第061回国会 社会労働委員会 第35号
昭和四十四年七月二十七日(日曜日)
   午前十時二十四分開会
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  出席者は左のとおり。
    委員長         吉田忠三郎君
    理 事
                上原 正吉君
                鹿島 俊雄君
                大橋 和孝君
                上林繁次郎君
    委 員
                鬼丸 勝之君
                黒木 利克君
                高田 浩運君
                中山 太郎君
                矢野  登君
                山崎 五郎君
                山下 春江君
                山本  杉君
                横山 フク君
                上田  哲君
                小野  明君
                中村 英男君
                藤原 道子君
                渋谷 邦彦君
                中沢伊登子君
   委員以外の議員
       議     員  渡辺  武君
   衆議院議員
       修正案提出者   澁谷 直藏君
       修正案提出者   谷垣 專一君
   国務大臣
       厚 生 大 臣  斎藤  昇君
   政府委員
       内閣法制次長   吉國 一郎君
       大蔵政務次官   沢田 一精君
       厚生大臣官房長  戸澤 政方君
       厚生省公衆衛生
       局長       村中 俊明君
       厚生省環境衛生
       局長       金光 克己君
       厚生省医務局長  松尾 正雄君
       厚生省薬務局長  坂元貞一郎君
       厚生省社会局長  今村  譲君
       厚生省児童家庭
       局長       渥美 節夫君
       厚生省保険局長  梅本 純正君
       社会保険庁医療
       保険部長     加藤 威二君
       労働省婦人少年
       局長       高橋 展子君
   事務局側
       事 務 総 長  宮坂 完孝君
       常任委員会専門
       員        中原 武夫君
   法制局側
       法 制 局 長  今枝 常男君
   衆議院法制局側
       法 制 局 長  三浦 義男君
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  本日の会議に付した案件
○健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する
 法律等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆
 議院送付)
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○委員長(吉田忠三郎君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
 健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。
 御質疑のある方の発言を求めます。
○小野明君 昨日は、提案者の谷垣君に対する質問があったわけでありますが、谷垣君の答弁によりますというと、まことにこの修正案が合法的に、しかもスムーズに議決をされたというふうに伺っておる。そういう答弁をされておるわけです。私はそれを聞きながら、私の聞いておる、仄聞しております状況とはかなり違っておる。何か天井から降ってきたから、手にとって見ると、それが何やら修正案とおぼしきものであった、そういうふうな状態である。あるいはだれだれが入っておるかということも、これはあなたの答弁でも、本会議における答弁では明確でないわけです。この問題について、内容は、後刻、同僚議員が質問いたしますから、まずそのときにおられた議員はだれだれであるのか、それをひとつ説明していただきたい。もし、説明ができなければ、後刻資料として提出してもらいたいと思うのですが、包み隠しなく、正直に実態をひとつ述べてもらいたいと思います。
○衆議院議員(谷垣專一君) 小野先生にお答えをいたします。
 昨日、大橋先生の御質問にお答えをいたしたわけでございますが、昨日お答えをいたしましたように、衆議院の社労委員会が行なわれました十日の状況は、先ほど申し上げましたように、午後四時過ぎから衆議院の第三委員会室は、野党諸君が六、七十名程度ずっと委員会の席を占拠されておるような状況であったわけでございます。したがいまして、八時過ぎに委員会が開会されましたときには、昨日お答えを申し上げましたように、委員長が委員長席に着くということはできない状況でございました。つまり、正常の状況ではないことは事実でございます。したがいまして、諸般の採決、議決等が合法的に行なわれましたことは事実でございますが、正常な状況とはやや異なった状況であったということを昨日お答え申し上げたわけでございます。この順序等は、ここでどの程度申し上げたらいいのか存じませんけれども、だれが出席してどうこうというような御質問でございますが、これの人名その他は、後刻必要がございますれば、資料でお届けできるかと思っております。
 なお、そういう状況でございますので、私の提案理由の説明その他は所定のとおり行なわれたわけでございますが、先ほどおことばにございました、天井からどうこうということは、これはそれぞれ配付をいたしたのでございますが、ただ、その際に少し乱暴な配付のしかたがあったかということにつきましては、いろいろ御議論があろうかと思いますけれども、そういう事情でございますので、その点は御了承をお願いいたしたい、かように考えておる次第でございます。
○小野明君 そのときだれがおったかという名前くらいは、あなたは議決をしたというのですから、覚えておられなければならぬ。その問題は、衆議院でもいろいろ質問があったようです。ただ、これはあまり時間をとりたくありません。ですから後刻、だれだれが出席をしておったという資料を出してもらいたい。
 この修正案について、財政効果というのは、どういうことになるわけですか。
○衆議院議員(谷垣專一君) 今度の修正案で、政府原案と異なっております点は、一つは、財政収支のほうから申し上げますと、お産等の分べん給付の改善をいたしましたものの、それの裏づけと申しますか、これが千分の一原案では料率が上がっておるわけでございますが、修正案では、その千分の一を引き上げるというのは取りやめにいたしております。原案よりもその点がマイナスになっておる、こういうことになるわけでございます。
 それから薬剤の、薬代の一部負担というものを今度は削除いたしておりますので、これを取りやめております。原案より取り除いております。
 そこで、これらの点によりまするところの財政見込みの収入減と申しますか、ということでございますが、およそ千分の一の減によりまして三十三億のマイナスになると思います。
 それから、例の薬剤の一部負担を取りやめにいたしましたから、これが三十一億程度になろうかと思います。
 さように考えてみますというと、政府原案でも、ことしのマイナス分は二十七億という予想をいたしておりますので、これでほぼ全体を合わせますというと、九十一億のマイナス要因がある。原案よりは六十四億の、修正によりまして、マイナス要因が出てきておる、こういうことになろうかと思います。
○小野明君 そこで、厚生大臣にお伺いをしたいんであります。いままで政府が長年月準備をしてまいりまして、きょういただいておる法律案参考資料、あるいはその他の資料によりましても、政府案で最低二十七億という赤字措置のためにこの特例法を延長をするんだというのが理由である。ところが、今度修正案で、いまの提案者によりますと、九十一億、これが最低の赤字である、こういうことを言われた。この修正案によって出る結果というのはこういうものだと、政府が長い間準備をされて二十七億にしたい、修正案はこれだと、一体、われわれはどっちをとればいいのかわからぬ。どう見れば、この保険財政という当面の臨時措置というものが救えるのか見当がつかぬようになっているんですが、大臣は、この修正案をはたしてどのように見られておるのか、御見解を伺いたい。
○国務大臣(斎藤昇君) 政府といたしましては、特例法のさらに二ヵ年延長をお願いしても、なおかつ、二十七億の赤字が出ますけれども、これはやむを得ない。もし二ヵ年間の延長をいたさないということになれば、約四百億以上の赤字が出るわけでありますから、したがって二ヵ年の延長はぜひいままでどおりで延長をしていただきたい。それでも二十七億出ますけれども、これはやむを得ませんということで原案を提案をいたしたわけでございます。
 そこで、衆議院におかれましては、いろいろ審議の状況その他にかんがみられて、いま御説明のあったような修正があったわけです。そのために赤字が六十四億さらにふえるというわけでございますが、しかし、国会で御修正になれば、財政当局としてもやむを得ないだろうということで、もし、さようになればやむを得ませんと、修正のほうがよろしいとは思いませんが、しかし、国会でおきめになればやむを得ませんというお答えをいたしておる次第でございます。
○小野明君 厚生大臣が自民党から押えつけられて、この際、あなたの抵抗が弱かったんではないかという結果が出ておるんではないかと、こう考える。しかし、これに賛成しておるわけではないということですね。
 そこで、資料を拝見しておりますというと、政府案によります試算の結果の資料というものは出ておりますけれども、修正案によります保険財政の試算というものが出されておりません。そこで、衆議院でも問題になっております、たとえばことしの春闘の結果一体どうなるんだ、標準報酬にもたらす影響あるいは保険財政にもたらす影響は一体どうなんだ、こういうものもあわせまして私ども資料として提案をいただかないと審議することができぬわけです。政府案だけのものであって、修正案を入れた場合にどうなるのだという試算の資料を何も出さなかったのは、一体、どういう理由によるのか。それはすぐ私は用意をしてもらいたいと思うがどうなんですか。
○国務大臣(斎藤昇君) 御要望がございましたら、衆議院における修正案に基づいてどうなるか、あるいはまた春闘の結果保険料収入がどうなるかという資料は、私のほうからお出しをいたします。政府に御要望がございましたらお出しをいたします。
○小野明君 それはすぐ出してください。
○委員長(吉田忠三郎君) 厚生大臣、小野委員のほうから、資料を可及的すみやかに提出するように求められておりますが、よろしいですね。
○国務大臣(斎藤昇君) 春闘の結果、昨年の十一月ですか、当時、予算編成の際に考えておりました保険料収入よりもどのくらいふえるであろうか、これはいろいろな推定が入りますけれども、衆議院のほうにおいても求められましたので、一応できております。ここで読み上げてもよろしゅうございますが、あとでむしろ資料としてお出しいたします。
○小野明君 澁谷君にお尋ねをいたします。あなたのほうは、修正案を出されておる。修正案ということばを使っておるわけですね。私は、これがはたして臨時特例法の修正案と言えるものかどうか、疑問を持っておるのです。新たな手続をもって本法を当たっておるわけですから、新たな手続をもってこれは衆参両院に提案をされるべき性格のものではないか、こう考えるのです。というのは、澁谷君も御承知のように、法律案名は変わらない、ところが、中身は本法修正に移っておる、こういう強引な、むちゃくちゃな修正のやり方、まことにこれはでたらめというか、違法の疑いさえ私はあるのではないかと思います。この修正案なるものを読んでおりますと、臨時特例法ではない、本法ばかりを見なければならぬようになっておる。ここと思えばまたあちらというように、むちゃくちゃなやり方をしておるのですが、一体、これを正当な修正案として見ておられるのか、その根拠は一体どうなのか、澁谷君にお尋ねいたします。
○衆議院議員(澁谷直藏君) ただいまの御質問でございますが、確かに修正としては、きわめて大幅な修正になっておることは事実でございます。したがいまして、私どもといたしましても、これだけの大修正というものをやるに当たりましては、十分これが法律的に適法であるかどうかという点については、特に慎重を期して検討をいたしたわけでございます。法制局とも十分相談をいたしまして、先例等も調べた上で、これは完全に適法な修正であるという結論に立って、この修正を行ったものであります。
○小野明君 澁谷君は大幅な修正と、大幅なという場合は、これは質は同じわけです。あなたは量の問題を言っておる。私が言っておるのは、完全にこれは質が変わってしまっておる。こういう修正が、帽子だけ同じで、人を全部入れかえておいて、修正案でございますとまかり通る理由というのは何なのか。あなたは、法制局とも打ち合わして、これが違法ではないと言われておるが、打ち合わせたことはわかるが、その理由は何なのか、それを説明してもらわなければ困る。
○衆議院議員(澁谷直藏君) 理由といわれても、ちょっと私には了解できない。どういう理由でやったかということになりますると、この修正をやった理由、法的な理由ではなくして、修正の中身についての考え方はどうかと、こういう質問と受け取ってよろしゅうございますか。
○小野明君 中身にも関連していますけれどもね。
○衆議院議員(澁谷直藏君) それでは、私、きのう同僚の谷垣議員からもお答えいたしたのでございますが、衆議院社会労働委員会における審議の過程を通じまして、この法律案についての問題点というものがかなり明瞭に浮き彫りになってまいったわけでございます。一つは、今回の修正案にあらわれた分べん費の改善に伴う、これに見合う保険料率千分の一の引き上げは、この際取りやめるべきであるということが一つ。
 第二点といたしましては、いわゆる薬価の一部負担というものを、むしろこれは抜本改正の際に、全体の制度の検討の中で再検討すべきではないかというような御意見が出てまいりまして、これが第二点でございます。
 さらに、今回の修正の一番大きな論点となりましたのは、臨時特例法に入っておりました千分の七十という料率を、いわゆる本法のほうに規定することに修正をしたということが第三点であるわけでございます。
 この保険料率千分の一の引き上げを取りやめるということ、薬剤の一部負担を取りやめるということ、これは、大体委員会の審議等を通じて一致した結論に近いような形で出てまいったと思います。それで、私どもは、抜本改正というものを、今回は間に合わなかったのでございますが、どうしてもあと二年後には、いわゆる保険制度の抜本改革案というものを国会に提出をしなけりゃならぬ。これは政府の責任でございますが、同時に、与党のわれわれといたしましても、これは重大な政治責任を感じておるわけでございます。そういうことを考えてみますると、特にこの臨時特例法を実施してまいりましたこの二年間における保険の収支状況、財政状況というものを検討してみまして、さらに抜本改革というものを展望した場合に、千分の七十という保険料率は、少なくとも、抜本改革を提案するさらに二年間というものを考えた場合に、千分の七十という料率は、やはり最低限度必要な料率である。このように私どもは判断をいたしまして、今回のような修正をいたしたわけでございます。
○小野明君 若干質問の趣旨をあなた取り違えておられるように思います。特例法というのは、いま生きておるんですか、死んでおるんですか、それをお尋ねします。
○衆議院議員(澁谷直藏君) 今回の修正によりまして、特例法の二年間延長というものは、これは取りやめることに修正をいたしましたので、八月三十一日をもって現在の臨時特例法は廃案になることに修正をいたしたわけでございます。
○小野明君 そこで、修正とあなたは言われる。何点か当たっておられるわけですね。修正の第一は、薬剤の一部負担についてはこれを取りやめる、分べん給付の問題は別として、政管健保の料率の問題、あるいは一時負担の問題、これあたりはこの法律――臨時特例というのは、八月三十一日をもって失効するわけですね。ほうっておいても失効するわけですね。八月三十一日で終わるのに、なおかつ、それを修正をする。これは修正ではないんじゃないか、修正する必要はないんじゃないか、この点はどうです。
○衆議院議員(澁谷直藏君) 御承知のように、今回政府から提案されておりまする改正法律案は、この提案しております修正の法律案が成立しない場合は、当然八月三十一日をもって失効する運命にあるわけでございます。先ほど厚生大臣から答弁がございましたように、千二百億をこえる累積赤字の上に、この特例法が生きておりませんと、さらに単年度で四、五百億円の赤字が追加されることになる。したがって、当面、どうしてもやはりこの臨時特例の料率というものが保険財政という観点からどうしても必要だということで、政府は、さらに二年間ひとつ延長をしてもらいたいというので、この法律案が提案されておるわけであります。これはもう先生も御承知のとおりでございまして、この特例法の修正案が成立をいたしません場合は、当然現行の特例法は八月三十一日をもって失効する、こういうことになっております。
○小野明君 そういうことはわかっておる。わかっておるから尋ねているんです。
 そこで、これは澁谷君、谷垣君でもいいのだが、法制局長も見えておりますが、二年間たてば失効をする、八月三十一日でいわば失効をする、だからこの特例法はなくなる。何もあなたのほうが修正せぬでもなくなるわけですね。そこで本法を当たっておるわけですから、手続としては、むしろ修正の趣旨としては、こういう修正点が何点あるとかいうことをあげずに、本法修正としてのこれは法律案として提出すべき性格のものではなかったか。だから、修正案としては、これはきわめておかしい性格のものになるのではないかということを申し上げておるのですが、法制局長は、この法案は当たっているが合法的だというようなことを裏づけをされておるようですが、その辺はいかがですか。
○衆議院議員(谷垣專一君) 御指摘のとおり、いろんな考え方があろうかと思います。小野先生のお考え、いま言われたことも、この本法に対しまして修正する場合の一つの考え方であろうかと、私も思います。ただ、政府が出しましたこの原案は、健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律等の一部を改正する法律という題名にありますとおり、その内容は、いわゆる健康保険法の臨時特例に関する一部改正部門と、それから健康保険法の一部改正部門と、それから船員保険法の一部改正部門と、附則はそれぞれございますが、こういう原案そのものにもそういう三部門、それからあと附則と、こういう形になっておるわけでして、いわば特例法だけの問題ではないわけでございます。したがいまして、これを修正でいき得ることは法律的にはきわめてはっきりしている。ただ、先生が言われるように、政治的にどうかという取り扱いの問題は、これはいろいろ議論があるところだと思います。けれども、法律的に見まして、これが修正でいき得ることは、これははっきりしておるのでありまして、したがって、私たちも、その点はこの特例法等の修正という形で修正提案をいたしたわけでございます。
 それから、なお審議の過程におきましていろいろ議論が起きておりますし、審議以前から問題もあるのですが、非常に臨時特例法そのものを廃案にしろと、つまり期限の延長をやろうとしておることは取りやめろという議論も強かったことも事実でございますし、先生も御存じかと思います。修正をいたします場合に、そういう諸般の状況というものをにらみ合わして考えてみますと、延長の部門を取りやめるという、つまり健康保険特例法の延長はけしからぬ、これを取りやめろという議論を十分にそしゃくして考えてみて、それをひとつ、それじゃ、なくしていこうということになりますと、先ほど来、同僚の渋谷議員が申し上げておりますように、非常な財政的欠陥というものが出てまいります。したがって、それを何らかの形で欠陥を最小限度補なうやり方を考えていかなければならないということになりますので、したがって、それが御指摘になっておりますような健康保険法の本文の改正という形につけ加わっていくということになったわけでございまして、これを修正いたしまする、何と申しますか、理由は、先ほど来、澁谷議員から申し上げていることに尽きると思うのですが、先生の御質問の中に、法律的に見てこれをやることはどうかという御議論がございましたから、修正案を提案いたしました私たちとしましては、先生のおっしゃるように、こういった全部廃案にして、特例法その他、健康保険法その他も含めて政府の原案全部を廃案にしてしまって、そうしてあらためて健康保険法と船員保険法の本文の修正だけで出してはどうかという御意見、それも私は一つの考え方であろうと、先ほど来申し上げておるように思うのでありますけれども、ただ、こういうような政府原案が出されて、しかも会期もなかなか切迫をしておる状況の判断をいたしました場合に、政府の原案として出してまいりましたものの修正案として提案することは、何ら法律的にも違法なことでもない、正当な修正案の提案ということになる、こういう結論に達しまして修正をお願いをいたした、こういう事情でございます。なお、詳しく法律的な問題につきましては、法制局のほうとも相談をいたして申し上げたわけでございます。
 なお、つけ加えさしていただきたいと思いますが、先ほど私に対しまする御質問の中に、当日だれが入っていったのか……。
○小野明君 資料として出せばいい。
○衆議院議員(谷垣專一君) 資料としてでいいですか。資料として出しましょう。
○小野明君 澁谷君ですね、この修正点として何点かあげられておるけれども、これは延長だけを削れば、当然失効する問題ばかりであります。だから修正点としては成り立たぬのではないかということを私は申し上げておるわけです。本法をさわる場合には、あなたも社労の理事ですから、御承知のように、いろんな制度審議会の議を経てこなければならぬ、政府が当たる場合には、これは当然審議会の議を経て云々と、こういう手続を経なければならぬのだが、きのう大臣も言われておるように、これは修正ですから、まるで大臣とあなたの所属しておる党が違うような答弁をされておるのですが、いろんな制度審議会がある、その意見もまた聞かなければならぬという趣旨になっておるものを無視して、しかも本法をさわったと、この政治的な責任、こういうものを私は問いたいわけです。これは、澁谷君、いかがですか。法的にも問題があるけれどもね。
○衆議院議員(澁谷直藏君) この点につきましては、きのう厚生大臣からもるる答弁があったわけでございますが、社会保険審議会、社会保障制度審議会、この二つの機関があるわけでございまして、これは政府が社会保障、社会保険に関する法律案を提案をする、あるいは修正を発議するという場合には、あらかじめこれらの審議会の意見を聞かなければならぬという法律になっておることは、私も十分承知をいたしておるわけでございます。したがって、今回提案されました臨時特例法案につきましては、厚生省としては、法に定められた手続を踏まれて、そうして国会に提案をされておるわけでございますから、その点については何ら問題はないわけでございます。
 ただいま御指摘がございましたのは、衆議院における今回の修正、この修正を行なう場合に、ただいま話の出ております二つの機関との関係がどうなのか、これの意見を聞く必要があるのではないかといった御質問と拝聴いたしたのでございますが、この点、政府と国会という関係は、これはもう全然別個なものでございまして、国会は、言うまでもなく、最高唯一の立法機関でございますから、その衆議院において、政府から出されました法律案の修正を行なう場合に、社会保険審議会あるいは社会保障制度審議会の意見を聞かなければ法案の修正ができないということは、私どもはそのように考えておりません。また、そのような法律もないわけでございますので、その点は、私どもがとりました今回の修正の手続は、そういった法律上の疑念は何らないというふうに考えているわけでございます。
○小野明君 修正という手続を純粋に見ていけばそうかもしれぬ。しかし、本法に触れる場合は、これは両審議会の意見を、答申を求めて触れることになっているわけです。ですから、その辺の意向。この特例法に対する意見というものも、すでにあげられておる段階である。しかし、そういうものは一切意見を聞く必要はない、おれたちはオールマイティだから、どこをどうさわろうとおれたちのかってである、これはおれたちの権限だと、そういう何というか、審議会そのものを軽視、無視して、じゅうりんしてもかってに何でもやれるんだという考え方に問題がある。そこで、特例法に当たると見せて本法をさわる。まるでむちゃくちゃなことをおやりになった原因というのは、動機というのは、あなたのその考え方にあるように、私は思う。これはあたりまえのことであって、ごうも反省の余地はない、こういうお考えなんですか。
○衆議院議員(澁谷直藏君) 重ねての答弁になりますが、社会保険審議会、社会保障制度審議会、これは政府との関係においては、政府の諮問機関として法律上定められて設置されておる機関でございまして、(「あたりまえだ、わかっているよ、そんなこと」と呼ぶ者あり)御承知のとおりでございます。したがって、政府が新しい法律案を提案する、あるいは大きな修正をやるというような場合には、当然これらの機関にはかって、その手続を経た上で出さなければならない、これも御承知のとおりでございます。私どもは、国会が唯一の最高の立法機関であるということで、何をやってもオールマイティだから、かってだという考え方は毛頭持っておりません。あくまでも、やはり事態の公正な判断の上に立って、通すべき法律は通し、修正を必要とするものには修正を加える。これは国会としての当然の責任であり、使命であると考えておるわけでございまして、先ほど来、答弁申し上げておりますように、今回の健保特例法案につきましては、各方面からいろいろな意見が出ておるというのも御承知のとおりでございます。そういった諸般の全般的な情勢というものを判断した上で、私どもは、今回の修正に踏み切ったというわけでございまして、決して私どもが何をやってもいいのだと、社会保険審議会、社会保障制度審議会というようなものは全然無視してもいいのだというような思い上がった考え方は毛頭持っておりません。その点ははっきりお答えを申し上げます。
○小野明君 大臣、いまの御答弁を聞きまして、私は非常に妙な気分になる。昔、二枚鑑札というのがありました。片一方はばくち打ちの親分であって、片一方は目明し、十手を預かっておる。あるときは十手を使う、あるときは暴力団でやる。今日、与党と内閣、自民党と内閣という関係は、これは政府が審議会を尊重すればいいので、おれたちは知らぬのだ、あるときは自民党を使い、あるときは政府を使う、それとよく似た私は気分になる。国会には修正権が、議院には修正権があるのだから、政府だけが尊重すればいいので、おれたちのかってだということを、いまの答弁では多少手直ししたようだが、そういう印象を私は受けてならぬ。きわめてこれはおもしろくない。大臣は、一体、どのような御見解をお持ちなのか。自民党が政府をこしらえておるのだから……。いかがですか。
○国務大臣(斎藤昇君) その点につきましては、昨日お答えを申し上げたとおりでございまするし、ただいま澁谷衆議院議員のお答えになったとおりであります。その間に見解の相違は毛頭ございません。審議会は、御承知のように、法律で定められておりますが、これは、政府がかってにやれないという、政府の拘束をしているような法律になっております。しかしながら、国会を拘束するような法律にはなっておりませんし、また、そういうような立法は不適当であろうと思います。そういうようにはなっておらぬことは、私は、国会というものと政府との関係を考えますと当然であろうと、かように思います。たとえば、選挙法の改正にいたしましても、選挙制度審議会というものがございます。政府が提案する場合には、意見を聞いて出すという慣例になっておりますから、国会で修正をなさるという場合には、そういう制度審議会に何も諮問をしないでやっておられて、だれも疑っておらない。それと同様であろう、私はかように思います。ただ、先ほど澁谷議員のお答えになりましたように、その内容については、審議会が考えている内容と非常に変わったものであれば、これは実質的には考えなければなるまいと、与党のあり方として、そういうお考えの発表がございましたが、それはきわめて、何といいますか、妥当な政治的な判断である、かように思います。与党から修正案を出した場合には審議会に聞かなければならぬし、野党が修正案を出す場合には審議会に聞く必要はない、そういう理由もないと、法律的にはきわめてその点は明瞭であると、かように考えております。また、政府が改正案を審議会に提案をいたしました際に、御承知のように、その答申は、両審議会とも、どんな答申であったか御承知のとおりだと思います。ただ、いまの実質的な修正案の内容は、審議会の考えていたところと百八十度違ったものであるというわけでもないと、澁谷議員はおっしゃったであろうと思いますが、私もさように考えているわけでございます。
○小野明君 私は、大臣に申し上げたかったのは、さきの澁谷君の答弁で、政府は審議会というものを尊重すべきものであって、私どもはそれに関連しませんと、こういう木で鼻をくくったような答弁があったから、私は申し上げたわけです。それは修正権がありましょう。幾らあるにいたしましても、その審議会の――最近は多少政府の耳の痛いことも言っているようですが、政府がこしらえた機関ですから、そういった審議会の意向も尊重をしながらこの修正というものがやっぱりなされてしかるべきだと、こういう考え方から質問しておるわけです。その点を与党がどうだの、野党がどうだのと大臣が切り返してくるが、これは私はいただけないわけです。答弁し直してください。
○国務大臣(斎藤昇君) 実質的な意味におきましては、先ほど澁谷議員がお答えになりましたように、審議会の審議の過程において、また、その答申におきましても、このたびの薬価の一部負担をとるとか、あるいは千分の一をなくするとかいうような点については、これは審議会の中でもそういう意見が非常にあるという並列答申もございますので、全然内容的には無緑ではないと、こうお答えになったんだと、私はそのとおりだと思います。
○小野明君 その問題に少し時間をとり過ぎましたが、最後に、この問題について、衆議院の法制局長お見えですから……。きのう違憲問題で、どうもあなたの守備範囲をこえる問題であったかと思いますけれども、これはあなたの完全な、いわば共謀――共謀と言うと、ことばが悪いけれども、あなたが合法性をつけたから、純粋に法律的なこれが問題になるかならぬかというところも、私は議論があると思います。私、しろうとだからわからぬけれども、しかし臨時特例法の修正、名前は同じで本法をさわる、しかも、本法をさわるということについては、制度審議会の意見を聞かなければならないということになっておる。先ほどから申し上げておるような疑点がいろいろあるわけです。こういったことが常時なされるということについては、私はきわめて問題が多いように思うんです。あなたは、今回のこの修正と称するものがきわめて法的にも問題ない、慣習的にも問題がない、これは今後の国会でも堂々と先例となって問題ないんだと、こういうふうにお考えなのかどうか。政治的には、どうもあなたもうしろ髪つかまれてやられておるようですけれども、そうでなくて、少なくとも法律でもってめしを食っているんだから、そういう立場でひとつ答弁してくださいませんか。
○衆議院法制局長(三浦義男君) 私は、政治的な問題の見解は別問題といたしまして、純法律的な見地に立ちまして、いまお尋ねの二、三点についてお答え申し上げます。
 第一に、私どもがその修正というものを考えておりますのは、どういうことが修正かと、法律上の法案の修正かということをまず申し上げたほうがいいと思います。私どもは、法案の修正というものは、法案の字句の変更あるいは法案の規定の削除、あるいは法案の条項の順序の変更、あるいは法案に新しい事項を追加すること、あるいは題名の変更と、これらすべてを含みまして、われわれは法案の修正だと考えております。これは、従来、衆議院におきましても、また参議院におきましても、大体取り扱ってこられた先例にも合致しておりますし、また、法律上の学者その他の見解とも一致しておると思いますし、私もさように考えております。
 それから、この問題につきまして、臨時特例法となっておりました政府提案を題名を変更し、また健康保険法の内容を変更した修正をやったのはどうかということでございますが、それは、私がいま前提として申し上げましたように、題名の変更あるいは新事項の追加、こういうことはすべて修正の条項に含まれますので、修正として法律上可能だと考えております。
 それから、なお、その点についてつけ加えて申し上げておきますが、この法案は、政府提案では健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律等の一部を改正する法律案となっておりまして、本法が三ヵ条に分かれております。
  〔委員長退席、理事大橋和孝君着席〕
 第一条は、いまの臨時特例法の期間の二ヵ年延長でございます。それから第二条が本来の健康保険法の内容の変更でございます。それから第三条が船員保険法の内容の変更でございます。したがいまして、いわゆる第一条の特例法の期間を延長いたしますことを削除いたしまして、そうして第二条に書いてある健康保険法の改正の内容に、臨時特例法の内容とも相関連いたしますので、その中にありました事項を健康保険法の改正として政府が出しておるこの第二条の内容の中に追加したのにすぎないのでありまして、その点は、何ら修正として問題となり得る性質のものでないと考えます。
 それから第三に、いわゆる題名の変更が「臨時特例に関する法律等の」というのを削ることにいたしました。これは、先ほど私が申し上げましたように、題名の変更を修正でまるで違った題名に直すことは、従来もいたしておりますし、これは国会の修正権の問題として十分可能であって、何らの問題を生ずることはないと考えております。
 それから最後に、私は念のために申し上げておきますが、さっきもお尋ねがございましたが、これは政府の問題かもわかりませんが、こういう修正につきまして、いわゆる社会保険、審議会等の意見を聞くべきではないか、こういう御意見がございましたが、私ども衆議院の、あるいは国会側の問題といたしましては、すべて修正につきましては、国会法あるいは衆議院規則、参議院規則等の一連の国会法規に支配されるわけでございまして、その中に、そういう場合においてどうだという規定があれば別問題といたしまして、ある規定は、ただ法案の修正をする場合に、予算に関係する場合には内閣の意見を聞かなければならぬ、こういう条項がございますから、それは手続をいたしておると思いますが、それ以外において、ただいま御指摘がありましたように、政府の設けました機関である社会保険、審議会に諮問する必要は、国会の修正においてはごうもない、こう考えております。また、それは現在の規定をお読みになればおわかりのように、たとえば健康保険法の二十四条の二でございますか、これは社会保険審議会に健康保険に関する基本的な事項とかなんとかにつきまして、大綱につきまして諮問する規定がございますが、これは厚生大臣、または社会保険庁の長官がそこに諮問するという拘束規定でございまして、国会を拘束するものではございませんので、先ほど提案者が御説明になりましたようなことで、この修正は法律上何ら問題がないと考えております。
○小野明君 この法律案は、あなたが言われるのを聞いておりますと、何ら問題はない、こういうふうにおっしゃるのですが、題名は、法律の案件名は変わらずに、臨時特例のというところを削っておりますから、これは当然施行とともになくなるわけですね。なくなってくるようになっておりますね、本法では。そうすると、本法をさわったという結果がそこについて出てくる。われわれとしては、あくまで臨時特例法の修正ということで審議をしておったのだが、事は、本法の修正であった、こうなれば、手続としてはそうかもしれぬが、オーソドックスな行き方としては、健康保険法の本法を修正をする、こういう形で、裏口からこそ泥が入るようなやり方をせずに、堂々と本法の修正を提案をすべきである。これが成規なはかり方ではないか、こう考えるわけです。
 それから、制度審議会の問題は、あなたが言われぬでも、そういうことはわかっておる、先ほどから申し上げるように。ただ、法律の改正について、審議会の意見がいろいろ出ておるわけです。ですから、これを全然考慮せずにやることはいかがかと、こういうふうに申し上げておるわけで、その辺をあなたが追加をしてどうだ、こうだと法律論をかざして言う必要はないわけです。
○衆議院法制局長(三浦義男君) 私が先ほど申し上げましたのが十分でなかったかと存じまするが、この政府提案の原案に即しまして、私はただいま説明申し上げたのでございまして、いま、小野先生がおっしゃいましたのは、ちょっと誤解があるんじゃないかと思います。と申しますのは、政府提案の中には、三つの問題が改正案として提出をされておる。第一は、臨時特例法の延長法案である。第二は、健康保険法の本来の内容を改正する案である。それから第三は、船員保険法の内容を改正する案の三本立てである。提案してきました題目は、それらをみんな書けばいいのですが、「健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律」とありまして、その下に「等」と書いてある。これは、従来の慣例で、三本に分けましたものを全部三本とも題名に書けば長ったらしくなりますので、臨時特例を第一条に書いたから臨時特例としたのだろうと思います、政府のことですから。そうして、それ以外の健康保険法の改正等あるのでありますから、「等」ということを加えて題名にしたのでございまして、提案の中には、健康保険法の改正案があるのですから、したがいまして、原案の中にある健康保険法をある程度修正するということは何ら差しつかえがない、こう申し上げたわけでございます。
 それからもう一つは、いわゆる諮問する問題についてでございますが、これは御意見のとおりでございまして、私は、ただ国会側といたしまして、そういうことは、国会法規によって制限を受ける範囲において、政府の意見を聞くとか何とかという制約は受けるが、それ以外については政府の問題だと、こう申し上げたにすぎないのであります。
○小野明君 あなたは、非常な何というか、おかしなところに理屈をつけて、これを合法化するという技術にたけておられるから、私ども、ごまかされるのだが、なるほど、あの修正点は何点かある。それは本法に当たるところは分べん給付あるいは船員保険、本法をさわっている部分もありますよ。それは量からいって、ごくわずかなものである。いわば何というか、針の穴みたいなものです。それをパイプとして、そこからあなたがだんだんドリルで穴を大きくして、しまいに手を入れて一番本体である料率、本法の生命である料率のところにさわった、これは合法である、こういうふうにこじつけ解釈をして、これをしも正しい、こう言われているように、私は解するわけです。そのために、あなたは法制局長をおやりになっておるんだろうが、こういうことをやってよろしいかどうか。これは好ましいあり方かどうか。量なり質の、量が大きくなれば質が変わっていくと言われているが、そういうところまでやっているやり方というものは、正しいかどうかということを言っているんですよ。
○理事(大橋和孝君) ちょっと関連して。いま局長が言われたが、「等」という名前で、そうして初診料を二百円にする、それから入院料を六十円にする、国民に対してはお金の負担が大きくなってくるこの問題を修正の中では「等」として中に含めておる、こういうわけですね。これは法律解釈上どうか、いまのに関連してひとつお答え願いたい。
○衆議院法制局長(三浦義男君) 私は、先ほど来申し上げましたように、政治的な見地を加味しないで、純法律的な立場で申し上げているわけでございまして、そういうやり方がまた別個の見地からいいか悪いか、これは皆さんが御判断になることでございまして、私がとやかく言う権限は持っておりません。したがいまして、私にお聞きになられましたので、これは法制局長としての法律的見解を述べただけでございます。それから先にお話のございました「等」という問題で、これもちょっと誤解があると思いますが、政府の提案に「等」となっているので、今度は「等」自体を削りまして、健康保険法の一部改正となったわけでございまして、本来の健康保険法の従来第二条にございましたのを第一条に直して、健康保険法の本来の改正をやったわけでございますから、それは何ら問題ない。健康保険法の「等」という名前は、政府が出してきた原案に「等」がついて、三ヵ条を一緒にひっくるめた内容のものであると、こう申し上げただけであります。今度はそれを本来の健康保険法及び船員保険法の一部改正という題名に改めました結果、題名と内容がずばりそのものになったのであります。
○理事(大橋和孝君) 修正案の中に「等」となって……。
○衆議院法制局長(三浦義男君) 修正案は「等」となっておりません、「等の」まで削りましたから。政府原案が「等」、詳しく申し上げますと、題名は「健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律等の一部を改正する法律」、こうなっておりますのを、その中の「臨時特例に関する法律等の」までを削ったことの内容にいたしましたから、「等」も削られております。
○理事(大橋和孝君) それは、そういう意味じゃない。料率を千分の七十にするなどの修正と書いてある、いまの題名じゃなくて。
○衆議院法制局長(三浦義男君) それは、政府から提案になっておりますのは、健康保険法の一部改正ということで、政府原案にありました二条でございますが、その中の改正の七十一条の四というところで料率の「千分の六十五」を「千分の六十六」に改める、こういうことになっておりましたのを「千分の六十六」を「千分の七十」に修正で直した、その「千分の七十」と直したのは臨特法にありました「千分の七十」の料率をとった、こういうことでございまして、ちっとも問題ないと思います。
○小野明君 この問題を残しまして、まだ基本的な問題がありますから、少し先に進みたいと思います。
 大臣にお尋ねをいたしますが、これは現在の特例法が成立をいたしました際に、多くの欠点とかあるいは問題点が残っておる、この法律には。したがって、二年間という期限が切られておる。この二年間の間に抜本的な医療保険の改革案というものが出されることになっておったわけですね。これは、総理も、厚生大臣も多くの場所で言明されていることは、御承知のとおりであります。ところが、今回の修正によりまして、二年間というものがはずされた。いわば永久に――この修正によりますと、これは本法さわっておるわけですから、四十二年に制定をされた特例法の趣旨というものが全然なくなってきた。この二年というものが削除された意味、いわばワクをはずして、二年というワクをはずして、何年でもいいからこれでやれということになっておるわけです、この修正案の意味は。こういう意味を、大臣は、一体どのように考えておられるのか、お尋ねしたい。
○国務大臣(斎藤昇君) ただいまの御質問の点は、まことに重大な御質問だと思います。この修正案の性格というものから考えて、この点が一番政治的には問題になる点であろうと、私は思います。そこで、政府といたしましても、総理はじめ私も、二年以内には必らず抜本的な改正案を提案をいたしたいということを、たびたび両院の本会議においても申し上げておりまするし、また、与党である自民党もそのことを申し、すでに抜本改正の要綱を一応決定されているわけであります。そこで、この法案の修正のお話がありましたときに、与党と政府との関係でありますから、一応私も意見を聞きまして、これは政府がいままで言っておる、いわゆる抜本改正を二年以内に提案をいたすという考え方を考え直させるものであるのか、また、党のいままでの考え方を変えるものであるのか、この点は重要なんだが、どうなんだと、これは十分話し合いをいたしました。党といたしましては、臨時特例は廃止せよという声が非常に強いから臨時特例は廃止をする、臨時特例はそういう声にこたえて廃止しましょう、しかしながら、そのために保険経済がもっていかないと困るから、千分の七十と、それから薬価を除いた一部負担は本法に入れるけれども、これは抜本改正をおくらせるという意味は毛頭ない。これは既定方針どおりやるべきである。党においては、総務会で党の最高意思決定をいたします際に、この修正をいたしても抜本改正はおくらせるべきではない、早急にやるべきだという附帯決議まではっきりとつけております。また、政府の考え方を変更するものでないということでございましたので、それならば、抜本改正に対するいままでの政府の政治的な姿勢、党の政治的な姿勢、これは少しも変わらないということを確認をいたしまして、それならばやむを得ないだろう、実質的にはさようになったわけでございますので、政府の態度も変わっておりません。この点は、はっきり申し上げておきます。
○小野明君 そういたしますと、抜本改正という従来の方向が、この修正によって変更をするということはあり得ない、こういう御答弁ですが、それでは、抜本改正というものはいつごろまでにおやりになるのか、それをお答えいただきたいと思います。
○国務大臣(斎藤昇君) かねがね申し上げておりますように、二年以内には必ず法案の提案をいたしたい、さように考えております。
○小野明君 二年以内といいますと、今年が四十四年の八月ですね、そうすると四十六年の八月までにはやらなければならぬ。いわゆる四十六年の当初国会にはかかっておらなければならぬということになりますね。そうしますと、それまでの間には、いわゆる社会保険審議会の意向もまた問わなければならぬでしょうし、その辺の具体的なスケジュールといいますか、何度も総理や、厚生大臣がこの点は御答弁されておられるわけですから、また衆議院においても、そういった手順等についても、若干この御見解を述べておられるようですから、その辺を確かめておきたいと思います。
○国務大臣(斎藤昇君) そのために、両院におきまして御質問がありました際にも、できるならば、この国会中に、要綱的なものでも関係審議会に諮問をいたすように努力をいたしたいと、かように申し上げております。それには変わりはないわけであります。できるなら、この国会中に要綱、細目に至るまでの要綱を諮問するということはむずかしいであろうと思いますが、大きな筋道についてでも諮問をいたしたい。かように考えておるわけであります。ぜひそうしたいと思うわけでありますが、会期も非常に少なくなってまいりまして、ここ十数日ほとんど国会にくぎづけにされておりますので、関係大臣と相談をいたすのには若干時日がおくれておりますが、しかし、できたならば、八月五日までにはぜひ諮問を出したいと、かように努力をいたしておるわけであります。
○小野明君 御承知のように、来年は安保の年ですね。こういったいろいろの問題がありましても、いまの御答弁のとおりに、二年のちにはきちっと抜本改正案というものができ上がる、このように確認をしてよろしゅうございますか。
○国務大臣(斎藤昇君) 来年は安保の年でありますが、来々年の通常国会には、まず抜本改正の道に踏み切れるような法案を出したいと思っております。抜本改正は、私は、一回、二回だけではできないと思います。相当広範なものを含んでおりますから、何といいますか、順序を経てやらなければならぬと思いますが、これに着手をいたすのは、来々年の通常国会に法案を出したいということで考えております。
○小野明君 抜本対策についての御意見を伺いましたので、私ども、そのとおりに確認をいたしまして、次の問題に進みたいと思うのであります。
 そこで、今回の改正につきましても、社会保険審議会あるいは社会保障制度審議会、両審議会からいろいろ答申が出されておりまして、これは大臣も十分御検討の上に、この今回の改正案というものが出されておると思うのであります。そこで、この社会保障制度審議会のほうから、会長の大内兵衛さんから答申をなされております中に、なかなか政府に対するきびしいものがあるわけであります。こういう項がある。「この特例法の二ヵ年の期限が延長されるような提案がなされることは、国民としておおよそ予想されなかったところというのほかはない。」というのは、二年間に抜本対策というものが出されるということを期待しておるからですね。こういった点で、「本審議会は、心からの遺憾を感ずるとともに、医療保険の前途に対してまことに憂慮に堪えない。」、こういうきびしい批判がなされております。そこで、この抜本対策については「筋のとおった成案を早急に期待することは不可能と考える。」、その「期待」というのは、政府に期待することは不可能と考える、こういうことではないかと思うのですが、ここで参考に、「政府は、英国の王立委員会のような機構を設け、少なくとも原案作成はこれに一任することを勧告したい。」、こういう答申がなされておりまして、これはきわめて注目に値するものである。政府はきびしくここで審議会からおしかりを受けておる。異例のこれは答申ではないかと思いますが、こういった提案さえもなされておるのですが、これについてはどのようにお考えであるのか、この答申をどう生かそうとされておるのか。
○国務大臣(斎藤昇君) 社会保障制度審議会の答申の最後のところに、いまおっしゃいましたように、英国の王立委員会のような審議会を設けて、そこで審議をさせるのが適当ではないかということでございます。私は、個人的な意見といたしましては、一つのりっぱな意見であり、このようにできるならば、これはむしろ政府としてはありがたいことで、そういう委員会を設けて、委員会で専心検討をしていただいて、それによってやるということは、これはけっこうなことだと思うのでございますが、しかし、実際問題として考えてみます場合に、政府は、二ヵ年以内に必ずやる、こう約束をしておって、今度できなかったのはきわめて遺憾であるということで、たびたび遺憾の意を表明をいたしております。しかし、さらに二ヵ年内には必ずやりますから御了承をいただきたいと言うております際に、これから王立委員会のようなものを設けて、そこで審議をしていただきますということは、政府としてはできません。政府が責任回避をするような感じがいたしまするし、また、いま一面、昭和四十一年にこういう考え方に立って制度審議会をつくってもらうべく法案を提出をいたしまして、これが国会においていれるところとならず、廃案となりました。そういう経過もあります。したがって、そういう王立委員会のようなものをつくるという考えはきわめてけっこうでありますけれども、すでに廃案になったといううき目を見た経過から考えまして、この委員会をつくるということそれ自身がこれは非常な問題である。むずかしい問題である。かつまた、先ほど申しました二年内に政府は責任を持って、こう言っておりますのを委員会にまたゆだねますということは、先ほども申しますように、政府の責任としてはとうていできないことである、かように思って、この答申に従う委員会の法律案を出すことを見合わせたわけでございます。
○小野明君 そこで、少しこの内容に入ってまいりたいと思うのですが、この政府案というのは、提案理由にもありますように、当面の財政危機というものにどう対処するかということが趣旨で提案をされてまいったと思います。大臣も先ほど抜本改正は別途これはやるとして、これが残っておるのだから、この修正案に従ったと、こういうふうにおっしゃっておるのですが、この修正案によってこの危機というものが切り抜けられるかどうかですね。あるいはこの財政危機というものがますます深刻になってくると予測をされておるのか、もし、この修正案によって財政危機というものがますます深刻になるということになれば、当然これにどう対処するかという方途がなければならぬと思うのですね。この辺は、一体、どのように見ておられるのか、御見解を承わりたいと思います。
○国務大臣(斎藤昇君) この修正案によりまして薬剤一部負担が削除をされたわけでありますから、したがって、それに対する財政的効果というものはなくなってしまうわけで、本年度において三十四億、平年度において六十八億ということになりますが、しかし、実際はもっとふえるおそれもあると、私はかように思います。したがって、財政的にはさらに困難を加えるであろう、かように考えます。これに対処いたしていろいろな方途を考えていかなければならないと、かように考えます。党が修正案を決定せられます際に、薬剤一部負担は削除はするが、しかし、乱診乱療という点を十分防ぐことのできる措置を考えるということ、これは党の協議会における附帯決議でありますが、これは、政府といたしましても、同様に考えておるわけでありまして、これらの点は抜本改正の際はもちろん、抜本改正に至るまでにおきましても、できるだけ考えてもらわなければならない点だと考えております。
○小野明君 いままでの保険財政のあり方ですと、当然これは悪化してくることは予想をされるわけですね。ですから、この修正案が通った、あるいは提案されておる段階で、どうこれに対処をするかという具体的な手だてというものはもうあってしかるべきではないか。また、この保険財政を窮屈にしてくる要素というものもまた考えられるわけですね。厚生大臣は、昨年でしたか、この委員会での御答弁の中に、診療報酬の点に一度触れられたことがあるわけです。物価、人件費の高騰という問題から診療報酬も当然これは引き上げらるべきものである、このようにおっしゃったことがあるわけですね。この修正案という事情が加わり、さらにいま中医協でいろいろ議論をされておる問題もあるわけです。この要素が新たにこの修正案に加わってくるということが当然予想されてくると思う。そういった場合に、どのように対処をしていくのかというのは、これは当然考えておられなければならぬ問題ではないかと思います。この辺はどのように、もし数字がわかれば、それを御説明をいただきたい。具体的な対策としてどうやるのか、これをひとつ御説明をいただきたいと思います。
○国務大臣(斎藤昇君) 診療報酬がやはり物価、人件費の上昇に伴って当然是正されるであろうということを、私は先般当委員会において申し述べまして、中医協を無視するのじゃないかというようなおしかりさえも一方受けたのでありますが、中医協の答申は、まだいただいておりませんけれども、しかし、いま常識的に見て、そういう答申が遠からず出るであろうと、私は思います。出てまいりましたら、これはやはり尊重してまいらなければならないと思うわけであります。そこで、その数字はどのくらいになるか、この見通しは、いまここでちょっと申し上げるのは早計であろう、かように思いますので、お許しをいただきたいと存じます。
 ただ、診療報酬全般にわたって、たとえば一%上がるということになれば四十三億ふえるということでありますから、それによってどの程度上がれば何ぼ支出がふえるかということは御想像いただけると、かように思います。何%上がるかということは申し上げられませんが、一%上がれば四十三億程度上がるということから、まあいろいろと御想像をいただけるのじゃないだろうかと、かように思います。その際に、どうして赤字を克服していくかという点は、これは、何といいますか、必要な診療は十分受けられるようにしてまいらなければなりませんし、いわゆる乱診乱療というものがありとすれば、それをできるだけなくしていくということがまず第一点である、かように考えます。
○小野明君 大臣のお考えの片りんが出たように感ずるわけですがね。私どもからいえば、この特例法の効果というものは受診抑制、あなたのほうからいえば、乱診乱療を防止をするということばでこの危機を突破しようとされておる、このように私は伺っておるわけです。私は、そこで根本的に誤った対処をしていただかないように、むしろねらっておる受診抑制という効果を心配をいたすわけであります。
 この四十二年、四十三年の保険診療、保険財政、政管の健保財政の状況を見ますと、いわゆる受診抑制というこの特例法の波及効果というものがまあきわめて小さい――小さいと言っては語弊がありますけれども、もうすでに出てきておるように、この数字の上から拝見をしておるわけであります。これは、まず医療給付というものが四十二年に下がっておるし、あるいは四十三年も下がっておる。これがきわめて下降の現象にあるということは、医療の内容を改悪する、医療需要を抑制するということによって、この保険財政の危機というものを突破しようとする意図ではないのかということを心配するわけであります。今回の修正案によって政府案よりもさらに手元が苦しくなる。だから、よけいに受診抑制という特例法の波及効果、あるいは本法修正による波及効果というものをねらって、この効果を発揮されようとしておるのではないか、こういうふうに心配をするわけですが、この辺は、さらに御見解をいただきたいと思うのです。
○国務大臣(斎藤昇君) ちょっと御質問の御趣意を十分了解しておらぬかもわかりませんが、薬剤の一部負担は受診抑制になるから、これをやめろという御意見が審議の過程で、衆議院のほうでも非常に強かったわけであります。私は、これが正当な診療を抑制するとは思わない。たとえば薬剤一部負担の免除をする規定がございますから、したがって、標準報酬二万四千円の段階以下の方には薬剤一部負担をする適用がないわけでありますから、したがって、薬剤の一部負担ができないから受診を見合わそうかということには、あまりならぬであろう、かように政府としては考えておったわけでございます。ただ、一部負担がなくなるということは、とにかく三十四億なくなるわけでありますから、それだけ赤字がふえるということを申し上げたわけであります。しかしまあ、精神的な受診抑制の作用をしているのだという御意見も強いわけです。そこで今度これは削除されたものだと、かように了解をいたすのでございます。私の申し上げたいのは、薬剤の点はそういうことでなくなりましても、まあいろいろと乱診乱療というようなことをするといわれる面もあるわけで、それがすべてだとは申しませんが、たとえ一部にでもそういうことのないような方途をできるだけ講じていくのが、やはり健全な保険財政を維持していく道であろうと、かようにいま考えて、どういう方途がいいか、十分検討をいたしたいと、かように考えておるわけであります。そのために正当な受診を抑制するということになってはこれは相ならぬわけでありますので、これらの点は保険制度の審議会等にも十分はかって善処をしてまいりたいと、かように考えます。
○小野明君 話は、抽象論ではどうもおもしろくないと思います。これは修正案の提案者にお聞きしたほうがいいと思うのですがね。政府案と比べて、被保険者というものは、修正によってどのような利益を受けるのか、それを端的にお尋ねをしたいと思うのです。いま受診抑制にならぬと、こう言われるが、二年前に比べると、お医者に行くのに千円持っていかなければ医者に行かれぬわけです。現金をそれ以上持って行かぬとかかれぬわけです。薬剤の一部負担をはずすということは、これもまた幾らか軽くはなるのかもしれぬが、現金を相当持たぬと医者に行けないということは、いま受診抑制の効果を出しているということを申し上げたいわけです。そこで、修正案というものは、被保険者というものの立場というものを十分考えて私は出されているものであろうと思うのだが、この修正によって被保険者が利益を受けるということになるならば、それはどういう点なのか、澁谷さんにひとつお尋ねをしておきたいと思うのであります。
○衆議院議員(澁谷直藏君) 先ほども答弁申し上げましたように、私どもは、今回の修正案をつくるに際しまして、一番重点を置いて考えました点は、ただいま御指摘の被保険者の負担をできるだけ軽減したい、こういうところに重点を置いて修正案を検討したわけでございます。その結果、分べん費の改善に見合う保険料率千分の一の引き上げというものも、これをひとつ取りやめよう、これによって財政的には本年度三十四億円の減収ということになりますから、これは被保険者側からいえば、三十四億円だけ負担が軽減されるということになるわけでございます。さらにまたただいま御議論がございました薬価の一部負担、これはいろいろな御意見がございますけれども、私どもはこの際薬価の一部負担というものは廃止しよう、そこでその結果、三十一億円の収入減となりますから、その分だけは被保険者の負担の軽減になる、両者合わせますと六十四億円の被保険者の負担の軽減、こういうことになるわけでございます。
○小野明君 私ばかり質問をいたしますと、他党との関係もありまして、実は委員長おられませんが、切り上げろというふうに言われているわけです。それで質問は再度保留をいたしまして、きょうのところは、他党に譲りたいと思います。
 最後に、厚生省にお尋ねをしたいのは、政府管掌の健保財政の状況というところで、四十二年度の決算はすでに出ておる。これで見ると、厚生省の見方というのは、保険料収入においても過小な評価をしておる、あるいは医療給付の面においても、実態よりもかなり上回る水増しの見方をしておる。その結果、決算との差がきわめて大きいわけです。それから見ると、四十三年の見通しというのも、これは厚生省の推計、試算というのは信用ならぬ、こういう気がしてならぬのですが、四十三年あるいは四十四年、少なくとも、今後二年間抜本改正ができるまでのこの健保財政の見通し、試算というものは、なされておってしかるべきだと思います。この点はどのようになっておるか、お伺いをしておきます。
○政府委員(加藤威二君) 政府管掌健康保険の収支の見通しにつきましては、確かに先生御指摘のように、予算のときの見通しと、年度が終わりました決算の場合の数字というものが相当食い違っております。私ども事務当局といたしましては、まことに申しわけないと思うのでございますが、その理由といたしましては、これは収支の見積りでございますから、まず収入をどう見るかということでございますが、これはその収入につきましては、当該年度の前二ヵ年の保険料の標準報酬のアップ率といいますか、上がりぐあいというものを一応とりまして、その統計によりまして当該年度の全被保険者の標準報酬が平均して幾らになるかということを推計するわけでございます。したがって、たとえば過去二年が非常に景気が、何と申しましょうか、上昇期にあるというときには、非常に標準報酬が当該年度の実績と比べて、何と申しましても下目に出てくる、これは当然そういうかっこうになるわけでございます。過去二年の標準報酬よりもだんだん上がってくるという場合には、標準報酬の評価が下目に出る。逆に景気が下がってくる時期におきましては、高い時期の標準報酬を基礎にして計算いたしますから、したがって、予算よりも決算のほうが標準報酬が安くなる、こういう食い違いが出てくるわけでございます。私どもといたしまして、過去の数字をとるということをもう健康保険始まって以来ずっとやっておりますので、したがって、そういう食い違いが何としても出てくる。景気がずっとこうコンスタントに並行で動いております場合には、あまり食い違わないわけでございますが、そういう点があるわけでございます。
 また医療費についても、医療費は過去三年の推移を見てきめておりますけれども、これもまた医療費、ことに最近の医療費は非常に動きが激しいわけでございます。なかなか来年度どういう動きをするかということは、予測が困難でございます。したがって、私どもは、過去三年間の実績をもとにして数字をはじいている、こういうことでございますので、両方とも非常に予算と決算がなかなか合わない、それがまあダブりになりますので、赤字の数字あるいは黒字の数字というものが非常に狂ってくる、こういうことでございまして、私どもが恣意的に、意図的に数字を動かしているということではございません。ただ、いま申し上げましたような数字のはじき方をいたしますもので、予算と決算の間に往々にして食い違いが生じてくる。ことに景気の変動の激しい時期あるいは医療費の動きの激しい時期には、そういう食い違いが非常に大きく出てくる、こういうことでございます。昭和四十二年度におきましては、特例法成立当時赤字が三百二十億円といわれましたのが、決算においては五十八億円に減りまして、二百六十二億円という誤差が生じたわけでございます。四十三年度におきましては、予算当初におきまして、単年度百四億円の赤字が出るだろうということでございましたが、現在のところ、それが四十五億円くらいに減少するのではないか、こういう見方になっておったわけでございます。まあ四十四年度の二十七億円という数字も、修正によりまして、九十一億円になったわけでございますが、これも先ほど大臣から答弁ありましたように、また医療費が動くかもしらぬ、こういうようなことで、それによってまた変動が出てくる、こういうことでございます。(「食い違いが大き過ぎるよ。」と呼ぶ者あり)
○小野明君 少々の数字ならがまんができるわけです。しかし、これは四十二年度においても三百二十億円と見ておったのが決算で五十八億円だと。これは見込み違いにしてはあまりにも大きすぎる数字ではないか。四十三年度でも百四億円と見ておる。これがいま推計では幾らですか、四十五億円ですか、これは倍以上ですね。四十二年においては、これはもうはなはだしく違う。今日景気によって動くとかいうことを言われておりましても、これは普通の会社ならもうとうに――これはその逆の意味だから倒産はないけれども、めちゃくちゃにもうけてしょうがない。こういう会計責任者だったらこれは首だよね、逆にいえば。政府機関がこういう食い違いを起こしたんではどうにもならぬ。何が原因でこんなに食い違いを起こしたのか、それをひとつ明らかにしてもらわなくては困る。
○政府委員(加藤威二君) まず四十三年度、これは百四億円が四十五億円ということでございまして、五十億円程度の数字、これはまあ確かに五十億円というのは大きい数字でございますが、予算規模といたしましては、大体四千億円の規模でございますから、まあ一%ちょっとということで、(「そんな答弁ってあるか。」と呼ぶ者あり)これは四十三年度はお許しを願いたいと思いますが、四十二年度の二百六十二億円というのは、確かにこれは大きい数字でございまして、これは私どもまことに、先ほど申し上げましたように、申しわけのない数字だと思います。
 その原因といたしましては、二百六十二億円違いましたものの内訳といたしまして、保険料収入が予定よりもたくさん入りましたのが八十三億円でございます。それから保険給付費の減少が百五十七億円あります。それから利子その他節減いたしまして二十二億円、こういうことで二百六十二億円の赤字が縮まったわけでございます。保険料収入の増の八十三億円というのは、これは、先ほどちょっと申し上げましたように、景気が非常に上昇時期でございましたので、私どもが見積っておりました標準報酬よりも現実の標準報酬のほうが高くなったということと、こういう時期でございますので、第一線の私どもの社会保険事務所の職員が保険料の収納率の向上のために非常に努力をいたしまして、収納率が予想以上に上がったということで、保険料が予想よりも八十三億円よけいに入ってきたわけでございます。
 それから百五十七億円保険給付費が減りましたが、そのうち、医療費が百三十一億円減っております。これは、衆議院でも、そういうふうに大幅に減ったのは、特例法の一部負担というようなことで、受診抑制の結果、医療費が減ったんだろう、こういうおしかりを受けたわけでございますが、私どもも、薬の一部負担の影響が全然ないということは申し上げませんけれども、これも先ほど大臣から御説明申し上げましたように、低所得者の免除ということもございますし、薬も一日一剤十五円という比較的軽い負担となりますので、ほんとうに必要な医療というものを抑制するというほどの影響はないというぐあいに私ども考えておりますが、そのほかに、最近におきまして、政管健保の本人の受診率というものが非常に上がってきたわけでございますが、これがたまたま四十二年初めからやや落ちついて、これは特例法の施行以前からでございます。そういう傾向と相まって百三十一億という医療費の減が生じたわけでございます。そういうことで、昭和四十二年度の二百六十二億というのは非常に大きい数字で、まことに申しわけないと思うのでございますが、今後、なるべくこういう大きな誤差のないように、さらに努力をいたしたいと思います。
○小野明君 今回の千分の五の引き上げの見込みに保険料収入の見込みも立てられておるようですが、あなたは、過去二年間の標準報酬の伸び率を見てきめたいというのだが、四十二、四十三を見たら四十四は出るわけですね。そうすると、これは例を保険料収入にとってみても、あなたの見込みよりも相当大幅に伸びがある、このように私どもは見ざるを得ぬわけです、この数字から見て。それから四千億もある財政の中の一%だからというような議論をあなたはされるようだが、そんな頭でやられちゃかなわんですよ。百億も、二百億も数字の違いを出しながら、何%だからということでは、これはいけませんよ。もう少しきちっと見通しを立てなければいかぬし、この四十二、四十三を見ると、あなたの保険料収入の見通しにしましても、どうも水増しというか、赤字を過大に評価するというか、低めに見過ぎていつも黒字を出しておる、私はこういう結果を生むような気がしてなりません。ですから、四十二年のような大きなミスがなく、正確な見通しをひとつ立てるようにお願いをしたいと思うのです。
 この問題は、いま休憩をとるようですから、なお後ほどお尋ねをしてまいりたいと思います。
 午前中の質問はこれで一応やめておきます。
○理事(大橋和孝君) 午前の質疑はこの程度にとどめまして、午後一時より再開をいたします。
 暫時休憩いたします。
   午後零時十四分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時二十六分開会
○委員長(吉田忠三郎君) 社会労働委員会を再開します。
 休憩前に引き続き質疑を行ないます。
 御質疑のある方の発言を求めます。
○小野明君 私は、きょうの質問については、委員長のたっての要望もあり、自分なりに多少縮めながらやってきたわけですね。そこで午前中も質問をいたしたわけですけれども、肝心の保険財政の問題になって、これから労働省あるいは大蔵省に質問をするという段階で委員長がやめろと、こういうことについては、私は、まことに委員長の運営に納得がいかぬ。これは、一体、どういう運営を委員長はおやりになろうとしているのか。私は、きょうの質問で、かなり三時間なり四時間の量を用意してきておる。これを縮めてやってきているんだけれども、午後はかわれなんという話があっておる。午前中の終わりでは、大橋理事が委員長席にすわっておったから、あえてその文句は私は言わなかったけれども、成規に委員長がすわっておるから、一体、どういう運営をされようとするのか。肝心の締めができない。これはどういう運営をされるのか、お聞きしておきます。
○委員長(吉田忠三郎君) ちょっと速記とめて。
  〔速記中止〕
○委員長(吉田忠三郎君) 速記を起こして。
○上林繁次郎君 私は、医療の抜本対策について、数点お尋ねしてみたいと思います。
 抜本対策については、政府のたびたびの公約であります。今日までこれが長引いてきたその原因ですね。と同時に、政府が、これに対してどのような努力をしてこられたのか、そういった点からまずお尋ねをしてみたいと思います。
○国務大臣(斎藤昇君) 抜本対策につきましては御承知のように、昭和四十二年の十一月に、厚生省といたしましては、一応試案をつくって、それに基づいて抜本対策を考えようといたしたのでございますが、これに対するいろいろな批判があり、与党である自由民主党におきましても、さらに検討を加えるということで、自由民主党では、各界各層の意見を医療基本問題調査会において聞かれまして、そうして一年余りかかって、今年の六月五日に党の一応の調査の結果をまとめて、政府に提示があったというのが今日の段階でございまして、何ぶん関係するところがきわめて広く、また問題もむずかしいものでありますから、したがって、抜本改正の方向についてきめますについても、そういった長い時間を要したのでございます。この間に、政府におきましても、党の調査の促進方を絶えずお願いをいたしておったわけであります。政府といたしましても、手をつかねておったわけではございませんが、たびたび本会議等において申し上げておりますように、たくさんの問題と利害が非常に錯綜しておるという点から今日までに至りました。いずれにいたしましても、今日までに至りましたことについては、まことに申しわけないと、こう申し上げるよりほかにないと思います。
○上林繁次郎君 やはりこの問題は、たいへんな問題だと思います。姿勢の問題でありますけれども、私たちが考えることは、何となく政府が与党・自民党にいわゆるおんぶしている、このことについてそういうような感じが非常に強いわけです。そういう姿勢であっては、これはいつまでたってもこの問題は解決できる問題じゃない、こういうふうに思う。もっと積極的に政府がこの問題については取り組んでいくべきだ、こういうふうに考えるわけでございます。いま申し上げたように、いままでの姿は何となく与党におんぶをしておる、こういう感じがします。その点どうですか。
○国務大臣(斎藤昇君) ただいままでおんぶをしておったわけではございませんが、党の方針のきまるのを促進しながら待っておったという状況でございますが、一応意見が出てまいりました。これをもとにいたしまして、今度は政府が責任を持ってやってまいりたいと、かように考えます。
○上林繁次郎君 先ほど小野委員の質問に対して、厚生大臣は、王立委員会について、こういったものを設ける考えはない、こういうふうに答えておりました。私は、かえって利害関係者のいない、そういう委員会、こういう形のものになったほうがいいのではないかというふうに考えております。ところが、大臣は、そういうものをつくる考えはないというふうに、いまおっしゃっているわけですが、その点のひとつ詳しい理由、考え方について伺いたいと思います。
○国務大臣(斎藤昇君) 先ほどもお答えをいたしましたように、一つのりっぱな考え方であるとは思うわけでございますが、しかし、政府が、この段階になって、さらに委員会を設けて、そこで学識経験者にひとつフリーに検討をしていただくということは、いかにも政府が責任をのがれるような感じになるわけであります。いままでの経過がなければ格別でありますが、今日この経過を通ってきたこの段階において、これから委員会を設けて、そこで白紙で考えていただきたいということは、いかにも政府は責任を全うしないような感じがいたしますのが第一点。
 第二点は、昭和四十一年に、すでにそういった考え方で医療保険制度の審議会を設けようというので、法案を政府が提出をいたしたのでありますが、これが国会においてついに廃案という形になりました経緯から考えますと、今日社会保障制度審議会があり、また社会保険審議会があり、そういったものと別個に新しいものを設けるということ自身、この法案を国会においてやっていただくということは、おそらく過去の経緯から考えても非常に困難だろう。この二つの理由から、そういう審議会に政府が責任を持って諮問をして、そうして国会に提出をするということ以外には方途がなかろう、かように考えたわけでございます。
○上林繁次郎君 大臣の話を聞いておりますと、王立委員会のようなものをつくるということは、政府の責任回避のような感じを持っていると、こういうふうに受け取れたのですが、私は、この医療問題については、大臣もおっしゃっているように、非常に幅の広い、奥深いものである、こう思います。そこで、私がお尋ねをしたことは、現在のいわゆる制度――利害関係者といいますか、こういう人たちからなる一つの体制というものは、どうしても公平を欠くのじゃないか、こういう考え方を持っている。そこで、やはり純粋な、そういう利害関係者を含まない純粋な立場で、この大きな問題に取り組んでいく、そういう姿勢ができたほうがいいのではないか、こういった点からお尋ねしたわけです。その点のところを私はもう一歩突っ込んで考えていく余地があるのじゃないか、こう思いますが、いかがでしょう。
○国務大臣(斎藤昇君) 医療保険制度をここでひとつ考え直さなければならない時期にきているということは、もう数年前からの問題でございますが、そのときに、そういう発想で、そういうやり方でやったらよかったと思います。四十一年にその発想を持って国会に法案を提出したわけであります。それが不幸にして廃案になってしまったという経過から考えまして、二ヵ年以内には必ず政府はやりますと言うて、やり切れなかったので、もう二ヵ年お待ちいただきたい、ぜひやります、その段階において、もう一度これから審議会をつくって、そこで審議をしていただきますとは、政府は、とうてい責任上さようなことは言えないというのが私の心境であり、また、政府全体の心境であるという点をお察しをいただきたいと存じます。
○上林繁次郎君 この抜本対策に関しては、おのおの関係団体の意見に懸隔がある。そこで、どのような点が一番大きな問題点になるかということ、こういった点についてひとつお答えを願いたいと思います。
○国務大臣(斎藤昇君) 党のほうでまとめられた意見、また政府の考え方といたしましても、今日、医療保険制度がその必要に応じて次から次へといろいろな形でできてまいりましていま八つの形態があることは御承知のとおりであります。そして国民皆保険という形にはなりましたけれども、そこで国民の側から考えてみますると、負担は必ずしも公平ではない、給付も必ずしも均等ではないという、いろいろなアンバランスができてきております。また、仕組みが仕組でありまするので、保険経済において余裕のある経済もあれば、非常に赤字を持つ経済もあるという形で、国民ひとしくできるだけいい給付を、しかも、それは企業あるいは国民の職業等に基づいて当然差異のあるべきものならばけっこうでございますけれども、そうでない部面において給付の内容が違うということはよろしくないというわけでありますから、そういう点のないようにいたしたい。同時に、やはり国民が健康であり、疾病にかからないということがまず第一の条件でありますから、そういった国民の健康の維持増進の施策、その体系というものとできるだけマッチする保険の単位がよろしいという考え方も成り立つわけであります。こういう考え方に立ちまして、できるだけ保険の種類の数を減らすということが必要になってまいるわけであります。同時に、いま健康保険に入っておられる人も、退職をされると国民保険に入ってこられる。そして退職をせられた人たちは年をとっておられますから、御承知のように、老人の病気がずいぶん多い。それが地域保険で保険をしていくという形になってまいっております。老人に対する医療の必要性、需要というものはますます高まってくるというようなことを考えまして、だきるだけ地域保険とそれから職域保険、老人保険、この三つの制度に統一をしていくことが将来の目標ではなかろうかというのが党の考え方であり、政府も、まだ最後決定はいたしておりませんが、方針としては、そういった方向でひとつ抜本改正に臨んでいきたい。
 そこで、地域保険と職域保険の関係でありますが、いま職域保険の中には家族も一緒に入っておる。その家族は地域保険で処理するほうがいいじゃないかという考え方が一方に強くあります。ところが、既存の保険制度は家族とそれから主人――いわゆる職場に働く主人とが一緒の保険に入っております。これを分離するかしないかというのが、これは一番大きな問題であろう、かように考えております。職域保険、勤労者保険、労災保険を一つにするがいいかどうかという点につきましても問題がございます。この点も慎重に考えなければならないと考えておるわけでございます。
 なお、このほかに、午前中も問題が出ましたが、いわゆる診療報酬制度のあり方は、今日のままでよろしいかどうか、医薬分業をもっと促進して、早く完全な医薬分業をやったほうがいいじゃないかという意見もございまして、これらの点が相当むずかしい問題ではありますが、しかし、どうしても解決をしなければならない問題であり、診療側におきましても、良心に従った技術を発揮すれば、それに相応するだけのやはり診療報酬制度という立て方をしなければなりません。そういう意味から検討すべき点が多々あるわけでございます。
○上林繁次郎君 いま申し上げましたように、抜本対策については関係団体の意見、あるいは思惑、これは千差万別でございます。そこで、この際、関係審議会に諮問する抜本対策の大綱ですね、この大綱について明示願えますか。
○国務大臣(斎藤昇君) その大綱につきましては、政府間で十分検討をいたしまして、そうして諮問をいたしたいと考えております。ここで政府の諮問をする大綱はこれでございますということを申し上げるまでに、もう若干の時日をおかしいただきたいと存じます。
○上林繁次郎君 しつこいようでございますけれども、若干のということでございますが、大体見通しとしては、どのくらいにその見通しを立てておられるのか。
○国務大臣(斎藤昇君) この国会の始まります当初から、衆議院の予算委員会におきましても、この国会の会期中にはぜひその大綱をまとめて諮問をいたしたい、さように努力をいたしたい、さように申し続けており、またその努力をいたし続けておるわけであります。先ほど申しましたように、六月の五日に党の一応の調査の結果を提示をしていただきました。しかし、これには考えなければならぬという反対意見もついておるわけでございますから、それらを勘案をいたしまして関係省と話をいたしたい。私は、この国会の終了までにはぜひやりたいと、いまもなおかつそう思っておりますが、御承知のように、ここ十数日ほとんど国会に張りつけられておりますので、若干関係大臣と折衝をする予定も延びてまいって苦慮いたしておるわけでございますが、まあ、できたら八月五日までには、政府として、その大綱をまとめたいと、かように存じております。
○上林繁次郎君 多少ダブる傾向があるかもしれませんけれども、先ごろ、いま大臣がおっしゃった自民党の国民医療対策大綱、これはもう発表されたわけでございますが、この大綱の考え方をそのまま審議会に諮問するという、こういうようなことがあり得ますか。
○国務大臣(斎藤昇君) この大綱そのままをというわけにはまいらないと思っております。この大綱の中に、これに反する意見もある。それを十分検討して、そして政府の大綱をつくるというたてまえになっておりますので、反対意見のついたものをそのまま諮問するということは、ただいまのところ考えておりません。
○上林繁次郎君 この大綱については五項目の付帯事項、付帯意見と申しますか、がございます。この付帯意見については、どのような考え方を持っておられますか。
○国務大臣(斎藤昇君) 先ほど申し上げましたように、これらの点につきまして関係省、関係大臣ともよく話し合いたいと、さように考えております。その機会をまだ持てないという現状でございますので、その話し合いをいたします前に、私はこう考えるということをちょっと申し上げかねるわけでございます。また、関係大臣の意見も聞いて私も判断をしなければならぬ点もあると、かように考えますので、しばらく御猶予をお願いいたしたいと思います。
○上林繁次郎君 先ほど大臣からちょっとお話がございましたけれども、そこでお尋ねをしてみたいのですが、被用者の家族を地域保険に移行する、こういう考え方。この問題については、各方面からいろいろの意見があるわけです。反対が強いということです。これらの問題についてどう対処されていくか。この点についてひとつお答え願いたいと思います。
○国務大臣(斎藤昇君) 私は、地域保険と職域保険と、この二つのあり方は、あるべき姿としては望ましい姿だ、かように考えます。しかしながら、今日、健康保険にいたしましても、その他の保険にいたしましても、その職域に働いている人と家族が一緒になっている。直ちに全部引き離せるかと申しますると、いろいろ制度の運用の実態等を見ますると、一挙に急激に一片の法律でやるというわけにはまいるまい。これは、できるものからそういった姿に徐々にやっていくということを考えるのがいいのじゃなかろうかと、ただいまのところ考えております。
○上林繁次郎君 そうしますと、大臣は被用者とその家族は別々にしたほうがよろしい、こういう考え方をお持ちになっているようですね。その辺の理由がちょっと明らかでなかったと思います。なぜそうしなければならないかという、その辺のところをひとつ詳しく御答弁願いたいと思います。
○国務大臣(斎藤昇君) これは最初に申し上げましたように、国民の健康の管理体制と、そして保険の組織というものができるだけマッチしているほうがいいと、こういう考え方からでございます。職域においては、その職域の健康管理体制というものがある。地域においては、地域の健康管理体制があるわけでありますから、それに合うようにするのが一番望ましい姿ではなかろうかと、かように思っております。
○上林繁次郎君 抜本対策に当たっては、医療保険の問題、これも確かに重要な問題であることは間違いありません。しかし、反面、この問題よりも、かえってその基盤となる医療制度、あるいはまた薬剤の問題等、こういう根本的な問題があると思います。この医療制度あるいは薬剤の問題等の根本的ないわゆる解決が必要であると思うのです。こういった問題について、そういうふうに考えるわけでありますけれども、この点についてどのような考え方を持っておられるか。
○国務大臣(斎藤昇君) 薬剤と診療との関係は、やはり医薬分業というものが望ましい姿ではなかろうかと、かように考えます。
 それから医療制度、おそらく医療機関の問題であろうと思いますが、これはやはり何といいますか、自由主義経済のもとにおける医療制度といたしましては、自由主義的な医療機関というものをやはり中心に考えてまいらなければなるまいかと考えます。医療国営という見地に立てば特別でありますが、ただいまのところ、医療の国営という点は考えておりません。これにはいろいろいいところもありますが、また適当でないところもあるようでございまするので、体制は今日の体制をとりながら、しかし国立あるいは公立等の病院の果たすべき職域もあるわけでございますから、そういった病院の必要な拡充をはかってまいりまして、また、過疎地域における医療機関の不足というものもございます。これなども解消してまいるというように考えてまいりたい、かように考えております。
○上林繁次郎君 今回衆議院から送付されましたこの健康保険特例法案、これは政府の当然の公約、またその責任を果たさないままに、これに関する赤字処理を一般労働者あるいは国民に転嫁しよう、こういうような感じがしてならないわけです。その点についてどういうふうな考え方であるのか、ひとつお答えいただきたいと思います。
○国務大臣(斎藤昇君) 政府管掌保険のいわゆる赤字解消策といたしまして、御承知のように、臨時特例法を二年前にお願いをしたわけでございますが、これは保険料率の引き上げももちろんございますが、政府の負担もその中に含んでおりまして、二百二十五億は政府が負担をしていこう、そうして保険料率は千分の五だけ負担をしてもらう、それから患者自身の一部負担、この三つの立て方でこの赤字を、とにかく抜本体制のできるまではこれによって克服したい、かような考え方でありまして、これは事業主にも、あるいは被保険者にも、また受診者も、また政府もということで臨時特例法が二年前に国会において成立をさしていただいたのであります。
○上林繁次郎君 また、あとで関連して問題が出てまいりますので、本問題はこの程度にしまして、今回の修正案では薬剤の一部負担がなくなったわけですが、そうなりますと、当然今後考えられることは、乱診乱療という問題が考えられてくる。こういった点が憂慮されるんでありますけれども、今後、政府としては、これに対してどういう行政指導をしていくかという問題は、やはりこの赤字をかかえている問題だけに、非常に大きな問題になってこようと思います。こういった点についてどのような行政指導をするかということについて、ひとつお考えをお聞きかせ願いたいと思います。
○国務大臣(斎藤昇君) 薬剤の一部負担がいわゆる受診を抑制する効果があるかないかという点につきましては、政府といたしましては、これによって受診は抑制はされておりません、また、そういう趣旨ではない、こう説明をいたしております。私もこれによって、受けるべき受診を抑制しておろうとは思わないわけです。しかしながら一面、いやそうは言うものの、やはり抑制の効果を持っているんだという御議論も一方に相当強くあるわけであります。そうでありますから、その中間ぐらいがほんとのところかもわかりませんが、それとは無関係に乱療乱診というものがあるじゃないかという声が、薬剤の一部負担と必ずしも関係を持たずに相当言われております。すべてのお医者さんがそうか、すべての患者がそうかといいますと、私は、それはごく一部であろうと思いますが、一部にいたしましても、そういう声がある以上は、そういうことのないような仕組み、またないような監査というようなことも必要であろう。かように考えまして、それらにつきましてはあるいは受け取りを出すとか、あるいは政府として償還方式をとるとか、いろいろな制度が考えられるわけでありますが、制度を考えますると同時に、その前に被保険者の方々にも、また診療側の方々にも、何といいますか、よく理解をしていただいて、そういった批判のないように、指導というとことばは悪うございますが、あるいは広報といいますか、理解を求めながら、また、できるだけ監査も適正にやれるようにやってまいりたい、かように考えております。
○上林繁次郎君 政府が言っておりますところの行政上の努力という点、これはどういった点をさしているのか、その中身ですね。行政上の努力、その中身、またさらに、過去三年くらいの行政努力の実績、こういったものをひとつお聞かせいただきたいと思います。
○国務大臣(斎藤昇君) 詳細につきましては、政府委員から必要に応じてお答えをいたさせますが、総括的に申しますると、たとえば保険料収入の点につきましては、保険料の滞納、遅延、あるいは当然納めるべき保険料の、何といいますか、査定というようなものの適正化をはかっていくということが一点、それから診療報酬制度におきましては、過当請求がないかどうか、こういうような点を中心にしたいわゆる監査と申しますか、診療報酬を支払う場合の査定といった点が主たる行政の努力だと思います。
○政府委員(加藤威二君) ただいま大臣からお答え申し上げましたように、行政努力の内容といたしましては、収納率の向上をはかるということと、それから医療給付費が適正に支給されておるかどうかということで、お医者さんのほうから回ってまいりますところの請求書について、過誤がないかどうかという点をチェックする努力をいたしております。その他、たとえば現金給付、傷病手当金というようなものがございますが、そういうものが適正に支給されているかどうかという点、そういうような点について行政努力というものを行なっております。四十二年度では約二十五億、四十三年度では約二十九億というようなのが行政努力による金額でございます。
○上林繁次郎君 この最近五ヵ年くらいの間の指導監査状況、これについてひとつお話願いたいと思いますが、これは特に薬価の一部負担が修正案によってなくなったわけであります。当然、保健所担当者の指導監査というもの、これを徹底していかなければならぬということが考えられる。そこでいま申し上げたような最近五ヵ年間における指導監査の状況、こういった点についてひとつお聞かせ願いたい。
○政府委員(梅本純正君) 保険医療機関等の保険医療担当者の指導監査につきましての最近五ヵ年間という御質問でございますが、昭和三十九年度以降につきまして申し上げますと、個別指導をいたしましたのが約三万三千件、それから監査をいたしましたのが約七百件を実施いたしました。監査の結果、指定取り消しの行政処分をいたしましたのが約四百件、その他約二百件につきましては戒告、または注意を行なっておる、こういうふうな状況でございます。
○上林繁次郎君 では、その次に移りますが、薬価の実態調査の状況、それと今後の見通し、これはどのようになっていくのか、こういう点についてひとつお答え願いたい。
○政府委員(梅本純正君) 薬価の調査につきまして、過去におきましていろいろ関係団体との協力問題につきまして問題がございましたが、四十二年の九月に、その以前約二ヵ年以上を費やされまして、いろいろ御審議になりました中央医療協議会から建議をいただいたわけでございます。御承知のように、中央医療協議会におきましては、三者構成の委員会でございまして、診療担当側もあるいは支払い側も、公益委員も一緒になられまして、「医薬品の実勢価格を薬価基準に反映させるため、薬価調査を少なくとも毎年一回実施すべきである。調査項目、調査対象等調査の細目については、今後本協議会において検討する。」という建議をいただいたわけでございます。そういう建議をいただきましたので、昨年におきましては、この中央医療協議会の調査実施小委員会でいろいろ御討議になりました調査項目に基づいて調査を実施したわけでございます。今回の調査につきましては、その前の調査が二本月でございましたが今年も二月に調査をするはずでございましたが、これが中央医療協議会の診療報酬の緊急是正の要望の審議といろいろからんでまいりまして、調査の対象になります医療機関である関係団体のほうの協力が得られませんで、現在のところ、中央医療協議会を中心にしまして、いろいろと審議が続けられておるということでございます。われわれといたしましては、できるだけ早くこの問題が片づきましたら調査を実施いたしたいというふうに考えております。
○上林繁次郎君 薬価の調査結果に基づいてこの薬価の切り下げがあった場合、この薬価基準の改定が行なわれる。その場合、その財政効果はすべて保険財政に充当できるのではないか、こういうふうに思うんですが、この点についての考え方についてひとつお答えを願いたいと思います。
○政府委員(梅本純正君) 先生のおっしゃいますようなお話につきまして、過去からよく言われましたのは、潜在技術料というふうなことばで言われておりました。薬価基準を下げるに応じまして、その薬価基準と実勢価格の差におきまして財源が出てまいりますので、それを技術料に振りかえるべきだというふうな議論でございます。しかし、現在におきましては、この二年有余にわたります中央医療協議会の審議の過程におきまして、できるだけそういう診療報酬の引き上げは診療報酬の引き上げとして十分に検討をし、薬価基準の引き下げというのは実勢価格と薬価基準との差をなくするということが一つの目的でありますので、それをできるだけ実勢価格に合わせるということで、一応現在のところそれを切り離した形で、やるべきことは必要に応じて今後やっていくというふうな形で進んでおります。
○上林繁次郎君 次の点に移ります。
 弱体の健康保険制度では国庫負担の定率は、これは常識となっているわけです。たとえば日雇保険は三割五分の定率です。国保は四割五分、こういうふうな定率になっていますね。そこで、政府管掌の健康保険は現在赤字です。当然、その給付費を上げるべきである、こう考えるわけです。少なくとも二割以上の定率化をはかる、こういうふうにしていくべきではないかと、こう考えるわけです。この点についてのいわゆる考え方、どうでしょうか。
○政府委員(梅本純正君) この医療保険に国庫負担をどういう形で入れるかということにつきましては、先ほど大臣も申し上げました抜本改正の一つの重要議題になろうかと考えております。そもそも社会保険でございますので、収支相当いたしまして、たてまえといたしましては、保険料をもって必要な医療給付をまかなうというのが一つの原則でございます。しかし、先ほど先生御指摘のように、低所得者であります日雇保険、あるいは非常に低所得者が多いというたてまえのもとに、国民健康保険には定率の国庫負担が入っております。現在、政府管掌の健康保険に二百二十五億の国庫負担が入っておりますのは、これは臨時応急の財政措置といたしまして、赤字対策として、予算措置におきまして、入っておる性格の国庫負担でございます。これを、御指摘のように、今後どの程度の定率国庫負担にすべきか、あるいは本来の社会保険のたてまえに返りまして、国庫負担がなくてやっていくべきものか、こういう点が問題だろうと思いますが、いずれにいたしましても、抜本改正の一番大きな問題といたしまして、制度の立て方が問題でございます。やはり制度の立て方におきまして、先ほど大臣も申し上げましたように、全部あらゆる制度を統合してしまうというふうな案もございます。あるいは小さく割って被用者保険は全部健康保険組合のような組合に分割してしまえというふうな案もございます。やはり制度の立て方がきまりましてから、そこに含まれます被保険者の実態を見まして、国庫負担をいかように入れるかというふうな点を重要な問題として検討していきたい、こういうふうに考えております。
○上林繁次郎君 今回の衆議院修正案によって、保険者、被保険者及び診療担当者の利害得失、これはやっぱり一つの大きな問題点になるのではないかと思います。そこで、その三者といいますか、この三者の利害得失はどのようになっておるか、その点をひとつ明確にしていただきたいと思います
○政府委員(梅本純正君) 先ほど被保険者の点につきましては、修正の提案者であられます澁谷先生からお話がございましたように、やはり被保険者につきましては、薬剤の一部負担が落ちたという点、あるいは保険料率が千分の一、あれはわれわれとしては、相当の大幅な給付改善であると考えております。分べん給付が行なわれますにかかわりませず、千分の一の保険料負担がなくて済むという形で、先ほどの金額にいたしまして六十四億円ばかりの軽減になると思います。それから診療担当側の点といたしましては、この薬剤の一部負担が修正によって削除されましたことによりまして、診療担当側は、いままではこの薬剤の一部負担は、窓口におきまして、事務的に非常にめんどうであるというふうなお話が出ておりましたが、事務的な点が非常に解消されるというふうに考えております。
○上林繁次郎君 被扶養者の給付率、これは昭和三十七年の八月の社会保障制度審議会の建議でも、最低七割程度まで引き上げることを勧告していたわけです。これに対して、今日に至ってもこれがそのようになっておらぬ、こういうことです。また、四十四年においても、社会保険審議会、この答申を見ますと、当面、扶養者の給付率は七割とすべきことを指摘している。したがって、いかなる事情があったにせよ、どういう理由があっても、この答申から言ってこの給付を七割まで持っていってしかるべきじゃないか、こういうふうに思うんですね。その点の見通しといいますか、考え方といいますか、その点についてひとつお願いいたします。
○政府委員(梅本純正君) 先生御指摘の、家族の給付率の引き上げの点でございますが、先ほど大臣が申し上げましたように、抜本改正の問題につきまして、関係団体の御意見はいろいろございます。しかし、それに共通をいたしまして、間違いなくやるべきだという問題の一つといたしまして、先生御指摘の給付率の改善がございます。皆保険下におきまして八つの制度に分かれてはおりますけれども、制度を統合しようと、あるいは現行制度をそのままにいたしましょうと、やはり皆保険になったのであるから、一応一定の線まで給付の割合をひとしくすべきである、不公平のないようにすべきであるという点と、それから各保険におきまして保険料負担が非常に不公平である、やはり皆保険になったのであるから、国民におきまして同じような所得の人については、大体どの制度によりましても保険料の負担が、ぴったりいかなくても、不公平のないようにというのが共通しての問題でございますので、先ほど大臣が申しましたように、抜本改正を進めますに当たりましても、一挙にできませんので、年次計画としてものごとを構想いたします場合、まず第一にやるべきことは、保険料負担の不均衡を直すということと、やはり給付率をできるだけ合わせるということが焦眉の急務だと思います。やはり先生御指摘の点は、できるだけ第一次計画で進めたいと、われわれ事務当局としてはそういうふうに考えております。
○上林繁次郎君 公害関係の医療と申しますか、この点について聞いてみたいと思います。
 いわゆる自己の責めに帰することのできない疾病、これらについては、抜本対策を待たないで、健康保険等の社会保険とは別の公費で、いわゆる国ですね、公費でひとつこれをまかなうべきではないか、こういうふうに考えるんですけれども、この点どうでしょうか。
○国務大臣(斎藤昇君) 公害による健康障害に対する解決策といたしまして、ただいま法案を提出をいたしておるわけであります。いま、参議院の公害対策特別委員会で御審議を願っている次第でございます。
○上林繁次郎君 これらの問題については、わが党としては、社会保障基本法案、これを提出しておりますが、この中には、これらの問題については、公費で負担をするということがうたわれているわけであります。そういう考え方について、もう一歩突っ込んでひとつ私はお答えを願いたいと思います。今後そういう姿勢といいますか、そういった方向に持っていくんだと、またいつごろまでにそういった方向にこれを持っていくという、そういった目安、こういうものをひとつ明らかにできればしていただきたいと思います。
○国務大臣(斎藤昇君) 公害による健康被害に対する法案といたしまして、いまお願いをいたしておりまするのは、この保険でまかなえない自己負担の分につきましては、これは国費と、それから企業者側と地方費と、この三者によって自己負担の分をカーバしていこうということになっておりますので、大体御趣旨に沿うような方針で立案をいたしておるわけでございます。
○上林繁次郎君 この問題については、公害医療救済特別措置法案の諮問に当たって、社会保障制度審議会において、「政府は、みやかに公害病に対する公費による公的医療制度を確立し、」、こういうふうに言っておるわけです。したがって、「この疾病の特質からみて、各種医療保険に負担させたりすることは適当ではない。」、こういうふうに指摘しているわけです。こういう答申を尊重していく、そういうことが最も大切ではないか、こういうふうに思います。こういう答申に対して、現在、政府としては、どういう考え方を持っておりますか。
○国務大臣(斎藤昇君) 公害による疾病の治療費、これを全部国費でずばりやるという考え方には、ただいま立っておりません。今日衆議院の審議の段階でも一番問題になりましたのは、これは公害を与える企業の責任ではないか、企業に負担をさせるべきではないかというような考え方が非常に大きく打ち出されておるわけでございますが、しかし、企業責任と申しましても、その企業が一企業としてはっきりしている場合は別でありますが、そうでない場合はどの企業に負担させるか、非常に困難でありますから、これも問題でございまするし、したがいまして、とにかく自己負担の分を何とか本人の負担にならないようにしていくという考え方に立っておりますので、いわゆる公害病ということになれば、全部それは別個の国費負担に根元からなってしまうという考え方は大いに考えなければならない、かように考えております。
○上林繁次郎君 まだまだお尋ねしたい点がたくさんございます。たとえば交通事故関係の問題、あるいは成人病対策、僻地看護婦の充足対策あるいは老人医療の問題、いろいろとございますけれども、またお尋ねもしてみたいと思う。ところが、私が言うまでもなく、時間が非常に制限されております。あとの質問者との関係もございますので、一応本日のところはこの程度にしまして、あとまた保留をさしていただきたい、このように考えます。
○中沢伊登子君 初めに御了解をいただきたいと思います。それは、今朝から法制局長官の御出席をお願いいたしておりましたが、現在の時点で、まだおいでいただけないそうでございまして、四時二十分から四時半ごろでなければおいでをいただけない、こういうことをいま伺いましたので、私の質問も一時間くらいを予定いたしておりましたので、おそらく私の質問の間には長官はお見えにならないのではないか、かように思います。そういたしますと、上田先生の質問のときにお見えになるのではないか、このように思いますが、その時点で、この問題については、特に発言を許していただきたいと思いますが、御了解をいただきたいと思います。
○委員長(吉田忠三郎君) 了承します。
○中沢伊登子君 それでは、初めに今度の修正案の問題について御質問を申し上げます。
  〔委員長退席、理事上林繁次郎君着席〕
 政府は、今度のこの健康保険特例法の原案を突如として修正されました。しかもこれを強行採決して参議院に送付をされましたが、この間のいきさつについて質問をしたいと思うわけです。先ほどから小野委員を初めとして再三質問が繰り返されておりますけれども、今度のこの修正案を突如として出してこられたそのいきさつをひとつお伺いをしたいのです。
 二年前に特例法を提案されて、そしてその後この二年間、ちっともその間にこの法律案に手をつけずにおかれ、今度再度その延長を提出してこられた。すなわちこの二年間何にもしていなかった、全く権威のないことであると私どもは思うわけです。そうしてこの法案は、政府と自民党との関連でどのようになっているか、つまり、おそらく政府がこの提案を自民党のほうに一度提出をされていろいろ御意見を伺ったのではないかと、かように思いますが、その辺のことをひとつお尋ねいたしたい、このように思います。――それではもう一ぺん御質問いたします。
 それでは、谷垣議員にお尋ねいたします。二年間ほったらかしてあったわけですね、特例法を。そうして、二年間とにかく抜本改革案が出せないということで、再度今度延長を求めてこられたわけです。ところが、その延長案を突如として修正案という形で提案になってこられたのですが、そもそも、この特例法の延長案を提出されましたね。その段階においては、おそらく政府のほうから自民党の政調会のほうに何らかの諮問があったのではないかと、このことをまずお伺いしておきます。
○衆議院議員(谷垣專一君) この二年間の間に何をしておったかというのは、これは政府の問題でございますので、私の答える筋合いのものじゃないと思います。ただ、政府がこの案を提案するのにつきまして、いわゆる政府原案を提案するのにつきまして、これを自由民主党のほうに相談があったことは事実であります。
○中沢伊登子君 そうしますと、自民党のほうにも提出をする前にいろいろ御相談があった、そうすると、これは党内や党の中の政調会の中で十分に検討をされたと、私は思いますが、どうでしょうか。
○衆議院議員(谷垣專一君) 十分に検討いたしたわけであります。
○中沢伊登子君 今度、突如としてその延長案を修正案に変えられたわけですが、党内あるいは政調会の中で十分検討をされたそのときに、どうして修正をされなかったか、その辺を伺います。
○衆議院議員(谷垣專一君) 従来から与党と政府の関係がございますので、政府が法律案を提案いたしまする前に、党のほうの政調その他で、原案につきましていろいろと議論をいたすわけであります。しかしそのことは、それでは政府案が国会に提案されました後におきまして、与党はこれに対して何ら修正その他の余地もないかどうかという問題につきましては、これは、私は、おのずから別個の問題だと思います。政府が原案として出します際に、これはこれでひとつ出していこうということの承認と申しますか、一種の同意をいたすことは、先ほど申しましたとおりでございますが、また、議論の過程においてはいろいろございます。政府がこういうふうに二年間の間に抜本策がやれなくて、そして延長するということに対しての政治的な責任はどうかという考え方もございますので、いろいろ問題があるわけでございます。
  〔理事上林繁次郎君退席、委員長着席〕
 しかし、これは特例法の延長は除きまして、健康保険法あるいは船員保険法の本文は、とりあえず時間が足りなかったからということでございます。その時点におきましては、自民党といたしましても、その原案を提案することにつきまして同意をしておったわけでございます。しかし、このたびの修正案が出ましたのは、その後におきまする国会における審議の状況その他の状況を勘案いたしまして、そうして党といたしまして修正案を提案するということになったのでございまして、これは従来でも実はあるのでございます。政府原案に対します与党修正、これもまたあり得るわけでございます。それと同じような経過をとった、こういうことでございます。
○中沢伊登子君 自民党の修正ということはあるでしょうけれども、それがあまりに突然にこう出てきたわけですね。国会もやがておしまいになるというときに、突然に自民党が修正をしてこられた。いろいろ審議の過程で野党が修正するというならおかしくはないけれども、国会も終了するまぎわになって、突然自民党のほうが修正をしてきた。なぜそのようになったか。このことを先ほどからいろいろ議論を承っておりますと、薬剤の一部負担をのけたらいいだろうとか、あるいは出産の給付のために千分の一引き上げる、それも反対があるからのけたほうがいいだろう、こういうようないろいろ議論が先ほどからかわされておったわけですが、そういうことであれば、それなら、いま、これからこうやって審議をしていく過程でいろいろ議論が出てきたら、いまからでも修正をなさる御意思がありますか。
○衆議院議員(谷垣專一君) 私、ここの席へ呼ばれておりますのは、衆議院におきまする修正の提案をいたしました責任者として本席へ呼ばれておるわけでございます。したがいまして、衆議院におきまする修正をいたしました立場で、それに対する御質問につきまして御説明をいたしておるわけでございまして、参議院におきましてのいろいろの御議論の末どういうふうに御処置なされまするかということについては、私が申し上げるのはいささか筋が――出過ぎたことになるかと思います。ただし、修正案を提案いたしました私個人の考え方は、非常に妥当な修正を提案したと信じておりますので、できますれば、参議院におきましても御賛成を願えれば、たいへんありがたい。これは私個人の考え方でございますが、これは少しこの席で申し上げるのは行き過ぎかと思います、せっかくの中沢先生のお尋ねでございますが。
○中沢伊登子君 それならば、厚生大臣のお考えはいかがでございますか。
○国務大臣(斎藤昇君) 政府といたしましては、原案が最善と考えて提案をいたしておりますので、原案がよろしいと、かように考えておりますが、しかし、衆議院で修正をされました以上、修正されたものを通すのがいいか、原案ばかり突っぱっておって、そうして参議院で原案に返って法案が全部流れてしまうのがいいかという判断に立ちますと、不満足ながらも、修正せられたものをぜひお通しいただきたいと、かように考えます。
○大橋和孝君 私、ちょっと関連して、一つだけ厚生大臣に質問してみたいと思います。
 いま話を聞くと、あなたは、原案のほうが正しいと思って出したのだと、それは修正されたけれども、修正に対しては抵抗しておってもいかぬから、それをやってもらってもいいということで折れた、こういうことだろうと思います。そういうふうに解釈をしたわけですよ。今度修正案を出されて、国民の健康をつかさどっておるところのあなたとしては、この国民のための医療という問題から考えて一体、この修正が国民にどれだけの利益、あるいはまた、どれだけの不利益になるか。あなたの出された案との間でどういうふうに考えておられるか。
 それからまた、今後の問題についても、いままで聞いておりますと、そういうふうに非常にこの修正案そのものは、いままでの考えを根底から引っくり返している。たとえば二年の間に抜本改正をしてもらいたい、これは社会保障制度審議会からも、それがついて時限立法となったはずでありますからして、こういうものがもとからくずれてしまうことについて、あなたは、国民の側に対して、今後の問題に対してどういうふうに受けとめておられるのか。やっぱり国民の側の医療という立場から考えると、一体これに対してどこにメリットがあり、どこに悪い点があるのか、そういうことをどういうふうに把握しておられるのか、ちょっと伺いたい。
○国務大臣(斎藤昇君) 二年間の歯止めがなくなったようになった修正案、この点はどうかという、まず第一点の御質問は、これは歯止めがなくなったのではない、法律的にはなくなったようであるけれども、しかし、政府といたしましては、抜本改正をゆるめる考えは毛頭ない。党のほうも、そういう考えはないということでございますから、その点は、差し引き何もないと私は思います。従前どおりであります。
 だが、薬剤の負担がなくなった、そうして千分の一が削除された、このメリットは、国民の側に立ってどうかというお尋ねでございました。さしあたっては、先ほどから御質問がございましたように、今年度において約六十数億という国民が負担しているものが負担しなくて済むということでございますから、国民の側にとってはメリットかもわかりませんが、しかし、これはそれで赤字がふえてくるということになると、その赤字の処理をどうしていくかということまでさらにさかのぼって考えてみますと、目先だけのメリットでいいのかどうかということになりますと、これは考慮すべき点があろうと、かように考えております。
 そこで、私は、当初出した原案のほうがいい、かように思って原案を出したわけでありますが、まあ修正をされました以上は、そうしてこれが両院を通過いたしましたならば、これを尊重してまいらなければならない、こう考えます。
○中沢伊登子君 いまの厚生大臣の御答弁、私はそれに引き続いて、ずっと質問を続けていきたいのですが、いま大橋委員からいろいろメリットの話や何かがございましたので、ちょっと質問をこちらのほうに変えます。
 先ほどから、国民がどの程度今度の修正案で得をするか、こういう話が出ておりますが、先ほどいただきました参考資料によりますと、出産給付のための千分の一をやめた、これで幾らか国民の負担が軽くなった、これが三十三億、それから薬剤の一部負担を取りやめたことで三十一億、合計六十四億国民の負担が軽くなった、こういうふうに、私、先ほどから何べんも伺っております。それは澁谷さんの答弁でもそうでございましたけれども、先ほどいただきましたこの参考資料によりますと、まず第一ページの対策前の単年度赤字の見込額、(ア)のところに、保険料率、九月以降の分として、約六十四億修正後では黒字になるわけですね。これは九月以降でございますから、それならば、満年度のときの黒字はどのくらいになるか。まずこの点からお尋ねをしたいと思います。
○政府委員(加藤威二君) 千分の六十五から千分の七十まで、要するに千分の五上げますと、満年度、四十四年度で三百十五億でございます。
○中沢伊登子君 これは千分の六十五であったのが千分の七十になるわけですね。そうしますと、先ほど申し上げましたように、六十四億の国民の負担が軽くなった、このようにだけ言っておられますけれども、千分の六十五から千分の七十の負担になっているわけです。そうすると、これは国民全体にとっては、ほんとうはメリットと言えるかどうか。赤字対策としては非常にけっこうではあるでしょうが、満年度のあれとしては三百十五億というお話ですが、しかし、これは低所得者にとっては、同じように千分の七十負担をすることですから、千分の五だけよけいに負担をすることが恒久化してしまった、こういうことで、私はこれはメリットにならない、こういうふうに思います。
 それならば、今度は(イ)のところの初診時における百円が二百円になりましたね。こういうものやら、あるいは入院時が三十円が六十円に引き上げられる、これも恒久化したわけですが、このような二百円になり、六十円に引き上げられた、これは低所得層の人もいままでと同じでございましょう。低所得の人たちもこれを同じように負担をしなければいけない。それならば、千分の七十に引き上げられたために三百十五億円の保険料が入ってくるならば、低所得の人たちに対してこの対策をなぜしないのか、その辺を一つお伺いをすると同時に、先ほどからお話のありました薬代は、いわゆる低所得の人と申し上げると、非常にことばは悪いですけれども、お医者さんに言わせれば、マル免の人たちは、この薬代の一部負担というものは、いままでもなかったはずですね。そうしたら、これはたいしたメリットにはなっていない、こういうことなんですが、そこら辺をひとつ御説明をいただきたい。
○政府委員(加藤威二君) 最初、中沢先生の御指摘のありました三十三億を減らすという問題は、確かに千分の六十五から七十まで千分の五上がるということは、特例法のときに、二年前にそういう措置をとったわけでございます。これは確かに被保険者の負担増でございますから、その限りにおいて反対があったわけでございます。しかし、財政上さらに二年これは延ばそう、その上に分べんの給付改善をやりますから、千分の一だけさらにプラスしよう、それが三十三億円分でございます。これをやめたということにつきましては、政府原案と衆議院で修正されました分との比較におきましては、やはり被保険者、事業主は三十三億円分だけ、政府原案よりは負担が軽くなったということは言えると思うのでございます。
 それから初診時、入院時、百円を二百円にした、それから三十円を六十円、これも倍になっております。これについては、確かに御指摘のように、外来投薬時につきましては、低所得者について免除をしておりますけれども、これについては免除をしておりません。これはもう百円と三十円をつくりましたとき、これは三十六年ごろだったと思いますけれども、そのころに五十円から百円にした、こういうようないきさつがある問題でございますが、この初診時、入院時の一部負担については、当初からそういう低所得者免除ということをやっていなかったわけでございます。これは、なぜかと申しますと、外来の本人一部負担につきましては、これは病気が長期化いたしますと、一日一剤十五円は、その分だけとりますと低額でございますけれども、長期疾病になりますと、相当な負担になる。しかし、初診時というのは、最初にお医者さんにかかりますときに、確かに二百円だけ払っていただけば、あとは全部無料ということでございますから、薬の一部負担よりもそうその圧迫といいますか、それが少ないということと、それから入院時につきましては、三十円から六十円、これは米代みたいなものでございまして、それは一ヵ月だけでございます。入院一ヵ月たちまして、二ヵ月目からはもうこれはございません。ですから、入院の当初の一ヵ月分だけと、こういうことで負担が比較的少ないわけでございますから、そういうことで薬の一部負担につきましては、低所得者の免除をやりましたけれども、この初診時、入院時につきましては一部負担、低所得者の免除というものがない、こういうことでございます。
 それから、この百円にいたしましたのは三十二年度でございます。訂正いたします。
○中沢伊登子君 百円が二百円になり、三十円が六十円になる、米代ぐらいのもので、まあ一ヵ月だと、こういうことでございますけれども、初めに小野委員からも質問がありましたように、最近はお医者さんに行くのにやっぱり千円ぐらい持っていかないとたりないんだ、こういうような話もございましたし、まあこれはお医者さんに行くときのことだけ考えればそうですけれども、物価も毎年毎年上がっているし、何もかも上がっているときですから、私は、この初診時、入院時の負担、こういうものは、ほんとうならば、特例法の前ならば千分の六十五であったのが特例として千分の七十になったんですから、それで一年間通じれば三百十五億というようなお金になるわけですから、この辺はもう少し考慮してもいいのではないか、このように思います。その辺でもう少し考慮をしていただきたいと思いますが、まあこの問題にだけさわっておれませんが……。
 そこで、もう一つ、今度はそれらの財源の問題を議論してみたいと思うわけです。その前に、先ほど厚生大臣から小野委員でしたか、上林さんでしたかに御答弁のありましたように、おそらく医療費の緊急是正というようなことがなされるであろう。もしも一%上がっただけでも、四十三億ということでございましたね。この前の私の本会議における質問、これは六月の十八日の健康保険に対する私の本会議における質問のときに、佐藤総理大臣の御答弁の中に、「特に診療報酬体系につきましては、医療担当者の技術を正当に評価することを主眼として、中央社会保険医療協議会の専門的な審議が進められる予定であります。今後ともその適正化につとめてまいりたい、かように考えております。」と、こういう御答弁があるわけですから、おそらくやがて診療報酬は引き上げられるかと思います。そういうような問題や、いろいろ財源の問題について私は質問をしたいと、こう考えておったわけですが、その財源を得るためにこういうことを御提案を申してみたい。それは、保険料を払う人たちの区分がありますね。第一級から三十六級まできめられております。第一級は三千円、最高の三十六級は十万四千円が上限になっていると思いますが、この上限を引き上げる考えはございませんか。つまり、最近はベースアップなどでどんどん収入が上がっているわけですね。それですから、この上限を撤廃するか、あるいはこれをもう少し引き上げるか、そのようなことをお考えになったことはございませんか。
○国務大臣(斎藤昇君) この上限を実情に合うようにいままでも引き上げてまいっております。今後も実情に合うように引き上げを考えていかなければならないと、かように思います。ただ、この上限を引き上げることによって入ってくる保険料収入は、ほとんど組合管掌が大部分でございます。政府管掌の財源にはあまりなるまい、かように考えております。
○中沢伊登子君 組合管掌の健康保険でも、これはどの程度ございますか。
○政府委員(梅本純正君) 十万四千円以上の着が現在のところ二・数%になっております。
○中沢伊登子君 そうしますと、政府管掌のほうにはあまり十万円以上の人がいない、こういうことになるわけでございますね。
○政府委員(梅本純正君) ちょっとただいまの答弁を間違えました。先ほど申しましたのは政府管掌の健康保険でございます。健康保険組合のほうは、おのおの自主的にやっておりますので、ちょっと全国的に数字を持っておりません。
○中沢伊登子君 この問題は、先ほど申し上げましたように、低所得者の人たちのことを考えて、初診時、入院時のこの問題をもう一ぺんできることなら考慮に入れていただきたい、このように思います。
 それから先ほど大橋委員が御質問になられたあの続きをいたしますと、今度突然にこのように修正案が出されたわけですけれども、この修正案は政治的にも内容的にも重大な政策転換だと思います。それは、国会における審議の過程にかんがみて、きわめて重大な政治的背信行為だと言わなければならないと考えます。こんな大転換を行なうということであれば、先ほどからいろいろ御意見もありましたように、社会保障制度審議会とか社会保険審議会、そういうところの意見を求めるなり、あるいは国会の審議をやり直すのが本筋ではないかと思いますが、先ほど法制局長のお話では、わざわざ社会保険や社会保障の審議会にかける必要はない、国会は唯一最高の立法機関であるから、それを通さなくてもよい、こういうようなお話がございましたが、それならば、国会の特に第一院である衆議院でほんとうはもっともっと審議をやり直すのが当然ではなかったか、このように思いますが、その辺のお話を伺いたい。
○衆議院議員(澁谷直藏君) 本案についての衆議院の審議のやり方についての先生の御意見でございますが、衆議院の段階におきましても確かにそのような議論があったことは事実でございます。ただ、結論としては、いろいろな議論がありましたけれども、委員会に差し戻すということはやらないで、そのまま本会議でこれを採決したということになっておりますので、これ以上の意見の開陳は差し控えたいと思います。
○中沢伊登子君 それでは、それを了解しておきましょう。
 世界の趨勢は、社会保障の立場から健康保険の問題を論じられてきておりますが、わが国の場合は依然として保険制度を堅持しているために、財政状態が悪化すれば全部受益者に赤字がかかってくる、こういうことになっておりますが、政府はもう少しこれを社会保障的の性格に強めていく考えはございませんか、厚生大臣にお尋ねをいたします。
○国務大臣(斎藤昇君) 御意見のように、わが国の医療保険は、いわゆる保険制度で、各自が支弁をする医療費を相互に保険し合おうということが中心になっているわけでございます。しかしながら、各種の保険を通じて見ますると、保険料は必ずしも全部を通じて所得に比例したものではないという状況になっておりますから、その点を直していかなければならない。それは抜本改正の問題である、かように考えております。なおまた、保険料を支払うことのできない、先ほどからおっしゃっておられます低所得層の方々に対しましては、保険料免除とかそのような措置を考えまして、国費なりその他の方法で支弁をしていくということも考えていかなければなるまい、社会保障の考え方をそういうふうに取り入れていかなければならない、かように考えております。
 全部国費その他で国民の医療をまかなうという制度の立て方もありますが、しかし、日本の経済その他あらゆる面から考えまして、やはり保険が中心であり、保険料を支払うことの困難な人に対しましては社会保障的な見地から措置をしていくということが適当ではないかと、かように考えます。
○中沢伊登子君 ILOは、医療保障の終局の目標として、すべての国民に対する医療のための公共サービスを設けることを明らかにしております。この基本的な立場に立って、予防、治療、リハビリテーションを通ずる一貫した医療の保障を国の責任で行なう体制を確立する考えはございませんか。
○国務大臣(斎藤昇君) 大筋におきましてはそのとおりだと考えております。そういう意味で医療制度もあるいは国民の健康管理体制も考えていくべきだ、その方向で進んでおりますが、まだ弱い点がございますから、それを強化していかなければならないと思います。
○中沢伊登子君 もう一つILOの条約関係について御質問をいたします。社会保障の最低基準に関するILO一〇二号、この条約を私はすみやかに批准すべきであると考えます。日本の社会保障は、この一〇二号の条約を批准する条件を十分満たしておりますのに、今日まで批准をしていない。その理由はいかがでございますか。
○国務大臣(斎藤昇君) おっしゃいますように、ILO一〇二号は、批准をする条件を満たしております。ところが、これを上回る条約がすでにいま締結されようといたしておりますので、その間の情勢を見合いまして、一〇二号条約を批准いたしましても、これはもうたいしたメリットになりませんから、その際には上回るものを批准いたしたい、かように考えます。
○中沢伊登子君 ことしのILOの総会において疾病条約が改正されたと聞きますが、それがいまのことでございましょうか、あるいは、その内容はどんなものでありますか、これを伺わせていただきたい。
○政府委員(梅本純正君) 本年のILOの総会におきまして、従来の疾病保険に関する第二四号及び二五号の改正が行なわれたわけでございます。その内容といたしましては、第二四号及び二五号条約が医療保険の条約であったのに対しまして、医療保険の分野だけでなく、公衆衛生公費負担の制度、それから社会福祉の諸策施を含めまして、広く医療及び疾病給付全般について規定したものでございます。
 条約の批准によりまして問題となりました点は、現金疾病給付の対象が全経済活動人口の七五%というふうなことが非常に中心の議題になったようでございます。
○中沢伊登子君 そうすると、日本ではそれを批准する考えはございませんか。
○政府委員(梅本純正君) いま申しました現金疾病給付の対象が全経済人口の七五%というふうになりましたので、自営農民及び自営商工業者、わが国で申しますと国民健康保険の被保険者の多いわが国の経済構造から見まして、このパーセントと比べ合わしました場合には、基準の上限を満たしておりませんので、この点は今後十分慎重に検討いたしてまいりたいと考えます。
○中沢伊登子君 それでは、次に、老人問題について一言伺います。あれだけ老人を喜ばせながら、老人医療の無料化は一体どうなりましたか。園田厚生大臣がだいぶんいい御発言をなさって、老人は非常に喜んでおりましたが、これはやっぱり社会保障でみるべきではないかと考えます。この老人問題については、さきの自民党の大綱でも取り上げられております。厚生省も老人対策について中央社会福祉審議会に諮問をしておりますが、老齢になってみずからを守り得られなくなった人々に対しては、国費をもって医療を保障するのは当然であると考えます。厚生大臣はいかにお考えになりますか。
○国務大臣(斎藤昇君) 老人の問題につきましては、年金の問題、あるいは提案をいたしております医療問題につきましては、自己負担の半分を公費でみるようにという意見が相当強かったのでございますが、そういう意見も取り入れまして、抜本改正の際に老人保険というものを特別のものにしてそういった需要に応じるようにいたしたい、かように考えて、改正の際に取り入れてまいりたいと、かように考えております。
○中沢伊登子君 厚生省は、昭和四十四年度の予算で、老人医療費の公費負担制度を要求していたようでございますが、これが実現できなかったように思います。引き続いて明年度も要求をし、実現に努力をされるお考えはございませんか。
○国務大臣(斎藤昇君) ただいま申し上げましたように、これは老人保険という制度によって抜本改正の中に取り入れて考えてまいりたい、二ケ年間考慮をいたしたいと考えております。
○中沢伊登子君 本年度はいわゆる寝たきり老人の対策を実現しているようですが、その実施状況はどのようになっておられますか。
○政府委員(今村譲君) お答え申し上げます。
 本年、初めて、在宅の寝たきり老人援護対策というのが予算三億一千万円というのが入ったわけでございます。
 その内容といたしましては、第一点は、普通の健康診断に集まれない寝たきりの人でありますから、医師、看護婦等を自宅に派遣して健康診断を行なう。それから家庭奉仕員を一挙にこの問題だけで四千四百人を増員するということでございます。これは普通のホームヘルパーは現在でも千五百人ほどやっておりますが、それを寝たきり老人に集中して行なうということでございます。それから特殊ベッド――ギャッチベッドという特別なやつでありますが、三千六百台、これを最も困っておる人から始めて貸与する。これは年次計画でまいりたい。それから特別養護老人ホームの緊急整備、これは去年約六億ぐらいありましたのが、ことしは十億二千万というように約四割以上ふやすというようなことでございます。
 そういう状況でございまして、現在、市町村におきまして、老人家庭奉仕員の派遣――派遣というよりも人の手当て、これは大体見通しがついて着々と進行しております。それから所在の医師会と連絡をいたしまして、家庭訪問のお医者さんの手当て、これも順調に進んでおります。ギャッチベットも同じようでございます。以上のような状況で、四千四百人全部完了しますのは、本年十二月あるいは一月、年度内にはこの人の確保では見通しはついております。
 以上でございます。
○中沢伊登子君 先ごろ、自民党の案として、医療制度の抜本大綱が発表されましたけれども、その内容の中で、被保険者の家族は全部国保に入れることになっております。この問題については、先ほど上林委員からも御質問がありましたが、家族全部国保に入れるというのは、一体どういうような理由でやられるのですか。これは家族の分断であると思いますが、政府側と厚生省の御意見をちょっと聞かしていただきたい。
○国務大臣(斎藤昇君) この考え方は、先ほど申し上げましたように、国民の健康管理体制と保険というものをマッチさせるのが適当ではないかという考え方に立っているわけでございます。職域においては職域の健康管理体制とそしてそこで疾病になった者の保険、地域においては地域の健康管理体制とそして保険という考え方に基づいているわけでございます。何といっても疾病になることを防いでいく、国民の健康を増進する、それでもなおかつ疾病になった場合には保険でまかなっていくというわけでありますから、これは非常に密接な関係がありますので、そういう考え方は一つのりっぱな考え方であろう、かように考えておるわけであります。現在、被用者の方々と家族を一つの保険に入れているというのは、発生の経過からそうなっているわけでありますが、国民皆保険という考え方から、もし最初からそういう保険を考えるということであれば、職域に働く人とそうでない人は、保険の体制が違うというのが当然ではなかろうか。ただ、今日、発生の経過から保険も体制がそういう形になっておりますから、いかにもこれを引き離すようなむごたらしいような感じでありますけれども、考え方はそのほうが正しいのじゃないか。しかし、これにはなかなか実際の問題として早急にやれない点もあると思いますから、やれるものからやってまいるというので、今日発展してきておりまする、たとえば組合管掌とか、共済組合というようなものにおいては早急にやることは相当困難ではないだろうか。しかし、将来のあり方としましては、そういう考え方のほうがいいのじゃないか。それを一つの将来の青写真と考えて、それに近づくような改正を徐々にやってまいりたいと思います。
○中沢伊登子君 その問題については、私ども、もう少し考えてみないと十分納得ができないわけですが、質問を次に進めてまいりたいと思います。
 わが国の母子保健の対策は母子保健法に基づいて実施されてきておりますが、先進国に比べて妊産婦の死亡率はまだ高率にございます。戦後著しい改善向上をみた乳幼児の死亡率、あるいは体位、栄養状況、妊産婦の訪問指導、母子保健施設等についても、なお努力を要する課題がたくさん残っております。政府は、この際、救貧対策といわれている現行の母子保健法を改正して十分強化をはかる考えはございませんか、その点はいかがですか。
○国務大臣(斎藤昇君) まさしく母子保健の問題はまだおくれておる、かように考えます。これから特に進めてまいらなければならぬのはその点だと、かように考えております。ことに、いわゆる身障児の問題等を考えました際に、事前にそういう身障児の生まれないような母子保健対策、また、妊産婦の死亡あるいは幼児の死亡というものを母子保健対策を強化することによって減少させてまいらなければならない。日本の社会保障制度の中におきましても、これは前向きの対策である、かように私は考えます。そういう意味で、来年度におきましても、特にこの点に重点を注いでまいりたい、かように考えております。
○中沢伊登子君 特に、母子健康センターの整備拡充は、要望がたいへん強うございます。社会保障制度審議会の答申の中にも要望が出ているように見受けましたが、市町村においては、お医者さんや保健婦の確保について苦心しているのでございまして、この対策をどのように考えておられるのか。先ほどの老人対策の点では、訪問指導員が順調に確保されていると、このように伺いましたけれども、母子健康センターの面ではどのようになっておりますか。
○政府委員(渥美節夫君) お話のとおり、母子健康センターは、特に農山漁村における母子保健対策の一つの拠点でございます。したがいまして、私どもといたしましても、昭和三十三年以降、母子健康センターの設置につきましては大いにつとめてまいりまして、昨年度末におきまして、全国で五百三十六ヵ所という数を確保するに至りましたが、まだまだ不足しております。したがいまして、これらの拡充はこれからも十分努力しなければいけない、かように思っておりますが、御指摘のように、母子健康センターの確保とそれの適正な運営につきましては、地域におきまして医師会あるいは助産婦会等の関係団体との緊密な連携と御協力を得なくちゃいけませんので、国におきましても、設置等については、そういう点を十分考慮の上設置するようにいま進めているところでございます。
○中沢伊登子君 そういう保健婦さんだの、看護婦さんだの、あるいは寝たきり老人の世話をする人だの、あるいはまた、違った場面からはゼロ歳保育の保育園の保母さんと、いろいろとそういう人たちは全部婦人が背負わなければならない部門でございます。だんだん要望がふえてまいりまして、たとえば、戦傷病者の人たちでも、もっともっとホームヘルパーを派遣してほしい、あるいは、保母さんたちにも、働く婦人が多くなってまいりますと、八時から夕方五時までの保育時間では間に合わない、もっと早くからもっとおそくまで保育をしてほしい、いろいろな要望がたくさん出てまいります。しかし、それを引き受けるのは全部女性でございます。そういう女性が、わりあい給料が安くて、そうしてその要望が強いということです。やはり女性にとりましては、ほんとうはもっとかっこいい仕事をやりたいわけですね。そうすると、だんだんそういうところに働きに行かれる婦人というものもなかなか求めにくくなってくるのではないか。こう考えますと、そういう人手の問題から日本の社会保障はくずれてくるのじゃないか、このことをいま非常に心配しているわけですが、その辺の見通しについていかがでございますか、お答えいただきたいと思います。大臣、いかがでございますか。
○国務大臣(斎藤昇君) 私も、中沢さんと同様の心配をいたしておるわけでございます。婦人の働かれる場が多くなってまいりまして、いまおっしゃいますように、かっこいい職場が他国に比べて特に日本は多くなってくる、かように考えます。このあり方は、日本の労働問題としていいかどうかという点もありますが、とにかく現状はそういうわけでありますから、したがって、こういった社会保障の関係に働いていただく婦人の方方の待遇のほうをもっとよくして、もっと魅力のあるものにしていかなければならない、かように考えております。本年も、ささやかではございましたが、三ヵ年にこういった方々の待遇を引き上げられるようにというように予算の考慮もいたしたわけでございまして、これで十分だとは考えておりませんが、私は同じ考えを持っております。
○中沢伊登子君 寝たきりの老人なんかを看護する人は、おふろに入れたり、あるいはおしめを取りかえたり、ずいぶん肉体の労働も多いですから、そういう点では、待遇もよくすると同時に、できる限りこれを機械化できるものならば機械化してほしい、こういうことを特に要望いたしておきます。
 と同時に、また、働く婦人の保護の面からも、出産休暇あるいは保育休暇について一年ぐらいの長期有給休暇を考えてはどうかと思いますが、これについてお答えをいただきたいと思います。実は、衆参両院の婦人議員懇談会でも、この問題がこの間から寄り寄りいろいろ相談になっておるわけですが、出産休暇あるいは保育休暇で一年ぐらい有給休暇をとっていただけるかどうか、お考えを聞かしていただきたいと思います。
○政府委員(高橋展子君) お答えいたします。
 御存じのように、産前産後につきましては、それぞれ六週間ずつの休業が基準法上規定されております。この休業期間中の給与につきましては、特に法律の規定はございませんで、有給にするかどうかは労使間の協約によることになっております。ただいまの御質問の、一年間についての休業と申しますか、休暇につきましては、これはもちろん現在法律上そのような規定はございません。で、民間の企業等におきまして、労使の話し合いで、一定の期間を限りまして、乳児を持つ働く婦人に、出産後、いわゆる休職期間を設けて身分を継続する、その期間終了後職場に復帰することを確保する、このような制度を設けておられるところが若干出てまいっているわけでございます。これを法制化するということにつきましては、これは非常に大きな問題でございますので、私ども慎重に検討いたさなければなりませんと思いますが、原則的に考えますと、働く婦人が安心して子供を産めるように、また、子供を持つ婦人が安心して働けるようにするということが大切なところでございますので、何らかの形で乳児を持つ婦人が一定期間休業ができるようにする、もちろん任意にでございますが、これが大切なことではないかと思います。ただ、それを有給にいたすかどうかということにつきましては、特に国の法制をもって有給の扱いにするということにつきましては、いろいろと問題が大きいかと思います。また、職業の種類等にも問題がございましょうし、特に民間の企業等にこのような義務を課すということにつきましては、非常に大きな困難もあることと思われますので、有給ということにつきましては検討すべき点が多々ある、一般的にはそういうところでございます。
○中沢伊登子君 いま、婦人の労働力が非常に高く評価されているわけです。それで、先ほども申し上げましたように、いろいろな職場で婦人の手が必要になってきているわけですね。そういうときに、ゼロ歳児保育所とか、あるいは普通の保育所とか、そういうものが全部婦人の要望を満たすだけの数がないわけです。それですから、やむを得ずこういうような制度も当然考えられるべきではないか、このように私どもは考えて、寄り寄り婦人議員の間でいろいろ相談が進められているところでございます。しかも、それがやっぱり有給でなければとても休んで、しかも保育園にもやれない、保育所にも預けられないという中で、有給でなければとても婦人も安心して休めないわけです。幸いに婦人少年局長は女性でございますから、この辺のことを十分御考慮いただいて、私どものそういう希望が満たされるように御尽力をいただきたいと思います。
 聞くところによりますと、自民党さんのほうでも、この問題を党全体として取り上げておられて、あるいは有給といっても三千円くらい出そうかという話も初めあった。ところが三千円ではとてもだめだということで、一部では、いまの給料の八〇%ぐらいは出してほしい、しかしそれはあまり高過ぎるのではないか、それでは、とても、なる話もならないのではないかというような、いろいろな議論がいまたたかわされている最中でございますから、どの辺が適当かという結論はまだ出るところまではいっておりませんが、どうかその辺で十分の御尽力をいただきたいと考えます。
 それでは、時間も一時間たったようでございますが、あともう二点だけ質問を続けさせていただきたいと思います。
 沖繩の医療保険の現状を承わらせていただきたいんですが、この前も沖繩の婦人たちが自分たちのお金を寄せ集めてガンの検診車を買いながら、それに乗ってくださるお医者さんが、産婦人科のお医者さんがなくて、何べんも内地に飛んでこられて、私も沖繩に行った関係上、何べんも御一緒に特連局に伺ったことがございますけれども、先ごろは、また風疹も非常にはやった、こういうようなお話もございますので、沖繩における医療保険の現状や、お医者さんの確保、医療機関の整備の状況はどのようになっているか、それを伺いたいと思います。今後沖繩が日本に復帰をする場合に、医療保険の一体化になるためにはどのような対策が必要であるか、あわせて御答弁をいただきたい。
○政府委員(梅本純正君) まず医療保険の問題から申し上げますと、被用者のみを対象といたしました医療保険法が、沖繩におきましては、昭和四十一年の七月から実施されております。現在、全住民の約半数が適用されている現状でございます。それから本土と違いますのは、給付方式が、本土は現物給付方式になっておりますが、償還方式でございまして、償還率は本人、家族とも七割でございます。次に、保険料は総報酬制を基礎といたしております。本土におきましては、先ほどから御承知のように標準報酬制をとっておりますが、総報酬制を基礎といたしまして料率は千分の三十二で、これを事業主と被保険者が折半しているという制度でございます。それから医師及び歯科医師の現状でございますが、昭和四十三年末におきまして、医師が四百四十七名、歯科医師が百二十三名でございまして、人口対比ではおおむね本土の三分の一強という現状でございます。医療機関につきましては、昭和四十三年末で病院十九、診療所は歯科診療所を含めまして三百八十八ございます。病床数は約六千七百床で、人口対比では本土の六割程度というのが現状でございます。
 第二点のお尋ねの本土と沖繩の一体化にあたってどういうふうに考えるかという問題でございますが、沖繩に皆保険体制を達成するというのが一つの条件でございます。本土のいわゆる地域保険の国民健康保険のようなものがございませんから、皆保険体制を達成していく。それから第二としまして、給付の割合、それから給付の方式等につきまして、実情に応じまして、逐次本土の制度に合わせるように調整していくということが第二点の一つの大きな問題でございます。
 それから第三点は、皆保険を達成するために基礎的条件になります市町村財政を強化する。これは先ほど申しました地域保険である国民健康保険のようなものを本土と同じようにやりますためには、市町村財政が持つか持たないかというのが最大問題で、財政を強化するという問題、それから医療担当者の確保、これは御承知の医師、歯科医師。これも難問中の難問でございますが、確保するということが中心になろうと思いますが、これまで厚生省といたしましても、財政的かつ技術面からの援助をひんぱんにやっておりますので、今後とも引き続き十分実情を見ながら、即刻本土と一体化の条件が整いますように努力し、援助してまいりたいと思います。
○中沢伊登子君 それでは、最後に船員保険の問題について一言お伺いをいたします。
 船員の特殊性ということにかんがみて、船員保険では、船員の疾病についてすべて船主が責任を持つことになっております。したがって、船員法と船員保険法とはうらはらの関係にありますが、船員保険法では、当然、船員の疾病にかかる初診時における一部負担を廃止すべきではないかと思います。それはしばしば国会における附帯決議事項にもありましたが、その後どのように尊重し、処理されているか、見解を承りたいのでございます。そこで、私も、いろいろ参議院の社労委員会の附帯決議や、衆議院の社労委の附帯決議を調べてみましたが、過去三回このような附帯決議がついておるわけです。この問題をどのように処理されているか、御見解を伺いたいと思います。
○政府委員(梅本純正君) 船員保険法の災害部門につきましての一部負担制につきましては、これまで国会の附帯決議等におきましても御指摘をいただいております。その後、事務当局におきまして十分検討をいたしたのでございますが、船員保険法におきましては、三つの形態の療養の給付を他の制度と共通の医療機関で行なわなければならないという、一つの相互保険でございますために、そういうことがございます。この場合、療養の給付の形態に応じまして、それぞれ異なった措置をとるということになりますと、医療機関にとりましてきわめて繁雑になるわけでございます。そういうことで繁雑になりますし、また職務外の三ヵ月の災害補償給付がございますけれども、同一疾病であるかどうかの認定、それから三ヵ月以内かどうかの判定等の事務を、結局はこれを医療機関にゆだねるほかないのではないかということになりまして、この点でデッドロックに乗り上げておるという現状でございます。したがいまして、現行のような診療報酬の支払い方式あるいは請求方法等、医療機関の自由選択制を前提として、船員法によります災害補償責任を、船員保険法によります療養給付との間に適当な、妥当な調整をはかるためには、現行のような一部負担の事前交付、または償還の方法は、いまのところはやむを得ないものではないかというふうに考えております。ただし、先ほど申しましたように、再三国会でも御指摘を受けておりますし、そういう点で、先ほど申しましたように、一定の研究をしました結果、やはり医療機関側がうんと言っていただけるかどうか、これがちょっと私から申しにくいんでございますが、なかなかその御了承をいただくにつきまして政治的な問題もございまして、その点がデッドロックになっておりますが、今後におきましてもなお研究いたしまして、御指摘の点が何とか解決できないかということで努力してまいりたいと思います。
○中沢伊登子君 その船員保険でございますけれども、今度適用範囲の拡大について、漁船の乗り組み員の場合は、二十トン以上の船でなければこれが適用されなかったわけですね。それを何とか五トン以上の漁船にも適用範囲を拡大すべきではないかと思いますが、その辺はいかがですか。
○政府委員(加藤威二君) 漁船につきまして、二十トン未満の漁船に船員法並びに船員保険法の適用拡大という問題につきましては、四十四年――ことしの五月に、船員中央労働委員会におきまして一つの答申が出ております。答申の趣旨は、五トン以上二十トン未満の漁船について、地先漁業等を除いて船員法の適用を拡大すべしと、それから、ただ、零細漁業の実態を明らかにしつつ、漸進的に適用拡大をはかっていくのが妥当であると、それから船員法と船員保険法は一体的に適用拡大をはかるべきであるが、実施の円滑をはかるために段階的に実施すべきである、そういう趣旨の答申が出ております。要するに、二十トン未満の漁船についても適用を拡大していくべきだ、これは一挙にできないから除々に拡大をしていく、適用拡大の可能なものから除々に拡大していく、こういう答申も出ておりますので、その答申の趣旨に沿いまして、運輸省と相談の上、この答申の趣旨に沿って法律の手当てをしていきたいというぐあいに考えております。
○中沢伊登子君 それでは、何べんも申し上げますけれども、漁船が相当数一緒に団を組んで漁に出ますときに、どうしてもやっぱり私は病院船を一緒に連れていくべきだと思います。病院船がないということは、相当の数の漁船が漁に出るとき、まるで無医村をつくっているようなものでございますから、何べんも質問のたびに申し上げますけれども、病院船を早くつくるように、このことをひとつ要望をしておきたいと思います。
 それから質問があちこち飛びましたが、最後に、今度のこの修正案というものが突然このように出されてまいりましたが、たいへん申しにくいことではありますけれども、この修正案というものは、医療を受ける側の意思が尊重されていない、このようなことがいわれております。すなわち、国民の立場において医療問題を解決しようとする熱意がない、あるいは今度の突然のこの修正案というものは、一部から圧力がかかったのではないかと、このようなうわさも私ども耳に再三するわけです。この辺のことについて特に大臣からお答えをいただきたいのでございますが、どうかいろいろ広範多岐にわたって質問を申し上げましたが、健康の問題は、どうしても国民の側に立って医療問題を解決するような方向に持っていっていただきたい、このように思いますが、御答弁をいただきたいと思います。
○国務大臣(斎藤昇君) このたび、政府が提案をいたしました改正法案は、御承知のように、国民の立場に立って保険制度をどうやっていくかという改善の一歩を踏み出したものではございません。この点はおっしゃるとおりであります。したがいまして、いまおっしゃいますような趣旨において、医療保険制度を抜本的に改正をしたい、それを一日も早くやりたい。それがいろいろな関係から今日までまだ提案ができないのは、これは総理も言っておられるとおり、私からも申しておりますとおり、何といっても申しわけがないという一語に尽きるわけでございますが、その点につきましては、先ほどからも申しておりますように、少なくとも二年以内にはその緒につけるようにいたしてまいりたい。その方向といたしましては、ただいまおっしゃいますように、できるだけ国民サイドに立ち、そして社会保障的な見地もできるだけとり入れるだけとり入れてまいって、りっぱな医療保険の制度にしてまいりたいと、かように考えているわけでございます。何とぞ御了承をお願いいたします。
○委員長(吉田忠三郎君) ちょっと速記をとめて。
  〔速記中止〕
○委員長(吉田忠三郎君) 速記起こして。
○上田哲君 昨日、提案理由の説明が行なわれました議題について御質問をいたしたいと思いますが、私は、昨日の委員会の最後の段階で、委員長のお取り計らいによって委員会で御決定をいただいた内容に基づいて、本法案の違憲性の問題ないし違法性の問題について、議案の内容の審議に合わせて幾つかの問題をただしたいと思います。
 念のためにもう一度申し上げますけれども、私どもは、さまざまな議論を越えて、二十五日の参議院本会議の院議に基づく立場からこの審議に入るのでありますけれども、衆議院ないし参議院、もとよりただいまの場合は参議院でありますけれども、参議院の院議なるものの内容は、昨日国務大臣としての斎藤厚生大臣も言明され、了解されましたように、三権分立の立場における司法権の解釈ないし決定を侵すものではない、そうした部分を参議院本会議の院議は超越し得ないという立場を含めてこの問題をお尋ねをするわけであります。
 この際、御答弁の皆さん方に特にお断わりを申し上げておきますけれども、私は、特に注意をいたしまして、この質疑ないし意見の開陳の中で、政治論ないし法解釈論についてはこれを争おうとはいたしません。念のために一言明らかにしておきたいと思いますが、まず法解釈論においては、明らかに自由民主党政府及びこれに伴う諸機関の見解と私どもの見解は相対立をしておりますし、そして政治論においては、私どもはまごうかたなくこの問題を違憲性を有するものとして、審議に値しないものとの見解をなお持続しております。したがって、このことについて議論をすることを避けますけれども、私がここで明らかにしていきたいことは、この法案にからまる今日までの審議についての事実関係についての問題を解明することと、それからそれについての政府及び与党側の解釈の確定部分を議事録にとどめたいとするわけであります。したがって、私自身も、相争うべき解釈論やあるいは政治的観点を排しますから、御答弁もその上できわめて簡潔に事実関係を明らかにされることをあらかじめ要望しておきます。
 私がここであえて違憲性と呼ぶものは、次の四点であります。第一点は、七月十日の衆議院社会労働委員会における採決の無効性、第二点は、七月十四日の衆議院本会議における採決の無効性、第三は、本院二十五日における中間報告を求める動議とこれに基づく院議の違憲性、そして第四には、本法案が突如として修正案として振りかえられたことに対する違法性の問題であります。この四つの問題のうち、第四点につきましては、すでに小野委員あるいは民社党の中沢委員からも一部触れられておりますから重複を避けることにいたしますけれども、ただ、一点だけ明らかにしておきたいと思いますことは、議員立法における各種審議会の議を経ないでいいという問題についての解釈の点であります。あらかじめ他の問題の質疑にも関連をいたしますから、澁谷議員にお尋ねをいたすのでありますが、先ほど澁谷議員は、小野委員の質問に対して、本修正案は大幅な修正の内容を含むものである、こういう御発言がございました。念のために大幅な修正というものの内容、大幅な修正として澁谷議員が指摘される部分は、何と何と何をさすのかをいま一度御解明をいただきたいと思います。
○衆議院議員(澁谷直藏君) 今回の修正は、先ほども申し上げたように、大幅な修正の内容を持っているものでございます。その内容は、先ほど同僚の谷垣議員からも提案理由で御説明がありましたとおりでございますが、繰り返して申し上げますると、第一点はいわゆる薬剤の一部負担を廃止したということ、それから第二点は料率千分の一の引き上げを、これを取りやめることにいたしたということ、第三点は臨時特例法に規定されておりました保険料率千分の七十を本法に規定することといたしましたということ、それから第四点は、これも同じく特例法に規定されておりました入院、初診料の規定をそれぞれ本法に規定することといたしたこと、以上の四点がおもなる修正内容でございます。
○上田哲君 さて、そこでお尋ねをしたいのでありますけれども、衆議院の議論にもあったかに仄聞をしておりますけれども、われわれは、こうした法案を御提出なさるについては、言うまでもなく、政府提案の法案であれば各種審議会の議を経なければならない、これは厚生大臣も先ほど関連質問についての御答弁の中で明らかにされておるのであります。厚生大臣のそのときの御見解では、しかしながら、これは行政府の過度の権限行使を抑制する目的に立っているのであって、議員立法はこの範疇に含まらないものである、こういう御見解でありました。そのことは一応そのとおりであろうと認めてもいいと思います。しかし、私がここでたいへん大きな拡張解釈があってはならないと思うのは、いやしくも行政府に過度の権限行使を認めないという趣旨が、議員立法であるならばそうした趣旨のすべてを排していいということにはならないであろうと思います。すなわち、議員立法であれば慎重審議のすべてを排することが望ましいというふうに理解をさるべきでないのはきわめて当然であります。そういう観点に立つならば、いま澁谷議員が御指摘になりましたような、客観的にいかなる判断においても大幅修正であるとする、提案者自身が大幅修正であると言われておるような大幅修正について、いかに議員立法であれ、単にこれが政府提出の法案であることとの対比においてそうした審議会の議を経ることが必要でないというような問題ではなしに、それとは比較する問題ではなくて、議員立法であるとしても、なお提案者自身が認められるような大幅修正に対しては十分な審議を行なうことが妥当である、こうした見解については異論がないと思いますが、いかがでありましょうか。澁谷議員並びに厚生大臣からお答えいただきたいと思います。
○衆議院議員(澁谷直藏君) 後段のこのような大きな修正について十分な審議を行なうべきであるという御意見に対しては、全く賛成でございます。
○国務大臣(斎藤昇君) 政府側から国会において審議をされることについて云々を申し上げるのは筋違いであろうと存じますが、しかしながら、国会におかれましては、十分慎重審議をされるのがたてまえであろうと、かように存じます。
○上田哲君 事実関係についてお尋ねをするのでありますが、そういう大前提に立っているとすれば、今回の修正案についての審議は全く行なわれてないとわれわれは了知をしておりますが、これが適当であるとお考えでありましょうか、澁谷議員からお答えをいただきます。
○衆議院議員(澁谷直藏君) 御指摘のように、今回の修正案については、少なくとも成規な社会労働委員会においての審議は行なわれなかったわけでございまして、この点については、私どももはなはだ遺憾に存じておる次第であります。できるだけ原則としては慎重な審議を尽くすべきであるという考え方は、私どももそのように存じておるわけでございますが、今回の十日のあの採決というものは、そういう点から見ると、十分な審議が行ない得なかったという点については、はなはだ遺憾に存じておる次第であります。
○上田哲君 重ねてお伺いをいたしますが、本来ならば十分な審議をすべきであった、これはただいま御確認のとおりであります。後段の部分で、しかしながら十日の状態では十分な審議ができなかったというような御説明でございますけれども、しからば、十日の日に平常な状態があったならば、さらにあり得べき姿として審議を続けるべきであったとお考えでありましょうか、あるいは、いかに平常な状態があっても審議を必要としないとお考えであったでしょうか。
○衆議院議員(澁谷直藏君) 実は、十日の午前に理事会が開かれまして、その席上に、私どもは、わが党の修正原案というものを一応用意して出席をいたしたのでございます。したがいまして、私どもの気持ちとしては、この理事会におきまして、このわが党の修正原案というものを各党の理事にお示しをいたしまして、そうして成規な話し合いをいたしたいと考えておったのでございますが、事実は、まあ詳しくは皆さん御存じないと思いますが、そのような話し合いをする機会を得ないままに、あのような結果になっていったわけでございます。
○上田哲君 できれば、質問申し上げている部分にのみお答えをいただきたいのでありますが、事情は、私ども仄聞している部分がいろいろございます。
 私がお伺いをいたしたいのは、十日の状態が平常でなかったので、尽くすべき審議を残念ながら尽くし得なかったとお考えなのか、もっとふえんして申し上げるならば、時間があればもっとやるべきであったとお考えなのか、それとも時間があっても、もはやあれが限度であったとお考えなのか、その点どうですか。
○衆議院議員(澁谷直藏君) でき得れば、この修正原案についての各党との話し合いをいたしたいと考えておったわけでございます。
○上田哲君 なお十分お答えになっていないと思いますが、一歩進めます。
 いかなる事情があるにせよ――これは自民党なり、政府なりを追及をし、社会党の立場をどうしようというようなことを私は申し上げているのではありません。その経過の是非は問いませんが、いかなるそうした経過の部分は別にせよ、とにかく審議が十分でなかったことは残念であるとお認めになりますね。
○衆議院議員(澁谷直藏君) そのとおりでございます。
○上田哲君 けっこうであります。
 そういたしますと、この点は違法であるということがかりに言えないとしても、はなはだ審議の状態としては残念であったということを提案者御自身がお認めになったわけであります。私は、やはりこの際、議会民主政治あるいは議院において十分な審議を尽くすべきあり方の問題にまでさかのぼろうとは思いませんが、いやしくもいま政治不信が議会審議のあり方に向けられているという観点に立つならば、少なくとも、この問題について再思三省があるべきだと思いますが、先ほど来の幾つかの審議をお伺いをしていると、これが議員立法であるからいいのである、あるいは会期がはなはだ逼迫をしているから、いたしかたなかったのであるというような趣旨の御説明があったように思います。さらに第三点として、私が耳の間違いであればそれまでのことでありますが、若干助け船になるかもしれませんが、これはあるいは谷垣議員の御答弁だったかもしれませんが、ほとんど内容の変わらない部分がそれまでの特例法に関する審議の中で尽くされていたと思うのでと、こういう部分があったように思います。この三点のいずれが理由になるでありましょうか、あるいはそれ以外の理由があるでありましょうか。
○衆議院議員(澁谷直藏君) すみませんが、もう一度ひとつ……。
○上田哲君 私は、かなりこれは好意的に助け船を出しているわけでありますが、提案者自身が不十分であったということをお認めになっているが、不十分のままでは相すまぬと思います。提案者の側は、それを不十分でないと御説明されるこれまでの経過の中で、幾つかの理由をおあげになったように思います。これはたとえば第一には議員立法だからいい、そういうことで不十分な審議、それから第二には、事態が逼迫をしていたと、それから第三は、委員会審議の中で、それと同じ内容の審議がかなり事前に尽くされていたのだからということを聞いたようにも思います。その三点のいずれの理由に依拠されるのでありましょうか。あるいはそれ以外の理由もおありでありましょうか、この際まとめてお答えいただきたい。
○衆議院議員(澁谷直藏君) 午前の答弁でも申し上げましたように、本法案につきましては、社会労働委員会においては、かなりの時間を費やして審議をいたしたわけでございます。参考人を招致してその意見も聴取をいたしました。さらには委員会の冒頭に総理大臣の出席も求めて、政府の最高責任者としての見解もただしたのでございます。そのような審議の経過の中で、先ほども申し上げましたように、薬剤の一部負担はこの際廃止したほうがいいといったような議論が非常に強く主張されたのが第一点、さらに分べん費の給付の改善に見合う保険料率千分の一の引き上げは、この際これも取りやめたほうがいいという強い主張があったわけでございます。私どもは、そのような審議の経過、さらには小野委員からお話がございましたように、社会保険審議会あるいは社会保障制度審議会の答申の中にもそのような意見が併記して提出されておったわけであります。私どもといたしましては、そういった各般の情勢判断の中から政府、特にまあ財政を預かる大蔵省側におきましてはかなりの抵抗、難色があったのでございますが、与党としてこれを押し切って、そして各般の要請にこたえる修正を行なうべきだ、こういう観点に立って今回の修正に踏み切ったわけでございます。
○上田哲君 確認をいたしますが、修正案の審議は十分でなかったけれども、しかし、それ以前に同じ内容について特例法における審議がかなり進んでいたからこうした立場に踏み切ったのである、そういうことでよろしいですね。――そうなりますと、私は、ここにたいへん大きな矛盾が出てくると思います。先ほど御説明になっていらっしゃることは、議員立法であるから各種審議会の議を経ることはないと、もっと簡単に申せば、政府提案の法案でないから、議員立法だから省けるものがあるのだとおっしゃる。その議員立法では十分な議を経てないことは残念であるとおっしゃっている。残念な部分を根拠を全然別にして、プロセスを、形成過程を別にして、政府提案の部分に肩がわりをして、その部分の審議をもってここに振りかえるということは、これは明らかに解釈上おかしいことになってくるわけです。実情論としては、隣のうちで飯を食ったから、きょうは飯はわが家では食わないことにしようというわけには――いま政府自民党も法解釈の拡張解釈にきゅうきゅうとされている立場を考えるならば、はなはだ疑問が出てくるところであります。この政府提案は、これを採用するしないは別として、曲がりなりにも各種審議会の議を経て提案されている特例法、この上に立って審議を一応踏まえているものの、案の上に立った審議を援用していささかも――お認めになったように、審議を尽くしていない立場をその上に肩車に乗せてこの部分を乗り越えようとされることは、法的にはなはだ不備であると考えますが、いかがですか。
○衆議院議員(澁谷直藏君) 社会保険審議会、社会保障制度審議会の問題につきましては、午前中の答弁でも私からかなり詳しくお答えを申し上げておるところでございます。この点についての見解は現在も全然変わっておりません。あくまでも社会保険審議会あるいは社会保障制度審議会は政府の諮問機関でございまして、政府が社会保障、社会保険関係の新しい法律案を提案する、あるいは修正をするという場合には、あらかじめこれらの機関にはかり、その意見を聞いた上で国会に提出をしなくちゃならぬという法律のたてまえになっておるわけでございまして、しかし、国会における修正という問題は、これとは全然別個な問題であることは、これはおのずから明らかでございます。ただ、午前の小野委員にもお答えいたしましたように、法律上はもちろんそういうことではございますけれども、私ども国会議員という立場において法律を審議し、法律を成立をさせ、あるいは修正をするという場合におきましては、あくまでも国民の立場に立って、どのような内容が適正であるか、妥当であるかと、こういう観点に立って私どもは判断をすべきだと考えておるわけでございます。したがって、実質的にはそれぞれの当該案件について、政府の諮問機関ではございますけれども、社会保険審議会がどのような結論を持っておるか、社会保障制度審議会がどのような意見を持っておるかということは、当然国会議員の立場において十分これは配慮しなければなりません。しかしながら、国会で現実に修正をする場合、自由民主党なら自由民主党という立場において、これらの政府の諮問機関にはからなければ修正ができないということは、法律のたてまえにもそうなっておりませんし、私どもはそのようには考えておらないということを申し上げているわけでございます。
○上田哲君 第一点は激しい法律論としての矛盾であり、第二はその矛盾を埋め合わせるために政治論が顔を出しておりますので、この点をひとつ軌道を修正をして御答弁をいただくようにお願いをしたいのです。
 私が申し上げたいのは、論旨を明快にお願いをいたしたい第一点は、御主張のように、あくまでも議員立法であるから、他のいかなる――たとえば政府提案の法律にかかわる諸手続なり、審議の内容とは関係のないものであると突っ放されるのであれば、先ほど御自身がお認めになりましたように、審議が十分でなかったことが残念であるということにとどまるのであります。しかし、それにもかかわらず、実質的にはまるっきり成り立ちが違うものであるけれども、中身がたまたま同じものであったから、政府提案の同じ趣旨の条文の中でも審議が尽くされていたではないか、国会議員として実情を把握するのは当然である、法案は違うけれども実情的にはわかっているのであるとおっしゃるのであるならば、そのことが院における審議のデータになり得るのであるならば、たとえば二十五日の参議院本会議における大谷藤之助議員がいみじくもそれと反対の論議を展開されましたよ。実質的に参議院社労委員会でこの法案の審議が行なわれているかどうかは、実情的に知っているかどうかは別だけれども、法規に照らしては中間報告を求める根拠があるということは、矛盾をしてくるのであります。二百五十人の参議院議員のどなたも参議院社労委員会でどのような審議が行なわれたか、ただいまの論旨に従うならば、知らなければならない国民的義務があるはずであります。しからば、わざわざ念を押して中間報告を求める必要は法的にその根拠を失うことになるはずであります。私は、こういう議論をすることを好まないということを先ほど申し上げておりますから、これについて追及はいたしません。整理をしていただきたいことは、あくまでも議員立法の筋を通すのであるならば、議員立法でない政府提案の成り立ちの中で行なわれたいかなる審議も、ここに準用する解釈がどこから出てくるかということは問題が出てくるだろうと思います。だから、この点について、明らかに一つの法案がある、政府提出の法案がある、この審議が相当進んでいるといたしましょう。そのときに、突如としてほぼ同じ内容を実情的には持っているかも知らないが、議員立法が出てきた。この場合には、いかなる審議をしなくても、他の名称の法案の中で審議が十分尽くされているという実情があるのであれば、議員立法の審議を省いても違法ではない、また妥当であるという、こういう新例が開かれるものかどうか、ひとつ衆議院の法制局長から御答弁を願います。
○衆議院議員(澁谷直藏君) 法制局長の答弁の前に私から重ねてお答えをいたしたいと思いますが、およそ法律案の審議というものは、政府提出の法律が一番多いわけでございますが、その審議全体を通じて修正をすべきであるか、原案のままでこれを成立させるべきであるか、あるいは廃案にすべきであるかという判断が出てまいるわけでございます。私の先ほどの答弁、あるいはお取り違いになっているのではないかと思いますが、政府原案の審議が行なわれたから、その審議で修正案についての審議は省略してもいいのだというようなことは、私はお答え申し上げておりません。先ほどの御質問に端的にお答えいたしましたように、でき得るならば、修正案についても十分の審議を行なうべきであったというふうに私は考えております。ただ、現実の問題として、先般の社会労働委員会におけるあの状態は、修正案についての十分な審議を行なうことができなかった、その点ははなはだ遺憾でございます。このように申し上げておるのでございますので、その点はひとつ御了承をいただきたいと思います。
○衆議院法制局長(三浦義男君) ただいまのお尋ねの点につきまして、ちょっと取り違えておれば、またお尋ねを願いたいと思いますが、けさほど午前中の小野委員の御質問に対しまして、私お答え申し上げましたが、いわゆる国会修正というものは、私は限界がないと考えております。それが憲法上いろいろな問題があれば別問題といたしまして、政府が国会に提出した法案の内容につきまして、それをいかなる修正を行なおうが、それは国会の独自の権限であるし、そのことは憲法で御承知のとおりに、いわゆる国権の最高機関であり、唯一の立法機関である国会の当然の権限からにじみ出てくる事柄であろうと考えております。したがいまして、国会法あるいは衆議院規則、または参議院規則等におきまして、修正の場合について何らかの制約の規定があれば別問題といたしまして、それがない限りは、国会における修正についての何らの制限はない、こう午前中に申し上げましたが、さように現在も考えております。ただ、ひとつ制約があるといたしますれば、それは国会法に書いてございますように、法案の修正内容が予算に関連を持つ場合において内閣の意見を聞かなければならないということはございますが、この点は、衆議院においても、その措置をとっておりますので問題はなかろうかと思います。
○上田哲君 法制局長の解釈というのは、私は解釈で争わないと前から申し上げておりますから議論はいたしませんが、私の意見をつけ足しておきたいと思いますのは、これは言ってみれば、教科書の第一ページに書いてあるコメントの要らない部分の言い方であります。予算を伴うものは云々ということはきわめて当然のことでありますけれども、少なくとも、提案者が十分な審議ができなかったことは残念であったと言われております。問題は、それを特に違法性とまではいま言いませんが、妥当でなかったことは認められておる。少なくとも法の立法の精神は、高度の常識を条文化するということでありましょうから、その限りにおいては法をこまかくことばになぞらえてつくっていく場合には、こういう解釈もあり得るというエクストリームな例外を設けるように意図するのではなく、できるだけ常軌に適合するような構成に努力するのが妥当であることは言うまでもありません。その限りでは、あなたのおっしゃることは、最小限の規定を表現されるのであって、議員立法というものが、議会の法案修正権というものが、ただいまおっしゃったような特殊な例外を除いては万能であるということそれ自体はけっこうであります。しかし、それはそのゆえにあらゆることがいかなるチェックもなしに行なわれることのほうが望ましいということにはならぬだろう。少なくとも、提案者が十分な審議をしなかったことが残念であると言われているような部分をもっと十全の形に補修するという方向を解釈の上でも取り出してくることが望ましいということを言っているのであります。この点について議論のある道理はありませんから、私がお伺いしていることは、明らかに二つの法案は名前が違うのでありますから、名前が違うという限りにおいて別問題であります、別法案であります。一方の法案の審議が十分でない。同じような内容のものがあったにせよ、他の法案の審議というものをもって別の法案の審議に対する充足ということがなし得るかどうか、その解釈を伺っておるのです、簡単にお答えいただきたい。
○衆議院法制局長(三浦義男君) 御承知のとおり、今回の提案は三本立てになっておりまして、ただいま申し上げましたような内容の健康保険法の改正、船員保険法の改正、それから健康保険法及び船員保険法の臨時特例の期間の延長、こういうものの内容を含んでおりますので、そういう一つの内容を持った一体の法律案として政府は提出したわけでございますので、その内容の中において、その条項のどの部分を整理し、どの部分を削除し、どの部分を追加する、こういうことは全く法案修正の上において何ら差しつかえない問題であって、特に問題とすることは私はないように思っております。
○上田哲君 少しざわめきがあったようでありまますから、委員長から御注意をいただきたい。見解の相違についてはの主張は、国会は言論の自由の府でありますから、十分に保障されなければなりません。かりに法制局長の法解釈が万能であるとしても、このことは国会立法権上議院立法の万能を振り回す理論をもってしても、なお理由づけ得ないものでありまして、その点は委員長から法に照らした委員会の秩序維持について十分に配慮していただくようにお願いいたします。
 次に進めますが、二十五日の参議院本会議の中間報告の問題であります。昨日の参議院事務総長ではなかったのですが、ちょっと名前を忘れましたが、法制局長さんでしたか、どなたかが委員会中心主義の問題について御説明をなされたときに、委員会審議は本会議の審議に便し云々ということばが使われました。これは何らかの条文の明文が存在するのでありましょうか、慣習による表現でありましょうか。これはどちらかの局長さんだったと思うのですが、参議院の局長から再度お答えを願いたい。
○法制局長(今枝常男君) ただいまお話のように、本会議の審議に便しということばを使いました記憶は私ございませんです。使っておらないと思います。
○上田哲君 ことばの問題はそれではけっこうでしょう。委員会中心主義というものはいかなる条文、慣習によるか、由来するか、参議院法制局長から伺います。
○法制局長(今枝常男君) 委員会中心主義ということを正面から規定した規定はあるいはないといっていいかもしれませんが、国会法の第五十六条の第二項にございます「議案が発議又は提出されたときは、議長は、これを適当の委員会に付託し、その審査を経て会議に付する。」、こうありまして、原則といたしましては、議案は、まず委員会の審査を経てから本会議が決定する、こういう原則的なたてまえをとっておりますことを一般に委員会中心主義というふうに理解しておるものと承知いたしております。
○上田哲君 それに伴っての昨日の御説明の中では、委員会中心主義とはいいながら、しょせんは本会議の審議に便するものであるから、その意味では、たとえば委員会で提案理由の説明が行なわれていない場合であっても、そのことが行なわれているかどうかについても中間報告を求めることができる、こういう解釈がなされたのであります。私は、これについてはいろいろ議論がございます。本質的には委員会中心主義をうたう以上、提案理由の説明もないものに中間報告を求める云云ということが、一体常識の底辺においてあり得るものかどうか、そうした問題が三百代言的な法解釈の中で遂行されていいかどうかという問題はあると思いますが、一歩譲って、この際、中間報告の中には、御説明のように、提案趣旨の説明が行なわれているかどうかについてもこれを求めることができるということを前提として議論することにいたします。私がお尋ねいたしたいのは中間報告、提案趣旨の説明が行なわれたかどうかということをすら中間報告を求めることができるとしても、この問題は委員会中心主義の限度ということを確定することになると思いますから、そのことができるとしても、その中間報告を求めるならば、求めたあとならば、そのまま本会議は、委員会においての一切の審議が提案趣旨の説明も行なわれていないということの上に立っても、なお採決することができるものかどうか、この点の御解釈を承りたいと思います。
○法制局長(今枝常男君) 私はもっぱら法律的の、これは申し上げるまでもないことですが、法律面を申し上げております。それで、法律は、最小限度といいますか、最大限度といいますかの規定をいたしておるわけでございますが、いずれにいたしましても、中間報告を聞きましたあとにおいて、本会議としてどのような措置をとるかということは五十六条の三の第二項に規定いたしております。したがいまして、この規定に該当して、あるいは期限を付し、あるいは直ちに会議で審査することになるかどうかということは、その具体的の場合において、この規定との関係において、この規定に該当しているかどうかということを会議御自身がお認めになるかどうかということによってきまることだと思います。申すまでもありませんが、五十六条の三では「中間報告があった案件について、議院が特に緊急を要すると認めたときは、委員会の審査に期限を附け又は議院の会議において審議することができる。」と規定いたしておりますので、会議におかれまして、緊急を要すると認められましたときには、法律論といたしましては、ここに現定されているような措置がとり得る、法律上は。つまりそれをとりましても、直ちに違法とは呼べないという意味において法律論としては、そういう措置をとることができる、こういうことになるかと思います。ただ、そういう措置をとりました場合に、そこに妥当論上問題があるというふうな考え方に立つ見解の起こり得るような場合が事実問題として起こり得るかどうかということは、これは、一応別の問題、と申しますのは法律的には別個の問題というように考えております。と申しますのは、重ねて申しますと、法律的に許されているワクの中で現実に行なわれます事態が、ときに妥当論の面から問題を起こすという場合があり得ることは、これは否定できないことだと存じます。
○上田哲君 たいへんもって回わった言い方で苦しい答弁でございまして、その中で法律論と運営論の区別があるだろうというところを私は重視いたしまして、法律論と運営論の二つに分けます。法律論としては、そういうことができる場合もある、できない場合もある、期限を付して委員会に送る場合もある、こういうふうな御解釈でありました。とすると、二十五日の参議院本会議で中間報告を求めた。ある場合もある、ない場合もあるというフレキシビリティの中で中間報告を求めた後、参議院本会議が委員会に期限を付して、審議をしろという決定をされたという解釈は、明らかに、直ちに本会議において採決をすることには十分熟していないということの結論に達したというふうに理解するのが妥当だと思いますが、いかがですか。
○法制局長(今枝常男君) ただいまお尋ねの問題は、五十六条の解釈の中で、現に行なわれました本会議での議決が、つまり妥当であったかどうかという点のお尋ねになると思います。これははなはだ……。こういうふうに申し上げていいかどうかわかりませんが、私ども法制局の者といたしましては、法律論についてだけの判断を申し上げたんでございまして、妥当であったかどうかということを申し上げることは、法制局としてはごかんべんをいただきたいと思います。これはそういう立場に置かれていないものであるということを御了承いただきたいと存じます。
○上田哲君 あなたの立場を追及しようとするわけではありませんから、私は二つに分けたのです。あなたがおっしゃるように、法律論と運用論があるでしょう。純法律的に答えることができなければ、法制局長、何のために禄をはんでいるのだ、有権解釈をなさるためにそこにいるんじゃありませんか。いかなる政党にも政府にも属しているわけではない。法に属しているのです、あなたは。その限りでは明らかに正当な立場において法解釈をきちんとお出しになればいいので、ごかんべんを願いたいとは何事ですか。法についてものを言うことができなければ、法制局長というのは要らないじゃないですか。これは明らかに堂々とおっしゃい。それがどうしても言いにくいことで、かつまた、それを今日の法律の中でおっしゃることができなければ、私はそういうめがねをかけて見ることにいたしますから。明らかに中間報告を求めた、その上で、できることもある、できないこともある中で、なお委員会に審議を期限をつけて返した、戻した。戻したと言っちゃいけないのですか、送ったということは、それは十分に、ここで本会議の採決をする、本会議の意思を決定するには熟してなかったということに法律的な解釈としてはならざるを得なかったと言ってるわけですから、イエスかノーかをちゃんとお答え願いたい。
○法制局長(今枝常男君) あるいは私のことばが不足したのかと存じますが、議決そのものは、法律の中で行なわれたものというふうに私了解いたしております。あとはそれが妥当であったかどうかという問題でございまして、これは適法、違法の問題ではございませんので、そこで、法律上の問題ではないというふうに申し上げたわけでございます。そういう意味におきまして、法律上の問題になりませんことを申し上げるのは、私の権限に与えられていないことであることを申し上げた次第でございます。
○小野明君 関連。法制局長、きのうの続きなんですが、いま上田君が触れた問題で、議院が緊急を要すると認めたとき、この点に関するあなたの見解というものがいまないわけですね。説明をされておらぬわけです。そこで緊急を要すると認めたときというのは、これは主観的に判断をされてはならぬという点については、きのうもあなたが答弁をされたと思うのです。やはり客観的な、合理的な判断の基準、緊急を要するという事態の判断というものがなされなければならない。同時に、緊急を要するときという基準というものがなければならぬと思うのです。今回の場合は、この緊急を要するときという問題に、この参議院社労委員会が中間報告で持っていかれたという事態が当てはまるわけですが、この緊急を要するときということばを、字句を解釈するのに妥当な基準、あるいは原則というものを、あなたのほうはお持ちでなければならぬと思うが、この点はどのようにお考えになりますか。
○法制局長(今枝常男君) 緊急を要する場合に該当するかどうかということは、これは場合々々の各種多様な事態を基礎として出てまいることでございまして、これを一般的にそれの基準というものを立てることは困難のように存じます。そこで今般の会議において緊急と認められたということは、むしろこれは本会議におかれまして、結論として緊急を要するという事態が存在するということをお認めになったものであると存じますし、それはそういう判断に至りました基本になる事態がどういうものであるかということは、これは私といたしまして、これをいわば有権的に認める立場にはございませんわけでございます。したがいまして、今回のものが緊急に該当したかどうかということは、私どもの立場では認定は困難というように考えている次第でございます。
○小野明君 そうすると、あなたのほうで、法律上の立場から認定は困難だ、緊急を要するときということばに該当する基準はない、こうなると、この議長がオールマイティであって、いつでも自分が必要と思ったときに、あるいは特定の政党が必要と考えたときに、特定の権力をにぎっている人がこれはこうしようと思うときに、いつでもかってに中間報告という武器を使うことができる、こういうことにしかならぬわけですね。そこで、これにブレーキをかけるには、客観的、合理的な基準というもの、これがあるべきだということを申し上げているのですが、この点があなたの解釈では、御見解では、どうも主観的に運用されてよろしい、その結果、委員会中心主義というものが、これを原則にしているのだが、この原則を破られてしまう、原則さえも破られてしまうという結果を招来するわけですが、それでも、なおかつ、そういった措置についてはわれわれは関知しないということになると思うのですが、いかがですか。
○法制局長(今枝常男君) 緊急を要するという法律的な効果を生じますのに、どういう事実があったら緊急を要すると法律が言っているか場合かという問題でございまして、実は問題が二つに分かれていると存じます。一つは、ある事実、ある事態がありまして、その事態を法律上緊急の必要がある場合と称しているものに当てはまると考えるかどうかという問題、こういう意味において、事実の問題と法の問題とが二つあると存じます。こちらに一定の事実があって、その事実をもとにして、この事態は緊急を要する場合だと、こういうふうに考える場合がこの規定の動く場合かと存じます。そこで、ただいま私が申しましたのは、その緊急の必要ありと考えられる、基礎になる事実が何であったかという問題でこれはきまるのでございまして、これはそういう意味において、私がここで右左を申し上げることのできない立場にありますということを申し上げたわけであります。と申しますのは、これはいま二つに分かれました法の面を私の立場としてはつまり扱っている関係に過ぎませんので、片方の事実関係がそれに当てはまっていたかどうかということを申し上げる立場ではない、と同時に、またそういうことを認識する立場には置かれていない、こういう趣旨なんでございます。したがいまして、私が申し上げましたことによって、この規定が恣意的に動くことになるというようなふうに、もし御了解いただきましたならば、それは私のことばが足りないのでございまして、それはもちろん緊急を要する場合というふうに法律で言われるだけの事実関係がなければならないということは、私申し上げることができます。
○上田哲君 先ほども言っていますように、いいですか、局長、あなたのおっしゃる区別に従って、私は、法律論と運用論を分けると言っているのですよ。だから、法的にあなたはこの現象をどう理解すべきかということをきちんと答えてもらいたい。運用の問題に入ってまで私はあなたをいじめちゃおらぬのですよ。いいですか。あなたは、この国会というところ、院というところ、あらゆる審議は全部法に基づいて行なわれているのです。どういう問題であれ、国会内の運営なり、審議なりというものが法以外の他の規範によって行なわれていることはないのですよ。いかなる部分についても、法的見解、解釈を求められれば、あなたはこれに答えなければならないのです。法が空白になっておるという部分が、あるいは空間が、あるいは時間がこの院には存在しないということはお認めになるわけでしょう。いいですね。そうだとすれば、なかなかおわかりにならなければ、たいへん卑俗な例をお話しするが、あなたのほうから、これはどうですよ、こうですよということを言われない場合があるでしょうが、野球のアンパイアは、ランナーがベースをほんとうに踏んでいったかどうかということを言わないわけですが、アピールを受ければ、明らかに踏んでいったかどうかということをアンパイアは答えなければならぬのです。いかなる場合であろうと、野球はルールによってしか運営されない。法に基づいてしかあらゆる手続、あらゆる運行はなされないのです。ですから、緊急の事態とは何であったか、どういう場合が緊急の事態に当たるのかというような解釈についても、またいろいろ事実関係の分析はあるでしょう。そのことはしばらくおきましょう。あるいは議長なり、それを受けた事務総長なりにこれからお伺いをすることになるだろうと思うから、それはしばらくおくとしてもいい。あるいはもう少し譲って、院全体がきめた判断に私は従うだけだという御答弁でも、私はあなたを追及しようとは思わない。少なくとも、しかしその中に包まれるものが何であれ、中間報告を求めたその中間報告の上に乗って院は採決をできることもある、できないこともあるというのがあなたのおっしゃった法的解釈なんです。それを採決をしないで委員会に送ったという事態がここに生じたということは、法律的にどう解釈すべきかということを法的に明らかにされたいということを私は言っている。つまりそれは、ここで採決できる場合もあるにもかかわらず、あなたの解釈によるならば、採決をしないで委員会に送ったということは、採決するに値しなかったというふうに解釈することが正しいのではないかと言っているのですから、イエスかノーかは答えられるでしょう。
○法制局長(今枝常男君) あるいはまだお尋ねの件をよく理解していないかもしれませんが、ひとまずお答えいたしますと、ただいまのお尋ねは、本会議においてなぜ直接審議、議決しないで委員会にもう一度戻したか、これが法に合わないんじゃないかということのお尋ねのように理解いたしました。もし、そうでありますならば、そういう意味でございますならば、それは議院、この場合議院と申しますのはハウスの意味で申しますけれども、このハウスが、緊急の必要があるけれどもまだ直ちに本会議で審議をするには適しないので、ひとまず期限をつけて委員会で審議を、審査をしてもらうことにするのが現段階においては適当だと、このように判断したことによって期限をつけて委員会に差し戻されたものであろうと、法律的にはそのように理解いたすわけでございます。
○委員長(吉田忠三郎君) 速記をとめて。
  〔速記中止〕
○委員長(吉田忠三郎君) 速記を起こして。
○上田哲君 委員長の御指示もありましたから、ひとつ時間の節約のためにも、私もずばりとお伺いするから、局長さんひとつ心配しないでずばっとお答えしなさい。
 あなたのことばをかりるならばハウス、さらにあなたのことばをかりるならば緊急の事態――必要があったにもかかわらず、なお委員会で審議をすることが妥当と考えて送ったと言われるのですよ。そうですね。緊急な事態が何であったかということは触れたくないようだから、そのことについては運用の問題としてあとに譲るけれども、緊急事態があったにもかかわらず、それでは委員会の審議に送ったというのは、どういう根拠なり、解釈に基づくことになるのですか。
○法制局長(今枝常男君) それは、五十六条の三の第二項におきましては、緊急の必要があると認めた場合に、期限をつけて委員会に返す場合と、本会議が直接審議する場合と、二つのどちらかを選ぶように――これはまさに法律的なことだけ私お答えしているつもりでございます。どちらかを選ばれるように、五十六条の三の第二項自身が規定しております。そしてどちらを選ぶかは、これは議院の判断にまかされております。そこで、その判断にまかされたワクの中で、今回は委員会のほうに一度返すというほうの手段を選ばれた、このように理解いたしておりますのでございまして、私は、実はあまり法律的なことばかり申し上げているのじゃないかと思って、言うことをおそれているくらいでございまして、それ以外の他意は何らございませんから御了承願いたいと思います。
○上田哲君 これ以上は、時間の空費でございますから、運用の問題に移ります。
 事務総長にお答えをいただくことにいたしますが、いまのたいへんあいまいな法解釈でありますけれども、緊急の事態があったにもかかわらず委員会の審議に送ったという理由ですね。これはまさに運用の問題だというふうに理解をしてお尋ねをするのですが、私どもの理解では、あれほど無理な中間報告、今日まで先例のないような、提案趣旨の説明がないにもかかわらずそれ自体が中間報告を求める対象になり得るというような、とにかく普通の法律家に聞けばいろいろな意見もあるでしょうけれども、まあ、無理だなあとだれだって言う程度の拡張解釈をしたのだと私は言いたいのだが、それを千歩万歩譲るとしても、なおかつ、ここで院の慣例を守っていくためには、緊急の事態があったにもかかわらずとおっしゃっておるのだからなおさらのことでしょうが、あれほどの中間報告の強行をされるにもかかわらず戻されたゆえんのものは、やはり今日までの議会政治八十年の歴史の中でも、委員会中心主義の委員会で提案趣旨の説明がなかったにもかかわらず中間報告を求め、その上でここでハウスの議を得るということは、いかにも運用上正しからざるものである、こういう判断に基づいてその運用的配慮に基づいて委員会の審議に付した、こういうふうに考えているのですが、いかがですか。
○事務総長(宮坂完孝君) この中間報告の件につきまして、法制局長の法解釈と申しますか、そういう点については、もう上田先生は十分御承知のことと思われるのであります。冷ややかな法律の解釈論におきましては、たとえ委員会におきましてこれは説明がなくても、この国会法五十六条の三の規定によりまして中間報告が求められるという法制局の見解は、その点私も了承いたしておるわけでございます。しかし、その法意によりまして中間報告の動議が出てまいったのでございまして、これは違法であるとは断じないわけでございまして、議長におきましてもこれを受理いたしたわけでございます。しかし、議長の御心境を私が申し上げるのでございまするが、あのとき受理はいたしましたが、すぐ本会議の上程は差し控えまして休憩を宣されたものと解釈いたします。終わりまして、議長の部屋におきまして各党の御参集を得まして、いろいろ議長がお話し合いの場をつくり、種々御協議を願ったわけでございまして、その際議長が各党に示されたものが一応の申し上げた文書に相なっておるわけでございまして、それによりましても、議長は、さらに各党におきましても十分審議のできるような取り計らいを願いたい、しかしながら、各党において協議が相ととのいません場合は、議長はやむなく法規に従って議事を進めざるを得ないという注釈がつけてございます。そういうような次第でございまして、そういう点につきましては、議長としては大いに御努力なさったことと私はそばにおりまして拝察いたしておるわけでございます。
 それで、いま、そのあとの議事につきましては、法制局長からも答えられたとおりでございまして、委員会に期限を付して差し戻されたと、こういうことでございまして、その点につきましての価値判断につきましては、あの場合それが一番いいのであると議院の会議においておきめになったことであろうと、私は了承いたします。
○委員長(吉田忠三郎君) 事務総長ね、声が低いせいか、ちょっと委員の諸君は聞き取りにくい。事務総長ですからね、胸を張って大声でやってください。
○上田哲君 私がお尋ねをしたこととは違うんですよ。私は、時間を急いでおりますけれども、そんなに人工衛星のようにぐるぐる回られたんでは、いつまでたっても基地に帰りませんから、これは時間に際限なくやりますから、ひとつ簡明率直にお答えいただきたいと思いますが、法律論については不十分だけれども、これはまた後に申し上げたいと思うけれども、私どもは違法性という立場をとっておるということは冒頭に申し上げた。だから、そのことについては争わないけれども、あなたのほうで、それはあくまでも違法ではないと考えるのだということを強弁されるなら、もう一次元違ったところで争わなければならぬ。ですから、その辺のところはまた違ったところで議論しましょう。だから、法律解釈についても不十分だけれども、先ほどの法制局長の答えもそこにとどめておく。問題は、苦しまぎれにしたところの法律上の解釈問題と、そして運用上の問題というふうに分けようじゃないか。そういうことになれば、事務総長から、議会の、ハウスの円満な運営をはかるべき先例を開くべき立場として、勇気をもって、良識をもって、きちんとお答えをいただきたいということで伺っているのですが、しょせんは運用の問題だというところに問題を集めてというのならば、この間のような中間報告の後に、なおかつそこでハウスの議を決定するのではなくて、委員会に差し戻したゆえんのものは、ただいまの御説明の中にも明らかに、一方に緊急の必要があったと認められておるのですから、にもかかわらず、委員会の審議にさらに送ったというのは、そもそも日本の憲政史上初めてというべき瑕疵があったとまでは言い切りませんけれども、ここにおいて争うべきことではありません。そこは司法権の問題でしょうから、争いませんけれども、すでに八十年の憲政史上初めてとも言うべき、常識的に、はなはだ無理があると考えるところの提案理由の趣旨説明もなかったという問題について、中間報告を求めるところまではいいけれども、その中間報告に乗って院の議決をするということは無理があったというふうに運用上考えられたからではないのか、こう言っているのです。
○事務総長(宮坂完孝君) 国会法五十六条の三によりまして中間報告を求めて、その中間報告がなされたあとにおきましては、この緊急の必要性によりまして、委員会に期限を付して差し戻す、あるいはまたそのまま院の会議に付して、これの審議を議院の会議において続行するという二途があるわけであります。その場合に、今回は前者をとりまして、期限を付する方法をおとりになったわけでございます。そうでございますから、二途のあるうち一途をとったのでございまするから、他の方途をとるよりも、この一途をとったほうがよかろうと議院の会議において御決定になったように、私は了承いたします。
○上田哲君 だいぶわかってきました。ということは、もう一方のほうをとるよりも、こちらのほうをとったほうがいい、したがって、この中間報告の上に立って直ちに院の決定をすることよりも、いましばらく時間を与えることのほうが、議会運用上正しいとお考えになったということなんですね。
○事務総長(宮坂完孝君) 二途があるうち一途をとった場合には、そういうことでございましょう。
○上田哲君 ということは、言うまでもなく、これはもうかなり事務総長は勇気をもっておっしゃっていることだと私は思います。あなたは、昨日の委員会審議の御答弁の中でも同様趣旨のことを言われ、新聞報道の伝えるところでは、あのような決定は無理があった、妥当でなかったというふうに感じられるというようにとれるような発言をされたと報道されていることも、十分御理解の上に立って、二つの方途の上で、こちら側をとることのほうがよかった――非常に慎重な言い回しでありますけれども、こちら側をとらないほうがよかったという、同じことを言われている。私もあのような中間報告の上に立って、直ちに院議を決定をすることは、先ほどのお話のように、緊急事態が一方にありとしても、なお議会運用上は正しくなかったということをいま申されたのだというふうに理解をいたします。そういうことであるならば、私は一歩進めまして、このような形で、百歩、千歩譲って、趣旨説明がないような問題について中間報告を求めることが有効であるとしても、直ちにそのことによって院議の決定をすることでないほうがいい、そうすることを先例とすべきではない、これが国会運用上の一般論でしょう、運用のあり方だというふうに考えるのだと思いますが、その点はそれでよろしゅうございますね。
○事務総長(宮坂完孝君) この中間報告の点につきまして、私は事務を補佐する立場で、いま現に行なわれているこの問題について、そのほうがいいとか悪いとかと、こう申し上げることは、いささかその立場でないのでございますので、避けたいと思いますが、過去におきまして、これは四十三回国会の点につきましても、それから二十九回におきましても、趣旨説明のみで本会議に中間報告をとったことがございます。(「趣旨説明もないですよ、今度は。」と呼ぶ者あり)趣旨説明のみで――趣旨説明があったわけで、今回の場合と違います。趣旨説明があって本会議にとったことがございます。その場合におきましては、当時、五党と申しますか、自民、社会、公明第二院クラブ、民社の申し合わせがございます。この点につきましても、委員会中心主義の新国会におきまして、新たな制度をつくりました常任委員会制度、委員会中心主義の制度のもとにおいては、委員会においても十分審議をするようにという項目がございます。それから中間報告に関連いたしましても、十分慎重にやりたい。それからまた、これにつきまして、重宗議長の所信の談話が出ておりますが、議長といたしましても、審議を十分委員会でするように、そのために各党でやってもらいたい、こういうような公式な所信の表明がありますが、私はこれらを見ましてもさように考えておるわけでございます。
○上田哲君 本来であればその五党の申し合わせなり、重宗議長の談話の内容なり、そうした問題もここで議事録にともにとどめておきながら、いまあなたのおっしゃった前向きの決意を私は受け取っておきたいと思うのです。しかし、その辺のところはこうしたことばでそれを含むことといたしますが、一言でけっこうだが、このような形でない方法、つまりもっと具体的に言えば、このような先例を国会の常態とすることが好ましいものではないと、こういう見解について運用上の見解を明らかにしていただきたいと思います。
○事務総長(宮坂完孝君) この件につきましては、昨日、小野委員の御質疑の際、理事の大橋先生がお述べになりました発言の御趣旨を私は十分体得しておるわけでございまして、大橋先生は、それらの点につきまして前向きの姿勢でこの中間報告の制度の運用、すなわち委員会と本会議の関係の点につきましては、十分前向きの姿勢で研究すべきであるという御意見でございまするので、私はそれについてそのとおりとお答え申し上げました。これの改正につきましては、いろいろな先例を積み重ねていくことでございましょう。また、ときによっては、立法的な法律の改正等の措置もございましょう。しかし、今回、私の私見でございますけれども、国会の運用につきましては慣例を積み重ねていく、慣例がすなわち法規になればいいんだ、こういう日ごろからの考えを持っておりまして、これらの点につきましては、運用を積み重ねて、りっぱな中間報告の制度を活用していきたい。私は、中間報告の制度が国会法にできておるんでございまして、全部が全部中間報告はけしからぬというような考えは持っておりません。たとえばこの委員会におきまして、審査中重大な案件が解明されまして、それはこの二十人の委員の間でもって行なわれるよりも、二百五十人の本会議に御報告になったほうがいいだろうというようなケースもあるわけでございまして、そういうときには進んで中間報告をしていただく、こういうことでこの本会議と委員会の制度が円満な運用ができるだろうと私は確信をいたしておりますので、上田先生のおっしゃった趣旨を十分了承いたしまして、将来の研究に資したいと思います。
○上田哲君 事務総長が相当な決意を持ってお話しになったものと理解をいたします。この問題の中間報告を求めるについての経過についての要請については、何べんも申し上げたようにここで問題にいたしませんが、いま言われた御答弁の中で、第一点はわれわれが千歩譲って、委員会における趣旨説明が行なわれていない場合でも、そのこと自体を中間報告の対象として求めることができるというふうに解釈したとしても、今回は八十年の憲政史上初めてその例がとられたわけでありますけれども、その場合でも、第一回目の慣例としては、今回は直ちにそのことをもって院の決定を出すには至らなかったという最初の例、そしてまた、これから先もこのことを慣例とするのではなしに、さらにわれわれは院のあり方について十分な良識と努力を続けながら運用上の責めを果たしつつ、十全な慣例をつくっていかなければならないという、この面に関しての前向きな御発言であったと私はこのような理解をいたします。その点についてはこうしたわけでありますから、これ以上の御発言はあり得ないだろうという事情は理解をいたしますので、この際は、厚生大臣から、国務大臣としてこの点についての御見解をあわせていただきたいと思います。
○国務大臣(斎藤昇君) ただいま質疑応答を拝聴いたしておりまして、ごもっともな質疑応答であったと考えます。
○上田哲君 国務大臣の見解も私の主張と全く同じであったということでけっこうであります。
 そこで、私は違法性の問題をしばらくおいてと言っておりますから、違法性を争うのではありませんが、昨日の委員会の議事録の中にも確認されておりますことを事実問題として簡単に確認しておきますが、その第一は、院議はあのように決定いたしましたけれども、少なくとも、たとえば先般議決されました国鉄運賃の改正法案その他等等、明らかに与党、野党が大きくその意見を異にするという場合とは異なり、この場合は憲法上の合憲、違憲について、与党とそれ以外の野党とが大きく別な意見を持ち合ったまま、今回は多数決原理の決するところに従って与党の解釈における院議がなされたのであって、そのことについて争うのは別な司法権のほうにゆだねるとしても、明らかに事務総長に御確認いただきたいことは、その憲法上の合憲、違憲の争いについて大きく院の見解が分かれた議決であったということが一点。そしてもう一つは、この中間報告に基づく社会労働委員会での期限を付した審議の決定は、その根底に社会労働委員長、吉田委員長の中間報告と、これを求める自民党の大谷藤之助議員の動議、この二つを根底として成り立っていたのであって、この二つの中ではそれぞれ他院、衆議院の採決の内容については他院の問題であるからここでは触れない、こういう留保があった。この二点について、事実問題として、これはイエスかノーでけっこうでありますから、イエスにきまっておるんですが御確認をいただきたい。
○事務総長(宮坂完孝君) 前段の、本件が憲法違反である、他方の自民党、与党は合憲である、こういう点につきまして相分かれておるという御指摘でございますが、その点につきましては、私はそうは思わないのでございまして、これは法制局長からもいろいろ御説明があったと思いますが、将来の制度の改正の点につきましては十分考慮いたしまして、将来の改革の場合にも、この制度の審議の場合に経験を生かしていきたいと、こう考えております。
 それから他院における審議の状態、この点につきましては、われわれは常に両院不干渉と申しますか、相干渉せず、独立の審議を続けてその間における議決の手続、そういうものについては不干渉、干渉せずというたてまえを長年とっておりますので、その点は、私たちとしては、他院の審議過程におきましていかようなことがあろうとも、衆議院議長の正式な書類をもって事務総長が送付してまいりますので、それにつきましては、それなりに受け取っております。
○上田哲君 それはもう全然的はずれなことを言っておるんでありまして、事実関係をもっと申し上げれば、きのうそういうことが委員会で了承されて、それできょうを迎えておるんでありまして、あなたはそのときにおいでにならず、あとからおいでになったからそういうことを言っておるんでありましょうが、これは委員長にお取り計らいをいただきますが、きのうはこの二つについて厚生大臣も国務大臣として御確認になって、だからこれを本院の決定、立法府における決定としてこれを含むかどうかではない、明らかにこれは三権分立にゆだねるものであるけれども、われわれは審議の内容に踏み込むものではないけれども、その問題は、院の決定がそういう違法性を超越するものではないということをおいておくということで、事実関係として確認をしているわけです。これは事務総長は御出席がなかったので間違いがあったと思う。もし、そうであればイエスでけっこうですから、事実関係を――あなたは責任を負えというのではない。その辺を御確認いただけばいいし、委員長も、これは昨日の議事の内容に基づいて御確認をいただきたい。
○事務総長(宮坂完孝君) その点につきましては、私が欠席いたしましてお伺いする機会を失しまして、たいへん申しわけなかったと思います。それらの点につきましては、法制局の御見解も十分承りまして、これが司法の場で争われる問題であるかどうか、そういう重大問題につきましては、もっと慎重に検討いたしまして御答弁しなければならない問題であると、私はいまこう考えております。
○委員長(吉田忠三郎君) 委員長の発言を求められておりますが、上田委員の発言の内容はですね、昨日の当委員会における国務大臣の答弁、この点については、いまの質問の内容は全く変わっていないことを委員長としてお答えいたしておきます。
○上田哲君 委員長の御確認によって、昨日の議事録どおりの解釈に立ちまして問題を進めます。
 次に、七月十四日の衆議院本会議の経緯について、若干事実関係を確認しておきますが、七月十四日の衆議院本会議の経緯について、憲法第五十七条第三項では、「出席議員の五分の一以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しなければならない。」、また、衆議院規則第百五十二条では、「議長が必要と認めたとき、又は出席議員の五分の一以上の要求があったときは、記名投票で表決を採る。」、こういうことになっております。慣例によれば、記名投票で採決することの動議は、院内交渉係が所定の用紙にその旨を書き込んで事務総長あてに提出すればそのまま受理されることになり、その旨が官報に公開、議事録に所載されるということになっておるはずであります。この点については、衆議院のことでありますから、衆議院の法制局長からその点を一応御確認をいただきたい。
○衆議院法制局長(三浦義男君) 実は、衆議院における採決の模様あるいはそれについての関連する事項につきましては、私、きのう申し上げましたように、これは議事運営の問題として事務局が補佐をしてやっておることでございまして、私どもといたしましては、また法制局といたしましては、そういうことに事前にタッチもしておらないし相談も受けておりませんので、その具体的の件につきまして私が他院においてここでとやかく申しますと、――と言うと語弊がありますが、何らかの意見を表明することは適当でないと思いますので、この点は御了承願います。
○上田哲君 これはまるっきり議論にならないのでありますが、私は別に事実問題についてのことをお伺いしておるのではないのです。あなたも法律の専門家であるならば、憲法にどういう条文があり、院の慣習がどういうことになっているのかということの事実関係を語ることができない、こういうことはないじゃありませんか。衆議院議員が参議院に来て真実を言えないとなれば、衆議院議員は駅頭でさえ何も言ってはいけないということになるのです。これはとんでもない話であります。三百代言というのはこういうことをいうのだろうと思いますから、一々お伺いをいたしますけれども、憲法五十七条の三項に、「出席議員の五分の一以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しなければならない。」と書いてあることは、そのとおりでしょうか、間違いがありましょうか、お伺いいたします。
○衆議院法制局長(三浦義男君) それは、そのとおり書いてございます。
○上田哲君 次に、衆議院規則百五十二条に、「議長が必要と認めたとき、又は出席議員の五分の一以上の要求があったときは、記名投票で表決を採る。」と書いてあることは間違いがありましょうか。
○衆議院法制局長(三浦義男君) そのとおりでございます。
○上田哲君 そうして、慣習に基づけば、記名投票で採決することの動議は、院内交渉係が所定の用紙にその旨を書き込み、事務総長あてに提出をすれば、そのまま受理されることになり、その要旨が官報に所載されるということになっておることに相違ありませんか。
○衆議院法制局長(三浦義男君) その点は議事の運営の問題でございますので、私詳しく承知しておりません。
○上田哲君 先ほどのさまざまな御答弁の中にありましたように、この程度のことがわからなくては、院内では生活ができないのであります。こういう慣習によって今日まで八十年の議事は運営をされているはずであります。
 お尋ねをいたしますが、この憲法五十七条三項と衆議院規則百五十二条に基づき、そうして慣例として、今日まで例外なく順守されてきたこの慣例に基づいて、当然、当日、七月十四日の衆議院本会議において、社会党議員側からこの五十七条三項及び衆議院規則百五十二条に基づき適法な記名投票を求める要旨の届けが事務総長あてに出されていたと思いますが、いかがでしょうか。
○衆議院法制局長(三浦義男君) そういう問題は、私、先ほど申し上げておりますように、私は本会議場に入っておるわけでもございませんし、そういうことは、どういうふうにやっておるかということは、私としては、関知していない、存じ上げていないことだもんですから、何ともお答えのしようがないのであります。
○委員長(吉田忠三郎君) 速記をとめて。
  〔速記中止〕
○委員長(吉田忠三郎君) 速記を始めて。
○上田哲君 与党の理事の方々が御努力いただいておるようでありますから感謝いたしますが、さらに御努力をいただきたいと存じます。
 そこで十分な答弁の適格者がお見えにならぬようでありますけれども、できるだけひとつ審議を進めていきたいと思いますので、衆議院法制局長に一般論としてお伺いをいたしますが、憲法五十七条三項及び衆議院規則第百五十二条に基づいて当日――一般論ですから当日とは申しますまい。これに基づいて所定の用紙に記名投票を要求する旨を書き込んで、院内交渉係が事務総長あてに提出をしているとすれば、当然、記名採決をすることが憲法五十七条三項、衆議院規則百五十二条にかなうものである、こういうふうに理解すべきだと思いますが、いかがですか。
○衆議院法制局長(三浦義男君) それは、そのとおりだと存じます。
○上田哲君 そこで、衆議院の事務次長がお見えになっているようで、ありますから、お尋ねをいたしますが……。
○委員長(吉田忠三郎君) 内閣法制局次長。
○上田哲君 そうすると、衆議院の事務局からは、お見えになっていないのですか。
○委員長(吉田忠三郎君) 速記をとめて。
  〔速記中止〕
○委員長(吉田忠三郎君) 速記を始めて。
○上田哲君 答弁適格者がお見えにならぬようでありますから、無理やりに引き出すということも何でありましょうから、一般的な問題として、私は、できる限り質疑を前に進めてまいりますから、もし、与党の皆さん方の御努力によって、答弁適格者の出席を求め得るならば、後ほど補充をしていただくことを留保しながら、できるだけひとつ前に進みます。
 そこで、いま確認いたしましたように、このような処置がとられていれば、当然、憲法及び衆議院規則に基づいて記名採決をしなければ、それ以外の採決のしかたは違法になるということになるはずであります。この場合には、もし、それ以外の何らかの特殊事情が生じなかった場合には、この場合、起立採決というような方法に――一般論としてお尋ねしますよ。起立採決というような方法がとられた場合には、五十七条三項及び百五十二条に違反して、憲法九十八条による条規違反として、つまりその命ずるところに従えば、「國務に關する」行為は効力を有しないということになるはずだと思いますが、局長いかがですか。
○衆議院法制局長(三浦義男君) ちょっと最後の、何の効力か、ちょっと聞き漏らしましたので……。
○上田哲君 憲法九十八条ですね。九十八条違反として国務に関する行為としての効力が生じないということになるのが有権解釈ではないかというのです。
○衆議院法制局長(三浦義男君) どうも、私、この問題につきまして、ここでいろいろ具体的ケースに関連して問題がいろいろ起こって、また、それに関連するお尋ねでございますので、私として、ここでこれ以上深入りをいたしまして、何ともお答えする立場にないものですから、もし、一般論として、憲法五十七条の三項のいわゆる「五分の一以上の要求」があったときは、「會議録に記載しなければならない。」、あるいは衆議院規則の問題、これは参議院にも同じ規則があると思いますが、そういう問題の記名採決の問題との関連において、一般法律論として、いろいろお尋ねになっているのだろうと思いますが、もし、そうであるといたしますならば、参議院に法制局があるのでございますから、それは参議院の法制局において、一般論としていろいろ御検討願うのが望ましいのじゃないかと思いますので、いかがなものでございましょうか。
○上田哲君 まあ、これは運用の問題でありましょうから、武士の情けという立場に立ちましょう。
 それでは、内閣法制次長からお伺いをいたします。私は、一般論としてお伺いするのでありますから、一般論として、くれぐれもひとつ法律家として恥ずかしくないような、すっきりした有権解釈を出していただきたいと思います。繰り返す必要はないと思いますけれども、憲法五十七条三項、衆議院規則百五十二条、これに基づいて、先ほど申し述べましたように、院内交渉係が所定の用紙にその旨を書き込んで記名投票にて採決することの動議を事務総長あてに届けたとする場合には、そのままの形であれば、記名採決以外は、憲法九十八条に基づいて、その決定は国務に関する行為として効力を発揮しないと考えますが、いかがですか。
○政府委員(吉國一郎君) 私は、内閣の法制次長でございますので、もちろん法律あるいは政令以下の命令、これらに基づく処分の効力につきましては、一般的に有効であるか無効であるか、行政を執行いたします場合に問題となりますれば、これを判定すべき立場にございますけれども、ただいまのような、国会の内部における運営の問題につきまして、私ども内閣といたしまして、とやかく申し上げることはまことに礼を失することであろうと思います。ただ一般的に申し上げますならば、憲法第五十七条に要請しておりまするのは、出席議員の五分の一以上の要求がございましたならば、「各議員の表決は、これを會議録に記載しなければならない。」、つまり表決を公開をいたす、表決の内容はもちろん、表決についてこれに賛成の表決をされたあるいは反対の表決をされた議員の氏名を公開するという趣旨にあると存じますので、その公開の方法として、会議録に記載しなければならないということを第三項は要求しているものと考えております。
○上田哲君 何を言っているのかさっぱりわからぬじゃないですか。礼を失するってだれに礼を失するのですか。礼を失するということばについて具体的に説明してください。
○政府委員(吉國一郎君) 国権の最高機関の内部において行なわれます種々の事件につきまして、私ども内閣としてこれに意見を申し述べることは差し控えたいという趣旨を申し上げたつもりでございます。
○上田哲君 よくわからなかったので、もう一ぺん御答弁願います。
○政府委員(吉國一郎君) 先ほども申し上げましたように、政行を執行いたします場合に、法律なりあるいは政令以下の命令につきまして、あるいはこれらの法令に基づきます処分につきまして、これを検討いたしますのは当然われわれの職責でございますけれども、国会の運営として、国会の内部において行なわれたことにつきまして、内閣でとかくの意見を申し上げることは差し控えるほうが、私どもの職責からいたしまして、当然だろうということを申し上げたつもりでございます。
○上田哲君 もし、内閣が、法的に言って、違法な措置をとった場合には、内閣に属するお役人は、これを違法だと言うことが内閣に対して失礼だという意味ですか。
○政府委員(吉國一郎君) 内閣及び内閣の統括のもとにおきます行政機関によって行なわれました行為につきましては、その法律的な側面について検討いたしますのは、当然われわれの職責であろうと存じます。ただいまお尋ねの点は、国権の最高機関でございます国会の内部における運営の問題でございますので、私どもは意見を差し控えたいということでございます。
○上田哲君 心中に激しい怒りを感じますけれども、国会審議の時間をむだにすることのほうがもっと大きなロスでありましょうから、私はあなたとことばをかわしません。
 一つお尋ねをする。しからばそうした適法、違法はいかなる機関に対して問うべきでありますか。
○政府委員(吉國一郎君) これが具体的な法律問題となりまして、訴訟として争われるようなケースでございまするならば、裁判所に出訴することも可能だろうと存じます。ただ、裁判所におきましても、いわゆる統治行為の理論というようなものを援用をして、その判断は避ける公算が相当大きいのではないかと存じます。
○上田哲君 何が統治行為の理論ですか。そういうくだらぬことを言ってもらっちゃ困るのでね。あなたの法律的な造詣がどれくらい深いかどうかについては、私は議論の対象などにはしておらぬのです。あなたが、少なくとも法律をもって生きるならば、目の前にそれほどかかえるだけ大きな六法全書を持っているならば、端から端まで六法全書を読んで、憲法四十一条に規定している国権の最高機関、国政審議権の立場において適法であるかいなかを問う場合には、いかなる法機関に対してこれを問うべきなのかというくらいは、はっきりお答えなさい。
○政府委員(吉國一郎君) これは、国会御自身が御決定に相なるべき問題と存じます。
○上田哲君 冗談言っちゃ困りますよ。あなた、もう一ぺん大学へ行って、三権分立理論を勉強してきなさい、モンテスキュー以来の。適法、違法ということを国会でもってきめて、国会で適法、違法をやったら全部だめになっちゃうじゃないですか。それと、あなたのさっき一言ちょっと言われたように、裁判所において云々ということであるならば、やはりこれはその違法については司法権にゆだねなければならないということで、それ以上は言いません。もうけっこうだから、うしろの席にお帰りなさい。――法的見解をどこに求むべきもないから、しからば、先ほどの衆議院法制局長の建言に基づいて、アドバイスに基づいて、わが参議院法制局長にもう一ぺんほこを戻さなければならぬ。法制局長に私は具体例で聞いていない。そんなに皆さんびくびくすることはないのです。きわめて一般論として、何が適法であるかどうかということが言われなければ、法をもって治むべき法治国家はどうなるんですか。あなたは参議院の法制局長です。一般論として、だれが読んだって、このごろは中学生の社会科でも教える。憲法五十七条三項、衆議院規則百五十二条に基づいて、何べんも申し上げているような所定の手続をとらなかった場合には、憲法九十八条に基づく国事行為を有効としないという解釈、それ以外の解釈があるかどうか。イエスかノーかでお答えいただきたい。
○法制局長(今枝常男君) お尋ねの趣旨をどうもいつも十分把握いたしませんで、まことに申しわけありませんが、実を申しますと、ただいま一般論としてのお尋ねではございますが、この際においては、一般論としてということが、結局、具体的な事案、ことに衆議院での具体的事案にかかわり合うわけでございますので、そういう意味からいたしまして、衆議院のなさったことに対して、何らかの意味において批判を申し上げるようなことになると存じます。そういう意味からいたしまして、私の職責の範囲内においては、これを申し上げることを御遠慮いたすことが適当と考えます。かように存ずるわけでございます。(「議事進行」と呼ぶ者あり)
○委員長(吉田忠三郎君) 速記をとめて。
  〔速記中止〕
○委員長(吉田忠三郎君) 速記を起こして。
○上田哲君 それでは、きわめて簡単にひとつこの部分だけを不満を残しながら一般論としての終局をしておきたいと思うので、それぞれの方に簡単にお答えをいただきたいと思うのでありますが、先ほど内閣法制次長の御見解では、裁判所にいってもはかばかしいことはなかろうけれども、しかし、裁判所へ持っていったらどうだろうかというようなお答えもございました。そこで、参議院の法制局長にお伺いしまするが、あなたも、これは裁判所へ持っていかない限り、どうにもならないとお考えになるのか。それ以外の方法があるのか、この点をお答えを願います。
○法制局長(今枝常男君) 法律の解釈といたしましては、もしこれが裁判所の事件になるきっかけのあるような場合におきまして、事件になりますれば、それは裁判所が最終の判断をいたすと思います。しかし、その判断が先ほど内閣の法制次長が申しましたようなことになるかどうかということは、私どもといたしましては、予見をいたしかねる次第でございます。
○上田哲君 もっと簡単に答えたらどうですか。あなたは勇気がないということを私は言おうとしているのじゃないのです。そうして、私どものほうは、社会党の立場、野党の立場で追い込もうとしているのではないんです。院の権威にかかわる問題だから、十年、二十年後にこの議事録が振り返られたときに、少なくとも、私たちはもう少し有権的な、証するに足ることの質疑応答はしておかなければならないと思うから、あえて一般論に戻して質問しているのでありますから、その辺はひとつ、うちへ帰ったらいろいろ、一言言いわけが立つようなことばかりを考えるような答弁でなく、しっかりした御答弁をお願いをしたいと思うんです。
 そこで、その問題は、あなたの言われた、実はありませんけれども、実の部分を懸命に拾いとらえて、裁判所でなければ違憲の問題を確定することはできなかろうというような方向に受け取っておきまして、これはまたしかるべき行政的な処置をとる問題に譲ることとし、また、しかるべき答弁適格者を得て、具体的な問題として論議をすることにいたします。
 なお、一、二点だけ簡単に伺って終局をしておきたいと思いますけれども、この場合はきわめて一般論ですが、もし、これが適法でないとか、違法であるということを阻却するためには、何らかの緊急措置をとることもあり得るだろうと私は思うんです。いいですか。何らかの緊急措置をとることも、こうした法運用上はあり得るであろう。私はいま述べたあら筋、骨筋だけではなくて、何らかの緊急救済はあり得たのではなかろうか。この場合に緊急救済をするとするならば、たとえば院の首長たる議長は、どういう緊急処置をとり得ることが法的にあり得るであろうか。このことを法制局長にお答えをいただきたい。
○法制局長(今枝常男君) さような緊急処置というものを、ただいまとしては私、思い当たりませんです。
○上田哲君 重大な発言であります。緊急措置が全くないということであれば、それが有権解釈であるということになれば、もう問答無用に、これは違法だということになってしまうということをとどめておきましょう。その場合には、しかも、なお、違法をとどめようとするのであれば、あとは法律解釈上の問題ではなくて、議院の運用上の問題として、議長がしかるべき処置をとるべきであった。たとえば、私は具体的に申し上げるが、休憩を宣する。起立採決にするというような形ではなくて、休憩を宣するというような収拾のしかたも運用上としてはあり得べきではなかったかと思いますので、これをひとつ、院は違いますけれども、もし、そのような事態があったら、そのような考え方がとり得るかどうかについて参議院の事務総長から御見解を伺いたいと思います。
○事務総長(宮坂完孝君) 上田先生の御指名でございますが、一般的なと申しましても、これは、衆議院の具体例と一致するわけでございます。そういう点につきましては、私たちの慣行としては、そういう点については発言を差し控えるのがいままでの慣例であります。その点につきまして、しばらくわれわれの立場を御了察願いたいと思います。
○上田哲君 立場を御了察というところが言いたかったのでありましょうから、言ってもしようがないので、これ以上はやめましょう。当然に私は緊急避難をすべきであった。議会運用の立場から言えば、当然何らかの緊急措置を講ずべきであった。その緊急措置としては、議長権限の中に、当然に休憩という措置をとることが含まれておると、私はこのように解釈をいたします。それは総長よろしいですね。
○事務総長(宮坂完孝君) これも衆議院と全然離れた立場であれば、あるいはそういう手段もとる方法もあったかとは想像されます。
○上田哲君 それでは、先ほどの委員長のお取り扱いがありましたので、私はこれをもってこの問題を一応とどめます。
 先ほどのお取り計らいは、しかるべき答弁適格者を得て、今度は一般論ではなくて、具体的にひとつ議論を進めるということでありますから、これは後の機会に譲ります。なお、一般論としてこの程度の答弁しかなさらないということは、私は法治国なり、あるいは法をもってととのうべき院のあり方、運用の問題として、激しい不満を表明し、委員長にその旨の措置を今後に向けて御努力をお願いしたいということを申し上げておきたいと思います。
 なお、私は議事運営についてお伺いしたいのでありますけれども、私に責を帰すべき部分は小でありまして、ことごとくは答弁者の不適格によるところの理由によって、はなはだ時間が延びておりますけれども、私の用意いたしました質問は、このあと衆議院から正修提案の質疑応答のためにお見えいただいている両議院に向かっても、具体的に、先ほども申し述べましたように、七月十日の社会労働委員会の議決の内容についても、お伺いをしたいのでありますけれども、この点は、いかがいたしましょうか。
○委員長(吉田忠三郎君) ちょっと速記をとめて。
  〔速記中止〕
○委員長(吉田忠三郎君) 速記を起こして。
○上田哲君 委員長のお取り計らいによって、私もそれに服したいと思います。
 ただ、せっかく両議員はわざわざお見えでございますから、後の審議がから回りしないために、この後、御答弁をいただくための問題だけを申し上げておきたいと思います。
 先ほど午前中の審議で小野委員が質問をされ、また、それに対して、御答弁としては資料提出という形になっていたのでありますが、私がここでこれからお伺いしたいと思うことは、七月十日の社会労働委員会におきまして、この委員会が委員室にあって行なわれたか、あるいは委員室外で行なわれたかというような問題もありましょうが、これはしばらく問わないとして、衆議院議長に報告をされている限りでの当日十日の社会労働委員会に出席した自民党議員の氏名は七名と聞いております。私のほうで実はこの問題について衆議院の議事録を調べました。どういうわけか、今日まで十日余りを経ていながら、その議事録はまだでき上がっていないのであります。また、その点について衆議院本会議十二日に社会党の大原亨議員がそのことを森田衆議院の社労委員長にお尋ねをしたところが、この問題についてもたいへん不明確な数字が御答弁をされております。この十二日の衆議院本会議の議事録についても、なお議事録としてまだ印刷ができ上がっておらぬのであります。奇妙なことに、前日の十一日まではでき上がっているのでありますが、十二日の分がなおでき上がっておらぬのであります。しからば、録音はどうなっておるかということになると、録音は消去したということになっているのでありまして、消したということですね。そういったことが一体どういうことになるのか、この辺をひとつ具体的に数字をもって明らかにしていただきたいのであります。資料をもって御提出になるということでありますけれども、これはコンピューターも必要としない、きわめて具体的な素資料でありますから、午前中にそうした御提案がなされて、そうした答弁があった以上は、そうしたすでに数字をお持ちであるならば、今日ただいまそのことだけを御答弁いただきたいし、そうでなければ、委員長のお取り扱いに従って、問題を後に譲りたいと思います。
○衆議院議員(谷垣專一君) 私からも発言を委員長に、お許しを願ってお答えをしたいと思っておったところでございますが、私に対しまして、十日の委員会の出席をした諸君の名前を知らせろ、こういう御要求がございました。小野委員からそういう御要求がございまして、私がそれを引き受けましたわけでございます。しかし、いま、たまたま上田委員から御質問がございましたので、それに答える形になって恐縮でございます。私のほうから、実はその問題について委員長のお許しを受けて発言をしたいと思っておったのでございますが、それを兼ねて申し上げさしていただきます。
 これは、私、すぐに口頭で答弁をすればよかったのでございますけれども、当日、私もあの場におりましたので、したがいまして採決の状況その他私もよく存じております。ただ、この出席をいたしました諸君の名前をそれぞれ全部私から申し上げますることは、私が当委員会に呼ばれておりまする立場は、修正案の提案をいたしました者といたしましてこの委員会に実は出席をしておるわけでございまして、いまのそれぞれ出席いたしました者の名前を私から資料にして申し上げますということは、いささか、私のいわばここにおります立場からいいますと、その範囲を越えたことに相なるかと思います。したがいまして、はなはだ申しわけないことでございますが、私がそういう氏名を資料として申し上げると申しましたことは、お断わりをせざるを得ない。たいへん申しわけないと思いますが、御了承を願いたいと思うのであります。
 で、私は当日の委員会に出席しました者として、私の見聞きいたしておりますこと、また、昨日、大橋委員から提案者である私、谷垣にという名前をさされまして、どこでやったと、廊下か、それとも中かというお話ございましたので、その点につきましては、私個人の問題でもございましたので、御答弁をと申しますか、発言をいたしたわけでございます。そういう事情でございますので、小野委員に対しましても、こういう上田委員の発言に付随して申し上げるということは、たいへん失礼でございますけれども、御了承を願いたい、かように考える次第でございます。
○上田哲君 まあ、先ほどから委員長の扱いに従うことになっておりますから、私は深追いはいたしませんけれども、後の審議を促進するために、御答弁がありましたから若干お伺いをいたしますけれども、氏名を述べることができないということでありますから、氏名を述べることまでいま議論するかどうかは後の問題に譲りますけれども、明らかになっておりますことは、衆議院議長に報告された氏名が七名であったと、そしてそのあと十二日の衆議院本会議で森田委員長が大原享議員にお答えになったのが二十一名ということになっております。この辺のところは、やはりどちらが正確であるのかということは、他院を侵す侵さぬという議論ではなしに、これは審議促進のためにここで簡単にお答えをいただきたいことが一つであります。私は、明らかに憲法四十二条に「國會は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する。」云々という規定がございます。この法解釈の問題としては、両院はお互いに相侵さざる審議権を持つと同時に、相補っていくということは当然な解釈に立つわけでありますから、その限りにおいて、他院を侵さないということを強調するならば、少なくとも、審議の状態を聞くべき国民が、何か衆議院で行なわれた問題についてはそうした厚い壁によって何一つ聞くことができないようなことでは、はなはだ常識に反することだと思います。必要以上に私は長年の慣習その他を乗り越えて、皆さん方に、ある意味での党利党略に受け取られるような質疑をいたしたいとは思いませんから、院の権威や、常識に適応するという点において、一つは四十二条の規定を順守するという意味におきましても、簡潔にその問題だけ取り上げてお答えをいただいて、私は後に譲りたいと思います。
○衆議院議員(谷垣專一君) 議長に届け出をした出席の委員が七名であったというようなことは、きょう初めてこの席上でお聞きいたしまして、私たちはそういう了解はいたしておりません。また、議長に報告をしたどうこうという問題は、本日、私が、修正提案をいたしますために出席をいたしました者の発言といたしますのには、少し何と申しますか、そういう立場ではございませんので、これは両院のいろいろ慎重な御審議をなされます場合に、それぞれのおそらく仕組みがあり、またそれぞれ適当な関係の方という問題もあろうかと思いますが、私に対しまして、その御質問をいただきましても、ちょっと答弁ができないということになると私は思います。御了承を願います。
○上田哲君 知っていても言えないのか、知らないのか、どっちですか、氏名なり数なり。
○衆議院議員(谷垣專一君) 答弁をいたします限りではないと言うと、非常にことばがきつい表現になりますので、そういう表現はいたしませんけれども、たとえば、議長へどういう報告をしたかということは、これは修正提案いたしております私とは縁がないと言うと、これも言い過ぎになりますけれども、私は担当をいたしております者ではないのでございますから、ひとつそこは御了承願いたいと、さように考えるわけです。たいへんどうも、適当なことばがないので恐縮でございますが……。
○小野明君 いま、あらためてそういう取り消しの釈明があって、非常に私も不本意であります。午前中にお尋ねをして、実は、私もあなたに聞くのが適当であるかないかということは、多少考えぬことはなかった。ところが、あなたがここで氏名を言いましょう、こう言われて、そのときに言わしておけばよかったと思うんです。しかし、氏名を言うと言われるから、いやそれは資料でもらいたいと言ったら、あなたは「うん」と言った。だから男に二言はないということで、私も安心をしておった。ところが、いまになってこうだ。そのときの心境は一体どうだったのか、ひとつ発表してもらいたい。
○衆議院議員(谷垣專一君) どうも心境までお答えするのは、いかがかと思いますが、確かに、小町先生と私の問答には、いま申し上げましたような問答があったわけでありますから、釈明させていただきたいと思います。
 私も、両院の関係の問題がございますが、その範囲内でできるだけの、きょう出席しました提案理由説明者としての立場の中で、御説明できることは御説明するのがほんとうだろうという気持ちが前提に私にございます。したがいまして、当然私もあの席上におったわけでございますから、私の見聞きしている周辺の人々その他はよくわかっております。したがいまして、それがありましたので、すぐにでもと、こう思ったのですが、先生から文書だというお話になり、さて、そうすると、国会の常識でございますが、即座に返事をせずに文書だというと、これはどういう意味があるのかと、私もあれこれ考えてみました。これはなかなか大切な扱いをすべき問題であって、提案理由の説明をいたすためにここに修正案の発議者として出席している私が、そういうような資料をここへ提出するということは、これは控えるべきものであるという実は結論に私は到達をいたしたのでございまして、これは前言をひるがえすという形になりまして、たいへん申しわけない。これはたいへん申しわけないと思っておりますが、しかし、心境を申し上げますと、そういう事情でございますので、これは御了承を願いたい、かように存ずる次第でございます。
○中村英男君 委員長にお願いしたいけれども、本来は、法案の審議に単刀直入に入りたいのですが、時間がないからね。しかしこれも上田君や、小野君が、皆さん聞かれたら、しつこいほどこの問題を究明しようとするのは、非常に問題があることと、それから参議院のこの委員会は、御承知のように、非常にスムーズな審議を今日までしてきたのですね。ことに失保なんか上げて、日程に載っておる。それにもかかわらず、それを頭ごなしに、しかも、従来なかった、提案説明も聞かなくて中間報告を求めたという、この前例にないことをやったという、これに対して私どもは腹いりしないのだな。ただ、院議できめているから早く審議をしなければいかぬということだ。そういうことだから、けさから聞いておると、全くふがいないというか、何か本題に入らないのですな。ですから、これはひとつ委員長、委員長として心得ておいでになるでしょうが、これは早く上田君あるいはその他の方々の質問に答えられるようなことを処置してもらわないと、あした一日しかないですからね、これは。衆議院で本会議があるから来られない点も、事情はわかりますよ。わかりますけれども、休憩もあるのですから、長い間、何かそこら辺便法があると思うから、そうやってもらって、法案そのものの審議に入ってもらわないと、これはちょっとこういうことでは困る。これは委員長にお願いしておきます。
○小野明君 それで、私はあなたが出すと、あるいはいますぐにでも言うと、こういうことを言われたので、これは正式には森田委員長が答弁すべき事柄であろうと思う。森田委員長が議長に報告しておるわけです。ただ、あなたがそういうようにすなおに出られたので、これは森田委員長とそこにおられる谷垣君と澁谷君が三巨頭で共同謀議に加わっておるのだから、その間の事情というものをあなたが知っておるから、それを正直に言おう、だからそれは正直にお聞きをしよう、こういうことで私は待っておったわけです。ところが、あなたがだんだん小ずるいものだから、考え直したところが、これはたいへん不利になって、またどうだと、こういうことをお考えになったかどうか知りませんが、そういうことですから、私のほうも筋を立て直しまして、いま中村委員の発言がありますから、委員長のほうで正式に森田委員長にこの席に来ていただいて、議長に二十一名出席と報告しておるわけですから、その氏名を資料として出せるあるいは口頭でも報告ができるはずですから、そういった措置を委員長にお願いをいたします。あなたの釈明は、私は了承しておらぬ。だから、責任者が出席をするような措置を委員長に要求をいたしまして、終わります。
○委員長(吉田忠三郎君) 速記をとめて。
  〔速記中止〕
○委員長(吉田忠三郎君) 速記を起こして。
 この際、おはかりいたします。
 委員外議員渡辺武君から発言許可の申し出がございます。これを許可することに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶものあり〕
○委員長(吉田忠三郎君) 御異議ないものと認めます。よって、これを許可することに決しました。
 速記をとめて。
  〔速記中止〕
○委員長(吉田忠三郎君) 速記を起こして。渡辺君。
○委員以外の議員(渡辺武君) 私も、質問に先立ちまして、衆議院の石井前議長、それから衆議院社会労働委員会の森田委員長など関係者の出席を求めておったわけですが、きょうは出席されていないわけです。
  〔委員長退席、理事大橋和孝君着席〕
 先ほどからの上田委員、その他の方の質疑に対する政府側の答弁を聞いておりまして、また同時に、委員長が最大の努力を払ってこれは直接担当者の出席を実現するようにするというふうに言われましたので、非常に残念ではありますけれども、衆議院で行なったあの深刻な事態、社会労働委員会の採決についての違法性が問われている、あるいはまた、衆議院本会議における憲法違反という疑いが持たれているというような事態についての質問を留保せざるを得ないという状態であります。この点をまずはっきり申し上げておきたいと思います。
 私は、きょうのやりとりを伺っておりまして、つくづく感じたことが一つあるわけです。それは、この国会中に政府、自民党が各委員会で強行採決などをやった回数、これがいままでの各国会中になかったほどの異常な回数です。しかもその上に、衆議院本会議で憲法違反の疑いを持たれる――私は明らかに憲法違反だと思いますけれども、こういうような全く不当だけじゃなくて、違法な採決を、カッコつき採決をやるというような事態を引き起こしているわけでありますが、こういう政府、自民党が議会制民主主義を根本から踏みにじるような態度をとってきているそのあらわれが、きょうの審議において十分に問題の焦点を明らかにすることができないという事態となってあらわれてきているということを考えざるを得ません。したがって、わずか三日間に会期を制限されておるわけでありますけれども、しかし、この三日間の会期の中で十分に問題点を質疑応答の中で明らかにすることはできない、審査することができないというような事態がもしかりに起こったとすれば、その責任はすべて政府、自民党が負うべきであるということをはっきり申し上げておきたいと思う。
 さて、衆議院の問題は留保しておきますが、参議院の問題について、まず最初に伺いたいと思います。
 この参議院社会労働委員会の委員長が、先日の本会議で中間報告を求められたという事態について、これは国会法五十六条の第三項、読むまでもないことだと思いますが、念のためちょっと読んでおきますが、第五十六条の三「各議院は、委員会の審査中の案件について特に必要があるときは、中間報告を求めることができる。」ということが第一項に書かれているわけです。この「審査中の案件」ということについて非常に重大な疑義が出ておりまして、きのうのこの質疑を伺っておりましても、参議院の法制局長が、この「委員会の審査中の案件」というのは、これは委員会に法案が付託されたときから審査が始まるということであって、すでに法案が付託されているのだから、したがって、提案理由の説明がなくてもこれは審査中とみなすべきだというような趣旨の御答弁があったと思います。
 そこで伺いたいのですけれども、一体、この委員会に法案が付託されたときから審査中であるというふうに解釈する、その解釈の根拠をおっしゃっていただきたいと思います。
○法制局長(今枝常男君) その根拠は、昨日も申し上げましたとおりでございますが、この規定の趣旨が本来どういう意図をもって、どういう趣旨をもってできた規定であるかということから、この「審査中」ということばの意味を合理的に意味づけていくということが、これはあえて五十六条だけの問題ではなくして、一般に法律を解釈いたします場合のあり方として認められているところでございます。そこで、そういう意味からいたしまして、五十六条の三の意味を考えました場合に、この規定は委員会に付託されまして、委員会にあります案件が、いま、いかような状態で取り扱われているかということを随時本会議において知りたい。まずそういうことが第一段階の趣旨としてこれはできているものと理解すべきじゃないかと、このように考えますので、これは要するに委員会審査の段階にある案件、このように理解していいのではないかということから、つまりは付託後のあらゆる段階が入っているというふうに理解したわけでございます。
○委員以外の議員(渡辺武君) 法の解釈が正しいかどうかということは、これはやはり法律、もしくは規則に基づいて判断しなきゃならないのですね。この前ほかの委員も言われましたけれども、参議院規則の第三十九条「委員会は、議案が付託されたときは、先ず議案の趣旨について説明を聴いた後、審査に入る。」というふうにはっきりうたわれておって、ここでは付託という問題と審査という問題がはっきり分けられているわけですね。また、同じ参議院規則の第三十三条「委員会は、付託を受けた案件の審査又は調査のためこれを開くことができる。」、ここでもまた付託という事態と、そうして審査という事態とははっきり条文の上で区別されて書かれているというふうに考えます。あなたの解釈は適法であるという、その法的根拠はどこにありますか。
○法制局長(今枝常男君) いま御指摘の参議院規則の規定にあります「審査」ということばと、国会法五十六条の三の「審査」ということばとが的確に一致していない結果になるのではないかという点につきましては、そのようにもとれることになるとは存じます。ただ、先ほど来申しましたように、法律の解釈は、必ずしも文字だけで解釈するものではない。規定の趣旨から推して、その中に含まれている文字がどのように理解することが合理的かというところできまるべきものだという意味において、先般来の解釈でもって妥当とするのではないかというふうに考えておる次第でございます。
○委員以外の議員(渡辺武君) それは重大な答弁だと思います。法案に書かれている文字ですね、これを正確に読まずしてどうして正確な解釈ができますか。参議院規則に付託という問題と審査という問題がはっきり区別されて書かれているんです。これが審査と付託の問題についての唯一の条文じゃないですか。そうでしょう。そういう点がはっきりとうたわれているにもかかわらず、あなた方が、解釈でもってかってにその内容をねじ曲げるということは、これは法令の解釈としては正しい解釈と言えないんじゃないですか。審査と付託について、その点はどうですか。
○法制局長(今枝常男君) 法文の文字に即して申しました場合には、ただいまお話のような御見解もあり得るかとは存じます。
○委員以外の議員(渡辺武君) そうしますと、参議院規則の三十九条、いま読みました点ですね。「委員会は、議案が付託されたときは、」、議案が付託されたとき、「先ず議案の趣旨について説明を聴いた後、審査に入る。」、こういうことになっていますわね。これはどういうことですか。
○法制局長(今枝常男君) 三十九条は、委員会におきます審査の順序を規定いたしておると存じます。
○委員以外の議員(渡辺武君) つまり、審査の順序というのは、法案が付託され、それから議案の趣旨についての説明があり、その後に審査に入る、こういうことでしょう。どうですか。
○法制局長(今枝常男君) ただいまも申しましたように、ここだけの文字はそのようにも読めるかと存じますので、そのような御見解もあり得るかと思いますということは、申し上げたとおりでございます。
○委員以外の議員(渡辺武君) そうしますと、条文にはっきり書かれていることを離れて、かってな解釈をやっていいということですか。
○法制局長(今枝常男君) 先ほど来申しましたように、かってな解釈という意味ではございませんで、おのおのその規定が、もともとどういう趣旨をもってできたものと理解すべきかというところから出ておるわけでございまして、規定の趣旨を合理的に解釈いたしました場合には、先ほど来申しましたような解釈が合理性を持っておるのではないかというふうに、私といたしましては、理解いたしておるわけでございます。
○委員以外の議員(渡辺武君) 法案が委員会に付託されたことが審査だと、こういうふうなことを規定した条文がどこかにありますか。
○法制局長(今枝常男君) 付託されたことが審査になるという、そういう文言をもって規定いたした規定はないかと存じますが、ただ、関連のこととして申し上げますと、これも昨日申し上げましたことでございますが、国会法の六十八条の規定に「会期中に議決に至らなかった案件は、後会に継続しない。但し、第四十七条第二項の規定により閉会中審査した議案」「は、後会に継続する。」と、こういう規定がございまして、このときの「審査」というのは、やはり付託された以後の段階というふうに理解して、実際上すでに処理されてきております。と申しますのは、この場合に、提案理由の説明もなく、つまり何もない場合もこの閉会中審査の付託があっておれば後会に継続するというふうの理解がされ、それでもって処理が行なわれてきております。この点については、いままで疑義がはさまれたことがございません。そのような意味から申しまして、むしろ先ほどの五十六条の三の「審査」と、この場合には同じように理解されているわけじゃないかというふうに考えております。
○委員以外の議員(渡辺武君) そうすると、確認しておきたいのですけれども、委員会に法案が付託されたことですね、これが審査の始まりだということを規定した条文はないということですね。
○法制局長(今枝常男君) いま仰せのとおりのことばをもって規定した規定はございません。
○委員以外の議員(渡辺武君) そうすると、参議院法制局は、これは法令にきまっていないことでかってな解釈をやっているということになりますね。法令に基づいて解釈をしているということではなくして、法令にはきまっていないけれども、しかし趣旨なるものを持ち出して、そうして解釈しておるということですな。
○法制局長(今枝常男君) 趣旨というものにのっとって解釈いたしておりますことは、仰せのとおりでございます。ただ、その意味は、そういう法律の解釈のあり方というものは一般に認められているところでありまして、その意味において私どもはかっての解釈とは存じておりません。しかし、かっての解釈だという御見解もあり得るかと存じます。
○委員以外の議員(渡辺武君) かってな解釈ですよ。いま、あなたのおっしゃった国会法第六十八条ですね。これはどういうことを書いてありますか。私読んでみますがね。「会期中に議決に至らなかった案件は、後会に継続しない。但し、第四十七条第二項の規定により閉会中審査した議案及び懲罰事犯の件は、後会に継続する。」、こういうことが書かれてあるにすぎない。委員会に法案が付託されたそのときから審査が始まっているのだということは、この条文の解釈の中のどこから出てきますか。
○法制局長(今枝常男君) この文言そのものから出てくると申し上げた趣旨ではございませんで、いままでそういう解釈で扱われて、これは疑義なく済んでいるということを申し上げたわけでございます。その立場に立つ限りは、同じような解釈になるのではないかということを申し上げた次第でございます。
○委員以外の議員(渡辺武君) あなたのその解釈は、これは全く国会法違反の解釈ですよ。なぜかといいますと、四十七条第二項の規定によると、こういうことになっておりますから、これを読んでみましょう。国会法第四十七条第一項は「常任委員会及び特別委員会は、会期中に限り、付託された案件を審査する。」ということになっておりますが、第二項は次のように書かれているのです。「常任委員会及び特別委員会は、各議院の議決で特に付託された案件(懲罰事犯の件を含む。)については、閉会中もなお、これを審査することができる。」と、こういうことになっております。そうしますと、あなたの解釈によりますと、法案が委員会に付託されたときから審査は始まっているということになっているのですけれどもね、あなたの解釈は。ところが四十七条の第二項はどうなっていますか。「特に付託された案件については、閉会中もなお、これを審査することができる。」と、こういうことになっている。「審査することができる。」ということは、これは、審査してもいいし、審査しなくてもいいということになりますね、そうでしょう。そう解釈せざるを得ないと思いますが、どうですか。
○法制局長(今枝常男君) 四十七条に規定するところは、抑せのとおりであると存じます。
○委員以外の議員(渡辺武君) そうしますと、あなたの解釈によると、法案が付託されたときから審査が始まっているのだという解釈になりますと、付託された案件ですね、ここに出ている「常任委員会及び特別委員会」に「各議院の議決で特に付託された案件」、これはもう付託されたときからこの常任委員会では審査が始まっているということになりますね、あなたの解釈によるとですよ。そういうことになりましょう。ところがね、その解釈がおかしいということは、「閉会中もなお、これを審査することができる」、つまり審査してもよければ審査しなくてもいいという解釈でいいのだと、あなた、いま言ったでしょう。付託された瞬間からこの審査が始まっているから、審査してもいい、しなくてもいいというような国会法の解釈がどこから出てきますか。
○法制局長(今枝常男君) 私は、いま六十八条に「閉会中審査した」とあるけれども、審査しないと言っては語弊があるかもしれませんが、とにかく何事も行なわれなかった議案も審査した議案として扱われている。したがって、ここで言う「審査した」ということは、やはり付託後の状況をとらえているものと解釈する場合に当たるだろうということを申し上げたわけでございます。
 それからなお、私、少し軽率に答えましたけれども、四十七条二項の「審査することができる」という規定は、これは審査の権能を与えた規定とむしろ読むべきでありまして、審査しても、しなくてもいいというふうに言い切ることには多少問題があろうかと思います。ただ、そのことは、先ほど来申しましたこととは、私の理解では、直接には関係いたさないように存じます。それは六十八条に「審査した」とありますので、その「審査した」というのは、現実、審査が行なわれなかった場合でもそのように理解されているということを申し上げたわけでございます。ただ、四十七条二項の解釈につきましては、いま申しましたように、最初申し上げましたことがあるいは少し軽率な答えではなかったかと思います。これは権能を規定した規定だと思う次第でございます。
○委員以外の議員(渡辺武君) 全く趣旨が一貫してないじゃないですか。先ほど、私の読んだ国会法六十八条ですね。後会に継続することのできる要件としては、「閉会中審査した議案」ということですね。継続の条件ははっきり明確にうたわれているのですよ。「閉会中審査した」ということは、審査したかどうかが、これが後会に継続させることができるかどうかということを規定する決定的な条件です、これは。そうでしょう。その審査について、あなた方はかってな解釈をして、法案が委員会に付託された、そのことも審査だということを言っているのだけれども、しかし四十七条ではどういうことになっていますか。「各議院の議決で特に付託された案件については、閉会中もなお、これを審査することができる。」、あなたは、いま、これは審査する能力だという議論を立てられましたけれども、その議論がもしかりに正しいとしても、国会法四十七条では、付託されたということと、そうして審査するということとはっきり区別して言っているのです、そうでしょう。六十八条の最も重要な条件は、これは閉会中に審査した議案、これを後会に継続するということで、審査したかどうかということが最も重要な条件ですよ。あなたのおっしゃっていることは、全然つじつまが合わないじゃないですか。
○法制局長(今枝常男君) 従来の継続審査の取り扱い、したがってその取り扱いの前提となっている六十八条の解釈そのものが誤っているという前提に立ちますならば、仰せのとおりでございます。ただ、この点は実際の取り扱いはそのようになって、すでに継続扱いでされてきている事例は少なくない、かように存じますので、それを前提として申し上げているわけでございます。
○委員以外の議員(渡辺武君) そうしますと、いまあなたの御答弁を伺っておりますと、実際、処理がもうやられているから、だからということで、逆に、今度はそういう解釈で実際の処理がやられているからその処理は正しいのだ、そういう議論になってしまいますが、これはおかしいじゃないですか。法案の解釈が、法令の解釈が正しいかどうかということは、これは法令そのものから考えていかなければならぬのですよ。実際の処理が違法でやられていた場合は、その実際の処理を理由にして法令の解釈を逆にやったとしたらどういうことになりますか、違法な解釈が生まれてきますよ。そうでしょう。私は繰り返して言うのです。一体、法案が委員会に付託されたとき、その付託ということが審査だというふうに規定している法令があるかと言うのですよ。ないでしょう。そうして付託と審査について書かれた国会法の規定では、すべて審査というのは付託されたあとで行なうものだ、付託というのは審査じゃないのだというふうに解釈することが、これが法令の趣旨に全く適合している解釈だということを物語っているのじゃないですか。どうですか、その点。
○法制局長(今枝常男君) 私の申し上げ方が事実に立って、それで法解釈を是認したような表現になりましたことは、仰せのとおりでございます。ただ、私の申し上げましたことが、そういう解釈で正しいものと考えておりますし、それでそのような扱いがされたのだろうということを申し上げたのが趣旨でございます。それから、仰せのとおり、審査の順序を規定いたしましたところの参議院規則の規定と法律の規定との間に、「審査」ということばそのものの意味が違っているかのようにとれる余地がある――それ自身、それだけをとらえてはとれる場合もあると存じます。したがいまして、そのような御見解も成り立つのではないかということを申し上げております。
○委員以外の議員(渡辺武君) そのような御見解が成り立つじゃないですよ、それ以外に解釈のしようがないじゃないですか。そうでしょう。国会法五十六条の三だって、先ほど読みましたとおりですよ。それからおそらくそれとの関連で出てきていると思うのですけれども、参議院規則の三十九条、「委員会は、議案が付託されたときは、先ず議案の趣旨について説明を聴いた後、審査に入る。」、ここでも、最も合理的な解釈は、付託ということと審査ということが別だということですよ。法案が委員会に付託されて、そうしてその後に議案の趣旨について説明を聞いた後に審査に入るということが、最もすなおな、この規則を読んでみれば、だれもが納得できる解釈だと思う。
 それから、先ほどあなたがたった一つの論拠として持ち出した国会法第六十八条、「会期中に議決に至らなかった案件は、後会に継続しない。」、これは大原則ですよ。これは議会の民主主義的な運営についての大原則だと思う。その次に出ているただし書き、「第四十七条第二項の規定により閉会中審査した議案及び懲罰事犯の件は、後会に継続する。」、ここでは、閉会中に審査したかどうか、これが決定的な条件でしょう。審査しなければこれは後会に継続することができない、そういうことが、この国会法第六十八条を読めばこれまた条文の上から無理なく理解できるところです。それでは、第四十七条の第二項、これはどういうことが書いてあるかといえば、「常任委員会及び特別委員会は、各議院の議決で特に付託された案件については、閉会中もなお、これを審査することができる。」。ここでも、付託された案件と、それについての審査と、これは明確に区別してここで書かれている。どれ一つとってみても、法案が付託されたとき、そのことがもう審査の始まりだというように解釈することのできるような根拠は一つもない。一体、あなたの解釈はどこにそういう法律的な根拠があるんですか。
○法制局長(今枝常男君) 先ほど来お答え申し上げているとおり、法文の文字そのものにそのまま即して法を理解する理解のしかたの立場に立つのか、その法の趣旨というものを究明して、その趣旨に基づいて用語の意味を理解する立場に立つかという立場の相違かと存じます。したがいまして、前々申しますように、お話しのような御見解もあり得るかと思いますということを申し上げておるのでありまして、どうもそれ以上にお答えのすべを知らないわけでございます。
 それから、なお六十八条そのものを根拠として持ち出したわけではございませんで、ただ、こういう場合もあるということを一つの例として申し上げただけのことでございます。
○委員以外の議員(渡辺武君) それでは、法案が付託されたこと、そのことが審査だということを規定した法令ありますか。
○法制局長(今枝常男君) これも先ほどお答えいたしましたように、そういうことばをもって規定した規定は、私の了解する限り、ないように存じております。
○委員以外の議員(渡辺武君) 全く無責任な答弁で、それで参議院の法制局長という肩書きで答弁してもらってるとは私はちっとも思いませんが、あなた方は、政府のやったことを合理化するために法の解釈をかってにやって、そして、そう思いますと、しかしその反対の御意見もあろうかと思いますと、こんな答弁で責任のある答弁と言えますか。全く政府の手先になった三百代言の答弁だとしか考えられないじゃないですか。しかも参議院規則の三十九条、何回も読みますけれども、「議案が付託されたときは、先ず議案の趣旨について説明を聴いた後、審査に入る。」ということになってるんだけれども、この提案理由の説明さえもまだ行なわれてない、付託されただけだというような状態で、これを審査だというふうにこじつけて、そして委員長に中間報告を求める、これは全く政治的判断以外の何物でもないじゃないですか。違法な判断ですよ、これは。どうですか。
○法制局長(今枝常男君) 初めにお断わりいたしておきますが、私どものほうは参議院の機関でございまして、政府とは何のかかわり合いのないものであることを最初に申し上げておきます。
 それからその他の点につきましては、同じ御答弁を申し上げることになりますわけでございまして、何度も繰り返しになると思いますが、要するに法の趣旨によって法の文言を理解するか、文字を一寸も離れない、ただ文字だけで理解するかという、そこの問題になると存じます。したがいまして、そのどちらかを選ぶことが許されるかどうかということは、これは各議員さんの方々の御見解にまかせるほかないかと存じます。
○委員以外の議員(渡辺武君) その法の趣旨趣旨というけれども、さっきあなたのおっしゃった、今回は委員会の審査の経過について関心を持っているのだという趣旨ですね、そのことから直ちに法案が委員会に付託されたときから審査が始まるのだというような解釈が直ちに引き出せるというふうに、あなた考えているとすれば、ずいぶんおかしい話だと思う。今回は委員会の審議の経過について関心を持っているという、そのことはまあ当然のことだと思う。当然のことだと思うけれども、しかし、関心を持っているからといって、法令に違反したようなことをやっているのか。絶対にそういうことはないと思う。やはり法令に規定されたとおりの手続、これでやらなければならぬということです。少しも、あなた、論拠になってないじゃないですか、どうですか。
○法制局長(今枝常男君) 論拠になっているというふうにお認めいただくか、論拠になっていないというふうにお考えいただくかということは、これは私の力をもっていかんともなしがたいことでございます。ただ、私は解釈として、先日来申し上げていることが正しいと思っております。これは私の考えでございます。これをどのようにお考えになるかということは、これは皆さま方のお立場の問題でございます。これ以上は、私、御意見を拝聴するということのほかには道はないのではないかというふうに考えております。
○委員以外の議員(渡辺武君) 法制局長が答弁に窮したようですから、事務総長、この問題について、私のこの質疑聞かれておられたと思いますけれども、どう考えておられますか。
○事務総長(宮坂完孝君) ただいまの質疑応答につきましては、私たち運営事務を取り扱う者といたしましては、重大なる問題でありまするが、私といたしましては、この国会法におきまして、過ぐる二十三年にこの制度が打ち出されまして、自来十二回のこの制度の実例があったわけでございまして、この点につきましては、本来下部の審査機関として認められました常任委員会中心の運行で新制度が出発したわけでございます。委員会中心主義と申しますか、いまは制度と言われておる、そういう主義がとられたわけでございまして、委員会におきまして十分審査をして本会議に報告すると、こういう制度でございます。それですから、本会議におきましては、下部機関の委員会が、付託後、全部文字どおりオールマイティーで、いかなる機関からも制約されずに審議ができるという制度かと申しますれば、そうではないのでございまして、最終の議決権を持っておる本会議が、この委員会に対していかような権限を持つか、こういう問題が残っておるのでございまして、それに基づきまして、本会議におきましては、付託されたその法案の審議状況というものを、一においてその進行状況等を聴取できる、こういうことにつきまして、この新制度がつくられたわけでございます。そういうことでございまして、最終議決権の本会議と下部の委員会の両機関の調整をはかる、こういうのがつくられた制度の趣旨であり、私は目的である、こう解釈しております。そういう点につきまして、法制局長がるる御説明申し上げた点につきまして、一たび付託のあった以後はいかなる段階におきましても、上部の議決権を持つ、最後の議決権を持っておる本会議が、いつでも中間報告がとれるのだ、こういう制度で中間報告が生まれ、運用されてきた、こう解釈しております。
○委員以外の議員(渡辺武君) 事務総長がそういう考えじゃ全く困るんですね。委員会はオールマイティーじゃない。それは確かにオールマイティーじゃないですよ。委員会の運営だって国会法及び参議院の規則に基づいてやられることは当然のルールですよ。それから逸脱することは許されない。同時に、本会議もこれまたオールマイティーじゃない。やはり憲法、国会法、それからまた参議院規則に基づいて運営されなければならぬ。本会議だからといって国会法や、参議院規則に違反するようなことができるかといえば絶対にできないんです、それは。あなたの議論は、委員会のほうはこれはオールマイティーではない、国会の委員会の審議の経過について関心を持っている、だから、そういう議論であります。一体、国会法や参議院規則はどういうことになるのですか。まさにその規則を守らなければならぬのです。守っていないから私は言っているのです。国会法の解釈、参議院規則の解釈、かってな解釈をやって、そうして政府与党に都合のいいような方向にだけ事を運んでいる。あなた方は国会の役員だということになっているわけだけれども、しかし、実際、いまのあなた方の答弁、これを聞いておりますと、政府与党の走狗以外の何ものでもない、実際のところ。一体、国会が国会法や、参議院規則に違反したことをやることができるということをどこに書いてありますか。書いていないでしょう。
○事務総長(宮坂完孝君) ただいまの御発言で走狗ということばをお使いになられましたが、はなはだ心外だと思います。私たちは、国会法のこの規定、この規定の解釈は法制局長がるる述べたのでございますが、私は、法制局長の解釈が妥当なものである、法律解釈としてはこれがぎりぎりの線ではないかというふうに了承しておるものでございますから、これについてはその方針に従うものでございますけれども、運用の点については、議員諸公がいかなる運用をもできるのではないか、運営を補佐いたします私たちの立場では、こう考えておるわけでございます。
○委員以外の議員(渡辺武君) その法制局長の答弁についても、解釈が全くでたらめだということを言っているのです。まるっきり政府・与党に都合のいいような解釈だけ、をやっているということを言っている。この問題についてこれ以上追及しても、どうもあなたの立場からしても、私の意見に賛成するというような回答が得られそうもないから、あなたが依拠しているという法制局長がこの答弁に窮して、そうして(「窮していないぞ」と呼ぶ者あり)盛んに声援を送っておりますが、あぶなくなれば与党のほうが声援をお送りしたいだろうということは、これはよくわかるわけですけれども、実際、答弁に窮して、何の合理的な根拠をも言うことができないというような状態であることを確認して私は、時間ももうないので、次の質問に移りたいと思います。
 厚生大臣に伺いたいのですが、政府が二年前にこの健保特例法を制定しましたけれども、これによって保険料率は千分の六十五から七十に引き上げられた。それから初診時、入院時の患者負担が倍増される。それからまた薬代の一部患者負担というようなことが行なわれて、本来、政府あるいはまた資本家の負担すべき社会保険費が、これが被保険者、つまり国民の負担に転嫁されてきているということになっているわけですけれども、この特例法をとらない場合、かりにとらなかった場合ですね、とらなかった場合と比べてこの措置をとることによって――特例法ですね、特例法を制定して、いま申し上げたような措置をとることによってどれほどのいわゆる財政効果が生み出されたのか、その辺をまず最初に伺いたいと思います。
○政府委員(加藤威二君) 特例法による財政効果でございますが、四十二年度は、これは年度途中から実施いたしたわけでございますが、それによる財政効果は百八十二億でございます。それから四十三年度は三百六十四億でございます。
○委員以外の議員(渡辺武君) その場合の財政効果といわれるのは、つまり私が質問した趣旨と合致しておりますか。特例法が制定されないとかりに考えた場合と、それから特例法が制定されていろいろ患者負担その他が行なわれた場合ですね、その比較ですか。
○政府委員(加藤威二君) たとえば四十三年度三百六十四億と申し上げましたのは、これは要するに保険料率を千分の五上げます、その財政効果が二百七十五億であります。それから初診時、入院時の一部負担、これが三十九億でございます。それから外来投薬時の一部負担が五十億、したがってそういう特例措置をやりましたために、これだけの保険給付といいますか、保険財政がプラスになったと、こういうことです。
○委員以外の議員(渡辺武君) そうしますと、先ほどこれはどなたがお答えになったのか、はっきり覚えてませんけれども、いま議案になっている修正案ですね。修正案によって分べん給付ですね、引き上げに伴う料率千分の一の引き上げをやめたので、これによって被保険者は三十三億円の利益を得ているんだと、それからまた薬代一部負担をやめたことによって三十一億円の利益を受けているんだというような御答弁がありましたけれども、実際のところは、いま伺った数字によりますと、特例法を定めたために、本来、患者が負担しなくてもいい金が、これが百八十二億円も患者が負担しなければならなくなった。つまり逆に言えば、それだけ財政上の効果があらわれたと、こういうことになると思うんです。
  〔理事大橋和孝君退席、委員長着席〕
 四十三年度は三百六十四億円、これまた患者のふところから吸い上げられて、いわゆる財政効果というものになってあらわれたということになっているかと思うんです。合計しますと、五百四十六億円というばく大な金がこの二ヵ年間に被保険者のふところから吸い上げられた。これがいわゆる政府の立場からいえば財政効果だと、こういうことになっていると思うんですね。そうしますと、今度の修正案によって、かりに三十三億円、あるいは薬代一部負担の廃止三十一億円、これが患者の利益だというその言い分をかりに認めるとしても、差し引きでは国民にとっては大きな負担になっているという結果が出るかと思いますけれども、どうですか。
○政府委員(加藤威二君) 確かに先ほど申し上げました四十二年度百八十二億の財政効果、それから四十三年度三百六十四億の財政効果ということでございますが、たとえば四十三年度で申し上げますと、三百六十四億のうち二百七十五億が保険料の引き上げ、千分の五でございますが、その千分の五のうち、半分の千分の二・五が事業主が負担、千分の二・五が被保険者負担、そういうことでございます。これはいろいろ御見解あろうと思いますけれども、一応、健康保険も社会保険でございまして、保険財政の立て直しのためには、もちろん国庫負担ということも考えなければいけませんけれども、やっぱりまずその保険を構成しておる被保険者たちあるいは事業主が負担の可能な範囲で保険料を引き上げ、そしてできるだけ財政のつじつまを合わしていく。それでも足りない場合には国庫負担する。それからまた患者も可能な限りにおいて一部負担をしていただく、そういう趣旨で特例法ができておるわけでございます。そういう意味で、負担増加が出たということは、先生御指摘のとおりでございます。全部患者負担ということじゃございません。事業主負担もございます。それから被保険者の保険料負担もございます。そのほかに二百二十五億という国庫負担もやっておるわけでございます。国も負担する、それから事業主も、被保険者もそれから患者さんも若干負担しておるわけでございます。そういうことで財政の危機を乗り越えていこうというのが特例法の趣旨でございます。
○委員以外の議員(渡辺武君) 財政負担、財政危機を乗り越える、乗り越えると一生懸命強調していますがね。しかし、なるほど資本家負担も一部入っていますよ。入っていますけれども、主としては保険契約者――被保険者ですね、及びその家族と、これの負担になっていることは否定すべくもない事実ですよ。つまり一言で言えば、本来ならば、政府及び資本家が負担すべき金を被保険者及びその家族に背負わして、そしていわゆる財政効果なるものをあげているということが、これがまことに単純明快な結論だというふうに考えて差しつかえないんじゃないですか。
○国務大臣(斎藤昇君) ただいまの立論されるところに大きな誤りがあると存じます。先ほどから政府委員から答えておりますように、三百六十四億の財政効果、その中の二百八十五億は保険料の値上げでありますが、被保険者である人の負担は、その半額の百四十八億、政府負担は二百二十五億、患者負担は三十九億と五十億、いわゆる患者負担は八十九億ということでございますから、政府が一番たくさん負担をし、その次に事業主と被保険者が半々に負担をし、そして患者負担が八十九億ということでございまして、この赤字の克服を患者だけに負わしておるということでもありませんし、また、被保険者だけに負わしているというわけではないという前提に立って御議論を進めていただきたいと存じます。
○委員以外の議員(渡辺武君) そんなとんでもない前提に立って議論を進めるわけにいきませんよ。そうでしょう。被保険者であろうと、患者であろうと、これは国民であることに変わりないんですよ。私が言っているのは、これは政府の負担がなるほど二百二十五億円だと、それはそうかもわからぬ。しかし、それじゃいまあなたのおっしゃった答弁で計算してごらんなさいよ。保険料率の引き上げの半分が、これが被保険者の負担で百四十八億円、それに患者負担三十九億と五十億だから八十九億でしょう。そうしましたらね、二百三十七億ですよ。政府よりもよほど大きいじゃないですか、そうでしょう。私の言いたいのは、本来、社会保障制度というのは、これは国と資本家が負担すべきものです。国民は一銭も負担すべきものじゃない。これこそが最も正しい社会保障制度のあり方ですよ。それを国も負担しているというようなことで、被保険者及び患者に当然国や資本家が持つべき負担を背負わしている、それを合理化することは絶対できませんよ。今度の修正案で幾らか患者の利益になるのだというような議論があったけれども、これは全くのごまかしの理論以外の何ものでもないじゃないですか。本来、こんな特例法の制定なんかやらなければ、こんな患者負担も被保険者負担も出てこなかったはずです。特例法の制定などをやって、しかも、今度修正案でその中の一部分ではあるけれども、しかし本法まで変えてしまって、そして保険料率も実は固定化してしまう、あるいは入院時あるいは初診時の患者負担、これをまた本法に固定化する、こういうような状態、何が一体患者の利益になりますか。
○国務大臣(斎藤昇君) 患者の利益になると、先ほど修正案の説明をされた側からの御説明は、とにかく特例がそのまま続けば患者はいままでどおりよけい負担しなきゃならない、今度の修正によってその負担がそれだけ減ったということで、これはそのとおりなんです。先ほどのお話の国民の医療はすべて国が見るべきだ、それが社会保障だと、私は社会主義国における社会保障制度はあるいはそうであろうと思います。そのかわりに賃金制度、その他の経済制度もすべて違うわけでありますから、自由主義国の経済制度、そのもとにおける賃金制度、所得制度という中に立って保険制度を考えます際には、まず国民の医療は自分たちの所得から医療費を支払うべきだ、しかしながら、それには一定の限度もあるから、お互いに相互扶助の関係で保険をし合おう、しかし、保険料も支払うことのできない低所得層の人は、これは国が見ようという立て方になっておりますので、この保険制度だけをごらんになって、そして社会主義国の保険制度とこの医療に対する社会保障制度と違うからこれはいけないということは、これは相当筋が違うのじゃないだろうか。やはり全体の制度を考えて、その制度の中において、あるべき保険制度はそういう形でできておるわけでありますから、そこで赤字ができてまいりましたならばやはり負担のできる被保険者がお互いに負担をし合う、しかしそれもあまり多くなれば国費も支払う、保険料は事業主と被保険者の半々というこの原則はやはり貫いていくべきである、かように考えているわけであって、この制度は、わが国における制度としては適当な制度である、かように考えております。
○委員以外の議員(渡辺武君) 厚生大臣からそういう答弁が当然くるだろうというふうに予想して聞いておりましたので、別にあきれ返りもしませんけれども、しかし、やはり社会保障制度の根幹は、これは必要な費用については国と資本家の負担によらなければならぬというのは、これは社会主義諸国ではこれは実施されているわけですけれども、同時にまた、日本の――資本家はいないからこれは除外しますけれども……。
○委員長(吉田忠三郎君) 静粛に願います。
○委員以外の議員(渡辺武君) 日本の国民の非常に強い要望だということをあなた方は考える必要がある。筋が違うと言うけれども、いわゆるいまあなた方は自由主義国だと言うけれども、つまり資本主義国、特にその中でも大きな資本家ですね、この立場に立って考えているから、私どもの立場から言えば、全く筋違いな社会保険制度を実施せざるを得ないということになっている。その原則論はちょっと除きまして、しかし、それにしましても、財政効果、財政効果ということで健保会計の赤字その他をいろいろ云々するのですけれども、一体財政上の見地ではなくして、あなた方がこの二年前からの特例法の実施によって日本の医療制度、医療保障ですね、このものが一体どういう影響を受けたのか、それについてあなた方よく調べておりますか。
○国務大臣(斎藤昇君) 二ヵ年の特例法実施によって医療制度がどういう影響を受けるかということでございますが、この制度そのものによって医療制度自身には大した影響は出ていないと考えます。今日の医療制度そのままでよろしいか、ことに医療保障制度はそのままでよろしいか、これは大いに検討の余地があるわけでございますが、特例法は、ただ負担のしかたを二ヵ年の特例として臨時にきめたわけでございますので、医療制度にこれが及ぼした影響というのは、そう大してないと思います。
○委員以外の議員(渡辺武君) 少しは国民のことも考えて答弁してもらいたいと思うんですね。ことしの二月に総評がやった社会保障討論集会というのがありますけれども、そこで保険医団体連合会の代表が次のような報告をしております。念のために読んでみますがね。「特例法は本人十割給付の原則を完全にくずしてしまった。感冒のような短期の疾患では、四百四十七円の医療費中、一部負担は二百四十五円で、実質給付率は四割五分、長期疾患でも、二種投薬の場合は一ヵ月の医療費四千四十円中、一部負担は千百二十円で実質給付率は七割二分となる。こうして患者の治療中断や売薬に走るという結果を招いている。」、ということが報告されておりますが、この点認めますか。
○国務大臣(斎藤昇君) この特例法の実施によって、いわゆる被保険者本人十割給付が変更になったとは考えておりません。特例法があったがためにそういうことになったというようには私は考えておりません。
○委員以外の議員(渡辺武君) 十割給付が変更になったということを言っているわけじゃないので、十割給付というたてまえは、形式的には言われているわけでしょう。しかし、実質上どうなったかということをここじゃ言っているのです。国民の声をひとつ耳を傾けて聞いてもらいたいと思うのです。実質給付率が四割五分になったと、感冒のような短期疾患の場合は。二種投薬の場合は、長期疾患で二種投薬の場合は七割二分に下がってしまっている、事実こういうことになっているのだということを、これは言っているのです。この事実は率直に認めなければいけませんよ、どうですか。
○国務大臣(斎藤昇君) その数字はよく検討いたしませんとわかりませんが、この特例法によって一部負担が非常に多くなってそういうことになったということでもあろうかと思いますが、先ほどのお尋ねは、医療制度に変更がきたというお尋ねでございましたから、私は医療制度にはそういう変更はなかろうと、かようにお答えをいたしました。一部負担が増したわけでありますから、一部負担のための影響というものは、これはあるはずであります。
○委員以外の議員(渡辺武君) まことに冷然と言い放ちましたがね。この二年前の特例法の実施後、政府管掌保険では受診率が前の年の同じ月に比べて入院、外来ともに、家族のほうは受診率がふえているけれども、被保険者本人は減っているという現象のあるのを御存じですか。
○政府委員(加藤威二君) 確かに受診率につきましては、四十二年の十月から薬の一部負担を実施いたしました、そのときに、本人の外来、薬の一部負担は御承知のとおり外来の場合だけでございますから、外来の受診率は落ちております。しかし、その場合には家族も――これは原因はわかりませんけれども、一、二ヵ月でございますが、受診率は落ちておる。これは新聞等にいろいろ薬の一部負担ができたというようなことが報道されますと、家族もそういう負担がかかるのかというようなことで、あるいはそういう影響があったかもしれないが、そういう一時的な受診率の下降というのはありましたけれども、ショック的なものはございましたけれども、その後、漸次また上昇いたしております。
 それから、全体的に、四十二年度の本人の受診率というのは比較的伸び率が低いわけでございますが、これは、先ほどもちょっと私御説明申し上げましたように、三十七、八年ごろから政管の健保の本人の受診率というものがものすごい伸び方をしておったわけでございます。それが四十一年の後半、ことに四十二年の初めごろからその伸び率が落ちついてきております。そういうことと特例法の一部負担というものと若干からみ合っていると思いますけれども、そういう影響と両方かみ合って四十二年度の受診率というものが比較的伸び方が鈍化しているということは言えると思います。
○委員以外の議員(渡辺武君) うそを言っちゃいけませんよ。入院時でも、被保険者本人の場合ですと、四十二年度は四十一年度に比べて、毎月、前年同月に比べるとずっと落ちておりますよ。例外としてほんのちょっと前年同月よりも上昇というのは四十二年の五月、それから四十三年の十月、これ例外ですわ。家族の場合は、これは入院時の場合は例外なく受診率はふえているわけですから、だからあなたの言っていることはちょっと違いますね。私、この数字をあれこれしようと思わぬですけれども、問題は、こういう傾向が起こっている原因はどこにあるか。薬代の一部負担及び初診時及び入院時の患者負担ですが、これが非常に強く響いている。特に政管健保の場合には、中小企業に働いている労働者が多い。低賃金、労働強化で病気にならないうちから非常に苦しめられている人たち、それが病気になって医者にかかれば薬代を負担させられる。それから入院時、初診時の負担も従来の二倍に引き上げられるというようなことで、病気になったって安心して医者にかかれないというような事態がこの特例法によってつくられたということは、いま、私が申し上げた数字がはっきり物語っている。そうでしょう。薬代の初診時、入院時の患者負担も、これは被保険者本人にかかってきている。家族については、そういう事態がないから受診率が上がってきている。それで本人の受診率が下がってきているということは、これは二年前の特例法が、これが医療保障に、つまり国民の健康にどれほど深刻な影響を与えたかということをこの数字が端的に物語っていると思う。この点どうですか。
○委員長(吉田忠三郎君) 速記をとめて。
  〔速記中止〕
○委員長(吉田忠三郎君) 速記を起こして。
○国務大臣(斎藤昇君) 特例法によって、一部負担が増したことによって患者がそれだけ負担をさせられたということでありますから、これはそれだけ苦しくなったということは、これは認めざるを得ません。そこで、正当な受診をどれだけ抑制をしたかという点になりますと、先ほど政府委員からお答えしましたように、受診率が三十七、八年ごろからずっと上がってまいって、そうして特例法の出る前から大体下降線になってきたという点から考えて、この一部負担はあるけれども、したがって患者の負担が重くなったけれども、そのために受診の抑制にはそうなっていないと政府委員が答弁をいたしております。しかし、一方では心理的に受診の抑制になっているという御議論がある。そこで、私は先ほどもお答えをいたしましたが、ちょうど両方合わせた中間ごろがほんとうの見方ではなかろうかと私は申し上げて、受診の抑制にも若干なっておったんじゃなかろうかと、私は政治的にさように判断をいたしておるわけであります。
○委員以外の議員(渡辺武君) 先ほどの政府委員の答弁で私でたらめを言っちゃいけないのだということを言いましたが、それを具体的に言いますと、先ほどの被保険者本人の入院時の受診率ですね。入院の場合の受診率が四十二年、四十三年と傾向的にずっと下がっていくということは申し上げたとおりですけれども、入院外の場合でも、被保険者本人につきましては、たとえば四十二年度を申しますと、四十二年の三月ですが、これは前年同月に比べてふえております。それから四月は減っておりますが、その後九月までふえる傾向を見せて、その後は十月からずっと減る傾向をとっている。四十三年に入ってもそういう傾向を一貫して保持しているということです。家族の場合ですと、これは入院のときとほとんど同じように、外来の場合でも四十二年、四十三年度は、これは傾向的に受診率が高まっているという傾向です。このギャップはどこから出てきているのか。家族のほうは受診率は高まっている、本人のほうは受診率が低下する傾向をとっている。特に四十二年のこの特例法がきまって薬代あるいはまた受診時、入院時の費用が患者負担になった、あるいはまた患者負担がふえたというような事態が起こってからこういう傾向が非常に顕著にあらわれてきている。どうしてもこれはやはり病気になっても安心して医者にもかかれない。中小企業の労働者の場合でいえば、医者へ行って、たとえ百円であろうと二百円であろうと、その場で現金で取られなければならぬというような事態は、これは苦痛であることは明らかです。こういう深刻な事態が生み出されている。いま、厚生大臣は、これは多少はそういうこともあるだろうというような程度の御答弁をしましたけれども、たとえばここにある診療所で調査した実例があります。それを申し上げてみましょう。京都の九条診療所という診療所が診療中断患者を調査した資料があります。この九条診療所というのは、一ヵ月の実際外来患者は約千百名ぐらいの小さな診療所ですけれども、特例法実施後、中断患者がばかにふえてきたということは、どういう事情で診療中断をするだろうかということで診療中断の患者の中から九十四名の人を四ヵ月がかりでいろいろ調べた例です。家まで出かけていって訪問調査したわけです。人手があればもっとたくさん調べられるのだが、残念ながら人手がないので、これだけしか調査することができなかったということを私は聞いておりますけれども、この微々たる調査からしましても、この診療中断患者の中で被保険者本人が七十九名、九十四名のうちの七十九名、家族は十五名に過ぎません。つまり被保険者のほうが圧倒的に多い。どういう病気にかかっているか、高血圧、肺結核、糖尿病、慢性肺炎、消化器糸、運動器系、その他の長期疾患が圧倒的に多いということです。中断の理由として患者の答えたのは、自覚症状がない、これが三十名。診療所に不満、これが十三名。忙しい、これが十名。金が続かない、これが六名。その他となっております。ところが自覚症状がないとか、診療所に不満などというのは、患者の病状から見て、その後ほかの医療機関へ行っていない事実から見て、経済的理由をそういうふうに言いつくろっていることは明かだというふうに、調査した委員の人たちはそう言っております。これはまことに微々たる調査です。その点は明らかなんですけれども、この微々たる調査が一つの典型を示しているというふうに見なきゃならぬと思う。それは、先ほど私が申し上げた、政府自身が二月の二十一日に社会保険審議会に提出した資料ですね。この特例法が実施されて以後です。本人の受診率が傾向的に低下するというような事実を、これを別の資料で裏書きしてるというふうに見なきゃならぬと思う。とにかくこういうふうに、多少影響があったかなあというような程度じゃない。病人が医者にかかれないような事態に置かれるということは、これはたいへんなことですよ。そういう深刻な影響がある。この点を政府に率直に認めてもらわなきゃならぬと思う。どうですか。
○国務大臣(斎藤昇君) そういうような御議論も衆議院で相当強くありましたので、今度の薬剤一部負担をやめたほうがよかろうという修正案になったのではなかろうかと拝察をしたしております。したがって、そういった意味では、全然ないということは打ち消しております。そういう点もあるだろうと、私は若干考えております。
○委員長(吉田忠三郎君) ちょっと速記をとめて。
  〔速記中止〕
○委員長(吉田忠三郎君) 速記を始めて。
○委員以外の議員(渡辺武君) なお、質問したいことが山ほどあります。特に一番最初申しましたように、衆議院の事態について責任ある答弁をすることのできる人が出席していないというような事態で、質問を留保せざるを得なくなりましたので、同時にこの議題となっている法案についても、なお質問を留保して、きょうのところは私の質疑を打ち切りたいと思います。
○委員長(吉田忠三郎君) ちょっと速記をとめて。
  〔速記中止〕
○委員長(吉田忠三郎君) 速記を起こして。
 他に発言もなければ、本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。
 本日はこれにて散会をいたします。
   午後七時十四分散会