第031回国会 予算委員会 第19号
昭和三十四年三月三十一日(火曜日)
   午前十時四十一分開会
  ―――――――――――――
  委員の異動
本日委員勝俣稔君、横山フク君、後藤
義隆君、吉江勝保君、松永忠二君、平
林剛君、田中一君及び曾祢益君辞任に
つき、その補欠として川村松助君、小
林武治君、大沢雄一君、平島敏夫君、
戸叶武君、羽生三七君、荒木正三郎君
及び吉田法晴君を議長において指名し
た。
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     木暮武太夫君
   理事
           小柳 牧衞君
           近藤 鶴代君
           塩見 俊二君
           西田 信一君
           堀木 鎌三君
           鈴木  強君
           松浦 清一君
           矢嶋 三義君
           森 八三一君
   委員
           石坂 豊一君
           泉山 三六君
           植竹 春彦君
           大沢 雄一君
           大谷 贇雄君
           川口爲五郎君
           川村 松助君
           古池 信三君
           紅露 みつ君
           小林 武治君
           小山邦太郎君
           迫水 久常君
           笹森 順造君
           下條 康麿君
           館  哲二君
           鶴見 祐輔君
           苫米地英俊君
           吉江 勝保君
           荒木正三郎君
           岡田 宗司君
           片岡 文重君
           北村  暢君
           栗山 良夫君
           坂本  昭君
           高田なほ子君
           戸叶  武君
           中村 正雄君
           羽生 三七君
           山田 節男君
           吉田 法晴君
           加賀山之雄君
           田村 文吉君
           千田  正君
           市川 房枝君
  国務大臣
   内閣総理大臣  岸  信介君
   法 務 大 臣 愛知 揆一君
   外 務 大 臣 藤山愛一郎君
   大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君
   文 部 大 臣 橋本 龍伍君
   厚 生 大 臣 坂田 道太君
   農 林 大 臣 三浦 一雄君
   通商産業大臣  高碕達之助君
   郵 政 大 臣 寺尾  豊君
   労 働 大 臣 倉石 忠雄君
   建 設 大 臣 遠藤 三郎君
   国 務 大 臣 青木  正君
   国 務 大 臣 伊能繁次郎君
   国 務 大 臣 世耕 弘一君
  国 務 大 臣 山口喜久一郎君
  政府委員
   内閣官房長官  赤城 宗徳君
   法制局長官   林  修三君
   総理府総務長官 松野 頼三君
   大蔵省主計局長 石原 周夫君
   大蔵省主税局長 原  純夫君
   運輸政務次官  中馬 辰猪君
  国立国会図書館側
   館     長 金森徳次郎君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○昭和三十四年度一般会計予算(内閣
 提出、衆議院送付)
○昭和三十四年度特別会計予算(内閣
 提出、衆議院送付)
○昭和三十四年度政府関係機関予算
 (内閣提出、衆議院送付)
  ―――――――――――――
○委員長(木暮武太夫君) ただいまから委員会を開会いたします。
 まず、委員の変更について御報告いたします。本日勝俣稔君、平林剛君が辞任し、その補欠として川村松助君、羽生三七君が選任せられました。
  ―――――――――――――
○委員長(木暮武太夫君) これより昭和三十四年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算を一括して議題といたします。
 前回に引き続いて質疑を行います。笹森順造君。
○笹森順造君 私は日中関係につきまして、おもに総理並びに外相にお尋ねをいたしまして、さらにそののちに漁業問題について農林大臣にお尋ねをしたいと思います。
 先般来、衆議院あるいは参議院におきまして、日中問題に関する質疑応答が行われておりまして、政府の答弁は、私からいたしましては、おおむね妥当適切であったと思っております。しかるところ、野党の質問者は必ずしもこれを納得しておらないというような印象も受けておるのであります。従いまして、この際それらの重要なる根本の諸点だけに触れて明確にしていただく必要があると感ずるわけでございます。
 そこで第一に、このことに触れて申し上げたいことは、日本が昭和二十年の八月に敗戦となりまして、中国においては、日本軍は当時の蒋介石政権によって武装の解除を行なわれておることは御承知の通りであります。そうして昭和二十七年に日本の政府は中華民国との間に平和条約を締結しておるわけであります。そういたしまして、蒋政権と平和条約を締結いたしましたことをもって、日本の政府は全中国との戦争状態が終了したことを宣言しておるのであります。従いまして、日本といたしましては全中国のどことも、その以後に戦争状態はないものと判断をしているのは、これは吉田内閣以来の日本の建前だと信じております。この点を岸総理はどう御判断になっておるか、まずお尋ねをいたしたいと思います。
○国務大臣(岸信介君) 御質問のように、日本と中国との関係につきましては、日華平和条約によりまして、全面的に平和が結ばれたものと、従来政府がとってきております吉田内閣以来の考えが正しいものであると、かように考えております。
○笹森順造君 そこで、中共政府は戦後に台頭した勢力でありまして、日本と中国との間には戦争が終ったのちの新らしい勢力であると言わなければなりません。従いまして、日本との間に相互に中共とは敵国になったことはない。日本は中共を敵としたこともなければ、中共は日本の敵でもないというのが、これは歴史的な経過の原則であると私は信じます。なぜならば、中華人民共和国中央人民政府の発足は終戦後満四年以上経ました昭和二十四年の十月でございます。しかるにもかかわらず、中共側では日本とまだ戦争状態が終っていないというようなことの言動をときどき聞くのであります。あるいはこういう議論が日本の国内においても、野党の中においてもたびたび発言せられることがございまするので、私はここに問題の困難性と誤まりがあると判断いたしまするが、この点の明確な御判断を岸首相から承わりたいと思います。
○国務大臣(岸信介君) 先ほどお答え申し上げましたように、中国全体を代表する正当な政府として中華民国との間に平和条約を締結をいたしました。全中国との間の平和関係がこれによってでき上った、かように私どもは考えておる。従って中共政府に対してわれわれが敵視しておるとか、あるいは戦争状態が残っておるというふうには考えておりません。
○笹森順造君 そこで問題は明確になったのでありまするが、戦後に新しく起りました勢力を、これを承認するか、あるいはまたそれと条約を結ぶかという問題が残ってくるかと思います。戦後において新しい勢力として台頭いたしましたのは、世界中各地にあるわけでございまするが、それがまだ国交ができておらない、条約ができておらないから、みんなこれは敵だという通念がもしもありまするならば、これは野蛮時代の通念であって、現代の国際法の上から、あるいは国際通念からは間違ったものだと私は判断するのであります。この点に今までの困難性があるのではなかろうか。そこでこの新しく台頭したのは、必ずしも中共に限ったわけではございませんが、これをどういう場合に原則的にこれを承認し、あるいはまた条約を締結するかということについて、これをお尋ねを申し上げなければならない。私の判断で申しまするならば、一つの勢力が起りました場合に、その勢力が主張いたしますところの領土全体において領土権を十分に発動し得る状態が必要、すなわちその領土内におけるすべての安定勢力でなければならない。もしもその間にお互いに紛争がありますものを残しておりまする場合には、これは承認する上において非常な困難性があると私は考える。このことがなければ、これは承認する一つの要素を欠くものでなかろうかと私は思うのであります。
 また第二には、そういう勢力を、これを承認するための国との間に利害が全く一致するということが必要である。もしもその間に利害の一致を見ないならば、その間はやはりその承認はしばらく差し控えて、情勢を見るというのが当然であろうかと思います。
 第三には、そういう国が承認されるには、相当な国際的な世論が起って、これを承認するという態勢がやはり国際理論上必要でなければならない、こういうものが備わらない間は、これはなかなか承認できないのではなかろうか、これは今後も他にも起るべき問題でありますので、私はそう判断しておりまするが、岸首相はどうお考えなさるか。そのほかに今後どこかの新しい勢力が台頭した場合に、これを承認し、あるいはまた条約を結ぶ上においての原則的なことをどうお考えになっているかを一応お尋ね申し上げたいと思います。
○国務大臣(岸信介君) ある新しい勢力がある地域を支配しているという状態を承認し、そうしてこれとの間に国交を新しく作り上げていく、正常化していくという問題につきましては、いろいろなことを検討する必要があると思います。今おあげになりましたように、その勢力が、一定の地域において安定した勢力として政権が安定しておるということも大事な要素でありましょう。またおあげになりましたように、日本が承認する場合におきまして、日本との間に十分な理解と相互信頼の基礎ができるような状態にある、すなわち十分に両方のたとえ政治形態や思想が違っておりましても、お互いがお互いの立場を尊重し理解し合って、両国の間に国交を正常化することが両国の利益であり、平和のために適当であるというような条件も必要であるし、また今日におきましては、国際社会において国際連合というふうな世界的な機構のもとに世界の秩序と平和を保っていく、従ってこの国際の一員として、十分に義務とその使命を果し得るというふうに、国際的においても認められるというような条件が備わってくる必要があるだろう、こういう各般のことを十分に考えて、そうしてそれとの間の国交の正常化を承認するという問題を決定することになるように思います。
○笹森順造君 ただいまのお答えで基本的な態度が明瞭になったと思いますが、それでは中共を敵視しておるのではないが、しかし情勢の判断において、これはまだ時期ではない、こういう工合の結論が当然の理論の帰結としてここに現われてくるように考えられまするが、この点はいかがでございまするか。
○国務大臣(岸信介君) 中華人民共和国が中国大陸における政権として、そうして中国大陸を支配し、ここにおける安定した一つの政権であるという事実は、年とともに私は強固になってきておるというこの事実は無視はできないと思います。しかしながら、承認するとか、国交を正常化する上におきましては、先ほど申し上げましたように、ただそれだけでは直ちにその時期が到来しておると、こういうわけにはいかないので、国際的の関係をいろいろ調整するとか、あるいは両国の間におきまして十分に理解と信頼の上に立っての友好関係を作り上げようというような情勢に到達しておることが必要である。私どもが中華人民共和国に対して今直ちに政治的な関係を開くにはまだ至っておらないと申し上げておるのは、そういう国際的の関係や、両国の理解の問題等について、さらに誠実を積み上げていく必要がある、こういうふうに考えるからでございます。
○笹森順造君 中国の張爰若と日本社会党の淺沼稻次郎両氏の間の共同コミュニケにおきまして、その一節に「直ちに正式かつ全面的に国交回復問題について交渉を行う段階に入るべきであると確認した。」とございます。私はここに大きな疑問を持つのであります。なぜならば、私から言わせますると、国交回復ということはこれは不適当な言葉であると思う。なぜならば、先ほど来ここでお話がございましたように、そのできた勢力は後にできた勢力であって、戦争前にあった国と戦争したために国交が断絶したならば、回復ということが言われましょう。しかしながら、戦争後にできた国がみずから国交を回復するのだというような言葉を用いまする思想の根底に、私どもは多くの疑問を持たなければならぬのであります。従いまして、これは新しくそういう国と国交を結ぶのである、新しく条約を結ぶのである、こういう観念ならば、私は一応の理論的なそこに考え方の条理が一貫すると思うのでございます。そこで、日本が自主的に判断をいたしまして、それを一つの国として認め、尊重して条約を結ぶかいなかということを決すべきである。今後そういう問題が起っても、「国交の回復」という言葉を中共でも申し、あるいはまた野党が申しまするならば、これは条理に反するものだと私には判断されまするが、いかがでありましょうか。岸総理のお考えを伺いたいと思います。
○国務大臣(岸信介君) 先ほど来の質疑応答で明らかのように、日本としては中国に対しては日華平和条約でもって全面的に平和の状態、国交ができておるわけで、新しい今中国大陸におけるところの政権を承認するかどうか、国交をこの間に維持するかどうかという問題であると思います。今の共同声明の「国交回復」という言葉を用いられている基礎におきましては、あるいは笹森委員のお話のような思想的な考え方があるかと思いまするが、また通俗的にいいますれば、要するに私どもの今言ったような関係を「国交回復」という言葉で示されているとも解釈できるのでありますが、ともかく理論的構成からいえば、先ほどからの質疑応答のように、新しくできた国家と新しく国交を開くという考え方をすることが、日華の間におきましては日華平和条約の締結以来の日本の経緯にかんがみて、正しいと思います。
○笹森順造君 私のお尋ねいたしましたのは、法理論のようなことになりましたので、政策面において今総理の申されたことは私も同様に適当だと思います。つまり法理に基かない政策は応応にして誤まつていますし、政策を持たない法理論は空疎なものになりまするから、ただいまのお答えは私は適当だと考えます。
 そこで、問題の核心に触れて少しお尋ねをいたしたいのでありますが、また先ほどの共同コミュニケにおきまして、三原則を実行しなければならないことを確認した、ということを述べております。ところが、私はこの三原則なるものをよく検討いたしてみますると、私なりに、これは全然条理の通っておらない、これこそ空疎な理論に終始しておるものと判断される。そのことを私もう少し掘り下げて明確にしていただきたいと思います。
 第一に、中国の敵視政策停止ということをあげておりまするが、それは日本とアメリカとの関係を意味しており、共同コミュニケにおきまして、日米安全保障体制を紛砕することだと、こう申しております。そうして中国及びソ連と相互の不可侵協定を結べ、こういうことを申している。ところが、この日米安全保障条約を締結いたしましたのは、これは中共を敵視するがゆえにやったものとは私には考えられない。御承知の通りに、サンフランシスコの平和条約と引続き行われましたその当時の状況を考えてみますると、今になってこの安保条約がそのまま継承せられてあることによって、あるいはこれに対する改定を考えることにおいて、中共を敵視するのが、それが目当てであるからという考え方はとんでもない考え方で、これは日本の従来岸内閣以前から継続された日本の一つの態度でありますので、これをもって決して日本が中共を敵視するがゆえに、この安全保障条約を継続しており、あるいは発足したときからそれをやったものでもなければ、それを継続するということもそれが決して目的ではない。これこそ完全に日本が自衛のためにやっておるものであり、この安全保障条約は、ある国を仮装敵とした、あるいは日本を仮装敵とした中ソ条約とは根本的にその意義を異にするので、日本が単に自国を防衛するための、自衛のためのこれは条約であって、決して、特に中共を目ざして敵視したところのこれは政策でないと私は確信しておるのでありまするが、しかし相手はそう考えておらない。その点の考えの食い違いについて総理はどう御判断なさっておられるか、明確にさしていただきたいと思います。
○国務大臣(岸信介君) いわゆる三原則の第一である敵視政策を改めること、こういうことでありますが、私どもは従来中国に対して、いかなる意味においても敵視政策をとった考えもございませんし、またそういうことを全然考えておらないのであります。ただこの内容のうちに、日米安保条約を結んでおるということが、これが果して敵視政策という内容であるかどうかという点に関しましても、訪中国の方にもその意向を確かめたのでありますが、ごく明確な御回答はなかったのであります。これを直ちにやめろというようなことはもちろん中国側で考えているわけじゃなしに、ゆとりのある考えであって、直ちにこれをもって日本が敵視政策をとっているんだと、従って敵視政策をとらないことというために安保条約を廃棄しなければならぬというまで、突き詰めて考える必要はないんだというふうな御意見も訪中国の方からあったのであります。しかし、また全然安保条約というものを無視もできないというふうな意見もありまして、その点は明瞭でなかったのであります。しかし、あの共同声明全体を読んでみますると、とにかく安保条約を廃棄するということがやはり非常な大きな題目になっておりまして、こういうことがやはり三原則の精神に反しているんだというふうなことが共同声明の趣旨であろうと思うのです。私は、安保条約なるものができましたのは、言うまでもなく、今おあげになりました通り平和条約と同時にできたわけであります。で、決して特定の国を仮装敵国としてこれに対する考え方じゃなくて、あくまでも日本の自衛を全うするための安全保障の条約であることは御指摘の通りでございます。従って、これが敵視政策であるとか、またこういうことが私の内閣よりもずっと前にできておることから申しまして、その後ずっと引き続いて積み上げ方式の経済交流ができておったのでありますから、急に昨年来敵視政策ということが非常に大きく取り上げられたなにから言うと、この安保条約を敵視政策の一つに入れるということも適当でない。しかし共同声明を見るというと、安保条約というものがやはり敵視政策の内容であるような点もございまするが少くともこういう安全保障条約というようなものは、日本が自主的に日本の自衛のためにやっておるものである。これは全く日本の自主独立の立場からやっておるものであるということは、前提としてわれわれはどこへも主張できる。従って、これが特定の国に対する敵視政策ではないということはわれわれの確信でございます。
○笹森順造君 その次の問題として取り扱われておりまするものは、二つの中国を作る陰謀に参加してはならないということでございます。これは先ほど来も話のありましたように、まことに条理の合わない、歴史のこまをはずしたこれはものの言い方であろうかと考えられます。すなわち、戦争の終りました当時の相手の中国の国権は蒋介石政府であり、引き続き平和条約を締結した後のその相手は蒋介石政府であり、これと今までそのまま国交がかわされておるのである。ところがそれを認めておることが、これは敵視政策であるということであるならば、歴史の事実を無視したものとこれは考えなければならない。こういう意味において、将来どういう工合に国際の情勢が変っていく、あるいは中共と台湾政府との状況が推移するかということは、これは歴史が決定することであって、その責任を日本に持ってき、しかもまた特に岸政権が、かるがゆえに敵視政策をとっているのだということの判断が非常な論理の矛盾であると私には考えられる。このことを日本の野党が一緒になって、それと力をあわせてこれを押し進めようということは、私としてはこれは日本の歴史の上からも、あるいは国際信義の過程からいっても容易に承服することはできない。でありまするから、いずれにしてもこれが向うの言うような二つの中国を作る陰謀であるというようなことのその理論の条理が不徹底であり、しかもまた、それがむしろ私から言えば間違った議論であるとさえ考えられるのでございますが、これについての岸総理のお考えをもう一回明確にしていただきたいと思います。
○国務大臣(岸信介君) 日本は、先ほどからお答え申し上げているように中華民国との間に、これを中国全体を代表する政府として、これとの間に平和条約を結んでいて、厳として日華平和条約というものが両国の友好親善関係の基礎をなしておるわけであります。従って、われわれがそういう沿革と正当にでき上った日華平和条約というものを完全に守り、これによって友好関係を進めていくということは、国際法の上から申しましても国際信義の上から申しましても、これは当然の日本国としての私は義務であると思うのであります。従って、そういう条約をわれわれが誠意をもってこれを実行するということが、直ちに中華人民共和国に対する敵視政策や、あるいは二つの中国を認める陰謀であるというふうに解釈するということは、私はこれは非常に事実を曲げて、しいて、そういうような意見になるのであって、事の成り行きと国際条理というものを素直に解釈すれば、当然のことであるとわれわれは思うのであります。
○笹森順造君 共同コミュニケの第三とでも申しましょうか、日中両国の正常関係の回復を妨げず、それ相応の措置をとれということが言われておるようであります。これはいろいろな内容のある、含みのある言葉のように察せられるのでありまするが、国連との関係のごときも、その中の重要な一つであろうと思います。つまり国交をそこに新たに結ぶことであるとか、あるいは国連加入に関して日本がどういう態度をとるべきかというようなことなぞは、将来の問題にすべきことかと思います。しかし現に日本が国連に入りましたときに、国連自体が中共に対してとっておった態度というものを、日本が国連に加入したがゆえに日本の考えによって変えられたことはないと私は信じております。従いまして、国連において中共に対しておりまするところの態度それ自体が、つまり日本の責任として中共が満足しないものを日本に向けてくるということは、私はこれは非常な迷惑な話だと考えております。つまり、もっと明確に申しまするならば、中共は侵略の国であるというようなことがあの朝鮮の南北戦争時代から言われておったわけであります。そういう態度が国連の一面の考え方になってなかなか中共の承認ということはむずかしくなっている。ただそれを、日本が敵視しているから――そういう工合に責任をそこに負わせているということは迷惑千万であって、国連が漸次歴史の過程に従って、あるいはまた中共の態度がいろいろと変ってくる推移において実績を示すことによって、そういうことが過去のことであって、喜んで国連に加入せしめられるという、そういう国際の世論が起ったというような場合には、これは当然いろいろとまた情勢が変ってくるでありましょう。この国連のそういう原則的なことを日本が同調しておるということが、これが敵視政策というなら、これも迷惑な話、こういうことを私は考えておりまするが、この点について、岸総理はどうお考えになるか、お尋ねしたいと思います。
○国務大臣(岸信介君) 中華人民共和国のあの国連加盟の問題につきましては、国連がそれをどういうふうに扱うかということは、国連加盟者の間におきまして、できるかぎりいろいろとこれらの問題点についての討議が行われて、過去における中共に対する国連の決議等もございますし、またその後における中国大陸における中華人民共和国の安定勢力としての立場がだんだん作り上げられていっておるというこの事実もありまして、なお国連としては、この問題について最後的ないわゆる加盟を認めるというところまでは行っておらないことは御承知の通りであります。私はこれにはいろいろのやはり歴史的な問題もあり、同時に中華人民共和国に対する各国の認識や、あるいは国際社会においての中華人民共和国に対する評価と言いますかが、これの加盟を認めるまでには相当まだ距離があるというのが現実の問題であると思います。私どもは、この国際的な関係がやはりある程度調整されなければ、なかなかこの加盟問題というものは解決できないものであると従来も考えておりますし、またそういう立場をとってきております。従って、今日の状況においてなお加盟が認められないし、日本もこの加盟を強く支持するというまでに至っておらないということが直ちに敵視政策であるというふうに考えられることは、私どもも非常に迷惑であると思います。私はこういうことはやはり国際の諸情勢を十分に見きわめた上において決定をすべき問題であると、現実に即して考えることは、決して非友好的な考え方ではない、当然のことである、かように思います。
○笹森順造君 以上三点で、政府の態度が明確になったと思いますし、また、いわゆる三原則なるものの理論の根底がすこぶる空疎のものであり、意味をなさないものであったということが私は感ぜられるのであります。従いまして、先ほどからのお話にもありましたように、たとえば一九五五年の周首相の、日台条約破棄は日中国交正常化開始の条件ではないと、あのときはそういうことを言っておったわけであります。従いまして、こういう思想は今急に変えられるべきものではなくて、そういう思想があるのだというような弾力性のあることを私どもは実は期待をしつつあり、また、そうあることによって初めて今後日中の関係が円滑に展開されていく希望が持たれるのではないかと思う。こういうところにもう一度考え直すようにする努力が、私としては野党にも努力をされるならば、そういう努力がむしろ必要であったので、それをそうでなく、向うの言いなりほうだいに三原則を押しつけられてきたような格好であることは、私としては非常に遺憾に考えておるわけであります。しかし、昨日の野党議員の発言等によりましても、相当弾力性があるものであるようなことをも考えられて、そこであるいは正常化談議をする場合についても、この政経分離論というものに対してもいろいろとまだ余裕があるのだということを言っておられるのが、私どもの一つの希望でもあろうかと思うので、そこで外務大臣は、何かそこに将来国交を開くという糸口でもあるならば、何か一つやってみようということがございまするならば、それをもう少しどういうことになればどういうことができるのだということを、たとえば今申しましたような誤解を解くということのために、どういうことであるならばどうするかというようなことがありましたならば、お答えを願いたいと思います。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 昨日、曾祢委員の言われましたように、弾力性があるという状況でありますれば、今の御質問のようにわれわれも十分何か考えていけるのではないかと思うのであります。そういう意味においてはこの国際情勢なり、あるいは両国の関係の面におきまして、今後機会がありますれば、適当な機会をつかんでいくというのが今日までの政府の態度でございます。また、今後もそういう条件のもとにおいてならばそうあるべきだと、こう考えております。それにつきましては、あるいはそうした日本の考え方を十分党自身が言うという必要もありましょうし、何かいろいろな機会がありましたならば、そうした説明をするチャンスをつかまえることも適当だと思うのであります。ただ問題はその意味で言われたような見込みがあるかないかということが、十分われわれもまだ了解いたしておりませんので、そういう点をもう少し調査してからいろいろ考えていきたい、こう思っております。
○笹森順造君 次に、漁業の問題について主として農林大臣にお答え願いたいと思います。
 申し上げますまでもなく、日本の置かれておりまする地理的環境なり歴史的事実なり、産業形態なりからいたしまして、水産業の重要性は私から申し上げるまでもなかろうと思います。特に戦後における日本経済の大きな問題がここにかかっておることと考えられます。それは特に日本人は漁業技術の面から見ても世界の最優秀なものであることは申し上げるまでもない、漁獲高等につきましても日本が断然リードしておるということは、これもまた私から申上げるまでもなかろうかと思います。そこで昨日も質問にお答えがあったようでありまするが、大体、日ソ漁業の問題あるいはまた日本とカナダとの漁業の関係、アメリカとの漁業の関係、特に大西洋上における今年開かれまするマグロ漁業の問題等について、大体における農林大臣の日本の水産業の大方針とでも申しましょうか、こういう点についてまず伺っておきたいと思います。
○国務大臣(三浦一雄君) わが国を取り巻くこの広大な海域におきまして、日ソ、日米カ等の漁業協定、そのほか太平洋等におきましても濠州方面にもこの問題があるわけでございまして、さらに近いところでは日韓の李ライン等の問題がございますので、これらの国際的なだんだん制約を受けて参っておる環境でございます。しかしながら、この海域における漁業の問題等につきましては、昨今の国際的情勢から考えましても、科学的な基礎に立ちまして、資源を保護しつつこれを利用する、こういう観点から国際的な協調を持つとともに進むという態度でなければならぬ、こう考えております。しかしながら、同時にわが国の特殊事情にかんがみまして、これらの環境制約を受けつつも相当な進出をいたしておるわけでございます。今お尋ねのマグロの問題でございますが、すでに日本におきましては、インド洋はもとより大西洋方面にまでだんだん進出しているような状況でございます。すなわち大西洋に至りましては、すでに日本の漁船は大西洋まで出まして、そうして操業いたしておって、イタリア方面にその陸揚げをして販売をいたしておる。さらにまた、中南米の方にまでこれがだんだん伸びてきているわけでございまして、これらは日本の進出に伴いまして、開拓と同時に、これに規制を加えつつ国際間の調整をいたして参りたい、こう考えております。しかしながら、幸いにもまだ大西洋方面の漁業上の問題につきましては、マグロに関しましてはいまだ調整を要するような事態は生じておりませんが、ちょうどお尋ねでございますから、若干説明を加えたいと思いますが、昭和三十四年度の目標といたしましては、イタリアに対しましてマグロ一万二千トン程度、それから対米につきましては、なお今後の問題でございますが、中継ぎをもちまして三万五千トン程度のマグロ等を供給いたしたい、こういうふうに進んでおります。御承知の通り、現在は冷凍マグロにおきまして大体約三万トン、本年からはさらにキワダマグロ等について三万トン程度の輸出を期待しておるわけでございますが、なかんずく、この西欧海域につきましては、水産庁の調査船の蒼鷹丸というのを派遣いたしまして、そして大西洋の新漁場の調査を行なっておるわけでございまして、これらが市場開拓の先駆となっておりまして、ただいま申し上げるような態勢のもとに、中南米方面につきましても漁場の開拓をする、こういうような状況でございます。なおお尋ねでございまするならば、詳細な計数等の説明は、水産庁長官をして説明させていただきたいと考えます。
○笹森順造君 ただいまの農林大臣の御説明は、水産業に対する重要性と、しかし漁獲に関する規制は、やはり保護、増殖等を考えてというふうなお話は、まことに適当なことであり、そうなければならないと考えます。
 そこで、その問題に関しまして非常な困難を感じておる点がございますが、今までは大体そういう原則的なことでいっておるのでありまするけれども、諸外国との関係において一番問題になりまするのは領海の問題でございます。つまり、領海侵犯という問題は、御承知の通りに日ソ漁業の間においても安全操業の問題としてしばしば論議された問題であり、今日まで多数の船があるいは拿捕され、多数の漁民が監禁されたというような事実、大きな損害をこれによって受けている。このことがやはり国として相当な配慮をし、相手国との間に十分なる条約なり了解なりなければ、日本が非常な被害をこうむるのであろうと、この点について私は非常な心配をするので、特にこの領海の問題に関して、海洋法に関するいろいろなことなり、あるいはまた国連の方にこの問題を提起するとか、あるいは国際裁判にこの問題を持っていって、この困難性を打開するとか、もっと正確に申しまするならば、従来、日本の三カイリ説をどこまでも堅持して、そしてむずかしい諸問題を排除しなければならないと、こう思うのでありますが、この問題に関しまして、特に外務大臣から御所見を加えていただいて、今の漁獲に関するいろいろな規制の問題はわかりましたけれども、また育成の問題はわかりましたけれども、そういう国際法の通念と合わない、日本の確信に対しまする反対なことをされておることに対する政府の配慮がぜひ必要だと思いまするので、これはぜひとも外務大臣と農林大臣との間に、この領海問題に対するはっきりとした日本の政府の態度なり、今後の御方針なりを、この際、明確にしておいていただきたいと思います。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 御承知のように、海洋法の会議が昨年行われたわけでありますが、九月に一だったと思います。九月に量りまして、領海の問題以外の問題は、大体、大筋において会議がまとまったわけでありまして、領海につきましては三カイリ説、六カイリ説あるいは十二カイリ説というような、いろいろな説が各国から出まして、まとまつておりません。日本は御承知のように三カイリ説を主張しておる国なのであります。従って、まだ十二カイリが国際上認められた領海であるということは言えないのであります。そういうように未決定のままになっておる問題でありまして、来年さらにこの問題について海洋法の会議が開かれることになろうかと思います。そうした決定がありまして国際的に一つの基準ができますまでは、どちらの主張が当を得て、どちらの主張が当を得ないかは言えないと思います。従いまして、日本の主張しております三カイリということも決して不当ではないとわれわれ思っております。従って、この問題につきまして、問題が近海漁業の問題について十二カイリ以上に入ることは不当であるというところまで、まだ国際的に言い切れる問題では私どもないと思っております。従って、そうした問題につきましては、われわれとしてできるだけ相手国側と話し合いをしまして、そうして円満裏に実際の漁業的な立場あるいは漁業者の生活の問題等を縷述いたしまして、そうして問題が円満に解決するように話し合いでもっていくことが一番適当だと思っております。が、しかしどうしてもそうした話し合いがつきません場合には、暫定的にでもこの問題についてある程度国際的な関係において処理してもらうということも適当なのではないかと、私ども現在の段階で考えつつございます。従って、こうした問題につきまして何か国際的な機関等に対して助力を求め、あるいはその判断を求めるということも、われわれやらなければならぬことではないかと、こう考えております。そういう意味において、ただいま近海操業の問題につきまして問題の解決が長引いておりますが、そうした段階にだんだん近づきつつあるのではないかというふうにわれわれとしては考えて、日本の主張をできるだけ生かして参るように努力して参りたいと、こういうふうに存じております。
○笹森順造君 最後にもう一点だけ。これはこまかい点になりまするが、農林大臣にお尋ねしたいと思います。
 先ほどキワダマグロ等を加えて何トン何トンというようなお話がございましたが、大体アメリカ側の観測では、昨年の大西洋上の七万トンのキワダマグロ等に対して、日本の方では五割増しになって十万トンことしとるのではなかろうか、こういうようなことが予想されておるようであります。そこで日本としては、やはりあの海域において相当たくさんのマグロをとるということは有利なことでもあるし、今まで規制を受けておらぬとすれば、それは当然やったらいいと思うのですが、これに対する配船のことであるとか、あるいは売れ先のことであるとか、いろいろな問題が起ると思います。特に日米の間でマグロのカン詰の輸入制限の問題が、いつも日本で困った問題になるのでありますけれども、これはむしろアメリカの家庭の主婦としては一安いマグロをたくさんもらうということを非常に歓迎しておるので、ある意味においてはそういう意味で日本が相当積極的にやってもいいのじゃないか。従いまして、本年、昨年に比べて五割増しもとろうということに対する計画、しかもまた、とった上でそれがどういうことになり、どういう会社で、どういう工合に処理されるか、計画ができておれば大へんけっこうでありますが、やはりこの船等について、よほど政府が助成でもしなければこれがうまくいかぬと思いますので、これは最後に大へんこまかい問題になりましたけれども、対米輸出の関係と、それからとりましたものの処理の問題について、具体的にお答えを願って、それで私の質問は終りたいと思います。
○国務大臣(三浦一雄君) 実は対米マグロの輸出につきましては、今御指摘になりましたが、アメリカ側におきましても、原料を取得する必要のある会社の事情、それからまたこれを製造しておりますものとのいろいろの利害関係がございまして、日本の希望通りに非常にたくさんは出せない現状でございます。そこで、日本側としましては、輸出水産業振興法によりまして、この水産組合等の機構等によりまして、そして輸出量をも規制を加え、同時にまた、マグロのカン詰等の数量も規制をいたして輸出しておる、こういう現況でございます。同時に向う側も、業者から言わせますと、自分の方で宣伝費をかけて、そうして販路を拡張したものを、日本側がどんどん入ってきてその利益をただひとり占めするのはこれは不当だ、こういうような意見もありますので、わが方といたしましては、実は業界並びに政府の助成によりまして、五千万円程度の宣伝費等も出しまして、共同してこのマグロの宣伝をする、こういうようなことを協調的にいたしておるわけであります。今申し上げました大西洋方面のものは、直接に従って日本の漁船から向うに輸入するというわけにいきませんので、若干中継地を利用しまして、そうしていろいろの方策を講じていく、こういう現況でございます。
 なお詳細な統計等につきましては、水産庁長官から補足さしていただきたいと、こう思います。(「議事進行」と呼ぶ者あり)
○委員長(木暮武太夫君) 羽生委員何ですか。
○羽生三七君 関連してちょっと一言。
○委員長(木暮武太夫君) 関連質問ですか……。これを許します。
○羽生三七君 質問と申すか、ちょっと私、社会党の見解を一言笹森委員の御発言に関連して申し述べたいと思っております。
 先ほどの笹森委員の御質問の中共問題に関する点でありますが、私どもの尊敬をする笹森委員の御発言ではありますが、中国との関係についての御見解がいささか独断に過ぎはしないかと考えます。特にその前提となる諸問題については、われわれ野党、社会党と根本的に見解を異にいたしております。中国大陸は、現に六億余の人口を持つ厳然たる実体の国として存在しておる、歴史的にもまた現実的にも。これは動かしがたい現実であります。しかも世界の十数カ国がこれを承認しておる。こういう現実の上に立って考えます際に、先ほどのお考えは、あまりにも独断的である。その国と国交回復を今なお政府がやらないので、野党のわが党の使節団が向うに参って、あえて岸内閣でもいいから1岸内閣ではだめだから社会党でやるというわけではありません。岸内閣でもいいから、基本的な路線を設定して、国交回復に踏み切れるように、その間の橋渡しをしようとするのが社会党の今度の訪中の目的であります。だからそういう点に関して、先ほど来の御見解は、野党としては外交権を持っておりませんが、しかし、われわれの真意というものが非常にこれは曲解をされて、しかも中国問題に対する基本的な点で、全く根本的に見解を異にしておる。それとこれと、関連質問で一々やれば大へんな時間を要することになるので、私といたしましては、尊敬すべき笹森先生の御発言ではありますけれども、遺憾ながらわれわれは根本的に見解を異にするということをここに申し述べて、私の発言を終らせていただきます。(「関連」と呼ぶ者あり)
○委員長(木暮武太夫君) 鈴木君何ですか。
○鈴木強君 関連です。
○委員長(木暮武太夫君) 許します。鈴木君。
○鈴木強君 今、わが党の羽生委員からお話がありましたように、私も冷静に笹森先生の御意見を承わっておりましたが、その根底を流れる思想が、やはり日本国民の悲願である対中共との国交回復に対する理解が私はないというふうな判断をしたのであります。従って、そういう今羽生委員の質問でありますが、この際、岸総理に私は明確に伺っておきたいのでありますが、なるほど日華の間に国交が回復をされておりますが、しかし、今御発言がありましたように、六億の人口を有する中共は、名実ともにただいま中国として現存しておるわけです。これに対して国交の回復をし、貿易の再開をしようというのは、これは全国民の悲願である。従ってこの考え方については、岸総理として同感だと思うのです。従って、現実に二つの中国がある中で、いかにしてこの問題を解決するかということが政府に課せられた大きな使命でありましょう。従って、その御苦労をされていると思うのです。だが、中国が岸内閣を敵視しているとかいないとか、そういった問題も今いろいろやられておりますが、しかしそういうことはとにかくとして、新しい中国との間に国交を回復しようということは、これはあなたも異論ないと思うのですね、従ってそういう方面に努力をすることについては、いささかも私は努力することにやぶさかでないと思うのです。笹森先生のおっしゃるのは、そういう実態の中で、もう少し相手側の立場を理解し、与党としてこの間の困難を克服するという考え方が根底にあればいいのですが、わが党のやり方に対して、いろいろな一方的な見解を述べられるということは非常に困る。だからあなた方は(「邪推してはだめですよ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)黙りなさい。発言中だ。
○委員長(木暮武太夫君) 静粛に願います。
○鈴木強君 発言があるならば、私の発言が終ってからやればいい。
 だから岸総理に、この際、そういう国民の悲願である対中共との国交回復については、あなたの基本線であろうと思うのです、それをどうするかという現実問題に立ってお悩みになっていると思うのだが……。本質的な、私の言っているような、全国民の非願である対中共との問題について、一日も早く国交を回復しようということは、あなたの念願であると思うのです。そうであれば、今御意見等もいろいろありましたが、とにかくこの難関を克服するための努力をやってもらうことは当然だと思うのです。そういう努力は、私たちは、日本社会党は念願をして、今回の使節団の派遣にもなっておるわけでありますから、個々の問題に対していろいろやり取りをして、本質的な問題を忘れられては私は困ると思うので、特にこの際、岸総理の意見を伺っておきたい、こう思ったのです。
○国務大臣(岸信介君) 私は先ほど来、笹森委員との質疑応答において、今お話のように、笹森委員が、中国大陸との関係をこのままにしておいてよろしいというお考えで、ああいう質問があったとは思っておりません。ただ前提として、日本の置かれておる立場、いろいろ二つの中国であるとか、あるいは日本が敵視政策をとっておるというふうな非難があるのであって、これに対して、本来日本と中国との関係がどういうふうに法律的に、条約上にこの事実が作り上げられていっておるかということに対する基礎的のことを明確にしておくことが、かえってこのことを混乱せしめず、誤解を解くゆえんである。要は、もちろん中国との間における歴史的、地理的、文化的、長い因縁のある、また将来これとの間に友好親善の関係を結び、文化の交流や経済の交流をはかっていかなければならない。しかし、その前提でいろいろ誤解が生じているから、まず基礎的なことを明確にしようという意味において、先ほど来の私は質疑応答をしたつもりであります。従って、私がしばしば申し上げているように、中国との関係が現在のような状態にあることは、私は非常に遺憾とし、これを何とかして打開しなければならない。しかしながら、これはただ単に政局を担当し、外交の現実の責任を持っておるものから申しますというと、先ほど来、笹森委員との応答のように、国家的の、国際的の関係もあるし、また、あらゆる面におけるこういうことを円滑に処理しないというと、直ちに国交回復というふうなことをわれわれは一足飛びにはできないというところに悩みがあり、また、われわれが今後責任を持って努力を続けていって、これを、難問題を解決していこうというところに、私どもも一そうの努力を払わなければならぬということについては、私は全然意見が同じだと思います。また、そういう意味において、政府としてもあらゆる点において努力を続けるようにいたしたいと思います。
○委員長(木暮武太夫君) 笹森委員の質疑は、以上をもって終了いたしました。
  ―――――――――――――
○委員長(木暮武太夫君) この際、委員の変更について報告をいたします。
 後藤義隆君、松永忠二君、横山フク君が辞任し、その補欠として大沢雄一君、戸叶武君、小林武治君が選任せられました。
  ―――――――――――――
○委員長(木暮武太夫君) 先日の栗山君の質疑に対する大蔵大臣の答弁を補足したい旨の申し出がありますので、この際これを許すことといたします。
○国務大臣(佐藤榮作君) 過日の本委員会において、栗山委員から日本銀行金保有の問題についてのお尋ねがございました。その後明確になりました点もございますので、主計局長から詳細御説明いたします。
○政府委員(石原周夫君) 三月の二十日に、栗山委員からお尋ねのございました要旨は、「国の予算」という刊行物に載っております日本銀行の昭和十二年末におきまする保有金の残高と、その前に大蔵大臣が御答弁を申し上げました金の保有量との差が五トンある、前者が二百二十七トン、後者が二百三十二トン、五トンほどの差があるが、それはいかなる理由であるかというお尋ねでございました。取り調べましたところこういうことであります。これは昭和十二年中に、もとの台湾銀行が造幣局に金を渡しまして、そのかわりに持っておりました貨幣を払い渡しをしようという証書の形になりましたものを日本銀行に受けたのでありますので、日本銀行が貨幣払渡証書の形で保有していた分であります。その分を実は十三年に現物化しておりますので、予算は現物の金になっておりますが、そういうような造幣局に預けております払い渡しの証書という形で五トン分を持っており、その分が日本銀行の方の数字になっておりまして、大蔵大臣がそれに基いて二百三十二トンという数字でお答えしたわけであります。私どもが国の予算という刊行物で整理をいたしましたのは、正確さから申して日本銀行の方の数字が正確だと思います。そういうことでありますのでこの際御説明を申し上げます。
  ―――――――――――――
○委員長(木暮武太夫君) 次に、矢嶋三義君の質疑に入ります。矢嶋三義君。
○矢嶋三義君 委員長、質問を始める前にちょっと議事進行で、きょうは総括質問の最後でありますが、実は本予算委員会の総括質問の段階に、総理大臣の財産目録の件について委員長理事打合会の経過について、委員長から総理に話されたことは御承知の通りです。出ない場合にはあらためて協議するということでありまして、きのう鈴木委員からちょっと質問がありましたが、私はちょっと委員長に善処方を個別にもお願いしておったわけですが、委員長としてはどう努力をされたか、きょう最終の締めくくり質問をするに当って私はそれを明確にしたいと思いますので、まず質問を始める前に、どういう努力をなさって下さったか、その経緯を承わって質問に入りたいと思います。
○委員長(木暮武太夫君) 先日の委員会で栗山委員からその件についての御質問がありましたので、その節、委員長としてとりました模様をお話し申し上げまして、委員の一般の方の御了承を願っておったと思うのですが、ただいま矢嶋委員からの御質問がございましたので、重ねて委員長としてお答え申し上げますが、先日の委員長、理事打合会におきまして、社会党理事の方方から、今の財産目録を資料として提出すべしという御要求が強くありましたが、結局お話し合い、協議の結果、全員一致でもって当予算委員会としては資料として提出しないでよろしいということに決定をいたしました。これは全員一致でございます。その節、その場の空気を総理大臣に委員長からお伝えをするようにということなので、私が翌日ですか、官房長官を同席していただきまして、詳細に全員資料として提出しないでよろしいというところに至る空気をお話しいたしまして、そのときにこれを国会に提出する、せざるは総理の自発的な判断に待つことにするというお話であったということを申し上げておいたわけでございます。
 以上、お答えをいたします。
○矢嶋三義君 委員長、もう一回ですがね、委員長の把握は若干違っていると思うのです。委員長、理事打合会の件については、その翌日の本委員会でやったから繰り返しませんが、委員長理事打合会としては問題を明確にするためにそういうものは必要だ、委員長、理事打合会とか本委員会で決定すべきものではない、ついてはそのことを委員長から総理にお伝えをして、総理の自発的善処を待つ、その善処がされない場合はあらためて協議をする、これが決定であったわけです。で、それをその後報告されて、する、しないで、私は昨日委員長にも、あすは最後の締めくくりの質問をするのだが、一つよろしくということをお願いしたわけですが、どういう善処をしていただいたかを承わって総括質問に入るというわけですが、簡単に一つお答え願います。
○委員長(木暮武太夫君) 御承知の通りに、あのときは資料としては請求をしないが、そのときの空気をよく伝えて、そうしてこの問題に対しては総理の御判断に待つ、こういうことであったものですから、それをお話し申し上げまして、昨日の鈴木さんの質問に対しても総理の御答弁があった、こういうふうに承知しておるわけです。
○矢嶋三義君 まず、昨日の地裁判決について伺います。
 まず、金森国会図書館長に伺いますが、本日の「毎日新聞」にあなたの名前で「地裁判決をこうみる」という記事が出ております。あなたはこの記事の責任を持ちますか。
○国立国会図書館長(金森徳次郎君) きょう毎日新聞を見まして、私の昨晩話したことが出ておるということを発見いたしました。その中で私の大体言ったことが出ております。従ってその本体については責任を負うと存じます。ただし言葉の行き違いと申しまするか、書いたのでもなく、ことに速記したわけでもございませんので、実はしまいの方の青葉が足りなくて、いささか遺憾な点があるということを考えております。
○矢嶋三義君 あなたは国会図書館の館長です。特別職です。また特別職中の特別職でしょう。だからいかなる見解を持ち表明されることもそれは自由でしょう。しかしながら、それを大毎日新聞の記者がそうでたらめのことを書くはずがない。この最後の言葉は何事ですか。これは言葉が足りないということではありませんよ。「よほど甲羅を経た人間がやるべきものだ。若い人にまかせたのでは危くて仕様がない。もっとも、だからこそ三審制で、二審三審では甲羅を経たのが出てくることになっているのだが。それに安物にいい物はないのだから」と書いてある。何事ですか。あなた、これは取り消して陳謝しなさい。
○国立国会図書館長(金森徳次郎君) どうもあれは軽い座談的に……。(発言する者多し)
○委員長(木暮武太夫君) 御静粛に願います。
○国立国会図書館長(金森徳次郎君) 新聞記者がたずねてこられて、それについて、まあ話をしておった。あとで向うがまとめられたということでございますが、そこの中で私の言った通りではないという気がいたします。それは「安物にいい物はない」とか何とかいうことは、そんなことは、それは私はどうも言わなかったように記憶いたします。しかし「甲羅を経た」という言葉は私も使ったように記憶がありますが、私は私の言わんと欲するところは……。
○矢嶋三義君 それはよろしい。
○委員長(木暮武太夫君) 静粛に願います。
○国立国会図書館長(金森徳次郎君) やはりそれは裁判官というものは、いろいろの角度からよく考えて、十分な経験、熟慮を持った人でありたいという気持は非公式で――非公式でないです、雑談の間に出たので、そこに興味を持たれて文章ができ上ったもので、その点は私の言った語調と相当差があるような気がいたします。
○矢嶋三義君 あなたはこのたびの裁判は十分なる経験と熟慮をもって判決を下したものでないという前提に立っているのですか。
○国立国会図書館長(金森徳次郎君) 私自身の考えから申しますると、どうもそういう気持になるような気がいたします。(拍手)
○矢嶋三義君 あなたは立法府の図書館長です。そういう立場でこういう言動をすることは慎しまなければいけませんよ。
○国立国会図書館長(金森徳次郎君) 私はあれは、ゆうべこの間から病気で寝ておるときにこられて、純粋の古いことにも触れておるからして、やはり個人の立場でこれはそう思っておりまして、その気持でお話をしたわけでございまして、決して世の中の、そういう方面において政治に関係しておりませんから、世の中に一つの思想を流そうというわけではございませんから、いろいろこう言葉の行き違いがあって意を尽しませんけれども、私は平素思っておる考えをついその機会に、新聞社の方が尋ねられるに従ってお答えをしたということで、末尾の方の言葉は、あれは少し、(「陳謝しなさい」「謝罪しなさい」と呼ぶ者あり)末尾の方は私の言わない言葉も加わっておったような気がいたします。
○矢嶋三義君 次に総理に伺いますが、昨日の判決は、これは合議制であったのです。一人の裁判官が判決を下したのではありません。三人の裁判官が合議で下したのです。これはあなた方の最近の憲法の拡大解釈としての運用に対する私は警醒的な名判決だと思う。頂門の一針として感銘きわめて深いものがある。岸内閣の行政に対する一つの不信任表明であります。あなたは反省されるところはありませんか。
○国務大臣(岸信介君) 私は従来憲法解釈において、歴代内閣が一貫してとってきておる解釈は正しいと今でも信じております。裁判所が、もちろん裁判所の独立の立場におきまして判決をすること、法律解釈として法の適用について裁判所が判決することは、これは裁判所の独立の立場から当然でありますが、それはあくまでも裁判所として法の純粋の適用や、運用の問題として決定されるわけでありまして、それに何らの政治的意味があるとも私は考えておりません。あくまでも法律の問題として政府が考えておることが正しいのか、今回の裁判所の判決が正しいかということは、最後的に決定すべき手続があり、また方法があるわけでございますから、十分それを尽して、政府はその法律解釈の、従来とってきたのが正しいという考えをあくまでも主張いたしたいと考えております。
○矢嶋三義君 この報道は、国内はもちろんけさのニュースを聞きますと、全米に放送されたというのでありますが、あなたは国内並びに全米に対してどういう影響をもたらしたであろうと考えますか。
○国務大臣(岸信介君) 判決というものは一審の、日本の判決の最後的の決定のことでないことは、私がここで申し上げるまでもないことでありまして、従って一審の判決ということが十分にわかるならば、私はいろいろ新聞等で報ぜられておりますアメリカ等の一種の私は刺激と衝激というものは、これは当然冷静に返るものだろうと考えます。またアメリカにおきましても、われわれの入手しております。ところによりますと、ワシントンの官辺筋その他のものは、きわめて冷静にこの問題を受け取っているようでございます。
○矢嶋三義君 国内は。
○国務大臣(岸信介君) 国内におきましても、私はまた国民全般がこの問題に関する十分な理解を持つに至っておらないと思います。これからのいろいろなきょうの新聞その他の論ずる意見を見ましても、いろいろな見解が出ておりますように、こうたというふうにその影響を考える状態ではないと思います。
○矢嶋三義君 日本の学者の中には、あなた方の立場を支持する若干の学者もあります。しかしこの判決を支持しているところの憲法学者がたくさんあることを皆さん御承知だと思う。わが日本社会党が多年にわたって叫び続けた通りのこれは判決文です。それだけに国民に対するこの影響は、私はきわめて大きいと思うのでありますが、この判決に従ったならば、今われわれがまさに審議の最終段階に参りましたこの予算案というものは違憲予算であります。あなたはこの予算の撤回、そういうことについてお考えになりませんか。
○国務大臣(岸信介君) そういう撤回なんていうことは考えておりませんです。なおこれは国民の多数の人がいろいろありますが、矢嶋委員のごとく十分御研究になっている方には十分御理解がいくと思いますが、日本のこの問題に関しての判決も多数ありまして、その一つとしてこういう判決が出ております。しかもそれも下級審の判決でありますから、それ自身が確定的であるというふうな問題でないことは、私ここに付け加えるまでもないと思います。従って政府としては従来の考え通りで進んで参るつもりでございますし、予算を撤回するとか、あるいはこれをとめるというようなことは全然考えておりません。
○矢嶋三義君 こういう問題は多数決できめるべき問題ではございません。少くとも立法府の中に相当数こういう意見がある。さらに中正であるべき司法部内にこういう意見があって判決が下されたというこの事態はきわめて重大であり、あなた方はあなた方の立場から一方的に憲法の解釈を拡大解釈して運用している、その点については行政府としてやはり若干の反省があってしかるべきだと思う、少くとも頂門の一針です。警醒的な判決であると後世の史家は評するでしょう。あなたは何らの反省もないのですか。
○国務大臣(岸信介君) 先ほど来申し上げている通り、政府は政府の従来の憲法解釈を正しいと思っております。また法律の最後のこの判決の決定につきましては、それぞれ政府がその所信に向って適当な措置をとる考えでおります。
○矢嶋三義君 総理府総務長官に伺いますが、一体総理府はどういう場合に世論調査をやっているか、世論調査の予算というのはどのくらいあるか、こういう問題こそ即刻流して、全国民を対象としての世論調査をやるべきだ。やっていただきたい。いかがですか。
○政府委員(松野頼三君) 三十三年度が約二千万円、三十四年度が二千三百八十万円。この内容と方法は毎月一回約三千人を対象として世論調査をやっております。そのほかに大きな問題といたしまして、憲法の問題を過去三年間、毎年やっております。これはおよそ二万人から二万数千人を対象としております。これは年に一回でありますが、この二つが世論調査の内容でありまして、どういう問題を取り上げるかということは各省からの要求がございますから、各省からの要求の中で今月適当なものをとるという順序でやっておりますので、直ちにどうやるこうやると私一人で独断できめるのではございません。
○矢嶋三義君 あなたの見解を聞くのですよ。これは世論調査のいい対象ですよ。
○政府委員(松野頼三君) 各省からの要求がございますれば、その要求の中からやるのでありまして、私が独断であれをやるこれをやると独断できめるのではございませんので、各省から要求があれば、そのときに私の力から適当なものをきめてやりたい、こう思っております。
○矢嶋三義君 されば総理に伺います。総理、これは世論調査をするのには絶好の表題だと思うのです。これを取り上げてさっそく世論調査をして下さい。こういう場合にこの予算を使わなかったら何のための世論調査かわかりません。一番はっきりわかる。いかがですか。
○国務大臣(岸信介君) こうした純粋の法律解釈の問題につきまして一般国民の世論調査をすることが適当であるかどうかにつきましては、私は疑問を持っております。今、直ちにこういう問題をそういうふうに取り扱うかどうかはなお検討を要することと存じております。
○矢嶋三義君 総理の言葉は国民を愚弄するもはなはだしいですよ。それじゃあなたは選挙のときに演説をしなさるな。あなたは憲法の解釈とか何かについて国民大衆を前にして笑顔をして応援演説をやって票をかっぱらっている。それを国民をあなたは愚人だと思うならば応援演説なんかやめなさい。これはあなた、世論調査をした場合、国民にこれに応ずる素質がないということがどうして言えますか、重ねてお答え願います。
○国務大臣(岸信介君) 今お答え申し上げましたように、これは純粋の法律の解釈の問題でございますので、問題点もいろいろな観点からこれは今論ぜられているようであります。従って私は国民のこういう問題について、かりに世論調査をするということになりますれば、よほど問題点を明確にして、そうして世論を調査する必要があろうと思います。私の現在の心境ではいろいろな点からまだそういうふうな確定的な判決でもございませんので、これに対して世論調査するということは適当なものだとは私自身は考えておりません。
○高田なほ子君 関連。
○委員長(木暮武太夫君) あなたはよろしゅうございますか。
○矢嶋三義君 けっこうです。
○委員長(木暮武太夫君) 関連質問は簡潔にお願いいたします。
○高田なほ子君 岸内閣は、ただいまの発言によりますと、あくまでも正しい、こういう観点に立っておやりになっているようですし、またそうおっしゃることも私は決して無理ではないと思います。しかし岸内閣の行政を憲法に沿って制限するのは裁判の判決以外にない。このことは明らかだと思うのです。きのうの判決は、言うならば条約に基く岸内閣の国務執行行為は無効であるという判決が出ている。これは最高裁ではありませんが、しかし岸内閣の条約締結に基く国務執行行為は無効であるというこの判決が出ていることに対してあなたは深い反省をお持ちになっておらない。もしその判決が正しく最高裁までいかされれば当然これは条約改正の国務的なあなたは責任と義務を負わなければならない。条約改正の義務と責任をあなたは負わなければならない、こういう重大なところに直面しているけれども、これはやがて最高裁でひっくりかえるであろうというような、そういう考え方を多分にお持ちになっておるから割合に責任を感じないような御答弁があったのではないかと思う。私は三権分立の建前からいって、今回の地裁の判決というものは、これは相当政治的にも重視しなければならないし、岸内閣としても国務執行に対する無効の判決が出たということについては、当然政治上の責任が痛感されなければならないと思う。この点再度、どういうふうにお考えになっておられますか、あなたに伺います。
○国務大臣(岸信介君) 御承知のように、同じ行政協定等の問題に関しまして、有効だという判決が従来幾多すでに確定したということもあるのであります。この無効という今日初めての第一審の判決でありまして、これにつきましてはわれわれの所信と異にしておりますので、最終的な決定をする方向をとっていかなければならん。従来におきましても、あるいはあるものが憲法違反だと一審において判決され、さらに上級審において、これは憲法違反でない、合憲的だと判決された例もありますし、ただ一審のなにをもって直ちに政府としてはこれは政府の考えと相反しておると、また従来の判決例等の例にも反しておるというような場合におきまして、これを非常に重視して、政治的ないろいろな責任やあるいは処置を講じなければならんというふうには私どもは考えておりません。
○矢嶋三義君 総理の答弁から法務大臣に伺いますが、本日の新聞によると、跳躍上告をされるということが伝えられておりますがそのお考えはありますか。
○国務大臣(愛知揆一君) 検察庁といたしましては、申すまでもございませんが、本件は刑特法に違反するものとして公訴を提起したわけであります。それに対しまして昨日のような判決があったわけでございますから、昨日もここで問題になりましたが、その判決の理由書の成文を詳細に検討いたしました上で検察庁としてとるべき態度を決定することになろうと思います。新聞に報道されておりますように、いわゆる飛躍上告ということも一つの考え方として検察庁内の意見として出ておることは事実のようでございますが、そのことが決定するという時期は、そういう方法をとるかいなかということを決定する時期はまだ相当時間がかかると思います。詳細に判決の理由書を点検いたしましたあとで控訴の提起ということになろうと思います。
○矢嶋三義君 その点総理に伺いますが、控訴を棄却させるお考えはございませんか、すべきだと思う……
○国務大臣(岸信介君) 御質問でありますが、控訴棄却は裁判所がやることでございますから、政府がもちろんなにすべき義務はありません。あるいは検事をして控訴させないというふうに指揮権を発動する意思があるかという意味であれば、私はそういう意思は持っておりません。
○鈴木強君 この問題はきわめて重要でありますから私はもう少し具体的にお尋ねをいたします。この予算委員会の審議を通じても、憲法第九条の自衛権の解釈について、あまりにも拡大の一途をたどるような姿になっておる。戦力なき軍隊から始って、今日小型の核兵器を持ってもこれは自衛のためであるならば憲法違反ではない、こういうところまで九条の解釈が発展をしております。国民は今やこの政府の解釈に対してりつ然たるものを感じていると私は思います。従ってこの裁判の判決がなされた今日において、少くとも自衛権というものが政府の御解釈でいくと、自衛であるならば何でも持てるという解釈になってくると思う。これは原水爆の問題を含めて、将来自衛のためであるならばということに名をかりて、日本の戦力がそこまでいくということをこの委員会を通じて国民が非常に危惧しておるのです。そこでそういう段階にきわめて重要な判決が下った。少くとも政府が国民の深慮し、非常な危惧を感じている点に対して、今までやってきたことが絶対間違いないというような態度で行政執行されては非常に私は困ると思う。ですからこういう判決を契機にして、多少は私は第九条の解釈に対して冷静に政府が反省するということはあってしかるべきだと思う。にもかかわらず、この厳然たる事実に立って何らの反省がないということは、これは私はきわめて重要な問題だと思います。少くとも最終的には最高裁まで参るでありましょう。従って、その判決によって態度をきめたいという政府の気持も私はわかります。現在の裁判上そういう道があるわけですから、これは私は否定いたしません。だがしかし、国民の心配する憲法九条の自衛権について無制限に拡大されようとすることに対する一つの反省として、政府はやはりこの事実を根拠にして、私は多少の反省を持つということは当然だと思う。にもかかわらず、矢嶋委員の質問に対して岸総理は何らの反省がない。私はこれは遺憾だと思います。
 きょうは、金森先生もいらっしゃっておりますからついでにお尋ねいたしますが、今のような憲法九条の解釈が現在の岸内閣の解釈なんです。私は海外派兵の問題についても、いいですか、戦闘機が敵の基地に攻撃して行く、これが海外派兵であるかどうかということを聞いたときに、岸総理は明らかにこれは海外派兵ではないと言った。その後答弁を訂正しておりますが、やはりそういうところまで憲法解釈は進んでいる。この判決文の中に述べられているように、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないようにしようというのが私は基本だと思う。そうであるならば、この自衛権というものが、どこまでが自衛権であるか。武力を持つわけでありますから、一たん間違えば、たとえそれが自衛の戦争であっても戦争行為になる。そういう戦禍から私たちは逃れようとするのがこの憲法の大精神でなければならぬと思う。その段階に、あなたは甲らを経た者でなければわからぬ、やがてこれは裁判引つくり返るのだということを述べられておりますが、あなたも憲法制定当時の立役者であったはずです。ですからこの基本となる憲法の精神というものは、これは現実に今内閣がやられているような拡大解釈ではいけないと私は思う。朝鮮戦争を契機として、アメリカから押しつけられた自衛権というものに名を借りて武力を持っている、軍備を持っている。これを政府は戦力でないと言っている。政府がこの自衛権を、どこまでが自衛権か、拡大して解釈しておりますそういう段階に来たときに、これは大きなる反省だと思う、こういうことが出たことは。これらの点についてもあなたはお考えにならないで、きわめて軽率な意見を持たれている。もう少し新しいセンスを持って、憲法制定当時の考え方を明確にしてもらいたいと思うのだ。この点について岸総理と金森先生から一つお聞きしたいと思います。
○国務大臣(岸信介君) 先ほどお答えを申し上げておりますように、私は、この憲法解釈について従来とってきておる私どもの解釈は正しいという信念に立っておる。従ってこの判決に対しましては、私どもは基本的にはこれはわれわれは承服をいたしておりません。また、これは私の内閣だけじゃなしに、安保条約が制定され、批准されて、国会におきましても批准をされて今日まできておるこういう法秩序というものが、私はこの判決だけでもって、このすべてが、われわれがとってきておった解釈をそれでもって反省しなきゃならぬというふうには考えておりません。しかしながら、そういう判決が出ておるのでありますから、これに対しては最終判決に至るまでわれわれは十分に研究し、そうしてこれによって最終の判決を求めるように努力したい、こういうふうに思っております。
○国立国会図書館長(金森徳次郎君) 先ほどの御質問について……。
○鈴木強君 あなたは、今政府がやっておることを押えなければならぬのだ、それをハッパかけるようなこと言っちゃいかぬ。
○国立国会図書館長(金森徳次郎君) 当時関係をした人間の個人的なる意見、――個人的ではありません、当時関係した人間の意見としてお答えをいたします。
 私ども、あるときに、憲法の制定に関係をしたそのときに、一つの解釈を作っておりましたけれども、その後政治の上におきましての解釈はいろいろに動揺しておりまして、私としては不満足である、こう言わざるを得ないわけであります。ただし、政治は政治、学究の考えでございまして、私はどういうふうに思っておったかということを申しますると、この憲法九条というものはきわめて簡単な条文であるにかかわらず、いろんなところに難点を含んでおりまして、私は、憲法九条の第一項は、当時の吉田総理は、自衛戦争にもこの規定の適用があると、こう確かに言われたに相違ないのでありまするが、これは何かの、口がすべったのかもしれません、後に至ってはそれと違ったことを言っておられます。あれはどう解しておるかと言うと、私ども憲法が最初(「くどいくどい」「あなたのは簡単でいいよ」と呼ぶ者あり)これは実情を申しまするが、第九条第一項がきまりましたときには、これはもう当初のことはいざ知らず、国会にかかりましたときには、これはもう自衛の戦争はできるというふうになった。何とならば、国際紛争の解決手段としては戦争を放棄すると、こう言っておりますから。ところが、第二項はどうかというと、第二項は、無制限に戦力を持ってはならぬ、こういう解釈をしておるし、それは当時の議会において明瞭に言っております。それは自衛のためならばどの戦力を持ってもいいかということになったときには、これは私どもの当時の解釈としては一致していないというふうに思われるのであります。そういうような実情でございまして、私の今日申し上げるのは、当時の私どもの考えと、今の道行とは同じではないということを申し上げさしていただきます。
○矢嶋三義君 先ほどの私の質疑は、起訴取り消しと、言い間違いでしたからそれを訂正いたします。
 そこで総理に伺いますがね、総理大臣が言われるように、飛躍上告をされるようになる、憲法の番人である最高裁判所の判決というものは早くおりるわけですね。従って、その期間は安保改定交渉を即時中止しなさい。それから、今私どもが予算審議している中には、自衛隊増強のために約百六十億円強が見込まれております、人員にして一万二千八十二人増の内容を含んでいるこれらは、飛躍上告して最高裁判所の判決の出るまでは行政当局としてはその執行をストップすることが常識だと思う。いかがですか。
   (「その通りだよ」を呼ぶ者あり)
○国務大臣(岸信介君) 飛躍上告ということをするかしないか、その手続につきましては検察当局において、先ほど法務大臣が言っておるように十分慎重に検討した上できめることになっております。ただ、その前提として最終裁判が決定するまでは従来の憲法解釈についてのこの政府の考えを何らか停止して、そうして、具体的にいえば安保条約やあるいはこの予算等につきましても、そういう問題について従来政府がとっている態度を改めろというお話でありまするが、それを一時的にも中止しろということでありまするが、これは先ほど来申し上げておるように、政府の従来とってきておる法律の解釈は正しいという信念に立っておりまするので、これがためにそういうような現在進行しておるもの、また責任を持って編成しておる予算等につきまして、これを停止したりあるいは削除したりするようなことは絶対に考えておりません。
○矢嶋三義君 金森図書館長は当時の国務大臣ですが、あなたは今になって相当勝手なことを答弁している。先般、憲法調査会長の高柳さんがアメリカに視察に行かれて、この憲法調査会第二十四回総会議事録によると、決して押しつけられたものではない、憲法九条は幣原首相がマッカーサーに会見を求めて提示したもので、マッカーサーがオーケーと言ったところが幣原首相はそれを見て感動したと、こういうふうに述べられている。調査会に報告されたものです。決して憲法九条というものは押しつけられたものではない。吉田総理は口がすべったかもしれないと言われるが、そんなものではありません。訂正しなさい。
○国立国会図書館長(金森徳次郎君) 今お話になりましたことは、ほかに格別お答えするはっきりした点がございませんが、私としては吉田総理が口をすべったかもしれぬ、それは言いました。それはすべったのじゃない。私の申し上げたのは、吉田総理は、あの規定は、憲法九条というものは自衛戦争にも適用がある、従って、いかなる場合でも戦争はできない、こう前に言われまして、その後の幾多の答弁のときにはそれが変ってきておるということを申し上げたのでございまして、私の考えを言う必要はないかもしれませんが、私の考えというのは、憲法九条の一項はこれは自衛戦争を認めておるものであるけれども、憲法九条の二項は自衛たると何たるとを問わず、戦力と称し得べきものは持ってはならぬ、こういう規定であることを自分でこの十年間考えておりまして、その趣旨で御答弁をいたしましたので、まあ別に取り消すほどのことは含んでいないように思います。
   〔戸叶武君発言の許可を求む〕
○委員長(木暮武太夫君) 戸叶君何ですか。
○戸叶武君 関連質問。
○委員長(木暮武太夫君) 矢嶋君どうですか……。発言を許します。
○戸叶武君 裁判所のこの判決というものを、新たなる判決が何かゆえに起きたかという事態を見ないで、軽々率々に過去の事例を基礎として弁解しているのでは何もならぬと思います。これは憲法解釈がいろいろな俗論に惑わされて、また政治的な意図によって拡大解釈をされてその基本法の精神というものがゆがめられたときに、しかも国の最高機関としての立法府におきましても多数の力を頼んで、そうして憲法改正せざる今日において、憲法改正をした状態のもとにおけるような言動がなされているときに、これは三権分立の立場から、そうして司法権の立場からこれに対する一つの抵抗を表わしたものだと私は信ずるのであります。今日の日本において一番危惧すべき問題は、これは行政府の、もっと俗にいえば官僚がのさばり上って、政党は、これによってほとんど保守党はじゅうりんされておる。その閣僚は岸内閣においてもすべて官僚によって占められ、そういう権力的な行政府がのし上ってきて、最高機関としての立法府を多数の圧力によってじゅうりんし、しかも憲法に対する俗論的な拡大解釈をし、それを支えるのに、いろいろなことにおいて、政府機関に附属するようなところで碌をはむ御用学者を動員をしてPRを行い、そうして憲法の本質的な解釈というものがゆがめられたときに、司法府の中に立てこもる者の正義感としては、これを見るに忍びない。(「質問をしろ」と呼ぶ者あり)これが質問だ。そういう大きな抵抗が現われたのであって、これは軽率に見るべきでない。それをもって内閣総理大臣に対しても三権分立の立場から今飛躍上告がなされ、最高裁判所によって問題を解決しようとしておるが、この裁判所には条約について違憲審査権があるのかないのか、これは佐藤達夫氏もありという解釈の上に立って意見を発表しておりますが、このことがあるかないかによってこの飛躍上告の問題にも大きな関連が生まれるのであります。最高裁判所の判決を待ってというが、少くとも国の憲法の解釈の最高的な解釈というものは憲法第四十一条において規定されているように、国会は国権の最高機関であるのです。国会が今日のような状態の低迷しているところにこういう一つの判決も出てきたのであり、最高裁判所に持っていかれるといっても、最高裁判所は司法権の独立のために戦うであろうが、今日の日本の雰囲気の中においては、あらゆる機関が国の行政最高機関に過ぎない内閣のやつのもとに、多数党の圧力のもとに正しい意見というものをゆがめている状態がある。このことにすら大きな危惧があるのでありまするが、最高裁判所においては最高裁判所なりの判決が下るであろうが、この問題に関しては最高裁判所の判決に待つ前に、憲法調査会というようなところにのみ依存するのでなく、国会みずからがこの岸総理大臣を初めとする憲法解釈に対するところの混乱、拡大解釈によって憲法違反をあえてするこの問題に対して裁判所からの一つの抵抗があった事実を基礎として、国会みずからが十分に検討をせざる限り、私は国会というものが権威を失うと思うのです。この問題に関して総理大臣から責任ある私は答弁を求める次第であります。
○国務大臣(岸信介君) 今度のこの裁判所の判決のあれで見ますというと、安保条約による駐兵というようなことが憲法違反である、これは無効だという判決になっている。言うまでもなく、安保条約は国会におきまして十分に御審議になって、そして批准され今日まで効力を持ってきたことはこれ私が申し上げるまでもない。しかしながら、この国会と、三権分立でありますから、憲法の最高解釈というものは、行政府は行政府としての責任ある解釈をいたします。ときにまた憲法の問題に関して国会がその意見をはっきりさせられることもあろうと思います。しかし、最後の、この最高の憲法の解釈の決定は最高裁判所でなさるべきものであることは、これもまた憲法にはっきりしておりますから、これはその途上においていろいろな機関がいろいろな立場においてこれを解釈し、論議する、また学者なり個人も自由な立場においていろんな意見が発表されることは当然であります。裁判所も一審、二審、三審という制度になっておりますから、裁判所において一審の裁判がどういうふうにやるかということも、これは独立した、また裁判所としては自分の信念に基いた判決をされるだろうと思いますが、その最後の決定はやはり最高裁判所にいって決定されるのであります。その間の手続等につきましては、私どもは慎重に、不幸にしてわれわれの政府の憲法解釈とこの判決が違っておるのであります。政府としては責任を持って慎重に研究して、この最高の決定がされて、そして統一されるように今後も十分あらゆる面から検討して参りたい、かように思っております。
○委員長(木暮武太夫君) 戸叶君、きわめて簡潔にお願いいたします。
○戸叶武君 岸総理大臣から、最後の決定は最高裁判所において行うと言っておりますが、それでは最高裁判所は条約についても違憲審査権を持つという解釈にみているのかと思いますが、憲法は国の基本法であります。それではこの国会が憲法第四十一条に規定されるような、国の最高機関としての権威をどこで保つのですか。国の基本法としての憲法に対する最高解釈の決定というものがこの司法権の方にゆだねられ、最高裁判所が最終的な決定を行うというのならば、国の基本法に関する限りにおいては、最高決定は司法権が持つことですか。憲法第四十一条における立法府としての国会が、国の最高機関としての権威との関連をどう解釈していますか、総理大臣からあらためて承わりたい。この問題は重要な問題です。
○国務大臣(岸信介君) 三権分立でございますから、立法府は立法府としての権限を持ち、司法権は司法権として独立した立場、また権限が明らかにされており、行政府は行政府の立場というものがある。その間においておのおのの持っておる、憲法上明らかに明定されておるところのものはこれは紛淆を許さない。おのおのその立場を尊重してやるべきことは私当然であると思います。なおこの点に関する法律の解釈につきまして、もう少し具体的には法制局長官からお答えをさせます。
○政府委員(林修三君) 今、戸叶先生の御質問二点に分れていると思いますが、最初のいわゆる憲法八十一条の最高裁判所の違憲審査権の問題でございます。これに条約が入るかどうかという問題であろうと思います。これは御承知の通りに八十一条には条約のことは書いてございません。従いましてそこに学者にはいろいろの説があるわけであります。これは少くとも私どもは条約の国際法的な面につきましては、やはり最高裁には審査権はないのじゃないかと思っております。しかし、いわゆる国内法的な面についてはこれはいろいろ異論がございます。異論はございますが、従来もわれわれ法制局の考え方は国内法的な面については、やはり最高裁に審査権はあるものと認めるべきじゃなかろうかというふうにわれわれは考えております。もちろんこの点についても最高裁がみずから憲法の解釈をされるべきことだろうと実は思っております。
 それから、もう一つの憲法四十一条で国会は最高機関である。最高裁があらゆる法律あるいは条約、そういうものについての最終決定権を持つなら、司法の最高裁判所が最高機関になって国会はその下につくのかというような御質問だと思いますが、これは私はそうじゃないと思います。最高裁判所は憲法八十一条によっていわゆる違憲審査権を持っておりますが、これはいわゆる西独の基本法にいうようないわゆる憲法裁判所とは違うと思います。これはいわゆる司法裁判所でございます。司法裁判所でございますから、具体的な司法事件を通じてのみ最高裁判所は事件の審査をする。しかしその事件の審査をする場合にはある法律が――立法機関の制定された法律あるいは立法機関の承認された条約が国内法に憲法に違反するやいなやということの判断権は最高裁は持っておるわけであります。ただこれはやはり司法裁判所としての性格でございますから、その場合に最高裁判所はかりに違憲の判決をしたといっても、私どもの解釈としては法律が当然無効になるものではない、法律をあるいは廃止することはこれは立法機関のなさるべきことであると思います。立法機関としては当然そういう場合には法律の廃止手続をとることが大体筋であろうと思います。おそらく同じような法律に基いて同じような事件が何回最高裁判所に行きましても違憲になりますから、そういう場合には立法府としてはそういう法律を廃止する、あるいは条約については、かりに国内法的な面、国際法的な面は別でございますが、国内法的な面についてそういう問題があれば条約改定について努力をするということになるのでありまして、最高裁判所は直ちにある法律が絶対に無効である。条約は無効であるということを判決するだけの能力はこれは持っておるわけであります。その点は今の最高裁は立法、司法、行政の上に立つ憲法裁判所ではなく、やはり司法裁判所としての最高裁判所である。そういう点からそういう性格が出てくる、かように考えております。(「食い違いが出ている。総理大臣に取り消させよ」「議事進行」と呼ぶ者あり)
○委員長(木暮武太夫君) 戸叶委員に申し上げますが、関連質問は一問ぐらいでおやめを願って、本質疑者の腰を折られるようなことになりますから、本質疑者としての……。
○政府委員(林修三君) ただいま私のお答えいたしましたことは、さっき総理のお答えになりました最終的には憲法の解釈は最高裁がきめるということと何ら矛盾することはございません。いわゆる憲法八十一条は法律上その他についても最終決定権を持つということでございます。条約については先ほど申しました通りに、これは両説ございます。両説ございますが、いわゆる国際法的な面については、条約については私はないと思います。これは総理もそのおつもりでおっしゃったことと思います。これはきのうの判決を見ましても、これは判決の結論は私ども承服できませんけれども、途中に言っておりますことは、条約の国際法的効力はともかく、言っていることは当然そのことを頭に私えて言っておられることと思います。問題になるのは国内法的効力についてであります。国内法的効力についても両説ございますけれども、これは従来われわれ法制局といたしましては、国内法的効力の面についてはやはり最高裁に八十一条の違憲審査権はあるものと、こう考えております。
○矢嶋三義君 この点は私は推移を見守っていきたいと思います。そこで憲法調査会法は議員立法で岸さんは筆頭発議者であったわけです。そうしてその提案理由には、日本国憲法は押しつけ憲法であるから、その制定の経過を調査するのが主なる目的だということを提案理由に書いてある。ところが会長である高柳博士は、昨年調査に行った結果を二十四回総会に報告されております。これを見ますと、決して押しつけ憲法でないということを特に二十三ページ、二十六ページに非常に力を入れて述べられております。この憲法調査会を廃止する考えはないか、廃止すべきだと思っておりますが。
○国務大臣(岸信介君) 高柳ミッションの報告書は、高柳ミッションとしての報告書を憲法調査会に提出しておるわけでございます。憲法調査会はどういうふうにこの報告書を扱い、どういうふうな結論を出すかということは憲法調査会が他のいろいろの調査や研究とあわせて結論を出されることだと思います。私はただ単に憲法調査会は憲法制定のいわれだけを調査するのではなくて、(「あなたの提案理由に書いてある」と呼ぶ者あり)その問題をあらゆる面から検討するということに、調査審議するということになっておりますので、従ってまだ調査が完了をしておりませんし、これを廃止する考えは持っておりません。
○矢嶋三義君 もし憲法調査会の存在を許すならば、この調査会はいかにして平和主義、民主主義に即応するように憲法を運用するか、そういう角度から調査研究すべきであって、あなたの提案理由に述べてある角度からの憲法調査会の存在がなくなったと思う。検討を要望しておきます。
 そこで外務大臣、一体昨日の報道はアメリカにどういう影響を与えているとあなたはニュースをキャッチしておられるか、あなたが今続けられようとしているところの安保条約改定交渉にどういう影響があるとお考えになっておられるか。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 昨日の問題でありますので、まだアメリカ全体の大きな空気というものは詳細にはわかりません。今できるだけ十分にキャッチして参りたいと思っております。むろんああした解釈が一つ出たということについては、若干の動揺をいたしている場合があろうと思います。
○矢嶋三義君 いやいや、第二点は交渉の……
○国務大臣(藤山愛一郎君) 交渉につきましては総理大臣が申した通りであります。
○矢嶋三義君 影響があるかないかということです。好影響をもたらすか、悪影響をもたらすか、どう思っているか。
○国務大臣(藤山愛一郎君) それらの点につきましては今後よくアメリカの動向を聞いた上でなければ何とも申し上げられません。
○矢嶋三義君 現在の時点におけるあなたの考え方を伺っているのです。答えて下さい。現在の時点における藤山さんの考え方です。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 私はまだ先ほど申し上げましたように、昨日のことでありまして、詳細なアメリカの反響というものを知っておりません。従って私は特に今差しつかえるとは思っておりません。
○矢嶋三義君 藤山さんは善人だから非常に動揺をされている。気の毒だから次の質問に移ります。
 次は岸総理大臣に確認をいたしたいと思います。私ども先ほどから申し上げておるように、この裁判所の判決を全面的に支持いたします。従ってあなたの内閣の総辞職なりあるいは安保条約廃棄、自衛隊解散を強く要聖いたすものでありますが、それはそれとして、あなたの憲法解釈の時点に立って若干伺っておきたいと思います。それは攻撃用はもちろん防禦用の小型核兵器も米軍の手によっては持ち込ませない……。岸内閣において、さらに自民党内閣においてお答え願います。
○国務大臣(岸信介君) 従来私がはっきり責任をもって言明をいたしております通り、一切の核武装は自衛隊はしない、また米軍に一切の核兵器を持ち込ませないということは、私が責任をもって言明しておる通り、岸内閣は責任をもってこれを実行いたします。
○矢嶋三義君 次に総理。各国が核武装しないよう、世界の平和のため国際舞台において努力をすることを誓えるか。
○国務大臣(岸信介君) 核兵器の製造、使用、貯蔵等を、これを禁止しようということは私の念願でありまして、その前に核実験の禁止につきましてもまず第一段としてやる、最後の目的は今言った通りのことを念願いたしております。従って従来も努力してきておりますが、今後もその目的に向って努力するつもりでおります。
○矢嶋三義君 有澤原子力委員は、原子力基本法二条からして、たとえ自衛のため小型核兵器といえども保持できないということを言明されておりますが、この有澤委員の見解に岸総理は同感だと思いますが、念のため。
○国務大臣(岸信介君) 現在の原子力法によれば、平和的利用だけの目的にしかこれが一切のことをできないというふうになっております。従って、せんだって来憲法解釈の問題として私は、一切の核兵器を憲法上すべて禁止しておるという解釈はとっておりませんけれども、また従って今、私自身が決して政策的にそういうことを考えておるわけじゃありませんが、かりに核兵器というようなものを、これは憲法上許されておるということが……、承認されるようなものを用いるというような場合におきましても、これは原子力基本法を改正せずしてはできない問題であることは言うを待たないことと思います。
○矢嶋三義君 次、岸総理、外務大臣。米駐留軍が核武装するかどうかは、あなた方の憲法解釈をもってするならば、条約上できめるべき条約問題であると答えている、しからば条約に明記すべきであるというわれわれの主張に対して、協議事項で十分目的を達し得るという理由を詳細に述べていただきたい。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 私どもは今回の条約改正に当りまして、装備、配備――重要な装備になろうかと思います。核兵器というものは、そういうものについてむろん協議事項によりましてこれを相談事項にして参るということが一番適当だと考えております。従って、そういう意味において協議事項として参りたい、こう考えております。
○国務大臣(岸信介君) 私は事前の協議によりまして十分その目的を達し得る、かように考えております。
○矢嶋三義君 私にはアメリカからこういう情報が入っておるのであります。それは安保条約の改定で、日本の国会はもちろんのこと、自民党さえまとめ得ない岸総理の株が非常に下っている、それに持ってきて、あなたは国会で小型核兵器を絶対に持ち込まないという答弁をしたものだから、持ち込ませようとしているところのアメリカでいよいよ株が下った、そこであなたは憲法解釈を拡大して憲法上は云々という、ああいう答弁をわれわれにして、アメリカにおいて下った株を上げようとしている。実は昨年末ごろまでは、これは条約事項として明確に記載したいと考えておったが、こういう情勢のもとにアメリカが協議事項でなければならぬと強く主張した、そのアメリカの主張の前にあなた方は屈服した、こういう情報が私には入っております。まことにもっともらしい情報です。協議事項よりも条約に明記した方がはるかに確定して安全ではないですか。アメリカが反対しているのですか、外務大臣。
○国務大臣(藤山愛一郎君) まだ正式には交渉に入っておりませんから、アメリカが反対しているとも反対していないとも申し上げかねます。ただ私どもとしては協議事項で適当だと考えております。
○矢嶋三義君 日本社会党並びに日本国民の大多数は不安を除くために協議事項でなく、条約に明記してほしいということを強く要望いたしております。有澤原子力委員もかように述べております。従って、そういうふうに努力していただけますか。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 私どもとしては交渉に当りまして、むろんこの問題について協議事項でいくのが適当であろうと現在考えております。そういう意味において進めて参りたいと、こう思っております。
○矢嶋三義君 もう少しがんばりなさいよ、アメリカに対して、日本国の外務大臣ですからね。アメリカは行政協定の根本的改定に反対しているというんですが、いかがですか。
○国務大臣(藤山愛一郎君) アメリカはまだ行政協定の全面的改定ということに反対しておるとも、おらぬとも申し上げかねます。がしかし、行政協定につきましては、全面改定というようないろいろな言葉が使われておりますけれども、あのあります二十八条を全部改定しなければならぬものだとは私ども必ずしも考えておりません。そのうちのある部分、当然改定すべきものがあると思っておりますが、全条を、いわゆる全面改定ということがどういうことをいわれておるかわかりませんが、全条を改正しなければならぬものだとは考えておりません。
○矢嶋三義君 岸総理並びに外務大臣。自民党の中の河野さん、反主流派四派はこれを主張しておるではありませんか。藤山さんは二十四、二十五条、両条だけを考えておるようでありますが、変えなければならぬ問題がたくさんあるでしょう、国民生活に関係があるものが。裁判権一つとってもそうでしょう、いつでも問題になっているのは公務中か公務中でないか、また国内の労働法規を米軍は守っていないじゃありませんか、関税等の税金の問題にしてもしかり、米駐留軍並びに家族の独立国日本国への出入国の問題しかり、独立国としての名誉のためにも、国民生活上からいっても改定しなければならぬ根本的な問題が多々ある。だから、河野さん並びに反主流派四派は、この際に全面的に同時に改定すべきであるということを主張していますが、総理並びに外務大臣はこの主張を取り入れられるのかどうか。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 河野君がどういう意味で全面改定を言っているかわかりません。ただ、行政協定の内容を見ますれば、むろん刑事裁判権のごときは日本の司法権で行使することになっております。また、雇用関係につきましても日本の法令に従うということになっております。従って日本の法令に従う以上に特に改正することはないんではないか。ただ、その扱い方について今まで、行政協定そのものを変革しないまでも、その扱い方が悪かった結果相当いろいろな問題が起っておるのでありまして、これは行政協定の改定とは別に、やはり政府として常時アメリカ軍に対してその扱い方を十分注意してもらっていくことによって改正できると思うのでありまして、そういう意味において必ずしも私は全条を改正しなければならぬというようには現在考えておりません。
○矢嶋三義君 総理、基本的な方針を述べて下さい。三木さんも河野さんもいずれも論文を出していますよ、この問題で。
○国務大臣(岸信介君) ただいま外務大臣がお答えした通りであります。
○矢嶋三義君 では総理だけに伺いましょう、総理、何ですか、安保と行政協定は同時に抜本的に検討するのですか、それとも安保を先行さして行政協定をちょっと一部改正するんですか、それとも安保条約の改定をやって、そうしてそのときに付属書か何かで、ごく近い将来に根本的に行政協定を改定するとするのですか、第三の案は三木案であります。いずれをとらんとするのであるか、明確にお答えを願いたい。
○国務大臣(岸信介君) もちろん私どもが今回の安保条約の改定ということを考えたのは、言うまでもなく、この現行法が制定の当時の事情から非常にアメリカに一方的になっており、日本が片務的になっておる状態を合理的な基礎において直そうと、こういうのでありまして、これはただ単に安保条約だけではなくして、その付属である行政協定も含めてこの日本とアメリカとの関係をできるだけ対等な立場に置くことが日本国民の要望であり、またわれわれの自主独立の立場からこういうことを考えたい、こう思っております。従って、もちろん安保条約、現行の安保条約にかわる新しい条約を作るわけでありますから、行政協定も新しく作らなければなりません。しかし、その内容等について、現行の行政協定のうちのすべてを改めるというようなことは、これはその必要もないし、また実際上そういうこともわれわれは考えておらないのでありまして、日米の間における非常に不公正な点だと考えられるような点については、適当な改正をやはり安保条約と同時にできるだけやっていくということが望ましいと、かように考えております。
○矢嶋三義君 国民の権利を守るために行政協定は大幅に改正しなければならぬ、こういう私は――昨年ジョンソン基地に起った武蔵野音楽大学生宮村君の死亡事件について伺いたい。どういう裁判が行われていますか。法務大臣に。
○国務大臣(愛知揆一君) お尋ねの点につきまして御報告いたします。
 昨日、浦和の地方裁判所において行われる予定でありました判決の言い渡しは延期されたわけでございますが、その経緯は次のような経緯であります。
 第八回の公判が昨日の午後一時に行われたのでありますが、弁護人側から情状に関する立証を行うために判決の言い渡しを延期して弁論の再開を求める旨の申し立てがございました。裁判所はその申し立てを入れて弁論を再開したのであります。弁護人側から、本件について被害者に対しまして米軍当局から約百五十万円の補償金が支払われることになった事実を立証するために、米国の軍人ロバート・リーの証人尋問を請求し、裁判所は次回に同人を尋問することに決定したわけであります。一方、検察官側から、当日公判傍聴のために上京した被害者の母宮村サノ証人の尋問請求をいたしまして、裁判所は同人の尋問を行いました上、次回の公判期日は来たる四月二十七日に指定するということで閉廷をいたしたのであります。
 これがごく最近の状況であります。
○矢嶋三義君 総理並びに外務大臣、よく聞いて下さい。あの宮村君は大学生ですが、行政協定の十八条に基く支給基準によれば、大学生が死んだ場合には、その基準収入日額三百五十円、遺族補償はこの千日分、葬祭料六十日分、日本の大学生が米軍から殺されて四十万足らずの補償金しか出ないのです。従って、あの宮村君の場合は、国会で数度議論してようやく百五十万円のところにいったのです。ところが、それに対してお母さんはたえられずに1裁判では一年六カ月の求刑をしている。弁護団は罰金刑を請求している。これではたまらないというので、上ってこられた。上ってこられた。行政協定に欠陥があるのです。そうしたところが、弁護団が米軍が特別百五十万円出したんだから情状酌量の余地があるからロングプリーの刑量を軽くしろというので裁判所側に要求して、延期しているのです。母さんは泣いていますよ。こういうことは、この行政協定の欠陥からくるのです。日本の前途有望なる大学生が米軍に殺されて、ああいう形で殺されて、この行政協定の十八条からいえば四十万円しか渡されないのですよ。そういうことでよろしいのですか、どうか。どうお考えになりますか。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 行政協定に全然欠陥がないとはわれわれ思っておりませんし、むろんいろいろな意味においてこれらの問題についてはアメリカ側とも協議をいたして参ることにするのは当然であります。ただ、先ほどお話のありましたように、全面的という言葉で当てはまるかどうかということは、必ずしも全面的ではない、必要なところ改正しなければならないというところについては、当然われわれの主張すべきところは主張してみたいと思います。
○矢嶋三義君 宮村君のお母さん非常にかわいそうだと思いませんか。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 非常にかわいそうだと思っております。
○矢嶋三義君 総理、お答え願います。
○国務大臣(岸信介君) 被害者の身うちの方、特にお母さんに対しましてはわれわれ心からお気の毒に考えております。これは裁判がどうなろうとも、またおそらく補償金がどういう形であろうとも、親としてはあきらめ切れない気持で、われわれ御同情にたえない。ただ、裁判そのものはこれは別に行政協定には関係ありませんで、公務執行中のものは何でありますが、公務執行中のものではないとして日本の裁判所に、裁判権が渡されたわけであります。日本の司法権が独立に刑の量定その他の何を示すわけであります。この補償金の額の問題は、これは行政協定の一つの基準があるだろうと思いますが、これ自体はどういうふうになっておりますか、もちろんそういうことを実態に合せるように、また国民感情にも合うように、大きな問題につきましてはこの委員会がございますし、また行政協定の執行上の両国の委員会等におきましてできるだけ公正に何していくというふうに運営をしていくようにいたしております。従って、ただ形式的の標準だけで結論を出さないように、今後といえどもできるだけ被害者に十分に補償がいくように努力をしていきたい、努力しなければならぬ、かように考えております。
○矢嶋三義君 防衛庁長官。二月来日したドレーパー・ミッションは三月十七日アイゼンハワー大統領に対して中間報告をなしておりますが、いかなる報告をなし、日本国との関係いかん。
○国務大臣(伊能繁次郎君) お答え申し上げます。まだ私ども詳細な公文に接しませんので、何ともお答えを申し上げかねますが、先般来新聞等で論議になっておった点等につきましては、日本の希望について十分私どもの方から申し上げておる次第でございます。
○矢嶋三義君 あなたはあの報道でずいぶんあわてたでしょう。アメリカ大使館の使用人の語るところによると、ちょっと気の毒なくらいあわてられたとのことです。実際あの報道は真実ですよ。ちゃんとここに、政府が相互安全保障計画を継続的基礎の上にのせるのに必要な立法、行政措置をとるよう提案する云々と書いてある。これは日本の安保条約との関連があるのです。あなた方の核兵器持ち込みに対する憲法解釈とも関連があるのです。日本が通常兵器によって装備するには十分である。攻撃用ミサイルあるいは核兵器に対する日本政府の態度を変えるならばある程度の援助はよろしい。ただ、この報告の中では一九六〇会計年度の軍事援助は十六億ドル、NATOだけは四億ドル追加する必要があるということを述べておる。ところが、日本に対しては攻撃用ミサイルあるいは小型核兵器を持つにあらざれば減額するということをはっきりとドレーパー・ミッションは報告しておる。拒否する意思があるかどうか。はっきりと拒否してもらいたい。大使館に行ってぺこぺこするのはやめてもらいたい。
○国務大臣(伊能繁次郎君) お答え申し上げます。せんだって、去る二十三日と記憶いたしておりまするが――二十二日の夕刊であったか、詳細な記憶はございませんが、ドレーパー・ミッションの報告で、日本に対する軍事供与は削減をするという新聞が出ました。私があわてて行ったという事実は全く無根でございまして、私は就任以来在日米軍の幹部にごあいさつをする予定をいたしておりましたが、幹部が南の方その他へ旅行中でございましたので、前々から二十三日の朝九時から十時までお月にかかるということで、十数日前にお約束をいたしております。たまたま、その日にああいう新聞が出ておりましたものですから、私がドレーパー委員長に申し上げた詳細な経緯、並びにわれわれとして期待しておる内容等と、新聞の伝えるところとが、若干、私どもの気持としては違っておるように思いまするので、その点についてお話し合いをいたしましたところが、米軍の関係の方々としては、何ら公電に接しておらない、従って、自分たちとしても、防衛庁長官の考えるようにさようなことではないと思うが、いずれ公電に接した暁においてよく相談をしよう、ということでありましたので、私、あいさつを終えて帰って参りました。たまたま、その日に国会においてその問題が論議になりましたので、私は、まだ公けでない問題について国会において御答弁をするのはいかがかと、かようには存じましたが、事態はきわめて重大であるという意味の御指摘、お尋ねもありましたので、それでは速記をおとめ願って、すべて、きょう話し合いの内容等について詳細に申し上げましょうということで、私はその間の経緯を全部国会においてお話をいたしました。しかしながら、速記は、委員長の御承諾を得てとらなかったのでございます。この点については、当該の質問の方がよく御承知だろうと存じます。たまたま、その後数日を経まして、あのような情報が新聞にも載り、また、アメリカの関係の当局から私の方へ、その後の公電によってああいう問題については、何ら、日本を対象として減らすとかふやすとかいうような問題は、ドレーパー・ミッションの報告には示されておらない。従って、先般防衛庁長官からお尋ねのあった線は、御心配のないようにという回答がございました。それに付帯しまして、私は、ドレーパー・ミッションの報告を、ただいま矢嶋委員のお尋ねに対して、十分な詳細の内容を公文に接しておらないので承知いたしておりませんということをお答えしたわけでありますが、ただ一つ、お尋ねの、日本に対する軍事援助が、核兵器もしくはその他の関係の兵器の増強を条件として軍事援助が増加されるとか、あるいは削減されるとかというような交渉が、ドレーパー・ミッションあるいはその後のアメリカ関係との私どもの折衝においてあったかのごときお話でありますが、そういう問題は、全く無根であるということを、この機会に明らかにいたしたいと存じます。
○矢嶋三義君 一応、そういうふうに聞いておきましょう、時間がないから。
 次に承わりますが、それは新主力戦闘機種の問題。時間がないから簡単に伺いますが、天川なる人物がおって、国費がこの人に数十万円出されておる。そうして、この人が政府の秘密書類を持ち、いずれの飛行機を選ぶかということは、天川氏がスケールを作った。ところが、そのスケールというのは、時代おくれです。今の主力戦闘機種をかりに決定するとするならば、機体もさることながら、火器、ファイア・コントロール・システムの方がより重要であるということは、これはもう明確なことなんです。源田空将も証言していることなんです。ところが、天川氏の作ったものさしというのは、古くてだめなんです。行政権を侵犯して天川氏が牛耳った、それを基礎として、昨年四月十二日に、どういう事情があったかはかり知れないものがあるのですが、国防会議が内定した。議長としての岸総理の政治的責任を問います。
○国務大臣(岸信介君) あの当時、内定いたしました当時、いろいろな資料を検討して一応あのグラマン機に内定をいたしたのでありますが、さらに国防会議としては、いろいろな資料を整えてさらに検討をして最後の決定をするという意味において、一応の内定が行われたのであります。その後、国防会議におきましても、いろいろなグラマン機に関する具体的の調査はもちろん、その他の機種等につきましても、いろいろと各方面からの資料を集めて検討いたしております。従って、最後の決定につきましては、国防会議においてこれらのあらゆる資料を十分に検討した後における、また、その後におけるところのいろいろな変化等も十分に頭に入れまして、最後に最も適当な結論を見出して、最後の決定をいたしたい、責任を持って決定するようにいたしたい、かように考えております。
○鈴木強君 議事進行。きょうは矢嶋委員は労働大臣の出席を要求しておるのです。さっきちょっと見えて、その後どこへ行ったのか、私は何回も委員部を通じて出席を要求しておる。委員長にもわざわざ言っておりますが、トイレに行ったというので、五分ぐらい待っていたけれども、もう一時間半もいない。今度は医務室へ行って注射をしておると言ったから、調べてみたが、来ていない。一体これは何ですか。少くとも要求大臣が来ていないのに質問をしろということはけしからぬ。委員長、すぐ取り計らって下さい。
○委員長(木暮武太夫君) お答えをいたします。先ほどお話がありましたときに、すぐ院内を、労働省の役人に連絡をとって探させておるのでございますが、どうもおからだが悪いのじゃないかと思います。今はっきりしたことを確認して御報告申し上げます。
○鈴木強君 からだが悪いなら悪いで、われわれにも知らしてもらいたい。からだが悪いのをここへ引っぱってこようというのじゃないのですから、それを連絡しないで……。矢嶋委員の質問は十一時四十分から始まっておる。もう一時間……。
○委員長(木暮武太夫君) まことにごもっともでございます。
○鈴木強君 労働大臣は、この前も三十分も審議ができなかった。きのうも私の質問のときに、どっかへ行って帰ってこなかった。
○委員長(木暮武太夫君) どうもおからだが少し悪いようであります。よく連絡をとりまして御報告申し上げます。しばらくお待ち下さい。
○矢嶋三義君 通産大臣並びに防衛庁長官、飛行機メーカーは、機種がきまらないので、仕事がなくて困る、飛行機の性能なんか問題ない、ともかく、何でもいいから仕事をさしてくれ、どんな飛行機でもいいから作らしてくれという、そういう考え方でよろしいかどうか。
○国務大臣(高碕達之助君) 私は必ずしもそうとは感じませんですが、やはり国のために必要なものを製造するというように注意いたしたいと思っております。
○矢嶋三義君 そういう心がけではいかぬですな。はっきり言っておいて下さい。
○国務大臣(伊能繁次郎君) お答え申し上げます。私どもも、現在生産いたしておりまするものと次期戦闘機種の問題とに生産上の関連があることにつきましては、本国会においていろいろと御質疑がありました通りでございますので、さいぜん総理がお答え申し上げましたように、次期戦闘機種の決定については、慎重な検討を新しい角度からも目下いたしておりますので、できるだけすみやかにこれをきめて、アメリカとの関係についても明確にいたしたい、従って、その間につきましては、先般国会において御報告いたしましたように、F86Fの将来一応想定される、来年度、昭和三十四年度、五年度等の材料等について、最も能率的な生産をさせるというような暫定的な措置を講じまして、一時の何と申しますか、糊塗策をとり、単に仕事がないから何でもいいというような考えは、通産大臣と同様持っておりませんので、慎重に検討いたしたいと思います。
○矢嶋三義君 F86Fの部分品を二十六億円がた作るというのですが、二十六億円の部分品で一体何年使えますか。
○国務大臣(伊能繁次郎君) 来年度の予算に二十六億円の予定を持ってF86Fの部分品を製作さしておりますが、二年間の予定であります。
○矢嶋三義君 二年末にはF86Fは時代おくれになって役に立たぬことになるんじゃないですか。私はこの二十六億は業者に仕事を与えるだけで、どぶに捨てるようなものだと思うのですが、いかがですか。
○国務大臣(伊能繁次郎君) お答え申し上げます。F86Fは――御承知のように現在のジェット機といたしましてはF86FとF86D、この二機種が当面の戦闘機種でございまするので、二年後においても十分その性能を果し得ると考えております。
○矢嶋三義君 かりに新機種を決定するに当っては、源田空将のごとき人を団員に入れて、新たに団員を派遣して十分検討した上で決定すべきものである、四月十二日の閣議決定の線に沿って強行すべきでないと考えるが、総理の見解いかん。
○国務大臣(岸信介君) 先ほど申し上げましたように、十分あらゆる点から資料を集め、慎重な検討をいたすわけでありまして、昨年の四月十二日の内定を動かすべからざるものとして、決定するというようなことは考えておりませんで、広くあらゆる事態を十分に検討した上で、最後の最も妥当な結論を出したい。
○矢嶋三義君 調査団派遣は。
○国務大臣(岸信介君) 今、調査団を派遣する必要があるかどうかというようなことについては、私、事務もしくは実際に仕事を扱っている方から、その必要についてまだ意見を聞いておりませんから、ここでその必要ありやなしやを申し上げることは適当でないと思いますが、十分あらゆる面において検討いたしたいと、必要があれば調査団を出すことについて考えなければならぬと思います。今、そのことについては何ら聞いておりませんので、御返事を差し控えます。
○矢嶋三義君 防衛庁長官、アメリカ軍から返還されました赤羽におけるタイヤ更生施設、これは三井物産と東洋ゴム工業株式会社に共同してやらせて、今まで自衛隊、防衛庁に協力して参りました中小工業者を、ここでそでにするようなやり方をやっておりまするが、これは民業を圧迫するものであり、了承できません。今まであなた方に協力して参りました中小工業者を救うような立場において処理すべきものと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(伊能繁次郎君) お答え申し上げます。赤羽の米軍施設が返還をされまして、当時米軍としてタイヤの更生施設を直営でやっておりましたが、今回返還に際しまして、その施設を有効、適切に使用する意味におきまして、アメリカ軍のタイヤ更生施設を継続して、新しい民間の会社にやらせる、その余力につきまして一部防衛庁の方面のタイヤの更生等もやらせることが全体として経費の節約、能率化の上にきわめて適切であると、かように考えて、一部を更生せしめるつもりでありますが、それは決して全部でありませんで、ほんの一部でありますので、私どもとしては、目下民間の方面からも御指摘のような陳情はございまするが、全体として民業を圧迫するというようなものでは万々ないと考えておりまして、このことについては万全を期したいと思います。
○矢嶋三義君 やらせますか、ほかの中小工業者に。
○国務大臣(伊能繁次郎君) やらせます。
○矢嶋三義君 次は、文教関係について伺います。文部大臣、最近私学が振興して参りましたが、私立学校振興会の出資金が五十億円で打ち切られた理由は申し上げる必要はないと思いまするが、少くともこれから五ヵ年計画で二百五十億円程度の出資並びに低利融資をすることによって、日本の私学の振興をはかるべきである、これは日本の民主化の進展にも役立つと思うのですが、具体的な御構想を承わりたい。
○国務大臣(橋本龍伍君) 昭和二十四年から発足いたしました五十億の計画は、その当時の計画でございまたたので、御説の通り私学の振興をはかりますためには、新たに振興の計画を立てまして、所要の資金の調達をいたしたいと考えております。今回の予算にも一応五十億の出資金が認められましたので、それに加えて、財政投融資でさらに金額を新たに支出したいと思いましたが、諸般の事情で上げることができませんでした。はなはだ残念でごございましたが、今後さらに充実を期して参るつもりでございます。
○矢嶋三義君 もぐり入学の件については、分科会で相当質疑したのですが、どういう都道府県に指導と助言を与えたか、お答え願いたい。
○国務大臣(橋本龍伍君) もぐり入学の件につきましては、今年春の入学期を控えまして、すでに昨年十一月に通牒を出してございましたが、さらに重ねまして、三月二日付をもちまして、各都道府県教育委員会あてに、従来もしばしばやってきたことでありますけれども、どうもやはり不正入学がございまするので、十分いろいろな方法で連絡をとりながら、不正入学の防止に、さらに一そうの努力を払うようにという通達を出しました。
○矢嶋三義君 通達を読んで下さい、骨子だけ。
○国務大臣(橋本龍伍君) この区域外就学については、かねて適正な実施について善処方を要望しているところであるけれども、どうも不正な住民登録を行う等の、正当でない手続によって、児童生徒を区域外の学校に就学させる傾向が入学期を控えて、どうも増加するものと思われのるで、貴管下の市町村教育委員会に対しては、地方法務局、市町村長等の関係機関と協力をして、就学事務を適正に処理するように指導されるとともに、別途また父兄の啓発にも意を用いて、地域住民の理解と協力を得て、不正な区域外就学の防止に、さらに格段の配慮をお願いをするというのが骨子であります。
○矢嶋三義君 今後とも適切な助言と指導をしていただきたいと思います。
 次に、総理並びに文部大臣。総理はよく青少年問題を論ずるのでありますが、勤労青年教育については、岸内閣は非常に冷淡です。あなたの「若葉の歌」というのを私は調べてみたのですが、「山河が呼ぶ若者を清く正しくたくましい」そして「若葉若葉、若木よ伸びよ光をもとめて大樹となれよ」これを繰り返しているのです。この歌詞はりっぱなもんた。ところがあなたは、勤労青年の教育については一向に前進しない、一体どういうお考えを持っているのか、基本方針をあなたから、文部大臣からは具体的振興策を承わりたい、抽象的なものはいやです。
○国務大臣(岸信介君) 勤労青年の教育問題につきましては、御質問の趣旨にありますように、私としては大いにこれを振興をしていかなければならぬとかねがね考えております。なかなか具体的の施設等につきまして、十分なまだその効果を発揮してないことは非常に残念でありますが、しかし、熱意は十分に持ってこの振興をはかっていきたい。具体的なことは、文部大臣より御説明申し上げます。
○国務大臣(橋本龍伍君) 定時制教育の振興につきましては、まず第一に高等学校の定時制教育及び通信教育振興法の制定によりまして、設備等も次第に充実されて参っておりますが、今後もなお教育内容の改善、施設、設備の充実等に努力をいたして参るのが第一点でございます。
 それから次に、働きつつ学んでおりまする勤労青年の生活の実態に即して学習効果を上げますために、定時制または通信教育課程の生徒が技能者養成施設等で一定の基準に合った技能教育を受けているときには、これを当該高等学校の学習とみなして、学校と仕事の面での連携を密にして楽に学習のできるように考えまして、これは現在学校教育法の一部改正案を提案をしているわけであります。また通信教育につきましては、生徒用の学習書の編集発行を促進する措置を講じました。なお、ラジオ、テレビ放送との連携についても研究を進めております。特にラジオ放送につきましては、面接指導の出席時間を三割以内に軽減する措置を行なっております。なお、この定時制教育の振興に関しまして教職員の給与の国庫負担及び教職員の待遇の改善等につきましては、これはただいまにわかに実施することはなかなかむずかしい点がございますので、今後なお研究をいたしたいと考えます。
○矢嶋三義君 次に、スポーツ関係でありますが、岸内閣としては一九六四年のオリンピックも招致したい、国民体育大会は今後地方持ち回りを実施してその補助金も増加して参りたい、こういうことを分科会等で明確に答弁しておるわけです。私はここで承わりたいことは、あのオリンピック後援会に千九十二万六千円の不正支出が行われた、この責任者はだれか、それから一九六四年のオリンピックを招致するならば、その資金を集めるためにはどういう組織を作ろうとしているのか、それをお答え願いたい。
○国務大臣(橋本龍伍君) オリンピック後援会に関しまする昨年までの問題は、はなはだ遺憾なことでございまして、これにつきましてはいろいろな調べをいたしました結果、このオリンピック後援会の不正支出の責任者は事務局長をいたしておりました人物であるということを確認をいたしまして、来年までの間に分けて弁済をさせる方法によりまして、第一回目はたしかこの二月に入っております。それから今後の問題といたしましては、今問題の起りましたような任意組合のようなものでありますると、監督ができませんので、はっきり体育協会の中にオリンピック後援等に関しまする特別勘定を設けまして、そうしてその勘定を管理いたしまするまあ基金委員会みたいなものを置きまして、体育協会は御承知の通り、文部省から補助金も出しておりまする政府の監督下にありまする団体でありまするので、その体育協会の組織の一部として寄付金の管理をさせる、別経理をさせて政府が監督をすることにいたしました。
○坂本昭君 議事進行。委員長、与党のこの出席状態を見て下さい。これでは議事を進めるわけにいきません。もっと出席を委員長から要求すべきであります。
○矢嶋三義君 自民党の方で入れてくれるということでありますから、私は質疑続けたいと思いますが、よろしゅうございますか、もっと入れてからやりましょうか。
○委員長(木暮武太夫君) 続けて一つお願いします。今すぐ呼びに行きます。
○鈴木強君 議事進行について。質問者も議事進行に協力をしていこうという気持があるので今のような御発言もあると思うのです。われわれは過半数をちゃんといつも準備してやっております。食事もおくれておりますが、われわれ飯食わずにやっているんですよ。ところが政府与党――労働大臣はどこかへ行ってわからぬ、それから与党諸君も、こういう状態では、きょうは最終的に委員会で上げようという段階なんだ。もうちょっと私はしっかりしたこの審議をやってもらわぬと、国民は笑っていますよ。何ですか、この状態は。私はこういう発言がない前にすでに注意して連絡しておるのですけれども、遺憾ながらこういうことになる。委員長、もっと権限を持ってやって下さいよ。だめですよ。こんな状態では質問者に失礼ですよ。
○委員長(木暮武太夫君) 御趣旨はまことにごもっともでございます。出席をさせるようにいたしましょう。
 この際、委員長から、ただいまの議事進行で、鈴木君から発言がありましたことに関連して、労働大臣に一言申し上げておきますが、労働大臣には多少御健康を害しておられるように見受けられまして、委員長としてこのことは御同情にたえないのでございまするが、まあ本日は委員長の知らない間に、いつの間にか御退席されたために、今のような鈴木さんから議事進行の発言を受けて、注意を喚起されたような次第でございまして、かねて申し上げておりますように、本委員会を退席せられるときは、ぜひ委員長の許可を得て後に出られるように、特に御注意をお願い申し上げます。
○鈴木強君 ちょっとそれに関連して。
 私は、このことは実は言いたくないことでありますが、やはり委員会の運営上忍びがたきを忍んで申し上げます。労働大臣の今委員会における協力ぶりはまことになっておらない。すでに一般質問、総括質問の過程で労働大臣が出席しないために四十分間も審議ができず空白状態になったことがありました。昨日もまたそれに加えて、労働大臣の御出席がないために質疑が中断する。しかし、御健康を害されておるということを私たちは了承をしておりますから、きのうも質問が終ったあと、進んで私たちはお帰りをいただいて御静養を願ったのです。われわれ野党としても決して血も涙もないことは言いません。今お話のありますように、大体委員長にも労働大臣は何ら断わりなしに、矢嶋委員の要求はちゃんとあるにかかわらず、質問が始まってすぐどっかへ行ってしまって、トイレへ行っておるというからトイレに探しに行ったら、医務室へ行っておると、そこまでは大体わかったのですが、その後委員長を通じて所在を確かめたところが、どこへ行っておるかわからぬという、そういう一番この大事な段階にきて労働大臣のこの非協力ぶりは許しておけない。一回だったらこういうことは言いませんが、もう再三再四にわたってこういう状態であっては、これは重大問題です。岸総理大臣も、あなたは首相としてこんな統率ぶりでいいのですか。これは、ただ委員長の御注意だけでは私は済まされません。労働大臣からもどういうわけか……、われわれ委員を侮辱しているのですよ。私たちは健康に悪いなら別室に休んでいただいてけっこうです。連絡もしないで、理事も何も知らない、どこへ行ったかわからないという、そういう無責任な態度は、これはどういうことをしたのか、私は弁明をしてもらいたい。
○委員長(木暮武太夫君) ただいまお聞きのように、委員長から特に労働大臣を名ざして、あなたの御注意を喚起したことについて、今後はかようなことのないように伝達をいたしましたわけでございますが、それでいかがでございましょうか。
○鈴木強君 委員長にあやまってもらいたいと思わないよ、委員長はあやまる必要はないよ。
○矢嶋三義君 これから注意していただきましょう。
○鈴木強君 私は労働大臣の所信を聞きたい。一回くらいだったらいいけれども、そういう再三再四にわたってそういうことをやられては困る。われわれは真剣に協力しているにかかわらず……。
○委員長(木暮武太夫君) やはり御病気で医務室や何かに行かれたものですから探すのに困難をしたようなわけで、いろいろ情状酌量いたさなければならない点があるように思いますので、どうでしょうか、委員長から御注意を申し上げました次第ですから、議事を進行したいと思います。
○矢嶋三義君 藤山外務大臣並びに文部大臣。藤山外務大臣はこの問題について道義的責任を感じないか。当時の体協会長であるところの東君は当然責任を感ずべきであるし、責任があると思うが、文部大臣の見解いかん。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 私はまことに体協として、当時の規約の上からいいまして、直接の責任はございませんけれども、道義的には遺憾だったと思っております。
○国務大臣(橋本龍伍君) このオリンピックの資金の問題につきましては、なかなか各方面から寄付を集めてやって参ったわけでありますが、東氏は体育協会の会長であり、藤山さんは募金の方の後援会の方のまあ看板に立つ方であります。道義的に申しまして、これはできるだけ内容の間違いのないようにすべきであると思いますけれども、これは直接一千万円の不正経理の問題に関しましては、御両者とも責任はないと思います。
○矢嶋三義君 これらに関係した責任のある体協関係者が、このたびの都知事選挙に際して非常に行き過ぎの東後援をやっている。私はスポーツが好きです。日本のこのスポーツ行政については微力ながら努力してきた、また関心も持っておる。今後も進めなくちゃならぬと思う。しかし、体協の関係者が、しかもオリンピック後援会のこの一千九十二万円について責任を持つべきそれらの人々が、このたびの都知事選挙においてあたかも政治結社を結成した以上のああいう政治活動をしているということは、スポーツの中立性という立場からいって、私は好ましいことでないと思いますが、文部大臣の所見いかん。何らかの私的助言でもする意思はないか、お答え願います。
○国務大臣(橋本龍伍君) もう体育協会の組織を通じて政治運動のあるようなことのないようには十分留意をいたしております。
○矢嶋三義君 注意しますか。
○国務大臣(橋本龍伍君) 体育協会の組織を通じて、政治運動の行われるようなことのないように、今までに事務当局を通じ、その他から始終注意を喚起いたしておる次第でございます。
○矢嶋三義君 次は、機構並びに定員関係について、行政管理庁長官。現在常勤労務者と非常勤職員とは何名くらいいるのか。政府の従来の答弁では、国家公務員法の改正とともに大幅に定員内に繰り入れをなすということであったが、このたびの定員法改正法案では五千五百十七名しか計上されていないが、いかにしてこの非常勤労務者に当らんとするのか、当然定員に入れるべきである、これは各分科会において所管大臣が皆明言したところであります。お答え願います。
○国務大臣(山口喜久一郎君) 今期国会においては公務員法の改正を待ってこれを決定するような方針でございましたが、すでに聞き及ぶところでは衆参両院において定員法の改正を議せられるやに聞いておりますので、この決定に従う考えであります。
○矢嶋三義君 もう少し積極的にこの定員の問題を処理されるお考えは所管大臣としてありませんか。
○国務大臣(山口喜久一郎君) 大体、昭和三十五年度にはこれを徹底的にこの問題を解決する考えでありますが、今期国会においては残念ながらただいま申し述べたような次第でございます。御了承願います。
○矢嶋三義君 次は、内閣総理大臣に内閣の組織について伺います。今の岸内閣というものは派閥均衡内閣でないかどうか。本日予算が上るわけですが、予算が上ったならば、おそらく内閣改造の必要を感じていると思うのでありますが、それと同時に定員十七人を充足しない理由いかん。
○国務大臣(岸信介君) 内閣の閣僚の人選につきましては、私は従来十分あらゆる点を検討して、最も適当な人を適当な地位に据えるという意味において選考をいたして参っております。今日直ちに予算が済めば改造するというような意図は持っておりません。なお、定員の問題につきましては、現在のところにおきまして一、二欠員を生じておりますが、これはもちろん永久的なものではございませんで、できるだけ早い機会に補充をいたしたい、かように考えております。
○矢嶋三義君 立法府の無視ですよ。内閣官房長官並びに総理府総務長官は国務大臣をもって任命することができるようになっている。ところが、この御二人は閣議の構成員じゃないのです。閣議に法律の案件を提案する権利はないのです。そういう人に立法府の本会議において提案趣旨の説明をさしている、これは私は立法府に対して非常にいけないことだと思うのです。しかも十七人の定員を充足しないで、あけている責任を感じなくちゃいけませんよ。明らかにこの総理府総務長官と官房長官の何があったならば、国務大臣に任命して、そうして閣議において発言権があり、構成員であるところのそういう人々を通じて国会の本会議において提案の趣旨説明等をさせなければならないと思うが、そういう点は改めていただきたいと思います。いかがですか。
○国務大臣(岸信介君) 御意見は御意見として十分承わっておきます。私は先ほど申し上げましたように、適当なときにこの補充をしたい、こういうことを考えております。
○矢嶋三義君 補充だけじゃなくて、改造をする必要を感じているでしょう、岸さん正直にお答えなさい。選挙前にやるのですか、あとにやるのですか、これはやらなければ持たぬですよ、あなたは。正直に答えなさい、いかがですか。
○国務大臣(岸信介君) 先ほど申し上げたように、現在のところ改造ということは考えておりません。
○矢嶋三義君 次にお伺いしますが、あなたの国会後における外遊ですね。この報償費並びに交際費は三十二年の二倍にふくれている。内閣官房だけで二億八百万円、これは招待外交が行われるからふくれてきている。私は必要だと思いますが、しかし今度あなたが外遊される場合、派閥構成の団体を作ったりしてもらいたくない。あの随員というのはできるだけ切り詰めて、あなたが単身で行くような気持で行っていただきたい。派閥均衡の大きな団体を作ることは国民は認めません、いかがですか。
○国務大臣(岸信介君) 御趣旨はまことにごもっともでありまして、私もそういう御趣旨のような意味で現在考えております。
○矢嶋三義君 次は、財政経済について大蔵大臣並びに経済企画庁長官に伺いますが、経済の調整過程というものは思ったより早く終了したのではないか、最近の経済状況について御説明願いたい。
○国務大臣(世耕弘一君) お答えいたします。国民の勤勉な努力と政府の施策によろしきを得て順調に進んでおります。
○国務大臣(佐藤榮作君) 思ったより早く済んだのじゃないか、というお話でございますが、大体昨年秋ころまで調整の過程が続くのだろうというのが私どもの見通しでございます。大体そのころから調整が漸次順調に整理されつつある、かように考えております。
○矢嶋三義君 このたび刺激的積極的予算を組まれておるのでありますが、こういう性格の予算というものは、なべ底の当時に組むべきものであって、調整過程が早く進んで、経済が上昇過程になったときに、こういう予算を組めば、これは刺激となって、いわゆるすれ違い予算となって、私は過熱のおそれがあると思う。最近、民間の設備投資というものは予想以上に非常にふくれておる。これはよほど金融財政の運用当を得なければ、秋ごろに私一は非常に心配する事態が起ると思いますが、どういう見通しをつけておられるか、伺いたいと思います。
○国務大臣(佐藤榮作君) 今回の予算の見方で、社会党の方々は、刺激的な予算、かように仰せられておるように伺っておりますが、私どもは、成長する経済をささえるというか、ふさわしい対応する予算、かように考えております。もともと刺激を与えるというやり方は私は賛成しないのであります。経済は長期にわたりまして着実に堅実に伸びていく、こういうものでなければならない。不況だからといって、これに刺激を与えるというようなことはなるべく避けるべきだ、かように実は考えております。もっと具体的に申せば、非常に大きく行き過ぎるような場合にはブレーキをかけますし、また、非常に沈滞が続くような場合でありますれば、これを避けるような財政的な措置をとりたいと考えておりますが、いわゆる刺激を与える、一時的な効果をねらうという措置はとりたくないというのが私どもの考え方でありまして、今回の予算につきまして、一部におきましては、下期においていわゆる経済の過熱というか、また、放漫に流れはしないか、こういう意味の警戒的な考え方のあることも承知はいたしております。私は財界にかような警戒的な考えのある限り、いわゆるこれが過熱の状態を起すものではないだろうと思います。これはそういう一般的な考え方でございます。ただ、政府といたしましては、もちろん常時金融のあり方なり、財政のあり方なり、また、経済の活動状況等、十分勘案いたしまして、時期を失しないように十分注意しておるつもりであります。
○矢嶋三義君 経済企画庁長官、三十三年と三十四年と比べて国民所得は幾らふえたのか。その国民所得に対する予算規模というものは幾らふえたと、あなたは数字を持っておられるか、お答えを願いたい。
○国務大臣(世耕弘一君) 詳細な数字でございますから、政府委員からお答えをさせます。
○矢嶋三義君 長官、そのくらいのものは持っておらなければだめですよ。それならさっきのような答弁はしなさんな。
○政府委員(石原周夫君) お答えを申し上げます。昭和三十三年度におきまする国民所得を八兆四千百二十億と押えまして、パーセンテージは一五・六%であります。これは当初予算であります。それに対しまして、第二次補正まで含みました数字で申し上げますと、一五・八四%、三十四年度は八兆九千二百八十億という国民所得に対しまして、一五・九%であります。
○矢嶋三義君 経済の体質改善をはかったと言いますが、今の数字から見て、一般会計一兆四千百九十二億、財政投融資規模五千百九十八億、これらがそれぞれ九百八十億並びに千二百三億の拡大となっておるのであるが、これは電力、石炭、造船等、独占企業を中心とするこの圧力で拡大がなされておると思います。そういう意味において、この体質改善というものは大資本の体質改善であって、中小企業及び農業に対する体質改善となっていない、こういう点にこのたびの予算の特質があると思うが、大蔵大臣の見解いかん。
○国務大臣(佐藤榮作君) 必ずしも、あげられた例だけで大企業についてのみ特に力を入れておる、こういうように全体の予算を見ていただきますと、私どもまことに不満に存ずるのでありまして、中小企業や、また農村等に対しましても、それぞれの対策を講じておりますし、また、低所得者層に対しましても、それぞれの社会保障その他減税、あらゆる措置を講じて参っております。そういう点を十分勘案していただきたいと思います。また、金融の面におきましても、国民金融公庫、商工中金等、いわゆる中小業者に対する金融機関の資金ワクも拡大をいたしております。また、大企業と中小企業との関連ということも十分念頭に置いていただきたいのでありまして、大企業と中小企業がいつも対立抗争の関係にあるわけではございません。もちろん関連産業として双方が助け合う面もあるのでございまして、私どもの今回の予算は、要するに全体としての経済の活動を活発にする、こういうところに遺憾なきを期しておる次第でございます。
○矢嶋三義君 この低所得者層に対する手当が不十分というところに、このたびの予算の性格があると思います。一つをあげますと、国民年金は実施時期をずらした、これは公約違反ですが、百十億円国民年金に向けた。その反面として、厚生省関係の予算は実に三百十六項目にわたって予算が減額されておるじゃないですか、予算書をごらんなさい。三角がついているのが三百十六ある。蚊とハエ撲滅運動補助金二千五百万円はゼロにしてあります。家族計画普及費補助金、これも二五%減、性病予防費補助金、三四%減、こういうふうに厚生省関係の予算は軒並み減額されております。それで運賃が上るでしょう。減税の恩典には、低所得者層約千二百万私はあるとつかんでおります、何らの恵みというものはない、こういう予算では勤労大衆の名において認めることはできない。総理の見解いかん。
○国務大臣(佐藤榮作君) 厚生省関係の予算でございますが、今年は千三百五億円、これが総額であります。三十三年度予算に対しまして、これは当初予算でありますが、これは千七十二億円であります。実に二百三十三億円、二二%の大幅な増額でございます。その増額のおもなものは、国民年金制度を創設するために百十億、あるいは国民皆保険推進のため社会保険費を六十八億、あるいは生活保護の費用を三十四億、その他児童保護あるいは社会福祉費、結核対策費、環境衛生対策費等、それぞれ増額をいたしておるのであります。そこで、矢嶋さんが御指摘になりますように、この厚生省の所管の予算書に、いわゆる三角が非常に多い。これは減額の分でございます。厚生省の事務費等につきましては、これは各省とも同様でございますが、三亀ないし五%の減を今回は節約として計上いたしました。その点で、この厚生省関係の項目の分け方等から見まして非常に多数の三角が出ておる、こういう実情であります。蚊とハエの撲滅の費用は、過日も他の委員会において御説明申し上げましたが、中央のものを地方に分けておるというところで、この厚生省予算には計上されておらない。蚊とハエがなくなったわけでは絶対にございませんし、また、撲滅運動をやめたわけでもございません。
○矢嶋三義君 それでは聞きますが、国民年金法案の審議の段階において、衆議院では附帯決議をしていますが、これは附帯決議を生かしていますか、特に生活扶助の加算ですね、これなんかは至急にやらなくちゃならぬ問題だと思いますが、やる意思があるかないか、もしこの附帯決議を生かすとするならば、この加算の分は本年度から行うとしても、来年どの程度の予算を必要とするとつかんでおられるか、お答え願います。
○国務大臣(佐藤榮作君) 衆議院の社労委においての附帯決議でございますが、もちろん私どもは国会の附帯決議でございますから、十分尊重する、そして、これが実現を期するように最善の努力をするつもりでございますが、もちろんものの順序といたしまして、可能なものからこれを取り上げて参るつもりでございます。で、附帯決議の第一は、各種公的年金制度との通算調整に必要な措置ということでございます。これはすでにその方針は明確にいたしております。第二は、生活保護法において、老齢加算の創設、母子加算及び身体障害者加算の増額を行うことということでございます。これは十分今後の予算編成――来年度以降の予算編成におきまして十分検討いたすつもりでございます。さらにまた、積立金の運用について、一部は運用部資金とし、一部は被保険者の利益のために運用すること、これは在来の方針ももちろんこの通りでございますが、さらにそれを徹底するように考えて参るつもりでございます。
○坂本昭君 関連。ただいま矢嶋委員の質問に対して大蔵大臣は、低所得層に対して十分手当をしてある、非常に自信たっぷりな御発言でございましたが、矢嶋委員が指摘された通りに、今度の厚生省の予算は、国民年金の百十億を計上するために、非常にほかの面が圧縮を受けている。しかも、肝心の国民年金そのものが、たとえば例をあげれば、十一月から施行される七十才以上の人についても年所得十三万円という制限がついておって、わずかに一千円にしか過ぎない。この一千円というものは、皆さんは年金の名に値しないから援護という名前をくっつけている。年金というものは援護じゃありませんよ。当然の所得保障でなければならない。私はそういう点でも一千円という、そういう援護年金の額そのものもはなはだ不当である。さらに、七十才以上というような、――七十才以上という年令になれば農村では私は比較的少いと思う。しかもその内容は生活保護にも足りない。さらにまた、生活保護に対しては、この援護年金は加算の制度を作ると言うけれども、その加算の額もきまっていない。私はこういうことでは、低所得層に対して十分な手当ができていると言って広言をする大蔵大臣は、まことに国民を欺くものと言わざるを得ません。大蔵大臣の明確なる御答弁をいただきたい。
○国務大臣(佐藤榮作君) 少し詳しくなるし、具体的な問題だと思いまして省略いたしました。坂本さんの御質問でありますから、各項目について簡単に御説明をいたしておきたいと思います。
 歳出予算におきましてまず第一に取り上げましたのが、失対労務者の就労日数を半日ふやしまして、毎月二十一・五日とする、六億七千万円の増であります。生活保護者の保護基準を二一六%引き上げまして、これが五億二千万円の増であります。国民皆保険の達成を目ざし、前年度より五十四億円を増額いたしております。国民年金を創設し、援護年金の支給を開始、これは百十億円であります。公共事業費を四百十一億円増額し、就労人員を十八万人ふやす。中小企業の従業員に退職金を支給するため、国の援助と事業主の拠出による共済制度を創設いたしました。最低賃金法の成立を期し、これが実施について必要な予算を計上いたしております。従業員五人未満の事業所の従業員の失業保険加入を促進するため、事務組合を活用する任意包括制度を引き続き推進して、これに必要な経費を増額いたしております。その他、公共職業安定所の整備、職業訓練の充実、勤労青少年の福祉施設の設置及び内職相談所の増設等、各般にわたり施策の充実をはかっております。
 次に、低額所得者に対する負担の軽減の見地から、次のような減税を行なっております。所得税において、扶養控除の引き上げ、最低税率適用範囲の拡大、退職所得の負担の大幅軽減を行い、低額所得層の税負担を軽減しております。住民税におきまして、所得税負担の軽減に伴い、三十五年度以降住民税の負担も軽減されるのでございます。事業税におきまして、個人事業者の基礎控除が十二万円から二十万円に大幅な引き上げを行うとともに、法人事業税に対しましても、所得二百万円以下について税率の軽減、引き下げを実施しております。物品税につきましては、主として零細企業者の製造にかかる物品について税率の引き下げ、免税点の引き上げ、課税方法の合理化をはかっております。固定資産税につきましては、免税点を、土地現行一万円を二万円、家屋が同じく一万円を三万円、償却資産、現行十万円を十五万円といたしております。このほか、先ほど御説明いたしましたように、中小公庫、国民公庫、商工中金等におきましても、前年度に比べて三百三十二億の資金増を計画いたしております。かように各項目にわたりまして、私ども十分考慮いたしたつもりでございます。
○坂本昭君 どうも多量の書かれたものを、羅列されたものをずらずらと読まれても、ちっともわれわれ国民としては感銘を受けないのであります。初年度七百億の減税をやるといっておったが、四百数億に縮まってしまったような状態で、今さら羅列をお聞きしてもしようがない。ただ大事なことは、一つだけこれは総理にお尋ねしておきたい。それは一番低所得層の人たちが期待しておる国民年金の、老齢の援護年金の例をあげましたが、七十才以上の人の一千円の問題、それが生活保護との関係においてどうなるか、これは厚生大臣はしばしば加算の制度をとると言っておりますが、その加算の額がまだきまっていない。それからさらに、現在の生活保護の制度を見ますというと、あの中に局長の通牒で、年金、恩給、こういったものは収入と見なすということがはっきり書いてある。従って、もしほんとうに低所得層の人たちに、特に生活保護を受けておるような人たちに老齢援護年金をつけようとするならば、生活保護法を改正する必要がある。そこまで徹底してやらなければ年金というものは生きてこない。そういうことを何にもしないでおいて、一応加算する、加算するという言葉だけ言っておられる。しかも金額を明らかにしておらない。ですから、私はこの際、一体年金というものを、単なる生活保護の続きのような、援護というような、生活保護というような気持で考えておられるのかどうか。もしそれを考えておられないとするならば、明確に生活保護法の中に規定をして、はっきりと、保護を受けておる人も年金を十分にもらえるように私は立法化すべきだ、そういうことができてなくて、ただ加算いたしますということでは、これは国民はごまかされないと思います。今のようなことならば、結局実施の時期、おそらく給付を受けるのは来年の三月以降、おそらく四月になると思います。そのときになって、加算をするといった言葉の通りに加算をしました、しかし加算というものは結局つめのあかほどの加算にすぎないということになるおそれがある。従って、この際明白にどうするかという総理の決意を伺うことによって、この年金問題の基本的な考え、さらに生活保護に対する加算の問題を明確にきめておいていただきたい、総理の御所見を伺っておきたい。
○国務大臣(岸信介君) 加算するということは閣議で実は決定をいたしております。しからば加算する額を幾らにするかということについては、まだ閣議では決定いたしておりませんが、私は千円の程度には加算したいと考えて、関係各省といろいろ検討いたしております。そうしてそういうふうにきめたい、かように考えております。
○矢嶋三義君 次の数字は、あるいは過小、あるいは過大で、運用いかんによっては不経済と危険を伴うのではないか、経済企画庁長官並びに大蔵大臣。それは黒字期待一億六千万ドル、鉱工業生産水準は六・一%上昇、経済成長率五・五%、さらに税収増の見込み千八十六億円、これらの数字は、冒頭に申し上げたような立場から見られるのではないか、どういう見解をもっていかに対処されようとするか、両大臣のお答えを願いたい。
○国務大臣(佐藤榮作君) 先ほど三十四年度の経済の見通しについてどう考えるかというお話がございましたが、私どもは昨年いろいろ工夫をし、いろいろ材料を集めまして、そこで結論を出して大体の経済成長率を勘案いたしまして、今回の予算を組んでおるのであります。その点でただいま御指摘になりますように、貿易収支においては一億六千万ドルほどの黒字、同時にまた、経済も鉱工業生産を初めといたしまして、各産業の伸びというものを考えておるのでございます。
○矢嶋三義君 現時点に立っての答弁を願います。
○国務大臣(佐藤榮作君) そこで、現時点に立ってこの数字を見ますと、この数字を変更する何ものもただいまのところないのであります。あるいは年度が終ったから、十二月の月の材料でなしに、二月、三月の月の材料がありはしないかというお話もあろうと思いますが、一部についてはございます。なるほど鉱工業生産等については割合によく伸びたというものがございますが、しかし、一次産業あるいは三次産業等全般についてのものが十分今日つかめておりません。そういうことを考えてみますと、現時点に立っては、今日の状況のもとにおいては経済見通しを変えるような材料はございません。また、税の自然増につきましても同様なことが言えるのであります。今後の情勢いかんによりましては、もちろん私どもも絶えず経済の動きといいますか、活動状況を十分注意するつもりでございますから、そういう場合においてはどういう材料が出て参るかわかりませんが、現時点においては、ただいま申し上げるように、変えるものはないということを申し上げます。
○国務大臣(世耕弘一君) お答えいたします。大体今大蔵大臣が申し上げた通りでありますが、企画庁といたしましては、見通しの基本として、すなわち金融、物価、在庫、貿易、産業、経済、財政、公共事業等を全部通観いたしまして、今日の状況から見て、予定通り日本の経済産業が安定成長をたどっておるものと、かように確信をいたしております。
 なお、先ほど矢嶋委員からお前の答弁は簡単だというおしかりを受けたのでありますが、矢嶋さんの質問を私はストップ・ウオッチで調べてみますと、大てい十秒か、十五秒でお尋ねになるのでありますから、なるべくそれに合うように答弁しておるのであります。
○矢嶋三義君 経済企画庁長官、答弁を取り消しなさい。何と思っているのですか。専門家同士じゃないからね。聞いていることがわかっておったらちゃんと答弁しなければなりませんよ。何だと思っているのだ一体。あなたは専門家だから、私がちょっと言ってもわかるが、そんな不謹慎なことでは……。
○国務大臣(世耕弘一君) あらためてもう一回答弁します。あなたの質問は大てい十秒ないし十五秒で済んでおる。しかも各方面にわたって答弁を要求されておるから、なるべくあなたの持ち時間を有効にするために、私の答弁を、便利だと思って要約して申し上げたということを言いわけしているのです。どうぞ御了解を願います。
○矢嶋三義君 私は聞きたいことは、時間がないから追及しません。私個人としましては、経済企画庁長官を不信任します。従って、私は質問いたしません。
 次にお伺いします。たな上げ資金の取りくずし二百二十一億円を初め、散超が二千二百七十四億となっておる。いわばこれは出し切り予算だというわけですね。従って、来年度の予算編成というものは私は容易でないと思うのだが、大蔵大臣は来年度予算編成に当って、国民年金その他増額されるものがあるわけですが、どういう項目がどの程度増額されて、どういうように予算編成ができるというような見通しのもとに立って本年度の予算を組まれたか、お答え願いたい。
○国務大臣(佐藤榮作君) 予算審議の冒頭におきまして同様のお尋ねがございました。もちろんことしの三十四年度の予算編成に当りましては、いわゆる出し切り予算と申しますか、財源として考えられるものを使い果しておる、これは御指摘の通りであります。そこで、予算面、当然の支出負担になるものも、今回の年金制度、恩給制度、その他等、当然のものがありまして、なかなか義務支出になるものがありますので、来年度予算の編成は困難だということを御指摘になるのでございます。私もいわゆる、しろうと大蔵大臣と言われておりますが、もちろん三十四年度の予算を作ります場合には、三十五年度予算の見通しも立てて三十四年度の予算を作っておるわけであります。御承知のように、三十四年の経済の成長、これには相当の期待をかけておりますので、その面から自然増収その他の歳入等が予想されますので、私は一応大まかな数字としてのものは念頭に置きつつ三十四年度予算を組んだわけでございます。しかし、決して三十五年度が非常に楽な予算が組めるという状況はただいまのところではございません。
○坂本昭君 議事進行について。ただいま矢嶋委員と経済企画庁長官との間に言葉のやりとりがありましたが、これは経済企画庁長官は非常な間違った御認識を持っておられるのではないか。この持ち時間というのは、両方合せての質問と答えとではありません。質問だけの持ち時間です。ですから矢嶋委員は自分の質問を切り詰めて御計算の上に五秒、十秒と切り詰めているのです。答弁の方は持ち時間は入っておりません。ですから十分な答弁をしていただく必要がある。今のようなことで長官の説認のために、今矢嶋委員は個人的に不信任すると、もう質問しないと、この大事な一番最後の段階になって経済企画庁長官に質問しない、答弁を受けないということは、これは当予算委員会としても重大な問題であります。でありますから、私はあえて長官の誤まっておられた考えを訂正せられて、陳謝せられて、以後、矢嶋委員も質問せられて十分な審議のできるように私は要望する次第であります。
○国務大臣(世耕弘一君) 私は先ほど申し上げましたごとくに、矢嶋委員の質問が多岐にわたって、なるべく私の答弁を簡潔に御回答したいというのが、私の誠意であった。それに対して簡単過ぎるぞというおしかりがあったので、それで私の真意をお伝えしただけのことである。で聞くところによれば、今御発言によれば持ち時間というものは別に計算なさるお話でありますから、私の誤解であったということだけ申し上げておきます。
○矢嶋三義君 わが国の公定歩合は国際的割高で下げろという意見があり、また、かつて下げて参ったわけですが、先ほど来の御答弁のように、景気は上昇期であるとするならば、今後公定歩合の引き下げというものは当分ないものと了承してよろしいのではないかと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(佐藤榮作君) 景気が上昇するという場合に、上昇の仕方がいろいろあると思います。いわゆるインフレ的傾向をもって参りますと、これは非常に危険でございますから、そういう意味で金融引締であるとか、いろいろ金利高を招集するということがございますが、いわゆる着実な堅実な経済の発展であります場合においては、そういうことを特に考える要はないと思うのであります。ことに御指摘になりますように、わが国の金利全般といたしましては、金利水準が非常に高い、やはり国際競争の場面に臨みますためには、どうしても国際金利水準にさや寄せした低金利であることが望ましいことは申すまでもないのであります。過去におきまして、低金利政策とあえて銘を打ちませんが、あらゆる機会に十分金融の状態等を勘案して金利を引き下げろ、こういうことを数次にわたってお話をして参っております。過去におきましても公定歩合を三回にわたって引き下げました。これは引締前のときよりもさらに一厘下っておるという状況に今日はなっております。今後の金融のあり方でございますが、一面にいわゆる体質の改善として金融機関に対しては金融の正常化を強く要望いたしております。この方面の業績、成績が十分上って参った際、また、経済の活動状況、また、金融の状況等を十分勘案いたしますれば、この基本線の低金利の方向へ推進すること、この政策は持続いたしたいつもりでございます。
 ただ、お尋ねのうちにはなかったのでございますが、当然触れなければならない点は、ただいま一面においては預金の奨励もいたしておりますから、今日その預金金利をこのままにしておいて、さらに金利を下げることは可能かどうか、こういう問題は別の研究課題であります。私どもは、今日の状況におきましてもなお預金を奨励する、貯蓄を奨励する段階であるように思いますので、これらとも十分にらみ合して、今後の金利のあり方をきめていかなければならぬと思います。ただ低金利の方向でこの問題と取っ組んでいる、これだけは政府の方針としてはっきり申し上げ得るのであります。
○矢嶋三義君 論じられました資金運用部資金の運用については、大衆への還元ということを格段と考慮されるものと了承するが、いかがですか。
○国務大臣(佐藤榮作君) 今日までも審議会を通じまして、十分大衆への還元を考えて参っております、住宅その他の面で。これはまた、今後ともこの審議会の意見を十分に尊重して、ただいま御指摘のような方向で考えて参りたいと思います。
○矢嶋三義君 次には、税法関係の修正についてですが、時間がないから簡単に申し上げますが、税法関係の修正による減収は幾らとつかんでおられるか。その歳入不足をどうするか、特に地方自治体に対する補てんをどういうふうにお考えになっているか、お答え願います。
○国務大臣(佐藤榮作君) 一応御説明を申し上げます。今日までの修正による減収額は、物品税において三十四年度五億五千百万円、今の物品税は四月一日実施としてです。入場税は八月一日の実施、六千三百万円、平年度にいたしますと、物品税は平年度六億九千万。
○矢嶋三義君 それは違っておらないですか、十一億じゃないですか。
○国務大臣(佐藤榮作君) 間違いないようです。入場税は十億九千三百万円、それから地方税法関係で、軽油引取税の修正を国会で受けました。これは初年度十七億、かように伺っております。この物品税、入場税の減でございますが、この実施の時期、その他等から勘案いたしまして、ただいまの状況では収入見積り予算を一応立てておいて、実情を十分見究めたい、かように考えておりますし、軽油引取税の問題につきましては、地方の財源の全体としてこれは按配していただけるものと、かように考えております。軽油の関係は、初年度は十六億四千六百万円、平年度は十八億四千八百万円、かようになっております。
○矢嶋三義君 地方自治体に対する補てんをもう一ぺん答えて下さい。
○国務大臣(佐藤榮作君) 本年度の予算は全体としてこの程度をまかなっていただけるものだと、かように私、考えております。来年度以降の問題になりますと、来年度は住民税の減その他もございますから、全体としての地方財源はどうなるか、予算編成の際に十分考えて参りたいと、かように思っております。
○矢嶋三義君 国民一人当り負担の総額は、国税、地方税を合せて、実に一万九千五百七十九円となっている、相当高いのじゃないですかね。しかも所得税は三十三年より二五%の増となって、この所得税の納税者が非常に多く、しかも源泉所得納税者が実に九百十一万人ということですが、これらとあわせ考えるときに、法人税をもう少し取れるのじゃないか、そういう点、また再検討を要すると思うのですが、いかがですか。
○国務大臣(佐藤榮作君) 税の問題として考えますと、いろいろ税の問題があるのでございまして、今法人税はもう少しよけい取れるのじゃないかという御指摘でございますが、こういうものを一つ一つ結論を出すことは、今日の段階としては非常に私は危険があるように思います。そこで税のあり方として、どういうことがいいのかというので、相当の期間かかることではございますが、今回は法律に基く審議会を設けて、基本的な税のあり方を一つ検討しよう、もちろん所得税なりその他一般国民負担の軽減といいますか、も念頭に置き、同時に、税相互間の均衡も十分考えてみる、こういうことで基本的問題として取り組んで参るつもりであります。最も大きく指摘されておりますものは、企業課税のあり方がこれでよろしいのか、あるいは間接諸税のあり方が今日の状況でよろしいか、また、国と地方との財源、税源の分配、それが果してこれでよろしいか、こういう点が最も論議がされておりますが、基本的には矢嶋さんの御指摘になりますように、税の問題、国民負担の軽減という観点に立ちまして、しかも公平な理論でこの問題と取り組むということでなければならないと、かように考えて、十分検討するつもりであります。
○矢嶋三義君 このたびの私は修正案を見て、政府与党は、製造業者課税と小売課税について定見を持っているのかどうか疑わざるを得ない、どういう見解を持っておられますか。
○国務大臣(佐藤榮作君) 今日修正を受けました段階におきましても、政府原案は私ども十分自信を持って出したつもりでございます。製造課税かあるいは小売課税かという御議論でございますが、これにつきましては、いろいろの見方があります。税の建前から申せば、小売課税ということが一番の本筋かと思いますが、必ずしもその扱っております物品の実情なりあるいはまた、その他各種の事情を勘案いたさたければ、税の把握はなかなか困難でございますので、そういう意味でそれぞれの物品について適切な把握の場所をきめて参ったと、かように考えておるのでございます。一つの例をとって申しますならば、甘味料等についてこれを考えてみれば、小売課税ではどうしても把握ができない。そういたしますと、やはり甘味原料のそのもとのところでつかまえる、こういうような処置がこれは望ましいというようなことにもなるのであります。いろいろの点からやはり考えていかなければならない、ただ理論だけでは税の把握は十分できない、税の把握ができないことは、逆に今度は不公平を生ずる、そういう危険のあることを御了承いただきたいと思います。
○矢嶋三義君 私は、主税局長に、一つだけ例をとって承わりましょう。たとえばゴルフ用具について、これを製造業者課税五〇%を小売課税の二〇%に下げている。ところが、そのボールは製造業者課税で五〇%、おかしいじゃないですか、大衆品でないゴルフ用具の方が高いはずです。これを小売課税にすれば、外国から輸入する場合なんか、税は把握できないでしょう、逃げられるでしょう。こういう修正なんかというものは、おかしいと思うのです。それでほかのところを、幾つも幾つもありますが、これを一つ私は主税局長の意見を聞きたい。政府与党は定見を持っているとは思えない。
○政府委員(原純夫君) ただいまお話のゴルフ用具についての修正案につきましては、衆議院の大蔵委員会において提案がありました節に、政府の意見を求められております。政府はこれに大きな疑問を持つという意見を申し上げております。お話の税率が下るという点は、製造課税から小売課税に移りますので、ベースが変って参りますが、私どもは相当程度の負担の軽減になるというふうに判断いたしております。
○矢嶋三義君 こういう修正をやることは、与党は大衆の味方ではないですよ、問題がある。時間がないからこれは追及しない。それじゃガソリン税についてこれは一キロリットル五千五百円になっているが、業者は三千九百十八円に修正してほしいと働きかけているようです。一部には四千七百円程度に押えてはどうかという意見があるのですが、大蔵大臣は幾らで妥協するつもりか。
○国務大臣(岸信介君) 衆議院におきましては政府原案が通過いたしました。参議院の段階でただいま御審議をいただいておるのであります。政府といたしまして、また提案いたしました大蔵大臣といたしまして、原案の成立を心から願っております。
○矢嶋三義君 実質的に答弁しなさい。物品税、入場税の場合でも、あなた、党の七役会議に出席させられてのまされているじゃありませんか。ガソリン税も七役会議に引っぱり出されている。どういう腹で国会に臨んでいるのか、それを答えなければ予算の審議ができない。
○国務大臣(佐藤榮作君) ただいま申し上げますように、原案の成立を心から願っております。何とぞ御協力を願いたいと思います。
○矢嶋三義君 苦しいでしょう。
 次は、簡単に外貨予算について承わりますが、ドルの交換性が回復した機会に為替貿易の自由化にはどういう考えを持っておるのか。昨日前半期の外貨割当が発表されたようですが、いろいろと論じられているようです。政府の大きな方針を承わっておきたいと思います。
○国務大臣(佐藤榮作君) 御承知のように、欧州における各国が通貨の交換性を回復いたしました。わが国におきましても、この結果、当然為替貿易の自由化の方向へ踏み出さなければならないだろう、こういうことでいろいろ準備を進めておるのであります。ただいままでのところ、いわゆる円為替の導入というような点まてにはまだ踏み切ってはおりません。おりませんが、ただいま欧州諸国の通貨の交換性というその結果、わが国自身もこれに対応するような諸準備を進めるべきだ、こういう考え方でおるのであります。こういう基本的考えのもとに立ちまして、今回の三十四年の上期外貨予算を編成いたしたわけであります。そこで、この上期外貨予算の編成に当りましては、競争の激化に対応し得るだけの十分の措置をしたい、そういう意味では為替の自由化の方向に一そう踏み切らなければならない、いわゆる外貨の割当制をAA制に切りかえるということが基本的な問題として考えられるのであります。今回におきましては、AA制の品目を相当ふやして参りました。しかしながら、大きな物資についてのAA制は、今日の段階においては何かと危険が考えられますので、まだこれは研究の段階であるのであります。たとえば鉄くず、これなども将来はAA制にすべきものであろうと思いますが、今日の段階におきましては、AA制にいたしました後に生ずる業界の動きというものに対する十分の見通しを立てなければならないので、ただいまのところ、そこまでは踏み切っておりません。また外国へ参ります場合に、皆様方も御経験なさったと思いますが、外貨など相当不自由であったと思いますが、今回はその点は相当自由にいたすように幅を広げたつもりでございます。いずれにいたしましても、今回の外貨予算では、為替貿易の自由化の方向へは一歩踏み出したという程度でございまして、非常に拡大されたとは申し上げるわけに参りませんが、気持として、その方向へ諸準備を進めているというこの一事を御了承いただきたいと思います。
○矢嶋三義君 いろいろ問題がありますが、その一つとして、国内産業の保護政策との関連をどう考えていくかということが一つの私は大事な点だと思います。どういう考えか、お答え願いたいと思います。
○国務大臣(高碕達之助君) 原則として、ただいま大蔵大臣がお答えいたしましたごとく、できるだけ為替管理にいたしましても、貿易管理にいたしましても、自由の方向へ進んでいきたい、こう思っておりますが、急に自由になりますというと、国内産業に及ぼす影響が相当大きなものがあるわけでございまして、一例を申しますれば、たとえばスクラップのごときも、これをAA制にかえてしまうということになれば、アメリカにおきましては買いあおった結果、高いものをまた競争して買い取るというふうな結果になって、従って、国内の価格を上げる、こういうふうな心配かあるだろうと思いまして、アメリカ以外のところはこれをAA制にいたしておりますけれども、アメリカだけはFA制をとっておる、こういうふうな方針をとっておるわけでございます。いずれにいたしましても、できるだけ早い機会にAA制に持ってゆきたいと思っておりますが、国内の産業に混乱を来たすということをおそれて、ただいまのところ、よう踏み切らないでおるわけなんでございます。
○委員長(木暮武太夫君) 矢嶋さんに申し上げますが、お約束の時間を経過しておりますので、どうぞ御注意を願います。
○矢嶋三義君 高碕国務大臣にお伺いしますが、あなたは近くアメリカへ海外出張されるそうでありますが、どういうお考えでいるか。それから先般東海村を視察されましたが、これと若干の関連があるかと思いますので、お答えを願いたいと思います。
○国務大臣(高碕達之助君) 輸出貿易を促進いたしますことを最上使命と考えております政府といたしましては、今日、アメリカの貿易というものがいろいろ四月、五月ごろには毎年年中行事のごとく問題になっておりまして、それは輸入割当をするとか、あるいは関税引き上げをするとか、こういうふうなことでありまして、それに際しまして現職の大臣が今まで行ってその解決に当ったということはないわけでございますから、私はもし許されますれば、なるべく早い機会に国会の御承認を得てアメリカへ行きたい、こういう考えでおります。
 また科学技術庁の長官といたしまして初めてこの間、二十八日に東海村を視察いたしまして、私は驚いたことは、ほんとうにああいういい場所がよく日本にあったということを感じるほど、非常に感激したわけでありまして、これには従前、農林省があの松林を非常な努力をして作っておった、その位置から申しますると、農林省はあの松林を切りたくないと、こういう考えは無理ないと思いますけれども、これは将来の日本の向上のためには、あの東海村を原子力のセンターとするというふうな考えで農林省ともよく話し合いをつけまして、あの砂防なり、あるいは暴風の害を来たさない範囲におきまして、これは処理してゆきたい。で、総括的に申しまして、今後の東海村は日本の原子力平和利用のセンターといたしてゆきたい、こういうふうな感じを深くいたしたのであります。
○矢嶋三義君 総理、私、三月九日の総括質問のときにあなたが答弁を保留されて、また誤まって答弁された点を御訂正願いたいと思う。私が質問しましたところ、あなたは乗用車として国産車を使っていますと答弁していますが、箱根へおいでになるときの乗用車は、私確認したんですが、あれは国産車じゃないじゃないですか、あれはどういうことですか。
○国務大臣(岸信介君) 私が国産車を使っておるというのは、官庁用の車として国産車を使っております。私用の場合に、私の使用車は、実はクライスラーを持っておりまして、古いクライスラーでありますが、これを使うこともあります。私用の場合には使っております。
○矢嶋三義君 まさに両岸ですね。それからもう一カ所、これは私今ここで記憶いたしておりませんから、取り調べてあとで申し上げますと、これは箕山会解散の六千万円の申告の件についてでありますが、政府委員にも言っておきましたが、取り調べてあとで申し上げますということでしたが、どういうことでございましたでしょうか。
○委員長(木暮武太夫君) 矢嶋さん、一つ約束の時間でありますから、どうぞ……。
○矢嶋三義君 委員長、四十分しか与えなかったんですから、もう少し許して下さい、もうちょっとで終りますから。
○国務大臣(岸信介君) 箕山会は、解散いたしましたときのなににつきましては、それぞれ法規によりまして届出をいたしております。
○矢嶋三義君 と同時に、あなた個人としてお受けになった政治献金ですね、これは確定申告しなきゃならぬわけです。しているかしていないかと聞いたときに、取り調べた上で他日お答えしますということだったのですが、どういうことだったでしょうか。
○国務大臣(岸信介君) それはそれぞれその機会に適当に申告いたしておるということでございます。
○矢嶋三義君 それから各国務大臣に聞きます。国民は相当の税金を納めているのです。従って、総理大臣初め各国務大臣並びに国会議員というものは、税法に基いて確実に納税することは申すまでもないと思う。この確定申告を出しているか出していないか、それをお答え願います。どういう人が確定申告出すかということは御承知だと思うのです。あとで私は責任を追及しますから、出しているか出していないか。特にあなた方は、個人的に後援八等から政治献金を受けるわけです。これが定期的に受けるのならば、これは給与所得に入れなくちゃならぬ。ところが、臨時的なものは雑所得として、これは申告しなきゃならない。矢嶋は残念ながら国会の歳費のほか一円の収入もないから申告しておりません。しかし、あなた方は申告しているかいたいか、それをはっきりお答え願います。その後援会等からいただいたものを雑所得なり給与所得で申告しているかどうか、総理大臣以下各大臣の答弁を求めておきます。
○国務大臣(佐藤榮作君) 私もなかなか税法がよくわからないので、今回は特に大蔵省の国税庁の役人と相談してちゃんと成規のなにで、各原稿料その他ずいぶん私ども入っているものがわからなかったりいたしますので、間違いのないものを作って提出いたしたと思っております。
○矢嶋三義君 各大臣答弁しておいて下さい。大事ですよ。冗談じゃないのですよ。さっき言ったように赤ん坊まで一人一万九千円という税金を納めているのですよ。
○国務大臣(世耕弘一君) 規定の通りに申告いたしております。
○国務大臣(遠藤三郎君) 私も、スズメの涙ほどの届出をいたしております。今、大蔵大臣から話がありましたように、税法のこと詳しく知らぬものですから、秘書に全部やってもらっております。
○国務大臣(伊能繁次郎君) 所得がありましたものについては申告をいたしております。
○国務大臣(高碕達之助君) 終戦後毎年正確に申告しております。
○国務大臣(三浦一雄君) 去る三月十六日に確定申告をいたしております。
○国務大臣(藤山愛一郎君) 確定申告はいたしております。
○国務大臣(山口喜久一郎君) 私は後援会等を持ちませんから、矢嶋さん同様な申告をいたしております。(笑声)
○国務大臣(愛知揆一君) 確定申告は毎年やっております。
○国務大臣(橋本龍伍君) 税の申告はきちんといたしております。
○国務大臣(倉石忠雄君) 確定申告はいたしております。
○国務大臣(坂田道太君) 私も矢嶋君と同じであまり金がございませんので、大体秘書がやっておると思いますが、ただこの間、大臣給料が国会議員の皆さん方より低いということを知りまして、厚生省の事務当局で間違いまして一月と二月分を十一万円で計算してやりまして、三月になりまして、それは支払い超過だということで四万五千円払い戻しということで、これは全部申告いたしております。(笑声)
○国務大臣(寺尾豊君) 私も矢嶋さんと同様何の収入もありませんが、ありましたときは、むすこにその手続をやらしております。
○国務大臣(青木正君) 去る三月十六日に定められた通り申告しております。
○矢嶋三義君 これで終ります。
○委員長(木暮武太夫君) 御出席の皆さんは全部答弁にお立ちになったようです。
○矢嶋三義君 これで終りますが、これは笑い事じゃないのですよ。赤ん坊まで含んで一人当て約二万円の税金を納めている。日本国民の税負担というのは大きいのです。そこで、政治家は、政治家になると金もうけになるぐらいに国民は思っている。そこに選挙というのが濁る。政治というものがよごれてくる。こういう大きな原因があるので、われわれは税法に従って完全に申告し、納税しなくちゃならぬと思う。特に勤労者のサラリーマンは源泉徴収で百%微収されているのですからね。私は今、ことさらに失礼ながら答弁を求めましたがね。大臣でですよ、国会からもらう歳費あるいは大臣としてその差額を各省庁から給与を受けますが、それ以外に五万円の収入があったらば確定申告をしなければならないのですよ。私は、大臣諸公で、それ以外に五万円の収入のない大臣諸公というものは常識上考えられない。確定申告していない大臣は、ここであえて追及しないけれども、あなた方、税法知らないのじゃないですか。五万円以上あったらば確定申告しなきゃならないのですよ。国民がその答弁を聞いたら不思議だと思いますよ。あれだけりっぱな洋服を着て、あれだけの生活水準を保っておりながら、行政府並びに国会から支給される以外に五万円の収入も日本の国務大臣にないと言ったらとにかく人が笑いますよ。従って、私は、このいかんによってはその責任を追及して参る。なぜ私はこういうことを出すかというと、岸さん、あなたが財産目録を公開して国民の疑惑を解いたらいいじゃないかということはどなたも言っているわけです。それをあなたに要請したけれども、あなたは出さない。私、調べてみますと、あなたは国会から百四十五万五千円、総理府から年間五十八万三千八百円、合せて国会並びに総理府から支給されるところの給与は二百三万八千八百円です。ところが、次の点は私はちょっと控えますが、あなたは自分の出した確定申告と比べてみて下さい。それと、まあ建築費約一千万円の、やはり熱海の別荘がどうしてできるのだろうかという疑問が国民の中に浮んでくるわけです。だから、そういう点を国民が納得できるようにしなくちゃならぬと思う。一体、政治家はですよ、ことに大臣が正式にお役所に出す書類というものは明確にしなくちゃならないと思う。正しく書かなければならぬと思う。国民の範でなければならない。たとえば、あなたの選挙費を見ますと、山口県の第二区で、あなたは選挙費用五十二万千三百円と申告している。弟の佐藤さんは、同じ選挙区で五十一万五千六百二十二円と申告している。こんな五十二万とか五十一万で選挙をやれるはずがない。それを政治家が全部こういう数字を出して、そうして、お茶を濁しているところに、日本の選挙はきれいにならない、政治がりっぱにならない根源があると思うのだ。決してこれは笑い事じゃないと思うのですよ。(「自分はどうだ」と呼ぶ者あり)だから、それとこの確定申告の答弁は、日本の政治をりっぱにするに非常に大切なことである。最近、中央並びに地方に、政治家を中心としてのこの汚職というものがよく起る。お互い苦しいわけですね。国民が間違っているわけですよ。政治家になれば金もうけができる、金を持っているのだというようなことで、諸君も選挙前に選挙民からたかられて困っているのでしょう。だから焦点を明確にして、この国民の啓蒙もしなけりゃならぬ。それにはわれわれ政治に携わっている者がまずきれいになる。そうして、選挙費用の申告にいたしましても、その法定選挙費用で選挙ができないならば、われわれは立法府でありますから、法の改正もしようじゃありませんか。それから、確定申告等は正確にしなければならない。そこまで私たちは掘り下げなければ決して日本の政治というものはりっぱにならない。そういう意味において岸さんが、私は、あなたの財産目録を公開されることが、あなた自身のためにも、日本の政治のためにも幸いするのではないかというので、あえて忍んで先般御要求を申し上げたわけでございますが、あなたからそれに対する反応が出ないことを非常に遺憾に思います。これらの問題については、私、いろいろと資料をもって質疑したいと思っておったのでありますが、同僚諸君の質問時間その他等の関係で、委員長の配慮をいただきながらも四十二、三分間しか時間を持てなかったことは非常に残念でありますけれども、しかし、審議ということもありますから、私はこのところこれで質疑を終りますが、総理大臣が内閣を代表して、また大政党、与党自由民主党の総裁として岸さんに一つここではっきりとあなたの所信を国民に向って、矢嶋に向って御答弁いただきたいと思うのであります。
○国務大臣(岸信介君) 政治を正しくし、清くするために、政治家自身におきましても非常に身を慎しみ、あらゆる点において、特に金の出し入れというようなことについては、これを明確にする必要があるという御趣旨につきましては、私も全然同感でございます。ことに税のごときは、御指摘になるまでもなく、国民全体が国のためにおのおの分に応じて分担しておるわけでございますから、これが正確にそれぞれ申告されて、正確に納められることは当然であります。特に政治家であり、また閣僚というような地位にあります以上は、特にそういうことについては正確に考えらるべきものであり、また私自身といたしましても、特にこれは従来注意をしてきておるつもりでありますが、さらに十分な意を用いていきたい、かように思っております。
○矢嶋三義君 これをもって終ります。
○委員長(木暮武太夫君) 以上にて矢嶋委員の質疑は終了いたしました。
 これをもって質疑通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終局したものと認めます。
 これにて約一時間休憩をいたしまして、再開後直ちに討論に入り、引き続き採決を行います。
 それでは午後三時四十五分に再開することとして暫時休憩いたします。
   午後二時四十三分休憩
   ―――――・―――――
   午後四時十一分開会
○委員長(木暮武太夫君) これより委員会を再開いたします。
 昭和三十四年度総予算の討論に入ります。片岡文重君。
○片岡文重君 私は日本社会党を代表いたしまして、昭和三十四年度一般会計予算案外二案に対し反対の討論を申し述べたいと存じます。
 およそ国民の負託を受けて政権を担当する者にとりましては、国民に対する深い愛情と誠実なる政策、公明なる出所とが何よりも大切であり、いやしくも国民の生活を思わず、あるいは羊頭を掲げて国民を欺瞞し、あるいは血税を乱費して私腹を利するがごときことは断じて許すべきではないとかたく信ずるのであります。すでに衆参両院を通じ、二カ月間にわたって続けられました審議の結果、私どもが知り得ました明年度予算案の内容は、まことに残念ながら岸内閣の性格をそのままに、冷酷と欺瞞とそして汚職のにおいきわめて濃厚なるものであったのであります。以下事例をあげまして、本予算案の性格と、わが党の反対する理由とを明確にいたしたいと存じます。
 第一は、本予算案の基本的性格と経済見通しについてであります。政府は三十四年度における財政運営の基本方針について、わが国経済の安定的成長と質的改善をはかり、もって国民生活の向上と雇用の増大に資すると述べておりまするが、このかけ声こそは、まさに雇用と国民生活の犠牲の上に立てられたところの大企業の安定的発展とその体質改善の計画をカムフラージュするための何ものでもなかったと思うのであります。経済政策はまず経済安定、すなわち通貨価値の維持を目標とすべきか、それとも国民生活の向上と雇用増加のために発展を指向すべきか。これは資本主義経済のメッカ、アメリカにおいても、共和党政府と民主党とが互いに真剣になって追求しておる基本問題であります。現在の資本主義経済が常に大企業間の投資競争に追われているという事実、かつ価格の決定が常に労働者賃金の水準を上回っておるという事実、これはアメリカも日本も本質的には同じであります。従って現在の資本主義経済は、構造的に常にインフレ要因を内部に包有しておるのでありますから、このインフレ要因をはらみつつ、まずインフレ抑制を考えるべきか、あるいは多少のインフレを冒しても、国民経済生活の向上と雇用の増加をはかるべきか、これは保守党政府としては当然真剣に考慮さるべき眼重要課題でなければなりません。しかるに岸内閣は、これらの最重要課題について、ほとんど検討らしい検討も行わず、まさに風に吹かるる枯れアシのごとくに、その日その日の波の間に間にアメリカ景気におんぶしておるだけであります。日本経済の要請する課題には何らの回答も与えておりません。このような基本的構想を全く欠如して編成された予算案について、われわれが賛成し得ないことは当然のことであります。また、このような基本的重要課題の検討を怠った当然の帰結として、政府の経済見通しは全く見当はずれに終始しておると申しても過言ではございますまい。
 すなわち本予算案提出に際して、政府が二月初めに提示した明年度経済見通しは、僅々二カ月を出でずして早くも狂ってきた事実を私は指摘せざるを得ないのであります。すなわち政府の予算編成の土台となった経済見通しがすでに狂っておるということを申し上げるのであります。われわれは明年度経済において財政支出が大企業向け投融資に集中している点、政府みずから国庫対民間収支が約二千四百億円の支払い超過になると予測しておる点等を指摘いたし、このままでは現在の過剰施設をかかえた上に、さらに設備投資を必要以上に拡大されるおそれがあると警告をいたしたのでありますが、当時政府は、明年度の設備投資は本年度より下回るのである。経済過熱も起きないし、原材料輸入もそんなにふえないと強弁いたしておったのであります。ところが事実はどうでしょう。御承知のように、一月には明年度の産業設備投資は本年度より一・一考減少と発表しておきながら、二月二十五日付の通産省の集計によりますれば、大企業二百社の設備投資が本年度より実に一六・三%も上回るということを明らかにいたしております。しかもそのおもなる産業は、鉄鋼、非鉄金属、石油精製、自動車、硫安、紙パルプ、合成繊維等々、いずれもきのうまでの不況産業であり、今日も多くの過剰設備をかかえておる産業であります。これらが目の先に財政投融資のてこ入れを期待しながら、再び設備投資競争を開始せんとしておるのであります。民間投資について、全く民間の自主的調整に待つという、大企業の自主性尊重の方針で政府がおるのですから、これでは再びいわゆる経済過熱のおそれなしとは断言できないのではないか。しかも景気回復のめどとしておるアメリカ経済の動向を見ましても、とうていV字型の経済上昇が長く期待できるとは思いません。景気回復の唯一のかぎは財政支出の増加と見られております。すでに財政インフレの様相を呈し、早急に景気てこ入れの積極政策がとられる見込みは全くありません。それどころか、自動車販売高は昨年よりも減少必至と見られております。また六月になると、鉄鋼ストが必至でありましょう。これら目前のアメリカ経済の動きがどうなるか、これが世界の注視の的でありますが、わが国の自動車産業、鉄鋼業がさらにこれからよくなるのか、悪くなるのか。本年六、七月ころがおそらく一つの山でありましょう。岸内閣のように、ばく然とアメリカ経済の上昇を期待し、これに見合ってわが国経済も好転するであろうというような甘い観測は、とうてい通用しないのではありますまいか。これらの経済予測の基本条件についてわれわれは今まで何ら納得できる説明を承わることができなかったばかりではありません。政府の経済政策の前途について、ますます不安を抱かざるを得ないという結論に相なったのであります。反対を申し上げるのは当然と考えるのであります。
 第二は、本予算案の審議に当って明らかとなりました数多くの欠陥について、二、三申し上げてみたいと存じます。すなわち明年度予算案によりますれば、本年度、すなわち三十三年度の当初予算に比べて、一般会計予算において千七十一億円、財政投融資計画において千二百三億円と、それぞれ大幅に増額されておるのでありますが、このような大幅増額も、真実、国民大衆、特に低所得層の生活改善等のために行われるものでありまするならば、私どももその増額に対し何ら反対するものではありません。しかしながら、たとえば一般会計の歳出増加の内訳を見ましてもおわかりいただきまする通り、大企業の擁護と利権につながる公共事業費四百十一億円、死の商人――軍需産業に奉仕する防衛関係費七十五億円、汚職のにおいきわめて深い賠償関係費六十一億円、公共事業費のひもつきとなって地方自治体の自由にならない地方交付金二百四十六億円、以上四項目だけをもって見ましても、増額の八〇%弱に及ぶのであります。金額にして七百九十三億円となっております。財政投融資計画の増額分について見ましても、開発銀行、電源開発会社、輸出入銀行、石油資源開発等の四機関だけを見ましても四百六十三億円、すなわち増額の三五%を集めておるのでありまするが、一方中小企業関係は、国民金融公庫、中小企業金融公庫、中小企業信用保険公庫、商工中金等、すべてを計算いたしてみましても、金額にしてわずかに二十七億円、すなわち二・二%程度の増額にすぎないのであります。わが国工業統計の示すところによりますれば、従業員千名以上の大企業はわずかに四百五十カ所程度にすぎません。財政投融資が集中される大企業は、このうちのさらに少数企業であることは申し上げるまでもないところでありましょう。一方農林漁業関係はどうでありましょう。農林漁業金融公庫、愛知用水公団、森林開発公団、農地開発機械公団、さらに開拓者資金、特定土地改良特別資金、これらまで一切加えて見ましても四百三十二億円、増額の一二%であります。のみならず、農林漁業金融公庫九十億の増額分の中には、回収金三十三億の減少見込みを含んでいるのでありますから、実質的増額はわずかに五十七億円にすぎません。本予算案に示された一般会計歳出総額、御案内の通りに、一兆四千百九十二億円でありますが、この中に占める農林漁業関係予算は実に七・四%にすぎません。かつて昭和二十七年度予算において予算総額に対し一六・五%を占めておりましたこの関係予算が、自来年々減少の一途をたどりつつありますことは、明らかに自民党内閣が農林漁業政策を軽視していることを雄弁に物語って余りあると断じてはばからない次第であります。御承知の通りに、農林漁業の振興対策、中小企業の近代化等は、岸内閣としても、自民党としても、声を大きくして国民に公約した重要政策の中に加えられておったはずであります。しかるに選挙に当っては一言半句も発表しておらない。大資本のためには惜しみなき大盤ぶるまいを行なって、鳴りもの入りの宣伝をした農林漁業や中小企業のためにはほんの申しわけ的な割当をもってお茶を濁しておる。この欺瞞性を私どもはこの上もない悪徳として糾弾する次第であります。
 次に、政府は減税と国民年金の実施をもって、明年度予算案の特徴であるがごとくに宣伝いたしておるのでありますが、その減税案なるものは、与党たる自民党によってさんざんにこずき回され、修正をされ、今なお確定されるに至らないものがあるほどにずさんであり、権威のないものであります。金持ち階級の遊興用玩具とも言うべきゴルフ用具、猟銃、書画、骨董などというものについては大幅な減免税を行なっております。政府並びに自民党の税制がいずれの方向を向いておるかを物語るものとして興味なくもありません。所得税の免税点の引き上げによる恩恵は八十六万人でありますが、所得税免税点以下の低所得者層二千余万人は、かえって逆に、電気、ガス、鉄道運賃、新聞、ラジオ等々、生活必需費用の全面的値上りの被害だけを受ける結果となる。これが救済について政府は一体どう考えておるというのでありましょう。ほとんど考慮されておらないというのが実情であります。社会保障関係について考えてみましても、岸内閣は去る一月党内の派閥争いのために、いわゆる反主流派と称せられる五名の閣僚を更迭いたしたのであります。その際厚生行政のベテランとあえて自負される橋本厚生大臣を文部大臣に持っていかれました。文教政策には、いささか自信があるといわれておる坂田道太君を厚生大臣に持っていかれました。せっかく、平素研さんを積んでおられる両君を、わざわざそれぞれ全くのしろうと畑に追いやっているのでありますが、このことは、岸総理が文教並びに厚生行政に対して、いかに無関心であり、自民党の青少年問題や社会保障問題についての宣伝が、いかに根も葉もないこまかしであるかということを、最も端的に、雄弁に物語っておると考えられます。論より証拠、社会保障関係費について申し上げまするならば、なるほど明年度は、本年度に比較して二百二十一億円の増加にはなっておりますけれども、なお一般会計予算総額の一〇・四%に過ぎません。これを西独の三四%、スエーデンの二九%等に比較いたしますれば、文化国家を志向するわが国憲法の建前から申しましても、あまりにもお恥かしい次第といわなければなりません。ましてや二百二十一億円増額の中身を検討いたしまするならば、その五割近い百十億が国民年金費であり、五十八億円が国民健康保険助成費であります。すなわち政府は、これによって明年度中に被保険者六百万人増加を見込んでおるようでありますが、このような、なまぬるいやり方では、とうてい公約通りに三十五年度中に、皆保険を実現するということはでき得ないと信ずるのであります。
 ことに、国民健康保険について、わが党は同法成立に当って、財政困難な地方自治体の窮状を思い、国民健康保険の国庫負担三割を強く主張いたしたのでありましたが、わずか数億の差額であるにもかかわらず、政府は、頑迷にこれを聞き入れず、かつ患者負担についても、わが党は、低所得者層のため全額国保負担とすべきであることを年来の主張といたしておったのでありますが、特にその際は、まげて初年度患者負担三割、次年度二割、次次年度一割、ついで全額国保負担へとの妥協的忠告も申し上げましたのでありますが、これまた残念ながらお聞き入れ願われず、今や低所得者層は、この国民健康保険からさえ締め出される運命に泣いておるのであります。また国民年金制度につきましては、わが国社会保障制度にとって、まさに画期的な前進でございます。たとえそれが選挙のための手段とはいいながら、政府並びに自民党の諸君が、国民年金制度を実施することを社会的趨勢と認めるに至りましたことは、時勢を悟ったものとして幾分の進歩を遂げられた点をわれわれも認識するにやぶさかではありません。しかしなが国民年金は、社会保障である、この根本理念を理解できずに、あくまでも保険方式を固執して、最低醵出期間、所得制限等幾多の制約を設け、これまた、低所得者層の加入を大きくはばんでおるのでありますが、申し上げるまでもなく国民健康保険といい、国民年金といい、これらは、いずれも低所得者層の人々を考えずしては、存在理由の大半を失う制度であります。政府の社会保障制度に対する考え方は、依然として慈善事業的感覚の域を出ておりません。もし、不幸にして今後長く岸内閣の、このような政権が続くといたしまするならば、憲法二十五条に規定する健康で文化的な生活を全国民が享受できる日は、果していつの日ぞやと申し上げたいのであります。
 次に、地方財政について若干触れてみたいと存じます。地方交付税率は一%引き上げられ、地方財政計画は一千十八億円の増ということになっております。歳出増加の五一%は、国のひもつき事業で占められ、地方単独事業の増額分は、わずかに一%程度しか残されておりません。政府が取りつくろおうとしている点は、ただ大蔵省の窓口から見た地方財政計画のバランス・シートだけであり、地方自治をいかに育成するかという当然の課題すら、全く放棄されているのでありますから、地方自治体が、年々国の下請機関に転落しつつありますことも、けだしやむを得ないといわなければなりません。
 第三の反対理由について申し上げます。それは、政府の重大な憲法違反と欺瞞的性格についてであります。まず第一に、賠償問題をめぐっての岸内閣にからまる汚職の疑いについてであります。現在の賠償協定は、相手国が日本の国内業者と任意に随意契約を結び、これを日本政府が賠償計画に組み入れて認証を与えていくという仕組みであります。その間にあって、協定実施の交渉に当る政府みずからが、随意契約のブローカー的行為をやり、利権あさりに介入したのじゃないかという疑いは、もはや拭うことのできない国民の大きな疑惑となっているのであります。本来ならば、日本の賠償支払いは、東南アジア諸国家に対して、きわめて大きな経済的貢献をするものと存ずるのでありますし、一たび国際間において取りきめられた以上、わが国は、誠実にこれが履行の義務を負うべきことは論を待ちません。従いまして国民のこれに対する負担も、また非常なものでありますから、政府としては、慎重な上にも慎重な態度をもってこれが履行の責任を果すべきでありましょう。
 しかるに岸内閣は、国民の負担を思わず、かえっていまわしい汚職の疑いをすら招いているということは、何としても許すことのできない不始末といわざるを得ません。今後、賠償支払いの継続される十年、二十年の長きにわたって、このような不祥事が許されるといたしますならば、賠償の支払いは、いよいよ日本の政治を腐敗させ、相手国をも毒することになりかねないとは、ただに私だけの杞憂にすぎぬでありましょうか。私は、善処を要望してやまないのです。
 次に、防衛庁関係について申し上げます。防衛庁費は百六十億円も増額されましたほかに、国庫債務負担行為百九十八億円、継続費六十八億円、繰越明許費約百億円を加えて、総額実に一千七百億円をこえる大規模をもって自衛隊の増強をはかっているのでありますが、加えて政府は、憲法は在日米軍の核兵器持ち込みを何ら制約できない旨を明らかにいたしたのであります。憲法学者の多数の反対を押し切って、このような決定をいたしたのであります。のみならず、先にわが党が提案いたしました非核武装宣言の決議についても、これを拒否したばかりでなく、防御用兵器の概念を次第に拡張して、核兵器所有の意図のあることを明確にいたし、さらに近く日米安保条約を改定して相互援助条約にまで強化しようといたしておりますことは御承知の通りであります。このように憲法違反の明瞭である予算案に、われわれが賛成し得ないことも、また当然でございます。
 次に、日中国交回復について申し上げますならば、中国側が、政治と経済とは分離できないと繰り返し説明しているのに対し、岸首相は、従来通り積み重ね方式をとると言明し、依然として日中国交回復については、友情と誠意をもって交渉する意図の全くないことを明らかにいたしております。一方では、社会党の国民外交の努力を無視し、かつ、中国のめざましい経済発展にも、しいて目をつぶり、貿易の再開を切望する日中両国民の要望を押えつけているのでありますが、このようなやり方は、まさに日本の現下貿易経済と国民感情を知らざるもはなはだしきものと言わざるを得ません。岸総理のすみやかなる反省と、隣邦友好への努力を切に要望してやまない次第であります。
 最後に、一言申し上げたいのです。去る二月二十二日報道されました朝日新聞の世論調査によりますれば、三十二年七月、岸内閣は続いた方がよい、こういう答えは、四二%あったのであります。ところが、本年二月には、この四二%が、実に二六%と大幅に減少し、逆に三十二年七月、一七%でありました岸内閣はかわれ、こういう答えが、僅々一年半足らずの間に、四二%にも激増いたしておるとのことであります。私は、この報道を拝見いたしましたとき、欺瞞と汚職、愛情なき岸内閣に対する国民の怒りが、とうとうとして全国に巻き起っていることを直感せずにはいられませんでした。日本の政治を明朗にし、生活文化の水準を高めますために、岸総理の一日もすみやかなる善処を心から御要望申し上げまして、私の反対討論を終ります。(拍手)
○委員長(木暮武太夫君) 次は、西田信一君。
○西田信一君 私は自由民主党を代表いたしまして、昭和三十四年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算の三案に対し、賛成の意を明らかにせんとするものであります。
 まず、予等編成の前提条件となる内外の経済環境を顧みまするのに、空前の好況をたたえていた世界経済も、一昨年半ばころに頭を打ち、世界景気の支柱であるアメリカ経済も、景気停滞の兆を見せました。また西欧諸国も、貿易の逆調、金ドル資金の偏在等がやや顕著となり、自国通貨の擁護、外貨準備のため、緊縮政策をとらざるを得なくなる一方、わが国におきましても、三十一年末ごろより、急激に国際収支が悪化をいたしましたため、三十二年五月に至ってやむを得ず緊急総合対策を決定、一連の引き締め政策をとったのでございます。このため国内の諸需要は、漸次減退いたしまして、国際収支も、同十月より黒字に転じ、三十三年度予算編成のとき大蔵当局が示された国際収支の目標、黒字一億五千万ドルも、今日でははるかにオーバーいたしまして、三月までの実質収支は五億七、八千万ドルが予想せられておる現状であるのであります。
 この十年来、外貨準備高が最低を示しました三十二年九月の四億五千五百万ドルに比べますと、去る二月末の準備高九億三千八百万ドルは、まさに驚嘆に値する回復ぶりでありまして、終戦後最高の準備高であるのであります。三月末は、さらにこれをオーバーすること、必至であります。これは、ひとえに一昨年五月の緊急総合対策による景気調整の結果であると確信いたす次第であります。三十三年度予算における経済基盤強化資金の保留等は、本委員会の速記録にも載っておりますのでありますが、かなり当時活発な論議の的となりましたが、こうした一連の低姿勢予算が奏功いたしまして、今日の回復となったことは、まことに御同慶にたえません。この事実は、社会党の諸君も率直に認めていただかなければなりません。
 政府の昭和三十四年度予算編成の方針といたしましては、世界経済の立ち直りを前提として、今後の財政施策は、過去の経験に顧みて、長期にわたる通貨価値及び国際収支の安定保持をその第一義の目標とし、三十四年度はもとより、後年度における財政の健全性の確保をも十分考慮し、財政の国民経済に与える影響を適度のものとしながら、経済の安定的成長に資するとともに、他面、特に経済基盤の強化に留意し、経済の体質改善をはかることを基本とすると述べておられますが、おおむね適切であると賛意を表する次第であります。
 次に私は、予算の内容について、論及をしてみたいと存じます。
 第一に、本予算案は、一般会計で歳入歳出ともに一兆四千百九十二億円でありまして、三十三年度予算に比べ九百八十億円の増加、戦後最高の予算であります。さらに財政投融資の総額は五千百九十八億円でありまして、三十三年度予算に比べ千二百三億円の増加と相なっておりまして、一般会計予算とともに、かなり規模が大きくなっておるのであります。これについて社会党では、景気調整を名目として、不況被害対策の必要を全く無視してきた岸内閣が、どうして本年度の当初予算より大幅に増額したのか、われわれは、大きな疑問を持つと、このようなことを発表せられておりますが、この論旨こそ、国家予算の背景をなす経済基盤の強化拡充されたる現実を無視するところの暴論でありまして、われわれの了解に苦しむところであります。
 私は、本予算案が金額においても、またその内容においても、かなり積極性を持っていることを認めるものでありますが、これは経済基盤の強化拡充による当然の帰結でありまして、何ら危惧の念を持つ必要はないと思うのであります。
 本予算案は、わが党並びに政府が通貨価値の維持と国際収支の安定を目途として、慎重審議、編成されたものでありまして、健全財政の基本方針を断じてくずしていないと申し上げてよいと思うのであります。
 第二に、本予算案は、経済の安定的成長を支えるため、周到なる経済基盤の強化策が講ぜられておるのであります。すなわち第一の要件たる基礎部門の整備拡充のため、まず道路関係におきましては、二十九年度から出発いたしました道路五ヵ年計画の構想を、さらに新たにいたしまして、三十三年度より一兆億円を投入する道路五ヵ年計画に改め、経済基盤強化資金百億円を引き当てる一方、揮発油税等の増徴をはかり、また一般会計よりは、前年度比二百九十四億円増の九百十七億円、特別会計において、前年度比三百二十二億円増の千五億円を計上いたしております。
 次に、港湾につきましては、特別会計を設けて七十七億七千万円をもって計画的建設をはかる一方、一般会計の公共事業費の中において百十七億円を計上、相呼応することになっておるのであります。道路、港湾の整備は、今後のわが国産業の発展並びに輸出入の伸張に大いに寄与することを確信いたすものであります。
 さらに、第二の要件として、輸出の振興のためにも技術援助の強化、後進国援助のための国連特別基金への加入等の措置を講じて、従来の輸出振興策を一段と推進することにいたしております。
 第三に、税制改正による国民負担の軽減でありますが、本予算案は国税、地方税を含めて初年度五百三十三億円、平年度にして七百十七億円の減税を織り込んでおります。これはわが党の公約の一つでありますが、まず国税の方を見ますると、三十四年度において所得税三百七十九億円、物品税三十四億円、入場税十九億円等でありますが、特に所得税について申し上げまするならば、扶養控除を第一人目の現行五万円を七万円に、第二人目、第三人目の現行二万五千円を三万円に、第四人目以下を現行一万五千円を三万円にそれぞれ引き上げております一方、税率においては、適用範囲を引き上げて、夫婦と子供三人の標準給与所得者の非課税限度は、現行二十七万円より三十三万円に引き上げているのであります。これによって、従来月給二万二千五百円まで税金がかからなかったのが、改正案によりますと月給二万七千三百円までが税金がかからなくなったわけであります。これは社会党が昨年の総選挙で公約をされました年収三十二万円、すなわち月給に直しますと二万六千六百六十六円をはるかに上回る数字であります。また税率一〇%の適用を受ける最低税率の範囲を、五万円から十万円に引き上げられております。このため恩恵を受ける給与所得者の数は、前者におきまして初年度九十二万人、平年度百二十一万人、後者におきましては初年度千百十三万人、平年度千八十五万人となりますが、扶養家族をも含めますと、実に膨大な数に相なる次第であります。このほか、退職所得の特別控除額の最高限度を、現行五十万円を百万円に引き上げたり、入場税、物品税等の減税を含んでおるのであります。また地方税関係におきましては、個人事業税の基礎控除を十二万円より二十万円に引き上げる一方、法人事業税の税率を引き下げ、固定資産税の免税点を引き上げる等によるほか、所得税の減税による住民税の軽減を入れますと、初年度百一億円、平年度二百二十九億円が減税されるわけであります。
 第四に、農林漁業関係でありますが、最近この関係は予算が漸減するという傾向に対しまして、本予算案では土地改良、開拓等に四十四億円を増額いたしましたほか、林道開発、農林漁業金融公庫の貸付ワクの増大、全国蚕繭協会五の創設、畑作振興あるいは寒地農業対策等にも所要の措置が講ぜられておるのであります。
 第五に、中小企業対策は、これまたわが党の重要な政策の一つでありますが、中小企業設備近代化のため補正金交付の措置を講ずる一方、新たに従業員等の退職金共済金制度を設ける等の諸経費のため、十億七千五百万円を増加し、前年対比約二倍に当るところの二十二億余円を計上いたしておるのであります。また信用保証協会に対しましては、産業投資特別会計から十億円を出資いたしまするほか、中小企業金融公庫、国民金融公庫、商工中金等に対してそれぞれ若干の新規投資が行われておるのであります。
 第六は、文教関係でありますが、義務教育費国庫負担金、国立学校運営、文教施設費、育英事業費百五十億円増、一千五百九十七億円を計上いたしておりますが、この中で特に注目すべきことは、三十四年度を初年度といたしまするいわゆるすし詰め学級の解消、老朽校舎の改築等を行う五ヵ年計画が発足いたしたことでありまして、本年度だけでも七十七億円の予算で四十七万七千坪の整備を行うことに相なったのであります。
 第七に、社会保障関係でありますが、一般会計における関係費は前年度比二百二十一億円増の千四百七十八億円でありますが、これは国民皆保険の達成を初めとし、わが党並びに政府の福祉国家実現へのなみなみならぬ熱意を示すものでありまして、国民諸君の深く喜ぶところであります。ことに三十四年度より国民年金制度が創設されまして、これに対し百十億円が計上されております。この制度は、老齢者、身体障害者、母子世帯の三つの年金制度とし、新年度よりさしあたり無拠出の年金支給に踏み切ったのでありますが、この恩恵に浴する二百五十七万人の人々はもちろん、国民全体に明るい希望を与えましたことは特筆さるべき点であります。
 第八に、財政投融資四千三百十億円の配分計画でありますが、これは現下の国内外情勢に照らしておおむね適切であると考えられます。ただ注意すべきは、三十四年度は国庫収支は二千四百億円の散布超過が見込まれ、一部においては景気過熱論さえ起っている現実があるのであります。しかし政府の金融政策よろしきを得まするならば、絶対にこの心配は要りません。その措置としてはいろいろな方法が考えられまするが、願わくば政府におかれまして、財政と金融とが一体になってその運用に万全を期していただきたいのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)
 ただいま社会党を代表する片岡君の本予算案に対する反対意見を拝聴いたしましたが、その所論はおおむね観念的、非現実的かつ懐疑的であると思うのでありまして、われわれのとらざるところでありますが、このことは、本予算案に対する組みかえ案も修正案も提出せられないことが、これを明瞭に物語っておるものと言わなければなりません。
 以上、私は、新年度予算の内容を検討いたしました結果、よく内外の経済情勢に対応し、かつ公約を忠実に実行に移して、九千万国民の期待と信頼とにこたえた適切妥当なものであるとの確信に立ちまして、三十四年度予算三案に対し賛成をいたすものであります。(拍手)
  ―――――――――――――
○委員長(木暮武太夫君) この際、委員の変更がありましたので御報告をいたします。
 田中一君、曾祢益君が辞任し、その補欠として荒木正三郎君、吉田法晴君が選任せられました。
  ―――――――――――――
○委員長(木暮武太夫君) 次は千田正君。(拍手)
○千田正君 私は、ただいま議題となりました昭和三十四年度一般会計予算外二件に対しまして、まことに遺憾でありまするが、反対せざるを得ないのであります。(拍手)以下きわめて簡単に反対理由を申し述べます。
 私は、昭和三十四年度予算においては、政府はすべからく、外にあっては国の自主独立を完成し、内にあっては日本経済の深刻な危機を克服することを目標とした、しこうして、真にその目的に沿うごとき内容を含んだ予算案こそ編成さるべきであると信じておるものでありますが、近年の岸内閣の諸般の政策及びその動向について考察いたしまするに、そしてまた、今次の予算案に対してその内容を見るに、事実は必ずしもそうではないことに対しきわめて遺憾に存ずるものであります。
 今、本予算案を見まするに、歳入歳出ともに一兆四千百九十二億、前年度に比して大きく膨脹しているのでありますが、その歳入増加分は、大部分が租税の自然増収に対する過大な見積り、あるいは揮発油税の税率引き上げ等々によるものであり、今日の段階において、あえてかかる膨大な予算を編成するに至った政府の目標は、明らかに地方選挙あるいは参議院選挙を目前に控えて岸内閣の人気取りにあるものと思われるのであります。しかしながら、真に岸内閣の人気を回復し、内外の信用を増大させるためには、むしろこの際、民生の安定と地方財政の健全化を軸とし、国の自主独立を完成せしむるものこそ第一に必要であると思われるのであります。
 政府の予算編成方針は、一言にして尽すならば、それはすなわち、安定より成長へということであります。この方針によって編成された予算を見るに際し、少くとも次の諸点に言及せざるを得ないのであります。
 すなわち、歳入の面については、先刻も申し述べました通り、自然増収と増税に全く依存し、それによって歳入増の大部分をまかなうというものであります。大体この租税の自然増は、昨年秋ごろまでは約八百億程度と見込まれていたのでありますが、今回の予算によれば、実に一挙に一千八十六億とされております。それは明年度の経済成長率を六・一%、実質的には五五%に引き上げる操作によっておるのであります。政府の三十四年度経済見通しによれば、三十四年度は上期は横ばい、下期は好転という、はなはだ楽観的なものでありますが、しかしそれは、積極財政をとることによって下期は好転するのか、あるいはまた、そうでなくても、下期は好転というのか、その辺はきわめてあいまいであります。このようなあいまいな成長率を基礎とした水増し作業によって租税の自然増収が計算されるということは、ただに健全財政を呼号する政府の態度にみずから反するばかりでなく、四百十三億の減税さえもみずから踏みにじり、揮発油税等の引き上げによって、実質的には減税は二百億以下という結果を招来したのであります。
 歳入の面についての第二点は、以上の租税の自然増のほかに、昭和三十三年度たな上げの経済基盤強化資金、その他繰り越し、蓄積資金等々、すべての財源を使い尽して、一体昭和三十五年度財政の財源をどこに求めるのかと疑わざるを得ないのであります。これに対し、政府は、過去の蓄積資金を使い果したことは、現在直面している経済状態から将来の安定した経済への発展をはかるために必要な経費として計上したものであり、これによって将来の財政の基礎を作っていく。三十五年度財源は、例年のごとく、税収、その他税外収入によってまかない得ると言っておりますが、私は、そのような楽観的な見通しよりも、むしろこれを一つの転機として、公債政策が現実の問題として登場してくることをおそるるものであります。
 次に、歳出の面については、これまた多くの遺憾の点を指摘しないわけには参りません。最近、当予算委員会においていわゆる核兵器論争が行われたことは耳新しいことでありますが、本年度予算を見るに、防衛費は千五百三十六億、その総予算に対する比率は一〇・八%であります。零細な中小企業や農漁民の納める三十四年度申告納税は六百四十八億でありますが、防衛費はこれの約二倍半に当るわけであります。およそ、日本の防衛、その安全保障は、核兵器の保有によって保障されるものでなく、政府のいうところのいわゆる小型であるにせよ、防御用であるにせよ、核武装は憲法違反ではない、政策としては保有しないのである云々、あるいは、核武装したアメリカ軍の問題については憲法の及ぶところではない云々といった見解は、政府がどんなに強弁するにせよ、日本を一朝有事の際に核兵器の戦場と化することになるということは火を見るよりもなお明らかであります。(「そうそう」と呼ぶ者あり)日本の安全保障は、核兵器の保有や核武装したアメリカ軍に依存するところにはなく、また千五百億以上の防衛費を組んで、はなはだしいむだづかいと汚職を作り出すのみか、時代おくれの、アメリカに返還までしたF86ジェット機を百八十機も生産するというばかげた防衛方式の中にもなく、日本の安全保障ということは、実に相対立する両陣営、ことに米ソをあくまで戦わせないようにするというところにこそ存在するのであります。すなわち、日本が自主独立と積極的な中立の道を誤りなく歩き、しこうして、世界平和のために貢献することこそ、換言すれば最大の日本の安全保障であると言わざるを得ません。
 次に、歳出の六分の一に近くまで大幅に増額された公共事業費は、道路、港湾関係を主にしておりまするが、一部には土建屋財政という酷評が与えられておるほどであり、一部の土建業者に一時的に資金が放出され、それがやがて一つの政治資金グループになるであろうということはこれまた明らかてあり、しかも、その財源たるや、揮発油税の増税にかかっているに至っては、公共事業の名も泣くだろうと思うのであります。しかもこの点で寒心にたえないのは、この公共事業費が地方財政を相当に圧迫するという事実であります。すなわち、国の公共事業費の増加と見合って地方財政計画においては三百九十二億の増額になっておりますが、このうちで地方団体の純負担額増加は、二百八億となっております。こうした公共事業費の激増によって、財源の乏しい地方財政はますます窮屈となっております。また国から補助を受けないで地方団体が行う事業費は、昭和三十三年度二百二十八億増に対して、三十四年度は三分の一の七十四億増、しかも七十四億のうち二十四億は公共事業の最重要部分たる道路整備に充てられるといった工合でありまして、単独事業費は去年よりも十四億減少しておるのであります。いわゆる一兆円道路、すなわち政府の道路整備五ヵ年計画なるものは揮発油税の増税によってまかない、その上単独事業、補助、事業に伴う地方負担等々三千四百億を見込んで、これでは全く他力本願というのほかはなく、このような状態では、そもそも五ヵ年の間に道路が公約通り整備されるのか、はなはだ疑わざるを得ないのであります。このように公共事業費が増額の四二%を占め、歳出面一千七十一億の増加のうち四百六十九億にも上るというのに比べて、社会保障費の増額はわずかに二百十九億、総額に対して千四百七十七億、総予算の一〇・五%を占めるのみで、公共事業費よりも、防衛費よりも少額であるということは、岸総軍か常日ごろから福祉国家建設を繰り返し強調しているだけに、はのなはだ皮肉なことと言わざるを得ないのであります。
 次に、最大の公約の一つであった国民年金制度がようやく実現するの運びになったのは御同慶の至りでありまするが、公約の三百億から百十億に減っております。失業対策費は二百九十八億で、十二億増となっておりますが、失業保険費の負担が八十八億で、十七億減となっておりますから、失業対策費は差し引き三億減少しておる勘定であります。その上、失業吸収人員が二十五万人と前年度と同じに据え置かれておるということは、政府みずから失業対策の貧困を表明しておるにすぎないのであります。これは結局、労働力率を昭和三十四年度六七・四%と、不景気の最中であった二十九年度六八%よりも低く見積り、職業を求める人口は少いと独断し、この数字を基礎にして失業対策費を算出したものであって、これは前にも述べました通り、経済成長率を勝手につり上げ、租税の自然増を算出した方法と全く軌を一にするものであって、まことに数字の詐術というよりほかないのであります。
 次に、農林漁業予算につきましては、前に片岡委員も指摘されました通り、総予算に対する比率は、昭和三十三年度七・八%から七・四%に減少しておるのでありますが、これはまた、まことに納得しがたいことであります。岸総理は、内閣の重要政策の一つとして、常に農林水産問題を掲げ、しばしば特別の考慮を向けると言明し、現に去る一月の施政方針演説の中でも明らかに述べておられるのでありますが、しかるに、具体的な施策である予算の裏づけにおいては、言明に反して減少しておるというごときは、羊頭を掲げて狗肉を売るの類であります。戦後の政府の農業基本政策は食糧増産に主力を置いたのでありますが、その間、零細なる農漁民の生活水準の低下と経営内容の劣悪化は天下周知の事実であり、今や農漁村は、土地の細分化による経営放棄、法人化問題、米価算出方式、潜在的失業問題、漁業問題等々、数え上げれば枚挙にいとまのないほど矛盾が露呈されており、全産業を通じて最も水準の低いこれら第一次産業部門に対する早急にして完全なる保護政策の実現が叫ばれている折柄、農林漁業予算において見られるような政府の無策に近いような場当り的やり方には断じて納得し得ないものがあるのであります。もちろん、今般内閣に設置される農林漁業基本問題調査会において種々検討が加えられると思うのでありますが、そしてまた、それらの結論に大いに期待しているわけでもありますけれども、先ほど申しました通り、基本問題を解決する方向が少しも見出されていないうちに、一方では補償を求める旧地主の運動に早くも対応するかのごとき動きを政府が見せるというがごときは、きわめて遺憾に存ずる次第であります。
 さて、最後に、財政投融資について一言いたしたいと思うのであります。わが国の経済の特徴的な点は、何よりも生産設備の増加と国民所得の増加のアンバランスに集中的に表現されていると思うのであります。すなわち、生産設備の増加は、昭和三十二年度一兆三千七百五十億、三十三年度一兆六千七百四十億、三十四年度見込み一兆四千百三十億、この三カ年の合計が四兆四千六百二十億であるのに比較して、国民所得の増加は、昭和三十二年度六千五百五十四億、三十三年度から三十四年度見込みまで加えても総計一兆二千四百二十五億にすぎず、その差は実に三兆二千億以上であります。その結果、この設備投資の過剰をどうするかという問題は、財界、経済界あげての大問題であるのにとどまらず、今日の主要な政治上の問題、社会政策上の問題は、ここにその経済的背景を有するものであります。しこうして、この問題を解決するためにこそ、一般会計あるいは財政投融資計画を通じて経済の均衡的発展をもたらすように努力すべきものであると考える次第であります。しかるに今回の財政投融資は、その規模において五千百九十八億、前年度に比して一挙に千二百三億増という膨大なものであり、その増加率は、一般会計の増加率を上回っておるのであります。もちろん、開発銀行や農林漁業金融公庫に対する資金供給の面にも現われておる通り、自己資金の不足を政府出資で埋め合せするという点もあり、これらを差し引いたといたしましても、実質増は一千億と見られるのであります。この財政投融資の原資のうち五六%は大蔵省資金運用部の資金であり、すなわち半分以上は零細な郵便貯金に頼っているわけであります。これに加えて、先刻申し述べました通り、洗いざらいの資金を漏れなく総出しにしているのであります。
 次に、この資金供給の内容を若干見まするに、たとえば輸出入銀行の三百六十億円は、岸・藤山外交の経済的跡始末と、昨年来進められておる延べ払い等不正常輸出促進のしりぬぐいに充てられておるものであり、以下、開発銀行からその他に、あるいは主として輸銀、開銀、電発、石油資源等四社だけで四百六十三億も計上されておるのを見てもわかるように、一部にのみ厚くできているのであります。そうして逆に国民金融公庫、商工中金、中小企業金融公庫は四十三億も減額されておるのであります。農林漁業に対する財政投融資に至っては実に全体の八・四%にしか当らないというお寒い状況であります。かくて大資本の設備過剰はますます進む反面、国民所得の分配はますます不均衡になり、日本経済の破行性は拡大されることはあっても、均衡を生ずる方向には全然向っていないと言わざるを得ません。一般会計、財政投融資を通じてかくの通りとするならば、これでは民生の安定を軸とし、経済不況を克服していく方途を今回の予算に求めることはとうてい不可能であります。総じて今回の予算は、ほんとうに国民の求めている生活の向上、わけても、組織を持つこともできず、その声を中央に反映させることもできない零細なる農漁民、中小企業労働者あるいは生活保護世帯の人々の声なき声を相去ることすこぶる遠く、最低限度の要求さえも満たされていないものと断ぜざるを得ません。
 私は、ここに政府が国民の志向する方向を冷静に見きわめて、勇気を持って政策転換を行うことを近き将来に期待しつつ、あわせて今次の予算案が、われわれの期待と相反すること多きを指摘して私の反対討論を終る次第であります。(拍手)
○委員長(木暮武太夫君) 次は森八三一君。
○森八三一君 私は緑風会を代表して、ただいま議題になっておりまする、昭和三十四年度予算三案に対しまして、政府提出の原案に賛成の意を表するものであります。
 私どもは、いわゆる神武景気の波に乗って、一千億円減税、一千億円施策を打ち出されました昭和三十二年度予算の審議に当りまして、当面する好況に目を奪われて、いたずらに積極財政を展開いたしますることは、厳に戒心を要するところであり、きびしい国際経済の競争場裡に立って、輸出の振興と国際収支の正常なる発展を期し、わが国経済の再建を実現することは容易ならざる難事であり、周到綿密な計画のもとに対処しなければならぬことを警告したのであります。ところが私どものこの警告は政府のいれるところとならず、不幸にして国際収支は日を追って悪化の一途をたどり、わが国経済を破局に追いやる様相を呈するに至りました。そこで政府は遂に緊急総合対策を樹立実行するに至ったのであります。これがため黒字倒産の新しい言葉が流行するという困難にさえ直面したのでありまするが、ひたすら国民の理解と協力を求めてこれが推進をはかって参りました。
 かくして昭和三十三年度予算の編成に入りまするや、一部の世論は、内需を喚起して景気回復策を講ずべしとする、経済政策の転換を求むるに至ったのでありまするが、政府は、財政が経済に対して特別に刺激を与えることは避くべきであるとして、あくまで経済の調整に専念して参りました。私どもは経済基盤強化資金の創設を初めとして、安定した基礎の上に、経済の成長をはかるという政府の基本方針に対しまして賛意を表してきたのであります。幸いにして、国民の忍耐と協力によりまして、経済の調整過程を終え、国際収支も黒字基調となり、景気上昇の明るい前途を迎え得ましたことは、まことに同慶の至りにたえません。
 昭和三十四年度予算は、ときに景気の見通しを十分に把握し得なかった失態や、これに対処する緊急総合対策の実施等、幾多の困難にたえ、ようやくにしてかち得た成果を順調に成長発展せしむるものでなければなりません。私どもが、昭和三十四年度予算案に対しまして、賛意を表するゆえんはここに存するのであります。すなわち政府の予算編成の基本的態度が、長期にわたり通貨価値の安定を確保することを第一の目標とし、財政の健全性を堅持して経済の安定的成長に資するとともに、経済基盤を強化し、経済の体質改善をはかるというにあるからであります。しかしながら言うはやすく行うはかたしという、ことわざのごとく、これが実現には異常な決意と不動の信念と強力な実行力を要するのでありまして、巷間伝えられるがごとき、閣内の不統一、派閥内閣というがごとき弱体であってはなりません。首相の真撃な反省と考慮を望むものであります。
 さらに重要な二、三の問題点を挙げて政府の善処を期待するものであります。
 その第一は、昭和三十四年度予算は、経済企画庁の三十四年度の経済見通しと経済運営の基本的態度に基きまして編成され、明年度経済の成長率を、実質五・五%の国民所得の伸びに見込み、景気の見通しは大体上期横ばい、下期上昇という観測に立脚しているもののようであります。しかしながらこの楽観的見通しの根底には、本予算に基く財政支出の運用に大きな期待がかけられていることは見のがせぬところであります。すなわち企画庁の経済見通しにも、この見通しにおける実質成長率は、財政の適度な働きを期待して算定されたとはっきりこれをうたっておるのであります。長らく低迷を続けていた日本経済も、ようやく景気の回復の段階に入りましたが、これをさらに本格的な景気上昇にもっていくためには、どうしても財政面からの刺激を必要とするのであります。そこで昭和三十四年度予算はこの要請にこたえて積極性をもって編成されたものと理解いたします。ところが従来政府は早期に景気回復対策を行うべしとする主張を退けて、あくまで経済の調整を第一義とし、公共事業費の繰り上げ支出程度をもって対処して参りましたので、三十四年度予算がにわかに積極的なものとなっても、その経済効果が表われて参りまするまでには、半年近くの時間を要するものと見なければなりません。この時間的ズレを勘案いたしますると、本期上期は、政策的に景気を持ち上げる要因はあまり働く余地はなく、下期にそれが集中するという好ましからぬ可能性が濃厚であります。換言いたしますると、上期はあまり心配はないといたしましても、下期には積極的財政の膨張効果が集中的に顕現いたしますると同時に、民間投資もかなり活発化する可能性も多分にございますので、財政投融資と民間投資が競合いたしまして、かつての投資景気の二の舞を現出しないとも断言できないのであります。そうでなくとも下期には経済の自動的上昇要因が働き、さらにまた海外景気の持ち直しの影響なども次第に表われて参りまして、過熱を招来する危険なしとしないのであります。このため三十四年度の財政政策は、単に景気を刺激するずけではなく、景気調整の見地から財政支出を上期に繰り上げるなど、経済情勢に即応した、弾力的な財政運用並びに金融政策が特に必要とされると考えられるのであります。これに反し、もし上期の財政支出の促進が円滑にいきません場合には、下期の経済活動が急激に上昇し、これに伴うひずみが拡大されて、経済の妥当な成長を妨げる結果となりかねないと考えます。この点に関し政府の慎重周到な対処を望むものであります。
 次に、昭和三十四年度一般会計予算は一兆四千百九十二億円で、形式的には三十三年度より、一千七十一億円の増加にとどまっておりますが、たな上げ資金の使用及び国債利払い百十八億円の減少などを考慮に入れますと実質的には千六百二十五億円の増加になるわけであります。三十三年度が実質的には一千億円の膨張であったのに比べますると、三十四年度は相当大幅な増加であるとも言えるでありましょう。さらに財政投融資計画は五千百九十八億円で、三十三年度の当初計画三千九百九十五億円に比べますと、一千二百三億円の増加であります。このように財政規模は実質的にかなり拡大しております上に、民間の事業活動や有効需要の造出に大きな影響を持つ、投資的な経費が割合に多く、増加されておりますから、民間の経済活動にもかなり刺激を与えることになると考えます。大まかな計算をいたしましても、財政資金による財貨並びにサービスの購入は、ほぼ一千七百三十億円程度増加するものと予想されるのでありますが、これは三十三年度が、前年度に比べて一千三百億円の増加でありましたから、今年度はさらに四百二十億円程度上回る勘定となり、それだけ経済に対する財政の刺激が強まるわけであります。また、積極政策の資金を調達するため、過去の蓄積資金にかなり手をつけており、同時に外貨の導入などによって、財政収支は、一般会計並びに財政投融資及び政府経営企業、特別会計などを合計いたしますると、二千四百億から五百億円くらいの支払い超過となるものと思われます。三十三年度が大体二千八百億円くらいの支払い超過でありましたが、今年度さらに二千四、五百億円くらいの散超が加わりますと、金融はさらに緩慢となるでありましょう。政府はかねて懸案たる金融正常化を極力推進すべきであります。
 その第三はいわゆる公約の実現であります。すなわち減税の実施、国民年金制度の創設、社会保障の拡充、道路港湾の整備等、経済基盤強化対策の実施、すし詰め学校の解消等が取り上げられておりますることは、政党政治当然のこととはいえ、多とするところであります。形式が整ったというだけで満足するわけには参りません。その内容と実質が問題であります。
 まず減税でありまするが、今回の措置によって、国税と地方税を含めて昭和三十四年度五百三十三億円、平年度七百十七億円を軽減するというのであります。昨年五月の総選挙に際しまして、今年度七百億円の減税を約束していたのでありまするから、この点、いささか公約違反と申さなければならぬことは残念のきわみであります。課税の原則が、負担の公平を基調として、当面、低所得階層に対する生活の安定、法人の自己資金の充実並びに貿易の伸展に資することを目途としなければならぬことは申すまでもありません。昭和二十五年以来、累次にわたって行われた減税の機会に、私どもは常にこの主張を述べ、政府の善処を求めて参りました。
 特に具体的に、低所得階層に対する免税点の引き上げと税率の低下、法人税税率三割以下、特殊法人に対する免税、農業専従者控除、事業税の大幅軽減、物品税、租税特別措置の整理等をあげて、これが実現を望んで参りました。
 しかるに、今般の措置が、所得税におきまして、標準世帯年収三十三万円までの非課税と個人事業税免税点二十万円への引き上げなど一部の改正にとどまりましたことははなはだ残念の次第であります。
 政府は、中央地方を通ずる税制の改正を行うため、新たに調査会を設置して、抜本的改正を行うというのでありまするが、すみやかにその結論を得るとともに、私ども、年来の希望が実現されまするよう、最善の努力を払われたいのであります。
 この際、特に付言いたしたいのは、揮発油税等の引き上げが物価に及んで減税の効果を失うことのないよう特段の工夫と措置を要することであります。
 なお、新規課税及び増税となりまする間接三税の改正案が、与党内部の無統制、無定見により、業者団体の圧力に押されて、骨抜きとされようとするような形勢にあり、まことに遺憾であります。
 私は、すでに三十三年度予算の成立に当りまして、内閣の予算編成権が、しばしば圧力団体の横車によって侵害されている傾向を指摘いたしまして、遺憾の意を表したわけでありましたが、本年度予算編成過程におきまして、かかる好ましからざる傾向が、相変らず顕著に繰り返されておりますることは、まことに遺憾と言うのほかはありません。しかるに、今回は、それだけではなく、国会において、政府提出の税法案が、与党によって、あるいはまた社会党との間におけるかけ引きによって、修正され、あるいは予算案成立後、参議院で修正することを含みとして衆議院を通過させるというような事態を惹起しております。選挙目当ての感なきにあらざるは、まことに遺憾の次第であります。
 本来、議院内閣制の原理から申せば、与党と政府との間に、政策上の食い違いがあるはずがないのであります。与党と内閣に、重要法案について大きな意見の相違がありましては、議院内閣制そのものが成立する理由はないのであります。しかるに、年々歳々、予算の編成時期を迎えるごとに、あるいは国会の予算審議の過程において、不合理が公然と繰り返さるるゆえんのものは、ひっきょう、政党が近代政党としての責任感と統制力とを欠除している証拠にほかならぬと考えるものであります。将来、再びかかる愚を繰り返さぬよう、深刻な反省を要請いたすものであります。
 次に、久しきにわたる国民的要望でありました国民年金制度の創設を見るに至りましたことは、福祉国家への発展でありまして、喜びにたえない次第であり、その労を多とするものであります。きわめて長期にわたる制度のことでありまするので、国家財政の見通し、経済事情の変遷等を勘案して、運営の堅実を第一義といたさなければならない関係上、当面、給付金が老後における生活を保障するのに不十分であることや、適用年令がおそくなっていることなどはやむを得ないと存じまするが、運営の実績に徴して漸次改善さるべきであります。
 特に、当面問題となりますることは、低所得階層の掛金であります。いかに理想の制度でありましても、今日の生活を破壊してまで、将来に備えるというようなわけには参りません。さらにまた、農業のごとく、季節的収入と現物経済に立っている職業であります。果して彼らが、本制度に十分対応し得るかは、きわめて疑問とするところであります。これらの実態を正確に把握して、適切な調整がなされなければなりません。少くとも、すみやかに所得税の非課税者は、掛金の免除を行うべきであると思うのでありまして、研究、考慮を求める次第であります。
 わが国、人口の四割五分を占める農林漁業と、産業の基礎を形成する中小企業の振興は、国家の浮沈につながる最重要事であり、政府も、これが対策は重点中の重点として取り上げているところであります。しかるに、昭和三十四年度予算に具体化せられました施策は、きわめてりょうりょうたるものでありまして、いささか公約倒れの感がないとは申されません。ともすれば、圧力団体の威には屈するが、農民や中小企業者のごとく、政治的結集力の比較的に弱い方面に対する予算的、施策的配慮が等閑に付せられているという現状は、将来に幾多の問題を惹起するでありましょう。為政者の特に心すべきことであろうと思います。
 第四に、地方財政であります。地方財政計画は、地方交付税率一%を引き上げ、一千十八億円を増額して、行政水準の維持発展に配慮いたしているというのでありますが、その大半は、国のひもつき事業に引き当てられておりまするのと、自主財源として増額の計算になっておりまする四百余億円も、またその大部分は、国の事業との関連に使われるものと見なければなりません。わずかに、地方単独事業費に充てられる増額は七%であります。かくして、地方団体は、国の出先機関化して、自治体としての本質を失うに至る危険がないとは申されませんのみならず、最近ようやくその財政の堅実性を取り戻して参りました地方財政が、再び赤字に転落する最悪の事態が予測されるのであります。国と地方との事業の調整、財源配分の適正合理化は、国政運営上、最大の緊要事と申すべきであります。政府は、特にここに留意され、地方自治の健全な発展に抜本的な措置をなすべきであります。
 次に申し上げたいことは、今般、淺沼社会党書記長以下の訪中使節団によってもたらされた国論のおそるべき分裂であります。一国の外交方針が、二大政党によって、かくのごとく分割されましては、まさに二つの日本の現出でありまして、まことに憂慮にたえないところであります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)国民もまた、ひとしくこれを深憂し、日本は、果してどこに行くのかという危惧を払拭し得ないのが実情でございます。本来、国論が分裂していて、強力な外交が推進されるはずはありません。今やわが国は、日米安保条約の改定、日ソ漁業交渉、日中貿易問題、北鮮帰還問題、日韓交渉と、まさに外交上の八方ふさがりという重大段階に際会しております。これらの措置を一歩誤まれば、わが国の国利民福は、著しく制約されるでありましょう。わが緑風会が、国内世論の調整と外交の一元化を強く要望して参りました年来の主張は、ここにあるのであります。政府は、この際、何事にも先がけて、国論の統一に前進すべきであります。
 最後に、重ねて、政府は内外の情勢をよく洞察把握し、予算の執行に、いやしくも過熱を招来するがごとき誤まりを犯すことなく、基本方針を堅持するとともに、地方自治体が、その本来の使命を達成し、国運の隆盛に寄与貢献し得るよう指導助言に遺憾なきを期するはもちろん、国連の一員として、国際連合憲章を順守実践するとともに、アジア各国との善隣友好を深め、栄誉ある平和国家の建設に最善を尽されまするよう切望いたしまして、私の賛成討論を終る次第であります。(拍手)
  ―――――――――――――
○委員長(木暮武太夫君) 委員の変更がありましたから、御報告いたします。
 吉江勝保君が辞任し、その補欠として平島敏夫君が選任せられました。
  ―――――――――――――
○委員長(木暮武太夫君) 以上をもちまして、討論通告者の発言は、全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。
 これより採決に入ります。
 昭和三十四年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算を一括して問題に供します。
 右三案に賛成の方の起立を願います。
   〔賛成者起立〕
○委員長(木暮武太夫君) 起立多数と認めます。
 よって右三案は、多数をもって可決すべきものと決定いたしました。
 なお、本院規則第七十二条により、議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議はございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(木暮武太夫君) 御異議ないものと認めます。よって、さように決定いたします。
 この際、一言ごあいさつ申し上げます。
 委員各位には、久しきにわたりまして、終始変らざる御協力を賜わり、おかげをもって、不なれの委員長も(「名委員長だったよ」と呼ぶ者あり)大過なく職責を果すことを得ましたことは、まことに御厚志ありがたく、心から感謝申し上げます。本日は、これにて散会いたします。
   午後五時四十一分散会