第030回国会 法務委員会 第3号
昭和三十三年十月二十一日(火曜日)
   午前十時三十分開会
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  委員の異動
本日委員藤原道子君辞任につき、その
補欠として加瀬完君を議長において指
名した。
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 出席者は左の通り。
   委員長     野本 品吉君
   理 事
           大川 光三君
           一松 定吉君
           棚橋 小虎君
           宮城タマヨ君
   委 員
           青山 正一君
           小林 英三君
           鈴木 万平君
           亀田 得治君
           辻  武寿君
  政府委員
   中央青少年問題
   協議会事務局長 深見吉之助君
   法務政務次官  木島 虎藏君
   法務大臣官房司
   法法制調査部長 津田  實君
   法務省刑事局長 竹内 壽平君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       西村 高兄君
  説明員
   警察庁保安局防
   犯課長     増井正次郎君
   法務省刑事局付
   検事      安倍 治夫君
   最高裁判所事務
   総局家庭局第三
   課長      森田 宗一君
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  本日の会議に付した案件
○連合審査会開会の件
○司法試験法の一部を改正する法律案
 (内閣送付、予備審査)
○検察及び裁判の運営等に関する調査
 の件
 (少年犯罪対策に関する件)
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○委員長(野本品吉君) それではこれから法務委員会を開会いたします。
 まず委員の異動について御報告申し上げます。
 十月二十一日付藤原道子君が辞任されまして、そのかわり加瀬完君が選任されました。
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○委員長(野本品吉君) 議事の都合によりまして、初めに連合審査会開会についてお諮りいたします。
 ただいま地方行政委員会に予備審査となっております警察官職務執行法の一部を改正する法律案につきましては、本委員会といたしましては至大の関係があるものと考えますので、本件につきまして地方行政委員会に対し、連合審査会開会の申し入れを行いたいと思いますが、さよう決することに御異議ございませんか。
○委員長(野本品吉君) 御異議ないと認めます。
 委員長は直ちにこの旨を地方行政委員長に対して申し入れを行います。
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○委員長(野本品吉君) 次に、司法試験法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、提案の理由の説明を求めます。
○政府委員(木島虎藏君) 司法試験法の一部を改正する法律案について、その趣旨を説明いたします。
 御承知の通り、司法試験は、裁判官、検察官または弁護士となろうとする者に必要な学識及びその応用能力の有無を判定する国家試験でありまして、将来性のある優秀な人材を法曹として迎えることができるかどうかは、一にかかってこの制度の適否にあるのであります。しかるに、昭和二十四年以来実施されております現行の司法試験制度においては、大学の制度がいわゆる新制大学に切りかえられて以来大学在学生の司法試験に合格する者の数が逐年減少する傾向を示し、大学の優秀な新卒業生を他の職業分野に逸することが憂慮せられるとともに、他方において、社会生活の複雑化に伴い、将来の法曹たるための適格として単に法律についての学力を有するのみでは足らず、法律以外の素養を備える必要があるにもかかわらず、試験の科目が法律のみに偏しているとの批判を聞くに至りました。そこで、法務省におきましては、昭和二十九年の末ごろから司法試験制度について調査に着手いたし、昭和三十年十一月法務大臣から法制審議会に対し司法試験に関する制度の改善につき諮問を発し、昭和三十二年四月同審議会からの答申を得てさらに検討を加え、この法律案を立案した次第であります。
 次に法律案の内容の主要点について説明いたします。
(一) 第一点は、司法試験第二次試験の筆記試験を短答式(択一式を含む。)による試験と論文式による試験に分けまして、論文式による試験は、当該筆記試験の短答式による試験に合格した者に限り受験することができるものとしたことであります。これは、司法試験の受験者の数の増加に伴い、論文式による試験のみでは、これら多数の受験者の答案を限られた期間に精査することがきわめて困難となりましたので、まず、最も基礎的な憲法、民法及び刑法の三科目について、短答式による試験を行い、これに合格した者についてのみ、論文式による試験を行い、答案の審査を精密にしようとするものであります。
(二) 第二点は、論文式による試験の試験科目について、科目の数は現行の通り七科目といたしましたが、いわゆる必須科目を五科目に、いわゆる選択科目を二科目に改め、受験者の試験科目選択の範囲を広くして特に大学在学生の受験を容易にするとともに、選択科目のうちに法律科目以外の科目を含ましめ、視野の広い人材を選び得るようにしたことであります。すなわち、必須科目を(一)憲法、(二)民法、(三)商法、(四)刑法並びに(五)民事訴訟法及び刑事訴訟法のうち受験者のあらかじめ選択する一科目の五科目とし、そのほかに選択科目を二科目とし、そのうち一科目は、右の必須科目として選択しなかった民事訴訟法または刑事訴訟法、行政法、破産法、労働法、国際公法、国際私法及び刑事政策のうちから選択し得ることとし、他の一科目は、政治学、経済原論、財政学、会計学、心理学、経済政策及び社会政策のうちから選択し得ることとしたものであります。
 なお、これに伴い、口述試験も受験者が論文式による試験において受験した七科目について行うこととしたものであります。
(三) 第三点は、司法試験管理委員会は、司法試験管理委員会規則で、試験科目中の相当と認めるものについて、その範囲を限定できることしたことであります。これは、司法試験管理委員会が相当と認める試験科目については、合理的にその範囲を限定し、大学在学生たる受験者の負担をなるべく軽減することができるようにしようとするものであります。
(四) 第四点は、司法試験考査委員の数の制限を撤廃することとしたことであります。現行法が司法試験考査委員の数を一科目につき四人以下に限定しております点は、特に短答式による試験を実施するについて適当でないので、これを改めようとするものであります。
 なお、改正法律の施行期日は、受験者に十分な準備期間を与えるため、昭和三十六年一月一日といたしました。
 以上が、司法試験法の一部を改正する法律案の趣旨であります。
 何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さいますよう、お願いいたします。
○委員長(野本品吉君) 本件に関しまする本日の審査はこの程度にとどめまして、質疑は後日に譲りたいと思います。
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○委員長(野本品吉君) 次に、前回に引き続きまして少年犯罪対策について調査を行いたいと存じます。
 前回におきましては、足立区本木町における父親殺し事件を中心に少年法関係の検討を行なったのでありますが、ここ数年来少年犯罪が驚異的に激増いたしますとともに、質的にも粗暴ないし凶悪化の傾向もありますし、犯罪原因も複雑化しておりますので、この際その対策を総合的に真剣に取り上げねばならぬ段階に来ていると考えます。本日は、まず最近の青少年犯罪の実態につきまして、警察、裁判所、法務省、中央協議会それぞれの立場から内容を分析してお聞かせ願いたいと思います。同時に予防対策、取締り対策上問題点をお示し願いたいと存じます。また中央協議会の方からは犯罪対策はもとより、広く青少年対策の現状を予算の点等からも御説明願いたいと思います。とともに、諸外国の実情につきましてもお聞かせ願いたいと思います。委員会は懇談的に進めて参りたいと思いますので、どうぞ忌憚のない御意見をお聞かせ願いたいと思います。
 それでは、まず警察庁の方から御説明を願いたいと思います。
○説明員(増井正次郎君) 少年犯罪の状況につきましては、お手元にお配り申し上げました資料によって御説明を申し上げたいと存じます。
 最近におきまする少年の犯罪につきましては、各方面から非常に増加しており、またその傾向も質的に悪化しておるということが指摘されておるのでございますが、これを私どもの面におきまして、数学的にどうなっておるだろうかという点を取り上げたのが本資料でございます。
 まず最初に、少年刑法犯被疑者、触法少年を含んだ数の状況でございますが、過去二十一カ年における検挙人員年別推移というのがございますが、これはおわかりやすいようにいたしますためにカーブによって御説明しやすいようにしたのでございます。そこをごらん願いますると、一番上の欄が成人全刑法犯、昭和十一年以降の波の動きを示しております。これによりますると、成人犯罪につきましては、二十五年以降ずっとおおむね数の上においては変化はなく、むしろ減少の傾向にあるのでございますが、その次の欄にございまする少年全刑法犯につきましては、非常な量的には増加の傾向を示しております。昭和十一年の数が四万六千五百五十名という人員でございまするが、昭和三十二年におきましては十四万四千五百六名、刑法犯被疑者として検挙された少年の人員がこんなふうになっております。十六年の数字と比較いたしますると、大体二七五%、二・七五倍というような非常な増加の数字を示しております。特に戦後の最高は二十六年でございますが、昨年本年を通じまして見ますと、戦前戦後のやはり少年犯罪の第二の山がきておるんじゃないか、こんなふうに考えるのでございます。
 これを内容別に調べてみますると、その下の欄にございまするが、少年粗暴犯の状況は、十一年が二千八百名くらいでございますが、これが三十二年におきましては三万五百九十名という数字で、約十倍の増加になっております。
 それから次に凶悪犯でございますが、凶悪犯は、この点線で書いてございますが、点線の分に参りますと、三十二年が五千七百三十四名という数字で、これも約六倍以上という数字になっております。
 それから最後の欄の少年性犯罪でございますが、性犯罪につきましては三千五百五十四人という数字でございまして、昭和十六年を基準にいたしますと約九倍という人員の増加になっております。
 罪種別に見ますと、このように質的に粗暴犯それから性犯罪というようなものが非常に増加いたしております。これを今度全刑法犯のうちで少年がどの程度の割合を占めているかという数字が右の黒い数字で示したものであります。一番上の全刑法犯におきましては、昭和二十八年を例にとっておりますが、二十八年から最近六カ年におきまして、二十八年では少年が二三%という割合でございましたのが昨年には二五%、本年の上半期におきますと二七%という、全体の数字を非常に大きく占めております。
 それから、次の欄は恐喝でございますが、恐喝は二十八年におきましては二四%、百人中二十四人が恐喝犯罪を犯した少年だったのが、昭和三十三年の上半期になりますと五一%、恐喝犯罪の半分が子供によって行われておる、こういうことになるのでございます。
 それから全凶悪犯、殺人、強盗、放火、強姦等を含むのでございますが、これも同じように四〇%。二九%から四〇%という数字になっております。
 それから性犯罪中強姦犯罪について調べてみますと、二十八年の四四%が五五%、百人中五十五人までは少年によって強姦犯罪が行われておる、こういう数字でございます。しかもこれは一般的な傾向でありますが、私の最も注意いたしたいと思いますのは、本年度上半期の調べによりますと、少年犯罪のうち、おもな数字を占めております窃盗犯、これが非常に減っておるのでございます。窃盗犯、盗犯が減りまして、むしろ逆に性犯罪、粗暴犯、こういう性と暴力が結びついた犯罪というものが非常に増加して参るというのは、非常に憂慮しなければならないと考えておるのであります。
 第二表におきましては、これを本年度上半期を前年対比において調べた数字でございます。これは先ほど申し上げましたように、これは総体では本年度上半期と比較いたしますと、前年度上半期では二六%の増加の数字でございますが、内容別に申し上げますと、ただいま申し上げましたように、窃盗犯、盗犯につきましては九・四%の減少になるにかかわらず、一番最後の下の欄でございますが、粗暴犯は三三%の増加、凶悪犯につきましては二八・九%というような増加の数字になっております。ここでごらんいただきたいと思いますのは、年令別の欄でございますが、十四才未満、十四才以上十六才未満、十六才以上十八才未満、十八才以上二十才未満と年令別の状況をごらん願いたいと思います。これの一番右の端の数字でございます。これの中で年長少年十八才以上二十才未満が五・六%の減少となっておるにもかかわりませず、十六才以上十八才未満という少年につきましては、逆に一二・七%という増加の数字でございます。また十四才以上十六才未満は四・七%、十四才未満は二・一%という数字でございまして、年少少年における犯罪が非常に増加いたして参っておる。しかも盗犯等につきましては逆に減っておる、こういうような状況でございます。
 第三表につきましては、過五カ年間におきます犯罪少年ではございませんが、少年法上の虞犯少年、さらに虞犯少年にわたる一歩手前の非行少年と申しますか、こういう少年たちを警察の手によって補導いたしました数でございます。これは二十八年以降三十五万という数字が、昨年度におきまして約六十三万という数字になっております。第三表、第四表の例でございますが、次は、最近における少年非行の一部の事例と申しまして、三十二年ないし本年の上半期にかけて行われました性犯罪ないしは粗暴犯罪、特に集団的グループによる性と暴力を結びつけたような犯罪の著しい例だけをここにお示しいたしたのでございます。
 以上が少年犯罪並びに虞犯少年等の一般的な状況でございます。
 これに対する私ども警察の対策といたしましては、もとよりこういう問題につきましては、中央青少年問題協議会というものがございまして、そこで少年犯罪並びに非行防止対策の総合的な対策を推進さしておられることは御承知の通りでございまして、私どもといたしましても、警察の領域を通じ、いかにして犯罪を減らしていくか、いかにして少年非行を防止するかということにいろいろと苦心いたしておるのであります。この少年非行の防止につきましては、特にここで申し上げたいと思いますのは、少年警察という特殊な警察の分野が約十年前に私どもの警察の分野において専門化され、特殊化されて参っておるということであります。これは昭和二十四年に、参議院、衆議院両議院で、当時少年不良化、犯罪というものが非常に大きいのにかんがみまして、防止に関する御決議をなされまして、それに伴いまして中央青少年問題協議会が創設され、同時にその際少年警察という特殊な分野を設けて、これを検挙ということでなしに、この非行を防止する対策を講ずるために特殊な部門を設けるべきであるという御決議がございまして、私どもといたしまして、少年警察という分野が生れてきたのであります。少年警察は、しからばどういうことを内容としておるかと申しますと、少年警察は申し上げるまでもなく、少年の特殊性というものを十分に理解いたしまして、少年を単に犯罪構成要件に該当するから、これを阻止するというのじゃなしに、犯罪原因あるいは犯罪環境というものをよく調べまして、いかにして少年の再非行防止に寄与するか、あるいは少年の犯罪の未然防止ということに拡大して、整理して参るかというところに腐心いたして努力をいたしておるのでございます。特に法務省から御説明があるかと思いますが、刑事警察の新しい方向として世界的にも打ち出されておりますところの未然防止分野の拡大と申しますか、治療対策から予防対策へという新しい世紀の前進に対応いたしまして、私どもといたしましては、少年警察の充実性という面に、教養あるいは施設の面を通じていろいろ努力をいたして参っておるのであります。特に最近におきましては、これに対しまして、単に法律だけではなく、法律と心理、生理とか、各種の面を理解しなければならないというところから、科学と法律というものを結合いたしまして、少年の非行予防の方法を研究するなり、あるいは非行防止地区と申しますか、アメリカのクリフォードショウという人の構想で、地域社会との連係で非行防止計画を進められた、ああいうような構想を私ども頭に描きまして、少年警察と地域社会の人々との力の結合によりまして、少年犯罪の多いところ、非行の多いところを中心に、そこで具体的な施策を講じまして犯罪を減らしていこう、こういうような対策を講じておりますが、これもやはりこういう方向でもって参らなければならぬのじゃないかと考えておるわけでございます。そこで中央青少年問題協議会等とも、私ども単に警察だけの一人走りでなしに、むしろそういう中央青少年問題協議会、地方におきましては青少年問題協議会を中心にいたしまして、各種機関の中の一つのくさびといたしまして、私どもは少年非行防止をいかにして進めるかというところに努力いたしておるのでございます。そこで問題になりますのは、それでは警察はいかなる根拠によってこれをやっておるかということでございます。現在までのところは、少年警察の運営につきましては、現行法規の範囲内においてやり得るだけのことはやって参っておるのでございますが、いかにいたしましても、やはり警察法と申しますのは組織法でございます。それから警察官職務執行法というものは作用法でございます。その警察官職務執行法に掲げられております作用法の範囲内におきましては、きわめてむづかしい問題があるのであります。そこでやっておりますのは、私どもは事実行為といたしまして、少年のために、あるいは家庭のために、地域社会の人たちのいない場合に、私どもがかわりとなりまして、少年が転落をする、あるいは非行を受けそうである、あるいは加害行為を行うというような場合に説得行為によりましてやっておるのであります。しかし他面、この問題につきましては少年法、児童福祉法というものがございまして、少年法、児童福祉法の面を通じまして、私どもその前段階としてのいろんな保護政策、あるいは福祉政策の応急車、救急車的な役目をいたしておるのでございますが、最近の犯罪情勢にかんがみますと、なかなか説得、警告等に応じない、しかもみすみす放っておけば、その少年は必ず被害にかかる、あるいは必ず加害行為を行うということが明らかになっておりましても、事実行為といたしまして説得以上のことはできないのでございます。そういうような状況でございますので、私ども今回警察官職務執行法改正案の中に、一部少年の保護に関する規定を整備していただくように、私どもといたしましては、事務当局といたしまして要望いたしておるのが状況でございます。
 時間を非常にとりまして申しわけございませんが、大体少年犯罪の状況並びに警察における少年犯罪防止に関して果すべき役割ないし状況及び現行制度上の問題点につきまして申し上げました。
○大川光三君 ただいま御説明をいただきました表のうちで、少年犯罪のこの比率はよくわかるのでありますが、それの犯罪数というのはこの表でどこかわかりますか。
○説明員(増井正次郎君) お手元のこの表の中ではわかりやすいようにと思いまして、実は線によって、グラフによってお示ししたのでございますが、数につきましては右の端のところで三十二年の分に関してのみ掲示をしておりますが、もしこれで……おわかりやすいようにと思いまして数字の方を横に並べたのを省略いたしたのでございますが、お入り用でございましたらそれを刷りまして提出いたしたいと思います。
○大川光三君 そういたしますと、この表の見方ですね、たとえば一番上の成人全刑事事犯ですね、それのちょっと見方を教えてたとえば一番上に五十万ですか、一番上の線は。その次は四十万、その次は三十万、この線で見ていけば大体数字が概算が出るわけですか。
○説明員(増井正次郎君) そうでございます。
○大川光三君 それの詳しい表はありませんでしょうか、ありましたらちょうだいいたしたいのですが、ただこの表だけですと、大体三十万と四十万の中ほどを歩んでおる線で、これが三十五万か三十七万かということがわかりにくいのです。
○説明員(増井正次郎君) それでは数字をつけたものを整えまして準備するようにいたしましょうか。大体この線をごらん願えれば五万と四万の間のところで十三年を見れば、ちょうど四万八千になるという見当だけはおわかり願えると思います。たとえて申し上げますと、二十五年の数字を申し上げますと、二十五年の数字は少年犯罪につきましては十五万八千四百二十六人という数字になるのでありますが、これは十万と二十万の間で、二十五年の欄のちょうど交錯する点、この辺が十五万八千四百二十六名という数字になるのです。数字の詳細は省略さしていただきまして点線で出したのですが、もしおわかりにくければさっそく書類でこの中に数字を入れてもようございますからお出しいたしたいと思います。
○大川光三君 その点で、これで大体わかりますけれども、できますれば数字に表わしたものを追って御提出方をお願いをいたしたいと思います。
○委員長(野本品吉君) それでは熱心な御希望もありますので、そのように整理したものを御提出願いたいと思います。
 次に最高裁家庭局第三課長森田君から……。
○説明員(森田宗一君) 家庭裁判所の立場から御質問にお答えいたしたいと思います。
 家庭裁判所で少年事件を受理いたします経路は、司法警察員から直接送致されるもの、それから検察官から送致されるもののほか、調査官の報告あるいはその他一般の通告、それからいろいろな経路があるわけでございますが、そのうちの最も多いのは検察官からの送致であります。その事件の概要につきましては、建前上犯罪事件でありますと、司法警察員から検察官に送致されて家庭裁判所に大体全部送致される建前でございますので、ただいま警察庁の方から御報告の数が、大体家庭裁判所、検察庁あるいは司法警察員から送致される事件と見ていいと思います。それにつきましては、従って詳細に申し述べる必要がないかと思いますが、若干ただいまの御説明につけ加えたいと思いますことは、まず第一には、少年犯罪が非常に激増しておるという言い方でありますが、これは確かに増加していることは事実ですけれども、問題はその増加の仕方、内容であります。
 まず、第一に、ただいまの御説明は、もちろん刑法犯に限っておられたと思いますが、一般によく激増している、従って表面は非常に悪くなっている、こういうふうに結論されるときに援用されます統計は、交通事件を含んでおる場合が少くないのであります。これは別途に考慮すべき一つの社会の問題であろうと思います。
 その点を数的に申し上げますと、家庭裁判所で刑法犯あるいは虞犯事件、それから交通事件等を含む特別法犯と呼ばれるものの全部の受理件数は、三十二年度において大体四十六万件ございますが、これは驚くべき激増を年々しておるわけであります。ところがそのうち交通事件の占める割合は三十一万件で約六七%を占めております。カーブにいたしますと、二十六年ごろから少年事件が非常に急カーブになっておりますのは、その大部分はこの交通事件が占めている割合であります。この点をまず分析して考える必要があると思うのであります。そういう数の上で非常に激増しております。交通事件を除いて考えた場合にも、先ほど御説明のように二十九年ごろから少年の刑法犯あるいは虞犯事件というものがゆるやかなカーブと私はいいたいのでありますが、増加していることは事実であります。しかし問題は中味でありまして、ただいまの御報告にもありましたように、窃盗その他のいわゆる財産犯と申しますか、そういうものはむしろ減少しております。増加しているのは強盗、強姦、傷害、暴行等の事件に相当数の増加がみられる、こういうことになっていると思います。特にいわゆる凶悪犯といわれます刑法上の罪名からの重い罪とされているたとえば強姦、強盗、殺人、放火というようなものについてみますと、刑法犯のうち全体の四%くらいをこれらが占めておる。これらのうち強姦が半数以上であるという関係になっております。それから粗暴犯と通称呼ばれております損害、恐喝、暴行、脅迫等のものは全体の二二・五%、傷害がそのうちの半数というような関係であろうと思います。これらの一般状況につきましては、先ほどお断り申し上げましたように、警察庁の方の御説明に譲りたいと思います。
 こういう事件を家庭裁判所として受理いたしまして調査し、その処分をきめるわけでありますが、その概況を申し上げますと、保護処分は年々増加しておりますけれども、そのうち少年院送致はやや減少し、それに対して保護観察が相当増加しております。それから検察官送致も年々増加の傾向にあるというふうに申し上げられると思います。この処分の状況につきましては、なるべく新しい資料をお目にかけたいと思いまして、ただいままで用意してございませんが、近い機会にお目にかけることができると思います。ここではお求めもございましたので、家庭裁判所の立場からみたこれらの少年非行の問題点といいますか、家庭裁判所で取り扱った経験からみた一般状況を通じての少年非行の内容、その背景について二、三申し上げてみたいと思います。
 第一は、少年犯罪が少年の性格に基いておるものが相当多いということであります。前回の本木町、小松川の高校生殺しの事案等にもそのことが一ついわれると思いますが、幼少時からの性格の形成されてきた家庭生活なりあるいは教育の面なりに相当大きな問題があって、現在の少年には抵抗力がないとか、物事をやり抜いていけない、あるいは自分の衝動をコントロールできないといったような性格傾向がかなり強く見られるわけであります。そういう点に対する現在の機構、あるいは青少年対策のあらゆる面において十分これを治療し、十分な育成をはかっていくということが不十分ではないかということが考えられるわけであります。
 それから第二は、家庭に現在もなお相当多くの問題があるものが相当多いわけであります。それは前回の事件にもありましたような貧困とかアルコール中毒の問題とか、住宅の問題とか、いろいろございますが、特に目立っておる一般的な問題は、家庭生活の秩序といいますか、人間関係と申しますか、そういう面のゆがみあるいは崩壊というようなことが事件を通じて相当強く浮び上っておると思います。
 第三は、学校及び職場の関係が青少年にとって好ましくない状態におかれているのではないか。ことに学校における生活指導あるいは教師と生徒との間の問題。それから職場の労務関係というようなものが青少年の心あるいは生活態度をゆがめたり、あるいは不安や犯行をそそるというような状態が相当事件の中に見られるようであります。
 それから第五は、一般によくいわれることでありますが、社会環境の面に青少年の非行を直接、間接これを誘発しておるいろいろな悪条件が多いということであります。ことに性犯罪等におきましてはそれ自体だけを責めることはできないと思いますが、好ましくない映画、出版物等が相当、少くも一つの要素をなしておる、動機の一つになっている場合もかなり見られるわけであります。最近においてはいろいろこれに対する対策も考えられておるわけでありますが、今日でも実際の事例の中にはエロとかグロとか暴力讃美とか、魔とか怪とかといったような傾向のものが少年たちにかなりいろいろな影響を持っているということは否定できない事実であると思います。
 それから第六番目には、最近の傾向として、申し落しましたが再犯の少年が、再非行の少年が増加しておりますが、それらの事例を通じて見ますと、保護のそれぞれの機関に何か一貫した有機的な対策が欠けているということが一つ言われる。と同時に、特に、前に保護処分その他の手当を受けた後のアフター・ケアが十分でない。ことに年長の少年になりますと、職業ということが大きな指導の要素になると思いますが、その点で隘路がなかなか切り開かれていない。そのためにやむなく再犯に陥る、再非行を犯すというような事例が相当あるようであります。
 次に、最後に申し上げたいと思いますことは、成人の責任という問題であります。これは必ずしも親とか一般社会の責任というふうに、それもあると思いますが、直接に少年の犯罪や非行の原因となっている、あるいはそれを誘発しているおとなの問題であります。実際の事件を通じて見ましても、すでに誘発原因になっているというだけでなしに相当数の粗暴犯等が成人との共犯であります。また共犯と成人の方がとられないでも、何らかの意味で少年がその影響を受け、あるいは示唆を受けるというような実質的な意味の責任を成人が持っているという場合もありますし、物をとったりおどしたりすることを、暗に教唆を受けているといったような場合も相当見られるわけであります。こういうような少年の事案を実際に処理いたします際には、その成人に対する取扱い、取締り、処分というものがどうなっているかということが非常に重要でありますが、少年事件の方が非常に早く処理されるというようなことで、実際の処分の場合に、かりにこれが刑事手続になっていてもわかることが少い。また多くの場合、今申しましたような直接共犯であり、はっきりして検挙されたというような場合であれば刑事手続にやがては上り判決を受けることになると思いますが、実際には検挙に至らないものが相当あるわけでありますが、少年はそれをよく知っております。従って、保護処分をいたしましても、少年はそれに納得をしない。自分より悪い、責任のあるおとなが放任されているといったようなことに対して相当な不満と抵抗を感じる向きがあると思います。ことに少年送致は、本来少年の矯正教育のための、福祉をはかるための処分でありますけれども、実際には身柄を拘束されるという事実が伴うために、そういう場合には少年は相当これに対して反抗をし、反感を持つ。で、それには相当の理由があるということを私どもとしては感ぜざるを得ないという場合もあるわけであります。で、こういう直接間接、少年非行の原因をなしているおとなの事件に対する現在の制度対策、ことに少年法上の手当というものは非常に弱い。また現在の法規も十分に果してそういう少年という立場も考えて運用されているかどうかということは、私どもとして疑問があるのであります。そういう少年非行というものを取り締り、処理し、あるいはその育成をはかるという態勢及び活動とともに、こういう面の成人の責任というものをただす。そういうことによって初めて少年の納得を得るし、また少年問題に対する諸般の活動や保護制度が安定を保つ、また片手落ちでないということになるのだと思いますが、その点において現在の制度運用の面に相当考えなければならないものがあるというふうに私どもは感じております。
 最後に、簡単に現在の制度上、対策に関連して申し上げますが、先ほども御説明がありましたように、家庭裁判所の事件を見て痛切に感じられることは、早期発見、早期手当ということがいろいろな立場で不十分であるということであります。保護機関と他の機関、たとえば学校その他青少年団体というものとの密接な連携というものがもっとなければならぬというふうに考えられます。
 それから年少少年の事案が増加しているというような点から考えましても、年少少年に対する現在の少年法並びに児童福祉法というものがどうもしっくりいっていない、問題点があるというふうなことも反省さるべきだろうと思います。
 それから特に現在の少年法を中心とする保護制度の中に、相当内容的にこの際再検討をして改正すべき問題がたくさんあると思います。この点は、もし御質問がございましたならば、私どもの方で考えております態度というようなものについて申し上げたいと思います。
 もう一点は、現在の青少年、児童に対するいろいろな制度、対策がございます。また制度よりも人だということが特にこの分野で強調されるわけでありますが、第一線でこれらの少年に実際に当るケース・ワーカーと申しますか、実際の従事者というものが、ほんとうに情熱を傾けて、希望を持って、またいろいろな意味で安定感をみずから感じながらやれるような仕組みになっているかどうか。これは待遇の問題もありますけれども、それだけでなく、いろいろな点で問題があるように思います。実際に対象とする少年たちが、社会の不安というようなものを背景にして、いろいろな心理的、精神的な不安感を持っております。不信と反抗というような気持を持って、その抜け道をいろいろなところに求め、その吐け口をいろいろな形で表わしているわけでありますが、実際にそれに面接し、実際にそれを取り扱う人たちに不安があり、希望のない状態で、もしあるならば、それ自体が大へんな片手落ちであり、問題の解決の重大なきめ手を見失っているというふうに考えられると思います。
 以上、簡単に私どもの立場からの御報告を終ります。
○政府委員(竹内壽平君) 先ほど来お話しが出ておりますように、最近の少年犯罪は、数におきましても、また質におきましても、増加、悪質の傾向にあるわけでございますが、わが国の少年関係を取り扱う組織形態というものは非常に複雑でございます。しかし、運用といたしましては、個々の犯罪少年または虞犯少年に対する保護もしくは教化指導、またすでに犯罪と関係するに至った少年に対するいわゆる個別的な治療保護という点に重点が置かれているように思うのでございますが、広く青少年の不良化を防止して、青少年を犯罪に至らしめないような施策を講ずることがただいま非常に必要だというふうに感ずるわけでございます。いわゆる予防保護と申しますか、そういう面に重点が指向されなければならぬというふうに思うわけでございます。
 さような点、予防保護という点につきましては、従来比較的軽視されておるきらいがあるわけでございまして、法務省におきましても、犯罪予防という職責を持っておるのでございます。そういう観点からしてと、もう一つは検察を担当しておりますので、この両面からして青少年犯罪の一般予防の仕事を積極的に推進いたしまして適切な行政施策の樹立に資するとともに、個々の具体的事件の処理の適正を期して参りたい所存でございます。なお先ほどもお話が出ておりましたが、いわゆる少年事件の処理の複雑になっておる点は、先般のこの委員会でも法務大臣から御答弁申し上げたのでございますが、最近ストックホルムの社会防衛会議に法務省からも係官を出席させておりますが、それの手紙による中間報告によりますと、その会議におきましても少年問題というものは非常に重要な課題でございまして、その課題の焦点になっておりますのはこの組織運営をどういうふうにするかということと、もう一つは年令の問題でございます。この二つの問題は日本ばかりでなく諸外国あげて疑問にしておる課題でございますが、日本の現状に引き比べてみましてもやはりその点が問題でございます。今きわめて外観的に申しますと、犯罪を犯した少年のうちで十四才から二十才未満の者につきましては、先ほども話がありましたように、警察官から検察官のもとに事件が送られまして、検察官がこれを取り調べて刑事処分を相当とするとか、あるいは少年院送致とか、保護観察を相当とするといったような意見をつけまして家庭裁判所に送るわけでございますが、そういう場合と罰金以下の刑に当る軽微な事件につきましては、警察官から直接家裁に送る場合とがあるわけでございまして、また家庭裁判所における昭和二十九年から三十一年までの三カ年の少年事件の取扱数は受理総数のうちで審判不開始あるいは不処分というような家庭裁判所自身でドロップと申しますか、そういう措置になりましたものが、これは今の交通事件等を含めた数字でございますが五割七分になっておる。もしこれを刑法犯だけに直しますと七割以上になるかというふうに思うのでございます。そういう状態であります。それからまた保護処分に付されたものは全体の二割、検察官の方へ逆送と申しまして、今度は検察官が刑事処分、刑事裁判所に起訴するということになるわけでございますが、その逆送されたものが全体のわずか三割に過ぎない、こういう状況でございますので、これが果していいのであろうかという疑問を検察側としましては持っておるのでございます。そこで問題としてただいま考えられておりますのは、少年法上の問題としましては年令を十八才未満に引き下げるべきであるかどうかという点が一つございます。それから家庭裁判所の行いました決定に対して公益の代表者としての検察官が不服申し立てをする道が開かれておらないのでございますが、この申し立て権を認めるべきであるかどうかという問題、それからいわゆる検察官の先議権という問題がございますわけですが、そういう問題、それから道路交通の事件のような特別法犯の少年に対しましても保護処分を行うことが適当であるかどうかといったような問題がございます。それからまた虞犯少年あるいは触法少年、そのほかいわゆる問題少年と称せられておる者の現状につきましては、先ほど警察庁から御報告があったわけでございますが、これは申すまでもなく少年法第三条第一項第三号に掲げる事由があって、将来罪を犯しあるいは刑罰法令に触れる行為をするおそれのある少年でございます。こういう触法少年というのは十四才に満たない者で刑罰法令に触れる行為をした少年でございますが、これらの少年や、いわゆる問題少年というのは虞犯少年あるいは触法少年には当らないが不良性の行為をする少年でございます。この種の少年は警察においてはいわゆる少年の保護と犯罪予防というような立場から補導を行なっているわけでございますが、しかもその数が家庭裁判所や児童相談所に通告される者よりも圧倒的に多いということはこれは注目をしなければならぬのでございまして、三十二年の統計を見ましても家庭裁判所に送られました、送致になったのが六千八百九十三という数字でございますし、児童相談所に通告されましたものが六千三百五十七、福祉事務所に通知されたのが百五十八というので、一万三千そこそこの数字でございますが、これに対して警察限りの措置をいたしましたのが六十二万四千という数字に上っておるのでございます。これは虞犯少年と問題少年の措置別の統計でございます。こういうように少年を掌握すると申しますか、国家機関がこの問題少年を、国家機関の目に触れたこの種の少年、その取り扱い方法につきましていろいろな問題を含んでいる。結局私どもの考えからいたしますと、もしこの少年につきまして罪を犯した少年、おそれのある少年でございますが、この少年を将来に向って再び罪を犯すことのないような措置ができ、再犯防止と言いますか、そういうことが果して科学的に可能であるかどうか、それからまたそのような少年になる以前において罪に陥らないように未然にこれを防ぐ方法が科学的に考えられるであろうか、もしそういうことが可能でありますならば、この少年たちを犯罪から救うだけでなく、ひいては刑法犯の成人の犯罪をも含めましてこの種の犯罪が減っていくわけでございます。そこでこの少年の犯罪予防、あるいは再犯予防というような点に科学的なメスを加えていくということが非常に重要な課題ではなかろうかというふうに考えておるわけであります。その点につきましてただいま安倍検事を同道して参りましたが、安倍検事が再犯予防、あるいは犯罪予防という点につきまして若干の研究をいたしたものもございますので、御被露申し上げて御参考に供したいと思います。
○説明員(安倍治夫君) ただいま皆さんから少年犯罪の現状につきましてはいろいろ分析的に御説明がございました。その上に立ちまして、それならばその現状の上においてどうしたならば犯罪を減らすことができるか、そういうことについてこれからお話したい、こう思うのであります。
 犯罪を減らすにはもちろん刑罰を加えるというのも一つの方法でございますけれども、すでに犯罪者が犯罪を犯してしまってからこれを刑務所に入れてもなかなか直らない。また犯罪はそれによって簡単に減るものではないのであります。犯罪を減らす一番いい方法は犯罪者がまだ犯罪を犯さないうちにその犯罪を未然に防止するというところにならなければなりません。しからば犯罪予防の大眼目は何かというと、それはちょうど病気をなおすときと同じでありまして、早期発見、早期治療というところにございます。病気が非常に大きくなってから注射だとかあるいは入院だとか大騒ぎいたしましても、費用ばかりかかってさっぱり効果が上らない。同様に少年犯罪者がすでに、もうどうにもならないくらいに重症の少年犯罪者になった後で、これを少年院に送ってみたり、あるいは少年審判にかけてみてもあまり効果は上らないのであります。で、犯罪というのはいわば病気のようなものでありまして、その病気というのは要するに少年が性格的、環境的に見て社会の生活に適応できない不適応症という一つの病気であります。この不適応症は二つの面を持つのでありまして、だんだん不適応の傾向が強くなりますと社会との間に一つの緊張関係を生じます。これを解決するには一つには自己を否定するという方法、すなわちあるいは自殺を行う、あるいは家出放浪を行うというような一つの消極的な社会的な不適応性の現われもございます。しかし逆に自己が十分に強いと相手方を否定し、社会に迷惑を与えても、その緊張を解決しようとする。これが犯罪でございます。そこでこの社会的な不適応症という一つの病気はどういうふうになってなおされていくかといいますと、これは突然生ずるものではなくて、幼い少年の家庭環境あるいは社会環境のうちに徐々に芽ばえて、そうしてだんだん固定化していくのであります。そこでその犯罪性というものが固定化して、どうにもならなくなってから手を打つのではなくて固定する前に早期に手を打つ。そうされるならば少年犯罪を未然に防止することができるのではなかろうか、かように考えるのであります。ところが従来もろもろの国家機関というのは果して少年犯罪の犯罪性が固定する前に十分手を打ってきたかというと、遺憾ながらそういう手を打ってこなかったと言わざるを得ないのであります。その顕著な例はいろいろ例がございますが、たとえば最近世間を騒がせました小松川女高生殺しの例をごらんになるとよくわかるのであります。この小松川女高生殺しの犯人であるRという少年は決して突然あのような残虐な犯罪者になったのではないのでありまして、そのような犯罪徴候というのはすでに前々から現われていた。しかしながら国家機関が早期にこれを発見するすべを持たなかったというところに国家機関の刑事政策に非科学性があると言わざるを得ないのであります。
 お手元に配付いたしました資料で昭和三十三年十月付グリュック犯罪予測法説明資料、カッコして諸表と書いたのがございます。その一番最後の裏表紙のところをごらん願いたいのであります。この表をあけまして一番最後のところに紙が一枚張りつけてございます。これが有名な小松川女高生殺し事件におけるR少年の前歴がどうかというのを東京地検が調べたその報告を要約したものでございます。それによりますと、おそるべきことにはこの少年はすでに四回の前歴を持っておる。一番初めは三十年六月にハンドバックと現金千九百五十円を窃取いたしました。そうして検察庁に送られ、家庭裁判所に送られた。その後間もなく三ヵ月を経まして九月二十九日になりますというと、第二回の犯行を犯している。しかもこれは家裁に事件が送られまして、家裁がまだ事件を処理しない間にさらに次の犯行を犯したのであります。これがしかもたった一回の犯行ではなくて、右側の犯罪事実という欄を見ますと、小岩図書館で八回にわたり本を窃取した。つまり犯行が八回であります。前回のを合せますと九回。これが要するに警察に発覚した犯行でございます。おそらく発覚しない万引その他を入れますと、相当犯罪を行なっているに違いない。R少年はすでにこの段階で常習的な犯罪者の徴候を表わしているのでございます。しかし何と思いましたか、家庭裁判所の処分はいわゆる不処分であります。これは審判を開始いたしましたけれども、しかし特別の手当は必要はないというのでR少年はそのまま釈放されて、そこに何の手も打たれなかったのであります。果せるかなそれから三ヵ月たちまして、三十年十二月三十日に至りまして第三回目の犯行が行われた。厳密に言いますとこれは十回目になるわけでありましたが、出身中学校校庭で自転車一台の窃取、なお別に自転車一台の窃取、これは相当なものでございますけれども、この場合は検察庁から家庭裁判所に事件が送られまして、家庭裁判所では何と思ったか審判不開始、すなわち審判することすら必要がないといってこの少年を家庭に送り帰したのであります。そうしますと、もちろんそういう常習的な犯罪性を持った少年でございますから、間もなくまた次の犯行が行われている。その間に若干のインターヴアルはございますけれども、三十三年一月十三日に至って今度はいよいよ大きな犯罪を行なった、それが江戸川区立松栄図書館外五図書館で本を合計五十二冊窃取、つまり一回には数冊取ったのかもしれませんけれども、おそらく十数回の犯行がここで行われた。それをまとめましてまたも警察は彼を逮捕して検察庁に送り、検察庁は彼をまた家庭裁判所に送ったのであります。事ここに至りましては家庭裁判所もこれをまさか釈放するわけにはいきませんので、非常に一番軽い処分であるところの保護観察処分というのに付したのであります。そうして世間を騒がしました有名な小松川女高生殺しの事件というのは、まさにこの保護観察中のできごとであります。つまりこの少年については、保護観察官がその生活を指導しておった間に起きたことでございます。しかも不思議なことには、保護観察の記録を見ますというと、この少年は保護観察官の受けが非常によろしい。人ざわりも非常にいいし、礼儀も正しい、頭もよろしいというので保護観察の成績は良ということになっております。その成績良の少年が世にもおそろしい犯罪を行なった。殺人という犯罪を行なった。しかも強姦殺人という忌まわしい犯罪を行なったということについてわれわれは非常に考えざるを得ないのであります。つまり今までの国家機関というものは一人の犯罪少年を扱う場合におきまして、果して科学的にその性格なり環境なりを見抜いて、そうして適切なる処置をしているかというと、遺憾ながらしておらないと言わざるを得ないのであります。これほど顕著な犯罪性向を持った少年が目の前に現われてきた場合に、三回もこれを単に釈放して家に帰す。四回目に初めて保護観察処分にする。しかしながら保護観察官もこれを成績良ということの評点を与えて安心しておったということは、実におそろしいことではなかろうかとわれわれは思うのであります。そこで私は、別に現在の家庭裁判所の方々やあるいは保護観察官の方々を非難しようとは思はないのであります。なぜかというと、なぜ国家機関がかような非科学的な審判を行わざるを得ないかといいますと、それは刑事学という学問、つまり犯罪の原因を探求しその対策を立てるところの学問というものは、はなはだ未発達だからであります。もちろん十八世紀の終りごろから二十世紀の今日に至るまで、諸外国あるいは日本の学者たちがいろいろな犯罪学というものを発展させました。その十八世紀の終りごろから二十世紀の今日に至るまでの犯罪学の大要というものが、このお手元に差し上げました同じ資料の一番最後のところに織り込みにされてございますからごらんいただきたいと思います。一七七五年から一九二九年まで、この世界に現われましたあらゆる犯罪学の学派をこの一覧表にまとめたのでございます。これをごらんいただきますというと、今までどういう学問が、どういう犯罪学が成立し、どのような内容を持っているかがよくわかると思われます。これを大まかに申しますというと、この一番左の主要種別というところをごらんいただきたいのであります。そういたしますと、ごく大まかに分けまして、犯罪の原因は素質だ、人間は生まれつきに犯罪者だという考え方が一つであります。後天的なものももちろん大切でございましょうけれども、人間は犯罪的な素質を持って生まれついた、そういう素質を持った人間は行く行くは犯罪者になるという、そういう考え方が一つでございます。これを主観的、内面的犯罪理論ということにまとめることができます。また下の方、中ごろをごらんになりますというと、犯罪の原因は環境である、こういうことを主張する学者もございます。これを簡単に申しますと、客観的、外面的な犯罪理論、こういうふうに呼んでもよろしゅうございます。これらはいずれもたての一面を見ておるというので、ドイツなどに起りました犯罪生物学派に属するメツガーなどという人は、そういうことではよくない、犯罪原因というものは多面的だ、素質及び環境が一定の非常に複雑なダイナミックな、総合的な関係をもって作用し、それが犯罪を形成するのだということで、一番下のところを見ますというと、犯罪は人格全体を貫いて作用する。多様な素質的、環境的要因のダイナミックスによって生ずる、これが一番新しい学派であります。ところがこういうもっともらしいことを言ってもらいましても、われわれは別にどうにもならない。たとえばここに小松川女高生殺しの少年を一人連れて参りまして、メツガー先生の前にこれを示して、メツガー先生、あなたは非常な刑事学の大家だそうだが、一つこの小松川女高生殺しの犯人がどういう原因によって、どういう原因がどういう割合で作用して、このような犯罪者を作り上げたか、それを一つ分析していただきたい、あるいはそういうことが原因であるというならば、どういうことをしたらこの犯人を善良な人間に改善することができるか、それを教えてもらいたい、こういうふうにかりにドイツの学者であるメツガー先生に聞いても、メツガー先生はおそらく手を上げるでありましょう。いや、わしは理論はやっているけれども、実際はわからぬとおっしゃるでありましょう。しかし問題は、学問というのは現実に役立って初めて意味があるのでありまして、幾ら素質と環境の神秘なダイナミックスということを大げさに言ってもらっても、われわれにはちっとも役には立たない。そこでしからば犯罪学というものを発展させて、ほんとうに少年犯罪なり、未成年犯罪を予防するような犯罪学に形成していくのには、どういうところに着目したらよろしいかということをこれからお話したいと思うのであります。これにつきましていろいろ新しい刑事学の動向を研究いたしました結果、アメリカにおきまして一つの新しい犯罪学の傾向が台頭しているということがわかったのであります。これがいわゆるグリュック博士、すなわちハーバード大学で刑事学を講じておりますシェルドン・グリュックという人が、約三十年前から研究しておる犯罪予測の理論であります。グリュック博士によりますというと、少年の非行性というものは非常に幼いころに、家庭環境のうちに芽ばえるものだ、従って十分注意しておりますというと、家庭環境のうちにその少年を犯罪者に導くような要素がごく幼いころに現われておるのだ、それに早期に着目することによって少年犯罪になる、黙っておれば少年犯罪になるであろう少年というものを早期に発見することができる、これを早期に発見いたしましたならば、それに早期に治療を加えることによって少年犯罪を抜本的に防止することができるのだ、これがアメリカのグリュック博士の理論の大要でございます。で、この犯罪予測の理論というのは、実を申しますと二つの面を持っておるのでありまして、一つの面は今申しましたように、犯罪を早期に予測し、早期に治療するという面でございますが、もう一つの面は、一たん罪を犯して刑務所に入った者、あるいは少年院に入った者を釈放いたします場合、つまり仮釈放いたします場合に、この者は果して再犯を犯すであろうかということを予測する学問、これが犯罪予測理論の第二の応用面です。そこで仮釈放いたします場合、従来はつまり刑務所の中で看守のごきげんをよくとる者とか、あるいは非常によく働いて、働いたような振りをして見せる者とか、そういうような者が非常に点数がよろしいのでございまして、仮釈放委員会ではこの者は成績がいいからといって簡単に釈放される、そうすると一ヵ月、二ヵ月後には再犯を犯して刑務所に戻ってくる。今日世界を通じまして仮釈放になった犯罪者は七五%が再び刑務所の門をくぐるといわれておるのであります。そこで犯罪予測の理論を仮釈放の方で応用いたしますというと、仮釈放委員会が犯罪者を仮釈放する場合に、一たん犯罪予測を行なってみる、そうしてもし非行を犯す、つまり再犯を犯す確率、確からしさというものが非常に高い者であるというと、その仮釈放することを差し控えるか、あるいは非常に厳重な監視のもとに仮釈放をする、あるいは刑務所内にしばらくとどめる、あるいは少年院内にとどめて、十分その者が直ったという自信を持ったときに初めて世の中に出す、釈放する。こういう方法をもってやると七五%の者が再び再犯を犯して刑務所の門をくぐるという悪循環を立ち切ることができるのであります。この方法は実は夢ではないのでありまして、アメリカのイリノイ州ではバージェスという人の理論を修正したオーリンという人の方法を応用いたしまして、すでに今から二十年も前からこの方法を適用しておる。そうして二十年前と二十年後の今日を比べて見ますというと再犯率が半分に減ったと報告されておるのであります。これはもちろんほかの原因もあるかもしれませんが、アメリカの犯罪全体の傾向は、この二十年間において決して減っておらない、むしろ全体としては上昇の傾向にあるのにイリノイ州だけにおいて再犯者の減った率が半減したということは、仮釈放における犯罪予測という科学的な方法が成功したのではなかろうかという一つの証拠であろうと考えるのであります。で、ここでは時間がございませんので、論点をグリュック博士の少年犯罪の早期予測の問題にだけ限定いたしまして、簡単にこの理論の概要を御説明申し上げたいと思います。
 グリュック博士の方法というのは、まずボストンという町がアメリカにございますが、このボストンの下町に育って下町で犯行を犯して、そうしてボストンの少年院に入っている五百人の犯罪少年、これをサンプルとしてとったのであります。そうしてそれに対応するようにボストンの中学校、高等学校に在学するところの善良なる五百人の少年、これをいわゆるコントロール・グループ――対象群として抽出したのであります。そうしてこの善良なる五百人の少年と犯罪性を持つ五百人の少年を対比しながら一体どういう要素が作用して、どういう幼年時代の要素が作用して、同じようなボストンの下町に育った少年が一方では犯罪者になり、一方では善良なる少年になったかということを調べて見ました。そうしてその場合に、約四百二個のファクター、四百二個の要因というものに着目して、その差異を調べたのでありますが、そういたしますというと、その中には、たとえば二親が欠けている、いわゆる欠損家庭というものが重要なものだ、あるいはその少年が学校をサボっているということがわかったということも一つの原因。あるいは母親の愛情が非常になかったということも一つの原因。あるいは非常に犯行性を持っておったということも一つの原因。いろいろなものがございましたが、それらを選りすぐって参りまして、犯罪性と最も関係のある十五の因子、十五のファクターが最後に選び出されたのであります。この十五のファクターと申しますのは、お手元に配付しました先ほどの資料の六ページ以下に一覧表にしてあげてございます。大まかに言いまして、いわゆる社会的、六ページのところにございますが、社会的五因子というものがまず取り上げられます。その社会的五因子の内容を見ますというと、1は父による少年のしつけ。2は母親による少年の監督。3は少年に対する父の愛情。4は少年に対する母の愛情。5、家族の結合。この五つの要素が少年を犯罪者に追いやるか、あるいは善良な少年にするかをきめる非常に重要な要素であるということが統計学的に実証されたわけであります。われわれも、いい家庭からはいい子供が出るということは東洋人の直観として十分今まで知っておったことでございますが、アメリカ人がそれを統計学的に吟味した結果、やはりわれわれの直観と合致するような結果が出たことは非常に興味深いことと申さなければなりません。これは、非常にわれわれにわかりやすい社会的な五つの因子でございますが、そのほかに、さらにグリュック博士は、第二群の五因子として、いわゆるロールシャッハ・テストによる性格特性の五因子というものを選び出しました。第一は、社会的主張、これが強いか弱いか。第二は、反抗性が強いか弱いか。第三は、疑惑性が強いか弱いか。第四番目には、破壊性が強いか弱いか。第五は、情緒易変性が強いか弱いか。そういう、これは心理学上の有名なロールシャッハ・テストというのをやりまして、これが強いか弱いかを区別して、将来この少年が犯罪者になるかどうかを見きわめようという因子であります。それから「その三」は、精神医学的面接によるパーソナリティ特性の五因子。第一は冒険性。第二は行動の外向性。第三は被暗示性。第四は頑固性。第五は情緒不安定性。こういう因子もまた犯罪に非常に関係のあることがわかったのでございますが、「その二」、「その三」の、ロールシャッハ・テスト及び精神医学的面接による五因子ということは、しろうとではちょっとわかりにくいのでございまして、非常に専門的な知識が要りますので、ここでは、「その一」の社会的五因子について、どのような犯罪の予測が行われるかということに限定して説明を申し上げたいと思うのであります。
 そこで、グリュック博士の方法は、今申しました、父による少年のしつけ。母による少年の監督。少年に対する父の愛情。少年に対する母の愛情。家族の結合。この五つの因子の態様に従って、それぞれ一定の評点を与え、点数を与えるという方法をとったのでございます。その点数は、一定の統計的な計算から割り出されたものでございまして、その計算は、やや複雑でございますので省略いたすといたしますが、結果的にどのような評点が与えられたかということは、この資料の十五ページにまとめてあります。資料の十五ページを見ますと、「その二」としまして、「加重失敗得点一覧表」というものがございます。工合の悪い因子が現れて参りますと、それに一定の失敗得点を与える。しかし、その得点というのは、どんな要素が現れても一律に一とか二とかいうのを与えるのでなしに、統計的重みに従って加重した得点を与える。これがグリュック方式の非常な特性なのでございます。たとえば、父による少年のしつけについて見ますと、厳格過ぎる、あるいは気まぐれという場合には七一・八という点数を与える。ゆるやかである場合には五九・八という点数を与える。確固かつ親切という場合には九・三という点数を与える。非常にファクターがよく現れている場合には点数が低いわけでございます。同様に、他の四つの因子についても、それぞれ一定の評点をつけるようにいたしまして、特定の少年を取り上げまして、この五つの因子につきまして、加重失敗得点一覧表に従って評点をいたしまして、その五つの評点の総合計を作り上げるのでございます。その計算の実例が十六ページにございます。その次のページをあけて見ますと、「合計失点計算例」というのがございます。たとえば、ある少年をここに取り上げて見ます。父による少年のしつけがゆるやかであるという場合には五九・八という点数をここに与える。母による少年の監督が不適切であるという場合には、前の表に従いまして八三・二という点数を与える。少年に対する父の愛情が温情豊かであるという場合には三三・八という点数を与える。少年に対する母の愛情が無関心である場合には八六・二。家族の結びつきが、多少の結びつきであると認められる場合には六一・三。こういう評点を与えまして、その合計点をとりますと、三二四・三というふうになります。
 こういうふうにいたしまして、グリュック博士は、善良な少年と善良でない少年のそれぞれ五百人につきまして、各個につきまして計算したのであります。そうして合計点数というものがどういうような分布をなしておるかということを研究いたしました。そうすると、非常におもしろいことがわかったのであります。次の十七ページをごらんになりますと、その合計点が一五〇未満である。非常に成績のいい少年ですが、そういう成績のいい少年は、つまり幼年時代についてその評点をしてみますと、その合計点が一五〇未満というような成績のいい少年でありますと、非行に陥ったのは五人しかおりません。非行に陥った者はわずか五人、非行のない者が百六十七人というように、非常に大きな差がここに現われていることがわかります。次の段階を見ますと、一五〇点以上一九九点というのを見ますと、非行のある者はややふえて、十九人となっておりますが、大体においては非行のない者が多い。つまり、百二人。右の方に書いてあります。以下同様にしてずっとやっていきますと、点数がふえて参りますに従って、非行のある者の数がふえていって、非行のない者の数が減っていく、こういう逆の関係にあることがわかった。そこで、結局、重みをつけた失敗得点、この点数というものは、この少年が将来非常に陥るか陥らないかということに関する重大な着眼点になるということがわかったのであります。グリュック博士は、二五〇点を境にして一線を引きまして、そうしますと、二五〇点を境にして、つまり、二四九以下の場合におきましては、その少年が非行に陥るという確率、プロバビリティが非常に低い。しかし、二五〇点をこえるや、将来非行に陥るという確率が非常にふえるということがわかったのであります。その相関表を、わかりやすくするためにグラフに直しましたのが十八ページに書いてございます。十八ページは、十七ページの細別予測表をグラフに書き改めたものでございます。これを見ますと、非常にしろうとわかりするのでありまして、右の方に山が高いように盛り上っているのは、これは犯罪少年という曲線であります。左の方にずっと高く盛り上っているのは、これは善良なる少年の曲線でございます。これを見ますと、下の失敗得点の数字が右の方にだんだん高くなるに従って、犯罪少年の数がずっと右上りに高くなっていく、逆に、失敗得点の合計数が左の分にずっと低くなるに従って、善良なる少年の数がずっと高くなる。要するに、山の峰が二つに分れていくのであります。右側に参考図例としまして、山の峰がずっとくついたような図と、山の峰の分れた図が書いてありますが、グリュックさんの細別予測表をグラフに直しますと、ABのBの、識別力の大きい場合、つまり山の峰が大きく分れている場合に当るような分布をしております。それに対しまして、もう一つ、予測表のファクターの選び方が非常に下手でありますと、参考図例のAのように、山の峰が両方合わさってしまいまして、両方が識別できない、こういうことになります。そこで、予測というのはどういうようにして行うかというと、まん中の二五〇点というところに縦の垂線を置いてやってみますと、縦の垂線から右側に入るのが大体において将来非行に陥るべき少年、陥る確率の非常に大なる少年、こういうことになります。二五〇点の垂線から左の側にある少年は、大体において将来善良な少年になるような傾向を持っておる。こういうように判断するわけであります。ところが、もちろんこの予測に対して誤差を伴います。すなわち、このグラフで申しますと、右側に雨の降ったような点線の斜線でしるしをつけたところがございますが、これが誤差に当るのでありまして、これは、二五〇点以上の点数を持った少年でありますが、現実には、将来善良な少年になったというような少年、この群は予測の失敗した面積でございます。それから逆に、今度二五〇点以下のものが全部善良な少年になるかと思いきや、その中に実斜線を施したしま目のようなものがございますが、これが現実には非行少年であるということで、もちろん若干の誤差はございますけれども、大体において二五〇点をこえるものは将来犯罪者になりやすい、二五〇点を下る者は将来善良な少年になりやすいというように判断いたします。その大体の予測率というのは八五%ぐらいは当るということがこのグラフから推察されるのであります。これは要するに、ボストンの少年をサンプルにとっての図でありますから、これをほかの町の少年や、あるいは国籍の違う、たとえば日本の少年群に当てはめた場合、そのまま当てはまるかどうかは重大問題でございます。
 そこで、こういう犯罪予測表というのができますと、検定表というそのためしをやるわけであります。その一つのためしは、いわゆるめくらテストというやつでございまして、まず実験者には、ピック・アップしております五十名なら五十名の犯罪少年と、五十名の善良な少年との記録を実験者に渡すわけであります。そうして現在、それらが善良になったか、あるいは犯罪少年になったかを隠しておいて、そうしてその幼年時代の記録だけをもとにして、この少年はおそらく犯罪者になる、この少年は善良な者になるという判断をして、その結果を現在わかっている結果に照合するわけであります。その結果、果して何%このグリュック予測表が予測率を持っているかということを検定する、こういうやり方をするわけであります。その検定例がこの資料の二十ページにございます。二十ページの第六に、「アメリカにおけるグリュック予測表の検定成績」という欄がございますが、百名の少年を対象といたしまして、その百名の中には、八十名の非行のない少年と、それから非行のあった者二十名を含んでおったのでありますが、これを実際にはグリュックさんには隠しておきます。そうしてその幼年時代の記録だけをグリュックさんに与えて、この八十名と二十名をどれだけうまく選び分けることができるかをやらしたわけです。そうしてグリュック予測表に従えば、二五〇点未満の者のうち、非行のない者は七十三人おりました。非行のあった者で二五〇点未満の者が二名ございました。それで、その二名というのが、予測の誤差になるわけであります。それから二五〇点以上の者が、これは元来グリュック予測表によりますというと、全部非行少年になるはずでありますけれども、その中にも非行のない者が七名おりました。それから非行のあった者が十八名でありまして、百名中、七プラス二、つまり九名というのが予測の失敗でありましたが、九十一名はこれを見事当てたということになったわけであります。
 こういう実験をいたしますと、非常に老練なケース・ワーカー、あるいは保護観察官は、大いに憤慨いたしまして、そういう機械的な予測方法によらなくても、われわれの霊妙な直感によって予測してみせるということで、それならやってごらんなさいというので、同じような資料を渡して予測をさせたのが、その下の表でございます。それで委員会ナンバー・ワン、これは大いにいきまきまして――同じ資料を使って、グリュックさんの方は、下の予測を使ってわずか二日くらいで上の結果を出したのですが、第一委員会は、九十五名の対象人員について、二週間もかかって、ああでもない、こうでもないと大議論の結果、正しく予測したのは六十二名、予測率は六五・三%というようなみじめな失敗の結果に終ったわけであります。これによりましても、いわゆる組織化された人間の経験というものは、単なる情緒的な直感よりもはるかに科学的であり、また確率を持っているということのりっぱな証明になるのでございます。ところが、これらはいずれも、アメリカにおきまする予測表の検定でございまして、このアメリカに成立した犯罪予測表というものを日本に持って参りまして、日本の少年たちに当てはめた場合に、果して何%当るであろうか、これがまさに重大問題なのでありまして、われわれは、えてして外国製の理論をそのままわが国の問題に当てはめてそれを分析しようとするという大きなあやまちを犯しているのでありますが、問題は、このグリュック予測表が果してわが国の国情に適するかということをこれから研究していただかなければならないのであります。
 それで二十一ページには、「館澤調査官の研究」というのがございます。これは館澤さんという非常に篤志家の方がございまして、グリュック博士の研究は非常におもしろい、それを一つ日本の盛岡市の少年に当てはめてみたならば、どういうふうになるだろうかということを考えまして、非常にサンプルの数は少いのでございますけれども、六十名足らずの人員につきましてグリュック予測表を当てはめてみたのでございます。そういたしますと、グリュック博士が非常に重要であるとされた、少年に対する父の愛情、少年に対する母の愛情、そういったようなものが、非常に日本においても、ある程度の予測因子として役に立つ。そのほか、グリュックさんは、あまり重要だと言わなかったけれども、日本においては、父親の職業という因子が、犯罪予測因子として大いに役に立つ、アメリカでは、あまりこれは重要であるとはされなかったのでございますけれども、父の職業という要素をさらに加えたならば、グリュック予測表は、日本の社会に適用されるように改めることができるであろうということを示唆したわけでございます。
 そこで館澤氏の調査結果が、どういうような結果になったかということは、二十二ページ及び二十三ページに書いてございまして、これをお読みになればわかるのでございますけれども、これをわかりやすすくるために、二十四ページに「館澤氏による予測表のグラフ」を掲げておきました。二十四ページの表を見ますと、一目瞭然でございまして、確かに犯罪少年は、二百五十点を境といたしまして、右側に高く盛り上るような分布をしている。それから善良な少年は、二百五十点を境として、左に盛り上るような分布をしている。すなわち二百五十点を境といたしまして、この右側にあるものは、一応非行少年になりそうな者、二百五十点を境として左側にあるものは、一応善良少年になりそうな者という判断をいたしますならば、その誤差は非常に少いということでございまして、その誤差を数学的に計算いたしますと、八九・〇二%という、ほとんど九〇%の適中率でございます。このグリュック博士の犯罪予測の研究というのは、今や世界的な傾向となって参りまして、最近グリュック博士からの通信によりますと、フランスのストラスブールの大学におきましても、同様な実験を行なって、その結果九二%の適中率を示した、こういうことでございます。
 実は、当法務省におきましても、昨年度から、グリュックの予測表を日本の少年犯罪者に当てはめて、何%これが当てはまるかを検定する実験を開始したのでございます。もちろん大蔵当局は、必ずしもこの実験に同情的でございませんでして、わが方が三百万円ばかりの予算を請求したのに対しまして、わずか三十万円の予算措置をいたしましたので、私どもは、結局手弁当で、千葉の星華学園あるいは赤城少年院に行きまして、わずか三十五例の少年を調査しておりますうちに、資金切れになりまして、今、一頓挫しておるのでございますけれども、一策を案じまして、こちらに森田先生もいらっしゃいますが、家庭裁判所の調査官の方が全国に散らばっておりまして、これらの方は少年と絶えず接触しておられますので、これらの方々を通じて個別的な調査を依頼しまして、それらを総合いたしましたところ、七十例のものが集まったのでございます。七十例というと、かなりこれは統計学的にも意味のある数字でございます。それを今、館澤さんが一生懸命集計しておりますけれども、きのう電話をかけて聞いたところによりますと、この七十例中グリュック犯罪予測表を使いますと九二%は十分これを予測できた、従って九二%は事前に治療を施しますならば、犯罪者に陥らなくて済んだということが言えたのではなかろうかということになるのであります。で、早期発見をいたしましても、これに対する適当な治療方法がなければ、もちろん何らの意味もないのでありまして、一つの宿命論にほかならないのであります。この少年はやがて将来非行者になるであろう、それを黙って見ておって、非行者になった、やあ、当ったと言ったのでは、これは非常に非人道的でございますけれども、これは十分治療方法があるのでありまして、たとえばその犯罪者の性格が極度に内攻的である、たとえば人づき合いが非常に悪くて、そうしてその犯罪性が内にこもって参りまして、やがて爆発的に発散するといったような、たとえば小松川女高生殺しのような場合でありますと、たとえばその内攻性を緩和するように友だちを作ってやる、あるいは先生が絶えずそれを優しく指導してやる、あるいは野球のようなスポーツを教えて、戸外で運動するように習慣をつける、そういうようなほんのささやかな生活指導が、その少年の将来を大きく左右いたしまして、やがて固定的な犯罪者になるのを防ぐことができるのだと思います。
 ここで非常に重要なことは、犯罪予防というものは、今や抽象的な議論の段階ではなくして実践の段階に来ておる、そうして現にアメリカで発達いたしましたグリュック方式が九二%もの適中率を持っているというならば、それを日本的に修正いたしまして、わが国民性に合ったような予測表を一刻も早く確立いたしまして、それによって、少くとも一度家庭裁判所の門をくぐった少年は再び犯罪に陥らないように、もし犯罪性向が非常に高い場合には、これに集中的に治療手段を講ずるということによって、非常に国費を節約しながら犯罪を抜本的に予防できるのではなかろうか。その意味におきまして、当法務省におきましては、来年度、総合刑事政策研究所というものを設立する計画を立てまして、その研究所におきましては、従来の刑事学の基礎理論を研究すると同時に、今申しました具体的な犯罪予防の方策というものを科学的に研究いたしまして、それを家庭裁判所の審判あるいは保護観察の実務あるいは仮釈放の実務というような実務に適用いたしますならば、数年後には犯罪者を半減させることも決して夢ではない。現に、イリノイ州は二十年間に犯罪者を半減させることに成功した。これに対して若干の費用を投ずることを惜しむものではない。かように確信するのであります。
 大へん長くなりました。
○委員長(野本品吉君) 速記やめて。
○委員長(野本品吉君) 速記始めて。
○政府委員(深見吉之助君) いろいろとお話をいただきましたのでございますが、青少年問題は非常に複雑でございまして、これを、総合的に施策を施していくということにつきまして、中央青少年問題協議会の方において、各省と連絡をしながら施策を進めて参っておる次第でございます。御承知の通りに、協議会は本年の七月に事務局を設置いたしまして、その後、事務局におきましていろいろと関係省庁と連絡をとっておる次第でございまして、最近の動き方といたしましては、大体月に一回くらい全体の協議会を開催し、その間に、専門委員会あるいは幹事会、連絡委員の会議等を開きまして、関係各省との連絡を密接にいたしておる次第でございます。最近の仕事といたしましては、各地方におけるブロック的な関係者の会議を開きまして、地方の青少年問題についての研究、あるいはこれの総合的な連絡調整といったようなことをいたして参っております。また、全国の青少年の代表者を集めまして、これらの意見を聞いて、今後の青少年問題の施策に反映さす、また、青少年の自覚を促す会といったようなことをやっております。また、事務局ができました早々には、深夜喫茶の問題が非常に世間を騒がしまして、これの対策を、中央青少年問題協議会としてもまた地方の青少年問題協議会といたしましても取り上げまして、御承知の通りに、今国会に、警察庁の方から深夜喫茶の取締りを風俗営業取締法の一部改正案として御提出になっておるというような関係を持っております。しかしながら、われわれは、過去におきましては、青少年問題協議会の設置の経過からいたしまして、主として非行対策と申しますか、ときどきの現象に現われました青少年の非行に対する当面の処置というものを、各省とともにいたして参るところに重点を置いてきたやに考えられるのでありますが、今日におきましては、今後の日本の青少年をいかに健全に育成していくかということを同時に考えなければならない、いわば一つの方向を転換し、また新しく青少年全体の意欲、意気を盛り上げる時期に到達したと思いますので、今後におきましては、青少年健全育成のための方策と当面の青少年非行対策の問題と、この両方を強く打ち出すように中央青少年問題協議会といたしましては各省と連絡をして推進していく考えでございます。御承知の通りに中央青少年問題協議会――中青協と言わしていただきますが、中青協といたしましては、実施権は現在は持っておりませんので、各省の行いますところを連絡調整する機関となっております。そのゆえに、明年度におきましても、主として各省の行います施策にわれわれの方からいろいろ注文をつけたり、またそれを連絡調整をしたりいたしておる状況でございます。
 先ほども来年度予算についての話もせよ、こういうことでございましたので、来年度予算を各省の関係におきまして中青協がいかように調整しておるかということを申し上げたいと存じます。大体目安を健全育成とそれから非行対策と、こういう二つに分けまして、健全対策の方途といたしましては、青少年団体の健全な団体活動の育成というものに重点を置きまして、文部省、労働省等においてこれの予算化をしてもらっております。また団体活動その他青少年の日常生活を指導するための指導者の養成ということが大きな問題でありまして、これが戦後指導者の獲得といったような点が非常におくれておりますので、これは文部省、厚生省等と連絡をいたしまして指導者の養成機関を充実してもらい、またこれに要する予算を獲得するようにいたしております。それの最も具体的な施設といたしまして、昨年度より国が助成をいたしております、各都道府県に青年の家を設置いたしまして、これを足場として青少年の団体訓練並びに指導者の養成をしてもらう、こういうことを考えております。本年度におきましては、文部省に六千万円、運輸省に四千万円の費用を、青年の家及びユース・ホステルの設置費として同じ系統の予算を得ておりますが、明年度におきましても、これを倍あるいは三倍の費用として各地に少くとも四十カ所くらいの青年の家を作りたい。かように考えております。また勤労青少年、特に中小企業の勤労青少年対策といたしまして、中小企業の集中地区におきまして、勤労青少年のホームというようなものを作って、ここで特に週休制が実施されました暁の休日対策というようなものを考えていかなければならぬと考えております。また農村の次三男対策といたしまして、国土開発青年隊という意味で、農山村青年建設隊とか、あるいは漁村青年建設班等の、また産業開発青年隊、こういうような名称を持ちました青年活動を建設省並びに農林省を通じて展開してもらっておるわけでございます。こういう点を明年度の青少年対策として強力に推進し、また年少者の指導、健全対策といたしましては厚生省において児童館、児童遊園、あるいは児童公園といったような健全な児童に対する施設を設けるように予算を要求しております。
 不良対策といたしましては、先ほど来お話がございましたが環境の整備、なかんずく映画、出版物等のいわゆるマス・コミの不良対策というものが非常に重点でございますので、これらに対しましてはマス・コミ倫理懇談会等を通じて、また出版協会等を通じまして、それぞれ対策を協議をいたしておりますが、特に映画につきましては不良映画の防止ということと並行いたしまして、優良な映画を今後子供たちに与えるということもきわめて重要であると思いますので、文部省の関係方面をして、さような予算も計上させておる次第でございます。なお先ほど法務省の方からグリュックの調査についてのお話がございましたが、その節ございました総合刑事対策研究所の設置というようなこともきわめて重要であり、また警察の方で、警察庁で考えられておりますところの非行防止対策としての警察の科学研究所の設置といったような問題も青少年問題全体の問題として、特に非行防止問題として重要であると考えておりますので、中青協といたしましてもこれを取り上げて促進する、こういうことを考えておるのであります。要するに、中青協といたしましては、各省の行います青少年対策の全体を眺めまして、その中から最も必要であるというものを協議の上抽出いたしまして、これをバック・アップし、大いに活動をしていただき、かつ、これを各地方の青少年問題協議会の方に流し、末端の活動を十分にやってもらう、こういうような方針をもって現在並びに今後ともやっていこうと考えておる次第でございます。
 簡単でございますが……。
○委員長(野本品吉君) それでは今までの説明に対しまして、さらに伺っておきたいような点がございましたら、この際短時間に質問をしていただきたいと思います。
 速記をとめて。
○委員長(野本品吉君) 速記を始めて。
 それでは本日はこれにて説明を終りましたが、次回は十月二十八日火曜日午前十時から司法試験法一部改正案に対する質疑を行いたいと思います。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時二十四分散会