第041回国会 本会議 第5号
昭和三十七年八月十三日(月曜日)
   午前十時三十分開議
  ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第五号
  昭和三十七年八月十三日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件
  (第二日)
  ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、参議院法制局長の任命に関する
  件
 一、日程第一 国務大臣の演説に関
  する件(第二日)
  ━━━━━━━━━━━━━
○議長(重宗雄三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
   ――――・――――
○議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。
 この際、日程に追加して、
 参議院法制局長の任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。
 議長は、本院法制局長に今枝常男君を任命いたしたいと存じます。御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。よって、議長が本院法制局長に今枝常男君を任命することは承認されました。
   ――――・――――
○議長(重宗雄三君) 日程第一、国務大臣の演説に関する件(第二日)、
 去る十日の国務大臣の演説に対し、これより順次質疑を許します。近藤信一君。
  〔近藤信一君登壇、拍手〕
○近藤信一君 私は、日本社会党を代表いたしまして、池田総理の所信表明に対し、総理並びに関係各大臣に対し、若干の質問をするものであります。
 参議院選挙が行なわれました後の内閣改造にあたりまして、国民は大きな期待を持っておったのであります。ところが、第三次池田内閣の成立を見ますると、そのことごとくが派閥均衡の上に立った改造人事で、実力者に逃げられた第二軍的内閣であるとの批判が伝えられておるのであります。池田総理が政権を担当されて以来、寛容と忍耐の政治ということを主張してこられましたが、新内閣の成立とともに、高姿勢に転換するのではないかとも伝えられているのであります。その現われといたしまして、今国会が召集されて以来、自民党の派閥争いによって数日間を空費し、なお本院においては院の構成すら完了しないのみか、野党各派の要望する国会正常化に対する、正副議長の党籍離脱と、議長は第一党、副議長は第二党、常任委員長は議員数による按分割り振りの申し入れに対しても、何ら耳をかさず、党籍を離脱することなく、議長、副議長を一党で独占するがごときは、国民の要望を裏切るものもはなはだしいと断定せざるを得ないのであります。さらに、本院の構成もできないまま、本国会の開会式を挙行するがごときは、国会史上に一大汚点を残したものと言っても過言ではありません。総理の責任と国会正常化の御見解をお伺いしたいのであります。
 池田総理は、かつて、わが党の中立政策を幻想であると非難されました。ところが、最近ラオスの国際会議が成功して、ラオス中立化の国際協定が、米ソの意見一致の上に調印されましたのであります。これは、国際紛争解決の最善の道が中立政策であることを、米ソを含む世界各国が認めており。このことは、中立が国際的に、平和のために、いかに正しいものであるかを証明したものであります。池田総理は数字に強いが外交に弱いという世評があるが、まさにこのことを裏書きしたものであると思います。アジアにおいて最大の政治的経済的比重を持ち、かつて太平洋戦争を引き起こした歴史を持つ日本が、みずからの立場を堅持することがアジアと世界の平和に貢献するゆえんも、ここにあるのであります。
 核実験は、最近ソ連が行なうと発表しましたが、いかなる国がいかなる目的のための核実験にも反対であるというのが、被害国日本国民の悲願ともいうべきものであります。これに関連して、去る七月十二日の日米協会で、吉田元首相が、「日米友好を今後長く維持するには、日本は核兵器の保持も辞さぬくらいの決意が必要である」と述べられました。ここに同席していた横田最高裁長官がこれに拍手をしていたというような不謹慎な話が伝えられているが、これは一体どういうことか。国民の期待と悲願を裏切るものであり、本心を暴露したものであります。総理は、沖繩が核武装されているとすっぱ抜いて、沖繩の人たちを初め日本国民を驚かせたが、沖繩の核武装はアメリカの主権でどうにもならないという立場で認めているのか。もしそうであるとするならば、国内のアメリカ基地は治外法権になるのか。日本は、わが党が主張しているように、当面の最善の方法としては、日本非核武装宣言を世界に宣明すべきではないか。また、核実験について、新聞の伝えるところによれば、政府は、平和目的の核爆発実験には反対しない、そういう態度をきめられまして、昨年アメリカで行なわれた地下核爆発実験に、在ワシントン大使館科学担当官をオブザーバーとして派遣したといわれていますが、これは事実であるかどうか。もし事実であるとするならば、アメリカの地下核爆発実験をどういう根拠で平和目的のものと判定されたのか。またオブザーバーの所見としてどういう報告が政府のもとへなされているのか。御答弁を願います。
 沖繩については、日本に潜在主権の存在することは、政府がたびたび言明しているところであります。沖繩県民もまた日本復帰の要望が根強いことも、御承知のとおりであります。しかるに、最近の動きを見るに、アメリカは極東の緊張の続く限り永久に日本へ施政権を返還しないとの態度を示しており、これに対する日本政府の態度が施政権返還への努力と熱意を全く失っているのは、まことに遺憾千万であります。アメリカは極東の緊張の続く限りと言っていますが、その緊張を作り出しているのがアメリカ自身であるから、これでは沖繩は永久にアメリカの支配下につながれることになると思いますが、この点どのように考えておられるのか承りたいと思うのであります。
 沖繩に対する援助増額は、日米間で話し合われておりますが、われわれは沖繩県民の生活を引き上げるための援助を日本の予算から支出することは賛成であります。しかし、それがアメリカの占領行政の下請的役割を果たすことには反対であります。よって、日本政府の支出する予算が沖繩県民の福祉のために正しく使用されているのかどうか、会計検査院が検査して、これを国会へ報告すべきが当然であると思いますが、この点はどうか。
 防衛庁では、アメリカとの間に、日本防衛技術資料交換協定を結ぶ準備を進めているとのことであります。その進行状態はどのようになっているのか。また、この協定を結ぶ場合、かつてのMSA協定の場合に秘密保護法を制定させられたと同様に、防諜法に類するものの制定をアメリカから要求されるのではないかと思いますが、政府の見解を明らかにされたいのであります。
 八月一日、日米安全保障協議会を行なったが、今の時期にこの協議会を行なったのはどういうわけか。去る五月のラオス紛争に際して、在日米軍や第七艦隊が日本から出動し、日本が戦争へ巻き込まれるかもしれない危険が現実に切迫していたのであります。あの時期に何ゆえ安保協議会を開かなかったのか。また、事前協議条項が何の役にも立たなかったことを、どのように考えておられるのか、お尋ねいたします。
 去る八月二日、自民党及び兵器メーカーで構成されている防衛装備国産化懇談会において、兵器輸出は軍事援助でないので、兵器の生産を高めて、商業ベースとして輸出を促進すべきだ、そのためには、戦闘機F104の運転資金百億円ぐらいを兵器メーカーに特別融資する必要があると、意見の一致を見るに至ったと伝えられております。また、兵器の他国への供給が、通常の取引によらず、軍事援助の形で行なわれるならば、国際政局に対し大きな責任を伴うものであるが、貿易はそのようなものではないから、兵器を特に他の貨物と区別して、その輸出をはばむことは間違いで、日本が売らなければ他の国が売るであろうから、大いに兵器の生産を高めて輸出を振興しようということのようですが、これに対して政府はどのように考えておられるのか、お尋ねいたします。
 最近、国際収支が黒字基調に変わったということで、楽観気分が政府には見えるようですが、アメリカ市中銀行からの三億ドル以上の借款を返済していくことを考えますと、決して楽観はできません。わが国保存外貨のうち、短期外資の流入による部分が非常に多いことを考えますと、何らかの経済変動に際して、この短期資金が国外へ引き揚げられ、そのためにわが国際収支も赤字となります。また、金融信用体系も撹乱されるという不安を禁じ得ないのであります。このたび大蔵省が外資送金制限を大幅に緩和されたことは、この不安を一そう拡大するものではないか、こういうふうに思われますが、政府の御見解について承りたいので凝ります。
 最近のわが国経済は明らかに供給過剰の様相を呈しており、繊維、鉄鋼その他の業界は、大幅な操業短縮を余儀なくされております。この中で、石炭、金属鉱山等の危機産業や中小企業は、非常な経営難に陥っております。
 こうした事態を招いた責任を感ずるならば、政府は直ちに融資助成に誠意ある措置を講じなければならないと思いますが、この点、いかように考えておられるのか、お尋ねいたします。
 こうした不況に加えて、十月から九〇%自由化ということになりますと、日本経済は踏んだりけったりの目に合わねばなりません。業界では、十月から予定されている自由化計画を大幅に延期してもらいたいという意見が多くありますが、政府は、この業界の声を尊重して、大幅に延期をされようとする御意思がありますかどうか、お尋ねいたします。
 一体、政府は、自由化を進めようとする場合に、名品目ごとに、この品目の自由化によって、どの程度輸入がふえ、国民消費生活にどういう変化が生まれ、雇用や国際収支にどういうはね返りが来るかという、責任ある調査がなされての上であるかどうか。また、日本が自由化を進めていくのに対し、西欧には、まだガット三十五条を日本に対して採用し、あるいはそれと実質的に同様の輸入制限をとっている国がありますが、これに対するいわゆる差別自由化というような対抗措置を考えているのかどうか。あるいは、もっと重要なことは、アメリカのドル防衛政策のしわ寄せが、これほど日本経済に押しかぶされているのに対し、日本もまた、しかるべき報復措置をアメリカに対してとるべきではないか。今日の買手市場の世界貿易環境の中で、日本がアメリカから年間二十億ドル以上も輸入している顧客であるということは、アメリカに対する日本の強みで、この強みを生かして、何ゆえもっと強力にアメリカのドル防衛政策に対して抗議をしないのか、承りたいのであります。
 貿易の自由化というならば、何ゆえ中国、北鮮、ソ連等との貿易制限をはずして自由化を考えないのか。そもそも日本の産業構造は、すでに著しく重化学工業の比重が高まっているので、今後も一そうその方向へ進むものと思います。そういたしますると、当然日本の輸出商品の構成においても重化学工業製品が中心となってくるはずであります。ところが、日本の重化学工業製品を受け入れてくれる市場は、アメリカや西欧ではなく、アジア、アフリカ諸国であり、それ以上に中国、北鮮、ソ連等であります。こうした産業構造に見合った貿易構造を考えるならば、当然中ソ貿易の制限を撤廃し、ことに中国との国交回復、政府間貿易協定締結へ踏み切るべきではないか。これこそ大所高所からの政策であると考えますが、これについての御答弁を願いたいのであります。また、こうしたソ連、中国との貿易拡大により、特に日本海岸方面での工業開発が促進され、いわゆる地域的経済格差の解消を進めることができます。私どもが中立政策を主張いたしますのは、単に外交上の問題だけでなく、こうした経済的なプラスをも日本国民にもたらすことができるからであります。このたび実業界の一流指導者たちがソ連の経済視察に訪ソしたのも、私どもと同様のところへ財界人も着目したことの現われと思うのでありますが、政府の経済外交として、中ソに対する根本的な方針をお尋ねいたしたいと思う次第であります。
 物価問題は、池田内閣の高度成長経済による所得倍増計画の最大のウィーク・ポイントであります。最近のような供給過剰による不況状況のもとにおきましては、諸物価は下がるのが当然でありますのに、それが逆に上がり続けていることは、まことに矛盾した話であります。これは、上がっているのではなく、上げているのであって、上げている犯人は一体だれかといえば、第一に政府であります。政府が、昨年の国鉄運賃以来、一連の公共料金を次々と値上げしたことが諸物価上昇の第一の原因であります。そこで、今後に予想されている公共料金値上げに、私鉄運賃、電力料金、消費者米価等があるが、これらの値上げに対して政府の御見解を承りたいのであります。
 物価値上げの第二の犯人は独占大企業である。あれほど国際競争力をつけるためという大義名分で、投資々々と設備投資に狂奔し、そのあげく、今度は過剰生産だ、操業短縮だということになり、操短だからコストが上がったといって、これを独占価格で国民に押しつけている。こういう大企業の無責任な経営態度、これが物価値上がりの第二の原因であります。先日発表されました政府の経済白書でも、製造業のコスト構成は、昭和二十八年を一〇〇として、資本費のコストは一五〇にも上がっているのに対し、労務費コストは八〇程度に低下しています。これは、賃上げが物価上昇の原因だという政府並びに与党の宣伝がまっかな偽りであり、でたらめな過剰投資による金利や償却費の負担増こそが物価上昇の原因であることを、政府の経済白書みずからが認めているのであります。政府は、よろしく独占犬企業の無政府的投資を規制し、その独占価格を引き下げさせるべきであると考えますが、政府の責任ある答弁を願いたいのであります。
 政府は、生産者米価を引き上げることが、まるで悪いことのような印象を作り出そうとしておりますが、しかし、今年の生産者米価の引き上げは、政府の経済政策の失敗からきた物財費と労賃の上昇によってもたらされたものであります。したがって、農民所得も社会的水準に立ちおくれないように向上させるには、農業所得の半分を占める米価を引き上げるのは当然であります。与党の一部には、生産者米価の引き上げで利益を得るのは一部の富農層だとの議論がありますが、もしほんとうにそのように思われますならば、畜産物、果樹、蔬菜等の米以外の作物についても、米と同様に、価格保障制度を確立すべきであって、それをしないで米価を押えることばかり考えるのは、結局、大資本家の低米価低賃金の政策に通ずることになると思いますが、(拍手)政府ではどのように考えておられるのか、お尋ねいたします。
 このたび、生産者米価が一万二千円を上回ったことにより、食管会計の赤字は一千億円をこえるのであります。そこで政府は、さっそく消費者米価を引き上げて、この赤字を埋めなければならぬというようなことが伝えられておりますが、政府は、消費者米価を引き上げようと考えておられるのかどうか、お尋ねいたします。
 食管会計の赤字は、本来、農民と消費者の両者に対する社会保障的性格を持つものでありまして、これを一般会計から補てんするのは当然のことと思います。いわゆる食管の赤字といわれるもののうち、米の集荷経費、運賃、保管料、金利、事務人件費等は、明らかに政府の食糧管理政策の行政費として一般会計から負担し、消費者に転嫁すべからざるものであります。こうした費用は、昭和三十七年度食管予算で五百十七億円に上るのであります。これを含めて食管赤字一千億円と宣伝することは、まことに当を得ないものと思います。また、消費者米価の引き上げは、他の一般諸物価の引き上げを招くことは明らかでありますが、政府の御見解についてお尋ねいたします。
 さらに、食糧管理制度を改悪して、米の統制が撤廃されるのではないかという農民の不安は、非常に強いのであります。昨年、河野農林大臣が、自由米構想を発表されて、米を間接統制に移そうとされました。この河野構想は、農民を初め消費者団体を含めた世論の反撃に会って立ち消えとなり、実力者もあまり実力のないことが証明されましたが、それは別といたしまして、河野農政を引き継ぐといわれる重政農相は、この食管制度をどのように考えておられるのか、お尋ねいたします。
 いつものことながら、選挙には違反がつきものとなっておりますが、特に今回の参議院選挙では、池田内閣の所得倍増の線に沿って、自民党の違反事件も倍増したといわれております。なかんずく、高級官僚が自分の職務上の地位を選挙運動に利用いたしまして、違反容疑に問われているのが、特に目に余るものがあります。某地方自治体の幹部職員三十数名が送検され、行政の面が麻痺状態に陥ったとも伝えられております。知事は、幹部職員を集めて、職務上の地位利用禁止について、新公選法に規定された公務員の地位利用禁止の条項は、まだ新しいもので、その運用は今後にむずかしい問題を残していると、公選法に対して批判的なあいさつをしているのであります。こうした点から考えまして、選挙法で高級官僚の規制条項を特に強化すると同時に、総理は、行政府の最高責任者として、今後官僚の綱紀をどのようにして引き締めていかれるのか、お尋ねいたします。
 また、これと似たケースでありますが、たとえば全国農業会議所というような、政府の補助金で丸がかえにされている団体の事務局長が、その職についたまま自民党の公認で立候補され、しかも、二回にわたって落選された後も、ぬけぬけとその地位にとどまっておられる例があります。これなどは、監督官庁である農林省は何と考えておられるのか、農林大臣としての御見解を伺いたいのであります。
 最後に、自民党候補の買収、供応、利益誘導の違反がきわめて多いのであります。ところが新聞などで見ますると、落選候補の関係ばかりが厳しく逮捕追及されているのが目立ち、当選された違反候補は涼しい顔をしている傾向があります。買収、供応と、金力と権力によって、第一党の地位が築かれている自民党の総裁としての御所感をお伺いいたしまして、私の質問を終わるものであります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 今国会の当初におきまして、構成につきましていろいろ時間をとったことは遺憾でございまするが、各党意見の調整ができまして、先般成立を見たことを喜びたいと思います。
 なお御質問の第二で、中立外交について御質問がございましたが、およそ外交政策は、それぞれの国の置かれた国際環境によって決定すべきものでございます。先般ラオスの中立によって、日本も中立であるべきじゃないか、中立主義は幻想だというととは間違いだという御質問でございまするが、私はプーマ首相と話をしました。君のところは中立はけっこうだ、日本は中立というわけには参りませんと言うたら、そのとおりですとプーマも言っております。(拍手、発言する者多し)
 次に沖繩における核兵器の問題でございますが、沖繩が核武装をしておるかどうかということは、私は承知いたしておりません。これはアメリカにおいて決定すべきことでございます。
 次に経済問題についてのお話でございまするが、ただいまの一部産業におきまする不況対策は、所管の通産大臣から申し述べることにいたします。自由化を大幅に延期する――そういう考え方はございません。私は、わが国の産業の実態に沿いまして、できるだけ早くやる。今年十月一日より九〇%できるかできないか、これが八八・九%になるかどうかということにつきましては、わが国の産業の実態を今検討いたしまして、結論を出したいと思います。
 なお共産圏に対しまする貿易の根本的考え方、これは私は、共産圏であろうと自由圏であろうと、貿易の拡大は心から望んでおるところでございます。したがいまして、ソ連を初めポーランド等東欧諸国とも通商航海条約を結びまして、貿易の拡大をはかっております。ただ中共との関係は、御承知のとおり政府間の貿易協定ということは、ただいまの国際環境からいって私はできないと考えます。しかし、これができませんけれども、民間における貿易の拡大につきましては、十分私は拡大するよう努力していきたいと考えておるのであります。また一昨年よりも昨年、昨年よりも今年と、だんだんふえていっておることは御承知のとおりでございます。
 次に物価問題につきまして、物価が上がることは政府のためだ、第二は独占資本のためだ、こうおっしゃいますが、これは私は、経済の実態につきましてあなたと認識が違っておる関係だと思います。例にとられましたが、国鉄の運賃引き上げによって物価が上がった――それなら国鉄の運賃引き上げをやったら物価が常に上がりますか、上がらない。昭和三十二年のときの物価はどうですか。国鉄運賃は上げましたが、物価は下がりました。そういうものじゃない。これは日本の経済が急速に上昇いたしました。所信表明でも申しましたごとく、いわゆる先進国型の経済に急激に移行した一つの結果であります。われわれはそれをできるだけ上げないように努力しているのであります。独占資本が設備を投資したから上がった、こうおっしゃいますが、もし設備の投資がなかったならば、生産性が落ちて上がらず、また労賃も上がってこない。労賃もどんどん上がっていくのは生産性が伸びたためで、生産性が伸びたから、物価も、卸売物価は安定しているじゃありませんか。上がったのは小売物価のみであります。小売物価が上がったということにつきましては、先般所信表明のところで一応の考え方を申し上げておきました。具体的の問題は、今後十分検討する考えでございます。
 次に、米の問題等がございましたが、これは重要な問題でございますので、ただいま検討中であるわけであります。その結論はまだ早うございます。十分検討してあなた方の御審議を願いたいので、それまでお待ち願いたい。決して逃げるのじゃございません。政府としては当然の措置でございます。十分情勢を考えていかなければならないことでございます。
 なお選挙違反につきましていろいろお話がございました。選挙違反がふえたことはまことに遺憾であります。今後におきましても十分選挙違反が減少をするように努力をいたしたいと思います。高級官僚に関する規制は前国会で申し上げたとおりであります。なお違反検挙につきまして、当選者と落選者の区別をする考えは毛頭ございません。実態に沿って厳正な取り締まりをいたしております。(拍手)
  〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
○国務大臣(大平正芳君) ラオスの紛争に関連して在日米軍の一部の移動がございましたが、あれは御案内のように日米安保条約に基づく交換公文による事前協議の対象ではございません。しかしながら私どもとしては、しょっちゅう在日米軍の行動につきましては十分承知をしていなければなりませんので、随時事前協議を遂げまして、そのように把握をして参りたいと存じております。
 それから平和利用の目的で先般アメリカで地下核爆発の実験が行なわれましたが、その際に大使館の科学技術担当官がオブザーバーとして出席したことは事実でございます。その報告によりますと、その実験の準備の状況、実施の状況、それから実験目的の詳細と、あわせて、アメリカの原子力委員会が提供いたしました資料を付けて報告をして参っております。この報告によりますと、今度の実験によって所期いたしました目的の約七〇%程度は成果をおさめたということでございまするが、所期の目的をまだ十分達しなかった部分もあるやに聞いております。
 それから沖繩の施政権の返還につきましては、しょっちゅう政府は努力いたしているわけでございまするが、今度のケネディの三月の声明によりましても、その目的を容易にするため、そのときの困難を減殺するために、それまでの道程におきまして、沖繩住民の福祉、安寧、経済の開発ということに日米協力しようということになっておりまして、今回日本人の専門家が三回にわたりまして現地に赴いて、専門家的な眼識で直接沖繩の実態を調べることができたということは、非常な成果であったと思っているわけでございまして、その報告を待ちまして日米交渉を始めたいと心組んでいる次第でございます。その他は総理大臣がお答えしたとおりでございます。(拍手)
  〔国務大臣福田一君登壇、拍手〕
○国務大臣(福田一君) F104の生産に関連いたしまして、運転資金をふやしてやって兵器を増産して輸出をしてはどうかという御質問であると存ずるのでありますが、われわれとしてはそのような考えは持っておりません。
 次に、石炭問題でありますが、四月の閣議の決定に基づきまして、ただいま有沢調査団が調査をいたしております。それまで待てないような問題も起きて参りましたので、七月三十一日の閣議決定に基づきまして、臨時の措置をやって参っておるような次第であります。なお、石炭につきましては、調査団の答申を待ちまして、その線に沿って対策を講じて参りたいと考えております。
 自由化の問題につきましては、総理がお答えになったとおりでありますが、各般の調査を各方面から検討を加えまして、また万遺漏なきを期したいと考えております。なお、海外の輸入抑制についてどういうことをするかというお話でございますが、これは欧州といわず、アメリカといわず、輸入を抑制することに対しては、われわれとしてはできるだけそういうことのないように、今後いろいろの措置をとって参りたいと考えておる次第であります。
 中共貿易、あるいはまた物価の問題につきましては、総理からお答えがございましたとおりでございます。(拍手)
  〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
○国務大臣(田中角榮君) 国際収支と、外貨準備の問題と、外人の株式元本の送金の三点につきまして、お答えを申し上げます。
 第一点につきましては、昨年より、御承知のとお吟、国際収支均衡の諸施策を推進をいたして参りました関係上、調整基調も浸透いたしまして、外貨の事情も非常によくなって参りました。国際収支につきましては、六月の末で総合で約七百万ドル、なお七月には千二百万ドルの黒字を計上いたしておりまして、均衡は御承知のとおり達成しつつあります。なお、三十七年の上下雨期を通じまして、特別借入返済を除いてはほぼ均衡を達成できる見通しでございます。なお、特別借入の返済は本年の十一月の末から始まるのでありまして、これが返済につきましては、金繰り上等、万全の措置を講じて参りたいと存じます。また、短期外資につきましては、安定かつ有利のものを受け入れることにいたしまして、筋の悪いというような外資の受け入れに対しては、十分抑制の処置を為替銀行にも指示をいたしておるわけでございます。なお、受け入れた外資に対しまして支払い準備を保持できますように、資金運用面につきましても所要の措置を行なっております。幸い先ほど申し上げたとおり、わが国の国際収支の非常な好転によりまして、短期の外資が大幅に引き揚げられるというような懸念もなく、現在の外貨の手持ちは、御承知のとおり十六億三千五百万ドルに達しておる次第でございます。
 なお、先般の外人の株式元本の送金制限を二年から六カ月に緩和いたしたわけでございますが、これもただいま申し上げたように、非常に国際収支の状況も、また、わが国の経済状況も好調を続けて、また、均衡を保持できる方向にありますので、この送金制限緩和によって直ちに外資が引き揚げられるというような懸念はいたしておりません。しかも戦前に比べて、一・四、五%も総発行株のうち外人が保持をしておる率から比べますと、現在の一億九千四万ドルという外人の持っている株式の持ち高は非常に少ないのでありまして、この緩和によって引き揚げを急激に刺激をされるというような懸念は、現在いたしておらないわけでございます。しかし、特に今後の問題につきましては、十分事態を注視をしながら、適切な処置をとって参りたいと考えておるわけであります。(拍手)
  〔国務大臣重政誠之君登壇、拍手〕
○国務大臣(重政誠之君) お答えを申し上げます。
 消費者米価をどうするのかという御質問でありましたが、御承知のとおりに、消費者米価は、食糧管理法の上から申しますと、家計の安定を旨として決定をいたすことになっております。御承知のとおり、現在の十キロ八百五十円という消費者米価は、昭和三十二年に決定せられまして今日まで据え置きになっておる。その後の物価の上界でありますとか、あるいは国民所得の増高というようなことも十分調査をいたしましてきめなければならないのでありますが、しかし、米価は何と申しましても国民経済に非常な重大な影響を持つものでありますから、せっかく現在検討をいたしておるような次第であります。
 それから食管制度について、さきに河野農林大臣の構想があったがどう考えておるかという御質問であります。現在の食管制度は、これまた皆様御承知のとおりに、米が不足のときにできた制度であります。今日、米の需給が安心ができる程度になっておるというこの状態に、このままで、ほとんど二十年前にきめられましたこういう制度をそのままでやっていけるのかどうかということは、非常に私は問題であると考えるのであります。そこで前農林大臣が、農林大臣の相談相手として若干のそのほうの専門家の方々に御相談をしておられるのであります。熱心にこれは検討せられております。私も先般これらの方々にお願いをいたしまして、さらに検討を続けていただくことになっておりますが、それらの御意見も拝聴をいたしまして、この問題は解決いたしたい、こう考えておる次第であります。
 それから選挙違反についての御質問でありましたが、これはおそらく全国農業会議所事務局長の大坪君のお話であろうと思うのでありますが、彼は、役人は昭和三十三年の八月にもうやめて、事務局長になっておるのでありますが、今回の参議院選挙にも在職のままやったのではございません。三十七年の六月に退職をしてやったのであります。その辺、御了承を賜わりたいと思うのであります。(拍手)
  ―――――――――――――
○議長(重宗雄三君) 原島宏治君。
  〔原島宏治君登壇、拍手〕
○原島宏治君 私は公明会を代表し、去る十日行なわれました総理の所信表明演説に対して、若干の質問をいたしたいと思いますが、それに先だちまして、公明会の結成にあたりまして一言ごあいさつ申し上げ、先輩諸氏のあたたかい御指導と御協力を心からお願いする次第であります。
 今回の通常選挙に対し、世間一般からも参議院のあり方について種々の論議がかわされたことは御承知のとおりでありますが、一貫して主張された点は、参議院の自主性の確立であり、二院制の機能を十分に発揮せよということでありました。お互いに、それぞれの立場、思想を異にすることは当然ながら、ひとしく参議院議員として、また国権の最高機関の一員たる自覚と責任において、皆様とともに一致団結して国政に当たり、もって民衆の要望にこたえたいのが私の根本の願いであります。今や世界各国間の距離は著しく短縮され、その関係はきわめて微妙であります。地球上の一地域における利害の対立や紛争は、直ちにわが国に多大の影響をもたらすことは言うまでもありません。二大陣営の相剋は相変わらず激しく、われわれの周囲には常に不安がつきまとっていることを思えば、国会議員として選ばれたわれわれの責務は実に重大と言わなければなりません。ここにわれわれは、民主主義の本義に徹して、参議院の機能を十分に発揮し、国家百年の大計に立って、社会の繁栄、民族の興隆に最大の努力をしていきたいと思うものであります。
 以上、公明会の結成にあたって、いささか所感の一端を申し述べ、質問に移りたいと思うのであります。
 その第一は、公職選挙法の問題について、総理並びに自治大臣の所見をお伺いします。
 今回の参院選は、新しい選挙法によって初めて行なわれました。実に二百七十三条項にわたる複雑煩瑣な規定を設けて公明選挙を実践せんとしたのでありますが、はたしてその結果は良好であったと言えるでしょうか。さらに、八億数千万の血税を投じていわゆる国民総投票運動を展開したのでありますが、それによって直ちに政治意識の高揚を見たと言えるであろうか。皮肉にも違反件数は前回に比べて一・八倍、人数にして二・一倍という多きを数えているのであります。しかも、今回の違反の特質は、買収、供応等の悪質違反及び公務員の地位利用という嘆かわしい違反が多かったことであります。これは、せっかくのきびしい審議会の答申が骨抜きにされたことはもちろんながら、気持の上にも、当選さえすれば事実上失格はあり得ない、そういう安易な印象を与えたことに最大の原因があったと思うのであります。もはや逡巡の余地はありません。公選法を再検討し、買収等の悪質違反に対しては、諸外国の腐敗行為防止法のごとく、厳罰をもって対処し、もって政界の浄化をはかるべきものであると思うが、政府の考えはいかがでありますか。このたびの選挙の結果を反省し分析して、御決意のほどをお伺いいたします。
 次に、現行法の一大欠陥は、言論活動の自由を著しく圧迫していることであります。選挙は、最も活発な言論を通して行なわるべきものであるのに、選挙運動が即選挙違反になるような暗い選挙法は、直ちに改めるべきものと思うのであります。この点について、ある学者は、「違反のうち、買収、供応等は論外であるが、文書違反、戸別訪問などの形式犯については、そろそろ再検討すべき時期ではないか。日本では、まるで障害物競争でもやっているように、法律の目をかすめてうまく立ち回るといった暗い選挙だ。一足飛びには無理だろうが、形式犯は思い切って解除し、伸び伸びとした明るい選挙になるよう法律を見直すときではないか」と言っております。事実、選挙運動期間中、用事のため親戚や知人、友人をたずねたり、田畑で働いている人と話し合ったりしても、戸別訪問ではないかと疑われる。ポスターの貼付を依頼に行くにもびくびくしなければならない。あるいは演説会の開催通知を戸別に行なうことはいけないという工合に、実にこまかい規定をもって有権者を拘束し、かえって政治意識を低下させる結果を招いているのであります。わが公明会は、このように主権者である国民の意思を拘束し、選挙の自由を著しく阻害する現行法は、すみやかに改正すべきであると主張するものであります。たとえば現行法第百三十八条のごとき規定はむしろ撤廃し、いわゆる一種のお祭り気分の中に政治を論じ、候補者の適否を語り合うという、明るく楽しい選挙を通じ、もって真の民主政治の確立をはかるべきであると思うが、この点についての御見解をお伺いしたい。
 第二に、経済問題について総理の所信を承りたいと思います。
 まず、経済政策の基本は、いわゆる経済の高度成長が国民各個人の幸福の増進と一致して発展しなければならないと思います。すなわち、経済の高度成長を達成していく過程において、国民大衆の生活を犠牲にするようなことがあってはならないのであります。しかるに、現実においては、公共料金の値上がり、消費者物価の高騰による生活難は増大し、また金詰まりのため中小企業や各種の産業に弊害が現われつつあるのは事実であります。政府は所得倍増の看板を掲げ、経済の成長率の見込みが高いとか低いとか、予想が当たったとか、はずれたとか、あまりに成長率にこだわり過ぎてはいなかったか。そこには必然的に無理が生ずる。その無理が、先ほど申し上げたように、国民の犠牲という姿になって現われているのであります。計画のつじつまを合わせるために国民を犠牲にすることは本末転倒であって、よくないことと思うのであります。しかるに、現に所得倍増のかけ声でこのような結果を生んだのでありますから、これは深刻に反省しなければならない問題であると思います。そこで、政府は従来の考えを改め、公共投資の増大とか、社会保障の強化とか、減税とかの実質的行政面を強く打ち出し、かつ推進して、所得倍増のようなスローガンに固執することなく、真に国民を納得せしむるものにすべきであると信じますが、総理のお考えはいかがでありましょう。来年も相変わらず所得倍増計画を前面に立てるつもりであるか、お伺いいたします。
 次に、経済は長期安定計画が樹立されなければならないものであります。経済計画が、政府の選挙目当てや、国民の一時的な関心を買うような無責任な考えで立てられてはならないと思うのであります。また、かりにりっぱな計画が打ち出されたとしても、それが政権の交代によってたちまち変更されるようなものであってもならないのであります。今や民間の声は、政権に左右されない、しかも官僚統制の弊害に陥ることのない長期安定経済を望んでいるのであります。そこで、今後の国策として、政権の変動や派閥の消長によって左右されることのない経済計画を、広く各界の人材をすぐった新機構を設けて樹立すべきであると思いますが、この着想について総理並びに経済企画庁長官の所信を承りたいと存じます。
 次に、本年度の減税はかえって地方税へはね返って非常に不評でありました。また、社会保障費の増額なども物価の値上がりに追いつかない現状であります。総理は、これでよしと考えられるのかどうか、お伺いいたします。また、来年度予算は、約四千億の自然増収を見込んで二兆八千億くらいの規模になろうと報ぜられておりますが、減税については、はなはだ消極的のようであります。その理由はどこにあるかをお伺いしたい。特に明年度は、本格的な景気調整の段階に入るであろうと言われておりますが、総理に、来年度予算等の見通し、抱負について所見を承りたく、特に倍増計画で恵まれない谷間の人たちにどのような対策を用意しておられるか、お尋ねいたします。
 第三は、外交問題でありますが、総理並びに外相にお伺いいたします。
 まず、ケネディ大統領をして、おそるべきEECの挑戦と言わせるまでに発展したEEC対策でありますが、これにどう友好的に対処していくかが当面の重大問題であると思います。総理も世界経済の再編成期であることを認めておられるが、一体、EECにいかなる対策を用意しておられるのであるか、その具体的な内容をお聞かせ願いたいのであります。ついては、対EEC代表は現在ベルギー大使が兼任しておりますが、この際、方針を前進させ、EEC専任大使を常駐させて、情勢の把握と一そうの緊密化をはかるべきであると思うが、この点の御意見はいかがでありましょうか。また、中共や東南アジアに対するEECの経済進出は急速に強化されております。わが国としては、今こそ、まさに東南アジア貿易の確立を迫られていると言わざるを得ません。政府はこれをどう見通し、どう対策せんとしておるのであるか、明確にお示しいただきたい。
 次に、日韓問題でありますが、政府は会談妥結を急いでおるようですが、なぜ急がなければならぬ理由があるのか、まずその点を聞かせていただきたい。隣国同士として単に不自然であるからということが中心か、反共韓国との提携ないし国力回復の応援に重点があるのか、懸案解決を重く見ているのか、何らかアメリカの意向を含んでいるのか、それらの諸点についてお聞きいたしたいと思います。そしてこの際、竹島問題等も含めて、会談に臨む構想を新外相より明らかに伺いたいものであります。
 一方、池田総理は、共産諸国とも折り目正しい交渉を持っていくと申しておりますが、それならば、会談妥結を進めるについて北鮮関係はどう扱っていくか、その点を表明していただきたい。また、会談妥結に忘れてならないことは、韓国側の複雑な内部事情であります。今、韓国は改憲に着手しつつありますし、三月草案発表、五月総選挙、八月民政移管というスケジュールを持っております。この内部事情と会談妥結との関係はどう考えておられるのであろうか。
 おしまいに、総理が触れなかった日中貿易について伺います。日中貿易の中断はまことに不幸な事件でありました、現在わずかに民間貿易の道が開いているわけでありますが、わが貿易商社にとってまことに不安定、不利益であります。しかも民間では、正式なる日中貿易の再開を望む声が日増しに高まりつつあることは、政府も十分承知のはずであります。また中断後は、日中間で交易すべき分野にEEC諸国が全面的に取ってかわっていることも承知のはずであります。大平外相は、日中貿易は前向きで検討したい、日中輸出入組合を作って推進すると言明しておられるが、一方、中共側では、貿易三原則を打ち出し、今もって政府間協定を望んでいるのであります。そこで政府は、この際、自主的に勇断を下して、政府間協定を再締結し、通商代表部を復活し、漁業協定などの締結まで推し進め、同時に国内商社への指導と育成強化をはかるというように、日中貿易を抜本的に推進していくお考えは持っておられるかどうか、今後の方針をお伺いする次第であります
 さて最後に、文教政策についてお伺いいたします。総理は国作りの根本は人作りだと言われております。まことにけっこうな考え方であると思いますが、しからば、いかなる人を作らんとするか。過去においても、人作りという言葉こそ用いなくとも、文教政策の眼目はそこにあったと思います。総理は、過去における何らかの理念に方向づけようとなさるのか、それとも新たな理念のもとに人作りをなさんとするのか、総理のお考えになっている指導理念をお示し願いたいのであります。
 次に、一口に人作りと言っても、そこにはおのずから順序がありましょうし、対象をどこに置くかも考えねばなりません。人作りの対象は、一般人に置くのか、青少年より始めるのか、その師表である教育者より始めるのか。あるいは教育者を養成する機関を問題にしているのか、それとも足下の政府からまず人作りを始めようとなさるのか。私は、総理のお答えに、まず政府から始めるとお答え願いたいと思いますが、いかがでしょうか。一国の行政の任に当たる人は、同時に世の最高指導者であるべきものと思います。その為政者が派閥争いに明け暮れることだけでも、もはや人作りの基本線はくずれると思うし、綱紀の粛正などと言ってみても、結句は徒労に帰するのではあるまいか。なぜ私がそれを強調するかというと、総理も文相も、早くから文教政策に力を入れておられるはずなのに、青少年の不良化等が目立って多くなっていることが一例であると思います。法務省の犯罪白書を見ますと、三十六年度における青少年の犯罪は戦後最高と言われております。文部大臣はこの犯罪白書を、青少年の育成という立場からいかにごらんになりますか、御意見を承りたいと思います。
 人作りの一大条件は環境であります。総理が強調されている青少年の育成も、環境がこれに適合しなければ決してその成果は期待できないと思います。特に、社会の指導的立場にある人々の行為は、直接間接に多大の影響力を与えるものであります。為政者や世の指導者の言動が、若き青少年の心をとらえてこそ、自然のうちに人作りは行なわれると思いますが、総理並びに文相の所見をお伺いいたします。実に人作りをするのはまた人であります。人作りを重要視する首相みずから、文相みずから、進んで文教関係者に体当たりし、ときには教育現場に臨み、人作りに苦楽をともにする実践活動あってこそ、その念願は達せられると思うが、今までそうした傾向の見えないのはどうしたわけか、また、今後どうするつもりか、お伺いしたい。
 今問題の大学管理のごときも、教育の国家統制のごとき印象を与える管理法制定は一切やめて、学校当局に対する激励や援助に主眼を置き、大学自治のルールを確立するための法制化にとどめるべきであると思うが、その点、あわせて御説明願いたいと思います。
 要するに、人作りということについては、私は大いに賛成でありますが、総理は、その理念方法について再検討し、万人の納得する構想のもとに実践活動に移られんことを希望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 御質問の第一点の、今回の参議院議員選挙における選挙違反の問題でございます。私は、従来にも増して違反が出たことは、まことに遺憾なことと反省をいたしております。これはいろいろ原因はございましょうが、新法の周知の不徹底ということも大きな原因をなしたと考えておるのでございまするが、いずれにいたしましても、投票率が上がったことは非常にいいことであります。また、選挙違反が多くなったことは、今後十分戒めなければなりません。したがいまして、今回の経過にかんがみまして、選挙法につきましても、十分今まで改正した以外の問題と兼ね合わせまして、検討を続けていきたいと考えております。
 次に、経済問題で、どうも聞いておりますと、所得倍増計画自体がわれわれの目的のようにお考えになっておるように受け取られるのでございますが、所得倍増計画というのは、それ自体が目的でも何でもない。われわれの目的は、やはり雇用の増大と社会保障の拡充、そうして、そのもとにある国民全体の生活水準を引き上げるということが目的でございます。所得倍増はそのための手段でございます。したがいまして、過去二年の状況を見まするというと、この前も申し上げましたが、五兆円、総生産は二年間で四割ふえております。国民所得も一人当たり三割七分ふえております。物価は九%しか上がっておりません。そうしていろんな社会保障制度もお考え下さいましたら、生活保護費も四割七厘ふえておるわけでございます。いろんな点におきまして、非常な進歩をしておるのであります。私は、所得倍増計画というものを手段といたしまして、そうして社会保障の拡充、完全雇用の達成、社会資本の充実等々、新しい国作りをやっていっておるのであります。大体私は所期の目的を達しつつあると考えておるのであります。それはいろいろひずみはございましょう。ございます。よその国の二倍も三倍も四倍もの伸展をするのでございますから、国際収支等のひずみが出てきたことは、これはやむを得ませんが、しかし、これを直しつつ、私は日本の歩みとしては、すぐいばるとおっしゃるかもしれませんが、外国の人にお聞きになったらわかる。私は、大体国民はおわかりいただけると確信を持っておるのであります。したがいまして、この経済成長を政権の変動にかかわらずどうこうという考え方はございません。これは民主主義でございまするから、われわれは国民から政権をいただいておる以上、われわれの考え方でやっていくのであります。このために長期安定機構を設ける、こういう考えは持っていないのであります。
 なお、来年度の予算の見通しということでございますが、そう変わったことはございません。ただ、今までのように成長が大幅でないので、自然増収なんかもそうたくさんは見込み得られません。したがいまして、私は、ただいま申し上げましたように、社会保障の拡充、あるいは社会資本の増大、そして雇用を維持していく、こういうことで進んでいきたいと考えておるのであります。
 減税の問題につきましては、やはり今後の経済の見通しによりまして、やるかやらないか、やるとすればどの程度にするかということは、今後考えていきたいと思います。御承知のとおり、昭和三十六年の直接税の減税、今年度の間接税の減税等々によりまして、相当減税をいたしておるのであります。私は、終戦後におきまして一兆円になんなんとする減税をいたしております。これは外国にもその例を見ないことでございまするが、これはやはり国民の努力によって招来される。その私は国民の努力とその勤勉を高く評価するものであります。この気持を伸ばしていけば、また将来における減税も相当考えられると思っておるのであります。
 なお、外交問題につきましては、EECについてのみ答えまして、あとは外務大臣からお答えいたします。
 EEC対策は、御承知のとおり、ドイツとの関係は非常によくいっております。ガット三十五条もはずしております。イタリアともよくいきつつあります。制限品目も非常に少なくなっておる、そしてフランスとベネルックス三国、これらがまだ三十五条の援用をしておるのであります。しかし、いずれにいたしましても、交渉を進めておりまして、EECとの関係は、貿易関係はよほどよくなってくると思います。ところが、EECが結成せられましてから三、四年になりますが、その間に貿易額は七割ぐらいふえております。おととしに比べて去年は五割くらいふえておる。だんだんふえておる。ただ、ふえていきましても、一億数千万の人口を持っておるEECと日本が、ごく少ない、二%程度の貿易で――アメリカとは三〇数%でございますが、この先進工業国のEECと二%程度。これではとてもいけません。したがいまして、私はEECとの経済協力関係を早急に伸ばしていく。これはやはりEECの各国の人が日本の事情を知らないで、戦前の日本の安かろう悪かろう、そのフラッドが特におそれられている関係であろうと思います。最近、日本の商品に対する信用は上がっております。日本は貿易その他で非常に自制をいたしまして、他国を困らせるようなことはしないということで、日本の信用はだんだん上がってきております。こういう先進工業国と大いに貿易を拡大する。そして日本も一億の人口を持ち、しかも高度の経済をしておるのでございますから、EECへ、日本というものは貿易の相手に非常にいい国だ、日本が貿易でどんどん買ってくれると彼らに思わせると同時に、EECに日本のいいものを買ってもらうようにすれば、今後開けていくと考えております。だから、競争相手ということは協力相手だと、この二つの考え方で進めていくべきだと考えておるのであります。その他の外交問題は外務大臣よりお答えいたします。
 最後の教育問題でありますが、ずっと聞いておりますと、原島さんの意見は大体私と同じであります。これはまず、どこからやっていくかということになりますが、やはり青少年が大事であります。青少年につきましては、やはりどういうように力を入れていくかということになると、やはり道徳教育を充実していく、それに歴史、地理をやる、あるいは科学技術を教える。そしてまた、やはり青少年の愛国心その他、人格を向上するために、教育施設というものが必要でございます。またそれに伴います、またそれよりも先と言いたいくらい教員の資質を向上する、教員の素質を向上さす、こういうことに私は力を入れなければならぬと思うのであります。
 それから、学校教育の問題で、大学の管理運営につきましていろいろ御意見があるようでございますが、これも私は、大学の自治や学問の自由を拘束しようという考えは毛頭持っておりません。ただ、今のような野放しではいかない。大学の自治、学問の自由が正しいルートに乗るようにしなければならぬ。これを私は考えております。この問題につきましては、中教審の答申を待ち、あるいは世論の帰趨をわれわれも十分考えて、原島さんの意見も今後私は聞いてみたいと思います。大体私の考えと似ておると思います。
 なお、学校教育ばかりでなしに、社会教育、家庭教育、こういう問題につきましても、十分私はつけ加えていかなければならぬ。やはり人作りということは学校教育がもとでございます。それと相呼応する家庭の教育、そして社会教育、いわゆる環境を作り上げるということが非常に必要だということは、あなたのお考えと全く同じであります。そういう方向で、今後微力でございまするが、最善の努力を向けていきたいと考えております。(拍手)
  〔国務大臣篠田弘作君登壇、拍手〕
○国務大臣(篠田弘作君) 買収、供応、公務員の地位利用等の悪質違反について、厳重に取り締まったらどうか、こういう御質問の要旨だと思います。これは全く同感でありまして、厳重に取り締まっております。
 それから選挙公明化のための言論活動を自由にして、むしろ選挙運動というものは野放しにしたらどうか、こういう御質問であります。選挙運動は、やる者もやられる者も愉快に、ほんとうに民主的にやるということは、これは必要でございます。政府は、かねてから、選挙公明化のために、言論の自由というものを非常に尊重して参りました炉、現在の選挙の実情から見まして、全くこれを野放しにするというには、時期が少し早いように思うのであります。しかしながら、今申しましたとおり、言論の自由というものをあとう限り尊重するということについては、われわれがすでに注意しているところでございます。(拍手)
  〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
○国務大臣(宮澤喜一君) 物価の問題につきまして、先ほど総理大臣からお答えを申し上げましたが、先ほどの近藤さんのお尋ねともかなり関連をいたしますので、多少敷衍をさしていただきたいと存じます。
 従来、物価ことに消費者物価の値上がりの問題について、これは賃金が上がって、需要が旺盛になったために、生産が追いつけない、そういうところから消費者物価が上がるとのみ説明をされておったわけでございますが、先ほど御指摘もございましたように、それだけでは若干問題の解明が不十分なのではないかというふうに私ども考えております。したがいまして、このたびの首相の所信表明の中でも、そういう要因のほかに、生活内容の向上及び労働事情の変化等によるもの、これは生活内容、消費構造の変化、あるいは一つには、最近申します消費のデラックス化というようなこととも関係をいたしまするが、そのほかに、生産構造の高度化に基づくところの資本費の増加ということを申しておるわけでございます。これは申し上げるまでもなく、経済が急速に、高度に先進国型に近づきつつある現在、明治あるいは大正以来の、いわゆる償却の行き届きました公益事業的な施設、そういう基盤をもってしては、経済の急速な成長をまかない得ないということからくるものと考えておるのであります。
 先ほどから、東北電力の値上げの問題、あるいは私鉄の料金引き上げの問題等お尋ねがございましたが、毎年都市の輸送人員が一二ないし一三%ずつふえていくというようなことは、確かに正常な状態ではございませんし、また東北電力において、従来水力にたよっておりましたものが、新しく火力を設けなければならない。こういったような高度の成長に伴う資本費の増加というものは、現実の問題として避けられないし、またそれが高度の成長をささえている基盤になるというふうに私ども考えるのであります。そこで、そのような成長は、一応の過程を歩みまして一つの均衡点に達しましたときには、これらの資本費の増加というものは、おのずから生産性の向上によって吸収されるはずと考えるのでありますが、その過程においては、必ずしもそれがそう参らない。ことに所得の上がりがそういう均衡に追いついていかないというような事態が生じます。したがいまして、これらの資本費の増加は、国民経済のどこかで吸収をしなければならない、こういうことになると考えるのであります。そういたしますと、それは企業の負担において吸収するか、――それは、ある場合には赤字になることもあり得ると考えるのであります。――あるいは消費者の負担において吸収するか、または国、すなわち財政なり、税制なり、あるいは金融なりによって吸収をするか、またはその三つの結合、組み合わせによって吸収をするか、そういったような可能性になってくると考えるのであります。先ほどから総理大臣が、これらのいろいろな値上がり、ことにこの秋には集中をしてくるように考えるのでありますが、それについては根本的に考えると答弁を申し上げております意味は、このような成長の経過において、均衡後でありません今の経過的な時点において、そういうものが一時に起こる、国民生活を圧迫するということは、ゆゆしい問題でありますので、先ほど申しましたような三つの方策、及びその結合において、根本的な検討をいたしたい、こういう意味というふうに私ども了解をいたしまして、私どもの役所としましては、そのような観点からこの問題を検討しております。
 長期安定計画についての機構の問題につきましては、先ほど総理より答弁を申し上げました。(拍手)
  〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
○国務大臣(大平正芳君) 先ほどのEEC対策として専任大使を設ける意思があるかどうかという御質問でございましたが、まずEEC自体、あるいは加盟国の実態、またそれをめぐる各国の状況を詳細に把握する必要がございますので、私どもはEEC関係は、やっておりまするベルギー大使館の機構をまず充実していかなければならぬと思っておりますが、今の段階におきましては、EEC加盟国との折衝、たとえば貿易差別待遇の撤廃にいたしましても、その加盟国自体との折衝が重点にございますので、そのスタッフの充実をはかることを当面の課題としておりまして、専任大使を直ちに置こうというところまでは、まだ参っておりません。
 それから日韓問題につきましての御質問でございました。政府はなぜ急ぐのかという御質問でございますが、私どもは決して急いでいるわけではございません。むしろおそきに失していると思います。隣り合う国がこのような不自然な状態に長くあるということは、不幸でございますので、これを自然な状態に返すということに、私どもは力点を置いているわけでございまして、先方の政権のテコ入れをやろうとか云々、そういう考え方は毛頭ございません。それから、その場合に、韓国の現実の支配が朝鮮半島の南部に限られておるという事実は、常に念頭に置くつもりでございます。具体的な点は、交渉の道程にございますので、差し控えさしていただきたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣荒木萬壽夫君登壇、拍手〕
○国務大臣(荒木萬壽夫君) お答えを申し上げます。先ほど総理からお答えがございましたので、補足的に申し上げたいと思います。
 お説のとおり、青少年犯罪が量質ともに嘆かわしい状態であることを同感に存じます。そのできました後の対策については、文部省以外の関係各者でも協力を願うほかにはないと思います。青少年犯罪ないしは非行事件等が起こらないようにどうするかという課題からいきますれば、やはり教育が第一義的には責任があると存ずるのであります。その点から申しますと、終戦直後の占領政策の誤りにさかのぼらざるを得ない。そのことは、道徳教育を義務教育の場でやってはいけない、あるいは日本歴史、日本地理の教育をやってはいけない、という進駐軍命令が昭和二十年の十二月に出ておったことであります。それが最近に至りまするまでそのままであったことは、子供たちのために不幸であったと思います。おまけに日教組が道徳教育反対を言うから、なお不幸であったと思います。ですから、新教育課程を実施いたしまして、そうしてその青少年犯罪の根源ともいうべき教育の欠陥を補なう努力をいたしまして、ようやく昨年から小学校、中学校はことしから、高等学校は来年から、道徳、倫理の教育に力を入れることに相なりましたことを、御同慶に存じておる次第であります。今後さらに前向きに充実の努力をいたしたいと存じます。それと同時に、やはりこの青少年のことにつきまして、おとながもっと親切な気持で、かつまた、しつけをするという積極的な気持で御協力を願わなければならぬと思います。さらには、学校を出まして、社会に出ましても、職場に入りましても、子供たちを待ちかまえているのはエロとグロの充満した社会であるといわれることにつきましても、私は、おとながもっと自粛をして、子供たちのために御協力を願うという課題があろうかと思います。マスコミの御協力を得ながら、さような社会環境の整備に努力いたしますことも、お説のとおりと存じております。同時に、宗教活動が、もっと青少年と密着するような宗教・情操教育を通じての青少年の善導に効果をあげていただきますことも、期待すべき事柄だと存じておるのであります。
 第二は、人作りの実践的な順序方法いかんという意味のお尋ねでございました。先ほど総理からお答え申し上げまして、格別申すこともございませんが、文部大臣という立場では、現場の教師との話し合いをもっとやったらどうだというふうなお話もあったかと思います。就任以来今日まで、極力そのことを努力して参りました。現場教師としての教育の改善に関する前向きの積極的な改善意見、きわめて貴重なものと心得えます。それらの意見は進んで承るべく、あらゆる努力をしてきたつもりでございます。ただし、日教組という職員団体の代表者と会いますことは、法律的にも適切ではない、また、性根が間違っておりますから、これらと会いますことは弊害がある、かように考えておる次第であります。今日まで無慮数万の先生方と私はお話をして参りました。御意見も拝聴して参りました。今後も謙虚に現場教師の御意見を承りながら微力を尽くして、教育条件の整備に努力して参りたいと思います。
 大学問題につきましては、総理からお答え申し上げましたとおり、中教審に三年前から御検討願って、その客観的な立場からする御答申を待ちまして、さらによりよき意見もあれば、それも参考にいたしながら、世論に聞きながら善処する課題であろうと存じております。(拍手)
  ―――――――――――――
○議長(重宗雄三君) 吉田法晴君。
  〔吉田法晴君登壇、拍手〕
○吉田法晴君 私は、日本社会党を代表して、先日の池田総理の所信表明に対して、引き続いて質問をなさんとするものであります。
 池田総理は、その所信表明で、今回の内閣改造により、新たな決意と勇断をもって内外の要務に当たりたいと申しました。
  〔議長退席、副議長着席〕
しかし、演説全体としては、手前みそと抽象的な表現に終始して、内外政策いずれも具体策がなく、官僚式美文調ではあっても、政治家としての抱負識見というものは感ぜられませんでした。外交の上で見るべきものがなく、池田内閣の一枚看板であった高度成長政策自体が、いろいろのひずみと不況様相をもたらして、失敗を自認せざるを得なかったのであります。すなわち、総理の所信表明と同じ日、総理に最も近い宮澤経企長官によって、「昭和三十七年度経済見通し」を修正せざるを得なかったのであります。いわば、総理が、この壇上から、所信表明で高度成長政策の功績をみずから謳歌していたその日、側近の手によって、皮肉にも、その葬式を裏口からこっそり出さざるを得なかったではありませんか。この無為と失敗とをおおい隠すために、繁栄と生活の向上を自画自讃し、また、国民生活と経済、国際情勢が当面している困難と不安に目をおおおうとするのでありましょう。所信表明が、その大切な部分をごまかしに終始したから、新しい改造内閣が何をやろうとするか、新しい重点施策が何であるかを浮き彫りにすることができませんでした。今度の所信表明の中で総理が強調した人作りそれ自身が抽象的で、文教政策として何をなさんとするか示されなかったのも、当然でありましょう。国作りに失敗をしたから、政策のかわりに道義だとか、徳性の涵養とか、祖国愛とか、精神主義による説教、国民に責任を転嫁する反動教育政策が示されたにとどまったではありませんか。
 以上、酷評をいたしましたが、所信表明に具体性が欠けていたという点は免れ得ない批判であります。国民生活と経済、国際情勢が当面している困難と不安が深刻なだけに、これを解消する具体策を示されたい。インフレなき高度経済の助長、所得水準の向上、雇用の増大、所得格差の解消、社会保障の拡充、減税の断行、あるいは平和外交、経済外交の推進、文教の高揚と刷新、人作りといっても、その具体策が示されていないではありませんか。総理の所見を聞きたいところです。
 次に、当面の緊急な核実験の停止、軍縮、アジアの緊張緩和のためいかなる具体的な方針を持っているかということであります。
 東西間の緊張、特にアジアの緊張については、日本国民の最も危惧するところであります。この八月、原爆投下の暗い思い出の残っているときに、国民がひとしく心配することは、ベルリンで起こる事態に呼応して、南ベトナムから、金門・馬祖から、韓国から、いつ軍事行動が始まるかわからぬ。沖繩や日本基地を使っての核戦争の危険、人類共滅の核戦争に、日本と日本国民がいつ巻き込まれていくかわからぬということであります。核実験の即時停止、核停協定の成立、完全軍縮、アジアを中心とする緊張緩和、これはすべての国民の願うところであり、日本の政府が国民の政府なら、一番緊急な外交方針としてとらねばならぬところではないでしょうか。さきの通常国会の施政方針演説では、池田総理大臣から、緊張緩和について一言触れるところがありましたけれども、今度の所信表明では、故意か偶然か、全く触れられておりません。だから、この点について、いかなる具体的な方針を持っておられるか伺いたい。
 しかし問題は、この核実験の停止、核装備を含む完全軍縮、アジアの緊張緩和を、日米協力と力の均衡政策の上に立ってやるのか、東西両陣営のいずれにも加担せず、日本の自主的な立場、日本国民の滅亡を防ぐために努力するか、いずれかであります。力の政策に立たず、自主的な立場から、アジアにおける緊張と核戦争の危険を一日も早く取り去るために、まず核停協定を成功させるため努力することが、日本政府の緊急課題だとするならば、軍縮委員会に提出されている核実験の停止のための中立八カ国案があります。これを基礎に核停協定が結ばれるよう、諸国家に呼びかけたり、国連総会で努力すべきではないでしょうか。岡崎国連大使は、重要事項方式に賛成を得るため、カサブランカ諸国を回ったと言われます。緊張緩和、核停、軍縮への道を作るために、八カ国案を基礎にして、国連で核実験停止促進決議を実現しなければならぬとするならば、アジア・アフリカの中立諸国をそのために歴訪することこそ、国連大使の仕事ではないでしょうか。EECの実情を見、日本のこれに対する対策を立てるため、総理は欧州諸国を歴訪するとのことですが、しかし、当面この緊急の核停協定の成功、軍縮交渉成立促進のため、イギリスの首相を説き、中立諸国の結集をはかり、あるいはアジア・アフリカ諸国の協力を得るため努力することも、より緊急であり、当面の外交の最大のものではないでしょうか。総理と外相に聞きたい。また、ソ連とアメリカだけで核戦争をするとかしないとかきめられて、その影響を黙って受けねばならない義理があるだろうか、核兵器の実験禁止だけでなく、ソ連とアメリカの関係を何とかするような努力をしなければならぬのではないかと言われる河野国務大臣に、この問題についての意見を聞きたいと思います。
 アジアにおける緊張緩和の鍵となるもう一つの問題に、ソ連、中国の問題があります。所信表明は、従来の方針の繰り返しで、中国、ソ連との国交調整、緊張緩和のための具体的な政策が何にも示されなかったし、日中、日ソの貿易拡大の具体策も論及されませんでした。訪ソ経済使節団に大きな期待がかけられ、シベリア開発にどれだけ日本の経済技術が協力できるのか、締結される日ソ貿易協定の規模や、これに対する政府の態度が注目されているし、総理と石橋氏との会談、その結果、どういう具体的な措置がとられるのか、国民の注視と関心が集まっているときだけに、日中、日ソ貿易拡大に対する政府の方針を承りたい。
 これらの点に関連して、二つのことをお尋ねしたいのであります。
 一つは、来月から始まる国連総会での態度についてであります。池田総理は、その政局担当にあたって、中国問題について前向きの姿勢をとる、あるいは中国は敵視していないと答弁してきましたが、昨年の国連では、岡崎大使の口から、「二つの中国」という言葉は使わぬけれども、まさに「二つの中国」論を内容とする演説がなされました。中国の国連における地位の回復の問題については、重要事項方式の提案国となったのであります。日本が中国に対して友好的であるというならば、中国が国連に正当な地位を回復させるのが当然だというソ連案、あるいは中立国案に対して、賛成するのは当然でありますが、しかし、それができないにしても、中国を国連に復帰させるべきではないという案に対しては、せめて棄権すべきではないか。重要事項方式の提案国にはなるべきではなかったという意見が政府部内にもあります。ことしの国連総会でどういう態度をとられるか承りたい。
 もう一つは、貿易を促進したいと言われる。しかし国連や外交政治の舞台で非友好的な態度をとっていて、貿易が増大すると思われるか。これに関連して二つの意見が最近述べられました。一つは、ハリマン国務次官補及びアメリカ大使館からの、日中貿易を拡大することは好ましくないという意思表示であります。この露骨な内政干渉の疑いある発言に、日本政府自身困ったようですが、しかし自由主義陣営並みのことしか考えていないからという弁明によって、日中貿易の出鼻をくじかれたのは事実のようであります。もう一つは、国務大臣の河野氏の「特定の国に追随する外交をやめて先立つ国自身濃霧の中に混迷しているとき、そのあとを追随することがどんな結果をもたらすか、よく考え、民族の自主的な立場に立ち、共存外交とともに共通の利益を考え、貿易のごときは大いに伸ばすべきだ」という議論であります。これについて総理及び河野国務大臣の所見を伺いたい。
 なお、佐藤前通産大臣は、日中貿易にも第三国保証なしの延べ払い方式を認める方針だと言明されました。改造内閣でも同じ方針だと理解してよろしいか。また総理が石橋湛山氏に会われた後、輸出入組合の強化と、これを通じての日中貿易の拡大を検討されているようであります。しかし、岸内閣当時の日中貿易中断と、その後の経緯や、貿易三原則もあり、友好取引の拡大と長期化をこそ考えるのが本筋だと考えます。
 日ソ貿易、日中貿易とも、政府が友好的であること、ソ連、中国が長期計画を持っているのだから、契約の長期化をはからねばならぬとすれば、何らかの政府保証を考えるべきであること、ココムの撤廃に努力することこそが、日中、日ソ貿易等、いわゆる共産圏貿易に関連する政府の施策であらねばならぬと考えるが、総理、外務、通産各大臣の所信を承りたい。
 次に、日韓会談についてでありますが、まずこれは、日韓会談の前提となる原則的問題ですが、第二次大戦後の一つの特徴として、朝鮮のような不幸な分割された民族が幾つかあります。これら民族国家は、かつて一つであったし、また当然に一つに再統一されねばなりません。統一は民族の悲願でありますが、実際には統一は容易でなく、しかも統一を妨げている原因が、その民族以外の大国にあるため、不幸な分裂自身が紛争の種になり、緊張の原因となっております。こういう不幸な民族、不幸な国に対して、日本はいかなる態度をもって臨むべきか。外国の干渉、外国の軍隊の撤退、そして民族自決による統一を助けることこそが、唯一の解決策であり、紛争や緊張を除く道ではないかと考えられますが、総理、外務大臣の御所見を伺いたい。
 また、もう一つは、日韓会談は何を目的とするのか。カイロ宣言によって自由独立のものとして日本から分離された朝鮮に対して、この分離独立に関連する諸問題を解決して、国交正常化をはかろうとするのか。そうすると、朝鮮を一体として考えなければなりません。それとも、軍事政権を支援をし、アメリカの示唆にこたえて国交正常化を急ごうとするものであるかどうか。これに関連をして、国連に設置されている統一復帰のための朝鮮統一復興委員会の存在と活動を無視しても、なおあえて韓国との国交を正常化し、統一を阻害するつもりなのか、首相と外相に伺いたい。
 日韓会談は、今までの経緯から見ても、あるいは新内閣になってからの総理、外相の談話から見ても、近く予備折衝が開始され、ソウルでの高級政治会談が開かれるようでありますが、次の諸点を総理と外相に伺いたい。
 韓国との国交正常化は、領土請求権等、諸懸案の一括解決を織り込んだ基本条約方式によるのか。諸懸案は一応たな上げにして、国交正常化のための共同宣言方式によるのか。共同宣言方式によるとすれば、竹島問題に関連する領土の問題、国籍の問題、帰国問題、対日請求権問題、季ライン問題等、懸案は、いついかなる形式と内容で解決するつもりか、伺いたい。国交正常化と諸懸案解決とを切り離し、請求権問題の解決なしに日韓会談は成立するか。日本側からいっても、竹島問題、李ライン問題が解決せずして、日韓国交正常化して、それで国民が納得すると考えられておるのかどうか。
 また、会談再開の前提と言われた韓国における日本代表部の設置問題はどうなったか。
 いわゆる対日請求権は、賠償請求権的なものか。あるいは法律的、事務的なものか。対日請求権の合法的、合理的根拠のあるものというのは幾らか。無償援助、経済援助を加えて総額幾らという形を考えているのか。請求権の範囲は、小坂外相は、三十八度線の南、すなわち、韓国の地域に限り、北を含まないと答えていたが、大平外相も同様に考えているものと理解してよろしいかどうか。
 経済協力について政府保証を考えられているかどうか。日韓経済協力は、純然たる民間ベースでは、手動式の漁網一万ドル余の無為替輸出許可の申請一件にとどまっております。湯川氏その他が石井光次郎氏から池田総理に伝えられたという保税加工方式は、朝鮮の中に租界を作るものとして、朝鮮全土から反対をされているところであります。日本からいうと、かつてのような在外権益を作るものではないでしょうか。また、有償無償の援助は利権の対象となり、汚職が発生する危険が多分にあります。
 請求権支払いを含む対韓援助は、南ベトナムのゴ・ジン・ジェム政権に対する「鶏三羽に三百億の贈償」と同一の運命をたどり、日本国民の税金を使って反共政権を支援をしたが、民族の信頼をつなぎ得ない政権への援助は、民族の反感を残すのみで、泥沼に金をつぎ込むのと同じ効果しかないという運命をたどる危険性がきわめてあると考えられますが、以上の諸点について、総理、外務、通産の各大臣に所見を伺いたい。
 次に、今度の所信表明の中心だといわれる人作りについてであります。
 この国作りの基本たる人作りは、参議院選挙の際強調された「法秩序の無視の傾向と暴力的風潮」の排除のための治安立法と呼応して、徳性の涵養、祖国愛の強調などを基礎にしようとしております。教育基本法は、憲法の民主主義、平和主義の原則に基づいて、教育の基本を、「民主的、平和的な国家社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値を尊ぶ自主自立の人格完成を目ざす」ものと規定しております。この教育の基本目標と、人作りの基礎である祖国愛だの、あるいは民族精神といわれるものは、異質のものではないでしょうか。教育基本法の平和的、民主主義的教育を、赤の教育、革命の教育と非難する立場から、徳性の涵養、祖国愛の養成ということになると、それは、古い修身的道徳観とファッショ的祖国愛思想とを結びつけて、教育内容を全く変えようとするものではありませんか。そうして、この教育の転換と、アジアの緊張の激化、祖国を守る義務とは、結びつく必然性を持っております。祖国防衛のために一身一命を犠牲にするという徳性につながって参ります。私は、総理の所信表明を聞きながら、「この話はいつか聞いた話」という気がいたしました。世の中を変えようとするとき、政治の基本方向を変えようとするとき、まず教育の目標が変えられ、学問が政治によって曲げられ、方向づけられて参ります。学者や教育者や、なかんずく教職員に熾烈な攻撃を加える右翼団体、治安グループの台頭と相呼応し、法秩序の擁護とともに祖国愛を強調して、人作りを進め、教育の基本理念を変えようとする池田総理の態度を考え合わせると、ちょうどあの満州事変前後、準戦体制への道を推進した時代を思い起こさせます。「いつか来た道」、暗い道をまたたどらせようとするのか、総理に伺いたい。
 次に、大学管理制度改革問題についてお尋ねをしたい。
 総理は、先日の所信表明にはこのことに触れませんでした。しかし、参議院選挙にあたって、あるいは内閣改造の記者会見では、この点に触れました。言うまでもなく、大学は学術研究の中心であるとともに、また、人材養成の最高機関でもあり、近代国家存立発展の基礎をつちかうものであります。したがって、そのあり方いかんに国民が大きな関心を寄せることは当然であります。しかし、学問の自由、学園の自治の保障、その具体化のための自治制度は、今日のあらゆる先進国家のいい伝統として確立せられて参ったところであります。洋の東西を問わず、大学の歴史は専制的な政治権力者との闘争の歴史でありました。日本で、大正の初め、デモクラシーの高揚期にやっとたたかい取られた大学の自治の原則も、その後、昭和初頭から始まったファッショ的軍国主義の台頭期に、学問思想の自由とともに弾圧攻撃が加えられました。いわく森戸事件、京大事件、この議場にも関係のある天皇機関説事件、その間における荒木文部大臣――名前は違いますが、荒木貞夫文相の大学自治制度批判事件等々、数え切れないほどありました。そうしてこの大学自治と学問の自由に加えられた弾圧は、日本を敗戦に導いた序幕であったのであります。今日、総理は、大学管理問題を取り上げてどう改革しようとするのか。中教審の答申待ちと言っておりますが、大学の管理運営に政府が責任を持てるように、学長や教授の任命に拒否権を持つかいなかはともかくとして、何らかの権限を持とうとしているのは明白ではありませんか。これをわれわれは、大学の自治と学問の自由に対する制約の企図があると言うゆえんであります。私は、故鳩山一郎氏を戦後の数少ない政治家の一人としてあげることができると思いますが、政治家として識見を持ち、日ソ国交回復と日本の国連加盟に寄与されました。しかし、残念なことには、彼は文相として、滝川教授をその刑法読本のゆえに追放し、京大事件の責任者であったという点で、歴史に汚点を残す結果となりました。池田総理も鳩山さんのような悪名を歴史に残すためあえて勇断をふるおうとするのでありましょうか、総理の所信を伺いたい。
 次に、国家公務員の給与改定に関する人事院勧告に関連して、総理及び給与担当大臣にお尋ねをいたしたい。
 人事院は、十日、国会及び内閣に対して、一般職国家公務員の給与に関連して勧告を行ないました。わが党は基本的にはこの勧告の内容に不満であります。なぜなら、労働省の毎勤によっても、この一年間民間給与の平均上昇率は一三・三%に上っております。人事院自身が調査したところによっても、民間給与との格差は九・三%を上回っているのに、人事院は七・九%と上昇率を押えたからであります。消費者物価指数は、昨年四月から本年三月までの間に全都市七・八%の上昇、家計費の増加は一三%、民間給与との差は依然として大きく、公務員労働者の生活水準は民間に比して大幅に低下しております。こういった実情を知りながら、年なおかつこの上昇率を低く押えた理由は、政府からの圧力と人事院の政治的考慮以外の何ものでもありません。わが党は、人事院勧告の実施にあたり、民間給与との格差解消のため、勧告を大幅に上回る措置、技術職員の待遇についての抜本的措置、実施期日、昨年十二月なされた暫定手当整理の勧告の完全実施を政府に要求をいたしました。以上の諸点と、実施期日を五月一日にさかのぼり実施するかどうか、財政上の措置をどうするか、国会の開会中勧告がなされたのでありますから、国会にすみやかに給与法の改正案と補正予算を提出すべきでありますが、総理及び給与担当大臣の所見を承りたい。
 なお、災害対策についてお尋ねしたいのでありますが、時間がございませんから、このたびの北九州から北海道に及ぶ水害と有明海の魚介類壊滅に対する対策の大綱と、その措置のため、給与とともに補正予算を組むべきであると思うが、総理、建設大臣の所見を承りたいところであります。
 最後に、危機を告げ、従業員の雇用と生活きわめて不安な石炭と金属鉱業の問題について伺いたい。
 四月六日の閣議決定によって、石炭産業の安定と雇用の安定について抜本的対策がとられることが約束されました。そして、石炭調査団が九州、北海道の現地を視察して、現在答申の作成中であります。ところが、この答申を待たずして、依然として閉山、首切りはますます強く進行しようとしております。いな、進行しつつあります。しかも、その後、雇用市場は全く変化して、受け入れ態勢はない深刻な実情の中で、首切り、閉山が続いております。炭労の大量動員と無期限ストライキが中止されたのは、解雇が答申までストップされ、生活と雇用の、安定について政府が誠意をもって措置すると信じたからであります。しかるに、事実はその逆であります。もしこの事態によって、政府が閣議決定をもって保証したのに、それが裏切られたという印象を、労働者、国民に与えるとするならば、きわめて重大な問題だと思うのであります。総合エネルギー対策の確立について、また炭鉱の最低賃金制について、具体案はいつごろ明らかにできる段階にあるか、総理、通産大臣にお尋ねをいたしたい。
 金属鉱業は、重要基礎産業でありますが、比較的国際競争力が弱く、貿易自由化を目前に控えて、一歩誤れば壊滅的な打撃を受けること必至であります。このため、通常国会で危機打開のための決議等がなされました。政府は決議に応ずるいかなる対策を立てつつあるか。また、十月自由化が予定されているアンチモニー地金、水銀、マンガン鉱石、黒鉛、石綿等の五鉱種について、格安外国品の脅威や全般的外国相場の値下がりのため、保護措置のみでは対処できないといわれますが、問題の銅、鉛、亜鉛等とともに、この際、自由化を延期し、抜本的金属鉱業対策を確立すべきであると考えるが、いかがです。すでに自由化を待たずして金属鉱業は深刻な不況に見舞われ、昨年以来一万名近い労働者の首切りが行なわれ、また切られようとする現状であります。雇用の安定と離職者対策についていかに考えるか。
 以上、総理の所信――具体的内容の乏しかった所信に対して、社会党を代表しての質問を終わる次第であります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
○国務大臣(池田勇人君) お答えいたします。
 私の所信表明が簡単であるという御非難でございまするが、私は施政の方向について申し上げたのでございます。具体的措置につきましては、わが党が選挙中に公約いたしましたことを着々と実行していこうといたしておるのであります。何をやろうとするかということは、選挙の公約をやろうとしておることは当然のことでごございます。
 その次に、核実験停止とかあるいは軍縮について努力が足らないじゃないか。――われわれは、ただいまのところ、国連、特に最近ジュネーブで行なわれております十八カ国の軍縮会議、これに強く働きかけておるのであります。あらゆる機会に最善の努力をしておりますことを、ここに重ねて申し上げます。
 また、中国、ソ連に対しての方針に所信表明がなかった。――私はこのことは既定方針どおりにやって、変わりはございません。貿易につきましても、ソ連との間にはだんだんふえていっている。中共ともふえていっておりますが、との程度ではまだ不十分でございますので、何と申しまするか、貿易機構、いわゆる輸出入組合等を拡大いたしまして、そうして予算でも、見本市を設けるとか何とか、いろいろな予算はとっておりますが、これがうまく実行せられるように、貿易機関の拡大、あるいはまた延べ払い制度の創設等々をやっていきたいと考えておるのであります。
 なお、外交問題につきましては、外務大臣よりお答えさすことにいたします。
 教育問題について、祖国を愛する、徳性を涵養するということは、教育基本法にうたってないじゃないかというお話でございます。しかし、私は、教育基本法に、わが国の国家及び社会の形成者としての人を育成すると、こういうことが載っております。これはすなわち、りっぱな、国を愛する、民族を愛する気持があってこそであります。私は、国を愛し、徳性を涵養するということは、教育基本法以前の問題である、こういうふうに考えております。教育基本法でも、このことは、言葉は一緒ではございませんが、載っておることは、私はおわかりいただけると思います。そうして、徳性を重んじ、国を愛し、りっぱな、社会から信用をされる人を作るということが準戦時体制ということは、あつものにこりて、なますを吹くそしりを免かれないと思います。私はそういうことは全然考えておりません。
 また、大学の自治、学問の自由、これはもう守らなければならぬこと当然です。しかし、今の状態でよろしゅうございましょうか。もっと反省してもらって、学問の自由と大学の自治を守るためにルールをこしらえることが必要であるというのであります。何もこんなことに政府の権限をふやそうとか、そんなけちな気持じゃございません。将来のりっぱな日本を作るために、私はお考え願いたい、こういうことを言っておるのであります。
 国家公務員の給与引き上げにつきましては、検討をいたしております。また、金属鉱業等の自由化その他の対策につきましても、十分検討いたしておりますが、今検討中でございまして、補正予算を今国会に出すか出さぬかという問題につきまして、今の気持を申し上げますと、今国会には出す考えはございません。(拍手)
  〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
○国務大臣(大平正芳君) 緊張緩和のためにとっておる措置につきましては、今総理からあらましお話がございましたが、国連を中心に平和的な解決をはかるために、核実験停止はもとより、軍縮の前進につきましても、常に努力いたしておる次第でございまするし、御指摘の中立十八カ国提案に対しましても積極的な支持をして、強く要請いたしておりますことは、今申し上げたとおりでございます。
 第二の、中国代表権問題でございますが、ただいままでのところ、加盟各国から議案として今次の国連総会に御提案がございません。しかしながら、この問題はかねがね申し上げておりますとおり、極東並びに世界の平和に重要な影響がある深い問題でございますので、国連の場におきまして公正に討議されて、世界の世論が納得がいくような解決をはかりたいというのが、わが国の既定の方針でございまして、ただいまその考えを変えるつもりはございません。
 中共貿易でございますが、これにつきましては、機構の問題、条件の問題がございますが、特に共産圏の各国にフェーバーを与えるというようなことではなくて、今、西欧各国が共産圏貿易をやっている条件もよく調査しなければなりませんし、また、わが国が自由圏並びに共産圏にただいままでやっておりまする条件をよく吟味いたしまして、延べ払いあるいは輸出保険等につきまして、検討すべき要ありやなしや、どこまで踏み切れるかというようなことにつきまして、関係各省との間に今検討中でございます。
 それから日韓問題でございますが、先ほどの御質問にもお答え申し上げましたとおり、私どもは国交を正常化するということが眼目でございます。ただいま五十カ国に余る国が韓国を承認しておるような実情でございますので、この問題はできるだけ早く、御指摘の諸懸案の一括解決と同時に、正常化いたしたいという基本方針で、しんぼう強く当たっておる次第でございます。どういう方式をとるか、国交回復の方式につきましては、実態がきまりましてから、それに応じたように考えるべきものだと思っております。
 なお、御質問がございました請求権その他の案件につきましての具体的の考え方を示せということでございますが、先ほどもお断わり申し上げましたとおり、ただいま交渉中でございますので、差し控えさせていただきたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣河野一郎君登壇、拍手〕
○国務大臣(河野一郎君) 世界の平和に対するわが国の外交方針について私の考えておりますことは、総理、外務大臣からこの席でお答えになりましたと同様に考えております。(拍手)
  〔国務大臣福田一君登壇、拍手〕
○国務大臣(福田一君) 中ソ貿易の問題につきましては、総理並びに外務大臣からお答えがありましたとおりでございます。
 なお、日韓問題につきましては、これは重要な問題でございますので、各省間に異論なきように慎重に検討さしていただきたいと思います。
 石炭の問題でございますが、御指摘のとおり四月六日の閣議決定に基づきまして、抜本的な対策を立てるように、ただいま有沢調査団が調査を進めておいでになります。その間にありまして、去る七月三十一日に石炭鉱山整理促進交付金制度のワクを約二百万トン増大することといたしましたのは、いささかこの閣議決定と相反しておるのではないかというような御質問と解するのでございますが、これはすでに閣議決定の中にありましたように、石炭鉱業の合理化臨時措置法に基づくものは、これはやってもよろしいということがありましたので、終閉山対策を促進することとしたものでございますから、御了承を願いたいと思います。
 なお、銅、鉛、亜鉛等々の非鉄金属の問題でございますが、御指摘のように、なかなか苦しい場面に経営が追い込まれていることもありますので、慎重にこの対策は検討をいたしておるわけでありますが、総理が申されましたとおり、ただいまの段階におきましては、この臨時国会に何らかの法案を提出するというところまでは調査が進んでおりません。さらにまた、この自由化を延ばしまして、こういうような関係鉱山の通常を何とかうまくやっていくようにしてはどうかというような御質問と存ずるのでありまするが、これにつきましても、ただいま各方面から慎重に検討をいたしておりますので、さよう御了承をお願いいたしたいと存じます。
  ―――――――――――――
 なお、先ほどの近藤先生の御質問について、この際一言申し述べさしていただきたいと思います。先ほど、政府がF104の生産に関連して、運転資金等を回して、そうして兵器の増産をはかって、その輸出をはかるような考えがあるのではないかというような御質問であったのを、私があるいは取り違えておったかもしれませんので、さような御趣旨でありますならば、政府といたしましては、そのような所存は毛頭ございませんので、この際、弁明をさしていただきたいと思うのでございます。(拍手)
  〔国務大臣大橋武夫君登壇、拍手〕
○国務大臣(大橋武夫君) 公務員諸君の給与の改善に関する人事院勧告につきましては、ただいま総理大臣からお答え申し上げましたとおり、現に勧告の内容その他につきまして、関係各省が十分検討をいたしておるところでございます。(拍手)
  ―――――――――――――
○副議長(重政庸徳君) 田畑金光君。
  〔田畑金光君登壇、拍手〕
○田畑金光君 私は民主社会党を代表し、総理の所信表明に対し、若干の質問を行ないます。
 まず初めに、内閣改造の意義と政治の姿勢についてであります。総理は所信表明の中で、今回の参議院選挙において、政府与党が圧倒的支持を受けたとしております。なるほど、自民党の支持率はなお高いかもしれません。しかし、頭打ちし、漸減しつつあることも否定できない傾向であります。しかも、今回のように数億に上る国民の税金を使い、投票をかり立てるやり方が、国民の自由な意思表現と言えるでありましょうか。政治に対する国民の不信が言われて久しきになります。このことは、すべての政党、政党人がひとしく考えてみなければならない問題だと思います。ことに、内閣を担当される政府、与党の責任は重大であります。世間では今回の内閣改造を中型の派閥均衡内閣と呼んでおります。総理としては小回りのきく内閣を作られたのかもしれませんが、前回の池田・ケネディ会談のあとを受けて、国際緊張を理由に実力者内閣を作られた当時に比べますと、国民に訴えるものが少ないのであります。今回の内閣改造は、国民のための内閣改造にあらず、自民党のお家の都合のための改造であったと思いまするが、どうでございましょうか。参議院も院の構成をめぐり、数日を空費し、国政を渋滞せしめるに至りましたが、それは、参議院与党内の複雑な派閥抗争に起因していることは、天下周知の事実であります。池田内閣は、長くて二年、短ければ一年と世間では見ておりますが、池田総理は、この短な期間に、どういうことを重点に置かれて政策を推進されようとするのか、お伺いいたします。
 また、池田総理は、人作りや青少年の育成を強調されております。私も同感であります。しかし、青少年に愛国心を求める前に、政治の姿勢を正すことが必要ではないでしょうか。利権あさりが横行したり、買収選挙が跡を断たなかったり、閣僚という大きな公職が派閥に利用されるようでは、綱紀の粛正を求める資格はないと考えます。今回の参議院選挙の跡を振りかえってごらんなさい。ことに、高級公務員の目に余る、異様とも思われるほどの悪質きわまる選挙違反をごらんなさい。公衆のための公衆衛生機関がそのまま高級官僚の選挙網に動員されております。これは氷山の一角にすぎません。国有林の払い下げ、補助金の交付、契約の締結、事業実施の認可等、国民のための行政が、あげて与党や高級公務員の選挙に利用されるようでは、世はおしまいであります。下級公務員にはきびしく、高級公務員には野放図に悪徳を許していて、綱紀の粛正ができましょうか。しかも、高級公務員はあげて与党の一員として選挙を戦っております。与党内にあっては、官僚派として常に政権に結びついております。官僚という権力機構が常に与党と結びつき、国民のための行政が党利党略に乱用されるところに、政治や行政が国民から遊離し、政治の不信を招いている最大の原因があると私は考えます。総理は、これをどのようにお考えになっておられましょうか。今後の政治姿勢としてどんな態度をもって臨まれようとするのか、総理の御所見を承っておきたいと思います。
 第二に、私は外交問題について、一、二お尋ねいたします。
 まず初めに、日韓交渉に関する政府の態度についてでありますが、われわれもまた、お隣りの韓国と長い間の諸懸案を解決し、国交の正常化をはかることには、賛成であります。しかし、最近の政府与党の動きを見ておりますると、条件が整わないにかかわらず、急ぎ朴政権と協定を結び、国交の回復をはかり、文民政権に移行する前に処理することが、日本の利益であるという立場に立っております。そのため、大平構想として宣言方式が検討されているようでありますが、なぜ朴政権の存続中に解決を急ぐことがわが国の利益に通ずる道であるのか。その理由並びに共同宣言方式についての政府の構想をお伺いいたしておきます。
 三月の尹大統領辞任や、最近の東亜日報社幹部の逮捕事件は、明らかに朴軍事政権の独裁性と不安定性を立証するものであり、不安定政権との協定は、将来に問題を残し、日本の利益ではないと考えます。軍事政権から文民政権への移行を条件とし、また、日韓両国の間には軍事的関係を持たないことを明らかにしながら、慎重な態度をもって臨むことが、今日なお必要な交渉段階にあると思いますが、総理の御所見を承ります。
 次に、私は沖繩問題についてお尋ねいたします。
 三月十九日、米国の沖繩新政策に関するケネディ大統領声明中、日米協議の対象となる事項は、「琉球住民の安寧と福祉及び琉球の経済開発を増進するための援助供与」についてであります。政府は、六月以降二次の調査団を現地に派遣し、九月から日米交渉が始まると聞いておりますが、アメリカはこれに応ずる準備ができておりましょうか。アメリカ援助の根幹をなすプライス法修正案は、今日に至るまで成立を見ておりません。これでは、日本側の負担もきまるはずはありません。なぜプライス法修正案は難航しているのか、いつごろ成立をする見通しであるのか、承りたい。最近、沖繩においては、公職選挙法改正案も減税法案も、拒否権に会い、廃案になっております。自治権拡大には何らの進歩もありません。なかんずくプライス法修正案をめぐる上院、下院の論争を見ますと、琉球は日本領土の一部であるとするケネディ声明は大きな後退を見せております。米下院軍事委員会は、五月十八日、沖繩援助に関するプライス法修正案について報告書を発表いたしましたが、潜在主権については、「日本に真の主権行使の権利もなく、日本が保有しているのは、米国が第三者に琉球を引き渡さないことを期待する権利である。」と述べております。また、上院のサーモンド議員は、「日本から米国が追い出されたら、とどまる所は沖繩だけとなる。ダレス元長官が日本の潜在主権があると述べたことは了解できない。」と、同じく上院軍事委員会で述べております。政府は、かかる動きをどう見ておられましょうか。大平外相は近く渡米することになっているようでございますが、私は、大統領声明の即時実施並びに施政権の返還、自治権拡大について、アメリカに強力に交渉すべきであると思いますが、政府にその用意があるかどうか、この際、池田総理に承っておきます。
 第三点として、私は経済政策並びに国民福祉について総理並びに関係閣僚にお尋ねいたします。
 私は、昨年以来の景気後退は、帰するところ、池田内閣の高度成長政策に刺激された設備投資の行き過ぎによるものであり、大企業の設備投資がすばらしく巨大化した結果として生産能力が増大し、これを押え、調整することは容易でありません。このことは、昨年秋以降、政府が金融引き締めを中心に、投資抑制に乗り出したにもかかわらず、鉱工業生産水準の低下にメドがついたのも本年五月であった事実に照らしても明らかであります。しかも、今回の不況は、石炭産業、非鉄金属鉱業、海運業などの重要産業が、貿易自由化を前にして、さらに大きな影響を受けている点に特色があります。すなわち、今回の不況は、政府の言うように、すでに国際収支の前途に明るい光がさし込んできたので、間もなく解決するというような、軽いリセッションではないと思います。ゆえに、景気の建て直しは、産業構造そのものに触れる根本的施策なしには成功し得ないと考えております。経済白書も指摘いたしますとおり、今回の不況は大企業の過剰投資にあったことは明らかであり、これがコントロールなしには、今後の安定成長も不況予防もあり得ないと私は考えます。不況になれば、急激な金融引き締めで中小企業を破壊するのではなく、計画的な資金配分を中心に恒常的政策をとることが必要と思います。かくして初めて経済の安定成長は保証されるものと思います。政府は、最近の世界経済の動きに刺激され、独禁法を骨抜きにし、大企業中心に、産業界の再編を強行しようとする方針のようでありますが、そういうことでは、経済格差をますます固定化し、経済の二重構造の解消どころか、所得倍増政策の矛盾を拡大すると思うが、総理の御見解を承ります。
 次に、私は不況産業対策についてお尋ねいたします。
 その一つは、海運産業についてでありますが、政府は、前国会から継続審議中の海運企業整備臨時措置法案によって海運企業の再建ができると思っているのでございましょうか。今日わが国の船腹量は、おおよそ六百万総トンに上り、戦前の水準に復し、世界の海運国に比肩し得るまでに至っておりますが、一たび企業経営の実態、経理の内容を見ますると、驚くべき脆弱性を露呈していることは周知の事実であります。国際競争の激しいときに、海運企業をこのまま放任することは国家の損失であると私は考えます。政府提出法案では、結局、普通外航船会社二社、タンカー三社の救済に役立つだけで、他の企業は全く見殺しになる法律案であります。政府は、この法案をもって海運業再建に対し必要にして十分なりという認識に立っておられるのかどうか、私は運輸大臣の所見を承りたいと思います。
 次は、石炭の問題に入ります。今日石炭産業は、特別調査団の答申を待ついとまもなく、より深刻な危機に突入しつつあることは、先ほど吉田議員から指摘されたとおりであります。経済の不況で石炭需要は減少し、コスト引き下げのため増産にたよると生産過剰となり、生産制限をすると経営基盤を掘りくずしているのが石炭の現況であります。最近の需要減少では、たとえ五千五百万トンに出炭を押えましても、なおかつ相当量の過剰貯炭が予想されるという今日の状況でありますが、これは、政府の責任において、需要の確保、貯炭融資の実施、過剰貯炭の買い上げ措置を行なうべきであると考えまするが、通産大臣のお考え方を承ります。
 九月に予想される石炭特別調査団の答申は、わが国石炭産業のあるべき姿を明示するものと思いまするが、とにかく石炭産業の体質改善には莫大な国家資金の投下なしには不可能でありましょう。また鉱区の整理統合を断行し、休眠鉱区の解放を行なう等、生産体制の集約化と未開発炭田の積極的な開発が石炭企業の体質改善の根幹をなすものでありますが、これらの大事業はもはや私企業の能力ででき得る問題ではございません。もはや石炭産業は私企業を離れて、国家管理ないし国有に移行すべき段階にきていると私は見ております。この際、政府もイギリスやフランスの経営方式を参考にしつつ、石炭産業のあり方について真剣に検討する時期に入ったのではないかと考えまするが、この点は総理の率直な御意見を承っておきたいと考えます。
 次に、私は電力料金と電気事業についてお尋ねいたします。政府は東北電力の料金値上げ要求にどう対処されようとする御方針でありましょうか。近くは私鉄運賃を値上げし、新米穀年度からは消費者米価を値上げすることは必至と私は見ておりまするが、産業と国民生活に及ぼす影響は、不況下にあるだけに、より深刻であります。消費者物価の上界は先進国型経済への急速な移行に伴うやむを得ないことだということでは済まされない問題であります。ことに、東北、北海道地区は後進地域であり、未開発地域であります。市場が遠隔であり、勢い運賃の負担等が他地域に比べ著しく不利、その上、積雪寒冷地帯であり、産業立地上も不利でありまするが、ただ一つ、東北の電力が豊富、低廉、良質であるというところに魅力があるといわれております。今日、電解電炉等、電気化学工業の約四〇%を東北が占めているということも、こういう電力事情の結果であります。もし料金値上げが実現いたしますと、産業と住民生活に打撃を与え、せっかく東北開発三法以来、緒についたばかりの地域格差是正の問題、産業構造改善の問題等が大きな支障に逢着することは明らかであります。ことに不況期と貿易自由化を前にいたしまして、公共料金の値上げはいろいろな点に波及することは必至でございまするが、私は一東北の問題を申し上げておるのではなくして、政府の施策の矛盾を申し上げておるのでございます。こういう公共料金値上げについて、政府の明確な今後に対する方針を承っておきます。また同時に、今日電力事業の経理が非常な悪化を見ていること、公共事業なるがゆえにかえって多くの犠牲をしいていることも見のがし得ない事実であります。すなわち、電力需要に応ずる膨大な資本投下、資本費の圧力が、企業経営を困難に追い込んでおります。この際、政府の財政投融資を画期的に増大すること、また調達資金の有効利用をはかるため、橋梁、道路等、公共補償費の国または地方自治体への肩がわりを考慮すること、租税公課の軽減等の実現を企図すること、これらを勇断をもって実施することにより、コスト高騰による料金改訂の抑制を行なうべきであると考えまするが、政府の方針を承っておきます。
○副議長(重政庸徳君) 田畑金光君、時間が参りました。
○田畑金光君(続) 最後に、時間も参りましたので、私は結論だけを申し上げますが、特に労働問題に関し、先ほど来、総理並びに大橋労働大臣の御答弁は不親切きわまる御答弁でありまして、政府は人事院勧告に対して一体どのように善処しようとする具体的な方針をお持ちであるのか、この際もっと親切な御答弁を要求して、私の質問を終わることにいたします。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 今回の改造につきましていろいろ御批判があったようでございまするが、私は国会により総理大臣の指名を受けて、内閣につきまして改造その他の権限を持っておる。その権限によってやっておるので、何もこれが自民党の都合とか社会党の関係とか、そういうことはございません。私は、新しい人を採用しまして、挙党態勢、閣内一心同体という考え方で今度の改造をしたのであります。
 次に、高級公務員の選挙に関しましての御質問でございますが、先の国会からたびたび答弁いたしておりますように、だれが高級かどうかという問題、また、これを制限することが憲法上の疑義等の問題から、前回の国会でああいう結果を見たのでございますが、いずれにいたしましても、高級であろうが下級であろうが、その地位を利用するということはよくございません。だからそういうことを制限すべきであって、高級なるがゆえにという考え方は、私は今のところ持っておりません。
 次に日韓会談を急ぐ理由――これは先ほど外務大臣も申し上げましたごとく、韓国が独立して十余年になっております。わが国は従来から正常化をやっておる。ただいろいろの事情でできなかった。最近の軍事政権がやろうという――私はこれでやるべきだと考えております。韓国に対する外国の扱いも、一年半、二年前くらいは、韓国を承認した国は三十四カ国であった。しかし最近はこれが五十一カ国、すなわち先月もシリアが承認いたしまして、最近、韓国の軍事政権をどんどん承認いたしております。この世界の大勢を見ながら、しかも歴史的、地理的に、また文化的に、そして一衣帯水のこの韓国とともに、自由主義の考え方を持っておるわれわれが手をつながずにおるということは、不自然きわまることであると私は思うのであります。だから、お互いの国民が納得する方法で、できるだけ早く正常化を促進することは、内閣総理大臣として当然のことだと私は考えております。
 次に、独禁法につきましていろいろ御質問がございましたが、日本の経済規模が相当変わってきております。ことに、今後自由化をして世界の各国と競争するという場合におきましては、独禁法が主として国内産業の独占なり競争なりを規制しておったのでございますが、自由化になってきますと、独占なりあるいは競争の範囲というものが世界的になってくる、こういう新しい場面も出て参ります。したがいまして、独禁法の改正を、国内的に限らずに、国際的にも見ていかなければならないという解釈の幅の広さも今後は出てくると思うのであります。しかし、御承知のとおり、この独禁法というものは産業構造の基本をなすもので、ほんとうに産業の基本法でございますから、私は十分その事態の推移を見、世界の情勢を考えながら行くべきである、今ただちに独禁法をどうこうということはまだ早過ぎると私は考えておるのであります。自由化に伴います影響あるいは産業規模の増大によります影響等々を考えまして、日本が競争力を持ち、公正な競争のできるような建前で検討していきたいと思っておるのであります。
 また、人事院の勧告によります公務員の給与の問題でございまするが、先般勧告があったばかりでございます。十分検討いたしまして、従来どおりわれわれがこれを尊重し善処することに何ら変わりはございません。(拍手)
  〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
○国務大臣(大平正芳君) お尋ねのプライス法案は、ただいま上院で御審議中であるやに聞いておりますが、私たちは近く可決になるものと期待いたしております。(拍手)
  〔国務大臣綾部健太郎君登壇、拍手〕
○国務大臣(綾部健太郎君) お答え申し上げます。
 海運企業の整備に関する臨時措置法案はただいま継続審議中でございまして、私どもはこの通過を確信いたしております。この結果によって海運界が抜本的に救われるか、こういう御質問でございますが、私どもは、専門家の田畑君が言われたように、二、三がこれによって救われるだけで、あとはどうにもならぬじゃないかというふうには考えておりません。この法案の通過によりまして、多大の効果があることを期待いたしております。それによって、経過を見まして、さらに私どもは研究いたしまして、何と申しましても海運日本でありますから、この海運日本国が経済の上で栄えていくような方途に向かって努力することを申し上げまして、お答えといたします。(拍手)
  〔国務大臣福田一君登壇、拍手〕
○国務大臣(福田一君) 石炭の問題に対する御質問でございますが、先ほども申し上げましたとおり、ただいま有沢調査団が一生懸命御調査をなさって、基本的な方針を打ち出されようといたしております。この際、私たちが、どうするこうするというようなことを申し上げないほうが適当ではなかろうかと存じますので、どうぞ御了承をお願いしたいと思います。
 なお、電力料金の問題でございますが、これは従来しばしば総理からもお答えがございましたとおり、公共料金という立場におきまして、各方面に与える影響その他を十分勘案いたさなければなりませんので、慎重にただいま検討をしておるということを申し上げさしていただきます。(拍手)
  〔国務大臣大橋武夫君登壇、拍手〕
○国務大臣(大橋武夫君) 人事院勧告の取り扱いにつきましては、国家公務員法の精神から考えましても、政府は十分にこれを尊重し、できるだけすみやかに実施するようにいたすべきと存じております。かような趣旨をもって、現在勧告の内容その他について検討を進めつつある次第でございます。どうぞ御了承をお願いいたします。(拍手)
○副議長(重政庸徳君) 奥むめお君。
  〔奥むめお君登壇、拍手〕
○奥むめお君 与えられた時間も非常に少のうございますし、昼食もだいぶおくれておりますので……。
 第一に、総理は、所得の格差解消、国民生活の安定と向上に努めてきたと言われますが、間違いではないかしら。企画庁が最近発表しましたものに、三十六年度の国民総所得が十三兆五千百三十七億、この分配の面から見たものを五年前と比べてみますと、勤労所得が六兆七千九百五十四億、個人業主所得三兆五千六百七十六億、法人所得二兆七百五十九億で、法人所得は二・七倍になっているのに、勤労所得は八八%増でしかありません。個人企業主に至っては、わずかに三五%増であります。この著しい格差は、今日の国民大衆の暮らしのつらさそのままの姿であり、今のままの政策ならば、これからますます大きくなるであろうと思うのでございます。政府は、国民総生産、総所得といった大きな数字に、高度成長と繁栄をうたっていられるような感がある。その財政資金は、ほとんど国民の税金と貯金から出ている。今の今まで税金も貯金もあげて産業育成に充てて、あまりに長く耐えてきた国民のことを思いますならば、これからの行政のあり方は、国民への奉仕、税金を国民に返す、これを予算編成の基本方針として、民生安定と消費生活の保護に置くべきであるというのが私の主張でありますが、総理の御所見はいかがですか。
 産業道路や、ビル・ラッシュの陰に、収入が上がらぬ上に、物価の値上げ、公共料金、土地、家賃、床屋、ふろ屋、教育費等々の高騰に苦しみ、また、はんらんする新製品を、あまりにひどいマスコミのあらしの中で売りつけられている。また、インチキ薬屋や食品の選択に戸惑う。ほんとうに雑多なものが国民生活を脅かしている。命があぶないなというおそれさえあるのでございます。世論調査を見ましても、いつでも、物価値下げと、減税と、環境整備、それから不良な広告や商人の取り締まり要望が一番多いのでございます。このほんとうの肉のついた声、生活の声、これくらい多くの人のなまの声を政治の上で無視されているということは、私の憤慨にたえない点でございまして、新しい予算編成にあたりまして、まず姿勢を正すことはここからと、こう言いたいのであります。前国会のときには、経済閣僚懇談会というのが、たびたび会合しておりました。今はこれをやめたのであるかどうか伺いたい。また、それがあっても、物価を抑制する、公共料金を上げないと、しばしば書いたもので発表し、口で発表していながら、あとから、あとから上がっているのでございます。したがって、今、各同僚議員から、電気料金、あるいは私鉄、消費者米価の御質問があっても、池田総理の御返事を聞けば聞くほど心配にたえない。これが国民の偽らざる声であります。総理はこれに対して、何と実行においてお答えになるつもりかどうか、伺いたいのでございます。
 一体、総理は、この一年間にどれくらい物価が上がったか、また、政府の見通しがどのように、何のために狂ったのかということを、はっきりここで述べていただきたいと思います。
 私どもは、池田内閣が発足当初、今までの政治は生産者のためにあった。これからは消費者のために政治を行なうとはっきり言明されて、期待を大いに持ったのでありますが、二年の間に消費者のために池田内閣は何をしたか。また、政府のいう消費者行政とは一体何であるか。これを総理からこまかく説明してほしいのでございます。藤山前企画庁長官は、消費者のために一つの機関が必要であると考えて、研究を進めていると言われた。今の大蔵大臣、さきの政調会長は、厚生省を国民生活省に改めて、消費生活のために、いろいろ働かなければならぬということをおっしゃっている。これは今の内閣が受け継ぐのであるか。もう知りませんと言うものであるか。総理並びに大蔵大臣から伺いたい。また、非常に必要なことでありますから、ぜひこれを推進して、内容も充実して、国民が安心して信頼できるような政治の姿の基盤を作っていただきたいと思うのでございますが、いかがでございますか。
 最近の新聞に、石油コンロやストーブから火事があまりふえたので、消防庁では七月からきびしい義務規定を設けて、石油燃焼器具防火規格を実施しましたところが、これは通産省のJISマークと違い、両方が非常に困っていると出ております。火事になりやすい石油器具のようなものを、業者の団体にまかせて規格の検査をさせて、それに通産省のJISマークをつけ、信頼してよろしい、これを買いなさいと勧めている通産省は、業者の育成機関ではあっても、消費者保護官庁としては非常に遠いと、私どもは憤慨にたえないのでございます。しかし、この問題だけではございません。今日、農林省といわず、厚生省といわず、通産省といわず、文部省といわず、いろいろな役所が、国民生活を離れて官僚独裁、あるいは国民生活を足場にして利用する、買わせる、あるいは税金を出させる、取り締まる。非常に不便、憤慨にたえないことが多いのでございます。で、これは福田通産大臣にも十分御研究願いたいことでもございますが、たとえば家庭用品品質表示法、これも幾多の問題を含んでおります。また、石炭の目方売り、正しい目方で物を売るということは、これはあたりまえのことでございますのに、石炭の計量審議会では、石炭は、三十八年の十月、その当時からいえば二年後まで猶予期間を置きまして、正しいはかり方をすることを、二年の猶予期間を置いて見のがして、それさえも二キロ以下のものの取引に限ると制限を加えたのでございます。消費者の利益はどこで守ってくれるのでございますか。
 また、新聞に、アメリカの薬品行政の担当官であるケルセイ女史が、このごろ世界の評判になっております妊婦の睡眠薬、日本にもこれは及んできているのでございます。現に不幸な子供がたくさんできております。生まれた子供が手がなかったり、首がどうかしていたり、非常なかわいそうな奇形児になる。ドイツ、スエーデン、各国が問題にして、アメリカはこれを売らせろと言うて、非常な業界の圧力があったそうですが、このケルセイ女史は断固としてはねつけて、大統領から最高の栄誉を与えられた。この報道を見ても、日本にも一人ぐらいそんな役人があっていいじゃないか。総理大臣も人作りに御熱意をお持ちになるのであったならば……。
○副議長(重政庸徳君) 奥君、時間が参りました。
○奥むめお君(続) そのような面から、人作りに、まず役人の骨っ節のたたき直し、または根性の練り直し、国民のほうを向いた政治を、行政を行なうように、これこそ、今、貿易振興を至上命令とする日本では一番必要なことであると私は考えるが、総理はいかがお考えであるか。このことをぜひ考えていただきたい。
 そのほか、私どもから言いましたら、減税の問題も、人口は四〇%しか伸びていない。
○副議長(重政庸徳君) 奥君、時間が来ました。
○奥むめお君(続) もうちょっと待って下さい。昭和十年に比べて四〇%しかふえていないのに、課税対象は十三倍、税金は二千倍になっている。しかも、その税額、国民の重税にあえぐ姿は、数字で示すだけではなく、現実の生活が示している、私は、総理が謳歌なさるよりも、税の取り過ぎということを、ぜひここで姿勢を変えて考え直してもらいたいと要望したいのでございます。幾つも問題が残って残念ですが。失礼いたしました。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
○国務大臣(池田勇人君) お答えいたしますが、奥さんの資料が、法人や賃金やその他の資料で、所得格差がふえたというお考えでございますが、所得格差の問題は、法人の事業がふえたとか、あるいは賃金がどうだとか、これでは比較にはならぬと思います。これは比較になりません。それは、一体に低所得階層の問題で見ますと、やはり雇用問題で大企業のものと中小企業以下のものとの賃金の格差はどうなっておるか、これを見ますと、やはり低所得者のほうがずっと上がっておる。また、最低賃金の問題等で所得格差があるのでございますまいか。そうしてまた、内閣の勤労者所得統計、生活統計を見ましても、下のほうと上のほうとは、大体同じように伸びていっております。そういうところでひとつ議論してみたいと思います。法人企業がふえたから、あるいは個人企業がどうだとか、こういうものでは、所得格差は問題にならぬと、私の勉強の上ではそう考えておりますが、いずれまた委員会で議論いたしましょう。
 税金を国民に返せとおっしゃるが、われわれはできるだけ返しております。できるだけ返す。すなわち、先ほど申し上げましたように、終戦後、減税の総額は一兆円に達しておる。そうして、私が総理大臣になってから、三十六年、三十七年度二カ年で返したのが、地方税を通じて減税いたしましたのが、二千数百億円になっております。これは間違いでございません。三千億と言いたいのですが、平年度二千数百億になっております。こういうところから見て、非常に返しております。そうして、戦前に比べて非常に高いとおっしゃいますが、所得が戦前の倍になっておるのですから累進税率、その他戦後の国作りのために税金を相当負担してもらうことは、これはやむを得ない。先進国に比べて決して高くはございません。そうして、心配にたえない心配にたえないとおっしゃるが、これはやはり長い目で見ようじゃございませんか。二年間に五兆円ふえました。総生産は四割ふえました。国民所得は三割七分、三七%近くふえております。それで物価は九%でございます。物価は九%。消費支出は三〇%ふえ、貯蓄も一〇%以上ずつふえておる。全体の所得は一人当たり三十何パーセントふえた。その四分の一ぐらい物価が上がっておる。しかも、卸売物価は一つも上がっておらない。一つも上がらない。小売物価だけ上がっておる。しかも、小売物価がなぜ上がるかと見ますと、私はじっと見ておりますが、御承知のとおり、昨年の七月ごろから、去年の春闘によって賃金が非常に上がった。去年は一二%、今年の一月から五月は一三・七%、急激な賃金増であります。その増に加えて、今までおくれておったサービス料金、洗たく屋さん、床屋さん、パーマネント屋さんの、去年からことしに対してのいわゆるサービス料の上がりをごらんになったならば、あの急激な上がり、春闘による結果の労働者の賃金よりもサービス料のほうの賃金がもっと上がってはおりますまいか。こういう点につきまして、私はどういうふうにしたらいいかということを考えてきておるのであります。もちろん、戦後におきましては、生産、消費の場合に、われわれは生産が落ちたから非常に物価が上がってインフレになった。生産をまず伸ばす、しかし生産を伸ばすということが即消費者にもいい影響がある。だから、テレビとかラジオ、繊維品は相当下がってきたじゃありませんか。生産が伸びた。消費を考えるのは身近なものです。その点につきましても、消費がだんだん、ほうっておいたならば非常に上がるのを、このごろでも野菜ものは相当下がりました。二、三日前からまたキュウリその他二割ほど上がっているようでありますが、ずっと下がっております。それはやはり市場の改正とか、流通機構をこれから考えよう、生産を考えると同時に、その次に消費を考えていこうとしておるのであります。だから、物価がどれだけ上がったか、われわれの所得がどれだけ上がったか、格差がどうなったか、労働者の賃金ばかりでなしに、おくれておったサービス料金、床屋さん、パーマネント、洗たく屋さん、大工さん、左官、その賃金の上がりようも、これは国全体として見ればやむを得ぬところがあるのではありますまいか。そう心配するよりも、上がることよりも、所得がそれの何倍か上がることが、先進国になる、文化国家になるのであります。その点を十分お考え下さることを私はお願いするのであります。もちろん、政府は勉強し、綱紀をただすことは当然でございます。国民も政府の意のあるところを十分了解して下さって、非難をすればそれでいいんだと考えずに、協力して、もっと教えてやるという考え方でひとつお考えを願いたいと思うのであります。(拍手)
  〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
○国務大臣(宮澤喜一君) 物価問題の基本の考え方につきましては、先ほど補足をして申し上げましたとおりであります。
 賃金格差につきまして、ただいま総理大臣から説明を申し上げたわけでございますが、そういう考え方に基づきまして、かりに五百人以上を常時雇っております製造工業の昭和三十三年における賃金を一〇〇といたします。その場合に、百人から五百人まで、そこまでの製造工業における平均賃金は、三十三年に六九・七でございましたが、現在は七九・四になっております。それから一番小さいところ、五人から二十九人までの製造工業について見ますと、昭和三十三年には五百人以上の企業の平均賃金の四三・六でございました。現在では大体六二・三ぐらいまで上がっております。したがいまして、下にいくほど上がりが多い。格差がそれだけ縮まっているということになろうかと思います。(拍手)
  〔国務大臣福田一君登壇、拍手〕
○国務大臣(福田一君) 先ほど田畑先生から、石炭を国家管理にしてはどうか、こういうような御質問があったのでありますが、特に総理に答弁をということでございましたので、私が申し上げては失礼かと存じまして、実は遠慮さしていただいたのでありますが、申し上げるのが穏当かと存じますので、お答えを申し上げたいと存じます。
 御承知のように、石炭の問題は非常に深刻でございますから、との問題を解決するには、国の援助といいますか、何らかの措置を講じていかなければならないことは事実でありますが、しかし、その場合におきましても、私たちはこれを私企業として育成していくという建前に基づいてやっていくべきであると考えているのでございまして、国家管理に移すという考えはございませんので、御了承を願いたいと思います。
 なお、奥先生から、ただいま、消費者を守る意味においてどういうふうにやっていくのかというようなお言葉がございましたが、私といたしましては、ただいまのところでは、今日、通産省が生産から消費の問題までもこれを所管してやっておりますが、このやり方においてさほど不自由がある、また間違いがあるとは考えておりません。
 なお、石油コンロの問題につきまして御指摘がございましたが、これは事実でございまして、そういう問題が起きております。確かにいわゆるJIS規格に基づいて生産されたものについて、消防庁のほうで、最近の火事の状況を見るというと、そういう石油コンロから火事が起きている場合も多いからといって、東京の消防庁がそういうような処置をとられたのであります。しかし、そういうことにいたしますと、生産をしております者は、そのためにまたこのコンロが売れないという非常な不便も来たしているのでございますが、これらの点につきましては、これらをよく調整いたしていかなければなりません。ただし、JIS規格を作るには審議会の議を経ておりまして、その審議会には消防庁関係の方も関係をされているのでありますが、これが十分な連絡がついておらなかったようでございますので、今後はそのようなことがないように、十分注意をいたして参りたい、かように考えている次第でございます。
 なお、石炭の目方売りの件でございますが、これは御承知のように、水分の問題等々も関係いたしますので、ただいま慎重に検討いたしております。もし検討の結果、奥先生の仰せられるようなことがございましたならば、ひとつこれを直して参りたい。かように考えている次第でございます。(拍手)
○副議長(重政庸徳君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
 次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後一時三十八分散会