第068回国会 法務委員会 第9号
昭和四十七年四月十八日(火曜日)
   午前十時二十三分開会
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   委員の異動
 四月十八日
    辞任         補欠選任
     重宗 雄三君     金井 元彦君
     木島 義夫君     内藤誉三郎君
     星野 重次君     黒住 忠行君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         阿部 憲一君
    理 事
                後藤 義隆君
                原 文兵衛君
                佐々木静子君
    委 員
                金井 元彦君
                黒住 忠行君
                内藤誉三郎君
                平井 太郎君
                吉武 恵市君
                加瀬  完君
                野々山一三君
                松下 正寿君
   衆議院議員
       法務委員長代理
       理事       大竹 太郎君
       法務委員長代理
       理事       中谷 鉄也君
       法務委員長代理
       理事       沖本 泰幸君
       法務委員長代理  塚本 三郎君
   国務大臣
       法 務 大 臣  前尾繁三郎君
   政府委員
       警察庁刑事局長  高松 敬治君
       法務省刑事局長  辻 辰三郎君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        二見 次夫君
   説明員
       警察庁警備局参
       事官       斉藤 一郎君
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  本日の会議に付した案件
○火炎びんの使用等の処罰に関する法律案(衆議
 院提出)
○参考人の出席要求に関する件
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○委員長(阿部憲一君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 火炎びんの使用等の処罰に関する法律案を議題といたします。
 まず、衆議院法務委員長代理理事大竹太郎君から趣旨説明を聴取いたします。
○衆議院議員(大竹太郎君) 火炎びんの使用の処罰に関する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
 この法律案は、最近における火炎びんを使用する不法事犯の実情等にかんがみ、火炎びんの使用、製造、所持等の行為について特別の処罰規定を新設しようとするものであります。
 ここ数年来、一部不法分子は、各地においてきわめて過激な集団的組織的な不法事犯を繰り返しておりますが、その際、いわゆる火炎びんが主たる凶器としてしばしば使用され、その結果、これまで、多数の警察官や一般人の死傷をみているほか、各地において、官公署、民間の施設や車両の炎上等、多大の被害が発生し、社会一般にも大きな不安を惹起していることは、すでに御承知のとおりであります。
 ところで、火炎びんは、ガソリン等引火しやすい物質をガラスびんその他の容器に入れ、これに発火装置または点火装置を施したもので、人の生命、身体または財産に害を加えるのに使用されるものをいうのでありまして、きわめて危険な凶器であるのみならず、正当な用途に使用される余地は全く存しないものであります。
 しかして、現行法制のもとにおいては、このような火炎びんは爆発物取締罰則にいう爆発物に当たらないとされており、火炎びんの使用、製造または所持等を、直接処罰の対象とする刑事罰則は存在せず、また、その他既存の罰則をもってしても、火炎びんを使用する不法事犯を的確に処罰するには種々の難点がみられるのであります。
 このような観点から、火炎びんの使用等について特別の処罰規定を設け、もってこの種不法事犯の防遏に資するとともに、社会不安を一掃し、法秩序の維持に寄与するため、この法律案を提出することとした次第であります。
 この法律案の骨子は、次のとおりであります。
 第一点は、まず、火炎びんの定義を定めたことであります。
 現在、使用されている火炎びんは、性能・構造等多種にわたり、その内容は必ずしも一定しておりません。
 そこで、まず、この法律の適用範囲を明確にするため、火炎びんの定義規定を設けたものであり、この法律において火炎ぴんとは、単にガラスびんその他の容器にガソリン、灯油その他引火しやすい物質を入れたものというだけでなく、その物質が流出または飛散した場合に、これを燃焼させる発火装置または点火装置を施したもので、人の生命、身体または財産に害を加えるのに使用されるものとしたのであります。
 第二点は、このような火炎びんの使用、製造、所持等を処罰することとした点であります。
 このような火炎びんは、さきに申し上げましたように、きわめて高度の危険性を有する凶器であるのみならず、正当な用途に使用される余地の全く存しないものであり、ひとたびそれが使用される場合には、不特定、多数人の生命、身体または財産にも危険をもたらすものであります。そこで、このような火炎びんを使用して人の生命、身体または財産に危険を生じさせた者を七年以下の懲役に処することとするとともに、その未遂をも処罰し、また、使用に至らなくとも、このような火炎びんを製造、所持した者について、三年以下の懲役または十万円以下の罰金に処することとしたものであります。
 このほか、火炎びんを使用する不法事犯の事態にかんがみ、火炎びんの製造の用に供する目的をもって、ガラスびんその他の容器に引火しやすい物質を入れたもので、発火装置または点火装置を施しさえすれば火炎ぴんとなるものを所持した者についても、火炎びんを所持した者と同様に処罰することとしたものであります。
 以上が火炎びんの使用等の処罰に関する法律案の趣旨であります。
 何とぞ、慎重に御審議の上、すみやかに御可決くださいまするようお願いいたします。
○委員長(阿部憲一君) これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
○佐々木静子君 まず、この本案審議にあたっての私どもの立場というものを申し上げたいと思います。
 本法案は、十四日に衆議院を通過いたしまして参議院に送付されたものでございまして、このような治安立法につきまして、特に人権問題に関係する部分のきわめて多い本法案におきまして、十分に検討し、慎重に審議を重ねていきたいと私ども考えておったわけでございます。ところが、沖繩返還を目の前に控え本法律をあるいは適用せねばならぬというようなことが予測されるのかもしれぬというようなきわめて便宜的な考え方から、まことにわずかな期間で審議をなさなければならないというようなことは、実はまことにもって遺憾に考えている次第でございます。
 こうした立法、特に憲法の基本的原理としているところの人権の尊重ということにきわめて微妙な関係を有するこの種法案につきまして、私どもはこれは憲法あるいは刑法の学者あるいは法律の実務家の意見も十分に聞き、かつ特に主権者である国民、この法案が成立することによって取り締まりの対象となるやも知れぬ国民の意向を十分に検討した上で、本案の審議に取り組みたいと考えておったわけでございます。今後特にこの種の治安立法に関しましては、十分に審議を尽くした後に採決に入ることをあくまで私どもの基本的な原則として確立していきたいということを、私どもの立場として本件審議にあたる前提としてこのことを確認いたしまして、これから質問に入りたいと思います。
 まず、提案者に伺いたいと思います。大竹先生からいまいろいろと御説明を承りましたわけでございますが、この法案はさきに、昭和四十六年の十二月三十日、火炎びんの使用等の処罰に関する法律案として高橋英吉先生はじめ八名の方々を提出者として議案が提出されておったようでありますが、現在衆議院を通過して、本日いま御説明のございましたこの法案は、その当時と比べますと、修正されているのかどうか。また修正されたとすればどの部分がどのように修正されたのか、御説明いただきたいと思います。
○衆議院議員(大竹太郎君) いまお話がございましたように、この法案は、人権に関する等のことから非常に慎重にやらなければならない問題でございますので、まあ、いままでのこの種法律のあり方からいたしますと政府提案でなされるべきものかと存ずるわけでございますが、御承知のように、昭和四十四年以来非常にこの過激派学生の火炎びんによる闘争、したがってまた、これによる被害というものが頻発をしてまいりまして、ことに御承知のように、去年の後半以来激化してまいりまして、警察官が四名もこのために犠牲になるというようなことからいたしまして緊急にこの種の法案の必要性を痛感いたしたわけでございますが、先ほど申し上げましたように、政府提案ということになりますとなかなかその手続がかかるわけでありまして、たとえば法制審議会の議を経なければならないというようなこともございまして、率直に申し上げまして、緊急に提案することはなかなかできないというようなことからいたしまして、自民党といたしましては、いま申し上げましたような数名の者が発案者になりまして提案をいたしたわけでございます。
 ところが、この審議を相当重ねまして四月の十二日に至りまして野党の皆さん方とも種々協議をいたしました結果、この第二条の罰則の「七年以下」と、こうなっており、実は原案では「十年以下」と、こうなっておったのでございますが、これを「七年以下」に――重過ぎるので七年にすべきだという意見。したがいまして、この原案は「十年以下の懲役に処する。」ということになっておりましたが、野党の皆さん方とも協議をいたしましてこれは重過ぎるということで「七年以下」ということに訂正をいたしたわけであります。
 いま一つは、この第三条の二項でございますが、この三条の二項には、御承知のように、これはお手元へ行っていると思いますのでごらんをいただきたいと思いますが、こうなっておりますが、最初出しました原案には、「火炎びんの製造の用に供する目的で、ガラスびんその他の容器にガソリン、燈油その他引火しやすい物質を入れた物を所持した者も、前項と同様とする。」というふうになっておりました。一口に申しますと非常にばく然として範囲が広い。これでは先ほど質問者がおっしゃいましたように、非常に人権を、何といいますか、侵害するおそれがあるのではないかということからいたしまして、ごらんのような「発火装置又は点火装置を施しさえすれば火炎ぴんとなるものを」云々というふうに訂正をいたしまして、まあ第二条のいわゆるこの「十年」を「七年」にしたということと、第三条の二項をいま言いましたように、範囲を縮めまして人権侵犯の事項が起こらないように配慮したと、この二点を改正いたしまして、自民党その他野党全員が賛成ということで委員長提案ということにいたしたわけでございます。
○佐々木静子君 いま人権侵害が起こらないように御配慮の上改正なさったという御説明を承ったのでございますが、次に同じ提案者である中谷先生のほうにお伺いしたいと思うのでございますが、本法案が火炎びんの取り締まりに関する法案としてベストの法案であるかどうか、法律であるかどうか、どのように考えていられるか、お述べいただきたいと思います。
○衆議院議員(中谷鉄也君) 本法案を、結局先ほど大竹委員のほうから御説明申し上げましたように、衆議院において委員長提案として現在参議院で御審議をいただいているわけでありまするが、ベストであるかどうかという点については直ちにお答えいたしかねるわけでありまするけれども、先ほど申し上げましたように、本法案の持っておりますところの緊急性、法案の合理性、必要性等を勘案をいたしまして、衆議院といたしましては、この法案が少なくともベターである、こういうふうに考えている次第でございます。
○佐々木静子君 いまこの法案がないよりもあるほうがベターであるということに承ったのでございますが、この緊急性、合理性ということから、まあベストということよりもその緊急性ということにウエートを置いて衆議院でも御審議なさったわけでございますか、どうですか。
○衆議院議員(中谷鉄也君) 重ねてお答えを申し上げます。
 この法案の持っております必要性、合理性、緊急性等を勘案をいたしまして本法案の成案を得た、こういう趣旨でございます。
○佐々木静子君 かりにベストでないとお考えになるとすれば、この法案のうちのどのあたりが一番問題になるとお考えになりますか。
○衆議院議員(中谷鉄也君) 先ほど佐々木委員御指摘のありましたとおり、本法案が国民の基本的人権に重大な影響を持つ法案であることは御指摘のとおりであります。治安立法であるという御指摘もそのとおりであろうかと思います。そういたしますると、この法案の運用の面において、法案適用の面において、基本的人権を侵害しないような非常な配慮がなされねばならない、こういう趣旨で先ほどから申し上げている次第でございます。
○佐々木静子君 そうすると、この法案を運用する面において、特に基本的人権を十二分に尊重していかなければならないということにつきましては、提案者としても十分にその点御認識なさり、強調なさっているわけでございますね。
○衆議院議員(中谷鉄也君) 衆議院におきましては、特にその点につきまして決議をいたしました。そういう点からもこの法案の必要性、緊急性、合理性を勘案しつつ成案を得たわけでございまするけれども、同時にこの法案の持つ運用、適用の面においていやしくも基本的人権を侵害してはならないという点について十分な配慮あってしかるべきもの、こういうふうに考えておる次第でございます。
○佐々木静子君 ありがとうございました。
 そうすると、先ほど来提案者のほうから本法案についての提案理由を伺ったわけですが、次は警察庁にお伺いしたいと思うわけです。警察庁の方おられますね。
 この提案理由を拝見いたしますと、「ここ数年来、一部不法分子は、各地においてきわめて過激な集団的組織的な不法事犯を繰り返しておりますが、その際、いわゆる火炎びんが主たる凶器としてしばしば使用され」ているというふうに本法案の提案説明にございますが、取り締まり当局としてもやはりそのようにお考えになりますか。
○政府委員(高松敬治君) この法律案関係の資料の中にも数字をあげてございますけれども、特に昭和四十五年以来非常に火炎びんの使用が激しくなった、大量使用が行なわれるようになった、そういうふうな事態から私どもとしてはこういう法律がもし成立すればこれらの事態に非常に対処することができるというようなふうに考えております。
○佐々木静子君 いまそういう不法分子が昭和四十五年以来ふえているというお話でございますが、具体的にこの火炎びんを使用して犯罪を犯した者というのはまず年齢的にどういう人が多いか、職業的にどういう人が多いか述べていただきたい。
○説明員(斉藤一郎君) いま年齢的、職業的な区分をお尋ねでございますが、正確な統計的な資料をいま手元に持ち合わせておりませんが、私どもいままで事件を取り扱ってきた経験から申し上げますと、年齢的には二十歳前後の若い方々が多うございます。三十歳をこえた方というのはほとんど見当たらないように記憶いたしております。大体十八歳くらいの要するに大学に入った前後の年齢の方、若いほうは高校在学の方、それから少し年がいっておれば大学を卒業しておる方、こういうぐあいに、心得ております。それから職業的には学生もございますし、それから一部労働関係の仕事をなさっておる方々、あるいはもう仕事は何も・やっておらないが、こういうことに関心をお持ちになっておる方々、あるいは中には一部小企業の仕事をやっておられるような方がおられることもあったように記憶いたしております、まことに不十分でございますけれども。
○佐々木静子君 この火炎びんを最もよく使用している方たちというものは表現の方法はいろいろあると思うんですが、要するに過激派グループと呼ばれているのか、あるいは新左翼ということになるのか、私その定義が十分わからないのでございますが、小山内宏さんのお書きになっていらっしゃる主婦と生活社から出版しております「都市ゲリラ」という本を見ますと、これはことし出版されたものですが、この本によりますと過激派のグループ勢力というものについて警視庁では次のように推定しているということで、革マル派、中核派、社学同、赤軍派、ML派、反帝学評、学生インター、プロ軍団、共学線、フロント、プロ学同、民学同、日共左派、これは京浜安保共闘を含むというふうに書いてございますけれども、こういうふうないまのこの分類以外の系列があるのかないのか。そうしていま述べましたような、この本によりますといわゆる過激派グループということになっておりますが、そういうグループがいつ発生し、いつどのように系列化されていったのか。そうしてこのグループのどのグループがいつどのようなときにこの問題になっている火炎ビンを大量に使用したのか。そういう資料は警察庁のほうにあるはずだと思うんですが、そういう資料はございますか。
○説明員(斉藤一郎君) この火炎びんを使用した者たちが、大体においていま御質問ございましたように、私どもが過激派分子と称している者の中におります。この提案理由の中に「一部不法分子」とございますが、その人たちは、私どものつもりでは、私どもが過激派集団と称しておる者のことを表現しておるのかと思いますが、そこでお尋ねの、この者たちの系列、数というものでございますが、まず系列でございますけれども、これは俗にまことに大ざっぱな言い方をしますと、五流二十一派と称しまして、大きな流れが五つばかりございますが、それがさらにセクトに分かれていって五流二十一派と、二十一もいまある。さらにそれがお互いにいつも流れが変わっておりまして、正直なところ、私ども専門にこういうことを扱っている者もなかなか一口にここで御説明申し上げるだけの記憶をしておりませんくらいにたいへん派閥抗争がひどうございまして、その中でも特に過激なのは、これはわりに簡単でございますが、先般来問題になっておった赤軍派、それから共産同RGと書いてエル・ゲーと読んでおるのでありますが、共産同RG、京浜安保共闘、日共左派神奈川県委員会と、こういうのですけれども、京浜安保共闘と俗称しております。そういったものが、これは中でもウルトラCのような超過激派でございます。それからそのほかに、いわゆる中核派あるいは共産同戦旗派あるいは共産同ML派といったような非常に過激な傾向を持っておるものもございます。
 この連中の実際の数はどのぐらいあるかということでございますが、これはまことにつかみずろうございまして、各派ごとに変動があって、しかも御案内のように学生が主体になっているものが多うございますので、常に新しい分子がふえてくるし、古いものは脱落していくということで実態がなかなかつかめませんが、たとえば赤軍派などについては大体関係しておる者は合法、非合法合わせて三百名前後あるんじゃないか。ただ、地下組織に入って先般来の連合赤軍の一部になったものはそのうちのほんの数十名ぐらいだろうというふうに考えております。
 以上申し上げます。
○佐々木静子君 いま大まかな、先ほど説明にあった不穏分子の実態というものを伺ったわけでございますが、これはこの火炎びんのこの法案が必要であるかどうかということを考えていく上において、この使っているグループの実態というものを私ども把握しなければこの是非を論ずることは、これは困難であると思いますので、いま口でお答えいただくということはたいへんだと思いますので、これは次の委員会までにぜひとも過激派グループの実態というものについていま申し上げましたように、その系列、そして現勢力、それからこの火炎びんをどのグループがいつおもに使ったかというような一覧と申しますか、そういうようなものを資料としてぜひお出しいただきたいと思います。お出しいただけますね。
○説明員(斉藤一郎君) 先ほど大ざっぱに申し上げましたが、もう少し詳しい、ごらんになっていただいてわかるものは差し上げることができると思いますが、実態が十分私どもも取り締まり上非常に必要なことでございますが、把握できておらないので御満足いただけるかどうか懸念がございますけれども、なるたけわかっている限りのものを差し上げたいと思います。
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○委員長(阿部憲一君) この際、委員の異動について報告いたします。
 本日、重宗雄三君が委員を辞任され、その補欠として金井元彦君が選任されました。
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○佐々木静子君 それでは警視庁がおわかりになっている限度でその責任において、ぜひとも資料を委員会にお出しいただきたいと思います。
 それからいま提案理由の中にございましたけれども、この法案がなければこの火炎びんに対する犯罪が十分に取り締まりできなかった、検挙できなかったというふうな、検挙できないというような提案者のお話でしたが、捜査当局としてもそれは事実とお認めになるわけでございますか。
○政府委員(高松敬治君) 先ほど提案理由の御説明の中にもございましたが、爆発物につきましては爆発物取締罰則という法律がございまして、たいへん古い法律でございますけれども、これによって統一的処理がなされておる。ところが火炎びんにつきましては、火炎びん自体が何ら世の中の一般の役に立つもの、ほかの用途に使うという余地の全くない、ただ人の生命、身体、財産に害を加えるということ以外にしか使われないものであるにもかかわらず、これに対する一般的な処罰規定がない。その危険度あるいはその効力というものから比べれば、爆発物よりはやや弱いかもしれませんけれども、それに匹敵する危険性を非常に有しておる、こういうものからいって爆発物取締罰則に対応するような処罰法規がないということがそもそも根本的に問題であろうかと思います。もろろん現在まで、現行の法規によりましていろいろ、あるいは兇器準備集合罪により、あるいは軽犯罪法により、あるいは放火罪――放火殺人という結果が出ました場合には、そういうふうな罪名を適用してそれぞれ処罰をしておることは事実でございますけれども、何としても一般的な処罰規定がないということはどうしてもつぎはぎな処置にならざるを得ない、そういう点から申しまして、私どもはこういう統一法規があってしかるべきものというふうに考えているわけでございます。先ほどの、過激派学生あるいは過激派集団がこういうものを使用しておるという実態は、これはもう大多数がそうでございまして、そのことを否定するつもりは毛頭ないのでございますけれども、たとえば昨年の十二月に神奈川県で暴力団の対立抗争自身に対しても、火炎びんを使用し始めた。非常に容易に製造できるものですから、今後の暴力団の対立抗争というものを考えた場合にもこういうものが使用される危険性は多分にある。それから最近はちょっと妙な事件でしたけれども、たとえば銀行ギャングみたいな形のものがそういうものを使っておるという、いわゆる一般犯罪について、そういう集団に属しないものも一つの凶器といいますか、そういうものとしてこういうものを利用しておる、こういう実態があらわれ始めております。そういう意味におきましても、私どもはそういう必要性、こういうふうに今度国会のほうでこれを御提案くだすって審議していただくということにたいへん心強く感じておる次第でございます。
 それから先ほど私の説明でしばしば四十五年以降と申したかと思いますが、これは四十四年以降たいへんきびしく、激しくなったということでございますので、もし四十五年と言っておれば、それは四十四年ということに訂正をしてお聞き取りをお願いしたいと思います。
 こまかい点については斉藤参事官から説明申し上げます。
○説明員(斉藤一郎君) いまこの法律ができて警察としてどういう取り締まり上の実益があるかというお答えを申し上げたのでございますけれども、私から一、二、こういう法律がなくて困ったという事例を御紹介申し上げたいと思います。
 まず第一の例は、多少こまかくなりますが、昭和四十六年十一月十八日に都内の大田区でパトロール中の自動車の警ら隊員が学生風の男を一人発見したのでございます。この車をとめて調べたところ、荷物台の中に火炎びんが三十本積んでありました。職務質問をしてみますと、運転免許証に書いてあるとおりの住所氏名を言う。火炎びんを持っておることは明らかでございますけれども、私どもが火炎びんの取り締まりに従前よく使います兇器準備集合罪というのは、二人以上の人がいなければいけない。これは一人しかいない、そういうことでございますし、それからもう一つは、共同して――二人以上の人間が共同して害を加える目的がなければいかぬ。この場合そういうことの立証が非常にむずかしゅうございます。そのほか放火をするとか、殺人の予備をしておるとかといったようなことについても、その目的を立証することができない、こういった場合に荷台に積んだものを結局みすみす、しかたがないということで、そのまま行ってしまうということになるわけでございます。
 そういう例が幾つもございますが、さらにもう一つ御紹介申し上げますと、ことしの二月十五日に東京の水産大学から出動要請がございまして、警察官が水産大学に出動して、中へ入っておる学生の排除にあたったわけです。ところがその際に、学生たちがたむろしていた近くに竹かごに入った火炎びん十五本を発見しました。これについても、火炎びんを発見しましたら、軽犯罪法で、隠し持っておるという要件があればいいんですが、そういう要件もないし、目の前にあっても何ともならないというようなことで、みすみす見過ごしておるという事例――まことに法律的にこまかいことでございますけれども、先ほど来御指摘の、人権を擁護するということからいえば、条件がちゃんと備わっておらないと何ともならないという非常につらい思いをするわけでございます。
○佐々木静子君 法務省当局にお伺いしたいのですが、事件が送検されてきたが、この火炎びんの使用等の法案がまだ法律ができておらないために起訴するに至らなかったというようなことはかなりあるわけですか。あるとすれば、代表的な例をおあげいただきたいと思うわけです。
○政府委員(辻辰三郎君) 検察庁の側からみました火炎びんの使用事犯の問題でございますが、火炎びんが使用されましたのは、最近では四十三年の十月の福島における日大工学部の事件からでございます。それから四十四年に非常に多くなり、また四十六年に多くなっておるということでございまして、私どもの調べによりますと、この四十三年の日大工学部放火事件からちょっとさかのぼりますが、ことしの三月十三日の自衛隊の基地侵入事件までの間に検察庁といたしまして火炎びんの使用事犯を受理いたしましたのは合計四十二件でございます。そういたしまして、この四十二件の人員を見てまいりますると、合計で一万二千九百三十三名の人員を受理いたしておりますが、そのうちで起訴いたしましたのが三千百八十名でございます。不起訴が六千百四十五名。それから先ほどのお尋ねの年齢に関係すると思うのでございますが、二千九百九十三名が家裁送致、これはこれらの事件のうちの約四分の一が少年によって犯されているという例証になろうと思うのでございます。そういたしまして、さらに六百十五名が捜査中である、かような状況になっております。
 この不起訴の六千百四十五名というものの内容がどうかという点でございますが、これは御案内のとおり、起訴猶予または嫌疑なしということになろうと思うのでございますが、その内訳は、ただいま数の上では詳細に判明いたしません。かような状況になっておりますが、それでは具体的にこの法案がないために検察庁としてはたいへん処理がしにくかった、あるいは処理できなかったという典型的な事例を一、二申し上げたいと思うのでございます。
 先ほど来警察からも御答弁がございましたように、問題は、火炎びんを公然と一人で持っておる、あるいは一人で保管している、かような場合に適切な刑罰法規がないという点が一番大きな問題点でございます。これに関連いたしまして典型的な事例といたしましては、昭和四十四年の十月二十一日の国際反戦デーの当日でございますが、二人の被疑者がほか数名とともに自宅に多数の火炎びんを準備して集合したのでございますが、これはその火炎びんはほかの者が使うために自宅で用意をしておった。用意をしておったのでございますが、この二人の者が、これが凶器準備集合罪には証拠上結びつかない。ほんとうにその現場にこの二人が行くのかどうかというのが、現場と火炎びんの保管場所が離れております関係で、この結びつきがつかないということで、相当数の火炎びんを持ちながら何ともこれは処理ができないということで、嫌疑不十分で不起訴処分ということになっております。
 さらにまた、同じ四十四年十月二十一日でございますが、他の場所でございますが、これは、一名の者が自分のアパートに約百本の火炎びんを用意をして、そしてそれを他の者を介して引き取らして、他の者がこれで騒ぎを起こして凶器準備集合その他で処理をされておりますが、肝心のこの自分のアパートに火炎びんを用意した者は、先ほど申しました事例と同じように、この騒ぎといいますか、犯行との結びつきが証明できないということで、これまた嫌疑不十分で不起訴になっておると、かような事例がございます。
○佐々木静子君 この爆発物取締罰則違反に火炎びんが――全部の火炎ぴんというわけでありませんが、通常の火炎びんが当たらない、こういう最高裁の判決が出ましたのは昭和三十一年の六月二十七日でございますけれども、それからあといま伺ったような、まあいろいろ法律がないために捜査当局としては十分に取り締まれないで困るということが起こっているようでございますが、この判決が――最高裁の判例からもうすでに十数年を経ているわけでございますが、その間なぜ法務当局とすると、この立法をお考えにならなかったのか、どういうわけでいままで放置されておったのか、その理由を述べていただきたい。
○政府委員(辻辰三郎君) ただいま御指摘のとおり、昭和二十年代後半における火炎びん事件が相当あったわけでございますが、これにつきましてはこの爆発物取締罰則をもって当時検察は処理をいたしたわけでございますが、それらの事件は先ほど御指摘の昭和三十一年六月の最高裁大法廷判決によりまして、これは爆発物取締罰則にいう爆発物でないということで、全部この火炎びんについては爆発物取締罰則の適用がなかったわけでございます。そして、この判決にも言っておりますように、火炎びんを処罰する必要があるならば別途法律をつくるべきである、かような判示もしてあるわけでございます。ところがこれまた御案内のとおり、この判決が出ましたのは昭和三十一年でございますけれども、昭和三十年代は火炎びん事件そのものが終息しておったわけでございます。そういたしまして、先ほど申しましたように昭和四十三年の十月にまたこの火炎びん事犯が出始めて今日に至っておると、こういう状況でございました。そういうことで、昭和三十年代におきましては実際の事例がなかったわけでございます。
 で、かようなことが立法の必要性というものを緊急に感じさせなかったという大きな原因であろうと思うのでございますけれども、当省の法制審議会で調査審議をいたしております刑法の全面改正作業がございます。これは昭和三十八年に法務大臣から諮問がありまして、刑法の全面改正作業をいたしておるわけでございますけれども、この改正作業の参考案としてつくられております改正刑法準備草案というものがございます。これは、その第百八十六条に「爆発物に類する破壊力を有する物を使用した者は、十年以下の懲役又は禁錮に処する。」という、こういう条文をあげておりまして、これがすなわち火炎びんをいうんだという前提で、この刑法改正作業の一環といたしまして検討はいたしておったわけでございます。ところが、この刑法改正を調査審議いたしております法制審議会の刑事法部会におきましては、この「爆発物に類する破壊力を有する物」というものは、何も火炎びんに限らないではないかと、火炎びんだけを処罰するというのであれば、これは刑法の全体系から見てふさわしくないということで、この条文を刑法の審議の対象からは落としてしまったわけでございます。
 で、こういう意味におきまして、途中でもちろん火炎びん立法の必要性を考えて、しかも議論はいたしておったのでございますが、この必要がないというのが昭和四十三年の前半でございまして、前半にそういう決定をいたしまして、その当時はまだ火炎びんの二回目の使用事犯が出てこない時期でございました。かようなわけで、一応刑法全面改正のほうは火炎びんはやめようということになっておりまして、経過いたしてまいったのでございますが、先ほど来説明がございましたように、四十三年に始まった火炎びんが四十四年に至って急激にふえてまいった。そういうことで私どもは刑法の全面改正とは切り離しまして別途特別法でこれを、この法律案を作成する必要があるかどうかということを検討してまいりました。そして昨年の昭和四十六年に至りまして、いわゆる成田闘争であるとか、沖繩闘争であるとか、これについてたいへん多くの火炎びんが使用されるに至りましたので、法務省事務当局におきましても、この火炎びんの取り締まりに関する立案をいたしておったわけでございます。その際に、国会方面におきましてこういう必要があるからこの法案を出そうということにきまりましたものでございますから、法務省事務当局としてはまことにこれはけっこうなことであるということで、国会方面の議員提案の案でお願いをするという形になったわけでございます。
○佐々木静子君 これは昨年の十二月四日付の一流紙でございますが、「政府は十一月二十日に臨時閣議を開き、火炎びん規制のために立法措置を講じ、火炎びんを使用するだけでなく、製造したり所持しただけでも処罰できるよう政府・自民党が立法作業を開始することを決めた。」というふうに、これ、法務大臣が記者会見で述べた趣旨の記事が出ているわけでございますが、これはそのとおりでございますね。
○政府委員(辻辰三郎君) 時日の点はあるいは不確かかもしれませんが、昨年の十一月二十日ごろであったと思いますけれども、議員立法の形でこの火炎びん立法が検討されることになったから、法務省当局においてもそのお手伝いと申しますか、たたき台を示せというような御指示があったことは事実でございます。
○佐々木静子君 これはそういうことであるならば、先ほど提案者の衆議院の先生からもたいへんに急いだのでという御説明がありましたけれども、なぜ法務当局が、法務省の責任においてこの法案を提出なさらなかったのですか。
○政府委員(辻辰三郎君) これは政府の最高の決定ということで私がお答えできる事柄かどうか存じませんけれども、私が私なりに理解いたしておりますのは、政府提案でまいりますと、法務省の場合には法制審議会にやはり一応諮問して、その御答申を待つというのが通例の手続でございます。昨年の十一月、特に十一月十六日の松本楼のあの放火事件があった直後でございまして、これから法制審議会の手続をとっていくということになるとこれは政府提案に至るまでに相当の日時を要するんじゃなかろうかということで、この法案の緊急性、緊要性という点から政府提案ということが見送られたのではなかろうかというふうに、私は私なりに理解をいたしております。
○佐々木静子君 それでは次の問題に移りますが、この法案の最初に、第一条火炎びんの定義というものがきめられておりますが、第一条によりますと、「ガラスびんその他の容器にガソリン、燈油その他引火しやすい物質を入れ、その物質が流出し、又は飛散した場合にこれを燃焼させるための発火装置又は点火装置を施した物で、」と、これが火炎びんの物理的な要件だと思うんです。そして「人の生命、身体又は財産に害を加えるのに使用されるもの」というふうに定義されておりますね。この物理的な要件と、あとの「人の生命、身体又は財産に害を加えるのに使用されるもの」、この二つのものが合わさった場合に火炎びんと認められるわけですね。
○政府委員(辻辰三郎君) この第一条の火炎びんの定義でございますが、ただいま御指摘のように、この前段は「容器にガソリン、燈油その他引火しやすい物質を入れ、その物質が流出し、又は飛散した場合にこれを燃焼させるための発火装置又は点火装置を施した物」であると、こういう客観的なことが書いてあるわけでございますが、これだけの定義では他に社会上の有用なものがたくさんあるわけでございます。それを勘案いたしまして、そういうもので、そして「人の生命、身体又は財産に害を加えるのに使用されるものをいう。」ということで、本件に問題になっておる火炎びんというもののぴっちりした定義が行なわれると、かような趣旨からこの定義がつくられたものと理解をいたしております。
○佐々木静子君 たとえば木に害虫がたくさんついている、この木の枝を焼いてしまわなければならないと、そういうときに、これは普通のマッチで紙くずを燃やしたんじゃ木は焼けないので、ガソリンのびんにぼろきれをつけて、火炎びんの原理を利用して木の枝を焼き取るというようなことがときどき使われているように聞いているんでございますけれども、そういう場合は、むろんこの一の要件があっても二の要件には――一といいますか、前段の要件には合っても後段の要件には合致しないからこれはむろん火炎びんには当らないわけですね。
○政府委員(辻辰三郎君) この「人の生命、身体又は財産に害を加えるのに使用されるものをいう。」の解釈でございますが、これは、社会通念上もっぱら人の生命、身体、財産に害を加えるために使用されると認められるものをいうと、そしてそれはそのものの構造、形状、機能、利用状況等から客観的に判断されるべきものであろうと、かように私どもは理解をいたしておるわけでございまして、ただいま御指摘のようなものはこの火炎びんには当たらないというふうに考えております。
○佐々木静子君 いまお話のように、機能的にまたは外形的にすべて客観的に判断される非常に厳格な判断の基準をお示しになりましたこと、たいへん構成要件がはっきりしてけっこうなことだと思うんでございますが、その「人の生命、身体又は財産に害を加えるのに使用されるもの」であるかどうかということの判断はだれがされるわけですか。
○政府委員(辻辰三郎君) これは刑事事件に当然なるわけでございますが、最終的判断は裁判所の判断によるものと考えております。
○佐々木静子君 これは刑事事件になれば、言うまでもないことですけれども、立証は捜査当局で立証責任を負われるわけですね。
○政府委員(辻辰三郎君) 当然でございます。
○佐々木静子君 この第一条の前段の要件「ガラスびんその他の容器」のこの「容器」の材質とか形態とか大きさなどについて、特にこの法文上規定されておられませんが、この解釈上制限があるのかないのか、その点をお述べいただきたいと思います。
○政府委員(辻辰三郎君) 御指摘のように、この第一条の「容器」は、何らのこの明文上は制限がないようになっております。しかしながら、この条文からも出てまいりますように、「その物質が流出し、又は飛散した場合に」云々ということでございますから、この「容器」は、この中のものが流出し、または飛散するというような構造を持っていなければならないということがこの二段目の文言から出てきておるということで、私どもはさように解しておるわけでございます。
○佐々木静子君 たとえば、よく山の中へドライブに行ったりするときに、ポリ製品でガソリンの予備を積んでいきますが、あのポリ容器などはこの「容器」に当たるのかどうか、どのようにお考えですか。
○政府委員(辻辰三郎君) これはポリ容器がただいま申しました流出し、または飛散するというような構造を持っておるかどうかという点が一点と、それからまああとの違った概念になろうかと思いますが、発火装置または点火装置を施した場合に、その「発火装置又は点火装置」との関係において流出または飛散した物質が燃焼できるようになっておるのかどうかというような問題もあろうかと思いますが、いまの御質問そのものをずばり申し上げますと、その物質が流出し、または飛散するというようなそういう器の性格を持っておるかどうかということにかかる問題であろうと思うわけでございます。
○佐々木静子君 なぜそういうことを伺うかといいますと、当然おわかりのように、この第三条二項の「ガラスびんその他の容器にガソリン、燈油その他引火しやすい物質を入れた物でこれに発火装置又は点火装置を施しさえすれば火炎びんとなるものを所持した者」というのが処罰の対象になっておりますけれども、われわれ日常生活で自動車に乗っておる者であればたいていの人間が予備のガソリンを、これは都会のまん中を走っている場合は持たないこともあるかもしれませんが、ちょっといなかに行くかもわからないというようなときには、まあ普通、予備のガソリンを持っている。それから一番普通に用いられるポリ容器のことを伺ったわけなんです。そしてこの発火装置となるところのぼろきれというものはこれはもう自動車の中に入っているのが普通であって、入っていないのがおかしい。ぞうきんも要るし、まあこれは道交法の規定だったと思うんですけれども、これは故障した場合に赤い布で表示しなければならないように義務づけられておったと思うのですが、これは普通、布が入っているのがあたりまえで、入っていないのがおかしいんじゃないか。そうなるとポリ容器がこの容器に当たるとなれば、これは普通、ドライブしている人間の自動車の中にそれが入っているのが普通であって、入っていないのがまあ珍しいぐらいである。そういうようなことになりますので、そしてしかも、その判断を、とりあえず警察官が火炎びん法に触れるかどうかということの認定をされるとなると、どうしてもそこに問題が起こる。そういうことでこの容器というものに対しては特に厳密に解さなければならないのじゃないかと思いますので、念を入れてお尋ねしているわけなんです。警備当局も法務省としても人権擁護などの面から考えて、そうしたあたりのこの構成要件が非常に第三条第二項ばく然としているように考えるとお思いになると思うんですけれども、これは解釈上ある程度の線を示していただかないと、これは一般の国民は安心して自動車に乗ることもできないというような状態になりますので、もう一度重ねてどういう容器がこの条項に触れるのかどうか御説明いただきたいと思います。
○政府委員(辻辰三郎君) ただいまの御指摘の前段でございますが、三条二項につきましての御指摘につきましては、これは三条二項は、「火炎びんの製造の用に供する目的をもって、」という目的で一つの大きなしぼりがございますから、まずその点でただいま御指摘のような事例は問題になることは絶対にないということが言えると思うのでございます。
 次に御質問の後段で、この容器というものだけに限ってどういうふうに解釈するかということになりますと、これはやはり第一条と第三条にこの問題が出てくるわけでございますが、第一条の定義規定におけるこの「容器」というものは、先ほど来申し上げておりますように、容器の性質が、中の物質が流出しまたは飛散し得るような容器であるというしぼりであろうと思います。で、三条二項におきましても一応そういうものが前提になっておりまして、さらにこの三条二項におきましては「これに発火装置又は点火装置を施しさえすれば火炎ぴんとなるもの」というもう一つここに、三条二項のほうはもう一つの要件がかぶっていると、かように私は理解をいたしております。
○佐々木静子君 容器というものは器であって、ガソリンは液体ですから、これ液体を容器の中に入れた以上、今度容器をひっくり返したらその液体は流出するのがあたりまえであって、もし流出しなければこれは手品の箱だと思うんです。だから、容器というからには、この中に入れた物質がこれひっくり返せば外へ出るというのが当然のことで、出なければいま言ったようにふしぎなわけなんですね。そうすると、容器に入れたものは何でも一応「その物質が流出し、」のこれに該当するということになるんですか。どうなんですか、そのあたりは。
○政府委員(辻辰三郎君) これは容器につきまして、この性能上流出または飛散しないという容器もあろうと思うんでございます。そういう意味でこの「流出し、又は飛散した場合に」云々ということは非常に意味があろうと思いますけれども、そうしたしぼりをかけてみてもたいへん広いんではないかという御指摘であろうと思います。この点につきましては、第一条におきましては容器性のしぼりは比較的まあゆるやかでございますけれども、あとの「燃焼させるための発火装置又は点火装置を施した物で、人の生命、身体又は財産に害を加えるのに使用されるものをいう。」と、こういうしぼりでここに厳正なしぼりができておるというふうに私は理解をするわけでございます。三条の二項につきましても同様と考えております。
○佐々木静子君 流出しない容器というものもあるとおっしゃいましたが、これよほど頭をひねらないと私ども凡人にはどんなものかわからないわけなんです。というくらい容器というものは一たん入れたなら特に蒸発してなくなってしまわない限りまたもとへ戻せる、それが入れものであってそのための容器じゃないかと思うんです。ですから、たとえば一たん入れたならば出てこない容器というのは簡単にいえば何を言っていらっしゃるんですか。
○政府委員(辻辰三郎君) これは多少問題があろうかもしれませんが、たとえばドラムかんというものを考えました場合に、ドラムかんというものは、本来的に通常のドラムかんであれば、何ら手を加えていないものでございましたならば、これは流出または飛散しないように中に引火性物質を入れる、そういう容器であろうと思います。そういう意味でこの容器の本来的な目的と申しますか、そういうものからやはり流出または飛散しない、そういう性格を持った、性能を持った容器は多々あろうと思うのでございます。
○佐々木静子君 これ、ドラムかんでも密閉しているときはひっくり返しても出てこないでしょう。これふたをあけて使い出したらひっくり返したら幾らでも流れ出るじゃないですか。一たん入れたら出てこない容器というのはどんなものがあるんですか。
○政府委員(辻辰三郎君) 私どもこの「流出」「飛散」ということばでございますが、これはそのいまの、容器である以上は、その本来の容器に――その容器性からいいますとあるものを貯蔵しておってそれを次に移しかえるとか、そういうことは当然出てくると思うのでございますが、「流出」「飛散」というものは何か知らぬがそういう本来の用途からはずれまして流出するとか飛散するとかそういう性格を持った、性能を持った容器であろうと、こう思うのでございまして、その点の御指摘につきまして、容器というものは全部流出し、または飛散するんじゃないか――すべてを含むという御解釈かのように承るのでございますが、それはやはり容器のうちに完全にもう流出しないように、そういう用途に使う容器もあろうと思うのでございます。
○加瀬完君 関連して。おっしゃるような歯どめはどこにこの法文の中にはあるんですか。特にあなたさっきおっしゃったように、三条の二項だというと、この発火装置または点火装置を施してなくても、施せば火炎ぴんとして使用できるそのもとの燃焼物を入れたものは全部取り締まりの対象になるんでしょう。だから佐々木委員の言っているのは、一体ガソリンあるいは燈油等の引火しやすい物質を入れた容器というものはもっときびしく限定をされなければ非常に拡大解釈されるおそれがある、それをはっきり示せと、こういう質問に対してあなたは、流出したり飛散したりするものだと、そうでないものはドラムかんだと言うけれども、ドラムかんだって流出したり飛散したりするじゃないか。そうなってくると、これはもう厳密にこういうものが取り締まりの対象になる容器だと、こういうものは対象にはしないということを明確にしておかなければ、警察官の解釈によって、その状況判断でいかようにも取り締まりをされるということは危険である。基本的人権を尊重するというような先ほど御説明があったけれども、基本的人権がどこにも尊重されることにならない、そういう事態になると、だからここをはっきりしてくれと、こういう質問をしているのです。いま御答弁を伺っておりましてもはっきりしませんね、私どもそばで聞いておって。そこのところはっきりさせてください。
○政府委員(辻辰三郎君) 第一条と第三条二項と二つについて申し上げたいと思うのでございます。
 第一条につきましては、火炎びんの定義をいたしておるわけでございますが、「容器」というものの限定はともかくといたしまして、これはその「容器」に「引火しやすい物質」を「燃焼させるための発火装置又は点火装置」が施されていなければならない、かつ、それが「人の生命、身体又は財産に害を加えるのに使用されるものをいう。」、この二つの要件が重なっております。かような意味におきまして一条の定義規定は、これはきわめて厳格に私は定義ができておるというふうに確信をいたしておるのでございます。
 次は三条二項の問題でございます。三条二項につきましては、これはただいま御指摘のとおり、まだ発火装置または点火装置が施されていないわけでございますが、「施しさえすれば火炎びんとなる」という、一つのそういう意味の容器性の限定はございます。それだけでは裸で、容器だけで、当たるか当たらぬかというものにむき出しになってくるのじゃないか、これは乱用のおそれがあるのじゃなかろうかという御指摘であろうと思うのでございますが、それにつきましては、先ほど申し上げましたように、三条二項のほうは「火炎びんの製造の用に供する目的をもって、」と、こういう一つの目的でこの要件をしぼっておるわけでございます。かようなことであればこれは十分のしぼりができておるというふうに私どもは確信をいたすわけでございます。
○加瀬完君 関連ですからあとでまた詳しく伺いますけれども、「目的をもって」といったって、その「目的をもって」の判断が所有者なり所持者なりの判断で法が解釈されるということならば、これはあなたのおっしゃるとおりであります。しかし、本人がどう抗弁しようとも、これは火炎びんをつくる目的だという取り締まりのほうの判断で処罰の対象にされないという歯どめはどこにもこの内容の中には出てこない。あなたがおっしゃるように、確かに一条ははっきりしていますよ。一条のような、人の生命、財産を脅かすような火炎ぴんというものの形態を持ったものをこの三条で取り締まるというのなら話はわかる。これはそうじゃないでしょう。それが非常に条件が薄められておる。薄められておるんじゃないかといったら目的がなければいいんだと、目的があるかないかの判断は警察官がするといったら、これはさっぱり歯どめになりませんよ。これはあとで質問をしますが、三条二項といったようなものは、こんなものは要らないと私は思うのですよ。歯どめになっておらない。また一条の火炎びんの性格もここに出ておらない。この矛盾をどう御説明なさるのですか。
○政府委員(辻辰三郎君) この三条二項の「火炎びんの製造の用に供する目的」というこの要件でございますが、これは客観的な資料から立証しなければなりません。単にそういうものが恣意的な認定でこの犯罪が成立するものではもちろんございません。これは諸般の具体的な状況から、当該所持をしておった者が、「火炎びんの製造の用に供する目的をもって」所持しておったということは、具体的な客観的な資料から立証されなければならないわけでございまして、この「目的」というものを、そう何といいますか、しぼりにならないというふうに御解釈くださるのは、これは当を得ていないんじゃなかろうか、私どもは十分これでしぼりができておるというふうに考えます。
○加瀬完君 これで終わりますが、この客観的な状況なり客観的な資料なりで判断するというのは、裁判所へ行けばそういうことになる。しかし、取り締まりの担当に当たっている警察官が客観的な資料なり客観的な状況判断なりというものを、全部の人が全然恣意の施される幅がなく客観的な判断に立ち得ますか。いままでの具体的な例だって、無罪になっているようなものを全部つかまえているでしょう。それが現在の検察なり警察なりの行政の実態じゃありませんか。
 そこで、佐々木委員が言っているのは、火炎びんの取り締まりにだれも反対している者は一人もいない。しかしながら、取り締まりということで火炎びんでないものに対して基本的人権に対する侵害のようなことがあっては困るので歯どめをきちんとしておかなければならないだろうということで質問を展開をしたわけです。その答えにはあなたの答えはなっていませんよ。お答えする必要ありません、午後から聞いていきますから。
    ―――――――――――――
○委員長(阿部憲一君) この際委員の異動について報告いたします。
 本日、木島義夫君及び星野重次君が委員を辞任され、その補欠として内藤誉三郎君及び黒住忠行君が選任されました。
    ―――――――――――――
○佐々木静子君 もう一度容器のことに話を戻したいのですが、この「容器」の中にガラスびんはどうなんですか。いま御説明によりますと、通常物を入れる器であるならばこれは直ちにこの火炎びん法でいう「容器」には結びつかないというお話がありましたが、ガラスびんはどうなんです。
○政府委員(辻辰三郎君) いや、私が先ほど申し上げましたのは、絶対にその中のものが流失または飛散しないというような性能を持った容器、そういうものはこれは入らないでございましょうということを申し上げたわけでございます。したがって、この一条にございますように、「ガラスびんその他の容器」というふうにガラスびんを例示いたしておりますが、ガラスぴんというものは、その中の物質が流出または飛散するものであるということになっておるというふうに理解をいたしております。
○佐々木静子君 これは、火災びんの原料といたしましてガソリンもありますが、硫酸もあります、御承知のとおり。アルコールもあれば、アセトンもあるわけです。アルコールを入れる容器といえば、普通、ガラスびんにきまりきっているじゃないですか。普通、アルコールは、特に工業用とかなんとかたくさん使う場合は別として、通常、アルコールといえばガラスびんに入ったアルコールを普通われわれは想像するじゃないですか。そうすると、アルコールを何かの用で持っているということは、これはもう当然ガラスびんもその付属物として持っていることになるじゃないですか。そうなると、この燃えやすい物質とそれからガラスぴんというものは、もうそこで一致するわけですね。そういうことについて法務当局としてどうお考えになるんですか。
 私ども日常生活で、ここに該当する「ガラスびんその他の容器」、これは流出したり飛散したりするものですね。それから「ガソリン、燈油その他引火しやすい物質」、これは私たちの周囲にもういやというほどあるわけです。たとえば家庭用を考えてみますと、普通一般国民の家庭でそういうふうなものがない家庭というのはもうないんじゃないですか。どこの家庭にもある。たとえばまた自動車、どこの自動車の中にもそのくらいのものは入っている。コーラのびんの一本ぐらい入っているでしょう。ですから、これはないほうがふしぎであって、普通私たちの周囲のどこにでもころがっているものなんですね。ところが、それを先ほど加瀬先生も御指摘になっているように、第三条二項で「火炎びんの製造の用に供する目的」、この目的というものは一々紙に書いて張っているわけじゃない。私どもがアルコールをけがしたときに要るかもわからぬと思って持っているときもある。いろいろあるわけですけれども、その目的を警察官に一方的に認定されれば、これは普通の人間だって、善良な市民だって、幾らでも犯罪者に仕立てあげられるわけなんです。そこら辺のチェックをどういうふうに考えておられるのか。もう少し具体的に述べていただきたいと思います。
○政府委員(辻辰三郎君) ただいまの御指摘は、第一条のいわば完成火炎びん、これにつきましては十分しぼりができているという御理解であろうと拝察するのでございます。問題は、三条二項、これが非常に広いのではないかという御指摘であろうと思います。これはただいま御指摘になりましたように、ガラスびんその他にガソリンを入れておる、これに発火装置または点火装置を施しさえすれば火炎ぴんとなるじゃないかということでございます。その点においては私は御指摘のとおりであると思います。問題は、この三条二項は、火炎びんの製造の用に供する目的をもって所持していると、ここでしぼりがかかっておるということでございます。なお、三条二項におきましても、たとえば自動車の中のガソリンタンクにガソリンが入っておるというものであれば、これはガソリンタンクは、これに発火装置または点火装置を施しても火炎ぴんとなるものではございませんから、そういうものはこれは当然はずれてまいります。しかし、びんに入っているガソリンというものは、これは三条二項の目的というものを除外して考えますと、これはこの三条二項に該当すると、かように考えておりますが、しかし、この目的というものが十分なしぼりになっていると、かように理解をいたしているわけでございます。
○佐々木静子君 自動車の中にガソリンが入っている状態というんじゃなくて、たとえばこれは往々に、われわれ日常生活にもよくあるわけですが、いまでも自動車の検問というのが多いわけで、私どもこれは日常生活で非常に不愉快な思いを受けることがあるわけですけれども、この自動車の検問でトランクの中を見られた、そうすると、予備のガソリンがある、コーラびんもころがっている、それからぼろきれもある、それは普通ある場合のほうがない場合より――多いとまでいかなくても、ある場合は非常に普通であるんじゃないかと思うんですけれども、その場合に警察官が、これは火炎びんの製造の用に供するものだというふうに認定された場合に、これ非常な問題が起こるんじゃないか。私どもそれをたいへんに心配するわけなんです。そういうようなことについて具体的にどういう方法でチェックするのか、もう少し掘り下げてお答えいただきたいと思うわけなんです。
○政府委員(辻辰三郎君) 先ほど来申し上げておりますように、「火炎びんの製造の用に供する目的をもって、」ということは客観的な資料、状況から認定されるべきものでございます。ただいま御指摘のような、車の中にガソリンのびんがあるとか家庭でガソリンのびんがあると、ぼろきれもあるということは、これはもう当然のことでございます。しかし、「火炎びんの製造の用に供する」ということは、現在の社会におきましてきわめて異例のことでございます。こういう異例なこと、そいうう事柄を立証するということは、これはたいへん実はむずかしいことなんでございます。きわめて例外的な場合なんでございます。さればゆえにこの立証につきましては諸般の状況というもの、あるいは諸般の資料というものがあってはじめて、容器に入っておるガソリンその他の引火しやすい物質というものが火炎びんの製造の用に供するものだということが言えるわけでございます。その点はただいま御指摘のような、単に日常の市民生活において容器にガソリンが入っておるということではとうてい考えられない事柄であろうと思うのでございます。
○佐々木静子君 これはとうてい考えられない事柄がいままで幾らでも起こっているわけです。それで、私はこのとうてい考えられないことだけれども重ねて伺っているわけなんです。しかし、ここで論じていても話が進みませんので先に進みますが、「発火装置」と「点火装置」というふうに二つに分けて書いてありますが、これはどう違うのかお述べいただきたいと思います。
○政府委員(辻辰三郎君) 「発火装置」というものは、口火を人力によらずに口火が出るという意味でございます。「点火装置」というほうは、口火というものが人力によってできるという意味でございます。
 これを具体的に典型的な火炎びんについて申し上げますと、典型的な火炎びんは、これはまあビールびんならビールびんにガソリンと硫酸を入れましてそこのびんの外側に塩素酸カリをしませましたテープを巻いておくと、そしてこのビールびんを投げますとこの塩素酸カリをしませましたテープと中に入っておる硫酸とが化学変化を起こしましてそこで一つの口火になるわけでございまして、そしてガソリンに燃え移っていくと、こういうのが典型的な火炎びんでございますが、その場合の塩素酸カリをしませましたテープ、これが「発火装置」でございます。
 それから「点火装置」の場合には、さようなものよりももっと素朴なものでございまして、このビールびんにガソリンならガソリンと硫酸を入れましてそうして栓をしてそこにぼろきれならぼろきれを挿入いたしまして、そのぼろきれにマッチで人力で点火をして、そうしてからこの火炎びんを投げつけると、そういたしますとすでに点火しておるぼろきれと投げたあとの硫酸あるいはガソリンとが燃焼するという形のものでございます。そういうものが「点火装置」であると、かように考えております。
○佐々木静子君 これは大臣がお越しでございますので先に伺いますが、こういうふうな火炎びんの規制立法というものが、最高裁の判決が昭和三十一年に出て以来、火炎びんを規制する法律というものが、全部なかったわけではありませんがない部分があった。そういうことについて、法務省のほうは、普通こういった法案を立案されると法務省の責任において提出されると思うのでございますが、今回は議員立法で提出されておる。法務省から法案をお出しになる場合には法制審議会を経てお出しになるという、先ほどから刑事局長の御答弁がございましたのですが、これ時期的にいろんな点で非常にお急ぎになったという事情はわかるのでございますが、なぜ人権侵害のおそれの非常に多いこういうふうな法案を、どうして法制審議会にかけた後法務省でお出しにならなかったのか、その点をお伺いいたしたいと思います。
○国務大臣(前尾繁三郎君) 私、まあ以前のことについてはよく存じません、率直に申しまして。もっと前からいろいろと検討されるべきではなかろうかというふうに考えておりましたが、御承知のように以前行なわれてはおりましたが、そんなに人に殺傷を与えるほどひどい使用方法ではなしに、最近に非常に残酷な傷害を与えるような戦略といいますか、そういうふうに転換していったのだと思います。私が就任してまいりまして以来、これは何とか火炎びんについての立法をすべきであるというふうには考えましたが、いまの法制審議会の速度でいきますととうてい今国会には成立しない、こういうような判断をいたしたのであります。ことにこれは永久立法といいますか、火炎びんのいろんな態様を、これからできる態様を考えますと、おそらく法制審議会ではいろんな、先にどういうものができるだろうかというような検討から始めますと、とうてい一年あるいは二年でこの法案は制定されない、それでは全く時期を失しまして、そうでなくとも一般ではとにかくいまのやり方は手ぬるいじゃないか、しかもあんな被害を与えながら火炎びんについて何ら措置がされていないという声が非常にちまたにみなぎっておるわけでありまして、そういう点から考えますとどうしても今国会に成立させなければならぬ、それには法制審議会にかけておったのではとうてい私は今国会に通るようなスピードでいかない、こういう判定をいたしたわけであります。幸いに皆さん方のほうでも非常にやかましく言われておりますので、これはやっぱり政党でおつくり願ったほうが速度も早いし、しかも最終的にこれは通していただける、こういうふうな考えを――まあ、横着といえば横着でありますが、この際私としましては、やむを得ない措置であると、かように考えております。
○佐々木静子君 いま法務大臣のお話にもございましたように、私どもとしても、火炎びんを取り締まるということ、火炎びんを取り締まらないでいいとはちっとも言っておらないのでございます。ただ、取り締まるこの法律が、普通であれば法制審議会で練りに練って国会に出てくるわけですけれども、非常に便宜的で練れておらない。すなわち構成要件その他についても非常に不確かなものがあってはっきりしない。罪刑法定主義という意味から考えてみましてもこれはどうも人権侵害に広がっていくおそれが十分にあるというふうな危険を私はおそろしく感ずるわけなんでございます。そういう意味におきまして、この法律の運用ということにつきまして、これは法務省としても重々気をつけていただくということは、先ほど刑事局長から伺いましたのでございますが、その点に関しまして大臣はどのような運用方法を考えておられるかどうか。
○国務大臣(前尾繁三郎君) この法律が――率直に申しまして非常に簡易にできるものでありますから、日常生活に使っておるものを使用して使うわけであります、そういう意味からいたしますと、人権侵害になるおそれが多いことは事実であります。しかし、これは率直に言って、いかなる場合におきましても、これは運用の面で注意をしなければ幾ら法律が完備しておりましてもなかなか人権侵害が起こりやすいので、したがって、この法律ではいわゆる危険が――身体その他の生命に危険を及ぼす状態とか、あるいは火炎びんの製造の用に供する目的という主観的な歯どめがありますので、その点の運用については非常に厳格に、またもう少し運用にあたりましては、いろんな基準といいますか、この法律に従ってやる場合の運用のこまかい点、そういうようなものをつくって、みんな捜査当局なりあるいは警察当局に渡して、そうして人権の侵害のないようにということに特段の注意を払わなければならぬと思っております。そうすれば、また十分――まあ何と申しましても犯罪は未然防止が大事でありますから、未然に防ぐということにいたしたいと思っております。それについては、行き過ぎのないように十分な注意なり監督をいたす決心でおるわけであります。
○佐々木静子君 法務省として十分に、人権侵害にならぬように善処していきたいというお話で、非常に心強く思っておるわけでございますが、さらにこの条文についてもう少し法務省側にお伺いしたいと思うんです。
 第二条の保護法益ですね、これはどういうふうに考えておられるか。
○政府委員(辻辰三郎君) これは、公共の安全が保護法益であると考えておりますが、同時に、人の生命、身体、財産に危険を生じさせたという要件がございますので、付随的にと申しますか、付加的には人の生命、身体、財産も保護法益になっておると考えております。
○佐々木静子君 そうすると、公共の安全という法益と個人的法益と、二つの意味を持っているというふうにお考えですね。
○政府委員(辻辰三郎君) 第一次的には公共の安全を保護法益にしておると考えております。
○佐々木静子君 それから、第二条の二項の未遂ですね。この件について実行の着手というものを、法務省はどの時点で実行の着手があったとお考えなんですか。
○政府委員(辻辰三郎君) この実行の着手は、容器の中に入っております引火しやすい物質が燃焼をし得る状態になったときが、これが実行の着手であろうと思います。で、具体的に言えば、卑近な例で言えば、火炎びんを投てきした、投てきするということが実行の着手であろうと思います。
○佐々木静子君 たとえば火炎びんを投てきしたがこれが燃焼しなかったというような場合が未遂になるというふうにお考えになっていられるのだと思うんですが、そうしますと、この二項の「未遂罪」に中止未遂というものがあり得るわけですか、どうですか。
○政府委員(辻辰三郎君) この二条二項の未遂はいわゆる着手未遂と実行未遂と二つの事柄を両方とも含んでいると思います。具体的に申し上げますと、火炎びんを投げること自体をやめたという意味の未遂と、火炎びんは投げたけれども人の生命、身体、財産に危険を生じなかったという意味の未遂と、二つを含んでおると考えております。
○佐々木静子君 これは先ほどの御説明では、火炎びんを投げること自体をやめたという場合は、まだ燃焼し得る状態に達していないんだから実行の着手があったことにならないんじゃないですか。犯罪に全然ならないんじゃないですか。
○政府委員(辻辰三郎君) 私は、あるいはことばはやや不正確であったかもしれませんが、火炎びんを投てきする行為、それはすなわち、もう中の物質が燃焼し得る状態になった、かように考えておるわけで、同じことであろうと思っております。
○佐々木静子君 そうしますと、これは構成要件のうちで、もう一度やはりこの実行の着手というのを、法務省の見解を厳密にはっきりしておいていただきたいと思うのです。
○政府委員(辻辰三郎君) この二条の第一項の「使用」という観念でございますが、これはただいま申し上げましたように、引火しやすい物質を流出、飛散させて燃焼し得る状態に置くということが私はこの「使用」であろう、これを具体的に言えば、これは、この発火装置を備えた火炎びんを投てきするという行為は、すなわち引火しやすい物質を流出、飛散させて燃焼し得る状態に置いたということと同じであるというふうに考えております。
○佐々木静子君 これは、先ほどから発火と点火とがありましたので、点火装置の場合は、私思いますのに、たとえば火をマッチでつけるとしますね、このつけたときに実行の着手になると思うんです。ところが、この発火装置の場合ですね、これは自然に発火するわけですから、このいまの、たとえば投げて発火する場合に、投げようと思ってここまで持ってきてまだ手を離れていない時点においては実行の着手があったんですか、なかったんですか。
○政府委員(辻辰三郎君) この点火装置の場合でございますが、点火装置の場合は、私はこの投てきするという状態が実行の着手であろうと思いますから、口火に火をつけた、まだ投げなかったという場合には実行の着手になっていないのではなかろうかと、かように考えておりますが、発火装置の場合には投てき即これは実行の着手があったというふうに解していいのではないかと考えております。
○佐々木静子君 いまおっしゃるとおり、私のお尋ねのしかたもまずかったかと思いますが、点火装置の場合は、点火しただけでは実行の着手にはならぬわけですね。そういう御見解でございますね。
○政府委員(辻辰三郎君) 私どもはさように考えております。
○佐々木静子君 この発火装置の場合ですね。この、いま私の問題は、投げようと思ってこう投げる動作を、ここまでいったけれども結局その物体が手を離れておらない状態ですね、その状態は実行の着手があったのかなかったのかということです。
○政府委員(辻辰三郎君) 投げるという行為が実行の着手であると考えております。
○佐々木静子君 たとえば投げて手を離れてしまったら、もうそのままそれで発火するのでしょうから、これは実行の着手があったと思うんですよ。投げようと思って、こうしようとしたところがうしろから抱きとめられたという場合には、これは実行の着手であったかなかったのかということを伺っているわけでございます。
○政府委員(辻辰三郎君) それはまだ投げていないわけでございますから、実行の着手になっていないと思います。二条に関する限りは実行の着手になっていないと思います。
○佐々木静子君 よくわかりました。それで、放火罪には未遂罪を罰する規定が現行刑法でもあるいは改正刑法でもないわけですが、この放火罪には未遂を罰する規定がないのに、本件で未遂を罰する規定があるのは均衡を失するのじゃないかというふうな感じがするのですが、その点いかがでございますか。
○政府委員(辻辰三郎君) この二条二項で未遂罪処罰の規定が設けられております趣旨は、私先ほど申し上げましたように、いわゆる着手未遂と実行未遂と二つの場合を含んでおるわけでございます。もともとこの二条というものは、先ほど申しましたように、公共の安全を保護法益しておると、こういう公共の安全を保護法益しても、具体的危険犯――危険犯に対してさらに未遂を処罰することは法体系上おかしいのではなかろうかという御指摘であろうと思うのでございますけれども、これは現行刑法にも百二十四条以下の往来妨害罪がございますが、これは公共の安全を保護法益しておる犯罪でございます。こういうものにつきましてやはり百二十八条で未遂罪を処罰しておるということで、この点は刑法の体系とむしろマッチしておる、異例のものではないというふうに考えております。
○佐々木静子君 これちょっともう一度この火炎びんの前提に返るわけですけれども、広っぱがある、広っぱで火炎びんを燃やした、むろん人の生命、身体財産に対する危険は何も与えない、この場合には、燃やしても火炎びんにはならぬと思うのです。これはむろん何の罰にもなりませんですね。
○政府委員(辻辰三郎君) この法案第二条の火炎びんの使用事犯でございますが、「火炎びんを使用して、人の生命、身体又は財産に危険を生じさせた」、あるいは危険が生じなかった未遂という場合の犯罪の成否の問題でございますが、これは全く人の生命、身体、財産に危険がないという、たとえば砂漠のまん中で火炎びんを燃やしたという場合には、これはとうていどういうことがあっても人の生命、身体、財産に危険を生ずる余地がございませんから、そういう場合には、既遂はもちろん未遂というものもこれは成立しようがないと思います。この既遂やあるい主として未遂が成立いたしますためには、やはり人の生命、身体または財産に危険を生ずるおそれのある状態、こういうものが前提になっておりまして、そうして具体的に生命、身体、財産に危険を生じた場合には既遂になり、そして生じなかった場合には未遂になる、こういうことであろうと思います。この点当然、二条の解釈といたしましてそういうものが前提になっておるというふうに考えております。
○佐々木静子君 人の生命、身体、財産に害のないものについては、これは別に火炎びん法のあれに触れないということを重ねて確認させていただいたわけですが、これはまた別の問題になりますが、爆発物取締罰則、この火炎びん法の中にも爆発物取締罰則にも触れる火炎びんがあるということは、これは最高裁の判決でも述べられているとおりでございますが、この場合に、爆発物にも触れる、爆発物にも該当する火炎びんを使用した場合の法条適用はどういうふうになるのですか。
○政府委員(辻辰三郎君) 先ほど来御指摘になっておりますこの火炎びんと爆発物取締罰則の関係も、最高裁の判例でございますが、この三十一年六月二十七日大法廷判決は、これはこの「爆発物取締罰則にいわゆる爆発物とは、理化学上の爆発現象を惹起するような不安定な平衡状態において、薬品その他の資材が結合せる物体であって、その爆発作用そのものによって公共の安全をみだす」ものでなければならないということでございます。そういう意味でございまして、いわゆる火炎ぴんというものは、例の先ほどの塩素酸カリと硫酸が化合して発火すると、そしてガソリンについていくという場合の火炎びんの機能を考えました場合に、理化学的には塩素酸カリと硫酸の間の化合状態、これは一つの爆発であろうと思うのでございますけれども、その爆発だけではこの最高裁判例にいいます「爆発作用そのものによって公共の安全」というものは害されない。したがって、こういうような火炎びんは爆発物取締罰則にいう爆発物ではないということでございます。火炎びんの危険性は、流出または飛散した引火しやすい物質が燃焼するという意味の燃焼による危険でございまして、通常の場合には火炎びんは爆発物取締罰則には当たらないという前提で考えられたものと理解をいたしております。
○佐々木静子君 これは、いまの御説明にございましたが、昭和三十三年の十月十四日の最高裁の第三小法廷の判決ですけれども、ラムネ弾事件で、アセチレンガスのびん内における急速な膨張から生じたもので、一種の物理的爆発現象の起こった場合は爆発物取締罰則にいう爆発物に当たるという判例があるわけでございますが、こういう場合に、こういう種類の火炎びんを使用した場合の法条競合のことを伺っているわけなんでございます。
○政府委員(辻辰三郎君) ただいま御指摘の昭和三十三年十月十四日の第三小法廷判決でございますが、これはいわゆるラムネ弾というものでございまして、火炎ぴんとは違うわけでございます。この案件はこの判決にもございますように、「ラムネ瓶の中にカーバイト約十九瓦を詰めこれに水数十瓦を注入してこれを傾斜または倒立させて投ずるもので、この操作によりカーバイトと水の反応により急激多量にアセチレンガスを発生し且つその反応熱等によりそのガスの膨張を伴い」、云々と、こういうことで、このびんそのものが爆発するというこのことで、この爆発で公共の安全を害する力があるという判示でございまして、このラムネ弾はずっと最高裁の判例の線からいいましても爆発物取締罰則に該当するものだと考えております。
○佐々木静子君 そうしますと、ラムネ弾は火炎びんでないということでございますね。
○政府委員(辻辰三郎君) これはもとよりこの法案の第一条の定義には私は当たらない場合が非常に多いのじゃなかろうかと考えております。その意味におきまして火炎びんではないと思います。
○佐々木静子君 最後に、大臣に特にお伺いなりお願いなりしておきたいと思うのでございますが、刑法第二百八条ノ二、これは凶器準備集合罪というのがございますが、これは昭和三十三年に刑法の一部を改正する法律案によって新たに設けられた規定でございます。そのときの参議院における議事録を調べてみますと、これは法務省がこの凶器準備集合罪を提案した理由として、これは「近時各地に多数発生を見た、いわゆる暴力団、愚連隊等による殺傷暴力事犯の実情にかんがみまして、これが取締り処理の適正を期するため、所要の改正を加える」と述べておられ、またこの改正案の逐条説明書におきましても、これ法務省がおつくりになったものでございますが、この刑法二百八条ノ二を加えるについては「最近、いわゆる暴力団等の勢力争い等に関連いたしまして、なぐり込みなどのために相当数の人員が集合し、人心に著しく不安の念を抱かしめ、治安上憂慮すべき事態を惹起した事件が相次いで発生いたしたのでありますが、これを検挙、処罰すべき適切な規定がございませんため、その取締りに困難を来たしている実情にかんがみまして新設した」ものであるということをはっきりとうたっておるわけです。この凶器準備集合罪をつくります理由というものは、ここでもはっきり法務省述べておられますように、暴力団対策のためにつくられたわけなんです。ところが、現在では、凶器準備集合罪というものは、暴力団対策ではなしに、暴力団も多少はこれによってひっかかっているのもあるかもしれませんが、これはもう労働者がデモのときに持つデモの取り締まり、あるいは学生の大学紛争における取り締まりにこの凶器準備集合罪というものがフルに使われている。このデモに用いる旗が凶器である、あるいは学生が使う角材が凶器であるというふうに拡大解釈されて、その本来の立法の趣旨をはるかに離れて、現在この凶器準備集合罪というものが用いられているわけです。これは、火炎びん法案におきましても、先ほど来提案者並びに政府当局におかれましては、火炎びんをどうしても取り締まらなければならない、ほかに取り締まる立法がないからどうしても必要なのだということで御提案になっているわけですけれども、私ども、かつて凶器準備集合罪において非常な苦い経験をしているわけなんです。暴力団の取り締まりだというので、それはけっこうなことだということでもって、このときも賛成しているわけなんです。ところが、一たん法律になってしまったならば、もうひとり立ちしてしまって、これはもうわれわれ国民の意思を離れて、とんでもないところへまっしぐらしている。そこに私は法律のおそろしさがあると思うんです。
 大臣におかれましても、これは過去においての一例として凶器準備集合罪を出したわけでございますけれども、そのほかにもそういう事例がいろいろございますことは、大臣もよく御承知のとおりでございます。十分にこの火炎びん法の立法の趣旨というものをお考えいただきまして、決してこれから逸脱しないように、いま法務省がこの立法趣旨として御説明になりましたこの範囲から足を踏み出すことのないように、これは十分法務当局としてもお考えいただきたい。また、かりにほかの権力機構が、それよりも幅広くあるいはほかの方向へこの法律を使おうという場合には、人権擁護を一番考えられなければならない法務当局において十分にチェックしていっていただきたい。このことを特にお願いしたいわけです。最後に、この点につきましては法務大臣に重ねて御所信を伺いたいと思います。
○国務大臣(前尾繁三郎君) 凶器準備集合罪をつくりました当時の状況は、おっしゃることであったかと思います。ただいずれにしましても、まあ右翼にしましても左翼にしましても、とにかく、凶器を用いてしかも人の生命なりあるいは財産に危害を及ぼすということは、左右なり思想のいかんを問わず、やはり防止していかなければならない問題だと思います。したがいまして、ただいまはまあいわゆる過激派学生というものが使用いたしておるのが主でありますけれども、あるいは将来、暴力団がこういうものを使うときがあるかもわかりません。いずれにしましても、適正なまた平穏な人々を害するということは絶対にこれは避けなければなりませんが、ただいまの法案に該当するというようなことは、私は、思想のいかんを問わずにやはり取り締まりの対象になるのではなかろうか、かように思っております。
 しかし、おっしゃられるように、拡張解釈ということは、これは厳に戒めなければならぬことでありまして、極力こういう法律を使わないのがそれはよろしい。しかし、これは適切に使いませんと、率直に言って、現在、何をしておるんだかというような町の声にこたえるためには、適正にこれを使ってそして有効に未然防止もやり、また事後におきましても処罰について適正な処罰で、あまりにも手ぬるいじゃないかという非難のないようにはしていかなければならぬ、かように考えておるわけであります。
○佐々木静子君 それでは、大臣の御見解を伺いまして、特にこの法律が乱用にわたることのないように、善良な市民に対する人権侵害を起こすことがないように、その運用に法務当局におかれて特に御注意なさることを特に要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
    ―――――――――――――
○委員長(阿部憲一君) この際、参考人の出席要求に関する件についておはかりいたします。
 火炎びんの使用等の処罰に関する法律案審査のため、参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(阿部憲一君) 御異議ないと認めます。
 なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(阿部憲一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 午前の質疑はこの程度とし、午後一時十五分まで休憩いたします。
   午後零時十六分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時二十八分開会
○委員長(阿部憲一君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 午前に引き続き、火炎びんの使用等の処罰に関する法律案を議題といたします。
 これより質疑に入ります。御質疑のある方は順次御発言を願います。
○加瀬完君 提案者は来ておられないようですね。政府に質問するのは当を得ませんが、提案者がおりませんので……。この公布の日と施行の日の間に二十間期日を置いたわけですけれども、これはどういう理由でございますか。
○政府委員(辻辰三郎君) 大体、刑罰法規を主にいたしております法律の場合におきましては、近来はよくこれを周知徹底さすという趣旨から、公布の日から二十日間を経過した日から施行するというのが最近の通常の事例でございます。したがって、この法案においても最近の刑罰法規制定の場合の通常の例によられたものと理解をいたしております。
○加瀬完君 二十日間も説明期間というものを置かなければならないということは、通例そういうふうに行なわれているということであるならばそれは認めるとしても、結局今回の法案などにいたしましても、人権等に非常に関連をする点が多いので、そういうことの配慮というものからこの二十日間という施行日に余裕を持たせるということに解してよろしいですか。
○政府委員(辻辰三郎君) 先ほど申しましたように、刑罰法規の場合には、それによって人が処罰されるわけでございますから、十分にその周知徹底が期せられなければならないと思うのでございます。かような趣旨におきまして、この法案もそういうことであろうと思いますが、最近の刑罰法規、たとえばいわゆるハイジャック法――航空機の強取等の処罰に関する法律、これは一昨年御審議いただいた法律でございますが、これもやはり公布の日から二十日をもって施行とするということになっておりまして、ほとんど最近は二十日というのが通例になっております。
○加瀬完君 それはわかるんですよ。だから二十日間の周知徹底期間を置くということは本法案などにも明らかなとおりですね。人権等に非常に関連が深いことであるので、そういう配慮によって二十日という期間を置くのかということを伺っているんです。
○政府委員(辻辰三郎君) さようでございます。これは刑罰法規の場合には当然相当の期間が置かれておる、二十日というのが最近の例でございます。
○加瀬完君 結局、刑罰法規は二十日の周知徹底期間を置かなければならないほど配慮しなければならないということであれば、これを議員立法などにまかせることなく政府の提案によって法制審議会というものの筋を通して、諸般の観点から人権侵害等のないような適切な配慮がされて、それが法案の中に盛り込まれて公布をされるという手続を踏むのが当然ではないか、この点はどうですか。
○国務大臣(前尾繁三郎君) 午前中にもその点は佐々木委員に申し上げたわけでありますが、率直に申しまして火炎びんの戦略が最近になって変わってまいりまして、非常に甚大な損害があり、残酷な行為が行なわれるということで、急にこの火炎びんに対する立法をすべきだ、これはもう国民全般の考えであります。ところで、私も当然法制審議会にかけて成規の手続でいきたいということも考えたのでありますが、率直に申し上げまして、現在月に一回、しかも議論が出ますとまた一月後というようなスピードで審議をされております現在の法制審議会のいき方から考えますと、また常に法制審議会は永久的な立法という考え方で、あらゆる場合を想定して将来どういうような事犯が起こるかというようなことまで検討されてやっております現状を考えますと、おそらく今国会に成立ということは望み得ない、こういうような判断に立ちまして、また一面から言いますと、この国会側の方々も早く出せという声もあり、またそうでなければわれわれで出そうというようなお話もありました。そういう意味から考えますと、いずれにしても今国会で成立するようでなければ、私は国民の声にこたえられない、こういうような判断をいたしたわけでありまして、そういうような意味からいたしまして、結局法制審議会を通して、それからまた国会の審議をわずらわすということになりますと、これはとうてい私は今国会に間に合わぬ、こういうようなことを考えたわけであります。
○加瀬完君 その火炎びん事件が四十六年の後半から非常に激しくなったとか、あるいは突如として減少を呈したということであればこれは間に合わないので、急いで議員立法にするほうが便利であろうということは考えられますね。しかし火炎びん問題は四十六年に突如として出たものではない。もうすでに四十四年なども非常に激しかった。したがって、火炎びんに対する対策というものは、その当時において政府としては講じなければならなかった問題であります。そうすれば、法制審議会にかけるのに時間に余裕がなかったということではなく、政府が怠慢であった、まあ歯にきぬ着せず申せばそういうことになる。これは私見になりますけれども、もし議員立法ということであれば、なぜこれを時限立法にしなかったのですか。これは立法者に聞かなければなりませんけれども、政府としては、また刑法の大改正という問題もあるとすれば、当然これは時限立法にすべきじゃないか、この間の政府の御見解はいかがですか。
○国務大臣(前尾繁三郎君) 以前にやはり法制審議会で一般の刑法の際に問題になったようであります。その際には、これは特別立法でいくべきだと、一般の刑法としてそれに入れないほうがいいと、こういうことであったと聞いております。また率直に申しまして、現在やっと刑法草案が総会にかかっておるわけであります。これも非常に急がなければなりませんが、おそらく私は実はまあ非常に異例でありますが、ぜひ来年の国会に刑法草案が出るようにしてもらいたいということを頼んでおるわけでありまして、そういう面から言いますと、それにさらにこれを加えてやっておったのではとても間に合わない。また、時限立法ということ等、私は考えておりません。結局、刑法草案にこれが取り入れられる可能性は全然ありませんし、また将来戦略が変われば、またほかの、いろいろ別に火炎びんにかわるようなものができればその際に考えていったらいいので、現段階においては少なくとも火炎びん――爆発物と銃砲刀剣との間に非常な間隙がある、とにかくそれを埋めるということで考えていくべきだというふうに判断いたしたわけであります。
○加瀬完君 治安立法というものは数多く出ることを好ましいとはお考えになっていらっしゃらないでしょうね。
○国務大臣(前尾繁三郎君) もちろんそういうふうに考えております。
○加瀬完君 そうであるならば、これは立法者のほうに伺うべき筋ですけれども、政府としても軽々しく法制審議会というような正規の手続を踏まないで議員立法するというなら、それは時限的に制限を加えるというような方法をとることは、これは立法者としての当然の義務だと思うのですよ。政府はそうはお考えになりませんか。
○国務大臣(前尾繁三郎君) 私はしかし国会議員の皆さんがおつくりになるというたてまえを考えますと、一番スピーディな行き方をすれば皆さんでおつくりくださるということが一番いいんじゃないか、率直に言いまして、現在の法制審議会にも私は刑法その他の法案がもう七、八年かかっておるということについても、よほど機構の問題も考えていかなければならぬのではないかというところまで実は私みずからは疑問を持って考えておるわけなんです。そういう点で言いますと、あるいは異例であるかもわかりませんが、これも一つの新しい行き方ではなかろうかというふうにも考えられると思います。
○加瀬完君 これはあとで触れますけれども、法制審議会でもこの問題は議題になった。ところが、刑法の草案の中に入れるということはもちろん異論が出ましたし、あるいはその当時すぐにこれを特別立法することについても意見がまとまらなかったと思うのです。ということは、問題が逆に言えばあるということです。研究がまだ十分でないということにもなるわけです。政府も火炎びんの問題が起こってから数年たちますのに、政府自身が出さなかったということは、やっぱり若干の研究の余地なり、理論の幅というものがあったということに推定をするわけですが、政治的要求からそれが今回のように議員立法となって出てきた、これは便宜でいい、法制審議会にかけなくてもいいと、何かひとつ時の政府が政治的な便宜観なり利用観なりによっていつでもこういう治安立法みたいなものを議員立法にするという一つの前例になりますね。今回のやり方は法制審議会なり何なりで十分に問題点を究明するということを避けて、早ければいいとこういうことでいまの政府がそういうふうにやったとは私は思いません。これは火炎びんに対する対策というのは当然のことでありますから、原則を否定するわけではございません。しかし便宜的にいつでも法制審議会という正規の機関を省いて議員立法に移すということは、これは一つの危険を私どもは想定せざるを得ない。そういう点は政府はどういう御見解をおとりになっておるのですか。
○国務大臣(前尾繁三郎君) 私はいまの行き方にも、たとえばあの法制審議会という構成を考えますと、あれは法務大臣が審議会の委員長になっておるわけです。でありますから、そこでの、率直に言いますと、現在の何といいますか、立法体系からいいますと、旧憲法と同様な考え方のもとに置かれているのではないかという疑問さえ持っておるわけであります。そういう意味からいたしますと、いままでのやり方がはたして常道であったかどうか。まあほんとう言いますと、審議会というものは諮問機関と、実際は国会が審議をされ、また立法されるというたてまえに直すべきではなかろうかという疑問を持っておるわけであります。ただ今回、治安立法だからそうやったという考えではありません。これは率直に私みずから現在の法制審議会のスピードではとうてい間に合いませんし、これはやっぱり今国会に成立させるべきものだという判断からいたしたのでありまして、決して治安立法だから云々ということは私みずから全然考えたことはありません。
○加瀬完君 大臣の御見解はよくわかりましたので、二点重ねて伺います。
 法制審議会という諮問機関に十分はかった上で提案をするというのも常道と考えないか。あれはのろいからあんなことやっておっちゃ間に合わないから、むしろあれがなければないほうがいいと、こういう法制審議会という制度そのものを御否定になるというお考えにお立ちになるのかこれが一点。
 それからいまの大臣の御就任の期間からすれば、こういう方法で出さなければ間に合わないということも考えられますけれども、火炎びんの問題が起こってからは数年ですよ。その間に全然対策というものを政府が立てておらないで、議員立法にゆだねたということは政府の怠慢じゃないですか。その間総理大臣はかわっておらない、十二分に法制審議会にはかれる時間があったのにはからない、はかるのを省いた、こういう結果で今度の議員立法が提案されておるわけですね。
 そこで重ねてくどいようですけれども、法制審議会というのは無用の長物というお考えに立つのかどうか。それから当然法制審議会にはかる政府としては余裕があったのにそれを省いておったわけですね。同じような質問になりますけれども、そういう便法だけで特にこの治安立法をこれからやっていくのか、やっていって正しいという御見解かどうか。
○国務大臣(前尾繁三郎君) 法制審議会が無用の長物とは絶対考えておりません。したがって私は、当然法制審議会にかけていくべきものだというふうには考えております。ただ、先ほど来言っておりますように、火炎びん法を今国会に成立させたいという点からこういう措置をとったわけであります。従来にそれならもっと早く手をつけるべきではなかったかというお話でありますが、私の聞いておる範囲では、まず最近とにかく非常な戦略が転換して、非常にこれで大きな不法行為が行なわれるというようなことになって、一日を争うというような状態はやはりごく半年なり一年の最近の状態ではないかと思いますが、その点についてもし何か局長から補足ができましたら申し上げます。
○政府委員(辻辰三郎君) 法務省事務当局におけるこのいわゆる火炎びん立法の検討の問題でございますが、これは午前中にもお答えいたしましたのでございますけれども、刑法全面改正の一環としてこの火炎びんを刑法に入れるかどうかという問題は、昭和四十三年の法制審議会の刑事法特別部会でこれは特別法にしたほうがいいという一応の決定が出たわけでございます。その後にいわゆる最近の火炎びん事犯が出てまいったわけであります。昭和四十四年はたいへん多かったのでございまして、法務省事務当局におきましてもその必要性というものを検討しておったわけでございますけれども、昭和四十五年はこれはまた非常に火炎びん事犯が平静化いたしてまいったのでございます。そういうこともありまして、いわゆるこれは刑罰法規でございますから、しかも一応既存の刑罰法規をもって曲がりなりにも処理をしてまいったわけでございますので、昭和四十五年の状況のもとにおきましては、この検討作業というものは、さほど進捗しなかったわけでございます。ところで、昭和四十六年になりますと、これは成田または沖繩闘争ということで非常なまた数がふえてまいりまして、これでいよいよ法務省事務当局においても火炎びん立法を検討しなければならないというふうに考え、現に検討をしてまいったわけでございます。その段階におきまして、今回の国会の御提案ということに相なったというふうに考えておるのでございます。
○加瀬完君 四十四年は激しかったけれども、四十五年はとまったと、四十六年はまた激しくなったのでこういう方法をとったと、それならば、一応今度の法案ではね、当然二年なり三年の期間を置いてその取り締まりの実際の効力というものを判定して、もし火炎びんの被害というものがないならば、そのときに解除をするという時限立法をとるのが当然じゃないですか。それで、四十四年には激しかったけれども、四十五年にはとまったと。しかしながら、四十四年に激しかったならば、それが激しい闘争ならば、もう一ぺん使われるということが予想をされるわけですからね。火炎びんの対策というのは、当然これはいまのようにあなた方がお考えになるならば、政府として考えなきゃならない問題だったと思うんです。これは私はどうあなた方が御説明しようとも、議員立法で提案するという趣旨のものではない。政府が責任を持って提案をすべきもので、議員立法にまかせたということに私は異論があります。しかしこれは意見になりますからお答えは要りません。
 先ほどから伺っておりますとね、この政府提案によりますと、理由は法制審議会にかけると時間がかかるからだということだ。法制審議会の存在というものを、大臣はあなたはどう考える。法制審議会の存在というものを、あるいは使命というものを、どうお考えになっているのか。
○政府委員(辻辰三郎君) 当省の法制審議会は、民事、刑事及び司法制度に関する基本的な法制、これにつきましては当然御審議を願うべきものであるというふうに考えております。
○加瀬完君 今度のような問題では、法制審議会の存在は不必要だというお考えですか。
○政府委員(辻辰三郎君) 不必要とは考えておりません。これはこのハイジャック法案にいたしましても法制審議会の御審議を得たわけでございます。これはただいま大臣がお答えされたとおりの事情であるというふうに理解をいたしております。
○加瀬完君 法制審議会は、あなたの御説明のほかにもう一つの意義があると思うんですよ。政府そのものがずばりと提案をする前に、一応法制審議会のメンバーというものを通して、国民の世論というものを十分にそんたくをして、その賛成の上において政府が立案する。そのワンクッションの役目を法制審議会はしていると思う。ハイジャックのような問題を法制審議会にかけるならば、今度の問題たって当然これは法制審議会にかけなければならない問題なんです。一月に一回しか開かれないからなかなか結論が出ないということでありますけれども、この結論を早く出すように督促すればいいんですよ。問題は、結論を早く出すのではなく、出された法案がはたして国民の世論にこたえられる内容のものかどうかということを、法制審議会を通さなければあなた方は諮問をされるわけにいかぬでしょう。あなた方の提案でないんだから、われ関せずえんということなら別ですけれども、少なくとも政府は責任というものを私は持つべきものだと思うわけです。したがって、法制審議会をはぶいたということは、これは政府としては私は怠慢のそしりを免れることはできないと思う。
 いままで銃砲刀剣の取り締まりなどを、地方行政あるいは法務委員会でいろいろ審議をした経緯も私どもは存じておりますが、あるいは先ほど佐々木委員が御指摘になりました凶器準備集合罪ですか、凶器の内容というものをいろいろと論議をされました。そしてそれらに関する法律が施行をされました。しかし銃砲刀剣による犯罪、それが減っておりますか。銃砲刀剣の取り締まりというのはずいぶんきびしくしましたけれども、それらに関する制定をする前と制定をしたあとで、累年その事犯が減っておるというその効果が顕著ですか。これ、警察の方に伺ってみます。
○政府委員(高松敬治君) 銃砲刀剣について、現在の銃砲刀剣類所持等取締法が制定をされてから犯罪が減っているかどうかということですが、私いま手元に材料を持っておりません。ただ、犯罪が減る減らないという問題について、それが銃砲の取り締まりだけで犯罪が減るとか減らぬとかいうようなことが考えられるかどうかということ。それからもう一つは、私どもはあの法律があるということが、現在の日本の治安維持に非常に大きな貢献をしておる。占領当時につくられた法律でありますから、もともとは占領当時の立法でありますけれども、しかしあれがあるということがどれだけ現在の日本の治安維持に役立っているかということになれば、たとえばアメリカなり海外諸国の最近の犯罪の著しい増加状況というものと比べてみれば、私どもはあの法律は非常に有効に作用しておる。犯罪が必ずしも減っていないかもしれませんが、少なくとも増加をしているというふうなことに、著しい増加を見ているというようなことについての大きなブレーキになっていることは間違いないであろうというふうに考えております。
○加瀬完君 こういう法律を制定するときにはね、それらに関する犯罪というのが、犯罪事犯が非常に多くて、この法律を制定するならそれらを除去されると、効果があがると、こういう説明をあなた方はしているでしょう。いまのように取り締まりだけで効果はそう期待することはできないというならば、何のために提案をするのか、逆に私たちは問い返したい。
 問題は、あなたが御指摘になるように、どんなに取り締まり法というものをきびしくしたところで、取り締まり法だけで犯罪の事実というものは解消するものではない。これは私どももそのとおりだと思う。そうであるならば、火炎びんの取り締まりというものだけをやっても、火炎びんの製法なりあるいは使用なりというものは若干減っても、ほかのほうの犯罪事犯がまた出ないとは保証の限りではない。問題は、その根源を根絶やしにするということが基本的な問題だと思う。しかし、そういう諸般の情勢というものを十分勘案して、この刑法の中に入れるか入れないか、あるいは特別立法にすべきかすべきでないかということは、法制審議会で十分論議されなければならない問題だと思う。それをそちらの論議を捨てておいて、立法をぽんと出される。出されたところで、反社会的現象が、火炎びんを使うような、こういういい悪いにかかわらずこの根源が解消されなければ、火炎びんの問題だけ、取り締まりの問題だけで解決のできる問題ではないと思う。そういうことであれば、軽々しくこういった治安立法というものを議員立法で出されるということには、政府としては十二分に私どもはきびしい態度を持ってくれなければ困ると思う。
 そういう立場でさらに伺いますと、今後これからいろいろの治安立法が出てくるわけですけれども、先ほどから触れましたけれども、治安立法は一切法制審議会は通さないでやるという方法でこれからお臨みになるのかどうか、どうですか。
○国務大臣(前尾繁三郎君) 絶対にそういうふうに考えてはおりません。それは通ると思います。要するに問題は、率直に申しまして、まあ永久にどういう態様で考えていくかということ。際限がないかもわかりませんけれども、いずれにしましても、治安立法だから法制審議会を通さぬとか、そんなことは全然考えてはおりません。ただ先ほど申しましたように、まあとにかく、今国会に成立するというスピードで考えていかないと、国民の不安なりあるいは要望にこたえられないという判断だけの問題だと思います。
○加瀬完君 これから、若干午前中の佐々木委員の質問にダブる点があると思いますけれども、お許しをいただきまして、この第一条の法案の内容に入ってまいりたいと思いますが、火炎びん、この法律上「火炎びん」というのは、先ほど刑事局長が御説明のように、「人の生命、身体又は財産に害を加えるのに使用されるもの」、こういう大前提があると考えてよろしいですね。
○政府委員(辻辰三郎君) そのとおりでございます。「人の生命、身体又は財産に害を加えるのに使用される」と、もっぱらそういうことに使用されるというふうに理解をいたしております。
○加瀬完君 同じような形態、火炎びん形態がありましても、「人の生命、身体又は財産に害を加えるのに使用される」というはっきりした証拠がなければ、これは火炎びんとはみなされませんね。
○政府委員(辻辰三郎君) これも、午前中にお答えいたしたとおりでございます。ここの第一条の「人の生命、身体又は財産に害を加えるのに使用されるもの」とは、社会通念上もっぱら人の生命、身体、財産に害を加えるために使用されると認められるものをいい、その認定はその物の構造、形状、機能、利用状況等から客観的に判断されるべきものと解しております。
○加瀬完君 それは午前中伺いました。
 そこで、客観的に判断をされるとおっしゃいますので、その火炎びんとしての用に供する目的といなとは、客観的といっても、どういう要件というものを踏まえて判断をするのかという、その基準はあるんでしょうね。
○政府委員(辻辰三郎君) ただいまの御質問は、三条二項の御質問であろうかと思うのでございます。で、「火炎びん」は、第一条におきまして、先ほど来御質問のとおりの厳格な定義がございます。三条二項の場合には、一条に規定しておるようなそういう「火炎びんの製造の用に供する目的をもって、」以下云々ということでございまして、この三条二項の「火炎びんの製造の用に供する」という場合の「火炎びん」は、もちろん第一条の定義規定にいう厳格な「火炎びん」でございます。
○加瀬完君 いや私は、一条、三条を通して、火炎びんというものの概念をいま伺っております。「これに発火装置又は点火装置を施しさえすれば」というのは、どういう状態または要件をさしていますか。
○政府委員(辻辰三郎君) 三条二項の問題でございますが、これは、いわゆる火炎びんの半製品の所持を処罰しようとするものと理解をいたしておるわけでございます。で、その場合の処罰の要件といたしまして、先ほど来申し上げております「火炎びんの製造の用に供する目的」というものがなければ、この半製品の所持ももちろん処罰の対象にならないわけでございます。
 次に、客観的な要件として、その半製品は「容器」という点で一つの限定がされておるというふうに理解するわけでございまして、これは、容器性という面で、「これに発火装置又は点火装置を施しさえすれば火炎びんとなる」ようなそういう「容器」ということで、そういう「容器」という点で、この「容器」の客観的なしぼりができていると、かように理解いたしております。
○加瀬完君 「容器」は、午前中いろいろ質疑応答がありましたから、わかりました。
 しかし、その容器は、「発火装置又は点火装置」というものは、どういう状態になった場合にこれを「発火装置又は点火装置」とするのか。あるいはどういう要件を備えた場合に、その条件にかなったものとするのか。それは、この法文では明瞭ではありませんね。それを客観的にといっても、取り締まりの警察官が、一人がかりに客観的だという判断ができるという保障はどこにもない。それが午前中から問題になっているところだ。「容器」はわかった。その「容器」が火炎ぴんとして成立をする、その発火装置あるいは点火装置というものは、どういう状態になったものをさすんですか。
○政府委員(辻辰三郎君) これは多少具体的な事例を御説明いたしたいと思うのでございますが、過去におきます火炎びんの使用事犯でございますが、これは、いわゆる過激派集団の一つの犯行におきまして、火炎ぴんというものを現場においていわゆるドッキングをさすわけでございます。甲という者が引火しやすい物質を入れたびんを持っている、他のまた乙が、先ほど来御説明いたしましたように、塩素酸カリをしましたテープを持っている。そしてそれが犯行の現場におきまして出会いまして、そこで初めてびんにその塩素酸カリをしましたテープを巻く、そうして火炎びんを完成してそしてその場で使うと、こういう事例が少なくないのでございます。このいわゆる半製品の所持というものはきわめて危険な行為であろうと思うのでございます。
 その場合に、それじゃそういうものを可罰的にするという場合に、片やこの引火しやすい物質を入れておる容器を持っておる者、片や発火装置を持っておる者、こういう二つのもの、両方とも非常に危険なわけでございますから、可罰性のある行為であろうと思いますけれども、しかしながら、単に発火装置や点火装置を持っておる者は、これはいろんな形態がございましょう。そういうことで、これを犯罪としてとらえていくことはこれはいささか無理があろうと。そこでこの容器のほうを、現実に引火しやすい物質を入れているその容器を持っている者、これを処罰の対象にしようというところから出たのがこの三条二項でございます。したがいまして、法律的に申しまして、これは、片一方の、引火しやすい物質を入れておるそういう容器を持っておる者、しかもそれで、火炎びんの製造の用に供しようとするそういう確定的な認識のもとにそれを持っている者、この片っ方のほうを処罰しようという趣旨でございますので、この「発火装置又は点火装置」というものは、この三条二項の条文においてはいろんな形態が考えられるわけでございまして、そこには別段制限がないわけでございます。
○加瀬完君 第一条のようにね、「火炎びん」というものはこういうものだということが明確に規定されて、その火炎びんを持っている者が処罰の対象だということならば、これはわりあいにはっきりしている。しかし、火炎びんになるかもしれない、あるいは火炎びんを将来はつくろうとする容器を持っている者というだけで処罰の対象にするということになれば、そういう目的があるかないかという判定はなかなかむずかしい問題になる。そこで、午前中からその点が私どもはうなずけない。
 具体的に伺います。からの牛乳びんを何本も車へ積んでいる、それからガソリンかんを別個に持っている、こういう車の荷物は処罰の対象になりますか。
○政府委員(辻辰三郎君) 三条二項は、「ガラスびんその他の容器にガソリン、燈油その他引火しやすい物質を入れた物」を持っておることが必要でございますから、いまのからの牛乳びん、これはまず対象になりません。それから、別途、ガソリンのドラムかんを別に持っていると。そうすると、このガソリンのドラムかんのほうについて、この三条二項というものが適用があるかどうか。これは、一応目的があるということを前提にいたしまして考えました場合も、これも、ドラムかんというものは、特に加工をしておるというような場合は別でございますが、通常はこれは「流出し、又は飛散」しないというようなふうにつくられた容器であろうと思うのでございまして、その限りにおいては、そのドラムかんの場合も消極になろうとかように考えます。
○加瀬完君 そうすると、火炎びんを製造をする目的があるだけでは処罰の対象にはなりませんね。
○政府委員(辻辰三郎君) もとより処罰の対象になりません。
○加瀬完君 容器に引火しやすい物質が入っていること、これに発火または点火装置を施し得る条件、これが加えられていることが、この火炎びんの判定要件ということになりますか。
○政府委員(辻辰三郎君) そのとおりでございます。三条二項は、火炎びんの製造の用に供する目的をまず持っていなければなりません。所持をしている者がそういう目的を持っていなければなりません。それから、所持しているものは何かといえば、ガラスびんその他の容器に引火しやすい物質が入っているものを持っていなきゃならない。しかもその容器は、発火または点火装置を施しさえすれば火炎びんとなる、そういう容器でなければならないと、こういう要件になっておるわけでございます。
○加瀬完君 そこで、その発火や点火装置を施しさえすれば火炎びんになり得べきもの、そういう容器を持っていますね。ところが、いま申し上げましたように、発火、点火の装置そのものは持っていないんだと、こういう場合は、これは火炎びんの所持者と認めないことになりますか。
○政府委員(辻辰三郎君) もっぱら三条二項の問題としてお答えいたしたいと思います。これは要するに、ガラスびんその他の容器、しかもその容器は、発火装置又は点火装置を施しさえすれば火炎びんとなるような容器、その容器に燈油その他の引火しやすい物質を入れた物を持っていると、そしてその持っている者が火炎びんの製造の用に供する目的でそれを持っていると、こういうことでございます。
○加瀬完君 目的があるかないかということは、その持っている者自身の証言だけが一〇〇%信用されるという状態ではありませんわね。この法文の上からはそういう保障はどこにもありませんわね。
○政府委員(辻辰三郎君) この、火炎びんの製造の用に供する目的を当該所持者が持っているかどうかということは、諸般の客観的な資料、事情から認定せらるべきものと考えております。
○加瀬完君 諸般の事情というのは、取締官というのは大体初めから相手を犯罪者扱いにして調べるような傾向が強いんです。そういう観点で諸般の事情ということで判定されれば、ガソリンなり燈油なりをそういう容器に――やがて火炎びんになるのではないかと判定されるような容器に入れたものを持っておれば、すべてこれは取り締まりの対象ということにさせられますね。そうでないという保障がどこかありますか。
○政府委員(辻辰三郎君) これも午前中に申し上げましたけれども、火炎ぴんというものは社会的に全く無益かつ有害であるものでございます。特殊のものでございます。で、この「火炎びんの製造の用に供する目的」というものは、社会的に見てきわめて特殊のものであろうと思います。そういうことを認定するというためにはそういう特殊な事情がなければならないということは理の当然であろうと思うのでございます。各家庭にガラスびんその他の容器にガソリンその他の引火しやすい物質を入れたものを持っているというようなことは間々あることでございます、各家庭においてもあろうと。しかしながら、これは火炎びんの製造の用に供する目的だということになれば、きわめて特殊な事例でございますから、それに相ふさわしい状況と資料というものがなければとうてい認定することができないということになろうかと思います。そういう意味で、この目的というものはきわめて厳格に解されていくべきものであろうというふうに考えます。
○加瀬完君 大体法案の説明のときには、局長おっしゃるように皆さん御説明なさる、いつでも。ところが、運用になりますと、非常に拡大解釈がされて、全くそういう歯どめというのは守られておらない。具体的に言いますよ。たとえば千葉県の成田の空港闘争、これは学生が来て火炎びんを使っております。そこで全然空港反対にも賛成にも関係のない農家が一升びんの中に消毒用のガソリンなり燈油なりを入れて持ち歩いていた場合ですね、誤認逮捕という形にならないという保障がどこかにありますか、この法律上。事情を聞いて裁判にして無罪になるとかなんということでない。そういうあなたのおっしゃる御説明によれば、火炎びん製造の目的がなければ犯罪要件は成立しないと、これは。ところが犯罪要件は成立しないはずだけれども、ガソリンや燈油を入れて火炎びんになり得るものと見間違うような入れ物で物を運んでおればこれは取り締まりの対象になる。しかし、目的がないということを判然とさせる取り調べ上の手続というのはどこにもないという、だれが考えてもこれは火炎びんを使っているグループしかここに入ってこない、これは火炎びんの材料を運ぶんだという状況ならば見間違う必要はありませんけれども、一般の市民なり、具体的にいえば、いまのような農家の農作業している者と空港反対のグループとごっちゃに往来をしておるような中でそういう判定ができますか、どうして保障してくれますか。ただ、そうでない、火炎びんではないという保障は、どういう手続で保障してくれますか。これは警察にも聞きたい。どういう取り調べ、どういう取り締まりの方法でそういう一般の農民に被害は絶対に与えませんという保障が成り立つのか、それを聞きたい。
○政府委員(辻辰三郎君) しばしば申し上げておりますように、火炎びんの製造の用に供する目的というものは、この三条二項につきましての犯罪の構成要件でございます。したがいまして、これは検察側であくまで立証しなければならない問題でございます。積極的に立証しなければならない問題でございまして、単に推定とか、そういうものではだめなんでございます。あくまで検察側としては、三条二項の犯罪が有罪であるためには積極的に特殊なものを諸般の状況から立証しなければなりません。そういうことで具体的事案の場合には、きわめて慎重な証拠収集が行なわれるべきものと考えております。
○政府委員(高松敬治君) 三条二項の問題につきまして、こういう規定がどう理解されるべきものかということからまず申し上げていきたいと思いますが、火炎びん自身が、非常に完成した火炎びんというものはある種の危険性を持っている。現に昨年十一月ですか、池袋の電車の中でこれを持った過激派の女子学生が取り落として、そこで爆発をしまして、八人が負傷してその女子学生自身が死亡したというふうな事件がございます。たいへんこれは危険である。そこで大体において、最近の傾向としては製造を中止した、完成品を持ち歩くことはむしろ非常に少なくなりつつある。現に赤軍派の出している「夜想曲」――夜想う曲という、名前はたいへんやさしい名前の本でございますけれども、この中身は「火炎手榴弾」と書いてございますけれども、火炎びん、あるいは爆発物、そういうもののいろんな作製の手引き書、注意、それから使い方の説明書でございます。その中にも、原料はなるべく分離して持って歩け、それから点火する薬品はなるべく少量ずつ持っていくのだというふうなことを書いております。そこで三条二項というものは製造、所持を禁止をしておる。で、製造、所持だけに限った場合に、こういうふうな分離して持っていた場合には、これは火炎びんにならない。そこでやはりこういうふうな三条二項というのは、三条一項のいわば脱法的な行為と申しますか、そういうものを別々に持っていってドッキングするということをやはり処罰の対象にする、こういうことがまずこれの考え方であろうと思うのでございます。
 そこでいま御指摘になりましたこういう目的についての認定は非常に警察の認定だけでは信用できない、こういうお話でございます。目的罪につきましては、これはほかのものにもたくさんございます。選挙法にもいろいろございますし、あるいは行使の目的とかあるいは営利誘拐の目的とかいろいろたくさん目的がございます。私は、個人的な意見としては、こういう目的罪というものは、現在の刑事訴訟法あるいは訴訟手続、あるいは裁判の手続上の問題としては、一つのこういう主観的な要素というふうなものをどうして証明するのかというようなところに一つの疑問があるわけでございますが、しかし現実の立法としては、こういう目的罪は非常にたくさんございます。こういうことでなしに規定があれば、私どももそれは非常に客観的に認定ができる、客観的に法律を執行していける、こういう形になれば非常によろしいかと思いますけれども、やはり現実の問題としてはこういうふうな目的罪ということでしぼりをかける、それによって乱用を防いでいく、こういう形のものがございまして、これの認定につきましては、警察としてはもちろんこれは厳格にこの目的を認定すべきものであることは申すまでもございません。
 で、実際問題といたしまして、たとえば何もない銀座の町をぶらぶら持って歩くのと、一つの異常な状態における地域におけるそういう行動、あるいは運搬の方法、あるいは所持者の言動、あるいは所持している数量、その他のものをいろいろ勘案してこれを認定してまいらなければならないと思いますけれども、いずれにいたしましても、この認定については私どもとしても十分にこれを警察官にも周知徹底させ、乱用にわたるようなことのないように十分つとめてまいりたいと思います。それはまた、この法案の自民党提案であった第一次案から四党共同提案の第二次案に変化した大きな点でもございますし、また附帯決議のいっておられるところもまさにそういうところにある、かように考えまして、その点については十分力を尽くして誤りのないように処置してまいりたい、かように考えるわけでございます。
○加瀬完君 力を尽くして誤りがないように考えるというだけでは、何の保障にもならない。そう言いながらいままでにいろいろ、あとで具体的に言いますけれども、あなた方やっているのだから、被害を受けている国民の側からすれば、それだけの御答弁で、ああこれでよろしいということにはならない。
 もう一ぺん質問を繰り返します。この火炎びんになるであろう容器に火炎びんになる条件のものを入れて持っておれば、それは発火装置、点火装置がなくてもこれは取り締まりの対象になるということでしょう。
○政府委員(高松敬治君) 火炎びんの製造の用に供する目的でもってそれを所持しておればなるということでございます。
○加瀬完君 その目的があったかないかは、かりにそこで抗弁したところで取り締まり側がこれは目的があるというふうに判定をすれば、これはどうにもその場では――あとで裁判の結果白となろうとも、言いのがれが成り立たないことになる。そこで、あなた方取り締まりの側にある者は客観的判断をするということをたびたび言っておるのだけれども、客観的判断というのはどういう条件のものを具体的に備えて客観的判断ということをするのか、その条件を出せとさっきから言っている。午前中から、ただ公平に扱います、目的にはずれるようなことはありませんということだけじゃ何にも保障にならない。取り締まりの基準というものをここで明確に示してください。それがなければ、これは非常におそろしいことです。
○政府委員(高松敬治君) 先ほども申し上げましたように、あらゆる場合を通じての取り締まり認定の基準というものは、なかなか抽象的には申し上げにくいと思うのでございますけれども、少なくとも、それが一人の警察官のいわば恣意的な判断によってなさるべきものではない。それはそういう恣意的、独断的な判断ではなしに、やはりそれを裏づけるような客観的な資料、たとえば、それを持っている者がどういう人間であるか、あるいはそれを持っている人が何のために持っているかというふうなことが、つまり弁解といったらおかしいかもしれませんけれども、どういう説明があるか、あるいはその所持している数量、運搬方法、さらにそれらの所持なり運搬なりをめぐる客観的ないろんな情勢、そういうふうなものから見て、これは発火装置、点火装置を施しさえすれば火炎ぴんとなるものかどうか、こういう点がこういうものの認定の大きな一つの要素になってくるであろうというふうに考えます。
○加瀬完君 恣意的判断はしないというのは当然のことですよ。恣意的判断をされたらたまらない。しかし恣意的判断をしないという条件は一つも出していない。恣意的判断をしないとおっしゃるんだけれども、たびたびある。われわれの知っているところでも数件ある。そういう騒乱の中には、恣意的判断をしない、公平を期するといっても、あやまちが人間である限り行なわれる。そのあやまちを最小限こういう形で防ぐんだというものがなければ、これは恣意的でないといったって恣意的にならざるを得ませんよ、警察官あるいは取り締まりの側が。
○政府委員(高松敬治君) 恣意的な判断におちいらないようにするというためには、やはりまず第一はこれについての教養を十分徹底するということであろうと思います。これの持っている意味はどういうことであるか、どういうふうなことでこれを認定していくのかというふうなことが一つ。それから、もしそれが恣意的な、あるいは一警察官の独断的な判断によって間違って行なわれたというようなことになれば、それについての指導なり、あるいは場合によっては処分なりというふうなものでそれを考えていくべきことではなかろうか。それ以上にたとえばこれに対する保障と仰せられても、具体的にそれではどうするのかということになると、私はちょっといま具体的な方法というのは思いつかないのでございますけれども、われわれとしてはやはりこれに対してまじめに考えて、そうしていやしくも恣意的な判断、独断的な判断あるいは乱用といわれるそしりを受けることのないように万全を期していきたい、かように思うのでございます。
○加瀬完君 質問を変えて申しますと、一二条二項を必要とする理由は何ですか、警察側に伺いましょう。それから、一三条二項が過剰取り締まりの根拠となる危険性というものを全然感じませんか。
○政府委員(高松敬治君) 三条二項がわれわれとして必要であると考えるということにつきましては、先ほどちょっと御説明申し上げました、むしろそういう分離して持って歩いてドッキングをするという形態――明日いろいろ現物あるいは実験をごらんいただく予定になっているようでございますが、そういうふうな形が一般的になっている。それから、彼ら自身もそういうことを、むしろ分離して持って歩いたほうが危険性が少ないんだというふうなことを盛んに言っている。そういうふうなことからいって、もし三条二項がなければ三条一項というものはいわば抜けがら同然になるのではなかろうか。そういうものを防ぐ三条一項というものの実効性を担保すると申しますか、そういう意味で三条二項というものは必要であるというふうに考えているわけでございます。
○加瀬完君 三条二項が過剰取り締まりの根拠にならないという御説明はどういうことになりますか。
○政府委員(高松敬治君) いろいろ御指摘のように、これが目的罪である、目的罪の認定というのはとかくそこに恣意的に流れやすい、こういう御指摘は衆議院でもいろいろございましたし、それから午前中、午後を通じての当委員会の御議論の中心も一つはそこにあるというふうに私拝聴いたしております。その点について、確かにこれを恣意的、独断的に解するんならばそういう危険性というものはなしとはしないと思うのでございますけれども、しかしこの法律の運用につきましては、先ほど来申し上げておりますように、この審議の経過その他、あるいは附帯決議の御趣旨というふうなものを体してこれを厳正に執行してまいる、こういうことによってそういう乱用その他を防いでいきたい、防止できるというふうに私どもは確信している次第でございます。
○加瀬完君 それでは具体的に聞きますが、ガソリンなどを持った者を押えた、ところが火炎びんの製造の目的はありませんと、こう答えた。このときはあなた方は状況判断で、これは火炎びんの可能性がある、あるいは火炎びんの意思はないと、こう御決定をすることにはなりませんか。
○政府委員(高松敬治君) 先ほども申し上げましたように、たとえば日比谷公園に集中している、そこへ、日比谷公園に入る者、行く者がかなりの数量の火炎びんになるべきものを持っているというような状況がありました場合に、たとえ本人がこれは火炎びんに使うのではないんだというようなことでありましても、あるいはそれを火炎びんに――客観的に見てこういう情勢の中でその特定の人、あるいはその特定の人についてもその特定の人が何であるかという問題があろうと思います。たとえば六十歳過ぎた老人というのと過激派学生というものとは非常に違うと思いますが、そういうふうな客観的な情勢、それから所持する数量、運搬方法、公然と持っているか隠して持っているか、見つからないように持っているのかというふうなこと、それから本人の火炎びんに使うものでありませんという、そういう弁解でありましても、その弁解のしかたなりあるいは態度なり、そういうふうなものをいろいろ総合して客観的にこれを判断してまいるということになろうかと思います。
○加瀬完君 そうすると、火炎びんが使用されあるいは使用されようとする地域の周辺でだけしかこの取り締まりはしないということになりますか。
○政府委員(高松敬治君) まあ必ずしもそうはならないと思います。たとえばある学校から大挙してそういう者が出てくる、それらがこういうものを持っておるということになれば、あるいは製造の用に供する目的といって認定していい場合もあろうかと思います。地域的には、それは非常に遠いところで、たとえば神田から非常に離れておるというふうなことになっておる、そういう場合は当然あろうかと考えます。
○加瀬完君 そうすると、火炎びんを使用しあるいは使用されようとする地域の周辺、あるいは使用しまた使用しようとすることに関係のある地域なり建物の周囲、こういうことに限ってよろしゅうございますか、取り締まりの地域は。
○政府委員(高松敬治君) 具体的な態様はいろいろあろうかと思います。これだけに限ってよろしいかと言われても、その具体的な態様に応じてやはり考えていかざるを得ないというふうに思います。たいへんあいまいと思われるかもしれませんけれども、私は具体的な事実の認定というのはもうそれ以外に方法はない、これだけだというふうな言い方はちょっとこの場合にはできないかと思います。
○加瀬完君 そうすると、取り締まりの期日はどういうことになりますか。そういう事件が起こりそうな前後ということになりますか。もう不特定いつでもということになりますか。
○政府委員(高松敬治君) 実際に多いのはその前後のものが非常に多いであろうと思います。しかし、たとえばあるアパートを家宅捜索をやった場合に非常にそこにたくさんあった。火炎びん、こういう容器にガソリンその他の引火しやすい物質もある。それから別に塩素酸カリなりあるいは硫酸なりあるいは金属ナトリウムなり、そういうものもある。そういうものが発見された場合を考えますと、そういう場合にも、分離して持っていてもやっぱり三条二項の適用はあるであろう、かように思います。だから、期日的に非常に接近した期日というものは確かにそういう場合が非常に多いと思いますけれども、必ずしもそれに限らないというふうに私どもは考えております。
○加瀬完君 いままで火炎ぴんというこういう法律はなかったわけですけれども、こういう火炎びんを使用されるのではないかというようなことに類する対策としては、一週間も前から検問をしておりますね、そうしてその地域から十キロも二十キロも離れたところの駅でも全部検問する、こういうやり方をしておりましたね。この火炎びんの法律が出ればいままでのものはさらに強化されると考えてよろしゅうございますか。それはいままでのものも適法であり、今度のことも適法であるとお考えになりますか。
○政府委員(高松敬治君) この法律ができればたとえば一週間前、十日前からやっていた、それがさらに強化されていくとか、あるいはもっと長い期間になるとか、あるいはもっと大量の人数でやるとかという意味の御質問のように承りますけれども、現実にどの範囲の広さを、たとえばそういうものが隠されていないかということで検索をやる。これはいままでもそういう検索によって物を発見したという事例はたくさんあるわけでございます。それはどの範囲の広さまでやるのかとおっしゃられればそれは個々の具体的情勢いかんによってその範囲は定められてまいる。これはそういう検索は火炎びんだけではなしにあるいは爆発物その他についても検索するわけでございますから、そういうものをひっくるめましてやってまいる。で、その距離というものは幾らということも、これも個々の事件について考えていくより方法がないであろうかと思います。
 ただ、この法律ができたからそういうことがたいへん強化されてまいるかどうかということになりますと、先ほども申し上げましたように、火炎びんの発見だけではなく、問題は爆発物なりあるいはその他の凶器なりの発見なりということを含めて検索を実施してまいるわけでありますから、これができたからといって、そういう意味ではその検索が格別強化されるということにはならないだろうと思います。
○加瀬完君 さっき御説明の日比谷なら日比谷、ここで火炎びんが投げられるというような地域というものを限定して、これに火炎びんを運ぶであろうという予想をされて取り締まるということであるならばうなずけないこともないんです。ところが十キロも二十キロも離れているところの駅なら駅ということで――具体的に申しましょう、成田に代執行がある。この代執行には学生が乗り込むだろうということで一週間も前から船橋駅とか佐倉駅という十キロも二十キロも離れたところで検問をする、これは不特定多数の者にやることになりますね。状況判断ということでやるとすればそういう不特定多数のところで状況判断のもとでやっていくということであれば、これは火炎びんを使用する目的の全然ない者も当然取り締まりの対象になる。それが偶然火炎びんに見まがうようなものを持っているとこれは一応問題にされるわけでしょう。そういう警察側の取り締まりの行き過ぎ、過剰取り締まりというものが絶対にないんだという保障がこの法律にはどこにもないじゃないか、法律にないとするならば、あなた方が先ほどいろいろおっしゃっているけれども、どういう行政手続で不特定多数の一般の者にそういう取り締まりの行き過ぎというものを及ぼさないという歯どめはどこでするのか。
 こういう法律案が成立をしないときだっていろいろのことをやっている。あなたはさっき、ことばじりをつかまえるわけじゃありませんが、調べていったところが持っていたのが出たと。ところが普通のバスをとめて、この中にこん棒がかくされているからといってみんな調べたが出なかったことがある。一般の乗客をおろして調べる権利がどこにある、令状も何も持っていないのに。しかも陳弁これつとめた。そういうあれではありません。しかも全部おろして調べた。何も出ない。しかも知らぬふりをしてわきのほうにかくれてしまった。こういうことをやっているんです。われわれやられてきたんだ。だからですね、十二分な行政手続の上のチェックの対策というものがない限りは、あなた方がどんなにそういうことを言ったって信用できない、体験から。
 結局ですね、取り締まる者の判断に待つほかないということになるでしょう。判断に待つということであれば、個々の判断の差が当然生じてくる。警察の行政効果だけ見れば、きびしくやったほうがいいということになりますから、これを親切にするよりはきびしくなってくる。これでは火炎びんを投げ合うことに賛成する者は一人もありませんけれども、全然関係のない者が火炎びんの被害というもののために人権を阻害されるようなやられ方をしては、どうしたってこれはがまんができないという問題が出てくる。そういう保障というものが法律の内容にもないんじゃないか。だからこの三条の二項というものはなくても取り締まりはできるのに、何で三条の二項を付け加えなきゃならない理由があるんだ。ただ、そういうふうにやったほうが火炎びんを取り締まる上には確かにいいけれども、一方、関係のない者の人権を侵害するというおそれも出てくる。どっちをとるか、どっちをとる。まず関係のない者に被害を与えないということをとるのが立法の当然の立場ではないか。そういうこともあり得るわけだから、先ほどから言っているように、十二分に法制審議会等の意見を聞いて、これは政府が責任をもってやるべきことで、議員立法ということにしてそれで骨組みだけつくって、で、若干修正をして、こういうことで政府の責任がのがれられるものではないと私どもが指摘しているのは、そういうことですよ。
 それでは具体的に聞きますよ。ガソリンがドラムかんで積まれている。一方、ビールびんや牛乳のあきびんがまた積まれている。さらに一方には発火、点火の装置材料が備蓄されている。しかしそれは個々別々でね、組み立てられてはいない。こういう場合は三条二項は適用されることになりますか。
○政府委員(高松敬治君) それは先ほどお答え申した御質問であろうと思います。牛乳のあきびんはこれは全然三条二項の問題にはならないわけでございます。
 それからガソリンその他引火しやすい物質を入れていたドラムかんがあるという場合、そのドラムかんにつきましては、ドラムかんというものは通常流出または破損しないように装置されておりましょうから、そういう意味におきましてドラムかんが積んであるということも消極的であろうということを申し上げたわけでございます。
○加瀬完君 さらに伺いましょう。そうなりますとね、結局一条によれば、ガソリン等引火しやすい物質の容器があって、しかも発火、点火装置がなければ火炎びんとは言われないでしょう。第一条でいっている火炎びんというのは私が申し上げたとおりでしょう。火炎びんを取り締まるというのはわかる。やがて火炎びんになるかもしれないという別々な材料があれば、三条二項では取り締まれることになっている、火炎びんの取り締まりがね。そういうガソリン等引火しやすい物質の容器があって、しかも発火、点火の装置がある。こういう条件がそろったものを取り締まればいいじゃないですか。三条二項みたいに、非常に容器の中にガソリンみたいなものが入っておりさえすれば取り締まれる。しかしそれは火炎びんにする目的がなければだめだけれども、目的があるかないかというのは一方的に警察が判断をしがちになりますから、これでは基本的人権の保障はどこにもないということを私どもは言っているわけです。三条の一項だって十分じゃないか。
○政府委員(辻辰三郎君) 三条一項だけで十分であるという御意見につきまして、なぜ三条二項が要るかということは、私どもが先ほど御説明いたしましたし、また警察からもその必要性を申し述べたわけでございます。問題はやはりドッキングされるということが、これが非常に多い事例であるというところに、この三条二項の必要性があろうと考えておるわけでございます。
○加瀬完君 火炎びんの取り締まりというものの完璧を期する上から、三条二項というのが必要だということはいいとしますよ。しかしそれは一方危険性も当然生じてくる。人権侵害という危険性も生じてくる。その危険性が保護さるべき法律的保障というものはどこにもない。それでは法律としては完全ということにならないじゃないか。保障されている基本的へ権というものが侵害されるということが大幅に認められるという法律を私どもは認めるわけにいかない。こういう見解です。
 じゃあ、具体的にね、本法が成立をいたしますれば、火炎びんを所持していることだけでもこれは処罰されますね。火炎びんの片割れというか、二分の一だけ、容器、火炎びんになり得べきものを持っているだけで処罰されることになりますね、そうでしょう。
○政府委員(辻辰三郎君) 火炎びんを所持しておれば三条一項で処罰の対象になります。それから発火装置または点火装置を施しさえすれば火炎ぴんとなり得る容器に、ガソリンその他引火しやすい物質を入れたものを、火炎びん製造の用に供する目的を持っておる場合に、処罰の対象になるということでございます。
○加瀬完君 そうすると、火炎びんまたはこの三条二項のようなものを持っているかどうかというものを調べる場合に、不特定多数に対して所持品の検査をするということになりますか。
○政府委員(辻辰三郎君) これは私どもの立場でまいりますと、三条二項は「火炎びんの製造の用に供する目的」という目的がまずしぼられておる。しかもこの目的は異常な目的でございますから、これについては十分の立証を要するというふうに考えておりまして、法律的にはこれで十分のしぼりができておると確信いたしております。問題は、先ほど来御指摘のように、この法律ができました場合の警察の一つの運用の問題に帰着するだろうと思うのでございます。法律としてはまあこの三条二項のしぼりで必要なしぼりができておるというふうに確信をするわけでございます。
○加瀬完君 私はさっぱり確信が持てないのですよ。ね。一条のいうような、完全な火炎びんを持っておるものを取り締まるというのならわかる。火炎びんになるであろうものを持っておりさえすれば取り締まりの対象にできるというのは、火炎びんをつくるという目的というものがあるかないかが立証されなければだめだというけれども、そんな立証を不特定多数を調べていくときに、一々あなたは目的はどうですかということなんか聞くわけはありません。状況判断でやるということをさっきから言っておる。そうすると取り調べ官の状況判断の何といいますか、いい悪いによって、当然これは火炎びんらしきものを持っているというだけで、意思のあるなしにかかわらず取り調べられるし、検索されるということになり得る。それが絶対にないという条項はどこにもこの法律の中にはないではないかということを言っている。これはないことははっきりしている。そこで所持品検査というものが当然これは行なわれることになりますね。
○政府委員(辻辰三郎君) おことばを返すようで恐縮でございますが、この法律には「火炎びんの製造の用に供する目的」というものは、社会的にきわめて異例なことでございます。したがいまして、これは通常の場合にはむしろそういう目的はないんだというふうに考えるべきが相当なんでございまして、異常なんでございますから、異常な場合、積極的に、この「火炎びんの製造の用に供する目的」というものが認定されてくるわけでございます。通常の場合は、これはむしろそういう目的がないと。ないがゆえに、この「製造の用に供する目的」ということが犯罪の構成要件として加えられていると、かように私どもは理解をしておるのでございます。
○加瀬完君 それはそう理解してくれなきゃ困る。ところが、異常か異常でないかという判断は警察でやっている。目的があるかないかという判断も警察がする。そうならば、一般の国民は、どこにも、あなたのおっしゃられるような保障はされておらないことになりませんか。事実がそうなんですよ。何にも行なわれておらないときに、五日も十日も前から不特定多数の者に対して検問しているわけです。何だといえば、警察は、これは異常事態が発生するという、異常だという考え方をしているわけだ。そんな目的はありませんよと言ったって、なに、こいつはあぶないんだ。服装なら服装だけ見て言う。これは学生がもぐっているんじゃないか、これは反対同盟じゃないか、こういうことで、たとえば成田空港の場合にはやられているのだ。異常な場合だと、目的がなければと、こう言うけれども、目的があるなしは警察が判断する、異常か異常でないかということは取り締まり側が判断するということであれば、どこにも人権の保障はないじゃないですか。そうなってまいりますと、書物とか所持品の不可侵性という基本的人権の関係がどういうことになりますか。これはこの火炎びんの関係だけではありませんよ。いままで警察がやっている取り締まり方法はどういうことになりますか。憲法の基本的人権ということが守られていますか。
○政府委員(辻辰三郎君) しばしば申し上げておりますように、この三条二項の犯罪の成否というものは、これは厳格な原告側といいますか、検察側の立証の結果、裁判所によって認定されて初めてこの犯罪の成立が確認され有罪となるものでございます、刑罰法規でございますから、これは。刑罰法規の構成要件としては私は必要なしぼりができているというふうに、先ほど来しばしば申し上げておるわけでございます。
 で、先ほど来御指摘の問題は、こういう法律ができて、三条二項の犯罪ができたという場合に、これを犯罪として、警察官職務執行法の規定のもとで警察がどういうような警察の運用をなさるかという問題でございまして、先ほど来御指摘の問題は、もちろんこの三条二項の問題を中心にいたしておるわけでございますけれども、何かこの三条二項を介した警職法の運用の問題、このほうを御議論になっておられるのであろうと思うのでございますが、刑罰法規としては私はこれで十分なしぼりができているというふうに考えます。
○加瀬完君 法律上どうなっているか、法理論上これが合理的か不合理かというようなことを議論しているのではない。これが適用された場合に、一般の国民にどういう影響を及ぼすかということを、われわれの立場で質問をしているわけなんです。三条二項なんというものは、いままでの警職法の運用のしかたによれば、当然これは国民に被害を与えるいろいろの問題を含んでいるということで聞いているわけです。だから、法律的には歯どめができていると言うけれども、運用して歯どめにならないものを、歯どめができていると言えますか、これ。
○政府委員(辻辰三郎君) 刑罰法規としては歯どめができているということを申し上げておるわけでございます。で、問題は、この三条二項という犯罪ができました場合に、これを介して行なわれる警職法の運用の問題であろうと、かように申し上げておるわけでございます。
○加瀬完君 いや、法律をあなたがつくったんじゃない、文句を言うつもりはなかったけれども、火炎びんというものははっきり第一条で限定しているのでしょう。第三条の二項では、一条の火炎びんでないものだって、火炎びんの準備行為というものが処罰の対象になっていますよね。そういう取り締まり方をしていくと、この法の内容のとおりの運用をしていくと、これは基本的人権の侵害ということが随伴されてくる危険性が多分にある。そういう、取り締まり法規として初めから人権侵害が行なわれ得るような内容を含めたものを、一体内容としていいかどうか。こういうことを言っているわけですよ。
 それで、さらに伺いますが、これは政府に伺うのも筋違いでございましょうが、衆議院の附帯決議がございますね、これは御存じでしょう。(「決議だ」と呼ぶ者あり)これは中谷先生にもあとで伺うのですけれども、法律をきめておいて附帯決議をつけるというようなのはこれはどういうことだか、どうも私ども理解に苦しむのですけれども、「濫用又は拡張解釈」ということばがこの中にございますね。これは、提案者にもですが、ここで御心配になった「濫用又は拡張解釈」という内容はどういうことを御想定なさったか。
 もう一点、「濫用又は拡張解釈」という附帯決議をつけなければならないようなことであれば、本文の中にきちんとこれは整理して、乱用も拡張解釈もされないように歯どめをすべきだと思いますが、これについての御見解はどうか。
○衆議院議員(中谷鉄也君) だんだんの御質問がございまして、衆議院において論議された点、また法案作成の過程において問題点として予想をいたしました点、基本的人権と本法案の必要性を比較考量いたしました点、すべて非常に鋭い御質問がございましたが、本法案作成の過程中の一つの論議といたしまして、附帯決議の最初の項、すなわち、「火炎びんの使用等の処罰に関しては、捜査並びに法規の適用に当りいやしくも濫用又は拡張解釈により国民の基本的人権を不当に制限することのないよう留意すべきである。」という文言につきましては、本法の中にこの条文を入れるべきではないかというふうな意見もあったことは事実であります。しかしながら問題は、本来刑罰法規というのは、罪刑法定主義のたてまえから申しまして、本法の中にこの種条文を入れることについての、法の持っているところの何と申しまするか、本法の中に入れるということの一つの不合理性、そういうようなものについての指摘もありまして、そうしておいおい協議をいたしまして決議のほうに移したわけであります。これが、各委員の中で、作成過程の中において出てまいりましたところの意見の一つであります。そういうことで本法の中からはずしている、こういうことを申し上げておきたいと思います。
○加瀬完君 ちょっと、いまのは、これは附帯決議でなくて決議だそうでございまして、訂正をいたします。
○衆議院議員(中谷鉄也君) それから、先ほどから加瀬委員御指摘になっておられますとおりに、「捜査並びに法規の適用に当り濫用又は拡張解釈」、この問題点として論議が集中いたしましたのは、言うまでもなく三条二項であります。これはもう御指摘をまつまでもなく、衆議院における質問もこの点にほとんどの論議が集中をいたしました。先ほどから繰り返し御質疑がありますように、「火炎びんの製造の用に供する目的」という主観的違法要素を持っておるという点、その点についての認定にあたっての警職法の運用、たとえば先ほど御指摘ありましたところの誤認逮捕等の問題、あるいは警察官のいわゆる現在の教養あるいは人権感覚、そういうような点にわたりましてあらゆる角度かちその点についての問題を指摘いたしました。そうして特に三条二項について、乱用または拡張解釈をしてはならない、それはまさに三条二項を特に中心として論議したことは事実であります。
 なお、ただそういうふうな論議を通じまして、しかも提案者のほうで三条二項という条文を設けました理由について若干この機会に補足をいたしてお話を申し上げさしていただきたいと思いますが、たとえばAという人間が点火または発火装置を持っておる、Bという人が火炎びんの使用の目的をもって、「ガラスびんその他の容器にガソリン、燈油その他引火しやすい物質を入れた物」を持っておる、こうしてAとBとが二人一緒に歩いておるというふうな場合、三条二項というふうなものがない場合にはこれは取り締まりの対象にならないわけであります。こういうようなことについての不合理性は一体どういうように解消したらいいんだろうか、こういうような点についてもこれは先ほど繰り返し繰り返し御指摘がありました基本的人権の侵害のおそれという面を考慮しつつもそういうふうな場合は一体三条二項がなかったらば取り締まりの対象にはなり得ないじゃないかというような点を考えたわけであります。
 まあいろいろなケースが考えられますが、三条二項につきましては先ほどからお答え申し上げておりますとおりに、三条二項というものを、すなわち「火炎びんの製造の用に供する目的をもって」、これらのものを持っているという者が処罰の対象になる必要性があるということを前提といたします限りは三条二項については法律的にはしぼりはかかっておるし、またそのしぼりをかけることについては衆議院においてはたいへん苦労をいたしましたということを申し上げておきたいと思います。
○加瀬完君 よくわかりました。中谷先生に対する質問はこれで……。
 そこで火炎びん取り締まりについて異論はありませんよ、取り締まりについて。しかし警察や検察庁に対しましては、この取り締まり方法についての問題を私は幾つか持っておりますので、この際触れさしていただきます。
 で、火炎びん法案について一部心配される向きも、ときの権力の政治的な擁護のためにこの取り締まりが適用されるのではないかという点であろうかと思います。そういうことは絶対にないとお答えになるでありましょうから、私は問題をあらためてひとつたださなければなりません。昭和四十六年九月十六日千葉県成田市駒井野字張ヶ沢一一八七番地、いわゆる鉄塔を取りこわす代執行についての事件がございましたことは御承知のとおりです。この際千葉県警は代執行者を送検したといわれておりましたが、これは送検してありますかありませんか。
○説明員(斉藤一郎君) ただいまの千葉のいわゆる成田空港第二次代執行の際の四十六年九月十六日の鉄塔が倒れた事件でございますが、これは当時鉄塔が倒れたので、それに関連して県、空港公団に刑事責任があるのじゃないかという業務上過失傷害事件でございます。いまの時点ではまだ送検しておりません。
○加瀬完君 これは千葉県警本部長荒木貞一氏は新聞によれば送検をすると、こういう新聞発表があった、それを警察庁長官がとめたと、こう当時取りざたされておった。そこで私は、昭和四十六年の十月の九日に参議院の地方行政委員会でいろいろ問題点について質疑をした。そのときに警察庁長官はとめてありませんと、おそらく送検されることだろうと思いますからあとでお答えをしますということになっておる。送検されておらないというならこれは法務省の方にもお聞きいただきたいと思いますが、こういう事実は警察では調査をしたはずだからお認めになっているかどうか、これから伺ってまいります。
 事実関係、昭和四十六年九月十六日午後三時十五分ころ、千葉県成田市駒井野字張ヶ沢一一八七番の付近で、右土地内の鉄塔の撤去作業が行なわれたことはお認めになりますね。
○説明員(斉藤一郎君) はい、確かに撤去作業が行なわれております。
○加瀬完君 右鉄塔の支柱が横からの張力に弱いL字型鉄材であり、すでに、約十分前に鋼鉄製ワイヤー一本を周囲にめぐらしクレーン車で牽引したところ、右ワイヤーをかけた部分である南西側脚部の鉄骨が曲り、一瞬鉄塔上部が南北方向に揺れ動いたことは事実ですね。
○説明員(斉藤一郎君) いま御質問の途中でございますが、これらの捜査はまだ継続しておりまして、詳細の鉄塔の関係その他については鑑定を依頼中でございますので、これから――いまの御質問もそうでございますが、個々については私この場で一つ一つお答えができません。
○加瀬完君 原因はともかくとして、鉄塔が動いた事実は、これは警察が立ち会ったわけですから知らないとは言わせません。
 三番目に、右方法により牽引するならば、鉄塔の支柱が折れ曲がり、最上部及び中段部にいる約十名の学生らが高さ約十メートルないし十五メートルの地点から墜落し、地面に激突し全身打撲等の傷害により、ことによれば死に至るかもしれないという状態でありましたことはお認めになりますか。
○説明員(斉藤一郎君) ただいまの御質問は、最初に申し上げました県あるいは空港公団の関係者の刑事責任の問題に関連しまして、そのことについてはいま捜査中でございます。
○加瀬完君 それではね、これはお答えいただけるでしょうね、関係者について。千葉県知事友納武人君がこの物件の行政代執行の最高責任者でありましたことは御存じですね。
○説明員(斉藤一郎君) あの際の代執行については県知事が責任を持って代執行するという法的な仕組みになっておったことを承知しております。
○加瀬完君 千葉県副知事川上紀一君が右友納武人君より本件代執行の現場での最高責任者を命じられ、昭和四十六年九月十六日の本件代執行の際、空港公団分室において総指揮をしていたことはお認めになりますね。
○説明員(斉藤一郎君) 副知事が空港公団におってこの代執行の状況を指揮しておったことを承知しております。
○加瀬完君 千葉県警本部長荒木貞一君は本件代執行の警備本部部長でありましたね。
○説明員(斉藤一郎君) そのとおりでございます。
○加瀬完君 警視庁機動隊員、氏名は不詳の者が本件代執行の当日、成田市駒井野字張ヶ沢一一八七番地付近で大型ダンプカー荷台上の金網張り特製指揮官やぐら内で指揮をしておったことはお認めになりますか。
○説明員(斉藤一郎君) 問題の鉄塔のところで警視庁の第一機動隊が警察の責務を遂行するための活動をやっておったことは承知しております。
○加瀬完君 トラック・クレーン車(足立8な3457、HC78BS)の運転手氏名不詳の者がクレーン車を運転しておったこともお認めになりますね。
○説明員(斉藤一郎君) ただいま私が手元に持っております一部報告によると、運転手がクレーン車を運転しておったということをうかがう資料がございます。
○加瀬完君 何ですか、もう一回。
○説明員(斉藤一郎君) 私が報告を受けております資料の中に、クレーン車を運転する運転手がいたんだということが書いておるのを承知しております。
○加瀬完君 新東京国際空港公団総裁今井栄文君ら公団関係者も代執行のこの工事請負をしておりましたこともお認めになりますね。
○説明員(斉藤一郎君) 今井総裁がおられたかどうかはちょっと存じません。
○加瀬完君 それでは今井総裁にかわるべき者、その他公団の職員が代執行の工事請負をしておったことはお認めになりますね。
○説明員(斉藤一郎君) あの代執行は県知事、県側が代執行の法的な責任を負い、その実際の行為を空港公団がやるというたてまえでございましたので、公団の関係者が実際の作業をやっておったということを承知しております。
○加瀬完君 被害者でありますが、成田赤十字病院、Eの六、男。これは当時です。地面にたたき落とされた際、胸部を強打して右肺下葉を破裂せしめられ、左肺部上葉に肺挫傷の重傷を負い呼吸困難、意識不明となり、その後奇跡的に生命を取りとめた。この事実は御存じですか。
○説明員(斉藤一郎君) 塔の中におりました人は全部で十一人おったようでございますが、そのうちの一人がただいまお話しの方で、重傷を負って、いまおっしゃいました肺を――病名は正確でございませんが、たいへん重傷を負われておったということを承知しております。
○加瀬完君 同じ病院のE二、男です。顔、首、右手手首、右足ひざ下、左足もも二度の火傷、三週間の入院。同E三、男。顔面、頸部、左大腿、左下腿、右上膊、左前膊火傷二度、治療四週間。同E四、右足下腿骨折二、三カ月、顔面火傷、右小指右足左足裂傷。同E七、腰部打撲による腰痛、血圧不安定。こういうけが人が出たこともお認めになりますね。
○説明員(斉藤一郎君) いま御質問にございましたように名前が必ずしも特定できないので、私どもが承知しておるのと一々同一人物であるかどうかは判明いたしませんが、私どものほうでもE二とかE三とかいうことで学生五人の者が入院しておって、それぞれいま御指摘の方とほぼ似たような病状にあったというふうに承知しております。
○加瀬完君 この代執行の実態でありますけれども、本来代執行は行政代執行法に基づいて都道府県知事が義務履行者にかわって当該義務を履行するものであるのに、本件代執行は執行の担当者あるいは責任者が実際上は主体的に活動をしていなかった。駒井野団結小屋付近の代執行においては特にこの点は明白でありますし、警視庁機動隊二千名程度が到着するまで作業が着手されず、右機動隊が到着をし、警備自体の体制が整っても依然として作業は開始されなかった。機動隊用の放水車が放水の準備を完了した段階で初めて作業が開始をされた。これを指揮した者は特別製指揮官やぐらの中で双眼鏡、トランシーバーによる警視庁の機動隊の指揮官であった。さらに行政代執行法においては、直接強制は許されないとされておりますし、県側もこの点は行政代執行法に基づく代執行において直接強制をなすことが許されないことは当然であると、こういう態度でありましたのに、直接強制をもって代執行が行なわれた、こういう事実はお認めになりますか。
○説明員(斉藤一郎君) いま御質問でございますが、あの鉄塔は、先ほど申し上げましたように、土地収用法によって県が法的に責任を持ち、その実際を空港公団が行なうということでやった代執行でございます。そしてこの代執行については警察は何にも関与しておりません。あくまで県、公団がその責任においておやりになったので、ただ警察は警察法によりましてああいう場合に特に成田の場合はたいへん反対が多く、あるいはまたそれを支持する方々も多く、警察的に見てトラブルが起きるということでございますので、警察はそういったトラブルを警察の立場でもって予防し、鎮圧し、あるいは犯罪が発生した場合は検挙するという立場で現場に行っておったのでございます。
○加瀬完君 そうではありません。通称天浪団結小屋の反対派農民排除の際は、警察官は無抵抗の農民のえり首をつかみ、首に巻いたタオルを引っぱったり、髪の毛をつかんだりしながら引きずり出しております。学生に対しては足でける、なぐる等の暴行を加えた上、展望台の上から両手をつかみ、さかさに引きずりおろして排除をしております。駒井野団結小屋内では、ヘルメットを着用している学生はヘルメットをはずした上でなぐられております。しかしこれは本質的な問題ではありませんから次に移ります。
 鉄塔の倒壊に至る経緯並びに鉄塔が倒壊した以後の問題でありますが、午後三時四分ころ、公団側氏名不詳の作業員が鉄塔の下約四メートルくらいのところを一巻きするような形で鋼鉄製ワイヤロープをめぐらし、両端をクレーン車ビームの先端のかぎにかけた。引き続きクレーン車の運転手はビームを左に動かしワイヤを牽引した。そうすると、鉄塔南西方向の脚はちょうどワイヤがかかっているあたりでくの字型に折れ曲がり、鉄塔上部がぐらっとゆれ動いた。そこですぐワイヤをゆるめた。この間時間にしてわずか一分ぐらいであった。その後前記作業員は再度鉄塔をよじ登り、右ワイヤを約一メートル上方に上げた。そして三時十五分ころ、再びクレーン車運転手はワイヤを一気に牽引し鉄塔を引き倒そうとしたが、すぐ倒れず南側部分の二本の脚がワイヤをかけたあたりで折れ曲がり、鉄塔最上部が半円を描きながら、初めはゆっくり十五度くらい傾いてから急激に下方に倒れていき、学生約十人を乗せたまま地面に激突し、同時にガソリンに引火した。そして先ほど述べたようなけが人を出した。これはお認めになりますか。
○説明員(斉藤一郎君) 大体いま御指摘があったような経過でございますけれども、多少その詳細については関係者の主張などがいまなお明確でございませんので、詳細な点については食い違いがあるだろうと思いますが、九月十六日の午後、鉄塔に対して撤去の代執行を行なうにあたって、いわゆる農民放送塔、鉄塔だけが残っておりました。そのうちに、そのやぐらの一部が曲がっておると、これはあぶないというのでワイヤロープをかけて倒れないようにしようということを考えてワイヤロープをかけた。その過程において鉄塔が倒れ、それまで学生十人くらいが立てこもって公団職員あるいは警察部隊に対して火炎びんを投げ、先にくぎのついた棒などを使って抵抗をしておったのでございますが、塔が倒れると同時に、上に乗った人たちが転倒して、そしてけがをしたという状況でございます。したがってその詳細の経過についてどうであるかということはこの関係者の最初にお答え申しました刑事責任と関係があるところでございまして、目下のところ詳細をなお詰めるようにしておるところでございます。
○加瀬完君 あなたのおっしゃったのは、この前の地方行政委員会で公団側の説明したとおりですよ。塔が倒れかかったのでワイヤで引っぱったと。そうではないんです。地上から四メートル程度のところへワイヤをかけて始動したんです。そうしたら座屈が生じた。そこであわててやめて、今度は一メートル上の地上五メートルぐらいのところへワイヤを移してそれで引っぱった。しかし、それではもたないので、結局大きくゆらいで塔が倒れた、こういうことです。これは前回の委員会でも問題のところでありますから、十分に調査してもらいたいということを私は注文を申し上げておいたわけですけれども、あなたのいまの報告はその当時公団側が説明したとおりです。しかも、公団側の説明員は現場にはいなかった人が来て説明している。私どもに何人でも証人がいます。ここは間違っておりますから、もう一回十二分に調査していただきます。
○説明員(斉藤一郎君) この前と申しますのは、昨年事件があった直後の本院の地方行政委員会で先生が、あれは日は十月の九日でございますか、空港公団の総裁あるいは私のほうの警備局長、あるいはいま御指摘があった現場に行った春山一郎という工事の責任者などについて詳細をお尋ねであったいきさつは私承知しております。で、いま御指摘のように、この捜査をしっかりしろということでございますし、警察としても当然その刑事責任の有無を明らかにするという責務がございますので、その直後現場において、九月十六日、九月十七日、現場の実況検分をやっております。それからその後、空港公団あるいは県の関係者、作業の担当者、そういう者について数多くの事情聴取ないしは取り調べをやっております。
 それから、一番問題になっておりますのは、この鉄塔がどういう強度のものであったか、あるいは鉄塔が当時の天候状況そういうものに対してどの程度耐え得るものであったか、あるいはワイヤロープをかけた場所がどこであったか、倒壊後にどういうところに傷があって、それがワイヤロープをかけたところとどういう関係にあるか、あるいは倒壊前に曲がったところがあるようでございますが、それがはたしてどういう原因で曲がったのか、その他数多くの科学的な物理的な鑑定事項が必要でございます。それを建設省の建築研究所でもって鑑定をするようにという依頼を、昨年の暮れ十一月十六日に依頼を出しております。
 一方わがほうでは、先ほど申し上げましたように関係者多数を調べておりますが、その関係者の供述を要約いたしますと、ワイヤロープをかけたために倒れたのか、かける前に倒れそうになったのをワイヤロープをかけて倒れないようにしようとして、そしてそのとき同じく倒れたのか、あるいはそれが原因になって倒れたのか、その辺のところの科学的な鑑定、物的な裏づけ、そういうものがない限りは、供述者の意見が食い違っておりまして必ずしも結論が出せないということで、目下のところ結果の判定をまだできずにおります。鑑定結果ができ上がり次第、警察の意見を添えて、そして責任者を明らかにし、検察庁に送致するということになるのでございますが、一体いつ鑑定ができるのかということでございますが、これは何回も鑑定結果を催促しておるのでございますが、四月の下旬ごろできるということで、まだ警察としては判定を了しないという状況でございます。
○加瀬完君 その塔が倒れた原因は座屈が生じたことですね。座屈というのは私も専門家ではありませんが、専門家に伺いますと、この場合はワイヤロープで引っぱった点の反対側の直角に力というものはいくのだそうですね。そうしてワイヤロープをつないだ反対側の下が結局座屈を生じておる。ワイヤロープを引っぱったことが原因である、これは間違いない、それが一点。
 それから上に人がいるということがわかっているわけですから、犯罪人であろうとも殺していいという理屈はない。そこで上に人がいる場合は当然ワイヤロープを上からつらなければならない。この前の第二次代執行のときにはワイヤロープは上からつった。そうしてつり上げておろすようにした。前には上からつり、二台のワイヤロープを使ったけれども今度はワイヤロープは横から引っぱった。上からつり上げるという準備は全然なかった、どんなに最小に見てもこれは過失であることは間違いない、こういう状態で塔が倒れた。しかも火炎びんを持っている連中が上に乗っている。倒れれば火炎びんの発火でさっき報告をした以上のけがができることは当然予想される。その落ちてくる者の生命を救済するという方法は何にも講じられていなかった、こういう状態の中で行なわれた。もっとつけ加えれば、そこに警視庁の機動隊の指揮官が高いやぐらに乗って指揮をしておったので、どういう状態か一目りょう然、警察官が塔を倒したということは言わないが、警察官は無責任だということには絶対にならない。これはいずれ裁判にでもなればこの人に出てきてもらって証言することになるでしょうが、そういう事情だということをひとつつけ加えて調査を願いたい。
 そこでこういう形によりましてけが人が下に落ちました。ところが千葉県は約四時間――人事不省におちいりまして、生命を取りとめたのは奇跡的だといわれたような重症患者を四時間もそのまま捨てておきました。成田日赤病院に連れてまいりましたのは四時間後であります。こういう事実を代執行は合法だと御認定になるかどうか、御調査いただかなければなりません。この鉄塔は幅約四センチのL字型鉄材であって、横からの力は弱い。先ほど申しました三時五分ごろ一度ワイヤで引き倒そうとしたときに鉄塔の角材が曲がり、上部が大きく湾曲にゆれたので、同じ方法で一メーター上からまた引っぱった。上にいる人間が落ちてきてそれをどう救済するかという方法は何にもとられていなかった。こういう状態でありますから公正な捜査をすみやかに進めていただかなければならない、私はそう要求したわけでありますが、その後の経過はいま御報告のとおりであります。
 で、空港の反対、賛成というのはそれぞれの立場によって違うでありましょうけれども、当然塔を引き倒せば人が死ぬという状態の中で塔が引き倒されて大けがをして、そうしてそれが何カ月たっても全然捜査が進められないということでは、私どもは警察あるいは検察庁のやり方というものを承服するわけにはいかない。火炎びんの処罰法案には反対はいたしませんけれども、このような人権侵害の行為が、公共団体によって行なわれた行為が不問に付されるということでは、この火炎びん処罰法がどういうように使われるかということにわれわれは心配を持たないわけにはいかない。その関係者は、あるいは関係者でなくてもとにかく見ておった第三者は、この警察や県のやり方というものに対してふんまんやる方ないものがあります、いまも。したがって千葉県警察本部本部長の荒木貞一君が代執行責任者を書類送検したということでありましたけれども、送検しておらないということであるならば、今後十二分に調査をした上で送検するということなのかどうか、もう一度その点を伺います。
○説明員(斉藤一郎君) 捜査を進めておる概要は先ほどかいつまんで申し上げましたが、大体空港公団の作業計画、あの鉄塔解体をやる場合にどうであったか、話が長くなりますので、ごく要約いたしますが、その中で人命をあくまで保護する網を張って、そしてクレーンで、御指摘があったように、上のほうへつけてやろうという計画があったようでございますが、ところが実際の空港の作業経過はごらんのようにこれは国民全部がテレビで見ておったことでございますからあれでございますが、作業経過はあのような作業経過であった。これに対して過失責任があるかどうかということを警察はいま論議しておるわけでございますから、先ほど御質問の中にあった、御指摘の中にあったあらゆる観点から過失がありはせぬか、責任がありはせぬかということを目下調査をしております。いままで八十二人の関係者を調べておりまして、時間が非常にかかったようでございますが、一方において鑑定がまだ四月下旬までできていないということでございますので、この鑑定ができ次第御指摘を待つまでもなく過失責任を明らかにするということをやってまいりたいというふうに思っております。なお、警察は代執行には全く関係なかったということはおことばを返すようでございますが、重ねて申し上げたい。現場におって警備の責任を持っておったということでございますので、その点は御了承いただきたいと思います。
○加瀬完君 これはいまの質問と関係がありません。警察は全く関係なかったところで代執行をやっているんだ。あなたのほうは人を引きずり出しただけではない。小泉よねという者の代執行に当たっては稲束みんな持っていっちゃった。代執行では禁じられているところの稲こき機といいますか、こういうものを運んでいってしまった。警察が代執行をやっているんじゃないか。私は質問しようと思わなかったが、きょうは触れますけれども、全く関係ありませんなんという状態じゃない。われわれの見ている前でも警察官が全部代執行員の補助員のような役割りをやっていた。あなたはそういう権限ないだろう。私はとめたぐらいのことだ。全然関係ありませんなんてことは言わないほうがいい。
 そこで昭和四十六年九月の二十七日に成田市三里塚四十四番地戸村一作名で千葉県地方検察庁にこの問題は告発されているはずであります。検察庁の取り調べはどう運んでおるか、御存じですか。
○政府委員(辻辰三郎君) ただいまの案件でございますが、御指摘のようにあの案件につきまして昭和四十六年九月二十七日戸村一作氏外ら十名から千葉県地方検察庁に対しまして殺人未遂ということで告発がなされております。そのほか検察庁におきましてはそれより前の九月十八日に本件を被疑者不詳ということで検察官認知をいたしまして立件をいたしております。それからこの九月二十七日の告発のあとにも、昨年に、四十六年十一月十日にやはり杉浦明平氏ら四十四名から同一事件について告発が出ております。また本年の三月二十二日には村上純子氏ら二十三名から告発がなされております。また昨年の九月二十日にも結城康彦氏からも告発が出ております。いずれも検察庁において受理いたしております。
 ところで本件につきましては、検察庁においても検事の立場から必要な証拠の保全というような措置はとっておるわけでございますが、ただいま警察のほうからも御説明がございましたように、問題は警察の捜査――警察も同一事件を捜査なさっておるわけでございまして、しかもこの鑑定の問題もございます。こういうことがございますので。検察庁といたしましては、検察の立場から必要な証拠保全はいたしておりますが、あとは同一事件でございますので、警察の捜査の結果事件の送致があることと存じますので、それを待っておる状況でございます。
○加瀬完君 局長さんにははなはだ言いにくいことですけれども、いままでこの空港反対派の農民のほうから幾つか告訴が出されておる、それがほとんど認容措置がとられておりません。特に戸村一作といういま名前が出ましたが、戸村一作氏は警察官の暴行によりまして二十日間入院治療を要するようなけがをいたしました。これは警察官の暴行間違いないわけです。これも訴えておりましたが、全然取り上げられておりません。これもこの前の委員会に、たしか朝日新聞にまで、こういうことで私は警察官に暴行を加えられたけれども、地検はさっぱり取り上げてくれませんという投書までしておりますから、検察庁は御存じないはずはない。そこで、どういう理由かは知りませんけれども、告発についての取り調べだけは厳重にやってもらいませんと、私どもは公平な検察行政が行なわれるという判断は持ちかねるのであります。
 ですからさっき申し上げましたが、火炎びんの処罰法に反対するものではありませんけれども、一方的な検察側の見解だけで、警察側の見解だけで犯人をつくり出されるということであっては、こういういままでの前例がありますから、基本的人権が守られるという保障はどこにもないというので、私どもはたいへんぶしつけな質問をしたわけで、こういうことが一体どうして行なわれるわけですか。この戸村一作氏のけがをしたときは現場に私もおりましたから、よく知っております。これはまだ反対の情勢がいまのようなきびしくなったときではございません。少しすりばち型になった凹地の中で集会をやっておったところへ警視庁と神奈川県の警察がなぐり込みをかけるような状況で押し寄せて何もこれからどうこうしようということじゃないのだと説明する戸村一作氏を警棒でなぐりつけて裂傷を負わしたのをわれわれ目撃しているわけです。こういうことが不問に付される。あれからもう四年たって不問に付されて何も取り上げられないということは、私どもははなはだしい人権侵害として許すわけにまいらない。これはいずれかの機会にどういう取り調べの経過をたどっておるか、検察庁でその被疑者を十二分に調査をしたかどうか、あらためてこれは御回答をいただかなければなりません。
 そこで問題は火炎びん処罰法でありますけれども、正しくやりますというだけでは、私どもは承知をするわけにはまいりません。そこで法務省のほうでは、法律的には歯どめがきちんとできておりますということの御説明であります。しかし問題は、お前がいろいろ言うように、これは職務執行の上の問題が議論をされておるのだろうということでございまして、その点はお認めいただきとう存じます。そうすると職務執行のことに関しては、この法律の内容だけでは何ら歯どめができておらない。一にかかって検察庁がどういう職務執行の基準なり、あるいは準則なりというものをつくってそれぞれの取り調べに当たるかという問題の議論もあるのです。この委員会がまた明日も開かれるはずでございますから、一応これはこういう点に留意をするという基準的なものをお示しをいただきたい。そうでありませんと、議員と政府委員が問答をするようなわけに実際はいかない。どういうことがあろうとも、基本的人権なんかの侵害には絶対になりませんよと、このような歯どめを私どもは行政運営の上でつくりましたというものを出してもらわなければ、けっこうでございますというわけにまいりません。その御回答をあとでいただくことにいたしまして、私の質問は本日はこれで終わります。
○委員長(阿部憲一君) 本案に対する質疑は、本日はこの程度といたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時四十一分散会
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