第076回国会 外務委員会 第4号
昭和五十年十一月二十日(木曜日)
   午前十時十七分開会
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  出席者は左のとおり。
    委員長         二木 謙吾君
    理 事
                稲嶺 一郎君
                秦野  章君
                増原 恵吉君
                戸叶  武君
    委 員
                伊藤 五郎君
                糸山英太郎君
                大鷹 淑子君
                木内 四郎君
                亘  四郎君
                田中寿美子君
                田  英夫君
                松永 忠二君
                塩出 啓典君
                立木  洋君
                田渕 哲也君
   国務大臣
       外 務 大 臣  宮澤 喜一君
   政府委員
       外務政務次官   羽田野忠文君
       外務省アジア局
       長        中江 要介君
       外務省中近東ア
       フリカ局長    中村 輝彦君
       外務省経済局長  宮崎 弘道君
       外務省経済局次
       長        野村  豊君
       外務省条約局長  松永 信雄君
       外務省条約局参
       事官       伊達 宗起君
       外務省国際連合
       局長       大川 美雄君
       厚生大臣官房審
       議官       大森  薫君
       労働大臣官房長  桑原 敬一君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        服部比左治君
   説明員
       農林省農林経済
       局国際部貿易関
       税課長      塩飽 二郎君
       通商産業省通商
       政策局西欧アフ
       リカ中東課長   野々内 隆君
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  本日の会議に付した案件
○社会保障の最低基準に関する条約(第百二号)
 の締結について承認を求めるの件(内閣提出)
○国際情勢等に関する調査
 (婦人関係ILO条約の批准促進に関する決議
 の件)
 (先進国首脳会議に関する件)
 (国連総会における朝鮮問題決議に関する件)
 (松生丸事件に関する件)
 (在日米軍の移動と事前協議に関する件)
 (南アフリカ共和国に対する外交政策に関する
 件)
○千九百七十一年の国際小麦協定を構成する小麦
 貿易規約及び食糧援助規約の有効期間の再延長
 に関する議定書の締結について承認を求めるの
 件(内閣提出)
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○委員長(二木謙吾君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 社会保障の最低基準に関する条約(第百二号)の締結について承認を求めるの件(本院先議)を議題といたします。
 本件につきましては、前国会においてすでに全会一致をもって議了したものでありますので、理事会におきましても、本件の審査について協議いたしました結果、今回は、質疑、討論を行わず、直ちに採決することにいたしております。理事会の決定どおり取り運ぶことに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(二木謙吾君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 それでは、本件の趣旨説明は前回の委員会で聴取いたしておりますので、これより直ちに採決に入ります。
 社会保障の最低基準に関する条約(第百二号)の締結について承認を求めるの件を議題に供します。本件に賛成の方は挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
○委員長(二木謙吾君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(二木謙吾君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
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○委員長(二木謙吾君) 国際情勢等に関する調査を議題といたします。
 田中君から発言を求められておりますので、これを許します。田中君。
○田中寿美子君 私は、各派の共同提案に係る婦人関係ILO条約の批准促進に関する決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    婦人関係ILO条約の批准促進に関する決議(案)
 一、国際婦人年の意義に照らして、政府は未批准の婦人関係ILO条約をすみやかに批准するよう努力すべきである。
 一、政府は、批准ずみの条約については、その趣旨に添つて国内の法律、制度の運用を一層改善するよう最大の努力をすべきである。
 一、政府は、一〇二号条約に関し今回受諾しない部門、特に母性給付及び遺族給付については、本条約の趣旨をふまえてその改善をはかり、もつて、可及的すみやかに条約第四条1の規定に基づく義務受諾の通告を行うよう努力すべきである。
  右決議する。
 以上でございます。
 何とぞ御賛成くださいますようお願いいたします。
○委員長(二木謙吾君) ただいまの田中君提出の決議案に賛成のお方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
○委員長(二木謙吾君) 全会一致と認めます。よって、本決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたします。
 ただいまの決議に対し、宮澤外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。宮澤外務大臣。
○国務大臣(宮澤喜一君) ただいま採択されました御決議に関し、政府といたしましても、婦人関係ILO条約の履行に必要な国内法の整備を行った上これを批准することは、国内における勤労婦人の地位向上につながるのみならず、労働問題の分野におけるわが国の国際信用を高めることにもなり、きわめて有意義と考えておりますので、今後とも十分検討してまいりたいと考えます。
 また、このような観点から、先ほど御採決いただきましたILO第百二号条約につきましても、今回義務を受諾しない部分につき、今後とも引き続き関係各省間で緊密な連絡を保ちつつ、政府として最善の努力をいたす所存であります。
 なお、批准済みの条約について、国内法の運用を改善すべしとの点につきましては、政府部内において十分に検討してまいりたいと考えております。
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○委員長(二木謙吾君) 国際情勢等に関する調査について、これより質疑を行います。質疑のある方は順次御発言を願います。
○戸叶武君 先般行われたランブイエ先進六カ国首脳会議に、宮澤外務大臣は、三木総理並びに大平蔵相と出席しておりますので、この会議のねらいとこの会議の成果について重立った点を承りたいと思います。
 まず第一に、ジスカールデスタン仏大統領は、通貨を安定させるために、為替相場の安定についてフルカード仏蔵相とサイモン米財務長官の間にメモランダムの署名が行われたという発表をし、この問題がこの会議における一番大きな成果ではないかと見られておりますが、あなたの受けとめ方はどうなっておるでしょうか。
○国務大臣(宮澤喜一君) ただいまの戸叶委員のお尋ねでございますが、確かに、通貨の問題につきまして長年論争をいたしておりました米国及びフランスの間におきまして、いわゆる変動相場制というものをIMFの体制の上でどう考えるかということにつきまして一つの了解が成立したということを、各国の蔵相、蔵相代理者の会議において紹介があったわけでございます。このことは、通貨についてのいわゆる基本的な論争を一応別にいたしまして、当面、行われております変動相場制というものもIMFの協定の中で一つの地位を与えるべきではないかということについての両国間の考え方の一致というふうに見られるわけでございまして、今後の通貨情勢の安定に寄与する要素であると存じます。
 ただ、首脳会議全体の成果ということになりますと、これはもう少し幅広い、しかも将来にわたっての国際経済についての主要国間の考え方の一致というようなことに関係をいたしますので、ただいまの通貨の問題につきましての米仏間の意見の一致というものは、今回の首脳会議の一つの成果であるというふうに私としては考えております。
○戸叶武君 将来にわたっての見通しの上に立っていろいろな調整を行ったというのがねらいでしょうけれども、自主的な成果の面では、キッシンジャー米国務長官もあなた同様に、この会議においては沈黙を守っておりますが、帰りの飛行機の中での発言において、変動相場制と固定相場との関係をめぐる論議に終止符を打ったというような発言をしておりますが、終止符を打ったというところまで問題が煮詰ったのかどうか。あなたは、これはこの中における一つの問題であると言っておりますが、この一つの問題が、いままでのアメリカとフランス、ヨーロッパとアメリカというものの対立があったそれを調整を行ったのでしょうが、果たしてキッシンジャーが飛行機の中でアメリカのホワイトハウスの記者たちに発表したように、これでもって終止符が打たれたのかどうか、その認定はどういうふうに見ますか。
○国務大臣(宮澤喜一君) 大平大蔵大臣の説明によりますと、このたび、通貨の問題については二つの要素について話し合いが行われた由であります。
 第一点は、今後国際通貨の、いわゆる為替相場の乱高下を防ぐために各国の通貨当局が情報を交換し合い、あるいはおのおのの判断において必要な限り会議をすることあるべしということについての一般的な了解、これが一点でございます。第二の点は、長いこと米仏間の論争でありましたいわゆる固定相場制と変動相場制について、その間の本質論というものは今回をもって終了したとは私は考えていないわけでございますが、しかし、ともかく当面の国際通貨政策としては変動相場制というものが現実に行われつつある。その現実は、IMFの規約の中でのきわめて限られた緊急避難的な地位から、もう少し一般的な地位をIMFの考え方の中で固定相場制とともに与えられるべきではないか、認めるべきではないかということに関する米仏間の合意というふうに説明されております。この点は申し上げるまでもなく、IMFの規約の改正ということになるわけでございましょうが、したがって、それは来年一月のジャマイカにおける会合において決定をされるのであろうと存じますが、米仏間だけでこのような改正がなされるべきものではないことは申すまでもないことでありまして、加盟各国の決定のもとになされるべきものであります。ただ、主として米仏がこの点をめぐって長い間論争をいたしておりましたけれども、ともかく当面、現実の物の考え方としてこの論争に一応終止符を打とう、こういう意味合いを持っているものというふうに大蔵大臣から私は説明を開いております。
○戸叶武君 フルカード仏蔵相は、EC蔵相会議終了後、同じく去る十七日、記者団に対して、「為替乱高下を防ぐため 一、ECに加えて米連銀と日銀が毎日、介入操作について協調する 二、各国大蔵省高官が一週間ごとに、電話またはテレックスで調整を図る 三、一ないし二、三カ月ごとに各国蔵相が電話するか、直接会談して調整する」、この三段階の安全措置について語っているが、大体その程度の取り決めは行われたのでしょうか。
○国務大臣(宮澤喜一君) 実は、この点は表面にあらわれました会議の記録等々には、今度の会議の性格もありましてどこにも出ておりませんので、その会議の場におりました大蔵省の者からでありませんと非常に正確には実は申し上げられないのでございますけれども、私が間接的に聞いておりますところでは、現在、現実にECの国の間では毎日毎日の為替の動きについては、これは当然のことながら、常に情報の交換があるようでございます。そういう意味では、わが国ば直接にはドルとの相場が毎日立っておるという国柄でございますから、毎日毎日のECの動きについて通報を受け相談を受けるということは従来もないようでありますし、普通の場合、現実の必要があろうとは存ぜられません。しかしながら、今回の一般的な、いわゆる紳士協定と呼ばれているようでございますが、そういう相談の中では、必要が起こりました場合には、わが国もそのような情報交換あるいは相談の一環に入るということのようでありまして、なお、ECの間におきましては、ただいま戸叶委員の言われましたように、一つは中央銀行、次に大蔵省、財務省における高級、ハイオフィシャルの間、最終的には必要により大蔵大臣間、こういう三層の相談の仕組みというものを、これは新たに設けたと申しますよりは、従来からもほぼそういうしきたりがあるようでございますけれども、そういったようなことを確認をしたということであったというふうに、会議に出席いたしました蔵相、蔵相代理から私は聞いておりますのですが、非常に正確なことについて申し上げる必要がございましたら、会議出席者から申し上げることが実は適当であろうと存じます。
○戸叶武君 いまの宮澤外相の答弁で、あるところまでわかったのですが、このフルカード仏蔵相の発言は、あの会議が終わった後の、EC蔵州会議の終了後における記者会見での発言でありますから、あなたが言われるように、EC間の問題に制約をしているのかもしれませんが、しかしながら、この米仏間における現在最も重要な問題は、ドルとヘビと言われておるように、欧州共同体共同変動相場の通貨の安定と見られるのですが、その背景をなすものには、彼らの認識において円とドルとの間にはすでに安定した関係ができておるので、米国と日本の景気は回復のプロセスにある、そういうことをアメリカ側も打ち出しておりますし、日本もそれに同調してECの説得に回ったと思われるのですが、あなたの推定ではどうでしょうか。そういう点においてアメリカと日本、アメリカとEC、このアメリカ、EC、日本、これが大体において合意の方向に向かったというので、あなたが言ったように、これで最終的なピリオドを打ったものとはまだ思えないのですが、そこらの関係はどういうふうに表現していったらよいでしょうか。
○国務大臣(宮澤喜一君) ただいまお話しのように、私の推定、想像というようなことで申し上げることが適当であろうと存じますけれども、在来からこの問題につきましては、いわゆる固定相場か変動制かということの問題につきましては、
  〔委員長退席、理事増原恵吉君着席〕
わが国は、御承知のように変動制をドルとの間でとっておりまして、しかもそれは、過去におきましてかなり安定した姿で制度が運用されております。恐らくは、ときによりまして中央銀行がモデレートな介入をいたしておるとは存じますけれども、その結果として乱高下というようなことが起こらずに推移をしてまいりました。したがいまして、わが国としては基本的な、いわゆる哲学的な論争は別といたしまして、固定相場のみを中心に考えておるIMFの規約というものは、現実の問題としてある程度手直しをしておいた方がいいのではないかという立場をとっておったものと存じます。
 しかるところ、最近になりまして米国とフランスとの間でその問題について合意があり、すなわち合意の内容は、変動相場制というものをIMFにおいて正式に認知しようということではございますけれども、他方でIMFが従来からとっております金ドルの固定相場制というものについても、これはアメリカ側の方が一つの考え方としてそれを否定するという立場には立たないという、両方からのそういう妥協であったと思うわけでございますが、そのような両国の妥協ができたことは、先ほど申しましたようなことから申しますと、わが国として歓迎すべきことでございます。
 また、乱高下を防ぐための介入ということにつきましても、わが国自身が従来そのようなことを行いまして、為替の動きをモデレートにすることに成功をし、また、そういうことを現実にやってまいっておりますので、関係国間でそういうことについて紳士協定ができたということも、わが国の立場からいえば歓迎すべきことであるというふうに考えております。ただ、アメリカとフランスとの間にそのような了解ができたということについて、直接わが国が先に立ってそれを推進したというようなことは恐らくなかったのではないか。いわば円は一応御指摘のスネークとは離れた立場でドルとの関連で動いておりますから、わが国自身が直接にそのもの自身に関心があるという立場ではない。もちろん大きな問題としては深い関心がございますけれども。したがいまして、私の想像では、ジスカールデスタン大統領が今回の会議のしばらく前にいたしました講演の中で、為替相場のあり方として、いわゆる変動相場と固定相場との間に半流動的と申しますか、やや粘着性と申しますか、流動体と固体との間の、為替上のものとでも申しますか、そういう制度のあり方というものがあるであろうということを申しました。その段階で、すでに今回米仏で合意ができたと伝えられるようなものの考え方がほぼできつつあったのではないか。このたびの会議で突如としてそういう結果が出たということではなく、米仏間にかなり長いことその問題についての討議と打ち合わせがあったのではないかというふうに私は推察をいたしておるわけでございます。
○戸叶武君 アメリカとフランスの間に歩み寄りができたということは一つの大きな収穫だというふうにアメリカ側は見ているようですが、問題は、まだまだこれは煮詰めていかなきゃならない問題だと思うんでありますが、いま宮澤外務大臣が言われているように、メモランダムはIMF規定第四条為替機構改正について共同案を持ち、来年一月のジャマイカで共同行動がとれるように、そこで煮詰めていくんではないかと見られておりますが、その共同案というようなものは個々の国国だけでなく、アメリカなりECなりあるいは日本なり、そういう国々が持ち寄るのか、それとも各国で持ち寄るのか、その前における来月十九日の十カ国蔵相会議というようなもので煮詰めていくのか、それはどういう過程を通っていきますか。
○国務大臣(宮澤喜一君) この点も通貨当局がちょっとこの場におりませんので、多少申し上げることが一般的でありましてもお許しいただきたいと思いますが、来月の蔵相代理会議及び蔵相会議におきまして、一月にキングストンで決定をしたいと考えております規約の改正について議論が行われるように聞いております。
○戸叶武君 あなたと三木首相とでは、大体考え方が大平さんほど開きがなくて一致しているんじゃないかと思いますが、きのうの三木首相がこの会議における成果について五点ほど挙げておりまして、第一点においては、インフレの再燃を避けつつ速やかに景気を回復し、消費者と企業家との自信の回復を図ることが約束されたと第一に挙げておりますが、それは大体約束されたわけですか。あの宣言においては非常に抽象的ですが、約束されたと見らるべきでしょうか。
○国務大臣(宮澤喜一君) そのようにお考えくださって間違いないと思います。
○戸叶武君 それから次に第二点の、世界貿易拡大の必然性を指摘され、それに関連して自由貿易の原則とOECDの輸入制限自粛が再確認された。したがって、東京宣言に基づく多角的貿易交渉を促進することができるようになった。一九七七年までにはそれが達成されるであろうという見通しですが、そういうような見通しも立ったのでしょうか。
○国務大臣(宮澤喜一君) その点につきましても御指摘のとおりと考えております。
○戸叶武君 すでに第三の通貨問題、為替の問題はいま質問しましたが、第四の南北問題では、開発途上国の輸出所得の安定化の国際的取り決めに対して主要各国それぞれが責任を果たすことが合意された。それは具体的にはどういうことですか。
○国務大臣(宮澤喜一君) この点は宣言の十二項に多少詳細に述べられておるわけでございますが、すなわち、開発途上国につきましては、一つは現在生じております経常収支の赤字について先進国側がいろいろな方法によって何かの措置を講じませんと、これらの国々は石油製品のみならず、その他の必要な輸入に事を欠くような状態になりつつある。したがって、これは開発途上国にとって重大な問題であるのみならず、実は世界貿易の縮小ということから先進国にとりましても大きな問題でございます。したがって、それに対処する必要性、及び開発途上諸国の輸出所得の安定を図るために、これはいわゆる口〆協定でありますとかいろいろな構想が議論され、あるものは実施されようとしておるわけでございますが、やはりそういう方向に向かって先進国が一緒に努力をすべきではないか、その場といたしましてはIMFであるとかあるいはその他類似の国際的ないわゆるフォーラムがございますので、それらを使っていってはどうであろうかというような点につきましての合意が第十二項に述べられておりますが、それにつきまして総理大臣が昨日言及をされたものと存じます。
○戸叶武君 エネルギーの問題では、節約と代替エネルギー開発を通じ輸入エネルギーの依存度軽減のために引き続き協力することで一致した。この問題が産油国にも相当な刺激を与えておると思いますが、具体的な進め方、どういう進め方でこれを行っていく予定ですか。
○政府委員(宮崎弘道君) 国際エネルギー機関におきまして節約あるいは代替エネルギーの開発というようなものにつきまして現在も論議が行われております。節約につきましては、加盟国全体を一丸としました一種の節約目標というようなものを設定すべく、いま詰めが行われております。代替エネルギーの開発につきましても、たとえば研究開発についての相互協力であるとか等の分野で一種の長期目標をつくろうとしてるわけでございます。これらは国際エネルギー機構におきます消費国の間の協力、長期協力でございますが、これとあわせまして、いわゆる産油国との協調関係というものを図ろうということもこの機関でいろいろ討議されているわけでございます。十二月十六日に開催されますことが予定されております国際経済協力会議の場におきましても、産油国、非産油発展途上国を合わせましてこれらの問題を討議し、産油国と消費国との間に調和のある関係をつくるということを目標に作業が行われる予定でございます。
○戸叶武君 エネルギーの問題と食糧問題というものがアメリカでは重要な戦略物資として取り上げられておりますが、食糧の問題に対しては具体的にはどういうふうな取り決めがなされたでしょう。
○政府委員(宮崎弘道君) 今回の首脳会議におきましては、特に食糧の問題につきまして活発な議論が行われたということはないものと承知しておりますが、他方、例のローマにおきます国連の食糧会議の後を受けまして、引き続きローマでも世界の食糧問題が討議されておりますし、その中でいわゆる小麦につきましては、ロンドンにおきます国際小麦理事会の場を使いまして、小麦の安定的な貿易ないしは小麦の備蓄の問題が議論されております。それからまた、ガットの東京ラウンドの交渉の場におきましても貿易と備蓄の問題を含めまして、いま議論が行われておりますが、まだ非常に詰まった段階には達しておりませんで、それぞれの場におきまして、それぞれの場の特性を生かしながらいろんな角度から討議が進捗しつつあるというのが現状でございます。
○戸叶武君 別な機会にエネルギーや食糧の、特に備蓄の問題等は小麦協定の際か何かに質問することにいたしますが、きょう私がこの為替相場の安定というものを世界が目指しているときに、前の愛知君はこの問題と取っ組みながら死んでいってしまったようなものですが、やはり宮澤さんは日本の経済閣僚の中でその方では相当ベテランであるし、そういう関係から今後の外交というものが国際的なスケールを持って世界の中における日本のあり方を模索しなければならない。そういう点で宮澤さんから、私たちは三木さんから総論を聞き、三木さんと若干ニュアンスの違う大平さんから物を聞くよりもあなたから聞いた方が素直に問題がつかめるのではないかと思ったのは、キッシンジャー米国務長官が去る六月十八日、ニューヨークのウオルドルフ・アストリア・ホテルのジャパンソサエティーで行った臨時総会の演説、変化する世界の中のアメリカと日本というあのアメリカの外交政策の転換について、特に日本をパートナーとして彼は同盟という形に呼んでおりますが、手を携えて今後新しい世界秩序をつくろうという意欲を示しているのに対して、真っ正面からそれにこたえたのは、去る七月十日の宮澤外相の東京の外人クラブにおける今日の世界と日本の外交の演説だと思うんです。そこに問題を大胆に取り上げて、当面する基本問題との取り組みを示しておりますが、それが今度のこのパリ郊外における会議においてあるところまでまとまった形で却光を浴び、そして舞台回しの方のキッシンジャー並びにキッシンジャーの背後に秘められている宮澤さんというのが黙って一つのある役割りを私は果たしたものと見ておりますが、一般的な見方としては、資本主義の危機に対してこの会議が果たして成功をおさめるかどうかというものに注目を注がれておりましたが、三十四年前の一九三三年のロンドン世界経済会議があのようにまとまりがつかなくて失敗して、そうして第二次世界戦争誘発の歯どめができなかったのと違って、今度の会議は、煮詰まったような宣伝はしているが、細かい部分において具体的には煮詰まっているとは見られないので、あそこは公の出発点で、これから、ことしから来年に向かっての、あるいは二年間がかりぐらいの動きというものが注目に値するのじゃないかと思いますが、その一つ一つの歩みというものは非常に重要だと思いますけれども、今後における見通しは宮澤さんはどういうふうに見られるのですか。
○国務大臣(宮澤喜一君) ただいま一九三三年の会議との対比についてお話があったわけでございますが、戸叶委員は、当時の会議をすでに御自身の体験として御承知でいらっしゃいますし、私どもはいろいろ文書でそれを読むという間接的な体験しかございませんけれども、しかし、今回の状況と比べますと、一つはやはり戦争というものについての世界的な否定、戦争というもので事を解決するということについて世界の多くが非常に否定的、批判的になっておるということは、当時と大きな私は変化であろうと存じます。
 次に、当時に比べますと、いろいろな国際的な機関あるいは国際的な場において各国が絶えず協議をし、協調していくというような場が当時に比べますと数多く設けられておるということ。なかんずく、ヨーロッパにおきましていわゆるコンモンマーケットが誕生して、EC諸国が一国になったわけではございませんけれども、かなり緊密な常時連絡をする体制にある。このようなことは、三三年の場合に比べますと大きな変化であろうと考えます。したがいまして、今回の会議と一九三三年のころとはそのような点におきまして背景がかなり進歩をした、有利になっておると考えてよろしいのではないかと思います。
 そこで、このたびの会議が果たして具体的に成果を生んでいくかどうかということは、まさに御指摘のように、このたび合意いたしました諸点について各国首脳がこれを文字どおりそのように理解をし、また、おのおの国の中でそのようなコンセンサスをつくり上げて実行していくかどうかということにかかっているというふうに考えます。
 先ほど戸叶委員が御指摘になりました幾つかの点、すなわち、インフレの再燃なしに現在の世界経済を回復していくことはお互いの共通の問題である。一国だけではできないということについての認識、あるいはOECDで世界貿易の拡大、あるいは東京ラウンドの完成といったようなものについて、あるいはまた通貨問題について、また南北問題について、エネルギーもさようでございますが、宣言に述べられておるところが単なる言葉、宣言に終わるのか、あるいは文字どおりこのような宣言の精神に基づいて各国あるいは各国民が共同動作をとっていくのかいかないのか、その点が、今回の会議が果たして成功であったか成功でなかったかということを占います私はかぎになるというふうに考えておるわけでございます。
○戸叶武君 世界の中における日本の役割りというのを模索した点では一つの試みだと思いますが、いま日本は世界の中における日本の役割りを探求すると同時に、日本に直接迫ってくるベトナム以後における北東アジアの危機の打開、こういうものをどうやって、ただ世界の中に埋没するんでなく、アジアという名前の中に埋没するんでなくて、当面の危機をどう打開するかは、これは朝鮮の問題をめぐって田英夫さんが後で質問しますから、私はこれには触れないことにしますが、アメリカと手をとって国際調整に乗り出すことは一つの動きかと思いますが、このアジアの問題は、ベトナムにおける失敗、前の朝鮮戦争における失敗を見ても、アメリカはアジアを知っておらなかったんです。率直に間違ったということをキッシンジャーもあの歴史的な演説の中で反省しております。そういう点において、やってから反省したんじゃ間に合わない。日本はいままでにずいぶん朝鮮の問題、中国の問題でも失敗しておるので、アメリカをして再び失敗をさせないためには、少なくとも中国の問題、朝鮮の問題、ソ連の問題に対する調整は、日本がイニシアをとっていかなければならないと思うんですが、この機会にお聞きいたしますが、日中平和友好条約というものは覇権問題でいろいろ足踏みをしておりますが、もう当然なし得るところへきておると思うのでありますが、むずかしい問題を避けて通るような傾向がいまの政府にはあるんですけれども、これは年内に片づけるということはあるいは困難かと思いますが、年内なり明春早々なり、片づける見通しはできておりますか。
○国務大臣(宮澤喜一君) 去る九月の国連総会の折に、喬冠華中国外務大臣とかなり長いこと、この問題について話をいたしました。と申しますのは、それまでの九カ月間、交渉を真剣にいたしましたけれども、両者の意見が一致するに至らなかったというのが事実でございますので、その間にお互いの考えていることが何ゆえに突き合わなかったという点につきまして、主として御指摘のようないわゆる覇権問題というもので話をいたしたわけでございます。この点は先般他の委員会で一応申し上げましたので、冗長になりますといけませんから省略をさしていただきますけれども、要するにこの問題についてのわが国の考え方を私から申し述べまして、少なくとも喬冠華外相におかれて私の考え方に賛同をされたとは申し上げませんけれども、考え方としてそれなりの理解はされたであろうというふうに思っておるわけでございます。ただ、これを現実に文字にあらわしまして、そして合意に至れるかどうかということになりますと、これはそこまで進んでみませんと十分に予測のつきかねることでございまして、ただいま何かそういうことをもう少し確かめたいというふうに考えております。この点は、中国側も恐らくは九月の会談の記録等を詳細に検討をしておられるものというふうに考えますが、具体的に私どもが九月に話し合いましたことを、どのような方法でどのように表現するならば両国の立場というものが損なわれることなしに合意できるかというところを、いまいろいろに私もとつおいつ考えておるところでございます。年内にということは、もう日もわずかでございますから申し上げかねますけれども、私どもとしては、余りこの際回り道をせずに、ストレートにこちらの考えも述べ、向こうの考えも聞くという段階にできるだけ早く入りたいというふうに考えております。
○戸叶武君 時間がまいりましたから、最後にお願いだけをしておきます。
 戦後三十年間に世界は大きく変化して、七十余国の独立した国々が国連に加盟し、国連ではすでに百三十八カ国に加盟国が達しているんですが、こういうふうに第三世界の台頭というものがあり、発展途上国に対してどうやってこの人たちとの調整を図るかというのは、第一に日本がアジアの代表というよりは、後進国と言われたところ、アジアの後進性から脱却して一応先進国という仲間入りをしたんですが、必ずしもアジアを代表しているものじゃないと思います。ただ、アジアなりアフリカなり、発展途上国の苦悩というものを自己の体験で代表して国際社会で物を言うのでなくて、アメリカなりソ連なり、そういう強大国に従属して物を言うという立場では、日本の今後の外交の上における成果というものは上がらないんじゃないかというふうに私たちは心配するので、聡明な宮澤さんは百もこれを心得て、行きつ戻りつ、われわれから見るとまどろっこしいと思うようなスローな形で外交を進めているが、そういう配慮があってのことだと思いますけれども、今後においては、やはりわれわれはアメリカ一辺倒だけでなく、しかし、アメリカだけを敵視するんじゃなくて、やっぱり中国なりソ連なりの対立の中に入ってそれを激化するようなことはなくていくのには、みずからの主体性を確立することが一番大切なんじゃないか。キッシンジャーもなかなかさる者でありますが、やはり彼はそれなりにメッテルニヒ的な夢を見ている怪物でありますし、どうぞ宮澤さんも、品はいいようだが、怪物にならないまでも、キッシンジャーの手のひらの上で振り回されるようなことのないように、心して前進して行かれることを期待して、私の質問を終わります。
○田英夫君 今回国連総会で、第一委員会と同様に、朝鮮問題をめぐる二つの決議案がともに採択されるという事態が起こったわけでありますが、最初にこの事態に対する大臣の御感想を伺いたいと思います。
○国務大臣(宮澤喜一君) 国連総会におきまして、朝鮮問題に関する決議案が二本とも採択をされた、票にあらわれました結果は第一委員会におけるものとそんなに大きな差異はないような姿で採択をされたわけでございますが、わが国も共同提案国になりまして、国連軍解体についての決議案を一方を推進をいたしてまいりました。多数派工作もこの間一生懸命やったわけでございます。が、私どもが本当に考えましたことは、決議案が成立すること自身は現状を何ら解決するものではないわけでありまして、いわゆる平和的な関係国の話し合いを行うということがこの問題の解決の第一歩でなければならないという立場から、実は決議案についていろいろ努力をしてまいったわけでございます。
 結果は、内容の異なった、しかもある意味では矛盾する決議案が二つとも成立を総会でもしたという、まことにある意味では不毛な結果が生まれたというふうに考えておりまして、このようなことを毎年繰り返しておりますれば、朝鮮半島における対話というものは、促進されるよりは逆にその間のいわゆる感情的なあつれきと申しますか、両グループの票争いといったようなことで、かえって対話の空気というものは損なわれるおそれすらある、少し言い過ぎかもしれませんが、そのような感じがいたしておりまして、第一委員会と総会との間で何とかその間の話し合いへの進展を図ろうと、陰ながらではありますが、いろいろいたしましたが、実を結びませんでした。しかし、明年また同じことをやるということは、労多くして功少ないものではなかろうか、これは関係者もかなり多くそのように感じ始めているようでありますけれども、そういうことを背景に、何かやはり関係国の間の話し合いに入れるように、わが国としても国連の場を通じまして努力を新たにしなければならないというふうにただいま感じております。
○田英夫君 大臣が九月に国連総会においでになった機会に、そのときにはまだ第一委員会の採決もなかったわけでありますが、ワルトハイム事務総長にこの問題についての仲介を依頼されたということを御報告を伺っているわけでありますが、偶然に、大臣がお会いになる直前に、社会党の代表団もワルトハイム事務総長にお会いして、朝鮮問題についていろいろ論議もし、また、われわれの考えも述べたわけでありますが、期せずして、やや似たようなことをお願いしたかもしれません。大臣の、その問題についてワルトハイム事務総長に依頼をされた経緯あるいはお気持ちをこの際伺っておきます。
○国務大臣(宮澤喜一君) 問題が安保理事会によって決められました国連軍というものの派遣、そしてその解体という問題でございますから、当然これは事柄の性質上、事務総長が関心を持たれてしかるべき問題である、本質的にそういう性格を持っておる問題であるということを基本の認識にいたしまして、ワルトハイム事務総長と話をいたしたわけでございますが、特に、第三者的な立場からワルトハイム氏の努力に期待いたしましたのは、北鮮は韓国とは直接には――韓国と申しますよりは、韓国の現政権とは直接に話をすることは拒否する、一応そういう立場をとっておる。他方で、いろいろの見方はございましょうけれども、現在の朝鮮半島の現状から判断をして、韓国を度外視して問題の解決というものが図れるとは私どもには思えない。その間、アメリカの立場は、北鮮と話し合いをすること自身拒否をするものではないが、韓国を除外した形で有効な話し合いができるとは思わない、こういう立場でございますから、そういたしますと、第三者である事務総長がその間に仲介をして、何か米、北鮮両方の立場が損なわれないような形で、しかも、韓国を除外しない対話というものは可能ではないだろうかということを考えまして、中ソというところもむろん考えなかったわけじゃございませんけれど、とりあえず韓、米、北鮮というようなことを何か話し合いの場につけるということでやはり事務総長の努力に期待すべきではないか、ほぼそういう考えから要請をしたわけでございます。
○田英夫君 いわゆるこの問題についての関係者というのは、関係国といいますか関係政権といいますか、それはいま大臣言われたように当然韓国も入るのはあたりまえだと思いますが、大臣のお考えで関係国というと、いま言われたように南北朝鮮とアメリカというふうにお考えなのか、あるいはキッシンジャーが言っているように、日本や中ソというところまで入れるのか。しかも、中国の場合には朝鮮戦争に参加をした国でありますから、ソ連、日本とはやや違うと思いますが、今後の話し合いということ、あるいは韓国支持決議案の中にもそういう意味の関係国の間でこれを話し合うべきだということがあると思いますが、この関係国というのは、大臣としてどの範囲をお考えなのか、いかがでしょうか。
○国務大臣(宮澤喜一君) まさしく御指摘のように関係国、あるいは真の関係当事者といったようないろいろ微妙な表現が、決議案の起草あるいは修正の段階でいろいろな表現が使われておりまして、しかも、両決議案でおのおのが非常に正確に何を意味しているかということをある意味では私は意識的に詰めないできた形跡があるであろうと思うのでございます。その辺に問題を解く一つの可能性がやはりあるのであろう、あるいはあったのであろうと申し上げるべきかもしれませんが、そう思うのでございますが、おまえはどう思うかというお尋ねでございましたら、やはりコアになりますのは、南北、そして米国、本来から申せば休戦協定の当事者はそこに中国義勇軍ということであったわけでありますが、中国の動きをいろいろ見ておりますと、もうそのような義勇軍といったようなものはとっくに存在をしないのであって、むしろ中国にとってはこれは他国の内政問題であるというふうに考えておるようでございますので、そうなりますと、気の進まぬものを無理に、あなたは当事者であると言ってみたところで仕方がございません。そうなりますと、コアはやはり南北、アメリカ、こういうことになるのではないかと思います。そしてキッシンジャーが少し大きなフォーラムを示唆いたしました点は御指摘のとおりですが、それは少し先と申しますか、お話がうまく進んだ場合の次の段階を考えておったのではないかと存じます。
○田英夫君 その点は全く同感なんですが、問題は、今度の二つの決議案の中で一つ大きな相違点は、これは日本やアメリカの政府の側で、多数派工作をされる中で宣伝の具に使われたようでありますけれども、つまり北側の支持決議案は韓国を話し合いの対象にしていないのはおかしいじゃないか、こういうことを言われた。これは確かに常識論としては大変通りのいい言葉であると思います。現にスウェーデンを初め、中間的な立場の各国が、スウェーデンの場合はむしろ北朝鮮を最初に承認をした国でありますから北側に近いと考えられていたにもかかわらず、明らかに最終段階の演説では、そういう韓国との話し合いの問題などをとらえて北から離れたような、そういう動きがあったように感じますが、しかし、これはアジア局長が恐らく御存じだろうと思いますが、いわゆる停戦協定が一九五三年に結ばれたときに韓国はなぜこの協定に加わらなかったのか。つまり停戦協定当事国ということになりますと韓国ははずれるわけですね。ですから北側の決議案というのは、停戦協定を平和協定に発展させようという考え方でありますから、韓国は入ってこないという一つの論理があるわけですね。
 そこで伺いたいのは、韓国がなぜ入らなかったのかということを外務省として――当時季承晩政権だったのですが、どういうふうに理解をして、その事情をどういうふうに考えていらっしゃるのか。
○政府委員(中江要介君) 手元に細かい資料は持っておりませんけれども、私の記憶しておりますところでは、朝鮮動乱の終わりに結ばれた休戦協定というのは文字どおり体戦協定でございまして、これは軍事行動を行ったものの責任者の間での休戦、こういう立て方であったろうと思います。そういたしますと、北側は、先ほどお話に出ましたように、北朝鮮の司令官と中国の義勇軍の司令官、これは当然指揮者として当事者になるかと思いますが、南は実は国連軍司令官というものがその当時の南側の軍事作戦の最高責任者ということで署名いたして、その国連軍の中に韓国の軍隊もアメリカの軍隊もその他の軍隊も入っていた。したがって、厳密な意味で当事者といいますと、南は国連軍司令官であってアメリカでも韓国でもないということにあるいは理屈としてはなるのではないか、まあ私のフリーハンドの記憶ではそういうふうに認識すべきものであったんではないかと思います。
○田英夫君 まさにそのとおりだと思うわけです。ですからその国連軍が解体をするという前提に立って、そして事実上、現在も国連軍という形で韓国に駐留しているのはアメリカ軍でありますから、その話し合いの対象としてアメリカを選ぶという論理だと思います。
 そこで問題は、今度の決議案が二つ採択をされた状態の中で、具体的には一体これからどうなるのかということですね。共通点は、国連軍解体という点については共通なわけであります。そこから先の全国連軍という形でアメリカ軍の撤退のところから違ってくるわけですが、来年一月一日からやはり韓国には国連軍というのはいなくなるというふうにお考えでしょうか。
○政府委員(大川美雄君) 国連軍と申しますのは、最初はアメリカ軍その他十何カ国の軍隊が全部含まれまして、安保理事会の決議に基づいて北からの侵入を押し返すという役割りを持ってあそこで活躍をしていたわけでございますが、休戦協定ができまして、その翌年に米韓の間で相互防衛条約ができましてからは、いままでの国連軍の一部分と言われていたアメリカ軍は国連軍司令官の指揮下から一応引いて、その二国間条約に基づく在韓米軍といり地位を持つに至った、私どもはこういうふうに理解しております。今回の決議、両方の決議でございますけれども、表現の上では国連軍の撤退ではございませんで、国連軍司令部の撤退という表現を使っております。その国連軍司令部というのは実際どういう実態であるかという正確なことは私は存じませんけれども、司令部の司令官と、各国からそれに派遣されているいわば連絡将校のような者が何名かいる。実態としてはたとえば二百人ぐらいだとかといったようなことを聞いております。ですから、その司令部を撤収するということを両方の決議案がうたっているわけでございます。
○田英夫君 そのとおりなんですが、そうしますと、具体的にいま毎日正午になると板門店で、きわめて形式的ですが、南北といいますか、北は朝鮮民主主義人民共和国軍の司令官を代表する将校、南からは国連軍を代表する将校という形でアメリカ軍の将校があらわれてほんの数分顔を会わせて、また別れるという行事が続いているわけです。これはなくなりますか。
○政府委員(大川美雄君) その点につきましては、まさに韓国側支持の決議案では、国連軍司令部は引いてもよろしい、ただし、そのために休戦協定の一方の当事者がいなくなるというような状態になると困るんではないか、そこで、その休戦協定を何らかの形で維持したまま将来に向かってもう少し長期的な取り決めを結ぶ方向に持っていこうではないかという考え方がはっきり出ているわけです。でありますから、もし韓国支持派の決議案のごとく、休戦協定を承継するような何らかの取り決めができますれば、国連軍司令部がなくなりましても、それにかわるべき何らかのメカニズムがやはり従来どおり引き続き、要すれば、北鮮側からの代表者と必要に応じて会談をし、いろいろの物事を処理する、こういうふうに持っていくべきではないか、これが韓国側支持諸国の考え方ではなかったかと思います。
○田英夫君 それは韓国側支持決議案の考え方はわかるのですけれども、そこに問題があると思いますし、これからの一つの前進のきっかけもその辺のところにあるのではないかという実は気がして伺っているわけです。つまり、少なくとも形式的ですが、あそこで南北といいますか、北と国連軍という名のアメリカ軍が接触をしている。南の支持決議案でいけば、そこに今後はアメリカ軍司令官と韓国軍司令官を代表する二人の将校が出ていく。北は、もう中国はさっき大臣が言われたように引き揚げて関係なしという態度ですから、北の司令官を代表する将校が出てくるという形になるのがこれは韓国支持決議案の姿であったろうと思います。これは一応採択されているけれども、北の支持決議案は、その韓国軍が来るというところには同意しないでしょう。すると、来年の一月一日までの間に一体この問題についてどういう対応があるか。一月一日以降も現在のままであるということは北が認めないだろう。つまりテーブルの上に、私も見ましたけれども国連軍の旗が立っているんです。朝鮮民主主義人民共和国の旗と国連の旗がある。それは変えなければならないと思います。国連の旗は国連軍司令部を代表する旗としてこれはおろすことに南北の決議案ともになっているわけですから、これはもう通用しないんじゃないでしまうか。そういう意味で伺っているわけですが、その辺のところを当面とにかくどう進めるかという話の中で、何らかの話し合いのきっかけになるのではないか。
 もう一つ話を進めますと、大臣に伺いたいんですが、そういう状態の中でいよいよもってアメリカと北朝鮮との話し合いというものが、接触というものが必要になるだろうと思います。この点については大臣はどういうふうにお考えですか。
○国務大臣(宮澤喜一君) これは先ほど、私はどう考えるかというお尋ねがございましたときに、やはりコアになる当事者というものは南北、アメリカと思っておりますと申し上げたわけでございます。そういう考え方からいたしますならば、米、北鮮の接触というものは入り用なわけでございますけれども、それが韓国を除外して行われるということであってはならないというふうに、私の論理からすれば当然そういうふうになっていくわけでございます。
 そこで、もう少し基本の問題を申し上げますならば、そのような対話の中から生まれるべきものが軍事的な解決であるのか政治的な解決であるのかという問題が私はあるであろうと存じます。これは似たようなと申しますか、多少性格の似ている例で申しますと、サイナイ半島の第二回目の取り決めというものが、エジプトの立場からいえばこれは軍事的な取り決めにすぎないということであろうと思いますが、イスラエル側がどう考えておるかというようなことになりますと、必ずしもこれは私は故意にあいまいにされておるのだと思いますが、と申しますのは、エジプトは政治的な取り決めを単独でできる立場にないわけでございますから、あの取り決めがいわゆるミリタリーな性格のものであったのか、ポリティカルな性格のものであるのかということは、故意に私は両方は議論を詰めずにおると思うのでございますが、韓国の場合に、先ほど国連局長が申し上げましたように、停戦協定自身は軍事的な性格のものでございます。
 そこで、田委員の言われますことは、したがって、軍事的な性格のものである限りは韓国はもともとこの当事者ではないではないかとおっしゃることは私は一つの論理が立っておる、その限りではそういうふうな考え方ができると思いますが、しかし、実はこの軍事的な取り決めはもう二十何年たっておりまして、しかも、取り決め自身が比較的早い時間の間に政治的な取り決めにとりかわるであろうというような予測のもとにつくられたもののごとくであります。したがって現在必要なのは、むしろ政治的な取り決め、政治的な解決ではなかろうか。軍事的な取り決めに関する限り韓国の出る場がないではないかという論理そのものは、私はそれなりに筋が立っておりますと思いますけれども、いま必要なことはやはり政治的な取り決めではないであろうか。そういうことになりますれば、韓国を除外してそういう取り決めができるとは思えないという議論になるのではないかと思っております。
○田英夫君 そこで、韓国を初めから入れて南、北、米という形の会談ということは現実の問題としてあり得ない、こう私は思わざるを得ないと思うんですが、そういう状態を次の段階として持つ。そして、その先にキッシンジャー構想は日中ソというようなところまで入れて、こう言われるわけですが、これには私は絶対に反対であります。つまり、本来朝鮮戦争を引き起こした、戦ったと言いますか、やった当事者、南北とそれにアメリカというのが現在残っているわけです。最終的にはそこが話し合わなければならないことはわかりますけれども、中国がいまやもう関係なしという態度をとっている以上、それに加えて日本やソ連というようないわば周囲の大国がこれに加わるということは、自主的平和統一という朝鮮民族の願いに反することになりますし、いまの大きな世界の情勢の中に逆行することになると思いますので、これだけは絶対に日本を含めてとってはならない、キッシンジャー構想は間違いだ、こうはっきり思いますし、それはアメリカでもそういう意見を繰り返し述べてきたわけであります。
 そこで一番問題なのは、やはりさっき私は大変小さい問題のようですが、来年一月一日からの板門店の接触の問題を取り上げましたのは、そういう実は具体的な問題を控えてアメリカと北とが接触をするということを何らかの形で実現する必要があるんじゃないかと思うわけです。伝えられるところによると、宮澤さんと言いますか、日本の外務省がそういう意味の行動、活動をしておられるというふうにも言われておりますが、それが事実ならばここで明らかにできる限りのことを言っていただきたい。
○国務大臣(宮澤喜一君) 先ほど田委員から次の段階という非常に微妙な表現でお話があったわけなのですが、事柄の本質として韓国抜きで米、北鮮が接触をするということについては韓国が非常に強く反対をいたしておりますし、米国自身もあえてそのようなことをするつもりはないということを申しております。したがって、まずそれを先にというような発想ではどうも事態は私は進まないのではないかという感じがしておりまして、そこで事務総長あたりが務められる役割りが一つあるのではないだろうかというふうに当初から私は考えているわけでございますけれども、そうして事務総長自身もそのような意欲を持っておられるように私は思うんでございますが、なかなかそこから先が動かないということでございましょうと思います。
○田英夫君 確かに、いま私が具体的に申し上げた来年一月一日からの問題は国連軍の問題でありますから、ワルトハイム事務総長が活動される、関与できる問題なのではないか。ここに一つ打開の道があるという点で私も同感なのであります。したがって、そういう意味で伺ってるんです。
 もう一つは、こういう具体的な問題について直接当事者同士が話し合うことが不可能でも、間に一人人間が入って話し合うことは可能かもしれない。そういうことが一方で進む中で、逆にかつて中国とアメリカとの関係がそういう形で話し合いに移っていったように、たとえばアメリカの政府の人ではない、いわば民間というか、ジャーナリストを含めて、あるいは議会人であるとか、そういう人が朝鮮を訪問するという形の中で何らかの糸口がついてくるんじゃないか、こういう気持ちもしております。
 そこで、時間がなくなってきたようですから、最後に伺いたいのは、日本政府として、朝鮮半島に恒久的な平和をもたらすためには、何としても南北の自主的な話し合いによる統一、その話し合いができるような形へ最終的には持っていかなければならない。ですから、その前段階としては、朝鮮戦争という形が停戦協定のままにあるところに問題があるので、これを大臣のお言葉でいえば政治的なものに変えていかなくちゃならない、それがまさに実は北の提案である平和協定ということであると思います。ですから私は、もっと早い段階で、日本政府が参加をされて南支持の決議案をされたという以前の問題について実はここで議論をしたかったんですけれども、いまや遅いわけですが、私はそこが非常におかしいと思うんです。つまり、韓国支持決議案というのは実は停戦協定から前進する余地を示していない、それから先が非常にあいまいになってくるわけですが、北の支持決議案というのは、明らかにそれを平和協定へ移行させようじゃないか、そのためには停戦協定の当事者同士が話し合うべきだということで、むしろ北の側からアメリカとの話し合いを求めている。これはあの論理の限り北の側からはアメリカと話し合うことを肯定しているわけです。アメリカがむしろそれを拒否する形です。それはいま大臣がおっしゃったとおり、韓国への配慮だと。そういう糸のこんがらがりを冷静に整理していくと、朝鮮民主主義人民共和国とアメリカとの話し合いというものが最終的にできるんじゃないか。その先の段階で、さっきおっしゃった真の当事者の話し合いへと移っていく。最終的にはアメリカがどいて南北の朝鮮民族自身の話し合いに最後は煮詰まっていく、これが朝鮮問題解決の図式ではないかと思っているんですが、いかがでしょう。
○政府委員(大川美雄君) ただいま田先生は、北の決議案では平和協定を志向しているけれども、韓国支持の決議案では休戦協定の維持だけをめどとしているというようなことであったように……
○田英夫君 いや、そこから先の発展があいまいだというんです。
○政府委員(大川美雄君) そうですか。――事実関係だけを申し上げますと、韓国支持決議案でも、ここにテキストがございますが、第二項で休戦協定を代置し――置きかえでしょうか、――緊張を緩和し朝鮮半島における永続的平和を確保するための新しい諸取り決めを交渉するよう、直接関係当事国に対して希望を表明すると……
○田英夫君 それは知っていますよ。だから、それがあいまいだと言っているんですよ。そういう事実関係はぼくは知ってて大臣に聞いているんですよ、全部知った上で。――そんなことはとっくの昔にぼくだって字が読めるから知っていますよ。――大臣からお答えください。
○国務大臣(宮澤喜一君) そこで、いま御承知の新しい諸取り決めというものは、たしかニューアレンジメンツという言葉をいろいろ苦労をして考え出しておるわけでございますね。ですから韓国側決議案というものにも、私の言葉で申せば政治的な取り決めへ進むということは、あいまいとおっしゃればそれはあえて反論いたしませんが、だれが読んでもニューアレンジメンツというものは何を考えておるかということはわからないわけではない程度の表現にはなっておる。でございますから、問題は田委員の言われるそれから先のステップとしてと、こうおっしゃるところに問題があって、ミリタリー、軍事的な取り決めというのはもうすでに二十何年このままで来ておるわけですから、あるべきものは軍事的取り決めと同時に、あるいはむしろ政治的な取り決めにいくべきなのではないのか、先に一つ次の段階としてとおっしゃいますと、まず米、北鮮がという論理になってまいりますから、そこは一つにまとめて考えても実害はないのではないだろうかというような考え方があり得る。しかし、それは北鮮の論理から言えば、あくまでまず先のものが先で次のものは次だと、こういうことになりますと、関係国とはだれだれかというところへまた問題は返ってまいります。どうもそこらあたりに私は問題があるのではないかと思うわけです。
○田英夫君 時間が来ましたのでこの問題終わらざるを得ないのですが、別の問題で一言だけ伺いたいのですが、アジア局長、先日私がこの委員会で取り上げました在日韓国大使館の朴参事官の行動について、逆に韓国の駐日大使館から外務省に対して、外交活動を阻害するような動きがあるので、というような抗議か何かがありましたか、配慮をしてほしいというふうな。
○政府委員(中江要介君) ございません。
○田英夫君 これは韓国の東亜日報という新聞、御存じの新聞ですが、それに駐日韓国大使館が朴参事官の行動についていろいろ在日朝鮮総連系の人が阻害をしているので困る、日本の外務省に対して配慮しあるいは警察に対して身辺保護を願い出る、こういうようなことをすると書いておるのですが、ありませんね。
○政府委員(中江要介君) その身辺保護の点につきましては、朴参事官に対する脅迫電話その他いやがらせが最近ふえているので、日本の警察当局にそういうことを依頼したということは聞いております。
○田英夫君 終わります。
○塩出啓典君 まず最初にお尋ねしたいわけでごいますが、きのうきょうの新聞で、いわゆる松生丸事件の問題につきまして外務省が朝鮮民主主義人民共和国に対して領海侵犯はしていない、それからまた、向こうの過剰防衛に対して抗議をし、向こうの責任者の職を解くように、こういうような抗議を発表したように聞いておるわけでありますが、非常にこの問題について外務省のとってきた姿勢というのは、最初の方は余り力を入れなくて、いまになって急に抗議を申し入れる、何となくちぐはぐな感じがするわけでありますが、こういう点については外務大臣としてはどう考えておられるかお伺いします。
○国務大臣(宮澤喜一君) この点につきまして、私どもは当初から一貫した態度を実はとっておったつもりでございます。すなわち、まず事実関係を究明しなければならないということを考えてまいりました。ということになりますと、第一番には船長あるいは関係者の所見ということになるわけでございますが、当然のことではありますけれども、船長自身は、負傷いたしました僚友二名が無事にわが国に帰るまでは、万一のことをおもんぱかって所信について公にすることを避けるべきだという態度を船長自身はとった。そのことはよく理解のできることでございます。その間、そのような危険が生じないために十分な配慮をしつつ、船長自身について極秘に事実関係をわれわれには伝えてくれるように、いろいろな接触を実はいたしてまいりました。二人が無事に帰りました段階で、そのことは船長自身から公に所信として述べられることになったわけでございますが、私どもとして、したがってその間は、将来とるべき国の行動についての準備をいたしておったわけでございます。負傷者が無事帰還をいたしましたので、昨日、海上保安庁から従来の調査の結果を公にいたし、またそのような、すでに客観的に明らかになっておったと考えられる事実に基づきまして、われわれとしては北鮮に日本政府の所信を伝えるべく外交努力をいたした。もとよりそれは、二人の帰還を待っていたしたわけでございますけれども、それまでの間は、そのための準備を政府としていたしておったわけでございます。
○塩出啓典君 まあ領海侵犯をしたかどうかという、こういう問題は非常に軽々しく――やはりいま言われたように、慎重にしなければならない問題だと思うんですけれども、しかし、何ら武装もしていない漁船が銃撃をされた、こういうことはやはり過剰防衛であるということは、これはもう常識的に考えても早くわかっておったじゃないかと思うんです。そういう意味で、やはりわれわれもこういう問題があった場合に、ただけしからぬけしからぬと言うだけでは物事は解決しないわけで、今後こういう問題をなくするにはどうするか、こういうことを契機として北朝鮮と日本のやはり接触をもっと密にしていく。そういう意味から、たとえばこの事件のすぐ直後に社会党の代議士も向こうへ行ったわけですから、そういうときに当然やはり外務省もそういうような人を通して日本政府の考え方もどんどん伝えていくとか、そういうようなこともできたんじゃなかったかと思うんです。そういう点においてはどう考えているかですね。
○国務大臣(宮澤喜一君) 今回の問題につきましては、赤十字を通じて示されました北鮮側の事件についての解釈、当初からかなり微妙な表現が幾つかございまして、私どもは正直を申しますと、違法行為があったという心証を当初から非常に強く持っておりました。しかし、関係者が無事にわが国に帰ってまいりますまでは、そのことを強く申すことによって関係者の人命に危険が十分にあり得る、と申しますのは、負傷せずに帰りました人々が取り調べを受けましたときに、先方からどのような取り調べを受けたかということがほぼわかっておりましたから、したがって、日本政府がこれを違法だと考えるということを全員が帰還しない前に申しますことは、関係者の生命に危険を及ぼすおそれがある、当然のことながら私どもはそういうふうに判断をいたしまして、帰還するまで政府としての行動を控えておったわけでございます。
○塩出啓典君 まあそう言われればそれなりの理屈はあるようにも思うんですけれども、たとえばぼくらの率直な気持ちとして、そういうように相手を疑うんではなしに、やっぱり向こうも人間ですから、もっと率直にぶつかっていけないかというような気がするわけであります。
 それで、今回のこの抗議文の発表の仕方についても、日本には朝鮮総連という組織もございますし、また、自民党の代議士、自民党の人たちも朝鮮民主主義人民共和国にはすでに何回も行っておるわけであり、よすし、やはりそういうような遠くの方で発表するというのでなしに、ただ発表するだけじゃなしに、われわれはやはりそれを契機として、たとえば今回の漁業問題についてのトラブルをなくするために新しい協定を結ぶとか、そういうように進めていくためには、この抗議の仕方にも、もっと直接向こうへ行ったときに話しするとか、あるいは日本の朝鮮総連を通して伝えていくとか、こういうようなやり方があるんじゃないか、これはまあ私の素人的考え方かもしれませんけれども、その点はどうなんですか。
○国務大臣(宮澤喜一君) 日本政府としての北鮮当局に対する抗議でございますから、両方を代表するものの場においてなされなければならない、理想的には私はそうであろうと思います。しかしそのことは、わが国の外交の出先が北鮮当局の外交の出先と第三国で行いましても一向に差し支えないことでありまして、現実にそういうことを私どもは試みたわけでございます。結果として、先方がわが国の抗議を受領することを拒否したということでございますが、これは私どもは、たまたま第三国における北鮮当局の出先が自分だけの意思で拒否したのではなく、抗議の受領を拒否したのは北鮮当局そのものの意思であるというふうに考えておりますから、同じようなことがピョンヤンで行われましょうと、その他のところで行われましょうと、この抗議の受領を拒否するというのが北鮮当局の意思であるというふうに私どもは考えました。したがいまして、そうであるならばこれをいわゆる公知させることが適当であろうということで、昨日、外務省から発表を行ったような次第であります。
○田英夫君 関連して。
 一言伺いたいのですが、きょう、けさ八時ごろ、鳥取の漁船第七新和丸という船が韓国の軍艦らしいものに拿捕されているという報告が入ったという――外務省へ何か連絡が入っているのでしょうか。
  〔理事増原恵吉君退席、委員長着席〕
○政府委員(中江要介君) ただいまの件につきまして外務省が知り得ております情報は、海上保安庁、在韓日本大使館からの連絡、第一報でございますが、日本のカニかご漁船が韓国の専管水域内で操業中に、韓国の海上保安機関の調査を受けて巨津に連行されて現在取り調べを受けている、具体的な事実関係等についてはまだ調査中である、こういうことでございまして、それ以上のことはまだわからない、こういうことになっております。
○塩出啓典君 やはり、こういう北朝鮮における事件を今後再び繰り返さないようにしていくことが私は非常に大事なことじゃないかと思うのです。そういう意味で、結果的には、日本政府のそういう抗議文を発表したことは、わが国の主体的な姿勢を示すことはできたかもしれませんけど、そのために向こうの態度を硬化させてしまう、そういうことになってもこれは非常にまずいのじゃないか、その点はわれわれも心配するわけですけれども、政府としては、こういうようなトラブルを二度と繰り返さないようにするためには今後どういう方針で進まれていくのか、これを承っておきます。
○国務大臣(宮澤喜一君) 基本的には、今回の政府の公式発表にもございますように、このことが違法であるというわが国の見解を表明すること、次に事件の責任者を処分すること、事件の再発防止のための適切な措置をとることを求める、さらには賠償請求の権利を留保しておりますが、このような態度を示すことによりまして、本件そのものが、元来北鮮当局の基本的な積極的な意思のもとに起こされた事件であったのか、あるいはその間何かの錯誤なり誤りによって起こされたものであったのかということについては、私どもとしてもいろいろ考える余地がないわけではございませんので、したがって、このような再発防止のために適切な措置をとることを求めるということは相当意味のあることではなかろうかというふうに考えております。
○塩出啓典君 それでは次に、先ほどの田委員の質問に関連して二、三お伺いしておきたいと思うのでございますが、現在国際連合の国連軍はいま韓国には二百名とか、その程度しかいない、こういうお話でございますが、日本にはいま国連軍というのはいるのかいないのか、これはどうなっていますか。
○政府委員(松永信雄君) 事実関係は、主管局長がおりませんものですから、はっきり具体的に申し上げるわけにはまいりません。もし必要がございますれば、後で御報告、御連絡申し上げたいと思いますけれども、私が承知しております限りは、若干名の連絡将校がいるというふうに承知しております。
○塩出啓典君 それはあれですか、いわゆる米軍以外の国連軍はいないわけですね。
○政府委員(松永信雄君) いえ、連絡将校としておりますのはアメリカの軍以外の者でございます。――も含めましてでございます。
○塩出啓典君 そうすると、アメリカ軍の国連軍というのは日本にはかなりいるわけですか。
○政府委員(松永信雄君) いま申し上げました、いわゆる連絡に当たる任務を持っている者以外はおりません。したがいまして、国連軍が日本にいるということは言えないと思います。
○塩出啓典君 言えないですね。
 それから十月二十九日の衆議院の予算委員会で三木総理が答弁をした問題について、いろいろアメリカ政府当局は、原則として朝鮮での軍事紛争に際してわが国からのいわゆる米軍の戦闘作戦行動に対しては政府はイエスは与えない、こういうように三木さんが答えたことについて、アメリカ当局は、これでは安保条約の事前協議というものが意味がないじゃないか、こういうような発表をしておるように聞いておるわけでございますが、この三木総理の予算委員会での発言から考えて、朝鮮での軍事作戦、朝鮮でのいわゆる軍事紛争に対してわが国から米軍が直接に戦闘作戦行動に参加する場合は、わが国政府としてはイエスを与えない、こういうように判断していいのかどうかですね。
○国務大臣(宮澤喜一君) この十月二十九日の総理大臣の答弁でございますが、これはたまたま私その委員会におりまして経緯をよく存じております。
 総理大臣は、いわゆる安保条約第六条に基づき発せられた交換公文に言うところの事前協議というものは、当然わが国自身の平和と安全に重大な関連のあるという状況のもとにイエスと言うこともありノーと言うこともある、従来から申し上げているとおり、これが日本政府の立場であるという答弁をしておられるわけでございますが、質問者がさらに、そのような要件あるいは条件というものは自衛隊法七十六条に言うところの、定めるところの条件と同じであるか同じでないかという質問をされまして、総理大臣はそれに対して何度も繰り返し、片方の事前協議は安保条約に基礎を置くものであり、他方は自衛隊法に基礎を置くものであって、両方の法体系の間に直接の連関はないということを繰り返し実は答弁をされました。そういう答弁と質問とがかなり繰り返し繰り返し行われまして、もちろん総理大臣も、自衛隊法七十六条に定めるような状況というものはわが国の平和と安全にとってきわめて重要な関連のある状況である、それから事前協議が行われるような状況というものも恐らくは同様にわが国の平和と安全にとってきわめて重大な関係のある状況であろう、そういうことは言えることであるが、両方の要件が同じであるということは、もともと別個の法体系であるので、そういう論理的な帰結にはならない、普通の場合に軽々しく起こることでないという点ではこれは共通点はあろうけれどもと、こういう答弁をされたのでありますが、非常に長い答弁と質問の繰り返しがありましたために、多少、一部だけをとりますと明白でない部分があったかと思われます。しかし、総理大臣の答弁全体を総合してみますと、私がただいま申し上げたことが総理大臣の十月二十九日に言われた趣旨であると存じております。
○塩出啓典君 それから、今日までのこの委員会の質疑等を通しまして、たとえばマヤゲス号事件のときにいわゆる沖繩の海兵隊が移動した、そういうものは事前協議の対象にはならないというような答弁だと思うわけです。そうしますと、たとえば朝鮮半島における状況が非常に険悪になってきて、在日米軍の大半が韓国の基地に移動した、そういうような場合は、これはまあ想定の場合ですが、そういうのも事前協議の対象にはならないのかどうか。その点はどうなんですか。
○政府委員(松永信雄君) 在来から申し上げておりますように、アメリカの軍隊がわが国の施設・区域を使用して、戦闘作戦行動の基地として施設・区域を使用する、わが国から出ていくという場合には事前協議の対象になるということになっているわけでございます。そこで、いま御質問がありましたような状態において米軍がとりますいろいろな行動というものがあるだろと思いますが、その行動がこの事前協議に該当するかどうかということは、具体的な状況、態様によって判断していかなければならないのではないかと思っております。
○塩出啓典君 まあいままで、配置の重要な変更とか、装備の重要な変更、あるいは直接作戦行動に出る場合、こういうものが対象になると言われておるわけですけれども、やはりそのあたりをもう少しはっきりさしておかないと、これはまあ一機や二機ぐらい何かの都合でそっちへ飛んでいくとか、あるいはこの前話がありましたように、台風避難のために人道上やむを得ない、そういう場合たとえばグアムから沖繩へくる、あるいは日本の基地から韓国へ行く、こういうようなことは事前協議の対象にならなくてもいいと思うんですけれども、しかし、朝鮮半島における非常に事態が緊迫してきた、そういうことに備えて日本の基地にいる米軍が移動していく、こういう場合は当然これは事前協議の対象にすべきものではないか、この点はどうなんですか。
○政府委員(松永信雄君) 繰り返しになって恐縮でございますけれども、事前協議の主題となる日本国から行われる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用、そこに言いますところの戦闘作戦行動とは、直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動を指すものであって、したがって、米軍がわが国の施設・区域から発進する際の任務、態様が、かかる行動のための施設・区域の使用に該当する場合には、米国はわが国と事前協議を行う義務があるということでございます。したがいまして、それはそのときの状況、態様によってやはり判断してまいるべきものであろうと考えております。
○塩出啓典君 だから、いま言われましたように、直接ではなしに、一応そこへ移動をしてそこから出ていくという場合は非常に抜け道みたいになっているわけですね、実際もう作戦行動に参加するに等しいわけです。いままではそういうようになっておるわけですから、私は今後日本政府としてもそのあたりをはっきり米国政府とも話し合いをして、極端に言えば在日米軍の飛行機が全部韓国の基地へ移動した、そういう場合でもこれは事前協議の対象にならないんじゃ困るわけで、やっぱりそういうことは当然日本政府としても事前協議の対象となるようにアメリカとの取り決めを変えていくべきじゃないか、そのことを申し上げているんです。その点どうなんですか。そういう決意があるのかどうか、現状のままでいいのかどうか、そういうことを米国政府と話し合いをする余地はないとおっしゃるのか、その点どうなんですか。
○政府委員(松永信雄君) この御議論は、従来から国会の委員会等において行われているところでございますけれども、政府が一貫して申し上げておりますのは、通常の補給、移動、偵察等、直接戦闘に従事することを目的としない軍事行動のための施設・区域の使用は事前協議の対象にならないということを申し上げているわけでございます。具体的な状況によって、その都度米軍の個々の行動の任務、態様の具体的内容を考慮して判断するほかないということを申し上げているわけでございまして、先ほど申し上げました考え方、見解に基づいて判断してまいるということになると思います。
○塩出啓典君 次に、領海十二海里の問題につきまして、早くわが国も領海十二海里の宣言をしろ、こういうような強い意見があるわけですけれども、外務省としてはそれを踏み切ってないわけです。
 その理由は、いわゆる領海十二海里になった場合の津軽とか対馬等の海峡をどうするか、これが唯一のネックであるのかどうか、それ以外に十二海里に踏み切れない理由はあるのかどうか、この点はどうですか。
○国務大臣(宮澤喜一君) わが国は、伝統的に領海三海里ということで今日に及んでおるわけでございますが、たまたま海洋法会議におきまして、いわば新しい海のレジームをつくろうということで長いこと議論が行われておるわけでございます。この議論の過程におきまして、今後国際的な領海の幅、あるいはただいまちょっと御指摘のありました国際海峡といったようなものの性格、それから経済水域といったようなものをどういう範囲でどのような性格を帯びたものとして認めるか、海底資源をどうするか、あるいはまた、いわゆる群島理論といったようなものをどのように現実に扱うか、大陸だなもさようでございますが、たくさんの問題が議論になりまして、そうして各国の利害が当然のことながらふくそういたしますから、最終的に海洋法会議が総合的な結論を出すまでは各国は自分に都合のいいところだけを先取りをするというようなことはなるべく差し控えてほしいという海洋法会議の議長の要望が、先般ジュネーブ会議において行われたわけでございます。これはよく理解のできることでありまして、各国の議論の中の自分の都合のいいところだけをとってしまいますと、利害調整をして最後に大きな法典をつくり上げるということはしょせん不可能になりますから、議長がそのような憂慮を要望の形で表明されたのは至極もっともなことでありまして、わが国としてもしたがいまして、できることであれば海洋法会議が全体としてまとまった段階において、ただいまのような問題も処理してまいりたいと考えてまいったわけです。これが基本的には政府がこの問題について踏み切りを今日までいたしておりません一番大きな理由でございます。しかし、あと副次的な理由として申しますれば、いわゆる国際海峡というようなものが、これはまだ海洋法ができておりませんから法的な位置づけを持っていないわけですけれども、恐らくそのようなものができましたときには、わが国の中に生まれるであろう国際海峡、わが国の周辺に生まれるであろう国際海峡、それにどのようなわが国が権利と義務を持つか、また今度は、わが国の船舶が外国にできるであろう国際海峡の通過についてどのような権利と義務を持つか、そういったような点がございます。そういうこともございまして、できるならば海洋法会議の帰結を待ちたいと政府としては考えてまいりました。
 たまたましかし、ソ連の漁船のわが国の周辺への出漁ということが今年もかなり国民の注意を集めるようになり、関係漁民には相当これを問題視する向きが多くなってまいりましたから、基本的な政府の立場は先ほど申し上げたとおりでございますが、何かの処置が可能であろうかどうであろうかということについて、内閣官房を中心に関係各省の意見調整をいたしてみたいと考えまして、ただいまそのような作業を始めておるところでございます。
○塩出啓典君 もう時間が参りましたので、まあ海洋法会議の結論を待つということでは、また来年三月の海洋法会議で結論が出ればいいですけれども、もし出なければ結局もうどんどん延びてしまう、そういうことでは非常に困ると思うのです。十二海里を宣言するということは、海洋法会議における議長のその話はよくわかるにしても、決してそれに全く相反するものでもないと思いますし、十二海里という線が大体の方向ですから、これは政府としても早急に結論を出すようにひとつ努力をしていただきたい、このことを要望して質問を終わります。
○委員長(二木謙吾君) 政府委員から答弁の補足発言を求められておりますので、これを許します。中江アジア局長。
○政府委員(中江要介君) ただいま塩出委員の御質問中に田委員から関連で御質問がございました日本のカニかご漁船の連行の件につきまして、追加の情報が入りましたので御披露いたします。
  〔委員長退席、理事秦野章君着席〕
 ソウルにおりますわが方の西山大使からの連絡によりますと、巨津に連行して取り調べを受けておりました漁船は釈放されることになった、こういうことでございますので、一言申し上げます。
○立木洋君 先ほども問題になりましたけれども、六カ国首脳会議が終わりまして、これをめぐってのいろいろな評価もありますし、その後の動向も、この会議が何を意味するのかといういろいろな注目を集めているところだと思うんですが、この問題と関連して、日本政府の外交姿勢の幾つかの点についてお尋ねしたいと思います。
 御承知のように、ベトナム民主共和国とは援助協定が結ばれまして、ハノイに大使館が設置された、日本にも近くベトナムの大使館が設置されるというふうに考えておるわけですが、このベトナム民主共和国との今後の外交関係、いろいろな具体的な実務協定なんかも問題になってくるんではないかと思いますけれども、これらの問題にベトナム民主共和国との関係を進めていくための日本政府としての基本的な考え方、見通しを説明いただきたいと思います。
○国務大臣(宮澤喜一君) わが国が経済協力の協定を結びましてハノイに大使館を開きましたことからも御想像いただけますように、わが国としてはベトナムと親善友好の関係を拡大してまいりたいと考えておるわけでございます。
 そこで、何分にもしばらく交渉のとだえておりました両国のことでございますので、大使館を開くことによって少し、ずつお互いの事情がわかってはまいりましょうと思いますけれども、できるならば、先方の了承も得て、関係各省の専門家から成りますグループをハノイに派遣をいたしまして、そうして先方の実情も聞かせてもらい、また、わが国に対する要望等々があればそれもよく聞いてまいりまして、親善友好のためにわが国が何をなし得るかといったようなことを少しずつ情報と知識を得たいと考えておりますが、この点は先方の意思にかかわることでございますから、そのような了承が得られるものであろうかどうであろうか、少し外交交渉をいたしてみたいと考えておる。ところでございます。
○立木洋君 もう一つ、南ベトナム臨時革命政府、共和臨時革命政府との関係、ああいう大きな変化があって日本政府としては承認をするという態度を表明されているわけですが、
  〔理事秦野章君退席、委員長着席〕
御存じのように、何か、先般のあれでは、大使館を縮小する。もちろんいまは外交的な特権を持った大使館という形ではありませんけれども、私はこの間サイゴンに行って日の丸をつけた大使館見てきましたけれども、しかし、伊藤さんが帰ってこられてから、縮小されるというふうな報道なんかも新聞に出されておりましたが、南ベトナム共和臨時革命政府の方としては、日本との関係については新しい基礎の上で関係を築いていきたいというふうな意向のように私は了解しているわけです。この南ベトナムとの今後の関係について、日本政府としては基本的にどういう態度で臨んでいかれるおつもりなのか、その点について説明いただきたいと思います。
○国務大臣(宮澤喜一君) 基本的には、いわゆるサイゴンを中心にいたします南ベトナムが今後独立国として進んでいきましょうとも、あるいは北ベトナムと統合が行われましょうとも、いずれの場合にも私どもとしては同じく善隣友好の政策を進めてまいりたい、こう考えておるわけでございます。
 先ほど御指摘のありましたわが国のいわゆる大使館でございますが、これが厳密な意味で外交活動を認められておるというふうには私どもも考えてはおりません。ただ、経済情勢の激変によりまして、かつては南ベトナムへ永住しようと考えておりました邦人の中で、生活の手段を失いまして帰国を希望する者なども相当ございますし、また、不安な状況にあるようでございまして、そういう人々のいわば邦人の保護あるいは帰国のあっせんというふうなことにつきましては、なし得る限りの行動をいたしております。そのような行動の範囲内では、サイゴン当局も出先の外務省の者どものそういう行動には協力をしてくれておる、そういう状況でございます。したがいまして、私どもとしましてはそのような任務を遂行する範囲で館員を残しておきたい。それに差し支えない範囲では縮減をしてまいりまして、その仕事が終わりましたら、その時点で残りました者をどういたすべきか、決定をいたしたいと考えております。
○立木洋君 政府としてもベトナム南北と親善関係を促進したいというお考えのようですが、まだ残されている問題もいろいろあるように私の方では考えておりますけれども、そういう点で親善関係を発展させることをこの問題では要望しておいて、次の問題の質問に移らしていただきたいと思います。
 もう一つの点は、今度の国連でも問題になりましたけれども、いわゆる南アフリカ共和国に対する態度の問題等々が何回か問題になってきました。今回は初めてですが、日本の態度を名指しで非難するというふうな決議が出ているわけですが、日本と南アフリカとの貿易の関係ばこの二年間ぐらいどのような状況になっているのか。通産省の方、おいでになっていると思うんですが……。
○説明員(野々内隆君) 南アフリカと日本との貿易でございますが、日本側の通関統計によりますと、一九七三年は日本の輸出が五億九千五百万ドル、また七四年は日本の輸出が九億五千九百万ドルとなっております。また輸入につきましては、一九七三年は日本の輸入が五億二千百万ドル、七四年につきましては日本の輸入は七億六千三百万ドルというふうになっております。
○立木洋君 日本からの輸出が九億五千万ドルで輸入が七億六千万ドルですか、昨年が。ことしの見通しはどういう見通しでしょうか。
○説明員(野々内隆君) 私、手元にことしの数字を持ってきておりませんが、一般的に南アの経済も沈滞をいたしておりますし、それから日本の経済自体も不景気でございますので、従来ほどの伸びはないというふうに考えております。
○立木洋君 国連では六三年に、十八回国連総会でしたかのときに、南ア問題をめぐって人種差別の非難が国連で決議が採択されました。それから以後回を重ねるたびに非同盟諸国、発展途上国等等の要求が強まって、この南ア問題に関する経済的な規制、いわゆる経済制裁に関する決議ですとか、あるいはそれらの国における外国企業の活動を規制する決議ですとか、何回か決議がなされてきている。その中で、日本の政府の態度としては、棄権したものもあれば一部賛成したものもあるし、一つ一つ述べませんけれでも、いろいろなそういう態度があったと思うんですが、今日これらのいわゆる南アフリカに関する、あるいはローデシア、ナミビア等々に関するこれらの経済制裁の決議に対して、日本政府としてはどのように現在の時点で考えておいでになるか、その点についてお伺いしたいと思います。
○政府委員(大川美雄君) 南アフリカ共和国に対しましては、もちろんそのアパルトヘイト政策という人種差別政策に対しまして、日本としては伝統的に反対の立場をとっております。ところが、南アフリカに対するたとえば軍事行動、軍事を伴った行動でありますとか、あるいは経済制裁という角度からのアプローチにつきましては、これは必ずしも実際的なものではない。というのは、果たして所期の効果が得られるかどうか、必ずしもはっきりいたしませんということですが、そういった手段が提案されました場合には、日本は反対ないし棄権の立場をとっております。
 一方、南ローデシアにつきましては、これは安保理事会の決議がございまして、それに従いまして日本は忠実に南ローデシアに対する経済制裁に参加いたしております。
○立木洋君 南アフリカ共和国の場合でも、もう御承知のように、大変な人種差別、これは日本で考えたら想像つかないような状態になっておりますし、黒人と白人が結婚したら八年間の体刑を加えるとか、七〇%のいわゆる現地黒人が一二・六%の地域に強制移動させられる。一切証明を持たずに道を歩いておったらつかまれば強制労働だとか、まあ大変な人種差別が行われているわけです。これをそれならば経済制裁を行うということについては必ずしも適切ではないというふうに考えておられる根拠はどういうことなのか。どういう意味で国連で出されている決議に日本の立場としては同調できないのか。この人種差別を非難する決議については日本政府は賛成である、それを尊重すると言われるから、その経済制裁については必ずしもそれには賛成できないと言われる根拠ですね。
○政府委員(中村輝彦君) 国連で南ア政府に人種差別政策を変えさせよう、そのために経済制裁その他をやるべきであるという主張があるわけでございますけれども、その他にも武力をもってそれを強制しようといったような過激な極端な主張もあるわけでございますけれども、およそ南ア政府をしていままでの人種差別政策を変えさせるために一番いい方法というのは、これはもう南ア政府がみずから反省してそれで改めるというのが一番摩擦の少ない、一番望ましい姿であろうと思うわけです。われわれとしましては、したがいましてそこに焦点を当てて、そういうふうになるような環境をつくることに努力すべきであろうと思うわけですが、いまのような経済制裁というのは、これは仮にみんながそろってやれれば、ある程度南ア政府自体もそれによって痛い目に遭うというようなことになるのかもしれませんけれども、いまの実情を見ておりますと、そういうような事態にはとてもなりそうもないし、それからまた大変な混乱も起こすし、南アをしてまた非常に反発させる、それでどういうふうな考えにさせるかもわからぬといったような対決的な空気を非常に醸成することにもなるでございましょうし、最初申し述べましたような望ましい形での行き方ということと比較いたしますと非常に問題であろうというのが私どもの考え方でございます。
○立木洋君 それは根拠にならないと思うんですよ。そろってやらないからこちらが経済関係を持たなかったら損するかもしれないというふうな、そういうことでは根拠にならないのであって、日本政府としてなぜそういう人種差別をやっておる――それならばそろってやれるように日本側が努力するのかどうか、そうではなくて、最近のアンゴラの問題をめぐってみても、南アがとっている態度というのはきわめて遺憾な態度をとっているわけですし、本当にアンゴラ問題で統一できるようなやり方ではないわけですから、そういういろいろな関係を見ても、また、アフリカや中近東諸国のいろいろな動きを見ても、非同盟諸国では南アのやっている態度ということを厳しく糾弾して、こういう人種差別ということを世界上、国際上なくしていくという立場を本当に尊重するならば、少なくともそれを規制するような方向に日本の政府としては努力しなければならないんではないですか。ほかがやらないからこちらもやらないというふうなことでは全く根拠にならないし、そういう考え方では、これは国際的にも笑い物になるんじゃないですか。
○政府委員(中村輝彦君) ほかがやらないからやらないというふうにまあ仰せられるわけですけれども……
○立木洋君 いや、あなたがそう言ったと言うんですよ。私が言ったんじゃないですよ。
○政府委員(中村輝彦君) いや、そういうふうに見ればそういう面はございますけれども、やはり先ほど申しましたように、南ア政府が本当に自覚をし、反省して改めるということにならなければ本当の解決にはならないわけでございましょうし、したがってわれわれといたしましても、極端なことをやれば必ずその目的を早く達しられるんだというふうにも考えにくいわけでございまして、やはり時間がかかりましても南ア政府をして反省せしめるような、反省せざるを得ないような、そういう意味ではモラルなプレッシャーということになるかと思いますけれども、息長くそういったモラルの面でのプレッシャーをかけていく、これをうまずたゆまずやっていくということがやはり一番物事をスムーズに解決する手段じゃないか、これは時間もかかりますけれども、しかし、本当に物事を根本的に改めるためには、もちろん実効的なものでなくちゃなりませんし、これはあたりまえでございますけれども、南ア政府をして反省させるということに持っていかなければ解決にならない。そうだといたしますと、いたずらに強硬なことをして南アを反発させても解決にならないんじゃないかということで、まあほかがやらないからという言い方をすればそういう側面もありますけれども、ただ、それにもかかわらず、それを強行したところで解決にもならないんで、やはり道義的な圧力を絶えずかけていく、時間はかかってもそういう方向でやっていくのが結局は一番効果的な方法であるというふうに考えるわけでございます。
○立木洋君 どうもお話聞いても一つもはっきりしないんです。もちろんその国が十分に反省をしてどうするかということは一つの基本の問題でありましょうが、日本の政府としてどういう態度をとっていくかという問題で言えば、やはり何らかの形で反省さしていけるような方法を前向きにとるのかどうなのか。いろいろな協力関係といえば、広い意味で言えば経済関係はまあ貿易もあるでしょうし、あるいは投資だとかその他無償援助、有償援助、企業での活動だとか、いろいろな関係があるわけですね。だけれども、この間日本が名指しで非難をされたということについて、外務省の方では、これはほかの国とわれわれ並べられて非難されるのは大変遺憾であるというふうな見解が何か新聞では報道されておりましたけれども、問題はこの非難された国が、この間、これはたまたまということではなくて、六カ国首脳会議のメンバーですね、この六カ国首脳会議のメンバーが今度の場合非難の名指しで挙がっているわけですが、こういういわゆる発展途上国に対しての基本的な考え方、先ほども問題になりましたけれども、六カ国首脳会議ではどういうふうな態度で臨むというふうに話し合われたのか。あそこの宣言に盛られた文だけではなくて、少し内容的にも大臣の方から説明していただきたいと思います。
○国務大臣(宮澤喜一君) 六カ国首脳会議で発展途上国の問題をどう考えるかということにつきましては、基本的な合意は宣言の十二項に出ておりますのでごらんいただけることだと思いますが、やはり国によりまして発想が少しずつ違っておったように思います。
 わが国のような場合には、周辺がアジア諸国である、多くの国が発展途上国であるというようなこと、また、わが国自身が過去百年の間にそういうところから今日に至ったということ、あるいはまた、わが国が平和憲法を持って戦争をしない、軍備らしい軍備を持たないという政策を進めてきていること等々から、言ってみればこの発展途上国の問題を、世界平和の増進であるとか、あるいは一般的な人類社会の生活水準の向上、幸福といったような、申してみれば純粋に近い立場から取り上げる主張が概して申してわが国の主張であったわけであります。しかし、中には、むろんそれに反対というわけではありませんけれども、発展途上国に対する援助というものを、この際世界貿易が非常に縮小をしつつあるのは、このような多くの開発途上国が国際収支の逆調に陥って、石油製品が買えないのみならず必需品が買えないというところからきておるのであるから、したがって、これらの国に援助をするということは先進国自身のためでもあるというような発想の国もございましたし、またさらには、やがて来月には国際経済協力会議が開かれるわけでありますが、その際に、今後産油国がさらに石油製品の値上げを一方的に図るというようなことが起こらないためにも、多少戦術的な意味で発展途上国への援助をすべきではないか。これは別々に申しますといかにも大きく立場が違うようですが、そういうほどの意味ではなくて、ニュアンスに少しずつ国によって違いがございました。わが国の立場は、冒頭に申し上げましたような立場でございます。
 そして、具体的にすべきこととしては、共同宣言の十二項にわれわれの合意を盛ったわけでございます。
○立木洋君 それで先ほど問題になりました件ですけれども、やはり人種差別ということについては日本の政府としてもこれを非難する、そういうことを改めさせるという立場であるということはわかったわけですが、その場合に、やはり前向きにそれを解決していくために発展途上国、多くの非同盟諸国等々が要求しておる、こういう経済制裁も含めて本当に反省さしていくような方向に日本政府が態度をとるのかどうなのか、南アとの関係では今後どういうふうな態度をおとりになるつもりなのか、その点を大臣からお聞きしたいと思います。
○国務大臣(宮澤喜一君) 先ほど政府委員から御説明をいたしたわけですが、恐らく申し上げたいと考えておりましたことの一つに、南ア自身がかなり経済的に恵まれておって、したがって、経済制裁というようなものが効果を上げる公算と、むしろ逆に、南アに自衛体制をとらしてしまう危険と、その辺がどうであろうかという判断があるのではなかろうかと思いますけれども、私としてもう少し実態を知っておきたいと思いますので、その上で御答弁をさしていただきたいと思います。
○立木洋君 それじゃもう時間がありませんから、最後に要望しておきたいわけですが、御承知のように、国連内部での動向というものも変わってきましたし、非同盟諸国や発展途上国のいわゆる自分たち自身の主権を要求するという動きも非常に高まってきております。われわれが大国との関係を決して粗末にしてよいということではもちろんありませんけれども、しかし、そういう非同盟諸国あるいは発展途上国との関係というものを正しくどう打ち立てていくかというのは、日本の今後の外交にとっては非常に重要な問題ではないだろうかと思うんです。ですから、いま外務大臣が、後でまたよく検討してみてからというふうに言われましたけれども、この点は本当にさっき戸叶委員も言われましたが、大国との関係、大国の顔色をうかがってどうするかという問題ではなくて、これらの諸国との関係をどう正しく打ち立てていくかということについては、いろいろな日本の経済の問題についても重要な位置づけを持つのではないかと思うので、その点は今後十分に自主性を持った立場で外交姿勢を取り組んでいただきたい。
 もっとお聞きしたいことがあるわけですが、時間がないのでこれで終わります。
○委員長(二木謙吾君) 本件についての質疑は、本日はこの程度といたします。
 これにて休憩いたします。
   午後零時五十四分休憩
     ―――――・―――――
   午後二時十八分開会
○委員長(二木謙吾君) ただいまから外務委員会を再開いたします。
 千九行七十一年の国際小麦協定を構成する小麦貿易規約及び食糧援助規約の有効期間の再延長に関する議定書の締結について承認を求めるの件(本院先議)を議題といたします。
 本件につきましては、前回趣旨説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。質疑のある方は御発言を願います。
○立木洋君 国際小麦協定に関連してお尋ねしたいんですが、去る八月、安倍農林大臣が訪米されたときに、バッツ農務長官との間で小麦、大豆、それから飼料作物などの安定供給の問題について話し合いがなされたということを新聞報道で知ったわけですが、その話し合いの内容について、どういうことなのかお答えいただきたいと思います。
○説明員(塩飽二郎君) お答えいたします。
 先生御承知のように、従来からわが国は、特に穀物につきましては世界の、アメリカ、豪州、カナダ等から大量に輸入しておりまして、その安定的な輸入につきましては、事務的にも主要輸出国との連携を緊密に保ちながら努力をいたしてまいったところでございますけれども、一九七二年以降、特に国際穀物市場が従来の比較的安定した状況とは違った様相を呈してまいりました。さらに、中期的ないしは長期的に将来を展望した場合に、やはり大量の穀物輸入を行う日本の安定的な供給を確保する上から、さらに一段と主要輸出国との連携を緊密にする必要を痛感いたしてまいったところでございます。
 先般、御指摘のように八月に安倍農林大臣が参りまして、バッツ農務長官との間に、穀物と大豆につきまして合計毎年千四百万トンの一応の輸入目標数量といたす内容の協定といいますか、合意を行ったのであります。わが国からの千四百万トンの輸入目標に対して、米国側は、バッツ長官の方から、これだけの輸入必要量の確保については全面的に応じていきたいという意図の表明があった、そういう内容の合意が行われたわけでございます。
○立木洋君 その際、バッツ農務長官の方から日本側に対してはどういうふうな要望がなされたんでしょうか、いま挙げた品目以外の問題も含めて。
○説明員(塩飽二郎君) お話の中心は穀物の安定輸入でございまして、そのほかにも従来から懸案になっております果実関係とか、その間、若干の貿易に関連した問題で意見の交換が行われたと聞いております。
○立木洋君 バッツ農務長官の方から出された問題としては、レモン、マッシュポテト、サクランボなどについて輸入の解禁が要望され、安倍農林大臣が善処するというふうに答えたというふうなことですが、これは事実ですか。
○説明員(塩飽二郎君) 先生御指摘の問題は、おそらく果実についての害虫の輸入解禁の問題だと思いますけれども、これにつきましては、たとえばコドリンガにつきましては、現在米国産のサクランボ等につきましては植物防疫法によりまして、害虫がある国ではその完全な撲滅がなされるか、あるいはその害虫の完全な撲滅に至らないまでも、消毒技術が確立されることがはっきりするまでは解禁が禁じられているわけでありますが、いま日本間の専門家の間で技術的に検討を行っている段階でございます。
○立木洋君 私がお尋ねしているのは、バッツ農務長官がサクランボを含め、いわゆる輸入解禁を要望し、それについて日本側としては善処するというふうに答えたのかどうかという事実関係です、その内容ではなくて。
○説明員(塩飽二郎君) そういうお話までは至っておらないと思います。
○立木洋君 いまサクランボの輸入解禁の問題については、山形初め各地から要望が農林省初め外務省の方にも出されておるということについては御存じのとおりだと思うんですが、これは解禁する方向でいま準備作業が進んでいるんですか。
○説明員(塩飽二郎君) 解禁する方向といいますか、輸入植物防疫法上の解禁をしてくれという要望が従来からございまして、それについては先ほど申し上げましたように、害虫の完全な撲滅、消毒技術が確立されるかどうかにつきまして現在技術的に検討している段階でございまして、そういう検討を経ないと、果たして解禁するかどうかについては現在申し上げられない立場でございます。
○立木洋君 そうすると現在の段階では、そういう植物防疫法の関連から考えてみて、解禁が可能であるかどうかということが結論が出せる段階ではまだない、そういう意味ですか。
○説明員(塩飽二郎君) そのとおりでございます。
○立木洋君 そうすると、その要望に応じて輸入解禁するということもあり得るし、そうでない場合もあり得る。しかし問題は、いま調査の過程がどこまで進んでどういう見通しになるのか、そういういまの時点での見通しはどうですか。
○説明員(塩飽二郎君) 細かい技術的な検討を要する内容でございまして、現在その検討を進めている段階なわけで、その結果につきましては現在申し上げられる状況に至っておりません。
○立木洋君 アメリカ側が言ってきている点については、つまりコドリンガ、このコドリンガというのは日本には発生したことのない害虫であり、生態も不明である。これについての防止法も日本ではないわけでしょう。アメリカとしてはそのコドリンガがサクランボにつく害虫ではないというふうな説明がなされて、これについての完全な防止法も確立されて、いま輸入をしても問題になるようなことはあり得ないということが再三繰り返されてきたわけですね。特に昨年からことしにかけてその要望が強まってきたというふうな状態があるわけですが、これはいま日本の政府としては、いわゆるその害虫コドリンガの世界的な分布の状態だとか、それからアメリカで完全に防止されておるという根拠だとかという点については、完全にまだ掌握されておる状態ではないわけですか。
○説明員(塩飽二郎君) 私、植物防疫上の専門の知識をただいま持ち合わせておりませんので、先生のお尋ねの点につきまして調べた後、後ほど御回答申し上げたいと思います。
○立木洋君 いや、私はこの問題について質問するからわかる方においでいただきたいといって先ほど連絡したはずですがね。その回答がいただけないと私は質問を次に進めていくわけにいかない。
○説明員(塩飽二郎君) コドリンガにつきましては、世界的な分布状況は、一応赤道以外の主として北アメリカ、南アメリカ、ソ連等につきましては分布しているということは認められておりまして、現にアメリカでもそのコドリンガの存在については認めた上で実験を行っている状況でございます。
○立木洋君 アメリカとしてはこれは問題ないというふうなことが明確にされた時点はいつなんですか、コドリンガによるサクランボの害虫の影響が問題ないと。
○説明員(塩飽二郎君) アメリカにおけるコドリンガに関するデータはことしの一月に送られてきておりまして、アメリカが問題がないということを認めた事実はないわけでございます。
○立木洋君 日本側に再三にわたって農林省あてに、農林省の植物防疫担当官のところですが、再三にわたって資料が送られてきて、いわゆるアメリカとしては完全に除去されており、問題ないという証明の実験が繰り返し行われたデータが送り届けられてきておるというふうに私の方では了解しているんですが、そういうものは送り届けられてきていないわけですか。
○説明員(塩飽二郎君) 御指摘のようなデータが本年の一月と六月に送られて参っております。
○立木洋君 それは日本側としてはまだ十分に、何というか、それによって完全に問題がないというふうに結論を出す段階ではないというのが先ほどの答弁ですね。
○説明員(塩飽二郎君) そのとおりでございます。
○立木洋君 この問題に関しては、もちろん自由化品目になっておって、これを改めてまた非自由化品目にするというふうなことになればこれは大変なことになるというふうなことはわかっておりますけれども、問題はそういうコドリンガという特殊な害虫、これが果物に与える影響、これは私も写真で実際に見るとほとんど果物が完全にだめになってしまう、そういう状態が写真なんかで撮られてあるのを見たわけですけれども、こういうのがもし仮に日本に入ってきて、サクランボだけではなくて、他のものにも大変な被害を与えるというふうな事態になると、これはもう日本の果実界においては大変なことになる。これはもうあなた方御承知のとおりだと思うのですが、この問題に関しては十分な保証がない限り絶対にやはり輸入解禁すべきではないというふうに考えるのですが、その辺はどうですか。
○説明員(塩飽二郎君) 御指摘のように一たんそういうものを解禁した後に、仮に万一そういう害が発生いたしますと、影響するところ非常に大きいわけでございまして、従来から植物防疫法に基づく輸入の解禁にあたりましては十分技術的に検討を加えた上で、慎重にも慎重を期した上でやっておるわけでございまして、今回のコドリンガの問題についても目下技術的に慎重な検討を行っておるところでございます。
○立木洋君 この問題に関しては、外務省の方はどのようにお考えですか。
○政府委員(野村豊君) 先ほど先生も御指摘がございましたとおり、このサクランボは自由化品目でございます。しかしながら、御承知のとおりガットの二十条におきましても、いわゆる人とか動物とか植物の生命または健康の保護のために必要な措置というようなものをとる場合には、一般的な例外といたしまして、ガットの例外といたしまして輸入制限ができるということがもちろんあるわけではございます。しかしながら、そういったいろいろな植物検疫上の輸入制限というものはガット上正当化されておりますけれども、同町にまた、そういったものが余り差別待遇になってはいかぬとか、あるいはまたは偽装された輸入制限措置というふうにとられてはいかぬというふうな一般的な規定があるわけでございます。したがいまして、この問題につきましては、いま先生の御指摘もございましたとおり、非常に日本の農業とも関係がございます、いわゆる果樹産業とも関係あるわけでございますけれども、きわめて技術的な問題でございまして、先ほど来農林省の方でお答えいただいておりますように、目下技術的な問題を詰めておるという段階でございますので、われわれといたしましてはそういった技術的な結果を待っておるというふうなことでございます。
○立木洋君 これはアメリカシロヒトリの場合でも大変な害があって問題にされてきたわけですし、これは十分に保証できるというのはなかなかむずかしいことだと思うのですね。まあ向こうはもう完全に防御されて問題ないといっても、いわゆる権威あるイギリスなんかが発表しておるコドリンガの世界的な分布の状況を見ましてもちゃんとなっておりますし、それを受けて日本の植物防疫法施行規則第九条によっていわゆる輸入禁止植物それから輸入禁止地域、それに明確にアメリカ合衆国も含まれており、リンゴ、サクランボ等々も含まれておるわけです。だからそういう危険性があるのを、なおかつアメリカ側が要求してきたから十分に実験してやってみても、これは完全に危険性というものは除去されるというふうなことにはなり得ないとするならば、やはりこういう立場から今後とも輸入解禁は行わないというけじめをとる方が私は適切な処置だと思うのですが、その点については農林省どうですか。
○説明員(塩飽二郎君) 技術的に見て問題がある段階で解禁いたすということは、これは絶対植物防疫法上とるべきでないし、そういう運営は全く行っていないわけでございます。ただ、技術的に完全に、完全にといいますか、技術的に害虫の発生ないしその侵入の可能性が全くないという判断が下った段階で、なおかつ輸入の解禁をしないというようなことにつきましては、また別途、先ほど外務省の方から御答弁がありましたように、一般に貿易の自由な取引ということについて不当に制限しないという方針がございますので、その立場との調和ということを当然考えていかなければならない問題があるものと思います。
○立木洋君 外務省の方に、繰り返しになりますけれども、危険性というのは完全に除去されないと思うんですよ、このコドリンガの問題に関しては。これは先般もリンゴが朝鮮から輸入されたという問題で、青森でも大分問題になりましたけれども、いわゆる禁止地域でない場合でも、まあ大陸の場合にはいろいろ飛んでいったりするような状態ですからね。そうすると、こういう危険性が少なくとも完全に除去されるという状態でない限り、やはり植物防疫法で述べられているような立場を貫いていくという方が、国内のそういう果実の産業を守っていく上から重要ではないかというふうに考えるんですが、その点はどうなんですか。どうしてもやはりアメリカの要求に応じて自由化品目であるから解禁するという姿勢なんですか、外務省としては。
○政府委員(野村豊君) 先ほど申し上げましたとおり、一般的にはわが国も自由貿易を支持しておるわけでございますし、ガットも自由貿易の拡大ということを念願にしておるわけでございます。いま申し上げましたとおり、そういった例外といたしましていわゆる「人、動物又は植物の生命又は健康の保護のために必要な措置」をとれるということが一般的に認められておるわけでございます。したがいまして、いま申し上げましたとおり、そういったいわゆる植物に対する危険の除去という問題と同時に、かつまた、そういった輸入制限の手段というものが場合によっては必要以上の限度を超えて差別的なものになってはならないとか、あるいはまたは、輸入制限の口実のためにやられるということは一般的にはガットでは認められておらないというのがこの解釈ではなかろうかと思っておるわけでございます。この規定を受けましてできておりますのが植物防疫法かと思いまして、この実施につきましては農林省の方で主管されておるわけでございますので、いまのサクランボの問題につきましても、やはりその危険の問題という問題と、いま申し上げた差別になってはいかぬとか、あるいはまた偽装された輸入制限にならないというふうな考量を両方バランスをとりまして運用するのが本筋ではなかろうかということでございまして、あくまでも、もちろん日本の植物に重大な危険があるとかそういった場合に輸入を認める、そういうことをわれわれは申しておるわけではございませんし、かつまた、外務省といたしましてはかなりこの問題は、そういった段階になりますと技術的な問題でございますので、そういった農林省の御検討の結果を待っておるというのが実情でございます。
○立木洋君 じゃ、技術的に答えられる方はいまいないわけですね、どの程度まで問題がないかというふうなことを、さっき専門の技術家がいないからとあなた言われたけれども。
○説明員(塩飽二郎君) 御質問の内容によると思います。担当の者が参っておりますから……。
○立木洋君 それじゃ農林省の方とされては、完全に問題がないかどうかということをいま詰めている段階である、まだ完全に問題がないというふうな結論が出せる状態にはなっていない、外務省の方はそういうあれを受けて、問題がなければ、いわゆる自由化品目であるからそれをむげに差別をしておくというふうなことは困る、農林省の報告を受けて、それで輸入解禁できるかどうかということを判断する、こういうことなんですね。だから問題がある限り輸入解禁はしないというふうに受け取っていいわけですね。
○説明員(塩飽二郎君) そのとおりでございます。
○立木洋君 この問題と関連して、たとえば山形の場合に、あれは四十四年からお米の作付面積の制限政策がとられて、そして稲作転換対策としていわゆるサクランボをつくるということが奨励され、そして実際にサクランボができるような状態になってきた。あの当時はまだ輸入解禁されていない状態です。ところが、実際にお米の作付面積を制限して作付転換がやられて、そして実際にはサクランボである程度やっていけるというふうな状態になって、さあ、いままで借りたお金、借金を返済していくというふうな状態に輸入解禁されるということになると、これは農政の面から見たら、いまそういう果実をつくっている農家が大変な打撃を受けるというもう一つの問題があるんじゃないですか。その問題についてはどういうふうに考えておりますか。
○説明員(塩飽二郎君) 先生の御指摘されたように、国内品と海外品とのそういう競争上の問題につきましては、当然わが国農業の置かれました非常に困難な零細な経営の状況を十分勘案いたしまして、農政として取り組んでいくべき問題だと考えております。
○立木洋君 これは、つまり日本の国内におけるサクランボの需要と供給との関係で、いわゆる不足しておるという状態なんですか。
○説明員(塩飽二郎君) 私ただいまちょっと関連のデータを手元に持ち合わせておりませんので、必要があれば後ほど調べて御回答申し上げます。
○立木洋君 最後に、先ほど言われたコドリンガの問題については十分に検討して、そうして本当に問題がないかどうか。これはあらゆる専門の学者、技術者もおられるわけですし、日本の果実産業を守るかどうかという問題ですから、簡単な形で結論を出して、アメリカが要望しているから輸入解禁するというふうなことのないように、厳格な立場をとっていただきたい。
 外務省の方とされても、アメリカ側の要望があるからということで、農林省の方にそういう意味合いでの輸入解禁を迫るというようなことがないように、いわゆる技術的な問題として完全に除去される――私の考えでは完全に除去されるというようなことが考えられないからしない方がいいという判断ですけれども、いま研究されているという段階ですからこれ以上申しませんけれども、その点は十分に検討していただきたい。
 それから農政上の問題では、さっき言われたサクランボですね、これは五百ヘクタールですか、相当面積も広がっていますし、山形県の場合でもそういう点では直接農林省にも要求が出されていると思いますけれども、この点はよく聞いて、十分にそういう被害が起こらないように対策をとっていただきたいと思います。問題は、サクランボが入ってこなければ問題がないということも考えられるので、その辺も考えて慎重に対処していただきたい。そのことを要望して終わります。
○委員長(二木謙吾君) 本件についての質疑は、本日はこの程度といたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時四十三分散会
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