第048回国会 本会議 第4号
昭和四十年一月二十八日(木曜日)
   午前十時十四分開議
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○議事日程 第三号
  昭和四十年一月二十八日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
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○本日の会議に付した案件
 一、日程第一 国務大臣の演説に関する件(第
  二日)
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○議長(重宗雄三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
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○議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。
 日程第一、国務大臣の演説に関する件(第二日)。
 去る二十五日の国務大臣の演説に対し、これより順次質疑を許します。岡三郎君。
   〔岡三郎君登壇、拍手〕
○岡三郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、佐藤内閣総理大臣の施政方針に対し、若干の質問をいたしたいと思います。
 佐藤総理としては、臨時国会は、なれぬせいもあって、まことに不本意であったと思います。いまここに注目の通常国会を迎え、かなり緊張した、気負った面があったことと思います。それにしても、昨日の衆議院における総理の答弁は、最近、総理が言われておる寛容と調和の精神とは似ても似つかぬ、やや感情的な答弁ではなかったでしょうか。まことに残念に思われるのであります。外交、経済、内政全般にわたって、国民にわかりやすく、親切な御答弁をお願いいたしまして、質問に移ります。
 質問の第一は、民主政治、議会政治の基本に関する問題であります。池田前総理は、不幸にも病のために退陣のやむなきに至ったわけですが、自民党は、その、あと目相続をめぐって、長い間、派閥取引、暗闘を続けて、ようやく佐藤総理の誕生をみたのであります。この政変劇の過程で、佐藤総理は、自民党各派に対して、国会を解散しないという約束によって、首相の地位を得たと伝えられているのでありますが、国民はこの点についてぬぐい切れない疑惑を持っているわけであります。もしこのようなことがあったとするならば、――確かにこれは否定されることと思いますが、これは民主政治、議会政治の根本をじゅうりんするものと言わなければなりません。佐藤首相に対する国民の感情は、選挙における信託を得ていないこと、つまり、民主政治上、自前の総理大臣ではないということであります。この点から、佐藤首相の一番最初にやらなければならない政治上の行為は、国民にその信を問うことであろうと思うのであります。総理は、民主政治、議会政治の基本に対する国民の疑いと不信感を一掃するため、この通常国会終了後、すみやかに国会を解散すべきであると思いますが、その意思があるかどうかをまず伺いたいのであります。
 次に、綱紀粛正の問題であります。現に会計検査院から数十億にのぼる国費の不正不当支出が指摘されているばかりでなく、オリンピックのためといって道路をつくれば汚職が発生し、住宅建設を行なえば、そこにまた汚職が起こり、はなはだしきに至っては、現職の警察官が、すりを働き、強盗を働くといった、乱脈ぶりが報ぜられているのであります。これは、ただ末端が乱れているということにとどまりません。上が乱れれば、下おのずからこれにならう――その根源は政治の基本にあると思うのでありますが、これら綱紀粛正に関し、首相としていかなる所見と方針を持っておられるのか、伺っておきたいと思うのであります。
 次に、憲法の問題についてお尋ねいたします。日本国憲法は、国民主権、絶対平和主義、人権尊重を基本精神とする、世界にすぐれた憲法であると思うのであります。しかも、この憲法は、数百万人の同胞のとうとい血の犠牲の上にできたものでありまして、日本国民の人類全体への悲願がこの憲法の上に脈打っていると言っても過言ではないと思います。ところが、自民党政府は、一貫してこの憲法改正を主張し、内閣に憲法調査会をつくり、七カ年もの長期にわたって改憲論を展開してきたのであります。池田前首相は、私の在任中は憲法改正は行なわないと、きわめて明快な態度を示していたのでありますが、自民党の中でも強い改憲論者であると一般に見られております佐藤総理自身として、日本国憲法の基本精神についていかなる理解を持っておられるのか。また、佐藤総理は、憲法改正は自民党の立党の精神であると言い、また一方、万代不易のものではないと言っておりますが、現在いかに考えておられるのか、お尋ねいたしたいのであります。
 さらに、昨年六月、内閣に提出された憲法調査会の報告について、どういうお考えを持っておられるのか、内閣としてこの報告書をどう具体的にお取り扱いになるつもりであるのか、また国会内に憲法調査のための特別の機関を設置する必要を考慮されているのかどうかを伺いたいのであります。
 次に第三点として、日本の平和と繁栄のため、外交上の諸問題について質問をいたしたいと思います。
 まずその第一は、外交の基本的な態度についてであります。佐藤総理が渡米前に、大いに胸を張って「ずばずば主張してくる」と公言していた中国問題、沖繩問題、南ベトナム問題等々について、佐藤総理の態度は、逆にアメリカ側の御意見を拝聴してきた形になっており、国民に大きな失望を与えております。
 中国問題について日米共同声明では、「首相と大統領は、中国問題がアジアの平和と安定に至大の影響を及ぼす問題であることを認め」、「大統領は、アメリカの中華民国に対する確固たる支持の政策を強調するとともに、中共の隣国に対する好戦的政策及び膨張主義的圧力が、アジアの平和を脅かしていることについて、深甚なる憂慮の念を強く表明した」となっております。さらに佐藤首相は、一月十四日のニューヨークの日米協会夕食会で、「われわれは、中国の侵略的傾向に対し、米国と同じく、あるいは米国以上に不安の念を抱いている」と演説しているのでありますが、このような中国敵視の態度で、いかに政経分離で貿易と文化の交流をやると言っても、決してうまくいくはずがないのであります。一体、ジョンソン大統領が言った「好戦的政策及び膨張主義的圧力」、総理自身が述べた「中国の侵略的傾向」とは、具体的にいかなることを指摘しておられるのか、説明していただきたいと思うのであります。また、佐藤総理は、二十日の首相官邸の記者会見におきまして、「一つの中国、一つの台湾という考え方はどうか」という問いに対して、「日本はその考え方はとらない。北京政府にとっても、国府にとっても、これはまたたいへんな問題で、この考え方には反対である」と答えているのであります。しかるに、
 一月十四日、ニューヨークのアストリア・ホテルでの内外記者団との会見で、「中国に現実に二つの政権がある」と答えているのであります。これはまさに二枚舌外交の典型ではないか。アメリカで言明しているのが本心であるのか、日本で語っているのが本心であるのか、ここで明確に総理の見解をただしたいと思うのであります。
 歴史的に二千年の関係を有し、文化的、経済的、地理的にきわめて近い関係にある日本が、いまもってアメリカに追従して、重要事項方式などで中国の国連加盟を阻止しているのは、国際的な常識から見ても不合理きわまるものであります。この際、かつて鳩山総理が、自民党の一部強い反対も押し切って、日ソ国交のとびらを開いた勇断にならって、真に自主的な立場に立ち、中国との正常な国交を回復し、国連加盟を積極的に支持すべきであると思うのであります。このことが、すなわち自主外交であり、国家百年の計を見通す政治家の態度であろうというふうに考えるのであります。総理の見解を伺いたいと思うのであります。
 次に、沖繩の祖国復帰は、長い間の沖繩県民の熱望であり、同時に、一億国民の念願でもありましたが、日米会談の結果は、全く失望のほかはありません。とれがため、沖繩の自民党でさえ大きな不満を持ち、佐藤総理の真意をたださなければならないと言っているそうでありますが、当初、「米民政府の布令廃止など、自治権拡大につとめる」と意気込んでいった勢いは、一体どこへ行ったのでしょう。アメリカ側と、沖繩問題についていかなる話し合いを行なったのか、また、いつ沖縄を訪問されるのか、明らかにしていただきたいと思うのであります。
 日米会談で最も危険性をはらんでいるのは、南ベトナムの問題に対する話し合いであります。佐藤首相は、南ベトナムに対するアメリカの態度とその政策を認めているのでありますが、これは、アジアにおけるアメリカの帝国主義政策、新植民地主義政策に賛成をすることを意味づけるものであります。きわめて重要であります。しかも、その上、ベトナムに対して、経済、医療の援助を行なうことを明らかにしているのでありますが、南ベトナム問題について、いかなる話し合いをなされたのか、経済、医療援助とはいかなるものか、また、具体的にいかなる方法で行なおうとするのか、明確にしていただきたいと思うのであります。
 また、日韓会談については、共同声明にはあらわれていないが、これを一そう促進し、早期に解決すべきことを、アメリカ側と話し合い、急転回をはかろうとしていることは明白であります。しかし、われわれは、かつて岸・元総理が、国民の反対を無視して多額の血税を南ベトナムに賠償として支払い、すでに当時のゴ・ジンジェム政権は倒れ、現在の政権も崩壊の寸前にあり、何のために国民の血税が支払われたのか、明確に聞きたいのであります。今日の韓国の政情を見るとき、日韓妥結による請求権その他の問題、あるいは多くのわれわれの提供する問題は、結局、南ベトナムの二の舞いになりかねないのであります。韓国の強い要請とアメリカの注文で、漁業問題をたな上げするとか、名前を変えて李ラインを何らかの形で残すという方針をとるならば、禍根を今後永久に残すことになるし、南北朝鮮がかりに統一した場合にも、大きく問題を残すと思われるのであります。佐藤総理の基本的な態度を国民の前に明確にしてほしいのであります。
 次に、この際、北朝鮮との祖国自由往来についてお尋ねいたします。政府はさきに、北朝鮮との自由往来の運動を政治目的に結びついた運動として反対の態度を決定したといわれております。しかしながら、数多くの地方自治体がこれに賛成し、また、日本人の多くもこの自由往来を支援していることは、佐藤総理の承知のとおりであります。政府は、日韓会談への影響を考えて、ことさらにこの問題の解決をサボってきたのでありまするが、われわれといたしましては、人道主義、人間尊重の立場に立って考えると、政府の態度は許されないのであります。近い将来、当然、在日朝鮮公民の祖国往来を他の国と同様認めるべきであると思うのでありますが、政府の見解を聞きたいと思うのであります。
 いずれにいたしましても、佐藤内閣の外交態度は、明白に、自主外交とはほど遠いアメリカ追従の外交であることが、いまや、はっきりしたのであります。これは、現在の国際情勢の中で日本の置かれている立場を正しく認識する態度ではありません。佐藤総理は、過去において、五月にアルジェにおいて開かれようとしているアジア・アフリカ会議に政府代表を出すことをしばしば表明してきたのでありまするが、このような外交姿勢で、一体何を論じ、何を決定してこようとしているのか、明らかにしてもらわなければなりません。
 第二回アジア・アフリカ会議は、平和五原則、バンドン会議十原則を決定した第一回のバンドン会議の基礎の上に開かれるものであって、アジア・アフリカの約六十カ国が参加するものであります。これは、まさに国連加盟国の約半数に匹敵するもので、その動向は国際的にも大きな作用を及ぼすことは必至であります。しかも、これらの諸国は、その大多数が新興国であり、帝国主義、新植民地主義に反対し、強く民族独立の意欲に燃、えている国々であります。日本政府が、アジア・アフリカ会議に代表を派遣するという意義は認めるが、これは、ただ参加するだけで済むものではありません。これら諸国と協力して、世界の平和と繁栄に前進することを誓うことに、大きな意義があると思います。自主外交を唱えながら、中国を好戦的である、侵略的であると非難をし、南ベトナムの戦争に協力しながら、アジア・アフリカ新興諸国の掲げる反植民地、民族解放、中国の国連加盟実現という態度に、日本政府はどうこたえるのか、きのうの答弁はまことにあいまいであります。この際、AA会議に出席するのかどうか、また、臨むとすればその基本的態度を明らかにしていただきたいと思うのであります。
 次いで、軍事基地をめぐる諸問題について少しく質問いたします。日米安保条約によって、日本国内にアメリカ軍の施設、いわゆる軍事基地が、北海道の稚内から鹿児島まで百六十二カ所、一千八百七十二万七千坪に及んでいるのであります。これらの基地には、原爆を搭載できるF105D戦闘機やミサイルが配備され、原子力潜水艦まで入ってきているのでありますから、非武装、戦争放棄を宣言している憲法を持つ日本としては、これらの基地すべてが憲法違反であり、直ちに米軍の撤退と基地の撤去を求めなければならないものであります。われわれが、このように憲法上の理由から基地の撤去を求めるだけではなくて、このことによって大きな被害を受けている国民生活の立場からも、強く基地の撤去を求める声がいまや全国的に広がっているのであります。日本の防衛のため、日本人の安全保障のためと称する米軍の飛行機が、突如として民家や町の中に墜落して、住田を殺し、甚大なる被害を与えるという事故が、畠近、頻発しているのであります。また、厚木、照島、横田等では、ジェット機の騒音により、ラジオやテレビの視聴困難、電話の通話不能、児童の学習妨害、慢性の頭痛や目まいが起こる等、はたはだしい被害を受けております。これは単なる基地周辺の被害というにとどまらず、重大なる人権問題であります。そうしてまた、社会問題であります。人間尊重をうたっている佐藤総理としては、責任をもって、これらの被害を未然に防止する対策と同時に、十分なる補償を行なわなければならないことは当然であります。同時に、これらを含めて、現行の特別損失補償法を抜本的に改革し、基地周辺民生安定法の制定等の用意があるのかどうか、総理並びに防衛庁長官にお伺いいたしたいのであります。
 次に、アメリカ原子力潜水艦の寄港問題についてお尋ねいたします。この問題については、与野党かなり論議をかわしました。しかし、最近の情勢について、原子力潜水艦がいかに危険であるかを、われわれは知ったのであります。スレッシャー号の沈没事件に関して、最近アメリカ議会が発表したリコーバー中将の証言を見ても、「近年、原子力潜水艦が危うく沈没しかけたものが数隻もある」とのこと、また、アメリカ海軍省艦船局次長カーツ少将は「潜水艦の設計について、攻撃と防衛の能力の強化を急ぎ過ぎて、安全性の問題がこれに追いつかなかったことを認めねばならない。」と証言しております。さらに、最近地中海においてアメリカの原子力潜水艦とノルウェーの貨物船が衝突をしているのであります。これらの事実からみて、原子力潜水艦は、日本政府が言ろように決して安全なものではなく、また、大小の船舶が混み合う日本の港に入ることは、一そう危険を伴うことが、わが党の主張のごとく、まことに明らかとなったのであります。
 以上のような点からみて、いまでも政府は、従来どおり、米原子力潜水艦の寄港は安全だと思っておられるのかどうか、伺いたいのであります。さらに、これが対策をいかにするのか。いまこそ、はっきりとアメリカ政府に対して、原子力潜水艦の寄港を拒否する通告をすべきであると考えるのでありまするが、その意思があるのかどうか、伺いたいのであります。特に人口稠密地帯である横須賀等への寄港について、どう考えておられるのか。前臨時国会における成田議員に対する答弁とあわせて、明確にお答え願いたいのであります。
 次に私は、経済政策の問題について質問をいたしたいと思います。
 昭和四十年になって、私たち国民は、まことに暗い年を迎えたと言わなければなりません。私たちの生活と密接な関係のある物価が、次から次へと上がっているからであります。元日から消費者米価は一割五分にものぼる大幅な値上げとなりました。医療費は、支払い側の十分な意見を聞くこともなく、政府みずから法を無視して、一方的に値上げの告示を行なったのであります。しかも、薬代の本人半額負担という、社会保障の確立に全く逆行する方向がとられようとしているのであります。米代と医者代、これは、まさに国民の生命そのものであります。政府は、みずからこの国民の生命を脅かす基本的な物価上昇の先べんをつけたことは、まことに許すべからざる暴挙と言わなければなりません。さらに、十六日にはバス料金の値上げが行なわれ、いま全国各地において水道料金の値上げが行なわれ、バス料金等と相まって、公共料金を一体どうするのか。国民の生活を圧迫しているこれらの問題について、明確な総理の答弁を聞きたいのであります。特に、国民の負担によって医療費を上げるというがごとき施策につき、人間尊重を唱える佐藤総理の明確な答弁を求めるものであります。もちろん、総理が日ごろ言われるように、物価対策は総合的な経済政策の中で行なわれるべきことは当然でありましょう。総合的な経済政策は、予算の性格に反映しているはずであります。しかしながら、今年度予算を見る場合に、はたして物価の抑制を真剣に行なっていこうとしているのか、公共料金一つを見ても疑わしいのであります。国民の生命と生活を確保するという基本的な考え方が貫かれていると言えるでありましょうか。長期かつ総合対策では、国民は、もはや、がまんならぬのであります。
 今年の予算を貫く特徴の第一は、インフレ的性格であり、第二に、弱きをくじき、強きを助ける性格を持っていると言えるでありましょう。昨年十一月十七日、政府の諮問機関である経済審議会は、中期経済計画を発表し、所得倍増計画の第二ラウンドとして、ひずみの是正を旗じるしとしております。そしてまた、このひずみの是正のためには、経済の安定成長が必要だとしています。しかし、現実の予算案は、経済活動を刺激する度合いの高い財政投融資が昨年度より膨張していることであります。財投は国会の議決を必要としないという点を利用して、国民の目をごまかしながら、大企業の利潤を確保しようとする態度は、許されないのであります。しかも、その財源たるや、公募債や借入金の比率をますます高め、赤字国債とほとんど変わりのない実態になっております。また、日銀は、実体なき株価をつり上げるために二千億にものぼる金を使っているのでありますが、これらの政策は、明らかにインフレ政策であり、物価上昇の根本の原因となっております。総理は、こうしたインフレ政策を転換すると言っておりまするが、その意思がほんとうにあるのかどうか、お尋ねいたします。
 これと関連して、総理は、昭和四十一年度以降国債発行を行なう考えがあるかどうか。中期経済計画の閣議決定にあたって、総理は、「より積極的な経済運営」ということばを使われていますが、これは国債発行の意向を示したものともとれるのでありますから、総理、大蔵大臣の考え方を明らかにしてほしいのであります。私は、もし公然と国債発行に踏み切れば、インフレはますます高進することを警告したいと思います。
 ひずみの大きな問題の一つは農業問題であります。離農その他、多くの問題を含めて、現在の農業基本法の施策の中における農業改善事業では、いまや農家は倒れているのでありまして、これらの問題について総理は具体的にどうお考えになっているのか。
 また、次に中小企業の問題でございまするが、大蔵大臣は、今回の金融の緩和にあたって、選別融資の強化の方針を明らかにされました。これは、どういうことでありましょうか。一言で言えば、中小企業や設備の悪い企業を近代化し、育成するというのは、名目にすぎず、これらの企業をつぶして独占的な大企業のために資金と市場を確保しようとする意図が、明白にうかがわれるのであります。自由経済を標榜しながら、実際は、弱きをくじき強きを助けるという自民党の精神が貫かれていることは、確かに、まことにみごとでありまするが、この方向はまた、昨年世論の反撃の中で流産した特定産業振興法のねらったものと一致しているのであります。国会に出せば世論の反撃をくらうから、行政の面で自由に中小零細の企業の首を切るというのでは、これは独占資本の独裁政治であります。事実、佐藤内閣成立以来、池田前内閣の経済政策の時期にもまして、企業倒産は拡大しております。証券対策にはまことに熱心でありまするが、特に、二、三月の危機を控え、企業倒産を防止するための積極的な施策をいかにお考えになっておるのか。総理並びに大蔵大臣、通産大臣のお答えを聞きたいのであります。
 いずれにいたしましても、今年度予算は、ひずみを是正するという羊頭を掲げて、実は大資本と中小企業の格差を広げ、国民生活をますます圧迫して、一そうひずみを拡大するという狗肉を売っているのであります。われわれは、今回の予算については、十分に、インフレにならぬように、そうして物価安定に対して十分なる考慮を払うよう、予算の運用を望んでやまないのでありまするが、総理の基本方針をただしたいのであります。
 続いて私は、佐藤総理の「人間尊重の政治」を具体化したといわれる社会開発なるものについて、過密都市問題と公害問題に限ってお伺いいたします。
 昨年、佐藤総理は、その所信表明において、過密都市問題は重大であると言っております。しかし、いまや、都市における交通ラッシュ、特に通勤対策の問題は、もう、ゆるがせにはできない問題であります。しかも、これをめぐって、運賃を値上げしないというのは、りっぱでありまするが、しかし、二兆億にのぼる、いままでの国鉄の財産に対して、国は、わずかに四十億しか出資していないのであります。いまや国の施策以外には、この交通難を正す方向はないと私は信じます。しかるに、本年は三千三百億程度で、六カ年計画で国鉄の計画を推進するといっておりますが、具体的に、東京、大阪を中心とするところの交通網に対する建設計画について、これは一国鉄の問題ではございません。したがって、総理の見解を明確にただしたいのであります。
 と同時に、都市における過密問題はますます急を告げております。フランスは、すでに十年後のパリを想定して計画にかかり、イギリス労働党政府は、すでにロンドンにおける新しいビルの建設を中止する勇断に出ております。われわれは、このような施策を考えるときに、いわゆる筑波山ろくにおける研究都市なるものが、十年の年月と四千三百億円の金と、そうして、わずかにその人口が十六万という、こういう計画でもっては、私は、現在の過密都市対策にはならないと思うのであります。一体、いままで政府は何をやってきたのか。河野前建設大臣は、ヘリコプターで、かなりあちこちを回っておりましたけれども、結局、何もその緒についておらないのであります。いわゆる政府のいうところの主要産業の振興という角度の中で、いま各地に産業を起こしておりますが、何ら、これに対して具体的に手を出しておらないのであります。岡山県の水島の例を一つとって見ても、いまや地方の財政は、貧困から経済の破綻を来たしております。こういう点について根本的な解決を頼むとともに、要するに、これらの問題については、土地対策が不徹底であるということであります。公共施設の移転や都市交通網の建設を行ない、あるいはその他のことを行なうにいたしましても、地価抑制のために、どのような手段を政府はとろうとしておるのか。何よりも、土地を投機の対象としないということ、実需の伴わない土地の売買を禁止するということであろうと思うのでありますが、昨日衆議院での土地の先買いの問題等も一つの具体的な例になります。建設大臣の御答弁をお伺いします。
 次に、公害の問題でありますが、このことは、いまさら言うまでもございません。最近において、ようやく政府が公害防止事業団の新設を持ったことは、私は、政府の公害に臨む一つの施策として、その進歩を認めます。しかし、現在は、公害に対する監督が各官庁ばらばらになっております。われわれは、公害を出す企業の操業を認めないという強い原則を持つとともに、一貫した、ばらばらではない強い権限を持った行政委員会が、一元的にこの公害問題に対して指導に当たらなければならぬと思うのであります。こうした視点に立って、どうか総理の真摯なる公害に対する御答弁をお願いいたします。
 私の質問を終わるにあたって、この際、総理によく今日の事態を見つめていただきまして、数字上ではなくて――高度経済成長は、数字上では、あったかもしれませんが、しかし、犯罪は横行し、交通事故で死ぬ人が一年間に一万三千三百人もあります。
○議長(重宗雄三君) 岡君、時間がまいりました。簡単に願います。
○岡三郎君(続) われわれは、経済あって政治なく、行政あって政治なしという人間不在の政治から、今日、佐藤総理は脱却することを宣言しておるのでありますが、どうか佐藤総理は、人間尊重、社会開発、寛容と調和というように、まず、ことばだけではなくて、具体的実践的にお願いしたいのであります。経済だけが政治ではないように、ことばだけでは政治は成り立ちません。よく真実を見つめ、国民に対し血の通う答弁を期待いたしまして、私の質問を終わる次第であります。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
○国務大臣(佐藤榮作君) まず第一に、民主政治の、また議会政治のもとにおいては、解散して民意を問うてしかるべきではないかというお尋ねでございますが、私が総理になります、あるいは総裁になるについて、解散をしないという、それが約束ではございません。どこからか、そういう、うわさが立ったのかと思いますが、そういうようなことはございません。私は民主主義的な政党の当然のあり方として総裁になったわけでありまして、この解散の問題でありますが、解散権、これは政府が持っております。そう簡単に解散を振り回すようなことはいけないと思います。解散すべきときには解散する。しかしながら、解散を予定して政治をするというようなことはたいへん間違っておる、権利の乱用だ、かように私は思います。
 第二に、公務員の綱紀はもちろんお話のように厳正でなければなりません。しこうして、この公務員につきまして、私は施政演説でも申しましたように、より公衆に、国民に対する奉仕の精神を持っていただきたいということを、強く呼びかけましたが、最近、公務員において、あるいは業務上の犯罪もありますし、また一般の犯罪もある。それが警官であるとか、あるいは教員の中に、そういうものが出ておる。殺人の事件などはたいへん忌まわしいことだと思います。これが、その根源は政治にあるのだ、こういう点をお衝きになりましたが、やはり政治は清く正しくなければならない。もちろん私が率先垂範する、とにかくわれわれがまず第一のその中心であることには、かわりはございませんので、そういう意味におきまして、政治をする者はすべからく清く正しい政治をする、そうして公務員を率いていく、こういうことでありたいと思います。
 次に、憲法の問題についていかに考えるか。この憲法問題は御指摘のように、私どもが戦後二十年、この憲法のもとにおきまして、この繁栄をもたらしたのであります。言うまでもなく、この憲法が明示しております民主主義、あるいは平和主義、あるいは地本人権を尊重する、こういう三点は、最も私どもの繁栄に寄与したものである。この基礎に立ってこそ、初めて今日の繁栄があった。かように私は固く信じております。また、この憲法の私がただいま申しましたような三原則、これこそは、国民の血となり肉となっておる、かように考えます。しかして、本来この憲法というものは国民のものであります。したがいまして、進んだ、独立した民主主義国家においては、国民自身がその憲法のあり方を絶えず考え、そうして国民が、この憲法が規定している条項が、今日の国家あるいはその国家を取り巻く国際情勢に、はたして適当しているかどうかということを、絶えず調査研究をいたしまして、そうして国民自身がこの憲法をいかにするか、こういうことを考えるべきだと私は思います。御承知のように、憲法調査会におきましては、もうすでに七年間こういうことと取り組みまして、そうしてりっぱな調査ができ、その報告を受けているのが現状でございます。いかように申しましても、この憲法が制定された当時は、わが国の主権は完全だとはいえなかった。国民の考え方が完全な自由意思のもとにこの憲法が制定されたとは思いません。したがいまして、ただいま申し上げたような基本的原則については、だれも異存のないことだと思いまするが、しんから国民の信頼する、自分たちがつくったのだ、自分たちがこれをつくったのだ、こういうものがにじみ出るようなものがほしいと思います。これがその憲法のあり方だと思います。自由民主党におきましては、立党以来、かような点を申しております。ただいま私が直ちに改憲する、かように申すわけではございません。憲法は国民のものである。その立場に立って、国民ともども、十分、現在の憲法がはたして時勢に合うのか、そういうことをよく考えてまいりたいと思います。幸いにいたしまして、憲法調査会が調査を報告をしておりますから、この調査を今後は、内閣におきましては法制局におきまして、いろいろ調査の整理その他をいたしております。また、ただいまお尋ねになりましたように、国会内に適当な機関を設けるか、こういうことでありますが、これは国会自身のすることであります。政府の関与するところではありません。しかし私は、国会におきましても、この種の研究機関が設けられるということは、これは望ましいことではないかと、かように思いますけれども、これは私の個人的考え方でありまして、国会自身が自主的にきめるべきものである、かように考えます。要するに、憲法は国民のものである。国民自身が、この憲法がいかなる条章を持っておるか、また今日の国際情勢、たとえばあの憲法ができました際に、日本は国連に加入いたしておりません。そういうことが、まず第一、事情の変化がございます。その他の国際社会にはたして運用できるかどうか、こういうような点は十分国民が研究してほしいことであります。また、私も国民の一人として、ともどもにこの問題と取り組んでまいりたい、研究してまいりたい、かように考えます。
 次は、私の訪米につきましていろいろお尋ねがございました。今回の訪米につきましては、私は、日本の立場と日本の主張、これを率直に申し述べることができたと思います。少なくとも、全部私の言うとおりにはなりませんでしたが、私自身とすれば、日本の立場なり、日本の主張を十二分に説明することができた、たいへんに私は満足いたしております。したがいまして、ただいまお尋ねのように、何らかの荷物をしょってきたんではないか、こういうお尋ねでございますが、さようなことは全然ございません。日本は何にも荷物をしょってはおりません。私どもどこまでも自分の立場と自分の主張をはっきりいたしたわけでございます。
 そこで、お尋ねになりました、いわゆる私のニューヨークにおける「中国の侵略的傾向」、あるいはジョンソン大統領の「中国の好戦的政策及び膨張主義的圧力」、こういうものを一体いかに考えるのか、こういうことのお尋ねでございます。ジョンソン大統領のこの表現について、私は何も申し上げる筋ではございません。私自身のニューヨークにおける演説について申し上げますならば、中国の侵略的傾向、これは必ずしも断定しておるわけではありません。で、皆さま方も御承知のように、これは相当の時間が経過いたしておりますが、朝鮮事変の際に、これは、国連において、中国が侵略的である、こういう断定を下されたことは御承知のとおりであります。しこうして、その後におきまして、中国の歩んできた道、これは、私どもが、その国際的な感じを全部払拭さすような状態では必ずしもないと思います。御承知のように、最近におきましては、核実験をした、これなどは、私どもの国がアメリカのように遠い国ではない、また、日本の国は中国に隣りしておる、そういう関係にありまして、そうして中国が核実験をした、これから核兵器でも持とうとする、たいへん私どもは心配する、これは当然のことじゃないでしょうか。この点は十分御了承をいただきたいことであります。私はこういう感じを率直に披露した次第でございます。
 次に、中国政府についての、一つの中国なりや――二つの政権との関係でございます。御承知のように、私どもは今日まで、北京政府にしてもまた国民政府にいたしましても、これは、はっきり中国は一つだと言っております。私どもは、この中国は一つだという国民政府並びに北京政府の声明を聞きます際に、これはどうも観念的だ、この一つというものは観念的だ、現実には二つあるんじゃないか。現に台湾にあり、もう一つは北京にある。この観念的、抽象的な議論と、それから現実の問題が、どうしても一緒にならない。ここに国際問題があり、ここにむずかしい国連加入の問題があり、国際連合に加盟いたしております各国にいたしましても、この現実の問題と、またこの両政府が考えておるような一つの国家的、民族的な理想というものを、これをいかに結びつけるか、これが実は悩みなのであります。私ども隣国であり隣人であるだけに、この問題は、これは民族的願望、民族的理想として、一つの中国、これは私どもがそのまま受け入れてしかるべきである。しかし、現実にはとにかく二つある、それはいかようにもできないんだ、こういう点が問題の所在であります。したがいまして、このことを考えました際に、この中国の国連加盟、それこそはまことに重大な問題である、かような意味合いから、国連でも重要方式を採用している。十六回総会以来この重要方式というものが採用されている。今日におきましてもそのままで、これは有効である、かように私は考えております。ただ私どもは、先ほど来ソ連と日本との国交正常化についてのお話がございましたが、これなどは確かに考うべき事柄だろうと思います。今日の中国、これは隣国であり隣人だ、かように申していて今日の状況にあることには、まことに私自身も不満でありますし、おそらく北京政府としても何らかの方法はないだろうかということを考えておられるに違いないと思います。しかし、なかなかむずかしい理論上の問題のあることを御了承いただきたいのであります。
 次に、沖繩についてのお話をいたしますが、沖繩の百万島民、さらにまた九千万日本国民の、これは沖繩を祖国復帰さすべしという強い願望であります。この点につきましては、私はよくアメリカ側にも主張いたしました。アメリカもその願望の熾烈なことについては十分理解したようでございます。もちろんこの願望は今日直ちに実現しない、こういう段階におきましては、自治権の拡大なり、あるいは、政治的、社会的な自由をもっと与えるように、これをひとつ進めていきたい。そこで協議委員会の権能を拡大強化して、そしてこれらの問題を取り上げていこう、ただいまライシャワー大使が最近帰ってまいりますから、帰ってまいりましたら、それを具体化するように、さっそく作業を進めるつもりでございます。
 また、私の沖繩訪問、これは私自身は、この百万は私どもの同胞である、これはりっぱな日本人であります、その日本人が住んでいるところ、そこへ私、総理が行きたい、これは当然のことであります。私は出かけたい、かように思いますので、できるだけ早い機会に出かけるようにいたしたいと思います。ただいまは、いついつと、かようには申せません。また内閣官房長官などの説明なども、あるいはことしじゅうは行かないんじゃないかというような表現もいたしておりますが、私の気持ちは、できるだけ早く行きたい、ここにも日本人がいるんだ、こういう立場で私は行って、話を、また実情を十分見てきたい、かように私は考えております。社会党の力もすでに一回、また今回は二度目の沖繩訪問をされるというようにも伺っております。かように、私どものこれは同胞である、こういう気持ちから十分実情も把握してまいりたい、かように思います。
 ベトナムの問題につきましては、これまたいろいろお話をいたしましたが、ベトナムについてただいま米軍が軍事的な行動をしておる、そのことについてのお尋ねでありますが、とにかく南方諸地域、新興独立国家、そういうところにおいては、最も必要なことは民族的な願望を十分知ることだ、そして民族的な願望に沿っての処置をすべきだ、かようなことを強く要望してまいりました。医療援助の内容をいかにするか、こういうようなお話でございまするが、これも内容的にはまだはっきり具体的にはきまっておりません。もともと東南アジア諸地域、これは貧苦、同時に病気、そういうところからその民族を救うことが最も大事なことだと思います。私ども平和憲法においてなし得ること、これは民生の向上、またそういう意味においての努力であります。私は、長い間戦乱に苦しんでおるこれら諸地域の民族が、私どもの力をかすことによって、より平和な、また、より生活が向上するならば、この上もないことだ、かように思いますので、この意味の援助はするつもりでございます。
 次は日韓会談でございますが、ただいま日韓会談についての基本的態度は、すでに御説明したとおりでありますし、問題になります点については、公海の自由あるいは漁族の保存等を主張し、ことに李承晩ラインが今日まで問題になっておりますが、これらの基本的態度については何らの変更のないことをこの機会に申し上げておきます。
 それから、その次の朝鮮人民の祖国往来の自由、この自由往来の問題でございますが、本来から申せば、人道上の問題ではないかと非常に簡単に片づけられる問題であります。ところが、今日この自由往来運動なるものがいかなる意義を持っておるか、これは岡さんもよく御承知だと思います。あるいは日韓交渉に反対、あるいは日韓交渉停止、あるいは在日韓人を相互に反目さすとか、こういうような政治的意図を多分に持っておるものであります。しかも自由往来というものがそこに入ってきておる。私は、しんからこの種の人道上の見地に立っての問題ならば、日本政府もかたくなにならないで、進んで自由往来をさすべきだと思いますが、ただいまの状況は、どうも実情の把握にまことに困難な状態であります。いまの状況では、直ちに自由往来を許すというような結論にはなりません。
 また、AA会議、これにつきましては申すまでもなくアジア諸地域の平和と繁栄、これはアジアの一国である日本の当然心からの願いであります。しかしながら、ただいまインドネシアが国連を脱退してから、AA会議につきましてもいろいろな批判がございます。私は昨年の暮れに、AA会議に出席する、かように申しておりました。その考え方はただいままだ変わっておりません。しかしながら、AA会議に、はたして多数の国で参加するかどうか、また、いつ開かれるか、こういうことを十分見きわめる必要があるのじゃないか、かように思いまして、ただいま正式に参加招請も受けておらない日本の立場といたしましては、ただいまのような状態であることは、これはやむを得ないと思います。御了承いただきたいのであります。
 最後に、いろいろ軍事基地その他につきましてお話がございましたが、これはそれぞれ関係大臣に説明をさしてしかるべきかと思いますが、一言、大事な原子力潜水艦の問題でございますが、これが今日なお危険があると、かように考えられますことは、一体どういうところからきているか。私は、日本の原子力委員会にいたしましても、また米英原子力委員会等にいたしましても、この原子力潜水艦自身の危険性、原子炉による危険性、こういうものは、もうないということをはっきり申しておりますが、今日の科学的な観点に立ちまして、これは信頼していいんじゃないか。ことに、今日原子力潜水艦が入ることによるモニタリングその他も十分手を尽くしてみまして、第一回の入港、その後の結果におきましては、放射能等の危険のないことは、すでに御承知のとおりであります。
 財政投融資その他の問題につきまして、それぞれの大臣に答えていただきたいと思いますが、これも私は、大企業だけに偏すると、こういうのではない、実情を十分考えていただきたい。ことに最近のように倒産等の悩みがある、不渡り手形が発行されている、かような立場に立ってみますると、中小企業対策、これなどは私どもが特に力を入れておる問題でありますし、そういう意味から、金融の面におきましては格別の努力を払うつもりでございます。実情に即した考え方でございます。
 物価こそは、これは、わが内閣の現時点において最も力を入れるべき問題であります。したがいまして、施政方針におきましても、特に力点を置いて説明をいたしたはずであります。ただ、残念に思いますことは、物価問題と取り組む場合に、短期的な観点に立って今日どうするかという問題、もう一つは、長期的観点に立たなければならない問題、いわゆる経済そのものを安定成長に持っていかない限り、これは、物価は安定しないんだ、こういう二つの問題があるわけであります。政府といたしましては、その二つにつきまして、それぞれ所要の、また、すべき事柄をやっておるわけでございます。これも御了承いただきたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣小泉純也君登壇、拍手〕
○国務大臣(小泉純也君) 基地周辺におきまして、米軍の事故が相次ぎ、民家や人命の殺傷が相次いで最近起こっておりますことは、まことに遺憾のきわみに存じます。そのつど米軍に対しまして厳重な抗議をいたしますとともに、今後かかることが再び起こらないよう十分な注意を喚起をいたし、また、その事故の補償につきましても最大限の努力をいたしておる次第でございます。
 このことに関しまして、特別損失補償法を改正する考えはないかという御質問でございまするが、当面この問題の改正は考えておりませんで、行政措置によって個々に問題の解決に当たっていく所存でございます。もちろん特損法の改正については今後十分検討をしなければならないと存じております。
 なおまた、基地問題につきましては、御承知のとおり、昭和三十六年の五月、内閣に基地問題等関係閣僚懇談会、さらに基地等周辺問題対策協議会を設置いたしまして、鋭意、基地周辺の被害に対する対策並びに民生の安定に努力を続けておるわけでございます。これについて基地周辺の民生安定法の制定を必要とするのではないかということが、各基地方面からも陳情が行なわれ、各方面で検討を続けておりまするが、政府におきましては、基地問題は複雑広範であり、その基地一つ一つ特殊な事情もございますので、これを一本の法律によって規定することには、これは内容において、いろいろな面において問題があるということでございまして、当面はやはり行政措置によってそのつど積極的に解決をしていくという方法をとっておる次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
○国務大臣(田中角榮君) 私がお答えいたしますのは三点であります。
 その第一点は、財政の姿勢はインフレに通ずる、特に財政投融資は大企業中心であるということでございますが、財政は一般会計及び財政投融資の内容をごらんになっていただけばわかるとおり、健全均衡財政主義を貫いているのでありまして、財政がいやしくも景気を刺激しないように十分の配慮を行なっているわけでございます。特に財政投融資につきましては、住宅、生活環境整備等、特に国土保全や道路を中心として組まれたものでございまして、大企業中心などというものではなく、国民生活の向上を旨としたものであることは御了解願えると思います。
 第二点は、国債の発行についてでございます。四十一年から内国債の発行を行なうかということでございますが、御承知のとおり、昨年の四月一日を期して開放経済に向かったわけであります。これからは国際経済の波動を直接に受ける日本でありますので、国際環境を十分考えながら、国際収支の安定、物価の安定、経済の安定成長等を確保していかなければならぬわけであります。その意味において、健全財政主義を中心にして財政金融が運営されなければならぬことは言うを待ちません。経常収入で経常支出がまかなえないのかということが問題でありまして、現在の経常収入で経常支出がまかなえるのでありますから、国債発行に対しては特に慎重でなければならないということは事実でございます。しかも御承知のとおり、現在、公社債市場の育成が未発達の状態でございますので、現在直ちに国債を発行するというように短兵急なものの考え方をするより、公社債市場の育成その他前提となるべき条件の具備に十分の意を注ぐべきことは御承知のとおりであります。結論的に申し上げますと、まだ内国債を発行しなければならないような状態でないということを明らかにいたしておきます。
 第三点は、選別融資の内容いかんということでございます。選別融資、すなわち、直ちに資金統制というものを考えておるのではございません。ただ、選別融資の必要性が一体あるのかないのかということを考えますと、全体としましては、経済に行き過ぎを生じないよう、また不要不急な対象を排しまして、経済の健全な発達に役立つよう、企業資金を供給するということは、だれしも異論のないところでございます。金融も財政と一体となり、国民経済的見地に立って資金の効率的運用をはからなければならないという意味で、選別融資のごとき重点融資の必要性が説かれるわけであります。しかし、選別融資を考えますと、直ちに政府が統制するのではないかという、こういうことにつながるわけでありますが、政府が民間資金を直接に統制する意思は全くございません。ただ、ただいま申し上げましたように、全体として行き過ぎがないように、また、不要不急の対象を避けながら国民経済的見地に立って金融の効率化をはかってまいりたいということでありますので、自主的な民間の判断によりまして資金の流れが調整されるということが好ましいことでありますので、現在健全金融のあり方に対して検討を進めておる段階であります。(拍手)
   〔国務大臣櫻内義雄君登壇、拍手〕
○国務大臣(櫻内義雄君) 私への御質問は、倒産防止の積極的施策いかんというのが第一点であったと思うのであります。昨年の下期に、御指摘のように、非常に倒産が多うございました。私としてまことに憂慮にたえなかったのであります。この倒産の主たる原因が過去一年余にわたる金融引き締め政策が原因であった、あるいはそれが契機になったということであろうと思います。ところでこの七月以降の、一方において倒産が多いが、他面引き締めの主たる目標でございました総合収支の改善、国際収支の改善というのは、またこの七月以降、最初に貿易収支が黒字になりまして、続いて総合収支が黒字になっていた。こういうことでありますので、私といたしましては、十一月ごろより目的を果たしておるとするならば、金融緩和をぜひしてもらいたいということを繰り返し要望しておりました。その結果が預金準備率の引き下げあるいは公定歩合の引き下げというように、段階的な金融緩和が講ぜられつつあるわけでございます。で、こういうような金融面から倒産の防止ということが、これが考えられます。昨年の十二月におきましては、財政投融資の大幅の増額、あるいは買いオペその他によりまして、まず年末は切り抜け得たと思うのでありますが、しかし、ここで問題は、一体この倒産の具体的な原因がどこにあるのかということをよく掘り下げて見ておく必要があると思うのであります。そういたしますと、放漫経営であるとか、設備投資が過大であるとか、あるいはまた過去の業績不振が、これが原因になったとか、最近におきましては、労働力不足によって倒産をする場合もあるのでございますから、そこで、金融緩和ということ以外に、これらの原因に対処していく必要がある、かように考えるのでございまして、ただいま御審議を願っておる四十年度の予算の中に毛、これらの原因に対処する諸施策を盛り込んでおるつもりでございます。第一には、中小企業の経営の診断、あるいはその診断の結果による改善の指導ということが、これが必要であろうと思います。また、労働力不足などにつきましては、中小企業の近代化をいたしまして、労働力を効率的に使うということが考えられるのでありますから、近代化や高度化資金を、これを十分にしていく。また、中小企業の厚生施設が十分でありませんから、厚生施設をやる場合の金融措置であるとか、あるいは税制上に十分配慮をするというように、いろいろ考えておるのでございますが、何といっても、倒産防止の施策というものは広範囲に及ぶのでございますので、今後、財政の上に、また税制の上に、金融の上に、十分心をそこに置きまして、施策を進めてまいりたいと思います。
 それから、公害の問題について触れられました。これは後ほど、あるいは厚生大臣からお答え願うと思うのでありますが、通産省のほうといたしましては、第一には、水質保全法、工場排水法、ばい煙規制法などによって、公害に対する規制措置ということを、これをやっていく。しかし、いまの段階では、そういう規制措置というよりも、むしろ未然に防止をするというほうが、これが重点になってきておるということは、言うをまたないのであります。したがいまして、公害防止のための技術開発、これは私のほうでは工業技術院を中心にしてやっておりますが、さらにこれを積極的にいたしますために、四十年度の予算では、産業公害防止技術開発研究部を新たにつくってもらうとか、研究調整官を置いてもらうとかというように考えております。また、防止施設のほうにつきましては、金融あるいは税制よりの助成措置を講じていきたい。公害防止事業団につきましては、おほめのおことばがあったわけでございますが、この公害に対する行政について御批判がございました。この行政については、通産省、厚生省、緊密にやっております。しかし、総理府に公害対策推進連絡会議というような、そういう調整をする機関もございますので、それらを活用して万全を尽くしていきたい、かように存ずる次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣小山長規君登壇、拍手〕
○国務大臣(小山長規君) 土地問題、地価問題についてお答えを申し上げます。
 今日の地価の高騰は、御承知のように、人口あるいは産業が都市に集中し過ぎておって需給が不均衡になっておる、これが主たる原因であります。そのほか、地価が上昇をするにつれまして、やはり売り惜しみが出てまいりましたり、あるいは思惑的な需要が起こりましたりいたしまして、さらにこれに拍車をかけておるわけでありますが、これに対処するためには、いろいろな総合的な施策を講じなきゃなりません。そこで、政府としましては、御承知のように、宅地需要の分散化をはかるためには、地域開発を促進するとか、あるいは新産都市をつくるとか、あるいは首都圏の整備をするとか、いろいろな方策を講じておるわけであります。また、宅地の供給の緩和をはかる必要があるのでありますが、これには、宅地の改良造成をするために、いま御審議中の予算におきましても、あるいは住宅公団、あるいは金融公庫等で大量の造成資金を供給するというようなこと、あるいは宅地の高度利用のためのいろいろな方策を講じておるわけであります。また、思惑を防ぎ、あるいは売り惜しみを防ぐというためには、適正な地価の形成の基準を確立する必要がありますので、あるいは鑑定士制度を利用するとか、あるいは不動産の公示制度をやるとか、こういうようないろいろな方策を講じておるわけでございます。また、総合的な問題でありますので、宅地審議会にはかり、いろいろな方策を講じておる最中でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(重宗雄三君) 鹿島守之助君。
   〔鹿島守之助君登壇、拍手〕
○鹿島守之助君 私は、この参議院本会議において、政府の施政方針に関し、自民党を代表して若干の質疑を行なう機会を与えられましたことに対し、まことに光栄と感じ、感謝するものであります。
 私は、まずもって、佐藤総理並びに椎名外務大臣が、過般、ジョンソン米大統領、ラスク国務長官らと会合の上、短時間にもかかわらず、幾多の外交上の成功をおさめられたことに対し、深甚なる敬意を表するものであります。
 まず、平和と安全の問題について伺いたいと存じます。
 昨年十月の中共の核実験、フルシチョフの失脚、英国の総選挙、近くはインドネシアの国連脱退等により、国際政局に顕著なる変化のあったことは、すでに皆さん御承知のとおりであります。中共の核実験が、世界、特にアジアに甚大なる政治的心理的影響を与え、しかも、その実験がプルトニウム爆弾ではなく、ウラン二三五爆弾だと判定されると、世界はさらに強い衝撃を受け、軍事的にも軽視できないことになりました。ウィルソン英首相のごときは、中共の核実験は本年度の世界における最大の問題だと申しておるのであります。中国の隣国であるわが国にとっては、なおさらのことであります。しかし、幸いなことには、わが国の安全保障は、日米安全保障条約により、米国の核のかさのもとに確保されており、この条約の存続する限り心配する必要はないことが、今回佐藤総理の訪米により一そう明確になったことは、われわれの最も幸いとするところであります。日米共同声明は、「首相と大統領は、日本の安全の確保について、いささかの不安もなからしめることが、アジアの安定と平和の確保に不可欠であるとの確信を新たにした。」と記し、さらに、「大統領は、米国が、外部からのいかなる武力攻撃に対しても、日本を防衛するという同条約に基づく義務を順守する決意であることを再確認した。」と断じております。
 もとより、わが外交政策上、平和ほど重要なものはないと存じます。平和政策は、今日の日本においてただ一つの現実的政策であります。今日、戦争は、破壊のほか何らの利益ももたらさないでしょう。しかし、今日、日本において一般に行なわれている平和主義ないし平和外交は、あまりに非現実的かつ非政治的で、その指導者にはあまりに空想家が多く、政治の現実と遊離しているのであります。いたずらに高遠な理想に走り過ぎるのであります。目的が合理的であるとしても、その実現せんとする手段において不合理であることがしばしばであります。彼らは、ただいたずらに戦争に反対することのみに専念し、これにかわる平和実現の組織的計画を持たないのであります。その目的は高尚であるとしても、現実の積極的計画を欠いているのであります。これを要するに、わが国の平和主義は、いまだ宗教的、空想的範囲を出ず、現実的な政治的平和主義の域には達していないのであります。
 今日、日本の不完全な防備は、平和への確実なる道ではありません。ローマの昔から、「平和を欲するならば戦いに備えよ」という格言があります。平和は、事情によっては軍縮を要求し、事情によっては軍拡を要求するのであります。たとえば、第一次世界大戦に際し、英国がもしさらに二個師団の陸軍兵力を保有していたならば戦争は回避できていたに違いないと言われているのであります。また、朝鮮戦争についても、アメリカが韓国に対し今日のようにその安全を保障していたならば、決して起こらなかったであろうと言われております。これを要するに、あらゆる平和問題は、個別的、具体的な取り扱いを必要とします。かるがゆえに、日本は、諸外国に対して、一律同一の平和政策をとることはできません。その政策が安定し、また、条約を尊重する国との平和は、平和機構の上にこれを確立できますが、革命途上にあり、激動中の侵略的国家に対しては、平和はただ防備力の優越に上ってのみ保障せられるのであります。日本のような平和憲法により軍備が制限または禁ぜられている国家においては、ただ強力なる同盟国の援助の確約によってのみその平和と安全が保障されるのであります。かような意味において、日米安全保障条約は、他のいかなる国におけるよりも特別の意義と価値があるのであります。日米安全保障体制の堅持が確約されたことは、今次佐藤総理大臣訪米の最大の成果の一つであると確信するものであります。
 次に、私たちが最も心配しているのは、最近盛んに言われる五年先の一九七〇年危機の問題であります。今回佐藤総理の訪米によって日米安全保障条約が再確認され、その運用面に改善が加えられるとするも、その期限が延長せられない限り、この不安は解消するものでありません。元来、わが国が米国との間に、一九五一年九月、対日平和条約と同時に日米安保条約を締結したのは、それより先、一九五〇年二月、日本を仮想敵国として中ソ友好同盟相互援助条約が成立し、次いで朝鮮戦争が起こったのに対し、わが国の安全を守るための当然の必至的措置であったのであります。つまり、この条約は、国際政治上いわゆる勢力均衡の原則から必然に生まれたものであります。外交史上、第一次世界大戦前の独墺伊の三国同盟とこれに対する英仏露の三国協商、第二次大戦前の独伊日の枢軸対英仏米ソの連合国の対立などは、その顕著なる実例であります。ところが、中ソ友好同盟条約には三十年の期限がついており、一九八〇年に満期となるが、日米安保条約は、一九六〇年に改定の際、十年後の一九七〇年からは、一年の予告をもって廃棄できることになっております。これは勢力均衡の原則からいって重大なる欠陥であります。一九七〇年を待たず、中ソ同盟条約の満期となる一九八〇年まで、すなわち十カ年有効期間を延長することが望ましいと存じます。今日、盛んに一九七〇年の危機が叫ばれております。この危機を未然に防止するただ一つの最良の方法は、すみやかに安保条約の期限を延長することであります。歴史上、条約が満期にならない前にこれを延長した例は幾多あります。その一例は、一九〇五年八月十二日調印せられ、有効期間十カ年の第二次日英同盟条約を、六年目、すなわち一九一一年に改定し、さらに有効期間を十カ年とした第三次日英同盟条約であります。これによって、第一次大戦中、極東の平和と安全が保持せられたのであります。政府は、一九七〇年の危機を事前に防止するため、安保条約の期限をさらに延長する意向はありませんか、お伺いいたしたいと存じます。
 次に、沖繩及び小笠原諸島問題についてお伺いいたします。
 このたびの日米会談で、沖繩と小笠原諸島における米国の軍事施設が極東の安全に重要であることが認められると同時に、これら諸島の日本への復帰が極東の安全と関連する時期の問題であることが認められるようになり、さらに、日米協議委員会の機能が、経済援助の問題だけでなく、住民の福祉向上、その他の問題にも拡大されることになったのは、大いに歓迎されるべきことと存じます。しかしながら、アジア情勢が最近のように不安定になってくると、極東の安全保障上における沖繩の基地としての重要性は一そう増大してくるので、このことを十分認識して、単に自治権の拡大や福祉の増進を叫ぶだけでなく、米国側にも安心してわがほうの要望をいれることができるようなムードをつくり出す必要があると考えられます。他方、沖繩住民の民生は、日本本土の最もおくれた地域よりも劣っているとのことでありますが、ジョンソン米大統領は、年頭一般教書で偉大な社会の建設を呼びかけ、わが佐藤内閣も、いわゆる社会開発に力を注いでおりますので、それならば、沖繩住民の福祉の増進についても、米国と協力して大いに努力が払われねばならないと存じます。右に対する御所見を伺いたいと存じます。
 次に、中国国連代表権問題についてお伺いいたしたいと存じます。
 わが国は米英とともに、この問題について重要事項指定方式をもって臨むよしでありますが、わが国としては、国家的利益を十分検討した上で慎重に対処していかねばなりません。もし、この秋の国連総会において、事情変更により、この重要事項指定方式が採用される見込みがなくなり、紆余曲折を経て、結局において中共が加入するようなことになれば、事態はきわめて複雑なものになると思われますが、この場合においても、何とかして中華民国を国連内にとどめておくことがきわめて望ましいと存じますが、右に対する御所見を伺いたいと存じます。
 次に、中共承認の前提条件について伺いたいと存じます。
 私は、故ケネディ米大統領が言ったように、中国本土の住民と太平洋地域の諸国民が隔絶しているのは、近代世界の大きな悲劇であり、一時的現象に終わることを切望するものであります。特に、わが国民と中国人とは同種同文であり、古くより、政治、経済、文化において、切っても切れぬ関係にあったものでありますから、わが国独自の立場から、一定の条件が満たされるならば、これが承認、国交の正常化に踏み切るべきものと存じます。しかし、日本の外交路線は、国際順応主義や、あるいは中共の立場に立った日中国交回復論に軽々に応じてはならないと思います。私は、昨年三月六日、参議院予算委員会における総括質問において、中共承認の前提条件を提案しましたが、まず第一は、中共が日米安全保障条約を承認することであります。第二は、日華平和条約を尊重することであります。第三は、対日賠償請求権を放棄することであります。第四は、内政不干渉主義に基づいて、わが国に対し、共産主義の破壊宣伝を行なったり間接侵略を行なわないことを約束することであります。以上の見解に対し、池田前総理大臣は大体私と同意見であることを確認せられ、また、世論もこれを了承したように思われますが、この見解に対し、佐藤総理大臣の御所見を伺いたいと存じます。
 次に、日韓交渉について伺いたいと存じます。この交渉は、主として漁業問題をめぐりまだ難航し、両国国交の正常化がいつまでも達成せられないのは、まことに遺憾であります。韓国では椎名外相の訪問に大きな期待が寄せられているといわれますが、目下の交渉の経過と妥結の見通しについて、差しつかえない限り伺いたいと存じます。
 次に、南ベトナムの問題について伺いたいと存じます。南ベトナムの危機がきわめて切迫しておりますが、米国の南べトナムを支持する決意は牢固として変わりなく、この点は今回の日米共同声明でも明確にされております。わが国としても、平和憲法の関係上、軍事援助はできないにしても、政治的に、経済的に、できるだけの協力に努めるべきだと考えます。この点につき御所見を伺いたいと存じます。
 次に、インドネシアとマレーシアの紛争について伺いたいと存じます。インドネシアは、マレーシアの国連安保理事会の議席獲得を理由に、国際連合会を脱退して波乱を起こしております。佐藤総理には、ニューヨークでウ・タント国連事務総長と会談の際、同総長から、マレーシア紛争の打開策として、マフィリンド三国、すなわちマレーシア、フィリピン、インドネシアの大使級会談を開催するあっせん方を依頼された由であります。その後、スカルノ大統領は、マレーシア問題につき、国連による平和的解決の決定に従うと言明し、また日本政府のあっせんにも従うと、しばしば言明しております。また、マレーシア及び英国政府も日本のあっせんを希望しておる様子であります。わが国は昨年六月、マフィリンド三国に、東京における首脳会談及び外相会談の場所を提供しておりますが、この際、積極的にあっせんに乗り出すとともに、インドネシアの国連復帰にも努めることは、アジアの平和と安定に寄与するところすこぶる大であり、わがアジア外交の使命であるとも考えます。御所見を伺いたいと存じます。
 次に、東南アジアに対する経済協力について伺いたいと存じます。国際緊張がアジアに集約されている今日、わが国はこれまで主として市場としてとらえていた東南アジア諸国に対し、平和を守り、民生を安定するという見地からも、経済協力ないし援助を進めていく必要があろうと考えられます。この意味から、過般の日米会談で、南ベトナムを含むアジア諸国に対する開発及び技術援助に日本の役割を増大させること、アジア諸国の保健、医療の強化のために、日米両国が協力し、医学者の会議を開くことなどがきめられたのは、今後、東南アジア諸国に対してとらるべき協力の方向を示したものとして、高く評価するものであります。
 なお、エカフェがアジア経済協力構想を具体化し、アジア開発銀行の設立とアジア域内貿易の自由化について、わが国の協力を求めておりますが、これに対するわが国の態度と、これが実現の見通しについて伺いたいと存じます。
 次に、内政、特に財政経済政策について若干お伺いしたいと存じます。ここ数年間におけるわが国経済政策の基本方針は、言うまでもなく所得倍増政策にあったのであります。他のもう一つの柱は、貿易の自由化に対処して、いかにわが国の経済構造ないしは企業体質を改善していくかということでありました。幸いにして、昨年後半の急速な国際収支改善にも見られるごとく、わが国の経済は、金融引き締め政策による輸出促進にささえられたとはいうものの、いわゆる開放経済のもとにあって、相当巨額の輸出を行ない得るほどに強化されてきたわけで、基本的には所期の課題を果たすことができたといってよかろうと存じます。しかしながら、総理御自身が述べられたとおり、高度成長と国際競争力の増進という二つの命題を充足する間に発生した経済構造の変化に、景気調整政策が重なり合ったため、昨年においては、企業の倒産が増加するという憂慮すべき事態が起こったのであります。ことに最も問題なのは、やはり同じ要因から発生した消費者物価の上昇ということであります。もとより、消費者物価が上昇してはおりましても、一方には国民所得の増加があるわけでありますから、実質的には所得水準は上昇しているのでありますが、やはり経済を安定した軌道の上に乗せて、その上で、成長をはかっていくことが最も望ましいことだと思われます。消費者物価上昇の最大の要因は、労働力の不足による賃金の上昇にあるといわれますが、企業における生産性が、賃金の上昇をカバーし得るほどに向上するならば、賃金の上昇による生産コストの増大ということは、一時的ないし部分的現象としてはあり得ても、基本的にはあり得ないはずであります。したがって、物価上昇の抑制について最も必要なのは、企業の生産性を向上せしめることであると考えるのでありますが、この点、政府の御見解及び対策はいかがでありましょうか。一方、また、当面の問題として、やはり労働力の不足は物価上昇の要因となっておりますが、これに対してはどのように対処していかれるのか、あわせてお伺いいたしたいと存じます。
 最後に、輸出の問題でありますが、今後の経済政策における最大の課題が、輸出の増加にあることは言うまでもないわけでありますが、このためには、企業の国際競争力を増強することが最も根本的に必要なことであると思います。しかるに、現在、わが国企業の体質は、この点において多くの脆弱さを持っております。なるほど、先ほど述べましたように、金融引き締めというむちで打たれれば、無理をしても外国へ物を売ろうとし、また実際に売り込めるだけの力をつけているわけであります。しかしながら、こうした無理な売り込み活動の結果は、利益率の低下をもたらし、このためなかなか企業の体質改善が果たされないということになります。ことに、現在における企業の脆弱性の最たるものは、自己資本の低さであります。よくいわれるごとく、わが国企業における他人資本の割合は七割以上に及ぶものであるため、金利コストがかさみ、国際競争力を減殺することになります。したがって、この企業における自己資本の増強は今後の輸出政策における緊要課題であります。このためには、企業減税を断行することが必要であると思います。いわゆる民間貧乏論ということが最近言われておりますが、企業が営営として蓄積した利潤を政府が大幅に吸い上げて使うということは、その利潤の源泉を次第に枯らしてしまうことになるわけでありますから、結局、国全体が貧乏になってしまうことになります。この意味からする企業減税の要請に対し、どのようにお考えか、お伺いいたししたいと存じます。
 次に、輸出の問題に関連して、建設業の輸出についてお伺いいたします。と申しますのは、従来、わが国建設業の輸出実績があまりにも低いからであります。その海外工事量は大手各社においても二%にも達せず、外国業者の二五%程度に比し問題にならないものとなっております。この数年間にわが国建設企業も急速な発達を示し、世界のベスト・テンのうち半数を占めているくらいにまで向上しているので、海外に進出して外貨をかせぐことは重要な問題と思考されます。しかるに、金融、保険、情報等の各面において、わが国の制度は欧米諸国に比し貧弱でありますので、ぜひ改善願いたいと存じ、御所見を伺いたいと存じます。
 最後に一言申し上げたいことは、一月二十五日、佐藤総理は、施政方針演説において、新しい愛国心の必要なことを強調されましたが、私はこれにいたく敬服した次第であります。私は、第一次世界大戦直後、外交官としてドイツに駐在しましたが、ドイツ国会においてストレーゼマン総理が、「ドイツは敗戦の結果カイザーを失い、軍隊は消滅し、植民地は放棄せざるを得なくなった。しかし、残ったものに、隆々たるドイツの経済と愛国心がある。この二つこそはドイツ再建の基礎となるものであるから、あくまで保持し擁護しなければならない」と述べました。私はこのことばを終生忘れることができません。当時、ドイツの有名な国歌「トイチェラント・ユーバ一アレス――ドイツは世界に冠たり」は、「われ、何よりもドイツを愛す」ということに解釈されていたのであります。私は、終戦後の日本においても、残った価値あるものは、やはり隆々たる経済と愛国心であると思います。しかるに、愛国心については、一体どこに行ったのかと疑われていたのであります。このたび、総理が新たなる形において愛国心を提唱されたことは、まことに時宜を得たものとして、国民のひとしく歓迎するところであると信じます。
 同時に、最近、米国において、ジョンソン大統領が強調されたのは、自由と正義と団結であります。われわれは、フランス革命のモットーとして、自由と正義と博愛を教えられてきたのでありますが、今回、ジョンソン大統領が博愛のかわりに団結を強調されるに至ったことは、まことに意義深いものと存じます。
 私は、日本が神武天皇建国以来今日まで、他の民族に劣らぬ優越せる地位を保持し得たのは、わが愛国心と団結心にあると信じます。佐藤総理大臣も、新しい愛国心と団結をモットーとして、偉大なる日本国家、ひいては偉大なる社会をつくるよう、長く指導の任に当たられんことを念願して、私の質疑を終わります。
 御清聴を感謝いたします。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
○国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
 アジアにおける問題、同時にまた、アジアに位する日本、いずれも、その繁栄を心から願いますが、その繁栄の前提としての安全、その国の安全、これは最も大事なことだと思います。わが国の安全は、申すまでもなく、ただいまのところ、日米安全保障条約によって、そうして国内におきましては国力相応な、また国情に適した防衛力をもって、そうしてわが国の安全を確保しておるわけでございます。
   〔議長退席、副議長着席〕
これはただいまお説のとおりであります。
 しこうして、この安全保障条約が一九七〇年になれば改定されるのかと、こういうお尋ねでございますが、この安全保障条約を締結して今日までまいっておりますが、最近の極東アジアの情勢は、この安全保障条約の必要性は一そうあるのであります。今回、私がジョンソン大統領とお目にかかりましても、これを再確認したというのは、かような点であります。したがいまして、情勢に変化がない限り、安全保障条約を改定する考えはもちろん日本にはありません。また、条約の規定そのものから見まして、ややどこかに誤解があるのではないかと思いますが、これは七〇年になれば、十年たてば、いずれかの国がこれの廃棄を申し入れる権利ができる、こういうことでございまして、今日私どもは、この情勢の変化に対して、安全保障条約を続けていくという考えでございますから、ただいまのような問題はないと思います。また、これは中ソ同盟条約に対立して、対抗して実はできたものでもございません。したがいまして、中ソ同盟条約がどういうような条約の内容になっておるか知りませんが、しかし、これに対抗するという意味で八〇年まで延ばせという議論には、私はそのまま賛成はしないのであります。
 次に、中国国連代表権問題についてお尋ねがありましたが、先ほど来お答えしたようなことでございますから、これは省略さしていただきますが、中国承認の前提条件として四つばかりあげられたこと、これはいずれも尊重すべき御意見だと思います。しかして、私は具体的にいかような点をとっていくかということは今後の残された問題だと、かように考える次第でございます。
 日韓交渉についての御意見も、先ほど来申し上げたところで尽きると思いますが、私は、お説のように、日韓両国が隣国としての関係を、ぜひとも早い機会に、親密、緊密にすべきだ、かように考えます。
 インドネシアとマレーシアの紛争の問題についてでありますが、ウ・タント事務総長は、いろいろこの問題につきまして注意をいたしておるようであります。日本が双方に対して友好関係を持っている、そういう立場で、マレーシアとインドネシアと双方に友好関係を持っている日本が働く余地があるのじゃないだろうか、しかし、いきなりトップレベルの会談をやられても成功するものでもないだろう、だんだん話を積み上げていかない限り成功しないだろう、そういうようなことで、くふうの余地がありませんかというようなお話があったと思いますが、ただいま実情は必ずしもそう手っとり早く話し合いができるような、そういう状態にあるとは私は思いません。いずれにいたしましても、アジアにおいて紛争が激化しないように、この上とも私ども注意してまいるつもりであります。
 いろいろお尋ねがございましたが、自余の問題につきましては、それぞれの大臣からお答えさしたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣椎名悦三郎君登壇、拍手〕
○国務大臣(椎名悦三郎君) 御質問の点に関して、大半は総理から御答弁を申し上げました。沖繩、小笠原の問題につきましては、岡議員に総理がすでに答弁したとおりでございまして、、今回の情勢に徴して、基地としての重要性はますます増大しておる。しかしながら、二十年もたっておるのですから、施政権の返還をこいねがうという情勢はますます今後強くなるのでありまして、これらの問題につきましても、十分にジョンソン大統領に説明をいたしました。その他、とりあえず民生の向上、福祉の増進、自治権の拡大、あるいはまたそれに関連して協議会の取り扱い事項拡大というような問題につきまして話し合いが成立したことは、御承知のとおりであります。この協議会の権限をどういうふうに拡大するかということは、ただ、ばく然たる方針だけがきめられておって、その具体的内容は今後日米間において十分に話し合いをいたしまして、そして具体的にきめてまいるつもりであります。
 それから中共国連代表権の問題でございますが、いずれにしても、日本としては台湾における中国政府というものをどこまでも守り続けていく、こういう考えでございます。
 東南アジアに対する経済協力、これはすでに共同声明第十三項において、日米両国が率先してアジアを対象とする医療問題について基本的な討議を始めて、いろいろ具体的な問題にだんだん研究を進めるという申し合わせが行なわれておるわけでございますが、これも今後の具体的な進展をいかようにするかということも、これは今後の両国の間の話し合いの問題となると考えます。日本は御承知のとおり、東南アジアに対しては、これは日本の市場の擁護ということをこえて、もはや、もっと政治的な問題として日本はこれに関心を持たざるを得ないのであります。軍事協力は御承知のとおりできません。やはり日本の経済力あるいは文化力によって、この企業に対する影響力を広めてまいるという以外にないのでございまして、これはできる限り今後日本としてもやるべきであり、またやる考えでございます。
 これだけ補足いたしまして御答弁にかえます。
   〔国務大臣高橋衛君登壇、拍手〕
○国務大臣(高橋衛君) 鹿島さんの御意見は、ある企業または産業において、賃金の上昇がその労働生産性の向上でもってカバーしていくならば、賃金コストの面から物価の上昇はあり得ないという御意見でございますが、その点は全くそのとおりであると存じます。ただ、賃金の上昇をカバーし得る生産性の向上という意味は、生産性の向上をいたしますためには、どうしても相当な設備投資を必要とするわけでございます。したがって、設備投資に対するところの資本費、つまり利子その他の資本費が必要であるわけでございますから、資本費を控除した分が賃金の上昇と見合うということによっていわれるものと考えております。しかしながら、その企業または産業におきましては、それが見合うことによって賃金のコストの面からするところの物価の上昇はないということを申し上げられると存じますが、しかしながら、生産性の向上が非常に簡単な、容易な事業と、しからざるものとがあるわけでございます。製造業におきましては生産性の向上がわりあいに容易でございますが、しかし、サービス業とか農林業においてはそれが非常に困難である。したがって、製造業においてそれが見合った場合におきましても、最近労働の需給が逼迫してまいりまして、完全雇用の形態にだんだん近づいてまいるというような関係からいたしまして、所得賃金の平準化が相当強力に行なわれてまいっているのが実情でございます。そういうふうな観点から、ただ単に、製造業において賃金と生産性の向上とが見合うということだけでは、物価の上昇についての賃金面からくるところの原因は除去され得ないということを、この際お答え申し上げておきます。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
○国務大臣(田中角榮君) 私がお答えしますのは二点であります。その第一点は、輸出振興と企業減税についてであります。輸出振興をはかりますために企業減税を行なっていかなければならないという考えは全く同感でございます。私も企業減税に対しては重点的に行ないたいという考えでおります。
 まず、輸出振興のためには、企業の経営基盤の強化ということが問題であります。本件につきましては、今年度の税制改正で耐用年数の短縮等をはかったのでありますが、四十年度におきましても法人税率の引き下げというような措置を行なっているわけでございます。
 なお、輸出企業への特別措置の問題がございますが、これは国際条約その他によって制限は受けておりますが、認められるものに対して、中小企業海外市場開拓準備金の問題、海外取引がある場合の割増償却の問題等、税制改正を今年度行なったわけでございますが、四十年度には、技術等輸出所得控除の対象範囲の拡大というようなことを行なっておるわけでございます。これらをもって足りるとは考えておりませんので、十分企業減税の問題に対しても考えてまいりたいと存じます。
 次は、建設業の海外進出に対する処置の問題でございます。建設業の海外進出におきましては、その振興の必要性がありますので、来年度すなわち四十年度の税制の改正におきまして、技術等輸出所得控除の適用対象に、新たに対外支払い手段を対価とする建設請負を含めまして、所得控除を認めることにいたしたわけでございます。
 以上お答えいたします。(拍手)
  〔国務大臣小山長規君登壇、拍手〕
○国務大臣(小山長規君) お答えいたします。
 建設業というものは、強い力を持っておりながら、今日まで海外進出の実績がないのでございます。そこで、私は、中小の建設業者、国内における中小の建設業者対策のためにも、大企業である建設業の海外進出がぜひとも必要である、こういう考え方から、就任以来この問題に取り組んでまいったのでありますが、来年度においては、この対策といたしましてアタッシェの増員、それからただいま大蔵大臣が申し上げましたような税制上の改正、こういう問題を取り上げた次第であります。なお、今後必要になりますのは、延べ払いに関しますところの輸出金融の助成の問題、あるいは輸出保険の問題があります。また、コンサルタントの先行進出と申しますか、これを大いに助長する必要がありますので、この問題をさらに真剣に検討し、進めてまいりたいと考えているわけでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(重政庸徳君) 豊瀬禎一君。
   〔豊瀬禎一君登壇、拍手〕
○豊瀬禎一君 私は、日本社会党を代表いたしまして、佐藤内閣の施政方針に対し、教育政策、中小企業問題、社会保障制度等について、その所信をただしたいと思っているわけでございます。
 佐藤総理は、その演説の結びに、「あすの日本を切り開くために、新しい愛国心の喚起を期待する」と述べ、さらに、豊かな創造力と勤勉の意欲に満ちた国民の手による高度の文明社会を築く決意を述べておられます。さて、人間尊重の政治といい、社会開発といい、これらは今後教育に関連するところがきわめて大きいものがありますので、まず、私は、教育に対する基本姿勢についてその所信をただしたいのであります。
 今日わが国の教育の水準がきわめて質量ともに高いところにあることは、私もこれを認めるにやぶさかではありません。しかしながら、その反面、幼児教育から大学に至るまでの試験地獄は、家庭教育や学校教育のあるべき真の姿を破壊し、他人との協調よりも、排他性やエゴイズムにこり固まった非人間性を生み出し、やがてそれが青少年の不良化の増大へと発展してまいっております。特に教育実践家の意見を無視して強行されました学力調査のごときは、教師は、昼は輪転機となって問題を作成し、夜は採点機となって赤ペンをとるという、テストあって教育なき弊害を露呈し、教育不在に対する世論の高まりは一日も看過できない政治の重要な課題となっております。この質的教育の崩壊の真相を追及していくときに、私は二つの問題点を見出すことができるのであります。その一つは、戦後二十年間今日に至るまで、幼稚園から大学教育に至るまでの一貫した教育政策の樹立がなかったということであり、他の一つは、文部省という教育行政権による教育の不当な支配の体制であります。この二つは、国民及び教育実践象に政治と教育行政に対する根強い不信感を植えつけてまいりました。すなわち、教育委員会制度の改悪を手始めとし、教科書検定制による教育内容の質的統制、さらに、勤評、学力調査の強行、そして今日は大学の管理体制の強化や教員養成制度の改悪の企図等、民主教育は文部行政権の手によって大きく逆行させられてまいったのがその姿であります。教育基本法は、その十条に、教育は、不当の支配に屈することなく、国民全体に対し、直接に責任を負って行なわるべきを定め、国家権力の介入を固く禁ずるとともに、教育行政権が教育の内容事項に立ち入るべからざることを宣言し、外的教育条件の整備をその任務と定めているのであります。人間尊重を標傍される佐藤総理は、国に教育権が包括的には存在しないとする憲法の定めを銘記され、基本法の精神に立ち返り、今日までの学問、教育の自由を侵害してきた教育姿勢を基本的に是正され、教育界に対して信頼と協調の新しい体制を確立すべき段階に到達しておると思うが、その所信を承りたい。(拍手)
 第二には、教育政策の策定についてであります。今次の大学急増対策一つを例にとってみましても、文部省の計画は、当初は四十一年までに平均十万人増と発表し、予算要求時にはこれを六万人と改め、最終的にはわずかに一万九千人と減少し、ネコの目の変わるよりも早い無定見さに、一番混迷を感じているのは国民であります。このような無方針や放漫を是正し、国民に信頼される教育政策を樹立するためには、文部省の手ではなくて、学術会議等に委嘱して、幼児教育から大学教育に至る衣での長期教育政策を策定させ、これを政府が責任を持って実施していく等、政党政治の弊害からくる教育の混乱を解消していくべきであり、なお、その一方策として、臨時行政調査会の中間報告にも見られる文部大臣制を廃止して、中央教育委員会等の設置についても真剣に検討すべき段階にきていると思いますが、総理の所信を承りたいと思うのでありまりす。
 次にただしたいのは、教育の機会均等と父兄の負担の問題についてであります。今日、教育における父兄の負担は年とともに増大し、特に私立学校にその子弟を就学させている父兄は、教育費という常識をはるかにこえ、ために、健康で文化的生活に重圧を受けております。いま世論の注目を浴びております慶応大学の学費大幅引き上げの問題は、ひとり慶応の問題にとどまらず、全国民、全私立学校の共通の課題であります。さらに、一方、地方自治体の財政力の格差の増大や、特に、僻地、離島の町村の財政力の貧困化は、教育の条件整備を前時代的なものに放置するのやむなきに至らしております。これでは、国民が能力に応じてひとしく教育を受ける権利は実質的に失われ、義務教育無償の定めも空文化されてしまっております。
 そこで、この事態を解消するためには、まず第一番に、教科用図書、学校給食、教材教具その他の学用品に至るまで、すべて全額国庫負担とする、いわゆる義務教育無償の原則を早急に確立すべきでありましょう。第二には、私学に対する助成の拡大の問題であります。今日、幼児教育から大学に至るまで、私学が果たしている役割りの重大さに比し、国の助成の措置はまことに九牛の一毛にすぎません。ために、子弟を私学に就学させている父兄は、国公立に比して十倍から、多きに至っては五十倍の負担の余儀なきに至っております。同じく国民として国から受ける教育の恩恵にこのような不均衡が存在するということは、佐藤総理の言う文化国家の恥とも言うべきでありましょう。援助はするが支配せず、これが私学助成の基本であります。早急に、私学に対し、施設設備はもとより、経常費に対しても大幅の助成をはかり、もって父兄負担の軽減をはかるべきでありましよう。
 次は、教育条件の格差の是正であります。総理や文部大臣は、一度、恵まれない僻地、離島の学校をぜひ視察していただきたいのであります。そこには、都会の一流校に比し、これが、同じ国の同じ法律の適用を受け、同一の教科課程によって行なわれている義務教育諸学校と考えることは、不可能なような状態に放置されている学校がたくさんあります。哲人コンドルセは、その名著、「公教育の原理」の中で、教育における不平等は社会の最も大きな罪悪の一つであると指摘しております。この不均衡、格差を是正するためには、地方公共団体に対し、施設設備、教材教具等の国庫補助率を大幅に引き上げ、そのワクを拡大する措置を講ずる必要がありましょう。
 これらの点にわたる最低のものが確立されて、初めて憲法二十六条に定める国民の教育の機会均等のたてまえは生かされ、教育費に対する父兄の負担の解消の道が開けてまいると言えるでありましょう。この問題に対する総理、大蔵大臣、文部大臣の、それぞれの所見を承りたいと思うのであります。
 次にただしたいのは、去る十一日中間発表されました、「期待される人間像」についての問題であります。文部大臣が期待されるように、本問題については数多くの論評が行なわれておりますが、一言にしてこれを要約いたしますならば、あまりに精神主義的、観念的で、未来社会を築くための批判精神や、創造的エネルギーへの期待がないということでありましょう。佐藤総理の言う新しい愛国心とは、この期待される人間像の内容のごときものを意図しておられるのかどうか。
 さらに第二は、教育基本法第一条に、平和的国家社会の形成者として、真理と正義を愛し、自主的精神に満ちた人間の育成と、民主憲法下における人間像を明確に示しているのでありますが、佐藤総理の描く、精神力に満ちた人間とか、新たな愛国心とかは、この基本法第一条に定める人間像を変革しようと意図しておられるものかどうか。あわせて、教育基本法を改正したいとお考えなのかどうか、明確な御答弁を願いたいのであります。
 今次来日いたしましたILO調査団は、数項目からなる提案を行ない、政府はこれを受諾されたわけでございますが、これにつきまして二、三ただしておきたいと思います。
 その第一は、「労使双方の信頼を実現するためには、双方の従来の態度の重要な変化が必要である」と指摘しておりますが、政府は今日までの態度をどのように変化しようとしておるのか、その具体的な内容はいかなるものなのか、お示し願いたいと思います。また同時に、労使の定期的会合が提示され、しかも、その会合を促進し奨励することが政府の一般的な政策であり、総理がその推進役となるべきを指摘しておりますが、これに対する総理の具体的な構想をお答え願いたいのであります。
 次に、いわゆる日教組を中心とする中央交渉の問題についてであります。現在の教育行政制度及び地方自治の実態から、教職員の賃金及び勤務条件等は、実質国の政治によって左右され、文部大臣との話し合いなくしてはその改善が望まれないのが実情であることは御存じのとおりであります。その顕著な最近の事例は、昨年政府が公布いたしました義務教育費半額国庫負担の最帯を定める限度政令と、教職員定数標準法に基づく政令による教職員の勤務条件の問題等であります。さらに、結社の自由委員会の第五十四次報告にも、「教育改善の一般的な基準の決定は、教員団体と協議するのが通常の問題である」との勧告を行なっています。一九五八年のILO教員問題専門家委員会の結論も、「教員は、国家的諸条件によって、教育上あるいは職業上、教員に影響を及ぼす問題について、その使用者及び他の関係者と交渉もしくは協議する権利を享有する」と述べているのであります。私は、かかるILOの経緯からしますと、当然に、包括的にではありますが、調査団の提案の中に、この中央交渉の問題が含まれているとの解釈に立つべきと考えますが、文部大臣は、ILO調査団が直接に国内問題に介入しないとの態度を利用いたしまして、政府の過去の言動を正当化しようとしているやに見受けられますが、これを政府が受諾されました以上、総理はこの提案受諾にあたって、中央交渉の問題についてどのような把握をしておられるか、また、この多年の懸案をどのように具体的に解決しようとの決意を持っておられるのか、明確にお答えをいただきたいと思います。ILO結社の自由委員会は、第五十四次報告以来今日まで、日本政府に対するたびたびの勧告を行なってまいりましたし、今年六月にも総会が行なわれますが、今後出されてくる勧告について責任を持って実施していく用意があるかどうか。また諸懸案の解決は、双方の協議を原則として提案は出されていますが、総理みずからはこの協議を原則とするということを堅持して、その責任において事態の改善に当たられる決意があるかどうか。さらに、労使双方で意見を交換した結果とられた措置は、そのたびに国会に報告すべきとしているが、それを実施する決意がおありなのかどうか、総理のお答えをお願いいたします。
 次に、中小企業対策についてただしたいと思います。
 昨年一カ年間の中小企業の倒産は、負債金額一千万円以上のものだけを見ましても、実に四千二百十二件にのぼり、一昨年の約二・四倍、戦後の最高を記録いたしております。また、負債金額の面からいたしましても、四千六百三十一億円に達し、これまた一昨年の二・七倍であり、このような情勢がさらに一そう深刻化していくことは必至と言わなければなりません。しかるに、政府は、この当面する中小企業倒産に対し、緊急かつ適切な具体的施策を何ら示さないのみならず、全く手をこまねいている状態と言えるのではないでしょうか。私は、年度末を控え、中小企業の倒産を阻止するために、金融、税制その他各面にわたっての緊急救済措置を一刻もすみやかに政府が実施することを、強く要求するものであります。この点についての通産大臣の具体的な答弁を承りたいと思います。
 第二には、政府は今日の中小企業を一体どういう方向へ持っていこうと策定しているのか、中小企業のあるべき姿をどのように想定しておるのか、お伺いしたいのであります。これまでの政府のとった諸政策から結論しますと、自由経済体制では弱肉強食の結果、生き残る上位の中企業の近代化にのみもっぱらその政策の重点を置いてきたと、私は受け取るのであります。しかしながら、日本におきましては、中小企業が今後永続的に存立する経済的な条件があるものと判断することができます。したがって、自然淘汰のまま放置するのではなく、積極的にこれらに対し、組織化、近代化を促進して、中小企業全体のレベルアップをはかるべきであると思うのであります。同町に、本来、中小企業で十分やっていける企業分野にいたずらに大企業が進出して、経済的に優位な地位を利用して、既存の中小企業を破滅のふちに追いやる今日の姿は、何としても是正されねばなりません。わが日本社会党は、すでに過去幾たびか、中小企業の事業分野を確保して、大企業の不当な進出を阻止する法案を国会に提出してまいったのでありますが、いまこそ政府みずからが、この提案を率直大胆に取り上げるべき段階に立ち至っていると考えるのであります。通産大臣の所信をお尋ねいたします。
 第三は、中小企業省の設置についてであります。中小企業省を設置してもらいたいという要求は、いまや中小企業者の一致した叫びであります。現在の貧弱な機構の中小企業庁では、膨大な数の中小企業に、きめこまかな政策を立案実施することは不可能であります。その上、特に指摘したいのは、大企業の出店と化した通産省のもとに置かれているのでは、大企業の不当な圧迫を排除する中小企業政策を期待することはとうていできません。このような中小企業軽視の姿は、そのまま国の予算に反映され、今国会に提出されました一般会計予算を見ましても、中小企業対策費は、虫めがねでさがさなければわからないような、わずかなパーセントにすぎません。このような中小企業軽視の現状を打破するために、この際、思い切って全国の中小企業者の熱望にこたえ、中小企業省を設置すべきと思いますが、総理大臣にその決意のほどを承りたいのであります。
 次に、私がただしたいのは、社会保障の問題であります。池田内閣の三大公約の一つでありました社会保障の問題は、佐藤内閣になりましてその影をひそめた感を私は深くするのであります。昭和三十七年八月、「社会保障制度の総合調整に関する答申及び勧告」は、いまだに具体化されることなく、むしろ逆行しているごとき施策が行なわれているのではないでしょうか。この際、社会保障について、具体的な基本方針、長期の年次計画をお示し願いたい。
 また、政府は今国会に厚生年金法の一部を改正する法律案を提出していますが、その特に重要な問題点の第一は、一万円年金と銘打って大々的に宣伝しておりながら、生活水準、物価の変動に対しては、年金を引き上げるスライド制が確立されていないということであります。これは仏をつくって魂を入れないのと同じで、名実ともに老後の所得保障としての年金を価値づけることにはならないのではないでしょうか。第二は、公的年金である厚生年金を二つに分割して、基本年金額のうち報酬比例部分を、私的年金である企業年金に結びつけ、いわゆる調整年金制度を創設しようとする点であります。社会保障のねらいは、格差を縮小して所得の再配分効果をあげることにありますが、調整年金制を新たに創設することは、大企業のような調整年金に加入できるところと、零細企業のような企業年金すらないところでは、逆にますます格差が拡大していく方向をたどるでありましょう。しかも、改正案を諮問した社会保障制度審議会の答申においても、「調整年金制については、問題の経緯にかんがみ、慎重に取り扱う」と述べているのであります。しかるに、この審議会の答申の精神を無視して、さきの第四十六回国会に廃案となったものと同一内容の法案を再び提出し、何ら改正を加えようとしないのは、全く理解に苦しむところであります。この辺の事情、並びに、この際、調整年金の事項については、これを削除する考えはないかどうか、伺いたいのであります。
 さらに、児童手当制度については、第二次大戦以後、世界各国で急速に発展してきた新しい制度でありますが、現在世界六十二カ国がこの制度を実施いたしておるのであります。高度成長政策を呼号してまいりましたわが国におきまして、いまだ児童手当制度が確立されていないということは、社会保障制度の大きな欠陥というべきであり、政府の社会保障に対する熱意のないことを如実に物語るものというべきでありましょう。政府は、昭和四十一年度中から制度の創設を目途として準備しているやに承っておりますが、はたして、かなりの予算を要するこの制度に対して、昭和四十一年度から実のある制度を実施するだけの決意と用意があるのかどうか、その構想及び所見をお伺いいたしたい。
 また、さらに、かねてから国会で論議のあったILO第百二号条約、すなわち、社会保障に関する最低基準の条約についても、批准の促進及びその実現の見通しはいつごろになるのか、お考えをお伺いいたしたいのであります。
 医療保障の問題は、所得保障とともに社会保障制度の二大支柱となっていますが、今日の医療保障は、国民が病気になったときに安んじて医療を受ける権利が与えられるというだけではなく、国民が常に健康であることが保障されるという権利が確立されているというところにあります。したがって、医療保障の範囲は、当然に、予防、治療、アフターケアの問題にまで行き渡るべきでありましょう。今日のごとく、医療保障制度によってまかなわれ、日進月歩の医学、医術の向上と、医療技術の目ざましい進歩に相応じて、膨張する医療費の解決を、安易な保険料の引き上げと患者負担に期待するというような政策は、根本的に改められなければなりません。一九七〇年度を長期計画実現のめどと政府はされているようですが、疾病の構造、年齢の変化等による国民の総受診率は増大し、今後、医療需要の増大は必至でありますが、健康保険は膨大な赤字の危機に瀕しています。かかる事態に対応して、依然として、保険料の引き上げ、患者負担等によるこそくな対策によって切り抜けようとすることは、もはや許されない段階と思うのでありますが、この際、政府は、医療制度に対して根本的な改革をはかるとともに、大幅な国庫負担を裏づけとして、医療保障前進の政策を展開していただきたいと思いますが、大臣の所信を承ります。
 最後に、地方財政の問題についてお尋ねいたします。
 今日、地方公共団体の財政状態を健全に維持し、その行政運用に支障なからしめることは、最も重要な政治の責任であります。しかるに、とこ数年、地方財政の赤字が急速に増大傾向をたどり、危機的様相を深めてきております。昭和三十八年度の地方財政決算によりましても、普通会計の決算は、実質収支で二百七十二億円の赤字であり、これに、公営企業の赤字、国民健康保険の赤字等を加えると、約八百億円の赤字となり、全国の赤字団体数は四百九十二に達しています。しかも、この傾向は加速度的に進行していっているのであります。これは、地方公共団体の負担する義務的経費の膨張に対し、地方税収の伸びが追いつけないことにもあるし、さらには、各種公共事業の事業費単価が、物価上昇に対応して、国の補助率、負担の単価がこれに伴って引き上げられないところに原因があります。今般、政府は地方交付税率をわずかに〇・六%引き上げられたのでありますが、これでは問題の根本的な解決にはほど遠いものというべきであります。
 そこで、私は、その対策の第一は、各種公共事業の事業費に対しては、物価の上昇による負担を地方自治体に負わせないよう事業費の予算単価を適正に引き上げ、これに対して国の補助率を引き上げるべきだと思いますが、大蔵大臣の見解をお尋ねいたします。
 第二は、国と地方の税源の再配分の問題であります。さきに述べました地方税収の伸びが経費の膨張に追いつけないということは、
○副議長(重政庸徳君) 豊瀬君、時間が超過いたしました。
○豊瀬禎一君(続) 各種の税のうち、国民所得の伸びによって弾力的に税収の伸びる税は、すべて国税にとられているところに原因があります。よって、国と地方の事務の再配分を行なうとともに、税源の再配分を行ない、税収の弾力性に富んだ税を地方税に移しかえるべきではないでしょうか。そして、この税源再配分の行なわれるまでの経過措置としては、地方交付税率等の引き上げをさらにはかるべきものと考えますが、この点に対する大蔵大臣の御見解を承りたいのであります。
 以上をもちまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
○国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
 教育の大事なことは、申されるまでもないことだと思います。したがって、政府といたしましては、教育につきまして格段の留意を払っておるつもりであります。お説の中にもありましたように、今日、わが国の教育の普及度、同時にまた程度、これは他の国に比しましても自慢するに足ると、かように私は考えます。しかし、この上とも、次代をになう――また今日も大事でございますが、国の繁栄を求めるという立場から見ますると、教育には一そうに努力をいたしたい、かように考えます。
 ただいままでのお説では、何だかあるいは政治が関与する、あるいは権力が関与する、そのために教育が曲がっているんじゃないかと、こういうようなお説であったかと思います。その意味で、信頼と協調、融和、これこそはかるべきだというお説に対しまして、私は今日の文教の文部省その他の施設は、これは新しい憲法に基づいて行なわれておるのでありまして、いわゆる権力の介入、あるいは政治の介入、かような意味の批判は当たらないんだ、むしろこれこそ民主主義国家において当然かくあるべき筋のものと、かように思います。したがいまして、私は、文部省、文部大臣をやめろ、文部省をやめて委員会制度に移せ、こういう説には賛成をいたしません。
 また、教育全般につきまして、一そうその範囲を拡大し、父兄の負担を軽減しろ、あるいは私学の振興についても特別に留意しろ、こういう御指摘でありますが、これらの点については、私も今日の状態で満足すべきものだとは思いません。さらに私学振興等につきましても、その経営費等についても考究すべきものがあれば考えていきたいと思うし、父兄の負担は一そうこれを軽減するように努力したいと思います。ことに地方自治体の負担がたいへん重いと、かようなお話がございますし、また山村僻地等の教育施設等については、一そう力を入れなければだめだ、こういうような御指摘でございます。これらの問題も、全体としてくふうすべきものだと思います。私自身も山村の出でありますので、現状の実情につきましても、多大の関心を持っております。
 また、期待される人間像と最近私が提唱いたしました新しい愛国心との関連についてのお尋ねがございました。私は、教育基本法の定むるところのもの、この理念、これが最近の実情から見まして、この理念を私は変えるつもりはございません。むしろその理念を定着さすこと、これが新しい私の愛国心と一緒になるものだと、かように考えまして、理論的な矛盾を感じておらない次第でございます。これは申すまでもなく、偏狭な国家主義、そういうもとにおける愛国心、これは私どもも排撃すべきものと思います。しかし、世界的視野に立ってのものであるならば、大いに歓迎すべきものだと、私はかように考えております。
 次に、ILOの問題についてのお話でございますが、私自身もILOのドライヤーさんその他にも会ってお話をいたしました。そうしてILOが今回調査いたしましたその結論といたして、批准を早くすること、同時にまた労使間においてあらゆる機会をつかまえてよく話し合いをすることだと、かような基本的な考え方を持っておるようであります。ILOの条約批准の手続につきましては、すでに衆議院にも提案しておりますので、参議院の皆さま方にも御協力を得たいと思います。また労使双方をいろいろ調査した結果、日本の労使双方には非常な不信感がある、かような調査報告を出されることは、私は非常に不名誉だと、かように実は考えております。しかして、この不信ということがもしも調査団の目に映ったならば、一日も早くその不信をなくするように、そうして相互信頼の上に立つようにすることが必要だと思います。私の施政演説にも、労使双方が、ともにございますが、労使双方、十分国家経済的観点に立って話し合いをする、そういうことが望ましいのだということを、私は施政演説でも申し上げましたが、労使双方の問題につきましても特にこのことは言えると、一般にも言えると、かように考えます。ことに、これは民間の労使間の状態におきましては、最近は非常に円滑にまいっておると思います。この方向に向かいつつあると思います。また、私が以前に経験をいたしました国鉄等の組合関係におきましても、最近の実情は非常に落ちついてきておる、かように考えております。こういう点を考えてみますると、今回のILOの調査団一行の意見も十分これを尊重いたしまして、今後大事に具体化していくような方向で進めたいと思います。ことに石田労働大臣は、このILOの調査団と終始行をともにしていたようでございますので、労働大臣自身、今後のあり方についていろいろくふうしておるようでございます。いずれそれが具体化すれば、お話が出ていくかと思います。ことに御指摘にはございましたが、中央交渉、いわゆる日教組と文部大臣との中央交渉、こういうような問題については、今回の調査団からは私は何も聞くところがございませんでした。いわゆる日教組という名前もあげなければ、文部大臣という名前もあげない、いわゆる中央交渉、一対一の関係におけるこの二者の中央交渉ということは、話し合いにのぼっておらない。これだけをはっきり申し上げておきます。
 その次に、中小企業省の設置を考えるかどうか、こういうことであります。中小企業者――私が通産大臣時分にもこういう御意見があったのでございますが、私は役所をつくるばかりが実は能ではないと思う。むしろ、その仕事でどういうことをするかということだと思います。ただいまのところ、中小企業庁、その中の整備をはかり、同時に、中小企業者に対してあたたかい思いやりのできるような実際的な政治をする、かようなことが最も必要なことだと、かように考えますので、ただいまは設置については考えておりません。(拍手)
   〔国務大臣愛知揆一君登壇、拍手〕
○国務大臣(愛知揆一君) 総理大臣から詳細にお答えがございましたので、私から特にお答えすることもないようでございますが、一応順を追いまして補足的に御答弁申し上げます。
 第一は、教育制度と文部省のあり方、これは臨時行政調査会でも非常に真剣に熱心な御討議があったように伺っております。そうして、その最終の正式な答申におきましては、文部大臣の諮問機関でありますところの中央教育審議会、この機能を拡充するということが中心の御意見になっておりますので、これはまさにわが意を得たりというような感じで、私も受け取っておるわけでございまして、この臨調の答申の線に沿いまして今後ますます努力を新たにしていきたいと考えております。この臨調の問題に関連して、大学の拡充のやり方について、御質疑といいますか、御意見がございましたが、これは何も十万人というようなことを固定的に最初から取り上げておったわけではございませんので、問題の性質上、研究の過程におきまして、いろいろの角度から、たとえば大学というようなところのいわゆる学生の資質の向上ということはもちろんでございますが、教官の後続部隊がよい人がどしどし出るようにということも考えなければなりませんし、また社会的な要請あるいは社会的な需要というようなことも十二分に考えなければなりませんので、いろいろと関係方面の意見を徴した結果が、四十年度としては、国公私立合わせてほぼ二万人という程度のところに定員の増加をいたしたわけでございますが、それも最初に伝えられた十万人というようなのは、四十一年度を中心とする十万人というような数でございますから、この十万と二万弱というものは同列に比較すべきものではございませんで、その点は御承知のとおりと思いますが、念のため申し上げておきたいと思います。
 第二は、憲法二十六条に集中する御意見、御質問と思います。これは法律論だけから申しますれば、最高裁の判例にもあるようでございますが、義務教育の場合には授業料を取ってはいけないと、こう解すべきものであるというのが、確定的な解釈になっております。しかし、これはいわば冷たい法律の解釈の問題であって、われわれ政府与党といたしましても、御承知のように、教科書をはじめ、給食についても、教材等についても、父兄の負担をなくすることに具体的な努力目標をきめての具体的な成果をあげておりますことは、いまさら申し上げるまでもないところであります。特に僻地の問題につきましては、ただいま総理からも申し上げましたが、四十年度の予算におきましても相当きめのこまかい措置を講じておるわけでございまして、これらにつきましては、いずれ文教委員会等におきまして十分御説明も申し上げ、また御意見を承りたいと思います。
 その次は、私学の振興の問題でございます。実は私学の振興につきましては、これもいまさら申し上げるまでもないのでありますが、一方においては、政府の干渉などがあったってかまわないから、それよりは金を出せと、こういう一つの御意見がございます。しかし一方には、私学にはそれぞれの建学の精神があり、その建学の精神ということに徹して、政府からの助成というようなものはなるべくほしくないという、これまた一方の御意見があるわけであります。そのいろいろの意見の中で最大公約数といたしましては、私学振興会を通して私学に助成の資金を供給するということは、これはもう間違いのない、だれしもが考えることでありますから、四十年度の予算におきましても、振興会には政府が百十億の助成をすることにしております。それから経常費の問題についても、これも豊瀬議員よく御承知のとおりでありますが、私学についても、理科の特別助成、研究設備助成、教職員共済組合に対する補助、あるいは私学の教育研修センターに対する補助というような経常的な補助も、現に一部はいたしております。しかし、これらの多くの議論や、あるいは社会的な私学に対する期待というものが非常に大きい現状にかんがみまして、この国会で御審議をいただいて、私学の助成方策調査会というものをぜひ法律に基づきましてつくらしていただきたい。そこで十分ひとつ御意見を各方面から述べていただいて、よりよき一つの対策を根本的に考えたい、かように存じているわけであります。
 それから、「期待される人間像」は、これも総理からお話がございましたが、私どものかまえ方としては、実はあの「期待される人間像」は、もっともっとおそく、もっともっと練り上げた上で中教審としては世に問いたいという御希望が強くあったようでございますが、私どもとしては、発表されましたように、これは中間草案で、しかも部会の中間草案でございますが、この段階で世に一度問うていただいて、そうして広くいろいろの立場の方やあるいは老若男女の方々から人間像論議をしていただくことが、豊瀬議員も御指摘がありましたように、人間不在ということであってはならないということがいま大いに叫ばれているときでもございますから、「期待される人間像」というようなことが一つのテーマとなって、国民的な論議が起こる、そのこと自体に私どもとしては大きな意義があるのではないか、まあこう考えておりますから、私としてのいまの立場からいって、これをもとにして一つの鋳型をつくって、そうして教育基本法をその中に取り入れるというようなことは、現在考えておらないわけでございます。
 ILOの問題につきましては、これも総理から御答弁がございましたとおり、私は率直に申しまして、ドライヤーの提案なるものに、いわゆる文部大臣と日教組の中央交渉というようなことに触れていないことは、非常に賢明なプロポーザルであると私は考えます。それはそれとして、かりに日教組から文部大臣に会見の申し入れがあると仮定して、それにいかに応ずるか、あるいはいかに応じないかということは、当事者たる文部大臣の自主的判断によって私は処置すべきものであると考えているわけでございます。現在のところ、私どもの自主的判断によれば、その時期ではない、かように考えておりますことを念のために申し上げておきます。(拍手)
   〔国務大臣櫻内義雄君登壇、拍手〕
○国務大臣(櫻内義雄君) 中小企業の倒産につきましては、その対策について先ほど詳細に申し上げたとおりでございます。しいて申し上げますと、十二月末の政府三機関の貸し出しの状況は、目標どおりに推移いたしております。民間金融機関のほうはどうかというと、これは実に私もふしぎに思うのでありますが、目標額を相当下回っております。三月末までの金融については、計画どおりでただいまのところは支障はないものと判断をしておるのでございます。
 それから、中小企業の予算についてお話がございましたが、明年度の予算については、他の予算に比しまして相当な伸びを見ておることを御理解いただきたいと思います。
 また、中小企業の組織強化につきましては、すでに法律もあることでございますので、御趣旨に沿って指導していきたいと思います。中小企業の将来についての豊瀬議員の御判断については、納得をする面もございます。私は、中小企業基本法に沿いまして、すみやかに近代化すべき諸施策を積極的に遂行してまいりたいと思います。
 大企業と中小企業の関係については、長い経過において、おのずから分野がきまってきたものと思います。そこに対して大企業が不当に進出をする、こういうようなことにつきましては、私としては、さようなことのないようにつとめて指導してまいりたい、かように存ずる次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣神田博君登壇、拍手〕
○国務大臣(神田博君) 社会保障制度について、具体的基本方針、長期的な計画を設定すべきものであるというお考え、厚生年金については、年金額についてのスライド制を考慮すべきであるが、改正案については、この点どうなっておるか、また、厚生年金と企業年金との調整につきまして、社会保障制度審議会の答申と異なっておるがと、こういうお尋ねが第一点でございましたが、社会保障の長期計画としては、さきに、国民所得倍増計画の諸目標及び西欧先進諸国の社会保障推進等を参考として、昭和四十五年度を目標年次とする厚生行政長期計画基本構想を作成したのが、三十五年六月でございます。最近における社会的経済的諸条件の変動、三十七年八月行なわれた社会保障制度審議会の勧告、及び、さきに閣議決定された中期経済計画の諸目標等、諸般の事情を勘案しながら、社会保障制度の推進に関する長期的構想につきまして、慎重に検討いたしております。
 厚生年金につきましては、年金額の引き上げは、いわゆるベースアップとスライドと、二つのものが考えられますが、今回の改正は、大幅べースアップを内容とし、昭和二十九年以降の物価の上昇をはるかに上回るものとなっております。しかしながら、改正実施後の将来に向かっての問題としては、年金の実質価値の維持ということが重要な要請でもあり、各方面からの御要望でもあるので、前向きの姿勢で取り組むべきであるという考え、このことを改正案において明らかにしております。要は、これが実施の具体策であるが、いろいろと掘り下げて研究すべき問題もあり、他制度の影響も考えなければならないので、十分検討を加えたいと、かように考えております。
 また、企業年金と厚生年金との調整問題については、御指摘ございましたように、社会保障制度審議会からは、問題の経緯にかんがみ慎重に取り扱うという答申を受けておるところでありますが、民間各企業の間に最近著しく普及発達してまいっております企業年金は、現に労務者の老後保障としての機能も果たしているところから、現実問題として、この間の調整をはかることは、今回の改正におけるような給付内容の大幅改善を行なうに際しては、適切な措置であると考えております。なお、今回の改正は、労使すなわち事業主と被保険者の間の合意がある場合に限り調整が行なわれるものであり、被保険者の不利を招くような取り扱いはあり得ないということを留意しております。
 それから第二の点でございますが、児童手当制度の実施についての政府の考え方はどうかということでございます。児童手当制度につきましては、三十九年十月五日、中央児童福祉審議会児童手当部会から、問題点の摘出とその解明を中心とした中間報告が御承知のように出ております。同時に、一方、三十七年度より毎年度、本制度に関する基礎調査を行なったが、四十年度においても引き続いて実施することにしております。政府としては、四十年度より児童手当参事官を中心として検討準備態勢を整備し、右の中間報告や調査結果等を参考として成案を練り、できるだけ早期実現をはかりたい、かように考えております。
 次は、ILO百二号条約の批准についての考え方、見通しのお尋ねでございますが、ILO条約第百二号の批准には、医療、老齢、失業、労務災害など、条約に規定された九種類の給付の基準のうち、三部門の条件を満たしていることが要求されております。わが国の社会保障制度の現状においては、健康保険の疾病手当金と失業保険の失業保険金が、それぞれ条約の疾病給付と失業給付の要求を満たしておりますが、他の部門については、条約に比し、かなり進んでいる面も少なくない反面、個々の条件に合致しない点があって、いまだ批准の要件に合致していないものもあります。しかし、今国会に提出する厚生年金保険法の改正など、社会保障制度の整備充実をはかることにより、条約批准の態勢をつくる、こういうふうにしてまいりたいと思っております。
 第四の、医療保障について、現在の医療費の問題の解決を、患者の一部負担という形で国民に支払わせるのではないか、国庫負担の裏づけを持った医療保障制度をもって、予防、治療及びアフターケアに至るまで、国がその責任を持って行なうというたてまえをとるべきであるというお尋ねでございましたが、医療保障制度については、御承知のとおり、保険料と国庫負担によって、給付に要する財源をまかなっておるわけでありますが、最近の保険財政の逆調は、これらの収入の伸びに比しまして、医療費の上昇が著しく上回っていることによるものであります。このような医療費の上昇傾向は、基本的には、医学、医術の進歩に基づく国民医療の水準が上昇していることを意味しているものと考えられ、その面では、支出の増大に対応する収入、すなわち、保険料及び国庫負担の増加を考えることが、基本的な対策と考えておりますが、その反面、現在の医療費の増高の中には、薬剤の支給等の面において、被保険者に何らの費用負担がないため、やや乱に流れておるという面のあることも否定しがたいところであります。このような面を是正する、こういう意味で、財政政策として一部負担を検討することは、制度の将来の発展及び内容の充実をはかる基盤を整える上からも必要と考える、こういうふうに考えております。
 なお、治療のみならず、予防及びアフターケアの対策の、より一そうの充実をはかるという御趣旨には、全く同感であります。これらの施策を、医療保険という形の中で、しかも、国庫負担を主たる財源として行なうべきかどうかは、これはいろいろと意見のあるところでありまして、今後慎重に検討していきたいと、かように考えております。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕
○国務大臣(田中角榮君) 各大臣から大体お答えになったようでございますが、財政に関する部分だけ簡単に申し上げます。
 まず教育の問題でありますが、教育の振興充実は、政府といたしましても最も重要と考えておるのでありまして、財政上可能な限り最大の措置を講じております。
 なお、教科書の問題、それから給食等の問題、父兄負担の軽減等につきましては、政府も予算の中で補助単価の引き上げ等行なっておりますし、詳しいことは、文部大臣からお答えがございましたので省略いたします。
 第三の、私学振興の問題でありますが、この中で、おおよそ文部大臣から答弁がございましたが、特に経営費の補助をしてはどうかというものでございますが、総理大臣からお答えがあったように、私学の性質上、経営経費の補助はいたさないという考え方を基本といたしております。
 第四点は、地方財政の健全化についてでございますが、地方財政の健全化につきましては、政府は一致してこの方向を推進いたしております。今年度の予算編成に際しまして、交付税率を二八・九%から二九・五%に引き上げましたのも、その一助でございます。
 公共事業に対する国の補助単価を引き上げてはどうか、実質精算単価として交付すべきだという御議論は、つとに行なわれておるわけでございますが、御承知のとおり、政府が行なう補助単価は、基準単価を旨といたしておるわけでございます。しかし、どうしても是正をしなければならない問題については、そのつど是正をいたしております。たとえば、今年度の予算におきまして、国民健康保険の事務費一人当り百五十円を二百円に引き上げる、こういうようなことをやっておるわけでございます。
 地方税と国税との調整、また地方団体間の財源の調整というような御発言がございましたが、かかる問題は、税制調査会の御審議等を経ながら遺憾なきを期してまいりたいと考えます。(拍手)
○副議長(重政庸徳君) 質疑はなおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(重政庸徳君) 御異議ないと認めます。
 次会は、明日午前十時より開会いたします。本日はこれにて散会いたします。
  午後一時十二分散会