第049回国会 法務委員会 第1号
昭和四十年九月三十日(木曜日)
   午前十時二十四分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 九月三十日
    辞任         補欠選任
     亀田 得治君     大矢  正君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         和泉  覚君
    理 事
                木島 義夫君
                松野 孝一君
                稲葉 誠一君
                山田 徹一君
    委 員
                石井  桂君
                後藤 義隆君
                中野 文門君
                大森 創造君
                亀田 得治君
                柳岡 秋夫君
                岡村文四郎君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        増本 甲吉君
   説明員
       内閣官房内閣調
       査室次長     中川 豊吉君
       警察庁警備局長  秦野  章君
       警察庁警備局外
       事課長      渡部 正郎君
       法務省刑事局長  津田  實君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○検察及び裁判の運営等に関する調査
 (密出国事件に関する件)
    ―――――――――――――
○委員長(和泉覚君) ただいまより法務委員会を開会いたします。
 検察及び裁判の運営等に関する調査を行ないます。稲葉君。
○稲葉誠一君 閉会中であるから簡単にお聞きしておいて、あとは必要があれば国会が始まってからお聞きするようにしたいと思います。
 いわゆる旭洋丸事件というので、これは松江の地裁の浜田支部で一審があって、無罪の判決があり、いま検事控訴をやっているわけですね。ですから、証拠の判断とかなんとかそういうことをもちろん聞くわけではありませんが、なぜ一審で無罪になったかというような事件の概要をこれは法務省のほうからまずお聞きして、それから始めたいと思います。
○説明員(津田實君) いわゆる旭洋丸事件は、漁船の旭洋丸の船長であります江籠平茂太郎及び船員の洲崎利秋外五名の者が、渡辺清茂及び張永晋(日本名は尾崎清次郎)、それらの者と共謀の上、有効な旅券に出国の証印を受けないで、昭和三十五年十二月二十四日島根県の温泉津港から旭洋丸に乗船して、北鮮の新浦港に向け出航し、不法に本邦から出国したという事案であります。
 この事案につきましては、江籠平及び洲崎について、昭和三十六年二月十日、出入国管理令第六十条二項、第七十一条違反によりまして松江地方裁判所浜田支部に公判請求がなされております。同三十八年十二月十一日無罪の判決があり、検察官控訴によりまして、現在、広島高等裁判所松江支部に係属中であります。
 ほかの五名の旭洋丸の船員につきましては、昭和三十六年二月十日、出入国管理令違反によりまして略式命令の請求をし、いずれも罰金一万円の判決が確定しています。
 なお、渡辺清茂につきましては、昭和三十六年二月十日同じく出入国管理令違反によりまして松江地方裁判所浜田支部に公判請求をし、同年三月二十四日、懲役六月二年間執行猶予の判決があり、また、張永晋は、北鮮に出国した後また日本国に密入国をしてきているものでありますが、同年七月三日、出入国管理令二十五条第二項、七十一条、三条、七十条一号違反によりまして東京地方裁判所へ公判請求をし、昭和三十七年七月二十三日、懲役十月三年間執行猶予の判決があり、右判決はいずれも確定をしております。
 これが旭洋丸事件の概要であります。
○稲葉誠一君 これは全部が併合審理されたわけですか。略式のものは別ですか、初めから略式でいったんですか。その関係はどういうふうになっておりますか。
○説明員(津田實君) これは、先ほど申し上げました江籠平茂太郎、洲崎利秋、渡辺清茂はいずれも併合して公判請求されたのでありますが、裁判所において分離されて、渡辺は別途確定をしておる、江籠平、洲崎については控訴審に係属しておるということでありますし、略式命令については当然分離しておるわけであります。
○稲葉誠一君 そうすると、その二人が無罪になった理由というのはどういう点になるわけですか。まず弁護人の主張と、それに対する裁判所の見解とあるわけですね。
○説明員(津田實君) 江籠平及び洲崎に対する無罪判決の理由の要旨は、大体こういうことであります。「被告人等は本件出国について治安当局(特に鳥取県境港警察署)の承認があるものと信じ、且つそのように信ずべき正当な事由があるから罪を犯す意思がない。またかりに被告人等」に犯意があった「としても、当時の客観的情勢の下においては、もはや被告人等に出国を思い止まることを期待することは不可能であったから、いずれにしても本件所属は無罪であるというに帰着する。」というのが無罪理由の大体の要旨であります。
○稲葉誠一君 出国について治安当局の承認があるものと信じたというのは、具体的にはどういうことからそういうふうに信ずるようになったと、こういうふうに言っておるわけですか。
○説明員(津田實君) 本件におきます弁護人の主張は、公安調査庁、警察庁等が北鮮にスパイを送り込む計画の一環として行なわれたものであり、両名の被告人はそのようなことは全く知らずに関係当局の許可があったものと信じて就航した。本件が検挙されるに至ったのは海上保安庁と警備警察のなわ張り争いや反目が原因となっているもので、被告人らが検挙され処罰されるのはもってのほかである。真に追及されねばならないのは背後にある警備警察である、というような主張を弁護人がしておったのであります。
 そこで、裁判所の「本件出国の経過」として「証拠を検討した結果」というふうに言っておることがありますが、多少これは長くなりますのですが、一応ここで申し上げますと、「本件首謀者の渡辺清茂及びその背後にある福島四郎、中島辰次郎はいずれもかつての関東軍の特務機関員であり、福島は中島、渡辺の上司であったもの、福島は終戦後総司令部の嘱託として情報活動をなし現在もその方面の仕事をしていること、中島は終戦後在日米軍の情報員を、次いで内閣調査室韓国景武台機関に籍を置き主として共産圏国家の情報蒐集の任に当り、渡辺は新聞関係の職に就き主として中共、北鮮の政治、経済の情勢に関する資料を集め、これを在日米軍等に提供していたこと、本件出国の案内的役割を果した張永晋は北鮮に知人がおり、かつて景武台機関の機関員であり、現在も何らかの形で情報蒐集に当つていること、渡辺は中島と相談の上北鮮との漁業合作協約の成立を企図し、呉権八、金奉民等を利用して昭和三十三年昭光丸を、同三十四年天神丸をそれぞれ境港より北鮮に向け出航させようとしたがいずれも失敗に終わったこと、しかしその真意は本件もそうであるが、いずれも北鮮の政治、経済情勢の把握と日本に配置された北鮮の情報機関の実態把握にあったこと、渡辺は本件出国前の同三十五年十二月中旬頃「試験操業に関する基本方針」と題する書面を中島に渡し、これに対する警察庁の意向打診を依頼したこと、中島は右意を伝えて右書面を更に福島に手交し、福島において警察庁警備課に出向きその意向を確めたところ、不法ではない旨の回答を得たので中島を通じその旨渡辺に伝えられたこと、この際警察庁当局が出国に関する前記渡辺等の真意を推察していたかどうか、渡辺等の北鮮に対するスパイ行為を利用しようとしていたかどうかは明らかではないが、渡辺等が前記試験操業のためと称し出国することについては当然知り得た筈であること、一方被告人洲崎は前記漁業合作の際、昭光丸、天神丸の乗組員であり、同江籠平は同じく昭光丸の乗組員であったところから渡辺の企図する北鮮との漁業合作についての知識を有していたこと、同三十五年十一月頃渡辺より牛深市居住の洲崎に漁業合作のため漁船が必要なので手配してもらいたい旨の連絡があったところ、洲崎は丁度鮮魚買付運搬のため牛深港に停泊中の旭洋丸船長江籠平と会い、江籠平に渡辺の意を伝え、他の船員等とも協議のうえ後記認定のような事情から北鮮に向け出港することになつた。」と、こういうふうに裁判所は証拠を検討した結果の理由として言っておるようであります。
○稲葉誠一君 そこで、ちょっとお聞きをしたいのですが、福島というのは、「終戦後総司令部の嘱託として情報活動をなし、現在もその方面の仕事をしていること、」と、こういうふうに第一審の判決で認定しているわけですね。これはどこへ聞いたらいいのかはっきりしないわけですが、警察に聞くのか、内閣調査室に聞くのか、法務省に聞くのか、どこにしたらいいかわかりませんが、「終戦後総司令部の嘱託として情報活動をなし、現在もその方面の仕事をしていること、」というのは、これは一体何なんですか。「現在もその方面の仕事をしている」というのは何のことなんですか。
○説明員(津田實君) その辺は私どもわかりません。
○稲葉誠一君 これは御列席の皆さんにお聞きするんですが、一体だれに聞いたら一番わかるんですか。「総司令部の嘱託として情報活動をなし、現在もその方面の仕事をしている」と、裁判所がそういうふうに認定しているのですから、何らかの根拠がなければならぬわけですね。何ですか、これは。警察がこういう点はよくわかるのですか。
○説明員(秦野章君) 福島という人が総司令部の嘱託をしておったかどうかという事実については、私どもは全然存じておりません。ただ、お尋ねのこの人物が情報の仕事をしておるということについては、そのような事実はございます。
○稲葉誠一君 まあこれは判決の読み方ですが、「現在もその方面の仕事をしている」という意味が、単に情報活動をしているという意味にとっているのか、あるいは前のほうの総司令部の嘱託云々ということも含めて受けているのか、ちょっとはっきりしませんが、いずれにしても大きな問題があると思うんです。
 そこで、これは内閣調査室にお尋ねするのですが、内閣調査室というのは、何人くらい人がいて、具体的にどんな仕事をしているところなんですか。
○説明員(中川豊吉君) 人数は大体六十人くらいでございますが、外郭団体がございます。それで内閣の重要政策に関する情報の収集をやっております。
○稲葉誠一君 外郭団体というのは何ですか。
○説明員(中川豊吉君) 外郭団体の数は七つくらいでございます。たとえば、いろいろな通信とか、それから海外事情調査のためにつくった団体とか、そういうものであります。
○稲葉誠一君 ことばがちょっとはっきりしなくて恐縮ですけれども、七つくらいあって、どういうものとどういうものとがあって、どういう目的でそれがつくられて、内閣調査室から委託調査のような形で置かれておるわけでしょう。その関係を明らかにしてもらいたいわけですがね。
○説明員(中川豊吉君) いま七つと申し上げましたけれども、十一でございます。日本放送協会、内外情勢調査会、共同通信社、ラジオプレス、共同通信社開発局、海外事情調査所、世界政経調査会、東南アジア調査会、国際情勢研究会、国民出版協会、民主主義協会というものを持っております。
○稲葉誠一君 それで十一ありますか、ちょっと計算していなかったんですけれども。
○説明員(中川豊吉君) 十一ございます。
○稲葉誠一君 いずれ資料として内閣調査室がそういうところに幾ら毎年お金を出しておるかということを明らかにして出していただきたいと思うんですが、あるいは前にどこかほかのところでそういう質問があって出ておるかもしれないと思いますが、それを明らかにしていただきたいと、こう思うんですが、それは外郭団体であって、内閣調査室自身で調査をするものもあるわけですか。
○説明員(中川豊吉君) 調査室でやるものもございます。
○委員長(和泉覚君) ちょっと速記をとめて。
  〔速記中止〕
○委員長(和泉覚君) それでは速記を起こして。
○稲葉誠一君 内閣調査室で調査するというのは、具体的にはどうやってやるわけなんですか。
○説明員(中川豊吉君) 外務省と緊密に連絡をとることはもちろんでありますが、海外諸国のラジオ放送や通信社のニュース、それから海外新聞、雑誌、書籍等刊行物による調査、海外旅行者、海外研究家及び居住者等から資料や研究結果の提供を直接または委託団体を通じて受けて調査をしておるわけでございます。
○稲葉誠一君 そうすると、ここにある「内閣調査室韓国景武台機関」と判決で認定してあるわけですが、これは何なんですか。
○説明員(中川豊吉君) これは承知しておりません。これは私のところにはございません。
○稲葉誠一君 あなたのところにないといって本一審の判決で相当詳細に証人調べをして、記録だけでも千丁以上あるんですよ。以上あって、証人は十九名、調書は七十八通を調べて、そうしてこういうふうに認定をしておるわけですからね。認定をしておるのに、そういうふうなものが全然ないというのはおかしいじゃないですか。それだと、一審の判決というのは全然でたらめということになりますよ。そんなことないでしょう、これだけはっきり認定しておるんですから。
○説明員(中川豊吉君) 内閣調査室韓国景武台機関というものはございません。
○稲葉誠一君 そうすると、内閣調査室にもいたことがあるし、韓国景武台機関にもいたことがあるということにもとれるわけですね。内閣調査室韓国景武台機関と一本で言うのじゃなしに、内閣調査室にも籍を置いたと、それから韓国景武台機関にも籍を置いたと、こういうふうにもとれるんですが、ちょっとはっきりしませんが、内閣調査室にこの中島という人が籍を置いたことはあるんですか。
○説明員(中川豊吉君) 籍を置いたことはございません。
○稲葉誠一君 それはあなたのほうでちゃんと調べてそういうことを言っているわけですか。一審の判決で非常に詳細な調べをした結果として、その中島というのは――内閣調査室韓国景武台機関というのは、内閣調査室と別個のものなのか、内閣調査室の関係の機関なのか、ちょっとはっきりしないので、ぼくのほうも調べなければいけませんけれども、内閣調査室に少なくとも籍を置いて、主として共産圏国家の情報収集の任に当たったんだということに一審の判決は詳細な証拠調べの結果として認定をしているわけですから、何らか内閣調査室なら内閣調査室というものに中島という人が関係があったんじゃないですか。それでなければ、いかに何でも架空なことでこういう認定が出てくることはおかしいと思いますがね。
○説明員(中川豊吉君) 今度の判決がございましてからその判決文を拝見しまして初めてこういうことが載っているということがわかったわけでございます。それまで全然知りませんでした。
○稲葉誠一君 そうすると、中島辰次郎、これは内閣調査室とは全然関係がないという意味ですか。ことにあなたのほうで調べた結果としてはそういうことになるんだというふうに承っていいわけですか。
○説明員(中川豊吉君) さようでございます。
○稲葉誠一君 そうすると、本人は内閣調査室に関係があるんだということをあるいは警察なりあるいは検察庁なりあるいは裁判所の中で述べておったとしか考えられないのですが、その点については、本人がなぜそれではこういうふうに判決の中で認定をされるようになったのかという点については、調べられたことはあるんですか。
○説明員(中川豊吉君) 私のほうは何も存じておりません。
○稲葉誠一君 そうすると、これは法務省にお尋ねする以外なくなりますが、内閣調査室に籍を置いたというのか、内閣調査室韓国景武台機関というのか、あるいは韓国景武台機関というのか、これは読み方は三つあると思うんですよね。韓国景武台機関というのは全然内閣調査室とは関係のないもんだというふうな読み方にももちろんとれないわけはないわけですから、三つの読み方があると思うのですが、そうすると、「内閣調査室韓国景武台機関に籍を置き主として共産圏国家の情報蒐集の任に当り、」と、こう書いてあるのは、具体的にどういうようなことから認定されたのでしょうか。
○説明員(津田實君) 内閣調査宝とそれから韓国景武台機関というのは、これはおそらく別のもので、内閣調査室はもちろん日本国の機関ですけれども、韓国景武台機関というのは別の韓国の機関ではないかと思うのでありますが、詳細はわかりませんし、また、どういうものによってこれを認定したか――認定といいますか、まあ認定という形になりますが、裁判所がしたか、それはわかっておりません。
○稲葉誠一君 韓国景武台機関というものは内閣調査室と直接関係のない別個の機関のようにも書き方はとれるわけですが、あとのほうに出てくる張永晋というのがやはり景武台機関の機関員であったということが認定をされておるわけですが、そうすると、警察庁の警備課ではいろいろな形で内外の情報というものを集めておられるわけですが、その景武台機関というのは一体何なんですか、その点については警察庁のほうではある程度のことは調べてわかっておるわけですか。
○説明員(秦野章君) 景武台機関というようなものは、私どもとしては聞いたこともなければ、そういう存在がもちろんあるということについては全く関知しておりません。私どもの想像するところでは、これは本人が言っているのではなかろうかというふうに推定をしているわけであります。
○稲葉誠一君 その景武台機関というのは、あれですか、韓国にあるというのですか、あるいは日本にあるというのですか、それはどうなんですか。これはそこまでわからないといえばわからないかもわかりませんが、本人がかりに自分で言っているとしても、この機関というものはどこにあると言っているわけですか。これは法務省に聞く以外ないですな、記録はある程度検討されているのでしょうから。
○説明員(津田實君) あるいは公判調書にだれかの供述として出ているのかもしれぬと思いますが、いま私の手元ではわかりません。
○稲葉誠一君 いずれにしても、こういう景武台機関という一種の情報収集機関か特務機関か知りませんが、こういうふうなものがあるということは判決の中で認定をされておるわけです。その認定の根拠が本人の自供だけによるものなのかどうか、ここら辺もまだはっきりしないところがありますが、いずれにしてもそういうことが考えられる。
 それから「渡辺は書面(北鮮海域の漁場調査を主目的として、水産庁の許可を得た上で出港し場合によっては北鮮の港に寄港することもあることを内容とするもの)を中島に渡し、これに対する警察庁の意向打診を依頼したこと、中島は右意を伝えて右書面を更に福島に手交し、福島において警察庁警備課に出向きその意向を確かめたところ、不法ではない旨の回答を得たので中島を通じその旨渡辺に伝えられ」とありますが、福島という人が、日にちははっきりいたしませんが、大体三十五、六年ごろだと思いますが、警察庁警備課というのに出向いて意向を確かめたということは一体あるのですか、ないのですか。
○説明員(秦野章君) 日時ははっきりいたしませんけれども、警察庁に福島という人が来たことは事実のようであります。しかし、その際にいま御質問のございましたような趣旨のことについて承認をするとかというようなことは全くないというのが私どもの今日まで調べた結果でございます。警察自体としてはそういうようなことは全くないということでございます。
○稲葉誠一君 警察庁の警備課にだれがいつ来て、だれに会って、どういう話をしたのですか。来たことはあるんですね。そうすると、どういう話を福島というのがしたわけなんですか。
○説明員(秦野章君) 日がはっきりしておりませんけれども、三十五年の十一月ごろ、福島という人、この人は、さっきもお話がございましたように、いわゆる情報の仕事をしているわけであります。いろいろな話をしに出入りをしているという事実があったようでございます。しかし、こういういわゆる情報を持ってくるというような人は、私どものところへはいろいろあるわけでございまして、そういうものの取捨選択というか、整理をし選択し、とるべきものはとり、とらざるべきものはとらないというのが私どもの態度でございますけれども、そういうような情報を持ってくる人の中にこういう人物がおり、この人が来たときに、北鮮のほうに魚をとりに行くというようなことは合法でしょうかどうかというふうなことを係員に話したそうでございます。もちろん、係のほうでも、それは警察の仕事ではございませんけれども、まあそういう話というのは多少おかしいというような気持ちもあって、そういう話があるのなら、それは私どもの役所というよりも、ほかに適当な役所、魚をとることなら水産庁だ、要するにそういう問題ではないのかというような話をしたという事実はございます。
○稲葉誠一君 この渡辺という人は、警察のほうには情報収集か何かの関係で出入りをよくしていた人なんですか。
○説明員(秦野章君) 全然その人は警察に出入りという関係はございません。
○稲葉誠一君 そうすると、あとのほうで、判決の中で、「被告人両名が治安当局の承認があると信じた理由」というのがありますが、その(2)のところで、昭和三十五年十二月十二日付渡辺より境港警察署の汐留ですか広留ですか警備係長あての封書が警察署に送達された、こうありますね。そうして、「同年十二月十七日付洲崎より同署警備係景山部長宛封書がそれぞれ同警察署に送達され、渡辺が境港を基地として漁船による北鮮との漁業合作を実施する計画であり、これに要する資金が景山部長宛に送金されるかもしれないことは同署警備係長山下警部並びに景山部長において知っていたこと、」と、こういう認定によると、警察のほうでは十分この事実を知っていて、しかもこの北鮮との漁業合作という名のもとにおける密出国、この資金が警察の警備係の景山部長あてに送金されるかもしれないことは警備係長なんかが知っていた、こういうような認定ですね。この認定が誤りであるかどうかは別として、証拠を調べた形の中ではこういう認定が行なわれているのですが、この間の経過は警察としてはどういうふうに把握しているのですか。
○説明員(秦野章君) この渡辺という人は、警察庁と出入りというような関係は全然ないのでございますけれども、第一線の関係におきましては、実は昭和三十三年の八月に昭光丸という密輸容疑の事件がございます。それから三十四年五月に天神丸という密輸事件の容疑がございます。この二つの事件がいずれも渡辺という人物が被疑者になった事件でございます。この事件を現地の境港警察、ただいまお話しの警察で知っておりますから、そういうことでもちろん被疑者として取り調べをしたことがございますが、そういうことで、この人物が密輸なんかをやりそうな人物であるということを十分知っておるし、いつやるかもわからぬというような疑いも持っておるわけであります。そういう関係にあって、したがって、渡辺という人物は現地の警察ではよくわかっておるわけであります。それで接触ももちろんあったわけでございますが、渡辺からいまお話しのように景山という巡査部長にそういう手紙が来たということは事実でございます。そこで、これはまあ非常に何といいますか、常識的に言うとおかしいのですけれども、そういう手紙が来たので、景山という巡査部長は、これはまた何かやるな、何か計画しているなということで、すぐにその手紙を報告書にして上司に出しておるわけですけれども、そこで、またやるなということで捜査をしていくための一つの材料に心得ていま申し上げたように報告書にしておるわけでございます。そういうようなことでやはりマークされておったということは事実でございます。
○稲葉誠一君 それじゃ、その渡辺から警備係長あてに来た手紙というのは一体何が書いてあったんですか。
○説明員(秦野章君) いま手紙の詳細を持っておらぬのですけれども、私の聞いておるところによりますというと、この手紙は、いわゆる漁業合作と申しますか、そういったような計画もあるので、それを実行していくんだという趣旨のものであります。もちろん、密出国をするんだとかなんだとか、そういうことはなかったようでございますけれども、そういうかねてから渡辺が主張しておりますような漁業合作というような問題についての内容であったようであります。
○稲葉誠一君 それをなぜ警察へ出したんですか、ちょっとわからないんですがね。いま、あなたは、常識で考えられないと言ったけれども、ちょっと何かはっきりしませんが、なぜそういうようなものを出したんですか、警察へ。
○説明員(秦野章君) その点が私もちょっとわからないのでございます。これはまあ本人がどう言っておりますか、私も承知しておりませんけれども、何かしきりに漁業合作の名をかって情報工作的なことをやるようなふだんの行動がありますので、いろいろ出したほうではねらいがあったろうと思うのでありますけれども、確かに不可解な点がございます。
○稲葉誠一君 それから、洲崎というのは、これは船員ですね、本件の被告人ですが、それから警備係の景山部長あてに手紙が届いているわけですね。これは、ちょっとあとですが、十二月十七日付で届いているんですね。これは警察あてに届いたわけですな。これはどういうことですか。
○説明員(秦野章君) 景山あてにも速達郵便で手紙が来ておるようであります。その内容では、資金を送るというような趣旨が書いてあったようであります。
○稲葉誠一君 だから、その資金を送るというのが、漁船による北鮮との漁業合作を実施する計画でもって、それに要する資金が警察の警備係の景山部長に送られるという手紙でしょう。そこへ送るという手紙のようですね、これは。そうすると、漁業合作をやるその資金がなぜ警察あてに送られるようになっていたのか、あるいは、なっていなくても、そういうふうな手紙が本件の被告人である洲崎から行ったのか、ここのところはよくはっきりしない点があるかもわかりませんが、いまのあとの手紙は、景山という警備係の部長あてにこの漁業合作の資金を送るという手紙ですか。
○説明員(秦野章君) 経費を送るという手紙のようでございます。それで、いま、確かに御質問のように不可解な感じがするのですけれども、それまでに渡辺とこの境港署の警察官とは、まあ何とかして情報をとろう――向こうへ行くということであるならばこれはやはり事件でございますから、情報とろうという警備係としての情報への意欲がございます。そこで、まあ接触というものの過程の中ではやはりいわゆる捜査をしているというようなきびしい気持ちだけでは情報もとれませんから、そういうことで少しやわらかい感じもあったろうと思いますが、そういうことで、向こうでは、向こうというか、渡辺のほうでは、非常にこう親しいような感じを持っただろうし、それからまた、金を送るというようなことによってそれをかりにそのまま黙っておればあたかも警察がそういう計画を承認したかのごときふうに渡辺のほうにしてみればとれるというふろにも思われるわけであります。経費を送るというようなことは、確かに警察官にそういうことを言ってくるのはおかしいのですけれども、しかし、その経費自体は、悪いことをするという経費ではございませんで、一時預かってくれというような意味なのか、いずれにしても、経費を送るというようなことによって、そういうことを手紙を出して、それによってあたかも警察がその計画を承認したというような受け取り方をする可能性、そういうもの、そういうことが考えられると思うのであります。
○稲葉誠一君 そうすると、その経費を送るというのが、資金というのが幾らぐらい送るということなんですか。
○説明員(秦野章君) 金額は書いてなかったそうでございます。
○稲葉誠一君 この洲崎というのは、いま言った境港の旅館で渡辺と会って、そうしてそこへ景山部長を呼んだというふうに認定されていますね。これは、被告人と、何だか別の渡辺――これも本件の被告人になっていますね、これは確定しているほうですが、それが旅館に泊まっていて、そうして今度は警察の警備の巡査部長を呼んだということは、これはどういうわけなんですか。
○説明員(秦野章君) 先ほど申し上げましたように、顔見知りにはもう事件の関係でなっておるということと、まあ情報あるいは事件、そういうものを担当している警備係のほうとしては、また何かやるんだということで非常に警戒をしておる。やはり接触をして、何かやるという意図を探りたいという気持ちがありますので、宿屋へ来たときに、ちょっと出てこんかというような調子で出ていったというふうに考えられます。やはり接触をしなければそういう意図というものはわかりませんし、なかなかこういう事件の捜査というものは非常にむずかしいですから、そういう意味で出ていったものと考えられます。
○稲葉誠一君 そうすると、これは、旅館に二人が泊まっていて、警察へ電話をかけて、ちょっと来てくれないかといって電話か何かあったんで、警察のほうの景山という巡査部長が出かけていったんですか。
○説明員(秦野章君) ただいまの私が申し上げたのはちょっと違うかもしれません。いま詳細をなにしますと、たずねていった前日に、渡辺のほうが署へ寄ったそうでございます。そのときに来ないかというような話があって、それで行ったということでございます。
○稲葉誠一君 行って、どういう話があったんですか。
○説明員(秦野章君) こまかな事実関係について外事課長からお答えを申し上げます。
○説明員(渡部正郎君) 三十五年の十二月の二十一日に渡辺と洲崎が境港市の市内の旅館に泊まったわけですけれども、そのときに景山部長をたずねまして、あした相談があるからということを言って帰ったわけです。で、翌二十二日に景山部長を宿に呼びまして、そうしていろいろ話をしたんですけれども、内容は、北鮮に行くことに関連いたしまして、製氷機の話であるとか、どこから出ていくかとか、あるいは北鮮に行ったら新浦港に寄るとか、その他いろいろ連中の計画を話をしたわけであります。
○稲葉誠一君 そこで、話としては、これらのうちの渡辺というのは、前に二つの事件で、北朝鮮へ密出国するんだということが警察のほうではわかっておるわけですが、そこで旭洋丸が浜田港から北鮮の新浦港に出航をするというようなことの話があったんじゃないですか。
○説明員(渡部正郎君) その二十二日に宿で景山部長が会いましたときに、景山部長にそういう話がございました。
 なお、これに関連いたしましては、景山部長が宿をたずねる前に、鳥取県警本部の指示を受けておりまして、その指示に従いまして――もし北鮮に不法に行くということがあれば彼らに厳重に警告することという指示をもらっておりまして、その話を聞いてその場で警告をしております。
○稲葉誠一君 警告をしているというんですが、しかし、判決の認定では、「景山部長を呼び渡辺より同部長に対し旭洋丸が冷凍機の積込みを中止して浜田港より北鮮新浦港に出港することを告げたが、同部長は何等右計画の中止を勧告しなかったのみならず、」となっていますね。だから、そんな勧告なんかしなかったんじゃないですか。認定はそうですね。その点はどうなんですかね。そして、なお、「渡辺、洲崎と酒を飲み交したこと、――まあ酒を飲んで悪いことはないでしょうが、酒を飲んで――更に翌日頃同部長は渡辺、洲崎が境港を発つに当り洲崎が昭光丸事件の際の寝具を引取るについて――これは前の密出国事件ですね――その保管料の値引きをあっせんした上駅頭で渡辺にウイスキー一瓶を贈つた」というような認定があるわけですが、そうすると、渡辺なり何なりが北鮮へ出航するのだということを知っていたけれども計画の中止を勧告しなかった。しなかっただけではなくて、それに関連をして、いろいろこの前の事件の寝具引き取りについての保管料の値引きあっせんをしてやったり、ウイスキー一びんを贈ったり、いろいろ激励というか便宜をはかってやっているわけですね。これはどういうことなんですか。まず、そういう事実があるかどうか、それから……。
○説明員(秦野章君) その事実は、先ほど課長から申し上げたとおり、あるようでございますが、第一審の証人に呼ばれたときにいろいろ尋問がございまして、それに対する答えの中に、北鮮の話をしたとき、新浦へ行くのは違法なんだぞということを言ってないということを、私は調査したのですけれども、そういうことを言っております。そこで、控訴審の過程でだんだん明らかになっていかなければならぬ問題だと考えているわけですけれども、そういうことがございました。
 それと、いま一つはウイスキーの問題ですけれども、宿屋に行ったときに、これはまあほんとうに簡単らしいのですけれども、飲食をちょっとしているわけですけれども、ごちそうになった形になっているわけです。そこで、ぐあいが悪いというというような気持ちもあって、返しといいますか、そういう気持ちもあってウイスキーをやっておいた。それで、この現象だけから見ると、警察官の態度として非常にかっこうがおかしいような感じもするのですけれども、しかし、とにかく渡辺グループの北鮮へ渡るという意図について何とかこれを聞き出そうという懸命な努力の姿ともとれるというふうに私は解釈しているわけでございます。
○稲葉誠一君 いま言ったことの中で非常に重要なのは、そうすると、渡辺なり何なりが北鮮へ密出国するのだということがわかっていて、そしてしかも鳥取県の警察本部から厳重にそういうことをやめるように勧告をしろと言われておりながら、一審の法廷へ証人として出たときには、そういう中止の勧告はしなかったと答えている、こう承っていいわけですか。
○説明員(秦野章君) いままで第一審の裁判にあらわれた経過から見ますと、率直に申し上げて警察官の態度が不徹底だったと思います。しかし、事実は、北鮮に行くというようなことも証拠がないわけです。警察としては、どうも行くらしいという状況なんでございます。ただ、まあいまお話しのように、そのときに新浦へ寄るということを言ったといいますから、それが証拠といえば証拠ですけれども、その言い方の問題で、行ったらしかしそれはまあ違法なんだぞということを言っているということであるならば、決定的な証拠もありませんし、その段階ではやむを得ないのじゃないかというように思うわけでございます。
○稲葉誠一君 鳥取県の本部に言われて、その計画の中止を勧告をしろというようなことを言われたとすれば、相当な具体的な内容というものがこの警察官にはわかっていたはずですね。わかっていたからこそ鳥取県の警察本部へまで上申をしてその指示を仰いでいるわけですね。そうすると、その指示どおりに従わなかったということは認められるのですか。指示どおりに従わなかったけれども、それはこういうふうな理由からしてなおかつ情報を収集するためにはその指示どおりに中止を勧告しないほうがよかったのだという判断のもとにその中止勧告をしなかったのか、いろいろあると思うんですが、そこのところがちょっと何か引っかかってはっきりしないわけですがね。
○説明員(秦野章君) 本部からそういうことを指示されておったという理由につきましては、何ぶんにもそういうことを過去において二回も計画を企てておるという実績がございます。このことはもう本人も知っているわけだし、もちろん県本部もそれを知っての前提でありますけれども、それ以上に非常に具体的に北鮮に行くのだといういわば証拠と申しますかそういうようなものはなかなかないわけでございます。したがいまして、確かに見方としてはいま少し積極的にやるべきではなかったかという感じも受けるわけですけれども、それだけのことばで、自後において警戒をする、出そうだったらそれを押えるという段階としてはやはりやむを得ないのじゃないかというふうに考えられるわけでございます。
○稲葉誠一君 やむを得ないか得るかはまた別の認定というか判断の問題として、そのときに、北鮮へ行くというような計画の中止を一体勧告したのですか、しないのですか、これをお聞きしたいわけです。
○説明員(秦野章君) 勧告というか、要するにそういうことを言ったことは事実でございます。新浦へ寄るということはこれはもう事件だという趣旨のことを言ったということは事実のようでございます。
○稲葉誠一君 しかし、判決では、「何等右計画の中止を勧告しなかったのみならず、」と、こういうふうになっているわけですが、これはまあ事実認定の問題でしょうから、ここで争ってもあれでしょうからやめておきますが、それから「洲崎が境港を発つに当り洲崎が昭光丸事件の際の寝具を引取るについてその保管料の値引きをあっせんし」というわけですね。これは一体何のあれですか。
○説明員(秦野章君) これは、保管料は、普通の民間の会社で預かっておったようですけれども、やはり接触の過程でできるだけ世話をやいてやって、そのかわり情報を何とかとろうという、そういう気持ちのあらわれでやったことだと、本人もその気持ちのようですが、そういうことでございます。
○稲葉誠一君 その情報というのは二つあるんで、向こうへ行くか行かないかという情報と、行って来て向こうのいろいろな情勢を知るということもまた情報ですから、どっちの情報をとろうとしたのか、その争いは別の問題になってくるんですが、少しく度を越しているようにも考えられるんですがね。
 そして、その旭洋丸が浜田港に停泊しておって、これは十二月二十三日まで停泊しておったのですか、そのときに、密出国容疑としてですか、何か職務質問をしているんですね、浜田警察で。これはどういうことから職務質問したんですか。
○説明員(渡部正郎君) いままで御説明申し上げましたような状況で、北鮮に行く可能性が考えられておった。もちろん確証はありませんけれども、従来の関係者の動向から、何といいますか、ことばはあれですけれども、詐欺的といいますか、信用できない面が多々ありますから、この話もそうではないかというそういう考え方も現地の警察のほうにあったわけですが、いずれにしろ、そういう情報がございましたので、関係者をずっと尾行しておりまして、それで二十三日に職務質問をしたという状況になるわけでございます。
○稲葉誠一君 大体約束の時間ですから、あまりきょうはこれ以上あれしないでおきますが、あれですね、「何等突込んだ質問はなく、暗に被告人等をかばうような状態であり、」と、こう言っておりますね、判決は。「被告人両名に書かせた上申書も至って形式的であること、渡辺の北鮮出国計画は鳥取、島根両県警察本部を通じ浜田警察署に連絡があったのに同警察署においては何ら未然に右出国を阻止しようとする形跡も見当らないことが明らかである。」と、こう判決は認定をしているわけですね。そうすると、あれですか、渡辺が北朝鮮へ出国するという計画は、鳥取、島根両県警本部を通じて浜田警察署に連絡があったんですか。それはいつごろどういうような形で連絡があったんですか。
○説明員(渡部正郎君) ちょっといつごろどういう形で連絡があったかということは私承知していないのですけれども、当時、鳥取、島根両県で情報をお互いに交換しまして、尾行その他の方法によって動向の調査を続けておったわけであります。ことに、もし密出国する状況が非常に濃厚になって必要な資料が集まれば検挙をするという方針を定めておりまして、それにつきましては逮捕令状は島根と鳥取で相談をいたしまして島根県でとる協議をやったりしておりまして、事実、令状の請求をしておりまして、当時の状況からいたしまして十分な証拠が集まれば検挙するという態勢にあったわけであります。
○稲葉誠一君 令状の請求をしていたんですか、ちょっとその点をはっきりしてください。
○説明員(渡部正郎君) ちょっといま御質問が聞き取れなかったんですが……。
○稲葉誠一君 令状の請求をしているというようにあなたいまおっしゃったように聞いたんで、令状の請求をしていたのは事実かどうか、もう一ぺん確かめたわけです。いつしていたわけですか、どこへ対して。
○説明員(渡部正郎君) 十二月の二十三日に松江地検の久保という検事さんのところに行きまして令状請求の相談をしたわけですけれども、そのときに、資料がまだ十分そろっていないというので、この程度ではかりに逮捕しても公判維持はむずかしいのじゃないかということを言われまして、逮捕令状をとることに久保検事の賛成をいただけなかったという事実がございます。
○稲葉誠一君 令状請求をしたというふうにいま言われたので、ぼくはちょっと確かめたんですけれどもね。令状請求があって令状が出ているとすれば、いま言ったような一連の経過というのが非常におかしくなってくるわけで、それで確かめたわけですが、令状請求は検事を通じなくてもできるんじゃないですか。どうなっているんですか。
○説明員(渡部正郎君) 私ちょっとことばの使い方がまずくて申しわけありませんけれども、令状請求をしたのではございません。令状請求をするつもりでその準備をしまして検事に相談したのでございますけれども、通常、逮捕令状を請求いたしますときには、自後の捜査の関係、公判維持の関係がございますので、検事の所見を聞くというやり方を従来ともやっております。
○稲葉誠一君 そうすると、令状請求までいこうとして検事のところへ相談に行っているんですから、そのときには必要な供述書とかいろいろなものはとれて資料を持って行っていると、こう思うんですがね。そのときには、同じ日に本人たちに上申書を書かせたんですか、二十三日に。その書いた上申書も令状請求の資料の中に入っていっているわけですか。
○説明員(渡部正郎君) ただいま申し上げましたように、二十三日、久保検事に相談いたしましたときに、令状請求のまだ段階にきていないだろうと。それで、そのかわりということではございませんけれども、久保検事のサゼスチョンもございまして、上申書をとったほうがいいんじゃないかと、そのサゼスチョンを受け入れまして上申書をとった、こういう経過になっているようでございます。
○稲葉誠一君 いま言った形だと、「鳥取、島根両県警察本部を通じ浜田警察署に連絡があったのに同警察署においては何等未然に右出国を阻止しようとする形跡も見当らないことが明らかである。」と、こういうふうに認定されているわけですね。それは、浜田の警察では、そういう連絡があったのに、あれですか、犯罪になるかならないかわからないからというのでそこまで待っていたわけなんですか。それよりも前もって当然出国を阻止しようという行動はとらなかったわけなんですか。
○説明員(秦野章君) 逮捕請求の準備と申しますか、疎明資料としては、景山部長の、先ほど申し上げました新浦に行くかもしれぬといったような渡辺の言動とか、そういうものがあるわけですけれども、それはただそれだけのことであって、それだけではやはり十分ではないという判断がなされたようであります。したがって、何というか、密出国というものが、十分な容疑というか、それを認定するには不十分である、そういうことで、予備罪とかなんとかあれば別ですけれども、やはり強制的に出るという段階ではなかったというふうに判断したようでございます。
○稲葉誠一君 これは記録がいま係属中の事件ですからここにあるわけじゃありませんし、まだ終結していないわけですね。十一月に証人を五名調べることになっておるようですから、まあ終結しておらないですから、かれこれあまり論議をするのもあれだと思うのですけれども、いずれにしても、判決の認定がくつがえるかどうかは別として、一審の判決がこれだけ調べた認定によるというと、「警察当局が渡辺等の本件出国計画を暗黙のうちに了解していたのではないかとの疑問は残るが、(これは重大な問題であり当裁判所もこの点について遂に心証をとることができなかつた)」と、こういうふうに言ってはおりますけれども、警察がこの計画を了解して、むしろいろいろな形で援助をしていたのではないか、そうして向こうの情報をとりたいという形の運動をしていたのではないか、こういうふうに少し疑われる危険性というか、そういう可能性がある事件だと、こういうふうに思うわけですが、私も記録なり何なりを見ているわけじゃありませんし、判決とその間の審理の経過だけですから、どうもこれ以上のことはここでは聞けないのですけれども、いずれにいたしましても、もう少し内容を調べて、どうも疑いがある案件でありまするし、これが事実とすれば、そういうふうなことを警察が行なっていたとすれば、非常に重大な問題になってまいりますから、これは十分調べて、そうして私のほうでも追及すべきものは追及したい、こういうふうに考えます。
 きょうはこれで終わります。
○委員長(和泉覚君) 本日はこれにて散会いたします。
   午前十一時三十四分散会