第046回国会 社会労働委員会 第11号
昭和三十九年三月十日(火曜日)
   午前十時三十一分開会
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 出席者は左のとおり。
   委員長     鈴木  強君
   理事
           亀井  光君
           高野 一夫君
           藤田藤太郎君
           柳岡 秋夫君
   委員
           加藤 武徳君
           鹿島 俊雄君
           紅露 みつ君
           佐藤 芳男君
           徳永 正利君
           山下 春江君
           山本  杉君
           横山 フク君
           杉山善太郎君
           藤原 道子君
           小平 芳平君
           村尾 重雄君
           林   塩君
  衆議院議員
   発  議  者 吉川 兼光君
  国務大臣
   厚 生 大 臣 小林 武治君
  政府委員
   厚生政務次官  砂原  格君
   厚生大臣官房長 梅本 純正君
   厚生省公衆衛生
   局長      若松 栄一君
   厚生省薬務局長 熊崎 正夫君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       増本 甲吉君
  説明員
   国立予防衛生研
   究所腸内ウイル
   ス部長     多ケ谷 勇君
  参考人
   社団法人北里研
   究所副所長   笠原 四郎君
   東京大学教授  高津 忠夫君
   慶応義塾大学教
   授       中村 文彌君
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  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○公害対策基本法案(衆議院送付、予
 備審査)
○社会保障研究所法案(内閣送付、予
 備審査)
○予防接種法の一部を改正する法律案
 (内閣提出)
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○委員長(鈴木強君) ただいまより開会いたします。
 委員の異動についてお知らせします。
 三月五日、鈴木壽君が委員を辞任されて、その補欠に藤原道子君が選任されました。
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○委員長(鈴木強君) 参考人の出席要求に関する件についておはかりいたします。
 予防接種法の一部を改正する法律案審査のため、現行の生ワクチンの予防接種に関する問題について、参考人として社団法人北里研究所副所長笠原四郎君の出席を要求して、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(鈴木強君) 御異議なしと認め、さよう決定いたします。
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○委員長(鈴木強君) 次に、公害対策基本法案を議題といたします。
 発議者、衆議院議員吉川兼光君より提案理由の説明を聴取いたします。
○衆議院議員(吉川兼光君) 公害対策基本法案の提案理由の説明をいたします。
 今日、私たちの生活環境をとりまいておりまする公害は、多くの種類のものが、さまざまな形で発生し、これがますます累積化する傾向にあります。
 申すまでもなく、公害が及ぼす悪影響は、国民の健康並びに生活の利便を害するだけでなく、わが国産業に与える経済上の損失をも放置できない段階に立ち至っております。しかるに今日、これらの公害の防止のためにとられている措置はきわめて微弱でありまして、しかも、その責任の所在は不明確であります。
 また、公害防止対策の基礎となります実態調査並びに環境科学技術の研究も、非常におくれているのが実際の姿であります。かかる意味におきまして、経済成長とともにますます発生してまいります公害を防止することは、政府、事業者を問わず、国全体の問題として、これは早急に対処するの必要があるのであります。これが本案を提出いたします理由でございます。
 次に、この法案の内容について概要をご説明申し上げます。
 第一条目的は、ただいま申し述べましたことをここに明らかにしてあります。
 第二条では、これまで公害が単なる概念であったものを、一、大気汚染、二、水質汚濁、三、悪臭、四、騒音、五、振動、六、地盤沈下と六種類に分類規定し、それぞれが、多数の住民の健康並びに動植物の生育を害し、もしくは日常の生活の利便、経済上の損失等に害を与え、またはおそれのあるものと定義づけた次第です。
 第三条並びに第四条では、公害発生の防止対策を国の責務とし、そのための施策を総合的に講ずべきことといたしました。また、地方公共団体は、国に準じて、その施策を講じ、協力しなければならないといたしました。
 第五条では、事業者がその事業活動について、公害の発生を防止するための装置、施設の設置等、必要な措置を自主的に講じなければならないことといたしました。なお、これら装置、施設の普及については相当な費用を必要とするものもございますので、事業者の責務の円滑な遂行のため、第七条、第十七条におきまして、法制上、税財政上、金融上等、政府の行なうべき助成の基本を明らかにしてございます。
 第二章は、国の行なうべき施策の基本方針を明らかにしたものでございまして、
 第九条では、公害対策上、最もおくれております実態の調査並びに環境科学技術研究を積極的に推進すべきこととし、これが公害対策を行なう上での前提であることといたしました。
 第十一条より第十六条までは、さきに述べました六種類の公害について、それぞれの公害の全体の許容限度を定め、それに伴って、個々の排出及び放散等、必要な規制基準を早急に定めるべきことといたしました。
 第三章におきましては、公害防止行政を強化する機関として、総理府に「公害対策審議会」を設置することといたしました。同審議会につきましては、その特色は、委員の構成を学識経験者のほかに、関係行政機関の職員を加えました。このことは、現在公害問題を所管とする事務が、各省庁に細分化されて一元的な行政が困難な実情から、これを補完し、関係行政機関の連絡を密にして公害防止の行政が積極化することをねらいとしたものであります。また、公害問題が高度な専門知識を必要とすることから、必要な際は専門事項調査のための専門委員を設置できることといたしたのであります。
 本案は、去る二月十二日に衆議院に提案され、十三日に社会労働委員会に付託されまして、こえて二十六日に提案理由の説明が衆議院の社会労働委員会で行なわれたわけでございます。
 以上が、本案を提案する理由並びに概要でございます。何とぞ慎重審議の上、すみやかに御可決のほどをお願い申し上げます。
○委員長(鈴木強君) 本日は、本案に対する提案理由の聴取のみにとどめておきます。
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○委員長(鈴木強君) 次に、社会保障研究所法案を議題といたします。
 政府より提案理由の説明を聴取いたします。小林厚生大臣。
○国務大臣(小林武治君) ただいま議題となりました社会保障研究所法案について、その提案の理由を御説明申し上げます。
 御承知のように、わが国の社会保障制度は、経済の高度成長、国民生活の向上に対応して、近年かなりの整備拡充が行なわれ、制度的には一応国民皆保険、皆年金の体制が確立を見るに至ったのであります。しかしながら、その内容をしさいに検討いたしますと、各種制度間に著しいアンバランスが認められるなど、いまだ解決を要すべき問題は少なくありません。今後西欧先進国の水準への到達を目ざして、社会保障制度の計画的、合理的な発展をはかるためには、すみやかに社会保障制度全般を根本的に検討することが必要となっているのであります。
 一方、社会保障制度を取り巻く社会的、経済的諸情勢をながめましても、経済の成長、地域開発の進展などとともに、政府の施策において社会面に対する配慮の必要性が高まっており、このような観点から社会保障に寄せられる期待もまたきわめて大きなものとなりつつあるのであります。また、戦後の急激な人口動態の変化に伴いまして、現在わが国人口の年齢構造の面で著しい変化が生じつつあり、老齢人口の増加、若年労働力人口の減少などを通じてわが国の社会経済構造を大きく揺がしつつあるのでありまして、この面からも社会保障に多くの新しい任務が加えられているのであります。
 以上申し述べましたように、わが国の社会保障が当面する諸問題は、きわめて重大であるとともに、緊急な解決が必要とされているのでありまして、このような観点から、社会保障全般についての基礎的、総合的な調査研究機関の設立が特に要請される次第であります。そしてこのような調査研究機関の設立の必要性につきましては、一昨年八月に行なわれた社会保障制度審議会の答申及び勧告におきましても強く指摘されたところであります。このような事情にかんがみまして、来年度から特殊法人として社会保障研究所を設立し、社会保障に関する海外の資料を求め、先進諸国の実情を把握するとともに、経済、社会、法制等広く関係専門学者の力を結集し、総合的な検討を加えることといたしたいと存ずるのであります。
 本法案におきましては、以上のような研究所設立の趣旨に基づきまして、研究所の目的や、それを達成するための業務の範囲を定めるとともに、役職員の任命など研究所の組織に関すること、予算、財務諸表その他会計の方法、厚生大臣の監督等について規定しているのであります。なお、研究所の運営につきましては、その権威を高め、かつ、その独立性を保つよう配慮し、公正中立な立場から適切な調査研究活動が行なわれますよう、特に慎重を期してまいる所存であります。
 以上がこの法案を提出いたしました理由であります。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。
○委員長(鈴木強君) 本日は、本案に対する提案の理由の説明の聴取のみにとどめておきます。
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○委員長(鈴木強君) なお、おはかりいたします。先ほど笠原四郎君の参考人の御出席について御賛同を得ておりましたが、さらに予防接種法の一部を改正する法律案審査のため、東京大学教授高津忠夫君、慶応義塾大学教授中村文彌君のお二人を参考人として御出席を求め、御意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(鈴木強君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
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○委員長(鈴木強君) 次に、予防接種法の一部を改正する法律案を議題といたします。前回に引き続いて質疑を行ないます。質疑の通告がございますので、順次これを許します。藤田藤太郎君。
○藤田藤太郎君 いま小児麻痺の問題は、三十六年をピークにして、ソークワクチンからセービンワクチンに研究処置が講じられて、だんだんその罹災者が減ってきていることについてはいいことでありますが、しかし、日本がソークワクチンの製造から生ワクチンに、セービンワクチンの製造に踏み切った。この前のこの委員会の議論は、その免疫性の問題、これがこの前の議論で、きょうの議題として学術的に説明すると、その次の問題は、日本でできたセービンワクチンの安全性の問題、この問題について、きょうはその免疫の問題から安全性の問題、ここに入っていかなきゃならぬと私は思うのであります。
 第一は、その免疫性の学術的な証明をきょうはするということでありますから、ぜひひとつそれを明らかにしていただきたい。本来、われわれがこの急性灰白髄炎と取り組んできた、小児麻痺と取り組んできた過程では、単に小児麻痺ではない、人間麻痺だという議論をしてまいりました。外国のデータを見ても、環境衛生、終末処理との関係において免疫になるのだという抽象論が議論されてきたのでありますけれども、非常に年齢の高い人まで羅病を外国ではしているわけであります。そこで日本が、今度の法案を見ると、一歳から十八カ月までの小児だけで、あとは免疫であるということじゃ私はわからないと思うのです。だから、これはぜひひとつ学術的な、医学的な証明をひとつしていただきたいと思うのです。
○政府委員(若松栄一君) 先日の御要求によりまして、本日お手元に資料といたしまして「急性灰白髄炎の免疫に関する資料」というものをお届けしてございます。これをごらんいただきたいと思います。
 最初はその総括的な説明でございます。
 昭和三十五年度以降乳幼児を対象としましたソークワクチンの接種、さらには十三歳未満までの生ワクチン一斉投与によりまして、好発年齢並びにそれに続く学童、生徒に対しまして免疫賦与を行なった結果、昭和三十七年の調査によりまして一歳から十五歳までのものは人工免疫によって八〇%以上の抗体保有率を示しており、それ以上の年齢層は自然感染によってほぼ同水準の免疫を保有しているということが判明いたしました。
 予防接種の実施により患者はきわめて急速に激減して、届け出で患者数昭和三十七年には二百八十九名、昭和三十八年百三十九名ときわめて僅少であり、しかも、精査いたしました結果、その三分の一程度が臨床的並びに血清学的にポリオ患者と確認されたにすぎない。また生ワク一斉投与によりまして野生のウイルスも駆逐され、まれにしか発見できない状況になってまいりまして、したがって、現在のところでは、たとい野生のポリオウイルスが地域集団に侵入いたしましても流行をひき起こすとは全く考えられない状態でございます。
 ここ数年間の緊急対策によりまして低年齢層の予防接種が完了し、現段階においてはポリオの予防接種は、絶えず新しく生まれてくる乳幼児を対象にしてポリオ予防接種が合理的に行なわれるわけでありまして、高年齢層にまで一斉に投与する必要は認められません。
 なお、人工免疫の持続性につきましては、かなり長期にわたるものと予想されておりますが、これに対しては、まだ経験がございません。十分な研究、検討を行なうため、将来とも、流行予測事業によって各年齢層の免疫度を引き続き調査してまいりたいと存じております。
 この資料の二ページ目、資料2としてあります表は、アメリカにおける一九五五年と一九五九年の年齢別の患者の発生状況、あわせて、日本のまだワクチンをやっておりません時代の昭和三十三年の患者の年齢別の発生状況を示してございます。ここで先般も御説明申し上げましたように、アメリカにおきましては、ソークのワクチンを接種いたします以前から、すでに年齢層はかなり高年齢に片寄っておりまして、それがワクチンを開始いたしまして全般的に低下してまいりましたけれども、なお高年齢層にもかなりあるわけでございます。これに対して日本の患者の発生状況は、ごく低年齢層だけに限定されておりまして、高年齢層はきわめて少ないわけでございます。それはこの実線であらわしました図で御承知いただけるかと存じます。
 なお、その次の資料3は、これは一九六一年と六二年に日本で行ないました国民の免疫の状況を調査した結果でございまして、上のほうに複雑になっておりますのは、一九六二年に生ワクチンを服用した後における免疫の保有状況でございます。右のほうの下の注釈にございますように、I型、II型、III型というそれぞれの型だけに限ってその保有率を見ますと、九十数%の保有率を示します。しかし、三型とも免疫を持っているというものになりますと、太い破線で書いてありますように、八〇%から九〇%の間ということになります。なお、このワクチンを服用しない以前の一九六一年の免疫の保有状況は、その下に斜めに伸びている図でございまして、これは赤ん坊の六カ月ごろに母親から獲得して引き継ぎました免疫が急速に低下いたしまして、そして、それからまた六カ月以後急速に免疫ができ始めます。そして、ほぼ学童ないしは中学校ぐらいの年齢までに大多数が免疫を獲得していく、これが自然免疫の獲得の状況でございます。ただ、自然免疫によって獲得されるほとんど最高の水準までワクチンによる免疫が形成されているわけでございまして、これによりまして、幼児からワクチンを投与していない青年層に至るまで、ほとんど平等な免疫が得られたということを示しておるわけでございます。
 なお、次の4の資料は、これは先ほどのグラフにあらわしました三十三年の患者の発生状況、三十五年、七年の患者の発生状況を実数でもってあらわしました。三十三年ではこのように、かなり高年齢層まで一応数が分散しております。それが三十七年にはかなり高年齢層がもうなくなりまして、低年齢層のほうに限局してきている姿が見えております。
 なお、次の資料の5は、これはただいまの実数を人口十万対の率に直したものでございます。
 最後に資料6がございまして、資料4の三十七年の二百八十九名という総数につきまして、生ワク研究協議会の先生方に全部個別のレポートを検討していただきまして、この中で真にポリオの患者であるということが認定される者だけを選び出していただきました。そういたしますと、先ほど申しましたように、約三分の一の七十六名がこれは間違いないポリオであろうということを認定されました。その年齢分布が資料6に掲げておるわけでございまして、大体二十歳以上では発生が確認された患者がないというのがこの調査結果でございます。
 以上のような観点から、生ワクの三十六年来の集団投与、特に十三歳未満、その十三歳は現在は十五歳以上になっておりますが、その一斉投与によりまして全面的に国民の免疫が向上している、そのために、もう発生がこのとおり押えられてきたというのが現実であろうと思います。
○委員長(鈴木強君) 質疑の途中でございますが、ここで先ほど御承認いただきました社団法人北里研究所副所長笠原四郎さんに、たいへん御多忙の中をおいでいただいておりますので、まず、笠原四郎さんから本問題に対する御所見を承りたいと存じますが、約二十分ぐらいを目途にしてひとつ御所見を承りたいと存じます。
 ちょっと速記とめて。
  〔速記中止〕
○委員長(鈴木強君) じゃ速記を起こしてください。
○参考人(笠原四郎君) 笠原でございます。突然のことでございまして、私ちっとも頭がまとまっておりませんし、ポリオの生ワクにつきまして、ごく概略のことを御説明申し上げようと思います。ポリオにつきましては、すでに皆さん十分の御知識があると存じまするけれども、まあ一応簡単にお話申し上げたいと思います。
 今度の予防接種法の改正で、従来と申しますか、ソークワクチンが使われておった、それをセービンの生ワクチンに切りかえるその理由ははたして何であるかということを、私といたしまして、簡単に申し上げたいと思います。
 大体ポリオという、これは御承知のとおり、ポリオ病原体は細菌でございませんで、例のウイルスというものでございます。ビールス病の予防ということにつきましては、一般的に申しますと、これは死んだウイルス、つまり不活性ウイルスよりも生きたウイルス、生ワクチンがいいということは、これは常識でございます。早い話が例の天然痘でございます。天然痘は、現在のところ、不活化ワクチンというものは無効でございます。効力が少ない、ほとんど実用にならない。したがって、天然痘におきましては生ワクチンを使っておる。何であるか、これは植えぼうそう――種痘でございます。
 次に、ポリオというものの発病機転――病原体がどこから入ってどうして発病するかということを考えてみますと、これも御案内のように、ポリオは径口――口から入る、つまり便、うんこですね、便の何がしかが口に入って、そして感染――ちょうど赤痢と同じようでございます。したがいまして、そのポリオウイルスを防ぐ。どこで防ぐかというと、これは明らかでございます。敵が海から上陸してくる場合、海岸で防ぐのが最も合理的でございます。したがいまして、ポリオウイルスは口から胃を通って腸へきて、腸で初めて粘膜を通って、やかましく言えばリンパ管へ、それから腸管のリンパ腺へくるわけでございますから、まず小腸の粘膜で敵を押えるのが最も合理的でございます。セービンワクチン――ポリオの生ワクチンがすなわちそれであります。まず敵がくる第一歩で防ごう、そういうわけでございますね。ソークワクチンはどうか、ソークワクチンは皮下注射でございます。つまり間接的でございます。ソークのほうは皮下注射いたしまして、そうしてその抗原によって身体に血清抗体をつくらせるということでございますね。つまり防御の武器は何であるかと言えば、これは血清抗体でございます。生ワクのほうは口から移す。やかましく言いますと、生ウイルスがどうやって一般的に申しまして病原のウイルスを防ぐかは、なかなかむずかしい問題でございますけれども、まあ私考えまするに、何と言っても第一線の腸粘膜細胞免疫ということになりますけれども、細胞が免疫になるということでございますね、それが第一次でございます。それから、腸の粘膜から、先ほど申しました腸間膜のリンパ腺あたりが第二次の防御線になるわけでございますね。粘膜からリンパ腺まではまだまだよろしいんです。腸のリンパ腺を通って血流へ入ってくると、いよいよ敵が入ってきたわけですね。そういうことになります。ですから、ソークワクチンはそれからのことなんですよ。第一線では防いでおらないということでございますから、学問的に言いましても、生ワクのほうがはるかに合理的であるということになります。
 次に、これまた一般的に申しまして、ウイルスでも細菌でも、予防接種というものは異物を皮下なりに注射するわけでございますね。そうして抗体をつくらせる。簡単に申せば、これは宿主――人間から言えば異物になるわけでございます。したがって、すべての生体というものは、異物が入ってくれば必ず外へ排せつする、不要のものを外に排せつするという能力があるものでございます。それは、ですからいろいろな場合がございますけれども、つばから出るとか、あるいは尿から出るとか、あるいはふん便から出すとか、あるいは汗から出すとかございますけれども、とにかく異物なんです。したがって、たとい有効なものでありましても、早く体外に排せつされてしまう。ところが、生ウイルスの場合では、先ほど申しましたように、細胞なり組織なりが免疫になるのでございます。ですから有効期間が長いということは、これは自明の理でございます。それが第二の理由でございます。
 次に、注射と生ワクチンを飲むのと、しかも、その対象というのは幼い子供である、お医者さんのところへ行けば子供は泣く、注射の針で刺されて痛いから。それよりも口からゆくと、しかも、そこに甘い砂糖の液が入っているという点で、まあ簡単に投与できるという利便がございます。
 それから、次に、ソークワクチンとセービンワクチンを比べて、価格はどうかということは当然問題になります。これはセービンワクチンのほうがはるかに安くできるということ、これまたそれぞれの製造所をお調べになるとわかるところでございまして、ソークワクチンのほうがはるかに高価につきます。
 それから、先ほど効力で期間のことを申し上げました。それから、その安くつくということは、これはいろいろございまするけれども、製造施設がりっぱであり、製造技術がじょうずであるならば、まあこれはセービンでもソークでも、組織培養という技術を使うのでございますけれども、非常に力価――おわかりだと思いますけれども、有効度、ウイルスの力といいますか、量と申しますか、それが非常に高く出るのでございますね。実際投与するときはそれを薄めます。ソークの場合にはほとんど薄められないのですけれども、生ワクの場合には薄められる。なぜならば、病原体が生きているのですから、早い話が一匹でも二匹でも――これはそういう数字はわかりませんですけれども、非常に微量でも、さっき言った腸粘膜からからだの中へ入れば、それがわんさと天文学的な数字でふえるわけでございます。不活化ワクチンではそういうことはない、殺しちゃっているわけですから、ウイルスはふえないわけです。おわかりでございますね。希釈ができるということ、したがって、ソークよりも安くできるということになりますね。そんならもう安いほうがいいことは、これはきまっているというわけでございます。まあ大体のところ、まだ少し漏らしているかもしれませんけれども、とにかく不活化ワクチン――ソークワクチンよりも生ワク――セービンワクチンのほうが有効度が高くて有効期間が長くて、しかも、安全である。まあ安全のほうは詳しく申し上げませんでしたけれども、安全で、もう絶対安全でございます。これは安全のことをちょっと申し上げますれば、この日本で取り上げましたセービンワクチン、つまりアメリカのセービン博士が発明いたしましたポリオの種――株でございますね、これは現在まで発見されております弱毒生ワクチン用ポリオウイルスと申しますか、一番セービンの種が安全なんでございます。で、ソビエトで使ったのは、日本よりも一、二年ほど前に非常に多くの民衆に使ったわけでごさいますけれども、この種は何か、これはドクター・セービンの種でございます。日本の国産品と同じ種、それをちょっと詳しく申しますと、ドクター・セービンという方は、これはアメリカでございますけれども、ほんとうの由来はスラブ系なんでございます。それで、アメリカでは、最初のころはセービン博士の業績に対して非常に批判的だった。で、セービン博士は、ぜひ自分の発明した弱毒ウイルスの種につきまして大衆に野外実験をやってみたい。ところが、アメリカで取り上げてくれない。したがって、ソビエトにまあコネクションができた。そうしてソ連あるいは共産圏内、チェコスロバキアで使ったわけですね。それで、その種はもちろんセービン博士の種を送りまして、セービンの指導のもとにソビエト人がつくったわけですね。日本のものはどうか。これはやはりドクター・セービンが、これは厚生省あたりにもいろいろお骨折り願ったのですけれども、日本が使うのだがどうかと、セービン博士に日本のために種を送ってくれと交渉されたところが、セービン博士は喜んで、パテントも何も要らぬということで、無償で分けてくだすったわけです。そして、そのつくり方につきましても、去年の六月でしたか、日本でのセービンワクチンのポリオ生ワクチンの製造基準というものが告示されまして、その基準というものは、これは要するに大もとはセービン博士の原稿がもとでWHOがこれを承認して、それを日本の厚生省が、ほとんど大綱はちっとも変わっておらぬと思っております。ですから、結局ソビエトの使ったのと用いました技術は全く同じわけです、セービンが指導しているのですから。また、そのセービンの種を使い、セービンの方法で使わなければセービンもおれの種はやらぬというので、一切の責任はセービンが持つと言っておるわけですから、全然同じ種で、全然同じしかたでやっておる。
 なお、ちょっとここで申し上げなければならないのは、ソビエトで使いました種は、セービン博士が弱毒化ウイルスを見つけてから間がない種でございまして、この種は弱毒化でありますが、少し不都合なウイルスが入っているのです。なぜかといいますと、代継ぎに使っておりますサルから迷入してくるウイルスSV40というサルのウイルスが含まれているのです。これは動物実験をやりますと発ガン性――ガンをつくる危険性がある。そういった種をソビエトでは大衆に投与したのですね。しかし、ソビエトによれば、何らの事故がないとはっきり言っておるわけです、一例も事故はないのだ。それで、三十六年に厚生大臣の責任のもとにおいて大衆に飲まされたわけです。その種はソビエトから送られたわけです。その種にはSV40が入っておるのです。それで今度本年の四月一日にドクター・セービンがI型、II型、III型のオリジナルのスタンをくれましたが、セービン博士は、SV40が入っているのだから、これを除かなければいかぬと、除くにはこれこれの方法があるから、これを実施しなければいかぬ。したがいまして、日本でつくりましたときには、セービン博士の指示に従いましてSV40を完全に取っている。その期間が約二カ月ぐらいたっておるのだけれども、取ったのはソビエトで使ったのよりも日本で用いましたセービン博士の種はなおさらに純化している、完全な白砂糖になっておるという種でつくられたものである。したがって、厚生省あるいは予防衛生研究所が指示している種は完全に安全なもので、純化されたもので使われておるので、何らの危険性はないということを申し上げたいと思います。
 まだ言い残したことがあると思いまするけれども、これで終わります。
○委員長(鈴木強君) 高津東大教授にお見えいただきましたので、引き続き、予防接種法の一部を改正する法律案審査のために、径口生ワクチンの予防接種に関する問題について御意見を承りたいと思います。
 たいへんお忙しい中をおいでいただきましておりがとうございました。ただいま本委員会で審査をいたしております生ワクチンの、特に安全性の問題が論議になっておりますけれども、これらの問題を中心にして、約二十分間を目途としてお述べいただければ非常にしあわせに存じます。
○参考人(高津忠夫君) 私、小児科の臨床家でございますが、もちろんこのポリオの患者は以前たくさんみておりまして、その患者がなくなることを願っていたわけでありますが、御承知のように、生ワクチンが世界的に研究され、わが国におきましても使うことになりまして、当時私も生ワク協議会のメンバーの一人として研究に携わったわけでありますが、私ども臨床家としては、これはもうだいじょうぶだというものでないと使いません。初めセービンのワクチンをわが国で使うということで、使う前にある程度の研究をしようということになりましたが、私としては、もちろん危険性のあるものは、一般の子供に、たとい研究という理由であろうと、使うことはいたさないのが私どもの臨床家のやり方でございます。当時この生ワクチンは、まずだいじょうぶだという世界的のデータがありましたので、私も研究に参加していろいろやったわけでありますが、はたして期待のとおりに、全く危険はない、しかも、その効果は期待していたとおりでありまして、現在私ども小児科の医者として、ポリオの患者、いわゆる昔の小児麻痺の患者は、ここ一、二年、この生ワクチンが普及して以来見たことはございません。現在、学生にもその患者を見せることはできない。日本のいまからの学生は、ポリオを知らない医者ができ上がる、たいへんこれはけっこうなことだと思っております。しかし、何しろ生きものでありますので、私どもこれを使う際には、十分な用意といいますか、あり得る危険性も常に考慮に入れながら使っております。これはすべての薬に対して私どもそうでありまして、新しい薬が次から次へとできますが、どの薬も、初め使うときは非常な慎重な注意をもって使います。新しい薬をおそれて使わないのは、これはいたずらに新しい医学におくれるばかりでありますので、どうしても新しい薬を使わなければならない。その同じような心がまえで生ワクチンに対処して、そして期待どおり今日に至って、現在、理論的には、学問的には、ある型のワクチンに対しては多少の危険性は想像され得ます。しかし、これは純学問的に言えば現在の予防注射は全部そうでありまして、その危険性も多少は考えながら使う、しかし、実際はほとんどない、私どもの見聞した限りにおいては、ないと言っていいと思います。これはすべての医療行為には多少の危険性といいますか、ある程度の副作用を伴うというのが私どもの常識でありまして、絶対に安全な医療行為はないということも幾多の人が論文に書いておりますし、また、絶対に安全な薬はない。そういう意味から考えまして、この生ワクチンも優秀な薬と同じような効果だと、そういうつもりで使っております。
 二十分というお話でありますが、どういう方面を述べたらいいか、現在私の生ワクチンに対する考えはただいま申し述べたとおりでありますので、何か御質問があったら答えさしていただくということにさしていただきたいと思います。
○委員長(鈴木強君) どうもありがとうございました。
 なお、国立予防衛生研究所から多ケ谷ウイルス部長にも御出席をいただいておりますので、質問者の方には、そういうこともひとつお考えの上で、それでは質疑を続行していただきたいと思います。
○藤田藤太郎君 私は、先ほど厚生省の説明で免疫性の問題が発言されました。しかし、私は、この第2表を見てみて、この前の三十六年に問題になりました当時の、たとえばアメリカとか外国の表、ここにはアメリカだけしか出ておりませんけれども、あの当時の表と非常に大きな違いがあるわけですね。私は疑問に思う。委員会に正式に出されたアメリカのポリオ罹病者の関係を見ると、零歳から二、三カ月までから五カ月くらいまでは急速に上がって、四十二歳くらいまでは同じ水平線で進んで、四十二、三歳から落ちるという表をわれわれはこの議論の対象のときにもらった。ところが、これを見ると、こう何かだいぶ違った表になっている。私は、非常にここのところ疑問を持つわけであります。
 それから、第二点は、いまも笠原博士のお話にもございましたが、免疫の問題が、主として、し尿を通じてそのポリオのビールスが伝播して免疫になる。そこで、この前の議論のときには、環境衛生の発達したところは、要するに四十幾つまでは同じような伝染性、罹病性があって、環境衛生のおくれたところにおいては、その、し尿を通じて免疫になっていくんだというお話がありました。まあ非常に残念なことでございますけれども、そういう実態が、私はこの前の議論のときからも、ただそのことだけで話が尽きていると思います。そうすると、学術的にどういうことなのか、どういうかっこうになるのか。で、厚生省のこの前の委員会のお話のときには、その生ワクを投与されたものが、それが伝播をしていく分と、し尿の分とが混合して免疫性が出てくるんだと、こういうお話。いま笠原先生のお話もそのような御発言が私はあったと思うのであります。そうすると、何でそれをはかるのか。これは抽出統計で、これは統計上のあらわれた数字をこの表に書かれたのだと私は思うのですが、医学的、学術的にはそれはどうなるのか。医学的、学術的には、その免疫性の根源をなすものは、単にし尿とかワクチンの投与を受けた者から、人体から出ていくので免疫になるという、まあ今日では生ワクを投与してからの二つの分から出ているわけです。その証明をそれじゃ何でするのか。ただ抽出統計で統計の対象になったものを調べて見たらこういう結果になりましたと、主として罹病された人を中心に出てきているのだと思うが、非常に九千六百万人も国民がおるのでありますから、その中で、それじゃどうしてその把握をするのか。この表を見ましても、今日一番最後の表を見ましても、三十七年度で罹病された方の年齢が出ております。実際問題は、零歳は四人、一歳は二十四人、二−三歳十六人、四−六歳七人、七−九歳八人、十歳から十四歳十三人、その次は四人と、こうなってくる。そこでこういうことになっているわけであります。そうしますと、生後三カ月から十八カ月だけをやれば免疫があって、あとはもういいのだという理屈は私は成り立たないと、こう思うのです。ですから、そこらあたりの問題が明らかにならないと私はなかなか納得がいかないのではないか。いずれ参考人の方がお見えになっているから、参考人の方々にこの問題をお聞きして、厚生省の人にあとでお聞きしますけれども、これはひとつ厚生省の方に、いま私の申しましたことを聞いておいていただきたいと思う。そこで、その問題を厚生省から一言いただいて、それから笠原博士にその免疫性の問題についてお話を伺いたいと思います。
○政府委員(若松栄一君) この第2表の国民の総合的な免疫度の上昇ということと、実際に患者があらわれましたこの6表の成績と比べまして、すでに低年齢層に免疫付与を行なった結果、実質上自然免疫につながる高年齢層までの免疫程度がほぼ平等の水準にまで達しておりますので、今後は生まれてくる新しい年齢層の者だけにやっていけば、将来とも、日本の高年齢層に至るまでが同じような高い水準の免疫が得られるはずであるというふうに解釈しているわけでございます。
○藤田藤太郎君 どうも……。だから私は笠原先生にお尋ねしたいのですが、いまのようなことでは納得がなかなかできないわけでありますが、文化国家といいましょうか、文化国家ということは言わなくてもいいが、環境衛生の完備したところでは、小児麻痺じゃなくて、人間麻痺という実態をあらわして今日まできているわけです。
 そこで、免疫の主たるものは、し尿の問題、それから、ワクチンを投与した人体から伝播するので免疫だ、こういうことでありますけれども、しかし、その学問的な、医学的な証明はどういうことになるか。実際の統計を見てみると、いま三十七年度の統計を見たように、いまのお話ですと、零歳から二歳くらいの者に投与すればいいといいますが、三十七年度の表は、私が読み上げましたようなかっこうになっているわけでございますから、その点について笠原先生の御意見を承りたい、こう思うのです。
○参考人(笠原四郎君) たいへんむずかしい御質問でございまして、学問的にそうですね、あまりはっきり申し上げられないのでございますけれども、とにかくすべての伝染病、ことにビールス病というものは弱年者ほど――弱年者と成年から以上の高年齢層ですね、これを比べたら、一般的に弱年者、幼弱者のほうが、すべての、ことにビールスに対しては感受性が強いということは申し上げられます。たとえて申し上げますと、コクサッキーというやはり腸内ビールスがございますけれども、これもやはり患者の便などから病原体が出るのでございますけれども、それをそのコクサッキーのビールスを分離いたしますときには、ハツカネズミ――マウスを使うのでありますけれども、非常に若いもの、つまり生まれてなおおっぱいを飲んでいる程度の乳幼児のハツカネズミの脳内に材料を注射いたしませんとネズミが発病しない。つまりビールスが分離できないというような事実がございます。そういうものは一般にみんなそうでございます。したがいまして、ポリオの場合に、単に免疫ということだけでなしに、宿主、組織、細胞のレベルにおいても、幼弱なものほどかかりやすい。これは細胞が若々しくて新陳代謝が非常に旺盛である、あるいはいろいろな酵素系も非常に盛んに動いている、ウイルスというのは酵素系を利用して細胞の中でふえるわけでございますから、その理屈は納得いただけると思うのでございますね、そのことが一つございますね。
 それから、高年者になればだいぶんポリオに対する抗体が上がってくる。それが私こまかい数字はとても申し上げられませんけれど、大体高年者といったって小学校の五、六年から中学以上になりますと、現在の日本の環境衛生の状態ではアメリカと違うわけでございますね。相当もう抗体がある。つまり感染しちゃっているのですね、それがいま日本の環境衛生の状態でございます。日本は文化国家といえども、残念ながらまだまだ低いので、ポリオの患者の発生と年齢の曲線など見ますと、日本はまさにエジプトと同格なんでございます。その程度でございますので、まだまだ便からビールスが出て、それが口に入って自然免疫になるという率はまだ相当にあるだろうと思うのです。これが生ワクが全般に毎年定期的にどんどん投与されていけばそういうことはなくなろうと思います。生ワクが投与されますと、今度世間に広がっているビールスの排せつというようなこともだんだん少なくなるというようなことは、これは原則的なことでございます。
○藤田藤太郎君 どうもよくわからないのでありますが、高津先生にお尋ねしたいのですけれど、いまの私が質問していることについて、免疫性の根拠が、し尿や投与を受けた者の人体から発生することによって免疫になるということのお話なんですが、それは学術的といいますか、どういう形でどうなっていくのかというようなことについて触れられたことはどうでございましょうか。御意見があったらお聞かせいただきたい。
○参考人(高津忠夫君) 口から入るポリオのビールスがその代表でございますが、そういうビールスは口から入ると感染するが、免疫がある人は感染が起こらないのです。そのうちに不顕性感染といって、全然自分は病気にならない、免疫だけができるという事実がございまして、大体私どもの研究によりますと、生ワクが投与される前でも、ポリオは千人感染しているうちに約一人実際発病しているという割合で、大部分の人は知らないうちに免疫ができる、そういうふうにして日本人われわれは全部免疫ができているといろわけでございます。
○説明員(多ケ谷勇君) 先ほど来の御質問によって、私どもが調査しております成績を御参考に申し上げれば御理解いただけるかと思います。実は、その詳しい数字は、こういう話になると思いませんので、持ってまいりませんでしたけれども、もし御必要であれば、いつでも私どものほうでコピーをとって差し上げられます。
 私どものやっております仕事は平常時の、つまり一番ビールスの伝播に一役買うといわれている健康な小児ですね、ワクチンを飲もうと飲むまいと、それの毎月の便からどういうビールスが出るかということを、東京近郊の保健所の御協力を得まして、昭和三十七年度、三十八年度の二カ年にわたって毎月続けております。それで、したがって、とれてまいりますポリオビールス、それから、ポリオでないビールス、そういうものを全部分類、同定いたしまして、その結果によりまして実際にポリオビールスがどれくらい社会にはびこっているか、その推定をするわけであります。それで私ども得ましたデータによりますと、三十七年、三十八年とも、ポリオビールスがとれますのは、生ワクチンを投与した直後の約一カ月間だけであります。すなわち、生ワクチンを投与して、それが便に出てくるビールスだけでありまして、そのほかの月には一切ポリオビールスはとれておりません。それから、さらに私どもの研究所におきまして、ポリオの容疑患者、ただいま各都道府県の衛生研究所でもかなり検査はできますが、なおそれができませんところは私の研究所へ材料を送ってまいります。これは高年齢層も低年齢層もいろいろございます。それで、そういう糞便の材料からポリオビールスを分離し、それから、それの血清にポリオ抗体があるかないか、そういう調査をずっとやっておるわけでございますが、これも三十七年、三十八年の、つまり生ワクが三十六年度後半に使用しました後はポリオビールスがとれた例というのは、生ワクを飲んだあとで何か少し疑わしい疾患にかかったというような例が一、二ありました以外は、すべてビールスがとれておりません。したがって、これは現在野生のビールスというものは、もう日本から影をひそめたのではなかろうかとわれわれは思っております。ただ、一、二まだ現在調べておる最中のビールス、あるいはこれから調べようと思っておるビールスもございますが、こういうものは、たとえば三十八年の春三月頃に九州で分離されたIII型ビールス、これはIII型の投与は三十八年は五月でございますから、そのころIII型投与がされているはずがない。しかし、そういうのが一例出ている。ひょっとしたらこれは野生じゃなかろうかということで調べようと思っておりますが、その程度にしか、つまり生ワク投与期以外の時期に、全国の大学研究所のデータも私どもにお送りいただいて調べておりますが、野生ビールスらしいもの、いわゆるポリオビールスはとれていないのであります。したがって、現在この社会から野生ビールスといろものはほとんど影をひそめたと考えて間違いない。そうしますと、つまり高年齢層で万一ポリオの抗体をたまたまI型あるいはII型のみしか持っていない、I型、III型は持っているけれども、II型だけないというおとながいましても、回りに野生ビールスがない以上、そういう方がポリオにかかる危険性というものは九九・九九%ないと、つまりこれが集団免疫の通則でありまして、まあソークワクチンのときもいわれましたし、生ワクのときもいわれましたけれども、集団の八〇%ぐらいが免疫を持っていれば、その集団でビールスの伝播の鎖が断ち切られる。したがって、そこでたまたま免疫を持っていない人が集団にまぎれ込んでいるとしても、まずまず危険性はない、そういうふうに考えるのが疫学のこれは通則でございますが、現在の日本のポリオに対する免疫の状況というものは、それをさらに上回った状況であるとわれわれは考えております。もちろんこれは将来、先ほどからお話のありますように、糞便が口から通ってということで野生ビールスが相当はびこっておりますれば免疫の更新ということはあるわけです。つまり何べんも口から感染する。ただし、そのときには二度目、三度目に感染したときには症状はほとんどありませんし、腸管のビールスの増殖も非常に弱いものでありますけれども、免疫はそのつど幾らか上がっていく。これをわれわれはブースター効果と言っております。そういうものは一応なくなるわけであります。おとなについていえば野生ビールスはありませんから、したがって、今後五年、十年たちましたときにおとなの抗体がどう推移するか、これは非常に大きなわれわれの関心事でございます。それで、これにつきましては、われわれのほうも一緒になりまして、厚生省の防疫課を中心に、各都道府県で毎年ポリオ抗体保有率というものを、流行予測という予算で実施しております。したがって、これが毎年成績が、今後逐次高年齢層の抗体が下がっていくような傾向が見えました場合には、やはりまた生ワクのあるいは一斉投与ということも考える必要があるかとは思いますが、現在の時点においてはそういう必要はまずないというのがわれわれの考えでございます。
○藤田藤太郎君 ひとつ、いまの多ケ谷さんに重ねてお尋ねしますが、昭和三十五年、六年に非常に何千という罹病者が出たわけです。その当時はそれじゃその野性ビールスがあってかつて何千という罹病者が出たんですけれども、それが今日三年ぐらいの間に野性ビールスがなくなったというのは何が原因でございましょうかね。そこらあたりを御研究なさったことがありますか。
○説明員(多ケ谷勇君) ただいまの御質問は、つまりこれは直接それを証明するということは非常にむずかしいわけでありまして、疫学的にまず世界各国の学者の一致しております見解といたしまして、つまり感受性のある低年齢層ですね、日本でいえば。アメリカあたりのワクチンを投与する前はもう少し年齢層が高いわけですけれども、要するにポリオに感受性のある者が一人ポリオにかかりますと、そうしますと、その人が発病するしないにかかわらず、ビールスがその回りじゅうまき散らされる。それで、先ほど高津教授が言われたように、千人おそらく保有者があって一人患者が出るくらいの率で感受性層にまき散らすわけです。しかしながら、そのまき散らす範囲というのは感受性の人間の接触範囲に限られておりますし、それから、ポリオの流行期が夏の間でありますから、したがって、ほかの膓管でふえるというビールス、すなわちコクサッキー、エコーというようにタイプがいろいろございます。これは六十種類ぐらいタイプがございます。そういうビールスがはびこっておりますと、干渉現象によって、ビールスが野性でありましょうが、ワクチンビールスでありましても、それに押しのけられてそこにうまくつかないということがございます。そういうことで自然のビールス伝播のポリオの鎖というものは無限に広がるものでなく、ある一定のところで断ち切られるわけです。そうしますと、そこで断ち切られて、そこでかからなかった人間が翌年またそこにたまってきます。それでその集団は、たとえば北海道である年はやりますと、翌年は大体北海道はあまりはやらないのが通則です。と申しますのは、先ほど申しましたように、免疫されている層がかなり広いですから、そこにポリオの野性ビールスが残っていても、その鎖がちょいちょい断ち切られる。ところが、二、三年後にそこに感受性の年齢層がたまってまいりますと、先ほどのようにまたぱっと広がる。そういう局地的な流行を繰り返しつつ、あるいは北海道、九州、あるいは中国ということで、毎年患者の発生の波を示しながら推移してきて、それが特に北海道に相当しばらくの間そういう流行がなかったために、感受性の人口が蓄積されてあれほど大きな人数の患者を出した、そういう現象とわれわれ考えております。したがって、生ワクチンを、ほかのポリオ以外の膓管系のビールスの比較的はびこっていない冬から春先の間に投与するということは、そういう意味合いも含めまして、つまり干渉現象によって生ワクチンの効果を妨げられない、つまり生ワクチンを飲ました者は全部免疫になるようにという配慮からもそういう時期に投与するのでありまして、ポリオの流行は大体夏で、むしろそういう野性の雑草のようなビールスとせり合ってポリオビールスが一番勢力を占めているビールスだという状況にあったわけであります。したがって、生ワクチン投与によってそういう感受性層というものがほとんどすべて免疫になる。そうしますと、そこで感受性のある者が、生ワクをもちろん三十六年に大量投与しましたから、その年はかなりまだ野性ビールスは残っていたわけであります。しかしながら、その年も秋以後にいろいろ検便した結果では、やはりポリオビールス自体がほとんど出なくなっているという現象をわれわれ見ております。したがって、生ワク投与後三、四カ月もたてば、まずその集団の野性ビールスというのは、結局次にくっついてふえる宿主がなければ自然消滅してしまうわけであります。そのような現象のあらわれとわれわれは考えております。
○藤田藤太郎君 いずれまた何ですが、そこのところは三カ月から十八カ月で、あとは免疫だということには、どうもいまのお話だけでは私はわかりにくいのですけれども、そこで、参考人としておいでいただいている笠原先生に、私は安全性の問題についてお尋ねをしたい。
 先ほど御発言がありまして、セービン博士のセービンワクチンとまでいわれておる問題で、これは世界中、このワクチンによって世界の人類が非常に助かったという、また非常に人類に貢献されたということについては、私たち喜んでいるわけです。そこで、先ほど仰せになりましたセービン博士がワクチンをつくって、そうして非常に大きい規模でソ連で行なわれた。ソ連の投与の中では、まだ問題点は少しは残っておったけれども、それを排除して、日本のワクチン製造がセービン博士自身の指導によってSV40ですか、それが取り除かれて、すでに日本はより純度の高い安全性でワクチンを製造するようになったのだ、こういうことをおっしゃったのです。そのことを聞けばわれわれはもう安心ということでいい、ただ一口で言えばそういうことになるのだと思うのです。国民全体からすればあなたのおっしゃったとおり。ところが、問題は、この日本でおつくりになったものを、まあ人体実験というようなものは人権上非常にむずかしい問題でございましょうけれども、しかし、安全性の検査と申しましょうか、これは安全であるという検査というものはどういう形で行なわれているのか、あなたのほうで生セービンワクチンをつくっておられると私は思うのですが、だから、国民に投与するまでの検査の安全性の手続というものはどういうぐあいにおやりになっておるか、そこのところあたりを私はお聞きしたいと思うのです。
○参考人(笠原四郎君) ワクチンでございますね、これを使用される薬品ですね、細菌製剤として国が許可しなければ一般に製造、発売、使用ということはできないわけでございます。で、それにはセービンワクチンであれば、基準というものが厚生省から告示されているわけでございますね。そうしてメーカーがつくって、そうして自家検定する。製造所が自分のところで自家検定をいたしまして、で、自家検定は、基準に従ってあらゆる検定法をやりまして、そうして安全性はもちろん、効力も十分あるということのデータを予防衛生研究所に差し出しまして、その上で予防衛生研究所では国家検定をいたすわけでございます。それで国家検定をして、その基準に合格して初めて製品になるという段取りになります。それで、一般に細菌製剤というものは、一切自家検定と国家検定に合格しなければならないのです。それで野外実験ということですね、これはいままですべての細菌製剤について申し上げられることでございますけれども、初めて開発されたワクチン類というものにつきましては、つまり外国でもつくっておらないワクチンでございますね、それにつきましては、必ず野外実験を、その規模にはいろいろございますけれども、一通りやりまして、そうしてそのデータを薬事審議会に答申いたしまして、薬事審議会でそれをまず第一段階に許可されなければ製品化できないことになっております。その例は日本脳炎ワクチンというものがございます。これは自分のとりました種で、これは世界じゅうで使っておる中山という種があるのでございますけれども、これは日本脳炎ワクチンというものは、英国でもアメリカでも、その他外国ではつくっておらない、日本だけのものです。したがいまして、私が当時厚生省の研究所で委員長をやっておりましたときには、試作品をつくると、それにつきましては希望者の許可を得て――子供でございますから親御さんの許可を得て、それでそれぞれの数カ所の伝染病院に頼みまして、そうして実際野外実験をしてそのデータを集めて、安全性がある、抗体が十分あがるというような成績を出しまして、薬事審議会を通って、そして予研から基準が出て、その基準に従ってまた量産に入って初めて製品化して現在使われておるという段取りになります。しかし、セービンの生ワクチンにつきましては、これはすでに先ほど申しましたように、世界じゅうで使っているものである。しかも、セービンの指導と、そうして国の基準に従ってつくられて、自家検と予防衛生研究所の試験にパスしたものである。それについて野外実験をするということは、私、まあメーカーのほうで道義的にやるという程度のことでありまして、そういうことは学問上には私は必要ないんじゃないかと思うんです。もし国の基準に従ってつくって合格したものを、あらためて人に野外実験をしなきゃならぬというような、ことに生ワクについては、セービンの種を使って、そのつくり方に従ってつくっているものについて、なおかつ野外実験をせにゃならぬというのは、日本の技術者の技術に疑いを持たれるというならば、これは別問題であろうと思うんです。とにかく国民としては早く投与を受けたいだろうし、また、受けさせなければポリオ対策として間に合わないわけであると、このように存じます。日本でもってセービン博士以外のもしスタンを使って、そして日本独特の製造法に従ってやったというワクチンであるならば、私は、当然野外実験をしてちゃんとデータを集めなきゃならぬと思うのでございますけれども、そこまで日本の技術を疑われる必要は毛頭ない、単に道義的な意味じゃないかなと、もしやるとしてもですね、このように思います。
○藤田藤太郎君 そういたしますと、セービン博士の生ワクが世界の中で使用され始めたのは六、七年前からです。で、そのセービン博士のワクチンを各国が製造をするようになりました。その各国は、いま笠原先生の御意見によると、各国はその野外実験と申しましょうか、人体安全テスト、そういうことを各国はやってきたのかやってこなかったのか。日本も、セービンの指導といえども、初めてこの生ワクを製造したのでありますから、時限はズレております。六、七年――もうちょっとになるかもしれません。ようやく昭和三十六年に日本がソ連の生ワクを輸入して投与したのが初めてで、だんだんと学術的にも生ワクがいいという結論をお出しになって、効果があるということで、われわれもむしろ賛成をしてきてやったものでありますけれども、各国がセービンのワクチンを国内生産するときに、セービン博士を信用して、その本人に疑いを持つとか持たぬとかいう感情で――その野外実験というか、人体安全テストというものですか、人権にかかわる面も深くゆくと出てくるかと思いますけれども、いずれにいたしましても、そういうやはり安全性の中でテストが行なわれてきたと私は思うのですが、いままでの、これは厚生省でも笠原先生でもけっこうですから、そういう状態の中で外国はどういう手続をとってきたかということをお聞きしたいのです。
○説明員(多ケ谷勇君) ただいまの御質問に関しまして、大体いままでのセービンワクチンが使われますに至りましたいきさつを御紹介いたしますと、セービン博士がそもそもこのワクチンの研究に手をつけましたのはずっと古くて、一九五〇年ごろでございます。それで、その後いろいろ株の改良をやりまして、その間はセービン博士の手元で、ごく小規模の人体実験は、そのほかのコプロフスキーとかコックスその他のいろいろな人のワクチンがございました。それぞれの学者の手で行なわれたと同じぐらいの、数名ないし十名ぐらいの小規模の実験を経て株を改良いたしまして、それで、現在使われておりますような株に到達いたしましたのは大体一九五六、七年のころのことであります。それでセービン博士も、これならだいじょうぶということで、一ぺんにかなりの大量のワクチンを会社に依頼してつくったわけであります。それで、これをWHOを通じまして、各国に使ってみてくれないかということで寄贈したわけであります。そのワクチンはソ連にもいきましたし、それからシンガポールで一九五八年にI型の流行にII型ワクチンを使ったという、これは十万人ですか、だいぶたくさんの人間に使っておりますけれども、十九万人ですか、そういうふうなワクチンの大きなロットをつくられましたのはそのときであります。それで、大体その同じロットを使いまして各国の実験をした結果、これならだいじょうぶだというところで民間製造が開始されたわけであります。それで、ソ連は民間ではございませんので、政府機関がやはり同じく一九五八年ごろからつくり始めまして、それで小規模のテストから逐次大規模のテストへ移っていった。それからアメリカ、イギリス等も同じようなことでございます。それで、そのころはまだアメリカでもイギリスでも、基準はまだできていなかった時代であります。すなわち、民間の会社が試験的に製造して、政府に基準をつくってくれと要求すると、政府のほうはこれを取り上げて、その基準をどうつくるかという検討をする。WHOも同じでありまして、WHOが各国からいろいろそういう情報を入れまして、ソ連、アメリカ、カナダ等のそういう民間製造がぼつぼつ始まった当時のいろいろ記録を参考にしましてまあ基準案をつくる、そういう時代にこのようなことが行なわれたわけであります。それで、わが国でワクチンを用い始めました一九六一年ですか、昭和三十六年になりますが、そのころはすでにアメリカ、イギリス、ソ連、すべて基準をつくって、ごく普通に製造をし、使用をしていただいた次第になっておったわけであります。それで、わが国では御承知のように、昭和三十五年に北海道の大流行に際しまして、生ワクチンを使うべきかいなかという議論がありまして、これは当時としては各国ともやっと基準ができたという段階で、日本人に使った経験というものはほとんどないということで、まず生ワク協議会の手で、とにかくセービンの株が一番現在のところよさそうだから、コプロフスキーやコックスよりはセービンを使うべきであろうという学者の御意見によりましてセービンワクチンというものを取り上げて生ワク協議会が仕事を始めたわけであります。それで、小規模の人体実験をここにもおられる高津教授や中村教授の御協力でやりまして、その最中に九州でどんどんふえるという状況を見まして、もはや生ワクチンのいわゆる小人数で臨床的に観察した限りでは、直接のそういう安全性というものはもう十分立証された、危険性はないと認めるということで、いきなりまず九州の福岡、北海道地区に大量の投与が行なわれたと思います。その後カナダ、ソ連の千三百万の投与がありまして、さらに、その後ずっと政府のポリオ対策として、いままでに大量の投与が行なわれてきましたことは御承知のとおりであります。
 以上がただいままでの大体世界各国の状況とわが国の状況でございます。
○藤田藤太郎君 問題は、ですから安全性の問題として議論をするなら二つ出てくると思うのです。一つは、セービン博士のワクチンが世界じゅうで基準をつくりながら改善をしてきたのだから、もういいんだというものの見方でございます。もう一つは、日本で初めて生ワクを製造する、これは外国から輸入しなくても、日本で製造することはいいことなんですから、生ワクを製造するときに、いままで日本は外国からのそういうテストをしたものの効果があったものを緊急処置としてやってきたわけでございますけれども、日本で初めて製造をし、投与をする、国民を守るというときに、それじゃ前段の第一条件のように、セービン博士の指導があるからいいのだというだけで事を済ましていいのかどうかというところが聞きたい。これは主として学問的よりも行政的な判断の問題になろうと思いますけれども、それでいいかどうか、安全性というものが。それで日本の関係者全部が、国民も納得してそれを理解するかどうかということなんだと私は思うのです。単に機械的に、外国がしたから日本がしたとかいう機械的な問題じゃなしに、これはやはり受ける国民の納得、それから専門学識者といいますか、それに担当された方々の理解納得というものなしに、日本だけはそれじゃセービン博士の言うことだけでいいんだというところが私はむずかしいところだと思う。そこらあたりの判断はまたみんなの意見があるところだと思う。だから、そこらあたりの問題というものが学問的にも証明し、国民が納得する説明といいますか、実態というものがあらわせるかどうか、そこらが私はいま問題ではなかろうか、本来、私のこの議論をする前提は、国内で生ワクをつくる、つくって国民を守るという前提に立っているわけですから、その上に立って、いまのようなセービン博士だからいいということだけで済まされていいのかどうかというところなんです。御所見があったらもうひとつ。
○参考人(笠原四郎君) 藤田先生の御質問、要するにセービン博士の指導だから――私、指導だからというのじゃございませんで、さっき言っておりますように、検定法というものがあるのでございますよ。その検定法というものは、これは詳細を言ったら時間が長くかかりますけれども、安全性という検定法の中にはいろいろございまして、効力の問題、安全性の問題、いろいろ検定方法があるのでございます。その検定法につきましては、安全性についてはいろいろございますけれども、一番その安全性ということでいい目安になるのは組織培養法ですね、それから各種動物、ことにサルを使うのでございます。そうしてサルでもって安全性を見まするときに、生ワクチンを飲ませるというような間接的のことをやらないのです。飲めば、先ほど申しましたように、腸の粘膜から腸間膜リンパ腺から血液の中へ入って、それから今度中枢神経へ入って脊髄を通して脳神経へいくという、三段階、四段階の生体には防壁があるわけでございます。したがって、サルで実験いたしますためにワクチンができた――ワクチンというか、素材料ですね、そのときに脳内注射を一つはいたします。それから、一つは別の脳内接種法もやるし、脊髄の中にじかに注射するのです。そうして脳内の注射といいましても、単に脳の表面の大脳皮質でなしに、一番ポリオウイルスで、大脳では親和性のありますヒポタラームス――視床下部を目がけましていろいろ注射する。いろいろ方法がございますけれども、大脳では一番ポリオウイルスに感受性のあるところを目がけまして十分なる量の材料を注射するのです。ポリオウイルスというものは、血流を通って最後に中枢神経へいくわけだから、脳にも親和性がある。ことにさっき言ったヒポタラームス――視床下部に親和性があるけれども、もっと親和性があるのは脊髄です。脊髄から頸髄、胸髄、腰髄、腰髄をおかせば足がびっこになる。一番中枢神経が好みがあるのです。狂犬病では延髄なんです。だから狂犬病ではものを飲めなくなってしまう。小児麻痺では、胸髄にいけば呼吸麻痺が起きてしまう、延髄では呼吸中枢がある、腰髄にくれば足がびっこになるわけです。その脊髄へ刺して十分な量を注射するのです。そうしてサルを三週間観察いたしまして、症状がないということを見るわけなんです。人間の場合には、直接にポリオウイルスが脳へ行ったり脊髄へ行かない。さっき言ったように、段階があって初めてくっつく。だから、サルという感受性のある動物の脊髄、脳に対して注射をする。そうして症状が起きないということを見て、単に症状が起きないというだけでなしに、中枢神経――脳がこれくらいあるとすれば脊髄がこれくらいありますよ、それを連続截片といいまして、厚さ四ミクロンくらいの截片を機械で切りまして、それを病理標本をつくります。一頭について四百枚くらいの標本になります。それを完全に変化ないか変化ないかといって探すわけです。そうして変化につきましては、見つけまして注射するだけで、針を刺すだけで変化が出る。反応が出るから、それをウイルスの変化と区別して、範囲とか強さの程度を一枚の標本につきまして点数をつける、基準にそうなっている。それについて点数をつけて、何点以上では不合格だ、何点以下ならよろしいというところまでやっておるのでございます。おそらくこのくらいの検査方法でやれば、人間に対する危険性の危惧は完全に除外される、このように思っております。
 それから、なお、何でも人に刺してみなければ安全でないというようなことは、非常に私は学問的でないと思います。そのために検定方法があり、動物実験とか、あるいは組織培養の検定方法があるというわけです。現在においては、ロケットが何日何時の何分何秒に月に到達するかということまで計算され得る、それが学問なんです。検定方法はその程度までに現在進歩しておるということで、これはぜひ国民の皆さんに諸先生から納得してもらうように御説明を願いたいと、これが日本のためであると、私はこのように念願いたしております。
 それから、なお、人につきましては、この国産第一号の一部につきましては、これは生ワク協議会の高津先生に御援助をいただきまして、東大の小児科から慶応の小児科、日大、慈恵その他たしか五、六カ所ですね、希望者はちゃんと承諾書をとりまして飲んで、そして何らの副作用がないということはやってあるわけでございます。
 以上でございます。
○委員長(鈴木強君) じゃ、質疑の途中でありますが、お忙しい中を中村慶応大学教授に御出席いただきまして、ありがとうございました。ただいま本委員会において予防接種法の一部改正の法律案の審議をいたしておりますが、従来のワクチンから生ワクチンに切りかえるという、こういうのが内容でございます。その生ワクチンに切りかえる場合の安全性が実は問題になっておりますので、この点を中心にして先生の御所見を承りますれば非常に幸いだと思います。お願いします。
○参考人(中村文彌君) 先ほど私、伺いませんでしたが、結局高津教授が言われたところと全く同じになると思いますが、私ども臨床家としまして、非常に長年苦しみ悩むポリオの患者に対しまして、どうか打つ手はないかといって苦しんでおったのでありますが、それに対しまして今回生ワクチンができました。それに対しまして、生ワクチンをやりますというと、私のじかに経験したところでは、全く副作用らしきものはないということを、私、良心的にお答え申し上げることができると思います。御存じのとおり、ちょうど接種する年齢層におきましては、いろいろな病気が偶発してまいります。で、一般家庭におきましては、たとえばいまの時節を考えますというと、感冒性下痢からしまして、いろいろ腸外性の消化不良症、で、非常に重篤になりまして、なくなる者もございますが、私が経験しましたのは実はこの乳児院で、そして毎日毎日その患者を丁寧に観察しながらこのポリオをやっておりました。一般の家庭ではしろうとさん方で、何かと見落としがおありになるかと存じますが、そしてまあ大体その対象をとりまして調べてみますというと、たとえば下痢をしたとか、それから、また、熱が出たというような子供全部比較してみますというと、非常にこのポリオのワクチンを注射した者と注射しない者との間に懸隔はないのであります。しかも、その効果たるや、これはまあ私は途中からで、前の先生方の話を伺わないで残念でございますが、この効果は非常にございました。それから、現に資料にございますように、うそのように患者が少なくなりました。私ども子供を扱っている者としては非常にうれしく存じておるのでございます。先ほど野外実験をやらないで一斉にやってしまったという御抗議がございましたですが、あれは一通りやるつもりは――先ほどお話がございましたように、大流行がありました。それを手をこまぬいているということは至って厚生省当局としても良心にそむくところで、断行されたことと存じます。私はそれに対しまして大賛成なのでございまして、それから少しオーバーラップしまして、その後の結果は、見られた一斉投与の試験成績からしましても、高津教授からお話があったと存じますが、高津教授が委員長をやられた結果でございますので、詳しくお話があったかと思いますが、あの当時ほとんど見るべき副作用がないのでというような状態で、私自身といたしましては、現在使っておりますセービンワクチンがポリオの予防にほとんど絶対とは言われませんが、人間のすることとしては最も副作用が少ないだろう。したがって、最も効果的な予防接種の方法と信ずる次第でございます。
 これだけでございます。
○藤田藤太郎君 私は、笠原先生少し勇み足だと思うのですが、私は必ずしもあなたのような極端な意見を吐いているわけではないのです。学術的にも証明される、それが国民が納得する形で問題をと言っているのですけれども、薬というものは人体的に実験しなければいかぬのだということはナンセンスだというお話があったので、肝心の研究をしていただいているところでそういう御意見があるとは私は思わなかったわけです。あとのほうで、東大や慶大やによって了解をとって、よい方法はないかと実験をしたのだ、こういうお話でございますから、せっかくおやりになった最後の問題が前段のお話から抹殺されることになりはせぬかと思うので、私はあまりここで議論いたしたくないのであります。だから、私は、人体実験をやると、ここまで問題を言っているわけでない。人権問題にもかかってきますから。だから、外国では基準をつくるときには、そういう安全性のために最大の努力をした。日本もそういう努力が――私はその努力の限界というものには議論があると思いますけれども、やはり国民が納得するような努力というものがされるところに、みんなが喜んで投与を受けるということになりはせぬだろうかと私は思う。そこらの点を私は意見として述べておったわけであります。いま中村先生や東大の高津先生にもおいでいただいているわけでありますから、いまの慶応大学で実験をされ、東京大学でも実験――実験と言ったらえらい何ですが、投与されたと思うのですが、そういう実態についてのお話を高津先生からお聞かせいただければたいへんけっこうだと思います。
○参考人(高津忠夫君) きょうは特別データを持ってまいっておりません。私、初めに申しましたように、人体実験ということばは絶対に使いません。とにかく新しい薬、このワクチンといえども新しい薬と同じように私どもは了解いたしますが、それを使う際には、いままでのデータ、それからそれを製造している過程、その他すべてを研究調査して、そうしてこれは絶対だいじょうぶだという確信のもとに患者なり、あるいは予防注射でも使っております。ポリオ生ワクチンに関する限りは絶対安全だと信じたわけでございますが、国産品といえども、製造過程及びその検定過程を聞いてみると、日本の現在の技術は世界で一流でありますし、しかも、理論的にセービンのストレインビールスが試験管内培養によって毒性が強くなるということはあり得ない。少なくとも効果は悪くなっても、副作用については悪いほうには向かないという確信のもとに、国産の生ワクチンも手に入れば、いままでのワクチンと同じような考えで予防に使ってはみました。その結果は、厚生省から義務づけられてやっているわけではございませんが、学問的に免疫効果がどうであるか、一番副作用についてはあり得ないと信じておりますが、観察はしております。現在まで都下の大きな大学、あるいは病院と密接な連絡をとりながらやっておりますが、数百人の子供に非常な慎重な注意をもって従来のワクチンと同じような考えで使いましたが、一例も認むべき副作用、おそるべき副作用はございません。その効果については目下調査中であります。
○山本杉君 笠原参考人がお帰りになるような御様子でございますから、ちょっと伺わせていただきますが、さっきのお話の中で、学問的には、あるポリオのワクチンは危険が感じられるものがないわけでもないけれども、臨床的にはだいじょうぶだというようなお話でございましたが、ちょっとそこのところを詳しくお教え願いたい。
○参考人(笠原四郎君) 先ほど多ケ谷博士が申し上げましたように、ポリオの生ワクの種については、セービン博士のつくり出された種もございますし、コプロフスキーあるいはコックスの生ワクチンというものがございますけれども、コックスのワクチンではアメリカで小規模の野外実験をやりまして発病した例がある。それでアメリカではこれを取り上げておらない。コプロフスキーのワクチンもまた同様でございまして、ここに危険性があるという報告が出ておるのでございます。セービンのが一番安全であるというところでございます。それでよろしゅうございますか。
○山本杉君 いまお話の、その危険性というものはどういうことなんですか。
○参考人(笠原四郎君) 危険性と申しますのは、生ワクを飲んで、程度の差はございますけれども、小児麻痺にかかるということでございますね。その他は、副作用の中には、臨床のほうを私よく知らないのでございますが、強度の下痢とか発熱とかいうようなことじゃないかと思いますけれども。
○藤原道子君 笠原先生がお急ぎのようでございますから、ちょっと一点だけお伺いしておきたいと思います。先ほどのお話の中に、ソ連の最初の製剤の中に雑菌というのですか、発ガン性のおそれのあるものがまじっていた。それをだんだんに改造して、日本のはそうじゃないというようなお話だったのですが、それは何ザルというのですか、さいぜん使って実験したサルには腸内に何やらいろんな雑菌があるので、ウイルスがあるので、最近ミドリサルに変えた、そういうことで、そういう最初にソ連が使っていたから危険性がありましたので、いまでは改められたというわけなんでございましょうか。その点が一つと、いま一つは、岡山で日本の生ワクを飲んだ結果で赤ちゃんが死んだというので、たいへん社会が騒いでいるわけでございます。それにはどういうふうな御見解であるか、この二点をお伺いしたい。
○参考人(笠原四郎君) 先ほどの、サルが持っております迷入ウイルスでございますね、それに、それのうち一番危険なのがSV40というものである。SV40が発ガン性があるというのは、SV40を人に刺して、実験的に人に発ガン性があるかどうかということは全然わからないわけでございまして、SV40をハムスターですか、実験動物に注射したときにそういうものが出てきたからということですね。だから、発ガン性の物質ということは、これはウイルスと宿主――人間とかサルとかネズミとかということでまた問題が違ってきますので、ですから三十六年に一般大衆が飲んだものが、人に対してSV40が入っていたとか発ガン性があったのだということは言えないわけでございます、違いますから。ですからSV40で、ある種の実験動物でそういうデータが出た、実験的に出たことがあるということだけでございますね。
 それから、次に、いま世界でセービンの生ワクに使いまするサルにつきましては、ある国ではいまもってカニクイサルというのを使っております。カニクイサルは、SV40のほかにサルビールス、いろいろの種類がございまして、いろいろ持っておるのでございますね。あるところではいままでどおりカニクイサルを使っておりますけれども、こういうことが発見されておるのでございます。そのサルウイルスを除くのにいろいろ方法が見つかったのです。たとえばサルビールスを動物に刺しまして免疫血清をつくって、組織培養という、ウイルスをふやす容器の中にその免疫血清を加えますと、ポリオビールスだけはふえますけれども、迷入ビールスは殺して押えてしまうということで純化ができるわけです。
 もう一つの方法は、マグネシウムイオンを使いますと、サル由来のビールスは殺されてしまう。そうしてポリオビールスだけが純化されるという方法がございますのでやっておるわけでございます。それで、日本ではアフリカ産のミドリサルのほうがサルビールスを持っている率が非常に少ないのでございます。それでミドリサルを日本でも輸入して使っておるというわけでございます。よろしゅうございますか。
○藤原道子君 岡山の……。
○参考人(笠原四郎君) 岡山の話――これは私は臨床家でございませんので、むしろちょっと不向きだと思うのでございまするけれども、飲んだ子供さんが一歳をちょっとなんでございましょう。あの年齢は赤痢、つまり疫痢にかかりやすい年齢でもございますし、腸のほうがいろいろの細菌性の感受性も高いわけでございますし、また、新聞で読んだところでは、症状が全くどうも小児麻痺とは違うのじゃないかと思いますね。直接投与された生ワクチンとは関係がないのではと、医学常識から申しましてお答えしたいのです。
○藤原道子君 予研のほうから、岡山で赤ちゃんが死んだということでし非常に社会に衝撃を与えているわけなんです。はたしてこれが生ワクの結果であるかどうかということを、社会の不安がございますので、その疑いがあるならばある、そうでないならばないと、ひとつはっきり伺いたいのです。
○説明員(多ケ谷勇君) 岡山の件につきましては、実は私どもは新聞とかラジオとかいう報道でも一部は耳に入りましたが、厚生省の防疫課を通じて、いろいろ情報はいただいておりますが、私どもがいままで伺った限りでは、ワクチンとこれを結びつけるということは非常に学問的に無理があるんじゃなかろうか、そういうふうに私どもは考えております。ただし、これは正確にはやはりそのなくなられた赤ちゃんの病理解剖なり何なりが行なわれ、しかも、精細な検査が行なわれなければ、学問的にこれを完全に否定し去るということは不可能でございます。しかしながら、学問的な常識からいって、これをワクチンと結びつけるということは非常に無理があるとわれわれは理解しております。
○藤原道子君 その点もう一つ。私どもは幼い命を守るために、非常に真剣に心配いたしております。で、セービン株が世界各国でそれこそ多くの人に使用されて効果をあげていることも承知いたしております。けれども、学者でございませんので、しろうとでございますから一杞一憂いたすわけなんです。人体実験してないということでも心配いたしましたが、まあいろいろなことがあるし、試験投与で日本で有数な病院で実験された、それで異常がないということで、この点は私たちは安心したんです。ところが、たまたまこういう事件が起きた。ところが、私どもしろうとなりに、この問題はいろいろ勉強いたしまして、生ワクの場合は潜伏期があるから、飲んで一日や二日で発病するはずがないという意見をお述べになる方もあるわけです。ですから、その点もさらに明確にしていただいて、あぶないならあぶない、こういう場合は注意しろというなら注意するように指導されるのが私は当局の責任だと思いますので、押してこの点をお伺いしたい。予研で適当でないならほかの方でもけっこうでございますが、その点をお伺いしたい。
○説明員(多ケ谷勇君) ただいまのお話につきましては、またあるいは厚生省の当局、あるいはさらにいま臨床家の先生からもお話があるとは思いますが、私どものこれまでの日本におきます最初の生ワク協議会で約千名、非常に精細な臨床観察のもとに投与されております。それから、ただいまの国産品につきましては、高津教授のところの数百名という非常に精細な臨床観察、そういうお医者さんがつきっきりで観察して投与をするというような多数例におきまして、一例もそういう例はないわけであります。直接作用でひどい下痢を起こして熱を出している、死なないまでも、非常にたいへんな治療を要するという、そういう例は一例もないわけでございます。
 それから、従来は製造者が違いましょうが、セービンのワクチンにつきまして、ソ連、カナダ、アメリカ等で報告されております臨床データにしても、そういう報告は一例もございません。したがって、私どもは、ただいまのようなケースがワクチンで起こるということはあり得ないと確信しております。
○藤原道子君 ほかの先生はどうですか。東大の先生、ちょっとその点について。
○参考人(高津忠夫君) 私ども一例一例患者を見て、ときとして問題になることは、あることをしたことがその患者に対して害があったかどうか、つまりある薬と、それから患者の効果、それから副作用も含めて、何か変化があった場合に、それが薬のせいであるかどうか、その因果関係をきめることはたいへんむずかしいことでありまして、多くの経験、それから学問も必要で、私自身も困ることがしばしばありますが、はっきり因果関係をつけるには、相当の理論、あるいは根拠がなくてはつけ得られません。で、この場合、私もこれは正式にこの患者について報告を受けたわけじゃありませんが、けさラジオでちょっと聞いたくらいの知識でありますが、飲んだその晩から発病したというのでしたが、下痢という話でありますが、生ワクの副作用としては、これは麻痺が起こる。つまりポリオビールスによるポリオ疾患、そのものが一番こわいので、そのほかの副作用、たとえば下痢を起こすとか発しんを生ずるとか、それはもうきわめて微々たるものというのが、私どもこの数年来、何千人、何万、日本じゅうのもう千万以上と思いますが、の患者に投与されたところから聞いたり、あるいは自分自身で経験して知っているところでございます。一方、一歳前後の子供の下痢症というのは非常に多い。しかも、冬に多い病気でありまして、以前日本では夏に多くありました。それは先ほど笠原さんが言ったとおり、赤痢菌とかその他病原菌がいろいろあった時代は夏ありましたが、現在の乳児の下痢は冬でございまして、おそらく全国の小児科はこの下痢症にかなり悩まされておる。しかも、重症の者が至るところに発生しております。そういう事実と考えあわせまして、私自身は話を聞いただけでございますが、ありふれた下痢症、しかも、それが不幸にも非常に重症になったということが、偶然この予防投与と時期を同じうして起こった、私はそう解釈したいのでございます。
○柳岡秋夫君 時間がございませんですから、簡単にお伺いしたいのですが、安全性の問題につきましては、先生方から確信のあるお話をいただきまして、私どもも非常に勉強になったのでございますが、しかし、いま全国的に各地域で、この投与を前にして非常に騒がれておるということは、やはりどこかに欠陥があるのではないかと、こういうふうに私は考えております。まあそのことにつきましては、午後の中でも厚生省と御論議をしてまいりたい、こういうふうに思っておりますが、笠原先生は、今度つくられました日本生ワク会社のほうにも関係しておられるというふうに思うのですが、先ほどのお話ですと、価格が非常にソークと比べまして、はるかに安いということが申されました。しかし、ソ連なり、あるいはカナダの生ワクの価格は一人当たり十七円と、こういうことが厚生省から言われておるのでございますが、今回つくられておる生ワクは四十七円と、こういうことで、非常に値段の差があるわけでございます。したがって、原価がどのくらいで一人当たりできるのか、その辺をお伺いしたいと同時に、この会社の性格が非常にこれはあいまいのように私は感じておるのですが、もうからない仕事だと、こういうことも厚生省から言われております。したがって、株式会社として発足をして一体この会社の経営が今後いまのままでやっていけるのかどうか、そういう点も、ひとつ関係をされておる笠原先生からお伺いしておきたいと思います。
○参考人(笠原四郎君) まず会社の性格でございますね、これはまあ株式会社になっておるわけです。事の初めは、従来ソークワクチンをつくっておりましたメーカーが六つございます。北里研究所、これが社団法人ですね。それから千葉血清、これは千葉県立でございます。それから東芝、これは株式会社でございます。それから阪大微研、これは阪大微研の付属になっておりますが、血清をつくっておりますのは社団法人になっております。それから武田、これはもちろん株式会社、それから化血研があります。この六つがあるのでございまして、この六つがソークワクチンをつくっておった。それで、国の方針としまして、ソークワクチンはやめたほうがいい、世界の趨勢で。で、生ワクチンに切りかえるということになりました。それで、ソークワクチンをつくりますためには、各業者が施設、機械設備、あるいは人の面で多大の投資をやっておった。それで、実はソークワクチンの製造を生ワクに切りかえる趨勢にあるというので、ソークは行く行くは中止になるであろうということで、関係者は非常に苦慮したわけでございます。それで生ワクに切りかえるのならばというので、各社がそれぞれで自分のところで国産のポリオ生ワクチンをつくるということで、みんな旗を上げました。ところが、一方、ドクター・セービンは日本にも来たのでございまするけれども、日本その他各国ですね、生ワクチンをつくるのは一製造業者があれば十分である。というのは、先ほどお話をしましたように、希釈するから、原材料をたくさんつくっても余っちゃって、そうして施設その他でいろいろ薬も高いし、企業に合わない、だから一社でたくさんだということを、指示というか、忠告されたわけでございます。それが一つ。それから、もう一つは、生ワクチンの検定というものは、これは非常にめんどうでございまして、期間が四カ月ぐらいはかかるのですね。そうしますと、予研のほうの検定能力というものが限られているわけです。で、六社が一つずつ生ワクチンを検定に出したら予研のほうで検定ができないということでございます。そういうようなことで、その六社が、それでは共同出資をして会社でもつくろう、そのときに社団法人、財団法人という話もあったように、私、細菌製剤協会の理事もやっておりまして、理事長ではございませんけれども、そういう話が出たのでございますが、結局株式会社にしようということになったわけでございます。
 それから、値段のことでございますけれども、詳しい数字は、私、経理のほうは不案内なのでございますけれども、大体の数字を申し上げますと、ワクチンの原液をつくるのに一人四十円、それから諸経費が六円ぐらいかかる。それから希釈する糖液、お砂糖の液がございますが、これが一円ぐらいかかって、合計四十七円ぐらいになるということを聞いております。
 なお、検定料が生ワクは非常に高価になります。それで、一ロットの検定料が三千二百万でございます。これは国家検定料といたしまして最高のものでございます。三千二百万円でございますね。そうして先ほど申しましたように、自家検と国家検定と同じことをやっているわけでございます。自家検で効力があり、安全であるということをやると同時に、国家検定でまた同じことをやるというわけでございます。ですから、その検定料三千二百万というようなもの、概算してこのぐらいのものが生ワク会社のほうでも実際にかかると見なきゃならないんじゃないかと思うんです。非常にたくさんのサルを使いますし、マウスとかモルモットとかウサギとか、非常にたくさん使います。それから、検定には、先ほど言ったように、サルのほかに、組織培養で厳格な検定をいたしますので、薬品も高いしガラス器材も高いというようなことで、検定料が非常にかさばるというわけでございますね。そしてこの国家検定の三千二百万円を、今度は三百万人が一ロットでございますけれども、それで三千二百万円を割ってみますと、一人前が十円六十銭ぐらいにつくというのでございます。そうすると、それと同じ国家検定料を生ワク会社のほうがそれだけ見ると、それだけで十円六十銭の二倍かかってしまうというので、四十七円では、それで引き合ったとしましても、利益率としますれば、業者のほうとすれば、あまりたいした分のいい仕事ではない。もし不合格にでもなってしまったら、三千二百万円検定料だけで飛んじまうのですから、非常に心配な仕事である。ですから、利潤を追うということでなしに、国として国産の生ポリオワクチンをつくるということに、かえって生きがいを感じているわけでございます。
 それで、これは話がそれまするけれども、ワクチンというものは、これは独立国とすれば、まあ日本は戦争は放棄しちゃったのだけれども、武器と同じものでございまして、外国にあるワクチンがあるから、あるものを輸入すればいいのじゃないかと言いますけれども、外国の品物がその国で余っているときには売りたがるのです。ことに外国のほうで、このワクチン数は有効期間が限られておりますので、期限切れに近いようなものは、自分の国じゃいいやつを持っていて、少しでも悪いものはどんどん外国に出して売ってしまいたいという趨勢にある。しかも、諸外国では、自分の国内では一定の価格というものを高く押えて保っていて、輸出品となるとダンピングして出してしまう。ことにそれが国の方針とすると、その政策のためにただでも寄付しようということになります。ですから、外国品が安いということは、決して国産品の真の原価の目安にならないというわけでございます。しかも、三十六年ですか、生ワクを投与したあれは、厚生大臣の責任において大衆に飲ましたのである。あのころは日本のポリオの生ワクの基準もできておらなかったじぶんで、したがって、あの品物は決してワクチンでもない、薬剤でもない、はたまたお菓子でもないという単なるものを、ポリオの大流行の緊急対策として厚生大臣の責任において飲ました。それが幸いに何の不祥事件もなく成功したということであろうと私は思うのです。お笑いになる方があるかもしらぬけれども、私はそう思います。薬剤ではないのです。薬剤というものは一定の段取りを経なければならないのですね。ですから、あの当時安かった、国産品は高いのだということは、これは私は筋が通らない、このように思っております。
 それから、なお、ちょっとあれでございますけれども、その野外実験というものは、三十六年にやったあんな大きい野外実験はないのですね、あれほど大きいのは私はないと思います。それで、三十六年にやったあの成績でカナダは安心して、日本があれだけの大衆投与をやって有効であって危険がないというので、カナダは初めて基準をおろしたという実情でございます。あれがもう大きい野外実験であったと、このように私は思っております。
○藤原道子君 ちょっといまの笠原先生のお話で、一ロットの検定料をこの間三千四百万円と……。
○参考人(笠原四郎君) あれは私のほうで二百万円違っております。
○委員長(鈴木強君) ちょっと速記をとめてください。
  〔速記中止〕
○委員長(鈴木強君) 速記を起こしてください。
 中村先生に一つだけ私ちょっと恐縮ですが、お伺いしたいのです。先ほどの御意見の中で、絶対とは言えないと、こうおっしゃいました。それで、笠原参考人の意見もございましたが、臨床的な立場に立って、もう少し先生が御心配になっていることだけでも、絶対と言えない点についてもう少しお伺いできませんでしょうか。
○参考人(中村文彌君) これも絶対ということは絶対に言えないのじゃないでしょうか。こういうふうな件に関しましてはこういうことが将来起こるかもしれない。たとえば、では先ほど多ケ谷博士や何かがお話になったりしましたのですが、いわゆる将来において多少とも毒性――毒力還元というようなことは絶対ないと言えないという意味で、それをもう完全に心配ないとは、これはだれでも言えないのじゃないですか。あらゆるこういうふうな製剤に対しまして、絶対ということは言えない、そういうふうな非常に潔癖な意味で申し上げたわけで、現在臨床的に使用する範囲においては心配ないと考えていいと思います。そういうふうな意味です。非常に潔癖に考えております、学問的に。
○藤原道子君 一つだけさっきの続きをもう少し確認しておきたいのです。
 私は、厚生当局に、参考人のおいでになるところでちょっと伺っておきたい。さっきの岡山県の問題でございます。こだわるようですけれども、これは大問題になっているのですから、厚生当局に入りました現地の報告、それから、それに対しての当局としての対策ですか、見解などをあわせて伺いたい。ポリオによって死んだということで、非常にこの間も婦人の大集会でもこれが問題になっておるというようなことになるので、生ワクは飲ませたい、だが、飲んでもし死んだらどうだということで、おかあさん方の不安が非常に高まっておるわけです。ところが、先ほど参考人の方は、直接報告を得ているのではない、いろいろな面から言って、ポリオが直接の原因とは思われないというようなことで、さらに私としては心配な点がございますので、当委員会を通じまして、調査の実情というようなものについてひとつお聞かせを願っておきたい。
○政府委員(若松栄一君) 岡山県に生ワクの投与後、下痢をして死亡した患者が出たという報告がございました。直ちに県のほうに問い合わせましたけれども、県の判断も診察をした医師も、生ワクとは関係がないものと思うという判断でございました。私どももその当時の情報をできるだけ正確に得まして判断いたしました結果、私どもも、これは関係ないと断定していいと思いましたので、その後生ワクの扱いについて何らの変更を加えませんでした。その後、現地ではいろいろ不安がございますので、できるだけ不安を解消すべく努力すべきだということで、岡山県におきましては、岡山大学の小児科の助教授及び医局長ですか、二人の小児科の専門医を昨日でございますが、派遣いたしまして、もう患者は土葬されておりますので、患者自体を見ることはできません。で、回りの者並びに診療した医師についていろいろ調査、あるいは質問をいたしました結果、岡山大学の木下助教授の判断といたしまして、これはやはり生ワクの投与とは関係ないと思われるという見解を出しております。岡山大学の木本助教授が現地から帰りましての報告を私受けましたのがけさの三時半ごろでございます。そのときの報告では、木下助教授の見解でございますが、これは生ワクの投与と発症までの期間が非常に短か過ぎるということで、生ポリオワクチンの感染による発症とはどうも思いがたい、また、臨床症状においても神経系統の障害が全くないということから、これらの症状は、やはり消化不良性中毒症または感冒性の腸炎と考えたいという意向でございました。なお、この見解につきまして岡山の地元では、大学がやはり権威ある考え方を述べることが適当であろうということで、けさおそらく十時過ぎごろに、岡山大学の教授が正式に大学としての見解を発表するということを聞いております。ただいま発表があったかどうか、まだ承知しておりません。その内容はいま申し上げたような内容になるはずでございます。
 なお、これに伴いまして、岡山県としては、生ポリオワクチンの服用を続けるべきか中止すべきかということを当然判断いたしますが、岡山県としては、中止の必要なし、そのまま継続すべきであるという見解をとりました。なお、岡山市当局は、せっかく大学から調査に行っているのであるから、調査の結果は一日待てばいいから、一日だけは待ってみようという見解をとられたようでございますが、それが本日の朝状況がわかりましたので、本日中止するはずであったものは中止をせずに続行するということにきめたという情報が入っております。いま申し上げましたような点につきまして、さらに臨床の専門家の先生方の御意見が伺えればなおけっこうではないかと私存じております。
○藤原道子君 それで、さっきも一つお伺いしたのですけれども、御答弁が漏れたのですが、生ワクを投与したとすると、ポリオの場合には潜伏期間があるというようなことを聞いたことがあるのですが、それはあるのですかないのですか。
○説明員(多ケ谷勇君) 通常ワクチンのウイルスがふえる。それで、つまりウイルス直接によって何ごとかが起こるという場合には、少なくともやはり潜伏期間がある。アメリカあたりで考えておりますのは、すなわちワクチン投与後四日から三十日の間に何ごとかが起これば、一応これはワクチンの可能性があるということで、しさいに検討しなければいけない、そういう態度ですべて臨んでおりますし、わが国においても同じでありまして、それは潜伏期を経た上で何ごとかが起こっているという考えで当然進むべきであろうと思います。
○藤田藤太郎君 いま藤原委員の尋ねているのは、生ワクを投与してからその効果があらわれるまでにはどれだけの日にちがかかるかと、こういうことじゃないですか。――それじゃ、ぼくはそれを聞いておきたい。
○説明員(多ケ谷勇君) 効果のほうは、これはいろいろ研究いたしますと、大体生ワクチンのウイルスが腸管でふえまして、それから、先ほど笠原参考人の言われましたように、腸管の近辺のリンパ腺でまた増殖しまして、そこで抗体ができます。それで抗体ができますと同時に、腸管のほうの細胞が、これはほんとうにどういうメカニズムでなるのかまだわかっておりませんが、腸管の細胞がその次にポリオウイルスがきたときに受けつけなくなります。これは感受性の細胞が全部こわれて、感受性でない細胞だけが残るのかどうか、その辺はまだ正確にわかっておりませんが、とにかく腸管の抵抗ができる。それで腸管のほうの抵抗は、これはいつ幾日からということはなかなかつかみにくい。といいますのは、個人差がございまして、人によってはワクチンのウイルスは二週間くらいで消えてなくなる人もありますし、人によっては一カ月くらいわずかずつですけれども、ワクチンを飲んだあとウイルスが出続けている人があります。したがって、腸管がいつから正確に免疫ができるかということはわかりませんし、ウイルス的な常識から考えますれば、少なくとも投与後すでに十日前後から抵抗ができていると考えていいと思います。それから、血中の中和抗体のほうでありますが、これは大体において投与後十日前後からは明らかに証明される中和抗体ができております。したがって、そのころからは抵抗ができているとこれは考えていいわけであります。ただし、先ほど申し上げましたように、いわゆる流行期に生ワクを投与して、それで優性ウイルスがその辺にはびこっているのを受けつけなくするという干渉現象ですね、これは生ワク投与後一両日中に成立すると考えて考えられる節がございます。すなわち、生ワクチンビールスが腸管でふえるのに、そのふえる潜伏期間というのは、少なくとも一日、二日かかります。これは試験管の中でほとんどすべての細胞が感染するくらいのビールスを与えてやりますと、その感染を受けた一個の細胞からビールスが完成されて飛び出してくるのは約六時間くらいの時間、しかしながら、広い腸管で、広い腸管全体を最初に飲んだワクチンのビールスが次から次と連鎖反応的に感染を起こして、腸管一帯にそういう傾向を生ずるのは少なくとも二日くらいかかるだろうというふうにわれわれは考えております。
○委員長(鈴木強君) 参考人の皆さん方には、たいへん貴重な御意見を御開陳いただき、また、長時間熱心に委員の質疑にお答えいただきまして、まことにありがとうございました。
 午後二時まで休憩いたします。
   午後一時一分休憩
     ―――――・―――――
   午後二時三十五分開会
○委員長(鈴木強君) ただいまより再開いたします。
 予防接種法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 午前に引き続いて質疑を行ないます。質疑の通告がありますので、順次これを許します。藤原道子君。
○藤原道子君 午前中にもお伺いしたのでございますが、岡山の事故、引き続きまして静岡県下にも事故が起こったというようなことを伺いまして、非常に心配いたしております。そこで、静岡県に起こりました事故の状況、これをひとつこの際伺いたい。あわせまして、従来使いました生ワクによる副作用、今回百万ぐらいは行なったのじゃないかというようなお答えもございましたので、前回と今回の事故発生の詳しいデータはまだできていないと思いますが、その比率といいますか、そういうこともあわせてこの際伺いたいと思います。
○政府委員(若松栄一君) まず、静岡にも同じような事故があったのではないかというお話でございますが、私どもが入手いたしております情報によりますと、静岡県の島田保健所管内、掛川でございますが、生後四年の子供が一人死亡したということでございまして、これを調査いたしました結果は次のとおりであります。
 三月の九日に静岡県衛生部から電話がありましたが、三月九日に、掛川市役所に新日本婦人会という方々が来所しまして、京都、神奈川においては生ポリオワクチンの投与を中止しているが、本市では中止しないのかというお話があったそうであります。その後、市役所の職員で、実は私の子供が三月二日に投与を受けて、三月八日に死亡しましたというお話を申し出られたそうです。そこで、県がすぐ衛生部に話されまして、直ちに調査いたしました結果、模様は、三月二日に投与を受けましたが、そのときは何の異常もなかった。三月四日、二日おいて乳児検診に行きましたが、そのときかなり長い時間裸にしておいた。それでかぜを引いたらしい。三月六日に掛川市の病院で診断を受けましたら三十八度の熱、感冒性の腸炎という診断をされました。それで抗性物質の投与を受けたそうであります。三月の七日の朝往診しましたら熱が三十九度ございまして、胸部にラッセルが聞こえて肺炎の症状があった。三月八日の四時四十分に死亡の連絡を受けたということで、肺炎という死亡診断書で処理をされたということでございます。これもいろいろその後県衛生部で専門家の方に意見を聞いた結果、これは肺炎での死亡であろうということで、これはすでに報告があとになってまいりましたので、それ以上の精査はできなかったということでございます。なお、午前中の御審議の後に政府委員室に参りましたところ、ちょうど連絡がまいりまして、同じように静岡県でまた二歳の子供が熱海で予防注射を受けて、そうして発病したらしいケースがあるという報告を受けました。その詳細はまだ確実なところはわかっておりませんが、現在入手いたしましたところでは、九日の朝三十八度の熱があった。そして病院に行きまして、その後帰ってまいりましたらけいれんが起こったということで、友心病院という病院に再度行きまして、午後三時に入院した。入院したあと、一時人工呼吸等をやったそうでありますが、夜の十二時ごろにけいれんが起こってきた。そのあとに右半身の麻痺があらわれた。熱は三十八度五分ぐらいになっていた。そして右手足の麻痺がありますが、腱反射は正常である、知覚は正常であるということで、心配して東京の日大病院に入院させるために現在輸送中であるという報告が入っております。なお、ちょうどこの報告を受けましたときに、朝の参考人としておいでいただいておりました東大の高津教授並びに慶応の中村教授にこのことを申し上げまして御意見を伺いましたところ、少なくとも臨床的にはポリオの症状ではない、したがって、期間的な関係は否定するわけにはいかぬけれども、臨床的には全くポリオとは考えられないということを申されておりました。県当局も、この症状から見てポリオの発症ではないということで、投与その他を禁止するというような措置はとっておりません。なお、詳細はわかりませんが、この患者は、すでに本年の二月十日までにソークワクチンを三回受けて完了した。なお、そのほかに三十八年五月に生ワクの投与を一回受けている。これだけの免疫を与えられている者が通常のポリオの発症をすることは、いまのところ全く考えにくいところであるというお話を承りました。現在もし入院いたしましたならば、さっそく精密に調査をする予定でございます。
 なお、従来からの例でございますが、三十七年に約一千七百万人程度投与されました。その投与に引き続きまして、何らかの症状があったという者が二百八十七名報告されました。その中で、確実な記録によって正確な判断ができるとされた者が二百四十四名、この中で臨床的に小児麻痺との関連を否定することができないという者が七十六名ございました。その中で、しかも、先ほど来のお話がありましたように、ワクチンとの関連は投与の期間的な間隔が重大でございますので、そのうちで、投与との関係で四日以上一カ月以内に発症したというのがその中で二十一例でございます。この二十一例の中でA型というのが合計六名、したがって、千七百万人三十七年に投与いたしました中で、ポリオとの関係を否定できないというものが六例あるということでございます。これはしかし、特に重篤な症状のものはございませんでした。
○藤原道子君 まことに心配なことでございます。
 そこで、この投与にあたっての注意が出てますね。生ポリオワクチン研究所ですか、そこでは発熱をしたりかぜをひいたりした者にやっちゃいけないとか、病気がなおってから二週間以内の子供とか、結核や心臓病の子供、病後で衰弱している者、栄養不良の子供、腸の病気のある子供、一週間以内に他の伝染病の予防注射等を受けた子供、あるいは手術をしたり歯を抜いたりした子供、これには投与してはならないという注意がございますね。そういうことは現地の者にも徹底しているのですね。どうなんですか。
○政府委員(若松栄一君) 現地には三十六年以来の詳細なパンフレットその他の資料を配付いたしまして、医師にも渡すように注意をいたしております。その後も接種のたびごとに注意を繰り返して実施しております。
○藤原道子君 そこで、いまのお答えの中に、ソークワクナンの注射をしている、三回注射した、さらに生ワクも飲んでおる、それが今回なぜ生ワクを飲まさなきゃならなかったか。ソークワクチンを注射したのでしょう。で、生ワクまでやっているのでしょう。その子にさらに重ねて今回生ワクをやらなきゃならなかった理由がわからない。必要があるのですか、それは。必要ありとすれば、さらに私たちはこの審議をまた角度を改めてやり直さなければならない。これに対してどうですか。
○政府委員(若松栄一君) 御承知のように、ソークは従来の予防接種における定期でございまして、そのほかに任意投与の生ワクを実施いたしているわけでございます。で、ソークは、御承知のように、生ワクほど効果はございません。そこで、外国の例等におきましても、特におとな等におきましては、ソークをやっておいて、それから生ワクをやったほうがむしろ好ましいという意見がございます。日本ではいまのところ二重にやるということをすすめておるわけではございませんが、二重であっても差しつかえないといたしております。
 なお、今度熱海で起こりました例は、予防接種台帳には見つからない。県の熱海の保健所のいまの報告では、予防接種台帳には見つかっていない。しかも、本人が飲んだか飲まないかもよくわかっていないという、現在のところはそういう実情でございます。
○藤原道子君 しっかり言ってもらわなくちゃ困るのですね。さっきのあなたの報告では、なおこの子供はソークワクチンを三回やった、その後生ワクも飲んでいるということを言われた。私はもっと答弁をはっきりしてもらいたい。もう一回。
○政府委員(若松栄一君) 失礼いたしました。ソークをやりまして、それから生ワクを二回投与するのが例でございます。その第一回目を昨年の五月に受けて、今度が二回目に当たることになるわけでございます。その間隔は六週間以上となっておりますが、第一回目が昨年の五月になりますと、第二回目は六週間を経過した時期が夏に入りますので、その期間を除いて、今度の冬に第二回目をやるのが順当な番でございます。したがって、生ワクの第二回目に当たるものをやったかやらないか、それがまだ記録がはっきりしないということでございます。失礼いたしました。
○藤原道子君 私の聞き誤りだったか、非常にそこがあいまいだったのです。そこで、非常に心配なのは、今度も臨床学的にはポリオの生ワクの関係とは思われないと言っても、まあ一般には疑いを持ちますね。そうして、万一これが生ワクによる症状であったというようなことが明らかになりましたときには、これは当然それに対する国家補償、これらは考えられるのですね。もしそれがそういう経過で推移した場合にですよ。生ワクによる障害ではない、軽く済めばようございますけれども、これからきて――私が聞くには、下痢等で死んだ岡山の例は、これは生ワクの場合には神経系統にあらわれるから、だからあれが疫痢症状であったということも私も大体わかる。けれども、いま聞くと麻痺けいれんがあらわれている。麻痺があらわれているというと、非常に私も心配になるのですけれども、それは一体どうなのか。
○政府委員(若松栄一君) 私は小児科の専門家ではございませんので、先ほどの高津先生、中村先生にお尋ねいたしたわけでございます。このように小児麻痺に伴う麻痺の発症であると、けいれんを伴ってその次に麻痺がくるというようなことはない。けいれんしますが、正常であるというようなことはあり得ないということで、むしろこの症状は脳並びに脳膜刺激症状の形と思われるということで、症状的には小児麻痺の発症とは全く関係がないであろうということを、かなり自信を持っておっしゃっておられました。
○藤原道子君 それはさらに今後の経緯を見なければならないわけですが、私はしろうとですけれども、ただ心配なんです。そこで、過日のこの審議でも明らかになりましたので、もし明らかにそれが生ワクによるものであった場合、生ワクによる障害であった場合には、国家は当然補償すべきものであるというように御答弁をいただいたと思っておりますから、それをさらに重ねてただしておるわけですが、とにかく一般に少しでも疑いがあり、不安を招くものがあったということは、これは相当御注意をいただかなければならないし、さらに慎重を期してもらわなければならないと思うから、重ねて申し上げているわけなんです。
 そこで、私はお伺いしておきたいと思いますのは、さらに報告がけさあって、けさまであなた方はわからなかった。いま熱海に起こっている。全国にもしそういう事例がありやなしやは、さらにこちらから問い合わすくらいの慎重さをもって対処していただきたいということを強く要望いたしまして、それから次にお伺いしておきたいと思いますのは、けさも笠原先生の御証言等を伺いまして、何としても私どもには納得がいかないわけです。幸い予研の多ケ谷さんも見えておりますので、この際伺いたい。私たちは子供の命を大切に思うから、多少危険でも――危険はないというところでやるのですけれども、九九・九%までは安全だといっても、一分の問題がありましても、はしかにしても肺炎にしても予防接種をやるわけでございます。そこで、私たちの立場からいけば、予防接種は全額無料としなければならない、国の方針として。先進国では相当国の費用でやっているところがあるわけです。私は、そういう立場から、当然予防接種は国の費用でやるべきだということを主張しているわけです。ところが、今度は原価四十七円、きょうの笠原さんのお話で計算するともっと高くなりますけれども、ところが、これが諸雑費が入りますので、地方にまいりますと六十円でやっている。松戸とか何とかは六十円、七十円のところもある。あるいは地方自治体が負担をいたしまして、東京ではただでやっておりますですね、まちまちなんです。私は、これは全額国庫で負担すべきものと考える。大臣がおりませんので非常に残念でございますが、ところが、ここで当然ただでやるべきなのに、国でやるべき製薬を、これを一会社にやらして、しかも、その予防の国家検定というのですか、製薬の国家検定が一ロットが三千二百万円、これは予研に入るわけですね。予研は国家の機関ですね、私は、あまりもうかるものじゃないと思います。生ワクチンの検定にそれほど高度な金額を国が取らなければならないというところに納得がいかない。もともと外国では製薬会社に国が費用を出しておるのです。ところが、日本は製薬会社にまかしておるのみならず、そこから一ロットについて三千二百万円の検定料を徴収している、だから、さらに薬が高くなってくる、こういうことになるのじゃないかと思う。私は、これは当然ただにすべきものと強く主張いたしますが、これに対して政務次官のお考えを伺いたい。
 それから、予研に対しまして伺いたいことは、いろいろワクチンの検定をしていらっしゃるはずでございますが、ワクチン検定の収入ですね、その中に今度の生ワクの検定が含まれます率はどのくらいになっておるか。私は非常に高額になっておるのじゃないかと、こう思いますが、それを伺いたい。
○政府委員(砂原格君) ただいま藤原先生のお話のとおりに、国が義務づけてやらせなければならないものに対しては、これは国において負担することが正しいのではないかという御説明でございました。厚生省といたしましても、大臣もわれわれも、この点については同様検討をする必要ありと考えておりますので、目下この点は検討を進めておる現状でございます。
 検定試験料の問題につきましては、まあ技術的な問題もあろうと思いますから、むしろ私よりも、担当の局長から御答弁申し上げたほうがいいと思います。
○藤原道子君 技術的じゃない、政治的なものです。
○説明員(多ケ谷勇君) 先ほど藤原先生からお話の生ワクの検定料の問題でございます。これは正確な数字を実は私覚えておりませんが、まあ予研の検定関係の総予算のたしか二分の一から三分の一くらいを占めるのじゃないかと思います。それで、これはつまりわれわれのほうへの収入という形じゃなくて、検定料は全部大蔵省へ収入の一部として入りまして、われわれのほうは検定にかかる費用を予算に計上して大蔵省から予算をいただく、したがって、大蔵省がそういう収入源に依存しなければ、これはわれわれのほうの予算で全部やることになるわけでございまして、予研側はぜひお金を取ってくださいと言っておるわけじゃございませんので、その辺御了承いただきます。
○藤原道子君 政務次官には無理だと思うのですけれども、技術的な問題は、それは予研なんです。だけれども、検定料を取るか取らないかは、いま言ったように、国の方針なんです。大蔵省に対して厚生省がもっと強くなればいいと思う。これは私は技術的な面をあなたに聞こうとは思っていないのであって、あなたに政治的な問題をお聞きしたわけです。大臣がおりませんので、これは次に譲りたいと思います。
 あといろいろな面は同僚議員に譲るといたしまして、私、ここでひとつ最近日経新聞に三日にわたって取り上げられている関連のある事件についてお伺いしたいのです。その日経新聞の三月七日に、肝臓障害の薬、これを社員百人を使って人体検査をした。ところが、その中で二十六人が肝障害にかかったということが載っているわけです。私は、何といいますか、試験投与ということはいろいろな形でなされると思います。けれども、一製薬会社が会社の社員を使ってこうした人体実験をやることが許されているのかどうか、それが妥当な方針であるかどうか、これらに対して厚生省ではどのような見解を持っておられるか。
○政府委員(熊崎正夫君) 藤原先生御指摘の点は、日本経済新聞が大体情報を探知をいたしまして、新聞に出る前に、私どものところにそういう報告を持ってまいりました。私どもも心配をいたしまして調査を進めておったわけでございます。それで、御指摘のように、大体あの新聞の記事は、中身は正しい記事だと思います。それで、薬事法上のたてまえから申しますと、いわゆる新薬として許可の申請をするという前段の問題でございます。新しい薬をつくる場合には、あるいは外国から製品を輸入して、その製法を一応国内のメーカーが採用して新薬としてつくり上げるとか、あるいは国内のメーカーが新しい薬を発見してつくり上げるとかいった場合に、その事前に、許可の前提といたしまして臨床データをとる。臨床データをとる要件としましては、権威ある研究機関で二カ所以上でもって大体六十以上の治験例というものをとる、こういうことになっておりますが、その治験例の段階において起こった事故だ、こういうふうに私どもは考えておるわけでございます。ただ、治験例をとる場合には、これは医者の常識としまして、医師の監視のもとに、先ほど午前中の高津先生その他の先生方のお話もございましたが、十分な医師の監視のもとにおいて治験例をとるわけでございまして、事実あの薬につきましても、東北大、あるいは伝研等で医師の監視のもとに治験例はとったようでございます。ただ一つの若干不安な点があったということでもって、その点が心配だから、一応社員の方に飲ましてみたらどうだ、つまり、なお安全性を確保するというふうな配慮のもとに社の方に頼んで、社の方々がこれを引き受けて、それで飲まれてああいうふうな事故が起きた、こういうふうに私ども聞いておるのでありまして、これは少なくとも新薬を許可申請する前段の問題ではございますけれども、新しい薬の安全性の問題につきまして、医師の十分なる監視のもと以外に、少なくともそれが社員であったにしても、あのような方法をとるということは、決して私どもは好ましいことではないと思っておりますし、また、薬につきましての常識を当然持っておるべき製薬会社の社員の方々がそういうことをやるということは好ましいことではないというふうに存じまして、関係者の方々には一応警告はいたしておりますけれども、しかし、これでもって直ちにそういう事故が起こったらその会社自体が責めらるべきものであるかどうかということにつきましても、これは少なくとも薬事法上の以前の問題でございますので、いわば治験例をとる医者のモラルの問題、あるいは製薬会社で新薬をつくる社員のモラルの問題ということでもって、今後ともそういうことのないように十分注意してまいりたい、こういうふうに考えております。
○藤原道子君 薬事法にかかる以前の問題だといっても、そのままにはできないと思うのです。私は、そういう点におきまして、厳重なる警告、人権を守る、それから、また、試験をする過程には医者の十分な管理、監視のもとにやらるべきものと私は考えますので、少なくとも社員を人体実験の対象にする、そして仕事をしながらでしょう、そういうことで完全なデータも出るはずがないし、非常に危険だと思いますので、厳重な警告をしてもらいたい。
 さらに、最近避妊黄体ホルモンなんかで非常に私たちが心配しておりますときに、やはりこれまた三月八日の日経でございますが、開業医が、避妊薬――飲む避妊薬ですね、これを盛んに大々的に広告したというようなことも出ているのですね。これも大きな問題ではなかろうかと思いますし、若干このごろ乱れてきているのではないかという気がいたしますね、誇大広告等について。こういう点も十分警告を発し取り締まっていただきたい。その中で、私一つどうしてもがまんがならない記事でございますけれども、アメリカでも人体実験に対する補償が非常に高いので、結局囚人であるとか、そういうものを使ってやっていたけれども、だんだん人体実験に要する費用が高くなってきたので、日本に依頼して、日本人がアメリカの製薬の人体実験を依頼されているという記事がちょっと出ています。そういう例があるのですか。アメリカから日本やヨーロッパに実験を頼んでやってもらっているケースも多いというような記事が出ているのですけれども、まさかそんなことがあったら私はがまんできないと思うのですが、そういう例があるかどうか。ありとすればひとつお聞かせを願いたい。それともあの新聞の記事が間違いであるのか。
○政府委員(熊崎正夫君) 先生の後段の、日本で人体実験をやるという例があるかということでございますが、こういうことは私ども全然聞いておりませんし、また、あるべきことではないというふうに思っております。
 それから、径口避妊薬の記事が出ておりましたが、ある婦人科の医院で治験例としてこれを使うというふうな広告をいたしました事実はございますが、これも私どもその広告の中身も十分拝見しますと同時に、また、どういう意思でもってやったかということも、東京都を通じまして、十分調べておりまして、たまたまああいう広告をしましたお医者の方が、実は昨年までアメリカのほうに留学をされておりまして、おとうさまがなくなられたということで、急遽日本に帰ってこられて、それで日本の国内事情というものもよく御存じなかった点もありますし、それから、また、たまたまアメリカのほうで、まだ発売以前の径口避妊薬、つまり発売以前の径口避妊薬を、たまたま自分が研究しておった研究機関で治験例を集めておるということでもって、個人的に輸入許可申請をいたしまして、それで輸入したものを便宜自分の産婦人科の病院でもって使うというふうに考えて、しかも、使うことについては、日本で相当なきびしい薬事法なり、あるいは医療法の規制があるということも、国内事情をあまり御存じないためにおやりになったということで、非常に前非を悔いておられますので、東京都を通じまして、厳重警告処分をもちまして、二度とこういうことをやらないということにいたした次第でございます。それで、明らかにあの広告は、まだ医薬品として許可を得ておらない薬についての悪質な宣伝である、こういうふうに私どもは了解をいたしておるわけでございます。
○藤原道子君 私たちは人体実験というものを非常に重視いたしますがゆえに、やはり人権尊重という立場から大事なポリオの問題でもいろいろ考えておるわけで、そこにもってきて、外国のまだ許可にもならないものを日本で人体実験をするかのごとき状態でやられていることにたまらない憤りを感じましたので、いまお伺いしたわけであります。とかくこのごろ過大広告であるとか、薬の面におきましても、非常に乱れているのではないかというような気がするわけでございまして、厳重なお取り締まりをお願いしたい。
 以上申し上げまして私の本日の質問は終わりたいと思います。
○委員長(鈴木強君) 藤田藤太郎君。
○藤田藤太郎君 私は、午前の厚生省に対する質問は控えましたから、厚生省に対しては、もう少し具体的に二つの問題、一つは免疫の問題、きょうは予研の多ケ谷先生おいでになりますから、一つは安全性の問題についてもう少しお聞きしておきたい。学者先生東大、慶大の先生は臨床面からお話しになりましたし、笠原先生は何か経営論みたいのことになってしまって、どうも実感がこないようなお話になってしまって、私はそんなんじゃなしに、実際問題として、今度の法律にあるけれども、生後三カ月から十八カ月の間に投与する、しかも、この書類を見てみると、結局統計的に立証をするということだけがあって、学術的な免疫の立証というものがうかがわれないわけですね、実際問題として。だから、その学術的な免疫の実証というものを私は説明してもらわなければ困る。九九・九九%ないのだというのなら、三十七年度の結果として、その野生のビールスがないとおっしゃっているのですから、起きるはずがないわけですけれども起きている。それは特異な病弱体とか何とかであると言う。それは理屈としては成り立つでしょうけれども、学術的な免疫立証の問題が明らかにされてないというのでは困りますから、これはひとつ多ケ谷先生おいでになることですから、そこのところを少し詰めていただきたいと思います。
○説明員(多ケ谷勇君) ただいまお話の免疫の問題でございますが、これは先ほども申し上げましたように、まずいろんな年齢層の人の血清をとりまして抗体を調べる、それによりまして免疫がどのくらいあるかということがわかるわけです。しかしながら、それと同時に、いま藤田先生のおっしゃったように、ポリオ患者が出ているじゃないかというお話ですね、つまりこの政府の用意しました資料の最後の表にも二百八十七例ですか、出ている。それで年齢分布見るとこれだけだ、それならこれがはたしてポリオであるかどうかと、そういう調査をいたしておりますのがポリオの中央鑑別診断委員会というのがございまして、これは先ほどの高津教授を班長としまして、それから、われわれここにおります同僚の江頭病理部長とか、それから東大の松本教授とか、そういうビールス学者、それから臨床家、病理学者すべてを含めまして、この実際の病人の一例一例をできる限り詳しく調べてみようと、そういう調査をしているわけでありますが、その結果、臨床的にはっきりしたポリオの症状を備えているというのが約三分の一、二百八十七例の三分の一、そういうことになります。しかしながら、これの実際の糞便であるとか脊髄液であるとか、そういうものを調べましても、先ほど申し上げましたように、ポリオビールスが出ない。それからポリオの抗体を初めから持っている、そういう例が多いのであります。したがって、これがはたしてポリオといえるかどうか。それから、これがポリオ様の症状を起こすものが必ずしもポリオビールスだけではないということはすでに知られておるわけであります。それでコクサッキービールスとかエコービールスとか、そういうもののある型のものではポリオとそっくりの症状を起こします。それからコクサッキーのAの7型というビールスがございまして、これは時としては、はなはだしいやはり集団的流行を起こすことがソ連とか北欧の例で知られております。ソ連では、これが初めて経験されましたときは、ポリオの4型ではなかろうか、I、II、IIIと、ポリオには三つ型がありますが、4型ではなかろうかということで発表したほどであります。それでポリオと間違ったわけでありますが、後にこれはコクサッキーのAの7型というビールスで起こったということがわかりました。かような例が日本でも昨年二例京都で報告されております。すなわち、この患者は京都の国立病院にポリオ容疑で入りまして、糞便の中からそのコクサッキーのAの7番、これが病源体であるということが確認された例であります。それから、もう一つ、これは日本ではございませんが、台湾で同じようにポリオ容疑患者でビールスがとれた、ところが、これが調べてもポリオビールスではない。台湾ではまだそういう腸内ビールスに対して調べるだけの血清がございませんので、私どものところへ送ってまいりました。私どものところはWHOのエンテロバエラスのセンターになっておりますので、そこへ送ってきたわけです。それで私どものほうでいろいろ調べましたけれども、これもやはりコクサッキーのAの7番ということが判明いたしました。このような病原体がとれて判明した例では解決がつくのでありますが、やはり何例かはとれないで残る例があります。これは材料のとり方が悪いということもございましょうし、それから、なお現在の方法では見つからないビールスによる場合もあるかもしれません。そういうものを今後やはり一つ一つ丁寧に拾い上げて研究していくというのがわれわれに課せられた使命でありまして、そういう意味から、患者がなおわずかではあるが出ている、これは免疫が足りないせいじゃなかろうかという御疑問をお抱きになるのは御無理ないことではありますが、われわれのかような調べから見ますと、まずポリオの免疫は十分である、そういうふうにわれわれ確信しております。
○藤田藤太郎君 そうすると、生後三カ月から十八カ月というものを推定された基準的な考え方が出てくると私は思うのです。それはどうですか。
○説明員(多ケ谷勇君) これはもうすでに学問的にいろいろわれわれもデーターも入っておりますが、要するに生まれたての赤ちゃんの血液を調べて見ますと、現在の日本のおかあさんから生まれる限り、ほとんど全部ポリオの抗体をおかあさんからもらってきております。それで、これが年月がたちますとだんだん抗体が減ってまいります。それで、それの抗体価が一番低くなるときが生後六カ月から一年の間に最低のレベルに達する、つまりだんだん消えていくわけであります。それから、その後自然に放置しておけば、少しずつポリオに感染して抗体ができてきて、日本の生ワクを用います前の状態ですと、生後七、八カ月ぐらいで八〇%とか、それくらいに抗体を持つようになるわけであります。ところが、生ワクチンを使いますれば、それがもっと早く抗体を持たせる、すなわち生後半年から一年半ぐらいまでの間というものは、もしも生ワクチンにもさらされず、野生のビールスにもさらされなければ、まあ抗体がほとんどゼロという状態になるわけであります。したがって、この時期に免疫を与えるということが一番大事なわけであります。ところが、ソークワクチンでは、それが早い時期にソークワクチンを注射しましても、子供のからだのほうの抗体をつくる機能がまだ十分発達しておりません。それと同時に、ある程度親からもらった抗体が残っておりますと、注射ですから、注射したワクチン自身がその親からもらった免疫体で中和されまして、それが抗体を呼び起こす作用を十分発揮し得ない。したがって、生後三カ月から六カ月の間というのは、ソークワクチンを注射しましても、これはほとんどきき目がないわけであります。したがって、ソークワクチンの接種基準のときは生後六カ月以後に始める、そういうことだったのですが、理想を言えば、つまり親からもらった抗体の非常に高い人は、生後約八カ月なり十カ月まで抗体を持っておりますが、親からもらった抗体がそれほど高くない赤ちゃんは、もう生後三、四カ月ごろからそろそろ抗体が消えかかってまいります。それだから生後半年ごろにはほとんど抗体は検出されない、そういう状況に至る子供もございます。これは一人一人調べて見ればそういうデーターは出るのであります。したがって、生ワクチンの場合には、可能な限り早い時期というところでもって、生後三カ月ぐらいから免疫を開始する、したがって、そのころから開始して二回投与あるいは三回投与ということを繰り返しますれば、まあ生後一年以上のときには完全に免疫を獲得している、生ワクを用います前に一番患者が多発しております生後一歳から二歳というところは完全に免疫になっている、そういう根拠で出しているわけであります。
○藤田藤太郎君 そうしますと、一たん免疫になると、二歳でも一歳ごろでも、三回とか二回とか投与して免疫に一たんなると、それは永続性のあるものですか。
○説明員(多ケ谷勇君) それは永続性があると一時考えられたわけであります。すなわち、かつて生ワクを一ぺん飲めば一生涯免疫になる、あるいは一人飲めば、そのまわりの人が全部免疫になる、そういうことが事実学者でもかなりそれを考えた人がありました。しかしながら、われわれもそういう実験をしておりますが、生ワクチンを飲ませて免疫体が上がりまして一年たちますと、幾らか中和抗体が低下いたします。それから、そのあとはわりに下がらないで、同じくらいの値を持続いたします。しかしながら、これは世界じゅうのデータ、つまり日本よりも生ワクチンを早く使い始めた国のデータを参考にいたしましても、まだ数年を出ておりません。ソ連のように毎年毎年飲ませておるところは、データとして参考にならないわけであります。外国で日本より早く始めたところですと、チェコスロバキアなどは日本と同じ方式で、最初はあそこは十五歳以下に飲ませまして、それからあとは生まれてくる子供、赤ちゃんだけに毎年飲ませておる、そういうやり方をしておりますが、そちらのデータも日本と一年違いでありますから、まだあまり年数はたっておりません。したがって、今後こういう抗体がはたして何年続くものであるかということは、やはり日本が毎年抗体調査をして、毎年データを出してやるべきだと思っておりますが、しかし、少なくとも非常に高く上がった値そのままが続くのでなくて、やや下がった形で持続するのだ、現在のところは二、三年はまだだいじょうぶ持っている、そういうことは言えると思います。
○藤田藤太郎君 そうすると、その一段降下した状態で、一年したら降下するが、あとはその状態で、ある一定限度下がったらあとは続くわけだが、そのときには現代の医学上から見て大体免疫性は維持できる、こう見ていいわけですか。
○説明員(多ケ谷勇君) これは現代のビールス学的な、あるいは免疫血清学的な観点からしますれば、最低限、つまり四倍に血清を薄めまして抗体のあるなしを調べまして、それでひっかかるものは十分予防効果がある、そういうふうに考えられております。したがって、少なくとも中和抗体価をはかって四倍以下に下がってくる。つまり発見できないレベルまで下がったのでなければ十分予防効果は持ち続けている、そのように考えていいと思います。それと同時に、生ワクチンで免疫した場合には腸管の局所の抵抗ということがございます。すなわち、これは生ワクチンも、あるいは野生ビールスでも同じですけれども、あとからまたもう一度生ワクチンを飲ませましても、腸管でわずかにはふえますけれども、ほとんどふえないで、すぐビールスの増殖はとまってしまう。したがって、ビールスの排せつも続いて起こらない。そういう腸管の抵抗というものは、これはセービン博士に言わせると、かなり長い間、ほとんど一生涯続くのじゃなかろうかということを言っております。しかし、これもほんとうに何十年とそういうビールスが完全にふえない状態というのは、従来の野生ビールスがうろちょろしておる集団ではこれは考えられないわけであります。たとえば親が相当免疫があったとしても、子供が外からビールスにかかってきますと、子供の世話をしているうちにおかあさんがビールスをなめて飲む、だんなさんも同時に感染する。したがって、従来の社会では一生涯の間に三べんでも五へんでも野生のビールスをなめてかかった状態があったわけです。したがって、今後野生ビールスが完全に一掃され、しかも、子供と接触のないおとなで何年間これが続くかということを見れば、だんだんそういう腸管免疫の持続の程度というものもわかるだろうと思いますけれども、現在のところはそこまでのデータはございません。しかしながら、これはもう相当長く続くというふうに考えられております。したがって、腸管の免疫とそれと血清の免疫と両方兼ね備えているのが生ワクチンの与えた免疫効果でありますから、これは非常に強力で、かつ、長期間続くものというわれわれは予想をしておるわけであります。
○藤田藤太郎君 今度は三カ月から十八カ月でいまのお話を聞いておると、ことしのところはこれでいいのだ、こうおっしゃる。私は外国もこのセービンワクチンができてから、ほとんどの国がこれで予防接種しておる。もうソーク時代が過ぎたと思っておりますが、ですから、いま免疫性の問題について、私は外国のデータなんかもぜひひとつわれわれにいただきたいと思うのです。ただ、いま免疫性の問題について三カ月から十八カ月でいいかどうか、三年前には子供を小児麻痺でなくて人間麻痺だという議論をして、そういうデータがずっとわれわれの議論の前に出てきております。いまになったら、みんな免疫だから六カ月から一年五カ月でいいのだという、その議論の転換が、それを理解するというのがなかなかむずかかいものだと私は思います。学者の皆さま方は日々研さんに研さんを重ねて、こうきたからこうだということだけれども、一般国民の側からいえば、なかなかそれが転換しない。これはやっぱり何で立証するかというと、統計以外にはないと私は思うのです。そういう意味で外国のセービンワクチン以後の立証というものをわれわれ委員会にお示しを願いたい。これは厚生省を通じて、予研とよく協力していただいてわれわれにお出しをいただきたい。免疫の問題はそのくらいにしておきます。
 それで、今度特に安全性の問題についてですが、これはできるだけ不慮の障害が起きない状態で製造をしておる、その努力には敬意を表するものであります。ところが、一般国民から見る場合は、今度の岡山、静岡の問題でも、よっぽど学術的に立証され、国民に納得させなければこれは理解ができないと思うのです。やはりこういう日本で初めての生ワクチンを飲ませるという時代だから心配をしておるわけです、国民全体が。しかし、心配をすると同時に、何とかしてこのワクチンを子供に飲ましていかなければ、麻痺になったら困るということからいって、より切実だと私は思うわけです。そうすると、これは飲んでもいいんだろうか、飲んじゃいけないんだろうかというジレンマというものは、これは家庭生活の重大問題だと私は思うのです。ですから、午前中のような極端な議論の吐き方では問題にならないので、私は人体実験を人命上やれとかどうこうということは言わないが、午前中から言っているように、その安全性を学者の皆さん方が立証をして、それでやっぱり国民がこれは安全だという理解をするようなその指導のしかたというものが実際問題であって、それ以上学問的な議論をここでやっても九九・九%安全だと、こうおっしゃるのだけれども、それ以上の議論は私はやらない。ところが、まあこれはむしろ行政上の問題だと私は思うのです。行政的な処置が足らないからいろいろの問題が起きてくると、私はそう思うのです。そうすると、行政をもっとよい条件のもとに、一人の障害者もないようにというような議論はなかなかむずかしいのですけれども、比較対照で数の問題でしょうけれども、やっぱしこの余病が出たり、それから、それに起因すると疑われるような状態で死亡とか障害が出るようなものでは、私は国民の中でも問題だと思います。だから、私は、もう一つこれは外国がやっている実態をひとつ御説明願って、ビールスをつくってから基準をつくるまでの実態をひとつ御説明を願って、それで今度日本でつくったものに対して、何か東大や慶大や日大でやったのだということをちょっと話の端につけ加えられておりましたけれども、そういうものが確実――正確度といいましょうか、確かな形において、それが実験というとまた語弊が出ますけれども、確認がされたかどうか、そういう点のひとつ一連の御説明を願いたいと思います。そうでないと、われわれも自信を持って説明するわけにはまいらないとこう思うのです。
○説明員(多ケ谷勇君) いまの藤田先生のお話でございますが、午前中いろいろそういう論議がございましたように、私も午前中申し上げましたように、ワクチンの基準ができますまでの過程というのは、新しいワクチンが開発されて、非常に慎重に石橋をたたいて渡る方式でいかなければならないわけです。それは外国で開発されようが日本で開発されようが、同じことでございます。それで、一たん基準ができました上は、この基準に従いましてつくり、基準に従って検定するということは、つまりワクチンの検定ということを一言でいいますと、ワクチンが安全であって効力があるということを実験的に調べ得る範囲のあらゆる手を尽くして調べる、これが検定の根本方針であります。したがって、現在のセービンワクチンでありますと、これはビールスをなまのまま使わなければならない。したがって、なまのまま使うためには、いろいろのものがもし入っていても、それを何らかの操作で殺して使うことは非常にむずかしい。ある意味では殺して使う方法もわかってはおりますけれども、午前中に笠原先生の言われたマグネシウムというようなものもありますけれども、大体において初めからそういうものが入っていないものをつくらなければならない。同時に、万が一入っているかもしれない場合については、あらゆる手を尽くしてこれがあるかないかを調べる。したがって、現在の生ワクチンでありますと、サルのじん臓細胞ではえるビールス、ポリオ以外のビールス、ウサギのじん臓ではえるビールス、それから生まれたてのマウスの中ではえるビールス、人間の細胞の中ではえるビールス、そういったものも、あらゆるものを手を尽くして調べているわけであります。それで、一応その上で、なお種のビールスとワクチンにできたポリオビールスが同じ性質であるということの安全性も調べるわけであります。これはけさほども笠原先生の言われましたように、サルの神経毒力であるとか、あるいはビールスの遺伝的な性質を調べるマーカーテストといったようなもので、ワクチンのビールスが種のビールスと全然性質が違っていない、製造工程において何らかの間違いで違う可能性も考えて――これはほとんど考えなくていいのでありますが、それも考えて、そういうことはないというテストを検定でやるわけであります。その上で、神経の毒力も、人間よりもはるかに敏感なカニクイサルの中枢神経に直接刺して調べる、そういう手順も尽くして調べて、それで一応パスしたワクチンは、従来の経験から、人体に使って安全である、かつ、有効であるということがすでに立証されてこういう基準ができておるわけでありますから、これを毎回ワクチンの毎ロットをテストするたびに、そういう人体的な安全性を確認して使うということは不必要なわけであります。それで、検定のほうは、これは先ほど申し上げましたように、生物学的製剤というものの性質上、同じ条件でつくったと考えても、何か過誤があってはいけないということで、毎ロット必ずテストするわけであります。これは外国品でも日本品でも同じでありまして、外国でも毎ロット必ず検定はいたします。それで、ソ連のような国でも、製造するパートと検定するパートとは同じ国家機関ですけれども、別の人がやる。それから、日本並びに欧米諸国では製造会社で自家検定をやるし、国家機関でもう一ぺん同じことを検定をやる、そういうふうに二重にやって万遺漏なきを期しているわけであります。そのようにしてテストされたものが人体に使って安全であり、効力があるということの見通しがきまった上で基準というものができるわけでありますから、そのあとで毎回それをやるという必要はないと、われわれは基礎学者として考えているわけであります。
○藤田藤太郎君 そうすると、いま国民の中で世論として起きていることは、死亡――岡山の問題が、これまた静岡に出てくるというと、なお問題になってくると思うのですけれども、そうすると、いまここで議論しているようなことが国民にわかるはずがないわけです。そうですから、こういうことが確信を持っていわゆる安全だというなら、安全性の確証を国民に知らしめるということが出てくる。これが行政上の問題として私は出てこなければならんと思うのです。ですから、私はきょう聞くところによると、いままであちらこちらにあったのでありますけれども、肝心の子供を持つ婦人の団体が、とにかく安全性が確立するまでこの投与は受けないという決議をここ二、三日うちにされている。そうなってくると、私は非常に重大な問題だと思っているわけです。ですから、私は、これは多ケ谷さんの話じゃなしに、厚生省の話になりますが、ここで議論をして、その免疫の問題と安全性の問題の方向についてはわかったような気がするわけです。わかったような気がするけれども、実際問題として起きている今日の実態の解明というものは、私は的確に国民の前にされなければならんと思うのです。
 もう一つお聞きしたいことは、セービンのワクチンをしたときに、副作用としてどういうことが起きるか。それは万が一か十万が一か、私は知りませんけれども、副作用として起きる現象の例があったらひとつ聞かしていただきたいと思うのです。それはどれくらいの比率で――弱体と申しますか、病弱体というか、そういうものの現象で起きてくるのでありましょうけれども、どういう現象がこの投与から起きてくるか、いままでの調べられた点があったらお聞かせ願いたい。
○政府委員(若松栄一君) 生ポリオワクチンの投与に伴いまして、直接副作用と申しますのは、発熱がある、あるいは軽い下痢がある、あるいは時に発しんがあるということが従来から報告されております。しかし、これはいわゆる致命的なそういう重大なようなケースはいままで報告されておりません。いわゆるほんの軽い副作用という程度でございます。ただ、生ポリオワクチンを飲んでポリオに近いような麻痺性の疾患が起こるかどうかという問題につきましては、いまのところ、生ポリオワクチンとの関連が否定できない。積極的にポリオワクチンによって起こったということでなしに、ポリオワクチンとの関係を否定できないという例が従来から報告されております。それは先般も申し上げましたが、カナダにおいて四百万人投与した中で四例だけあった。アメリカで千三百万人ばかり投与いたしました中で、十一例がそれに該当するであろう。しかし、これはいわゆるワクチンによってポリオが起こったということでなしに、何らかの麻痺的なポリオに似た症状が起こって、それが否定ができない。その否定ができないということは、先ほど多ケ谷先生のお話にありましたように、エコーウイルスによって起こる場合もありましょうし、コクサッキーウイルスによって起こる場合もございましょう。それほかに麻痺性の疾患が小児には多数ございますので、とにかく関連は否定できないという程度のものでございます。日本におきましては、先ほどのように、三十八年に七例だけがそういうものがあった。したがって、百何万人に一人程度そのような否定できない例が一応ある。なぜそういうことになるかといいますと、御承知のように、現在日本で一歳未満の赤ちゃんが一年間で約三万八千人くらいずつ死亡いたしております。一日に百人以上の赤ちゃんが死亡いたしているわけでございまして、そのほかに実際に毎日毎日病気にかかっている赤ちゃんが、その十倍ありますか何十倍ありますか、そういたしますと、毎日毎日一歳未満の赤ちゃんが数千人病気になっているわけでございます。したがって、そういうものがちょうど生ワクチンを飲んだ時期と時期をあまり違わないで発病することがままあるわけでございますので、そういうような点は、われわれ決して逃げる意味でなしに、それぞれの個々のケースを十分に検討してその真偽を確かめてまいりたい、そう思っております。
○説明員(多ケ谷勇君) 先ほどのお話の副作用の点でございますが、先ほどここにおられました高津教授はじめ、臨床の方々が詳しく調べましたデータが協議会の成績として厚生省に報告されておりますが、それによりますと、一応発熱と発しんと嘔吐、下痢、その四項目について詳しく対照群を調査いたしまして、結局対照群にもやはり同時に同じくらいの年齢層の何人かの子供をグループに分けて調べると、発熱、発しん、嘔吐、下痢をしている者がたくさんある。それで、そのための有意な差というのはなかなかとりにくいわけであります。たとえば発熱が投与した者に一〇%あったグループで、コントロールのほうに一二%あったというようなことで、これはなかなかとりにくい。ただ、発しんだけはやや投与した者に多いということが報告されております。それで、これは傾向でいくものでありますから、異種たん白といいましても、たん白量はきわめてわずかでありまして、何ゆえに出るかという説明は非常にむずかしいということで、これは従来の――このときには協議会で成績を出しましたときの報告でありますから、かなり精密に臨床のお医者さんがつききりで調べたケースでありますが、その後の千三百万、千七百万の投与におきましても発しんが出るということは私どもも聞いております。したがって、現在考えられる何か直接のそういう副作用というものが、場合によっては幾らか軽い発熱や下痢が出る場合があるかもしれませんが、これは対照群を精密にとりますと、ほんとうにこうであるということは言いにくい。ただ、発しんだけは幾らか生ワクを飲んだ者に多く、飲まない者にほとんどまあほかの病気でもない限り見られないというデータが出ております。
 それから、先ほどの、われわれのほうではコンパチブル・ケースといっておりますけれども、生ワクを飲んで、それに何かポリオに近い症状を出すといった場合に、そのワクチンとそういう症状とがはたして結びつき得るかどうかということは、これはカナダで一九六二年の秋ごろ、かなりショッキングな発表をしまして、百万人に一人くらいどうもIII型のビールスで麻痺が起こるんじゃないかという報告をいたしましたことは皆さんもお聞き及びかと思います。その後、アメリカでも同様の報告をいたしましたが、さらにその後、このセービンワクチンの創始者であるセービン博士は、これは小児科の臨床医でもあります。したがって、小児の臨床に非常に詳しい方でありまして、それの一々こまかい症状を、アメリカの政府当局が発表している症状をこまかく分析しまして、自分から患者を見にいった例もあるようですし、それから材料を取り寄せて調べた例もたくさんあるようですが、結局調べた例では、ほとんどそのワクチンと関係ないと言えるというような発表をセービン博士が六二年の終わりごろにしておられます。その後、カナダでは六二年から六三年の一年間かけまして、いろいろ実際に麻痺を起こした例を詳しく調べたわけであります。その結果、一九六三年の十一月になりまして、六二年の秋に発表した四百万くらい投与して四例麻痺患者が起こったという例は、すべてワクチンによるという積極的な証明は得られない、かつ、このワクチンの投与を受けた者からその後ポリオが一例も出ていないというところから、このワクチンがポリオ予防上絶対に必要な方策であるということで、積極的にI、II、III型を使ってワクチンの投与を指示していこうというような政府の正式見解を発表いたしております。
 一方において、当時厚生省でもいろいろ資料を入れまして、イギリスであるとかソ連であるとかはどうだということをお調べになりましたが、当時はこれはいずれも該当例はなかったという報告でありまして、したがって、裏を返せば、カナダ、アメリカの該当例がなかったというようなその後政府の見解にだんだんなってきているわけであります。したがって、ほんとうにこの生ワクと結びつき得るかどうかということは、学問的に言いましてもなかなかむずかしい。われわれは、先ほどから学者の態度云々とおっしゃいましたけれども、一〇〇%ゼロであるとか、一〇〇%プラスということはなかなか学問的には言いにくい。それで、いままでに知られております例で、ただ一例だけ私が個人的な学問的見解で、ワクチンによる事例だろうと解釈してよかろうと思われるのがたった一例ございます。これはセービンの株ではございません。コックスの株でございまして、ベルリンで一九六〇年に生ワクチンを投与しまして、それで、その中から麻痺例が数例出たわけであります。しかしながら、大部分は死亡いたしませんから、いろいろ調べてもわからないのでありますが、一例だけ、その生ワクチンを飲んだ直接の人ではなくて、そのおとうさんが死んだ例がありまして、その解剖例が、ビールスがとれて、それがいろいろビールスの親子鑑別のようなテストがあったわけですが、それによって当時ベルリンではやっていたビールスではない、ワクチンのビールスにより近いのだというようなことがわかった例が一例ございます。まあこのようなケースは、コックスワクチンではあるいは起こり得るのじゃないかということで、世界じゅうの学者がコックスワクチンに対しては、やや警戒の態度をとっていたやさきにこういう事件が起こりまして、コックスワクチンは、その後世界から相手にされなくなったわけであります。しかし、セービンワクチンは、そういう懸念は、先ほど申し上げましたこのような決定を受けました上の動物実験からも全然考えられませんし、同時に、いままで世界じゅうで各国でやられている、全体からすればおそらく何億という数になるかもわかりませんけれども、一例も出ていないということを申し上げられるかと思います。
○高野一夫君 ちょっと関連して。公衆衛生局長と薬務局長に伺いたいのですが、非常に有効な注射なり薬品なりは多少副作用があるのは常識ですよ、残念ながら。われわれがチブスの予防注射をすれば必ず発熱する、これも一つの副作用。それから、かぜをひいて熱が出るとアスピリンを飲む、かぜのほうはなおっちゃう、けれど胃が悪くなる。かといって、九九%効力のあるそういう有効な医薬品なり注射を捨てるわけにはまいらない。で、生ワクのお話をだんだんに――私は途中で出たり入ったりしたけれども、伺っておると、ほとんど副作用というようなものの範疇に入らないじゃありませんか、そうでしょう。だから、厚生省はもっと勇敢に、国民に、特に奥さんたちに安心感を与えて、生ワクを使うのだというようなことを大いにPRをされるべきだと思う。
 そのことで私は一つおもしろくないのは、この生ワクが安全性があるとかないとかいうようなことに疑惑を与えるようなビラをまいたりなんかするのは、何とかいう特別の思想運動をしている医者の連中です、そうでしょう。ソビエトのワクチンのほうがいいといっている。その特別の思想運動をしている医者の連中が、堂々と名前を掲げて、ソビエトの生ワクチンならいいけれども、国産の生ワクチンはいかぬ、安全性がまだ信憑性がない、こういうことを言っている。こういうことに対して医務局なり薬務局なり公衆衛生局の役人が、そういう医者の連中に、あなた方そんなばかなことはないじゃないかというなぜ説得をなさらぬのか。普通の家庭の奥さんやらおねえさんたち、母親、おばあさんたちに、それがどういう種類の活動をしている医者であるかわからない。それはとにかく医学者であるのであります、開業医。そういう人たちが、国産の生ワクはまだ信頼ができない、こう言えば、普通の人はそうだと思いますよ、ここでわれわれわずかただの者がだいじょうぶだ、だいじょうぶだといったって。だから、そういうものをほったらかしておいて、ただ生ワクを強制的に飲ませるということをやるのでは厚生省としてはいけない。しろうとが言うならいいんですが、医者の連中が言っておる。その医者の連中をあなた方は説得して、しかりおかないのですか、堂々とやるべきじゃないですか。厚生省の権威においておやりになるべきで、それをほっておくことが私はいかぬと思う。それをやっておれば、自然とこういうことはおかしいと考えるようになる。多くの主婦、おばあさんは、だいぶ誤られている、誤られる原動力がそういう点に相当ある。きょうはここでビラを見ましたが、ひどいビラですよ。何々医師会と書いてある。そういう点に私はもっと行政的やり方をもって、そういう専門家の医者諸君にまずよく説いて、こういういまのお話の点なんか、薬の相違、あるいはワクチンの副作用があるとかないとかいう問題じゃないですよ。ほとんど〇・〇〇何%くらい副作用があるかないかという見当でしょう。確信を持っておやりになっていいじゃないですか。その点についてどう考えられるか、そういうような専門家や専門家のグループに属する人たちが、いわゆる反対のビラをまいて反対の宣伝をしている。政府の、あなたたちのりっぱな仕事を阻害しようとしている、それをあなたたちほうっておきますか。何も手を打ちませんか。その点について政務次官もおられるが、はっきりした決意を示してもらいたいと思う。われわれは幾らでも協力するから。
○政府委員(若松栄一君) 午前、午後の審議を通じまして、専門家の方々から懇切なお話をいただきましたとおりに、現在日本で使用しております国産生ワクチンは、いわゆるセービンワクチンであり、セービンワクチンというのは、国産であろうがソビエトでつくろうが、アメリカでつくろうがカナダでつくろうが、やはりセービンワクチンであります。そのセービンワクチンは、すでに何億という経験を積んで、その経験によって安全性は立証されたワクチンでございます。したがって、私どもは、現在も将来も、このワクチンに対していささかの不安も感じておりません。しかしながら、残念ながら、ただいまお話がありましたように、一部の方々が、いかにもこれが不安であるかのごとく宣伝をし、現実にワクチンの接種の妨げになっておることも事実であります。私それらの方々とすでに数回会いまして、綿密に懇談いたしまして、こんこんと安全性も申し上げたわけでありますが、遺憾ながら理解をしていただけなくて、何回も平行線的な懇談をたどっておることはまことに遺憾であります。こういう事情にかんがみまして、私ども、ことに静岡あるいは岡山等の側が一そうその不安に拍車をかけておる実情にかんがみまして、昨日実は公衆衛生局長名をもって、各県知事あてに、これらの事態に迷わされずに、国産ワクチンの安全性を確信して、従来の決定どおりの計画を実施するようにということを強く指示いたしております。今後もそのような態度で臨んでいくつもりであります。
○高野一夫君 そういうように、ただ衛生部長なり県知事に局長通達でそういうことをするということくらいではなまぬるいですよ。それは何というか、行政官庁の内部だけではっきり腹をきめてやるのだということにすぎない。やはり受けるほうが安心感を持ってやる。先ほど来、藤田委員から盛んに心配されておるが、そのとおりです。安心感を持って喜んで受けてもらうということのために、もっと何か方法を講じていいじゃないですか。厚生大臣は大いに新聞記者を集めて大臣談話を発表する、あるいは少しくらい金をかけても印刷物をばらまくということをおやりになっていいと思うのですが、どうですか。大臣と相談なさってそういう方法をおとりになる気持ちはありませんか。
○政府委員(砂原格君) 高野先生の御意見にわれわれは全面的に賛意を表するものであります。特にけさほどから藤原先生や藤田先生からいろいろ心配な面をあげて、国民の皆さん方が納得してくださるために、好意的に岡山の事件や静岡の事件を引き出して説明を求めていただいたのだと思うのでありますが、公衆衛生局長からもはっきり申し上げたとおりに、日本におります子供、幼児が、いわゆる一日に何千人と病気にかかって死んでいるのでありまして、ワクチンを飲んだら、すぐそれがワクチンの障害であるというように取り上げて宣伝をする一部の方々があるのであります。これはためにせんがための一つの宣伝のようにわれわれは心得ております。したがって、そうした人が、かりに医学者であったとしても、けさほどからの午前中の学者の御意見もはっきり、もうこれは絶対ない、絶対という言葉はどの場面でも私は使えるものではないと思います。したがって、先ほど高野先生の御意見のとおりに、厚生大臣とも十分打ち合わせをいたしまして、国民の皆さん方に安心をして国産ワクチンをお使いをいただいて決して不安のないものであるということを明らかにいたしたいと思っているのでございます。
○高野一夫君 薬務局長にちょっと伺いますが、ソ連から生ワクチンを輸入した場合の支払い関係はどうなりますか。どういう方法で、だれに対して支払いをされておるのですか。
○政府委員(熊崎正夫君) 過去の例によりますと、ソ連からワクチンを買う場合には、国でもって予算を計上いたしまして、競争入札でもって落札をいたしまして、これはソ連のワクチンを輸入する輸入業者がありますので、その輸入業者から見積りをとりまして、国の予算でこれを払う、こういう形をとっております。
○高野一夫君 私は、これを深く追及しませんが、その輸入業者が許可を受けて、指定を受けて輸入しておるソ連のワクチンは、その輸入業者に国の予算から出た金を払い、その輸入業者から正規にそれだけの金をソ連に送られますか、送金される事実はやはり政府でつきとめられますか。それはもう輸入業者に渡せばほったらかしてしまうのですか。あとはもう調べようがない、支払いの責任は果たした、それでその会社から事実ソ連の政府のほうにその金が入ったかどうかというところまではつきとめられないのか。つきとめる必要もない、支払ったら政府の責任はそれでいいと、こう考えられるのかどうか。わからなければわからないでいいですが、一言だけ。
○政府委員(熊崎正夫君) 国の会計から支出しまして業者に払いました金の行く先までは私どものほうは追及する権限もございませんし、また、わからないということになると思います。
○紅露みつ君 関連して。大部分私がお伺いしたいと思うことは高野先生から御質問になりまして、ようやく自信を深めたようでございますが、そんなに追いつめられないうちに自信を持って御相談になっていいと、私も深くそう思っております。いまのこの段階において、いまの医学の進歩の程度において絶対であれば、それは絶対と言い切れるでしょう。決して神様のすることではないので、それはもっと自信を深めなければいけないと思いますし、それのPRをするということは、高野先生御提唱になったとおり、私、大賛成で、そうすべきだと思います。まず第一にマスコミへの働きかけが足りないし、それから、一部のお医者にそういう方たちがあるならば、それは直接に啓蒙すべきだと思います。そうしないでは、ばらばらの婦人層をとらえてどうしてPRをしますか。だから、見当をちゃんとつけてお進みになるべきだと思いますが、もうひとつしろうとなりにお聞きしたいことは、副作用があるかどうか、死亡者についても、投与した全体について副作用が当然ある程度はあるだろうということは想像がつきますけれども、それが自信を持ってお答えのできないというのは、こういうふうに私は考えられるのです。全くのしろうとの考えですから、ひとつ解明していただきたいのですが、副作用がはっきりあったかなかったかということは、そのワクチンの投与するときのその子供たちの健康状態をしっかり把握してやらないからではないでしょうか。それはある程度やっていらっしゃるということはおっしゃるでしょうけれども、一体どんなふうにやっていらっしゃるのですか、そのときの健康状態が何も問題ないというところまで診断しておりますならば、その後にできたその副作用というものはほかにも関連があるかもしれないけれども、大いにこのワクチンに関係してくるわけですね。どんなふうにして実際は投与するときにやっておりますか。ただ年齢でもってつかまえて、ただ飲ましてしまう。たまたまそのときにいろいろな故障がある場合があったらば、そこに結びついてしまうのじゃないでしょうか。その点をひとつ公衆衛生局長から。
○政府委員(若松栄一君) 先ほど多ケ谷先生からもこの点についてお触れになりましたけれども、副作用といいますものは、もちろん投与時には何らの障害がなくて、それからずっとたってあらわれてくるようなものでございます。そういうものに発熱、嘔吐、下痢、発しんというようなものがあると申しましたが、それは先ほども数字をあげられましたけれども、ワクチンを飲ませた子供と、飲ませない隣の町内の子供を綿密に観察いたしておりますと、その間にほとんど差がない。下痢、嘔吐、発熱というようなものも、ワクチンの投与後数日あらわれるものがございますけれども、全然ワクチンを飲ませない子供を五百人検査いたしておりますと、その中にやはり下痢、発熱、嘔吐というものが起こってまいりまして、そういう意味で副作用というものはコントロールを十分に設定いたしまして検討いたしますと、きわめてわずかなものであって、わずかに発しんだけが若干優位の差があって認められるということを先ほど申し上げたわけでございまして、十分その点は検討しながらやっておるつもりでございます。
○紅露みつ君 私はこういうことをお尋ねしたかったのです。投与いたしますところの子供たちの健康状態の診断が十分でないのではないか。これならばワクチンを飲ましてもだいじょうぶだという健康状態を確かめる努力が足りないのではございませんかと伺っておる。どんなふうにそのときに健康診断をしていらっしゃいますか。
○政府委員(若松栄一君) いろいろお話が出ましたように、このセービンワクチンは、ワクチンの中でも副作用の軽微な、ほとんどないといってもいい程度のワクチンでございます。それにもかかわらず、十分な注意をするために、急性の疾患がある場合、あるいは結核その他の慢性疾患がある場合、循環器系の障害のあらわれておる場合、あるいは病気をしたあと等で健康状態がまだ回復していない場合、あるいは種痘をやったあと二週間以内の者というようなものは全部除外いたすことにいたしております。
○紅露みつ君 それはなんでございましょうか、付き添いのおかあさんなりが、このような状態にこの子はありますということを申しますね、それで、その言い分によってそれを信じておやりになるのでございましょうといまのお話では思われるのですが、私は、そこにもう一つ厚生省としては努力をする必要がありはしないかと思う。おかあさんたちはしろうとでございますから、細心な注意はしておりましょう、かわいい子供のことでありますから、してはおりましょうけれども、何といってもしろうとです。そこで十分な健康診断をして、これならばということで飲ませたならば、その関連性というものはよりはっきりしてきて、あなた方がもっと自信を深めることができるのではないでしょうかと思うのです。その点はどうでございますか。その場では健康診断をしていないのでございましょう。ただおかあさんの言い分だけでございましょう。私はそれでは不十分ではございませんかと、しろうと考えではございますが、申し上げておるのでございます。そういうことが行なわれるならばたいへんな手数であるといわれるでしょうけれども、こういう問題を残して、これは一応納得した形ではございますよ。だけれども、一まつの不安をやはり何らかぬぐい切れない、ひっかかるものがあるのは、あなた方に第一に自信がないということです。そして追い詰められると、非常に自信を深めたようなことを言われますけれども、それはもっと努力をする、手数であっても、こんな問題を残すというよりも、経費がかかるということ、手数がかかるということ、そんなことどころではないと思う。私は、これはいつまでも続く問題であると思うし、おかあさんたちの不安を払拭する唯一の道のように思うのです。そして、なおかつ自信が持てないとならば、皆さん方が専門的にも研究しなければいけないし、さもなければ、自信を持っていまの段階の医学の程度では、万全でございますと言い切れるように思うのでございますが、その点を。
○政府委員(若松栄一君) ただいま申し上げましたように、ポリオのワクチンは、あらゆるワクチンの中でも最も副作用の少ないワクチンでございます。したがって、おかあさまからいろいろな症状、いままでの健康の経過をお聞きして、さらに医師が顔色その他の様子を見て、それで現在のところ健康に異状がない程度であれば、もう副作用で事故の起こるような心配は毛頭ないというふうに信じております。
○紅露みつ君 政務次官に申し上げますが、いままでの経過は十分わかりました。今後の問題でございますが、やはり私は、いま申し上げた点をもう一つ検討してみていただきたいと思うのです。それは副作用のきわめて少ないワクチンだから、おかあさんの申し立てで十分だ、そうお思いになって、どうしてもそれをやっていこうとおっしゃるならば、また違った角度から検討していかなければならないが、私はそこに少なくとも引っかかるのでございます。ワクチンを飲ませる瞬間において、その前に健康診断がもっと十分になされておるということは、それは万全の方途であろうと思うのでございますが、そのような御努力が今後払われるかどうか、お気持を政務次官に伺います。
○政府委員(砂原格君) 紅露先生の御意見にはそのとおりであると私も考えております。ただ、私は、お医者のことはよくわからないのですが、お医者さんは、全部の医者に聞いたわけじゃありませんが、二、三の友人の小児科の医者に聞きますと、小児の患者というものは実に判定のつきにくいものだ。健康の面においてもなかなか見分けはつきにくいものだということを話しておりましたが、特に何といってもそういう関係から、やはり親から子供の病状に対する意見を十分聞いて、それによるところの判定も相当医術の面においては行なわれておるのではないかと思うのであります。したがって、国産ワクチンの場合にこうした問題が非常に論争をされるのでございますが、この国産ワクチンを国内でそのもとをつくり出したというのなら、それはいまの御意見は特に検討をせなければならぬと思うのでありますが、現在ソ連からも入り、カナダからも入ってきたそのものを国内で生産をしたというだけで、過去においても十分な実績がある。それで国内のものを使ったときだけに一部のおかあさん方が格段の御心配をなさるということは、ほかの方法でつくったのじゃない、かつてはソ連のものを飲んでおるのであります。決して私はそう御不安をいただくようなことはない、それがためにこういう岡山の一例、あるいは静岡の一例のようなものだけが起こったのではないと私は思う。ソ連のものを飲んだときにも、カナダのものを飲んだときにもそういう事態はあったのだろうと思います。けれども、それは問題にならんで、国内の分だけはことさらにワクチンのほうも何か関係があるのではないかというふうに、その国民大衆がそういうような誤った考え方のほうに引き込まれるようなことを一部の専門家がやられるということは、どうもわれわれは納得できないのでございます、実際に。したがいまして、先ほど紅露先生の御意見のように、十分厚生省といたしましては自信を持ちまして、しかも、赤ちゃんにこれを与えます前に、健康診断等については格段の注意をいたしたいと考えております。
○藤田藤太郎君 だんだん時間が過ぎましたから、またいずれ続けられると思いますから、きょうはもう簡単でやめたいと思います。
 私は、厚生省の皆さんは行政の置きどころを少し抜かっておりゃせんかと思うんです。痛いとかかゆいとか、味がないとかおいしいとかという年の人にやるんじゃないでしょう。生後三カ月から十八カ月というと、ことばがわからん、口が言えん子供にこの薬をやる。一%でも不安が母親にあったら、その一%の不安を除きたいという、それが私は子を持つ母親の心理だと思うんです。それを一般の薬をやるような考え方で、これはだいじょうぶですとか何とかということじゃ、それは母親を納得させることはむずかしいと私は思う。心の置きどころを、一%でも〇・〇一%でも不安がありませんという確証ができて、そして母親が安心して飲ませ得るもの、痛いとかかゆいとか言えない年齢の子供なんです。そういうところに医学的にどうしてもやらなければならぬというなら、その万全の策を初めからとっておやりにならないと問題がある。いま高野委員が触れられたから、私はあまり触れないけれども、医学者としてその人が、これはだめなんだと、こうおっしゃれば、〇・〇一%の不安でも、母親は全部私はその意見になびかれるのは心理だと思うんです。その人の認識が足りるとか足らんとかという問題じゃないと思うんです。そこらの点をよくお考えになってこの問題を取り扱わないと、普通の青年、小学校に行くような子供から上の人は、現症が起きれば、どういうところが痛いとかかゆいとかいうようなことが言えるが、自己意識で言えるような国民に投与するのでないということを十分にお考えなさらないと、ただ私のところは正しいんだ、セービン博士のセービンワクチンだからということでは、ここの中の議論では、それはいままで議論しておるからよくわかっておるんだけれども、そうはいかないところに問題がある。たとえば岡山の問題、静岡の問題でも、最も明確に立証しない限り、母親は不安を持ちます。私は、ほんとうに確信があるなら、今度は行政面、行政の上で、免疫の問題からしてもこの程度でよろしいというような、よろしいという自信を持って――安全性の問題についてもそうです。ものも言えない、自分の意思も表現できない赤ん坊にやるのですから、その母親に納得させて飲まそうという、この出発点はここから始まらなければなかなか理解ができないのではないかと、私は最後にそういう感じを持つわけです。ですから、皆さん方もそういうおつもりでこの問題と取り組んでもらわなければ、青年の人たち――青年とは言いません、ものが言えて、痛いとかかゆいとか言える人にやるときはこういうことは申しませんが、それくらい、〇・〇一%の不安でも取り除きたい母親の心理というものがあるということ、自分の赤ちゃんは何も言わないで表現もしないんです。そこら辺を十分くんでこの問題をやられて、新聞に発表するのも一つの方法でありましょう。しかし、私は、もっと母親に対してあなた方が自信があるなら、そういう納得させる方法を特別に考えなければ、この問題は不安の状態、不安定の状態で続くと思う。私は、せっかくセービン博士の生ワクチンをソ連やカナダから入れていたのが、ようやく日本で製造するということになってきたんですから、これは日本でつくったワクチンで身体が守られるというところに皆さん方が努力されることは当然だと思うし、われわれも期待しているんですが、それが不安定な状態を続けてもらいたくない。このことだけを、私はきょうの段階では最後に強くお願いをしておきたい。
○委員長(鈴木強君) 他に御発言もなければ、本案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめておきます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時十六分散会
     ―――――・―――――