分話し合っている。向うも了解している問題なのに、ことさらに、へたな法律論みたいなものばかりを並べるということは、ほんとうに政府回答をぶっこわしちまうようなことになるだろうと思うので、こういうことは私は取り下げたらよろしかろう、こう思うのですが、今後政府は、事態を静観していくという態度と関連して、また、協定をほんとうに実施するつもりがあるのかどうか。実施させるつもりがあるのかどうか。そこの決心のほどを伺いたい。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 第四次協定につきましては、政府は支持と協力とを与えるということを申しておるわけでありまして、貿易の拡大その他について民間協定ができるだけスムーズに運行されることを所期しておるわけであります。従って、その範囲内において、政府としてはできるだけの努力をすることは当然のことであります。ただ、お話のような官房長官談話というようなものは、今もお話のありましたように、累次池田団長初め党の幹事長その他も皆言っていることなのでありまして、特に取り消すというような必要のあるものでなくて、従来言っていることをその機会に重ねて言ったというにすぎないと、こう私どもは考えております。
○森元治郎君 言わずもがなのことを長々と述べたのは、どうもこの文章内容から見て、国民政府と打ち合せのコミュニケみたいの印象をこれは受けるのです。国民政府の言いたいことをそのまま文章にして、まあこれで国民政府納得してくれという辛い立場で出したような感じがするのですが、その点が一つ。
 それから例の国旗の問題ですが、どこの国の国旗であろうと、権利云々の問題はさておいて、国旗に対しては敬意を払うのだということをおっしゃる必要があるのじゃないか。よほどこれは相手の感情をやわらげることにもなり、大へんけっこうだと思うのですが、どうでしょうか。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 官房長官談について、特に国民政府側と何らかの話し合いをいたしたのではないわけであります。国民政府側に対しては、日本の中共との民間貿易を締結するまでのいきさつを申し、中共を承認してないという立場で発表しているというので、数次の説明によって理解を求めたのであります。
 それから国旗の問題につきましては、御承知のように、未承認国のことでありますから、国旗としてこれを扱うわけにいかないのは当然でありますが、しかし、掲げられたものに対して、個人の器具と申しますか、器物と申しますか、そういうものの破損に対して、刑法の範囲内で処置をすることは、それは当然のことでありますので、その立場は政府も前からとっておるわけであります。
○森元治郎君 やはりそういうことは中共側でもよくわかっているので、ことさらにその権利がどうだ、刑法がどうだというような法律論みたいなことでやるからうるさいのだ。向うは納得している。ただ、国旗に対してはそれは敬意を表するのだ、未承認国の国旗であろうと、どこの国旗であろうと。こういう態度を宣明されることが事態の緩和に役立つと思うのですが、抽象的にこういうことをおっしゃることは大事だと思うので、もう一ぺん伺います。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 私の方といたしましては、やはり国際慣例に従いまして、未承認国の国旗としてはそういう権利を認めるというわけにはいかないのであります。むろん個々の個人が何らかの形でその店のしるし、あるいは団体のしるし等を掲げましたときに、それ自体を損壊するということを希望しているわけでも毛頭ございませんし、それらのものを国内法によって保護するということは、当然すべきことはしなくてはならぬ。こう考えておるのが従来通りの政府の見解なのであります。
○森元治郎君 それではこういう事実があったかどうか。この事件が起きてから、政府はあわてて国民政府と−堀内大使と――外交部長といろいろ話をして、国民政府の立場は、日本にある、日本に作られる中共の通商代表部に国旗を掲げさせることに絶対に反対だと、掲げさせないと、初っぱなから、そういう態度で臨んでおる。そうして、これに対して一体政府はどういうふうに答えているか。新聞電報ですが、七日の夜の堀内大使と葉外交部長との話では、堀内大使は、国旗は掲げさせないように努力すると約束して、向うを一応納得さした、こう伝えている。そうするならば、これは、通商代表部を置かせないと、支持と協力を与えるなんというのは単なる形式であって、実体は置かせない、中共代表部を置かせない、協定を実施させないということにも通ずるんですが、この事実と、これに対する政府の方針を伺いたい。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 国民党政府としては、むろん御承知のように、日中貿易の民間協定ができましたときに、非常に一時憤激したことは事実であります。従って、それらの問題に対しては、時間をかげながら十分説明をしていくと、そうして、日本としては日中貿易を経済的な立場からいってやらざるを得ない点を十分説明もいたしておりますし、また、それらの問題について、国旗等の問題については、国内法の範囲内で処置するほか方法はないのであって、その点も十分な説明をいたし、時間がたつにつれて、向う側――国民党政府側においても理解も深め、あるいは反省もしてきたと思うのでありまして、そういう意味において、十分な理解を得たものだと私は考えております。
○森元治郎君 二点は……、そうすると、掲げさせないということは、向うは引っ込めたと、こういうふうに了解してよろしゅうございますか。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 向うは、むろん掲げさせたくないと思うのでありますが、国民党政府にしても、掲げさせないとまで言い切ることはできないのではないかと思うのでありましてわれわれとしても、できるだけそういう意味において理解を達するように努力したつもりであるのであります。
○森元治郎君 そうすると、堀内さんが掲げさせないように努力しようと言ったことはなかったわけですね。
○国務大臣(藤山愛一郎君) いろいろな意味において、むろん説明をいたしておりますから、それは、中共側にも十分な理解を得たいということは申したかもしれませんが、掲げさせぬように、むろん日本としては、先ほど申し上げておりますように、未承認国の国旗でありますから、国旗としてこれを認めて、掲げさせるとか掲げさせないとかいう問題を論議するわけではないのであります。
○羽生三七君 森さんの御質問で大様尽きておると思いますが、なお一、二点お伺いしたいことは、あるいは、もしダブっておったらお答えなくてもけっこうですが、まあ、第四次貿易協定の問題がこういうことになって、このあと、政府は静観すると言われておるんですが、このまま様子を見ておるんですか。いずれ、近く議会も解散になって、しばらく空白状態が続くと思うんですが、やはり何も、今、即時こういう混乱した問題を打開する処置をとることなく、様子を見るということが、政府の今当面の方針なんですか、何か処置をしようということなんですか。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 御承知のように、今、中共は承認しておりませんので、政府が直接中共側に誤解のあるところを解く、その他の方法というものは当然考えられないわけであります。むろん、政府は、誤解のある点も、私としては南漢宸のああいう声明の中には、日本の実情について誤解のある点もあろうかと存じておるわけでありまして、そういう意味において、日本の空気、あるいは今日まで政府のとってきた態度等を十分理解をしてもらえば、やはり一時的な興奮というものもおさまっていくんじゃないか、そういう上に立って将来の問題は考えらるべきじゃないか、こう思っております。
○羽生三七君 私ども、実際に台湾と中共との関係はなかなかむずかしいと思います。そう簡単に割り切って言おうとも思っておりません。それは、政府の立場もお察しいたします。お察しするが、しかし、片っ方にはよく了解を求めるが、片っ方は民間にまかせっ切りで、こういう状態になってもそれは知らぬことだと。今、外務大臣は、それはいずれよく納得も求めてと言うけれども、納得を求めるような方法は講じないんです、国交回復しておらぬとおっしゃるから。そうすると、向うが何とかして出てくるまでは民間団体まかせか何かで、政府としては何も処置をとらぬ。これは民間団体が少しばかり動いたって、今すぐどうなることでもないと思うんです。そういう意味で、国府にもあれだけの処置をとって十分納得をさせられるなら、何らかの形で、外務大臣が直接どうこうということじゃないんですが、何らかの形でやはり問題を打開するような方法をお考えにならぬと、私は適当じゃないと思いますが、依然として向うの出方を待つという方針ですか。
○国務大臣(藤山愛一郎君) むろん政府として、日中貿易をスムーズにやる、そういうことのために民間代表部の設置等については、支持と協力を与える立場をとるわけでありますから、貿易拡大についてじゃまをしよう、特にチェックしよう、という考え方は持っておらぬのであります。従って、政府として十分な理解を得て、そうして問題が解決――一時的にしましても、ああいう中共側が態度をとったことが解決されることを希望いたしておるのであります。
 申し上げましたように、今直接政府がこれに対して手を打つというような方法もございませんし、また、現在の段階では、しばらく様子を見ながら向うの理解が深まることによって、おのずから道が開けてくるのではないかと、こういうふうに考えております。
○羽生三七君 それは、国旗掲揚の権利問題に触れると、私なかなか問題はむずかしいと思いますけれども、とにかく向うでも、そうあえて、私は必ずしも無理を言うこともなかろうと思うので、むしろ刺激したのは日本だろうと思うんです。だから、そういう場合には、むしろ事実問題として、黙認をして、権利問題なんか、日本がかれこれその権利問題を起すような形の発言を日本はやらない方が私は賢明だと思っております。問題はむずかしいけれども、やはり中共にもある、中共自身としての何らかの考えがあるでしょうが、しかし、今度のような問題を起したことは、私は何と言っても先日来の談話なんかの非常な拙劣さから来ておると思いますので、それはそれで、何か別に他意はないような意味のことをもう一度何かおっしゃるお考えはありませんか。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 官房長官談話がしばしば問題になりますが、あの問題は、先ほども森委員も言われましたように、過去においていろいろな人が言っていることを繰り返してこの際言ったというにすぎないのでありまして、そういう意味から言えば、おのずから理解を得ることもあるのではないかと、こういうふうに考えておるわけであります。
○羽生三七君 もう一点だけお伺いしますが、率直に申し上げて、今度の問題を契機に、岸内閣の政策というものは中間的――両岸という言葉がよく使われますが、中間的政策のやっぱり何か決着を迫られるような段階にだんだん近づいていると私は思っております。
 そこで、私のお尋ねしたいことは、直接今の問題に関連はありませんが、間接的の関連になりますが、一体どういう条件がくれば、政府としてもっと積極的に中共の貿易なり、国交回復の問題に踏み切るのか。ことごとく国際情勢待ちか、一体国際情勢がどういうふうに転換すれば踏み切るのか。むしろ日本自身の判断で相当ウエートの置き方を変えていってもいい段階に私はきておると思うのです。どっちをどうしてということを明確に今一刀両断にというような意思はありませんが、しかし、いつまでたっても国際情勢待ちで、世界情勢が変って、アメリカの態度が変ったらというようなことでは、私はもういけない時期にきておると思う。従って私はやはり日本政府自身として、ある程度の見通しを立って、国際情勢待ちというのでなしに、国際情勢をむしろ日本がみずから切り開いていくというお考えを固めながら、問題を徐々に切りかえていく、方向転換をしていくという、そういう時期じゃないかと思う。また、そういう方向にウエートを置くべきだと思う。いつまでたっても今のような状態であることは、私は決して得策でない。貿易のみならず、世界情勢の上からいっても、得策でないと思いますが、そういう意味の見通しについても、この際、一つおざなりでなしに、明確にお答えいただきたいと思います。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 貿易につきましては、かねがね申し上げておりますように、政府としては、これが拡大をし、スムーズにいくということが必要であるということを思っておるわけでありまして、その方針については、今日変っておらぬ。また、今後ともその方針で進めていくと思います。政府の政治的な問題につきましては、国際情勢待ちだというお話もあるわけでありますが、むろんわれわれとして、国際情勢の推移というものを十分見て参らなければなりませんし、世界の動きというものを見て参らなければならぬと思います。そういうことは当然のことでありまして、将来、むろんこういう問題についてどう態度をきめるかというような場合において、日本が他国に追随するということではなくして、日本みずからの判断によって決定するのは当然であります。ただ、その判断をするのに、国際情勢というものが非常に重要な要素であるということを申し上げるわけであります。
○笹森順造君 この前の委員会の際に、海洋法国際会議に関する日本の政府の立場及びその状況について、一通りの基本の御説明をいただいたのでありますが、その後、だいぶこの会議も進展しておる模様でありますので、その後のことについて、お尋ねしたいと思うわけであります。
 それは、今も羽生委員からお話のありましたように、今の政府の外交の方針は、自主的な立場を堅持していこうという新しい路線にやはり顔を出してきておるようにも考えられる、こういう意味で、日本は日本独自の外交の考え方がありましょうが、しかし、自国の利益だけで他国の利益を無視するということは、今後、国際情勢に立つ日本の外交のやり方ではないと思う。特に、この海洋法の国際会議等に処する態度においては、こうしたことが大事じゃなかろうかと実は思うわけであります。そうして、今まで、外務大臣のこの間のお話でも、この領海の問題に関しましては、従来の伝統的なる十八世紀以来の三海里説を堅持するのである。しかし、情勢によっては、できるだけその範囲を広げない、それに近い線でいこうということは、この間お話があったので、これは私どももその当時の御答弁として承わっておったのでありますが、最近、新聞等において報ずるところによると、この三海里説はくずれてしまうのではなかろうか、しかもまた、十二海里説を主張し、あるいはまた、その他いろいろな、水深の尺度によってきめるとか、いろいろな問題が出てきておるようでありますが、ちょうどイギリスが妥協案として出した六海里説を、あたかも日本が堅持するがごとく、あるいは支持するがごとき報道も伝えられておりますので、今後、この十八世紀以来の大きな問題を処理する中心に、日本がある意味において進出するという場合に、よほどはっきりした態度をここでおきめ願わなければ、相当将来においてこれは問題をかもすと思うので、特に海洋国として日本が大事な面に当面しておると思いますので、この間の御答弁に引き続き、政府の確信を、現在の状況と将来の心組みをこの際御解明を願いたいと思います。
○国務大臣(藤山愛一郎君) ただいま笹森委員のお話のありましたように、また、前回私が申し上げておりますように、日本としては、三海里説を主張しております。が、しかしながら、現在の情勢では、三海里説が三分の二の多数をもって総会を通る見通しは、遺憾ながらないのではないかというふうに見られるわけであります。また、十二海里説等が果して三分の二を取って通るかどうかもわからない。これらの間に処しまして、御承知のように、数年にわたりまして、国連が委員会を作って、そうして海洋法典を作ろうということなんです。これらの問題も、どれも採択されませんと、再びもとの、実は海洋の何といいますか、無警察状態みたいなものに陥る憂いもあるわけであります。そうすると、それぞれの国が勝手に、新法典ができない限りにおいて、領海の問題がきまらない限りにおいては、それぞれ自分のところは十二海里だ、自分のところは三海里だ、自分のところは二十海里だというような主張を続けて、無警察状態に陥る心配もあるわけであります。従って、国連が数年かけましてこういう研究を遂げた結果、海洋法典を作ろうということによって何らかの決定ができますれば、そういう海洋上における無警察状態というものが、一応終止符を打つことになり得ると思うのであります。その意味からいいますと、三分の二の多数を取り得る――取る規定ができますことが望ましいことだと思うのです。しかし、日本の立場としては、漁業の問題等は、日本の国民生活の上からいいましても、日本の漁業者の立場からいいましても、非常に重要でありますから、それが非常に長い距離にきまりますことは、とうてい耐え得られないことでありまして、そういう意味からいうと、できるだけ三海里説がどうしても多数を得られないならば、一番三海里説に近い点でもって三分の二がもし通るような案がありまするならば、それを支持して、三分の二の多数によって海洋法典ができるということを私ども希望するわけであります。これが日本の根本的態度であります。従って、三海里説がかりに敗れました場合に、一番近距離の線と申せば、六海里説ということになろうと思うのであります。そのほかに、三海里ではあるけれでも、十二海里までは漁業だけの面においては領海と同じような扱いをするとか、いろいろな案がございます。そういう問題を、今専門家も行っておられることでありますから、十分検討されておりますけれども、いざこざが一番起らないのは、漁業上の権利を十二海里まで伸ばすというようなことはかりに領海は三海里ときまりましても、好ましいことではないのでありまして、六海里程度でもって全部が解決するような状態に法典ができますならば、三海里説は敗れましても、その方が次善の策ではないか、こういうふうにも考えられるので、現在そういう立場をとりましてせっかく努力をいたしている段階でございます。
○笹森順造君 北海の漁業に関しましては、御承知の通りに、漁民は北海道周辺、あるいは千島、樺太等において、この領海の問題については、日本は三海里を主張して、現在までやってきておったが、ソ連は十二海里を主張して、その間に食い違いがあって、日本の船が拿捕されている。あるいはまた、その従業員が監禁されているという事実、これらの問題等を考えてみましても、今のお話しの領海を三海里にし、あるいは漁業権を十二海里までにするというようなことは、非常に関連性があって、大きな問題と私は考えられるわけでありまして、そこで、今の海洋法典ができますれば、これは一応そこで一つの格好ができるわけでありますが、なかなかその間にひまがかかるだろうと思いますので、そこでこの現在領海を主張しておりまする三海里、あるいは十二海里、あるいは六海里のその領海の中において、日本の国が、それらの海洋法典ができるまで、個々の国との間に、いかなる外交的な方法をとりなさるのか。たとえば、私どもが通商航海条約において、その領土内においてすら、それはお互いが相互的に同じ便宜を与えるというようなことに考えておるわけなんですが、今の無警察状態に、公海を、あるいはまた、その領海を置くということでなくて、やはり国際的な海洋法典ができまするまでは、個々の具体的な最も密接な日本の国と他の国との間に、何かその辺に個々のとりきめ、約定あるいは協約、協定というようなものがなければ、この問題はむずかしい。個々にやることはめんどうでありましても、そこまで踏み込まなければ、なかなか日本の漁業者、あるいはまた、それによって利害を感じておりまするものの満足はいかないのじゃないか。ですから、もっとかみ合せて、そういうところを、どういうふうに考えておられるか。この海洋法典ができるまで、あるいは、できないかもしれない、そうすると、どうするのか。これは無警察状態に置くわけにはいかぬわけですから、それを一体、外務当局では、どういうふうにお考えになっておるか、もう一歩掘り下げてお尋ねしたいと思います。
○国務大臣(藤山愛一郎君) ただいま御指摘のように、海洋法典ができませんで、領海の問題について、当事国の間に意見が違っておる場合、三海里説あるいは十二海里説の場合があるわけでありますが、これらの問題につきましては、個々の協定によって、特に日本の漁業者等の立場を考えて、そして個別的に話し合いをする。日本の漁業者の一番密接な利害関係を持っているところに話し合いをするというのは、私ども努めなければならぬ。それが先般、日ソの暫定的な安全操業という問題にも一つはなったわけでありまして、かりに将来、海洋法典等によりまして、領海が六海里と決定いたす場合がありましても、あるいはソ連との友好関係がありますれば、その領海内で日本の漁民がコンブをとるとか、あるいはワカメをとるというようなものは、話し合いでできれば一番けっこうなことであります。その特定の産物に対しては許されるというような話し合いができれば、両国友好のために非常にいいわけでありますから、この問題につきましては、むろん海洋法典のできることを期待し、そして、そういう意味において、領海問題が世界的に発展していくように、私どもは一面には努力いたしますが、一面では、やはり漁業国としての日本の立場からいいまして、そういう問題を将来とも個々に交渉していくということは、当然、外務省としても考えていくべき問題だと思っております。
○笹森順造君 今の問題は、漁業の問題ばかりでなくて、海底にありまする無生物の問題、たとえば、石油あるいはその他の問題等もありまして、相当これは根本的なものを含んでおることと思うわけであります。つまり、日本のように領土の狭い、国土の狭いところが、それは公海として、その海底にありまするものを取得するということは、従来の特権であったように考えられますが、よしんば、それが、領海が三海里なり、あるいは六海里なり、あるいはその他にきまりましたとしても、沿岸を持っておりまする沿岸国では、やはりその限定された領海に接続したところに権利を主張するというのが、このごろの国際的な定石のように考えられる。そうなりますと、公海として自由にわれわれが、日本の国のような海洋を利用しておりましたものも制限されてくる一つの国際的な慣例なりできてきやせぬか、こういうことを考えますると、単に伝統的な、十八世紀以来の大砲の距離の三海里説というようなわけではなくて、そういう地球上の海底のいろいろな物資、資源の開発の上についても、よほど深く考えておく必要があるのじゃなかろうか、こういう意味で、よほど根本的に研究をしてかからなければならぬ問題でなかろうか。ある国は、二百海里を主張するものもあり、ある国は、水深で二百メートルを主張する国もある。ところが、公海の中で二百メートル以下の浅いところで、やはり魚族のたくさん繁殖しておるところがある。あるいは、その海底内に物資、資源のあるところもあり、あるいはまた、魚族の遊よくの動静、潮流がいろいろな意味において、深いところでも一定のものがある。いろいろ異なるので、長い間、漁業、漁撈、あるいは、そのほかに、日本として必要な物資、資源のことを考える場合には、よほど、そういうような点を日本の国でももっと調査して、日本の主張をすべきではないか。要するに、今の各国が主張しておりまする点と食い違っておる、きまろうとする領海に接続したところの海底資源に対する日本の立場、あるいは公海内における水深の浅いところにおきます日本の今までやっておったところの権利、それらについての確固とした一つの態度と、基本的なものの考え方がなければ、この問題は将来において災いを来たすのじゃなかろうかと思いますので、それらについての御所見を明らかにしておいていただきたいと思います。
○国務大臣(藤山愛一郎君) ただいま笹森委員のお話は、大陸だなの問題だと思うのであります。大陸だなの問題は、御承知のように、領海の問題と別個に最近取り上げられてきた問題でありまして、これについては、大陸だなの定義というものを、ただいまお話しのように、水深できめていく、あるいは距離できめていくというような、いろいろな主張が織りまざっております。日本としましては、むろん大陸だなそのものを絶対否定するわけにはいかぬのでありますが、しかしながら、少くも大陸だなの上に浮遊しております水産資源については、これは当然、今の領海問題とかみ合せて自由である、大陸だな自体の地下資源、石油でありますとか、鉱物でありますとかというものを、どういう点に大陸だなというものを認めていくかという点が一つの問題となってくるわけであります。これは新しい各国の最近のそれぞれの主張でありますので、現在、日本としても、大陸だなという問題をどういうふうにきめていくかということは、非常に重要な問題だと思います。従来の立場からいいますれば、大陸だなという問題について、日本としては否定的な立場をとってきておるわけでありますけれども、しかしながら、世界の傾向からいえば、これを絶対的に否定するというわけには参らない、多数国の意見があるわけでありますから、それらに対応して一番、日本として適当な処置を考えて参らなければならぬのは当然であります。従って、ただいまの領海の問題とあわせて大陸だなの問題というものは、相当、地下資源その他の貧弱な日本におきましては、十分問題として考えていかなければならぬ、こう思っております。
○笹森順造君 もう一問。今の外務大臣のお話は、沿岸国に接続した海底の大陸だなの観念のお話のように思うのでありまして、今のお答えは、将来の研究の題材になりましょうから、今、その通り承わったわけでありますが、私の特に指摘してお尋ねしたいことは、全く国から離れた大洋の中における、公海の中におけるこの暗礁と申しましょうか、そういうものはずいぶんとあるはずなんで、これが従来、日本の海軍はずいぶんと海底の尺度を研究して、そこで、どの国の大陸だなと称するものでないものであっても、ずいぶんと有利なところが世界中、公海の中にある、こういうような点の調査と研究、それに対して、いち早く日本が優先的に利用するというようなことに対する研究が、どれほど行われておるか。これが日本の国として最も大事なことでなかろうか。従来でも、そういうことが言われておったのですが、このごろ、普通には、大陸だなというのは、接岸の大陸だなのことでありますが、私が特に申し上げたいのは、そのほかに、今申しました孤立したそういうものの研究なり、あるいはまた、それに対する態度なり、公海の原則によって自由であるのか、そこまで日本が、ほかの国が、たとえば今のように、二百メートルまでは大陸だなということには反対でありますけれども、そういうことを主張するものが出てきた場合には、日本がこの海洋の公海の中においては、こういうところは従来もやっておったところであると、すでにそこの中で一つの何か漁業しておるとか、あるいはいろいろな養殖をしておるとか、いろいろなそういうような過去の実績があれば、それを強く主張していって、かたがた大陸だなの問題が出ていったときに、日本は海洋内において特にそういうことが優先的に出てくるんじゃないかと思って実はお尋ねしておったわけであります。
○国務大臣(藤山愛一郎君) ただいまのお話は、公海上において島嶼の形をなしていないで――表面に出ていない水深の浅いところの問題、その近辺に、たとえばマグロだとかカツオの魚群が集まる、そういうところを日本の漁夫が漁撈の中心地にしていく、そういうところに対する権利を将来どう主張し得るか、こういう御質問かと思うのであります。法律的には非常にむずかしい問題だと思いますので、私どもも今この席でお答えしがたいと思いますが、今御指摘のようなことは、十分研究をいたしまして進めて参りたいと思います。
○石黒忠篤君 日韓会談につきまして伺いたいのでありますが、だんだん会談に入る過程が進んでおるようでありますが、抑留漁夫の返還は十分見込みがあるのでありますか。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 抑留漁夫を二十五日までに帰すように予定するということは向うから言っております。従いまして、われわれとしては、その向う側の考え方を信頼して、ただいま送還の期日を持っておるわけであります。随時申し上げておりまするように、日韓正式会談を円満に進行させるためには、抑留漁夫の送還ということが必要な条件でございます。従って、そういう問題について、われわれとしても、今後ともこの方針のもとに進めておるわけでございます。
○石黒忠篤君 抑留漁夫の返還ということが、日韓会談を開く前提としているということの政府の主張は、少しも変らぬと承知してよろしいんですか。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 政府の主張としては、日韓会談を進めますのには、抑留漁夫の送還が必要であるということについては変っておりません。
○石黒忠篤君 二十五日までに帰すということの言明を信頼して、これを開くことに進んでおるということでありますが、この言明なるものは、政府が信頼されるものでありますから、相当根拠のあることと思うのでありますが、新聞紙の伝えるところによれば、そういうことはないといったようなことを韓国側で言っておるようでありますが、大丈夫でありますか。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 連絡協議会におきまして、韓国側から申したことでありますから、私どもはその線を信頼いたしております。
○森元治郎君 関連して。私は今石黒委員のおっしゃったのは、多分夕べの京城放送だと思うのですが、金外務次官が、東京放送で、二十五日に帰すなんと言っておるけれども、事実に反すると、従来の京城放送は、向うの言っておる節は大てい確かですから、その点と今の外務大臣の確信と、どうなりますか、大へんに大きな問題になりますよ。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 私どもは日韓会談を、抑留漁夫の送還を必要とするという立場を堅持しておりますので、正式会談を開きましても、一週間の休会をいたしておるわけであります。その間向う側で、われわれに言明した通りの処置をとってくると思っております。もしそうでない場合には、われわれとしても考えなければならないところだと思います。
○岡田宗司君 すでに森君、羽生君からただした問題でありますが、私も中国との貿易協定の問題から生ずるいろいろな点について二、三お伺いしたいと思います。
 本日の日本経済新聞にも伝えられておるようでありますが、日本からの人絹の輸出が、まあ最近中国側の方が非常に硬化してきておる、条件がむずかしくなってきておるということを伝えておるのであります。これはほんの一例にすぎません。それからまた、日本の商社の人が中国の都市におりますが、滞在期間の更新の問題も非常にむずかしくなってきておると聞いております。そういう点から見ますと、この第四次貿易協定が、政府がああいうふうな愛知官房長官の談話を出しました結果として、非常にむずかしい問題が起ってきておる。おそらくこれは一、二の例じゃなくして、今後も起ってくるだろう、しばらく中国と日本との間の貿易が無協定状態になるということになりますれば、そういうようなこともどうも考えられるわけであります。が、そうすると、せっかく中国と日本との間の貿易が漸次増加してきて、政府の方もかなり中国との貿易に期待をかけておると、まあ政治と貿易とは別だという建前に政府が立って、貿易の増加を考えられておったようでありますが、それが逆になってくるというふうに私には思えるのであります。政府は、先ほどしばらく事態を静観するのだ、こう言われておりますけれども、こういうような無協定状態、それからまあ中国側をああいうふうに刺激した問題から起りますいろいろの障害のために、貿易がむずかしくなったり、非常に量が減ってくるということに対して、政府はやはり何も手を打たないで、単に静観をしていくというお考えであるかどうか、その点をお伺いしたい。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 政府は、ただいまお話の通り、貿易の拡大ということについては十分努力をして参るわけでありまして、その点については、今後とも政府の方針は変っておらないわけであります。ただ、政治的な問題としての旗の問題等とこれが関連しますことは好ましいことではないのでありまして、その後においては政府として随時申し上げた通りの説明をいたしておるわけであります。従って、単に官房長官談話、それらのものを総合して話をしたというにすぎないのでありまして、特に中共側を刺激するような言辞を弄したとも考えておらないのであります。従って、将来にわたって中共側においても、その点を十分理解するのではないかという考え方を持っております。
○岡田宗司君 私は、そのことをお伺いしておるのではなくして、現実に貿易がむずかしくなり、さらにまた、取引額も減ってくるであろうということに対して、政府はただ静観をしておるのか、それとも静観をせずして政治は経済と別であるという建前に立って、特別にさらに貿易だけは促進するという方針をもっておやりになるのかどうかということをお伺いしたい。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 第四次の民間協定ができないでおりました状態の場合においても、鉄鋼連盟等は、人を出しまして、鉄鋼の問題について話し合いをしておるわけであります。そういう意味におきましては、日本と中共との間の貿易を特に政府がチェックしておる、あるいはそういうことについて望ましくないという態度はとっておらないのであります。政府の態度としては、引き続きそういう態度で当然いくわけであります。
○岡田宗司君 しかし、現実にむずかしい問題が起ってきておるのです。そうすると、政府の方では、従来のままの態度を続けていくというだけであって、現実に起っておるむずかしい問題に対して何にも処置をとられない。それでは結局減っていくということをそのまま認めていくということになるのかどうかということをお伺いをしたい。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 日本と中共との貿易が協定のあるなしにかかわらず、ふえていくか減っていくかということでありますが、日本と中共との経済的な関係からいえば、中共の建設計画等も進み、あるいはその財政状況等によりまして、当然チンコムの線も解消されたことでありますし、増大していくものだと見ておるのであります。それを政府が何らかの形でチェックするという考えは持っておりません。なお、そういうことが行われたために、民間的な協定であろうと、スムースにいく場合には、政府としては、支持と協力を惜しまないという立場をとっておるわけであります。純経済上の問題については、そういう立場で、ただ、政治的にこれがいろいろに曲げられること、誤解を受けることを政府としては好まないわけでありまして、その意味において、今日までの態度と少しも変っておらぬわけであります。
○岡田宗司君 ただいま、愛知官房長官の談は、従来のことを繰り返して言ったまでにすぎないのである。中共側は誤解をしておるのだということを言われておるのでありますが、たとえそうであっても、あるいはまた、中共側に誤解があろうがなかろうが、とにかくあの官房長官の談話というものは、両国の間に非常に大きな政治的な問題をすでに引き起してしまっておる。そういたしますと、たとえ政府の方でもって、政治と経済とは別であるという建前をとって、それはこっちがそう考えておるだけであって、現実の問題としては、これが大きな影響を貿易の上に及ぼしておることは、これは人絹の輸出の条件の問題についてもすでに起ってきておることである。おそらく私は、今後こういう問題が起ってくるであろう、こういうふうに予想されます。そうすると、この問題は、ただ、ほっておけばよろしい。民間の業者と向うの取引にまかしておけばよろしい。向うは第二次五カ年計画を進めていく上に、日本の品物を必要とするであろうから、自然にこれは日本と中国の貿易を進めて、増大していくことになるであろうというような甘い考えでは、私はこの問題の解決はできないと思います。やはり非常に難関に逢着したという認識に、まず立たなければならぬと思うのでありますが、今、中国との貿易の問題について、この愛知声明によって非常な難関に当面したというふうにはお考えにならないのかどうか。その点を一つ伺いたい。
○国務大臣(藤山愛一郎君) ただいま申し上げましたように、また、さっきも森委員が言われましたように、この国旗の問題等につきましては、かねがねわれわれも言い、あるいはとうにそういうようなことで言い表わしてきたことでありまして、特にそれを一括して申したまででありまして、特別にあの声明が何らかの形で非常な反動的な刺激を中共側に与えたというふうにはわれわれ考えておらぬの、でありまして、また、おそらく三団体でもしばらく静観をしていかれるというような態度をとっておられるようにわれわれも見ているわけであります。そういう意味から言いまして現在の段階では、中共側が日本のそういう立場を十分理解することを期待しているわけであります。
○岡田宗司君 どうも私どもは、政府の今までの答弁では、難関に逢着した日中貿易の問題の解決には役に立たない、こういうふうに思っているのであります。やはり新しい局面が展開されなければならぬと思うのですが、根本問題は、政府が一体中国をどう考えておるかという点にあると思う。現在中国を事実上統治しておるのは、これは北京の政府であるということは、これは動かしがたい事実です。ところが、日本は、その事実を認めないで、サンフランシスコ会議のあとで、アメリカ側の指示に従って、日本と台湾との間に平和条約を結んで、そうしてアメリカと同じように、台湾を中国の政府であると認めておるところに問題がある。私はこんな不自然なことはないと思う。たとえアメリカその他の国々が、台湾政府を中国政府であると認めて、そうして北京の政府を否認しているような態度をとっておっても、これは非常に不自然なことである。日本はもはやこれに追随するなどということは必要ないことであるし、日本自身もこういう事態を検討してみなければならないと思う。これは今度のこの日中第四次貿易協定について起りました問題は、事は国旗の掲揚を、通商代表部が権利として掲げることを認めるか、認めないかというだけのことでありますけれども、その意味するところは、結局日本が中国に対してどういう考えを持つかということと非常に密接な関係のある問題である。また、その問題を根本的に考えなければ、私は今後中国との貿易の問題などに限らず、諸般の問題についても、いろいろむずかしい問題が出てくると思う。私は、たとえ今日、台湾政府と日本が条約を結んでおりましょうとも、こういうような不自然な状態というものは、日本側でもだんだんに考え直していかなければならぬ問題だと思っております。そうして今度もはなはだ遺憾なことは、ああいう愛知官房長官の談話によりまして、せっかくできました第四次貿易協定を完全にくつがえしてしまう結果を招来しているという点であるのであります。で、このために、私は、政府がこれをすらっと承認したとき以上にむずかしい問題にぶつかったと思う。というのは、あれをすらっと承認しておりまして、台湾の方に対しては、いやまだ日本としては中国を認めておらないのだという一言だけ言っておけば、それで済むわけです。わざわざ台湾に対していろいろの手を打ち、岸さんから親書を送ったりなんぞして、かえって逆に台湾の方を、悪く言えばつけ上らしたというようなことから、問題が非常にこじれてしまって、そうしてまた、台湾の方に対して、ああいうふうに台湾の方の言うことを十分にいれて、ああいう声明を出したという結果、私はあの問題が大きな政治問題になったと思うのであります。これは結局、日本の中国に対する認識というものが、はっきり定まっておらないところからきていると思うのです。第一、政治と経済を分けて考える、これは別問題であるということは、これはもうまことに認識不足もはなはだしいと思うのでありまして、これはひとり中国と日本との関係だけでなく、よその国との間においても、政治と経済というものを分けて考えられるべきものじゃないと思うのです。中国についても同じだと思う。そうすると、いよいよ今後、政治と経済というものがからまった形で出てくるのでありますから、日本政府としては、結局中国の問題についてどう考えるかということを漸次明らかにしていかなければならぬ段階に私は逢着すると思う。それに対して、一体岸内閣は、この中国の問題に対して、根本的にどう考えているのかということ、それからまた、この現在の不自然な状況に対して、これを自然な状態を認めていくようにしようとするのかどうかということが問題になりますので、その二点について、岸内閣の中国に対する根本方針をお聞かせ願いたいと思います。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 現在の段階において日本が中共政府を承認しておらぬことは、これはもうはっきりした事実でありまして、また、台湾政府を承認して友交関係を結んでおりますことも、これまた事実であります。従って、その建前において日本政府としては、行動して参るということも当然のことだと思います。
 将来の問題につきましては、国際情勢がいろいろ変転しておりますので、先ほども申し上げましたように、これらの情勢を見ながら、日本が自主的に、そういう日本の立場というものを考えながら、行動をしていくわけでありまして、将来の問題については、今、私からにわかに言明をいたす段階ではないと思っております。
○岡田宗司君 もう一点。それでは現在中国を統治し、支配している実力のある政府は、一体北京の政府なのか、台湾の政府なのか、そのことと、それから、今日、台湾政府が中国を代表する政府であるということは自然な状態であるか、不自然な状態であるか、この二点だけお聞かせ願いたい。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 現在の段階におきまして、台湾政府が中国を代表しておりますことは、世界の多くの国から認められているわけでありまして、日本もその立場をとっているわけであります。自然的な、地理的な、あるいは人口的な大きさの問題その他につきましては、台湾政府の統治しております範囲内と、現実的には必ずしも大小を言いかねると思うわけでありましてそういうことが私どもの考え方でございます。
○岡田宗司君 ただいま最後の方の御説明によりますというと、台湾が地理的、あるいは人口的等について全体を支配しているとは言いかねるというお話でございましたが、これは、台湾政府と日本との間に平和条約が結ばれるときにも、この問題は非常に大きく問題にされたのであります。当時も台湾政府の統治の及ぶ範囲は、これは台湾島と澎湖島とその他であり、実際に中国本土に及んでないということは、この前、岡崎外務大臣からも答弁されているのでありますけれども、今日の台湾政府の統治の及ぶ範囲は、現在台湾政府が占有しております地帯、それだけだ、そういうふうにお考えになっていると解してよろしゅうございましょうか。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 岡崎大臣の言われた現状が続いていると思っております。
○杉原荒太君 一点だけ……。
○委員長(寺本広作君) けさほど理事会で申し合せました時間をだいぶ過ぎておりますから、その点御承知の上、簡単にお願いいたします。
○杉原荒太君 それは承知しておりますから、外務大臣からでなくて、事務当局からでもけっこうです。先ほど、笹森委員の質問に関連して一点だけお尋ねしたいと思います。
 領海等に対する日本側の態度、主張については、先ほど外務大臣から御答弁をいただきましたが、私がお尋ねしたいのは、日本でなく、よその国の主張、態度の現状です。今まで会期もずいぶん進行して、各国も当初の主張から多少弾力性なども発揮しておるのではないかと思うが、現状において、どういう説が多数説であるか、その多数説の中で、たとえば三分の二の多数を得られるような見込み、状況にあるのかどうか。あるとすれば、それはどういう説であるのかということ。それから、さらに、この会議の終結は、大体いつごろになる見込みでありますか、その点。
○政府委員(高橋通敏君) ただいま御指摘の点でございますが、それでは私からお答え申し上げます。実は結論的に申し上げますと、今いろいろな案が出ておりますが、それが、果してどれがどの程度の票をとるかということは、事実問題といたしまして、実は非常にこんとんとして判断がつかない、このような状況でございます。現にいろいろな案が出つつある次第でございます。
 そこで、現在まで出ている案と申しますと、ギリシャ案、これはきっぱりとした三海里説であります。それからイギリス案、これは六海里説でございます。ただ、この六海里説も、多少条件がついておりまして、従来の三海里までは従来の三海里説でありますが、それをこえる六海里までの三海里は、この通航権は、公海と同じように考えるべきである、従いまして、この六海里説というのは、多少通常のすっきりした六海里説ではないわけであります。
 次にスエーデン、これはすっきりしたと申しますか、領海そのものを六海里といたしております。
 カナダ案、これは領海は三海里でありますが、漁業の管轄権と申しますか、これはさらに九海里、すなわち沿岸から十二海里までは延ばして認めることができる、これがカナダ案でございます。
 それからインド・メキシコ案でございますが、これはおのおのその国が十二海里の範囲内において自分の領海を定めることができる、これがインド・メキシコ案でございます。
 それから最近――昨日でございましたか、急遽アメリカがまた提案いたした次第でございますが、これは六海里説でございますが、領海は六海里だ、しかしながら、他国の伝統的な既得権と申しますか、漁場を妨げない限り、さらに十二海里までその漁業管轄権だけは延ばすことができる。
 このような六つばかりの案が出ておりまして、現在おのおの多数派工作をやっているのではないかと考えられますが、この案のどれがどのようにして採決になるかということは、まだはっきり申し上げられない次第でございます。
 それから大体の、それらの領海説を支持している国の数でございますが、実はいろいろな演説や、われわれがアプローチしました限りにおきまして判明した点でございますので、はっきりまだ結論的に申し上げることはできません。ただ、まだ八十カ国以上のうちに、発言していないとかその他推定ができない国が、まだ三十カ国以上ございますが、われわれが推定と申しますか、聞いた限りにおきましては、三海里の説が十カ国以上、六海里の説も十カ国以上あるようでございます。しかし、一番強い案といたしましては、現在のところ、カナダ案または領海十二海里そのものにする案、こういう国々が二十カ国以上存在している次第でございます。
○杉原荒太君 会議はいつごろ終るのですか。
○政府委員(高橋通敏君) 会議は四月二十四日に終ることに一応予定はされております。しかし、まだ相当委員会で投票になっていない条文が多数ございますので、果して四月二十四日までに委員会を通過し、本会議に三分の二の多数で各国の条文が確定するかどうかということは、非常に疑問と考えている次第でございます。
○鶴見祐輔君 ついでに伺っておきますが、今、領海説だけですか、やかましい問題になっているのは。
○政府委員(高橋通敏君) 一番やはり問題になっているのは、領海説でございます。その他の説は、相当技術的な問題が大部分含まれております。われわれとして、一番問題といたしますのは、この領海説と、それから先ほどの大陸だなの問題と、それから、沿岸国がその沿岸に近い海域において漁業の規制のための措置をとることができるというふうな、沿岸国の利益を相当考えた点がございます。この三点が最も重要な点ではないかと考えます。
○鶴見祐輔君 私が伺うのは、その国家の領土と非常に遠いところの海上を使用する場合に、今まで始終問題になりました、戦争中に中立国の船舶を臨検拿捕するとか、あるいは核兵器の実験のときに、今までに例のないように広い水面を使用するというような問題は、先ほどの海洋法に関係はございませんか。
○政府委員(高橋通敏君) ただいま御指摘の点は、海洋の制度に公海の自由ということがうたってありまして、その公海の自由ということには、航行の自由、漁業の自由、海底電線敷設の自由、公海上空飛行の自由、これはなかんずく軍事的なものでございまするが、これらを含む海洋の自由、公海の自由は尊重されなければならないというふうな規定がございます。
○森元治郎君 今の領海の問題だが、これも中共政府のよろめきと同じで、協定を成立させるためならば六海里を承認する、もし協定ができなければ三海里だなんて、二本建をいつも岸内閣はやるのですが、各国を見ていても、自民党の大好きな自由国家群だって、自分の権益擁護だけの何海里説を出しているのですよ。人のことなんかかまっていないですよ。日本は世界のことを心配して、協定ができるのならば六海里だ、だめならば三海里だと、こういうようなことではだめなんだ。やはりソビエトの交渉を見たって、安全操業の場合でも、もしあなた方が案が立たないならば、三海里説を断固がんばって、これが得だと思うならばこれでいくべきだと思うのですがね。もう一ぺん、政府は関係者を呼んで案を立て直す考えはないかどうか。どうも外務省の条約同あたりで、知識のある人が、三海里だ、六海里だ、十二海里だというような算術ばかりやっていたって、これは片づかない。案を練り直す必要ないかどうか。それから、自分の権益ばかりうんと主張するよその国が、六海里協定ができたって、おれは三海里でいくということでなければ、権益は守れない。その点はどうなんです。
○政府委員(松本瀧藏君) もし三海里説が破れた場合には、どういうわれわれは態度を示すのだというようなことを今申し上げることはいろいろと交渉に支障を来たすものだと考えます。あくまでも三海里説を主張いたしますが、先般外務大臣の答弁の中にありましたごとく、三海里説が通る公算というのが非常に薄くなっている。しかしながら、とにかく三海里説は、あくまでも突っぱるということを言っておられますが、その態度で進みたいと考えております。
○森元治郎君 そんなこと言ったって、けさや一昨日の新聞を見たって、ジュネーヴの会議は幅のある会議だということでしゃべっているじゃないか。六海里がだめなら三海里、だれも信用しませんよ、そんなうまい言葉で言っても。自民党の大好きな国連主催の海洋法会議でしょう、党々とやったらいいじゃないか、ソビエトとやっているんじゃない。六海里といった日にゃあ安全操業は全然できぬ、コンブも何も取れない。まして十二海里だなんということになってきたらどうします。私は案を立て直すべきだと思う。どこでこの案を作っているんですか。
○政府委員(高橋通敏君) ただいま御指摘の点、ちょっと私から補足させていただきますが、日本といたしましては、やはり伝統的な三海里説というのを強く堅持いたしております。決してわれわれはこの態度を捨てたわけではございませんし、終始この態度でいきたいというのがわれわれの基本的な私は立場であろうと考える次第であります。ただ、問題といたしましては、やはりこれは、多数国家の国際会議でございますから、やはりほかの国も同様だと思いますが、これをなるべく積極的に成立させるためには、お互いに互譲の精神といったのが必要じゃなかろうか、そういうふうな見地からやはり考えてみる必要もあるのじゃないか。こういうふうな考えが基礎になっていると考えます。
○森元治郎君 まだ互譲の精神なんというのは、日本だけ互譲の精神を発揮して、よその国は全部自分の主張を十二海里だ、六海里だとやっているんじゃないか。日本なんか、まだ互譲なんか頼まれていないのですよ。よその国から。日本だけがやっているんだから、こっちは互譲の精神をやる必要はない。どんどん突っぱって、よその国が全部十二海里になろうとも、三海里でいくのだ。これが大事だ。もう一ぺん、どこでやって研究しているかしらぬが、研究し直す必要があると思います。その考えはないかどうか。
○政府委員(高橋通敏君) もちろん会議の将来の成り行きや、その他に考えましても、いろいろと検討してみなければならぬと思います。
○森元治郎君 成り行きといっても一日か二日しかない。
○政府委員(高橋通敏君) 確かに、御指摘の通り、われわれが三海里であるということ、それから三海軍を通す主張を持っているということは、これは会議でも、列国から全部、日本の強い立場というのは非常に強く認められているところであると私は考えております。そして今後の会議の推移と申しますか、結局、今委員会の投票により、本会議の投票により、また、各国がこれを署名するかしないかということは、また、将来の、いろいろな問題が起っているそういう問題につきましても、よく、彼此にらみ合せて考えていかなければならない。こういうふうに考えております。
○委員長(寺本広作君) 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時三十八分散会
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