第051回国会 大蔵委員会 第27号
昭和四十一年六月七日(火曜日)
   午前十時三十九分開会
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   委員の異動
 六月二日
    辞任         補欠選任
     須藤 五郎君     春日 正一君
 六月三日
    辞任         補欠選任
     春日 正一君     須藤 五郎君
 六月七日
    辞任         補欠選任
     塩見 俊二君     林屋亀次郎君
     吉武 恵市君     西川甚五郎君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         徳永 正利君
    理 事
                青柳 秀夫君
                日高 広為君
                藤田 正明君
                柴谷  要君
                中尾 辰義君
    委 員
                伊藤 五郎君
                植木 光教君
                大竹平八郎君
                大谷 贇雄君
                栗原 祐幸君
                木暮武太夫君
                西郷吉之助君
                西田 信一君
                林屋亀次郎君
                野溝  勝君
                瓜生  清君
                須藤 五郎君
                小林  章君
   国務大臣
       大 蔵 大 臣  福田 赳夫君
   政府委員
       大蔵政務次官   竹中 恒夫君
       大蔵省主税局長  塩崎  潤君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        坂入長太郎君
   説明員
       外務省条約局条
       約課長      松永 信雄君
       大蔵省主税局国
       際租税課長    大倉 真隆君
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  本日の会議に付した案件
○所得に対する租税及びある種の他の租税に関す
 る二重課税の回避のための日本国とドイツ連邦
 共和国との間の協定の実施に伴う所得税法、法
 人税法及び地方税法の特例等に関する法律案
 (内閣提出)
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○委員長(徳永正利君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。
 所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税の回避のための日本国とドイツ連邦共和国との間の協定の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律案を議題とし、審査を進めます。
 質疑のおありの方は順次御発言を願います。
○柴谷要君 本特例法では、租税条約に伴うものではなくて、租税協定となっている点については、どう違うのか、これが一点。
 それから、この種の法案の場合、脱税の防止という字句が入るものと入らないものとあるけれども、まずその違いをお聞かせいただきたい。
○政府委員(塩崎潤君) まず第一の御質問でございますが、条約と協定との違いという点でございます。この点につきましては、私どもの関係いたします二重課税の防止のための二国間の意思の一致と申しますかという問題につきましては、すべて租税協定となっておりますが、この点につきましては外務省からお答えを願えればいいんではないかと思いますので、この点につきましては省略さしていただきます。
 第二の御質問でございますところの、二重課税の回避という条約になっておるが、脱税防止ということがあるかないかという点でございます。条約の全体の大きな規定の中ではそういった趣旨はうたっておりませんが、資料交換、情報交換の中に租税の回避あるいは脱税の防止、こういった意味の規定がございますので、付随的に脱税の防止も意図しておる、こういうことが言えようかと思います。
○説明員(松永信雄君) 先ほどお尋ねがございました条約と協定との違いにつきましては、これは全く名称だけの問題でございまして、内容といたしましては、条約という名前を使用する場合あるいは協定という名称を使用する場合、全く同じでございます。従来租税関係の条約ないし協定につきましても、日本が結んでまいりましたものには、たとえばアメリカとの間では租税に関する条約という名称を使っておりますし、また、インドとかスウェーデンとかいう国と結びました場合には協定という名称を使っております。
○柴谷要君 条約も協定も同じだということならば、統一をして、同じ租税協定であるならば租税協定、こういうふうに統一する、それから脱税防止なら脱税防止という字句が入っておるならば、全部入れると、こういう考え方に、同じになりませんか。
○政府委員(塩崎潤君) 脱税防止ということばは、先ほども申し上げましたように、広い意味におきまして資料の交換、情報の交換の中に入っていることでございます。アメリカとの関係におきましては脱税防止という明文がございますけれども、そのほかの条約におきましては脱税防止ということがうたわれておりません。これはまあその国のたとえば国内法の関係で、他国の税金についてまでの脱税防止まで協定において権限を得られるかどうか疑問であるというふうな考え方から、アメリカと違ったような表現をとる、それが大部分の協定となっているわけでございます。そんなような意味で、私どもは脱税防止ということばは最近の条約においては使っていない。ただ、大きな意味におきまして、先ほども申し上げましたように、資料の交換その他によりましてある程度の効果があげられる、こんなような気持ちを持っております。
○柴谷要君 次に、他の国との租税条約の特例法と比べてみると、アメリカ、スウェーデンの特例とは同じであるが、その他諸国とは少しずつ違っている。税率はともかく、先進国の租税条約のモデルといわれるOECD租税条約との考え方の相違点等があるとすれば、その理由をひとつ聞かしてもらいたい。
○政府委員(塩崎潤君) 十幾つかの条約をわが国は締結しておるわけでございます。いずれも各国の国内法がまだまだ統一されておりませんので、各国の国内法の事情によりまして違いが出てくるのが条約、協定でございます。さらにまた、OECDに一つの統一モデルもございますが、この統一モデルを私どもは簡単に受け入れることもできません点もございますので、そんなような関係から、この法律はこれまでに締結いたしました条約に伴う法律と違っている、こういうことが一般的に言えようかと思います。
○柴谷要君 外務委員会では、この協定による減収額が問題になりましたね。減収額が、これによると日本側の減収額は一体幾らなのか、それから日本人、日本法人がドイツで幾ら減収になるのか、そのわかる範囲でけっこうですから、お知らせを願いたい。
○政府委員(塩崎潤君) 外務委員会には私どもの国際租税課長が出席いたしましたので、その間の模様につきまして国際租税課長からお答えいたします。
○説明員(大倉真隆君) お答え申し上げます。
 外務委員会でただいまの御質問と同じ御質問を受けましたが、配当、利子、技術使用料といういわゆる投資所得の系統と事業所得の系統に分けてお答え申し上げます。
 投資所得につきましては、ドイツの居住者あるいはドイツの企業が日本に投資して、現実に幾らかせいでいるかと申しますと、これは四十年ベースで、円にいたしまして約八十六億円所得を得ております。これに対しまして、現在条約がないといたしました状況で、約十億日本の租税が課されるわけでございますが、条約上の制限税率を適用いたしまして計算いたしますと、この税額が約八億四千万円ということになります。差額約一億六千万円がドイツ側として日本の税が軽くなるというふうに御了解いただきたい。これをひっくり返しまして、日本からドイツへどの程度投資があり、どの程度所得を得ているかということになりますが、これは残念ながらまだ利子、配当、ほとんど見るべきものがございません。わずかに技術使用料で約十五万ドル受け取っておりますが、これによります軽減というものは円にいたしますと約八百万円程度と計算されます。その意味では、技術交流そのものが一方的でございますので、税の減り方も一方的になるというふうに御了解いただきたいと思います。
 次に、事業所得でございますが、これは現在日本からドイツに非常に多数の企業が進出いたしております。私ども全部を調べ上げるわけに実はまいりませんが、主要な大きいところを拾い上げました結果では、一番近い事業年度一年分をとりまして、利益をあげております会社が総額で約七千六百万円、これに対して約三千五百万円ドイツの税を払っております。欠損をあげております会社が、欠損総額で約七千一百万円、欠損会社と利益会社が数といたしまして約半々とお考えいただけばけっこうだと思います。なお、申し上げるまでもございませんが、このように拠点をはっきり持ちまして事業を行なっております場合には、条約ができましても税がそれによって減るということはございません。ただ現状がどうかということの御参考までに申し上げた次第でございます。なお、ドイツ側が日本には企業の数としてはほとんど来ておりませんが、私どもわかっております結果では、申告、税務当局の調査ともに現在は欠損になっております。全社とも欠損になっております。
 なお、条約による目に見えない効果といたしましては、いわゆる駐在員事務所、つまり正式な商売をいたしておらない、情報収集とか、広告、宣伝、あるいは俗に申しますとお客さまの世話をしているというふうなところでは、条約によりまして明らかにドイツの租税を払わないでよろしいということになります。これが条約がございませんと、駐在員事務所経費を日本からもらえば、その五分とか一割は所得があるのではないかという推定を受けまして、課税されることがあるかもしれません。この点、外務委員会でいろいろお尋ねがございまして、非常に大ざっぱな推定でございますが、一年間に払っております駐在員事務所経費をかりにドイツの税務当局がその一割所得があると推定して課税するとすれば、円にいたしまして約一億円の税になっておる。条約ができればそういうトラブルはなくなるというふうにお考えいただけばけっこうだと思います。
○柴谷要君 課長、親切な御答弁ありがたいんですが、時間の制約があるので、要約して、外務委員会であなたがしゃべったのを全部読んでおるから、要点だけここで言ってください。
 それでは、租税協定及び特例法によって経済交流はどう具体的に促進されていくのか。これはどなたでしょうか。大臣でしょうか、だれでしょうか。局長でしょうか。
○政府委員(塩崎潤君) 租税条約の経済交流に及ぼす効果についての御質問でございます。先ほど大倉課長から、条約によりまして税収がどういうふうに動くかというお話がございました。おっしゃられる点はこういうことだと思いますが、まあ数字上にあらわれない経済交流はどうかと、こういう意味だと思います。私どもこの条約の効果は、そういった相互に二重課税を排除することによりまして、安心してお互いに投資していく、あるいはまた企業が進出していく、こういうところにあろうかと思います。さらにまた、教育あるいは文化の交流ができる、こういうことかと思いますが、これらの点につきましては、すでに先進国との間に結んでおる条約、さらにはまた私どもが低開発国に対しまして結んでおりますところの条約、これによりましていま数字にあらわれない経済交流が着々あがっておるのではないか、かように想像しております。
○柴谷要君 いままでの租税条約の締結国は、すべて西欧側に締結されている。で、共産圏の諸国とこの種の租税条約を締結する必要は一体ないのかどうか、これをひとつ。
 それから、日本商社が共産圏諸国にどんどん進出していま商売やっておるが、その場合どのような課税を現地で受けているのか。これをひとつ聞かしてください。
○政府委員(塩崎潤君) ただいまの第一の御質問でございます。私どもが締結している条約はまあ西欧諸国とだけではないか、こういう御質問でございますが、決して西欧諸国だけではございません。御存じのように、インド、パキスタンを第一号といたしまして、先進国のみならず低開発国との間に租税条約が締結されております。マラヤ、さらにはタイ等もございます。決して先進国とだけではございません。
 そこで、進んで、柴谷委員の御質問は、共産圏諸国との間に租税条約を締結したらどうか、こういう御質問でございます。まあ御存じのように、税制は資本主義国におきましては所得税、法人税が中心でございまするけれども、御存じのように共産圏諸国におきましては所得税、法人税が中心ではございません。多分に取引税的なものが中心でございます。そういう税制の違いは、必ずしも二重課税という問題を生じないような傾向がございますので、共産圏諸国との間に二重課税の防止条約、防止協定と申しますか、防止協定が必要であるかどうか、これはまだまだ検討しなければならぬことだと思うのでございますが、そんなような意味で共産圏諸国との間の租税条約はまだ進んでいない、こういう実情だと思うのでございます。
 さらにまた、第二の御質問でございますが、共産圏諸国のみならず、各国におきまして商社が進出し、経済活動を営んでおりますが、条約におきまして示されておりますように、どの程度の経済活動から課税されるか、これは種々千差万別でございます。条約におきましては、恒久的施設的なものになれば課税と、こういうことになっておりますが、共産圏諸国におきましてもそういうことになるかどうか。さらにまた、税制がまあどうなっているかによると思いますので、これらの点につきましてはまだ問題になっているような状態ではない、かように見ております。
○柴谷要君 外国技術に対して日本が、昭和三十九年だと思うのですが、まあ五百五十億ばかりの使用料を支払っていますね。日本の科学技術の振興の基本的なあり方に問題があるのじゃないかと、こうまあ一つ思うことと、それから、政府がこれに対して今後どういう心がまえでこれを処置していこうとするか、これをひとつ、まあ大臣からこれはお伺いしたほうがいいと思うのですがね。しばらくぶりで、大臣、ひとつお聞かせ願いたい。
○国務大臣(福田赳夫君) ロイアルティーの支払いは、わが国の国際収支上非常にまあ重要な一つのアイテムになっております。やっぱりわが日本が戦中戦後を通じまして技術が立ちおくれておる。まあおくればせに国際自由社会の競争に参加する、こういうことになりました関係上、まことに遺憾なことでありまするけれども、現実には相当多額の支払い超過を来たしておる、かようなことになっておるのでございます。
 そこで、これがあまり過大にならないようにという配意のもとに、ただいまではロイアルティーの取得については政府のほうで規制をしておりますが、必要なものがどうしてもある程度あるということはこれは争えないわけであります。さようなことで、まあ基本的にはわが国の科学技術水準が他の先進諸国に追いつき追い越すという形勢になりませんと解決をしませんが、まあそういう方向へいまずいぶん努力が払われておる、こういうお答えをいま申し上げるほかないのであります。
○柴谷要君 最後になりますが、未締結国の中でも経済、技術の交流が相当ある国、これらの国との二重課税の問題が国内で別途考慮されているのじゃないか、こう思いますが、近々条約が結ばれる予定の国はどこになりそうですか、これをひとつお聞かせ願いたい。
○政府委員(塩崎潤君) 先ほど来申し上げておりますように、私どもは経済交流、さらにまた文化の交流を活発にする意味におきまして、二重課税の防止協定を進めておるわけでございます。残っております国で、おもなもので、私どもが現に協定の締結方を促進しておるものの中に、ベルギー、あるいはオランダ等がございますし、近くブラジルの全権が参りまして私どもと租税条約について交渉することになっております。私どもの考え方といたしましては、できる限り私どもの税法の立場を尊重しながら、さらにまたわが国が安心して進出できるような地域、さらにまたわが国がどうしても外資あるいは企業を受け入れる必要のある国を選びまして、租税条約を締結してまいりたい、かように考えております。
○柴谷要君 質問を終わります。
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○委員長(徳永正利君) この際、委員の異動について報告いたします。
 ただいま塩見俊二君及び吉武恵市君が委員を辞任され、その補欠として林屋亀次郎君及び西川甚五郎君が選任されました。以上でございます。
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○委員長(徳永正利君) 本法案について他に御発言はございませんか。――他に御発言もなければ、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(徳永正利君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより討論に入ります。――別に御意見もないようでございますが、討論はないものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(徳永正利君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより採決に入ります。所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税の回避のための日本国とドイツ連邦共和国との間の協定の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
○委員長(徳永正利君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、本案につきまして議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(徳永正利君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 ちょっと速記をとめて。
  〔速記中止〕
○委員長(徳永正利君) 速記を起こして。
 次回は六月九日(木曜日)午前十時より開会いたすこととし、本日はこれにて散会いたします。
   午前十一時一分散会
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