第071回国会 法務委員会 第17号
昭和四十八年八月二十三日(木曜日)
   午前十時三十分開会
   委員の異動
 七月十八日
    辞任         補欠選任
     塚田 大願君     野坂 参三君
 七月二十日
    辞任         補欠選任
     伊部  真君     杉山善太郎君
 八月二十三日
    辞任         補欠選任
     杉山善太郎君     田  英夫君
     野坂 参三君     星野  力君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         原田  立君
    理 事
                後藤 義隆君
                原 文兵衛君
                佐々木静子君
                白木義一郎君
    委 員
                鈴木 省吾君
                増原 恵吉君
                吉武 恵市君
                鈴木  強君
                竹田 現照君
                田  英夫君
                星野  力君
       発  議  者  佐々木静子君
       発  議  者  白木義一郎君
   国務大臣
       法 務 大 臣  田中伊三次君
   政府委員
       警察庁警備局長  山本 鎮彦君
       法務大臣官房長  香川 保一君
       法務省刑事局長  安原 美穂君
       法務省入国管理
       局長       吉岡  章君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局刑事局長   千葉 和郎君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        二見 次夫君
   説明員
       外務省アジア局
       外務参事官    中江 要介君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○刑事訴訟法及び刑事訴訟費用等に関する法律の
 一部を改正する法律案(佐々木静子君外一名発
 議)
○検察及び裁判の運営等に関する調査
 (金大中事件に関する件)
    ―――――――――――――
○委員長(原田立君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について報告いたします。
 本日、野坂参三君が委員を辞任され、その補欠として星野力君が選任されました。
    ―――――――――――――
○委員長(原田立君) 刑事訴訟法及び刑事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
○後藤義隆君 法務省の刑事局長にお聞きしますが、これは当然だと思いますけれども、念を入れてお聞きしておきますが、国選弁護人に支払うところの費用は原則として被告人の負担ではないかという点について質問します。
○政府委員(安原美穂君) 仰せのとおりでございます。
○後藤義隆君 国選弁護人のつく事件のうちでもって弁護人から謄写料の請求のあったのは、国選弁護人を付する事件の何%ぐらいでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(千葉和郎君) 結論から申し上げますと、遺憾ながら正確な数は把握できておりません。御承知のように国選弁護人が記録等を調査された場合の費用は、裁判所の申し出があった場合でも、報酬の中に組み込んで一括して支払う運用になっておりますので、支給決定のあった報酬のどの部分が謄写料に該当するかということは、内訳が実は明白でありませんので、支給決定があったあとについて調べるということはなかなか困難でございます。ただ私どもの実務上の経験から申しますと、その割合はそう多くありませんで、数%、せいぜいのところ一〇%ぐらいではないかというふうに考えております。
○後藤義隆君 お聞きいたしますが、いまわずか数%ぐらいの請求であるというが、そうすると、それより以外の人はなぜ請求しないのか、その理由をお伺いしたいですが。
○最高裁判所長官代理者(千葉和郎君) この点も、もっぱら弁護人の事情に関することなので、正確に把握できないのでございますが、弁護人が訴訟準備のために必要な支出をしたときには、報酬額の算定にあたってこれをしんしゃくすべきであるということは昭和三十六年から通達がございまして、全国の裁判所にこの点は厳底していると思います。この点はさらに弁護士、検察官がお入りになった第一審強化地方協議会というものを通じまして弁護士の間にも十分認識されているはずでございますので、必要な謄写をした場合には大体請求されていると私どもは理解しておりますが、したがって、請求が少ないという原因はもっぽら謄写が行なわれていない、あるいは、かりに謄写をされましても、非常に厳選してごく必要なものだけを謄写されている、そういう事情によるものと思います。
○後藤義隆君 国選弁護の入っておる事件はおおむね自白しておる事件が多いというようなふうに思うのでありまするが、その自白を公判廷に参りましてくつがえすような事件は何%ぐらいあると思われますか。
○最高裁判所長官代理者(千葉和郎君) 私どもが統計で全部自白事件というふうに申しまして、この席でもたびたび申しております約九〇%に近いのが自白事件だというのは、全部自白事件の統計でございます。したがって公判廷で自白をくつがえしたような場合には、それはその九〇%の中には入っておりませんので、公判廷に来てからくつがえしたという数はわかりませんが、要するに争いが起こっておるという事件は約一〇ないし一一%ということでございます。
○後藤義隆君 いまのお話でもって、自白している事件が約九〇%あるだろうということでありまするが、そうすると、自白をしておれば、おおむねこれは謄写をする必要がないのではないか、もう事件が明白であるから謄写の必要がない事件が大部分ではないかと思うのでございまするが、その点はどうですか。
○最高裁判所長官代理者(千葉和郎君) 警察、検察庁で自白しておりましても、先ほどお話がございましたように、公判廷でそれをくつがえす、あるいは情状について争いが生ずるという事件は必ずしも皆無ではございません。したがいまして、自白事件であるからすべて謄写は必要がない、捜査段階で自白しているから謄写が必要ではないとは私どもは考えておりませんですが、その数はごくわずかであろうというふうに考えております。
○後藤義隆君 今度の法案の中でもって、刑事訴訟法の三十八条の「宿泊料」の次に「謄写料」というものを加えるということが一つの問題になっているわけでありまするが、これは謄写料という文字を入れてなくても当然謄写料は現在支払っておるのではないかどうかという点をひとつ質問申し上げます。
○最高裁判所長官代理者(千葉和郎君) 仰せのとおりでございまして、請求があったものについては、ほとんど九九%支払っていると思います。
○後藤義隆君 ほとんど、九九%は謄写料の請求のあった部分に対しては支払っているということであるが、あとの払わなかった一%くらいというのは、どういう理由があって払わないのかわかりませんでしょうか、どうでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(千葉和郎君) その点も正確にはわかりませんのですが、ということは、正確に調査ができないわけでございますが、これまでの経験によりますと、やはり国選弁護人が選任されまして、検察庁等の記録をまず閲覧してもらう。その中で必要なものだけを謄写に回すようにというふうな運用が大体固定していると思います。それで、わずかながら、謄写料の請求があったにかかわらず支払われなかったという事例があるといたしますと、それは裁判所のほうで、その点についての謄写は必要ではなかったのではないかというような判断がありまして、それで弁護人といろいろ折衝した上で減額するということであろうと思います。ただ、この点についていままでトラブルを聞いたことがございませんので、念のため申し上げます。
○後藤義隆君 この刑事訴訟法の三十八条の中には、報酬の中に謄写料は含めてあるのだというお話でありますが、ところがその次の三百六十九条の中のこの謄写料というものは報酬の中に含めるわけにはいかないから、これはやはり、国選の場合はもう当然でありまするが、私選の場合には、三百六十九条の場合には報酬というものがないから、やはり謄写料というのは別の項目を置かなければ支払いができないのじゃないかと思うが、その点はどうですか。
○政府委員(安原美穂君) 三百六十九条の規定の後段に「その額に関しては、刑事訴訟費用に関する法律の規定中、被告人であった者については証人、弁護人であった者については弁護人に関する規定を準用する。」という規定がございますので、しかもその中の報酬というものがございますから、結局この報酬に関する解釈あるいは報酬の範囲というのは、先ほど来の国選弁護人に関する刑事訴訟費用法の規定の概念を準用するということに相なりますので、この場合におきましても、裁判所が支払う場合には、報酬の中に謄写料を含めて、勘案して払うものというふうに理解いたしております。
○後藤義隆君 そうすると、謄写料という文字は文章の中に入れても入れなくても、現行法は入っておらないわけでありまするが、しかし、入れても入れなくても実質的には何も変わりはないというふうに、結果から見ると思われるのでありまするが、そうすると、これを入れることによってどんな利益があるのでしょうか。あるいは何ももう利害関係はないのでしょうか、ちょっとお伺いいたします。
  〔委員長退席、理事原文兵衛君着席〕
○政府委員(安原美穂君) 政府が提案をしている法案ではございませんので、このメリットというものにつきましては提案者からお話があるかと思いまするけれども、後藤先生御指摘のとおり、報酬という中に特に、謄写料で考えるならば、もう含めて勘案しておるわけでありまするから、特別に謄写料を引き出して書くということは必ずしも必要ではない一現在の運用を前提とするならば必要ではないということに相なると思いますし、ここで逆にその報酬の中から謄写料というものを抜き出しまして別建てにいたしますというと、その他、現在における報酬の支払いにおきましては、裁判所は、謄写料のみならず訴訟準備に要したあらゆる費用を勘案して報酬を考えておるわけでございますので、その他の費用というものがかえってネグレクトされることとなるというマイナスの、デメリットが出てくるのじゃないかというふうにも思われますので、政府当局といたしましては、現在の運用を前提とする限り、必ずしも謄写料を引き出すということにメリットはないというふうに考えております。
  〔理事原文兵衛君退席、委員長着席〕
○後藤義隆君 この国選弁護の場合に、報酬の中に謄写料が入っておるのだと計算して国選弁護人には支払うのだということでありますが、そうすると、報酬を国選弁護人が受け取った場合には、それに対するところの課税があるわけでありまするが、そうすると今度は謄写料に対してもやはり税金を納めなければならぬというふうな、そこに何かおかしい問題が起こるんじゃないかと、こう思うのですが、その点はどうですか。
○政府委員(安原美穂君) 御指摘のとおり、報酬とはいうものの、謄写料を支払うというのはいわゆる実費弁償でございまして、たとえば日当とか宿泊料と同じような実費弁償の本質を持つものでございますので、それが報酬の中に入っているがゆえに、源泉徴収の対象になるということは実費弁償という性質からいって若干矛盾するような気がいたしますので、この点につきましては何らか、謄写料というものを報酬の中で内訳を、明細を明らかにいたしまして、その部分については源泉徴収の対象にしないということを国税当局でお考えいただくという必要があろうかと考えております。
○後藤義隆君 まあ謄写料の意義でありまするが、国選弁護人が自分でもって記録を見て必要な部分を書き取ったり、あるいはまた国選弁護人の事務員をして必要な部分を書き取らしたようなものも謄写料としてそこに――実際は金は払っておらない、国選弁護人自身、あるいはまた事務員が写すわけでありまするから、金は払わないのだけれども、やはりそれは一枚幾らというようなふうに見積もって謄写料というものを計算するのか、それとも謄写をする業者に謄写の代金を支払った分だけをするのか、そこの内訳はどうなっておるのですか。いわゆる謄写料の内容でありまするが、その点どうですか。
○政府委員(安原美穂君) 法律の解釈といたしましては、謄写料を払うというのは、いわば訴訟に要した費用の弁償ということであろうかと思いますので、弁護士さん自体がお写しになった場合、あるいは本来俸給の中に、俸給を払って雇っておられる雇い人がなさったというような場合には、謄写料というものの現実の出捐がないわけでありまするから、おそらくそれは現行の運用におきましては謄写料支給の対象にはならないものであろうと思います。今後この謄写料の支給ということを法律で考えるという場合におきましてもこれは一つの問題でございまして、支給すべき謄写料の範囲をどうするかはさらに慎重に検討を要する問題であると思いますので、必ずしもこの社会党提案の法案ではその点ははっきりしていないと思いますが、一応そういうように考えております。もっと検討すべき問題であると思います。
○後藤義隆君 三百六十九条の改正の案がいま出ておるわけでありまするが、三百六十九条の場合でありまするが、国選の場合はこれは問題ないのでありまするが、私選の場合を考えてみると、検事が上訴をした、申し立てをしたというのですぐこれはわかるわけでありまするが、そうすると、被告人がすぐ弁護士を、前の弁護士あるいはまた新たな弁護士を依頼すると、それがために要した費用とか、あるいはまた謄写を一番最初から、一番最初、一審のときからも全部謄写を新たに写したような場合に、そのときの謄写料というのはどの範囲を謄写料というのか、これは非常に問題だと思う。弁護士が数人ある場合には一人に払えばいいのじゃないかと思うが、新たに今度別な弁護士が入って、前の記録を受けなくてやったような場合に、上告審についてはその審級だけに必要だということでありまするが、前からの記録を見なければわからないというので、一番最初の起訴状からずっと後も全部新たに写したとしたならば、これは謄写料の中に入るのかどうか、その点をお伺いします。
○政府委員(安原美穂君) 三百六十八条は、費用の補償の対象といたしまして、「上訴によりその審級において生じた費用」ということになっておりまして、その審級において生じた費用の中には、いま後藤先生御指摘のように、上訴を担当した弁護士が、上訴の関係における弁護権の行使のために必要だということで、第一審、下級審の公判記録等を謄写するということもやはりこの審級において生じた費用ということになりますので、原則といたしましては費用補償の対象になる。問題は、そういう現行の運用からすれば、数人の弁護士さんがおられるのに、それをまたあえて謄写するということが必要であったかどうかというような必要性の問題は残ると思いますけれども、一応この審級において生じた費用の中には入るというふうに理解すべきものと考えております。
○委員長(原田立君) 本案に対する質疑は本日はこの程度といたします。
    ―――――――――――――
○委員長(原田立君) この際、委員の異動について報告いたします。
 本日、杉山善太郎君が委員を辞任され、その補欠として田英夫君が選任されました。
    ―――――――――――――
○委員長(原田立君) 検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
○佐々木静子君 それでは私から、まず、この八月八日以来日本国じゅう、いえそれのみならず世界じゅうを全く青天のへきれきのようなできごととしてたいへんに驚かせておりますところの金大中事件に関連いたしまして、主として法務省に関係することに限定いたしましてお伺いさしていただきたいと思います。この金大中事件、私どもこれが新聞で報ぜられてから、まさか日本の、しかもこの東京で、白昼このような事件が起ころうなどというようなことは、いろいろと話には聞いておったことはあっても、現実にそのようなことが、しかもお隣の韓国の大統領元候補者という大物の政治家が誘拐されるということだけに、私どもは非常に驚いたわけでございますが、それが単に誘拐されたというだけでなしに、日本の国境を越えて、しかも韓国へ入国してこの金大中さんの御自宅のところまで誘拐されたというような事柄に、いまさらながら全くあきれ果てたわけでございます。これに関しまして、いろんなうわさも出、また確実な情報によりましても、きょうは韓国の政府当局からも韓国の情報機関の機関員がこれにタッチしていたというような発表なども新聞によって報ぜらておるわけでございますが、とにもかくにも、日本の国内からこのように自由に、しかも意思に反して金大中さんは国外に連れ去られたわけでございますけれども、そのように日本のきびしいと考えておりましたところの出入国管理を突破して、ゆうゆうと、私どもの聞いている話では国外に脱出しているということについて、ただただ言うべきことばを知らないというわけでございますが、まずこの件につきまして、法務大臣から、まあそうした出入国問題を中心に、この件についての所信をお述べいただきたいというふうに思うわけでございます。またあと順を追って御質問さしていただきますので、概括的に簡単にお答えいただきたいと思います。
○国務大臣(田中伊三次君) ただいまお尋ねの出入国の関係を一言にして申し上げますと、入国の場合はなかなか慎重な審査をいたします。一定の条件に沿わなければ入国は許さない、厳格でございます。これに反して、出ていく場合、わが国を退去をしていきます場合には、これは自由、ただ、自由といっても、入国管理のたてまえがございますので、出ていくときには、出入国管理令によってきめられておる百二十数個の港湾がございます。空の港、海の港、この空、海の港湾を出ていくときには日本の証印を受けるべし、証印と申しますのはわかりにくいことばですが、証明の証と判この印でございます。判こをもらって出ていけと、こういうことですね。出ていくことは自由であるが、判こをもらって出ていけ。判こをもらって出ていかなければ相ならぬと、こういうふうに規定をしておりますのでございます。
○佐々木静子君 これは私ども、その判こがなければ出れないということは百も日本国民は承知している、あるいは日本に滞在する外国人も承知していると思うわけでございますが、しかし、これが単に任意に判こをもらうというだけじゃなくて、やはり日本の法務省とすれば、これを判こをもらわないで出国できないように当然チェックしていられたと思うわけでございますが、今度の件から見ますと、ここに重大な、大きなミスがあったんじゃないか、これはないとおっしゃっても、現実にこういうことが起こっているわけですから、現実にあるわけですけれども、その点について法務省はどのように考えておられますか。
○国務大臣(田中伊三次君) ただいま申し上げましたように、百二十数個の港湾が指定してあります。その指定をいたしております港湾から出ていったという事実はない。指定の港以外のところから出ていった形跡があるようであります。出ていったかどうかがわからぬのでありますが、出ていかなければ韓国へ帰れないということになるわけで、出ていったものと思われる。そこで、法務省の立場を申し上げますと、責任のがれを言うんじゃないんです、法律のたてまえ、制度のたてまえを申し上げますと、百二十数個の定められた港湾から判こをとらずに出ていったという事実があればたいへんな手落ちだ。そういうことでなければ、どうも取り締まりの法務省の入管の立場から申しますと取り締まりの道がない。指定した港湾以外のところを張りめぐらしてこれを防止するという道が、制度的に法務省の入管の立場においてこれをやる余地がない。これは遺憾でありますけれども、その盲点をついて、指定された港湾の以外のところから出国をしている、まずこの観測は間違いがないものと見ておるのでございます。
○佐々木静子君 そうしますと、この百二十数港以外のところは、いま自由に出ることは可能だということになるわけでございますね。私どもそれを聞いて、またさらに驚くわけでございますが、これは金大中さんのみならず、これは在日外国人がこの百二十数個の港以外のところからは自由に連れ去ることができる。これは外国人のみならず日本国民も、この百二十数個の港以外からは、これはそれ以外のところであれば、もうかってに連れ去ることができるというようなことであると、私どもおちおちと、きょうあるいはあした連れ去られるかわからないというふうな、不安な状態にぞっとするわけでございますが、大げさに言いますと。そこら辺の入国管理行政は一体どうなっておるわけなんでしょうか。
○国務大臣(田中伊三次君) それは誤解をいただいては困るんでありますが、入国管理令によって百二十数個の港湾が指定されてある。帰るときには、出ていくことは自由だけれども、そこで判こをもらっていけと、こういう制度でございます。それ以外のところは判こなしで自由に出ていっていいんだなんていうことを言っているんじゃないんです。それは、そんなことを言っているんじゃない。それ以外のところからは出ていってはいけない、出ていくことができない、出ていくべきでない、法律制度上はそういうたてまえである。それを犯したという事件が今回の事件であろう。まことに遺憾な事件でありますが、そういう説明以外にはない。お尋ねに対する説明としてはそういう説明以外ないのであります。
○鈴木強君 大臣ね、そこがやはり一つの盲点であり、問題ではないでしょうか。少なくとも日本の、法治国家の日本におきまして、亡命をしておる外国の重要人物がそういうところから連れ去られるような、そういう盲点があるということは、これは重大問題ですよ。その盲点をどうしてチェックするか、それが相当これは重大なやっぱり責務じゃないですか、責任じゃないですか。そういう盲点があれば、佐々木委員のおっしゃるように、これからもそういうところからどんどん連れ去られてしまえば、出てはいけないことになっておるが、そこから連れ去られたらどうにもならぬというのが現実の姿でございましょうから、そこのところをもう少しきちっとしておかなければ、また再び三たびこういう問題が発生するんではないでしょうか。そんないいかげんなものなんでしょうか。その点に対してこの不備といいますかね、そういう盲点を認めて、その盲点に対してどうするかということをやっぱりはっきりさせるべきだと思います。
○国務大臣(田中伊三次君) 両先生のお尋ね、私もごもっともと思います。そうあるべきものと思います。ところが制度のたてまえ、どの国も同じでございますが、わが国の制度のたてまえも、百二十幾つということを私は言うておりましたが、百二十六だそうでございます。百二十六個の指定された港を出て行くときに、そこをどこでもいいから出て行け、そこを出よ、そこを出て行くときには判こをとれと、こういう制度になっておるわけで、それ以外のところも厳重にしなければならぬ、これは両先生のおことばのとおり、私もそう思う。それは警察と海上保安庁、これが連携をしていただきまして、それ以外のところから密出国ができないように、しかし日本は、そう言いましても、両先生御承知のとおりに四面海に囲まれておる。ちょっと一メートルおきに人間を立てるわけにもいかぬだろうし、これ冗談のような話ですけれども、事は重大なことなんでありましてね。それは厳格なことをやらねばならぬけれども、周囲が海に囲まれておる日本のような国において、入国管理制度をそうやたらに何万という港湾の要所要所を建物で囲むわけにもまいりますまい。いま百二十六でございますけれども、この制度を一体どうするのか、法務省に責任を負わすのは百二十六の責任を負わしておるのが現在のたてまえでございます。それ以外は、決して責任のがれを言うのではありませんが、たてまえの客観的事実を申し上げますというと、それは警察と海上保安庁が担当をして密出国できないようにしてもらわなければならぬ。場合によっては、百二十六を何百にこれをふやしまして、さらにやっていくなどということの検討はこれはひとつ真剣にやっていかねばならぬ。一体どこをどんなぐあいにして出て行ったのかという今日のこの出国の経緯といいますか、いきさつ、経路といいますか、そういうものも厳格な調べができ上がるはずでございますから、このでき上がるのを待ちまして、これを参考に、検討を加えなければならぬ。百二十六の指定港湾というもの、空港というもの、これをどう将来において拡大するかということはひとつ真剣に検討しなければ対策になりません。私もそう思います。
○鈴木強君 とにかく事件発生以来五日間、どうなったのかさっぱりこの事件はわからなかったわけですね。ですからね、これは捜査当局なり警察関係なり海上保安庁なりそれぞれ職分はあると思いますよ。密出国はしちゃいけないということでしょう。ですから、密出国であればこれはやっぱり取り締まらなきゃならぬわけでしょう。したがって、法律的にはちゃんとそういうたてまえはあるわけですから、ただ出入国管理の面から言えば、これは大臣のおっしゃるように、法務省としては百二十六の港においてちゃんとチェックして出ていただく、それ以外は出ていただいちゃ困りますよ、これは一般論で、わかります。
 しかしこの事件は、これは警察が来ているかどうか知りません、ぼくは。その五日間も、金さんが東京のホテルから連れ出されてね、わけがわからない、どこを通ったかわからない、とにかく自分のお宅に帰ったというようなね、こういうところに捜査に対する不信というものがあるわけですよ。しかも途中では、大阪でも情報があったとかということがあるにもかかわらず、そのことがわれわれにもわからない。ですから法律制度上の不備とともに――不備とは私は言えない、やっぱり出入国管理と同時に、密出国はいけないわけですから、そういうことに対してはどっかの機関でちゃんとチェックしなきゃならぬ。不断にこれはやっていただかなきゃならない。そういうたてまえからすると、法治国家である日本が、少なくともこういう人物が拉致されたという事件が発生してから五日間も、国内のどこからどう行ったのか、その経路も何にもつかめなかったということについては、これは重大問題ですね。われわれは非常に不信感を持っている、そういう点において捜査当局に対しても。
 だからそこを今後再びこういう事件のないようにするためには、大臣のおっしゃるように、百二十六で足りなければもっとこれをふやして、そしてできるだけそういう事件の起こらないような体制を出入国の管理の面からもやってもらわなきゃこれは困りますよ。と同時に、あなたも国務大臣ですから、海上あるいは警察の陸上における取り締まり、こういうものについてももっときびしくしなければならないし、特に事件が発生したからには、どういう厳戒体制をとってやったのですか、これはもし捜査当局が来ておったら聞きたいくらいです。これは関連したようなことですから、これで私は終わりますけれどもね。
○政府委員(山本鎮彦君) お答えいたします。
 事件が発生してからの警察のとった措置について御報告申し上げたいと思いますが、一一〇番通報、それから宇都宮代議士からの通報、こういうものがございまして、捜査員を直ちに現場に急派しまして事件の確認に当たった、と同時にパトカーも現場に急行し、所轄の署長以下臨場いたしまして、現場の保存、目撃者の発見に当たりまして、さらに本部からも応援を出しまして、計百五十二名の体制で初動捜査に着手したわけでございまして、その内容をやや具体的に申し上げますと、直ちに緊急配備、これは検問などを行なうわけでございますが、それと東京港、羽田空港などの出国の監視、これは午後三時十五分に発令をいたしております。それから続いて海、空港の警戒を警察庁のほうから全国の警察の本部のほうに指示をいたして手配をいたしました。これが午後の三時四十分でございます。それから事件担当の本部であります警視庁からは全国に事件発生の手配をいたしました。それから特別捜査本部を設置いたしました。それからホテル宿泊客のチェックをやはり全国警察本部が実施をいたしております。そのような形で、できる限りの、とり得る限りの体制、措置をとって本件の捜査に従事したわけでございます。
○佐々木静子君 いまの捜査のお話が出たので、私もいろいろお伺いしたいことがあるのですが、時間の関係もございますので何でございますが、ただ非常に私、この件で警察当局が御苦心なさったとは思うのでございますけれども、遺憾ながらその効果が非常におそい、あるいはほとんど出ておらないというようなことで、国民の捜査当局に対する信頼感というものが非常にこのことでそこなわれたわけなんでございますが、たまたま、私大阪でございますが、大阪で、社会党の大阪府本部亀田得治委員長のところに九日の日の夜に、金大中さんが大阪に荷物として拘束されているらしいという情報があって、すぐに、大阪の警察、府警の本部長にお話をしているわけなんですね、詳しく、じかに出会って。ところが、実はたまたま私タッチしたことですが、十三日の日、これは金大中さんがもうソウルに着いていたわけですね。十三日のお昼ごろに、これは麹町の捜査本部から私のところに、大阪の家に電話がありまして、亀田得治さんの住所と電話番号を教えてもらえないだろうかというような電話があったわけなんですけれども、私、九日直後には聞いていなかったのですが、あとでこれを亀田さんと話をしまして、実はあ然としたわけなんです。これは非常にいい情報、確かな情報だし、急を要するということで、急いで、夜おそくに聞いてすぐに本部長に御連絡している。だからもう亀田さんの住所とか電話は麹町の捜査本部でその日のうちに当然もうわかっておられると思っておったところが、四日たって金大中さんが事実上もうソウルの自宅の近くまで来ているころに、亀田さんの住所と電話番号を教えてほしいというようなことの問い合わせが私のところにあった。
 まあそういうふうな事柄一つをとらえましても、考えてみましても、その時点の大阪港と思われる港は出ているけれども、どこかまだ瀬戸内海周辺に、金大中さんの供述によりますと、まだおられたような状態で、すぐに動いておれば簡単に私は救出できたと思うんです、日本の領海内で。領海どころか、内海の状態のところですからね。警察はほんとうにそういう点について非常に間の抜けた捜査を今度されたんじゃないか。たとえば一例は、亀田情報を受けてから大阪府警なり、それから大阪港の周辺、瀬戸内海、これはどのような警備をされたのか。海上保安庁にもすぐ連絡をされたのか。具体的にどういう人がどのように動いたかということを御説明いただきたいと思います。
○政府委員(山本鎮彦君) お答えいたします。
 ただいまの御質問にありました亀田さんの情報についてでございますが、これについては、九日の午後九時半ごろ、亀田得治さんから警察の片岡本部長に、出所は言えないけれども、という前提で、次のような提報がございました。
 第一点は、金大中氏が荷物として取り扱われている、それから生死はわからない、それから荷物の送り出しの手続をいま相談をしている、それからパレットホテルまたはパレホテルで相談中である、それでイマモトという社長がこれに関与している、ホテルにはナカタまたはナガタが相談相手となっている、身柄がホテルにあるかどうかはちょっといまわからない、こういう提報でございます。
 大阪府警察本部では、直ちにこれに基づきまして捜査を開始いたしております。しかし、パレットまたはパレホテル、それからイマモト社長、それからナカタまたはナガタ某、これの発見につとめまして、同夜、制私服千百五十名の警察官を急拠動員いたしまして、徹底的に旅館、ホテル二千二百五十九カ所の捜査を実施いたしました。しかし、残念でありましたけれども、この提報内容を裏づけるような事実は遂に見当たらなかったわけでございます。また八月十日も、午後七時から十一時まで、ホテル等千七百七カ所のチェックを行ないましたが、とうとう発見できなかった。それから大阪府警からは直ちに隣接の府県にも連絡をいたしまして、京都、兵庫、和歌山、こういう府県においても、それぞれ制私服警察官によりまして、旅館、ホテルの宿泊客チェックを行なったけれども、提報内容を裏づけるような事実が見当たりませんでした。
 とれについてさらに亀田さんから、十一日に片岡本部長に電話で、情報提供者がタレまたはタレットホテルあるいはパレまたはパレスホテルと言っているようだけれども、自分で当たった結果、これは尼崎のパレスホテルに違いない。これに電話したところ、ナカタさんはいますか、と聞いたところ、社長は不在です、という返事があった、こういうような意味の二回目の提報がございました。
 警察本部長は直ちにこれを兵庫県警察本部に連絡して、兵庫県警察本部は尼崎のこのパレスホテルについて二十四時間の張り込みを実施するとともに、翌十二日に同ホテルに対して直接聞き込みをいたしましたが、同ホテルには社長を含めて従業員、宿泊客いずれもナカタあるいはナガタと称する人物は発見することができませんでした。御説明いたしますが、亀田さんの提報によると、ナカタさんはいますか、という電話をしたところ、従業員が、社長は不在です、とこう答えているわけでございますが、よく聞きますと、女子従業員が電話を受け取ってから、その従業員は、自分ではわからないので社長に答えてもらわなければならないというふうに考えて、社長は不在です、と言ったわけで、社長がナカタあるいはナガタという人であるというふうな意味で答えたわけではないということがわかりまして、同ホテルの社長は大神という方でございました。
 また十三日午前九時四十五分、亀田さんからまた本部長に電話がございました。それによりますと、荷物にして出すそのためのLCの手配をしている。ナカタは堺市大美野七七、近畿船用鉄協同組合の理事長である。イマモトという人は日本電波工業株式会社の社長であるという第三回目の提報がございました。直ちに警察本部は、ナカタ、イマモト両氏に面接をして、いろいろと話を伺いましたけれども、本件に関係ないものということに判断をいたしました。
 まあそういうことで、亀田さんからは前後三回にわたって詳しい情報を得まして、これについては警察は非常に感謝をいたしております。これはどんな情報でもわれわれは決してむだにはしなくて、これについて大阪府警はじめ近県は全力をふるって捜査をいたしました。その状況について、私のほうに全部連絡も来ておりまして、私から捜査本部のほうにも連絡をいたしておるわけでございまして、いま先生の御質問にあったようなことはちょっと何かのあれかと思いますが、われわれとしてはできる限りの努力はこれについていたしたのですが、残念ながらそういう事実を把握するに至らなかったということでございます。
○佐々木静子君 警察はいろいろとじみな捜査をなすったことはよくわかりましたが、私、先ほど質問いたしましたのは、この港に近い大阪に金大中さんが来ている、いまのそんなこまかい張り込みとか何とか、それはあるいは必要かもしれませんが、一時間あればもう韓国へ着く時代なんですね、いま飛行機にさえ乗れば。それで、いまのお話では、日本の領海、法務省できっちり管理できるのは百二十六港で、そのほかのところからは、これはもう極端に言えば自由自在に出れる状態だというようなお話でもあったわけですからね。そんなときに、単に大阪府警なら大阪府警だけが狭い地域で探してたって、これくらい国際的な、しかもこのスピード時代に、これはちょっと常識でも、われわれしろうとが考えても、時代離れした間の抜けた捜査じゃないか。
 やっぱり常識的に考えられることは、空か海ですね。空が、どこの飛行場がどうのというぐあいにもいかぬとすれば、船ですね、船をすぐ押えるというのは、これは一番の常識じゃないか。特に大阪とか神戸とかいう地形から見ると、みな内海ですからね。海峡さえ押えれば、数は知れているわけですよ。それをなぜしなかったのか、いま私の質問は、海上保安庁にどういう協力を求められたかということを伺ったわけなんですが、どうですか。
○政府委員(山本鎮彦君) お答えいたします。
 いま亀田さんの具体的なお話について、きわめて狭い範囲内での問題についてお答えしたわけでございますが、全般的には、この事件発生と同時に警視庁のほうから連絡を受けました警察庁は、管区警察局を通じまして全国の各空港六十一及び港、先ほど申し上げましたような、法務大臣からお話がありましたようなそういう海港場、これについて関係機関と連絡をいたしまして、検問及び航空機、船舶、乗員、乗客のチェックを徹底するよう、各全国の都道府県警察本部に詳しく指示をいたしておりまして、全国の警察官、これに専従いたしました警察官延べ二万二千名ということで、空港、港湾に通ずる要衝の検問、主として韓国へ就航する船舶延べ三百隻を、それぞれその船に登りまして、中の検査を、乗員、乗客のチェックを行なっております。そうして個々の関係機関との連携ということで、これは当然入国管理の事務所、それから海上保安庁、あるいは税関、そういうところで、日ごろからその出入国管理の密出国、密入国、こういうものの捜査共助ということで、日ごろから協定を結び、あるいは話し合いをしております。そういうところへすぐ連絡をして、とり得るだけの万全の体制は、もうこの事件が発生したその日のこれは三時四十分に指令を出しておりますので、その日のうちにすでにその手配は全部完了いたしておるわけでございます。
○田英夫君 法務大臣に伺いたいのですが、いま佐々木委員から御質問をいたしてまいりましたこの問題、突き詰めていけば、日本の国家主権が侵されたということに非常に大きな問題があると思うわけです。大臣は、この事件が日本の国家主権が侵されたとお考えになっているのかどうか、新聞などの報道によると、大臣は韓国のだれがやったかわからぬ、韓国の官憲がやったのなら国家主権を侵されているけれども、民間人であるとそうは言えないというような意味のことを話しておられるやに聞くんですが、この点を確認しておきたい。今度の事件は日本の国家主権が侵されたとお考えになっているかどうか。
○国務大臣(田中伊三次君) ありのままに申し上げますと、国家主権が侵されたかどうかという認定がまだできにくい状態である。何でそんなことを言うのかというと、犯人が個人であるか国家であるか、犯人が日本国以外の国家である、あるいは国家機関だと――国家ということは、国家自体はどうすることもできぬわけですから、抽象的な団体ですから。国家だということは国家機関だ、犯人が国家機関だ、つまり他国の機関だ、すなわち他国だということになるならば、主権の侵犯である、これは重大事態、容易なことではない、こういうことになるのでありますが、もしその犯人が、まあ日本人であろうはずはないわけでございましょうけれども、外国人個人だということになるというと、治安を乱されたということにはなるが、日本国の主権を侵犯されたということにはなるまい。個人なら主権侵犯にならぬ、治安の侵害であろう、国家機関、すなわち国家なら主権の侵犯である、こういう解釈を、これは法律論ですけれどもね、私がものを言うと法律論に堕するきらいがございます。まあしかし、ものの道理としてそう考えざる得ないのではなかろうか。どっか旅行先の記者会見で私がおしゃべりをいたしましたことも、同様の気持ちで言っておるわけでございます。
○田英夫君 国家機関であれば国家主権が侵されたと、民間人である場合はそうは考えないというこの法理論、この問題は私も議論があります。しかし本日は関連質問ですから、そこまで入りませんけれども、この問題はひとつ非常に重要なことであると思います。
 同時に、四囲の状況から考えて、韓国の金鍾泌首相も後宮大使に対して、韓国人がやったと認めざるを得ないということは言っておられる。しかも四囲の状況から考えると、韓国の国家機関が関与していると考えざるを得ない状況が非常に濃厚であります。そういう中で、この韓国のいわゆるCIAと言われるような情報機関が日本の中で過去にいろいろ活動している。あるいは西ドイツでかつてCIAが活動して、西ドイツと韓国との間に国交断絶に近いような状況まで進むような問題があったのも御存じのとおりでありますが、そこで外務省の中江参事官に伺いたいのは、在日韓国大使館の中にこの情報部員、CIAと言われるような人が何人いるのか、そしてその名前を把握しておられるかどうか。これは私、いけないと言っているんじゃないんです。日本の警察庁の人が在ソウル韓国日本大使館に書記官として行っているという事実もありますし、それは国のきめることですから、その辺は把握しておられるかどうか。
○説明員(中江要介君) お答えいたします。
 田先生のおっしゃるように、在日韓国大使館の館員の中に韓国のCIAに所属しておられる方がおられるということは私どもも承知しております。それが具体的に何人で名前はどういう人かということにつきましては、ちょっと私準備しておりませんので、ここに資料を持っておりませんので、この場ではちょっとお答えいたしかねる次第でございます。
○田英夫君 資料を見ればおわかりになる程度に把握しておられるのかどうか。私もここにディプロマティックリストを持っておりますけれども、ここに正式に登録されている人物の名前が、今度の事件に関連をして、報道にもちょくちょくあらわれてくるようです。あるいは、過去に私もかつて外務委員会で御質問したときにも名前をあげました。これに対して中江参事官からは、それがどういう身分の男であるか調べてほしいという要求をしてありますが、いまだにお答えがありませんけれども、こういう者がいることはかまわぬけれども、日本の主権を侵すような捜査活動であるとか、そういうことをやってくると問題になるわけです。このところを当然日本政府としては把握をしておられないのは、たいへんおかしいじゃないか、こういう気がしてなりません。
 そこで非常に具体的なことを一つ伺いますけれども、警察庁の方に伺いますが、事件当日グランドパレスのホテルの駐車場にとまっていた車の中で、すでに手配をしておられるそうですが、四八五二というベンツの車があったことを確認しておられるかどうか、そうしてそれを捜査しておられるかどうか伺いたい。
○政府委員(山本鎮彦君) お答えいたします。
 そういう事実は私どもは存じておりません。
○田英夫君 もう一つだけ。
 この四八五二というのは警察庁が御存じないというのはおかしいので、捜査本部の発表で、車の番号を報道機関に発表されている中にこの番号が入っている。しかも普通の民間の番号は練馬とか品川とか、そういうのが入っているわけですけれども、そういうのを抜きにして番号だけ、四けたの番号が駐車場のチェックリストには載っているということで捜査本部のほうで発表されたようでありますから、これも四けたなんでまぎらわしいのですけれども、これは外交官ナンバーですね。水色に白の外交官ナンバーで、四八というのは韓国大使館のナンバーであるということになりますと、これは韓国大使館の車が当日グランドパレスの駐車場に入っていたということになるのですが、その辺を捜査本部のほうはつかんでおられるのかどうか。
○政府委員(山本鎮彦君) 私のほうはその点まだつまびらかにしておりませんので、さっそく調査をいたします。
○佐々木静子君 中江参事官にお伺いいたしますが、いま資料を持っていないので、と田委員の質問にお答えになりましたので、資料がおありなわけですね。おありだったらこの委員会に早急にお出しいただきたいと思うわけです。そのとおりでございますね。いま資料を持っていないのでというお話だったので、外務省の中におありだというふうに私ども当然受け取ったわけでございますので、早急に委員会に出していただけますね。
○説明員(中江要介君) 私が先ほどお答えいたしましたのは、第一点として、在日韓国大使館員の中に中央情報部に関係のあった、あるいは現在どうも身分が関係のある方もあるかと思いますけれども、そういう方がおられるという事実は私ども承知しております。で、具体的にどの人で、何人かという点につきましては、韓国大使館員の全員の身分調査をしておるわけでもございませんので、わかっている限りでは、何人かというのはある程度わかるかと思うのですが、私どもで承知している限りでの現状というのは、後刻御報告さしていただきたいと、こう思います。
○佐々木静子君 もちろんわかっていないことまで出していただくわけにはいきませんから、大使館も外務省もただぼんやりとしておられるわけではなくて鋭意御研究していらっしゃると思いますので、わかっている範囲で早急に委員会にお出しいただきたいと思います。お出しいただけますね。
○説明員(中江要介君) はい、承知いたしました。
○佐々木静子君 それから、いま警察のほうに本件についての捜査について伺ったのですが、普通大きな事件が起こりますと、当面の表に出ている捜査は警察が担当しても、検察庁が捜査の指導に当たるというのが常でございますけれども、法務省の刑事局長に伺いますが、今度の場合、検察庁はどのように指揮をしておられますか。
○政府委員(安原美穂君) 本件につきまして、法務、検察当局といたしまして重大な関心を持っていることは申すまでもないところでございますが、本件はさしあたり警視庁において現在捜査中の案件でございまして、事件の送致を受けていない段階でございますので、検察庁として特別の捜査体制というものはとっていないのでございまするが、重大な関心を持ちまして、東京地検公安部を中心といたしまして、警察、警視庁と綿密な連絡をとりながら随時法律面その他にわたりまして協議を行ない、場合によりましては助言を行なっているというのが実情でございます。
○佐々木静子君 そうしますと、東京地検の公安部がこの問題にタッチせられるようになったのはいつからですか。
○政府委員(安原美穂君) もとより本件発生を知ったとき、直後からでございます。
○佐々木静子君 いま田委員のほうから韓国CIAのことについて御質問があったわけですけれども、これは大臣に伺いたいんでございますが、もうこのところアメリカでも韓国の情報機関について相当にいろんな批判の声が起こっている。日本におきましてもマスコミに、各一流紙に大きく取り上げられまして、日本に外国の諜報機関が、しかも一流紙の報ずるところによりますと、韓国の諜報機関、万をこゆる数の諜報員がいるとか報ぜられておりまして、私どもいまさらながらそのおそろしさにりつ然としているというのが、非常に不安な気持ちに襲われているというのが実情でございますけれども、治安の一番の責任者であるところの法務省においては、韓国の諜報機関というようなことについてどの程度把握しておられるのか。簡単に言いますと、一流紙でいろいろと報ぜられておりますけれども、確かなことはなかなかつかみにくいかと思いますが、大体このCIAあるいはCICその他いろいろ機関があるようでございますが、幾つぐらいの機関、諜報機関、韓国系の諜報機関が日本にあり、かつ諜報員が日本に何人ぐらいいるか、把握しておられるのか。これは治安の当局としての法務省としたら当然われわれの国民の生活を守るためにいろいろ調べておられると思いますので、ぜひその点についてお答えいただきたいと思います。
○国務大臣(田中伊三次君) 大事なことでございますから、入管局長が来ております。局長からお答えいたします。
○政府委員(吉岡章君) 入管におきましては、日本に入国または出国いたします人たちの個々のチェックはやっておりますが、そういった機関員として秘密活動をする者についての調査はいたしておりませんので、残念ながら入管当局としてはそういったものは把握しておりません。
○竹田現照君 関連。
 韓国中央情報部の活動について、アメリカの政府も過去外交上四回ほど警告を発したというように新聞に伝えられておりますけれども、アメリカでもそういう活動が行なわれているのですから、日本でも当然行なわれていると想定するにやぶさかでありませんけれども、日本国政府として、そういうような外交上の抗議といいますか、警告というようなことを韓国側にしたことがいままでにあるのですか、あわせてひとつお答えいただきたい。
○説明員(中江要介君) 私の承知している限りでは、いままで韓国政府に対して日本国内における韓国CIAの活動に関連して抗議を申し込んだということは承知しておりません。
○竹田現照君 このCIAの活動の実態というようなものについて、日本国政府として調査をしたというふうなことはいままであるんですか。全然野放図にして、そういうことをタッチしたということはいままで全然ないんですか。
○説明員(中江要介君) この件につきましては、先ほど田委員が言及されました過去の、たしか外務委員会だったかと思いますが、ある事件に関連しまして、CIAの活動があったのではないかという疑念を表明されまして、私のほうで捜査当局と協議して、捜査当局に照会いたしまして、そういう事実があったかどうかについていま突きとめておりますが、現在までのところ、そういうことがあったという報告はまだ受けていないと、こういう状況でございます。
○政府委員(山本鎮彦君) ただいま外務省のほろからお話がございましたが、どこへ照会されましたのか、私のほうでは、現在そういう照会があったという事実は承知しておりません。
○田英夫君 これは大臣、国務大臣としても聞いていただきたいんですけれども、非常に問題ですよ。つまり西ドイツの例、アメリカの例、韓国のCIAは外国で外国の主権を侵してかってな活動をして、それに対しては、この被害を受けた諸外国は厳重に抗議をしている。一番日本に数も多いと思われます、CIAは。そういう中で、政府の機関の中で、きょうほぼ関連すると思われる政府機関の方がここにおそろいであるにもかかわらず、だれもどこもこれを把握しようともしていない。警察庁は、これは当然、日本の国家主権が侵される犯罪行為ですから、警察庁は犯罪を捜査するのがあたりまえだ。法務当局もそうだ。外務省は外交的な関係からこれを把握しなければおかしい。
 現に私は六月の外務委員会で、中江参事官もあの席におられましたけれども、三月に逮捕された沢本三次という日本人、昭和十年以来帰化をして、法律的にはまさに日本人ですよ。その日本人が韓国で逮捕されて、その関係者を、韓国政府の発表によると指名手配したと。これがまた日本人です。これは帰化人ではなくて、正真正銘の日本人です。韓国政府はそれを指名手配したと、こう発表しているんで、私は外務委員会で、指名手配なら、国際刑事警察機構を通じて当然警察庁に連絡がなければ、日本にいる日本人を外国の官憲が逮捕するわけにはいかないから、そういう連絡があるはずだが、あったかと聞いたら、六月の時点で、ありませんと。警察庁に連絡がないものをどうして韓国の官憲が指名手配したと発表できるんですか。そしてその純粋の日本人である中村さんという人のところに、はっきり名前を申し上げるけれども、これにも載っている在日韓国大使館の朴載京という一等書記官が自宅をたずねて調べているんです。こういうことはまさに主権の侵害と言わざるを得ない。そういう活動が現に行なわれ、国会で私どもが指摘しているにもかかわらず、どこの政府機関もこれを把握していないというのは一体どういうことですか。法務大臣どうですか。
○国務大臣(田中伊三次君) 法務省の所管でない部面についてもお答えをすることになりますが、まあ私は国務大臣でもありますからお答えを申し上げますと、一体どの国のということが今日の段階においては言えないのでありますが、某国のCIA、まあ一口に言う秘密警察、情報部員という者が日本の国に上陸をしてくる、こういう場合は、表で、おれは情報部員だ、秘密警察員だと言っては入ってこない。まあ日本でたいへん困る問題は某国等は外交旅券で入ってくる。これはこういうことをこの席で言うことはどうかと思うのですけれども、某国ですからね。某国と言っているのだからどうということはないのです。外交旅券で、外交ビザを取って入ってくる。それが外交官だという外形であるけれども、事実はCIAだ、秘密警察だ、それが目的で来ておるというのが相当量あるのではないかと頭を痛めておるわけでございます。なぜ一体そういうものを今日まで黙っておるのかということでございますが、いままで事故が起こらぬものですからね。いままで事故が起こっておると、その事故をとらえて、何をしているんだと、こうなるんです。事故が起こらぬものでございますから、外形を信用する以外にない。
 今回は、どの国のどのCIAが、どの秘密警察がこれをやったものかということがかりに明瞭になります場合――これだけは明瞭になるものと私は信じておりますが、これが明瞭になりました場合においては、その国と日本国との両国の間に重大問題を発生いたしますので、いまお説のような事柄も今後においては十分取り締まることができる――取り締まるというよりは、外国の警官が日本に出てくるのでありますから、取り締まるということばは間違いでありますが、それを十分に推察することができますように処置をすることができるものではなかろうか。何しろ初めてのことにぶち当たっておりますので、いまこれだけの人間がおって、このうちのだれとだれとが秘密警察の任務を帯びておるんだということ、ちょっと調査のしょうがない、調査もできていないようでございます。想像がついておっても調査ができておらない、こういうずさんなあり方が現在の状況でございます。
○田英夫君 これはいま、今回初めて起こったと大臣はおっしゃいましたけれども、さっきの沢本三次の事件でも、すでにCIAと思われる人物が動いているということも国会ではっきり申し上げてあります。また、たとえば公安調査庁とか内閣調査室とか、いわゆる革新陣営に対する取り締まりについては非常に膨大な予算を使い、膨大な人間を使ってやっておられるにもかかわらず、こういう問題については、しかも日本の国民が非常に不安におちいるようなこういう問題については全くどこも調べてなくて、今度が初めてだという、そういうことは、たとえば、私まだ調べてますから、全部ここへありませんけれども、ことしになって、七十三年になってからだけでも十件以上ありますよ。日本にいる日本人、あるいは日本国籍に変わった元韓国人――帰化した人、あるいは在日韓国人、そういう人たちがいつの間にか蒸発するようにして連れていかれて、調べてみたら北朝鮮スパイという名目で向こうで逮捕、取り調べを受けているという事実が、いま私の手元で、ここでわかっているだけですでにことしに入って五件あります。おそらくこれは十件以上になるでしょう、いま調べておりますが。以前の問題を含めたら膨大な数になる。そういうことをやっているのはみんないわゆる情報部員と言われる人たちです。いつの間にか蒸発しているんです。西ドイツの場合は五十六人同時にやりましたから、非常に大騒ぎになりましたけれども、日本の場合はおそらくそれに近い人数になるであろう。次々次々に少しずつやられていくからわからないんです。しかし、こういうことが日本を舞台にして行なわれているということは、しかも日本の政府当局は何も知らないということは――しかも日本人もやられているんですよ、沢本三次さんというのは明らかに日本人ですから。そして、それに関連して日本人である人に指名手配なんて言われているんですよ。これ、警察、検察、政府当局が知らないというのは、しかも、これは引っかけられているのは反共法、国家保安法――これは国家保安法は第一条で、政府を僣称する者は首魁は死刑と――僣称ということばはずいぶん古いことばですけれども、金大中氏はこれに引っかけられる可能性濃厚ですよ。一部の新聞で書いていた亡命政権をつくろうと計画していたなんというのはその伏線だと思わざるを得ない。そして、反共法では、北朝鮮に行けば、行っただけで懲役五年ですよ、第六条にあります。それを日本人に引っかけてるんですよ、反共法を。私だって北朝鮮へ行きましたから、これからソウルにのこのこ行ったら、逮捕されて、懲役五年だと言われてもしかたがない、いまのような状況では。そういうことですよ。日本人もやられているんですよ。それを政府機関がどこも把握しておられないというのは、以前の事件の問題のリストももし政府当局がお持ちになっていないなら、私のほうから差し上げますよ。私どものようなところでさえ、ちょっと調べただけでこれだけのものはわかるんですよ。政府がこれを御存じないというのは非常におかしいんですが、大臣、この辺はほんとうにどうですか。
○国務大臣(田中伊三次君) 何と申しますか、私たちには大事な第六感というものがあるわけで、その第六感によれば、この国に違いない、この国の秘密警察がやったことに違いがないというようなところまでは胸の中に浮かんでおるわけであります。
 国会の答弁でどう言うのかということは、これは話は別でございます。国会の答弁で、お尋ねがあってお答えをいたしますときには、某国のCIAがやったものだということを――先生はまあそうきめつけている御意見、それに違いないと、何で知らぬのかと、こう仰せになるんですが、それに違いがあるかないかがわからない。これはやがてわかるものと思います。今日の答弁をいたします現段階においては、某国のCIAかどうか、某国の国家機関としての秘密警察かどうかということは明らかにわかっていない。その明らかにわかっていない時点で、どうもこの問題をわかったことを前提にして、このCIAをめぐって、いかにもCIAがやったものだということをきめつけて、それを前提にして論議が進むということは、その某国と日本国との間にも非常にむずかしい私は刺激を与えるのではなかろうかというふうに思うんです。それで、お前はどう思うか、CIAとして活躍しておる者をどうするかというこの問題の答弁につきましては、これは一国でありませんから、方々の国のCIAがただいま日本にはおると思われるのでありますから、これらの者に対する対策というものは、この捜査が一定の段階に進みまして、詳しいことがわからぬにしても、某国CIAの行動にまさに間違いがないということがはっきりいたしました上でありませんと、この問題については自分の感想を述べるということができません。
○鈴木強君 ちょっと。大臣、こう二つに分けて、いまの田委員の質問に対して答えていただけませんかね。
 それは、一つは、別にこうきめつけているわけじゃないんですね。これはきょうの読売新聞を私ずっと拝見しましたけれども、かなり詳細に問題点をうがって書いてありますよ、摘出して。それで非常に参考になりましたけれども、たとえばいまの韓国CIAの問題についても、自民党のアジア・アフリカ問題研究会の代表世話人である宇都宮先生が二十二日、ゆうべの夜に「金大中事件は韓国中央情報部の下部が関与したという情報について「下部機関ではなく、中央情報部そのものが実行したことが明らかになって、あわてて〃下部〃がやったと認めざるを得なくなったのだ」と次のように語った。」というので、要するに中央情報部がたくらんだ仕事だ、事件だと、こういうふうに見ている部面もあるわけです。ただ私は、そうなると、これはさっきの国家主権との問題で出てくると思いますが、これは法律的には大臣のおっしゃるとおりでしょう。しかし、われわれはその法律的見解についても問題はあると思いますけれども、ですから司法権や国内法が完全に侵害されていることは、これは間違いないんですよね。したがって、そのことはそういうふうに理解するとしても、問題はCIAというものが日常日本においてどういうふうな活動をされているのか、その実態と対策というものがわれわれにはわからないわけですよ。ですから、大使館の名前も、それは館員の名前はわかるでしょうけれども、その人がCIAの者であるか、所属するかしないかということについては、なかなかこれはわからぬ――それはそうでしょう。わからないが、相手方がわれわれが想像以上の活動をされているわけですから、それに対してわが国が対策を立てないということはいけないと思うんですね。そういうところに今度のようなことが出てきたのじゃないですか。ですから、外国が日本に来て主権侵犯にもなるような、そういう情報活動を平気でやるということになるならば、これは見過ごすわけにはいかないと思いますよ。そうであれば、政府はもっとそれに対する対応策というものをつくって、不断にもっと取っ組んでいく必要があるのじゃないですか。その点が私は非常に欠けていると思うんですよ。いずれにしても、そういうようなCIAが関与したのだという判断、そうなればこれは主権侵犯になる、大臣もおっしゃるとおり法律的にもそうなります。現在司法権と国内法が侵犯されたことは、これは間違いないですね。と同時に、もう一つ、そのCIAの活動に対してもう少し対応策を具体的に、積極的にそれに負けないだけのものを日本がつくる必要があるんじゃないですか。そういうことを言うんですね。結局そのことを大臣はどういうふうにするのか、考えているのかということをもう少し明確にしてもらえばいいんですよ。
 それからもう一つ、事件のなぞは、かぎというのは金大中さんと梁一東さんだと言われておりますが、この人たちが遺憾ながら、警察のほうは、訪日をして日本の捜査に協力してもらいたいということを日本政府が言っているけれども、来ないじゃないですか。これは一体どうなんですか、どういう手はずになっているんですか。そして、今後、やっぱりかぎがここにあるんですから、どんなことをしてもやはりこの人たちに日本においでいただいて日本の捜査に協力してもらわない限り、私は、なぞは解けないような気もしますので、これは一体今後どうするんですか。その問題とひとつあわせてお答えていただきたい。
○政府委員(山本鎮彦君) お答えいたします。
 ただいまの、金大中さんと梁一東さんに日本に来ていただいて事情を聴取したい、この問題については、これまで何度も外交ルートを通じて向こうに交渉するように外務省に依頼をしております。外務省からも――外務省の方はおられますが――それぞれ所定の手続をとって強硬に向こうに申し入れている、まあこういうふうに聞いておりますが、われわれとしては、ぜひ、被害者である金大中さん、それからその付近におられた梁一東さん、これの事情をよく聞かないとなかなか捜査が進展いたしませんので、これからも執拗にこの点をお願いいたしたい、こういうふうに考えます。
○鈴木強君 外務省はどうですか、現状では。
○説明員(中江要介君) ただいま警察庁のほうからお答えになりましたように、警察庁の捜査を進めていく必要上、ぜひ、被害者と見られております金大中氏、それからそれに密接に関連しておられると思われる梁一東党首の来日を、東京におきましても、ソウルにおきましても一再々申し入れておるわけですが、先方の回答は、御承知のように、現在、韓国政府当局においても本件は捜査中であるので、いま韓国の官憲で捜査当局は捜査中なので、それを中断をして日本に行っていただくというわけにいかないので、日本に行っていただく、日本に来ていただきたいという日本側の要請には、いまのところ応じられないと、こういう返事をいただいておるわけであります。で、それではいつ日本に来れるようにしてもらえるのかという点については、これは捜査がまだ終わってないので何とも言えないと、こういう返事であります。
○鈴木強君 そんなものじゃだめだ。大臣、どうですか、さっきの田さんの前段の……。
○国務大臣(田中伊三次君) この問題は、先生お説のとおり、金大中君、これが一番大事な人であります、捜査の上からいいますとね。捜査の真相を押えるのに、この人なくしては捜査の真相を押えられない。それから次いでは梁一東さん、もう一人大事なのは、梁一東さんに呼び入れられて、そうして金大中君と二人を自室で対談をさしたと言われておる金国会議員、この三君が大事な者でございます。おまえは二二一二号室へ入れ、きさまは二二一〇号室だといって押し込んだ、押されながら入っていったんですからこれはわかっておるんです。目隠しはないんです。この三君が出てくると、ものはわかるんですね。いやしくもこれはどの国のどういう立場の者であったかなどということは確かにわかる。これは常識で私はわかるものと思う。これも日本においでを願いたい、日本国がそう要求し、外務省も御苦心をいただいておる。警察も待望して待っておる。それは、よこさない理由は捜査中だからと、これはまあわからぬことはないです、いろいろ捜査をしているんですから。自国民である金大中君、これは韓国からいうと自国民でありますから、その自国民をめぐる犯罪について捜査をしておるんですから、このからだをこちらに捜査の済むまで置いておきたいということは、私は、道理としてわからぬことはないと思うんです。それはけしからぬと言うわけにはいくまい。しかし、一定の捜査を終われば日本国に返すべきものだ、金の自由意思で帰ったものではありません。拉致されたもの、暴力をもって誘拐略取をされたもの、刑法で申しますと。これは事件発生以前の状態に戻して、日本国の治安の原状を回復すべきもの、これが韓国において協力ができないはずはない。また、それに協力しないということを韓国も申しておりません。言うたら承知しない、何を言っておるかという事件が起こるんではなかろうか、私は両国の間に非常に険悪な空気がかもし出されつつある現状を見まして、私は両国の関係のために非常にこのことを残念に思っておるものでございます。
 何しろ、法務省には全世界の外国人を七十三万人預かっておるのであります。私のもとに管理をしております者、七十三万人のうちの六十二万人までは朝鮮半島出身の諸君でございます。六十二万人をお預かりをしておる。結婚をしておる、子供ができておる、孫ができておる、日本人との関係は容易なものじゃありません。国と国とが接近をしておるなんということじゃございません。深刻な、緊密な間柄の両国でございます。その両国の間に緊迫した事情が出てくるなどということは、これはもってのほかでございます。へたをまごついて韓国政府が誠意のないことを仰せになるというと、まず第一に、日韓関係の経済閣僚懇談会等の会議にも重大影響が免れぬのではないか、私が閣僚の一人として言い切ることはできませんが、免れないのではなかろうかということを心からおそれておるという表現になるわけでございますが、私はこれをおそれておる。
 せめてこれらの人々を送ってくれぬのならば、これらの人々を調べた調書だけでも、コピーを見せてくれということも要求をしております。情報も送ってくれということをやっておる。今日まで、これという情報は送ってこない。まとまった情報を送ってきて、取り調べが進むに従って、取り調べの調書のコピーを日本国にちょうだいをしたい、こんな協力が両国の間にできぬはずはありません。こういう重大段階に置かれております。
 たいへん申しわけのないことを言うのでありますが、国会はどのような御質疑も国会の御自由でなきゃならぬ。何ものにも束縛されることはないのが国会のたてまえでございますけれども、ちょっと、この今日の段階で、国会で詳細にわたって御答弁を申し上げ、熱心に御質疑をいただく先生方のお尋ねに答えるには、少し時間が早いんですね。捜査に合わしてみると少し時間が早い、こういうことで、何ということなくなまぬるい答弁をしておるように見えます点は、どうか、肝心の捜査が一歩も進まぬのだということ、これが原因であるということにひとつ御同情を賜わりたい、こう思うのでございます。
○鈴木強君 前段のCIAのほう、それはどうなんですか、あなたが言われたから……。いま始まったことだという、始まってないと、田委員から、具体的に十数件あると書いてあるCIA、日本の対応策がないじゃないですか、CIAについて。
○国務大臣(田中伊三次君) 続いて一口申し上げますが、日本の外国のCIAに対する対応策というものは、お説のとおり、現段階においては確たるものが立っていないのが現状でございます。真相はつかんでいない。つかんでいない理由はどういう理由かというと、言いわけになるようでありますけれども、秘密で来るものであります。おれは秘密警察だ、おれは中央情報部員だと言っては入ってこないで、りっぱな外交旅券を持って入ってくるということが実情でございます。それ以外に独立をした情報がありましても、それは何かほかの名目で入国管をしてまいりまして、その目的を信じて入国を許すという状態になって今日に至っておりますので、この管理体制、CIAをめぐる管理体制、管理ということばがはまるかどうか存じませんが、これを調査をし、これに対する対策でありますけれども、そういう対策については、今後、十全の方法を検討をいたしましてこれをやっていきたいと考える次第でございます。
○佐々木静子君 先ほど来、日本におけるCIAの実態について再々各委員から伺っているんですが、私ども、もう全くほとんど満足すべき御回答をいただいてないわけなんです。それで、この法務委員会におきましても、時間がもうございませんので、次、引き続いてまたこの問題について大臣に御質問をさしていただきますが、いま私ども、前から起こっていることだから、どうしていままでほうってあったのだということを、まあこの点非常に遺憾に思うわけですけれども、早急に法務省内でも――いまも田委員から言われたように、たとえば私も前に質問しましたけれども、同じ外国でも朝鮮総連とか、あるいは日本共産党でさえ公安調査庁の調査の対象になっている。ところが外国のCIAは、法務省の中で全然どこの調査の対象にもなっておらぬというような、そんな不合理な、日本の法務省は一体どこの国の法務省かと言いたいような感じが、私、込み上げてくるわけなんですが、まあこれは私だけじゃなくって、日本国民全部が今度の事件を通じて適切に感じていると思いますので、また今後法務委員会におきまして重ねて質問さしていただきますから、大臣としても早急に、外国の諜報機関に対する対応策というようなものを早急に法務省内でも御検討いただいて、またそれについて御回答いただきたいと思うわけです。
 それから、これはもう時間がございませんから、いま鈴木議員からも最終的に御質問がございましたように、これは今度の事件についての捜査に金大中さんがぜひともなくてはならない人であるということだけではなしに、金大中さんが日本に入国されたのは、また滞在されたのは合法的に滞在されている、出国が違法にやられたわけですから、これはいままでの日本の入管行政でも、不法に入国したものはまたもとへ強制送還しているんですから、それと同じ話です。不法に出国されたんだからもとの状態に直すということは、当然、金大中さんを入管行政の面から見ても、日本に合法的にいてた人が不法に出国さされたんですから、また日本へともかく金大中さんの身柄を早急に持ってきてもらう、それを強硬に韓国政府へ折衝していただきたい。そして、いま日韓閣僚会議のお話もございましたけれども、これは大臣お一人ではきめかねることかもしれませんけれども、担当の法務大臣として、これは日本国民の世論にこたえる意味においても、また諸外国からの日本という国に対する信頼を回復するためにも、もうきびしい態度で臨んでいただいて、金大中さんが日本へ身柄が返ってこない限りは日韓閣僚会議は絶対に開かないという強い態度で臨んでいただきたいということを特にお願いするわけです。最終に所信を伺って、私の質問を終わります。
○国務大臣(田中伊三次君) 前段仰せの点はよくわかりました。
 最後の、日韓閣僚会議は日本の捜査当局の要求に応じない限りは開くには至らないように処置をするという問題は、少し私では小もの過ぎて申し上げにくい、仰せのことをよく承って、これを総理に伝達をいたします。
○白木義一郎君 今回の事件は、日本の帝都の一流ホテルの中で行なわれた、しかも韓国の有名な政治指導者が国外にさらわれた非常にショッキングな事件であります。おそらく国内は当然のことながら、諸外国も、この日本の現状に対して非常に不安なイメージを抱かざるを得ない、こういう現状であろうかと思います。したがいまして、わが国といたしましては非常に国家的な損失の事件である、したがいまして、歴史的また伝統的に従来の韓国との関係を逐次的に前進をせしめてきた現状からいいますと、はなはだ憂うべき事件であると思わざるを得ないわけです。したがいまして、ここで政府はどうしてもこの問題をすみやかに明らかにして、単にこの両国の関係悪化を気にするだけではなく、国民並びに諸外国に対しまして納得のいく判断を、並びに態度を示すべきだ、このように思う次第であります。その点について、まず大臣のお考えをさらにお伺いしておきたいと思います。
○国務大臣(田中伊三次君) 御趣旨の線に従いまして最善を尽くして、御期待に沿いたいと存じます。
○白木義一郎君 そこで、いま質疑が行なわれまして、伺っておりますと、たいへん大臣もお手上げのような御答弁ではありましたけれども、このような大きな問題が日本の捜査当局の手から水が漏れるようになってしまった、そういうところから、日常のこのような一般的な密入国あるいは密出国、そういう点について現在まで捜査当局のもとに明らかになった事件をお知らせ願いたいと思います。
○政府委員(山本鎮彦君) お答えいたします。
 不法出入国事件の実態でございますが、不法出国事件は、昨年は十六件、十七名検挙いたしております。本年は、六月三十日現在で、四件、四名でございます。それから不法入国のほうは、昨年は二百件、 二百八名、本年は、六月三十日現在で、百八十六件、二百二名という数になっております。
 平素におけるこの不法出入国関係の警戒でございますが、これは、それぞれ受け持ちの海岸付近の警察官による情報の収集、警戒のいろいろな勤務、そういうことに配慮をいたしております。それから密航監視所というのがございまして、それによって警戒の穴を埋めるような形で協力体制をしいております。それから沿岸警備協力会、こういうような民間人などによる警戒体制をとっております。また、関係官庁でございます海上保安部あるいは入国管理事務所あるいは税関、こういう関連の機関とも、日ごろから、事件の起こる前からいろいろとこういう問題についても協議をいたしておりますし、事件が起こった際にも協力的に情報を交換し、適切な管理が行なわれるように努力をいたしておる次第でございます。
○白木義一郎君 いまの密出入国の実態をもう少し具体的に、場所あるいはその行なわれた状況等御説明願いたいんですが。
○政府委員(山本鎮彦君) この詳しいデータはいま持っておりませんのでございますが、この数をいまあげましたけれども、そのうち特に不法入国の関係は、ほとんどがいわゆる朝鮮半島の出身の方がこちらへ入ってくるということで検挙されている事案が多いので、したがいまして、地域としても、北九州でございますね、それから中国の山陰地方、それからさらに兵庫県から京都、それから一連の、こうずっと北まで、青森まで日本海沿岸の各県に、また時期は、大体春から夏にかけてが多いのでございますが、そういう時期に、船で、ブローカー等を通じて日本にあがってくると、こういうのが大部分でございます。
○白木義一郎君 今回の事件は、海上から連れて行かれた、こういうことですが、先ほども佐々木委員からお話がありましたけれども、警察当局は膨大な捜査陣を活動せしめてこの捜査に全力を尽くした、そういう報告でありますけれども、これは将来、事件が明確になりました場合に論ぜられる問題でありますが、一応関西方面あるいは大阪付近、こういうことに話を限定して考えると、まあ袋のネズミ、こういうような現状でありますが、それがなぜ捜査網にひっかからなかったかという点について、私どもは、日本の優秀な警察当局にしては、非常に何か手落ちが、あるいは甘さがあったんじゃないか、こういう推測をするわけですが、その点いかがでしょうか。
○政府委員(山本鎮彦君) お答えいたします。
 確かに、われわれは与えられた条件でできる限りの努力をしたわけでございますが、結果として、金大中さんが何らかの方法で連れ出されてしまった、これはまことに残念であり、御指摘のとおりですが、何らかの欠陥があったというふうに思われます。これらの問題については、後刻事態がはっきりしたときに、これに対する、将来こういうことのないような対策を講じていきたいと思いますが、ただ、いろいろ手配をいたしたいと申し上げましたけれども、非常に残念でございますが、実際にホテルを出たときにどんな車に乗って行ったのか、たとえば何年型の何番の車というようなことがわかっておれば、これは非常に、何といいますか、かなり迅速に捕捉できたと思うんでございますが、そういうものを目撃した者がいなかったということは、捜査上与えられた条件として、非常にわれわれとしては不利な条件であったわけでございますが、そういう点も十分われわれとしては踏まえながら捜査をいたしたわけでございますが、この点非常にいまでも残念だというふうに思っております。
○白木義一郎君 また、大臣の先ほどからのお話を伺っていますと、どうも韓国の政府機関の犯罪であるというような響きが非常に強く感じられたわけでありますが、もし、これが一般の政府機関でなかった場合は――これがまあ今後の論点の焦点になるわけですけれども、主権の侵害になるのかどうか、これは問題でありますけれども、一般の組織、あるいは単に個人的な犯行であった事件が、過去に――当面韓国との問題になりますけれども、そういう事件がかつてどのぐらいあったか、おわかりでしたらお知らせを願いたい。
○国務大臣(田中伊三次君) 私がお答えを申し上げる筋でないのでございますが、私の発言が、お聞きをいただいておりますと、韓国の情報部員がやったということが濃厚だというように受け取れるというおことばですが、これ、そのとおり、私が黙っておりまして、報道されると、これ、重大事態でございます。政府の大臣が韓国の秘密警察のしわざであるという意味のことを述べた様子であるなどということになると、これは重大な事態。どうかそういうことでございませんように、私は、某国の何がしというように、某国ということばを用いております。それ以上のことは申し上げておりませんので、たいへん心を使ってこれを申し上げておるわけでございます。どうぞそういうふうに御理解をいただきたい。
○白木義一郎君 私も大臣の立場はそうあらねばならないと思いますが、どの新聞報道を見ましても、また先ほども申し上げましたが、これはあくまでも受け取り方の問題ですが、大臣の先ほどの答弁も、どうも相当この問題について政府機関が関与しているんじゃないかという考え方を大臣は持っているように伺ったわけです。しかも新聞報道によると、どうもくさいというような大臣の談話みたいな記事が載っている、こういうことから、どの程度、われわれとしては、政府が今日までその情報を、あるいは国内あるいは諸外国から情報を得て、それがそのようなニュアンスとなって国民に響いているか、こういう心配をするわけです。お話ししにくいかもわかりませんが、どの程度、法務大臣としてどんな情報をいままで入手しているか、お聞きしたいと思います。
○国務大臣(田中伊三次君) 先ほどから申し上げておりますように、法務省の立場は、いまだ送局前である、いまだ送局がないという、こういう時点で御答弁を申し上げるのでございます。そういうことでありますので、情報としてどんな情報を取っておるか、犯人は韓国か、あるいは何国か、あるいは何国のどういう機関かというようなことに対する情報は私の手元に収集ができておりません。第六感というもの以外は何にも言いようがない、資料ゼロということでございます。捜査当局もこれに頭が痛いところであろうと思います。全力を尽くしてくれておりますが、現時点においては資料として御報告を申し上げるものがない、こういうことで、すべて使いますことばも某国某機関、某国の秘密警察、某国の中央情報機関といったようなことを述べる以外には述べようがない、情報がないのでございます。
○白木義一郎君 こういう点もいずれは将来明らかになることだろうと思いますが、そこで、先ほどちょっと触れましたが、法務省は、この金大中氏の再入国を韓国に対して強く日本政府は要請しているということですが、被害者が自国人あるいは政治犯の場合は、これまでの慣例からいって、まず応じないであろうという見解が報じられておりますが、どのような慣例があったのですか、いままでに。ですから、被害者が自国にいた政治犯の場合は、これまでの慣例からいってその要求は、こちらへ、もう一度日本の国へ戻すということについては、韓国は応じないであろう、そういう見解が報じられているんですが、そういう見解、慣例がいままでどのくらいあったか、お聞かせ願いたいと思います。
○説明員(中江要介君) いままでの事例をつぶさには承知しておりませんけれども、一般的に国際社会で言われておりますことは、いま先生御指摘のように、犯罪人――これは犯罪人の場合でございます、被害者じゃなくて。犯罪人の引き渡しに関連しましては自国民不引き渡しの原則、政治犯不引き渡しの原則というものが確立されております。これは犯罪人引き渡し条約というものを締結する場合にもその中に明記されておりますし、犯罪人引き渡し条約がない場合でも、一般の国際慣行としては確立された原則になっております。ただ、これは原則でございますので、それプラス政治的配慮というもので物事が処理されていくということは当然あり得ることですが、国際慣行として確立された原則はそういうふうになっておる、こういうことを申し上げるわけでございます。
○白木義一郎君 そうしますと、現在は両国の間に犯人引き渡しの取りきめあるいは条約等がありますか。
○説明員(中江要介君) 日本と韓国との間につきましては、犯罪人引き渡し条約はございません。
○白木義一郎君 そうしますと、あくまでも一方的に韓国側の考え方で犯人は引き渡さないということが考えられるわけですか。それ以上はどうしようもない、こういうことでしょう。
○説明員(中江要介君) 韓国で日本における違法行為の犯罪人が発見された場合、それが確定した場合、判明した場合、そういう場合には、いま申し上げましたような原則で、自国民不引き渡しの原則というものが相当強い力を持つんではないかと推測されます。
 それから、その犯人が政治犯である場合には、さらにむずかしくなる可能性はあると思います。ただ、これはよけいなことかもしれませんが、いま問題になっております金大中さん自身の問題は、これは犯罪人という立場ではなくて、被害者として、わがほうの捜査に協力していただくために来ていただきたいと、こういうことになっておりますので、そこは多少性格は違うということをつけ加えておきます。
○白木義一郎君 われわれ国民といたしましては、この事件は必ず近い将来において全貌を明らかにして、そして納得をしたいし、また、しなければならない問題であります。ということは、当然、繰り返すようでありますが、政府が金大中氏の再入国を韓国政府に強く要請して、事情を聴取せねばならない、そして世論の前にこれを明確にしなければならない政府が強い当然の責任があるということを明らかにしておきたいと思います。したがって、この金大中氏の再入国がはっきりしないうちはこの日韓閣僚会議の開催は慎重にすべきであると、このように思います。国務大臣として心得ておいていただきたい。しかし、この閣僚会議の性質は御承知のとおりでありまして、日本の国民と韓国の全体の国民に対する経済援助等も大きな問題として扱われている会議であります。したがいまして、この事件がそのまま両国間の国民に大きな影響を与えるということは非常に慎重にしなければならないと、このように考えているわけであります。と同時に、大臣並びにそれから捜査当局にもお考え願いたいことは、この種の事件が起きますと、非常に出入国に対して敏感になります。かつまた非常に厳重な取り締まりを行なうのが従来の常であります。したがって、この事件から大ぜいの国民あるいは外国人が迷惑をする場合が予想されますので、当然十分当局は心得て行動あるいは捜査の任に当たっていただきたい、このように要望する次第であります。
 いずれにいたしましても現段階では、御承知のとおりの現状で、逐次事実が判明次第、あるいは当委員会におきまして、あるいは外務、あるいは衆参両院においても明らかにしていかなきゃならない問題ですが、特に私といたしましては、いまの二点ですね、この出入国の件について一般に迷惑を及ぼさないような配慮をしていただきたい、それから、経済閣僚会議の開催については政府は慎重に考慮をすべきである、以上二点を申し上げまして、一応私の質問を終わります。
○国務大臣(田中伊三次君) 外務省御列席になっておりますが、外務大臣が御不在ということでございます。私からお答えをいたしますが、韓国が誠意を示すに至るまでは、日韓両国の閣僚会議は慎重にやれという、さきに佐々木先生からおことばのありました線に沿うた御意見でございます。これは、私がここにおりますが、お答えをいたしかねますので、こういう熱心な御主張が国家を思う立場からおありになったということを明日内閣総理大臣にしかと伝達をいたします。
○星野力君 金大中氏が日本に滞在中に、私の知っております範囲でも、韓国政界の有力者が何人か日本にやってきまして、金大中氏を韓国に連れ戻すための説得をやったという事実があるようでございます。それらの説得が奏功しなかった、そのあとで今度は実力で連れ返すという今回の事件が起きたわけでございます。某国の中央情報部が今回の事件に関係しておるということはほぼ間違いないと言ってよろしいと思います。少なくともこの事件にその某国の中央情報部の意思が働いておることは確実と思うのであります。中央情報部というのは、これは某国の有力な政府機関でございます。日本の政府が身体、生命の安全に責任を持たなければならぬ人物を実力で拉致して国外に連れ出した。それが外国の政府機関によって行なわれたということになれば、これは傍若無人もはなはだしいところの主権の侵害行為でありますが、他の委員各位からも御発言のあったことでありますから、最も重大な問題でありますので、この点について大臣がどう考えておられるのか、どうしようとしておるのか、中央情報部が関与しておることがより明確になったら一体どうするのか、その点について重ねてお聞きしておきたいと思います。
○国務大臣(田中伊三次君) 先生お尋ねの、某国の政府機関がこれに関与しておったということが明白になった場合はどうするかというお尋ねでございます。
 これはよほどしっかり答弁をしておきませんと誤解を招くおそれがあろうと思いますが、かりにそういうことが明白になりました場合は、先ほどから答弁をしておりますように、重大な主権の侵犯である。これは重大事態でございます。外交機関を通じまして、重大決意をもって重大なる申し入れを行なわなければならぬ、これは当然でございます。こういう程度のことを御答弁申し上げる以外に、この段階においてはないのであります。万一さような事態があった場合には、重大決意をもって重大申し入れを行なう。そういう外交交渉に入ってもらう。われわれのタッチすべきことでございません。一国と一国との外交関係で処置をしていく、こういうことになろうかと思います。
○星野力君 この事件はまことにミステリーに満ち満ちておるのでありますが、この事件を捜査した日本の捜査当局の態度もミステリーの部分が多いようであります。
 白昼、都心の人の出入りも多いホテルであの事件が起きた。当初目撃者がないというようなことが捜査当局の意見として新聞にも報道されておりましたが、そんなはずがないということはだれでもわかることなんです。どうも捜査当局の態度に奇怪なものがあるということを一般に感じたわけでありますが、はたしてその後になって、ことに、最近になりましていろいろの目撃者もあらわれておるということが伝えられております。一体これまでの捜査において、真相に近づけるようなどういう材料を入手されたのかどうか。捜査そのものにミステリーがつきまとっておると、こう申しましたが、率直に言いますと、捜査当局はその初動の段階においてすでに政治の壁にぶつかっておったんではないかということが言われております。もっとはっきり言っておるところでは、日本政府の少なくともその一部が、事件の真相に近いものを知っておりながら、捜査の手綱をゆるめたりしぼったりしたのではないかということまで言っております。外国では、たとえばフランスのル・モンド紙が、日本の警察は元来有能である、その有能な日本警察が異例の無能ぶりを示したことは、事実の核心を突きとめるのに消極的になっていたためではないか、というような報道もいたしております。日本政府が共謀しておるのではないかというようなことさえ外国では言われておるということは御存じだと思います。そんなことが国内国外で言われるだけでもたいへんなことでありますから、日本政府あるいは捜査当局のこの事件の対処のしかたが疑惑を持たれておるということは事実でございます。それに対して政府としてはどういろふうにお答えになりますか、お聞きしたいのであります。
○政府委員(山本鎮彦君) お答えいたします。
 先ほどもお答えいたしました点と重複いたすと思いますけれども、事件の発生の通知を受けまして、警察としては、非常に困難な状況にはございましたけれども、初動捜査、緊急配備、全国への手配、そういう面において万全の体制をとり、捜査員はこの暑い中、酷暑をものともせず不眠不休で活動しているのが実態でございまして、政治的な壁に当たったとか、どこかからの制肘を受けて捜査を左右した、そういうことは絶対にございません。
○国務大臣(田中伊三次君) 警察当局からお答えのとおりでございますが、私のほうも、東京地検公安部におきまして、先ほどからも御報告を申し上げましたように、一々重要事項につきましては御相談を受け、連絡を受けて、捜査の指揮をしておりますという事情でございます。よくわかっておるのでありますが、いやしくも警察が何らかの圧力に屈したとか、ただいま先生仰せのような事情が警察当局にあったなどということは、まことにもってのほかであります。私たちがこれを見ておりましても、さような事実は断じてないのみならず、最近まれに見る熱意と努力をもってたいへん誠実にこの捜査に乗り出しておられる、これを私たちは感激をもって見ておるという事情でございます。さような事実は断じてないということを、私からもひとつ先生の御了承をいただきたいと思います。
○星野力君 他の委員からも申されたことでありますが、韓国中央情報部の職員あるいはその関係者、これがたくさん日本国内で活動しておる、暗躍しておるという事実がございます。私たちの知っておる限りでも、何件かそういう事実がございます。いわば韓国中央情報部は、世界のどこの国におけるよりも、日本において自由に活動しておるということになると思いますが、政府はその状況をどのようにつかんでおられるのか。先ほどは大臣から入管局長に答弁の御指示がございましたが、これは入管でわかることではございません、御答弁のとおり。一体どこでこれはわかっておるのか、どこをつかんでおるのか、その点を、いままではっきりしないんですが、ひとつ言っていただきたいと思います。
○国務大臣(田中伊三次君) 先ほど申し上げましたように、おれは何国の中央情報部員である、おれは秘密警察職員であるといって入国してくる者は、表向きは、言うまでもなく、ないのであります。みんな一定の、わが国において法律上制定されております一定の理由に基づいて入国目的をきめて入ってくる、それが外交官であります場合においては、外交の旅券を持って、外交ビザをとって入ってくる。これが中に入ってきた後にいろいろな活動をしておるということが絶無でない、こういう事情でございますので、たいへん実態は押えにくい。
  〔委員長退席、理事原文兵衛君着席〕
非常に押えにくい。ことに相手が外交官である場合においては不可能に近いほど押えにくい、こういう実情でございます。しかしながら、こういう重大事態が発生をいたしまして、押えにくいでは事が済みませんので、少なくとも今回の、異例の大事件とも言うべきこの事件の捜査が、やがて見通しがつくものと存じますので、見きわめをつけまして、どの国のどういう組織に属するものが出てきて、どういうことをしたのか、こういうことを明白に実態をつかんだ上で、これを生きた資料といたしまして、わが国では具体的対策を講じたい。具体的対策を講ずる面では、警察庁、外務省、法務省と、関係各官庁連絡をいたしまして、十全の措置を講じて御期待に沿いたい。現段階においては、残念でありますが、そういう機関もなく、調査をいたしました調査の事例もない。したがって、資料はまことに不十分なものでございます。幾らかの資料はありましても、これをいやしくも国会において発表するほどの資料はできていない、こういう実情でございます。
○星野力君 ただいまの大臣の御答弁、私はまことに不満でございます。秘密諜報員であると名のって入ってくるわけではないから実態がつかみにくい。これは秘密諜報員と名のって入ってくるわけはございません。
  〔理事原文兵衛君退席、委員長着席〕
しかし、それを押えなきゃならないのが、つかんでおらなければならないのが、主権国家のこれは仕事である。主権国家の公安当局、捜査当局の仕事ではないかと思うんであります。実際は日本のそういう機関がつかんでおらないということがないと思うんです。大臣の言われるように、ほとんど知らないということではまことに怠慢ですよ。そんなことがあるはずはないと思うんです。日本の有能な警察にいたしましても、実際は知っておられるんだろうと思うのです。言わない。
 こういうことがございませんか。日本政府は破防法適用団体として在日朝鮮人総連合会を指定いたしておりますが、いわゆる総連の情報をつかむのに、日本人よりも同国人のほうが都合がいいのはもちろんでありますけれども、そういうことで、総連の動向などについても、日本国内で絶えず目を見張っておるところの韓国中央情報部員、そういう者から情報をとっておる、あるいは情報を交換しておる、公安調査庁などと日本におる韓国中央情報部員との間に、そういう連絡関係、仕事の上の緊密な関係があると私たちは聞いておりますが、それについてどういうふうにお考えになりますか。
○国務大臣(田中伊三次君) おことばの韓国との関係は、暴力主義的破壊活動をやっておるかどうか、どんなやり方をしておるだろうか、暴力主義的破壊活動の具体的な動きがあるかないかということを調査をする必要があって指定をいたしまして以来、調査団体として調査をしております。先生お示しのとおりでございます。その限度において、若干の資料はございます。ございますが、この資料は表に出せない。ことに国会でこれを申し上げるわけにいかない資料でございます。これは破壊活動防止法の法律の中にもりっぱに明文がございまして、調査にあたり、調査にあたった結果については、調査をされた被調査団体の立場を十分に顧慮して、団体としての人権を尊重するように、人権の侵犯がないように心得よということがくどく――これほどくどく書いてあります法律はないと思うほどくどく法律が命令をしております。そういう趣旨で調査をいたしておりまして、若干の資料はございますが、この資料の中身を申し上げることが残念ながらできない、こういうことでございます。
○星野力君 大臣、私の質問をはぐらかしておられるんでありまして、私は朝鮮総連についての調査内容を知りたいなどと申しておるわけではございません。朝鮮総連に対する調査にあたって、日本の機関、公安調査庁なども含めまして、そういうものが日本におる韓国中央情報部員を利用しておる。韓国中央情報部と日本の公安警察機関の間にはそういう点でも緊密な連絡がある。そのことについていかがお考えになるかということをお聞きしたわけでございます。
○国務大臣(田中伊三次君) とんちんかんなお答えを申し上げまして恐縮をいたします。
 お尋ねのような若干の連絡はあろうかと存じます。ここに責任局長がおりませんが、先ほどから私が申しましたような暴力主義的破壊活動に関する調査を遂行してまいります上から、必要な限度において、いわゆる情報部員と言われる人々、これらの人々とも数多く存じ上げて連絡があることと存じますが、具体的にどういう人がどういう連絡をしておるかということは申し上げかねますけれども、そういう連絡は確かにあろうかと存じます。
○星野力君 私たちの日本共産党も破防法の指定団体にされております。暴力何とかということだそうでございますが、朝鮮総連に対しても同じような指定をしておる。私たち、朝鮮総連が暴力主義の団体などとは今日では決して考えておる者はないと思いますが、そういうところに金を使い、人を使ってむだなことをやっておる、そういう一面が、やっぱり今度のようなことで動きがとれない、そういう結果になっておると思います。私はやっぱり今回の事件に対する日本の警察の動きというものには疑惑を解消し得ないのであります。これはいま御答弁の中にありましたから、一言申し上げておきます。
 国際勝共連合統一教会という反共右翼団体がございます。これはいわば日韓合作の組織であり、日韓両国にわたって活動しておるところの反共右翼団体でございますが、この団体の性格、内容について、もう少し詳しいところをお聞かせ願えないかと思います。この団体には韓国籍を持った人々も多いと思いますが、その中には、韓国中央情報部員あるいはその関係の仕事をしておる人々もおるということを聞いておりますが、いかがでございますか。
○国務大臣(田中伊三次君) 私、残念ですが、ちょっといまお答えを申し上げる材料がございません。
○星野力君 これはあらかじめお断わりしなかった質問でありますけど、警察庁警備局長の山本さんおいでになりますが、勝共連合というのは街頭で実に活発に動いておりますですね。反共宣伝などをやっておりますが、あの団体について御存じないわけはないと思いますが、あなたのほうは管轄違いでございましょうか。お答えできないことはないと思うんですね、警察庁の幹部として。
○政府委員(山本鎮彦君) お答えいたします。
 反共活動をやっているということは承知いたしておりますけれども、それらの全貌についてわれわれは適切に把握をいたしてはおりません。
○星野力君 適切に全貌を把握しておる部署はどこでございましょうか。
○政府委員(山本鎮彦君) 警察としてはございません。
○星野力君 政府としてはどこでございましょうか。
○国務大臣(田中伊三次君) いま仰せになる団体の活動がどういう活動の内容であるかということについては、いま警察は、仰せのように反共活動をやっておるということは承知しておるのでありますが、その内容が暴力主義的破壊活動に関係があるなどというけしからぬ段階になってまいりますと、その所管は法務省の外局であります公安調査庁ということになるわけであります。いまのところは、そういう段階に来ておる団体であるとは承知しておりません。
○星野力君 一般の右翼団体はどこで調査しておられますか。実態を把握しておられますか。
○国務大臣(田中伊三次君) 右翼も、破防法適用、こういう段階に及びますと、先ほど申し上げた私のほうの公安調査庁でございます。
○星野力君 そうすると、右翼団体というのは、あれはなかなか危険なしろものでございますね。最近はことにそうでございます。先般は私のほうの中央幹部会委員長の宮本顕治を刺そうとしたような事件もございますが、こういう右翼団体をどこでも的確に所管としてつかむところがない。何か、相当暴力の正体がはっきりしなければやらぬということでは、まことに奇怪な、危険な結果も予想されることでございますが、そういう御答弁でいいんですか。
 よく、警察や法務省関係の合同においては、右翼の動向を――共産党の動向もやりますが、御報告なさっておりますが、あれはどこで御報告なさるんですか。大臣やられておる――わかりませんか。どこかでつかんでおりましょう。
○国務大臣(田中伊三次君) ちょっと、もう一度言ってください。
○星野力君 検察官の会同とか何か、公安関係の会同なんかで、よく右翼団体の動向というものを説明されております、報告されておりますね。あれは、ふだん調査し、実態を知っておらなければできないわけでしょうが。それはどこでやっておるんですか。
○国務大臣(田中伊三次君) 刑事局長からちょっとお答え申し上げます。
○政府委員(安原美穂君) 検察官の会同におきまして、確かに御指摘のとおり、右翼の動向に注意しろということは申しておりますが、それは、右翼の思想を持っているからということそのことで思想を調査しろということではございませんで、右翼団体の中に往々にして暴力主義的な行動に出る、つまりれっきとした刑法の違反である傷害とか暴行とかいうような犯罪を犯す場合が多いものでありまするから、治安の観点から右翼団体の動向に注意しろということを申しておるのでありますし、公安調査庁が右翼団体をかりに容疑の団体としておるとすれば、それは暴力主義的破壊活動の容疑団体という観点からその動向を調査しているということでございまして、右翼団体であることそのこと自体で調査の対象にしているということは、わが国の治安機関では、ございません。
○星野力君 そうしますと、いま申し上げました国際勝共連合という団体については、どこも調べておられないということになりそうでありますが、これはいろいろ問題のある団体でございますよ。いま私ここで詳しく申し上げる時間はございませんが。しかも、先ほど申しましたように、これは、日韓合作の組織であり、日韓をまたにかけて活動しておる団体でございます。大臣や政府委員の方も、これらの団体の過去のいろんな奇怪な行動についてはお聞き及びになっている部分もあると思いますが、こういうものは、やっぱりしっかり押えて、実態をつかんでもらわなければいけないと思うんです。この問題は、また今後機会があったらやることにいたします。
 先ほど他の委員からも御要求がございましたが、金大中氏にはどうしてもこれは日本に来てもらうべきであります。もともと日本政府がその身体と生命の安全を守る責任を持っておる人物なんです。これを不法に持っていかれてしまって、現に金大中氏は自由を奪われております。生命の危険にさえさらされておる。もし、金大中氏が生命を失うというような最悪の事態になりますと、この事件の真相は永久にこれはわからないまま、日本がむざんに主権を侵害されたなぞの事件が歴史に残るということになるんでありますから、これは、日本国の名誉にかけても、金大中氏は日本に来てもらわなければならぬ。私はそうでなければならぬと思いますが、大臣いかがでございますか。
○国務大臣(田中伊三次君) おことばのように、全力を傾け、ことに最善を尽くして、日本にお帰りを願いたい。しかし、韓国の側では、先ほどから御答弁もありましたように、自国民であるから、自国民は引き渡さないんだと、また、これは政治犯罪であるから、政治犯罪に関係しては引き渡さないんだという、自国民不引き渡し原則、政治犯人不引き渡し原則などという原則があるということをたてにとって韓国がものをおっしゃることは間違っておる。これははっきりしたい。
 どこがはっきりしなければならぬのかというと、それらのお引き渡しを願いたいと言っております人間は、本人の意思で韓国におるんじゃない。冗談じゃありません。先生仰せのように、日本国におる自由意思を持って、日本国政府が特別在留許可を与えて、私が与えて、日本国に十一月二日までは滞在を許しておるものでございます。それを、本人の意思に基づかず誘拐略取したものである、刑法のことばで言えば誘拐略取したものである。そういう、治安の侵犯はもちろんのこと、場合によってはわが日本国の主権それ自体を侵犯しておるとまで言わなければならぬような重大事態があって、そういう事情でからだが韓国に置かれておる。不引き渡しの原則などというものが適用されるべきもんじゃない、冗談じゃない。そういうことを四の五の言わないで、誠意をもってお引き渡しを願いたい。お引き渡しくださるまではわが国は国をあげてお引き渡しがいただけることに最善を尽くす、そういう気持ちでございます。
 こいつがね――こいつと言うとおかしいが、この人が日本へ戻ってこないことには手のつけようがないですよ、これは。先ほどから申しましたとおりです。これと、梁一東さんと、もう一つは、そのそばで別の部屋に押し込められたと言われる金国会議員と、この三君は日本においでを願って、日本の厳正な捜査当局の手でしっかりとひとつ御調査をいただくということでなければ、この問題の真相は明らかにはならない。それをするために御協力を願う義務が韓国にある。ぜひその義務を御履行を願いたい。両国将来のためにぜひこれはひとつ応じていただくことを私は希望する。応じてくださらなければ、応じてくださるまでどこまでもこれは要求をする、お願いをする、こういう態度でございます。
○星野力君 韓国政府というのは反共を国是としたところの政府でございますが、この政府に対して日本政府は一貫して支持、援助の立場をとってきております。先ごろの日米首脳会談でも合意されましたように、日本政府は、アメリカのこれまでの援助を逐次肩がわりしてまで、ますます韓国政府への援助を強める方針を明確にいたしております。
 また、朝鮮民主主義人民共和国との関係などで韓国政府から抗議的な申し入れなどがありますと、そのたびごとに唯々としてこれを受け入れておる。そういうことからして、大体韓国政府は日本政府をなめておるんじゃないかとさえ見られます。こういうことが今度の事件を引き起こした背景にはあると思うんであります。
 今回のような事件を某国が引き起こした、金大中氏の身柄を安全に日本に返すということに応じておらぬ、それだけ取り上げても、実際けしからぬ態度をとっておるんであります。こういう事態のもとにおいて、日韓閣僚会議を中止するなんということは当然でありますし、現に行なってきたところの日本政府からのいろいろな援助もこれは停止すべきであると思うんであります。
 その点についてもう一度国務大臣としての大臣のお考えを聞いて、私、質問を終わります。
○国務大臣(田中伊三次君) 星野先生のおことばよくわかりました。よくわかりましたが、日韓閣僚会議の開催を無期延期をして処置をするということを私がここでお答えを申し上げるわけにまいりませんので、先ほどから白木先生からもお話があり、佐々木先生からも同様のお話がございましたので、三先生の熱心な御発言を明日内閣総理大臣にしかと伝達をいたします。
○委員長(原田立君) 本件に対する質疑は本日はこの程度といたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後一時散会
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