第028回国会 本会議 第27号
昭和三十三年四月二十四日(木曜日)
   午後零時六分開議
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 議事日程 第二十六号
  昭和三十三年四月二十四日
   午前十時開議
 第一 訴訟費用等臨時措置法の一
  部を改正する法律の一部を改正
  する法律案(内閣提出、衆議院
  送付)      (委員長報
           告)
 第二 恩赦法の一部を改正する法
  律案(第二十六回国会高瀬荘太
  郎君外四名発議) (委員長報
           告)
 第三 自治庁設置法の一部を改正
  する法律案(内閣提出、衆議院
  送付)      (委員長報
           告)
 第四 建設省設置法の一部を改正
  する法律案(内閣提出、衆議院
  送付)      (委員長報
  告)
 第五 文部省設置法の一部を改正
  する法律案(内閣提出、衆議院
  送付)      (委員長報
           告)
 第六 総理府設置法の一部を改正
  する法律案(内閣提出、衆議院
  送付)      (委員長報
  告)
 第七 恩給法等の一部を改正する
  法律案(内閣提出、衆議院送付)
           (委員長報
  告)
 第八 旧令による共済組合等から
  の年金受給者のための特別措置
  法等の規定による年金の額の改
  定に関する法律案(内閣提出、
  衆議院送付)   (委員長報
           告)
 第九 内閣法の一部を改正する法
  律案(内閣提出、衆議院送付)
          (委員長報告)
 第一〇 国防会議の構成等に関す
  る法律の一部を改正する法律案
  (内閣提出、衆議院送付)
           (委員長報
           告)
 第一一 水洗炭業に関する法律案
  (衆議院提出)  (委員長報
           告)
 第一二 航空機工業振興法案(内
  閣提出、衆議院送付)
           (委員長報
           告)
 第一三 名古屋刑務所移転に関す
  る請願(二件)  (委員長報
           告)
 第一四 更生保護事業の強化に関
  する請願(三件) (委員長報
           告)
 第一五 福井地方法務局大野支局
  新庁舎建設促進に関する請願
           (委員長報
           告)
 第一六 福井地方、家庭裁判所大
  野支部新庁舎建設促進に関する
  請願       (委員長報
           告)
 第一七 福井地方検察庁大野支部
  新庁舎建設促進に関する請願
           (委員長報
           告)
 第一八 新潟地方法務局柏崎支局
  庁舎新築に関する請願
           (委員長報
           告)
 第一九 新潟県糸魚川区検察庁庁
  舎新築に関する請願
           (委員長報
           告)
 第二〇 飲酒による犯罪処罰の請
  願(六件)    (委員長報
           告)
 第二一 岐阜県中津川簡易裁判所
  庁舎新築に関する請願
           (委員長報
           告)
 第二二 都城拘置支所設置に関す
  る請願      (委員長報
           告)
 第二三 地方卸売市場に関する立
  法措置の請願(六件)
           (委員長報
           告)
 第二四 蚕糸業の危機打開対策強
  化に関する請願  (委員長報
           告)
 第二五 岩手県長部漁港南防波堤
  構築等に関する請願
           (委員長報
           告)
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○議長(松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
○議長(松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。
 日程第一、訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
 日程第二、恩赦法の一部を改正する法律案(第二十六回国会高瀬莊太郎君外四名発議)
 以上、両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
 まず、委員長の報告を求めます。法務委員長青山正一君。
   〔青山正一君登壇、拍手〕
○青山正一君 ただいま議題となりました訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案につきまして、法務委員会における審議の経過並びに結果につき御報告いたします。
 御承知の通り、執行吏は、一般の公務員に準じて恩給を受けることになっており、その年額については、執行吏の手数料に対する国庫補助基準額を俸給年額とみなし、一般の公務員の給与水準に応じて定められているのであります。このたび政府におきましては、一般の老令退職公務員の恩給について、その計算の基礎となっている俸給年額を増額する等、所要の措置を講ずる法律案を別途提出したことに対応し、執行吏の恩給につきましても、昭和二十八年十二月三十一日以前に給与事由の生じた執行吏の恩給について、その年額を、二万五千四百八十三円の給与水準による国庫補助基準額である十一万五千円を俸給年額として算出した額に増額することといたしたのであります。
 以上が、本法律案提出の趣旨であります。
 さて、委員会におきましては、三月十日、政府当局より提案理由を聴取した後、慎重に審議を重ね、大川委員より、執行吏の待遇改善、研修、競売ブローカーの取締り等につき質疑がなされましたが、その詳細は会議録に譲りたいと存じます。
 かくして、四月二十三日討論に入りましたところ、別に発言もなく、採決に入り、全会一致をもって、これを政府原案通り可決すべきものと決定いたしました。
 次に、恩赦法の一部を改正する法律案につきまして、法務委員会における審議の経過並びに結果につき御報告いたします。
 本法律案は、第二十六回国会に、本院議員高瀬莊太郎君外四名から発議されたものでありまして、その提案の趣旨は、政令恩赦の公正妥当を期するため、内閣に諮問機関として恩赦審議会を設け、その委員には、衆議院議長、参議院議長、法務大臣、最高裁判所長官、検事総長、日本学術会議会長、日本弁護士連合会会長を充てることとし、内閣は、政令恩赦の決定については、あらかじめこの恩赦審議会に諮問しなければならないとするものであります。
 当委員会におきましては、第二十六回国会において発議者から提案理由を聴取し、以来、継続して審議を重ねましたが、今国会においても慎重に審議を尽し、多くの委員から熱心な質議がなされました。特に、恩赦審議会の委員の顔ぶれと民意の反映との関係、恩赦制度の根本的あり方、日本弁護士連合会会長の任命上の問題等が論議の中心となったのでありますが、その詳細につきましては、会議録に譲りたいと存じます。
 かくして、四月二十三日質疑を打ち切り、討論に入りましたところ、大川、亀田、後藤の各委員から、それぞれ賛成の討論がなされ、かくて採決の結果、全会一致をもって、これを可決すべきものと決定いたしました。
 なお、亀田得治君から、本法律案につき、「恩赦制度の精神にかんがみ、政府は、恩赦法の運用に慎重を期すべきはもちろん、審議会委員の構成等については、民意を十分反映させ得るように検討すべきである。」旨の付帯決議案が提出され、これまた全会一致を、もって可決されました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。
 両案全部を問題に供します。両案に賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって両案は、全会一致をもって可決せられました。
     ―――――・―――――
○議長(松野鶴平君) 日程第三、自治庁設置法の一部を改正する法律案
 日程第四、建設省設置法の一部を改正する法律案
 日程第五、文部省設置法の一部を改正する法律案
 日程第六、総理府設置法の一部を改正する法律案
 日程第七、恩給法等の一部を改正する法律案
 日程第八、旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法等の規定による年金の額の改定に関する法律案
 日程第九、内閣法の一部を改正する法律案
 日程第十、国防会議の構成等に関する法律の一部を改正する法律案(いずれも内閣提出、衆議院送付)
 以上、八案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
 まず、委員長の報告を求めます。内閣委員長藤田進君。
  〔藤田進君登壇、拍手〕
○藤田進君 ただいま議題となりました自治庁設置法の一部を改正する法律案外七件につきまして、内閣委員会における審議の経過並びに結果を、以下、順次、御報告申し上げます。
 まず、自治庁設置法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 この法律案の改正の要点を申し上げますと、第一は、自治庁の所掌事務の円滑な遂行をはかるため、長官官房に官房長を置き、これに関連して、長官官房と財政局の所掌事務について調整を加えようとする点であり、第二は、学識経験者のうちから任命される参与について、適当な時期に更新し得る道を開くため、二年の任期を定めることとした点であり、第三は、財政再建債の消化促進のため、昭和三十年十二月、自治庁に財政再建消化促進審議会が設置されてきたが、今回その任務を終了いたしましたので、同審議会を廃止せんとする点でありまして、その他若干の所要の規定の整備を行なっております。
 内閣委員会は、郡自治庁長官その他関係政府委員の出席を求めまして、本法律案の審議に当りましたが、この審議において、官房長設置の理由、鳩山内閣以来、歴代内閣の公約である行政機構の簡素化の方針と今回の各設置法の改正案に現われた機構改革との関連等の諸問題、地方公共団体特に再建団体に対する自治庁のあり方等の諸点につきまして質疑応答が行われましたが、その詳細は委員会会議録に譲りたいと存じます。
 昨日の委員会におきまして質疑を終り、討論もなく、よって直ちに本法律案を採決いたしましたところ、賛成者多数をもって、原案通り可決すべきものと決定いたしました。
 次に、建設省設置法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 本法律案は、去る四月十八日、衆議院において修正議決の上、当院に送付せられたものでありまして、まず、本法律案の政府原案の改正の要点を申し上げますと、その第一点は、今回、政府の樹立した新道路整備五カ年計画に基く道路整備事業を強力に推進するため、内部部局としては、道路局の機構を整備拡充し、同局に管理部及び建設部の二部を新設するとともに、地方支分部局としては、北陸地方建設局及び四国地方建設局の二地方建設局を新設すること、その第二点は、道路事業等の増大に伴い、事業実施の能率化をはかるため、地方建設局の内部局につき所要の改正を加えること、その第三点は、地理調査所の位置を現在の千葉県より東京静に変更すること等であります。
 右、政府原案に対し、衆議院におきまして、次の三点につき修正がなされました。その第一点は、道路局に管理部及び建設部の二部を設置する規定を削除すること、その第二点は、道路局に次長一人を新設すること、その第三点は、東北及び関東地方建設局の内部部局として用地部を新設する規定を削除すること、以上三点であります。
 内閣委員会は、山本衆議院内閣委員の出席を求めて、本法律案ほか衆議院において修正せられた他の設置法改正法案の修正部分について説明を求めました後、根本建設大臣その他政府委員の出席を求めて、本法律案の審議に当りましたが、その審議において、政府の道路整備拡充計画の実施に当り、衆議院修正が適当なりやいなやの点、関門国道トンネルの通行料金の点、各ブロックの中心地域における合同庁舎設置の現状等の諸点につきまして質疑応答がありましたが、その詳細は会議録に譲りたいと存じます。
 昨日の委員会において質疑を終り、討論もなく、よって直ちに採決いたしましたところ、賛成者多数をもって衆議院送付の原案通り可決すべきものと決定いたしました。
 次に、文部省設置法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 本法律案は、去る四月十八日、衆議院において修正議決の上、当院に送付せられたものでありまして、まず、本法律案の政府原案の改正の要点を申し上げますと、その第一点は、大臣官房に官房長を設けること、その第二点は、現在、各局に分掌せられている体育に関する事務と学校保健及び学校給食に関する事務を一体的に処理するため、内部部局として体育局を新設すること、その第三点は、故松方氏の所蔵にかかる美術作品が、今回フランス政府よりわが国に寄贈されることになったため、これらの作品の保管及び観覧に供するため、近代美術館の分館として西洋美術館を本年十二月一日から設置することであります。
 右の政府原案に対し、衆議院におきまして、次の三点につぎ修正がなされました。その第一点は、官房長を置く規定を削除すること、その第二点は、西洋美術館は、昭和三十四年四月一日よりこれを独立の美術館とすること、第三点は、施行期日について所要の修正を加えたことであります。
 内閣委員会は、松永文部大臣その他政府委員の出席を求めて、本法律案の審議に当りましたが、その審議において、体育局の今後の運営方針、テレビ放送の教育面における利用対策、国立劇場の設置に関する政府の方針、学校給食の運営、体育団体に対する補助金の問題等の諸点につきまして、質疑応答がありましたが、その詳細は会議録に譲りたいと存じます。
 昨日の委員会におきまして、質疑を終り、討論もなく、よって直ちに採決をいたしましたところ、賛成者多数をもって、衆議院送付の原案通り可決すべきものと決定いたしました。
 次に、総理府設置法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 本法律案は、去る四月十八日、衆議院において、政府原案に対し、施行期日につきまして所要の修正を加えられた上、本院に送付せられたものであります。
 本法律案は、終戦以来、ソ連により占領され、事実上その支配下にある北方地域に在住していた島民は、土地、家屋その他の財産等を島に残したまま全員本土に引き揚げ、その生活も困窮しておるので、これら北方地域と、その島民に関し、諸般の事項について調査、連絡、あっせん及び処理等を行わなければならない問題が少くない状況であるので、これらの事務を行い、必要な措置を講ずるために、現在の南方連絡事務局を改組して特別地域連絡局とし、沖繩、小笠原諸島等南方地域のほか、北方地域に関する事務をも行わせることとし、ここにこの法律案を提出するに至った次第である旨、政府は説明いたしております。
 次に、この法律案の主要な点を申し上げますと、第一は、総理府本府の内部部局として特別地域連絡局を置き、その所掌事務として、現在、南方連絡事務局で所掌している事務のほか、北方地域に関し必要な事務を加えたことであり、第二は、日本政府南方連絡事務所を総理府水府の付属機関とし、南方連絡事務局設置法中の日本政府南方連絡事務所に関する規定とほぼ同様の規定を設けたことであります。
 内閣委員会は、今松総理府総務長官その他政府委員の出席を求めて、本法律案の審議に当りましたが、その審議において、北方地域に関する連絡事務局の設置がおそきに失した点、従来、北方地域に関する事務を、いずれの政府機関において所掌していたかの点、今回設置される特別地域連絡局の組織及び定員等の諸点につきまして質疑応答が行われましたが、その詳細は会議録に譲りたいと存じます。
 昨日の委員会において質疑を終り、討論もなく、よって直ちに採決いたしましたところ、全会一致をもって、衆議院送付の原案通り可決すべきものと決定いたしました。
 次に、恩給法等の一部を改正する法律案及び旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法等の規定による年金の額の改定に関する法律案について申し上げます。
 まず、恩給法等の一部を改正する法律案について申し上げます。
 政府が、本法律案の提案の理由として説明するところによりますと、戦後における退職公務員、すなわち軍人、文官及びその遺族に対する恩給上の処遇について種々検討を行うため、昨年六月、臨時恩給等調査会を設置したが、同調査会における審議の結果が、昨年十一月十五日、政府に報告されたため、政府は今回この報告をもとにしつつ、戦後処理の重要問題でもあり、かつまた、恩給法それ自体における懸案であった戦没軍人遺族並びに戦傷病者の処遇の改善と、老令退職公務員の処遇の向上に重点を置いて、問題の総合的解決をはかるため、本法律案を提出したとのことであり、また、今回の改正については、特に次の諸点について留意しておるとのことであります。すなわちその第一は、国家財政を考慮して急激な財政負担を来たさないよう、四カ年にまたがる漸進的な計画のもとに所期の目的の達成をはかったこと、その第二は、その実施については、戦没軍人、重傷病者及び高年令者を優先したこと、その第三は、処遇の改善の対象を六十六才以上の老令者、寡婦、遺児及び傷病者としたこと、その第四は、上薄下厚の精神に立脚して、重点を下級者に置いたこと等の諸点であります。
 次に、本法律案の改正の要点を申し上げますと、その第一点は、昭和二十八年十二月三十一日以前に退職した文官並びに旧軍人の仮定俸給の増額改定を行い、これに伴い、普通恩給及び扶助料の増額を実施すること、なお、仮定俸給の増額改定に当っては、上薄下厚の方針に基き、将官級においてはこれを実施せず、尉官及び佐官級については相当の抑制措置を行なっております。その第二点は、准士官以下の旧軍人の公務扶助料の倍率を増加したこと、その第三点は、傷病恩給の増額を実施するとともに、階級差を廃止し、また、特別項症、第一項症及び第二項症に該当する者には、新たに介護手当を加給することとしたこと、その第四点は、旧軍人軍属の実在職年のうち、現在、恩給の基礎在職年に算入されないことになっておる実在職年の通算を実施すること、その第五点は、恩給外に高額所得のある者に対する恩給支給額の制限の強化を行うこととした等がその主要な改正点であります。
 次に、旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法等の規定による年金の額の改定に関する法律案について申し上げます。
 まず、この法律案の内容を御説明申し上げますと、この法律案は、旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法の規定により現に支給されておる年金を、さきに御説明申し上げました恩給法等の一部を改正する法律案による恩給の額の改定措置に準じて改定せんとするものでありまして、第一に、退職年金、遺族年金等の額を、恩給法による同種の恩給の改定措置に準じて改定し、第二に、公務に基く傷病及び死亡を給付事由とする年金については、恩給法による同種の恩給の改定措置等を考慮して、従前の最低保障額を引き上げ、第三に、以上の年金額改定のほか、若年者に対する増額分の支給停止、高令者に対する繰り上げ改定その他につきまして、所要の措置を講ずることといたしております。
 また、国家公務員共済組合法及び公共企業体職員等共済組合法の規定により現に支給されておる年金につきましても、以上申し述べました旧令共済の規定による年金の改定に準じて所要の改正を行わんとするものであります。
 内閣委員会は、以上二法案につきまして、岸内閣総理大臣、一萬田大蔵大臣、今松総理府総務長官、その他関係政府委員の出席を求めて、その審議に当りましたが、その審議におきまして、まず、「旧軍人の恩給の増額措置については、今回の改正をもって終りとするか、あるいは将来さらに再検討を行う考えであるか」との点につきまして、岸総理は、「この軍人恩給については、今回の改正により、一応主要な問題は政府としては解決されたと理解しておるが、しかしながら、恩給の処遇上、給与の公平を期するという見地からして、なお残されておる諸問題について、今後とも十分の検討を加え、決してこれをおろそかにすべきものとは考えておらない」旨の答弁がありました。次に、「政府は、旧軍人の公務扶助料の倍率を将来引き上げる考えがあるか」との点につきまして、岸総理は、「この点については、問題は倍率にあるのではなく、もらう実額が現在の額で適当かいなかが問題である、社会情勢より見て、その額が少額の場合は、これに合うよう改正するものである」旨、また、「将来、加算制度を実施するかどうか」との点については、「この問題は将来の問題として、国家財政及び国民感情等を考え合せて適当な方法を考えたい、この問題は、将来検討を加えるべき重要な問題である」旨答弁がありました。その他本法律案に関連して、臨時恩給等調査会の答申の内容は、どの程度尊重されたかの点、扶助料等において、なお階級差が残されておる理由、旧軍人の遺族扶助料を恩給法のワクよりはずし、別途考慮することの要否、傷病恩給は他の恩給に比し、なお低きに失していないか、また、傷病恩給の支給に当っては、外形的傷害に比し、内部疾患が軽視されている点、旧軍人の遺族について戸籍上の不合理是正に関する点、元満州国政府職員及び元満鉄職員に恩給法を適用することの要否、将来の国民年金と恩給との関係及びその調整に関する問題等の諸点につきまして、政府との間に質疑応答が重ねられましたが、その詳細については委員会会議録に譲りたいと存じます。
 昨日の委員会におきまして、質疑を終了し、次いで討論に入りましたところ、まず、日本社会党を代表して田畑委員より、「第一に、恩給法の改正案は、上薄下厚の精神が貫かれておらず、また、傷病恩給が抑圧されていること、第二に、臨時恩給等調査会の答申が尊重されておらないこと、第三に、恩給と国民年金との関係について、政府がはっきりした方針を出しておらないこと等の理由により、恩給法等の一部を改正する法律案に反対」の旨の討論が述べられ、次いで、緑風会を代表して島村委員より、「両法案に賛成」の旨の発言があり、特に恩給法等の一部を改正する法律案については、「第一に、今回の改正は、遺族及び傷病者並びに老令者に対する処遇の改善を行なったこと、第二に、不十分ながら社会保障の制度が取り入れられたこと、第三に、文官、武官を通じて仮定俸給の引上げ等、恩給法上の均衡がとられたこと等の理由により賛成」の旨、最後に、自由民主党を代表して大谷贇雄委員より、「恩給法の改正法案は、多年の懸案であった恩給法上の不均衡を是正しようとするものであり、特に今回の改正は、いわゆる職業軍人に対してのみ増額を行うものではなく、その大部分は戦没者遺族の扶助料と傷病恩給の改正であり、今回このような改正を行なったことには心から賛意を表する」旨の発言がありました。
 かくて討論を終り、まず、恩給法等の一部を改正する法律案について採決いたしましたところ、賛成者多数をもって、原案通り可決すべきものと決定し、次いで、旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法等の規定による年金の額の改定に関する法律案について採決いたしましたところ、全会一致をもって、原案通り可決すべきものと決定いたしました。
 次に、内閣法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 この法律案は、衆議院において、施行期日に関し修正議決の上、当院に送付せられたものでありまして、本法律案の改正の要点を申し上げますと、内閣官房においては、内閣法第十二条の規定により、内閣の重要政策に関する情報事務等をつかさどっておるのでありますが、政府は、このうち、特に情報の総合整理についての機能の向上をはかる必要がありと認め、内閣法第十六条第一項の規定を改正して、その定員を十五人増員せんとするものであります。
 内閣委員会は、愛知内閣官房長官その他政府委員の出席を求めて、本法律案の審議に当りましたが、その審議におきまして、今回の改正による定員増の理由と、この増員せられる職員の担当事務の内容、内閣調査室の業務運営の状況、特に情報収集の具体的内容、情報局設置の構想の有無、内閣官房の報償費及び情報調査委託費の使途等の諸点につきまして質疑応答が行われましたが、その詳細は会議録に譲りたいと存じます。
 昨日の委員会におきまして、質疑を終り、討論もなく、よって直ちに採決いたしましたところ、賛成者多数をもって、衆議院送付の原案通り可決すべきものと決定いたしました。
 最後に、国防会議の構成等に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。
 この法律案は、衆議院において修正議決の上、当院に送付せられたのでありまして、その改正点は現在置かれている国防会議事務局の業務を円滑に処理せしめるため、参事官一名を増員せんとする点であります。
 内閣委員会は、愛知官房長官その他政府委員の出席を求めて、本法律案の審議に当りましたが、その審議におきまして、国防会議及び国防会議議員懇談会の運営状況、国防会議と日米安保委員会との関係、今回の改正により増員せられる定員の必要な理由、国防会議関係予算の使途等の諸点につきまして質疑応答が行われましたが、その詳細は会議録に譲りたいと存じます。
 昨日の委員会におきまして、質疑を終り、討論もなく、よって直ちに採決いたしましたところ、賛成者多数をもって、衆議院送付の原案通り可決すべきものと決定いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
○議長(松野鶴平君) 恩給法等の一部を改正する法律案に対し、討論の通告がございます。順次、発言を許します。田畑金光君。
  〔田畑金光君登壇、拍手〕
○田畑金光君 私は日本社会党を代表し、ただいま議題となりました恩給法等の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行わんとするものであります。
 恩給制度の歴史的変遷を見て参りますと、明治以降、わが国の官吏制度と表裏一体をなして発達してきたものであります。いわゆる天皇の官吏、大元帥の股肱の臣としての文武官に付与された特権的恩恵であったことは否定し得ない事実であり、恩給制度が、過去の幾多の戦争を通じ、戦争遂行の面に、はたまた戦後処理の面におきまして、大きな支柱であったことは事実であります。しかしながら、戦後、連合国最高司令官の覚書に基き、昭和二十一年勅令六十八号により、軍人恩給は、傷病者に対する少額の恩給を除いて廃止されたのでありますが、昭和二十七年、平和条約発効と相前後いたしまして、日本をめぐる内外の軍事的要請は、ことに自衛隊の急速な増強と、古き愛国心の鼓吹に迫られた政府をして、昭和二十八年法律第百五十五号により、旧軍人恩給の復活をはかるに至らしめたのであります。しかして、復活された現行軍人恩給は、既得権であるのか、あるいは新しい権利の創設であるのか、議論の分るるところでありますが、法律学者の多くは、既得権にあらず、新しい権利の創設と見ておるのでありまして、旧軍人恩給が、ポツダム勅令によって廃止された歴史的経過に照らしましても、この見解が妥当なりと信ずるのであります。
 今次の戦争が、古今未曾有の規模で行われ、しかも前線、銃後の区別はない総力戦であったという事実に照らしまして、旧軍人恩給についても、このような客観的情勢によって相当の制約が加えられましたことは当然でありまして、かくて、現行軍人恩給が遺族、傷病者の処遇に重点を置き、社会保障的性格を濃厚にして参りましたことは、理の当然と言わなければなりません。ゆえに、政府も今次提案に当り、遺族、重傷病者、高令者に重点を置き、上に薄く、下に厚くするという精神に立脚し、重点を下級者に置いたと言っておりますが、しかし事実は、政府の看板が全く偽わりに終っておることを指摘しなければなりません。なるほど今回の改正に当り、旧軍人の将官については据え置き、佐官、尉官についても、それぞれの制限を付したことは事実でありますが、にもかかわらず、仮定俸給年額は、大将七十二万六千円、大佐三十七万五千円であるのに比し、伍長十万八千円、兵にあっては、わずかに九万円に過ぎません。上級者は大なり小なり戦争の責任者であります。また、経済取得能力も、過去の蓄積能力も、赤紙応召の下級兵士との比ではないはずであります。恩給受給権は財産権であり、既得権であって、侵害を許されないという形式的な憲法理論で律するには、あまりにも国民心情と相反するものがあるのであります。遺族扶助料を例にとりますと、准士官以下には倍率改正を行い、また、仮定俸給についても、一万五千円ベースに完全実施したと言っておりますが、兵の扶助料は五万三千二百円に比し、大佐のそれは十一万八千七百円、大将のそれは二十万五千七百円でありまして、一家の支柱、大黒柱を失い、家族が路頭に迷い、貧窮に陥る事例は、上級者の遺族ではなく、これら下級兵士の遺族であることを知るとき、この不均衡を、このまま放置することは許されるものではありません。世上一部の論者は、いわゆる職業軍人は九万名であり、金額にして二十二億五千万円にすぎないのであるから、旧軍人恩給として、かれこれ批判することは当らぬことだと申しておりますが、問題は、まさにそこにあるのであります。百五十余万の遺族の方々、約十三万名に上る傷病軍人の方々は、戦争に際し、公務により、または国の命令による行動等によって、身を犠牲として、または傷ついた人々でありますから、国がその使用主の責任に立脚し、あるいはこれに準ずる立場において、しかるべき処遇を講ずることは当然であると考えます。しかるに、これらの人々についても、軍人恩給の名において批判が加えられるのは、まことに遺憾でありまして、わが党は、これらの人々については別個の法律によって処遇し、もって恩給亡国等と言われる非難から救済すべきであると考えます。同時に、職業軍人等については、さらに大きな所得制限等を加え、もって国民感情との調和をはかるべきものと考えます。わが党が、収入の低い下級者の公務扶助料については一律五万四千円まで引き上げ、将来、国民年金制度との調整をはかりながら処理することとし、また、これら下級者については、四年間据え置くということでなく、直ちに実施に移すべきこととし、他面、職業軍人等については、新たな角度から検討を加え、平均余命率等を根拠にしまして、公債による打ち切り補償制度を考えているのも、要は、これなくしては、下級者を優遇することも、国民世論や、国民年金制度との和解調整をはかることも困難であると考えているからであります。ことに、今回の改正案で不当に抑圧されたものは傷病恩給であり、独占資本には積極放漫な施策のしわ寄せが、これら傷病者の上に現われていることは遺憾しごくと申さねばなりません。階級差が撤廃され、不具廃疾、または傷病の程度の同一者には、同一の傷病恩給額を支給するに至ったことは、わが党の主張に譲歩した結果であり、一歩前進ではありますが、しかし、両手両足のないいわゆる第一項症を十七万一千円に引き上げることによって万事均衡を得たと考えているが、完全な廃疾者に十七万一千円と、元大将の扶助料二十万五千七百円とでは、経済取得能力の減損度合いから見ても、妥当ではありません。これを要するに、政府の言う、上に薄く下に厚いという精神は、完全にじゅうりんされており、遺族と傷病に重点を置いたといっても、階級差は厳然として残存し、職業軍人と赤紙応召者との不均衡は、なおはるかに遠く、しかも、最も弱い傷病者等について、多くのしわ寄せが行われておること等は、臨時恩給等調査会の答申にもそむくものであり、国民世論、国民感情上から申しても許されない措置であり、これが政府案に反対する第一の理由であります。
 第二に私の反対する理由は、今回の改正法案は、臨時恩給等調査会の指摘した問題点に関し、なお的確な解決方法を示していないということであります。政府与党といたしまして最も苦慮したところは、公務扶助料の倍率でありましたが、結局、総理の裁定によって、文官の特別公務四十割、普通公務三十三割の平均三十五・五割に落ちつけたわけでありますが、しかし、これだけで文武官の比較論を行うことは危険であります。政府提出法案は、倍率問題ですべてが解決される前提のもとに、遺族団体の要望にこたえたと言っておりますが、事実は全く逆であります。粗雑な内容でありましたがゆえに、衆議院内閣委員会の審議の最終段階に当り、かつて前例を見ない方法により、福永内閣委員長より質疑の形で問題点を提起し、今松総務長官がこれに答弁するという形で、多くの問題を将来にゆだねているのであります。これらの問題点のうち、一例を旧軍人等恩給失権者に対する加算制度の実施について見て参りますと、いわゆる旧軍人恩給廃止前に普通恩給を受ける権利の裁定を受けた者は、実役三年で恩給受給権が認められているにもかかわらず、ひとしく戦地に勤務した旧軍人でありながら、昭和二十一年二月一日前の夫裁定者は、実役十一年十一カ月でも恩給受給権がないところに、はなはだしい不均衡があるわけでありまして、しかも、これらの該当者は、ほとんどが赤紙応召者であるところに問題があるわけであります。もし、これらに加算を実施するといたしますと、約七十五万余の人が浮び上って参りまして 一万五千円ベースで支給いたしますと、ピーク時には、百三十七億の新規財源が必要となって参りますが、国家財政、国民感情、国民年金制度等との関係を考慮いたしますとき、これをどう処理するかということは、すみやかに政府としても方針を決定すべき問題であり、ときには国民世論をおそれて、問題の焦点をぼかし、ときには国民世論の間隙を縫って弥縫策に走るなどは、まさに岸内閣の性格を端的に示すものでありまして、わが党は、こういう責任回避の態度は、厳に糾弾したいと考えているわけであります。このような責任回避の片手落ちの措置が、私の反対する第二の理由であります。
 第三の反対の理由は、恩給と国民年金制度の関係におきまして、政府の明確な方針、理念が明らかにされず、結局、恩給制度の前に、国民年金制度が犠牲にされる危険性があるということであります。三十三年度予算によりますれば、恩給関係費は一千一百六億余に上り、三十六年度には一千三百億をこえる見通しでありまして、さらに先ほど指摘いたしました加算制度の是正、不均衡措置を行うといたしますると、一千五百億をこえる額に上ることは必至であります。社会保障制度審議会は近く答申するでありましょう。ことに同審議会は、昨年十二月、大内会長の名において、政府に対し、恩給増額のため社会保障を犠牲にせぬようにと、強く申し入れをしている事実を想起すべきであります。昨年十月、厚生大臣の諮問機関で五名の国民年金委員は、中間報告書を出しておりますが、それによりますと、現存の六十五才以上の老令者を対象として、月額三千円程度の年金制度を実施いたしますと年額千六百億、これに加えまして、重度の身体障害者に月額三千円を支給すれば年額百四十億、母子世帯に月額四千円程度を支給すれば年額二百億、合計千九百四十億の膨大な経費を必要とし、老令人口増大化の傾向は、ますますこの金額を大きくするだろうと指摘しているわけであります。今回の政府提出法案には、将来の国民年金確立との考慮の上に立って何らの展望も具体的施策も方向も、明らかでありません。恩給は雇用関係に基く被用者の権利であり、社会保障は貧民の救済であるという観念は、近代国家の理念としては、もはや通用いたしません。福祉国家を目指す先進諸国における社会保障制度の内容と、新たな理念の発展を見落してはならぬと考えるわけであります。社会保障即救貧なりとする考え方は、遺家族と傷病者と国民との間を分裂させるものであり、お気の毒なこれらの人々の立場を、かえって不幸にするものと申さなければなりません。まして今次大戦の犠牲となった一般戦争犠牲者との処遇の均衡や、感情の融和をはかる上からも、恩給と社会保障の調整は、欠くべからざる措置であると考えるわけであります。
 本法律案には、こういうような配慮が欠けていることが私の反対する第三の理由でありまして、結局、わが党の恩給法改正の構想に立たなければ、遺族も、傷病者も、老令者も、また、国民一般も救われないのだということを強く訴えまして、私の反対討論を終ることにいたします。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(松野鶴平君) 大谷贇雄君。
  〔大谷贇雄君登壇、拍手〕
○大谷贇雄君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま上程になりました恩給法等の一部を改正する法律案に対しまして、賛成の討論を行わんとするものであります。
 今日は、くしくも、靖国神社の春の大祭がおごそかに営まれて、全国の遺児たちが神の宮居にぬかずいて、今は言葉なき父の御前に無言の対面をいたしている聖なる日であるのでございます。老いて杖ひく父母たち、心傷つける未亡人の方たちが、おごそかなる神殿の前にひざまずいて、つつましく礼拝恭敬の誠をささげつつあります全国遺族の心の日であります。この記念すべき祭典の行われます日に、全国民期待の中に、昨日、内閣委員会において可決されました本法律案が、ただいまこの本会議に上程をされましたことは、私は国民とともに喜びにたえざる次第でございます。(拍手)私はここに、本法律案に対しまして、心からなる賛意を表することのできますことは、その光栄に深い感激を覚えるものでございます。
 本法律案が今国会に上程をされまして、今日まで正に三カ月、その間、世上の一部におきましては、軍人恩給の名のもとに、故意に激しい批判を浴びせかけ、しかも、ゆがめる見解と論議を展開して、正しき世論を惑わしめる動きのありましたことは、正義を愛する国民の名において私は憤りを禁じ得ないものでございます。(拍手)本法律案が、率直に、しかも明らかに表現をしておりまするものは、軍人を業としていた人々に対する恩給の増額では断じてないのであります。すなわち、本案の明確に意図しておりまするところは、かねて文官との間にきわめて不均衡であった人々の恩給措置を正しく是正して、その処遇を改善せんとするものであります。しかも、その対象とせるところのものは、遺家族、戦傷病者等の人々が大部分であって、九割以上を占めているのでありまして、いわゆる軍人恩給という、間違える邪見曲解は、全く当らざるもはなはだしいものと言わざるを得ません。国家にその尊い生命を捧げられたる殉国の英魂の御遺族に対して、公務扶助料を贈り、あるいはお互い国民にかわって、戦場に傷つける人々に対して、国民としての心からなる感謝と敬意を表明せんとするものであります。
 今さら申し上げるまでもありません。杖柱と頼んでいるわが愛する子を国にささげ、一片の令状によって愛するその夫をたちどころに失われ、あるいは残酷にも、わがいとしの父親を戦いに奪い去られたる遺児たちの心情は、身をもって体験せざる心なき人々には、とうてい理解し得ざるところであります。去る者日々にうとしと申しますが、子をなくし、夫を奪われ、父を失うた人々の心情というものは、日さえたてば忘れ去るというがごとき単純なものでは絶対にあり得ないのであります。尽きざる寂寥と、はらわたを断つの思いはますます深く、ますます濃くなるものであります。現に私は、ただ一人の弟を南溟ボルネオの地に失ったものであります。晩学三十にして学を終え、教職についておったのが、一片の令状によって召集をされ、結婚わずか一年の若妻と、生まれたばかりのみどり児をあとに残して、遠く戦地に立って行ったのでありますが、戦い終って、直後、一片の戦死公報が届けられたのであります。そうして遺骨のかわりとして届けられましたものは、一握りの砂だけでありました。遺体も遺骨もなく、一握りの砂を仏前に飾って村葬は終ったのであります。従いまして、私自身の気持は、いまだに戦死したという切実な感じがわいてこないのであります。ラジオや新聞に引揚者の名前が出るたびに、わが弟の名前を探さずにはおれぬような、実は心境であるのでございます。今にも帰って来るか、帰って来るかとの思いが、毎日のように私の胸の中にわき上ってくるのであります。私の弟が征途に立ちまするときに生まれたばかりの女の子は、今や小学校の六年生になって、岡崎の祖母の家に引き取られておりまするが、その子の姿を見るたびに、私の胸はつぶれる思いをいたす次第であります。弟をなくしてさえかくのごとき私の心情であります。ましていわんや、かけがえのないわが子をなくし、最愛の夫を失い、親を失うた遺児たちの、これら遺族の心情というものは、いかばかり深いものであるかということは、はかり知れざるものがあるのでございます。おそらくは、これら遺族の人々の心持は、盆がくればくるで、彼岸の法要がくればくるで、衣がえの時がくればくるで、わが子を思い、なくなった人の思いが、心の中に、胸の中にこみ上げてくるものと信ずるのであります。
 惻隠の情なき者は人にあらず、しかも、われらにかわって命をささげた人々に対して、社会党の諸君は、三十三年度において保守党政府は再軍備を目的とする旧軍人恩給の増額を決定したと、きめつけているのであります。浄土におります英魂は、この不遜きわまる言辞に対しておそらくは限りない憤激を覚えておられることと信ずるのであります。
 今回の改正法案は、申すまでもなく、数十回にわたります臨時恩給等調査会の報告を尊重いたしまして、わが党政府が、この際、文官恩給に比して、はなはだ不公平、不均衡なる措置を受けておられた戦没軍人遺家族と戦傷病者の処遇改善、並びに老令退職公務員等のその処遇の向上に重点を置いて、この問題の総合的解決をはからんとするものでありまして、これが実施に当りましては、遺家族、戦傷病者あるいは高年令者を先として、その処遇の改善は六十才以上の老令者、未亡人、遺児、戦傷病者という順序で、しかも先ほど、上に薄く下に厚いということは、うそだということでありますけれども、厳として下に厚く上に薄いという根本理念をもって処置をするなど、あるいはまた、傷病恩給に対しましては、階級制を排除する。こういった社会保障的の考慮を払っている等の点につきまして、私どもは大いに賛意を表するものであります。
 わが党が、今回この予算措置といたしまして、英断をもって三百億円を計上したことは、国に殉じたる人々に対する、せめてもの感謝と償いの気持の表現であるのでございます。三百億円と言えば、いかにも多額のようでありまするけれども、百六十万に上る遺族の人々、十数万の傷痍軍人等にこれを割り当てまするときに、わずかに平均五万三千二百円の恩給額にしかならぬのであります。これを月額にすれば、たった四千四百三十三円にしかすぎません。東京都における生活保護費は標準世帯、母と二人の子供に対しまして月額七千八百三十円であります。かれこれ相比較いたしまするときに、遺族の扶助料がいかに少いものであるかということは、これをもっても明らかであります。絶対に断わることのできない一片の召集令状によって、国家に一命をささげたるこれらの方々の扶助料が、単に生活に困る人に与えられる生活保護費の半額というようなことでは、相済まぬ次第であります。しかしながら、国家財政の許さざる今日におきましては、やむを得ぬ次第ではありまするけれども、これをもって決して多額ということは、断じて申しがたいのでございます。いわんや、これらの措置をもって、再軍備に通ずるものだというがごときに至っては、果して同じ民族、同じ同胞なりや、疑いなきを得ないと思うのでございます。(拍手)
 社会党の諸君は、軍人恩給呼ばわりをして、わが党をいかにも仇敵のごとく呼号せられるが、そのいわゆる軍人にしてすらが、決して優遇されてはおりません。本年度予算におきましては、何らの増額をせられておらぬのであって、優遇どころか、むしろ冷遇、酷遇すら受けておるのであります。日本社会党の諸君は、本法案が再軍備政策の一環となるがゆえに、これを廃して、社会保障制度の確立をすべきであり、恩給制度を再検討すべきであると主張をされておりまするが、われわれの見解をもってすれば、恩給制度は恩給制度、社会保障制度は社会・保障制度と、並立して何ら差しつかえはないのである。現に、わが自由民主党は、社会保障制度の拡充をどんどんやっておる。国民年金制度の実施をやろうといたしておるのであります。現に、欧米各国においても、また、社会党さんの礼賛されるかに見えるソ連においてすら、軍人恩給制度というものは厳として存在をしておるのであります。(拍手)社会党の盟友諸君、諸君は、一方には本法案を再軍備を目的とするものとけなしながら、一方には遺家族、傷痍軍人に、ただいまも田畑君は、同情の言辞を弄しておられるのであります。私は、友党と信ずる日本社会党の心情を理解することに苦しむものであります。首尾一貫を欠くという言葉は、社会党のために作られたものか知らんというふうに感ぜざるを得ないのであります。願わくは、二大政党の一方の雄たる社会党諸君は、すみやかによろめきを脱却して、筋金入りの社会党として私は成長されることを念じてやまぬのであります。それでなくては、いかに鈴木委員長が呼号されましても、政権はますますその座を遠のき、天空高き空想として舞い上ってしまうであろうとおそれるものでございます。
 私は、本法律案が可決されることによりまして恩給が是正をされ、不合理や不均衡が是正され、適正なる処置ができることを、きわめて喜びといたす次第であります。私は本法案に賛意を表しまするとともに、あるいは倍率の問題、あるいは傷病恩給の間差等の問題、あるいは加算等の問題につきまして、今後、政府におかれまして、財政の許す限り十分の検討を加え、でき得る限り、すみやかに適正なる措置を講ぜられまするよう強く要望をいたしまして、本法律案に満腔の賛意を表する次第でございます。(拍手)
○議長(松野鶴平君) これにて討論の通告者の発言は、全部終了いたしました。討論は、終局したものと認めます。
 これより八案の採決をいたします。
 まず、自治庁設置法の一部を改正する法律案、建設省設置法の一部を改正する法律案及び文部省設置法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。
 三案に賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○議長(松野鶴平君) 過半数と認めます。よって三案は可決せられました。
     ―――――・―――――
○議長(松野鶴平君) 次に、総理府設置法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○議長(松野鶴平君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。
     ―――――・―――――
○議長(松野鶴平君) 次に、恩給法等の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○議長(松野鶴平君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。
     ―――――・―――――
○議長(松野鶴平君) 次に、旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法等の規定による年金の額の改定に関する法律案全部を問題に供します。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○議長(松野鶴平君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。
     ―――――・―――――
○議長(松野鶴平君) 次に、内閣法の一部を改正する法律案及び国防会議の構成等に関する法律の一部を改正する法律案全部を問題に供します。
 両案に賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○議長(松野鶴平君) 過半数と認めます。よって両案は可決せられました。
     ―――――・―――――
○議長(松野鶴平君) 日程第十一、水洗炭業に関する法律案(衆議院提出)
 日程第十二、航空機工業振興法案(内閣提出、衆議院送付)
 以上、両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
 まず、委員長の報告を求めます。商工委員長近藤信一君。
  〔近藤信一君登壇、拍手〕
○近藤信一君 ただいま議題となりました二法案につきまして、商工委員会における審査の経過並びに結果を御報告いたします。
 まず、水洗炭業に関する法律案について申し上げます。
 この法律案は、衆議院議員楢橋渡君外二十六名より発議され、四月十七日、衆議院において可決、本院に提出されたものであります。
 法案の趣旨は、炭鉱地帯におきまして、いわゆるボタを水洗して石炭を採取する水洗炭業者が相当数存在し、河川、道路、田畑等にいろいろの損害を与えている実情にかんがみ、水洗炭業者の登録制の実施、作業方法の規制等によって、被害の防止と被害者保護をはかろうとするものであります。
 委員会におきましては、提案者たる衆議院議員多賀谷真稔君、簡牛凡夫君及び政府当局に対し、熱心な質疑が行われました。その際、本法律案に対する政府側の見解をただしましたところ、本法実施の権限の多くは都道府県にゆだねられることになるが、政府としても、法案成立の際は、立法府の意思を体し、忠実にその執行に当りたい旨の答弁がありました。その他、審議の詳細は、この際、会議録に譲ることを御了承いただきたいと存じます。
 質疑を終り、討論に入りましたが、別に発言もなく、直ちに採決の結果、本法律案は、全会一致をもって衆議院提出の原案通り可決すべきものと決定いたしました。
 次に、航空機工業振興法案について申し上げます。
 わが国航空機工業再建のため、御承知の通り、事業調整を目的として航空機製造事業法がありますが、技術的にはほとんど外国に依存し、独自の試験と設計によるものではなく、企業的には、まだきわめて不安定であります。そこでこの際、積極的な助成を行わなければ、ますます航空機工業の世界的な進歩におくれますし、他方、またその助成によって、東南アジア等への輸出や、中小企業の技術的、経営的な近代化などにも役立つので、政府当局では、特に中型輸送機の国産化を促進することを目的として本法案を提出し、本年度予算に、中型輸送機試作研究費補助として一億二千万円が計上してあります。
 本法案の骨子は、通商産業省に航空機工業審議会を設置すること、国有の試験研究施設を時価より安く使用させること及び政府は、必要な設備資金の確保に努めることであります。
 当委員会では、特に実地視察をも行いまして、慎重に審議いたしましたが、詳細は会議録に譲ることをお認めいただきます。
 質疑を終り、討論に入りましたところ、まず、古池委員は、「本法案は骨だけであるから、今後、技術と経営に対する強力な助成を講ずること」を希望条件として賛成意見を述べ、次いで、阿部委員は、「中型輸送機の生産を、中途で軍事的に転用しないこと、また、航空機の心臓部であるエンジンの国産化に努力すべきであり、それを明年度に予算化されたい」との希望条件を付して賛成意見を述べました。
 かくして採決に入りましたが、全会一致をもって、本法案は、衆議院送付案通り可決すべきものと決定いたしました。
 右、御報告いたします。(拍手)
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。
 両案全部を問題に供します。両案に賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○議長(松野鶴平君) 過半数と認めます。よって両案は可決せられました。
     ―――――・―――――
○議長(松野鶴平君) 日程第十三より第二十二までの請願を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
 まず、委員長の報告を求めます。法務委員会理事棚橋小虎君。
  〔棚橋小虎君登壇、拍手〕
○棚橋小虎君 ただいま議題となりました請願に対する法務委員会における審査の経過並びに結果について御報告申し上げます。
 請願第百二十九号及び八百九十七号、名古屋刑務所移転に関する件。請願第三百六十号、六百六十七号及び千二百号、更生保護事業の強化に関する件。請願第四百二十三号、四百二十四号、四百二十五号、四百七十五号、七百十一号、千五百六十一号は、それぞれ福井地方法務局大野支局、福井地方並びに家庭裁判所大野支部、福井地方検察庁大野支部、新潟地方法務局柏崎支局、新潟県糸魚川区検察庁、岐阜県中津川簡易裁判所の各庁舎新改築に関する件。請願第七百二十五号、九百九十一号、千四百四十七号、千七百六十三号、千七百六十四号、千七百六十五号、いずれも飲酒による犯罪処罰の件。請願第千八百五号、都城拘置支所設置に関する件。
 以上、いずれも法務省並びに裁判所各当局から意見を聞き、慎重に審議いたしましたところ、請願第四百七十五号、新潟地方法務局柏崎支局庁舎新築に関する件及び請願第七百十一号、新潟県糸魚川区検察庁庁舎新築に関する件については、「本請願は、庁舎新築費を昭和三十三年度予算に計上されたいとのものであるが、その趣旨は、同庁舎の新築費の予算化を可及的すみやかに実現されたいとの願意を有するものとして、妥当なものと認める」との趣旨の意見書案を付し、飲酒犯罪処罰に関する請願第七百二十五号外五件については、「本請願は、酒乱等、飲酒に上る犯罪について、刑罰法または保安処分の制定を実現されたいとのものであるが、その趣旨は、近く行われる刑法改正と相待って、改正措置せられたいとの願意を有するものと認める」との意見書案を付し、いずれも願意は妥当と認め、これを採択して議院の会議に付し、内閣に送付すべきものと決定いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。日程第十八より第二十までの請願については、意見書案が付されております。
 日程第十三より第二十二までの請願は、委員長報告の通り採択し、内閣に送付することに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よってこれらの請願は、全会一致をもって採択し、内閣に送付することに決定いたしました。
     ―――――・―――――
○議長(松野鶴平君) 日程第二十三より第二十五までの請願を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
 まず、委員長の報告を求めます。農林水産委員会理事藤野繁雄君。
  〔藤野繁雄君登壇、拍手〕
○藤野繁雄君 ただいま議題になりました請願八件について、農林水産委員会における審査の経過及び結果を報告いたします。
 今国会中、四月十六日までに農林水産委員会に付託されました請願については、これが審査の結果を、過日、報告いたしましたところでありますが、その後、四月二十三日までに付託されましたものは、ただいま議題になりました通り、地方卸売市場の立法措置、蚕糸業の危機打開対策の強化、あるいは岩手県長部漁港南防波堤の構築等を要請するものでありまして、委員会におきましては、全会一致をもって、いずれも議院の会議に付し、内閣に送付すべきものと決定いたしました。
 右、報告いたします。(拍手)
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。
 これらの請願は、委員長報告の通り採択し、内閣に送付することに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よってこれらの請願は、全会一致をもって採択し、内閣に送付することに決定いたしました。
 議事の都合により、これにて暫時休憩いたします。
   午後一時十九分休憩
     ―――――・―――――
   午後十一時五十分開議
○副議長(寺尾豊君) 休憩前に引き続き、これより会議を開きます。
 次会は、明日午前零時五分より開会いたします。議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。
 本日は、これにて散会いたします。(拍手)
   午後十一時五十一分散会