第040回国会 社会労働委員会 第10号
昭和三十七年二月二十七日(火曜日)
   午前十時五十八分開会
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  出席者は左の通り。
   理事
           鹿島 俊雄君
           村山 道雄君
           阿具根 登君
   委員
           勝俣  稔君
           佐藤 芳男君
           谷口弥三郎君
           山本  杉君
           横山 フク君
           坂本  昭君
           藤原 道子君
           石田 次男君
  国務大臣
   厚 生 大 臣 灘尾 弘吉君
  政府委員
   厚生省環境衛生
   局長      五十嵐義明君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       増本 甲吉君
  説明員
   国立衛生試験所
   薬理部長    池田 良雄君
  参考人
   東京都立衛生研
   究所臨床試験部
   長       柳沢 文正君
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  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○児童扶養手当法の一部を改正する法
 律案(内閣送付、予備審査)
○国民健康保険法の一部を改正する法
 律案(内閣送付、予備審査)
○国民年金法の一部を改正する法律案
 (内閣送付、予備審査)
○医療金融公庫法の一部を改正する法
 律案(内閣送付、予備審査)
○船員保険法の一部を改正する法律案
 (内閣送付、予備審査)
○戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一
 部を改正する法律案(内閣送付、予
 備審査)
○社会保障制度に関する調査(合成洗
 剤問題に関する件)
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  〔理事村山道雄君委員長席に着く〕
○理事(村山道雄君) ただいまより社会労働委員会を開会いたします。
 まず、参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。社会保障制度に関する調査の一環として、合成洗剤問題に関する件について調査のため、参考人から意見を聴取してはいかがかと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○理事(村山道雄君) 御異議ないと認めます。参考人の人選、その他手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○理事(村山道雄君) 御異議ないと認めます。よってさように決定いたしました。
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○理事(村山道雄君) 次に、児童扶養手当法の一部を改正する法律案、国民健康保険法の一部を改正する法律案、国民年金法の一部を改正する法律案、医療金融公庫法の一部を改正する法律案、船員保険法の一部を改正する法律案、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案、以上六件を一括して議題といたします。提案理由の説明をお願いいたします。灘尾厚生大臣。
○国務大臣(灘尾弘吉君) ただいま議題となりました児童扶養手当法の一部を改正する法律案、その他各法律案につきまして、順次提案の理由及び要旨を御説明申し上げます。
 児童扶養手当法は本年一月から施行され、母子世帯等における児童の福祉の向上をはかるため、母子世帯の母等に対して児童扶養手当を支給することとなっているところでありますが、今回さらにこの児童扶養手当制度の充実をはかるため、手当の額を引き上げるとともに受給資格者の所得による支給要件を緩和することを内容とするこの法案を提出した次第であります。
 次に、今回の改正の概略について御説明いたしますと、まず第一は、手当の月額が現行法では児童一人の場合は八百円、二人の場合は千二百円、三人以上の場合は三人以上の一人につき二百円を加算することになっておりますのを、児童二人の場合は千四百円、三人以上の場合は三人以上の一人につき四百円を加算することに改めようとするものであります。第二は、現行法では受給資格者が前年において十三万円以上の所得かある場合は手当が支給されないことになっていますが、この所得による制限額を十五万円に引き上げ支給制限を緩和しようとするものであります。なお、この改正は、手当額の引き上げについては本年五月分の手当から、所得制限額の引き上げについては昭和三十六年分の所得から適用することといたしております。
 以上が児童扶養手当法の一部を改正する法律案の提案理由及びその要旨であります。
 次に、国民健康保険法の一部を改正する法律案について、その提案理由を御説明申し上げます。
 国民健康保険は、その被保険者の相当部分が保険料の負担能力の乏しい低所得階層であるため、その財政基盤は比較的薄弱であります。特に受診率の上昇、医療費の改定等の最近の状況にかんがみ、保険財政の健全化のためには、この際国の財政措置の強化が必要であると考え、ここに、この法律案を提案した次第であります。
 次に、この法律案の内容について御説明申し上げます。現行の国民健康保険法におきましては、療養給付費についての国庫の負担または補助の率は十分の二となっているのでありますが、この負担または補助の率を五分引き上げ、百分の二十五にすることといたしました。
 なお、本改正は本年四月一日から実施するものであります。
 以上がこの法律案の提案理由であります。
 次に、国民年金法の一部を改正する法律案について、その提案の理由を御説明申し上げます。
 国民年金法は、昭和三十五年十月の拠出年金の適用及び昭和三十六年四月の保険料納付の開始をもって、全面的な実施に入ったのでありますが、この制度につきましては、さきに第三十九国会におきまして相当大幅な改善内容を持った改正法案について御審議をわずらわし、その実施をみたのであります。しかしながら、わが国年金制度の中核たる基盤を確立し、所得保障の実をあげますためには、なお改善充実に努めなければならないことは申すまでもないところであります。
 今回の改正法案は、この制度における低所得者層の処遇をさらに厚からしめるため、当委員会の強い御要望でもある保険料の免除を受けた場合にも保険料を納付した場合と同様に国庫負担を行なうことを実現することによって、低所得被保険者について拠出年金の受給要件を緩和し、あわせて年金額の引き上げを実施するとともに、低所得、かつ、低額の公的年金受給者に対する福祉年金支給制限の緩和等を行なおうとするものでありまして、そのおもな内容は次のとおりであります。
 まず、拠出年金に関する事項について御説明申し上げます。国庫が毎年度において免除された保険料総額の二分の一に相当する額を負担することにいたしましたことは、さきに申し上げたとおりでありますが、これに基づき、まず第一に、老齢年金について、従来二十五年間以上の保険料納付または十年間以上の保険料納付及び十五年間以上の保険料免除のいずれかに該当することを受給要件といたしておりましたが、これを改め、保険料納付期間、保険料免除期間またはこれらの合算期間のいずれかが所定の年数以上あればよいことにしたのであります。
 第二に、老齢年金の額は、保険料納付期間に応じて定める額と保険料免除期間に応じて定める額との合算額とし、その合算額が一万二千円に達しないときは、七十歳以後の老齢年金額を一万二千円まで引き上げるものといたしたのであります。
 第三に、障害年金、母子年金、準母子年金及び遺児年金については、継続する直近の三年間の全部が保険料免除期間であっても支給が受けられるようにその要件の緩和をするとともに、その場合の支給額も保険料納付期間で満たされている場合と事実上ほとんど等しからしめようとするものであります。
 次に、福祉年金に関する改正について申し上げます。第一に、公的年金受給者に対する福祉年金の併給に関する改正でありますが、その内容は、公的年金を受けている人々の年金額が二万四千円未満であるときは、福祉年金の額の限度で、二万四千円とその公的年金額との差額を支給しようというものでありまして、公的年金が戦争公務により死亡し、または廃疾となったことに基づき支給されるものであるときは、この二万四千円を七万円といたしております。
 第二に、受給権者本人の所得による福祉年金の支給制限額十三万円を十五万円に引き上げようというものであります。
 第三に、福祉年金の受給権者の配偶者が公的年金を受けております場合に、受給権者に支給する福祉年金の額を六千円に減額する措置は、これを撤廃することといたしております。
 第四に、母子福祉年金及び準母子福祉年金における加算額を一人当たり年額四千八百円とし、現在の倍額にしようというものであります。
 なお、以上のうち、福祉年金に関する第一及び第三のものは、昭和三十七年十月分から、第二及び第四のものは、昭和三十七年五月分から支給することといたしております。
 次に、医療金融公庫法の一部を改正する法律案について、その提案の理由を御説明申し上げます。
 医療金融公庫は、昭和三十五年七月に、私立の病院、診療所等の設置及びその機能の向上に必要な長期かつ低利の資金であって、一般の金融機関が融資することを困難とするものを融通することを目的として設立されたのであります。
 設立当初の昭和三十五年度におきましては、二十九億五千万円の融資原資をもって発足いたしましたが、昭和三十六年度におきましては、これを七十億円に増加し、これについては、三十六年十二月末までにすでに約六十五億円の貸付けを決定しているのであります。しかし、私立の病院、診療所等の適正な整備及び機能の向上をはかるためには、公庫の資金量を一段と増加する必要があり、政府は、昭和三十七年度におきましては、公庫の融資原資として九十億円を予定し、これに要する資金として資金運用部資金の借入金五十億円及び貸付回収金六億円のほか、一般会計から二十五億円を出資することといたしております。このため、公庫の資本金三十億円を二十五億円増加して五十五億円とする必要があります。
 また、医療金融公庫は、昭和三十七年度は設立三年目に当たるわけでありますが、年々その業務量が増大し、経営の基礎も充実して参りましたので、この際、他の公庫の例にならい、理事長を総裁と改め、業務の一層円滑な運用を期することが必要であります。
 以上が、この法律案を提出いたしました理由であります。
 次に、船員保険法の一部を改正する法律案について、その提案の理由を御説明申し上げます。
 今回の主要な改正事項は二つありまして、一つは、被保険者の標準報酬を改めること、一つは、遺族に対する保険給付の合理化をはかることであります。
 まず、標準報酬の改正について説明いたします。船員保険の標準報酬の月額は、現在、最低五千円、最高三万六千円の十八等級に区分されておりますが、社会経済情勢の推移等によりまして、現在、この区分では著しく実情に沿わないものとなって参りました。
 今回の改正におきましては、この標準報酬の最低を七千円に、最高を五万二千円にそれぞれ引き上げ、あわせて標準報酬の等級を二十一等級に区分いたそうとするものであります。
 第二に、船員保険における遺族給付の合理化について説明いたします。現在、船員保険の遺族に対する年金給付には、老齢年金の受給資格を満たした人が死亡した場合とか、職務上の事由で死亡した場合に、その遺族に支給する遺族年金の制度のほかに、主として老齢年金の受給資格を満たすに至らない短い被保険者期間しか有しない被保険者が職務外の事由で死亡した場合に、その配偶者または子に支給する寡婦年金、鰥夫年金及び遺児年金の制度がありますが、この両制度の統合及び調整につきましては、昭和二十九年法律第二百四号船員保険法の一部を改正する法律の附則第二十一条によりまして、その実現が強く要請されているところであり、また、厚生年金保険におきましては、すでに昭和二十九年にこれらについての統合が実現しているのであります。
 今回の改正は、寡婦年金、鰥夫年金及び遺児年金の制度を廃して、すべて遺族年金の制度の中に統合するとともに、遺の族範囲、年金額の計算方式をも遺族年金の場合と同様とする等の調整をはかり、もって船員保険の遺族給付の合理化をはかろうとするものであります。
 以上がこの法律案を提案する理由であります。
 最後に、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由を御説明申し上げます。
 戦傷病者、戦没者遺族、未帰還者留守家族、引揚者等に対しましては、戦傷病者、戦没者遺族等援護法、未帰還者留守家族等援護法、引揚者給付金等支給法及び未帰還者に関する特別措置法によりまして各般の措置が講ぜられて参りましたが、今般これらの援護措置の改善をはかることとし、別途本国会に提案されております恩給法等の一部を改正する法律案とも関連いたしましてこの法律案を提案する運びとなった次第であります。
 次に、この法案律の概要について御説明いたします。まず第一は、戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部改正であります。この改正は、恩給法等の一部改正による傷病恩給及び公務扶助料の増額に関連いたしまして、障害年金障害一時金、遺族年金及び遺族給与金の額を増額いたすこととしたものでありまして、増額の程度、増額の実施時期等につきましては、恩給法のそれにならっております。
 第二は、未帰還者留守家族等援護法の一部改正であります。その改正点の第一は、留守家族手当並びに死亡の事実の判明した未帰還者の遺族に対して支給する葬祭料及び遺骨引き取り経費の額を他制度との均衡を考慮いたしまして増額いたしたことであります。改正点の第二は、未帰還者に対する療養の給付に関しまして、現在給付期間が、帰還の時期により、最高九年ないし十四年となっており、本年八月以降その給付期間が満了する者が生じて参りますが、期間経過後もなお療養を必要とするものについては、当分の間療養の給付を行ない得ることとしたことであります。
 第三は、未帰還者に関する特別措置法の一部改正であります。改正点の第一は、最終の生存資料が昭和二十八年以後に存する未帰還者についても、厚生大臣が同法により戦時死亡宣告の請求をなし得るように対象範囲を広げ、民法第三十条に規定する場合と合致させることといたしたことであります。改正点の第二は、戦時死亡宣告を受けた者の遺族に支給する弔慰料の受給者の範囲につき、現在二親等内の血族に限られておりますのを、戦傷病者戦没遺者族等援護法による弔慰金の受給者の範囲と同様に、三親等内の親族にまで拡大することとしたことであります。
 第四は、引揚者国債の元利金の支払いにつきまして、その消滅時効の適用についての特例を設けることとしたことであります。右のほか、条文の整理等、所要の改正を行なうことといたしました。
 以上がこの法律案を提出いたしました理由であります。
 何とぞ各案につきまして、慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
○理事(村山道雄君) 右諸法案に対する補足説明及び質疑は、次回以降にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○理事(村山道雄君) 御異議ないと認めます。
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○理事(村山道雄君) 社会保障制度に関する調査の一環として、合成洗剤問題に関する件を議題といたします。
 合成洗剤の中には、人体に影響を及ぼすおそれがあるものがある、あるいは差しつかえない等の意見が、最近新聞紙上において見出されているのでありまするが、これにつきましては、国民に多大の影響がありますので、その意見を聞き、調査上の参考とするため、御繁忙の折柄、参考人の方にお出を願ったわけであります。何とぞ当委員会の意のあるところをお考えいただきまして、御意見をお述べ下さいますようお願いをいたしたいと存じます。
 なお、便宜上、最初に参考人の方に御発言を願い、次に委員からの質疑にお答えをいただきますように御了承をいただきたいと存じます。
 それでは参考人、東京都立衛生研究所臨床試験部長柳沢文正君。
○参考人(柳沢文正君) 初めに、この問題を研究したことから申し上げます。
 アルキル・ベンゼン・スルフォン酸、学名ドデシル、ベンゼン、スルフォン酸ソーダ一塩、略しましてABS、日本では中性洗剤と申しております。これにつきまして東京医科歯科大学柳沢文徳教授、並びに都衛生研究所のわれわれグループによりまして、昨年の四月から研究を始めました。研究結果が成就いたしましたので、一月二十四日、お茶の水学会において発表いたしました。発表内容は、本物質の生化学的研究並びにその毒性であります。この発表がありましたあと、各報道機関が、一般に問題がありましたことは、これは二十六年に本物質が輸入され、三十一年に通牒となり、一般に使用されましたときに、厚生省におきましては、砒素、鉛、銅、すず、アンチモン、亜鉛を含有しないという試験成績、それと回虫卵の除去並びに衛生試験所の急性毒性試験、それにつきまして、本品は毒性は大ならずとは考えられぬということでありました。しかるに、これに対しまして、外郭団体であるところの日本食品衛生協会におきましては、本品は毒性を有する有害なる不純物を含まずとして発表しました。さらに業者はこのごとく、厚生省なり日本食品衛生協会推薦品、厚生省実験証明、毒性を有せず、衛生上無害であるという発表をしております。これによりまして、国民、特に主婦の方は全く無害のものとして使用して参ったのであります。私どもは、この物質、アルキル、ベンゼン、スルフォン酸というものは毒性があるのだ、こういうものは界面活性剤でありますから、浸透するものであります。物理的性質の上において、いろいろな無害でないことを申し上げたのであります。これは全く化学的な常識でありますが、それに対してこれだけの問題が起こりましたことは、そういう出発点に何かいわゆる問題点があったのではないかと考えられるのであります。そこで私たちが発表したその翌日、厚生省は私たちのデータを見ないで、一方的な見解を発表し本物質は三十一年の通牒どおり無害である、大いに使用すべしというような通達を出されたそうであります。少なくとも、国家の機関でありますから、国家のいわゆる研究所においてそういうことを御審議の上なされたのであろうと考えますが、少なくとも、このいわゆる界面活性剤というものは、今までの慢性中毒、そういうものによっていわゆる毒性を吟味されることはできないものであります。そこにおきまして私たちがどういう実験を行なったか、申し上げる前に、簡単にその趣意書をここに書いて参りましたから、これをひとつごらん願いたいと思うのであります。内容はかなり高度でありますが、これを簡単に申し上げますと、私たちの行ないました実験は、慢性中毒による所見、つまりラット、マウスにおけるところの成長の阻害、それから微量の投与、あるいは注射あるいは皮膚塗布によりましてからだが酸性になる。しかも、この物質は、市販されておるところのサポニンよりも溶血反応が強い、野菜、皮膚に浸透する、われわれの食物を消化するところの酵素を阻害する、こういうことを申し上げたのであります。でありますから、私たちの申し上げることは、従来の化学研究を離れておるのであります。従来は、慢性中毒というものは、従来の薬品の考え方というものは、いわゆる神経毒あるいは触媒とか、そういうものを行なってきたのでありますが、それだけをもってわれわれのいわゆるこの毒性をきめるということはできないのであります。そこで、私たちが、その一例として申し上げるならば、皆さん方は、ABSの体内に入りました場合に、直ちにいわゆるふん便となって外に出るだろうというお考えがありますが、文献によりますと、六〇%以上も血液に移行いたしますと、たとえば脳、骨髄などに侵入するのであります。豚等におきましては、毛の中にまで入るということであります。こういうことは、従来のいわゆる学問と違うことを考えなければならない。そうして血液に侵入したものはどうなるかと申しますと、たとえば私たちの実験によりますと、一キロ当たり四百mcgおより四mcg、こういうような非常な微量をウサギに注射してみますと、下肢にいわゆる麻痺がするのであります。たとえば二十四匹のうち、三例のウサギに麻痺を生じております。こういうことは、いわゆる従来の防腐剤だとか色素剤などというものとだいぶ違うのであります。さらにこの物質が侵入する場合に、結合を生じて入る場合があるのであります。悪い物質と結合して入った場合には、非常な危険性をもたらすものでありますから、野菜などで、洗浄した場合に、野菜に浸透して入っているところのABSが、ある悪い物質と結合した場合には、非常な害毒を流すということが考えられるのであります。なおかつ、この物質に対しまして、発ガン性の補助物質になるという知見がございます。それはすでに日本食品衛生協会から出されておりますところの、いわゆる「食品衛生研究」において、国際ガン対策連合の委員長であるW・C・ヒーパーが、いわゆる食品添加物及び異物の中に加えておりまして、その中に明らかにドデシル・ベンゼンをマウスの皮膚に塗布し、ガンを作ることに成功したという報吉があります。しかも、そのほかにおきまして、いわゆる国立衛生試験所の川城技官は、発ガン補助因子または促進因子が存在する、界面活性剤や洗浄剤などがこれに当たると申しております。
 また、皮膚の場合におきましては、これがどういうように働くかということはありませんが、本邦の医学者においても疫学的の調査がありますが、これも明らかにABSによって発ガン性補助物質ができるということを発表されております。ついこの間来朝されましたサスキンド博士は、いわゆるアレルギー感作実験により考察しまして、無害ということを言っておられますが、それはいわゆる十分なる検討がされていないものと考えられるのであります。皮膚浸透につきまして、わが国の論文が一つございます。その文献は、本ABSを許可されたときの担当官である日本食品衛生協会の常務理事、事務局長をされているところの小谷博士が、日本公衆衛生学会――昭和三十五年十月九日に発表されたところの中性洗剤に関する皮膚の問題につきまして、中性洗剤をラットに四センチ塗布実験しますと、通常の使用範囲であるところの〇・二五%におきまして、わずか八日間において光沢を失い、さらに皮毛は汚染され、粗鬆となるということを申しております。しかも十五日塗布したラットは、十五日以内に全部死亡するという報告を出しております。この作用は、単なる皮膚の局所に影響するにとどまらず、侵入した皮膚よりABSが臓器に侵入したことが考えられるものであります。一面、ABSの障害がきわめて強いことを立証するものであります。毒性の有無の論では、同教授と私は見解を全く一致するところでございますが、教授は、日本食品衛生協会の常務理事であり、事務局長で、唯一の医科大学教授兼任の方であるのに、同協会で、本品は毒性を有せずと言っておられます。そういう推奨広告をし、学会では、皮膚塗布による死亡を発表しております。この見解の相違は、常識的に見ても疑問を持たざるを得ず、本問題が学問的知見に基づき論議されている点から見ても、学界を信ずるか協会の発表を信ずるか、国民も迷わざるを得ない状態であります。特にこのABSに関しましては、今日私どものところにおきまして、免疫を成立せしむるところの研究ができております。この知見は文献的にもなく、また、所見とも考えられ、これよりABSアレルギーの解明にも役割を果たし得るものと、考察並びに研究にも努めております。しかし、これらの問題は、臨床的には皮膚科の専門家の判定に待つより仕方がないのであります。
 以上が私などの考えておる実験の内容でありますが、多くの学者が、界面活性剤の特徴を考えた上で、この毒性が人体にいかに影響を与えるかという新しい研究方法並びに考え方に立って、慎重に実験を行なうことを認めるのであります。それで、昭和三十一年の通牒は、界面活性剤である、また、本物質が容易に分解しないという特性を無視して、生体の影響を考慮した結果に導かれたものであります。特に公害の問題に対しましては、いわゆる外国において、特にドイツの先進国においては本年の六月、アメリカにおいては来年におきまして、いわゆる分解物質に変えようとしておるのであります。そういうときにおきまして、通常の塩で無害であるという結論を出すに至ったということは、全く科学的な根拠を認ゆることができないのであります。したがって、科学的行政をうたっておるところの厚生省では、すみやかにこの通牒を撤回し、新たにわれわれが主張しておるところの考えに基づき、ABSを吟味した上で、国民にいかに利用すべきであるかということを検討すべきであると思います。
○理事(村山道雄君) これより質疑を行ないます。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
 ただいまの政府側の御出席は、五十嵐環境衛生局長、池田国立衛生試験所薬理部長、以上の諸君であります。
○坂本昭君 それでは、ちょうど今参考人として柳沢博士の御説明をいただきましたので、国立衛生試験所の池田博士から、学問的な見解について、補足あるいは格別の御意見があれば、ひとつ述べていただきたいと思います。
○説明員(池田良雄君) ただいま問題になっておりまする中性洗剤につきまして、最も大きな関心は、実際にこれが有害であるか有害でないかという問題かと存じます。そこで、ある物質が有害であるかないかを調べるには、これは動物実験によるほかは現在ないのでございます。そこで、この中性洗剤が使われましたのは、今から二十年近く前でございまして、当時からこのものにつきまして、外国では詳しく検討されております。それで、現在まで外国の文献でございますが、この問題となっておりまするアルキル・ベンゼン・サルファネイトにつきましての十数種の亜急性あるいは慢性毒性の実験でございます。亜急性といいますのは、比較的短期間、まあ三カ月程度ですが、そこで、これらの論文によりますと、本剤をかなり多量に含んでおりますえさ、あるいは水を動物に与えまして、影響を見ておるのでありますが、大多数の学者は何ら影響がなかったということであります。そこで、これらのデーターを検討いたしまして、このイギリスの政府委員会報告書というのが一九五六年に発表されております。この論文の要旨を簡単に述べますと……。
○坂本昭君 簡単でいいです。結論だけでいいです。
○説明員(池田良雄君) まず皮膚に対する障害は大して影響はない。それから急性毒性、すなわち、誤って多量を飲むような機会も非常に少ないということ、それから慢性毒性もまあ大したことはなかろうというようなことであります。しかしながら、まだ長期の慢性毒性を検討する必要がある、そこで、ごく最近でございますが、アメリカのブランク及びボールドという学者が、これらの長期慢性毒性、すなわち白ネズミを使いまして二年間、二年間と申しますと、ネズミの一生を研究いたしまして、これでは人体に入り得る可能性がある量よりも数百倍の大量を二年間にネズミに与えまして、詳しい研究をしておりますが、その研究によりまして、何ら毒性が見られなかったということであります。そのほかに、ブランク氏らは子孫に及ぼす影響は、すなわちネズミを使いまして、三代にわたる影響を見ておりますが、それにおいても何ら影響がなかった、これは非常にやはり量が多いのであります。
 それからもう一つは、皮膚から侵入するかどうかという問題でございますが、ちょっとここで訂正申し上げますが、先ほどのブランクと言いましたのは間違いでございまして、名前は後ほど訂正させていただきます。このブランク氏のは、皮膚から本剤が吸収するかどうかという問題を、アイソトープを使って研究したのであります。で、これによりますと、この人体の皮膚を切りまして、十八ないし二十四時間つけまして、その物質が移行するかどうかという研究をしておりますが、認むべき量の中性洗剤が浸透しなかったというふうに記載されております。
 次に、柳沢博士らが研究されましたデータについてでございますが、先般、一月二十四日でございますか、東京医科歯科大学で行なわれました研究発表会におきまして発表されておりますが、野菜につけて、あとそのままあるいは洗濯しても若干残る、あるいは本剤をウサギの口から、あるいは注射により、あるいは皮膚に塗ると血液の変動があるということ、あるいは本剤が潜血、溶血反応がある、そういうような事実を発表しただけでありまして、このものが有害であるとかないとかは学会で発表されておらない。このデーターをまだどの学会におきましても詳しく検討しておらないのであります。柳沢博士らが行なわれました実験によりますと白菜を一定時間本剤につけましてどのくらい残るかという実験をされております。そうしますと、百グラムの白菜が三ミリグラムのアルキル・ベンゼン・スルフォン酸ソーダを含有している。それから一時間の場合には、さらに二倍量を含有する、すなわち、六ミリグラム程度であります。野菜を一日にどのくらい食べるかと申しますと、国立栄養研究所の実験によりますと、大体二百二十グラム前後だということであります。そうしますと、大体十二ミリグラム前後のものが体内に入り得る可能性がある。もちろんこの実験データを拝借しての話であります。そこで、このような量がはたして有害かどうかということであります。先ほど申し上げたアメリカの長期慢性実験、二年間あるいは三代にわたる実験から考えまして、これは有害であるとは全然考えられないのであります。それから、ただいま柳沢博士は、人体に有害かどうかということは、現在まで行なわれておりまする、いわゆる慢性中毒によってだけでは判断すべきものではなくて、新たな観点から判断をしなければならないというふうにおっしゃいましたですが、現在この毒性の有無、特に慢性毒性の有無を判断するには、長期の慢性毒性以外にはないのであります。これは全世界的な見解でありまして、この世界的な見解を、単なる個人的な学問的意見によってとうてい変えるわけには参らないのであります。それから、先ほど柳沢博士がお出しになりましたこの文章でございますが、このABSは血液に移行する、脳骨髄などにも移行する、アスピリンを飲んでも血液に移行します。脳にも移行します。カフェイン、コーヒーを飲みましても移行します。幾らでもわれわれは絶えずこのようなものを食べておるのであります。
 それから、この二ページの一というところに、静脈注射をすると毒性が強いというふうに書いてあります。これは当然なことでありまして、界面活性を有するものは、口から食べた場合には毒性が弱いのでありますけれども、静脈注射をしますと毒性が強く、現に私どもの体内に胆汁酸という物質が毎日肝臓から約一グラム排泄されて、脂肪の乳化をいたしまして栄養素を吸収する働きをしております。この胆汁酸をかりに抽出して静脈注射しますと強い毒性を発揮する、また例をあげますならば、サポニンという、これはせきの薬でございますが、これは大体せき薬としまして、一日にわれわれは百ミリグラム以上飲むわけであります。これも静脈注射をしますと非常に強い毒性を出す。たとえばサルチン酸のようなものでも、静脈注射しますと運動麻痺が起こりますし、けいれんも起こります。このようなことから、これだけで毒性は論ぜられないということであります。
 それから三番目の、界面活性剤が二十日ネズミに対し発ガン補助物質になるということでございます。なるほどこの発ガン補助物質というものは、一応は問題になっております。しかしながら、実際にほんとうの発ガン物質だけでも非常に問題、すなわち、動物実験の解釈が問題であります。食品にもちろん入ってはいけないのですけれども、非常に問題のあるところであります。そこで、昨年の十月に国際ガン会議がございまして、そのときに「食品添加物による発ガン性について」というシンポジウムがあったのであります。私もその委員の一人としまして出席したのでありますが、この発ガン補助物質については、現在何らきめ手がない、きめ手がないといいますのは、学問的にはそういうことは考えられても、実際面、あるいは行政面にこれをどのように解釈するかということにつきましては全然討議されない。非常にむずかしい問題で、これはもう各国の考え方が違いますので、特にこれが発ガン補助物質であっても、危険であるとは言えない。現にこのようなものは各国で使っているところもあるのであります。
 それから、柳沢博士らの出された皮膚から浸透するという問題でございますが、昨日東京都の調査委員会がありまして、そのときの話で、皮膚から浸透するのか、あるいは浸透してから血液中に吸収されるのかという質問をしたのでありますが、柳沢博士は、吸収云々はいまだ実験不明でわかりませんということであります。
 結論といたしまして、現在まで世界で行なわれておりまして、まず有害でないとされておりますものにつきまして、これを直ちに有害であるとするには、学問的には非常に根拠が十分でないと私は思うのであります。
 それから、先ほどの訂正をいたしますが、最初の文献はチューディングその他の人の論文であります。
○坂本昭君 今二人の権威者から御説明がございましたが、厚生省側から、つまり、行政の責任者側からの御説明を聞いておって、私ちょっとふに落ちない点がある。それは、外国の文献はずいぶんあげられたが、一体厚生省自体の実験はあるかということですね。厚生省はよその文献を読んでおって、それでいろいろなことを判断されるのか、これが厚生省の行政の目的なのかどうか。私は、そういう点では、今聞いておったら、英米の各文献を羅列され、また柳沢博士のデータをいろいろと批判されるのだが、御自身の実験結果というものは持っておられないように思うのだが、一体厚生省というところは、大体こういう科学的な研究結果については、いつもそういう指導をされておるのか、この際、局長の御意見を聞いておきたい。
○政府委員(五十嵐義明君) 御指摘のまうに、こういう物質を行政的にどう取り扱うかということにつきましては、もちろん私どもの役所の立場で十分納得のいく説明が必要なわけでございます。まずその問題を検討するにあたりましては、その物質の構造上、基本的に危険なものであるかないかということから出発いたしまして、諸外国の文献、あるいは使用の状況等を検討することはもちろんでありますが、その上で、なおかつ、日本で使うことについていろいろ問題がありますならば、それにつきまして、私どもの付属機関、あるいはその他の学者の御研究を待って、その結果をつきとめまして、これを行政的に取り扱っていくという態度で処しておるわけであります。
○坂本昭君 そこで今、両権威者の学問的な御説明を承って、従来私自身の持っておった知識もあわせて、まず考えられたことは、このABSという非常に特殊な物質、これはきわめて非分解性のものだということを聞いていますが、それが浸透あるいは吸収、その辺についてはまだ若干問題が残っているようです。しかしデータそのものからいうと、たとえば、柳沢博士の研究や、あるいは小谷教授の研究、それらを通して、何らかの作用を与えているという点は間違いない。それについて、先ほど池田博士は、御説明を通して、たとえばイギリスの説明などでは、たいして障害がない、あるいはたいしたことはなかろう、そういった表現が非常に多いのですね。それから、最後の結論としても、まず有害ではない、そういう非常にあいまいな言葉が私は多く聞こえた。これは非常に大事なことであって、こうした新しい、しかも非常にポピュラーな、一般家庭で常時使われるものについて、まずとか、たいしてということでは、非常にわれわれとしては不安を伴なわざるを得ない。ことにこの使用にあたって、ドイツあるいはアメリカ等においては手袋を使うとか、皿洗いには使うが、野菜などにはどういう程度にまで使っているか、そういう点を私は十分な研究をしてから厚生省としては行政指導をせられるべきだと思う。ところが、池田博士が一番最初にこのABSの実験をされた。このことについては、今、池田博士は触れられなかったのですが、この中性洗剤の第一号であるライポンF、このFの試験報告について、最後に、本検体、つまり検査する物体ですね、本検体の毒性は大であるとは考えられないというふうな結論を書いておられる。かつ、この研究の中では、いろいろな砒素だとか、そういったもの、――失礼しました。その点はまたあとで池田博士から御説明いただきましょう。
 とにかく毒性は大であるとは考えられないということの結論に基づいて、厚生省としてはこの中性洗剤の第一号の使用、販売を許可されたと思う。しかも、その販売、使用を許可せられる場合のいきさつについて、特に昭和三十一年九月二十九日に、これは環境衛生部長の名前で各都道府県知事に通牒を出しておられる。この通牒を見ますというと、いろいろ長い説明が書いてありますが、洗滌力がすぐれ、通例の使用方法では無害、さらに野菜類という言葉が非常によけいあげられて、野菜類の洗滌に活用し、特に野菜のことについて非常に重点をあげてこの通牒の中で説明をしておられる。そうしてこれを集団給食だとか、飲食店、そういうところでも十分使うように指導されたいということが、わざわざ環境衛生部長の名で各都道府県知事あてに送られている。これは、こうした責任のある通牒が厚生省から出される場合に、一体どこまでの実験の根拠の上に立っているか。少なくとも私の承知している範囲内では、池田博士のこの実験をもととして、科学的の根拠に立ったと称してこの通牒を出しておられるが、一体そういうことをだれの責任をもって出されたか、また、さらにこの通牒の中には、有害な影響を与えるもの、これらの使用は望ましくない。つまりこれらの洗剤の中には、あるいは有害な影響を与えるものもあるかもしれぬが、そのような場合にはこれらの使用は望ましくないから、念のために申し添える。しかし、望ましくないといったって、一般の家庭の主婦にはわからぬ。望ましくない場合には、どうやってだれが行政的に決定し、そうしてそれを、各市民、国民に指導していくか、そういうことについても、私は、厚生当局の明確な行政的な責任をお尋ねいたしたい。特に奇怪なことは、今のようなことに基づいて実際に売り出されたこのライポンFの第一号、これを見ますというと、私もときどき女房の手伝いをいたしましてこれを使うことがあるので、今まではあまり関心がなかったのですが、あらためて見ますというと、奥さんたちがお使いになる理由もわかるのですね。ライポンFは、食品関係の専用洗剤として、厚生省や各種公共機関の厳密な審査により、最も優秀であることが証明され、推薦第一号を得ております。一体こういうことで厚生省は責任を持てるか、厳密な審査は一体だれがやっておるか、今、池田博士、あなたがこの厳密な審査を担当されておると思うのですが、厳密なあなた自身のデータをあげていただきたい。先ほどのような、イギリス、アメリカ、そんなことをいったって日本は日本なんですから、日本のデータがあるかないか、その点をあげられ、さらに環境衛生局長としては、こういうようなことでいいかということ。さらに、これを見ますと、一番上に、用途の中には、野菜のキャベツ、白菜の絵が載っております。これで一体正しく、これでいいか、特に池田博士は、御自身で「毒性は大であるとは考えられない」――「大であるとは考えられない」ということは、それが積もり積もったらどうなるかわかりませんし、その辺については、僕は責任を持っていただく必要があると思う。したがって、学問的な立場での池田博士の補足と、さらに局長の、今私の述べた点についての御答弁をいただきたい。
○説明員(池田良雄君) それでは、私は初めに、ライポンFの急性毒性試験を行なった――こまかいことは別といたしまして、結論だけ読みまして、それでよろしゅうございますか。
 「マウス、ラットにライポンFを経口投与し急性毒性試験を行ったが、五〇%致死量はいずれも五グラム・パー・キログラム以上と推定され、且つ著明な中毒症状乃至主要臓器の変化等も認め得ず、本試験よりは、本検体の毒性は大であるとは考えられない。」というふうに書いております。
○坂本昭君 ちょっと、池田博士のあれはこれだけで、ほかはないのですか、実験は。
○説明員(池田良雄君) ライポンFにはございません。あとはミヨシ中性洗剤についてもやはり行なっております。これの結論を読ましていただきますと、「ミヨシ中性洗剤をラット及びマウスに経口投与し急性毒性試験を行ったが、五〇%致死量はいずれも五グラム・パー・キログラム以上と推定され、また著明な中毒症状、主要臓器の変化も認められなかった。本試験の結果からミヨシ中性洗剤の毒性は大であるとは考えられない」。そういうことでございます。
 それから、先ほど砒素とか鉛の問題がありましたのですが、これは私どもは動物実験のほうでございまして、定量のほうは別の分野かと存じます。
○政府委員(五十嵐義明君) ただいまの御質問で、三十一年に出しました環境衛生部長の通知並びに商品の中に使ってあります表現等をあげました御質問にお答え申し上げたいと思います。
 通知の中に、有害な影響を与えるようなものは使用が望ましくないということが書いてあるが、これの判定とか選別とか、あるいは指導とかいうことはどこが責任を持ってやっておるかというお尋ねであります。この中性洗剤につきましては、いろいろと検討をいたしておりますが、ただいまのところでは、これを薬事法による医薬品という取り扱い、あるいは食品衛生法による食品添加物としての取り扱いということに直ちには該当しないという考え方に立ちまして、この取り扱いにつきましては、一応指導していくという方針を従来とってきたわけでありますが、指導のよりどころといたしましては、食品衛生法を主管いたしておりまする環境衛生局、当時の部でございますが、部で、食品衛生の向上のために好ましいものであるならば、それを指導していきたいという根拠に立ちまして指導いたして参ったわけであります。そこで、有害なものであるかないかの判別はどうするかということでございますが、ただいま申し上げましたような事情でございますので、これを直ちに法規に照らしまして、有害とか無害とか、あるいは有害な影響を与えるものであるとかないとかという判断を下す仕組みになっておりませんので、当時部内で検討いたしました結果、社団法人食品衛生協会にその推薦の制度をとるようにいたしまして、そこに食品の器具及び容器、包装等、推奨に関する規程というものを設けまして、その規程に基づいて社団法人食品衛生協会が推薦に値する品物としからざる品物とを選別するということにいたしたわけでございます。その審査の基準につきましては、九項目にわたります細目の基準がございまして、それに基づいて推薦するかしないかということをきめるという行き方をとったわけでございます。したがいまして、厚生省といたしましては、この食品衛生協会の推薦になるものは、これは有害な影響を与えるものでないという見解に立ちまして、この通知に基づいて食品衛生の向上のために使うということを指導いたしたわけでございます。
 それから、なお、商品に記載してございます表現等につきましては、これはいろいろ御意見もあろうかと存じますが、私どもの見解といたしましては、言葉の使い方にはいろいろ御意見があろうかと存じますが、はなはだしく事実をゆがめておるというような不当なものではないというふうに考えておるわけでございます。
○坂本昭君 今の食品衛生協会の推奨については、不当ではないという見解を持っておられるようですが、これは朝日新聞二月十一日のワンダフルKという広告ですね、やはりこれは中性洗剤、これには「日本食品衛生協会推奨、日常の使用においては衛生上無害であることが証明されております。」それから同じ朝日新聞の二月二十五日、これはプラムZという中性洗剤、これにも「日本食品衛生協会推奨品で、指定の使用法で洗えば“野菜・果物・食器洗いに安心して使ってよい”と証明されています。」こういうふうな証明のついた広告というのは、私はそうたくさんはないと思います。で、ほかのアスピリンだとかいろいろな問題、そういうものについては、薬事法の中にちゃんと定められておる。それから化粧品についても、薬事法の中に化粧品の規定と、さらにその取り扱いのことが定められている。しかし、この洗たく石けんと中性洗剤につきましては定められていない。特にこの中性洗剤は、先ほど来学者の間でも、吸収、浸透の問題が論ぜられているし、それから、厚生省側の実験も、担当しておられる池田博士によっても、柳沢博士のデータを、これは全部実験は誤りであると指摘したというふうには今見ていない。したがって、そういう点では、特に野菜の消毒については、私は非常に問題点があると思います。この一番問題のある点について、日本独自というか、特にこれは野菜の扱いは日本独自ということになるので、そういう研究がなされないで、しかも、一方では野菜の消毒に非常にいいとして、ちゃんと容器にも一番最初のところには、野菜を洗うことに使うのはよろしいというふうな広告が出ている。そして、その横には、厚生省や各種公共機関の厳密な審査によって推薦されている、こういうことはおかしいではないかと私は言うのです。それについての今の局長の答弁では、私は明確ではないと思う。その点もう少し明らかにしていただきたい。
○政府委員(五十嵐義明君) 二、三の商品につきまして、実際に書かれております文言をあげての御質問でございますが、特に野菜の問題につきましてわが国の独自のいろんな事情があるではないか、それについて十分検討しておるか、こういうお尋ねでございますが、確かに野菜の問題については、日本で独自の事情がございます。それは御承知のように、ふん便を肥料に使うということから出て参ります寄生虫の問題が一つあると思います。各種の商品、あるいは通知の中で、「野菜」という言葉が盛んに使われておる、このことについては疑問があるということでございますが、私の理解しておりますところでは、日本の野菜の特殊事情――寄生虫卵によって汚染されておるという事情等から、これを衛生的に処理したいという意味が「野菜」という言葉の上に現われてきておるというふうに理解できるわけでございますが、諸外国におきましても、もちろん野菜の洗浄には、いわゆる中性洗剤を使っておるというように聞いておるわけでございまして、その点では、決して日本だけの問題ではないというふうに考えておるわけでございます。
○坂本昭君 そんなあいまいなことを言ってはいけませんよ。諸外国では野菜の洗浄に使っていると聞いているというが、もうちょっとこれは私は責任のある調査をやっていただきたい。実際にアメリカの場合、イギリスの場合、ドイツの場合に使っているかどうか、あなたのほうでは使っていると聞いている、したがって、外国の文献を引用したり、外国の実際を引用して、だから日本の場合だって使っていいというわけにはなかなかならぬと思います。ただ、あなたが、日本の場合は特殊な事情のもとに寄生虫卵が非常に多いということ、そして、そのために環境衛生の立場で何とかこれを除去したいという熱意は認めます。認めるけれども、寄生虫はのいたけれども、今度はABSという、アルキル・ベンゼン・スルフォン酸とかいうおかしなもので全部日本人が中毒されたんじゃかなわんです。ですから、私は、これは責任のある研究者としての態度の上に立って行政指導をする必要がある。そういう点では、私は、今までの厚生省当局の御説明を伺った限りでは、私は納得できない。もちろんこの柳沢博士の研究の結果、こういうことを繰り返しておったらどういうことになるかという具体的な成績の発表はございません。確かに静脈内に刺すと麻痺が起こる、私は確かに静脈に刺すということは、専門的にいって非常に特殊の場合でしょう。しかし、ABSが非分解性であるということは、あとでまたお尋ねしたいと思いますが、非分解性のもので、アスピリン、カフェインのように、食べたら脳に入り、肝臓に入る。それはそれだけのことでなくして、非分解性の形で入っていって、そして、そのものを注射した場合に麻痺を起こすこともある。そういうことから、私は、やはり注意して、十分な研究を重ねた上で、はっきりしたデータの上で許可しないというと、やはり心の中に非常な危惧の念を残す。こういうことでは、私は問題が起こると思う。特に今日どの家庭でもこんなに使われている洗剤はありません。したがって、正しい使用方法というものを私は明確に指摘していただく必要がどうしても出てくると思う。そういうことでは、あなたのほうのいろいろな準備や指導がきわめて不十分だと私は言わざるを得ないのです。ことに、これは先ほども柳沢博士のほうからも触れておりましたが、環境衛生の行政の担当者であって人が、今度は大学の教授にもなって、しかも、その教授の研究論文の中でも、必ずしも無害とは言えないという一つの結果を出しておられる。しかも、その人が、今度は今の食品衛生協会の幹部として、今度はこの中性洗剤の推薦に当たっているというこの矛盾は、一体今後どうされるつもりですか。私は、これは非常に世間の疑惑を招かざるを得ないと思う。この点について局長はどういう御見解を持っておられますか。
○政府委員(五十嵐義明君) たまたまこの問題を取り扱いました所管課長が、後に官を辞しまして大学の教授になり、あるいは社団法人食品衛生協会の理事になったということは、この方の御経歴その他から申しまして、そういう経過をたどったわけでございまして、私としましては、この中性洗剤に関して、この人事とか異動というものが云々されるというふうには考えていないわけでございます。
○坂本昭君 たまたまというふうな、そういう言葉を使うなら、こっちもそれはあれですよ、たまたまこの環境衛生の担当の職にあった人を、その人をこの食品衛生協会の専門的な地位につけるということは、たまたまということよりも、きわめて合目的的なのです、悪い目で見れば。そういう疑いのかかるような人事についてはどうされるおつもりですか、あなたはそれでもよろしいといっておられるのですか。
○政府委員(五十嵐義明君) 私は、今お尋ねになっております方の人柄等もよく存じているつもりでございます。また、協会でやっております仕事の中身についても承知しているつもりでございます。このような人事が不当であるというふうには考えていないわけでございます。
○坂本昭君 それでは、最初の中性洗剤の第一号に対する日本食品協会の名前による公告、推奨状の第一号を見るというと、「本品は毒性を有せず有害な不純物を含有しない」これは結論的な推奨状になっている。これに附記として、「協会が行う推奨は極めて大きな意義を持つものでこの審査にあたっては厚生省の関係官をはじめ学界、国家関等の権威者が審査委員として厳密な審査を行って決定することになっておるので食品衛生の向上に資するは勿論のこと推奨を受けた商品も非常に価値づけられ宣伝、販売等にも影響するところ尠くないものと思われるので業界の進んで利用されることを切望します。」こんなことを一体食品協会の公告の中に書く必要がありますか、どういうわけで書かせるのですか。また、こういうことについて厚生省として何ら取り締まりも何もおやりになるおつもりはないんですか。
○政府委員(五十嵐義明君) 食品衛生協会の推薦状の中の文句につきましてのお尋ねでございますが、私は、その内容が間違っていない、不当でないという限りにおいては、私ども特にそれを訂正させる、あるいはそれを改めさせるというような考えは持っていないわけでございます。
○坂本昭君 それでは、もう一ぺん最初の野菜の問題になりますが、あなたのほうでは、野菜についての実験や、あるいはデータは十分にお持ちになっているとはお答えになっていないにもかかわらず、野菜については絶対に間違いないという格好で宣伝が行なわれている、この事実については将来どういうふうに指導されるおつもりですか。
○政府委員(五十嵐義明君) 野菜の問題につきましてのお尋ねでございますが、これは先ほど池田部長からも申し上げましたように、わが国の実験、諸外国における経験並びに文献等から見まして、野菜についてこれを使いましても危険でないというふうに考えてこれを指導したわけでございます。
○坂本昭君 あなたのほうでは、このことについて責任を持つといわれるわけですね。
○政府委員(五十嵐義明君) 私どもが指導いたしております限りにおいては、その責任は私どもが負わざるを得ないと思います。
○坂本昭君 それでは現時点で、各種の新聞やその他のものに出ているところの広告については、これを制限したり、あるいはこの不確かな点については、これを取り消させたり、そういう措置はとらぬ、今までのとおりにやらせていく、そういう御方針なんですね。
○政府委員(五十嵐義明君) 先生がただいまお尋ねになったような趣旨でお答えしたつもりではございません。今後それを検討いたしまして、その内容にもし不当であり、あるいは不正であり、あるいは行き過ぎというようなことがありますれば、その具体的な事例につきまして検討いたしました上、改めるものは改めさせるように指導して参りたい、こういうふうに考えております。
○坂本昭君 だから局長、野菜に関する実験のデータというものがないじゃないですか。十分なものがないにかかわらず、無害だということを言いふらすのは、私は厚生省の指導としてもまずいではないか、また同時に、そういうことを食品衛生協会を通してやらせるのもおかしいではないか、だから、それらについては、全国民が使用しているこの際、十分慎重な態度をとって、そういう食品、自動車のボディ、そういうものを洗うについては私もかれこれ言いません。もちろん洗う場合に手袋をはめるとかいう問題は残ってきます。少なくとも、野菜を筆頭に掲げてこういう宣伝、広告をしていることについて疑義があるのではないか、すべての広告に、ごらんなさい、野菜、果物、それから食品洗いにと書いてある、一番最初に野菜と書いている。この野菜に問題があるのじゃないか、それだけの十分な調査がないじゃないか、それを私は聞いている。だから将来じゃないですよ、将来のことじゃなくて、現時点において、あなたのほうでは、私の言うことを論駁するだけの十分な、野菜についても絶対大丈夫だという証拠があるか、その証拠が十分でないから、私はこの点については制限を加えて、もっと正しい指導をすべきではないかといって私は聞いている。それについて、この際、もう一ぺん明らかにしていただきたい。
○政府委員(五十嵐義明君) 個々の食品につきまして、逐一精密なデータがあることは、これはもちろん御指摘のように望ましいことでございます。冒頭に申し上げましたように、この種の物質の取り扱いにつきましては、一定の科学的な常識というものもございます。そこで、これは必ずしも先生の御意見に対して反駁しているわけじゃございませんが、野菜について、あるいは何々についてと、一つ一つの食品について全部実験データをまとめなければ推奨ができない、あるいは指導ができないということではないと考えるわけでございまして、先生のお尋ねも、最も主要なものとして筆頭にあげている野菜についてどうかというお尋ねのように私は伺ったわけでございます。この点は、私どもも国立衛生試験所その他の試験の結果、また、外国の文献等を見まして、野菜に使いましても危険がない、野菜に残存する量等を考慮いたしまして危険がないと考えて指導をいたしているわけでございまして、なお、この柳沢先生の学問的な御見解につきましては、私どももこれを尊重いたしまして、国立衛生試験所で、その限りにおいてこれを追試いたしているというような事情でございます。
○坂本昭君 あなた、しかし、一つ一つ全部実験をやる必要はないと言われるけれども、一番大事なこの野菜についての実験データを持たなくてそういうことを言い得ますか。実に私は広言はばからないものだと思うのです。非常にこれは大事な点であります。
 もう一ぺんこの問題はあとで申し上げますが、さらに引き続いて、やはりこれに関連してくるのですが、このABSというのは非常に非分解性のものだ、そうしてあなたのお考えのように、簡単に見ていいかどうか、これは非常に問題だと思うのですね。それは、たとえば東京都の井戸の水の中にこのABSが入っているかどうか、そういう調査は、これはおやりになったことがありますか。あるいはまた水道の中に――これはあなたのほうの担当ですよ。上下水道の中にABSがどんなふうになっているか。少なくとも上水道の場合には入る可能性があるということの御調査をなすっておられるのかどうか。その点局長にお尋ねいたしたい。
○政府委員(五十嵐義明君) この点につきましては、所管課である水道課が東京都の水道局と連絡をいたしまして、その点の検討をいたしているわけでございます。ただいままでのところ、健康に支障を来たすというようなことは出ていないわけでございます。
○坂本昭君 健康に支障を来たすというようなことじゃなく、もう少し正確に言って下さい。一体どのくらい含有量が入っておったか、だれが調べたか、そのデータをあげて下さい。
○政府委員(五十嵐義明君) 手元に持って参っておりませんので、後ほどお答え申し上げます。
○坂本昭君 そんないいかげんなことを言っちゃいけませんよ。一体きょう何の議論をやっているんですか。中性洗剤の問題といったら、あなた方知っておられるはずじゃないですか。これはアメリカやドイツで一番問題になっているのは、上下水道に上ってくる問題、そうして日本の場合でも、われわれのようなしろうとでさえも、たとえばこれは新聞に去年の秋出ておった記事ですよ。横浜国立大学の建築学科の山越教授の「処置のない汚水」という題で、中性洗剤によってあわ立ちができる、そのあわ立ちの中で、つまり表面活性剤として、そのあわ立ちの中にいろいろなごみとか回虫卵とかが吸着されていくわけですね。だからそういう点では、一面においては非常に環境衛生上、皆さんの希望される点も満足できる。満足できるが、同時に、どんどんあわが立ってしまって、そのために浄化槽におけるいわゆる自浄作用、ばい菌による自浄作用、そういったものが阻止されている。そのために汚水の処置というものができなくなりつつある。これはアメリカだって、あるいはドイツでも非常な問題になっているし、さらに、このことが中性洗剤そのものの将来の問題のきめ手になっているのではないか。そうして、たまたま日本の行政ではあなたの中に全部入っている。ところが、あなたはこの中性洗剤を、とにかく最初に推薦第一号で、よろしいといってしまった。そして、あとは何でもかんでもよろしいといわなきゃならぬという態度で押し切ろうとしている。私は、そういうことは困るから、今の野菜の問題についても、もう一ぺん問題を提起しているし、さらにこの上下水道の問題、これについてもお尋ねしたいと思っている。山越教授の意見などによると「アルキルベンゾール系の洗剤による汚水の処置については、ほどこすすべもなく世界中困り抜いている。ヨーロッパの、たとえばドイツなどでは、とうにこの洗剤の害を認めて、やむを得ず使用を中止しているというし、アメリカでもその方面を重視しはじめているらしい」せっかく外国の文献に通じておられる厚生省当局が、こういうことに通じていないはずはないのです。そういう点で、このABSの上下水道に対する問題、さらにもう一ぺんこれに関連して、野菜の問題について、あなたの方でももっとまじめな態度を私は要求したい。
○政府委員(五十嵐義明君) ただいまの上下水道についてのお尋ねでございますが、今一つだけここに数字がございまして、東京都の多摩川上水の成績でございますが、昨年の一月から現在までに調べました最高値は、本年の一月二十一日渇水期を迎えまして〇・九PPMというような数字でございます。なお、下水道を含めてのお尋ねでございましたが、下水道につきましては、細菌によって分解されないということから、下水道終末処理の浄化作用にいろいろな支障があるのではないか。この点につきましても、ドイツの法律取り扱い等、諸外国の事例もあるわけでございますから、私どもも、この点につきまして、現実にこれを取り扱っております都の清掃関係の幹部と連絡をいたしまして、これの取り扱いについて検討をいたしておるわけでございますが、この点も、現在までのところ、下水道終末処理に支障を来たすという程度の結果は出ていないわけでございます。しかしながら、諸外国の事例もございまして、今後これが非常に大量に使用される、また、渇水期とぶつかるというような場合にいろいろの問題が出てくることが予想されるわけでございまして、この点につきましては、私ども担当の課が集まりまして、薬務局も加えていろいろと検討を進めておるということを申し上げたいと思います。
○坂本昭君 今までの審議の過程を通じて感じたことは、どうも厚生当局は、いろいろな調査や、あるいは実験、それらについてまだ不十分だという印象を非常に深くせざるを得ない。
 さらに私は、問題に関連してもう少しお尋ねしたいのですが、それは中性洗剤の基本原料である品物、聞くところによると、アメリカのオールナイト社というところから、アルケンという名前で、これが年間四十億円程度輸入されているというふうに承っているのですが、したがって、四十億という莫大な原料をもとにして、現在二十九社で約百ぐらいの製品が作られている。そして、これは将来ともにどんどん販路も拡張され、使用される数も私はふえていく可能性があると思いますので、だからこそ、この使用についての明確な基準を私は作っていただきたいと思うのです。ところが、実はさらにいろいろと注意すべき問題点がある。それは、このABSという一つの化学物質を澱粉の除蛋白に使う、そういう実験もある会社で行なわれている。これは中性洗剤を作っている会社が、これが澱粉の除蛋白にABSを使う、そういう実験の結果も上がっている。そしてわが国のカンショ澱粉の品質向上、歩どまり向上に役立たせんとしつつある、そういうことが書いてある。で、さらにこの研究者の書いている論文の内容を見るというと、アルキルベンゾールが、洗剤においては、毒性においては全く心配する必要がないのだから、その後の食品、食器用洗剤においては、この形態のものである限り、動物実験を省略して推奨品の申請を受けることができるようになった。つまり一番最初の非常に不十分な、われわれから見ると、化学的にきわめて不十分なデータをもととして、特に池田博士も指摘されたように、毒性は大であるとは考えられないという不確かな事実をもととして、あとこの推薦を受けたところでは、毒性においては全く心配する必要がない、だから動物実験も省略して推奨品の申請を受けることができるようになったから、あとはたとえば澱粉の除蛋白にもABSをどんどん使っていったってかまいはしない。つまり一番最初のあなたのほうの行政指導の不適確のために、あといろいろな問題が引き続いて出てくる。私は、この際、先ほどから問題となって触れた教授、その教授が課長の当時に、例の森永事件というのを起こしておる。この森永事件もきわめて専門的な問題点ですけれども、しかし、あのときに問題になったのは、燐酸ソーダを入れてアルカリ性を保つ。ところが、この燐酸ソーダに、あやまって工業用の燐酸ソーダを入れて、そしてこの工業用の燐酸ソーダの中に砒素、そういったものが入っておったから、あのおそるべき森永事件を引き起こした。しかも、これは実はまだ終息していないのです。去年もわれわれはいろいろな陳情を受けています。非常に悲惨な事件をあなた方はもうすでに経験している。そしてこの森永事件が、まだ今日でもくすぶっているさなかに、今度はABS――輸入原料ではアルケンという名前、このアルケンに硫酸を入れて、つまりSO3――硫酸基をくっつける。もちろんこのときに工業用の硫酸は一PPMというふうな大体規定になっていると承っていますが、この一PP程度なら砒素は入らないでしょう。しかし、全然砒素の痕跡もないとは言えないだろう。ことに食品衛生協会の場合には〇・二PPMという基準を作っておられるそうですが、私は、今のように澱粉の除蛋白に使うとか、そういうようなふうになってくるというと、またこれがあやまって入ってくることを私たちは完全に除外できるか、また、先ほど局長は法規の問題に触れておられましたが、洗たく用のABSの場合、この場合にはトリポリ燐酸を賦形剤としてかなり入れるそうでありますが、そうなってくると、洗たく用の場合には相当な砒素と考えられる。現在は野菜用にはトリポリ燐酸は使っていないそうでありますが、しかし、法的な規制はない。法的な規制はないから、ひょっとしてこの今の中性洗剤の中にトリポリ燐酸を入れたような場合には、そしてそれが今のホーレンソウだとか白菜の中に入っていった場合には、また森永事件のようなことが起こらぬとだれが保証できるか。特に非常に専門的なことで私も初めて承ったことすでが、液状の洗剤の場合には二〇プロの工業用の変性アルコール、これをお使いになる。この変性アルコールの中にはメチール、エチール、ケトン変性アルコールとしていろいろなものが入って、したがって、砒素も入っている。こういう点から、今のような森永事件というのは二度もあっては困りますが、この中性洗剤の利用を通して、こういうことが完全に除外されていない、一体そういう危険はどこでだれが責任を持ってやってくれるか、先ほど来の審議を通じて感じたことは、非常に厚生当局はいいかげんだということですね。化学的な実験の正確な上に立たないで、無害であるそうだから、まあ認めているのだ、そういういいかげんなことでやってくると、まだあとこういうトリポリ燐酸や変性アルコールの問題を通じて中性洗剤の中に砒素剤あたりが混入する危険を完全に防止することはできないではないか、そういう点で非常にこの中性洗剤の問題は重大な問題をいろいろな面で持っている。確かに野菜から回虫卵を除くことはけっこうですよ、けっこうですが、今のような問題点があり、さらに上下水道の浄化作用の問出題についても、あるいはさらにこのABSを使って澱粉の除蛋白に使うというような計画がすでにこの中性洗剤を使っている会社の実験室で発表されている。こういうことを通じて、今のような態度では、厚生省として国民の生活を完全に保障しているとは私は考えられない。特に今のあとの問題について局長の見解を一つただしておきたい。
○政府委員(五十嵐義明君) 森永の砒素事件を取り上げましてお尋ねでございますが、もちろん先生も御承知のように、乳児の主食であるミルクと食器、野菜等の洗浄に使う洗剤との間にはおのずと持つ性格が違うことは御承知のとおりでございます。しかし、これが学問的に絶対に安全であるかどうかということは、柳沢先生の実験、あるいは私どもの試験所の実験その他の文献によっておるところでございまして、私どもはこれを行政的に予想される範囲内の残量であっても、人の健康をそこなうおそれはないと見て指導をいたしておるわけでございますが、なお、澱粉の蛋白を取り除くというようなことに使う場合は、これは食品の加工その他の材料になるわけでございますので、これは食品衛生法上の食品添加物としてその方面の規制を受けることになるわけでございます。なお、この物質の持つ特性から、水道あるいは下水道に与える影響等につきましては、これまた御指摘のように問題があるのでございますが、外国におきましても、細菌による分解性を持たせるというような考慮から、構造式を変えていくような研究が行なわれておるのでございますが、こういった点も加味いたしまして、こういう取り扱いにつきましては、特に先生の御指摘のように、使用方法を明確に普及徹底させるということを念頭に置きまして、なお検討を続けて参りたいと、このように考えております。
○阿具根登君 参考人の方が時間が相当必要だろうと思いますので、ちょっと両博士に御質問申し上げます。非常に重大な問題だと思うのです。この問題を当委員会で論議されて、双方の権威ある専門家の方の意見が違っておる、実際中性洗剤というものは、全国の各家庭で使っておる非常な問題だと思います。だから、私は両専門家の方の意見の違っておるところに私なりに質問を申し上げたいと思います。たとえば柳沢博士の研究では、静脈注射の場合に、ウサギの下肢の運動が麻痺をしたと言われるし、池田博士は、静脈注射の場合は、他の例を引いて有害は当然だということを、それは認めておる。ところが今度は、池田博士のほうでは、米国の文献等による白ネズミの実験を、二年間も口からこれをABSを入れて実験してみたが、何ら有害ではなかった、こういうことを言われておるわけです。そうすると柳沢博士は、これはお認めになるかどうか。たとえば静脈注射した場合は下肢が不随になった、非常な有害であった、それでは口から実験されたことがあるか、口から実験した場合はどういう有害があるか、そういう点がちょっとはっきりしてないから、私は論旨がぼけているのではないかと思います。その点をひとつ御説明願います。
○参考人(柳沢文正君) ただいまのお話のごとく、私どもは多量にABSを投与しますと、血液の中の白血球が低下します。大体三十分から一時間くらいで著しく低下して参ります。このことによって明らかに、いわゆる血液の中に、あるいは体内に入ると確信しております。また外国論文におきまして、ネズミの二年間にわたるところの実験がありますが、私たちの電解質から考察いたしますと、大体外国におけるところの実験というものは、ABSを飼料に加えております。この飼料に加えた場合におきましては、蛋白と結合して、いわゆる体内に入らないで排泄する場合が考えられるのでございます。その一番いい例と申しましては、私たちが蛋白に加えてABSをウサギに投与しますと、血液の中の電解質はあまり変動しません。それから血液は酸性に傾かないのであります。ところが、水溶性または野菜の中に浸透したところのABSを与えますと、いずれもからだは酸性になります。いわゆるわれわれの常識からいえばカルシウムが低下していくのであります。この点からいいますと、実験方法によっても非常に問題が起こるのでありますが、こういうような、いわゆる質量作用の法則に従わない物質というものは、いわゆる投与法においても非常に多くの問題を含んでいると思うのです。そういう点におきまして、現在世界においてやっておられるところの慢性中毒の実験というものは、もう少し高度の、近代におけるところの化学的な研究を含めまして、そういうような実験をしていただきたいと思うのであります。
○阿具根登君 池田博士はまだほかの御意見があると思いますのであとでお尋ねしますが、もう一つ柳沢博士にお尋ねしますが、池田博士の設明では、野菜を一人か何人か知りませんけれども、一日に二百二十グラム食べる、そうすると十二ミリグラムの程度のABSが体内に入る。これは有害ではないのだ、こういうことを言っておられるわけですね。まあ、これは何時間つけたのか、一時間ぐらいだと思うのですが、一時間ぐらいつけた場合に、ABSが体内に入ってくるのは十二ミリグラムだということをその文献は示しているようですが、先生はそれをお認めになってのことであるのか、あるいは二百二十グラム食べるのはあたりまえのことであって、それ以上これが入るのか。なぜこういうことを尋ねるのかというと、現在あらゆる宣伝機関を通じてなま野菜を食べろ、なま野菜を食べろと、これはジェーサーの宣伝から、すべての宣伝でなま野菜、なま野菜と宣伝しているわけです。ですから、今日本国民は相当ななま野菜を食っている。しかもこの洗剤で洗ったやつならば、日本の今までの野菜とは違って全然ばい菌が入っておらないので、なま野菜を食べていいのだということが非常に先入観になっておりますので、だからまあこういう量でいいのか、あるいはこういう量に対してこのぐらいの、一二ミリグラムのABSは入っているのが正しいと思っているのか、この点をお伺いします。
○参考人(柳沢文正君) 先ほど野菜の中にどのくらい入るかという点につきまして言い落としましたが、私どもが白菜を用いた場合に、〇・五%の洗剤溶液に十分以上つけた場合には、千グラムの中に洗剤として〇・一五グラム入りました。また一昼夜つけた場合−普通はこういう例はないと思いますが、つけ物屋などはそういう例があります。そういう場合は百グラムに対して〇・一五グラム入る。池田技官の言われたのは、いわゆるアルキル・ベンゼン・スルフォン酸としての量をおっしゃったのでありますが、よく池田先生のほうで言われるのは、いわゆるライポンFに対してはしD50を五グラムつまりライポンFでおはかりになっている、こういうような問題に対しまして、いわゆるアルキル・ベンゼン・スルフォン酸でおはかりになっている、こういうところが非常に矛盾していると思うのです。こういうようなしD50というものは純製品をもってはかるのが至当であると思うのです。さもなければ、厚生省ではあらゆる商品に対してLD50をはからなければならない。日本の商品というものは二〇%から三五%までのアルキル・ベンゼン・スルフォン酸の含有量の差異がある。そういう場合は当然各商品についてLD50をはからなければならない。私どもの質問に対しては、そういうものに対しては純製品を用いていかにも量が少ないようなことをおっしゃっている。これは非常に聞く人によってはうそのように感じられることで、われわれとしては、洗剤に対してはこれだけ入る、それからアルキル・ベンゼン・スルフォン酸に対してはこれだけ入る。これだけ入るとどういうことになるかと申るますと、こういうような物質におきましては、それが大量であっても少量であっても害があるということは、これはいわゆる物理的な現象がありますもので、非常に危険が予想されるのであります。でありますから、諸外国におきましていわゆる野菜に使用するということを宣伝しているところはないと存じます。そういう場合に日本だけ、日本だけがいわゆる風土が違うとかいうことで、特に野菜を取り上げて、これだけ滲透していくものに対して、いわゆる実験もよくされずに、何ら裏づけがなくして使用されているということに対して、非常に私たちは疑問を持つのであります。
○阿具根登君 私が質問申し上げておりますのは、最初に柳沢博士が今日までの研究の結果を発表されて、それに対して池田博士の反対といいますか、あるいはそうじゃないのだというような見解が述べられて、そのままになっておるから、その差を私は質問しておりますので、簡単にお答えいただいてけっこうだと思うのです。
 もう一つは、柳沢先生のほうではABSの皮膚からの侵入が判明しておる、こういうことを言っておられる。ところが、池田博士は二十四時間も数百倍のABSの液の中に手をつけておったけれども吸収されない、こう言っておられる。私どもしろうとにはまるきり反対のことを両方で言っておられる。一方は皮膚から吸収されておる、一方は数百倍の液の中につけても皮膚から吸収されないと、こういうことになってくると、国民は一体どうなるか。専門家の権威のある方々お二人がお二人まるきり反対のことを言っておられるわけですね。これは一体どういうことなんでしょう。
○参考人(柳沢文正君) 私のほうで実験しましたことは、人間を用いることができません。でありますから、ガマガエルを用いました。このガマガエルを〇・五%の溶液に三時間つけておきまして、それをよく水洗いをいたします。そして皮をはがしまして、それをホモジナイトしまして、そしてその中に入っておるところのABSを測定したのであります。さらにガマガエルの内側の筋肉を取り出しまして、これについても実験をいたしました。その場合に、明らかにABSの含有を認めたのであります。特に六時間日におきましては、完全にいわゆる足の内側の筋肉の中にABSを認めておる。しかし、この実験はウサギを同様に処理した場合においても、皮膚に浸透をしているのを認めたのであります。
○阿具根登君 それでは今までの私の質問に対します池田博士のひとつ御見解を承りたいと思いますが、柳沢先生は先ほどもお答えの中に言っておりましたように、自分で実際の研究をされて発表されておる、こういうことなんですね。それで坂本委員のほうからも指摘しておりましたように、厚生省関係も他の文献だけでなくて、やはりそういう問題については的確な答弁をしていただかなければ、これを使っておる人たちはおそらく非常なショックを私は受けておると思うのです。そうすると、営業関係の方もこれはたいへんな問題になってくるであろうが、実際毎日々々朝昼晩食っておるのですから、それに少しでもこれは有害だ、あるいは毒性があるのだということになれば、これは大きな政治問題になるわけです。だから有毒か無毒かということよりも、有毒か無毒か、またこれが他の食品を一緒に体内に入る場合に一体どうだ。先ほど柳沢先生のお言葉の中にもありましたが、そういう点についてはっきりとひとつ御意見を承りたいと思います。
○説明員(池田良雄君) 先ほど私が申し上げましたのは皮膚浸透と、それから浸透して血液の中に入るか、そういう二つの問題があるわけです。そこで、この柳沢博士の論文をまず見ますと、初めに経口投与をやりまして、あるいは皮下注射をしまして、血液の電解質といいますかカルシウム、マグネシウムの変動がある。あるいはPHの変動がある。そこで今度は皮膚に塗ったらやはりそのような現象が起こったから、これが浸透するのである、そういう理論になるわけであります。ところが、このような血液の変動PH、あるいはマグネシウム、カルシウム、そういう電解物質の変動によって、ある物質が浸透するかどうかを論ずることに、かなり学問的な問題がある。といいますのは、この柳沢博士の論文をよく見てみますと、皮膚に塗った場合に、これは一〇%溶液五ccをウサギの皮膚に塗布しております。ここに図がありますが、本文にはPH、が酸性になるというふうに書いておりますけれども、この図を見ますと、常識的に、むしろ上昇している、まあ一時下がっておりますけれども、上昇している。これが一つ。それから、五%溶液五ccですから、少ない量でございます。少ない量を塗りましたときに、PHが下がっている。そうしますと、これは多い量を塗るほうが、影響が少ない。そういう個々の事実にかなり問題があるわけでございます。そのほかに、それでは口から与えた場合に、そういう血液の変動が起こるというようなことが、毒性とどのような関連があるかという問題が一つございます。で、実は、柳沢博士が、前にゾンデの問題で論じたことがございます。そこで、ある物質につきましての毒性を論じたのでございますけれども、そのときに、薬液を入れないでゾンデを入れることによって、PHの変動が起こるという文献があるわけでございます。そうしますと、そのときに実験としまして――そういうような対照実験ですね、ゾンデの場合は薬液を入れないでゾンデだけ入れる。あるいは塗る場合には、他のコントロールを――何でもいいのですけれども、あとの実験は、普通の石けんを塗るとか、そういうことまで示して、学問的にはたしてこれが吸収されるという実証があるなら、まだ私はいいと思うのでございますが、現在一般的に申しまして、ある物質が皮膚から吸収されるというには、アイソトープを使うか、あるいは皮膚に塗りまして、血中からこれを証明するか、あるいは尿中からこのものを証明するという以外にはないわけであります。この実験方法自体に、まだ学問の場で論ずる点が多いということでございます。
 それから、先ほどの白血球の問題でございますが、それはどのくらいの量をやったか、そういうことは私は伺っておりませんので、すべてこれは量の問題でございまして……。
○阿具根登君 柳沢博士のお話を聞いておりましても、直接血液の中に入るということは言っておられないのです。ただいま言われましたように、柳沢博士の言われるのは、有害物質との体内での結びつきで、血液なり、あるいは腸壁侵入の可能性が非常に強い、こう言っておられるわけなんです。口から何ミリグラムかのABSが入っていけば、他の有害物質と結びついた場合に、血液なり、腸壁に入っていくんだ、こう言っておられるわけなんです。それはいかがですか。
○説明員(池田良雄君) 経口投与した場合に血液中に入るだろうという問題、もちろんこれは大量にやれば血中に吸収されて移行いたします。
○阿具根登君 大量ということで今話をしておるのじゃなくて、たとえば野菜を二百二十グラム食べるのだと池田博士は言われたけれども、これはいつの例だか知りませんけれども、現在だったらもう少しとるのじゃなかろうかという私の感覚からいえば、それだけのものを食えば、何ミリグラムですか、十二ミリグラムですね、そうすると、少し食べれば二十ミリグラムぐらいのABSがからだの中に入る。そうすると、体内に有毒物質がありますから、そういうものと結びついて、腸壁なりあるいは血液の中に入るのだという柳沢博士の発表だったようですが、そういうことが認められるかどうかという問題です。
○坂本昭君 関連して、今の同じ問題をもう少し……、結局、界面活性剤としての研究の問題だと私は思うのです。そういう点で非常に今学問的にむずかしい点ですが、池田博士の界面活性剤としての研究の結果、あるいは柳沢博士のデータに対する所見をひとつ設明していただき、また同時に柳沢博士のほうも、そういう面でわれわれにひとつ説明をいただきたい。
○説明員(池田良雄君) 界面活性作用のあるものは、実は私どもの体内にも先ほどあると申し上げたわけです。そういうものは、脂肪の乳化、乳化といいますと小さくする、脂肪は大きいですからそのままでは吸収されませんので、非常に小さくするわけです。そこで、それではかりに二十ミリグラムのものが、長期間入った場合に、どういう影響があるかという問題が、一番私はポイントだと思います。そこで、そういうある一定量のものが、体内に絶えず入りまして、有害かどうかということを判断するには、これは長期の動物実験による――これは日本では長期実験はございません。柳沢博士のところもそれほど長期のものではなく、全部急性の問題です。そこで現在のある文献から判断するならば、先ほど申し上げました二年間、かつ三代にわたる大量の投与の結果を信用せざるを得ないのだ、これは実に確実なデータでございます。そういうデータがありまして、アメリカあるいはイギリスで、これはそれほど、毒性そのものは問題にしておりませんので、これは直ちに有害であると決し得ないと思う。毒性があるかないかを見るためにそういう実験をやりまして、安全というデータが出ているわけでございます。
○参考人(柳沢文正君) これは界面活性剤であるために、いわゆるそういう酸の問題におきましても、少量で上がったり下がったりすることが起こるのであります。たとえば、先ほど血液の中に入った麻痺の問題を申しましたが、あれは大量に入ったときに麻痺が起こるのではないのでありまして、少量の場合に、二十四匹のうち三匹に起こったのであります。でありますから、量という問題が関係のないところに、いわゆる界面活性の特性があるのであります。たとえば界面活性の、腸から吸収された場合に、どういうふうにして入るかというのでありますが、これは先ほども池田技官のおっしゃったように脂肪を乳化します、そうすると、片方が、乳化が減ってきます。このいわゆる乳化された脂肪が、非常に毒性を持っておるとすれば、それが肝臓にいきまして、どういう働きをするかということを考えた場合に、いわゆる一つの肝臓の障害を起こすのではないかということが想像できるのであります。でありますから、従来の慢性中毒外国でよく起こりました慢性中毒の理論をもって、これを直ちに日本に当てはめる、特に日本というところは風習が違いまして、このくらいたくさんとにかく野菜物を素手でやるというところはないのです。そう考えましたならば、いわゆるこういう危険性がある、特に界面活性というものは、全然まだわからないのだというのに皮膚に触れさしておる。特に先ほどゾンデの問題がありましたが、たとえば皆さん方、楽しい生活がからだにいいか、不愉快な生活がからだに悪いか、どうして判定しますか、その場合に私は、私のカルシウムの測定法によりますと、不愉快になってきた場合に身体が酸性となり非常に悪い状態になります。喜んでいるときにはアルカリ性になります。そういう場合に、ゾンデ投与という場合は動物が非常に苦しみまして、そのときにはものすごい酸性になります。それを続けていきますと二カ月、三カ月いたしまして、非常な成長指数がとまって参ります。そういう実験をなさって、そうしてここにパピロームができるということによって、ある防腐剤を十年間、とにかく出されてからまだ許可をし得ない、ただわずかにゾンデ投与のパピロームによって許可されない、そういう事実に対して私どもはゾンデ投与によってそういう実験をやってみましたら、薬物を与えなくとも、水を与えなくとも、同様にここにパピロームができるということを出しておるのであります。そういう点から考えますれば、私たちはある一つの目安として、こういうような電解質の測定に対して私たちは力を注いでいる。特にこの界面活性剤を調べるのに他にいい方法がない。でありますから、たとえばここに強いものが残った、それじゃ皮膚に入るのじゃなかろうかというわれわれは一つのいわゆる目安に使ったのであります。その結果、あらためて、ウサギとかガマとか、そういうものを使ったのでありまして、必ずしもこれでもって皮膚に滲透するという言葉は入っておりません。
○説明員(池田良雄君) ただいまの、ちょっと本題からはずれるかもしれませんが、ゾンデ問題、これはまだいろいろ学問的にむずかしい問題がございます。そこで十年間云々というお話がございましたのですけれども、これは私ゼもゾンデを投与いたしまして、それで胃の中にパピロームといいますか、乳嘴腫ができたからいかぬといっているのじゃございませんで、そのものは非常に新化合物で、ものは言いませんですけれども、これは発ガン性という問題も検討しなければならないものでございますので、非常に慎重にやっておるわけでございます。これが実際に添加いたしまして、毎日われわれが食べるものでございますから、非常に慎重にやっておるわけでございます。そのことだけひとつ申し上げます。
○坂本昭君 今ちょうどその発ガン性のことをお尋ねしたいと思ったのです。一体この中性洗剤の発ガン性について、どういう御見解を持っておられるか、あるいはまたあなた方の知っている結果はどうであるか、それを聞かして下さい。
○説明員(池田良雄君) 中性洗剤の発ガン性の問題でございますけれども、もちろんこれは発ガン性については、実は非常に長期莫大な費用がかかります。それで私どもでやっておりませんのですが、先ほど申し上げました二年間の実験ですね、これは非常に莫大な動物を使っておりまして、こういう実験がいわゆる慢性毒性を見るとともに、そういう発ガン実験にもなっております。で、これではガンは認めておりませんでした。
○坂本昭君 柳沢博士にちょっとお尋ねしたいのですが、いろいろな点で非常に啓発していただいた点感謝しますが、この前、お茶の水の会で発表せられたときのあなた方の基本的な何といいますか、考え方をちょっと御説明いただきたい。
○参考人(柳沢文正君) 私どもはあの場合、いわゆるABSの生化学的知見及びこれに対する新しい療法というものに対して発表いたしたのでございます。でありますから、公衆衛生の面につきましては、他の時期に譲るとはっきり申し上げたのでありますが、当日いらっしゃった小谷博士によりまして公衆衛生面に触れまして、非常にその点が角度が違っておりまして、ついにそのほうに移っていきました。その点でああいうような大きな問題を引き起こしたのであります。私たちは別に公衆衛生の面ではもう少し検討したいと思っておったのです。もっと私たちは学問的に研究をしようと、この問題を食い下がっていこうと思っておるのであります。現在も研究は続行しております。しかしながら、私どもは考えてみますと、いわゆるこのまま社会の人に使わせていいだろうかという学者的良心から、これはある意味において外国の使用方法に準じて使わせる、そういうようなことをしない限りにおいては非常に大きな問題が起こるのじゃないか、そういうことを私たちは感じたので、まあその以後はそういうふうに感じておる次第であります。
○坂本昭君 この際ちょっと伺っておきたいのですけれども、普通のシャンプー――大臣のようなきれいな美しい髪を持っておられる方は何の石けんを使っておられるか存じませんが、シャンプーで私も洗うのですがね、どうもシャンプーで洗って以来、どうも毛が脱けるように思うのですが、シャンプーの中にABSが入っているのですか、入っていないのですか。またこれらのことは一体どういう規定になっているか、あるいはまたこれは厚生省並びに柳沢博士のほうでABSをつけたら、これは頭の髪の毛につけた場合は毛が脱けるのか、脱けないのか、この際ちょっと説明していただきたいと思うのですが……。大臣は何を使っているのですか。
○政府委員(五十嵐義明君) これは答弁で逃げるわけではありませんが、薬事法によって化粧品ということで私ども所管外でございまして、ここで明確にお答えする用意がございません。
○参考人(柳沢文正君) ただいま資料をここに持って来ておりませんが、ある会社によって特許をとって、入っているそうであります。
○坂本昭君 たいへん長く時間をとりましたが、研究者の方々にこの際ひとつ伺っておきたいのは、どうも今までの御説明を伺いますと、非常に中性洗剤というものは新しい問題だということはわれわれとしても認識を新たにいたしました。そうしていろいろな研究上の不十分な点がかなりたくさん残っている、そこで厚生省の方と池田博士と柳沢博士に一体今後どういう点を目標として研究していけばよろしいか、特に一番の、これは国民生活に非常に直結しておりますので、どういう点について研究していけばいいかという点、また今後の研究者としての、現在ある中性洗剤問題についての率直な研究者としての御意見、それをこの二人の研究者から承っておきたいと思います。
○説明員(池田良雄君) この問題が起こりましてから、私のほうでも慢性毒性を研究するために準備しておりまして、もうすぐ始まります。それから化学分野では野菜の付着量、そういうものを十分検討すると聞いております。
 それからもう一つ、この問題は今まで大量をやりましても何ら所見がないというネガティヴといいますか、陰性のデーターが多いわけであります。ですからこれが一体、非常に大量の場合でございますけれども、どのようなところに働くのか、特に臓器のどのようなところに働いて、どのような機序があるのか、物質の機序というのは非常にむずかしいものでありまして、現在われわれが使っておりまするたくさんの薬がほんとうにどのように働くかということがわかっているものは少ないのであります。ですから、そこまでやるかどうかはわかりませんけれども、非常に大量であった場合にどういうところが障害問受けるだろうかというようなところを研究したいと思っております。
○参考人(柳沢文正君) 私たちも実は私たちの力だけでは研究ができないのでありまして、できれば厚生側の諸機関、あるいはそういうような多くの研究機関でぜひ御援助をいただきまして、そして私たちのこういう貧しい仕事でありますが、ぜひそのときは御支援を賜わりたいと思います。
○坂本昭君 最後に大臣に伺っておきたいのですが、きよう初めて当委員会で中性洗剤の問題を取り上げたのです。この中性洗剤は今日非常に普及して、もう家庭生活の台所の必需品であります。ところがわれわれもきよう、初めて知ったことは、この中性洗剤というものがABS――アルキル・ベンゼン・サルフォネートという特殊な合成化学物質で、このものの人体に及ぼす影響、その中でどうも特に柳沢博士の指摘によっても、大量だから害毒を与えるとかというものじゃなくて、界面活性剤という非常に特殊な物理的な作用力によって、徴量であっても非常におそるべき影響を人体に与える。そういう点の研究が実はあまりできていない。しかもこれは先ほど環境衛生局長に私が強く指摘したのでありますが、最初に、この中性洗剤が市販に供せられる場合に、厚生当局は十分な実験的なデータの上に立つことなく、ただ漫然と外国の文献その他から大体大丈夫だろうという大まかな考えでこれを推薦した。確かに便利なもので、かつ、野菜の中の回虫卵などを除く上においては効果があるのですが、今のような界面活性剤としての非常な危険性もある。それらの点が十分調査されないで、むしろ食品衛生協会というような外郭団体を通じて行政的にこれをもっぱら宣伝広告させて、その宣伝広告自体がわれわれとしては非常にけしからぬと思うのですが、そういうようなことの中で、この中性洗剤というものが一般に広まっている。私は、この際、やはりこれらのものは今日アメリカでもドイツでも非常に問題になってきている。そして決して日本のような使い方では一般に普及されてない。かなり慎重な態度で、手袋をはめさすとか、あるいはお皿を洗うには使うが野菜など、特にホウレンソウだとか白菜だとか、そういったものに使うことについては相当慎重な態度をとっている。そういう点も、慎重さが日本の場合にはどうも欠けているように思われる。したがって、それらについて大臣として、今も二人の研究者がたまたま将来の方針について言葉を述べられましたが、まず厳重な化学的な研究をしていただきたい。そしてその上に立って大衆に対する的確な行政指導をやっていただきたい。少なくとも今日テレビ、ラジオ、新聞を通じて誇大広告に私は近いのではないかと思われる。それらの点について、大臣としての今後の行政の方針をこの際承っておきたいと思います。これが第一点。
 それからもう一つは、これは立法的な問題として、いわゆる化粧石けんは、これは薬事法の中に入る。ところが、薬品に色をつけたりする、これは食品衛生法の添加物として入る。ところが、中性洗剤は、洗剤なのですね、洗剤なんだけれども、自動車のからだを洗ったりお皿を洗ったりするほかに野菜を洗う。そして野菜を洗った場合に、柳沢博士の指摘されたとおり浸透して、これが吸収になるんだかどうなるんだか、洗剤の場合非常にむずかしい点がまだ残っておりますが、とにかく付着してわれわれの口の中に入ってくる、そういう場合に、これは一体どういうところで立法的に規制をしていくか。私はこれは、このABSという特殊な中性洗剤、ことにこれが非分解性のもので、あとあとずっと残っていく、そういう点で、これの立法について単に食品衛生の面からでなしに、上下水道の面、先ほどもお話がありましたが、上下水道の中にもすでに混入されている、そういう点も勘案して、大臣として、この中性洗剤の立法的な扱いを今後どういうふうにしていかれる御所存か、この二点についてこの際、大臣の所見をただしておきたいと思います。
○国務大臣(灘尾弘吉君) 学問技術が進んで参りまして、いろいろ調法なものができる、それが使用せられる。その一例がこの中性洗剤であろうかと思うのでありますが、その反面において人体に有害な要素がある、こういうことになりますれば、厚生省としましても重大な関心を払わなければならぬ問題であることは当然のことだと思うわけであります。ひとり中性洗剤だけではないと思うのであります。一般的に申しまして、お互いの健康生命に、影響を与えるようなことにつきましてはよほど慎重な考慮を払わなければならぬと思います。そういったことについて、こういう問題についていろいろな研究が進み、論争が行なわれるということも非常にけっこうなことじゃないかと思うのであります。今御指摘になりました中性洗剤につきましては、柳沢先生のほかいろいろな御研究の成果が発表せられて、私も承知いたしております。これにつきまして、従来、厚生省としましては使用方法さえ気をつければ別に有害ではないというような考え方をいたしておったように聞いているのでございますが、せっかくさような意見も出ていることでございますし、今、薬事部長の中にも今後研究するというふうな意味のお言葉がありましたが、厚生省としましても、この問題につきましても、もっともっと慎重にひとつ検討を重ねる必要があるのじゃないか、さように私考えております。専門の学者、学界の御意見ももちろん尊重して参らなければならぬ立場にいる厚生省でございますので、遺憾のないようにひとついたして参りたいと存じます。
 それから立法の問題でございますが、御指摘のように、私聞くところによりますれば、これは食品衛生法の適用も受けていない、あるいは薬事法の適用も受けていない、こういうことになっているようでございます。専門家の意見を徴しまして、必要であるとするならば、立法についての考えをいたさなければならぬと思いますが、十分ひとつ検討さしていただきたいと思います。
○理事(村山道雄君) ちょっと速記をとめて下さい。
  〔速記中止〕
○理事(村山道雄君) 速記を始めて下さい。
 本件に関する参考人に対する質疑及びこれに関連する政府当局に対する質疑は、本日はこの程度にいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○理事(村山道雄君) 御異議ないと認めます。
 参考人の方には長時間の御出席をいただき、御意見を発表いただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。
 以上をもって本日の審議は終了いたしました。
 次回の委員会は三月一日、木曜日、午前十時より開会いたします。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後一時三十一分散会
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