第084回国会 外務委員会 第16号
昭和五十三年四月二十日(木曜日)
   午前十時六分開会
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   委員の異動
 四月十八日
    辞任         補欠選任
     田渕 哲也君     和田 春生君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         安孫子藤吉君
    理 事
                鳩山威一郎君
                戸叶  武君
                渋谷 邦彦君
    委 員
                大鷹 淑子君
                亀井 久興君
                永野 嚴雄君
                三善 信二君
                小野  明君
                田中寿美子君
                矢追 秀彦君
                立木  洋君
                和田 春生君
                田  英夫君
   国務大臣
       外 務 大 臣  園田  直君
   政府委員
       外務省アジア局
       次長       三宅 和助君
       外務省欧亜局長  宮澤  泰君
       外務省条約局外
       務参事官     村田 良平君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        山本 義彰君
   説明員
       警察庁刑事局保
       安部防犯課長   長岡  茂君
       警察庁警備局外
       事課長      城内 康光君
       防衛施設庁総務
       部補償課長    南雲  彬君
       法務省刑事局総
       務課長      敷田  稔君
       外務大臣官房領
       事移住部外務参
       事官       橋本  恕君
       外務省アメリカ
       局外務参事官   北村  汎君
       郵政省郵務局国
       際業務課長    日高 英実君
       郵政省貯金局国
       際業務課長    三木 準一君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○日本国とアメリカ合衆国との間の犯罪人引渡し
 に関する条約の締結について承認を求めるの件
 (内閣提出、衆議院送付)
○日本国とバングラデシュ人民共和国との間の国
 際郵便為替の交換に関する約定の締結について
 承認を求めるの件(内閣提出)
○日本国とカナダとの間の小包郵便約定の締結に
 ついて承認を求めるの件(内閣提出)
    ―――――――――――――
○委員長(安孫子藤吉君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告をいたします。
 去る四月十八日、田渕哲也君が委員を辞任され、その補欠として和田春生君が選任されました。
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○委員長(安孫子藤吉君) 日本国とアメリカ合衆国との間の犯罪人引渡しに関する条約の締結について承認を求めるの件を議題といたします。
 本件につきましてはすでに趣旨説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
○小野明君 犯罪人引き渡しの条約の質問に入ります前に、二、三、日中平和友好条約の締結の問題について大臣の御見解を承りたいと思います。
 先般の当委員会におきましても、尖閣列島問題に関しまして、いわゆる中国側の耿ヒョウ副首相の偶発発言、あるいはその後におきます再侵犯という事件に関しまして、大臣は中国側との折衝を行う、こういう言明がございました。で、この折衝についての経過はどうなっておりますか、お伺いをしたいと思います。
○国務大臣(園田直君) まず、尖閣列島周辺の現状を御報告申し上げます。
 昨日に引き続きまして、けさの八時現在も領海内の漁船は全くございません心領海付近に漂泊をしておった船団の主力は少し遠ざかりまして、二十四海里以遠に漂泊をしておるというのが現状でございます。
 次に、ただいまの御質問にお答えをいたしますが、経過は省略をいたします。その後、中国の方と公式、非公式に折衝をいたしておりますが、在京の方でも、いままでのは偶然である、決して計画的ではないということを繰り返して回答しておるわけでありますが、中国の北京においてはこちらから公式の会談を申し入れておりますが、これについてはまだ公式の返答はありません。そこで外務省としては公式、非公式に折衝を続けているところでありますが、要は、両方の意見がほぼ一致しているところは、この問題を解決して、この問題が日中友好条約交渉再開に障害にならないようにということは両方がほぼ一致した意見でございますから、そういう点について考慮しながら、公式でできなければ非公式に、そして詰まったところで公式の会談、こういうふうに考えておるわけでございます。
○小野明君 大臣の言われました交渉のルートでありますが、在京の場合は符浩大使との接触と、このように考えてもよろしゅうございますか。
○国務大臣(園田直君) 最初は、この事件、領海内に漁船団が長くとどまっている場合においては、各レベルの折衝を続けて、最後には、当面の起こっている事件の解決のために、場合によっては在京の大使と私が会うことも考えておりましたが、その後、領海内から退去して、主力船団も少しは遠ざかっている現況でありますから、今後の出方を見守りつつ処理をしなければなりませんので、当面は符浩大使を呼んで大臣とじかに話をすることはまだ時期が早いかと考えております。
○小野明君 そうしますと、日中条約交渉の障害――この問題があくまでも偶発であり、また障害にならないような扱いにしたい、こういうことでございますか。
○国務大臣(園田直君) 中間からどのよりな回答があるかわかりませんが、私の期待するところは、本事件が日中友好条約交渉再開に障害にならないように、両方が本件に対して日本の国民の方々が納得をされるようなことに進めたいと期待をしているわけであります。
○小野明君 いろいろな報道がありまして非常に私も迷うわけでありますが、きのうの朝日によりますと、公式に外務大臣が表明をされたのは、尖閣の扱いについて双方触れない、こういうことで条約交渉に進む、こういう報道もあります。これは朝日です。先般の当委員会におきましても、大臣は、尖閣列島の帰属問題については条約の必須の条項ではないので、その後に平和的に解決をする、このように答弁をされておられるわけであります。大臣の御趣旨はこのとおりと承知をしてよろしいですか。
○国務大臣(園田直君) 本委員会において私はしばしば大臣の所信を申し述べてきたところでありますが、その方針はいまでも一変わりはございません。
 少しくお許しを得て申し上げますと、尖閣列島は中国のも一のであるという中国の主張は、理論的に言いますと、台湾は中国に所属する領土である、その台湾に付属する島嶼である、こういうことから、中国は、尖閣列島は中国のものであると言っているわけであります。そこで、台湾の帰趨については、共同声明では、中国はおれのものであると言い、日本はこれを尊重するという言葉で決めておるわけでありますから、この帰属を決定しなければ友好条約が締結できないということになれば、この帰属の決定は、台湾問題が正式に中国との関係が決まらなければなかなかこれは決まるべき筋合いのものではないと、現実問題として大臣は解釈するわけであります。したがいまして、本事件が起こらなければでありますが、起こったわけでありますから、これを不問に付するわけにはまいりません。納得のできる話はしなければならぬけれども、かと一言って、それならば、尖閣列島の帰属を明確にしろ、そうしなければ友好条約は交渉できない、こういうことになればこれはいつになるかわからぬ。こういうことで、私は、今度のような事件が起こらないためにも友好条約締結を進めることが肝要である、こういう方針に大臣としては変わりはございません。
○小野明君 そこで、私もそういう大臣の御方針に賛成でありますが、若干ニュアンスが違うのは官房長官の発言であります。
 自民党内のいろいろな議論というのは、これはいろんな意見の違いというのは当然あってよろしいわけですけれども、十七日、前日、安倍官房長官が尖閣列島問題について声明といいますか、記者会見をやられておりますが、いわゆる領土問題は不可避である、領土問題をまず解決して条約交渉に入るといったニュアンスの記者会見をされておるわけであります。ということは、当然、尖閣列島の帰属の問題を決めなければ、大臣の言われるような、いま政府が基本的に進めようとされております日中友好条約の交渉には入らない、こういうふうに私は受け取ったわけですね。そのほか、官房長官のいろいろな機会で言われておる中国との折衝ルートの問題、官房長官はたしか公使級の折衝を行って――初めから大使との折衝等を行うとどんなことになるかわからぬので初めは公使級云々と、こういう折衝ルートの問題でも非常なニュアンスの違いを感じます。で先ほどの大臣の御答弁では、最終的には大使とも一お会いになる、こういうことでこれはよろしかろうと思うのですが、官房長官の発言と外務大臣の発言が食い違いを生じておるように私は受け取っておるわけです。
 この問題は、ほとんど連日のように委員会が開かれて、そのたびに答弁をなさっておられるわけでありますが、もし外務大臣ルートと官房長官ルートと二本のルートでそれぞれ勝手なことをしゃべるということになりますと、これは大変なことであろうと思うんです。ですから、ひとつ官房長官との間に大臣は十分打ち合わせをされた上で、重大な外交折衝でありますから、記者会見あるいは答弁のニュアンスが違うというようなことのないようにしてもらわないと、これは重大な問題だと思います。そういう違いを私は感ずるわけですが、官房長官あるいは総理との間に十分な打ち合わせをなさっておられるのかどうか、その上での御発言、御答弁であるかどうか。これがもしこの種問題が、まあ国会答弁は空体語というようなことが言われておるんですが、そういうことであればこれは大変なことでありますから、ひとつその辺を明確に御説明を承りたいと思うんです。
○国務大臣(園田直君) 大臣が当委員会で発言しておるのは、個人の見解を述べる場所では当委員会はないのでございまして、これについては先週の土曜十五日に政府与党首脳者会議、これに政府側は運輸大臣、外務大臣、官房長官もこの会議に入りまして決めた方針が、本事件は一日も早く解決するよう外交努力をする、なお日中平和友好条約は共同声明の線に従って変わりなくこれを進めていくという方針に変わりはない、こういうことを決定したわけで、特に記者会見については、外務省の所管については食い違いがないようによく連絡をしているつもりでありますが、官房長官が発言された時期は、中国の漁船が領海内にあるときに発言されたことでありまして、この事件を解決してと、こういう意味であって、領土の帰属をどうこうという発言ではなかったと思います。
 しかしながら、御発言のとおり、官房長官と私の意見が食い違うと、国内は弁解ができまするが、これを聞く関係諸国の間に誤解を受けては大変でありますから、今後とも、御指摘がないように十分連携をしてお互いに発言するように注意をいたします。
○小野明君 私は、官房長官の言われたことも、その意味はよくわかるんですけれども、領土問題は不可避であると、こういう一般論で言われておるんですが、この際の十七日の官房長官の領土問題は不可避という問題は、これは尖閣列島の問題と、このように直接受け取りますわね、受け取るのが当然ですわ、侵犯問題があったんですから。それを受けて、十八日に、尖閣列島の帰属の問題は条約の必須の条件ではない、だからその後に平和的に解決するという外務大臣の御答弁との食い違いというのは、ニュアンスの違いというのは、これは明らかであろうと思われるわけですね。そこでお尋ねをしたんでありまして、いまお話がございましたから、なおこの問題については今後十分やっぱり御注意をいただきたいと思います。
 それから、新聞によりますと、もうすでに河野前議長が符浩大使と会われて、そして河野前議長が中国側が説明するように偶発的なものとは考えられない、こういうふうな質問をされた。これに対してあくまでそのようなことはないと、符浩大使はこのように言明をされておるわけであります。すでにもうこれは非公式とはいうものの符浩大使の言明もあり、あるいは耿ヒョウ副首相の言明もあるので、この偶発的という問題を大臣はどのように見ておられるのか、あるいは中国側の言明をどう受け取っておられるのか、この辺を承りたいと思う。
○国務大臣(園田直君) 尖閣列島の周辺に起きたこの事件をどう処理するかということは重大であり、かつまた慎重でなければならぬと考えております。当初は、在東京においても尖閣列島はわが方の領土であるということでありましたが、その後、これが偶然な出来事であって決して計画的ではないということを言い、北京でもそう言っておられるわけであります。ところが、その後の漁船団の行動を見ますると、なかなかそう理解しがたいところもあるわけでありますが、しかし、昨日来からは領海外に漁船団が退去をし、しかも主力船団も一領海から若干離れたところへ移動したと、こういうこともありまするので、中国の正式の回答を待ってからこれに対する対応をやるべきことであって、いま憶測をして私がお答えをいたしますと、今後の処理の障害になりますので、ここは冷静にしかも落ちついて中国の正式の回答を待つのが適当であると考えております。
○小野明君 次に、そうしますと、いままでの大臣の御答弁で大臣の御見解は大体わかったような気がいたすわけでありますが、日中平和友好条約を日中共同声明の線に沿って進める基本方針には変わりはないということでございますね。しかしながら、尖閣列島問題、これが突然起こりましたので、この条約交渉再開に一つの暗雲を投げかけたということは間違いないわけでありますけれども、ここで整理をいたしまして、日中平和友好条約再開のための諸条件があると思いますが、その条件を整えなければなりませんが、大臣はその再開の条件というものはどのようにお考えですか、これを整理をしてひとつお答え願いたい。
○国務大臣(園田直君) まず第一に、領海内から退去をし、船団は領海から少しく離れたわけでありますが、まず、ここに起きた事件の処理、続いてこの起きた事件をどうお互いに取り扱うかということ、これができましたら直ちにいままでの方針に従って、そして政府・与党の理解と協力を求めるために努力をしておったわけでありますが、改めてこれに引き続いて政府・与党の御理解を求め、国民の方々の御理解を得て段取りを進めていくべきである、このように考えております。
○小野明君 政府・与党の御理解を得ると、こういうお話がありましたが、これは自民党内のことでございますから余り触れたくはないんですけれども、やはり日中条約に関係がありますので、大臣のお見通し等もこれはお尋ねをしておかなければならぬと思うんですが、この領有権問題に触れないで、いわゆる大臣の言われるように大局的見地から条約を結ぼうと、こういうふうに進めようとされる場合には、なかなか自民党内というのはおさまらないのではないかという見方を持っておりますが、いわゆる日中共同声明というものがありながら、この精神を覆すという意見がかなり強硬であるかのように伺っておりますが、これはいかがですか。
○国務大臣(園田直君) 友好条約の締結についても、それからこの尖閣列島の問題についても、共同声明の線に立ち返ってこれから話を進めるということであると考えておりますが、いままで一回も中国漁船の領海侵犯事件とか、あるいは尖閣列島に対する主張とかというものは中国側からなかったわけでありますから、その状態が私は一番好ましい状態であると、話がつくならつけるべきでありますが、つけられる現実の段階ではない、こういうことでありますから、共同声明、それから衆参両議院の議決、こういうものは、これは議論はありましても本件の大前提になるわけでありますから、十分御理解を得たいと全力を挙げて努力したい、こう思っております。
○小野明君 その辺、大臣のお気持ちはよくわかるわけですが、いろんな報道を見てみますというと、この際尖閣の帰属問題を先に決着をつけなければ入るべきでないという意見が非常に強硬なように見られるわけであります。この点は日本の将来の国家的、現在の国家的利益あるいは国益にもかかわる問題でありますし、非常に重大な問題でもありますが、やはり共同声明、これは日本の領土であるということは歴史的にも明らかなんでありますから、この際、やはり大局的な見地に立ってこの条約を推進されるという大臣の方針が果たして貫かれるかどうかということに私は非常な危惧を持っておるわけですが、その辺の見通しをもう一度ひとつ。
○国務大臣(園田直君) この事件が起こらなければ、少なくともあとしばらくで理解と御協力を求めることは解決できたと思うわけでありますが、本事件が起きたために困難になり、やや延びたことは事実でございます。しかしながら、これをいつまでも延引しておくと、このような事件がまたどのような事態になって起こるかということは予測しがたいばかりでなく、二国の間に結ばれた声明というのは条約にも匹敵する重要な約束でありますから、これは他の国々に対する日本の国際信義にも関することでありまして、時期は切迫してきたと私は判断をしております。そういうわけでありますから、十分御理解をいただいてやりたいと努力しておりますが、いつごろどういう見通しかということはこれから相談することでございますから、これまたかえって私の発言が問題を呼ぶことになりますので、御推察に任しておきたいと思います。
○小野明君 この際、福田総理も、この日中平和友好条約の締結については交渉の機は熟したと、こういうふうに三月の下旬に言われまして、そうして外務大臣の訪中が四月かあるいは五月かと、そういう日程までいろいろ公表された時期がございます。ところが、その総理が遅疑逡巡する間にこういう事件が起こる。いわば交渉の機の熟し過ぎて機を失したのではないか、いわゆる福田総理のリーダーシップというものが欠如しておるんではないか。日中平和友好条約を締結しようという総理の熱意といいますか、いろんなグループが党内にはあるのでありましょうけれども、総理、外務大臣、官房長官一体になって乗り切ろうと思えば、乗り切れない障害ではないように私は思います。その辺で、ひとつ改めてこの尖閣の問題について国民の理解の得られる措置をとりながら、平和条約の締結へと改めて強力に進める必要な時期が来ておると思いますが、この点について再度承っておきます。
○国務大臣(園田直君) 私も一そのように判断いたしますので、この上ともなくよく相談をし、努力を続けたいと思うわけであります。
○小野明君 次に、犯罪人引渡しに関する条約についてお尋ねをいたします。
 この提案理由を見ますと、昭和五十年八月のクアラルンプール事件等を契機として国際的な犯罪の抑圧をする、そのための日米両国の協力を一層実効あらしめる、こういうことが提案理由に挙げられておるわけであります。この際、クアラルンプール事件をちょっと思い出しますと、日本赤軍がアメリカ大使館とスウェーデンの大使館を、何といいますか、大使館ジャック、襲撃をした事件でありますが、その際は、日本から超法規的な措置で釈放した五名、それから襲撃をした五名、十名の犯人がリビアに投降しておるわけですね。この犯人の動向は一体どうなっておりますか、この際、この現況は把握できますか。
○説明員(城内康光君) お答えいたします。
 御質問のように、リビアに犯人らは投降したわけでございますが、一昨年、ヨルダンにおきまして、すでにリビアで拘禁中であると見られておりました一人であります奥平純三が身柄を拘束されて、同年の十月十三日に日本に強制送還されたということがございましたことは先生御承知と思いますが、したがいまして他の釈放犯人についてもすでに同国を出国しているというふうに私ども判断しているわけでございます。で、その後の犯人の所在につきましては、私ども鋭意捜査をしておるわけでございますけれども、これまでに具体的な情報を入手するに至っておりません。
○小野明君 リビアというのは、これはICPOに加盟をしておる国ですね。
○説明員(城内康光君) さようでございます。
○小野明君 ICPOに加盟をしておりましても現況というのは把握はできないわけですか。
○説明員(城内康光君) 私ども、インターポールを通じましてもそういった努力をしておるわけでございますけれども、先ほどお答えいたしましたように、犯人らの所在を確認するに至っていないわけでございます。
○小野明君 もっともこのときは旅券を渡しておりますから――たしかそうですね、これは犯罪人としては追及できないんじゃないですか。
○説明員(城内康光君) クアラルンプールの釈放犯につきましては、クアラルンプールを出国する時点で旅券を返納させたというふうに承知しております。
○小野明君 もう旅券は、そうすると失効しておるわけですか。
○説明員(橋本恕君) このクアラルンプール事件の際のこの引き渡し犯罪人が、先ほど城内外事課長がお答え申し上げましたとおり、クアラルンプールを出ましてリビアに向かう際に旅券を返納させております。で実際に旅券を取り上げると同時に、この旅券を無効措置にいたしております。
○小野明君 これは本筋ではないのでやめますが、このクアラルンプール要件の後にロッキードの事件が起こったわけですね。これは七六年の二月に起こっておりすが、このロッキード事件というのもこの条約の改正作業を推進する役割りを果たしたと思えるわけですが、その点はいかがですか。
○説明員(北村汎君) 提案理由の説明の中にもございますように、この条約の改正を痛感いたしましたのは、国際的な犯罪事件が非常に幅が広くなってきたということを踏まえまして、特にさっきから先生御指摘のクアラルンプール事件を契機といたしまして、翌年の昭和五十一年の一月に日本側からアメリカ側にこの条約の改定の交渉を申し入れたわけでございます。でロッキード事件が起きましたのは二月でございますので、ロッキード事件の起こる以前からこの条約の改定を意図したわけでございます。もちろんロッキード事件が起きまして、その年の十一月に内閣で取りまとめられました「ロッキード事件再発防止のための対策について」という中で日米犯罪人引渡条約の適用罪種を拡大するということが掲げられておりますので、そういうものを受けて、もちろん交渉の際に可能な限り引き渡しの罪種を拡大するという交渉をいたしたわけでございます。
○小野明君 ですから、罪種を拡大をしたといいますから、やはりこのロッキード事件というのもこの条約の整備、改正作業に推進役を果たした、こう言ってよろしいわけですね。
○説明員(北村汎君) ロッキード事件がこの条約改正の直接の動機でなかったことは先ほど御説明いたしましたとおりでございますが、実際の交渉を行いましたのは去年でございますので、その交渉をいたしております間に交渉者の念頭にロッキード事件があったということは当然のことでございます。
○小野明君 どうも私の質問にぴったり答えてくれないんですが、このときは、外務大臣、ロッキード事件が起こりましたときの、あれは二月の四日か五日ぐらいだったと思いますが、ちょうど予算委員会の最中で大きな議論になりまして、私も予算におりましたが、その際、非常に重要であるのは、三木内閣のときですが、やはり再発防止のため、二度とこのロッキード事件――最近またにぎやかになっておりますが、このロッキード事件を再び起こさないような再発防止の施策を強力に講ずべきである、こういう意見を申し上げたことがあるんです。
 で、その際に、もちろん三木前総理もそういう約束をされて、いま答弁がありましたような「犯罪捜査等についての条約の整備」「日米犯罪人引渡条約の適用罪種の拡大」こういう項目並びに贈収賄の犯罪、ハイジャック犯罪、麻薬犯、これらの要項を出されておる。「犯罪人引渡条約締結国の拡大」こういう問題についても対策の中にうたわれておりまして、アメリカ以外の国との間にもこの引渡条約の締結を拡大していく、そういう中で捜査司共法助法制を整備していくんだ。さらに「多国籍企業、海外進出企業の行動規制」と、こういうロッキード問題閣僚連絡協議会という名称を打ったものが発表されておるわけですね。
 ですから、当然、これはロッキード事件のような国際犯罪、それの再発防止対策の一環としてこれが結ばれるという意味もある、前内閣が定めた政治腐敗防止の対策の一環ですからね。そういうものだと、そういう意味も大きく含まれておるんだというふうにこれを受け取るのが妥当ではないかと私は思うわけです。大臣はいかがですか。
○国務大臣(園田直君) 内閣でまとめられた、内閣のロッキード事件再発防止のための対策という中の一項にいまの御指摘のような発言があるわけであります。この犯罪人引渡条約はその前からやっておったわけでありますけれども、これに書かれた一項に基づいて日米犯罪人引渡条約の適用罪種の拡大が挙げられたことを受けて、可能な限りこの趣旨に合致するよう努力した所存でございます。
 なお、締約国の拡大についても、相手国の法制度、特に刑法、刑事訴訟法体制がわが国と似通った民生的かつ文化的なものであり、相手の政治や法制度が一般に安定しており、次に人の往来の状況等から見て現実に犯罪人の引き渡しの要請が多いところなどいろいろ考慮して、国際協力のために条約締結国の拡大を図る所存でございます。
○小野明君 いまおっしゃるように、締約国相互に法体系の問題、類似性等が必要な条件ではありましょうけれども、前内閣が締約国を拡大していくんだ、こういう約束をされておるわけですね。そういたしますと、日米だけではなくて、その他の国々とも当然締約国を拡大していく。そうした中でインターポールだけに頼りますと、インターポールのやり方というのは、条約に基づいて事件を処理するということよりも、やっぱりインターポールの要綱だけでやりますと人権擁護という点で若干問題点なしとしないと私は思うんです。ですから、この締約国の拡大という点に政府は当然努力をしてこなければならなかったと思うんですが、どのように努力をされておられるのか、その経緯を御説明いただきたいと思います。
○政府委員(村田良平君) 現在までのところ、わが国に対しましては、豪州それからイギリス、マレーシア、ベルギー、インド、それからパプア・ニューギニア、こういった国々から犯罪人引渡条約を締結してはどうだろうという申し入れが公式あるいは非公式にあっわけでございます。
 確かに先生御指摘のように条約を結びますと、引き渡しが義務的になるわけでございますので、国際犯罪の抑圧という点では非常に有効な措置でございます。また、ただこういった条約を結ぶにつきましては、先ほど大臣も申されましたように、実態的に見まして犯罪人の引き渡しの必要性がどれぐらいあるかということ、それから相手国の法制度という問題、さらにアングロサクソン系統の国におきましては条約がないと引き渡せない、わが国の場合には逃亡犯罪人引渡法によって相互主義のもとに引き渡しが可能でございますけれども、そういうことができない法制の国もある。そういった点を総合的に勘案して、この条約締結の網を広げていくべきものであるというふうに私どもも考えておる次第でございます。
 しかしながら、現実に以上のような諸点を勘案いたしますと、最も人の往来も多く、それから日本と刑法、刑事訴訟法その他の制度が民主的であることにおける共通点あるいは条約がないと引き渡せないという体制をとっておることから考えまして、アメリカ合衆国との間の明治時代につくられた古い条約をつくり直すということが最も先決問題である、こういう判断で過去数年来検討を重ね二年間交渉して、この条約を今回新たに結ぶということにいたしたわけでございます。したがいまして、一般的な方針といたしましては、先ほど挙げましたような国々も含めまして、今後いかなる国とこの種の条約をつくるべきかということを今後検討していくことになろうかと存じます。
○小野明君 いま挙げられました国々といいますか、日本に条約の締結を申し入れておるという国々の中で条件を満たしておるという国々はどういうものがありますか。
○政府委員(村田良平君) 先ほど大きく言って三点を申し上げたわけでございますが、特にその第三点、すなわち相手の国の制度といたしまして、条約を結ばないと犯罪人が引き渡せないという点につきましては、主としてアングロサクソン系統の国がそのような法体制をとっております。先ほど挙げました幾つかの国でも、ベルギーを除きましてはすべてアングロサクソン系の国または元アングロサクソン系統の国の領土であった地域でございますので、そういった意味では豪州、英国等はその要件には合致するかと思いますが、その他人の往来、現実に犯罪人引き渡しの必要性がどれぐらいあるかとか、あるいは相手国の制度がどうであるかという点は、やはり個別に判断すべきものと思われますので、また相手国の制度が民主的である、文化的であるというふうなことにもかかわりますので、特定のこの国は要件が合致しておるということは現段階ではちょっと申し上げにくいのでございます。
○小野明君 そのイギリス、オーストラリア等からの申し入れがあっておるんですが、こういう系統の国々の申し入れに対しましてはどう対応されますか。
○政府委員(村田良平君) 今後の問題でございますので、まだ具体的にイギリスあるいは豪州と交渉を行おうという方針を決めておるわけではございませんで、先ほど申し上げましたような諸点を検討いたしまして総合的に判断するわけでございます。イギリスの場合には、英本国のみならず、香港等のもちろん問題もあるわけでございまして、そういった諸点を勘案して今後研究をしてまいりたいというふうに存じております。
○小野明君 また、韓国から申し入れがあっておるかどうかわかりませんが、韓国とこの種条約を結ぶ可能性はどうですか。
○政府委員(三宅和助君) 韓国との関係につきましては、先方からそういう申し入れが現在まいっておりませんし、日本側といたしましても一現時点ではこのような条約を結ぶという具体的計画はございません。
○小野明君 韓国には御承知のように反共法というのがあって、相互可罰性の範囲という点からいきますと問題なしとしませんけれども、これは大臣も御承知のように金大中事件等に見られるような大きな問題もあります。さらに日韓癒着という風評が日本政界にもいろいろ問題を起こしているわけですが、韓国と犯罪人引渡条約を結ぶ私は必要性があるのではないか、このように思いますが、大臣はいかがですか。
○国務大臣(園田直君) 韓国と日本は隣接する国でありますが、法の体制がいろいろ違うわけでありまして、なかなかいろんな問題も多いようであります。向こうからも申し入ればないわけでありますが、ただ隣接国であっていろんな往来は一番激しいし、また犯罪等も予想されるわけでありますから、ただいまの御意見を踏まえて検討してみたいと思います。
○小野明君 大臣、やっぱり先ほどもちょっと申し上げましたように、インター。ボールに加盟しておる国は非常に多数に上っておるわけですね。こういうルートを通じて犯罪を抑圧していく、こういうことも便宜的にはできるわけでありますけれども、このルートによりますと、いついつ出国をさせる、強制出国させる、そうすると日本官憲が船あるいは飛行機に乗って日本の領土に入りました際に逮捕する、こういうケースになっておるわけですね。ところが、この条約ができ上がりますと、外交ルートによる、そうして立証の証拠書類を相手国に送る、そして相手国政府で司法判断によって、もちろん被疑者に弁明の機会も与えられるわけなんですが、そういう十分な手だてをとってそうして引き渡しが行われる、こういうことに相なるわけですから、インターポールのみに頼るのではなくて、やはりあらゆる国と可能な限り拡大をしていくというのが必要なことではないだろうか、このように思いますが、大臣、この点について、韓国ともそういう点ではやっぱり結んでいく必要があるのではないか、こういうふうに思いますが、ひとつ再度お答えを願いたいと思います。
○国務大臣(園田直君) 御発言のとおりでありまして、締約国を拡大していくことは、これは当然のことと思います。お隣の韓国につきましてもいろいろ事件の多いことは事実でありますから、よく検討したいと考えます。
○小野明君 それから衆議院の外務委員会でわが党の井上君が質問をいたしておるわけですが、この条約が発効した場合に、金大中氏事件の有力容疑者の一人で現在アメリカに滞在中と言われる金東雲、御承知の元一等書記官をアメリカ側に対して引き渡し要求ができるかと、こういう質問をいたしておりますね。これに対して、警察庁は、金東雲の容疑は逮捕、監禁、略取、誘拐であり同条約の条文に照らして身柄引き渡し要求は可能だと、こういうふうに答えられておるわけですね。この点は間違いありませんか。
○説明員(城内康光君) お答えいたします。
 過般の衆議院の外務委員会で先生ただいま御指摘のとおり井上議員から御質問がありまして私がお答えしたわけでございますが、まず申し上げたいことは、アメリカに金東雲元一等書記官がおるということについて私どもは承知をしておりません。
 それから、仮にアメリカにおる場合に、それが今回の条約の対象になるかという点でございますけれども、罪種的に見ますと、今回の条約では長期一年以上の拘禁刑ということが書いてございます。そういう金大中氏事件に関しましては、さしあたり逮捕、監禁、略取、誘拐ということでやっておりますから、そういう罪種的にはその要件には当てはまる。しかしながら、その他いろいろとこの条約を適用するためには要件がございます。たとえば二条の相互可罰性の問題とか、三条関係の証拠の十分性の問題とか、あるいはその他八条関係のいろいろな手続とか、そういうものがあるわけでございまして、そういった要件が充足されなければ当然のことながら引き渡しの請求の対象とはなり得ないわけでございます。
 そういうことで、それを踏まえまして、過般の衆議院の外務委員会におきましても、そういう要件を充足するかどうか詰めていく必要がある、とりわけ国と国との問題でありますので、問題が具体化した時点で関係の向きと慎重に詰めをしていきたい、こういうことを申し上げたわけでございます。
○小野明君 金東雲の容疑については、これは日本の主権を侵害したということは明らかだと思うんですが、警察庁は、ここに挙げられておるように、金東雲の容疑は、逮捕、監禁、略取、誘拐、こういう容疑であると答弁をされておることには、この事実は間違いはないわけですか。
○説明員(城内康光君) 金東雲は金大中氏を連行いたしましたグループの犯人であるというふうな点につきましては私ども十分な確信を持っておるわけでございます。そしてまた、その罪名の点でございますけれども、さしあたり明らかな逮捕、監禁、略取、誘拐という事件名のもとに当事件を捜査しておるわけでございます。
○小野明君 そうしますと、いわば今度の条約でそういう罪種というのも非常に拡大をされておるわけですね、十五から四十七に拡大をされておる。しかし、いま挙げられた罪名というのは、拡大をした中ではなくて、もう伝統的な従来あった条約の範囲にあるような罪種ですね。この罪種でありながら、引き渡し要求が、もしアメリカに金東雲がおるとすれば、要求できないというのはちょっとおかしいんじゃないですか。
○説明員(城内康光君) 逮捕、監禁、略取、誘拐という罪名につきましては、従来の条約にはないというふうに私は承知しております。
○小野明君 私はそういうものがあったと思うんですが、ないとしても、この条約が成立すれば、六項に略取、誘拐、不法な逮捕あるいは監禁という項目がありますね、新たに六項目にありますよ。これがあるとすれば、どうして金東雲の引き渡しが要求できないんですか。
○説明員(城内康光君) 先ほどもお答えいたしましたように、罪種的には今回の条約の改正でその対象の中に入ってきている、その点は確かでございます。しかしながら、その他のいろいろな要件があるわけでございます。そういうすべての条件というものを充足しなければその対象にならないということでございます。
 なお、大きな前提として、現在、その金東雲元一等書記官がアメリカにおるということについて、私ども何ら承知していないわけでございます。
○小野明君 アメリカにおると私は仮定をして質問をしておるんですが、この条約が成立すれば金東雲については請求できる、このように思いますけれども、その他の条件というのをひとつ再度説明をしてくれませんか、どういう条件です。
○説明員(城内康光君) 条約の条文については、警察は説明をする立場にございませんので、控えさしていただきます。
○小野明君 いや、その他の条件について、要求できるかできないかという、私はできるのではないかと、こういうふうに言っておるのですが、その他の条件というのはどういうものがありますか。
○政府委員(村田良平君) この条約にはいろいろな要件が定められておるわけでございまして、その大部分は先ほど城内課長の方から答弁があったところでございますが、相互可罰性等の要件のほかに、恐らく、手続的に見まして最も重要なのは第八条であろうかと思います。
 御指摘の金東雲の場合には第八条の三項がこれに当たると思われますけれども、その場合には、たとえば逮捕状がすでにわが国で出ておりまして、その令状の写しであるとか、それからその者が逮捕すべき旨の令状にいう者であることを証明する証拠資料、それからその他犯罪を行ったと疑うに足りる相当な理由があることを示す証拠資料というふうなものを整えて初めて引き渡し請求が可能になるということでございます。
○小野明君 そうすると、金東雲の犯罪については、いま外事課長が言うように、この条約が成立すれば、そういう罪状がある、疑いがあるということになれば、それらの条件がありますけれども、いろいろな条件を整えて請求をするということはやらないのですか。
○説明員(城内康光君) ただいま外務当局から、令状の点について、まず令状もないということを御説明があったわけでございますけれども、確かに現在の捜査の状態ではそういうことでございます。それからなお、その他にもいろいろと具体的に詰めなければならない点が多々あるというふうに私ども理解しております。
 しかしながら、アメリカにおるということがどうもはっきりいたしませんので、そういうことが具体的にある程度明らかになった段階において、個々具体的に詰めをしていきたいというのが私どもの考えでございます。
○小野明君 いま外務省の参事官の言われたのは手続ですね、いわば手続ですよ。しかも先ほど外事課長が答弁されたのは逮捕、監禁といろいろな罪状が適用される事実があるんだと、こういうふうに言われる。仮に金東雲がアメリカにいるということになれば、これらの令状あるいは立証資料、これらを整えて引き渡し請求ができる、または、しなければならぬ。できるということはわかりますけれども、なぜその辺で明快な答弁がないんですかね。
○説明員(城内康光君) 先ほど来申し上げておりますように、私どもが昼夜を分かたない捜査をいたしまして、金大中氏の連行犯人グループの一人として金東雲を翻り出したわけでございますが、同人の容疑性につきましては私ども十分確信を持っておるわけでございまして、同人について必要な取り調べをいたしまして事件の解明をしたいという気持ちを十分に持っているわけでございます。しかしながら、国と国との関係で問題を取り上げるということになりますと、単に風評――まだ私ども風評らしきものも余りよく知っておりませんけれども、ある程度所在が明らかになる、そういうようなことで、その段階で具体的に諸問題を詰めるという手順をとるべきであるというふうに考えまして、現在、そういうことをしておらないわけでございます。
○小野明君 大臣、この点は大臣もこういうふうに言われておりますね。捜査当局は条件を満たしているというのだから、当局が引き渡し交渉を求めるなら受け入れると、こういうふうに答弁をされておられるのですが、日本の政府は、金東雲がもしアメリカにおるとするならば、身柄引き渡し要求の意思がございますか。
○国務大臣(園田直君) これは政治判断をすべき問題ではなくて、事務的に冷静に判断すべき問題でありますので、この新条約に定めた具体的な要件を満たすということで犯罪人明き渡しの要求がわが外務省にあれば、わが外務省はこれを請求するのは当然であると考えております。
○小野明君 実は、これはいつの予算委員会か私もはっきりいたしませんが、金大中事件については、宮澤外相のときですかね、政治決着をいたしましたと、しかしながら新たな罪状が立証されるならばこの問題について追及をいたしますと、たしかそういう当時の官灘外務大臣の答弁があったように思いますよ。
 いま大臣が言われますように、警察庁も金東雲についてはかなりの確信があるようですが、やはり事は条約ができれば事務的に処理して、あるいは大臣の言明のように新たな罪状というものが明白になっておるわけですから、当然、アメリカに引き渡しを要求すべきだと思うのですが、この点は再度ひとつ大臣はっきりしてもらいたい。
○国務大臣(園田直君) これを請求すべきかどうかは外務大臣の判断ではなくて、外務大臣は、要請があれば、条件を満たしたものについては当然請求するのがこれに決められた当然の権利である、こう思っております。
○小野明君 それで、引き渡しの犯罪の罪種が従来の伝統的な罪種十五から四十七に引き上げられておりますが、これによりまして麻薬犯とかあるいは贈収賄犯、こういう新たな罪種も加えられておるわけですが、こういうことによりまして、拡大をしたことによって引き渡しの事例というのは、今後、なかなか見通しはむずかしいかもしれませんが、どれぐらい増加をすると見ておられますか。
○説明員(敷田稔君) 先生御指摘のとおり、従来は戦後二件の引き渡し事例しかなかったわけでございますけれども、このように大幅に引き渡し対象の犯罪がふえますと相当程度ふえるのではないかと予測しているわけでございますが、ただ具体的にその二件が何倍になって何件になるかというところまでは現在ちょっと予測いたしかねている次第です。
 ただ、相当程度ふえましても、御高承のとおり四月に本省刑事局の中にも国際犯罪対策室というものが設置されまして、この種の事例が仮にふえたとしても、それに適切に対応できるような体制を整備いたしておりますので、一言申し上げておきます。
○小野明君 これも新聞報道によりますと、金炯旭元KCIA部長が例のフレーザー委員会での諮問が終わりましたら来日を希望しておる、こういうことが出ております。わが党の野田君がアメリカに行きまして確かめてきておるようですが、もし金炯旭元KCIA部長が来日をするということになりますと、その身柄の安全については政府は保証をいたしますか。
○説明員(城内康光君) 金炯旭氏が来日することになりますれば、警察は同氏の身辺に対し不法な攻撃が加えられることのないよう、その身辺の安全につきまして最善の措置をとろうと考えております。ただ、そのためには御本人及び協力者の御協力が得られるということがぜひとも必要であるというふうに考えております。
○小野明君 これは大臣にお尋ねをいたしますが、金大中事件、まあ政治決着をつけたと、こういう前内閣の答弁もあるわけですが、新たな事実があればと、こういうことはちゃんとついておるわけです。さらにアメリカ政界に対するいろんな工作、それは日本政界におきましてもいろいろ工作をしておるんだと、こういう証言もされておる。ところが、従来は、日本の政府としては、金炯旭氏についてはこれは伝聞証書が多い、こういうふうな立場に立っておられたように思います。もし金炯旭元KCIA部長が来日を希望する、そしてその来日が実現をしたという場合においては、外務大臣、金大中事件あるいは日韓癒着について政府は究明をするという意図をお持ちですか。
○国務大臣(園田直君) 金天中事件については御発言のとおりでありまして、一九七三年十一月に当時の金鍾泌国務総理が来日をし、わが国政府及び国民に対し金大中事件の発生に遺憾の意を表明し、同様な事件の再発防止等を確認したこと、また同時に、その際同総理が携行した朴大統領親書の中で同様の趣旨が明確に表現されていたことを踏まえて、外交的決済をつけたということになってはおりますが、しかしながら、わが国としては刑事事件としての捜査をその後も継続しておるわけであります、したがいまして、将来、韓国側による公権力行使を明確に裏づける証拠が出てきたと捜査当局が判断する場合には、右の外交的決着を見直すことになろうと存じます。
○小野明君 いま大臣が言われますように、この金大中事件はやはり私ども政治決着はつけたというものの、多くの疑問を国民の間に残しておる、日本の主権が侵害をされたという事実はまぎれもないことである。さらに、日韓問題についてはいろんな風評がありますし、この点については、先般の参議院本会議で大陸だなの質問の際にもいろいろこの問題が出ておったように記憶をいたしておりますが、もし金炯旭氏が来日する、こういった場合には、政府はひとつ熱意を持ってこの真実を究明していく、こういう態度を堅持していただきたいと思いますが、大臣よろしゅうございますか。
○説明員(城内康光君) 警察は、現在もなお捜査体制を維持しまして本事件の究明に当たっておるわけでございます。で御質問の金炯旭氏の来日に関しまして、もし同氏が来日されたときに事情を聴取するか、どういうふうにするんだという御質問であれば、同氏のこれまでの米国議会における証言あるいは報道等で報ぜられておりまするいろいろな発言の内容から判断いたしますと、意図的に虚偽を申し立てている。たとえば議会の証書の中で、金大中氏を連行したのは三十五ノットの高速船だというふうに宣誓をして証言をしながら、実は、後で、そうじゃなかったんだと、あれはわざとひっかけてやったんだというような発言をしていることなどなど、またさらに事実無根の事柄あるいは不確かな事柄いろいろございまして、どうもその信憑性に疑義があるということで、私ども捜査上有用であるというふうには考えておりませんので、警察といたしましては、当面、同氏から事情聴取をする必要は感じていないということでございます。
○小野明君 しかしながら、いまあなたが言われたことは、これも伝聞証言ではないですか、金炯旭氏に直接会ってその点を確かめたことですか。
○説明員(城内康光君) 私ども捜査に役立つものであれば、伝聞であれ再伝聞であれ、すべてを参考にしたいという基本的な姿勢を持っていることは変わりないわけでございます。ただ、御本人がいろいろと証言をされましたことなどは、外務省を通じましてある程度私どものところに捜査資料が入っておるわけでございまして、私どもは、そういうものにつきましては十分関心を持ちまして、いろいろな挙げられたポイントにつきまして私どもは大量の捜査員を動員して一々その裏づけなどをしておるわけでございます。そういう努力の結果、先ほど申し上げましたとおり、同氏のいろいろと言われている点が結論から言って信憑性がない、そういうふうに私ども判断しているわけでございます。
○小野明君 そうすると、警察としては、もちろんその身柄の安全については保証するけれども、金大中事件あるいは日韓癒着にかかわる金炯旭元KCIA部長の発言については信憑性が薄いので、事情聴取をする必要はない、する気持ちはない、こういうことですか。
○説明員(城内康光君) 私どもは、事件を解決いたしますために、捜査の手がかりになることが欲しいわけでございます。しかしながら、先ほどるる御説明申し上げましたとおり、同氏の証言あるいは発言の中から、私どもはこれまで捜査の手がかりになるような事項を発見するに至っておらないわけでございます。そういうことでありますので、私どもは、先ほど申しましたように、当面、同氏から事情聴取するという気持ちを持っていないわけでございます。
○小野明君 そうすると、先ほどの大臣の言明からしますというと、金大中事件、日韓癒着等について政府は究明をする意図はあるんだという御答弁だったと思うんですが、これは金炯旭証言というものを指してはいないというふうに受け取られますが、そういうことですか。
○国務大臣(園田直君) 私がお答えいたしましたのは、金大中事件についてのお答えをいたしたわけでありまして、金大中事件に関連をして捜査当局が捜査をしておる段階であるので、ここで新しい証拠が出てきた場合には政治決着というのは見直しされることであろう、こういうことでありまして、捜査をどうするか、証拠だということは、これは捜査当局の判断でございます。
○小野明君 しかし、これは日本の警察庁はそう言われますが、そういう何ら意味がないような金炯旭氏に何でアメリカの米議会フレーザー委員会が何回も証言を求めておるか、これはもちろん米韓問題ではありますけれども、これは有力な証言があればこそ何回も議会が喚問しておる。それについて金炯旭氏が来日をした場合には、日本の警察庁としては彼を信用できない、彼から事情を聞く必要はない、こういうふうに言われるのは、非常に何といいますか、政治的な発言のように思われますが、それは的確な事実、間違いのない事実に立っての御発言ですか。
○政府委員(三宅和助君) まず、前段の点につきましてお答えをいたしますが、なぜ金炯旭氏がアメリカの議会に呼ばれているかということにつきましては、これは明らかに朴東宣を中心とする米韓関係についての質問でございます。したがいまして日本関係につきましてはきわめて派生的に問題が出た、なぜ呼ばれたかということにつきましてはいま言ったことでございます。その前段の方だけとりあえず私の方でお答えします。
○説明員(城内康光君) 私ども問題にしておりますのは、金炯旭氏という人がどうだとかいうことではなくて、これまで金炯旭氏が議会における証言あるいは報道で報ぜられておるいろいろな発言の中身、そういう中身が重要でございまして、それにつきまして何ら私どもは予断はないわけでございます。で十分な関心を持ちまして裏づけなどをした結果、どうも本人のおっしゃることには信憑性がないという結論でございます。そしてそうした発言というものは捜査の手がかりにならないばかりか、むしろ捜査に大変に混乱をもたらす、また無用な捜査力を費やす結果になりかねないということで、結論といたしまして、先ほど申し上げましたように、当面、同氏から事情聴取をする必要を感じていないということを申し上げたわけであります。
○小野明君 そうすると、警察庁としては、金大中事件あるいは日韓癒着についてはなおかつ捜査を継続しておるといいますか、そういう状況にあるんだと、こういうふうに見てよろしいですか。
○説明員(城内康光君) 私どもは、金大中氏事件につきまして、先ほども申し上げましたように、その解決のために鋭意努力をしておるわけでございます。
○小野明君 終わります。
○委員長(安孫子藤吉君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後零時三十分まで休憩いたします。
   午前十一時三十四分休憩
     ―――――・―――――
   午後零時三十四分開会
○委員長(安孫子藤吉君) ただいまから外務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、日本国とアメリカ合衆国との間の犯罪人引渡しに関する条約の締結について承認を求めるの件を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
○矢追秀彦君 最初に、この犯罪人の引渡条約ですが、前回よりは今回かなり拡大をされたということでございますけれども、その拡大が包括主義方式になっておりまして、罪種列挙主義にはなっておりません。この理由についてお伺いをしたいと思います。
○政府委員(村田良平君) 罪種列挙主義及び包括主義はそれぞれの利点があるわけでございます。罪種列挙主義の場合には、それをぱっと見ますとすぐにどの犯罪が対象になっているかということがわかる、そういう意味で非常に便利なわけでございまして、たとえばアメリカの場合には、いま、まで九十以上の条約を結んでおりますけれども、すべて罪種列挙主義によっておったわけでございます。しかしながら、罪種列挙主義によりますと列挙されておらない、しかしながら同じぐらい凶悪な犯罪というものは引き渡しの対象にならないことになるわけでございまして、そういう意味で引き渡し犯罪とそうでない犯罪との公平を欠くということになるわけでございます。それから、最近のように社会の変化が目まぐるしい場合には新しい犯罪というものも起こり得るわけでございますが、この場合には、罪種列挙主義でございますと一々条約を改正しなければならない、このような欠点がございますので、今回、日米間で話し合いまして、基本的に包括主義をとるということで合意いたしました。アメリカにとっては最初の包括主義をとった条約ということでございます。
 ただし、罪種列挙主義には先ほど申し上げましたような利点がございますので、今回の条約では包括主義をとりながら、最も典型的と思われます重要な犯罪を日米間で話し合いまして四十七種類に分けて付表につけた、それをもって罪種列挙主義の利点も補足的に取り入れておる、こういうことでございます。
○矢追秀彦君 この四十七種の付表ですが、これは将来変わることはあり得るわけですか。そういった場合は、どういう手続で変えられるわけですか。
○政府委員(村田良平君) この付表は条約の一部分でございますので、これにさらに新しい犯罪を加えるとか、あるいは現在記載されておりますものを削除するという必要がもし起こりました場合には、日米間で交渉をいたしまして、本条約の修正ということになるわけでございまして、その際には改めて国会の御承認を仰ぐ、こういうことになるわけでございます。
○矢追秀彦君 次に、いままでの犯罪人の引き渡しの過去のデータといいますか、これをお示しいただきたいと思います。
○説明員(敷田稔君) この日米犯罪人引渡条約に基づきまして引き渡しを行った事例は、戦争前に一件あった模様でございますが、その詳細は記録が焼失いたしておりますので不明でございます。ただし、戦後につきましては二件ございます。これは犯罪人引渡条約によらないものでございますが、スイスから詐欺罪の関係者を二名、フランスから背任罪の被疑者一名の引き渡しを受けております。また、若干前後いたしますが、犯罪人引渡条約によってアメリカから引き渡しを受けました事例は、戦後、双方殺人でございますが、日本人が一名、アメリカ人が一名ということでございます。
○矢追秀彦君 かなり戦後の件数としては少ないわけですが、今回のこの拡大によりまして、過去にさかのぼって当てはめたとした場合は、かなりこれはふえるわけですか。余りやはり変化はないようですか、いかがですか。
○説明員(敷田稔君) きわめてむつかしい予測の問題になると思いますが、相当程度ふえるのではないかと思われます。
○矢追秀彦君 そうしますと、今後、この拡大によってかなりいまふえるというふうなことですので今後もふえる可能性が出てまいりますが、どういった犯罪が一番多いと考えられますか。
○説明員(敷田稔君) それも正確には予測することは困難でございますが、いままでのアメリカ以外の国との条約によらない引き渡しの関係を見てみますと、やはり詐欺罪でございますとか背任罪でございますとかいうような財産犯、それから殺人罪でございますので、やはりこういう重大な殺傷犯とそれから相当多額の財産犯、こういう者が主として対象になろうかと、このように予測しております。
○矢追秀彦君 いま殺人罪とおっしゃいましたけれども、それはいままでも適用されてきたのではないんですか。むしろ今度の拡大は麻薬とかハイジャック、そういった新規の犯罪の引き渡しの対象が明記されておる、こういうことになっておりますので、その点はいかがですか。
○説明員(敷田稔君) 先生仰せのとおりでございまして、殺人罪は戦前からのいわゆる現行条約におきましても引き渡し対象の犯罪となっております。それ以外の、先生仰せの麻薬でございますとか、ハイジャックでございますとか、そういうものがどの程度ふえるかということは、まあふえるであろうということだけで、どの程度ということは非常に困難なものでございます。
○矢追秀彦君 次に、この交換公文にあります日米地位協定、これが優先をする、こういうことになっておりますが、この日米地位協定に基づく引き渡しとこの引渡条約に基づく引き渡し、この関係はいかがですか。
○説明員(北村汎君) 引渡条約と申しますのは、これは犯人が一国の国の法律を破って、そうして逃亡した者、それを引き渡していただくということで、これはいわば一般的な条約でございます。で地位協定と申しますのは、これはアメリカ軍が日本に駐留するという特定の状況に基づいてつくられた協定でございますので、米軍人及び軍属、その家族の犯罪というものにつきましては、これはその特定の状況に基づいてつくられた地位協定を優先させるということで、二つの条約が競合いたします場合には地位協定を優先させるというふうになっております。
○矢追秀彦君 この辺、私、大変疑問に思うことは、これは国会においても議論をすでにされたことですが、過去二十六年間、かなりの犯罪が米軍の軍人等によって行われているにもかかわらず、軍事裁判は一度もない。相当たくさんの事故があるにもかかわらず、全然裁かれていない、こういう実情が政府の方から明らかにされたわけですけれども、こうなりますと、この地位協定が優先するということは、結局、一番日本でアメリカ人の犯罪が日本に対して起こす事例としては、やっぱり米軍の人がいるわけですから、数としては多い可能性が出てくる。にもかかわらず、この地位協定が何か逃げ道になってしまって、せっかくこの条約が結ばれても、米軍の軍人、軍属、家族には適用されない、こうなってしまうと空洞化されてしまっている。この地位協定の方を優先にした理由というのはどこにあるわけですか。安保条約が普通の条約より優先するからということなんですか、その辺はいかがですか。
○政府委員(村田良平君) 今回、このような交換公文によりまして締結しようとしております条約と、それからすでにございます地位協定との関係を明確化しようとしました最大の理由は、先ほど北村参事官から申し上げたとおりでございますが、特に、今回の条約によりますと、国外犯も一対象にしたということがその主な理由でございます。そういう意味では、今度この交換公文によりまして新たにその地位協定を優先させることにしたというよりは、従来から地位協定が適用されておるケースについてはそのまま新条約ができましても引き続いて地位協定を適用していく、こういうことを定めたわけでございます。
 しからば、なぜ競合するかという点を若干具体的に申し上げますと、過去におきましては、在日米軍人がわが国で犯罪を犯しまして、たとえばそれが米側に一次裁判権があるという場合に、わが国の当局が本人を逮捕して米側に引き渡す、要するにこれだけであったわけでありまして、現行の日米犯罪人引渡条約によりますと、それぞれの国の領域で犯罪を犯して他方の国に逃亡した者のみについて引き渡し請求を行い合う、こういうことであったわけでございますが、新条約によりますと国外犯の規定がございますので、先ほど申し上げましたようなケースにつきましても、理論的には地位協定で引き渡しを求めるというやり方と、それから犯罪人引渡条約に基づきまして米国政府が日本国政府に引き渡しを要求するという手続の二種類が考えられるという状況が出てくるわけでございます。しかしながら、この犯罪人引渡条約によるという場合には、いろんな実態面での不都合も生じますので、従来から地位協定が適用しているそのやり方をそのまま引き続き適用するということにしようということでございます。
 ただ、ともに国会の御承認をいただく条約でもございますし、前法・後法等の関係でも疑問が生じてもいけませんので、交換公文におきまして現状どおり地位協定を適用するということを明確にした、こういう趣旨でございます。
○矢追秀彦君 大臣にお伺いするんですが、いま私の質問に対する答弁、従来からきておるから地位協定でいくのだと。すっきりしないのは、先ほども申し上げたように裁判が全然行われていない。結局、極端な甘い方をしますと、米国市人は日本において人殺しをやっても構わぬ、何も日本はできない、こういう結果に現状、過去二十六年間は四百八十六人も日本人が殺されていながら、実際は裁判がゼロという、こういう大変な状況にありますので、やはり私としては、まあ結ばれたものはしようがないと言えばしようがないんですけれども、今後の問題として、この地位協定の中から、こういったものについてはこの条約一本にしぼる、こういうふうなことへの変更といいますか改正といいますか、そういったことは考えられないのか。たとえ地位協定と両方あったとしても、こちらを使っていくということはできないのか。その点はいかがですか。
○政府委員(村田良平君) 大臣のお答えになります前に、若干技術的な点を明らかにさせていただきたいと思うのでございますが、わが国で犯罪を犯した米国人をわが国が引き渡しを求めるという場合には、そもそもこの犯罪人引渡条約の対象にはならないわけであります。これは日本の国内において犯罪が犯されまして、その犯人がわが国におるわけでございますので、これは地位協定そのものの運用という以外には方法がないわけでございます。もちろん、理論的には、何らかの理由によりましてわが国において犯罪を犯した人間が米国に帰還しておる、その人間の引き渡しをどうするかという点はございますけれども、その場合に、私どもの考え方としましては、これは地位協定十七条の五項の規定に基づきまして当然引き渡しを地位協定に基づいて要求し得るし、また現に米側からわが方の要請に応じて引き渡している事例も過去においてあるわけでございます。
 今回、特にこの引渡条約と地位協定の競合関係が生じますのは、米国がわが国に対して引き渡し請求をする場合に地位協定でやるのか、条約でやるのか、その辺が不明確になる、あるいは競合する関係がございますので交換公文にした、こういうことでございます。
○国務大臣(園田直君) 地位協定によるにいたしましても、あるいは今度の条約によるにいたしましても、要は、行われた犯罪が適切に――実際に犯罪を犯した人間に対して法により処罰を科せられることが当然の条理であります。しかしながら、地位協定で定められて、その運用が、今日まで米軍及びその関係者の犯罪というのは全部向こうでやられて、その結果も成り行きも全然日本が知らないというような運用に問題があるわけでありまして、先ほど申し上げましたような犯罪を実際に犯した人間に対しては法によって適切な処罰を科するという当然の条理が納得できるように、今後、協定の適切な運用を図っていくべきだ、このように考えまするが、本条約と地位協定の関係はいま事務当局から説明したとおりでございます。
○矢追秀彦君 要するに、日本にいる米軍人についてはもちろん地位協定でやる、これはそのとおりだと思いますが、ひとつ今後、まだ米軍は日本に駐留しておるわけですから犯罪が起こる可能性がありますので、いままでのようなことのないように米側に対する毅然たる姿勢でやっていただきたい。そういうこともありますので、私たちは安保条約そのものに反対をし、この解消を言ってきたわけでございますので、これはまたぜひ検討課題にしていただきたいと思います。
 次に、これは衆議院の委員会でも議論されておりましたロッキードの問題でございますけれども、ロッキード事件とこの犯人引渡条約、これをどうこうするということになりますと、裁判中等の問題がありますので仮定の質問になるかと思いますけれども、贈収賄はこれに適用されるわけですね。
○政府委員(村田良平君) 協定の付表の第三十九番に「贈賄、収賄」という罪種が挙がっております。
○矢追秀彦君 外為法違反はどうですか。
○政府委員(村田良平君) 第四十六番目の「輸出入又は資金の国際移動の規制に関する法令に違反する罪」に当たる場合があり得るかと存じます。
○矢追秀彦君 ただし、刑の大きさによってこれは――ここは漠然としか書いてませんよね、この四十六は。それによってこれから、たとえ外為法違反でも罰金の金額が少なかった場合、あるいは罰金だけであれば、禁錮にならなければ外されるわけですか、その点はいかがですか。
○政府委員(村田良平君) 第二条に定めるところによりまして、わが国及びアメリカ合衆国の法令によって死刑、無期もしくは長期一年を超える拘禁刑に処することとされている犯罪よりも軽微な犯罪については引き渡しの対象にはならないということでございます。
○矢追秀彦君 私が問題にしたいのはコーチャン、クラッターなんですが、これは仮定の問題になりますのでいろいろむずかしいかもわかりませんけども、コーチャンは現在は議会で証言をしたということで免責特権ということになっております。ところが、クラッターは証言を拒否しておる、しかし、免責特権でああいう状況になっておる。仮にこの免責特権がなくて、外為法違反で、かなりこれは金額も大きゅうございますから相当また贈収賄罪等も絡んできてこの四十七の付表の中に適当になるような罪であるということが予想された場合、もちろんロッキードの公判ではクラッターは裁かれていないわけですから、被告じゃないわけですから、その問題にはなりませんが、ロッキードの裁判の今後の進行の中でかなりクラッターとの関係が浮き彫りにされてきて、これに該当するような犯罪を犯しておるということが明らかになってきた場合、これは免責特権さえなければ、この条約を適用して犯人引き渡しということが可能なのか、その点はいかがですか。
○説明員(敷田稔君) クラッターにつきましても不起訴の宣明がなされておりますので、全く仮定の将来の問題といたしましてそのような事件がさらに起こりました場合、仮にこの事実認定上この付表に該当するものであって相互可罰性があるといたしますならば、当然、犯罪人の引き渡し請求をするかしないかについて検討すべき問題だと思います。
○矢追秀彦君 この問題はあくまでも仮定ですから、これ以上余り突っ込みませんけれども、一応、収賄罪、こういったものが入っておりますので、ただ、不起訴になってそれで終わりとか、あるいは免責特権があるからだけでうやむやにされては私は困ると思うわけです。
 次に、麻薬の問題ですが、麻薬についてはいままでどういうふうな状況にありましたか、麻薬事犯の実態と対象についてお伺いしたいと思います。
○説明員(長岡茂君) 麻薬についてお尋ねでございますが、覚醒剤を含めて申し上げたいと思います。
 昭和五十二年中に日本国内で検挙されました麻薬事犯は千四百十八件、千百六十三人でございます。また、覚醒剤事犯につきましては二万三千七百六十五件、二万四千四百四十七人を検挙しておるわけであります。
○矢追秀彦君 これはふえている傾向にありますか、減っている傾向にありますか。
○説明員(長岡茂君) もう少し詳しく申し上げますと、まず覚醒剤事犯でございますが、昭和四十五年以降増加の傾向を示しまして、昨年全国の警察で検挙をいたしました件数はただいま申し上げたとおりでございまして、この八年間に約二十倍に急増しておるわけでございます。また覚醒剤の押収量も、昨年は全国で六十五キログラムを押収いたしております。ここ数年の倍になっておりまして、ここ十年間でも最高の記録を示しております。
 また麻薬事犯について申し上げますと、大麻、ヘロインを中心にしまして全体的には増加の傾向を示しておりまして、昨年全国の警察で検挙しました件数はただいま申し上げたとおりでございまして、押収量も、大麻が昨年は百十三キログラム、ヘロインが四キログラム等いろいろあるわけでございます。
 この傾向は本年に入りましても依然として続きまして、現在二月までの統計しかございませんが、これを見ますと、覚醒剤、麻薬の検挙の件数、人員、押収量、いずれにつきましても昨年の同期の二倍以上にふえておるという状況でございます。
○矢追秀彦君 この中で外国人はどれくらいおりますか、特に米国人ですね。
○説明員(長岡茂君) 昨年、昭和五十二年中の検挙人員で申し上げますと、麻薬につきましては、日本人が九百二十六人に対しまして外国人が二百三十七人でございます。それから覚醒剤につきましては、日本人が一万三千八百十六人、外国人が六百三十一人でございます。この麻薬、覚醒剤の検挙被疑者の外国人のうち、現在わかっておりますのは韓国人が六百二十三人、台湾、香港等の中国人が二十九人、アメリカ人が百八十五人というような状況になっております。
○矢追秀彦君 アメリカ人もかなり多いわけですので、この条約が結ばれると、かなり向こうへ帰って逃げておるような人たちの検挙といいますか、引き渡しというのはかなりふえると見られますか、その点はいかがですか。
○説明員(長岡茂君) 日本の国外に逃亡しているおそれのある被疑者は相当数おるわけでございますけれども、ただ、問題は、他人の名前で国外に逃亡しているという者もかなりあるわけでございます。それからまた、どこの国へ行っているのかわからぬ、国内にはおらないけれども、そうかといってどこの国へ行っているということもまたはっきりしないという者もございますので、具体的に現在アメリカに何人おって、今後どのぐらいふえるかということについては大変むずかしい問題じゃないかというふうに考える次第でございます。
○矢追秀彦君 いまのお答えだと、せっかく麻薬がふえたにもかかわらず余りつかまえられないというふうなことになるわけですけれども、これは何とか外交交渉等であるいは入管ですね、出入国の管理を厳しくすることによってこれはもっときちんとしてもらわないと困るわけですが、その点はできますか。
○説明員(長岡茂君) 警察の立場から申しますと、各都道府県警察から指名手配された者で具体的にその人間がアメリカに逃亡しているという場合には、この条約の対象になるんではないかというふうに考えるわけでございます。
○矢追秀彦君 対象になるないじゃなくて、いま言われた相当数が多いわけですよね、年々ふえてきておると。しかも外国人も多い。しかも日本でつくられているものより外から入ってきた麻薬というのが圧倒的に多いわけですから、やはりたとえ日本の人がこういった犯罪をしておっても外人との関係の中でやっていることも間違いないわけですから、そういった点が厳しくなって検挙等がふえてこなければますます麻薬がふえていくという状況にありますので、ちょっといまの御答弁だと余り私も納得できないんですけれども、もっとうんとふやすという体制を固める、強化する、これはいかがですか。
○説明員(敷田稔君) 警察庁の方から非常に慎重な御発言がございましたが、それは確定的な見通しをおっしゃったんだろうと思います。しかし、やはりこの条約ができまして引き渡し犯罪の対象となりました以上は、できる限り逃走することによってその罪を免れしめることのないように、その点の国際協力を緊密にしていかなければならない、このように思っておりまして、法務省の刑事局にも、先般、国際犯罪対策室というものが設立されまして、警察庁、外務省などと緊密な協力をしてその間の体制の整備を図っていきたい、このように考えております。
○矢追秀彦君 大胆、直接麻薬には外務省は関係ないでしょうけれども、最近の傾向としてはかなり有名なタレントがたくさん麻薬を使っておりまして、子供たちが大変アイドルにしておるような俳優が所持をしておったということで大変教育上にも問題が出てきておりますので、せっかくこの条約ができるわけですから、この点の取り締まりの強化、閣僚の一人としても、条約担当の大臣としても私はきちんとしていただきたいと思うのですが、その点の御所見を伺いたいと思います。
○国務大臣(園田直君) 麻薬の取り締まり、麻薬の弊害については各国とも非常に苦しんでいるところでありまして、これは単に健康上のみならず、青少年の教育風潮上重大な影響を及ぼしております。この取り締まりについては、日本は他の国々に比べると比較的にうまくいっておったわけでありますが、その後・近隣諸国との往来、それから軍等の関係もあってやや低下してきておりますが、御発言のとおりでありますから、今後、この条約ができると同時に、新たな決意を持って取り締まる必要があると考えております。
○矢追秀彦君 最後に、この問題はこれで終わりまして、一言だけ。
 午前中も尖閣列島をめぐる中国漁船の問題、また日中平和友好条約締結の質問がありましたので重ねて細かいことには触れません。時間もありませんので、一言だけ大臣の見通しと決意をお伺いしたいのは、こういういろんな問題が起こりましたが、中国側としての日中条約締結への意欲、これは従来と変わりないという判断なのかどうなのか、これがまず第一点。もう一つは、わが国政府としての熱意も変わらないのかどうか。とすれば、前からよく呼吸を合わして土俵に、相撲にたとえて大臣はかなり予算委員会等では積極的な答弁をされておりましたが、いまこういう事件が起こっていろいろ苦慮されていることはわかりますが、いろんなことを乗り越えて、さらに向こうと呼吸も合わせ、話し合いもした上で速やかな締結へいくべきであると、それがまた私はアジアの平和、いろんな問題を今後起こさせないことにつながると思うのですけれども、その点と、時期明示はできないでしょうけれども、大体これぐらいを目標にがんばるのだと、そういった点もお示しいただければありがたいと思います。
○国務大臣(園田直君) わが方の友好条約締結交渉についての意欲はしばしば申し上げておりますとおり、本事件が起こってやや困難にはなってまいりましたけれども、一日も早く締結したいという、交渉を始めたいという意欲に変わりはございません。中国の方も公式、非公式に友好条約締結交渉再開については依然として変わらない、こういうことでありますから、この点は両方とも目標に向かっては一致しているものと考えます。
 なおまた、本書事件が起こったわけでありますが、この問題をどう処理するか、これは問題でありますけれども、お互いに近ければ近いほど、関係が深ければ深いほどいろんな問題が起こるわけであります。問題が起こったごとに起こった問題をお互いに冷静に処理をして、そして相互理解を深めながら起こる問題を乗り越えて友好交渉を始めることが私は両国のためであり、また、それが両国の道であると考えております。わが方といたしましても十分冷静に沈着にやりたいと思いまするし、また中国もこれに対して慎重にお答えがあるようでございますから待っているところであります。
 こういう問題はよほどの注意をしないと、今朝の新聞を見ましても、一国の大使が総理に対する批判をされたなどという発言が出ておりますが、いやしくも一国に駐箚する大使が自分の任地の総理に対し公式、非公式にかかわらず批判をなさるなどということは外交慣例上、礼儀上あってはなぬことでありまして、お互いにこういう点は注意をしつつ交渉再開に全力を尽くすつもりでありますが、いまようやく尖閣列島周辺の現況について、現在の状況について変化を来したところでございますから、いつごろどうかという見当はお答えはできませんけれども、一日も早く共同声明の線に従ってこの話が進むように全幅の努力をこの上ともする所存でございます。
○矢追秀彦君 一言だけ。中国側の熱意は変わらない、そうありたいし、そうでなければならぬと私も思いますが、いま大使の発言にお触れになりましたが、そういう状況あるいはこういうことを見ると、何か向こう側にも問題があるんじゃないかなという素朴な疑問というのが起こるわけでして、したがって外交ルートを通じてのきちんとした返答というのは、いろんな面であるようなないようなはっきりしていない状況です。そういった点については、かなり早い時期に正式な外交を通じての向こうの姿勢また今後の再開への見通しというか方針というものは出るものと、これはかなり早い時期に出ると大臣はお見通しになっておりますか、それを聞いて質問を終わりたいと思います。
○国務大臣(園田直君) これがどのようにして話が進んでいくかというその時期の見通しについては、いまお答えする時期ではございませんけれども、双方冷静に努力をしていけば遠からず交渉再開ができるようにと念願をして努力をいたしております。
○立木洋君 この条約の条文について若干お尋ねしたいんですが、第四条の1項の(1)の中で、ここでは引き渡しが行われない場合のことが述べられてありますが、政治犯罪というのが(1)に挙げられておりますね。この政治犯罪というのは日本の政府としてはどういうふうな定義といいますか、これはどうなっているんですか。
○政府委員(村田良平君) 政治犯罪人を引き渡さないということは、国際慣行として相当確立しておる事柄でございますが、したがいまして諸外国が結んでおります条約あるいは各国の国内法におきましても、政治犯罪人不引き渡しということが規定されておる例が非常に多いわけでございますけれども、しかし、いずれの国内法、条約をとりましても明確に政治犯罪とは何ぞやという概念規定を置いているものはないわけでございます。
 西ドイツの国内法等で若干考え方をうかがわせるような規定というのはございますが、それも非常に解釈に幅のあるような抽象的なものでございまして、国際的には政治犯罪と申しますのは、まことに抽象的な表現でございますけれども、ある国の政治的な秩序を侵害する行為、こういうふうに言われておるわけでございまして、学説等では純粋政治犯、相対政治犯等の議論もございますが、いずれにいたしましても、ある国の政治体制を変革するというたぐいの企図を持って行われた犯罪ということが基本的な考え方だと思いますが、個別にその犯罪が行われました背景、もちろんその犯罪自体の構成要件、それから犯人の動機もろもろの要素を総合的に判断いたしまして、特定の犯罪行為が政治犯罪であるということを認定する以外には方法がないのではなかろうかというふうに考えております。
○立木洋君 明確な規定がない、大体常識的にと、幅もあると、これは事実上運用する場合に、法務省どうなんですか、問題は起こりかねませんか、起こるということはありませんか。
○説明員(敷田稔君) やはりそのケースそのケースに基づきまして個別的、具体的に判断せざるを得ない事項でありまして――。
○立木洋君 どうもはっきりしてないから、よくわからないんですね、これも。
 交換公文のところで、もちろん第2項のところに述べられている先ほど問題にされました地位協定の問題ですけれども、これはわれわれもちろん認めるわけにはいかないわけですけれども、しかし、ここで述べられてあるのでお尋ねするわけですが、ここでは地位「協定に基づいて有する権利及び義務に影響を及ぼすものではない。」ということが述べられてあるわけですけれども、 つまり、この公文の第2項が仮にない場合ですね、この引渡条約というのが地位協定の影響を受ける条項、これはどういう条項が一体影響を受けるのか、これは両国の権利と義務に関する問題なので、どういう条項がどういう影響を受けるのかというのをはっきりさしておいてもらいたいんですが。
○説明員(北村汎君) 地位協定の第十七条の5項の(a)に「日本国の当局及び合衆国の軍当局は、日本国の領域内における合衆国軍隊の構成員若しくは軍属又はそれらの家族の逮捕」並びにそれらを引き渡すことについて「相互に援助しなければならない。」という趣旨の規定がございます。で、ここで交換公文に言っております権利義務とは、第十七条5項の(a)に言っております援助を相互に行うことについて日米それぞれの当局が持っております権利及び義務を指すものでございます。
 具体的に申しますと、たとえば在日米軍人が「公務執行中の作為又は不作為から生ずる罪」、これは地位協定上はアメリカ側の第一次の裁判権を有する場合とされておりますが、そういう罪であって、しかも米法制上田外犯に該当する罪を犯して日本国内において逃亡しておるような場合、この場合は、新しい今度の犯罪人引渡条約によりますと、これも引き渡しの対象になり得るものでございます。ところが、地位協定上は、アメリカ当局は十七条5(a)の規定に基づいて引き渡しについての協力を日本側に要求する権利がございます。日本はそれに応ずる義務があるわけでございますが、犯罪人引渡条約の規定というものはこの権利義務に影響を与えないという趣旨でございます。
○立木洋君 結局、ここで言われておるのは十七条の5項から関連してきて、3項の(a)ですね、アメリカの第一次裁判権を有するという(i)(ii)ですか、これは事実上問題によれば引き渡しを要求できるわけだけれども、地位協定でなければですよ、日本の犯罪を構成する内容のものであるならば引き渡しを要求することができるわけでしょう、犯罪人引渡条約では。しかし、地位協定ではこうなっているから、第一次裁判権である限り、引き渡しを要求できないという、そういう慣例があるということですね。
○政府委員(村田良平君) ただいまの立木委員の御質問は、日本側から米側に対する引き渡しのことを言っておられるのだと思いますが、先ほど矢追委員にもお答えいたしましたように、引渡条約によりますと、それはあくまでわが国の領域で犯罪を犯すあるいは日本の法律によって国外犯に当たる人間が合衆国に逃亡をいたしまして、その人間に対する引き渡し請求を行う、これが引渡条約の定めるところでございます。したがって、わが国が米側に対する引き渡し請求というのは、日本の国内において犯された犯罪につきましては地位協定以外にこれを律する条約というのはそもそもないわけでございます。先ほどちょっとただ一点だけ申し上げましたのは、日本の中で犯罪を犯しながらアメリカに逃げ帰ったとか、あるいは正当な手続を経て帰ってしまったという人間はどうかという問題が理論的にはあり得るわけでございますけれども、この点は、私どもは、地位協定十七条5項によりまして、あくまで引き渡し請求ができるという立場でございます。
 一方、先ほど来申し上げております条約と協定の競合関係と申しますのは、もっぱらアメリカが日本に米軍人の引き渡しを求める場合に、それが地位協定によるのか引渡条約によるのか競合をしてしまう、それで引渡条約の方によりますと不都合が生ずるケースがございますので、従来どおり地位協定でもって律したい、こういうことでございます。
○立木洋君 それから、この四条の1項の(2)のところに述べられている「引渡しを求められている者が被請求国において引渡しの請求に係る犯罪について訴追されている場合又は確定判決を受けた場合」というのは、これは刑法上の一事不再理という意味ですか、ということでできないということになるのですか。
○政府委員(村田良平君) そのとおりでございます。
○立木洋君 そうすると、ここで今度は地位協定の問題に入ってくるわけですけれども、十七条の8項のところに述べられていることですけれども、ここで前半の部分に述べられておるところで、ここにおいても「同一の犯罪について重ねてその者を裁判してはならない。」という、これも同じ概念ですね。
○政府委員(村田良平君) そうでございます。
○立木洋君 それから地位協定の十七条1項の(a)のところに述べられてある、ここで「刑事及び懲戒の裁判権を日本国において行使する権利を有する。」という、ここで言う「刑事及び懲戒の裁判権」、これは裁判権として刑事裁判権と懲戒の裁判権の二つがあるということでいいんですか。
○説明員(敷田稔君) 刑事裁判権の中にさらに分かれて刑事及び懲戒の裁判権があるというふうに考えております。
○立木洋君 ちょっと済みません、もう一遍。
○説明員(敷田稔君) 「刑事及び懲戒の裁判権を日本国において行使する権利を有する。」わけでございますわけでございますが、この二つを包括しまして通常刑事裁判権と、このように呼んでおるわけでございます。
○立木洋君 これは前に吉田さんの説明によりますと、米側が行使する第一次裁判権の内容は刑事に関する裁判権と懲戒の裁判権と二つがあるわけでございますということなんじゃないですか、そういう説明をしていますけれども。
○説明員(敷田稔君) 刑事裁判権というものを包括的に考えて、さらに懲戒だけをやるものと、それから懲戒以外のたとえば禁錮刑に処するものという三つあるわけでございますけれども、それを通常包括して私ども刑事裁判権と呼んでいるということでございます。呼び方の問題であろうと思います。
○立木洋君 そうすると、ここの先ほど言いました十七条の3項のところに述べられてある「裁判権を行使する権利が競合する場合には」というこの裁判権の中にも、当然、アメリカ側としては、言われている懲戒の裁判権というのも含まれるわけですね。
○説明員(敷田稔君) そのとおりでございます。
○立木洋君 そうすると、これはいわゆる懲戒の裁判権というものに関して、これは言うならば本質的には行政処分だと思うんですね。これがアメリカ側と日本側で懲戒の裁判権が競合するなんというようなことはあるわけですか。
○説明員(敷田稔君) 一つの犯罪が犯されました場合に、それに対してどのような処分をするかという点につきましては競合するわけでございますが、日本側の場合には懲戒というものはございませんので、日本側の裁判権の内容としては刑事処分、刑事裁判だけになるわけでございますが、向こうの米軍側の裁判権の内容といたしましては、先ほど申しましたような二つがあり得るということでございます。
○立木洋君 競合しないのに、わざわざ懲戒の裁判権というものを持ち出してきている意味はどういうことなんですか。
○説明員(敷田稔君) ですから、広い意味でいきますと競合しているわけでございます。ただ、日本国の刑事裁判権の内容としては懲戒の処分がないということでございますので、裁判権としては競合しているわけでございます。
○立木洋君 これはちょっと私は問題だと思うんですけれども、結局、日本で言うならば、いわゆる刑事裁判権を当然有する米軍の犯した罪、これについてアメリカ側で適当な形で刑事裁判権で処分する場合には、これは問題がないだろうと思うんですよ。いろいろ意味があったにしても、同じ刑事裁判権で処分する場合には。しかし、日本から見たら当然その米兵の犯した罪というのは刑事裁判権で処分されなければならないのに、相手側では行政処分で済まされてしまう。そうすると、一事不可理ということで日本側としては刑事裁判権が行使できない、そういうことになるんじゃないですか。これは内容的に言うならばきわめて屈辱的な側面も持っておるというふうに言えるんじゃないですか。
○説明員(敷田稔君) 私は必ずしもそのようには考えておりませんが。
○立木洋君 必ずしもじゃないですよ、あなた。行政処分というのは日本では行政処分できないんですよ、米側で行政処分ができるわけだ。ましてや米側の統一軍法ですか、によってやるのは、外国人に対して被害を与えたような場合というのは軍の規律に反するというようなものとして取り締まる内容はないんですよ、言うならば。そうすると、軍で行う行政処分というのは、これは米軍の権限でしょう。日本側ではこれは行政処分を行う権限がないわけです。当然刑事処分として処罰されなければならない対象である犯罪行為に対して、日本側が刑事処分を行うべきだと言ったって、向こう側は行わない、行政処分でやったんだから、一事不再理だからあなた方は要求しなさんなと、こういうことになるということはきわめて遺憾な問題がここに含まれているということじゃないですか。
○説明員(北村汎君) 理論的にはそういう場合もあるかと思いますが、もともとこの地位協定と申しますのは、安保条約の目的を遂行するために日本に駐在するアメリカの軍の地位について定めたものでございまして、したがいまして軍である以上、軍の特別な法規というものがあるわけで、その中に懲戒権というものがありますので、そういうことでこういう書き方のところで日米が違っておるようなふうに書かれておるのではないか。しかし、そういう地位協定という、いわゆる特殊な日本に駐留する米軍の地位について番いた特殊な状況における協定でございますので、そういう点はいたし方ないかと思います。
○立木洋君 理論的にはあり得ると言って一応あなたはお認めになりましたけれども、実際には、いま説明したような点では問題にならないんですよね。
 先ほど言いましたけれども、十七条の8項の第三段落のところではこう書いているんですよ。つまり一事不再理という問題が両方でありながら、ここでは「合衆国の軍当局が合衆国軍隊の構成員を、その者が日本国の出局により裁判を受けた犯罪を構成した作為又は不作為から生ずる軍紀違反について、裁判することを妨げるものではない。」と、いわゆる米側としては一事不再理でなくて、再び軍法会議にかけて処分することができるわけでしょう、日本の側だけができない。この内容というのはきわめて不平等で、事実上日本人に対する大変な犯罪行為が行われながら行政処分だけで済まされる。
○説明員(北村汎君) ただいま先生がお読みになりました十七条8項の最後の末段のところは、やはりこれは先ほども御説明いたしましたとおり、合衆国軍隊というその軍の特殊な規律を守るという観点からこういうことが書かれておるのでございまして、それはいわゆる刑事裁判権における一事不再理、そういうふうなものではないのではないかと思います。
○立木洋君 大臣、お聞きのような状態ですけれども、つまりアメリカの軍法会議で裁判にかけるというのは、軍の規律を犯した場合ですよ。つまり日本の国における法律を犯したような場合、これに対しては軍法会議で問題にならないこともあり得るわけですね、統一軍法典から見ても。ところが、実際日本人に対する犯罪というのは非常に多い、これはいままでも何回も問題になってきましたけれども。しかし、これが実際にはアメリカ側としては行政処分と言われる形で懲戒権が行使されたから、日本側として、事実上刑事犯罪を構成する重大な犯罪事件であっても、いわゆる一事不再理ということで裁判ができない、要求することすらできないということになると、きわめて不合理だと思うんですよ。これは大変屈辱的な内容だと思うんですけれども、大臣、その点についてのお考えはどうでしょうか。
○国務大臣(園田直君) 地位協定で規定された裁判権の問題その他がありますが、過去において日本が第二裁判権を要求したことはほとんど皆無であるばかりでなく、どのような処置をされたのか、裁判にかけられたのか、どういう刑事処分を受けたのか全然わかってないというところに一つの問題があると思うわけでありますので、今後は、この運用については日本側が積極的に米軍に請求するものは請求し、あるいは報告を求めるものは報告を求めるということから始めていって、地位協定の中の不平等な日本の生命、人権に関する問題等を逐次見直していかなきゃならぬと考えております。
○立木洋君 運用上の問題は、大臣、後でまたお伺いしようと思っているんですけれども、運用上だけの問題じゃなくて、この地位協定それ自体に懲戒の裁判権ということを認めておること自体が、事実上、日本の刑事裁判権を行使する権利を奪う、そういう側面を持っているのじゃないか。
○国務大臣(園田直君) これは条約並びに協定に規定されておるところでありますから、今日においてはやむを得ないと存じます。
○立木洋君 やむを得ないというのは、これはやっぱりよくないけれども、やむを得ないということですか。
○国務大臣(園田直君) 規定されていることによって、そういう同じ事件が日本で行われて、自動車事故にいたしましても、こちらは殺された、過失致死罪をやった者が日本の裁判であれば当然の過失罪で処罰を受けるのに、それがどうなったかわからぬと、こういうことでありますから、これはいいとは言い切れません。
○立木洋君 もう少しはっきりさしていただきたいんですけれども、あと続けていきます。
 少し運用上の問題もお尋ねしたいんですが、先般の予算委員会で米軍関係者の公務外の事故、犯罪として、昭和二十七年以降五十二年の十一月までとして十一万三百十八件、それによって日本側の死亡者が四百七十名というふうに言われていますが、この十一万余りの件数のうちで日本の法令によって罰したのは何件、米軍関係者にしては何名になっているのかお答えいただきたいと思うんです。
○説明員(敷田稔君) 前提とされておられます統計の詳細につきましては、私ども承知いたしておりませんので、その内容がどうであるかということにつきましては御説明できないわけでございます。
○立木洋君 施設庁での方はわからぬのですか。
○説明員(南雲彬君) 私どもの方で発表いたしましたその数字でございますが、この数字の性質につきまして申し上げますと、防衛施設庁では被害者に対する補償措置を所掌する官庁ということで、被害の大小を問わず事故が生じた事実を警察それから米軍当局、自治体などから知った場合、被害者の救済、それから損害補償請求の指導という立場から事故の調査を行っております。
 当庁の発生件数は知り得た件数でございまして、その後被害者からの補償請求手続を経まして十八条に載る事務手続を開始する前に、事故の当事者間で補償の示談が成立したり、あるいは自動車の損害賠償責任保険によって相互が満足するに至った案件につきましては、犯罪という形には出てこないわけでございます。当庁の数字はそういう性質のものでございまして、その中に刑事上の立件の有無という点につきまして法務省の方へ御連絡しておるわけでございますが、まだその突き合わせという事務が終わっておらない段階でございます。
○立木洋君 いま言われたような点でわかりにくい点があるかもしれませんけれども、事実上、いわゆる刑事事件を構成するものというのは大体わかるわけでしょう。全くわからないわけではなくて大体わかるわけで、そういう日本人に対する事故が起こって、それが刑事事件を構成するのか構成しないのかというふうなことまであいまいにしておるというようなことでは、これは全く大変なことになるわけですが、この十一万件ある中で、刑事事件が事実上明白に構成されるというものは何件あるんですか、犯罪として。
○説明員(敷田稔君) 日本国が第一次裁判権を有しております犯罪、これにつきましては、たとえば過去三年間検察庁が受理いたしております件数は六千百三十三名でございますが、その処理状況は三千三百三十名を起訴、二千八百三名を不起訴という結果になっております。
○立木洋君 それは三年間であって、二十七年からのやつはどうなんですか、十一万件の。これは全くあいまいにしてきたということですか。
○説明員(敷田稔君) 先ほど御説明申し上げましたように、基礎となっております十一万件といいますのは私どものとります統計とは全く目的を異にしておりますので、それがどういうものであるかということについては詳細承知しておりませんということでございます。
○立木洋君 いや、それを詳細承知してないのはいいけれども――いいけどって、よくないけれども、十一万件があるわけでしょう。この中で私はいま刑事犯罪を明確に構成する件数が何件あるのかと言うと、あなたは三年の間に六千何ぼと言われた。その前の件数はどうなっているのかと聞いているんです。
○説明員(敷田稔君) その前の件数につきましての統計は手元にございません。
○立木洋君 いわゆる公務外の問題というのは、第一次裁判権というのは日本側にあるわけでしょう。日本側にありながら、十一万件以上も事実上事故が多発している、それによって死者が四百名余りも出ておるわけでしょう。三年間に六千件と事実上犯罪が構成されるものとしてあなたは挙げられたけれども、この十二万件の問題については全く調べてもいない。日本人がそれほど大きな被害を受けているにもかかわらず、統計上は何ら調べていないし、そういう熱意が全くないということですか。
○説明員(敷田稔君) ただいま数字であらわし得る統計があるかないかということと、検察当局がこれに対して真剣に捜査をしているかどうかというのはおのずから別個でございまして、私が申し上げておりますのは、ただいま三年間の統計を手持ちいたしておりますが、その前の統計は手持ちしていないと、こういうことでございます。
○立木洋君 真剣にやっておったらおのずから数字が出てくるんですよ。真剣にやっていて数字が出てこないなんという、そんな真剣さというのはどこにあるんですか。
 もうこれ以上あなたに言ってもあれかもしれませんけれども、これは第一次裁判権がある問題についてすらこういう事態ですよね。それからアメリカ側に第一次裁判権があるいわゆる公務中の問題ですけれども、これも先般の予算委員会で先ほど述べた同期間中に三万六千七十五件、死亡者が四百八十六名というふうに報告されているわけですが、これでアメリカが第一次裁判権を行使するということになっていますけれども、この中で刑事裁判や軍事裁判が行われたのは全くゼロということですね。
○説明員(敷田稔君) 私どもは承知しておりません。
○立木洋君 だって、これは政府委員の伊藤榮樹さんという方ですか、予算委員会では「米側で軍事裁判に付したものはゼロのようでございます。」とはっきり言っていますよ。間違いないですか、これは。わからないのか、ゼロなのか、あなたがわからないのか。
○説明員(敷田稔君) わからないわけでございます。
○立木洋君 あなたがわからないわけ。伊藤さんはゼロと言っているんですよ、ゼロのようにというふうに言っていますけれどもね。
○説明員(敷田稔君) 一応、わからないので、ゼロではなかろうかということなんでございますが。
○立木洋君 全く頼りない答弁ですね。
 それでは次に、これらの問題で地位協定の中では懲戒の裁判権が行使されるということも二心認めている。これ自身問題があるわけですけれども、懲戒の裁判権の行使されたのは何件あるかという問題について、これはやっているかやっていないか不明でございますということ、これは間違いないですか。
○説明員(敷田稔君) 間違いございません。
○立木洋君 それから、これは地位協定の十七条の6項の(b)のところに「競合するすべての事件の処理について、相互に通告しなければならない。」というふうになっていますけれども、この通告もアメリカ側からはほとんどないというのも間違いないですか。
○説明員(敷田稔君) 通告は外務省を通して参るわけでございますが、私どもの方はその通告を受けていないということでございます。
○立木洋君 外務省の方は通告ないわけですか。通告があるのに法務省に連絡しないというばかなことはないでしょうから、通告はないと。
○説明員(北村汎君) 外務省が通告を受けました場合には、全部法務省に通告しております。
○立木洋君 いや、法務省は受けてないと言うんだから、あなた、ないということだろう。そんなややこしい答弁の仕方をすると頭がこんがらかるじゃないですか。
○説明員(敷田稔君) 若干説明不足の点がございましたのであろうかと思いますが、通告はあるわけでございますが、ただ件数はないということでございます。結局、ゼロという通告があるという……。
○立木洋君 全くもう大変なことですがね。
 それから、先ほど大臣が言われましたように、第一次裁判権を有するアメリカが裁判権を行使しないということが決定された場合に、日本側からは相手国のいわゆる裁判権放棄、それを要請することができるわけだけれども、それはアメリカ側に放棄要請をしたことは一つもないということも、これも間違いないわけですね。
○説明員(敷田稔君) そのとおりでございます。
○立木洋君 これは、そうすると、この三万六千余件のいわゆる公務中の米軍関係者による事故、この中で日本側から見て、当然これは犯罪とみなし得る、あるいは問題がなければ日本として裁判権が行使でき得るような、そういう犯罪を構成し得る件数というのは何件あるんですか。
○説明員(敷田稔君) 件数的に何件ということは、ただいま資料がございませんので言えないわけでございますが、ただ申し上げられますことは、公務中の犯罪であるという通報がまいりました場合に、その内容をしさいに検討はいたしておりまして、それが重大な犯罪を構成するものであるかどうかということ、あるいは仮にそうであるとすれば第一次裁判権の放棄を要請すべきであるかどうかということにつきましては検察当局で十分検討いたしまして、その結果、やはりそれまでのものではないということで特に放棄の要請をしていないというのが実情でございます。
○立木洋君 これも事実上あいまいでよくわからない、件数がどうなっているかもわからない、みんなわからないわけですね。いわゆる地位協定の運用なんというふうなことは全くでたらめだということになるですよ、この十七条の裁判権の行使の問題については。結局、先ほどから聞いていますと、日本側が第一次裁判権を有する公務外の問題についても、これは事実上わからない。それからアメリカ側が第一次裁判権を有する件数についても、アメリカ側はいわゆる軍事裁判はゼロ、ないからゼロだろうと。懲戒権の行使というのもこれはゼロだ。しかも、それに対して日本側からは裁判権の放棄要請も行っていない。
 日本側で件数から言うならば昭和二十七年から五十二年までというわけですから、この期間に十五万件近くも事故が発生しているわけです、それによって亡くなった方というのが九百名にも上る。これは沖繩が入ってないというから、沖繩を含めればもっと大変なものになるだろう、米軍の基地が存在する沖繩の状態ですから。こういうふうな問題が事実上大変な事態にありながら、われわれは賛成していませんよ、しかし、十七条で規定されているこの裁判権の問題に関しては全くでたらめきわまるものだということになるわけですが、この点について大臣どのようにお考えでしょうか。
○国務大臣(園田直君) 私は、地位協定の問題については他の委員会でも私の考え方を発言しておりますが、今後、安保体制を維持して、日米を日本の外交政治の基軸とする上からいっても、基地問題はきわめて重大であると考えます。その基地問題で周辺の方々、日本国民が納得するようなことでなければ、今後派生的な問題はたくさん出てくると思います。
 そこで、この地位協定については、時代の変遷、世の中の移り変わりにつれてこれはよく話し合わなきゃならぬと思うけれども、しかし、まだまだそこへ行きませんので、御承知のとおり、いままでこちらに請求したこともない、やったことは一回も聞いていないというようなことで、そういう話じゃならぬので、まず運用上規定された最大限のことを向こうに請求するものは請求し、要求するものは要求していくということから始めなければならない、こう考えております。
○立木洋君 これはもう大臣おわかりでしょうけれども、西ドイツに駐留するNATO軍の地位に関する協定を補足する協定というのがあって、その第十七条になされているわけですけれども、「犯罪に関する裁判管轄権の決定のために、ある行為が派遣国の法律によって罰しうるかどうかの決定が必要とされる場合には、事件を扱うドイツの裁判所又は当局は、手続を停止し、派遣国の所轄当局に通知するものとする。派遣国の所轄当局は、通告を受理した後二十一以内に、もしくは通告がなされていない場合にはいつでもドイツの裁判所又は当局に対し、同行為が派遣国の法律において罰しうるかどうかについての証明書を提出することができる。証明書が同行為を派遣国の法律によって罰しうることをのべている場合には、処罰を定めた規定ないし法的根拠、および刑罰について明示するものとする。」という、これは西ドイツが結んでおるものですけれども、われわれはその地位協定に賛成していませんけれども、西ドイツの場合にはここまで大体はっきり定められているわけですね。
 この点については、少なくともこういうふうないわゆる明確にした内容ぐらいは望ましいことではないかというふうにお考えになるのかどうなのか。
○国務大臣(園田直君) いまおっしゃいましたように、安保条約地位協定については私たちは立場を異にしているわけであります。立場を異にしておって、これを緊密にしかも問題なくやっていくためには、やはり先ほど言うように、だれが見ても納得のいくようなことにしていかなければならぬ。そうしなければいままでのままでやっておると、いつの日にか基地問題でいろいろ問題が起きてきてアジアの国々に起こったようなことになると思いますので、そのためにまず運用を適確にして実績を積んで、それから地位協定についての話し合い、こういう段取りを考えながら、私は、まず運用を適確にやる、決められた内で最大限にこれをやろうと考えているわけでありますが、なかなかこれが地位協定は外務省、防衛庁その他に分かれております、いままで決まった枠内の中でじっとしておればというような気持ちがないでもありませんので、これは事務当局に十分お願いをして、そういう方向で、私のいまの答弁に事務当局は批判があるかもわかりませんが、その方向でやらなければ基地問題というものはもっていけるものではない、私はこう思っております。
○立木洋君 じゃ最後に、四つの点だけ。先ほどはいままでの問題について大分法務省に厳しく言ったわけですけれども、次の四つの点について確認を得ておきたいのです。
 第一に、いままでアメリカ側がいわゆる犯罪が競合する場合、裁判権が競合する場合には報告する義務がある、これは第一に完全に履行させる。やったかやらないかわからないようなことは放置させず、報告の義務は完全に履行させるということが第一点。
 それから第二点は、アメリカ側がもしか裁判権を行使していないという事態が明らかになり、なおかつ日本で刑事犯罪を構成するものであるならば、これはアメリカに裁判権の放棄要請を行い、日本で裁判権を行使する、これが第一点。
 それから第三点は、公務外のものについて、これは第一次裁判権を完全に行使する。さっき言ったような一生懸命やっておりますけれども、統計が出ないのでわかりませんというふうなことではなくて、やっていただく。
 それから第四点は、米側の懲戒権、いわゆる懲戒の裁判権というふうなものは、これは日本側と競合しないわけですから、これはアメリカ側としては懲戒権というのはいわゆる統一軍法典によって行われるわけで、これは全く競合しないわけですから、しかもアメリカ側は、日本側が裁判しても、彼らとしては懲戒権を行使するという特別の規定も8項の後段に設けてあるわけですから、いわゆる懲戒権の問題についてはやはり除く、明確に刑事裁判権ということをはっきりさせる。
 この四点を確認いただきたいわけですが、大臣と、それから法務省の方からも一お答えいただきたいんですが。
○説明員(敷田稔君) 四点、先生お述べになりましたわけでございますが、第四点目は法務省の所管ではございませんので、一点、二点、三点につきまして申し上げるといたしますと、いずれもそのとおりであろうかと思います。で、それは私の説明が必ずしもうまくないので、やっていないのではないかというふうな印象をお与えして申しわけないわけでございますが、実際にやっておりまして、今後ともやると。それから特に懲戒に関しましては御指摘のとおりでございまして、これは懲戒処分、懲戒裁判の結果を確実に把握するような特段の措置をすでに講じてございますので、これも統計的にはっきりできる形になるであろう、このように考えております。
○立木洋君 では、大臣いかがですか。
○説明員(北村汎君) 立木先生のおっしゃいました四点のうち、まず第一点の犯罪に関する通知、これにつきましては地位協定はもちろんのこと、それに基づく合同委員会の合意がございまして、それに非常に詳しく、何日以内に通知があってから裁判権を行使するという通告がないときには、それは他方の国が行使する、こういう非常にきわめて詳細な規定がございます。ですから、この点はこのとおり運営されていくべきものでありまして、それから第二点のアメリカが裁判権を行使しないというときに、これは日本が第二次の裁判権を持って、それを行使すべきである、これは地位協定上明白に書かれておることでございます。今後、そういうような場合はケース・バイ・ケースで判断いたしまして、日本側も大いに第二次裁判権を行使しなきゃならぬというときにはそれを要求すべきことであろうかと思います。
 それから第三点の公務外の問題につきまして、これはもちろん日本が第一次の裁判権を持つ問題でございます。ですから、これは先生のおっしゃるとおりでございます。
 ただ、第四点の軍の懲戒権を外せというお話でございますけれども、これは先ほどからも御説明申し上げておりますように、これは軍というものの特殊性、それから安保条約、あるいはこれは西ドイツにおけるNATOの場合と全く同文の規定がございます。それでこれは何も日本にだけアメリカが押しつけておる問題ではございません。これは軍の特殊な規律を維持していくためにできておる規定でございますから、これは決して不平等であるとかという問題ではなくて、やはりこれは軍の特殊な性格からくる問題として、地位協定に書かれてあるとおりに運用されるべき問題かと思います。
○立木洋君 それはいま北村さんですか、書いてあっても、やってないから問題だと言っているんですよ。
 それから西ドイツの問題については、そういう条項がどこにあるのか。それから、それがあっても先ほど私が読み上げた十七条で明確にされているんですからね、そのことは違いますよ、それは。日本の場合には屈辱的な内容になっているわけですから。
 以上、四つの点について、最後に大臣の方からやっぱりやるという明確な御答弁をいただかないと引き下がるわけにいかないので、これは日本人の生命財産が犯罪によって犯されるわけですから、ひとつはっきりと最後に――。
○国務大臣(園田直君) 私が二回にわたって答弁しました運用上の問題を適確にやりたいということは、いまおっしゃいました質問の要旨を私も考えておるわけでありまして、しかし、これは事務当局の責任ではなくて、事務当局はまあ非常に苦しい答弁をしているわけでありますが、日本の外交なり日本の政治の姿勢であると考えております。どうも決められた規約あるいは協定、その中できちんと主張すべきものは主張し、やるべきものはやるということが相手の国によってどうも弱さ強さがある、こういう日本の姿勢にあると考えますので、そういう点も十分注意をして今後運用をやりたい、そして将来はまた将来のことを考えたい、こういうことでございます。
○委員長(安孫子藤吉君) 他に御発言もないようでありますから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。――別に御発言もないようでありますから、これより直ちに採決に入ります。
 日本国とアメリカ合衆国との間の犯罪人引渡しに関する条約の締結について承認を求めるの件を問題に供します。
 本件に賛成の方は挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
○委員長(安孫子藤吉君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(安孫子藤吉君) 御異議ないと認め、さように決定をいたします。
    ―――――――――――――
○委員長(安孫子藤吉君) 次に、日本国とバングラデシュ人民共和国との間の国際郵便為替の交換に関する約定の締結について承認を求めるの件
 及び、日本国とカナダとの間の小包郵便約定の締結について承認を求めるの件
 両件を便宜一括して議題といたします。
 政府から、順次、趣旨説明を聴取いたします。園田外務大臣。
○国務大臣(園田直君) ただいま議題となりました日本国とバングラデシュ人民共和国との間の国際郵便為替の交換に関する約定の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。
 わが国と諸外国との郵便為替の交換は、一般的には、万国郵便連合の郵便為替及び郵便旅行小為替に関する約定によって規律されております。しかし、バングラデシュ人民共和国はこの多数国間の約定の締約国ではありませんので、バングラデシュ人民共和国との間で郵便為替を直接交換するためには、同国との間で二国間の約定を新たに締結することが必要であります。
 よって、わが国及びバングラデシュ人民共和国の郵政当局は、両国の間において郵便為替の直接交換を開始するため、かねてから予備的な話し合いを行っておりました。この予備的な交換を通じ実質的な合意が得られましたので、両国政府は、本年二月より正式に郵便為替約定の締結交渉を開始し、先般最終案文について合意を見るに至りましたので、本年四月十四日に東京において日本側本大臣及び服部郵政大臣とバングラデシュ側カマル駐日バングラデシュ大使との間でこの約定の署名を行った次第であります。
 この約定は、前文、本文十四カ条及び末文から成り、本文十四カ条は、為替の交換方式、為替の表示通貨、為替業務に関する諸料金、両郵政庁間における決済の方式、仲介業務の条件等両国が郵便為替業務を円滑に行うために必要となる基本的事項について定めております。
 この約定を締結し、わが国とバングラデシュ人民共和国との間で郵便為替の直接交換を開始することとなれば、両国国民間の送金の利便が拡充されるとともに両国間の協力関係の一層の増進にも寄与するものと期待されます。
 よって、ここに、この約定の締結について御承認を求める次第であります。
 次に、日本国とカナダとの間の小包郵便約定の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。
 現行の日加小包郵便約定は、大正三年に締結された日加小包郵便約定を受けて、昭和三十一年に締結され、その後昭和三十七年に部分的に改正されて現在に至っております。
 一方、わが国を含む世界の大多数の国が加入している万国郵便連合の連合小包郵便約定にはカナダは米加入でありますが、この連合小包郵便約定は、現行の日加小包郵便約定の締結後、四回にわたり改正されました。このため、日加小包郵便約定と連合小包郵便約定との間には、小包郵便物の取り扱い等に関して差異が生じてきております。
 以上の状況にかんがみ、政府といたしましては、昭和四十九年七月に新たな連合小包郵便約定が採択された機会をとらえ、昭和五十年四月に、現行日加小包郵便約定の全面的な改正を行い、両約定間の差異をなくすこととし、カナダ側に対し予備的交渉の開始を提案いたしました。両国政府は、この提案に基づき、まず予備的交渉を行い、これによる実質的な合意の成立を受けて、さらに昭和五十一年十一月から正式に改正交渉を開始し、外交経路を通じて調整を束ねた結果、このほど約定の最終案文について合意を見るに至りましたので、本年四月十一日に東京において、日本側本大臣及び服部郵便大臣とカナダ側ランキン駐日カナダ大使との間で、この約定の署名を行った次第であります。
 この約定は、本文十六カ条及び付属書から成り、その主要な改正点は、次のとおりであります。
 すなわち、現行約定を体系的に整理し直すとともに、取り調べ請求に関して受取人からの請求及び電信による請求を新たに認めることとし、また、価格表記小包の亡失等の事故が不可抗力による場合であっても各郵政庁が任意に損害賠償を行い得るように改めることなどにより、現行日加小包郵便約定と連合小包郵便約定との間に従来見られた差異をなくし、もって、日加両国間の小包郵便物の交換業務の一瞬の円滑化を図った次第であります。
 したがいまして、かかる約定を締結することは、小包郵便の分野における日加両国の協力関係の一層の増進に資するものと考えられます。
 よって、ここに、この約定の締結について御承認を求める次第であります。
 以上二件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことをお願いをいたします。
○委員長(安孫子藤吉君) 以上で趣旨説明は終わりました。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
○戸叶武君 この件に対する質疑に入る前に、当面している一、二の問題についてお尋ねします。
 外務大臣は、フレーザー・オーストラリア首相並びに外務大臣のピーコックさんがついてきたので、きょう、あすと重要な懇談があるということでありますから、時間をなるたけ短くしたいと考えております。
 そこで、先ほどの西ドイツのシェール大統領とのお話し合いにおいても相当な成果をおさめたと思うのでありますが、その問題はさておいて、このオーストラリアとの関係には、新聞もすでにあらかじめ伝えておりますけれども、かなり重要な話し合いの終結が行われるんではないかと言われておりますが、それは具体的にはいかような状態になっておるんですか。
○国務大臣(園田直君) 本日午後、総理と豪州の総理大臣との会談があり、外務大臣もこれに立ち会います。なお、明日、豪州の外務大臣と私との会談が予定されております。
 豪州は、御承知のとおりに、日本に対して非常な関心があるばかりでなく、知日、親日家の指導者が多いわけであります。豪州の置かれた立場から、特に米国、日本との関係を重視をしておるわけであります。そういうわけで、今、明日中の総理会談及び外務大臣の会談等については、国際情勢を初め、経済の問題等、主要な問題で話し合われることと想像いたします。二国間の問題で出る問題は余りないのではないかということでございますが、これから会談することでございますから、それ以上具体的なお答えはできません。
○戸叶武君 大臣からのそういう答弁ですから、これ以上私は質問はいたしません。しかし、豪州の問題が重大であると同時に、いまソ連並びに中国及び近接した韓国と中国という形だが、内面的にはアメリカのメジャーが策動しているんじゃないかと思われるような節の尖閣列島の問題、そういう問題が非常にデリケートな段階に来ておると思います。
 それで問題は、国連の関係の調査によって石油があることがわかったと言われるが、アメリカのメジャーの持っている技術なり、その関連した機関なりとの協力も得て恐らくはその調査もなされたのではないかという節もあるのでございますが、それが石油が海底にあるというふうな発表がされるや否や、韓国は問題を起こしてやはり突っ込んでまいり、アメリカのメジャーとの契約もやり、また台湾でもそのようなことをする。台湾というのは、日本のいままでの日中条約締結への方向づけの中で中国の領土であるということを確認しているはずであります。おとといですか、あの外務大臣の答弁は非常にデリケートで慎重のような答弁でしたが、わからなくなった節もずいぶんあるのであります。現実的においては中国側でもそう受けとめておるようですが、台湾、韓国はアメリカがコントロールしている。主権の存在どうかの問題じゃなく、現実的にコントロールしている。その上に立ってこの問題が私は起きているのであって、表現は非常に丁重で相手を刺激しないような表現だが、事実関係は正確にあるところまで見た上で問題の中心の目玉に指突っ込んでいるような状態がいまの韓国のやり方、中国のやり方、アメリカのメジャーのやり方だと思います。日本は目をこすっているだけで、どこにだれが指突っ込んだかもわからないで、問題の核心をはっきりとつかまえていないのではこの問題の解決もできないと思うのですが、その関係はどのように総合的に観察しておりますか。
○政府委員(三宅和助君) まず、第一点でございますが、先生御指摘のとおりエカフェの調査が出まして、あのあたりが非常に石油資源が有望であるということから、これは一九六九年に出たわけでございます。その後、一九七〇年ぐらいに台湾の新聞、中国の新聞に政府の要人の発言といたしまして、尖閣列島というものは中国ないし台湾の領土というそれぞれの発言が出てきたわけでございます。七一年に至りまして公式声明が出た。ですから、確かに石油問題というものを契機にいたしまして尖閣列島の領有権問題が出てまいった。それから韓国の問題につきましても、やはり石油資源ということで韓国政府が海底資源開発法というものをつくりまして、これにアメリカのメジャーに開発権を与えるというような動きになったことは事実でございます。
 それから第二点は、それではメジャーが実際問題として韓国、台湾の石油業界をコントロールしているかという点でございますが、実際問題としまして韓国、台湾の石油開発につきましては、それぞれがメジャーと提携しながら石油開発を進めるかどうかという問題は、日本側といたしまして、どうこう言う立場にはないわけでございます。実際問題として韓国なり台湾それ自体が一つの開発を進めるに当たって諸外国との技術提携、資本提携をいかなる形で行うかということは、台湾なり韓国の決めるべき問題だろうと思います。
 それから第三点の、台湾の帰属の問題でございますが、これは言うまでもございませんように、日中の共同声明の第二項で、日本政府は中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であるということを承認しておりますし、第三項では、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であるということを中華人民共和国が表明いたしまして、日本政府はこの中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持するということで、この段階で台湾問題がそういう形で処理された。したがいまして日中の条約問題とは関係のない問題である、こういうぐあいに考えております。
○戸叶武君 なかなか外務省の見解というものは正直で正確に物を把握ししていると思います。こういう政府自体でも事態を把握しているのに、いま福田内閣の政府与党の言論というものは、外交権というものは内閣にあるが、それを揺すぶっている連中の無責任さというものを明らかに露呈して、海外において信頼を失っているのがすべて福田さんにぶつかってきたり、まあ園田さんの方は幾らか避けて通っているようですが、私はこれは大変なことだと思うのです。
 そこで、今度は園田さんに質問いたしますが、日本駐在大使が前の議長の河野さんか何かに会ったときに、もう福田内閣はどうも信用ができないのだと、待つならば一カ月でも二カ月でも待つが、来年あたりまで待たなくちゃならないのではないですかというような表現を公然と使っているのは、それまでには福田内閣は往生してしまうのじゃないかという見通しの上における非常に儀礼的な発言のようにも見えるし、そればかりでなく、北京における耿ヒョウ副首相の発言においては、日中平和友好条約というものは解決はなかなかむずかしいが、福田首相はやはり田中さんのような迫力はありませんねという形で、田中をほめているとも見えないが、迫力のない、とにかくまとめる能力がない人じゃないかというような一つのさじを投げてかかっているんじゃないかと思うのです。
 外交はやはり国際信義を基調とするものでありますが、外面的な形じゃなくて、お医者さんでも病人にさじを投げちゃってからはもうこれは病膏肓に入ったというので見放したという意味にもとれるのでありますが、あなたは外務大臣として忠実に福田内閣を守っているのですが、大体見放されたとは見てないのですか。
○国務大臣(園田直君) 尖閣列島の事件が起きましてから後のことは、いま事務当局がお答えしたとおりであって、政府・与党でも差項目の方針を決定して、友好条約締結交渉については共同声明の線に従って努力をする、こういうことで、せっかく与党に対する理解と協力を求めてきたところでありますが、尖閣列島の問題が解決をすれば、さらに理解を得つつ段取りを進めていくという覚悟であります。
 なお、新聞でございますから事実はまだわかりませんけれども、こういう時期には、尖閣列島の問題についても条約交渉の問題についても、当時者である両国が軽率な発言は慎み、お互いに冷静に友好条約が締結されるという方向に向かって努力をすることとが大事であると私は熱意があればあるほど考えるわけであります。
 そこで、きのうの符浩大使の発言は、新聞で見ただけでありますから事実を確かめているところでありますけれども、事実であるとするならば、これは公式、非公式にかかわらず駐在をする大使が自分の任地の総理に対する批判をやることは外交礼儀上慣例から言ってもあるまじきことでありまして、こういう言動はお互いに慎むべきである、こう考えておりますが、問題が起こりまするといろいろ問題が派生的に出てきますから、冷静に厳正に目的に向かって努力をしたい、こういうわけでありますので、符浩大使の発言によって向こうが福田内閣を相手にしないというようなことではないと考えております。仮にそうであるとするならば、これはまた方向は違ってくるわけであります。
○戸叶武君 相手にしないという言葉は使っておりませんが、中国の人は言葉の使い方が非常に上手ですから、日本の近衛さんのように蒋介石を相手にしなければ和平が結べないということをあの段階でわかっていながら、蒋介石を相手にせずと言えば何とか向こうで中国側の出方があるのではないかと思って、そういう発言をしたら、本当に向こうの方であべこべに日本がそう言うのなら相手にしないという声明を出した。後日、参謀本部の大佐影佐禎昭大使は重慶側の密使高宗武を通じ、士官学校時代の同期生何応欽軍政部長、張群行政院副院長に私書を誓いて、あれはえらい間違いだと送った。それを読んだ蒋介石は、日本の軍部の中枢の幹部が敵将に謝るという態度に感激し、一時は日中両国の和平可能の線が出たこともあったのです。
 いま、紋切り型に、常識的には園川さんの受けとめ方で、園田さんも若干遠慮しておりますが、こういう言葉を出先の大使が漏らさざるを得ないような体を張っての非公式発言にしても出てくるというのは、やはり非常に不信感の憤りというものが満ち満ちているのじゃないか。それが証拠に、その符浩さんだけじゃなくて、副総理の耿ヒョウさんも、福田さんではまとまらないのじゃないかという形の、言葉は少し歯切れが悪くて遠慮していますが、半分はあきらめたような発言をしているのは、これは容易なことじゃないと思うんです。
 怒るのは楽ですよ。外交儀礼としてあり得べからざることだと言うけれども、とにかく日中関係の最悪な事態をまとめようとした近衛さんの蒋介石を相手にせずという表明がかえってまとめる綱を失ってしまったように、いまの符浩さんがそういうことを言うのは失礼じゃないかと言うが、日中間において相当煮詰められたにもかかわらず、公然とたとえば中曽根総務会長のごときは、きょうの――私は新聞記者出身で新聞が全部正しいとばかりは言えないけれども、あの佐藤さんの息子をおだてるおだて方なんかは、さすがの保利議長さんもたしなめておりますけれども、とにかく台湾と結んで参議院の中枢になって揺すぶっていることはまことに結構なことだと言わんばかりのような発言を自民党の総務会長がやっているというようなことになれば、中国の副首相であろうが、日本に来ている大使であろうが、公然とやっぱり憤りを発せざるを得ない段階に来ているのではないかと思うんで、災いのもとは中国にあるのでなく、福田内閣、自民党の体内にあるのだということを私たちはもう少し見詰めてみずからの姿を反省しないと、いまの自民党なり福田内閣には外交は任せられないというところが、これは中国だけではなく、われわれの憤りからも発してきますよ。
 これは重大な段階に来ているんで新聞に書かれていることは気にしなくてもいいと言うが、日本は自由な言論があって国民の言わんとするところが皆ほかにも知れていっていますが、外交権は内閣にあるんだと力んでいるところの内閣の、それを支えている与党の総務会長が、公然として、その中国揺すぶりの先頭に立つ者を激励して歩くというような状態では、一体、どこの政党か、どこの内閣を支えているのか、改めて私たちは他党のことであるけれども、これは不問に付することはできないと思うんです。そういう野放しの発言をするから海外から侮りを受け、海外からようしそれまでわれわれをなめているならばわれわれの方でもというけんか腰にならざるを得なくなるのだと思います。
 その辺のところは、まあ外務大臣に言わせるとあなたの方へたたりがいくから、気の毒だから、これは答弁は要しませんけれども、福田さんなり、それからあなたのところの総務会長なんてどっちを向いているのかわからぬけれども、ああいう慎重派と言われる人たちに戦争の危険を冒すつもりかそうでないのか、こういうことをはっきり、国会でどなりつけられたから私は静かな声でお伝え申し上げますというぐらいなことをひとつ言っておいてください。そうじゃなけりゃ人のことは言えないですよ。
 やはり党の三役と言われる総務会長の地位にある者、あるいは党の長老と言われる者、温厚なあの外務大臣をやった小坂さんあたりでも、頭なでなで、なでても毛があるわけじゃないが、毛がないからいいんでしょうが、おれは引き下がる、とてもこれじゃかなわぬというんでさじを投げるんで、そんなことをやっちゃ君だめだぞ、こういうときにどろをかぶるような政治家にならなくちゃいかぬとぼくは言いましたけれども、これは私は非常にこじれにこじれてくると、いろいろなもろもろのものが出ちゃって収拾がつかない状態にくる。近衛声明のときと同じような末期的現象が私は醸し出されると思うのですが、よくあなたから注意してやってください。
 それでは転じまして、ソ連の漁業の問題は帰ってきてからにしますが、あなたにしろ農林大臣にしろ相当腹のある人間だが、どっちも火あぶりにされていて相当残酷な状態にあるのは、日本の政治姿勢がやはりふやけているから、それでこういうことになって方々でなめられているのだと思いますが、バングラデシュやカナダの方は余りなめられてないようですから、そっちの方へひとつ話を移します。
 それでは、カナダとの小包郵便に関する件でありますが、カナダの方の問題点はどういうところが、重要な問題点ですか。
○説明員(日高英実君) お答えいたします。
 いま世界的に小包郵便物を交換する場合には、大体、国連の専門機関でございます万国郵便連合、これの条約熱に基づいて交換しておるわけでございますが、一部それに加入しない国がございまして、カナダもその一つでございますが、このような場合には二国間で条約を結んで交換する以外に道がないわけでございます。
 先ほど外務大臣から説明がございましたように、昭和三十年代の初めに日加間で二国間条約を結んだわけでございますが、その後、万国郵便連合の方がたび重なる改正で細かい手続を変えてまいりました。それに合わせようというのが今度の趣旨でございまして、利用者との面で改正になる点といたしましては、先ほど申し上げましたように取り調べ請求、これは小包を出したけれども何カ月たっても着かない、どうしたんだということで利用者の方から郵便業務に対して申告をする制度でございます。これがいままでは受取人からは認めないと。万国郵便連合の方でございますと差出人でも受取人でもできるわけでございますが、日加間の条約ではできないことになっておりまして、利用者から、あるいは郵便業務の方からも二重の取り扱いになっておりまして不便なものですから、この点を改正する。
 それから二点目といたしまして、原則として日加間で交換いたします小包は無記録扱い。したがって、なくなった場合にも損害賠償しないわけでございますが、特に利用者の方が大事なものを送られるときに保険を付したいという場合には価格表記という制度がございます。この価格表記の制度で、いわゆるなくなった場合に賠償する賠償額、これを多少引き上げるという点。
 それから、先ほど申し上げました万国郵便連合の枠内で運用されております制度でございますと、各国それぞれ内国法制との絡みもございますけれども、いわゆる保険に付された小包がなくなった場合、それが不可抗力であったとしても損害賠償に応じましょうということを一方的に宣言できるわけでございます。ところが、現行の日加間の条約では不可抗力の場合には絶対にやらないということになっておりまして、これまた利用者の方から多少苦情が出ておりますものですから、日加間でも不可抗力の場合、一方の国が一方的に宣言することによって、たとえ不可抗力の事由でなくなった場合でも損害賠償をするということを許容する規定を設けよう。
 大体、以上の、三点が主たる改正点でございます。
○戸叶武君 この万国郵便連合、UPUですか、これにカナダはどうして参加しないんですか、その主たる理由は何でしょうか。
○説明員(日高英実君) お答えいたします。
 万国郵便連合の枠内で交換される小包の場合には、これは利用者の力から特に要求がなくても、運送過程を一切記録扱いとして運送いたしまして、もちろん配達の場合にも受取印をいただくわけでございますが、したがって、なくなった場合、ある一定の額の枠内で賠償請求に応じるわけでございます。ところが、カナダは国内的に原則として小包は無記録扱いでございます。したがって原則として小包がなくなったり、あるいは一部損傷した場合にも損害賠償に応じていない、これが一番問題点でございまして、これがございますためにカナダは万国郵便連合の約定に加入しておらないという次第でございます。
○戸叶武君 万国郵便連合は昭和三十年に出発したのでしょうが、これにはいまどのぐらいの国が加盟しているんですか。
○説明員(日高英実君) 現在、加盟国は百五十八でございます。
○戸叶武君 じゃ重立った国々が加盟しているのに、それだけの理由でカナダは加盟していないんでしょうか。
○説明員(日高英実君) そのほかにも細かい点を申し上げますと、たとえば利用者の方が出せる小包の容積、大きさ等細かい点がございますが、根本的にはやはり私ども先ほど申し上げましたように、賠償請求するしないということは、小包の運送を一切記録扱いとするか、あるいは原則としては無記録扱いで運送するかという点にあるのかと存じます。
○戸叶武君 万国郵便連合に参加していないので二国間で結ぶ以外に道はないということですが、一九七四年のローザンヌにおける改定までに四回もその間改定が行われているのにもかかわらず、カナダとの剛はその間何らの改定もなされていなかったんでしょうか。
○説明員(日高英実君) お答えいたします。
 先ほど外務大臣からも御説明申し上げましたように、昭和三十一年の六月にそれまでの大正年間に結ばれました日加間の小包郵便約定を全面的に改正して新たな小包郵便約定を結びました。それから三十七年九月二十五日に一回一部改正を施しております。
○戸叶武君 次に、バングラデシュの方をお伺いします。
 御承知のようにバングラデシュは人口が八千万もあり、面積の方は北海道の一・八倍だという小地域に人口が密集している、したがって非常に貧乏人の子だくさんで餓死するような人も多いような状態になっている世界で有名なところでありますが、ここの国においては郵便制度というものは相当整備しておるんですか。
○説明員(日高英実君) お答えいたします。
 先生いま御指摘のように、バングラデシュは国際的にはいわゆる後発開発途上国、いわゆるLLDCとわれわれ呼んでおるカテゴリーの国でございますが、昭和四十七年までは御存じのようにパキスタンの一部でございまして、来パキスタンと言われていたところでございます。また、第二次大戦以前は御承知のとおり英国の植民地でございまして、私ども大体世界的に見ますと、英国の旧植民地というのは比較的インフラストラクチュア、郵便、電気通信等が整備されている国が多うございまして、バングラデシュも比較的開発途上国の中ではしっかりしている国かと存じます。
○戸叶武君 開発途上国の中ではしっかりしていると言うが、現地を踏んでのそういう見解ですか。
○説明員(日高英実君) お答えいたします。
 私ども、実は、バングラデシュからは、毎年ではございませんが、比較的しばしば研修員等を受け入れておりますが、私どもからまだ何分かの地で会議が催されたこともなく専門家として入った者もおりませんので、実際に郵便の職員がバングラデシュの郵政事業を目の当たりに見たということはございません。
○政府委員(三宅和助君) ちょっとバングラデシュのことについて補足説明いたしますが、確かに生活水準自体はLLDCということで低いのでございますが、イギリスの植民地系統の国は、一般的に、国家公務員、役人の質が比較的化活水準に比べて訓練されているということは言えると思います。したがいまして、われわれ郵便業務は必ずしも知らないのでございますが、一般的に申し上げられることは、比較的役人はしっかりしているということは言えると思います。
○戸叶武君 それはあるところまで正確な見方だと思います。
 私は、昭和二十八年の正月に、ウェストベンガルのドクター・ムカージーのガバナハウスに招かれて一週間ほど泊まっておりましたが、それは東京裁判で無罪論を展開したパール博士がドクター・ムカージーの友人であるので、そのあっせんによるものでしたけれども、とにかく役人はしっかりしているが、住んでいる人は全く、カルカッタから、昔のいわゆる「ベンガルの槍騎兵」の映画にもある。チャーチルの若きときの思い出の中にもありますが、えらい地帯です。しかし、日本は赤軍の問題のときに御厄介にもなったり、御厄介になっている間に武力革命が起きようとしていたり、また日本航空あたりでもあの辺一帯から餓死した死体を実験川にアメリカに運ぶのが主たる仕事になっているというような、世にもあさましい地獄のような状態が展開されているのは事実であります。こういうところに日本が協力しなければならないというのはよくわかります。わかるけれども、日本的な感覚と発想でいくと大変なことになると思うので、たとえば食糧の問題でも何でもインド大使をやっていた時分の那須さんあたりもずいぶん模索したようでありますが、あの地帯と取り組むにはそれ相応の心構えを持っていかないと、私の親戚の者も意気地がないからであろうか、カルカッタの日本航空の支店長にされて、とてもこれはここにいちゃ死んじゃうというので逃げ帰ってきたのが事実であります。これは意気地がないんでしょうが、やはりよほど覚悟を決めて、そうしていろいろな協力をしないと、話と大分違ったというような形でどじを踏むようなことがあったら困ると思うんです。
 この間も、私は、満州の少年義勇軍の人たちの慰霊祭に出て、ソ連侵入のときに、戦争というものはみんな悪魔になるんですから、残虐のほどを尽くされた彼ら、その遺族がみんな日中平和友好条約促進のために運動を起こしているんですという言葉を聞いたとき、私は思わず涙が出たですよ。恩讐を超えて、とにかく民族というものがあの戦争というものでどれだけ苦悩をなめて、その上に立ってとにかく新しい時代を築こうという模索がその傷つける人々の中からまで盛り上がってきているんですが、バングラデシュの苦労、私らはガンジーさんや、あるいはベトナムそれからビルマにおける悲劇を目の当たりに見てきているだけに、これはよほど大変だと思います。
 これも、大体、カナダのやっと同じようなぐあいですか、問題点はどこですか。
○説明員(三木準一君) バングラデシュは、先ほど外務大臣から御説明申し上げましたとおり、現在、万国郵便連合の郵便為替に関する約定に入っておらないわけでございます。したがいましてバングラデシュと直接に郵便為替を交換するためには二国間の約定を結ぶしか方法がないわけでございまして、この約定につきましては、バングラデシュが独立した後すぐ先方から私ども郵政省に対して、二国間約定を結んで業務を実施したいという提案がございました。その後、郵政省間で自益的な問題につきまして話し合いを進めておったわけでございますが、先般、合意が成立いたしまして、その後、本年二月から正式の外交ルートによる交渉を開始して、最近、条約案の内容について合意が成立したのでございます。
 このバングラデシュとの間の約定につきましては、すでにわが国が、UPUの約定に入っておりませんたとえばアメリカでありますとかオーストラリアとかといった国と七本の約定を結んでおります。今回結ぼうとしておるバングラデシュとの約定も、大体、そういったすでに結んでおります二国間約定とほぼ同じ内容になっておりまして、この点特に問題はないんじゃないかというふうに考えております。
○戸叶武君 時間がなくなったようですから、これで終わりますが、いままで二国間での約定は七つの国と結んでおり、これが八番目だから心配はないという意味の答弁がいまなされましたので、その答弁をそのまま受けとめて、私の質問は終わります。
○委員長(安孫子藤吉君) 先ほどの戸叶委員の発言中に不適当な発言があったとの指摘がございましたので、後ほど委員長において速記録を調査の上、適当に措置いたしたいと存じます。
 両件に対する本日の審査はこの程度にとどめます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時四十五分散会
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