第063回国会 内閣委員会 第17号
昭和四十五年五月十二日(火曜日)
   午前十時三十七分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         西村 尚治君
    理 事
                石原幹市郎君
                八田 一朗君
                足鹿  覺君
                上田  哲君
    委 員
                鬼丸 勝之君
                源田  実君
                佐藤  隆君
                柴田  栄君
                玉置 猛夫君
                長屋  茂君
                矢野  登君
                鶴園 哲夫君
                矢山 有作君
                山崎  昇君
                中尾 辰義君
                峯山 昭範君
                片山 武夫君
                岩間 正男君
   国務大臣
       国 務 大 臣  中曽根康弘君
   政府委員
       総理府人事局長  栗山 廉平君
       防衛政務次官   土屋 義彦君
       防衛庁長官官房
       長        島田  豊君
       防衛庁防衛局長  宍戸 基男君
       防衛庁人事教育
       局長       内海  倫君
       防衛庁衛生局長  浜田  彪君
       防衛庁経理局長  田代 一正君
       防衛庁装備局長  蒲谷 友芳君
       防衛庁参事官   江藤 淳雄君
       防衛施設庁長官  山上 信重君
       防衛施設庁総務
       部長       鐘江 士郎君
       防衛施設庁施設
       部長       鶴崎  敏君
       防衛施設庁労務
       部長       長坂  強君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        相原 桂次君
   説明員
       大蔵省理財局国
       有財産第二課長  庄司 俊夫君
       大蔵省理財局国
       有財産第三課長  永松 慶也君
       通商産業省貿易
       振興局経済協力
       部長       黒部  穣君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○防衛庁設置法等の一部を改正する法律案(内閣
 提出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
○委員長(西村尚治君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。
 防衛庁設置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 御質疑のある方は、順次御発言を願います。
○上田哲君 たんたんと経過してまいりました今国会、逆の言い方では低調といわれる終盤に、やや波高い状況もあったようですけれども、今朝はたいへんからりと晴れたさつき空でもありますから、どうかひとつ長官からも今日は心ゆくまで冷徹な御答弁をいただきたいと思います。私をトップとして同僚議員からもたくさん続いて質問をいたしますので、やや大づかみに総括的に御質問をしていきたいと思います。
 私はこの質問の中心を、去る四月十日の私自身の参議院本会議における質問及び政府答弁に大筋を置いて、長い展望におけるわが国の安全保障論を、その基本問題に触れて質疑を行ないたいと思います。
 私の考えでは、アジア太平洋地域の列国の力関係、あるいは政府の姿勢である安保条約の自動延長、そうしてまた膨大な七二年からの四次防の策定が山場に入っているこの時期、それにこれまでの三次防までの経過を踏まえても、わが国の安全保障論は、いま最も重要な段階にあると思います。
 私はこの際、わが国の安全保障論はここで三つの認識を求められている、こういうふうに考えてみたいと思います。第一の認識は、ほかならぬ防衛庁自身あるいは防衛計画自身の内部において、それが新しい段階に入っているという認識そのものであろうと思います。質の転換の自己認識です。第二の問題は、わが国の安全保障論を大きく国民的基盤の中で展開しなければならないという認識。第三の問題は、政党それ自身の間においても、今日までのいわばたてまえを重点とする議論から、きわめて具体的な問題に深く足を踏み入れての議論をしなければならない、こういう段階にきているという認識。いまはこうしたそれぞれの側面における三つの認識を三つながら立てて進むべき重大な時点であろうと思います。
 これをあえてもう少しく率直に触れるならば、代表質問でも申し上げたとおり、非武装中立を堅持するわれわれの側からしても、単にそうしたあり方、パターンの議論だけと受け取られてはならない。今日の国際関係あるいは軍事状況としての力関係なり、ほかならぬ四次防を展望する軍事計画をそこから出発して具体的に目標に向かって解きほぐしていくのでなければ、十分な説明力を持たないでありましょう。同様に政府側も、事実、欠員を多くかかえて悩む現在の三軍自衝隊を、さらに大きく膨張させようとしても、政府のかけ声だけではさらに大きな悩みをかかえなければならないだけだろう。一方に単に日米安保条約を標榜する無説明の軍事同盟の主張と、他方にこれに対抗する非武装中立論のパターン論争という形ではなくて、日米軍事同盟の側に立つものも、同盟条約保障論というものがどれほどの保障力を持ち得るのかということに深く足を踏み入れての議論を展開すべきであるし、われわれもまたそれに応じて中立保障論の具体的な道筋の展開を迫るべきだろうと思います。本日はこうした立場からの議論を進めたいと思うのでありますが、まずこの提起について、防衛庁長官の御見解をただしたいと思います。
○国務大臣(中曽根康弘君) 今日のような国際情勢及び国内的諸要因の過渡期にあたりまして、いままでの既成概念にとらわれることなく、自分たちの立脚点を深層においてこれを再検討し、常に自己批判を行ないながら進んでいくということは非常に大切な要素であると思います。私も防衛を担当する一人といたしまして、わが国がたどってまいりましたいままでの安全保障政策あるいは防衛体系というものについて率直に自己批判を行ない、また再検討を行ない、あやまちなきを期するようにいたしていきたいと思います。そうしてでき得べくんば、国民が待望している各党間のコンセンサスをできるだけワクを拡げていく、そういう方向に向かって誠実に努力していきたいと思います。
○上田哲君 自己批判ということばすら出まして――すぐそのあとから再検討ということばに変えられたおもむきでありますけれども――ことばのあげ足とりでなく、ひとつおおいに胸襟を開いて、きびしく議論を突き詰めてまいりたいと思います。
 私はこの質疑の中で、アジア太平洋圏の未来図にかかわるわが国の安全保障の長期展望、さらに分け入って言うならば、政府、防衛庁の長期防衛戦略、わが国を取り巻く緊張の分析や核均衡論、そこから出てくるいわゆる軍国主議論、また産軍複合体の問題、さらに間接侵略論、さらにまたわれわれの主張する中立保障論、特に永世中立の可能の問題もいろいろお伺いしたいのでありますけれども、問題が抽象的になることを避けて、まず具体的に四次防そのものについての議論から始めていきたいと思います。
 まず伺いたいのでありますが、四次防の手順であります。これまでいろいろと伝えられておりますところでは、四次防についての防衛庁原案の仕上がりが、さきの有田長官によれば八月ごろというようなことであります。関係各省間との折衝が、大体常識的に一年ということを踏まえて、そして四十七年度からの発足ということであれば、常識的に四次防原案は十月ごろというふうに考えられてきたわけでありますが、一体そのような見通しでいいのでありましょうか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 普通四次防と言われておりますが、私はむしろ現時点の新しい観点に立って新防衛計画と呼ぶほうが適当ではないか、このように心得ます。そういう観点に立っていままでの立場を検討して、そうして七〇年代の日本の新しい安全保障体系を模索しながら国民と対話しつつ進めていきたい、そのように考えております。これはしかしまだ役所で正式にきまったわけではありませんが、呼称としてはそういうほうが適当であると私は考えております。
 それから第二に、その手順でございますが、四十七年から始まる予定でございますから、来年の夏ごろまでには正式にきめたい、国防会議並びに閣議決定まで持っていきたい。そういたしますと、ことしの秋までに大体防衛庁の考え方をきめたいと思います。そういうつもりで、国会が終わりましたら精力的に作業をいたしまして、防衛庁としてのものの考え方の基準、それからそれに必要とする体系、それから数量的把握、性能、そういう問題について詰めを行なっていきたいと考えております。
○上田哲君 四次防と言うよりも新防衛計画というべきであるだろう、こういうお話がありました。基準、体系、数量、性能その他の内容についてのお話もございましたけれども、それらのところは通常の場合の項目と変わらないところでありますから、新防衛計画とあえて称されるゆえんのものは、単に一次防以来倍々に進んできたというような量的な把握だけではなくして、先ほど来申し上げているような、防衛庁側としても新段階に入る防衛論というものの発足であるという感覚、あるいは単に五年区切りの四次防というようなことではなしに、五次防と称せられるべきものを含む、たとえば十年期間というような見通しでの防衛計画策定というふうに受け取っていいのでありましょうか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 時期的な長さはやはり五カ年計画とすることが適当であると思いますが、やはり五カ年計画というものも十年くらいの展望を持ったぐらいの上に立った五カ年計画というのが適当であると私は思います。それで新という考えが適当であろうと申し上げましたのは、いま上田委員が申されたような考えに立ってでございます。ともかく、たぶんこの六月二十三日には安全保障条約は自動継続になりまして、客観情勢もいままでとは変わりますし、そういう新しい時点に立ちまして、いままでの日本の安全保障体系を検討しつつ新しい時代に臨むという考えに立っていまのようなことを申し上げたわけでございます。
○上田哲君 新しいということの内容を、このあとに続くいろいろなテーマの中でもう少しくお伺いをしたいと思いますが、手順の問題でもう一つ伺いたい。この防衛庁原案とともに、表裏一体と申しましょうか、国防の基本方針、それから国防白書、これがほとんど前後して出るように伺っておりますが、同じようにこの二つの内容策定についての手順、時期などについて御報告いただきたい。
○国務大臣(中曽根康弘君) 新しい防衛計画を策定する前に、でき得べくんば、国防の基本方針は検討を加えておきたい、そういう基本方針に立脚して、新しいそういう防衛計画というものが出てくるものだろうと思います。したがいまして、新防衛計画ができる前に、少なくとも国防の基本方針は検討していただいて、いままででよいか、あるいは変えるとすればどこを変えるか、国防会議等においておきめいただきたいと思っております。
○上田哲君 次に、四次防の総額について伺いたいのであります。
 長官自身が、防衛費は単にGNPの何%という比率だけで言うべきではない、その絶対額を比較すべきであるということを発言されておられるわけです。私はそこまでは正しいと思います。これもまた後ほどこまかくは伺いたいと思いますけれども、その、これまで倍々ゲームだと言われている各次防衛力整備計画の膨張率。四次防も大体三次防の二兆三千四百億の倍だろうというこれまでの感覚からすると、どうもそれよりも上にいくだろうというのが今日の常識であり、たいへん国民各層が注目をしているところでありまして、これについては防衛庁長官は、さきの質疑の中で、五兆二千億ないし六兆四千億というあたりの幅が当たらずとも遠からずということを言われたわけであります。時日もかなりたっておりまして、この段階では、そのようなおおざっぱな言い方では、もう許されないところにきているだろうと思います。秋ごろにということであれば、もう少し踏み込んだつかみ方を御提示いただくべきであろうと思います。識者の感覚では、大体五兆五千億前後というような見方に定着しているように感ずるのでありますが、いかがでありましょうか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 数量につきまして、また絶対額につきましては、いま防衛庁内部において、その基礎をいろいろ策定中でございますので、金額を申し上げる段階に至っていないのは、はなはだ残念でございますが、大体の目見当では、GNPの変動にもよりますけれども、また、ほかの社会保障関係経費、教育研究関係の経費等の数字等もにらみ合わせながら考えなければいかぬと思いますけれども、大体現在のGNP、国民総生産のいま〇・八%程度であったと思いますが、大体その辺を基準にしながら考えていったら適当ではないかと、そういうように考えております。
○上田哲君 五兆二千億、六兆四千億という範囲というのは、大体そういう単純な算術計算から出ていると判断するのですけれども、質問するほうはそれにしても、答えるほうではそのようには単純に答えられない時期というものがあります。そういうことからいけば、前の答えが出てきた時期との時間的なズレから言っても、もうそろそろ〇・八%も、GNPの成長率も、判断の基準としてのウエートが若干変わってきているだろうといえるのですから、もう少し突っ込んだイメージというものが長官の胸の中になきゃならぬ。天気晴朗にして本日、もう少しすっきりした答えが出てこなければいかぬと私は思うのですが、いかがでありましょうか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 大体目の子算用でGNPの成長度合いを計算してみまして、もしその計算が大体間違いないとするならば、先ほど上田議員がおっしゃった数字の前後ではないか、そういうように一応推定しております。
○上田哲君 わかりました。私は五兆五千億ということを申し上げたので、これまで目の子で五兆二千億ないし六兆四千億と言われていた幅よりも、五兆五千億前後というところに大体詰まってきたという御答弁だと理解をいたします。そこでさきの本会議の質問に関連して、ややしぼって申し上げる。さきの御答弁では、今後の新しい整備の重点が海、空に置かれるということでもありましたし、その際、目の子の問題として、基準の問題として、海では総トン数が二十万トンをこえるのか、あるいは空ではファントムが何機になるのかということをお伺いした。これはもう少し答弁を進めることができるんじゃないか、最終的なトータルは時間がかかるとしても、四次防総額の積算根拠であるべき総トン数なり、あるいは航空機数なりというものは、もうそろそろはじかれていなければならぬと思います。したがって、もう一度お伺いするのでありますが、海上の総トン数は二十万トンをこえるようになりますか。また、航空機は、現在九百六十機というのがどのぐらいになる見込みでありましょうか。
○国務大臣(中曽根康弘君) いま各幕からその資料を、一応の原案を出させまして、私もそれを点検いたしまして、内局においていろいろ検討してる最中でございます。したがいまして、まだ外にその数字を持ち出すという段階には立ち至っておりません。したがいまして、数字を申し上げるということは、はなはだ残念ながらできない段階にございます。大体の状況につきましては防衛局長から答弁さしていただきます。
○政府委員(宍戸基男君) 作業はいま大臣のお答えのように、各自衛隊から、陸・海・空自衛隊から原案が出まして、内局におきまして、特に防衛局におきましていろいろな作業をやっておる段階でございます。各幕の要請なり希望なり、またそれなりの理由もあるわけでございますけれども、他のいろんな政策といいますか、国策といいますか、社会保障その他の関係がございますので……。
○上田哲君 そういう話は要らないです。あなたは数字だけ言えばいいのです。
○政府委員(宍戸基男君) その辺のところを勘案しながら、具体的な作業をやっておる段階で、数字はいままだまとまっておりませんので、数字的にはちょっとまだ私から申し上げるのは差し控えさしていただきます。
○上田哲君 そういう御答弁は御遠慮いただきたい。あなたは数字を出す役目であります。その辺はからんでまた後にいろいろお伺いいたしますけれども……。
 次に、定員の問題についてもあらかじめ承っておきたいと思います。まあ定員の問題は充足率とからんでくるわけでありますが、陸上自衛隊の場合の十八万態勢というのは、先国会で成立したあと佐藤総理もこれを当面多くふやす気はないのだと――沖繩関係その他もいろいろあるでしょうが――言われております。問題は海、空でありますが・念のために、陸の十八万態勢の維持ということについての確認と、海、空はどのくらいふえるのかということについてあわせてお答えいただきたいと思います。
○国務大臣(中曽根康弘君) 陸につきましては、一応現在の態勢で、あとは質的充実を行なう、そういうことでございますが、海、空につきましては、艦船あるいは航空機のふえるのに従ってそれに応ずる定員増をお願いしなければならぬかと思います。
 それからそのほかに予備自衛官制度を海について今度お願いしておりますが、空につきましてもこれを拡充していきたい。それで予備自衛官制度は、幹部につきましては、現在は一番最高のものが一尉でございますが、一佐ぐらいまで次の段階では広げたい、そういうふうに考えて、予備自衛官をもって、背後関係そのほかのものはいざというときには補充し得るようにして、そうして現在の自衛官はできるだけ第一線の有要なところに配置する、そういう考え方に立ってまいりたいと思っております。
 なお婦人自衛官につきましても、適用できる部分がかなりあると思いますので、それらも陸・海、空にわたって拡充していきたい、このように考えます。
○上田哲君 いまのお話の中にはちょっと気になることが幾つか出てきたと思います。そこを中心に少し突込んで議論をしたいと思いますが、先に念のために外ワクの数字をお伺いをしておきますと、充足率が二月末現在で陸が八七%、海が九四%、空が九六%、海や空はともかくとして、陸の八七%、これはやはりかなり低いのだろうと思います。しかも近衛師団ともいうべき練馬の第一師団は九七%であります。八七%が平均であるとすると、非常に低い陸の部隊が他にあるということは当然にあるわけであります。ここに一つ問題になるのは、現在の自衛隊の考え方の中には平時編成というのがないのじゃないか。元来平時編成ということになれば、定員の七割方とか八割方というところが通常の形になるんでしょうが、平時編成というのがないんだとなると、戦時編成の数の八〇%前後というのは非常に問題が出てくるのではないか。その台所を一生懸命心配しているわけではないのでありまして、そういうことになると、この充足率を高めるということのために、いろいろな無理が出てくるんじゃないか。その辺のところを私は次の議論にしたいと思うんで、この充足率をいまどう考えるかということについて御答弁をいただきたい。
○国務大臣(中曽根康弘君) たとえば昭和四十五年度自衛官募集計画は、陸上自衛隊が八八・四%、海上自衛隊が九六・五%、航空自衛隊が九七%の年間平均充足率を計画し、努力してまいりたいと思っておるわけでございます。それで現在のいろいろな防衛計画を総合してみますと、陸につきましては、先ほど申し上げました程度に、定員につきましては当分足踏みをやる、それから海、空につきましても、できるだけ省力化を徹底して、そして人間を省くという方向に努力をしてまいりたいと思っております。これからの産業構成の変化とか、あるいは若年労働者層の人口層の移動等を見ますと、なかなか募集は困難であると思いますので、やはり自衛隊につきましても徹底的な省力化計画を進めて、できるだけ機械あるいはその他のものを使って代替していく、そういう基本観念に立っていきたいと思うんです。それで、いずれそういういろいろ装備する機器の情勢によって、陸と同じように定員についてもこの程度がもう足どめだ、そういう限度はいずれ出てくるだろうと思うのです。しかし、それは海、空についてはまだ申し上げるような段階ではないし、もう少し様子を見ないと申し上げられる段階ではないと思います。しかし、ちょうど陸と同じように海、空につきましても、人間の定員については当分この程度でという限度は出てくるし、また出てこなければならぬ、そのように思います。
○上田哲君 戦時編成と平時編成の問題、答弁が落ちたようです。あわせてお尋ねしておくんですが、問題は陸なんだということですね。陸ということになると、いかに機械によってかわるんだ、省力化をはかるんだといっても、これはすでに限度にきている、その辺をあわせてもう一度お伺いしておきます。
○国務大臣(中曽根康弘君) いまの編成の問題につきましては、防衛局長より答弁させます。
○政府委員(宍戸基男君) 戦時編成、平時編成のお尋ねがございましたけれども、御承知かと思いますけれども、現在のたとえば陸で申し上げますと、五方面十三個師団という第一線の部隊の編成は、かりに事がありましたらそのまま使えるような編成にいたしております。通常われわれはそれを戦時編成と中で言っているわけではございませんが、有事即応の体制にしております。しかし、たとえば補給系統、いろんな補給処等がございますけれども、これは有事の際にはそのままでは不足するというふうに、平時でいいますと最小限のものをかかえております。有事のときにはそういう支援部隊は増強しなければならぬというような考え方で編成を組んでおります。
○上田哲君 自分のほうでどういう名前で呼んでいるかという説明はあまり意味がないんですね。有事即応とおっしゃるんだが、通常軍隊編成の概念というのは、平時の編成と有事の編成、戦時編成ですね、これがあるわけです。これは平時であればこの線でいいんだという考え方が出てくる。兵員ばかり多くても人件費の問題とかその他の問題が起きてくる。ですからそういう二本立てになっているか、一本立てになっているか、そこが聞きたいので、有事即応のときに間に合うか間に合わぬかという概念ではないわけです。そこをもう一ぺん伺いたい。
○政府委員(宍戸基男君) 通常の国際的な軍隊的用語を使うことを許していただければ、十三個師団編成――たとえば陸の十三個師団編成というのは、戦時編成的な編成でございます。有事がかりにあれば、そのまま一線に繰り出して働いてもらうというたてまえにいたしております。
○上田哲君 けっこうです。そういうことでいいです。だからそうなってくると、平時編成ならば八〇%前後ということにも、いろいろな考え方が成り立つ。たとえば予備軍、こちらで予備自衛官ということばになるんでしょうが、予備役というものがはっきりしていれば、戦時編成にはいろいろ繰り入れ方がある。けれども、いまいろいろどろなわ的にやっていることはあるにしても、そこまでいっていない。海や空はそこまでいっていないという長官のお話があったけれども、陸はだれが見ても頭打ちという現実がある。
 そこで、自衛官集めの戸別訪問が出てきたり、上野の山の西郷さんの銅像のまわりの若者さがしということになる。西郷さんのまわりをいかに回っても、どうにもならないという社会的厚みが出てきておるという現実を、防衛計画の中ではどういうふうに考えていくかということがあるに違いないと思う。テクニカルにいえば、省力化とか機械代替ということになるけれども、それがきかない限度にきているのがいまの段階だと思うのです。そうなってくれば、短絡した言い方になるけれども、徴兵制とか、あるいはあの五十万の郷土予備軍なんという自民党の発想が出てくる。一体こういう方向にいくのか、さもなくば充足率を高める何らかの新手が出てこざるを得ないと思うのですよ。ちらっとさっき耳にはさんだけれども、長官が言われた、たとえば婦人自衛官であるとか、あるいは予備自衛官の増強というのが出てくる。予備自衛官は階級もいままで一尉だったものを一佐まで持っていく、一佐は連隊長ですね、そうですね。そういうところまでいくということになると、これは軍の編成論上非常に大きな性格論が出てくるのではないか、こういうことになると思うのです。
 そこでまず一つ、あまり先走ってお答えいただくことはないから、克明に一つ一つこっちから聞いたことに答えていただきたいのだが、念のために、徴兵制とか五十万や郷土予備軍とか、こういうことはよもやお考えになっておらぬでしょうね。
○国務大臣(中曽根康弘君) 徴兵制を行なうということはございません。それから五十万の郷土軍でございますか、民兵でございますか、そういう構想もございません。
○上田哲君 そこで、ここにあるのが長官が三月十九日に自民党の安全保障調査会で演説をされた原稿であります。この中でいろいろ興味深いことが書いてあるわけですが、「現在中学卒の少年自衛官が応募者十人につき一人を選抜しておるが、特殊な例などを除き全員を採用するのも一策である、」、こういうことが書いてある。これだけでは具体論はないのですが、それと先ほど婦人自衛官のことについて言及をされた。それから予備自衛官の問題が出てきた。私はこの三本が今後の充足率のために非常な大きなウエートをかけられることになる、そういうふうに思うのです。ここに大きなウエートをかけて、いま頭打ちになっている陸の定員の充足率の低さを解消していく方向であるのか、まず具体論の前に原則を伺います。
○国務大臣(中曽根康弘君) これはまだ私の構想の範囲内でございますけれども、その自民党の安保調査会でもこの構想に言及いたしましたが、自衛隊の中に教育的要素ももう少し考えたらどうかと。それで自衛官として三年なら三年やっている間に相当な教育を施して、中卒ならば高校卒の資格が認定されるようなことを考えたらどうだろうか。あるいは高校卒なら大学卒の資格が認定されるような措置を考えたらどうだろうか。現在でもある意味においては国民教育的な場でもあるわけでございますけれども、次の新しい防衛計画の中においては、そういう構想を取り入れたらどうかと、私はそういう考えを持っておるものであります。それで次の新しい防衛計画の中にそういうことがどの程度入れられるか。私の現在の考えでは、現在は十八歳以上から二十四歳までの青少年を対象にしていますが、これらのほかに、中学の新卒者を一般隊員として採用することはどうだろうか。このような少年を採用する制度は、現在も技術曹――曹士の曹ですが、技術曹の養成を目的とした少年自衛官制度がございますけれども、これも含めて、これとまた別個の体系として、一般隊員としての採用というものを考えたらどうか。で、この場合、十八歳に達するまでは一般部隊の勤務につけることなく、一般部隊で一般の自衛官と同じように扱わないで、そして技術を中心とした高校並みの教育を施して、十八歳に達した以後に二年ないし三年間隊務に服せしめることにしたらどうだろうか。そしてでき得ればこの間に修得したいろんな勉強等について、高校卒と同等の資格を社会的にも認められるような措置をとったらどうだろうか。それから婦人自衛官につきましては、現在約千名弱の婦人自衛官をとっておりますけれども、成績は非常にいいようです。ただ婦人自衛官につきましては、いろいろ扱いがむずかしいことがあります、居住性とか、そのほかの問題につきまして。しかし現在この七〇年代の日本の人口層の変動を考えてみますと、御婦人のそういう能力を公の仕事の場にももっと生かしていいはずである。そういう考えに立ちまして、たとえば補給、通信、衛生、募集、広報、管理事務等において、三自衛隊の中で婦人でできる部門を婦人でやってもらうようにする。そういろ意味において三自衛隊を含めて、婦人自衛官を現在の三倍ぐらいに増強したらどうか、一応そういうことを考えておりまして、新しい防衛計画の中にどの程度取り入れられるか、各省とも協議してみたいと思っているわけであります。
○上田哲君 これは非常にたいへんなことが出てきたと思うのです。少年自衛官というのは、今日まではごく特殊なものとして技術曹ということであった。これは例の訓練で十九人ほどなくなったあの学校ですね。これは技術下士官養成というのですか、そういう特殊な教育なんだから、全く別問題であります。いまのお話で非常に重要な問題だと思うのは、技術下士官ではなくて一般隊員としての採用だと、この点が一つ。次にこれは、私はことばをかえて言えば、隊員の年齢引き下げだと思うのです。兵役年齢の切り下げというような言い方にだってならないことはない、非常に大きな問題だと思うのです。ふっと思いつくのですが、これはいろいよ白虎隊がつくられるのじゃないか。少なくとも幼年学校の復活と言えば、ほぼ当たらずといえども遠からざるということになるのじゃないか。しかも、もう一つの問題は、教育を主眼とするというのですね。自衛隊の中で中卒を連れてきて、高校卒までの技術だけではなくて一般教養までつけさせるという。自衛隊として一般教養をここにたたき込むということになると、これはまさに新しき人間像を育てる入れものを自衛隊がつくっていくということになるのです。だから念のために確認をするのでありますが、一般隊員としてとるという点と一般教育をするという点で、いままでとは全く違う、新しい募集タイプであるというふうに考えますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 自衛隊の中に国民教育的要素も現実にはあると思うのです。したがいまして、会社その他で自衛隊を出てきた人を採用したいという希望がかなりございます。それはやはりそういう規律、訓練を受けた人間が好ましいという考えに立ってであろうと思うのであります。また近ごろは会社やその他で自衛隊に訓練入隊みたいな、新社員教育みたいなものでやるのも非常に多うございます。そういう趨勢も考えてみて、これはもちろん志願でやることでございますが、中卒でそういう希望者がいる場合には、そういうようなファシリティを供与する。そしてそのかわり自衛隊のほうも教育の方面にかなりの要素も注いで、そしてそういう人々は大体恵まれない家庭の人もあるだろうと思います、中卒で高校へ行けないという方があるわけですから。そういう人については国費である程度教育がなされる。そしてそれが三年なら三年終わるころには高校卒の実力として認定してもらって、そういうふうに社会的にも取り扱ってもらう、そういう考え方が好ましいのではないかと私は前から考えておりまして、その発想が自民党の安保調査会の講演の中に出ているわけであります。そういう発想を一つたたき台にしていただいて、そして新しい防衛計画の中にそういうものが加えられるかどうか検討してもらおう、そういう考えに立っておるわけであります。
○上田哲君 長官は、自衛隊への訓練入隊であるとか、自衛隊を出た人がたいへん外の会社で重用されるという例を出されますけれども、これは全く次元が違うわけです。いかに志願兵といえども、出ていってどう役に立つかということと、そういう者を採用するということとは、まず根本的に議論の入り口が違う。そこへ持ってきて、技術的な下士官の養成ということではなしに、一般隊員としての年齢切り下げということは、つまり枯渇している若年労働力というものを自衛隊に引きつけるための苦肉の策以外の何ものでもない。すでに先ほど確認したように、全く壁にぶつかってしまっている陸上自衛隊の充足率が悪いから、これを埋めるためには、年齢を白虎隊まで下げなければならぬのだ、こういうふうになったのがポイントです。この点は、どういうふうにことばをつくっても、決定的にいままでの発想とは違う問題だと思います。そこに一つ国民教育論の問題が入ってくる。なるほど、家の貧しく、学校へ行けない子供たちに、学校で勉強する方法を与えてやるということは、一般論として当然認めるところでありますけれども、これはたとえば、少なくともこの学校を出たら鉄砲かついで戦争に行かせるというような――昔の師範学校でも、そこで勉強した青年が、卒業後どうしても教職につかなければならぬという義務を課せられていたのを、いまや撤廃をしている。それなのにこれは二十五年前に逆行するような感じがいなめないわけです。私は、これをこれまでとは違う全く新しい兵員充足論の発想である、あるいは自衛隊の一番基のところを変えていくにも匹敵するような大きな発想の転換であると思います。――ちょっと私も多少びっくりしたものだから、大事なところを一つ抜かしているのですが、長官としては四次防の中にこれをどれぐらいの熱意で持ち込むつもりなのか。徴兵制や郷土予備軍などというような発想で充足率を高めようとするのでなければ、省力化と機械化といえども、それはほとんど大きな穴埋めにならないのだから、さすれば予備自衛官の充足を含めてこの方法で一体どれぐらいの規模の数を採用しようとされるのか、伺いたいと思います。
○国務大臣(中曽根康弘君) いま私が申し上げました考え方は、これはまだ私の構想でありまして、これから検討していただくということになるのでありますが、募集につきましては、いままでの制度を中心にしてもちろんやっていくんです。しかし、いま申し上げたようなことも付加したらどうだ、加味していったらどうだと。私、前にデンマークへ行きましたときに、国民高等学校という制度を見まして、そして中卒ぐらい、あるいは高卒の者もありますけれども、それらが社会へ入ってからも一定年限やはり国民的教育を受けている制度を実際見まして、これはいい考え方だと、そう思いました。そういう意味で、中卒あたりでもしそういう希望者がいるならば、国として自衛隊というファシリティを使ってそういうこともやってあげたらどうかと、そういう考えがありまして、付加してそういうものを考えていきたいと、そういうことを申し上げたのであります。
 したがって、もしそういうことをやる場合に、問題が出てくるのは、労働基準法との関係が一つあるわけです。自衛隊としては労働基準法を尊重するというたてまえでもありますから、その辺の調整が一つございますのと、それから文部省との関係の調整がございます。それはなかなかむずかしい問題が含まれているとは思うんですけれども、しかし、ほかにそういう人たちに対する国民教育的な場というものはいまのところちょっとない。そういう面も考え、また自衛隊としての有用性も考えましていまのような発想を持ったわけです。婦人自衛官については、すでにもう発足して、そしてかなりの、非常に応募者がございますので、三倍程度という数字を申し上げましたが、少年につきましては、まだそういう構想という程度でございますから、数字を申し上げる段階ではございません。
○上田哲君 これはもう付加するという言い方しかまいのはあたりまえのことなんですね。日本の自衛隊が、年端もいかない中学卒業の生徒をもって中心防衛力とするというのは、これはなろう道理がないんですから。しかしこの本質は、昔の幼年学校などという経過と比較してみても、これはやっぱりその量の問題ではなくて、非常に重要です。たとえば募集要綱というものを変えなくってもやれることができたとしても、これはやはり性格変更としては非常に大きい問題であるだろうと思うんです。なかんづくいま長官が言われた国民教育の場という考え、これは確かに先ほどの自民党の安全保障調査会での長官の発言の中にも、国民教育の場としてということが非常に強くにじみ出ている。高校へ行けない少年に対して、これは一半の愛情であるかもしれない。私はその点までも否定しようとは言いません。しかし、国防論、防衛論との関連において青少年教育論を論ずるということについては、非常に厳密な区分というものをみずから持たなければならぬ。ということになると、いま長官の言われた、教育の場がない人たちがいるじゃないか、それからもう一つ、自衛隊側の有用性ということをつけ加えられた。この二つの問題が結びつくときに非常に危険な面が出てくる。中国からもいまいわれている日本の軍国主義化の批判に対して、反論できなくなる一つです。学校に行けない子弟を自衛隊に連れてきて、とにかく学校へ行けるならどこでもいいからというので、勉強はさしてあげる。そして、実はこれは自衛隊側の有用性とマッチしているんだということになれば、まさに国策としての軍国主義教育というもののパターンが出てくる。私は長官の言う善意の問題、善意、悪意の分野の問題は別にして、本来軍国主義論というようなものについて考える場合には、平和憲法下のわが国のあり方としても、その辺に大きな重点を置かなければならぬのだと思います。
 つけ足して御答弁をお願いするんですが、法律上の関連でいうと、おっしゃるとおり、労基法の問題と学校教育の問題が出てくる。まあ労基法の問題はしばらくカッコに入れるとして、学校教育法との問題。長官は非常に簡単に高校卒の資格を与えるというけれども、これはそう簡単にはまずまいらぬだろうと私は思います。たとえばここで想起できるのは、たしか防衛大学校を防衛大学にしようという問題が論議されたときに、大きく残っている教訓ですが、防衛大学を大学にちれば、これはやはり逆に言えば大学の教育一般課程に軍事教練を持ち込むということになる。それが目途でないにしても、危険があるのではないかということになっているはずです。非常に幼い子供たち――学校に行けない子供たちに、学校をえさにしてと言ってはことばがきたないだろうけれども、教育のチャンスを与えるということの中で、ほとんどそれから先の選択権を失わさせるようなコースに入らざるを得なくしていく、この選択の範囲を狭めることの影響というのは、大学と比べてもう明らかに下へいくほど大きくなっていくと思うのです。そういう意味で、これはやっぱり学校教育法との関係というのは重大に考えられなければならないだろうと思うのです。それが一つ。もう一つは、それにもかかわらず、防衛大学校が正式の大学でなくても、やっぱり大学校とつければ学生は来るという魅力にはなり得る、官費でいろいろとできることもある、同じように学校教育法によって高校卒の資格が認定されなくても、そういうふうな高校教育課程と同じような教育を十分に施してやるのだよということになれば、確かに学校に自分の親の力では行けない子弟にとっては十分な魅力になり得る。だから生徒は集め得る。それを見越して、かわいそうだから、一人前に仕立ててやるのだからというきれいごとではなしに、やっぱり学校教育法上基本的な厳重な区分というものがここに設定されなければならぬと思うのです。御見解を承りたいと思います。
○国務大臣(中曽根康弘君) 私は自衛隊が昔の軍隊と違う要素の中に、いまのように、たとえば災害出動で出たり、あるいは公共事業のために土木で奉仕したり、あるいはオリンピックのために協力したり、あるいは南極の研究にも協力するとか、そういう昔の軍隊にない社会性というものがあると思うのです。それがまた軍隊と違う自衛隊の要素でもあると思うのです。そういう意味において、いまのような点も自衛隊の一つの性格として付与していったらどうか。単にミリタリーアフェアーズといいますか、そういうことばかりやるのではなくして、国民のそういう幅広い社会性も多少もっていったらどうか、そういう気が実はしておるのです。それで、少年自衛官から自衛官になりまして、三年なら三年つとめて、そのままずっとつとめろというものではない、やめたい人はどうぞやめて、そうして事実上その資格を認定されて、そういう資格の者として社会へ受け入れられるような体制をつくってあげたい。たとえば企業に入るとか、あるいは協同組合に入るとか、そういう人も多いでしょう。そういう場合にはこの人は高校卒として取り扱ってください、文部省で正式にそれ認定するということはなかなかむずかしいでしょうけれども、しかし、われわれが努力して受け入れ側にそういうふうな形で取り扱ってくださいといってお願いをして、そういうことに同意をいただくということは、努力によっては不可能ではない。防衛大学等につきましても、これは中教審の答申で、商船大学とか防衛大学とか航空大学とか、ああいう校のつくものをどうするか、文部省側でも基本的にいま検討している最中であります。私はその一環として防衛大学という問題も取り上げてもらいたいと思っておりまして、防衛大学を独走させようとは思っておりません。この点は文部大臣の意見を尊重し、よく相談をしてやるべきであると思っております。と同じように、この少年自衛官の問題についても考えてみたらどうか。そういう少年自衛官になることと軍国主義とは直接結びつくものではない、軍国主義という問題で一番大きな問題は、為政者の心がまえ、意図というもの、これが非常に大事であると思うわけです。またその場合行なう教育の内容も非常に重要な問題で、つまりこれも為政者の意図ということにもなります。その点は自衛隊の精神をくずさずに、平和国家を建設するための防衛措置をやるということに徹してやっていきたいと、そう考えておるわけであります。
○上田哲君 為政者の意図というところは、まさに大きくとらえなければならない重大なポイントでもありますし、大いに警戒しなければならないポイントでもある。それは大きな争点です。その辺はちょっとあとで言います。
 いま長官のおことばの中に非常に重大な問題が出てきたと思うのは、学校教育法によって高校卒などという認定が得られなくても、その課程を修了した子供たちが社会で十分に受け入れられていくならば、これはいいじゃないか、こういうことでありました。現に防衛大学校もそうした資格取得上の結着がまだついていないにもかかわらず、それなりに大学とまぎらわしい名前で現存しているわけです。そこで私は、最後にお答えいただきたいのだが、いまのおことばをそのまま進めていくと、ほかの条件がととのうならば、防衛大学校と同じように、学校教育法その他から高校卒という資格認定をするということにならなくても、こういう少年自衛官教育隊ですか――団ですか、学校ですか、そういうことになるだろうと思うのですが――そういうものを発足させるお考えでありますか。
○国務大臣(中曽根康弘君) そうしたいと思っておるのです。必ずしも正式に免状をもらって高校卒ということにならなくても、そういう事実上の待遇が得られればそれでも前進ではないか、そういう気がいたしておりまして、しかしその点についても、これは労働省や文部省とよく相談しなければいけない問題でありますから、まだ文部省に相談したわけでも何でもありません。そういう意味におきまして、これからいろいろ検討してまいりたいと思います。
○上田哲君 文部省や労働省は、どうせ政府部内のことでもありますし、現に結論が出なくても、現存する防衛大学校を見ても、ほかの条件がととのえばそういう可能性が出てくるだろう。特にいま私の考えだとおっしゃるけれども、現にあなたの党の安全保障調査会で演説された文章の中に、「自衛隊を国民教育の場とし、部隊内における教育施設を充実することにより中学卒の隊員は任期終了後は高校卒の資格を認定して高校卒並みに社会で取り扱われるようにし、また高校卒隊員は任期後は大学卒として取り扱うことにしたらどうかと思う。」云々ということがあるわけでありますから、これはきょうの思いつきということではなくて、非常に意欲を持っていらっしゃるということが十分に推しはかれます。時間の関係もありますからそのことだけにこだわってはいられませんが、非常に大きな問題として、日本のやはり防衛構想の基本にかかわる問題、教育の問題に足を伸ばす問題、そういう問題としてあとでひとつ大いに議論をしたいと思います。
 婦人の場合。WACのほうは千人という数字その他が出ましたが、これは先におきます。やはり非常に大きな問題は予備自衛官の問題。しかもこれは予備校というような感覚をはるかにこえて、さっき長官の言われたことばで言うと、十三個師団は第一線の有効なところで使用して、その背後関係を十分に固めるんだ、こういうことがはっきり出ております。これは本来予備自衛官のあり方の問題それ自体だと思うのですけれども、この予備自衛官を、先ほどのお話では、いままでは一尉以下であったのを一佐までやるんだ、予備自衛官自身の中に一佐がなければ、予備自衛官だけでは連隊は組めないわけです。必ず補充要員でしかない。ところが一佐というのが予備自衛官の中に出てくるというのは、予備自衛官のみで独立の連隊を組むことができるという点で、これは自衛隊編成上あるいは作戦行動上、あるいはそれを背後支援勢力として前に出ていく十三個師団の使い方の問題という点では、非常に大きな違いが見えることになるのだろうと思います。その予備自衛官の拡充計画、あるいは新しい展開の問題について御説明をいただきたいと思います。
○国務大臣(中曽根康弘君) 予備自衛官は、大体防衛出動が下令されましたときに後方を固める、あるいは損耗補充、そういう意味で採用されておるのでありますが、防衛出動が下令されて自衛隊が各方面に出動するということになりますと、やっぱり地域の問題あるいは補給の問題、あらゆる問題について人間が足りなくなる。自衛隊といたしましても、そういうときに予備自衛官を活用していろいろな連絡とか復旧とか、あるいは衛生事務とか、そういうことを担当してもらうという考え方に立脚しております。その際に曹、士だけでは体系としては整わない。いままで一番上の人は一尉でございますけれども、一尉だけでも、それだけの予備自衛官というものを召集したりしますれば、とても体系としては整わない。やはりやる以上は佐クラスまで持ってこないと均斉ある体系にならない。そういう考えから佐クラスまで広げたらどうか、そういう考えに立っているわけです。そういう場合に、予備自衛官を一つのユニットとして使うか、あるいは現在の自衛官と混合して使うか、それはそのときの情勢によってきまると思うので、場所によっては予備自衛官だけを一つのユニットとして中隊とか大隊とか、何とか部署、連絡部署、補給部署、衛生部署という面で使う場合もありましょうし、その点は今後の研究課題であると思っております。
○上田哲君 ユニットとして使うこともあり得るし、あり得ない場合もある。つまりあり得るわけですね。
○国務大臣(中曽根康弘君) それがどの程度のスケールになるか、大隊単位のユニットになるか、あるいは中隊単位のユニットになるか、あるいは補給処とか、衛生関係の病院とか、そういう面のユニットまで拡充されるか、これは研究課題でありますけれども、混合される場合もあるし、あるいはユニットとして使われる場合もあると考えていいと思います。
○上田哲君 予備自衛官というものの役割りは、従来は有事の後方支援と戦闘損耗だ、これは間違いない。しかしそれをたとえばユニットとして、大隊であるとか連隊であるとか、いろいろな区分があるかもしれませんけれども、ユニットとして使い得るということも含めてということになると、単純に後方支援であるとか、戦闘損耗ということから出て、具体的に場合によっては今日存在する十三個師団と並置できるような戦力としての扱いを考えることになる。そこまで戦力としての具体的な配置を考慮することになりますか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 演練の度合い、練達の度合いというものがありますから、そこまでいくことはちょっと無理じゃないか、むしろ後方関係の仕事をやってもらうことのほうが有効ではないかと、私はそういうふうに考えます。
○上田哲君 その予備自衛官をどういう計画でどのようにふやすのですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 防衛局長をして答弁させます。
○政府委員(宍戸基男君) まだ実は構想の段階でございますから、そう詰まった問題はございませんけれども、御承知のように三次防では三万数千人、いわゆる全部予定どおりいきますと三万九千人くらいになるわけですが、いま長官のお話しのような構想を実現するとしますと、それの約二倍前後は要るのじゃなかろうかなあというふうな感じを持って、いろいろな作業をしている段階でございます。
○上田哲君 ちょっともう一回言ってください。数字を正確にしてください。
○政府委員(宍戸基男君) 三次防で三万九千人の予定でございます。
○上田哲君 そうなりますと三万九千人が倍になるというのは、これはやっぱり簡単なことではないわけですよ。七万八千人ですよ。陸ですね。七万八千人という数字は、十八万体制の中の七万八千でしょう。これはたいへんな、単なる何といいましょうか、補助任務というようなことではない。非常に大きな陸上自衛隊の支柱の中心になる、これは当然な数字的な結論だと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 予備自衛官は普通の自衛官と違いまして、ふだんは自分の職業に従事しておりまして、そして年間一定時日を召集に応じて訓練を行なう。そのためにいまは月千五百円ずつ手当をあげて、あとは出張してきた場合の旅費と、日当二百円あげていくという数字であります。それでいろいろ財政的顧慮等も考えてみまして、日本の防衛自体を考えてみますと、その程度の予備勢力というものは、一朝有事の防衛出動の場合を考えていくと確保しておく必要がある。その程度のものを持っていないと、防衛出動の場合のいろいろな変化に応ずることがむずかしいのではないか、特に後方関係の問題、補給関係の問題を考えてみますと。そういうように考えまして、その限度で一応次の防衛計画について考慮してみたらどうかといういま構想中のものなんでございます。
○上田哲君 一朝有事の際の防衛出動に必要なんだということばでありますけれども、そういうことになりますと、この予備自衛官七万八千が独立の連隊なり大隊を組み、防衛出動をするということを含んでおるという意味ですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) そういう意味ではございません。予備自衛官は、先ほど申しましたように後方支援、あるいは補給とか衛生とか、そういう仕事をいまのところは考えておる。しかし情勢によっては補充に使うということもあり得ます。原則としては後方支援という関係にいくだろうと思っております。
○上田哲君 実際にたいへん安い給料で動員義務を、召集義務を負うているというようなことですけれども、これができるのは簡単に魚屋さんや八百屋さんや、パン屋さんをやっているという人たちではないわけです。大体ならしていくと、傾向としてはそういう一定の期間の訓練に社内有給休暇で出ていけるような理解のある会社、軍需会社などに入っていて備えるというような、そういうことになっているわけです。やはり有事出動ということをおっしゃる以上、パン屋さん、魚屋さんがすぐ前かけをはずして走ってくるということにならない実態がここに一つあるわけですから、場合によっては単なる後方支援というようなことではない状態ということも十分に考えた上での補充計画だと思うのですが、念のためにひとつ、単なる後方支援だということにして、七万八千という大きい後方支援を必要とする十三個師団正規軍の防衛出動というのは、どういうことを考えていらっしゃるのですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) これは日本に対する外部侵略等がどういう体系でくるか、その点はいろいろそのときの情勢変化によるので、固定的には考えられないと思います。しかし一応日本の国を自分で守る、日本の本土防衛については外国の力を借りない、そういう体系で、時間をかけて年月を入れて整備していこうと思いますれば、先ほど上田委員、最初に申されました長期的展望の中にそういう程度のスケールのものは入っていていいのではないか、だから正直にきょうは申し上げたわけであります。その程度のものをあまりオーバーするということは、いまのところどうかと思いますけれども、その程度のものまでは考えておかぬと、防衛責任者として責を全うできないのではないか、そういう感じが私は正直に申してしているのであります。
○上田哲君 そうなりますと、私たちの議論の行く先は、いわゆる間接侵略論というようなものを確認していかなければならないところにどうしても行きついていく。間接侵略イコール治安出動という荒い議論でなくても、治安出動というようなジャンルで議論されている部面に、後方に七万八千人の予備自衛官、つまりベテランの兵士をして、連隊長までちゃんと自己充足できる軍隊があって、そして十三個師団がどこへ出て行くかということになると、これは長期展望だと言われるから、私も急に目をつり上げて言おうとは思わないけれども、逆に言えば、これは目をつり上げなくても、目がつり上がっていくような大きな問題がうしろにある。このあとそこをじっくりお話を伺いたいのです。
 ところで、その前に、念のために、ひとつ数字でお伺いしておきたいのは、沖繩ですね。七二年返還は、カンボジアがどうなろうと、どういうことがあろうと、絶対に心配がないのだと佐藤さんがしょっちゅう言われておる。そこで、沖繩七二年返還ということになると、当然肩がわりの自衛隊がどれだけあそこにいくのかということがあると思います。そこはどうなんでしょうか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 七二年、沖繩が返還されました以降日本の自衛隊が沖繩の防衛に任ずる、これは国土防衛でございます。そういう考えに立脚してどの程度のもので防衛するか、そういう点について、アメリカが沖繩をどういうふうにしようとしているのか、そういう点も相談しながら数量等もきめてまいりたい、そう思っておるわけであります。
○上田哲君 まだ全くきまっていないということですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) まだ全くきまっておりません。
○上田哲君 十九日に日米安保協議委員会がございますので、ここのテーマにあがっておるようにも聞いておるのですが、この辺では問題煮詰まらないでしょうか。
○国務大臣(中曽根康弘君) これはまだ議事日程について先方と正式の了解がございませんから、正確なことはまだ申し上げにくいのでありますが、おそらく沖繩問題について話し合いを始めよう、そういうかんぬきを開く話があるのじゃないか、そう思います。
○上田哲君 かんぬきを開いて、どのくらいの話をされますか。
○国務大臣(中曽根康弘君) そろそろ話し合いを始めようという話し合いをする。
○上田哲君 それでは、沖繩の陸では大体一個連隊二千人、空では一個飛行隊十八機ぐらい、レーダサイト四基ぐらい、海では一地方隊ぐらいを持っていくということを、かんぬきを開いてお話しになりますか。
○国務大臣(中曽根康弘君) まだ数字的には全くきまっておりません。私の個人的考えでは、それほど大きな自衛力を持っていこうと思っておりません。
○上田哲君 それほどということばの意味ですけれども、いま私が申し上げたほどという意味でしょうか、それとも一般的にそれほどということでしょうか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 一般的にそれほどでございます。
○上田哲君 私が申し上げた数字については、どのようにお考えになりますか。
○国務大臣(中曽根康弘君) まだ検討中でございますので、上田委員の申された数字について論評することは差し控えたいと思います。
○上田哲君 これはやはりわれわれだけではなくて、沖繩の人たちの関心もありましょうし、まさにこれは国土防衛だと、いま胸を張られたというかね合いからいっても、この辺のところは固まりましたら御説明をいただきたいし、大きいオーダーとは私は思いませんけれども、今後の増員計画のからまってくる要素でしょうから、姿勢が固まりましたらまたすみやかに御説明をいただきたいと思います。
 どうも、時間が非常に足りなくて、時計の針が気になってしょうがないのですが、じっくりひとつ前に進めましょう。そこで、いよいよ間接侵略論ということになると思うのです。そもそも間接侵略というのは何ですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 国際法上明確な定義はございませんが、外国の教唆または干渉によって引き起こされた日本国における大規模の内乱及び騒擾をいうものと解しております。
○上田哲君 いま長官の言われたのは旧安保の内乱条項ですね、そのままのことばなんですね。間接侵略とは何かと聞いて、旧安保条約の内乱条項のそのままのおことばでお答えになったということは、間接侵略というのは内乱であるということになるのですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) これは定義の問題で、すなわち、それであるというふうに即答はしかねるとは思いますけれども、内乱も間接侵略の一形態としてあり得ると思います。
○上田哲君 ことばの定義をめぐっていろいろ、てにをはの話などしようとは私も思っていないのです。しかし、あえてことばじりをとらえることでなしに申し上げるが、内乱もその一つであるというようなことだけでは、とうてい満足できない。ことばの奥にある感覚というものまでさかのぼって議論をしなければならないと思うのです。私は間接侵略というのはよくわからないのですよ。こぼれのないてにをはを使って、修辞学的にもきれいなことを言ってくれとは言いませんけれども、私は間接侵略ということばが、どうもよくわからぬのですが、長官は、間接侵略ということばを、正確な内容のあることばだとお考えになりますか。
○国務大臣(中曽根康弘君) これは、直接侵略との対比において考えられることばだと思うのです。それで、外国の教唆または扇動、干渉ということが、一つの非常に大きな要件になっていると思うのです。ですから大塩平八郎の乱みたいなものは、これは間接侵略とは言えないでしょう。しかし、内乱だけであるかといえば、騒擾の大きな事件なんかも入るでしょうし、内乱と騒擾が一緒の場合も入るのではないか。しかし、それらはいずれも外国との関係において注目されるところであると思うのです。
○上田哲君 間接侵略が直接侵略と対比してというところまでは、概念規定の論理としてはわかりそうなんですけれども、これはもうタヌキの雌がムジナでムジナの雄がタヌキだというようなわけのわからぬ循環になっていく。そうですね。それは概念規定としては論理上はいいかもしれないけれども、その内容を忠実に詰めていくということでは、たいへん親切でない言い方になるだろう。しかし、いまの言い方の中で出てまいりましたものは――言うまでもなく、内乱だけではなくて騒擾だというお話もあったけれども――それはすべて外国からの指示連絡、教唆扇動――まあことばはいろいろあるでしょうけれども、そういうつながりが一つなければ成り立たないということになるだろうと思います。そういうことになっても、なお私は間接侵略ということの具体的なイメージが十分には浮かび上がってこない。この浮かび上がってこないところがたいへんくせ者であって、それが実はたいへんあいまいなものの上に足を据えている自衛隊の性格論の基本にも触れてこざるを得ないのだと思うのです。直接侵略についての考えは、私は、おそらく中曽根長官とはそんなに違うと思わない。強大なわが身知らずの大軍備をつくるのだということは、中曽根長官もいま思っていらっしゃらないと思う。とにかく大規模な直接侵略。A国、B国、C国が一斉に核を踏まえて攻め込んでくる、これは大体いまの戦略技術論ではどうにも対抗できない。それがわれわれの議論の共通の前提になっていると思うわけですから、そういう前提の中で、あと大規模の直接侵略からこぼれたものが間接侵略だというようなことでは、どうも発想がはっきりしてこないし、それでは、そのこぼれたものに向かって、一体何を基準にして軍備を増強していくのか、必要限度ということであるにしても、その尺度というものが非常に明確になってこない。そこでわれわれは明確にならないままに何兆何千億という金を、税金を費消するということが許されないという、モラルの問題から防衛力の限度論というものが出てくるのだと、私は発想としてはそう思うわけです。別なことばで言えば、政府側の最低限の気がねですよ。この間接侵略には常にそういうふうなことで、本質的にそういう気がね論があると思うのです。そういう気がね論がまだある間は私は健康的だと思うけれども、ところが気がね論があるにもかかわらず、間接侵略の位置づけというものが変わってきている。間接侵略の位置づけが、そんなに強大になっていかないのならばいいですけれども、足がなくて、その上に咲いたお化けの花がさらにさらに大きくなっていくということになると、国民の危機感、不安はさらに大きくなっていかざるを得ない。去年の五月に愛知さんがアメリカに行かれるときに防衛庁から出た「今後の自主防衛力整備について」の中で、「間接侵略と直接侵略の事態に際し」と書かれています。直接侵略があって、その直接侵略に対比するものとして、こぼれたものが間接侵略なんだというのが、いまの長官の大体発想だったと思うのですけれども、ところが、ここに出てくるものはそれとは逆で、間接侵略の位置づけというものが、そうしたあいまいさにもかかわらず、たいへん大きく直接侵略の上に上がってきているという問題が重要なことになるのだと指摘したいのです。この位置づけの問題とあわせて、いま少し突っ込んだ御見解をいただきたいと思います。
○国務大臣(中曽根康弘君) 前に、これはマッカーサーの占領中、その大もとでありました、山村工作隊とか、あるいは中核自衛隊とか、武装蜂起だとか、共産党の前のテーゼのようなものがありました。ああいうことが実際に行なわれて、しかも外国との関係があれば、これはやはり間接侵略の萌芽であるのではないかと思います。そういう過去の経験等も考えてみまして将来を考える場合に、そういう可能性が絶無とは言えない。また、政治が失敗した場合に、国民の不安が非常に増大し、そうしてそれが国内だけの問題にとどまっておればいいのでありますけれども、外国との牽連関係が出てきて、そういうような不安や暴動、騒擾、そういうものが醸成されるということもないとは言えない。そういう問題も頭の中に置いて、直接侵略、間接侵略、そういうことばが挿入してあるのだろうと私は思います。
○上田哲君 間接侵略というそのことばですが、先ほどのは、去年の五月の愛知さんの訪米のときに出てきたことばですけれども、歴史的にたどってみても、あまり古い使われ方はしていない。四七年のトルーマン・ドクトリンあたりから出てきたように思うのですけれども、どうしてもいまのお話を聞いていてもわからないのです。たまたま同じように、先ほどの資料の中に、長官自身が述べられたことばがありますね。「軍事力が全面戦争を回避しつつもっぱら政治の手段として用いられる現代において、わが国に対し万一外部から侵略があるとすればなんらかの原因で国内の治安が乱れた場合に叛乱分子に地方政権を樹立させた上でこれを外部から支援するという形をとり、艦隊が舳艫相銜んで海洋を越えて来襲し、」、非常に古い表現ですけれども、「わが本土に部隊を大挙上陸させるというような形の侵略は目下のところ考えられない。あるいは事態によってはことさらにたとえば伊豆大島近海にICBMを練習に弾着させ、日本を脅迫するというような形をとるかもしれない。いずれにせよ、侵略者はアメリカを戦争に引き込まないよう細心の注意を払い、その限度でゲリラ的戦争を断続させ、国内破綻を狙うと思う。したがって自衛隊はこのような事態に備えて訓練し、装備することが必要である。」、こういうことを言われております。
 一番最後の一行をとらえて言えば、防衛庁ではいまはっきり間接侵略というものに対する高い位置づけというものが出てきているわけです。そこで私はここで述べられている一つのイメージ、想定、この中曽根長官の想定を追って、間接侵略という概念をもうちょっと具体的に詰めてみたいと思うのです。
 いまの最後の一行に関連して、もう一ぺんお尋ねするのだが、いまや自衛隊の方向は、まず直接侵略があって、次に間接侵略という主と従の関係になっているのではなくて、おもに間接侵略に対応するものとしての防衛力整備なのであるということでいいのでしょうか、どうですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 直接侵略と間接侵略というのは並列しているだろうと私は思います。しかし、大体いままでの考え方は、わりあいに直接侵略ということを頭に置いて整備されてきたような気がするのです。しかし、そういうような「舳艫相銜んで」来るというような様相のものは、いまの情勢を考えると、そうは考えられないので、むしろ最近行なわれている各種の事変、騒乱等を見ますと、そこに私が申し上げましたように、これは例として申し上げたことでございますが、そういう可能性にも備える必要性が前より増してきている。その認識において、その昔の日本海海戦とか、あるいはミッドウェー海戦とか、満洲の平原で、いまの「坂の上の雲」で書いておりますような遼陽の会戦とか、ああいうものが行なわれるということは、いまのところそう考えられない。そういう意味で、日本の戦略構想を確立するということは一番大事である。これは本会議で御答弁申し上げたとおりです。そういう基本的観点に立って、日本の防衛構想の中に直接侵略と間接侵略というものを並列に考えていこう、そういうふうな意味でございます。
○上田哲君 並列的に考えていくのだけれども、日本の戦略展望の中で見るというと、間接侵略重視になってきているという実態を御説明いただいたように思うのです。そこで具体的に行きましょう。この表現の中にあるのは、「なんらかの原因で国内の治安が乱れた場合に叛乱分子に地方政権を樹立させた上で」云々ということばがあるわけですが、地方政権を樹立するというのは何ですか、一体もう少しこまかく具体的なイメージで御説明いただきたい。
○国務大臣(中曽根康弘君) これも、それが破局に向かって進むという場合には、交戦団体ということになります。これはベトナムや、あるいはほかの場所でもそういう可能性はございます。あるいは東ヨーロッパの、トルーマン宣言が出てくる前の情勢その他を考えてみても、そういう可能性もあると思います。そういう一般的な一つの例示としてこれは申し上げたのであります。
○上田哲君 例示でありますけれども、間接侵略に対する対応力という方向で自衛隊が訓練されている以上、自衛隊としては、この地方政権樹立というような具体的な例示の想定の上に立っての訓練をなさっておられますか。
○国務大臣(中曽根康弘君) まだしておりません。
○上田哲君 揚陸艦というのがありますね。これは目立って大きいのがあるわけではないし、これからようやく数隻つくっていくというまだまだ現在その段階のようですね。局長、そうですね。そういうことですから、まあこれで大規模な兵員輸送だとかいうことを私は大げさに言うつもりはない。しかし、日本が絶対に防衛軍備なのだということであれば、性格上は揚陸艦などというものは必要ないはずのものですよ。こういうものがあるということ、これはことばで言いくるめれば、いろいろなことが言えるだろうと思うのだけれども、そのほかにもヘリコプターがそういう役目を果たすというような計画もある。あるいはCXの問題もある。不整地着陸可能なものですから、四次防でこれが本格化する計画だと聞いております。そういうようなものがあって、なお訓練をしていないのですか。
○政府委員(宍戸基男君) 揚陸艦のお尋ねがございましたが、先生のおことばの中にもありましたように、これは部隊を輸送するのが主任務でございます。そして有事の際には岸壁等が破壊されている可能性も十分ございますので、たとえば具体的に申し上げますと、東京なら東京、九州なら九州の連隊なり師団なりをたとえば北部に、北海道に運ぶという場合に、岸壁のないような場合には、その揚陸艦が役に立つというようなことを考えて、現在訓練をしたり装備をしたりしているわけでございます。
○上田哲君 ことばじりをとらえるのではありませんよ。ことばじりをとらえるのじゃありませんが、北海道ということばがありました。北海道で演習をやったでしょう。
○政府委員(宍戸基男君) それは北海道でもその揚陸的な訓練はしたことはあると思います。
○上田哲君 私が聞いているのは、地方政権樹立というようなことを想定して、そういう形での演習というものが行なわれたであろうと申しているわけです。
○政府委員(宍戸基男君) 具体的に地方政権が、どこでもよろしいのでございますが、たとえば札幌なら札幌に樹立されて、そうして何といいますか、間接侵略の態様になったというようなことは、私はあまり聞いておりませんが、むしろその揚陸艦を使っての訓練は、部隊の輸送とか、あるいはむしろ直接侵略に対応して、それに対応する訓練だとか、それからまあお尋ねの間接侵略に近いものとしましては、治安行動の訓練をわりあいしょっちゅうやっておりますが、そういうことは北海道でも、あるいは東京周辺でもやっていると思います。
○上田哲君 その場合の治安行動と、たとえば地方政権の樹立を想定して行なう出動訓練と、どう違うのですか。
○政府委員(宍戸基男君) 具体的に差を申し上げるのもなかなかむずかしいわけでございますけれども、具体的にある地方政権が樹立されたという想定をして訓練をしたというのはあまり聞いてないのです。ただ、警察がよくやっております機動隊の訓練を少し大げさにしましたようなものは、各部隊でそれぞれやっております。
○上田哲君 あまりやっていませんという表現はおかしい。やっているのじゃないですか、とにかくやっているでしょう。
○政府委員(宍戸基男君) 直接侵略に対処する訓練、間接侵略に対処する訓練、あとのほうで申し上げますと、治安行動の訓練ということになりますが、そういうのはやっております。
○上田哲君 小さいことだからあまり言いませんが、長官、そういう訓練はやっているのですよ。また、いまの自衛隊の方針として、それをやっていなければおかしいのですよ。少なくとも、国の運命をある考え方の中でゆだねられているとされている自衛隊が、間接侵略をこれほど表に出している。たとえばその長官が、こういう文書の中でこういうことばをお使いになっていて、それはやっていませんというようなことになれば、それはたいへん問題だろうと思うのですよ。現に、たとえばやっている規模が非常に小さくても、その程度のことはやっていますと、もうちょっと簡単にお認めになったらいかがでしょう。
○国務大臣(中曽根康弘君) 自衛隊の出動には防衛出動と治安出動というのがございまして、治安出動に備えていろいろ訓練をしている、そういうことは十分あり得ると思います。しかし、地方政権がどこかに樹立されて、それを想定して訓練をするという大規模なそういうものはやっていないと私は思います。
○上田哲君 ちょっと念のために聞いておきますが、地方政権樹立ということを想定する場合の出動は防衛出動なんですか。
○政府委員(宍戸基男君) ちょうど防衛出動と治安出動と混合した事態ではないかというふうに考えます。
○上田哲君 防衛出動と治安出動と、まあそれでも半分は認められた。私はサギをサギ、カラスをカラスと見るということにして話を進めますが、つまりやっているのですね。やっている。そこで、少なくともそういう混合形態でも何でもいいですが、ここで仮想敵になぞらえて言うのですけれども、仮想地とでも言いましょうか、そういう仮想地はどこですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) これは再三申し上げますように、仮想敵国というのは、日本は持っておりません。
○上田哲君 お耳が遠いのかもしれませんが、仮想敵のことを聞いたのではないのです。軍隊があって仮想敵国がないということはたいへんおかしな話ですが、私がいま言っているのは、地方政権樹立の仮想地です。いま間接侵略論をやっている。そして、場合によれば地方政権が樹立するかもしれないと長官は例示された。いろいろなことを想定してやっているのが私の義務だと長官はおっしゃるのですから、地方政権樹立ということがあって、治安出動と防衛出動をミックスした現実の出動訓練が行なわれているとすれば、これは外国じゃなくて国内ですよ。この幾つかの島の中ですよ。決してこれはほかの国への配慮は要らんのですよ。そこにとにかく仮想地なんというものはないということじゃ、訓練はできないじゃないですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) この地方政権云々というのは、私が着任して、それから活字になって出てきて論議されておるのでありまして、いままでの防衛庁の内部ではそれほどの何といいますか、飛躍したような発想というようなことはなかったと思います。ただ治安出動訓練というのはありました。しかし、私は、この日本の戦略体系、それから今後の平和と防衛との関連、そういう趨勢を見まして、そういう概念を自民党の安保調査会の方に聞いてもらって、それでいいかどうかと、そういう意味でたたき台として私はそういうことばを持ち出したのであります。そのことばのその部分もまだ熟したものではありません。しかし、そういう一般的概念を認識として考えてもらう必要がある、そう思って申し上げたのでありますから、どの場所でどういう地方政権が樹立されて、それに対してどういう行動をとるというような、そういうフォーマルな演習や何かは行なわれていないと私は思います。
○上田哲君 じゃ、演習の話にはあまり重点をしぼらずに、側面を変えていきましょう。しかし、地方政権ということばは単なる例であった。例示であったということは、たまたま思いつきであったという程度の説明では話は終わらないと思うんです。あなたのほうでお出しににくければ、私のほうから申し上げるが、北海道がやっぱり一応の想定になっているのじゃないかと思う。あの津軽海峡の向こうへ地方政権ができた場合に、あの海をどうするんだということは、私は防衛庁の中で具体的に論議されていることと思う。話を広げますが、「長期統合戦略見積もり」の中で言えば、明らかに政経中枢防衛論ということが論議されているではありませんか。東京なり大阪なり名古屋なり、そういう中枢政経都市、これは地方政権どころではない。そういう問題が出てくる。これを想定をしている段階にきているということを、それではどのように御説明になるのですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) それは自衛隊の任務として、中枢政経地帯を守るということは当然考えられる。また、その演習、訓練等もしておかなきゃならぬものだろうと思います。それはある意味においては治安出動にも該当いたします。
○上田哲君 とすれば、そのもっとずっと前の段階である地方政権という想定が明らかにされないのはおかしい。都市防衛、大都市防衛、政経中枢防衛なんというのが出てくる、そういう概念が具体的になっている。それなら、もっとずっと手前の問題として、間接侵略の例示としての地方政権論に見合うような訓練というものがなければおかしいし、そういう想定というものがあるというのは、そんなに答弁にこだわることはないのです。長官は、運転手さんからお手伝いさんまでわかるような自衛隊の話をしたいと言っているのに、少し軽々しい答弁じゃないかというのです。そこで、今度は海のほうへいきましょう。つまり私が先ほど来一生懸命がんばって説明を求めておることは、間接侵略というものの概念がどうしてもわからぬから、それに対応する自衛隊の防衛戦略というのは何なのかということなので、その点を忘れないようにして御答弁をいただきたいのですが、海といえば港湾警備、海峡警備ということに当然なってくる。海峡警備でいきましょう。海峡警備というのは、どういうふうに考えているわけですか。
○政府委員(宍戸基男君) 海においてはいろいろのことを考えますと、やはり現在のいろいろな様相からしますと、対潜水艦に対する作戦といいますか、潜水艦の脅威というものを一番頭に描かなければならぬだろうと思います。日本の地形を考えてみますと、海峡を潜水艦が通るか通らないかということがわりあい重要な要素になろうかと思います。そこで、海峡において、潜水艦以外のもちろん艦艇も含めますけれども、潜水艦を頭に置きながら、それを探知し、それを打撃するというふうなことを、海上自衛力のいろいろな整備構想なり訓練計画で考えている、こういうことでございます。
○上田哲君 海峡、どこをどういうふうにするのですか。
○政府委員(宍戸基男君) 日本の周辺には海峡は三つございますが、それらの海峡において、できるだけ海上自衛力をつけたいというふうに考えておるわけでございます。
○上田哲君 津軽海峡と対馬海峡を閉鎖するのでしょう。
○政府委員(宍戸基男君) 津軽も対馬も、それから宗谷海峡もあると思います。日本の周辺には、北から言いますと宗谷海峡があり、それから津軽海峡があり、それから対馬海峡がある、これをできるだけ、何といいますか、まあ抑止したり打撃をしたり、探知する能力をつけたいということであります。
○上田哲君 歯切れが悪いですね。イメージがはっきりすればいいのです。対馬、津軽を封鎖するのだろうと思っているのです。だから、宗谷に追い込む、そうなれば一日余り対応可能の余裕が出てくるということなんでしょう。
○政府委員(宍戸基男君) そういうことも考えられます。
○上田哲君 念のためにちょっと伺っておきます。水中固定聴音器LQO3、LQO4などの開発計画あるいは設置の現状、そうしてその辺ですね、その辺説明してくれませんか。
○政府委員(宍戸基男君) LQO3という探知器につきましては、三次防で計画いたしまして、ある数量配置しつつあります。
○上田哲君 十六基。
○政府委員(宍戸基男君) まだ十六基の計画でございます。LQO4につきましてはまだ開発中、開発を考えているというところでございます。
○上田哲君 これまではまるっきり探知能力がゼロにひとしかったそうですね。それから機雷というのは全然役に立たないのだというふうに聞いていますが、そのからみはどうですか。
○政府委員(宍戸基男君) 探知能力はゼロだということはございません。一次防、二次防、三次防とまいっておりまして、まず三次防現在で申し上げましても、逐次上がってまいっております。LQO3もその一つでございますけれども、こればかりでもございませんで、各種の他の艦艇その他による探知の方法もございますし、しかし、まだ十分とは申し上げられない。これから逐次上げていきたいと思っております。
○上田哲君 それはもう少し具体的なことがあるわけですけれども、つまり全くつかまらなかったということがあるので、わがほうの能力としてはゼロではないと言っている話を聞いているわけじゃないのです。実績はどうだったかということを聞いているのです。実績はゼロだったという苦い反省に立って、いま一生懸命力を注いでいるんだと言ってもらえばそれでいいのです。それで私が明らかにしたいのは、やはりこれもまた侵略に対応し得るものじゃないんだということが浮かび上がってくれば十分なんです。ついでに言えば、船団護衛ですね。マラッカ海峡論はばかばかしい話だと長官はかつて言われた。私もそう思います。それはそれでいいと思う。そこまでの話ではないとして、船団護衛の能力というのは、いまどのくらいあるのですか。
○政府委員(宍戸基男君) これも具体的に申し上げるのはなかなかむずかしい問題でございます。ただ、一例というか、そういう運用構想を、いつも有事の際にするというわけではございませんけれども、具体的にどうだというふうなことのお尋ねでございますので、例をあげて申し上げますと、現在護衛隊群というのがありますが、それで船団を組んで、有事の際を想定しまして、五十隻なら五十隻の船団を組んで、それに船をずっとつけていくというようなことが可能であるかどうかということになりますと、ある程度の距離までは可能でございます。しかし非常にまだ距離としては不十分な距離しかできない。それは対潜水艦作戦というか、抑止というか、そういう能力もまだ十分ではないと言わざるを得ない、そういう状況でございます。
○上田哲君 遠い距離まではという話ですが、やはりもっとはっきり言えば、これはできないですよね。たとえば、船団形成能力からいっても、船の場合自身の、それから日本の通商量からいっても、マラッカ海峡どころではない。もっともっと手前だって船団護衛は不可能だという実情に立っていると私は思うのです。長官、そういうことですね。
○国務大臣(中曽根康弘君) そのとおりであります。
○上田哲君 もう少し広げて言いますと、海の問題は、長官のことばによれば、武器の搬入、通商破壊、こういうことになってくるわけですね。武器の搬入の問題もちょっといろいろ質疑をしたいのですが、これは時間が追われますからそこは省きましょう。通商破壊。通商破壊というのは、かなりの重点がここに置かれているというふうになっていると思います。その通商破壊に対してはどういう対処方針、どういう訓練を行なっておられるのか、御説明ください。
○国務大臣(中曽根康弘君) 日本の間接侵略と申しますか、有事の想定を考えてみますと、宣戦布告をして、そうして戦争みたいなのが行なわれるという可能性よりも、さっき申し上げましたように、非常に不規則な政治の中に軍事が入り、軍事の中に政治が込められているというような形のさみだれみたいなものが初め出てくるという可能性がなきにしもあらずであると思います。その前にはいろいろ脅迫みたいなことがあって、民心を非常にゆるがすということもあるでしょうし、また場合によっては、ドイツが第一次世界大戦のときに国籍不明の潜水艦が船を撃沈させて恐怖心を与えて、国内人心の乱れをねらったとかいうようなこともあります。あるいは国籍不明の浮遊機雷が港のまわりに流れつくとか、そういうことも一応想定としては考えられます。そういうようなことにも一応は防衛としては考えを向けて対処するということもしなければならない。
 それで船団護衛というようなことを考えますと、ともかく日本の一番使われている港湾に向かって鉄鋼資源なり、食糧資源なり、あるいは石油資源なりがいまも続々と入ってきているわけでありますが、その港湾の入り口というのは一番船が密集するわけです。その一定限度ぐらいまでは、密集する一番密度の濃い地帯でありますから、とりあえず、その辺は日本の海上自衛隊その他で守る。いまのところはその程度の構想で、その自衛力を整備していくという考えに立っておるわけでございます。
○上田哲君 簡単に質問をまとめておきましょう。通商破壊なるものに対応するものとしてはパトロールなりハンターキラーですね。第七艦隊に一グループがある。CVSを中心とする給油艦、駆逐艦、潜水艦など、CVSは持てないからそこでDDHになる。これでDDA、DDG、DDKなりを一群とする四群をやろうということになっておりますね。これくらいのところだろう、簡単に言えば。たいへん強力な軍隊が直接侵略をかけてきた場合には全くだめなんだから、そこで間接侵略への対抗軍備論というのが浮かび上がってくるのだと言うのだけれども、どうもこういういろんなデータを並べてみると、一体自衛隊がどうもこういう直接侵略からこぼれるものとしての間接侵略に具体的に向き合っているというイメージがぴったりわいてこぬのですよ。ところが、それにもかかわらず、間接侵略ということばのほうが直接侵略の上に置かれるというのは、直接侵略にはどのみち対応できないのだからということではなくて、間接侵略ということばを標榜することによって別な目的、もっと突っ込んで言えば、自衛隊の増強を正当化していく理由づけとして、間接侵略ということばが使われているのではないかと考えられてくる。つまり、もっとほかのことばを使うならば、三次防の中期である現段階までは、何はともあれ、大ざっぱに敵国とか相手側とか、侵略国とか、たいへん抽象的なことばでそれをまとめて、その直接侵略仮想敵に対する防衛体制の整備であったものが、これから先は間接侵略仮想敵とでも申しましょうか、そういうものに向かっての防衛体系をつくり上げていく、こういうことになろうとしているのだといえると思う、大ざっぱに言って。こういうふうな理解をしているのですが、いかがですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) そういう幾つかのステージがあると思います。直接侵略で上着陸をやってくるというのは一つのステージ、その前の段階では国籍不明の潜水艦とか機雷群というものも考えられる。それからその中に、あるいはその前の段階で、いろいろ内乱、騒擾状態が国内で起こるということも考えられる。そういうものがミックスして出てくるということもまた考えられる。そういう場合に備えるように自衛隊の力を整備していこうと思っておりますが、いままでややもすると、何といいますか、いわゆる正面兵力というものを整えて、そうして宣戦布告であって、上着陸してきたものに備えるような感じのにおいがあったように思うんです。しかし、現在の戦略をずっと分析してみると、そういう可能性よりも、申し上げた間接戦略的なそういうふうな方向のほうが強いという可能性もあると思うんです。そこでその部分を私は部内のものに重視する必要がある、そういうことで、何と申しますか、構想の中にそういう部面をいままでよりも強く取り上げるように考えてきている。そう申し上げられると思います。
○上田哲君 かなりはっきりしてきたと思います。どちらかというと、自衛隊のあり方なり防衛力増強に対する反対論の根拠というのを、すぐ治安行動、治安出動というもののみに結びつけて終わっている。これでは政府も痛くあるまい。自衛隊がやはり明確に治安出動、そして治安対策というものを持っている。これはまぎれもないことでありましょうけれども、そのことだけに埋没せずに、政府はむしろかなり大きなウエートを間接侵略、対応戦略にかけていま整備努力を続けているということを確認をしておきたいと思うんです。長官の御答弁からも防衛論のねらいがこれだけはっきりしてきて、その上でなお私が言いたいのは、それでもどうしても間接侵略の実態がまだわからぬ。一体、そもそも直接侵略で来ればすぐ来られるようなたいへんな実力を持って、核までとは言わないまでも、飛行機の量からいっても、ファントムの数からいっても問題にならない大国があって、それが直接侵略もしないのに――やるなら直接侵略をすればいいのであって、核の話はまた別ですよ――それをわざわざ間接侵略という形で、まるでわきの下や手のひらをくすぐったりするような感じの軍事行動をそんなに執拗にとってくるということがあるだろうというのは、どうもこれはよくわからない。また少なくともたとえの話で、ちょっとした切りきずも致命傷になることもあるのだからという論法で言われるなら、若干の理屈づけがあるのでしょうけれども、それならばその任務は、長官自身が大きく打ち出されているように、まさに外交優先という外交の守備範囲に属するところではないか。私が言いたいのは、そういう外交部分の努力によって埋め合わされるべきものを、武力というものによって代置させよう、転換させようというところに、そもそも国の方針として誤りがあるのではないかということ。それがまた先ほど中曽根長官からは、為政者のあり方なんだという話がありましたけれども、それでは危険が大きいのではないか。多少持ち上げていけば、ある程度の見識をお持ちの中曽根長官在任中はいいかもしれないけれども、そうではない、とんでもない小型ヒットラーの出てきた場合に、その軍事機能というものは、はなはだ安易に危険な目的のために使われるということももちろんあり得るわけです。政治の見識というものはここへ向かって備えられねばならない。したがってこの間接侵略とは何かとして、いまイメージを出された程度の分野に関しては、軍備論でなく、やはり外交論をさらにさらに強く押し出されることが正しいのだろう。そうでなければそのことは、やはりいわれなき批判だ、誤りだと政府がいかに強弁されても、中国のみならず、かつて日本の軍靴のもとにたいへん苦しい経験を実感として持っている東南アジア諸国から起こっている日本への軍国主義化批判というものに十分な納得を与え得ない、こういうことになるのではないか。私はその考えに中曽根長官は必ず共感される部分を根底にお持ちだと思うのだが、ステーツマンとしてしっかりひとつ御見解を承っておきたいと思います。
○国務大臣(中曽根康弘君) 私はいつか申し上げましたように、今日のような核兵器をかかえた国際関係においては、外交の機能というものは人類の運命を支配する。防衛とか軍事というものは、一たん外交がお手あげになった場合には、ほとんど防衛や軍事というものを使ったという場合には、みんな運命を同じようにして、灰の上にすわらなければならぬという形になる危険性がある。それぐらいに外交と軍事、外交というものに国民や人類の運命がかかっている、そういうふうに私は思っております。したがって、各国とも話し合い、外交という手続を通じて、実に運命をかけるような気持ちでまじめに折衝し、妥協案を見出していくという形で努力を継続していくべきものだと私は思います。これがもう第一義であります。ところが万策尽きて、外交の手も尽きた、そういう万一の事態が出てくると、ことによれば日本の周辺に対して、先ほど申し上げましたような浮遊機雷であるとか、国籍不明の潜水艦の出没とか、つまり国民が非常に恐怖心を抱くような事態が出ないとは言えない。そういう場合に、国民に不安を与えないで、恐怖心を与えないということが政治としてもまた大事な要素でもございます。したがって、そういう場合にも、万一の際、外交が万策尽きた場合にも、国民にそういう恐怖心を与えないような措置を考えておくということも、われわれとしては責任があると思います。そういう範囲内のことも考慮に入れて、間接戦略、あるいは間接侵略というのではなく間接戦略としての立場として、防衛の充実を考えておるわけでございます。
○上田哲君 それでは時間の都合がありますから――長官、あなたは防衛庁長官としてたいへん宙ぶらりんな感じがするでしょう。一方に外交優先という主張をしっかり堅持すべきステーツマンとして、一方、三軍のシビリアンコントロールの最高の責任者として、どこに安定的な基準を置くか。国際的なモラルの問題を別にして、非常に乱暴なたとえをいえば、世界一の強大な軍備を持っている場合、そのこと自体が絶対の安全保障にはもちろんならないけれども、ある程度そのことを軸としてする説明というのは歯切れがよくなってくる。その面では歯切れが悪い。外交優先論も歯切れが悪い。それでは、いまの軍事力を無理して倍にしても、そのことによって何を一体守るのか、何に対応するのかというような説明でも、非常に歯切れの悪い宙ぶらりんの感じというものがあるように思えてならぬのです。長官は、これから先は防衛庁長官をやらない者は総理大臣になる資格がないということをどこかで言われておりますけれども、そういうことの感覚の中にも、二流軍事国の無力感、軍事と外交の背反の苦悩があって、それを詰めなければならぬということもあるのじゃないか。これは私かなりその立場に踏み込んで考えてみたい気持ちもするのですが、率直な御見解を承って、時計の針が動いておりますから、一応ここで一回休憩をとりたいと思うのです。
○国務大臣(中曽根康弘君) 現に毎日動いておる国際情勢を見ましても、たとえばSALTの交渉、あるいはベトナム問題、あるいはそのほか軍縮問題、日本の自主防衛の問題、そういうあらゆる問題を考えてみましても、安全保障という問題が国際間ではやはり大きな問題で、それに人類の運命がかかっているし、国民の幸福もかかっているという実態が底深くあるわけです。ユネスコであるとか、あるいは文化協力、そのほかいろいろな面が国際間にはございますけれども、とことんの底を開いてみると、やはり安全保障という、原水爆をかかえている厳粛な問題が、実はいやだけれども横たわっているわけであります。その問題を回避するわけにはいかない。それをどういうふうに人類の英知で調整していくかということが、いまや外交の一番の基本の髄になっているのではないかと私思うのです。そうなりますと、外交の中身の非常に大きな要素には、安全保障という要素があると思います。そういう意味において、世界の政治家は、安全保障という問題を回避しては今日の国際政局は語られない。それをいかに合理的に人類の運命をより幸福な平和の方向に持っていくかというそういう能力を示し、その実績をつくり上げていくというところに、今日の政治家の資格が評価される、そういうように私思います。日本も同じであって、われわれは極東にあるささやかな国ではあるけれども、やはり人類の一員としては共同の責任を背負っております。したがって、特に広島で原水爆を受けた日本といたしましては、この痛烈な反省を世界の国民にも訴えなければならぬ大きな人類的責任もあると私思います。そういう厳粛な気持ちに立って安全保障の問題を評価して、そうして国内外に向かって、国民にはそういう方向でまいりましょう、そういうことで結束いたしましょう、そういう指導といいますか、リードすることは政治家の責任でありますし、外に向かってもそういう方向に世論を醸成して、国際関係を改善していくということも、やはり政治家の責任であると思います。そういう立場に立って私は政治をやるべきであると信念を持っております。
○委員長(西村尚治君) 本案に対する午前中の審査はこの程度にいたします。
 午後一時三十分まで休憩いたします。
   午後零時四十分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時四十三分開会
○委員長(西村尚治君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。
 防衛庁設置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
○足鹿覺君 上田委員の午前中の質疑に関連をいたしまして、長官にお伺いいたしたい点があるのでありますが、自衛隊を国民教育の場とし、自衛隊における教育施設を充実することにより、中学卒の隊員は、任期終了後は高校卒の資格を認定して、高校並みに社会で取り扱うようにし、また、高校卒隊員は、任期後は大学卒として取り扱うようにしたらどうかと思うと、この一節が自民党防衛調査会の席上において述べられた一節でありますが、現行学校教育法によれば、こういう取り扱いはどういう関係において成り立つものであるか。少なくとも高校並みの社会において資格ある者として認めるようにするということについては、法的な措置も必要であろうし、またそういうことに相なりまするというと、私学でもない、公立学校でもない、自衛隊学校という一つの段階的な、いわゆる高等学校、大学校、こういう段階的な独自の教育機構を持つ、つまり国民の教育の場とするのではなくして、自衛隊の専門の教育の段階的な、系統的新しい機構を設けるというふうにもとれまして、これはきわめて学校教育法上からも問題があり、教育基本法の面からも大きな問題であると私は思うのであります。そういう点について、これは御発言でありまして、まだ固まっておらないとおっしゃればそれまででありますが、このようなことがもし取り上げられるということに相なりますならば、上田委員も指摘いたしましたように、幼年学校の復活であり、いわゆる最近いわれておる軍国主義への教育の一つの体系づけである、そういうふうにも受け取れないことはないと私は思うのであります。きわめて重大な問題でありまするし、こういうことになりますと、文部大臣の御出席を求めて、これらの点も究明いたしたい、こういう気もいたすのでありますが、この点について大臣はいかように御判断になっておりますか。私が申し上げておることが間違っておりまするならば、その点を御指摘いただきたい。今後このような構想をお進めになる上においては、少なくとももっと十分教育の本義に照らしてやはり御再考あってしかるべきではないか。あなたの真意はどこにあるか知りませんが、非常に誤解を生じ、さらにここらが軍国主義復活へ向かっての大きな疑惑を受ける結果にもなりかねないと私は考えるのでありますが、いかがでありますか。
○国務大臣(中曽根康弘君) その点は足鹿委員の御指摘のとおり、非常に大事なことを含んでおる問題であるように思います。そこで現在、自衛官でそういう高等教育を受けたいと思う者は、相当定時制に通っているのがおります。それから、あるいは通信教育を受けているのもありますが、これらはそういう形をとることによって、資格をみな獲得しておるので、自衛隊としては非常に便宜供与をやっておるわけであります。私は中学校卒業者の中から、そういうようなシステムをつくって、文部省系統の正式の資格を得るということは非常にむずかしいと思います。これはいま御指摘のように、学校教育法の体系に非常に大きな変化をもたらすものでありますから、非常にむずかしいということを明らかに考えておりまして、それで事実上そういう認定と申しますか、そういう取り扱いを産業界や受け入れ側のほうでしていただけるということはどうであろうかということも実は申しておるのであります。これは産業界やあるいは就職先、その他の人との話し合いによって、会社の方針としてそういうふうな政策をとっていただければできることでありますから、そういうことも考えて、おそらく可能性とすればそちらのほうが非常に強いのではないかと思います。しかし、そういう年少の人を採用する場合には、やはり国民教育的な教育を付与する。それは市民としての通常教育を非常に加味したもので、そういう部面を強調したやり方で、自衛隊というもののあり方も若干考えてみたらどうか、そういう着想から申し上げたのでありまして、そういう考えを一応たたき台として出してみて、先生方の御意見も伺い、また大方のいろいろな反応も伺って、そして検討していきたい、こう考えておるわけであります。
○足鹿覺君 関連でありますから、深くは申し上げませんが、一つの企業内において専門技術教育を行なうという事例は現在でもあります。大企業が自分に必要な技能教育を行なっておるという例はありますが、それとこれとは趣きを異にする。いま長官が申しておられますのは、いわゆる中学卒業者に対して高等学校程度の学力を与えたい、また、社会でもこれに準ずる取り扱いを受けるようにという、隊員に対する思いやりの一面、ないしは通信教育を受けておる者たちの不便、不利を補おうというそのお気持ちはわからぬではありません。しかしながら、そういうこと自体を自衛隊法内においてどう位置づけるか。また学校教育法との関係をどのように御検討になって、たたき台とはいうものの、大胆な御提案をなさったのか。私は、とり方によっては、私がただいま申したような憂慮すべき事態も生じかねない。そういう点において、私はただいまの長官の御発言の中に、不幸にして教育を受けることのできなかった人たちに対するお気持ちがあるということはわかりました。だとするならば、国務大臣として、国民がすべて教育の機会均等を受けて、そうして少なくとも中学卒で自衛隊を志願したり、あるいは社会に飛び出すというようなことのないような社会の実現を期して、国務大臣として、全体の教育水準を上げるべく御善処になることが、私は政治家として当然のことではなかろうかと、それを自衛隊の中にあって、一つの自衛隊法式的な体系的教育機構をつくっていこうとしていかれるその御意図に、あなたの意図とは別なまた受けとめ方をする向きも私はなしとしない。私は十分御再考あってしかるべきではないか、かように申し上げておきたいと思います。
○上田哲君 質問を続けます。
 いまの論議にもありましたように、午前中続けてまいりましたいろいろな側面を共通して流れております中心点は、日本の軍事化への危惧の問題です。たとえその中に、長官のことばをかりれば、為政者の見識なり、あるいは全体の世論の歯どめなりというさまざまな要素を加えたにしても、いまわれわれの国が膨大な軍事費を踏まえながら、ごうごうと音をたてて進んでいる歩み方というものには、少なくとも外から見れば、これを軍国主義、こういう評価や批判が出てくる理由がないとは言えない。また、いまの少年自衛官の問題も、非常にそうした視点を増幅する要素であるだろうと思うんです。そこでこれからひとつしぼっていきたいのは、軍国主義の問題であります。一体この軍国主義ということばもはなはだ、非常にわかりにくいのです。長官はいろいろなところで軍国主義ということばを説明されておりますけれども、この際ひとつ軍国主義とは何か、まず定義を伺いたいと思います。
○国務大臣(中曽根康弘君) 私も正確には存じませんが、字引きを引いてみますと、軍事がすべての政策に優先して、そして政治も外交も経済も、文化も軍事に従属して行なわれる状態になったそういうイズムというものを軍国主義と言う、そういうふうにしようとする主義を軍国主義と言う、というふうに辞書に書いてあったように記憶しております。
○上田哲君 そのような定義に照らして、軍国主義と呼ばれるべき国がいま世界にありますか。
○国務大臣(中曽根康弘君) ほかの国のことを論評することは、この際私としては差し控えたいと思います。
○上田哲君 ほかの国のことを論評すべきでないという配慮には、私も深追いはいたしません。しかし、一般常識としてそういう配慮をしなければならないような事態が、世界のいろいろな流れの中に生起しているということは事実でありましょう。そのゆえにこそ軍国主義ということばがいまにわかに私たちの喫緊な課題になってきていると思うんです。ただ、しかし、非常にことばを厳密な形で使うならば、軍事政策というものがその国の政治、外交、経済、文化、すべてに優先する主義というような規定でいけば、そういう軍国主義なりミリタリズムというものは、これはいまやことばの正確な意味においては存在しにくいだろうと思うんです。いかに強大な軍隊があれ、その上にわずかな数のシビリアンが乗っていれば、それは軍国主義ではないということも形式的には言えるでありましょうが実質的には無意味です。その辺は近代の国家構造については非常にこまかい検討が必要になってくるでありましょうが、私がここで言いたいのは、そういうことばの定義や分類ではないのです。長官はいろいろなところで、大体いま言われたような軍国主義の定義を使われておりますし、現に私もここに用意してまいりましたけれども、いろいろな辞典をことこまかく調べてみますと、大体同じようなことが書いてあります。大体の通説は、古い騎士団から始まって傭兵の段階、そうしてナショナルアーミーというようなことになってくる。それが言われるような経済、外交、文化、すべての問題の最優先の位置づけを得るというようなことを軍国主義と言うのだというふうになっております。私はこれはまことに前近代的な定義にすぎないだろうと思います。こういう形の中では、近代国家構造というようなもの、そういうものを踏まえた国際社会の中でのミリタリズム論争は、これは意味がない。新たな軍国主義とでも言いましょうか、それをまた軍国主義と呼ぶ呼ばないの定義の問題は別にして、国家間関係あるいは国内関係にも新たな脅威というものが、別の要素の骨組みの中で生まれているということにこそ着目をして、軍国主義論争なるものの内容を盛らなければならないと思うのです。私もことばの正確な意味でこの定義を使いなさいといえるようなものは持ち合わせていないけれども、たいへんおもしろいのは、日本の国内で出ている字引きには、辞書、事典とも、大体そういう古典的な言い方に終始しておるのですが、おもしろいことにはエンサイクロペディアアメリカーナ、アメリカでたいへん権威を持っているこの辞典によりますと、軍国主義とは軍事力によって政権を維持すること、こう書いてあるのですよ。これは当然先ほどの間接侵略論というものに立脚をする軍備が十分あり得るのだという論旨との強い関連を持っているし、新しい世界の軍事状況の中での軍国主義というものを考える指針となる。こういう定義が、ほかならぬアメリカの中で通用する表現として出てきていることにたいへん興味を感ずるのです。御見解いかがですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 軍国主義をそういうふうに定義することは、いま初めてお聞きいたしましたが、いまのようなアメリカーナにあるような解釈は、軍国主義の一つの形態、一つの部分ではないかと、単に政権を維持するだけでなくして、あらゆる政策に優先するということを推進しよう、政権を維持するのはそのためであるというふうに、私はもっと広義に解したほうが適当ではないかと思います。
○上田哲君 広義に解釈しておりますと、そういう国はいまやちょっと存在しないのですよ。そういう実態を隠れみのとして極端に広義の定義を使い、経済、外交、政治、文化、あらゆるものに優先するような軍事力ではありませんと言い張って、どんどん軍事体制を進行させる。これが武力発動をしてたいへんな状態になって、破綻状態まで追い込まれたときでなければ、これこそ軍国主義というような、定義は使わないことになるわけです。それなら軍国主義ということばは、為政者にとってたいへん便利に使えるのであって、われわれがいま外国からの非難や批判に対して、幾ばくかのプライドや省みの気持ちを持つのなら、ほんとうに平和国家として立ち上がろうとする決意のゆえに、そういう姿にかりにもなってはならぬという戒めのことばとしてきびしい使い方をすべきなんです。そういう立場で言うならば、軍国主義論というものを広義に解釈するというのが何で正しいのか、狭義に解釈をして、その狭義の解釈のミリタリズムの中にも当てはまらないようにしようという態度こそ大切ではないか。どうせことばというものはいいかげんなものでありましょうけれども、それを使うときの姿勢をあえて厳密に正すのがわが国のあり方ではないか。なかんずく一国の方向を決定する政治家というものの姿ではないか。私は強く反論をしたいんですが、いかがでしょうか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 単に政権を維持するということでは、その政権が何をするかということが問われていないと思うんです。一番大事なことは、その政権が行なわんとする政策あるいはその選択順位ということが問題じゃないか。軍事力によって政権を維持して、そして平和政策をやるとか、社会福祉に専念するとかという国も、必ずしもなきにしもあらずであります。南米あたりにかつてそういう国もあったように思います。だから、じゃ、それが軍国主義であったかというと、必ずしもそうではないんじゃないかとも考えられますので、私は、やっぱりその政権が何をするかということを中心に考えてみたいと思います。
  〔委員長退席、理事八田一朗君着席〕
○上田哲君 政権というものは、激しく自己目的的なものでありまして、ことさらに神社に祭ったり、エンサイクロペディアに出さなきゃならぬほどの大義名分は存在しなくても、一人の独裁者の自己満足のために政権というものは存在し行動したことは歴史上幾らもある。大きな権力者のために、政権なるものは実に従順なしもべたり得るのは歴史の教えるところでありましょう。したがって強大な権力者のもとに軍事力というものが使われるという危険を防いでいかなきゃならぬということを考えていくならば、まさに常に権力者というものは自己目的的な政権維持の手段として軍事力というものを使うというのが定説なんでありますから――そういうことでいうならば、私は、いま長官の言われる目的論的な、目的を先に置いての手段の地位に置くべきものとしての軍隊、こういうものが為政者の思惑によってしばしば限度をこえるという心配こそとらえておかなきゃならないということを強く主張します。単純にこれは侵略論ということだけに局限してもらっちゃ困るんですけれども、私は重ねて申し上げますけれども、政治家の、特にいま海外からの批判のざわめかしい日本周辺の環境の中で、日本の責任ある政治家としては、先ほどのことばのように、軍国主義を広義にとらえるべきだということではなくして、軍国主義をできるだけ狭義にとらえていくことこそ当然な戒めであると主張したいのです。これについて、さらにあえて深い理解を求め、御答弁をいただきたいと思います。
○国務大臣(中曽根康弘君) 上田委員の言われんとするところは、たとえば、かつてわが国にあって、二・二六事件によってクーデターを起こして、それによって軍事政権をつくって国防国家に邁進しようとした、そういう企図をお考えになって、その危険性を指摘されておっしゃっているんだろうと思います。そういう意味においては、その軍国主義が発生する一つの基本は政権奪取ということで、政権奪取から全部そういう結果は出てくると、ふえんして出てくるという意味においては、その点は非常に重要視しなければならぬと思います。
○上田哲君 抽象論になってはいけないので、長官のお答えが、全面的でないにせよ、かなり主要な部分において私の主張に同感されるものであって、できるだけ軍国主義なるものの害毒が流されないように最大の配慮を払うべきであるという見解を示されたものと理解をして、具体的に話しを進めてみたいと思います。
 私が申し上げたいのは、百科事典的に、こういう場合軍国主義とはどういう定義が正しいか、どういう内容を持つかということは、まあむずかしいと思うんです。具体的な政治の努力としては、望むべきでない軍国主義の形態に至らないために、どのような歯どめをしっかりかませていくべきかということが大切ではないか、こういうふうに考えます。その考え方はどうでしょうか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 同感であります。
○上田哲君 私は五つの歯どめを考えてみたわけです。
 ここではその順序を別にして、まず議論になる一つの歯どめを、兵器国産能力に置いてみるのです。最近、政府の防衛戦略の中心になっているのが自主防衛論というもの、自主防衛論というものは、少し縮めていえば自立軍備ということでありましょう。自立軍備でない間は本来ミリタリズムなんていうものは出てくる余地はないわけですが、自立軍備というものの大きな柱になるのは、自前の兵器をつくる能力ということになるだろうと思うんです。今日、近代戦の概念の中で、兵器国産能力というのは、これは重要な戦力でありますが、つまりこれがなければ、全く戦略が成り立たないというくらい重要な戦力でありましょう。そこで、兵器国産能力というものが、やはりどの辺までキャパシティを持っていいのかということが、歯どめの一つの基準になるのではないかと思います。とすれば、兵器国産能力というものの限界というようなものをどのようにお考えになるでしょう。
○国務大臣(中曽根康弘君) 兵器国産ということが、そういう軍備過剰に流れる危険性はあると思います。しかし、政治が民主主義でシビリアン・コントロールがきいておれば、そういう危険性はないと思います。たとえばイギリスのような国は、兵器はほとんど国産であります。またフランスも兵器はほとんど国産であります。しかし、あれが軍国主義であるかといえば、そう断定することはできないと思います。兵器はまた国産でなくて貸与されておる国であっても、自分で国産しないでおっても、態勢が軍事優先で行なわれておるという国もあります。そういう面から見ますと、生産の自主性云々ということよりか、やはり国会とか内閣とかの構成及び政治の性格によって、そういうものはきまるのじゃないかと思います。
○上田哲君 長官、ひとつずばりの話をしたいのですが、どうも私はいまの答弁は不満です。もう少し突っ込んで議論ができると思うのですが、たとえば武器を貸与されている国の中にも軍国主義の国もあるというのは、それは実態を捨象した論理としてはあり得ます。しかし、明らかにビッグパワーの時代になっている今日、自分の国の軍隊に使う兵器を――例外があるのは別ですけれども――ほかから主たる武器を借りながら成り立っている軍隊の国のことを一般論として議論するというのは、少し枝葉末節に流れ過ぎていると思います。長官の言われる、イギリスやフランスは兵器を国産しているけれども、軍国主義には流れていないと思うと言われるのなら、それは私もそう言えると思います。しからば伺いたいのだが、フランスやイギリスは兵器を国産しておる、しかし軍国主義でもないというのは、どこの辺までの兵器国産水準だから軍国主義じゃないといえるのか。これは非常に抽象的なことかもしれませんけれども、少なくとも防衛庁長官としては、何がしかの基準なり考え方なりというものをそこに示していただかないと、なぜ兵器国産能力を持っておるけれども、フランスやイギリスはミリタリズムでないのかということも、論旨薄弱になると思うんです。それを単に為政者の見識、政策指導のあり方だけの問題だということであっては、これは非常に論理は薄くなり過ぎてくる。
 問題五つということを先に申し上げないと、話がかみ合わないといけないから、ちょっとつけ足して申し上げますが、私はそのほかに軍需の波及効果の問題、それからシビリアン・コントロールの問題、それから外交に及ぼす軍事的影響度の問題、国民意識の誘導の度合いの問題、この五つの側面をあげたいと思っているんです。そういうかね合いで、いまはこの部分にしぼってお話しをしていただきたいのだが、本来はそういう意味で、軍国主義論争は、単にそういうような短絡論シンプルケースだけで説明がつかない要素があるのじゃないか。そこで英仏の場合などを例にとってもう少しく突っ込んだ御意見を承りたいと思います。
○国務大臣(中曽根康弘君) 兵器の国産率と申しますか、それがどの程度の場合に軍国主義に入る危険性があるかという御質問でありますが、私はそういうもののパーセンテージにはかかわりなく、最も大事なことは、要するに国会の権限とか、内閣の性格とか、国策とか、そういう政治の側における選択的要素、いわばソフトウエアの世界だと思うのです。ハードウエアの世界よりもソフトウェアの世界である。したがってそういうソフトウェアの世界のシステムや関係をどういうふうに規制するかということにかかってきているのではないかと思います。
○上田哲君 ソフトウェアだということはいいです。ソフトウエアが一律に全世界的に、さっと大根の頭を切るように、ここから上はいいとかいけないとか、そんなことはいえないと私も思っている。それぞれ個別の条件によって、基準というものが明確に出てこなければいけないともいわない。しかし、どういう方向を持って歯どめをしていくか。まさか長官が兵器国産能力というものが非常に大きくなって、全世界に人殺しの兵器をどんどん輸出していったほうが世界のために寄与するのだということをお考えになるわけはないだろう。また、ミリタリズムを助長することがよかろうという論理があろうはずがない。それじゃ一体それでは電子計算機に入れれば、日本ではどれくらいの基準、アメリカではどれくらいの線を出してくれ、それがなければいけないのだということをいっているのじゃない。長官が言われるのも、どういう方法とたてまえのもとで、無制限に兵器国産能力が上がっていくのを押えたらいいかということをいま御説明になったと、それは理解したい。ソフトウエアけっこうです。それは、直ちに基準は何かではなくて、何かの基準を持たなければならないという配慮を政治の側から持ち出していくべきだ。そこまでは持っていくべきです。まずそれについての御同意を得たい。
○国務大臣(中曽根康弘君) いまの点は賛成であります。
○上田哲君 けっこうです。
 ここまで肥大した防衛産業の当面の限度をどこに置くかということはむずかしいところです。しかし、これは何とかして考えていかなきゃならないという問題ですが、それを認められればけっこうです。そこでその次に、よく産軍複合体ということが議論になるわけでありますけれども、私は、経済構造の中に占める軍需のウエートを、波及効果をとらえながら考えてみなきゃならぬと思います。長官がよく使われている説明法ですけれども、日本の兵器生産が鉱工業生産に占めている割合は〇・四%だから、これは皮革産業と同じくらいなんだということをかつておっしゃった。それがたいへん便利に説明に使われているわけです。私は、これは間違いだと思うのです。確かにGNPの中に占める防衛予算の割合は〇・八%前後、これはまあもう一つ下の単位まで持っていって十分議論する余地があると思いますが、ここではいいです。そこで〇・八%ということから出発をするのですけれども、この数字と照応しながら、鉱工業生産に占める割合、〇・四%というのは、まるきり次元の違う数字の提出のしかただと思うのですよ。少なくともアメリカがいまアイゼンハワーの警告以来というか、あるいはそれ以前からのっぴきならないところにまで進展してしまっている産軍複合体あるいは産軍依存体制。これは六〇年のケネディ演説の直後ですね、六一年四月のサイエンティフィックアメリカンという雑誌にワシリー・レオンチェフという人の「軍縮の経済的影響」という論文が載っております。あるいは六二年の二月にアメリカ軍備管理軍事局なんかのレポートも同じような趣旨で論理を展開しております。この論文の目ざすところは産業連関分析、これを通じて軍縮が及ぼすアメリカ経済への影響を研究するということなんでありますけれども、こういう側面の研究というものが、あるいは試算というものがわが国にもあってしかるべきだ。明らかに一国の経済政策を遂行するデータとしてでも――もちろんこれは防衛庁はその主管省だというつもりはないですけれども――防衛庁はいろいろな数字を出しておられるのだから、これだけ大きい軍事支出をお持ちになる担当省として、こういう産業連関分析というような形での波及度の調査、こういう計算をされたことがありますか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 抽象的に申し上げますと、軍需生産というものがその国の工業生産に非常に大きく影響を与えて、それが関連産業にも影響を与える。そうしてそういうものが一つの社会的勢力を形成して、それが政治にはねがえって圧力となって、そして循環式に自律運動みたいにして拡大していくと軍国主義になる危険性は出てくる。そういう意味においては確かに波及効果ということは社会学的に考えられると思います。日本の場合に、しかし現在調達額というのは大体二千二、三百億円ぐらいでありまして、鉱工業生産の総額あるいはGNPの総額、あるいはある社における防衛関係の生産の能力、全体の生産における比率という点を見ますと、まだ微々たるものであります。そういう意味において、それが政治にはね返ってきて、圧力団体になるというところまではまだいっておりませんし、われわれもその点は大いに規制をしようと思っておるわけであります。数字的に計算したことはおそらくないと思いますので、抽象的にお答えいたす次第であります。
○上田哲君 念のために申し上げておくのですけれども、私は〇・四%じゃこれはまあ問題にならないけれども、実はこれが四〇%だとか三〇%だろうとかいっているのではないのです。日本の産軍複合体なるものが決定的にもうゆるがすことのできない形をつくり終わってしまっているのじゃないかということを、私も目下論証できるわけではないのです。けれども、長官が軍事支出が、GNPの中に占めるウエートが〇・八%だ、兵器生産は〇・四%だという数字を出されたことは、率直にいって長官への失望ですよ。これは違うのですよ、明らかに。人件費、給料まで含めて、言ってみればここのところから波及効果が出てきた結論がGNPなんでしょう。年度の初めと年度の終わりを比べているようなものでありまして、こんな比較論はないですよ。こういう比較論は鶏と卵と、卵の重さと鶏の重さを比べておるようなものでありまして、これは違う。経済学的に論理にならないということですよ。どっちみち〇・八%を私のほうで計算しても三・七%くらいにしかならない。だから三・七%になったら産軍複合体ができ上がっているんじゃないかということは、その数字では私も言えないでしょう。ただ少なくとも防衛庁がそれだけのいろいろなPR文書を出しているのであるならば、それならばまるで年度の当初と年度の終わりとをくっつけて、年度の終わりに波及効果を通じて太っちゃった数字を分母にして、入り口のところのもとの数字を分子にするような形で〇・八%じゃないかといってるのじゃ、これはおかしい。これは痛くもない腹をさぐられてもしかたがないということになるのじゃないか。私もあえて近代経済学の手法をもって問うのだが、そういう計算をするのでないと、経済学的にこれは落第ですよ。私はそういうことを言いたい。防衛庁は隠したということでなければ、この論理を知らないということになる。防衛庁にこれだけのスタッフがいて、やはりそういう計算をされてしかるべきじゃないか、これは率直にいって。長官がいま正直にやってないとおっしゃったから私はその点はけっこうだと思うのです。やるべきですよ。国民は防衛費の大きさや兵器産業の大きさに、防衛庁の発表の数字とは別な実感を持っている。
 たとえば一九五八年におけるアメリカの軍事支出は四一九・五億ドルであった。そのうち燃料動力産業に例をとると、この産業はこの年にペンタゴンに対して九・九億ドル納入したのですが、このためにこの燃料動力産業は二六・三億ドルの生産を行なわなければならなかったのです。このようなことが理論的に考えられるわけですから、軍事支出というものは、非常にその分まで見越して考えなければならない慎重さが必要になるわけですね。
 もう一つの考え方として検討しなければならないのは、軍事支出の乗数効果の測定です。防衛庁当局から資料を出していただいたんですけれども、四半期ごとの支出状況をもとに経企庁の経済研究所のパイロットモデル、それからマスターモデルというのがあります。これは私どもがしろうとでやったんですから、ずいぶん大ざっぱな計算なんですけれども、四十二年度以降、つまり第三次防が推進され始めてからの波及効果を四十五年度で累計してみると、大体二兆六千億円ぐらいになるわけです。昭和四十二年度以降装備品費というんですか、として支出された軍事支出が、本年度まで影響を及ぼして、本年度に生み出す有効需要の累計額が二兆六千億円だと、これは大体今年度のGNPの推計額は大体七十兆円だということになると、これを分母にして分子を割ると、さっき申し上げたような三・七%になるんですよ。このような考え方からすると、〇・八%だというのは、これは分母と分子が全然次元の違った数字を使っていることになりますね。ここから出ていった金が一年かかって子供を産んで大きくなったのを分母にして、もとの出口のところの数字を分子にして割っていれば、当然パーセントは小さくなるんです。そういう形でない数字を出すべきじゃないか。これは三・七%なんていっても、小数点以下の数字まで私は責任が持てない。たいへん大ざっぱな、しかも大ざっぱにならざるを得ないことだと思うんですけれども、そこで政府が〇・八%にすぎないんだといっているのは、そこで煙幕を張っている結果になるんじゃないか。四次防という大規模なのが出てくるということになると、この辺の問題は、いずれもう少し緻密な経済理論的な精緻さをもっての追及が必要になってくるのでありましょうから、私はぜひひとつ産業連関分析、それから経企庁の計量モデル等による方法で実態を洗い直して、その数字を御報告いただきたいと思うんです。何か生活実感としても、どうもいまの防衛庁が出しておられる数字というのは、やっぱりぴんとこないのが国民の実感なんであって、何かもっと大きなごうごうと音をたてる軍事費が動いているような気がする。防衛庁が胸を張って国民の疑惑に答えようとされるなら、そういう分析論の批判にたえるような数字を出していただいて、その上で産軍複合体の危険というのはこの程度、まだこの程度だけれども、こういう注意をしなきゃならぬじゃないかということをひとつ議論の土俵の上に乗せていただきたい。経企庁にそういう機関もあるんですし、防衛庁でも十分そういうこともできるはずなんでありますから、ぜひ試算をしていただき、そうした数字も御発表をいただきたい。
○国務大臣(中曽根康弘君) おっしゃるような意味ですと、確かにそれは検討しなければならぬ要素があると思います。もっとも二年前あるいは三年前の千億円とか二千億円という支出が、それが投資乗数効果を持ってある年度のあとにくれば、かなりの大きな影響力にふくれ上がることは事実であります。それで、それをなるべく、教育研究費とか、あるいは社会保障関係費用というものは乗数効果はそう多くはない。しかし公共事業費等になると非常に大きな乗数効果を持ち、防衛費なんかもそのほうの部類に入るだろうと思います。そういう意味におきまして、ある年次の予算が何年後にどういう乗数効果を持って出てくるかということは、ひとつ検討しなきゃならぬ要素であると思いまして、検討したいと思います。
○上田哲君 三番目の問題なんですけれども、長官も先ほどから言われたシビリアン・コントロールの問題、そのシビリアン・コントロールということが私はどうも機能的にわからないところがあるんですが、どうでしょうか。軍隊というものはそれ自身において非常に強大な機能なり、あるいは専門性なりを具備してくるとですね、つまりアマチュアリズムが通用しなくなるわけですね。言えば軍事スペシャリストに対するアマチュアリズムというものが、ある意味ではシビリアン・コントロールの性格の一つだと思うのですよ。ずっと飛躍をしてしまって、政治家の見識というようなところに持っていってしまえば、もう議論の余地はないのですけれども、本来軍備というものは非常に専門化されて、巨大化されていく段階では、どうもシビリアン・コントロールができなくなっていく。能力的にも機能的にもそういう性格を持ってはいないか。こういう懸念をひとつ持つんですが、いかがでしょうか。
○国務大臣(中曽根康弘君) そういう危険性はあると思います。したがって、政策判定機関というものは、むしろどちらかといえばアマチュアリズムというか、普遍性を持っておる立場の人が好ましい。私はそういう意味で文民統制というものがずうっと民主主義国家において成立しているんだろうと思います。
○上田哲君 長官もそれを歯どめとするために、国防会議とかあるいは閣僚会議とか、いろいろな機関を設定し、機能を装置しなければならないという意味のことをおっしゃっておるように理解をします。それも大切です。しかし、そういうたてまえや努力とは別に、やはり具体的に心配をしなければならない事態が今日までのミリタリズムの歴史そのものであったのではないか。たとえば、もうちょっと前からいきましょうか、よくシビリアン・コントロールの典型的な例だといわれるのが、トルーマンがマッカーサーを解任したということです。これはまさにデモクラシーというものの奥深い実力を見せつけられたような賛仰の気持ちを持ったんですが、しかし、またよく考えてみれば、シビリアンであるトルーマンは、マッカーサーという軍事技術家、そういうスペシャリストに対しては最終的な政治判断で、水ぎわまで行って首を切るというような形でなければ、なかなかそういう権限の発動ということはできないということをやはり裏書きしているんじゃないか。またアメリカで、一体シビリアンであるプレジデントが軍司令官の首を切ることができるような状況というものが、あれから以降進んでいるだろうか、逆だろうかということを考えてみると、このことが典型的な例であることには異論はないけれども、このことを金科玉条にして、こういう形がどこの国でも常に保証されるのだということにはならなくなっているんじゃないかという心配を持つんですが、いかがですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) そういうことは非常に危険性があると思います。よくトルーマンはあのときマッカーサー元帥の首を切ったと思いまして、そのシビリアン・コントロールの強さにわれわれも非常に驚異の念を持ちました。あれはやはり民主主義の弾力性といいますか、生鮮性をまだアメリカの国家は失っていなかった、そういう例だと思います。しかし、その後アイゼンハワー大統領が引退したときの声明などを見ますと、多分に硬直してきた、そういう印象を禁じ得ないものがあります。
○上田哲君 それはまあだいぶ古い話なんですけれども、つい最近の例で伝えられるところによりますと、このカンボジア問題。国防総省が北爆を三回やると言っていたわけですね。ところが実際は北爆を四回やってしまった。国防総省が――国防長官なる者はやはりシビリアンですから、シビリアン・コントロールがそこでなされておって、そのシビリアンの判断と命令の中ではうそをついたのではなくて、北爆三回と言っていたんですけれども、実際には軍では四回やったということが明らかになった。この辺はすでにシビリアンではやはり具体的な手綱をつかむことのできないスペシャリズムの問題、軍全体をつかみ切れないというシビリアンの限界をあらわしていることになるのじゃないか。あるいはもっと言えば、今回のカンボジャ問題の決断、ニクソンの重要な歴史的な決断も――これは伝えられているところでありますけれども――ホワイトハウスの大統領のブレーンの判断より、ベトナム派遣軍司令官とか、あるいはバンカー・サイゴン大使あたりの意見というのが非常に大きく大統領を動かしたというふうに伝えられています。こういうことになると、やはり閣僚会議を持つんだ、いろいろなチェック機能をつくっておくんだといわれるけれども、しかし、それはそれとして、いかに政治家の見識ある機能や構造を上層化しても、軍全体が強大化していくということの中では、シビリアン・コントロールというのはたいへん形骸化してくるのではないか。いざというときには、トルーマンがマッカーサーの首を切れるようなことが非常にむずかしくなるのじゃないか。そういうことであるならば、やはりこの段階でシビリアン・コントロールをどういうふうに確保するかということの方法と限界をはっきり見定めておかなければならないと言いたいのです。簡単に言えば、それは結局軍備を一定限まで、つまりシビリアン・コントロールが確保できるまでの範囲に押えるということになるのじゃなかろうか、こういうふうに思うのですが、いかがですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 軍事費の過大化ということは、確かにそういうものを誘発する危険性はあるだろうと思います。
○上田哲君 私が四番目に言いたいのは、外交に及ぼす影響の問題、外交というのはもちろん相手があるから外交なんですが、こちら側の気持ちはどうあれ、相手国がわれわれの国からする外交の裏側に軍事的な脅威を感ずるということに尺度をもって配慮すべきじゃないか。五番目には、国民の軍事意識への誘導の問題です。私はなかなか定義しにくいミリタリズムというもの、それを定義で争っているのじゃなくて、いつの間にか巨大な化けものに転化し得る危険のあるミリタリズムに対するかまえとしては、やはりこういう幾つかの歯どめをしっかり常に打っておくということが必要なんだと思います。それが政治の見識です。いま私がかりに五つの歯どめを考えたのですが、ひとつ総括的にこうした考え方について御見解をいただきたいと思います。
○国務大臣(中曽根康弘君) 最初の兵器の国産の問題については真意がよくわかりませんでしたが、お話をいろいろ聞いているうちに了解いたしました。それらのお話の中で、私は一番大事な問題は、やはり文民統制の部分だろうと思うのです。これが政治の選択を決定する問題であります。そういう意味において文民統制を一番重要視しつつ、以上のような社会的背景を持ったバックグラウンドをわれわれはよく注意深く見守りながら政策を進めなければならぬ、そのように思います。
○上田哲君 くどいようですが、これは私論にすぎませんけれども、いま五つの立て方をした歯どめ論について共通の議論の場を求められるかどうか、もう少し突っ込んだ御意見を伺いたいのです。
○国務大臣(中曽根康弘君) この五つの項目は、政治が防衛なら防衛の政策を実施する上についてのある意味においては対象である。それがある意味においては政治を制約する要素としてはね返ってくる問題です。そういう意味において、軍事政策を遂行しようとする場合には、単に防衛政策のワクだけを見ておってはいけない、あるいはその年の年次予算だけを見ておってはいけない、もっと深い波及効果とか、社会的反応とか、それが蓄積されて沈でんして逆に返ってくる、岩盤のように固まっていくという要素があるわけであります。一年目においては固まらないけれども、三年、五年たつと、それが岩盤になって、ぶち破れないというものに成長していくというおそろしさがある。そういう点を御指摘になりました点は、確かに私もそのように思います。そういう点大いに注意してまいりたいと思います。
○上田哲君 わかりました。
 それで、時間がだんだんなくなりますので、先へどんどん進みますけれども、長官が三月の五日に外人記者クラブで行なわれた演説のテキストがここにあります。ここにはたいへんおもしろいことがいろいろ出ておりまして、一番最後を見ますとね、国会における論議と記者会見の論議と、どちらがきびしいかと問われて、記者団のほうがずっときびしいと、こういうことになっておりまして、これは国会側はがんばらなきゃいかぬということだと思うのですが、そういうまあきびしい議論が行なわれた内容のようです。で、この中に出てくる考え方は、英語で読まれたようですから、日本語の翻訳のほうはあとからくるのかもしれませんが、長官の言われた日本の防衛論は、気持ちを言えば、私は中級国家論などというよりは二流軍事国論ということになるのだろうと思うのですが、その辺をひとつもう少し突っ込んでイメージを明らかにしてみたいと思います。
 で、中曽根長官は、かつて安保条約の七五年廃棄論ということをお持ちになっていたと思います。いまこれは見直し論ということになっております。それはどっちでもいいと思います。七五年という年度にもこだわるつもりはありません。しかし、いずれにせよ、見直し論なり廃棄論なり、そういうようなお考えの変遷の中で、今日日米安保条約の延長限についてどういうお考えをお持ちか、これは限定して質問します。廃棄論なり見直し論の範囲内での意見ですが、お考えを承りたいと思います。
○国務大臣(中曽根康弘君) 私は、安保条約を七五年で廃棄しろという言明はしていないのです。安保条約は七五年ごろ新しい日米親善関係に切りかえていくということを可能性を検討したらどうか、そういう発言を日米民間人会議で言いまして、安保条約に基づくような廃棄論というようなことは言っておらないのです。それから、安保条約に対する考え方は、これは七〇年代の展望との関係においてこれは考えなけりゃいかぬと、で、私は佐藤総理大臣が今度の施政方針演説でも、七〇年代は選択と可能性の段階である。それから、たしかナショナルプレスクラブの演説でもそういうような趣旨のことを、変化と何とかの、選択の幅を広げると、たしか幅を広げるということばを使っておったと思いますが、そういう表現をしておる。で、私の考えの根拠は、とにかく安保条約というものは歴史的因縁を持ってきている。最初に二十七年に施行したときには、日本は防衛力ゼロ、そこで占領の関係もあって、アメリカに基地を貸す、そのかわりアメリカが日本を守ると、そういうことでできたために、ほとんど不平等であり、日米関係というものはアメリカ側に非常に比重が置かれておったと、そこで、その後日本人の努力によって保安隊、自衛隊になり、その防衛努力が重なることによって、日本の発言権も回復し、アメリカ軍隊も撤退をし始めて、そうして三十五年に新しい安保に切りかえた。その際は幾つかの改革をやったと、一つは期限を十年間に一応設定してレビューの期間をつくったと、あるいは事前協議条項を設けたと、あるいは行政協定をNATO並みに改定して地位協定に改革したと、あるいは、内乱出動条項というものを削除した、こういう四つの改革点は私は前進だろうと思うのです。それはやっぱり日本の国力がふえ自衛力がふえてきた結果そういうように変わった。それで十年たった結果、ことしは自動継続という形になる。自動継続になると、これは一年の予告でいつでもやめられるという体制になって、日本側も緊張するだろうし、アメリカ側も不安に思うかもしれません。
 そこで、これからの時代を考えてみると、ことしの自動継続、七二年の沖繩返還、それから七五年ぐらいになると、日本のGNPが四千億ドルぐらいにもこのままいったらなるだろうと言われておる。そういうふうに日本の経済力が膨張していった場合に、国民の意思とか、日米関係というものは、いままでの安保条約でそのまま済むか、あるいは済んでいいかという疑問が出てくると思うのです。当然これは出なけりゃいかぬ。というのは、安保条約の解釈というものは、日本の自主性の回復という面が非常に出てきて、変わってきておるからだと私は思います。事前協議一つ設けただけでもかなりの、不十分ではあるけれども、自主性はかなり回復してきていると思うわけです。そういう意味において、その自主性の回復の延長線で安保条約というものを次の段階にどういうふうにこなしていくかという選択を十分持つべきだ、そういう考えを持っております。しかし、日本は核兵器による抑止力が自分で持てないし、それから攻撃的兵器は持てない、そういう面からすると、やはり日本の防衛力には一定の限度がある。だからそういう点においてはやはりアメリカと相互協力しなければならぬだろうけれども、それがいまの安保条約そのままを維持するか、私は日米間の安全保障体制――体制と言っているのです。それはいまの情勢で続く限りは当分必要であり、半永久的に必要かもしれぬ。しかし、安保条約自体というものは、選択の対象として選ばれていいのだ、その方向はいままでの解釈どおり自主性の回復という方向にもっと前進すべきである、そういうふうに考えております。
○上田哲君 そこへ入ってしまいたいのですね。ちょっとその前に一つ二つ伺っていまの問題に入っていきたい。長官が二流軍事国というわれわれの国を取り巻く背景なり状況、ここらが長官の言われる核手詰まり論であったり、核均衡論、そして三角形論に五角形論が出てくる。ひとつ聞いておきましょう。五角形論ですね、長官の言われる――英仏というものを除かれた五角形、核保有国である英仏という国々よりも、日本の位置づけによって五角形を組み立てられる現在の世界軍事状況上の理由は何か。
 それからついでに時間省くために聞くのですが、かつてICBMを中国が持つことになったら核戦争の可能性というものは非常に遠のくのだということをいわれております。今度の中国の衛星の打ち上げがそういう意味でどの程度の影響を持つものか、この二つをあわせてお答えをいただきたいと思います。
○国務大臣(中曽根康弘君) 私があげました五角形というのは、国際政治力学に関する一つの持論でありますが、英というのは大体米と一体であって、米の力の中に国際政治力学の上からは入っておるのではないか。それから仏は若干違いますけれども、ソ連に対抗する一つの力としては、やはり西ドイツというものが非常に顕著に出てきている。これはソ連側の意識においてもそうですし、西ドイツ側の意識においても同様です。つまり西ドイツの東方政策というものが、いま世界政治の上で非常に顕著に変わりつつあるのを見てもわかります。そういう意味において西独というものを実は出したのであります。しかし、それは厳密な意味の分析ではございませんで、象徴的意味において発言しているわけであります。それからもし将来中共にアメリカを討てるICBMが戦略兵器的な状態になれば、これは米ソに働いていると同じような抑止力が中米に働く可能性がないとは言えない。それが中ソに働く可能性もないとはいえない。戦略的核兵器というものはそういう抑止力を生んでいく可能性があると思うわけです。そういう意味において、もし中共がそういうような情勢になった場合には、どういう戦略をとるであろうかということを予想してみると、アメリカに対してもソ連に対しても、等距離政策をとる可能性があるのじゃないか、あのナショナリズムの傾向から見ますと。そうすると、中米ソという関係は正三角形が出てくる。正三角形の場合には、そのうちの二つがけんかした場合には第三者が一番利益を受けますから、そういう意味においてなかなか二つのけんかはしにくい。あるいは二つが結束して一つがやっつけられるという可能性になる。しかしその際といえども、そういう飽和兵器みたいなものを持ってやられれば、両方とも死の灰の上にすわって考えるという形にならざるを得ない。そういう面からも核の手詰まりが三角形型に生まれる可能性があるのじゃないか。これは非常に単純計算による力学的な分析でありますけれども、そういうような政治力学的思考というものも、われわれは防衛を考える上において一つの戦略的基本として考える必要がある。そういう意味で参考に申し上げたのであります。
 それから人工衛星の問題は、ICBMへ一歩前進しているということの一つの証左でもあります。そういう意味においてわれわれは関心を持たざるを得ないと思います。
○上田哲君 ICBMへの前進ということは、いまのところMRBM、IRBMぐらいのところまできた、誘導方式から言って偵察衛星は十分乗るだろう、これが大体推定されるところだと思うのですが、これは長官が言われる七五年くらいにICBMを持ったときには起きるであろう新たな均衡に対して、いまはどのくらいの役割りを果たしているとお考えですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) その正三角形の手詰まりから見れば、現在はまだそういうことはできていない。それから中国が偵察衛星を発進させる力があるかどうかもまだ私は疑問だと思います。一つのポイントは、誘導の能力でありますけれども、誘導の能力が偵察衛星を発進させるぐらいまでのところにいっているかどうか、私の考えではまだ消極的な見解を持っております。
○上田哲君 時間に追われておりますから飛ばさざるを得ません。さっき長官が安保体制はひょっとすれば半永久的にというようなおことばがあったのですが、しかし安保体制と安保条約を区別されて自主性という問題を強調されました。そういうことを突き詰めていくと、当面は米軍基地の自主管理の問題ということに行き着くわけだと思います。これもさらに突き詰めていえば地位協定の改定ということになる。二条四項(b)ということでしょう。ところがこれは外務省が七二年まではできないといっています。一体七二年直後にはすみやかに地位協定の改定を行なうかどうか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 沖繩返還までは現在の地位協定でできるだけ解釈しながら適用していく、そういう考え方でございますが、七二年返還後の体制は、そのときの返還の情勢とか、基地をめぐる日米関係の状態とか、そういうものを見た上、その時点に立って考えるべきものであると思います。
○上田哲君 その時点に立ってすみやかに行なうのみですか。いまからは何も考えぬわけですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 地位協定を改正しなければ困るというそういう事態が出るか出ないか、先方の見解がどうであるかという、そういうようないろいろなファクターを考えながら点検していくべきものであると思います。
○上田哲君 変えなければならない状況が出た場合、先方の意見にかかわらず、交渉を進めますか。
○国務大臣(中曽根康弘君) それはそのときの情勢によって、日本としてどうしても困るという、そういう情勢が出れば、われわれとしても考えなきゃならぬと思います。
○上田哲君 現時点においてそういうことに対して強い執着をお持ちでありますか。
○国務大臣(中曽根康弘君) そのときの要するに諸般の情勢をよく見きわめた上で判断を加えてみたい。いまどうするかということは白紙にしておきたいと思います。
○上田哲君 前向きとかというような表現が出てくればいいのですが、白紙ということになってしまうと議論ができないな――白紙よりは前向きになりませんか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 日本側の不便やあるいは困難、不都合というものを解消するのは、日本の政府の責任でもありますから、その時点に立って善処したいと考えます。
○上田哲君 大いにがんばっていただきたいと思います。潜在的には非常に強い願望がおありであろうと期待をして、この部分を終わります。
 最後のテーマでありますが、いままで議論されてきたいろいろな問題を踏まえて、何としてもひとつうんと長いスパンでわが国の将来の安全保障について話をしようじゃありませんか。その意味で私は、わが国の中立志向について精一ぱいこれから長官を詰めてみたい。きょうは何を答えられようと、そのことで直ちにあしたというようなことにつなげようというさもしい根性はない。ひとつ大きく日本と太平洋の未来図にかかわるような、そうした形での日本のこれからの基本的な安全保障にかかわるものとしての中立論の是非について御見解をただしたいと思います。これは私もそういう点で多少思い切って参議院本会議の代表質問では佐藤総理に向かって、あえて武装、非武装の別をこえるならば、中立に対する志向は国民の過半をはるかに制していると問うたのでありますが、総理の答弁はまことに陳腐でありました。あなたはそういわれるが、非武装中立を支援するものは一七%ぐらいであることを銘記願いたいなどという、用意された答弁の範囲内だったからでありましょう。これはいかぬと思います。私は本会議と委員会との関係からいって、委員長に申し上げておきたいのですが、この問題については、本委員会審議においていずれ総理に御答弁をあらためて伺いたい。総理についてはほかに本会議質問の中での、その後委員会審議との関連でズレが出てきたことがございますから、御配慮をいただくように。
 まず、非武装中立であります。日米軍事同盟保障論に対して非武装中立保障論というかまえだけで話をするというようなことでは、今日の安全保障論にはならないから、あえてそこを進めます。しかし、この際、非常に長いスパンで考えるならば、非武装中立は人類普遍の理想というようなもの。観念的と言われようが、宗教的と言われようが、人類普遍の真理として、それが実現するときを設定するならば、それは賛成だ――ずいぶん回りくどい言い方ですけれども、そのときがくるならば、それはいいことなんだということは、これは何人も反対することのできないことだと思うのです。それはいいですね。
○国務大臣(中曽根康弘君) 哲学的思弁においては成立するというふうに――しかし、いま日本が当面している現実政治の思弁としては、われわれは成立しないと、われわれはそう思っております。
○上田哲君 だいじょうぶですよ。現実的な政策上の観点からする政治思弁は。いま私はあえて宗教的、哲学的、観念的と言っているのですから。長官の答弁をにわかに今日のリアルなところへ移植転用するようなことはしません。御心配なく御論議願いたい。いま御答弁の前半の部分だけを受け取って話を進めたいのですが、それがどうやって実現できるかという路程の話をしようというのではない。将来それが実現をする路程があるならば、そこへ向かっての同意、理解というのは当然あるであろうということです。
 さて、そこで私が問題にしたいのは、中立保障論を議論する場合に指摘したいのは、いま言ったような理想の理解といったものと現実の中立化というものとの区分をわきまえない議論が多過ぎる。現に中立といえば、戦時の局外中立のことだというような簡単な考えにすぐいってしまう部分が多いわけです。中立といえば、戦時における局外中立と平時中立が厳密に区分される。戦時局外中立は、これは私どもの議論の対象にはならぬわけですから、具体的に問題を煮詰める場合には、論議の外において置かなければならない。私たちが議論するのは戸締まり論などではない。平時における中立論でしかないわけです。平時における中立論であれば、釈迦に説法で恐縮だが、国際法上の、条約上の義務を有する中立保障論と、そういうものにかかわりない中立保障論がある。結論を言えば、平時中立の中立保障論の中で、国際法上、条約上の義務を有する形、つまり条約締結国が当該国に対して中立保障の義務を負わせるほどの形を持った保障論が一番いいことは言うまでもないのですけれども、現実の問題として、日本を囲繞する核大国、米、中、ソが一緒に一堂に会してこういう条約締結をする可能性はほとんどないというのはやむを得ないことでしょう。ですから、いまにわかにそれを言うのではない。そこで観念的な理想ではなくて、現実に国際法上の条約上の義務を有するのではない形、たとえて言うならば、オーストリア型の中立保障論に向かって中立の方向を志向する、これが妥当なのではないか。もう少しく説明を加えるならば、永世中立というのがそのパターンです。このパターンは哲学的な観念的な宗教的な思弁の対象だということではない。いまのところは、ただちに路程をそこまで組めないならば、永世非武装中立ということまでいかずとも、いま申し上げたオーストリア型のような形での永世中立論への志向ということは、外交政策上、真剣に考えてみなければならない課題ではないかと思うのですが、そこの御意見をひとつ伺いたい。
○国務大臣(中曽根康弘君) オーストリアがやっているような武装中立という行き方は、これは一つの考え方であると思います。
○上田哲君 議論の発展のためにまた一つ私は押えておかなければいかぬのですが、長官は、武装ということばにちょっと力を入れられた。そこのところ何べんも申し上げるが、私はここでは武装の点に論議の中心を置くのではない。問題は、中立保障論を大事にしよう。中立外交についての何らかのコンセンサスを、ここだけの話でなくて、広くつくっていきたい、そこにたいへん情熱を燃やしているわけです。ですから私はこういう議論をするのに、十分にこまかいロジックと歴史的資料をきちんと積み上げて議論を用意したのだが、時間がないのが残念です。飛ばしたので、オーストリアが一体どういう形の条約保障なのか、もともと軍備中立といったところで、オーストリアという国がどのくらいの軍隊を持った国かというふうな諸点を議論をしたいのです。ですから、長官もそれらを全部のみ込んだ上で、そこらはひとつ捨象いたしましょう。その上で、オーストリア型の中立保障論に向かって、外交優先といわれるあなたの外交を志向させる意欲はないか。つまり非常に大胆な言い方をすれば、非武装中立ははるかに将来の課題だということをあえて前提として、永世中立に向かってスパンの長い過程でのアプローチというものが考えられないか。私は、長官の言われる核手詰まりによる軍事均衡論、この均衡論の中で中立志向の状況が出てきているんではないかと思うんです。いかがですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) オーストラリアの型の中立論が有力政党の間に出てくれば、私らはこれは話し合う余地がある、お互いにお互いの立場を見つめながら話し合ってみたいと、そういう気持ちをそそられます。
○上田哲君 仮説の上での妥協をしながら話をしますが、その場合、興味をそそられるポイントは、永世中立国家としてのオーストラリアでありましょうか、永世中立国の中に持っている軍備保障の部分でありましょうか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 両方兼ねたものです。
○上田哲君 私は議論のための妥協の仮定をこの際大いに設けておきたいと思うのです。妥協の仮定というのは私の発明したことばですから、その意味ではそのことばに甘えて、できるだけ大胆に踏み込みます。少なくとも、まずどこかにとっかかりができて議論ができるならば、オーストラリア型の永世中立保障論というものにひとつぜひ興味をそそられてもらいたいと思うんです。
 いまいわれている力の均衡論というものについては、一つだけくぎをさしておきますけれども、私は長い歴史の教えるところで、力の均衡論ということに絶対的な安全保障を求めることは誤りであることをやはり一言だけ言っておかなければなりません。非常に不確定な相手方の実力の測定ということから、どうしても均衡論というのは次の不均衡を生んでいくという力学を持っているわけですから、そのことに大きく中立保障、安全保障をかけることはできないだろうということです。しかし、当面の核によるものであれ何であれ、一つの均衡ということ、核哲学ということばでもいい。そういうものが出てきた場合には、そこに中立保障のかなり有力な土俵があり得るんだということを強調しておきたいのです。力の均衡の上に保障されている安定策についてでもいい、そこまでおりていきます。そこまでおりていってみれば、たとえばアメリカがすでに完全な軍事力の優位を背景にした封じ込めの時代から、それから柔軟戦略の時代に入る。そしていま均衡論の時代に入っている。いまやどういう理由をつけるにせよ、後退論ということを一つ出していることはいなめないところですね。そういう均衡論、いまやまさに均衡論の世界になった。その世界の均衡論の中で出てきたのが中曽根長官の言われるたいへんユニークな核手詰まり論でしょう。核手詰まり論というのは、核による均衡論の発想、そういうものだと考えてよろしいですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 大体そう考えてけっこうだと思います。私はそういう意味から上田委員が言われんとされるところは理解しているつもりです。それで、そういう部面の研究開拓及びその政策化ということが、中国やソ連、アメリカの動向によっては大きな課題になってくるんではないかとも考えられます。
○上田哲君 長官のことばをかりれば、私も非常に興味をそそられるところです。そこで一歩踏み込むんですが、そこで一つのナショナルな基盤でのコンセンサスを見込むために、私がさっき発明したと申し上げた妥協の仮定を持つことはできないか。踏み込んでみます。興味をそそられたらひとつ乗っていただいて、ことばの訂正もしていただこうということで、あえて妥協の仮定で申し上げれば、たとえば二つ、一つは軍備を――わが国のです、もちろん――軍備を純粋に防衛に限って、軍事同盟への依存度を軽減する方向をとるならば、それは中立志向の過程にあるものだというふうに考えたらどうだろうか。もう一つ、長官は四つのテーマを出されていますね。これは「国防」という雑誌で私は見たのですけれども、こういうことを言われている。徴兵はしない、核は持たない、海外派兵をしない、そうすれば四番目に自衛隊を認める、こういう四つのポイントでコンセンサスができないかということを言われておりますね。非武装中立を掲げるサイドからすれば、そこで自衛隊を認めるということは、これはあり得ない、しかし、少なくともいま自衛隊を認めるという文言にはならなくても、現在の自衛隊の大まかな意味での凍結ということに立つならば、双方はこれをもって憲法への国民的合意として、憲法九条を改正せず、そういう上に乗って中立外交を安全保障論として志向する共通の土俵ができないか。そこから先へいく条件ができ得るのではないかと思います。
○国務大臣(中曽根康弘君) 私は前から日本の外交、防衛等については、できるだけ外国の影響力から離脱して、そうして自主性を回復して、日本のことは一〇〇%日本人できめていく、そういう境地に日本を持っていきたい、しかし今日の世界の情勢から見ると、相互依存でいかざるを得ぬという部面がある、これはみな外国もやむを得ずやっておることであると思います。しかし、本来の形からいうと、私はこれを自然体といっているのですけれども、外国の影響力から離脱していきたい、そうして人にも迷惑をかけないが、自分のことは自分でやっていく、そういう形が望ましき自然体であると考えておるのです。そういうことが実現できるような国際環境が生まれれば、非常にわれわれはありがたく思うし、そういう国際環境を生んでいくために努力していくべきものであって、そうしていまおっしゃったような線は、もしそういう条件が出てくるならば、検討に値する線でありましようし、国民全体もそういう面で有力政党が話し合いが進むとすれば喜ぶのじゃないか、そう私は思います。
○上田哲君 まあ、かなり踏み込んでものを申し上げているわけですが、私はこういうことを思うのです。五月三日の憲法記念日に、新宿駅の前でざっと三百人ほどに私はアンケートを取ってみた。非常にささやかな印象データでありますけれども、ここに非常にあざやかなといえるほどのコンセンサスというふうなものが認められた。それは「九条−自衛権−中立」ということなんですね。九条−自衛権−中立という、その辺を一本の線につなぐような何かコンセンサスというものが非常に強く感じられた。そこにはわれわれのそれぞれが非常にたいへん不満とする部分が含まれておる。先ほど有力政党云々ということばがありましたけれども、相対決する外交政策その他において、基本的な政治理念において対決する諸政党が、それぞれにおいて許容できない部分がここにはそれぞれ含まれておるのですが、全体としては、ここにはどうやら三百人やなんかのこんな小さなアンケートや、局地的な印象データとしてでなく、もっと広範なコンセンサスが、われわれが考えるよりも意外に意識的に進んでいる、こういう感じを受けたのです。今日ほどわが国に正しいナショナルコンセンサスが求められているときはない。長官もこれならば九条を守るんだということを四つの提案の中で言われておりますね。明確な安全保障論の構築を大きな柱として、やはり立憲国家としてのわれわれの国に正しいナショナルコンセンサスを構築し得る可能性がいま出てきているのじゃないかと思うのです。そこで、私のいう妥協の仮説を前提とするならば、オーストリア型ということをたいへん簡単に申し上げているわけですが、そこにある幾つかの国際法上の分析も十分にふまえて、ひとつ現実に長官の言う有力政党間などの舞台の上で考えてもいい道筋が、この妥協の仮説の上に、たとえば次のように生まれるのじゃないか。
 第一に、各国の無視し得ないような経済関係の構築、特にアメリカでの経済発言力の増加といいましょうか、このことに一つ大きなポイントを置く。二つ目は、現憲法のあくまでも改正ということばを避けるためにも、現憲法の付属規定としての中立宣言を目ざす、そういう起草努力、それからもう一つは――これは非常に誤解を招くかもしれないけれども――日本の安全保障ラインを韓国、台湾とグアムの線をそれぞれ均衡の接線として考えてみるような設定のし方。たとえばこういう形に国民的議論をしぼってみる政治的努力というものが成り立つのじゃないか。もちろん、そうなれば日米安保条約の廃棄というような問題とか、日中問題あるいは米中問題の改善を軸とするアジアの緊張緩和の努力というふうなことが当然日程にのぼってくるわけです。しかし、そういうことは議論の悪循還を避けるためにしばらくおいて、どうでしょう。これまでのところでどのような御感想をお持ちでしょうか。
○国務大臣(中曽根康弘君) われわれの基本的立場はすでに委員会、本会議においてこまかく申し上げているとおりであり、現時点にあってわれわれは、その立場を動くことは適当でないとは考えますけれども、非常に遠い将来のことをおっしゃっております。そうして理論的可能性としては幾つかの選択をとらえて、おのおのについて検討しておくということは必要であるだろうと思いますし、その理論的可能性が現実的可能性にふ化してくれば、そういうチャンスをつかまえて、最善と思う道に進んでいくということも、政治家として弾力性を持つゆえんであり、国のためにも大事なことであると思います。
 それで、いま上田委員がおっしゃいました九条、自衛権、中立というこの表現は、私も大体国民の、特に都会におきましてはこういう考え方がかなり多いということを、いままでの世論調査でも拝見しておりますし、いまお話を承りまして、やはりそういう要素があるんだなと、そういう気がいたしました。ほんとうならば、九条、自衛隊、中立と、こう言いたいところでありますけれども、私はそういうしゃばくさい話はいまそのときでありませんから申されませんが、われわれが現時点においてひっかかるのは中立ということばである。しかし、そういうことを問題にしたんでは、長い将来におけるコンセンサスというものは得られない。それは客観情勢の推移というものを一つの条件として、両方見比べながら研究していくべきものである。そうして一がいに相手を排斥すべきものではない。そういう考え方に立ってまいりたいと私は思います。
○上田哲君 おことばを借りるならば、非常に私はいま興味をそそられた御発言だったと思う。非常に重要な御発言だったと思います。それをすぐ目の前のれんがを積む話にせよという詰め方をとりません。しかし、少なくとも国の未来に対する政治的努力、あるいは政治家的努力ということであるならば、いま言われたような部分をいかにして現実のものとしていくのかというところにこそ目標があるのだろうと思います。私は、いかにもすでに固定し切ってしまって、動かすべからざるもの、むしろアプリオリなものになってしまっている感じの日米安保条約なり安保体制なりというものも、どういう立場からにせよ――非常に極端なものは別でずが、思い切って柔軟に自主的に見直してみるという立場を失わないことが、やはり何としても外交の基本であると思います。そういう立場に立つ限り、たとえば日中、日米の関係などというものは、それほど固定的なものではないのだ。たとえば日米安保条約の廃棄というような命題は、廃棄ということばを使うだけで食傷する部分があるでしょうけれども、それもまた、たとえば日本国内に日米安保条約に対してのアンチのコンセンサスが成立したとすれば、いかなる条約も他国はこれを律することはできないという、この事態が招来されるはずです。そのことは決して夢のような話ではない。リアルでない話ではないということは、これはしかと申し上げておきたいと思います。
 最後に、しかし、そこで、どうしてもゆるがせにできない問題として一つにしぼって、日中関係に触れたいと思います。どうしても中国問題をこれからどのように国益の中で考えていくのか、いかに一衣帯水を遠くと見るか近くと見るかということはあれ、やはりどうしてもこの問題について目をそらしていくことになれば、国益なり外交論なり平和なりは語れないということになる。その辺のことが政治の責任として欠落しておるところに、軍国主義批判なるものをめぐって、どちらもが打ち返し合うという結果になるということであろうと思うのです。そういう意味で、中国関係論を、対策とは言いますまい、外交論とも言いません。中国関係論と言うべき深い展望、十分な長官の御見解を承っておきたいのであります。
○国務大臣(中曽根康弘君) 中国を見るについては、いわゆるいままでのような人文的な面からのみ見るべきではないので、最近の第二次世界大戦後の新生中国というものをよく見きわめる必要があると思います。たとえば科学技術の面、あるいはすでに原水爆あるいは長距離ロケットにおいて示している能力、そういうものは中国民族の能力、科学技術的に近代性を持った能力でもあるわけでありまして、ややもすれば、われわれが中国を見る目というものはロマンチックな詠嘆調の明治時代の中国という連想が浮かびますが、これは非常に危険である。そういう近代科学技術を駆使する中国の実態を余すことなくまず把握するということが、日本の反省としてまず大事だと、それから第二番目は、やはり中国は四千年の歴史を持つ悠遠な大民族であって、その精神構成というふうなものは、日本人のような島国根性のせせこましいところに生まれたものとは違う、もっと大きなスケールのものがある。それから表現にしましても、日本人のようなせせこましい、あるいは何と申しますか、ことばのニュアンスというか、デリケートさを誇るというようなこと以上に表現の雄大な点、あるいは表現についてもああいう大きな大民族ですから、大民族を動かすについてはかなり表現においても大きな表現をとるということも考えられる。そういうような面がまだ今日の中国にもある。だから中国の要人の発言あるいは共同声明の内容等についても、日本的なものさしではかってはいけない。やはりそういう四千年の歴史を持った大民族のいままでの歴史を背景にしたことばという考えをもって取り上げなければならぬ要素もあるだろう。そういう点について見ると、中国に対する見方というものは、ややもすれば、日本側においては、特にわが党におきましては、いわゆる日本的せせこましさがあるように反省をいたします。それで、もう少し中国民族に相対し得るような精神の深さ、それから表現の受け取り方、あるいは樽爼折衝の配慮、そういうものについて、日本人ももう少し大きくなっていかなければいけない。
 私はこの間共同声明を見、その後の反響等も見まして、あの中国の民族に太刀打ちできるような政治家がほんとうに日本にいるだろうか、そういう気が実はわれわれの反省を含めてしておるのです。あの共同声明について、私はもちろん全幅的に賛成しておりませんし、われわれから見れば誤解であると思う点も多々ございますけれども、しかし、言わんとしていることは、われわれも想像できるところはあります。それは、第二次世界大戦であれだけ被害を受けた中国の指導者にとってみれば、そういう立場もわれわれは理解しなければならぬと思うのです。そういうような深い理解力とお互いをいたわり合うような気持ちでものを見ながら、これから中国関係を進めていくという心がまえが非常に大事ではないかと思います。
○上田哲君 長い時間にわたりましたけれども、安全保障論の最後に、先般の共同声明についての御意見も承りました。そこで一方にいまお話しのような中国への関係論もあり、そして長官から言えば、日本の七〇年代の自主防衛論というものがある。そしてその限りで、長官のことばを使えば、日米安保条約の弾力的運用がある。安保条約をこれからどのような形で変えていくかという問題と、いまお話しの中国への理解というものが、どうからんでいくのか。中国の人工衛星があと五年すれば違った意味を持ってくるのだという軍事状況なども含めて、長い展望での中立志向とも関連しながら、日米安保条約の行く末についてのいま一歩突っ込んだ御見解を伺っておきたいと思います。
 なお、いろいろな問題があるのですけれども、時間の都合もあります。そして総理に対する質疑との関連もあります。そして防衛三法の全体の審議の中であらためて総括的にお伺いすべき分も留保して、当面ここで最後に一言御意見を承って、私の質問を終わります。
○国務大臣(中曽根康弘君) 安保条約につきましては、いままで考えを申し上げましたが、この自動延長は、客観情勢の推移を見つつ弾力的にこれを運用していく、そして基地問題を日本人が納得するような形でできるだけ始末していきたいと思うんです。この中には民間に返せという御議論もございますし、また、私らのように共同使用という形で便法的にまず前進しようという考えもございます一ともかく、安保条約につきましては、弾力的運用でこれを処理していく、そして沖繩の返還及びその後の日本の経済の成長、あるいはアメリカのいろいろな政策の情勢等を見ながら、先ほど私が安保条約について申し上げましたような観点に立ってこれを適切に処理していく。必ずしも一つの考えに膠着することは正しいこととは思いません。こういう変化と選択の時代でありますから、政治家が新鮮な鮮度の思考の弾力性を持つということは非常に大事であると思いますし、客観情勢もいろいろ変化があると私ら考えられますので、そういう柔軟適応の力を維持しながら処理してまいりたいと、このように考えます。
○山崎昇君 いままでたいへん高度な政策論が展開をされて、
  〔理事八田一朗君退席、委員長着席〕
かなりな点については明らかになった点もありますし、また、新しい構想等も拝聴をしてきました。しかし、私は、どうしても自分の専門分野が行政系統でありますし、また法律系統でもありますために、せっかくの大論争に水を注ぐようでありますけれども、当面、政府から提案されておるこの法案を中心にまず二、三お聞きをして、あと、ほんとうに国民が自衛隊について素朴に感じておると思われる疑問点について二、三長官の見解を聞きたいと思っておるわけです。
 まず第一番目に、今度の法律案を見ますというと、昔の軍隊にありました准尉というのが提案をされてきておるわけです。そこでこの准尉というのは、これは一体どういう任務で、なぜこういうものを置かなければ自衛隊が運営できないのか。このもらっております説明だけではどうしても私どもわかりません。ただ平均年齢が高いとか、何か沈滞ぎみだから准尉というものを設けたほうがいいのだとか、こういうことだけしか私どもわかりませんので、この准尉というものを設けたほんとうの理由といいますか、趣旨といいますか、そういうものについてまずお聞きをしたい。
○国務大臣(中曽根康弘君) 准尉を設けましたのは、二つ大きな理由があると思います。
 一つは曹のクラスに対する優遇措置でございます。曹のクラスはたしか停年があれは四十九でございましたか、そうすると十五年以上も曹のままでおる人たちがおるわけです。それでもちろん曹士の中で試験を受けて三尉に昇進していく人もかなり多うございます。しかし、三尉に昇進できないが、しかし曹としては非常に優秀だという人もおるわけです。それらの人々が十数年も同じ位でおるということは、士気の上でも非常に考えさすべきものがある。そういう意味で三尉に近いポジションとして、一曹と三尉の間に准尉というクラスを設けて、そうしてそれらの人々を優遇してあげようというのが一つの考え方です。
 それから第二は、曹士の訓練等の内部におきまして、そういう人たちはわりあいに兵器の調整とか、あるいは若い隊員の訓練とか、そういう点について得意なところを持っている人があるわけです。必ずしも尉官としての指導性はない、しかし与えられた分野についてはきわめて責任もあり、技術も練摩され、部下に対する教え方もうまいと、そういう人たちのポジションを一曹より上にひとつ設けてやって、そういう自分の特技を生かすというポジションをつくってやろう、そういう二つの理由で准尉は設けたと考えております。
○山崎昇君 いまの御説明では、曹のクラスの優遇だと、こういうんですね。あとでお聞きしますが、必ずしも優遇策にはなっておらない。まあ昔で言うなら、私もかつての軍隊では陸軍上等兵でありましたけれども、何か伍長勤務みたいなかっこうになる。昔もこの准尉というのがありました。しかしいま中曽根長官の言うように、必ずしもこの准尉の任務というのは、そういう任務でなかった、昔は。今度もできちまえば、いまあなたはそう言うけれども、実際は何かの任務を与えなければ、この准尉というものの存在は意味がないのではないだろうかというふうに考えます。
 それから曹士の訓練、昔の准尉とかなり違うんでしょうけれども、私は、いまの自衛隊の内部よくわかりませんが、准尉が直接、昔でいうならば訓練に当たったとうこと、あんまり私は聞いてなかった。あるいは、私自身も経験をしておらない。なぜならば、内務班におって、主として指揮班でありますとか、あるいは昔でいうならば准尉というのは、ほとんど内務班の人事を担当しておる。こういう私ども経験からいうと、この准尉というのは、いまの長官の言うように曹士の訓練に経験を生かすなんということには、どうもなりそうもないのではないだろうか。それよりもっとほんとうの考え方というのは、何か一つ設けて、おまえは優遇してるんだぞという精神的な支柱といいますかね、あるいは給与上の優遇策とでもいいますか、そういうことのほうが主力になってるような気がするのです、これは。しかし、これは初めてあなた方が考えついたことでありますから、今後どうなるかわからぬが、どうも、いま長官の言うようなことにはならない気もするんですが、もう少しお考えあれば、その訓練等の実情等も加味しながら御説明願いたいと思う。
○国務大臣(中曽根康弘君) 詳細につきまして、人事教育局長から答弁さしていただきます。
○政府委員(内海倫君) 准尉を設けます目的は、あるいは准尉の任務というふうなものの基本的な考え方は、ただいま長官から説明を申し上げたとおりでございますが、さらに御質問の点に長官の答弁を補充いたしましてお答えを申し上げたいと思います。
 確かに、仰せのように、今度設けました准尉の制度というものは、この准尉になる人たちの士気を鼓舞するという点で、一つの大きな意義があります。これは、その理由は、先ほど長官も触れましたように、一等陸・海・空曹の停年が、昭和三十八年に五十歳まで延びたこと等から、非常に曹の階級の者が多くなったわけであります。これらについて、さらに優秀な者はどんどん三尉に進級いたしますけれども、大きな経験と能力を持ちながら、遺憾ながら幹部に昇進し得ない人たちというものが、准尉というふうな階級につくことによって、確かに一つの気持ちが新たになり、士気を鼓舞してくるということは当然言えるのではなかろうかと、また人事管理の面からいいましても、こういう多量にある一曹というものを管理していく上からも、准尉の制度を設けるということは必要なものと考えます。
 半面この准尉というものの職能でございますが、先ほどもその点御質問ございましたが、御承知のように、現在の自衛隊は非常にこの曹の階級の分の厚い構成をとっております。陸上自衛隊におきましても、士の階級にある者と曹の階級にある者との比率が、曹を一にしまして、士のほうが一・二四、海及び空の自衛隊になりますと、それがもう一対一というふうに、非常に前の、これは比較することが適当かどうか、別問題といたしまして、旧陸・海・空等の下士官と兵との対比に比べますと、非常に違うところでございます。それだけ曹の階級というものが数が多いわけでございます。そういう中において、この曹をさらにまとめていく、曹を指導していく、こういうふうな者が必要になってくるわけであります。しかも、今日の自衛隊というものは、技術的にも非常に高度の技術を内包いたしておりますので、昔と違いまして、そういうふうな経験、技術を十分身につけた者が率先して指導に当たる。率先してその仕事に当たっていくということの必要性が非常に大きいわけでございます。そういう意味で、陸・海・空各自衛隊とも、曹の仕事の中において、さらに一曹よりも上の階級においてこれらの仕事を果たし、また曹以下を指導監督していく者が必要である、こういう点でこの准尉の意義があると、私どもは考えておる次第でございます。
○山崎昇君 どうもわからないんですが、たとえば具体的に聞きます。大尉がかりに小隊長といたしますね、それからいまの一曹というのがかりに班長といたしますね、そうすると准尉というのはどういうふうに置かれるのですか、何か何人かの班長を指揮して、そして小隊長のもちろん下でしょう。何かそこら辺のところが私は機能的に一つはわからないということ。それから御説明では幹部だと、こういうことですね。しかし、自衛隊で幹部というならば一尉以上になっているから、だから身分はそうするとこの人はどうなるんですか。待遇は幹部だけれども身分は曹なんですか。何かそこら辺のところがどうも私は准尉という名称からいって、昔の軍隊におったものだから、どうも昔の軍隊のことが頭にすぐ浮かぶわけなんですけれども、昔の准尉の制度からいうと、あなたが説明するような制度ではなかった。何か主として内務班の仕事をやるようなことが准尉というかっこうでやられておったように記憶しておるので、どうも准尉という制度がいまの説明ではぴんとこないんですね。もう一回ひとつ聞かしてくれませんか。
○政府委員(内海倫君) もう一度御説明申し上げますが、准尉の属する分野といたしましては曹の分野に属します。したがいまして、幹部ではない、要するに幹部に準ずるものである、こういうふうに私どもも理解して法案を出さしていただいております。そしてこの准尉が果たします任務は、かつての軍隊におきましても、いろいろ准尉というものの果たしておった任務はあろうと思いますが、現在自衛隊においてこれに果たさせたいと思っております任務は、陸上自衛隊におきましては、現在、私どもはこれを先任陸曹というふうなことで、古参の一等陸曹がこの任務を果たしておりますが、これを今度できました准尉に果たさせたいと思っておりますが、それは営内の服務指導に関する業務、これは要するに営内服務に関しまして中隊長を補佐し、さらに営内の班長を指導監督していくというふうなこと。さらに先ほどもお話しのありましたような人事に関する業務、曹士の人事、賞罰、給与の事務、さらに文書あるいは庶務に関する事務、それからさらに中隊指揮所の開設をいたしましたような場合に、指揮所に関する庶務的業務、こういうようなものを行なう。また海の場合におきましては、これは昔の海軍の経験をお持ちの方はよくわかるわけでございますが、昔の海軍には掌長という任務が、ポストがあります。これは准士官あるいは一部特務士官の人がこれに当たっておりましたが、要するに最も専門的なその部門の、実務的な技術者の責任者ということで、これが当たっておったわけであります。たとえば掌航海長であるとか、掌水雷長というふうな名称のもとに任務を持っております。これは、おそらくは昔の艦艇等を中心にする海軍が、非常に技術的に高度なものであったために、必然的に生まれてきたものと思いますが、この海上自衛隊の場合におきましても、そういうふうな任務に従事する者、さらに兵あるいは機器の整備操作に関しまして曹士以下の隊員の教育、訓練を行なう、こういうふうな任務でございます。また、航空自衛隊のほうにおきましては、航空自衛隊は御存じのようにたいへん高度な器材あるいは物品等を持っております。これらの品質の管理あるいは調査、装備器材の品質管理に関しましてみずからいろいろな業務を行なう、こういうふうな任務を持たせる、こういうことでございまして、要は、かつて御経験というか、御承知のような、昔のような軍隊における准士官の持っておった任務もあわせながら、さらに現在のきわめて高度な技術的なものを内包しておる自衛隊における必要な任務を持たせるというのが、准尉制度の目的でございます。
○山崎昇君 説明聞けば聞くほど、やっぱり内部管理の仕事にほとんどがとられる。いわば経験を生かして曹士以下の訓練、指導ということばがある、私はこう思うんです。だから、この准尉制度はどうも不明確であります。とても時間がありません、こればっかりやっておったんじゃ話になりませんから。重ねてお尋ねしたいんですが、説明資料を読みますと、この准尉が設けられるので、給与体系も改められているんですが、そこで私がこれもらっておりますのは――内閣の調査室からもらっている資料ですが、これは間違いないんだろうと思いますが、曹の給与に営外手当に関連をする六千七百円足して、それが准尉の給料なんだという表になっておるようですね、それは間違いありませんか。
○政府委員(内海倫君) 准尉の俸給表の初号におきましては、それのままの額が准尉の俸給となっております。お説のとおりです。
○山崎昇君 そうすると、私の表で具体的にあなたにお聞きしますが、一号から二十一号まで載っております。三等陸尉、海尉、空尉、俗に尉ですね。これは一号が四万四千百円、准尉が四万一千五百円、曹が三万四千八百円、それから二号は四万五千四百円に四万四千百円、三万七千四百円、三号になりますというと、四万六千八百円、四万六千七百円、四万円と、こうなるわけです。そこで、これからあなたにお尋ねしたいのは、曹のクラスは、これは営舎内の居住でありますね。したがって、食費等で六千七百円とっているわけです。それを引いた部分を払っている。ところが、これは優遇だというけれども、准尉の俸給表を見ると、ただその人は営外にあるからこの六千七百円はあなたにあげます、これがあなたの月給ですというんで、曹と准尉の月給は一円も変わりない。これは一体どういうことをお考えになっているのか。
 それからさらに准尉と三等陸尉との月給を見ますと百円しか差がない。そうすると、私から言うならば、給与体系からいうと、曹も准尉も尉も何も変わりないんですね。どこに准尉の優遇策ということになるのか、まずこれがわからないということ。それから説明を聞くというと、一曹以下はたとえば年金は十五年でつく。しかし尉以上は二十年になるから、身分的には何か優遇しているようだけれども、待遇関係からいけば不利になりますので、そうして特別措置を設けて、曹以下の規定を準用して何とかしようではないか、どうもあなた方の説明している位に対する何といいますか、待遇といいますかね、そういうものは何にもないのではないだろうか、この辺はどういうふうに私ども理解したらいいのかわかりませんので、ひとつ説明願いたいということと。それからもう一つ、関連して申し上げますが、一号と二号だけは、これは尉官と准尉というのは二千六百円、千三百円の差がある。三号以降になると百円しか差がない。どうして一号と二号だけは差があって三号以上になると百円でおさまるのか、これはいまの体系そのものがなっておらぬような気がするわけですね。それもあわせてひとつ説明願いたい。
○政府委員(内海倫君) 御質問の点は、私どもも、率直に申し上げまして、そういう御意見をそのまま承らなければならない点があると思います。この准尉制度を設けますにつきまして、私どもが一番困りましたのは、給与体系を定めるという点でございます。もともとが現在の自衛隊員の給与というものは、これが設けられるときに公安職の俸給表になぞらえまして自衛隊員の俸給がきめられておるわけでございます。そうしますと、そのきめられました際に、ただいま御指摘の一曹と三尉というものの違いというものが、もともときわめて少ない、接近したものになっておるわけであります。ただ、将校だけが、いまも御指摘のように、三尉は四万四千百円、これに対しまして一曹は三万四千八百円という、これに六千七百円を加えますと、先ほどの准尉の四万一千五百円と同額になるわけでございます。これは公安職の俸給がきめられました場合に、公安職になる者の、上級試験で合格してきて幹部に採用される者の、要するに大学卒業の初任給という観念がこの中に入っておりまして、それから一曹のほうの初任給につきましては、高校卒という観念に基づく、約十年を経過した後の額というものがここに定められておる、こういうことでございますので、初号との差がこのように出ておりますが、それ以後におきましては非常に三尉と一曹が接近してまいりまして、一番幅のつくところでも千円程度の幅しか各号を通じましてついてないわけであります。その中に、さらに准尉の給与基準をその狭い中に割り込んで入れてきましたために、お説のように一曹と三尉の俸給差というものがほとんど変わらない、こういうふうなことになったわけでございます。
○山崎昇君 そんなばかな説明ありますか。法律を改正してこれから新しい体系をつくろうというときに、そうしていま聞けば、幹部を待遇します、任務は重いものを預けます。実際の給料を見たら曹と何にも違わない。ただ、営外手当を入れたか入れないだけ、そうして三尉と百円しか違わない、どれだけの任務の差がありますか、あなた、そう聞くと。ところで、二十一年これはたつのだと思うのですね。かりに一年一回昇給したとすれば、二十一年たちまして初めて六百円の差がつくようになっている。十年までは百円ですよ、差は。こういう給与体系をあなた方つくって、そうしてしかたがありませんなんという説明で私は了承することはできない。准尉制度について私は疑問を持つけれども、こういう制度をつくるならば、つくるようにきちんと裏づけについても改むべきじゃないですか、長官。そうしていま聞いたら、一号と二号だけは二千六百円の差がある、二号は二千三百円の差がある。私はこういうやり方はすべきでないと思う。ですから、これはやるならこの給与体系全般について改めてもらいたい。そうしなければ私はとてもこれを了承するいとはできないです。そして、私は去年か一昨年だったと思いますが、自衛隊の給与のあり方について私は疑問を投げたのですね。そのときにあなた方は、いろいろ検討しますと答弁をした。なぜならば、この営外手当――営舎内で払っているわけですが、それを差し引いて、それを俸給表にするところに誤りがある。ですから、基本給は基本給できめて、実際にかかったものは差っ引いて払うべきではないか、そういうことを言ったら、検討しますとあなた方言ったんですよ。期末手当を払うときには、この営内で差っ引いている金を足して、それを基礎にしてあなた方計算するんじゃないですか。ですから、給与体系からいくと全くつじつまの合わないことをあなた方はやって、国会でそれを指摘をしても直すあれがないではないですか。長官、こういう給与体系であなた准尉をつくってどうしますか。これは処遇の改善になりますか。私はならないと思うのですが、どうですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 御指摘はごもっともと思いますが、ともかく身分的に曹と三尉との間にそういう新しい階層を設けて、そうして取り扱いにおいて優遇すると、そういう考え方が強く出てこういうものを設けて、いま非常に停滞している曹クラスを優遇してやろうという考え方に立脚したのでありまして、給与体系がその場で非常に密着していることは御指摘のとおりであります。しかし、とりあえずこの優遇措置として、いま詰まっている曹をめんどうをみてあげるという意味においてやむを得ない措置として行なったのでございます。
○山崎昇君 この説明にある退職年金等の特例措置というのは、どういうことをやるのですか。
○政府委員(内海倫君) 退職年金につきまして、二つ、この准尉を設けました場合に問題があるわけでございますが、一つは、先ほど御意見の中にございましたように、現在の年金法でいきますと、いわゆる自衛隊のほうに直しますと、幹部は二十年以上の勤続に伴って年金が発生するわけでございます。曹以下は十五年で年金の取得権が出るわけでございますが、これについて、准尉の場合、二十年に満たない場合におきましても、十五年以上の勤務をしております場合には年金権の発生を認めるというのが一つでございます。
 それからもう一つは、この准尉になっております者につきまして、恩給、要するに、昭和三十二年以前に自衛隊に入りました者については恩給の適用がございますので、これらの関係で計算をいたしますと、人によりますと、退職する際に一曹であったほうが年金額の算定上有利になる場合がございますので、この場合においてはその有利なほうを適用する。要するに、准尉として計算されたものよりも、そのときに一曹になっているというほうが年金計算上有利である者については、その有利なほうを採用する、こういうふうな特例を定めたものでございます。
○山崎昇君 要するに、この准尉制度というのはたいした説得するだけの理由はないわけですね。そうして任務と仕事だけは何か重いような仕事をあずけておいて、実際の待遇は曹以下の待遇と同じである。そうして特例を設けなければ年金についても救うことができない。いわば複雑にしているだけであって何の意味もないんではないですか。ですから、言うならば、昔の軍隊の伍長勤務か、そういうやり方をまたこの自衛隊としてとってきているにすぎない。あるいは名実ともにこういう任務が必要であって、そうしてその裏づけ等がきちんとされるというならば、私はまだ考えていいと思うんだが、いま聞いた限りではどうもそういうことではないようであります。ですから、私は長官に、こういう取ってつけたようなやり方をせずに、自衛隊のほんとうの階級というものを考えるならば、もう少しきちんとした検討を加えて、そうしてそれに対する裏づけについても、やはり体系づけるなら体系づけてきちんとすべきじゃないかと思う。ぽっと浮かんだから、この人を優遇するんだなんという簡単なやり方でやったからといって、決して自衛隊の仕事が前進するものではないと思う。私はこういう意味で警告をしておきたいと思う、こういうやり方は。こういうことで、この問題については最後に警告をして私は次の質問に移りたいと思う。
 それからもらいました資料によると、先ほども上田委員のほうからも多少触れられておりますが、自衛隊員の充足率というのは年々低下をしているのですね。ふえておらない。全体の充足率を見ても、昭和四十一年度から四十二年度まできておりますが、充足率そのものは低下をしている。いわゆる陸海空等々に割ってみても、やはり充足率というものは低下をしている。どうしてこんなに、相当程度自衛隊は金を使って宣伝をし、そうして地方連絡部でも世の中から批判をされるような方法まで使ってすら、この充足率がだんだん減っていく、こういうものをどう私ども理解したらいいのか。その原因についてお考えを聞きたいと思う。
○国務大臣(中曽根康弘君) 一つは、やはり経済情勢がわりあいに良好であるために、民間企業のほうが魅力がある、そういうかげんで自衛隊を志願する者が少ないということと、それから若年人口層が年々減少しておりまして、それが加速度を加えている、そういうこともあると思います。われわれとしては自衛隊をもっと魅力のある自衛隊にするようにして、産業の方面に吸収されるのを、できるだけ従前どおり自衛隊のほうに回すように今後努力してまいりたいと思います。
○山崎昇君 私は、いまの高度経済成長政策をとる限りは、これはいかに長官がそう言おうとも充足率は低下をしていくのではないだろうか。これが上がるという保障もなければ、希望もないのではないだろうか、私はこう考えるわけです。いま長官はその理由の二つをあげられまして、それも私はそのとおりだと思うのですが、そのほかに、私はどうも国民のうち、特に若い諸君に自衛隊とは何なんだ、こういう素朴な疑問があるのではないだろうかと思うのですね。この点に関連して長官にお聞きしたいと思うのですが、どうもあなたの三島由紀夫さんとの対談を見ておりましても、必ずしも自衛隊というのは昔の軍隊ではない、さればといって災害復旧をやるばかりでもなさそうだ。で、あなたのことばをかりるというと、端的にいえば、自衛隊員は若い技術者群の集団であると。若い技術者群の集団だというならば、何も自衛隊まで来て安い月給で仕事をせぬでもいい。民間のどんどん進む企業に働いたほうがいいということになるのではないだろうか、私はこう思うのです。そこで、あなたがこういうことを述べておられるんだが、一体、自衛隊というものを若い諸君がどういうふうに理解したらいいのか。また、あなた方はさせようとしているのか。そういうことについて関連してお聞きをしておきたいと思う。
○国務大臣(中曽根康弘君) 三島由紀夫さんとの対談は、前後をお読みいただきますと、防衛を担当する若い技術者群としてとらえよう、そういうふうに考えますというふうに私言っていると思います。自衛隊を昔のように一銭五厘で召集し、兵隊のように道具に使うということはいかぬのだ、もう人間として自衛官を尊重する待遇も与えなければいけない、そういう趣旨のことを言ったのだと思います。そういう考えに立って防衛を担当する若い技術者群としてわれわれは心得て、これから成長させていくというふうに考えておるわけであります。
○山崎昇君 いまあなたが言われたが、しかし、最後に集約して、あなたは端的に言えばということばで、技術者ということばを使っている。そこで自衛隊員の充足率が思うようにいかない。したがって、将来に備えて、このうらはらの関係として、私は予備自衛官制度というのがどんどん拡充されていく、こういうやはり因果関係にあるのだと思うのですね。そういうふうに私は理解しているのですが、間違いありませんか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 自衛官は自衛官として募集を続行して、充実さし、定員を充足さしていく必要はございますが、また一面において、自衛官として訓練を受け、教育を受けた諸君が志願して、そういう予備自衛官といろものに応じてくれるならば、これも大きな意味の防衛力の一要素をなしますから、いざというときに備えて、その力も温存しておく、そういう考えで予備自衛官もふやしておるわけでございます。
○山崎昇君 そこで充足率と、あとで予備自衛官との関係は聞きますが、私はだんだん自衛隊の充足率が低下をしていく。あなたはさっき第一線は現役の自衛官で何とかやっていきたい、背後関係は予備自衛官で守らせたいのだという趣旨のことを述べられておる。そういう意味でいきますと、私は予備自衛官の制度と、隊員の充足率の低下というものは、やはり因果関係があるというふうに理解をしている一人なんですが、後ほどまたこれは聞きます。
 そこで、自衛隊というものについて、やはり国民の中には素朴に疑問を持っておるのは、自衛隊というのは軍隊なのか、軍隊でないのか。これはあなたこの間、本会議で海軍、空軍と言ったのでたいへん問題になったようでありますから、率直に私はお聞きしますが、自衛隊というのは軍隊ですか、軍隊でないですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 自衛隊は自衛隊でありまして、軍隊ではありません。
○山崎昇君 そうすると、自衛隊と軍隊の違いというのはどこにありますか。名称の違いだけですか。中身は同じだけれども、ただ呼び方が違うというのですか。呼び方も違うが中身も違うというのか、軍隊と自衛隊の違いというものを国民がわかるようにひとつ説明してくれませんか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 普通、軍隊と言われますものの自衛隊は要件を持っていない。たとえば交戦権を持たないということ、これは憲法上明記してございます。あるいは軍法会議のような特別裁判所を持たない。これらは明瞭に違うところでございます。それから日本の自衛隊の場合は、特に専守防衛ということで憲法上も明確に規定されております。そういう点で一般の軍隊というものと違う性格がございます。
○山崎昇君 そこで、私は長官にお聞きをしたいのですが、これはかつて防衛庁の人事局長をやられた加藤陽三さんという方が自衛隊が軍隊かどうかということについて解説をされておる。軍隊といって差しつかえないと言っているのですね、簡単に言うならば。ただ憲法九条二項との関係があるからどうも言うのはぐあいが悪いという趣旨のことが一つ述べられておる。もう一つは、国際法的に言うならば軍隊だ。ですから、海上自衛隊の練習艦が回っておるようでありますが、どこへ行っても海軍としての栄誉礼も受けておる。また、それについて何の疑問も持っていない。堂々と受けられておる。そういうことから言えば、国際的な常識から言えば軍隊であって、日本に帰ってくると軍隊ではありません、ただ、それは憲法上ぐあいが悪いから軍隊ではありません、こう言っているにすぎないのじゃないでしょうか。だから国民は、自衛隊というのは軍隊なんだけれども、政治家の皆さんや政府が軍隊と言わないものだから、ただ自衛隊という呼び名で呼んでいるにすぎないのだ、こう私は思うのですが、この加藤陽三さんの解説が違うなら違う。あるいは国際的には軍隊でございます、しかし、憲法九条二項との関係がありまして呼ぶことはできないんです。全く苦しいんですというなら、苦しさを表明されてもけっこうなんでございますが、一体どうですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 自衛隊が軍隊であるかどうかというのは、いままで吉田さんの言明とか、あるいは増田防衛庁長官の言明とか、法制局の見解とかいろいろございました。私もずっとこれを読んでみましたが、佐藤総理の最終の言明は、自衛隊は軍隊でありません、はっきり明言しております。そして自衛隊は自衛隊であります、私はこの定義が正しいと思います。いままで吉田さんや増田さんが言われたのは、ある意味におけるという冠詞がついておる。ある意味における軍隊と呼ぶならば言えるかもしれません、あるいは戦力なき軍隊云々とか、そういう妙な使い方をしております。私はすなおに、先ほど申し上げました理由で、普通の軍隊とは違う性格を持っておる日本の防衛力であるというふうに規定していることが正しいと思っております。
○山崎昇君 この解説ですと、軍隊の定義いかんによる。一九二七年のジェネバ会議において討議された案のごとく、外敵に対して国の防衛を直接担当するものを軍隊と称する、それならば自衛隊は軍隊であってもいいというのです。ただ、憲法の九条二項との関係があるから言えないのだという解説になっているのですよ。そして先ほど申し上げたように、日本の自衛隊は、国際的にあるいは国際法上といいますか、常識で言うならば軍隊になっておる。あなた方はねじ曲げて、ただ自衛隊という呼び名だから自衛隊と言っているにすぎない。実体は軍隊である。こういうことが明確にされないから、たとえば募集される若い人でも、あなた方が幾ら国を守る気概を持てといったって、自分のつとめようとする自衛隊が一体国際的に軍隊でありながら軍隊と認められないところに疑問を持っているのじゃないかと私は思う。そういうところがかねや太鼓で一生懸命宣伝しながらも自衛隊の充足率というものがなかなか満足にいかなねその他の理由があるにしてもいかない。そのためにこの間、衆議院でも問題になりましたようなああいうことすらやらなければ隊員というものができない。そのために先ほど上田委員から指摘をされましたように、年齢を引き下げて、そして中学出た者をしゃにむに連れてきて、あなた方は昔の幼年学校のような仕組みでもしなければ自衛隊の充足というものが困難になってきておる、こういうことなんですが、そうすると、この解説は誤まりですね。長官どうですか。間違っていますか。間違っていませんか。
○国務大臣(中曽根康弘君) その解説を私直接読んでおりませんので内容はよくわかりませんが、加藤さんの定義いかんによるというふうにいま拝聴いたしました。つまり、どういうものを軍隊と称するかという定義によって考え方が違うので、先ほどお読みになった中で、直接侵略に対して防衛するものを軍隊だというならば自衛隊は直接侵略に対して防衛するから軍隊の一種と言えると加藤さんは言ったので、その定義が、基準が問題だと私は思うのです。しかし、軍隊というものをもう少し裁判権の問題とか、いろいろな問題で条件をあげてくれば、そういう定義に従えば自衛隊は軍隊でないという定義になると私は思うんです。やはり日本国憲法における考え方が何であるかということが日本において通用する考え方でなければならぬし、私はそういう考えに立って、自衛隊であり軍隊ではない、そういうふうに言いたいと思うんです。
○山崎昇君 先ほどあなたは交戦権がない、それから軍法会議がない、だから軍隊でないんだと、しかし、この解説の第一義的な軍隊の定義というのは、国の防衛を直接担当するものが軍隊なんだ、そうすれば自衛隊は明確に軍隊ではないでしょうか。そうしなければ、私はやはり国民の疑惑というものは晴れない、こう私は思うんです。あなた方の気持ちの中にはやはり軍隊だという気持ちが多少ともあるから、不用意であろうが、あるいは何であろうが、海軍、空軍、陸軍というようなことばが出てくる、そう私ども考えないとこれはつじつまが合わないと思うんです。
  〔委員長退席、理事八田一朗君着席〕
そこで、私はこのいまの自衛隊は国際的に見ても、それから内容的に見ても軍隊であろう、こう私は考えておるわけなんです。そういう意味でこの充足率というのは、こういう問題と関連をして私は考えてみなければならぬのではないだろうかというふうに一つ考えているわけです。
 もう一つ私が考えているのは、先ほども触れましたが、予備自衛官制度との関連であります。これも上田委員からもう質問されたことでありますから、私は数学的にひとつお聞きをしておきたいと思うんです。これは調査室を通じて一応自衛隊の考えの数字を聞いたわけでありますが、防衛庁に勤務しておる予備自衛官が六百八十一名だ、こういう数字をもらっているんですが、間違いありませんか。
○政府委員(内海倫君) 六百八十一名、間違いございません。
○山崎昇君 そうすると、四月二日に私は予算委員会であなたに質問したときに、あなたの答弁は、昭和四十四年三月三十一日現在二万九千八百人であって、そのうち自衛隊に勤務しております者は九百七十一名であります、そうすると、このもらったのもこれは四十四年三月三十一日現在の数字だと、こういうんですが、わずか一月の間に同じ現在人員をとりながらも、予算委員会とこの委員会では数字が違うんですね。そうすると、この一月半の間に二百九十名ばかりやめたんですか、その辺の資料を明らかにしてください。
○政府委員(内海倫君) 御指摘のように、お手元にございます資料は四十五年五月八日現在の調査をいたしました数字でございます。それから前に参議院の予算委員会で申し述べました員数九百七十一名は昭和四十四年三月三十一日現在の数でございます。したがいまして、その間に差し引き二百九十名ですかの者がやめたといいますか、再任をしなかった、こういうことです。あらためて予備自衛官として任命しなかった者がそれだけ出たわけでございます。それから、なお念のため申し加えておきますけれども、自衛隊におきましては、昭和三十八年以降は防衛庁、要するに、三自衛隊に関しまする限り自衛隊の出身者を予備自衛官として採用することをいたさないということにいたしておりますので、増加はしないわけでございます。だんだん減ってまいるわけでございます。
○山崎昇君 だから、私が数字を確認したのは、あなたが予算委員会で私に答弁した数字が九百七十一、もらったのが六百八十一で、二百九十の差があるから、そうすると、その間にあなたは採用しなかったと、いまこう言う。そんなばかな話がありますか。九百七十一名おった者がいまの数字で六百八十一名というのは、その間にやめたから減ったというんなら話はわかりますよ、採用しなかったとはどういうわけですか、数字はもう少しきちんとしてください。
○政府委員(内海倫君) もう先刻御承知のように、予備自衛官は本人の申請に基づきまして採用するわけでございますから、したがって、このただいま出ました数字は、任期が満了してもう一度任期をつとめるという者についてこれを認めなかった、結局、したがって、これは何といいますか、それだけのものが減っていく形になるわけでございます。いままでもう予備自衛官として採用されておった者が三年の任期が満ちまして、そこでほうっておけば、そのままもう予備自衛官でなくなるわけでございます。あらためてこれを予備自衛官に採用しない限りは減っていくわけでございます。したがって、任期が満ちましてやめていった者が、結局この一年間ほどの間に約三百名近くあったということでございます。
○山崎昇君 だから、結論からいえば、この間にこれだけの人がやめたわけでしょう。あなたがごたごた言うけれども、簡単なんです、そんなこと。
 そこで、長官にお聞きしますがね。予備自衛官の性格からいいまして、どうして防衛庁の職員にこういう者を採用されるのか、これは予算委員会で、時間ありませんでしたけれども、最初は定員外だという、だんだん聞いていったら定員内でございます、普通の職員でございます、こういうことになった。そうすると、私は一体この予備自衛官という者は自衛隊の中の事務屋だと思うのですけれども、給料表を見ると、行政職(一)表、行政職日表の適用者でありますから当然事務屋だと思う。こういうものに採用しておいて予備自衛官というものは私は意味がないんじゃないか、ほかの官庁に採用する場合と私は違うと思うのです。そういう意味で防衛庁に予備自衛官を採用することについて私は疑問を持っておるのですが、どうですか、長官。
○国務大臣(中曽根康弘君) 御趣旨のような理由から最近は採用しなくなったのではないかと私は思います。
○山崎昇君 そうすると、いま六百八十一ありますが、これは予備自衛官としての任期が切れた場合に全部整理されますか、どうされますか。
○政府委員(内海倫君) 先ほど申しましたように、任期の問題ございますが、方針としては、もう任期が切れた者については再任用はしないという方針でいくべきであると考えております。
○山崎昇君 そうすると、簡潔に私は聞きますがね、任期の切れた者は予備自衛官にしませんね、この六百八十一名については。そうすると、予備自衛官にしないと普通の事務屋だけの任免関係になりますよ。それでいいですね、念を押しておきますよ。
○政府委員(内海倫君) 基本的な方針でございますから、事務当局の私としまして方針まで述べることはいたしかねますが、事務的な観点からは、任期が満ちた者については再任馬をしないという方針でいくのが適当だろうと思います。なぜなら、昭和三十七年の訓令におきましてそういうふうな規定をいたしまして、予備自衛官には自衛隊においては採用しないという方針をとっておるわけでございます。
○山崎昇君 それはいつから。
○政府委員(内海倫君) 昭和三十七年の一月十二日に出しております訓令に基づくものでございます。
○山崎昇君 それじゃ、あなた訓令違反じゃないですかね。だから、私は長官にお尋ねしておきます、政策のことは言われないというから。この六百八十一名の予備自衛官は任期がきたら、予備自衛官としての任期ですよ。そうすると、予備自衛官としてあなた方職員に採用したわけですから、予備自衛官というのは切れますね、だから事務屋だけになります。こういう者については、自後、予備自衛官でありませんから防衛召集はできませんよ、よろしゅうございますね。整理されますね。
○国務大臣(中曽根康弘君) そういう方針でまいります。
○山崎昇君 そこで予備自衛官なんですがね。今度の法案でもまた三千三百ばかりふえます。将来はあなた方の見解は、もっと上級の階級までこれを広げたい。人数もまた広げたい。そこで、私はどうしてそんなに予備自衛官というものをふやさなきゃならぬのか。その理由がやっぱり国民から言うと明確でありません。そしてこれは毎月、御存じのように千五百円ずつ手当を払うわけであります。この法律をつくったときには、おそらくあなた方も想定しなかったんだろうと思うが、この間、予算委員会で申し上げましたように、もう市町村会議員等、いわば公職に席を置くような者まで出てきているわけですから、ここら辺で予備自衛官制度そのものについて、私は法律的に検討してみる必要があるのではないだろうか。法律ではどんどんどんどん採用してください、差別してはございませんぞよ。こういう奨励規定まで入れて予備自衛官制度というものはつくられておる。ところが、いま申し上げたように、この制度というのは、あなた方が法律をつくるときと違った様相も帯びてきておる。こういう私は考え方がありますんでね、この予備自衛官というものをふやすことについて、もちろん基本的に反対ですが、これは先ほど申し上げた隊員の充足の問題と私は関連をしてくるんではないか。そして片や現役で、片やこれは予備役と同じでありますから、したがって、言うならば、これは、ていのいい予備自衛官という制度によって、そして自衛隊の数というものがどんどんどんどん実質的にはふえている。こういうことに私はこれはやっぱりならざるを得ないと思うんです。したがって、予備自衛官をそんなにふやさなきゃならぬという最も中心的な理由について、もう一度、長官から聞いておきたい。
○国務大臣(中曽根康弘君) 防衛出動の際におきます日本の警備その他を考えてみますと、ふだんは職業について市民として働いておられる方々が、そういう一たん有事の際に後方や補給等の仕事に当たってもらえるということは、有事の際のことも考えて配慮しておくことは防衛上私は必要であると思うんです。そういう配慮から予備自衛官という制度は設けられておりますので、この予備自衛官の数がある一定数量までに達するように逐次ふやしていくということは、防衛上、経費的にも安上がりであり、能率的に見てもいいんではないか、そう考えておる次第であります。
○山崎昇君 やっぱりこれは実質的な自衛隊の膨張につながる問題である、名前は予備自衛官ですけれどもね。片や現役のほうは、だんだんだんだん採用しにくくなる。そういうものとやっぱりうらはらの関係もある。こういう意味で、私は安上がりの軍隊をつくり上げていく一つのてこにもなるんではないかという心配もしているわけです。そういう意味でこの予備自衛官の膨張ということについては、どうしても私は納得ができないわけです。
 それから、さらにお聞きをしたいのは、最近、防衛大学でも卒業生の一割ぐらいは自衛隊に勤務しない、民間に行かれると聞いています。最近二、三年でけっこうでありますが、一体、防衛大学の卒業生と、自衛隊につく者、自衛隊から離れていく者、そういう者の数をお知らせいただきたいと思います。
○政府委員(内海倫君) 数字を申し上げます。要するに、防衛大学校を離れていく者の数字を申し上げますと、昭和四十年に卒業いたしました者で在校中に退校した者が四十三名、卒業後一年以内に自衛隊を退職した者が二十六名、以下、年次を追いまして在校中退職三十八名、卒業後三十二名、それから、その次が四十九名と六十七名、それから、昭和四十三年が在校中退職が四十一名、卒業後一年内退職が五十一名、こういうことで、本年は、本年の卒業生は五十名が卒業の際に退職いたしております。
○山崎昇君 その卒業と同時に自衛隊の勤務をしないでやめていく最大の理由は何ですか。
○政府委員(内海倫君) これは実のところ明確にその理由を明らかに取り得るという手だてがないのでございますが、いろいろやめていく人などに聞いた形でその理由を見てみますと、結局家庭の事情あるいは自衛官としての職に自分は適しないと思う、あるいは能力不足で自信がない。こういうふうな者が比較的多くなっております。また他の大学院に進学したい、あるいは身体的な欠陥を指摘された。こういうふうな者、それから、もう一つは自衛官にはなりたかったのだけれども、配置がどうも、たとえば自分は空のほうに行きたかったのに海のほうに回されたからというようなことでやめるというふうなものも理由になっております。
○山崎昇君 それで、いまお聞きした理由をある程度解消するようなあなた方の検討がなされておるのか、どうも私もこの数字を見てみますと、一二名でありますけれども、年がたつに従ってやめていく者が、やはりこれまたふえているのですね。ですから、せっかく防衛大学にとって、そのうちの一割がいなくなる。その数もだんだん、少ないけれども、ふえていく傾向にある。その理由は、四年間一生懸命やったんだが、どうも家庭上の事情ということは、私はどういう事情かわかりませんし、また、私は自衛隊に不適当だと思う。というのは、これは本人自身がそう思っているんでしょうけれども、どうも私はわからない。この四年間、そうすると、どういう教育をして、もちろんほんとうに自衛官に不向きなのか、それから、あるいは不適当でないのか。そういう判定は、四年の間に、教えるほうとしては、なされないのか、なされるのか、その点はどうなんですか。
○政府委員(内海倫君) 当然、四年間においてなされ得るものとしましては、身体的な理由、それから、特に航空自衛隊等の搭乗員等の問題につきましては、適性の問題もございます。これらはいわば非常に客観的に明らかになるものでございます。それ以外につきましては、学校において直ちにこれが不適であるというふうな判定をするのは基準としてなかなか困難である。具体的に一人ずつ見ていって、あるいは適任でないというような者が出てくるかと思いますけれども。
○山崎昇君 そうすると、それに対して、今後、人事局としてはどういう対策を講ぜられるのか。これは私は、しかし人権の問題ですからね。私はどうしてもやめたいというのをやめるなとか、どうせいという意味で言っているのじゃありませんが、しかし、せっかく防衛大学というのがあって、そうして、相当これは国費としてもやはりつぎ込んでいるわけですから、そういうものが最後になって、私が合わないとか合うとか、そういうことで一割近い人間がやめていく。こういうことになるのは、これ一体、しかし、どうも私どもなかなか理解しにくいのですがね。どういう対策を講じますか。
○政府委員(内海倫君) 結局、防大の中におきます教官諸君の情熱を傾けた教育によって、その在校生がみずからの意思によって防大にとどまり、さらに卒業後も自衛隊に勤務するというふうな意欲をかき立てる、育てる、自発的なそういう意思を持たせるということに教育の大事な目的があろうと思う。私どもはそういうふうに教育が正しく行なわれるということを今後さらに助成していきたい、こういうふうに考えます。
○山崎昇君 助成していきたいというが、現実的にやめていくわけでしょう、それがだんだんやめる人がふえていくわけでしょう。それに対してただそういうことだけでこれがとまるものではないだろう、しかも、人権にわたっては困るけれども、せっかく教育した者がやめていくということに対して、ただそれだけで私は人事教育局としてはやっぱり足りぬものがあるのだろうと思うのですが、この点は長官どうですか。いまのような防衛大学生のやめていくということについて、あなたは一体どういうお考えをお持ちになりますか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 防衛大生になるときから国の防衛に任じようという考えで入ってきたと思うので、そういう諸君が一割もやめていくということは、はなはだ遺憾千万であります。これはあるいは教育の上から少し欠陥があるのではないか、もっと納得して、合理的にそういう考え方で一貫するということまで仕上げるのが足りないのじゃないかという要素もありますし、あるいは身体的欠陥のある者が間違って入ったという可能性も必ずしもなきにあらず、適性検査というものを厳重にやったかどうか、そういうことも反省し、検討しなければならぬと思います。総じて申し上げますと、やっぱり入るときによく決心を聞いて、何でも員数合わせればいいという考えでなくして、そういう志をしっかり持った人を入れるということが大事ではないかと思います。
○山崎昇君 私がこれを重要視するのは、私どもは自衛隊に反対という立場はとりますけれども、しかし、国の機関として置かれて、そして将来、あなた方からいえば、自衛隊を背負って立つような幹部の養成機関でありますね。そういうところの者を四年間教育して、いま長官から欠陥があると思われるというようなものは、これは即刻直してもらっていいと思うのだが、その結果として一割もの人間が自衛隊にとどまらないというこの事態は、私は相当重きを置いて考えなければならぬのじゃないか、こう考えるものですから、いまお尋ねをしたわけです。そこで、この問題については、私は人事局長というのはもう少ししっかりしておらなければいかぬと思うのです。あなたのそういう説明だけでは、いまもちろんわかりませんけれども、いま長官のお話もございましたから、この点は一応この程度にとどめておきたいと思います。
 そこで、次に長官にお聞きをいたしたいのは、これも国民の側からいうと、素朴な疑問を持っているのは、この間、小西三曹が逮捕されましたね。そこで、自衛隊員というのは、思想、言論の自由はどこまで許されるのか、こういうものも自衛隊のこれからの存在に一つはかかってくるのじゃないか。最近何か反戦ビラとかいろいろ出るようであります。そこで、自衛隊員の思想、言論の自由というものをどういうふうにお考えになるのか。これは法制的な面もあるでしょうし、政策的な面もあるでしょう。いろんな面を総合して、現実的にどの程度にいま確立をされているのか、お聞きをしたいと思います。
○国務大臣(中曽根康弘君) 自衛隊員も国民でありますから、憲法上の基本権を持って思想、言論の自由はございます。ただ、自衛隊という特殊な規律を受けるということで入隊もして、そのときにいわば契約が成立しておるわけであります。そこで、法律でも、政治的な扇動とか、そういうことをしてはいけないと規定されております。そういうような法律で規定されていることを侵犯することは許されない。そういうこと以外の個人的な思想とか、言論とかいう範囲にとどまっている場合には、当然これは認められるべきものである、このように考えます。
○山崎昇君 そうすると、これは事務当局でけっこうですが、具体的にどの行動まで許されるのですか。この間の小西三曹のその後出たいろいろな文書なり、あるいは報道なり見ますと、一般の国家公務員とそんなに違ったことをやっておらない。そうしていま裁判をやっておるようでありますが、六十一条というのはついに使われない。これを使うとたいへんなことになる。そこで自衛隊員の思想、言論の自由というのは、行動面として具体的にどこまであなた方は許されると思っておるのか。まずあなた方の見解を聞いてから質問したいと思う。
○政府委員(内海倫君) 自衛隊員のいわば行動につきまして、一応、自衛隊法が規制をしております点を、まず条文について申し上げたいと思います。
 自衛隊法の六十一条は、御存じのように、「政党又は政令で定める政治的目的のため」云々というふうなことで、選挙権の行使を除くほか政令で定めるような政治的行為をしてはならないということを中心とします一般公務員と同様な政治的行為の制限というものがございます。それからもう一つは、団体の結成等の禁止、これは六十四条でございますが、隊員は、「組合その他」の前にいろいろ字句がついておりますが、「組合その他の団体を結成し、又はこれに加入してはならない。」、「同盟罷業、怠業その他の争議行為をし、又は政府の活動能率を低下させる怠業的行為をしてはならない。」また、「何人も」そのような、「行為を企て、又はその遂行を共謀し、教唆し、若しくはせん動してはならない。」ということが一応法律でもって、ただいま御質問のような点を規制する規定でございます。なお、そのほかに、自衛隊員になります際に、隊員は服務についてり宣誓をいたさなければなりません。この服務に関する宣誓もやはり一つの自衛隊員として守るべき規範であろうと考えております。
○山崎昇君 いま述べられた規定というのは、これは一般の国家公務員の規定と何にも変わりませんね。そうすると、一般公務員の場合には相当程度の行動がなされておる。これはあなたも知ってのとおりですね。この小西さんのをいろいろ聞いてみるというと、むしろ自衛隊のほうが政治教育が旺盛である、だから六十一条で起訴するなら私は全貌を全部やるよと、こう言ったので、六十一条はついに発動できないのではないですかということを堂々と書いておるのですよ。そうすると、私は自衛隊の内部でむしろ反共政治教育、あるいはその他の思想教育というのが行なわれておって、それがいけないというふうに、いわば、かなり問題が生じてきておるのではないだろうか、こう考えるのです。だから、具体的にいまあなたの読まれた条文で、どういうことまでしたらそれは違反として摘発されるのか。ここまでならいいのだという点があれば、事務当局でけっこうですが、その限界を私は聞きたい。
○政府委員(内海倫君) 限界は先ほど読み上げました法律に基づく限界であろうと思います。したがって、これがどうなるかという問題につきましては、やはり個々のケースについてこれを論じなければ、抽象的に判断することは容易でない。もし抽象的に判断するとするならば、ただいま読み上げました法律がその基準になる、こういうことだろうと思います。
○山崎昇君 そうすると、これはアメリカの例ですけれども、アメリカのベトナム戦争に行っておる兵隊が本国の反戦デーに呼応して、腕章に黒の喪章を巻いて行動しておるのですね。こういう写真報道が載っております。そうすると、自衛隊の隊員が反戦デーに呼応して、私はこの安保条約に反対である、いまの治安訓練に反対だ、そういう意思表示を体のどこかにして、かりに訓練なら訓練に参加した場合、どうなりますか、聞いておきます。
○政府委員(内海倫君) いま直ちに、私、最終的な解釈をすることは差し控えたいと思いますが、もしその喪章というものをつけただけで、本人は訓練をりっぱにし、また他の隊員等に対して訓練をなまける、あるいは反対運動をするように持ちかけるというふうな行動が一切ないというのであれば、少なくとも犯罪としてこれを律することは困難であろうと考えます。
○山崎昇君 私は犯罪まで言ってないのですよ。あなた、先ほど自衛隊内における政治行動について条文を読んだから、具体的にそれはどこが限界なんですかと。具体的にこの小西さんがやられているわけだから。これはいま裁判で争っている。しかし、どう見ても六十一条は発動されてない。そうすると、あの六十一条の行動になるのだが、いまこれはアメリカの例だということであなたに申し上げた。しかし、思想の自由は当然表現の自由につながるわけでありますから、本人自身は反対の意思表示をして訓練を受けるかもしれない。しかし、私はどうしてもこの訓練はこういう理由で受けられないということを上官に言った場合に、これまたどうなりますか。ですから、私はいま具体的にあなたに聞いてる。あなたが具体的にあの条文を適用するほうなんだから。どうですか。だから自衛隊員の思想、言論、表現の自由というものはどこまで許されるのか、隊内において、あるいはまた隊外において。それをいまあなたに聞いている。
○政府委員(内海倫君) 問題はそういう単なる思想の表現というだけにとどまるものであれば、私はそれ自身が問題の対象になるとは思いませんが、しかし、多くの場合、それに関連して勤務をなまける、あるいは勤務を拒否する、あるいはそういうふうなことを一般隊員に呼びかける、あるいは上官の命令に従わない、こういう事実が随伴いたすことが多いと思います。その場合に、それぞれの法条に照らしてあるいは行政処分の対象にもなろうと思いますし、また場合によっては犯罪として律せられることもあろうと思います。
○山崎昇君 これはまだ起きたことじゃありませんから私はあれですが、少なくとも一般の国家公務員と同じである。そして中曽根長官ではありませんが、若い技術者集団だと、こういう定義づけをするならば、当然、一般公務員が認められておるような行動は認められていいし、そして表現も認められて私はいいんだと思うのです。ところがどうしても自衛隊というのは外からある意味では隔離されておりますから、わからぬ点がたくさんありますが、今後あなた方が具体的なこの条文の適用等にあたっては、一般公務員と差別をしないのだということを明言をしておいてもらいたい。小西の場合も私はそうだと思うのですが、これは法律的に私は当然そうなると思うが、政治論としてもこの点は明確にしておきたい。
 そこで長官どうですか、いま人事局長からいろいろ条文を述べられておる。そして一般的には自衛隊員といえども一般国家公務員でありますから、他の公務員に許される程度の行動は許される、こういうことになろうと思うのですが、長官の見解を聞いておきます。
○国務大臣(中曽根康弘君) 私は法律の一つ一つの条文に対する解釈を正確に存じておりませんが、いま人事教育局長が申されたようなことであると考えます。
○山崎昇君 それで、私のほうからこの小西問題はまた別にやりたいと思いますが、強く言論、思想、表現の自由というのを統制しないようにしてもらいたい、そういうことだけ重ねて申し上げておきたいと思うのです。
 それから次に長官にお聞きしたいのは、先ほど上田委員からも出ましたが、盛んに最近シビリアン・コントロールということを言われるわけですが、そこで、外国の例を二、三調べてみると、特に日米安保条約によってアメリカを模範としてやっておるわけでありますから、アメリカの場合は少尉以上については上院の承認を受けて任命をやっていると私ども聞いているのですが、誤りですか。もし、階級的にもっと上のクラスだとか、どうかであるかもしれませんが、いずれにしても軍人の採用等においては、軍人というより高級軍人でありますが、そういうものについてはアメリカの場合は上院の承認を受けておる、こう私ども聞いているわけです。それについてどういうお考えを持ちますか。
○国務大臣(中曽根康弘君) シビリアン・コントロールの中には人事のコントロールというのも非常に重要な部面であると思いまして、アメリカの上院の権限はその典型的な一つの例であると思います。
○山崎昇君 そこで、いま私はすぐ日本で実施できるとは思いません。法制上の問題がある。あなたが繰り返し繰り返しこのシビリアン・コントロールということを言うならば、日本においてもそういう方向に私は向かうべきではないか。たとえば衆議院が解散等があってどうだと言うならば、少なくとも参議院ぐらいの私は承認を得るべきではないか。それもさっき言った一尉以上全部なんということは言いません。少なくとも陸将なり、そういう自衛隊そのものを動かすような権限のある者については、私はそういう方向をとるべきでないかと思うのですが、これはもちろん法制的なことも伴う問題でありますから、いますぐあなたにしなさいという意味ではありません。そういうことを検討できますか、あなたの見解を聞きたい。
○国務大臣(中曽根康弘君) 防衛問題の基本に関する各党のコンセンサスが将来できれば、そういうことも検討に値すると思います。
○山崎昇君 この問題はこれは日本の自衛隊ができるときに参画をしたというアメリカの当時の責任者が本を書いておりますが、その中の一節に、当時そういうことが議論された、しかし、吉田さんは、社会党にそのたんびに防衛問題で議論されるのがいやだからやらなかったのだという趣旨のことが述べられておるわけです。しかし、ほんとうに自衛隊について国民的合意を得るならば、こういうふうに議院内閣制であったとしても、与党だけがそれに参画するやり方はやっぱりいけないのではないか。野党といえども、間接的であっても自衛隊についてのコントロールということは、たとえ人事面であっても持っていいのではないかということを指摘をしておりますが、そういう意味でいまあなたは国防会議その他等で検討してもいいというようなお話でありますが、ぜひ私はこれは検討してもらいたい。なぜ私はこの点言うかというと、きょうは外務大臣来ておりませんが、世界の歴史をながめてみても、軍事クーデターというのがほとんど政府転覆の場合の主力であります。ですから私は軍隊というのが大きくなって権力が増大されれば、やはりこれは物理的な問題もありまして、ものごとは、やっぱり物体は熱を加えられるというと発火をします。それと同様に、私は軍隊というものはよほど注意をしておかないといけないのではないか。あなたは軍隊ということばはきらいでしょうから、自衛隊ということばでもけっこうでありますけれども、これが増大されるならば――私はそういう懸念がありますからね、少なくとも国会というのはそういう意味でコントロールする場になるのではないだろうか、こういう意味であなたに重ねてこれは強く要望しておきたいと思うのですが、どうですか。
  〔理事八田一朗君退席、委員長着席〕
○国務大臣(中曽根康弘君) 防衛問題に関する各党のコンセンサスができれば、将来それは検討に値すると思います。
○山崎昇君 それは逆ではないですか。そういう一つ一つ積み重ねていってコンセンサスというものができるのであって、先にコンセンサスがあって手順があとになるなんということは逆ではないでしょうか。そういう意味で私はこの問題はぜひひとつ検討してもらいたい。そしてほんとうの意味のシビリアン・コントロールというものを確立してもらいたい、こういうふうにまあ思うわけです。時間もなくなってきましたから、その次にお聞きしておきたいのは、一昨年、日米の協議会で軍事基地五十カ所ばかり返すということになっていますね。ところがどうも実績が半分ちょっとくらいだと私は思うんです。そこでどうしてこの軍事基地がそういう合意に成り立ちながら今日まで半分ぐらいが残っておるのか、残っておるところの事情等をひとつ説明願いたいと思います。
○政府委員(山上信重君) 一昨年、日米安保協議委員会において約五十の施設につきまして返還、共同使用、あるいは移転について協議がされまして、それ以後、日米合同委員会並びにその下部機関である施設分科会におきまして、鋭意これの具体化について協議をしてまいったのであります。今日までこれらにつきまして、日米合同委員会におきまして正式の合意がなされましたものは、これらのうち二十八施設でございます。そのうちすでに二十六施設につきましては具体的な返還、使用転換、あるいは共同使用等の処置済みでございます。したがいまして、なお二十余りのものが残りておるわけでございますが、御承知のように、この協議されました中には、単純なる返還もございまするが、同時に使用転換、いわゆる共同使用といっておりますが、使用転換あるいは移転というようなものがございます。したがいまして、これらの使用転換等につきまして、あるいは移転等につきましては、移転に要するところの予算の問題もございます。また、移転先についての問題もございます。一番具体的には移転の内容を双方におきまして具体的にどういう施設をどういうふうに移転するというような、双方の非常に具体的、事務的になることもございます。あるいは相当政治的な問題を含んでおるものもございます。それらについてのいろいろ問題がございまして、今日まですべてについて解決するというわけにはまいっておりませんのですが、今後残ったものにつきましては日米間でさらに協議を詰め、われわれのほうといたしましても具体的な措置について検討を進めてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
○山崎昇君 そこでもう少し具体的に、おもなるものでけっこうですが、説明願いたいということと、それからもちろん政治的な問題も含んでいることがあると思うが、一体、最終的な解決のめどをどれくらいにあなた方は置いて折衝を続けられておるのか、そこらのことも含めて説明を聞きたいと思います。
○政府委員(山上信重君) この約五十の施設につきましては、われわれといたしましても、できるだけすみやかに解決をしたいというふうに考えておるのでございまするが、具体的に、ではいつまでというふうにただいまこの段階でお答えするというのも困難かと思いまするが、われわれとしてはなるべくすみやかな解決というふうに考えておる次第でございます。なお、具体的にどういうふうになっておるかということでございまするが、二十八施設につきましてはすでに解決いたしておりまするが、なお近く返還を予想されるもの、あるいはなお調整等に時間をかけておるものが、さらに半分ぐらいはあるかと思います。半分以上、そういうような状態でございます。残りの一部にまだ解決のきわめて困難な問題を含んでおるものが数件あるというような実情に相なっております。
○山崎昇君 確かに、いついつまでということは私はきっちり聞こうとは思いませんが、しかし、おおよそのめどは四十三年からでありますから、もうやはり二年になりますね。したがって、半分くらいは二年の間に解決しているわけですが、残されているのもずいぶんあります。そういう意味で、それじゃ、あなたの考え方でもけっこうですが、一体、この問題についてはいつごろまでをめどとしておるのかという、そのめどについてもお聞きをしておきたいし、それから新たに軍事基地の問題はいろいろな問題を提起されておりますから、私は具体的にきょうは言いませんが、別な機会に、新たに返還させるべきものが一体議論されておるのか、検討されておるのか。されておるとすれば大体どの程度のことがされておるのか。これは発表できないものがあればけっこうでありますが、できるだけひとつ発表してもらいたい。
○政府委員(山上信重君) どうもいろいろむずかしい問題を含んでおりますので、いつまでということがはなはだお答えしにくい状態でございますが、われわれといたしましては、これらの中に、たとえば水戸の問題などがございます。これらは三ないし四年のうちにというようなことは政府においても方針を決定いたしております。少なくとも構想の中には、これも解決しようという考えでございます。ほかの問題につきましても、いろいろそういったようなものが一つの標準に少なくともなっておるのじゃないかというふうに考えております。なお、新たな問題ということで、もちろん最近のアメリカの国防費の削減、これに伴うところの在外基地の縮小というようなことから考慮しなければならぬのは当然でございますが、ただいま政府部内におきましていろいろ米軍基地の将来におけるところのあり方として、自衛隊の管理の移管という問題も検討いたしておるのでございますが、これらの情勢等をからみ合わせて、今後基本的な話し合いを進めることになると思います。それらに伴いまして具体的な措置につきましては、これから漸次進めてまいりたいというふうに考えておるのでございまして、ただいまにおきましては、具体的にどこどこというところまで案が進んでおらない。しかしながら、今後そういう問題についても検討してまいりたいと、かように考えておる次第でございます。
○山崎昇君 ほんとうにまだまだ聞きたいことがあるのですけれども、私自身の任務がちょっと別にあるのでありまして、たいへん恐縮でありますが、もう一問でやめたいと思いますが、長官にお聞きしておきたいのは、沖繩返還に伴って日本国本土にある米軍基地の問題については、四十三年の協議で返ってくるのが一部あり、検討中のものがある。そこで沖繩の基地については、これはどういう形で残るのか、あるいはまた日本に返還されるものももちろん議論されるでしょうし、あるいはそっくりそのまま使うのか、いますぐ明言できない点ももちろんあろうと思います。いま向こうの施政権下であるからむずかしいと思いますが、今後、自衛隊として沖繩の基地についてアメリカと協議をされる場合、どういう基本的な考え方でいられるのか、その点だけ一点聞いておいて私の質問を終えておきたいと思います。
○委員長(西村尚治君) 山崎さん、長官の御答弁の前に、人事教育局長から、先ほどの答弁の補足の答弁をしたいということでございますから。
○政府委員(内海倫君) たいへん恐縮でございますが、先ほどの私の答弁中、一部を補足し、かつ訂正さしていただきたいと思いますが、事例にあげられました安保反対の黒い喪章をつけた場合の問題ですが、これは六十一条に基づきます政治行為を規定した政令の中で、政治的目的をもって、勤務時間中において、政治上の主義主張または政党その他政治団体の表示に用いられる旗、腕章、記章、えり章、服飾その他これらに類するものを着用し、または表示することは、六十一条に規定する政治的行為に入るということが政令で明らかになっておりますので、念のため、つけ加えておきます。
○国務大臣(中曽根康弘君) 沖繩の問題でございますが、沖繩を米軍がどのように評価し、使用したいと思っているか、そのことをまずわれわれとしては明確に知る必要があります。また、わがほうの見解もアメリカ側に申し述べて、われわれのほうの見解と向こうの見解を調整させるということも必要であるだろうと存じます。それで、いまアメリカ大使館に大使を補佐する役目として米軍の将校が来ておりまして、この人がシュナイダー公使と一緒にいまワシントンに行ってアメリカ側のそういうラフな方針を相談に行っているようです。これが帰って来ましたら、そういう向こうの見解をまず聞き、われわれのほうの見解も述べ、どういうふうに段取りをしていくかという相談に入るだろうと思います。そこで、われわれのほうといたしましては、地元の住民の皆さまの非常な御要望もございますし、特に沖繩はああいう戦禍を受けて、民生の上からもわれわれは深甚な考慮をしなければならない情勢でもありますから、そういう沖繩の人たちの声をできるだけ反映しながら、この長い問の沖繩の人たちを苦しみからできるだけ解放してあげたい、そういう気持ちが私にございます。そういう考えを基本に持ち、また、沖繩が将来日本に帰って来た場合は、日本が沖繩を防衛するということは当然のことでございますが、その際に米軍側が行なう仕事と日本側が行なう仕事とどういうふうに調整し、吻合していくかという問題も起きます。それらにつきましては、わがほうの国益といいますか、立場というものも十分反映させるように積極的に努力してまいりたい。また一面、米軍としてもあすこを全部にわかに撤去するというわけにはまいらぬと思いますから、先方の要望も一応よく聞きながら調整をうまくやっていきたい、かように考えている次第であります。
○山崎昇君 これはこれからのことですから、私はそう突っ込んでお聞きをしないで、後日また聞きたいと思いますが、ただ、いま沖繩にある基地というのは、どちらかと言えばやっぱり攻撃中心の基地みたいになっていると私は思う。ところが、日本の防衛の場合には、あなたが使われるように、専守防衛になりますから、したがって、防衛オンリーの基地に私はならざるを得ないと思うんですね。そこに同じ沖繩の基地と言っても、基地の性格そのものが大転換を私はしなければならぬであろう、こう思うわけであります。あわせて本土の基地と同様になるということになると、これまたやはり問題点を相当含んでいるんではないだろうかと私は思います。そういう意味で、沖繩の基地というものが沖繩返還と同時にどうなるかというのはやっぱり重要な問題点になってくるであろう、こう考えますんで、その際にいま沖繩本土住民の考え方でありますとか、国益でありますとか、いろんなことを述べられましたけれども、この沖繩の置かれておる軍事基地というものは相当これはメスを入れなければならぬのじゃないだろうか。そういう意味で自衛隊としても私はよほどしっかりした考え方で対処しなきゃならぬであろうと、こう思うんです。そういう意味で、これは最後で、私の意見になりますけれども、そういう意向等を踏まえて、この沖繩の軍事基地というのは、ほんとうの意味で本土なら本土のいまある軍事基地と同性格のものにするという形にならなければ意味がないのではなかろうか。そうでないと、施政権だけ戻ってきたが、依然としてアメリカで従来持っておったような攻撃型の軍事基地がそのまま残るというのでは意味がないと思うんですね。そういう点について最後に長官のもう一ぺん決意を聞いて私の質問をきょうは終わりたいと思います。
○国務大臣(中曽根康弘君) 沖繩の本土化というのがわれわれの主張であり、われわれの政策でございますから、それを貫くように一生懸命努力してまいりたいと思います。
○鶴園哲夫君 いま山崎委員のほうから質問がありましたし、先ほど上田委員のほうからも質問があったんですが、私は三点ぐらいにわたりまして、かねがね疑問に思っております点をお尋ねしたい。
 一つは、中曽根さんが防衛庁長官になってからというわけじゃないんですけれども、去年の日米共同声明以来、とりわけ日本の軍国主義化というのが盛んに言われるようになりました。これに呼応するようにということになりますか、防衛庁長官の発言もなかなかいいものがたびたび出ているわけですね。ですから、そういう問題について若干感ずるところがありますのでお尋ねをしたいわけなんですが、一つは、長官が、有田前長官はそうでなかったんですが、中曽根さんが長官になられましてシビリアン・コントロールというのがたびたび出るわけですね。いま山崎さんも、それから上田さんのほうからも質問があったんですが、私はこれはまあ三つによく言われるように中身はわかれると思うんですけれども、一つは統帥権の克服の問題、もう一つは防衛組織の中における文民の優位の問題、もう一つは議会との関係だと思うんです。
 この統帥権問題は別ですから、防衛組織、自衛隊の中における文民の優位という点についてお尋ねをしたいわけなんです。防衛庁の機構、組織を見ますと、内部部局があって、そのほかに内部部局と陸上幕僚部、それに海上幕僚部、それから空の幕僚部というものがあるんですが、その内部部局が何か非常に貧弱な感じがするわけですね。これは私は、中身は、どういう方々が局長になったり、あるいは課長になったり、部長になったり、審議官になったりしておられるのかよくわからないのですけれども、まあ察するところ、各省からおいでになっている方が大部分だろうと思う。中には、大部分の人たちは二年、三年たったらまたそれぞれの出られた省に帰られる人が多いんじゃないかというまあ気がしているわけですが、中の内部部局の人員構成からいいましても、課の構成からいいましても、まことに小さい、ちっぽけだという感じがするわけですがね。ちっぽけだという点からもう少し入ってみまして、いま内部部局の課長以下のポストには自衛官がなることができるようになっていますですね。それから内部部局の課長以上のポストについては自衛官の経験者を任命することができることになっていますね。ですから官房長に陸将を、かつて陸将であった者、昔で言えば予備役というのですかね、そういう自衛官であった者を官房長にすることができる。あるいは事務次官に、あなたの直接の補佐官である事務次官に陸将をやった人をすることができる、こういうふうになっているわけですね。私はこれは非常に、はなはだ重要だと思うんですけれども、実際いまの運営はどうなっているのかという点ですね。それをまずひとつお尋ねをしたいと思うんです。
○国務大臣(中曽根康弘君) 自衛隊法をつくりますときに、文民統制ということを非常に念を入れて実はつくったと私らも考えております。文民統制の中にはいろいろな所管がございますが、自衛隊の内部の統制につきましての、まず第一に内局をつくりまして、そして内局が各幕僚幹部の仕事を内面的にいろいろ調査し、長官が決断をくだす場合、あるいは長官が指令をくだす場合、全部内局が下審査をしてそれを通ってから発令されると、そういうことで、内局はあらゆる、ほとんど全部の幕僚幹部の重要な仕事は目を通すという組織になっております。これは、従来いわゆる制服組の不満や批判があったところで、あまりにも内局がいばり過ぎるとか、防衛庁内部におけるせびろが優越過ぎるとか、まあ制服の将クラスの人間が内局の前でペコペコしなければいかぬと、そういう尾ひれのついた話も出てきている状態にもなっております。それで私は、しかし、シビリアン・コントロールということは、政治理念が軍事理念に優越するということであり、国民代表である政治家、あるいは国権の最高機関である国会が軍事を掌握するとかいうことであって、国家公務員相互においてせびろが制服に優越するということではない。それはおのおの法規典礼できめられていることを忠実に実行すればいいのであり、文民優位とは政治家や、あるいは国民の代表である国会が軍事を掌握することであると考えなければいかぬ、そういうことを私は言っております。しかし、法的には、内局がいまのようにほとんど重要事項は目を通して、そこをろ過しなければ通れないという形になっておりまして、私はそういう意味における長官補佐機関が整備されてあって、文民としての長官がいろいろ仕事をする上においては遺憾のないようなシステムになっておると思います。それで、たしか保安隊のときには、かなりのポジションまで制服がなれるようになりましたけれども、自衛隊になりましたときに相当改正いたしまして、現在の自衛隊法では、課長以下の職については、旧保安庁法では制服出身者の就任は禁止していましたが、現自衛隊法にはそのような制限規定はなくなっておると、こう言っております。私はちょっと逆に、私の記憶では記憶しておりましたが、ともかく現在の運用におきまして、そういうように内局の性格から見て、制服の相当な力を持っておる人間が内局の責任あるポストにつくことは適当ではないという考えに立って、いわゆる長官補佐機関の文民優位という形を実行しております。詳細につきましては官房長から御答弁さしていただきます。
○政府委員(島田豊君) 大筋につきましては、ただいま長官からお答えになりましたとおりでございます。先ほどの旧保安庁法におきましては、内部部局に自衛官あるいは自衛官を経験した者、これを一定のポスト以上につきましては制限をいたしておりました。それが現行法ではなくなっておりますので、一応、規定上は自衛官が参事官なり、あるいは書記官なりに転換をいたしますれば、それぞれの局長あるいは課長に就任することが可能でございますけれども、もともと内部部局、幕僚幹部、それぞれ長官の補佐機関でございますし、内部部局は基本的な事項、あるいは政策的な事項、あるいは一般的な方針、こういうものにつきまして長官を補佐するという立場でございますし、幕僚幹部は、幕僚長が最高の専門的助言者として長官を補佐しておりまして、幕僚幹部もまたそれぞれ長官のそういう専門的な事項についての幕僚の機構でございます。そこで、それぞれの生い立ちが違いますし、前述の人的な運用におきましては、もと自衛官であった者が制服を脱いで局長なり課長になる、そういう運用はかつてしておらないのでございます。
○鶴園哲夫君 いまの官房長のほうから説明がありましたように、保安隊のときよりも非常に変わっている。法制上は非常に変わっている。ですから、私は先ほど申し上げたように、事務次官に任用することができると、これは自衛官からせびろに転身すればよろしいのですね。変えればいいわけですね。ですから、これは内部部局の補佐官というのも、これは予備役の――昔でいえば予備役の陸将でやることもできるし、現役の者を転換させて次官にすることもできれば局長にすることもできれば課長にすることも官房長にすることもできるというものになっているわけです。これから中曽根さんがおっしゃるように、日本の防衛というのが強まっていくだろうと思うのです。自主防衛という形になってくるだろうと思うのです。そういう場合に、この点が私は心配になるのではないかと、こういうふうに考えているわけなんです。いままでそういうことをやったことはないというのですが、これからこの問題について、私どもが懸念をしなければならなくなるのではないかということを考えるのですが、そういうことはないというふうにお考えですか、長官は。
○国務大臣(中曽根康弘君) その点につきましては、御発言の趣旨に沿って政策を堅持してまいるつもりです。
○鶴園哲夫君 保安隊のときから比べまして、自衛隊法になってから、そういうような自衛官が内部部局の課長以下の職につける、そういうようにしたのは、結局やっぱり陸なり海なり空のそういう実施部隊におる制服を着た者の経験がなければ、長官に対する内部部局からの補佐ができにくいと、こういう点があって、私は課長以下のポストについて制服の自衛官がなることができるということになり、さらにまた、課長以上のポストについても、これは身分を変えさえずれば、つまり自衛隊の経験のある者が、自衛官の経験のある者が次官にも官房長にもなれるということにしたのではないか。そうしますと、これからの問題として、私はやはり十分考えてもらわなければならぬ点があると、こういうように思っているわけなんです。ですから、その点を重ねてひとつ、私としては強く長官に要望いたしておきたいと思います。
 もう一つは、幕僚幹部――陸幕、海幕、空幕ですね、こういうところのポストに、言うなら、逆の立場ですね、内部部局と逆の立場で文民、文官が課長以上の該当するポストについておるかどうかという点をお尋ねしたい。内部部局に対しては、私がいま申し上げたように、課長以上のポストについてもそういうような条件になっているのだが、それじゃ、実施部隊である陸海空の課長以上のポストに該当するポストというものについて、文官がなっているかどうかという点をお伺いいたします。
○政府委員(島田豊君) 自衛隊法のたてまえからいきまして、幕僚監部は原則は自衛官でございますけれども、事務官、技官等その他の職員が配置につくことができることになっております。現実にかなりの数の事務官あるいは技官等がそれぞれ自衛隊の幕僚監部、あるいは各種機関に勤務いたしておるわけでございまして、幕僚監部についていいますれば、大体最上のポストにおるそのポストは部の班長というところでございまして、陸海空通じまして課長以上のポストにはそういう事務官、あるいは技官等は就任いたしておらないのが事実でございます。
○鶴園哲夫君 いま答弁をなさいました官房長、官房長は一般職の国家公務員でしょう、そうですね。
○政府委員(島田豊君) 特別職でございます。
○鶴園哲夫君 特別職なのか。――ちょっとあなたのほうはどこから行かれたわけですか。
○政府委員(島田豊君) これは自衛隊は原則として全部特別職、一部防衛施設庁の労務部におります者が一般職でございまして、原則は特別職の公務員でございます。
○鶴園哲夫君 ああそうですか。この中に二方九千という非自衛官がおりますね。その中の二千六百何名というのは、これは一般職の国家公務員、あなたはそれじゃ特別職なんですね。
○政府委員(島田豊君) そうです。
○鶴園哲夫君 じゃ、わかりました。
 いまお話を承りますというと、内部部局に対しては自衛官がなれる、あるいは課長以上の職にもなれるというのと同じようなものですね。しかし、実施部隊である幕僚監部では、課長以上のポストには一般の事務官なり技官なりという文官はなれないということなんですね。
○政府委員(島田豊君) 幕僚監部は事務官、技官で一定のポスト以上につけることができないという、そういう制限の規定はございません。事実上の運用といたしまして先ほど申し上げたような状況でございます。
○鶴園哲夫君 いまの内部部局の中で自衛官が何人いらっしゃるのですか。
○政府委員(島田豊君) 本年の三月十六日現在で九十二名でございます。この内訳は装備局で類別義務――各種の装備品なり、あるいは部品を類別いたしまして、これを標準化していくという非常にこまかい技術的な仕事がございますが、そこに五十五名、それから医務室、防衛庁に医務室がございますが、医務室に十名、それから防衛局に主として情報関係の整理なり、あるいは分析をやりますそれに自衛官を充てておりますが、それが十四名、それから官房に各種の広報担当、あるいは電子計算機の担当、こういう者を合わせまして十一名、その他人事教育局、経理局に各一名ということでございまして、これらについております自衛官は大部分、原則として技術的なあるいは補佐的な業務ということでございます。
○鶴園哲夫君 これで見ますというと、装備局というのはほとんど自衛官ということになりますね。六十六名いるわけですからね。ほとんどが自衛官ですね。衛生局が十二名いるわけですが、そのうちの十名が、これが自衛官だ。これは別にいたしまして、先ほど長官は、この内部部局は私は非常に貧弱という表現を使ったのですが、この内部部局の補佐によって、文民としての優位性を確保されているというお話ですけれども、一体、内部部局というものと、この幕僚監部との間の関係はどうなっておりますか。先ほど長官の話では、なかなかスムーズにいっているような話ですが、私にはそういうふうに受け取れないことをしばしば感ずるのですけれどもね。
○国務大臣(中曽根康弘君) 重要政策の立案とか、あるいは執行とか、そういう面につきましたり、あるいは重要な人事、あるいは予算、そういう部面につきましては、内部部局が長官を補佐いたしまして、原案をみんな目を通し、調整し、そうして長官に助言してきたものを執行に移していく、そういうことでありますので、現実の運用を見ますと、幕僚監部が行なわんとする私は重要問題については、すべて内部部局をろ過して、そこをパスしてこないと運用されない、執行に移されない、そういう実情にあるように思います。そういう意味では幕僚監部のほうから見ると、なかなかうるさい手続によって門を一つづつくぐっていくのはたいへんだ、班から課、課から局、局から官房を通って長官までいくということは、そういう意味でなかなか煩瑣な経過であろうというふうに、幕僚監部側から見れば思うかもしれませんが、しかし、それが大事な点で、それがまたある意味においては、文民統制を全うするための補佐機関としての必要な職務をやっていると思います。ですから、制服組からすれば、そういう手続を経なければできませんから、めんどうくさいような気も起こるでしょうけれども、しかし、それが大事なことであると、われわれは認識して、その点は確保して今後も進んでいく、そういう考えに立っております。で、幕僚監部側と内局との関係でございますが、近ごろは、前はそのおのおののポストにある人間の人間的エチケットが足りなくて、そうして相当年寄りの制服組に対して、若い部員がいろいろ失礼なことをしたり、いばったりしたりするようなことがあったらしいけれども、これは人間のエチケットの問題で、最近はそういうことはないように思います。しかし、政策的ないろいろ見解の差は、これは幾らでもあり得ることで、そういう面の調整につきましては、時間がかかることもあるとは思います。しかし、全般的に見て、私が見ているところでは、そういうようなチェックの機能も生きているし、大体においてスムーズにいっているのではないか、そのように思います。
○鶴園哲夫君 私は局長なり官房長なりという、あるいはその他の内部部局の主要なポストというものは、おそらく二年、三年でかわる人が非常に多いのじゃないかというふうに見ているわけなんです。私、六年ぐらい前に内閣委員会におりまして、それから内閣委員会に初めてきたから、あるいはその間に事情が変わっておるかもしれませんが、どうも私の感じでは、内部部局の重要なポストというのは、大部分は二、三年で異動をするという形になっているのじゃないか、その場合に、これは長官がおっしゃるように、手続としては、これは役所の手続ですから、課長、部長、あるいは局長の手続、関門はあるかもしれませんが、中身はたいしたことはないじゃないか、関門はあるけれども、中身においては心配する必要があるのじゃないか、おっしゃるようなものではないじゃないかという私は気がしているわけです。そういう心配はないのですか。
○政府委員(島田豊君) 現在、内部部局に勤務しております参事官、これは局長クラスでございます。書記官、課長クラスでございます。それから、その下に部員という配置がございますが、それぞれ、参事官、書記官、部員、交流人事で来ておられる方がおりまして、そういう方が大体原則として二年ぐらいで元の部署に帰っていかれるということでございますが、その比率もだんだんと最近は低くなってまいっておりまして、ことに部員等では、いま一月一日付の資料でございますが、百三十六名中、外部から来た人が十九名というふうな程度で、非常に低いことになっておりますし、課長クラスにおきましても約三分の一という状況でございます。したがいまして、その点は逐次改善されつつありましょうし、それから防衛庁自体で採用いたしました者が、だんだんとそれぞれの重要ポストについてまいっておりますので、今後はそういう点も逐次改善されていくと思いますし、それから外部の官庁から参りまして、二年程度で交代するということもありますけれども、私ども見ておりまして、そういう交流があるがゆえに非常に事務が渋滞をするとか、あるいは適正な人事が行なえないとか、そういうふうな弊害は必ずしもない。それぞれのもち屋はもち屋、特色がございまして、それぞれ各機関におきまして全力を発揮していただいておるというふうに感じておるわけでございまして、現在のこういう交流人事という制度をとっておりますことが、内局あるいは幕僚監部間の仕事のやり方、あるいは調整というふうな面におきまして大きな支障になっておるというふうには考えておりません。
○鶴園哲夫君 私は約六年前この内閣委員会におりまして、防衛庁の方々といろいろ法案等の審議に当たったのでありますが、その場合の印象というのは、官房長にしましても、装備局長にしましても、なかなかやかましいかっこうの人が多かった。今度出てみまして、みなやさしい感じですね。これは各省における局長よりもっとやわらかい感じですね。非常に六年前と感じが違うものですから、気になったり、よかったり、どういうことかなあと思ったりしているところなんですけれども、それは一応別にしまして、もう一つ、これは統帥権というのがありませんですから、いまある幕僚監部というのが、私は軍政と軍令を統一した、一緒にしたところだと思うのですね。これは強いんじゃないかと思うのです。しかも、たいへんな陸幕にしましても空幕にしましても組織を持っておる。その三幕の幕僚長に対しても、あるいは議長に対しましても、文民としての中曽根防衛庁長官が、中曽根さんでなくてもいいんですが、どうも優位に立てない、圧倒されるんじゃないかという心配があるわけなんです。もちろん補佐官としまして非常にやわらかい、やさしい部局長がおられるわけですけれども、私はこの軍令と軍政を統一して、分離していない幕僚監部に対しまして、どうも防衛庁長官というのが優位に立てないんじゃないかという心配をしているのですけれども、そういう点はありませんか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 現在の法制並びに運用の実態を見ますと、御心配のようなことはないと思います。しかし、それは私らも自衛隊法をつくりましたときに心配をした点でございますが、その後の十数年の運用、二十年近い運用の実績を見ますと、幕僚監部はその分限をもって節制を旨としてやっておるようです。これからもわれわれといたしましては識見を高めて、要するに、それは単に権限とか何とかいう問題よりも、人間的迫力とか、誠実さとか、見識とか、そういうことに依存することが非常に多いと思いますので、大いにこれからも精進して、完全に把握してやってまいりたいと思います。
○鶴園哲夫君 もう一つは、国会との関係なんですけれども、いまこういうふうに予備自衛官をふやすにいたしましても、あるいは定員をふやすにいたしましても、予算にいたしましても、あるいは装備の問題にいたしましても、法律、予算等によってそれぞれ審議が行なわれている。しかし、一番重大な防衛出動ですね、この防衛出動に対する国会の関係というものは、これは非常にあいまいだと私は思っているわけなんです。ですから、自衛隊法の七十六条の防衛出動についてどういうふうに考えていらっしゃるか。総理大臣が、国会の承認を得て防衛出動を命ずるということになっておりますけれども、しかし、緊急の場合はそういうふうにしなくてもいいというふうになっていますね。緊急の場合というのが多いだろうと思いますが、そこの辺をどういうふうに――これは総理がお見えになったとき、もう一ぺん総理の考え方も伺っておきたいと思っているんですけれども。
○国務大臣(中曽根康弘君) 防衛出動が行なわれるような場合が、もし、将来あるとしますると、突発的に急にそういう事態が出てくる可能性は私はそう多くないと思います。やはり事前に何らかの兆候とか、いろいろ前提的な現象が出て、そうしてそれがだんだんエスカレートして、こういう必要が出てくるという可能性が多いと思いますが、そういう各段階に応じて国防会議を開くなり、あるいは国会に報告するなり、そして国民にいろいろ事前の情報を知っていただいておくということが、手続としても重要であるだろうと思う。それで、ある一定の限度に達して出動しなければならぬというときに、国会に正式に承認を求める。そういう行為に出る形が正しいやり方であるだろうと思います。もし、突発的にそういう事件が起こった場合はやむを得ないと思いますけれども、そういう可能性は少ないだろうと私は思います。そういう意味において、民主的な手続を尽くして、そういう方向に順次手続を経て進むという形でやっていきたいと考えます。
○鶴園哲夫君 これは中曽根防衛庁長官が考えておられるんじゃないかというふうに言われておるんですけれども、長官、いま予備自衛官というものがあるんですが、その予備自衛官を上のほうにも拡大して、将官の予備自衛官というのをつくって、そうして何か防衛庁長官の諮問機関みたいなものをつくりたい。言うならば昔の軍事参議官ですかね、というようなものをつくりたいんだという話がいわれておるんですけれども、そういうことを考えていらっしゃるわけですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) きょうはこの委員会におきまして、大体自衛官の中で佐官、佐のクラスまでは予備自衛官制度を陸海空にわたりまして拡充したい、そういうことを御答弁申し上げました。将官については、私は個人的にそういう発想を持ったことがございます。と申しますのは、たとえば幕僚長をやったような人が停年で、たしか五十八、九くらいだと思いますけれども、ちょうど子供が嫁にいくとか何とかいう年ごろになって、そうしてやめられて、その人がどういうところへ就職するかということも考えてみると、軍事会社の顧問であるとか何とかという例もございます。その上、幕僚長になるような人は相当優秀な人で、国の費用も使って相当外国へ行ったり研究したりして見識を持っておるわけですけれども、そういうことを手放すこと自体がもったいないような気も実はいたしております。大体、幕僚長になった人が、軍事会社あたりへいってどの程度の報酬をもらっているかということを考えてみますと、十五万とか十万とか、その程度らしいんです。そういう面から考えて、そういう優秀な人は何らかの形で体面をつくろっていけるようなことを考えたらどうかという気がいたしまして、個人的にそういうような考え、発想を持ったことがございます。しかし、国会の委員会できょう正式に申し上げましたのは、佐官クラスまで予備自衛官を拡充していきたいということを申し上げたのであります。将のクラスまで拡充するということはこれはまだ言明するものではありません。
○鶴園哲夫君 いや、長官が将官なり、あるいは幕僚長をやられた人たちの問題についていろいろお考えになることは、このことはわかりますけれども、そのことと、予備自衛官にして、あるいは防衛庁長官の諮問機関にするというような形になりますと、これはもう事態が全然違うと私は思いますので、その点をひとつ申し上げておきたいと思います。
 次に、先ほど出ました欠員募集の問題について伺いたいのですが、私の記憶では、前は募集に対して志望者が五倍、六倍というふうにあったように記憶しております。何かいま非常に、どうなんですか、募集人員に対しまして何倍という志願者がいるのですかね。どうも新聞等で見ますと、何か幾らか山梨のような指数の足りないような人が入っている。しかも、あの前後開かれました会議におきますと、全国的なようですね、こういう施設に入っておった人たちが全国的にやはり自衛隊の中に募集に応じて、応ずるというのか、入っておるというのか、そういう形のようなんですけれども、これはいま募集に対しまして志望の倍率というのはどういうぐあいになっておるのですか。
○政府委員(内海倫君) 大体最近におきます年間の採用は三万二千ないし三千の辺が数年間における平均の採用の人員数でございますが、これに対しまして大体応募した者は六万人強という辺が平均の数字になりますから、まず倍率からいえば二倍ないし二倍弱ということになります。しかしながら、これは全部が率先して自衛隊に入るということで応募してまいったという者ばかりではございませんで、やはり相当自衛隊におきまして勧誘をいたしました者も当然その中には入っております。
○鶴園哲夫君 ここに前の数字があるのですが、大体六倍から八倍というのが私どもがやっておった当時の倍率になっておりますね。いまお話のように二倍というと、まあたいへん少なくなっておるわけですね。この募集方法ですね、これは私見ていますと、募集方法はどうしておられるかと思って見ていますと、こういうやり方でいきますというと、これは山梨のようなことが起きるのは当然じゃないかという気がするのですがね。その問題について、何かこの五月になってから地方連絡部長会議ですか、開かれて、いろいろ検討なさったようですけれども、その結論はどういうことになっているのか、お伺いをいたします。
○政府委員(内海倫君) 地方連絡部の長の会議が行なわれまして、いかにして自衛隊員の募集に対処するかということを一つのテーマといたしまして会議を行ないました。特にその中で、かりに少数でありましても不適格な隊員を入隊せしめておるというふうなことがあってはなりませんので、そういうふうなことに対しては地方連絡部の募集段階においてしっかりしたチェックをして、隊員にふさわしい者を入隊せしめるような対策を今後推進しようではないかということでいろいろ討議をいたしました。しかし、その討議におきましては、やはり地方連絡部長のほうから、ああもしてもらいたい、こうもしてもらいたいという要望が非常に強く出されておりまして、むしろ今後におきましては、私どもがそういうふうな地連の部長をして真に安んじて募集に当たり得るような諸条件を設定することが結局大事であるという、そういう結論に相なったかと思います。
○鶴園哲夫君 そうしますと、従来の募集方法というのを変える必要はないというお考えですか、そういう考えですか。
○政府委員(内海倫君) もとより私どもは長年経験を積み重ねてきております募集方法を変えるというふうなことは必要はないと思いますが、しかし、もしその間に適切を欠くようなものがあれば、これは直さなければいけませんが、このほかにさらにより有効な、より適切な方法をつけ加えていくということは必要であろうと思います。
○鶴園哲夫君 長官は、山梨の問題が出ましたときに、これは新聞報道だったと記憶しておりますが、指数が足りなくても仕事に専一できればいいのだというお話が載りましたですね、これは私は危険だと感じましたのですが、そうでなければいいのですが、これは武器を取り扱うのですから非常に危険ですね。少なくとも普通の常識があってもらわないと、武器を取り扱うものですから、これはそうあってはならないと私は思うのです。もう一つ、先ほど山崎委員のほうからも出たのですが、十五歳、十六歳、十七歳という、十八歳以下の隊員というのはどのくらいいるものですか、そして、これが重要な地位を占めているのじゃないかという気がするのですが、若い人がどのくらいいるものですか、それを。
○政府委員(内海倫君) いま少年隊員としてとっておりますのは、陸海空の三自衛隊とも学校に入れまして技術の曹を養成するために採用しておるわけであります。年間、陸海空の自衛隊を通じまして約七百名くらいでございまして、大体三年の期間でございますから、いま現在少年として在隊しております者は二千人前後だと思います。
○鶴園哲夫君 わかりました。
 もう一つですが、この陸の場合非常に充足率が低いわけですね、八七%くらいですね。これは師団構成はどういうふうになっておるのですか、つまり足りないままに、師団はある程度足りない、連隊も足りない、小隊も足りない、こういう形になっておるのか、あるいはどこかぴしっとしていてほかのところは足らないのだというふうにしてあるのか、その点をお尋ねしたいと思います。
○政府委員(宍戸基男君) 編成によりまして師団とか、連隊とか、あるいは学校とか、あるいは地方連絡部とか、いろいろな種類がございますが、全部が平均して九〇%なら九〇%というわけではございませんで、やはり学校等は必要なものですから一〇〇%近くやっておりますし、それから平常業務のたくさんあります地方連絡部とか、あるいは補給処等にもわりあい欠員を少なくしておりますので、欠員のしわはどちらかといえば第一線の部隊の師団、あるいはそれを構成するいろいろな連隊等にしわよせがいきまして、全体がかりに九〇%程度でありますと、普通の師団ですと七〇数%程度になっているのが現状でございます。
○鶴園哲夫君 それはなかなかたいへんですね。七〇何%の充足率で師団を構成する、あるいは連隊を構成する、たいへんなことですね。こういう話があるのです、そういう非常に人員が不足している事態に対応して、師団を分けて、うんと足りない師団、装備の悪いやつと、それから正規のといいますか、装備もいいし、人員もそろったという二つに分けてという考えがあるということですが、そういう考え方あるのですか。
○政府委員(宍戸基男君) 結論から申しますと、現在そういう考えはとっておりません。そういう話題はあるいはお聞きになったのかもしれませんけれども、これは外国にそういう例がございます。もちろん基礎的に徴兵制がない国、ある国と違うわけでございますが、現実の問題としては、アメリカでもソ連でもすべての師団がすべて一〇〇%になっているわけではございませんで、ある後方の師団は七〇%とか、あるいは六〇%とかの充足にとどめておく。中ソ国境がかりに緊張すれば、その国境付近の師団は充足を高めるというふうなやり方をしている国はたくさんございます。あるいはそういうことがお耳に入ったのかもしれません。現在、自衛隊では特にそういうことを分けてやっているわけではございません。
○鶴園哲夫君 予備自衛官の問題は、これは自衛官に対して大体どのくらいの割合で考えていらっしゃるのか。これからもどんどんふやしていかれる予定なのか。私の感じとしましては、どうも今度海のほうにも三百名ですか、予備自衛官ができました。これは欠員が一番多いのは陸のほうなんですね。したがって、一たん必要ある場合に、予備自衛官によって欠員部分を充足しようという考え方なのか、そういう構想なのかどうか。そうしますと、これは今後ますますふやしていかなければならないということにもなるし、どういうふうに考えていらっしゃるのか。どこら辺の割合を妥当というふうに、予備自衛官を見ておられるのか、お尋ねいたします。
○政府委員(宍戸基男君) 現在の予備自衛官の数は三万数千人でございますけれども、その運用構想は先ほども長官からお答えがありましたように、有事に際しまして必要となるであろう後方部隊、支援部隊の充足のため、あるいは有事に考えられます人員の補てんのためというふうなことをもとにしてつくってあります。ただ、今後の構想としましては、そういうことにとどまらないで、後方の警備等のことを考えまして、五方面十三個師団等をできるだけ効率的に運用するために、もう少し防衛力の厚みを増したいというふうなことから三万数千人をもう少しふやしたらどうかというふうなめどで、そういう見当で作業をやっている。けさほどもお答えいたしましたけれども、三万数千人に対しまして、二倍前後のものにふやしてみたらどうかというふうな見当で、まだ、もちろん確定的なことではございませんけれども、作業を進めておるということで、趣旨としましては、いま申し上げましたように、全体の防衛力の厚みを増したいということを考えておるわけでございます。
○鶴園哲夫君 そうすると、七万くらいの予備自衛官をこれからここに想定しておられるということになるのですか。たいへんな数ですね。
 それから厚みを増したいというお話があったのですが、私は予備自衛官というのはどういうことかはっきり知らないのですが、年間に訓練をするのですね。それで、いま先ほどの山崎委員の質問によりますと、何か月に千五百円の手当を出して訓練をする、何日間訓練をするのですか。
○政府委員(内海倫君) 大体、法令の定めるところでは年二十日以内、こういうことになっておりますが、現在実際に行なっておりますのはもう少し少ないのですけれども。
○鶴園哲夫君 自衛隊を満期になった人、ただいま満期ということばがあるかどうか知らないけれども、三年の年期が来てやめるときに、予備自衛官になるかならないかというお話になるでしょうね。予備自衛官になるのはどのくらいいるか。そうして、訓練のために招集というか何というか、呼ぶわけですね。どのくらいの数ですか。それともう一つ、来ない場合にはどうなるのですか。
○政府委員(内海倫君) 現在、予備自衛官の定員は三万三千、この本年度の予算要求におきましてさらに増加いたすことになりますが、三万三千人のいままでの定員に対しまして、予備自衛官は、たしか三万二千余だったと思いますが、大体九七、八%の充足だと思いましたが、これで教育訓練に応じますものの大ざっぱな比率は大体八四ないし五%程度のものが参集をいたします。いろいろ事情がありますれば、日を振りかえて参りますとか、いろいろな措置はとっておりますが、意識的にどうしてもいやだからということで教育招集に応じない場合には手当等を支給しないというふうな措置はとることになっておりますが、刑罰とかいうふうな、そういうものは教育のための招集にはございません。
 それからなお、先ほど御質問の中の、自衛隊をやめております者の大体四〇%くらいがいま予備自衛官になっておる、こういうことであります。
○鶴園哲夫君 もう一つですね、いまおっしゃるように、自衛官、特に陸上自衛官の場合は非常に欠員が大きい。それから予備自衛官の場合においてもそれ以上にもっとなかなか思うようにいかないという状況の中で、自衛官をふやしていくということはどういうことなのか。昨年でしたか、六千名以上自衛官がふえましたですね。これは一体どういうことなのか。これは普通の行政官庁でいいますと、これは欠員がこれだけあったらふやすなんということはとても言えたものじゃない。普通の官庁と違う論理があるのかどうか、どういう理由なのか、お尋ねしたい。
○政府委員(内海倫君) 普通の行政機関と違った論理が働いているというふうにわれわれは心得ております。軍隊と申しますとおしかりを受けるかもしれませんが、一般的に諸外国の軍隊の場合ですね。行政機関と違いまして、先ほどちょっと申し上げましたように、普通の行政機関ですといろいろな公共のために毎日の仕事があるわけです。しかし、軍隊というものは毎日国民に対して積極的に仕事をするということじゃありませんで、万一に備えて訓練をするということで、諸外国とも一般的にそういうことだと思います。自衛隊ももちろん軍隊そのものじゃありませんけれども、非常に共通したところがあるものかと思います。自衛隊の場合も警察その他の行政機関と違いまして、日常国民に対して一定の仕事をするということじゃございませんで、有事に備えて訓練をする、それに存在価値があるということで、別の論理が働いてよろしいんじゃないかというのがまず前提になります。昨年六千人ふやしていただくときもそういうことを申し上げました。で、有事に際しては、たとえば十八万なら十八万体制でやりたい、またやるべきだと考えておりますけれども、そして平時も十八万の体制のままで訓練をするのが一番望ましいわけでございますけれども、かりに欠員がありましても望ましいわけじゃございませんけれども、他の行政機関ほど直接の支障はない。もちろんそれが半分になるとかというようなことでは、訓練そのものに支障がございましょうけれども、一割ないし二割程度の欠員であれば平時の訓練にはそれほど大きな支障はない、かたがた別の理由で、ヘリコプター部隊をつくるとか、あるいは船をつくるとかということのために、それが全体の抑止力ということで必要があるとしますと、かりに欠員をかかえておりましても、その増員をお願いしたいと、普通の行政機関ですと、まず欠員を埋めて、そしてやるわけでしょうけれども、そこで軍隊的な、行政機関とは違った論理が働いてよろしいんじゃないかというふうにわれわれは考えて、そうお願いしたわけでございます。
○鶴園哲夫君 もう一つの問題は、中曽根さんが長官になられましてから、防衛の基本方針を変えたいというような発言がたびたび行なわれておりますね。まあ、いま三十二年の五月にきまっておる国防の基本方針と中曽根さんが変えたいという基本方針との差はどこにあるのか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 国防の基本方針のことを申し上げます前に、先ほど軍事参議官のことがございますので重ねて申し上げますが、あれをつくろうという考えはいまございません。予備自衛官という制度は佐官にとどめておく、この限度でやっていきたい、そう考えております。
 それから国防の基本方針につきましては、昭和三十二年につくりましたものがだんだんだんだん時代に合わない要素が出てきているんではないか、だから、新しい防衛計画を策定する際に、その基準としてはたして適当であるかどうか、検討を要する部面がある。たとえて申し上げますと、第三項でありましたか、国力、国情に応じて外的の侵入に対して防衛力を漸進的に整備するということがございます。国力、国情といいますと、国力といいますと、たとえば国の経済力に応じてと読まれるおそれがある。そうすると、GNPに比例するというような感じが出てくると、日本の経済力が非常に膨大に成長しているわけでございますから、かなり大きな絶対額になる可能性もある。それから防衛につきまして、あの第四項では、外部からの侵略があった場合には国際連合の機能が十分に立ち向かえるまでは日米安全保障条約を基調としてこれに対処する、そういうことばがあったと思いますが、それを基調として対処するとなると、安全保障条約に全部おんぶしてしまう。自分は何もしないような印象を与えるおそれがある。そういう意味において、これは三十二年ごろの日本の経済力がまだ非常に弱くて、国際的にもまだ微弱であったころの日本の国防の基本方針ではないか。これだけ成長してきたら、やはり自主的な面をもっと出すべきではないか。今度、安全保障条約は自動延長されますし、そういういろいろな情勢も踏まえながらこれを検討して、適当なときに必要な改正を施すという考えが妥当ではないかと思っております。
○鶴園哲夫君 いまの長官の御説明になりました基本方針の第四項ですね。第四項についていまのお話を承っておりますと、いままでは日米安全保障体制というのが主になっておって、そうして日本の自衛隊というのは従の立場に立っておる。それが日本の国力も十年の間にすばらしく成長しておるし、日米安全保障条約も自動延長になることだし、もう一つつけ加えれば沖繩も返ってくる、あるいは昨年の十一月の佐藤さんとニクソンさんの共同声明もあるというところから、自主防衛というのが主になって、そうして日米安全保障条約というのが従になっておるというような考え方ですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 次の段階は自主防衛を主として安全保障条約で、補完する、そういう立場が適当であると考えます。
○鶴園哲夫君 第四次防を計画するに当たって、長官がこの防衛の基本方針を改める必要がある、その考え方はいまお話のとおり。ですから四次防というものはいまおっしゃるように、自主防衛を中心として、そうして日米安全保障条約を従とする、補完するという立場から四次防をつくる、こういう基本的な考え方ですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 四次防もそういう性格を付与しながら進めていきたいと思います。
○鶴園哲夫君 そこで、去年の夏ごろでしたか、秋でしたか、国防白書というのが新聞報道されましたですね。その後、国防白書というものはどういうふうになっておるのですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 私、着任しまして国防白書の草案というのを読みましたが、必ずしも現在の情勢にマッチしていないところがある。内容等を見ますと、何と申しますか、冷戦思想の残滓みたいなところも多少まだありますし、それから自衛隊というものを国民の中に安置し、あるいは文民統制を非常に重要事項として強調するとか、そういうような要素においてもう少し検討を要する。それからいま専門家あるいは評論家、小説家等に自衛隊、防衛庁並びに防衛を診断していただいていますが、アマチュアの、しろうとの自衛隊を見た感想等も参考にいたしまして手直しをして適当のときに出そうと考えております。たぶん秋以降になって出せるのではないかと思っております。
○鶴園哲夫君 確かに去年の夏でしたか、出ましたときは非常に評判悪かったですね。冷戦構想的なものも残っておるし、それから自衛隊中心の国防になっておるというようなことで評判悪かったのですが、この四次防はどういう想定をし、前提でつくられますのですか。先ほど自主防衛が基礎になって、そうして日米安保というのが従になっておるということですが、どういう状況を想定し、前提でおつくりになるのですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 現在の国際情勢を見ますと、日本に対して顕在的な脅威がいますぐあるとは思わない。しかし、最近の情勢を見ますと、政治と軍事が非常に混在した形で出てきておる。そして、たとえば中近東の戦争、あるいは朝鮮事変、あるいはベトナム戦争等々を見ますと、いままでの様相とは変わった様相が出ておりまして、そういういわゆる間接戦略という様相が非常に大事な状態になってきておる。で、そういうことを踏まえながら、日本の民生安定、あるいは経済的発展、国民生活の充実というようなものを阻害しないように考慮を払いつつ、わりあいに科学的に精鋭な部隊を整備していきたい、そうして運用は非常に大事でありますので、この前申し上げました自主防衛の五原則というような、ああいう構想を取り入れて、そして順次整備していきたいと、そういう考え方でおるわけであります。
○鶴園哲夫君 中曽根長官が、これは本会議における発言だったと記憶しておりますが、まあ日本は軍国主義的、そういうような潜在力を持っている、つまり、経済的に非常に大きな国柄であって、一億をこす単一の民族でというような発言があったと思うんですが、いまは日本が再び軍国主義的な方向をとってるんじゃないかという、そういうまあ心配なり懸念なり、あちこちに行なわれていますですね。私はこの間、アメリカの人がやってきて、アメリカの下院の外交委員会の人たちが来て、そして非常にきびしい話をして、それで、調査団としては、「日本の新しい軍国主義に真剣な憂慮を抱きながら日本を離れた」と書いてますね。中を見てみますと、なかなか心配になりそうなことがたくさん書いてあるんですが、これはおそらく防衛庁長官もごらんになったんだろうと思うのですけれども、どういうふうにお考えになりますか。私は、いま長官がこの国防の基本方針を改定する必要があるということをお話しになりまして、その場合に、三番目にあります「国力、国情に応じて」ということになるというと、これは日本の国力、国情というのは、十年前、十二年前と比べますと非常な大きなものになってきてる。その意味から、日本の国防というのはこれはたいへんな大きなものになってしまう、そういう点の懸念があると、こうおっしゃる。しかし、一方においては日米安保条約が主である、そして自主防衛といいますか、自衛隊がその補完をなしておる、それが逆になって、自主防衛というものが中心になって、日米安保条約というのはその補完をしていくというような防衛方針をおきめになるという考え方からいきますと、これは相当大きな防衛力になっていくのじゃないか。ここにアメリカの下院議員の二人が、日本から、沖繩から、東南アジア等を視察して帰って、その場合の調査のしかたを見ますと、沖繩の基地についても共同利用という立場でいくという考え方が強いというような言い方もしてますね。中曽根長官は国内の、本土内の基地についてもまあ共同使用みたいな感じのお話が、御意見が出たように思っていますが、どうもこのアメリカの二人が結論として非常に心配をして帰ったということは、しごくうなずける点があるんですけれども、どういうふうに考えていらっしゃいますか。
○国務大臣(中曽根康弘君) アメリカの二人のリポートは、日本の実情をわりあいに知らない方の内容であると私思います。日本の現在の政党政治、あるいは国会、防衛庁の権能、機能、あるいはジャーナリズムのこれだけ厚い層、そういうようないろいろな面を考えてみて、日本が軍国主義化しているとか、あるいはする危険性が現在あるということは私は当たっていないと思います。ただ、われわれ自体の自戒する反省として、前に申し上げましたように、これだけ膨大な経済力を持ってきておりますから、もしこれが軍事優先に一ぺんに転化すればおそるべきことになるという憂いを抱いて帰ったことは想像される。しかし、もしそうすればという条件づきを、それが現にあると考えたら間違いであると私は思います。そういう意味において政治の責任が非常に重大であると思いまして、この経済力というものを国民福祉のほうにどういうふうに使っていくか、そういうことを真剣に取り上げて、そして、いやしくも軍事優先ということにならないように、われわれは慎重に配慮していく必要がある、そのように考えておる次第であります。
○鶴園哲夫君 それは、三十二年に防衛計画が始まるわけなんですが、第二次防ですね。それから第三次防、第四次防といま計画が進められておるわけですが、これを見ますというと、二次防、三次防、四次防と、そのたびごとに目標が大きくなるわけですね。特に今回の四次防という考え方から見ますと、これは非常に大きなものになるのじゃないか。長官はいまお話のような常識的な、いうならば良識的なお話ですけれども、しかし、考え方そのものはこれはどうも非常に大きなものではないか。しかもこれは長官もおっしゃるように、十三年前の基本方針がきまったころと比べてみて、あるいは十年前と比べてみて、日本の国力というものが、あるいは経済の規模というものが非常に大きなものになっている。また沖繩の問題を考えましても、あるいは台湾水域の問題、韓国の問題まで佐藤さんがおっしゃるというようなことになりますと、これはどうもやっぱり長官が国防の基本方針を変えると、そして自主防衛というものを主にして日米安保条約というものをこれを従にするのだという、そういう考え方からいきますと大きなものに想像されるのですけれども、それに対していま長官はきわめて常識的なお話をなさるのですが、そのように受け取れないように私は思うのですが、逐次非常に発展していきますし、二次防、三次防、四次防と目標そのものが発展していきますし、特に四次防の場合における目標というものが非常に飛躍的に変わってきておるという印象を強く受けるものですから、しかも、長官のおっしゃるように、日本は潜在的な力としては大きな力を持っている、その意味で私は心配しているのですが、長官の見解をお伺いします。
○国務大臣(中曽根康弘君) 日本の防衛力の整備という面を考えてみますと、具体的に陸海空と当たってみますと、必ずしも充実しているという部面ではないと思います。まあ陸の場合は、定員はこの程度で足踏みさせますが、機動力とか、そういう面において、あるいは米軍貸与の兵器がまだかなりございます。そういう陳腐化した第二次世界大戦時代の兵器は更新を要する。それから海の場合は、大体こういう練習的基礎という程度の防衛力ができておるという程度で、有効な周辺海域の防衛とか、あるいは対潜掃討とか、そういうものをやるまでの力がまだ出てきておりません。あるいは空にいたしましても、防空力等においてまだ機械化その他での不十分な部面がございます。そういう具体的に点検してみますと、まだ整備を要する部面がありますので、それらは次の防衛計画で逐次補充しつつ、ある程度時間をかけてやってまいりたいと思うのです。しかし、陸について、定員でもう足踏みという情勢が出ておりますと同じように、海、空につきましてもある限度にくれば足踏みという情勢がいずれは出てくると思います。それから数量的な面につきましても、どの程度のスケールが大体日本として似合わしいかという限度をできるだけ把握するように、模索しつつ努力していきたいと思っております。野方図に無制限に伸ばそうなどとは毛頭考えておりません。それはやはり日本が明治維新以来努力して西欧に追いつこうとして、政治水準においても西欧に肩を並べるところにまで早く持っていきたい、下水道一つ考えてみてもまだ外国と比べてみたら惨たんたる状態であります。そういう面をやはりわれわれとしてもよく考えて、非常に広い視野に立ってその一環としての防衛というものも考えてまいりたい、そう考えておるわけであります。
○中尾辰義君 それでは私は、この自主防衛につきましていまも御質問がございましたけれども、これは一昨年の佐藤・ジョンソン会談以来ですか、日本の守りはわれわれの手でやらなければいけない、こういう佐藤総理の自主防衛というかけ声でだんだんだんだん防衛力が強化をされてきたわけであります。そしてこの第三次防衛計画では航空機や誘導兵器の国産化までできるようになった。そしてわが国の自衛隊の力というのは、アジアにおきましては中共に次いで最高の実力がある。このような現状に、さらに第四次防整備計画、これからですね、これには約六兆円にのぼる経費が予想されておる。そして今後ますます陸海空の三自衛隊が増強されていくわけであります。これはアジアの各国からも脅威の目で見られておる。まあ先般の中国が日本に対する軍国主義云々の非難のことばもありました。また聞くところによりますと、お隣の韓国でも少し心配になってきた。こういうふうにだんだん、自主防衛という非常に名前は聞こえがいいんですが、だんだんと増強されていく。一体自主防衛というのはどこまで落ち着く先はいくのか。この自主防衛ということは、一体日本が自由な選択に基づいたところの自主防衛なのか、その辺がどうももう一つはっきりしたようではっきりしてない。その辺にひとつ質問の焦点を合わせまして少し具体的にお伺いしてみたい。
 まず一番最初にお伺いしたいのは、これは予算委員会でも問題になったんですが、例の日米共同声明におきまして、あれを見ますというと、これは一九七〇年のわが国の進む方向が示されておるような気がするわけです。そしてあの共同声明の中に盛り込まれたわが国の軍事的役割りはどうなっているのか、こういうふうに考えてみますと、例の共同声明の第四項が出てくるわけであります。台湾韓国の安全はわが国の安全にとってきわめて緊要、このような発言をしているわけです。そこで私はお伺いしたいのは、自衛隊を指揮する中曽根防衛庁長官として、その共同声明に盛り込まれた、いま申し上げました点について、どのように受け取っていらっしゃるのか、承りたい。
○国務大臣(中曽根康弘君) 昨年の佐藤・ニクソン共同声明につきましては沖繩返還を機とする日米両国の方針についてあのような合意がなされたと思います。しかし、日本の防衛に関する限りは日本の憲法、自衛隊法そのほかの諸法令の規定するところに従って、従来どおり日本の本土防衛ということを中心にし、専守防衛に徹してやっていきたいというのでありまして、いやしくも海外派兵であるとか、そういうような方向に自衛隊を使うということは、厳にいたしません。
○中尾辰義君 そこで、これはまあ一般論だけではなかなかわかりませんので、少し具体的にお伺いしてみたい問題は、この日米共同声明に基づきまして、例の佐藤総理大臣がナショナル・プレス・クラブにおきまして演説をなさった点です。これはもう御存じですけれども、あらためてここに読みますというと、「特に韓国に対する武力攻撃が発生するようなことがあれば、これは、わが国の安全に重大な影響を及ぼすものであります。従って、万一韓国に対し武力攻撃が発生し、これに対処するため米軍が日本国内の施設・区域を戦闘作戦行動の発進基地として使用しなければならないような事態が生じた場合には、日本政府としては、このような認識に立って、事前協議に対し前向きにかつすみやかに態度を決定する方針であります。」、台湾の問題につきましてもそれは同じような意味のものが言われているわけでありまするが、そこでナショナル・プレス・クラブにおける佐藤総理の演説を拝見しますると、これではもうこういう事態が発生した場合には事前協議に対して前向きに、かつ、すみやかにということは、大体米軍が出動することはイエスである、こういうふうに受け取れるわけです。この点はいかがですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 共同コミュニケの解釈の問題は、外務大臣の所管事項でございまして、われわれからはとやかく申し上げる筋ではございませんが、従来、日本政府が言明してまいりましたことは、そういう事態が発生してきた場合には、すみやかに協議に応ずる、そして対処する、そういう心がまえを言ったので、イエス、ノーという点については、あくまでも自主性を持って判断をする、そういう点を留保していると私は解しております。したがいまして、事前協議においてイエスということを先に予約しているというようなことは毛頭ない、そのように思います。
○中尾辰義君 まあ佐藤総理の本会議における答弁も、これは全部が全部そういったようなイエスばかりでもない、またノーばかりでもない。イエスの場合もあればノーの場合もある、こういうふうに言われたように私は記憶しているのですが、ただ私はこの演説の内容を出しましたのは、これはやはりあなたは防衛庁長官として、これから日本の自衛隊の指揮もとらなければならない、また整備もしていかなければならない。そうなれば、やはりこういったような問題が起こった場合には、自衛隊としてのそれに対処するかまえがなければならぬ、またそれに対するところの整備も必要である。そういうふうになるわけであると私は思います。ですから、これは、こういう事態が私はなければ幸いでありますけれども、国防というものはやはりそういったような場面が起こった場合に、どう対処していくかというようなことも常に検討していかないと、これはやられてしまう。それで、これがひとつの想定に基づくといたしましても、もしそういうような米軍が韓国に出動しなければならないような羽目になった、そして日本の基地からどんどん出ていく。そうした場合に、米軍が出ていくのはそれはいいといたしまして、出て行って向こうでだんだんだんだん戦闘が開始される。それに対して今度はさらに戦火が拡大されて、日本の基地が向こうのほうから攻撃を受けた場合、やられた場合には、これは防衛庁長官として航空自衛隊も指揮しなければならない、陸上のほうも指揮しなければならないわけですが、やられた場合にはこれはどうなるんですか。それをただ黙っておるのか、それとも航空自衛隊は、向こうが来たんだからこちらも向こうの基地をたたくことが許されるのかどうか、それをひとつお伺いをしておきたいと思います。
○国務大臣(中曽根康弘君) 日本の本土が外からの力によって侵され、あるいは爆撃される、そういうような事態が起きれば、自衛隊は当然憲法並びに自衛隊法、防衛庁設置法等々の規定に従って防衛に任じなければならぬと思います。そういう場合に、条件次第によって防衛出動ということになると思います。それはすべて、そういう客観条件によってきまってくるだろうと思います。
○中尾辰義君 私はそれを聞いておるんですから。そういうふうに向こうから攻撃を受けた場合に、当然あなた防衛庁長官ですから、間髪を入れずに、そこまでやらなくても、場合によってはやらなければならない。そのときそれが許されるかどうか。許されるとなれば、これはやらなければならぬでしょう、あなたの立場として。いかがでしょう。
○国務大臣(中曽根康弘君) 日本の本土、あるいは日本の基地というものが爆撃その他によって攻撃を受ければ当然防衛に任ずる、そういうことになると思います。
○中尾辰義君 防衛に任ずるということなんでしょう。それをもう少し解釈してください。それだけだと私は理解ができない。
○国務大臣(中曽根康弘君) そういう状態がないような状態にする。だといって、それは攻撃的に敵の基地をたたくとか何とかという、そういうことでなくして、来るものは撃墜する、そういうような形で日本の平和を守っていくということになるだろうと思います。
○中尾辰義君 それでは、攻撃をしてきたものだけを払いのける、それだけの役割りしかないのか、それともこちらから飛んで行って敵の基地をたたけるのか、この辺を私は聞いておるわけです。
○国務大臣(中曽根康弘君) 原則として払いのけるだけである。しかし、たしか増田長官でありましたか、緊急やむを得ないという場合には相手方の発進基地をたたくこともあり得るけれども、そういうことはまずはないと、そういう答弁をしていると記憶いたしました。要するに、払いのけるということであると思います。
○中尾辰義君 私が聞いているのは、そういうような見解によって、これは航空自衛力をどの程度まで整備するかということも出てくるわけです。ですから、私はお伺いしているのであって、自主防衛、自主防衛とおっしゃるけれども、そういういま私が申し上げたような、向こうのほうから攻撃を受けた場合、こちらからもそれに対処して攻撃をやってもよろしいとなれば、それもやはり自主の中に入るとすれば、自主防衛というものが、その範疇において、やはり航空兵力というものを出してもこれは問題はないというふうな解釈が出てくる。これも第四次防衛計画、それ以後の防衛計画に関連しているからお伺いしているのであって、そこでこれは愛知外相はこういうように答えているわけです。「これは、それに対して向こうが来るとすれば、それは報復どころではなく、第二の侵略攻撃である。安保条約第五条は日本国自体が侵略を受けることを規定しているわけだから、当然第五条が発動されるし、これは憲法に基づいた自衛権の発動になる。」、これは衆議院の予算委員会ですが、こういうような答弁があるのですが、この愛知外相の答弁と関連してどのように考えられますか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 鳩山内閣のときに、衆議院内閣委員会におきまして船田長官が総理の答弁を代読しておられますが、「誘導弾等による攻撃を受けて、これを防御する手段がほかに全然ないというような場合、敵基地をたたくことも自衛権の範囲に入るということは、独立国として自衛権を持つ以上、坐して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨ではあるまい。そういうような場合には、そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置をとること、たとえば誘導弾等による攻撃を防御するのに他に全然方法がないと認められる限り、誘導弾などの基地をたたくということは、法理的には自衛の範囲に含まれており、また、可能であると考えている。」、「しかし、このような事態は今日においては現実の問題として起りがたいものでありまして、こういう仮定の事態を想定して、その危険があるからといって平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持っているということは、憲法の趣旨とするところではない。」、これは伊能長官が敷術してあとで答えたことであります。こういう見解を政府は持っておりまして、防衛に徹しつつ平和を守っていくという形であると思います。
○中尾辰義君 私は現役の長官にお伺いしているわけで、防衛に徹しながら平和を守る、これは外務大臣の答弁ならいいかもしれないが、直接自衛隊を指揮する、三軍を――三軍と言うとしかられるかもしれないが、陸海空の総指揮官ですから、外務大臣の答弁のように防衛に徹して平和のために云々、これだけでは、これは行動隊である自衛隊じゃちょっとわからないですね。
○国務大臣(中曽根康弘君) これはやはり事態に応じて自衛隊法やあるいは防衛庁設置法の命ずるところに従いまして、待機あるいは防衛出動、おのおの所定の手続を経てやっていくものだろうと思いますが、その運用の基本方針というものはやはり専守防御ということで、節制ある態度で臨むというのが基本的方針でよろしいと思います。
○中尾辰義君 まあそうしますと、報復爆撃等はよろしいということに理解してもよろしいですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 先ほど読み上げました船田長官代読あるいは伊能長官の答弁ということは政府の統一解釈で、私もその方針で実行いたします。
○中尾辰義君 それじゃもう一点お伺いします。これも報復攻撃に類する行為でありますが、これは作戦上、向こうの基地はたくさんある。Aの基地から飛んできたのだけれども、場合によってはBの基地もくるかもしれぬので、そこに先制攻撃をかけることは、これはどういうことになりますか。
○国務大臣(中曽根康弘君) その辺の法解釈は、私、独断では答えにくいと思いますが、ここにありますような答弁の趣旨から見ますと、過剰になるのではないかと、そういう感じがいたします。つまり過剰防衛ということはこれは禁止されておることであると思います。
○中尾辰義君 過剰防衛だってね、それは戦いが始まっておる最中ですからね、過剰防衛といいましても、どこからどこまでが限界でどこから以上過剰だと、そういうことは結局は戦いの場合においては、そんなことをやりおったのじゃそれは負けですわ。まあ非常に答えにくい点もありましょうから、私の端的な質問だけで、作戦の全般的な情勢はわからない。委員会でそういうような質問だけじゃ責任ある防衛長官としてですよ、答弁はむずかしい点もあろうかと思いますので、まあこの辺でこれは終わっておきます。
 それで、もう一つ、まあこういうような情勢のもとで、自衛隊は自衛隊法によってまあ出動はできない。海外派兵はできない。こういうように考えられるわけでありますけれども、こういうような答弁があるのですがね、これをひとつあなた、現役の長官として説明をしていただきたい。これは松野防衛庁長官の答弁です。六六年三月、通常国会においての答弁であります。「政府にとって「海外派兵とは武力を行使する目的をもって、武装して外国領土へ出かけること」であって」、よろしゅうございますか、「「武力を行使する目的でない」派兵は「海外派遣」といい「海外派兵」とは違う」のである。つまり海外派兵と海外派遣とあると、こういうことですね。したがって、海外派遣、海外派遣というのは、憲法違反ではないと、これはわかったようでわからぬのですがね。この辺をあなたがもしこういう場面に直面するかもわからぬですから、長官にもこれはお伺いしておく必要がある。
○国務大臣(中曽根康弘君) これは具体的なケース、ケースで判断をしないと、抽象的にお答えすることは非常にむずかしいと思うのです。武力行使の目的を持って武装した部隊を外国領土に派遣するということがいわゆる海外派兵、これは憲法のたてまえから許されないと考えます。これに反して、武力の行使を目的とすることなく、たとえば国連の平和維持のための監視機構に自衛隊を参画することは、憲法上の問題は生じないと考えます。しかし、自衛隊法には当該参加に相応する規定がございませんので、自衛隊法を整備しなければ現状ではできませんが、目下のところ自衛隊法を改正することは考えておりません。
○中尾辰義君 それならば、不幸にしてさっき申し上げたような事態が発生をして米軍が出動した、その場合に国連軍参加という名目ならどうなるのか、それがまあ今日、在韓国連軍ですか、あれがいまなお派遣されて、実質的にあれは米軍と変わらないわけでありますけれども、米軍じゃなしに国連軍、在韓国連軍に自衛隊を組み入れることはどうなのか、それができるのかどうか、それを一つお伺いいたします。
○国務大臣(中曽根康弘君) それはお話しの内容を見ますと、やはり武力行使の目的を持って武装した部隊を国連軍と一緒に使おう、そういう考えのように思われますから、やはりこれは憲法のたてまえから許されない、そのように考えます。
○中尾辰義君 憲法違反ということですね。それならば、まあそれを聞いて私も安心いたしますけれども、政府部内では国連軍に自衛隊を組み入れることによって、海外派遣もいいんじゃないかというような意見もあるやに私はお伺いしておる、この辺のところは政府部内におきまして明確になっておるのかどうか、この点をお伺いしたい。
○国務大臣(中曽根康弘君) 国連警察軍という場合は、その国連警察軍の性格がどうであるか、また、国連警察軍の与えられている任務は何であるか、そういうことがやはり非常に重要な要件で、たとえばその任務として、監視であるとか、純粋な警察目的で行なわれるという場合、そういう場合で武力行使を伴わない監視のみに限るというような場合には、参加しても憲法上の問題は生じないであろうと、そういう解釈でございます。
○中尾辰義君 それならば、当初の目的は国連監視軍、あるいは警察軍として参加をしたけれども、たまたま向こうに行ったところが向こうのほうの陣営から攻撃を受けた、こういうようなケースが起こらぬとも限らぬ、やむを得ずしてそこで戦闘が始まった、ところがそれがなかなかまあわがほうに不利になったので、さらに逐次自衛隊を増加派遣するというようなことはどうなんですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 武力行使の目的で派遣するということは、ともかく憲法違反になるだろうと思います。
○中尾辰義君 そういう場合は結局まあ派兵はできない、こういうことですね。そういうふうに理解をしてよろしいですね。
 で、最後に私がお伺いしたいのは、日本は国連に参加している以上は、やはり国連軍に参加をしないというと、日本の国のメンツにかかわる。経済大国とまで言われている、このような実力がついて何もしないのはおかしいのじゃないか、そういうようなことで派遣しても、国連軍に参加するなら派遣してもいいんじゃないか。こういうような考え方を持っている人があるように私は思うんです。それで、それには自衛隊法を改正しないというと、これはちょっと問題ある、こういうような意見があるように思うんです。ですから、私は長官にお伺いしたいのは、自衛隊法の第三条には、「自衛隊は、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当るものとする。」、このように厳然たる条文がありますので、できない、しかし、何とかこれをしなければならないというような意見があるらしいので、私は長官にお伺いしたいのは、この自衛隊法を改正する意思はなかろうとは思いますが、この際にお伺いをしておきます。
○国務大臣(中曽根康弘君) 目下のところ改正する意思はございません。
○中尾辰義君 了解。それで自主防衛という、いまの質問は私のテーマですね。ところがもう一つ観点を変えまして、日米共同声明は単なる軍事的なものだけを扱うのではなしに、やはり日米経済の関係、あるいは東南アジアにおけるところのアメリカにかわって日本がそれを肩がわりしていかなきゃならない、そういうようなこともあるわけです。ところが、この戦争というものはどうしても利害を伴って、戦争の始まりは経済から始まるというようなことは昔から言われておりますので、それに関連をして、この経済的に台湾と韓国、東南アジア方面におけるつながり、その辺を私はちょっとお伺いしてみたいんですが、通産省、おいでになっておりますか。――それから具体的に台湾や韓国、東南アジアにおけるわが国の投資額、貿易量、それからどういう会社が進出をしておるか、現地との合弁会社はどれくらいあるのか、それをひとつ明らかにしてください。
○説明員(黒部穣君) ただいまの御質問の点でございますが、韓国との貿易は昨年四十四年、歴年で申しますと、輸入が一億三千三百万、輸出が七億六千七百万になっております。中華民国、台湾の場合は輸入が一億八千万ドル、輸出が六億六百万ドルに相なっております。投資額は許可件数で申しますと、金額で申しますが、四十四年三月末現在で、韓国に対する投資額は四百六十七万ドル、台湾に対します投資額は三千九百万ドルになっております。件数は同じく四十四年三月末現在で韓国は四件でございます。台湾は二百三十三件になっております。
○中尾辰義君 何かもう少し明快に答えてくださいよ。どういう会社が出ているのか、合弁会社がどのくらいあるのか、そうしてどういう事業をしておるのか、その概略でいいですから。
○説明員(黒部穣君) 合弁会社の個々の名前をいま直ちに申し上げるほどの資料を持ち合わせておりませんが、韓国に対しまする投資は、つまり合弁会社の設立はごく最近認められるようになりました関係上、件数はまだ少数でございます。主として電気関係、これは韓国で使われるラジオやあるいは家庭用電気機器の製造のための合弁のようなものがあります。そのほかに化学繊維、あるいは合成繊維のための合弁工場がございます。一方、台湾におきましては投資環境がすこぶるよろしいわけでございまして、非常に多くの分野にわたって合弁事業が行なわれております。機械工業あるいは製薬工業のような分野、特に最近は良質安価な労働力を利用して輸出を高めるという目的で日本の投資を歓迎いたしておりますので、雑貨関係に相当の件数のものが合弁会社として設立されておるような状況でございます。
○中尾辰義君 まあ、ただいまお伺いしましたように、経済的にもう韓国、台湾、あるいは東南アジア方面にかなりの相当なつながりができており、また将来もますますこれはふえていくだろうと思うのですね。そうして共同声明というもの、またその前にニクソン・ドクトソンを考えてみますると、要するに、アメリカはあまりベトナムに突っ込み過ぎてドルも大分失ってきた、国内はインフレ景気で物価も高騰し、また国内においては反戦運動が盛んになってきた、この辺でひとつアジアはアジアの手にまかせようというニクソンの声明、あるいはまたこの前の佐藤・ニクソン共同声明にしても、結局、今後わが国は政治に、あるいは経済、軍事面におきまして、アメリカがアジアでやっておる役割りを引き受けていかなければならないように方向づけられておる。そういうような気がするわけであります。そういう点から私は見まして、いま盛んに自主防衛、自主防衛といわれているのですけれども、この自主防衛たるものが、いま私が申し上げましたような背景をもとにどんどんこれがまた増強されていくのじゃなかろうか、その辺を心配をしておるわけであります。言うなれば、自主防衛ということも、結局はアジアにおける日本の役割りをアメリカの下請によってこれはやっておる。それがどんどん日本の自主だけでなしに、アメリカの強力なる指導のもとに、あるいはハッパをかけられてこれをふやしていかなければならない、そういうような方向に向くのじゃないか、こういう気がするわけであります。その辺のところ、長官にお伺いしたい。
○国務大臣(中曽根康弘君) 海外における権益を擁護するために武力で派兵するというようなことはいたしません。それは憲法に反する行為であると思います。やはり日本の専守防衛ということを中心にして、本土と国民生活を守るということに徹してまいりたいと思っております。
○中尾辰義君 まあそれは防衛庁長官としてはそういう答弁しかできないでしょう。本来はこの防衛委員会――防衛委員会じゃありませんが、まあ実質的には防衛を審議するのですから。国の防衛というものは単に自衛隊をふやせとか、減らせとか、それだけを論議するのがこれは委員会ではありません。本来なれば、防衛を論ずるならば、ここで全部、総理大臣から通産大臣、外務大臣からそろわなければこれはできないですよ、ほんとうは。国の防衛というものはただ自衛隊だけじゃないのですからね。いろいろな点に関係がございますし、その点、中曽根長官は御存じでしょう。それから考えまして、今度の第四次防衛計画というものを私はどういう方向に置こうとするのか、それを考えながら長官にお伺いするのですけれども、先ほどから聞いているのですけれども、なかなかほかの委員の質問に対する答弁も、もう一つ具体的なものがあまり出てきませんけれども、その辺はひとつ前向きで御答弁を願いたいと思うのです。
 それで、まず最初に、この国防の基本方針、これは先ほどひんぱんに質問がありましたが、再度私はお伺いしますが、国防基本方針は、これは現在は昭和三十二年五月二十日、国防会議において決定をし、同日、閣議決定をしたものである、こうなっておりますがね。約十三年前のこれは国防基本方針であります。まあ多少情勢も変わっておりますから、これは変えたほうがいいと、こういう御意見ですが、どういうところをどういうふうにどういう目的のために変えるのか、それをひとつお伺いをしておきます。
○国務大臣(中曽根康弘君) 現在の国防基本方針は、お説のとおり昭和三十二年にできたものでございまして、日本の防衛力もまだはなはだ微弱であり、日本の経済力も非常に弱い時代の産物で、ほとんどアメリカの力に依存しなければ防衛が成り立たなかった、そういう時代の産物であったように思います。日本の経済力がこれだけ復興いたしましたし、それからこの一九七〇年代というものを考えますと、かなりの変化も客観条件において予想されます。そういうことを踏まえまして新しい防衛計画をつくっていく際に、そういう新しい環境なり条件というものを考慮に入れて基準を検討し直す必要がある。そういう考えに立って国防の基本方針というものを検討してみたいと考えているわけです。その中身の中で、たしか四項目ございますけれども、その中の三項目に、「国力国情に応じ」云々ということばがあります。国力国情に応ずるということになりますと、これだけ日本の経済力が成長して、国力に応ずるということになりますと、これはGNPの成長に比例するというような形でもとれば、かなり大きな数字になってまいります。そういう点はどうであろうか。やはりほかの民生安定の諸国策と調和を保ち、バランスをとる必要がある。そういうこととか、あるいは四項目にあります、もし外部の侵略に対しては、国際連合の機能が十全を得るまでは、日米安保条約を基調として、これに対処するという考え方がありますが、これは一見すると、アメリカに頼むというような感じが出ております。やはり国を守るという場合には、みずからが守るべきであって、足りないところは友好国と協力し合うという原則が今日では適当ではないか、そういう考え等を基本にして、参考にしつつ国防の基本方針というものは適当なときに再検討を加えたい、このように考えているわけであります。
○中尾辰義君 それでもう一つお伺いしますが、第三項の、「国力国情に応じ自衛のため必要な限度において、効率的な防衛力を漸進的に整備する。」、ここのところを、ただいまのお話では、民生とバランスをとりながら考えなければならない、こういうような意味合いのことをおっしゃっておりますが、そういうところをもう少しひとつ説明していただきたい。
○国務大臣(中曽根康弘君) まだ深く掘り下げたわけではございませんから、正確に御答弁できるかどうかわかりませんが、とにかく「国力国情」ということばをそのまま真に受けると、国力といえば経済力ということが一応すぐ考えられます。それに応ずるということになると、日本の国民総生産が上昇するにつれて、そのまま並行移動をしていくというと、絶対額においてもかなりの大きな金額に成長しやしないか、そういうことをおそれるわけであります。国情といいますと、これも衆議院でたしか申し上げたと思いますが、自民党が三百名とって、国民が全部支持して、相当数が支持してきておる、それじゃ自民党の思うままにやっていいと、そういうものでもあるまい。やはり国民全体のコンセンサスとか、ほかの国策との調和とか、そういう点に思いをいたす必要があるし、海外の諸国の反応というものも重要な要素でもあります。そういう点を考えてみて、第三項というものを慎重に検討してみる必要はありゃしないか、そのように考えているわけであります。
○中尾辰義君 それでは、あなたのお話を聞きまして、いわゆる自主防衛の自主というものが、私ははっきりしたようではっきりしないのですがね。ただ単に憲法だとか、自衛隊法だとか、そういう法律に照らしますと、それはいろいろな規制があるのですから、まあ当然できないわけですけれども、大きく飛躍はできないわけですけれども、やはり国際情勢から、いろいろな政治経済の面から考えてみて、私はこの自主ということが、どうもはっきりわからない。一体、自主防衛というのは行きつくところはどこなんだと、これはこういう質問をしても、それは限界というものははっきりしないと、こういうようなことで、それこそまた国力国情が出てきて、これはもうなかなかわれわれとしてはわかりにくいのですけれども、どうですか、その辺のお考えは。ただ何回も言いますように、われわれが心配をしておりますのは、結論を言いますと、これは自主防衛というけれども、歯どめがないのだから何ぼでもいくのじゃないか。その辺が心配なんです。そして、そのように第四次防衛計画にしても、いまのところ概算六兆円前後だと、それは何回も聞きましたがね。その六兆円前後というものは、五カ年の平均をいたしますと一年間に一兆円あるいは一兆数千億円、その中で人件費が四〇%から五〇%ということにしますと、あとの五〇から六〇%の経費、つまり五千億から七千億というような膨大な金がどんどんどんどん防衛産業のほうに入っていく。そうすると、しまいにやはりコマーシャルベースで兵器工業界からの圧力もあって、また、いいものいいものということで防衛力がふえていく、一体どこまでいくのか。しまいには、そういうところから新しい兵器を持っていくと何となしにそれを使ってみたい。ピストルを持たせると一発ばんとやってみたい。新しい大砲を持ちますと軍人さんは一発ばんとやってみたいのだ。そういうところから心配もあるわけでありまして、そういう法解釈の面とあわせて政治的な判断からでも、長官のこういう危惧に対する長官としての見解をひとつお伺いしたいのです。
○国務大臣(中曽根康弘君) 防衛力というものが無限に伸びず、節制ある伸び方をするということは非常に大事であると思いますし、また限界というものも考える必要もあるように思います。陸上自衛隊の定員については、現在の定員で大体足踏みをさせる。海上並びに航空につきましても、いずれそういうふうに限界線が出てくるときがくるだろうと思います。防衛力の場合は相対的でありますので、兵器の進歩とか客観情勢にもよりましてなかなかその限界線を数量的に把握できないのが残念でございますが、しかし、文民統制を徹底して、いまのような考えに沿ってできるだけ節制を重んじて今後もやっていきたい、そのように考える次第でございます。
○中尾辰義君 それならば、これは各国の軍事費の比較を見ますと、一九六九年で日本が第十三位になっています。数字的に見ますと、アメリカが二十八兆二千五百十億円、ソ連が十五兆一千七百四億円、中共が二兆六千億円、フランスが約二兆円、イギリスが一兆九千億、西独が一兆九千億円、それから第七位ポーランド、この辺からちょっと落ちてくる。ポーランドが七千四百億、八位イタリアが六千九百億、九位は東独六千七百億、十位がカナダ六千億、十一位チェコが五千六百億、十二位がインド五千三百億、十三位が日本の四千八百億、こうなっていますがね。これがいまの第四次防衛計画の輪郭でありますと、一年間に一兆円そこそこのそういう予算になりますと、これは急ピッチにこういう東独、イタリア等を越えまして、西独あたりの、この辺まで追いついていくのじゃないか、やがてはフランス、イギリス、この辺と肩を並べるような防衛予算になるというようなことも予想される。そうしますと、これは、こういうフランスみたいなものは、これは核を持っておるのですからね。核兵器をつくっておるような国の軍事費と同じようなところまで行ったのでは、そういうことを心配するわけです。はたしてそういうのが自主防衛になるのかどうか、そういうような批判も出てきやしないか。それで、近隣からの日本の防衛に対して、自衛隊に対するところの脅威というものも出てくるのじゃないか、そうことも予想されるのですね。いかがですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) いまの防衛費の比較をごらんいただきましたが、日本の国際的な位置、あるいは人口、そういうものから考えてみますと、いままでの防衛費は必ずしも多いとは言えないと思いますし、国の経済力や、その他の政策とのバランスを考えてみまして、社会保障関係とか、あるいは教育研究費とか、そういうものとの節度ある調整といいますか、調和といいますか、そういう立場を維持してきているということは非常に賢明であったと思います。で、私もやはり政治家として、日本の国民の生活水準を、一日も早くヨーロッパ水準並みに上げたい、それが今日の政治家の非常に大きな任務であろう、かように心得ておりまして、国民の生活の発展を阻害するような限界まで防衛を持っていかない、そういうことを基本方針としてかたく考えております。一日も早く、ともかく西欧の水準に国民の平均レベルを追いつかせたいという念願に燃えておりまして、そういう配慮をもって今後も努力してまいりたいと思うわけであります。
○中尾辰義君 それじゃ、もうひとつお伺いしますが、そのようにこれからの見通しは相当の防衛力が強化されるわけですが、一体このように日本をめぐる各国の軍事情勢というものが変わってきているか、日本に脅威を与えるように近隣の軍事情勢が変わっておるのかどうか、この辺のところをひとつ見解を述べていただきたい。
○国務大臣(中曽根康弘君) 現在の情勢は、顕在的な脅威というものは私は幸いにないように思います。しかし、脅威というものは、意見と能力が結びついたときに顕在化してまいります。そういう事態があらわれないとは限らない。また、最近の国際紛争のやり方を見ますと、政治と軍事が混在して、平和の中に軍事があったり、軍事の中に平和がもぐり込んだり、いろいろさまざまな、複雑な、いわゆる全体戦略、あるいは間接戦略と言われる紛争が非常に濃化してきているように思います。中近東の問題や、ベトナムの問題や、韓国の問題や、そのほかの問題を見ましても、そういう非常に陰性な、降りみ降らずみみたいな、さみだれのような情勢で紛争が続いたりしております。そういうような変化をわきまえて、やはり防衛というものは、一定期間の長い歴史の過程で考えないといけないので、そういうこま切れのような短かい時間だけを考えるべきものではない、そういう観点に立って、最も経済的な効率的な防衛力をもって国民に安心をしていただく、そういう政策を進めてまいりたいと思う次第です。
○中尾辰義君 国民に安心してもらいたいというのは、よその国が非常にびっくりしちゃって、それにまた対処していきますというと、やはりこれはまた軍事競争みたいにならぬとも限らぬわけですね。そこで、第四次防衛計画につきまして、先ほどからもお尋ねをしていますけれども、予算委員会等における長官の答弁は、防衛に必要な制空権、制海権を確保する、そういう方向でやりたいような大体の御意向を述べられておるようですけれども、今後、それならば陸と海と空に分けまして自衛隊をどのように次の五カ年間で整備をされるのか、この辺少し具体的にどういう装備をお持ちになるのか、その辺ひとつわかっておれば説明をしていただきたいと思います。
○国務大臣(中曽根康弘君) 具体的な内容は、これから整備するという、これから検討を加えてまとめていくという段階でありますので、あまり具体的には申し上げられないと思いますが、防衛局長から大体の見当を御答弁させていただきます。
○政府委員(宍戸基男君) 作業中なものですから、なかなか具体的に数字をあげて御説明できかねるわけでございますけれども、考え方としましては、陸で申し上げますと、たびたび長官からもお話がありますように、量の問題は大体従来から目標にしております十八万体制を維持すればよかろうかという見当でおります。質の問題につきましてはまだ不十分である。たとえば陸上機動力及び空中機動力、ヘリコプター等を使います機動力等において不足が目立つという感じを持っております。それから、先ほども申し上げましたが、全般にまだ厚みが不十分であるということで予備自衛官を増強いたしたいという構想を持っておるわけでございます。
 それから海につきましては、陸に比較いたしますと一般的に建設がおくれております。海の任務としましては沿岸警備、海峡の警備、あるいは沿岸の哨戒等、あるいは海上交通の保護といったいろいろな任務がございますが、どの部面をとりましても一般に建設がおくれております。質量ともにおくれておりますので、これを増強いたしたいという感じを持っております。三次防ではせいぜい、たとえば四護衛隊群がやっとそろいまして基礎的な訓練ができる程度になったところでございまして、これをさらに増強いたしたいと考えております。
 空につきましては、現在では御承知の104戦闘機を中心にいたしまして、ナイキ、ホーク等の航空ミサイルを組み合わせまして、海に比較いたしますと幾らか基盤が建設的である、陸ほどではございません。陸と海の中間的なところが空ではなかろうかという感じを持っております。ただ、航空機の宿命から寿命がわりあい短かいですから、それをそのままにしておきますと、総体的に防空力が低くなりますので、新しい戦闘機にかえていきたい。これは御承知のように、昨年ファントムという戦闘機の機種がきまりましたので、四次防におきましては新しい機種を中心といたしたい。これが中心になろうかと思います。そのほか各種のそれに伴ういろいろの支援部隊等の増強もいたしたい。それからナイキ、ホーク等の航空ミサイルにつきましても、さらに増強をいたしたい。さらにまた海空は予備兵力、予備自衛官を持っておりませんが、これをある程度持つようにいたしたいというふうなことをもちまして、陸と同じような厚みをつけたいというふうなことで構想を練っている、大体以上のような状況でございます。
○中尾辰義君 それで、この海上自衛隊の件で、きょうの日経に長々出ておりますが、私ひとつ長官にお伺いしたいのですが、予算委員会でしたか、この原子力潜水艦につきまして、わが国でも原子力機関が普及したときが来たら検討をしたい、こういったような意味合いの発言を長官はなさっておるのでありますが、この原子力機関が普及する時期は大体何年ごろとお考えになりますか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 原子力商船というものがようやく出始めたところで、まだ試験期であります。日本でもまだできてはおりません。こういう原子力が推進力として船に使われて、それが一般化するというときでございますから、やはりかなりまだ将来のことであると思います。
○中尾辰義君 それで、この四次防の計画中に原子力潜水艦の建造ということも考えられますか。あるいは検討の段階に入るのか、その辺をひとつお伺いをしたいと思います。
○国務大臣(中曽根康弘君) これは原子力の推進力がどの程度の早さで普及していくかということにかかっていると思いますが、いまのスピードでいきますと、ちょっとないのではないか、そういうように思います。
○中尾辰義君 次に、沖繩の防衛力、返還された場合にどういうような構想を持っていらっしゃるのか。新聞等にもちらほら出ておりますが、この際、長官からお伺いしておきたい。
○国務大臣(中曽根康弘君) これはアメリカ側とも相談をして調整をしてきめる必要があると思いますが、陸上につきましてはある程度の警備力及び施設部隊、それから海上につきましては沿岸哨戒及び護衛力、沿岸警備力と申しますか、それから空につきましては防空力、それから通信隊等が必要ではないかと思います。
○中尾辰義君 新聞報道では沖繩防衛の構想は航空自衛隊で空軍重点主義でいきたい、こういうことも出ているようですが、その点いかがですか。
○国務大臣(中曽根康弘君) まだきまったわけではございません。その新聞記事は必ずしも正確ではございません。いま申し上げましたように、陸上、航空及び海上警備について、大まかなところはさっき申し上げたようなことでいきたいと思っております。
○中尾辰義君 それでは次に、基地問題につきまして施設庁長官にお伺いをいたします。私どもの公明党は、かねてから日米安保体制の段階的解消を主張して、それの実質的形骸化をはかるために在日米軍基地の撤去を推進してきたわけです。すなわち、昭和四十三年には在日米軍基地百四十五カ所の総点検の実施をいたしまして、米軍基地の撤去を要求する国民的合意を盛り上げてまいりましたが、その後、同年十二月二十三日に日米安保協議委員会で五十数カ所の整理縮小計画が発表され、今日まで二十七カ所の返還の実現を見るに至ったわけであります。それから、先般米軍基地の再調査をいたしまして、いろんな問題点がまあ出たわけでありますので、若干お伺いをいたしたいと思います。四十三年十二月の日米安保協議委員会で発表されました整理縮小計画のうち二十七カ所が返還の実現を見ましたけれども、残った部分はどうなっておるのか。返還についての方向なり、具体的なものがわかっておれば、お伺いをしたいと思います。
○政府委員(山上信重君) 一昨年の十二月に安保協議委員会で協議せられました約五十の施設につきまして、その後、日米合同委員会、あるいはその下部の機関である施設特別委員会等におきまして、鋭意個々の施設の返還、あるいは共同使用、あるいは移転等の協議をしてきたわけですが、今日までの段階で、先ほどもお答えしましたように、二十八施設について合意が済んでおります。そのうち二十六はすでに返還等の措置が済んでおるのでございまして、残る二十余りのものが、なおまだ協議中ということでございますが、これらにつきましては、先ほどもお答え申し上げましたとおり、単純返還のものも五十の中にはございまして、相当ございましたが、いろいろな移転であるとか、使用転換等につきましては、たとえばその移転の内容についていろいろな条件がございます。どういう施設をどういうところへ移すという内容的な問題、あるいは移転先の問題等がございまして、まだその問題における調整がついていない。使用転換につきましても同じように、たとえば北富士の問題でございますれば、そういったようなことについてのまだ調整が地元との間に完全につかないというような実情のために、まだ整理がつかないのが若干ございます。二十余りありますが、現在ある程度合意に近い状態に達しておるものもございます。なお、協議中で時間を要するものもございまして、十数カ所はそういうような状態になっておりますが、なお数カ所につきましては、きわめて困難な条件を持っておるものもございます。したがいまして、われわれといたしましては、これらのいろいろな問題がございまするが、できるだけすみやかにこれらの措置ができまするように、目下最大の努力を尽くしておる次第でございます。
○中尾辰義君 これは公明党で再調査をいたしたものであります。これはひとつ長官もよく読んでいただいて参考にしていただきたいと思うんです。それで、返還をされた中で、ほとんどがこれは自衛隊へ返還するらしいんです。全体の九五%は自衛隊が使用することに決定することになっているようです。そうしますと、これは民間に返すのはほんのわずかしかないわけです。この辺の実情はどうなっておるのか、なぜそうなったのか、その辺をひとつお伺いしたい。
○政府委員(山上信重君) 公明党で最近基地の再調査をなさいましたというような御努力に対しましては、深い敬意を表したいと存じます。われわれといたしましても、いろいろな実務上、地元の希望、その他につきましていろいろ参考になるところが多々ございます。現在までの返還せられました施設につきましての処理でございまするが、御承知のように、返還せられました施設の中には、もともとが自衛隊の施設でございまして、これを米軍に従来提供して共同使用、二4(b)によるところの共同使用を認めておった、そういったものがございまして、これらがいわゆる米軍の共同使用が返還になって完全に日本側のものになる。たとえば、これは日出生台の演習場のごときところでございます。そういったようなものが、施設としては、返還せられました二十三の施設のうち、五つあるわけでございます。ところが、これは数は少ないのでございまするが、たまたま面積がきわめて大きい。日出生台の演習場のごときは、御承知のように一カ所で五千万平米もあるような大きな施設でございますので、返還せられました総面積が約六千数百万平米ございますが、そのうちの五千万平米というような、一つだけでそういう面積を占めるために、非常に多くのものが自衛隊にいったように見えますが、実際はもともと自衛隊の施設であったものが返還になったというために、これはよそにお返しするわけにいかない。自衛隊が使っているのは当然のことということで、数は少ないのでございますが、面積が多い。それから残った十六、七カ所のうち、そのうち自衛隊に移しましょうというのは五つでございます。その他のものはすべて民間等の使用にいく。民間とは限らないと思いまするが、自衛隊以外の使用に供せられる予定になっております。まだそれらの予定の配分が、これは大蔵省において中心になっておやりになっておりますが、決定いたしていないものもございまして、これは関係機関において地元等との調整がまだついておらないというようなこともこれあるやに伺っておりまするが、いずれにいたしましても、自衛隊に相当きているというのは、そういった事情でございまして、施設の数においては必ずしも自衛隊に数十%きている、九十何%きているというわけではございませんので、その辺御了承願いたいと思います。
○中尾辰義君 もともと自衛隊のものだとおっしゃるけれども、自衛隊のものになる前は民間のものであった。それを考えてもらわないと。それは御答弁要りませんけれども。
 それで具体的に二、三お伺いしますが、神奈川県の根岸競馬場地区、これは十六万五千二百平米、四十四年十一月二十三日、大蔵省にこれは返還されているわけですね。これはどうなっているのですか。何か半年くらいそのままほったらかしてあるというふうなことも聞いているのですが、こういう十六万五千二百平米というのは相当広大な土地でありますし、地元のほうからもいろいろな要望もあるらしいのですが、どうなっているのですか。
○説明員(庄司俊夫君) ただいま御指摘の根岸競馬場あと地でございますが、全体といたしましては約八万坪ばかりございます。五万坪は今回返還になったわけでございます。この五万坪につきましては、まだ恒久的な利用計画は決定いたしておりませんが、当面、地元の住民の方々に開放するということで、いこいの場として開放してございます。恒久的な利用計画につきましては、まだ未返還の部分もございますので、これらの部分と合わせまして一体としての利用を現在検討中でございます。
○中尾辰義君 検討といって、だれが検討するのですか。どういうメンバーで検討するのですか。
○説明員(庄司俊夫君) 具体的には関東財務局が公有財産の管理をやっておりまして、財務局のほうにいろいろ地元その他から利用計画の要請がございますと、それを参考にいたしながら私どものほうで検討しているわけでございます。
○中尾辰義君 結局これは財務局できめるのですか、いろんな意見もあるでしょうけれども、だいぶ意見を尊重してもらわぬと、意見は意見で聞きおく程度の意見ならこれはあまり意見にはならぬですから、そこら辺のところに住民の不満もあるわけですから、ひとつその辺をよく考慮していただきたい。
○説明員(庄司俊夫君) もちろん地元の御要望等承りまして、あるいは利用計画者の申請等を検討さしていただきました上で、財務局では国有財産関東地方審議会にはかりまして、その上で利用計画を決定するということで従来実施いたしております。
○中尾辰義君 それから名切谷住宅地区というのがございますが、長崎県。名切谷住宅地区十二万三千三百平米、四十四年の四月二十五日、これも大蔵省ですね。そのほか横浜の海浜兵員クラブ、これは四千百平米、神奈川県。それから座間の小銃射撃場、神奈川県、十二万四千五百平米、それから太田小泉飛行場、こういうところはどういうような見通しになっておりますか、お伺いしたい。
○説明員(庄司俊夫君) いまお話のございました中で、名切谷につきましては国有三課が所管になっておりますので、後ほど三課長から御答弁申し上げますが、私どものほうで所管いたしておりますのは横浜の海浜兵員とそれから座間の射撃場あと地、それから太田小泉飛行場あと地でございますので、それについて申し上げますと、横浜の海浜兵員クラブにつきましては、地元の横浜市のほうで何か隣の民有地とあわせて利用されたいという御希望があるようでございますが、まだ具体的な計画が出ておりませんので、現在まだ利用方針等はきまっておりません。それから座間の射撃場あと地につきましては、現在、自衛隊のほうで引き続き使用せられております。それから太田小泉飛行場につきましては、その返還された土地を、民有地もあるわけでございますが、それを含めまして工業団地にいたしたいというような計画でございますが、具体的にどういう利用者が決定するか、まだきまっておりませんので、こちらのほうの利用計画もきまっておらない状態でございます。
○説明員(永松慶也君) 名切谷住宅地区の利用計画につきましてお答えいたします。
 本地の大部分につきましては、昭和三十九年に都市計画におきまして公園区域として都市計画決定されておりまして、それを受けまして、本地は佐世保市も都市公園として利用するという方針がきまっておりまして、市のほうからの申請を待って処理する予定になっております。
○中尾辰義君 それじゃ最後に、この基地問題は日米合同委員会で検討されるわけでありますが、最近の日米合同委員会の組織及び運営はどういうふうになっているのか、それと日米合同委員会の下部組織である施設分科会、事故分科委員会、航空機騒音対策分科委員会、契約調停委員会等の運営状況をひとつ説明を願いたい。それを最後にお伺いしておきます。
○政府委員(山上信重君) 日米合同委員会の運営と申しますと、これは、外務省のアメリカ局長が日本側の議長であり、米側は在日米軍の参謀長が米側の議長ということになっておりまして、その委員といたしましては、各省から関係の局長クラスの者が委員に出ておるようなわけでございます。軍側は、各軍の代表が出ておるというようなことでございまして、これについて、私が運営状況を説明するのは必ずしも適当でないかもしれませんが、隔週一回ずつ合同委員会を開催いたしております。そういたしまして、私のほうの関連事項から申しますれば、施設の提供であるとか、あるいは返還の関連の事項等につきましては、すべてこの合同委員会において決定するということになっておりまして、隔週の合同委員会におきまして、大小いろいろございますが、常にそういった議題が審議せられておるのでございます。このほかにも、合同委員会の任務といたしましては、必ずしも施設だけではございませんで、地位協定全般の運営については合同委員会において審議せられるということになっておりまするので、財務問題であるとか、あるいはその他の問題、日米間の地位協定の運用に関して合同委員会の審議を要する事項は、すべてこの合同委員会にかけられておるというのが実情でございます。
 なお、この下にある、それぞれの分科委員会等についての運用ということでございまするが、施設分科委員会は、これは日米の代表といたしましては、私が日本側の代表になっておりまするし、米側は米軍の施設担当の将校が米側の代表となっておりまして、これまた、日米合同委員会を開かない隔週に、一週間おきに、毎回開催いたしておるような次第でございまして、ここにおきましては、ただいま御説明したような返還の問題はもちろんのことでございまするが、その他、米軍に対するところの、地位協定に基づく施設の提供、あるいは返還等を主体にして、これらの案件がすべてここで審議されるということになっておりまして、きわめてたくさんの事案を常時処理いたしておるような実情でございます。
 それから、事故分科委員会、これはやはり日米合同委員会のもとに設置せられておるのでございまして、日本側からは、施設庁の施設調査官というのが代表、米側は事故担当の将校が代表ということで、これはいろいろな航空機事故その他重大な事故が起きましたつど開催されておるというのが実情でございまして、これは事故の原因の究明であるとか、それらについての対策の勧告というようなことを主たる任務といたして運用されておるような次第でございます。
 それから、航空機騒音対策分科委員会、これまた同じく、日米間の、日本側の代表は施設庁の連絡調整官というのが代表になっておりまして、日米で、これはたとえば各飛行場、厚木なら厚木の航空機騒音の規制であるとか、そういったような飛行場の騒音の規制に関連する事項等を主として審議いたしておるのでございまするが、この委員会につきましては、これまた、これは常時継続的ではございません、間欠的に、必要に応じて開催されておるというような実情でございます。
 それから、契約調停委員会と申しまするのは、これは米軍が直接いろいろ発注いたしました民間契約に関連するところの、いろいろ紛議が生じた際に調停をいたすというための委員会でございまするが、これらにつきましては、現在のところさしたる事案も出ておりませんので、あまりひんぱんには開催されておらない。過去におきましては相当多数の問題がありまして、しばしば開催されたようでございまするが、最近は私つまびらかにいたしませんが、さほどひんぱんには開かれておらないというのが実情でございます。これまた、この代表は防衛施設庁の調停官というのが日本側の代表になっております。以上でございます。
○委員長(西村尚治君) 本案に対する本日の審査はこの程度にいたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後七時五十分散会
     ―――――・―――――