第061回国会 本会議 第20号
昭和四十四年四月二十三日(水曜日)
   午前十時六分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
○議事日程 第二十一号
  昭和四十四年四月二十三日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の報告に関する件(沿岸漁業等
  振興法に基づく昭和四十三年度年次報告及び
  昭和四十四年度沿岸漁業等の施策について)
 第二 所得に対する租税に関する二重課税の回
  避のための日本国とベルギー王国との間の条
  約の締結について承認を求めるの件
 第三 所得に対する租税に関する二重課税の回
  避及び脱税の防止のための日本国とアラブ連
  合共和国との間の条約の締結について承認を
  求めるの件
 第四 特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部
  を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
 第五 国際開発協会への加盟に伴う措置に関す
  る法律の一部を改正する法律案(内閣提出、
  衆議院送付)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、皇孫殿下御誕生につき慶賀の意を表する件
 一、日程第一より第五まで
 一、四月十五日の日本海における米機撃墜事件
  についての有田国務大臣の報告
    ―――――――――――――
○議長(重宗雄三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
○議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。
 去る十八日、皇孫殿下が御誕生になりましたことは、まことに喜びにたえません。
 議長は、とりあえず翌十九日、皇居において、天皇、皇后両陛下にお目にかかり、皇孫殿下御誕生につき、お祝いのことばを申し上げ、次いで、皇太子殿下にお目にかかり、内親王殿下御誕生につき、お祝いのことばを申し上げました。
 つきましては、御命名の当日、さらに慶賀の意を表するため、議長は、議院を代表して、天皇陛下並びに皇太子殿下にお祝いのことばを申し上げたいと存じます。これに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。
     ―――――・―――――
○議長(重宗雄三君) 日程第一、国務大臣の報告に関する件(沿岸漁業等振興法に基づく昭和四十三年度年次報告及び昭和四十四年度沿岸漁業等の施策について)。
 農林大臣から発言を求められております。発言を許します。長谷川農林大臣。
   〔国務大臣長谷川四郎君登壇、拍手〕
○国務大臣(長谷川四郎君) 「昭和四十三年度漁業の動向に関する年次報告」及び「昭和四十四年度において沿岸漁業等について講じようとする施策」につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 まず、「昭和四十三年度漁業の動向に関する年次報告」について申し上げます。
 昭和四十二年の漁業生産量は、七百八十五万トンと、これまでの最高を記録いたしましたが、水産物に対する需要は、国民所得水準の上昇に伴って増大し、生産の伸びを上回っております。したがいまして、水産物の輸入は、中高級魚介類を中心に引き続き増加をしております。また、水産物の価格は、生産地ではスケソウダラの豊漁の影響もあって前年より五%の上昇にとどまりましたが、消費者価格は需要の強い中高級魚介類や多獲性魚類の供給量がまだ不十分なこと等により前年より一一・五%上昇いたしました。
 次に、漁業経営体数は約二十二万八千で近年の傾向としてはほぼ横ばいであります。しかし、内部では無動力船経営体が減少し、浅海養殖経営体及び動力船経営体が増加をしております。漁業就業者数は、前年より二・四%減って六十万人台を割るとともに、中高年齢層の比率が一そう高まりつつあります。
 沿岸漁家の平均所得は、百十万円となり、都市勤労者世帯の平均実収入を上回りましたが、一人当たり所得で見れば都市勤労者よりはまだかなり低位にあります。
 中小漁業経営では、収益性は全体として見ると、前年よりかなり好転はしておりますが、漁業の種類や経営規模により格差が見られます。
 また、大規模漁業経営では、資源の減少や国際的制約のため、最近一般に収益性が低下いたしております。
 なお、わが国の漁業をめぐる内外の諸情勢はきわめてきびしいものがありますが、これに対処して、国民の必要とする動物性たん白食料の安定的供給を確保するために、さらに生産の増強につとめるとともに、あわせて漁業所得の増大をはからなければならないと考えております。
 以上が第一部の概要であります。
 次に、「第二部沿岸漁業等について講じた施策」は、昭和四十二年度を中心といたしまして、おおむね沿岸漁業等振興法第三条に掲げる施策の項目に従って記述したものであります。
 最後に、「昭和四十四年度において沿岸漁業等について講じようとする施策」について申し上げます。
 ただいま御説明いたしました漁業の動向に対処するために、政府といたしましては、沿岸漁業等振興法の定めるところに従い、昭和四十四年度におきましては、新漁場の開発等、水産資源の維持増大、漁港等漁業の生産基盤の整備、水産物の流通加工の合理化、沿岸漁業及び中小漁業の近代化に重点を置いて諸施策の推進をはかることといたしております。
 以上、「昭和四十三年度漁業の動向に関する年次報告」及び「昭和四十四年度において沿岸漁業等について講じようとする施策」につき、その概要を御説明申し上げた次第であります。(拍手)
○議長(重宗雄三君) ただいまの報告に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。達田龍彦君。
   〔達田龍彦君登壇、拍手〕
○達田龍彦君 私は、日本社会党を代表して、ただいま説明のありましたいわゆる漁業白書等に対して、内閣総理大臣並びに関係大臣に若干の質問をいたします。
 今日、わが国の漁業の総生産高は、ようやく七百万トン台を維持し、昭和四十二年においては、特にスケソウダラの豊漁により七百八十五万トンと、若干の生産の向上が見られるのでありますが、しかしながら、依然として国民食糧としての水産物への需要はきわめて高く、旺盛な需要に供給が追いつけず、慢性的供給不足となっているのであります。この慢性的供給不足の原因は、今日まで国民食糧の自給向上をはかるための国内生産の拡大策に意欲を示さず、これを軽視し、もっぱら輸入食糧依存にたよった政府の政策がもたらした結果であり、まさに政策的、構造的な供給不足であると言えるのであります。他面、経済成長のもたらした需要の増大は、消費構造の高度化を伴いながら、著しいものがあり、ために、水産物消費者価格は高騰を続け、輸入もまた激増しておるのであります。
 さらにまた、国際漁業においては、アメリカ、カナダ、ソ連、韓国等の開発途上国や、東南アジアその他の後進国の進出も目ざましく、その結果、重要資源の国際管理化への方向を明らかにし始めつつあるのであります。特に、沿岸国による領海の幅員の拡大や漁業専管水域設定は増加しており、その規制はますます強化され、新規漁場の開発も見るべきものがなく、わが国漁業の現状と将来は希望も魅力もない八方ふさがりであり、これは今日の佐藤内閣の内政外交政策の行き詰まりを端的にあらわしているのが今日の日本漁業の姿であると断ぜざるを得ないのであります。
 そこで、総理にお尋ねいたしますが、総理は、この日本漁業の現状と将来をいかに認識し、日本の経済社会開発の中でわが国漁業をどう位置づけようとしておられるのか、その決意と具体策をお伺いする次第であります。
 さらにまた、このような需要、供給の不均衡を是正するための講ずべき抜本的振興対策についても、この際明らかにしていただきたいのであります。
 質問の第二は、白書も若干指摘しているのでありますが、申すまでもなく、産業としての漁業の使命は、国民の食生活に必要な動物性たん白質をより多く供給することにあるのであります。今日の大資本漁業の経営と生産は、生産費は横ばいで、その供給度合いは拡大していないにもかかわらず、その収益率は生産率を大きく上回って、ばく大なる収益をあげているのであります。この収益率の増大の最大の原因は、大資本漁業者による資本力にものをいわせた生産、加工、流通を通じての独占的価格形成によるものであります。沿岸漁業者や中小漁業者が、流通、加工業者の意のままに値段をきめられ、安く買いたたかれている現状とはまさに対照的であり、ひとり大手一貫業者のみが独占的価格形成の中でその収益をむさぼっているこの形態こそ、わが国漁業構造上の根本的にして、しかも排除しなければならない矛盾であり、最大の問題点であります。このことが、大資本漁業と、沿岸・中小漁業との所得と経営の格差を拡大している主因であり、同時にまた、特定の漁価を高騰させている原因であります。この意味では、今日の大資本漁業経営は、沿岸中小漁業の犠牲の上に安定し、ばく大な収益を上げているといっても決して過言ではないのであります。今日、国民が最も疑問を持ち、また期待していることは、なぜ生産地価格は安いのに消費地価格は高いのか、あるいはなぜ新鮮な魚が安定した価格で供給できないのか等、直接身近かな食生活の問題にあるのでありまして、これを解決してやることこそ最も大切なことであります。
 そこで、総理にお尋ねをいたしたいことは、これらの大資本漁業と沿岸・中小漁業との格差の解消のための抜本的政策をお示しいただきたいと同時に、魚価安定対策についても方針をお示しいただきたいのであります。
 さらに、今日、流通機構の整備は農林水産行政の緊急な課題であります。中央卸し売り市場を中心とした地方市場等の流通機構の整備をいかにはかる方針であるのか、農林大臣から御見解と方針を承りたいのであります。
 質問の第三は、沿岸漁業振興対策についてであります。今日、漁業は農業とともに、わが国経済の高度発展と成長の中で大きく取り残され、他の産業に比較して経営、生産、所得の各分野においていよいよその格差は拡大し、行き詰まりつつあるのであります。しかも、日本の産業の中で一番取り残され、行き詰まっている漁業の中でも、漁業構造の中で九割五分を占める沿岸漁業者の経営と生活はさらにきびしく、貧困と窮乏の中に耐えながら生活のために必死で漁業に従事している実情にあるのであります。まさに破局的、危機的様相を呈していると言っても決して過言ではないのであります。
 私が、この白書において特に注目をいたしましたのは、この沿岸漁業に従事する人々が、いまどの程度の所得を保障され、どのような生活をしているかという点であります。白書は、これについて沿岸漁業の漁家所得は、四十二年には前年度より一九%増加し、百十万円となり、人口五万人以上の都市勤労者世帯の平均実収入九十九万円を上回ったとしているのであります。そこには、沿岸漁業の危機意識は全くなく、むしろ、多分に楽観的余裕さえ見られるのであります。一体そうでありましょうか。
 まず、この白書の数字には、漁業外所得や、さらには、漁獲生産の増加による所得の向上ではなくて、不安定な魚価の値上がりによる所得が大部分を占めていることを知らなければなりません。また、沿岸漁業者は、自己の資本と自己の危険負担で漁業を経営しているのでありますから、極力生活を切り詰めても、漁船の建造とその装備に資本をつぎ込むのでありまして、そのために、さらに経営と生活が苦しくなっているのが、漁業者の今日の実態であるのであります。ややもすると、沿岸漁業をやっかい者扱いする風潮があるのは、これら沿岸漁業の実態認識に欠けるからであり、沿岸漁業の振興に政府が意欲を示さないところに、今日の沿岸漁業の不振の最大の原因があることを認識すべきであります。そこで、総理にお尋ねしたいことは、このような慢性的生活苦と、経営困難にある沿岸漁業の振興対策について、御見解と方針を承りたいのであります。
 質問の第四は、わが国遠洋漁業は、これまで、領海三海里と公海自由の原則を方針として、諸外国の沿岸で操業してきたのでありますが、今日、世界の大勢は、沿岸の水産資源の利用については、沿岸国の優先を認める方向に向かっております。いまや、領海十二海里及び十二海里漁業専管水域を設定する国々は六十数カ国の多きに達し、わが国の領海三海里、公海自由の原則の主張は、国際的に通らなくなっており、いよいよ孤立化しつつあるのであります。
 このような傾向に対して、政府は、今日まで、国際漁業の問題解決のために、関係国間の話し合いと実績尊重を基本方針として、交渉を進めてまいっている実情でありますが、米国、その他の国々に見られるように、一方的に、国内法により、十二海里専管水域を設定することが慣行となってまいっておるのでありまして、わが国の話し合いと実績尊重も、相手国がなかなか容認しない実情であります。さきのソ連との交渉においても、わが国の原則論はたな上げとなり、実績をとることのみに専念する交渉となっているのであります。このように、わが国の国際遠洋漁業は、ますますきびしい規制を受けることが容易に想像されるのであります。最近、わが国の沿海にもソ連漁船が、沿岸三海里近くまで、数十隻の船団を組んで接近し、操業を始めたのであります。そのために、日本の沿岸漁業は大きな打撃を受けているのであります。このことは、今日までの攻める立場の漁業から、追い払われ、さらに追い込まれた立場の漁業であり、日本の三海里説が、攻める立場の主張としては、国益と権益を守ることになるが、追い込まれた立場での主張としては、国益を守ることができないということを、今日までの実績が実証しているのであります。さらに、また、日本の国際漁業は、世界の各国から略奪漁業の汚名を着せられているように、強い不信感を持たれているのであります。利益追求のみを目的とし、資源を無視した略奪的漁業による過去の実績を認めさせるために、今日、なおかつ、世界各国から全く相手にされない領海三海里説に固執することは、かえって、わが国の国際的信用を失墜させるばかりでなく、水産先進国日本の国益と権益に反する結果となることを認識すべきであります。
 そこで、私が質問したいのは、なぜに、実績を尊重し、資源量に基づく、漁業専管水域十二海里をとらないのか。総理の決意を促すとともに、その所信を承りたいのであります。
 さらに、一歩進めて、関係国との協調による資源の国際管理並びに科学的、合理的利用等について、わが国が漁業先進国の立場から、各国に先がけて提唱し、その指導的役割りを果たすべきであると考えるが、総理の見解を承りたいのであります。
 質問の第五は、漁業就労者が逐年減少し、しかも高齢化し、特に沿岸漁業はその傾向がきわめて顕著であります。今日この減少化と高齢化に見られるように、漁業労働力の他産業や都市への流出が依然として続く限り、日本の漁業は労働力の不足により斜陽化していくことは明らかであります。労働力を集め得る漁業のみが生き残り、労働者を集める力のない漁業は滅びるほかないとも見られる今日、漁業における労働力の確保にいかに対処するかは、漁業の今後の成否にかかわる最大の、しかも緊急の重要問題であります。そのための方策として、労働力の省力化や、労働条件の向上、労働環境の整備、福利厚生施設の充実等、総合的対策を講ずべきにもかかわらず、その施策はほとんど見るべきものがなく、効果は全くあらわれていないのであります。この深刻な労働力の不足と労働条件に対して、一体いかなる方針と対策を立てておられるのか、農林、労働両大臣からその具体的方針をお聞かせいただきたいのであります。
 さらに問題は、労働力を確保するために、省力化や賃金の引き上げ、労働条件の向上、改善をはかり、労働力の定着化に国が積極的に努力することは当然であるが、省力化を進める力を持たない弱小零細漁業をどうするのか。賃金や労働条件を高めることのできない沿岸漁業の労働力確保については、この際、社会保障制度を含めた意欲的な対策が特に望まれるのであるが、これに対する具体策を農林、労働両大胆から聞かせていただきたいのであります。
 次に、漁船及び船舶の海難事故は、近年、船舶の装備の向上から、安全度がかなり増加したにもかかわらず、依然として海難事故の発生が非常に多いのであります。乗り組み員の技術水準の低さ、経営間の過当競争、歩合制賃金制度からくる無理な操業、運航技術の未熟等に基因するものでありますが、その中で特に運航技術の未熟に基因する事故がかなりの数を占めているのであります。この際、運輸大臣にお尋ねしますが、これら運輸行政に基因する海難事故について、これの防止策について具体的にその方策をお示しをいただきたいのであります。
 質問の第六は、漁港の整備についてであります。漁業における漁港の果たす役割りは、農業における農業基盤整備以上に、漁業の生産性向上と漁業活動に果たす役割りは大きいのであります。しかるに、今日までの漁港整備の第一次から第三次までの整備計画の実施状況を見るに、その進捗率及び整備内容からみて、きわめて不備、不徹底であり、不満足そのものであります。日本漁業が今日、生産が停滞し、漁業経営が不振にあえでいる原因の一つは、この漁港の不備、不完全にあると言っても決して言い過ぎることはありません。それほど漁港が持つ漁業に対する役割りは大きいのであります。そこで私は、大蔵、農林両大臣にお尋ねしますが、漁港の漁業に果たす役割りをいかに認識しているのか、さらに、今回の第四次の漁港整備計画を完全に実施する決意があるのか、お伺いしたいのであります。
 最後に、総理にお尋ねしたいのであります。すでに述べてまいりましたように、今日のわが国の漁業及び水産業を取り巻く情勢と環境はきわめてきびしく、困難であります。このまま推移すれば、わが国水産業は、衰微、衰頽を続け、希望も魅力もない斜陽産業となり果てるでありましょう。しかし、このような状況の中にあって、わが国、いな世界の漁業に活路を求め、夢と希望を与え得る道があるとするならば、それは、今日なおかつ、未開発の分野が多く、しかも、無限の資源とエネルギーを内包しているであろう海洋開発にあると私は主張したいのであります。世界の各国も、この分野の開発に目を向け、力を注ぎつつある段階にあるのであります。かつてわが国の帝国海軍は、「海を制するものは世界を制す」という勇ましいことばで、軍事目的による海洋の制覇を企て、失敗したのでありまするが、今日、わが国が水産先進国として、また、海洋国として世界の各国に果たす役割りは、平和目的による海洋資源の開発にあると考えるのであります。宇宙開発と並んで海洋開発こそ、今日の政治の最大の課題であり、人類最高の夢であるとされているとき、わが国が世界に先がけてこの研究開発に取り組むことこそ、わが国の歴史的、地理的に負わされた使命であると考えます。この課題に対しいかに対処するか、総理の所信と決意をお伺いして私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
○国務大臣(佐藤榮作君) 達田君が御指摘のとおり、水産物の供給は急増する需要に追いつけない状況にあり、国民のたん白質食料を豊富低廉かつ安定的に供給することは、水産行政の中心課題であります。このため政府といたしましては、今後一そう漁港等の漁業生産基盤の整備を計画的に推進するとともに、水産資源の増殖をはかり、また、未開発漁場の開発を積極的に行ない、国民の水産物需要をできるだけ満たすようつとめてまいります。
 大漁業との格差の問題でありますが、大漁業と中小漁業あるいは沿岸漁業との格差についての御質問がございましたが、最近では、大漁業におきましても、国際的な制約などによりましてむしろ収益性が低下している。さような傾向もありまして、必ずしも格差が拡大しているものとは私は考えませんが、いずれにせよ、中小漁業、沿岸漁業では、まだ近代化がおくれている面も多いので、経営の近代化につとめ、あるいはまた、協同組合の組織を活用するなど、中小漁業、沿岸漁業自体の強化のため一そうの配慮を払いたいと考えております。
 次に、沿岸漁家の所得がやや伸びておるという点はただいま御指摘がございましたけれども、この点は確かに喜ばしいことには違いありませんが、私どもは、この状況で満足すべきものとは思っておりません。これは達田君も同意見だと思います。特にいままでは、御指摘のとおり、魚価の上昇に依存している面が大きかったのでありますが、今後の課題としては、積極的に生産量の拡大のための施策を進めてまいることが肝要と考えます。このため、生産基盤の整備、沿岸漁業構造改善事業等の一そうの推進をはかってまいります。
 次に、領海の幅員についてでありますが、これは関係国が一方的に主張し得るものではなく、その対外的効力は国際法に依存するものであり、政府は、一般国際法上確立した原則によれば三海里を限度とすると考えております。従来、国際条約等によりこの原則が変更されない限り、三海里をこえる領海を主張することは国際法上認められないことである、かように考えております。
 また、実際上の問題として、領海の問題は、漁業全般に対する影響があるのみならず、国際海洋交通、国際航空等への影響もありますので、領海の幅員の変更につきましては、十分慎重に検討する必要があるものと考えます。すでに政府におきましても、ただいま検討を命じておりますのでございますが、もちろんまだ簡単に結論が出ておらない、こういう実情にございます。
 次に、関係各国との協調を緊密にして、そうして資源の国際管理並びに科学的、合理的利用につとめることは、御承知のとおり必要なことだと思いますので、私はこの意味で、関係国間の連携をさらに緊密にいたしていくつもりでございます。御承知のように、日ソ、日米加漁業条約等があり、さらにまた、国際捕鯨条約にも加入しております。これらの関係におきまして、関係各国でさらにさらに話し合いを続けていくつもりであります。今後ますます増大する水産需要に対処するためには、海洋生物資源の開発利用と積極的に取り組む必要のあることは御指摘のとおりであります。このため沿岸漁業におきましては、水産動植物の増養殖対策の推進に努力するとともに、遠洋漁業におきましては、新漁場の開発につとめてまいります。これらはいわゆる海洋開発、その部門だと、かように考えておりますので、積極的にお説のように取り組みたい、かように考えております。(拍手)
   〔国務大臣長谷川四郎君登壇、拍手〕
○国務大臣(長谷川四郎君) お話がございましたように、漁業の就業構造は、高齢化を伴いながら就業者の減少が進んでおります。特に若年労働力の不足が強まっております。このような漁業就業動向に対処するためには、漁業を青少年層にとって魅力ある産業として進めなければならない、こういうような考え方の上に立ちまして、漁業振興のための各般の施策を今後さらに充実をしていく考えでございます。
 第四次漁港の整備計画につきましては、四十四年度以降五カ年間に、整備計画に基づく漁港修築事業のほか、漁港の改修、局部改良事業、これらを合わせまして総事業費二千三百億を予定しております。その事業規模は、第三次事業計画に比べますとかなり前進しておると思うのでございまして、この計画を完遂するためには、今後一段と必要な予算の確保に努力をいたしまして、それを完成する考え方でございます。(拍手)
   〔国務大臣原健三郎君登壇、拍手〕
○国務大臣(原健三郎君) 達田さんにお答え申し上げます。御承知のごとく、漁業は天候等自然条件に左右されることが多く、また、労働慣行なども非常な特殊性があることは御承知のとおりであります。それで基本的には、さいぜん総理からお話もございましたように、農業の近代化を促進していくことがもちろん大事でございます。それで、そういう観点に立って農林省とも協力して、明日の漁業をになう後継者の養成、確保などをはかって労働力の、不足を補いたいと思っております。
 さらに、労働省といたしましては、運輸省、水産庁等関係行政機関とも連絡をとりながら、労働災害の防止に全力をあげたいと思っております。
 さらに、賃金等の労働条件の改善等につきましても総合的施策を行ない、行政指導につとめてまいる所存でございます。(拍手)
   〔国務大臣原田憲君登壇、拍手〕
○国務大臣(原田憲君) 漁船の海難防止の具体策についてお尋ねでございます。
 政府は、海上交通の環境整備につとめまして、海難防止につとめておりますが、特に漁船に対しましては、その遠距離または全損海難の多発にかんがみまして、SOS発信機及び膨張式救命いかだの使用並びに集団操業を勧奨するとともに、巡視船を海難多発海域に重点的に配置し、前進哨戒を実施し、気象警報の周知及び現場の直接指導を行ない、一たん海難が発生した場合の迅速確実な救助を期しております。また、海上保安庁の船艇、航空機等については、今後一そうその充実強化をはかって海難防止をいたします。(拍手)
   〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕
○国務大臣(福田赳夫君) お答えいたします。
 新しい漁業整備計画を完全に実施するかというお話でありますが、さようにいたしたい。何とぞ御協力のほどをお願いいたします。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(重宗雄三君) 中尾辰義君。
   〔中尾辰義君登壇、拍手〕
○中尾辰義君 私は公明党を代表いたしまして、ただいま報告のありました「昭和四十三年度漁業の動向に関する年次報告」並びに「昭和四十四年度において沿岸漁業等について講じようとする施策」に対し、総理並びに関係各大臣に若干の質問をいたすものであります。
 ただいまの漁業白書の報告によりますと、国際漁業界における水産王国日本の地位が大きくゆらぎ、わが国の漁業が一大転機に立たされておることであります。四十二年度におけるわが国の漁業生産量は七百八十五万トン、前年度に比較して若干の伸びを示したとはいえ、水産物の需要は、引き続き高級魚介類を中心として生産量を上回る増大傾向を示し、輸入の急増にもかかわらず、産地、消費地ともに魚価の大幅な上昇を示しておるのであります。
 一方、漁業経営は、国際漁場規制の強化、臨海地帯への工場進出のため、公害発生による沿岸漁場の悪化、あるいは労働力の不足、資源の減少等、多くの問題をかかえておるのであります。こうした中に、その需要は今後ますます増大していくものと予想されておりますが、漁業生産を取り巻く諸情勢にはきびしいものがあり、需要に見合う供給を続けていくことはきわめて困難な見通しであります。こうした需給ギャップの解消は、漁業生産の振興によってのみ可能であり、政府はこのために財政負担を惜しまず、強力なる抜本対策、を急ぐべきであります。
 私はこのような観点に立ちまして、まず第一番目にお尋ねいたしたいのは、国際漁業並びに漁業専管水域の問題であります。
 さきに行なわれた日ソカニ交渉は六十日余りに及ぶ長期交渉の末、よくやく妥結をいたしましたが、漁獲量は昨年を二割も下回る取りきめとなったのであります。また、昨年秋の日米タラバガニ交渉でも、日本の漁獲は半減されております。このほかにも、日本の漁民が独自の技術と、血のにじむような努力で開発した漁場から、年々締め出しを食っておるのが、最近における日本遠洋漁業の実情であります。言うまでもなく、大陸だな問題や、領海、漁業専管水域の世界的な拡張の傾向等、根の深い問題が背後にあるにしても、ここまで追い込まれたのは、外交交渉に当たる政府の大きな責任と言わなければなりません。総理は、このように後退の一途をたどっておる日本遠洋漁業を、どのようにして立て直すつもりか、そのための外交交渉、国内体制はいかにあるべきか、所信をお伺いしたい。
 また、わが国の近海には、近年、強力な外国船団が進出して、零細な沿岸沖合い漁民に大きな脅威を与えておりまするが、いつまでも領海三海里、公海自由の原則に固執することは、世界の大勢に逆行するものであります。わが国も漁業専管水域の設定に踏み切るべきときが来ておるのではないかと思います。ただいまも総理からの御答弁がありまして、慎重に検討するということでございますが、農林大臣並びに外務大臣の所見をお伺いをいたします。
 第二に、漁業資源の増養殖と、海洋開発の問題であります。
 わが国の漁業生産量が、需要の強い高級魚介類が伸びず、また、漁業経営の物的生産性の伸びも悪いのは、天然の資源を漁獲対象としているために、その制約が大きな原因となっておるのであります。しかるに、近年クルマエビ等の沿岸性高級魚介類のふ化放流技術や、養殖技術が進み、海洋開発技術の一環として脚光を浴びております。今後はこの方向の試験研究を一そう強化するとともに、マグロ等の海洋性の高級魚についても研究を進め、海洋における重要資源の管理技術の開発とあわせて、人工的につくり出した豊富な資源を、経済的に利用する方向に進むべきだと思うのであります。わが党が、今国会に提出した海洋資源開発振興法案に盛られている海底牧場、海底農場等の考えもまたここにあります。宇宙、原子力と並んでビッグ・サイエンスの一つと言われながら、わが国では著しく立ちおくれている海洋開発をいかに進めていくお考えか、総理の御意見をお伺いしたい。また、その中で、漁業がどのような役割りを果たすことを期待しておられるか、明らかにしていただきたい。また、農林大臣は、増養殖技術の一そうの開発のためにどのような具体策をお持ちになっているか、お伺いをいたします。
 第三に、漁業従事者の社会保障並びに労働力の問題であります。
 近年、漁船に乗り組む船員の不足が目立ち、この結果、沿岸漁業では、家族労働力への依存度が増大して、主婦や老人が海上労働に従事しなければならない事態が増大しております。主婦や老人の海上労働は、肉体的に非常な無理を伴い、特に一人乗りの老人漁家は、海上での急病や災害の発生の場合に大きな危険があります。さりとて、後継者や若年労働力を確保するにしても、他産業を上回る労働条件、労働環境が必要でありますが、この面での漁業の実態は全く見るにたえないほどであります。特に四十二年の漁船の海難は、前年を四・五%上回る千百九十六隻にも達しております。これは白書も指摘しているように、経営間の競争の激化と、おくれた歩合制賃金制度との関係で、無理な操業が行なわれ、乗り組み員の過労によるものであります。さらに、労働災害も増加し、職務上の死亡発生率は、〇・三八%と陸上産業をはるかに上回る高い率となっております。一方、漁業者の社会保障制度ははなはだしく立ちおくれ、特に、二十トン未満漁船の被用者は、労災保険以外の被用者保険制度はすべて任意適用とされており、経営者の保険料負担能力や、雇用の季節的な不明確さなどのため、加入者はきわめて少ないのであります。こうした実情が、結局、漁業労働力の不足を来たしている原因にもなっていると思われるのでありますが、現行の船員法を改正して、船員保険の適用範囲を、二十トン未満漁船の乗り組み員にも拡大してはどうか。もし現行制度のもとで加入に問題があるならば、実態に即した船員保険類似の総合的な保険制度を新設するお考えはないか。農林、運輸両大臣に御答弁を願いたい。また、漁業の海難防止のために、どのような具体策を立てておられるか。また、漁業乗り組み員の労働災害をどのように防止していくおつもりか、所見をお伺いしたい。
 第四に、漁業金融についてであります。
 漁業における資金需要は、近年ますます増大をしております。この結果、中小漁業は借り入れ金の増加に伴い、自己資本率の低下、さらに、金利負担の増大傾向が見られ、経営困難に追いやられております。こうした傾向を是正するため、政府の融資制度もかなり前進はしてまいりましたが、しかし、融資ワク、融資条件等で、漁業者にはまだ満足すべきものとは言えないのであります。今後一そうの拡充が望まれております。
 そこでお伺いをしたいのは、中小企業には中小企業設備近代化資金が、また、農業には農業改良資金が、それぞれ無利子の制度として設けられております。漁業の現状を考えるとき、漁業にも早急にこのような制度を導入する必要があると思われますが、農林、大蔵両大臣はいかがお考えになりますか、お伺いをいたします。
 第五に、流通問題についてであります。
 近年、水産物の消費地における価格上昇率は、生産地における上昇率を上回っており、その差は拡大の方向にあるように見受けられます。言うまでもなく、水産物は変質、腐敗しやすく、その流通経費を大きくする要因があることは否定できませんが、より大きな問題は、流通過程そのものに内在すると言わざるを得ません。水産物が野菜とともに、消費者物価上昇の寄与率が最も高いように言われている今日、流通過程の整備、つまり中央卸売市場、冷蔵施設、コールドチェーンの推進、流通経路の簡素化が急務と思われるのでありますが、この問題についての農林大臣の所信を明らかにしていただきたいと思うのであります。
 最後に、米偵察機による今日の日本海における緊迫した空気は、過去のプエブロ事件のごとく、わが国漁船に多大の不安を与えております。政府は、漁船の安全操業を確保するために、どのような処置を講じられておるか、総理並びに外務大臣にその対策をお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
○国務大臣(佐藤榮作君) 中尾君にお答えいたします。
 まず、中尾君は、最近行なわれた日ソカニ交渉、また、昨年行なわれました日米タラバガニの交渉等は、外交交渉の失敗だったと、こういう見解を述べられましたが、私どもは失敗であったとは見ておりません。カニ漁業につきましては、わが国の公海資源、これを公海の資源と見る考え方と、米ソ両国の大陸だな資源とする考え方と、双方の間に基本的な立場の相違があったのにかかわらず、相互の立場を害することなく実績がおおむね確保されたことは、私は、むしろ成功であったと、かように言ってよいものではないかと、かように思っております。そういう意味で、このために日本の遠洋漁業が後退したということを一部でいわれておりますが、さような非難は当たらない、かように私は考えております。政府といたしましては、今後ともますます増大が予想される種々の国際的制約を乗り越え、関係国との協力のもとに、既存の権益はできるだけこれを確保し、わが国遠洋漁業の一そうの発展のため努力してまいるつもりであります。
 次に、海洋開発について、先ほど私が達田君にもお答えいたしましたが、達田君が首をひねっておられました。どうも漁業だけでお答えしたのが不満であったかと、ただいまの中尾君の御質問を聞いて、これはやはり漁業以外の点も海洋開発でねらっていらっしゃる、それについての答弁を要求していらっしゃったのじゃないかと、実は達田君に対して相済まないように思っております。漁業に関する限り、先ほど申し上げたことで御了解をいただきたいと思います。ただ、最近は、漁業にいたしましても、深度がよほど深まりまして、いわゆる深海漁業、そういうものをだんだん重要視し、そのほうに力が入っておる。この点で、漁業もまた、在来の浅海――浅い海の漁業から、深海漁業に変わっていると、こういうことを指摘しておきます。さらにまた、一般の海洋開発の問題については、御指摘等の問題もございますが、これはまた他の機会に譲らせていただきたいと思います。
 また、漁業資源と海洋開発についていろいろお話がございました。しかし、これについては先ほど達田君にお答えしたとおりでございますが、いま御指摘になりましたように、水産物に対する需要が今後ますます増大する傾向にありますし、できるだけ需給体制を向上させるために、海洋生物資源の開発利用に積極的に取り組む必要があることは、御指摘のとおりでございます。政府としては、沿岸漁場においては、水産動植物の増殖、増養殖対策の推進、浅海漁場の開発等、いわゆる「つくる漁業」の推進につとめるとともに、遠洋漁場におきましては、深海、新漁場の開発を積極的にはかってまいるつもりであります。
 次に、日本海における最近の事件から、日本海漁民の安全操業は、わが国にとりましてきわめて重要な関心事であります。政府は、昨年十一月のプエブロ号事件の際にも、米側に対し、米海軍当局が日本漁船の安全操業の確保のため留意すること、これを強く申し入れてまいりましたが、さらに、昨年末には、年間を通じての日本海における各種の漁業の操業状態に関する資料を米側に提示して、米側の配慮を求めた次第でございます。今回の米艦隊の日本海における行動につきましても、日本漁民の安全確保について十分慎重な配慮を払われるようさっそく申し入れを行なった次第であり、今後の推移につきましては注意深く見守ってまいり、漁業の安定操業等を厳に確保する、そういう考え方で対処したいと、かように思っております。何とぞ御協力のほどをお願いいたします。(拍手)
   〔国務大臣長谷川四郎君登壇、拍手〕
○国務大臣(長谷川四郎君) お答え申し上げます。
 わが国は、国際法上確立された原則に基づきまして、幅員は三海里までである、距岸三海里である、こういう範囲内を越えて一方的に設定された漁業水域というものは、国際法上有効でないのだ、こういうような立場をとっております。また、これらを主張しておるのでございます。そういう立場に立っておりますので、漁業水域の設定は、このような従来とってきたわが国の立場との関連もございますので、実際上の問題としても、沿岸漁業のみならず、遠洋漁業を含むわが国漁業全体への波及の問題もございますし、特に、最近、わが国の近海には、外国漁船の操業が目立ってきておる事実もございます。これらをあわせ考えてみまして、諸外国の動向をも十分勘案しつつ、これらの問題と真剣に今後取り組まなければならないと考えておる次第でございます。
 さらに、海の土地改良といいましょうか、資源の増殖法、こういう点を御指摘でございます。まさに、いま私たちの考えていることは、海の土地の改良をやらなければならぬ。土地基盤もやらなければならぬ。老朽化してきたところの魚礁というものを、まず、その若さを取り戻すような方法をやる。それらは日本の、すなわちいままで特別な技術を持っている潜水技術等によって、その若返り法をなし遂げていきたい。このような考え方を持ち、さらに、海の放牧といいましょうか、これらもあわせて考えて、そうしてその上に立った今後の漁獲の拡大をはかっていく、資源保護を推進してまいりたい、このように考えておるわけでございます。
 漁業の労働力の確保という点お話でございますが、漁業従事者の社会保障については、二十トン以上の漁船の乗り組み員に対しましては、船員法、船員保険法が適用になっております。二十トン未満の乗り組み員についてはこれらの適用がなく、なお十分でない現状にございます。目下、船員中央労働委員会において、二十トン未満の漁船の一部に対しても、船員法、船員保険法の適用拡大が検討されておりまして、この方向には賛成をしておりますし、準備の整い次第、船員法、船員保険法の適用による社会保障の充実をはかりたいと望んでおるところでございます。
 次に、漁業において、従来から設備の近代化及び経営の合理化を促進するために、長期低利資金の円滑な融通をはかるべく大いに努力をしております。たとえば、本年度は農林漁業金融公庫から貸し付け金利年三分五厘の沿岸漁業構造改善資金、あるいはまた、中小漁業振興特別措置法に基づく年六分五厘の漁船資金を融通するなど、漁業者の金利負担の軽減をはかっておりますし、また、本年度からは、漁協系統資金を活用した年六分または七分の資金を融通する漁業近代化資金融通制度の創設を予定しておるのでございまして、この制度の円滑な運営に努力するとともに、今後とも中小漁業者に対する低利資金の円滑な融通につとめてまいりたいと考えております。
 最後に、最近の水産物の生産、流通の情勢にかんがみまして、産地冷蔵施設あるいは加工施設の建設、冷凍魚の流通の促進を進めるとともに、流通のポイントである卸売市場については、消費地の中央卸売市場等は助成によって、また、民営地方市場は農林漁業金融公庫資金によって計画的な整備につとめておりますし、特に産地市場については、本年度創設を予定しておる漁業近代化資金によってその整備をさらにはかってまいりたい、このように考えておる次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣愛知揆一君登壇、拍手〕
○国務大臣(愛知揆一君) まず領海の幅員の問題でございますが、この問題は、一方におきましては沿岸国の主権の主張というものがあり、また一方におきましては、海洋自由の原則という大原則があるわけでございます。その間に調整を求めなければなりませんので、御承知のように、十七世紀以来古い慣行があり、また古い国際条約もございます。同時に、そういうものでございますから、沿岸国が一方的に主張いたしましても、その対外的な効力というものはございません。これは、あくまで国際的に合意された国際法に依存して、その効力を持つものであると考えるわけでございます。このことは、ほかの例で申しましても、大陸だなについても同様のことが言えると思うのでありまして、ただいま御質疑がございましたカニのソ連との交渉にあたりましても、ソ連は大陸だなに定着する魚類であるという主張をいたしますが、わがほうはこれを全然認めていないわけでございます。つまり、ソ連の国際法的な主張というものは対外的効力を持たないわけでございます。その間にありまして、先ほど総理からも御答弁がございましたように、実際の実績ということを中心にして本件は妥結をいたしておるような状況でございます。こういうような関係でございますから、政府としては、現在一般国際法上の確立した規則によって、領海の幅員は三海里を限度とするという態度をとっておるわけでございます。同時に、この領海の幅員や漁業水域の問題は、世界各国の最近の動向や趨勢というものも十分見きわめてまいらなければなりませんし、それにかんがみまして、国際的な合意と協力によって画一的な制度が確立されることが望ましいわけでございます。したがって、外務省といたしましても、諸般の状況を十分考慮をいたしながら、沿岸漁業を含む漁業利益、国際海上交通、国際航空あるいは防衛といったような国益全般の立場からいって、いかような態度をとるべきであるか、いかように国際的な合意というものがまとまり得るかということ等も含めまして、総合的に真剣な検討をやっておるような次第でございます。
 それから次に、日本海における安全操業の問題は、これも総理から御答弁がございましたが、実は政府としては、従来から非常にこの点に関心を強くいたしておりますので、アメリカ側に対しましては、非常に詳細な具体的な水域、あるいは漁業の種類、あるいは使います船舶、漁具等にわたりましてきわめて詳細な説明をし、そしてその安全操業について誤りなきような十分な配慮を求めておるわけでございますが、今回のアメリカの艦船の日本海への航海ということにつきまして、さっそくあらためて念を入れて、この配慮を十分にいたしますように申し入れをいたしておる次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣原田憲君登壇、拍手〕
○国務大臣(原田憲君) 労働力の確保につきましては、農林大臣から御答弁がありましたが、追加、補足してお答えいたします。
 二十トン未満の漁船船員につきまして船員法及び船員保険法を適用すべきではないかという御意見がございましたが、現在、船員中央労働委員会において審議をいたしております。その結論を得て、漁船船員の労働条件の改善、災害防止、社会保障の充実につとめてまいりたい所存でございます。
 また、海難防止の具体策について御質問がございましたが、これも先ほどの達田さんとお答えが重なるわけで、まことに恐縮でございますが、特に漁船の海難防止に対しましては、その遠距離または全損海難の多発にかんがみまして、SOS発信機及び膨張式の救命いかだの使用並びに集団操業を勧奨するとともに、巡視船を海難多発海域に重点的に配置いたしまして、前進哨戒を実施いたしております。また、気象警報の周知及び現場の直接指導を行ない、一たん海難が発生した場合には迅速、確実な救助を期しております。また、海上保安庁の船艇、航空機等については、今後一そうその充実、強化をはかって海難防止につとめてまいります。(拍手)
   〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕
○国務大臣(福田赳夫君) お答え申します。
 中小企業近代化資金、また農業改良資金、こういう制度を中小漁業者にも適用できないか、こういうお話でございますが、中小漁業者に対しましては、従来とも農林漁業金融公庫を通じまして、長期低利の融資を逐年拡大強化しておるわけです。しかし、特に四十四年度におきましては、いま農林大臣からお答えがありましたが、漁業近代化資金という制度を創設をいたしまして、さらに長期低利の融資、この制度を拡大をいたしております。まあこれが農業におきましては農業近代化資金といって非常に活躍をしておる制度でございますが、この制度がいかに漁業者に働くか、こういうことをよく見きわめながら、今後とも前向きで融資問題については検討をいたしていきたい、かように考えております。(拍手)
○議長(重宗雄三君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
     ―――――・―――――
○議長(重宗雄三君) 日程第二、所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とベルギー王国との間の条約の締結について承認を求めるの件。
 日程第三、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアラブ連合共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件。
 以上両件を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。
 まず、委員長の報告を求めます。外務委員長山本利壽君。
   〔山本利壽君登壇、拍手〕
○山本利壽君 ただいま議題となりました二重課税の回避のためのベルギーとの条約及びアラブ連合との条約につきまして、外務委員会における審議の経過と結果を御報告申し上げます。
 これらの条約は、わが国とベルギー及びわが国とアラブ連合との間で、相手国にある支店等の恒久的施設を通じて事業を行なう場合の利得に対する相手国の課税基準、船舶、航空機の運用利得に対する相手国の課税免除、並びに配当、利子及び使用料に対する課税方式等について取りきめるとともに、二重課税を排除する方法を規定したものであります。
 委員会におきましては、これらの条約を締結することによるわが国の利害得失等について熱心な質疑が行なわれましたが、詳細は会議録によって御承知願います。
 四月二十二日、討論採決の結果、両件はいずれも多数をもって承認すべきものと決定いたしました。
 以上御報告申し上げます。(拍手)
○議長(重宗雄三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。
 両件全部を問題に供します。両件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○議長(重宗雄三君) 過半数と認めます。よって、両件は承認することに決しました。
     ―――――・―――――
○議長(重宗雄三君) 日程第四、特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。商工委員長八木一郎君。
   〔八木一郎君登壇、拍手〕
○八木一郎君 ただいま議題となりました法律案につきまして、商工委員会における審査の経過並びに結果について御報告申し上げます。
 現行の特定繊維工業構造改善臨時措置法は、昭和四十二年に制定されており、わが国の繊維工業が欧米先進国の巻き返し、発展途上国の追い上げ、国内の労働力不足等、内外のきびしい経済環境の中で、その構造的脆弱性を克服し、国際競争力を強化するために、紡績業及び織布業につきまして構造改善をはかろうとしたものであります。
 今回は、この現行法の一部を改正して、繊維工業の最終工程を担当いたしております染色整理業と、世界的に急速な成長が期待されますメリヤス製造業の二つを新たに構造改善の対象業種に追加しようとするものであります。
 委員会におきましては、繊維業各界の代表より参考意見を聞き、染色工場を視察するほか、質疑で、紡績・織布の構造改善の進捗状況、繊維産業の将来性、繊維の輸出政策、後進国特恵問題、繊維機械の開発等の諸問題について熱心なる質疑が行なわれましたが、その詳細は会議録に譲りたいと存じます。
 質疑を終わり、討論なく、採決の結果、本法案は全会一致をもって可決すべきものと決定いたしました。
 以上御報告申し上げます。(拍手)
○議長(重宗雄三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。
 本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○議長(重宗雄三君) 過半数と認めます。よって、本案は可決せられました。
     ―――――・―――――
○議長(重宗雄三君) 日程第五、国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。大蔵委員長丸茂重貞君。
   〔丸茂重貞君登壇、拍手〕
○丸茂重貞君 ただいま議題となりました法律案につきまして、委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、開発途上国からの資金需要の増大により、国際開発協会の資金事情が年々悪化している実情にかんがみ、同協会での増資決議に従い、わが国も新たに邦貨換算二百三十九億三千二百八十万円相当額の追加出資ができるようにしております。
 なお、この出資は、本邦通貨にかえて、前回の出資と同様、国債で行なうことが予定されております。
 委員会における質疑の詳細は、会議録によって御承知願いたいと存じます。
 質疑を終了し、討論に入りましたところ、日本社会党の戸田委員及び日本共産党の渡辺委員より、本案に対し、それぞれ各党を代表して反対の意見が述べられました。
 次いで採決の結果、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 以上報告を終わります。(拍手)
○議長(重宗雄三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。
 本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○議長(重宗雄三君) 過半数と認めます。よって、本案は可決せられました。
 これにて休憩いたします。
   午前十一時二十二分休憩
     ―――――・―――――
   午後三時四十四分開議
○議長(重宗雄三君) 休憩前に引き続き、これより会議を開きます。
 有田国務大臣から四月十五日の日本海における米機撃墜事件について発言を求められております。この際、発言を許します。有田国務大臣。
   〔国務大臣有田喜一君登壇、拍手〕
○国務大臣(有田喜一君) 四月十五日日本海上空において米軍偵察機EC121型機が北鮮側に撃墜された事件に関し、経緯等の概要を御報告申し上げます。
 四月十五日午後三時半ごろ、平壌放送は、北朝鮮人民空軍が、北朝鮮の領空深く侵入した米国偵察機を撃墜したと放送いたしました。在京米大使館よりは、米国防省及び国務省の本件発表内容を通報してまいりましたが、その発表は、北朝鮮の清津南東九十五マイルの日本海海上において、厚木に基地を置く乗員三十一名の四発プロペラ海軍機EC121の捜索救難活動が行なわれており、同機は同日午後二時ごろから行くえ不明になっていることなどを明らかにしたものでありました。
 米側の捜索は、米機数十機及び米軍艦四隻により、ソ連駆逐艦二隻及び若干の航空機の協力のもとに行なわれた模様でありますが、乗員二名の遺体のほか、機体の破片、パラシュートなどが発見されたのみで、結局捜索救助活動は四月二十日をもって打ち切られたとのことであります。私は、この機会に、この事件でとうとい生命を失った搭乗員に対し深い哀悼の意を表するものであります。
 本事件に関し、オズボーン駐日米国臨時代理大使は、四月十六日外務大臣を来訪し、当該米軍機はいかなる時点においても北朝鮮の海岸から四十海里以内には絶対に入っていないことを米国政府として保証する、このことはレーダーその他の確実な根拠に基づくものである旨を申し越してまいりました。外務大臣は、その際、本件が平和的に解決されることを希望する旨わがほうの見解を米側に伝えたのであります。
 米国政府は、事件発生以来、きわめて冷静かつ慎重に本件に対する対処ぶりを検討した模様であります。四月十八日、ニクソン大統領は、記者会見において、本件に関する米国政府の見解及び対策について、当該機はいかなる時点においても北朝鮮の沿岸四十海里以内に立ち入っておらず、このことは米側レーダーによってわかっており、また、北鮮レーダーもこのことをとらえておる。したがって、これは無警告かつ計画的な攻撃であったことを強調するとともに、事件発生後中止していた本件偵察行動を護衛つきで再開することを命じた旨発表いたしました。
 一方、板門店において四月十八日午前十一時から第二百九十回軍事休戦委員会が開催されました。この会談において米側は、公海上空にあって完全に合法的な偵察活動に従事していた米軍機の撃墜は、自衛行為ではなく、計画された侵略行為である旨を指摘し、北鮮が将来同様の事件が起こらないよう適切な措置をとるよう望むものであると、その趣旨を発言した旨発表されておりますが、この会談はもの別れになったようであります。
 米側の偵察活動再開決定後、これまでの捜索救難のため日本海に派遣されていた米国軍艦のほかに、米国の航空母艦、巡洋艦、駆逐艦等が、対馬海峡を通過し日本海に入りましたが、四月二十二日朝、米国防省は、航空母艦四隻、すなわち、エンタープライズ、レーンジャー、タイコンデロガ、ホーネット、そういったものでありますが、巡洋艦三、駆逐艦十六から成る第七十一機動部隊が編成された旨発表いたし、在京米国大使館よりも同様の連絡がありました。なお、米側は、護衛機が在日米軍基地から発進することはない旨、わがほうに連絡してきております。
 以上、本件の事実関係につき、概要を御説明いたしましたが、最後に、本事件に関する政府の基本的見解を明らかにしておきたいと思います。
 北朝鮮側は、いわゆる祖国統一政策に基づき、対韓工作を積極化し、これが原因となって、朝鮮半島において緊張した情勢が続いております。これは、プエブロ号事件と前後して起こった韓国大統領官邸襲撃事件や、韓国東海岸における武装ゲリラ上陸事件等に見られるとおりであり、今回の米軍機撃墜事件は、このような朝鮮半島の緊張を背景として起こったものと見られるのであります。
 前述いたしましたように、米側は、当該偵察機は、いかなる時点においても、北鮮沿岸から四十海里以内に立ち入っていない旨、保証いたしておりますが、このことから考えますと、当該米軍機は、終始公海上において行動していたのでありまして、これを撃墜した北朝鮮の行為は、国際的にも非難さるべきものと考えるのであります。
 米国政府の偵察飛行再開決定後、日本海において航空母艦等の米国艦艇が行動を開始いたしましたが、その目的は、北鮮側による不法行為の発生を防止し、合法的な偵察活動が円滑に行なわれるよう措置するにありました。今日の状況では、本事件がさらに拡大していくとは考えません。本件は、わが国周辺地域で発生したことでもあり、政府は、日本を含む極東の平和と安全の見地から、重大な関心を持っておりますので、米国政府とも本件に関し緊密な連絡を保っている次第であります。
 なお、日本海における米国艦艇の行動に関連する日本漁船の安全につきましては、政府は、かねてから米側に対し、日本漁船の操業状況等を詳細に通報し、その安全に配慮方要望してきておりますが、四月二十二日、外務省より、米側に重ねて要望しておいたような次第であります。
 以上御報告申し上げます。(拍手)
○議長(重宗雄三君) ただいまの報告に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。亀田得治君。
   〔亀田得治君登壇、拍手〕
○亀田得治君 私は、日本社会党を代表して、ただいまの有田国務大臣の報告に関連し、政府の所信を伺いたいと存じます。
 昨日の米国国防総省の発表によりますと、米国は、再開された北朝鮮近海の偵察飛行護衛のために、航空母艦四隻を主力とし、合計二十三隻から成る第七十一機動艦隊を新たに編成し、日本海に展開させているのであります。ベトナム戦争で大国の力の限界を知ったはずの米国が、相変わらず大国意識をもって、力で相手を威圧しようとしているのであります。私たちは、現在、米国と北朝鮮との間に起きておる事件の平和的解決を心から望んでおるのであります。しかるに、事件を平和的に解決するための努力をしないで、このような大機動艦隊を新しく編成するようなやり方に対し、激しいいきどおりを感ずるものであります。(拍手)
 以上のような立場から、私は以下、政府の考えを具体的にお聞きいたします。
 最初に、総理に対し、八つの点につきお尋ねをいたします。
 その第一点は、米国と北朝鮮との板門店会談を再開し、事実を究明し、その基礎の上に立って事件の解決をはかるように、総理は米国に要請すべきであると思いますが、どのようにお考えになられますでしょうか。本件では、撃墜されたEC121機がどのような行動をしていたかということが重大な争点になっております。北朝鮮側は、米機が領空を侵したと主張していますが、米国側は、北朝鮮の沿岸から六十キロ以内に近づいたことはないと言っております。米国側はその論拠として、事件発生直後には、EC121機に対して北朝鮮の海岸線九十キロ以内に近寄るなと命令してあることを主張していたのでありますが、しかし、その飛行機が命令どおりに行動していたかどうかは不明であります。その後、米国はレーダーによる確認など、若干の物的証拠を引用しておるのでありますが、しかし、それらもきわめて抽象的説明にすぎず、その程度の挙証によってEC121機が当時いかなる時点においても北朝鮮の領空を侵したことはないと断定できる根拠にはならないと思われるのであります。米国上院外交委員長フルブライト氏も、事件の翌四月十六日に、「私は自分自身が調査に当たったトンキン湾事件以来、国防総省の発表の一部にきわめて懐疑的になっている」と述べ、今回の事件についても疑念を表明しておるのであります。
 このように双方の主張が対立しているときには、互いに相手方の主張を聞き、疑問点についてただし合うことが重要であり、それが真相発見のための最も近道であります。現在、米国と北朝鮮とが接触できるのは板門店しかないのでありますが、その板門店会談が去る四月十八日に開かれました。しかし、残念ながらこの会談は、双方の議論を尽くす場とはならず、米側代表ナップ少将は一方的に退場しておるのであります。このことはあらゆるマスコミが指摘したところであり、当時の写真を見ても、ナップ少将が立ち上がり、他の代表が着席している中を退場していく姿が写っているのであります。このような米国側の態度は、事件の平和的解決という立場からはなはだ遺憾と言わなければなりません。しかし、北鮮側は引き続き板門店会談を開きたい希望のようであります。あの困難な朝鮮戦争の休戦、昨年のプエブロ号事件も、結局板門店で結末がついたのであります。総理がもし今回の事件について、真に平和的解決を望んでおるのであれば、米国に対して、威圧的な護衛偵察を中止し、板門店会談を再開するよう注意を喚起すべきであると思いますが、総理の所見をお伺いいたします。(拍手)
 第二に、過剰な偵察行動を抑制するよう米国に要請すべきであると思います。
 元来、偵察行動、すなわち相手方の内部事情、秘密を探るスパイ行為の評価については、人によりまちまちでありますが、このような行動を積極的によいこととして評価している人は少ないのであります。換言すれば、大手を振って野方図にやれることではありません。やむを得ない限度にとどめるべきものであります。今回のEC121機の偵察行為が法的に合法であるかどうかは別として、日本国民の多くは、このような行動に対し苦々しく思っておるのであります。ところが、ニクソン大統領は四月十八日、「今回のような偵察行動は過去二十年にわたって行なってきており、ことしになってからもすでに百九十回も行なっている」旨、言明したのであります。われわれは、その回数があまりにも多いことに再度驚いた次第であります。かりに米国が、その海岸近くを毎日平均二回も連続して偵察されたとしたら、はたしてじっとしておられるでしょうか。米軍が北朝鮮海岸で続けておる偵察行動は過剰であり、必要以上に相手方を刺激しておるのであり、このことが今回の事件の最大の遠因であると思うのであります。(拍手)総理は、こういう立場から、米国に対して過剰偵察を控えるよう要請すべきであると思いますが、その所信を伺います。
 第三に、護衛偵察は当然事前協議の対象にすべきではないかという点であります。
 すなわち、護衛機は、相手方の出方によって戦闘に入る蓋然性がきわめて強いのであります。相手方より攻撃をされれば直ちにそのまま戦う用意をして出て行くのでありますから、当然事前協議の対象に入れて考えるべきであります。もちろん米国は、今回の護衛機については、日本の基地より発進させることはしない旨述べておるようでありますが、その場合といえども、偵察機と護衛機とは一体のものであり、相手方からは一つのものとして受け取られるのでありまして、交換公文の精神からすれば、同様、事前協議の対象とすべきであると思うのであります。しかるに、政府の見解によれば、護衛機が日本の基地より発進しない場合はもちろん、たとえそれが日本の基地より発進する場合でも事前協議の対象にならないと解釈しているようでありますが、米国側が主張するならまだしも、日本政府が進んでそのような解釈をすることは、政府みずから事前協議条項を空文化するものであり、また、日本基地からの護衛機の発進を誘発するのでありまして、国民大衆に大きな不安を与えておるのであります。
 さらに、政府は、昨日統一見解を発表し、現在日本海で行動しておる第七十一機動艦隊が、今後日本の港に入港することがあっても、それが一時的なものであれば、事前協議の対象にならないとしておるのであります。しかし、艦隊の全部または一部が反復入港してくるような場合には、結局、第七十一艦隊と日本の港とは不可分の関係に立つのでありまして、そのような場合には、当然事前協議の対象にしなければ、交換公文の精神に反するのであります。昨日の政府の統一見解は、このような後者の場合をも含めて事前協議の対象からはずしているのかどうか、明確にされたい。私は、この際、政府が事前協議についてルーズに考え過ぎておる従来の態度を反省し、国民が安心するように、その解釈、運用面について再検討を加えるべきであると思うのでありますが、総理の所見を伺います。
 四月十八日、ニクソン大統領は、「もし必要ならば日本あるいは他の同盟国と協議する」旨、言明しております。私が指摘した以上三つの問題、すなわち、板門店会談の再開、過剰偵察の抑制、事前協議条項の解釈などについて、至急日米会談を開くよう努力することは、平和的解決を望む日本国民の希望にこたえるゆえんであると思うのでありますが、総理にその意思がおありかどうか、お伺いをいたします。
 次に、政府は今回の米国の大がかりな護衛出動を一時的なものと理解しているのか。また護衛出動をしても、米軍が北朝鮮の攻撃を受けることはないとの見通しを持っておるのか。この二点について、政府は米国側よりいかなる説明を受け、政府自身としてはどのように見ておるか、明らかにしていただきたいと思います。
 総理に対する最後の質問として、日本と北朝鮮の関係について一言触れておきたいと存じます。
 すなわち、今回のような事件が起こると、日本の現在の国際的地位からいたしまして、どうしても北朝鮮に対し冷たくなる傾向が生まれることをおそれるものであります。米国と北朝鮮との紛糾にもかかわらず、日本人と朝鮮人との歴史的関係に深く配慮し、両国の関係をさらに悪くしないように努力すべきだと思います。特に、人道的問題である在日朝鮮人の帰国問題や里帰り問題にまで波及させてはならないと思うのでありますが、総理の所信をお伺いいたします。
 次に、防衛庁長官に三点につきお尋ねいたします。
 すなわち、第一、EC121偵察機は厚木基地に何機おるのか。
 第二、厚木基地以外の基地におる偵察機の種類、機数及びその基地名はどうなっておるか。
 第三、さらに昨日の報道によると、情報収集艦バナー号は佐世保港を出て北朝鮮海域に向かったというが、このような軍艦が何隻日本海で活動しているか、明らかにされたい。
 最後に、運輸大臣にお伺いいたしますが、今回の米国の大機動艦隊の出動によって日本船舶の航行の安全が保証されるよういかなる措置をとっておるのか。また、実際に妨害された場合にどのように処置する方針であるか、明らかにされたいと思うのであります。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
○国務大臣(佐藤榮作君) 亀田君にお答えいたします。
 いろいろ御意見をまじえてのお尋ねでございますが、御意見は御意見として伺っておくことにいたします。
 私は、アメリカが今回の偵察機撃墜事件を平和裏に解決しようとしていることにつきまして、疑問はないもの、かように思っております。しかしながら、事の発端は、米軍機が平和時に、しかも公海上において不法に撃墜されたことにあるので、米政府としては国家的観点からしかるべき善後処置をとる必要があったことは、容易に想像ができるところであります。これが言われるように、二十三隻にも及ぶ米艦艇群の日本海集結、戦闘機の護衛による偵察の再開になったものと考えられます。
 また、今回の事件が、北朝鮮の韓国に対する執拗な武力工作の反復によって朝鮮半島の緊張が激化し、これを背景として米軍偵察機の撃墜事件にまで発展したことを考えると、今回の米政府の措置を一方的に非難することは妥当ではない、かように政府は考えます。
 次に、今後米国と北朝鮮との話し合いがいかなる形で行なわれるか、それはつまびらかではありませんが、いずれ板門店において話し合いのための会談が持たれるものと予想されます。事実関係を冷静に分析し、今後再びこのような不法行為が繰り返されないようにすることが、アジアの平和を確保し、緊張を緩和するゆえんであると、かように考えております。政府としては、極東情勢がこれ以上悪化しないよう、米側に慎重な配慮を要請しており、米側もこれにこたえてくれることと期待しております。
 次に、公海上における偵察行動は、各国ともこれを行なっており、決して違法ではありません。亀田君の言われる過剰偵察行為とはどのようなことを言われるのか、私にはよくわかりませんが、極東の安全を確保し、戦争を未然に防止するという見地からの米軍の通常の偵察活動に対し、政府は中止を申し入れるような考えは持っておりません。このことははっきり申し上げておきます。
 次に、公海上における偵察活動を護衛するための米戦闘機がこれに参加することは、不法行為の再発を防止するやむを得ない措置であり、事前協議の対象とすべき事柄ではありません。また、政府としてこのような行為を事前協議の対象とするよう再検討する考えも、これまた全くありません。本事件の発生以後、米側はわがほうに対し、緊密な連絡をとっており、いわゆる随時協議はひんぱんに行なわれております。せっかくの亀田君の御提案ではありますが、私としては、この問題に関し、別な形の日米会談を行なう考えはございません。
 次に、ニクソン米大統領が記者会見で明らかにしたとおり、今回の米国のとった一連の措置は、暫定的な措置であると理解しております。
 また、米軍機に対する北朝鮮側の攻撃はないと、かように見ているかとのお尋ねでありますが、私はそのような事態が発生しないことを心から希望しております。米政府としても、今回の一連の行動は、再び北朝鮮による不法行為が起こらないよう抑止効果をねらったものであると思います。この点御理解をいただきたい。
 また、私の北鮮対策、外交の基本は、しばしば申し上げておりますように、いずれの国とも仲よくする、他国の内政には干渉しないというのが私の外交政策の基本であることは、亀田君も御承知のとおりであります。アジアの平和と安定がそのままわが国の平和と繁栄につながる日本としては、アジアの緊張が緩和されることは何よりも望ましいことであります。特に朝鮮半島の動向は、わが国にとって重大であり、北朝鮮が武力による統一政策をこれ以上積極化しないよう望むものであります。わが国としては、この事件の発生によりましてこれまでの北朝鮮との関係に対する態度をこれによって変える、かようなことはいたしません。
 以上、お答えいたします。(拍手、「答弁漏れ」と呼ぶ者あり)
   〔亀田得治君発言の許可を求む〕
○議長(重宗雄三君) 亀田君何ですか。
○亀田得治君 答弁漏れが二つあります。――一つは、板門店会談を開くように米国政府に要請する具体的な……(「そんなことはよけいなことだ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)……いいですか、もう一つは、七十一機動艦隊、これの日本への反復寄港、これも事前協議の対象にならないという理解なのかどうか。昨日の政府の統一見解の発表されたものでは明確でありませんので、先ほどお聞きしたわけであります。二点が抜けておりますから、明確に答えていただきたい。
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇〕
○国務大臣(佐藤榮作君) 第一の、板門店会議を積極的にやるように申し出ろと、こういうお話でありますが、私はその点に触れたつもりであります。アメリカがどういうような態度に出るかわからないが、板門店でもうすでに会議が開かれておる、とにかく、平和のうちにどんな方法であろうがこれをやるべきだということを申し上げております。ただいまの、板門店には限らないのではないかと私は思っておりますので、そういう意味でお答えしたのであります。
 第二の、反復寄港の問題、これも外務大臣がお答えしたことだと思いますが、いわゆるこのわれわれの事前協議の対象になるものは、いわゆる駐留という問題であります。寄港という、まあこれはいわゆる寄港、そういう意味で、駐留とはこれは別にすべきものであります。この点では他の機会でもすでに説明がされておると思いますので、反復寄港をいたしましても、それは駐留ではないというのが私どもの解釈であります。(拍手)
   〔国務大臣有田喜一君登壇、拍手〕
○国務大臣(有田喜一君) 在日米軍の偵察機の種類あるいは機数、性能等についてのお尋ねでございますが、存日米軍の偵察機は、海軍所属のものと空軍所属のものとがございますが、在日米海軍の偵察機としては、厚木基地所在の、電子偵察飛行隊に所属しておるEC121及びEA−13B、これらが約十数機ございます。でEC121は、航続距離約七千七百キロ、速度約六百キロ、EA−13Bは航続距離約四千六百キロ、速度約千キロといわれております。
 次に、在日米空軍の偵察機としては、横田基地所在の航空団に所属しておるRC−13及びB−57、これらが十機前後あります。RC−13は航続距離約七千七百キロ、速度約六百キロ、B−57は航続距離約三千二百キロ、速度約九百六十キロといわれております。
 なお、板付基地におりましたRF−101は御承知のとおり、昨日米木国へ引き揚げましたが、まだEB−66というのが四機おりますが、これも近いうちに本国へ引き揚げるといわれております。
 なお、日本海に活動しておる米海軍の情報収集艦の数などについてのお尋ねでございますが、米海軍のプエブロと同型船といわれる調査船、さっきおっしゃったバナーというのが一隻ときどき横須賀に入港しておりますが、その具体的な行動については、われわれは明らかにされておりません。
 なお、調査船バナーは今回編成されたタスクフォース、いわゆる機動部隊の中には入ってない模様でございます。(拍手)
   〔国務大臣原田憲君登壇、拍手〕
○国務大臣(原田憲君) 四月十五日の米軍機墜落事件が発生をいたしました。外国の船艇の捜索活動が行なわれましたので、第七、第八管区海上保安本部に対しまして、漁船の安全指導に特に注意を払うよう指示をいたしております。
 もう少し具体的に申し上げますと、外国艦艇に不必要に接近しないこと。日本国旗の掲揚、海上衝突予防法に定める灯火及び形象物の表示を励行すること。事故防止につとめること。特異事項があった場合は巡視船に連絡すること。外国艦艇が操業中の日本漁船に接近するような場合には、国際信号旗を掲揚する等により相手の注意を喚起すること。さらに、四月二十一日朝、空母を含む米艦隊が日本海に入ったことが確認されましたので、関係のある漁業協同組合、漁業無線局、出漁船に通報し、注意の喚起を行なうとともに、特に出漁船の多い日本海南西海域に、通常の巡視船のほか、さしあたり巡視船二隻を常時配置いたしまして、また、航空機による哨戒を実施して、船舶、漁船の安全指導に当たっておる次第でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(重宗雄三君) 黒柳明君。
   〔黒柳明君登壇、拍手〕
○黒柳明君 私は公明党を代表しまして、ただいまの政府の報告に対し、総理並びに関係大臣に質問したいと思います。
   〔議長退席、副議長着席〕
 先日の米軍偵察機撃墜後、米国政府は、護衛つき偵察飛行の再開という対応措置をとり、また、第七十一機動部隊を編成し、日本海に出動させて威嚇行為を示している事実は、まことに遺憾にたえない次第であります。いまや、ベトナムの戦火は日本海に燃え上がろうとしており、これは世界平和に対する重大なる挑戦であると言わざるを得ないと思います。
 わが国から偵察機が発進しており、また、米海軍の艦隊の寄港を許している以上、わが国はすでに、この紛争に全面的に関与してしまったと言っても決して過言でないと思うものであります。
 このような最悪の事態にありながら佐藤総理をはじめ自民党政府は、国家の命運を忘れたかのごとく、いたずらにアリメカ一辺倒の言動にくみしている態度は、われわれはとうてい理解でき得ないものであります。この自主性を忘れた政府の対米追随姿勢を改め、強い反省を求めるためにも、以下十一点にわたって質問をしたいと思うものであります。
 まず第一に、去る十五日午後の北朝鮮による米軍偵察機撃墜事件発生以来、米国政府がとった一連の行動、すなわち、護衛つき偵察、第七十一機動部隊の編成、ニクソン大統領の記者会見における強硬論などは、明らかに国際緊張を高めるより以外の何ものでもないと確信するわけでございますが、昨日私は、愛知外務大臣にこの問題を質問しましたが、明確なる答弁が得られなかったので、重ねて総理に見解をお伺いしたいものであります。
 第二に、安保条約第六条に付属する事前協議条項は、わが国が意図しない戦争に巻き込まれることに対する歯どめの役割りをなしているのであります。戦闘機の護衛のもとで偵察行動が行なわれれば、日本が戦争に巻き込まれる危険性が十分にあることは明白であります。いまからでもおそくはありません。米軍の護衛つき偵察及び日本海における威示行為をすみやかに中止するよう、アメリカ政府へ申し入れる意思があるかどうか、総理にお伺いいたします。
 第三に、昨日、外務大臣は、「日本海のアメリカ軍の行動は、護衛の範囲である」と述べておりますが、エンタープライズ号をはじめとする二十三隻の艦艇の集結は、護衛の目的どころか、明らかに北朝鮮に対する威嚇行為であり、一大デモンストレーションと言わざるを得ません。これでも政府は、護衛の範囲内であると信じているのかどうか、総理の見解を明らかにしてほしいものであります。
 第四に、第七十一機動部隊は、二週間くらいの行動能力しかないといわれております。とすれば、近々中に当然日本寄港が予想されるのであります。ところが、政府は、ただいまの総理の答弁にありましたように、また、昨日の統一見解で明らかにされていますように、「一機動部隊の日本寄港は事前協議の対象にはならない」と言っております。しかし、ワシントンからの報道によりますと、アメリカの専門家の間には、「同時に一機動部隊が入港しなくても、交代で合計一機動部隊に相当する艦隊が継続的に入港すれば事前協議の対象となる」――総理よく聞いてもらいたいのです、いまお話しありましたように――という意見も述べられております。当事者のアメリカすらも、この一機動部隊の寄港に対する事前協議の問題については、意見が固まっておりません。それにもかかわらず、どうして日本が先ばしって艦艇の寄港は事前協議の対象外だと言うのか、その根拠を示してもらいたいのであります。
 また、一機動部隊が寄港するのは事前協議の対象とはならないとすれば、もし寄港期間が長期にわたる場合については事前協議の対象となるのですか、また、その期間はどの程度であるのか、あわせてお伺いをいたしたいと思います。
 第五に、事前協議の対象についてでありますが、陸軍の場合は一個師団以上となっております。現在、沖繩には、一個師団以上の兵力が駐留しておりますが、総理は、「沖繩については返還交渉で話し合い、事前協議は必要としない」とたびたび答弁しておりますが、これでは陸海における事前協議の歯どめは完全に具体的事実において適用しなくなり、従来からわれわれが指摘してきたとおり、事前協議事項の形骸化は明白になったと言わざるを得ませんが、いかがでありましょうか。
 第六には、安保条約第四条の随時協議についても、政府の態度は、「協議の結果は、従来からどういうふうに行動するかについて、日米両国はお互いに権利と義務を確認する必要はない、それぞれ両国が独自の国際法、国内法に従ってかってに行動してよろしい」、これが政府の見解であります。とするならば、事前協議ももはや歯どめになり得ないし、また、随時協議も形骸化されてしまっていると言ってもよろしいのではないでしょうか。この点、総理はどのような見解をお持ちでしょうか。
 第七に、これも昨日外務大臣の答弁ですが、「日本以外の基地から発進した護衛機が攻撃され破損した場合、日本の基地に着陸せざるを得ない場合があったときには、人道的に対処する」と明言したのであります。これは、日本の基地に着陸することを認めることを意味すると解してよろしいでしょうか。もしそうであるとするならば、日本が直接戦闘作戦行動に巻き込まれる危険性があると思うのですが、いかがでしょうか、お答えをいただきたい。
 第八に、去る十八日、ニクソン米大統領は、記者会見で、「日本海上空での偵察行動は、五万六千人の在韓米軍を守るためだ」と述べております。在韓米軍、すなわち国連軍である性格上、米軍の偵察行動は国連軍を保護する行為となるわけであります。わが国は、安保条約において米軍の国連行動を支持する立場に置かれておりますから、もしこの偵察行為が戦闘行動にエスカレートした場合は、日本も戦闘行動を支援せざるを得なくなると思われますが、どうですか、明快なる御答弁をお願いします。
 第九に、沖繩返還にあたって、総理は、基地の態様をきめるための条件として、国際情勢の変化、科学技術の変化、世論の動向を指摘し、さらに日本の安全保障の要請を踏まえつつ沖繩返還につとめると、しばしば答弁されてきております。今回の事件は、明らかに極東の緊張を高め、国際情勢が悪化したわけでありますが、総理の論理によりますと、沖繩返還が遠のいたのではないかと思われますが、この点いかがでしょうか、お尋ねします。
 第十には、日本海は、わが国の漁業にとって重要な漁場であります。現在はタイ、イワシ等の最盛期に当たります。第七十一機動部隊の投入により、日本海における漁民の生活を守るために安全操業を確保する必要があることは言うまでもありません。したがって、この安全操業についてどうお考えになるか、運輸大臣の御答弁をお伺いします。
 最後に、最近の報道によれば、ただいま防衛庁長官の説明ですと、たまたま横須賀に一隻ぐらい入るといわれておるプエブロと同型の情報収集艦、私どもの新聞情報の調査によりますと、佐世保にはすでに七隻も停泊しておると、こういうことですが、この点防衛庁長官の御答弁が正しいのか、あるいは新聞情報が正しいのか、もう一回長官にも御答弁願いたいのですが、その情報収集艦七隻、その行動については一切秘密でございます。今回の偵察機は、言うまでもなく、わが国の厚木基地を発進しております。政府が、在日米軍基地の機能、役割り、現状を明確に把握しておられないことはまことに遺憾でありますが、再びこのような危険な状態を招かぬよう、在日米軍基地の態様をよく把握し、整理統合を促進すべきことを強く要望して、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
○国務大臣(佐藤榮作君) 黒柳君にお答えいたします。
 さきの御質問でもお答えいたしましたとおり、公海上における偵察活動というものは、各国ともこれを行なっており、別にこれは違法ではありません。米軍が偵察機に戦闘機の護衛をつけるのは、北朝鮮による不法行為の再発を防止するためのやむを得ない措置だ、かように私も考えております。政府といたしましては、事態が平和なうちに話し合いがついて、そうして拡大しない、解決されることを心から念願するものでありますが、最近における北朝鮮の対韓武力工作はまことに遺憾であります。今回の米軍機撃墜事件も、このような情勢を背景に発生したものであると私は考えます。一方で米国の偵察行動を非難されますが、同時に、朝鮮半島における事態につきましても十分眼を開いて、公正に判断していただきたい、かように思います。
 政府といたしましても、今回、米政府のとった一連の対応措置について中止を申し入れろということでございますが、中止を申し入れることは考えておりません。
 次に、米政府としては、当該偵察機が受けていた命令、撃墜されるまでのレーダー航跡、機体の破片や乗員の遺体を発見した海域などを総合して、今度の事件を北朝鮮の重大な武力挑発行為と受け取っているようであります。米国艦艇の日本海集結は、米軍偵察機が公海上において北朝鮮に不法に撃墜されたことに対する善後措置の一つとして、米政府のとった行動であると考えます。これが護衛の範囲かどうかという黒柳君の御質問につきましての答えは差し控えたいと思いますが、この際国民各位は、冷静に事態の推移を見守っていただきたいと思います。政府としては、すでに米政府に対し、問題が平和裏に解決されるよう、米政府の自重を求めておるのであります。
 次に黒柳君は、今回の米艦艇の日本海への出動に関連して、事前協議の解釈の問題について、いろいろお尋ねがありました。委員会等におきましてもしばしばお尋ねであったようでありますが、いわゆる洋上に配置された米艦艇が補給、休養のため、わが国の施設区域に寄港することは、事前協議の対象にはなりません。これは、すでに何度も繰り返してお答えしているところであります。事前協議の解釈につきましては、米国にもいろいろの意見があるんだと、こういう御指摘でありますが、ただいま申し上げたような事前協議の解釈につきましては、岸内閣以来歴代の政府の態度は一貫して変わっておりません。
 今回の米艦艇の日本海への出動に関連して、一部新聞が事前協議の解釈につき米側と話し合うという趣旨の報道をしておりますが、これまた誤解を招かないように、このような事実は全くございませんので、申し添えておきます。
 寄港期間が長期にわたる場合には、事前協議の対象になるのではないかとのお尋ねもありましたが、事前協議の交換公文にいう配置とは、日本の施設区域を本拠として駐留することでありますので、単なる反復寄港は事前協議の対象とはなりません。従来からお答えしているとおりでありますが、お尋ねがありましたので、重ねて明らかにしておきます。
 現在沖繩における米軍兵力の問題でありますが、これは沖繩返還交渉の主題でありまして――この兵力をいかにするかということは、これは主題でありまして、いわゆる事前協議の対象ではございません。沖繩返還が実現した暁は、憲法が適用され、特別の取りきめをしない限り、安保条約がそのまま適用されるということは、これまでも述べたとおりであります。
 次に、随時協議についてのお尋ねがありましたが、随時協議の趣旨は、本来両国間の意思疎通をはかるのが目的であり、これによりまして何らかの合意を得ることを目的としたものでは必ずしもありませんし、随時協議によりまして両国間に特定の問題で意見が一致する事柄の生ずることは当然の成り行きであります。このようにして合意が成立した場合、両国政府が相互の責任によって問題を遂行することになります。したがって、随時協議にはそれなりに十分なメリットがあり、形骸化という批判は当たらない、かように考えます。むしろ随時協議は盛んに行なうべきではないか、かように考えております。
 次に、公海上における北鮮の不法行為の再発を防止するため米国艦艇群の集結、護衛つき偵察活動の再開が行なわれておりまして、ここに見られる米軍の戦力は、明らかに巨大な戦争抑止力であります。先ほど、どういうような任務があるかと言われましたが、私は、この米軍の持つ戦力は巨大な戦争抑止力、かように考えております。したがって、公海上における米軍と北朝鮮との交戦という事態が発生するということは考えられません。私は考えておりません。これによりましてわが国が戦争に巻き込まれることなどは絶対にない、戦争に拡大しない、かように確信しております。
 さらに黒柳君は、米軍の偵察行動が戦闘にエスカレートすることを懸念しておられるようですが、ただいま申しましたように、そのようにならないよう今回の予防措置がとられたものと理解いたしております。また、かりに公海上で米軍機が正当防衛のための自衛手段を講じた場合におきましても、わが国の自衛隊機がこれを支援するための行動をとることなどは絶対にありませんから、国民の皆さんも戦争に巻き込まれる、さような危険のないことを御了承いただきたいと思います。
 最後に、この事件が沖繩返還交渉に悪い影響を及ぼすのではないかとのお尋ねでありますが、そのようなことにはならないと私は考えております。
 なおまた、日本漁業の安全操業につきましては、これは運輸大臣から答えるといたしまして、最後に要望として、在日米軍の基地を整理統合しろ、こういう強い御要望を述べられました。私は、すでに公明党の御協力も得て、いろいろ基地の調査も終わっておりますから、ただいま言われますように、必要以上の基地は必ず整理統合さるべきものだ、そのように思います。政府はその方向で努力するつもりであります。(拍手)
   〔国務大臣有田喜一君登壇、拍手〕
○国務大臣(有田喜一君) 日本海におけるアメリカの情報収集艦のお尋ねは、先ほど亀田議員にお答えしたとおりでありまして、現在におきましては、私の申したことが正しいのであります。
 なお、日本における米軍基地の整理の問題、私どもは、日本におけるアメリカの軍事基地が日本の安全のために必要である、こういう前提の上に立っておるのでございまするが、だんだんと事情の変化もございまして、利用度の少なくなっておるものもございますので、これが整理調整の必要を認めまして、御存じのとおり、昨年の募れに、日米安全保障協議委員会において約五十の米軍施設区域を対象といたしまして、両国の間に大体の話をまとめまして、その返還あるいは使用転換あるいは移転等につきまして、その具体的処理を日米合同委員会においてすみやかにやらそう、こういうことであります。日米合同委員会におきましては、鋭意その促進をはかっておるのでありまして、今日まででは名寄演習場とか、日出生台、十文字原演習場など、十カ所の施設の返還及び移転について完全に合意を得たような次第であります。その残りの施設、区域につきましても、今後ともその調整の促進をはかりたいと思っております。同時に、その他の米軍施設につきましても、その実態を十分把握しまして、基地と周辺住民の生活との調整に積極的に取り組んでいきたい、かような考えで鋭意いまいろいろと進めつつある、こういう段階でございます。(拍手)
   〔国務大臣原田憲君登壇、拍手〕
○国務大臣(原田憲君) 漁船の安全操業対策といたしましては、先ほどお答えを申し上げましたが、大事なことでございますので、重ねてお答えをいたしますが、重複する点は御了承を賜わりたいと存じます。
 すなわち、第七、第八管区海上保安本部管区の保安部署及び巡視船艇は、関係漁業協同組合、出漁船に対し、次の事項につき安全指導を行なわせております。外国艦艇に不必要に接近しないこと。日本国旗の掲揚。海上衝突予防法に定める灯火及び形象物の表示を励行すること。事故防止につとめること。特異事項があった場合は巡視船に連絡すること。外国艦艇が操業中の日本漁船に接近するような場合には、国際信号旗を掲揚する等により相手の注意を喚起すること。さらに、四月二十一日朝、空母を含む米艦隊が日本海に入ったことが確認されましたので、関係のある漁業協同組合、漁業無線局、出漁船に通報し、注意の喚起を行なうとともに、特に出漁船の多い日本海南西海域に、通常の巡視船のほか、さしあたり巡視船二隻を常時配置いたしまして、また、航空機による哨戒を実施しまして、船舶、漁船の安全指導に万全を期しておる次第でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(安井謙君) 向井長年君。
   〔向井長年君登壇、拍手〕
○向井長年君 私は民主社会党を代表いたしまして、ただいま政府の報告されました去る十五日の北朝鮮による米偵察機撃墜事件並びに十八日の米政府による護衛つきの偵察飛行の続行決定等、日本海における一連の緊張激化事件について、総理並びに関係閣僚の所信をただし、決意をお聞きいたしたいと存じます。
 私は質問に入る前に、現在、日本海において高まっている緊張が、今後、双方の報復措置の悪循環によって一そう高まることがないよう、わが国政府として米政府に対し、強く要請するよう要求いたしたいのであります。
 まず第一に伺いたい点は、今回の一連の事件に対する政府の基本的姿勢についてであります。
 朝鮮半島をさして「日本に突きつけられたあいくち」であるということが、これまで言われてきております。これが適切な表現であるとは考えませんが、しかし、日本の安全にとって朝鮮半島の動向を無視することができないということは、歴史的に見ても確かなことだと考えるのであります。また、ベトナム以後は朝鮮半島だということも軍事専門家の一般的見解となっております。
 そこでお伺いしたい点は、政府がこの現在の朝鮮半島の動向をどのように洞察しているのか、という点であります。つまり昨年一月のプエブロ事件、そして武装スパイの侵入事件、米韓の合同大演習、そして今回の事件と続く一連の緊張の高まりをどのように評価されていますか。また同時に、それが日本の安全にどのような影響を与えているのか、具体的にお伺いいたしたいと存じます。
 質問の第二点は、今回の事件に対する政府の措置についてであります。
 これまでの措置は、昨年のプエブロ事件のときと同じく、一口に言って、米政府の見解をオウム返しに繰り返すだけで、国民が不安を抱いている日本の基地の使用について、政府として主張すべき点を主張せずにいるうらみがあることはまことに遺憾であります。特に、十八日の米ニクソン大統領の護衛つき偵察飛行、すなわち過剰偵察の続行決定は緊張をエスカレートするものであり、こうした措置が臨時措置といわれながら、いつか常時の態勢となることは、沖繩におけるB52常駐化問題を見れば明らかであります。また、それが双方の緊張を高め、不測の事態を招かないという保証があると、一体だれが断言できましょうか。そうした事態におけるわが国の在日米軍と基地の状況を予測すれば、戦慄せざるを得ないのであります。かかる見地からして、政府はこの際、米政府に対し、護衛つき偵察の続行を取りやめるよう強く要求すべきであると考えるが、総理の所見を伺いたいと存じます。
 質問の第三点は、日米安保条約に基づく事前協議制についてであります。
 昭和三十五年の日米安保条約改定によって、新たに事前協議制がその歯どめとしてできたことは周知のとおりであります。しかし、今日まで一度も行なわれたことはなく、事実上この事前協議制が空洞化していることは、今回の事件一つ見ても明らかなことであります。
 そこでお伺いしたい点は、事前協議制とは、そもそもどういう目的で設けられたものであるかということであります。われわれは、この制度はわが国が戦争に巻き込まれることがないよう取りきめたものだと確信しますが、政府の見解をお伺いいたしたいと存じます。もし事前協議制の目的が本来そういうものであるならば、今回の一連の事件のように、実質上そういう事態が発生したのならば、当然事前協議の対象とすべきであると思うが、もし、そうでなければ、一対体何のために事前協議制というようなものを、もっともらしい制度を設けたのか、その理由を国民に釈明すべきであります。政府のかかる見解をお伺いいたしたいと存じます。単なる言いのがれ的なものではなく、国民の抱いている疑念と不信を晴らすために、納得のいく答弁をいただきたいのでございます。
 質問の第四点は、今回の事件であらためて問題となっている在日米軍基地と在日米軍のあり方についてであります。
 基地問題、基地公害が、今日大きな社会問題となっていることは周知のとおりであります。しかも今回の事件は、そもそも厚木基地から発進した偵察機であり、それが今後は護衛つきで偵察が続行されるというのでありますから、基地問題はもはや看過し得ない深刻な段階に立ち至ったと言うべきでありましょう。政府は、基地公害といわれ、また、わが国が戦争に巻き込まれる危険性のあるこの在日米軍基地について、基本的にどのように考えておられるか、お伺いいたしたいと存じます。
 もし、今後とも基地の存続が絶対不可欠というのであれば、この米軍基地が、日本の安全にとって具体的にどのようなプラスの役割りをもたらしていると考えておられるか、この点をお伺いいたしたいのであります。それを具体的に立証していただきたいと思います。
 また政府は、昨年五十にのぼる米軍基地の整理の方針を明らかにしたと、先ほど防衛庁長官から説明ございましたが、この基地がいつ撤廃されるのか、また、具体的に推進しているただいまのスケジュールを明らかにしていただきたいと存じます。
 われわれ民社党は、日米安保条約が今日まで果たしてきた一定の役割りを率直に評価しつつも、各国の集団安全保障条約の例からして、条約上全く異例な在日米軍と基地の存在を廃止するよう主張してまいりました。特に基地公害として騒がれ、しかも戦争に巻き込まれる危険性を生む基地の存在は、もうこれ以上放置することは断じて許されません。それは政治の怠慢以外の何ものでもありません。かかる見地から、七〇年の日米安保条約について、佐藤総理は、そのまま堅持する発言をたびたびされておりますけれども、わが国が今回のような紛争事件にいたずらに巻き込まれる危険性を根本的に除去するため、この際、安保条約に対する政府の考え方に再検討を加えるべき時期が来ておると思うのであります。すでにわが党が主張しているように、米軍の基地と駐留をなくする方向で安保条約を改定すべきであると考えますが、この際、総理の所信をあらためてお伺いをいたしたいのであります。私が強調したい点は、日米関係の基本についてであります。日米の友好関係を維持し、発展させることは、わが国のナショナル・インタレストにとって不可欠の要因であることは多言を要しません。しかるに、政府のこれまでの対米姿勢は、対等なるパートナーシップでなく、一口にいって、対米依存、対米追随であることは否定し得ない事実であります。これでは国民の間に対米不信感、反米感情が高まるのも理の当然と言わなければなりません。このままでは、日米双方の国民の間に信頼関係が断絶し、日米関係が実質上空洞化していくことは必至と言わなければなりません。最後に、総理の誠意ある御答弁をお願いいたします。
 なお、かかる事態発生に伴って、近海漁業約六百隻の業者が戦々恐々として、安心して安全操業ができず、出漁を手控えせざるを得ない状態と私は聞いております。これによる損失を政府はどう考えているのか、かかる損失を来たさないため、この点からも早急に日本海水域から退去するよう、対米交渉を強力に進めるべきだと思うが、政府の所見をお伺いいたします。
 以上、われわれはかかる憂慮すべき事態にかんがみ、わが国政府は、この際、き然たる態度で主張すべきことははっきり主張するという自主性を持つことを強く私は要請いたしまして、質問を終わりたいと思います。
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
○国務大臣(佐藤榮作君) 向井君にお答えいたします。
 現在までのところ、米国政府は、この問題に冷静に対処しており、今日の状況では、今度の事件がさらに拡大していくとは私は考えておりません。しかし、わが国周辺地域で発生したできごとでもあり、政府は、極東の平和と安全の見地から重大な関心を持っておることは事実であります。事が北朝鮮側の抗議によって引き起こされたものであろうが、どうであろうが、軍事的にこの問題がエスカレートしないように願っておる次第であります。このような政府の見解は、すでに米側に対しては十分に伝えてあります。常時話し合っておるような次第であります。
 次に、向井君が御指摘になりましたように、朝鮮半島の動向は、わが国の平和と安全に影響するところがきわめて大であります。この点、最近北朝鮮が韓国に対し浸透工作を強化するなど、この地域に緊張を生み出していることはまことに遺憾であります。今回の事件も、このような情勢を背景に起こったものと考える次第でありますが、政府としては、今回の事件が平和的に処理されて、一日も早く事態が平静化することを希望しておる次第であります。これは各党の質問に対しましてお答えしたとおりであります。
 次に、これまた繰り返し述べておりますように、公海上における偵察活動というものは、これは違法ではありません。米側が偵察機に護衛をつけることは、不法行為の再発を防止するための予防措置と考えられますので、政府としては、米側にこの中止を申し入れる考えはもちろんございません。過剰防衛、過剰偵察ということばを使われておりますが、先ほど社会党の亀田君にも答えたように、私は過剰偵察ということは十分理解ができません。また、わが国の周辺に対しましても、しばしばソ連等は偵察を行なっております。このことは私どもは身近に感ずるところでありますので、米国自身が公海において偵察を行使したからといって非難するには当たらない、かように思っております。次に、安全保障条約第六条の実施に関する交換公文におきまして、日米間の協議の対象となる事項は明確に定められておりますが、今回の事件に関連して、米側は、事前協議の対象となるべき措置はまだ何らとっておりません。したがいまして、今回の事件に関連していわゆる事前協議が行なわれていないのは、この制度を発動する事態になっていないからでありまして、これをもちまして制度に対する疑念と不信が増大するという向井君の主張は、やや的はずれの議論ではないかと私は思います。
 次に、基地公害その他についてお話がありましたが、安保の再検討期に米軍基地を撤廃せよと言われますが、そうはいきません。わが国は、自主防衛によって足りないところを安全保障条約によって補っているのでありまして、この方針は引き続き堅持することを重ねてこの際申し述べておきます。
 次に、日米の友好関係が空洞化していくというようなお尋ねがあり、もっと自主性を持て、こういうことでありますが、私は、日米関係につきましての御意見はそのまま伺っておきますが、私どもが今日までの日米間の友好信頼関係を維持発展させることこそ国益に沿うゆえんであると、かような点につきましては異論のないところではないかと思います。戦後の日米関係は、年々に緊密の度を加えてきておりますが、今日におきましては、対等のパートナーシップということをことさら言うまでもなく、両国の相互理解と友好信頼関係はあらゆる分野において深まっております。しかし、日米間においては問題が多く存在し、関係が深まれば深まるほど、これからもまた解決すべき多くの問題が発生すると思います。そして、このような問題を利用して日米関係に水をさそうとする力が働くことも予想されますが、私は、国家社会に対する共通の理念と価値観を持つ日米両国が提携し協力することこそ、世界平和に寄与するゆえんであると確信しておる次第であります。(拍手)
 最近の日本海における諸情勢に関連し、現在までのところ、わが国漁船の安全操業に支障を来たし、出漁を手控えているという報告は、まだ受けておりません。しかし、米海軍等の外国艦船の行動に伴い、わが国漁船の出漁手控えなどによる損失に関しての国内的な救済措置をどうするかについては、少なくとも現段階においては、まだとやかく申すのは適当ではないと考えております。しかし、いずれにいたしましても、政府としては、日本海における安全操業を確保するよう努力いたしますし、わが国の漁業につきまして万一不幸な事態が起これば、それらにつきましても、その段階におきまして十分対策を考慮し、そして善処するつもりであることをこの機会にはっきり申し上げておきます。ありがとうございました。(拍手)
○副議長(安井謙君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時六分散会