第084回国会 外務委員会 第11号
昭和五十三年四月六日(木曜日)
   午前十時十二分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         安孫子藤吉君
    理 事
                稲嶺 一郎君
                鳩山威一郎君
                渋谷 邦彦君
    委 員
                亀井 久興君
                三善 信二君
                小野  明君
                田中寿美子君
                矢追 秀彦君
                立木  洋君
                和田 春生君
   国務大臣
       外 務 大 臣  園田  直君
   政府委員
       行政管理庁行政
       管理局長     辻  敬一君
       外務政務次官   愛野興一郎君
       外務大臣官房長  山崎 敏夫君
       運輸省船員局長  高橋 英雄君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        山本 義彰君
   説明員
       外務大臣官房領
       事移住部長    賀陽 治憲君
       外務省経済局外
       務参事官     羽澄 光彦君
       外務省国際連合
       局外務参事官   小林 俊二君
       大蔵省銀行局特
       別金融課長    藤田 恒郎君
       社会保険庁医療
       保険部船員保険
       課長       岡光 序治君
       運輸省海運局次
       長        山元伊佐久君
       運輸省船員局労
       働基準課長    豊田  実君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○日本とイラク共和国との間の文化協定の締結に
 ついて承認を求めるの件(内閣提出)
○船員の職業上の災害の防止に関する条約(第百
 三十四号)の締結について承認を求めるの件
 (内閣提出)
○国際協力事業団法の一部を改正する法律案(内
 閣送付、予備審査)
○在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務
 する外務公務員の給与に関する法律の一部を改
 正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
○委員長(安孫子藤吉君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 日本国とイラク共和国との間の文化協定の締結について承認を求めるの件
 及び、船員の職業上の災害の防止に関する条約の締結について承認を求めるの件
 両件を便宜一括して議題とし、前回に引き続き質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
○田中寿美子君 このILO百三十四号条約につきまして、委員長、私、細切れに切られるのは大変やりにくいんでございますけれども、前回、この条約については批准をするのについて外務省も全然問題はない、運輸省も国内法がもう完備しているというふうなお話でございましたけれども、その条文や法文の上で一応問題はなくても、実態において非常に問題がたくさんあるんじゃないか。この船員の職業上の災害を防止あるいは安全を図るためのその法律制度の適用を受けない人たちがたくさんあるし、また、受けるべきはずの者が実態において受けられない状況にあるのがいっぱいあるということを申し上げました。陸上の災害に比べて海上は三倍もある、それから死亡率なんかは十五倍もあるということ、これは海運局の統計で出ているわけです。
 それで、もう一度確認したいと思うんですけれども、この間のときにもちょっと申し上げましたが、いまの海運事業は、日本船だけでは行われていないで、半分ぐらいが外国用船という形で行われている。しかも実際にそれを回しているのは日本の海運会社である。そしてその中にマルシップだとか便宜置籍船がたくさんあって大変問題を抱えている。こういうものにこの条約や労働法が及ばないという問題があって、そして災害も起こるし、労働者の労働条件も十分守られない問題があるということで、特にマルシップという、つまり日本の旗を掲げて日本の国籍を持っている船であるけれども、外国に貸して、そして外国の乗務員を乗せて、その外国という場合に韓国、台湾、フィリピン、香港などの乗務員を乗せて、賃金は三分の一ぐらいの賃金である。そしてこういう中に、日本国籍船ですから、ここには船舶通信士はどうしても乗らなきゃいけない、あるいは一人、二人、船長だとか技術者が乗っているかもしれない、あるいは全然乗っていないかもしれないという状況で乗っている船、マルシップというのは、やっぱりこれには日本の労働保護法、船員の保護法も適用されるものであるということをもう一度確認したいと思いますが、いかがですか。
○政府委員(高橋英雄君) いわゆるマルシップ等もその中に一部として含まれております日本から外国へ裸貸しされております船舶につきましては、船員法は適用になっております。
○田中寿美子君 なっていると言われましたけれども、それは大変疑わしい。これは船舶通信士の報告などを読みますと、全くそういうふうにはなっていない。それでそういう船にまで、第三国の船員労働者にも及んでいないという実情があるということについて、私は指摘だけしておきます。
 で、海の上へ出てからのことというのは大変わかりにくい。たとえば賃金においては日本人の船員は日本の賃金レベルで払われるでしょう。しかし、第三国の人たちは大体三分の一ぐらいの賃金だと。こういうことになりますと、やっぱりそこに恨みが生ずることもあり得るし、あるいは労働時間だって日本の船員だけが海員組合と船主協会で結んだ協約を守るというふうにはいかないんじゃないか。そういうことがあって、大変問題は残っているということだけを指摘しておきます。
 そうしますと、逆に便宜置籍船ですね、船籍が外国にある船の場合には、日本の国内法は適用しないでもいいということでございますね、いかがですか。
○政府委員(高橋英雄君) 便宜置籍船あるいは仕組み船と言われておりますような船につきましては、日本の船員法は適用にはなっておりませんで、船員の保護につきましてはそれぞれの船舶の登録されております国の国内法によって保護されるというのがたてまえになっておるわけでございます。
○田中寿美子君 よく運輸省の方は御存じだと思うんですけれども、その便宜置籍船の非常に多くがリベリア国籍であるとか、あるいはパナマだとか、そしてしかもその会社がペーパーカンパニーである。実際に実在していなかったり、どこにいるのかわからないような状況がある。こういう場合に、その国の保護法が適用されるということは全く無意味に等しいことになる。これはいろいろ海難事故が起こったときの補償などでも、補償する相手がいないというような事件が起こっていることはよく御承知だと思います。
 そこで、私は、この前にもちょっと申し上げましたが、いまの日本の海運の状況の中で脱日本船員政策というものが進められている。つまり日本船員を乗せるところの日本の船というのはだんだん減っていって、そして外国用船化がどんどん進んでいる。これは海運局の資料によりましても、昭和四十四年の外国用船一六%、四十六年二九・五%、五十年四三・七、五十一年四四・九と、もう半分くらいは外国用船である。そしてその中にいわゆる仕組み船と称して籍を外国のペーパーカンパニーに置くところの船が非常にたくさんある。これは抜け道でございますね、日本の保護法を適用しないでも済む。便宜置籍船の比率はだんだんふえていく、ウエートがますますふえていく。これは海運局が出されておりますところの「日本海連の現況」だとか、運輸省の出している海運白書ですか、そういうものでもいまやこれは認めつつある、あるいはそういう方向に進みつつある。その理由は一体何でございますか。
○説明員(山元伊佐久君) お答え申し上げます。
 日本海運が、現在、便宜置籍船を初めといたしまして、外国用船のその商船隊の中で五十二年六月末で約四六%を占めるような状態でございまして、この点は先生御指摘のとおりでございます。
 しからば、なぜこの便宜置籍船を利用せざるを得ないのかということでございますけれども、先生も御承知のとおり、日本人船員によります日本船のコストがかなり上がってきておりまして、海運が国際的な場でも競争をいたしますので、やはりそういう競争に打ちかつためにはコスト的な面の配属を要するわけでございます。したがいまして、日本海運といたしましても、日本船をもちろん主軸にするわけでございますけれども、それとのコンビネーションにおいて便宜置籍船等を活用しているというのが別状でございます。
○田中寿美子君 船員費の上昇、コスト高、そしてそのために国際競争で勝たなきゃならないというのは大義名分のようになっておりますですけれども、これは和田先生なんか詳しいと思うんですけれども、日本の船員が陸上の労働者よりはるかに賃金が高くて、労働条件がよ過ぎるということでございますか。
○説明員(山元伊佐久君) お答え申し上げます。
 日本人船員による日本船の中で占める船員費のコストが他の外国船の場合に比べて高いと申し上げますのは、一人一人の乗組員の賃金は日本の他の職場での賃金の上昇と同じ程度だと思うんでございますけれども、端的に申し上げますれば、予備員率、これが非常に高くなっているわけでございます。通常、その適正予備員率は海運界では現在五六、七%程度が適正と言われておりますけれども、現状は七〇%を超えるという状態になっているわけでございます。
○田中寿美子君 それはもう循環論になるんですね。日本の海運業者がコストを下げるためにと言うけれども、成長期にはどんどんどんどん船をつくらせ、海運業は世界のあちこちにペーパーカンパニーをつくって広げていく、こういう状況の中で過当競争、そうして今度は国際競争力で不況になってきて勝てなくなってくるということで、外国に船の籍を置いて、さっき言ったような国々の安い労働力を使うということで切りかえていくために予備員率はどんどん上がっていくんじゃないかと思うんですね。
 これは船員の方々の実際の状況を聞いてみましても、陸上の労働者と迷いまして、年次有給休暇なんかは陸に上がったときにはためてとるのは当然だと思いますし、週休二日も海員組合との間で協定していらっしゃるけれども、それだって船の中でとれない場合が、ずいぶんあると思うんですよ。仮にとったとしても海上からおりるわけにはいきませんから、そういう意味で、私は海上で働く人たちには陸上で働くよりよほどよい労働条件を与えるのが当然であろうと思うんですが、そういうことが災いするという形で、休みをとらせなくてもいい、長時間労働をやってもいい、賃金も安いという労働力の方に逃げ込んでいくということで予備員率をどんどん上げていっていると思うんですね。そしてその予備員としている人たちが、いまおっしゃった適正率五六、七%というのより非常に多くなった部分は、いま配転をさせようとしていらっしゃるんですね、どうしようとしていらっしゃるんですか。
○説明員(山元伊佐久君) お答え申し上げます。
 適正予備員率を上回っている船員につきましては、一部陸上等に配置転換をいたしているものもございますけれども、その他の方々は、休暇等、そういう形で処遇をされているというぐあいに聞いております。
○田中寿美子君 余り次長御自身がよく実態を御存じないようなお答えの気がするんですけれどもね、私は船員にとってはそれは重大な問題であろうというふうに思います。それで今後の海運政策いかんによっては非常にたくさんの失業者が出てくるだろう。これは海員組合に入ってない人たちもいるわけですね。船員二十七万ぐらいと言われておりますが、十二、三万海員組合があるとして十四、五万は組合に入ってない人もいる。保護も全然受けられない人たちがいる。そして外国船にこのごろでは乗らざるを得なくなっていくという人たちがたくさんあるというふうに、これは日本海事新聞で見て、そういうことが報道されているわけですがね、御存じないはずないと思いますが、いかがでしょうか。
○説明員(山元伊佐久君) いま先生の御指摘のように、先ほどの答弁は舌足らずでございましたけれども、適正予備員率を上回る方々の一部につきましては、仕組み船等に乗り組んでいる力もあるように聞いております。
○田中寿美子君 そうなると問題ですね。仕組み船というのは、さっきおっしゃった日本の保護法規が適用できない。そこへ日本の船員が乗っている場合どうなりますか、もし事故などが起こったとき、あるいはその災害の防止のための保護というのはどうやってやりますか。
○説明員(山元伊佐久君) 仕組み船と申しましても、やはりこれは便宜置籍船のカテゴリーの中に入るわけでございますが、便宜置籍船につきましては、船舶の構造、設備等の安全性につきましては、海上における人命の安全のための国際条約及び国際満載喫水線条約の二つの条約に基づきまして安全の規制が行われておりますし、便宜置籍船の船籍国もすべてこれらの二条約に加盟いたしておりまして、安全証書を保持しているわけでございます。また、この種の船舶、つまり便宜置籍船は十分な安全性が証明されているものでなければ、保険契約の対象にならないわけでございまして、このような便宜置籍船につきましても、ロイドとかABとかNK等の国際的に高く評価されております船級協会がその船舶を検査した上で、十分にその安全性を確認したものについて船級証書を取得しているというようなことでございます。そのほかにもIMCOでいろいろの現在検討が加えられておりますし、すでに一部その安全性をさらに高める見地から制度化されたものもございますし、あるいは乗組員の海技資格の付与等につきましていろいろと検討もされているところでございます。
 それから、補償の問題についてでございますけれども、便宜置籍船でも、これは国際的に用船が行われる場合につきましては、保険が付保されてなければ用船契約がされないというのが国際的な慣行になっておりまして、御指摘のように、まだまだ便宜置籍船につきましては問題はあろうかと思いますけれども、そうした問題を解消する方向で関係各国が努力をしているというのが実情でございます。
○田中寿美子君 いまおっしゃったことはたてまえなんですね。事実、この便宜置籍船、仕組み船が事故を起こしているのはもう非常にたくさんあるわけで、よく御存じだと思います。
 外務省の方ね、百三十四号条約を批准するというこの精神というのは、こういう問題がたくさんあるんだということをほったらかしにしておいて、そうして条文だけで何にも問題ございませんということではないということがおわかりになったと思うんですけれどもね。だから、たとえば百四十五号条約のように継続雇用の条約だとか、百四十七号のように商船の最低基準の条約だとか、次々とそういうものを批准していって、働く人たちか――この百四十七号条約というのは便宜置籍船を排除するという趣旨が含まれていると思うんですがね。そういうようなことを次々と担保していかないと、百三十四号条約を批准したらこれで結構でございますということにはならないと思うんですがね、いかがですか、外務省。
○説明員(小林俊二君) ILOにおきます船員に関する諸条約というものは非常に積極的な検討が進められております。それに対して、わが国も原則として前向きの姿勢でもって積極的にこの審議に参加し、また、国内体制の整備を待って批准に努めておるわけでございますけれども、本来、このILOにおきますこういった条約の採択は、その採択の時点においてその国内体制が整っておる、批准が可能であるということを見きわめてから採択されるものではございませんで、将来にわたって問題点の解決に努めていく上での国際的な基準を定めていくというもので、一つの目標を掲げる、その目標について実現を約するというところにその意義があると思いますので、その間において、当然なすべき、改善すべき点が多いということはあらかじめ念頭に置かれて行われておるものであると存じております。
 また、これは国内におきますそうした基準を達成するまでの努力とともに、先ほどから御指摘のございましたように、国内法の及ばない便宜置籍船のような形態の船におけるその安全性あるいはその他の問題点の解決に役立たせるということにまた一つの大きな意義があるわけでございます。これは国際的な協調という枠内でそういう船籍国の努力を要求するというところに一つの大きな目的があるわけでございますので、そうした国際的な枠組みの中で問題の解決を図るというところにこれらの諸条約の恩義があると私どもは了解いたしております。
○田中寿美子君 いま言われたような趣旨で批准していくILO条約に関しては、国内の法制だけじゃなくて、実態を伴うように努力することと、国際的にもそういう意味で法の適用を受けない者に対する保護というところに向かって進んでいくものであるという態度を外務省はとっていらっしゃるというふうに私は了解したいと思うんです。
 さっき山元次長が便宜置籍船でも仕組み船でもみんなそれぞれちゃんと設備なども点検した上で航行しているものであり、保険もかけてあると言われたけれども、問題は、高度成長期にやたらにつくらせ過ぎた造船と、それに見合う船長の増員、それから労働条件の改善、その後始末なんかに、国際競争力という至上命令のもとに、コスト切り下げのための便宜置籍船とかマルシップなんかに移行して切り抜けてきているという状況があるということはもう十分に認めなきゃいけないと思います。
 これら外国用船の事故はもうたくさんあるということは運輸省は知り過ぎていらっしゃるんじゃないかと思います。最近、これも日本海事新聞で見たんですけれどもね、五十年以降当て逃げが増加している。これは海上保安庁調べですが、実に発生率は瀬戸内海なんかですごいんですね、東京湾、伊勢湾、もう当てて逃げていって行方不明なのもある。そして当てられた方は漁船なんかが多いわけで、小さい船が多くって死亡事故もずいぶん起こっている。そういうときに補償を求めても、さっき保険がかけてあると言ったけれども、会社は保険をとっても、死んだ人への補償が必ずしも十分にやられていない。思い出すだけでも箱根丸、山形丸、ぼりばあ丸、かりふおるにあ丸など沈没事故が次々とあるわけでございます。で、乗組員も不熟練のままの第三国の人たちが乗っている。そして国籍がリベリアとかパナマなどというところですね。災害があっても補償は必ずしもないという問題は、これは国際的に問題にしていってもらわなければならないと思います。日本の競争力競争力ということだけで、人間の命の方をもっと十分見ていただかなければならないと思うのでございます。
 この便宜置籍船というようなものが、さらに外国用船関係で不正な利得を生ずる場合がございますね。これは最近報道されているジャパンラインの松永社長が韓国の朴東宣との関係で、アメリカのUSアジア・ニュースで暴露されておりますけれども、ジャパンラインに関しては昨年の夏ごろから幾つか報道されてきております。非常に大手のタンカーの会社であるジャパンラインがだんだん不況でもって苦しい状況にあると、もう昨年の七月当時ですね、読売新聞紙上でこれは何らかの対策を講じて救わなきゃならないというようなことが出ているわけなんです。ところが、これが最近韓国の朴東宣との関係がアメリカの下院の委員会にかかっておりまして暴露されているわけですが、七三年に、五万トン級のタンカー三隻を格安で朴東宣の会社の美隆航海というんですか、そこに売っておりますね。さらに木材輸送船二隻。五隻を売っている。百万ドルから百二十万ドルという非常に格安の値段で売った形になっている。果たして売ったのかどうかわかりません。売却の形式をとって、そしてそれは割賦払いでよろしいということになっていて、そして逆に今度はジャパンラインがまた雇っているわけですね。そして五、六年の間赴東宣の会社に利益を保証するということにしてもうけさしている。
 この赴東宣とジャパンラインの社長はたびたび会ってキーセンの歓待まで受けているわけなんですが、こういうことがあって朴東宣がアメリカ政界に数十人の人への献金をしている。そういう金を生み出すことができるということはまことに不可思議。海運界が不況であるというにもかかわらず、そういううまみがあって船籍を外国に置く。しかも、韓国に置いている場合が非常に多いわけですけれども、こういうことではまことに問題だと。その問題について私はいまここで追及する時間もないし、する気はありませんけれども、こういうジャパンラインに対して、ジャパンラインが大手だから、これが倒産でもしたら世界的に不名誉であるということと、それからたくさんのものに影響するということで、国がいろいろの形で援助をするということなんですね。
 それで、同時に、日本がいま貿易の黒字がいっぱいある、だから黒字を減らす方法としても、また仕組み船の買い戻しということがある。そのジャパンラインの問題ですが、約二百億の民間市中銀行からの借金を猶予してほしいという申し入れがある。そしてまた九十四億の開発銀行から融資した分ですね、これも猶予してほしい、合計三百億近いものの融資の支払いを待ってやろうということがいま政府の方でも議論されている。そして五十三年度以降、あと三年間、合計して六百億ぐらいの援助をしなければならないということになっていくような様子なんですけれども、一体、このようなことは正当なことなのかどうか。これは大蔵省の方にも、それから外務省の経済局にも伺いたいんです。
○説明員(山元伊佐久君) 先に私からお答え申し上げます。
 ジャパンラインは、わが国海運企業の六中核体の一つでございまして、大体、二千万重量トンほどの船舶を運航いたしておりますけれども、その相当の部分がタンカーであるということで、国際的なタンカーの不況のあおりを受けまして、ここ二、三年来採算が急速に悪化してきたわけでございます。そこで、五十三年度につきましては、資金繰りが困難となるというようなことでございましたので、昨年十二月から本年三月にかけまして、開発銀行及び一般金融機関に対しまして、五十三年度以降の長期借入金の返済猶予を申請したものでございます。
 それで、先ほど先生の方から数字の御指摘がございましたが、現在、開発銀行、それから市中銀行に対して、とりあえず五十三年度で返済猶予を申請いたしておるものは約二百億でございます。そういうような状態でございますが、同社は、こういう金融機関に対しまして、借入金の返済猶予を申請する一方、金融機関とも相談いたしまして、資金の処分を行うとか、あるいは経費の節減あるいは合理化を図るとか、あるいは不採算の用船を解除するとか、そういったことを中心といたしました経常改善計画を立てまして、鋭意努力をいたしているところでございまして、金融機関もほぼこれを支援してくれるものと考えておりますし、会社といたしましても成果が一日でも早く上がるように私どもは期待をしているところでございます。
○説明員(藤田恒郎君) 大蔵省の方からお答え申し上げます。
 開発銀行のジャパンラインに対する融資につきましては、ジャパンラインからの申請に基づきまして、とりあえず五十二年度末を期限といたしまして返済の猶予をいたしました。
○田中寿美子君 九十四億円ですか。
○説明員(藤田恒郎君) 金額については、これは私どもといたしましては、個々の企業の取引に係る問題でございますので、発言は差し控えさしていただきたいと思います。
 この理由といたしましては、先ほど運輸省の方からも御説明ございましたように、市中銀行その他一体となって企業再建のために返済猶予をやらなければ企業の存続にもかかわる。これは私ども開銀の立場からいたしますと、開銀の債権の管理を行う上でも必要である。国民の税金あるいは運用部の資金を預かって安全に運営していくという立場でございますので、その管理の上でも必要である。こういう支払いの猶予をいたしますと、その間、企業が再建計画そういったものを立てまして、市中銀行の協力も得て再建できる、こういう情勢を見守る必要があるのではないかと判断したわけでございます。したがいまして、一般的にこういう企業に対します支払い猶予措置、これは金融機関、私どもで申しますと開銀でございますけれども、開銀限りの判断でできるということになっておりまして、私どももこの判断は市中銀行その他の態度から見ましても適当であったのではないかというふうに考えております。
○田中寿美子君 ジャパンラインのような大きなところが倒産でもしたら、これは働く人にも関係しますし、非常に重大なことだと私も思いますけれども、しかし、朴東宣との間で五年前に五万トン級のタンカーを百万ドルから百二十万ドルという格安な代金で売っているというようなことで、果たしてそれは開銀や輸銀のお金を使っていいのかどうか、こういうようなことは十分厳しく検討しなきゃならないはずだと思う。そうして、これも仕組み船になっているわけですね。韓国に籍を置いて、そうしてジャパンラインがこれをまた用船しているという形でございますから、ですから、非常に便宜置籍船をめぐってこういう事柄が起こり得る、あるいはそこに不正不当な利得が可能であるということ、どちらが取ったかこれわかりませんけれども、そういうことがあるのに、開銀など、財投のお金は国民の税金やそれから預金を使っていくものですから、私はそれで援助するときには非常に厳しくそのあたりを調べて、そうして正していただかなければならないと思います。
 それで時間がありませんので、続いて、いま財投の話が出ましたが、最近の貿易における黒字解消のために仕組み船を買い戻すという案を昨日私は新聞紙上で見ました。これなんですが、まず、これは業界の人たちは、海事新聞によりますと、船主たちは、今後船をつくるのに融資を開銀なり輸銀からしたい、ところが仕組み船を買い取るためにその金を出すということになると、二重の二元融資になる、こういうことになるとどっちが得かなとちょっとしり込みしている、考えている様子でございます。私は国民の立場から申しますと、日本の海運業が成長期にむちゃくちゃに過剰になっていく過程で、船を外国の籍の名のもとに日本でつくらせるときに融資をし、そうしてそれを外国籍で海を回しておいて、そうしてかせぐときにはかせいだ。今度また、それを買い戻すというときには、また開銀や輸銀の金を使うという、国民は何重にも何だかばかにされているような感じがいたします。その辺をどう考えられるか。この仕組み船買い戻しというのが黒字解消の対策としてよい方法であるというふうに大蔵省あるいは外務省は考えていらっしゃるのかどうか。
○説明員(藤田恒郎君) 仕組み船の問題は私どもも新聞紙上で拝見した程度で、まだ運輸省その他関係各省から御相談がございませんので、いまこの問題について私どもとして全く検討もしていない状況でございます。
 ただ、いま先生がお話しになりましたように、ちょっと私も若干先生の誤解があるのではないかと思いますのは、便宜置籍船の輸出でございますね、その輸出の際に開銀あるいは輸銀が融資しておるのではないかというお話もあったように思いましたけれども、便宜置籍船については、輸出入銀行はこれは輸出ではございますけれども、わが国の輸出市場の開拓のために真に必要であるという場合に輸銀は初めて融資できるわけであります。輸出市場の開拓に必要かどうかは若干疑問があるのではないかという意味で、輸出入銀行の融資をいたしておりません。
 それからまた、仕組み船を一本に買い戻すときに、それではまた輸入金融だということで輸銀が融資するかしないかという問題はあろうかと思いますが、これは私ども検討しておりませんので明言することはむずかしいと思いますけれども、輸出入銀行の輸入金融を行うためにはまた条件がございまして、形式的には輸入であっても、これが国民経済の健全な発展に資するという条件がございます。したがいまして、もし関係各省の方からお話がございましたら、私どもはその点を踏まえて、たとえば国際収支の改善と申しますか、経常収支の黒字幅縮小に貢献するかどうか、それが国民経済の真の発展に寄与すると考えられるかどうか、そういう観点から検討を進めたいというふうに考えております。
○田中寿美子君 運輸省、いかがですか。
○説明員(山元伊佐久君) 黒字減らしの対策の一環といたしまして、先生御指摘の仕組み船買い戻しの話があるわけでございますけれども、これはまだいまの段階では一つのアイデア……
○田中寿美子君 運輸省から出ていますね、おたくから。
○説明員(山元伊佐久君) 提起されたものでございまして、これは運輸省から出たものではないわけでございまして、そういうアイデアが政府部内で一部提起されておりまして、運輸省で、現在、検討はいたしておりますけれども、まだ政府として正式に実施を決定したということではないわけでございます。それで、現在、検討いたしているわけではございますけれども、仕組み船は、先ほど来お話し申し上げましたように、船員問題を中心といたしまして、また円ヘッジの問題もございまして、このような仕組み船の形態がとられてきたわけでございますけれども、これを日本船に切りかえるに当たりましては金融上の問題とか、あるいは船員の問題とか、あるいは外貨貸付制度の問題とか、いろいろ問題がございますので、まだ私ども部内で検討、研究をしているというような状態でございまして、まだ成案を得ているという状態ではないわけでございます。
○田中寿美子君 海運業者の方も、いまおっしゃったように、買い戻して日本国籍にしてしまうと日本の船員を使わなければならない、それはまたコストが高くなるというようなことでしり込みしているという人もあるらしいというふうに私もこれを記事で見ております。
 大蔵省の方はさっき輸銀のことだけをおっしゃいましたけれども、ジャパンラインは開発銀行から借りておりますよね。だから、仕組み船建造のときには開発銀行が相当出しているということは、私は各社調べてみればあると思います、そんな時間がありませんでしたけれども。つまり国民のお金を使って建造した船を外国籍に置いておいて、また、今度それを買い戻すときにまた国民の金を使う、非常に低利で融資してやるという非常な保護を与えているわけですが、このことはそこに働く人々への保護に及ばなければ何にも意味がない。
 ですから、きょう、何回にもこれ細切れになって、午後、また大臣にほんの二十分ぐらいお尋ねするわけで、もう時間が来ましたんですけれども、一点だけ、大蔵省の方来ていらっしゃるときに、そして経済局が来ていらっしゃるときに伺っておきますが、仕組み船にしろ便宜置籍船にしろ、日本の海運業者が持っているものには違いないわけなんですね。それでマルシップのように日本国籍である船を使う、しかし雇い上げた人は外国の労働者である、賃金は日本の労働者よりは三分の一ぐらい安い。それにしてもそれはドルで支払うわけなんですが、貿易収支は日本はもうやたらに黒字で困っているけれども、貿易外収支では赤字である、この辺が私の読みました論文ではEC諸国で問題になっているというふうに読んだんですけれども、それは問題になっているのかいないのか、この赤字は黒字減らしとの関係でどういうふうに考えられているかを伺って、後は外務大臣のときに伺います。
○説明員(羽澄光彦君) お答えいたします。
 EECとの貿易関係につきましては、ただいま先生御指摘のとおり、貿易収支では、大体、わが方の四十億ドル程度の黒字になるわけでございますが、貿易外収支におきましては、わが方の二十億ドル程度の赤字になるというような問題がございます。しかしながら、この海運関係の方から黒字をどうしてくれとか、貿易外収支をどうしろとかいうような話がEEC側から正式にわが方に持ち込まれたことはございません。先般の牛場・ハフェルカンプの会談におきましても、この問題は全然取り上げられておりません。
○矢追秀彦君 初めに、ILOについて伺いますけれども、このILOに対しましてアメリカが最近脱退をしたわけですが、アメリカが脱退をした理由、これはどういうところにあるのか。以前から脱退をするというふうな方向できたものか、あるいはカーター政権になってからのカーター大統領の一つの世界戦略の一環としてこういうふうなところにはアメリカとしては顔を出すべきではないという判断になったのか、その点はどのように外務省はごらんになっておりますか。
○政府委員(愛野興一郎君) ILO脱退の原因につきましては担当者から詳しく話すことといたしまして、まず、アメリカの脱退につきましては、わが国としては非常に残念であるという見地に立っております。それはILOに財政上の混乱をもたらすということと、それから普遍性を損なうことになるときわめて重大な影響を与えるからであります。
 わが国は、このILOが、創設以来、世界じゅうの労働分野における労働条件の向上、人権の擁護に重要な役割りを果たしており、また、発展途上国に対する多大な技術協力等によってその功績は高く評価し得るものであり、このILOが本来の目的を達成するため、一層有効に機能するよう、引き続き総会、理事会等を通じて粘り強くアメリカを説得する覚悟であります。
 アメリカが指摘しておるいろんな諸種の問題点について見解を問われるということであれば、専門の方からお答をいたします。
○説明員(小林俊二君) 米国がILOから脱退するという意向を通報いたしましたのは、前政権時代でございまして、キッシンジャー書簡をもってILOに対して通報が行われております。
 その内容といたしましては、まず第一に、そのILOの基本をなしておる三者構成、すなわち政府、労働、使用者の三者がそれぞれの独自性をもって発言をしていくという、そういう三者構成の原則が現在においては非常に侵食されている、実態的には労働も使用者も政府によって支配されている、そういう国が多いということが一つの不満として指摘されております。
 第二といたしましては、人権問題について差別的な取り扱いが非常に多い。国によって差別的な取り扱いが多い。ある国についてはこれを非難する、他の異なった政治制度をとる国については大目に見る、こういう取り扱いが横行しておる、こういう現況においては公正な審議が不可能である、そういう点が指摘されております。
 第三といたしまして、適正な手続が無視されておる。すなわち、従来、ILOにおきましては人権侵犯等の提訴がございました場合、その審査に当たりまして、実情の調査であるとか、あるいは調停等、とるべき手続がはっきり確立しておったんでありますけれども、そういった望ましい伝統が失われつつある。政治的な観点からそういった手続を無視して結論に急ぐといった事例が目に余るという点が指摘されたのであります。
 最後に、ILOが全体として非常に政治的な討議の場あるいは結論を出す場になりつつあるという点についての不満も表明されております。
 以上の点について、米国としては、こういった現況が是正されない限りとどまることはできないといった通報が行われて、予告期間を経て脱退が行われたということでございます。
○矢追秀彦君 政務次官はいま残念であるということと説得をすると言われましたが、具体的に、いままでこの問題について米政府に対して説得をされたことはあるのですか、もしないとすれば今後どのような機会に説得をされるのか、その点をお伺いしたいと思います。
○政府委員(愛野興一郎君) アメリカが脱退の意向を表明した時点で、脱退の前に、総理から面接書簡をアメリカに送っておるわけであります。脱退後も、総会とか理事会等を通じて積極的に呼びかけをいたしておるというのが実情であります。
○矢追秀彦君 総理から書簡を出されて、返事は来たのですか。
○説明員(小林俊二君) 日本国政府の関心を評価し、そのゼスチュアに対して謝意を表明するという簡単な書簡が届いております。
○矢追秀彦君 いま言われた三点及び最後の政治的な面、そういった点が是正されれば、また復帰するということになろうかと思いますが、そういう可能性、見通しというのはあるわけですか。アメリカの指摘するような点がいま是正されるような動きがILO自体にあるのかどうか、その点はいかがですか。
○説明員(小林俊二君) この時点の現況だけで概括的に申し上げますれば、その見通しが明るいとは申しかねると言わざるを得ないと存じます。
 米国と従来協力を密にしてまいりました西側の諸国におきましては、ジュネーブにおきまして随時会合の上諸情勢を協議いたしておりますけれども、米国が満足するようなかっこうで、この事態が西側の目から見て早急に改善されるという見通しが非常に明るいということは言い得ないのではないかと存じます。
○矢追秀彦君 そうしますと、多分にいまのお話だと、アメリカの脱退というのは、かなり政治的、単なる財政上等ではなくて、政治的な配慮が強いんではないか。カーター政権というのは人権外交もやかましく言っておりますので、いま二番目に挙げられた人権問題などはかなり強く出てくると私は思いますけれども、それにしても、西側諸国がそういったことで、最大の協力国であるアメリカが脱退をしたことによって、いま言われたように、実情がもしアメリカが帰ってくるような状況にないとした場合、西側諸国自身がこれに対して余り熱意を持たなくなる、そういう可能性が出てくるのかどうか、あるいは他の国が脱退する可能性、その点の見通しはいかがですか。
○説明員(小林俊二君) 米国の脱退そのものは、現在でも、ILOにおいて有形無形の影響を及ぼしていると存じます。もちろん、いまお話のございましたような財政的な影響が一番大きいわけでございますけれども、それのみでなく、米国の指摘しておりました諸点につきましては、西側諸国としても大方その感をともにしておるところでございますし、また、いわゆる開発途上国の中の穏健派と目される諸国におきましても、その言うところに理由があるというふうな感触を内々持っておる国もあるわけでございまして、また、事務局に対する影響も無視できないということで、脱退そのものが決して無意味に終わってしまっておるということではございません。脱退しているという状態そのものがある種の影響を及ぼしておるということは言い得ると思います。したがいまして、その中にとどまっておる西側諸国といたしましても、米国の脱退後、その復帰の見通しが乏しいということをもってILOに対する興味を失い、あるいは警戒を強めていくといったようなことを申し上げる必要はないと存じます。
 ILOそのものは、非常に長い、国際機関のうちでも最も長い歴史を持って今日に至っておるわけでございますし、その間になし遂げた業績も数々ございます。今後とも、その存在あるいはその機能の恩義はふえていくことがあっても、衰えることはないだろうと私どもは考えておりますし、単に米国の復帰の見通しが暗いということのみをもってILOに対する興味が西側各諸国において失われるということを懸念する必要は必ずしもないと存じます。
○矢追秀彦君 財政面でわが国に対する影響は具体的にどの程度ありますか、アメリカの脱退によって。
○説明員(小林俊二君) 米国は、脱退まで、ILOの総予算の四分の一を負担しておりましたので、その二五%が突然欠けたということは大きな影響はもちろんもたらしておるわけでございますけれども、当面する会計年度におきましては、ILOは予算の緊縮措置をとりまして、あるいは機構を削減する、事業を削減するということで、二十数%までこれを削減する計画を提出して承認を受けております。残りの数%につきまして、どうしてもこれを節約をもってカバーできないということで、各国にさしあたり自発的な拠出を求めておる、その拠出の申し出がかなりの額に上っておるという現況でございます。
○矢追秀彦君 ILOがアメリカの脱退によっていま機構等がだんだん縮少されてきた、それによって一応、いまの御答弁では、余り意義等も失われないということですが、仮に、これから金がないということで動きが鈍くなったことによって、たとえばILOの勧告が日本に対して出たと、そういうふうに機能が仮に弱まってきた場合、日本政府としてILOの勧告等は余り受けられないと。アメリカも外れてしまっているんだし、機能も大分低下しているんだからというようなことで、これを軽く考えるというふうな事態が将来発生する可能性というのはあってはならぬと思いますけれども、その点はいかがですか。
○説明員(小林俊二君) ILOの予算の縮減によって最も大きな影響を受けますのは、いわゆる事業予算でございます、それから抱えるスタッフの規模でございます。特にジュネーブ以外の各地に、出先に配属されておるスタッフの縮減といった面で大きな影響は確かにあったと言うことができます。
 しかしながら、いま御指摘のような、ILOの本来の機能である勧告作成あるいは条約の作成といった機能は、これはILOの本部におきまして、各国が参集の上、協議を経て行われている機能でございますので、そういった面で、この予算の縮減そのものが直接に非常に大きな影響を及ぼすということはないのではないかと考えております。
○矢追秀彦君 私は、アメリカのこういった脱退は、ある日突然出てきたのではなくて、やはりアメリカの世界戦略の一つの動きだと見てよいかと思うわけです。
 最近、円高に見られるように、どうしてもアメリカの傾向としては、だんだんモンロー主義といいますか、あるいは貿易で言えば保護貿易、そういうアメリカ自身を固めればいいんだと。極言すれば、いままでわりあいアメリカは、世界の平和とか、あるいは世界の福祉だとか、そういった面をアメリカが背負ってやるんだというかなり自負心も持ち、それなりに第二次世界大戦以後はかなりのオーバーコミットメントになるぐらいの援助を含めてやってきたわけですけれども、そういった点では、だんだん最近の傾向としては撤退をしておる。そういうことで日本などはその影響をもろにかぶって、私は、円高というのは、再々予算委員会等でも議論してまいりましたけれども、これはアメリカの完全な戦略の一環として日本に対する挑戦である、こう見ておるわけですけれども、そういったこととはこれは無関係ではないと思うわけでして、今後のアメリカの対日戦略あるいは対世界戦略というものは、よほど分析をし、カーター政権の本質等を見きわめた上で当たっていかないと、私は、大変な失敗をするのではないかと思うわけでございます。
 そういった点で、これから日米首脳会談も行われますので、この問題も含めまして、やはりアメリカが門戸を閉ざさないように、やはり自由な貿易あるいは世界の平和というものに対して、もっともっと、アメリカはまだまだ何だかんだ言いながら力のある国ですから、軍事力ではなくて、平和への大きな役割りを果たすべきであるということで、一本もそういった面では協力を惜しまない、こういうことでアメリカに当たっていただきたい。これは政務次官に要請をして、大臣、また党に、何らかの機会にまたお伝えをいただきたいと思うわけですので申し上げますが、その点ちょっと御感想をいかがですか。
○政府委員(愛野興一郎君) いまの先生のお話はまことにごもっともでありまして、アメリカのいわゆる実力というものはまだまだ高く評価をしなければならぬというふうに私どもは思っておるわけであります。しかし、アメリカの世界戦略はどうあろうと、ILOの勧告とか決定事項はあくまで効力あるものであるという受け取り方を私どもはしなければならぬ、こういうふうに思っております。そういう見地から、今後とも、ひとつアメリカがILOに復帰するように説得をしていくのがわが国の務めである、こういうふうに考えております。
○矢追秀彦君 次に、この船員関係の条約に移りますけれども、いままでILOが採択をした条約数と、わが国が批准をしている条約数、これは幾らですか。その中で、わが国が賛成し、わが国が採択した中でまだ批准していないものはどれくらいありますか。
○説明員(小林俊二君) ILOの船員関係の条約といたしましては、現在までに三十七条約が採択されております。そのうち、すでに九条約がわが国によって批准されておる現況でございます。わが国が批准していないILOの船員関係条約、二十八でございますが、このうちには、すでに改正条約が発効しておるとか、あるいは批准のための開放が終わっているといったようなことで、それからまた、それよりもさらに高い基準が定められたといったようなことで、この時点で批准することの意味がないものが七条約ございます。そこで、現在、わが国が批准することの意味がある条約だけに限って申し上げれば、未批准条約は二十一条約ということになるわけでございます。この二十一条約のうち、わが国が賛成しておりますのは十二条約ございます。
○矢追秀彦君 この十二条約をまだ批准していない理由はどこにあるのですか。一つ一つ言うと大変でしょうから、大まかで結構ですけれども、全般的に見て、国内関係法案が整備をされていない、それが最大の理由ですか。
○説明員(小林俊二君) 一口で申し上げれば、国内の体制が十分整っていないということと、それからまた、条約によりましては、わが国の海上労働の実態にそぐわない面があるものを含むものがあるということでございます。
○矢追秀彦君 いま言われた、海上労働の実態にそぐわないからまだなんだというのは、一応賛成なんでしょう、賛成の中での話ですか。
○説明員(小林俊二君) 各条約別の話に入らないと、あるいは十分な御説明ができないのかも存じませんが、この条約の採択に当たりましては、全体の趣旨につきまして、わが国として賛成できるかどうかという観点から、これの採択に当たって賛成するというのが現在までの行き方でございますので、今後の条約につきまして、また今後の条約の中の個別の条文の中で、わが国の実態に必ずしもそぐわないといったような面が出てくる場合も賛成条約にもあり狩るということでございます。
○矢追秀彦君 いま言われた国内体制の整備のおくれというのは、どこに原因があるわけですか。たとえば政府の事務のおくれが原因なのか、あるいはその船会社がそれに合ったような仕事をしていない、それを変えることが非常に時間がかかっておるのか、大体、原因を大まかに分けるとどういうことになりますか。
○政府委員(高橋英雄君) 個々の条約によって、それぞれいろいろむずかしい理由があるわけでございますけれども、すべてについて学問的に調べたというわけじゃございませんけれども、一応二、三御紹介申し上げます。
 たとえば船内におきます船員の設備に関する条約というふうなものが採択されておるわけですけれども、この場合には、条約が決めております基準の数値とか、あるいは規制の方法がわが国の場合と非常に異なっておる、それで条約どおりに直すことについて必ずしもわが国の場合には実益がないというふうなことでなかなかそれが直せない。
 あるいは海上労働等におきます実態に必ずしもそぐわないと申しますか、たとえば漁船等の場合には、日本の漁業の場合には、どちらかといいますと小規模の場合には家族労働でやっている場合が比較的多いわけですけれども、そういった場合には、家族の同居の親族が船員になる場合には、特に同居の親族の船員については船員法の適用除外というふうな規定がある。これはわが国の実態としてやむを得ないわけですけれども、条約の漁船関係の場合には必ずしもそういうことを認めない、一律に規制するというふうな問題がございます。
 あるいはまた、船員についてはそれでいいのかもしれないけれども、ほかの行政目的から必ずしも妥当ではないんで直しにくい。たとえば国の発給する船員の身分証明書に関する条約というのがございますけれども、これは、たとえば日本の発給いたします船員手帳を所持しておる、外国人の船員でございますけれども、そういった船員は、一遍出航しまして、それからまたその身分証明書の有効期間内はもちろん、有効期間を一年経た者でも、無条件に再入国できるというふうな内容の条約になっておりますけれども、この場合は、これは外務省の所管でございますけれども、日本の入国管理政策といたしましては必ずしもそれでは困る。実際に、現在の入国管理令におきましては、伝染病の患者とかあるいは犯罪者の場合には再入国を拒否しておる。それから有効期間が切れた場合には、それで再入国ができないというふうなことになっておりまして、そういったようにいろいろな角度でわが国の法制を直しにくいという問題があるわけでございます。
○矢追秀彦君 できるだけ早く体制を整備していただいて、賛成については早い批准をやるような体制づくりはお願いしたいと思います。
 次に、昨日も和田委員の方からも質問があったかと思いますが、船員労働者の問題ですが、先ほども田中委員の方からも出ておりましたが、陸と海とハンディがある、法律の面においてもかなり差があるということは政府はお認めになりますか。
○政府委員(高橋英雄君) これは、従来、船員関係につきましては、陸上の場合と多少実態的に異なっていると申しますか、陸上はいろいろな業種全般を含んでおりますけれども、船員の場合には船員だけである、に限定されておるというふうな経過等もございまして、船員を保護するという意味の法律関係につきましては、陸上に比べますと若干おくれておると申しますか、後を追うというような状況にあることは、正直なところ、そういうことでございます。
○矢追秀彦君 昨日も、たしか運輸大臣に船員組合の方から要望が出されたかと思いますが、現在、船員労働安全衛生規則だけではいろいろ不備があるので、ぜひこれを法制化してもらいたい、仮称として船員労働安全衛生法というふうなことが要望されておりますが、これは政府としては検討されるおつもりはありますか。
○政府委員(高橋英雄君) 現在、船員の安全衛生問題につきましては、船員法とそれから船員法に基づきます船員労働安全衛生規則というのが主たる法令になっておりまして、それでこの条約の履行については、これらの法令で十分であるというふうに思っているわけでございますが、しかしながら、おっしゃるような安全衛生規則というような省令ではなしに、これを法律にしてはいかがとうふうな御意見がございまして、私どもとしては、法律にして悪いということはもちろんございません。しかしながら、この問題につきましては、船員法の規定に基づきまして、公労使の三者で構成されております船員中央労働委員会の意見を聞いて行う。これは船員法の改正にかかわる問題というふうなことに形式的には相なるわけでございますので、そういった手続が必要になるわけでございます。したがいまして、私どもとしては、そういった船員中央労働委員会の意見等も十分に見きわめながら、今後、慎重に、そしてまた前向きに検討してまいりたい、かように考えております。
○矢追秀彦君 次に、船員災害防止計画、この推進についてでありますが、四十九年度は、たしか目標の九・三%減で、目標が大体達成をした。しかし、五十年度ですか、五十年度では目標までいかなかったと、こう理解をしておりますが、それが間違いであるかどうか。さらに五十一年度、五十二年度、これはどういうふうになっておりますか。
○説明員(豊田実君) これまでの災害防止計画上、毎年度、災害の防止の減少率というのを具体的に目標数字等を掲げてございます。御指摘のように、年々それ自体は減少しておるわけですか、目標値に対してはまだ全体としては達成していないという状況です。御指摘の五十一年、五十二年の数字については、まだ最終集計が終わっておりません。
○矢追秀彦君 これ九%に置かれたのは大体どういうことが理由ですか、根拠ですね。
○説明員(豊田実君) 災害防止計画は五カ年間の計画になっております。現在と申しますか、五十二年で終わりました五カ年計画、四十八年度が最初の年になるわけですが、その最初の四十八年度からの五カ年計画を設定する際に、五年間を通じまして、全体の災害の減少目標を三五%減少させるという五カ年の一応全体の目標を掲げまして、その後、その目標を達成するために、毎年度、過去の実績をにらみながら、一年間の目標を設定するということでやっております。その結果、大体、一年間に九%の減少を目標とするということになってきております。
○矢追秀彦君 この目標が妥当かどうかについては、私も確固たる理論的な計算根拠というのを持っておりませんのでちょっと言及は控えますけれども、仮にこの目標が妥当とした上でも、なおかつ陸より海の方が災害は三倍もある、死亡についてはもう十七倍近くもあるということですから、この目標はもっと引き上げても構わないわけです。しかし、現状では、この目標すら達成できていない。五十一年度、五十二年度を見なければわかりませんけれども、できていないような状況でございますから、やはりまずはこの目標を達成することに全力を挙げる必要があると思うのですけれども、それに対して、いまの規則だけでは不備なのか、法律にすればこれができるのか、あるいはもっとそのほかの体制が整備すればこういったことが防げるのか、その点はどういうお考えですか。
○政府委員(高橋英雄君) 先生がおっしゃるその法律は、実は、ただいまお答えいたしました災害の防止計画、これは労働安全衛生規則とは一応別に船員災害防止協会等に関する法律というのがありまして、この法律に基づいてやっておることでございまして、その労働安全衛生規則を法律にいたしましたからといって、すぐに変わるという問題ではなかろうかと思います。
○矢追秀彦君 それから疾病の場合が三%という目標になっておりますが、これの目標達成の経緯はいかがですか。
○説明員(豊田実君) 疾病については毎年度三%という目標になっておりますが、こちらの方については目標率をかなり上回って、大体、一〇%以上の態勢になっております。
○矢追秀彦君 一番、私がこの災害関係の規則を見ておりまして問題に思うのは、やはり企業責任の明確化ということにあるかと思いますけれども、陸上の方は、使用者から事業者に統一をされておる、そういうことになっております。したがって船の場合もそういった線を出さなければならないかと思いますけれども、その点はいかがですか。
○説明員(豊田実君) 現在、災害防止関係の体制としましては、船の場合に、船舶の所有者、具体的に船員を雇用する事業者に第一次的な責任を持たせ、具体的に船舶ごとに船長がおり、その下に安全担当者、衛生担当者というような体制でやってきております。陸上のいろいろな体制と海上労働の体制とで必ずしも直に対応するということではないかもわかりませんが、先ほど御指摘の、将来のいろいろな体制の見直しというような中で検討させていただきたいと思います。
○矢追秀彦君 じゃ、もう時間ですから、最後に、厚生省がお見えになっているのでお伺いするのですけれども、七十号と七十一号ですね、これがまだ批准されておりませんけれども、これの過去の経緯ですね、国際連盟脱退時のため、あるいは戦後の状況下においてできなかったわけですけれども、それにしても今日までかなり日がたったのにどうしてまだ批准されていないのか、その経緯と理由、それから今後どのように対処されていくのか、その点をお伺いしたいと思います。
○説明員(岡光序治君) 先生御承知のとおり、七十号といいますのは船員のための社会保障に関する条約であり、七十一号というのは年金に関する条約でございまして、いずれも昭和二十一年の六月に採択をされたものでございます。従来からこの条約につきましては一連のものとして考えておりまして、早期にこれを批准しようじゃないかという基本方針を持っておりますが、わが国の国内法との関係がいろいろございまして、残された問題についていろいろ検討を加えてきているところでございます。実は、五十一年の十月にILOの海事総会がございまして、その席で船員の社会保障に関する条約とか勧告を見直そうじゃないかという決議がされております。したがいまして、そういった動きがございますので、そういった動きを見定めながら、この両条約の批准について今後とも検討を加えていきたい、そういうふうに考えております。
○立木洋君 いまの問題で引き続いて運輸省にお尋ねしたいのですが、運輸省が五十二年度を初年度とする第三次船員災害防止基本計画という五カ年計画を進めるということですが、ここでは、先ほども問題になりましたように、陸上労働との比較においていまなお格差を縮めることができない結果になっているという点、死傷者の問題について述べているわけですが、非常にこれは災害件数が陸上に比べて三倍、死亡が千人率で出しておるわけでしょうが、十七倍、これは大変な状態だと思うのですね。どうしてこのような陸上労働に比較してこういうふうに事故が多く、また死者が多いのか、その原因についてどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
○説明員(豊田実君) 御案内のように、海上労働という特殊な場面での労働で、船それ自体が常に動揺しておるという環境の中で業務が遂行されるわけです。災害の中で一番多いと申しますか、死亡に結びつく事故については、海中転落、陸上ではその例が非常に少ない事故が第一位に上がっておるわけです。そういうことで、職場の環境自体が非常に陸上の場面と違って厳しい環境に置かれているというのが災害の陸上との格差の原因であると考えております。
○立木洋君 ここでも、それをなお縮めていくように努力するということになっているんですが、基本的にはどういうふうな対策を立てられておられるんですか。
○政府委員(高橋英雄君) 災害防止につきましては、大きな柱は二本ございます。
 一つは、先ほどもお話が出ましたけれども、船員災害防止協会等に関する法律に基づきまして、昭和四十三年度から船員災害防止基本計画、これは五カ年計画でございますが、それから毎年度それの実施計画というものを作成、実施するということが一つでございまして、この結果、年度別に見ますと、船員の場合の災害発生率は着実に減少の傾向は示しておりますけれども、なおかつ先ほどお話に出ましたように、陸上に比べますと非常にまだ高率であるというふうなのが現状でございます。したがいまして昭和五十三年度から新たにまた船員災害防止基本計画が発足するわけでございますけれども、この新しい基本計画におきましては、これまでの結果を踏まえまして、第二次基本計画の際に取り入れました本質安全化と言っておりますけれども、これはうっかりしても災害にならないように設備環境を安全にするということでございまして、この本質安全化という思想を新しい計画ではさらに徹定をさせる。そして船内環境の整備改善を物的人的両面にわたって強力に進めるということを計画推進の基本的な姿勢として災害の防止に取り組むというふうに考えておるわけでございます。
 それから二番目の災害防止対策の柱は、これは船員法あるいは船員労働安全衛生規則に盛られております災害防止に関しますもろもろの規定の履行を担保するために、平たく申し上げれば、役所の監督体制の整備強化を図るというふうなことでございまして、この中心になる問題が船員労務官の増強ということでございまして、これにつきましては年々財政当局にもお願いをして増員を図っていただいておりまして、この条約の採択されました昭和四十五年当時は労務官が八十五人全国でございましたけれども、昭和五十三年度は百二十二人になるというふうな予定になっている次第でございます。
○立木洋君 ここでも述べてありますけれども、十年間にわたるいままでの災害防止の推進で前進を見てきたというふうに述べられてありますけれども、第一次計画、第二次計画の時点と比較して、その時点ではどれぐらい好転したのか、災害件数や死亡者数などの千人率、陸上との比較においてどういうふうな数字になっていますか。
○政府委員(高橋英雄君) 従来からの経過を若干数字で申し上げますと、災害の発生状況は千人率につきましては昭和四十年度は一二一・一でございまして、それが昭和四十五年度におきましては九二・一ということになり、そして昭和五十年度は七二・〇ということで、千人率におきましては船員の場合一応着実に減少の傾向は示しておるということでございますが、残念ながら、陸上の医業の災害発生率との比較におきましては、陸上産業の方も災害の発生が減少しておりますので、依然としてやはりその率としては陸上に比べて一般のけが、疾病で約三倍、それから死亡になりますと十倍以上というふうな状態が続いているわけでございます。
○立木洋君 千人率で言えば、こういうふうに減少していると言うけれども、陸上に比べて非常に依然として格差が縮まっていないという状態ですね。
 これは運輸白書によりましても、事故の第一に挙げられているのが転倒、墜落、落下など作業構造災害というのが第一に挙げられて、これが非常に多い。その次に挙げられているのが動力運転災害というのが挙げられているわけですね。しかし、海上の場合を見ますと、陸上の法律に比べて安全衛生管理者、作業主任者等々の規定もない。専門の仕事に携わる場合においても、陸上では明確に有資格者のもとでそれが行われなければならないとされておりますけれども、海上の場合では熟練者というあいまいな規定になっている。こういうふうな問題もこういう安全等の問題に大きく関係しているの、じゃないですか。
○説明員(豊田実君) 船舶の場合、その中に乗り組む船員につきまして、船員法だけではなくて、ほかの法令上いろいろな資格要件を要求されております。また、船員法の体系におきましても、一定の危険な作業につきましては、その作業に経験を有する人に限定するということで、その安全を確保するというようにしております。
○立木洋君 いや、こういう事態が陸上に比べて多いという原因としては考えられないのだろうかという質問なんですよ。全然関係がないのか、関係があるというふうに判断しているのか、どうですか。
○説明員(豊田実君) これまで十年間災害防止計画をつくりまして、いろいろ対策をとってきました。先ほど御紹介申し上げたように、その対策の中には、単に物的な面、環境の整備ということではなくて、それだけではなくて、人的な面の対策、御指摘のいろいろな特殊な作業に対してその能力を向上させるというようなことで、関係の作業担当者について一定の講習会等を通じまして、その技能を向上させてきております。
○立木洋君 課長、答弁それ違うんですよ。局長、関係があるのかないのかということをはっきりさしてください、全く関係ございませんというのかどうなのか。
○政府委員(高橋英雄君) 全く関係ございませんと申し上げるほどの自信は……
○立木洋君 ないでしょう。
○政府委員(高橋英雄君) ございません。
○立木洋君 そうすれば、たとえば労働安全衛生法には六十一条には「(就業制限)」というふうな形で明確になされているわけですね。これでは「事業者は、クレーンの運転その他の業務」云々としてありますけれども、それはここでは幾つかの条件を挙げて「資格を有する者でなければ、当該業務につかせてはならない。」という就業制限等があるわけですが、しかし、船員の労働安全衛生規則等々によりますと、揚貨装置の使用をする作業等々の場合でも、もちろんこれは規則ですから、いわゆるそういう就業制限等々の内容が全然盛られていない。ここでも四号には「揚貨装置は熟練者に操作させること。」というふうになっているわけですね。これは船員法の中等々で見てみましても、同じく船員労働安全衛生規則の二十八条等々の場合でも「次に掲げる作業」として行っている場合でも、ここでは熟練者というふうな内容で、もちろん有資格という点では明確にされていない。こういうふうなことは、やはりいま局長が述べたように、明確に有資格者というふうに規定ができて就業制限ができない、そういう規則ではやっぱり問題があるというふうにお考えになるんじゃないですか、関係がないわけではございませんというふうに言われるからには。
○政府委員(高橋英雄君) この労働安全衛生規則におきましては「熟練者」ということで、有資格者というのと表現は違いますけれども、中身はそれほど変わらぬように思っておるわけですけれども、おっしゃるようにちゃんと一定の資格を設けて、そういう資格のあった人というのが、どっちがベターだと言われればその方がベターであるということは間違いないと思います。
○立木洋君 結局、先ほども挙げられたように、二番目に動力運転の災害が多いと、熟練者という場合にそれをどう認定するか、実際に使っている場合ですね、まあおまえやっていいじゃないかというふうなかっこうになれば、これが事故につながると思う。しかし、資格がなければ決してその作業に従事してはならないという明確な制約があれば、それをやれば違反になるわけですから、そういうふうなけじめがつかない規則ということだけでは、実際に本当に先ほども挙げられましたように、大変な、陸上に比べて死亡のあれが十七倍と、これは五十一年の運輸白書ですけれども、これは大変な事態だと思うんですね。これは前の十年前に比べれば、あるいは五年前に比べれば、前進してきておりますからと言って喜んでいいような状態ではないわけですよ。これは依然としてそういう死亡者が後を絶たない。それどころか陸上に比べて大変な人数の方々がとうとい命を落とす、こういう問題を考えるならば、これは真剣に安全衛生の問題については、この規則ではなくして、やはり法的に罰則規定を明確にしてやらなければならないということは、当然、運輸省の立場としては積極的にやるべきだと思うんですがね。慎重に前向きに検討さしていただきますという答弁じゃこれは済まぬのですよ、こういう死亡者が多く出ている状態だというのは。その点どういうふうにお考えになっているんですか。
○政府委員(高橋英雄君) 現在の段階におきましては、それほどはっきり見通しを申し上げる段階ではございませんので、先ほど来お答えしておりますように、この衛生規則の法律化という問題につきましては、船員法の改正にかかわる問題でございますので、公労使三者構成になっております船員中央労働委員会の意見等も今後踏まえまして、前向きに検討するというふうにお答えせざるを得ないわけでございます。
○立木洋君 あのね、局長、いわゆる労働者の側から言えば、これはぜひやってくれと言っているわけでしょう。それで政府の側も、これはやっぱり先ほど言われた内容で言うならば、これは十分法律にして悪いということではございませんと、前向きに慎重に検討したいということでしょう。で使用者は消極的なんですか、どこに一体問題があるんですか。
○説明員(豊田実君) 現在の船員法につきましては、その中身に安全衛生関係だけではなくて、ほかのいろいろな規定が含まれております。したがいまして安全衛生関係の規定を抜き出ししまして別の法律体系に移すという際に当たりまして、残りました規定について他のいろいろな法制との調整を総合的に行う必要があるというようなことが過去にこれまで検討した過程の中で一つの問題点として残っております。
○立木洋君 いや課長の答弁じゃどうもはっきりせぬのですよ。局長さん、にこにこ笑っていないで、ひとつちゃんと答えていただきたいんですがね。
○政府委員(高橋英雄君) どの点に問題があるかということを、実は、私どもまだこの問題について直接に各方面の意見を聞いておりませんので、いまこの席でどこに問題があるかとおっしゃられても、ちょっとお答えするのが困難でございます。
○立木洋君 じゃ、政府としては、やはりこういう先ほど申し上げたような災害事故が非常に多い、死亡者も陸上に比べて大変な事態だと、この点については、これは真剣に考えなければならないことであるという点は間違いないですね。
○政府委員(高橋英雄君) それはおっしゃるとおりでございます。
○立木洋君 そうだとするならば、いまの規則では、先ほど問題を私が指摘したような点から言えば、関係がないわけではない、十分に罰則規定もないような規則という状態では、やはり依然として事故が多く存在しておる、これは全く関係がないとは言い切れませんというふうにいま局長はおっしゃった。だとするならば、もっときちっとしたいわゆる罰則規定も設け、就業制限も明確にして労働者の安全衛生が完全に守れるような法体系というのは必要であるということは、局長、どうお考えですか、必要だというふうに考えるのか、必要ないと考えるのか。
○政府委員(高橋英雄君) ただいまのお話の中で、罰則の問題につきましては、この現在の労働安全衛生規則も罰則はついております。あと、そういう資格等の問題、中身の充実という問題だと思いますけれども、その点については、私どもとして、そういう方向が好ましいという点については全く異論はございません。
○立木洋君 そうしたら、局長がこの場で、そんなら法制化しますというふうな答弁はもちろんできないでしょうから、好ましいという積極的なあなたの考えで運輸大臣にぜひともそのことを詳しく述べていただいて、やはりこれは労働者の側からも出されている強い要望ですし、やっぱり法制化すべきだということを積極的に意見を提起して、そして使用者の側に問題があるならば、いわゆるこういう安全衛生の問題について人命にかかわる問題というのは重大な問題であるということを十分に納得さして法制化する努力をやってほしいと思うんですが、その点はいかがですか、いいですか。
○政府委員(高橋英雄君) 先生の御意見も十分に踏まえまして、また同じようなことで恐縮でございますけれども、今後、前向きに検討をさしていただきたいと思います。
○立木洋君 局長がここで全部結論を出してしまうというのはもちろん無理でしょうけれども、いま言ったような趣旨を十分に踏まえて努力をしていただきたいということを重ねて要望しておきたいと思うんです。
 それから外務省の方で、先ほど矢追委員の方から七十号、七十一号の問題について質問されたんですけれども、ILOの百十二号ですね、漁船船員の最低年齢条約、それから百十三号漁船船員の健康検査条約、百十四号漁船船員の雇用契約条約、百四十七号商船の最低基準条約等々について、これを早期に批准するようにという強い要望がなされておりますけれども、先ほどこれらの条項についてどこに問題があるのか、あるいはこれを国内的な法制化は完了しておるか、その他の理由でできないのか、あるいは批准する準備を考えているならば、いつごろをめどにそれぞれの条約については考えているのか、その点についていまの四件をお答えいただきたいと思うんです。
○政府委員(高橋英雄君) いま先生御指摘の百十二、百十三、百十四、百四十七でございますか、このあたりの条約につきましては、一般的には国内法との相違点がございますし、それから海上労働等に関します実態に必ずしもそぐわないというふうな問題もございますので、今後、検討をさらにさしていただきたい、かように思っておるわけでございます。
○立木洋君 これは外務省の方としては問題ないけれども、いわゆる運輸省の方として問題があるということですか、外務省に、私、質問したんですけれども。
○説明員(小林俊二君) 一般論で申し上げますれば、こういう船員の労働状況、労働環境にかかわり合いのある国際的な基準の設定ということでございますので、私どもとしては、そういう国際的な枠組みを強化するという観点から、基本的に前向きの姿勢をとるものでございますけれども、これを日本が批准するということは、すなわち、わが国におきましてその実施を国際的に約束するということでございますので、当然、国内の体制を前提として考えざるを得ない、国内の体制の上から言って、これを義務として受け入れることができるかどうかということから考えざるを得ませんので、その辺のイニシアチブは各主管官庁の御意見を尊重するということから出発せざるを得ないということでございます。
○立木洋君 最後に、政務次官に御所見をお伺いしたいんですが、第一点は、これはもちろん外務省の管轄じゃございませんけれども、このILOの百三十四号を批准するに当たって、いまお聞きのようないわゆる船員の災害の件数というのも非常に多いし、死亡の状態から見てもいわゆる陸上に比較するならば十七倍と、これはやっぱりゆゆしき問題だと思うのですね。こういう事態というのをいつまでも放置しておったんでは、先進海運国だと言っているような日本の状態から言ったってこれは許される状態じゃないわけですし、ですから、この点、この条約を批准するに当たって、運輸省にもよく意見を述べていただきたいし、先ほど言ったように、積極的に法制化する方向でぜひ努力をしていただきたいという問題に対しての御所見をひとつ伺いたい。
 それから、もう一点は、いま挙げましたように、そういう先進海運国として、船員の方々の地位の向上といいますか、それから生活の安定にしろ、それから安全衛生の拡充の問題にしろ、これはそういうことが保障されて初めてそれにふさわしい状態というのがつくられることができるわけですね。いま参事官の方が述べられましたけれども、こういうふうな残されておるいわゆる船員関係のILOの条約ですね、これは見てみますと、ここ二十年間に船員関係に関するILO条約というのは批准したのがわずか一条約だと、二十年間に。これは余りにも先進海運国である日本だというふうなことを言っておきながら、全くさびしい限りだと思うんですよ。こういうことでは全く困るわけで、こういう条約についても積極的に関係省庁と協議をして、一刻も早く批准できるような体制に整えるべきだという点についての御所見、二点お伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
○政府委員(愛野興一郎君) 先生の御所見はまことにごもっともでありまして、特に、わが国もILO加盟国となっておる以上は、残された船員関係の条約の批准についても積極的な態度で臨むということは、これは当然のことであると私も考えております。ただ、いろいろ事務的な準備期間なり、いろんな先ほどから御議論になっておりますような整備すること等もございますので、おくれておるわけでありまして、外務省としては、先生の御趣旨を体して、関係省庁にも十分ひとつ連絡をしながら、できるだけひとつ前向きでいきたい。
 それから、第二点の問題につきましては、局長は御存じですが、私も陸上交通の方をやっておるわけでありまして、まことに御同感であります。
○委員長(安孫子藤吉君) 午前の質疑はこの程度として、午後一時十分まで休憩いたします。
   午前十一時五十四分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時十九分開会
○委員長(安孫子藤吉君) ただいまから外務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、日本国とイラク共和国との間の文化協定の締結について承認を求めるの件及び船員の職業上の災害の防止に関する条約の締結について承認を求めるの件を一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
○田中寿美子君 外務大臣、大変御心労の多いときで、詳しくはこういう条約の中身なども余りごらんにならないかもしれません。これはわずかの時間でございますので、本当に一、二点にしぼって外務大臣の御意思を伺いたいと思います。
 これは船員の災害の防止に関するILO条約百三十四号で、いままでにみんなが問題にいたしましたことは、船員の海上の災害は陸上の労働者の災害をはるかに上回っている、大体三倍ぐらいの災害が起こっているし、死亡率は十五か十七倍もあるということが言われて、これを少なくしなければ、せっかく百三十四号条約を批准しても問題ではないかということが言われておりますが、私は、その際に、大変問題になるのは、国内の船員労務官が百二十二人、これは労働基準監督官より数が多いと言われましても、そういう船員労務官が船の中まで入っていって、そうして航行中に見るわけではございません。それで非常に多くの災害がいわゆる便宜置籍船から引き起こされているという問題を二回にわたっていろいろと御質問したわけでございます。
 便宜置籍船というのは、日本の海運会社が動かしている船ではあるけれども、籍は外国に置いて、特にリベリアとかパナマとか、そういった第三世界の国に置いて、そして走らせております。しばしばそれは日本の海運が高度成長する段階で非常にたくさんの船をつくり、回したわけでございますが、その間、国際競争に勝つ一つの方途として、日本の船員はコストが高い、だから韓国、台湾、フィリピン、香港、その他第三世界の国々の船員であれば非常にコストが安いということから、そういう船員を乗せ、しかも船籍を日本に置かなければ税金も逃れられるし、それから災害が起こった際の補償も逃れられると言えば変な言い方ですけれども、そういうことも見越してどんどんつくったものだと思われるんですが、その便宜置籍船の事故というのは非常に多いんですね。
 ごく最近、ブルターニュの海で、フランスの海岸ですね、あそこで非常に大きなタンカーが事故を起こして、そしてそこから原油がやたらすごく流れ出たと、これ四月二日の読売新聞ですけれども、「便宜置籍船ゆえの〃人災〃」というレポートをしている、非常に詳しく。これなんかもリベリアの籍を持っているけれども、アメリカの海運会社が動かしている、船長はイタリア人と、そしてどっこも責任を持つところがない。だからフランスは非常な大きな損害をこうむっているということが出ております。こんな事例を引くまでもなく、日本の海岸の周辺でもいっぱいあって、そして海事新聞で見ますところによりますと、海上保安庁が調べても便宜置籍船の当て逃げというのがたくさん起こっている、ことに瀬戸内海なんかでたくさん起こっている、東京湾でも、あるいは伊勢湾でも。これは非常な工業地帯ですから、これが大きな災害に発展しないという保証はないような状況で非常に問題があるんではないか。外からそういう海難事故がいっぱい起こるということや、それからそういう船籍が外国にあって、しかもそれがペーパーカンパニーであるような場合には、その船で起こりますところの殺傷事件、暴力事件、こういうものに関しても補償をちゃんとするすべがないということすら起こってくる。
 そこで、そこに乗っている第三国の、つまり大体東南アジアその他の発展途上国の安い労働者の労働条件や生命は守らないでもいいのかという問題もあるし、それからマルシップといって日本の国籍を持ちながら外国の人たちを船員としてマニングの会社が乗せて、そして引き回している船がいっぱいあるわけですが、これなんかに乗っておりますところの日本の船舶通信士その他一、二名乗っているような船員の労働条件と、それから第三国の船員の労働条件とが食い違うというようなことで感情問題も起こるわけで、暴行、殺傷事件もあり得るし、転落した者はすぐ死亡事故に通じるというような、海の上に出たら何が起こるかわからないような状況で、外からのそういう衝突事故あるいは船自体が欠陥船である場合が非常に私はあると思います。先ほど運輸省の方は必ず船はちゃんと検査を通っているし、保険にも入っているとおっしゃったけれども、事実、そうでない事例がいっぱいあるわけですね。そういうような状況を何とかしないことには、中から起こってくる災害だけじゃなくて、外からそういうふうに引き起こされる災害がいっぱいあるし、その船を回しているのが日本の海運会社であるという問題がありますので、そのことを今後どういうふうにしていくかということの問題があると思います。
 これは運輸省の方針もあると思いますが、同時に、そのことによって船員が日本人でなく、脱日本船員化、つまり外国船員にかえられていくという問題があるわけですね。そこで日本の船員はいま予備員率、陸上に上がっているのが七〇%にもなると先ほどもお話があって、これは失業につながっていくわけなんですね。それで国際競争のために海運会社が第三国の船籍で船を回すことは、これは運輸省も半ば――半ばどころか大いに認めているわけで、今後も仕組み船が好もしいようなことを海運白書でおっしゃっておりますが、そういうことになるとすれば、日本人の船員はどうなるのかということについて十分考えませんと、せっかくILO百三十四号条約を批准して、船員を災害から守ってやるんだと言ったって、実態が伴わないという問題を非常に私は問題にしているわけなんです。
 ですから、これは外務大臣の立場からして、外務省というのはこういう問題では窓口、ILO条約に関して窓口でございますね。ですけれども、実態は運輸省が握っているとしても、これはどの条約に関してもILO条約というのは労働者の労働条件の最低を守ろうとする国際条約でございますから、これに関しては窓口である外務大臣も大いに実態が条約にそぐっていくように、あるいは国内法に実態がそぐうように督励していただきたいと思うんですが、いかがでございますか。
○国務大臣(園田直君) いま御指摘の便宜置籍船は逐次増加をしておって問題がいろいろ出ております。基本的にはやはり国際条約でこれを守る以外に方法はございません。
 そこで、いま安全性、経済性等の広範な観点から検討が進められておりますが、たとえば船舶の構造設備に関する安全規制については、海上における人命の安全のための国際条約及び満載喫水線に関する国際条約がすでに国際的な基準として作成されており、これらの条約をさらにレベルアップするために継承して検討が進められておりまして、国際的また従来統一基準のなかった船員の資格についても本年六月から開催される全権会議で条約が採択される予定でございます。いわゆる便宜置籍船といえどもこれらの条約の適用から免れるものではなくて、これらの規制を厳格に行えば多くの効果が期待できるものでありまして、わが国としては、今後とも、これらの会議に積極的に出席し問題解決に当たりたいと考えております。
 いずれにせよ、この問題は海運政策の基本に触れる問題でございますから、運輸省と十分打ち合わせをして、小さい問題等を承りつつ、国際的な会議にのせていきたいと考えております。
○田中寿美子君 ILO条約、どの条約も批准する以上は、それに向かってぜひ外務省は努力していただきたいと思いますけれども、いま言われた便宜置籍船、これはアメリカと日本が一番たくさん持っていて、実際に大変責任があるんですね、世界の海運の中で。しかもアメリカはILOから脱退しておりますから、ILO条約、今後どれだけ結んでも余り守らなくてもいいということになったんではこれは困りますので、その辺もぜひ心してやってもらわなければいけませんが、東南アジア、その他発展途上国の船員が雇用の機会を得るということ、これも必要でございましょう。しかし、そのために日本の船員たちが職を失うということは、これもまた大問題なんでございますね。
 それで、昨年の暮れに、船員の離職者対策特別措置法がつくられたわけですけれども、それでもその予備員率が七〇%にもなっている分は外国用船にも乗せるという方向が出ているかと思いますけれども、その際に条件を切り下げていかないこと、これは労働条件、日本の労働者の持っております条件を切り下げて、そして第三世界の人たちの労働条件に合わせるとか、そういうことをしてはいけないし、安全の基準に関しても切り下げないようにしてほしいと思うんですが、いかがですか。
○政府委員(高橋英雄君) 先生御指摘のような予備員率が非常にふえている、高くなっておる、それから外国用船等がふえてくるというふうな状況で雇用情勢は大変厳しい情勢になっておりますので、この際の雇用対策としては、基本的には海運政策を見直すということが必要でございますけれども、それは時間のかかることでございますので、御指摘のような船員の雇用の促進に関する特別措置法に基づきまして近く発足を予定しております船員、雇用促進センターというところを通して、これらの外国用船に日本の船員もどんどん乗せていく、そういう雇用の拡大対策を積極的に進めなければいけないということで考えておるわけでございますけれども、このセンターを通して日本の船員を外国船等へ乗せていく場合の労働条件等につきましては、これは十分に関係の労働組合とも話し合いをして決めていくように私どもとしては指導してまいりたいと考えております。
 また、その際に、外国船等におきます船員の災害等の保護の問題がございますけれども、これらにつきましては、一方でそういう外国用船等に大なり小なり支配権といいますか、影響力を持っております日本のチャーター船主等を通じてそういった点に配慮するように指導もいたしますし、また、そういう外国用船、日本人を乗せる船を選ぶ際に、そういった問題について危ない船はできるだけ避けるような、そういったような配慮をするように指導をしてまいりたい、かように考えております。
○田中寿美子君 外務大臣ね、これは海運行政のあり方、政策そのものに非常に深くかかわっていると思いますし、海運業界にかかわっている問題です。私は、もう時間がありませんから、この点はあれですけれども、例のジャパンライン、これは仕組み船です、便宜置籍で韓国に籍を置いたわけですね。そして朴東宣氏の航運会社からまた雇い上げているわけですね。そしてそこに利益をつくり出して、この朴東宣氏はアメリカの政界に、数十人の人に賄賂を贈っているわけですが、こういうような利潤が生み出せるとすれば、ジャパンラインそのものの経営が悪いから、いま金融機関、民間も、あるいは政府の金融機関も、開銀や輸銀まで動員して助けるというようなこともしようとしているということは、これは徹底的によく調べて、そして公正な金融をするということでありませんと、国民の金を使うわけですから、重大な問題であるということを申し上げておきたい。
 今後の海運の中で仕組み船、つまり日本がつくるけれども、外国に籍を置いた船は便利だ、それを利用するという方針が運輸省の方からも出ていると思います。これはどのくらいにするかという問題は非常に今後の問題だと思いますけれども、外務大臣、資源もエネルギーも食糧も日本は外国に負っておりますね。ですから、それを運ぶのも船でございますね、それを日本政府が責任を持たない外国籍の船で今後運んでいていいものかどうかということ、私は一つ問題があると思いますが、その点も考えて外務大臣の御意見を伺い、そしてILOの百十三四号条約のみならず、先ほど挙げられたような条約もそうですけれども、今後、船員の雇用を保障していくような条約百四十五号も出ておる、百四十七号も出ているわけですが、そういう国籍がはっきりしない、国籍があってもペーパーカンパニーで会社そのものがはっきりしないような、そういうところの船に対しても、そういうものをだんだんなくしていって、そして海で働く人たちが、日本の労働者だけでなく、第三世界の労働者も守れるというふうな方向に、日本はこういう仕組み船の一番大株主なんです、アメリカとともに。そういう意味でも責任をもってイニシアチブをとってほしいと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(園田直君) 御指摘のとおりに、日本の海運業は、逐次、経済は拡大均衡と言いながら縮小の方に進みつつあります。また、便宜置籍船はいろいろ企業の逃げ道、それから船員に対する待遇の脱法の道に利用されている等も漏れ承っておりますから、十分検討いたしまして、運輸省とも相談をして、国内の枠においても、海運の基本的な政策についても、御指摘のとおりに進めていきたいと存じます。
○田中寿美子君 今後のつまり割合ですね、日本国籍船とそれから外国籍船をどうしていくかという問題ですね、このままでどんどん外国籍船をふやしていく、仕組み船をどんどん使っていくという方向がいいとお思いになるんでしょうか、どうでしょうか。
○国務大臣(園田直君) 先ほど言いましたとおり、これがいいと思っておりません。海運の基本的な問題でそういう便宜でとらわれてやっておると、日本の海運業は逐次縮小して壊滅をすると思いますので、その点は御意見のとおりでございます。
○田中寿美子君 そうしたら、国際会議などにおいて、ILOのみならず、あらゆる国際会議においてやはり日本の海運業において占めるウエートというのは大変大きいんですから、ですから、そのようなことが将来世界の海運で働く人たちを守っていくということに日本がイニシアチブをとってもらいたいと思いますが。
○国務大臣(園田直君) よく了承いたしまして、御意見を参考にして、そのように努力をいたします。
○渋谷邦彦君 十五分というきわめて限られた時間であれもこれもはとてもきょうは不可能でありますので、できるだけ焦点をしぼって確認を込めてお尋ねをしたいと思うんであります。
 ILO百三十四号条約もさることながら、二日間にわたる委員会の審議の経過を伺っておりまして、国内法の整備についてこそむしろ急がなければならない、また、今後の運用の面でも相当問題が残されているんじゃないかという、こうした基本的な問題のめどがつかないままこの条約が批准されるということは非常に残念だと思うんですね。
 どうも答弁を伺っておりましても、大変失礼な言い方ですけれども、歯切れがいいとは思えない。やはり現在の船員災害というものについて大きな社会問題であるだけに、それをどう一体本気になって取り組んでいるのかというのはあたりまえのことでありましてね、あたりまえのいま課題に対して、それが十分検討をされているのかどうなのか。努力をする検討の段階では、これは遅きに失するんじゃないか。次から次へ起こっている、しかも陸上より海上の災害の方がはるかに大きい、こういうようなことが指摘され、また当局としてもそれを十分踏まえているにもかかわらず、明快な回答が得られない。果たしてILO百三十四号条約の批准に伴って、これはどう一体これから連動しながら効果を上げていくんであろうか。私自身としては、大変疑問を持ったまま、この条約の成立を図らなきゃならぬということは非常に遺憾に思っております。私はきょうILOに触れる時間もありません、残念でありますけれども。そういうことを前置きにしながら、今後当局の一層の努力を促したい、問題解決に向かって真剣になって取り組んでいただきたい、まず要望を最初に申し上げ、せっかく外務大臣がきょう御出席でありますし、なかなかこういう機会というのは忙し過ぎる外務大臣でありますので、やはり今日的な問題もこの機会にお尋ねをしておかなきゃならぬということで、質問通告をしない問題でございますけれども、これはもう十分に心得ていらっしゃる問題でありますだけに、あえて申し上げなくてもと思ってこれからお尋ねをするわけでございます。
 第一点は、やはりわれわれが気がかりになっております日中条約でございますけれども、もう一ころの園田さんの御答弁からはるかに後退をしてきた印象があるんではないだろうか。言うまでもなく、党内調整ということに相当時間をかけていらっしゃるようであります。慎重を期されることは結構でございましょう、これから二十年、三十年先の日中関係がどうあるかということに対応するわけでございますから、それは結構ですけれども、余り延引をし過ぎますと、やはりこの日中間における信義というものがぶち壊しになってしまうんじゃないかというおそれがなきにしもあらず。大平幹事長あたりの表明を新聞を通して拝見しておりますと、今月末ぐらいまでには調整ができるんではあるまいか。それも決して確定を意味するものではない。この間、福田総理はアメリカにも飛ばなければならない、また中川農林大臣はソビエトにも飛ばなければならぬという、そうした目まぐるしい情勢の中で、果たして見通しが立つんであろうか、一体、これからのスケジュールの立てようがあるんだろうか、このままずるずるいったんではせっかく関心が高まっているときに、何かその芽を摘まれてしまうようなおそれがありはしまいかということの心配の余り、再度、ここでそうした経緯を踏まえた上での今後の差し支えない範囲での見通しをお聞かせいただきたい、これが第一問であります。
○国務大臣(園田直君) 日中友好条約締結の再交渉についていろいろ御配慮をいただいてありがとうございます。私も必死に努力をいたしておるところでありますが、まず、外務大臣の決意はいささかも変わっておりません。むしろこういう事態になってこそ、事の重要性を認識をして、一日も早く再開をしたいということで努力をしていることだけは御理解を願いたいと思います。
 いま総理の方も、そういうおつもりでいろいろ党内の説得にみずから先頭に立ってやっておられるところでありまして、だんだん御理解も願える段階であると存じておりますが、なるべく早くそういう国内の諸手順を終わって再開をしたいものと最善の努力を注ぐ所存でございます。
○渋谷邦彦君 園田さんとしても、いろいろ昨今の一連の起こった事実関係については、心中穏やかでないものを胸中に秘めていらっしゃるだろうと思うんですね。たとえば昨日は大挙して台湾に行かれた事実もございます。決してどうこうというわけじゃないですけれども、やはり一つの機運というものが高まっているときに逆なでをするような、そういうあり方というものは果たして好ましいんだろうか。なるほど蒋介石総統の三回忌法要に参加をする、名目はわからぬわけでもありませんけれども、いま事態が事態でありますだけに、果たしてそういうことが好ましいのかということが一つと、それから慎重にという、いま与党内におけるいろんな願望というもの、それは必ずしも反対を意味しないものなのかどうなのか、強硬に反対を貫こうという、そういう空気ではないのかどうなのか、慎重というのはあくまでも読んで字のとおりの意味合いを持った、そういうふうにわれわれは受けとめていいのかどうなのかということで、いま御答弁があったことに連動していくんではないだろうかというふうに私は判断をしたいと思うんですが、その辺はいかがでございましょうか。
○国務大臣(園田直君) いま与党内で御理解を求めている段階でありますから、私の発言は非常に微妙に響くわけでありますけれども、党内の方々の大部分の御意見は、反対ということではなくて、長きにわたる条約であるから、国民もほかの国々も納得するようにやれといういわゆる慎重の御意見の方々が多いようで、そういう意見も承りつつ努力をしているところでございます。
○渋谷邦彦君 この問題、また次の機会にと思っておりますから、次に移ります。
 一番、われわれがその日中問題と同様に大きなウエートを置きながら関心を持っているのは、やはり日ソ漁業交渉の成り行きだと思うんです。これも伝えられるところでありますけれども、外務省でも当然その事実関係については掌握をされておられるんじゃないかと思いますけれども、さらに最近新しい区域にサケ・マス禁漁区を設定しようという、しかも中川さんが訪ソするその直前に、いやがらせとも思うような、歯どめをかけようというような趣があるのかどうなのかわかりまんけれども、そういうようなことを発表する。非常に成り行きは、前回にも私申し上げておりますように、楽観を許さない。もしどうしても今回設定しようとしている禁漁区域が広がるといたしますと、北海道を初めとするサケ・マス漁業に携わる漁民というものは壊滅的打撃を受けるであろうということは専門家ならずもこれは一様に考えられる方向ではないだろうか。
 果たして、今回、中川さんが行かれてどういう交渉をされるか予測もつかないわけでありますけれども、こうした一連の関係がこの日中条約に絡みがあるのかどうなのか、暗に牽制をしようとする一つの趣ではないだろうかという、またよけいな勘ぐりをしなければならない新しい事態の発展、そういう点についてはいま外務省としてはどういう分析をされて、側面的にやはり中川さんの訪ソに対しては応援もしなければならぬというお立場にあるだけに、その辺はいろいろな細かい分析を加えて外務省も協力しながら今回の交渉に臨まれるんだろうと思うんですが、その辺の先行きの見通しはどのようにお受けとめになっていらっしゃるでしょうか。
○国務大臣(園田直君) 農林大臣とはよく連携をし、よく相談をいたしておるところでございます。中川農林大臣が今度出発をして三日間向こうで折衝するわけでありますが、これに対する見通しは出発直前でありますから私はお答えすることを避けますが、いずれにしても、また出発直前には二人で会ってよく相談をして出発をしてもらうことにしております。が、一方には、いまおっしゃいましたような、北海道の大部分の方々が非常な注視をして見ておられる漁業交渉、もう一つは、絡むか絡まぬかわかりませんけれども、日中交渉に絡まれないようにこれをやっていこうというのが私の考え方でございます。
○渋谷邦彦君 また、この日ソ漁業交渉の問題については、いずれ交渉を終えて帰ってこられる中川さんのいろんな報告、政府答弁等もございましょうから、そうしたことを踏まえつつ、また次の機会に改めてお伺いをさしていただきたい、こう思います。
 で、もう一つ、これはすでに申し上げてありますが、昨日、大阪のロイヤルホテルにおいてマンスフィールド大使が講演をされた経過がございます。その内容をこう見ておりますと、やはり大変アメリカの日本に対する考え方というものは厳しい。要するに一月、二月の経常収支を見ても依然として大幅な黒字、要するに黒字が少しも減ってないということになると、アメリカ議会筋あたりにおいても、保護政策をとらざるを得ないそういう方向に踏み切らざるを得ないんではないかという警告を発しておられる。もう事態が決して日本としては楽観できない、あるいは非常に日米経済関係においても危険な状態がこれから展開されるんではないかというおそれ、そうしてまた、きのうかおとといかわかりませんけれども、アメリカの下院国際経済委員会ですか、その小委員会で、やはり商務次官補だとか、そういうメンバーが公聴会に呼ばれて、それでやはり危険な状態にある、そう簡単に黒字減らしなんということはできないだろうというような発言をして注目をされている。これはマンスフィールドの発言と非常に軌を一にする表明ではないかというふうに感じられてなりません。しかも、円高はますます、一体、どの時点で歯どめができるんだろうかというその先行きの見通しもつかない、こういう一貫した一つの流れの中で、相当やはり敏感に外務省としても、それに対応する一つの考え方というものを日米折衝の中においてこれからも積極的に取り組まなきゃならぬことは言うまでもありませんけれども、今回の一連のこうした一つの動きに対して、どのように判断されておられるのか。そしてまた同時に、その判断に基づいた対応策というものはいまどういうふうにお考えになっていらっしゃるのかをお尋ねをしておきたいと思います。
○国務大臣(園田直君) 御承知のとおりに、在日米国大使のマンスフィールド氏は、長年議会に席を有した経験豊かな政治家でありまして、たびたび、いままで数回要務のために米国に帰っておりますが、その際には、絶えず集会あるいは議会等に行って、米国は日本の立場をもっと理解せよ、日本はこういう立場にある、日本に黒字減らしを要求するからには米国もそれだけの責任を果たせなどという、日本に非常に好意的な演説あるいは努力をしてきた方であります。そのマンスマイールド氏がいまおっしゃいましたような発言をしたことは、確かに米国内の厳しい実情を認識をして、これに警告を与えたものだと思い、私も先生と同じように政治家として、マンスフィールド氏の発言の内容、心中等については十分理解できるものがございます。
 政府としては、数回、会合を繰り返しつつ、黒字減らしその他の努力をしているところでありまして、内需の拡大、輸入の促進、いろいろ具体的に努力をしておりまするし、また牛場国務大臣は近くこのために出かける準備等もしておるところであります。日米首脳者会議等においてもこの問題が出てくるだろうという準備を必死にやっておるところでございます。
 そこで、私個人の感じを申し上げますと、黒字減らしを具体的に数字を挙げてどうこうやるということはなかなかむずかしいし、また、それだけを米国が求めておるのではなかろう。将来にわたってどのような展望で、どのような計画でいくかということ、それから黒字減らしと同様に、同等以上に、ただ乗り論というのがありますが、どうも日本の方ではただ乗り論というと、防衛のただ乗り論ばっかり言われておりますが、そうではなくて、日本が現在持っておる経済力で貢献すべき世界に対する義務を果たさない、こういう意味のただ乗り論の方が強いんじゃないかと私個人は判断をいたしておりますので、黒字減らしだけではなくて、国際機関に対する責任の分担あるいは各国に対する経済的な貢献、こういうものをもっと意欲的に伸ばしていく。まず数字の前に、日本の努力を信頼されることが大事だと、こういうふうに考えて、せっかくいろいろ努力をしているところでございます。
○渋谷邦彦君 最後に一問。
 日本とイラクの文化協定を細切れできょうはお尋ねしておるわけですけれども、先日もあらあらお尋ねをしたところでありますが、この種の文化協定はまことに結構だと思うんです。日本がいま世界平和へ貢献し得るものは何かと言えば、文化交流であり経済交流であることは論を持たないところであるわけです。ただ、こうしたせっかく理想的な条約が結ばれましても、日本の方がどちらかというと受動的であるそういう姿勢をこの機会に改めて、特にこの中東地域あるいは将来結ばれるであろう諸国との文化協定などにつきましても、積極的に文化交流の推進というものを具体的に図っていっていただきたい。
 いままでの経済交流を見ましても、約束はしてくるけれども、もう二年も三年もたって少しも実行に移していないというその経過があるわけです。これではやはり日本に対する認識も評価も落ちるでありましょうし、国際信義にももとるというようなことにまで発展しかねない。そういう観点に立ちまして、せっかく今回締結されるこの種の文化協定については、これこそじみちな日本の一つのあり方として推進をしなければならない問題でありますだけに、その辺の政府としての見解をこの機会にお伺いをして、私の質問を終わりにしたいと思っております。
○国務大臣(園田直君) いまイラクとの文化協定の締結をお願いをしておるところでありますが、この本協定を実施するための特別の予算は組まれていないわけでございます。文化交流というものが非常に重大であるということは、年々、日本の方でも、また世界各国でもこれ重要視されてきているところであります。そこで、この文化交流のために御承知の国際交流基金がもとになってやっておるわけでありますが、逐次、基金をふやして拡充していくとは言いますものの、この基金が満額になるまでは金利というものは非常に少ないわけでございます。そこで、いままでの予算では、基金をふやすことばっかりやっておりまして、そのわずかの金利でやっているものでありますから、いろいろ考えましても実行が伴わない、こういう根底に大きな問題があるわけでありますから、この基金が満額になるまでは予算的に何らか措置をして、経済交流、技術協力、いろいろな面の一番スタートは交化交流でございますから、そちらの方へ実行を意欲的に移すためには、基金の金利だけではなくて、当分の間は余分の予算をつけるべきではないか、このように考えているところでございます。
 そこで、経済協力とか文化交流のための基金というのは、先ほど私が申し上げましたような、日本が世界に貢献する一つのバロメーターになるわけでありますから、補正予算が出る場合には、これは緊急のものと考えて、そういうこともお願いしようと、いまだんだん検討しておるところでございます。
○立木洋君 ILO条約に関連してお尋ねしたいのですが、先ほども指摘のありました便宜置籍船の問題ですが、非常にこれは問題があるということは大臣自身お認めになっているところですけれども、最近におけるわが国商船隊の中で邦船と外国用船の船舶量の比率、どういう推移になっているかお答えください。
○説明員(山元伊佐久君) 五十二年の六月末現在でございますが、日本商船隊の構成比率は日本船が五三・七%、外国用船が四六・三%になっております。
○立木洋君 大臣、この便宜置籍船が国会でも取り上げられて、この問題について何とかしなければならないということが言われてからもう大分月日がたっているわけですけれども、この間、いまの外国用船の推移、邦船との比率を見てみますと、四十八年には三七%だった、四十九年に四〇%になった、五十年に四三・七%、五十一年に四四・九%、そして五一二年には四六・三%、だんだんだんだん減るどころかふえているんですよ。
 それで、この問題について、先ほど大臣は便宜置籍船というのは非常に問題がある、運輸省とも相談をして何とかしなければならないという御趣旨のお話がございましたけれども、昨年も、鳩山さんが大臣のときに私お尋ねして、鳩山さんも、この便宜置籍船については大変な疑問を持っておる、この点については何とかしなければならないというお話があったんです。ところが、そういうお約束があっても、結局はだんだんだんだん便宜置籍船がふえておる、この点、大臣、一体どういうことなんでしょうかね。
○国務大臣(園田直君) だんだんふえているということは、結局、日本の海運業を取り巻く環境というものが厳しい、そこでそれを逃げるためにこういう方向に日本の船が逃げていっているというのが一番大きな問題だと存じます。そこで、田中先生の御発言にもありましたとおり、海運業の基本問題について、この際、政府としては検討をし、改めてこの環境をつくらなければ、ほうっておけば民間企業でありますから依然としてふえていくというふうに考えるわけであります。
○立木洋君 それはいままでも数年来言われてきたことなんですけれども、いつごろまでにそういうふうな見通しがきちっと立つような対策をお考えになりますか。
○説明員(山元伊佐久君) 最近、わが国の外航海運を取り巻く環境が非常に変わってきております。特にオイルショック後におきましてはタンカーを中心といたしまして船腹が世界的に過剰な状態になっているということ。それから午前中もお話が出ておりましたように、日本の商船隊の国際競争力が非常に弱くなってきておるという点。それから三番目には、いわゆる南北問題、東西問題等、いろいろ国際的な海運において従来と違った動きが出てきている。
 こういうふうに環境は非常に変わってきておりますので、一昨年の十一月に、運輸大臣から諮問機関であります海運造船合理化審議会に対しまして長期的立場における外航海運政策いかんという諮問が発せられまして、現在、海造審におきまして基本的な外航政策につきまして鋭意検討が加えられているわけでございます。その中に、当然、国際競争力をいかにして回復するかという問題も含まれているわけでございまして、各委員の先生方に熱心に検討をしていただいておりまして、ことしの夏ごろには、一応の方向づけをしていただきまして、年内には御答申をいただきたいというように考えております。
 これと並行いたしまして、労使の間におきましても、一年半ほど前から、船長政策協議会というものをつくりまして、労使双方ともこのままの状態では日本海運の在立が危なくなるという意識を持ち出しまして、現在、労使で真剣に労使間の問題が検討さてれおりまして、その結果、今後労使の立場において打開の方策が児出されることになろうかと思います。
 なお、便宜置籍船問題につきましては、先ほど外務大臣からもお話がございましたように、IMCOなりあるいはOECDでも鋭意検討が進められておりまして、特に一定の基準以下の便宜置籍船につきましては問題視されておりまして、これについての安全対策をいかに強化するかということが議論されているわけでございまして、この便宜置籍船問題は、単に日本だけがどうこうということでなくて、国際的に解決されなければならない問題かと思いますので、関係各国においてそういうIMCOなりOECDの場を通じて合意されたことについて逐次実行に移され、安全性が高められるということが期待されている実情でございます。
○立木洋君 事実上、便宜置籍船というのがいわゆる悪と言われるような状態、この問題については、山元さんでしたかね、前回私がお尋ねしたときもお答えいただいたんじゃないかと思うんですけれども、あのときも日本の商船隊の構成をできる限り日本船舶の船で、しかも日本の技術の高い船員が乗務している船によって構成されることが一番望ましいということをあなたが私にお答えくださったと思うんですよ。現実にはそうなっていないわけですね。
 条件の変化だとかというふうな、国際的な環境が厳しくなっているというふうなことも言われましたけれども、前回、私が質問したときに、これは同じく鳩山さんが大臣のときにお答えいただいたわけですが、国際的にもやはり十分に協議をして国際的な規制措置ということももちろん検討してほしいという要望をしたのについて、御指摘の点は大事な問題だと思いますので、関係の当局とも努力いたしていきたいと考えますという御答弁をいただいているわけです。ことしの二月に政府間海事協議機関が開催されたと思うんですけれども、そこで日本側としては便宜置籍船の問題について何らかの提案をしたんですか。
○説明員(山元伊佐久君) 日本側としては特別な提案はいたしておりませんけれども、その便宜置籍船問題についてどのような問題が存在するか、それをいろいろと検討してみようということが各国の間で話題になっている状態でございます。
○立木洋君 大臣、結局、先ほど言いましたように、大変な問題になっている便宜置籍船の問題について、鳩山さんはいまは大臣をやめられて今度園田さんがなられた、で鳩山さんは国際的な規制の問題も重大問題だから関係当局と相談をして努力したい、そういう努力をしたいということを約束されたのは去年の四月ですよ。で、ことしの二月、そういう政府間海事協議機関というのが開かれているわけですね。しかし、日本側は何も述べていない。そして努力しますということを国会ではお話しになるけれども、何一つ努力されていないということでは、一体、本当にやってもらえるのかどうかということを疑わざるを得ないような事態にまでなるわけですね。この点、大臣のお考えをはっきりとさしておいていただきたいんですがね。大臣、お答えくださいよ。
○国務大臣(園田直君) ただいま安全性その他について話し合いを進めておるところでございますが、さらに、ただいまの御指摘はそのまま受けまして具体的に努力をいたします。
○立木洋君 大臣、また努力いたしますと言って、また大臣がかわるとまた前の経過がわからなくて、またそのとき努力しますということじゃ、この便宜置籍船というのは大変な問題ですから、本腰を入れてやっていただきたいし、運輸省の方も特に努力をしてもらわなければ私は困ると思うんですよ。その点は強く重ねて要望しておきたいと思うんです。
 最後に一問。イラクとの文化協定に関連して、エネルギー危機の問題が起こってから、中東アラブに対する外交の姿勢というのは若干日本政府としても考えざるを得なかった点があって、いろいろとその後中東アラブに対する積極的な考え方ということをお持ちになるようになったと思うんですが、現在の中東情勢について、どのようにお考えになっておるのか、そして日本政府として何がなし得べきなのか、何を行ってはならないのか、その点だけを端的にお答えいただいて、私の質問を終わりにしたいと思います。
○国務大臣(園田直君) ただいま中東で行われておる和平工作は、紆余曲折、いろいろな問題が起こって必ずしも甘い見通しはできません。しかし、何とかしてこの和平工作が成功し、中東地域に平和が来るように念願をいたしております。
 これについて日本がなすべきことは、中東和平工作というものが進みやすいように協力をすること、それから非産油国に対する経済的な協力、それからまたEC、米国等に対する連絡ということが日本のやるべきことだと考えておりますか、注意しなければならぬのは、イスラエルとそれからアラブ諸国との対決を、それをそのまま進めていくようなかっこうではなくて、イスラエルの面目も立てながらこの和平工作がうまくいくようにということを考えなければならぬことだと考えております。
○和田春生君 きょうは、条約関係にしぼって大臣にお尋ねしようと思っておったんですが、けさほど来の質疑を聞いておりまして、最初に運輸省当局に確かめておきたいことがあります。
 それはILOの第百三十四号条約の批准と関連いたしまして、国内法制面について船員労働安全衛生規則の法律化の問題です。一昨日も、私はこの問題について具体的にいろいろお尋ねをいたしたわけですが、そのときも船員中央労働委員会に責任を転嫁しちゃいかないということを言っておったんですが、けさからも何回も、労働安全衛生法をつくるという面について船員中央労働委員会に問題があるような御発言があったんです。船員法によれば、確かに船員法の施行並びに命令の制定等に関する問題については行政官庁の諮問に応じて船員中央労働委員会が調査審議するとなっている。そこで、お伺いするんですが、船員労働安全衛生法を制定をするという問題について、どういう諮問を運輸省はしたんですか、労働委員会に。
○政府委員(高橋英雄君) 船員中央労働委員会におきまして、船員法の改正問題につきましては、従来の経過は、諮問をはっきりいたしたというかっこうではなしに、船員中央労働委員会独自におきまして今後の船員法の改正についていろんな問題があるということで検討が始まりまして、その中で労働安全衛生法というものの制定の必要があるんではないかというふうな意見も出まして、その際、役所側としてもその問題に関与をいたしたわけでございまして、私どもの方から船員中央労働委員会にはっきりとした形で諮問をいたしたという経緯は従来はなかったように聞いております。
○和田春生君 なかったように聞いているんじゃなくて、諮問をした事実はないはずです。で、条約の批准が問題になり、陸上一般には労働安全衛生法が成立をしている。おとといも申し上げましたように、船員関係については規則のままであって、運輸省が責任監修した法令集にさえも載っていないという状況ですね。その中で、これを法律としてもっと体制を整備しろと強い要求が出ているにもかかわらず、諮問をしていないということは政府が何らのイニシアチブを発揮していないということになるんです。
 何かと言うと、船員法を盾に引き合いに出しますけれども、行政官庁の諮問に応じて調査審議をするというふうになっているんです。ですから、運輸省が労働安全衛生法の制定について、これをどうしたらいいか、内容についてはこうこうどうだということを諮問して、船員中央労働委員会でいろいろ議論が分かれてなかなか結論が出ないということであるならば、労働委員会の審議の結果というものを持ちたいということも、時期的な関係もありますが、ある意味では説明材料になる。何にもイニシアチブを発揮していない、諮問もしていない、そしてその問題が国会で質疑に出てきますと、船員労働委員会で意見がまとまらないからというのは、まさに船員中央労働委員会を隠れみのにして行政官庁の責任を放棄していると言われても私は弁解できないと思う。そういう態度に終始するんなら、一遍、船員中央労働委員会の会長をここに呼んできて、並べておいて確かめたいと思うんですが、いかがですか。
○政府委員(高橋英雄君) 私どもといたしましては、従来の経過はそういうことで、審議はある程度行われたけれども、正式に諮問という形ではなかったということで今後の問題でございますけれども、やはりたてまえ上はどうしても船員中央労働委員会の意見を踏まえながら検討しなければならぬと思います。
○和田春生君 諮問諮問、聞いているのは。
○政府委員(高橋英雄君) はい。そういうことでございますので、われわれとしては、諮問をするという問題について改めて考え直して前向きにやっていきたい、かように考えております。
○和田春生君 同僚各委員の皆さんからも再々指摘されたわけですから、単に前向きという言葉で韜晦するんではなく、それはもう運輸省の責任においてぜひ取り組んでもらいたい。今後また場所を変えて、その問題については審議を続けたいと思います。
 それで、今度は大臣にお伺いをするわけですが、いま議題に供されている百三十四号条約と同じ七〇年の第五十四回総会において第百三十三号条約が採択をされているわけであります。これは御承知のように設備に対する補足条約であります。すでにこの条約を採択してから八年たっているわけですが、これがいまだ承認に関する手続が国会にとられていない。その理由は一体何かということを、まず外務省の方に伺いたい。
○説明員(小林俊二君) この問題につきましては、まだ主管官庁の方から国内体制及び法制上の問題、実態から見まして批准の段階に達したという御通報を得ていないというところが具体的には批准の手続に至っておらない理由でございます。
○和田春生君 外務省は、じゃ所管官庁の方から何も言ってこないからと言うんですが、この百三十三号条約についても、これは日本は全員賛成しているんです、賛成して成立をさせているわけです。その条約について言ってこないからという形では、まるきり責任官庁の外務省としては無関心もはなはだしいわけですし、言っていかないとすれば、一体、運輸省は何をしておるんですか、ひとつ両方でそれぞれ答えてください。
○説明員(小林俊二君) この百三十三号条約は、現在までのところ、批准国が十一カ国で、いまだこの時点においては発効いたしおりません。したがいまして、各国とも、それぞれ国内的にその整備の手続の必要があって批准がおくれているものであると考えます。この問題につきましては、当然、この百三十四号条約とも関係の多いことでございますので、所要の国内措置につきましては所管官庁において手配をして検討を進めておられるものと考えております。
○和田春生君 大臣、お尋ねいたしますがね、いつも条約の論議になるとそういう答弁が出てくるんですが、まだ発効いたしておりません、検討中であると言うけれども、じゃ世界じゅうの国が条約がまだ発効していないからというて様子を見ておったら、その条約はついに発効しないわけですよ。世界最大の海運国として多くの船員も抱えている、しかも先進海運国で公正基準を打ち立てていこうという場合には、日本としての責任があるはずなんです。よそが全部批准をして発効を見てからそろりとついていこうかなんていうことでは、これはやはり国際的な関係においても日本の信用上決していいことではない、名誉なことでないと思うんですが、そういう根本的な態度についてどうお考えですか。
○国務大臣(園田直君) 御指摘のとおりでありまして、一言の弁解もございません。今後、注意をいたします。
○和田春生君 外務省の方に所管官庁として何にも言っていないというのは運輸省はなぜですか。この総会には運輸省関係からも行っているわけですね、代表団。賛成したんです。
○政府委員(高橋英雄君) 賛成をした条約が直ちに批准できるかどうかという問題は、ILOの条約につきましては外務省からもお答えがございましたように、その時点で必ずしも国内の法制の整備が直ちにできるかどうか疑問がある、あるいはわが国の海上労働の実態に必ずしもそぐわないような点が多少あるにしても、全体の趣旨としては一般的に妥当であるというふうなものにつきましては、ILOの場合には加盟国が大体賛成するというのが一般的態度であるというふうになっておるわけでございまして、したがいまして、賛成はしてまいりましたけれども、その時点でいろいろと問題があるという点は変わらないわけでございまして、目下、これらにつきましても検討しておるというふうな段階でございます。
○説明員(小林俊二君) 先ほど私の御答弁申し上げましたことが若干舌足らずであったと思いますけれども、私がこの条約百三十三号がまだ発効していない、批准した国が十一カ国にすぎないということを申し上げましたのは、わが国として各国の様子をうかがっているということでは決してございませんで、百三十四号が発効しながら、こちらの方が批准国がまだ十一カ国にとどまって、そのために発効していないというのは、それだけに国内的に手当てする面が各国とも多いということを御了解いただきたいと思って申し上げたことでございます。
○和田春生君 しかし、いま運輸省の方からも言っているわけでありますけれども、すでに八年間たっているわけです。その間に、外務省はもとより、主管官庁としても何らのイニシアチブがとられていないということははなはだ問題である。こういう点について外務大臣も国務大臣といたしまして積極的に取り組むというふうにしていただきたいと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(園田直君) そのとおりにいたします。
○和田春生君 最後の質問は、便宜置籍船の問題がしばしば取り上げられてまいりました。しかし、これは国際的な海運の習慣ないしはいろんな趨勢からいって便宜置籍船を一掃するということは言うべくしてなかなかむずかしい。問題は、公正基準を守らして、不当な競争あるいは運賃ダンピング、海運市場の撹乱というようなことを行わせないようにしなければならない。単に賃金の水準だけではなくて、国内の法制とか税制あるいは労働基準、訓練、安全衛生、いろんな面において国際的に比較してみて非常に水準の低いところが安いコストを有力な武器にして海運市場を荒らし回るということははなはだ迷惑なわけであります。そういうことについて、先日来の質疑におきまして、政府側は、海運局あるいは外務当局、また先ほどは外務大臣からも関係各国と協力をし問題の解決をしていこう、便宜置籍船というようなものはいいと思っていないので、それを規制する方に努力したいという御答弁がございまして、大変結構だと思います。
 そこでお伺いをするんですが、一九七六年の第六十二回総会において商船の最低基準に関する条約が採択をされました。これにも日本は賛成をいたしております。この条約は、言うまでもなく、便宜置籍船に関しまして国際的に長い経緯がありますが、時間がありませんから省略いたしますけれども、踏んまえて前に提案もあった。それを条約化することが過半だという形で条約として採択をされたわけです。条約として採択をされてから二年たちます。この承認を求める件について政府はどういう準備をいたしておりますか、これをお伺いしておきたい。
○政府委員(高橋英雄君) 先生御指摘になりました商船の最低基準に関する条約でございますが、現在、わが国の法制の上では、この条約の要求しております基準はほぼ満足させているのではないかというふうに思いますけれども、詳細についてはまだ具体的にはわからないというので、諸外国の例等も参照にしつつさらに検討が必要ではないかというふうに考えております。
 また、さらに、この条約を批准いたしますと、日本に入港します外国の船舶、この中には御指摘のような便宜置籍船等も入るわけでございますけれども、そういった船舶に対し一定の安全等の基準が守られていない場合には是正措置を行うというふうなことがあるわけですけれども、一体、どの程度のときにその是正措置をやるのか、その具体的な基準というものが実は非常にあいまいといいますか不明確でございますんで、この辺の点についてさらにわれわれとしては詰めなけりゃいけない、かように考えておるわけでございます。
○委員長(安孫子藤吉君) 大臣の時間も迫っておりますので……。
○和田春生君 大臣、ひとついまの問題の条約、百四十七号条約、商船の最低基準、これは先ほど大臣も言われましたまさに便宜置籍船の国際的な規制に関する条約なんですから、前向きに検討するということを百回繰り返すよりも、この条約について日本が積極的に批准または条約の発効のために努力をするということが具体的な声だと思うんです。そういう点について御所見を承っておきたいと思います。
○国務大臣(園田直君) 関係各省とも積極的に相談をして、御指示のとおりになるべく早く取り進めます。
○委員長(安孫子藤吉君) 他に御発言もないようでありますから、質疑は終局したものと認めます。
○委員長(安孫子藤吉君) 次に、国際協力事業団法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。園田外務大臣。
○国務大臣(園田直君) ただいま議題となりました国際協力事業団法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 まず、この法律案の提案理由を御説明いたしますと、政府は開発途上地域の経済及び社会の発展に寄与する見地から、無償資金協力の一図効率的な実施を確保するため、今般新たに国際協力事業団に、技術協力と密接に関連する無償資金協力の促進に必要な業務を行わせるものであります。
 次に、新規業務を御説明いたしますと、この事業団は、条約その他の国際約束に基づく技術協力またはこれに密接な関連性を有する事業のための施設の整備を目的として行われる無償資金協力の実施の促進のため、調査・あっせん・連絡その他の必要な業務を行うことであります。
 このほか、新規業務に関する主務大臣は外務大臣となることを定めております。
 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。
○委員長(安孫子藤吉君) 以上で説明は終わりました。
 本案に対する自後の審査は後日に譲ります。
 三時まで休憩をいたします。
   午後二時二十八分休憩
     ―――――・―――――
   午後三時六分開会
○委員長(安孫子藤吉君) ただいまから外務委員会を再開いたします。
 在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案につきましては、すでに趣旨説明を聴取しておりまするので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○渋谷邦彦君 ただいま議題となりました件につきまして、本日は残念ながら外務大臣の御出席がいただけません。したがいまして次回に相当量留保さしていただきながら、時間の許す限り、主として政務次官を中心にお尋ねをさしていただきたいと思っております。
 日本のこれからの外交戦略といいますか、また、外交の基本的な方針というものについては、もうすでに稲田総理、園田外務大臣等によってその趣旨というものが一応お示しをされました。要約いたしますと、今後、資源外交というものに重点を置きながら、目まぐるしく変動する外交というものを強力に推進していきたいという意味のことが述べられたと記憶をしております。
 そこで、問題になってきますことは、その先頭に立つであろう外務省の現在の機構あるいは機能というものが果たして十分であろうかどうであろうか。と同時に、特に在外公館における役割りというものは一体どこにあるのかということについて、まず政務次官にお尋ねをしたいと思います。
○政府委員(愛野興一郎君) 外務省の定員あるいは機構等が満足すべき状態でないということは、これははっきり申し上げることができると考えております。ただ、鳩山前外務大臣もおられますが、年々漸増はしていただいておるわけでありますけれども、少なくとも今日この外交課題をたくさん抱えておるわが国としては、まだまだ定員、機構ともに不十分であるという認識に立っております。私どもといたしましては、ぜひひとつ大蔵御当局あるいは行政管理庁御当局に御理解をいただいて、そうして堅実に着実に定員あるいは機構等をふやしていきたいという念願を持っておるわけであります。
 また、在外公館の役割りいかんということでありますけれども、これは今日わが国の在外公館が経済外交といい資源外交といい文化外交といい、言うなればその触覚的役割り、さらにはまたわが国の意思そのものを働かしていく機能を有することはもちろんでありますから、もっともっとそういった意味では充実強化をしていかなければならぬ、そういうふうに考えておるところであります。
○渋谷邦彦君 いまお述べになりましたように、現在の時点では満足すべき状態ではない、確かに年々少しずつはふえているかもしれませんけれども、それで政府がいま掲げている方針に基づいた外交政策の展開というものが可能であるかどうかということになりますと、これは事実上不可能と言った方が決して言い過ぎでないくらいのいまそういう障壁にぶつかっているんではあるまいかというふうに思えてなりません。
 ならば、その解決の方途として、なるほどいま大蔵省だとか行政管理庁あたりにも協力をしていただきながらというくだりがありましたけれども、果たしてそういう関係だけの話し合いで予算の措置がなされたからということでいいのかどうなのか。もっと強力な政府としての判断に基づいた考え方をもとにして取り組まなければ、この問題の解決は一向に進まないというふうに私自身は理解をしておりますけれども、いかがでしょうか。
○政府委員(山崎敏夫君) 外務省が年々予算を要求するに当たりまして、外交実施体制の整備強化ということを重点事項として掲げております。そしてこれは政府の方針にもなっており、また自民党に御説明いたします場合にも、そういうことを申し上げており、また各方面で御理解をいただいておるわけでございます。その意味で政府全体としても外交実施体制の整備強化ということを図るということは全くコンセンサスがあるわけでございます。
 ただ、実際問題といたしまして、ただいま政務次官からもお話がありましたように、予算あるいは人員上の制約から、必ずしもわれわれが期待するほどには伸びないというのが実情でございます。
○渋谷邦彦君 政務次官は、大変失礼ですけれども、本名の職員は何名いらっしゃるか御存じですか。
○政府委員(愛野興一郎君) 五十二年度末で千五百二一二名、五十三年度査定を受けた後で年度末の定員は千五百三十五名になる予定でございます。
○渋谷邦彦君 在外公館に勤務する職員の数は御存じですか。
○政府委員(愛野興一郎君) 五十二年度末千七百三名、五十二年度末千七百七十六名になる見込みであります。
○渋谷邦彦君 その中で各省から派遣されているアタッシェの数は何人いるか御存じですか。
○政府委員(山崎敏夫君) 総数二百七十名でございます。
○渋谷邦彦君 いま政務次官お聞きになったとおりです。私は数を知っておりますよ。政務次官は少なくとも外務省の政務を担当される副大臣というお立場です。本当にいまの外務省の窮状というものを理解するためには、そういうやはり細かい点に至るまで御承知おきをいただかなければ手の打ちようがないんじゃないでしょうか。
○政府委員(愛野興一郎君) いまの御意見はまことにごもっともでありまして、予算の際にブリーフを受けたときにも確実に数字を聞いておるわけでありますから、十二分にのみ込んでおかなければならない、こういうふうに考えております。そういう意味では、今後、十分反省をしていかなければならぬ、こういうふうに考えております。
○渋谷邦彦君 特に、出先において活躍をされる外交官の方は、一理事官あるいは外交官補に至るまで、これは日本の顔だと私はそう理解しております。それだけに過酷な仕事の量で思う存分の外交活動ができないとするならば、これは政府の基本的な方針にももとるということになることをわれわれは非常に心配するわけであります。
 たとえばいま在外公館は百幾つあります。その中で一館当たり平均四、五人というところが相当数に上るんです。この実態を踏まえたときに、果たして外交活動というものができるとはお思いにならないと私は思うんですがね、いまそういう実態なんです。先ほどもイラクの文化協定が議題になりました。前回にも私申し上げました。せっかくこうした文化協定なり経済協力というものの約束ができましても、具体的にそれを推進していく役割りは、大変ときにはじみちな仕事を押しつけられる外交官であろうというふうに思うんですね。にもかかわらず、特にこれから日本としても、重大な関心を払っていかなければならない、たとえば中東地域に例をとるまでもなく、余りにも背筋に寒いものを覚えるわけです。仮にその館員のうちで一人病気になって倒れた場合に、一体、どうして補充がつくんだろうか。もうその辺から後手後手になる日本外交というものの手詰まりというものが目に見えてくることは、だれが見ても明確に理解できる現象ではあるまいか。
 そうした点をどうお考えになって、どういう一体これからの計画に基づいて、先ほど冒頭にお述べになった整備強化をお図りになろうとする計画をお持ちになっていらっしゃるのか。
○政府委員(山崎敏夫君) 仰せのとおり、最近、国際関係はますます各様化してまいり、また国際的な権力構造も多極化してまいっておりまして、外務省がカバーしなければならない分野がますます広がってきております。その意味で在外公館の機能の拡充が非常に必要な次第でございます。しかしながら、外交というものは、結局、人によるわけでございまして、その人の質と量の拡充ということがわれわれとしては最大の急務になっておる次第でございます。
 外務省としては、定員の拡充につきましては従来から努力してまいりました。ただ、残念ながらまだ十分なレベルには達しておりません。外務省は、昭和四一九年に、外務省の定員の拡充長期構想というものを打ち出しまして、定員五千名を長期目標として段階的にその実況を図るという考えを持って努力してまいっておるわけでございます。この五千名と申しましても、実は、各国と比較してみますと、アメリカやイギリスやフランスや西ドイツにも及ばず、イタリア並みなのであります。しかし、この目標といえども実は達成は容易でない次第でございますが、この点は、関係省庁の御理解と御協力を得て、逐次、その目標に近づくように努力してまいりたいと考えております。
○渋谷邦彦君 政務次官、いまお聞きになったとおりなんです。われわれはもう何年も前にこのことを知っているんです。少なくとも私が外務委員会に所属をいたしましてから八年余り経過しております。この在外公館設置にかかわる問題が起こるたびごとにこのことを強調してきたつもりでありますけれども、今日に至るまで残念ながら一向に改善された跡がないんです。そしてその仕事の大半は出先の外交官に、極端な言い方をすれば、押しつけられたようなそういう重圧の中でやっていこうということになれば、人間の能力にも限界がございますよ。あたら有能な人材をしぼましてしまうというようなおそれだって、いろいろ考えてみれば、なきにしもあらずだと私は思います。
 愛野さんは政務次官になられてまだ日も浅いという、これは理由にならないと私は思います。やはり外務大臣を補佐するそのお立場が政務次官である以上、やはり本陣がどうなっているのかということは十分わきまえた上に立って、そして外務大臣と表裏一体になった言動というものをおとりになることが私は当然だろうと、何も説教がましいことを申し上げたいというつもりで申し上げているのではございません。ですから、百年河清を待つような状態で、いまこの段階でこうした問題提起がなければ、これから五年先、十年先、二十年先いっても同じ轍を相も変わらず踏んでいくのであるまいかということを非常に心配するんです。
 いま山崎官房長はせめてイタリア並みということを言われた。いま本省と在外公館の職員は合計いたしますと三千三百十一名です。その五千名にすることすらも大変なんです。一人の外交官を育てるのにやっぱり少なくとも十年かかると私は思います。そんなところてん式にできるものじゃございません。そういうことを十分に知りつつもいままでその手が打たれなかった、あるいは御努力はされてきたのかもしれないけれども、やはり結果論から見れば、その成果が少しも上がらないということは、仮にその努力をされていても果たして本当におやりになったのかという疑問しか残らないということになるだろうと思うんです。各国との比較を考えましても、もうアメリカやソビエトはこれは例外だと思うんですよ、一万人以上いるわけですから。しかも先進国だという誇りを持っている日本が、西ドイツやフランスやイタリアにもおくれをとっているということになれば、これはおのずから機能的な働きを期待しようとしても期待する方が無理だということになりはしませんかということなんですが、いかがでございましょうか。
○政府委員(愛野興一郎君) いまの御所見はまことにごもっともでありまして、私自体、外務省の定員、機構が非常に貧弱なのに実際は驚いておるわけであります。しかし、だからといって何にも努力をしないということではないのであって、予算の時期じゃなくて、通常の段階に関係各省庁あるいは各政党あるいは各機関に外務省の拡充強化のPRをもっともっとやっていかなければならぬ、こういうふうに認識をいたしておるわけであります。いま官房長からも申し上げましたように、昨年の予算の際にも十分お願いはいたしたわけでありますが、なかなか認められなかったというのが実情でありまして、そういう点はさらに私ども努力をしていかなければならぬ、こういうふうに考えております。
○渋谷邦彦君 せっかく御努力をなさってなぜできなかったのかということも本当はお伺いしたいところなんですね。福田さん自身がおっしゃっているんです、日本は貿易立国だ、どうしても外へ活路を見出していかなければならない宿命的なそういう立場に置かれているということを述べていらっしゃる。とすれば、やはり外交というものがその先兵となっていかなきゃならぬことは、そんなことは常識でございましょう。わかっていながら一番大事なところに手当てができない。
 行政改革結構だと思うんです、行政改革も結構だ。余分なところは整理することも結構でしょう。けれども、一番国の将来の命運を決するかもしれない外交という問題を考えた場合に、果たしてそうした行政改革の枠組みの中で外務省も整理をされていかなきゃならぬ、あるいは対象にされたんでは、これはどうにも手足の出ないことになってしまうのじゃないかとぼくは思うんです。その辺については行政管理庁ではどんな御判断をお持ちになっているんでしょうか。
○政府委員(辻敬一君) ただいま御指摘のございましたように、現在の厳しい社会経済情勢あるいは財政の現状にかんがみまして、私ども、広い範囲の行政改革を推進いたしておりますことは御承知のとおりでございます。したがいまして、全体として見ますと、機構なり定員なりにつきまして抑制的に運営する必要があると考えておるわけでございます。
 しかし、もちろん必要な行政需要に対しましては当然これに対応しなければならないわけでございまして、先ほど来、外務省当局から御説明申し上げておりますように、外務省につきましては、国際関係の多様化あるいは複雑化に即応いたしまして、外交機能の強化を図るという見地から、従来から重点的な配慮をしてきているところでございます。
 四十二年以来、五十三年までの外務省の定員の増加は二割以上に達しておるわけでございまして、府省のレベルでは最高の増加率ということになっておるわけでございます。機構の面におきましても、ただいま御審議をいただいております在外公館の増設その他、できる限り配属をいたしているつもりでございます。
○渋谷邦彦君 なるほど各省庁と比較をした場合に二割増ということだそうでございますけれども、行政管理庁としての「(所掌事務及び権限)」という第一項目ですが、「行政制度一般に関する基本的事項を企画すること。」という一項目がございますね。ということになれば、各省庁とのもちろん調整もありましょうし、また、件名から出された部局の増廃設等についても当然審査をおやりになるということも行政管理庁ではおやりになる。しかし、いま答弁にもございましたように、これから激動する世界情勢に対応するためには、行政管理庁として、あるいは外務省からもいままでいろいろな申し入れなり話し合いというものがあったろうと御推察申し上げるんです。そうしたような話し合いを通じて、行政管理庁はその独自の立場に立っても、やはり将来の外務省というものはこうあるべきだ、また、こうすべきではないでしょうかと、直ちに決定しないまでも、そういうような検討というものは今日までなされたことはないんでしょうか。
○政府委員(辻敬一君) ただいまお話のございましたように、私どもの仕事は、各省から機構あるいは定員につきましての要求を受けまして、これに対しまして審査をいたしているわけでございます。外務省につきましても同様でございまして、五十三年度におきましても機構、定員の要求を受けまして審査をいたしたわけでございます。その結果、定員につきましては振りかえの増員を含めまして百五十名の措置をとったわけでございます。その他、機構につきましても、在外公館の問題は別にいたしましても、本省において軍縮課を新設いたしますとか、いろいろな措置をとっているわけでございます。
 先ほど外務省の政府委員からお話し申し上げましたような外務省の将来におきます長期構想と申しますか、そういうものにつきましても外務省から説明を受けまして承知をいたしております。そういうものも参考にいたしながら、毎年の定員あるいは機構の審査に当たっている次第でございます。
○渋谷邦彦君 その審査についての私は具体的なことを寡聞にして聞いておりません、よく知りませんけれども、どんな方法でどういうことをやるんですか。
○政府委員(辻敬一君) 当然のことでございますけれども、定員につきましては、いろいろな資料によりまして、こういうところに幾人要求があるというふうになってまいるわけでございます。それを資料等に基づいて審査をいたしまして積み上げてまいりまして、先ほど申し上げましたような数字を査定をいたしたわけでございます。
○渋谷邦彦君 あくまでも、それは事務的な機能の発揮しかできないというふうに理解をしてよろしいのでしょうか。
○政府委員(辻敬一君) 事務的と申しますか、当然、外務省の要求の背景には政治的経済的な変化の要素、それに基づきます外交機能の強化をどこへ重点的に行うかということを踏まえた上での要求であるわけでございます。私どもも、当然、そういうものを頭に置きまして例年の審査に当たっているわけでございます。
○渋谷邦彦君 ともあれ、もう外務省からもいろんな要望事項が出された、それを検討もした。実際、その検討の段階で、これはもう当然だという判断に立ったのか。もし当然だという判断に立った場合に、次にどういう手が打たれていったのか、いろいろこう常識的に考えられることが出てまいりますね。最終的には政治判断を待つ以外にないのか。なれば、長官もいることでございますから、当然、そのくらいのことは敏速に推進の役割りを果たしても私は一向に差し支えない、一部局であろうと何であろうと。そのように単純に私は考えがちになるのですが、いかがなんですか、その辺は。
○政府委員(辻敬一君) 増員の要求といたしましては、たとえば事項別に申しますと、政務部門、情報部門あるいは経済協力の部門、文化広報活動の部門、領事部門、その他事項別に当然出てくるわけでございます。それから在外公館別に申しますと、アジアの地域でどのぐらいとかヨーロッパ地域でどのぐらいとかアメリカ地域でどのぐらいとか、そういうふうに出てまいるわけでございます。そういう結びつきを考えまして、いろいろな資料に基づきまして、先ほど来申し上げているような審査の結果に到達したわけでございます。
○渋谷邦彦君 じゃ端的に伺います。外務省の要望については、無理だと思いますか、これ一点。
 それから、私が先ほど途中で触れましたように、たとえば中東でもいいし東南アジアでもいいし中南米でも結構です。一館四、五人というような館員でもって十分な機能が果たせると御判断になっていますか。
○政府委員(辻敬一君) 私どもといたしましては、少なくとも当面の問題に関します限り、五十三年度におきましては最善の案である、かように考えております。
○渋谷邦彦君 最善でございましょうか。五十三年度予算の枠組みの中では最善というふうなことになるのでしょうけれども、むしろ予算というものにとらわれずに、将来展望を考えつつ、短期、中期、長期ということを当然考えていかなければならぬわけでございますから、その観点に立ってどのように判断をされていらっしゃるのか。
○政府委員(辻敬一君) 先ほどお答え申し上げましたように、外務省の方で立てておられます長期的な見通しにつきましては私どもも伺っているわけでございます。ただいま委員から御指摘のございましたように、定員問題につきましても、長期的展望と申しますか、あるいは長期的視点と申しますか、そういうものに立ちました検討は当然これは必要であろうと思っております。私どもも定員管理計画というものを持っておりますが、これは内容は定員削減でございますけれども、五十二年度から五十五年度まで四カ年間にわたる計画を立てて、ただいま実施中であるわけでございます。
 ただ、申し上げるまでもございませんけれども、社会経済情勢の変化も激しい昨今でございますので行政需要も非常に流動的でございます。したがいまして、前もって正確に長期的な予測を立てるということ、これはなかなか困難な問題ではなかろうかと考えておるわけでございます。長期的な観点からの検討も含めまして、今後とも、外務省の定員管理が適正に行われますように努力してまいりたいと思っている次第でございます。
○渋谷邦彦君 政務次官、いまお聞き及びのとおりなんです。局長答弁としてはそれ以上のことはできないと私は思いますよ。どうすればそうした隘路が解消できるとお考えになっていらっしゃいますか。これははっきり申し上げて緊急を要するんです。このままでずるずるいっちゃったんではもう日本は立ちおくれるだけだというふうに思えてならないんです。
○政府委員(愛野興一郎君) いまの先生の御意見は外務省としてはもう非常にありがたい御意見であるわけでありますが、私は、いささか私見にわたるかもわかりませんが、外務省から出しておる「外務省の定員」という冊子がございます。そこに各省庁の昭和六年と三十二年とそれから五十二年の定員が載っておるわけでありますけれども、根本的に外務省の数字が非常に基礎が下回っておる。たとえば外務省は昭和六年は三千六百十三名、そうして三十二年は千八百三十四名、こういうふうに減っておるわけでありますが、それは拓務省が昭和六年は含まれておるというが、少なくとも技術協力、経済協力、文化協力、そういったことを考え合わせれば、いまの外務省の仕事よりも昭和六年の時点ではもっと仕事量というものも少なかったであろう、こういうふうに思うわけであります。そういたしますと、まず、外務省に関する限りは、その基礎をひとつ三千六百十二名の方から出発していただかなければならぬのに、終戦による昭和二十一年にどかっと減ったままの数字で、各省庁の伸び率のパーセンテージでいかれるわけでありますから、もう根本的に基礎的に減っておる、こういうふうに私は考えておるわけであります。
 そこで、少なくともその基礎の数字をほかの省庁並みにまず上げていただくというお願いをしなければならないのではなかろうか、こういうふうに考えております。そういたしますと、各省庁とのにらみから上げていくということもわかるわけでありまして、この終戦によってどかっと減った数字を基礎としていかれるわけでありますから、もう勢い、外務省だけ特別にやったといっても、基礎数字が少ないわけでありますから一向にふえない、こういうことになっておるのが一つの隘路であろう、こういうふうに私は考えております。
○渋谷邦彦君 それはお気持ちはわかりますよ。終戦時においてがたっと減らされたそのままで推移してきた、その割合でもってふやす以外には方法がなかった、それはそうでしょう。
 ただ、私、非常にひっかかるところは、各省庁とのバランスという問題ですよ。この各省庁とのバランスというものを考えていったんでは、外務省はいつまでたったって、いま外務省が苦労して願望している方向にはとうてい到達することはできないという結論なんですよ。数字的にはじいたってそうでしょう。比例的に、ほかの省が少し増員した、じゃそれに見合うだけのものを外務省でもふやそうじゃないか。また減らした、それに見合うだけ減らそう。私は、そういう各省とのバランスのらち外に外務省を置くべきじゃないかというぐらいの、極論でも何でもないです。そうでなければ、戦後三十年余りたった現在、外務省の機能整備なんというものは言うべくして絶対にそれはもうできないだろうということを強調したいのです。もう枠外に置いてもらいたい。総定員法の枠だとかなんかに縛られれば、その中でもって操作をするということになったら、どこかはみ出したりということが当然考えられるわけです。それじゃ本当のこれからの外交布陣というものが鉄壁の状態に確立できるのかどうなのか。いまの現状でできるというなら、私は何もこんなことを言う必要はないんです。
 もちろん、次の機会に、園田さんからも政治的な判断に基づいた結論をお伺いしたいとは思っています。しかし、いま具体的なそういう細かい問題にも触れておりますので、少なくともそのくらいのことは考慮の中に入れながら道を開いていかないことには解決はできないんじゃないでしょうかということを申し上げたいわけです。いかがですか。
○政府委員(愛野興一郎君) 御所見はむしろ大賛成でありまして、私も今日の日本の置かれた立場から、外務省は特段のひとつ御配慮を、総定員法とか何とかいうふうなことではなしに、特段の御配慮をお願いしたいという気持ちはもう先生と全く同感であります。
 しかし、それだからといって現実の外交活動をなおざりにしたりすることは許されませんから、現実の定員のままでもできるだけの努力をお願いをしながら、いま先生が言われたような特段の、外務省は特別にひとつ配慮を願いたいということをお願いをしていかなければならぬ、こういうふうに考えておるわけであります。
○渋谷邦彦君 それはそれでいいんですよ。それはもうまた来年になれば、多少でも、また増員できる、また再来年になればこうなるだろうと、まだ機構の内部までぼくはいま入っておりませんのでね。
 しかし、それは、一体、何年を大体目標にしながら計画が進められていくことが望ましいのか。アメリカにしてもソビエトにしてもフランスやドイツにしても、やっぱり時々刻々変わっていくと思うんです。何とか対応しようという観点に立ちまして、それなりのやはり対応策を立てるだろうと思うんです。そんなに一遍に五百人も一千人も外交官が育つわけはないですよ。先ほど私は少なくとも十年はかかるだろう、一人前でもって外交活動がされるまでは。その期間を考えた場合に、相当いろんな方法というものを考えていかなければならぬのじゃないだろうか。
 たとえば先ほども中東方面のことを話題にいたしました。あるいは東ヨーロッパのことを考えましても、まだ疎遠ですよ、はっきり申し上げると、日本の場合は。果たしてそこでの特殊な言葉を話せる人が一体何人いるんだろう。それはブルガリア語でもいいですよ、ルーマニア語でも結構ですよ。あるいは東南アジア地域を見たってそうです。外務省の方から伺ってみても、英語はできても、インドネシアならインドネシアの言語を知らなければならぬという場合もある、そうでなければ人間的なつながりというものはなかなか開けないということを伺っております。そうした場合に、やはり特殊なそういう外交活動をする場合に、言葉を知らないということになりますと、相手の認識と理解というものは当然求め得べくして求められない。ならば、今度は東京には外語大学もあります、大阪にも外語大学があります。そういった学校に働きかけて、こういう言葉の話せる人を特別に養成してもらえないかという連動した一つの働きというものがなされていかなければ、とうていその需要にこたえることはできないだろうという心配も私は出てくるであろう。
 だから、いろんなところから総合して、一体、外交官をどういうふうに日本の顔として育てなければならないのか。これは時間がかかります、金もかかるでしょう。そういう展望に立って、一体、何年後においては、先ほど官房長が言われたように、せめてイタリア並みの五千数百名ぐらいのレベルに達するように持っていくのか。何も人をたくさん集めればいいということを申し上げているんじゃないんです。一騎当千の外交官、それは二人分も三人分もやれる人は当然あるでしょう、日本人は頭脳が優秀ですから。にもかかわらず、やはり今日の激動する世界情勢というものを考えた場合に、いまの状態では余りにも出先に、特に出先で仕事をしていただく外交官としては重圧であろう。思っていても存分な外交活動はできないだろう、そう思えてならないんです。
 もし仮に、各公館には電信士がいると思うんです。恐らくそんな二人も三人もスペアを用意してないだろうと思うんですよ。もし一人の電信士が病気で長期療養しなきゃならぬ、本名に対して公文を発信しなきゃならぬという場合、どないしますか。すべて後手後手に回るであろう。その象徴的なのはオイルショックのときですよ。あのときは大平さんにぼくは言いました。だから、そういうことを踏まえつつ、いまのその体制というものを、政務次官がおっしゃったように、整備もし強化も図っていかなきゃならぬとするならば、どういったところにポイントを置きながら、いまのその中身を充実していかなきゃならぬか。当然、定員をふやしていかなきゃならぬ問題もそれにかかわり合いを持ってくる。そういう枠の中で、一体、これは何年後にはどうしなければならぬかということをどういうふうに考えているのか。それは恐らく官房長やなんかからも、いろんなぼくらが聞く以上に細かくこういう実態だと報告も受けていらっしゃるはずだとぼくは思うんです。ならば、その報告に基づいてどうしなければならないかという一つのビジョンは当然あってもいいんじゃないかと、これを言いたいわけなんです。いかがでしょう、まだこれから五十年も百年もかかりますか。
○政府委員(愛野興一郎君) いまのお話は私どもいろいろとブリーフを受けておるわけでありまして、同時にまた、ブロック別の在外公館長会議でも、さっきの電信の問題にいたしましても、いろんな苦情と申しますか陳情と申しますか、そういった話も聞いておるわけであります。
 そこで、これをひとつ何年度までにできるだけ解消をしていくかというふうな、まだはっきりした年次計画という中長期の計画を実際は持ち合わせておるわけではありませんが、いま先生が言われた意を体して、ひとつ具体的に戦術戦略も含めてこの計画を策定をしなければならぬ、こういうふうに考えておるところであります。
○渋谷邦彦君 私はね、愛野さんを責めるわけじゃございませんよ、誤解しないようにしてください。むしろこんな話をしていることは、これ自体が遅きに失しているという印象をぬぐい切れないんです。
 これから五年先には、大体、このぐらいの願望でもって外務省の体制を整備していきたいとか、あるいは十年後にはせめてこのくらいのレベルまで上げていきたい、行く行くは、二十年――まあ二十年後でもいいと思うんです、いますぐにできることじゃございませんから。せめてイタリア並み、西ドイツ並みぐらいにしたいなと、そうなれば日本外交は完璧だろうというくらいのアウトラインすらもないということになりますと、一体いかがなものかというふうに思わざるを得ないとぼくは思うんですが、これはむしろ政務次官のお仕事でもあるんじゃないかなという感じがしてならないんですよ。いかがですか、その辺は。
○政府委員(愛野興一郎君) これをとにかく解決をしなければならぬということはもう明々白々たる事実でありますから、政務次官の仕事であるという御意見もございましたので、ひとつ私なりに、それぞれの部局からいろいろと知識を授かりまして、そうしてこの計画を策定をしていきたい、そうしてまた大臣にも御進言を申し上げたい、こういうふうに考えております。
○渋谷邦彦君 多少具体的になるかもしれませんけれどもね、要するに上級試験を受けた場合にはどうだ、中級試験を受けて入ってきた人はどう扱うか、いろんなそういう細かい仕組みの中に、これから配慮していかなきゃならぬ問題があるだろうと思うんですね。そういったことも一体どういうふうにこれをうまいぐあいに整備されているのかどうなのか。
 伝え聞くところによると、数年前ですか、中級試験を受けて入ったはいいけれども、将来の見込みがないということで、本人自身の能力からすればどこでも使えるようなそういう有能な人たちが二十名も三十名も退省していったという話も聞いております。これは事実あるんでしょう、そういうことが。それで貿易会社やなんかに勤めた。
○政府委員(山崎敏夫君) ことに数年前には、そういう事象がかなり見られましたことは事実でございます。ことに特殊語学を研修をいたしました場合には、貿易商社とか製造会社の方からかなり強い勧誘がございまして、そういう方面に進むために外務省をやめるということはございます。最近は、そういう傾向は減少いたしております。
○渋谷邦彦君 いずれにしても、今後において、そういう傾向がまた顕著にあらわれるということは好ましくありませんし、それは内容的にもいろいろと検討を加えていかなければならない問題も並行して御配慮をいただきたいというふうに思います。
 また同時に、特に華やかなヨーロッパだとかアメリカあたりに在勤する人はまだいいかもしれません。けれども、瘴癘地やなんかへ在勤を命ぜられた場合には孤独ですよ、まず孤独と闘わなきゃならぬだろうとぼくは思いますね。これ自体がもう大変な重圧だと思います、そこに仕事が加わってくるわけですから。先ほども触れましたように、病気になって倒れた、その倒れた分まで今度だれかが負担しなきゃならぬ、そういう実態がたくさんあるわけですよ、アフリカにしても中南米にしても東南アジア地域にしても、もう現実的な問題が出ているんですよ。助けてくれと言ったってそんなすぐ出すわけにいかない。それには次善の体制というものを整備しておかないことにはその手当てがつかないという、これは必ず来年も再来年もこの問題が繰り返し繰り返し起こってくるであろう。ですから、こういう問題提起――法案が上程されたときには、せめてこれからの五年なり十年先の行き方はこういういま考え方で取り組もうとしているという、多少は具体的なそういう方向というものをお示しいただくようなことが私は望ましいんじゃないかということを申し上げるのはそこにあるんですよ。現実的に起こっているんですから、問題は。むしろ政務次官よりぼくの方が詳しいかもしれぬ、そういう細かいことについては、大変失礼な話ですけれども。それじゃやっぱりあべこべだと思うんですよね。
 報告は聞いた、受けっ放しだと、じゃどこでそういった切ない――大使会議にしたって何にしたって遠慮しいしい物を言っていると思うんですよ、ぼくは。本当ならばもうのどから手が出る――もうすくにでもやってくれという、そういうような場合がもうしょっちゅうあるだろうという、そういうことも背景にわれわれは描きながら、どうしても活路をやっぱり開くような方向へ取り組んでもらわなければならぬ。
 と同時に、そういういま実態がまだこれ浮き彫りにされたわけじゃございません、もうすぐ時間が来ちゃってあっと言う間にこれで終わるわけですけれども。行政管理庁としても、そういう実態については私は十分理解しておられるはずではなかろうか。そういう立場に立って、先ほども御答弁にあったように、これから複雑化するいろんな経済外交やなんかを推進する場合に、やはり人ですよ、だれがやるかと言ったら一つの事務所が動くわけじゃない、人間が動いてやらなければ対応できないわけでしょう、こんなことあたりまえの話ですけれども。そういったところ、高次元の立場で、日本の将来という展望に立って、やはり本気になって考えていかなかったならば、もう何回も何回もこういう問題が起こっても、また同じことかという絶望感しか残らないだろう。局長、いかがですか。
○政府委員(辻敬一君) 先ほどお答え申し上げましたように、外務省の定員問題につきましては、従来から重点的に考えているところでございますけれども、再三御指摘のございました長期的な観点からの検討も含めまして、今後とも十分検討いたしまして、適切な定員措置を講ずるよう努力してまいりたいと考えております。
○渋谷邦彦君 きょうのところは、もう制限時間が来ているんです。ですから、もうこれ以上のことは申し上げません、しかし、少なくとも意のあるところをくんでくださいよ。何も私はひいきでもって外務省をどうこう――あたりまえのことなんです、これは、国民として。ですから、これ以上の御答弁を求めようとも私はいたしません。また、これだけの時間、次の機会に外務大臣が御出席になる予定だそうでございますので、また別な面から確認を一つ一つしながら、早急に問題の解決に当たってもらいたい、またその努力をぜひお願いしたいということだけをきょう申し上げて、きょうのところは次回に譲りたいと思います。
○和田春生君 ただいま在外公館に配置される人の問題については、渋谷委員から大変具体的にいろいろ御質問がございました。きょうは時間も限定されておりますので、連係プレーという形で重複する点は避けまして、関連する問題について若干お伺いをいたしたいと思います。
 ただいまも渋谷委員から御指摘がございましたように、日本の外交活動というものを充実をさしていく、他の国にひけをとらないようにするということのためには、何といっても人の問題が非常に重要でありますが、同時に、人をたくさん集めただけではあらゆる場合にうまくいかぬわけでありまして、そういう人がたとえば任地に行けば、それがどういう条件の悪いところであろうと、そこに腰を落ちつけて任期中は精いっぱい働く、いつも東京の空をながめながら腰が落ちつかぬというようなことでは、これはお話にならぬわけであります。そうした面には人とともに施設ということが非常に重要だと思います。
 同時に、商社でバイヤーで活動するような場合ももちろんそういうこともありますが、これはいろいろ飛び歩くというわけですけれども、外交活動の場合には、家族と一緒にそこに行って、ある程度任地にも溶け込んで仕事をするということが必要なことは言うまでもないわけなんです。そうなってくると、今日の状況では、子弟の教育という問題が非常に重要な要素になってまいりまして、これがうまくいかないと、やはり人の親として大変心配をして後ろ髪を引かれるような状況も出てくると思うんです。そういう点で、施設と子弟の教育という問題にしぼってお伺いをしたいと思うんです。
 私も、あちらこちら回ってみました。国会議員になってからではなくて、国際自由労連を通じて国際活動に大分長い間携わっておったものですから、いろいろ在外公館を見てまいりました。とりわけ私の領域が国際自由労連のアジア地域の会長という仕事だったもんですから、関連して開発途上国をいろいろ見ているわけですが、どうも条件が悪いわけですから、東南アジア、中近東あるいはアフリカ、ラテンアメリカ、中米等、一生懸命努力をしておられるにもかかわらず、なかなか十分にいかないという面があるわけですが、どうも華やかな面の北米とかあるいは西ヨーロッパとか、そういうところに比べて、本当はもっと施設を充実して、資金をかけて働きやすい環境をつくってあげなくてはいけないところがお粗末で、そしてもちろんいいにこしたことはないけれども、比較的華やかな舞台のところが大変いい、その格差が大変大き過ぎるということを現場を見て痛感しているわけですけれども、その改善について具体的にどういう措置をとりつつあるんですか。
○政府委員(山崎敏夫君) 在外におきます外交活動の場である大使館の事務所及び公邸につきましては、これを整備する必要があることはまことに仰せのとおりでございます。われわれといたしましては、従来は、多くは借り上げて賄ってきたわけでございますが、これではなかなか思うようなものが得られないということで、近年、在外公館の土地、建物の国有化を推進してまいっております。国有化いたしますことによりまして、われわれの思うようなものを建て、あるいは購入いたしておるわけでございます。
 現在の状況を申し上げますと、本年四月現在におきまして、在外公館の実館数は百五十六でございますが、そのうち、事務所建物につきましては全体の二四%に当たる三十八、公邸建物につきましては全体の五〇%に当たる七十八がそれぞれ国有化されております。また、土地につきましては、事務所用地が全体の二五%に当たる三十九、公邸用地が五六%に当たる八十七が国有化されております。今後とも、この国有化の政策は推し進めてまいりたいと思います。
 また、他方、一挙にはいきませんので、借り上げております事務所とか公邸につきましても、みすぼらしいものについては、逐次、借りかえを実施いたしております。そのようにして日本の国力にふさわしい公邸、事務所を整備してまいりたいと考えております。
○和田春生君 この国有化を進めていくということは非常に重要なことだと思いますし、特に、そういうものに対する投資効果というものを継続的に見た場合の効率という点では、単年度で見れば借り上げが大して負担ではないように見えますけれども、経過的に見ていきますと、べらぼうもない金を使って、それが皆いわば捨て金と言ってはひどいわけですけれども、回収できないわけですね。そういう点について、とりわけ開発途上国などの場合には、早く手を打っていけば大変安く買える、あるいはそういうわが方にとっても大変いいような話が持ち込まれる。ところが、予算資金上そうはいかないというので借り上げでやっていると、そのうちにだんだん地価も上昇する、次に買いたいというときには足もとにつけ込まれて、ずいぶん高く吹っかけられるというようなことのために、みすみす利益を失っているという例も少なからずあると思うんですが、昨年の九月に中近東をちょっと回ってきたんですが、たとえばイラク、イラン、ここで大使館の官邸、大使公邸、それからそこに勤めている人たちの住居、そういう点で借り上げに年間幾らずつ払っておりますか、トータルで。これはイラク、イランの両国でよろしゅうございますが。
○政府委員(山崎敏夫君) イランの大使館につきましては、事務所借料は年間三千六百十二万四千円払っております。公邸は二千九百三十五万円支払っております。次に、イラク大使館につきましては、事務所の借料は四百八十九万四千円でございまして、公邸は千七百七十九万二千円払っております。イラクの事務所借料は大変少ないのでございますが、これは、実は、私もこの間、昨年十一月にイラクに参りまして、視察いたしまして、これは大変貧弱で、とうてい大使館の体面を維持するにたえないということで、その後、現地にもいろいろ極力借りかえ物件を探させまして、目下、借りかえるように交渉をさせております。
○和田春生君 イラクの場合、またイランの場合も、借り上げている部分が圧倒的に多いわけで、言うところの国有化になっていないわけですが、そのイラクの場合借りかえる、公邸の方はまあまあですわね。しかし、事務所の方、官邸の方に金をかけると、やっぱし年間それ相応のものを借り上げれば数千万円近い金が消えていくと思うんですね。年五千万ずつ払っておるといっても五年間で見れば一億五千万になるわけ。二億五千万ぶち込めばむしろかなりのものが買えるんです。そういう状況もあるわけですね。そうすれば、目先で相当の金をつぎ込んでも、買って、みずから建てておけば、十年とか十五年という長期的に見ていけば大変割り安になる。ある程度の敷地を確保しておけば、あるいはその施設をふやす、建て増しをする、新しく建てるという場合でもやりやすいわけです。
 これはきょう外務省から聞いておいて、別の機会に大蔵省にひとつただそうと思うんですけれども、投資効果と、それからランニングコストというものを考えた場合に、全くこれはどぶに銭を捨てると言っては失礼かもわからないが、似たようなことをやっているんですね。そういう点、一体外務省としてはどういうイニシアチブをとっているんですか。
○政府委員(山崎敏夫君) まことに仰せのとおりでございます。われわれとしましても、先ほどから申し上げましたように、在外公館の体面の維持とか、あるいは機密の保持あるいは警備の点あるいは事務能率というあらゆる点から見て、在外公館の事務所、公邸の国有化は望ましいと考えております。また、先生もおっしゃいましたように、最近は、世界的に見ても家賃の値上がり傾向は激しいわけでございます。したがいまして外務省は可能なものから極力国有化をしてまいりたいと考えております。
 ただ、一番大きな問題は、確かに予算の制約でございます。しかし、また購入であればわりあい簡単にいくわけでございますが、ことに低開発国の場合には適当な物件を見つけるのが非常にむずかしいということでございまして、やはり適当な土地を見つけてそこに建てなければなりません。これは相手国の技術水準の問題もございますし、わが方のその関係の担当者の不足という問題もございまして、世界じゅう一斉にやるわけにもまいりませんので、逐次、やっておるのが実情でございます。その場合、やはり緊急なものから手をつけなければならないということで、先生がごらんいただきましたような土地において非常に貧弱な公邸とか事務所というものが現実にあるというのは否定できない事実でございます。われわれとしては大変努力の足らないことを反省いたしておりますが、さらに財政当局の御理解と御協力を得て、逐次、これは整備してまいりたいというふうに考えております。
○和田春生君 その点について、国がいろいろな事業を国内で行う場合に、国庫債務負担行為、かなり長期間にわたって、言うならば延べ払いで、頭金だけ払っておいてやるということがあるわけですが、特にいま私が指摘したいのは、外貨減らしということで大変苦労しているわけでしょう。使うめどもないエアバスでも購入して、どっか開発途上国の方にリースでもしようかどうかというような、できるかできないかわからないような当てのない案が思いつきでできている。この際、思い切って外貨減らしの点からいきましても、そういうところに相当のドルを投入して、土地なり適当な物件を買い入れる、ひとつ開発途上国の政府よ協力してくれいという形でやれば、これはかなり外貨減らしにも大きなプラスになると思いますよ。もう十五件か二十件の物件を見つければ、へたなエアバスなんかを買うよりも、よっぽど向こうにも喜ばれる、外貨減らしにもなる。そうしてそれは日本の国有財産として残るわけですから、外務省の在外活動においてもプラスになるわけですね。そういうアイデアは外務省から出さないんですか。
○政府委員(山崎敏夫君) 外貨減らしの観点からいたしましても、在外公館の土地、建物を国有化することは非常に望ましいことだと思います。五十三年度の予算の要求及び折衝に当たりましても、その点はわれわれとしても大いに強調いたしたわけでございますが、何分にも外務省の予算全体に一つの枠をはめられておるということでございまして、御承知のとおり、予算要求段階で一五%増に抑えろと、こう言われるものですから、やはりほかの経費との関係もあり、この国有化だけに予算要求を全部使っちゃうわけにはいかないわけでございまして、十分な予算の伸びが得られなかったわけでございます。
 ただ、数年前のやはり外貨減らし対策のときに、補正予算等で特別に予算をつけていただきまして、在外公館の土地、建物をかなり購入いたしました。これが現在非常に役に立っております。確かにその後一般的に値上がりが激しいので、このときに購入した土地なんかに現在建築を進めておるわけでございます。われわれとしても、この問題は今後も取り上げてまいりたいと思いますが、何と申しましても政府の予算であります以上、円と離れてドルだけいただくというわけにはいかないというところにむつかしい問題があるわけでございます。
○和田春生君 そこはひとつ発想を転換して、そういう既存の枠はぶち破っていくというだけの意欲を示さなければ、黙っておったんじゃ大蔵省は銭出すようなところじゃないんですから、外務省としては積極的にそれを取り上げる、閣議に持ち込む、こういうことが必要だと思いますし、これはたとえば国内における予算関係、財政関係でも御承知のように、建設公債の場合には、特別にその枠は設けてないけれども、赤字公債の場合には財政特例法ですね、措置が必要だという形になっている。これは物件を手に入れるわけですからね、捨てちまうわけじゃないんですから。そういう点でひとつ補正予算でも次に組むときに積極的に手を打つ。金があるから見つけろと言えば、在外公館は大使以下担当者は一生懸命になって見つけますよ。せっかくいい物件を見つけて話を進めても申請したらぽんとけられるというんじゃ話のしようがないんだ、危なくてできないですからね、おまえうそついたなんて言われたら困りますから。用意があるから見つけろと言えば、それはいい物件を見つけようと思えばあるんですよ、現に。どうですかね、これひとつ政務次官。
○政府委員(愛野興一郎君) 先々週の政務次官会議で、私と、それから向山労働政務次官からちょうど先生と同じ意見で、外貨減らしの一環として在外公館を国有化するためにできるだけこの機会に外貨減らしに国有化をしろという意見が出たわけであります。ただ、いま山崎官房長が申し上げましたように、とにかく在外公館は投資効果等々はわかっておるが、言うならば従来の、さっきから御議論があっております予算制度にとらわれて、予算化の問題であるから等々の理由で難色を示しておるわけでありますけれども、私もひとつ先生の御意思を体して、今後、ひとつ強く運動をしていきたい、こう思っております。
 同時に、補正予算等々でも特別にひとつ枠を設けていただいて、何とか少しでも、何カ所でもいいから、国有化をできないものかどうか、そういったことも大蔵に強く外務省としてアタックしていく必要性がある、こういうふうに考えております。
○和田春生君 ぜひそういう点で努力をしてもらいたいと思います。いい、プラスになる物件を見つけようと思っても、われわれの場合でも同じように、資金の用意がなければ交渉できないんですから、資金の裏づけがあって初めて本気の話ができるわけですから、その点はひとつ積極的に外務大臣にも伝えていただいて、取り組んでいただきたいと思います。
 次に、残り時間が余りありませんが、子弟の教育の問題について端的にお伺いいたしたいと思うんですが、日本の学校制度というものも現在の中学、高校、大学の一本系列というものがいろんな面で多様な教育を阻害しているということも指摘をされておりますけれども、そういう関係で非常にいま困ることの一つは、日本の中学あるいは高校卒と同等に認められないと、内地へ帰ってきたときに、あるいは日本で教育をさせようと思うときに、上級学校への進学とか転入学のときに大変支障になるということがあるんです。
 そこで、そういう点について、日本の相当する学校と同等のレベル、こういうふうに認められている教育機関、施設が存在をしない在外公館の数はどれぐらいありますか。日本人学校とか、あるいは外国の学校でも、それは日本の相当する学校と同一レベルに認めるから大学入試を受けるときの資格としてそいつは認めてやろうというところがあるのはまあまあとして、そういうもののない地域の在外公館の数というのはどれぐらいありますか。
○説明員(賀陽治憲君) ただいまの先生の御指摘の点でございますけれども、恐らく、御指摘の点は、たとえば在外の日本人の義務教育に屈する中学、小学校につきましてはその問題はちょっと起こらないかと思いますので、高等学校以上の問題ということに理解さしていただきますと、高等学校で海外に日本人を主体とする高等学校が一校あるかと申しますと、これは端的に言って非常に少ない、ロンドンほか若干の私立学校がある程度でございますが、それらの高等学校に大学進学の資格を認めているかどうかというのがただいまの先生の御質問であろうかと思っております。
 これは最近ロンドンのたしか立教英国学院というのがございますが、これは日本人を相手にいたしましたなかなかりっぱな学校でございますが、それは高校でございますが、その高校卒業者に対して日本の大学に入り得る資格を文部省が認めたということでございます。かように非常に少ない例でございますけれども、この点は高校教育というものが海外子女教育の中ではいまだやはり全く新しい分野でございまして、格段の努力をしなければならない分野でございますので、そういうのが偽らざる現状であろうかと思っておるわけでございます。
○和田春生君 時間がありませんから、いろいろ実例を挙げてお伺いするのは省略したいと思いますけれども、ロンドンなんか問題じゃないんですよ、やはり開発途上国の場合ですね。しかも、教育機関の関係で、日本ではもちろん中学までは義務教育と言っておりますけれども、中学から高校へという一貫した教育が行われる機関、学校があるところもあるわけです。日本が経営する、あるいは日本人が経営している日本人学校でなくても、外国人がやっている学校、たとえばアメリカンスクールであるとか、一つの例を挙げれば、そういうところで日本と学制は違うが、同じレベルであると認めれば、積極的にそれを認めてやるということが行われればわりあい安心ができるんです。ところが、認めておるところも部分的にあるけれども、そういうことを認められないために非常に困るという例もあるわけですね。
○説明員(賀陽治憲君) いまの点でございますが、これは、最近、先生も御承知かと思いますけれども、インターナショナルバカロレアという制度がございまして、これは御承知のように若干のヨーロッパの学校でそこで得ました卒業免状というものを、そのバカロレアの規約に参加している国は必ずそれを認めて学校に進学させろということを義務づけておる規約でございます。こういったものに日本が加入をいたしますれば、先生のおっしゃるような形でさらに問題が促進されるということでございますが、これは文部省の中でかなり積極的な御検討が行われておるというふうにお伺いさしていただいております。
○和田春生君 いまのお答えのことも積極的な措置の一つだと思います。しかし、特に外務省関係で在外公館に勤務する人の子弟につきましては、学校教育法とかそういう法律のたてまえとか、そういうことにとらわれずに、もっと幅のある扱いをして、またそういうところで外国の教育を受けてきたというのはそれなりに異色ある才能を発揮し得る可能性もあるわけですから、進路を閉ざさないような措置というものが必要じゃないか、そういう点、どうも文部省の関係もあるけれども、大変お役所的たてまえ論が多くて、現実には苦労なさっている例が非常に多い。それが条件の悪い開発途上国ほど心配の種の一つになっていると思うんです。ですから、ロンドンとかヨーロッパとか国際的な機関で適当に処理できるところはいいわけですが、それ以外のところにもぜひ細かく目を配って積極的な手を私は打つようにしてやってほしいという強い希望を持っておりますが、その点をお願いしておきたいと思います。
○説明員(賀陽治憲君) 御趣旨まことにごもっともでございますが、そのラインで一層文部省、外務省がさらに努力を重ねることになると存じますが、昨日、国際基督教大学の新設高校の開校式がございまして私も参列さしていただいたんでございますけれども、これは帰国子女とそれから一般から公募した子女、双方から成る学校でございまして、寄宿舎が付設されておるということで、かなり新機軸のものでございますけれども、ただいま先生御指摘の点をある程度こういう形で充足せしめられる非常に意義の深い一歩であるというふうに感じる次第でございます。
○和田春生君 終わります。
○委員長(安孫子藤吉君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時二十分散会