第064回国会 本会議 第5号
昭和四十五年十二月四日(金曜日)
   午前十時五分開議
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○議事日程 第五号
  昭和四十五年十二月四日
   午前十時開議
 第一 公害対策基本法の一部を改正する法律案
  及び環境保全基本法案(趣旨説明)
 第二 一般職の職員の給与に関する法律等の一
  部を改正する法律案(趣旨説明)
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○本日の会議に付した案件
 一、請暇の件
 一、裁判官訴追委員辞任の件
 一、裁判官訴追委員及び鉄道建設審議会委員の
  選挙
 以下 議事日程のとおり
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○副議長(安井謙君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
○副議長(安井謙君) これより本日の会議を開きます。
 この際、おはかりいたします。
 大谷贇雄君から、病気のため会期中の請暇の申し出がございました。
 これを許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(安井謙君) 御異議ないと認めます。よって、許可することに決しました。
     ―――――・―――――
○副議長(安井謙君) この際、おはかりいたします。
 北村暢君、竹田四郎君から裁判官訴追委員を辞任いたしたいとの申し出がございました。
 これを許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(安井謙君) 御異議ないと認めます。よって、許可することに決しました。
     ―――――・―――――
○副議長(安井謙君) つきましては、この際、
 裁判官訴追委員二名、及び、
 欠員中の鉄道建設審議会委員二名の選挙を行ないます。
○佐藤隆君 各種委員の選挙は、いずれもその手続を省略して、議長において指名することの動議を提出いたします。
○矢山有作君 私は、ただいまの佐藤君の動議に賛成をいたします。
○副議長(安井謙君) 佐藤君の動議に御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(安井謙君) 御異議ないと認めます。
 よって、議長は、裁判官訴追委員に小林武君、上田哲君を、
 鉄道建設審議会委員に平井太郎君、田中茂穂君を指名いたします。
     ―――――・―――――
○副議長(安井謙君) 日程第一、公害対策基本法の一部を改正する法律案及び環境保全基本法案(趣旨説明)。
 両案について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者から順次趣旨説明を求めます。山中国務大臣。
   〔国務大臣山中貞則君登壇、拍手〕
○国務大臣(山中貞則君) 公害対策基本法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
 戦後すでに二十有余年を経過いたしましたが、その間、わが国経済は目ざましい発展を遂げ、これに伴い国民所得の増大、産業構造の高度化等、望ましい現象をもたらした反面、短期間におけるきわめて早い経済の発展と人口の著しい都市集中を背景として、大気の汚染、水質の汚濁、騒音等による公害の発生が各地に見られ、人の健康や生活環境に対する脅威となって、重大かつ深刻な社会問題を引き起こしております。
 公害対策基本法は、昭和四十二年八月に制定され、以来、同法の精神にのっとり、政府としては、大気汚染防止法、水質保全法、工場排水規制法、騒音規制法等により、公害の発生源の規制を強化するとともに、公害紛争処理法及び公害にかかる健康被害の救済に関する特別措置法の制定により、紛争処理及び被害救済のための法制の整備をはかるなど、公害関係諸法の整備につとめたほか、内閣に公害対策本部を設置する等、政府の公害防止に関する体制を強化し、さらに、公害防止施設の整備を促進するための金融上、税制上の措置の拡充強化につとめてまいったのであります。
 しかしながら、近年に至って、公害現象はますます複雑の度を加え、自動車排出ガスによる鉛汚染、カドミウム汚染、産業廃棄物による公害等、新しい公害が問題となるに至っているのであります。
 このような状況にかんがみ、政府の公害に取り組む姿勢を明確にするため、公害対策基本法の目的を全面的に改正するとともに、土壌の汚染、産業廃棄物の適正な処理等、新たに問題となるに至ったものを取り上げて同法の上に位置づけ、公害関係諸法制の全面的な改正をはかるため、この際、同法について所要の改正を行なう必要があるものと考え、ここに公害対策基本法の一部を改正する法律案を提案することにした次第であります。
 次に、この法律案の概要について御説明申し上げます。
 第一に、憲法にいう国民の健康で文化的な生活を確保する上において公害の防止がきわめて重要であることを目的の中で明確にするとともに、経済の健全な発展との調和規定を削除したことであります。
 第二に、公害の定義に、土壌の汚染を追加するとともに、これに伴い土壌の汚染にかかる環境基準の設定等、土壌の汚染を防止するために必要な規定を設けるほか、温熱排水等による水の状態の悪化、汚泥による水底の底質の悪化等が公害に含まれることを明確にしたことであります。
 第三は、廃棄物の適正な処理をはかるため、その処理についての事業者の責務を明確にするとともに、政府の講ずべき措置として廃棄物の公共的な処理施設の整備を推進すべき旨を明らかにしたのであります。
 第四は、各種の公害の防止のための施策と相まって公害の防止に資するよう緑地の保全その他自然環境の保護につとめなければならない旨を規定いたしたことであります。
 その他、都道府県公害対策審議会を必置の機関としたこと等所要の改正を行なうこととしたことであります。
 以上が公害対策基本法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)
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○副議長(安井謙君) 衆議院議員細谷治嘉君。
   〔衆議院議員細谷治嘉君登壇、拍手〕
○衆議院議員(細谷治嘉君) 私は、日本社会党、公明党、民社党を代表いたしまして、三党共同提案にかかる環境保全基本法案についてその趣旨を説明し、議員各位の御賛同を得たいと存じます。
 このたび、政府は、計十四件の公害関係法案を国会に提出し、ただいま、その柱とも言うべき公害対策基本法改正案の趣旨を説明されたのでありますが、お聞きのごとく、その内容は、第一に、経済との調和条項を削除したものの、人間の生活と生命、すなわち、総理自身が常に口にする人間尊重を優位に置くことを明記せず、依然として従来の基本姿勢をとり続けていること。
 第二に、土壌汚染、産業廃棄物を対象に加えたものの、国民の基本的権利である良好かつ快適な生活環境を、現在及び後代に保障する努力を忘れ、単に「緑地の保全その他」にとどめて矮小化し、世界の傾向からも著しくおくれていること。
 第三に、加害者企業の無過失賠償責任を明記せず、公害罪は、法案をつくったものの、後退に後退を重ねたこと。
 第四に、法案のみで、これを裏づけする予算措置を全く講ぜず、特に公害行政を実質的に担当する地方公共団体に対する行政、財政上の措置を軽視また無視したこと。
 第五に、公害行政の強化、一元化が強く叫ばれているにもかかわらずこれを怠り、たとえば電気事業法等の対象工場、事業場を、いままでどおり大気汚染防止法の適用除外としているなど、多くの縦割り行政の弊害を存続していること等々、基本的な点できわめて不徹底、不十分でありまして、今日の激化した公害問題に対処することは、とうてい不可能だと断ぜざるを得ないのであります。
 今年一月、アメリカのニクソン大統領は、年頭教書において、七〇年代の大きな課題として、公害問題を取り上げ、その解決には費用と決意と創意が必要だとし、二十三項目の立法措置と十四項目の行政措置からなる総合計画を、いま実行できるものとして提案し、河川浄化のための四十億ドルの支出をはじめ、年次計画による自動車排気ガス規制、各種の基準違反に対する一日一万ドルの罰金賦課等を発表したことはいまだ耳新しいことであり、比較するだに天地の差を感ずるのであります。
 このたびの国会は公害国会とすら呼ばれております。過日の本会議におきまして、佐藤首相は、「福祉なくして成長なし」を政策基調の理念とすると述べたのでありますが、一方では、今後進むべき道は、「国民の福祉と経済成長がこん然と融和し、調和がとれてこそ初めて理想が達成される」とし、依然として経済成長優位主義を捨てていないことを暴露いたしました。
 去る九月二十一日、宇都宮市での一日内閣で、総理は、「政府は、人間尊重を第一義として、公害対策基本法をはじめ、各種規制立法の整備、公害罪新設等の立法措置を行なうとともに、企業の無過失責任を早急に検討したい」と力説いたしました。ところが、この国会では、無過失責任はその影すらもなく、この上ない後退であります。それのみか、公害罪法案は、財界などの圧力で、政府原案が修正提出されるという醜態を演じ、公約を破棄したことは、まさしく言語道断と申さねばなりません。
 そもそも今日の公害問題は、昭和三十年代以降とられた政府の高度経済成長と企業第一の政策とによって、毒物、害物がたれ流され、自然の環境調節能力の限界を越えて、環境汚染を進行させたところにあります。
 現に、公害がこれほど重大化、深刻化しているにもかかわらず、今年九月、労働省が一万四千工場について行なった実態調査では、排気は七四%が未処理、アルキル水銀は、調査工場全部が未処理のままたれ流し、農薬のPCPは、七二・六%が、また膀胱ガンを誘発するベンジジンは、七・七%の工場が、何らの処理もせず放出していたというのであります。全く驚くべき事態であり、法律あれどもやる気なし、文字どおりの無法状態と言って差しつかえないのであります。
 訪日中のニューヨーク・タイムズ紙の論説主幹オークス氏は、十一月三十日付紙上で、「日本は、史上最もみごとな経済的カムバックをなし遂げたが、その代価として、環境にひどい打撃をもたらし、人口集中地帯では、生存不可能の事態が生まれつつある。もし日本が環境面における〃ヒロシマ〃から救われるとしたら、それは世論の力をおいてない。過去一年間、一般の関心は爆発的に高まったが、現実に公害対策は進んでいないし、政治家も一般人もその巨大な費用を引き受ける用意もないようだ。産業優先の佐藤内閣は、公害対策を口で言いながら、実際は、他に心を奪われているようだ」と論評しているのであります。
 いまやわが国の公害問題は、対症療法やごまかしの予算では解決できるものではなく、政治の基本姿勢を正し、全力をあげて取り組まねばならない課題であります。
 健康で文化的な生活を営むことは人間の基本的権利であり、これを確保するために、何人にも、長期的に良好かつ快適な生活環境を保障されなければならず、この基本理念に立ってのみ基本法は立法されるべきであります。
 私どもはこの見地に立って、本年八月以来検討に検討を重ねた結果、提出したものが、この環境保全基本法案なのであります。本法案は、先に述べました政府の公害対策基本法案の欠陥をすべて抜本的に改め、公害撲滅を目ざすことはもちろん、進んで自然環境や資源を守り、自然的景観や歴史的遺産の保全をはかり、国民すべてが健康で文化的生活を営むに必要で、かつ十分な公共的施設の整備を約束し得るための国、地方公共団体、事業所等の責務、確保すべき環境基準、その他施策の基本事項を明らかにしたものであります。
 何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願いいたしまして、私の趣旨説明を終わります。(拍手)
○副議長(安井謙君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。近藤英一郎君。
   〔近藤英一郎君登壇、拍手〕
○近藤英一郎君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま趣旨説明のありました公害対策基本法改正案並びに公害関係法案に関し、人間の健康の優先と快適な生活環境の保護の見地から、佐藤総理をはじめ関係閣僚に対し、公害克服の施策をただすものであります。
 澄み切った空気、清浄な水、輝く太陽、そして静かな生活環境、それは人類が希求し、享受する基本的な権利であります。政治の理念が、福祉国家の実現にあるならば、人間の生命、健康に関するよりよい環境の保持は、何にも増して優先されるべきものであって、われわれ政治家の当然なる責務であると思うのであります。
 総理は、今回の所信表明の中で、「福祉なくして成長なし」という理念を今後の政策の目標、政治姿勢としてとられんとしておりますことは、国民の健康を保護し、生活環境の保全に資するものとして高く評価するものであります。いまや公害問題は、国の内外を問わず、世界的な課題となっておりますが、今日のわが国の公害問題を考えるとき、明治以来、一世紀のわが国の産業、経済、社会の体制を振り返って、今日の公害の発生のよってきたる原因と基盤を正しく見つけて、健全な対策を強く進めるべきであります。
 思えば明治十三年、栃木県足尾の山々に源を発し、群馬県を流れる渡良瀬川の足尾銅山鉱毒事件は、わが国の公害第一号として広く知られておりまして、地元の代議士田中正造翁の血のにじむような闘争史は、明治時代における最大の社会問題として歴史に残っているのであります。このような過去のとうとい経験を顧みて、いまこそ公害対策に科学性と合理性を取り入れて、先行的に対処するとともに、問題の実態を国民の前に明らかにして、いわれのない不安はすみやかに解くことが肝要であります。
 そこで総理にお伺いをいたします。七十年代の今日、人類が英知を傾けて公害克服に取り組むことは急務でありますが、このような長い歴史の中から生じた公害問題に対処するには相当の期間が必要でありまして、その根本的な解決には長期的な展望に立った年次計画に基づいて、公害防止をはかる必要があろうと思うのであります。私は、四十六年度を初年度とする公害防止長期計画を策定して、公害防止対策を計画、かつ総合的に推進すべきだと思うのでありますが、総理の所見を伺いたいのであります。
 次に、総理は、七十年代を内政の年として、人間尊重の精神に基づく社会開発をより一そう進められんとしておりますが、公害問題ほど複雑でいろいろな要素を含んでいるものはありません。その解決にも巨額の国家資金の投入が必要でありまして、来年度予算における公害対策は当然大きな柱の一つでありましょうが、総理は、公害対策費を来年度予算にいかに重点的に編成すべきだと考えておられましょうか、公害問題解決のための財政支出及び融資についてお伺いいたしたいのであります。また、従来、予算折衝は各省大臣がそれぞれ所管事項につき、大蔵大臣と折衝するのがたてまえでありますが、公害関係予算は、内閣の対策本部で一元的に折衝させて処理したほうがより効率的であると思うのでありますけれども、これに関し総理の所見をお伺いしたいのであります。
 次に、公害対策基本法改正案について総務長官にお伺いをいたします。公害対策基本法は、公害防止対策の基本的事項とこれを総合的に推進する仕組みを規定しておりまして、いわば、わが国の公害対策の憲法であります。しかしながら、従来、法一条二項に規定しております経済発展との調和が、公害発生源である企業者責任を明確にできず、とかく経済優先の立場であるとの批評があったのでありますが、今回の改正案により、経済発展との調和という条項を各条文の中から削除されたほか、法律の目的を全面的に改正して、憲法二十五条の思想を取り入れて、国民の健康で文化的な社会生活の確保に資することを目的とすると改めましたことは、従来の公害政策の基本的転換を意味するものとして高く評価するものでありますが、さらに、この際一歩進んで、生活優先の規定を明記すべきであったと思うのでありますけれども、これに対する所見及び公害克服に取り組む基本姿勢について伺いたいのであります。
 その他今回の改正で、公害の定義に土壌汚染が追加されたこと、廃棄物処理を事業者の責務として明確化したこと、政府が廃棄物の公共的処理施設の整備を行なうこと、及び緑地の保全と自然環境の保護の規定が新たに明記されましたが、これらの改正の必要になった背景とその及ぼす効果について伺います。
 次に、公害防止対策に関する費用負担について総務長官にお伺いいたします。中小企業の国民経済に果たす役割りについては、いまさら申すまでもないことでありますが、企業として公害防止のための社会的責務も当然存するのであります。しかしながら、中小企業においては、その防止のための投資は、資本金や年間収益との関係においてきわめて深刻な影響を及ぼすこととなりますので、今後の国及び地方団体においては、これら中小企業に対して税制、金融上の措置を考慮する必要があると思いますが、御所見を承りたいと存じます。
 以下、公害対策基本法改正案以外の他の主要なる公害関係法案に関し、若干の質問を行ないたいと存じます。
 まず、道路交通法改正案について、交通安全対策本部長であります総務長官に伺います。今回の改正により、公害防止のためにも交通規制を行なうことができるようになるのでありますが、交通規制の影響はひとり道路における交通にとどまらず、広く社会、経済の各般に及ぶものであります。したがって、これを軽々に行なうべきではないと思うのでありますが、交通規制を行なうことができる基準及び方法はいかなるものでありますか、伺いたいのであります。また、公害を生じないような自動車、燃料等を開発すること及び自動車の排出ガスの保安基準については、政府は、いかに業界に対する指導監督を行なう所存でありますか、その取り組む姿勢について伺いたいのであります。
 次に、下水道法の改正案について建設大臣にお伺いをいたします。人口の都市集中と産業の急激な発展に伴い都市の環境は悪化し、特に公共用水域の水質汚濁は大きな社会問題となっております。さきに政府は、公害対策基本法に基づく水質汚濁にかかわる環境基準をきめたのでありますが、特に都市地域の公共用水域の汚濁防止をはかるためには、下水道の整備が不可欠のものと考えられます。現在、わが国の下水道整備の現況は、先進国の中では最もおくれているといわれ、きわめて貧弱であります。したがいまして、このような下水道をめぐる諸般の事情を考慮し、公共用水域の汚濁に対処する必要があろうと思うのでありますが、以下四点について質問をいたします。
 質問の第一は、都市地域における公共用水域の水質汚濁を防止するためには、下水道の緊急な整備が必要と思うのであります。下水道整備の現況はどのようになっておりましょうか。なお、今後の対策もあわせて伺いたいのであります。
 第二点は、公共用水域の汚濁を防止するには、発生源の強力な規則とあわせて下水道の整備が必要であります。今回の改正による流域別下水道整備総合計画を都道府県が策定する場合、これに要する経費の国の財政援助についてはどのような方針をとられるのか、また、公害対策基本法に基づく水質汚濁にかかわる環境基準と下水道事業との関係についてもお伺いをいたします。
 第三点は、流域下水道事業は今後の下水道を整備する上に最も基本的な事業と思うのでありますが、流域下水道事業の現況と今後の方針についてお伺いいたします。
 第四点、わが国の水洗便所の普及状況並びに改造者に対する地方公共団体の財政援助の現況はどのようになっているのか、伺いたいのであります。
 次に、農用地の土壌汚染の防止等に関する法律案について農林大臣にお伺いをいたします。この法案は世界にも類例がない立法といわれ、技術的にむずかしいとされながら、今国会提出の運びに至りましたことを多とするものであります。土壌中に蓄積した銅、亜鉛等有毒物質による農作物の生育障害は、鉱害として特定の地域では古くから大きな問題となっております。これは銅、亜鉛等の有毒物質による農作物の生育障害が一時的なものでなく、一たん汚染された農用地では、長期的に農作物の生育が阻害されることが問題の原因となっているからであります。
 さらに、最近になって、土壌中に蓄積した重金属類の一種であるカドミウムが、農作物を通して人の健康をそこなうおそれのあることがわかり、国民の健康の保護の観点から、銅、亜鉛、カドミウム等の有害物による土壌の汚染が、特定の地域から全国的な社会問題として大きく取り上げられるようになったのであります。今回、政府は、公害対策基本法を改正し、土壌汚染を典型公害の一つに加えられ、本法案を制定することになりましたが、土壌汚染の実態と現状はどのようになっておりましょうか。また、土壌汚染に対してどのような措置を講じ、対処されるのか、所信をお伺いしたいのであります。
 次に、廃棄物処理法案について厚生大臣に伺います。いまや土壌汚染と並んで、企業や家庭から生ずる廃棄物が新しい公害として大きな社会問題となっております。廃棄物は経済活動の避けがたい所産として、産業の高度化、消費生活の多様化により必然的に増大するものでありますが、わが国における廃棄物問題の特異性は膨大な廃棄物がきわめて狭い地域に排出されていることで、この廃棄物の処理は、一般の家庭ごみと焼却や埋め立ての可能な一部の産業廃棄物が市町村の清掃事業によって行なわれているだけで、その大部分は排出者のほしいままにまかされているため、これら廃棄物が環境汚染の主要な因子となっていると思うのであります。
 そこでお伺いしたいことの一つは、この膨大で多様化した産業廃棄物の処理について、どのような対策を考えているかということであります。
 次に、現行の清掃法においても事業者の責任について若干触れていますが、このたびの全面改正にあたり、事業者の事業責任についてどのように考えているのか、責任の範囲、費用負担等についてお伺いをいたします。
 第三点は、現行法では廃棄物の処理事業は市町村の事務とされていますが、産業廃棄物の適正な処理を推進するため、市町村を包括する広域的な地方公共団体として都道府県はどのような役割りを果たすことになるのか、また、産業廃棄物についての広域処理事業等に対して、国はどのような財政的援助を考えているのか、この点もあわせて承りたいのであります。
 最後に、私は公害闘争のあり方について意見を述べたいのであります。公害問題の解決には、長い月日と多くの方々の協力の必要であることは論を待ちません。被害の発生に対しては、国、地方公共団体、産業及び関係国民が一致協力して事態解決に対処すべきだと思うのであります。公害問題が、七〇年代の本年に入り、特に大きく社会問題化してまいりましたが、公害問題の提起は、別に今日始まったのではなく、わが国議会の創設とともにその歴史があります。その対策も十年前より着々行なわれておりますほか、世界に例のない国会における公害対策特別委員会の設置も五年前であります。近年のめざましい経済成長により、従来なかった新しい公害が惹起されておりまして、この克服のための国民的要請が社会的に強くあらわれております。私は、公害防止に関する運動、闘争は、公害から人類を守るものとして、十分にこれを尊重し、政府及び国会がこの期待に報いることは当然でありますが、しかしながら、その運動はあくまでも人間性回復の立場に立った人道的なものでなければなりません。沖繩復帰が確定し、安保条約の延長が決定した今日、ごく一部の労働組合、組織団体が、その政治闘争の目標を失って、公害闘争運動に転嫁し、組合運動の表看板としておりますことは断じて許されないことであります。公害運動は、あくまでも純粋なヒューマニズムに基づいた運動であるべきだと思うのであります。これに関し、総理の忌憚のない御所見を伺いたいのであります。
 以上、公害対策基本法改正案外公害関係法案に対する私の質疑を終わります。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
○国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
 まず、公害防止のためにも、政策目標を明確にし、関係諸施策を総合的かつ計画的に推進することが望ましいことは申すまでもありません。具体的な地域別防止計画の策定にあたりましては、十分御趣旨の線に従って計画的防止事業の推進をはかってまいります。
 なお、公害防止に関連する事業としては、下水道事業や家庭廃棄物処理施設の整備のように、すでに五カ年計画のもとに計画的実施をはかっているものも少なくないことを申し添えておきます。
 次に、公害対策の経費につきましては、来年度予算編成の最重点事項の一つとして、単に予算においてのみならず、財政投融資、さらには税制面におきましても十分配慮してまいります。
 なお、公害関係予算は、公害対策本部で一元的に折衝したらどうかとの御意見でありましたが、予算要求については同本部が折衝の過程で調整補完することとしておりますので、その意見を尊重することによりまして、均衡のとれた効率的な公害関係予算の編成は十分可能であると考えます。
 最後に、公害をなくして住みよい豊かな自然環境を保全するということは、政府や各種企業だけでなく、国民全体が力を合わせなければ、とうていできないことであります。各界各層の英知を結集していただきたいというのが私の願いであります。したがって、公害対策に関するいろいろな行動は、御指摘のように、あくまでも純粋な高いヒューマニズムに基づいたものでなければならないことは申すまでもありません。この基本線を逸脱するようなことがあると、いたずらに混乱を助長することになりますので、この点は特に銘記していただきたいと思います。
 以上、私のお答えといたします。(拍手)
   〔国務大臣山中貞則君登壇、拍手〕
○国務大臣(山中貞則君) 基本法の目的に、私たちの原案といたしまして、憲法第二十五条を引用して、国民の健康にして文化的な生活の確保ということを最大限の目標として掲げたことでありますが、これについて、もっと生活優先という姿勢は出せなかったのかという御質問でございます。生活優先という表現がいろいろございますが、しかし、法律的に文章にして目的に掲げるべきものであるのかどうなのか、私たちは、国民の健康にして文化的な生活を守るという憲法の目的に従ってこの法を運用する姿勢を、何ものにも公害対策はまさるものであるという政治姿勢をとることによって、その目的の中に挿入する必要がないというふうに考えたわけでございます。
 さらに、第二点は、今回の基本法の改正で、緑地の保全、自然環境等に政府の責務として触れておるようであるが、それについてどのような背景があるかということでありますが、わが日本列島のこの美しい四つの大きな島、さらに点在する離島群というものが、われわれのこの人口集中、メガロポリス化していく太平洋ベルト地帯に集中されて、巨大生産の過程における不必要な物質としての排泄物を、自然浄化能力を越えて人類が、私たちが出し始めた、それを処理できないところまできた、これに対して私たちが取り組んでいかなければならない、ここにこの問題の基本的な出発点があるわけでございます。私たちは、おそきに失したとはいえ、これをやらなければならない。すなわち、私たちは、後世の、われわれの次の時代の人々にも、さらに長い世代のあとにも、われわれの日本列島を美しいものとして継承さしていく責任を現代の私たちが負っておるということを背景にいたしまして、具体的には、自然公園法や、あるいは農薬取締法改正、産業廃棄物あるいは生活環境廃棄物等を踏まえた廃棄物処理法案等を今国会に提案をいたしておるのがその具体策の一つでございます。
 費用負担法に関連をいたしまして、中小企業に対する税制、金融等についての配慮はどのようなものかということでございますが、御指摘を待つまでもなく、中小企業に対して、基本法の二十四条でも、全体の姿勢としては触れてあるのでありますが、今回の公害防止事業費の事業者費用負担に関する法律では、ことさらにこの中小企業に対する負担を明示することによって、費用負担というものが企業の存立を危うくするような負担になるおそれがございます。したがって、私たちは、この企業費用負担法の中でも、中小企業に対するさらに配慮をはっきりと明示していったわけでございますが、現在の公害防止事業団の融資のワクや、あるいは融資条件の改善等、あるいは中小企業振興事業団や中小公庫、国民公庫等の融資、あるいはまたそれと相まって、税制等において、現在特別償却等は三分の一というのが原則でありますけれども、この場合、これから大蔵との話し合いをつけるわけでございますが、予算と関連して、最終的にはその特別償却の正常の三分の一を中小企業に限ってはもっと大きい償却ができるようにしたいということ等も考えておりまするし、自治省等と相談をいたしながら、固定資産税の減免等の配慮も当然していかなければならないだろう。企業をつぶすために企業費用負担法をつくったのではないということを中小企業には特に明記をいたしたというつもりでございます。
 運輸大臣がおられますので、運輸大臣の御答弁が適当かと思うのでありますが、御指名の質問でございますので、道交法関係の問題で、運輸大臣もしくは国家公安委員長等が適当と思いますが、それらの問題に関連をいたしまして一応私のほうが答弁をいたしますが、今日までの道交法等は、自動車という人の生命に危険を及ぼすおそれのある走ってくる物体に対するいわゆる交通安全という観点からのみとらえておりました。しかしながら、すでにその廃棄物、排出ガス等について、大気汚染は具体的な事実となって、ことに大都市の生活の脅威となっておりまするし、振動やあるいは騒音等についても、住宅、学校、あるいはまた病院その他の社会福祉施設等の周辺においては、無視できない影響を与えつつあるわけでございます。この際、この交通法規の中に公害というものを起こす物体としての自動車をとらえていこうという考え方から、今回の法の改正に踏み切ったものでございますが、具体的にはそれらの、ただいま申し上げましたような、静穏な状態を必要とする環境の中において、自動車の通行の規制、迂回あるいはまた通行を許す場合のそれぞれの規制、あるいは速度の制限等について、これから政令において具体的な基準を定めて目的を達成できるよう配慮していくつもりでございます。(拍手)
   〔国務大臣根本龍太郎君登壇、拍手〕
○国務大臣(根本龍太郎君) お答えいたします。
 まず、下水道整備の現況と今後の対策いかんということでございまするが、現在の下水道の整備状況は、残念ながらたいへん先進国に比べておくれております。昭和四十五年度末の公共下水道の普及率は二二・八%と見込まれております。御指摘のように、公害対策の一環といたしましても下水道の整備が非常に大事でありまするので、現在の下水道五カ年計画を改定いたしまして、新たに四十六年度を初年度とする総額二兆六千億の第三次下水道計画を策定をして、強力にこれが整備をはかりたいと思っております。
 その第三次下水道五カ年計画の要点を申し上げますと、まず第一に、水質環境基準を達成するために、流域別下水道整備総合計画を定めまして、対象地域の下水道を重点的に整備する、こういうふうにいたしたいと思っております。
 その次に、市街化区域の生活環境を改善するための下水道整備を強力に推進するとともに、市街地における先行的な下水道整備をはかってまいりたいと思っております。これによりまして、昭和五十年度末における公共下水道の普及率を三八%まで上げたいと考えております。
 次に、市街地における浸水の著しい地域について、特に緊急に実施する必要のある下水道の整備をはかることにいたしたいと思います。これは、最近いわゆる都市消火栓が非常に重大な問題になっておりますので、これともあわせてやるということでございます。
 次に、下水道整備総合計画を定めるための調査を新たに実施するとともに、水質基準に適応し得る下水道技術の開発をはかりたいと思います。これは従来、下水道の技術開発が相当おくれておりまするので、あわせて行なうということでございます。
 次に、この下水道総合計画をやる場合における都道府県に対する経費の国の負担の状況はどうかということでございますが、従来、下水道の予算については、これは国の補助を行なっておりまするが、調査については、国でやるものだけより補助しておりません。しかし、ただいま申し上げましたように、流域下水道等はかなり広範な地域について相当綿密な、しかも金のかかる事業でありまするので、この調査についても助成をいたしたいと考えております。
 次に、公害基本法に基づく水質汚濁にかかわる環境基準と下水道事業との関係がどうなっておるかということでございまするが、すでに国におきましては、四十九水域について水域類型の指定をいたしております。これを漸次拡大していくということになるのでありまするが、この下水道の整備につきましては、今後、先ほど申しましたように、広域下水道を中心として実施をいたしたい。従来の下水道整備は市町村が固有の事業としてやっておりまして、府県は間接的なものでありましたが、広域下水道を実施する場合には、原則として府県が事業の主体になる、こういうふうな形で進めてまいりたいと思っております。
 それでは、この流域下水道の現況と今後の方針はどうかということでございまするが、流域下水道は昭和四十四年度までに大阪府の寝屋川流域の下水道、このほかに八地域が着工されております。さらに昭和四十五年度三流域が着工されまして、現在は十二カ所の流域下水道が実施されております。昭和四十五年度の事業費は百五十億六千四百万円でありまするが、このうち国費は六十五億円でございます。事業着工後の状況は、寝屋川右岸、猪名川左岸、安威川の各流域の下水道ですでに一カ所処理場の運転をしておる状況でございます。現行の五カ年計画では、この流域下水道に約六百億円を計上しておりまするが、先ほど申しました第三次五カ年計画の案では三千七百億を予定しておるという状況でございます。
 最後に、水洗便所の普及状況ということでありまするが、これも各国に比べると非常におくれておりまして、昭和四十四年度末市街地人口に対し一六・一%でございます。これの改善のために、公共団体に対する財政援助並びに資金融通をはかれということでありまするが、これは極力御趣旨に沿うように努力するつもりであります。(拍手)
   〔国務大臣倉石忠雄君登壇、拍手〕
○国務大臣(倉石忠雄君) 農用地の土壌汚染の実態はどうなっているかというお話でございますが、土壌汚染には、農作物等の生育に障害を生ずる場合と、人の健康をそこなうおそれのある農畜産物が生産される場合とがございます。土壌汚染の原因となっているものとしてはカドミウム、銅、亜鉛等がございます。そこで、これら土壌汚染の実態を詳細に把握いたしますためには、今後のさらに調査にまつところが多いわけでありまするが、これまでに実施されております土壌調査の結果等から見ますというと、汚染されておると推定される農用地の面積は三万七千ヘクタールほどでございます。これを汚染源別に区分けをしてみますると、鉱山、工場排水等によるものが最も多いわけでありまして、排煙等がこれに次いでおるわけでございます。
 そこで、これに対してどのような措置を講じるかというお尋ねでございますが、いま申し上げましたように、最近のカドミウム等重金属類による土壌汚染等の状況にかんがみまして、農用地の土壌汚染対策を早急に推進いたしたいと存じまして、政府は、農用地の土壌の汚染防止等に関する法律案を今国会に提出いたしました次第でございますが、本法案が皆さまの御賛成を得て一日も早く成立することをお願いいたしたいのでありますが、対策地域指定、それから対策計画の作成等を本法によっていたしたいわけでございます。その汚染防止、改良等のための対策を定めているわけでありまして、その成立を見た場合には、所要の調査を進めた上、実情に応じまして、かんがい排水施設の設置、あるいは客土の施設、その他諸般の対策を実施いたしてまいりたいと、このように考えておるわけであります。(拍手)
   〔国務大臣内田常雄君登壇、拍手〕
○国務大臣(内田常雄君) 最近、廃棄物といわれているものの中で産業廃棄物が非常に大きな量を占めるようなことになりまして、これが環境汚染や人の生活の障害になってまいっておりますことは、近藤議員の仰せられるとおりでございます。そこで政府におきましては、今回、公害基本法の中に下水道施設等と相並んで廃棄物処理施設の重要性をうたいますとともに、現行の清掃法を根本的に体系的に改正をいたしまして、廃棄物処理法ということにいたしまして、産業廃棄物処理の新しい体制を規定することにいたしております。
 その新しい体制における第一の仕組みは、産業廃棄物につきましては、それを排出する企業者の責任を第一義に取り上げまするし、したがって、業者みずからがそれを処理する責任を持ちますとともに、あとから申し上げるように、公共団体等がそれを処理する場合にも、その費用は排出責任者が負担する、こういうような仕組みをとってまいりました。なおまた、従来ごみ処理、屎尿処理等、清掃の事業は主として市町村を主とする体制だけでございましたが、これを今回思い切って広域的見地から、都道府県もみずから廃棄物、産業廃棄物処理ができるような、そういう体制をとることにいたしました。都道府県は広域的見地から、今回この公害対策基本法によりまして必置義務を設けられました地方公害対策審議会に相談をして産業廃棄物処理の広域計画を立てるとともに、必要な場合にはみずから産業廃棄物の処理事業を営む、こういうことができるようになりました。
 なお、これらの体系の中におきましても、従来の市町村を中心とし、またそれに関連ある処理業者等の処理体系はそのまま生かしてまいるというようなことも考慮をいたしておるわけございます。これらに対しまする国の援助等につきましても、技術的援助などはもちろんでございますが、地方公共団体、都道府県等がこの仕事を行ないます場合における起債その他の資金の融通並びにあっせん等をも行なう、こういうことにいたしてございます。
 さらにまた、従来は清掃というものは限られた区域だけを指定をいたしまして、ちょうど公害立法における水域指定、あるいは大気汚染における地域指定のようなぐあいに、清掃地域というものを局地的に指定をしておりましたのを、それを全面的に広げるというようなことをもって対処をいたすことにいたしました。
 以上、お答え申し上げます。(拍手)
○副議長(安井謙君) 小野明君。
   〔小野明君登壇、拍手〕
○小野明君 私は、ただいま議題となりました公害対策基本法案及び関係法案につきまして、政府、特に佐藤総理に対し、日本社会党を代表して質問をいたします。
 まず初めに、現在のわが国における公害の危機的状況の認識についてであります。総理も御承知のとおり、生命、身体をおかされた公害病患者は年ごとに増加をいたしております。水俣病、イタイイタイ病など、工場廃液を飲まされて悲惨な死に追いやられた人たちをはじめ、四日市、川崎等における大気汚染の公害病患者も年ごとにふえ、死亡者も老人ばかりではなく、四日市においては小学生が、また川崎においては二十歳代の主婦が亡死するに至っております。しかも、最近においてはカドミウムなどの重金属物質、シアンなどの劇毒物質が全国各地に検出されている事実から見ても、悲惨な公害病患者が再び三たび発生しないとは断言できない状況ではないでしょうか。公害病は、公害の中でも特に激しく突出した事例でありますが、これは氷山の一角であります。実際は公害病でも公害病と認定されない幾多の人々が去り、その下には公害病寸前の人、さらにはその底辺に生活環境をおかされている人々が幾十万、幾百万存在をし、これによって日本の公害被害の全体が構成をされております。これは公害列島の名のごとく、いわば一億総公害といってもよい状況ではないでしょうか。
 公害防止施策の基調は、現代の公害の状況を危機として認識することから樹立されねなばらないと思います。総理の言われる調和の思想は、とかくすると、この危機状況の認識にあえてほおかぶりをしているのではないかとさえ思われます。もし危機として認識しないならば、公害の実態、国民の認識から遊離した態度と断ぜざるを得ません。私は、公害防止施策決定の最高責任者たる総理に対し、あなたの立場はどこにあるかをただし、たい。すなわち、総理は政策樹立にあたって公害の発生者の立場に立つか、さもなくば被害者住民の立場に立たれるのか、いずれであるのか、その選択の決意を伺いたいのであります。
 総理の公害思想の系譜をたどってみると「成長なくして福祉なし」から「公害は必要悪」へ、さらに、経済発展と生活環境との調和へと変遷し、過般の施政方針では、「福祉なくして成長なし」との考えを述べておられます。施策の内容、発言の形態に若干の変化が見られますものの、基調は依然として調和の思想に立脚しており、根本的には発想の大転換が行なわれておりません。それが今回提案の諸法案に如実に示されております。国民の立場から見るならば、総理の発言は、国会答弁の技術的な操作に終始し、形式論理的につじつまを合わせているにすぎません。国民はもはや総理の修辞学には飽き飽きしているのであります。総理に対して国民が心から望んでいるのは、私は被害者の立場から公害防止を断行する、少なくとも被害者擁護に重点を置き蛮勇をふるって公害を規制する、この一言であります。
 政府は、今回の公害十四法案の提案にあたって、当初は鳴りもの入りで、世界に冠たる画期的な公害法体系の樹立を宣伝してまいりました。その名に値する法体系を築くならば、総理として、本部長として、また与党総裁として国民の要望を先取りし、強力なリーダーシップを発揮し、果断に所期の目的に進むべきであろうかと思います。
 新聞の報ずるところによれば、財界は、来年の地方統一選挙、参議院選挙で自民党に選挙資金を与える見返りに、公害罪法案の廃案、または骨抜きを策していることが明らかにされております。衆議院では、総理はこれに対し、財界の圧力とは無関係と言われておりますが、これは新聞の誤報であるのかどうか。また、政務次官会議ではかなりの内ゲバが起こっているようでございますが、これらをあわせ考えて、総理はいかがお考えになるでありましょうか。
 ふしぎなことに公害罪法案は、かつて政府与党が政治資金規正法案の大骨小骨を抜いたと全く同様の経過をたどって提案をしたものとしか国民の目には映っておらないのであります。もともと政府与党と財界の結びつきの本質から見て、このような結果を招くことは想像にかたくないのであります。またしても、佐藤総理を頂点とする政府与党の本質を暴露したものと言えるのであります。このような政治姿勢は、財界あって国民なし、まさしく大企業擁護、国民不在の公害対策でありましょう。これがはたして「福祉なくして成長なし」の中身と言えるかどうか、総理の御見解をただしたいのであります。
 以下、具体的にただしてまいります。
 まず、公害対策基本法の目的について伺います。政府は、今回やっと経済調和条項を削除することに踏み切りました。この点は、わが党の年来の主張の正当性が証明されたことになると思います。しかし、問題は、三党共同修正案に見られるごとく、生活環境があらゆる施策に優先するという基本理念をうたい込み、これに基づき関係条項を改正することが必要であります。法案作成の過程において、政府の部局の中ですら、このような主張であったやに聞いております。公害防止の基本法の本来的性格から言って、当然にこのような理念を設定すべきものと確信するのでありますが、総理及び総務長官の所信をただしたいのであります。
 また、目的の中に、憲法第二十五条の健康で文化的な生活を確信する趣旨が盛り込まれておりますが、これを入れることによって、基本法の性格、目的にどのような意義の変化を持たせようとするのか。しかも、このことによって、今後の施策にどのような変化が期待できるのか、明らかにされたいのであります。実質的な変化がなく、単なるうたい文句にすぎないというのなら、これまた欺瞞的改正と言わざるを得ません。
 同じく目的改正に関連をして環境基準の改定についてお尋ねいたします。
 現行の環境基準は経済調和条項の存在する現行基本法のもとで設定をされております。したがって、大気、水質の二つの環境基準は経済発展との調和の観点から設定されたものであります。基本法の目的並びに第九条の環境基準の条項から経済発展との調和を削除する以上は、新しい目的のもとに環境基準が改定され、さらにその時期の短縮等がはかられなければならないと思いますが、総務長官、経企庁長官、厚生大臣の所見を伺います。
 次に、骨抜きにされた目玉法案、公害罪について重ねて伺います。
 この法案は、どうせ成立しても実際の適用では加害者が罰せられる可能性がないという公害軽視の考えが底流にあったのではないか。去る六十三国会予算委員会における私の質問、宇都宮の一日内閣で総理が国民に約束した手前、一応提案だけしようという姿勢がありありとうかがわれるのであります。その上、財界の圧力に屈した与党が、私どもから見ても不十分な法務省原案すらも修正し、去る一日の閣議で一つの異議もなく全会一致で骨抜きにいたしました。この提案について政府がいかに消極的であったか、その姿勢がうかがわれます。
 私は、公害罪法案は、政府のいう宣伝的な目玉とは異なった意味において最も重要な法案と考えます。その意味は、過去における水俣病のチッソ株式会社、昭和電工、イタイイタイ病における三井金属の刑事責任追及において、現行の刑法では適用が困難であること、公害罪の制定によって事業者の社会的責任を認識させ、公害予防の措置をとらせる効果を持つこと、また、公害罪適用の範囲を被害者擁護の立場から広く設定することによって、実際の適用ができるようにすることなど、公害の一般予防、個別予防の面で十分な期待を持てるからであります。しかも、国民の多くはこの法案に重大な関心を寄せ、きびしい処罰を期待しております。
 しかるに、この法案を廃案にすべしとする財界の感覚は、全く時代錯誤的、自己本位的であり、加えて、この圧力に屈したとすれば、全く政府与党の態度も言語道断と言わざるを得ません。法案の内容に即して指摘するならば、いわゆる「おそれのある状態」を削除したことは、公害の特性を無視し、発生者を免責する結果となります。生命、健康に実害が発生したらもう終わりであります。この条項をなぜ削除したのか、本院においても重ねて佐藤総理、小林法務大臣の明確な答弁を願いたいのであります。
 さらに、公害発生の一般的形態から見て、複合汚染による生命、身体への侵害が起こる場合が通常でありますが、これに対しては実際に法の適用が可能であるかどうか。もし、ないとすれば、この法案は全くのしり抜け法案と言えるのでありますが、総務長官、法務大臣の見解を承ります。
 次に、企業責任と公害防止事業の費用負担との関連について総務長官、通産大臣に伺います。
 そもそも、公害防止の費用は原則として事業者たる企業が負担すべきであります。しかるに、今回の費用負担法案は、グリーンベルトは四分の一から二分の一、ヘドロのしゅんせつについては二分の一から十分の十となっております。この四分の一の負担率は、すでに実施された京葉、市原、四日市の地域における企業負担の実態に合わせて設定したやに聞いておりますが、公害の発生者責任の点から見ても軽きに過ぎ、また、負担率設定の理論的根拠も薄弱であります。ヘドロのしゅんせつ費用の負担率についても同様のことが指摘できます。田子の浦、洞海湾、伊予三島、伊勢湾等、全国各地において産業活動におけるヘドロ公害が起きておりますが、これらについても十分の十の負担を課する条件にあてはまると考えますが、総務長官、通産大臣の所見を承ります。
 さらに、知事または地方公共団体の公害規制権限の強化についても、実質的な大幅な前進はありません。大気汚染防止法についてみると、いわゆる上乗せ規制については、あくまでも政令で定める基準の範囲内という縛りがかかっております。電気事業、ガス事業に対する規制に見ましても、かろうじて報告聴取、立ち入り検査権を認めたにすぎず、ばい煙発生施設の許可については、知事は直接的には介入する権限を与えられてはおりません。地方に対する財政援助も含めて、知事及び地方公共団体の役割りの強化について、総務長官及び通産大臣の所信を伺います。
 以上、基本法案並びに関連諸法案の不備について、代表的な欠陥を指摘をいたしましたが、これによりましても、政府の消極性が十分にうかがえるところであります。この実情から、いまあらためて被害者を守り、人間疎外からの脱却の姿勢を示すことこそが、七〇年代初頭における国民の要望にこたえる政治課題だと思うのでありますが、再度総理の決意を披瀝願いたいのであります。
 最後に、三党共同提案にかかる環境保全法案について、提案者細谷代議士にお尋ねをいたします。
 本法案提出に至った背景、その理由、また、環境保全を実現するための基本方針について、特徴的な点を御説明をいただきます。さらに、本法案は事業者に無過失責任を負わせておりますが、これは総務長官のかつての委員会の言明と異なり、あるいは昨日の政府答弁については立法化を確約しておらないところでありますが、この点について御見解をいただきたいと存じます。
 以上をもって私の質問を終わります。(拍手)
    〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
○国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
 公害防止施策の基調が、現在の公害状況を危機として認識することが出発点でなければならないという小野君の御意見には、私も全く同感であります。公害はわが国のみならず、国際的にもきわめて重大な問題として取り上げられつつあります。いまや地球を守るという表現が全然大げさに聞こえないほどに深刻なものとなっております。私がさきの国連総会におきまして、公害問題を取り上げたのも、この危機意識に基づくものにほかなりません。小野君は、公害問題は七〇年代の課題であると主張されましたが、私も同様の考え方で、この問題と取り組んでまいるつもりでございます。今回提案した多くの公害関係法案は、いずれもその基礎となるものでありますので、よろしく御審議のほどをお願いいたします。
 次に、公害源の側に立脚するのか、被害者側に立脚するのかというお尋ねでありましたが、これは当然被害者の側に立ってその保護をはかるべきであります。さらに、より正確に申すなら、今後の公害対策は、このような結果としての公害に対する措置から一歩進んで、公害を起こさない、公害の防止という積極的姿勢で臨む決意であります。
 次に、「福祉なくして成長なし」を標榜しているが、従来の主張はその逆ではないかとの御批判をまじえての御発言でありますが、昨年六月二十日の本議場における私の答弁も、「基本的には、国民生活を守り、向上させていくためには、どうすべきかを念頭に置いて、公害対策を推進してまいる決意であります。」と結んでいるとおり、あくまでも国民の福祉を第一義とするものであり、そして、この状態と経済成長との調和を政策課題として追求しようとするものであります。福祉は目標であり、経済成長はどこまでもその手段である、このことは、はっきりとしておりますから、誤解のないように申し上げておきます。
 人間尊重、社会開発、これは「福祉なくして成長なし」の裏づけであり、従来から一貫してとってきた佐藤内閣の課題であることをよく御理解いただきたいと思います。御批判は御自由でありますが、ただいまのように間違った考え方で政治を御批判なさらないようにお願いいたします。
 次に、公害罪についてでありますが、政府案確定までの過程において「おそれ」という表現を盛り込むかどうかが議論の対象となったことは事実であります。最終的にこれを削除することとしたため種々の意見を呼んでおりますが、これは、刑事罰の性格上、犯罪の構成要件はできるだけ厳正に運用されることが望ましいという刑事政策上の要請との調和をはかったものであり、現状においては最善の判断であると考えます。
 なお、法案の準備の段階において、与党である自民党の意見を十分に取り入れることは、政党内閣のたてまえとして、むしろ当然のことであり、決して一部第三者の圧力に屈したものではありません。政治献金あるいは財界との関係があって私どもはこれを修正したのではございません。私はこの機会に申し上げておきますが、幾ら言論自由の場といっても、公党の名誉を傷つけるような発言については、良識ある――言動を慎まれるよう、お願いいたします。
 その他は担当大臣からお答えいたします。(拍手)
   〔国務大臣山中貞則君登壇、拍手〕
○国務大臣(山中貞則君) 目的に、国民が健康にして、かつ文化的な生活を確保するということを書き込んだことが、どのような全体の流れに反映しているかというお尋ねでございますが、基本法の各条項には、それらの考えを、全部新規に挿入した条項、あるいは書きかえた条項等について、受けて一貫して流れておるものでありますが、さらに、今国会に提案をいたしておりまする現在までの十四の法案それぞれも、いずれも新規のもの、あるいは改正の趣旨等については、この基本的な姿勢が一貫して貫けていると私は考えるものであります。
 さらに、調和条項を削除したことによって、新しい環境基準の設定が必要となるのではないかという御質問でございますが、水質汚濁等については現在四十九の水域指定をいたしておりますけれども、さらにこれらを広げていく等の問題等はあるといたしましても、環境基準そのものは、やはりその設定について誤りはないと考えますが、経企、厚生大臣のほうからの答弁をお願いしたいと思います。
 さらに、企業責任と今回の提出されました公害防止事業の費用負担法の関係について、企業のそれらの費用負担が一義的には全額持つべきものであるという御主張でありますが、そのとおりでございます。企業は公害を出さない姿で存在しなければならない、したがって、出さないために必要とする施設、そのために必要とする費用を、たとえ収益にそれがつながらなくとも、今後の存在すべき企業の姿として、まず企業は全額みずから負担をして、そのような公害発生のもとをつくらないという姿勢は、この公害防止の費用負担法においても前提として置かれておるものであります。したがって、この公共事業として行ないまする費用負担法の場合には、個々の企業が、そのような規制に対して、かりに完全に守り得たとしても、長期的な堆積によるものがあったり、あるいはまた複合した河川、港湾等の水域や海域等でありました場合に、これが国民の、その周辺の方々の生活の環境、健康等に無視できない状態が発生するわけでありますから、それらの問題を、公共事業として行なう場合の負担法を定めるわけであります。しかし、その負担法の前提も、あくまでもこれらの企業が、それぞれの企業のその行なう公共事業の性質に応じて、まず企業がどれだけ負担すべきであるかを前提に置いておるわけであります。したがって、緩衝緑地や、あるいは河川、港湾等のしゅんせつ、その他の事業を行なうにいたしましても、これが都市機能的な、他の機能も備えた事業として行なわれる場合には、若干企業側の費用も安くなりますし、たとえば特例として指摘されました田子の浦等について言えば、これは当然十分の十、一〇〇%の負担を企業が持つべき性格のものであるということは明言できると考えるわけであります。
 それから地方自治体に規制権限の委譲の実態はどのようなものであるかという意味の御疑念がございましたが、私たちの考え方は、前々から申し上げておりまするように、公害がやはり地域的な、ローカル的な現象として、それぞれの地域において、あるいは特異な形態をとって発生しておる現状であり、国全体が全部のたとえば河川を把握するよりも、知事さんが自分の県内において把握される河川というものが、一番手っとり早いというようなこと等を申してまいりましたが、そのような意味で、原則的に、全面的に知事にこの権限の委譲ということを行なっておるつもりであります。したがって、知事が今後、この条例等による上乗せ権限等を持ちながら、立ち入りや、あるいは規制、そういう行為を行なっていかれるにあたりまして、国のほうで次の通常国会に、予算と関連をして、財政や地方自治体に対する税制等の配慮について十分の考慮をしてまいりたいと考えるわけでございます。
 以上、私に対するお尋ねに対して御答弁をいたしました。(拍手)
   〔国務大臣佐藤一郎君登壇、拍手〕
○国務大臣(佐藤一郎君) 経済条項の削除に伴いまして、環境基準の訂正は必要ないか、こういう御質問でございます。いわゆる個々の排出基準につきましては、すでに年月を経たものもございまして、われわれも逐次訂正をいたしておりますが、環境基準は、御存じのように、本年になりまして逐次つくっております。私たちもすでに経済条項の廃止ということを頭に置いて十分やってきておるわけであります。したがいまして、具体的な環境基準は、利水目的に応じまして、十分な数値を定めておるつもりでございます。したがって、調和条項を別に重視してつくっておりませんので、さしあたって、この環境基準によってやっていきたい、こう思います。(拍手)
   〔国務大臣内田常雄君登壇、拍手〕
○国務大臣(内田常雄君) 小野議員の御指摘のように、環境基準の設定につきましては、今度の基本法の改正におきまして、経済との調和条項を削除することにいたしました。しかし、いま経済企画庁長官からもお話がございましたが、私のほうがやっております大気汚染における硫黄酸化物、あるいは自動車排出ガスにおける一酸化炭素の環境基準は、これは初めから人の健康に関する環境基準でございまして、したがって、今度の基本法の改正による九条の削除とは関係がございませんので、これを直ちに再検討する必要はないものでございます。しかし、私どもは、健康官庁といたしまして、今回せっかくいろいろな法律を改正をいたしまして、排出基準等をつくるわけでありますから、環境基準につきましても常に検討いたしまして、さらにその目標を尽くしたほうがいいものにつきましては検討を怠らない考えでおります。したがいまして、この達成目標などにつきましても、上乗せの規定、あるいは燃料規制等も今度の改正法案にございますし、また、公害防止事業計画などにつきましても、最近、最終決定をいたしました千葉市原、あるいは四日市、水鳥等のほか、東京、大阪、名古屋とか、あるいは北九州、それぞれの方面で引き続いて防止計画を進めてまいりますので、そういうこととも関連しながら、達成目標は一日も早く達成をさせたいと、こういうことで厚生省といたしましては進めてまいります。新しく最近のうちに、騒音に関する環境基準を設けることになっておりますが、これは生活環境に関する環境基準ということになりますので、今度の改正の趣旨を十分頭に置きまして、そして設定をしてまいる所存でございます。
 以上お答え申し上げました。(拍手)
   〔国務大臣小林武治君登壇、拍手〕
○国務大臣(小林武治君) 公害罪処罰法案についての手直しをしたことについてのお話でございますが、私どもは、実はこの法律は、公害という特殊の態様を犯罪としてとらえる、そのことによって、企業者、事業者が反省自粛して公害を出さないようにする、こういう抑止的、予防的効果を最大の眼目として提案いたしておるのでございます。その内容につきまして多少の手直しがあったと、直ちにこれを――――――――――非難されるということは、非常に私は遺憾に思っておるのでありまして、私どもは、それを、さような、骨抜きなどということは考えておりません。これらは十分の効果を奏するものと思うのでありまして、すなわち、私どもはこの案を立案するにあたりまして、いまの、おそれのあると、こういうふうなことにつきましてもいろいろの検討がされておったのでありまして、これらのことにつきましては、これを最終的に確定する段階におきまして、あらゆる角度からさらに慎重な検討を重ねた結果、本法案において危険を及ぼすおそれのある状態までを処罰の対象にする必要はない。これを削除しても、実害発生の未然防止には十分に役に立つ刑事法として必要なものである、必要にして十分なものである、また、運用上も支障は生じないと、こういう結論に達したので、立案者の私といたしまして、その責任においてこの手直しをしたのでありまして、そのために、これによりまして刑法におけるいわゆる危険犯と同様に危険を生じさせたものと規定することにしたのでありまして、別段、圧力に屈したとか、どうこうという問題ではありません。したがって、この問題が全体としてこの法律の趣旨なり効果なりを大きく変えるものとは考えておりません。さような意味におきまして、骨抜きなどと、ただ簡単に批判されることにつきましては、私どもとしてはきわめて遺憾に存じておるのであります。そのことをあらためてここで申し上げておきます。(拍手)
 なお、御質問の第二に、複合汚染による被害については公害罪の適用があるかどうかと、こういうことでありますが、実はこの問題につきましては、共犯関係にない多数の者の無関係な行為によって生ずるいわゆる複合形態の公害につきましては、原則としては本法案の適用はないと、かように考えておるのでありまして、このような公害現象に対しましては、排出規制の強化と行政措置の強化によりまして対処するのが相当であり、この生じた結果に対して、わずかな程度にしか関与していないというものを一律に処罰の対象とすることは、刑事法の性質上、私どもは適当でないと、かように考えておるものでございます。
 以上お答え申し上げます。(拍手)
   〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
○国務大臣(宮澤喜一君) 公害防止事業における企業の負担の問題でございますが、結局、私どもが通念として考えますところは、その防止事業を必要とするに至りました経緯の中で、企業とその事業とがどのような因果関係にあるかという点と、それからそのようにして行なわれました事業がどのような機能を持つかという点と、その二つで判断をしていけばよろしいのではないかと思っております。そういう意味で、田子の浦のヘドロをしゅんせつする公害防止事業と、グリーンベルトを置く公害防止事業とは、ただいま申しましたような観点、いわゆる因果関係と事業の機能という観点から見ますと、かなり異なっておるわけでございますから、この法律は、そういう意味で負担割合をそういう観点から書きまして御提案を申し上げておるわけでございます。
 それから知事の権限につきましては、先ほど山中国務大臣からお答えになりましたとおりでございます。(拍手)
   〔衆議院議員細谷治嘉君登壇、拍手〕
○衆議院議員(細谷治嘉君) 私に対する質問の第一点は、環境保全基本法案を提出した背景、理由、あるいは特徴点と、こういう点でありますが、先ほど申し上げましたように、わが国の公害問題は、政府の高度経済成長政策、GNP至上主義とともに起こりまして、年々その深刻の度を増しておることは御承知のとおりであります。それまでは、産業活動その他による環境汚染は、自然の浄化作用によって希釈され、調節されて、環境破壊を起こすことがなかったのであります。企業は当然、公害対策を講ずべき社会的責任があるにもかかわらず、これを怠り、また取り締まるべき当局が十分な監視をせず放任し、そのため自然の環境調節能力の限界を越えまして環境汚染が進行し、ついに今日のごとき重大な社会問題を起こしたと思います。したがいまして、この環境汚染の進行を阻止し、自然の浄化作用を取り戻すことが喫緊の課題でございます。いままで公害対策基本法をはじめ、たくさんの公害関係法令が制定されましたけれども、事態は好転するどころか、悪化するばかりでございます。その原因は、基本法及び関連法案の基本的な欠陥と政府の政治姿勢、本気で取り組む気概が欠除していたと申さなければなりません。
 今回、経済との調和条項の削除をはじめとして、基本法その他の関連法の改正案、あるいは新規法案がセットとして提案されましたけれども、その内容は不完全、不徹底であるばかりでなく、基本的な点について従来と全く変わっておらないと思うのであります。私たちは、このような姿勢あるいは療法では問題の解決は不可能だと判断し、憲法が保障する基本的人権を確保するために、何ぴとにも良好かつ快適な環境を保障しようと考えまして、この環境保全基本法案を提出した次第であります。
 わが国では公害ということばが使われておりますが、欧米諸国では環境汚染と表現し、国連の機関でもこのことばが用いられております。それは、人為的な原因によって自然のままの構造や状態が変化して、自然のままの構造や状態の場合よりも人間が利用する上で不都合な影響を受けるようになった場合に環境が汚染されたということであります。
 私どもは、公害現象が世界のトップレベルにあるわが国の公害を撲滅し、公害被害者を救い、進んで現在及び後代の子孫に対しても良好な環境を確保したいものと考えまして、前文に表現いたしました理念に基づいて環境保全法案を作成した次第であります。小野議員御指摘のように、そういう基本的な点については、すべてこの基本法案に盛り込んでおりますので、私どもとしては、これこそが現実に即し、しかも政府案よりも次元が高く、現在必要な基本法だと確信いたしております。
 第二点の無過失損害賠償責任制度の問題でございますが、この環境保全基本法案の第二十六条に、「無過失損害賠償責任制度の確立等」とうたっております。同時に、本条に基づきまして、別途三党共同で、事業活動に伴って人の健康等に係る公害を生じさせた事業者の無過失損害賠償責任に関する法律案を提案することといたしております。
 公害がますます広範かつ深刻化している現在、公害加害企業の責任を明確にし、被害者の正当な保護をはかることは当然でありますし、公害被害者のみならず、広範な国民の要求となっておることは御承知のとおりであります。しかるに、今回の一連の政府公害法案の中に、これが見当たらないことをたいへん遺憾に思っております。
 公害現象は複雑であり、したがって、また公害にかかわる被害はきわめて特殊性を持っております。それだけに弱い被害者は、故意または過失を立証することは困難なので泣き寝入りを余儀なくされ、当事者間の実質的な公平ははからるべくもないのでございます。しかも、すでに御承知のごとく、鉱業法、独占禁止法、原子力損害の賠償に関する法律、労働基準法、国家賠償法等には、民法の特例として、無過失責任賠償の制度が確立しておるのであります。政府答弁によりますと、以上と比べて、公害の場合は、複雑、特殊性があるので、立法技術上困難だからできないと逃げておるのでありますが、逆にそれだからこそ、この制度の確立が一段と必要であり、これなくしては被害者の正当な保護と救済は不可能だと考える次第であります。
 なお、現在大きな問題となっております食品公害等の場合は、食品衛生法等の中にこの制度を導入し、被害者の保護をはかるべきだと考えております。
 以上でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(安井謙君) 内田善利君。
   〔内田善利君登壇、拍手〕
○内田善利君 私は、公明党を代表して、公害対策基本法案及び関係諸法案について、総理並びに関係大臣に質問をいたします。
 まず初めに、公害対策の政治姿勢についてであります。いまや、国民の健康と福祉を最優先させ、そのために経済の発展をおくらせることもやむを得ないとの国民の声は、もはやとめることもできない大きな世論の流れになっているのであります。そのような大衆の声に対して、さしもの佐藤内閣も無視することはできず、ついにおそすぎたとはいえ、公害国会といわれる本臨時国会の開会となったことは御存じのとおりであります。
 今日までの政府自民党は常に企業寄り、財界寄りの体質を改めることはできず、その体質が今日の公害を起こしたことはもはや周知の事実であります。そして今回の公害国会において、政府自民党が公害諸法案にどのような態度を示すかは、国民のひとしく注目するところと言えましょう。総理は、先日の一日内閣において大いに蛮勇をふるうと発言したのであります。国民は、総裁に四選し、いまや大きなリーダーシップを持つと考えられる佐藤総理の国民のための蛮勇に、万一のかすかな期待を持っていたこともこれまた事実であります。しかし、その万に一つもという期待は大きくくずれようとしております。公害諸法案は財界等の圧力で相次いで骨抜きにされようとしており、佐藤総理はいまや国民のための蛮勇ではなく、財界のための蛮勇をふるっていると言われてもしかたがないと思うが、総理の所見を伺いたいのであります。
 次に、今回、政府の上程された基本法の改正案では、いわゆる経済との調和条項の削除と公害の対象に土壌汚染を加えるのみにとどまり、人間優先、生活環境優先という最も基本的命題が明らかにされていないことは、国民の一人として大いに不満であります。さきに行なわれた所信表明に関する野党議員の質問に対して、総理は、基本法の中には、「国民が健康で文化的な生活を確保する上において公害の防止がきわめて重要である」との一項目が入っているので十分であると言明しておりますが、その内容は、依然として企業に国民の健康と福祉が最優先するという明確な方向が示されなかったのは、今後に禍根を残すものであると判断され得るのであります。このような点について、総理はどう把握され、国民の納得を得ようとしておられるのか、先日の佐藤総理の答弁はまさに詭弁と言わざるを得ないのであります。
 次に、公害の定義についてお尋ねいたします。今回の改正案では、公害の対象が従来の六種類に土壌汚染が追加されたのみでありますが、たとえば最近の公害の苦情の中には、日照障害、薬品公害、あるいは食品汚染が激増しているという事実であります。御存じのように、日照障害では三百六十五日全然日光の当たらない家とか、一日のうちわずか三十分とか一時間日光が入ればいいほうで、このように日光障害によって生活、健康がじゅうりんされているという事態も起こっております。こういった日照権のような大問題に対しても、公害の種類として織り込み、公害法の上で処理する体系をつくるべきであると思うのであります。総理並びに総務長官の所見を伺いたい。
 次に、地方自治体への権限委譲に伴い、早急に解決を迫られている財政措置や技術者の配置等について、法的な裏づけを明らかにできなかったのはいかなる理由によるものであるか、大蔵大臣の答弁を願いたい。
 次に、大気汚染防止法の改正とその運用についてお尋ねいたします。大気汚染の防止はその広域化に伴い、単なる一地域の問題から、いまや全国民の生死にかかわる緊急の課題であると言えるのであります。しかも、空気中の酸素の絶対量と工場及び自動車から出される亜硫酸ガス、一酸化炭素の量とのバランスはぎりぎりの線まで追い詰められるといった深刻な実情にあります。しかし、本法案では、亜硫酸ガスの排出基準については依然として国のエネルギー政策のたてまえから、地方自治体は上のせできないこととされております。そして四十四年の閣議決定できめた環境基準の五年ないし十年という長い達成期間は依然として残ることになります。これでは大気の浄化は事実上不可能になるのであります。すなわち、川崎や四日市などの公害のひどい地域では、長い達成期間中に亜硫酸ガスによる被害者がうらみの声を残して次々に死んでいっておるのであります。これに対し、本法案ではいかなる対応措置をとろうとするのか、総理及び総務長官の所見を伺いたい。
 この公害による非常事態にかんがみ、この猶予期間の短縮、またそれに関連して、公害激甚地においては効果のある立地規制により新増設は一切認めない等の非常措置を講ずるべきであると思いますが、その所見を明らかにしていただきたい。
 さらに、それに伴なって、十年間も猶予期間の理由としてあげられる低硫黄石油の公害激甚地への配分についても、緊急措置をとるべきであると思うが、あわせて総理並びに総務長官の答弁をお願いしたい。
 次に、海洋汚染防止法についてお伺いいたします。四面海に囲まれた日本国にとって、年々加速度的に増大する汚染から私たちの海を守ることは最大の急務といわなければなりません。今回の法案は、海水油濁防止の国際条約が昨年の改正で強化されることに相応して、今までの海水油濁防止法より一歩前進していることを認めるにやぶさかではありませんが、政府がよほどの強い決意を持って推進していかなければ、効果は何らあらわれないことを強く警告したいのであります。
 そこで、私は第一に、監視体制の強化についてお伺いしたい。この法律によって幾ら規制がきびしくなっても監視体制を強化し、関係者にこの法律を順守させなければ海洋汚染防止も、まさに絵にかいた餅といわなければなりません。その監視の業務は海上保安庁が主として担当するわけでありますが、海上保安庁の体制は、御存じのように、続発する海難事故の人命救助にさえこと欠く現状で、まさに弱体の一語に尽きます。政府は自衛隊の強化には金を出すが、海上保安庁には全くけちくさいことは、いまさら言うまでもありません。四十五年度予算においても、あれほど海上保安庁の人命救助体制の強化が叫ばれながら、海上保安庁の航空機購入費は、わずか四千万円で中型ヘリコプター一機のみで、自衛隊航空機購入費に比べれば、何と千分の一に満たないのであります。そして現状における海洋汚濁事件の海上保安庁による検挙率は年々低下しており、さらに今回の法律により、監視の範囲が拡大していくならば、監視体制の不備はますますはげしくなることは火を見るよりも明らかであります。総理並びに大蔵大臣は、この監視体制の強化について、どのように考えているかお伺いしたい。
 第二に、廃油処理施設の拡充についてであります。この施設の拡充なくして今回の法律も実行不可能となります。政府は、四十七年度までに廃油処理施設が十分整備されるといっているが、はたして可能かどうか、過去の例から考えて私ははなはだ疑わしいと思うのであります。政府は今後の廃油処理施設建設の年次計画を明らかにし、責任をもって推進すべきであると思うが、お考えをお聞きしたい。
 第三に、この法案は、タンカー以外の船舶及び日本国内を航行するタンカーについては、昭和四十八年三月末までは、廃油処理施設の不備を理由に猶予期間を置いております。近年増大する海洋汚濁の現状を考えるとき、あまりにものんびりし過ぎていると思うのは私だけではありますまい。政府は廃油処理施設の拡充につとめるとともに、処理施設の完了と相まって順次規制を強化すべきと思うが、運輸大臣のお考えをお聞きしたい。
 第四に、この法案は、肝心なところは政令にまかせるところが多く、一歩あいまいな表現が多いのであります。たとえば、ビルジの排出は海岸からできる限り離れて行なうようつとめなければならないという条文があります。政府が本気で海洋汚濁防止につとめるつもりならば、これらの諸点もはっきりさせるべきだと考えるが、運輸大臣の御見解をお聞きしたい。
 第五に、田子の浦のヘドロはいつなくなるのか、現在のヘドロの処理と、工場の排水規制をどうするのか、運輸大臣の明快なる御答弁をお願いしたい。
 次に、土壌汚染防止法案についてお伺いいたします。カドミウムや水銀等による土壌汚染は、富山、安中、磐梯など、さらにその被害は府中、立川にまで及び、いまや全国的な広がりを見せ、農民や地域住民に極度の不安を与えております。土壌汚染防止法案要綱には、「特定事業による特定物質の排出により、人の健康や農作物に著しい被害が出た場合、その事業者は、過失の有無を問わず、損害賠償の責任を負うものとする。」とありましたが、本法案では無過失責任が削除されております。これは明らかに政府の土壌汚染対策の大幅後退と言わざるを得ません。まさに、本法案の意義が失われ、国民の期待を裏切るものであります。無過失責任については、すでに鉱山法や、原子力基本法等には明文化されている先例があるにもかかわらず、無過失責任を本法より削除したのはなぜか、総理並びに農林大臣の所見を伺いたい。
 次に、被害対象を農用地に限って適用しているが、環境権の設定が国民世論として盛り上がっている現在、宅地、公園、林野も当然その防止対象に入れてしかるべきであります。一昨日、ある農家の婦人が見えて、私たちは公害のために農地を奪われただけでなく、庭に毎年度実ったカキもクリも花も奪われてしまい、人間としての心の安らぎさえもむしり取られてしまいました。これはお金で解決のつく問題ではありません。昔に返してほしいと、涙ながらに切々と訴えておりました。こうした具体的な深刻な実情をとらえた上での農用地に限るという立法趣旨なのか、総務長官並びに農林大臣に明快なる答弁を願いたい。
 次に、本法案で政府が考えていることは、特定有害物質をカドミウムに限るというが、わが党の公害調査では、カドミウムのほかに水銀、ニッケル、銅、亜鉛、クローム、砒素等、重金属による土壌汚染の実態を明らかにしております。カドミウムという一つの有害物質に限定するということがいかに不十分であるかは、国民のひとしく知るところであります。わが国の鉱害による被害の発端となった足尾銅山による土壌汚染は銅によるものであり、現在まで何十町歩といった田畑が使用不能となっていること、また九州奥岳川の砒素による土壌汚染は、住民の健康問題にまで波及しております。特定有害物質をカドミウムに限定した理由について農林大臣の所見を伺いたい。
 次にお尋ねしたいことは、今日世論のきびしい追及を受けている薬品公害をなぜ盛り込まなかったかということであります。先日、米国の食品医薬局が三百六十九種に及ぶ不良医薬品のリストを発表いたしましたが、この中には現在日本でも使用されているものも少なくないということであります。薬王国と称されているとおり、約十万点に及ぶ薬が認可され、年間一兆円もの大量消費がなされ、直接国民の生命をむしばむほどの危険な状態に追い込んでいる例も多いのであります。英米においてはもはや効果がないとされている薬が、日本では保健薬として販売されているということは再検討すべきといえます。国民の医薬品に対する不信は、スモン病の原因であるといわれているキノホルム等、大きな社会問題にまで発展しております。政府はこの事態に対してどう対策を講じられたのか。政府は、この際、医薬品の総点検を行ない、許可方法の再検討及び認可後の取り消しのでき得る法規の立法化を実施すべきであると思いますが、厚生大臣のお考えを伺いたいのであります。
 最後に公害罪についてお伺いいたします。小林法務大臣は、再三にわたり、「修正しないで原案どおり提出する」と言明しながら、公害罪法案のきめ手といわれた「危険のおそれ」の条項を削除したことは、政府自民党が財界の圧力に屈し、大幅な後退であると断じても決して過言ではないと思うのであります。政府は昨日の衆議院の本会議においていろいろ弁解したが、この削除によって公害を事前に防止するという意義を失ったことは疑いのない事実であります。小林法務大臣は、この「危険のおそれ」を削除する程度の修正では内容が大きく変わったとは思えないと述べておられるが、これこそ全く国民の目をあざむくものであります。たとえば、水俣病についていえば、処罰の対象段階として、第一段階で工場が廃液を流したとき、第二段階では魚が汚染されたとき、第三段階でその魚を食べ、日時を経て人体に被害が出たときの三段階が考えられますが、政府の原案では、二番目の魚が汚染された段階を危険を及ぼすおそれのある状態と判断し、処罰することにしていたわけであります。この危険のおそれを削除したことは、政府が第三段階の時点で犯罪の構成を判断するということであり、公害の予防効果は全然期待できなくなったのであります。これでは、再び第三、第四の水俣病の発生するということは明らかであります。この法案によってほんとうに水俣病の絶滅を期することができるのか、また、二十年、三十年と鉱山排出中のカドミウムを摂取してイタイイタイ病になった神通川流域のような悲惨な公害が二度と起こらないように防止できるというのでしょうか、総理並びに法務大臣に明確にお答え願いたいと思うのであります。
 以上、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
○国務大臣(佐藤榮作君) 内田君にお答えいたします。
 まず、公害に対する政府の政治姿勢についてお尋ねがありましたが、さきに社会党の小野君に詳しく説明いたしましたので多くは申しません。今回の基本法第一条の改正に見るように、今回の基本法改正案は憲法第二十五条の規定の大原則のもとに組み立てられたものであり、国民の福祉とすぐれた環境の保持を第一義として公害行政を強力に進めていこうとするものであります。この改正基本法により、公害対策基本法は、人間優先を理念とした公害憲章としての性格を十分持つに至ったものと考えます。本日提案した多くの公害関係法案は、政府が責任をもって作成したものであります。これは、国会においてあらゆる角度から建設的な討議の対象となり、今後の公害行政の飛躍的な充実の基礎となることを心から期待するものであります。
 次に、日照権についてお尋ねがありました。私は日照障害を典型公害に加えよ、こういう御意見ではありますが、それが社会生活上受忍すべき限度を越えた場合に不法行為となるものであります。この受忍限度を判定するにあたっては、ケース・バイ・ケースにより処理するのが現実的と考えておりますので、公害対策基本法の公害の範囲に含めることは当面考えておりません。
 薬品その他については担当大臣からお答えいたします。
 次に、昨年二月に決定した硫黄酸化物に関する環境基準は、大気汚染の現状や燃料の低硫黄化の見通しなどを考慮して設定したものであり、その実現にはかなりの努力を要するものであります。率直に申しまして、大気汚染防止法が改正を見たからといって、東京の空が直ちにきれいになることもありませんが、この改正により過密地帯のビル暖房による汚染などが抑制される結果、その改善により寄与すること少なくないものと考えます。
 また、過密地帯の工場の新増設については、すでに現行法で特にきびしい基準を適用してその抑制をはかっており、また、首都圏、近畿圏については工場新増設について別個の規制が行なわれておりますので、内田君の御趣旨は十分に生かされておるものと私は考えます。
 次に、海洋汚染防止法の運用強化についてお尋ねがありましたが、政府としても、油及び廃棄物の排出規制についてはきびしく制限する方針であります。また、水質汚濁防止法、廃棄物処理法等による総合的な規制の実施によって、海洋汚染の防止は飛躍的に充実するものと考えます。
 次に、土壌汚染防止法についてでありますが、事業者の無過失責任につきましては、土壌汚染による損害ばかりでなく、水質汚濁、大気汚染その他公害一般に通ずる問題であり、今後一般問題として検討するほうがより適切であると考え、本法案には規定しないことといたしたものであります。また、今回の土壌汚染防止法案は、現実に問題となっている農畜産物の汚染及び農作物の生育障害に対処することをねらいとしたものであり、宅地、公園、林野などについては、その汚染による被害の実情と、その社会的影響などについて調査研究を深め、その結果によって対処することとしたいと考えています。
 最後に公害罪についてでありますが、先ほど社会党の小野君に対し詳しくお答えをしたとおりでありますので、省略させていただきます。
 その他の事項につきましては、それぞれ担当大臣からお答えいたします。(拍手)
   〔国務大臣山中貞則君登壇、拍手〕
○国務大臣(山中貞則君) 総理から日照権の問題についてはお話がございまして、つけ加えることはございませんが、やはり相隣関係の問題でございますし、私有権の問題でもございます。したがって、やはり問題として提起されておる現象等を見ておりますと、さらにそれらの問題に加えて高層ビル等が建った場合の局地強風等の問題等も、やはり住民被害として出ておるようでありますので、これらを踏まえて、日照権の問題等も関連しながら、建設省の許可基準等において、きびしいそれらの配慮を行なっていくべきことが至当であろうと考えている次第でございまして、典型公害に、基本法第二条に盛り込むという公害には入らないのではないかと考えます。
 さらに、第三条の事業者の責務について、産業廃棄物処理等のことについてお触れになったのでありますが、これらは企業負担の法律でも、前提として全額、防止施設は企業が持つべきものである。防止事業について、公共事業の際であっても、まず企業の負担を先に定めるべきものであるということは申し上げたとおりでございまして、第三条では、産業廃棄物等の処理について、企業の事業者の責務に、自分たちの事業を行なうためにそれらの出てきた廃棄物が、第二条でいう典型公害の現象となって、人の健康や生活環境に影響を与える前の状態においても、すなわち企業の廃棄物が出る場合の前の処理を自分たちの責務でやりなさいということを明確にしたつもりでございます。
 審議会については、今回必置制にいたしまして、さらに市町村にもこれを――県においては必置制、市町村においては任意制ということで地方に置くことになったわけでありますが、何しろ各種規制法を一ぱいつくりましたので、このまま規制法の定型どおりいきますと、審議会が都道府県に五つも六つもつくられるような形になるおそれがございましたので、対策本部のほうで調整をいたしまして、公害対策基本法に基づく都道府県の審議会を必置制とすることにより、その中に、たとえば費用負担の部会、いろいろの部会等をつくっていただくことが、最も行政簡素化や能率向上の上によろしいのではないかと考えて、そのような措置をいたしたつもりでございます。
 大気汚染に関する問題は、総理の御答弁のとおりでございます。
 さらに、田子の浦の問題を運輸大臣に答弁をという要求がございましたが、運輸大臣は、山中君、君が答弁しろと、悲鳴をあげておりますので、私のほうから答弁をさしていただきます。
 田子の浦の問題は、典型的なこれらの港湾地区内、あるいはその周辺の海域まで影響を与えた企業が明確であるという点において、ある意味の一つのパターンになっていると考えるわけであります。したがって、対策本部において、各省のそれぞれの所管するところがございましたけれども、緊急処理として、財源上は公害防止事業団から十億の緊急融資と、さらに県の起債としては今後先例になるかもしれませんが、異例の措置として富士市へ転貸いたして事業を行なう。そのかわり、その転貸債の返還については企業が全額負担していくという措置をとることによりまして、計十七億をもってその処理の財源としたわけでございます。現在の見通しでは、一方において企業側が明年中ごろまでに大企業を中心にほぼ規制基準を達成できる防止施設を着々装置中でございますし、さらに岳南排水路等の終末処理等を必要とする中小企業のほうは、この終末処理場の建設を急いでおるところでございます。一方、すでに堆積しておりまする、港則法等で云々される状態になりかかっておりますヘドロの処理については、県が現在、富士川の河川敷に建設省の了解を得てこれを囲いをして、流出あるいはまた地下水浸透等の危険を十分に配慮しながら、ヘドロを処理しようといたしておるわけでありますが、県、県議会等の努力によりまして、一応漁業者側はそのような処理がなされるならば、予防措置が確実であることを前提に了承されたと承っておりますが、なお、その一番近いところの周辺の地域住民の方々が、富士川の河川敷にヘドロの処理施設を設けることについて最終的に御納得を得ておられないので、したがって、県、県議会がそれに対して現在説得を続けておるということを承っておりますが、いずれにしても来年中には田子の浦の問題は片づくものと確信をいたしております。(拍手)
   〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕
○国務大臣(福田赳夫君) お答えを申し上げます。
 今回の諸法案によりまして、地方財政にはかなり複雑でまた広範な影響があるわけであります。さような状況でありますので、目下検討中ではございまするけれども、結論が出ておりません。四十六年度予算においてこれを明らかにしたいと、かように考えております。ただ、いかなる場合でも、地方財政の運営がこれによって支障があるというようなことにはいたさない方針でございます。
 なお、海上保安庁の予算のことでありますが、今回の措置によりまして監視体制の強化が必要となる、それに伴いまして予算の増額が必要になる、これは当然のことでございます。運輸省ともよく相談いたしまして善処いたします。(拍手)
   〔国務大臣橋本登美三郎君登壇、拍手〕
○国務大臣(橋本登美三郎君) 内田さんから、海洋汚染防止法案は一歩前進であるという御推賞をいただきましてまことに恐縮に存じます。
 御承知のように、この法案は、従来、油船は百五十トン以下は禁止条項に触れない、免れておったわけでありますが、今度の法律によりまして、百五十トンどころか、一トンの油船でもこの禁止条項に触れる。一般の船は従来五百トン以下は対象になっておりませんでしたが、今度は三百トンに制限される。こういうことで非常に私は、一歩前進じゃなくて数歩前進であると確信いたしておるわけであります。実はお話の監視隊の問題でありますが、現在この法律によりましては海上保安庁長官がこの監視の役目をやることになっております。かつまた登録制、いわゆる投棄船のような廃棄物船、これは登録制をとる。並びに登録日記、いわゆる日記をつけさせる等によりまして、十分ではありませんけれども、ある程度積極的な措置ができるのじゃないか。お話のように、監視隊をつくりまする場合には、何せこれは東京沿岸あるいは日本の沿岸だけではなくして、全世界に日本の船に対して適用されますからして、監視隊というようなものをつくるというようなことも、なかなかむずかしい問題であると思いますが、しかし、従来の体制だけでは不十分でありますからして、したがって、大蔵省とも十分に相談をして、これらの充実をはかってまいりたい。
 実はせんだって、御承知のように、アメリカの大統領の諮問委員会であるトレインという環境汚染の諮問委員長が参りました。そのときに、いろいろ安全車の問題、先ほどの排気ガスの問題等につきましても相談をいたしましたが、その際に私から、今度、日本政府は海洋汚染防止法という法案を出すことになっておると、その内容を説明しましたところが、たいへんに驚いたといいますか、非常に推奨されまして、帰って、必ずアメリカにおいてもこれは実現したい、日本は海運国であるから当然だろうけれども、米国といたしましても、世界の海をきれいにするということについては全力をあげて御協力申し上げたいと、かようなお話があったのであります。私は万全を期して、七つの海をよごさないような防止措置を講じてまいりたいと、かように考えております。(拍手)
   〔国務大臣倉石忠雄君登壇、拍手〕
○国務大臣(倉石忠雄君) 事業者の無過失責任につきましては、土壌汚染による損害ばかりでございませんで、水質汚濁や大気汚染、その他公害一般を通ずる問題でございますし、今後、一般問題として検討することのほうがより適切であると考えましたので、本案にはこのことを入れないことにいたしたわけでございます。
 第二の土壌汚染防止法案の適用を、農用地外にもすべきではないか、宅地、公園、林野等にも。そのことにつきましては、ただいま内閣総理大臣が詳細に申し上げましたので御了承をいただきたいと思います。
 三番目の特定有害物質を当面カドミウムに限定する理由は何か。銅、亜鉛はもちろんのこと、砒素、鉛その他も加えるべきではないかというお話がございました。私どもが特定有害物質として当面カドミウムを指定することにいたしましたのは、食品衛生法によりまして、一PPM以上のカドミウムを含む米は「人の健康を害う虞」があるものとされておりますので、その対策を緊急に進める必要があったからでございます。
 そこで、銅、亜鉛につきましては、今後さらに調査を進めまして、地域指定の基準の作成等の準備を整えました上で、これらを指定することといたしました。鉛、砒素につきましても、人の健康に関するものでございますので、これらも今後慎重に調査を進めてまいりたいと思っております。(拍手)
   〔国務大臣内田常雄君登壇、拍手〕
○国務大臣(内田常雄君) 御質問にございましたいわゆる薬品公害についてでありますが、これは、公害対策基本法にいう事業活動などに伴って生ずる公害とは、その趣旨と申しますか、あるいは質を異にするものであると考えますので、御承知のように、別の法体系、すなわち薬事法でありますとか、あるいは毒物及び劇物取締法というような法体系で対処いたしております。ことに毒物及び劇物取締法につきましては、今回、公害関係法の一つといたしまして改正案を提出をいたしまして、日用品等に用いられておりますこれらの薬品類につきまして十分の取り締まりをする、こういう態勢を進めております。
 また、米国における最近の一部薬品類の回収の報道についてでありますが、FDAの正式発表文、あるいは今回の発表の根拠となった資料を目下取り寄せ中でありますので、入手次第、直ちに慎重に検討の上で、わが国においても適正な措置をとる所存でございます。
 なお、ニューヨーク・タイムズ紙によりますと、今回の回収理由は、配合剤であって、配合理由が乏しいもの、あるいは効能等の広告について間違いのあるものなどが対象となっておるようでございますが、いま申しますように、正確な資料及び根拠の到着を待っております。
 一方、わが国におきましては、昭和四十二年からは、配合剤については配合理由を示す十分な資料を提出させて、中央薬事審議会にはかって承認する制度をとることになっており、また安全性につきましても、大学付属病院、国立病院などの協力による副作用モニター制度を実施するなど、安全対策に対処をいたしておるところでありますが、これらの薬品の再評価、再検討ということにつきましても、私はやるべきであると考えまして、本年九月から、私の諮問機関として、関係方面の代表専門家からなる薬効問題懇談会というものを設置をいたしまして、目下再評価の方法、範囲などについて検討中でございます。年度内には結論を出すよう、努力をいたしております。
 なお、承認の取り消しということについて御意見がございましたが、私は現行法でも、有害なことが明らかになった場合には、たとえ規定はなくても、行政法規のたてまえとして当然取り消すことができると考えておりますが、しかし、これは今後、薬事法改正の際には、法文上にも明記をするようにいたしたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣小林武治君登壇、拍手〕
○国務大臣(小林武治君) 公害罪の法案の手直しをした、このことの問題で、いわゆる「おそれのある」と、こういうことばを削ったのが、削らない場合とどういう違いがあるか。これはもう純粋な法律的な、司法的な問題でありますので、むしろ委員会等によって明らかにしたいと、かように考えますが、一応のところを申し上げますれば、こういうことでございます。私はこれはもう間違えてはいけないから、書いてもらって持ってまいりましたから、それを読みます。
 公衆の生命、身体にとって具体的に危険な状態が生ずる前の状態は処罰の対象にならないが、危険を生じさせたというのは、実害を発生させることまでは必要としない。すなわち公衆の生命、身体に危険な状態を生ぜしめれば、その段階で処罰し得るのでありまするから、健康上の実害の発生を未然に防止するための刑罰規定としては有効適切なものである、こういうことでありまして、ただいま水俣病等についての例をおあげになりましたが、私が聞いておるところでは、排出をしたということではなくて、その結果として魚介類がそれに汚染をされて、それを食べれば人体に障害が生ずる、こういうことになるからして、魚が汚染された状態において処罰ができる、こういうふうなことを聞いておりますが、いずれ正確なことは、ひとつ委員会等の審議におまかせ願いたい、こういうふうに思います。しかし、いずれにいたしましても、この法律は、いわゆる両罰規定、法人の処罰とか、あるいは推定規定とか、非常ないままでとは変わった一つの進んだ法律であるのでありまして、初めての規定でございますので、これらは今後その運用の実際、あるいは公害そのものの推移、こういうことにかんがみまして、これからも必要な改正を加え、これを整備してまいるのが筋であろう、かように考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(安井謙君) 田渕哲也君。
   〔田渕哲也君登壇、拍手〕
○田渕哲也君 私は、民社党を代表して、ただいま提案されました公害対策基本法の一部を改正する法律案について政府の見解をただしたいと存じます。
 まず第一に、公害に対する基本的な考え方についてであります。よく経済優先か、あるいは人間尊重かということが言われますが、公害問題というのは、そのどちらを選ぶかといった選択の余地のある問題ではなく、もっと基本的な課題であると思います。現在の経済体制下においては、私的利潤を追求する活動は自由であり、そしてその活動の推進が国民経済の発展に寄与していることも否定できません。しかし、私的利潤の追求のために、他人あるいは公共の福祉を侵害することは絶対に許さるべきではありません。公害問題の本質は、それが意識されるかいなかにかかわらず、結果的には、社会的不利益をまき散らしながら私的利潤を追求するところにあり、何よりもまず現行憲法下における秩序の破壊であり、社会正義に反するものと言わざるを得ません。これを規制し、公共の福祉を守ることは政治の最も重要な責務の一つであります。今日の公害の原因は政治姿勢の問題というよりも、政治のサボタージュ以外の何ものでもないと存じますが、この点についての総理の御意見をお伺いいたします。
 第二に、公害問題は、最近の急速な経済の成長や技術の進展によって新しく浮かび上がってきた面もあることは事実であります。しかし、公害対策はあくまで事後処理でなく、事前防止でなければならないことは言うまでもありません。経済の発展、技術の進歩等により、社会の変化のスピードが速くなればなるほど、打つべき手のタイミングのズレや、判断の誤りが国民に与える被害はますます大きなものになるのであります。将来起こり得る危険を予知し、その発生を未然に防ぐことこそ政治の役割りであり、そのためには、現在表面化していなくても、将来の可能性をあらゆる角度から研究し、調査し、監視していくことが肝要であります。私は、そのため公害予防に対する総合的な研究調査機関を設置することが必要と思いますが、総理の御見解をお伺いいたします。
 第三に、自然環境の保全についてお尋ねいたします。公害対策の基本的課題は単なる対症療法的対策でなく、動植物の生息環境全体に対する破壊としてとらえ、これに対処することが大前提でなければなりません。ところが、今回の政府提出の公害対策基本法案は、残念ながらそのような認識に立っていないのであります。政府提案の基本法案第十七条の二においては、「他の施策と相まって公害の防止に資するよう緑地の保全その他自然環境の保護に努めなければならない。」とあります。しかし、これでは、公害防止対策にとって必要最低限の緑地保全等に限定する意図としか解せられないのであります。自然破壊を生活環境破壊と密接不可分のものとしてとらえ、自然破壊は人間の生命、健康破壊の前ぶれであるとの認識に立つならば、自然の保護に対し、もっと積極的かつ総合的な施策を樹立すべきであります。現行の自然保護関係法は、自然保護の目的を達成するために体系的につくられてはおりません。自然公園法、森林法、鳥獣保護法、水産資源保護法等、それぞれがばらばらな目的をもって制定されている上、きわめて局部的、資源保護的、事業法的色彩が強いのであります。政府は、民社党、社会党、公明党の共同提案である環境保全法の趣旨を尊重し、環境保全に関する総合的立法措置とともに、欧米の先駆的な環境保全行政にならい、環境保全行政の改革、充実を進める意図があるかどうか、総理の御見解を伺いたいのであります。
 第四に、公害防止事業の費用負担についてでありますが、公害原因企業の負担の原則を定めただけでは問題の解決にならないと思います。なぜならば、その費用負担分がコストとして製品価格に織り込まれ、結局は消費者である大衆の負担となるおそれがあるからであります。総務長官は、競争社会だからその心配はないと言っておられますが、ビールの値上げやカラーテレビ問題にも見られるように、寡占管理価格的色彩の濃厚なものがまかり通っている現状を見た場合、公害防止費用が消費者である大衆の負担となる可能性はきわめて強いと言わざるを得ません。また一面においては、労働者賃金にしわ寄せされるおそれもあります。公害防止費用は、結局は国民所得のいずれかの部分で受け持たざるを得ないわけですが、資本利得、労働者賃金、企業蓄積、消費者等の中で、どこがどれだけ分担するのが望ましいと考えるのか、政府の見解をお伺いしたいのであります。
 また、そのために、政府は特に何らかの施策を必要と考えているのか、あるいは、この問題は政府としては関知しないのか、私は特にその中でも物価等にはね返らないような歯どめ策が絶対に必要だと思いますが、これについて政府は具体的にどのように考えておられるか、お伺いしたいと思います。
 次に、公害防止費用のうち、公共負担分についてその財源はどうするのか、具体的な構想をお聞きしたい。この際、寡占管理価格による過当利潤や、公共投資により私的利潤を増大させている土地値上がり利益に対する課税の強化、さらには、交際費課税の増徴や租税特別措置の整理によりその財源を生み出すべきだと思いますが、そのようなお考えはないのか、大蔵大臣の見解をお伺いします。
 第五に、中小企業の公害規制並びにその防止事業助成についてお尋ねいたします。
 公害を発生する企業は規模の大小にかかわらず、その社会的責任にかんがみ、みずから公害防止施設の設置につとめ、政府、地方公共団体の実施する公害防止事業に対して積極的に協力すべきであることは当然であります。しかし、資力がなく競争力の弱い中小零細企業に対しては特別の配慮を払う必要があります。公害防止事業費事業者負担法第十六条では、費用を負担する事業者、負担総額の配分の基準の決定、負担金の納付について、中小企業に対して特別の配慮をするほか、税制上、金融上必要な措置を講ずるとあります。特に税制上中小企業に対し具体的にどのような措置を講ずるのか、また、金融制度については単に融資ワクの拡大にとどまらず、金利の引き下げ、償還期限の延長等幅広い措置を行なうべきだと思うが、具体的にどのような構想を持っておられるか、お伺いしたいと思います。
 以上、五点について総理並びに関係各大臣の明快な御答弁をお願いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
○国務大臣(佐藤榮作君) 田渕君にお答えいたします。
 私的利潤の追求のために他人あるいは公共の福祉を侵害してはならないという田渕君の御意見には、私も同感であります。さきの一日内閣におきまして、質問に立った高校生は、公害をもたらした責任の一つとして住民の心がまえを指摘されましたが、最終的に私たちの環境を守るのは、われわれ自身であります。その意味で公徳心こそ何よりも望まれるものであります。もちろんかように申したからと言って、公害問題についての国の責任を回避したり、企業の責任をかばうつもりは全くありません。美しい自然を取り戻し、人間の健康な生活を守るためには、国、地方公共団体、企業者、住民がそれぞれの責任を自覚して、総力をあげて取り組むことが重要であり、このような観点から国民一人一人が公害防止の重要な課題に取り組んでいただきたいと思うだけであります。街路も工場も川も海も全く私たちの家庭と同様に大切であるし、愛情を持つとき、公害問題はおのずから違った形となるはずであります。政府も再び政治のサボタージュと――ことさら申し開きもいたしませんが、そのようなことを言われることのないよう決意を新たにして公害対策を進めてまいるつもりでございます。
 次に、公害の事前防止のための総合的な調査研究については、政府としての統一的な方針のもとに、各機関の研究について総合調整につとめております。現在一応の成果を得ているように考えております。御指摘の調査研究機関の設置につきましては、今後諸般の見地からなお検討を行なってまいる考えでございます。
 次に、今回の基本法の改正に際し、新たに第十七条の二として、自然環境の保護に関する規定を設けたのは、公害防止のため必要最小限の緑地保護に限定する趣旨ではなく、緑地の保全その他自然環境一般の保護をはかることを目標としたものであります。政府としては、従来から造林、治山などの計画的推進、保安林の整備拡充、都市公園の整備、首都圏と近郊緑地の積極的な保全をはかってきたものでありますが、さらに一そう自然環境の保護をはかるため、今回、自然公園法改正法案、海洋汚染防止法案を提案した次第であります。これにより、田渕君の御趣旨は十分生かされているかと思います。
 その他の問題につきましては担当大臣からお答えいたします。(拍手)
   〔国務大臣山中貞則君登壇、拍手〕
○国務大臣(山中貞則君) 公害防止事業費の事業者負担法が制定されること並びに防止施設に対する基準がきびしくなりまして、その規制を守るために、非収益的な部面における投資が必要となること等に関連して、それらの投資がコストにはね返り、あるいは労働者の賃金等にしわ寄せされるおそれがあるのではないかという御意見等がございました。大衆負担に転嫁されざるように、私たちとしても積極的な行政指導を展開いたさなければなりませんが、しかし、その前にやはり今日の企業の存立というものが、総理の言われた、よき隣人としての立場を守るためには、公害防止事業をやらなければ企業自身の存立にも影響があることでもありますし、さらにまた、米国等において、すでにそういう意見が述べられつつありますけれども、日本の企業は、本来、周辺地域住民に対して持つべき責務を、すなわち公害防止の費用を投下しないでいて、その分だけ安いダンピングを行なっていること等の批判等を私たちが受けとめて、そうではない事実を示していくためには、われわれとしてはやはり、まず企業みずからの合理化によって、それらのものは当然吸収していくべきものであり、もともと公害防止のための投資費用というものは、人件費や資材やそういう原料等と同じものとして、最終的なコストの中に吸収されて、市場の競争に、りっぱに消費者の選択に耐えるようなものをつくっていくことが、今後の責務であろうと考えるわけであります。政府としては、当然正しいそのような措置を行なうために必要な資金については、公害防止事業団その他を通じての融資その他の手当をしていくことについては答弁申し上げているとおりでございます。(拍手)
   〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕
○国務大臣(福田赳夫君) 田渕さんにお答えを申し上げます。
 公害対策の財源をいたしまして、寡占による超過利潤あるいは土地などの値上がり益などの課税を考えたらどうか、また、交際費課税など考えられないかというお話でございますが、私は、目的税というような考えはとる必要はないと思います。つまり、九兆円をかなり上回る財源が四十六年度においても見られます。その中で優先的にこれらの問題は取り上げていく、つまり、私の考えでは、物価、また公害、これを最大の眼目として四十六年度予算を編成したい、その九兆円を余る大きな予算の中で、ゆうゆうとこれらの経費は吸収し、消化していく、かように考えております。
 次に、中小企業の費用負担に対する助成の問題、つまり、費用負担法第十六条の問題でありますが、税制上におきましては、負担金を損金算入にするということが考えられるというふうに、ただいま見ております。また、その他何か考えられないか、検討をいたしたいと思います。また、金融上におきましては、この負担金を中小企業金融公庫あるいは国民金融公庫などの貸し出しで考える、その態様をどういうふうにするかということについては、これから検討いたしてみたい、かように考えております。(拍手)
   〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
○国務大臣(宮澤喜一君) 公害防止事業に関しての中小企業の負担の問題でございますが、概要は、ただいま大蔵大臣からお答えがございました。私どもとしては、この負担金を損金に算入するということ、これは理屈の上ではいろいろ議論があるかと思いますが、できれば、そういうふうにひとつお願いをしたい。ただいま大蔵大臣とお話をいたしておるところでございます。それから政府関係機関の融資がありますことはいまもお話がございましたが、できましたら、それについて、信用補完制度、中小企業信用保険の対象にそれができないであろうか。これは法律改正を必要とするかと思いますが、ただいまそういうことを検討いたしております。
 それから、これは私が申し上げるのは適切でございますかどうか、公害防止費用というものは、国民経済計算上どこに属すべきものかというお尋ねでありまして、結局、財政と企業と消費、そのどこにどういうふうに配分されるかということになるわけだと思いますが、できるだけ財政が、また企業が、能率向上によってそれを吸収していくというのが、そうあるべきほんとうの姿だと思いますが、しかし、消費だけが完全にそれから自由でなければならないと考えることには、多少やはり問題があるのではないだろうか。なるべくそういう方向でなければならないという御指摘につきましては、私どももそう努力すべきものだと思います。(拍手)
○副議長(安井謙君) 先刻の小野明君の質疑に対する小林法務大臣の答弁中、不穏当な言辞がありますれば、速記録を調査の上、議長において適切な措置をとります。
 これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
     ―――――・―――――
○副議長(安井謙君) 日程第二、一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案(趣旨説明)。
 本案について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者からその趣旨説明を求めます。山中国務大臣。
   〔国務大臣山中貞則君登壇、拍手〕
○国務大臣(山中貞則君) 一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
 本年八月十四日、一般職の国家公務員の給与について、俸給表を全面的に改定し、調整手当を改正すること等を内容とする人事院勧告がなされたのでありますが、政府としては、その内容を検討した結果、人事院勧告どおり、五月一日からこれを実施することが適当であると認めましたので、この際、一般職の職員の給与に関する法律等について所要の改正を行なおうとするものであります。
 まず、一般職の職員の給与に関する法律の一部を次のとおり改めることにいたしました。
 第一に、全俸給表の俸給月額を引き上げることにいたしました。この結果、俸給表全体の改善率は平均一〇・七〇%になることになります。
 第二に、調整手当について、現行の甲地のうち、人事院規則で定める地域及び官署における支給割合を百分の六から百分の八に引き上げるとともに、これらの地域及び官署以外の地に在勤する医療職俸給表(1)の適用を受ける職員等については、当分の間、その在勤する地域等の区分にかかわらず、一律に百分の八の調整手当を支給することにいたしました。また、転勤等により調整手当の支給割合が減少する場合または調整手当が支給されなくなる場合の異動保障期間を二年から三年に延長することにいたしております。
 第三に、今回、新たに住居手当を設けることにし、公務員宿舎の入居者等を除き、みずから居住するため住宅等を借り受け、月額三千円をこえる家賃を支払っている職員に対し、その家賃の額と三千円との差額の二分の一の額を、三千円を限度として支給することにいたしました。
 第四に、隔遠地手当を改め、その名称を特地勤務手当とし、離島その他の生活の著しく不便な地に所在する官署として人事院が定める特地官署に勤務する職員に対して、俸給及び扶養手当の月額の合計額の百分の二十五をこえない範囲内で人事院規則で定める額を支給することにいたしました。また、職員が異動し、その異動に伴って住居を移転した場合において、当該異動後の官署が特地官署または人事院が指定するこれらに準ずる官署に該当するときは、これらの職員に対し、異動後三年以内の期間、特別な場合にあっては、さらに三年以内の期間、特地勤務手当に準ずる手当を支給することにし、その支給額は、俸給及び扶養手当の合計額の百分の四をこえない範囲内の額とすることにいたしました。
 第五に、期末・勤勉手当について、六月に支給する支給額をそれぞれ〇・一月分ずつ増額することにいたしました。
 その他、初任給調整手当、通勤手当及び宿日直手当の改正等を行なうこととするとともに、さらに、五十六歳以上の年齢で人事院規則で定めるものを越える職員の昇給について、当該年齢を越えることになった日以後における昇給期間を十八月または二十四月を下らない期間とすることにして、昇給制度の合理化をはかることにいたしました。
   〔副議長退席、議長着席〕
 以上のほか、昭和三十二年法律第百五十四号、一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律及び昭和四十二年法律第百四十一号、一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律の附則の一部を改めて、暫定手当制度を廃止することにいたしました。
 以上が一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)
○議長(重宗雄三君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。山崎昇君。
   〔山崎昇君登壇、拍手〕
○山崎昇君 私は、日本社会党を代表して、ただいま趣旨説明のありました一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案に関連して、公務員の賃金に対する政府の基本的な見解について、若干の質問を行なうものであります。
 本年度の人事院勧告は、七〇年代の新たな前進を目ざして戦った春闘の成果と、二百五十万公務員労働者が統一して戦った結果として、要求が多少反映したものと言うことができるのでありますが、長年にわたる低賃金と激しい物価高、さらには、生活様式の急速な変化を社会的にしいられている公務員労働者の苦しい生活実態から見れば、赤字の一部を解消することにはなり得ても、生活を改善するものとはならず、公務員労働者の切実な統一賃金要求に照らすとき、不満と言わざるを得ないのであります。
 特に今回の勧告は、大多数の下積み職員にはわずか四千円から八千円ほどの引き上げであるのに比べ、次官、局長クラスのいわゆる高級公務員は、一般職の水準をはかるに上回り、特に次官に至っては実に三〇%に近いけたはずれの賃上げをしているのであります。世論を代表するといわれる新聞、テレビの社説、論説等もこの点を指摘し、「常識はずれの上厚下薄」、あるいは「トップのお手盛り」と論断しているのであります。さらには、わずか六億円しか節約にならないといわれるいわゆる高齢者の昇給延伸を実施しようとして多くの公務員労働者の憤激を買っているのであります。
 政府は、昨年来の公約どおり完全実施の方針をとったのでありますが、人事院発足以来二十三年、人事院が実施時期を明記して勧告してから実に十一年の歳月を経て、ようやくにして実現したものであります。まさにおそきに失したと言うべく、この間における公務員労働者の経済的損失は実に四千億円と算定されているのであります。
 また、政府は、新経済社会発展計画の中で、賃金指標を設定し、賃金水準の上昇を年一二・一%程度に誘導したいという所得政策的意図も示しているのでありますが、人事院勧告制度という最大の安定賃金制度に公務員賃金を縛りつけ、経済計画のワク組みの中に押し込もうとしているものと思われるのでありますが、七〇年代における公務員賃金のあり方並びに公務員賃金の決定方法等について、まず、総理の所信を承りたいのであります。
 次に、ただいま提案されております給与法案の中に、高齢者の昇給延伸の措置が含まれているのでありますが、この措置は、該当する高齢職員の現在及び将来にわたる生活と権利にかかる重大な勤務条件の変更であり、さらには給与、任用の制度と運用全般にかかわる重大問題であると思うのであります。特にいま高齢層といわれる年齢に達している者は、戦前、戦中の日本社会の激動の中で数々の辛酸をなめ、戦後の悪条件の中で公務に精励してきた功労者なのであります。しかるに、給与面では、途中採用による減俸措置、あるいは昭和三十二年の給与改定以前の頭打ちなど幾多のたび重なる損失をこうむり、近年の給与改善によっても、なお回復されていない状態にあるのであります。このため、普通昇給による給与の増額は欠かすことのできない予定収入であり、これの停止あるいは減額措置は家計に深刻な打撃になることは申し上げるまでもありません。加えて、現行の年金制度及び退職手当制度は、俸給月額を基礎に算定される結果、普通昇給の増減がそのまま現在及び将来の所得にはね返る仕組みとなっており、それだけに昇給制度の意義と役割りは大きく、軽々しく変更させてよいものではないと思うのでありますが、この措置を撤回する意思はないか、見解を聞きたいのであります。
 次に、退職手当の問題についてお尋ねいたします。国家公務員の退職手当制度は、公務員の勤続に対する報奨と退職後の生活を保障することを目的としていることは言をまちません。ひとり高級公務員のみが多額の退職金を握り、しかも天下りして優雅な余生を送っていることは多くの批判の的となっておりますが、大多数の公務員は、在職中の低賃金とも関連し、その額がきわめて低いため、退職後の生活保障になっていない現状にあるのみならず、再就職の機会をさがし回らなければならない状態にあるのであります。現行の退職手当は、昭和三十四年に定められて以来、すでに十年以上も経ており、多くの矛盾が山積しているのでありますが、今後いつごろをめどに解決される考えか、また退職手当を含めた高齢者問題がどうあるべきなのか、その施策を示すことが先決であると思うのでありますが、所見を承りたいのであります。
 次に、大蔵大臣にお尋ねいたします。例年、八月に人事院勧告が出され、年末に臨時国会が開かれて給与法案が審議され、年内ぎりぎりに差額が支給されるのが何か恒例のごとくなっているのでありますが、六カ月分も七か月分も差額が支給されるということは、政治的にも決して好ましいことではないと思うのであります。現在、公務員の給与改善に要する経費は、一般会計予算の中に五%を組み、残りを予備費で対処する形式をとっておるのでありますが、過去における経験値、趨勢値等を見ながら、当初予算に一般財源として組み込み、勧告後、直ちに内払いができる予算制度が確立できないかと思うのでありますが、今後、給与改善費をどう当初予算に組み込んでいくかという基本的な問題とあわせて見解を聞きたいのであります。
 また、去る八月二十五日、政府は人事院勧告の取り扱いを決定した際、給与改定財源の一部に充てるため、行政経費の八%削減をもあわせてきめておりますが、前例のない高率の節減率で、はたして行政効率が落ちないかとも思うのでありますが、本年度の財源措置をどうするのか、補正予算を組むのか組まないのか、お答えをいただきたいのであります。
 次に、人事院総裁にお尋ねいたします。まず、実施時期の問題であります。人事院は、四月調査八月勧告の方針のもとに、三十五年以来五月実施を勧告しているのでありますが、民間の春闘や公労委の仲裁裁定はいずれも四月から実施しているのでありまして、名実ともに民間給与との均衡をはかるためには、四月実施が当然だと思うのでありますが、今後の人事院の方針について伺いたいのであります。
 次に、指定職俸給表の格づけ変更に伴う下位等級者の底上げ問題についてお尋ねいたします。昭和三十九年の指定職俸給表の設定により、高級公務員につきましては一般職俸給表と分離したのでありますが、本省局長クラスは、当初二等級であったものが、この制度の創設により一段階上位の一等級にランクされ、その後、いわゆる一局削減によって指定職乙に格上げし、今回さらに甲に移行するという、実に五年間に三段飛びの運用となっており、実質的に賃上げを運用面でも実行しているのであります。その反面、下位等級の職員につきましては、三十二年以来ほとんど一定のワクに閉じ込めているのであります。このようなことは、公務員に非常な不信感を与え、上級職と下級職との間に断絶を画す以外の何ものでもないと思うのでありますが、高級公務員の職務評価をどう変えたのか、今後、下位等級につきましてもバランスのとれた底上げを行なうのかどうか、聞いておきたいのであります。
 次に、年金制度についての意見についてであります。国家公務員の利益擁護の責務を負う人事院としては、高齢層職員の給与、任用あるいは退職条件等の全般的な待遇問題について慎重に検討しなければならなかったのではないかと思うのであります。特に、退職後の所得保障である年金制度につきましては、国家公務員法に、国会及び内閣に意見申し出の権能が与えられているにもかかわらず、この権能を放棄し、高齢者の昇給延伸に踏み切ったことは、片手落ちと言わざるを得ないのであります。人事院は今後この年金制度に対する権能をどうなされるおつもりか、見解を聞きたいのであります。
 また、今回の法案を見ますと、実質的な面にわたる多くの部分がすべて人事院規則にゆだねられており、高齢者の昇給延伸の当面の措置として人事院が説明していた部分が、人事院の一方的な規則の改正で変更されることは、国会を軽視するものと思われますが、人事院のいう当面の暫定措置はいつまで存続させるつもりなのか、あわせてお答えいただきたいと思うのであります。
 次に、特別給についてお尋ねいたします。人事院は、「民間における特別給の支給割合には、職務の段階等に応じて相当の差異があることが明らかとなったので、一般職国家公務員におけるこの種給与のあり方について、今後さらに検討する必要があると考える。」と、本年度の報告の中で述べておりますが、民間の特別給と公務員のそれとは、おのずと性格を異にしているのでありまして、これが実施されることは絶対に許さるべきではないと考えるのでありますが、総裁の見解を聞きたいのであります。
 次に、寒冷地手当についてお尋ねいたします。この手当につきましては、昭和四十三年に抜本改正があったのでありますが、衆参両院の内閣委員会における附帯決議及びその後における物価等、経済の変動に伴い、人事院としても、すでに勧告の時期にきておるものと判断されますが、いつごろを目途に勧告をされるのか、その見通しについて聞きたいのであります。
 次に、行政管理庁長官にお尋ねいたします。政府は八月二十五日、人事院勧告の取り扱いを決定した際、それまで十月あるいは十一月ごろを目途に検討していた、いわゆる第二次定員削減計画を急遽繰り上げ、一般非現業職員の三年間九%定員削減、三公社五現業並びに政府関係法人への削減計画の拡大、行政機構改革と省庁間の配置転換の強化などをあわせて決定したようであります。このことは、安上がりの政府と一方で宣伝しながら、他方では自衛官、警察官等、治安関係職員を増員し、防衛力整備計画の増強や、軍国主義復活への道を、一そう強化しようとするもの以外の何ものでもなく、勧告完全実施を口実として、そのための財政費用を新たにつくり出そうとするものと言わなければなりません。さきに、政府が決定し、実行している第一次定員削減計画でさえ、完全に消化し切れていない状態にあるにもかかわらず、さらに高率の三年九%の削減は、公務員に労働過重をもたらし、ひいては行政能率の低下をも招くものと思われるのでありますが、完全実施と定員削減との関連を、基本的にどう認識されておられるのか伺いたいのであります。
 次に、定員外職員の問題についてお尋ねいたします。私は、かつて総定員法を審議した際、佐藤総理に定員外職員の問題についてお尋ねいたしました。その際、総理は定員外職員の存在にさえ驚いたのでありますが、その実態を調査し、すみやかに対策を講ずることを約束しているのでありますが、その後一年半たった今日まで、対策を講ずるどころか、いまだその調査結果すら公表されていない状態にあるのであります。その約束はどうなったのか、また、この定員外職員の問題を放置して、いたずらに定員削減のみを急ぐ政府の無為無策は、まさにここにきわまったと言っても過言ではないと思うのであります。この定員外職員の定員化についてどのようになされるのか、また、身分の確立、労働条件の改善など、本年三月二十八日、本院予算委員会における私の提案に、どのような対策を講ぜられるのか、総理並びに行政管理庁長官の所信をお聞きしたいのであります。
 次に、自治大臣にお尋ねいたします。申し上げるまでもなく、地方公務員の給与制度につきましては、地方公務員法により、「生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定められなければならない。」となっているわけでありまして、従来、国家公務員について給与改定が行なわれる場合は、地方公務員につきましても、これに準じて給与改善が行なわれることが通例となっております。しかしながら、地方公共団体にも人事委員会が置かれ、地方公務員の給与のあり方なり、給与改善の勧告等を行なっているのでありますが、この機関が現在どのように積極的にその機能を果たしているのか、また、自治省として今後この人事委員会制度をどう運営されていくのか、基本的な問題としてお伺いいたしたいのであります。
 次に、先ごろ自治大臣の私的な研究機関である地方公務員給与問題研究会が、二年にわたる調査研究を終え、報告書をまとめたようでありますが、この結論の是非はともかくとして、都道府県、市町村を通じて技能職員につきましては、国の同職種の職員の給与水準を基準としてきめられていますが、たとえば清掃、給食等に従事する職員のように、地方団体特有の職員につきましては、その労働需給の関係から、民間の同職種の相場的な賃金水準が形成されているときには、それによることが適当と指摘し、同時にまた、給料表、昇給制度等の給与制度につきましても、そのあり方を指摘しているのでありますが、今後どう取り扱われるのか、お尋ねをいたします。
 最後に、公営企業関係職員の賃金及び財源についてお尋ねいたします。本来、公営企業関係職員の賃金は団体交渉で決定すべきであります。しかるに政府は、この団体交渉を実質的に制限するような指導、さらには賃金改定について圧力とも思われるような指導を行なっているようでありますが、私どもはこのようなやり方を絶対に認めることはできません。国家公務員、地方の大多数の公務員が人事院勧告等により給与の改定が行なわれようとしているとき、ひとり公営企業関係職員のみが、やっと昨年の改定に準じて改定している状況であるのでありますが、今後、これらの職員の給与改定について、政府としてはどうあるべきだと考えておられるのか。また、自治体財政と関連をして、給与財源についてどのように措置しているのか、あわせてお答えを願いたいのであります。
 お尋ねしたいことは多々ありますけれども、時間の制約もあり、詳細は委員会の審議に譲ることにいたしますが、政府は、公務員労働者が生活に不安を感ずることなく、安心して公務に専念できるよう、労働条件の改善に最善の努力を払われるよう強く要請いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
○国務大臣(佐藤榮作君) 山崎君にお答えいたします。
 公務員の給与は一体どうあるべきか、こういうお話でありますが、一口に言えば、少数にして精鋭な公務員を確保し得る給与ではなかろうかと、私はかように考えます。具体的には、公務員が国民全体の奉仕者としての最大の能率を発揮し得るよう、また、その職務と責任、人材の確保等を考慮しつつ決定さるべきものであろうと、かように思います。
 次に、高齢者の昇給制限について御意見を交えてのお尋ねでありますが、高齢者に対する今回の措置は、人事院の民間給与実態調査の結果に基づいて、高齢者の官民給与格差を調整し、また、民間の昇給の実態に合わせて合理化をはかるものであり、その趣旨、内容ともに適切なものと考えます。
 また、退職金の問題でありますが、公務員の退職金は一がいに安いとは言い切れないと思いますが、御意見は御意見として承り、民間の動向、年金制度との関係をも考慮し、今後の検討課題としてまいりたいと思います。
 次に、定員外職員の定員化についてのお尋ねでありましたが、定員外職員の問題につきましては、昨年八月以来調査を進めてまいりましたが、その調査結果によりますと、いわゆる定員化の措置を要するものはないと、かように聞いております。また、処遇の改善については、各省庁におきまして、その実態に応じてできる限り善処してまいります。
 以上お答えいたします。(拍手)
   〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕
○国務大臣(福田赳夫君) お答え申し上げます。
 まず、人事院勧告と実際の支出との間に時間的なズレがある、これが妥当かどうかという御指摘でありますが、私はこれに問題があるというふうに考えております。ただ、人事院勧告がありましても、これを政府においては検討しなければならないという時間も見なければならぬ、また、国会にこれをはからなければならないという現在の法的なたてまえになっております。そういうことを考慮しますと、何らかのこれは時間的ズレが出てくる、これはやむを得ない。ただ、そのズレをあまり長くしちやならぬというお説には私も賛成でございます。まあ、総務長官の問題かと思いますが、何かそれを適当に制度的にさばくという方法がありますれば、私も積極的に御相談に応じてみたい、かように考えております。
 次の問題は、予算編成上、人事院勧告を予想しまして、現在五%の額をあらかじめ見積もっております。これが妥当かどうかというようなお話でございますが、私はこれは妥当である、かような制度を導入いたしましたことは、私はこれは大きな前進だと、こういうふうに考えております。まあ、五%がもっとふえないかというような感じをお持ちかもしれませんけれども、五%にいたしましても、もしこれで不足であるという場合が出ますれば、これは他の方法によって必ず善処をする、こういうことにいたしておりますので、支障はありませんです。
 次に、今回の人事院勧告を完全実施する財源といたしまして、八%の行政経費の節約をやろうとしておる、それで一体、行政はうまくいくのかというお話でございますが、これはかなり行政府としては窮屈な思いをするんです。しかし、それをいたしましても、とにかく完全実施をいたしたい、かように考えておりますので、御了承願いたいと存じます。
 なお、補正予算を組むかというお話でありますが、おそらく増ワク補正を組むかと、こういうことかと思うのでありまするが、財源対策上増ワク補正を組む必要が生ずるかどうか、いま検討しておる最中でございますが、見通しといたしますと、どうも増ワク補正を組まないといかないのじゃないかというふうな感じがいたしております。いずれにいたしましても、来年二月ごろの時点において、最終的な結論を出したい、かような考えでございます。(拍手)
   〔国務大臣荒木萬壽夫君登壇、拍手〕
○国務大臣(荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。
 まず、人事院勧告の完全実施に関連して公務員の定員削減を決定したが、妥当ではないと思う、どう考えるかということであります。本年八月二十五日の閣議決定において、新たな定員削減計画の策定を決定しましたが、これは行政需要の変動に即応した合理的な定員の再配置を推進していくために、現在の三年五%削減計画に引き続き、新たに計画的な削減を実施する必要があると考えたことによるものであります。
 なお、国家公務員の給与改定に関する人事院勧告の完全実施が行なわれることとなれば、公務員として従来にも増して能率の向上につとめ、国民の負担を軽減するための努力を払うべきであると考えましたが、この努力を具体化する措置として新たな定員削減計画を策定することは、まことに適切な措置であったと考えます。
 次に、定員外職員の問題でございますが、総理からお答えがありましたので、多くを申し上げることはないと思いますが、ちょっと補足さしていただきます。定員外職員の問題については、昭和四十四年八月以来、昭和三十六年二月二十八日閣議決定、「定員外職員の常勤化の防止について」の実施状況等について、各省庁において調査を行ないました。先般その調査結果の取りまとめを終えましたが、この調査結果によりますと、常勤化防止の閣議決定は各省庁において忠実に順守されており、定員外職員の従事している業務で定員上の増員措置を要するとされたものはございません。今後とも常勤化防止の閣議決定を順守することが必要であると考えております。(拍手)
   〔国務大臣秋田大助君登壇、拍手〕
○国務大臣(秋田大助君) 地方公務員の給与制度が国家公務員のそれに準ずべきとするところの地方公務員法あるいは教育公務員特例法、警察法のこれらの該当規定は、当然地方の人事委員会をも拘束する、それが順守さるべきものでございます。そこで、地方の人事委員会は、国家公務員の給与改定の勧告が出れば、それに準じて、もう活動の余地があまりないんじゃないかという御趣旨かとも存じますけれども、準ずるにいたしましても、そこに幅もございますし、具体的ないろいろの問題点につきまして適正な措置を講ずるという必要性も十分考えられるのでありまして、これらの点につきまして、人事委員会が適正に地方の事情をよく考えて勧告をする意義が考えられるわけでございます。したがいまして、自治省といたしましては、これらの人事委員会が地方の事情をよく考慮されまして、適正な勧告をされることを今後も期待し、また、その勧告の趣旨を尊重してまいりたいと考えておるわけであります。
 なお、地方の公務員の給与制度の研究会の報告の内容をどういうふうに今後取り扱っていくかということでございます。この報告は、御承知のとおり、給与制度の根本につきまして、現在の法律のたてまえなり、あるいは政府の指導方針については変更を加える必要を認めないけれども、地方公共団体が、これらの制度の具体的適用について、地方の団体の規模あるいは種類に応じて、国家公務員の給与の制度に準ずる幅、準じ方等の具体的な方策についてはもっと考えたらいい。しかしながら、その方向を示唆しているだけでありまして、内容については具体的に述べられておりません。これらは今後の専門的な調査研究にゆだねられておるわけでございまするから、ここに専門調査研究会を設けまして、これらの給与の制度なり水準の具体化につきまして研究をし、検討をしてもらうことにいたしております。これらの研究会をただいまつくっておりまして、来年の中ごろを目途に、この研究会の調査報告書の趣旨に沿いまして、これらの具体的問題について検討発表していただきたい、こう考えて、いまそれらの活動をお願いしておるところでございます。
 なお、公営企業の給与のことについてもお話がございましたが、この点につきましては、一般の地方公務員の給与改定とはいささか趣を異にいたしまして、やはりこれらの企業は独立採算をたてまえとするものと考えております。これらの企業の職員の給与改定の財源は、やはりその企業の収益からまかなうことをたてまえとすると考えております。したがって、給与改定を必要とする場合には、企業努力によりましてやはり財源を生み出してくるというのがたてまえでなければならないと思います。安易に特別交付税等の処置によることは避けたいと思うのでございますが、しかしながら、企業内容の悪い企業につきましては、やはりこれら企業の健全化等につきましては、個々に前向きにひとつ自治省といたしましても御相談に応じてまいりたいと考える次第でございます。(拍手)
   〔政府委員佐藤達夫君登壇、拍手〕
○政府委員(佐藤達夫君) 大体六項目お尋ねがございましたが、その第一の給与勧告の実施時期の問題でございます。お話に出ましたとおり、昭和三十五年の勧告以来、私ども五月一日実施をうたってまいって今日に及んでおるわけでございますが、近年になりまして、にわかに、四月一日実施のほうが正しいのではないかというお声があがってまいりました。私どもとして、今日の段階ではまだこの五月一日実施は決して間違いではないとは思いますけれど、しかし、何ぶん事は根本問題にかかわることでございますので、私どもとして謙虚にこの問題を検討してまいりたいという所存でございます。
 次に、指定職俸給表についての御批判がございましたが、今回の指定職俸給表の改定は、特に本年四月に実施いたしました民間企業の役員給与を調べましたその調査の結果に基づきまして、少しでもこれに追いつかせようという趣旨で金額を盛ったわけでございます。これが一つと、もう一つは、これらの指定職の職員につきましては、いわゆる職務給の方向へ持ってまいりたい、徹してまいりたいということで、職務給となりますれば、もちろん昇給はございませんし、また、昇給の天井もずっと低くなるというような関係もありますが、要するに、職務給を導入しようということで、号俸の構成を一部改めたということが今回の指定職俸給表の改定でございます。もちろん、その一方におきまして、いわゆる下位等級その他の一般の方々の給与につきましても、格段の改善を加えておることは、これは申すまでもないところでございまして、なお、今後、先ほどおことばにありましたように、それじゃ等級との結びつきその他の点について基本的な検討を必要とするのではないか、これは私ども今後もなお検討を続けてまいるつもりでおります。
 次に、年金制度に関係いたしまして、特に高齢者との関連でお触れになりましたけれども、高齢者の昇給延伸の今回の勧告は、先ほど総理が述べられましたので、その趣旨はそのとおりでございます。したがいまして、この高齢層に対する措置は昇給制度の筋を通すということからきたものでございまして、それにまた尽きるわけでございますからして、決して高齢者の追い出し策をはかっておるというような点は毛頭ございません。したがいまして、年金制度との関係は、そういう趣旨から申しまして、まあ全然関係はないわけでございます。高齢者との関係ではございませんけれども、しかし、一般年金の制度の問題といたしましては、御承知のように、スライド制の問題その他たくさんわれわれとして研究課題をかかえております。これらの点につきましては、関係機関と十分連絡をとりつつ、現に研究をしておりますし、今後もなおその方面の研究を続けてまいりたい、こういう所存でおります。
 それから、次に人事院規則への委任の問題をお触れになりました。これは相当重大な問題だと思います。現在、御承知のように、国家公務員法及び一般職給与法等々をごらんになりますとおわかりになりますように、非常に幅広い委任を人事院規則に対してなされておるわけです。これは、これらの法律の特徴であろうと思いますが、なぜそのようになっておるか、結局、私の口から申しますのはたいへんおこがましいことではございますが、これは公正な中立機関としての人事院を信頼されての御立法であるというふうに考えております。したがいまして、私どもといたしましては、今後御指摘の規則を制定いたしますにつきましても、極力、独善あるいは独走ということを避けまして、戒めながら、各方面の御意見を謙虚に拝聴しながら、その御信頼にこたえたいと思っております。
 それから、次に今回の勧告の際に、報告で触れました民間における特別給の支給の問題、これをお取り上げになりましたが、この問題につきましては、今回相当顕著な事実を私ども発見いたしましたものですから、その確認をいたしましたものですから、問題をひとつ大きく提起しようということで報告の中にうたいました。したがいまして、これは問題の提起でございますからして、今後各方面の御意見を十分拝聴いたしまして、私どもも研究を進めたいという態度でおるわけでございます。
 最後に、寒冷地手当の問題についてお触れになりました。これは昭和四十三年、根本的な勧告をいたしまして、まだ年はたっておりませんけれども、しかし、もう常に、絶え間なく関係の各方面から御要望なり御意見を私ども承ってまいっております。また、私どももそれにこたえまして、絶え間なく、常時実情の調査その他につとめながら検討を続けておるわけでございます。その検討を続けた結果によりまして、勧告の必要があるというふうに確認いたしますれば、その結果によってその措置をとりたいというのが現在のかまえでございます。(拍手)
○議長(重宗雄三君) これにて質疑の通告者の発言は終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後一時二十九分散会