第063回国会 本会議 第15号
昭和四十五年五月八日(金曜日)
   午前十時五分開議
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○議事日程 第十五号
  昭和四十五年五月八日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の報告に関する件(中小企業基
  本法に基づく昭和四十四年度年次報告及び昭
  和四十五年度中小企業施策について)
 第二 民事訴訟手続に関する条約の締結につい
  て承認を求めるの件(衆議院送付)
 第三 民事又は商事に関する裁判上及び裁判外
  の文書の外国における送達及び告知に関する
  条約の締結について承認を求めるの件(衆議
  院送付)
 第四 外国公文書の認証を不要とする条約の締
  結について承認を求めるの件(衆議院送付)
 第五 教育的、科学的及び文化的資材の輸入に
  関する協定の締結について承認を求めるの件
  (衆議院送付)
 第六 通商産業省設置法の一部を改正する法律
  案(内閣提出、衆議院送付)
 第七 許可、認可等の整理に関する法律案(内
  閣提出、衆議院送付)
 第八 農林省設置法の一部を改正する法律案
  (内閣提出、衆議院送付)
 第九 タクシー業務適正化臨時措置法案(内閣
  提出、衆議院送付)
 第一〇 港湾法及び港湾整備緊急措置法の一部
  を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
 第一一 船員法の一部を改正する法律案(内閣
  提出、衆議院送付)
 第一二 海上運送法の一部を改正する法律案
  (内閣提出、衆議院送付)
 第一三 地方道路公社法案(内閣提出、衆議院
  送付)
 第一四 農地法の一部を改正する法律案(内閣
  提出、衆議院送付)
 第一五 農業協同組合法の一部を改正する法律
  案(内閣提出、衆議院送付)
 第一六 家内労働法案(内閣提出、衆議院送
 付)
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○本日の会議に付した案件
 一、元議員石坂豊一君逝去につき弔詞贈呈の件
 一、緊急質問の件
 以下 議事日程のとおり
    ―――――――――――――
○議長(重宗雄三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
○議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。
 さきに院議をもって永年在職議員として表彰されました元議員石坂豊一君は、去る五日逝去せられました。まことに痛惜哀悼の至りにたえません。
 つきましては、同君に対し、院議をもって弔詞を贈呈することとし、その弔詞は議長に一任せられたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。
 議長において起草いたしました弔詞を朗読いたします。
   〔総員起立〕
 参議院はわが国民主政治発展のため力を尽くし特に院議をもつて永年の功労を表彰せられました元議員従三位勲一等石坂豊一君の長逝に対しましてつつしんで哀悼の意を表しうやうやしく弔詞をささげます
    ―――――――――――――
 弔詞の贈呈方は、議長において取り計らいます。
     ―――――・―――――
○議長(重宗雄三君) この際、緊急質問の件につき、おはかりいたします。
 羽生三七君から、日中国交回復等に関する緊急質問が、黒柳明君から、在日米軍基地撤去等に関する緊急質問が、向井長年君から、日米安保条約改定等に関する緊急質問が、それぞれ提出されております。
 これらの緊急質問を行なうことに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。順次発言を許します。羽生三七君。
   〔羽生三七君登壇、拍手〕
○羽生三七君 私は、日本社会党を代表し、当面する日中問題を中心に、安保、インドシナ情勢等について質問を行ないます。
 今日、七〇年代の世界は変革の時代とも言われております。これを国際関係について見れば、何が変革されなければならぬのか、そしてその課題は何かといえば、その主要な柱は核を含む完全軍縮の達成と緊張緩和であろうと存じます。
 ところが、日本を取り巻くアジアの情勢は、緊張緩和とは逆に、インドシナ情勢に見られるように、緊張の激化となり、また日本にとって七〇年代の幕あけの重要な課題となっている日中関係は、前進ではなく、後退という不幸な事態へと発展しているのであります。そして、その原因はそもそもどこにあるのでございましょうか。
 まず、日中問題を見てみましょう。周知のように、先般の日中覚書貿易取りきめに関連する日中コミュニケは、日米共同声明問題を中心に、日本政府をきびしく批判し、政府・自民党もまたこれに反論をしておりますが、この問題の本質は、貿易額が多いとか少ないとか、コミュニケの表現が適当かどうかという観点だけから論議する性質の問題ではないと信じます。さきにも触れたように、七〇年代の変革とは何か、われわれが創造しなければならない新しい世界構造はどのようなものであり、かつ、日本の将来のためにわれわれはどのような選択をしなければならぬのかという基本的、本質的な問題の一環としてとらえなければならぬ課題であると思います。そして、そういう意味で、日中の国交回復と中国の国連加盟問題が、いま選択を迫られている日本外交の重要な課題なのではありませんか。この基本的な前提条件を総理はどのように理解されるのか、まずお尋ねをいたします。
 この前提条件に立っての質問の第一は、台湾問題についてであります。私は、さきの予算委員会での質問の際に、「台湾国府が全中国を代表する資格で国連安保常任理事国の地位を占めることは不適当とは思わないか」とただしたのに対して、総理は、「適当かどうかをきめる前に、国連が中華民国をはっきり指名している事実を認めざるを得ない」と答弁されました。確かに経過はそのとおりでございましょう。しかし、大事なことは、国連も日本も、中国問題については出発点においてその選択を誤ったのではないかということであります。また、総理はその際、「国府に対して国際信義がある」とも言われました。では、太平洋戦争終結までの長い日中間の歴史を振り返って、北京政府、中国人民に対して、日本は何らの信義を必要としないというのでしょうか。もし、信義を言うならば、まず中国人民に対してこそその責任を果たすべきではありませんか。総理はどうお考えになりますか、伺います。
 私にも台湾問題の困難さはよくわかります。しかし、新しい歴史や秩序を創造する場合には、程度の差こそあれ、困難は避け得られぬのではございませんか。まず、台湾問題については、さきに述べた原則に立ち、さらに、台湾問題は中国の内政問題であるということを確認した上で問題の平和的解決を期待すべきではありませんか、お答えをいただきます。
 私は、台湾問題が即時解決できるとは思っておりません。しかし、問題は、原則をまず確認することでありましょう。こういう問題提起に対して、政府はいつも、必ず、積み上げ方式でと答えます。だが、実はその積み上げが何一つないのであります。もし政府が本気で日中打開を考えるならば、まず原則を確認することであり、同時に、いうところの積み上げを一つでも確実に実行することでございます。たとえば輸銀使用や航空協定などもその例になるでしょう。これは一例であります。しかし、政府間接触と全く無縁の問題を積み上げに数えても前進はないと思います。総理はどうお考えになりますか、伺います。
 さらに、政府は、日中打開は七〇年代の課題と言っておりますが、それは、国際的にその大勢がきまったらそれに追随するというのか、大勢がきまる前にでも日本独自で決断する必要があると思うがどうか、この点を明らかにしていただきたい。
 これらのすべてを考慮して、今秋の国連総会では、中国問題の重要事項指定については、提案国にも同調国にもなるべきではありません。なお、総理は、国連二十五周年記念総会を機会に、国連憲章の敵国条項の削除等を含む規約改正案の提案を考慮しているようでありますが、日中復交及び中国その他の未承認国の国連加盟が実現してこそ、初めて戦後は終わるのではありませんか。総理の所見を伺います。もっとも、これは総理の四選とからめて質問するわけではありません、念のため。
 中国問題でいま一つ重要なことは、中国の核開発と軍縮との関連であります。周知のように、中国はさきに人工衛星の打ち上げに成功し、さらにICBMが実用化の階段に達するのも時間の問題とされております。この場合、これを脅威として日本がアメリカの核戦略への依存を一そう深めることは必至でありましょうし、さらに、米ソの戦略核兵器制限交渉にも影響が起こることが予測されております。軍縮どころか軍拡にもつながるこの矛盾を阻止し、核兵器を含む軍縮を実現し、真の平和を築くためにも、中国の国際社会への復帰が不可欠の要件ではありませんか。このような意味からも、中国問題は当面の貿易上の利害だけからではなく、一そう高い次元から取り組むべきであると思いますが、総理はどうお考えになりますか、伺います。
 さて、今回の日中コミュニケといい、さきの中国と朝鮮との会談といい、結局のところ、昨秋の日米共同声明に基因していることは明白であります。日中コミュニケは、日米安保が一そうその範囲を拡大し、一そう危険に富んだものとなったと指摘しております。なぜならば、現行安保には見られない台湾や朝鮮の問題が日米共同声明に入り込み、さらには沖繩返還に関連してベトナムも入ってきたのでありますから、安保の危険性と極東の範囲の拡大と解釈されても当然でありましょう。
 次に、沖繩返還に関する日中コミュニケの指摘は、その表現が適当であるかどうかは別として、指摘されるような危険性が、日本の対米姿勢いかんでは現実の問題となることもまた確実であります。さらに、軍国主義の復活という問題については、その定義にもよりますが、いまや軍事大国となりつつあることは確実であり、さらに今日の状態がこのまま進行すれば、軍国主義の復活と言われても弁解の余地がなくなるのではありませんか。これらの指摘が、もし政府・自民党の言うように、曲解であり不当であると言うならば、先方が望むならば大使級会談をという姿勢ではなく、何らかの形で日本が進んで政府間接触の道を開き、わがほうの真意を中国側に伝える機会を、それもなるべく早くつくるべきではありませんか。形式はいずれにもあれ、こちらが呼びかけて政府間接触の道を開き、先方の言い分が曲解というなら、日本側の真意を伝えよということであります。この問題については、特に総理の明快な答弁を期待をいたします。もしそういう努力を怠り、売りことばに買いことばというような事態となれば、日中間の隔絶は一そう距離を広げるという不幸な方向へ発展するのではないでしょうか。佐藤内閣では日中打開はできないとの強い批判もありますが、批判は批判として、総理自身としては真剣に取り組む意思があるのかどうか。北京、台湾の双方にいい顔はできない限界にまできたこの時期において、あらためて総理の真意をただしたいのであります。
 次に、安保、アジア情勢に関連をしてお尋ねをいたします。周知のように、アメリカのカンボジアへの介入、北爆の再開によって、ベトナム戦争はインドシナ全域に拡大するという事態になりましたが、アメリカの上院は、去る四月十日、ベトナム戦争を理由づける有力な法的根拠となっていたトンキン湾決議を廃棄し、さらに、今回の介入を不当とする動きが全米に広がっていることは御承知のとおりであります。しかるに、日本が、アメリカのカンボジアへの介入をやむを得ない措置と言うのはなぜなのか。その根拠を説明されたいのであります。昨日、衆議院では、自衛権の発動と説明されたようでありますが、当事国の要請のない介入は侵略ではございませんか。
 次に、愛知外相は、今国会の劈頭の外交演説で、「ベトナム和平の実現のためにできる限りの役割りを果たしたい」と述べられましたが、今日まで、言うところのベトナム和平のためにどのような努力、役割りを果たされたのか、お聞かせを願いたいのであります。また、そのこととアメリカのカンボジアへの介入を認める外交方針との間に何らの矛盾を感ぜられないのか、明らかにされたいのであります。要するに、ベトナム和平に対する日本政府の協力ということが、米軍の作戦行動に対する協力も和平への道といっているようにもとれるが、今日問われていることは、米軍のインドシナへの介入と戦闘行動の中止を求めることではありませんか。どちらが真意なのか、お尋ねをいたします。
 さらにまた、このような情勢のもとで、伝えられるアジア会議にわが国は絶対に参加すべきでないと思います。なぜならば、参加が予定されている国々は、ベトナム戦争でのアメリカの同盟国が中心でありますから――中心と言っておきます――その方向はおおよそ想像にかたくありません。必要なことは、アメリカに戦争拡大中止を求めることで、それは日本単独でもやれるはずであります。それとも会議に出席して、そういう方向へ会議をリードできる確信でもあるとでもいうのでしょうか。また、もしアメリカの介入を正当化するようなことになるような会議になった場合に、日本はどうするのか。この際明らかにしていただきたいと思います。またこの際、ロン・ノル政権とは今後どういう関係に立つのかもあわせてお答えいただきます。
 これと関連して次にお尋ねすることは、このような情勢から一九七二年の沖繩返還の時期に変更が起こることはないかどうか。総理は、さきの予算委員会における私の質問に、「いかなる情勢変化があろうとも、七二年返還は不動である」と答弁されましたが、今日の情勢から将来を展望して、絶対に確信が持てるのかどうか、お答えをいただきます。
 さらに、この場合重要なことは、もし返還の時期そのものに変わりはないとしても、その代償として基地の自由使用が要求されるのではないかと思います。政府としては、その場合、事前協議が適用され、イエスもあればノーもあるというのでしょうが、この場合は絶対にノーだけがあるべきで、返還後の沖繩は当然本土の一部となるのですから、断じてイエスの先例を開くべきではありません。もしそういうことからB52などに発進の道を開くことになれば、それこそが本土の沖繩化といわれることが現実の問題になるのでございます。この問題についての明確な答弁をお願いをいたします。
 また、日中コミュニケも、また、さきの中国と朝鮮との会談においても、日米共同声明に盛られた朝鮮と台湾の問題に関連して、安保の本質を攻撃していることは言うまでもありません。このことは、他国が日本に直接の攻撃侵略を行なわない場合でも、すなわち朝鮮や台湾の問題を直接日本の安全と結びつけ、事が起こればアメリカに日本からの出撃を許すことがあること、さらに、それで紛争が激化して報復を受ければ、安保第五条の適用ということにも発展する危険性を持つ条約を、しかも、あからさまに対象とされた国が黙視するはずはないではありませんか。日本に対する直接の攻撃侵略がない限り、さきにも述べたベトナム問題と同様に、事前協議で断じてイエスの道を開くべきではありません。さきの問題とあわせてお答えを願います。
 最後に、軍国主義の復活という問題に関連して、防衛力の限界についてただしたいと存じます。軍国主義の復活を指摘しているのは単に中国だけではありません。アメリカの一部も含めて実に多くの国々から疑いの目をもって見られていることは事実であります。事実、憲法上の明確な制約があるにもかかわらず、わが国の防衛力は限界を示すことなく拡大をしております。おそらく中国を除けば、総合戦力ではアジア第一位でありましょう。さらに、第四次防で六兆円前後の防衛費を投入することともなれば、文字どおりの軍事大国となることは言うまでもありません。この場合、政府は攻撃的兵器は持たないと説明しますが、それでは通常兵器は無制限で限界はないのかどうか。また、攻撃的兵器は安保でアメリカの戦力で補完するというのであれば、半永久的に安保からの脱却はあり得ないことになるのではありませんか。しかも、自衛隊の力が拡大していけば、やがて物理的にコントロールがきかなくなるのではないかと考えられるし、また、このことは、かつての日本の太平洋戦争の歴史を見れば明瞭であろうと思います。わが国は太平洋戦争の反省を現状に照らしていま一度かみしめる必要に直面しているのではないでしょうか。この限界なしに拡大していく自衛隊について、総理は、予算委員会で、地上部隊については一応現状程度でと答弁されましたが、空、海についてはどうお考えになられるのか。われわれの基本的な考え方は別として、政府自身の立場から言っても、自衛隊の増強は現状で凍結するか、あるいは明確に限界を示すべき段階と情勢にあると思いますが、この際、総理及び中曽根防衛庁長官の答弁を求めます。
 私は質問の初めに、七〇年代の日本の外交の選択について触れましたが、日本は平和憲法を持ち、核を持たないことをマイナスと考えるのではなく、これをプラスとして、国際緊急の緩和や核を含む完全軍縮の実現の先頭に立つべきであると思います。そして、そのためには安保の延長ではなく、非同盟中立を基礎に、アジア諸国と相互主権の尊重、相互内政不干渉、民族自決、自主独立の原則に立って親善関係を強化し、緊張緩和の実をあげるべきでありましょう。なお、これらの原則は国家間の関係を律するわれわれの基本的立場であることをこの機会に明確にしておきたいと思います。
 結論をいたしますが、今日インドシナの戦火は拡大の一途をたどっております。アメリカとその同盟国は、ベトナム戦争の教訓を学びとらなかったのでございましょうか。世界最高の経済力と世界最強の軍事力を持つアメリカが、何十万の軍隊を投入し、最強の武器を使い、何年戦っても小さい国家民族の政治的意思を変えることはできなかったのであります。侵略戦争は断じて勝利することはできないことを歴史は証明していることを指摘し、わが国外交政策の転換を求めて質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
○国務大臣(佐藤榮作君) 羽生君にお答えいたします。
 一九七〇年代の重要課題は国際緊張の緩和であるという羽生君の御指摘には、私も同感の意を表します。
 私は、国際間の緊張を緩和し、アジアの平和を維持してこそ、初めて日本民族の長所を伸ばし、七〇年代における進歩と発展が期待できると考えるものであります。
 政府の外交の基本姿勢は、たびたび申し上げましたとおり、内政不干渉、相互の立場を尊重するという原則のもとであらゆる国と友好関係を保つことにあります。このため、私自身、平和に徹する理念を貫き通す決意であります。
 未承認国の国連参加問題は、国際情勢の現実から見ましてきわめてむずかしい要素を含んでおりますが、人類の恒久平和達成という理想に照らして、あらゆる国が努力しなければならないことであると考えるものであります。
 次に、昨日も衆議院で申したのでありますが、日中問題は現在の国際政治の中でも最もむずかしい問題の一つであります。国民政府、北京政府ともに内政問題であるとしており、わが国もそのような認識で対処しております。また、現在の国連機構は不合理な点があり、政府としてもその改組を希望しております。敵国条項がいまなお存在することもその一つであります。しかし、安保理事会の常任理事国の構成メンバーの問題は国際世論がきめることであり、微妙な日中問題に当面しているわが国として、いまの段階で、ことさらこの点についてものを言うことは妥当でないと私は思います。いずれにせよ、第二次大戦後の国際情勢は分裂国家問題という新たな要因をかかえて、きわめて複雑になっていることは御承知のとおりであります。わが国と中国との関係は、同時に米国やソ連やEEC諸国などと中国との関係に通ずるものがあり、わが国の善意だけでは問題の解決にならないとも言えるのであります。しかしながら、わが国としてはできるだけの努力を尽くし、日中関係の改善をはかるべきでありますが、そのためには、中国が現実的な態度で国際社会に臨むことを強く希望する次第であります。
 次に、中国の核開発が進むとわが国は一そう米国の核戦略へ依存せざるを得なくなるから、中国の国連加盟を実現させよという議論を展開されましたが、日本国民は中国の核開発はきわめて遺憾に考えているのでありますから、その点、この機会にはっきり申し上げておきます。政府としては、中国が進んで国際社会に復帰する熱意を示し、核軍縮を含む軍縮交渉に参加することを望んでおります。また、政府としては、日中間の相互理解を促進するため、高い次元からも、大使級会談に限らず政府間の接触に応ずる用意があります。この用意があるということは、私どもの申し込みととられてもしかるべきものだと思います。
 さらに、北京政府、国民政府双方にいい顔をすることは限界がきたとの御指摘がありましたが、政府としては、国際間の信義を守りつつ、現実的な、かつ、妥当な形で対処してまいる決意であります。なお、重要事項指定方式の問題に対する政府の方針には、ただいまのところ変化のないことを申し上げておきます。
 カンボジア問題に対する政府の態度は、ジュネーブ協定に基づいてカンボジアの中立が確保されるべきであるということであります。したがって、北ベトナムやベトコンがカンボジアの中立を侵し、南越への攻撃の拠点としていることに対し、その原因を除去するための努力は、これを認めるべきだと考えております。しかし、政府は、戦火の拡大ははなはだ遺憾であり、カンボジアの中立と独立が維持され、一日も早くインドシナ半島の平和が回復することを強く望んでおります。
 アジア会議やまたロン・ノル政権に対するお尋ねがありましたが、これは外務大臣からお答えすることにいたします。
 次に、インドシナ半島の趨勢いかんにかかわらず、沖繩は一九七二年中に本土並み、核抜きで祖国に復帰いたします。この基本線が変わることはありません。返還後の沖繩からの米軍の出動について事前協議を求められれば、国益に照らして自主的に判断いたします。いままでも申し上げましたとおり、イエスもあればノーの場合もあることはいままで申し上げたとおりであります。いわゆるノーだけを言うという考えはございませんが、同町にまた、あらゆる場合にイエスと言うのだという、いわゆる自由使用というようなことはございません。この点はっきり区別して御理解いただきたいと思います。
 朝鮮半島や台湾海峡で問題が起こった場合も全く同様であり、わが国の安全に直接かつきわめて密接なる関係を有するかどうかを基準として、事前協議に対処することになります。私は、昨年の日米――私とニクソン大統領との会談で安保条約が変貌したかのようなお話をされましたが、安保条約の条文の一言一句にもさわっておらない、それによって変わりがないことをはっきりこの機会に認識していただきたいと思います。(拍手)
 最後に、わが国の防衛力は国力、国情に応じ、国民の納得のいく形で整備すべきものと考えております。したがって、おのずから限界があります。そうしてその足らざるところを日米安保条約によって補完するというのが政府の基本方針であります。羽生君があげられたように、主権の尊重、内政不干渉、民族自決、親善関係の強化、いずれについても、もとより異存はありません。ただ、私と羽生君との違いはどこにあるかと申せば、安保を是認するかしないかという根本的な相違が出てきておるように思います。私は、この点につきましては、限りある時間でございますので、これより以上は申しません。すでに委員会等でも私の所信は明らかにしたところでございます。
 ただ、一言つけ加えておきますが、いずれ中曽根君からお答えすることだと思いますが、いまの自衛隊の空、海自衛力は、いかにも不十分でございます。それらの点については、私は、さらに国民の納得を得て、これをさらに強化することに努力したい、かように考えております。
 以上お答えいたします。(拍手)
   〔国務大臣愛知揆一君登壇、拍手〕
○国務大臣(愛知揆一君) お尋ねの第一点は、いわゆるベトナム問題について政府がいままでとってきた措置はどういうことであるか。この点につきましては、政府といたしまして、アメリカ、南越、北越等の紛争の直接の当事国に対しまして、種々の角度から平和的解決の必要を訴えてまいりましたことはもちろんでございますが、ジュネーブ会議の共同議長国たる英ソ両国、それから休戦監視委員会の構成国をはじめ、各国と緊密な連絡をとって、和平機運の醸成につとめてまいりました。現に、米国、ベトナム両国首脳に対しましては、早期に和平を実現できるように強く要望する日本国民の意向を率直に伝えて、相互の意思疎通に努力してまいりました。また、ソ連につきましては、私自身も訪ソの際ももちろんでございまするし、その後もソ連首脳との会談、あるいはモスコー駐在の外交機関を通じまして絶えず接触して、ソ連が和平のために積極的なイニシアチブをとるように要請してまいっております。さらに、北越に対しまして和平を呼びかける努力をいろいろとやってまいりました。このような努力は、もちろん今後とも一そう続けてまいりたいと思います。
 お尋ねの第二点は、いわゆるジャカルタ会議の問題でございます。カンボジア問題につきましては、私は、ただいま総理も言われましたが、ジュネーブ協定の精神に基づいて、カンボジアの中立、独立、領土保全を旨として解決さるべきものであるとかねがね考えてまいったわけでございます。日本は、アジアの一国として、イデオロギーを離れ、特定の政治的ブロックの形成などではないカンボジアの公正で平和的な処理に建設的な努力を積み上げたい、かように念じておる次第でございます。この意味におきまして、従来から中立的な立場にありまするインドネシア政府の提唱にこたえまして、まず参加国とともに語り合って、積極的な、いま申しましたような方向の努力を展開したいと考えておるわけでございます。そうして、当事者間の話し合い、あるいは一そう広い範囲の国際的な話し合いへのアピール、あるいは国際監視委員会の復活等々の方法等について、カンボジアの公正な平和の達成の方途を見出したい。この意味におきまして、ジャカルタ会議に参加するということは、私は日本としての当然やるべき任務であろう、かように考えておる次第でございます。
 第三は、ロン・ノル政権の問題でございますが、三月十八日にロン・ノル政府が成立いたしましたが、これは、同国の憲法の規定によりまして正規に合法的な成立をいたしたものであるという通報をわが国としては受けておるわけでございます。同様に、従来、カンボジア政府と国交関係を持っておりました各国々にも同様の通報がなされました。そして、その結果、国連におきましても、ロン・ノル政府の代表がカンボジアの正式な代表として受け入れられておることは周知の事実でございます。日本政府といたしましても、ロン・ノル政府との間で公文書の交換等、引き続き平常の外交関係を維持しておるのが現状でございます。
 なお、先ほど総理からの御答弁もございましたが、今回の米国のとりました措置につきましては、四月三十日の米国大統領の演説を見ますると、今回の措置はベトナム戦争の早期終結をはかるための、目的達成のための方法である、やむを得ざる方法であるということが述べられておること、あるいはまた、この点はカンボジアのシアヌークもかねがね要請しておった点でございますが、かねてからカンボジア領域内に北越、ベトコンの軍が侵入し、居すわり、そして最近における軍事活動が激化している、こういう世界的に客観的に明らかな事実に着目しておるという点を私どもも冷静に分析、判断の資料としなければならないと、こういう点を特にわれわれとして念頭に置かなければならないということを念のために申し上げておきたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
○国務大臣(中曽根康弘君) まず海外筋の、日本軍国主義復活云々の論難に対しましては、その事実はないと確信しております。
 ただ、日本は終戦以来、ものすごい経済成長をしておりまして、その上、一億の民族が一つの日本語で二千年も長い国家生活をやってきた結束力の強い民族でございますから、こういう巨大な経済力と民族のバイタリティが、一たん軍事優先に転化した場合にはどうなるか、そのように周辺の諸国が心配するということは了察できます。したがいまして、そういうような誤解を与えないように、日本は、終戦以来、平和国家建設に邁進しておるのでございますけれども、その点をよく了知願い、かつわれわれ自体も、防衛力の建設につきましてはそういう誤解を与えないように、節制を主として、戒心して慎重にやってまいりたいと心得ます。
 それから、防衛力の限界でございますが、法律的、政策的限界ははっきりしていると思います。しかし、数量的限界は、客観情勢が流動的であることと、兵器の進歩が日進月歩であるという情勢もございまして、なかなか把握できないのは残念でございます。しかし、客観情勢の安定化に並行いたしまして、できるだけ数量的限界も把握するようにつとめてまいりたいと思います。
 そこで、日本の防衛の限界につきましては、専守防衛を主とする、旨とする、これははっきりしております。そして具体的には、通常兵器による限定戦以下に対処するということでございます。限定戦と申しますのは、まず目的において防衛に限るということ、地域において本土並びにその本土周辺に限るということ、手段において核兵器や外国に脅威を与える攻撃的兵器は使わない、そういう三つの限定的要素が確立されていると思います。
 いま空軍と海軍についてお話がございましたが、空軍につきましては、本土の防空並びに本土防衛のための海及び陸の支援を行なう、この限度にとどめる。海につきましては、周辺海域の防衛並びに周辺海域における輸送の保護、この限度にとどめるという方針でございます。それと同時に、経費的には、平時におきましては国民生活の充実、発展を阻害しないという範囲内において注意してまいりたいと思います。大東亜戦争の先訓をかみしめよというお話でございますが、一番大事なことは、文民統制を確立するということであると思います。これによって、国民の防衛力として国民に御安心を願う、そういうことがわれわれの一番大きな仕事ではないかと思います。そして、特に周辺諸国と軍備拡張の悪循環を起こさないように、少なくとも日本が初動的にそういう立場に出ないように、われわれが注意するということが非常に大事である、そのように考えます。(拍手、「議長、いまのはおかしいよ」「海軍とか空軍とかいうことばを使っちゃだめだよ」と呼ぶ者あり、その他発言する者あり)
    ―――――――――――――
○議長(重宗雄三君) 黒柳明君。
   〔黒柳明君登壇、拍手〕
○黒柳明君 私は、公明党を代表しまして、米軍のカンボジア介入及び在日米軍基地の撤去について、総理及び関係大臣に若干の質問をいたしたいと思います。時間の制限があるため、質問の要旨だけで端的にお伺いしたいと思いますが、御答弁のほうは、国民の皆さんが納得し得るよう、十二分な御答弁をお願いしたいと思います。
 質問の第一は、今回のアメリカ軍のカンボジア介入を支持した日本政府の支持の姿勢についてであります。今回のアメリカ軍のカンボジア介入については、アメリカ国内はもちろん、国際世論が異口同音に非難を浴びせておりますが、その中にあって、ただ日本政府のみが介入を支持したのはどういうことなのでしょうか。なかんずく、昨日、愛知外務大臣は、参議院の外務委員会で米軍のカンボジア介入は好ましくないと、こうおっしゃいました。また、従来の政府の態度は、やむを得ぬ措置であると、こういうことです。総理大臣、この、好ましくないがやむを得ない、このことばの間には非常に論理の矛盾があると思うのですが、あらためて、具体的な説明をお願いしたいと思います。
 第二には、去る四月二十三日、ニクソン大統領は、カンボジアに対する軍事援助の開始を明らかにしましたが、当時は武器援助のみに限定されておりました。それが、今日では、すでに五万の米軍がカンボジアに侵入するに至っております。この間の経過を見れば明らかなように、小規模かつ間接的援助から、大規模かつ直接的援助に拡大されていく危険があることを示しており、やがては第二のベトナム化へとエスカレートしていく可能性があると思いますが、総理の見通しはどうでしょうか。また、本日の報道によりますと、第七艦隊がすでにトンキン湾上に出撃しておる。これは米海軍の初の出動である。さらには、米艦艇が、メコン川周域において、ニクソン大統領が言った三十五キロ以内の限定地域を越えて、そして掃討作戦に乗り出すのではないかと、このようなことも報道されております。このような一連の行為は、明らかにカンボジアへの米軍の介入が、やがてはエスカレートして、インドシナ戦争へと発展する危険性が多分にある。こういうふうに私は思いますが、総理の見通しをお伺いしたいと思います。
 第三は、昨日の衆院本会議において、総理は、アメリカのカンボジア介入は国連憲章第五十一条に基づく自衛権の発動であり、違法ではないと、このように申しました。ただいまもそういう質問が若干ありました。しかし、あのトンキン湾事件のとき、第四十八国会のときですが、外務大臣は、アメリカのベトナム介入に対して、これは南ベトナム政府の要請があったから五十一条の自衛権の発動があったのだと、こうおっしゃつておる。しかし、今回は、もう周知のように、ロン・ノル政権からの要請はなくして、そしてアメリカ軍が介入しているわけです。これは明らかに、ただいまもありましたように、アメリカの侵略行為だ。これは、政府のトンキン湾事件の当時と今回の答弁が食い違う、私はこのように思うのですが、総理大臣いかがでございましょうか。
 第四に、ニクソン大統領は共産側によるカンボジア聖域使用がジュネーブ協定違反である旨を指摘しておりますが、米軍のカンボジア進攻こそジュネーブ協定の重大な侵犯であると思いますが、どうでしょうか。また、国連加盟国に対する直接の侵略行為であると思いますが、いかがですか。さらに、アメリカがこれまでたびたび繰り返してきたカンボジアの中立尊重という声明を、みずから踏みにじるものではないか、あわせて御答弁をお願いします。
 第五には、ニクソン大統領は、アジアの問題はアジア人自身で解決をはかれという、あのグアム・ドクトリンを打ち出して、その後、南ベトナムから第四次十五万の撤兵計画を発表したにもかかわらず、カンボジア介入を行なったということは、グアム・ドクトリンに背反する行為であると思いますが、総理はいかに考えるか、所信をお伺いしたいと思います。
 さらに第六には、マリク・インドネシア外相の提案するアジア会議へ外務大臣は出席すると、このように伝えられておる。いまも答弁がございました。しかし、現在のカンボジアの情勢というものは、非常に動きが激しく流動的であります。なおかつ、参加国は、もちろん北側は参加せず、インド、ビルマなども参加しないような現状では、いわゆるベトナム参戦国会議といわれるのと全く変化のないものとなる可能性があります。反共同盟国会議になることは必至であると思います。さらに、いまから一週間の期間があるわけですから、今後、たとえば中国やソ連などの強力な介入といった事態が発生しても、すなわち、いかなる事態が発生したとしても、アジア会議に参加するという政府の態度には変更はないのか、今後検討する余地は全くないのか、この際、御答弁をお願いしたいと思います。
 第七には、愛知外務大臣は、インドシナ半島の平和解決のために、日本をはじめとする五カ国の、いわゆる平和のための共同アピールを行なう構想を持っておられるようですが、それは、何もアジア会議に出席しなくても、その実を示すことができるのではないかと思いますが、どうでしょうか。たとえば、ウ・タント総長が提唱する当事国の国際会議や、イギリスが提唱する新国際会議の提唱を日本としても強力に支持し、それを積極的に推進することによって平和への方向を見出す、こういうことはできないものでしょうか。
 次は、ロン・ノル首相の特使として来日したシン・バル議員が、カンボジアへの経済援助を要請しております。外務大臣は、援助について検討を約束しましたが、政府は経済援助を行なうのかどうか、明らかにしていただきたいのであります。しかも、シン・バル議員はシアヌーク殿下追放の張本人でもあり、カンボジア国民もまだどの程度ロン・ノル政権を支持しているかも疑問である現在、日本がカンボジアに対し積極的な経済援助を行なうことには大きな疑問があると思いますが、いかがでございましょうか。
 第九番目には、外務省筋は、去る六日、求められれば国際休戦監視委員会に参加する用意があるという積極的な姿勢を示しております。政府は、この国際休戦監視委員会に参加するのかどうか。もし参加するとするならば、憲法上の問題点はないのかどうか、お伺いします。
 さらに、沖繩ではB52の動きが従来と異り、ベトナム攻撃からカンボジア爆撃へと移行するのではないかと、現地住民の不安は増大しておるのであります。したがって、政府は、アメリカ政府に対して、沖繩よりB52のカンボジア爆撃を決してやらせないよう申し入れを行なう意思はないかどうか、お伺いします。
 さらに、トンキン湾事件発生時には、在日米軍は緊急出動体制をとったわけですが、今回のカンボジア進攻という情勢の変化に際して、在日米軍の変動について、アメリカ側から日本政府に対して何らかの通知があったかどうかもお伺いしたいのであります。
 次に、現在、東富士演習場では、これまでにない大規模な沖繩駐留の米海兵隊による演習が行なわれております。これはカンボジア情勢の悪化に伴う緊急輸送訓練を兼ねたものであるといわれておりますが、日本とインドシナ半島の危険を直接結びつけるものとはならないかどうか、お答え願います。
 次に、在日米軍基地の撤去及びあと地利用についてお伺いいたします。昭和四十三年十二月、米政府より返還を提示されました五十数カ所に及ぶ在日米軍基地のうち、実際に返還されたものはまだ二十七カ所のみであります。あと二十数カ所はどうなっているのですか。またそれはいつ返還されるのか。さらに、今後の在日米軍基地の返還の方向について、この際明らかにしていただきたいのであります。
 次に、すでに返還された基地、すなわち根岸競馬場地区、あるいは名切谷住宅地区、広弾薬庫、横浜兵員クラブ等、利用価値が大きいにもかかわらず、あと地利用の具体的作業が進んでおりません。したがって、返還された基地のあと地利用をすみやかに行なっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。それとともに、返還された米軍基地を自衛隊の継続使用及び膨大な資金のかかる移転計画はぜひやめて、広く住民福祉向上のために利用してほしいと思いますが、いかがですか。
 次には、返還された国有地は、公園など公共施設に限って無償で貸与しておりますが、他の目的に使用する場合は有償となっております。長年、米軍基地として使用されたという実情にかんがみ、米軍基地に対する国有財産法の特例などを設け、使用目的を問わず、地方自治団体の利用計画に応じて無償で払い下げてはいかがでしょうか、御答弁願いたいのであります。
 最後に、公明党の今回の再調査によりましても、米軍基地の占める地域の利用価値はきわめて大きいのであります。工場用地、住宅地、市民の公共施設などの不足は、国民生活に深刻な影響を与えておりますが、米軍基地の利用によってこれらの問題が大幅に緩和できるのであります。これまで政府はこの点に対する考慮を全く払っていないと言っても過言ではありません。したがって、総合的に基地の利用計画を地方自治団体と協議立案し、これを付して米側に積極的に返還要求していくことが、返還の促進に大きな役割りを果たすことは明らかであります。すみやかに総合的利用計画をつくり、もって米国政府に返還要求を強力にしてはどうかという点を最後にお聞きしたいと思います。
 以上です。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
○国務大臣(佐藤榮作君) 限られた時間に多数の点のお尋ねがございましたので、私、なるべく落とさないようにお答えするつもりでございますが、あるいはもし落ちていたらお許しを願いたいと思います。
 今回のカンボジア問題は、久しく以前からカンボジア領内を一部の北越軍及びベトコンが占拠し、そこを拠点として南への攻撃を続けていたことに基因するのであります。これでは、北越策やベトコンが占領しておりましては、いわゆるカンボジアの中立は維持できません。シアヌーク殿下の施政下にありましても、しばしばこの点を指摘し、北越軍やベトコンの退去を要求した事実がございます。しかしながら、それが行なわれておらない、こういうところにカンボジアが中立を維持することができなかった点があるように思います。また、このことがあるために、南越における米軍兵士及び南ベトナム人の生命の保護、ベトナム化の促進、米軍の順調なる撤兵をはかるために、ニクソン大統領は自衛権の行使として今回の措置をとらざるを得なかったことを明らかにしたのであります。カンボジアのロン・ノル首相も今回の米国がとった措置を尊重し、感謝の意を表明していることは御承知のとおりであります。政府としては、戦火の拡大は遺憾とするところでありますが、問題の根源が北越などの不法占拠にあることにかんがみ、今回の米国の措置はやむを得ないものと理解している次第であります。この点について、外務大臣が好ましくない、かような表現をしたということと、ただいまのようにやむを得ない措置と、かような表現とはずいぶん違うではないかという御指摘がありましたが、私は好ましくないが、戦火の拡大はこれは好ましくないんだ、かような点はただいま指摘したとおりであります。しかし、私は米軍並びに南ベトナム軍のために自衛権の発動、これはやむを得なかったことだ、かように理解しておるのでありまして、外務大臣の表現のしかたといままでの私どもの表現と、これが食い違っていると、私はかようには思いません。あるいはことばが足らなかったんだと、かように私、外務大臣の説明を補足してもいいかと思いますが、別に変わりはないようでございます。
 また、ニクソン演説及び米国の国連安保理事会への報告によれば、米国の行為は自衛権の行使として行なわれているものであると述べており、自衛権の行使は国連憲章第五十一条の認めるところであります。最初の起こりの場合には、ベトナムから要請があった、これが五十一条というわけではない、他の国連憲章の発動、援助という形で進んだのでございますが、今回はすでに米軍が駐留しておるのでありますから、その米軍の安全のために自衛権を発動すること、これは当然なことではないか、これが五十一条の問題でございます。
 また、今回のこの処置がさらに拡大されるかどうかという問題、あるいは、今後の見通しはどうだ、こういうことについてのお尋ねがありましたが、私どもこれらの材料についてただいまからとやかく申し上げるものは持っておりませんが、米軍自身が、また大統領自身が国会でも説明しているように、三十五キロ以上は深入りはしない、あるいはまた、この期間を短期間の間に十分の効果をあげるように努力する、かようなことを申しておりますので、いわゆる長期戦化するような危険はまずないのではないだろうかと思います。私が申し上げるまでもなく、カンボジアは御承知のように、北ベトナムとカンボジアとの間には、その間にベトナム国があり、またラオスがある。その国々を越えてカンボジアに北越軍が侵入しておる、侵略しておる、そうしてそのために中立が維持されない。しかも、これが、カンボジアの中立が維持されないばかりじゃなく、このカンボジアを拠点にしてベトナムを攻撃する、南ベトナムにいる米軍を、これを攻撃する。これではアメリカ自身が約束しているような撤兵もできないのではないか。私はそういうようなことを考えると、やはりこの事態は、ただいま申し上げるようなカンボジアの中立を尊重するためにも、どうしても、ただいま申し上げるようなカンボジアのいわゆる聖域、そういうようなことばで外国の兵隊は一切入らないのだ、かようにいわれておりますが、聖域であるならば、まず北越軍、ベトコン、そういうものがこの聖域から退去することがまず第一の問題だ、かように私は思います。この点でどうも事態は、黒柳君はよく御承知だと思いますが、ただいま申し上げるような事態のもとにカンボジアに対する進撃が始まっておること、これは理解しなければならない、かように思います。(「でたらめ言うな」と呼ぶ者あり)共産党の方に説明しておるわけじゃありません。
 次に、休戦監視委員会の問題につきましては、とりあえず、現在の休戦監視委員会の活動を復活するのが現実的であると思いますが、もし今後の進展によりまして、何らかの平和維持機構が設立され、関係国からの要請があれば、わが国としてこれに応ずべきだと考えております。しかし、その場合におきましても、憲法に矛盾するような参加はもちろん考えておりません。憲法を守り、そうして国際平和に協力する、こういう立場で私どもも参加する、その用意のあることを申し上げたのであります。
 アジア諸国の会議、これはカンボジア情勢がこれ以上悪くならないように努力し、その独立と中立を維持するための方途を探ることにあります。わが国としては、この会議の意義を十分認識しており、目下のところ、これに積極的に参加する考えであります。
 また、カンボジアへのこの参加は、私はこれこそ、日本が積極的に進んで参加し、そうして日本の平和に徹したこの主張を十分理解してもらい、そうして国際世論がその方向で形成されることが望ましいのではないだろうか、かように私は思いますので、ただいまのところ、積極的に参加する、そうしてどのような状態がありましても、この参加だけは必ずする、こういう考え方でございます。
 また、カンボジアへの経済援助につきましては、人道的な見地に基づいて考慮すべきだと考えておりますが、ただいま検討中でありまして、まだ具体案はありません。これも御了承をいただきます。
 次に、政府は沖繩住民の不安を除くためB52が沖繩から撤去されることが望ましいと考え、これまでも再々米側に対しその旨を伝えております。しかし、いまの段階では特に申し出をするような考えはございませんが、今日の国会、この論議等は米側でも十分注意しておることだと思いますけれども、私はその上にも、この国会の審議の経過、これなぞは十分アメリカ側に伝えたい、十分参考になるだろう、かように思いますので伝えるつもりでございます。
 返還された施設区域を自衛隊に継続使用させるな、こういう御意見は昨日も衆議院で伺いましたが、御意見として承っておきます。政府は国有地の処分にあたっては、公用または公共用に優先的に活用する方針をとっております。米軍から返還された国有地についても、この方針に沿って個々の財産の規模、立地条件、環境等を勘案しつつ適切な利用をはかっているところであります。したがって、返還国有地を一律に地方公共団体に払い下げるのが適当であるとは私は考えておりません。また地方公共団体に払い下げる場合も、これをすべて無償とすることは考えていないのであります。
 さらに最後に、公明党の方は熱心に全国における米軍基地等を調査された。そうしてその調査の結果では、大幅にこれを解除するような余地がある、こういうような御指摘であります。もちろん、地域住民に重大なる影響を与えておる問題でございますから、ただいまの御意見等を伺った上で…また、御指摘になりましたように、総合的利用、こういう計画を立ててしかるべきではないか、大局的な観点に立ってさような処置をとれという御注意は、私も十分肝に銘じて承っておきます。ありがとうございました。(拍手)
   〔国務大臣愛知揆一君登壇、拍手〕
○国務大臣(愛知揆一君) 総理から非常に詳しく御答弁がございましたから、私から申し上げることはほとんどございませんが、今回のアメリカのとった措置についての法的根拠ということは、これは、アメリカ大統領の演説、それからアメリカ政府の国連安保理事会への報告によりますると、カンボジア内におる北越軍、ベトコンからの攻撃に対する自衛権の発動であり、国連憲章第五十一条というような見解に立っているようでございます。
 なお、先ほどもお話が出ましたけれども、カンボジア政府は、このアメリカのとりたる措置に対して是認し、かつ謝意を述べるような談話を発表しておりますことも御承知のとおりでございます。
 それから、ジャカルタ会議につきましては、先ほど羽生議員に私からも詳しく御説明をいたしましたが、この会議が、広く多くの国々に、招請国であるインドネシアから呼びかけられましたことも御承知のとおりでございます。そして、どういうことをここで相談し合い、どういうコンセンサスを出すか、そしてその上に立ってどういう行動に出るかということが実は大切なことであって、先ほど申し上げましたように、政府といたしましては、一つの政治ブロックを結成して、その上に立って一方的な意見をまとめるというようなかっこうでは、いわゆるジュネーブ精神に基づくようなカンボジアの中立、こういうことは期待できないのではないか、ここが大事なところである、こういうつもりで私も努力を大いにいたしたいと考えているわけでございまして、そういう意味合いにおきまして、私は超党派的にひとつ御協力いただきたいものである、かようにお願いをいたしたいくらいの気持ちでおる次第でございます。
 それからシン・バル議員の問題でございますが、これは、来日し、私を訪問されまして面会をいたしました。カンボジアの立場に立って援助を求められたわけでございますが、日本としては、軍事あるいは軍事にまぎらわしいような援助というものは全然問題にするわけにはまいりません。これはシン・バル議員もよく了解をいたしたと思います。ただいま総理からお話がございましたように、人道的な立場に立って、何かしかるべき方途があれば、これは検討に値するのではなかろうかと思いますけれども、まだ今後の検討にまつべき問題であろうと考えております。
 それから国際監視団の問題については、率直に申しますと、たいへん先回りをしたお尋ねのように思われるのでありまして、現に私が考えておりますのは、一九五四年に国際監視委員会ができたわけで、そして、これはカナダとポーランドとインドで構成されて、インドが議長国をつとめておりますが、こういうものが五四年にできておるのでありますから、この機能の復活ということができれば一番実際的である、こういうふうに考えておるわけでございまして、しかし、これからの関係国との相談、あるいは幸いにして一つのコンセンサスができましたような場合に、日本にどういうふうに求められるかということは、将来の問題でありますが、その場合におきましても、ただいま総理から明確にされたように、憲法あるいは現行の法令に従ってなすべき協力の限度というものは、日本としておのずから明確な限界があるべきもの、かように私は考えておる次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
○国務大臣(中曽根康弘君) 米軍基地の返還の問題でございますが、一昨年末の日米安保協議委員会におきまして協議された約五十の施設、区域の返還、共同使用、移転につきましては、その後、日米間において調整につとめました結果、今日まで二十八の施設、区域について返還等の合意を見ており、引き続き、積極的にその返還、移転、集約等につきまして努力をしていきたいと思います。
 なお、防衛上必要な施設につきましては、段階的にできるだけこれを自衛隊に移管し、必要に応じ米軍にも使用を認める方向で協議を進めたいと思っております。
 なお、地方自治体のあと地利用の問題でございますが、米軍基地は、政府としては、米軍施設の使用状況等から見まして、地元機関の要望に沿って、返還することが適当と認められる施設につきましては、極力その実現に努力もしており、今後も努力を続けてまいりたいと思います。そうして、あと地利用につきましても、これを極力、ただいまの御趣旨に沿うように努力していきたいと思います。また、地元に返還されるものにつきましては、公共的利用に供することが適当と思い、そのように処理していきたいと思っております。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(重宗雄三君) 向井長年君。
   〔向井長年君登壇、拍手〕
   〔議長退席、副議長着席〕
○向井長年君 私は、民社党を代表して、急激な変化に対応する外交問題に関し、政府に対し緊急質問をいたすものであります。
 その第一点は、日米安保条約の再検討についてでございます。御承知のとおり、この六月で日米安保条約は十年の固定期間を終了いたすのでございまして、この段階で政府・自民党が条約を自動継続し、その再検討を回避せんとしていることは安易な態度であり、まことに遺憾であるのでございます。しかしながら、わが国を取り巻く国際情勢の推移は、わが国の安全保障体制の再検討問題を七〇年代にかけてますます避けがたいものとなりつつあります。すなわち、それはアメリカのグアム・ドクトリンと遠隔駐留方式の提唱であり、また、NATOの変容に象徴される東西の同盟関係の再検討等でございます。しかも、先月末アメリカで開催された七〇年代のアメリカ極東政策に関する日米専門家による討論会においても、米側代表はいずれも、現在の安保体制は変わる。変わる以上は、日本はこれをどのように変えようとしているのかとの認識に立っていたと伝えられておるのであります。政府は、このような国際情勢、特にアメリカの世界政策の転換をどのように評価し、分析しているのか、まずお伺いをしたいのであります。こうした国際情勢の急激な変化の中で、政府・自民党が昨秋の日米共同声明で、日本領土外への発進事前協議におけるところの日本側のいわゆる拒否権の不明確さ、日米安保条約の機能拡大、強化を約束したことは、こうした国際情勢の推移に全く逆行し、ひとり冷戦時代の感覚に立つものであると言わなければならないのであります。あえてこのような立場に立たんとする政府の見解を伺いたいのであります。われわれは、こうした国際情勢の変動の中にあって、いまこそ日米安保条約を根本的に再検討し、占領時代からの遺物を清算するため、この際、安保条約を国民の要望するところに従い、将来は国連集団安全保障体制の確立を目標に、米軍の常時駐留の排除と基地の原則的撤廃をはかるべきであると確信いたしますが、政府の見解を再びお聞きをいたしたいのであります。
 質問の第二点は、日中問題についてであります。さきの日中覚書貿易交渉の妥結によって、日中をつなぐパイプが継続したことは喜ばしいことでありますが、しかし、日中共同コミュニケをめぐるその後の日中両国政府の対立はまことに遺憾と言わねばなりません。自民党の党声明、総理の内政不干渉発言、そして新華社の反論などの一連の事態は、米中接近など、最近の国際的な対中国関係の緩和ムードに逆行するものであり、むしろこれによって日中関係は最悪の事態にまで落ち込んでいくと言わなければなりません。政府は、このような売りことばに買いことばとも言うべき事態を展開すること自体をどのように評価され、またその責任をどのように考えているのか、お伺いをいたしたいのであります。われわれは、日中関係の正常化にあたっては、単なる口先だけの友好でなく、具体的な行動を伴うことが必要であるとともに、日本側の一貫した対中国姿勢を明らかにすることが不可欠であると確信いたします。われわれは、そのための基本姿勢として、まず第一に、台湾政府が中国を代表しているというフィクションを排し、北京政府を中国の代表としてはっきり認めることでなければならぬのであります。第二に、この見地に立って中国の国連参加の実現につとめること。第三に、台湾問題は、単に中国の内政問題のみならず、国際問題でもある現状からして、国連の場を通じてその解決をはかることの基本原則を明らかにすべきであると考えますが、政府の中国に対する基本姿勢を伺いたいのであります。
 さきの日中覚書交渉においても、またそれに基づく日中両国政府の対立においても、最大の問題となったのが、いわゆる日本の軍国主義の復活についての評価であります。また、米下院外交委員会のメンバーによるアジア視察報告において、「日本は新しい軍国主義に向かって進んでいる」との報告がなされたことは周知のとおりであります。このようなわが国に対する警戒、不信感は、このような例に限られず、いまや海外の至るところで見、そして聞かれるのが、偽らざる現実となっているのであります。それというのも、わが国の経済力が飛躍的に上昇する中で、わが国がその強大化する国力を一体何に使わんとしているのか、諸外国が重大な関心を抱いているからであります。こうした中で、本年度の防衛予算の急上昇、中曽根防衛庁長官による原子力潜水艦保有論、あるいは最近、津元首相が韓国で明らかにしたという憲法改正論、さらにはアジア諸国への資本輸出を重点とする無秩序な経済進出等が渦巻いているわけであります。われわれはもちろん、現在わが国が軍国主義におちいっているなどとは考えておりません。しかしながら、また、軍事大国への危険性は全くないと断言できないのも事実であります。われわれは、このような危険性、さらには海外の対日警戒、なお不信を払拭するため、政府は単なることばでなく、具体的な行動あるいは政策、たとえば自主防衛の限界を明示すること、アジア進出のルールを確立すること等を示すべきであると考えますが、政府の見解を伺いたいのであります。
 質問の第三点は、最近のカンボジア、ベトナム情勢についてであります。われわれはかねてからベトナム戦争のすみやかな終結をこいねがい、ニクソン大統領の戦闘縮小の努力を支持してきましたが、最近のカンボジア政変以来の事態の悪化に伴う今回のニクソン大統領によるカンボジアへの米軍の直接介入の決定を深く遺憾とするものであります。このことは、いまやアメリカ国内をはじめとする世界の世論となっていることは周知のとおりであります。このような圧倒的な世論の結果、ニクソン大統領も当初の方針を変更し、その軍事介入を制限せざるを得なくなったのは事実であります。しかるに、わが国政府は、アメリカの軍事介入もやむなしとする態度をいち早く明らかにしたが、その後の国際世論に照してみても、政府の態度は明らかに軽率であり、国民の意思に反した行為と言わなければなりません。総理、外務大臣は現在これに対していかなる態度をとらんとされるのか、特にただしておきたいところであります。政府は、これをもってしてもその方針がいまもって正しいと考えているならば、これこそまさにアメリカ追従でなくて何でありましょう。このようなベトナムをめぐる情勢の悪化はわが国にとっても決して無関係ではありません。特に、日米共同声明によって沖繩返還はベトナム情勢と密接に関係づけられております。すなわち、七二年までにベトナム戦争が終結されていないときは、日本と再協議すると定められているのでありますが、このような日米共同声明の趣旨からして、七二年沖繩返還にどのような影響をもたらすと考えるか、政府の信ずるところをお伺いいたします。
 最後に、今回のアメリカのカンボジア軍事介入に対し、政府みずからがアジアの平和確保に積極的な姿勢と努力を払うとともに、アメリカ政府に対しても猛省を促すことが緊要と思うのであります。私はこの際、政府が今後とるべき指針を提案いたしたいと存ずるのであります。カンボジア国家も北ベトナムの動向もきわめて微妙でございます。たてまえと現実は異なっていると思うのであります。現に両国の政治指導力は変化しつつあります。したがって、この際、米国に反省を促すと同時に、ソ連とも話し合い、ジュネーブ協定の線に従って、和平と民族経済復興に協力することが、今日ただいま日本のとるべき措置ではないかと確信いたします。私は、ただ口だけの協力ではなくて、具体的な行動を起こさなければならぬ時期が参っておると思うのであります。政府にこれに対しての所信を披瀝していただきまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
○国務大臣(佐藤榮作君) 向井君にお答えいたします。
 向井君は、いわゆるグアム・ドクトリンなどに象徴されるアメリカの世界政策の転換によりわが国を取り巻く国際環境が大きく変わっているとの御意見でありますが、私は、グアム・ドクトリンによってアメリカの対アジア政策の基本が変わったとは見ておりません。昨年の十一月に、私自身がニクソン大統領と話し合って、そうして私自身が感得したのがただいまのような結論であります。いろいろの学者その他が、また政治評論家などがいろいろ批判をいたしておりますが、そういう意見にあまり迷わされないことが望ましいのではないかと思います。ニクソン大統領は、グアムにおける声明の中で、アジアの安全保障について、既存の条約上のコミットメントを守るのはもちろんのこと、今後も引き続き太平洋国家として、アジアの平和と安全に大きな関心を抱き続ける、そのことをはっきり述べておりますが、したがって、私は、グアム・ドクトリンが米軍の遠隔駐留方式とか、あるいは米軍のアジアからの全面撤退とかにつながるとの向井君の見方はいかがかと思います。わが国をめぐる国際情勢は確かに流動的ではありますが、日米安保条約の再検討を必要とするような国際情勢の基本的な変化が、現在あるいはきわめて近い将来起こるとは考えられません。したがって、現行の日米安保条約を改定する意向は持っていないことをはっきり申し上げておきます。
 次に、昨秋の私とニクソン大統領との共同声明によって日米安保条約の機能が拡大されたとの御指摘がありましたが、そのようなことは絶対にございません。この点では、先ほども羽生君にお答えしたとおり、安保条約条文自身に何らの変わりのないことでもおわかりだろうと思います。この点につきまして、従来とも、衆参両院の予算委員会あるいは本会議で再三再四申し上げたとおりであり、誤解のないように願います。
 また、昨日、衆議院の曽祢君にもお答えいたしましたが、米軍がわが国の自主的な防衛力の足らざるところを補完するという機能を果たすため、その必要とする施設、区域をわが国が提供することは当然であります。民社党の主張である米軍の常時駐留の廃止、あるいは基地の原則的撤廃ということでは、現下の国際情勢のもとにおいてわが国の安全を確保することはできないと思います。繰り返し申し上げますが、私は現行条約をただいま改定する意向を持っておらないことをはっきり申し上げておきます。そうして、この種の問題についてあまり先走った議論を展開されることはいかがかと思いますので、私自身は注意をいたします。
 次に、中国問題についてお答えをいたします。今回の日中覚書貿易交渉の共同コミュニケを見て、国民の大部分の方々は、中国側の日本の実情に対する理解、認識にかなりの誤りがあることに驚いたことと私は思います。現在の中国大陸はきわめて閉鎖的であり、われわれがその実情を知る手がかりが少ないのと同時に、中国側もまた日本の実情に対しての理解が著しく不足しているように感じます。中国側の態度が、ためにするものにせよ、あるいは基本的な認識の誤りによるものにせよ、われわれは平和憲法のもと、自由を守り、平和に徹し、すべての国と仲よくするというわが国の基本的理念を、忍耐強く中国に理解せしめる努力を今後とも続けなければならないと痛感しております。向井君は、日本の一貫した対中国姿勢を明らかにするため、北京政府を中国の代表と認めよ云々と述べられました。およそ国際関係におきまして、また個人の場合も同様でありますが、信義を守ることがいかに大切であるかは申すまでもありません。わが国は中華民国との間に正式な国交を結んでおり、両国間の友好関係はあくまで尊重してまいります。しかし、国民政府の支配が中国大陸に及んでおらず、大陸におきましては北京政府が存在することも動かしがたい事実であります。私は北京政府が、その対外関係におきまして、より協調的、かつ建設的な態度をとることを期待するものであり、一日も早く国際社会の一員として迎えられる日の来ることを期待いたします。わが国における軍国主義の復活という非難ほど的はずれな議論はないことは、あらためて申し上げるまでもないと思います。したがいまして、多くは申し上げません。
 すでにお答えしたように、カンボジア問題に関しては、わが国としては、戦火が拡大していることはまことに遺憾と考えておりますが、問題の根源は、北越、ベトコンのカンボジア領内への不法侵入、不法占拠にあるのであります。いずれにせよ、政府としては、このような事態が一日も早く収拾され、カンボジアに平和が訪れることを強く希望いたします。
 また、昨年十一月の日米共同声明による一九七二年中の沖繩返還の大綱が、かかるカンボジアをめぐるインドシナ情勢によって影響を受けるものでないことは、すでに再三申し述べたとおりであります。
 最後に、今回開かれるジャカルタ会議を含めて、わが国が積極的にどういうような態度でこれに臨むか、また、そういう意味で、この機会こそアメリカの猛者を求める絶好の機会ではないか、そうしてソ連とも話し合って、和平への積極的な協力をしろ、こういう御意見を述べられ、提案にもひとしいように私は感得いたしたのであります。これらは今後の私どもの政府のとるべき問題といたしまして十分伺っておくことにいたします。(拍手)
   〔国務大臣愛知揆一君登壇、拍手〕
○国務大臣(愛知揆一君) 総理からお答えがございましたから、簡単に申し上げますが、今回のこのアメリカ大統領の演説にこういうことが明らかにされております。ベトナム戦争をすみやかに終結することは大多数のアメリカ国民の願望である、この目的を達成するために、こうこうこういうことをやらざるを得なかった。これが私は注目してよろしいところではないかと考えるわけでございまして、アメリカ国民のみならず、これは全世界の人たちが願望するところではないかと思います。その願望を達成するために日本としてなすべきことがあれば、大いに努力を新たにするのが日本外交の役割りではなかろうか。特にカンボジアにおきましては、現在非常に緊急の事態であります。その間に処しまして、先ほど来申しておりますような気持ちでまずこの会議に臨む、場合によれば、これを第一歩といたしまして、さらに幅広い呼びかけをするということを展開するのが日本の立場ではなかろうかと思うわけでございます。本日は冒頭に羽生委員から、一体こういう問題に対して、政府は何をしてきたかという詰問的な御質問を受けましたが、われわれとしては、東京におりましても一生懸命やっておるつもりでございますけれども、場合によれば、これをやはり行動の上にもあらわして、その努力を展開するということ、これをむしろおすすめいただいたようにも感ずるわけでございます。
 先ほど申しましたように、どうか、こういう気持ちでやってまいりたいと思いますから、超党派的な御支援、御協力をお願いいたしたいと存じます。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
○国務大臣(中曽根康弘君) 先ほどの羽生議員の御質問に対する答弁の中で、空軍、海軍ということばを使いましたが、これは航空自衛隊、海上自衛隊に訂正さしていただきます。以後注意をいたします。
 次に、向井議員の御質問の中で、自衛力の限界について御質問がございましたが、この点は先ほど羽生議員にお答えしたとおりでございます。特に注意いたしますことは、文民統制を徹底させて、国民代表である国会、国会に責任を持つ政府のもとに防衛問題を完全に掌握しておくということが必要であると思っております。
 なお、周辺の諸国の反応等も慎重に考慮する必要があると感じております。そして、国民生活の発展を阻害しないように、慎重に進めてまいりたいと思います。(拍手)
     ―――――・―――――
○副議長(安井謙君) 日程第一、国務大臣の報告に関する件(中小企業基本法に基づく昭和四十四年度年次報告及び昭和四十五年度中小企業施策について)。
 通商産業大臣から発言を求められております。発言を許します。宮澤通商産業大臣。
   〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
○国務大臣(宮澤喜一君) 中小企業基本法第八条に基づきまして、先般、政府が国会に提出いたしました「昭和四十四年度中小企業の動向に関する年次報告」及び「昭和四十五年度において講じようとする中小企業施策」の概要を御説明申し上げます。
 昭和四十三年から昭和四十四年にかけて、わが国経済は拡大基調を続けました。このため、四十四年の中小企業の事業活動もほぼ好調に推移し、資金繰りにも大きな逼迫感は見られず、収益も概して好調であり、倒産件数も四十三年と比べますとかなり減少いたしました。しかしながら、近年改善されてきておりますが、中小企業の生産性や技術水準における大企業との間の格差は依然として大きく、また労働力不足の進行、あるいは発展途上国の追い上げや、資本自由化の進展など、中小企業をめぐる最近の経済環境の変化は、これまで生産性の低さを低賃金で補うというような経営形態をとってきた中小企業に対しては、きわめてきびしい影響を及ぼしております。
 他面、産業の高加工度化に応じて部品点数や加工工程がますます増加し、また、所得水準の向上に伴って高級品や個性のある商品に対する需要が増大するなど、中小企業に適した新しい分野が次々と展開されてきており、この意味において、中小企業は今後ともわが国経済の中で重要な役割りを果たしていくことが期待されております。このような環境変化の中にあって、中小企業が発展していくためには、技術水準の向上、設備の近代化、製品の高級化、事業の共同化などを進めて生産性を向上させる必要がございます。特に機械関連産業では、下請企業の技術水準の向上や設備の近代化を、親企業の協力を得て進めるとともに、消費財産業では商品企画力の充実が重要になっております。また、中小商業においては、地域構造の変化に対応して近代化を進めることが要請されております。
 このため政府といたしましても、中小企業基本法の精神にのっとり、中小企業者の自主的努力を助長するとともに、事業環境の整備をはかることが責務であると考え、中小企業施策を最重点政策の一つとして取り上げております。
 四十四年度におきましては、中小企業振興事業団の高度化資金を大幅に拡大するとともに、新たに構造改善制度を設け、業種別の体質改善を強力かつ総合的に促進することといたしました。このほか設備、技術、経営、労働等各般にわたる施策を拡充いたしました。その際、経営基盤の弱い小規模企業の体質の改善については特にきめこまかい配慮を払っております。
 さらに四十五年度におきましては、内外のきびしい環境変化を乗り越えていくため、中小企業の一そうの近代化、体質の改善をはかることとし、あらまし次のような施策を推進していくこととしております。
 まず第一に、中小企業振興事業団の融資事業を大幅に拡充し、中小企業の共同化、集団化を進めることとしております。その際、特に中小企業者からの要望の多い工業団地、商業団地、共同施設等について強力な助成をはかってまいるとともに、繊維工業の構造改善に必要な資金についても特段の配慮を払っております。
 第二に、国際競争力を強化するため緊急に対策を講じる必要のある業種について構造改善を鋭意促進するため、税制面、金融面、指導面等から一そうの助成を行なうこととしております。
 第三に、近代化のおくれが著しく、きびしい環境変化にさらされている下請中小企業については、下請中小企業振興法を制定し、その近代化を促進するとともに、下請企業の受注あっせん体制の強化をはかることとしております。また、取引についても、引き続きその適正化につとめてまいります。
 第四に、中小企業者の近代化投資に必要な資金の円滑な供給を確保するため、政府関係中小企業三機関に対し財政資金を大幅に投入し、貸し付け規模の拡大をはかる一方、信用補完制度を充実して民間資金による中小企業向け融資の増加につとめる所存でございます。
 第五に、小規模企業対策につきましては、特に経営改善普及事業を充実するとともに、設備の近代化と金融の円滑化にも特段の配慮を払っております。また、地方税における事業主控除の引き上げ等により、税負担の軽減をはかることといたしております。
 第六に、中小企業の経営管理の合理化と技術水準の向上をはかるため、診断指導事業を充実するとともに、中小企業者の技術開発に対する助成、公設試験研究機関による技術開発等の施策の拡充強化をはかることとしております。また、中小企業における労働力の確保と、その資質の向上、従業員の福祉の増進等のための施策を推進することとしております。
 第七に、流通部門につきましては、中小企業振興事業団による助成を強化するとともに、中小企業金融公庫及び国民金融公庫の特別貸付制度を拡充する等の措置を講じ、その近代化を進める所存でございます。
 以上が「昭和四十四年度中小企業の動向に関する年次報告」及び「昭和四十五年度において講じようとする中小企業施策」の概要でございます。(拍手)
○副議長(安井謙君) ただいまの報告に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。竹田現照君。
   〔竹田現照君登壇、拍手〕
○竹田現照君 私は、日本社会党を代表して、ただいま報告になりました昭和四十四年度中小企業白書について、総理並びに関係大臣に質問をいたします。
 今回の白書は、昨年のそれを受けて中小企業の明るい面が強調されています。昨年の白書が、先進国にも中小企業は存在し、先進国型中小企業をつくっていると述べたのに対し、今年度は「中小企業の存立分野の新展開」と題して、機械関連、消費財生産、流通の各面で中小企業が新しい分野を開拓しつつある現状を分析しております。これら新しい分野で成功し、発展していく企業は心配ないとしても、その陰には没落し、消滅していく企業もあるはずであり、新しい分野の発展のために侵食され、衰退していく部門もあるはずであります。全体として中小企業の地位は低下しないにしても、その中では栄枯盛衰が激しいのであり、その暗い反面を見過ごしているきらいがあるのではないかと思います。
 次には、業種的に政策がとらえられ、関連的に政策が考えられていないようであります。中小企業を考える場合、大企業との関連は考えるにしても、流通面や、他の中小企業との関連がおろそかにされている感が強いのであります。繊維業を考える場合、繊維機械製造業を忘れ、自動車部品下請を考える場合に、親企業の産業体制を忘れ、食料品工業を考える場合に、農産物過保護政策の存在を忘れるごときであります。中小企業政策が中小企業だけを考えても、それが他の政策との斉合性を欠く場合は効果は薄くなります。ここに白書の欠陥を感ずるとともに、中小企業対策の実効性の貧弱を感ずるのでありますが、この点についてまず総理の御所見を承りたいのであります。
 次に、金融に関する点についてお尋ねいたします。四十四年度は、中小企業向け貸し出しが比較的順調に伸びたとして、講じたる施策の中でも対前年度一七・五%の増加資金を投入したと述べています。これは、大体、四十三年八月に公定歩合の引き下げがあり、四十四年九月に今回の引き締めが行なわれたために、中小金融にとっては、比較的順調な年であったといわねばなりません。昨年秋からの引き締めは、中小企業にまで浸透しなかった時期を見ているわけであります。ところが、今回の引き締めも、ようやく大企業から中小企業にまで影響を持つようになり、四十五年度を展望すると、さらにそれが強くなってきております。日本経済新聞によりますと、引き締めの影響が、大企業を中心とする資金繰り難が支払い条件の悪化という形で各地の下請、中小企業にはね返ってきており、比較的余裕のあった地方中小企業金融機関や、農協系金融機関の手持ち資金も、相次ぐ資金需要で底を見せ始めたということであります。中小企業は資金繰りに窮して、またもや黒字倒産が増加しそうになってきておりますが、政府は何か特別融通措置をとるつもりがあるのか、また、中小企業金融の姿は歩積み両建てなど拘束性預金が多いのでありますが、これらの解消のため必要な措置をとるべきだと思いますが、大蔵大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
 次に、政府は、これまで中小企業の重点項目として構造改善及び高度化事業の推進をはかってまりいましたが、その効果なり問題点について白書はほおかぶりをしております。講じた施策は、ただ講じた事実を示すだけで、効果については関係ないといえばそれまでであります。しかし、昭和四十年度白書では、工場集団化と小売り商業店舗共同化を、四十一年度に工場集団化を、四十二年度に近促法による業種別近代化を、それぞれ取り上げて、若干の効果分析をしておりますが、四十三年度及び四十四年度は構造改善や高度化について全く触れるところがありません。このことについて具体的に説明しないのは、実は、それが説明できるだけの効果があがらず、問題点が多過ぎるからではないのか。また、意図したような技術革新は行なわれず、スクラップした機械化がそのまま新規参入者に用いられていたり、小規模事業者が増加して規模の適正化が進展していないのではないのか。白書で示さなかった構革事業の効果と問題について、この際具体的に御説明をしてほしいのであります。
 次に、政府は、今国会に下請振興法案を提出しております。これはいわば近促法の下請関連業種における親子ぐるみの近代化をはかることにねらいがあります。この近代化対策のほかに、協同組合法に基づく協約や、下請代金法に基づく不公正取引の規制のごとき、いわゆる環境整備に関する政策があるから、これで有機的総合的に運用される限り、下請振興法要綱にいうところの独立専門メーカーへの道は可能と考えられるかもしれませんが、しかし、下請関係の諸制度が総合的に運用されることは必ずしも容易なものではないことは、事実がこれを示しています。白書も、下請の独立化ないし専門化が望ましいと述べていますが、現実には親企業の合併寡占化が急速に進展している今日、下請の隷属化は必然ではないでしょうか。すでに新日本製鉄が四月から発足しています。下請を最も多く利用している自動車工業でも、政府は、常に二社ないし少数有力企業の育成を進めています。寡占大企業のもとに、中小下請業が独立的形態を持ち得るものかどうか。親子ぐるみ近代化の看板のもとで、中小企業を親のえじきとする囲いをつくることに専念するのではないのか。中小企業隷属化促進のための下請振興法に終わることなきやいなや。総理のお考えのほどを承りたいのであります。
 次に、政府は、流通近代化政策、中小商業対策についておそまきながら各種の措置を講じつつありますが、これまで明らかにされた流通近代化政策並びに物価対策と、他方、中小商業対策との関係は必ずしも明らかではありません。白書は、中小小売り業の分野が、最近、著しく百貨店等の大規模商業、特にスーパーの進出によって蚕食されていることを明らかにしています。これら百貨店や、スーパー対策についての基本的な考え方、百貨店法の運用方針や基準についてどのように考えておられるのか。また、経済企画庁は、物価対策の具体的内容として、大型小売り店の育成、競争条件の整備、すなわち団体法によるカルテル制限、事業許可制の再検討を打ち出しておりますが、これをどのように考えておられるのか。大型店によって蚕食されている中小商業をそのままにして、大企業を育成し、中小商業は滅びるままにまかせようとするのか。チェーンによる組織化、商店街の育成等々を考えておられるようでありますが、それだけで膨大な中小小売り商が摩擦なしに、再組織に乗り得るかどうか、すこぶる疑問であります。小売り店の多くは、現在、その将来について大きな不安を感じています。これらの問題に対して、どのような指針を与えようとするのか、通産大臣にお答えいただきたいと思います。
 次に、情報化についてであります。ある新聞に、白書を評して「ものたりない分析」といっています。その末尾に、第三部、講じた施策は、「こんな施策があったのか」と初めて知らされることが多いと述べ、これは施策の普及が不足しているものだと嘆いています。いまや情報化の時代であります。経営管理あるいは生産管理の面において、情報の収集や、処理技術をいかに活用するかは企業の盛衰にかかわる重大な問題となっていますが、白書では「積極的に情報化に取組んでいくことが肝要である」と述べているだけで、具体的な対策について何も触れていません。中小企業の情報化を促進するために、政府は、たとえば中小企業向け経営情報を提供して、経営者の判断と決断を誤らせないようにするとか、プログラムの開発、あるいは共同処理センターの設置を行なうとかの具体的な方針について、どのようにお考えになっているのかお示しをいただきます。
 最後に、労働力の問題でありますが、労働力不足が中小企業の将来に大きな不安を与えていることは、白書にも明らかにされています。それでは、それにどう対処すればよいのか、これが問題であります。たとえば省力化をはかること、パートタイマー、または中高年齢者の利用、あるいはけさの新聞に報ぜられているように、インドなど発展途上国の労働力を活用するなど、それなりに考えられておりますが、また問題もあります。つまるところ、賃金、待遇を上げて、中小企業に労働者を吸収する方策が選ばれることになりますが、大企業に対抗してこれに対処していくには、どうしても経営を改善していくことが必要となります。しかし、労働者が集まらない状態では、経営を改善しようにも、経営の継続すらおぼつかないことになります。もしここで中小企業に労働者を確保しようとすれば、待遇を平準化するための政策を実施しなければなりません。白書はいろいろと指摘しておりますが、直ちに中小企業の労働力不足の解消になるとは考えられません。政府は、この問題について、きめこまかく問題に即した正しい方向を助言し、必要な援助を与えることが肝要と考えますが、労働大臣の御所見を承ります。
 ともあれ、年々白書が出され、総理以下出席されて、ここで中小企業対策について論じ、かつ考えるということは、決して無意義なことではありませんが、総理も、平生は中小企業のことなど念頭を離れておられるので、ここではメモを頼りにでも、一応中小企業のことを考えておるのだと装わねばならないということに白書の最も大きな意義を見出すということにならないように、積極的な施策を推し進められることを希望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
○国務大臣(佐藤榮作君) お答えをいたします。
 まず、白書は中小企業の明るい面のみを強調しているとの御批判でありましたが、政府といたしましては、労働力不足の進行や国際化の進展等、中小企業をめぐるきびしい経済環境につきましても指摘し、かつ、その対応策につきましても明確にしたつもりであります。中小企業の直面するきびしい試練も、企業自身の自覚と努力によって初めて乗り切れるものであり、決して手放しで楽観論を展開しているものではありません。
 次に、下請中小企業振興法案は、下請という特殊性から、親企業の協力が当然必要なことと考えておりますが、そのねらいはあくまでも下請中小企業が自主的に事業を運営し、かつ、その能力を最も有効に発揮することができるようにすることにあるものであり、決して大企業への隷属化を意図したものではありません。私はかような意味合いにおきまして、十分今後とも必要なる援助指導をきめこまかくやっていくつもりであります。
 最後に、白書の指摘にとどまらず、よりきめこまかい助言と必要な援助をという発言でありましたが、特にただいまは情報化時代である、そういう際であるだけにこういうことが必要だという御指摘でありましたが、政府といたしましても十分その心組みをもちまして対処してまいる決意でありますので、今後とも御鞭撻のほどをお願いをいたします。
 私からのお答えは以上でございますが、その他の問題につきましては、それぞれ所管大臣からお答えをすることにいたします。(拍手)
   〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕
○国務大臣(福田赳夫君) まず第一に、引き締め下で中小企業金融に注意せいというお話であります。引き締めがようやく浸透してきたというお話でございますが、そのとおりに考えております。そういう際に中小金融をどうするか、これはまあ非常に注意をしなけりゃならぬ問題である。そういうことで、御指摘のように金融機関を督励いたしまして、しわ寄せが中小企業にいかないように特に注意していきたいと、かように考えております。
 それから、歩積み、両建てです。これは三十九年以来、整理をしております。大体整理ができたと、こういうふうに思っておりますが、引き締め時におきましては、またこれが頭をもたげる傾向がありますので、いま特にこの点につきましては注意をいたしまして、関係官庁でこれを督励いたしまして、これがまた頭をもたげるようなことがないように注意をいたしておる最中であります。
 以上であります。(拍手)
   〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
○国務大臣(宮澤喜一君) 広い範囲にわたってのお尋ねでございましたが、まず構造改善、高度化、近代化等につきましては、実はさきの白書で何度か叙述をいたしましたので、今回は詳しく述べておりませんが、その効果いかんというお尋ねでございました。近代化促進法と中小企業振興事業団によりまして近代化をずっと進めてまいりました。現在まで百二十業種を近代化に指定をいたしまして、千二百億円ほどの融資をしております。そのほかに割り増し償却がございますわけで、これは非常に歓迎をされておるように考えておりますし、かなり近代化が進んでまいりました。
 それから構造改善につきましては、昨年、近代化促進法の改正をお願い申し上げました結果、昨年度に八つ指定をいたしました。今年度は十ぐらいと考えておりますが、これも非常に希望され、また私どもの計画どおりに大体進んでおるように思っております。
 高度化のほうは、例の工場団地、商業団地等が中心でございますが、今日まで工場団地の指定が百三十、商業団地が六十といったところで、これは最近非常に希望がございますので、これらの点についての問題点と申しますと、もう少し予算の規模を大きくして希望に応じてあげたいといったような実は問題意識を持っておるわけでございます。
 それから下請の振興法案についてお尋ねがございましたが、これは私どもの考えでは、相当すぐれた下請というものは、従来、親企業がまるがかえにしようと考えておった場合が多うございましたが、このごろは、むしろそういう下請企業は専門メーカーになって、なるべく多くのところから注文を取ってもらったほうが生産の規模が大きくなり、コストが下がる、こういうふうに考えられるようになりましたので、そこで、この振興法案では、一応親企業との関連で育成をはかりたいと思いますが、ねらうところは、その結果独立をしてもらいたいという、こういう考え方に立っておりますことを申し上げたいと思います。
 それから百貨店と中小企業、あるいは物価対策との関連でございますけれども、私ども物価対策というのは、中小企業者も含めて全国民的な問題でありますから、やはり前向きに取り組まなければならないと思います。片方で中小企業の流通を近代化しなければならない、そのためのまた資金も出しておるわけでございますけれども、百貨店とかスーパーというものが、消費者の利益になっておることも、また間違いございません。その間の接点を行政上さがすということになるわけでございまして、私どもとしては中小企業の流通の近代化を助けて、他方で百貨店等の増設につきましては、たとえば地方の商工会議所の意見を聞いて調整をはかるということをいたしておりますが、そういう場で中小企業の声を反映してもらうように考えておるわけでございます。いわゆるカルテルにつきましては、安定事業と称するカルテルがマンネリズムになりませんように、実のあがらないものはもう廃止してしまう、なるべくまた数も減らしていくという方向で検討いたしませんと、物価対策に資するゆえんでございません。そういうふうにいたしたいと思っております。
 それから最後に情報の問題でございますが、確かに施策が十分に、ことに小企業には理解してもらえない点がございます。それはやはり経営指導であるとか、企業の診断であるとか、あるいは地方の商工会の活用であるとかいうことで、よく施策をわかってもらい、利用してもらうという努力がもう一つ必要だということは痛感しております。それから、別の意味での情報プログラム等に関係のあります情報につきましては、いわゆる地方の計算センター、これには事業団から融資をいたしておりますし、また、今後中小企業のためのプログラムというものを私どもやはりつくっていく必要がある、これは御指摘の点に同感でございます。(拍手)
   〔国務大臣野原正勝君登壇、拍手〕
○国務大臣(野原正勝君) 中小企業の労働力不足に対して、きめこまかな対策を講じよという御指摘でございます。まことに御同感でございます。いままでもかなりいろんな対策を講じてまいったんでありますけれども、十分だとは申し得ないわけでございます。中小企業におきましては、労働力の受け入れにつきまして多少おくれている面があるという点から、適正な求人条件についての指導、あるいは住宅福祉施設の設置等、雇用促進融資の制度を活用をしております。移転就職者に対する雇用促進住宅の貸与等の措置も行なっておるわけでございます。また、職場への定着性を高めるために、年少就職者相談員制度を設け、各種の指導、助言をしておりますし、勤労者総合福祉センターや勤労青少年ホーム等の建設も行なっておるわけでございます。さらに片寄った求人態度を改めまして、給源の転換をはかることが必要であるという点で、専門的なあるいは管理的職種については、人材銀行の活用をはかりたい、あるいは家庭婦人の雇用促進のために、女子のパートタイマーに対する指導、相談等を行なっておるわけでございます。今後とも一そうきめこまかい助言、援助を与えるために努力いたしたいと考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(安井謙君) 矢追秀彦君。
   〔矢追秀彦君登壇、拍手〕
○矢追秀彦君 私は、公明党を代表して、ただいま報告のありました昭和四十四年度中小企業白書について、物価安定、情報化社会、労働力、公害防止の観点から、総理並びに関係大臣に若干の質問を行なうものであります。
 まず第一に、物価の安定と中小企業政策についてであります。
 総理は、施政方針演説の中で、「政府は経済成長を適切に保ちつつ競争条件を整備し、中小企業、流通部門の近代化をはじめとして積極的な生産性向上施策を進めてまいります。」と述べ、さらに政府は、先日発表された新経済社会発展計画の中で、第一は、「従来から実施されてきた構造政策をよりいっそう強力に推進し、労働力不足下にふさわしい国民経済の効率化をはかることである。とくに、農業、中小企業、流通部門など生産性上昇率が低く、各種の保護措置もあって、非能率な状態が残されている分野を中心として、産業の近代化、合理化を強力に進め、農産物や大衆的工業製品などの廉価にして豊富な供給体制をつくらなければならない。」と提言し、そして政府は、中小企業部門の高度化の必要に伴い、「これら生産段階における効率化が消費者物価の安定にむすびつくよう流通段階の効率化を進め、とくに産地直送方式を含めた流通の大量化などによって、労働力が過剰であった時代に成立したこれまでの流通経路を合理化し、取引に関する制度慣行を改め、また協同一貫輸送体制やコールドチェーン・システムの導入など物的流通の改善を行なう。」と、その方針を打ち出しております。しかしながら、現状においてますます物価は高騰し、国民の中には、政府の物価政策に対する不満はつのる一方であります。
 本年度予算編成における政府の態度も、いたずらに景気を刺激する超大型予算を組み、物価に対する配慮はほとんど見られないばかりか、ますます高度経済成長によるひずみが国民生活の中にひたひたと押し寄せ、これが大きく中小企業に種々の圧迫となってきていることは周知の事実であります。このたびの中小企業白書に見られる特徴は、機械関連産業、消費財産業、流通部門についてどのような分野が小回りのきく中小企業に適しているのか、そのための条件は何であるかを解明し、部門別に新環境への適応策を示唆した点については一応納得のいくものであります。
 しかしながら、中小企業政策の中で、さきに政府が強く主張している消費者の立場からの物価の安定という命題への配慮が欠けていたのではないかと思うものであります。すなわち、新経済社会発展計画と白書に見られる施策との一体化が実際に貫かれているのかどうか、政府のいう生産性向上が実現する前に、中小企業がその近代化のために必要な種々の負担がかえって物価の上昇を招く結果とはならないか、あくまでも、政府は、物価の安定という大目的に向かって、中小企業の健全な育成をはかりつつ国民生活を充実させる具体的な方策はあるのかどうか、この白書が絵にかいたもちに終わらない確信がおありかどうか、総理並びに通産大臣にお伺いしたいのであります。
 次に、物価の安価の面から重要な問題は、中小企業カルテルのことであります。卸、小売物価上昇の元凶は、農水産物と中小企業製品ともいわれております。さらに、中小企業団体法に基づく組合カルテルによる価格の維持が一役買っているともいわれております。中小企業製造業のカルテル数は、昨年末現在で五十八業種、三百四十七件に達しているのであります。このカルテルを政府は大幅に整理すると伝えられておりますが、もともと中小企業カルテルは、大企業が独占価格を高く維持し、大企業の独占力を取り締まる政府の力が弱いために、中小企業が自衛手段ともいうべきものとしてつくったものであり、大企業のカルテルを放任したまま、中小企業のみ整理することは不合理であるとの非難を免れないと思いますが、中小企業製品の価格を中小企業者に圧迫を与えないで調整する方策はないものか、これを政府はどのように考えているのか、カルテル整理の方策とあわせてお答え願いたい。
 第二は、情報化社会に適応した中小企業の方途についてであります。近年におけるところの知識、情報量の爆発的な増大とコンピューターの目ざましい発展は、情報処理の生成、発展を促し、これらを原動力として展開される情報革命の波は、わが国においても加速度的に全く新しい社会である情報化社会へと移行しつつあります。こうした情報化への進展の中で、わが国の中小企業が生き抜くことは、ますますきびしさを増すことでありましょう。この情報化社会に対応するため、白書は、消費財関連工業や商業においては、積極的に市場を開拓していくため、情報指向的になる必要があると指摘しているのであります。私は、白書で示している一部の産業に限らず、中小企業全般にわたって情報化への指向は重大な問題であると思うのであります。政府は、今後も情報化社会を迎えての中小企業対策にもっと積極的に取り組んでいくべきであると思うが、総理並びに通産大臣の所信を伺いたいのであります。
 一方、情報化社会を迎える七〇年代にとって、中小企業のたどる道はすこぶるきびしいことが予想されているのであります。すなわち、労働力不足による大幅賃金の上昇や技術革新の波及、さらに、情報化の促進に伴い中小企業の存立基盤そのものがゆらぎ始めているのであります。その上、発展途上国からは特恵関税の早期実施、先進国からは貿易、資本の自由化の促進を迫られるなど、内外の圧力にはさみ打ちを受けようとしており、中小企業はかつてない重大な転換点を迎えようとしているのであります。
 このような情勢の中で、七〇年代の中小企業にとって最も大切なことは、自助努力への指向と、その自助努力が実を結ぶための政府の助長をいかに施すかということであります。中小企業政策に魂が入るとも考えられている中小企業に対する自助努力の助長に対して、いかに総理は取り組んでいかれるつもりであるのか、所信を伺いたいのであります。
 第三に、労働力の不足の問題についてであります。労働力の不足については、新経済社会発展計画の答申を見ますと、昭和四十五年度から五十年度の年平均労働力人口増加率は一・一%であり、三十八年から四十三年度の年平均増加率一・六%を大幅に下回ることが予想されているのであります。このデータで見る限り、雇用面において、中小企業が、一般的に見て、大企業に比べて不利な立場に置かれることは事実であります。そのために、政府は、経営の合理化や設備の近代化をはかり、省力化に努力することの重要性を示しているのでありますが、中小企業にとっては、設備の近代化をはかることは資金的な制約があり、なかなか容易なことではないのであります。そこで、政府は、企業のグループ化や協業化、あるいは業界全体の構造改善などの方法をも考えられているのでありますが、労働力が豊富な時代は、労働時間の延長や低賃金によって中小企業の経営が維持できたのでありますが、今日ではそれが許されなくなってきているのであります。このような労働力の減少に伴う中小企業の圧迫に対して、労働大臣はいかなる対策を講じようとされているのか、所信を伺いたいのであります。
 最後に、公害防止の問題についてであります。公害防止については、白書では都市化の進展と過密公害の問題の顕在化について簡単に取り上げているのみであります。私は、ことに中小企業の公害防止問題について、もっと積極的に政府は重点施策として取り組むべきであると思うのであります。最近、都市化の進展により工場廃液や騒音問題が社会問題の一つとして大きくクローズアップされてきており、これらの解決を怠るようなことがあっては、中小企業にとって大きな存立の基盤を失うことにもなると思うのであります。政府は過密防止や公害防止のために工場団地づくりを前向きに進めておりますが、中小企業についてももっと深刻にこの問題を考え、積極的に取り組まなければならないと思うのであります。人命尊重の立場を守る上からも、ともすれば投資に大きな負担がかかるために、公害防止にはあまり力を入れられない中小企業をいかに指導し、また、財政的な面からいかなる助成をしていくべきであるのか、総理並びに通産大臣の所信を伺いたいのであります。
 以上をもちまして私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
○国務大臣(佐藤榮作君) お答えをいたします。
 物価の安定が国民生活の安定にとりまして大きな課題であることは申すまでもありませんが、中小企業者にとりましても深刻な問題であることは私もよく承知しております。私はその打開の基本が、やはり中小企業自体の体質の強化と団結にあるものと考えます。その意味におきまして、中小企業の構造改善そのものと、企業者の自助の努力が解決のかぎであると考えます。なお、申すまでもないことながら、今日の物価問題の基本は、一つには中小企業の生産性の低さに存在するものであり、かかる意味合いからも、中小企業の近代化は強く推進してまいらなければならない大きな政策課題であると、かように考えております。もちろん御指摘になりましたような組合カルテル大企業の独占価格と同様に組合カルテルなどは、これは適正なる指導をすること、これが必要だと、かように思っております。
 次に、中小企業が経営環境の激しい変化に適応し、その経営力を強化するためには、経営者が最新の情報を持つことがきわめて大切であり、このため中小企業者に対する情報サービス事業を強化するほか、中小企業が、経営活動の各方面において、コンピューターによる情報処理を進めていくための標準的なシステムの研究を行ない、その成果を広く中小企業に普及利用させることとしております。しかし、これからの問題であります。
 次に、中小企業の自助努力の指向についてお答えをしてみたいと思います。中小企業の直面しておる環境はまことにきびしく、かつ、その変化が激しいだけに、まず何よりも要請されるのは、企業自身の自助の努力であります。それは御指摘のとおりであります。私はむしろ政策の基本線は、立ち上がろうとする中小企業を経済合理性に沿って方向づけ、その自助努力が実を結ぶように助長することにあると考えております。白書の現状の分析と今後の方向づけは、その意味でも大いに役立つものと期待するものであります。
 労働力の問題は、労働大臣からお答えいたします。
 最後に、都市化の進展に伴い、中小企業の公害問題が無視できない重要な課題となってきていることは御指摘のとおりであります。特に、中小企業にとりましては、公害防止の課題は資金的にも技術的にも隘路があるものと考えられますので、四十五年度におきましては、新たに産業公害相談室を設けたほか、所要資金の確保をはかり、公害対策を積極的に進めた次第であります。
 以上お答えをいたします。(拍手)
   〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
○国務大臣(宮澤喜一君) 総理のお答えで大部分尽きておりますので、簡単に補足をさせていただきます。
 カルテルの問題でございますが、やはり、安定事業を長くやっておりますと、どうしても容易につくというようなことがございますので、私どもとしては、できるだけその数を減らしていきたい。また、更新のときの基準をできるだけ厳重にやってまいりたいという心がまえを持っております。これはやはり物価問題との関係がどうしてもございますので、少しそういうほうにウエートをかけた行政をやってまいりたいと思っておるわけでございます。
 それから情報化につきましては、中小企業振興事業団が中小企業のために情報をいろいろ収集しておりまして、それを都道府県の中小企業の総合指導所のほうへ流しております。これは御指摘のように、何といっても、付加価値の高い、あるいは個性に合った品物を中小企業がつくるということが、これが大切なところでございますので、情報というものはやはりそういう意味で欠かせないと私どもも考えております。
 それから電子計算機との関係では、地方の共同計算センターに事業団が融資をたしております。
 それから、なお、中小企業向けの標準になりますような情報処理システムというものも、これは国の、私どもの力で開発をして渡して差し上げたいというふうに、いま考えておるところでございます。
 それから公害につきましては、公害防止事業団の仕事がやはり基本でありますけれども、昨今は、公害防止のための工場の移転といったようなものにつきましては、中小企業金融公庫も融資をする、あるいは国民金融公庫の融資もございますし、これは何といっても中小企業には公害のところまでなかなか考え切れないところがございますから、なるべくそういう融資をつける方法で、公害防止に協力をしてもらいたいと、かように考えておるわけでございます。
 自助努力につきましては、先ほど総理がお答えになりましたので、省略をさしていただきます。(拍手)
   〔国務大臣野原正勝君登壇、拍手〕
○国務大臣(野原正勝君) お答えいたします。
 中小企業の人手不足対策に対処するためには、基本的には協業化、設備の近代化等を通じて、高い生産性を有する近代的中小企業への脱皮をはかることが必要であります。同時に、労働力対策の面でも、労働条件と労務管理の改善、福祉施設の充実等によりまして、中小企業の魅力ある職場づくりを積極的に援助し、これら企業に労働者が進んで就業できるようにして、定着ができるようにすることが肝要であると思います。
 このような観点に立って、労働省としましては、通産省の行なう中小企業対策と密接な連携のもとに、中小企業の雇用の促進をはかるとともに、労働者の福祉を向上するため、雇用促進住宅の建設、雇用促進融資制度の活用、各種の公的福祉施設の建設、中小企業退職金共済制度の拡充をはかり、労務管理の改善のためには、最低賃金制度、労働災害防止対策の推進等、労働条件の近代化、中小企業集団に対する指導、助成を強化し、さらに労働者の定着性を高めるため、新規学校卒業者に対する職業適性検査の拡充、年少就職者相談員制度の充実等の総合的な中小企業労働対策を講ずることとしておるわけでありまして、今後とも施策の拡充に一そう努力いたす考えでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(安井謙君) 田渕哲也君。
   〔田渕哲也君登壇、拍手〕
○田渕哲也君 私は、民社党を代表して、四十四年度中小企業白書について質問いたします。
 わが国経済の中で、中小企業が果たす役割りの重要性は、いまさら云々するまでもありません。また、将来にわたり、中小企業がその創意と自主性と機動性を十分に発揮して、わが国経済の活力の根源となることも決して不可能ではないと存じます。しかし、現在の激しく変動しつつある情勢に対応し、将来にわたってその存立の基盤を固めていくためには、白書も指摘しているとおり、第一には、設備や管理の近代化による生産性の向上、第二には、技術開発力の強化、第三には、優秀な労働力の確保と働きがいのある職場づくり等々が何よりも必要であると思います。
 しかし、現状はいかがでしょうか。白書にも述べられているごとく、中小企業の資金調達力は弱く、特に固定資本の不足が顕著であります。技術開発力も、コンピューター時代を迎え、大企業との格差はますます開こうとしております。さらに、中小企業の労働力不足は深刻化し、賃金、労働条件における大企業との格差は縮まりつつあるとはいえ、まだまだ大きな隔たりがあります。このような情勢の中で、取引関係においても大企業の優位は動かず、中小企業の自主性は、大企業の支配の中に埋没しつつあるのが現状であり、白書に示されている将来の発展の方向とは大きくかけ離れているのが現実であります。
 中小企業が、わが国経済の中でその役割りを十分に果たすためには、いままでの政府の中小企業政策は、いろいろ項目は並べられてはおりますが、総合政策のバランスから見た場合、きわめて不十分であり、今後強力な取り組みの必要があると思います。具体的には、一、設備近代化、構造改善のための政府資金の思い切った増額、二、技術開発に対する強力なてこ入れ、三、福利厚生施設等についての補助の強化等々があげられますが、総理並びに通産大臣の御意見をお伺いいたします。
 次に、白書についてまことに不可解に存ずる点は、中小企業の大半を占める小規模企業についての実態分析がきわめて粗略な点であります。小規模企業は、事業所数は三百八十万で、全事業所の八三%、従業者数は一千二百万で、全従業者数の三五%を占めております。しかるに、白書の本文二九四ページにわたる中で、小規模企業の動向と問題点にはわずか九ページしかさかれておりません。ページ数のみならず、内容においても、他の職業との兼業の状態あるいは業種ごとの実態等、肝心な点が明らかにされておりません。主人が月給取りで妻が小売り商であるとか、老夫婦が店を開き、若者はサラリーマンであるとか、いずれかが家計補充であるような兼業がどれくらいあるのか。農業の第一種、第二種兼業調査に相当するものが、中小企業庁開設以来二十年をこえているのに、いまだ実施されておりません。
 また、最近の小売り商業を見ると、大資本スーパーと商品が競合する小規模商店は、ごく一部の例外を除いて、転廃業せざるを得ない方向に追い込まれております。白書においても述べられているごとく、小売り業における小規模企業のシェアの急速な低下がこれを示しております。大資本スーパーや大型専門店のチェーン化が、流通機構の近代化のために必要だとするならば、おびただしい数の小規模小売り店の将来図はどうなるのか、この白書はきわめておざなりにしか触れていないのであります。小規模企業の家族労働中心の零細性をマイナスでなくプラスとして活用する道を開くよう、もっと具体的な施策を示していただきたい。また、的確な施策樹立のためには、次の四十五年度白書は、小規模企業について農家調査と同じような緻密な調査をすべきだと思いますが、総理並びに通産大臣の見解をお伺いいたします。
 次に、政府は、四月六日の物価安定政策会議の総合部会の提言に基づいて、過剰な行政介入を廃止する方向を打ち出しております。薬局等の適正配置規制、酒類小売り店の免許制のあり方、化粧品の再販売価格問題、各種の中小企業カルテルのあり方、現行百貨店法の存続の可否等、数々の項目があげられておりますが、政府はこれら行政介入の廃止をどの程度行なうつもりか、またそれが中小企業に与える影響をどう判断しておられますか。行政の過剰介入の廃止は物価対策上から考えても当然と思いますが、同時に、それにかわる新しい施策がなければ中小企業の経営に打撃を与え、混乱を招くことは必至であります。これに対する政府の見解と対策を経企庁長官並びに通産大臣にお伺いいたします。
 次に、最近の金融引き締めの影響についてでありますが、四月の倒産件数は八百五十二件と四十三年十月以来の最高を記録しております。また、一件当たりの負債金額が小口化しており、大企業中心といわれた今回の金融引き締めの影響が中小企業に波及してきたことをあらわしております。このような状態をどう判断されるか。また、中小企業に対する対策、特に構造改善事業の実施中である企業の倒産予防について配慮をすべきだと思いますが、経企庁長官及び通産大臣の御答弁をいただきたいと思います。
 最後に、資本の自由化並びに特恵関税についてでありますが、今秋に予定されている第三次資本自由化の対象業種には、商業、サービス業、食品加工業等、中小企業の多い部門がかなり含まれておるようであります。これら業種について自由化を実施した場合の中小企業に対する影響並びに対策をどう考えておられるか、また、特恵関税交渉についてでありますが、本年中にUNCTADの交渉が成立し、特恵関税は四十六年度には実施される見通しであるかどうか、また、その場合、繊維、雑貨等輸出関連業種の中で中小企業に特に影響を及ぼす特定の品目については特恵関税の適用を除外させる見込みがあるのか、以上の点について通産大臣の御答弁をお願いいたします。
 以上で私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
○国務大臣(佐藤榮作君) 田渕君にお答えいたします。
 まず、中小企業の予算が少ない、あるいは金融対策が不十分だ、こういう御批判でありましたが、予算は予算として、必要な予算は計上いたしたつもりであります。何よりも中小企業対策は、金融、税制、財政投融資等のすべてによって推進されるべき分野であるとの認識のもとに、適切な対策を講じているものであります。
 次に、また特に小規模企業につきましてもお触れになりましたが、金融、税制上格段の配慮を払っているところであります。今後の方向としては、小規模企業のグループ化、あるいは協業化、あるいは業界全体の構造改善につきましても、真剣に取り組んでまいる必要があるものと考えております。
 田渕君は、全体として中小企業に対する政府の取り組みの姿勢は熱意が足らない、まことに弱いとの御批判でありましたが、私どもは、中小企業の今後の存廃は、単に中小企業の問題だけではなく、国の経済全体の立場から見ましても、内外の競争にたえ得る生産性の高い中小企業の発展が何よりも肝要であり、そのような立場から中小企業施策の充実につきまして今後とも十分に努力し、また配意してまいるつもりであります。
 以上、私からお答えいたしますのは二点でございますが、その他の点は、それぞれの主管大臣からお聞き取りをいただきたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
○国務大臣(宮澤喜一君) 構造改善につきましては先ほど申し上げましたので、重複を避けさせていただきますが、中小企業向けの技術の開発でございます。これは、都道府県の、御承知の総合指導所、それから公設の試験所で中小企業向けの技術指導をいたしておりまして、これをせっかく利用してもらいたいと思っておるわけでございます。
 それから、福利厚生施設は、年金福祉事業団でありますとか、雇用促進事業団でありますとかの住宅関係は、かなり利用もされ、また歓迎もされておりまして、これをやはり中小企業には一番利用してもらいたいと考えております。
 それから、小規模企業について、確かに私どもの実態把握がなかなかむずかしゅうございまして、兼業収入なんかの点も、なかなかはっきりいたさないところがございます。これは御指摘のように、もう少ししっかり他のいわゆる中と別に把握をいたしたいと思っております。
 それから、物価との関係で行政介入の問題でありますが、これは、物価対策会議で言われていることに私は基本的に賛成でございます。そこで、中小企業の安定事業につきましても、先ほども申し上げましたように、少しきびしい基準で審査をしてまいりたいと思っておるわけでございます。
 それから、金融でございますが、昨年の引き締め以来注意をしてまいりましたが、この五月、六月がちょうどボーナス時期でもあり、決済資金の時期でもございます。さらに注意をいたす必要があると思っていますが、中小企業関係の三機関の今年の貸し出しのワクは、前年の一八%増でございます。そこで、これを上期と下期と分けまして、上期に少し傾斜をつけた形で金融の準備をいたしております。
 それから、特恵でございますが、長いこと言われておりまして、四十六年度にこれが実施になりますかどうか。実は、ただいま日本、アメリカ、EECとおのおの違った意見を持っておりますので、ちょっと四十六年度にはどうかということをしかとは申し上げにくい情勢でございます。しかし、もう言われましてから数年以上たっておりますから、わが国のほうの中小企業の体制もかなり進んできたことは確かだと思っております。それにいたしましても、現実に工業製品の特恵をいたしますときには、中小企業側の事情はよく十分聞きました上できめてまいりたいと思っております。(拍手)
   〔国務大臣佐藤一郎君登壇、拍手〕
○国務大臣(佐藤一郎君) 田渕さんにお答え申し上げます。
 物価安定対策会議が提案しております過剰行政介入の排除、これが中小企業に対して相当の影響を及ぼすんじゃないかということに対する御心配でございます。それから、もう一点は、金融引き締めの影響の問題、それから、構造改善の問題は、こういう金融引き締めがあろうがなかろうが、積極的に進めるべきではないか。こういう三点についての御質問があったように思います。すでに総理大臣、通産大臣からほぼお答え申し上げておるんでありますから、私から補足的な御答弁を申し上げたいと思います。
 この物価安定対策会議の提言、これはその中を十分検討いたしてみなければなりませんが、基本的な方向は、私もこの提言の方向に賛成でございます。何らかの意味での行政介入というものがもし排除されました場合に、それが中小企業にもし影響を与えます場合に、その行政介入があって初めてその中小企業というものが温存されておる、そういうような場合におきましては、今後一そう構造対策その他合理化を進めなければならないことを物語っておるわけでございます。でありますから、方向といたしましては、そうした場合には中小企業に対する影響を十分考慮しながら、逐次具体的な施策を進めてまいる必要があろうかと、こういうふうに考えております。
 金融引き締めの影響、構造改善の実施、ともに、通産大臣の答弁のごとく、金融引き締めの影響につきましては、大企業の資金繰りの窮迫ということを通じてやや影響が出てきているように思いますが、これにつきましては、すでに中小のいわゆる三金融機関におけるところの用意その他を、できるだけ事態に即応して繰り上げて融資をするとか、その他各般の用意をいたしておりますから、事態の推移を見守りまして、そうして万遺漏なきを期していくつもりでございます。(拍手)
○副議長(安井謙君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
     ―――――・―――――
○副議長(安井謙君) 日程第二、民事訴訟手続に関する条約の締結について承認を求めるの件。
 日程第三、民事又は商事に関する裁判上及び裁判外の文書の外国における送達及び告知に関する条約の締結について承認を求めるの件。
 日程第四、外国公文書の認証を不用とする条約の締結について承認を求めるの件。
 日程第五、教育的、科学的及び文化的資材の輸入に関する協定の締結について承認を求めるの件。
  (いずれも衆議院送付)
 以上四件を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(安井謙君) 御異議ないと認めます。
 まず、委員長の報告を求めます。外務委員長長谷川仁君。
    ―――――――――――――
〔審査報告書は都合により追録に掲載〕
    ―――――――――――――
   〔長谷川仁君登壇、拍手〕
○長谷川仁君 ただいま議題となりました条約四件につきまして、外務委員会における審議の経過と結果を御報告申し上げます。
 まず、民事訴訟手続に関する条約は、民事または商事に関し、外国人または外国に住所、居所を有する者が一方の訴訟当事者となる場合には、裁判上種々の障害が生ずるので、これを除去するために作成されたもので、裁判上の文書の送達、証拠調べ等の司法共助及び外国人訴訟当事者の地位等を規定しております。
    ―――――――――――――
 次に、民事又は商事に関する裁判上及び裁判外の文書の外国における送達及び告知に関する条約は、国家間の裁判上の文書等の送達の方法及び経路の改善を定めるとともに、外国にいる訴訟当事者が文書の送達を受けなかった場合にこうむる不利益の救済を規定する等、訴訟の迅速化と訴訟当事者の利益の保護をはかるものであります。
    ―――――――――――――
 次に、外国公文書の認証を不要とする条約は、外国公文書が提出される場合には、その外国に駐在する自国の外交官または領事官による認証を必要とする現状を改め、文書作成国の当局が証明文を付することによって、認証制度の不便を除去しようとするものであります。
    ―――――――――――――
 最後に、教育的、科学的及び文化的資材の輸入に関する協定は、書籍、出版物その他の教育的、科学的及び文化的資材の国際的流通を容易にすることによって文化交流を促進するため、これら物品の輸入関税の免除等を定めたものであります。
 委員会における審議の詳細は会議録によって御承知願います。
 五月七日、質疑を終え、別に討論もなく、採決の結果、四件はいずれも全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 以上御報告申し上げます。(拍手)
○副議長(安井謙君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。
 四件全部を問題に供します。四件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○副議長(安井謙君) 総員起立と認めます。よって、四件は全会一致をもって承認することに決しました。
     ―――――・―――――
○副議長(安井謙君) 日程第六、通商産業省設置法の一部を改正する法律案。
 日程第七、許可、認可等の整理に関する法律一案。
 日程第八、農林省設置法の一部を改正する法律案。
  (いずれも内閣提出、衆議院送付)
 以上三案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(安井謙君) 御異議ないと認めます。
 まず、委員長の報告を求めます。内閣委員長西村尚治君。
   〔西村尚治君登壇、拍手〕
○西村尚治君 ただいま議題となりました三件の法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 まず、通商産業省設置法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 本法律案は、公害の防止及び保安の確保に関する事務を総合的に処理するため、鉱山保安局を改組して公害保安局とし、同局に公害部を設置するとともに、企業局の立地公害部を廃止すること等を内容とするものであります。
 委員会におきましては、公害保安局の設置とこれに伴う内部部局改組との関係、公害対策についての政府の施策と基本姿勢、国民の健康保護と経済発展との関係、無過失責任の問題公害防止環境基準の妥当性など、公害に関する各般にわたる問題等について質疑が行なわれたほか、特に参考人を徴して、公害防止事業団の事業内容、資金需要、中小企業助成などについて、その実情と意見を聴取するなど、熱心に審査いたしましたが、その詳細は会議録に譲りたいと存じます。
 質疑を終わり、討論なく、採決の結果、本法案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
    ―――――――――――――
 次に、許可、認可等の整理に関する法律案について申し上げます。
 本法案は、行政改革三カ年計画に基づき八十四件の許可、認可等について一括整理を行なうことを内容とするものであります。
 委員会におきましては、臨時行政調査会指摘の許認可の整理促進と新設抑制措置、行政改革三カ年計画の進捗状況、行政監察の実効性の確保、行政監理委員会の性格とあり方等について質疑が行なわれましたが、その詳細は会議録に譲りたいと存じます。
 質疑を終わり、討論なく、採決の結果、本法案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
    ―――――――――――――
 最後に、農林省設置法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 本法案は、本省の付属機関として草地試験場、熱帯農業研究センター及び農業者大学校を新設すること、地域農業行政の総合的な推進をはかるため、地方農政局に統計調査事務所の組織を吸収、統合すること等を内容とするものであります。
 委員会におきましては、農林水産技術会議のあり方と農業技術政策の確立、民有林行政の強化、七〇年代の農政の基本方向、米の生産調整と農地の転用計画、過剰米の処理問題、統計調査事務所の統合と人事問題等について質疑が行なわれましたが、その詳細は会議録に譲りたいと存じます。
 質疑を終わり、討論なく、採決の結果、本法案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、本法案に対し、自民、社会、公明、民社四党の共同提案にかかる農林省職員の処遇についての附帯決議が付せられました。
 以上をもって御報告を終わります。(拍手)
○副議長(安井謙君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。
 まず、通商産業省設置法の一部を改正する法律案及び許可、認可等の整理に関する法律案全部を問題に供します。両案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○副議長(安井謙君) 総員起立と認めます。よって、両案は全会一致をもって可決せられました。
     ―――――・―――――
○副議長(安井謙君) 次に、農林省設置法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○副議長(安井謙君) 過半数と認めます。よって、本案は可決せられました。
     ―――――・―――――
○副議長(安井謙君) 日程第九、タクシー業務適正化臨時措置法案。
 日程第十、港湾法及び港湾整備緊急措置法の一部を改正する法律案。
 日程第十一、船員法の一部を改正する法律案。
 日程第十二、海上運送法の一部を改正する法律案。
  (いずれも内閣提出、衆議院送付)
 以上四案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(安井謙君) 御異議ないと認めます。
 まず、委員長の報告を求めます。運輸委員長温水三郎君。
   〔温水三郎君登壇、拍手〕
○温水三郎君 議題となりました四法案について報告をいたします。
 まず、タクシー業務適正化臨時措置法案は、タクシー事業の業務が適正に行なわれていないと認められる地域において、当分の間、タクシー運転者の登録を実施するとともに、タクシー業務適正化事業を促進すること等の措置を講じようとするものであります。
    ―――――――――――――
 次に、港湾法及び港湾整備緊急措置法の一部を改正する法律案は、重要港湾における外貿コンテナー埠頭等の整備を一そう促進するため、民間事業者によるこれらの港湾施設の整備について財政上の助成措置を講じようとするものであります。
    ―――――――――――――
 次に、船員法の一部を改正する法律案は、漁船に関する船員法の適用範囲を原則として総トン数五トン以上の船舶にまで拡大するほか、船舶に危険がある場合における船長の最後退船義務を廃止しようとするものであります。
    ―――――――――――――
 次に、海上運送法の一部を改正する法律案は、旅客船による輸送の安全を確保するため、旅客船運航事業者に対し、運航管理規程の作成、運航管理者の選任を義務づける等の措置を講じようとするものであります。
 委員会における質疑の詳細については会議録によって御承知願います。
 質疑を終了し、討論なく、採決の結果、四法案はいずれも全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、タクシー業務適正化臨時措置法案に対し附帯決議を行ないました。
 以上報告を終わります。(拍手)
○副議長(安井謙君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。
 まず、タクシー業務適正化臨時措置法案及び港湾法及び港湾整備緊急措置法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。両案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○副議長(安井謙君) 過半数と認めます。よって、両案は可決せられました。
     ―――――・―――――
○副議長(安井謙君) 次に、船員法の一部を改正する法律案及び海上運送法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。両案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○副議長(安井謙君) 総員起立と認めます。よって、両案は全会一致をもって可決せられました。
     ―――――・―――――
○副議長(安井謙君) 日程第十三、地方道路公社法案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。建設委員長大和与一君。
   〔大和与一君登壇、拍手〕
○大和与一君 ただいま議題となりました地方道路公社法案につきまして、建設委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本案は、自動車交通量の激増に比し、道路整備が著しく立ちおくれている実情にかんがみ、地方道路公社の制度を創設し、公的資金に加え民間資金の導入をはかり、もって地方における道路整備を促進しようとするものであります。
 そのおもなる内容は、第一に、都道府県及び人口五十万以上の市は、議会の議決を経、かつ、建設大臣の認可を受けて、地方道路公社を設立することができること。
 第二に、地方道路公社は、地方的な幹線道路のうち、有料道路事業として適当なものについて、その建設及び管理等を総合的に行なうものとすること。
 第三に、地方道路公社の予算、資金計画及び事業計画は、都道府県知事または市長の承認を受けることとし、また、地方公共団体は、地方道路公社の債務について保証契約をすることができること。
 第四に、建設大臣または都道府県知事等は、地方道路公社の健全な運営を確保するため、その業務に関し、監督上必要な措置をとることができること等であります。
 委員会における質疑の内容は会議録に譲ることといたします。
 質疑を終了し、討論に入りましたが、別に発言もなく、採決いたしました結果、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
○副議長(安井謙君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。
 本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○副議長(安井謙君) 過半数と認めます。よって、本案は可決せられました。
     ―――――・―――――
○副議長(安井謙君) 日程第十四、農地法の一部を改正する法律案。
 日程第十五、農業協同組合法の一部を改正する法律案。
  (いずれも内閣提出、衆議院送付)
 以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(安井謙君) 御異議ないと認めます。
 まず、委員長の報告を求めます。農林水産委員長園田清充君。
   〔園田清充君登壇、拍手〕
○園田清充君 ただいま議題となりました両案について、委員会における審査の経過並びに結果を御報告いたします。
 まず、農地法の一部を改正する法律案は、農業経営の規模拡大と土地の農業上の効率的な利用をはかるため、農地等の賃貸借の規制の緩和、小作料統制の廃止、小作地所有制限の緩和、農地等の権利取得の適正化、農業生産法人の要件の緩和、草地利用権に関する制度の創設、農地等の紛争和解仲介制度の整備等、所要の改正をしようとするものであります。
    ―――――――――――――
 次に、農業協同組合法の一部を改正する法律案は、最近における諸情勢の推移に対応して、農協による農業経営の受託、農地等の供給及び転用相当農地等に関する事業の創設、農事組合法人の要件の緩和、総代会制の整備、農協連合会等の一会員一票制の特例など、所要の改正をしようとするものであります。
 委員会におきましては、両案を一括して議題に供し、六回にわたり審査を行ないましたが、その詳細は会議録に譲ることといたします。
 質疑を終局しましたところ、達田委員から日本社会党を代表して、両案に対する修正案が提出され、その趣旨説明の後、両案を一括して討論に付し、日本社会党を代表して北村委員は原案反対、修正案賛成、自由民主党を代表して亀井委員は原案賛成、修正案反対、日本共産党を代表して河田委員は原案反対、修正案棄権の意見を表明されました。次いで、採決に入り、修正案は賛成少数をもって否決、政府原案は多数をもって可決、よって、両案はいずれも多数をもって原案のとおり可決すべきものと決定いたしました。
 続いて、藤原委員から自民、公明、民社三党の共同により、農地法改正案には七項目の、農協法改正案には六項目の附帯決議案が提出され、多数をもって委員会の決議とすることに決定いたしました。
 以上御報告いたします。(拍手)
○副議長(安井謙君) 両案に対し、討論の通告がございます。発言を許します。中村波男君。
   〔中村波男君登壇、拍手〕
○中村波男君 私は日本社会党を代表して、ただいま議題となりました農地法の一部を改正する法律案並びに農業協同組合法の一部を改正する法律案について、反対の討論を行なうものであります。
 わが党が農地法改正法案に反対する理由の第一は、この法案が何よりも農民の犠牲において資本に奉仕するという明治以降一貫してとられてきた農政を継承する措置にすぎないからであります。
 これを法律案の規定に即して申し上げますと、上限面積及び雇用労働力制限の廃止や、農業生産法人の要件の緩和は、少数の離農をますます優遇し、わが国としては幻想的といわれた農業の資本主義化を可能ならしめようとしていることであります。さらに、不在地主の容認、賃貸借規制の緩和、小作料統制の廃止等の措置は、地主の地位を向上させ、投機的な土地取得の弊害を大きくし、農業の発展を阻害するとともに、階層分解を一そう激化させることは明らかであります。また、下限面積制限を底上げしたことも、文字どおり零細層の切り捨てを地で行くものであって、このような農地制度における露骨な貧農切り捨て政策は、米価据え置き、自由化の強行等と相まって、農政を
 一そう安上がりにし、逼迫する労働力の供給源として資本に奉仕する農政以外の何ものでもないのであります。
 反対理由の第二は、農地の流動化と規模拡大を阻害する要因は、農地制度以外に圧倒的なウエートがあるということであります。現在の農地流動率が、北海道三・三%、都府県〇・八%というように両者の間に非常に大きな差異がある。この三・三%の流動率とは、全農地の所有者が平均三十年に一回かわることを意味しているのでありまして、全く同じ農地制度のもとにありながら、北海道はきわめて流動的、都府県はきわめて硬直的というのは、農地流動化の阻害要因がもっぱら農地制度以外にあることを端的に示しているものと言わなければなりません。しかるに、政府は、農地流動化の真の阻害要因である総合的な地価対策、農外雇用条件の改善、社会保障制度の拡充等にはほとんど手をつけず、目先の現象にとらわれて、弊害の多い農地制度の改正をまず行なおうとするのはどういうことでありましょうか。もしこの改正が実施されれば、今後増加するであろう所有権移転による農地流動は、大幅に小作権設定による流動に置きかえられ、せっかく五%にまで減少した小作地は大幅に増加して、新しいタイプの地主小作制を形成するであろうし、また、富農層、会社、法人等による地主的農地の集中化を来たすことをわれわれはおそれ、強く反対いたすものであります。
 反対理由の第三は、政府の自立農家主義は幻想にすぎず、このため改正の方向が見当違いになっていることであります。農業機械化の動向は、政府発表の技術展望によっても、共同経営を指向しなければ具体性はないのであります。しかるに、この改正案では、小作統制の緩和をはじめ、非営利法人による農地保有合理化促進事業とか、農協の農業経営の受託等、農民を地主化する方向にばかり力を入れているのであります。また、二十年後の自立農家は三十万戸にすぎないという計算が行なわれておりますが、いずれにしても五百五十万農家の大部分を切り捨てなければ自立農家主義は実現できないのであります。
 反対理由の第四は、自作農主義を相変わらずうたいながら、これと明らかに矛盾する小作統制の緩和を中心に改正しようとしていることであります。言うまでもなく、自作農主義とは、耕作する者が農地を所有すべきであるということでありまして、これこそは長年にわたって苦しめられてきた寄生地主制に対処するわが農政の最も重要な伝統なのであり、それゆえにこそ、われわれは自作農主義の持つ意義の重さを常に反省しなければならないのであります。しかるに、政府は、農地流動化を急ぐあまり、自作農が望ましいという基本的な考え方は変らないが、小作統制の緩和が必要であると、全く非論理的な説明を弄しております。小作統制をゆるめれば、所有権を手離すより小作化する方向に走ることは目に見えているのであります。また、政府は、雇用の機会が増大したから戦前のような寄生地主制が再現するおそれはないと強弁しております。戦前と同じタイプの半封建的な寄生地主制は今後あり得ないかもしれませんが、現に横行しているやみ小作的請負耕作等をすなおに観察すれば、政府の主張するがごとき極端な楽観論はどこからも出てこないはずであります。多くの事例調査は、小作料が反当三俵から四俵、すなわち小作料率が三割ないし四割に、あるいはそれ以上に及ぶものがざらにあることを示しております。したがって、改正案の標準小作料制度では、小作料が経営の圧迫とならない正常な水準に維持する保証はなく、むしろ戦前に近い高率小作料再現の可能性のほうがより強いと私は見ているのでありまして、そうなれば地価上昇を起こして、所有権移転による流動化を一そう困難にすることは明らかであります。また、賃貸借規制の緩和等により、最も普及している二十年間の定期賃貸借は十年契約に切りかえられ、合意解約も実質的には泣き寝入り解約を誘発して、土地取り上げが頻発するおそれが強いのであります。したがって、自作農主義と土地の効率的利用とを真に両立させる道は、小作統制等の緩和にあるのではなく、この二つを両立させる道はただ一つ、耕作放棄地や、荒らしづくり地及びやみ小作地に所有制限をかけ、農民的な共同経営の組織化に向かわせる以外にあり得ないのであります。われわれは、冒頭に述べましたごとく、自作農主義の伝統を崩壊させることは断じて容認できないのであります。
 反対理由の第五は、この改正案が現在横行しているやみ小作、擬装小作、やみ小作的請負耕作を是正するのに全く無力だということであります。農業調査から推測すれば、やみ小作の発生件数は、合法的な小作権設定の少くとも三倍に達しているようであります。このような自由奔放に伸びたやみ小作をほとんど発動されたことのない罰則だけを頼りにして、是正することは不可能でありまして、小作統制の緩和をはかれば必ずやみ小作を是認する風潮をあおり、農地制度の形骸化を推し進めることは火を見るよりも明らかであります。
 以上、私は、ごく基本的な五つの点だけに論点をしぼって反対理由を述べましたが、続いて農協法の改正案に対し、簡単に反対理由を述べ討論を終わりたいと存じます。
 反対の第一点は、総代会の権限の拡大についてであります。政府案は、総代会で従来できなかった役員の選挙、または選任及び定款の変更の決議をなし得るなどの権限の強化をはかったのであります。われわれは、これに対し、組合員の意思を反映させる場として、総会はできるだけ正しく活用されるべきであるとする趣旨から、この政府案のうち、総代会において役員の選挙及び定款の変更の議決ができるという点については賛成ができないのであります。言いかえれば、役員の選挙については、総代会においてはできないこととし、総会において総代の選挙と同様に役員の選挙を行ない、定款の変更については、単に総代会の議決できめるのではなく、その議決を組合員投票によって決すべきであります。また、総代については代理権を認めないこととし、可及的に広く組合員の意見をくみ取り、充実した総代会の運営を進めるべきが当然であります。
 反対の第二点は、農協による農業経営の受託制度についてであります。受託制度における農地及び構造政策との関連についてその位置づけが明らかでなく、さらに農業の近代化、集団的生産組織にどう誘導するか等について、政府が的確な指導対策を示さないまま、農協に農業経営の受託の道を開くことはむしろ逆効果に終わると考えるからであります。いうところの受託農地については、小作地所有制限の規定も、小作料に関する規制も適用されず、脱農して地主となった者も組合員とみなすことにしている。このことは、農民の共同化よりも脱農化、地主化を促すものであって、自立経営の育成とは背反関係に立つものであります。したがって、われわれは反対せざるを得ないのであります。
 反対の第三点は、今回新たにつけ加えた転用相当農地等の売買と宅地造成の事業についてであります。このような新事業を認めることは、農協の目的からして、農協の性格になじまないことは言うまでもなく、それが委託経営、大規模農業へと進むよりは資産面での委託、農協の住宅団地経営など、農協の不動産業化だけが進行する危険のほうが多いことを指摘し、農協本来の事業と異質の二つの事業をつけ加えることには絶対に反対するものであります。
 まだ反対の論拠を多く申し述べたいのでありますが、時間の制限があるため、以上をもって反対討論を終わります。(拍手)
○副議長(安井謙君) これにて討論の通告者の発言は終了いたしました。討論は終局したものと認めます。
 これより採決をいたします。
 両案全部を問題に供します。両案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○副議長(安井謙君) 過半数と認めます。よって、両案は可決せられました。
     ―――――・―――――
○副議長(安井謙君) 日程第十六、家内労働法案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。社会労働委員長佐野芳雄君。
   〔佐野芳雄君登壇、拍手〕
○佐野芳雄君 ただいま議題となりました家内労働法案について、委員会における審議の経過と結果を報告いたします。
 百四十三万人ないし二百九十万人と推定される家内労働者は、その作業場所こそ自宅ではありますが、その労働の実質は雇用労働に近い性格のものであります。しかるに、使用関係がないために、労働基準法はじめ労働保護立法の適用外とされてきたのであります。本法律案は、このような立法の空隙を埋めるため、委託関係の明確化、就業時間の適正化、工賃支払い方法の基準化と最低工賃の決定、安全衛生対策及び行政体制の整備等に関する措置を含む単独法を新たに制定するものであります。
 委員会におきましては、熱心な質疑が行なわれたのでありますが、詳細は会議録により御承知願います。
 採決の結果、本法律案は全会一致をもって衆議院送付案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、大橋和孝委員提案にかかる附帯決議を委員会の決議とすることに決しました。
 以上、御報告いたします。(拍手)
○副議長(安井謙君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。
 本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
○副議長(安井謙君) 過半数と認めます。よって、本案は可決せられました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後一時二十分散会