第078回国会 外務委員会 第4号
昭和五十一年十月二十一日(木曜日)
   午前十時四分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         高橋雄之助君
    理 事
                亀井 久興君
                増原 恵吉君
                戸叶  武君
    委 員
                伊藤 五郎君
                大鷹 淑子君
                矢野  登君
                寺田 熊雄君
                田  英夫君
                羽生 三七君
                立木  洋君
                田渕 哲也君
   国務大臣
       外 務 大 臣  小坂善太郎君
   政府委員
       外務省アジア局
       長        中江 要介君
       外務省アメリカ
       局長       山崎 敏夫君
       外務省欧亜局長  橘  正忠君
       外務省条約局長  中島敏次郎君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        服部比左治君
   説明員
       警察庁刑事局保
       安課長      柳館  栄君
       法務大臣官房審
       議官       竹村 照雄君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○国際情勢等に関する調査
 (大統領選挙後における米国の外交政策に関す
 る件)
 (外為法違反容疑で指名手配されている在日韓
 国人に関する件)
 (国際海洋法会議と領海十二カイリ宣言問題に
 関する件)
 (サハリン居住朝鮮半島出身者の引揚げ問題に
 関する件)
    ―――――――――――――
○委員長(高橋雄之助君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 国際情勢等に関する調査を議題とし、これより質疑を行います。質疑のある方は順次御発言を願います。
○田英夫君 最初に、アメリカとの問題で大臣の御見解を承りたいと思います。
 アメリカの大統領選挙がいよいよ近づいてまいりました。今回の大統領選挙では、フォード、カーター両候補とも外交問題について従来に比べて比較的力点を置いているように思いますし、その意見はかなり重要なポイントで違うんじゃないかという気がいたします。大臣のお立場から、他国の責任者を選ぶ問題の中で批評をされるというお立場ではないとは思いますけれども、どちらが大統領になるかによって当然日本との関係は非常に大きな影響を受けると思わざるを得ませんし、特に、いま非常に焦点になっている朝鮮問題、韓国の問題について両候補の間の意見が違うように思いますので、この両候補の外交姿勢というものについて違う点があるかどうか、あるとすればどういう点なのか、その御認識をこの際伺いたいと思います。
○国務大臣(小坂善太郎君) 田さんの仰せられますように、私の立場から他国の政策、ことに大統領選挙というような、これからアメリカ国民の意思を決定するものに対して批評するということは差し控えなければならぬと思うのでございますが、そういう意味でなくて、いま仰せの中にありましたような、何といいますか、きわめて抽象的な、批評ということじゃなくて、感じのような、そういう意味でお答えをさしていただきますれば、フォード大統領はいままでの大統領としての実績、そういうものから割り出していまの御設問の朝鮮半島の問題を見ておられる。一方カーター候補は、どちらかと言えば非常に理論的あるいはアイディアリスティックな面で見ていらっしゃるというふうな違いがあるように思うのでございます。しかし、その違いがそれじゃ大統領としての施政を行う立場に立った場合にそのままその違いとしてあらわれるであろうかということは、その後の問題としてあるんじゃないかというふうに思います。
○田英夫君 専門のアジア局長がおいでですが、特にアジアの問題、先ほど申し上げた朝鮮の問題について具体的に違う点が表にあらわれていて、それが一つの争点になっているように思いますね。特に、カーター候補が在韓米軍の撤退ということを述べている。これは単に韓国政策あるいは朝鮮政策の違いというよりも、根本にある世界情勢の認識に違いがあるのではないかという見方もできると思うのです。つまりデタントについて積極的か消極的かと。従来選挙戦の当初はむしろ対ソ強硬姿勢を示すことを競ったような、つまりデタントという言葉を使わないということをフォードが言い始めるようなことがあったわけですけれども、この韓国問題について、朝鮮問題についてはカーター候補の方が非常にハト派的な意見を述べているようこ思いますが、その違いをどういうふうにお考えですか。
○政府委員(中江要介君) 常々言われておりますように、どこの国でもそうなんですが、選挙前の発言というものはそれなりに、まあ何といいますか、そういう状況を踏まえて受けとめなきゃならないということが一般論としてあるわけでございますので、私どももいろいろ伝えられてきているものについて、その字句どおり考えていいのかどうかという点はもちろん考慮しておるわけですが、それにもかかわらず、一般的にこの大統領選の始まりました当初に、いま田先生の言われましたように、どうもカーター候補というのは非常にハト派的なイメージを大きく打ち出しているじゃないか。在韓米軍の撤退の問題にいたしましても、また人権の問題にいたしましても、これはカーター候補がもし大統領に当選すると大変ではないかというようなことが世上言われておりまして、韓国の方でもいろいろ心配していたという情報がございますけれども、私ども一その段階ですら、カーター候補が実際に演説された内容とか発表された意見というものをしさいに見ますと、そうドラスチックなものを考えておられるわけでもなさそうだし、そのうち、だんだん日が進むにつれまして、当初与えたイメージどおりではないような趨勢も最近は見受けられますし、いまのところは果たしてどこが――こういう言い方をしちゃあれかもしれませんが、本当の歩どまりかということについてはまだ決めかねるというのが現状でございます。
○田英夫君 この問題実は大変外務大臣としては先ほどおっしゃったとおり言いにくい問題だろうと思うので、無理にこの機会に伺うのもどうかと思いますが、ただ、やはり日米関係というのは何といいましても日本の外交の基軸であることは間違いありませんので、国民の気持ちも、果たしてアメリカの対日政策あるいは世界に対する外交政策というのはカーターになると変るんだろうかという点で注目していることは間違いありませんので、この問題最後に一言伺いますが、外務大臣としては変化があると予想されるのか、あるいは揺れ動きはないと考えられるのか、この点はいかがでしょう。
○国務大臣(小坂善太郎君) 先ほども申し上げたように、またアジア局長も申し上げましたように、実際大統領になって施政を行う場合にどの程度のものになるであろうかという点を考えますと、やはりその置かれている世界情勢の中における位置、そういうものからしてそう変わるものはないんではないかというふうに思うのでございますが、これは一つの見方でございますが、私は、歩どまりという言葉がいいか悪いか、まあアジア局長が言うたようなそういう点がございますんじゃないかと思うんです。
 韓国問題について申し上げますと、やはり朝鮮民主主義人民共和国というものが非常にプレマチュアーである、あのコロンボにおける会議でも非常にミリタントなアロガントな態度、これが同盟会議に集まった諸国の間でいろいろ批判されているということに見られまするような、あそこでバキュームができると妙な風が吹き込んで混乱のもともできるという点から考えて、理想は理想として、現実の平和維持の対処策というものは、おのずからあまり現在と変わらぬものになるんじゃないかというような気がいたしておるわけでございます。
○田英夫君 別の問題に移りますが、警察庁からおいでになっていると思いますけれども、これは韓国の人ですが、大変おかしな名前なんで日本読みにして「そうまたおくまん」と呼んでいるそうですが、曹又億万と四字のめずらしい名前ですけれども、この人物が兵庫県警から指名手配を受けているということで、外為法違反だというふうに聞いておりますが、この事件の概要をお話しいただきたいと思います。
○説明員(柳館栄君) この事件の概要について申し上げます。
 曹又億万の外為法違反事件の概要でございますけれども、同人は、昭和四十六年八月二十七日から四十七年五月二十七日にかけまして八回にわたって石井光治ら三名と共謀し、円表示自己あて小切手二億三千万円を韓国へ法定の除外事由なく携帯輸出したものである、こういう事案でございます。
 ただ、兵庫県警が捜査の対象にいたしました金額は総額で六億九千四百十四万円でございますけれども、持ち出し人が特定できたものがただいま申し上げた二億三千万円と、こういうことでございます。
○田英夫君 私の方で調べました、事件はいまおっしゃったとおりですが、曹又億万という人物はソウル生まれ、一九〇五年二月二十三日生まれといいますから七十一歳だろうと思いますが、日本には大正十三年に入国をしているという大変古い在日韓国人であるわけですが、この人物の特徴は、統一神霊協会の日本における幹部と見られていて、例の街頭で花を売ったりニンジン茶を売ったりしていたキャラバン部隊のボスである、いま言われた七億円近い金もそうして集めた金だというふうに言われているというか、そういう金のようであります。
 いま言われた共犯の三人、石井光治、これも統一神霊協会の人間であり、勝共連合の渉外部長という肩書きを持っている。もう一人増田勝というのも統一神霊協会の伝道師、さらに三人目の藤本三雄というのも統一神霊協会の伝道師、こういうことになっておりますから、この事件は統一神霊協会並びに勝共連合と関係があるというふうに考えざるを得ないんですが、この点は警察のお調べでわかっているでしょうか。
○説明員(柳館栄君) ただいま申し上げました資金がどこから入って、そして何のために持ち出したのかということの詳細については報告を受けておりません。ただ、いま先生のおっしゃいましたような活動をしておった人間であるということは承知いたしております。
○田英夫君 そこは非常に重要な点だと思うんですけれども、この人物は指名手配になっているにもかかわらず逃亡中で、四十七年以来行方不明というふうに聞いていますが、それは事実ですか。
○説明員(柳館栄君) 兵庫県警が曹又億万の逮捕状を取りましたのが四十七年十一月二十二日でございます。ところが、そのときにはもうすでに日本にいなかったということが後でわかったわけでございます。その後ずうっと指名手配を続けておりまして、あわせてまた入管、税関等にも、外国に出たという話を聞いたものですから、もし日本に帰ってきたら連絡してくれぬかというような手配もいたしておったわけでございます。
 ところが、その後ずうっとこの種形式的な事犯のものについて長く手配しておくということもあまり適当ではないという判断もありまして、四十九年九月三日で連続して逮捕状の切りかえをしておった手続を終了いたして、現在逮捕状は取っておらないという経過でございます。
○田英夫君 そういう状態になって、国外逃亡ということですから、これは当然時効は中断になっていると思いますが、その点はいかがですか。
○説明員(柳館栄君) 外国に出ておるということであれば、そのことが立証される限り時効は停止いたしますので、必要とあれば逮捕状が取れるものだと考えております。
○田英夫君 共犯の石井以下三人については、現在裁判が進められているというふうに聞いておりますが、その点は把握しておられますか。
○説明員(柳館栄君) そのように承っております。
○田英夫君 これも私どもの方の調査で、この三人はすでに神戸地裁の刑事三部で公判が続けられていて、それぞれことし九月に結審をして懲役一年ないし二年という求刑を受けていて、ことしの十二月二十一日に判決の予定であるというふうに聞いているわけですが、現在この曹又という男がどこにいるかは全く不明ですか。
○説明員(柳館栄君) 確認しておりません。
○田英夫君 これもわれわれで調べたところが、ハワイにいる、その住所も電話番号もわれわれのところでわかっていますが、捜査当局はそういうことは全くわかっていないのかどうか、見当もついていないのかどうか、いかがですか。
○説明員(柳館栄君) ただいま申し上げましたように確認いたしておらなかった次第でございます。
○田英夫君 われわれの方からお知らせするのもおかしな話ですが、ハワイのホノルルですが、そこの住所をあたったところが、それに該当する老人が住んでいて、これは韓国の領事館のすぐそばですけれども、その電話の持ち主の名義も統一神霊協会になっているというようなことから、まず間違いない。現在、本日ただいまの時点でそこにいるかどうか。しばしば米本土に渡っているというふうに調べによるとなっておりますから、いるかどうかはわかりませんけれども、こういう状態が判明した場合には、警察としてはどういう処置をとられるのか。日米犯罪人引渡条約というものがあるわけですから、アメリカ政府にこれを要求する、この条約の発動を要求するということは可能と思いますが、これはいかがでしょう。
○説明員(柳館栄君) 日米両国犯罪人引渡条約というのがございますけれども、これに定める犯人の引き渡しの罪種には外為法が該当いたしませんので、私どもとしてはそういうことを要求する法的根拠がないと、こう考えております。
○田英夫君 そうすると、手をこまねいている以外にないということになるわけでしょうか。それとも係員を派遣するというようなことは考えませんか。
○説明員(柳館栄君) 私どもとしては曹又億万が共犯である、先ほどの犯罪事実について申し上げましたように。かつまた、逮捕状もとっておりますので、格別派遣しなければ立証が困難だとは考えておらないわけでございます。むしろ、それよりも逮捕できるかどうかということが最大の問題でございますけれども、ただいま申し上げような次第で、法的根拠がないということで大変残念に思っておる次第でございます。
○田英夫君 外為法違反が適用外ということで、きのうの衆議院の外務委員会でも日米の犯罪人引渡条約の改定の問題が論議されたようでありますけれども、この犯人というのは非常に問題の――きょう私はなぜ外務委員会で取り上げているかというと、韓国との関係の中で非常に重要な問題を背後に持っているから取り上げているわけで、私どものような捜査の権限も何もない者が調べても、ここに写真がありますけれども、これはハワイでの曹又億万の写真です。それから、兵庫県警で持っておられる写真を提供していただいて、全く同一人物であるということは素人が見ても明らかなわけであります。そういう状況になっているにもかかわらず、この重要な、外為法というものの性格をどう考えるかという議論は別にあるとしましても、手をこまねいていざるを得ないというのは一体どういうことなんでしょうか。
○説明員(柳館栄君) 私どもとしては、逮捕したいと考えておることは先ほど申し上げたとおりでございます。そういう意味では非常に法律上やむを得ざることで残念だと思っておる次第でございます。
○田英夫君 日本の警察官がアメリカへ行って逮捕できないというのは、これはあたりまえでありますけれども、国際刑事警察機構とか、そうした機構を使う、あるいは日米間の外交ルートを使うというようなことをやる余地はありませんか。
○説明員(柳館栄君) 国際刑事警察機構を使いますのは、日米両国犯罪人引渡条約のような条約がお互いにあって、その上で協力をいただくという場合に使えるわけでございますけれども、両国間にそういう基本条約がないという場合、仮に基本条約がございましてもその罪種の中に入ってないということになりますと、強制力の行使をICPOを通じて行うということはできないと、こういうことになっております。
○田英夫君 きのうの衆議院の議論を蒸し返すようなことになりますけれども、大臣、すでにロッキード事件であらわれたような贈収賄、国際的にまたがる贈収賄の問題、そしてこの外為法違反も、今回のロッキード事件でもすでに起訴された何人かの被告、容疑者の中に適用されているものがあるわけでありまして、明治何年という時期には予想されなかった、あるいは起こりにくかったこの種の犯罪がこの条約に欠けているという、これはもう早急に改めなければならないと思いますけれども、きのうの御答弁では非常に消極的なように受け取れるわけですが、この点はいかがですか。
○国務大臣(小坂善太郎君) 昨日も衆議院の方で御質問にお答えしたわけでございますが、あの法律は明治十九年というものでございますので、その時点における犯罪というのは非常に限られたものでございます。いま仰せのような事態でございますので、アメリカとの話し合いを進めたいと考えて、できれば年内にセットしたいというふうにわれわれは思っておるわけでございます。法務省、警察等も関係あるわけでございますが、その間の連絡をとりましてさように考えておるわけでございます。
○田英夫君 そこで、先ほど申し上げたように、この事件を単なる日本における犯罪人がアメリカに逃亡しているという事件として私は取り上げているわけではなくて、日本と韓国との外交問題の基本に触れてくる一つの問題ということで取り上げたいと思っているわけです。つまり、先ほどこれは警察も確認されたように、この人物が犯した犯罪のもとになったのは統一神霊協会、そしてそれと一体のものとされている勝共連合の活動の中から起こってきたということですが、この統一神霊協会並びに勝共連合というものについて、これは専門家というのはないでしょうから、どなたがお答えいただいてもいいんですが、どういうふうに把握をしておられますか。これはともに韓国をもとにするものですけれども、どういうふうに把握しておられますか。どういう組織だというふうに把握していますか。
○政府委員(中江要介君) 私が担当しているという意味ではなくて、私がどう把握しているかという御質問だといたしますと、私は新聞その他で報道されている以上のことは存じないと、こういうことを申し上げるよりほかないと思います。
○田英夫君 この問題は、実はとっぴなようでありますけれども、そうではなくて、アメリカの外交委員会もこの統一神霊協会、勝共連合の問題をKCIAの問題とともに取り上げているわけです。
 ことしの春から一連の公聴会を開いてきたいわゆるフレーザー委員会、下院の外交委員会の中の国際機構小委員会、ここで何人もの証人を呼んで公聴会を開いている。その記録、経過などは外務省では把握しておられますか。
○政府委員(中江要介君) 把握しておりません。
○田英夫君 これは、在米大使館は当然この程度の情報はつかんでおられないとおかしなことになると思うんですけれども、統一神霊協会と勝共連合の活動というのは、日本でも現在も続いているようでありますが、アメリカでも建国二百年祭のお祭りの中に神霊協会が入り込んで新聞に大きく報道されているので、これは外務省、アメリカ局長ここにきょうおられないけれども、担当者が御存じないということになると、いささか問題だという気がするんですが、全くわかりませんか、この動きは。
○政府委員(中江要介君) これは田先生も先刻御承知のように、日本の社会体制というのが、いまの憲法のもとでさまざまな自由が保障されておりますので、物事が外交問題になる前提として、その団体なり活動なりが日本の法に触れるというようなことがあって、その法に触れた問題について外交問題が絡んできたときに、私どもとしては重要な関心を持つと。その結果として、その団体の海外における活動なり存在というものが必要になれば私どもも当然調べることになると、こういう順序だと思いますので、いままでのところ、先ほども申し上げましたように、日本において日本の国内法に触れたような存在の仕方、あるいは活動というものについて私どもは承知していないと、こういうことでございます。
○田英夫君 いま答弁されたことは非常に問題なんで、一つは曹又億万という男が、先ほど申し上げたように、勝共連合と統一神霊協会の活動の中で集めた七億円の金を不正な方法で韓国に送ろうとして指名手配になっているという問題であって、まさに日本における多くの方が御存じの街角で花を売りつけようとするあの青年たちの活動というのが、このごろは余り見かけませんが、一時非常に目立ったわけですね。あの中から出てきた犯罪ですよ。日本の国内での活動に非常に問題がある。そしてその勝共連合というのは何をやっているか、後でまた申し上げますが、これはもう知る人ぞ知るということだと思います。
 もう一つアメリカでの活動は日本と無関係でなくて、日本の外交と非常に関係があるという事件が起きようとしている。起きなかったのはアメリカの捜査当局なりアメリカの政府の事前の抑止があったからなんで、たとえば先ほどフレーザー委員会の公聴会の内容について把握しておられないということでありましたけれども、これはもし、いまこれから申し上げることを把握しておられないとすれば、在米大使館の怠慢でありますが、金大中事件の直後にアメリカにおける統一神霊協会の最高責任者の指示によって日本の駐米大使館に卵を投げ込むというような、つまり抗議行動のようなものを神霊協会が計画をしたということを九月二十七日の外交委員会の小委員会、フレーザー委員会で在米統一協会の関係者が証言をしております。このことは、計画そのものはすでに過去のことですけれども、こういうことをやろうとした連中なんですね。もしやられていたら、これはやはり日韓関係を、あの金大中事件直後非常に問題になった日韓関係をさらに悪化させたと思わざるを得ない、それは把握しておられませんか。
○政府委員(中江要介君) その九月二十七日の分は把握しておりませんが、いま一つ資料を拝見いたしまして、先ほど私が申し上げました御説明の訂正をしなければいけませんのは、九月の初めに公表されましたアメリカの下院の国際関係委員会国際機構小委員会、それの本年三月二十五日の秘密公聴会の議事録が公表されましたが、その三月二十五日の秘密公聴会で、レイナード元国務省朝鮮部長が証言しました中に、朴東宣という在米韓国人の活動、この人物と自由アジア放送との結びつき、それから先生が御指摘になりました統一教会とKCIAとの関係などについて証言しているということは、私どももその公表された議事録で承知しているということはございます。
○田英夫君 いまおっしゃった、公表されたフレーザ委員会の公聴会の議事録、私どもも実はそれを手に入れて検討をいたしましたが、この中にさまざまなことが出てくるわけです。つまりアメリカにおける統一神霊協会、そしてそれと一体と言われるKCIAの活動、たとえば、やはり同じ委員会での三月十一日から二十五日の間に行われた統一神霊協会とKCIAの関係を述べる何人かの証言の中で、これはいま言われたレイナード証言ですけれども、田中前総理が訪米をするときに、やはりこの統一神霊協会の連中が抗議のデモをやる計画を立てたということも証言をされているわけです。
 そこで、警察庁の方は担当でないとおわかりならないかもしれませんが、この統一神霊協会、そうして勝共連合というものを警察はどういう態度で受けとめておられるのか。
○説明員(柳館栄君) 私も新聞その他で知っている程度の知識しか持ち合わせておりませんので、まあ警察庁としてどう対応するかということについては、大変役人的でございますけれども、所管外でございますので発言を差し控えさしていただきたいと思います。
○田英夫君 これは、たとえば警視庁が昭和四十四年に作成された報告書の形のものですが、国際は恐ろしく何といいますか、勝共連合を評価するような言葉が出てくるわけですね。これはもう私などの感覚からすれば大変驚いてしまう、そういう態度でいいのかどうか。一方で、日本における財政部長という肩書きを持っている曹又億万という男は警察から指名手配をして、明らかに犯罪を行っておるという、この辺のところの感覚は私は狂っていると思いますよ。
 たとえばこのフレーザー委員会における証言の一つ、元在米韓国大使館付武官であった、これは非常にむずかしい字で、ちょっと読みにくいのですけれども、朴普煕と読むのでしょうか、その男と非常に親交のあったというロバート・ロランドというユナイテッド航空の人物の証言の中に、一九六七年七月に文鮮明という――文鮮明というのは御存じのとおり統一神霊協会の教祖と称しておる男です。現在アメリカにおりますが、この文鮮明が世界反共連合を設立するために日本の山中湖畔で児玉譽士夫、笹川良一と会合をしたということをこのロランド氏は証言をしています。そうしてこの証言によると、この会合の結果、世界反共連合というものが一九六八年の一月に韓国に本部を持って発足をし、同年、六八年四月には日本支部が設立され岸信介氏がこれに加わった、こういうことを証言をしていますが、これはフレーザー委員会の証言の中に出てくるわけですけれども、その点は外務省は把握しておられますか。
○政府委員(中江要介君) ちょっと正確に記憶しておりません。ただ公表された公聴会の記録は全文入手はしております。
○田英夫君 こういうことを、私はもう事実をずっと並べて申し上げてきたわけです。中心人物の曹又億万という男は明らかにハワイに住んでいて、私どもの調査の人間が行って家まで確認をしている。いわば民間人が行って確認できる状況にある。それを警察は指名手配していながら逮捕もできない。その背後にひそむものはこういう韓国の組織であって、それは日本の中ではかって非常に強力な空気銃――空気銃と言ってもスズメを撃つ空気銃ではないのですね、非常に強力な空気銃を大量に輸入をして、警視庁が先ほど申し上げた国際勝共連合という文書の中で、その点についてはさすがにきわめて警戒すべき動きであるというふうに指摘をしている、こういう組織ですよ。これを放置している。この前申し上げたように、金大中事件で告発されている金在権こと金基完というのがロサンゼルスに住んでいる。私どもはこれまた住所も電話番号もわかっている。にもかかわらず、検察庁も警察も全く知らないと言われる。これは近くこの金在権の住所はアメリカでマスコミで大々的に報道しますよ、アメリカの方が大変関心持ってますよ、KCIAの活動に対して。
 そこで伺いたいんですが、アジア局長、在日韓国大使館の中に朴載京という参事官が現在もおりますか。
○政府委員(中江要介君) 現在の外交団リストにはその名前が載っております。
○田英夫君 そのとおり、私もいただいた中に載っております。この人物はこの委員会でも何回か私は名前を出した人物です。この間、自民党の玉置委員が取り上げられた魚塘氏の誘拐未遂事件と言ってもいいでしょうが、その事件に彼は主役をまた演じているわけです。これは彼が魚塘氏を引っ張り出して高輪のコリアンハウスに呼び出して会談をした。その席から魚塘氏が家族に連れ戻されて自宅へ帰ったというのが、この間も警察庁の担当者の御答弁で明らかになっています。この人物は明らかにKCIAと考えざるを得ない。私の聞くところでは、韓国政府からこの朴載京に対して、そういうことを、あわてて魚塘氏がいなくなったことを一一〇番するから、おまえが魚塘氏を口説いていたことがばれてしまったではないかと言って、現在批判をされているということも聞いています。明らかにこの魚塘氏の事件というのは朴載京という外交官が、母国墓参と称して、これは在日朝鮮人にとっては人間として非常にやはり心情的に乗りやすいというか、悪く言えば弱みです。在日朝鮮人というのは大部分が南朝鮮、韓国側の出身者ですから、そこには親族も多い。そこへ墓参に連れてってやるよという持ちかけ方をして、そして朝鮮総連の組織を切り崩そうとしている。これはKCIAの活動ですよ。日本におけるKCIAの活動というものに対して、この委員会でもしばしば警告を発してきましたけれども、これだけのことをやっている朴載京という人物が、いまだに、金大中事件直後姿を消したと思ったら参事官に出世をしてまたあらわれている。これは驚くべきことですよ。アメリカだったらこれは許しませんよ。
 そこで警察に、これは担当の方でないのでお答えにくいかもしれませんけれども、調べておいていただきたいんです。というのは、魚塘氏の事件については、この間は外事課長が出席をされて捜査を続けていると言われました。ところが、私どもの調べによると、調べているのは魚塘氏の方なんですね、これは被害者ですよ。現在立川の彼の家の周りには機動隊の車まで置かれて、家の周りは刑事によって取り囲まれていますよ。これは一体何のためにそういうことをしているのか。そして魚塘氏に対して取り調べの刑事は、取り調べの発言を拒むと、それなら刑訴法を発動してしゃべれるようにしてやるというようなことを発言をしています。
 そこで伺いたいのですが、この誘拐未遂事件の、つまり誘拐ということについての容疑は朴載京という外交官にある。この朴載京という男をお調べになりましたか。このことを現在答えられなければ次回の委員会冒頭にお答えいただきたい。これは委員長にお願いをいたします。いかがですか。
○説明員(柳館栄君) その旨連絡したいと思います。
○田英夫君 大臣、お聞きのようなことで、きょうはいきなりこういう事件を持ち出して、どこまでわかっているかと言っても、それはなかなか多くの事件を担当している警察の方がここの場ですべてを答えられるとは思いませんので、問題を実は提起したつもりです。ですから、これは十二分に内部で相談をされて、検討されて、この曹又億万という男に対する対処の仕方、これも御検討いただきたい。そして大臣に申し上げたいのは、こういう姿勢が本当の意味の日本と韓国との友好関係というものを阻害するんじゃないかということを私は心配をするわけです。この点からひとつ大臣の、いまずっとやりとりをお聞きになってのお考えを最後に伺っておきたいと思います。
○国務大臣(小坂善太郎君) いまいろいろのやりとりを聞いておりまして、よく調査をいたしまして、その結果について判断したいと思いますわけです。
○田英夫君 終わります。
○立木洋君 きのうの衆議院の外務委員会で問題になりました領海十二海里の問題ですが、去る十九日、参議院の農林水産委員会で大石農林大臣が、領海十二海里は国内法で処理できることがわかったので、来年の海洋法会議の結論を待たずに、次の通常国会に法案を提出して成立さしてもらえるように努めたいという趣旨の答弁をなさって、それに関連してきのうの衆議院の外務委員会でも問題になったと思うのですが、この件に関して外務省としての、大臣としてのお考えをもう一度改めて最初にお尋ねしておきたいと思います。
○国務大臣(小坂善太郎君) この問題については、過般来内閣官房副長官が主宰いたしましていろいろと協議を重ねました結果、結論として領海を十二海里にすることはしよう、その時期、方法については、今日海洋法会議が開かれておるから、その結論を待って対処したいということを決めたわけでございます。
 ところが、海洋法会議が結論が出ないままに会期を終わりまして、明年の五月に再び招集されるということになったわけでございます。明年の五月の海洋法会議は恐らく結論が出るであろうと、こういうふうに思われるわけでございますが、それに至るまでの間にも、できるだけ関係各国との間に調整をいたしまして、来年の海洋法会議には結論が出るようにしたい、その結論と相まってこの領海問題を決定しよう、こういう態度をとっているわけでございます。われわれはその態度を変更するという決定をいたしておらないわけです。
 ただ、大石農林大臣の主管大臣として漁業の問題ことに漁民の状況を心配されるこの気持ちは、私も政治家としてよくわかるわけでございます。さらに調整をしたいと、こう思っておるわけです。
 ただ、これは漁業問題だけでなくて、いろいろな関連するところが多いわけでございまして、たとえば海峡の通航の問題もございます。もちろん非核三原則との関連もございます。海峡通航問題等に関連いたしますと、わが国は大量の石油をマラッカ海峡を通じて持ってきているわけでございますので、これは大変な大きな影響を受けるわけでございます。卒然として国内法だけでやると、こう言われましても、その影響するところきわめて多いと、こういう認識を持っておるわけでございます。
○立木洋君 前の農林大臣の安倍さんでしたか、のときも大体農林省は漁民の要求を踏まえて、もちろん積極的に領海十二海里宣言をできるだけ早くやりたいという主張を繰り返しておったわけですが、外務省としては、宮澤さんのときから大体この領海十二海里宣言については常に消極的な姿勢を示しておるというふうな印象をどうしても免れないわけですが、外務省として特にこの問題についての宣言に慎重である、あるいは消極的であるという基本的な原因はどこにあるんですか。
○国務大臣(小坂善太郎君) いま申し上げたように、関係するところきわめて多いということでございます。たとえば、いまのわが国のエネルギーの根本を占める石油の輸入、それに差し支えるようなことがあってはならない。それから非核三原則との関係もある。その点などが最も、他にもございますが、象徴的に言えるものだと思うのでございます。単に漁業問題が重要だからといって、領海の問題をそれで解決するということはどんなものであろうか。漁業問題が重要なことはわかりますし、漁民の立場を保護せにゃならぬということも十分わかるわけですが、しかし、それにはそれなりの方法もあるではないかという考えでおるわけでございます。
○立木洋君 だけど、領海十二海里の宣言をしてそういう制度をとっている国というのはもうすでに五十数カ国国際的にもあるわけですね、五十七カ国と言われていますけれども。そして宮澤さんのときに、あれは一九七五年十一月でしたか、もう一年近く前になりますけれども、そのときも当時の宮澤外相が、関係省庁の利害を調整し早い機会に結論を得たいというふうに述べて一年近くたった。結局海洋法会議の結論を待たなければならないということになってしまったというあたりがどうしても理解できないわけです。結局漁民の方々の被害の問題から問題が大きくなってくると農林水産委員会で問題に取り上げられる、農林大臣は大体積極的にできるだけ早くしたい、それをいつもブレーキをかけているのが外務省ではないかというふうな感じがどうしても強いわけですが、これは日本がどうしても、その十二海里宣言をやった場合に非核三原則との関係でどういうふうに悪いのか。日本政府としては非核三原則を国是として貫くという立場を一方で明確にし、一方では領海十二海里宣言を明確に出すという態度をとれば、自主的な立場をそういう形で明確に表明すれば問題はないと思うんですけれども、どういう点に問題があるわけですか。
○政府委員(中島敏次郎君) いろいろの点にお触れになりましたので、まず第一に、領海十二海里の国がたくさんあるじゃないかというお話がございまして、数からいきますとまさに先生のおっしゃられるとおりでございますが、他方、伝統的な国際法として確立された規則というのは、領海は三海里までであるというのが依然として国際法上の一般的な考え方、原則でありまして、領海三海里を維持しておる国というのは、数からいけば十二海里を実施している国よりも少のうございますけれども、たとえば所有船舶の量というようなことになれば、やはり依然として世界の海運の大部分を占めておるというようなこともありますし、領海十二海里がもう世界の大勢であるということは現在の状況で必ずしも言えるとは限らないんじゃないか。
 それより何よりも重要なことは、先生よく御了解いただいておると思いますが、たびたび御論議がここでも出ておりますけれども、海洋法会議の最大の目的が、二百海里の経済水域の問題と領海十二海里への拡張の問題そしてそれから生ずるところの国際海峡の問題と、三つの問題をパッケージにして一括解決で片づけようということで努力をやってきているわけでございます。
 この点について、三木総理もおっしゃっておられるように、わが国はまさに世界の中で最も海に依存するところの大なる国でございますから、海洋の秩序が乱れることによって一番損害を受けるのはわが国である。そういう意味で、海洋の秩序の確立ということについてはわが国としては最大限の努力をしなきゃいかぬ。そしていまのような重要な問題については、せっかく海洋法で一括解決ということで各国が努力をしている最中でございますので、それらの海洋の制度の問題は新しい海洋法秩序の中で解決するということで努力をいたしたいということでございます。
○立木洋君 さっきも言いましたけれども、結局外務省の態度というのは、日本が独自に領海十二海里宣言を行う、そうすると問題になってくる国際海峡などの問題が問題になって、そこでは核積載艦や原潜等々が通航ができなくなる、領海となって。だから、結局日本としては非核三原則の立場をとるために、アメリカの核積載艦がそういう国際海峡を通れなくなるので、アメリカに対して気がねをしてと言うんですか、アメリカの顔色を見ながら、結局海洋法会議で結論を出して、日本の政府としてはその責任を海洋法会議に転嫁する、みずからはいわゆる火中のクリを拾わないということに終始しておる、そういうことじゃないんですか。
○政府委員(中島敏次郎君) 先生いま国際海峡の問題をお挙げになられまして、まさに国際海峡の問題があるわけでございます。それは申し上げましたように、領海十二海里への拡張の問題、二百海里経済水域の問題、そしてそれと一括解決ということで努力をしておりますところの国際海峡における船舶の自由通航の問題という問題があるわけでございます。
 ただ、わが国といたしまして、御承知のようにわが国は最大の海運国でございますから、いま先生はたまたま日本の近海における国際海峡の問題のみをお取り上げになられましたけれども、まずわが国の国益という点からいけば、沿岸国としての日本近海における国際海峡における通航の問題と、それから最大の海運国としての、世界各地における国際海峡、いわば海運の国際交通の要衝の地点におけるわが船舶の自由な通航を確保する、そういう国益と、両方の問題を抱えておるわけでございます。そういう意味で、わが国といたしましては、世界じゅうの国際海峡において、船舶が種類のいかんを問わず一般的な制度として、通常の領海における無害通航よりも、より自由な通航の制度が確保せられることが日本の総合的な国益に沿うゆえんであるということが基本的な立場になって海洋法会議に臨んでおるわけでございます。
 したがいまして、いま先生が海洋法会議への責任を転嫁する云々ということがございましたけれども、その点は先ほどの繰り返しになってまことに恐縮でございますけれども、海洋法会議そのものがいまのような主要問題を一括して解決しようということで、漁業水域二百海里の問題については、一方的にそんな措置をとる国がぼつぼつ出てきておるという問題は確かに深刻な事態ではございますけれども、なおかつ会議の議長も、その会議での一括解決の話が成立する前に一方的な措置をとらないようにということを繰り返し繰り返し自制をしておるわけでございます。
 先ほど申しましたように、わが国としては、海洋法秩序というものが一括して解決されるということがわが国の総合的な国益に最も合致するゆえんである。それはなぜかなれば、わが国が海に依存することが最も大きな国であるから、海洋の無秩序というものによって一番ヒットされるのは日本である、そういう基本的な立場があるということでございます。
○立木洋君 それならば、前回の海洋法会議で提出されました単一草案の修正案ですが、あれがあのまま決まった場合に、領海内における核の通過というのは一体どうなるんですか。
○政府委員(中島敏次郎君) その点は、この前たしか立木先生からも御提起がこの当委員会であったかと思います。
 いままで議論しておりましたのは国際海峡の問題、国際海峡における通航制度の問題でございますが、いま御提起になりましたのは一般領海における船舶の通航の問題、具体的には無害通航の問題だと理解いたしておりますが、この前も御説明申し上げましたように、現在の条文は改定草案の第十八条でございまして、改定草案の第十八条につきましては、前回にも申し上げましたように、一般的に言いまして、いまだ最終的な固まりを見せていない、論議が詰まっていないという点がありますので、いまの段階で確定的にどうこうということを申し上げることができないということも、この前にも申し上げたわけでございますが、いずれにいたしましても、わが国といたしましては、先生この前も御論議がありましたように、非核三原則の問題というものはあるわけでございまして、いま申し上げましたように、沿岸国の安全保障の問題というものも確保しなければいかぬという、そういう利益もあるわけでございまして、そういう点を十分に踏まえながら対処しておる。
 ただ、いまの案文でどうだというのは、この前の御質問でもございましたけれども、遺憾ながら、この前の会期においては、第十八条というよりは、伝統的な領海制度の問題については、いわゆる第二委員会の作業は余り進展がございません。進展がないというよりは、もっとほかの方に焦点が、論議が集中いたしまして、さしたる論議が行われないで済んでしまったということになっております。
○立木洋君 いや、このまま決まったらどうなるのか。まだ論議の過程であるということはわかるわけですよ。しかし、このままこの領海の無害通航に関する第三章の問題、これがこのまま決まった場合には、核の通過というのが事実上無害ではないとしてチェックできるのかどうか、このまま決まったらです。論議の過程ということは前回も伺っていますから。
○政府委員(中島敏次郎君) この前にも先生からそういう御質問があったことはよく存じております。このまま決まったらどうかという仮定の解釈の問題を論議いたすことが、どれだけ実益があると申しますか、そう言っては失礼でございますけれども、実益があるかどうか多少疑問に感じているわけでございますが、いずれにしろ、この前にも多少御説明いたしましたけれども、現在の十八条というのは先生よく御承知の一九五八年の領海条約、いま日本が入っておりますところの領海条約の第十四条の四項、これが無害通航の原則でございます。そこには、「通航は、沿岸国の平和、秩序又は安全を害しない限り、無害とされる。」と書いてございます。そしていまの改定草案の第十八条にも、まさに第一項にその原則が入っているわけでございます。
 そこで、今度の海洋法会議の焦点は、この現行の領海条約の第十四条四項だけでは余りにも無害通航の内容が不明確であるから、それをもう少し、もっと明確にしたいというのが問題意識であるわけでございます。そこで、その明確にするということの意味についていろいろな会議参加国の意見があるわけでございます。それをたとえば制限的に列挙すべきであるとか、いやそうじゃなくて、大体の典型的な例を書き上げて、あと沿岸国の正当な当断の余地が残されているべきであるとか、いろいろな意見があったわけでございます。そのような意見を全部踏まえまして、第二委員会の委員長のアギラール氏が、その無害通航の喪失要因と考えられるべき活動を第二項で書き上げていったというのがいまの単一草案の第十八条二項であります。
 したがいまして、いま私が申し上げたいのは、そういうようなことで、要するに会議として最終的な結論が出て、無害通航とはこういうものであるということを最終的な結論を出して、それがいま十八条になっているということではないわけでございまして、事実これから最終的なところの結論が、ドラフトができるまでにどういうふうな変転があり得るのか、これはわからないわけでございます。
○立木洋君 前もそれと同じ趣旨ですね、条約局長述べたのは。しかし問題は、この今度の十八条によりますと、これはちゃんと第二項のところで、「外国船舶による通航は、同船舶が領海内で次のいずれかの活動をした場合、沿岸国の平和、秩序または安全を害するものとみなされる。」といって、十二項目が特定に取り上げられている。しかし、十二項目の中には核の通過という問題は全然入っていない。そして日本の代表はこの問題について、いわゆる核の通過というのは無害ではないのだということの意見を述べたのかというと述べていない。日本の藤崎首席代表は、結局そのまま条約化されることになるだろうと言って、会議から帰ってきた後の報告の中ではちゃんと述べているわけですよ。あなたは、いまこの問題がこのまま決まるかどうかわからないし、討議の経過だから、そのことを前提にして質疑するのはいかがなものでしょうかと言われましたけれども、このまま決まるという可能性も強い。しかも、核の通過の問題が無害ではないとされていない、これについて日本の代表は意見を述べていない。ということになると、これは明らかに核の通過は、今後いわゆる領海が十二海里になっても、領海内は自由に通過できるということになると見ざるを得ないわけなんです。前もきょう述べたと同じように言って条約局長はお逃げになりましたけれども。
○政府委員(中島敏次郎君) 大変お言葉を返すようで恐縮でございますが、別に逃げているということではなくて、私がるる御説明申し上げていることは、そのいまの単一草案の十八条の条文の性格、そして会議の現段階、今後の発展の可能性、そういう全体の状況から考えまして、先生の御質問に対していま的確にこうですというお答えがしにくいということを申し上げているわけで、先生はよく検討しろとこの前もおっしゃられました。私どもも、もちろんそういう問題意識を持って会議に臨んでいるわけでございます。
 この次の会期、来年の五月になっているわけでございますが、非核三原則の問題がわが国にとって最高の原則の政策であるということは、これはもう当然わかっているわけでございまして、それらを会議の席上で公式的に言うかどうかということよりは、そういう非核三原則をも含めた沿岸国としての安全保障上の利益ということが、どういうふうにわが国にとって確保されるかという問題なのであって、会議でございますから、当然に会議に臨むタクティックスとか、そのやり方とかいろいろあるわけでございまして、ただ申し上げられることは、非核三原則を十分念頭に置いて、これを踏まえながら会議に臨んでおること、それから十八条の条文そのものについては、まことに明確なお答えができないで残念だと思いますけれども、しかし、実態がそのとおりであるということについてぜひ御理解をいただきたいということでございます。
○立木洋君 もう時間がないので、きょう条約局長の方から、来年の五月までの間に日本代表としてはこういう立場を述べるということが明確に述べられるかと思ったが、そうでないので、大臣に最後にお尋ねしたいのです。
 いま私が述べましたのは、この単一草案ですね、いま問題になっています。これにはこういう場合には安全と秩序を「害するものとみなされる」として特に十二項目挙げられているわけですね。こういう場合には無害ではないとされている。ところが、この十二項目の中には核の通過の問題は入っていないわけですよ。日本の代表はこの問題について会議の席上でもまだ述べていないというわけですから、日本は非核三原則を国是として核の通過を認めないという立場を貫くならば、来年の会議の時点で明確に日本の代表はそういう立場をとる意思があるのかないのか。これがこのままになってしまうと、これは核の通過は無害ではないということにはならなくなるわけですから、そうすると、もう自由に領海内を通過できるということになるわけですから、これは大変、日本の国是というふうに言われている非核三原則の立場から言えば反するわけですから、そうならないように努力するのが外務省の立場だろうと思うので、来年の五月の海洋法会議においてはそういう核が領海内を通過するのは無害ではないという立場を貫かれるのかどうなのか、その点だけ最後にお尋ねしておきたいと思います。
○国務大臣(小坂善太郎君) 条約局長からるる申し上げましたように、この十八条二項の問題は非常に複雑な内容を含んでいるわけでございます。もとより非核三原則というものがわが国の大きな方針であるということはもう疑いないところでございまして、その点は条約局長申し上げたようなことでございますけれども、ただ、会議というのは余り単純明快だけでもなくて、いろいろ目的を達するためのタクティックスと申しますか、そんなようなものもあるわけでございます。まだ五月まで期間もあることでございますので、その間にもいろいろ話をするわけでございます。この点につきましては、条約局長がるる申し上げたことでひとつ御了解を願いたい。
○立木洋君 そういう立場を貫くと。
○政府委員(中島敏次郎君) 先ほど来申し上げておりますように、非核三原則を十分踏まえて会議に臨むということでございます。
○田渕哲也君 私は、現在サハリン、元樺太ですけれども、樺太に日本政府が強制的に連行していまだ置き去りにされておる朝鮮半島出身者の問題について、外務大臣の基本的な方針というものをお伺いしたいと思います。
 時間がありませんので基本的なことだけになろうかと思いますけれども、これはもう戦後三十年たった今日、いまだに朝鮮半島出身者が約四万人残留しておる、これは外務大臣も御承知のとおりであります。そして、そのうち何千人かが韓国へ帰ることを希望しておる、中には日本へ帰ることを希望しておる人もいると思いますけれども、韓国へ帰ることを望んでおるけれども韓国とソ連との国交がないために帰れない、こういう状態が放置されておるわけであります。私は、ことしの一月二十二日の本院の決算委員会で同様の問題を取り上げましたけれども、外務大臣もかわられましたので、再度お伺いをしたいと思うわけであります。
 当時の宮澤外務大臣も、それから稲葉法務大臣も、ともにこれは人道上の問題として日本政府に政治的、道義的責任が存在する、こういうことを認めておられるわけです。法律的な問題としては、サンフランシスコ平和条約以来、もうこれらの人たちは日本の国籍がなくなったから法的責任はないんだ、こういうふうに言っておられますけれども、これは現在御承知のように裁判で争っておる問題であります。しかし、いずれにしても政治的、道義的責任が存在することは事実でありますけれども、これらの人たちの郷土へ帰るという希望を達成するために今後外務大臣はどのような方針で臨まれるのか、まずこの点をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(小坂善太郎君) サハリン在住の朝鮮人につきましては、終戦前には日本国籍を持っていたのでありますし、戦後日本人が引き揚げた際には、本人の意思にかかわりなく残留を余儀なくされて現在に至った経緯がございます。したがいしたが、私も同様に人道上、道義上の観点から誠意を尽くしてこの帰還については取り組みたいと考えておるわけでございます。しかし、何分にもサハリンがわが管理下にございません、わが国の管轄下にございませんために、おのずからそこに限度があるという点はあると存じております。
○田渕哲也君 さらに、具体的にどういうことをされるかということをお聞きしたいわけですが、北方領土の問題が日ソ間の重要な問題ですけれども、サハリンに残された人たちは生きておる人間ですから、時間がたりとどんどん年をとっていくわけです。終戦当時は働き盛りの青壮年の人がもうすでに老境に入っておる。このまま放置して時が経過しますと、故郷へ帰りたいという希望を持ちながら異国の地で死んでいくということになるわけです。したがって私は、政府としてもかなりこれは積極的に精力的にこの問題の解決に取り組まないとなかなかこれは実現できないんじゃないかと思いますけれども、具体的にソ連との交渉はどのようにやられるつもりか、お伺いをしたいと思います。
○国務大臣(小坂善太郎君) 田渕さんがこの問題について非常に人道的な見地に立って御熱心な御主張をいただいていることに深く敬意を表したいと思います。実はそういうお気持ちもございまして、昨年の秋ごろからサハリン帰還希望者が現地当局から、日本政府の入国の許可さえあればソ連側としては出国を許可するという説明を受けている旨が伝えられておるわけでございます。また日本政府としては、そういう事情でもございますので、個別的に入国の申請を受け付けて入国を許可するかどうか、その可否を検討してまいっておるわけでございます。
 現在政府の入国許可の審査を行っておりますものは九十五家族でございます。人員にして三百三十一名。しこうして、すでに入国を許可したものは十家族二十四名でございます。なお、許可したもののうち二家族、二名の帰還が実現しておる、そういう状況でございます。
○田渕哲也君 この入国許可の申請をしておる人というのは、ソ連は出国許可を出したんですか。
○政府委員(中江要介君) 先ほど大臣が説明されましたように.ソ連としては抽象的な形で、日本側で入国を許可するならば出国も認めようというようなことになっておりますので、はっきりとした個々のケースについてソ連側の最終的な出国許可というのは、これはその後に与えられるものと、こういうふうに見ております。
○田渕哲也君 三百三十一名の申請が出て二十四名しか許可していないという、この事情はどうですか。
○説明員(竹村照雄君) 入国申請している中には、日本に永住したいという希望と、日本を経由して韓国へ帰りたいという希望と両方ございますが、日本に帰りたいというものにつきましては、サハリン渡航前に在日していた経歴があるものはこれを受け入れております。それで現在まで六家族二十名から入国、日本への永住的な意味での入国申請があって、そのうち五家族十九名の入国を許可しておりますが、あとの一家族一名につきましては現在調査中でございます。
 それから、日本を経由して韓国へ帰りたいというものにつきましては、いま外務省の方から申されたようなまだ決定をしていないもの、決定したものは五家族五名おりますけれども、そのものにつきましては審査中でございます。審査中でございますが、具体的には韓国政府の引き取り保証を待っているという形でございます。
○田渕哲也君 そうすると、あとこれはかなりたくさん残っているわけですね。申請を出して審査をしていない人が残っているということですか。
○説明員(竹村照雄君) 申請を出している人の数はわれわれとしては把握しておりますけれども、申請をしていない人は恐らくまだおるのではなかろうかと思われますが、申請を出しておる人につきましては逐次審査を進めておって、一番大事なところは韓国政府のひき取り保証を待っていると、だから韓国政府が引き取りを保証するならば直ちに結論が出るというのが大部分でございます。
○田渕哲也君 それは何名ぐらいになりますか。
○説明員(竹村照雄君) 現在日本を経由して韓国へ帰りたいと言っておるもので審査中のものが九十四家族三百三十名でございます。
○田渕哲也君 韓国政府、韓国側の受け入れ体制の問題もあると思いますけれども、それについて日韓両国で政府交渉あるいは話し合いを持たれているわけですか。
○政府委員(中江要介君) 具体的に韓国に帰国したこれらの人たちがどういうふうな待遇を受けるかというのは、これは第一義的に韓国政府の問題ですので、私どもが、もし交渉しているかという御質問に対してしているという面がありといたしますと、いま入国管理局の方からも御説明がありましたように、韓国人が韓国に帰国を希望しているのだから、これは当然のことながら自国民ですから入国は認めていただけるんでしょうねという話をしている、こういうことでございます。
○田渕哲也君 法務省に再度確認しますけれども、日本に住みたいという希望者で日本が受け入れを認める場合の条件というのは何々ですか。
○説明員(竹村照雄君) 基本的なものは、サハリンへ渡航する前に日本で暮らしていたということでございます。あと、一般的には、入国の場合の身元引受人があるかとか、そういった入国後の生活条項についてある程度見通しがあるということでございます。ただ、具体的なケースによってそこは人道的に対処するという考え方でやっております。
 現実に五家族十九名入国を許可しましたけれども、ソ連の方で出国を許可したのはたった一名で、この一名はもう日本へ入国しております。
○田渕哲也君 とにかく三十年余りもたっているわけですから、非常にこれはむずかしい問題があると思うのです。たとえば本人は日本に帰りたい、あるいは韓国に帰りたいと思っても、本人が知っている日本とか韓国というのは三十年前の日本であり韓国である。そういうこともあって、ぼくはなかなかこれは正確な情報伝達とかそういうものがないと困ると思いますし、それから途中でいろいろ、日ソ韓三国の手続が必要ですから暇がかかったり、あるいはせっかく出国許可が出ておりながら、受け入れ側の手続がおくれたがためにまたそれが無効になる、こういうトラブルも非常に多いと思うのです。したがって、私は日本の法務省側に望みたいことは、かなり弾力的な取り扱いをしないといけないのじゃないか。たとえば韓国に帰る人の滞留期間にしても、やはりかなり余裕を持った期間というものを与える必要があると思います。それから身元引受人その他の問題にしてもかなり弾力的な運用をやってもらいたい。それから、外務大臣に再度お願いしたいことは、宮澤前外務大臣も、ソ連との外相会談のたびにこの問題を取り上げておると言われましたけれども、あらゆる外交交渉の機会があればこの問題は取り上げていただきたい。やはり戦争被害者で、日本政府に道義的責任がある人たちですから、これは人道的にもそれだけのことをする義務が日本政府にあると私は思うのです。
 以上のことをお願いし、また御答弁を求めまして、私の質問を終わりたいと思います。
○国務大臣(小坂善太郎君) ただいまの田渕さんの、人道的な道義的な見地に立ってこの問題についてソ連側と機会あるごとに話をするようにということのお気持ちにつきましては、全く同感でございまして、さように私もいたしてまいりたいと思っておるわけでございます。
○説明員(竹村照雄君) 前に、先生の御質問に対して法務大臣からお答えしました方針にのっとりまして、私ども事務レベルの者もそういった方向で努力しております。
○田渕哲也君 終わります。
○委員長(高橋雄之助君) 本調査についての質疑は、本日はこの程度といたします。これにて散会いたします。
  午前十一時二十四分散会