第034回国会 本会議 第15号
昭和三十五年三月三十一日(木曜日)
   午前十時四十五分開議
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 議事日程 第十五号
  昭和三十五年三月三十一日
   午前十時開議
 第一 農地被買収者問題調査会設置法案(趣旨説明)
 第二 補助金等の臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
 第三 昭和二十八年度から昭和三十四年度までの各年度における国債整理基金に充てるべき資金の繰入の特例に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
 第四 総理府設置法の一部を改正する法律案(内閣提出第四一号、衆議院送付)
 第五 農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
 第六 日本国有鉄道法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
 第七 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
 第八 検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
 第九 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
 第一〇 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、国会の承認を求めるの件(衆議院送付)
 第一一 道路交通法案(内閣提出)
 第一二 じん肺法案(内閣提出、衆議院送付)
 第一三 労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
 第一四 参議院事務局職員定員規程の一部改正に関する件
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○議長(松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
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○議長(松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。
 この際、日程に追加して、国会法第三十九条但書の規定による議決に関する件(肥料審議会委員)を議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり]
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
 内閣から、衆議院議員足立篤郎君、小松信太郎君、重政誠之君、三宅正一君、本院議員河野謙三君を肥料審議会委員に任命することについて、本院の議決を求めて参りました。これらの諸君が同委員につくことに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本件は全会一致をもってこれらの諸君が肥料審議会委員につくことができると議決されました。……。
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○議長(松野鶴平君) 日程第一、農地被買収者問題調査会設置法案(趣旨説明)、
 本案について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者からその趣旨説明を求めます。益谷国務大臣。
   [国務大臣益谷秀次君登壇、拍手]
○国務大臣(益谷秀次君) 農地被買収者問題調査会設置法案について、その趣旨を御説明申し上げます。
 戦後のわが国の農業生産力の発展に対して、農地改革の寄与しております
 ところは、まことに大きなものがありますが、反面、これが非常に大なる社会的変革でありましたために、従来の社会的経済的基盤が大幅に変更され、その際、農地を買収された者に関しても、いろいろな社会的な問題が起こっていると思われます。言うまでもなく、農地改革は正当な法律に基づいて正当に行なわれたところでありまして、農地を買収された者に対して、これを是正する意味において補償することは考えられないのでありますが、現行の農地法の問題とは別に、この農地改革の副次的結果ともいうべき被買収者に関する社会的な問題につきましては、その実情を明らかにするとともに、要すれば所要の措置を講じて参りたいと存ずる次第であります。以上申し上げましたような見地から、この際、総理府に、その付属機関として、農地被買収者問題調査会を設置し、広く各界の学識経験者の意見を聞き、農地改革により農地を買収された者に関する社会的な問題を調査し、何らかの措置を講ずる要があるかいなかを審議することといたしたいのであります。
 次に、本法律案の概要を御説明申し上げます。
 農地被買収者問題調査会の任務は、内閣総理大臣の諮問に応じ、農地改革により農地を買収された者についての社会的な問題を調査審議することであります。調査会は、二十人以内の委員で組織することといたしまして、さらに、十人以内の専門調査員及び十人以内の幹事を設置する考えであります。調査会の調査審議は、おおむね二年を目途といたしまして、その結論を得たいと考えております。この法律の有効期間は、この法律施行後二年といたしております。
 以上がこの法律案の趣旨でございます。(拍手)
○議長(松野鶴平君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。
 順次発言を許します。横川正市君。
   〔横川正市君登壇、拍手〕
○横川正市君 私は日本社会党を代表して、ただいま提案されました農地被買収者問題調査会設置法案に対しまして、総理大臣、行政管理庁長官並びに総務長官に若干の質疑をいたさんとするものであります。
 本法案は、去る第三十一国会に政府より提案され、本院において審議未了、廃案となっております。さらに第三十三国会に提出されながらも、衆参両院ともに、本会議説明もまた委員会付託も行なわれず、政府において撤回されているのでありまして、このことは、国民のすべてが周知するところであると思うのであります。ゆえにわれわれは、本法案については、再度国会に提出されるものではないと信ずると同時に、さきの国会において政府が約束されたごとくに、旧地主団体を解散せしめられるものと考えていたのでありますが、今回、おくめんもなく再三の提案を行なわれたことに対し、まことに遺憾と存ずる次第であります。
 この設置法案は、一見単なる調査会設置の法案であるかのごとくでありますが、九日の衆議院本会議で行なわれたわが党代表に対する総理を初め関係大臣の答弁によりましても、きわめて不明確であります。その本質は、依然として党利党略か、農地改革の行なわれたことに対して多くの疑惑の余地を残し、再補償の底意をもって満を持しているかのごとく考えられるのであります。ほんとうに、政府に、農地改革の効果を認められ、農地再補償の考えがないのであるならば、なぜこの問題を繰り返し国会に提出されるのか、その理由がわからないのであります。
 まず第一に、総理は、昭和三十三年三月十四日、当院予算委員会を初めとして、各種委員会において、本法提案の説明に、「特に旧地主であったがゆ、えに特別の補償を考える気持はない」と言明されているが、この言質は変更せず、今もってこれを堅持しているのかどうか。もしこの言明に変更がないとするならば、審議未了、また前回撤回いたしましたこの本法案について、少なくとも私には、ただいまの本法案の提案説明によっては、遺憾ながらこの理由をくみ取ることができないのであります。おそらく、国民のすべても理解に苦しむところと考えますが、再三の提出に至った理由について詳細な説明をお願いいたしたいと存ずる次第であります。
 第二は、農地改革の効果を認められている総理は、この提案説明によりますと、農地改革によって副次的に起こって参りました旧地主の社会的変革について調査をし、必要とあらば何らかの措置を講じたいとの趣旨でありますが、この何らかの措置とは何をさすのでありますか。また旧地主の急激なる農地改革に基づいて生じた社会的問題とはいかなる問題をさすのか、明白にしていただきたいと思うのであります。
 第三といたしまして、去る二月十日、「戦後GHQの強制によって定められた農地法は、地主の利益を押えるものである」と、旧地主が耕作者を相手どって、「土地の賃貸借契約を無効にし、土地引き渡しまで、年三十四万余円の金を支払え」との訴えを起こしております。これに対して最高裁は、「農地法は、農業民主化と近代化をはかるもので、地主に対しては、かなりの制限規定を設けているが、公共の福祉の立場からは、この程度の制限は忍ばねばならず、憲法に違反しない」と、地主側の上告を棄却いたしております。この判決はしごく妥当なものと考えるのでありますが、総理はこの判決に対していかなる御所見であるかをお尋ねいたします。
 第四といたしまして、旧地主団体と自由民主党内に設けられております農地問題調査会についてお尋ねをいたします。旧地主団体の全国的組織は、幾多の変遷を経て今日に至っておりますが、先般行なわれました参院選挙において、この団体をバツクとして立候補いたしました自民党議員の選挙資金をめぐって紛糾をいたした、こういうことは御承知のことと存じます。三十二年暮れ、時あたかも衆議院の解散を目睫にいたしまして、旧地主団体が、「自民党がわれわれのめんどうをみないならば、選挙に際し一票もやらぬ」と声明するなどの一幕があったためか、自民党幹部のあっせんとなり、現在の全国農地解放者同盟が結成され、自民党の実力者である田中萬逸氏が会長に就任いたしております。一時は国会内の一室にその同盟の事務所の看板があげられたこともあるようであります。さらには、この顧問として自民党代議士諸君百数十名が名前を連ねているとのことであります。私は、総理の言質や、はたまた、元・井出農林大臣がその良識をもって、「地主団体は解散するよう行政指導する」と言明されたこととは、あまりにも相違をいたしておりますので、この関係について全く理解に苦しむところであり、明快な答弁をお願いいたしたいと思うのであります。
 さらに続いて、去る全国農地解放者同盟の決議によりますと、「自民党農地問題調査会の法律をすみやかに実現することを要請する。また、来年度の予算に解放農地処理に関する予算の計上を要望する。さらに、われわれは来年度予算確保のため決死の覚悟をもって邁進する。」と、こういう議決を行なっているのであります。これに対して自民党農地問題調査会は、本調査会法の提出にきわめて積極的な役割を果たしておりますと同時に、同調査会は、
 一、財源確保の措置、
 農地を転用し、売買をして際には、売り主から土地増価税を取り立て、これを別経理として一部を農地達成事業に充て、一部を旧地主に還元する。
 二、農地問題審議会の設置、
 総理府に審議会を設置し、旧地主の救済対策を審議させ、三十四年度中に、その答申を求める、審議会は、土地増価税による財源の配分、旧地主への配分基準を検討する。
 三、困窮地主に対する厚生資金の貸付、
 国民金融公庫から旧地主の生活困窮者に対し生業資金の貸付を行ない、このため同公庫に別ワクを設ける。一戸当たり五万円として二十五億円となる。
 四、土地増価税の要綱、などがきめられております。
 この両者の決定は、一連として連携のあるものと考えるのであります。この調査会法は、いわばこれらの実現を中身としてできたものだと考えるのでありますが、御所見をお伺いしたいと思います。
 さらに、これらの旧地主の団体並びに自民党調査会が、二十七年に出されました最高裁の判決の際付言された少数意見、及び京都大学の橋本教授の意見である。すなわち収益価額を出してきめることは賛成だが、この収益価額は、はたして当時理屈に合った価額かどうか。最高裁の調査が不備であったのではないか。この決定には納得のいかないものがある。最高裁の判決には反対であるという意見、これらの意見によって、両者は、農地改革による収益価額は当時の売買価額によるべきであったとして、補償を前提としてこの調査会法案を出したと考えられるのであります。
 さらにまた、第三十一国会において、元・坂田厚生大臣は、「生活困窮者に限って特別救済措置はとらず、全農民を対象とした徹底した社会補償をとるべきである」との質問に答え、「旧地主と農民とを問わず、すべての生活困窮者を対象とする生活補償政策の推進に努力する」との答弁をされております。また岸総理は、「旧地主の社会問題としては、生活困窮者で子弟の教育に支障を来たしている者その他については、社会保障的見地から適当な方法を講ずる」との言明、さらにまた、元・松野総理府総務長官は、「旧地主の農村における地位を調査し、その上、全農村の一般的社会問題をあわせて調査する。単なる地主の難民救済では、この調査会法は無意味である。現在の社会保障が問題である。」と答弁しているのであります。これらの答弁を総合してみますと、前項の旧地主または自民党調査会の方針と照らし、あまりにも相違することに驚くのでありますが、総理の明快なる答弁をお願いする次第であります。
 また国家補償のため、その財源措置として、過重な転用税を新たに耕作者に課税せんとする動きが与党内にあると聞くのでありますが、政府はいかなる見解なのかをお聞きいたしたいのであります。
 次に本法案による調査会活動のため、当初四千万円の要求がありましたが、提出された予算では一千万円となっております。これらの資金は、いかように使われるものなのか。ことに、そのうち委託調査費が四百万円計上されているのでありますが、この委託すべき相手はだれなのか。現在、理不尽にも執拗に運動を続ける旧地主団体の幹部を任命されると聞くが、あわせてお答えをお願いいたす次第でございます。
 次に質問の第五は、農村における旧地主の中に、生産手段として農地を使い、生計を立てているとか、または都市周辺における宅地転用にて地価が数千倍になっているとかの感情問題というものがあることは、理解できるのでありますが、旧地主の生計調査、すなわち一昨々年、三十三年十月農林省の調査によって明らかにされた内容によれば、全国九万三千余戸を対象としての調査の結果、一般農家の経営よりその耕作面積は広く、農家経営の面から見てもその経済的地位は高いと判定されているのであります。これらの結果は、解放農家に比べて高級兼業が多いこと、また一戸当たりの耕作面積が大きく、山林など未解放財産などの所有者の多いことから、旧地主の実態は、苦しいどころか、依然として農村における支配的な立場を堅持している。現に一ヘクタール以上を経営して、農村一で優位な経済的地位を占めているもの一の全体の四〇%以上が旧地主であるということが明らかにされているのであります。この調査によってもわかるように、この調査会の設置の本来的表面の理由は、小範囲の未亡人か、または労働力のない旧地主の救済に限られているので、調査会の設置の理由としては成り立たないと思うのであります。ゆえに、土地は私有財産であることには相違ないが、公共の福祉に適合する合理的な制限もまた認めるべきであって、偉大なる農地改革の成果を否定し、これを戦前におけるがごとき様態に逆行せしめないということこそ、現在われわれは大切だと考えるのであります。これがために、農地改革が終戦時において小作争議などの混乱を避けしめ、一路生産に寄与し、その間、農村の民主化に大きな功績をあげたことを評価し、これらの努力のかいも報いられず、戦後の急激な農村人口の増加による一人当たり耕作反別の減少、二、三男対策など、農地改革の効果を、さらに農家経営の安定のために発展せしめる対策を立てるべきだと私は考えるのでありますが、この点について御所信をお伺いいたしたいと思うのであります。
 さらに敷衍いたしまして、最近、宅地の値上がりは全く天井知らずと言っても過言ではないと思うのでありますが、この住地事情の困窮は宅地に基因すると存じますので、政府はこれら宅地騰貴に対する何らかの方策をお持ちであるかを、あわせてお答えをいただきたいと思います。
 また、農地の売買価額を評価価額として固定資産税を賦課する考えがあるとのことでありますが、その真偽についてもこの際明らかにしていただきたいと思うのであります。
 さらに、行政管理庁長官に御質問いたしますが、本法は、今日までの質疑における総理及び関係大臣の答弁や質疑から見ても、政府の態度そのものから見ても、この法案を提案するがごときは当たらないと考えるのでありますが、一部旧地主の農地改革に伴う社会的地位に関し、あらためて法律事項として本会を設置する理由に乏しく、またこの調査会法は、国家行政組織法から見て、必要ならば厚生省の所管とすべきものか、または現行社会保障制度審議会の調査の内容として追加すべきものだと考えるのでありますが、御意見をお伺いしたいのであります。
 また、総理府総務長官に、本法が総理府に設置されることについてお尋ねいたします。この調査会の委員が二十名とされております。おそらくこの任命については、他の審議会または委員会に見られるごとき任命が行なわれるものと存じますが、一体、何をどう調査するか、それをどのように処理されるのか、具体的に予想される委員の選任とあわせて御説明いただきたいと思うのであります。
 以上をもって私の質問を終わりますが、巷間に伝えられるところによりますと、農地改革で土地を失ったとする旧地主二百万世帯、いわゆるこの票の威力に屈してこの調査会法案が提出されたのではないかと、多くの疑点が生まれているのであります。一つの欺瞞が多くの欺瞞を生み出すように、この法律案が、欺瞞された政策を根拠として出されたのではないか、こういうことを巷間いろいろ批判をされておりますので、この批判にどのように政府としておこたえになるのか、この点を一つ明らかにしていただきまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣益谷秀次君登壇、拍手〕
○国務大臣(益谷秀次君) 質問の第一点は、農地の対価に対する再補償をするかしないかということのお尋ねのようであります。御承知の通り、農地改革は、正当な法律に基づいて合法的に行なわれたものであります。最高裁の判決にもありますごとく、その対価も妥当であるということであります。政府も、従って再補償する考えは毛頭ございません。
 さらに、調査会法案を、たびたび出すのはどういうわけかというようなお尋ねのようでありましたが、御承知の通り農地改革は、これは社会的な大変革でありました。そうして、農業生産力を増強いたすために寄与したことも大であります。だが反面、副次的結果と申すべきか、被買収者の方面から見ますれば、非常に大きい社会問題を惹起いたしているのであります。従ってその実態を十分に調査いたして、これに対処する必要があるかないかということを、第三者の公平な判断によってきめていただきたいと思うのであります。そのために本調査会法案を提出いたしましたので、毛頭他意はございません。
 なお、二月十日の最高裁の判決についてでありますが最高裁の判決も、農地については規制を設けても、それは憲法違反ではないと申しているのであります。政府においても妥当な判決であると存じております。
 さらに、農地解放者同盟と自民党の農地解放調査会でありますか、これについてのお尋ねでありましたが、志を同じゅうする者が集まっていろいろの評議をするとか、また方策を立てるということは、きわめて民主的なことでありまして政府がかれこれ申すべき筋合いのものではないと考えております。
 大体、以上のようなことだと思います。なお、農林大臣、総務長官等に答弁をしていただきます。
 最後に、私は行政管理庁の長官として、この調査会は、行政機構の簡素化に反しはしないかというお尋ねでございますが、先ほども申しました通り、農地解放、改革は、非常な大きな社会問題であります。従って、その副次的結果とも申しましょうか、被買収者におきましては、貧困その他きわめて重大な社会問題を惹起いたしているのであります。従って、その実態を十分に調査して、これに対処する必要があるかないかという調査会、しかも政府の独断に陥ることなく、学識経験の豊かな第三者をして十分に検討してもらってその意見を聞くということは、きわめて時宜に適したものと存じております。なお、特定の一省というような問題ではない、非常に広い問題であろうと思いますので、これは総理府に調査会を設置するのがきわめて妥当であるというので、行政管理庁の長官として賛意を表した次第であります。
 以上お答え申し上げます。(拍手)
   〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕
○国務大臣(福田赳夫君) 私に対しましては、何かこの調査会の結論といたしまして措置を要するという場合に、その財源といたしまして土地増価税を取る考えがあるか、こういうようなことでございまするが、ただいまそういうようなことは検討いたしておりません。私の個人の考え方といたしましては、もし何か措置をする必要があるということでありますれば、それは一般の財源を使うべきであって、必ずしも特別の財源を用意する必要はないと、かように考えております。
 第二に、農村に対する施策の方向といたしましては、生産性の向上でありますとか、あるいは二、三男対策と、そういう方向に取っ組むべきではないかというお話でございますが、私はまことにその通りだと考えまして、私自身ただいまそういう方向を根幹といたしまして農政に取り組んでおるということを申し上げたいのでございます。(拍手)
   〔政府委員福田篤泰君登壇、拍手〕
○政府委員(福田篤泰君) お答え申し上げます。
 なぜ総理府に置いたか、厚生省に置いたらどうかという御質問の趣旨のようでございますが、御存じの通り、この調査会の目的ないし任務というものが、厚生省のみでなく農林省その他いろいろ各般の問題を含んでおりますので、総理府に設置した方が適当ではないかと考えた次第であります。なお、社会保障制度という観念の中に考慮せらるべきではないかという御質問でございますが、政府は御承知の通り、社会保障という観点からは、国民皆保険あるいは国民年金、あらゆる施策を講じておるわけでございますが、この問題のいわゆる旧地主の問題は、先ほど副総理の答弁されました通り、農地改革という特殊な形態で、しかも農村という特殊な環境のもとに行なわれた問題を対象とするものでありますので、これはやはり社会保障制度という一般的な観念でなく、特殊な問題として、対象として考えたらどうかという考えで調査会を考えておるわけでございます。
 なお、委託調査費の問題につきまして、三百八十八万の委託調査費はどう使うかという御質問でございますが、御指摘のように旧地主に委託をすることは全然考えておりません。権威のある調査会に一括委託をいたして調査をいたさせたいと考えておる次第でございます。
 なお委員の任命についての問題でありますが、これはもう申し上げるまでもなく、厳正公平にやる必要がありますので、この点は十分注意して御趣旨に沿いたいと考えておる次第でございます。(拍手)
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○議長(松野鶴平君) 天田勝正君。
   〔天田勝正君登壇、拍手〕
○天田勝正君 私は民主社会党を代表してただいま上程されました農地被買収者問題調査会設置法案につきまして、総理並びに関係閣僚に若干の質問をいたしたいと思うのであります。
 まず岸総理がおられませんから盆谷国務大臣に伺いますが、今、横川君からも指摘されましたように、本法律案は、すでに第三十一国会、第三十三国会に提案され、いずれも不成立、撤回のやむなきに至ったものであります。しかるに野党の反対、農民の反対を顧みず、ここに三たび提出して参ったのでございますが、その熱心さ、その執拗さには驚くのほかはないのであります。かつて、第二十四国会にあたりまして自民党が永久政権をねらい、党の運命をかけて提案した小選挙区法案でさえ、世論の反撃にあって廃案になりまするや、今日に至るも再提出を放棄されたのであります。しかるに本法案は、この選挙法以上の熱心さ、執拗さをもってまたまた提案して強行成立をもくろんでおられると存ずるのでございますが、ここに国民は疑惑の目を向けざるを得ないのであります。政府はさりげなく提案し、他意はないと答弁を繰り返すのでありますが、以上の経過から、これには必らず何らかの政治的意図がある、意図と言って悪ければ、特別な目的、信念がなければならないと思うのでありますが、この際、いまだ説明されざる政治的意図について政府の率直な見解を承りたいと思うのであります。
 第二に、これまた益谷副総理に伺いますが、本法律案は、農地改革が非常に大きな変革であり、そのため旧地主による社会問題が起こっているからというのでありますが、およそ無謀な戦争と未曽有の敗戦の結果するところ、国民各階層にわたって社会的変動があったのでありまして、単に旧地主に限ったことではないのであります。短国を失った者、ふるさとを失った者、あるいは生命を失い、あるいは経済的再起不能に陥った者等、枚挙にいとまがないのであります。従って、もし戦争及び敗戦による歓会的変動全般について調査するというならば、かりに調査結果に基づいて何らの措置をとらないとしても、歴史的事業としてきわめて意義深い仕事であると思うのであります。かかる戦争による社会的変動全般の調査を行なう意図があるかどうか承っておきたいと存じます。さもなくして、社会的変動のうち、旧地主の問題だけを取り上げた理由はいかなる見解によるものか、はっきりいたしていただきたいと思うのであります。およそ農地解放のごとき変革が行なわれる場合、長く封建地主の苛斂誅求にあえいで参りました農民によって報復的流血の惨事が起こるのが歴史の示すところであります。しかるに日本においては、これが法律によって平穏裏に行なわれました結果、かえって農地法が苛酷であったなどとの説をなす者がありますが、それならばこそ流血の惨事が避けられたと思うのであります。このことを理解されるならば、解放農地について何らかの要求をなす者があれば、むしろ警告を発すべきであると思うのでございますが、いかがでございましょう。(拍手)
 第三点は、総務長官に伺います。それは、この法案の目標が不明確であるという点であります。すでに横川君からも指摘されましたが、第三十一国会以来多くの質問がございましたが、それにもかかわらず、まことにこの目標があいまい模糊としておるのであります。政府の説明では、農地法の改悪はしない、補償もしない。しからば何のために調査審議するのでございましょう。少なくとも調査のしつぱなしということではないはずでございましょう。元来、解放後十数年、今さら調査しなくてもわかっておらなければならないのであります。現に昭和三十年の臨時農業基本調査によれば、旧地主層は一般農家に比較して生活水準が高く、その経営内容は良好であるし、専業農家も多く、兼業の場合は、その内容が高級であるとともに、安定性のある職業についていることが明らかであります。また、この調査をする調査会の委員の選任は政府の意のままでございましょう。そうして次には、委員会の結論であるからと称して、農地法の改悪、補償措置を強行するか、あるいは他産業転換にあたって優遇措置をいたす等、いわゆる何らかの特権を与えることは、絶対多数の与党勢力からすれば、きわめてやさしいことでございます。かくて、調査会はワン・クッションの役目をするにすぎないと思われるのでございますが、目標を示さないところにこの疑惑が生ずるのでありますから、この際、目標をはっきりしていただきたいと存じます。
 第四点、これまた総務長官及び農林大臣に伺います。政府は、旧地主を中心として一大社会問題が発生していると言われるのでありまするが、その社会問題とは、いかなるものであり、いかなる形で起こっておるかお示し願いたいと存じます。私見をもってするならば、今日農村の社会問題は三つございます。その第一は、農地取り上げの激増であります。すなわち、農地法による人為的取り上げ件数だけでも、三十二年が一万二千六百六十件、三十三年が一万五千七百九十件と激増いたし、これ以外に、農事調停によるものや、やみ取り上げを含めれば、膨大な数に上ると思うのであります。政府は何らこれが抑制策を講じていないのでありまして、耕作農民を一大不安に陥れておるのであります。また、次には、都市と農村の所得格差の問題でございます。今ここに多くの例を申し述べる時間の余裕がございませんが、昭和二十六年におきまする農業就業者一人当たりの所得は六万七千七百十八円、農業以外の就業者一人当たりの所得は十六万二千二百九十四円、農業者は非農業者に比較して四二%の所得にすぎない。さらに、三十二年におきましては、農業者は九万二千八百三十五円、非農業者は二十五万三千三百十三円、すなわち、農業者所得の割合は他に比較して三六%に下がっておるのであります。さらに、都市と農村の生計費を三十四年六月において比較いたしてみますと、都市一人当たり六千百八十九円になり、農村は三千八百十六円にすぎないのであります。これ農村の一大社会問題と言わなければならないのであります。次に、農村の二、三男の問題でありますが、以上の問題こそが、今日、旧地主、小作のいかんを問わず、農村の一大不安の原因に相なっておる社会問題であると思うのであります。総務長官、農林大臣は、この事実をお認めになるか。認められた上で、この問題よりも旧地主に限る事柄がなお重大な社会問題であると言うならば、ここにその見解を明らかにしていただきたいと思うのであります。
 次に、旧地主団体が政府並びに国会に陳情あるいは圧力をかけた頂点は、三十一年参議院選挙の前後でありまして、当時この問題だけを掲げて議員に当選された方さえあったのであります。やがて自民党内に農地問題調査会なるものが設置され、それ以降、旧地主攻勢が下火になったことから見れば、旧地主団体と自由民主党農地問題調査会とに相関関係があったと見られるのであります。私がここに伺いたい点は、旧地主団体の要請の内容は、補償要求と農地法緩和要求であったのでありますが、政府としては、この法案提出の過程において、外部団体の圧力に何ら関係がないと言い切れるかどうか、総務長官に承りたいのであります。
 次に、自民党農地問題調査会の答申をめぐって、これが政府与党によってなされただけに、農民に一大不安を与えたのであります。その一つは、買収価格の問題であります。この価格の正当性については、他の議員もすでに指摘されましたから、重複を避けます。二つには、農地の売買にあたって不当利得があるという説がなされたと聞きますが、私は、しからざる数字を承知いたしておるのであります。権威ある勧銀の調査によりますると、昭和二十九年の農地売買価格の平均は、反当たり九万三千五百四十六円、三十三年が十六万円に相なっておりまして、昭和二十一年以降、他の一般物価の上昇等と比較する場合、農地価格だけが不当な騰貴といえないと思うのであります。しかも、この価格は、旧小作人に限ったことではございません。解放された農民だけが不当利得であると言うのは当たらないと思うのであります。土地価格の騰貴が不当だとするならば、それは、あげて自由放任経済の罪というべきであります。総務長官、農林大臣は、この点どうお考えになっておられるか、承りたいと存じます。
 次は、課税の問題でございますが、すでに同僚議員から指摘されましたから、この点は省略いたします。問題は、わが国のごとく国土が狭く、工業の発展なくしてはとうてい生きる道がない国においては、都市産業の進出による農地の転用、また、これに伴う住宅建設は、今日わが国の国策ともいう一べきでありましょう。現に、政府機関によって工場適地の指定を行なったり、住宅公団の計画に基づいて農地の大量転用が行なわれておるのであります。その際、一定の地域内において、解放農地なるがゆえに売り渡しを拒否することは不可能でありますし、拒否すれば、産業発展上一大支障を来たすでありましょう。従って、農地売買課税どころか、産業発展に伴う離農者には、むしろ国としてこれら農民に何らかの保護を与えなければならないと思うのでございますが、この点について政府の見解を承りたいと存じます。さらに、農林大臣には、都市産業の発展一と住宅による農地転用についていかなる対策を立てておられますか、この点、承っておきたいと存じます。
 最後に、農村窮乏の実態については先に申し述べた通りでありまするが、この曲がり角に来た農村問題について、政府は、所得倍増計画などと喜ばしているのでありますが、都市がこのままの所得水準でストップしたとしましても、農村は、倍増どころか、三倍増いたさなければ、都市平均の水準に達しないのであります。政府が好んで用いる体質改善は、他に先んじて農村に実践しなければならないと存ずるのでありますが、その方策について承りたい。たとえば、現在、開墾可能地五百万町歩といわれておりますが、そのうちでも、手のつけやすい三百万町歩くらいは政府の手によって開墾して、これを農民に与える等の意思がおありかどうか、承りたいのであります。
 以上をもって私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣益谷秀次君君登壇、拍手〕
○国務大臣(益谷秀次君) お答え申し上げます。
 先ほど横川さんにお答えいたしました通り、農地改革は正当にそうして合法的に行なわれておるのでありまして、農業生産力増大に非常に寄与して参っておりますことは申すまでもございません。しかしながら、その反面において、いわゆる旧地主と申しましょうか、これに関しては、きわめて大きい社会問題を引き起こしております。政府におきましては、これの実態をよく把握いたしまして、そうしてこれに対処する必要があるかないかを委員会を通じて検討して参りたいと思って、今回さらに本法案を提案いたした次第であります。ほかに他意はございません。何とぞ慎重御審議の上、一日も早く可決していただきたいと存じます。
 なお、旧地主の問題にのみ調査会を設けて、敗戦の結果起こった社会問題に対しては無関心であるかのようなお話でございますが、詳細なことは私は今存じませんが、二引揚者問題、あるいは恩給の問題とか、いろいろ敗戦の結果についても施策を行なっておると思います。ひとり旧地主の問題のみを取り上げておる次第ではございません。これは社会問題としてきわめて重要でありまするので、特に調査会を設置して検討してもらおうという考え方から提案いたした次第であります。(拍手)
   〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手]
○国務大臣(福田赳夫君) 御質問の第一点は、農村における社会問題をどういうふうに理解しておるかというようなお話でございます。戦前におきましては、農村社会問題といいますれば、小作争議、こういうことだと思いまするが、戦後の最大の社会問題は、私は農村経営の零細性、これをどういうふうに解決していくかという問題にあると思うのでございます。お話のように、そういう角度から考えますると、所得格差を解消するというための施策、また、それに関連いたしまして農村の次三男問題でありますとか、過剰労働力をどういうふうに処置するか、すなわち農村構造問題、こういうような種類のものが社会的に非常に大きな問題であると、かように考えます。
 次に、今後の農政の方向といたしまして、開拓、干拓等を大いにやるか、こういうようなお話でございまするが、もとより、農政の非常な困難な問題になっておる零細性を克服するという観点から申し上げますると、やはり干拓、開拓、移住、こういうことを大いに進めなければならぬ。そうして農家の方にそれらの土地を拡張する機会を与えるということにいたさなければならぬと考えておりまして、さような施策を推進いたしたいという考えでございます。なおまた、離農者の対策といたしましてどういうことを考えるかということでございまするが、住宅建設等に伴いまして離農される農家に対しましては、まず第一に、補償金の適正なる額を確保する、こういうことが第一だというふうに考えます。同時に、農地を取得いたしまして農業経営をいたしたいという者に対しましては、農地の新しいものをあっせんするという施策をとらなければならないし、また、そういう努力をいたしておる次第でございます。
 最後に、答申に基づいて何をするかという御趣旨のお話でございまするが、答申は、これは調査の結果を承るということでございまして、まだそれに基づいて何をするかということは具体的に考えておりません。ここではっきり申し上げますことは、再補償というような考え方の措置はいたしません。また、農地法の基本精神でありまするところの自作農主義、これに相反する施策はいたしませんと、このことだけは、はっきり申し上げておくことができる次第でございます。(拍手)
   〔政府委員福田篤泰君登壇、拍手〕
○政府委員(福田篤泰君) お答えいたします。
 調査会の目標に関連しまして、三十年度に行なわれた農林省の調査を事例としてあげられたようでございまするが、これは御承知の通り、解放問題に関連した約百七十万戸のうちの七十万戸は、いわば解放小作農、こういう農業に従事している者を対象とした農林省の調査でございまして、他の百万につきましては、その実態は全然つかんでおらない。この意味におきまして、こういう特殊な社会的な大きな問題について実態をとらえたいというのがこの調査会の目標でございます。
 なお、本案の提案と圧力団体、いわば地主団体との関係でございますが、こういう地主団体の圧力によって提案したものでなく、当然、政府が独自の判断から必要と考えて提案した次第でございます。
 また、地価の値上がり問題につきまして、勧銀その他の例をあげられたわけでありますが、この問題もいろいろな議論がございまして、調査会ができた場合には、相当権威のある回答ができるものと期待しておる次第でございます。(拍手)
○議長(松野鶴平君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
     ─────・─────
○議長(松野鶴平君) 日程第二、補助金等の臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案、
 日程第三、昭和二十八年度から昭和三十四年度までの各年度における国債整理基金に充てるべき資金の繰入の特例に関する法律の一部を改正する法律案(いずれも内閣提出、衆議院送付)、
 以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。まず委員長の報告を求めます。大蔵委員会理事上林忠次君
   〔上林忠次君登壇、拍手〕
○上林忠次君 ただいま議題となりました二法案について、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 まず、補助金等の臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。
 本案は、補助金等の整理、合理化をはかるため、法的措置を要するものについて、昭和二十九年度以降講ぜられて参りました特例措置を、引き続き昭和三十五年度においても講ずるため、本特例法の有効期限を昭和三十六年三月三十一日まで延長しようとするものであります。
 なお、申し添えますと、今国会に別途提案され、さきに可決されました漁船損害補償法の一部を改正する法律、及び運輸委員会において審議中であります外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法の一部を改正する法律案においては、「漁船損害補償法」及び「外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法」に基づく補助金等の本法の特例措置と同趣旨の改正を、それぞれの基本法に加え、本法からは該当条文を削除することにしようとしております。
 委員会の審議におきましては、昭和三十五年度の補助金等の整理、合理化方針と予算削減額はどうなっているか、予算編成に際して閣僚間に補助金制度のあり方について熱意のないのが、整理、合理化を進捗せしめない根因をなしているのじゃないか、昨年設置された補助金制度研究懇談会はどのように調査活動をしたか、補助金白書を発表する考えはないか等の問題、その他、外航船舶建造融資利子補給問題等について、熱心な質疑がなされましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
 質疑を終わり、討論に入りましたところ、永末委員より、現在、補助金行政は、地方公共団体、民間団体に対して種々の悪影響を与えており、この際、岸内閣の方針を明確にすべきであると考えるので、暫定的に一年度間効力を延長しようとする本案には反対である旨の意見が述べられ、採決の結果、多数をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。
    ―――――――――――――
 次に、昭和二十八年度から昭和三十四年度までの各年度における国債整理基金に充てるべき資金の繰入の特例に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。
 昭和二十八年度から昭和三十四年度の間においては、国債の元金償還のための資金を一般会計から国債整理基金特別会計に繰り入れる場合、その繰り入れるべき金額は国債整理基金特別会計法の規定を適用せず、財政法の規定による前々年度の剰余金の二分の一を下らざる額とすること、また、日本国有鉄道及び電信電話公社が発足当時に政府に対して負うこととなった債務の償還元利金は、直接、国債整理基金特別会計に納付し、一般会計から同特別会計に繰り入れがあったものとみなすという、二つの特別措置が講ぜられてきたのでございます。本案は、国債償還の状況にかんがみ、かつ経理の簡素化をはかるため、この特例措置を昭和三十五年度においても講じようとするものであります。
 本委員会の審議におきましては、国債償還に関する適切なる長期計画を樹立し、合理的な減債基金制度を確立する必要があるのではないか、現在の国債残高及び償還期限の到来する年度別の金額はどうなっておるか等について質疑がなされたのでありますが、詳細は会議録によって御承知を願いたいと存じます。
 質疑を終了し、討論、採決の結果、全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。
 右御報告申し上げます。(拍手)
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。
 まず、補助金等の臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○議長(松野鶴平君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。
     ―――――・―――――
○議長(松野鶴平君) 次に、昭和二十八年度から昭和三十四年度までの各年度における国債整理基金に充てるべき資金の繰入の特例に関する法律の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は全会一致をもって可決せられました。
     ―――――・―――――
○議長(松野鶴平君) 日程第四、総理府設置法の一部を改正する法律案(内閣提出第四十一号、衆議院送付)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。内閣委員長中野文門君。
   〔中野文門君登壇、拍手〕
○中野文門君 ただいま議題となりました総理府設置法の一部を改正する法律案につきまして、内閣委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 まず、本法律案の内容を申し上げますと、総理府の付属機関である訴願制度調査会の昭和三十五年三月三十一日までの設置期限を昭和三十五年十二月三十一日まで延長しようとするものであります。
 訴願制度調査会は、行政の公正な運営と国民の権利救済をはかるための訴願制度を民意の盛られた能率的なものとするため、内閣総理大臣の諮問に応じて、訴願制度の改正に関する重要事項を調査審議することを目的として昨年、第三十一回国会において一部改正された総理府設置法によって、総理府の付属機関として設けられたものであります。政府の説明するところによれば、現行訴願制度は、明治二十三年に制定された訴願法とその後補足制定された個別法令によっているため、これが調査審議の対象は広範かつ多岐にわたっておることと、また、訴願制度の改善をはかるためには現行制度の運営の実情等について調査を行なう必要があったこと等のため、審議が予想外に手間どり、調査会の設置期限の本年三月末までには審議事項の全部について審議を完了することが困難であることが明らかとなったので、この際、調査会の設置期限を本年十二月末まで九カ月延長し、審議事項について十分検討し、本調査会設置の趣旨を全うしたいということであります。
 内閣委員会は、昨日、福田総理府総務長官より本法律案の提案理由の説明を聴取いたしました後、引き続き本法律案の審議を行ないましたが、その審議におきまして、本調査会の設置期限を九カ月延長せざるを得なかった事情、九カ月間の延長で本調査会の調査は完全に達し得る見込みであるかの点、本調査会の従来の運営状況、すなわち調査会の総会、小委員会の開会の回数、調査会における調査のおもな事項、さらに、明治二十三年以来今日まで、訴願制度の改正がなされなかった理由等の諸点につき、政府委員との間に質疑応答が重ねられましたが、その詳細は委員会会議録に譲りたいと存じます。
 昨日の委員会におきまして質疑を終わり、別に討論もなく、よって直ちに本法律案を採決いたしましたところ、賛成者多数をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。
 以上御報告申し上げます。(拍手)
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。
 本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は全会一致をもって可決せられました。
     ─────・─────
○議長(松野鶴平君) 日程第五、農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。農林水産委員長堀本宜実君。
   〔堀本宜実君登壇、拍手〕
○堀本宜実君 ただいま議題となりました農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案について、農林水産委員会における審査の経過並びに結果を報告いたします。
 この法律案は、農林漁業金融公庫の資本金の増額、業務運営の円滑化及び融資条件の変更等の措置を講ずるため提案されたものでありまして、第一の資本金の増額については、政府の出資金を一般会計から七億円、産業投資特別会計から七十億円、合わせて七十七億円増額して七百八十億七百万円とすることとし、第二の業務運営の円滑化については、貸付金の回収等、業務の円滑をはかるため、公庫は必要によって、その業務にかかる現金を郵便振替貯金とし、または農林中央金庫もしくは銀行に預け入れることができる道を開き、第三の融資条件の変更については、農地または牧野の改良造成または復旧に必要な資金の貸付条件のうち、据置期間は従来五年以内となっておりましたのを七年以内に改め、都道府県営の土地改良事業に対し貸し付けられる資金について適用することとしようとするものであります。委員会におきましては、まず政府当局から提案の理由その他について説明を聞き、質疑に入り、農林漁業金融、農林漁業金融公庫の資金構成、貸付計画及び業務運営並びに農家の負債整理ての他をめぐる各般の問題について、農林当局との間に細大にわたって質疑応答が行なわれたのでありまして、これが詳細は会議録に譲ることを御了承いただきたいのであります。
 かくして質疑を終わり、討論に入り、別に発言もなく、採決の結果、この法律案は全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。
 続いて、農林漁業金融の改善、農林漁業金融公庫の原資の充実、土地改良事業の促進、乳業に対する公庫資金の融通等に関して政府の善処を求める趣旨の附帯決議を委員会の決議とすることに決定し、これに対して農林大臣から、決議の線に沿って善処したい旨、政府の方針が述べられましたことを申し添えて、報告を終わります。(拍手)
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。
 本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は全会一致をもって可決せられました。
     ―――――・―――――
○議長(松野鶴平君) 日程第六、日本国有鉄道法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
 まず委員長の報告を求めます。運輸委員長平島敏夫君。
   〔平島敏夫君登壇、拍手〕
○平島敏夫君 ただいま上程になりました日本国有鉄道法の一部を改正する法律案に関する運輸委員会における審議の経過並びに結果について御報告申し上げます。
 まず、政府の提案理由によりますと、現在の東海道線の輸送の行き詰まりを打開するため、国鉄がおおむね五カ年間の予定で昭和三十四年度から着手いたしました東海道新幹線の工事に要する資金の一部として、国際復興開発銀行から外貨資金を借り入れることとしたための関係法律の整備、並びに当該工事を円滑に進めるため理事の定員を改正する必要があるので、本法律案を提出するに至ったということでありました。
 次に、改正しようとする点について申し上げます。第一点は、ただいま申し上げました外貨資金の借り入れ契約に基づいて発行する鉄道債券に関する事項であり、第二点は理事の定数の増加に関する事項であります。
 委員会におきましては、国鉄が国際復興開発銀行から借り入れようとする金額及びその借り入れ条件、すなわち、いわゆるひもつきになる懸念の有無、役員増加の事由等について、主として質疑が行なわれました。これらの点について、政府並びに国鉄当局より、借入金は一億ドルの予定で交渉中である旨、また、借り入れ契約については国鉄の自主性を確保する方針である旨の答弁がありました。役員の定数の増加の件については、新線工事の仕事は業務量も多く、関連するところも広範囲にわたるので、工事を円滑に進める必要から増員するのであるとの答弁でございました。なお、理事の増員については、役員構成、支社制度の問題等、組織と関連し、相当活発に議論がかわされました。詳細は速記録により御承知願います。
 以上で質疑を終了し、討論に入りましたところ、相澤委員より賛成の意見の開陳があり、なお、国際復興開発銀行からの外資導入については国鉄の自主性がそこなわれることのないよう措置すること、五カ年計画の完全実施と東海道新幹線の早期完成をはかること、ほか三項目に関する附帯決議の提案がなされました。次いで、江藤委員は、自由民主党を代表して、相澤委員提案の附帯決議を付して本案に賛成の旨の意見の開陳があり、最後に、中村順造委員は、日本社会党を代表して、相澤委員提案の附帯決議を付して本案に賛成の旨の意見の開陳がありました。
 以上で討論を終わり、直ちに採決に入りましたところ、全会一致をもって、原案通り可決すべきものと決定いたしました。
 続いて、相澤委員提案の附帯決議案について諮りましたところ、これまた全会一致をもって委員会の決議とすることに決定いたしました。
 以上御報告申し上げます。(拍手)
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。
 本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は全会一致をもって可決せられました。
     ─────・─────
○議長(松野鶴平君) 日程第七、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案、
 日程第八、検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案、
 日程第九、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(いずれも内閣提出、衆議院送付)、
 以上三案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。まず、委員長の報告を求めます。法務委員長大川光三君。
   〔大川光三君登壇、拍手〕
○大川光三君 ただいま議題となりました三法律案に関する法務委員会における審議の経過並びに結果について御報告いたします。
 まず、裁判官の報酬等及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する二法案の趣旨は、一般の政府職員の中級職員の給与改訂に伴い、これに対応する一部の裁判官及び検察官の報酬または俸給を改正しようとするものであります。
 以下、改正の要点を申し上げますると、第一に、一般の政府職員について中級職員の給与を改善せられることにかんがみ、これに準じて、月額三万円以下の裁判官及び検察官の報酬、俸給の月額を増額すること。第二に、裁判官及び検察官については、さきの改正により、暫定手当の一定額が報酬または俸給の各月額に繰り入れられ、百円未満の端数を生じているが、今回一般の政府職員についてその俸給表の整理が行なわれることにかんがみ、これに準じて右の端数を切り上げる等の措置を講ずることであります。
 さて、委員会は、政府当局より提案理由の説明を聴取した後、質疑に入りましたるところ、各委員から、裁判官優位の原則と一般行政機関職員との間の給与上の関係等について、熱心な質疑が行なわれましたが、これが詳細は会議録に譲ることにいたします。
 かくて質疑を終了し、討論に入りましたるところ、日本社会党を代表して千葉委員から、本改正案が本来の裁判官優位の原則等に照らし十分であるとは考えられない等の点を指摘して反対する旨の討論がなされ、自由民主党を代表して井川理事から、本改正案は一般政府職員の中級職員の給与改訂等に伴い、これに準じて裁判官及び検察官の報酬、俸給を改正しようとするものであって、妥当であると考えられるので、これに賛成する旨の意見が述べられました。
 討論を終了し、右の二法案について採決いたしましたるところ、多数をもって政府原案通り可決すべきものと決定いたしました。
    ―――――――――――――
 次に、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の趣旨は、第一に、第一審充実強化方策の一環として、特に裁判官の負担が過重となっている地方裁判所における訴訟の適正迅速な処理をはかるとともに、この際、地方裁判所と簡易裁判所との間の事件負担の均衡、裁判官の欠員の状況等を勘案して、裁判官の定員構成を実情に即したものとするため、判事の員数を五十人増員するとともに、簡易裁判所判事の員数を三十人減員すること。第二に、裁判所における事件数の増加、特に家庭裁判所調査官の事務量の著しい増大並びに裁判所における諸設備の拡充整備に伴う関係職員増員の必要性に応ずるため、家庭裁判所調査官及び傭人等、裁判官以外の裁判所職員を八十三人増員することであります。
 さて委員会は政府当局より提案理由の説明を聴取した後、質疑に入りましたるところ、各委員から、今回の改正の訴訟促進に対する効果、裁判所関係定員外職員の定員化問題等につき熱心なる質疑が行なわれましたが、これが詳細は会議録に譲ることといたします。
 かくて質疑を終了し――討論に入りましたるところ、日本社会党を代表して千葉委員から、本改正案は、裁判所職員の欠員の状況並びに臨時職員の取り扱いの実情にかんがみ、定員法の根本原則に背馳する措置である旨の反対の討論がなされ、自由民主党を代表して井川理事からは、本改正案は、第一審充実強化方策等の一環として、裁判官、家庭裁判所調査官等の定員を整備しようとするものであって、妥当と考えられるので、これに賛成する旨の意見が述べられました。
 討論を終了し、採決いたしましたるところ、多数をもって政府原案通り可決すべきものと決定いたしました。
 以上御報告申し上げます。(拍手)
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより三案の採決をいたします。
 三案全部を問題に供します。三案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○議長(松野鶴平君) 過半数と認めます。よって三案は可決せられました。
     ―――――・―――――
○議長(松野鶴平君) 日程第十、放送法第三十七条第二項の規定に基づき、国会の承認を求めるの件(衆議院送付)を議題といたします。
 まず委員長の報告を求めます。逓信委員長柴田栄君。
   〔柴田栄君登壇、拍手〕
○柴田栄君 ただいま議題となりました放送法第三十七条第二項の規定に基づき国会の承認を求めるの件について、逓信委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本件は、日本放送協会の昭和三十五年度収支予算、事業計画及び資金計画につきまして国会の承認を求めんとするものでありまして、その内容を申し上げますると、まず、収支予算につきましては、収入支出ともに総額三百七十二億九千八百余万円でありまして、これを前年度に比べますとそれぞれ八十二億六千四百余万円の増加となっております。なお、受信料収入については、前年度と同額のラジオ月額八十五円、テレビジョン月額三百円として、それぞれ算出しております。また、この収支予算では、従前におけるラジオ・テレビジョンの区分を廃止しております。
 次に、事業計画につきましてはその重点を、ラジオにおいては難聴地域の解消、老朽設備の改善、受信者維持対策及び国際放送の拡充に置いております。テレビジョンにおいては、総合、教育両放送の早期普及、放送時間の増加、並びにラジオ及びテレビジョン放送番組の刷新拡充、研究活動の強化等に置いております。
 次に、資金計画につきましては、右収支予算及び事業計画に基づいて、年度中における資金の出入に関する計画をいたしてあります。これら収支予算等に対し、郵政大臣は、適切妥当なものと認める旨の意見を付しております。
 逓信委員会におきましては、郵政省及び日本放送協会の各当局につき、詳細にわたり質疑を行ない、慎重に審議をいたしたのでありますが、問題となったおもなる点を申し上げますと、ラジオ受信契約者の減少対策、受信料制度の抜本的検討、外国電波による混信防止、国際放送時間の延長と政府交付金の増額、従業員の待遇の向上、放送番組の質的向上、生活困窮者に対する受信料免除範囲の拡張等であります。なお、詳細については会議録によって御承知を願いたいと存じます。
 かくて質疑を終え、討論に入りましたところ、日本社会党を代表して森中委員より、次の希望を付して賛成する旨の発言がありました。すなわち、ラジオ減収対策を考究すること、駐留軍の放送役務はこれを廃止すること、職員の待遇、なかんずく臨時職員の待遇を是正すること等であります。次に、民主社会党を代表して山田委員より、次の条件を付して賛成せられました。すなわち、難聴地域の早期解消をはかること、放送番組については公共放送たる特異性を発揮すべきこと等であります。次いで同志会を代表して、奥委員より、協会に対し、大衆が期待する内容の放送を充実して、日本放送協会の使命を達成すべきことを要望して賛成する旨の発言がありました。
 かくて討論を終え、採決いたしましたところ、全会一致をもって原案通り承認すべきものと議決した次第であります。
 右御報告申し上げます。(拍手)
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本件の採決をいたします。
 本件を問題に供します。本件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立]
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本件は全会一致をもって承認することに決しました。
     ―――――・―――――
○議長(松野鶴平君) 日程第十一、道路交通法案(内閣提出)を議題といたします。
 まず委員長の報告を求めます。地方行政委員長新谷寅三郎君。
   〔新谷寅三郎君登壇、拍手〕
○新谷寅三郎君 ただいま議題となりました道路交通法案につきまして地方行政委員会における審査の経過並びに結果を御報告いたします。
 政府の説明によれば、昭和二十二年、現行道路交通取締法の制定以来、自動車の急激な発達、普及及び増加に伴い、わが国における道路交通事情は今や著しい変化を見、特に最近における大都市の道路交通は異常な発展、変貌を遂げ、現行法令の規定をもってしては、今後ますます発展することが予想される新しい情勢にとうてい対処できないものと判断せられるるに至りましたので、今回道路交通取締法を廃止して、新たに時代に適応した道路交通の基本法として、ここに本法案を提案するに至ったものでありまして、その内容の要点は大要次のごときものであります。
 すなわち第一に、法の目的につき、単に道路における危険を防止し、その他交通の安全をはかるのみでなく、積極的に交通の円滑をはかることを目的とするものであることを明らかにしております。
 第二に、交通の規制に関する規定を整備したことであります。そのおもなものは交通規制のための道路標示の設置に関する規定、自動車の最低速度に関する規定及び道路交通に関する調査を行なうための規定の新設等であります。第三に歩行者の通行について、その通行方法の基本を明らかにするとともに、これらの規定には原則として罰則を付さず、違反者に対しては警察官が必要な指示を行なうこととし、また、車両等の交通方法に関する規定において、歩行者の通行の保護をはかったことであります。
 第四に、最近における道路交通の実情にかんがみ、車両等の通行方法の基本原則、追い越しに関する規制、交差点における通行方法、停車及び駐車に関する規制等に関し新たに規定を設け、その他現行規定に全面的な検討を加え、車両等の交通方法の合理化に必要な規定を整備したことであります。
 第五に、道路における車両等の通行の停滞のため交通が著しく混雑するおそれがある場合における混雑緩和の措置、違法駐車または違法工作物等が、交通の危険を生じさせまたは著しく交通の妨害となるおそれがある場合における移動、除去、移転等の措置について必要な規定を設けるほか、酔っぱらい運転、過労運転等の無謀運転の禁止、整備不良車両の運転の禁止等、道路における危険防止のために規定の整備をはかったことであります。
 第六に、最近における交通事故及び交通法令違反の原因には、単に運転者の責めに帰すべきもののみならず、むしろその雇用者あるいは車両の運行を管理する地位にある者の責任と思われるものが少なくない実情にかんがみ、雇用者等の義務についての規定を設け、これらの者が、運転者とともに、交通秩序の確立に責任のあることを明らかにしたことであります。
 第七に、運転免許の種別を整理してその簡素化をはかり、各都道府県における運転免許関係事務の斉一化、適正化のため、全国的な基準を命令で定めることとする等、運転免許制度の合理化をはかったことであります。
 第八に、罰則については、現行法制定以後の社会情勢の変化及び現行各種法令に規定する罰則との均衡を考慮して、全面的にこれを改正するとともに、過失犯の規定及び両罰規定を整備し、また、運転者が交通違反を犯した場合において酒気を帯びていたときの刑の加重について規定したこと等であります。
 地方行政委員会におきましては、本法案が全文百数十カ条より成る道路交通に関する基本法であるのみならず、一般国民の日常生活にも多大の関係を有するものである点にかんがみ、前後十回にわたって委員会を開き、その間、運輸委員会との連合審査会を二回開会するほか、参考人の出席を求めて意見を聴取し、実地調査を行ない、特に、交通行政の総合施策の問題については、石原国務大臣、楢橋運輸大臣、福田総務長官その他、警察、運輸、建設、労働、法務各当局の出席を求めて質疑応答を重ねる等、慎重審議を行ないましたが、その詳細については会議録によって御了承を願いたいと存じます。
 ただ、その間、後に申し上げます本法案に対する修正案及び附帯決議において取り上げられました諸問題のほか、終始熱心に論議せられました事項のうち、一、二の点について御報告申し上げますと、第七十七条により、公安委員会が集団示威運動等をこの規定に該当するものと定めれば、公安条例による公安委員会の許可手続と重複して警察署長の許可をも受けなければならないのみならず、署長は、同条第五項により、道路における危険の防止、交通の安全と円滑をはかるため必要と認めた場合には、その許可を取り消すこともできることになるが、これが乱用されることはないかとの質問に対しては、政府側より、許可手続の重複については、関係規則の調整により処理できる問題であり、署長の許可権については、集団示威運動等は、同条第二項により、警察署長が許可をしなければならない条項に該当するものと認められるので、これを不許可にすることはあり得ない。従って、その許可をみだりに取り消すような許可権の乱用については、厳にこれを戒しめる旨の答弁がありました。また、本法案は、運転者とその雇用者と、双方ともに、交通の秩序の確立に責任のあることを明らかにし、両罰規定も整備したというが、実際上はその責任が運転者にしわ寄せされて、不公平な取り扱いになるのではないかとの質問に対しては、本法案の立場からいえば、この程度の規制が限度だと思われるが、政府としては、関係官庁においてそれぞれ関係法規の励行と雇用者側に対する指導監督の徹底をはかり、本法案の趣旨が没却されることがないように一そう努力したい旨の答弁がありました。
 三月三十日、質疑を終了して討論に入りましたところ、鍋島委員より、各派共同の修正案が提出せられたのでありますその修正案。の要点は、
 第一に、第六条の、車両等の通行が著しく停滞したことにより道路における交通が著しく混雑するおそれがある場合における警察官の指示権に制限を加えて、同条第一項に規定する禁止制限等の措置のみによってはその現場における混雑を緩和することができないと認めるときは、その混雑を緩和するため必要な限度において、その現場にある関係者に対し必要な指示をすることができるものとし、
 第二に、第七条第三項において、道路における危険防止のため緊急の必要があると認めるときは、警察官は、一時、歩行者または車両等の通行を禁止し、または制限することができるとあるのを、「道路の損壊、火災の発生その他の事情により道路において交通の危険が生ずるおそれがある場合に」限定して、取り締まりの慎重を期し、第三に、第四十五条について、駐車禁止の場所のうち「勾配の急な坂」を削るとともに、公安委員会が駐車を禁止する場所として指定した場所といえども、実情に応じ、警察署長の許可を条件として、駐車ができる旨の除外規定を設け、また、公安委員会が交通ひんぱんでないと認めて指定した区域については、駐車車両の右側に三・五メートル以上の余地のない道路においても、駐車を認めることとし、
 第四に、第六十五条の酔っぱらい運転の禁止の規定を改めて、何人も酒気を帯びて、すなわち、身体に政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態において車両等を運転してはならないこととするとともに、罰則の対象としては、この「酒気帯び運転禁止」の規定に違反して、酒に酔い、すなわち、アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態において車両等を運転した者に限定することとし、
 第五に、第七十四条第二項は、雇用者の義務として、雇用者は、雇用運転者に対し最高速度の規定に違反することを誘発するように時間を拘束した業務を課し、またはそのような条件を付して運転させてはならない旨を規定しているが、この規定を実効あらしめるため、新たにこの義務に違反する雇用者に対する罰則を設けることとし、
 第六に、運転免許の種類の整理に関連して、免許の年令制限を原案よりも引き上げて大型免許、普通免許及び特殊免許にあっては十八才に、三輪免許、二輪免許、軽免許、第一種原付免許及び第二種原付免許にあっては十六才に改めるとともに、この年令引き上げの趣旨に沿う経過規定を設けることとし、
 第七に、法令等の違反者で、その者が自動車等を運転することが、著しく道路における交通の危険を生じさせるおそれがある者に対し、公安委員会は、免許を与えず、または一年をこえない範囲内において免許を保留することができることとし、
 第八に、免許証の携帯及び提示義務の規定に違反した場合の罰則が、三万円以下の罰金とあるのを、一万円以下の罰金または科料に改め、
 第九に、本法案の罰則については、一般国民の理解を深めるための方策として、本法案中罰則を伴う各条の末尾に、その各条に対する罰則が第何条に規定せられているかを明瞭ならしめるための参照条文を付記することにしたこと等であります。
 次いで、鈴木委員は日本社会党を代表して、本法案の修正案及び修正部分を除く原案に対し賛成の旨を述べられ、各派共同提案にかかる附帯決議案を提出せられたのであります。その案文は次の通りであります。
  近時、交通事故激増の実情にかんがみ、政府は、本法の制定に当り特に左の諸点に留意し、交通対策上遺憾なきを期すべきである。
  一、交通関係行政の連絡調整を強化し、総合的施策の策定推進を図るため、内閣に法的根拠に基
く強力な審議機関を設置すること。
  一、一般国民に対して、本法趣旨の徹底と交通道徳の昂揚を図るため必要な措置を講ずるととも
に、学校教育を通じ学童に対して交通知識の普及を図ること。
  一、交通警察に関する要員及びその施設装備を充実すること。
  一、交通に関する行政処分等についての苦情処理機関の設置につき検討を加えること。
  一、安全運転の一般原則に関する基準を設定して運用の適正を期すること。
  一、乗車定員の規制については、実情に即し、その運用につき慎重を期すること。
  一、自動車教習所の指定基準を確立強化して運転免許の適正を期すること。
  一、免許の取消、停止等については慎重を期して処理すること。
 右決議する。
 かくて討論を終わり、採決の結果、本法案に対する修正案及び修正部分を除く原案は、いずれも全会一致をもって可決せられ、従って本法案は修正議決すべきものと決定した次第であります。
 なお、鈴木委員提出の附帯決議案は、これまた全会一致をもってこれを委員会の決議とすることに決定し、これに対し石原国務大臣より、決議の趣旨に沿うよう極力努力したい旨の所信を表明せられた次第であります。
 以上御報告申し上げます。(拍手)
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。
 本案の委員長報告は修正議決報告でございます。本案全部を問題に供します。本案は委員長報告の通り修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は全会一致をもって委員会修正通り議決せられました。
     ―――――・―――――
○議長(松野鶴平君) 日程第十二、じん肺法案、
 日程第十三、労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案(いずれも内閣提出、衆議院送付)、
 以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。まず委員長の報告を求めます。社会労働委員長加藤武徳君。
   〔加藤武徳君登壇、拍手〕
○加藤武徳君 ただいま議題となりましたじん肺法案及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案につきまして、社会労働委員会における審議の経過並びに結果を報告いたします。
 昭和三十年第二十二国会において、けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法が制定され、けい肺の予防措置を規定するとともに、けい肺または外傷性脊髄障害にかかった労働者に対して、労働基準法または労働者災害補償保険法による打ち切り補償の支給後さらに二年間、療養給付及び休業給付を支給する等、特別の保護が加えられることになったのでありますが、同法施行後二年を経過しても、大部分の者は依然として療養を必要とする状態にありましたので、昭和三十三年第二十八回国会において、けい肺及び外傷性せき髄障害の療養等に関する臨時措置法が制定され、引き続き療養を必要とする者に対しては、昭和三十五年三月三十一日までに、療養給付及び傷病手当を支給するとともに、政府は、けい肺及び外傷性脊髄障害にかかった労働者の保護措置について根本的に検討を加え、昭和三十四年十二月三十一日までに、けい肺等特別保護法の改正に関する法律案を国会に提出しなければならないこととされたのであります。議題の二法案は、これに基づいて昨年十二月国会に提出されたのであります。
 じん肺法案の要旨は、
 第一に、現行のけい肺等特別保護法では、けい肺のみを対象としておりますのを、石綿肺、アルミニウム肺等、鉱物性粉じんの吸入によって起こるその他のじん肺をも対象として、その予防及び健康管理を規定すること。
 第二に、じん肺の予防に関して、労働基準法及び鉱山保安法の規定によるほか、粉じん発散の抑制措置、呼吸用保護具の整備着用等、じん肺の予防のための措置について、労使双方の努力義務を定めるとともに、使用者は労働者に対して、じん肺の予防及び健康管理に関し必要な教育の徹底をはかること。なお、政府は粉じん対策指導委員を新たに設けて技術上の援助指導を行なうこと。
 第三に、労働者の健康管理のために、使用者は、常時、粉じん作業に従事する労働者に対して、その新規就労のとき及びその後定期的に、または新たに肺結核にかかったときにはその都度、それぞれ、じん肺健康診断を行なうこととし、都道府県労働基準局長は、これらじん肺健康診断の結果の資料の提出を求めて、じん肺診査医の診断または審査の上、労働者の健康管理の区分を決定すること。
 第四に、じん肺健康診断の結果、じん肺が管理区分三の者については、必要に応じ、都道府県労働基準局長は、粉じん作業からの転換を勧告して、じん肺の症状の進行を防止する措置を講ずるとともに、使用者は粉じん作業から転換する労働者に対して、転換手当を支払わねばならないこと。また作業転換の勧告を受けた労働者が企業内において作業の転換が行なわれがたく、離職せざるを得ないときは、政府は、職業紹介、職業訓練等について努力するとともに、さらに、これらの離職した者のために就労の機会を与えるための施設または労働能力を回復するための施設を設置経営して、その労働者の生活の安定をはかるよう努力すること。
 第五に、じん肺の予防措置等について、関係研究施設等の整備充実をはかるとともに、じん肺の診断については、じん肺診査医を置き、また労働省にじん肺審議会を設置して、じん肺に関する重要事項を調査審議すること等であります。
 次に、労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案の要旨は、
 第一に現行労働者災害補償保険法では、業務上の傷病が療養開始後三年を経過してもなおらないときには、打ち切り補償を行ない、以後一切の補償を行なわなくてもよいことになっており、ただ、けい肺及び外傷性脊髄障害については、けい肺特別保護法及び同臨時措置法により、その後引き続き約四年間、療養給付、休業給付等が行なわれることになっていますが、本改正案においては、けい肺及び外傷性脊髄障害に限らず、潜水病、放射線障害等、療養開始後三年を経過してもなおらないすべての傷病について、必要な期間、打ち切り補償費にかえて長期傷病者補償を行なうこと。
 第二に、障害等級第三級以上の重度の身体障害を残す者については、従来の一時金による障害補償費にかえて長期給付金である障害補償費を支給すること。
 第三に、今回の改正により労働基準法による補償に相当する部分をこえる部分については、それぞれその一部を国庫が負担すること。
 第四に、現行の保険加入制度のままでは労災保険に加入し得ない事業場については、事業主あるいは事業場の労働者の過半数が希望するときは、事業主から特別保険料を徴収して、労働者に長期傷病者補償または長期給付金である障害補償費を労災保険から支給すること。
 第五に、現在けい肺特別保護法または同臨時措置法による療養給付等の支給を受けている者で、四月一日以降なお引き続き療養を必要とする者については、経過措置として、すでに受けた打ち切り補償費に相当する額を減額して長期傷病者補償を行なうこと。
 第六に、長期傷病者補償または障害補償のうち、長期給付金の支給を受ける者が、同時に厚生年金保険法等の障害年金等を受けることができるときは、その者に対する長期給付金の額は、これらの障害年金等のうち、国及び使用者の負担割合に相当する部分を減じた額とすること。またこれらの長期給付金については、全産業の労働者の平均給与額が百分の二十以上変動したときには、その比率を基準としてその額を改定すること等であります。
 なお、この改正案の内容については、将来社会保障に関する制度全般の調整がなされる機会には、これを検討して必要な措置を講ずることとし、この両法律案は昭和三十五年四月一日より施行し、けい肺及び外傷性特別保護法は廃止することといたしております。
 以上が両法律案の概要でありますが、労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案につきましては、衆議院におきまして、長期傷病者補償及び遺族給付の一部の増額、並びに旧特別保護法または旧臨時措置法適用者に給付すべき長期傷病者補償を増額する等の修正が行なわれました。
 社会労働委員会におきましては慎重に審議を重ねました。質疑のありましたおもなる点は、
 じん肺法案につきましては、じん肺の予防、労働者の健康管理及びじん肺健康診断の方法、粉じん作業の内容を法律でなく省令にした理由、作業転換を行なった者の健康診断、作業転換の勧告及び転換手当の額、じん肺が治癒して管理区分の変更された者の取り扱い方、じん肺審議会の組織と権限及び本法施行上必要な予算等について。
 次に、労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案につきましては、職業病の定義及び業務上の疾病との相違、打ち切り補償費にかえて長期傷病者補償を行なう理由、長期傷病者補償を行なう期間の解雇制限及び傷病給付を第一種、第二種と区別する理由、国庫で費用の一部を負担する理由、長期給付金と厚生年金保険法等による障害年金等との併給及び遺族給付の漸減支給及び年金化等についてでありますが、詳細は委員会会議録により御承知願いたいと思います。
 かくして質疑を終了し、討論に入りましたところ、自由民主党を代表して吉武委員より両法律案に賛成、日本社会党を代表して坂本委員、民主社会党を代表して片岡委員より、それぞれ両法律案に反対の旨の意見が述べられました。続いて、両法律案について順次採決を行ないましたところ、両法律案とも多数をもって原案の通り可決すべきものと決定いたしました。
 次いで、吉武委員より、各派共同提案によって、両法律案に対して次のごとき附帯決議を付することの動議が提出され、その趣旨の説明がありました。
 附帯決議文を朗読いたします。
   じん肺法案に対する附帯決議
  政府は、じん肺法の実施に当っては特に予防対策に重点をおき、労働衛生全般について適切なる指導を行うべきである。
    ―――――――――――――
   労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案に対する附帯決議
  政府は次の事項について努力すべきである。
 一、今後、職業病について、その
  範囲を明確にし、総合的立法を
  検討すること。
 二、長期療養者ならびに遺族の生活維持のため、今後補償率及び補償条件に適切なる改善を図ること。
 三、長期傷病補償を受ける者については、住宅その他の福利施設の確保等につき関係機関において配慮せられたいこと。
 四、けい肺患者、外傷性せき髄障害者のうち過去に打切補償のみによって災害補償を打切られ(労災保険法の適用を受けない者を含む)今回の長期傷病者補償を受けることのできない者については、療養生活を継続し得るよう政府関係機関において適切なる措置を講ずるよう配慮すること。
 右の附帯決議を付することについて採決いたしましたところ、全会一致をもって可決いたしました。
 以上報告いたします。(拍手)
○議長(松野鶴平君) 両案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。坂本昭君。
   〔坂本昭君登壇、拍手〕
○坂本昭君 ただいま議題となりましたじん肺法案及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案に対しまして、日本社会党を代表して反対の討論を申し述べんとするものであります。
   〔議長退席、副議長着席]
 そもそも昔から、過失すなわち、あやまちがあって初めて責任をとらねばならないというのが、一般社会の通念でございます。ところが、一つの職場で仕事をしている労働者が、はからざる災害すなわちアクシデントによって負傷し、あるいは病気になった場合、その職場の使用者が、全責任をもって、この労働者の負傷や病気に対して徹底的な補償をするというのが、災害補償の国際的な原則なのでございます。職場の設備構造が不完全であるために労働者が負傷したとするならば、当然それは使用者の過失によるものとして責任が問われなければなりませんが、過去約一世紀にわたる労働問題の歴史的事実の中から、現在におきましては、使用者の過失のあるなしを問わずに、使用者が所有権を持っている彼の企業内におけるこのような不慮の災害による負傷に対しましては、大きな利益をおさめる者は、その収益活動に基づく損害に対し、常に責任を負うべきであるという立場からも、補償の責任をとるという、いわゆる無過失賠償責任論が確立されているのでございます。もちろん、このような結論の生ま一れるまでには、産業革命以来、生産の飛躍的発展の反面において、生産設備の機械化、大規模化、複雑化による新しい危険のために、産業上の災害による負傷や疾病が増加し、労働者の生活と生命を著しく脅やかしたのであって、その間、労働者と使用主とは、災害による負傷の損害賠償をめぐって、裁判所において激しくその責任と賠償の所在を争ってきたというのが、ヨーロッパ各国の歴史的事実でございます。長い争いの歴史の結果、たとえばイギリスにおきましては、一八九七年に近代的な労働者災害補償法が制定され、今世紀の初めにかけて、産業災害に対する補償は、今や労働者の正当な権利として法律上確立されるに至ったのであります。
 わが国の労働者の災害補償につきましては、すでに昭和十四年制定の船員保険法においては、近代文明国とほぼ歩調を一にして使用者責任が明確にされ災害による負傷、疾病は、なおるまで使用者がその費用を負担しなければならないとされており、さらに、休業中最初の四ヵ月間は標準報酬全額の傷病手当、さらにその後は、回復するまで六割の手当を支給されることになって初めて国際的レベルに達したのであります。しかるに、わが国の労働基準法の中におきましては、その第七十五条から八十条にかけまして労働者の災害補償に対する使用者責任が外国並みに一応明らかにされてはおりながら、しかも、第八十一条においては、療養を開始して三年を経過しても負傷または疾病がなおらない場合においては、使用者は平均賃金の千二百日分の費用を支払えば、使用者の労働者に対する責任は未来永遠に免除されるという打ち切り補償の制度が定められてあるのでございます。産業災害による労働者の負傷に対する使用者の責任が、わずか三年の期間によって済むということ、また、しかも、それがわずかに千二百日分の賃金で果たされるということは、これは全世界どこにもない、実に驚くべき事実であります。(拍手)日本の恥辱であります。
 今回の審議を通して、政府みずからも明確にこの点の誤りを認めているのでございます。今回の改正案が、この点について三年の期間制限を解いたことは、確かに一歩前進ではありますが、これは災害補償法のイロハのイの字でございまして、当然のことでございます。しかるに、政府は大企業家の圧力に屈して、災害補償における使用者責任の期間制限を解除しながらも、その財政的な内容においては、依然として千二百日分の打ち切り補償費のワクの中でその責任を免れようとしておるのであります。そもそも、三年たって負傷がなおらないときに、千二百日分の打ち切り補償で責任を免れるという、日本独得のこの千二百日という数字には、全然根拠がありません。(拍手)しいて求むれば、明治四十四年、工場法制定当時のいきさつによるものでございます。近代産業国家に成長してきました今日の日本の現段階にもかかわらず、明治時代の古典的思想がいまだに労働災害の問題を左右しているというのが実情であります。われわれは、三年の期間制限を解くとともに、使用者責任をあくまで明確にすべきであると考えます。今回の法改正のような差別扱いをするのではなくて入院も居宅療養者も、そのいかんを問わずに、療養費と生活費とを完全に支給さるべきであります。また、さらに、労働基準法十九条では、労働災害によって療養のため休業している間は解雇してはならないことになっております。しかし、今回療養に対する三年の期間制限がすべての労働災害に対して撤廃されはしたものの、改正案では、三年間をこえて長期傷病者の補償を受けることとなった場合には、打ち切り補償を支払ったものとみなす、支払ったものとみなすとして、労働基準法十九条ただし書きの規定により、労働者を解雇することができるのであります。お情けによって、労働者は三年以上見てやるぞ、だが、炭鉱の山の住宅からは出ていけという、まことに冷酷無情な企業家の態度が全く露骨に出されており、政府もまた、災害補償の国際的原則に完全に反しているのであります。ことに、打ち切り補償とは平均賃金千二百日分の金額の支払いをいうのであって、現実に千二百日分の支払いに至らないにもかかわらず、これを支払ったものとみなすということは、いわば詐欺行為であり、法律そのものとしても矛盾があり、疑問点を有しているものであって、おそるべきごまかしと言わなければなりません。国家公務員災害補償法にも打ち切り補償は規定されてはありますが、現実には人事院は打ち切りをほとんど実施してはおりません。船員保険法では、船員は三年をこえて無期限に災害補償が行なわれています。一千三百万人の労災法加入の労働者に対して、政府はまことに怠慢のそしりを免れません。また、厚生年金保険の障害年金や国家公務員共済組合の廃疾年金の支給を受けるときには、一併給が認められないので、当分の間は減額された年金を受け取るのでございますが、そもそも、年金は所得保障のための制度であります。併給によっても、まだきわめて不十分な所得保障であるにかかわらず、これを一方的に減額する政府案は、所得保障の理論を先にして、現実を後にするものであって、少なくとも近代政治と申すことはできないのでございます。
 さらにまた、遺族給付が六年で打ち切られようとしていたのでございますが、修正によって、六年後も受けられるようになったことは当然のことでありますが、本来、労働基準法では、労働災害による遺族給付は平均賃金の千日分と定められてあるのにもかかわらず、これがわずかに修正によって百四十日分とされたことは、基準法違反であり、かつ、労働者の遺族の正当なる権利を踏みにじるものと言わざるを得ません。
 また、大正十四年以来・労働者職業病補償に関するILO国際条約は、わが国もいち早く批准を行なっているにもかかわらず、政府の怠慢によって、労働災害との関連において検討されること不十分であり、立法的にも行政的にも、職業病は不当な取り扱いを受けてきたことは、まことに遺憾であります、。職業病の取り上げ方が、今回の審議を通してやや前進したことは喜ぶべき事実ではございますが、さらに政府は、研究機関と行政機構を整備して、各種の職業病をすみやかに明確にすべきであります。
 さらに、じん肺法案が、この点におきまして、今後の職業病の予防と健康管理と、労働者の生活保障を進めるために、きわめて重要な最初の法案であることは明らかであります。われわれは、労働災害対策は、その災害補償にあるよりも、災害予防に目標があると信じており、予防、健康管理、災害補償、アフター・ケア、これらは首尾一貫、系統化されなければならないと考えております。今回のじん肺法案は、医学、専門的な面については国際水準をはるかに抜いてはおりながら、具体的に、行政的に、予防を実施するための機構はきわめて弱体であり、指導基準は不明確であって、とうてい予防の実をあげ得るとは考えられません。特に、労働者が健康管理のために産業転換する場合の転換手当は、わずかに三十日分であって、職場の確保と生活の保障とが使用者の明確な責任として示されていないことは、はなはだ残念であって、われわれはとうてい承服ができないところでございます。
 さて、わが国の近代産業の驚くべき発展にもかかわらず、その産業を推進するわが国労働者の仕事の上での災害補償のためのわが国の労働者災害補償保険法は、今回の法律改正によっても、いまだに国際的レベルを遠ざかること著しく、文明国家の法律とはとうてい申すことができないのであります。ことに、労働災害としての職業病がいまだに不明確に放置され、研究や予防措置はきわめて不十分でございます。特に注意すべきことは、労働災害全般に対する国際的通念である、なおるまでの使用主の全責任が、近来わが国においては、むしろ弱体化されていこうとすることが特に注目すべきことでございます。政府の企業家一辺倒の政治思想の誤りを、この際、特に強く警告をして、今回の改正法律案に対して、修正部分を含めて反対の意見を表明するものでございます。(拍手)
    ─────────────○副議長(平井太郎君) 徳永正利君。
  [徳永正利君登壇、拍手〕
○徳永正利君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となっておりますじん肺法案及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案に賛成の意見を申し述べるものであります。
 まず、労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案につきましては、
 今回の改正の第一点は、業務上、けい肺及び外傷性脊髄障害にかかった労働者に対しましては、治癒するまで長期保護を行なうこととしたことであります。現行の労災保険法または労働基準法では、業務上の傷病者に対する補償は三年間を限度とし、あとは一時金の打ち切り補償によって保護が打ち切られることとなっておりまして、特にけい肺及び脊髄障害の場合でも、保護が約四年間延長されたにとどまって、その後は全く放置されておるのであります。政府案は、治癒が困難で長期にわたる療養を要するけい肺患者や脊髄障害患者に対しましては、必要な期間何年でも安心して療養を継続し得るようにすることが保護対策の根本である考え、今回英断をもって従来の補償の打ち切り制度を廃止し、これにかえて、なおるまで、終身にも及んで長期給付を行なうこととしたのでありまして、まことに適切な措置であるといわなければなりません。
 第二点は、けい肺、脊髄障害以外の他の類似傷病にも保護を拡大したことであります。現行制度では、労災保険法または労働基準法の三年の補償期間をこえて特別保護を与えられるものは、けい肺及び脊髄障害患者に限られ、他の傷病は一切除外されているのでありますが、今回の政府案では、保護の適用範囲を拡大し、およそ三年の療養をもってなおらない傷病は、すべて平等に、なおるまでの長期保護を行なうこととしているのであります。その結果、けい肺や脊髄障害のほか、頭部外傷のごとき災害による負傷、けい肺以外のじん肺、放射線障害、また重度のベンゾール中毒のごとき職業病など、これまで特別保護を受けていなかった労働者も長期給付を受けられることとなるのであります。
 第三点は、業務上の重度の身体障害者につきましても終身の保護が与えられることとなったことであります。現行の労災保険法では、業務上身体障害をこうむった者についても一時金による障害補償が行なわれるだけでありますが、今回の改正案では、前述のごとく、すべての長期傷病者に対して長期保護を行なうこととなったのにあわせまして、両眼の失明、半身不随、両手または両足切断等、労働能力を百パーセント喪失された業務上の重度の身体障害者につきましても、同様の年金制による終身の保護を与えることとしているのであります。しかも、以上の長期給付の内容は、すべて他の社会保障に比較いたしましても相当に厚いものでありまして、保護の永久化、対象範囲の拡大と相待って、業務上災害を受けられた者に対する保護は大幅に向上することとなるのであります。
 次に、じん肺法案につきましては、政府案の内容は、じん肺の予防及び健康管理の充実であります。現行のけい肺等特別保護法は、けい肺の健康管理については規定しておりますが、予防措置につきましては特に規定しておらないのであります。これにかえまして、今回政府が提出いたしましたじん肺法案においては、その対象をけい肺かち鉱物准じん肺全部に拡大するとともに、治療の困難なじん肺につきましては、予防措置の強化と病勢の悪化を防止するための健康管理の充実をはかることが特に重要であるとの考えに基づきまして、新たに予防の義務に関する規定を設け、また粉じん対策指導委員の設置その他により、政府は使用者に予防に関する技術援助を行なうこととする等、予防の強化をはかることとし、さらに健康管理につきましても、「最近における医学の進歩に応じまして、一そうこれを充実することとしているのであります。
 これを要するに、今回の政府の措置は、業務上の傷病にかかる労働者の保護措置といたしまして画期的なものであり、社会保障制度の拡充の見地からしまして一大前進でありまして、これが実施せられますならば、このような気の毒な労働者諸君に対し福祉をもたらすことを確信いたしまして、私はこの二法案に対して賛意を表するものであります。(拍手)
○副議長(平井太郎君) 赤松常子君。
   〔赤松常子君登壇、拍手〕
○赤松常子君 私は、民主社会党を代表いたしまして、政府提案のじん肺法案及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案、並びに衆議院与党提出の修正案に対しまして、反対の意見を申し述べたいと存じます。
 すでに早くわが民主社会党は、今日各産業の職場の中に発生しております各種の職業病の予防と健康管理及び補償などについて適切なる対策を施す必要を痛切に感じて参っておりました。ところが、政府は、今回けい肺等の療養に関する臨時措置法第十三条に基づいて、じん肺法案並びに労働者災害保険法の一部を改正する法律案を提出したのでございますが、この法案を成立するまでの経過の内容を見ますと、けい肺審議会、労働者災害保険審議会、社会保障制度審議会等が出しております答申に盛られた各界代表の意見を十分に取り上げていないうらみがございます。特に、社会保障制度審議会の答申は、わが民主社会党の意見と全く同じ考え方であると思いますが、それすらも全然とり入れられていない。ほんとうに遺憾に思う次第でございます。私は、以下わが党の反対理由を明らかにいたしまして、政府の善処を強く要望いたすものでございます。
 まず、反対理由の第一点は、法の体系上あるいは内容について、多くの疑問が存在しているわけでございます。政府案は、予防、健康管理、症度区分、作業転換などの必要な規定は、じん肺法案の中で、また、補償は労働者災害保険法の一部改正の法律案に分けていますが、私は、政府がこの法案を作るに至ったのは、けい肺症その他類似病の特異性を認めるがゆえによるものと思っております。しかし、この案では、職業病を災害病と混同して、最も安易な方法で、労働災害保険という偶発的な災害補償を中心とする法律の中で取り扱おうとしておりますが、わが党が反対する本質的な問題点がそこにあるわけでございます。
 反対理由の第二点は、じん肺法案で規定する予防措置について、政府は、労働基準法、鉱山保安法、結核予防法の三法で規定していない部分について規定するとしていますが、本法案の中に政府の言っております規定がどこにも見当たらないのでございます。たとえば、じん肺についても、その他類似病についても、これらの疾病を発生させない予防処置を講ずることこそが大切なことは当然のことでございましょう。そのことのために、一例をじん肺の予防に求めてみますと、じん肺症発生の粉じん職場における粉じんをなくするための施策がほんとうに大事であることは当然でございます。しかし、実際的に粉じん職場において粉じんを皆無にすることの困難は、私もよく承知いたしております。そこで、粉じんをどの程度に押えるならば、けい肺病の発生を防ぐことができるか、あるいは発生の低下が期待できるかという、粉じん濃度の恕限度の基準を、それぞれの粉じん職場に設定させて、苦悩するけい肺症撲滅に意を注ぐべきであると存じます。また、その他、類似病について予防あるいは健康管理の必要な措置を講ずべきでございましょう。そのために、現状の予防に関するそれぞれの研究機関を一元化して、総合的な予防、健康管理等の施策を検討するための研究機関の設置をしなければならないと深く思う次第でございます。
 理由の第三点は補償関係でございます。政府案は、補償の給付を労働者災害保険法は、改正で行なわんとしていますが、労働者災害保険法は、本来、偶発的事故または疾病を予想して、これに対する事業主の無過失賠償責任を明らかにしたものでありますか、この中に異質の職業病を含めることは、職業病に対する特殊の保護を弱めるものと言わなければなりません。従って、けい肺特別保護法や、けい肺臨時措置法が、労災法と別個に立法規定された理由はここにあるのでございましょう。さらに、現行労働基準法は、労働者の災害について事業主がその責任を負うことを明確に規定いたしております。しかし政府の改正案は、国庫負担の導入によってこれらの補償を制度化しようとしていますが、このことは、事業主の補償責任をあいまいにするものであり、加えて、補償制度の立て方についても多くの問題点を内包していると存じます。また政府の案は、打ち切り補償及び障害補償を合理化して、長期給付制度に変えようといたしておりますが、この考え方は、労働基準法との関係を不明確にするものでございましょう。さらに、政府案は給付の年金制を採用していますが、この考え方は、前進的なものとして一応は認め得ますが、わが国社会保障制度における各種一年金制度は、現在総合調整を強く要望されておる段階にあり、この時点で政府案を加えることは適切でないと思う次第でございます。また、年金制の採用にあたっては、他に存在する社会保険との均衡をはかると言いながら、厚生年金保険、船員保険その他の保険法との均衡が全く考えられていないのでございます。たとえば船員保険法で規定する障害年金は、一級から六級まで年金制としておるにもかかわらず、改正案は、同一条件の内容を規定しながら、一級から三級までの年金制に定めることは、労働基準法で労働者がひとしく保護を受けることの規定に反するものと言えましょう。また、この年金は、打ち切り補償の支給条件を手直ししたものであるべき補償の、根本的検討が十分なされていない点を指摘しなければなりません。
 次に私は、長期療養者に対する補償は、最低、現行法によって支給されている療養に必要な費用の金額及び必要な期間の生活維持の費用を合わせたものを補償すべきであると存じます。従って長期療養者に対する給付は、通院、入院の差別をつけるべきではございません。
 次に、長期療養者に対する長期給付と、障害費と厚生年金との関連について一言触れなければなりません。政府案は、厚生年金法で規定する障害年金との併給になるとして、差引方式をとっておることはきわめて不合理でありまして、本来の保険制度は、一定の保険料が定められ、その保険料を拠出しておる者は、その保険制度で定める給付を受ける権利を保障するものであり、かつ完全なる給付を受けることが当然でございます。この政府案は、経過措置として、打ち切り補償を受けた労働者が引き続き政府案の保護を受ける場合の措置として、平均賃金の四十日分を差し引くこととしていますが、政府が四十日分を算定した年数をこえる場合も、なお引き続き差し引かれることになっていますので、この点についても全く不合理と申さねばなりません。
 以上、政府の改正案に対するわが党の反対理由の一端を申し述べましたが、まだまだ解決されねばならぬ幾多の矛盾と不備があることをもここに申し添えておく次第でございます。
 そこで、この際、私は、政府当局におかれては、今回の改正案が数多くの問題点を内包しておることを認められて、さらにより完全な法案を、そうしてまた苦悩する労働者が真に期待してやまない法案を提出されるよう、強く要求してやまない次第でございます。
 私は、以上の考え方に立って、政府及び関係当局に向かって、この政府案を適当な機関で慎重に再検討していただくために、現行のけい肺臨時措置法を一年間延長する措置を講ぜられんことを要望いたすものでございます。その再検討にあたっては、各産業の職場で発生している多くの職業病の全般にわたっての総合対策を立て、これが立法化の一日も早からんことを強く期待いたしておる次第でございます。
 以上をもちまして私の反対意見を終わる次第でございます。(拍手)
○副議長(平井太郎君) これにて討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局とたものと認めます。
 これより両案の採決をいたします。
 両案全部を問題に供します。両案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○副議長(平井太郎君) 過半数と認めます。よって両案は可決せられました。
     ─────・─────
○副議長(平井太郎君) 参事に報告させます。
  〔参事朗読〕
本日委員長から左の報告書が提出された。
 開拓融資保証法の一部を改正する法律案可決報告書
 アジア経済研究所法案可決報告書
 裁判官弾劾法の一部を改正する法律案可決報告書
     ―――――・―――――
○副議長(平井太郎君) この際、日程に追加して、開拓融資保証法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(平井太郎君) 御異議ないと認めます。まず、委員長の報告を求めます。農林水産委員長堀本宜実君。
   〔堀本宜実君登壇、拍手]
○堀本宜実君 ただいま議題になりました開拓融資保証法の一部を改正する法律案について、農林水産委員会における審査の経過並びに結果を報告いたします。
 開拓者が肥料、飼料、種苗あるいは中小家畜等を購入するための短期営農資金等の疎通をはかるため、昭和二十八年、開拓融資保証法が実施され、政府は中央開拓融資保証協会に対し、現在三億九千万円を出資しておるのでありますが、昭和三十五年度において、一般会計からさらに一億円を追加出資して四億九千万円とし、保証力を高め、融資の拡大に資することとしようとするのが、この法律案が提案された理由とその内容であります。
 委員会におきましては、政府当局から提案の理由その他について説明を聞き、質疑に入り、開拓政策、開拓営農、開拓農協、開拓金融、開拓者の負債、開拓融資保証制度その他に関する諸般の問題について農林当局との間に質疑応答が行なわれたのでありまして、これら審議の詳細は会議録に譲ることを御了承いただきたいのであります。
 かくして質疑を終わり、討論に入り、別に発言もなく、続いて採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決定いたしました。
 右報告いたします。(拍手)
○副議長(平井太郎君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。
 本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○副議長(平井太郎君) 総員起立と認めます。よって本案は全会一致をもつて可決せられました。
     ─────・─────
○副議長(平井太郎君) この際、日程に追加して、アジア経済研究所法案(内閣提出、衆議院送付)を議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり]
○副議長(平井太郎君) 御異議ないと認めます。まず委員長の報告を求めます。商工委員会理事古池信三君。
   〔古池信三君登壇、拍手〕
○古池信三君 ただいま議題となりましたアジア経済研究所法案について、商工委員会における審査の経過並びに結果について御報告申し上げます。
 本法案は、現在の財団法人アジア経済研究所を特殊法人に改組して、アジア地域等の経済及びこれに関連する諸事情についての基礎的かつ総合的な調査研究と、その成果の普及を行なわせ、これらの地域との貿易の拡大及び経済協力の促進に寄与することを目的したものでございまして、概略次のことを規定しております。第一に、研究所の資本金は、設立に際し政府の出資する一億円と政府以外のものが出資する額の合計とし、第二に、役員のうち、会長、所長及び監事は通商産業大臣が任命することにするとともに、所要の監督規定を設けております。第三に、研究所の業務は、アジア地域の経済及びこれに関連する諸事情に関する資料の収集、調査研究及びそれらの成果の普及でありますが、必要に応じてはアジア地域以外の諸事情についても調査研究等を行ない得ることとしておるのであります。
 委員会におきましては、研究所運営の基本方向、研究の対象となる地域、研究所の事業計画並びに資金計画、さらには研究所の所管問題等、きわめて広範かつ多岐にわたって審査を行なったのでございますが、その詳細は会議録によって御承知いただくことにいたしまして、政府側との質疑応答の一端を申し上げますと、まず、従来の財団法人をなぜ特殊法人に改組するのかという質問に対しては、研究所を財政的にも安定させ、有能な調査員を集めて長期計画で養成していくためには、特殊法人にした方がよく、しかも現在の研究所の責任者もそれを希望しているという旨の答弁があり、中南米、アフリカ等に関する研究も、アジア地域のそれに劣らぬ重要性を持っているのではないかという質問に対しては、研究の重点はアジア地域に置かれるが力の及ぶ限りそれ以外の地域についても配慮したいとの答弁がございました。また産業経済に直接寄与する研究所に対して、さらに積極的な資金的協力を広く呼びかけるべきだという発言に対しては、政府側も同感の意を表しました。
 質疑を終了し、討論に入りましたところ、栗山委員から、次の附帯決議を付して賛成するとの意見が述べられました。附帯決議案は、
  政府は、アジア経済研究所の実施する海外経済事情の基礎的かつ総合的な調査研究の重要性にかんがみ、本法の施行にあたっては、左の諸点に特に留意すべきである。
  一、研究所の運営に際しては、わが国の当面する貿易の振興及び経済協力の推進に直接寄与し、国の要請に応えうるよう措置すること。
  二、研究所には、アジア地域についてはもとより、わが国の貿易及び経済協力に密接な関連を有
し、かつ未だ調査研究の充分に行われていない中南米、アフリカ等の諸事情についても、遅滞なく、適切なる調査研究を行わしめること。
  三、研究所を充実させるため、今後とも十分な予算措置を講ずるとともに、民間資金をも多量に導入しうるよう配慮すること。
 というのであります。ついで古池委員からも本法案及び附帯決議案について賛意が表明されました。
 かくて討論を終わり、採決に付しましたところ、本法案は全会一致をもって衆議院送付の原案通り可決すべきものと決定いたしました。
 なお栗山委員から提案されました附帯決議案も、これまた全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。その際、池田通商産業大臣より、附帯決議の意のあるところを体して善処したいとの発言がございました。
 以上御報告申し上げます。(拍手)
○副議長(平井太郎君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。
 本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○副議長(平井太郎君) 総員起立と認めます。よって本案は全会一致をもって可決せられました。
     ―――――・―――――
○副議長(平井太郎君) この際、日程に追加して、裁判官弾劾法の一部を改正する法律案(衆議院提出)を議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(平井太郎君) 御異議ないと認めます。まず委員長の報告を求めます。議院運営委員長高橋進太郎君。
   〔高橋進太郎君登壇、拍手〕
○高橋進太郎君 ただいま議題となりました裁判官弾劾法の一部を改正する法律案は、弾劾裁判所及び訴追委員会の事務局の職員について、国会事務局職員の例にならって、参事、参事補の区別を廃止するとともに、職員の定員は現在法律をもって規定しておりますが、これを規程に譲ることといたしたものでございます、
 議院運営委員会におきましては、審査の結果、全会一致をもって可決すべきものと決定いたした次第でございます。
 以上御報告申し上げます。(拍手)
○副議長(平井太郎君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。
 本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○副議長(平井太郎君) 総員起立と認めます、よって本案は全会一致をもって可決せられました。
     ―――――・―――――
○副議長(平井太郎君) 日程第十四、参議院事務局職員定員規程の一部改正に関する件を議題といたします。
○副議長(平井太郎君) 本件につきまして、議長は、参議院事務局職員定員規程の一部を改正する規程案を立案いたしまして、あらかじめ議院運営委員会に諮りましたところ、同委員会においては異議がない旨の決定がございました。本規程案は、議席に配布いたしました通りでございます。
 別に御発言もなければ、これより本規程案の採決をいたします。
 本規程案全部を問題に供します。本規程案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○副議長(平井太郎君) 総員起立と認めます。よって本規程案は全会一致をもって可決せられました。    参議事の都合によりこれにて暫時休憩いたします。
   午後一時二十三分休憩
     ―――――・―――――
   午後五時四十一分開議
○議長(松野鶴平君) 休憩前に引き続き、これより会議を開きます。
 参事に報告させます。
   〔参事朗読〕
本日衆議院から左の内閣提出案を受領した。よって議長は直ちにこれを社会労働委員会に付託した。 精神薄弱者福祉法案
本日委員長から左の報告書が提出された。
 公営企業金融公庫法の一部を改正する法律案
市町村職員共済組合法の一部を改正する法律案可決報告書
 高等学校の定時制教育及び通信教育振興法の一部を改正する法律案可決報告書
 関税定率法の一部を改正する法律案可決報告書
 関税暫定措置法案可決報告書
 糸価安定特別会計法の一部を改正する法律案可決報告書
 国有林野事業特別会計法の一部を改正する法律案可決報告書
 治水特別会計法案可決報告書
 精神薄弱者福祉法案可決報告書
     ―――――・―――――
○議長(松野鶴平君) この際、日程に追加して、
 公営企業金融公庫法の一部を改正する法律案、
 市町村職員共済組合法の一部を改正する法律案(いずれも内閣提出、衆議院送付)、以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。まず委員長の報告を求めます。地方行政委員長新谷寅三郎君。
  [新谷寅三郎君登壇、拍手〕
○新谷寅三郎君 ただいま議題となりました公営企業金融公庫法の一部を改正する法律案及び市町村職員共済組合法の一部を改正する法律案につきまして、地方行政委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 まず、公営企業金融公庫法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 本法案の内容は、公営企業金融公庫の業務運営の基礎を充実するため、その資本金を十五億円から十八億円に増額するとともに、同公庫は、当分の間、農林漁業金融公庫からの委託を受けて、地方公共団体の行なう造林に必要な資金の貸付にかかる業務を行なうことができるものとすること等が、その要点であります。
 地方行政委員会におきましては、二月十六日、石原国務大臣より提案理由の説明を聞いた後、慎重審査を行ない、三月三十一日質疑を終局して討論に入りましたところ、別に発言もなく、採決の結果、本法案は全会一致をもって衆議院送付案通り可決すべきものと決定した次第であります。

 次に、市町村職員共済組合法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 現行市町村職員共済組合法の規定によれば、市町村職員共済組合の発足の際、健康保険組合の権利義務を承継した組合は、昭和三十五年十二月三十一日までの間、当該健康保険組合が行なっていた付加給付を引き続いて行なうことができることとされており、また、職員である被保険者の負担する保険料よりも多額の保険料を負担していた市町村では、組合の短期給付に要する費用は、市町村と職員との折半負担の建前の特例として、昭和三十五年十二月三十一日までの間は、引き続き市町村において組合員よりも多額の負担をすることができることとされているのでありますが、本法案は、政府において、目下、地方公務員を通ずる統一的な共済制度について検討を進めている事情とも見合いまして、現行法に認められておりまする右の特例期間を、この際一年間延長して昭和三十六年十二月三十一日までとしようとするものであります。
 地方行政委員会におきましては、三月十五日、石原国務大臣より提案理由の説明を聞いた後、慎重審査を行ないましたが三月三十一日質疑を終わり、討論に入りましたところ、別に発言もなく、採決の結果、本法案は全会一致をもって衆議院送付案通り可決すべきものと決定した次第であります。
 以上御報告申し上げます。(拍手)
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。
 両案全部を問題に供します。両案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって両案は全会一致をもって可決せられました。
     ―――――・―――――
○議長(松野鶴平君) この際、日程に追加して、高等学校の定時制教育及び通信教育振興法の一部を改正する法律一案(内閣提出、衆議院送付)を議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。まず、委員長の報告を求めます。文教委員会理事加瀬完君。
   〔加瀬完君登壇、拍手〕
○加瀬完君 ただいま議題となりました高等学校の定時制教育及び通信教育振興法の一部を改正する法律案について、文教委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本法案は、国立、公立の高等学校における定時制教育及び通信教育を振興する一方策として、これらの学校の校長と教員の待遇を改善するため、新たに定時制通信教育手当を支給することといたしております。
 委員会においては、これらの学校に勤務する事務職員の待遇改善等についても熱心な質疑が行なわれましたが、その詳細については会議録によって御承知願いたいと存じます。
 本日、質疑を終了、討論の後、本案は全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。
 以上御報告申し上げます。(拍手)
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。
 本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は全会一致をもって可決せられました。
     ―――――・―――――
○議長(松野鶴平君) この際、日程に追加して、
 関税定率法の一部を改正する法律案、
 関税暫定措置法案、
 糸価安定特別会計法の一部を改正する法律案、
 国有林野事業特別会計法の一部を改正する法律案、
 治水特別会計法案(いずれも内閣提出、衆議院送付)、
 以上五案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。まず、委員長の報告を求めます。大蔵委員長杉山昌作君。
   〔杉山昌作君登壇、拍手〕
○杉山昌作君 ただいま議題となりました五法律案の大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 まず、関税定率法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 本案は、現在対ドル地域差別待遇品目となっているラードが本年四月からAA制べ移行することに備えて、国内生産者の保護をはかるため、その関税率を改正しようとするものであります。
 ラードの現行関税率は、基本税率で従価一〇%となっておりますが、ガットの譲許税率が従価五%となっているため、協定税率適用国ではこの適用を受けております。しかし、今後、貿易の自由化促進に伴い、安価な外国産品が進出することとなれば、国内のラード精製業界は相当深刻な打撃をこうむるものと予想されますので、今回精製ラードについて、従価換算で一五%相当の、一キログラムにつき十五円の従量税率に引き上げようとするものであります。
 次に、関税暫定措置法案について申し上げます。
 関税の暫定的減免制度は、現在、関税定率法の一部を改正する法律において規定されておりますが、今回その内容に調整を加えて、関税定率法及び関税法の特例として新たにこの法律案で規定しようとするものであります。
 本案の内容を簡単に申し上げますと、第一点は、炭化水素油について、最近の石炭産業の状況及び石油の輸入価格の推移等にかんがみ、現行の暫定減免税措置を延長しないこととしております。しかし、わが国産業の実情を考慮して、昭和三十五年度を限って、製油原料については六%の軽減税率を適用するとともに、農林漁業用のA重油及び肥料製造用の原油については免税することとしております。
 第二点は、電子計算機のうち国産化が進んでいる中型及び小型計算機の本体について、現行の免税措置を取りやめることとしております。
 第三点は、石油化学工業並びに特殊鋼産業の発展に資するため、ニッケル・コバルト・クロム触媒及びシリカ・アルミナ触媒並びに五酸化バナジウムについて、また、国民保健の向上のために、小児麻痺予防用ワクチン製造に使用する猿について、それぞれ昭和三十五年度に限り免税措置を講ずることとしております。
 第四点は、これらの物品以外の物品で現在暫定減免措置の適用を受けているものについて、継続措置を講ずることとし、原子力関係物品及び航空機関係の物品については三年間、その他主要機械類、給食用脱脂ミルク、小麦等の物品については一年間、さらに減免税の期間を延長することとしております。
 第五点は、特定用途に供することを条件に暫定減免税措置を受けた物品については、あらかじめ税関長の承認を受けた場合のほか、用途外使用を禁止するとともに、これに違反した場合の罰則規定を設けております。
 以上両案の委員会における審議につきましては、貿易の自由化促進に伴い、今後の関税政策のあり方が全面的に検討されねばならなくなるが、その改正の見通しはどうなっているか石炭産業との競合関係から見て石油関税を引き上げるべきではないか、税関職員の勤務状況は作業量の増大によって労働過重となっているので、この際、抜本的な対策を講ずべきではないか等について、質疑応答がなされましたが、その詳細は会議録により御承知願いたいと存じます。
 質疑を終了し、両案一括して討論に入りましたところ、須藤委員より反対意見、天坊委員、平林委員より賛成意見が述べられ、採決の結果、両案はそれぞれ多数をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。
    ―――――――――――――
 次に、糸価安定特別会計法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 昭和三十三、三十四年産の生糸及び繭の価格安定対策は、繭糸価格の安定に関する臨時措置法に基づいて行なわれ、同法の措置に伴い、政府の買い入れ資金を補強するため、去る第三十一回国会において、糸価安定特別会計に一般会計から二十億円を繰り入れるとともに、同特別会計の借入金等の限度額を二百七十五億円に大幅に引き上げる措置を講じたのでありまするが、昭和三十五年産の生糸及び繭につきましては、臨時措置法に基づく措置を継続する必要がないと見込まれます、ので、本案は、さきに引き上げた借入金等の限度額を百六十億円引き下げて百十五億円にしようとするものであります。
 委員会の審議にあたりましては、今後の養蚕対策・等につきまして質疑がございましたが、それらの詳細は会議録によって御承知を願います。
 質疑を終わり、討論採決の結果、多数をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。
    ―――――――――――――
 次に、国有林野事業特別会計法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 本案は、さきに成立いたしました治山治水緊急措置法に基づいて行なわれる治山事業の収支並びにその成果を明確にするため、国有林野事業特別会計に新たに治山勘定を設け、直轄治山事業等に関する経理を一般会計と区分して行なおうとするものであります。
 最後に、治水特別会計法案について申し上げます。
 本案は、さきに成立いたしました治山治水緊急措置法に基づいて行なわれる直轄治水事業及び多目的ダム建設工事等に関する経理を明確にするため、特別会計を新設しようとするものであります。
 委員会の審議におきましては、特別会計をみだりに設けることの可否につきまして論議がございましたが、それらの詳細は会議録によってごらんを願いたいと存じます。
 右の両案を一括してそれぞれ討論採決の結果、両案ともそれぞれ多数をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。
 以上御報告を申し上げます。(拍手)
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより五案の採決をいたします。
 まず、関税定率法の一部を改正する法律案、関税暫定措置法案、糸価安定特別会計法の一部を改正する法律案、国有林野事業特別会計法の一部を改正する法律案、
 以上四案全部を問題に供します。四案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○議長(松野鶴平君) 過半数と認めます。よって四案は可決せられました。
     ―――――・―――――
○議長(松野鶴平君) 次に、治水特別会計法案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○議長(松野鶴平君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。
     ―――――・―――――
○議長(松野鶴平君) この際、日程に追加して、精神薄弱者福祉法案(内閣提出、衆議院送付)を議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。まず、委員長の報告を求めます。社会労働委員長加藤武徳君。
   〔加藤武徳君登壇、拍手〕
○加藤武徳君 ただいま議題となりました精神薄弱者福祉法案につきまして、社会労働委員会における審議の経過並びに結果を報告いたします。本法律案の要旨は、第一に、精神薄弱者に対する福祉措置の前提となる専門的な判定を行ない、あわせてその相談指導を行なう精神薄弱者更生相談所を設置すること。第二に、精神薄弱者の相談指導等を専門的に行なう職員として精神薄弱者福祉司を置くこと。第三に、自立更生の助長と保護のためにとるべき措置を規定すること。第四に、公立の援護施設に対し、設置費の二分の一、運営費の十分の八を国が負担すること。第五に、精神薄弱者福祉対策の推進のため、学識経験者による審議去を設けることなどであります。委員会におきましては、終始熱心に質疑が行なわれましたが、詳細は会議録によって御承知を願います。
 かくて質疑を終了し、討論採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決定いたしました。
 次に、高野委員より、本法律案に対し次の附帯決議を付するの動議が提出せられました。
   精神薄弱者福祉法案に対する附帯決議
  政府は、本法実施にあたっては特に次の諸施策の実現に努力すべきである。
  一、精神薄弱者の実態を明らかにするため積極的に調査を進め、その発生予防、援護、更生のた
めの総合的対策を速やかに確立すること。
  二、精神薄弱者の援護施設の収容力が入所必要者の数に比し著しく不足している現状にかんがみ、国立施設の増加、公私立施設に対する国庫負担の増額等、積極的対策をはかること。
  三、児童福祉法と成人たる精神薄弱者を対象とする本法の施設との関連を明らかにし、経費の負担、責任の分野など遺憾なきを期すること。
  四、技能を修得した精神薄弱者の雇用を促進するための措置を速やかに講ずること。
 右の決議案について採決を行ないましたところ、これまた全会一致をもって本法律案の附帯決議とすることに決した次第であります。
 以上報告いたします。(拍手)
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。
 本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は全会一致をもって可決せられました。
     ―――――・―――――
○議長(松野鶴平君) 参事に報告させます。
   〔参事朗読〕
本日委員長から左の報告書が提出された。
 外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法の一部を改正する法律案可決報告書
     ―――――・―――――
○議長(松野鶴平君) この際、日程に追加して、外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。まず、委員長の報告を求めます。運輸委員会理事江藤智君。
   〔江藤智君登壇、拍手]
○江藤智君 ただいま議題となりました外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法の一部を改正する法律案につきまして、運輸委員会における審議の経過並びに結果を御報告いたします。
 造船利子補給制度は、スエズ運河紛争による海運界の好況に伴いまして、三十二年度は予算措置が講ぜられず、そのまま今日に及んでいたものでありますが、世界海運市況がスエズ運河の復旧再開後急速に低落し、これに伴いましてわが国の海運会社の経理内容は著しく悪化するに至りました。そこで政府は、日本海運の国際競争力強化対策の一環として、造船利子補給復活の方針を決定し、三十五年度予算に約九億五千万円を計上するとともに、本改正案を提出するに至ったのであります。
 次に、改正案のおもなる点を申し上げますと、第一は、利子補給の復活に伴いまして、利子補給停止期間中の建造船舶についても利子補給を行ない得るようにすることであります。第二は、現在停止中の開発銀行に対する利子補給制度を廃止することであります。第三は、市中金融機関に対する損失補償制度の実施を当分の間停止することであります。
 さて質疑におきましては、まず日本海運のあり方と、政府の海運基本政策について、その所信をただし、次いで、最近における海運諸問題に対する政府の指導とその実施状況等について、資料により詳細説明を聴取した後、利子補給の内容、今後の利子補給の見込み等について質疑が行なわれたのでありますが、その詳細は会議録に譲ることを御了承願います。
 次に、討論に入りましたところ、相澤委員より、日本社会党を代表して反対意見が述べられ、また、松浦委員より賛成意見が述べられました。
 かくて討論を終わり、採決に入りましたところ、本法案は多数をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。
 以上御報告申し上げます。(拍手)
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。
 本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○議長(松野鶴平君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。
 議事の都合により、これにて暫時休憩いたします。
   午後六時六分休憩
     ―――――・―――――
   午後八時十五分開議
○議長(松野鶴平君) 休憩前に引き続きこれより会議を開きます。
 参事に報告させます。
   〔参事朗読〕
本日委員長から左の報告書が提出された。
 昭和三十五年度一般会計予算、昭和三十五年度特別会計予算及び昭和三十五年度政府関係機関予算可決報告書
    ―――――――――――――
○議長(松野鶴平君) この際、日程に追加して、
 昭和三十五年度一般会計予算、
 昭和三十五年度特別会計予算、
 昭和三十五年度政府関係機関予算、
 以上三案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。まず、委員長の報告を求めます。予算委員長小林英三君。
   〔小林英三君登壇、拍手〕
○小林英三君 ただいま議題となりました昭和三十五年度一般会計予算、昭和三十五年度特別会計予算及び昭和三十五年度政府関係機関予算の、予算委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 昭和三十五年度予算は、最近におきまするわが国経済の順調な発展と、貿易為替の自由化推進の必要とにかんがみまして、財政面から景気に刺激を与えることを避け、経済の安定的成長を持続することを基本方針といたしまして、大体次のように編成されているのでございます。
 すなわち、まず第一には、健全財政を堅持する建前からいたしまして、公債発行等の財源によることなく、一般会計予算については租税その他の普通歳入によって支弁し得る範囲にとどめるとともに、財政投融資につきましても、通常の原資によるほか、民間資金の活用はこれを適当な規模にとどめることといたしておるのでございます。第二には、昨年発生いたしました大災害の実情に顧み、当面緊急に措置すべき災害の復旧に万全を期することはもちろん、将来再びかような災害を招くことのないよう、抜本的な国土保全対策を樹立することに最大の重点を置いているのでございます。
 かくて昭和三十五年度予算の規模は、一般会計におきまして一兆五千六百九十六億円余でありまして、前年度当初予算に比し、千五百四億円の増加となっておりますが、国民所得に対する割合といたしましては、前年度の一五・九%に対し一五%と、やや低下を示しております。また財政投融資計画におきましては、総額五千九百四十一億円でありまして、前年度の当初計画に比し七百四十三億円の増加となっておるのでございます。
 以上のような規模を持った昭和三十五年度予算の内容をきわめて重点的に御説明申し上げます。
 まず歳入面におきまする租税及び印紙収入は一兆三千三百六十六億円でありまして、前年度当初予算に比し二千百五十四億円の増加となっております。このうち二千九十六億円は自然増収でありまして、残りの五十八億円が原重油などに対する関税の暫定減免措置の改定または廃止による増徴分となっているわけであります。なお、昭和三十五年度には、前年度に比し、財源といたしまして使用し得る過去の剰余金等が八百五十八億円に上る減少を見ましたので、災害復旧、国土保全等
 の重要経費を確保し、しかも、なおかつ、財政の健全性を堅持するため、減税の実施はこれを見送ることとし、引き続き税制調査会において検討を続けることといたしております。
 次に、歳出でありまするが、伊勢湾台風等、大災害の経験にかんがみまして、三十五年度予算におきましては、災害復旧、国土保全に最重点を置いておりますことは、すでに申し上げた通りでございます。すなわち、災害復旧につきましては五百八十一億円を計上し、所定の年度割に従い災害復旧の進捗をはかるほか、災害を未然に防止いたし、国土を保全するために、新たに治山治水の長期計画を樹立し、今後十カ年間に、治水事業につきましては九千二百億円、治山事業につきましては千三百億円、合計一兆五百億円に上る事業を遂行することとし、また、これらの事業を円滑に推進するため、新たに治水特別会計及び国有林野事業特別会計治山勘定を設置することとしておるのであります。これら特別会計に対する繰り入れを含め、一般会計の治山治水対策費は総額六百三億円と、前年度当初予算に比しまして二百億円の増加となっております。
 このほか、道路、港湾等を初め、農業基盤の整備等につきましても、それぞれ予算額の増加を行なっており、公共事業関係費全体といたしましては、総額二千八百八十九億円に上り、前年度当初予算に比べますると五百六十六億円の増加と相なっておるのでございます。
 次に、社会保障関係費でありまするが、まず国民年金につきましては、前年度に支給を開始いたしました無拠出の福祉年金の支給の平年度化及び三十六年度から実施予定の拠出制年金の準備に必要な予算措置を行ない、また、国民皆保険計画につきましては、予定の通り三十五年度末におきましてこれを達成するよう、所要の予算措置を講じておるのでございます。さらに生活保護費、児童保護、その他社会福祉費、失業対策費、結核対策費等におきましても、施策の充実をはかるため、それぞれ経費を増額いたしており、社会保障関係費全体といたしましては、総額千八百十七億円に上り、前年度当初予算に比べますると三百三十八億円の増加となっておるのであります。
 防衛関係費につきましては、わが国自衛態勢整備のため、防衛庁経費が前年度当初予算に比し百二十五億円増の千四百八十五億円となっておるのでありますが、他方、新安保条約の締結に伴う防衛分担金の皆減等によりまして百十六億円を減少いたしておりまするので、防衛関係費全体といたしましては千五百四十五億円と、前年度当初予算に比しまして九億円の微増にとどまっているのであります。(「微増とは何だ」と呼ぶ者あり)
 地方財政関係費といたしましては、三十五年度の所得税、法人税及び酒税収入見込額の二八・五%に相当する地方交付税交付金二千八百三十五億円のほか、今回新たに右三税の〇・三%に相当する臨時地方特別交付金三十億円が計上されております。この特別交付金は、昭和三十四年度におきまして実施した国税の減税に伴い住民税が減税となりまするので、地方財政の現況にかんがみ、この減収額を考慮いたしまして、当分の間、これを交付することとしたものであります。なお、地方財政につきましては、地方起債ワクの大幅拡大並びに特別会計にかかる直轄事業分担金の現金納付化、すなわち、いわゆる交付公債制度廃止等の措置がとられておるのであります。
 貿易振興及び経済協力費につきましては、従来からの諸施策の拡充に必要な経費を増額しておりますほか、日本輸出入銀行に置かれている東南アジア開発協力基金を振りかえ充当いたしまして、今回新たに特殊法人たる海外経済協力基金を設け、東南アジアに対する経済協力の一そうの進展をはかることといたし、また、低開発地域の経済開発を促進する目的をもちまして新設を予定されておりまするところのいわゆる第二世銀への加入をも予定いたしまして、必要な予算措置が講ぜられておるのであります。
 このほか、中小企業対策費、農林漁業、文教及び科学技術、住宅及び環境衛生等に関しましても、それぞれ必要な経費の増額、が行なわれておりまするが、特に不振産業の対策といたしまして石炭業につきましては、その体質改善のための合理化対策と離職者援護の措置が講ぜられ、海運業につきましては、計画造船に関する市中融資につき利子補給を復活する予算措置がなされておるのであります。
 以上、主として一般会計について申し上げたのでありますが、特別会計は、治水特別会計が新設されましたのに対し、これに吸収されることとなる多目的ダム建設工事特別会計及び工事の完了による臨時受託調達特別会計の廃止があり、差引一つを減少することとなっておるのであります。
 また、政府関係機関といたしましては、医療金融公庫の新設によりまして、その数を一つ増加することとなっております。
 これら予算三案は、一月二十九日国会に提出せられ、予算委員会におきましては、二月四日佐藤大蔵大臣から提案理由の説明を聴取いたし、三月三日、衆議院よりの送付を待ちまして翌四日から本審査に入りました。自来、委員会を開くこと十七回、その間、二日間にわたりまして公聴会を、また、四日間にわたりまして分科会を開くなど、慎重に審議を重ねた次第であります。
 申すまでもなく、予算委員会におきまする質疑は、政府の施政全般を通じ、きわめて広範多岐にわたったのでございまするが、以下、そのうち若干のものにつきまして簡単に要旨を御報告いたしたいと存じます。
 まず、予算の性格につきまして、「政府は財政面から経済に刺激を与えないということを基本方針としていると言うが、三十五年度の経済成長率六・六%に対し、国の予算は二%の伸び、財政投融資は一四・三%の伸び地方財政は一五・六%の伸びというように、財政規模が相当大幅に拡大しており、はたして政府の方針通りになっているかどうか疑問である。かりにこの程度の財政規模は過大でないとしても、少しも減税を行なわず、歳入の限度一ぱいに歳出を膨張せしめたことは、後年度における経費の著しい当然増を必至ならしめ、財政の弾力性を失わしめるものではないか。ことに防衛庁には九百億円以上の国庫債務負担行為が計上されており、今後防衛費の増大が著しく他の経費を圧迫するようになるのではないか。また、政府は今後減税に努めるとは言っておるが、三十六年度に必ず減税すると確約できるか。」などの質疑がありました。これに対しまして、佐藤大蔵大臣から、「昭和三十五年度予算が健全財政の建前を堅持していることは言うまでもなく、地方財政についても同一の方針によっているのであり、国の財政と地方財政の純計の国民所得に対する割合を見ても、三十四年度の二四・二%に対し、三十五年度は二三%に低下しており、健全かつ適正な規模を保っている。財政投融資についても通常の原資と適当な規模の民間資金でまかなっており、これを弾力的に運用することによって経済の安定成長を期し得ると思う。防衛関係費は三十五年度において予算総額の九・八%を占めているにすぎないが、今後とも民生安定に重きを置き、防衛費が他の経費を圧迫しないよう十分留意するつもりである。三十五年度に減税が行なえないことはまことに残念であるが、現在の経済好況がこのまま持続すれば、三十六年度においても相当の自然増収を期待できるし、国費全般にわたる節約等をもあわせ考え、税制調査会の結論とも相待って、三十六年度にはぜひとも減税を実施したい考えである。」との答弁がありました。
 防衛問題につきましては、「わが国は、新安保条約により、相互防衛並びに防衛力増強の義務を負うことになると思うが、これは憲法違反ではないか。また、もし政府の言うように、防衛力についてわが国が自主的に決定するというのであれば、防衛力の漸減もまた可能ということになり、その場合には条約違反となるのではないか。」との質疑があり、岸内閣総理大臣から、「新安保条約第五条の相互防衛は、日本領土内の米軍が武力攻撃を受けた場合、それは日本そのものに対する侵犯にほかならないものであるから、それに対して日本が個別的自衛権を発動するという内容のものであって、憲法の規定に違反するものではない。また新安保条約第三条は、従来日本がとってきている国力、国情に応じて防衛力を漸増するという基本方針に対して、何ら実質的に新たな義務を加重するものではない。日本が自分の国をみずから防衛するという考え方を捨ててしまわない限り、そのときどきの国際情勢や国力、国情により、現実の防衛費や人数等が動くことがあっても、条約第三条の規定と直接の関係はない。」との答弁がありました。また、「政府は武力攻撃に対処する行動には外交交渉等は含まないと言っているが、この場合、武力行使以外には、その他の方法で平和的に解決する余地は全くないものであるかどうか。また竹島はわが国の領土でありながら韓国によって不法に占拠されているが、かりにこの条約が発効した際にはどうなるのであるか。また、将来竹島問題と同様の事件が発生した場合には、第五条が発動されるのであるかどうか。」との質疑に対しまして、岸内閣総理大臣、藤山外務大臣及び赤城防衛庁長官から、「第五条に言う武力攻撃は、国連憲章第五十一条の武力攻撃であるから、当然武力をもってそれを排除するとともに、直ちに国連安保理事会に報告することとなる。それ以外の広義の武力攻撃の場合におきましては、第四条の協議によって対処するわけで、むろん外交交渉の余地があり、あとう限り平和的に解決すべきは当然である。竹島問題はすでに八年以前に起こった問題であり、日本は終始一貫外交交渉によって平和的にこれを解決しようと努力しているものであって、第五条に該当する問題ではない。しかしながら、将来竹島と同じように日本の領土が外国の侵略を受けた場合においては、当然第五条が発動される。」との答弁がありました。
 国民所得倍増計画につきましては、「昭和三十五年度予算には、所得倍増計画は何ら織り込まれていないではないか。普通の長期経済計画と区別して、特に所得倍増計画と銘を打つ以上、単純に十年たてば国民所得が倍になるというだけで、国民経済の構造的変化を意図しなければ、それは単なる選挙用のキャッチ・フレーズにすぎないではないか。現状のまま国民所得を倍増すれば、貧富の差、所得の格差はますます増大すると思うが、これはどうするつもりであるか。また、農家や公務員の所得はどうなるのであるか。」などの質疑に対しまして、関係各閣僚から、「国民所得倍増計画は、ただいま経済審議会に諮問中で、まだ結論を得ていないので、三十五年度予算に所得倍増計画を織り込んだとは言いかねる点もあるが、しかし、所得倍増の基本的な考え方に沿い、その基礎条件を整備するよう予算を編成したつもりである。経済の成熟に伴い、高い成長率を維持していくことがますます困難となるので、十年間に国民所得を倍増することだけでも必ずしも容易ではないが、同時に、内容的には各種の所得格差をなくする工夫をしなければならない。地域的な格差に対しては、いわゆる後進地域の開発をはかる必要があるが、後進地域は農業を主としているので、農業と他の産業との格差を解消していくことが最も肝要である。農業基盤を強化し、その生産性を高めると同時に、その過剰労働力を他の産業に吸収していけば、農家一人当たりの所得についても倍増は必ずしも不可能ではない。また公務員の給与については、民間給与との比較に基づく人事院勧告を政府が尊重するという方針に変わりはない。しかし所得倍増計画そのものは、目下せっかく審議中の段階であって、六月ごろまでに正式に決定いたしたい。」との答弁がありました。貿易・為替の自由化につきましては、「自由化によって、わが国の経済、産業はきわめて重大な影響を受けることとなるが、これに対してどのように対処するのであるか、なかんずく最も深刻な打撃を受ける中小企業や農業についての対策はどうであるか。貿易自由化で国内の後進産業の保護育成は関税だけに頼らなければならなくなるが、関税政策をどうするつもりであるか。自由化実施の具体的な段取りはどうであるか。またわが国の外貨準備がどれくらいになればIMFから貿易制限の撤廃を勧告されることになるのか。」などの質疑に対しまして関係各閣僚から「貿易・為替の自由化は世界経済の大勢であって、ことに貿易に依存する程度の多いわが国としましては、貿易・為替が自由になることが経済発展の上から望ましい。自由化の影響は、大企業よりも資本的技術的に脆弱な中小企業に大きいので、中小企業自体の近代化や組織化を促進するとともに、商工会法あるいは中小企業業種別振興臨時措置・法等、新規の施策により、中小企業へのしわ寄せをできるだけ緩和するようにいたしたい。農産物の自由化については、各国とも慎重な態度をとっており、わが国としてもその実施には特に慎重でなければならぬと考えている。米麦と酪農製品については自由化しない。また砂糖についてもただいまのところ自由化する考えはない。関税改正については、自由化に備えて関税の適正化をはかるため、さしあたり関税率審議会に関税率の全面的検討をやらせる考えである。いナれにしても貿易・為替の自由化についての総合的なスヶジユールは五月中に作成する方針である。なおIMF規約第八条国になるかならないかの点であるが、外貨準備について格別の基準はなく、外貨手持のほか各国の国情も考慮せられるのであり、わが国が今直ちに第八条国になるような勧告を受けることはないと思う。」との答弁がありました。
 災害復旧と国土保全につきましては、「昨年の伊勢湾台風等災害の復旧事業は順調に行なわれているかどうか。さらに、昭和三十五年度は災害復旧事業の最盛期に当たるが、はたして円滑に行なわれるように措置されているかどうか。また政府はこのような災害を未然に防止するための抜本的な国土保全対策を推進するといっているが、二十八年の大災害直後の膨大な治山治水基本対策がそのまま立ち消えとなった実例もあり、今度は、はたして完遂する自信があるかどうか、また治山治水について建設省では治水特別会計を新設し、補助事業まで一括して遂行するのに、農林省では国有林野事業特別会計の中に治山勘定を設けただけで、しかもその勘定に国有林の治山事業を含めていないのはどういうわけであるか。治山事業一体化の趣旨から国有林も含めるのが効果的ではないか。また治山治水計画等で激増した公共事業を地方団体がはたして消化できるか。」などの質疑に対し、村上建設大臣から、「三十四年に発生した災害の復旧事業は順調に進んでおり、三十四年度末における進捗率は二七・四%であり、三十五年度の予算措置により、同年度末には六七・一%の進捗率を達成できる。昭和二十八年、治山治水対策協議会で決定された基本対策要綱は、はかばかしく実施されていないので、あらためて昭和三十五年度を初年度とする長期計画を策定することといたした。しかも、これは従来の関係各省の申し合わせ程度のものではなく、治山治水緊急措置法により、閣議で決定されるものであって、財政上の裏づけもあるので、この計画は完全に実行できるものと確信している。」との答弁がありました。また、福田農林大臣からは、「国有林野事業特別会計に事業勘定と治山勘定とを設けたのは、国有林と民有林とは、そのやり方が基本的に違うので、これを区分すると同時に、一つの特別会計内に置くことによって、彼此融通の便宜もあるので、このようにしたのである。」との答弁がありました。また、石原自治庁長官からは、「公共事業の地方負担については、地方財政計画に盛り込んであるが、貧弱団体の中には、現行の負担率では消化に困難を感ずる一向きもあるので、交付税等の傾斜的配分などにより措置する考えである。」との答弁がございました。
 以上のほか、新安保条約に関連しての極東の範囲並びに事前協議、日中関係の打開、北方領土、日ソ漁業交渉、フィリピン賠償及び経済協力、ILO条約の批准、三井三池炭鉱争議等の諸問題につきましても、活発なる質疑が行なわれたのでございまするが詳細は会議録によって御承知を願いたいと存じます。
 かくて、本日をもちまして質疑を終了し、討論に入りましたところ、日本社会党を代表いたしまして鈴木委員が反対、自由民主党を代表して小柳委員が賛成、民主社会党を代表して松浦委員が反対、参議院同志会を代表して森委員が賛成、日本共産党を代表して岩間委員が反対の旨、それぞれ述べられました。
 討論を終局し、採決の結果、予算委員会に付託されました昭和三十五年度予算三案は、いずれも多数をもって原案の通り可決すべきものと決定した次第でございます。
 以上御報告申し上げます。(拍手)
   〔相澤重明君発言の許可を求む〕
○議長(松野鶴平君) 相澤君、何ですか。
○相澤重明君 今の委員長の報告は、私は静かに聞いておりました。そこで、前段の御報告については、若干私は疑義があります。後段の佐藤大蔵大臣の意見からの話については、その通りだと思います。しかし、前段の防衛費の微増ということについては、日本社会党の委員が微増ということは言わなかったのです。従って、これらの点について、委員長の報告に私は質疑をいたしたいと思う。その議事進行についての発言を許してもらいたい。委員長の報告は政府に対してじゃない。委員会の公正な報告をしなければいかぬ。議長、議事進行。あれでは一方的ですよ。院内交渉係、話して下さい。一方的だ。議事進行について発言。議員の固有の権利だ。そんな話があるか。議長は発言しなさいよ。はっきりしなさい、議長は中立だ。(「発言を許せ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
○議長(松野鶴平君) 議事進行の発言として質疑を要求されておりますが、議事進行の発言と質疑とは違いますから、お認めできません。(「その通り」「おかしいじゃないか」と呼ぶ者あり)
 三案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。秋山長造君。
   〔秋山長造君登壇、拍手〕
○秋山長造君 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となっております昭和三十五年度予算三案に対して、反対の討論をいたしたいと思うのでありますが、予算の討論に入る前に、私は予算委員の一人として、また、予算委員会の理事の一人として、ただいま行なわれました委員長の御報告の、ただいま問題になっております前段については、はなはだ了承に苦しむものであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)そもそも、委員会の委員長報告というものは、その委員長の所属党派がいずれにありましょうとも、そういうことにかかわりなしに、委員会の審議の経過及び結果をきわめて公平に客観的に報告さるべき性質のものでございます。にもかかわらず、ただいまの委員長の御報告の中に、たとえば新年度の防衛庁費が九億円ふえておるということは、これは事実であります。しかし、それに形容詞をつけて微増をしておるとおっしゃったのであります。微増ということは、これは見る人によってそれぞれ見解が違うと思う。ですから、委員長報告としては、それはあくまで客観的に、形容詞をつけないで、九億円は九億円として、そのものずばりで御報告になるのが、私は委員長報告としてのしかるべきあり方だろうと思う。(「自由だ」と呼ぶ者あり)自由じゃございません。委員長報告というものはそういうものなのだ、委員長報告は。その他いろいろな点についても言及したいけれども、私の持ち時間というものに食い込んでも困りますから、私は最初にも申し上げましたように、委員の一人として、理事の一人として、委員長報告の前段には断じて了承ができない。私はこの前段は取り消していただきたい、こういう意思をはっきりと申し上げておきます。(拍手)
 さて、本論に入りますが、反対の理由の第一は、今回の予算編成をめぐって演じられました政府与党内部の混乱と醜態ぶりであります。昨年暮れ、三十五年度予算の大蔵省原案が発表されてから、一月十三日、政府案の最終決定を見るまでの三週間、派閥や圧力団体の予算ぶんどり合戦が猛烈をきわめ、本来、国民のものであるべき予算を一党一派が私するものとして、国民の激しい非難を浴びたことは、皆さん御記憶の通りであります。もとより政党政治、政党内閣の今日でありますから、政府の予算編成が与党の政策方針に沿うて行なわるべきは当然でありますが、本三十五年度予算の編成過程に働いたのは、そのような筋の通った、統一された与党の意思では断じてなく、与党内の派閥を中心に、各省の官僚や圧力団体が三つどもえになっての予算ぶんどりであり、本来、事態の取りまとめに当たるべき副総裁や政調会長のような最高幹部が、「伴睦一たびほゆれば」と叫んで、みずから先頭に立っての予算強奪であって、保守党政治の醜悪面をまざまざと国民の前に露呈したものであります。さればこそ、政府案の決定した翌日の各新聞は、朝日が、「醜態を露呈した予算編成」、毎日は、「はたして健全予算なのか」、読売は、「圧力に屈した放漫予算」、日経は、「思いつきでゆがめられた予算案」といった調子で、筆をそろえて、かつてない痛烈な批判を加えたのであります。しかも、奇怪なのは、このような乱脈ぶりに対する岸総理大臣の態度であります。総理はまた与党の総裁として、事態収拾の最高責任者であるにもかかわらず、何らなすところなく、拱手傍観、ひたすら派閥闘争の火の粉を避けるのにきゅうきゅうとしていたのであります。これでは肝心の予算編成に筋が通らず、派閥や圧力団体のぶんどり競争によって、予算が食い荒らされ、ゆがめられるのも当然でありまして、われわれはかかる乱脈な予算案に断じて賛成するわけには参りません。(拍手)
 第二に、われわれの問題としなければならない点は、一兆五千六百九十六億円の予算規模についてであります。昨年十二月十八日、政府の発表した昭和三十五年度予算編成方針によれば、三十五年度の経済成長率を六・六%と見込みつつも、健全財政を堅持して、財政面から景気に刺激を与えることを避け、通貨価値の維持と国際収支の安一定を確保することを基本とすることになっており、いわゆる中立健全予算を組むというのが政府の方針であったはずであります。なるほど、そのため予算の財源は、税金、専売益金等の普通財源でまかない、公債発行や外為会計のインベントリーの取りくずし等は行なわれなかったし、財政投融資についても通常の原資によることとしております。しかし、大蔵省原案の一兆五千六百九十六億円は、前年度当初予算に比べて千五百四億円の膨張であり、これに大蔵省原案のワクを形式的に維持するためごまかしを行なったところの三十四年度第三次補正予算べの繰り上げ計上額百億円を加うれば、実に千六百四億円、一一・三%の膨張となるのであります。予算編成の前提となる経済成長率を六・六%と見込みながら、そのおよそ倍に当たる膨張率の予算を実施すれば、それが景気刺激的となり、数量景気を価格景気に転ぜしめるであろうことは明らかであり、すでにこの点からも中立予算の方針はくずれていると言わなければなりません。また、財政投融資についても、一応五千九百四十一億円ということになっておりますが、これに愛知用水に融資する余剰農産物の見返り資金四十五億円、開発銀行及び電電公社の外債五千万ドル(百八十億円)を加えると、三十五年度の実質的な財政投融資は六千百六十六億円に上り、前年度の五千百九十八億円に比べて九百六十八億円、一八・六%の膨張となり、経済成長率六・六%の実に三倍に当たるのであります。予算の中立主義はこの面からもくずれておりますし、政府は公債発行はしないと言いながら、五千万ドルの外債発行を予定しているのであります。このようにして、政府の三十五年度予算は、景気や物価を刺激する積極予算、インフレ予算となり、すでに実施され、あるいは近く実施されようとしておるところの新聞代金、放送料金、ガス、通運、地下鉄、電気、授業料、郵便、理髪、ふろ屋等々の公共的大衆的料金の値上げと相待って、国民生活に重大なる圧迫を加えることとなるのであります。(拍手)われわれはかかる見地からも本予算案に賛成することは断じてできないのであります。
 第三は、政府のいわゆる所得倍増計画についてであります。岸総理は、昨年の参議院選挙以来、所得倍増を、安保改定、選挙制度改正とともに、岸内閣の三大政策の一つとして公約して来たのであります。そうして本計画が三十五年度予算に織り込まれるべきことは、自民党の予算編成大綱にも、政府の予算編成方針にも明らかにされていたところであります。しかるに、今現実にわれわれの前に示されております昭和三十五年度予算案は、遺憾ながら、この所得倍増計画の一環として編成されたものとは認めがたいのであります。すなわち昨年十月発表された自民党の国民所得倍増の構想によれば、昭和四十四年度には国民総生産が十三兆円もふえるのに、輸出の増加を四十一億ドル、一・兆五千億円程度しか見込んでいないのはおかしいとか、鉱工業生産の伸びを九・三%と見込みながら、農林水産業を二・五%しか見込んでいないのは、都市と農村との所得格差をいよいよ拡大するものではないかというような異論が続出して、御破算となり、政府案はあらためて経済審議会に諮問し、その答申を待って決定することとなったのでありまして、その時期は早くとも本年末と言われているのでありますから、現在政府には、所得倍増計画はもちろん、その構想すらないのがあたりまえであります。われわれは予算審議を通じて繰り返し本問題を追及したのでありますが、政府の言う所得倍増計画なるものは何ら実体のない、から宣伝にすぎず、三十五年度予算案は、長期的展望のない、出たとこ勝負の無原則な予算であることが完全に暴露されたのであります。そもそも派閥や圧力団体の予算ぶんどりを許す要因は、すでにこうしたところにもあったわけでありまして、われわれの断じて納得し得ない点であります。
 第四は、貿易・為易の自由化について何ら基本的具体的対策を示していない点であります。政府は昨秋来、にわかに貿易・為易の自由化方針を打ち出し、今後三年間にこれを完了するといっております。これは直接には、国際通貨基金やガットの総会で勧告を受けたことによるものと思われますが、その背後にアメリカの強い圧力が動いていることは、自民党の河野一郎氏も指摘された通りであります。最近アメリカは金の流出、ドルの軟化に悩んでおり、その回復のために輸出の振興と対外投資の活発化に腐心しているのであります。日本に対する自由化の要求もその一つの現われであり、それこそ新安保条約第二条にいう日米経済協力なるものの実態であります。岸内閣は一部の大資本家と結託して、不用意、無計画にこのアメリカの要求にこたえんとしておるのであります。いうまでもなく、自由化が独占と集中を一そう促進し、かたがた競争力の弱い中小企業や農林漁業にしわが寄せられることは明らかであり、労働者には合理化首切りと低賃金が押しつけられること必定であります。われわれが自由化の前提として、対中ソ貿易の正常化と、中小企業や農林漁業の体質改善と、経済の二重構造是正のための積極的施策を強く要望するゆえんであります。しかるに、肝心の農林予算は、農業基盤の整備強化をうたいながら、食管会計繰り入れや災害復旧費にその増加分の大半が食われて、実質増加はせいぜい八十億円程度にすぎません。また、農林予算は予算総額の七・二%で、前年度の七四%に比べても相当の後退であります。さらに、中小企業の面でも同様であります。事業税、法人税の減税が見送られたことはもとより、政府が鳴りもの入りで宣伝これ努めている商工会法案にしても、その裏づけはわずか四億円、ロッキード機分にも及ばないのであります。さきにも触れた新年度財政投融資にいたしましても、総額六千百六十六億円のうち、中小企業向けの融資はわずかに六百五十三億円で、一〇・六%にすぎず、その大部分が大独占企業に対する投融資になっているのであります。かかる政策は、当然労働者の上に大きくしわ寄せされるのであります。論より証拠、現に三井鉱山において六千名の首切りをめぐり、労使の激しい紛争が続いているではありませんか。こうした事態が貿易・為替自由化によってさらに他の産業、他の企業に波及拡大するであろうことは火を見るよりも明らかであります。われわれは、岸内閣のかかる不用意、無計画な一貿易自由化の政策に対して強い抵抗を感ぜざるを得ないものであります。(拍手)
 第五の問題点は、二千百五十三億円という巨額の自然増収を見込みながら、一銭一厘の減税も行なっていないことであります。元来、減税は岸内閣成立以来の金看板であったはずであります。現に前年度は、自然増収千八十六億円に対し、曲がりなりにも、初年度四百十三億円、平年度七百億円の減税を行なったのでありますが、本年度はその倍の自然増収を見込みながら、全然減税を行なわないのみか、逆に原油、重油関係の引き上げによって五十億円の増税すら企図しているのであります。政府は減税のできない理由として、三十五年度は三十四年度に比べて、剰余金及び経済基盤強化資金を合わせて八百五十七億円も財源が減少すること、三十五年度は伊勢湾台風などの災害復旧や治山治水対策費が大幅増加すること、社会保障費、文教費、軍人恩給費等の当然増が大きいこと等々をあげておりますが、第一、予算の大蔵省原案がきまってから、予算の総ワクを変更することなく、自民党の三百億円に上る復活要求、すなわち派閥のぶんどり要求をそっくりのみ込むだけの隠し財源があったではありませんか。また、資本蓄積の名目によって、租税特別措置法を通じ、大法人や高額所得層に一千億円前後の減免税が行なわれておりますが、これを整理再検討することによって少なくとも五百億円程度の財源は確保できるはずであります。さらに年々多額の剰余金、繰越金を出している防衛関係費の大幅節減等を考えあわせるならば、財源は確保する意思があれば確保できるものであり、減税は行なう意思があれば必ず行ない得るものであると言わざるを得ません。(拍手)問題は、岸政権のあり方、岸政治の性格にかかってくるのであります。元来わが国民の税負担はいまだに戦前よりも重く、諸外国に比べても、はるかに重いことは周知の事実であります。すなわち、国税、地方税を合わせた租税収入が国民所得中に占める割合は、戦前すなわち昭和九年から十一年の平均の一二・九%から、戦後急テンポで増大をして、ドッジ・ラインの実施された昭和二十四年度には二八・五%にまで達したのでありますが、その後は三十四年度の一九・五%に至るまでささやかながらも毎年のごとく減税が行なわれてきたわけでありまして、昭和三十五年度租税負担率二〇・六%というのは、この趨勢に反して再び三十三年度の水準に逆戻りしたきわめて反動的な数字であります。税制調査会の中間報告でもこの点に強い不満が表明され、租税負担率の限度を二〇%に押えるべき旨が指摘されたことは、皆さん御承知の通りであります。そのほか、本年は国民皆保険の実施により、東京都などでは住民税とほぼ同額の保険料が加わり、公務員は恩給が共済制度に切りかわることによって、掛金が千分の二十から千分の四十四に倍増することになっており、しかも今年の減税がストップされたばかりでなく、明三十六年度1の剰余金となるべき財源を三十四年度の第三次補正で食ってしまい、また三十六年は、防衛費、治山治水事業費の急増や、食管特別会計の赤字補てんにも財源が食われるので、減税どころか、増税、赤字公債、消費者米価値上げ等々が日程に上ってくることは必定であります。われわれは、このような勤労大衆を収奪する物価引き上げと増税の予算案に断じて反対しなければならないのであります。(拍手)
 第六の最も重大な問題点は、予算の軍事的性格が一そう強くなってきたことであります。世界の緊張緩和、軍備縮小の方向とは逆に、また災害復旧や治山治水に多くの国費を必要とする国内情勢にも逆行して、防衛庁費は百二十五億円も増額されたのみならず、総額一千億円からの国庫債務負担行為を計上して、ロッキードF104J二百機を初め、潜水艦、ミサイル兵器等々を飛躍的に整備強化しようとしておるのであります。これは日米軍事同盟たる新安全保障条約の必然的な結果であり、世界の緊張緩和の趨勢と日本国憲法の平和主義を頭から踏みにじるものと言わねばなりません。さらに、財政経済の観点から見ましても、新安全保障条約第三条はバンデンバーグ決議をそのまま受け入れて、日本に軍備増強の一そう強い義務を課しており、今後防衛費は加速度的に増加することは必至であります。目下防衛庁で策定中の第二次防衛六カ年計画によれば、昭和四十年度には、防衛費は実に三千億円をこえるものと見られるのであります。こうした再軍備政策が国民生活を圧迫することは不可避でありロッキード一機分にも足りない予算を惜しんで、全国の保育所の子供のおやつ代五円の要求を三円に値切ったごときは、その最も端的な現われであり、死の商人たちの欲望を満たすために子供のおやつ代をもかすめ取ろうとするところの、血も涙もない態度と言わなければなりません。われわれは、このように世界の大勢に逆行して、憲法をじゅうりんし、アジアに緊張を作り出して、国民生活を脅かす岸内閣の再軍備拡張予算と、日米新安全保障条約に強く反対せざるを得ないのであります。(拍手)
 以上、要するに、本昭和三十五年度政府予算案は、旧態依然たる軍備拡張、独占資本擁護の予算であり、派閥と利権でゆがめられたところの放漫無原則な予算であり、国民生活を圧迫する物価値上げのインフレ予算でありまして、わが日本社会党は、全日本の勤労大衆の名において、断固として反対の意思をここに重ねて明らかにする次第であります。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(松野鶴平君) 太田正孝君。
   〔太田正孝君登壇、拍手〕
○太田正孝君 私は自由民主党を代表し、ただいま議題となっておりまする昭和三十五年度一般会計予算外二案につきまして、政府提出の原案に対し、賛成の意を表するものであります。しかも、四月一日という年度初めを明日に控えまして、参議院に与えられている三十日の期間内に審議を尽くし、これを批判し得ることを喜びとするものであります。
 私は、問題を三つに分けて申し上げます。
 その第一は、来たるべき一年度間における国の予算がこれでよいかということであります。その第二は、この予算をもってすれば、後年度に対してしかるべき用意を持ち、将来の明るいものであるかどうかということであります。いわゆる財政計画上の判断であります。前者を平面的判断としますれば、後者を立体的判断と申すべきかと思います。そして第三の判断は、国の財政につながる地方財政計画がこれでよいかということであります。
 第一点から申し上げます。明年度の予算は一兆五千七百億円でありまして、これに関連する財政投融資が五千九百余億円を計上しております。この財政規模が適正であるかどうかということであります。申すまでもなく、この額は、前年度に比べまして、増加の程度は、改定予算と比べますると七百億円の程度でございます。また国民所得に対しまして一割五分という、前年度における一割五分五厘の増加よりもかえって少ないのであります。政府は、この予算を作るにあたりまして、国内経済は総じて好調をたどっている、国際経済も明かるい見通しを立てていたのでございます。その見通しは今日においても誤りがないか、まずこの点から申し上げなければなりません。国内におきましては、一月と二月の国際収支が赤字となったことが気がかりではございまするが、基本的見通しに何ら変更する必要はないと思います。関西地方の繊維工業界に多少の破たんが現われたものもございます。こういうことなど、経済界の動きに多少のでこぼこはございますが、一般の事業界の状況を端的に映し出しておりまする昨年九月期の決算も、本年三月期の決算も、ともに予想以上の成績を示しておりまするので、政府や私どもの状況判断に何ら狂いのなかったことを証明するものでございます。(拍手)また国際情勢におきましても、アメリカにおける金融引き締めが長期の金利を高めまして、わが外債政策にも影響を及ぼしておりまするが、鉄鋼ストライキ鎮静後の事業界はきわめて順調なる道をたどっております。案じられた、先ほど討論にも引き合いに出されました国際収支も、持ち直している姿がはっきり現われておるのでございます。ヨーロッパにおける好調も依然として続いておりまして、共同市場におけるベルギー・ドイツなどの石炭問題も片づき、関係六カ国の繁栄がうたわれております。とりわけ日本の経済構造とよく似ているといわれるイタリーの産業の発展がすばらしくありまして、観光事業のごときフランスの倍率にも達し、金準備がアメリカ、ドイツに続いて第三位となり、イギリス、フランスをしのぎつつあるような状況でございます。とにかく政府が予算編成の基礎とされた内外の情勢に対する判断は誤りなかったと信ずるのでございます。私はこの出発点に立ちまして、一方に歳入をながめ、他方に歳出を検討していくのでございます。
 まず歳入につきましては、自然増収が二千億円をこえておるのであります。ただいまの御討論の中にもありましたが、この自然増収を中心として減税すべきではないか、あるいは防衛費などを削減して、しかるべく減税すべきではないかというようなことがいわれております。私どもがここ数年来減税を続けてきましたことはあらためて申すまでもありません。現に明年度も三十四年度の減税の一部といたしまして、住民税の百二十二億円を減税しているのでございます。しかしながら、国税につきましては、ただいま秋山君も言われましたる通り、剰余金などの財源が乏しいということと、災害関係や国土保全などの緊急事業を遂行いたしまするために、この際減税する余地がないのでございます。それはおっしゃる通りでございます。しかし、ここに、この点につきまして、特に秋山君が言われた以上の大きな減税論を持ち出しておる問題がございます。慶応義塾大学の高木教授は、先ほどの公聴会におきまして、新しい租税見積り方式から割り出される自然増収は、政府の見積っている以外に千五百億円以上の余裕があり、補正予算を組んでも減税すべきことを説かれ、新聞紙上等、世論にも訴えられておるのでございます。さりながら、歳入の見積りは、新財政理論による限界租税函数なり弾力性なりによって適正を得るのでございましょうか。租税の弾力性につきましても、源泉課税や酒税のごとき、見込みにあまり違いのないものは別といたしまして、自然増収の四割近くを占めておる法人所得税が問題となるのでございます。しかも、わが国の税務行政におきまして、税をかけたり税を徴収するときの時期的ズレや景気変動のことを考えねばなりません。また、限界租税函数による見積りにつきましても、高木教授が取り上げられたところの昭和三十四年度につきまして第三次補正予算のほかに自然増収を千三百億円も見込んでおるのでございますが、現実はどうかといいますると、この二月分まではすでにわかっておるのでございます。はっきりしておるのでございます。今後の分も推定し得られますので、とうてい千三百億円という大増収を見込むことはできません。千三百億円の千億円を取った、おそらく二、三百億円にすぎないと思われるのでございます。また高木教授は、三十二年度の景気の型を明年度に当てはめられまして、限界租税函数を二割五分としておるのでございますが、三十二年度は景気過熱の年でございまして、これを三十五年度の租税見積りに適用することは妥当でないと私は信ずるのでございます。従づて政府の見積り以上に、千五百億円あるいは千八百億円もというような余裕を見ることはできないのであります。翻って大蔵当局の歳入見積りを見ますると、各項目別に課税実績及び税収の状況を勘案いたしまして、将来の景気の動向をも織り込み、詳細に積み上げ計算をしているのでありまして私どもは、自然増収の数字を検討し、ここに誤りないことを証明いたすものであります。もしそれ、歳入を過大に見積りますときにおきましては、国民に対し苛敬株求の結果を招くことをおそれねばならないのであります。さらに、歳出における防衛費などを節約して、減税に振り向けたらという問題につきましては、すぐ引き続いて申し述べますように、とうてい私どもの賛成し得ざるととろであります。もとより、昭和三十六年におきまして、自然増収を生じ得る見込みがありまするときは、第一義的に減税に振り向けるべきことは、大蔵大臣がたびたび明言されだところであります。さなきだに、現行税制は、国税、地方税を通じまして改むべき点が多く、政府の税制調査会もわが党の税制調査会も鋭意心がけているところであります。また、所得倍増にからむところの格差を縮めねばならぬということにつきまして、税制の立場からとくと検討を要することは言うまでもございません。さらに、貿易為替の自由化にあたりましても、体質改善などに留意しつつ、税制上の工夫をいたさねばなりません。たとえば機械設備の耐用年数を短縮いたしまするとか、広い範囲にわたり関税を改正するにいたしましても、決して軽はずみの措置はできないのであります。なお、歳入について申すべきことは、災害復旧や国土保全などの歳出に充当すべく公債をもって財源としていないことでございます。もっとも、公共的建設事業などにつきまして、一定の限界を設け得るものならば、公債という将来の国民の負担を増すことも必ずしも排すべきではございませんが、眼前に処理すべき貿易自由化の推進なり所得倍増計画なりを実現すべく、健全財政のあるべき姿を考えますとき、公債政策をとらなかったことは、明年度予算について強調してよいことと信ずるのでございます。(拍手)
 かように、一方に歳入予算のしかるべきものであるのに対して、歳出はどうでありますか。私は予算に計上された政府施策の一々について申し述べることは差し控えます。問題となる防衛予算と、国土保全予算と、社会福祉予算と、産業予算とについて、ごく概括して申し上げるにとどめておきます。野党の方々は、国際関係が雪解け状況にあるとき、これに無関心なるごとく軍事予算を作っていることを非難されているのでございます。人たれか平和を願わざる。ただ国家存立の第一義たる自衛のために、国の経済力に釣り合った構えをするということは、当然過ぎるほど当然なことと信じます。(拍手)しかも、計上されたる額は千五百三十余億円、総予算の九分八厘、国民所得の一分五厘にすぎないのであります。私は、近代兵器の発達について研究することはもとよりでございますが、卑近なるお互いの生活におきましても、つつましやかに家のぐるりに、へいを作るというようなことは、これは当然のことであろうと思うのです。大それた万里の長城を築こうというのではございません。さらに私は、歳出のうちに占める防衛費の割合につきまして、特に強調いたしたいことがあります。すなわち、わが国の財政は総予算主義を建前としておりますので、言葉をかえて言いますれば、一般会計のほかに数多くの特別会計があり、一体として国家財政を構成しているのでありますから、その全体の予算に対して防衛費がいかなる比率にあるべきかを見るべきであります。ごこに一般会計と特別会計とを統合したいわゆる純計予算の方式が生まれるのでありまして戦時財政となって顧みられなかったのを、新憲法下の新財政制度におきまして再びこれを認めることにいたし、財政法第二十八条に基づきまして、参考資料として純計予算が提出されているのでございます。すなわち、昭和三十五年度におきまして、一般会計と三十九の特別会計を統合し、会計間の重複を差し引いた純計予算は歳入が三兆四千億円、歳出が三兆二千億円となつでおります。そのうちに占める防衛費の割合は、わずかに三分見当にすぎないのであります。同時に、特に明年度予算の批判にあたりましては、純計予算を中心として調べなければならぬと思うのであります。中でも公共土木事業の比率が高く、農業予算の比率も少なくないことなどに思い及ぶべきことと思うのであります。この意味におきまして、私は両院における質疑が三音も純計予算のことに触れなかったことをいぶかしくさ、え思うのでございます。もちろん、私は防衛費をどしどし増せとか、特別会計の数の増すことを軽々しく是認するものではありません。
 次に歳出の項目中に、われわれが特に災害処理と国土保全のために力を入れたことを指摘いたしたいのでございます。すなわち、治山治水につきまして長期計画を立てました。十年間に一兆五百億円の事業をもくろみ、前期五年計画として四千五百五十億円を実現すべく、三十五年度に初年度分の予算の計上をしておるのでございます。防衛なり国土建設の仕事と並んで心すべきことは、社会保障の費用などによるいわゆる福祉国家建設のことでございます。この点につきまして、私たちは、国民年金の充実、国民皆保険の実施……。生活保護費の増加等につき千八百余億円を計上し、これに恩給関係費等を合しますれば三千百余億円にも達し、一般会計予算の二割となり、防衛費よりずっと多いのでございます。もちろん今後とも社会保障費を増していくべきことは、自由主義経済を進めていく上において心すべきことであります。イギリスはもちろん、アメリカ、ドイツに見るごとく、資本主義経済の修正でもあります。私たちは、国民層の組み立てにおきまして上位に少数の資本家があぐらをかき、貧困もしくは多数の小所得者を底辺とする三角形の姿をよくないと思います。農民層、中小企業層、給料生活者などによる中産階級をふくらまし、三角でなく、中ふくらみのダイヤモンド型を実現するのがわが党の政治方式でございます。次に産業施策につきましては、五月を期して実施方策を立てる貿易・為替の自由化や、十年を期しての所得倍増計画につき、産業の体質改善なり、所得格差の是正を実現すべきであります。この意味におきまして、特に経済の基盤条件を整えるため、道路、港湾、交通、通信等の予算化に努めた次第であります。農業基盤を整備し、中小企業の設備近代化に心を配ったことは、これまた言うまでもありません。さらに、経済協力につきまして東南地域開発などに力を入れることも当然であります。もとよりこれらの歳出を計上することによりまして、経済界を刺激することを厳に戒めねばなりません。物価が上がらないように通貨価値を維持しなければなりません。国際収支の安定をはからなければなりません。そして、ここに国民経済の健全なる成長をはからんとするものであります。一言にして申しますれば、昭和三十五年度予算は、正真正銘の健全予算と申すべきでございます。(拍手)
 第二の論点は、明年度予算と財政計画との関係であります。両院を通じての予算審議におきまして、昭和三十五年度の予算が将来に及ぼす関係に及んだのは当然であります。特にロッキードに関する国庫債務負担行為や治水事業などについての質疑がございました。私は本院における木村禧八郎君や加瀬完君などの有益なる質疑に耳を傾けたのでございます。そしてこれに関連して佐藤大蔵大臣が、各省それぞれの計画と、これを予算化する立場を説かれたのでございます。また、防衛費と国防会議との関係について明快なる答弁のあったことを了得いたしたのであります。問題は、歳出においての債務負担行為は、防衛庁における航空機購入のほかに、器材整備もあり、農林省関係の愛知用水公団事業費補助などもあります。また、継続費が将来の歳出予算につながることも考えねばなりません。歳入につきましても、野党の方々が指摘されておる租税臨時措置法に基づく租税が何年くらいを期待しているかも問題となるのであります。
 この意味におきまして、歳入歳出の後年度にわたる見通しを立てることが財政を批判するに当たっての要諦であると存じます。顧みれば、戦前の財政が危機に立たんとしたとき、政府が通俗に概計表とか財政計画と称する基本数字を国会に提出したことがあります。もちろんこの財政計画なるものは、歳入について将来の自然増収を見込まず、歳出について想像上の新規事業も計上していません。その自然増収とその新規事業に対する見込みが与党と野党との論議の中心となり特に落ちついて財政を批判する立場にあった古き貴族院におきまして、このことが根強く論議されたことが思い出されるのであります。しかし、せっかくの概計表も、不幸なる時局に遭遇いたしまして、巨額の戦費を公債によってととのえることなどのため、ついにこれを提出しないことになったのであります。この意味におきまして、私は、今後予算審議の材料として、政府としてもこれを再現することを考えられたならばどうかと思うのであります。いわんや、さしあたり財政の将来につきまして、防衛費だけでなく、国土保全なり、所得倍増なり、経済協力なりなどの見通しを立てることの大切なることを考えますときに、この方式がいかばかり財政の批判に役立つことを信ずるからであります。しこうして明年度予算につきましては、このような型に当てはめてみましたときに、予算編成者たる大蔵大臣が、歳入についても歳出についても、将来に対する判断をあやまっておらなかったことを認めます。いわゆる末広がりの将来の明るい財政一を作られたことを、私はここに言う次第でございます。
 終わりに、第三点として申し上ぐべきことは、地方財政についてであります。昭和三十五年度の地方財政の特色は、自然増収が近来になく多く、八百億円余を算したことであります。国庫から補充される約三十億円を加えまして、百二十余億円に上る住民税の減税を行なったのであります。地方財政のガンとまでいわれた国の直轄事業の負担にかかわる交付公債を廃したことであります。PTAなどの寄付を整理すべく財源措置に手をかけたことであります。昭和三十年度における地方財政の危機を救った以来の地方財政の改善といっていいと思います。しかし、地方自治の大切なることが憲法に強調されている点からしますれば、まだまだ不十分の点が多いのでございます。地方財政計画の規模は、国の財政と肩を並べるほどの一兆五千億円を算するうちに、給与関係費が半額にも近い六千億円を算しているのでございます。国からの交付税が二千八百余億円、その他、各都道府県市町村との財政の間に格差のはなはだしいことなど、数多くの問題が考えられております。特にわが国の財政との関係におきまして、交付税の基本たる所得税、法人税、酒税の三つの税金合わせてざっと一兆円近くにもなっており、臨時特別交付金を合わせ、その二割八分八厘、三分の一にも当たるものが国から地方財政に向けられているところに、国の財政の地方に対する限界も考えられるのであります。しかも地方税を軽減するのには、財源を補てんせずしては手のつけられないものも少なくないのであります。こう考えてみますると、問題解決の基本は、明治、大正、昭和につながる都道府県制度そのものに手をつけなければならぬ段階にきていると思うのでございます。人口の都会集中、農村経済の窮乏など、当然考えのうちに入るべき問題と思うのでございます。
 以上をもちまして、私は、昭和三十五年度予算の討論を終わります。ただ一言申し添えることがございます。すなわち、明年度予算は、昨年夏行なわれた参議院選挙後初めて現内閣によって作られた予算であります。当時選挙にあたりまして私たちが国民に公約したことが、ここに予算として数字化され、公約を果たし得たことを喜ぶものでございます。(拍手)
○議長(松野鶴平君) 向井長年君。
   〔向井長年君登壇、拍手〕
○向井長年君 ただいま議題となりました政府提出の昭和三十五年度予算三案に対して、私は、民主社会党を代表して、反対の意向を明らかにするものであります。
 反対の理由の第一点は、政府案は、財政制度の乱用、悪用がその極に達したものであるからであります。防衛庁費に計上された一千億円近い国庫債務負担行為、治水事業費に新設された治水特別会計、自民党内の派閥対立が生み出した臨時地方特別交付金制度、この三つの事例は、いずれも岸内閣が、明年度予算編成にあたって、財政法の裏をくぐり、財政運用の本来の任務を放棄して、財政を権力保持の手段と化してしまった最も典型的な例と言わざるを得ないのであります。本院における赤城防衛庁長官の答弁によれば、防衛庁の予算の執行は、すでに一部分は新六カ年計画の実施に入らんとしているのでありますが、一千億円に近い国庫債務負担行為の計上は、明らかに昭和三十六年度以降の予算を新六カ年計画によって強力に拘束せんがための手段であり、また、治水特別会計は、いろいろの歳入歳出予算項目をかき集めて特別会計と名づけたものでありますが、これをもって特定の歳入を持つ特定の歳出予算、すなわち特別会計予算と呼ぶならば、党利党略によっていかなる特別会計制度のでっち上げも可能となります。これは明らかに制度の乱用であり、既往の政策に新たな装いをこらして、何らかの新しい政策をするかのごとく、国民を欺瞞するものと言わなければなりません。臨時地方特別交付金に至っては論外であります。閣内における反主流派のゆさぶりが、このような、つかみ金を生み出したものであり、これは当然に、赤字団体がなお多く存在している現在、交付税率〇・三%の引き上げとして固定化すべき金額なのであります。何ゆえに岸内閣は、無理にも財政制度を悪用して、このような制度乱用をあえてしたのでありましょうか。岸内閣が、明年度歳入予算案において、二千百億円の租税自然増収を見積もりながら、一切の減税を捨てて顧みようとしなかったと同じく、政府の予算編成の真意は、財政をもって保守勢力温存の牙城たらしめんとし、この一点に一切の努力を集中しているところにあるのであります。私どもは、このような予算編成に対しては絶対に対立せざるを得ないところであります。
 わが党が政府予算案に反対する第二の理由は、予算編成の内容そのものを方向づけている政策上の問題であります。
 まず、歳入面について申しますならば、政府は、企業活動、特に大企業活発化の事実を認め、法人税を中心として二千百億円の租税自然増収を認めております。法人税は約一千億円の増収となっているのでありますが、これは国税庁の報告によれば、租税特別措置法によって一千二百億円の減免税の恩恵が施された後においてすら、このような大増収をあげているのであります。また一方において、証券投資、土地投資などによる不当なる超過利得を得ているものが続出しているのでありますが、これらは課税対象として正確に把握されておりません。これは、過日の全国検事正会議におきまして、法務大臣が訓示のうちに明らかにしている点であります。富めるもの、企業規模の大きいものの所得は、温存されて正確に課税をされず、一方において、低所得者についての減税措置は放置されているのが、岸内閣の租税政策と言わなければなりません。(拍手)本院において、大蔵大臣は、昭和三十六年度には減税を考慮すると答弁されておるのでありますが、与党の諸君といえども、岸内閣が昭和三十六年度予算の編成に当たるとは予想もしておらないでありましょう。このような無責任な答弁は、単に言いのがれというよりほかはないのであります。わが党は、租税自然増収を多く期待し得る明年度予算こそは、国民の租税負担の公平化のための税制改革に着手すべきであると主張いたします。この点、岸内閣の歳入予算編成の誤りを見のがすわけには参りません。
 また、歳出予算面につきましては、わが党は歳出増額の重点を、国民の生活と雇用の保障、並びに生産性向上に基調を置く産業体制の整備の二点に置くべきであると主張いたすのでございます。自民党が福祉国家建設を看板に掲げ、所得倍増計画を立案せんとしているならば、もちろん、わが党と主張を同じくするはずであるにもかかわらず、歳出予算の増額の重点が、防衛庁費と治山治水関係費に集中してしまったのは、どうしても賛成しがたいのであります。特に防衛庁費に関しては、守るべき範囲として米国と協定するという、極東地域とは何ぞやの概念すら国民に明示し得ないで、何で自衛のための支出と言えるでありましょうか。現に、軍事専門家や防衛庁内部にすら、米国に主導権を握られる新安保条約反対の論が横行し、かつ、時代おくれの陸上自衛隊縮小論が主張されているのであります。わが党は、世界の雪解け現象を甘く評価するものではありません。しかしながら、自衛措置をいかにして最小限にとどめていくかの努力を外交政策と照らし合わせて実現するのが、世界政治の大勢に応じたわが国の責任であると痛感しているのでございます。しかるに、岸内閣が米国の極東戦略のみに順応する自衛隊増強を実現せんとし、これがための予算措置を講じている点を、われわれは何としても容認し得ないところであります。
 政府案に対する第三の反対の理由は、政府が声を大きくして宣伝している貿易・為替の自由化に備えなければならぬといいながら、予算面においては、およそ、その主張と矛盾する予算の編成を行なっている点であります。岸内閣は、昨年末の閣議で、岸首相の渡米に先立って、輸入の完全自由化品目を発表したのでありますが、そのうちにあげられた大豆については、とうてい本年中に輸入を自由化し得ない事実が政府答弁によって明らかにされております。また、閣僚懇談会の申し合わせとして、輸入自由化を三年間に八〇%程度実現すると発表したのでありますが、これもどうやらあやしくなってきているのであります。政府は、海外からの要請に押されて、自由化したいという願望と願望の目標とを政策らしき体裁で発表してはおりますが、自由化について何の識見も抱負も持っていないのであります。自由化が促進されれば、国内産業の最も弱い面である農林漁業面への影響が大きく、かつ国際的にも国内的にも競争力の弱い中小企業面への影響も大きいことは明らかであります。にもかかわらず、従来の農業関係予算は、本年度までの農業増産対策費という名称を農業基盤整備費という名称に変更しただけで、内容に何ら進歩も変化もないのであります。中小企業予算に至っては、本年度の十億円台の予算額を、明年度は二十億円台に増額したことをもって大手柄であるかのごとく大宣伝しておるのでありますが、一兆五千六百九十六億円の歳出予算のうちわずか二十億円の政策費をもって、中小企業を自由化の荒波にさらすことが、はたして政策の名に値するでありましょうか。わが党は、為替管理を産業保護の切り札とする従来までの経済政策をこれ以上続けることは、今後の経済発展にとって、かえって障害となることを率直に認めます。この限りにおいて、自由化という世界の大勢に沿うような経済政策に転換し、このための政策を漸次予算面で計上していく必要を大いに認めるものであります。ところが岸内閣は、口にいう自由化という経済政策と実際の予算編成とは、全く食い違っております。旧態依然たる大企業保護の経済政策のみが横行しているのであります。わが党は、このような予算編成に対して断じて賛成はできません。
 第四の反対の理由として、政府は明年度予算案における人事院勧告の実現について、これを本年四月一日より実施することにしております。人事院勧告が発表されたのは昨年の七月であります。政府が人事院勧告を尊重するというならば、少なくとも昨年の十月にさかのぼってこれを実施すべきであります。半年間をさかのぼって人事院勧告通りの公務員給与を支給するとして、一般会計予算の負担額はせいぜい五十億円程度であります。従って、財源がなくて実施できなかったとは政府は理由にし得ないところであります。わが党は、戦後の政府の民主化過程に国民が獲得した人事院制度を軽視する岸内閣を断じて許し得ないのであります。明年度予算案の審議は本日をもって最終的に打ち切りとなり、明日より予算が執行の運びになるかもしれませんが、このような予算案を編成した岸内閣は、今や新安保条約の国会承認を促進せんとして、この点でも国民に不安と不利益をもたらさんとしているのであります。わが民主社会党は、この予算審議のあとに続く新安保条約の審議においても、徹底的に政府案を追及し、国民の批判を仰ぎたいと思っております。
 われわれは、ここに、国民の支持を得つつ、まず政府予算案に反対の意向を明らかにして、わが党の態度を表明し、私の討論を終わります。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(松野鶴平君) 森八三一君。
   〔森八三一君登壇、拍手〕
○森八三一君 私は、ただいま議題となっております昭和三十五年度一般会計予算案外二件に対しまして、政府提出の原案に賛成の意を表するものであります。
 私が賛意を表明いたしますゆえんのものは、本案が健全財政を堅持して、財政面から景気に刺激を与えることを避け、通貨価値の維持と国際収支の安定をはかることを基調として、わが国経済の拡大発展と正常な成長を目途として編成されたという政府の説明を、率直に受け取っているからであります。(拍手)すなわち、われわれ九千万国民が常に夢に描いておりまする理想は、平和な国家を再建し、福祉国家を創造することであり、全国民不断の努力もこの一点に集中しております。これがためには、わが国経済の正常な拡大発展がその基幹をなす最大の要諦であると確信するからであります。しかしながら、予算の内容にわたりまして具体的に詳細に検討いたしますると、これが運用を誤るようなことになりますれば、きわめて憂慮すべき事態を招来する危険がないとは申されない幾多の問題や、改善を要する事項を包蔵していると思うのであります。私は、それらの重要な数点を指摘して、政府の注意を喚起いたしまするとともに、善処を求める次第であります。
 まず第一に、過熱防止の対策であります。一般会計歳出総額は一兆五千六日九十六億円でありまして、前年度当初予算に比較いたしますると千五百億円、財政投融資においても七百四十億円の増加となっております。そのほか国債費、賠償費の減額約三百六十億円も、実質的には増額と見るべきでありましょう。さらに、一千億に達する債務貝担行為など、予算の規模は著しく膨張を示しておりまして、インフレ的要因を多分に包蔵しているものと申さなればなりません。ところが、この膨脹予算も、前年度と対比いたしまするこ、国民所得に対しては〇・九%の縮減であり、財政投融資を含めた場合でも約一%の低下を示しており、予算規模は前年度を下回っておるのであって、断じて過熱を招来するような懸念はないのだと申されておりまするが、んだ単に数字上の比較をもって安易な丸持であっては、大へんな結果が生ずることに思いをいたさなければなりません。この膨大な予算が時期的に集中をして放出されるような場合には、インフレを見ることは必定でありましょう。そこに、年度の全体を通じて、平均的な運用が企画されなければならぬと存じます。今日までの経験に徴しますれば、予算が通過確定いたしましてから、実行上の規定や命令が制定せられまして、ほんとうに動き出すのは下半期ということであります。この点に関し、政府の格別な留意と敏速な措置を望むものであります。
 第二に、国民負担の問題であります。伊勢湾台風を初め、累次の災害を復旧することは、寸刻の遷延が許されない緊要事であり、基本的な国土保全の事業や、社会保障拡充等のため、二千百億に上る自然増収は歳出に充足し、減税は後年度に見送らざるを得なかったというのであります。国民の租税負担は逐年軽減されて参りましたが、今なお戦前に対比いたしますれば八%前後の高率でありまして、国民は常にこれが軽減を待望しているのであります。抜本的な税制の改正は、すでに発足しておりまする税制調査会の答申を得て実施するといたしましても、当面、自然増収による減税が取り上げられなかったことは残念に存ずるのであります。大蔵大臣も本年の特異事情に基づくものと釈明をされながら、三十六年一度にはその実行を約束せられておるのであります。どんなことがありましても、明年度には国民の待望を裏切ってはならないど思うのであります。ところが、明年度の財政を案じまするに、治山治水事業、国民年金、恩給、健康保険、債務負担行為の予算化、公務員給与等々、命令的に増額を要求せられまする経費を考えますると、実に容易ならない状況を見るのでありまするが、少なくとも最低生活を確保するための基礎控除の引き上げや事業所得における家族専従者控除等は実現されなければならぬと思うのであります。これがためには、予算編成時におけるぶんどり的傾向の排除はもちろん、冗費的な経費の整理等、強力な政治力を必要と思うのでありまして、政府は確固たる態度をもって臨まなければなりません。他方、最近一カ年ぐらいにおきまする政府の価格対策を見まするに、もちろんその部面だけを考える場合にはそれぞれ理由のあったこととは存じまするが、私鉄料金、ラジオ聴取料、ガス電気料金等がおおむね二〇%前後の引き上げとなっております。今年になりましてからも、通運料金約二十七億円の引き上げが認可をせられ、近く地下鉄料金も値上げになる、さらにまた、国鉄運賃の改訂が企図せられていると承っているのであります。かような公共的性格を持つ料金等の引き上げが物価に及ぼす影響は憂慮にたえないものがあります。現に日銀卸売物価指数も、ここ一カ年の間に約五%の上昇を示しており、国民負担、特に低所得階層の経済には深刻なものがあります。端的に申しますれば増税ともいえましょう。政府におきましては窮余の策やむを得ざる挙に出たものとは存じまするが、私はきわめて近視眼的なその揚限りの安易な措置であったと申し上げたいのであります。近く具体的に進行していくでありましょう貿易自由化対策として、国際競争に対抗し得る経済力を酒養して参らなければならぬ重要課題の解決のためにも、きわめて悪い条件を提供していると思うのでありまして、今後における価格対策について、いま一段の工夫を希望いたします。
 第三に、貿易自由化の問題であります。世界の大勢となって参りました貿易の自由化に即応して立ちおくれとならないように措置すべきは当然のことでありまして、基本的な態度として貿易・為替の自由化を打ち出されますことにつきましては、原則的に賛意を表するものでありまするが戦後十数年にわたって温室育ちで参りましたわが国の産業経済は、いまだ国際競争に耐え抜くだけの素質を具有しておらないのであります。これが円滑な遂行のためには日本経済の体質改善が優先されなければなりません。特に、農林漁業を初め、中小企業者等、弱体産業にその感を深くするものでありまして、三十五年度予算を通じましてこれが対策を十分に発見し得ないことを残念に思うのであります。ことに輸出入取引法改正の方向が国内取引にまでカルテルを容認したり、極端なアウトサイダーの規制を行なうように構想されていると承るのでありまするが、かくのごときは、独占禁止法の違反の疑いを生ずるはもちろん、農業等に及ぼす影響はきわめて大きいものがあると言わなければなりません。ただ単に原則にこだわることなく、実態に即応して、不測の混乱を生じないように、国内取引にカルテルを容認しないようにするとともに、アウトサイダーの規制は、公取の承認を得ることはもちろん、主管大臣の承認を要する等の法的処置をなすべきことを強く要望してやみません。
 最後に、私どもがしばしば指摘して参りました外交に対する国論の統一であります。対ソ、対中共、対韓国等、身近に迫っている外交について、国民の多くはきわめて不安と不平を訴えております。その間ややともいたしますると、二つの日本が存在するがごとき錯覚をすら感ずる状況に対し、憂国の情禁じ得ないものがあります。かくのごときは、政府の努力にも欠くる点がないとは申し上げられません。さらに一そうの情熱と赤誠を傾けて、国論の帰一に対し最善を尽くされますることを衷心から期待し、私の賛成討論を結びます。(拍手)
○議長(松野鶴平君) 岩間正男君。
   〔岩間正男君登壇、拍手〕
    ―――――――――――――
○岩間正男君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となっている昭和三十五年度予算について反対するものであります。反対論を述べるに先立って一言申し上げたいのでありますが、それは、私の討論時間がはなはだ短いということです。わずか五分です。私は、この予算の審議にあたりまして、朝は早くから夜おそくまで一カ月がんばった。その報いられるところがこのような形では、実にこれは予算の討論はできない。岸総理はよく、少数意見は尊重する、あるいは審議はよく尽くす、こういうことを言っております。しかし、その正体がこういうことでは今後の審議が思いやられる。われわれは、こういう意味でも、今後時間に対しまして十分与えられるよう、まず私は要求しまして、私の討論に移りたいと思います。さて、本予算は、一口で言えば、侵略的な日米軍事同盟の強化を前提とし、日米共同防衛と軍備の飛躍的な増強を足場にして、帝国主義的な海外膨張をはかり、かつ、わが国民の犠牲の上に、独占資本の利益を擁護し、その支配体制を確立しようとする意図を露骨に示した、反動的、反民族的な独占貸本本位の予算であります。今日世界の大勢が軍縮と平和共存の方向に向かって大きく転換し始め、好戦的で反動的な勢力の必死な策動にもかかわらす、軍縮問題、核兵器の実験禁止問題、東西交流と首脳会談の開催等々、具体的な措置がとられ、着々とその基礎か固められつつあるのであります。まさにそのとき、国際情勢の変化と発展に逆行して、日本をアメリカの戦争政策に従属させ、米・日・台・韓軍事同盟、自衛隊のミサイル化、核武装化、海外派兵を目ざして、軍備の拡大強化と兵器の国産化を中心とする経済の軍事化を急速に押し進めようとしているのであります。本予算は、独占資本の当面の救済とての強化拡大のために、一般会計及び財政投融資をあわせ、膨大な資金を集一丁的に投入しております。すなわち、これは石炭、造船べの融資及び利子補給、あるいは電源開発、国鉄、電電公社、鉄鋼、その他重点産業への財政仮融資の大幅増額を見ても明らかであります。一方、国民に対しては、その生活改善・民生安定のための経費とし、は、社会保障費、文教費、中小企業の育成費等々を見ても、全く見せかけのごまかしであり、社会保障費に至っ、は、政府の一枚看板である福祉国家の建設の方向とは全く逆に、その増額はほとんどすべて既定経費の増加にすぎず、拠出年金、国民健保の高率徴収など、実質的な収奪強化であります。最も特徴的なのは、政府の最大公約の一つである減税は文字通り一銭も行なわれず、あまつさえ地方自治体、地方住民へのしわ寄せを強化し、通運料、鉄道、地下鉄運賃、電気ガス料金などの値上げと、独占価格の維持強化と相待って、国民の負担をますます重くしており、労働者階級に対しては、徹底的な企業の合理化、首切り、低賃金を押しつける政策を強行しているのであります。しかも政府は、安保改定の阻止、その破棄を中心に、このような政府の政策に反対して国民がたたかいに立ち上がっておるのに対して、今回の三井三池に集中的に示されましたように、これを全面的に弾圧するために、弾圧機構の強化その他の弾圧費を増加しているのであります。国民はこのような政府の政策に全面的に反対し、国際緊張緩和と軍備の縮小、両体制の平和的共存を積極的に推進する方向に、わが国の内外政策を根本的に転換すると同時に、安保改定阻止、軍事費の削減と社会保障費の拡大、最低賃金制の確立、大幅な賃上げと時間短縮、減税、日中国交回復と貿易の再開等を中心とする、国民生活の改善と経済の平和的発展拡大を要求し、その実現を強く強く望んでいるのであります。
 わが党は、本予算に断固として反対するとともに、この国民の要求を全面的に支持し、安保改定阻止、その破棄と、日本の独立と平和と中立のためにたたかうことを、ここにあらためて宣言するものであります。(拍手)
○議長(松野鶴平君) これにて討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。
 これより三案の採決をいたします。三案全部を問題に供します。表決は記名投票をもって行ないます。三案に賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上、御投票を願います。
 議場の閉鎖を命じます。氏名点呼を行ないます。
   〔議場閉鎖〕
   〔参事氏名を点呼〕
   〔投票執行〕
○議長(松野鶴平君) 投票漏れはございませんか。――投票漏れないと認めます。投票箱閉鎖。
   〔投票箱閉鎖〕
○議長(松野鶴平君) これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。
   〔議場開鎖〕
   〔参事投票を計算〕
○議長(松野鶴平君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数     二百十九票
  白色票      百四十票
   〔拍手〕
  青色票     七十九票
   〔拍手]
 よって三案は可決せられました。
     ―――――・―――――
 賛成者(白色票)氏名 百四十名
   杉山 昌作君  石田 次男君
   牛田  寛君  村山 道雄君
   谷口 慶吉君  森 八三一君
   柏原 ヤス君  小平 芳平君
   鳥畠徳次郎君  田中 清一君
   櫻井 志郎君  加賀山之雄君
   原島 宏治君  稲浦 鹿藏君
   大谷藤之助君  大竹平八郎君
   中尾 辰義君  白木義一郎君
   前田 久吉君  白井  勇君
   下村  定君  吉江 勝保君
   常岡 一郎君  辻  武寿君
   北條 雋八君  岩沢 忠恭君
   苫米地英俊君  野本 品吉君
   三木與吉郎君  佐藤 尚武君
   天坊 裕彦君  大谷 瑩潤君
   村松 久義君  堀  末治君
   村上 義一君  辻  政信君
   太田 正孝君  笹森 順造君
   黒川 武雄君  泉山 三六君
   杉原 荒太君  鍋島 直紹君
   山本  杉君  谷村 貞治君
   天埜 良吉君  米田 正文君
   櫻井 三郎君  岸田 幸雄君
   金丸 冨夫君  川上 為治君
   徳永 正利君  安部 清美君
   鈴木 万平君  手島  栄君
   林田 正治君  佐藤 芳男君
   松野 孝一君  柴田  栄君
   中野 文門君  増原 恵吉君
   平島 敏夫君  勝俣  稔君
   後藤 義隆君  塩見 俊二君
   秋山俊一郎君  上原 正吉君
   岡崎 真一君  古池 信三君
   武藤 常介君  田中 啓一君
   松平 勇雄君  田中 茂穂君
   藤野 繁雄君  西川甚五郎君
   新谷寅三郎君  近藤 鶴代君
   西郷吉之助君  迫水 久常君
   高橋進太郎君  吉武 惠市君
   下條 康麿君  林屋亀次郎君
   小林 英三君  野村吉三郎君
  大野木秀次郎君  平井 太郎君
   大沢 雄一君  小幡 治和君
   前田佳都男君  宮澤 喜一君
   石谷 憲男君  村上 春藏君
   鹿島 俊雄君  植垣弥一郎君
   赤間 文三君  青田源太郎君
   仲原 善一君  堀本 宜実君
   松村 秀逸君  井川 伊平君
   上林 忠次君  西田 信一君
   江藤  智君  梶原 茂嘉君
   高野 一夫君  鈴木 恭一君
   河野 謙三君  大川 光三君
   佐野  廣君  山本 米治君
   小沢久太郎君  剱木 亨弘君
   青柳 秀夫君  井上 清一君
   加藤 武徳君  安井  謙君
   斎藤  昇君  小柳 牧衞君
   谷口弥三郎君  木内 四郎君
   木暮武太夫君  小山邦太郎君
   堀木 鎌三君  郡  祐一君
   草葉 隆圓君  一松 定吉君
   青木 一男君  鹿島守之助君
   木村篤太郎君  津島 壽一君
   伊能繁次郎君  最上 英子君
   岡村文四郎君  大谷 贇雄君
   重政 庸徳君  石原幹市郎君
   植竹 春彦君  野田 俊作君
   湯澤三千男君  井野 碩哉君
反対者(青色票)氏名  七十九名
   市川 房枝君  竹中 恒夫君
   千田  正君  鶴園 哲夫君
   野上  元君  米田  勲君
   中村 順造君  安田 敏雄君
   千葉千代世君  森中 守義君
   北村  暢君  横川 正市君
   鈴木  強君  坂本  昭君
   森 元治郎君  鈴木  壽君
   大河原一次君  伊藤 顕道君
   木下 友敬君  平林  剛君
   大和 与一君  近藤 信一君
   占部 秀男君  大倉 精一君
   矢嶋 三義君  江田 三郎君
   中田 吉雄君  荒木正三郎君
   小酒井義男君  高田なほ子君
   光村 甚助君  藤原 道子君
   野溝  勝君  加藤シヅエ君
   木村禧八郎君  岡  三郎君
   戸叶  武君  岩間 正男君
   野坂 参三君  須藤 五郎君
   山本伊三郎君  武内 五郎君
   小柳  勇君  大矢  正君
   永末 英一君  基  政七君
   藤田藤太郎君  相澤 重明君
   松永 忠二君  片岡 文重君
   田上 松衞君  田畑 金光君
   秋山 長造君  永岡 光治君
   藤田  進君  亀田 得治君
   加瀬  完君  天田 勝正君
   相馬 助治君  向井 長年君
   椿  繁夫君 小笠原二三男君
   成瀬 幡治君  小林 孝平君
   村尾 重雄君  松浦 清一君
   松澤 兼人君  佐多 忠隆君
   田中  一君  重盛 壽治君
   島   清君  中村 正雄君
   千葉  信君  久保  等君
   羽生 三七君  栗山 良夫君
   内村 清次君  赤松 常子君
   棚橋 小虎君

○議長(松野鶴平君) 次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後十時二十四分散会
     ―――――・―――――
○本日の会議に付した案件
 一、国会法第三十九条但書の規定による議決に関する件(肥料審議会委員)
 一、日程第一 農地被買収者問題調査会設置法案(趣旨説明)
 一、日程第二 補助金等の臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案
 一、日程第三 昭和二十八年度から昭和三十四年度までの各年度における国債整理基金に充てるべき資金の繰入の特例に関する法律の一部を改正する法律案
 一、日程第四 総理府設置法の一部を改正する法律案
 一、日程第五 農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案
 一、日程第六 日本国有鉄道法の一郡を改正する法律案
 一、日程第七 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案
 一、日程第八 検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案
 一、日程第九 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案
 一、日程第十 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、国会の承認を求めるの件
 一、日程第十一道路交通法案
 一、日程第十二じん肺法案
 一、日程第十三 労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案
 一、開拓融資保証法の一部を改正する法律案
 一、アジア経済研究所法案
 一、裁判官弾劾法の一部を改正する法律案
 一、日程第十四 参議院事務局職員定員規程の一部改正に関する件
 一、公営企業金融公庫法の一部を改正する法律案
 一、市町村職員共済組合法の一部を改正する法律案
 一、高等学校の定時制教育及び通信教育振興法の一部を改正する法律案
 一、関税定率法の一部を改正する法律案
 一、関税暫定措置法案
 一、糸価安定特別会計法の一部を改正する法律案
 一、国有林野事業特別会計法の一部を改正する法律案
 一、治水特別会計法案
 一、精神薄弱者福祉法案
 一、外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法の一部を改正する法律案
 一、昭和三十五年度一般会計予算
 一、昭和三十五年度特別会計予算
 一、昭和三十五年度政府関係機関予算