第028回国会 予算委員会 第21号
昭和三十三年三月三十一日(月曜日)
   午前十一時十三分開会
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  委員の異動
本日委員青木一男君及び森中守義君辞
任につき、その補欠として小山邦太郎
君及び鈴木強君を議長において指名し
た。
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 出席者は左の通り。
   委員長     泉山 三六君
   理事
           伊能 芳雄君
           小幡 治和君
           剱木 亨弘君
           迫水 久常君
           高橋進太郎君
           佐多 忠隆君
           中田 吉雄君
           松澤 兼人君
           森 八三一君
   委員
           石坂 豊一君
           大川 光三君
           大谷 贇雄君
           木島 虎藏君
           古池 信三君
           後藤 義隆君
           佐藤清一郎君
           塩見 俊二君
           下條 康麿君
           館  哲二君
           鶴見 祐輔君
           苫米地義三君
           苫米地英俊君
           一松 定吉君
           本多 市郎君
           三浦 義男君
           安部キミ子君
          小笠原二三男君
           岡田 宗司君
           亀田 得治君
           坂本  昭君
           鈴木  強君
           曾祢  益君
           高田なほ子君
           戸叶  武君
           藤原 道子君
           矢嶋 三義君
           吉田 法晴君
           加賀山之雄君
           田村 文吉君
           豊田 雅孝君
           千田  正君
           八木 幸吉君
  国務大臣
   内閣総理大臣  岸  信介君
   法 務 大 臣 唐澤 俊樹君
   大 蔵 大 臣 一萬田尚登君
   文 部 大 臣 松永  東君
   厚 生 大 臣 堀木 鎌三君
   農林大臣臨時代
   理       石井光次郎君
   通商産業大臣  前尾繁三郎君
   運 輸 大 臣 中村三之丞君
   郵 政 大 臣 田中 角榮君
   労 働 大 臣 石田 博英君
   建 設 大 臣 根本龍太郎君
   国 務 大 臣 河野 一郎君
   国 務 大 臣 郡  祐一君
   国 務 大 臣 正力松太郎君
   国 務 大 臣 津島 壽一君
  政府委員
   内閣官房長官  愛知 揆一君
   法制局長官   林  修三君
   総理府総務副長
   官       藤原 節夫君
   外務大臣官房長 田付 景一君
   大蔵省主計局長 石原 周夫君
   大蔵省主計局次
   長       佐藤 一郎君
   文部政務次官  臼井 莊一君
   文部大臣官房総
   務参事官    齋藤  正君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       正木 千冬君
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  本日の会議に付した案件
○昭和三十三年度一般会計予算(内閣
 提出、衆議院送付)
○昭和三十三年度特別会計予算(内閣
 提出、衆議院送付)
○昭和三十三年度政府関係機関予算
 (内閣提出、衆議院送付)
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○委員長(泉山三六君) ただいまから委員会を開きます。
 まず、委員の変更について御報告いたします。
 本日、青木一男君及び森中守義君が辞任せられ、その補欠として小山邦太郎君及び鈴木強君が選任されました。
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○委員長(泉山三六君) これより昭和三十三年度一般会計予算外二件を一括議題といたします。
 質疑に入ります前に、去る三月二十日の小笠原二三男君の東北開発に関する質疑及び去る三月三十四日の矢嶋三義君の教育課程審議会の答申に関する質疑について、河野経済企画庁長官及び松永文部大臣からそれぞれ発言を求められております。この際、順次、これを許します。
○国務大臣(河野一郎君) 東北におきましてセメント開発会社がセメント工場を作ります際に、その敷地の問題について、その後地元の町村と会社との間に、当時の事情からいたしまして、会社が地元に相当の負担といいますか、金を出したことがあるというお話がありますことは、その通りでございまして、この問題は引き続き地元と県と会社、県が中に入りまして会社との間を仲介して話し合っておるようでございます。私といたしましては、これらの関係者の談合が進みました上で、しかるべく善処いたしたいと考えておるわけであります。
○国務大臣(松永東君) 先般この予算委員会におきまして、矢嶋委員の質問に対する私の答弁が多少はっきりしなかった点がありますので、ただいまここで補足して御説明申し上げることにいたします。
 中学校は義務教育の最終段階で、卒業生の大体半分が高等学校の方に進学する、半分は直ちに就職したりあるいは家事に従事したりするような状況でございます。従ってこれまでも英語やそれから職業・家庭科その他の選択教科を設けまして、生徒の進路、特性に応ずる教育をいたして参ったのであります。今回の改訂におきましては、第三学年の教科に充てることのできる時間数を一週間に二時間だけ増しまして、学校がそれだけのそれぞれ地域の事情や生徒の進路に応じて最も適した教育課程をとることができまするように、その裁量の余地を多くしたのでございます。国語、社会、理科、保健体育、技術等の多くの教科につきましては、進路、特性によって内容や程度に差を設けないことにしたのであります。従ってこれらの教科について進路によって組織がえをしたりあるいは別にしたりというような教育を行うという必要はないのであります。何か、私の説明が足りませんので、さらに今回の答申においては、現行の教育課程の建前を大きく変えて画一的に、進学組と就職組に分けて教育を行うようになるのではないかというような誤解もあると思うのでございまするが、そうした差別を設けることはないようにするつもりでおります。従って今回の答申によって、右のように実施していきたいというふうに考えておる次第でございます。
○矢嶋三義君 簡単に聞かせて下さい。
○委員長(泉山三六君) 簡単にお願いします。座席で御発言願います、あなたは特に声が大きうございますから。
○矢嶋三義君 この問題はきわめて重要な問題で、大臣の答弁は、誤解だと言っておりますが、なお不明確になりましたから、二、三簡単に伺いますから、明確にお答え願います。
 その第一点は、中学校第三学年は進路指導という立場から、将来進学する人と進学しない人とを区別して別の学級編成は絶対にしないという立場をとっておるのである、こういうことですか、お答え願います。
○国務大臣(松永東君) お説の通りでございます。
○矢嶋三義君 では、三月十八日稻田文部事務次官の名において各都道府県委員会、各都道府県知事等に発せられました通達に、そういう一番重要な点をなぜ明確に書かなかったか、この通達をもってするならば、今まで大臣が事あるたびに、本院の委員会あるいは新聞記者会見等に発表された筋からして、第三学年を二つに区別学級編成をするととれるわけであって、現場においてはそういう準備段階に入っております。従ってそういう点を明確に各都道府県教育委員会並びに知事に通達をいたしますかどうですか。いたしていただきたい。お答え願います。
○政府委員(齋藤正君) 通達には教育課程審議会の答申をつけてございますので、教育課程審議会の答申の内容といたしましては、選択科目の幅を従来より持たせるということで表現されてありまして、お話しのように組を二つに分けるという趣旨でないことは明かであるのでございまので、特にその点を申してございませんが、なお、教科課程の問題につきましては、現在も各都道府県の指導主事を集めて直接いろいろ指導いたしておりますので、その際に明確にいたしたいと思っております。
○矢嶋三義君 大臣並びに事務当局はごまかしてはいけません。何ごとですか。第三学年を分離しないでやると言っておりますが、一体やれますか、これで。このあなた方の通達並びにこの審議会の答申から、分離しないで一体やれますか。そこが問題です。結果は必ず分離することになりますよ。英語において年間百七十五時間、数学において年間百七十五時間、そうして将来就職する人は職業課程を年間百四十時間以上やるようにちゃんと規定しているじゃありませんか。こういう規定があって言葉だけで幾らうまいことを言っても、進学組と就職組に現実に分離しないで、今の職業課程の教員の定数、それから施設、そういう点で分離しないでやれますかどうですか。
○政府委員(齋藤正君) 御承知のように、従来も中学校においては職業、その他の教科といたしまして選択科目があったのであります。その幅が先ほど大臣御説明いたしましたように、必修の教科の時間が週二時間減ってそうして選択の教科の時間がふえたということでございますし、さらに選択教科の科目を分けて詳しく書いたということでございますので、建前といたしまして、現行の制度と変ってない。ただ進路特性において若干の幅がふえたということを申し上げておるわけであります。
○矢嶋三義君 ここが一番重要なところなんです。私どもが今度の教科課程の改訂において、音楽とかあるいは図画の時間数を減らしたことには賛成できない。また一方英語とか数学を将来進学する人にさらに充実して教育をしようとする点には賛成をしている。しかし問題はこれを施行する結果、これは進学組と就職組に分離学級編成をしない限りできるはずがないのです。表面ではそういうことを書いておりながら、心の中では別に編成してやることを期待しているのです。だからこの通達はごまかしているじゃありませんか。ごまかしている。では、お茶の水大学で全国約千人からの学校長並びに教育委員会の指導主事を集めてきょうから講習会を開いているのですが、あの目的は何ですか。そしてあの旅費は、あの費用は昭和三十二年度の予算から出るのですか。今われわれが審議してまさに可決せんとする昭和三十三年度の予算から出るのですか。大臣はこの前のここの委員会で、慎重にもう一度考えて、本国会が終るまでにお答えいたしますということを言っておる。そのわれわれと約束をした三月十八日にこの通達を出して全国から約千人の人を集めて、現にきょうお茶ノ水大学で講習しているじゃありませんか。そういうところでは進学組と就職組に分離して教育してはならない、そういうことをしてはならないということをはっきり示しますかどうですか。これは大臣から伺いたい。その点だけが大事なんです。内藤初中局長どこへ行っているのか。局長はお茶の水大学に行っているのだろう、立法府の意思を無視して。
○国務大臣(松永東君) 繰り返して申し上げます。進学級と職業級とを別にしてやるような考えは持っておりません。今日までやっておった通りにやります。ただ選択時間を、それを二時間ふやすだけなんでございます。ですからお説の通り、別の組をこさえてやるという考えは持っておりません。
○委員長(泉山三六君) 簡単にお願いします。
○矢嶋三義君 簡単に伺います。これは大事なことですからね、簡単にいきます。(笑声)文部大臣、実は本院の文教委員会で土曜日に四人の学者を呼んで意見を聞いたわけです。それから審議会の会長さんにも承りました。ところが会長さんはこの答申を行うに当っては慎重にやってもらいたいという希望を持っておったということを明確に述べている。ところがあなた方は、まず道徳教育の方は四月から行おうと準備されて今やっているわけです。この答申を実施するとすれば、さっき言ったように、職業科の教員の数とか、英数の教員の数とか、施設設備というものが整わなければできない、この答申には、財政的な配慮は全然述べられていないが、従って今のままではやれないような答申をあなた方しているわけですが、この点についてどうして触れなかったかということをただしたところが、その財政的配慮は文部大臣の方で、行政府の方で考えることであるから、必要は万々認めながらも、それに触れなかったということを答えられているわけでありますが、あなた方、今度答申の一部をこの四月から実施するとするならば、この財政的配慮について、中央教育審議会なりどこなりに諮問する考えがあるのか。
 それからもう一つ重要なことは、たとえば教育大学の梅根教授のような、こういう教育課程については非常に見識を持っている学者、こういう一部の人を審議会委員から全部追い出してしまつて、そうして教育課程審議会委員を文部省の事務当局の方々と意見が一致するような人たちだけで編成をし、そうしてもと文部事務次官であった方を会長として、わずか半年間に、あなた方の考えの通りの答申を出していただいて、しかも審議会に慎重にやってほしいというのを早急に強行するこの態度は、私は是正されなければならない、かように思うわけで、審議会の資格そのものについて、日本の相当数の学者、教育者は非常な不満と危惧の念を持っております。これらの点について、文部大臣はどういうお考えを持ち、今後どういうふうに善処されるつもりであるか承ります。
○国務大臣(松永東君) 前回のこの委員会でも申し上げました通り、学習指導要領ができ上りますのが、大体八月までにでき上るというつもりでおります、従って、その学習指導要領ができ上りますれば、それに基いて諸般の手続を進めたい。従ってその内容等も改善するものがあれば改善したいという考えでいるわけであります。従って八月までにゆっくり一つ審議いたしまして、そうして今申し上げた編成その他の内容等についても検討を加えていきたいというふうに考えております。
○小笠原二三男君 関連して。どうしてもはっきりしませんので一言だけ。
○委員長(泉山三六君) 簡単にお願いいたします。
○小笠原二三男君 今日、もう教科課程の変更そのものについてとやこう言うことは、他日にその批判は譲って、触れません。要するに一週二時間程度の増減が、結局進学を希望する父兄が、高等学校の入学試験内容等から見て、どうしても増になっている英語、数学を重点的に、必修ではないけれども、選択科目だけれども、やりたいという希望が起こる。それから都市あるいは同学年多数学級において、学校経営上、教員数の都合等から言うて、どうしてもその希望と合致せしめて、進学組並びに職業組とを編成替えをする方が能率的である、教育効果が上がるということをどうしても考えがちになる、過去の例がそれであったのですから。今日の高等学校のコース制というものは、今の大学の入学難から起ってやむなくそうせざるを得ない。そういう便法上からも高等学校の経営というものまでくずしてでもやっておるわけなんです。中学校にそれが影響してくるのです。そのことは先般剱木委員からもお話がありました通り、教育の機会均等の上からいって不都合である。過去の学校制度からいってそれは欠陥であるということで、そういうことはもう一致して認められておる方式なんで、ところがそのことが結果として起る可能性がある。従って問題はそういうふうでなくてやらせるのだということなら、それは十分よくわかりましたから、そういう編成をしてやってはいかぬ。この点をはっきりしていただきたいと思います。どうしてもその点をはっきりしてもらわなくちゃいかぬ。それほどまで大臣がおっしゃるなら、そのやり方はいかぬということを言ってもらいたい。それが明日からの、四月からの新学期を迎えるときに当って全国の学校における新学年の学級編成に大きく影響するのです。もうよそのことは聞きません。
○国務大臣(松永東君) お説のことはこの前からも承わっております。さらにまた剱木委員からの同様のお説も承わっております。そうして私もこれに対して多少の意見を持っておるのであります。しかしながら一応答申案が出ておりますので、その答申案についてみっちり研究をいたしましてそうしてそれぞれの専門家の御意向もとり入れまして、そうして実施する、こういう決心でおります。
○小笠原二三男君 いや、たびたびの大臣の発言でよくそれは私もわかっておる。ですが、今差し迫っておる点は学級編成の問題なんです。ですから私が質問したのに答えていただきたい、お気持は十分わかっていますから。そして全国の代表を呼んで今準備をし、文部省としていろいろ指示をするのだそうですから、そういう編成の仕方をしてはいかぬ、岸内閣における文教政策上貧乏人にも育英制度、保障制度で力があれば大学までのばそうと考えておるのだから、従って初めから貧乏人組というのを、進学組、職業組と分けるような、こういう青年の将来の発達をしていく可能性をふみにじるような、そういうことはやめろとはっきり指導してもらいたい。そう言えるかどうかという問題、させませんとさえ言っていただけばいいのです。何もよけいなことは言わぬでもいい。
○国務大臣(松永東君) 御質問の趣旨よくわかっております。ことに小笠原さんのこの前の御質問ちょうどその趣旨であります。よく承知いたしております。しかし今の御説の通り今日ここで、させません、そうさせますとかいうことを断言することができないのです。しかし断言することができるのは、進学級と就職級とに二つに分けることはやりません、それはやはり従来からやっていた通りやるということだけは間違いありません。そこでただ問題は、今のいろいろ学習指導要領あたりを研究して編成するつもりでありますから、それが、編成ができ上ってから内容は実施いたしますが、しかし進学級と就職級とに分けて差別待遇をするようなことが見られるようなことはなるべく避けたいというふうにこの前も私は申し上げております。従って今日まで私は二つに分けるということは申し上げ得ません、二つに分けることは申し上げません。また申し上げる必要がない。私は二つに分けるつもりはないのですから。しかしそれは学習指導要領ができ上ってから内容等については御趣旨に沿うように一つ実施していきたいと思っております。
○委員長(泉山三六君) 小笠原君、きわめて簡単にお願いいたします。
○小笠原二三男君 ただいま御答弁の中でこう言うております。二つに分けることはやりませんと前段に言うている。だんだん話しているうちには、なるべく避けたいと思います。二つに分けることはなるべく避けたいと思います。第三には将来この教科課程内容を専門的に研究して、そのときに措置します、こういうふうになっている。ところが今この職業課程と進学課程とを、学級編成を学校経営上分けることは義務教育の建前からいい、あるいは教育の目的、方法論上からいい、学校制度の上においてはいけないものとされてきておるのです、戦前からも、これは。それが特に今日の新らしい憲法における教育の機会均等、その精神なり、民主主義の精神なりからいって、これはいけないことなんです。原則論なんです。そのいけないものをいけないとしながら、教科課程の内容を、いろいろ能率を上げるように、子供の教育がしっかりいくようにお考えになるのが文部大臣の建前なんです。その教科課程をいじくり回している結果は、あるいは二つに分けなくちゃならぬという結論も出るような、そういういじくり方は文部大臣の考え方として真向から間違っている。ですから私はやりませんでなくて、それだけのお気持があるなら、大臣の趣旨もわかっているのですから、やりませんというのをやらせませんとさえおっしゃれば、それで済むことなんです。とてもこれは答弁になりませんが、岸総理大臣ならそつがなく御答弁になるだろうと思うのですが、岸総理大臣御賛成ですか。御賛成でしたら耳打ちして、そうやらせませんと答えさせて下さい、あなたの文教政策にもとるのですから。
○国務大臣(松永東君) それはこの前から私の言い回し方がたりなかったかと思います。それはそつがなく岸総理みたいに言えれば受けたかもしれませんが、言い回しが足りなかった、それは御説の通りであります。二つに分けて編成がえをしようという考え方は毛頭持っておりません。でございまするが、その教課内容については学習指導要領ができ上るまでにいろいろ研究をしまして、御趣旨に沿うように内容を盛り上げるつもりであります。
○小笠原二三男君 だから二つにはやらせません……。
○国務大臣(松永東君) やらせません。
○委員長(泉山三六君) 矢嶋君に申し上げます。文部大臣はたびたび所信を表明されました。何とぞ御了承願います。
○矢嶋三義君 あと一問だけ……。
○委員長(泉山三六君) それじゃただ御一点だけに願います。
○矢嶋三義君 文部大臣、本会議において今あなたがここで述べられた通り速記も残っている。中学校において第三学年を進学組と就職組にはっきり分けて教育を行うようにしたと受け取っておられるようでありますが、それはそうではないのですと、本会議で、そこで述べられている。だから私の言うのは三月十八日のこの通牒だけでは不明確ですから、この通牒に付け加えて進学組と就職組というふうに分けてはならない、そういう考えでないということを追って通達を出しなさいということと、きょうお茶の水大学で全国から約千人の人たちを集めて講習をされているのですが、その講習会の席上へあなたはおそらくあいさつに行かれると思いますが、進学組と就職組とに分けてやるようなことをすることは、岸内閣の文教政策がそうでないということを通牒並びにお茶の水大学で明確にすることをお約束して下さいというのです。はっきりして下さい。それができなかったら問題ですよ。この速記はどうしますか。
○国務大臣(松永東君) 御趣旨はよくわかりましたが、私はもうお茶の水に行って参りました。(笑声)ですからそのお茶の水では教育道徳の時間を特設するように、週一時間きめたのだからその一時間を有意義に、しこうして世論にいろいろ反対説もあるようだから、その反対説がなるほど一時間特設してよかったというふうに認められるように御考案願いたいということをあいさつして参りました。しかし今のその問題は初めから私どもは何もそれを編成がえをして進学級と職業級とに分けようという考えは寸豪も持っておりません。そのことに触れておりません。そこで何かの方法でやることにいたしますが、これから私がそれじゃ今のお茶の水大学でやっているところへ行ってやれとおっしゃるけれども、これからあなたに肝心の予算委員会もあるし、本会議もあるし、なかなかそういうわけには参りません。何らかの方法で御趣旨は通達することにいたします。
○委員長(泉山三六君) これより本日の質疑に入ります。
○下條康麿君 私実は二、三の問題についてお尋ねしたい考えでありましたけれども、時間等の制約がありまして、この際、栄典の問題について二、三の事項について岸総理にお尋ねしたいと思います。
 わが国の栄典制度は、終戦後間もなく、昭和二十一年五月五日の閣議決定によりまして、文化勲章を除き叙勲は生存者には一般的にストップいたしておるのであります。しかしながらそのままにしておけませんから、すでに栄典審議会が吉田内閣におきましても、また鳩山内閣におきましてもできまして、いろいろ研究した結果、すでに栄典法案は第一、第十五、第二十四国会に前後を通じて三回提案せられておるのであります。なかんずく第二国会におきましては、衆議院を通過いたしまして参議院に回付されましたけれども、そのときは審議未議了になっております。かように栄典審議会、栄典法案等のいろいろな審議の過程を経まして、今もこの栄典法案が成立いたしません、難航いたしておりますのは、いろいろ理由があると思いますが、私の判断では、その提案された法案の内容がまだ十分でなく、いろいろ問題が包蔵されている上に、提出されました図案を実は、私見たのでありますが、当時参議院におりまして第二国会の提案に対しては率先して反対した一人であります。そういうような不備な案が出ておった経験があるのでありますが、その問題の一、二点を申しますると、勲章は一種でいいじゃないか、ということが強く出ておりまするが、私はさようには考えない。実際の必要に応じて勲章は必ずしも一種に限るものではない。必要があれば、二種でも三種でも差しつかえない。
 現にソ連の例を申し上げますと、一九一七年十月革命によりまして、ボルシェヴイキが政権を掌握いたしまして、その際、一切の伝統、歴史を否認して、もちろん勲章制度も廃したのでありますが、しかし翌年の一九一八年の九月には赤旗勲章ができまして以来、すでに二十三種類の勲章ができておりまして、ソ連は世界で最も種類の多い勲章を持っている国であります。かような事情は人間の本能に基くところのいわゆる特異性といいますか、ディスティンクョンを希望する観念からかような必要があると私は認めるのでありますが、ことにソ連の勲章について興味深いことは、そのうちにアレクサンダー・ネヴスキーという勲章がある。ところがこのアレクサンダー・ネヴスキーという勲章は、これは全然第一次戦争前のローマ法王朝時代の最高勲章の名前であります。現在は部隊長級に出します単一級の勲章になっておりますが、そういうふうにローマ法王朝時代の名前でも、もしそれが国民に親しまれており、国民に尊敬を受けるものであれば、その名前は使ってあるというところに私は相当に意義が深いものがあると認めておるのであります。またたとえばイギリスのガーター勲章とかあるいはバース勲章、これはいずれも十四世紀にできた勲章で、いまなお向うで用いておるのであります。三年程前に私フランスに参りまして。パリで電車に乗ったことがある。たぶんシャンゼリゼエからコンコールド広場に行く途中で、あるスタシオンで立派な紳士が入ってきました。そうしますと、そこにおる人がほとんど全員席を譲ろうとしたのでありますが、見ますと、その紳士の左のボタン・ホールに赤い字がつけてあった。これは申すまでもなくレジォン・ド・ヌール勲章の略字であります。ところがレジォン・ド・ヌールの勲章なるものは、一〇八二年のナポレオン一世が作って、馬上から戦功のある将兵に手ずから渡したという有名ないわれがある。もちろんその勲章は共和政体になりましてから、まん中のナポレオン一世の横顔を平和の女神の横顔に直したと言われておりますが、大体においてそのまま使っております。このレジォン・ド・ヌ―ル勲章というものはフランス人の間に愛され、親しまれ、また尊敬されている勲章なのであります。こういうふうに私は沿革を経て相当国民に親しまれている勲章は、そうにわかに改廃すべきものでないということをかたく信じております。
 たとえば日本の旭日勲章はライジング・サンの勲章として海外に非常に高く評価されておることをよく知っております。その勲章は今申したレジォン・ド・ヌール勲章をモデルに作ったものであります。やはり栄典法案が出まして、いろいろの考案が出るけれども、その内容を私見ましても、決して現行制度にまさるものがあったということを認めることができないのでありまして、しかるに現実の社会情勢はどうかと申しますると、この叙勲に対する期待がだんだんと強くなって参っております。この形勢を政府といえども無視はできない情勢に追い込まれておる。現在は先ほども申しました昭和二十一年の五月五日の閣議決定によりまして、死亡者と外国人だけが認められて、一切生存者は認めておりませんが、しかし今申したような叙勲に対する期待がだんだんとふえて参りましたので、すでに昭和二十八年の八月に関西風水害を機会に特例を開くことになった。災害とか犯人逮捕に協力するとか、あるいは公務傷病というような場合には、生存者といえども特例を開くことによりまして、すでにこの特例の規定によりまして六十幾人が恩賞にあめずかっておる。また昭和三十年の一月二十二日に鳩山内閣におきましては、当時褒章が紅綬、藍綬、緑綬、紺綬と四種類ありましたが、さらに紫綬、紫、黄綬、黄色の綬をつけた褒章でありますが、この二種類をつけ加えまして、広くこの恩賞のことがあったのでありまして、これも全面的に生存者に対する行賞がストップしておることを緩和する一つの方法であると私は考えておるのであります。で、栄典法案の制定、ごもっともでありまするが、しかしこれには相当な今までの過去の経過がありますし、閣議決定でストップしたものは閣議決定でこれを改変することができると私は思います。今期通常国会に栄典法案はお出しになるような形勢は見えませんので、すみやかに閣議決定によりまして生存者に対するこの叙勲のことを実施いたすようにお願いしたいと思いますが、総理大臣のお考えを聞きたいと思います。
○国務大臣(岸信介君) 戦後栄典の制度の運用は非常にいろいろな沿革を経てきておりますが、これが戦後の運営としては望ましい状態になっているとは言いかねると思います。ことに戦後の混乱時代からようやくこういうふうにあらゆる面が復興をいたしてきて、社会その他におけるところの混乱もなくなった場合において、この栄典制度というものをやはり正常な形にしよう。この問題につきましては、歴代の内閣におきましても、いろいろと検討をいたして参っておるのであります。今おあげになりましたような栄典法についての日本の国会における沿革もございます。そこで、今おあげになりましたように、やはり栄典制度というものは、よほど国々における歴史、沿革、またこれに対する社会の尊敬なり、親しまれるという、国民の間にそういう感情というようなものがみな盛り込まれて、初めて栄典制度というものの意義をなすと思うのです。従いまして、政府としては、現行――現行といいますか、従来行われてきております制度を基本として、そうしていろいろその後の社会情勢等も勘案して、栄典法を制定することについて、検討をいたしておるということでございます。御指摘になりましたように、現在のこの栄典制度の勲章の制度につきましては、閣議決定で、生存者に与えないということにしてきておるわけでございます。御指摘のように、生存者にこれを与えるということであれば、閣議決定を変更するということだけの手続で私は足りると思います。ただ、栄典制度に対する戦後における歴代内閣がとってきましたいろいろな国会との関係等も考え、また、政府自体としても大事な問題でありますので、先ほども申しましたように、現行制度を基本として、一つ栄典制度の確立をしようということで検討をいたしておるところでございます。本国会には提案の運びにならぬと思いますけれども、また、現行のものにつきまして、われわれとしては、やはりこれを基本に考えておりますので、将来の問題といたしまして、やはり検討を十分いたして、別の法制を作ることが望ましいという結論を得まするならば、成案を得て国会に提案をするし、あるいは現行のものでよろしいと、生存者にも、運営の方法として、制限していることを撤廃するということで足りるという結論になりますれば、閣議を変更いたしましてする、それらの点につきまして検討中でございます。
○下條康麿君 実は、昭和三十三年度の今審議されております予算の中に、年間七千人、総額千六百万円の経費が盛り込んでありまして、これはむろん、現在の死亡者等の関係もありますが、生存者の叙勲も予想して、そういう予算が組まれておるのであります。従いまして、御研究、まことにごもっともでありまするが、なるべく早く結論をお出しになりまして、その予算が年度当初から実施されるような意味において、早急にこの問題を解決され、場合によりましては、必ずしも私、先ほど申し述べたように、法案の必要を認めない、現に法律にかわるそれぞれの法令があるのでありますから、すみやかに実施することが妥当であるというようにも考えますので、その点も十分に御考慮置き願いたいと思います。
 なお、実は昨年の暮れに、学界の最長老の方が八十八才に達して、喜寿の祝いで、関係者一同、その方の学界の功績に対して、叙勲の詮議を非常に希望したのでありますが、今申したような制度がまだ動かないために、遂に恩典の詮議がなかったのをまことに遺憾にしております。さようなことも御考慮いただきまして、どうぞすみやかに政府の態度を御決定、実施の運びになるように希望します。
 それにつきまして一、二お尋ねしたいと思いますが、現在の、死亡者、緊急の場合、国際礼譲に基くところの外国人の叙勲というようなものは、従前の慣例によりましても、いわゆる叙勲詮議機関の審議を経ない特例の場合であります。しかしながら、最近いろいろ見ておりますと、私は、かような場合にも、相当審議機関の議を経る必要があるのじゃないかということを考えたのであります。もちろん生存者の叙勲が始まれば、さらにその必要度が高まってくると思います。総理府に関係部局がありますが、もちろん、最後の決定は、閣議でこれがきまるのでありますが、そういう機関のほかに、第三者的に公平な見地から、学識経験ある者がその叙勲に対する意見を尽して、そうして公正妥当なる叙勲の実施されることが望ましいことであると思います。現在、文化勲章につきましては、昭和二十四年十一月三日に、文部省に文化勲章受賞者選考委員会が設けられて、文部大臣の委嘱するところの委員がその審議にあずかっております。しかしながら、私よくながめておりますというと、その文化勲章の選考委員会が文部省所管にあるということは、ややもすれば、その文化の範囲が文部省所管に限局されるやに見受けられる節がないでもないのであります。文化勲章が昭和十二年二月に制定されるとき、私当時その事務を担当しておったのでありますが、その事情から申しますると、文化というのは、必ずしも文部省所管だけでなく、各省にわたるものであります。従いまして、もし文化勲章に関する選考委員会を作るならば、それは総理府に置き、総理大臣のもとに置くべきものと私は考えます。で、それが文部省にある関係ばかりでもないかもしれませぬが、ややもすれば文芸、芸術等に関する叙勲の内容が、必ずしも国家社会に顕著なる功績をなしていると認めがたいものもあると思います。あるいは個人的趣味とか趣向に偏しているのじゃないかというような向きもあるように思うのであります。また、最近いろいろ実例が出ておるのでありますが、文化勲章は、制定当初、文化の方面における最高峰に対して叙勲になることになっておりました。従いまして、ある度盛りでその功績を判定できないという考え方に根拠を置いております。従いまして、文化勲章は、単一級の、階級のない勲章が作られている。ところが、その文化功労者が、一面文化勲章をもらっているのにかかわらず、別に他に特段の功績なきにかかわらず、階級のある勲章をさらに詮議して、あわせて行うごときことは、これは私は、文化勲章の本旨に反すると考えております。かれこれ考えまして、かようなことが出て参りますことは、結局この恩賞に関する、栄典に関する詮議機関がないということに帰着するのじゃないかと思います。従いまして私は、これはいまの法律がかりに設けられるならば、そういうものを待たないで、現に即刻、この栄典に関する審議をする特段の機関をお作りになって、ここで公正妥当な判断に基いて詮議が行われるように願いたいと思うのであります。何か予算の中にも、栄典審議会に関する委員九名、経費三十八万円の予算を盛ってあるようでありますが、その点に関する総理のお考えを承わりたいと思います。
○国務大臣(岸信介君) 今、予算に盛ってあるのは、先ほど来申し上げておりますような栄典制度の樹立について、これの審議をお願いすることを目的としており、将来栄典法ができましてあるいは先ほどの内閣の決定を閣議決定を変更して、生存の人にもこれを授与するということになりました場合に、それを慎重にし、また公平にするという意味から、中正な立場にあり、十分各方面の意見が述べられるような審議会の制度を置くというようなことは、もちろん私は、この栄典制度の運営を公正妥当ならしめるためには、考えていかなければならないと思います。そういう場合において、これを内閣に置く、総理府に置くということは、やはり事の性質から見るというと、そういう性質のものであろう、かように考えております。
○下條康麿君 栄典法が成立するまでもなく、それまでの期間において、私はかような審議機関が要ると思いますので、その点は、さらに御研究を願いたいと思います。
 もう一点、栄典を取扱う部局の問題でありまするが、たとえば、フランスで申しますと、レジォン・ド。ヌール局というのがありまして、その長官はグラン・シャンスリエといいまして日本で申しますれば、認証官的な地位が与えられておる。身分は慣例上保障されておって、非常に高い地位です。たとえ大統領といえども、その地位を奪うことはできない。その詮議した叙勲の内容については、批判できない程度の高い地位を持っておるのであります。およそ部局の規模をどういう程度にきめるかという問題は、事務の分量とか責任の在所ということによることはむろんでございますけれども、その事務の性質、関係の事項を勘案しまして、おのずからその部局の品位を保つことも私は必要であると考えております。しかるに、現在の日本の恩賞に関する部局は、おそらくどなたもあまり御承知にならないような小さい局でありまして、総理府の官房の一部になっておるのであります。いずれこの生存者の叙勲が開始され、従前の規模になろうかどうか知りませんけれども、私は、相当なる規模にこの部局が拡大されることを予想しておりますが、そういう場合には、栄典局という制度でなく、あるいは長は長官にするとかいうことも、一つ今から御研究願っておきたいと思います。こういう点に関して、総理のお考えを一応お伺いしておきます。
○国務大臣(岸信介君) 行政部局のこの問題は、今おあげように、事務の内容であるとか、あるいは責任の在所であるとかいうことも必要でありましょうし、さらに、その扱うところの事務の性質というものも、十分考えていかなければならぬと思います。栄典の問題は、何といっても、国民がそれに対し一つの尊敬を持ち、親しみを持つというところに本拠があるわけでありまして、従って、それは公正に行われ、また国民自身がその尊敬を持つにふさわしいような機構においてこれが決定され、事務が扱われるということは、もちろん私は必要であると思います。そういうことにおきまして、栄典法なりあるいは栄典に関する政府の方針をきめるときには、当然その行政機構については、今申しましたような趣旨においてこれを考えなければならぬ、かように考えております。十分研究をいたします。
○下條康麿君 昔から賞罰は並び称されて、信償必罰といっておりまして、社会秩序を維持する二つの大きな柱だと考えております。しかるに、罰の方には、機構として法務大臣から検察当局、地方検察官と、至れり尽せりの完備の状態になっておりますが、どうもこのほめる方は、案外手薄になっておるのでありまして、私どもは、教育者として、学童その他の関係なんかの点から、よく児童の訓育の場合に、ほめる七分のしかる三分ということを基準にしておるのであります。どうも国家の現在の制度は逆で、しかり七分のほめる三分に足りないのであります。これは、政治を運営せられる総理大臣として、信賞必罰の見地から、さらにこういう点についても、特段の御考慮を願います。
 今、三点御質問申し上げましたが、そういう点につきましては、将来の問題として十分御考慮をわずらわしたいと思います。
 これで私の質問を終ります。
○委員長(泉山三六君) これにて……
○松澤兼人君 議事進行について発言いたします。
 予算は、いよいよ本日をもって討論採決の段階に入るようになったのであります。私は、質疑終局前に、ぜひとも総理に対して伺っておきたい点があるのでありますので、明快な御所信の発表を願いたいと存じます。
 言うまでもなく、予算は、これと関連する各種の法律案が成立しなければならない。予算と関係法律案とは、一体をなしていなければならないのであります。でありますから、予算成立と同時に、関係法律案が成立するということが、理論的にいって正しい形式であると考えられるのであります。特に歳入関係の法律案は、予算の前提をなすものでありますから、予算が成立しておる以前に、歳入関係の法律案は成立していなければならないということが、理論の上からいえば当然言えるのではないかと思うのであります。しかるに現在、予算は最終段階に入りましたけれども、これに関連するところの関係法律案というものの審議がまだ十分でないと思われる節があるのであります。この点につきましては、岸総理、あるいは岸総裁といたしまして、国会及び与党の人々に対して、どんな予算審議の促進に関する措置を講ぜられたか、この点お伺いしたいのであります。
 なお、これらの重要な歳入関係なりあるいは予算の骨格をなす法律案の成立の見通しについて、どういうお考えを持っておられるか、承わりたいと存じます。
 土曜日におきましても、いろいろと解散の問題が出ましたけれども、四月解散ということはもう必至である、こう思わなければならないのであります。岸総理が明確に解散の時期について発言を避けておられることは、それだけの理由はあると思うのでありますが、しかし、自民党としましても、事実としては、もう選挙対策に突入しておると見られる節もあるのであります。こういう段階におきまして、愛知官房長官は、解散までに成立せしめるべき法律案あるいはその他の法律案を各分類をいたしまして、それぞれ促進するものは促進する、あるいは一時たな上げするものはたな上げするというような分類をされておるようであります。しかし、その分類をわれわれが拝見いたしますと、これは明らかに政府の一方的な判断であって、必ずしも国民的な立場から、そういう重要な法律案、しからざるもの、こういうふうに分けられていないと考えられる点があるのであります。総理は、いかなる法律案を緊急に、しかも解散近い今日成立せしめなければならないと考えておるか、この点を承わりたいと思います。
 なお、最近問題となっております酒税の改正法律案につきましては、衆議院におきまして全会一致の付帯決議がある。それは、減税分は価格の引き下げに充当すべきであるという付帯決議がなされたにかかわらず、大蔵当局としましては、一部は原料高という名目において醸造業者にこれを渡す、そうして一部だけ消費価格を引き下げて、そうして減税分がまるまる消費者に恩恵を与えないような措置をとられるということを聞いておるのであります。こういう問題は、せっかくの内閣の減税、酒税の引き下げということが、その通り消費者に均霑を与えないということでありますならば、政府の趣旨にも反しますし、また、院議でもってそういう付帯決議をしたにかかわらず、政府の措置としてそういうことをしないということは、院議無視ということも考えられるのであります。で、院議の尊重について岸総理はどういうお考えを持っておられるか、承わりたい。
 以上、予算審議の終局に当りまして、総理の所信をあらためてお伺いいたしたいと思います。
○国務大臣(岸信介君) 御質問のように、予算が成立する場合において、その予算の施行上当然それと一体不可分の関係にある法律案等がやはり成立することを必要とすることは、言うを待ちません。歳入に関するものはもちろんのこと、施行上の問題に関しましても、それが成立を見なければ、完全な予算の執行はできないわけでありますから、これが成立につきましては、われわれとしても、十分に努力をしなければならぬ問題であると思います。政府、また与党といたしまして、これらのものが成立するように、あらゆる全力をあげて努力をすべきことは、言うを待たないのであります。
 最近、解散についていろいろ論議が行われておりますし、いろいろとこれに対する思惑等のために、あるいは国会の出席が悪いとかいうふうな事態も見受けられたのでありまして、これに対しましては、政府、また与党の総裁として、非常な責任を感じておりまして、当院のこれらの重要法案の審議に対して、十分な全力をあげるように、厳重に申し渡しをいたしまして、最近における各委員会の状況は、一時に見たような事態とは非常に改善されたと思います。政府、また与党の首脳部といたしまして、今後ともそういう意味において全力をあげたいと思います。
 さらにお尋ねの、この予算に関連している法案につきまして、その審議の状況等の具体的な問題は、官房長官からお答えをさせますが、何を一体そのうちぜひともしなければならぬか、あるいはどのものは、やむを得ないとすれば、審議未了になっても、あるいは不成立でもやむを得ないのじゃないかというふうに、そこの間に重点をどういうふうに思考して、考えているかという御質問でありますが、この点に関しましては、実は政府としては、ごく率直に申し上げますというと、出しておりますものが全部通ることが一番望ましいと思うのです。そういう意味においてわれわれとしては努力をいたしております。ただ、時期的に申しましても、どうしてもいつまでに、たとえば年度内に成立しなければ施行上困るというようなものもありましょうし、一日も早くそれを成立せしめなければならないような必要に迫られているものもありましょうし、あるいは多少、時期的にずれても差しつかえないというふうなものも、たくさんのうちには私はあると思います。そういう意味にりおいて、あるいはこの審議の促進について、政府あるいは与党との連絡等も、それに応じてとっておるという向きはあろうと思いますが、政府としていやしくも出しております、また予算に関係しておりますところの法案について、実は重点をどこに置くかという……、成立しなくてもやむを得ぬとかというふうには、実は私考えておらないのでございます。重点という意味においては、いずれも何である。ただ、成立の時期等について今申しますような、非常に急いでやらなければならぬ問題と、あるいはいついつまでにはという期限のついている問題、そうでない問題等の区別はあるいはあると思いますが、予算の施行を円滑ならしめる意味からいうと、これと不可分の関係にあるものは、いずれもこれを成立させたいというのが政府の考えであります。
 なお、お尋ねのありました酒税等の問題についての具体的の何は、大蔵大臣等からあるいはお答えしますが、私としては、御質問の院議について政府はどう考えるか。もちろん、衆議院といわず、参議院といわず、御審議の結果いろいろと院議できまりましたところの院の意思というものに、政府がこれを尊重し、その方向に向って努力をすべきことはこれは当然のことでありまして、私、言うまでもなく、院議は尊重していかなければならぬと思っております。
○政府委員(愛知揆一君) 先ほどのお尋ねの中に、私がある意図のもとに法案を区分しているというようなお尋ねがございましたが、ある新聞にさような記事が出ておったことは私も読みましたが、これは事実に反するわけでございまして、ただいま総理から御答弁のございましたように、政府といたしましては、特にこの歳入関係等におきまして、予算の成立のときに、できる限りその時期を同じゅうして法案の成立をお願いいたしたいというものにつきまして、特に重点を置きまして、両院の御審議をお願いしているような次第でございます。
 それから、いわゆる予算関係法律案と称しておりますものは、この国会に提案いたしましたものが八十一件ございます。この八十一件につきましては、実は二月二十日前後までにほとんど全部の提案を完了いたしまして、例年に比べますると、非常に時期も早く御審議をお願いしたつもりでございます。そのうちで、本日午前現在で成立いたしておりますものが十七件ございます。それから、一院を通過いたしまして、他の一院におきまして、御審議がもう最終段階になっておると見受けられますものが二十五件ございます。この予算関係法律案と通称いたしておりますものの中には、申すまでもございませんが、歳入の関係、あるいは四月一日に施行ということを原案に書いてありますもの、あるいは施行の期日が相当先になっておりますものというように、いろいろの分類はできるわけでございますが、先ほど申しましたように、時間的な関係から申しまして、政府といたしましては、特に歳入関係に重点を置きまして、御審議をお願いいたしておりますが、幸いに両院の非常な御熱意によりまして、本日、三十一日中にも相当の件数が成立をするのではなかろうか、これを衷心から御期待申し上げておるような次第でございます。
○国務大臣(一萬田尚登君) 今回酒税法の一部を改正する法律案の御審議を願って、衆議院でこれについて、この減税の効果を消費者がフルに受け得るようにしようと、こういう決議が付帯されたのでありまするが、たまたま一方、当該の酒類につきまして原料が上りまして、価格を引き上げる、そこで、むろん減税の効果は、消費者がフルにこれに浴するようにいたすのでありますが、同時にまた、この原料高による価格の引き上げ、問題は、これと同時に一本でやるか、別々にやるかという点であります。まあこの点の扱いにつきましては、ただいま両党の議運の関係者で御相談をいたしております。それらをよく御意見も聞きました上でと考えておる次第であります。(「何だかわからなかった」と呼ぶ者あり)
○松澤兼人君 簡単に……。今の大蔵大臣の答弁では、どうもはっきりわかりませんのですが、もちろん、議運で与野党で話し合いをするということは、私も聞いているわけであります。しかし、先ほど総理大臣が言われましたように、院議は十分に尊重しなければならない、こういう立場であるならば、大蔵大臣は、院議を尊重してその態度を明らかにすべきであって、むしろ自主的に、大蔵大臣が、自分の意見を、院議尊重の立場に立って決定されるのが適当であると考えるのであります。いかがでございますか。
○国務大臣(一萬田尚登君) 私は、できるだけ明瞭に申し上げたつもりでありまするが、むろん、議院の決議等を尊重いたしますことは言うまでもございませんが、それが一点、それで、その決議の趣旨に沿いまして、この減税の効果が消費者に及ぶようにいたします。これを考える。同時に、しかしまた、行政措置として、価格を引き上げなければなりませんので、価格の引き上げを、それをどういうふうな形でするかということについて、今考え方がいろいろあるようであります。これらについて、議運で、こうした方がいいのじゃないかというふうになっておりまするので、それらのことをよく聞きましてから、大蔵大臣としては決定いたしたいと思います。(「大臣はどう思うか」と呼ぶ者あり)決議の趣旨の、この減税の効果を消費者に及ぼすということはやるのです。これは尊重するのです。
○委員長(泉山三六君) これをもって、質疑通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。(「関係閣僚みんな出てきているんですか」と呼ぶ者あり)ちょっと申し上げます。おおむね全員そろいました。ただし、松永文部大臣、根本建設大臣、郡自治庁長官は本院の委員会に……(「そんなことだめだよ、最後の締めくくりじゃないか」と呼ぶ者あり)なお、前尾通産大臣も委員会に出席中でありますので、(「それじゃ休憩しましょう」と呼ぶ者あり)二十八日、委員長から、理事会の申し合せに基きまして皆様にお諮りいたしまして、御同意を得ました通り、もし他の関係で御出席願えないときは、政務次官をもってと、こういうような(「いや、最後じゃないか」「じゃあ、速記をとめて、そういうことを一つ相談しなさい」「続けたまえ」と呼ぶ者あり)……よく了承いたしました。(「休憩々々」「進行」「官房長官、もっと呼んできなさい」「労働大臣はどうしたのだ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)よくわかりました。速記をとめて。
   〔速記中止〕
○委員長(泉山三六君) 速記を始めて。
 これより討論に入ります。
○坂本昭君 ただいま議題となりました、昭和三十三年度一般会計予算、特別会計予算、政府関係機関予算、以上三案に対し、私は、日本社会党を代表して、これに反対の討論を行わんとするものであります。
 まず第一に、批判しなければならない点は、予算編成方針の基本となった政府の内外経済情勢の分析が誤まっていることであり、従って、来たるべき不況に対する処置を通して、予算編成に根本的な誤まりがあるということであります。すなわち、政府は、昨年五月以来の外貨危機に対する引き締め政策で、国内需要が漸次鎮静し、経済調整が次第に進んで、国際収支が改善されたが、世界景気の支柱であるアメリカ経済は、昨秋以来景気停滞の傾向で、本年も楽観を許さず、わが国の輸出環境は一段ときびしくなるから、政府も国民も一体となって、あらゆる努力を集中して輸出の伸張、すなわち目標三十一億五千万ドルの達成を期すべきであり、そのためには、投資及び消費を通じて厳に内需を抑制すべきであるというのが政府の主張であります。この点は、最近の不況分析が明確にされるとともに、本委員会において大蔵大臣は、国内需要を抑制して輸出第一主義だというのでは必ずしもないと、基本方針をみずから訂正し始めており、月ならずして昨年の例のごとくに、政府の情勢分析の誤まりを露呈して再び国民の信頼を失うことを予言しておくものであります。
 岸内閣は、昨年一千億減税、一千億施策の積極経済政策を掲げて発足しましたが、すでに進行中であった国際収支の悪化のために、早くも三月には、日銀公定歩合の引き上げに着手し、五月からは、本格的金融引き締め、財政投融資の繰り延べなど、正反対の政策に転換し、ようやくにして昨年十月以来国際収支は黒字に好転したとはいうものの、今や国内経済は、深刻な不況に陥り、過剰生産恐慌の状態にあるのであります。昨昭和三十二年において工業生産は、七月が最高で十一月には最低、卸売物価は、三月最高で十二月最低、常用雇用は七月最高で十二月最低、失業保険離職票受付件数は、六月五万二千件が十二月には十一万一千件、本年一月には十四万五千件に増加、昨年七月に二十七万であった失業保険受給者は、本年一月現在で四十四万一千名に達し、特に繊維関係では、初回受給者は、八月七千二百名、十月六千八百名、十二月五千四百名が、本年一月には一万三千名と激増し、繊維全体で、三万四千ないし五千名の離職者が予想されておる。かくのごとく、生産、物価、雇用を通じて、約半年間に急速に経済が縮小し、かつ、それは依然として進行中であります。
 三十一年以来の無計画的な設備投資競争は、三十一年は前年に比し七六%増加、三十二年は四一%増加しましたが、昨年の設備投資繰り延べのため、まず鉄鋼、機械類などの資本財から需要が減小して生産過剰になり、次第に過剰生産の産業範囲は消費財産業に拡大し、その結果、思惑で大量輸入した原材料の在庫品は、製品在庫の形に変りつつあるとはいいながら、原材料と製品の在庫は滞貨となり、出荷は減小し、卸売物価は下降する一方である。生産面では、大企業の操業短縮はますます強化されざるを得なくなり、すでに一昨年来過剰生産であった繊維関係を先頭に、製糸、パルプ、鉄鋼、ニッケル、電気銅、金属チダン、過燐酸石灰、塩化ビニール、ソーダ等、二割ないし五割の操短に入るに至ったのであり、自動車、家庭電気機械等の耐久消費財関係も、需要の伸びはにぶくなる中で、設備増加と販売競争の負担が重くなり、今や全産業におおいかぶさっている過剰生産と供給過剰に対して、金融引き締めによる国内需要減、世界不況による輸出拡大の困難が横たわり、大企業の犠牲のしわ寄せば、早くも労働者、農民と中小企業に及んでいるのであります。すなわち、製造工業労働者の現金給与に例をとれば、昨年六月二万二千百十八円が十一月には一万六千五百九十二円と、五千五百二十六円も減小しているのであり、企業整理は、中小企業を中心に急激に増加し、昨年六月まで月平均二百件であったのが、八月五百件、十二月六百八十四件、本年一月八百十件とふえ、その結果、企業整理による整理人員は、九月二万二千名、十月三万三千名、十一月二万名、十二月三万三千名、本年一月四万一千名とふえ、労働省さえ、三十三年度の失業者増加は三十万人と見込んでいるのでありまして、失業者数は、戦後最高とならざるを得ない状態に立ち至っているのであります。農民に対する不況の直接影響は、青果物の価格の暴落となって現われ、昨年六貫目二百五十円の愛知白菜が百円に下り、六貫目のキャベツ三百円が百円に下るというふうに、半値から三分の一に下っている。中には、運賃以下になって、野菜農家がキャベツを牛に食わせたり、関東では、水戸の農家が一わ一円なりのホウレンソウを牛にやるのはもったいないと、夫婦二人で、一日百円の商売を泣きながら続けている状態であります。このようなおそるべき不況の認識とその原因の正確な把握の上に立つことなく、岸内閣が明年度に掲げている経済政策の特徴は、依然として対米従属、再軍備予算であり、独占大企業に対しては積極予算、圧力団体には放漫予算、勤労国民には緊縮予算であり、不況の深刻化に対しては、勤労国民勢力の分裂と労働組合の弾圧をもって臨んでいるのであります。今や、全産業一律の最低賃金制と完全雇用を実施し、労働時間の短縮とベース・アップを行い、低額所得者には減税をなし、生活保護基準を引き上げ、さらに、国民皆保険と皆年金制による生活と所得の保証を全国民に与えることによって、国内有効需要の育成をはかるべきであるのに、かえって政府は、輸出第一主義と称して、内需を抑制し、しかも輸出面では、日中貿易の拡大を阻害し、輸出代金のこげつきを国の損失負担にするなど、輸出振興とかけ離れた政策を行い、また、他方輸入面では、思惑輸入の減少によって輸入見込みは減少するにもかかわらず、政府は、依然目標として過大な輸入見込額三十二億四千万ドルを掲げているのであって、このことは、国内有効需要をふやせば、さらに輸入がふえて国際収支が悪くなると、国民をおどかすためのにせ看板であり、目的は、大企業のために、現在以上の思惑輸入の余裕を残している、まことにずるいやり方と言わざるを得ない。しかも政府は、現在は不況ではない、経済膨張の行き過ぎ調整であり、第一四半期末までに生産調整を終え、アメリカ経済と相待って、七月以降に上昇していくと称しておりますが、最近閣内でも、日銀との間でも、景気見通しの不統一あるいは混乱を見ている。解散をひかえ、人気取りに金融緩和を暗示するなど、政策の不統一がはなはだしいのであります。アメリカ依存の貿易構造を根本的に変えない限り、あるいはアメリカの日本商品に対する関税引き上げに抗議したり、またあるいは日中貿易協定を結んだとしても、これらは単なる一時的不況対策にすぎなく、今日の不況は、資本主義時代の根本に横たわる全産業の恐慌状態であり、生産と消費、供給と需要との極度の矛盾状態であって、不況対策として岸内閣の可能な政策は、国家財政の総力をあげて独占資本と大企業を擁護し、恐慌の爆発を一時的に糊塗するにすぎず、かくては、自覚した直接国民大衆の激しい抵抗と怒りを買うに至るものと、固く私は信ずるものであります。
 かくのごとき経済情勢の分析と見通しの誤まりの上に立った昭和三十三年度予算には、重大なる難点がある。たとえば、三十二年度予算に比較して二千億以上の歳入増加を見込みながらわずかに二百六十億、しかもその内容たるや、大法人と高額所得者本位の減税しか行なっておらず、勤労大衆にはほとんど縁がないのであります。またたな上げ資金四百三十六億は、所得税、物品税等、低額所得者の減り税に回し、社会保障費を思い切って増額すべきであり、これこそ真に過剰生産恐慌対策に役立つものであります。政府は、生活水準を引き上げると、再び国際収支の危機をもたらす危険があると、反対をしております。しかし、国際収支はすでに黒字になっておるのであり、それであるのに、内需をあまりに押えるからこそ、過剰生産の不況が訪れるに至っているのであります。
 さて、国内有効需要を高めるためには、民生の安定が先決でありますが、岸内閣三悪追放のうち、純政治的に予算措置を要する唯一の悪、貧乏に対して、社会保障費として、いかなるバランスのもとに予算化され、岸内閣の看板に果して偽わりなしといい得るか、検討してみた。まず驚くべきことは新長期経済計画の中におきまして衣食住の数量的計画が示されてあります。たとえば、衣については五〇%増、食についてはカロリー二・七%、蛋白四・八%増、住については、ほぼ安定というふうに示されてあるにかかわらず、国民皆保険と国民金制度については、その財政もプログラムも示されていないことで、岸内閣の貧乏追放は、科学的根拠のないから念仏のスローガンだということであります。当委員会の審議において、皆保険完成の三十五年度末において、日傭者保険四千三百万、国民健康保険四千九百万という答弁をいただきましたが、総経費と国の負担額については、明瞭なる数字を得ることができなかったのであります。ただ、この計画で明らかなことは、日傭者保険中最も零細な事業所の適用者は、政府管掌保険として、今後三カ年間に数百万新規加入せしめなければならない経済的困難な実情のもとにあって、三十三年度予算中に、政府管掌健康保険に対する従来の正当適切なる国庫補助額が、にわかに三分の一に圧縮されたという事実は、政府の皆保険政策が全然理想もなければ計画もないばかりでなく、道義的責任を欠くものではないかと判断されたことでございます。さらに、近代国家においては、国民所得に対し、国民総医療費は三ないし四%、社会保険総経費は一〇%以上、西ドイツの場合には一二%でありますが、三十三年度の見込みでは、総医療費は三・五%、社会保障総経費は七%程度であって、社会保障総経費は、近代国家の域には達しておらないのであり、特に総経費中の国の負担の割合は、近代国家では少くとも三〇%以上、普通は五〇%をこえているのでありますが、わが国の場合、二〇%に至らないのでありまして、かかる実情では、国が責任をもって行う社会保障などと申すことは、まことに口はばったいことであると言わざるを得ません。しかも、一方九百万人をこえる労働者から徴収する厚生年金保険の積立金は、現在すでに二千三百億円をこえ二十年後には、驚くなかれ一兆二千億円に達するといわれ、現在においても、財政投融資の重大なる原資をなすものでありますが、この金額を醵出した労働者の年金額は、わずかに月平均五千五百三十九円にすぎず、また、積立金が労働者に還元、融資されるところは、まことに微々たるものでありましてかつ、その内容には疑問もありまして、労働者の生活の所得も保障されるところがいかに薄く、それに反して、いかに政府が社会保障のスローガンのみを掲げても、実際には冷淡、無関心どころか、労働者の積立金をむしろ盗み用いている事実を率直に批判せざるを得ないのであります。今や、厚生年金保険の運用と年金額の決定は、皆年金制の基本を構成するものであるのみならず、老令所得保障の金額は、日本国民の生活基準を定め、生活保護の基準を改訂し、動物的生存ではなく、人間的、文化的生活の水準と最低賃金の額を決定し、貧乏追放の科学的基準を制定するものでありまして、政府の緊急決定すべきところでございます。特に過剰生産恐慌の現在、決定を安定して、有効需要を刺激せんとするならば、すみやかに国民所得を再分配し、最低生活基準が国民消費水準のわずがに二ないし三割にしか達しないこの日本の野蛮な生活基準を、アメリカ並みに、国民消費水準の六割まで引き上げる必要があります。さらに、社会保障実施について、政府が当然批判されねばならぬことは、政府が政治的責任を追及されるときには、学者の隠れみのを着たがることである。国民年金制度について、総理が社会保障制度審議会の答申を待つこと、全くラブ・レターを待つごときものがあります。しかるに、この審議会がかって医療保障、結核対策、国民健康保険などについて答申しました勧告に対しては、政治的にあえて顧みることをしないというのが政府の現状であります。社会保障は、一政党の独占物ではなく、国民のためのものである。われわれは、資本主義体制では十分なものはできないと確信しているものでありますが、イギリスの例に見るごとく、政治家グリーンウッド氏がよく学者ビーバーリッチ教授を起用して、ゆりかごから端場まで、複雑な社会保障の学問的な体系を完成せしめ、これを政治的に活用したという事実をお互いに銘記すべきであります。
 さて、来たるべき過剰生産恐慌の中で、明年度は、完全失業者六十五万人となり、本年に比し、失業者は統計上十三万人増加する。実際には約三十万人ふえるということが予想されておりますが、これに対し政府は、わずかに失業保険七万人増、失業対策関係吸収人員二万五千人増で、もっぱら失業保険におんぶするという、まことに無責任な予算であり、特に本年六月末までに約七万人の首切りが予想される駐留軍労務者の離職対策としては、わずかに三千百万円の対策本部設置と職業訓練の補助金が計上されているにすぎないこと、まことに驚くべきことであります。また、総選挙対策もありまして、大幅に復活を認められ、一千億円をこえたと宣伝された農林関係予算につきましては、経済基盤強化資金のうちから、六十五億が農林漁業金融公庫、小団地等土地改良基金として振りあてられましたが、使用方法は、六十五億を小団地等土地改良に使うのではなく、六十五億を資金運用部に預託し、その金利六分、約三億九千万円をもって、公庫の小団地土地改良融資の利子引き下げに充てるのでありまして、事業の実態はわずがに三億九千万円で、差額約六十一億円は、金融資本家のオーバー・ローン解消に融資せられ、農林関係予算の規模は、実は一千億をこえず、九百四十七億にしかすぎず、総予算の七・二%であって、二十八年度一六・五%に比較し、戦後最悪の農政後退予算であることを農民諸君は冷静に認識すべきであります。
 また、岸内閣の三大目標の一つである中小企業振興のためには、第一に共同化促進が必要でありますが、共同施設補助については、本年同様一億円であって、必要経費のわすかに六分の一にしかすぎません。
 また、第二の問題、中小企業近代化のための補助は、六億円となりましたが、老朽陳腐化する設備に対する現行補助では、近代化どころか、老朽施設が累積するばかりであります。
 特に、第三の問題である市場拡大のための輸出振興としましては、輸出振興費は中小企業家に対してはわずかに四千二百万円で、貿易振興費全体として三億五千万円増加しましたが、大企業のための貿易振興会、ジェトロに大部分注入されるのが実情で、まことに不合理であります。
 さらに、中小企業の税問題についても、事業税は全く考慮が払われず、かえって法人税一律二%引き下げは、租税特別措置法の一部撤廃によって受けた大企業家の損失二百数十億を埋め合わせるためのものであって、まことに政府の中小企業振興は、から宣伝だけで、何らの予算の裏づけがないのであります。
 文教政策については、国家予算全体との比率で一一・六%と、本年度よりさらに一二%減少し、教材費への負担金は二億円増の十五億円にとどまり、父兄が公費を肩がわりする教材費負担の額は年間約百六十億円であり文教政策が財政的にまことに貧困顕著なものがあるにかかわらず、日教組対策となると政策豊富となり、勤務評定、道徳教育を強行せんがためには、小中学校長に七%という根拠不明の管理職手当の予算四億数千万円が計上され、視学官、視学委員の増員が認められるに至ったのでありますが、緊急必要とするすし詰め教室は解消されず、貧困な準要保護児童生徒給食費補助は半数しか実施されず、定時制及び通信教育職員費国庫補助は一顧だも与えられなかったのであって、政府は日教組との対決にはきわめて熱心でありますが、次代の子供の教育に対してはまことに不熱心と言わざるを得ません。
 また、輸出増進は、政府の最高努力目標であると政府は常に主張しており、かつ、そのためには、海外市場の開拓が先決でありますが、六億の人口を有する中国に対して、政府はいまだ輸出制限を行い、商品展覧会開催についても非協力的であり、三十二年度六千万円出した補助金は、三十三年度は削除されたのであります。これに反し、東南アジア開発基金として五十億円が設定されましたが、これも単なる構想倒れで、五十億円は輸出入銀行内に入れてあるが、使途については何らの具体的計画さえ立てられていない実情であります。驚くべき政府の不見識、無計画と言わざるを得ません。たとえ使う場合があるとしても、少くとも中小企業家の貿易上の基金として役に立つことはなく、大企業と大資本の貿易家のための基金となるものであることは間違いがありません。私は、あえてこれを外務省に献じ、東西両巨頭会談成立を初め、平和外交に思う存分使わせたいと考えるのであります。
 財政投融資については、当初政府は三千九百九十五億円をきめていましたが、本年一月二十一日、三十二年度計画のうち、繰り延べ約二百六十億円復活、さらに、開発銀行は三十二年度内に五十億円追加融資が承認され、ともに四月以降へずれ込むため、実際の計画規模は四千三百億円に達し、政府は財政投融資計画に関する限りは、金融引締め方針を撤回したと言わざるを得ません。しかも、投融資の重点は、第一に電力、第二に海運、第三に石炭に向けられており、これらの基礎産業はますます有利となって、重要産業対一般産業、大企業対中小企業及び農業の不均衡な発展は、さらに拡大されるのであります。しかも、この投融資の財源は、郵便貯金、簡易保険積立金、厚生年金など、勤労国民の零細な積立金をもって七割を占めているのであります。なるほど、投融資によって中小企業関係金融も百五億円が融資という形で、増額はありましたが、まだ金額は不十分である。しかも、利子のつかない出資が全然ないことは、いかに大企業本位の財政投融資であるかがまことに明瞭であります。さて、第二次大戦終了後、米ソ両陣営の対立は、朝鮮、ディエンビエンフー、スエズ、ハンガリー等、幾たびかの危機を経て今日に至っておりますが、両者ひざをまじえての話し合いの機会は、昭和三十年七月のジュネーヴ会談のみであります。しかるに、昨年核兵器の長足の進歩を伴う大陸間弾道弾の完成、人工衛星打ち上げ成功を見て以来、世界の世論は、にわかに東西巨頭会談の実現を要請するに至ったのであります。平和か、はたまた戦争かの分岐点に差しかかっている昨今の国際情勢の中で、最初にして最大の原爆並びに水爆被災国民たるわれわれの果すべき使命は、まことに大であります。今や、東西会談を促進するのには、三年前のジュネーヴ会談のときより、はるかによい条件が幾つかそろっております。
 第一は、アメリカにおいては、スタッセン氏などのように、従来の力の政策に反省を加え、政策転換を行おうとする動きが、ダレス外交に対する世論の批判とともに強まりつつあり、ポーリング博士などを初め、化学者と宗教家の核実験反対の平和勢力は、日増しに世論を強く指導し始めていることであります。
 第二には、第二次大戦後の植民地の崩壊はさらに進展して、今日では大きな情勢変化を起してるいことであります。
 第三に、イギリスは首脳部会談のソ連呼びかけに際し、最初から外相会議抜きでもいいとしており、マクミラン首相は不可侵条約の提唱さえされて、積極的であります。
 第四に、昨年末の北大西洋条約機構の会議に際し、力の外交に対するヨーロッパの不満と反抗の空気がかなり現われ、昭和三十年のジュネーヴ会談の時代よりも世論もはるかに進んでおり、大陸間弾道弾と人工衛星の出現は、世界の人に新しい決意を促がしていることであります。
 第五に、第一書記のままでフルシチョフが首相の選任を見たことは、その重大な理由の一つとして、従来のブルガーニン書簡外交の行き詰まりを打開して、直接首脳会談に備えたものとも判断されるのであります。今や、東西両陣営の対立の中で占める軍事的武力的対立は、次第に方向を転じて、経済競争、平和競争の面が強化せられんとしつつあり、このことは、新しい不況、新しい恐慌に対処せんとするアメリカ国内国外政策の中にも、新しい芽として認められているところであります。すなわち、国務省みずから本年一月三日には低開発諸国に対する中共、ソ連ブロックの経済攻勢という報告の中にもそれを指摘し、また、アドライ・スチーブンソン氏は、昨年末大幅な後進国援助の必要を、すなわち新しいニュー・ディールを提唱している事実によっても察知されるのでありますが、過ぐる一九三〇年の大不況に当り、労働組合の権利と賃金を引き上げ、ソシアル・セキュアリティ――社会保障というこの言葉を初めて創造したルーズヴェルト大統領のニュー・ディールの体験は、決してむだに忘れられてはいないと考えます。昨年後半から始まったアメリカの景気後退によって、本年二月、失業者は五百二十万、三月には五百四十万と言われ、七月以来工業生産は下降しておりまして、今や失業問題は、人工衛星、平和問題以上のアメリカ国内問題となっておりますが、景気対策の最初の立法として、去る三月十九日のアメリカ議会では、予算約二十億ドルをもって住宅建設促進法を成立させたのであります。私は現段階において、アイゼンハウアー大統領の新しいニュー・ディールが、アメリカ自身及びさらに世界の不況をいかに根本的に救済し得るか、はなはだ多くの疑問を持つものでありますが、当面する日本の不況に際し、労働組合が戦っている春闘に、政府があえてこれに挑戦して、警察官と威嚇をもって臨むという、その正当なる権利と賃上げを弾圧することは、予算総ワクの中において、不況年度に対する社会保障経費を削減した政府の事実とともに、一九三〇年のルーズヴェルト氏にもはるかに劣る時代錯誤日本政府と断ぜざるを得ないのであります。今や連続する核爆発実験、四六時中行わるる水爆機による地球のパトロール、今もしこの興奮と緊張の中で、基地ならずとも、誤まって核兵器が、はからざるところにおいて暴発することの危険なしと言えるでありましょうか。アメリカ空軍の核兵器事故はすでに六回あり、日本国民は、核兵器の最もおそるべく悲しむべきことを最も知悉しているからこそ、岸総理を先頭に立てて、核実験無条件即時禁止、国内への核兵器持ち込み禁止、ミサイル基地設立禁止を内外に叫んで参ったのでありますが、今やわれわれは、アメリカとの間に核兵器持ち込み禁止、ミサイル基地設定禁止の明確な協定を結ぶことにより、東西両巨頭会談の橋渡しをする端緒を作り、それによってさらに、原水爆実験禁止、北太平洋非核武装地帯設定の協定成立を可能ならしめると信じます。政治行動の真の目標は、要するに、人間の心の底に宿る確信を動かすことであります。原子爆弾といえどもそれはできないが、人間の精神はそれができるのであります。今や内外ともに新転機に当り、われわれは今まさに新しい年度を迎えんとしております。院内には重要法案山積し、日ソ、日韓、日中の外交問題まだ解決を見ず、岸内閣はまさに内憂外患こもごも至るという状況にあります。けれども、信を国民にまさに問うべきときに問わなかった人の焦燥と苦悩は当然みずから負うべきでありますが、政治的窮地において憲法第七条を乱用することは、憲法の個人的、党利党略的悪用であって、国民の断じて許さざるところであり、近代的、民主的政党政治家としての資格を喪失するものであります。人類平和と世界経済にとっての最大の危機を迎えんとする昭和三十三年度の予算審議に当って、政府の信念なき平和外交をつき、誤まれる経済見通しを批判するとともに、対米従属、大資本、大企業擁護の政府予算案に断固反対し、私の討論を終るものであります。(拍手)
○伊能芳雄君 私は自由民主党を代表して、ただいま議題となっております、昭和三十三年度一般会計予算案外二案に対し、賛成の意見を述べるものであります。
 戦後、わが国経済成長のテンポの早いこと、そうしてその率の高いことは世界驚異の的であったのでありますが、特に最近二、三年の経済成長率並びに生産規模拡大の度合いは、まさに世界の人々をして驚嘆せしむるものがあったのであります。しかしながら、このことはやがて投資並びに消費の増大を招来し、かつ、経済の過度の膨張の反動も手伝って、昨年初頭以来、輸入の急激な増加を招いて、外貨事情の著しい悪化を来たしましたので、政府並びに日銀は、昨年五月公定歩合を引き上げ、続いて金融引き締め、事業の繰り延べ等、一連のいわゆる総合緊急施策を断行して、極力外貨危機の切り抜け、経済の調整に努力をして参ったのでありますが、幸いに国民の理解ある協力を得て、昨年九月を最低線として、逐次好転して今日に至りましたことは、まことに欣快にたえないところであります。
 翻って、世界経済の情勢を見まするに、自由諸国の経済に重大な影響力をもつ米国の経済も、昨年夏以来頭打ちの状態となり、漸次下向線をたどり、米当局はこれが回復に努力を傾注しておるにもかかわらず、今後回復にはなおかすに時をもってしなければならないところであり、西欧諸国もまた、目下調整過程にあって、急速な景気上向は期待できず、その他の諸国もおおむね外貨欠乏に悩み、外国の援助なしには経済の発展を期しがたいという実情にあって、ひとりわが国のみ急速に景気回復を期待することは至難な情勢にあることは、ひとしく認むるところであります。
 このような国際環境、国内事情のもとにおける昭和三十三年度予算は、まことに重大であり、困難な条件に立ったものと言わねばならないのであります。
 こうした実情のもとに、昭和三十三年度予算は、財政投融資を含めて私どもといたしましては、第一には、経済を過度に刺激せず、かつ、萎縮せしめないために、特に弾力性に富むものであること。
 第二には、歳入歳出の均衡を保つのみならず、経済の現段階との均衡を保つものであること〇
 第三には、わが党がかねてより国民に公約してきた政策を忠実に織り込んだものであること。
 第四には、急激に膨脹した経済の反映として、増収となる税収の一部は減税して、国民のふところに還元する措置を講じていること。
 第五には、広く国民の声を聞いて、これにこたえ、全体として調和を保ったものであること。
 これらの要件を備えたものでなければならないと信ずるものであります。これらの要件は互いにからみ合ったものでありますが、本予算案を検討してみまするのに、これらの要件をおおむね備えたものであると信じ、賛成するゆえんであります。
 すなわち、第一の要件については、増収を予定される歳入のうち、四百三十六億円に上る高額のものを経済基盤張化費等としてたな上げし、また、財政投融資は前年度最終実行額とほぼ同額として、経済に対する過度の刺激を避けながら、予想される民間資金の不足額を補うこととし、かつ、余裕金を残して、複雑多岐な今後の経済動向に対処して、弾力性を持ち、きわめて適切な処置をして、これら資金が適当なとき、適当な方法によって、機動的に利用されるならば、わが国今後の経済に重大な役割を果すものであると信ずるのであります。
 第二の要件につきましては、前年度予算に比し、二千億円増収が見込まれるうち、四百三十六億円を経済基盤強化費等としてたな上げし、三百十億円を前年度より多く国債償還に充てて、財政の健全化をはかり、また一方、前年度には、所得税を中軸として行なった減税の補完の意味をも含めて、法人税、酒税、相続税を減税し、貯蓄奨励のため、所得税の減税をはかり、国民負担の軽減をはかって、財政規模の純粋増を一千億にとどめて、歳入歳出の均衡を保ったばかりでなく、経済の成長及び国民所得の増との均整をはかっておるのであります。
 第三の要件につきましては、重要施策として、重点的にことごとくこれを織り込んで、国民の期待にこたえておるのであります。
 まず貿易振興については、シエトロに二十億円を出資して、海外市場の調査、開拓の推進に資し、また、特別宣伝の強化、国際見本市への参加、巡回見本船派遣等、効果的な経費を増額しており、経済協力については、東南アジアの開発と貿易の振興に適切な出資と経費が計上されております。
 産業基盤整備強化には、輸送力増強とエネルギー資源開発に重点が置かてれおりますが、特に道路については、新経済計画に即応して、道路事業五カ年計画を樹立し、これを強力に推進するため、道路整備特別会計を創設し、一般会計より六百十六億円を受け入れ、資金運用部資金より五十二億円を借り入れて、これら資金により、重要幹線道路の改良舗装に面目を一新することが期待されます。
 このほか、港湾整備及び国鉄の建設等に経費が増額されて、輸送力増強がはかられ、電力、石油、石炭等の資源開発の資金も、それぞれ増額がはかられて、基礎部門の整備強化に期待し得るものがあります。
 民生安定の面を見ますと、生活保護と社会保険を二つの柱として、おのおの拡充がはかられ、特に国民皆保険には大きく踏み出しており、このほか、結核対策、社会福祉対策にも、こまかい心づかいがされております。
 失業対策事業には、前年度より吸収人員を一割一分増加し、失業保険経費を著しく増額して、経済の実情に対処し、住宅対策にも、前年度とほぼ同数の建設がはかられております。
 軍人遺家族に対する恩給については、不均衡是正を年次計画的に実行することとして、その第一年度所要経費三十七億五千万円が計上されております。これには、だいぶ批判があるようでありますが、これら批判をする人々は、あの誤まった戦争に召集を受けた軍人が、勝ってくるぞと言い、残った人々が、あとを引き受けたと誓い励まして、行をさかんにしておいて、その誓いを最後まで信じて戦死した勇士に対して、今までの程度の遺族の処遇では、引き受けがいがないとかこっておった多数の国民が、この措置によって、これら勇士の両親や妻や子供に、いささか報い、誓いを果し得ると愁眉を開いておる事実を見のがしておるものであります。社会保障だけでいいという人々には、この偽わらざる国民感情、人情の機微を理解し得ないものであると言わざるを得ません。
 科学技術の振興については、前年度より二割増、二百十六億円を計上して、原子力平和利用の研究を拡充し、各種科学技術研究機関、大学等の試験研究関係経費を大幅に増額して、科学技術の世界的水準保持を期しており、文教の振興については、教員数の憎加、教材費の単価引き上げ等に努め、特に英才教育を目途としての進学保証制度の創設には、注目すべきものがあります。
 中小企業育成強化は、農林漁業対策とともに、わが党が年来強く推進してきたものでありますが、本予算案においては、中小企業信用保険公庫の創設、保険準備基金への出資、国民金融公庫、中小企業金融公庫の資金量増加等、金融面を飛躍的に充実ぜしむるほか、設備近代化、技術指導の強化等、適切な経費を計上いたしております。
 農林漁業対策については、土地改良、開拓等の事業を強化し、畜産振興対策を充実する等、前年度より大幅に多額の経費を計上するとともに、農林漁業金融公庫の資金量を豊富にし、特に非補助小団地等土地改良事業助成基金を創設して、六十五億円をこれに出資することとし、農民諸君の努力にこたえております。
 このほか、自衛体制の整備、地方財政の健全化等、公約した事項には、それぞれ必要にして十分な経費を計上しておるのであります。
 第四に、前年度における所得税の大幅な減税のあとを受け、これを補完する意味をも含めて、本予算案においては、法人税、酒税及び相続税の減税を行なって、税制の整備をはかるとともに、貯蓄奨励のため、貯蓄控除制度を創設して、所得税を減税することとし、合計、本年度において二百六十一億円、平年度において三百七十三億円に上る減税を行なって、国民負担の軽減をはかっておるのであります。
 第五、広く国民の声にこたえては、一部の人々から、いわゆる圧力団体に屈したと、批判もありましたが、有力な組織層の主張も、国民一部の多数の声として、虚心たんかいに聞くとともに、一面には、ちまたの声なきにも聞いて、教育、文化、産業、社会福祉等、あらゆる面から拾い上げて、これを全体として総合調和して、系統ある予算案にまとめ上げておるのであります。すなわち、中小企業技術指導普遍化のため、都道府県の試験所への補助、エネルギー長期対策のため、未開発炭田調査費補助、海外市場開拓のため、中南米十一カ国、十三港へ見本船派遣の費用、らい患者食費値上げの経費、小児麻痺ワクチン試作費、低所得層世帯更生貸付、医療費の貸付及び母子福祉貸付を円滑にするための事務費補助、盲人の慰安及び職業開拓のため、ホーム設置の補助、未熟児公費収容の補助、児童健全育成のため、遊園地設置の補助、母子福祉増進のため、センター設置補助、働く婦人の修養並びに慰安のため、「働く婦人の家」補助、恵まれざる英才育英の貸費、要保護、準要保護児童生徒の保健医療補助、「青年の家」補助、ユースホステル補助、科学振興の地盤となる学校教育については、国立に対し、また、私学の補助に対し、酪農振興のための基金、乳価安定と学童栄養の、一石二鳥を兼ねた乳製品給食費補助、各地に頻発する地すべり対策としてはこれが立法化とともに、前年度より八割増しの増額、無形文化財保存のため、前年より約三倍の高額の経費等、新規並びに飛躍的増額をした予算が入っておるものが著しい例であります。人おのおのが立場々々により主張もあり、願望もあります。納税者の立場に立っては税の安いことを望み、公共事業の受益者の立場に立てばますます事業の拡充されることを願います。労働者は賃金の高いことを主張し、生産者は生産品の高いことを望み、商人はマージンの多いことを望み、消費者あるいはサービスの利用者としては物価及び料金の安いことを希望します。これらの主張は人としての至情でありますが、また、互いに矛盾しあっておる面も多いのであります、しかもこの主張を強い組織の力をもってなし得る人々もあり、正当な主張をもなし得ない人々もあり、また、しても弱い人々もあります。これらの主張や希望を職域や階層や地域にかかわらず手ぎわよく総合調和、あんばいして処理し、均整のとれたものにして、国民多数に満足を与えることはなかなか至難なことではありますが、国民政党を標榜し、福祉国家の実現に邁進するわが自由民主党にして初めて果し得るところであり、階級政党ではとうていなし得ないところであります。わが党の本領はここにありというべきであります。
 本予算案は、間もなくここで採決の上、数時間のうちに本会議に上程され、可決、成立を見るでありましょう。本予算案は、かくのごとくりっぱなものでありますが、これが実施に当っては、世界経済が見通し困難であり、これと有機的関連性を持つ国内経済も逆賭しがたい今日、政府は経済の動向には不断の注意を払い、科学的分析を怠らず、見通しを誤まらず、一時的変動に一喜一憂することなく、無責任な批判のための批判、反対のための反対に誤まられず、一貫した信念のもと、本予算の一大特色である弾力性を極度に利用し、機動性を発揮して、刺激する必要あるときは適度の刺激を与え、また、鎮静せしむる必要あるときは鎮静せしむる等、いやしくもその運用を誤まらず、国民の寧福と繁栄に一路邁進されんことを付言しまして、私の賛成討論を終ります。(拍手)
○八木幸吉君 私は、昭和三十三年度予算三案に対し、反対するものであります。
 その理由は、本予算案が、国民負担軽減の見地からの配慮がきわめて少いからであります。
 第一に、昭和三十二年度の自然増収は約一千億円と称されておりますが、従来政府は、歳入の見積りを低くして自然増収ができればこれを温存する傾向があります。しかし、政府当局が国民経済の見通しを誤まらず、予算が適確に編成されましたならば、当初予算の一割以上も歳入が増加するわけはありません。実質的には税の取り過ぎであります。そこで私のまず希望いたしたいことは、歳入の見積りを適正にして、自然増収を見込まぬことであります。もし万一歳入に不足を生じましたときには、予備費もあるし、また、補正予算を組めるからであります。本予算においては、現行税法の場合、昭和三十二年度に比して千五十一億円の租税及び印紙収入の増加が見込まれております。しかるに、直接減税財源として振り向けられました額はわずかに二百六十一億円であります。また、昭和三十一年度の剰余金一千一億七千万円のうち、国債償還等法定の使途に充てられるものを除く四百三十六億三千万円の中で、各種の基金に充てられるものを除き、二百二十一億円は経済基盤強化資金としてたな上げされております。私はこの構想には賛成いたしません。自然増収はすなおに減税の形において国民に返すべきであると思います。
 星野直樹氏は「ダイヤモンド」誌上に「減税は何をもたらすか」という題目で、三十二年の予算減税の結果についてきわめて興味ある発表をしておられます。これによると、個人消費支出は前年度に比して、三十二年度は八%、三十三年度は五%ないし四%と増加すると予想され、同時に、貯蓄の増加率は三十二年度に比して、四月から年末までで一三%、すなわち六百五十二億円増加していると報告しておられます。そして、財源に少しでも余裕があれば国民に返せ、国民は決してむだ使いをしない。余裕金をたな上げするようなけちな了見を出すのは、結局一番むだ使いのもととなる、国民を信頼せよ、と結んでおられますが、きわめて味わうべき言葉であると思います。
 第二に、予算案は中小企業者に対する思いやりがありません。申すまでもなく、中小企業者はわが国国民経済の中枢をなすものであります。中小企業はわが国産業構造の中で事業所数で九九%六、従業員数で七三%、出荷額で五六%、輸出面で総輸出額の五割を占めているとは経済企画庁の発表しているところであります。政府は、中小企業の育成強化のために、昨冬臨時国会を召集して、問題の多い中小企業団体法案を成立せしめました。しかるに政府は、本予算案に、中小企業対策費としては信用保険公庫関係を除いて、設備近代化補助金六億円、その他五億四千五百万円、計十一億四千五百万円より計上せず、きわめて貧弱であります。また、当初大蔵省においては、初年度百六十億円に上る事業税の減税案を用意したとのことでありますが、ついにこれも実現せず、わずかに地方税として自転車荷車税四十七億円が廃止されましたが、逆に軽自動車税が二十億円新設されております。中小企業者の強く要望するところのものは個人事業税の撤廃であり、中小法人事業税の軽減であります。中小企業対策としては、これらの廃減税を中心としてもっと抜本的な負担軽減政策が考えられなければなりません。この意味からも本予算案は、きわめて不満足なものであります。
 第三は、行政改革の問題であります。戦前基準年度たる昭和九年――十一年度における国民所得に対する国税の負担率は八・五%、地方税を含めまして一二・九%であります。しかるに本予算案では、国民所得に対して、国税一三・九%、地方税を含めまして二〇%の比率に上っております。また、租税負担額は国税地方税を合算して、国民一人当り一万八千三百八十六円の巨額であります。国民の行政改革を切望するもまた当然であります。歴代内閣としても、吉田首相はこの問題に最も熱心であり、鳩山内閣も三大政綱の一つに掲げました。しかるに岸内閣になってからは、本予算に関連しまして九省二庁にわたって官房長や次長の設置、部局の新増設案が提出されております。それぞれ一応の理由はありますが、全体としてこれを見るとき、敗戦後の日本の置かれておる地位、国民負担軽減の見地から抜本的に再検討するの必要を痛感せざるを得ません。さらに定員法の適用を受けない常勤職員が約六万名あり、そのうち約二万名が今回定員に繰り入れられますが、これらはいずれも大部分実質上の定員法の脱法行為であり、当然その職務内容から見て定員に繰り入れらるべきものであります。しかもこれらを加えて全体としての行政の簡素能率化をはかるべきであります。
 本予算の一般会計の職員給与その他給与、旅費等の人件費の総額は一千八百八十億円で、一人当り三十一万六千円、物件費は一千百三十五億四千万円で一人当り十九万八百円であります。私は、一人当りの給与は決して高くはなく、総額が問題であって、総額を減らして、一人当りの給与はむしろ増額すべきであると考えております。極端な表現をするならば、一人の公務員を休職にして、現在の給与約三十万円をそのまま全額毎年支給しても、一カ年の物件費の約二十万円の大半は国費の節約ができる勘定であります。本予算案は、国民の切望する行政簡素能率化に対する配慮が欠けていると言わねばなりません。
 次は、順法精神の問題であります。総理は法を守ることは民主政治の第一歩であると申されます。しかし、一千数百万石に上るやみ米の横行を、何としても黙視できません。米の統制撤廃に一大勇断を望みます。
 さらに、防衛関係諸費一千四百六十一億六千万円は国民所得の一・七%で、その使用の状態、内容は別といたしましても、総額では必ずしも多いとは考えられません。しかし、自衛隊が憲法第九条の違反であることは明白な事実であって政府は憲法調査会に逃避することなく、第九条改正を国民に訴えるべきで、これが改正されざる限り、その予算は認めるわけには参りません。
 最後に、私は本予算の編成上きわめて重大な誤まりがあることを指摘しなければなりません。国会所管において、立法事務費八千六百四万円、議員歳費及び期末手当において昨年の実行額に比して一億一千九百万円、それぞれ増額されております。しかるに、これが裏づけとなるべき法律案は、政府案としても、また議員提出案としても、国会開会以来すでに三カ月を経た今日まで、いまだ提出されておりません。議員提案で、予算にその金額を計上することはきわめて稀有の例であります。その先例としては、第十三国会において約二億円の耐火建築促進法があります。また、第二十四国会では一千万円の憲法調査会法案があります。予算は、申すまでもなく、憲法上の関係として国会が内閣へ財政権を付与するものであり、行政法上の関係においては、行政官庁がこれによって歳出の義務を生ずるものであります。しかるに、これが根拠法規なくして、いかにしてその義務を履行することができますか。全然議案の提出のない本経費を予算に計上するがごときは、予算法律一体不可分の見地から、重大な失態なりと断ぜざるを得ません。加えて、その内容としても、歳費の値上げは、時節柄としても、また地方議会に及ぼす影響から考えても、見送るべきであり、立法調査費に至っては、官製政党の端を発するものとして、断固反対せざるを得ません。政策立案の必要上なれば、法制局のほかに、百七十名の部員と約八千五百万円の予算を有する有能なる立法考査局があります。もしこれでその必要を満たされないとするならば、この予算を増額すべきでありまして、断じて法律の裏づけのない立法事務費等の増額を予算に計上すべきではありません。
 以上をもって私の反対討論を終ります。
○森八三一君 私は、ただいま議題となっておりまする昭和三十三年度一般会計予算ほか二件に対しまして、緑風会を代表して、政府提出の原案に賛成の討論を行うものであります。(拍手)
 本三十三年度予算に国民が期待するものはきわめて多岐多様でありますが、なかんづく、その最も重要なものは、産業の健実な成長を達成すること、国際収支の黒字を完遂すること、これらの成果の上に国民経済の発展と安定を具現することであろうと存じます。これがためには、政治の清潔が保持され、きびしい内外の諸情勢に処し判断と対策の誤まりなきを期し、国民の政治に対する信頼と協力を得ることが、その要諦であると存じます。私はここにまず政府の決意と善処を切望するものであります。
 私は、昭和三十二年度予算の討論に際しまして、いわゆる神武景気というような偶発的とも申すべき現象にうちょうてんになって、いたずらに経済を刺激するようなことは厳に戒めなければならぬ。産業の異常な発展と、国民所得が八兆円をこえるというよう現実からして、心配はないというように説明されておりましたが、決してそういう甘いものではない。前年度に比べて一般会計で一千億増しているのを初め、投融資その他を合せますると二千億にも上る財政規模の膨脹は、大いに警戒を要するところであると、政府の善処を要望したのであります。
 しかるに、一、二ヵ月を出でずして、国際収支は破局的な様相を呈するに至り、再度にわたる日銀公定歩合の引き上げとなり、ついに緊急総合対策の実施を見るに至ったのであります。これがため国民のこうむった損失は、筆舌に尽しがたいものがありました。いわゆる黒字倒産の新熟語が流行いたしましたのを見ても、その及ぼした影響のいかに深刻であったかは想像に余りあるものがあります。
 幸いにして、国民各位の理解と協力とによりまして、国際収支も急速に改善され、予期以上に好転して参りましたことは、まことに善ぶべきことでありまして、御同慶の至りにたえません。しかしながら、これをもって政府の緊急総合対策のみの成果であるとして、誇示さるべきものではないと存じます。私どもが発した警告に対して最大の留意と関心を払って対処しておったとしますならば、国民の負担と犠牲を回避し得たのではありますまいか。
 政府もこの点については強く反省をされまして、再びかくのごとき不幸の結果を生じないようにというような配慮から、昭和三十三年度の予算編成に際しましては、景気に対する過度の刺激を避けることに格別の努力が払われましたことは、敬意を表するにやぶさかではありませんが、それでもなお、一般会計において前年対比一千億円の増であり、昭和三十二年度の補正を加えれば千二百億ぐらいに達するかと思います。さらに、留保されました四百三十六億円の資金も、その半額に近い二百十五億円がひもつきになっておりますことや、国庫債務負担行為費が二百億余の増額となっておりますこと、さらに財政投融資額が三十二年度の実行額より三百億も増加しておりますことなど、相当額の膨脹となるのでありまして、必ずしも放漫とは申しませんが、積極財政と見るべきでありまして、金融引き締めによる極度の困難に対し堅実な手直しは必要かと思いますが、これが運用には格段の注意を要するところであります。特に、米国を中核とする国際的景気の立ち直り時期の見通しに楽観的観察を行うような態度はきわめて危険と申すべきでありまして、どこまでも現実第一主義をもって終始されんことを望むものであります。
 三十三年度一般会計予算の内容を見まするに、前年度予算に比しまして、社会保障費関係で百二億円、文教並びに科学技術振興費関係で百三十七億、農林関係百十三億、中小企業関係十三億を初め、道路交通関係、公共事業費関係、その他いずれも増額となっているのであります。政府は既定経費の節減をはかり、重点政策の遂行に万全を期したと説明されておりますが、前述のごとく、まさにまんべんなく配慮した総花的予算といつう感じでありまして、重点がぼやけてしまった、とはまことに残念に存ずるところであります。
 予算の編成権が内閣にあることと、政党政治から来る政党の公約を合理的に予算化することとを、いかにして調和、あんばいするかということは、きわめてむずかしいこととは存じますが、本予算の決定に当りまして、内閣の予算編成権が侵されたような感じを与えましたことは、きわめて遺憾に思うのであります。巷間、圧力団体に屈したとか、分取り合戦に終始したとかいうような批判が生まれ、ついには腰抜け予算であるとか、なぐり込み予算などという声を聞くに至ったのでありまして、国民の一部には、政党政治下におきまする予算の編成に対し、危惧の念を抱くに至った者もあるかと存じまするのでありまして、将来かくのごとき信を失うような事態を引き起さぬよう、善処を望みます。
 本三十三年度予算は、さきに策定されました長期経済計画にのっとって、わが国経済の発展と民生の安定を実現するための本年度計画として、輸出三十一億五千万ドル、国際収支黒字一億五千万ドル、前年対比三%の経済成長を達成することを目途として編成されたものでありまして、私どもはこれが達成のための努力と協力を惜しむものではありませんが、特に政府に注意を喚起いたしたいのは、三十一億五千万ドルの輸出目標の達成は、最近における世界景気の動向、ブロック経済の強化、並びにわが国をめぐる外交上の諸情勢等からしつて、必ずしも安易な目標とは申しがたいのでありまして、いたずらに数字にこだわり過ぎますると、勢い不合理な輸入とのからみ合せにおいて輸出が強行されるということになるのではないかということであります。もちろん、輸出の振興、増進をはかりますためには、ときに不要物資の輸入と抱き合せることの必要が生まれて参りますることも否定するものではありませんが、不要物資は国内流通過程でおおむね巨利を博し得る場合が多いのであります。そこに多数国民の犠牲において特定の一部関係者のみが利益するという結果が生じ、善良な国民に迷惑を及ぼすのみならず、そこには総理が国民に対する最大の公約である汚職発生の危険が伏在するのであります。過去に見た幾多の汚職あるいはそれに類する事件が、かくのごとき不当利得をめぐって発生していたのではないかと存ずるのであります。政府は諸般の実情にかんがみ、不要物資の輸入は絶対に拒否すべきであり、やむを得ず輸入いたしまするような場合といえども、輸入後における当該物資の措置に誤まりなきを期すべきであります。
 わが国が自由主義陣営の一員としての立場を堅持しつつ、あらゆる国家との間に親善関係を増進するとともに、アジアの一員としてアジアの開発に協力を行うという政府の方針に対し、同感の意を表するはもちろん、さらに、われわれの努力が世界平和のすみやかなる確立に寄与貢献することを念ずるものであります。その具体的な行動として、経済協力が推し進められておりますることも、アジア各国の後進性にかんがみ、当然のことでありまするが、ややもいたしますると、そこにはいわゆる政商的存在の暗躍が行われる危険がないとは申されないかと思うのであります。かくのごとき不祥のことがありましては、経済開発の実をあげることができないというだけではありません。両国の親善友好関係を破壊し、中外に向って日本及び日本人の信用を失うというおそるべき結果を招来するのでありまして、政府の慎重な態度を望むものであります。
 食糧の総合的自給施策として、畑作の振興と営農の有畜化が取り上げられましたことは、きわめて意を強くするものでありますが、ただかけ声だけで、生産物の需要の拡大がなされず、流通機構が整備されず、加うるに、海外からの無計画輸入が放置されるという現状では、結局、零細農民をして破局へ追いやるという最悪の結果となるのでありましょう。その責、きわめて重夫と申さなければなりません。政府はこれらに思いをいたし、所期の目的を達成するに万全を期せられたいのであります。
 中小企業振興の最大の要諦である金融の円滑化に対して、積極的な対策をとったと説明されておりますが、数字的には減少を見ているものもあります。いまだ真に零細な弱小企業者は高利貸しに走らざるを得ないという現状にあるのであります。今日、最も重要なことは、これら金融ぺースに乗らない階層の金融であります。これがためには、組織化とその活用でありまして、政府も従来勧奨されておるところでありますが、さらに強く推進すべきであると存じます。
 社会保障が年とともに拡充強化されて参りましたことは喜ぶべきところでありますが、すみやかに養老年金制度を確立し、近代国家としての施策を推進されんことを強く要請する次第であります。さらに、近時、国民精神が弛緩し、頽廃的風潮が深刻化しつつあることはきわめて遺憾な現象であり、青少年にその傾向を見ますることは特に意を用いなければならぬところであります。抜本有効の施策を実施し、次代をになう国民の養成に遺憾なきを期せられたいのであります。
 道路港湾等の整備について躍進的な対策をとられましたことはきわめて適切なことで、賛意を表するところでありますが、さらに国際観光の重要性とも相関連せしめ、これらの改善拡充に一そうの努力を望むものであります。
 次に、私は、昭和三十二年度の一千億所得税減税に当りまして、賛意を表するとともに、将来法人税の軽減、特殊法人税の免除、物品税、事業税の減免、租税特別措置の整理を提唱いたしたのでありますが、今回法人税の軽減が取り上げられましたことは、国会の論議に耳をかされたことであり、民主政治の発展のために喜びにたえません。しかしながら、私どもが具体的に要求いたしておるところとは、いまだ相当の距離を存しておるのであります。すみやかに再検討を行なって、一そうの軽減を断行し、自己資本の充実に資し、企業の堅実化に寄与されまするとともに、特殊法人税はその総額わずかに三十億円にすぎない実情にかんがみ、その本質上当然廃止さるべきであると存じます。最後に、私は、日ソ、日韓、日中等を初め、わが国が当面する外交を正しく推進するためには、国論を調整し、挙国体制のもとに国民的支援を得ることが、その要諦であると確信いたします。さきに緑風会が超党派外交を提唱いたしましたゆえんもまたここに存するのであります。当時、総理として、総裁として、きわめてあいまいな態度でありまして、私どもきわめて不満の感を抱いておつたのでありますが、その後考慮をされましてか、本委員会の質疑応答を通じて、総理もすでに同感の意を表せられておるところであります。この際すみやかにその具体化をはかられまして、わが正義の外交に輝かしき成果をあげられますよう衷心から切望して、討論を結ぶ次第であります。(拍手)
○委員長(泉山三六君) 以上をもちまして、討論通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。
 これより採決に入ります。昭和三十三年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算を、一括して問題に供します、右三案に賛成の方の起立を願います。
   〔賛成者起立〕
○委員長(泉山三六君) 起立多数と認めます。よって右二案は、多数をもって可決すべきものと決定いたしました。
 なお、本会議における口頭報告の内容及び報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じます。
 三案に賛成の方は、順次、御署名を願います。
  多数意見者署名
    伊能 芳雄  小幡 治和
    剱木 亨弘  迫水 久常
    高橋進太郎  森 八三一
    石坂 豊一  大川 光三
    大谷 贇雄  木島 虎藏
    古池 信三  後藤 義隆
    佐藤清一郎  塩見 俊二
    下條 康麿  館  哲二
    鶴見 祐輔  苫米地義三
    苫米地英俊  一松 定吉
    本多 市郎  三浦 義男
    加賀山之雄  田村 文吉
    豊田 雅孝
○委員長(泉山三六君) ここに委員長は、委員各位の久しきにわたり終始変らざる御協力に対し、心から感謝の意を表し、本日はこれにて散会いたします。
   午後一時四十九分散会