第071回国会 予算委員会 第7号
昭和四十八年三月二十日(火曜日)
   午前十時三分開会
    ―――――――――――――
  委員の異動
 三月二十日
    辞任         補欠選任
     栗林 卓司君     田渕 哲也君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
      委員長       大竹平八郎君
      理 事
                上田  稔君
                佐藤  隆君
                高橋 邦雄君
                西村 尚治君
                米田 正文君
                森中 守義君
                横川 正市君
                鈴木 一弘君
                向井 長年君
      委 員
                小笠 公韶君
                梶木 又三君
                木村 睦男君
                楠  正俊君
                熊谷太三郎君
                小山邦太郎君
                古賀雷四郎君
                塩見 俊二君
                白井  勇君
                竹内 藤男君
                玉置 和郎君
                長屋  茂君
                初村瀧一郎君
                林田悠紀夫君
                細川 護煕君
                山崎 五郎君
                山内 一郎君
                吉武 恵市君
                足鹿  覺君
                上田  哲君
                川村 清一君
                小林  武君
                瀬谷 英行君
                田中寿美子君
                羽生 三七君
                前川  旦君
                安永 英雄君
                塩出 啓典君
                三木 忠雄君
                矢追 秀彦君
                田渕 哲也君
                岩間 正男君
                渡辺  武君
                青島 幸男君
   国務大臣
       内閣総理大臣   田中 角榮君
       国 務 大 臣
       (環境庁長官)  三木 武夫君
       法 務 大 臣  田中伊三次君
       外 務 大 臣  大平 正芳君
       大 蔵 大 臣  愛知 揆一君
       文 部 大 臣  奥野 誠亮君
       厚 生 大 臣  齋藤 邦吉君
       農 林 大 臣  櫻内 義雄君
       通商産業大臣   中曽根康弘君
       運 輸 大 臣  新谷寅三郎君
       郵 政 大 臣  久野 忠治君
       労 働 大 臣  加藤常太郎君
       建 設 大 臣
       国 務 大 臣
       (近畿圏整備長
       官)
       (中部圏開発整
       備長官)
       (首都圏整備委
       員会委員長)   金丸  信君
       自 治 大 臣
       国 務 大 臣
       (国家公安委員
       会委員長)
       (北海道開発庁
       長官)      江崎 真澄君
       国 務 大 臣
       (内閣官房長
       官)       二階堂 進君
       国 務 大 臣
       (総理府総務長
       官)
      (沖繩開発庁長
       官)       坪川 信三君
       国 務 大 臣
       (行政管理庁長
       官)       福田 赳夫君
       国 務 大 臣
       (防衛庁長官)  増原 恵吉君
       国 務 大 臣
       (経済企画庁長
       官)       小坂善太郎君
       国 務 大 臣
       (科学技術庁長
       官)       前田佳都男君
   政府委員
       内閣法制局長官  吉國 一郎君
       内閣法制局第一
       部長       角田礼次郎君
       人事院総裁    佐藤 達夫君
       人事院事務総局
       任用局長     渡辺 哲利君
       人事院事務総局
       給与局長     尾崎 朝夷君
       総理府人事局長  皆川 迪夫君
       警察庁刑事局保
       安部長      斎藤 一郎君
       警察庁警備局長  山本 鎮彦君
       首都圏整備委員
       会事務局長    小林 忠雄君
       防衛庁参事官   大西誠一郎君
       防衛庁長官官房
       長        田代 一正君
       防衛庁防衛局長  久保 卓也君
       防衛庁経理局長  小田村四郎君
       防衛庁装備局長  山口 衛一君
       経済企画庁調整
       局長       新田 庚一君
       経済企画庁国民
       生活局長     小島 英敏君
       経済企画庁総合
       開発局長     下河辺 淳君
       経済企画庁調査
       局長       宮崎  勇君
       科学技術庁長官
       官房長      進   淳君
       環境庁企画調整
       局長       船後 正道君
       環境庁水質保全
       局長       岡安  誠君
       法務省刑事局長  安原 美穂君
       外務省アメリカ
       局長       大河原良雄君
       外務省中近東ア
       フリカ局長    田中 秀穂君
       外務省経済局長  宮崎 弘道君
       外務省条約局長  高島 益郎君
       大蔵大臣官房審
       議官       大倉 眞隆君
       大蔵省主計局長  相澤 英之君
       大蔵省主税局長  高木 文雄君
       大蔵省証券局長  坂野 常和君
       大蔵省銀行局長  吉田太郎一君
       国税庁次長    江口 健司君
       文部省初等中等
       教育局長     岩間英太郎君
       文部省大学学術
       局長       木田  宏君
       文部省管理局長  安嶋  彌君
       厚生省公衆衛生
       局長       加倉井駿一君
       厚生省環境衛生
       局長       浦田 純一君
       厚生省児童家庭
       局長       穴山 徳夫君
       厚生省援護局長  高木  玄君
       農林大臣官房長  三善 信二君
       農林大臣官房予
       算課長      渡邉 文雄君
       農林省農林経済
       局長       内村 良英君
       農林省構造改善
       局長       小沼  勇君
       農林省農蚕園芸
       局長       伊藤 俊三君
       農林省畜産局長 大河原太一郎君
       農林省食品流通
       局長       池田 正範君
       農林水産技術会
       議事務局長    中澤 三郎君
       食糧庁長官    中野 和仁君
       通商産業省通商
       局長       小松勇五郎君
       通商産業省企業
       局長       山下 英明君
       通商産業省公害
       保安局長     青木 慎三君
       通商産業省化学
       工業局長     齋藤 太一君
       通商産業省鉱山
       石炭局長     外山  弘君
       通商産業省公益
       事業局長     井上  保君
       運輸大臣官房審
       議官       原田昇左右君
       運輸省海運局長  佐原  亨君
       運輸省港湾局長  岡部  保君
       運輸省鉄道監督
       局長       秋富 公正君
       海上保安庁長官  野村 一彦君
       労働省労政局長  石黒 拓爾君
       建設大臣官房長  大津留 温君
       建設省計画局長  高橋 弘篤君
       建設省都市局長  吉田 泰夫君
       建設省河川局長  松村 賢吉君
       建設省住宅局長  沢田 光英君
       自治大臣官房審
       議官       山下  稔君
       自治省行政局公
       務員部長     植弘 親民君
       自治省行政局選
       挙部長      山本  悟君
       自治省税務局長 佐々木喜久治君
       消防庁長官    宮澤  弘君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        首藤 俊彦君
   説明員
       日本国有鉄道総
       裁        磯崎  叡君
   参考人
       日本銀行総裁   佐々木 直君
       日本銀行総務部
       長        中川 幸次君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○昭和四十八年度一般会計予算(内閣提出、衆議
 院送付)
○昭和四十八年度特別会計予算(内閣提出、衆議
 院送付)
○昭和四十八年度政府関係機関予算(内閣提
 出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
○委員長(大竹平八郎君) ただいまから予算委員会を開会いたします。
 昭和四十八年度一般会計予算
 昭和四十八年度特別会計予算
 昭和四十八年度政府関係機関予算
 以上三案を一括して議題といたします。
 これより質疑を行ないます。安永英雄君。
○安永英雄君 一昨日、私は……。
○委員長(大竹平八郎君) 御静粛に願います。
○安永英雄君 核兵器と憲法の問題について総理に質問をいたしました。その答弁を聞きましても、私はどうしても理解できない。十三日の衆議院における総理の発言というのを私も調査もし、調べてもみたわけでありますが、これは明らかに核兵器が攻撃的な武器と断定をしていらっしゃいます。その上、憲法に反するということをはっきり明言されておる。いかに戦術的な意味でも核は保有できないという憲法解釈をはっきりお示しになっていることは間違いないわけであります。一昨々日の答弁を聞いておりますというと、憲法と核の関係を主とした質問に答えたのではないというふうに言っておられますけれども、核の問題は平和憲法のこれは中核をなすものであって、極言すれば平和憲法そのものであると言ってもいいのであります。これを総理のようにいろいろ分けて、そうして聞いておる国民はいない。そういう言いのがれは私はだめだと思う。これは納得できない。総理からもう一回その点についての答弁をお願いを申し上げたい。
○国務大臣(田中角榮君) 衆議院の予算委員会では、永末英一委員の質問に対して答えておるわけでございますが、冒頭にも申し上げておりますように、自民党内閣は一貫しておるのでございまして、という前提を置いてお答えをいたしておるわけでございます。でございますから、核はつくらず、持たず、持ち込ませずという点を、過去も現在も将来にもわたってこれを堅持してまいるということを述べたものでございまして、これは明確な答弁であることを御理解いただけると思います。しかも、先日御質問がありましたとおり、この答弁をもって核兵器のすべてが憲法に背反をするので持てないというふうに理解をするということでございますが、これは御承知のとおり、憲法解釈というものは私が個人の発言においてできるものではないわけでございます。憲法の解釈は純法律的に解釈すべきでございます。それは過去岸内閣のときも佐藤内閣のときも、憲法に関する政府の解釈は、両院において明確に述べておるわけでございます。しかし、核兵器に対しては、この憲法の解釈とは別に、つくらず、持たず、持ち込ませずというこの政策的な内閣の決定は、依然としてこれを堅持してまいりますと、こういうことと御理解をいただきたい。
○前川旦君 委員長、関連。
○委員長(大竹平八郎君) はい、どうぞ、前川君。
○前川旦君 総理にお尋ねいたします。
 従来からの憲法の解釈は、国会での総理の答弁等が積み重なって解釈になってきたように思います。そこで私は、憲法といまの核の問題であらためてお尋ねしたいと思いますが、総理が核兵器は攻撃的なものであるとおっしゃった、これはまことに理解できます。われわれも同じ意見です。それでは一体核兵器に攻撃用と防御用との区別をつける意味があるのかどうか、つけられるのかどうか、これがまず疑問だと思うんです。たとえば防御用の例としてよく出されるのは防空用のミサイルでありますが、防空用のミサイルは非常に高い、高度の誘導技術を持っておりますから、この技術はすぐ攻撃用のミサイルに転用できます。それからコンピューターとレーダーのシステムを変えたら、防空用のミサイルといえども、効率は悪くなりますが、対地攻撃も可能であります。そういうことを考えれば、いままでの従来の憲法からいいますと、攻撃的な兵器は持たない、他国に脅威を与えるものは自衛の範囲を越えるという解釈でありました。しかし核兵器であれば、防御用という名前がつこうともたやすく攻撃用に転化されるわけでありますから、どのような理由があっても、核兵器を持つということは、他国に対する脅威を必ずこれは与える、他国を攻撃する能力を持つということであります。したがって、憲法上も核兵器を一切持たないんだというふうに解釈することが憲法理論としても正しいのではないかと私は思います。総理の考えを聞きたいと思います。
○国務大臣(田中角榮君) 憲法上持てるか持てないかという理論になりますと、これは憲法上持てないんだという議論は起こらないというのが従来一貫しての答弁でございます。もちろん攻撃を主とするような攻撃用ミサイルというような核兵器はこれは持てない。大陸間弾道弾とか長距離弾道弾とか、こういうものが憲法でもって禁止をしておる範疇のものであるということはそのとおりでございますが、法律解釈として、憲法解釈として、核兵器と名のつくものは一切持てないんだということにはならないわけでございます。しかし政策的には、つくらず、持たず、持ち込ませずということを、過去も現在も将来も堅持をしてまいりますということを、国会を通じて明確に述べておるわけでございます。
 もう一つは、原子力基本法によりまして、原子力基本法の条文によって、日本が兵器としては核兵器はこれを保有しない、製造もしない、平和利用のみに原子力は使うんだと、こういうことに明定をしておりますし、政府が一貫して述べておりますように、政策的にはこの三つの原則は守ってまいります。これはもう間違いない。つくらない、持たない、持ち込ませない、これはもうそのとおりでございます。ただ憲法解釈上、持てないと憲法解釈すべきであると、こういう考え方には、これは従来一貫して述べておる政府の統一的な見解、これは変わるものではない、これは理解がいただけると思います。法律的には持てないというものではないが、持ちませんということを明確に言っているんです。つくらず、持たず、持ち込ませずと、これはもう非常に明確に述べておるわけでございます。
○前川旦君 もう一つ関連。
 従来そういう見解であったということはわれわれも承知しているわけです。そのことを言っているわけじゃないんです。ですから、従来そういう見解であったけれども、その見解そのものが正しいのかという、あらためて実は総理にお尋ねをしているわけです。その理由として、先ほど私が言いましたのは、純粋な防御用という名称でたとえ持ったとしても、それは他国に攻撃し得る能力を持つことであり、脅威を与えることになるから、憲法からいうとどう考えてもこれは抵触すると考えるのが妥当である。妥当であれば、私は勇気を持ってこの際攻めていただきたいということを申し上げたんでありますから、その点についてのお答えをいただきたいんであります。
○国務大臣(田中角榮君) 憲法解釈は、従来一貫してとっておるとおりでございます。これを、私は私の見解だけで改めるには――改められないと、これはもう事実でございます。これは学校教育法の中で先生がいろんなことを、あらゆるものを勉強するということと同じことでございまして、何々は勉強しては――何でも勉強できるというけれども、これは勉強してはならないというものではありませんから、ただこういうものは勉強しませんということを述べておると同じように、憲法解釈を私に変えよと言っても、これは私が変えられるものではありません。これは政府が一貫してとっておる解釈のとおりだと私は考えておりますが、問題の重点は、つくらず、持たず、保有せず、持ち込ませずという政策は、過去も現在も将来も堅持をしてまいりますと言うんですから、これはひとつ分けて考えていただきたい。
○委員長(大竹平八郎君) いま一問、簡単に願います。――御静粛に。
○前川旦君 私はたいへん残念です。私が質問いたしましたのは、あらためて本質的な問題として、これは政治家としての総理が、従来にこだわらず、正しいと思うものをきめていただきたいという、あなたの衆議院で言われたことを支持しての発言でありますから、その辺を次元の違う問題で答えられたのは残念です。
 もう一問しか許されませんから、それではまず、このつくらず、持たずのつくるですけれども、核をつくるためには不可欠なことは実験ですね、核実験をしなきゃいけない。これは日本はもう部分的核停条約に入っていますから、もしかりにつくるとしても地下核実験しかありませんが、これは日本では不可能です。したがって核をつくるということは憲法でも禁止されておるし、条約上も不可能であります。これが一つあります。それから、いずれ核拡散防止条約の批准をせられるということを伺いました。もしこれを批准するということになれば、持つということも条約上不可能に――さっきはつくる、今度は持つですね、条約上も憲法上も不可能になる。それから昨年の五月、六月、参議院の内閣委員会で、久保卓也防衛局長は、日本が核武装をするということは、どんなもんであれ、軍事科学的に見て、軍事の専門家の立場から見て、安全度と危険度を考えれば危険度がはるかに高い、安全度のほうがずっと低い、したがって、持つことは軍事政策面から見てもマイナスであると、はっきり言っております。これは卓見であると思います。そういうことを考えれば、核兵器はどんなものであろうと、憲法で禁止されていると言ってきびしい歯どめをするということにどれほど国損があり、実損がありますか。何もありません。むしろ憲法では核兵器のすべてを禁止しているのではないのだ、核兵器のあるものは憲法で許されているのだ、このことに固執されることが効果として外国に対して脅威を与える。つまりそのこと自体が私は憲法の精神に反しているというふうに思うんです。私はこれは総理と考えが同じ、同調できると思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(田中角榮君) あなたの御発言の趣旨も、気持ちもよく理解しておるんです。理解をしておりますから、私も申し述べておりますように、世界における唯一の被爆国である日本は、核戦争が起こるというようなことは絶対に避けなければなりません。だから相手が、持っておる国があるんですから、あるんですが、これらの国々も核を持たないようにこれから発言をしていかなければならないと思いますと、軍事的な核が使われるということになれば、どこの国が勝って、どこの国が負けるというようななまやさしいものではなく、地球上における全人類が死滅をするおそれのある、このような核兵器というものを使わない、持たないというように、これから努力をしていかなければならないと思います。唯一の被爆国である日本のこのような発言は相当説得力があると思います。だから、少なくとも日本においては、つくらず、持たず、持ち込ませずと、この原則は十分守ってまいりますと、こう述べておるのでありまして、気持ちはよく理解できます。しかし、あなたも私の気持ちを理解していただきたい。ただ、そこまでは十分理解ができるんでしょうが、憲法解釈というものを、私が、いままでずうっとやってきた憲法解釈というものを、それを私の発言においてそういうふうに断定をしなさいと、こう言っても、これはちょっと無理があるんです。やっぱり理論的な問題でございますから、法律解釈、理論という問題に対しては、これは依然として政府が従来述べておるようなものではございますが、どんなものにしろ、つくらず、持たず、持ち込ませずだと、そこにほんとうに政治的なメリットもあり、国民も理解をし、世界じゅうがこれを理解しておるわけでございますから、その意味ではひとつ御理解を賜わりたい。
○委員長(大竹平八郎君) 安永君。安永君。安永君。
○上田哲君 関連。
○委員長(大竹平八郎君) 上田君、簡単に。
○上田哲君 総理の御答弁は混乱がございます。いま憲法解釈と政策判断と、ということを言われたんでありますけれども、そこが根本的に混乱をいたしております。で、つくらず、持たず、持ち込ませずというのは非核三原則という政策判断、総理はそこを言われているわけです。そこで、安永委員への御答弁の中でも、そのことを繰り返しておられまして、私は法理論として改めたものではないと言うわけです。ところが、その前の総理の御答弁を読んでみますと、「私の考え方は、核というものはこれは攻撃的な兵器でございます。相手が使ってくるからやむを得ず受けるんだからということをいっておる国もございますが、しかし核は、核兵器は攻撃的な兵器であるということが、第一に持たないという憲法に背反をするという、憲法の精神からみても核はつくらず、持ち込まず、持たずが最も正しい姿」云々と、はっきり総理は「憲法の精神からみても」あるいは「憲法に背反をすると」こういうことばをお使いになって御答弁になっておるんでございまして、このことは明らかに非核三原則という政策判断ということではなくて、憲法解釈として明らかに見解を述べられたものだと、これは日本語は、とれ以上解釈のしょうがないのであります。私は、そういう意味では、ベトナム戦争についての見解を求められたその答弁が、いまや力によっては他国を屈服させることはできないという教訓になったんだというような御見解は正しいと思います。これは岸内閣以来の憲法解釈という姿が、現実の問題として、今日、力の政策に対する認識を改めてくるに至ったのであって、そういう立場では憲法解釈としても、これは単に政策判断、非核三原則というところではなくて、憲法解釈としても田中内閣は一歩を進めて、あらゆる核は攻撃的な兵器であり、これを持たないことにするんだという高い判断を示されたものだとわれわれは理解せざるを得ないわけでありまして、このことは、総理の食言だと私は申しているんじゃない、けっこうなことだと支持しておる。このことはたいへん私はけっこうだから、この際、岸内閣以来たいへんあいまいになっておりました見解を、憲法解釈論上も、総理自身がおっしゃるように、これは憲法の精神から見てもそのとおりだと言われておるのでありますから――もっとほかにもあります、同じ答弁の中で……
○委員長(大竹平八郎君) 上田君、なるべく簡潔に願います。
○上田哲君 簡単にやります。
 「私は、そういう意味で核は持たないといったことは、やはり日本としては正しい見解を全人類平和のために述べたんだ。」と、こういうふうに言われております。これは主語は明らかに憲法なんです。こういうふうに見解を出されているのでありますから、この際、ひとつ世界情勢の推移の中から見て、田中内閣としては、従来の自民党の見解、憲法解釈を確定をして、あらゆる核兵器は攻撃兵器として持たないんだという先般の御見解を確定されるのが正しいのじゃないかということを一つ申し上げたい。
 もう一つ、そうではないんだとおっしゃるのであれば、第二点ですが、先般の御答弁にもありましたように、従来の政府の見解だとおっしゃる。従来の政府の見解だということになると、それは一体どの見解をさすのかということをはっきりしていただかなければなりません。たとえば、四十五年十月の国防白書の中に「憲法上の限界」という明記がございます。で、これは先般の臨時国会でも総理が御答弁なさいましたように、このことはすでに廃棄したんだと、なくしたんだということになるので、このことをお認めにならないのかどうか。このときは、B52のような長距離爆撃機、攻撃型航空母艦、ICBM等は保持できない云々となっております。逆解釈も可能だという見解が裏にあるんですが、これは全面的に否定されているわけですから、このことを否定されるということになりますと、四十四年二月四日の政府見解に戻らざるを得ません。簡単に申し上げますと、四十四年の二月四日の政府見解は、非核三原則について、これをつくらず、持たずというのは、憲法上これは認められないのである、持ち込ませずというのは政策判断である、こういうことであります。この線でいいのならば、この線を従来の政府見解としてお認めになるのかどうか。たいへん抽象的に、これまでの政府の見解どおりだと言われるのではよくわからぬのでありまして、もう一ぺん繰り返します。
 これまでの政府見解を全面的に撤回をされて、あらゆる核兵器は攻撃兵器として持たないのだということを、憲法解釈上も確定をされるならば大いにけっこう。そうではなくて、これを訂正されて、従来の政府見解だと言われるのであるならば四十四年二月四日見解に戻られる、というところをしっかりしていただきたい。いまさら岸内閣の解釈をというような話では、これは話にならぬと思うのでありまして、一番直近の線で、明確な政府見解を明らかにしていただきたいと思います。
○国務大臣(田中角榮君) 永末委員の質問に対してお答えしましたが、「自民党内閣は一貫して続いておるわけでございまして、前内閣以来申し述べておりますように、つくらず、持たず、持ちこまず」――これは持ち込ませずの間違いでございますが、「持ち込まずの三原則」の「考え方は、核というものはこれは攻撃的な兵器でございます。相手が使ってくるからやむを得ず受けるんだからということをいっておる国もございますが、しかし核は、核兵器は攻撃的な兵器であるということが、第一に持たないという憲法に背反をするという、」、ここにウエートを置いて発言しておるわけでございますが、これはあくまでも非核三原則というものを述べておるのでございまして、引き続いて、「憲法の精神から見ても核はつくらず、持ち込まず、持たずが最も正しい姿である」と思いますと、こういうことを述べておるわけでございますから、これはずっと、前とうしろと述べておることを見ていただきますと、少なくとも核兵器に対しては三原則を厳守してまいります、それでまた世界に対しても、核兵器というものを持たないように――使用しないことはもちろんでありますが、持たないように、これからも努力をしてまいりますということにウエートを置いて発言をしたものであるということは御理解賜わりたいと思います。
 憲法解釈につきましては、これは法制局長官から述べるほうがいいかもわかりませんが、従来しばしば言明しておるように、わが国には固有の自衛権があり、自衛の目的達成の限度を逸脱しない戦力は、憲法第九条第二項によって禁止されているわけではない。したがって、核兵器であっても、そのような限度にとどまるものであれば、これを保有することは憲法の禁止するところではない。政府が核兵器を保有しないこととしていることのうち、右に述べたような限度にとどまるものについては憲法上の問題はないが、政策上の方針として保有しないという原則を堅持しているわけである。この限度を越えるものについては、政策上の方針というにとどまらず、憲法上の要請であると言わなければならない。核兵器の製造についても全く同様でありますということでございまして、全く防御用のものが憲法で禁止をされておるというふうには憲法を読むべきではないし、それは禁止はされておらない。ということは、しかし、純粋に攻撃的兵器であり、脅威を与えるものというものについては、もちろん憲法上の制約を受けるものであって、憲法で禁止されるものであると、こう政府は明確にしておるわけでございますから、いままで政策的に述べておりますのは、つくらず、持たず、持ち込ませずという、この政策的三原則はあくまでも堅持してまいりますということで御理解をいただきたいと、こう思います。
○安永英雄君 どんなに聞いても、いまの総理の答弁では納得はできかねます。この問題については、憲法の基本に触れる問題でありますから、時間もありませんが、委員長に要請をしておきたいと思いますが、時間がありませんから、こういう重要な問題については、この委員会において特別な時間を設定してもらって、集中的にこの問題が審議できるようにお取り計らいを願いたい。どうですか。
○委員長(大竹平八郎君) お申し出は承りました。いずれ理事会で協議をいたします。
○安永英雄君 それでは、水俣裁判の問題について質問をいたします。
 全世界の注目を浴びたこの水俣裁判は、原告の勝利に終わりました。昭和四十四年六月十四日提訴以来三年と九カ月、昭和三十一年患者発生以来十七年ぶりで、チッソの責任に対して断が下ったわけであります。私は、このことは政府の今日までの公害行政も、ともにさばかれたものという認識に立たなければならないと思うわけです。チッソの責任と、患者が受けた被害の深さ、これははかり知れないものがあると思うのでありますが、こういった結果は、患者の血の叫びが通ったものだと私は思います。したがいまして、この判決を受けて、総理の現在の心境と、政府の見解と、今後の政府のとるべき施策について総理からお伺いをしたい。
 なお、あわせて環境庁長官にも、今日の判決をどのように受けとめて、今後の環境行政をどのように進めていこうとするのか、その決意をお伺いしたい。
○国務大臣(三木武夫君) まだ判決の内容については、詳細私も承知をしていないんです。原告側が勝訴したという簡単な報告だけでございます。ただ、原告側が勝訴したといっても、失われた生命、健康というものはあとに戻ってくるものではない、こういう厳粛な事実の前に、企業の経営者はもちろんのこと、政府自体としても、今後の公害防止、人命の尊重ということに対して、厳粛な反省を加える一つの契機にいたしたいと考えておる次第でございます。
 今後の対策としては、御承知のように幾つものグループに分かれて、患者の方々というものの間に非常に分裂があるわけです。しかし、まあ生命や健康、あとに戻らぬといっても、しかし、せめても損害の一つの賠償に対して、会社側が全患者に対してみずからの提案を行なって、これを契機に、いままでのいろいろあったしこりというものを解消して、この問題が円満に解決されることを私は望んでいる次第であります。
 また、政府としても、今後この患者に対しては、治療の方法というものをこれは開発を促進しなければならぬし、あるいは健康の管理であるとか、こういう患者並びに今後のその人たちの生活、健康の管理に対して、やっぱり十分な注意を払っていく必要がある。また、ヘドロが依然としてまだ堆積されておるわけですから、このヘドロの処理というものも急速にいたさなければならぬ。
 まあ、こういうことで、この判決を契機として、水俣問題に対して政府が一そうこの問題の解決にあたって強力に取り組んでまいりたいと、こう考えておる次第でございます。
○国務大臣(田中角榮君) 四日市判決に続いて水俣判決があったわけでございまして、これを契機に、産業公害はもとよりのこと、各種の公害に対して、より積極的な対策を講ずる契機としなければならないと、こう考えておるわけでございます。その意味で、けさ閣議におきましては、中性洗剤の問題とか、新しい工業原料の問題とか、PCBのごとき問題、それから薬品公害の問題、その他もろもろの公害に対して、政府は抜本的な施策を行なうように努力を誓い合ったわけでございます。
 いま環境庁長官から述べましたとおり、本判決によってすべての問題が解決したわけでありません。患者のこれからの生活の問題もございますし、治療方針の確立もしなければなりません。また、環境汚染の様態の調査も必要でございます。水俣湾そのものの汚染の状況調査も必要でありますし、ヘドロの排除等まだまだ行なわれなければならない各般の問題が残っておるわけでございます。こういう問題に対しても、政府も会社まかせというようなことではなく、地方公共団体とも十分な連絡をとりながら、これらの問題に対しては遺憾のない措置をとるべく努力を続けてまいりたい、こう考えるわけでございます。
○森中守義君 関連。
 先ほど質問の中にもありましたように、補償裁判とはいいながらも、実際は責任を問うていると、こういう意味で、私は在来の政府がとってこられた措置というものは適切であったかどうか、この際、あらためてもう一回政府の責任を私は感じてもらわなきゃいかぬ、こう思うんです。
 そこで、時間がありませんから、一、二、端的にお尋ねいたしますが、今回示された災害者の補償の金額、いわばこれが一つの基準になっていくんじゃないか。そうなれば、訴訟に参加をした原告以外の一任派であるとか、あるいは自主交渉派であるとか、もちろんすでに決着のついたと見られる人たちもおります。こういう人たちには、あらためて今回の裁判所が提示した、判決を出した金額等が、もう一回再審をされる必要があると思うが、これについてはどうお考えでしょうか。
 いま一つは、これからの新認定患者に対しても同様な措置を当然とるべきと思いますが、どうでしょうか。
 それといま一つは、ずっと以前に、私は、明らかに故意である、刑事責任を問うべきである、こういうお尋ねをしたことがあります。もう一回この機会に、故意か過失かという、判決の内容を見なきゃわかりませんけれども、おおむね原告の完全勝訴に終わっている限り、あらためて刑事問題が追求されてもいいのではないか、こう思うのですが、この点はどうでございましょう。
 それと、いまヘドロの問題が出ましたが、全然これに対する対策がとられておりません。熊本県が調査やっているけれども、国は調査に入っていない。こういう意味で、一体具体的にヘドロの除去対策はいつからどういう方法でおやりになるのか。
 以上数点について、総理及び関係の閣僚からお答えを願っておきたいと思います。
○国務大臣(三木武夫君) 最初に申し上げたように、われわれもこの判決を機会に、これを厳粛に受けとめて、今後の公害防止に対してのわれわれの決意を新たにしたいと、最初に、先ほど申し上げたとおりでございます。いま、判決の内容については私は詳細承知しておりませんので、判決に待たなければならぬ点もございますが、一応この判決に示されたのは、損害賠償に対する一つの裁判所側の基準が示されたわけですから、これをもって一つの解決の契機にすることが必要である。そのために、会社側はその基準に従って、全患者に対して会社側の一つの提案を行なうべできある。そしてこの判決が出た機会に、この損害賠償の問題を解決する一つの機会にすることが適当である、そしていま森中委員のお説のように、これはやはり全患者に対してその損害補償というものは適用さるべき性質のものだと考えておる次第でございます。
○国務大臣(田中角榮君) 環境庁長官述べたとおりでございますが、政府の責任、これは産業行政をあずかっておる政府というものは、謙虚にこの実態を認識しなければならないと思うわけでございます。これからに対しましては、環境汚染排除のための施策及び環境保全基準等を厳重にして、かかる問題が起きないように万全の対策をとらなければならないと考えておるわけでございます。
 また、判決外の者、調停をいま要請しておるような者もございますが、これは会社側がすでに判決を待たずして、初級審の判決に服するということを言っておるわけでございますから、いま長官述べたとおり、会社とその他の被害者との間には、これから十分な相談が行なわれるべきであるということは論を待ちません。
 そしてまた、政府にもいま持ち込まれておるものもございますので、政府も、かかる問題に対しては、合理的な解決をはかれるように、側面的な援助をしてまいりたいと、こう考えておるわけであります。
 新認定患者につきましても同断のことが言われるわけでございまして、これから十分調査の上、適切な措置がとられることを望んでおります。
 ヘドロ対策につきましては、運輸省にけさ閣議の席上で指示をしておりましたので、地方自治体とも十分連絡の上、万全な調査を行ない、対策を立ててまいりたいと、こう考えます。
○委員長(大竹平八郎君) 安永君の残余の質疑は後ほど行なうことにいたしたいと存じます。
    ―――――――――――――
○委員長(大竹平八郎君) 塩出啓典君
○塩出啓典君 それでは、まず最初に、私は田中内閣の政治姿勢の問題について一言お聞きしたいと思うのであります。
 御存じのように、昭和四十二年四月、選挙制度審議会が政治資金の規制等の改善に対し当面緊急に措置することを要する事項、それについて答申をしているわけでありますが、あなたが総理になって今日までの態度を見ると、この選挙制度審議会の答申を尊重する気持ちが全く見られない。やはり、これは尊重すべきだと、そう思うんですが、どうでしょうか。
○国務大臣(田中角榮君) 選挙制度審議会の答申は尊重してまいりたい、これは、基本姿勢は変わっておりません。これからも尊重してまいりたいということで、いま具体的な問題に対して検討を進めておるのでございます。
○塩出啓典君 佐藤前総理は、小骨一本抜きません、答申を尊重して改正案を出すと、一応、そういう発言をして、ともかく形だけでもやはり出そうと努力をしたわけでありますが、あなたはそういう努力もしてない。で、佐藤さんの場合は、選挙制度とは別個に、これ、緊急を要する問題だから、それだけやると。あなたは選挙制度と一緒にやるとか、そういうことで、われわれから見るならば、佐藤内閣よりも一歩後退であると、そう思うんですけどね。
○国務大臣(田中角榮君) これは政治資金規正法というものが、政党制度の問題や選挙制度の問題とかかわりなくやられる問題ではありません。私は、そういう基本的な考えを持っております。なぜかというと、これは御承知のメモケースの尤なる問題でございますが、私はこの法律を制定した当時の事情も承知をしておるのであります。ですから、この法律を制定しましたときには、日本にはなかなか合わないというものであっても、これは占領軍のメモケースのものとして相当強く要求があってできた法律でございます。しかも、そのときには政党法が前提にならない。一面においては現憲法を持ちながら、そして政党法が一体つくれるんですかというときには、それは日本自体が判断をすべき問題であると、とにかく政治資金規正法というものは必要であるということで成立をした経緯がございまして、これは全然切り離して、びほう策として出せるものでないということは、これは御理解いただけると思うのであります。私自身が今日まで成案を得ておらないと言うけれども、新聞に散見するように、政府でも、自民党でも、また各党の御意見も聞いていることは事実でございます。それで、三回も出して、これがもう通らなかった。しかも、その間、大骨、小骨まで抜いたと。政府は出すだけ出したのであってというので、通りでもすればまだ少しはメリットもあったでしょうが、あの場合は文句を言われただけで、大骨、小骨を抜いたと言われただけでもって、何もメリットはなかったわけでございます。これは、やはり自民党や政府の問題だけではありません。やはり国会そのものとか、政党全体に対する批判を受けるわけでございますから、出すときにやはりいろいろ根回しもし、いろいろな皆さんの御意見も聞きながら、不退転の決意で提出すべきであるということで、現に衆議院選挙区制も、それから参議院区制も、あわせて政治資金規正法も検討いたしております。検討しております。ただ、これは自民党や政府だけでということではなく、これは皆さんの御意見も拝聴しなければならぬということであって、その後、こんなに勉強しておったのかといわれるくらいに私は勉強しております。現実的に申し上げます。
○塩出啓典君 田中総理はそう言われても、われわれは納得ができないわけであります。ともかく、最近非常に大手商社のそういう買い占めとか投機規制、そういうことのために新しい立法も考えられておるわけでございますが、先日の新聞等を見ますと、そういう大手の企業からかなり政治家が献金を受けている。これはもう一年間に六千八百万とか一億近い金が流れておる。そういうことを見て、やはり国民は、幾らそういう法律をつくっても効果はないのじゃないかと、そういうことを非常に心配をしておるわけであります。私は、あなたが国民の輿望をになって総理になって一番失望したのは、この政治資金の問題に対する態度であります。だから、やはり総理になって初めていままでとは違ったリーダーシップが発揮できるわけですから、今後も真剣に努力をして、ひとつ、選挙制度と一緒ということじゃなしに、それがむずかしければ、第五次選挙制度審議会では政治資金の面だけでも、緊急を要する問題としてこれだけまず先にやれ、そういうことが出されて、すでにもう六年になるわけでありますから、今後ともひとつ総理の真剣な努力を要望しておきます。
○国務大臣(田中角榮君) 私は過去に受けた答申のすべてをいま勉強いたしております。そして一つだけではなく、すべての問題、これがいつでも与野党の対立論争になるようなことではなく、お互いがここで整備をしたら相当期間これを維持していけるというようなものを出すべきであるということで努力を続けておりますし、最善の努力をいたします。明確に申し上げておきます。
 ただ一言付言しておきたいのは、あなたがいま、政治資金がいろいろのところから集められておるとか、掲示をされており、届け出られておると、これはこの法律の制定の当初議論になったことであって、これは公開をされて主権者がこの問題に対して判断をするのであって、あまり多くの制限を行なうということは民主政治の大木にかかわる問題であるから、非常にそれは慎重になさなければならない。これが官僚統制というようなものになっては民主政治そのものが根底からゆらぐのであって、すべては選挙における主権者の判断に待つべきであると、こういうことでございまして、いま公開という問題は、私は公開度という問題に対しては、いろいろな会費とかその他の問題で問題があると思いますが、この法律制定当時の立法の精神に徴して申し上げれば、これは金額の多寡とか、それから拠出者の国民の政治に対する関与の限度を制約すべきということよりも、そのすべては公開された数字によって主権者が投票権を行なうときに判断すべきであるという考えだけは明らかに申し上げておきたい。これは付言して申し上げておきます。
○塩出啓典君 アメリカも一九七一年に選挙法を改正して公開の原則を徹底したと聞いておりますが、ひとつ日本のそういう政治資金規正法も一刻も早く改正をすべきである、このことを意見として述べまして、次に移りたいと思います。
 そこで、税金の問題についてまずお尋ねしたいと思うのでございますが、国税庁は昨年十月、資本金五千万円以上の大企業の脱税の実態を発表しております。大体この概要を簡単に説明してもらいたい。
○政府委員(江口健司君) 昨年の秋に、いわゆる四十六事務年度、これは四十六年の七月から四十七年の六月までの間に処理をした内容を発表したものでございますが、五千万円以上の法人が昨年の七月末現在で一万八千七百三十六法人ございます。これの申告件数が全体で二万一千八百十七件ございます。これは六カ月決算の法人もございますので、法人数よりは、申告件数は事業年度に対応するものでございますので、申告件数としては多くなっておるものでございます。その内容は、申告所得で五兆六百五十七億円でございます。申告税額では一兆五千七百十一億円となっております。これに対しましで処理済みの件数でございますが、二万一千二百七十三件処理いたしてございます。このうち五千百八十一件につきまして実際の調査をいたしました。その調査の結果によりますと、更正決定をしたものが九四・六%の四千九百四件となっております。その結果、いわゆる増差所得として把握されたものが申告以外の分として千百十一億円ございます。そのうち仮装隠蔽等によりますところの不正所得として把握されたものが百四十七億円ございます。先ほど申し上げました増差所得千百十一億円に対応する税額としまして三百八十五億円を追徴したわけでございます。
○塩出啓典君 ただいまの発表によりますと、五千百八十一件の実地調査をした結果、不正計算をやったものが千四百三十八件。これはいま申しませんでしたけれども、二七・二%と。それで、不正申告、所得漏れが百四十七億円、そういうような話で、これは四十二年当時の二倍になっているわけでございますが、この不正計算というのは一体どういう内容のものなのかですね。
○政府委員(江口健司君) 不正の手口はいろいろございますが、大きな内容で分けてみますと、架空の原価あるいは経費を計上する場合、それから逆に売り上げや雑収入を収入除外とするものが大部分でございます。これらの不正の計算によりますところの金額の使途の問題でございますが、簿外の預金、現金になっておるもの、あるいはたなおろし資産の形態をとっておるものというものが大部分でございまして、そのほかにこまかな使途別の形態がいろいろございますが、大部分はいま申し上げたような簿外預金、現金あるいはたなおろしという形になっております。
○塩出啓典君 国税庁は使途不明金が大体三分の一ぐらいあると、そういうことを記者会見で発表して、各紙にそれが載っておるわけでございますが、使途不明金というのは大体どの程度あったんですか。
○政府委員(江口健司君) ただいま使途不明資金三割程度というお話がございましたが、実は発表の当時、記者クラブの皆さんから御質問がございまして、どの程度のものが使途不明になっておるかという質問があったわけでございますが、先ほど申し上げました百四十数億円の不正発見に基づくところの脱漏所得、このうち不正、使途不明資金を全部集計したわけではなくて、そのうちのある部分についてサンプル的に見たところが使途不明というものが約三割程度ありますと、こういう説明をしたわけでございます。したがって、百四十数億円のうちの三割程度が使途不明というわけではございません。ただ、使途不明の中には、役員賞与等として支出されておるもの等も、調査の当時にはわかりませんでしたが、あとでさらに綿密な追及をした結果、役員賞与等で支出されておるというのが認定される場合がございますが、そういうものは、また別個に使途不明資金からはずしまして、役員賞与でございますから、利益処分という形で法人税の課税にもなりますし、また支給を受けた当事者に対しましては所得税の課税を行なうというような補正措置も事後にとっておるわけでございます。
○塩出啓典君 私が申し上げたいのは、やはり使途不明金というものが結局あった場合、これは国税庁としては、そういうときにはどういう処理をするのですか、これは。その法人に、結局、使途不明金の分だけ税金を取ると、それがどこに流れていったか、あるいはいま言ったように、役員のやみ給与に流れているとか、あるいは場合によっては政治献金に流れているかもしれない。そういう行くえというものは、これはわからないのもあるわけですね。そういう場合に、じゃ、やみ給与で個人の人がもしもらったとするならば、やっぱり会社は法人ですから税金をよけいに納めるけれども、個人への追及はなされていないのじゃないか、その点はどうですか。
○政府委員(江口健司君) 会社の調査をいたしますと、しばしば使途不明資金というものが出てまいりますが、われわれとしましては、いま御指摘のとおり、その会社としては支出したであろうと思われるものが個人のほうに行っている場合には、当然個人の所得を形成するものとして追及をするわけでございますが、いろんな事情でもって会社としてはどうしても使途先を明らかにしないということが多いわけでございます。その場合には、法人税法二十二条の三項に基づきまして、会社の損金経理を認めないということでございますので、やむを得ずどうしても内容を明らかにしない場合には、会社の損金経理を否認して法人税を課すると、こういう処理にしておるわけでございます。先ほども触れましたように、その後新たな事情によりまして、一たん使途不明資金として課税処理をされたものの中で、あるいは課税処理をする前役階において、使途不明資金の一部が個人に支出されたものということが説明され、あるいは別途の資料等に基づきましてわれわれが把握いたしました場合には、それに基づきまして、法人税はもちろん訂正いたしますが、個人の課税のほうにつきましても、しっかりした処理をするというような処理をやっておるわけでございます。おおむね使途不明資金の中身は、大まかに分けますと、政治献金と思われるもの、あるいは総会屋等に流れていくもの、あるいは、最近われわれも注意をしておりますが、暴力団等に支出されるもの、あるいはそのほか会社の個別の事情に基づきまして、交際費となっておりますが、使途先については取引の関係上明らかにすることを拒むと、こういったケースのものが非常に多くなっております。
○塩出啓典君 私が申し上げたいのは、国民の目から見れば、われわれ国民は非常に秘話についてもなかなか抜け目がない。にもかかわらず、五千万以上の大法人の場合ですからね、それがそういう使途不明金があるなんていうことは許せない。またそれを公に見ているような国税庁の態度というのは納得いかないわけですよ。
 大体、使途不明金をもしやみ賞与として自分が着服した場合には、これは私法務大臣にお聞きしたいのでございますが、商法の何か特別背任罪か何かになるんじゃないですか。
○国務大臣(田中伊三次君) お説のような場合が特別背任罪になるかどうかという問題でございますが、特別背任罪というものは、明文の規定がございますように、会社に損害をかける意図があって、その結果は会社に損害を与えたと、こういうことが絶対の要件でございます。そういう要件に当てはまる場合は特別背任罪が成立をする。出てはまらない場合もあるのではないかと思うのでございます。
○塩出啓典君 国税庁は、そういう何件かの使途不明金等の中で、これは非常に法律違反であるといって告訴したのがございますか。
○政府委員(江口健司君) 一般の税務調査の場合に、俗に任意調査といわれておりますが、これは各税法に基づきまして、犯罪捜査のために行なうものではないと、税務調査そのものはそういう位置づけを税法上しておるわけでございますが、そのほかに守秘義務がございますので、一々取り上げまして、かりに他の法令等に違反した場合に、これを直ちに告発する、あるいは通報するというやり方はいたしてございません。ただし、強制調査に及ぶ場合には、脱税という形の告発はもちろんいたしますが、そのほかに他法令に違反したような場合には、これについても関係方面と協議をして取り上げるか取り上げないかを決定するという措置をとっておる例はございます。
○塩出啓典君 いま法務大臣の意見では、そういう特別背任罪になる場合もあると、そういうふうに判断しておるわけでございますが、そうすると、大蔵大臣にお伺いいたしますけれども、結局そういう特別背任罪とか、そういうのを犯していることはわかっても、税務署とすれば要は税金をもらえばいいんだと、あと個人へのそういう問題はこれはもう関知しないと、そういう態度でいいわけですか。
○国務大臣(愛知揆一君) ただいま国税庁次長から御説明いたしましたように、国税庁としてのなし得る限りの調査をいたしておるわけでございますが、さらに一そう徹底して、できる限り、なかなか技術的その他でむずかしいところがあると思いますけれども、御指摘のように、使途不明のものがどういうふうな流れ方をしているかというふうなところについては、もっと徹底して調べたいと考えております。そのまま放てきしておくというようなことを、放置するような気持ちはございません。
○塩出啓典君 やはり私は、課税というものは国民平等でなければいけないと思います。そういう点で、国民の感じとしては、税務署は非常に小さいところにはやかましいけれども、そういう大法人なんかに対しては非常に甘いんじゃないかと、やっぱり税金というのはたくさんあるところからよけい取って、ないところから取らないと、そういう原則でなければならないと思うんですね。そういう点で、大蔵省としてもひとつ公平な態度で、そしていま言ったようないわゆる使途不明金等についてはきびしい態度で望んでもらいたい、このことをひとつ要望しておきます。
 それから次に、交際費の問題について。われわれ庶民にとっては非常に納得のいかないのが交際費の問題でございます。昭和四十六年度交際費の支出額は一兆二千五百五十八億円、このような膨大な金額であります。これは年々上昇しておりまして、諸外国に比べれば非常に日本の使い方は激しいと、そのようにいわれておるわけでありますが、大蔵大臣はこういう問題ではどう考えていますか。
○国務大臣(愛知揆一君) 交際費の問題は、御承知のように、税制の上では交際費の支出を抑制したいという政策目標を確立しておるわけでございます。ですから、たとえば、本来事業を行なっていく上に必要なコストであるという考え方、あるいは企業会計の面から見ても、当然損金として扱ってもいい交際費という観念があると思いますけれども、これを一律に否定して、そうして今度は四十八年度の税制改正におきましては、従来七〇%を否認しておりましたのを、七五%に五%引き上げるわけでございますから、交際費というものが、いま申しましたように、本来ならば損金として見ていいという面もあるにかかわらず、これに対して一律に七五%というような、相当高い水準で否認をして、そうして税金を取るわけでございますから、私はかねがね、この問題についても、いろいろの御意見がございますから、相当な率だと思いましたけれども、今回の税制改正にあたっては、さらに否認の限度を五%引き上げた、こういう点に御理解をいただきたいと思います。
○塩出啓典君 わが国のそういう交際費の支出は、これは私の調査では、国民所得の二・一%を占めておる、アメリカは〇・四%で、日本のほうが五倍ぐらいの使い方である。これはやはり交際費についての税制上の違い、そういうものからくるのではないか、そういわれているわけでありますが、そういうアメリカとか、あるいはイギリス、あるいは西ドイツ、そういう先進国と日本の税制を比較した場合どう違うか、大蔵大臣にお聞きしたいと思います。
○国務大臣(愛知揆一君) これは各国によっていろいろ制度も違っておるようでございますけれども、ただいま申しましたように、税制の上では原則的に交際費を否認するという考え方をとって、そうしてこれを現実のやり方としては、いま申しましたように、七割五分まで否認をしておるわけです。否認をしているということは、それを課税の対象にしておるわけです。こういうやり方をやっておりますことは、私としては相当のところまでいっておるつもりでございますけれども、お話もごもっともでございますので、さらに特別措置の役割りとしての補完的な作用を充実をする。また、これはこう申してはいかがかと思いますけれども、結局は企業経営者のモラルの面においても協力をしてもらわなければならないことである、かように考えておる次第でございます。
○塩出啓典君 アメリカやイギリスの場合は、たとえば営業上どうしても必要という合理的な理由がなければいけない。あるいは、イギリス等では、国内取り引きでは、交際費はコストに認めない。海外のお客さんを接待した場合だけ合理的な範囲においてコストに認めるとか、あるいは、西ドイツなどは特にきびしく、会社の本社及びそれに準ずる支店の所在地以外の地域では一切の交際費を認めない。これは私行って調べてきたわけではございませんけれども、そういうように日本と非常に違いがあるわけですね。日本は、大蔵大臣は七五%否認すると言う、これはしかし、四百万円プラス資本金の千分の二・五をこえた部分についてであって、この元の部分にしても非常に問題があると思うわけですね。そういう点で、ひとつこれは総理に要望しておきたいのでございますが、ある学者はこう言っておるんです。交際費を制限したならば、労働力の不足対策になる。先般も参議院の本会議で、看護婦が非常に不足をしておるのに、全国で三十数万の看護婦が不足しておるのに、一方ではホステスも非常に多いと、そういうようなことを言っておる。それから第二に、経営者のモラルの向上になる。それから過密対策になる。あるいは物価対策にもなる。あるいはどらむすこ対策にもなる、結局親子の対話の時間がない。そういうようなことを言っておるわけでありまして、まあ私は、これは全部が全部賛成はできませんけれども、やはり考えていかなければならない問題じゃないかと思うのです。もちろん商習慣の違いというものはいろいろあると思うのでありますけれども、しかし、やはりアメリカや、それから西ドイツやイギリスのいいところは守っていかなければいけないと思うのですね。そういう点で、やはりそういう諸外国の制度の方向に、私は前進をしていくべきだと、絶対そうすべきだと。そうして庶母の感覚から見れば、あまりにもそういう税の不公平というものは非常に大きいと思うのですね。そういう点で、ひとつ総理の決意を、今後の考えを聞いておきたいと思うのです。
○国務大臣(田中角榮君) いまあなたも述べられたとおり、商習慣の相違ということもあるということでございますが、確かにそういうことはあるわけですが、どうも乱に乱れておるというような面があります。ありますので、いまの状態では、やはり損金算入額をだんだん小さくしていくということで七〇%から七五%にだんだん引き上げていったわけであります。これはまあ一〇〇%になれば――一〇〇%まで課税対象とすべきだという議論もありますが、やっぱりそうであってもまだ問題があると思います。ですから、やっぱり、いまも大蔵大臣述べたように、モラルの問題でもあるし、やっぱり会社の中においても、この社費を使える人と使えない人との間のトラブル等いろいろありますから、やはり合理的なものにだんだんと進めていく、そしてそういう余裕があったら、給与やいろいろ社内施設や社内全体が利用し、そしてやっぱり生産力向上というものに寄与できるようにすべきだと思うのです。これはこの間も衆議院でも、税制改正でもって、民社党の方々からでございましたか、指摘がございましたが、広告税の問題が出ておりました。これは、税金を納めるならば、全部広告にしておけば無形の資産になるというような考え方で、すべてを広告として使うという、そういう考え方も一部に存在することもこれは事実であります。ですから、広告の問題、いまの社費を使っての交際費、こういう問題というものはやっぱり合理的な、先進工業国にも例があるわけでありますから、これは全然社会主義国のようにして一つを窓口にしてやっているわけじゃありませんから、全然認めないというわけにはいかないと思うのです。しかし、こういう問題は、合理化のために、政府だけではなく、やっぱり企業モラルの問題もありますが政府が指導していく、そしてまた、制度上是正できるものは是正するということに努力を続けていくべきだと思います。
○塩出啓典君 来年度の税改正においても強化の方向にいくと、そう考えてよろしいですか。
○国務大臣(愛知揆一君) そのとおりでございまして、先ほど申しましたように、言われている御趣旨は私どももよく理解できますので、なお今後ともいろいろ検討をいたし、直すべきところがあったらば直すようにいたしたいと思います。
○塩出啓典君 それで、日本生産性本部の調査結果を私新聞で拝見したのでございますが、それによりますと、だんだんお金のある人とない人の差というものが非常に激しくなってきておる。これは最高所得者上位四十人の平均所得と平均勤労者賃金の差が、昭和四十二年には百九倍、それが四十六年には三百八十九倍と、こういうように上と下の差が非常に大きくなってきておるわけですね。ある者はどんどんあるけれども、ない者はない、こういうやはり状態は非常によろしくない、私はそう思うんですけれども、大蔵大臣どう思いますか。この原因は、なぜこうなると思いますか。
○国務大臣(愛知揆一君) これもまたごもっともな御説でございますから、たとえば、今回の減税案等につきましても、そういうところを十分考慮に入れておるつもりでございます。
 それから、なぜこう格差といいますか、これが広がるかということにはいろいろな原因があると思います。一般的に経済の繁栄の度合いが非常に急速であるということが一番基本であろうと思いますから、それを税制その他の上に生かしていって、これを有効な方面に、国家的に効果を発生できるようにするということが適当な考え方ではないかと思います。
 また、当今の問題といたしましては、まことに困ったことと私どもも思いますけれども、いわば、一口に言って換物的な傾向が起こっていると、あるいは土地とか株とかいうようなところから非常な収益といいますか、これが生まれてくるようであっては困るわけでございますから、これらに対しても、総合的な各般の措置を次々と手を打っておりますことも御承知のとおりと思います。
○塩出啓典君 まあ生産性本部は、やはりこれを、格差の最大の原因は地価、株価の異常な値上がりによるキャピタルゲインにあると、そのように述べているわけでございますが、やはり現在の税制においては資産所得というものが非常に優遇されておるわけであります。そういう点を、ひとつ政府としても、公平の原則から国民の人たちに納得のいくような税制に今後とも改めていってもらいたい、このことをひとつ要望いたしまして次へ進みたいと思います。
 それで、四十八年度は、税の自然増収は二兆五千六百五十六億もありながら、所得税減税は三千百九十一億、これは非常に少ない。三十二年、池田蔵相のときは、一般会計の規模が約一兆円のときに一千億の減税をやっておるわけでありますが、そういう点を考えると、非常に取り過ぎのわりにはやはり減税が少ない、そう思うわけですが、その考えはどうですか。
○国務大臣(愛知揆一君) 自然増収と減税の関係でございますけれども、今回の税制の改正においては、自然増収に対する減税の比率というのが、所得税におきましても、また全体から申しましても二七%というような程度にいっておりまして、これは従来の減税と自然増収の関係の比率からいって決して劣るものではございません。それから特に所得税等につきましては、課税最低限度を引き上げるというところに重点を置きまして、御案内のように標準家計最低の課税限度が百十三万から十四万、これは現在までは百三万でございますから、その最低限度の引き上げ率が八%以上になっている。これは消費者物価の上がり方よりも比率が相当大きいわけでございまして、まあそういう点に特にくふうをこらしたつもりでございます。この課税の最低限度から申しますと、もう欧米に肩を並べ、あるいは主要国の中からは、むしろ日本のほうが最低限度が高くなったというような状況でございますが、しかし将来においては、ますますこういう点を重視して、まあたとえば、四十九年度以降等になりましたら、またさらにこういう考え方を一段とふやしてまいりたい。つまり、先ほども御指摘がありましたが、所得の少ない、比較的に少ない勤労大衆の税負担をできるだけ軽減していくと、これに中心の考え方を置いてまいりたい。そして一面において、法人に対する税制というものは担当積極的に考えていかなければならない。ただ、これらについては相当の時日をもって真剣に考えていかなければなりませんので、多少の時日の余裕を置いていただいて、まあ四十九年度には、何とかひとつもっと建設的な考え方が打ち出されるようにと、こういうふうに考えておる次第でございます。
○塩出啓典君 先般の参議院の本会議におきまして、総理府の家計調査では、四人家族で昭和四十六年度に百二十六万であると、そういう点から計算すれば、四十八年はやっぱり百五十万には匹敵すると、そういう点で課税最低限を百五十万まで上げろという、そういうわが党の質問に対しまして、愛知大蔵大臣は、この家計調査の中の消費支出の中には、レジャーに向けられる支出とか、カラーテレビの購入費というものがあるわけで、これは非常に問題だと、そういうような発言をしておるわけですけれども、大蔵大臣の意図はどういう意味なんですか、それは。
○国務大臣(愛知揆一君) 総理府の家計の調査についての御質問がありましたときに、その百五十万という数字等については、これと、課税の対象にする度合いと申しますか、考え方については、家計費の調査というものの中のいわば中心となる生活費と申しましょうか、それの計算というものももっと的確に掘り下げていかなければならない、税制との関係から見ましてです。それから同時に、そうして生計費というものが出ました場合に、その中に全然課税というものの要素が考えられない、考えてはならぬものであるという考え方も、税の面からいえば少し行き過ぎではないだろうか、こういうふうな考え方。たとえばかりに最低限百十余万の家計でも、百万円、最低の生活費、純粋の生活費にかかった場合には、その家庭が消費者物価が五・五%上がればどういうことになるかと。最低限百十余万の家計ではたいへんなことになるのではないかという御質疑も実は他の委員会でも受けたわけでございますが、それもなるほど一つのお考えではございましょうけれども、そうすると所得税という点を考えてみ、あるいは最低というものの規模、構成というものから考えて、直ちにこれを結びつけて、税制をその角度からすみやかに改正をすべきであると言われましても、そこのところはなかなか割り切れないところがあるということを率直に申し上げたような次第でございまして、言われんとするところの御趣旨は私もよくわかりますし、そういう方向へ順を追うて、かつなるべくすみやかに最低限の引き上げということは今後とも考えていかなければならない。そういった考え方については、先ほど来申しておりますように、基本的なお考えの線については私もごもっともだと、同感の意を表しているわけでございます。
○塩出啓典君 ひとつ大蔵大臣、もういまカラーテレビは全国の世帯の三分の二はカラーテレビを持っている時代ですから、それでいまはレジャーなんというのはあたりまえ、国民としての権利だと思うのですね。大蔵省の課税最低限の生活というのは一体どういう線を考えに入れているわけなんですか、これは。
○国務大臣(愛知揆一君) 税のほうから見ますと、先ほど申しましたように、今回の場合で申しますと、たとえば消費者物価の値上がりの経済見通し、これを一つの基準にいたしまして、それよりは相当オーバーするところに最低限度の引き上げを持っていきたいということでこの改正案をつくったわけでございます。
○塩出啓典君 これは四十七年の家計調査でございますが、これは全国平均が大体一カ月十一万一千二百二十九円、一年に直すと大体百三十三万五千円であります。これは総理もよく聞いておいてもらいたいと思うのですけれども、食費は、まあ副食も全部入れて一カ月三万七百七十九円ですからね。大体一日一千円ですよ、これは国民的な平均のあれがですね。一日千円、これは三・八六人、四人家族で一日千円。こういえば決してぜいたくではない。これが国民の生活なんですね。これは上野動物園の動物なんか、一番安いチンパンジーでも一日五百円ですからね。ところがこちらのほうは四人家族で一日千円。一番高いのはパンダが一日三千五百円。そういうわけで、住居費は一カ月一万一千二百二十円なんです。これはおそらく全国平均ならこうなるわけですね。けれどもいまどんないなかのほうにいっても、一方一千二百二十円で貸してくれるところはないわけですね。これは平均であって、そこにはやっぱりある程度のばらつきがあるわけですから、やはり税というものはそういうばらつきの中で一番やはり生活のよけい要っている人に合わしていかなければいけないと思うのですね。そういう点から考えるならば、やはり現在百十三万、十二万一千二百六十円、これが非常に外国から比べて高いといって、私はいばれたものではないと思うのですね。これは単なる金額の比較だけではいけない、物価の問題もあるし、社会保障のやはり程度の違いもあると思うのですね、日本は非常に力も高いわけですから。そういう点で、ひとつ政府はそういう課税最低限を上げる点についても、外国に比較をして高いなんというのじゃなしに、もっとやはり国民の生活に合わして、百五十万実現を目ざしてひとつがんばってもらいたい。これはひとつ総理に……。
○国務大臣(田中角榮君) 御発言の趣旨はよく理解できます。ただ、百五十万に来年度できるかどうか、これはもうそんなに一ぺんにできないかもしれませんが、これは課税最低限を引き上げていくということに対しては、私も熱意を持って考えてまいりたいと、こう考えます。
○塩出啓典君 それでは、次に農業問題に移りたいと思いますが、最初に、世界の食糧需給の点について、農林省としてどういう考えを持っているのか。昨年は、御存じのように、非常にソ連とか中国が不作で、たくさんの小麦を買い入れておるとか、そういうことで、小麦の国際価格が高騰、あるいは飼料も値段が上がっておる。あるいは昨年末から今年にかけては大豆が非常に上がるということが日本でも社会問題になったわけでありますが、そういう世界的な食糧需給というものが一時的なものか、農林省としての見通しを聞きたいと思います。
○国務大臣(櫻内義雄君) 昨年後半と申しましょうか、年末迫るにつれまして、国際需給が非常に逼迫いたしまして、小麦、大豆その他価格上昇が見られたわけでございまするが、ことしになってからの各方面の情報を総合してみまするに、ソ連がたいへん積雪量が少ないために、雪がないということが凍霜害を――凍害ですね、凍寒害と申しますか、凍寒害を起こしておると、こういうようにいわれております。それから飼料について、非常に私どもの関心を持っております魚かすの関係では、ペルーの魚かすの原料のカタクチイワシ、これの漁があまりかんばしくないと、こういうことでございまするので、したがって、ソ連の昨年の大量買いつけのような事態、あるいは日本自身の飼料原料の不足というようなことが予想されます。しかし、また一面アメリカにおきましては、本年の作付面積を非常にふやすようでございまして、三月十五日の発表でございまするが、昨年の九千万ヘクタールの作付に対しまして八%ふやす。七百万ヘクタールを新規に作付をしようと、こういうことで、その七百万ヘクタールの中で小麦が百三十万ヘクタール、飼料穀物が二百六十五万ヘクタール、大豆が二百八十万ヘクタールと、こういうことになっております。いろいろと情報が入っておりまするが、昨年のようなソ連、東南アジアの諸国の異常気象による影響というような大きな影響はことしはないんではないか。そしてFAOの長期見通しなどを検討いたしますると、まあ昨年のような異常気象というものはまずないようにいわれておるので、われわれとしても、このような情報を頭に置いてこれからの輸入農産物に対処してまいりたいと、こう思っております。
○塩出啓典君 まあ非常に私らの感じでは、ちょっと農林省の考えは少し楽観過ぎるんではないかと思います。まあ気象学者等は、地球をおおう異常気象は一時的なものではなくて、全体的にやはり気温が下がってきているんではないか、そういうことを心配している。またFAOも、やはり人口の伸びのほうが食糧生産の伸びよりも高くなるために、一九八〇年では世界全体を見ても不足するんではないか。現在でもすでにもう部分的には余っているところもあれば、足りないところもある。そういう状態でありますが、世界全体を見ても、そういう食糧不定ということは非常に警告をされておるわけですね。そういう点で、これは総理にお伺いしたいんでございますが、まあわが国の、いわゆる今後の食糧政策において自給を高めていけという意見、あるいはまた一方では国際分業の立場から、生産性の悪い日本の農業等はその必要ないと、そういう意見、財界等からそういう意見もあるわけでございますが、日本農業の食糧の確保という食糧政策、これはやはり国の一番根本でございますが、総理の見解をあらためて聞いておきたいと思います。
○国務大臣(田中角榮君) 短期的に見ますと、非常に食糧が不足をしておる、また飼料も不足をしておるということは事実でございます。これは天候の問題その他もございますが、たいへん不足をしておって、ことしは飼料の確保に対してもたいへんな努力を必要とするというような状態であることは事実でございます。
 それから、中期的に見るとどうかというと、これは御承知のとおり南北問題で、一次産品国と主要工業国との間には、国際分業して、なるべく一次産品に対しては開発途上国にその責任を持たすべきだと、こういうことを言っております。言っておりますが、そんなこと言っているうちに、南方でもって食糧が不足であって、南方の稲を北方でもって栽培をしておる日本から逆に米の援助が必要であるというような状態になっておることは事実でございまして、これはなかなか中期的に見てもさだかに――いま食糧を外国に求めるということが可能であるかどうかという問題もございます。長期的に見れば、もう問題なく、今世紀末における人口から逆算してみると、主食と水が不足である、こうもう指摘をされておるわけでありますから、これはやはりそういう面から見て、食糧の自給度を上げなきゃいかぬということは、もうほんとうにそうだと思います。
 それから、まあ飼料などに対しても、国際価格との間に非常に大きな差があるのでということでございましたが、今日のような国際変動に対処できないような状態を考えてみると、やはり自給度を上げなきゃいかぬということだけは事実でございまして、いま農林省でも自給度を上げるべく勉強しておりますから、これから主食に類するものは八〇%以上というような目標を立ててやっておりますので、自給度をできるだけ高めていくために諸般の政策を進めてまいりたい、こう考えます。
○塩出啓典君 ただいま総理は、将来の方向としては自給度を高めていく方向であると、そういう答弁でございます。それで、昨年の十月に「農産物需給の展望と生産目標の試案」、これを農林省は出したわけでありますが、これは農林大臣にお聞きしたいんでありますが、どういう意図でこれを出したのか。そうしてこれは試案となっているわけですけれども、単なる試みの案というのはどういう意味なのか。やはりこの内容については農林省としてその方向に、また政府として推進していくのに責任を持つものなのかどうなのか、その点どうですか。
○国務大臣(櫻内義雄君) この「農産物需給の展望と生産目標の試案」は、相当権威ある皆さん方の御協力を得てこの試案というものが作成されておる、この点は御承知であろうと思うのであります。
 この試案の主たる内容は、ただいま総理が御指摘になりましたように、米とか野菜とか、果樹とか畜産とかあるいは牛乳とか乳製品等の自給率を一〇〇%ないし八〇%のところへ上げていこうというような、そういう大きな目標を持っております。したがって農林省といたしましては、これからの農政をやる上におきまして重要なる参考になる試案であると、こういうことで対処をしておるわけでございます。
 ただ、私が就任後にこの試案を見て考えましたことは、昨年の十月の試案と、こういうことになりますると、先ほど御質問があったように、昨年の国際の食糧需給の関係というようなもの、あるいはいろいろと今後の展望についての不安も持っておられる、あるいはまあそうでない材料もございますが、そういうようなものは織り込んでおらない。さらには、本年になりましてからの通貨調整などのこともございます。そういうことは一応別として、純粋の当時の専門家の見識としての試案でございますから、その点はやはり念頭に置きながら、これをわれわれとしては施策の重要なる指針として使っておると、かように申し上げてよいと思います。
○塩出啓典君 そうすると、これはまあ私は、総理、やはりこういう一つの試案という将来の目標ですね、これをただ設定しただけでは意味がないわけでありまして、農業というのはやはりそういう数多くの農民の皆さんがいろいろ判断をして将来きめていくわけでありますが、やはり政府がそれを話し合い、よく指導してその方向に持っていかなければ、この試案の意味はないと思うのですね。そういう点で、これはあれでございますか、政府としてこの試案をやはりその方向に推進していくと、そういう責任を持ってやっていくんですか。
○国務大臣(田中角榮君) いま農林大臣が述べたとおり、一つの目標として農林省だけできめたものでございます。きめたものでございますが、政府としてもそういうものはやっぱりつくらなきゃならぬと思うんです。これはこれから新全総を二カ年かかってどうするかという問題もございますし、今度経済社会基本計画ができましたから、地域的に、それから年次別に、一次産業をどうする、二次産業をどうする、三次産業をどうするかという一つの目標というものが出てくるわけでございます。社会保障の問題に対しても年次計画をつくれと、つくらなきゃなりませんと、こう言っているのでございますから、その一次産業の中で主要農産物をどうするかというような問題、いままではやっぱり各省とではなく、その分野、その分野で専門的に組み立てられたというので、いろんな波動があったわけでございますが、今度は全国的に土地利用計画も定めると、こう言っているわけでございますから、そういう問題の中でできるだけ早い機会に農産物、一次産品というものに対する年次計画、いわゆる一つの目標と年次計画というものを明らかにして、農民が不安を抱かないような状態ということを考えなきゃならぬと思うのです。
 もう一つは、安いものは国際的に買えばいいじゃないかという考え方に、やっぱりどの程度備蓄があるのだ、持たなきゃいかぬのか、国際波動に対応するためにはどのようにしなければならないんだと。ソ連自体が、二年間に対して約三千万トンの小麦を必要として、アメリカから買いつけておるという事実があります。こういう問題を考えれば、私はやはりそのために、さあ必要であるといってアメリカ市場へ全部行くときには、みんな困っておるというような状態でありますから、そういう意味で、長期的なものと年次計画をつくりながら、相当期間安心して農民が働けるようにしたいと、こう思います。
○塩出啓典君 ただいま総理から、これは農林省の計画であって、政府としては別につくると、そういうお考えのようですね。そう判断していいわけですね。
○国務大臣(田中角榮君) これは政府が責任を持ってやるのかということでございますから、農林大臣いま答えましたように、農林省も一つの指針として勉強してまいりますし、実行してまいりたいと思います。農林省は政府の一員でございますし、政府は連帯して責任を負わなければならぬわけですから、農林大臣が述べたことはそのまま是認をいたします。しかし、そういうものだけではなく、より合理的なものの追求に努力をしていかなきゃならない、こういうことを述べているわけです。
○塩出啓典君 これは農業基本法にも、ちゃんと第八条第一項に、農産物の需要と生産の長期見通し、これはやはり政府が公表しなければならないようになっておるわけですね。昭和三十七年に長期見通しを公表し、その後四十三年にこの十カ年の公表はできているわけなんです。これは総理、ちゃんと四十三年のときに閣議決定でしているわけなんですよ。ところがそのあと、四十五年に農業生産の地域指標の試案ができて、しかも今度はこの四十七年の試案。結局こういう閣議決定したものがありながら、あと次々と試案を発表している。そうして、内容というものはこれとはだいぶ変わってきているわけですね。そういう点で、これは当然――これがもし政府を代表するものであるならば、やはり四十三年と同じように閣議で決定し、しかもこの農業基本法にはちゃんと農政審議会の意見も聞かなきゃいかぬと、そうなっているけれども、それも聞いてない。そういういいかげんな、まあ結局いうなれば試案ですから、当たらなければあと責任持たない。そういうのがれ道をつくったと言えないことはないわけです。そういう姿勢、私は農業に対する国の姿勢というものを改めていかなければならないと思うんですね。だから、これはもう当然閣議決定して、内閣、責任を持つと、そのように判断していいわけですか。
○国務大臣(田中角榮君) いま御指摘のものを、すぐ内閣の決定にするということは考えておりません。しかし、先ほどから述べましたように、閣議決定でもってつくらなければならないような、合理的なものをつくらなければならない責任は十分感じております。それはこの一、二年――一、二年というよりも、この一年間でもって全く国際情勢はまた変わっておるわけであります。実際いまアメリカへ行っても、今年の端境期まで待たなければ、今度は増反しますから何とかいたしますが、雑穀に対してはいまはだめです、こう言って困っているんです、実際。ですから、米を放出しなければならないというような、飼料に米を放出しようと、こういう状態でございますから、だから、やっぱりそういう国際的な状態も考えながら、純農政の面だけではなく、政治的にも加味しなければならぬと思うのです。私は審議会から出てきたものをそのまま、私たちも検討もしないで政府決定をするということになると、やっぱりそういうものが出てくると思うんです。やっぱりそれは政治的な判断をしなければならぬと思うのです。これは経済的に見たら、安いものを安く買いなさい、こういうのがいままでだったんですから、食管の赤字というのを減らすためには、食管を目のかたきにしたときもあったんですが、しかし、このごろは全くがらっと変わって、米というものに対しては少なくとももっと備蓄をしなければならぬじゃないかと、それだけではなく、近隣諸国に対して米を提供しなきゃならないという議論もあるわけでありますから、政治的にやはり判断をしなければならない面があると思うんです。私たちはそういう意味で、政府全体として朝令暮改にならないようにですな、これは年度、年度に対してはどの作物にウェートを置くとかという問題はあると思いますが、長期的に農民に安定感を持たせ、しかも政府が責任を負って、農政に対しては責任を負えるということに対しては、これはもう勉強も続けますし、国会に対して責任を負えるようなものをつくって、そうして閣議決定に持ち込むということで、いま御指摘になったのを直ちに閣議決定しろと、こう言っても、この間も申し述べましたが、もう少し慎重を要する、こういうことであります。
○国務大臣(櫻内義雄君) ちょっと補足を。
 ただいま御指摘になりました四十三年の農産物の需要と生産の長期見通し、これは五十二年までの見通しで、これは基本法八条によって立てた閣議決定のものでございます。したがって、その五十二年までで――これは生きている、死んでいるという表現はおかしいですが、これはまあ生きておるわけでございます。そこへ、最近におけるいろいるな諸情勢が変わってきておることから、主として政策的な意味における昨年の十月の試案ということになっております。ですから、先ほど私御説明申し上げたように、そりせっかくできたものでも、またいろいろな要素も変わっておるし、またこれは非常に見識のある方々によるものである、だから、重要な参考の指標として扱っておる、しかし、その基本法八条の見地からいくと、現に五十二年のまでが生きておると、こういうことで、この試案の扱い、私どもたいへんむずかしいなと思っております。しかし、先ほどから御指摘のように、これはもう場合によりましては、近く農政審議会のほうへこれを御審議願うというようなことも、これは当然考えていいように私は思います。
○塩出啓典君 私は農業の問題は、農林省だけの問題ではなくて、やっぱり内閣の問題であります。そういう点で、田中内閣としても結局はその農業に対する基本方針が四十三年以後全然できていない、そういう怠慢は私は責められるべきだと思うのですね。そういう点でひとつ早急につくってもらいたいと思うのです。
 いま農林大臣言われましたけれども、四十三年にたとえばできた計画では、昭和五十二年を目標にして、その当時、たとえば五十二年の耕地面積は五百七十五万ヘクタールを目標にしておったわけなんです、これは。ところが、もう御存じのように、農地がどんどん減ってきたために、五十二年度五百七十五万ヘクタールを目標にしておったのが、もう四十六年で五百七十四万ヘクタールいっちゃったもんですから、それで今度はこの四十五年のこれでは、この五十二年の目標を変えているわけなんですよ。政令で、閣議できまったのを、この農林省の試案はかってに目標を変更しておるわけであります。これが五十二年度は五百五十八万ヘクタールになっておる。その計算でいきますと、年々四十六年から二万七千ヘクタールずつ減っていってちょうどこの目標に達するわけでありますが、ところが、御存じのように、現在は土地の買い占め、農地の転用が激しくて、四十六年度においてはもう五万五千ヘクタール、これは農林統計で減少しているわけですね。そのように農地というものがどんどん急速に荒廃化していっている。そうして農林省の計画はそれをあとから追っていくだけであって、全くこの農林省の試案というものは意味をなしていないわけなんですね。そういう点、農林大臣、その農地の確保という問題からですね、自給率を高めていく上において、農地の確保ははたしてできるのかどうか。どういう対策を講じていくのかどうかですね。そうしてもう一点は、四十二年の閣議決定の目標というものを、その一省の試案においてかってに変更してきている。そういうことがはたして許されるかどうかですね。その二点について御回答いただきたい。
○国務大臣(櫻内義雄君) 先に申し上げますのは、かってに目標を変えたという御批判でございますが、大体試案のほうから見ますると、この基本法八条できめられた長期見通しが、五十二年がちょうど中間になるわけです。そこで、先ほど申したように、いろいろな情勢が変わってきておってこの試案というものができておる。そして、この試案とこの長期見通しとを照らし合わしてまいりますると、確かに幾つかの点で狂いがきております。しかし、これは何といってもこういう変動の多いときの十年の長期見通しでございまするから、その他の長期見通しでもときおり変更を余儀なくすることもあるのでございまするから、責められることは責められるといたしましても、しかし、そういうこともあるからまた試案の必要もあったと、こういうふうに御理解をちょうだいをいたしたいんであります。それで、この中間の要素としては、大部分はここへ資料として差し上げてよろしいと思うんでありますが、大体狂っておるものは三つ、四つと、こういうことでございます。
 そこで、後段のお尋ねの農地の確保のほうの問題でございます。今回の試案からいいますと、田畑が五百二十万ヘクタール、草地で六十万ヘクタール、――五百八十万ヘクタールという見通しに立っておるのでございまして、これが先ほど申し上げた米、野菜、果実等々の完全自給ないし八割自給に対しての見合いになる田畑、草地ということになるわけでございまするが、しかし、現在農地が相当壊廃しておる、こういうような現状からまいりまするときに、私どもとしては、農業振興地域の整備に関する法律による農用地区域の設定とか、農地法に基づく転用の規制の適正な運用とか、あるいは所要の農用地の造成事業とか、そういうことにつとめまするとともに、農地の生産性を高めるための基盤整備事業もしていく。だから、優良農地であり、また効率高い農地でいこうと、こういうことで、御指摘のような心配の点もございまするが、いま申し上げたような見地にのっとりまして目標を間違いなく遂行してまいりたいと、こう思う次第でございます。
○塩出啓典君 ひとつ、農林省としてもはっきりとした農民の指針をつくってもらいたい、そのことを政府に要望しておきます。
 それでは、三木環境庁長官が帰ってこられましたので、水俣裁判の件についてお聞きしたいと思うんでありますが、この裁判は原告の勝訴に終わったようでありますが、先ほども話がありましたように、裁判に勝っても死んだ人は帰らない。また生きている人の悲惨さが直るわけではありません。そういう点で、ほんとうに三年九カ月の裁判、そういう長い裁判をやらなければ原告が勝てない、そういうようなことに対して、私はほんとうに憤りを感ずるわけであります。そういうわけで、この裁判の結果について、一応、概況、それと環境庁長官の所感を御説明願いたいと思います。
○国務大臣(三木武夫君) 日本の公害の原点とも言うべき水俣の判決が下ったということ、公害問題に対する歴史的な一つの日であることは間違いがないわけであります。これで、これを契機にして、企業が、企業の持っておる社会的責任というんですかね、公害防止ということにもう徹底をしなければ、今後の企業はやっぱり成り立っていかないんだという、強いやっぱり企業者の態度というものが要求をされるということ。もう一つは、政府自体としても、これは結局は福祉と言っても、その中心になるものは生命、健康、それを保持する環境の保持ということでしょうから、それをおいて福祉というもののやっぱり基本はないわけですから、政府自体としても、公害の防止、環境の保全ということに、決意を新たにして出発すべき一つの契機にせなければならぬと、こういうふうに考えておる次第であります。
○塩出啓典君 ここで午前中の最後に、総理に、ひとつ、この水俣裁判についての考えを聞いておきたいと思うんでありますが、私たちの感じからすれば、実際、政府が認可した工場がこういう公害を出した。そして、それに対して、長い裁判の結果、ほんとうに住民の皆さんが戦って今回の勝利をかちえたわけでございますが、しかし、政府としては、結局、四十三年九月にようやくおそまきながら公害病に認定した、そういうことだけで、まことに政府としては傍観をしておる。われわれはそのような感じがするわけであります。そういう点で、今後はやはり二度とこういうような問題を起こさないように、そしてまた、被害者の今後残された問題に、ひとつ、総理としても全力をあげてもらいたい、私はそのように要望するわけですが、総理の考えをお聞きしたいと思います。
○国務大臣(田中角榮君) 先ほどもお答えをいたしましたが、今度の判決、前の四日市判決等があったわけでございまして、産業公害はもちろんのこと、各種の公害除去の対策に対しては積極的に取り組み、実施をしていかなければならないと、このような考え方で、けさも閣議において、公害発生の起こり得る可能性を持つ各省大臣に対して指示を行なったわけでございます。いままでは、これらの問題に対しても、政府関係機関が中心になって、公害はないんだというような結論を出しておっても、その後長い間に公害ありというような問題も、実証されたものもあります。ですから、薬品公害、それからPCBの公害、その他いろんな公害に対して、政府も広くひとつ、制度上も予算上も各般の措置を行なって、日本人の技術、科学の力を集めて万全の体制をとろうということを指示したわけでございます。水俣病につきましては、環境庁長官からも述べましたが、これが実態の調査もしなければなりませんし、これで終わったと言うんじゃありません。被害者の生活の問題もありますし、また、治療方法、この問題もあります。それから、水俣湾の有機水銀を含む堆積どろの排除という問題もございます。こういう問題に対しては、政府、地方公共団体等と十分連絡をとりながら遺憾なきを期してまいりたいと、こう考えます。
○委員長(大竹平八郎君) 午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時五十八分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時三分開会
○委員長(大竹平八郎君) ただいまから予算委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、塩出君の質疑を続行いたします。塩出啓典君。
○塩出啓典君 それでは午前中に続きまして、二、三水俣裁判のことについてお聞きしたいと思います。通産大臣にお聞きしたいと思うんですが、今回の判決は、非常に企業の公害防止の責任というものを強くその義務を認めておるわけでございますが、先般の衆議院における公明党の渡部一郎議員等の質問にもあったように、PCBの管理、あるいはまた、全国におけるそういう水銀の管理、人体に及ぼす健康についてのそういうチェック、そういう点が必ずしも私は十分ではないと思うわけでございますが、通産省としては、この水俣裁判の結果からしても、今後やはりどういう姿勢で臨むのか、その点を聞いておきたいと思います。
○国務大臣(中曽根康弘君) 水俣病の問題に関しまして、いろいろ過去の行政並びに会社の処置をトレースしてみますと、必ずしも両方とも万全の措置があったと思わない、われわれも深く反省しなければならぬと思います。昭和三十四年に大体調査会の結論が出まして、そして事態が明らかになったように思いますが、通産省としては、それからは排水の処理の問題について、会社にいろいろ警告をしたり、あるいは指導したりしまして、その間に、クローズドシステムによる排水処理まで最終的にはやらせました。さらに、結局は生産を転換させなければならぬというので、いままでの生産体系――水銀触媒のやり方から、今度は石油化学方式に転換さしたわけでございます。しかし、その間にかなりの年月もあります。そういういろんな一連の過去を考えてみますと、これだけの大きな被害が出た問題に関して、会社の責任あるいは行政が緩慢であったように、私たちは今日の時点において反省するものであります。今後、こういう事態が繰り返されないように、これは初期の段階においてきびしく事態を検討して、そして初期の事態において万全の措置を尽くすということが非常に重大であると考えた次第でございます。環境庁その他等とも連絡をとりまして、われわれもそのように戒めていきたいと思います。
○塩出啓典君 今回の判決で、三十四年の見舞い金契約、こういうものは非常に企業が被害者の無知につけ込んだものである。そうしてまた、一任派の示談等もこれは効力を失ったわけでありますが、まあ結論的には、全被害者に対し企業は今回の裁判の判決同様の補償をしていけと、まあそういうことでないかと私たちは判断しているわけでございますが、そういう点に対して、政府は今後どういう立場においてその実現に努力をしていくのか、これを聞きたいと思います。これはどこになりますか、環境庁になりますか。
○国務大臣(中曽根康弘君) 被害者に対するいろいろな処置につきましては、今回判決も出まして、会社の責任が明らかにもなっておりますのにかんがみまして、会社といたしましては、財産をはたいてもこれは賠償し、補償し、また、それ相当の措置をすべきであると、そういうように私たちは判定いたします。したがいまして、会社に対しましても、土地であろうが、有価証券であろうが、ともかく処分できるものは最大限に処分して、そして患者に対しまして誠意を尽くすべきであると、そのように指導したいと思います。
○塩出啓典君 まあ今後、原告等がいろいろなことを要求しておるわけでございますが、たとえば水俣湾の海底のヘドロの処理、まあ海底にまだ多量の水銀が残っておるわけでございますが、被害者に対する補償、そしてまたそういうヘドロの処理、そういう点について、このチッソの財政的な負担というのは非常に大きいわけであります。そういう点で、一部の話では、環境庁が銀行等に働きかけて、そしてこの会社に資金援助を申し入れた、そういうような話も聞くわけでありますけれども、これはまあ私聞いた話で……。まあしかし、いまの国民感情として、そういうことをしたんでは、今後やはりそういうしこりというものはますます大きくなっていくし、そういうことはやはり国民感情の上からも私はやるべきではないと、そのように思うわけですけれども、それに対する政府の見解を聞いておきたいと思います。
○国務大臣(三木武夫君) 御承知のように、きょう判決が下ったわけですから、銀行へ環境庁が融資のあっせんなどに行く、そういうことはあり得ることではないわけです。やはり汚染をした原因者が全責任をもって、それはもうすべてをなげうって補償の責任に当たるべきものである、企業の経営者にはそれだけのきびしさが社会的に要求されておると、私はこう考えております。
○塩出啓典君 まだ不知火海全域等にはかなりの潜在患者もいるといわれておるわけでございますが、政府としても、そういう潜在患者の全面的な調査、そして万全の対策、また未認定患者を早期認定をすると、そういうひとつ万全の処置をとるべきである、このことを政府に要望いたします。
 最後に、総理に、こういう今回の公害の事件を通して、田中総理としてはやはりどのように反省をし、今後やっぱりどういう決意で臨んでいくか、それを最後に聞いておきたいと思います。
○国務大臣(田中角榮君) 先ほども述べましたとおり、政府としては、今度の問題を契機にしまして、けさの閣議でも各省大臣に指示をいたしましたし、これで済んだというわけではないのであって、被害者の生活の問題、水俣湾の有機水銀を含むどろの問題等々、また治療の方法の問題等に対して、可能な限り最大の努力を続けてまいらなければならないと、こう考えておりますし、産業公害については、未然にこれを防除できるように諸般の対策を進めてまいりたい、このように考えます。
○鈴木一弘君 関連して……。
 水俣の裁判のあれが、そのほかの公害も見ますというと、最終的に補償の問題等についても裁判を待たなければということがある。これは非常に問題だと思うんです。ほんとうはやはり無過失賠償責任ということをはっきりと打ち立てるように、これは政府は努力しなきゃいけないし、それは早々にするべきである問題であると、このように思うのでありますが、その点について、それがないと、もう解決をするのに何年も何年もかかって、その間被害者が泣きっぱなしということになるわけであります。こういうことだけは絶対ないようにしていきたい。そういうまあ多くの教訓を得たわけでありますが、ひとつ無過失賠償責任についてどう考えているか。直ちにするべきである、そういう法律をつくるべきであると思うのでありますが、いかがお考えでございますか。
○国務大臣(三木武夫君) 今度の水俣裁判の判決文を読んでみましても、もうそのぎりぎりまで要求しておるわけですからね。化学工業というものがその排出物に対するもう安全確保に対して世界のあらゆる、一つの最高の頭脳を動員して、その安全確保に対して注意を払わなければ、過失の責任を問うわけでありますから、そういう意味においては、もうほとんど紙一重だと言ってもいいと思いますね。今後まあ、御承知のように、大気汚染、水質汚濁等については、そういう規定を置いておりますが、今後は、やはり無過失責任というものに対して、どのように拡大していくかということは、今後の検討の課題であろうと考えております。
○塩出啓典君 それでは、農業問題に移りますが、非常に農地が急速に減少しております。まあ、そういう点から、四十五年の農林省の計画を大きく上回わる、そういう状態である。そしてまた、一方においては、瀬戸内海の埋め立て地は、農業用地の埋め立て地が工業用地に転換をされたり、これは島根県の中海等においてもそういうようになっておるわけでありますが、そういう点で、この四十七年十月の生産目標の試案は、五十七年に五百二十万ヘクタールの農地を確保すると、そのように言っておるわけでありますが、農林省としては、その農地の確保のためにどういう対策を考えておるのか。いまの現状では、これはもう優良農地は食われて、五百二十万ヘクタールは確保できない。食糧の自給もおぼつかない。そのことを私たちは心配するわけでありますが……。
○国務大臣(櫻内義雄君) これは先ほど私お答えを申し上げましたように、優良農地の確保のためには、それなりの法律上の裏づけを持ってやっておるわけでございます。また、農地の転用のほうにつきましては、御承知のように規制がございます。その面で、これを厳正に扱っていきたい。また同時に、ただ単に農地を確保するということだけではなく、その農地の生産性を高める努力をしなければならない。こういうことから、新しい土地改良の十カ年計画に基づく基盤整備をやっていくと、こういうことで、確かに現在農地の壊廃等が見られまするけれども、いま申し上げるような施策が総合することによりまして、試案による五十七年の、米を初めとする主要農産物の完全自給ないし八割は確保していけると、こういうことでございます。
○塩出啓典君 まあ、農民が農地を売るのは、やはり一つは農業をやっていけない、そういうような点もあるわけでございます。これは先般、島根県の横田町の開拓地、これは二百三十ヘクタールの開拓地で、野菜畑が七十ヘクタール、二十八戸、入植して二十五年。ここはまあ、農林大臣も自分の故郷でよく御存じのように、夏はキャベツ、そして冬はそこでスキーの民宿をして、非常に島根県下においても唯一の開拓成功の部落であったわけでありますが、ところが、キャベツの暴落、あるいはまた暖冬で雪が降らない、そういうような理由も重なって、現在借金が非常にたくさんできておる。それで、この開拓地が不動産業者に買われるんではないか、そういうような話が一時問題になりまして、まあ、いまは一応県のほうとしてもそれはストップしておるわけでございますが、まあ、キャベツの値段がひどいときには七円、そういうような状態であります。そういう点で、まあ、価格の安定基金もあるわけでございますけれども、いろいろ掛け金が高いというような理由で、入ってない人もおるわけであります。そういう点で、やはり今後この計画に従って農業を進めていくためには、それに見合う価格保障の制度をしていかなければいけない、そのように思うわけであります。まあ、大豆も、いま四%を十年後には一二%まで自給率を高める。そのためには、やはり価格保障の制度が必要ではないかと思うのであります。これは結城という学者が計算したことでございますが、まあ、せめて米並みの価格保障をした場合には、大体あと三千八百億円ぐらいを追加すれば可能である、そのように言っておるわけであります。そういう点で、農林省としては、そういう価格保障等の問題については、抜本的にやはり検討をしているのかどうか。そういう価格保障を実現すべきであると、私はそう主張したいわけでありますが、農林大臣の考えを聞いておきたいと思います。
○国務大臣(櫻内義雄君) 価格支持政策は、農産物の主たるもの七割程度に行なっておるわけであります。で、それぞれの価格政策がいろいろな事情によってでき上がってきておりまするので、そこで、この価格支持政策を、たとえば米のような生産費所得補償方式をとるかどうかということになりますると、なかなかむずかしい面もございます。それから、価格支持政策だけが農業振興ではない。これは御指摘するまでもないと思うのですが、一方に価格支持政策はとっておるけれども、また同時に、基盤整備事業や構造改善事業をやっていくことによって、初めてそこに総合的な効果をもたらすと、こういうことでございます。そういうわけで、農林省のこういうやり方についても、御理解をちょうだいいたしたいと思います。
 なお、私の郷里の島根県の横田町の実情についてお触れいただきましたが、幸いにこの組合の自主的な判断の結果が、これを他に転売するようなこともなく、引き続き生産を営んでおるという実情でございますので、私も安心をしておるわけでありますが、さらに一そう、地元のことでございますので、大いに振興につとめたいと、こういうふうに思っております。
○塩出啓典君 私は総理にも――価格支持政策だけが農政ではありませんけれども、やはり農民がつくるという意欲がなければ、いかに構造改善しても効果がないわけですよ。そういう点で、これはまあ主要国における農業関係の予算額を見ても、農民一人当たりの政府の支出額、これはまあよその国は農民の数が少ないわけですけれども、日本は八十六万円、英国は四百五十七万円、フランスは三百七十四万、西ドイツは二百二十七万、米国は六百二十一万と。日本は八十六万ですから、そういう点からもやはり価格支持政策というものは、まあ三千八百億でできるわけですから、そういう点、政府としてももう少し本気になって検討したらどうかと思うんです。全然検討もしてないんじゃないですか。総理のほうから指示をして、ひとつ検討してもらいたいと思うんですが、どうですか、総理。
○国務大臣(田中角榮君) いますぐ全般に対して価格支持政策をとるというわけにはまいらぬと思うんです。これは、アメリカにおいては一次産業人口四%ですし、拡大EC十カ国では六%ですから、日本はまだ一六・何%あるわけでございますから、こういう段階においてすぐそのようなことはできない。しかし、食糧が重要であるということと、国際的な問題――先ほども述べましたように、これから主食や食糧の国内自給度をどういうふうにするかというような問題がきまってまいりますから、そういう意味でいろいろな施策が加味され、検討されるということでないと、いますぐすべてのものに価格支持政策をとるということにはならぬと思いますが、牛乳とかいろんなものに不足払い制度をやったり、必要なものに対しては食管の中に特別勘定をつくって需給調整を行なったほうがいいじゃないかというような議論さえもあるところでございますから、これは十分勉強してまいります。
○塩出啓典君 次に、米の備蓄でございますが、先般FAOの事務局長バーマ氏も、やはり、もっと日本は備蓄をふやすべきだ、そういうことを言っております。まあ日本は四十八年の十月において――端境期には五十万トンの在庫と聞いておりますが、これは一カ月分でございまするので、かつて、米が非常にたくさんあったときの倉庫もあるわけですから、やはりもう少し備蓄をふやす。一カ月というのじゃあまりにも心配だと思うんですね。そういう点で、ひとつ来年の米作の生産調整においてもこれは再検討すべきである。農林大臣、どうですか。
○国務大臣(櫻内義雄君) ただいまの五十万トンのことは、この十月末の数量でございます。これは昨年の産米のことでございまして、確実に五十万トンございますが、この十月の末になりますると、ことしの新米が当然入ってくるわけでございまして、私どもはどんなことがあっても二百万トン以上は入ると、こういうふうに見ておりまするので、食糧需給事情は何らその時点では心配がないわけでございます。なお、四十九年につきましては、もう二十五万トン上乗せをして、七十五万トンの保有で次の米穀年度を迎えたい。そして、できればこれを百万トンぐらいにしたいという方針でおるわけでございまするが、備蓄ということで、これをもっとふやせという御趣旨だと思うのでございまするが、しかし、これはなかなかむずかしい点がございます。かりに百万トンを百五十万トン、二百万トンにいたしますると、新米の配給がずっとずれ込みます。そうすると、消費者のほうから言えば、何で新米を配給しないのかと、こういうことになってまいりまするので、まず、百万トンぐらいなところが順当で、それ以上になりますると、いわゆる先年いろいろと苦労いたしました過剰米のたぐいになっていく。その辺のところがなかなかむずかしいのでございまして、その百万トンを百五十万トンはよかろうと、こう言えばそれはある程度考慮ができまするが、しかし、消費者のほうのことを考えまするときに、いろいろとむずかしい点もあるということをひとつ御了承おき願いたいと思います。
○塩出啓典君 飼料の自給率、最近飼料が値上がりをして非常に農家は困っておるわけでございますが、濃厚飼料については現在三三%、これが五十七年には二〇%に低下するわけであります。現在はほとんどアメリカから輸入しているわけでございますが、やはり一つは国産の自給率を高める。それからもう一つは、アメリカだけをたよらず、やはり輸入の先の多様化、たとえば国際協力をからませて東南アジア等の、あるいはその他の国の現地開発をやると、そういうことも必要ではないかと思うのでありますが、農林大臣の今後の方針を聞いておきたいと思います。
○国務大臣(櫻内義雄君) 飼料関係についての、後段の開発輸入のことにつきましては、これはわれわれとしても積極的に検討すべきことだと思います。
 ところで、その飼料の関係の備蓄ということになりますると、これが非常に御承知のとおり、数量の多いことでございます。したがって、これを相当量備蓄をするということになりますると、倉庫等の施設が必要になってまいります。そういうことでございまするので、ある程度の備蓄のためには、民間の倉庫庫にでも協力を願う、この金利、倉敷でも出してやるというような方法を講じたいという気もいたします。しかしその、飼料関係では保存という点、あるいはその品質の保持という点、そういうようなことが非常にむずかしい点がございまするので、御指摘のような多角的な輸入方式で安定的な供給を得る。もちろん国内における自給度をある程度保持するということは言うまでもございませんが、お話しのような、従来アメリカだけに大量に依存しておるというのを、相当数の国から入れる、あるいは開発輸入をすると、これは私どもとしても御趣旨に沿って考えてまいりたいと思います。
○塩出啓典君 次に、ミカンの問題についてお聞きしたいと思いますが、昨年はミカンが非常に過剰生産で暴落をしたわけでございます。政府はこれを非常に天候のせいである、このように言っておるわけでございますが、しかし、われわれに言わせるならば、これはもう昭和四十二年、政府のつくった果樹農業基本方針では、五十一年に十六万八千ヘクタール、三百六十四万トン、こういう目標であったわけでありますが、ところが、現在はもうすでに五十一年の計画目標以上に、十七万一千三百ヘクタールになっておる。したがって、五十一年の面積以上ですから、今回三百三十万トンあるいは三百五十万トンといわれておりますが、こういうふうにできるのはやはり当然考えられることであります。したがって、政府としては当然そういうミカンの加工の問題あるいは倉庫の問題、そういうような手を打たずしてやはり生産が拡大してきたところに今回のそういう暴落の原因がある、私たちはそのように思うわけでございますが、農林大臣の見解を聞いておきたいと思います。
○国務大臣(櫻内義雄君) ただいまお話がございましたように、植栽面積が計画を上回ったということは、現実にそうなっておるのでございまして、これはもう否定の余地がございません。そこで、ミカンの大増産の要素ということを考えまするときに、この植栽面積が上回ったということも大きな要素でございまするが、また、しばしば申し上げておるように、隔年結果の表年であった。また、非常に天候に恵まれた。これらの要素がすべて重なり合った結果が異常な大豊作になったと、こういうことでございます。まことに遺憾なことは、植栽面積が計画を非常に上回った。四十七年だけでも三千ヘクタールが五千ヘクタールというような、実績になっておりまするので、したがいまして、これらの急速に植栽面積が上回ったということを十分に把握できなかったということは、これは私どもに責任があると思います。したがって、そのために御指摘の倉庫とか加工工場の手配がおくれたということも、その植栽面積に応じたものがなかったということは事実でございまするが、私は、今度の結果を見まして、昨年暮れの国会で農林省の機構の改革をお願いして、統計情報事務所にしていただきましたが、これからも情報を確実につかんで、そしてこれをそれぞれの生産農家に伝えるというようなこともくふうしながら、今回のような大きな計画上のそごのないようにつとめるべきだと、このように認識をいたしております。
○塩出啓典君 ミカンは、これは植えましてから大体三十一年から三十五年目が一番よくできるわけでございまして、いまのままでも、ほっておけば、どんどんミカンの生産量はふえていく。ところが、先般の果樹基本方針では、この十年間でさらに二万五千ヘクタールも面積をふやそうとしているわけでございますが、私はこの果樹農業基本方針を再検討すべきである、そう思いますが、どうですか、農林大臣。
○国務大臣(櫻内義雄君) ただいまのところは、とりあえず、先ほど申したように、植栽面積が計画を上回っておりますので、なるべく押えるという方針で行政指導をいたしておるわけでございまするが、長期的な展望に立ちましたときに、なお従来の、二、三年のような傾向でいくということがあってはいけないのでございまして、そういう点からいたしますならば、計画の変更というよりも、計画が忠実に行なわれるように行政指導をしていくべきではないか。しかし、お話のように、なおどんどん植栽をするという傾向があるといたしますれば、それは極力押えていかなければならないと、こう思います。私は、これからの五十六年なら五十六年をおいたその終点のところは、別によく検討されたところのミカンの面積であり、また需要に応じたその数を出しておるのでございまするから、その点の変更というよりも、その過程の指導ということが非常に大事ではないかと、こう思うのでございます。
○塩出啓典君 今後ミカンの需要を拡大するためには、やはり加工をふやしていかなければならないと思います。これは四十六年の科学技術庁資源調査会の報告では、アメリカは一人当たりいま年間四十四キロ、そのうち、なまが十キロでございます。したがって、日本も加工をふやしていくならば、ミカンの需要はまだまだ伸びる。なまでありますと期間が限られておりますので、そういう点で農林省としては、ミカンの加工をどういう計画でふやしていくのか。五十六年大体何%ぐらいを目標にしているのか、それを聞いておきたいと思います。
○国務大臣(櫻内義雄君) 現在は加工が一割少しでございます。五十六年はそれを倍程度に引き上げていくように計画をいたしております。
○塩出啓典君 それで、これは厚生大臣にお聞きしたいんでございますが、日本果樹農業協同組合連合会から、厚生省に対して、食品衛生法の改正を要望しております。なぜかといいますと、現在の食品衛生法は全部清涼飲料水、その中に天然の果汁も含まれている。そういうことで、全部八十度C、三十分間の加熱をしなければいけない。そのためにミカンの風味が非常にそこなわれるわけであります。それで、日本果樹農業協同組合としては、アメリカのように、清涼飲料水と一〇〇%の果汁飲料は別にして、そうして果汁飲料については、殺菌等においても風味をそこなわないような方法を取り入れるべきである。今後はやはり濃縮チルドジュース、非常に冷凍で消費者のところまで送られてくるわけですから、当然清涼飲料水の場合とは、これは処理も違ってこなければいけない。そういうことを、もう実は三十三年から果汁連盟は厚生省に陳情しているわけでございますが、厚生省はなかなか見解を出さない。何か問題はありますか。
○国務大臣(齋藤邦吉君) 冷凍濃縮果汁の問題につきましては、アメリカでそういう例のありますことを私も聞いておりますが、日本では、御承知のように、末端における冷凍設備がいままで十分でなかったといったふうなこともありまして、加熱滅菌ということを原則としてまいりました。しかしながら、私どもの生活においても、冷凍食品が非常に普及してまいりましたし、販売業者の末端、家庭の末端におきましても、冷凍施設設備等もだいぶ整備されるようになってまいりましたので、そういう事態を踏まえて、食品衛生法に基づく告示といいますか、その告示を改正する必要がある、こういうふうに考えまして、目下検討をいたしているような段階でございます。
○塩出啓典君 改正の方向で検討しているというけれども、あまりにも検討の期間が長過ぎます。こういうことでは、やはりジュースも伸びないと思うのですね。国内のミカンの生産あるいはジュースの消費、そういうものについても、国のやるべきことをやってないわけでありますが、そういう中で、一部においては今回またオレンジやあるいは果汁が自由化されるのではないか、そういうようなうわさものぼっているわけでありますが、池田総理のときにはレモン、佐藤総理のときはグレープフルーツ、これがいずれも抜き打ちにやられたわけであります。こういうことはやはり全く農民をばかにする、よろしくないやり方であります。私は、オレンジあるいはオレンジジュース等の自由化については、これは断じてやるべきでない。総理、どうですか。
○国務大臣(櫻内義雄君) 農林省の立場からいたしますると、現在のミカンの実情からいたしまして、オレンジとかジュースの自由化につきましては、私は、一方において緊急対策をとっているこの際でございまするので、反対をしているわけでございます。ただ、貿易や資本の自由化という大きい理想がある、こういうことにつきまして、また政府がそういう方針をとっているということは明らかなところでございまするので、そのことは私としても忘れているわけではございません、念頭にないわけではございませんが、現在の実情から、自由化ができるかといえば、それはできない。このことは最も強く要望しているアメリカに対しましても、機会があるごとに詳しく説明をしている段階でございます。
○国務大臣(田中角榮君) 一次産品につきましても自由化の方向を進めなければならないということは事実でございますが、間々申し上げておりますように、国内的体制が整備しなければできないという両面を持っておるわけでございます。そこらが政府の非常にむずかしいところでございます。オレンジがまたアメリカは、ほかのものよりもオレンジの自由化をしてくれというところに、オレンジにしぼっているとさえ言われてもいいぐらいに問題があるわけですから、農業団体等とも話をしているわけでありますが、ミカンのないときだけやったらどうかと言う者もあるのです。ミカンが終わって、もうしなびてしまって、どうにもならないというときがあるわけです。そういうときだけやったらどうかと、こういう問題があるのですが、そうなると、それはいま冷凍倉庫とかいいろなものがあって、そういうことをやってもなかなかミカンの出てくるときだって保存して置かぬということはないんだと、こう言うから、農業団体が何とかうまく入れるという手はないかと、農業団体がうまく入れるということになれば、それはクォータをふやすということであって、自由化ではないという問題になりますし、何かうまい手はないのかなあということでございます。(笑声)うまい手はないのかなあと。これもまたオレンジを自由化しなさいという要求もあるのです、消費君のほうからは。ですから、そういう意味でミカンと競合しないようにということでいろいろ検討しておりますし、その間だけでもって全部消費ができるというような、何か監視体制とかいろいろなものがないのかといろいろなことを考えておるのです。考えておりますが、これはなかなかミカン業者としてはいま大豊作のあとでしたから、暴落のあとでしたから、オレンジの自由化などということを言っただけでも、もうこれは非常に刺激的であるということでございますが、私の立場で真実を述べないわけにはいきませんので、方向としては自由化ということでありますが、影響のあるような状態ではなかなかできないので、いろいろ苦慮しているところでございます。これは現実でございます。
○塩出啓典君 それでは、いろいろあとは農林水産委員会等でまた検討したいと思います。
 次に、資源問題について通産大臣に二、三点お聞きしたいと思うのでありますが、現在石油資源が非常に足りない。そういう点で、アメリカ等が消費国だけの機構をつくろうと、そういう動きがございます。そのことによって産油国を非常に刺激をしている。私は、やはり今後こういう世界的に少ない資源の確保のためには、消費国と生産国が別のような組織をつくるのではなしに、全部合わせて共同歩調をとるようなことが型ましい。政府の見解を聞いておきたいと思います。
○国務大臣(中曽根康弘君) 私も同感でございます。消費国だけでつくるということは、OPEC等を中心にする産油国側の猜疑心も起こしまして、無用な摩擦が起こる原因になると思います。したがいまして、私も記者会見や、先般ピーターソン等に会いましたときにも、消費国、産油国全部合わさった会議形態あるいは協議形式をつくることが望ましいということを述べておきました。
○塩出啓典君 で、今後のやはり方式としては、私は、たとえばサウジアラビアが都市開発で援助してもらいたい、そういう要望がきているそうでございますが、私の友人でイランにしょっちゅう行っている人が、イランは非常に地震が多い。そういうわけで、向こうの大蔵大臣が、やはり日本の技術援助で耐震住宅を建ててもらいたい、そういうような要望もあるわけですね。今後はやはり海外経済協力基金等も産業基盤整備だけでなしに、そういう住宅とか、生活基盤整備とか、そういう方面にもやはり推進していくべきである。これは外務大臣、どうですか。
○国務大臣(大平正芳君) いま御指摘のイランのように、産油国で原油売却収入が豊富に期待されておりながら、なお他国の資本を入れてまで経済の開発をやろうという国もございまするし、またそうでなくて、豊富な原油収入というものをまだ有効に活用しきれていない国々も多いようでございます。したがって、いまあなたが御指摘のように、経済協力政策の推進にあたりまして、その国のいわばインフラストラクチュアとか、あるいは教育施設であるとか、あるいは生活環境の整備、そういったところに先方の資本と日本の技術とのコンビネーションを考えるとかいうような方式はたいへん現地の実情に合った施策であると私も考えます。したがって、そういう国々に対する経済協力につきましては、御指摘のような方向で考えていかなければならぬと思います。
○塩出啓典君 特に圏内のエネルギー資源の開発について、アメリカ等におきましては、いわゆる石炭のガス化というのを研究しております。日本ではまだやってない。やはり私はこういう石炭のガス化ということも今後緊急の場合に備えて検討していくべきである。これは通産大臣。
○国務大臣(中曽根康弘君) アメリカにおきましては、かなりの年月、資金もかけましてやっておるようでありますけれども、まだ石油に対抗するようなコストで成功するところまでいっておらぬようでございます。日本におきましても、工業技術院を中心にそういう研究をさせておりますけれども、アメリカほどの研究にまではまだいっておりません。しかし、将来を見ておりますと、そういう方向の研究をさらに続けて充実させていくべきであると思います。
○塩出啓典君 総理に聞いておきたいのでございますが、先般産業計画懇談会が、いろいろ将来石油とかそういうものを縮小していかなければいけない、そういう計画を発表したわけでございますが、やはり私は、現在は非常に消費は美徳なりという、そういう世の中でございますが、そういう中でやっぱり節約、そうしてまたそういう将来の成長率を規制する、そういうことも当然考えていかなければならぬと思うのでありますが、この産業計画懇談会の提言を踏まえて、どう考えているのか。
○国務大臣(田中角榮君) 方向としては、原材料を節約をしていくという方向にいかなきゃならないことはもう当然でございますし、エネルギー資源に対してもそのとおりであります。ですから、当初見込んでおりましたものは、私が日本列島改造論で七億キロリッターないし七億五千万キロリッターと、こう述べた六十年度の石油の数字は、私が適当に用いたものではなく、あれは権威ある積算だったのです。ところがその後、公害問題が起こったり、エネルギー資源の枯渇状態が起こったり、アメリカが輸入国に振りかわっていくというような事態で、これからの産業というものは、いままでのような状態で考えられないということで、非常に縮小した数字が出ておるわけでございます。しかし、石油を燃料としてたくということだけではなく、石油化学やいろいろな原材料としての面もございますし、もう一つはエネルギーとして、いわゆる電力等の面から考えると、これはやっぱり産業用電力だけではなく、どうしても生活水準が上がると電力と水はうんと使うわけでありますから、そういう意味で電力問題から考えると、やはり電力の消費を押えるというわけにはまいりませんから、これは石油にかわるべきもの、地熱発電とか太陽熱発電とか原子力発電のウエートを上げなければいかぬ。六十年度には、当初、わずか二年ばかり前には一〇%のウエートだと計算されておったわけですが、現時点からいうと二〇%をこさなければならないと、これはわずか二年間のうちにそう転化しておるわけでありますので、やっぱり各方面から検討して、エネルギーの問題に対しては総合的な計画を立てなければいけない。しかも、いままで、なまだきでもってやっておるというようなことがそのまま認められるものではない。ですから、石油だけではなく、あらゆる原材料というものが日本においてはもっと節約をされる状態でなければならないし、同じ材料を使っても付加価値の高い品物をつくるような方向に進まなければならないと、こう思います。また、二次製品としての輸入も拡大をしていかなきゃならぬというようなことと付随をして総合的な問題を考えるべきだと思います。
○塩出啓典君 それでは時間がなくなりましたので、最後に瀬戸内海の問題につきまして、特に埋め立ての問題について政府の見解がはっきりしていないように思うわけですが、瀬戸内海の埋め立てについては政府見解はどうなのか。
○国務大臣(金丸信君) 瀬戸内海の埋め立てにつきまして、ただいま公有水面の埋め立て法案を検討いたして、この国会に提出する考え方で進めておるわけでございますが、公共の利益に寄与しないものにつきましては極力抑制していくという考え方、あるいは環境保全、あるいは公害、これを阻害するものは許可をしないというような考え方、そしてその内容の中には、出願事項の縦覧、あるいは地元市町村長の意見書提出、埋め立て免許基準、あるいは埋め立て地に関する権利処分の制限、あるいは埋め立て地の用途の変更の規制と、そういうような考え方でおるわけでございますが、なお、瀬戸内海は国立公園でもありますから、当然環境庁のチェックはあるわけでありますし、また瀬戸内海環境保全対策会議がありまして、その意見も聴取するというようなことで万全を期していきたいといま検討中で、各省庁とやっておるわけでございます。
○国務大臣(三木武夫君) 瀬戸内海、これはあれだけの有数なすぐれた自然環境を持っておる地域はないですから、ますます自然環境に対する国民の希求、これは強くなっていく。いまあれをそのままほっておけば、瀬戸内海の水はもう死んでしまうことは明らかです。去年も実態を把握するために水質の調査をやったけれども、汚染は年とともにひどくなっていっておる。したがって、いまにしてこの瀬戸内海の浄化ということに乗り出さなければ、後世のきびしい審判をいまの時代に生きておる者は受けるに違いないと私は思っておる。そのために、これは瀬戸内海浄化という立場から、埋め立てについても、あるいは工場立地についても、あるいはまた下水の整備とか、あるいは工場排水の規制についても、これをきれいにしようとするならば、特別の配慮が要るというのが私の見解でございます。
○塩出啓典君 どうも政府の見解がはっきりしないわけですけれども、環境庁長官はもう新規は認めないと、計画中は検討すると、そういう話をされた、前に。ところが、いまの建設大臣の話ではそうではない。まあ地元の自治体ではすでに埋め立て計画も将来の計画も立っているわけですから、そういう点でぼくはやっぱりはっきりさすべきじゃないかと思うのです。それはどうなんですか、環境庁長官。
○国務大臣(三木武夫君) 全体として、瀬戸内海の埋め立てば、これをできるだけ抑制するという方向が瀬戸内海浄化のためには必要である。しかし、いま埋め立てを行なう許可を得て、しておる者に対してこれをとめてしまうというわけにはいかぬですが、その埋め立てた土地の利用について、産業立地について再検討する必要がある。そういうことで、いまやっておる、進行しておる埋め立てを全部ストップするということではないんだが、埋め立てておる、その埋め立てたあと地の利用については再検討するぐらいの態度が必要であるということを言っておるのであります。
○塩出啓典君 それでは、最後に総理に。
 実は、広島県の大久野島というところには毒ガス工場がありました、戦時中ですね。総理は御存じだと思うんですけれどもね、大久野島。それで、その大久野島のいわゆる毒ガス患者の救済について、そこに正式に働いていた人はいわゆる共済組合で救済をされておる。ところが、そこで働いていた学徒動員の人については何らその対策がない。これは厚生省の援護法、けれども、援護法のほうは、申請しているがなかなかそういうことは適用にならない。そういうわけで、言うならば学徒動員の人がほったらかしにされておるわけであります。これはたびたび、去年の予算委員会等でも、私分科会でもいろいろ質問したわけでございますが、これはやはりそういう大久野島という島の毒ガス工場で、学徒動員の人もやっぱり同じように働いているわけなんですね。これは先般「炎の島」という、そういう当時の学徒動員の人がこれ書いたわけです。これを読みますと、みな一緒になって毒ガスのドラムかん等を運搬したり、そういう作業をやっておるわけであります。ところが、それに対しては国はもう何もやってない。それでいま広島県では今年から医療費だけは県で見ようと、そういう問題があるわけなんでありますが、私はこういう問題は、やはり戦後処理として、総理の決断によって、ひとつそういう学徒動員の人も、学徒動員だから、工員だからと、身分の差別からではなしに、毒ガスの被害をどれだけ受けたか、その程度によって私はやはり救済していくべきである。それを聞いて終わります。
○国務大臣(齋藤邦吉君) お答えを申し上げますが、大久野島の毒ガス工場があったときの学徒の問題につきましては私ども十分承知いたしております。昨年の秋でございますか、その学生の中から遺族等援護法に基づきまして障害年金支給の申請が出てまいりまして、その点については目下審査会において事情を調査中でございます。なお、こうした方々が毒ガスの製造作業あるいは運搬等の仕事に従事しておったという因果関係等がはっきりいたしますれば、当然傷病者援護法等によりまして医療の給付をするということになっております。しかし、お話のとおり、この学生に対する処遇については、私もまだ十分だとは考えておりません。もう少し何とか解決の方法がないだろうかということで頭を痛めておりまして、各省との合同連絡会議等も目下開いておりますので、何とかこの問題について前向きに解決したいと、こういうふうに考えておる次第でございます。
○塩出啓典君 総理、昨年のやっぱり分科会で、前の斎藤厚生大臣もそう言っているんですよ。いまの齋藤さんもこう言っているんです。また来年になりますよ。そういうことをひとつしっかり総理の責任のもとに検討して結論出してもらいたいと思うんですけどね。
○国務大臣(田中角榮君) 事案に対する調査を急がして適切な措置をいたしたいと、こう思います。
○委員長(大竹平八郎君) これにて塩出君の質疑は終了いたしました。(拍手)
    ―――――――――――――
○委員長(大竹平八郎君) 田渕哲也君。
○田渕哲也君 私は、民社党を代表して、四十八年度の予算をめぐる国政全般にわたりまして質問をいたしたいと思います。
 まず初めに、本日、水俣病の裁判の判決が出ましたけれども、一応原告の勝利だといわれておりますけれども、もちろんこれですべてが解決したわけではございません。判決文には言及はされておりませんけれども、いままでとってきたチッソの経営者、会社側の反社会的な言動、さらに会社側のデータを一方的にうのみにしてきた政府当局の姿勢、こういう点を考えた場合に、私は行政上の責任はまことに重大だと思うのであります。この点について、総理はこの責任をどうとられるか、まずお伺いをしたいと思います。
○国務大臣(田中角榮君) 先ほども申し上げましたように、四日市裁判に続いて水俣判決があったわけでございます。本来この種の問題に対しては、判例を求めるまで争うというのが例でございましたが、今度は四日市も水俣も一審判決をもってこれに服すということになったことはたいへんいいことだと思っております。また、政府もこれからも、いま御発言がございましたように、一切解決したわけではありませんが、しかし、これが円満解決に向かうように、行政的にもできるだけの措置をとってまいりたいと思います。まだそのほかに残っておる問題もあるわけであります。これは被害者の生活の問題とか、また環境保全の問題とか、それから有機水銀を含む湾の堆積したどろの問題とか、いろいろあるわけでありますから、こういう問題に対しても、地方公共団体とも連絡をとりながら万全の措置を講じてまいりたいと、こう申し上げております。なお、産業公害だけではなく薬品公害とかそれから新しい発明物資の実用化に対する場合とかいろいろな問題に対して、公害に対しては衆知を集めて、高い研究のもとに万全の体制をとっていくべきだということで、行政に対しては遺憾なき方向を確立してまいりたいと、こう考えております。
○田渕哲也君 先ほどの記者会見で、三木環境庁長官は、行政上の責任もあるから所管大臣としてはできることは何でもしたい、という趣旨の発言をされております。今後被害者の救済あるいは公害の防除に対しまして、具体的にまず何から手をつけていこうとされておるのか、所信をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(三木武夫君) いま考えておるのは、私は三つあるわけであります。
 一つは、この長期にわたる水俣の紛争を一つの判決という――まあこれ生命や健康の補いがつくわけではありませんけれども、一応の損害賠償の基準というものが出たわけですから、何とかこれで紛争というものが処理できるような契機にできないかと、そしてこの問題に、損害賠償をめぐる問題にピリオドを打って、そうして将来の、いろんな問題が将来残っておるのですから、そういう問題に取り組めるようなことに持っていけないかということが一点。そのためにできるだけの努力をしたいと私は言ったわけです。
 第二点は、水俣というものがなかなか、やっぱり原因の解明というものが、今日まで非常に解明されていない部門が、いま総理もいろいろお触れになった点についてまだ解明されていない点が多いんですね、水俣をめぐるいろんな有機水銀等の関係などについても。そういうところで、やはり患者とすれば治療の方法がないというぐらいこういう絶望的なものはないですから、これと取り組みたい。だから、新潟と無水の大学がこれは非常に貢献したわけですからね、その専門家とも会って、そうしてこの治療の開発といいますかね、医学の、これに対してもっと強力に取り組んでもらう。そのためには、総理にも言って、金に糸目をつけまいと思っている。そうしてこの悲惨な人たちの治療の方法というものを、研究体制を強化して解明をして――い主なお治療の方法がないということになれば実際に絶望的ですからね、この解明に当たる、第二は。
 第三には、やはりヘドロというものは除去されなければいかぬ。有機水銀を含んだああいうどろが水俣湾にひとつ堆積されておるという事態は、いつどういうことになるか不安ですからね、これは除去する。除去技術は、やっぱり埋め立てか、しゅんせつか、第二次汚染を起こさないようにといういろいろなむずかしい問題もあるけれども、これは熊本大学にも依頼して、工法の研究もしているわけですから、これは四十八年度から着工できるような目標のもとに熊本県とも打ち合わせをしたい。これが、私が水俣問題に対していま考えておる三点でございます。
○田渕哲也君 この問題について特に政府にお願いをしたいことは、単に司法権だけにまかせずに、これから政府としても、特に悲惨な被害者の救済のために全力をあげて取り組んでもらうことを要望したいと思います。
 次に、安保・防衛問題について質問をしたいと思いますけれども、先日の衆議院の予算委員会における核をめぐる憲法解釈の問題で答弁をされた総理の内容と、けさほど同じ点について追及されました社会党の委員に対する総理の答弁とは明らかに食い違っております。私は、国会の審議の場で、総理の答弁がこのように食い違うということは重大なことだと思うのでありますけれども、この点について、総理の明確な見解をお聞かせいただきたいと思います。
○国務大臣(田中角榮君) 永末委員の発言に答えた中に、核兵器を持たない、つくらない、持ち込ませないという積極的な気持ちを出すためにいろいろな発言をいたしました。しかし、その中に、語尾は途中、中で消えておるようでありますが、その部分だけをとりますと、核兵器がすべて憲法にに背反するがごとくとられるおそれのある発言があった、部分があったということは私も認めます。認めますが、私は、従来の政府の憲法解釈を、憲法解釈に対して問われてあのように答えたとしたならば、これはそうとっていただいてもけっこうなんですが、前段はちゃんとあるのです。自民党内閣は依然として続いておるのでございまして、とこういうことで、ただ、つくらず持たず、持ち込ませずということにウエートを置いて強い発言をいたしたことでございますので、憲法の解釈と、政策的に政府が過去も現在も将来もこれを守ってまいりますという非核三原則を強調したことを同一の問題であると論断されるということに対しては、私のやはり発言というものをひとつ理解をしていただきたいと思うのです。
 で、私は、速記録を見てもわかりますが、あの部分だけをとれば、これはいろんな判断が生まれると思います。しかし、ずっと、永末議員は憲法解釈など全然求めておらないのです。憲法解釈というのではなく、日本が平和国家として立って行くための問題に対しての基本的な理念を聞いておる中で、私が核兵器の問題を例に引いたわけでございます。ですから、過去も現在も将来もと、しかしこれは原稿を読んでずっとやっておったんではなく、私としては心の中にあることをさらけ出して、真摯な態度で御質問にお答えをしておったので、舌足らずのようなその部分だけをとりますとそういうふうにおとりになれるかもしれませんが、ずっとあの前段から後段までお読みになっていただければ、私が衆議院と参議院で全く異なる答弁をやっているというようなものでない、そんな意図もございませんし、そういうことはないということは御理解いただけると思うのです。
 これはもう明確に申し上げて、憲法上の解釈を私が単にこうでございますと言っても、これは判例によって示されているものではないのでありまして、これは、政府としては、自民党内閣は依然として続いておるのでございますから、という前段、まくらから申し上げても、憲法の解釈そのものは、以前行なったものと、そのとおりでございます。しかし、非核三原則というものに対しては、これはもう過去も現在も将来も守ってまいります、それだけではなく、唯一の被爆国である日本は、核というものに対しては一番悲惨なことを知っておりますから、これはどこの国が勝ってどこの国が負けるというような単純な戦争ではありませんと、現に持っておる国はありますけれども、この国々も持たないような運動もし、発言をすることは被爆国としては意義あることだと思うし、評価さるべきことであろうと思いますと、こう結んでおるのでございますから、これは全文をお読みいただいて御理解を賜わりたい、こう思います。
○向井長年君 関連。
 総理、この永末質問の要点をどう解釈されておるか知りませんが、永末君は、核を持たない理由をまず明確にせよ、こういう質問をしておるんですよ。それに対して総理は、まあ速記録を読みますと、自由民主党からずっと出てきておりますが、三原則は確実に堅持いたします、非核三原則は堅持いたします、しかし、私の考え方は、核というものはこれは攻撃的な兵器でございますと、こう断言されておるんですよ。よろしいですか。こう断言されて、その上で、攻撃的兵器であるということは、これはこの兵器を持つことは憲法に背反するということを云々と言っておるんですよ。これは明確に言っておるじゃありませんか。したがって、いろいろ前文、後段ありましても、やはり一応総理としては断定された。攻撃的兵器である、この攻撃的兵器は憲法に背反するものである、持つことはですよ、こういうことを言われておるんだよ。こいつを、いまここで、そうではないということになると、やはり違う答弁になるんじゃないですか。で、永末質問は、平和国家として立つためにはどうするか、こういう問いでありましょうが、しかし、まず第一に、非核三原則は政策論議だけではなくて、もちろん国民感情もありましょう。しかしながら、その根拠たるものは何ものだと、この根拠を聞いているわけです。したがって、そういう根拠があるならば憲法にも抵触するという問題も出てくるし、一方においてはわが国の防衛、安全を守るためには少なくとも核を持たないほうが安全であるのか、こういう質問をしておるんですよ。これに対して総理は、前段からずっとこう述べておりますけれども、非常にあいまいな、そして先ほどから、午前中の質問の中でもこの点非常に私たちが理解しにくい。いまそれを田渕君がただしておるわけでございますから、いま私が言ったことを明確にひとつ御答弁を願いたいと思います。
○国務大臣(田中角榮君) 攻撃的な意図を持ってつくられる核は憲法で許されるはずはないということは、もうこれは当然でございまして、それはだれでも述べておることでございますから、そういうふうにお読みいただきたいと思います。
 それからもう一つは、核はなぜ持たないのかということは、唯一の被爆国である、もう一つは、前段の第二問で、核戦争が起こる場合は地球上の人類の死滅を意味する、そういう意味で核は持つべきじゃありませんと。ですから、日本政府は非核三原則を堅持しておるのでございます。
 それで、第三問においては、いろんなことはございましても、これは日本が他の国、持っている国に対しても持たないように、これは平和利用以外に使われないように日本が発言することは、それなりに評価されることだと思いますと、そして最終段階において、しかし相手も持っておるのでございますから、持っておって、核攻撃等に対してはというような、攻撃とまでは言っておりませんが、相手が持っておる国もあるので、そういう問題に対してはというので、それはアメリカの核のかさのもとにありますと、こういうふうにちゃんとお答えをしておるのでございますから、私が先ほどお答えをしたことと、衆議院において答えたものが全然別であるということはないのです。
 私も長いこと閣僚をしておりまして、ここで法制局長官が答弁をしたり、佐藤内閣のときにいろいろの答弁をしたり、私も承知しておるのです。ですから、それとは全く違った次元に立って答弁をするなら、自民党内閣は依然として続いておるものでございますから、というようなお断わりをして申し上げておるわけはないのでございますので、これは法律解釈、憲法解釈というものに対しては、もう定着しておる、とは申し上げませんが、自民党内閣としての憲法と核との問題は、明確に区分をされておるわけでございます、明確に。それで、その上なお、がしかし、核は、全く防御的なものに対しては、核を持ってはならないというものではありません、全く防御的なものであれば――それは、大陸間弾道弾とか、そういうものは、もうこれは憲法違反でございます、しかし全くの防御的なものは、核兵器であろうが何であろうが、これは憲法の範囲内にあります、しかし非核三原則を堅持いたしますと、これがもういままでの理論構成であり、現実なんです。一貫して述べておるのです。ですから、私がですな、自民党政府が、自民党が、政府が、国会で明らかにしておる核に対する憲法解釈を越えても核を持たぬと、こういうのかという質問に答えて申し上げたわけじゃないのですから、これはもうずっと、三段、四段でもって読んでいただくとよくわかる、わかっていただけると思うのです。しかし持ちません、つくりません、持ちません、持ち込ませません、これだけは明確にいたしておきます。
○向井長年君 委員長、大きな質問だ。
 総理、気持ちはわかるのですよ。非核三原則を絶対に維持するという強い信念のほどはよくわかるのですよ。しかし、論議の過程で、やっぱりあなたは、核兵器は攻撃的兵器であると断定したのですよ。これ、取り消しますか。取り消さないでしょう、朝から見ておりますと。したがって、取り消さないとなると、これは憲法の問題があるということですよ。あなた自身がこう言っているわけだ。あなた自身が、そういうものであれば憲法に背反するということを言っておるのだから、こういう問題を取り消すのか、取り消さないのか、取り消さないとするならば、われわれは、やはり憲法にしたがって非核三原則は生まれておるのだ、こう解釈をしたい。それならそれでいいじゃないですか。それをなぜその後やろうとしないのか、それでやろうとしないのだったら、たびたびこれ、関連質問できませんから、私はもうちょっと続けますけれども……。
○委員長(大竹平八郎君) なるべく簡潔に願います。
○向井長年君 持たないほうがわが国にとって安全であるのか、あるいは持つほうが安全であるのか、この問題、どちらなんですか。おそらく、安全であるから持たないと思う。持つことによって危険をもたらすであろう、こういうことであろうと思いますが、したがって、先ほど申しましたように、攻撃的兵器は少なくともこれは憲法に抵触するものだということをあなた自身が言ったのだから、これは幾ら前段、後段あって、非核三原則のいわゆる政策論議を言いましても、この問題は速記録に明確に残っておるのだから、これを取り消すなら取り消す、いやそのとおりだというのだったらそのとおりわれわれは理解します。そうして、持たないほうがわが国の安全であるのか、ないのか、この点だけを明確にお聞きしたい。
○国務大臣(田中角榮君) すなおに読んでいただくと、私がそのまま答弁していることがよくおわかりになると思うのです。そうして核ということが、ここでもって――ここを指摘されているのでしょう。「しかし核は、核兵器は攻撃的な兵器であるということが、第一に持たないという憲法に背反をするという、」どうも日本語としてはここは少しつながりの悪い、平仄の合わないもの、もう少しりっぱなことをしゃべっておるはずだがと思いながら、やっぱりこういうことになっておりますが、この「憲法に背反するという、」というところでもって段落がついておりまして、あとはまたこう、別な問題憲法の精神云々、こうなっておるわけで、これはすなおに御解釈いただくならば、一般的な核、すなわち攻撃用の核、日本人が持ってはならない核、こういうものを頭に置いて私が述べんとしたことであると。それは、まあ日本語としては説得力のない言い方であった。それだけではなく、一部誤解を生ずるがごとき発言であったということもよくわかります。私もそこまでは理解しますが、これは、核というものはすべて憲法に違反なりということを断定をしての発言ではありませんので、非核三原則というのを何回も何回も何回も述べておりまして、そういう意味で述べたということをここで御理解をいただきたい。
 それから、持ったほうがいいのか、持たぬほうがいいのかということでありますが、これは、私は、日本としては絶対に持たないという方針をきめておるわけです、持たないということを。これは、被爆国であるし、いま核を持っている国々の状態を見て、これに対抗するような一体核が持てるのか、また、日本人は持つべきでない。またこういう発言すると間違うかもしれませんが、いわゆる日本は被爆国として核を持つべきでないという感じなんです。そういうものが前提になって非核三原則が貫かれておるということで御理解いただきたい。
○田渕哲也君 そうすると、従来の憲法解釈について、私は少しわからない点がありますので、お伺いをしたいと思うのです。というのは、攻撃的な核と防御的な核との区別はどこでするか、ということをお伺いをしたいと思います。
○政府委員(吉國一郎君) お答え申し上げます。
 憲法第九条では、始終政府では解釈を申し上げておりますが、自衛のため必要最小限度の範囲内の実力を持つことは禁止されておらない。そこから、わが国民の生存と安全を守るために、自衛のための正当な目的の限度内のものであれば憲法上持つことができるということになっております。攻撃的か防御的かということは判定は確かにむずかしいと思いますけれども、理論上の問題といたしまして、自衛のための正当な目的の限度内の核兵器というものがありとするならば、この点につきましては、従来、岸内閣時代におきましても、たとえば当時の、私のもとのもとの前任者でございます林修三氏が答弁をいたしておりまして、将来科学技術の進歩によって、非常に小型な核兵器であるとか性能が非常に弱いような核兵器というものがもし開発されるとするならば、そのようなものは防御的な核兵器と呼ばれるのではないか、そういうものについては憲法上持つことは禁止されておらないということを申し述べております。現段階におきましては、これはたとえば核地雷というものが開発されておるそうでございます。私は技術的な見解については十分な知識を持っておりませんけれども、核地雷というものは、これは防御に専用されるものであるということは専門家によって言われております。そういうようなものにつきましては、憲法上その保有が禁止されておるものではないということでございます。
○田渕哲也君 もう少し具体的にお伺いをしたいと思うのでありますけれども、それはその核の爆発力の大小、破壊力の大小できめるのか、あるいは足の長さといいますか、どこまで飛んでいけば攻撃的で、どこまでしか行かなければ防御的と、どちらで判断しておるのか、その点をお伺いしたいと思います。
○政府委員(吉國一郎君) もともと核兵器と申しますものは、核分裂反応あるいは核融合反応によって生じまするエネルギーを人の殺傷または物の破壊に用いる兵器だということになっております。で、一般的に申し上げまするならば、先ほど総理から何回も答弁がございましたように、そのような膨大なエネルギーを利用する兵器でございまするから、これは非常に大きな威力を持っているということは間違いございません。ただ、将来の科学技術の進歩によりまして、先ほども申し上げましたように、最近では核地雷というものが開発されておるそうでございますが、地雷と申しますものはもちろん固定的にしか使えません。たとえば、どこかの海岸線に敷設をしておきまして、そこに上陸をしてくるかもしれないどこかの兵力に対して防御をなすということにしかこれは使えないものでございます。そういうように、その性能でございますとか、使用の目的でございますとか、使用の態様とかをすべて総合的に考えて、防御的であるか、あるいは攻撃的であるかということを判定すべきものでございます。しかしながら、これは前々からお答え申し上げておりますとおり、兵器の目的なり性能なり使用方法なりによって、すべての兵器が攻撃的かあるいは防御的かというふうに峻別されるものではございません。大部分の兵器と申しますものはその中間的なものでございまして、攻撃的にしか使えないような、あるいは侵略の目的にしか使えないような非常に強大な兵器と、それから防御的にしか使えないような非常に消極的な兵器とが両端にございまして、その中間のものは、攻撃的にも使えるし防御的にも使えるというものでございましょう。したがいまして、まさに防御的にしか使えないという兵器は非常に少数のものだと思います。特に核兵器ごときものは、先ほど申し上げましたように原子核分裂、原子核融合によって生じます膨大なエネルギーを使用することが本来の性質のものでございまするから、それについて防御的、防御専用に用いられる兵器というものは非常に少数のものだとは思います。しかしながら、理論の問題といたしましては、かりにそういうものがあるとすれば、そういうものは憲法上保有は禁止されておるものではないということでございます。
○田渕哲也君 将来そういうものができるという仮定で考えられたことで、現在一般通念としていわれておる核兵器というものは、すべて攻撃的なもので、憲法で禁止されておる、このように解釈をしていいわけですね。
○政府委員(吉國一郎君) 専門的な軍事的な問題につきましては、防衛庁の防衛局長からお答えを申し上げますけれども、これはあるいはまた一つ御議論になるかもしれませんが、第二十六回国会におきまして、当院の内閣委員会において、当時の小瀧防衛庁長官が政府の見解といたしまして、「現在、核兵器といわれているものは、」――これは昭和三十二年当時でございます。「現在、核兵器といわれているものは、原水爆が代表的なものであるが、その他のものも、伝えられるところによれば、多分に攻撃的性質を持つもののようである。そうとすれば、この種の核兵器をわが国がみずから持つことは、憲法の容認するところではないと考えられる。」。これは政府の統一見解として述べたことがございますが、そのように、大部分のものは確かに攻撃的な性格のものであろうと思います。ただ、それ以外の専門的な知識につきましては防衛局長からお答えを申し上げます。
○政府委員(久保卓也君) 常識的に申し上げて、攻撃的兵器あるいは防御的兵器というものはあるように見受けられます。ただし軍事的に申し上げれば、これを峻別することは不適当であります。アメリカの議会でもこういった問題が議論されまして、当時の国防長官はICBMもアメリカにとっては防御兵器であると答弁をしたことがございます。ところで、現存する核兵器の中で何が攻撃的兵器であるか、常識的に申し上げて。また何が防御的兵器であるかということは、日本政府が核兵器を持とうという気持ちを全く捨てておりますので、峻別としてこれを検討したことはございません。しかしながら、ただいま言われましたような憲法解釈から申しますと、たとえば核地雷でありますとか、あるいは相手方の攻撃によって、その攻撃そのもののみを撃ちとめるようなもの、撃ち落とすようなもの、たとえば対空ミサイルの核弾頭といったようなもの、こういったものも防御的な兵器であろうというふうにいわれると思います。したがいまして、これはいま御質問のように、核爆発の能力でありますとかということは必ずしも関係ございません。足は関係ございましょう。要するに、対峙している相手国の国土あるいは軍隊といったようなものを攻撃し得るに足りるもの、これは攻撃的な兵器、したがって憲法の範囲を越えるもの。しかしながら相手方がわが国土及びその周辺を攻撃してきて、単にその分だけを阻止するということにとまるものであるならば、そういったものは防御的な兵器であろうというふうなことはいえようと思います。
○田渕哲也君 そうすると、重ねてお伺いをしたいと思いますけれども、核弾頭そのものは憲法には抵触をしない、それを撃つミサイルの足の長さが憲法違反になる、こういうことと解釈していいわけですか。
○政府委員(久保卓也君) おおよその感じで申し上げれば、足の長さというものは比較的判断の基準になろうかと考えられます。たとえば短距離の弾道弾、短距離の誘導弾、これは数百キロのものがございまするが、この辺のものは、これは詰めた議論ではございませんけれども、憲法違反のおそれが多分にあろうと。しかし、たとえば二万メートルあるいは三万メートルというようなもの、これは一五五ミリのりゅう弾砲などがそれに当たりまするけれども、そういったものは憲法の範囲内ではなかろうかと、私個人は考えまするが、先ほど申し上げましたように、それを詰めて法制局と具体的に議論したことはございません。
○田渕哲也君 そうすると、足の長いミサイルというものが憲法違反になるとすると、現在宇宙衛星の打ち上げが進められております。アメリカからソー・ロケットの購入の計画もあると聞いております。また、日本独自でそういうものを開発しつつある。こういうものを持つこと自体は憲法違反にならないのかどうか、お伺いをしたいと思います。
○政府委員(久保卓也君) 憲法違反と称せられまするものは、あくまでも核兵器であります。ところで、いま問題になっておりますソー・デルタといいますのは、二千キロから七千キロぐらいを飛ばし得るロケットだそうでありまするが、これは核兵器そのものではございません。宇宙衛星でありますとかあるいはロケットというのは、平和利用でわが国でも開発しておるわけでありまして、核兵器と、しからざるものとを区別する必要があろうと思います。
○田渕哲也君 ところが、核弾頭がもし認められるとすると、この核弾頭とそういうミサイルと結びつけることはきわめて容易であります。したがって、ミサイルそのものも憲法ではいいのだ、核弾頭も憲法ではいいのだ。そうすると、それが結びつけば憲法違反の兵器になる。こういうことでやると歯どめがなくなると思うのです。だから私は、核兵器を禁ずるならば核弾頭が憲法に反するというふうにきめたほうが明確であるし、また他の疑惑も招かないと思うのでありますけれども、これについて総理の見解を求めたいと思います。
○国務大臣(田中角榮君) 核弾頭を憲法違反として、憲法の許容する範囲外のものであるときめたほうがいいんだと、これは政治論としてはわかります。よく理解できるのです。しかし憲法解釈というものは、これは自然に解釈されることでありまして、理論としての問題でございますから、攻撃的な兵器でなければ憲法の許容する範囲を逸脱するものでないという解釈は、これは法律上、学問的なものですから。これが兵器として使われては困るということで、つくらず、持たず、持ち込まずという、兵器としては非常に強いワクをかけておるわけであります。ここに政治的なメリットがあるということをお考えになっていただいていいと思うのです。そうでなければ、平和利用をするということでもっていろいろなことを研究しております、研究しておりますが、その過程において、これはほんとうに平和利用を目的として研究されたものであっても、高度の各種工業は高度の兵器産業に直ちに転換できる。肥料工場でも高度になれば毒ガス工場にすぐなるわけであります。これは第二次戦争における西ドイツの例がそういうことであったので、しかしそれは現実問題としての問題でございまして、これは現実の兵器としては一切のものを持たない、持ち込ませない、つくらない、こういうところに政治上の一番の必要性があるものだと思います。ですから憲法解釈というものは、これも憲法の解釈に入れたほうがいい――いいという気持ちはわかりますよ、禁止のほうに入れたほうが安全だということはわかりますが、それは学問的なものであり、理論的なものであり、そういう自由に解釈はできないものであって、憲法解釈と、それから政策的に絶対に三原則を守る、絶対守るということは、ひとつ区別をしてお考えいただきたい。
○田渕哲也君 ただ、非核三原則というのは、総理も言われましたように、これは政策であります。政策というものは情勢の変化に応じて変わり得ることがあるということです。だから、将来においては核兵器も持ち縛るということになるわけです。この点について、どうですか、これは政策ですから不変のものではないと思うのですがね。
○国務大臣(田中角榮君) それは政策として決定をしておるわけでございますが、憲法で許容する範囲のもの――いま核兵器は三原則で、憲法に許容しておっても、つくりません、持ちません、持ち込ませませんと、こういっておるわけですから、これは完ぺきであります。しかし、憲法で許容しておるものは持ちますと、この三つの原則からはずしますという内閣ができた場合は、それは持てるということになります。これはそう思います。それは憲法上容認しているものは持てるということになるわけですが、いずれにしても私たちは、つくらず、持たず、持ち込ませずということはもう強くこれを守ってまいりますから、御協力のほどをお願いいたします。
○田渕哲也君 そうすると、核問題に対する理解としては、総理が衆議院の予算委員会で発言されたことは、現在においては通常の核兵器はすべて攻撃的なものであるから、現在通常核兵器といわれておるものはわが国ば憲法上持ち得ない、そういう意味と解釈していいわけですね。
○国務大臣(田中角榮君) 私が例示をしましたのは、私も核兵器にどのようなものがあるのか、いまよくわかっておりません。しかし大陸間弾道弾というようなものがあります。これはもう絶対に持てないものであるということはよくわかります。地雷などが開発されているという、いま話がございましたけれども、そういうことを私よく知っておりません。知っておりませんが、私たちが理解をする常識的な核兵器、広島や長崎に落ちた水爆、原爆、それから、とにかく何万キロも先の攻撃目標に対して命中をするような弾道弾、私もあまり兵器の問題に対しては詳しくないのですが、私が知るようなものは、これはやはり憲法が許容するものでないという考え方でございます。これはこまかい問題、私が知らない問題たくさんあるでしょうから、もしこんなものがあるのだということの例示が必要であれば防衛庁から答弁します。
○田渕哲也君 次に安保条約の問題に移りたいと思いますけれども、最近、日中の国交回復の実現、また米中の友好の促進、さらにベトナム和平の実現等によりまして、世界の情勢は大きく緊張緩和の方向に進んでおります。私は、戦後の東西対決、冷戦の落とし子として生まれた日米安保条約というものは見直す時期にきていると思いますけれども、この点についての総理の見解をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(田中角榮君) 間々申し上げておりますとおり、日米安全保障条約は維持をしてまいる、再検討とかいろいろなことを考えることではなく、日米安全保障条約というものはそのまま維持をしていくということが基本的な原則であってしかるべしだという政府の従来の考え方は変わっておりません。
 それからもう一つは、アジアの安定というような、安定したアジアの中における日本の安定というようなことは、やはりいままであり現に存在するそのワク組みというものを変えることによって、その平和が乱るという一つのきっかけも起こり得るわけでありますので、そういう意味ではいままでのワク組みをそのまま維持していくことが望ましい状態であると、このような観点からそう申し上げるわけでございます。
○田渕哲也君 最近政府は安保条約の性格づけについて、従来と若干変わってきておるように思います。いままでは脅威あるいは緊張、そういうものがあるから、わが国の防衛力の補完として安保条約が必要なんだという解釈をとっておられました。最近はそれが変わってきて、むしろ力の均衡による抑止力理論というふうになっておると思いますけれども、この点について見解をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(大平正芳君) 情勢が、御指摘のように変わってまいりました段階におきまして、安保条約はどういう機能を持っておるかということが問われておるわけでございまして、そういう面から答えたわけでございます。したがって、安保条約に対する考え方が変わったわけではございませんで、安保条約自体の情勢に対する適応力というようなことが問われますがゆえに、それに対してすなおに答えたまでのものでございます。
○田渕哲也君 私は、いままで政府は緊張や脅威があるから安保条約が必要だと言ってきたと思います。ところが、最近、世界の情勢が緊張緩和のほうに向かってきたから、安保条約の意義づけについて、むしろ既定のワク組みというものがこれからも維持することが必要だという答弁をされております。これは私は力の均衡論ではないかと思いますけれども、いかがですか。
○国務大臣(大平正芳君) 力の均衡ということを一口に言いますけれども、米ソの間の力の均衡ということはたいへん世界にとって重大な問題だと思いますけれども、日本とソ連の間、あるいは日本と米国との間の力の均衡なんという問題を議論しても、これはナンセンスだと思うのであります。
 私どもが申し上げておりますのは、御指摘のように、確かにこの安保条約というものも、その他の安全保障条約というものと同様に冷戦が生んだ産物だと思います。その点を否定するのではないのであります。冷戦時代におきまして、これが冷戦時代の状況に適応しての抑止力を発揮しておったという意味におきまして機能しておったと思うのでございます。しかし、この冷戦の産物である安全保障のメカニズムの中で新しい緊張緩和の状況が出てきたわけでございまして、そしてそういう状況になって、一体このワク組みはどう理解したらいいかということを考えてみますと、先ほど総理からもお話がありましたように、せっかくでき上がりつつある緊張緩和の状況を定着してまいる上におきましては、このワク組みを維持してまいるということが賢明である、そしてこのワク組みはそういう状態を支えておるのであるというように評価いたしておるわけでございます。
○向井長年君 関連。
○委員長(大竹平八郎君) 向井君。簡単に願います。
○向井長年君 ただいま質問をいたしておりますように、実はこれは前の予算委員会で私が、総理並びに外務大臣あるいは防衛庁長官等に質問をいたしました問題でございますが、いわゆる世界の緊張緩和に伴って安保の再検討が必要ではないのかと、こういう質問をいたしました。田渕質問も、そういう立場からただいま質問をやっております。このときに私が質問の要点として、防衛庁の久保防衛局長の論文の中にも有事駐留的な論文が書かれておる。あるいはまた防衛庁長官もこれを肯定したごとく発言をされておる。また、当時は閣内に入っておりませんでしたが、元外務大臣である福田行管庁長官が当時、安保の再検討も必要な時期がきておる、こういうことも国会で発言をされておるのであります。そういう中で政府は、こういう緊張緩和に伴って情勢が変化しておるから安保を再検討しなければならぬのではないか、防衛庁内部でもその論議は出ておるのではないか、またアメリカのレアード国防長官もその趣旨の発言をしておる、こういう実態をあげて私は質問をしたつもりであります。これに答えて最終的には――いろいろ論議がございましたが、最後は外務大臣は、再検討というよりも十分勉強をしましょう、勉強をします、こういう答弁をなされております。また田中総理も、その外務大臣の発言に伴って、政府は十分ひとつ勉強をいたしたいと思う、こう言われてきております。
 それで、そういう勉強の結果どういう状態がいまあらわれておるのか、あるいは検討されておるのか、この点をお伺いしたいことと、あわせて福田行政管理庁長官が、当時外務大臣でございましたので、そのときに再検討しなきゃならぬと言ったあのことが、いまなおそういう考え方を持っておられるのか、その点について福田行管庁長官にもあわせてお聞きいたしたいと思います。
○国務大臣(大平正芳君) 向井さんの前国会の当委員会におきましての御質問に答えまして、あなたの言う安保条約の再検討というのは私は二つの面があると了解します、一つは安保条約自体の再検討、もう一つは安保条約の運用上の再検討と、二つに分けて考えたいと思いますと。前者につきましては、私どもこの基本的なワク組みを変えるつもりはないのでありますと。ただ運用上の面につきましては、現に基地整理も進んでおることから御理解いただきますように、絶えざる検討を加えて運用上の改善をはかってまいるのは当然私どもの責任であると考えておるわけでございまして、いまなおそういう考えに変わりはございません。
○国務大臣(福田赳夫君) 民社党では有事駐留論というのを言っておりますが、私は前から日本の防衛体制、つまり日米安全保障体制はそういう方向に動いていると思うのです。かつて二十数万おった米軍兵力は、今日幾らになりますか、もう三、四万ぐらいしかいないのじゃないか、そういうふうに見るわけです。ですから、まさにその方向に動いておる。ただ、幾らそういう方向に動きましても、実戦部隊というか、第一線部隊というか、それはわが国からなくなりましても、しかし有事駐留を可能ならしめるところの地上の施設、そういうものにつきましては、これはなくすわけにいかぬ。たとえば飛行場がちゃんと整備されていなければ、空軍部隊が有事にわが国を救援するということはできないわけでありますから、これは私は有事駐留というものには限界があるだろう。わが国ももうりっぱな独立国でありまするから自衛力を整備しなけりゃならぬ、そうしてなるべくアメリカのごやっかいにならないようにしなけりゃ、ならぬと、こういうふうに思うのです。しかし、わが国の自衛力だけでは足りませんものですから、そこで有事駐留、有事に救援ということもまた考えておかなけりゃならぬ、そういうふうに思います。そういう意味におきまして、私が安保条約の勉強というようなことを申し上げたかと思いますが、とにかく、わが国は独立国である、自衛力を増強する、そうしてなるべくもう実戦部隊としての米軍はわが国に駐留しない、こういう形のほうがいいのじゃないか、そういうふうに思っておるのです。しかし、誤解がないように申し上げておきますが、日米安全保障体制というのは、わが国が憲法第九条というものを持っておる、その憲法の存在する以上、どうしてもこれをなくするわけにはいかないということが、これは私はもう絶対にそうなければならぬと、こういうふうに考えております。
○田渕哲也君 私は、安保条約に対する政府の説明がやはり変わってきておるということを指摘したいのであります。というのは、緊張緩和によって日本に具体的な脅威の存在が薄らいできたとするならば、安保条約は改めていっていいはずであります。しかし、既存のワク組みを維持するほうが賢明である、むしろ既存のワク組みがあったからこそ緊張緩和がもたらされたと、まあこういう趣旨の発言を総理並びに外務大臣がしておられますけれども、私は、これはやはり力の均衡論に立つものだと思います。既存のワク組みの力の均衡というもので世界の平和が維持されて、また、それが定着したことが緊張緩和を生んだと、こういう考え方だと思いますけれども、私は、こういう考えに若干疑問を持っております。なぜならば、こういう考え方に立つと、既存のワク組みの中での防衛力の整備計画、増強方針、そういうものにわが国が巻き込まれるおそれがないだろうか。もう一つは、やはり力の均衡論ですから、あらゆる外交政策の推進について力が背景になる。具体的に申し上げますと、まず第一の点については、最近の緊張緩和の情勢にかかわらず、わが国の防衛計画、防衛力の整備計画というものは、年々非常に大きくなってきて増強されつつある。これは、やはり、ニクソンドクトリンによるアメリカの撤退、その穴埋めをするのが日本の防衛力だという、こういう考え方と関連があるのではなかろうかと、こういう気がするわけですけれども、この点についてのお答えを求めたいと思います。
○国務大臣(大平正芳君) 私どもが御説明申し上げておるのは、世界全体を通じまして既存の条約上のワク組みにつきましては大きな改変はないと、そういう状況のもとで、ヨーロッパにおきましても、アジアにおきましても、緊張緩和の芽ばえが出てきたということを一つ申し上げておるわけでございます。そして、ヨーロッパにおきましても、そういう状況にかかわらず、既存の条約のワク組みについては何ら変改を加える動きは出ていないと。アジアにおきましては、緊張緩和の定着状況がなお不安定性がヨーロッパに比べてはあるような状況でございますがゆえに、なおさらアジアにおきましては既存のワク組みにつきましては軽々に手をつけるべきでないという考え方を第二に申し上げて、そして、もしこれに手をつけるというようなことがあると、逆に新たな緊張を生むおそれがありはしないかということを懸念いたしておるということも表明いたしておるわけでございます。で、従来の政府の安保条約が持つ機能につきましての説明が変わったという御指摘であれば、甘んじて受けたいと思いますけれども、正直に現在の状況を見た場合に、そういうことが言えるのではないかと考えております。
 第二点の、しからば、そういう状況のもとにおいて日本の国防力を増強してまいるということは矛盾しないかという御指摘でございます。第四次防衛力整備計画というものが国防会議に付議されましたときに、内閣のほうからいまの国際情勢をどう判断すべきかということを私ども外務省に検討をゆだねられたわけでございます。外務省といたしまして国防会議に出しました意見は、いま前段に申し上げたようなことに加えて、日本の防衛力の整備計画というものも、これをむやみに増強するという必要はなかろうと。しかし、これを軽率に削減するというようなことも国際情勢上微妙なことでございますので、まあ現在の防衛力というようなものを手がたく維持していくという心組みで当たっていただければしあわせだという意味のことを答えたわけでございまして、問題は、第四次防衛力整備計画というものが、現在のわが国の自衛力の整備計画として飛躍的にこれを増強するものであるかどうか、そうではなくて、第三次防衛力整備計画というものが時代の進展に応じていろいろ入れかえるべきものは入れかえる、更新すべきものは更新するという性質のものか、どちらかの判断にかかってくると思うのでございまして、私の判断では、第四次防衛力整備計画というものは、後段のほうであると、第三次防衛計画と質的に変わったものではないんだ、時代の進展に応じましてその内容につきまして更新すべきものを更新しようという内輪なものであるので、これを防衛力の増強というように評価する立場を私はとっていないわけでございますので、全体として緊張の緩和の状況を定着させて、そして新たな緊張を生まないように配慮してまいる上から申しまして、安保条約の堅持と、そして防衛力を最小限度整備してまいるという方針のもとには、根本的に矛盾がないという考えでおります。
○田渕哲也君 ただいま、外務大臣は、ヨーロッパの例を引かれてワク組みの必要性を言われましたけれども、ヨーロッパの場合は、NATOという集団安全保障機構があって、そのNATOとしての防衛力整備方針というものに従ってやっておると思います。これと同じ考え方に立つならば、わが国は日米安保体制というものに従って相互的な防衛力、そういうものを考えていかねばならない立場ではないかと思いますが、この点はいかがですか。
○国務大臣(大平正芳君) NATOが、アメリカ、カナダを含めて、十数カ国で構成されておるということは、承知しております。日米安保条約は二国間の条約であるということも承知いたしておりますが、その性格に別に変わったものはないと思います。
○田渕哲也君 そうだとすると、ニクソンドクトリンでアメリカの戦力がアジアから撤退していくと、それを穴埋めするというのは、NATOと同じような考え方で日米安保体制を考えるなら当然出てくると思いますが、いかがですか。
○国務大臣(大平正芳君) 安保条約それ自体にはちゃんとした規定がございまして、わが国の防衛と極東の平和と安全をはかるのが目的であるということでございまして、今後、わが国は、この安保条約の条章というものを軸にいたしまして、今後の事態の推移に応じて自主的に対処すればいいわけでございまして、アメリカの防衛力の撤退に応じて生じた間隙を日本が埋めなけりゃならぬという約束は安保条約にありません。
○田渕哲也君 安保条約にそういう約束はなくても、NATOと同じ機構を日米安保条約に求めるならば、そうならざるを得ないということを私は言っているわけですけれども、この点はいかがですか。
○国務大臣(大平正芳君) それはあなたと私と見解が違うわけでございまして、私はそういうようにならぬと思います。
○田渕哲也君 私は、日本の置かれた特殊な状況――平和憲法が存在し、軍備を持たないという、こういう点から考えて、ヨーロッパと同じような論理で考えてもらっては困るのではないかと思うのです。だから、ヨーロッパで既存のワク組みが存在しておるから、アジアにおいてもそうだという外務大臣の説明というものは、私は少し違うのではないかという気がするわけです。
 それから関連して聞きますけれども、最近、やはり、力を背景にした外交の推進というような考え方が政府にあるような気がします。これは大平外務大臣の昨年九月十九日の参議院の内閣委員会での答弁の中にあったわけですけれども、外交を推進する上において、経済力、行政力、情報力などとともに、自衛力も一つの力であるということを言っておられます。私は、この考え方というのは、やはり力の外交を意味するのではなかろうか、また、日本の憲法第九条の精神にも反する考え方ではないか、こう思うのでありますけれども、外務大臣の見解をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(大平正芳君) 私は全然そのように考えないわけでございまして、私が申し上げた意味は、別に力の外交をやろうなんというような大それたことを言っておるつもりはないのでございます。日本が持っている力、これはいろいろな力がありましょう。そのときに申し上げたように、経済力もあれば、情報力もあるし、科学技術の力もございましょうし、もっと言えば国民の道義的な水準、その他いろいろあるわけでございましょうが、自衛力というものも、いま十分の整備を見ておりませんけれども、現に持っておる自衛力も、わが国の持っておる力の一つではないかということを客観的に申し上げたわけでございまして、これを柱にいたしましてわが国の外交をやろうなんという、そういうつもりではないことは、全体の文脈を推論していただいて御了解をいただきたいと思うのであります。
 第一、力という問題でございますけれども、国連も一九四五年に第二次大戦の災禍のあとでできたのでございますけれども、あそこでは、力によって、つまり武力の行使によって国際紛争を解決しようというようなことはもう断念しようと、つまり戦争を非合法化したわけでございますけれども、あの国連憲章におきましても、第五十一条で、それぞれの国の自衛権、個別的自衛権、そして二国以上の国との間で結ぶところの集団的自衛権の行使を例外として認めておるわけでございまして、人間は不完全なものでございまして、力というようなものを無視するほど進化していないと私は思うのでございまして、わが国の憲法におきましても、たびたび御論議がございましたように、自衛力を否定しているわけでは決してないのでございまして、私の発言というようなものが憲法にいささかもかかわりがあるなどということは、私は全然考えておりません。
○田渕哲也君 一般的な国の力として自衛力というものを言われたわけじゃないわけです。外交を推進する上の一つの力であるということを答弁されておるわけです。これは議事録がここにありますから読んでもいいと思いますけれども、これは社会党の山崎委員の質問に対して――山崎委員が大臣に聞き返しております。「いま大臣から、ある程度の力を持たなけりゃ外交できない――そうすると、自衛隊の増強というものは外交を推進する上の力というふうに私ども理解していいのか。」と、この質問に対して、大臣は、「私は軍事力ばかり申し上げたつもりはないわけでございまして、有形無形のあらゆる力、日本で申しますれば、日本の持っている経済力、行政力、情報力、いろんな力を勘定に入れなきゃならぬと思いますが、同時に自衛隊の持っておる力も一つの力である」と、こういう答弁をしております。これは外交を推進する上の力として自衛力を一つの力と認めておるということだと思いますけれども、いかがですか。
○国務大臣(大平正芳君) 当然のことと考えています。
○田渕哲也君 私は、そうすると、やっぱり憲法の精神から見ておかしいのではないかと思うのですね。外交を推進する上において自衛力という一つの戦力を背景にするというのは憲法に反すると思いますけれども、いかがですか。
○国務大臣(大平正芳君) 憲法は自衛力を認めておるわけでございまして、そういうためにわが政府も営々として苦労いたしておるわけでございますが、私は、いろいろな国民の持てる有形無形の力に加えてそういう力はあるということもあわせて念頭に置いて外交を推進してまいることは、当然私の責任だと考えております。
○田渕哲也君 私は、まあこれは憲法の解釈の問題になるかもわかりませんけれども、第九条には、「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決をする手段」とはしないと。これは外交を推進をする上の一つの力として武力を考えるというのは問題ではないかと思いますがね。
○国務大臣(大平正芳君) 問題は、たびたび申し上げておりますように、わが国は平和外交を第一義的に推進してまいらなければならぬということは、歴代の内閣、現内閣におきましてもそういう方針をたびたび宣明いたしておるわけでございまして、まず平和外交というものを精力的に鋭意推進してまいりますということが私の第一義的な義務であると考えておるわけでございまして、力によって国際紛争を解決することにたよって外交をやろうなどという、そういう気持ちはもう毛頭ないわけでございます。ただ、日本の持てる有形無形の力というものは、われわれの外交を展開する場合におきましてもちろん念頭に置いて、その力を平和外交にどのように有効に活用するかということが外交だろうと思うのでございまして、それをミスユースするというようなことになりますとたいへんなあやまちをおかすわけでございまして、日本の過去の歴史がそれを示しているわけでございまして、そういう間違いは繰り返したくないと、こういう方針で推進いたしているわけでございます。
○田渕哲也君 平和外交といいましても、確かに武力を背景にした平和外交もあると思うのですね。自分のところの武力の力をもって世界の平和を維持するという行き方もあると思います。しかし、わが国の平和外交は、そういう要素があるべきではないと思うのですね。だから、自衛隊を外交推進の一つの要素として加えられたことは、大臣の気持ちはそうではないかもわかりませんけれども、やはり誤りではないかと思うのですが。
○国務大臣(大平正芳君) わが国の持てる有形無形の力ということが背景にあるということを客観的に申し上げたわけでございまして、わが国の外交がかりそめにも武力に肩入れをしていただかなけりゃやらぬというような、そんなことは毛頭考えていないことは、全体の文脈を精緻にお読みいただきまして御理解をいただきたいことだと思います。
○田渕哲也君 私は、この安保条約の解釈の推移について、やっぱり非常に危険性を感ずるわけです。そこで、憲法上許された防衛力の限界というものをどこに引くかというのが一つの大きな問題になるわけです。衆議院の予算委員会において、政府は、防衛力の限界についての防衛庁の見解を出されましたけれども、後に撤回をされました。私は、そのとき出された防衛庁の案である陸上十八万人、海上二十五ないし二十八万トン、航空約八百という一つの数字というものは、総理の撤回によって全く白紙になったのか、何ら意味がないものになったのか、あるいは防衛庁内部においては一つの整備計画のめどとしてまだ存在しておるのか、この点について明らかにしていただきたいと思います。
○国務大臣(増原恵吉君) 三次防が終わりまして四次防をつくるという段階になりまして、たいへん、何といいますか、全体の金額など一応倍のような額というものになると、とどまるところを知らぬのではないか、防衛力の限界を示せという声が国会の中の質疑応答においてもしばしば御質問になるようになりました。その段階で、総理から、平和時の防衛力の限界について勉強をしてみろというお話がありまして、私どもがこの指示に基づきまして勉強をいたしたものでございます。防衛力の限界は、いままで御議論になりましたように、憲法上の限界というものが一つ厳然たるものがあるわけでございまして、これはわが国を防衛する最小限度必要のものという、抽象的ではありましてもこれは憲法上の動かせない限界があるわけでございます。しかし、その限界の中で、さらに一般国民の理解を深めるための防衛力の限界というものを考えてみろというのが総理の御指示であったわけでありまして、私どもは、この平和時というものを、これを単に抽象的なことばでなしに、緊張緩和がだんだん進んでおるいまのアジア、世界の情勢を平和時と考えると、この平和時が続いていくという前提のもとにわが国の防衛力の限界というものを考えてみるという勉強をいたしたわけでございます。出しましたものは、いまあなたがお述べになりましたような数字でございまするが、これは、衆議院における議論の中で、防衛庁のつくった案ということでは不十分ではないかと、政府の案、あるいは国防会議にかけて政府の案とするという意思はないかという御議論が出ました。御承知のように、この平和時の防衛力の限界というものは、いろいろの前提条件を付してあるわけでございます。この前提条件というものを政府のそれぞれの所管庁等が長期にわたって認定をするということはたいへんむずかしいのでございまして、私ども防衛庁としては、それを、何といいますか、大きく前提を設け条件を設けたという形で平和時の防衛力の限界をつくった。したがって、総理としては、いまこの防衛庁でつくりました平和時の防衛力の限界を政府の案とする考えはないという御答弁があり、これに基づきまして、衆議院の予算委員会で、理事会の申し合わせもあり、これを撤回させるというふうに総理が述べられたわけでございます。しかし、このつくりました、あなたがいま数字としてお述べになりました平和時の防衛力の限界というものは、いろいろの前提があるわけでございまするが、防衛庁としてはさらにもちろん引き続いてしっかり勉強をいたさなければなりませんが、防衛庁が防衛力を整備をしていくという仕事の上では、何といいますか、重要な参考となるべきものである、さらにまた、これを絶えず勉強をし続けていくというべきものでありまして、あの数字が全然無意味に消えてなくなるというふうな形のものではあるまいというふうに私どもは考えておるわけでございます。
○田渕哲也君 私は、防衛力の限界を考える場合、これはまあ数字で出してそれをもとに論議をするということも重要だと思いますけれども、その数字の根拠というものがあるはずだと思うのですね。やはり、防衛力の限界を考える場合には、わが国が想定される侵略に対してどの程度の防御をするかという限定がなければいかぬと思うのです。いかなる侵略に対してもわが国が全部それを排除するだけの防衛力を持つのだということではないと思うのですね。特に日米安保体制のもとにあっては、わが国の自衛隊がやるべき範囲というものは限定されて、それによって防衛力の限界というものが出てくると思うのですけれども、そうすると、第四次防策定にあたっての防衛構想というものが出ております。これは一段階、二段階、三段階に分けてありまして、まず第一段階では、間接及び小規模の直接侵略に対しては自衛隊が独自で排除するということが書いてあります。防衛庁がその限界を設定されるにあたって、この場合の侵略の規模はどの程度のものと想定されておるのか、お伺いをしたいと思います。
○国務大臣(増原恵吉君) わが国の防衛は、総理からもしばしば述べられておりまするように、日米安保条約というものを基盤としておると申しまするか、背景としておると申しまするか、日米安保条約と相まっての形で防衛力、自衛力を整備をいたしておるわけでございます。三次防が終わり、四次防ができまする際の情勢判断は、先ほど申されたように、外務省で情勢判断をつくってもらう。緊張緩和という傾向、この緩和の状況が続くという情勢判断をしていただいたわけであります。したがいまして、これに基づいてつくりました私どもの第四次防衛力整備計画は、日米安保条約を背景とし、緊張緩和の状態が続いていくという前提のもとで考えておるわけであります。そうして、防衛構想に、間接侵略及び小規模の直接侵略に対してはわが国が独力で、それ以上のものに対しては米国の協力を得るというふうにいたしておるわけでございます。間接侵略は独力でやるということは明確でございまするが、小規模の侵略、外部からの侵攻ということ、これはたいへんむずかしい観念でございまして、ここでどういうものであるということを数字で明確に申し上げることはたいへん困難でございます。そうして、この防衛力整備の基盤は、先ほど外務大臣等の質疑応答の中で外務大臣が申されましたように、私どもは、周辺の軍事的脅威というものに対するという考え方を、まあ当初はそういう考え方があったわけでございますが、そういう考え方よりも、安保条約等の協力のもとに必要最小限の自衛力を整備することによって周辺よりの侵攻あるいはそういう意思が起こらないようにするという、通常抑止力ということばで申されておりまするが、そういうことを考えまして、防衛力の整備を安保条約と相まってやっておるということでございます。ごく、何と申しまするか、大ざっぱな概念がぜひ必要であれば、防衛局長から若干の説明をさせまするが、これは的確に小規模な直接侵略とは何かということを申し上げることはたいへん困難であるわけでございます。
○田渕哲也君 ただ、限界の数字が出ている以上は、その数字をきめるにあたって想定されたものがあると思います。そういうものなしに数字を出されたわけじゃないと思うのですが、そうすると、その小規模な侵略というのは、どの程度の規模に対処できるかということはお答えいただけると思うのですがね。
○政府委員(久保卓也君) まず申し上げねばならないのは、平和時の防衛力の中身とそれから四次防の防衛力の中身とは違っているということであります。したがいまして、平和時の防衛力においてどういうことを考えるかということは今後詰めてまいりたいと思いますが、従来四次防で考えておりましたのは、たとえば一昨年春に発表いたしました四次防原案五兆何千億といった場合の計画のときには、十年後における周辺諸国の軍事能力というものを見積もりまして、その場合に、どの程度のものがあれば、ある程度の対応ができるか、それを一応そのときにおける整備目標にしたわけであります。それは、しかし、原案のころでありまして、そのときであれば、いま御質問の小規模はどのぐらいの兵力であるか、あるいはそれが大規模になった場合にはどれぐらいを見積もっておったかということは申し上げたわけでありますが、現在の四次防の場合には、一応将来の目標を設定いたしませんで、これは平和時の防衛力との結び合わせを政府としてはつなげておりませんから、単に三次防の計画の延長という形で計画したものでありまするので、どういう時期に侵略自体を想定するか。また、四次防の防衛力そのままで侵略を防止するというわけではありませんで、その間にいろいろの準備を行ないます。つまり、準備期間というものをどういうふうに想定するか。数カ月であるか、一年以上であるかといったようなこととのからみ合いがありまして、具体的にどの程度のものということはなかなか言いにくい。しかし、どうしても観念的な数字を申せということであれば、まあ数個師団のうちの低いほうというふうに御理解いただければよろしいかと思います。
○田渕哲也君 いまの防衛局長の説明にも出てきましたけれども、先日の衆議院の予算委員会における永末委員の質問に対して、総理の答弁では、防空も含めて現在は有事即応体制がないというような答弁をされました。この点、いかがですか。
○国務大臣(増原恵吉君) 防衛力を整備しまする以上は、いわゆる有事即応であることが本来の形でございます。しかしながら、整備のいま段階にありまするわが国の防衛力といたしましては、なかなか有事即応というわけにまいりません。有事即応ということばにも解釈に幅があるようでございまして、外部からの進攻があれば直ちに完全にこれを防御し戦えるという、完全に整った形というあれもありまするし、それほどまででなくとも、若干の猶予期間等による補修整備をすればこの外部からの進攻に対しては戦えるというものもあるわけでございまするが、本来は有事即応でなければならぬ。したがいまして、御承知のように三次防ではやはり有事即応ということを目ざしましてやるということを書いたわけでございます。しかしながら、まだいまの日本の整備段階、そうして、今度四次防をつくりまする際の外務省を中心につくってもらいました情勢判断等に基づきまして、私どもは、いま有事即応という形に持っていくことよりも、そしてなかなかそれは困難なことでもある、それよりも、適当な装備をつくり、これを教育訓練に支障のない形において整備をする、ある期間を得るならば、その間に有事即応の体制を整え得るというふうにすることが適当であると考えまして、主たるところは、いまはなかなか有事即応という形に整備が困難であるということでありまするが、四次防の基本方針からは有事即応ということを抜いたのでございまするけれども、本来は、この自衛力の整備は有事即応であるべきであることはもう間違いございません。そういう意味で四次防というものはつくられたと、したがって、教育訓練等が適切に行ない得るという形の装備を整えていくというふうになっておるわけでございます。
○田渕哲也君 そうすると、四次防終了時には有事即応体制ができておるんですか、できていないんですか。
○国務大臣(増原恵吉君) 四次防ができ上がりました段階では、いわゆる進攻がありましたときに直ちにこれに対処して有効な反撃をするという意味の有事即応はできておらないわけでございます。
○田渕哲也君 それでは、いつできるわけですか。
○国務大臣(増原恵吉君) いつできるかということをまだ申し上げるだけの段階に達しておらない、それだけの検討をまだいたしておらぬわけでございます。
 先般途中で撤回をいたしました、先ほど言及になりました「平和時の防衛力の限界」、「平和時の防衛力の限界」として申しました、陸十八万、海二十五万トンないし二十八万トン、空主力八百機というふうなものでございまするが、これは基幹の力としては大体四次防と似たようなもの、海のほうがだんだん艦齢に達しまするものを新陳交代する場合に、近代化されたものを持ってきまするので、トン数もふえる、力もふえるというようなことがあり、航空機もF86なんというものをファントムでかえるということで力がふえてくるということはあるわけでございますが、基幹の十八万、二十五万トンないし二十八万トン、八百機というようなものは、「平和時の防衛力の限界」としてお示しをしましたものは大体四次防でそろうわけでございまするが、しかし、それだけでその「平和時の防衛力の限界」というものを整えましても、平和時の防衛力の説明にいろいろ申し上げてあるわけでございまするけれども、その時期の整備ではまだいわゆる有事即応という形には若干の時間が要るという考え方で、そうしてまた、この「平和時の防衛力の限界」をいつ整えるかということは、まだ研究で詰めてないわけでございます。そういうことで、この有事即応ということと四次防の完成なりあるいは「平和時の防衛力の限界」なりが直接関係があって、それができれば有事即応になるということで計画を練ったものではないというふうに御了解を願いたいのであります。
○田渕哲也君 私は、わが国の防衛の考え方がやっぱり基本的に間違っているんじゃないかと思うんです。艦艇をそろえ、航空機をそろえ、装備をそろえることに重点を置いて、実際の侵略に対して対応するという面では、有事即応がいつになったらできるかわからない。このような防衛計画のあり方というのは基本的に間違っているんじゃないかと思います。四次防で五兆円もの金を使って、その結果として実際には役に立たないということになるのではなかろうか、この点についてお伺いをしたいと思います。
○国務大臣(増原恵吉君) 進攻がありましたときに直ちに有効に打って返すことができないと申し上げたのでございまして、この四次防ができ上がるという段階になりますると、相当の陸海空にわたって装備が完成時には充実される。いまよりもずっと充実をされるわけでございます。一つには、たとえば各種の弾丸であるとかミサイルであるとかというふうなものは、これはたいへん価格も高いし、これをいま整える、ことにミサイルなどはさらに開発がどんどん進んでいく段階でもありまするので、有事即応の形でミサイルを整えるということよりも、現在においては必要な陸海空の装備を整え、そうしてこれをしっかり訓練された者によって十分にこなしていく。そうして、ある程度の期間がありますれば弾丸、ミサイルその他のいわゆる有事即応に必要な体制に持ち込めるという意味でいま防衛力を整備をいたしつつある。まあ、現在の状況の中でも警戒管制その他のものについてはある程度のもちろん有事即応体制をとっておりまするが、これもまあ厳密に言わせますると有事即応でない面が若干まだあるということでもありまして、ある程度の有事即応体制をとれているものもあるわけでございまするが、陸海空の大切な装備につきましては、この必要な要員、その訓練、そうして装備を得ることも要員を訓練することもなかなかこれ二年、三年、五年というふうな短日月にできないものでございます。最もこの要点となるべき必要な面を四次防において充実整備をするという考え方でやっておるわけでございまして、申し上げたように、有事即応はやらなければならぬ目標である。その段階としての四次防の整備のいたし方というふうに御理解を願いたいのであります。
○田渕哲也君 私は装備をふやすことと有事即応とは全然無関係だと思うんですね。装備が少なくてもそれが動ける態勢にある、あるいは敵の攻撃下にあって持続してある程度の期間戦力となり得るという体制が有事即応体制だと思うのです。現在は装備だけあるけれども、装備と人間と弾薬とそれから全体的な作戦計画とかそういうもの、全然その系統がとられていないわけですね。バランスがとられていないわけです。だから、幾ら軍艦をふやしても飛行機をふやしても、ある専門家に言わせれば、敵の十分間の攻撃で全部そればスクラップになるということを言っております。われわれはスクラップをつくるために国民の商い税金を使って四次防をやるわけじゃないと思うんですね。金を使うからには役に立つように使ってもらいたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(増原恵吉君) もとより大切な国費をいただいて防衛力を整備するわけでありまするから、最も有効なものをつくらなければいかぬ。たびたび申し上げましたように、有事即応であることを目ざしていっておるわけであります。しかし、その中でそれが達せられない段階において、いま四次防でどういう形の整備をすることがよろしいかと申しますると、私どもはいろいろ検討の結果、やはり装備のちょうど新陳交代の時期にも海空が当たっておるということもありまするが、装備の改善充実、これはなかなか短日月にできません。そうして、これをりっぱに動かしていく兵員の訓練、要員の訓練というものも、なかなか簡単にいくわけではありませんので、そういうことにいまは重点を置いて、そうして弾丸、ミサイル等の充実その他の問題は、ある程度の、何というか、リードタイムを得ることができれば、これによって十分有事即応体制に移り得るという見通しのもとに四次防というものを考えておるということでございまして、あくまでも、あなたのおっしゃるとおり、目標は有事即応である。そうして四次防で整備するものは、たいへん大きな陸海空の装備ではございません。わが国の憲法下にふさわしい必要限度のものというものをいま装備として整備をしてもらいたい、りっぱな要員の訓練をいたしたい、こういうことであることを御理解を願いたいと思います。
○田渕哲也君 この問題について最後に総理にお伺いをしたいと思いますけれども、私は、いろいろ申し上げましたように、現在の四次防の計画にしても、装備ばかりふやすけれども、ほんとうにどれだけ役に立つか疑問に思います。ほんとうに役に立たないものなら、五兆円も金を使うことはむだではなかろうか。ほんとうにああいうもので国民の生命財産をいざというときに守れるんだろうかという気がするのですけれども、もちろん、平和を守るためには、装備だけではなくて、平和外交なりいろいろなほかの施策というものが必要ですけれども、そういうものとのバランスにおいて、現在の五兆円の四次防計画というものは、金ばかりかけて役に立たないんじゃなかろうか、こういう気がしますけれども、これからの防衛計画のあり方について、一ぺんそういう面から検討していただきたいと思うんですが、総理の答弁を求めたいと思います。
○国務大臣(田中角榮君) 防衛力の整備は、有事即応できるような体制を目標として整備をされなければならぬことは言うをまちません。しかし、防衛力だけでもって平和が維持されたり独立が維持されるわけはないんで、御指摘のとおり、平和外交の推進、また国内体制の整備、いろいろな問題があるわけでございまして、相まって日本の独立と自由が守られる、こういうことであろうと思います。
 防衛力というのは一朝一夕になかなかできないわけでありますし、これは相手のある話であります。相対的な問題の中で整備が進められなければならないというわけでありますから、装備だけではなく、人間の問題もあるし、教育の問題、精神的な問題、国を愛する、国を守るという気概というものもあるわけでございます。そういう意味で、いま政府が行なっております防衛力の整備というものが必要であり、有事即応体制整備のために努力を続けていかなきゃならぬと思います。
 最後に一言付言しますと、やっぱり国民の理解も十分得て、理解と協力のもとに日本の防衛力が整備されることが望ましいと、こう考えております。
○田渕哲也君 次に、国鉄の順法闘争についてお伺いしたいと思いますけれども、まず初めに、順法闘争が原因となって起こった上尾駅の事件、この事件についていろいろなうわさなどが飛んでおりますけれども、その後の調査の結果明らかになった点を御報告していただきたいと思います。
○国務大臣(江崎真澄君) 埼玉県警におきましては当日の午後、それから引き続いて十八日の午前午後、現場におもむきまして、駅長その他関係者、参考人に詳細の事情を徴しました。それから当時逮捕をしました七人の者につきましても十分調査をしたわけです。これは具体的な事犯でございまするから、政府委員から詳細説明をさせます。
○政府委員(山本鎮彦君) その御指摘の件は、三月十八日付の新聞記事に出ている点だと思うわけでございますが、その内容の第一点は、かぎがなければ入れないはずの運転台の中の計器がこわされていたということであるが、運転台のドアは内側にいわゆる忍錠、こういう錠がかかっていて、通常はかぎがなければあけることはできないが、この忍錠は、しかし、窓ガラスを割ればそこから手を入れてはずすことができますし、また、ガラスを割らなくても、ドアの上にあるガラス窓はいわゆる落とし窓になっておりまして、普通の場合では、この落とし窓をこぶしでたたいてゆさぶれば簡単に窓が落ちてくる。そこから手を入れれば中の忍錠がはずれる、はずすことができるというようになっておりますので、群衆はこのいずれかの方法で運転台に入って内部を破壊したものと推定されておりまして、必ずしもかぎがなければ入れないと、こういう状態ではないということでございます。
 次に第二点として、同じくかぎがなければあかない配電盤の中がこわされ、しかも、高圧の配電盤には手が触れておられなくて、低圧の配電盤だけがこわれていると、こういうことでございますが、この電車の配電盤には低圧用の配電盤と冷房高圧配電盤、この二種類がございます。いずれもこの装置を見ますと、観音開きのとびらの中央内側に忍錠がかかっていて、通常の場合、かぎがなければあかない、こういう仕組みになっておりますが、このとびらの鉄板は非常に薄いものでできておりまして、厚さが一・五ミリということでございます。したがって、取っ手を強く引きますと、とびらが弓のようにたわんで内部の忍錠がぽんとはずれる、こういう仕組みになっておるわけで、とびらが簡単にあきますので、被害電車の配電盤は、検分をいたしますと、いずれもこういう方法でこじあけられたものと思われます。また、高圧の配電盤には手をつけてないということでございますが、被害電車の配電盤は、低圧、高圧両方とも、実際見ますと破壊されております。しかも、高圧の配電盤はいずれも冷房用のものでございますので、冬季間の現在は電流が通じていないというので、低圧のものよりもむしろ危険がないというわけでございますが、群衆はそんなことに関係なく、無差別に破壊したものというふうに認定をいたしております。
 第三点は、デスコン棒が傷ついていると、こういうことでございますが、このデスコン棒と開閉棒、これはいずれも高圧電流の開閉の用具でございまして、長さ五十センチぐらいのプラスチック製の絶縁体の先にしんちゅうの金具がついておりまして、このデスコン棒のほうは、この金具が横に突き出ておりまして、その先端がまるい形になっておりまして、開閉棒のほうは金具の先端が手かぎのようになっているものでございますが、この被害列車の計器類や配電盤は、その破損状況から見ますと、ほとんどこのどちらかの棒でたたいて破損したというふうに推定できる状態でございます。しかし、この二種類の棒は、運転席の後方の運転台に入ればすぐ目につきやすい場所に各一本、すなわち二本ずつ置かれておりまして、しかも、取りはずしが非常に容易にできるということで、事件直後にはそのほとんどは、見聞いたしますと、所定の場所にはなくて、ホームや車内のデッキ等に放置してある状況でございます。しかも、その先のしんちゅうのさびがはげているというようなことで、かたいものでたたいたあとがついておる状況でございますので、群集がこの棒を持ち出して車内の破壊等に使ったということが推定されます。
 以上のような状況で、これらの犯行は、特別の知識を持たない一般の者でも十分行なえるもので、新聞記事の内容のように、特別に国鉄内部の事情をよく知った者でなければできない、こういう事実はいまのところ出てきておりません。しかし、なお、今後もこれらの資料をいろいろな角度から検討して慎重に捜査を進めていきたい、こういう考え方でございます。
○田渕哲也君 いずれにしましても、私はこの事件は非常に重大だと思います。
 総理にまずお伺いしますけれども、この責任はどこにあるとお考えですか。
○国務大臣(加藤常太郎君) お答えします。
 これはやはり国鉄当局、そして組合双方の責任であり、政府もよくこの点については反省しなくてはならぬと思っております。
○田渕哲也君 総理は、衆議院の予算委員会で、順法闘争は違法だという旨の答弁をされました。もう一度確認したいと思います。
○国務大臣(加藤常太郎君) 私からお答えいたします。
 順法闘争という名前でありますが、やはり法規の解釈を離れまして、かってなしかたで業務を行なう、そして運営を阻害する、これは公労法の禁止する争議行為であることは明らかであります。これは総理から言わぬで私から申し上げても同様であります。
○田渕哲也君 そうすると、この違法なストによって国民の足が奪われた、その違法な状態を放置しておるというのは、これは政府の責任じゃないですか。もちろん、国鉄当局も責任があると思いますけれども、政府にも責任があると思いますが、いかがですか。
○国務大臣(加藤常太郎君) 健全な労働運動の発展、これは大いにやらなければなりませんが、やはりあらゆる問題は国民的視野――国民に迷惑を及ぼすようなことをやることは、これは政治も労働運動も成功いたしません。さような意味で、かような労使の問題、これを放任したのは政府の責任だと申されますけれども、これは間髪を入れず公労委にいろいろ申請いたしまして、公労委も打ち切った。政府も、これに対しましていろいろな対策をとり、そして機に臨み、推移によっていろいろ対策をとりましたが、政府の責任だといえば責任でありますけれども、やはり労使双方が国民的視野に立ってこれを解決する、これが当然でありますので、政府の責任だと言われますと、しからば、これを解決する場合には組合の言うままにいろいろの条件をのむと、これがすなわち組合の健全な発展になるかというと、これはなりません。また、いろいろな運営の問題につきましても阻害を来たしますので、責任かどうかということに対しましては、これは見方、見方によってそういう見方もありますが、必ずしも政府の責任であるとも申せませんし、また、あるとも言える点があるかもわかりません。よく政府も反省いたしております。
○田渕哲也君 私は、確かにまず第一義的には労使の問題だと思います。しかしながら、違法なストライキがあれだけエスカレートして国民の足が奪われ、そして国民がやったことも私はこれは違法なことも数々あると思います。その後も乗客が自主ダイヤを組ませた事件、あるいは規定を越えて料金の払い戻しを強要した事件、いろいろ起こっておりますけれども、私は、こういう法律に反した、法秩序が無視された状態を放置して、しかも国民の足が奪われたから、これは自衛上、自己防御でやむを得ず国民がああいうことを起こしたのではないかと思うのです。ああいう大きな事件になるまで放置したのは何といっても政府に責任があると思うんですけれども、この点いかがですか。
○国務大臣(加藤常太郎君) 先ほどから申し上げたように、これはもう無為無策、放任しておるのじゃありません。政府を代表いたしまして、私が二回にわたり労使双方を呼んで十分話し合いをいたしました。これはもう詳細になりますが、三十八万の全国鉄の組合の中で五万の方が、幹部の方は得心したが、帰ったらそれがなかなか実行できないと。いろいろな微妙な点がありますからここで申し上げることはできませんが、政府といたしましても、無為無策でなく、やるべきことはやりました。しかし、違法であるかと、そういう場合には刑法の罰がありませんので、これは何といっても労使双方がやはり国民の迷惑を考えて、ほんとうに良識を持って双方がこれに対処する、これが私は最大の要素と思います。政府も、これに対しましてよく反省して、責任も感じますし、今後かようなことがないように対処することは、これは善処いたします。
○田渕哲也君 今回の順法闘争によって国民が受けた被害というのはどれくらいありますか、国鉄総裁。
○説明員(磯崎叡君) なかなか計量化できない問題も多々ございますが、運転休止しました列車の本数等によりまして一応の概略を御説明申し上げます。
 旅客列車におきましては約一万二千本運転休止いたしました。全体の約五%に該当いたします。貨物列車におきましては約二万三百本運転休止いたしました。これは約二百六十万トンの輸送の減となりました。全体の約三〇%の減でございます。この旅客列車の運転休止、貨物列車の運転休止のほかに、列車の遅延が相当あったわけでございますが、これがいろいろな形で国民に御迷惑をおかけいたしております。
 きわめて申しわけないけが人の数でございますが、九十二名けがをされておりますが、その他の損害につきましては、なかなか計量化できませんで、一応この列車の本数で申し上げます。
○田渕哲也君 なかなかはっきりつかめない部分もあると思いますけれども、具体的に因果関係がはっきりし、具体的に損害額がはっきりしておるものについてば、国鉄は被害者に対して損害賠償すべきではありませんか。
○説明員(磯崎叡君) 貨物輸送におきましては、利用者の方々からのお申し入れによりまして、たとえば滅失、棄損、遅延等の問題につきましては損害賠償をいたすことにいたしております。また、旅客のほうにつきましては、いわゆる計量化できない面はなかなか賠償の求めに応じかねますけれども、たとえば、いまのけがの方々などにつきましては、もちろん、私のほうが責任を持ちまして治療その他、お見舞い等に当たっております。
 その他、国鉄としての直接受けました損害と申しますのは、旅客におきましては払い戻し金額が約十億でございます。そのほかに、先ほど申しましたとおり、相当列車の運転休止をいたしましたので、旅客輸送におきまして約四十三億の予定収入に対する減でございます。貨物におきましては四十八億の減収、これは予定に対する減ということでございまして、直接損害とは言えないかもしれませんが、一応の対予定の減収でございます。その他、自動車の借り上げ等におきまして約一億程度の、こまごましたものを入れますと一億以上の損害になっているわけでございますが、いまの御質問の損害賠償につきましては、一応いままでのルールによりまして賠償すべきものは賠償するというふうに考えております。
○田渕哲也君 順法闘争で負傷した方に対しては、私は必ずしも行き届いていないのではないかと思います。私も、これは新聞記事で見ただけですから、直接詳しくは調べてはおりませんけれども、非常に国鉄は冷淡だったというような記事もございます。この点、もう一ぺん再調査をして、万全の対策を打ってもらいたいと思いますが、いかがですか。
○説明員(磯崎叡君) 確かに、初めの一日、二日、そういう点がございました。さっそく私のほうの医者、看護婦等を現地のおもな駅に派遣いたしまして、その後は万全を期しておりますが、なお、先生のお話しのようなことがあるといけませんので、十分、住所、氏名等わかっておりますので、トレースをいたしたいと思っております。
○田渕哲也君 それから、国鉄の被害もいまお伺いしたわけですけれども、もし、この順法闘争が違法なストライキとするならば、労働組合法第八条による損害賠償の免責は適用されないわけです。国鉄は動労――動力車労組に対しまして損害賠償を要求しますかどうか。
○説明員(磯崎叡君) 御承知のとおり、損害賠償は、一応実行行為者の個人的な行為、これから積み上げてまいります。したがいまして、非常にこまかくなりますけれども、何という運転士が、どの列車を何分おくらしたというふうなことを全部いま調べておりますが、それの積み上げによりまして初めてそれを指揮しました労働組合の責任ということになるわけでございまして、現在その事実関係を詳しく列車ごとに、十二日間にわたる列車ごとに究明中でございますが、それによって、先ほど申しましたとおりに実害が出ておりますので、これらにつきましては、実行行為をした者と、それからそれの結果との因果関係を十分検討いたしまして、しかるべき処置に出たいというふうに思っております。
○田渕哲也君 その結果がはっきりすれば、しかるべき措置というのは、損害賠償を要求するということですか。
○説明員(磯崎叡君) 国鉄の受けた損害がはっきりすれば、これは賠償請求せざるを得ないというふうに思っております。
○田渕哲也君 私は、今回の順法闘争によって、やはり国民大衆の不満、怒りというものは極限に達しておると思います。それが上尾事件のような結果を招いたと思いますけれども、私は、このような状態の中で、国鉄運賃の値上げ法案が出されておりますけれども、ほんとうに国鉄運賃の値上げが国民の理解や支持を得られると思うかどうか、この点をお伺いをしたいと思います。
○国務大臣(新谷寅三郎君) 今度の上尾事件を中心にいたしまして、動労との間でいろいろの紛争を起こして国民に対して非常に御迷惑をかけたことは、われわれも非常に遺憾に思っておりまして、深く反省をいたしております。今後の問題といたしまして、こういった事態を再び起こさないように、労使間において早く信頼感を回復いたしまして、そういう事態が起こらないような措置を講じるように指導いたしますと同時に、今後こういった過密地帯における輸送問題につきましてはさらに検討をし、いままでもできるだけの努力はしてまいりましたが、今後ともさらにこれに努力を傾注したいと思っておる次第でございます。しかしながら、ただいま国会に提案いたしておりまする国鉄の運賃値上げの法案、これは御承知のように、国鉄財政の再建整備法にも明らかに書いてございますように、日本のこの輸送体系の中で中核体である国鉄のことでございまして、この国鉄が長い間赤字に悩みまして、本来発揮すべき機能も発揮していないというのが現状であると思います。でございますから、今後のわが国のこの総合交通体系の中におきまして、将来わが国がどういうふうに進むかということを考えながら、その中で、国鉄がどういう役割りを果たさなきゃならぬか、これは明瞭であると思いますが、そういうふうな意味におきまして、国鉄が早く近代的な経営体制を確立しながら、一方におきまして、累積いたしました赤字を徐々に回復して、その財政力を回復させるというのがねらいでございまして、これは国鉄の赤字をただ単に解消するということではなしに、将来の国民生活及び国民経済の上になきゃならぬものであると思いますので、政府といたしましても、最大限の財政措置をいたしたつもりでございますけれども、同時に、国鉄もできるだけの、自分のできるだけの範囲において合理化・近代化をいたしまして経費を節減いたしますと同時に、国民の方々にも必要最小限度の値上げをなしていただきたいと、こういうことでございますから、いずれ、本院におきましても趣旨を説明いたしまして、十分御納得を得るようにしたいと思いますが、そういう趣旨でございますから、この法律案は今度はぜひ通していただきますように希望する次第でございます。
○田渕哲也君 この順法闘争の問題と運賃の問題は、それとこれとは別だというわけにはいかないと思うのです。やはり国鉄の再建という目的のためにやるわけですから、だから国民がほんとうに自分たちの足である国鉄を維持し、あるいはさらに充実するためには値上げが必要だということを理解しなければ、値上げ案というものは私は通らない、また、国会では通すべきではないと思うのです。ところが、国鉄の再建ということに政府は、従来から、一つは国鉄労使の経営努力と、それからそれに対する労使の姿勢、それからもう一つは、国の国鉄に対する助成、もう一つは、運賃値上げだということを、三本柱ということを主張してまいりました。私は、再建にはまず労使の姿勢というものを正してもらわなければ、幾ら運賃値上げをしても再建ができるものじゃないと思います。
  〔委員長退席、理事米田正文君着席〕
したがって、これは、それとこれとは別じゃなくて、私は、こういう問題が起こった以上、まず国鉄内部の体制の建て直しをやっていただきたい。そして、こういう体制になったから、そうしてなおかつこれだけの運賃値上げが必要だと、こういうことを国民に提案すべきであって、現在の段階で出しておる運賃値上げ法案は撤回をすべきだと思いますけれども、政府の所見をお伺いしたいと思います。
○向井長年君 関連。
 いまの質問に対して関連して質問いたしますが、憲法二十八条で、御承知のごとく、これは労働基本権というものがあるわけです。したがって、団結権・団体行動権というものは、これは憲法で保障されている。しかしながら、国鉄の場合においては、公共企業体だから公労法によってスト権は制限されて、ないわけですね。そういう中で、順法闘争という名前において、今日、ああいう事態が起きておる。これに対して、少なくとも、違法であるという政府の見解であるとするならば、今日までたびたびこういう問題が起きておるが、これに対して、ただ、労使紛争だけの問題ではないと思う。こういう問題をどう処置しようとするのか。ただ、いま労働大臣の答弁を聞いておると、これは国民的視野で、労使が円満に話し合ってもらって……、そんな問題ではないですよ。法律違反じゃないですか。したがって、これは、少なくともただいまの法律が悪ければ、法案に対する規制も必要でありましょう。あるいはまた、そういうことではなく、やはり労働基本権という立場で、少なくとも、今日まで組合自体の反省、当局のそれに対する姿勢、こういう問題をまず改めなければならぬのじゃないですか。いまの国鉄の各職場に参りましても、特に動労関係のところにおいては、少なくとも、施設に対してももろもろのビラがどんどん張られているじゃありませんか。これは当局は許しておるんですか。なぜあれをはがさないんですか。そういうこともせずして、今日、ただ、国鉄が赤字だから国民の理解の中で国鉄運賃を上げてもらいたい。そんなことを国民は了解しませんよ。少なくとも当局自体、政府自体、こういう問題をたびたび起こしている。今日初めて起こった問題じゃない。違法であることをそのまま黙認して、最後に、何日かたって責任者を処分したとか何とかいっておるが、これはもうあなた、しり抜けです。いま国民の怒りというものは、上尾の事態はそういう形から出ておるんですよ。私は、政府並びに当局は十分反省して、今後どう対処するか、明確に、はっきり国民に理解するように言ってください。それによって国鉄運賃問題を取り扱いましょう。絶対、国鉄運賃問題は、国民は理解しません。はっきり申し上げます。答弁願います。
○国務大臣(加藤常太郎君) お答えいたします。
 もうこれは、何といったって、政府も当局も、私は、国民に迷惑をかけたことはほんとうに申しわけないと、これはよく反省しなくちゃなりません。しかし、これと労働基本権の問題、ストライキ権の回復の問題、この問題とは――これはこの場合に、ああいうような順法闘争でやった、それはストライキ権が回復しないからやったんだということ、そして国民全体にその納得を求めたときには、これはいまの時点においては、私は、スト権の問題は、なかなか国民が納得しないかもわかりません。何といっても、やはりあらゆるものの問題は、国民の世論を背景にして政治をやる、改正をやる。そしていまの問題は、法律によってできた公制審にお頼みしてその回答を待つ。その点、鋭意研究中でありまして、最近いろいろ公正な結論が出ようとしておるところであります。かようなデリケートな問題を、今回の事件とスト権の問題を混同するのは、これはなかなかちょっとどうかと思いますが、その他の問題につきましては当局から御答弁いたします。
○向井長年君 答弁なっていない。
○理事(米田正文君) 向井君、簡単にお願いします。
○向井長年君 労働大臣、ぼくは、労働基本権というものはある、憲法によって。これを言っただけであって、スト権をこの際どうせいということを、私は言ったんじゃないんですよ。今日までたびたびこういう事態が起きておるが、こういう問題に対して、皆、慢性になっておるんじゃないですか。国鉄当局も、あるいは政府も、労使問題だ、労使問題だという形で、慢性になっておる。そういう国民の怒りがいま爆発したのですよ。そういう問題を放置しておきながら、国鉄運賃問題は国民に理解せいと言ったって、だれが理解するんですか、と言うんです。あんたは答弁しなくてもいいんだ。総理、あるいは運輸大臣、国鉄総裁はおそらく……。
○国務大臣(新谷寅三郎君) ただいまお尋ねになりましたことについて、労働大臣から、労働組合に対する態度は一応お答えになったと思いますが、私も、公労法十七条の規定によりまして禁止せられておる争議行為を行なっておる労働組合のことでありますから、これは運輸省の所管ではありませんが、労働大臣とも十分に協議をいたしまして、国鉄のそういった問題に対する管理体制を確立するように、今後は努力をしなきゃならぬと思っております。
 それから田渕委員からのお尋ねのことでございますけれども、その点は、先ほど私も申し上げましたように、当局も非常に深い反省をいたしておるのであります。その点について、今後できるだけそういった事態が起こりませんような対策を講じるように、国鉄当局にも指示をいたしておりまして、この点は運輸省といたしましても、最善の努力をいたすつもりでございますけれども、それと、そういう中において今度の運賃値上げ法を出すのはけしからぬ、国民はそれに対して、これは拒絶反応を起こすだけだと、こういうような意味のお尋ねがございましたが、その点は、先ほど来申し上げましたように、国鉄の今度の財政再建の措置は、これをこのままで放置いたしますと、国鉄の機能がますます麻痺いたしまして、国民生活にも、国民経済にも、これは取り返しのつかないような打撃を与えることになりますので、この点は十分に御説明をし、また、国民の方々にも御納得を願いまして、この案をできるだけ早く通していただきたいということを希望しておる次第でございます。その理由は先ほど申し上げたとおりでございます。
○説明員(磯崎叡君) 私、当委員会においてたびたび申し上げましたが、今回の事態に対しましては、非常に私は遺憾に思い、また申しわけなく思っておるということは、先週来申し上げました。私といたしましては、いまの御質問に対しまして、やはり私のほうにも、いろいろな組合がございます。どの組合に対しても、きちっと筋を通してやるということを、今後絶対のルールとしてやってまいりたいというふうに思っております。
○田渕哲也君 ただいまの運輸大臣の運賃の問題は、私としては了解できません。
 それから最後に――この問題についての最後の質問として国鉄総裁にお伺いをしますけれども、もちろん、国鉄の膨大な赤字の責任は、私は総裁だけにあるとは思いません。政府の責任もあります。また、労使関係の悪化の問題も、一〇〇%総裁が悪いとは言い切れない面もあろうかと思います。しかし、今回のような事態の悪化、そして上尾駅のような大事件に発展した責任の大きな部分は、何といっても国鉄総裁にあると思うのであります。私は、この際、総裁は責任をとられるべきではないかと思いますけれども、所見をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(新谷寅三郎君) 私からお答えいたします。
 運輸省は国鉄に対しまして監督責任を持っておる立場でございますからお答えするのでありますが、いまお話しのような人事の問題につきましては、諸般の事情を慎重に十分に考えました上で、これは最終的に慎重な配慮をしながら決定すべき問題であると思いますので、具体的には、いまここでどうするかということは申し上げる段階ではございません。
○田渕哲也君 それでは、次に土地政策の問題について質問をしたいと思います。
 まず初めに、総理に対して質問いたします。
 最近の地価の上昇はきわめて著しく、最近の正確な統計はまだ出てはおりませんけれども、おそらく年率三〇%にも達するのではないか、こういうふうにいわれております。私は、これは田中総理の日本列島改造論に責任があると思うのであります。日本列島改造論の最後のほうに、うたい文句として、「人間と太陽と緑が主人公となる」というようなことが書いてありますけれども、「人間と太陽と緑が主人公となる」どころか、地主と不動産屋と買い占め法人が主人公となっておるではありませんか。この責任を総理はどうとられるかお伺いをしたいと思います。
○国務大臣(田中角榮君) 地価の値上がりは、日本列島改造論によるものが、全くないとは言えませんが、あなたが御指摘になるようなものではないということを考えております。しかも、土地の値上がりというのは、現時点における現象でございまして、その理由はたくさんあると思います。しかし、日本列島を改造すれば、改造論が進行すれば、良質の宅地も提供され、人間の生活環境も保持できるという理想的な環境を築き得るし、また、列島改造を行なわないで、そのようなことをすることは非常に困難な問題であると、こう理解しております。
○田渕哲也君 私は、過去長期にわたる地価の値上がりが、全部日本列島改造論の責任とは思いません。しかし特に最近上昇率が非常に上がっております。これは明らかに改造論の責任であります。私は、このような結果を招いた理由は、日本列島改造論なるものが、地道な政策手段としてではなくて、総裁選挙さらに衆議院選挙を戦うための宣伝用アドバルーンとして使われたところに問題があると思うのであります。地域開発を進め、集中を排除するというのは、私は土地政策の有効な一つの手段であることは否定をいたしません。しかしこれだけで十分だとは言えないのであります。ほんとうにこれをやろうとするならば、日本列島改造論をはなばなしく打ち上げる前に、土地の投機の防止に対する手を打つべきであります。それを打たずに、地域開発や、あるいは集中の分散ということを宣伝すれば、地方の土地は値上がりするのは当然であります。この政策手段の誤りを総理はおかされたのであります。この点をまずお認めいただきたいと思います。
○国務大臣(田中角榮君) 日本列島改造論を出す前に、同じ趣旨のものが自民党では決定されておるのであります。名前は都市政策大綱というのでございます。その前に政府も、議員立法によってきめられたものがたくさんあります。それは各種地域開発法であり、新産業都市建設法であり、離島振興法であり、山村振興法であり、農村地域工業導入法であり、工業再配置法であり、数えあげれば切りのないほどあるわけであります。そういう状態を十分是認していただけば、日本列島改造論が地価をあおった――一部分の影響はあると思いますよ。少なくとも、いま申し上げたような法律や制度ができた当時の地価の上昇率というものをしさいに比較検討せられれば、私は十分答弁もできると思いますし、よく理解できると思います。
○田渕哲也君 いま総理のお答えになったことは、そのまま私は日本列島改造論に問題があるということを言われたと思います。確かにその前に都市政策大綱もありました。いろいろな政策もありました。しかし、総理が総裁選挙を通じて日本列島改造論という本を出して宣伝されたわけです。その宣伝の力の大きさが土地の投機ブームをあおったわけです。また、総理大臣となって政策をアピールされました。これはかつての自民党の都市政策大綱の宣伝力とまるきり違うわけです。私はその点を反省してもらいたいと思うのです。
○国務大臣(田中角榮君) あの本は、通産大臣のときに書いたのでございます。総裁選挙などを目ざして書いたものでは絶対ありません。これはひとつ十分理解してください。
○田渕哲也君 確かに仰せのとおりでありますけれども、総裁選挙を戦う過程を通じてあの本は猛烈に売れたわけです。次に総裁になる可能性のある人の書いた本だから、一ぺん読んでみよう、こういうことで売れたわけです。それが宣伝力を持ったわけです。その点はお認めにならないといけないと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(田中角榮君) それまでは否定できません。
○田渕哲也君 私は、皮肉な言い方をしますと、日本列島改造論は、田中総理にとっては、もうすでに大半の役割りを果たしたのではないかと思っております。あれによって総裁選挙を勝つことができました。もちろんあれだけではないと思いますけれども、有力な武器になりました。また、前回の総選挙においても、自民党の大幅の低落を食いとめることができました。またあの本は、何十万部か売れて、田中総理のところには、何千万という印税が入っております。日本列島改造論は大半の役割りを果たしたわけです。ところが、私は、ほんとうのじみちな政策としてはこれからではなかろうか、「日本列島改造論」に書いてあることは、私は悪いことばかりとは申し上げません。必要なこともたくさん書いてあります。ほんとうにそれを政策として実行するためには、いままで政策手順の誤りによっておかしたあやまちというものを、総理の責任で収拾をしていただきたい、このように思うわけです。その誤りとは、収拾とは何かというと、一つは土地に対する投機需要を排除する手を打ってもらいたい。もう一つは、いままで買い占めた不動産屋とか、大法人の土地を吐き出させてもらいたい。そして、それによって得る利潤というものを排除してもらいたい。第三点は、地価の引き下げと宅地の廉価、大量供給をやってもらいたい、この三つの手を打っていただきたいと思うのでありますけれども、総理の見解をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(田中角榮君) 土地や株が値上がりをした――株の値上がりをしたのは日本列島改造論のせいではないと思いますが、いずれにしても、土地という名前が出るときには株という問題が出るわけです。そのぐらい土地と株というのは関連があったわけであります。これはなぜか。これは企業の手持ち流動性が非常に高かった。土地と株においては――株においては非常によくわかるわけです。六〇%、四〇%の個人及び法人の持ち株比率が一年間で逆転したわけでございますから、土地も必ずそうなっていると思います、つまびらかにはしておりませんが。その土地と株というもの、土地だけじゃなく、株に同じ現象があったわけですから、株は日本列島改造論には関係なかったわけですから、そうすると、土地と株というものが、同じくそういう投資の対象になった原因は他にあるはずであります。それは一年間に百億ドルもふえたというドルの裏づけの円があります。企業の手持ち流動性が非常に多くなった。それは普通なら借金の返済に当てられるべきでありますが、その当時は第一次円平価の調整を行ない、輸出を内需に転換をしなければならない、しかも四十六年の不況から急速に景気浮揚政策をとらざるを得なかったという二つの情勢があったわけでありまして、この対策を誤ると、中小企業や零細企業は将棋倒しになると、こういうような状態に対応して、金融の超緩慢な状態がはかられたわけであります。いま主要工業国で一番低い四・二五%という公定歩合まで引き下げられたわけでありますし、しかも予算を組まざるを得なかった、こういうような状態で、結果としては、一年間の結果としては、そういうふうな状態において、当然返済に当てられるべきものが、返済に当てられなかったということで、企業の流動性が非常にふえて株や土地に回ったと、こういう事実は否定できません。これは事実に近いものであります。私は、そういう意味で、中小企業や零細企業対策ということで、企業の手持ち流動性の引き上げその他に対して、すみやかな政策が行ない得なかったという面に対する責任は感じております。いまだそれが、土地や株だけでなく、投機資金にさえも回っておるわけでありますから――とうふが一丁百円というところまでいったわけですから、そういう意味では私は、やはり政府が機敏な、その意味の対策をとれなかったということは私自身も自覚しております。これは一つには、金融の自主的な金融ということで、財政金融の調整をはかってまいりますと言いながら、金融は自主的なものにまかしておるという金融の民主化、自主化というような過程において、やはり財政金融というものは、もっと緊密化を必要とするということの教えも受けたわけでありますが、そういう状態であったことは事実だと私は思うのです。ですから、何べんも言うわけじゃありませんが、これ以上申し上げませんが、とうふが上がったやつまで日本列島改造の関係だということを御指摘になっているわけじゃないと思うのですよ。これはみんな一連のものである。私はそれはやはり過剰流動性の問題というものがあったのと、いままでそういうものがあれば、すぐ設備投資に結びついた過去のパターンは、全然今度は行なわれなかったと、こういうところに問題があったと思います。だから、最終的にあなたが申されたとおりの実効をあげなければなりませんから、今度の諸法律をお願いをしているわけです。税制だけではできません。その意味で、今度の法律というものは私は相当きびしいものだと思います。知事が計画をつくる、土地の利用計画をつくる、特定地域を指定する、特定地域を指定したら一定期間動かせなくなる、こういうところまでやっているのですから、私はこの法律を早く成立をさしていただいて、的確な金融政策と相まっていけば、宅地の供給も地価の安定もはかれる、こう思います。その一つの例を端的に申し上げれば、東京や、大阪や、名古屋の周辺にある宅地並みの課税の問題をいま御審議をいただいておりますが、あそこを全部特定地域に指定していれば、新法によって指定すれば、移動は全部禁止できるのであります。全部禁止できます。何%の税金をとるなどという問題じゃありません。あの法律はそういうことを規定しているわけですから、そうすれば、あの宅地並み課税の問題でいま問題になっておる過密都市の周辺における市街化区域だけでも、宅地に転化できれば、当面する宅地問題は解決するといって、市街地再開発法を通していただいたんじゃありませんか。それが吐き出されないというところに、今日の宅地事情があるわけでありますから、私はあの法律が通過をして、ほんとうに知事がやる気になれば、大都市の周辺の宅地問題は相当解決できます。それだけでも平面都市じゃいかぬから、都心部の再開発を行なって、ある意味の高層化、そう無制限な高層化を言っているわけじゃありません。少なくともワシントンのような建蔽率の低い、理想的な、緑のある、災害があっても必ず生命財産を保護できるという状態をつくらなければならない。こういうことを申し上げておるのでございまして、そういう問題も検討いたしておりますというのでありますから、あの法律や今度の税制がすべて適用される、しかも農地に対してはレンタル制度を農協に認めますと、こういう画期的な法律を出しておるのでありますから、私は住宅問題や宅地問題が解決できないようなことを考えておりません。あの法律がほんとうにできて、知事がおやりにならないと言うなら、次の国会には国がやれるような改正案でも今度出してもらえばいいんですから――改正案を通していただけばいいんです。いずれにしましても、日本にまだ――現時点において供給できる宅地が存在しない、そんなことはありません。そういう意味では、相当な決意をもって御審議をお願いしていると、こういうことでございます。
○田渕哲也君 私は過剰流動性の問題まで日本列島改造の責任だと言うつもりはございません。ただ、過剰流動性がまず土地を投機の一番いい対象として選んだ、そういう状態をつくったというところに日本列島改造論の責任はのがれられないと思うのであります。株の高騰にしても、土地の値上がりと連動しておるというケースが非常に多いということも言えるわけであります。
 しかしまあ、いろいろ総理も考え、取り組んでおられると思いますけれども、私は一つ総理にお願いしたいことがあります。田中総理に対して、まあ非常にこれは失礼なうわさでありますけれども、田中総理がどうも土建業者の利益代表らしい、だから土地問題でも、いろいろ言っておるけれども、結局はしり抜けであまり効果はあがらないのではないか、こういううわさが巷間にあることは事実であります。私は、なぜこういううわさができるか、まあそれはよくわかりませんけれども、一つ調べてみました。これは自治省から発表された政党、協会その他の団体の収支に対する報告書であります。この中で、田中派の政治資金団体である越山会、財政調査会、新政経振興会、政治経済調査会、経済社会研究会、この五つの団体について調べてみますと、昭和四十五年の上期から昭和四十七年の上期まで五期にわたって調査しますと、この寄付者の中で占める不動産、建設関係の業者の割合が急増しております。最近の昭和四十七年上期では、実に三分の二が不動産、建設関係業者からの寄付であります。金額においても、四十五年の上期から、当初六百八十万であったやつが、四十七年の上期では五千九百万。急増している。しかも、その金額においても、三分の二は不動産、建設関係業者の寄付であります。私は、こういうところにやはり田中総理の姿勢というものが疑われる一つの要素があるのではないか。やはり一国の総理たる者は、特に土地政策を重要課題としておる限りは、こういう疑わしい目で見られるような要素をできる限り排除すべきである。私は、その意味で、少なくとも日本列島改造論に取り組み、土地政策に取り組まれるならば、不動産業者や建設業者からの寄付は断わられるべきではなかろうかと思いますけれども、いかがでしょうか。
○理事(米田正文君) 総理、簡明にお願いします。
○国務大臣(田中角榮君) 私は、まあ建設業者の代表なようなことを、もうしょっちゅう言われておりますが、それは、一級建築士というのにならなきゃよかったなと、こう思うんですが、(笑声)これは建築士法というのを議員立法いたしまして、その直後、まあ看板を掲げることはなくとも資格はもらっておいたほうがいいだろうということで、建設省に書類を出して一級建築士の資格をもらったわけでございますが、看板を掲げたことはありません。私自身は五十四歳でございますし、十五、六歳から仕事をしてまいりましたが、土建業者は二十四年か二十五年に廃業しております。その半分は建設の設計業者でございました。私は、その後、たくさんの企業に関係してまいりました。一番長く関係してきたのは、もっと大きい、一番大きいのは鉄道に関係してまいったわけでございますが、どうも、鉄道の専門家だとは評価してもらえないようである。土建業者の代表であるというのは、建築基準法をつくったり、それから都市計画法を手がけたり、国土開発法――これは閣法の名において提案されましたが、実際は議員立法でございました。それから現行道路法の提案者であります。ガソリン税を目的税にしたときの提案者でもございます。有料道路制度も閣法をもってできましたが、これも議員立法を中心として各党の意見を集めたものでございます。まだあります。現行公営住宅法の提案者でもございます。官庁営繕を統一して行なうために官公庁施設の建設等に関する法律もやりました。水資源開発法もやりました。ですから、そんなことでいろいろ言われるのかもわかりませんが、国土計画を前提としない政治は存在しないという考えなんです。これは、実は、戦争などは版図を拡大するというけれども、全部国土の支配であります。私は、このような狭隘な国土を高度に利用し、後世の日本人のためによりよい日本をつくり上げて譲り渡してやらなければならないということを考えないで、見識を持たないで政治はできないという考えで、いささか勉強してきたつもりでございます。それが、一面において批判の対象になるとするなら私は甘んじて受けていいと思います。前段に対するお答えでございます。
 後段に対するお答えは、これは、私には私の関係としての政治団体が存在いたします。しかし、私の政治団体は、率直に申し上げて、他の政治団体と違って、田中角榮を育成する、田中角榮を中心にするという「田中角榮」という字は全くありません。これは、一番初めに書いたときは――政治資金規正法ができましたときは、田中角榮を中心にしという発意でつくろうとされましたが、私自身はそういうことをやっておりません。しかも、この運営は私自身関知しておりません。私は政治資金団体からみずからの政治資金を受けたこともありませんし、これは明らかに第三着の権威ある人たちが運営をしております。運営しておりますが、公の立場にある私そのもの、越山会という政治資金団体イコール田中角榮の後援団体と思われているんだから、その意味においてもこの名前はやめなさいという御忠告を受けたこともございますが、しかし、もうそういう越山会という政治団体が存在するのがわかっておるのに、総理大臣になったから、通産大臣になったから、これを全然わからないような名前に変えるということ自身が公の責任を負うゆえんではないということで、私は、そういう意味でこの運営を明らかにするということで足るのではないかと考えておりました。ただ、その拠金者の中や、それから寄付金を届け出られた――会費は別にしまして、届け出られたものの中に御指摘のようなものが多いとするならば、それは注意いたします。これは会費に全部して届け出ないというようなことをやろうという考えじゃございませんから、そういうことはお考えにならないでいただきたいと思います。しかし、友人としては親しい人たちがありますので、そういうものが出ておるのだと思いますが、これはみんな――代議士、若い代議士の諸君や院外の人たちや、そういう方々に運営をお願いしておるわけですし、特に違法なことが起こらないように、検察庁に長いこと奉職をした人を代表者に頼みなさいということでやっておるわけでありますから、私は、そういう面に対しては比較的に純粋な気持ちで参ったつもりでございますが、しかし、そうでなくとも土建屋だと言われておるわけでございますから、また、それだけではなく、国土の総合利用やいろいろ重要な政策を実行しなければならない立場にある公の立場でありますので、私自身が受けておるのではありませんが、そういうものに対しては注意を促すように、公の発言に対しては私から注意を促しておきます。
○田渕哲也君 次に、地価の高騰による社会的なひずみが非常に増大しておると思います。私は、まずその第一のひずみは、所得不均衡の拡大ではないかと思います。また第二は、住宅のナショナルミニマムが確保されないという点、この二つだと思います。
 まず初めに、経済企画庁長官にお伺いをしますけれども、昭和三十年から昭和四十七年まで、比較的長期に日本の経済成長期の期間をとりまして、この経済成長の結果、国民の富の配分はどのようになったか、概略お答えをいただきたいと思います。
○理事(米田正文君) ちょっと、総理はじめ閣僚の皆さんにお願いですが、きょうの日程の関係もございますから、答弁のほうは簡単に、簡明にお願いをいたしたいと思います。
○国務大臣(小坂善太郎君) 委員長の御指示により、簡単に申し上げますが、ジニ係数というのとローレンツ曲線というのがあるわけでございまして、その間のジニ係数が小さくなるほどいいわけでございます。昭和三十六年の総所得に関するものを言いますと、〇・三三から昭和四十六年が〇・二七、貯蓄残高に関するジニ係数を見ますと昭和三十六年が〇・四三、昭和四十六年が〇・三一ということで、富の増大に従いまして貧富の懸隔が狭まっております。とこが、最近になりまして、土地の騰貴によりまして、土地を持つ者と持たざる者というものの差が非常に広がっているというふうにうかがえることは、これは否定できないようになっておりますので、政府といたしましては、土地問題の解決のために全力をあげるということで国総法その他によりまして、この解決に邁進しようと、こういうことに考えておるわけでございます。
○田渕哲也君 三十年から四十七年までのGNPの伸びは約十倍であります。それから勤労者の賃金の伸びが約五倍、市街地価格の値上がりが二十倍、こういう結果になっております。この結果、企画庁長官からの説明にもありましたように、土地の保有者の所得というものはきわめて増大しております。宅地地価の総額の値上がりは四十七年度経済白書によりますと、四十一兆円といわれておりますけれども、これを三十年から四十七年までの期間に当てはめますと、正確な数字は出ておりませんけれども、私はおそらく百兆をこえておるのではないかと思います。また、その間サラリーマンの生活状態はどうかといいますと、四十六年度の国民生活白書によりますと、昭和三十八年と昭和四十五年の二つの時点をとりまして、世帯当たりの貯蓄は三十八年が六十五万、四十五年が百六十万であります。百万近くふえておるわけでありますけれども、もしこれで土地を買うとするならば、三十八年の六十五万で買った広さの土地が四十五年が百六十万で買えないのであります。この土地の上昇分を調整しますと、貯蓄は六十五万から実質六十万の価値しかない。約百万目減りしておるわけですね。したがって、非常に大きな所得の不均衡というものが土地の値上がりで出てきておると思います。したがって、この間の経済成長の利得というものは、実質上、勤労者のふところは素通りして、確かに賃金も上がり、貯蓄もふえましたけれども、それで将来マイホームを持つとすると、かえって前より悪くなっておる。勤労者のふところは素通りして、土地所有者に集中しておるという傾向は指摘できると思います。これに対して政府はどういう責任と措置をとるのか、お伺いをしたいと思います。
○国務大臣(小坂善太郎君) 御指摘のように、土地の値上がりというものは、これは確かに異常なものでございまして、普通の国民所得をはかります場合、すなわち国連でとっておる統計等でもSNAと申しまして、システム・オブ・ナショナル・アカウント、こういう考え方には、土地の値上がりというものは入ってないわけです。これは単なる貨物の移動であって、付加価値を生まないという意味で入れていないわけでございますが、わが国の場合、最近のこの異常な状況によりまして、確かにいわゆるキャピタルゲインが統計上捕捉されないものが非常に大きな部分を占めている、これは異常なことでございます。
 そこで、繰り返しになりますが、先ほどから総理も言われ、私も申しましたように、何とかこの異常なる土地の値上がりを吐き出してもらう、国家にあるいは奉納してもらう。そういうような手だてをいま新国総法によってやろうということと、かたがた過剰流動性を退治するということのためにいろいろと方策を練っております。また、実行しておるわけでございます。
○田渕哲也君 私は、この不均衡是正の方策としまして、次の三点を総理にお願いをしたいと思います。
 まず第一は、地価を引き下げていただきたい。これによって勤労者にマイホームが持てるようにしてもらいたい。同時に、目減りをした貯金の埋め合わせをしてもらいたい。
 第二点は、勤労者が住宅、宅地を購入する場合に、国として補助を大幅に出してもらいたい。
 第三点は、土地の高騰による不労所得をあらゆる手段を講じて吸収してもらいたい。
 以上の三点をお願いしたいと思いますが、答弁を願いたいと思います。
○国務大臣(田中角榮君) 具体的に申し上げるとたいへんな時間になりますから申し上げませんが、いずれにしても地価の高騰を押える――土地は増産ができないのでありますから、国民が使えるようにしなければならないということに対しては努力をいたします。提出の法律案はすみやかに御可決をいただきたいと、こう思っております。
 それから、土地というもののキャピタルゲインに対してどうするか。これは、現行制度の中でも、売買をした場合にはしかるべく税金を徴収するようになっております。今度は分離課税も賦課することになっておりますし、これはその時代、その時代において税率を上下することによって目的は達成されるわけでございます。
○田渕哲也君 まず第一の、地価の引き下げでありますけれども、先日三月十七日のこの予算委員会におきまして、総理ばもし二、三年で下がらなかったら責任をとると言われました。もう少し具体的に目標を示してもらいたい。時価をどの辺まで下げるのか、適正な時価とはどの辺を目標にするのか、いつごろそれが実現するのか、お答えをいただきたいと思います。
○国務大臣(田中角榮君) にわかに答えがたい問題でございます。
○田渕哲也君 次に、その住宅に対する補助ですが、これは地価が幾ら下がっても、もとに戻るということはまず考えられません。十年前の地価になるということは、まず不可能だと思います。そうすると、やはり勤労者の住宅に対して国として補助をもっと強化すべきではなかろうか。たとえば食管制度のように逆ざやを国で補助するとか、あるいは住宅、宅地ローンの利子補給をもっとふやす。現在は住宅公庫の利子補給が四十八年で百八十三億であります。それから税制上の優遇措置をとる。現在やっておる住宅取得控除、住宅貯蓄控除は、四十八年で四百四十億であります。私はサラリーマン、将来マイホームを持とうとして貯金をしておるサラリーマンの損失額を考えるならば、もっと思い切って大幅の補助を出してもいいのではないかと思いますが、お答えをいただきたいと思います。
○国務大臣(田中角榮君) 住宅に補助を出すというのも一つの方法であるということは理解できますが、私の思想としては、住宅に補助金を出すということはあまり、宅地に補助金を出す、住宅に補助金を出すということには、あまり賛成していないんです。私のこれは考え方だし、思想ですが。それよりも、住宅というもの、土地というものに対しては、固定資産税の減免とか、それから長期低利の融資を行なうということが原則でなければならないと、こう考えております。
 それから、もう一つの問題を、みんな一つのラインでもって議論をするところに問題があるんですが、やはり大都会で住宅の困窮者、特に通勤をしなければならないという人たちには、これは東京のどまん中でもって住宅を持とうといっても、これは無理なんです、実際において。そして、その中で特に現在もう父祖代々からきておるのであって、坪百万円しようが三百万円しようが、銀座のまん中に木造平屋建てが存在するのでございますから、そういう状態において日本の風土や気候、高温多湿に合うような構造の家を持とうとすること、これ自体私は無理だと思うんです。そうじゃないんです。低家賃で、ある時期は職住の近接がはかれるということでなければならないんです。そして、環境がいまよりもよくならなければいかぬ。こういうことは外国の都市でもってみんなやっておるわけです。だからそういう意味では、いま二階であるものが六階になれば、土地代の家賃に対する割合は三分の一になりますから、そうすれば、少なくともいまの状態においても十分できるわけでございます。そして、しかしそれは一生そこにいれるわけはない。定年を過ぎたらどうするかという場合には、東京のまん中で住むというのではなく、しかるべく、自分の土地の中で持ち家でもって住めるというふうにしてやらなきゃならないと思うんです。そういう意味で新幹線ということがいま計画をされ、高速道路が計画をされておるわけであります。どこでも四十五分から一時間の通勤機関ということで、一時間といえば、百キロで走れれば百キロのところに住めるわけでございますから、そういうような状態をすべて考えないと、東京のまん中や大阪のまん中に持ち家をつくるためには、補助金を出してもとてもそれは税金でまかない得るものではない。
 いずれにしても、人間が働く環境において、土地がほしいのか、そうじゃなく、住居面積がほしいのか、環境がほしいのか。そして、自分の働いた退職金では必ず家が持てるようにならなきゃならぬというのが理想でなければならぬし、政策も理想に向かって現実的に前進をするべきだと――分けてやっぱりものは考え政策は行なうべきであると、こう考えております。
○田渕哲也君 私は何年か先の夢を聞いておるわけじゃなくて、現実的に富というものが不均衡になっておる――片方のサラリーマン、勤労者のほうは、貯金が大幅に目減りをしておる――特に土地を買おうとする場合ですね。それから一方では、土地保有者はばく大な不労所得を得ておる。この不均衡の是正策は早急に手を打ってもらいたい。将来どこにどういう住宅を確保するという問題とは別であります。したがって、まず、私は、この利子補給でもけっこうです、あるいは税制上の優遇でもけっこうですから、現在の規模を大幅に上回るものを実現してもらいたいと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(愛知揆一君) 現在御提案申し上げております予算、あるいは税制の上におきましても、住宅問題について特に御提起でございますが、ずいぶんいろいろとやっておりますわけで、時間の関係もございますから、一々こまかく申し上げるのもいかがかと思いますけれども、要するに、積極的な財政的の援助、その中には利子補給の問題も含まれているわけですし、それから税制のお話もございましたけれども、税制につきましては、数年来引き続いて、かなり持ち家住宅についてはくふうがこらされておるわけでありまして、これはもしなんでしたら詳しくお話を申し上げます。
 それから、たとえば公団等の住宅、公営住宅等につきましては、家賃の上にもくふうをし、あるいは金融の場合におきましては、金利の引き下げも、この予算の上でも実行することにいたしております。
 いま、こういったような点については、さらに大幅に、というお話がございましたが、既存のこうしたやり方をさらにその幅を広げるということにつきましては、将来におきまして御趣旨に沿うようにいたしたい。非常に抽象的でございますけれども、御趣旨に沿うように、いろいろとこれからも具体的に前向きな政策を展開してまいりたいと思います。
○国務大臣(田中角榮君) 一言だけ訂正させていただきますが、私が申し上げた、補助というのはあまり私の考え方から言うと望ましくないんですと、こう言ったのは、これは平米当たり百坪の土地を買ったからその一〇%を補助しなさい、五十坪のものに対して一〇%補助しなさいということになると大きなものに有利になるので、そういうことではなく、いまの利子補給とか、労働者住宅に対して免税措置を講ずるとか、二十五年免税というイタリーがやっておる労働者住宅法もあるんですから、そういう面とか、それから住宅金融公庫や住宅公団に対する利子補給とか、それから、これからレンタル制度を行なう農協に対する利子補給とか、それから地方の公社に対する利子補給とか、そういうものを意味したものではないのであって、これは言わずもがなでございますが、これはまた問題を起こすと悪いので、ここで訂正をさせていただきたい。
 それで、やっぱり不動産等に対しては固定資産税を、持っている人にはやっぱり上げると、これはまあいろいろ議論があるんです。いずれにしても一ぺん税を払ったもの――払ったものが投資をしたんだからということでもって、それは一律には論じられませんが、国民の不公平感ということが除去できなければ政治になりません。そういう意味で、やっぱり持てる者は税は上がっていく。それで新しく持つ人に対しては助成をすると、こういうような方向を進めなければならぬことは言うをまちません。
○田渕哲也君 それからもう一つ提案したいのでありますけれども、地価の値上がりによる不労所得の吸収についてであります。私は、これはやはり富裕税というものを創設すべきではなかろうか。これで個人のその不労所得を吸収する。もう一つは、法人に対しては資産再評価を行なって資産再評価税をかける、この二つを提案したいと思いますけれども、政府にそういうお考えがあるかどうか、お伺いをしたいと思います。
○国務大臣(愛知揆一君) かねがね民社党におかれて、富裕税あるいはこれに準ずるようなものを新しく考えてみたらどうかという御提案があることは承知いたしております。これは申すまでもなく、過去において経験を持ったわけでございますから、そういった過去の経験の上にさらにいろいろと検討したいと思っておりますが、所得税とか相続税とかの租税体系の上の問題と、それから過去の経験から見ますと、なかなか徴税的に、率直に言えばめんどうな手続きがありまして、そういう点から大いに反省もし検討もする必要があると思っております。
 それからキャピタルゲインの問題、さらには法人の土地の再評価の問題、これらもお考えになっておりますことにはごもっともな点が非常に私も多いと思います。同時に、まあ固いことを申すようでございますけれども、土地の再評価というような点については、最近の土地の地価の状況などが異常な変動がありますだけに、たとえば先祖伝来に平穏無事に持っていた土地と、それから最近において投機を目的にして取得した土地と、その再評価というようなことをどうするかというようなところについても、かえって逆に大きな不公平が起こるということも考えなければならない。いろいろそういうような点を考えまして、まず今日の状況におきましては、法人の御承知の譲渡益に対する課税、それから個人の保有税というところで相互補完をしながら、そして好ましい、たとえば宅地あるいは緑地の造成というような目的にもかなうように、まあ税をとるだけということだけではなくて、土地の好ましい移転、造成ができるようにと、まあこんなふうな点を十分検討いたしまして、現在提案をいたしておりますものを、今日の状況下においては実行性もある、理論的にもワクの中に入る、こういうことで考えたようなわけでございますが、十分ひとつ御審議をお願いいたしたいと思います。
○田渕哲也君 私は、今日の所得の不均衡の問題は、かなり思い切った政策を打たないとなかなかそのひずみが解消しないのではないかと思います。
  〔理事米田正文君退席、委員長着席〕
したがって、先ほどの住宅宅地に対するいろいろな補助の問題にしても、従来の補助の考え方ではなくて、やはり所得の不均衡を是正するという考え方のもとに実施をする。そして、その財源には富裕税なり資産再評価税によって徴収した財源を充てる、ぜひ政府にこういうことを検討してもらいたいと思うんですが、いかがですか。
○国務大臣(愛知揆一君) ただいま申しましたように、現に提案いたしております土地税制等については、十分ひとつ御審議をお願いいたしたいと思っております。
 それから四十八年度の税制につきましては、すでに御審議を始めていただいておるわけでございますが、先ほども申しましたように、現状においてはいろいろの建設的な御意見を伺って感銘しているわけでございますが、まず、この四十八年度の税制については、方向においては大体御意見のような線に沿っておるつもりでございます。幅においては足ら、ざるところが多いかと思いますが、これらの点については、四十九年度税制を頭に描いて積極的な検討をいたしたいと思います。いろいろの御意見は謙虚に、かつ建設的に伺って、政府のよい案をつくることに努力をいたしたいと思っております。
○田渕哲也君 税制の問題が出ましたので、ついでにお伺いをしますけれども、四十四年に土地の譲渡所得に対する分離課税の制度ができました。これは税を軽くして土地の供給を促進するというねらいを持っておったと思いますけれども、その効果がはたしてあっただろうか、この点どうお考えになりますか。
○国務大臣(愛知揆一君) お話のように、四十四年の税制改正は、高い累進税から分離した平均の課税にすることが、土地を手放す人が多くなるであろうということで立案され、実行されたものと理解いたしておりますが、その結果相当の効果はあったのではないかと思います。ただ、まだ四十四年からあとの状況でございますから、本格的な、たとえば土地造成、そして良質なデベロッパーというような人たちの手に渡って、そしてこれがまじめに建設されているものの効果が、具体的にまだ成果を十分にあらわしていないということが一つ。それから、その間において、先ほど来御指摘のような投機的な法人その他にこれが悪用されたと言うと、あまり言い過ぎかもしれませんが、悪用された。いろいろこういうことで政府としても反省をいたして、それが今回の土地税制を四十四年一月にさかのぼって実行しよう、つまり四十四年度の改正を補完をして、経験の上に立ってもっとうまくやるようにというふうに考えたゆえんはそこにあるわけでございます。
○田渕哲也君 私は、この四十四年にできた税制は、所期の目的を達していないと思うのです。やはり庶民の買う宅地がない、土地の値段がどんどん上がる、そこで土地の供給促進ということで、こういう税制がとられたと思いますけれども、結果としては、都市部ではあまり出ておりません。地方で大地主が売って、それを法人が買い占めた、こういう結果になっているわけです。その結果、この効果がどこにあったかというと、地方の地主の所得、これに対してきわめて低率の課税でその所得をふところに入れさせてしまった。私は益よりも害のほうが多かったという気がするわけであります。私は、四十四年四月三日の参議院の大蔵委員会で、当時の福田大蔵大臣に対しまして、特にこの法案の問題点は税率の刻みにある、二年で五%の刻みでは、一年に十数%という値上がりをする地価の状態においてはほとんど効果がないのではなかろうか、こういう質問をしたのでありますけれども、これに対して福田大蔵大臣は、この土地の税金を軽くするということに非常に意義があるんだと。供給に対して効果があると思う、あなたが言うように、ないなら、一ぺんやってみて、その結果を見てさらに考えようではないか、こういう答弁をされておるわけですけれども、当時の福田大蔵大臣は、この結果に対してどういう見解を持っておられるかお伺いをしたいと思います。
○国務大臣(福田赳夫君) 結論から申し上げますと、私は、これは所期の目的を達しておると、こういうふうに思うのです。しかし、同時に、当時予想しなかった思わしからざる副作用も出ておる、こういう評価でございます。これは私から申し上げるまでもございませんけれども、不動産譲渡所得税の収入が非常にふえておる。これは私は、この税制の影響である、こういうふうに思うのです。私この税制をつくったとき、まあ、大蔵大臣でありましたが、その後もこの税制をフォローしておりますが、たいへん評価されておるように思うのです。つまり、分離課税にした点が特に評価されておる。先祖代々の土地を売ったら総合所得だと、税は一体どうなるだろう。庶民にはこれは読み切れない。それを分離課税にした。しかも、低率の一〇%で、四十五年、四十六年は。その次は一五%だと、またさらに四十九年、五十年になりますと二〇%だと、早く売るとたいへん簡明にさばき得る、こういうので、かなりの効果を生んだと思う。ただ副作用と申し上げましたのは、ただいま愛知大蔵大臣からお話がありましたが、最近に至りまして、いわゆる流動性をたくさん持っておるところの企業等が、この税制のあることを奇貨といたしまして、土地の買い占めを行なうという傾向を助長するという効果があったんじゃないか、これは悪い面でございます。その悪い面は、是正しなければならぬというので、いま政府におきましては、土地保有税等の検討でありますとか、あるいは金融政策、土地に対する融資を規制するとか、そういうようなことをする。私は、顧みて遺憾な点も最近出てきておるけれども、大筋におきましては所期の目的を達しておる、かように見ております。
○田渕哲也君 福田行政管理庁長官は、評価されておると言われましたけれども、私は、だれに評価されて、だれに評価されていないかは疑問だと思います、問題だと思います。評価しているのは地主であって、評価していないのは土地のない勤労者であります。現に土地のない勤労者が、ほしい土地がこの税制によっても手に入らない。ますます地価が上がっておる、この事実を認識してもらいたいと思うのであります。したがって、私は、あのときに主張しましたように、今回この税制を改正して、たとえば、四十九年には三〇%に引き上げる、五十年には五〇%に引き上げるぐらいにしたらどうかと思いますけれども、大蔵大臣の見解をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(愛知揆一君) 四十四年の税制については、私は、先ほど率直に申しましたように、相当な効果があったものと思いますが、それはやはりまじめなデベロッパーがよい計画をもって相当の時日をかけて、これは随所に私は実績も見られると思うのでありますけれども、勤労者用の住宅等もかなりできつつある実況も、これは認識できるのではないだろうかと思います。
 それから、あとの税率等の問題につきましては、なお将来の問題として、先ほども申しましたように、いろいろの御意見については、謙虚に伺って、よい成果があがるような点につきましては、将来のさらに補強策として考えることにいたしたいと思います。
○田渕哲也君 これでも五十年までの立法ですから、五十一年以降はもとに戻るということになれば、四十九年から五十年にかけてかなりの吐き出しの効果はあると思います。問題は、五十一年以降どうするかということであります。この点についてどうお考えになっているか、お伺いをしたいと思います。
○国務大臣(愛知揆一君) これは一応時限が切られておりますけれども、これは効果があがればけっこうでございます。そのとき、あるいはこれからの状況に応じて、これをさらに延長するということも考えることが適当の場合もあろうと思っております。
○田渕哲也君 私は、この延長ということは非常に問題だと思うんです。延長されるとすると、税率の刻みについて再検討してもらわないと、単に税を低率にするというだけでは効果がないではないかと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(愛知揆一君) まさに御意見のとおりでございますから、延長することもあり得るというくらいにお答えをいたしたわけでございますが、五十年までに成果をあげるようにするのが当然であると思います。
○田渕哲也君 それでは、あまり時間もありませんので、最後に、日照権の問題についてお尋ねをしたいと思います。
 最近、マンションや高層ビルの建設によりまして、日照に関するトラブルが年々ふえてきております。したがって、各地方自治体では、自治体として日照に関する基準を設けたり、あるいは条例を設けようというような動きが出ておりますけれども、これは建設大臣の諮問機関である建設審議会の日照問題専門委員会でも、四十七年の十月に中間報告を出しまして、日照問題では適正な日照基準を定めて公法上の規制を行なうことが必要だということを言っております。政府は、この日照保護に関する法律の制定についてどう考えておるか、お伺いしたいと思います。
○国務大臣(金丸信君) 日照権の問題につきましては非常に議論の存するところでありまして、ただいま先生から申されましたように、審議会にかかりまして、中間報告を得ているわけですが、この問題もいま討議いたしているわけですが、最終に何かを得まして、これを法律化するか、要綱化するか、いま検討中でございます。
○田渕哲也君 それから、日照問題に関連しまして、列島改造で、公共施設、公共投資もどんどん行なわれると思いますけれども、たとえば新幹線とか高速道路、こういう公共建築物によって日照被害ということも起こっております。新幹線では十三件、高速道路では、首都、阪神だけで九件の日照紛争というものが起こっておるわけですけれども、そのほか、在来線の高架化によるこういう被害も非常にたくさんあります。騒音問題では不満足ながら一応の基準ができたわけですけれども、日照問題では、現在のところ放置されております。これについて今後どのような対策を立てるのか、お伺いをしたいと思います。
○国務大臣(金丸信君) この問題につきましては、いままで例がないわけでございますが、しかし、いま非常に問題になっておるところでございますし、人間尊重という立場で、この問題を十分に検討しまして、何とか何か成案を、いままでこういうことをやったことが例はないわけでありますが、今後こういう問題についてやらなければならぬじゃないかということで、前向きで検討いたしておるわけでございます。
○田渕哲也君 公共用地の取得等に関して日照被害が起こった場合の取り扱いについて、昭和三十七年の六月に閣議了解が出ております。これは、いまでもこれに従ってやられるのかどうかをお伺いをしたいと思います。
○国務大臣(金丸信君) 閣議了承を得たその問題を改定しようということで、いま検討いたしておるところでございます。
○田渕哲也君 どういうふうに改定する方向で検討されておるのですか、お伺いをしたいと思います。
○政府委員(大津留温君) 閣議了承を得ました損失補償基準要綱によりますと、日照による損害はいわゆる補償には当たらない、これは別途損害賠償で処置すべきだというたてまえをとっております。しかし、ただいま建設大臣が申しましたように、あらかじめ予測できる損害につきましては、事前にやはり補償という形で金銭で支払うべきではないかということで、その基準あるいはどの範囲をとらえるかというようなことを、いま研究しておる最中でございます。
○田渕哲也君 現在、研究、検討されておる日照の問題について、公共施設の場合、いつごろ結論が出る予定ですか、お伺いをしたいと思います。
○政府委員(大津留温君) ただいま鋭意検討を進めておりますが、ことしじゅうには結論を得たいという目標でやっております。
○田渕哲也君 そうすると、現在、日照問題でいろいろ紛争があるわけですけれども、結論が出るまではこの紛争というものは放置されるということでしょうか、あるいは、それまでも適宜、状況によっては、政府が補償なり損害賠償をやるという意味でしょうか、お伺いをしたいと思います。
○政府委員(大津留温君) 現在でも、先ほど申し上げましたように、著しい損害を与えた場合には損害賠償という形で損失を補てんいたします。したがって、ただいま研究しておりますのは、その一律の基準というものを設けようとして研究しておるわけでございますが、具体的なケースにつきまして、著しい損害を与えたという場合におきましては、ただいまにおきましても、そういう補償をすることがございます。
○田渕哲也君 私は、現在、三十七年六月の当時の閣議了解によりましても、受忍すべき範囲をこえたものである場合は損害賠償するということが書いてありますけれども、現実に非常にひどい例があるわけです。たとえば、総武線の高架化による市川とかあるいは新小岩近辺の住宅を見ましても、ほとんど一日じゅう日が当たらない。そういう問題に対して現在は放置されております。放置されておる理由は、これは国鉄の関係でありますけれども、国鉄としても、いままで公共物に対するこういう例が何にもない、だから、しようと思ってもできないのだということであります。私は、これなどは、三十七年六月の閣議了解の線に沿っても、当然損害賠償をすべきものに該当すると思いますけれども、これについて政府はどういう処置をとられますか、お伺いをします。
○政府委員(大津留温君) 私どものところで、いま学者その他に集まっていただいて研究しております。その研究会にも、国鉄の方も入っていただいておりますので、そういった一定の結論が出ますならば、それに従って処置していただけるものと考えております。
○田渕哲也君 いまの問題の結論はいつ出るのか。先ほどの結論と同じことですか、いまの問題の協議の結論はいつ出るのですか。
○委員長(大竹平八郎君) 田渕君、時間が参りました。
○政府委員(大津留温君) 先ほどお答えいたしましたように、ただいま研究しておりますのは、ことしじゅうに結論を出したいということでやっておるわけでございます。
○田渕哲也君 一言だけ。
 私は、ことしじゅうなど言わずに、できるだけ急いでもらいたいと思うのです。建設大臣にこの点要望したいと思います。
○国務大臣(金丸信君) ことしじゅうと言っておるわけですが、できるだけ早くやるようにいたしたいと思います。
○委員長(大竹平八郎君) これにて田渕君の質疑は終了いたしました。(拍手)
    ―――――――――――――
○委員長(大竹平八郎君) 渡辺武君。
○渡辺武君 私は、日本共産党を代表して、質問いたします。
 本題に入る前に、総理に一言伺いたいと思います。
 本日の水俣病判決は、長期にわたる危険なメチル水銀を含んだ工場廃水をたれ流し、水俣病を発生さした因果関係と、企業の責任を明確に認めております。このことは、大企業の高度成長第一主義の政治によって、公害のたれ流しを野放しさしてきた歴代自民党政府の責任に対するきびしい判決でもあると見なければなりません。総理は、この点を率直に認めて、国民に謝罪すべきだと思いますがどうでしょうか。
○国務大臣(田中角榮君) 水俣のチッソが、きのうきょうできた工場ではございませんから、非常に長い歴史のもとにあるわけでございます。しかし、新潟の阿賀野川の問題、今度の水俣の問題、こういう問題とか足尾銅山の問題とか、長いこと不明な、非常に高度な技術とか科学の問題、特に重金属や水銀の問題に対しては科学的に証明できないというような問題もあって、今日まで至ったということは不幸なことであったと思います。特に、きょうの判決がありまして、被害者は一応ほっとするところでもございますし、また、これを技術的に科学的に裏づけが得られるまで判例を求めて応訴するというような企業側も態度でないことは、私は非常に喜ばしいことだと思います。そういうことを契機にして、これからも産業公害はもとより、産業公害だけではなく、中性洗剤の問題とか、それから薬品公害の問題とか、いろいろな問題に対して、わからないからということではなく、やはり世界的にも、日本の衆知も集めて、技術的に科学的に未然にこれらを防止するために努力をすべきであると、また特に公害基準の厳正な基準の強化や、制度上の問題等も整備をしていかなければならないということを痛感いたしておるわけであります。
○渡辺武君 自民党政府の責任、それからまた、国民に対する謝罪、この点はどうですか。
○国務大臣(田中角榮君) 災いをもって福としなければならない。あなたが考えるように、国民に謝罪をしなければいかぬといっても、政府がそういう機構も制度もなかったわけでございます。なぜそれをつくらなかったかといえば、これから、こういうものを契機にしまして万全な対策をとるようにいたしてまいります。
○渡辺武君 総理大臣並びに環境庁長官にも伺いますが、有明海一帯には、まだ非常にたくさんの隠された水俣病患者が苦しんでいる。このことは、先ごろ熊本県葦北郡女島地区で、熊本県民会議医師団の検診した三十六世帯、八十七人全員が罹病していたことが新たに発見されたということでも明らかなことであります。政府は、責任を持って患者の発見と認定に取り組み、また、完全な救済と補償措置をチッソに責任を持ってとらせるべきだと思いますが、その点、御意見を伺いたいと思います。
○国務大臣(三木武夫君) いま、御承知のように、熊本県、鹿児島県、県を通じて検診をやっておるわけでありますが、私は、この機会に、被害調査というものを徹底的にやりたい。検診などに対しても、やはり水俣病にかかっていやしないかという不安を地域住民が持つことは非常にやはり気の毒なことでございますから、徹底して検診をやって、そうして水俣病患者が発見をされるならば、これに対して、現在は公害の健康被害に関する特別法によって、これに対する医療の、あるいは看護料等の手当を支給して、そして救済に当たっていく方針でございます。
○渡辺武君 本題に入ります。
 最近の物価の値上がりはおそるべきものがあります。二月の東京都の消費者物価指数は、昨年二月に比べまして七・三%という驚くべき伸び率を示しております。このような物価の急上昇、インフレの悪性化、これが生活物資に対する大商社、大企業の投機を重要な原因としていることは世論の指摘しているとおりであります。昨年、土地、木材、大豆などから激しくなりました大商社、大企業の買い占め投機が、最近ますます広がってきている。綿糸、羊毛、生糸などから、各種の繊維製品類、さらには牛肉、豚肉などの肉類、それからまた、マグロ、エビ、タラコなどの水産物から、落花生、コーヒー、レーズン、アズキなどにまで及んでおります。米も、モチ米からコシヒカリ、ササニシキなど一部の銘柄米にまで及んでおります。国民生活を踏みにじって顧みない大商社、大企業のこのような反社会的な行為は絶対に許すことができないと思います。
 私は、その一例として、モチ米に対する投機の問題をただいまから取り上げたいと思います。現在、モチ米の値段が非常に高くなっておりまして、昨年暮れには一俵一万一千円程度のものが、いまは一万五千円程度にまで上がっているといわれております。おせんべいや、あられなどをつくる業者は、品がなくなって非常に困っているという状況であります。
 そこで伺いたいのですが、農林省や警察庁が、このモチ米の投機の摘発に動いていると申しますけれども、その結果を報告していただきたいと思います。
○国務大臣(櫻内義雄君) ただいま私の手元に報告のまいっておりますのは、主要な生産県、消費県の十九都道府県を中心として、約四千の倉庫を優先して調査いたした結果は八十九件、約五千八百トン未検査米があったと報告を受けております。
○国務大臣(江崎真澄君) 農林省の食糧庁が中心になりまして調査をいたしました結果、現在食管法違反であるというので、北海道、茨城県、福島県の三警察本部において告発を受理したわけでございます。告発を受理いたしましたものにつきましては、厳正に今後取り締まりをしていきたい、調査をしたい、こう考えております。
○渡辺武君 告発をされた方はどういう業種の方が多いでしょうか。
○国務大臣(江崎真澄君) 具体的な事犯につきましては、政府委員がおりまするから詳しく申し上げさせます。
○政府委員(斎藤一郎君) お答え申し上げます。
 農林省の食糧庁から告発がございましたのは、北海道、これは三月十四日に受理しております。告発状によれば、被告発人は、東京都あられ工業協同組合。違反米穀の数量は、未検査モチ米三百九トン。所在の場所は、石狩郡当別町、辻野倉庫。
 茨城県の分は、同じく三月の十七日に受理しております。被告発人は、東京都あられ工業協同組合外五名。違反米穀数量は、未検査モチ米三百四十四トン。所在場所は、水戸市酒門町、茨城県主要食糧集荷指定商業協同組合水戸倉庫外四カ所。
 福島県の分は、三月十五日に受理しております。被告発人は、茨城県行方郡麻生町、米穀商谷口元右エ門。違反米穀数量、未検査モチ米七十ミトン。所在場所は、福島市太田町、日通太田倉庫。
 以上でございます。
○渡辺武君 あられ業者が多いようでありますが、これ、よほど大きな会社でしょうか、それとも中小企業が多いんでしょうか。
○政府委員(斎藤一郎君) 私ども承知しておるところでは、ただいま申し上げたように協同組合でございまして、その傘下に小さな業者がおるというふうに承知しております。
○渡辺武君 中小企業が摘発されているという状況であるようですけれども、一体この人たちはどのくらいの米を買っているのか。つまり、自分の商売のために買っているのか、それともこれを投機するために買っているのか、その点どうでしょう。
○政府委員(斎藤一郎君) ただいま申し上げたように、告発を受理してこれから捜査を始めるばかりのところでございまして、まだお尋ねの詳細については私ども実態はわかっておりません。
○渡辺武君 食糧庁から「新潟県未検査もち米について」という報告を私いただいております。これで摘発された業者の年間使用量と、それから今度摘発されるに至った未検査米の手持ち量、これをおっしゃっていただきたい。
○政府委員(中野和仁君) 新潟の場合、お尋ねの食糧庁のほうで二月末から調査いたしました米菓業者、これは八件ございますが、それぞれ百五十トン、大きいもので二百五十トンというようなことになっておりますが、詳細申し上げましょうか、全部。――わかりました。それでは浪花屋製菓百五十六トン、栗山米菓九十トン、亀田製菓百三十五トン、新野製菓九十三トン、星野製菓二百五十トン、上信製菓九十七トン、わかなみ製菓百三十二トン、それから北日本食品工業百四十四トン。これの昨年度におきます自主流通モチ米並びに政府所有モチ米の売却数量は、浪花屋製菓七百三十八トン、栗山米菓千四百三トン、亀田製菓二千三百六十九トン、新野製菓七百八十六トン、星野製菓千二十一トン、上信製菓八百八十九トン、わかなみ製菓九百二トン、北日本食品工業千九百四十三トンでございます。
○渡辺武君 いま伺ったところによりますと、年間使用量のほんの一部分を買ったということで、いま司直の手によって摘発されているという状況であります。これは明らかにあられ業者が自分の営業用のためにやむを得ずやみ米を買わざるを得なくなったということを示しているとしか考えられません。結局のところ、これは中小企業いじめになっているんじゃないですか。いま投機で問題になっているのは大きな商社の買い占め投機であります。このモチ米についても大商社の買い占めが行なわれていることは、これは明らかなことだと見なきゃならぬ。大商社はどうなっておりますか。
○国務大臣(櫻内義雄君) ただいま食糧庁長官からの御報告は、そういう調査をした、これは違反の事実があったらやむを得ないと思います。しかしながら、告発のほうは先ほどの報告のように大口の三件だけをいたしておる、こういうことでございます。
○国務大臣(江崎真澄君) こういう事犯は、現在の実情にかんがみまして、もとより関係省庁、ここで言うならば食糧庁、農林省等の行政指導、これはきびしい行政指導があっていいと思いますが、それにゆだねて、私のほうはどっちかといえば、そこに極端な不正があればこれは厳正に調査をする。こういう態度をとっておりますが、いま渡辺議員が指摘されるような中小商工業者、こういうところのいわゆる小ものいじめといいますか、零細な人を何だか痛しめるというようなことには絶対ならないようにということを私警察当局にもよく言っております。したがいまして、いま食糧庁長官も申しましたように、今度は相当目に余るものを告発したというわけでありまするから、今後の調査の結果によれば、相当なるほどと思われるような結論も出てくるのではないかというふうに思っております。
○渡辺武君 いずれにしましても、先ほどおっしゃった業種はあられ業者、協同組合になっているかあるいはまた個人でやっているかは別として、あられ業者はほとんど中小企業です。その中小企業ばっかりいじめているという印象を私はぬぐい去ることはできません。大手商社は追及していますか。
○国務大臣(櫻内義雄君) ただいま申し上げたとおり、大口のものしか告発をしておらないのであります。それで調査はこれはやむを得ないことですね。
○渡辺武君 それでは申し上げますけれども、私どもが調査したところによりますと、岩手県の紫波郡矢巾町大字西徳田第八地割九十八番地の一というところに本店を持っております岩手マタイ株式会社というのがあります。これは資本金二千二百七十万円、会長さんが藤原馨、社長さんが田代煕さん、この会社が通称アップルセンターと言われておりますけれども、正式には岩手県経済連中央青果物貯蔵業務所、ここの倉庫を借りている。そうしてこの倉庫の中に株式会社丸紅の委託によってたくさんのモチ米を、くず米と称して買い入れて保管をしております。その量は二月末現在で八千百三十五俵に及んでおります。いま一俵一万五千円で計算すれば、時価で一億二千万円の金額になるはずであります。資本金わずか二千二百七十万円の会社が、これほど大量の米を買って、そうして値上がりを待って置いてある。大手商社の委託によらなければこれは絶対にできることではない。あなた方、この事実つかんでおりますか。
○国務大臣(江崎真澄君) ただいま御指摘のようなうわさは相当確実性のあるうわさということで私どもも聞き及んでおります。ただ告発されてまだ捜査が進んでおりませんので確認はいたしておりませんが、その程度のうわさは承知いたしております。
○渡辺武君 うわさがあるなら――私どもちゃんとこれはもう調べてここではっきり申し上げておる。うわさがあるならば、なぜ早く手を打たない、何で中小企業ばかりやり玉に上げているのですか。ここが私は問題だと思う。
○国務大臣(江崎真澄君) 告発を受けましてから直ちに厳重な捜査、取り調べをいたしておると、こう申し上げたわけですね。ですから、私さっきも申し上げましたように、決して中小企業者いじめにならないように、これは現在の米、モチ米の現状からいってそういうことにならないように、少なくとも今度はやはり大手商社なり、さっきも農林大臣が答えましたように、相当大手の目に余る違反者を対象にして告発されたわけですから、今後の捜査の経緯によってだんだん具体的になってまいります。これは悪質なものに限っておるということを再三申し上げておるわけでございます。
○渡辺武君 念のために伺いますけれども、大手十社のモチ米の年間取り扱い量をおっしゃっていただきたいと思います。
○政府委員(中野和仁君) 四十七年産米につきまして、自主流通米を商社が代行で取り扱っておりますが……失礼しました、これは八つのほうです。ちょっと失礼いたします。
○渡辺武君 八社でいいです。
○政府委員(中野和仁君) 酒米あるいはモチ米につきましては自主流通米になっておりますが、それにつきまして実需者の代行をいたしております。それが八社。酒米について先に申し上げますと、安宅産業が三万三千四百トン、三菱商事が三万七千七百トン、伊藤忠商事が一万七千六百トン、三井物産が一万六千七百トン、住友商事が六千七百トン、丸紅が三千九百トン、日商岩井が千八百トン、トーメンが千五百トン。モチ米につきましては、安宅産業が四百トン、三菱商事が千三百トン、伊藤忠商事が三百トン、三井物産が二百トン、住友商事が二百トン、丸紅が七千八百トン、日商岩井が六百トン、トーメンが、わずかでございますが二十トン、こういうことになっております。これは代行でございます。
○渡辺武君 いま名前の出ました株式会社丸紅、これがモチ米では一番取り扱い高が大きいということが明らかになりました。私は、この岩手県の事例も決してこれは偶然のものじゃないだろうということを考えざるを得ません。特に、いま北海道で株式会社丸紅が大量のモチ米を買いあさっているといううわさがありますけれども、警察庁、これを確認しておりますか。
○国務大臣(江崎真澄君) まだ確たる証拠はつかんでおりませんが、厳重に捜査中でございます。
○渡辺武君 これは、三月十四日に開かれた新潟県の県会の産業経済委員会の席上で、平山県警部長の話したことばだそうでありますが、二月上旬に日商岩井がウルチ米の買い付けに来たという証言をしております。ただし、日商岩井は新聞社の問い合わせに対しては、二月二十六日に新潟に行ったことを認めたが、買い付けば否定したということだそうであります。とにかくこのように、もうモチ米だけじゃなくして、ウルチ米についても大手商社が投機のために乗り出しているということは私は否定できない事実だと思う。大手商社、これはあられ業者などと違うんですよ。あられ業者はいまモチ米が手に入らなくなったから、やむを得ず商売をやっていくためにヤミ米を買わざるを得なくなってきている。営業上の必要からやっているんです。大手商社はこれを転売して大もうけする、このためにやっているんだ。まさにこれは許すことのできない反社会的な行為。悪質なものを取り締まるというならば、まさに大手商社をこそ追及すべきだと思うけれども、どうですか。
○国務大臣(江崎真澄君) 私はもう二カ月ほど前、相当確実性のある情報に基づいて、大手商社がかりそめにも国民の食糧に投機対象として手を出しているということがあるなら、これはゆゆしいことだという警告を発したわけであります。で、相当事態の推移については私も確たるものを承知いたしておりますが、まだここで申し上げるに至らない。これは渡辺委員は議員の立場で言われますが、やはり警察当局の立場でこういう公の場でお答えするということになれば、これは当然慎重ならざるを得ないわけでございまして、今後の捜査に待ちたいと言っておりまするが、いまおあげになった程度のことは十分承知をいたしております。
○渡辺武君 それでは次に、私、非常に疑問に思いますのは、あなた方が追及しておられるのは未検査米と。未検査米を買っているという点だと思うのですけれども、なぜ未検査米だけを追及されるのか。
○政府委員(中野和仁君) 検査米につきましては、政府管理米あるいは自主流通米ということで、政府の管理あるいは自主流通といたしまして、きちっと管理をされております。最近問題になりましたモチ米等につきましては、従来からかなり未検査米が流れております。そこでこの二月に若干値段が上がってまいりましたので、これは未検査米が動いていくんではないかという心配がありましたものですから、未検査米を中心に倉庫の調査をいたしたわけでございます。
○渡辺武君 いま自主流通米は管理しているということをおっしゃいましたけれども、自主流通米について大手商社の買い占め、この可能性は全然ないですか。
○政府委員(中野和仁君) 自主流通米につきましては、単協あるいは集荷業者から、県経済連、県の集荷業者の団体、全国農業団体というふうに集まってまいりまして、それを卸売り業者、小売り業者に売る、あるいは実需者に売るというルートが明確でございますので、これをほかの者が買い占めるということはございません。
○渡辺武君 その全農から実需者に米が入る、そこのところに大手商社が、先ほどあなたの御報告にもありましたが、酒米やモチ米ですね、自主流通米についてすでに取り扱いを始めているんじゃないですか。たとえば三井物産の場合では三井農産物販売株式会社、丸紅の場合には日産丸紅、トーメンの場合には中部食糧、安宅の場合にはアタカフーズ、こういう米専門の扱いのところをつくって、これが自主流通米の買い付けに回っているじゃないですか。その点御存じですか。
○政府委員(中野和仁君) いまの団体、会社等がもしいたしましても、自主流通米の場合には、単協から私が申し上げました経済連を通じてこれは全農に上がってまいります。実需者の代行といたしまして、それが買って歩くということはあるかと思いますけれども、これはあくまで実需者なり卸売り業者の代行ということでやっているわけでございます。ただ、それとの関連で、まあいろいろな問題が、御指摘のことがあるかと思いますけれども、いま御指摘の問題につきましてはそういうふうになっているわけでございます。
○渡辺武君 念のために伺いたいと思いますが、モチ米の自主流通米の流通在庫の状況をおっしゃっていただきたい。
○政府委員(中野和仁君) 四十七年産米のモチ米につきまして、自主流通になりましたものが全体で十三万三千トンでございますが、一月までの自主流通米の出回り量は約七万六千トンでございます。残量は五万七千トンということになっております。若干日がたっておりますので、これよりは少し減少しているかと思います。
○渡辺武君 十三万三千トンの自主流通米の予定がある。ところが、一月の末にまだ七万六千トンしか流通していない。あとの五万七千トンはこれは倉庫の中にしまってある。私はこの点非常におかしいと思う。なぜかと言えば、モチ米が不足している。そしてそのために値段が暴騰して、あられ業者などは、これはうっかりすれば摘発されるということもおそらく承知の上であろうと思うけれども、やみ米を買いあさらなければ商売がやっていけないというような状態になっていながら、一番太い流通ルートであるこの自主流通米が、何で五万七千トンも倉庫の中に眠っているのか、この点どうお考えですか。
○政府委員(中野和仁君) ただいま私の申し上げましたのは一月末でございますから、大体自主流通米は、年間、月ごとに計画を立てまして、いまの五万七千トンはことしの端境期までの分を月ごとに計画を立てておりまして、順次売り出すということでございまして、これが倉庫に眠っているということではございません。
○渡辺武君 ここに二月二十六日のある新聞の記事がございます。これには大手商社が自主流通米の買い付けを通じてモチ米の投機をやろうとしているということが書かれている、やりつつあるということが書かれている。読んでみますと、「大手商社としては「ヤミ屋になり下がるわけにはいかない」ので、自主流通米の代行買い付けをという〃隠れみの〃をかぶっての買い付け展開した。すでに商社は酒米で酒造業者や組合の委任状による代行買い付けを行ない米取り扱いの足場を築いている。この手をもち米にも使い始めたわけ。」だと、こういうことが書かれている。御存じですか。
○政府委員(中野和仁君) 私、その記事自体は読んでおりませんが、そういううわさは聞いております。したがいまして、今回の倉庫調査もそういうことで、もし買い占めがあれば困るということから事前に調査を始めたような次第でございます。
○渡辺武君 自主流通米を大手商社が買って、そうしてそれを倉庫の中に寝かしておる。この場合は、現在では合法的なものであって、これを処罰する法律ないんじゃないでしょうか。
○政府委員(中野和仁君) 先ほどから御説明申し上げておりますように、自主流通米につきましては、主食につきましては卸売り業者が買いますし、その他の酒米それからモチ米につきましては実需者が買うということになっておりまして、商社はそれの代行といいますか、民法的にいいますれば委任みたいなものでやっておるわけでございます。商社の所有ということはないわけでございます。
○渡辺武君 代行買い付けという形で大量の自主流通米を大手商社が倉庫の中に眠らしておる。少し出荷をおくらせれば、最も太い流通ルートですから、たちまちのうちに価格が暴騰する、こういうことは当然起こるわけであります。そうでしょう。これを食管法で取り締まることができますか。
○政府委員(中野和仁君) 先ほど申し上げましたように、二月以降も一カ月刻みで、大体全部実需者あるいはその他に張りつけておるわけでございます。いまもし御指摘のことがあるとすれば、それは自主流通米でなくて、いわゆる自由米といいましょうか、やみ米といいましょうか、そういうものがあるいは若干あるかと思いますけれども、自主流通米そのものを商社なりその他の者が買い占めるということはございません。
○渡辺武君 それはおかしい。この自主流通米というのは、これは御存じのように、いままでの米の食管制度をなしくずし的に解体していこうということでつくった制度でしょう。そうしてこれについては、いま言ったように、あられ業者などの業者が、これが大手商社に委託をして買い付けても、これは食管法違反でも何でもないという状態がつくられている。酒米だってそうです。あるいはコシヒカリ、ササニシキのような、一部銘柄米の自主流通米についたってそうです。すでに大手商社は、二兆円商品といわれるこの米の流通に逐次乗り出していって、先ほども申しましたように、各地でうわさが立っているような大規模な買い占め、投機を始めていると見なければならない。初めから自主流通米はだいじょうぶだという予断をもって臨んだら、大手商社のこの大規模な投機は絶対にこれは押えることができない。あなた方やりますか、この点調べますか。
○政府委員(中野和仁君) 先ほどから申し上げておりますように、自主流通米につきましては、これはルートが明確でございます。それとあるいは関連あるかどうかは別にいたしまして、若干自由米が出回っております。それについていろいろ問題が出てまいりましたので、先ほど申し上げましたように、それは大体未検査米でございます。それを中心にこの際一斉に調査をして、事前にそういう買い占め等を防ぎたいという気持ちから今度調査を始めたわけでございます。
○渡辺武君 だから、小ものだけしかあがらないというのですよ。そうでしょう。あられ業者が、自主流通米がなかなか出回ってこない、したがって、やみ米を買わなければならないような事態に追い込められて、そうして少し買って、倉庫の中へ置いておいたら、さっそくそいつを摘発されている、こういう状況でしょう。一番太い流通ルート、この自主流通米の流通ルートにすでに大手商社が着々と浸透していっている。この点を調べなきゃならぬですよ。調べますか。
○政府委員(中野和仁君) 先ほど大臣から御報告申し上げましたように、倉庫にありますのでかなり大きなものは八十九件、五千八百トンあったわけでございますが、これを現所有者という意味で、先ほど警察庁のほうからお話がありましたように、告発をしたわけでございます。現所有者の中小企業だけということであれば全部やるべきかもわかりません。しかし、実態からいいまして、そういうことは私はやるべきではないと思っておりますが、そういう現在の所有者に連なる流通経路でございます。これがこのうちで問題になりそうなものを告発をいたしたわけでございまして、あとは食糧庁の事務的な調査といたしましては、前の所有者までなかなか追っていくことが容易ではありません。そういう問題になりそうなものを言発したというふうに御了解いただきたいと思います。
○渡辺武君 公安委員長に伺いたいんですけれども、自主流通米は合法的旨い付けることができる。これはどんなに大量に買い付けても法に問われなし ところが未検査米、これは食管法違反がということで問われると、こういう仕組みになってるんじゃないですか。
○国務大臣(江崎真澄君) そういう具体的な問題につきましては、食糧庁長官からお答えをさせますが、いま申しておりまするように、今度は流通経路からいっても何からいってもきわめて悪質不当なもの、これを何百件という中から三件にしぼって告発を受けたわけですから、これはもう問題の余地を残さないくらい悪い事犯であるというふうに思って捜査をしておるわけです。したがいまして、今後この捜査にあたっては、厳正に、やはり一罰百戒の意味も含めて行なわなければならない。で、いま御心配になっておられるような自分の必要商品のために、許された範囲で買っておる、多少そこに未検査米があったからといって、従来の経緯からいって、これは警察が積極的に乗り出して取り締まるものではない。これは冒頭私申し上げたわけです。やはりこういう問題は従来の経緯が大事ですから、農林省なり食糧庁なりというものが正しい行政指導をされることが第一義であって、われわれは食管法の上においても、またその流通経路においても、だれが見ても、なるほどこれはひど過ぎるというものについて厳重な捜査を行ない、罰則を加えていく、こういうことでなければならぬと思っております。どうぞ御心配の点は、私どもに免じて、いましばらく時をかしていただきたい、こう思います。
○渡辺武君 食糧庁長官。
○政府委員(中野和仁君) 先ほども申し上げましたように、今回は、告発をいたしましたのは、現に倉庫にあって所有しているから、その人はせざるを得ないわけでございます。われわれはそれをいじめるということではございません。むしろ、それとの関連での流通経路に問題があるものについて、問題がありそうなものについて告発をしたということでございます。大部分は、すでに実需者の手に入ったものは実需者の手に渡すように、それから相当よけいに持っているものにつきましては、若干は零細な業者に回すように、すでに行政指導をやっておりまして、現在、実施中でございます。そういうようなことになっておるわけでございます。
○渡辺武君 私の伺っているのは、法的にどうかということです。法的に自主流通米を買っても、これは違反にならないでしょう。しかし、未検査米を買ったら食管法違反になるんじゃないかと、こういうことを言っているのです。どうですか。
○政府委員(中野和仁君) 先ほどから繰り返しておりますように、自主流通米について大手商社その他が買っておるということはございません。これは実需者の代行で買っておるわけでございますから、買っておるのは実需者でございます。ただ、先ほども申し上げましたように、それとの関連があるかどうかわかりませんが、いわゆる未検米を同時にやっているとすれば、そこに問題があるということを申し上げたわけです。自主流通米は、繰り返して恐縮でございますが、これは実需者が買っておるその代行ということでございます。
○渡辺武君 法的にどうかと伺っている。
○政府委員(中野和仁君) したがいまして、食管法上は、それは違反ではございません。未検査米を取り扱うということになりますれば、これは食管法上問題があるということになります。
○渡辺武君 そこに問題があると思うんですね。大手商社がかりに自主流通米のルートでもってモチ米の買い付けをずうっとやってそれを押えたら、これは法的に問われないで合法的なものだとされている。このルートを通じていま二兆円商品という米の流通にずうっと乗り出している。ところが、小さなあられ業者が未検査米を買ったら、これは法的に問われるような仕組みになっている。ここに自民党農政の根本的な性格がある。そうでしょう。自主流通米制度をつくった。これを通じて大手商社が米の流通に進出していっている。そうして、いままさにこれはモチ米を頂点とし、コシヒカリ、ササニシキなど、これを通じて投機の対象になっていっている。このまま放置しておけば、国民の生活必需品である米全体が大商社の投機の対象になるおそれが出てきている。私は、この問題を根本的に解決するためには、この自主流通米制度はやめて、すべての米を食管物資にする必要がある。そうして、生産者には生産費を償う価格を保障し、消費者には家計を安定させるに必要な低い米価を保障して、そうして大商社の投機を防がなければならぬと思います。また、消費者米価に対する物価統制令、これの適用を撤廃した。投機をやって幾らだって米の値段を上げてもいいという状態がつくられている。大商社はにこにこしていますよ。したがって、消費者米価に対する物価統制令の適用を復活させるべきだと思います。この点、総理大臣及び農林大臣の御意見を伺いたい。
○国務大臣(櫻内義雄君) まず最初に申し上げたいのは、この自主流通米を問題にされておりますが、これは先生も御指摘のように、酒米、モチ米が代行ができると、その範囲でございますね、これが一般的な自主流通米には及びません。それからまた、これを代行しておる商社は、もし代行を利用して未検査米などを買いあさる、あるいはある程度の自由米を買いあさるというような事態がありますれば、これらの商社は食糧庁の関係の輸入代行などもしております。で、そういう不当な行動をする商社でありまするならば、その面の代行を中止させるというような制裁もできるのでございまするから、今回はそういうことから、一体、実態はどうなっているかということで調査をいたし、その実態の把握につとめておるわけでございます。
 なおまた、モチ米や酒米の自主流通あるいは代行の問題は、これは昭和四十四年から行なわれておった問題でございます。しかしながら、今回、これはもう先生の言われることに全く同感ですが、過剰流動性の問題から投機という問題が起きております。で、その投機がこういう面から起きるのではいけないということから、食管法による今回の調査、告発ということをいたしておるのでございまして、こういうことをやることによって商社の姿勢を正してまいりたいと、かように存ずる次第でございます。
○渡辺武君 物統令はどうですか。
○国務大臣(櫻内義雄君) 物統令は……、何でございましたか。
○渡辺武君 物統令の適用を復活させるべきだと。
○国務大臣(櫻内義雄君) この物統令の問題につきましては、これは現在、国が米を売り渡すときに価格がきまっております。そしてその売り渡しの際に標準米制度を設けておりまして、消費者の立場を考えておるわけでございまして、そういうことをやっておりまするから、それが一つの尺度になりまして、大体いまの上米、中米等の価格も非常な不当なものにはなっておらないのであります。大体、標準米はこれが並み米として扱われておりますが、その並み米が基準で上中米の価格ができておりまするので、私は、いまこの際物統令をまた適用するという考えはございません。また、自主流通米の制度というものは、一面、良質米をつくろう、それから消費者の嗜好に合うようにしようということから始まっておりまして、また、この制度によって農家にはわずかでも手取りがよけいになっておるという実情から考えまして、それこれを勘案してみまするときに、いま御意見ではございますが、私として物統令を適用する考えはございません。
○国務大臣(田中伊三次君) 先生の御熱心なお話に対する答えが誤って世の誤解を招くことがたいへんおそろしいと思います。少し言いにくいことでありますけれども、私からこの物統令をめぐってお答えを申し上げたい。
 およそ、自主流通米にしてもその他のものにしても、米の価格は物統令からはずしてあるんだと、幾ら買い集めるようなことをしても、幾ら売り惜しんでも、幾ら買い占めても、食管法上罪はないんだと、こう簡単に片づけてしまうと、業者のやみはますます横行するという結果にならざるを得ない。で、そうじゃないんです。価格統制は農林省のおっしゃるとおり撤廃をしておる。価格以外の物統令というものは生きておる。これを具体的に申し上げますと、「不当ニ」ということばを使っておるのであります、物統令は。不当に高い価格で販売をすることによって、その結果暴利をむさぼる、これは物統令が生きておるのです。これは米であろうが生糸であろうが、マグロであろうが何であろうが、区別はない。これはぴしぴしやるべきものでございます。これに対しましては最高は懲役十年、たいへん重い刑罰でございます。懲役十年、十万円以下の罰金だと、これは物統令から消えていない。米でも何でもこれは生きておるということ。
 で、そこまでは、暴利をむさぼるというところまでは至らないけれども、たとえば、いま問題になっております売り惜しみをやる、買いだめをやるというような事態の程度のものでありましても、最高、懲役は五年、五万円以下の罰金ということで、この処罰も物統令が生きておる。だから、価格統制は物統令からはずれておるけれども、価格以外の統制、暴利をむさぼったり売り惜しみ、買い占めをやったときの処罰の規定は物統令において生きておる。物統令というのでございますけれども、これは昭和二十一年にできた勅令ではございますが、勅令ではなくなっておりまして、二十七年には法律八十八号によって法律としての価値を与えておる。これは物統令と称する法律でございます。これを適用すれば先生の御心配に十分におこたえをすることができる、こう私は考えますので、念のために所見を申し上げておく次第でございます。
○渡辺武君 法務大臣の御所見を伺いましたけれども、私はやっぱり安心することはできないと思うんです。昨年からあの材木の投機、大豆の投機、それから米の投機、さらに最近はいろいろな生活必需物資に対する投機が行なわれている。
 いまおっしゃった不当な価格というのは、一体どの辺の水準を考えておられるのか。暴利の暴というのは一体どの辺の水準を考えているのか。これはかなり手心の加えられていることじゃなかろうかという懸念を私はぬぐい去ることはできない。だれ一人として大手商社はあげられていないじゃないですか。どうですか。
○国務大臣(田中伊三次君) 警察庁、公安委員会からも御報告のありましたとおり、現に第一線の警察当局で捜査中である。遠からず検察庁に送局になるものと見通しておるのでございます。その送局を待ちました上で、先生御心配のごときことがないように、小ものだけに力を入れて、そうして大もの、悪質のものが漏れることのないように、厳正な態度で捜査を断行したいと、こう考えておりますので、江崎長官の仰せのように、いましばらく御猶予をいただきたい。
○渡辺武君 けっこうな御答弁で、じゃ重ねて御答弁いただきたいんですが、大手商社というのは、さっきも新聞記事を読みましたように、自分で直接、おれは何々だぞといってやるようなことはしないようですね。あちらこちらの小さな業者、これにやらしているという状態です。もしあなた方がこれから徹底的に追及されるならば、その資金その他の背後関係、これに至るまで十分に調べますか。
○国務大臣(田中伊三次君) 仰せのごとき重要な事項を念頭に置きまして、検事総長を指揮する考えでございます。
○渡辺武君 総理大臣に伺います。
 いまお聞きのとおり、大商社、大企業の投機、これが国民生活を非常に脅かしております。ところが、政府が最近国会に提出しました買い占め売り惜しみ法案、これは全くしり抜けで、絵にかいたもちにすぎないように私には思われますけれども、総理大臣、どうお考えになりますか。
○国務大臣(田中角榮君) まず一日も早く、いっときも早くこれを通していただきたい。それで通していただいて、実効があがらなければ修正をしていただけばいいんですから、改正案を出していただけばいいですから、私たちは、これだけの問題が起こっておるにもかかわらず、審議もしていただけないということははなはだ遺憾であります。
○渡辺武君 何か審議拒否でもしているように言いますけれども、だれがしています、そんなこと。とんでもない話ですよ。
 重ねて聞きますけれども、総理大臣は、この買い占め売り惜しみ法案がもし通った場合の措置として、これは行政指導を補完するものだということをおっしゃいましたが、いまでもそういうお考えですか。
○国務大臣(田中角榮君) 自由経済を基調といたしておりますから、なるべく、法律をもって統制経済に復活するということに反対なんです、私は。ですから、自由経済のよさというものを育てなきゃならないということを一貫して考えておるんですが、しかし、国民生活を守るためには、法令で定むる範囲内において行政指導を行なうということは当然のことでございます。しかし、行政指導でもって行なえないものは、これはもうやむを得ず、法令の定むるところによって処置する以外にはないわけでございまして、これは自由経済を本義としておる私たちといたしまして、政府といたしましては、法律がすべてを律するということではなく、あくまでも正常な経済行為を促しながら行政指導が本則であると、こう考えます。
○渡辺武君 それでは伺いますけれど、食糧庁の課長以上及び食糧事務所長で米関係企業への就職、過去三年間、どういう実例がございますか。
○政府委員(中野和仁君) ただいまお尋ねの人数は十一人でございます。
○渡辺武君 詳しく言ってください。
○政府委員(中野和仁君) 十一人の行き先でございますが、四十五年度は二階威人、これが全国米穀配給協会に行っております。それから小原英俊、これは岩手の事務所長でございますが、日本精米工業会。それから伊田基、これが千葉の所長でございますが、武蔵米穀卸株式会社に行っております。それから松尾定隆、これが新潟の所長でございますが、木徳株式会社に行っております。それから山本尚政、島根の所長でございます。これが全農連の大阪支所に行っております。それから山田喜代司、これは食糧管理講習所長であったんでございますが、米麦改良協会。それから加藤龍二、これは東京の事務所長でございますが、三菱商事。それから武井仙太郎、宮城の所長、これは三井物産農産販売株式会社。それから宮澤光壽、新潟の所長でございますが、三井物産農産販売株式会社。それから朴澤進、福島の所長でございます、これが全国米菓工業組合。それから田中頼包、福井の所長でございますが、これは丸紅株式会社。
 以上でございます。
○渡辺武君 総理大臣、お聞きのとおりです。元食糧事務所の所長さんクラスの人たちが、これが三菱、三井、丸紅など大手商社の米扱いのところにみんな入っていっているんですよ。もしあなたのおっしゃるように、行政指導の補完措置にすぎないというふうになさるなら、その行政指導というのはだれがやるか。地方でいえば地方の食糧事務所長がやるでしょう。その場合に、先輩が就職している、そうして担当しているその米扱いについて、後輩がどういう指導ができましょうか。私はこの事実を伺うと、行政指導――もしそういうことになるならば、おそらく大手商社の買い占めは、それはまさに行政指導によって隠されてしまうんじゃないかという感じがしますが、どうですか。
○国務大臣(田中角榮君) それば最上の就職のしかたではないわけでございます。最上のしかたではないわけでございますが、役人も、役人を長いことやったからといっても、定年がきて退職をすればどこかへつとめなきゃならないんです。そういうことはやっぱり認めなきゃなりません。だから、直接関係のあるところへ行くには二年間という猶予期間を置いて、人事院はこれを、法律に基づかないものではありますが、その期間を置いてやっておるわけです。ですから、それは農林省におった人は米の関係や肥料関係に行かないことが一番いいと思うんです。建設省におった人は請負会社へ行かないほうがいいと思うんですよ。鉄道におった人は私鉄には行かないほうがいいと思いますし、運輸省の人は私鉄関係に行かないほうがいいかもわかりません。しかし、工業組合とかいろんなところへ――やっぱり私は就職の視野というのは狭いと思うんです。ですから、理想論だけを振り回しても、現実がこれに合わなければその人たちをどうするかという問題が起こるわけです。それならば定年をうんと延長するとか、一生食っていけるようなものを出すとか、私は、やっぱり文部省におった人だって私学振興会に行ったり、学校の先生も教科書会社へ行ったり、それは行っても、そこに不正が行なわれたり情実が行なわれないようにしなければならぬということが、行政の私はほんとうの行政だと思うんです。
 それから、人のつながりがあるからといえば、郵政省から先輩はみんな電電公社に行っているんです。法律上の権限は郵政省の後輩が行なうのであります。運輸省の先輩はみな国鉄へ行っているわけです。しかし、法律は現に行なわれておるじゃありませんか。しかし、私はそれはあなたに反論するんじゃありませんよ。反論するんじゃありませんし、それは最上の人事配置ではないということはわかりますけれども、不正が行なわれておるならば、それは私も糾弾されなければならぬし、行政が行なえないというならば、他に適当な措置を考えなければいけませんが、農林省におったから、食糧事務所長がほかの代行会社やそういうところに就職をしたからといっても、望ましいことではないと思いますけれども、それをもってすべての不正が行なわれるということに断ずることはできない。これはほんとうにあなたが言うようなことを全部排除するためには、国会で議員立法で、少なくとも警察官はどこへも就職しちゃならぬというぐらいなこと、そのかわりに金は出します、こういう制度ができない限り、あなたの議論はそのままこれはそのとおりでございますと言うわけにはまいりません。
○渡辺武君 私はこの場で、就職を禁止しろなんということを申し上げているんじゃないんです。こういう大手商社と食糧庁のお役人さんとの人的な結びつき関係がこうやってでき上がってきていると、そういう状態のもとで行政指導の補完的な措置でもって投機の取り締まり法を実施するのだというようなことを言っても、それは絵にかいたもちになるのじゃないかということを申し上げているんです。
○国務大臣(田中角榮君) そうならないようにしっかりやります。しかも、先ほどお話がございましたが、何か二兆円もあるところの米が全部買い占められるがごときことばを――これは院外で聞いている人はそう思いますよ。そうじゃないんです。これは明確に述べているように、モチ米と酒米だけに限っております。しかも酒米もモチ米も十二カ月に分けてちゃんと出しております。それは代行業者というものの行為は認めております。しかし、その行為を認めておる代行会社が悪いことをすれば、代行は取り消します、これは。取り消したら、少しの、何千トン、何百トンで、もうけたようなことをもって、それは輸入代行の権限もみななくなるわけでありますから、そういうところはうまくできているんです。そんなことは百も承知しておられるはずじゃありませんか、あなたも。そんなことで、だからいま自主流通米をそのためにやめなさい、物価統制令はやめなさい、そういう問題とは直接つながらない問題なんです。そういう問題があって、しかも自主流通米を買い占めて、しかも食糧庁が処罰もしない、代行の取り消しもしない。こうなったらこれは問題です。これは問題ですが、そうではない。六万トンとか、五万トン残っているものは、あとまだ、これから五カ月間も、月に割れば一万トンずつだ。こういうものがルートに乗って流れておって、これだけの問題が起こっているときに、食糧庁が倉庫検査をしないはずはありません、やっております。
 ですから、結局は、私も実際において、あられ業者のごときものだけが摘発を受けていやだなという感じだったんです、実際において、これが報道されたときには。しかし、やはり未検査米というもの以外には余地がないんだ、いわゆる買い占める余地がないんだと。そうでないと、これがルートに乗っているものまで、食管の管理下にあるものまで買い占めができるとしたら、食管そのものが崩壊をしているわけであって、それはたいへんなことなんです。ですから、あたかも大商社が、ウルチでも何でも、すべて買い占められるようなことを言うことは、物価政策上も望ましくないことだと考えております。所見の一端を述べます。
○渡辺武君 総理大臣、極端なことをおっしゃっちゃいけませんよ。二兆円商品全体がいま投機の対象になっているなんて、私ば一言も言っておりません。そうじゃない。モチ米や一部銘柄米、これがいま投機の対象になりつつあるということは顕著だということを申し上げておる。やがて二兆円商品、米全体がそういうことになるおそれがあるから、私はこれを重要視して申し上げている。
 さて、特に、買い占め売り惜しみ法案の第四条、投機行為そのものについての罰則がない。政府は、この買い占めたものの売り渡しを勧告する、それを聞かなければ、これは公表するというだけだ。おかしいじゃないですか。こんな反社会的な行為をやって、政府がこれを売りなさいと、勧告でやったとしても、それを聞かなかったら、公表するだけだ。さっき国家公安委員長の御答弁だったと思いますけれども――法務大臣でしたか――失礼しました。物統令の米については、非常にきびしい処罰が法で定められている。何で、同じような悪いことをやるこの大企業の、大商社の買い占め、これについて、こんな程度で済まされるのですか。
○国務大臣(小坂善太郎君) 私が法案の責任者になっておりますから、私からお答えいたしますが、これはなかなかよく考えて実はやってあるんですね。一見きびしいように見えても、黙秘権というものがあるわけで、これを黙秘されてしまうのでは実効をあげ得ないわけでございますから、行政的にどうなっているのだということをトレースして、それをがえんじなかった場合、それに対して聞かなかった場合には罰則がある。こういう形でいっているわけです。ですから、これは行政的な調査に対して黙秘し、あるいは秘匿することはできないわけです。ですから、その結果がどうなっているかということはわかりまするから、それに対して適正な措置がとれる、たとえば、もうけをちゃんと算出して、もうけただけは全部国家に税金として納めていただくこともできます。また、そのもうけが著しく不当なものであることがわかれば、先ほど法務大臣が言われましたように、物統令の適用があって、その罰則によって罰せられると、こういうことになっているわけで、一見非常にやわらかいようですが、非常によく考えて、実効をあげ得るような形になっておる法律案だと思いまするので、先ほど総理が言われましたように、これは一日も早く審議を開始していただいて、あげていただきたいというのが私どもの希望でございます。
○渡辺武君 そんな説明、とうてい納得できないじゃないですか。
 先ほど、あられ業者が未検査米を買ったと、いま食管法第九条が問題になっております。第九条違反の罰則では、「十年以下ノ懲役又ハ十万円以下ノ罰金ニ処ス」ということが第三十一条にはっきりと書かれている。あられ業者が営業上やむを得ず未検査米を買っても、もしかりに、法律どおりにこれが処罰されればそういうことになる、非常にきびしいですよ。ところが、大手商社が米を買い占めた、米の値段を暴騰さした、ところが、政府はただ売り渡しの勧告をするだけだ、それを聞かなかったら公表するだけだ、こういうことではあまりに甘過ぎるんじゃないでしょうか。
○国務大臣(小坂善太郎君) 大ものになればなるだけ世間体というものがございますので、大手商社が反社会的な行為をやったということが明瞭になれば、その受ける損失ははかり知れざるものがある。これはとても、それは五十年の懲役ぐらいに該当するような、非常な名誉を失う。そのことが、次の営業にも非常な大きなダメージを与えることになるということに考えておるわけです。
○政府委員(中野和仁君) ちょっと補足さしていただきますが、いまのお尋ねのあられ業者だけでありませんで、これはいろいろ御判断があるかと思いますが、その間にもし商社が入っておるとすれば、そのやみ米を扱っておれば、当然それも同じように食管法上の対象になりまして罰則もかかるわけでございます。
○渡辺武君 やみ米のことを言っておるのじゃないのです。自主流通米のことを言っておるのですよ。自主流通米ならば、全然合法的で、これは処罰の対象にならぬということは先ほど明らかになった。もしかりに自主流通米を買い占めて、そうして値段を暴騰さした。ところが、まことに、経済企画庁長官の御答弁によりますと、大商社は公表されるというと大きな打撃がある――大商社だけですか、中小企業は公表されても何の打撃もないのですか。ここにあなた方の立場がよく出ているような気がしますが、私どもは、こんな絵にかいたもちではなくして、政府は、買い占めをやった場合には売り渡し命令を出すべきだと思います。従わなかった場合には、きびしい行政的な処置をとらなきゃならぬじゃないかと思います。そうして、食管法や物統令の、あのきびしい行政的な罰則、これとよく似たように、売り渡し命令に従わなかった者は、やはり行為者はもとより、代理人、使用人を使って投機を行なわした法人や個人も、ともに五年以下の懲役または五百万円以下の罰金、このぐらいの罰則を付するべきだというふうに思いますが、どうですか。
○国務大臣(田中角榮君) この法律立法の過程において相当慎重に検討したのであります。積極論もありました。消極論もありました。しかし、現に御審議をいただいておるものが一番最良の策であるということで、御審議をお願いしておるわけであります。
 それは、いまあなたが言われたような法律はあったんです、昔。戦時中にあったんです。これはそういうような、いわゆる総動員法的な色彩の法律というものは、これは一つできると、ばたばたとみなできるということになるので、これは立法に対して非常に慎重でなければならぬということは言うをまちません。これは非常にむずかしいのです。これはもう、戦時中であれば、買いだめをした人間は銃殺刑にしておる国もたくさんあるのですから、それは緩急によって一そういう問題はかつて日本にもあったわけですから。しかし、そういう問題に対しては、もう非常に慎重でなければならない。ただし今度の土地の税制に関しては、これは土地が非常にたいへんな問題であると、特定地域の問題とか、そういう場合の罰則を設けたわけでございますが、このいまの状態において、買いだめ、売り惜しみ、それから暴利という問題に対しては、物統令が残っておりますので、場合によれば、ケースによっては、物統令をかぶせればいいわけでありますので、今度の法律というものは、経済の正常な発展をはかるというために御審議をいただくわけでありますから、私は、やはりいまの段階において、御審議をいただいておるものが一番いい姿だろうと、こう思います。実効もあがるという自信を持っております。
○渡辺武君 それでは、次に私が問題にしなきゃならないことは、商社、大企業の今回のような投機、インフレの悪性化などを引き起こした原因として、政府や日本銀行や大銀行、これらが大企業と一体となって進めてきた放漫な金融財政政策があるというふうに思います。
 一例を大商社にとって伺いたいと思いますが、投機の主役になっている商社に対し、銀行の大量の融資が行なわれた。おそらくこれが投機資金にも回っているだろうと思いますが、全国銀行及びその中での都市銀行の商社に対する貸し出しの現状を報告していただきたい。
○政府委員(吉田太郎一君) 各種商品卸売り業向け貸し出しの数字を申し上げます。
 全国銀行は四十七年十二月末、商社向け四兆百二十六億円でございます。うち都市銀行二兆七千五百七十七億円でございます。
○渡辺武君 都市銀行の貸し出し総額の中で、何%ぐらいを占めておりますか。昭和四十七年十二月末でおっしゃっていただきたい。
○政府委員(吉田太郎一君) 総貸し出し残高に占める割合は八・三%でございます。
○渡辺武君 その商社の範囲はどのくらいの範囲ですか。
○政府委員(吉田太郎一君) これは日本銀行の経済統計月報の各種商品卸売り業をとっております。その大部分が商社だと考えております。
○渡辺武君 それはおかしいですね。どういう数字をおっしゃいました。卸売り業でしょう。昭和四十七年の十二月末には、都市銀行から卸売り業に対する貸し出しの残高は八兆四千二百八十億円、貸し出し総額に対する割合は二五・三%になっています。違っているじゃないですか。
○政府委員(吉田太郎一君) 統計の卸売り業、小売り業のうち、繊維品、鉱物、金属材料というように、単品を扱っておるものと、それから各種商品卸売り業といっておるものがございます。私は、この各種商品卸売り業を申し上げたわけでございます。
○渡辺武君 それは過小評価させるつもりじゃないんでしょうけれども、実情に反したやっぱり統計ですね。全部が大商社というわけじゃないけれども、はっきりと統計に出ている。都市銀行が貸し出し総額の二五%も卸売り業に貸し出しを集中している。特に大手商社の場合は、三菱商事は三菱銀行、三井物産は三井銀行などといって、ちゃんと大銀行とかたく結びついた系列融資をやっている。この系列融資については、これは金融制度調査会も、以前から、こういうことはやめるべきであるということを再々言っております。大蔵大臣、こういう実情をどう思いますか。
○国務大臣(愛知揆一君) いまお尋ねの、まず数字ですが、これはお求めによりまして、資料として提出してございますから、いま銀行局長が申しましたのは、いわゆる商社を含めた、たしか資本金にも一つの限度を置いて計算したものであったと思いますが、大規模の、いわゆる商社を含めた数字でございます。
 それから第二のお尋ねは、やはり金融機関といたしましては、企業の活動等に対しまして、一口に申せば、もう少し日本の企業というものは、自己資本を充実すべきであると思いますけれども、その姿はだいぶよくなってきておりますけれども、やはり依然として金融機関から借り入れをして、その額が相当多いというのが現状である。その状況下におきまして、やはりなじみの深いところにどうしても融資の流れが大きい。これは、やはり債権者としての立場から申しましても、企業に対して、大事な預金を預かっている金融機関でございますから、貸し出し先の企業等についても、十分連携を多く、かつ信頼性を保持する必要がございますから、そういう点で、実際の結果としては、系統的に融資が行なわれているという実情があることは否定できません。しかし、これは偏することはいかぬのでございますから、そういう点については、お話しのように、金融制度調査会でも、そういう点についての批判や御意見も出ておりますから、これは金融当局として、十分指導等を行なってまいりまして、だんだんと分散するようにすべきであると考えております。
○渡辺武君 民間の大銀行だけじゃない。政府系金融機関も、この大商社に対して、かなりたくさんの融資をしていると私は思います。日本輸出入銀行と海外経済協力基金、これの融資残高はどのくらいになっておりますか、大手十社について。
○国務大臣(小坂善太郎君) 大手十社に対します融資残高は、昭和四十七年九月末現在で百三億円でございます。で、その金利は四%から六・七五%になっておるわけでございます。
○政府委員(吉田太郎一君) 輸出入銀行の貸し付け残高につきましては、同じ時点におきまして五千四百七億でございます。
○渡辺武君 輸出入銀行から、非常にたくさんの融資が大手十社にいっているようですけれども、輸出入銀行の貸し出し残高の中で、どのくらいのパーセンテージを占めますか。
○政府委員(吉田太郎一君) 二八・三%でございます。
○渡辺武君 輸出入銀行の場合の金利はどのくらいですか。
○政府委員(吉田太郎一君) 輸出につきましては四・五%から七・五%まで、輸入につきましては四%から七%まででございます。
○渡辺武君 融資の内容はどういう内容でしょうか。
○国務大臣(愛知揆一君) 日本輸出入銀行というのは、銀行という名前がついておりますし、確かに特殊の金融機関でございますけれども、これは普通の金融機関がやれない仕事をやるわけでございます。たとえば海外投資の場合、その投資によって資源の開発輸入が行なわれる、そしてわが国の資源の安定的な確保に役立つかどうか、たとえて言えば、こういう点が輸出入銀行の投割りでございますから、どうしてもこういうふうな、いわば大規模な、そして対外関係で、資源関係というような、一例を申しますと大きな額になりますから、自然、姿として十大商社に対する融資の残高が二八%というようなウェートを占める、こういうことになるわけでございます。
 そうして、ついでに申し上げますが、輸銀の仕事としては、今日のような状況になりますと、かつては船舶の輸出とかプラント輸出とかいう、やはり大規模なものをやっておりましたが、輸出よりも輸入が大事な時代になりましたから、最近におきましては、そういったような姿も、国家的な政策目標によって、国家的に運営をされる、こういう性格のものでございます。またこれは、海外経済協力基金のほうは経企庁の所管でございますけれども、これはまた一段と普通の金融機関以上に、資源の開発等についての調査、開発というようなことを重要な任務といたしておりますから、これを他の金融機関と同様に、同じようなお考えで比較をすることは当たらない、こういうふうに考えます。
○渡辺武君 大銀行からもう借りられるだけ借りて、しかもその上に、金利わずか四・五%程度と。中小企業関係のこの政府金融機関の金利は、標準金利七・七%でしょう。大企業に対して全く安い金利で、しかも基金と輸銀合わせて五千五百億円にも及ぶ金がわずか十社に融資されている。それはもう手元資金がダブついちゃって投機に走るのは、これは当然だと言わなきゃならぬ。しかもその上に、私は、日本銀行もかなりの金をこういう大商社に回しているんじゃないかと思う。昨年、金融の超緩慢期にもかかわらず、六月には日本銀行第六次公定歩合の引き下げをやって、それとともに貸し出しを急増さしております。今年二月にはその残高は二兆円にも及んでおりますけれども、これが大商社にかなり大量に出されているというふうに思いますけれども、この貸し出しの内容をおっしゃっていただきたい。
○参考人(佐々木直君) 日本銀行の貸し出しでございますが、これは、その中において、まず手形の割引というものがございます。それから有価証券その他のものを担保とした手形の貸し付け、それから最近ふえておりますのに輸入資金貸しというものがございます。
 それで、手形の割引につきましては、これは中央銀行の運営の原則といたしまして、きわめて短期間に決済される手形が最も流動性が高いということから、明治の――非常に古いことを申して恐縮ですが、明治の初めから商業手形の割引ということを中心としてまいりました。したがって、この分が商業関係の商社に出ておるという事実はございます。
 それからもう一つ、いま申しました輸入資金貸し、これは、いままで日本では、輸入の金融につきましては、これを全部あげてアメリカの銀行から借りておりました。それで、日本がこれだけ外貨がだんだんできてまいりましたので、そういう日本自身の輸入決済を全部外国の資金に依存するというのは不適当であるということから、現在はその五〇%を日本銀行が為替銀行に貸しまして、それで外国銀行からいままで借りておったものを置きかえる、それによって外貨の残高でもそれだけ減ってまいりますし、外国に対する金利負担も減るということからやっております。したがって、これは輸入決済関係でありますので、結局、為替銀行から商社のほうにいっているというのは、これはそのこと自体の持っておる特殊性であろうかと思います。
○渡辺武君 いまおっしゃったこの輸入資金貸し、ことしの二月で、貸し出し総額二兆円の中で、どのくらいの金額を占めておりますか。
○参考人(佐々木直君) 総貸し出しが、ことしの二月末で二兆百一億でございます。その中で、輸入資金貸しが一兆一千四百四十八億になっております。
○渡辺武君 ばく大なもんだと思うんですけれども、その金利は公定歩合ですか。
○参考人(佐々木直君) 公定歩合でございます。
○渡辺武君 輸銀、基金、これからばく大な金が出ているだけじゃない。それの二倍に近い金が日本銀行から大商社のところにつぎ込まれている。これじゃ大商社は金があり余っちゃって投機をやるのは当然だと私は思う。その上に、日本銀行は一月の末に手形買い取り限度額の設定というのをやりましたね。基準時は十二月二十三日と聞いておりますが、当時における手形買い入れ残高はどのくらいありましたか。
○参考人(佐々木直君) 十二月二十三日現在の買い取り残は、合計で一兆九十億でございます。
○渡辺武君 その業種別の内容をおっしゃっていただきたいと思う、手形支払い人の。
○参考人(中川幸次君) お答えいたします。
 製造業が四五・一%でございます。そのうち鉄鋼、非鉄、金属製品が六・六%、機械、電機が一三%、輸送用機器一一・八%、その他の製造業が一三・七%であります。非製造業が五四・九%でございまして、そのうち卸・小売りが四一・四%、電力・ガスが二・一%、その他の非製造業が一一・四%でございます。
○渡辺武君 これはもうたいへんなことだと思うのですね。一兆円に近い買い入れ手形のうちのこの四一・四%、これは小さなものも入っているのでしょうけれども、しかしとにかく大手十社を含めた商社に向けられておる。それに加えて輸入資金貸しが一兆一千億円も出ている。昨年の六月以来、日本銀行が信用を膨張させたそのほとんどが大手商社を中心とする商社に向けられておる。これでは手元資金がだぶついて、幾らでも投機をやりたくなるというのは当然のことじゃないでしょうか。まさに大銀行・政府・日銀一体となっての大きな投機だと言って差しつかえないと思う。日銀総裁は、このような通貨金融政策を正しいと思っていらっしゃいますか、どうですか。
○参考人(佐々木直君) ただいま輸入資金貸しのことをおっしゃいましたけれども、輸入資金貸しは、商社がいままで外国銀行から借りておったものを置きかえたんでございます。これは日本銀行が貸さなければ、外国の銀行から喜んで貸してくれるわけでございまして、この分が商社に余裕をつくったとは全然考えておりません。
○渡辺武君 この輸入資金貸し、これは円で貸せるわけですね。つまり、それだけ円が増発されるのじゃないですか。そうでしょう。その上に、一兆円の四〇%に近い買い入れ手形はどうですか。これだって円の増発になるじゃないですか。おととしから日本に外貨が流入して、そうして外為会計の円の払い超がおととしは四兆四千億円、去年はこれは一兆七千億円も出ているのです。そういう状態に加えて、日本銀行がまさに大量の金を大商社を中心にしてつぎ込んできている。当然これでは資金がだぶついて、いわゆる過剰流動性なるものが出てくるのは当然のことですよ。それを背景にして大商社が投機をやる、当然のことじゃないですか。どうですか。
○参考人(佐々木直君) 最初の輸入資金貸しでございますが、これは円で融資をいたしますけれども、その分だけは外国借り入れ金が減るわけでございますから、そうでなければ入ってくる外貨が入ってこないわけでございます。したがいまして、外為会計の払い超過がそれだけ減るという形で相殺されます。
 それからもう一つ、ただいまお話がございました、いままでの貸し出しの中で、たとえば大企業の、大商社の手形が入っております点でございますが、これは渡辺先生十分御承知でございますが、市中の金融機関が貸し出しをいたしますのと、日本銀行が市中の金融機関に貸し出しをいたしますのとでは、段階が違います。したがいまして、市中銀行がどれだけ大商社、大企業に金を貸したという問題はあると思いますが、その市中の金融機関が資金を不足いたしましたときにどういう方法で日本銀行から資金を借りるかということは、それぞれそのときの担保の状況その他によってきまってまいりまして、日本銀行の金が個々の貸し出し先につながって出るという性質のものではございませんので、その点は御理解をいただきたいと思います。
○渡辺武君 個々の金融上の技術はあるだろうと思います。しかし、私が特に総裁に申し上げたいことは、私はおととしぐらいからこの国会で総裁にインフレーションの問題について何回も質問いたしました。そのときに私は総裁に、日本銀行の金融政策、通貨政策、これは消費者物価の安定を目ざしておやりになっていただきたい、いまのように物価が上がって通貨価値が下落している、その通貨の安定を目ざしてやっていただきたいということを何回もお願いした。ところが、総裁は、通貨価値の安定を目ざしてきたけれども、それが意図に反しましたということもおっしゃっておられる。それからまた消費者物価の安定、これは卸売り物価の安定を通じてやりたいと考えているのだと、どうしても私の申し上げることを聞いていただけなかった。まさにいま私が明らかにしたような、商社をはじめとする大企業向けの日本銀行の放漫な金融政策こそがいままでの物価騰貴、インフレの一つの大きな原因になったことは私は明らかだと思う。
 特に昨年、実質経済成長率はわずか九%程度なのに、預金通貨、現金通貨の伸び率は二十数%に及んでいる。経済成長率よりも通貨の増発率のほうがよっぽど多い。これでいわゆる過剰流動性なるものが生まれないとすればおかしいのです。総裁は、金融技術上の御説明は私はけっこうだ。しかし一体、通貨金融政策の根本を今後どこに置いてやっていかれるのか。インフレーションをどうしても押えなければならぬと思うけれども、そのための対策をどういうふうにお考えですか。
○参考人(佐々木直君) その点につきましては、私どもの職責がインフレーションをとめることにあるということにつきましては、渡辺先生のお話と全然違っておりません。先般のお話でも、直接消費者物価に対してインフルエンスを及ぼすべきだとおっしゃいましたが、たとえばサービス料金とか運賃とかいうものにはなかなか直接金融の手が届かないので、われわれが直接届く卸売り物価を通じて調整するのが現実にできることであるというふうに申し上げたわけであります。当面物価が上昇しておりますことについては、私ども非常に責任を痛感しております。したがいまして、今度の為替の変動相場への移行、こういうことが日本の経済に実体的にどういう影響を及ぼすかということについては十分配慮はしなければなりませんが、いまの日本の実体、経済の強さから見て、今後の金融政策は引き締めの方向で持っていく覚悟でおります。ただ、その手段、その時期等につきましては、今後十分検討してまいりたいと思います。
○渡辺武君 これは総理大臣にぜひ伺いたいと思うんですけれども、日本銀行の従来の放漫な通貨金融政策、これも含め、また政府系の輸出入銀行などが大商社に五千五、六百億円もの金をつぎ込んでいる、これが商社の今度の投機の大きな原因の一つになったという点について、政府としてどう考えておられるのか。
○国務大臣(田中角榮君) 財政金融は相まって健全経済の発達に資さなければならないということは、もうそのとおり考えております。ただ、輸出入銀行の貸し出しが商社に多いと。これは、輸出入銀行ですから、輸出や輸入をしない人には貸せないわけであります。これは言うまでもないことでございまして、これは商社が対象になることはあたりまえであると、そんなことを百も承知して御質問になっておられると思いますが、そしてしかも輸出入銀行というのは、御承知のとおり、長期延べ払いとか、そういうものの輸出を扱うわけでございます。ですから、造船や大手商社の開発プロジェクトに対しては、輸出入銀行はそのために輸出金融があるわけでございます。ですから、そういう意味で輸出入銀行が貸してきたということが輸出を増大せしめたということはあると思います。そのために今度は輸入にウエートを置かなければいかぬので、輸出の安い金利を高くして、その分だけ輸入金利を下げたわけでありますから、そういうことをやっているので、輸出入銀行の特性から考えてみて、これは輸出を増大せしめたということは言えるかもしれません、まあしいて言えば。しかし、これが直接過剰流動性に結びついたものではなく、それは輸出代金が入ってきたときに商社の手元というものが非常に潤沢になるわけですから、それは借り入れ金を必ず銀行に返済しなさいよ、銀行は徴収すべしということをやることがよかったというようなことは考えられますが、あの当時は、そんなことをすると中小企業に対するサイトが延びたり、中小企業への影響を非常に配慮しなければならなかったために、特に商社には、中小企業に対しては努力をしなさい、こういうことを言っておったわけでありますが、それが過剰流動性の一因をなしたということは否定できないと思います。
 それから、まあ私はいつかひとつ銀行局長からでも調べてもらいたいと思いますが、いままで議論されない、いわゆる流通通貨の中で、案外一般的な人々が使っているもの、大きなものではないんです、一人が使うものは大きくはないんですが、これがとにかく六十兆、七十兆という動きの中で占めているウェートというものはなかなか看過できないものなんです。だから、そういうものもいろいろありますが、そういうものはひとつこの国会の審議の過程において、預金がどれだけあって、手元にはどれだけ動いておって、産業に動いておるものはこれだけ、輸出に動いておるのはおおむね……、これはさだかな数字は申し上げられませんが、あなたには数字というのは御理解できると思うのです。そういう問題を全部ひとつできるだけ明らかにしていかないと、どこかを締めてもなかなかうまくいかぬ。いままでは全然こういうところでは議論されませんが、系統金融それから中小企業金融機関という名における雑金融機関、これの持つ資金量というものは膨大もないものであることは、これはもう申すまでもないことであります。そういう実態をやはりみんな確認をし合いながら、そうして中小企業や零細企業に与える影響というものを排除しながら適正な金融をやっていかないと、これはたいへんなアンバランスが起こるおそれがありますので、金融政策実行に対しては、財政はもちろんのこと、そういうしさいな観察と実態把握のもとに適正な金融政策を進めてまいりたいと、こう思います。
○渡辺武君 国民が持っているお金が投機に回っているわけじゃないし、国民が投機をやっているわけじゃない。それは総理大臣もそうお考えですか、大企業こそ問題ですよ。
 それで、時間もありませんので、自治大臣に伺いたいのですけれども、私のほうから自民党本部、財団法人国民協会それからまた自民党の各派閥の団体、これの名前を指定して、そうして大手商社十社、それからまた不動産業六社、それから同じように土地の投機をやっている私鉄八社、それから銀行業、これから昭和四十五年上期・下期、四十六年上期・下期、これの政治献金の額を計算をお願いしております。四十五年度それから四十六年度でどのくらいになりましょうか。
○国務大臣(江崎真澄君) かねて渡辺議員からいま御指摘のようなお申し出がありました。四十五年、四十六年、四十七年、この三年間で財団法人国民協会四億七千九百四十二万円、ほか二千百六十三万円、合計五億百五万円、こうなっております。
 詳しく必要があれば、政府委員から申し上げます。
○渡辺武君 総理大臣に伺いたいんです。
 先ほど来、大商社、大企業、これが投機をやって、生活必需物資が大幅に上がっている。そして大工さんはもう材木の値上がりだけじゃない、材木がなくて仕事ができないような状態が出て、私の近所の病院などは、これはガーゼがなくなって、紙ガーゼでもって手術をやっている。近所のお針子さんは糸がなくなってきている、こういう状態ですよ。全くひどい……
○委員長(大竹平八郎君) 渡辺君、時間が来ました。
○渡辺武君 この国民の生活を踏みにじって顧みない投機をやっているこれらの大企業から、自民党が二年半にわたって、金額としては五億円、あなた方にすれば大きくないお金でしょうけれども、いずれにしてもお金をもらっている。こういう問題について、自民党の総裁としてもどういうようにお考えになるのか、総理大臣としての政治姿勢、これを伺いたい。こういう状態がある以上、大企業の買い占め、売り惜しみ、これを押えようとする法律案、これもまた甘いものになる、大企業に対する態度も甘いものになるのは避けられないではないですか、どうですか。
○国務大臣(田中角榮君) いま自治大臣が答えたことが、何年から何年までなのかさだかにわかりませんが、国民協会があなたが調査を要求された企業から受けておるようでございます。国民協会は特定な企業から受けておるわけじゃありません。これはほとんどの全企業から受けておるわけでございまして、全企業だけじゃなく相当の個人も法人も受けておるわけでございます。これはそういう制度がございまして、個人に限られることが望ましいことでございますが、過渡的なものとしていままで受けておるということは、これは事実であります。これは自治大臣が届け出に対して調査の上報告したのでありますから、事実であります。これは将来そういう問題に対して政治資金規正法のときに、これは国民の参政に対する手段でありますから、これは金額を制限するということよりも――金額を制限するのは、それじゃ企業から受けちゃいかぬと同じように、労働組合から受けちゃいかぬとか、零細なものからはなお受けちゃいかぬというような問題も起こるわけですから、こういう問題は、これはそういう法律案の過程においていろいろ御論議をいただく問題といたしたい、こう思います。
 ただ、国民協会がそのような資金を受けておることによって行政や政治の手心は加えません。そうだから、早くこの法律を審議して通してくださいと言っているでしょう。これだけせっついておるんじゃありませんか。
○渡辺武君 総理大臣の政治姿勢の問題ですよ。
○国務大臣(田中角榮君) だから、そういう意味で、それらの問題は政治資金規正法の過程において論ぜらるべき問題でございます。同時に、そのような資金を受けたからといって政治を曲げるようなことは絶対いたしておりません。
○委員長(大竹平八郎君) これにて渡辺君の質疑は終了いたしました。
 次回は明後日午前十時開会することとして、本日はこれにて散会いたします。
   午後六時五十四分散会