第084回国会 予算委員会 第19号
昭和五十三年三月二十七日(月曜日)
   午前十時三分開会
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   委員の異動
 三月二十五日
    辞任         補欠選任
     市川 房枝君     山田  勇君
 三月二十七日
    辞任         補欠選任
     竹内  潔君     八木 一郎君
     浅野  拡君     玉置 和郎君
     大木 正吾君     赤桐  操君
     馬場  富君     矢追 秀彦君
     峯山 昭範君     相沢 武彦君
     野末 陳平君     柿沢 弘治君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         鍋島 直紹君
    理 事
                戸塚 進也君
                内藤誉三郎君
                中村 太郎君
                宮田  輝君
                竹田 四郎君
                吉田忠三郎君
                多田 省吾君
                内藤  功君
                栗林 卓司君
    委 員
                岩動 道行君
                石破 二朗君
                糸山英太郎君
                小澤 太郎君
                亀井 久興君
                亀長 友義君
                熊谷  弘君
                下条進一郎君
                玉置 和郎君
                夏目 忠雄君
                成相 善十君
                林  ゆう君
                真鍋 賢二君
                三善 信二君
                望月 邦夫君
                八木 一郎君
                赤桐  操君
                大木 正吾君
                志苫  裕君
                高杉 廸忠君
                野田  哲君
                福間 知之君
               目黒今朝次郎君
                安恒 良一君
                相沢 武彦君
                太田 淳夫君
                矢追 秀彦君
                矢原 秀男君
                渡辺  武君
                井上  計君
                山田  勇君
                柿沢 弘治君
   国務大臣
       大 蔵 大 臣  村山 達雄君
       通商産業大臣   河本 敏夫君
       運 輸 大 臣  福永 健司君
       労 働 大 臣  藤井 勝志君
       自 治 大 臣
       国 務 大 臣
       (国家公安委員
       会委員長)
       (北海道開発庁
       長官)      加藤 武徳君
       国 務 大 臣
       (経済企画庁長
       官)       宮澤 喜一君
       国 務 大 臣  牛場 信彦君
   政府委員
       警察庁長官官房
       長        山田 英雄君
       警察庁警備局長  三井  脩君
       経済企画庁調整
       局長       宮崎  勇君
       経済企画庁総合
       計画局長     喜多村治雄君
       経済企画庁調査
       局長       岩田 幸基君
       法務省刑事局長  伊藤 榮樹君
       外務大臣官房長  山崎 敏夫君
       大蔵省主計局長  長岡  實君
       大蔵省主税局長  大倉 眞隆君
       大蔵省理財局長  田中  敬君
       大蔵省証券局長  山内  宏君
       大蔵省銀行局長  徳田 博美君
       大蔵省国際金融
       局長       旦  弘昌君
       通商産業省通商
       政策局長     矢野俊比古君
       通商産業省通商
       政策局次長    花岡 宗助君
       通商産業省貿易
       局長       西山敬次郎君
       通商産業省産業
       政策局長     濃野  滋君
       通商産業省基礎
       産業局長     天谷 直弘君
       通商産業省生活
       産業局長     藤原 一郎君
       工業技術院長   窪田 雅男君
       中小企業庁長官  岸田 文武君
       運輸省航空局長  高橋 寿夫君
       労働省職業安定
       局長       細野  正君
       労働省職業訓練
       局長       岩崎 隆造君
       自治省財政局長  山本  悟君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        菊地  拓君
   参考人
       日本経済研究セ
       ンター理事・研
       究主幹      並木 信義君
       日本長期信用銀
       行調査部長    竹内  宏君
       日本証券経済研
       究所主任研究員  中島 将隆君
       埼玉大学助教授  野口悠紀雄君
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  本日の会議に付した案件
○昭和五十三年度一般会計予算(内閣提出、衆議
 院送付)
○昭和五十三年度特別会計予算(内閣提出、衆議
 院送付)
○昭和五十三年度政府関係機関予算(内閣提出、
 衆議院送付)
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○委員長(鍋島直紹君) ただいまから予算委員会を開会いたします。
 昭和五十三年度一般会計予算
 昭和五十三年度特別会計予算
 昭和五十三年度政府関係機関予算
 以上三案を一括して議題といたします。
 本日は、お手元の質疑通告表のとおり、経済展望及び財政展望に関する集中審議を行います。
 それでは、これより経済展望に関し、順次質疑を行います。熊谷弘君。
○熊谷弘君 経済展望につきまして御質問に入る前に、その前提といたしまして、政府の当面及び中長期にわたる経済政策についての考え方の一つのあらわれとして、去る二十五日に経済対策閣僚会議が開かれて当面の経済対策が決定されたと伝えられているわけであります。その大要は新聞等で報道されているわけでありますけれども、この政策を決定するに当たった基本的な考え方、背景、こういうものにつきまして、閣僚会議の座長であります宮澤長官の御意見、御所見を伺いたいと思います。
○国務大臣(宮澤喜一君) 二十五日に決定いたしました当面の経済対策につきましては、報道により概要は熊谷委員すでに御承知でいらっしゃると思いますので、背景について申し上げますと、政府は、ただいま御審議願っております五十三年度予算において、いわゆる政府主導のもとに公共投資を中心に経済の振興を図ろうといたしておるわけでございますが、予算あるいは立法等によりましてすでに決定をいたしておりますもろもろの措置も、実際に具体的にできるだけ早く発動いたさなければそれだけ効果を減殺するわけでございますので、それらの措置を具体的にいつごろまでに行政の準備を整えて実施に移すかということにつきまして、重立ったものについて検討し、その具体的な日限の目安等を決定したというのが一つでございます。それは公共事業の前倒し等々にあらわれておる、あるいは石油の備蓄等に関してもさようでございますけれども、そういう点が一点。それからもう一つは、従来から言われながら具体的になかなか進行いたしておりません少し大型のプロジェクトにつきましても、行政上の阻害要因を解決いたしましてできるだけ早く実施に移したい、こういう分がもう一点でございます。これによりまして、予算が成立いたしました際、もろもろの立法をあわせましてできるだけ早く財政主導の経済運営を軌道に乗せていきたいと考えております。もちろん、そのほかに、いわゆる構造不況業種でございますとか、当面一番大きな問題でございます雇用対策、中小企業対策について具体的にできるだけ細部にわたる措置を決定したいという点もございます。
 なお、以上は当面の主として対内経済政策でございますが、いわゆる輸入促進等々につきましては、従来から少しずつその都度可能なものを決定してまいりましたが、なおさらに新しいものが考えられないかということで、それにつきましてもできるだけ早い機会に検討をし、決定をいたしたいと考えております。
○熊谷弘君 この経済対策と中期的な安定経済成長路線との関係についてはまた後ほど御質問することにいたしまして、この会議の中で新聞で報道されていることについてどうしても疑問に思う点が二、三ございますので質問を続けさしてもらいますけれども、まず第一に、新聞報道によりますと、この会議におきまして輸出抑制策に論議が集中して、何人かの閣僚から通産省が考えている行政指導だけでは手ぬるい、もっと強力な抑制措置をとるべきだと、こういう強硬意見も出た。しかし、最終的には福田首相と河本大臣が合意した通産省の行政指導方針を了承したと、こういうふうに報道されているわけでありますけれども、この通産省の行政指導方針とは一体どういうものなのか通産大臣にお伺いしたいわけでありますが、同時に、この最終決定後におきまして大蔵大臣と宮澤長官はこの点についてどんなふうにお考えになっておられるのか。私どもは、このプロセス、過程におきましては、大蔵大臣は、いま少し通産省が輸出抑制措置について強い措置をとるべきではないかという御意見もあったように伺っておりますけれども、その点をあわせてお伺いしたいと思います。
○国務大臣(河本敏夫君) 基本的な考え方は、貿易を縮小均衡の方向に持っていかないということが一番大事だと思います。それからもう一つは、うかつなことをしまして保護貿易的な傾向を助長してはいけないと、こういうことだと思います。そういう判断からいろいろ意見を交換いたしました結果、これからの貿易につきましては五十二年度の数量ベースを上回らないということで行政指導をしていこうと、こういうことが決まったわけでございます。
○国務大臣(村山達雄君) 私が前から申し上げていることも、いま通産大臣がお述べになったこととそう違うわけじゃございませんので、やはり行政指導による輸出についてある節度あるものが必要であろうということを前々から申しておったのでございます。一昨日の会議で決まりましたのは、数量ベースで大体前年並みでいってということが最終的に決まったわけでございます。
 もともと、この問題は、やはり年度を通して少し長期的に見る必要があると思っているのでございまして、今度は、財政、それから特に公定歩合の引き下げ、これらはいずれも内需の拡大をねらっているわけでございます。その影響が年度を通じて出てまいりましょうし、あわせて市場開放を含む緊急輸入対策とかあるいは市場開放政策を進めてまいりますれば輸入もだんだん入ってまいりましょうし、それから輸出圧力も内側に向かってくる。所期の目的がだんだん達成されて、そして七%と六十億ドルというのが達成できるのじゃないかと、かように考えているわけでございます。今後、その意味で、着実な現実的な輸出の自制というものと輸入の拡大、それから内需の振興、この三本柱、このことを確認されたわけでございます。
○熊谷弘君 宮澤長官にもひとつ……。
○国務大臣(宮澤喜一君) いろいろ議論はございましたが、ただいま通産大臣の言われましたとおり決定をいたしましたわけであります。この問題を放置しておきますと、世の中でいろいろ説がございますだけに、いわゆる駆け込み輸出等を誘う心配もございますので、正式にそのように決まりました旨を発表いたしたわけでございます。
○熊谷弘君 次に、この会議におきまして米国へのドル防衛要請をしようじゃないかという議論が出て、宮澤長官がシュルツ委員長に、それから牛場大臣がストラウス代表に、それぞれ機会をとらえてわが国の経済の現状を説明し、基軸通貨国としての善処を要望することになった、こう報道されているわけであります。米国に対してどのような考え方のもとに説得し、納得さしていくのか。わが方に今後の世界経済の運営だとか通貨体制のあり方などについて腹案があるのか。
 これに関連いたしまして、この報道によりますと、いわゆる宮澤構想が基本的な考え方になるだろうというふうに伝えられるわけでありますけれども、この宮澤構想はわが国の政府のオーソライズされた方針と考えてよいのかどうか、宮澤長官それから大蔵大臣の御所見を伺いたいと思います。
○国務大臣(宮澤喜一君) 私ども、ドルはいわゆる基軸通貨であると申しておりますけれども、そのこと自身については米国人のいわゆる町の多くの人々は、これは熊谷委員は米国においでになりましたことがおありでございますからよく御承知のように、何のことか実はわからない。これは自分たちの国内の通貨であると思っている人が大部分でございますから、なかなか政治の問題としてアメリカに基軸通貨の責任を云々と申しましてもこれは優先度の高い問題になりにくいわけでございますが、しかし、最近は、米国自身もインフレに悩むというようなことになってまいりましたから、政治の問題としてもこの問題をそろそろ放置できないという雰囲気が多少ずつ出てきたと思っております。
 したがいまして、私がせんだって戸塚委員に申し上げましたことは、具体的に何をどう提案すると申しますよりは、いまの問題は、日本もドイツも困るがアメリカも困るのじゃないですかと、お互いに何か共通の問題として考えないといけないのじゃないかという、そういう認識の統一をできるだけ早くしたいというのが私がああいうお答えを申しました真意でございまして、そういう努力をこれから続けていきたいと思っております。
 このこと自身は政府部内で別に異論のあるところではなかろうと思っておりまして、せんだって土曜に決定いたしましたとおり、さしずめの機会は私がシュルツ経済諮問委員長の来日の際に、四月の十日過ぎでございますが、そういう話し合いをするということ。また、牛場国務大臣はジュネーブで東京ラウンドの関係でボブ・ストラウス氏にお会いになるわけでございますので、そのときにもひとつ問題を牛場大臣から提起をしておいていただきたいと考えておりまして、延長線上は、五月に総理大臣が訪米をされますそのときの話の準備と申しますか、それにつながる線上で物を考えたいと思っておるわけでございます。
○国務大臣(村山達雄君) かねて通貨当局といたしましてはあらゆる機会に電話なりあるいは蔵相会議等で接触しているのでございますが、アメリカの認識自身もいま宮澤長官が言ったような方向に漸次動きつつあるわけでございます。私は施策よりも認識の一致が一番大事だと言っているのもそこでございまして、先般ドイツと結ばれました協定自身もその一つのあらわれだとわれわは受け取っているわけでございますので、こういう際でございますので、基軸通貨としてのアメリカ側の対応の重要性をさらに一層認識してもらうことはあらゆる意味で有意義であろうと、かように考えているところでございます。
○熊谷弘君 幾つかさらに疑問点があるわけですが、この会議の決定に関連いたしまして、公共事業の推進の一環として新幹線の整備五線についても早急に検討すると、アセスメントを進め九月末までには具体的に実施計画を作成することにされたと、こういうことになっているわけでありますけれども、この報道によりますと、同時に、大蔵大臣と運輸大臣の間に、この問題への取り組み方について、立場が違うわけでありますから当然ではありますけれども、ニュアンスの差があると、こういう報道がされているわけでございます。私どもも、この新幹線の整備五線ということを一生懸命やるということはともかくいいとしても、全体としての今後のたとえば国鉄の運営といったものに展望がないままに衝動的になされた場合には、さらに大きな問題を生み出すのではないかという心配をするわけであります。そういう意味で、いま少し全体の、これは後ほどまた角度を変えまして御質問もしたいと思っているわけでありますけれども、公共事業全体についての取り組み方というものを検討し直した上で、その一環として取り出した方がいいのではないかという感じを受けるわけでありますけれども、長官、それから大蔵大臣、この点についてどのようにお考えでしょうか。
○国務大臣(村山達雄君) 整備五線につきましては、今年度は調査費しかついておりません。国鉄に五十億、それから鉄建公団に五十億ということでございます。先日議論になりましたのは、今年度すぐやるというようなことではございませんので、現在やっております東北新幹線、上越新幹線が間もなく済むと、そして整備五線の要望は国民的に非常に強いと、だから、その問題を実行可能であるかどうか、そういう意味で見直すべきではないかという話が出たわけでございます。そして、最後の結論は、いずれにいたしましても、この問題は膨大な建設費を要する問題であり、そしてその結果として採算がとれないというようなことであるならば、それは何のことはない、建設はしてみたけれども国鉄財政をさらに困難にするという問題であるから、従来のように整備五線一緒にやるというようなことではなくて、まず優先度を決めていって、そしてたとえばどの線かわからないけれどもその線をまずやるということであれば、工期が一体どれくらいかかるのか、所要資金がどれぐらい要るのか、そして採算はいつごろ合うのか、そういうもっと具体的なプラクティカルな検討を進めた上でやるべきであると。そういう意味で、建設計画を具体的に決定すべきである、そしてその問題について九月ごろまでに検討を終えようじゃないかと、こういうことを申し合わしたのでございます。
○熊谷弘君 こうして、当面の経済対策として昭和五十三年度予算が仮に成立する、その後についての骨組み、実施のプログラムというものが決められたわけでありますけれども、そこでもう一度問題点を別の角度からとらえてみたいと思うわけでありますけれども、この対策の中にも触れられており、書かれておるわけでありますけれども、昭和五十三年度の実質経済成長率七%程度を達成し、中期的にわが国経済を安定成長の軌道に乗せるとともに、あわせて対外均衡を図ることが今後の課題だということがすでにいままでの予算委員会で各大臣からも繰り返し述べられてきたわけでありますけれども、そこでまた同時に、いままでの予算委員会の審議を振り返ってみますと、はっきり浮き彫りされてきたことは、政府と民間その各層の間にこの七%成長を含めた中期的な経済展望について非常に大きな意見の相違点があるということであろうと思います。そこで、もともと日本経済の成長のポテンシャリティーそのものが変わってしまったのかどうかということが一つの論点だろうと思うわけであります。たとえば下村さんなんかに言わせますと、もうゼロ成長が普通なんだという考え方もある。そこで、本日は二人の参考人がお見えになっておられるわけでありますけれども、この成長のポテンシャリティーについて、もっと言葉をかえますと日本経済の持つ潜在的な成長力から見て、その制約する条件というものがどの程度のものなのか、資源の問題エネルギーの問題、物価の問題、その他いろいろ挙げられておるわけですけれども、大きな項目について吟味した上で、日本経済の成長ポテンシャリティーについてお二人の参考人は一体どのように考えておられるのか。議論の前提といたしまして、昭和五十年代前期経済計画というのがございます。こういう計画に盛られた日本経済の成長条件というようなものが可能なのかどうか、そうじゃなくてもっとずっと低いところにあるものなのかどうか、こういう点について、並木さん、それから竹内さん、両参考人に御意見をお伺いしたいと思います。
○参考人(並木信義君) お答えいたします。
 ただいま御質問がございましたように、日本経済の石油危機後の成長ポテンシャルがどの程度であるかという点につきましては、個々の成長制約要因を個別に吟味して答えを出す必要がございます。結局、それぞれの成長制約要因を吟味しました結果、一番制約が強い要因というのはエネルギーでございます。大体昭和四十九年の春ごろの考えでは、昭和六十年度のエネルギーのアベーラビリティーは原油換算で七億六千万キロリットルであるということでございまして、これが最近では七億キロリットル前後で考えた方がベターであるということでございます。そういうエネルギーの制約を前提にしまして成長ポテンシャルを計算いたしますと、大体六%ないし七%でございまして、そのうち七億六千万キロリットルを前提にいたしますと七%に近い。それから七億キロリットルを前提にいたしますと六%に近い。そういう点で、いま日本経済研究センターでは今後六・三%平均ぐらいということで考えているわけであります。なお、他の資源につきましては、一応その成長率では制約が考えられません。同じく食糧につきましても楽観してよろしいであろうと思われます。それから水や土地の問題につきましても成長制約要因にはならないであろう。さらには、国際収支も、成長制約になるどころではない、これはわれわれ現在見ておりますような黒字要因であります。それから労働力につきましても同じく成長制約にはならないわけでありまして、むしろ雇用機会の不足が憂えられるということでございます。それから物価につきましては、昭和四十年代前半の日本経済の黄金時代のかなり安定した物価上昇率に引き戻すことは可能であろうというふうに思っております。
○参考人(竹内宏君) 御質問の件でございますけれども、第一番目には、日本は貯蓄率が大変高い国でございますから、その意味で成長力がございます。それに対する制約要因は、まさに並木さんが言われたように第一番目はあのエネルギーでございます。ところが、エネルギーにつきましてははなはだ予測しがたい点があるわけで、御案内のとおりサウジアラビアがどの程度掘ってくれるかというような点はまさに経済の問題ではなく七政治の問題ではなかろうかという感じがいたしますし、それからさらにアメリカでメキシコ湾湾岸にどの程度出るのか、あるいは中国の埋蔵量がどの程度あって日本にどの程度供給してくれるかどうかとか、あるいは日本がこれからどの程度エネルギーの供給地を分散することができるかどうかというような問題で、はなはだ予測ができない問題でございますけれども、その中で、考え方としては、何といいますか最も危険が少ない考え方、最も悲観的な考え方に立って予想するのが最も妥当だろうというような意味で、私もまさにエネルギーが主要な制約要因ではなかろうかというふうに考えるわけでございますけれども、何分この制約要因を考えます場合には、経済の問題とかあるいは数字の問題ではなくて、一種のビジョンの問題だろうと思います。世界の政治とか経済とか、発展途上国とか産油国がどう動くかというようなことだろうと思います。ここでエネルギーが成長制約要因と申し上げる非常に確からしいことは、一九八五年ぐらいになると、エネルギーが、一般商品じゃなくて、現在でも一般商品とは言えない面もございますけれども、一般商品ではなくなってくるという意味で大きな制約要因じゃなかろうか。
 あと、日本全体を考えますと、そのような制約要因から私どもも中期的な成長率七%というふうに考えておりますけれども、その七%をなぜ考えたかといいますと、七%以下になりますと失業が発生して残るということと、それから七%以下の成長率ですと産業転換ができない。そのような意味で、むしろどうしてもそうならなければ困るというような意味の七%でございまして、何といいますか、それが多分そうなるであろうというような自然的な意味の七%ではないと、そのような感じで七%を考えているわけでございます。
○熊谷弘君 長官に伺いたいわけでございますが、いま両参考人が述べられた考え方を見ますと、実は必ずしも大きな考え方からしますと五十年代前期経済計画を大きく訂正する必要はないような感じを受けるわけであります。その点長官はいかがでしょうか。
○国務大臣(宮澤喜一君) このように世界が変動しておりますときに長期計画を考えるということはもともとむずかしいことでございますが、いまお二人の参考人のお述べになりましたことは、与えられた予測可能な条件のもとに恐らくベストの御研究の結果だというふうに考えております。お説のように五十年代長期計画もほぼ似たような考え方に沿っておりますので、お二人のお話の枠内と申しますか、の予測に沿ったものであるというふうに考えております。
○熊谷弘君 そこで、潜在的な成長のポテンシャリティーということを考えますと、いまわれわれが目指そうとしている、あるいは政府が目指そうとしていることについて、そんなに大きな心配はないのじゃないかということを感ずるわけであります。
 ところが、さて五十三年度の経済見通しについて言いますと、御承知のようにいろいろ悲観的な空気が強い。たとえば、政府が七%成長ということを盛んに言いましても、これに対しまして、個人消費でありますとか、民間企業の設備投資、あるいは輸入と、こうした項目、また在庫投資についてはいろいろ論争があるようでありますけれども、これについても政府の考え方に比べるとかなり低目の見通しを立てる方々が多い。ところが、たとえば京都大学の安易さんが指摘しているわけでありますけれども、OECDのリポートによりますと、個人消費性向にいたしましても、それから民間の設備投資の受注にいたしましても、福田総理大臣がすでに各方面で強調されておりますようにほかの経済は非常にいいにもかかわらず、個人消費性向というものがドイツやアメリカに比べて、あるいは設備投資もドイツ、アメリカに比べて回復していないという現状にあるわけであります。これにつきまして、私の考え方は、これは非常に必要以上に民間側というものが、いろいろ項目の議論はあると思いますけれども、基本的には非常に萎縮している心理的な側面が非常に強いのじゃないか、こんなふうに思うわけでありますけれども、宮澤長官の御所見はどうでしょうか。
○国務大臣(宮澤喜一君) 政府が七%成長ということを昨年の暮れに申しましたときに、世の中では、これはいわばおとぎ話のようなことである、第一その前提になっているところの五十二年度の改定見通し五・三%というのは四%台に乗せればむしろいい方だというような批判があったと存じます。しかし、実際にはここまでまいりまして、五十二年度の成長が四%台ではないということは恐らくもう間違いがないところだと思います。五・三になるかどうかは別として、五%に乗せるということは、私は数カ月前よりももう少し自信を持って申し上げられるような感じがいたしますし、その上にこのような財政の努力でございますから、その線上にあるところの七%が、現在でも多くの方はどうかなと思っておられるでしょうけれども、しかし、数カ月前に比べると、これはやはりちょっと考えてみる必要があるなあと、可能かもしれないといったような議論が少しずつ多くなってきていると思います。これはしかし当然のことだと私は思いますのは、このたびのような財政の努力、それに過去一年間一見むだに終わったようでありますけれども、これだけの累積的な努力の効果というものはこれはむだになっているはずはないと私は思っておりますので、そこらが先ほどお話しの在庫論争等々になってきているわけでございますが、七%程度の成長は私はできても別に不思議がないといまも考えておるわけでございまして、そこからだんだんおっしゃいますように国民経済の各層が最悪の事態は済んだのかなというふうに考えられるようになりましたら、それはかなり心理的にもプラスの影響になるであろう、そのような要素も私は確かにありますことは御指摘のとおりだと思います。
○熊谷弘君 そこで、私は参議院のこの予算委員会の質疑をずっと聞いておりまして実は宮澤長官と若干意見が違っていますから議論がかみ合わなかったわけでありますけれども、私はその基本的な認識については一致するわけですけれども、ただ、一般的な国民の側、つまりは民間企業であるとか、個人消費を支える個人の側の意気消沈した、あるいは将来に対する不透明感、不安感と、こういうものを解消する場であってほしかったというふうに思うわけであります。たとえば、冒頭の総括質問におきまして中山委員が大体同じような質問をされたわけでありますけれども、とにかく民間企業はいろいろ政府がやってくれてもこれが本当に実需としてつながってくるかどうかわからない、こういう質問に対しまして、大蔵大臣が、暫定試算を示しながら、将来もわれわれの計算でもある程度公共事業は伸びるのだと、その辺をくんでいただきたいというような意味の御発言があって、その後宮澤大臣は、「五十年代の前期計画におきましても一定のいわゆる政府による投資を想定をしておりますし、先ほどお話しのこれからの財政計画においても、歳入に相当の困難があってもなおただいま大蔵大臣の言われました年々十数%の公共投資、政府投資の伸びを投資部門で考えざるを得ないというお考えでありまして、またそうしていただきませんと、わが国のようないわゆる貧弱な生活関連施設の現状から言いましても、また、先ほどからお話しの雇用問題から申しましても、それがどうしても前提にならなければならない。もとより、この五十三年度のような一遍限りのまことに異例なことを何度もやっていただくわけにはまいらないと思いますが、」云云と、こういう御発言をされておられるわけであります。しかし、今度は、逆に、設備投資をしようとする側、あるいは個人消費をする側から見ますと、一遍限りの臨時異例ということだけが言葉に響く。そのために在庫手当てはなるべく少なくしよう、設備投資はうっかりはできないと、こういう感じで受けとめているのではないだろうか。むしろ、いまは逆で、この際少なくとも五十年代前期経済計画というものを見直して、最小限手直しをしなきゃならない部分がすでに出ているわけであります。そういうものをして、もちろん大きな電子計算機を使って再計算を大がかりでやる必要はないわけでありまして、あの五十年代前期計画を踏まえながら、また昨年の十一月には第三次全国総合開発計画――三全総が出されているわけでありますけれども、こういうものを踏まえながら、三年ぐらいの見通しでこうなりますというような、決して心配には及ばないというようなものを示す必要があったのではないだろうか。むしろそういうふうに感ずるわけでありますけれども、長官のお考えはどうでしょうか。
○国務大臣(宮澤喜一君) 今回のようないわゆる臨時異例の財政措置によって、私どもは、五十三年度の下半期にはある程度民間経済が自信を取り戻して、そうして五十四年に向かって正常な経済活動、多少拡大発展的な経済活動、いわゆる中期路線に入っていけると。そういうつなぎの年になるというふうに五十三年度を考えておりますので、したがって、このような財政のいわば逆立ちをするほどの努力というものをそう何度もやるわけにはまいりませんし、また、やるということであればそれは経済は正常な拡大均衡に入っていないということになるので、私はそれは本来望ましいことでもない。しかしながら、先ほど御紹介いただきました答弁の繰り返しになりますけれども、今後ずいぶん長い間政府の固定資産形成というものはある程度のものを確保していかなければならないことは財政試算においても五十年代前期計画においても想定をいたしておるわけで、これで一切そういうことをやめてしまうという意味でないことはもとよりでございますという意味のことを申し上げました。
 五十年代前期計画をこの際どうするかということは確かに一つ実は問題でございます。問題でございますが、ただいまとしては昨年暮れの暫定試算というものをやってみまして、まず計画のねらっております幾つかの目的は、この七%の路線を初めといたしましてその後順調に政府の思っておりますような経済の歩みができれば達成は可能であるという答えでございましたから、ただいまとしては計画をそのままにしておこうと考えておるわけでございますが、しかし、五十年代前期といいますと五十五年まででございますので、もう来年度は五十四年度の予算編成をする、そうするとあと一年しか残っていないではないかというような御議論はあるいは出てまいるかもしれない。もう少し今年五十三年度の経済の運行を見ながら考えてまいりたいと思っております。
○熊谷弘君 そこで、若干こだわるようなんですけれども、たとえば五十三年度予算におきまして、せっかく三全総が策定された。まあ衆議院の予算委員会でもすでに質問が出ております。確かに二百四十兆に及ぶ公共事業を十年間でということで大枠しか書いてないわけでありますから、いやあれに合わせてありますというふうに回答されればそれまでなんですけれども、しかし、実は問題なのは、五十年代の前期経済計画にいたしましても、三全総にいたしましても、あのかつての所得倍増計画やあるいは一番最初の全国総合開発計画というものに比べて非常にペーパープランだという感じが、そういう意識が広範に浸透してしまっておる。
 たとえば、五十年代前期経済計画の策定時においてすら、「ESP」――経済企画庁の広報誌に、この計画の策定者の一人でもあります、参加者の一人であります稲葉秀三さんが、こういうことを指摘しておるわけであります。「この計画は新しい情勢変化に即応しているといわれているが、依然として〃目標計画〃である。」「一見していえるのは「あまりに沢山の課題が総花的に登場してきている。しかもこうしていかねばならないと指摘されているだけではっきりした明示がない」」「政策を提示するのなら少くともその主要部門をどこにおいているのか、少くともこれだけの政策は最重点課題だという主体性と責任制をもっと明確にうちだすべきであろう。」と、こういうことを広報誌に指摘して不満を述べておられるわけであります。実は、この考え方というものは当時からすでにあり、ますますそういう感じを強めているわけでありまして、全く同じことが三全総におきましてもわれわれ受ける感じであって、なるほど公共投資、公共事業につきましては三全総で大枠は示したけれども、その内容を見ますと、依然として具体的な計画だとか、あるいは実現のための方策であるとか、検討する体制、スケジュールすらできていない。言いかえれば非常に抽象的なレベルにとどまっている。これが逆に言えば非常にペーパープランだという印象をぬぐいがたくし、そして五十三年度予算は臨時異例で、いつ来年度になると切られてしまうかわからないと、こういう印象につながってくるわけでありまして、それは誤解だと言い切るだけでは不十分で、むしろそれはそれとしてその誤解を解き、自信をつけさせていくということが、実は、政府主導の財政、あれだけのアンバランスな財政措置をあえてとってそして民間需要が出てくるのを引き出すという構えを示したことの実施のために必要なことではないだろうか。そういう意味で私は大事なことは、国土庁長官が主導するのではなくて、むしろ経済対策閣僚会議の座長としての宮澤長官がこのことに主導権をとられて、そしていわば全体の経済の運営の見直しの中で三全総の具体的な検討、スケジュールづくりに少なくとも入って、五十四年度以降について少なくとも三年間はこういう形でやりますとか、五年間はこういうふうにやりますというものを検討するための体制に着手していただきたい。これは要望を兼ねた質問になりますけれども、御意見を伺いたいと思います。
○国務大臣(宮澤喜一君) おっしゃっていらっしゃることは私なりによくわかるよなう気がして御質問を伺いました。
 かつてわが国の経済が高度成長しておりました時代に、いわゆるポスト・インダストリアル・ソサエティーといいますか、ダニエル・ベルのような人が脱工業社会ということを申しまして、そしてわが国がだんだんそこへ入っていくんだという議論がずいぶん行われたわけでございます。ところが、その後に石油危機がまいりまして、最近はこのトンネルをいつ抜け出るのかということを皆さんが議論をしていらっしゃいます。トンネルはやがて抜け出るでありましょうし、抜け出た後が雪国でないことは私は間違いないと思っておりますけれども、しかしその後にどういう世界が一体出現するのかということは実ははっきりしていないと思うのでございます。恐らくは、かつて議論されたようなポスト・インダストリアル・ソサエティーというようなそういう問題意識にまた戻ってきて、そこでこれからの日本を考える、これからの世界を考えることであるかもしれないと思いますけれども、ただ、あのときには、わが国は有効求人倍率がもう二を超えておった時代でございます。いまは〇・五というような時代でございますから、この雇用の問題だけは実はあの当時に簡単に戻れるとは思えない。これは世界各国も同じことだと思うのでございます。したがって、三全総にいたしましても、五十年代前期計画にいたしましても、ややそういうトンネルのやみの中で模索をしているという要素がずいぶんあると思いますので、トンネルを抜け出ましたら、さてもう少し落ちついてもう少しはっきりした見きわめのもとに何か考えなければならないのだろうということは私も実は思っておるわけでございますけれども、いまの段階でそれ以上のことを具体的に申し上げることができない。そういう観点から、いまの三全総なり五十年代前期計画をいまのように御批判をなさるということは私は私なりに理解ができるように思います。
○熊谷弘君 この中期の経済展望を考えます場合にもう一つ忘れてならないのは、構造不況業種といいますか構造的に呻吟する業種の存在と、それからそれを踏まえた産業構造の転換というものをどうするかということでございます。並木さんは、すでに幾つかのところでこの構造不況の業種の問題点の解消ということについていろいろ御指摘をされているわけでありますけれども、この点についてはすでに当委員会の審議におきまして繰り返し議論されたところでございますので、私はちょっと問題点を変えまして御質問したいわけでありますけれども構造不況業種の問題は、ある程度の需要管理政策といいますか、ある程度の成長の伸びを前提としながらやっていかなければなかなかうまくはいかないというのは竹内参考人も御指摘のとおりでございます。しかし、そうは言いましても、それぞれの個別業種は仮にある程度高い成長あるいは需要が出てまいりましたとしても残るわけでありまして、そこから出てくるいろいろな失業者であるとかあるいはそれに関連する中小企業というものの行き先というものを全体としては考えていかなければ問題の解決にならないのではないだろうか。
 そこで、最近の産業政策というものを考えてみますと、エネルギー部門のようなものについては非常にハッスルしてがんばってやっておられる。それからまたどうしても対症療法につながるわけでありますけれども、中小企業分野につきましては非常な熱心な努力がなされておる。しかし、いわゆる先進的な新規産業、そういったものの育成、つまり構造不況から出てきた人たちの能力、エネルギーの吸収先である新規産業、伸びる産業というようなものの育成についてはかなり自信を失っているのではないだろうか、こういう感じを抑えきれないわけでございます。この点につきまして並木、竹内両参考人の御意見をお伺いするとともに、政策当局としての通産大臣の御意見を最後に伺いたいと思います。
○参考人(並木信義君) ただいまの御質問は、現在の産業政策に関する議論並びに恐らく民間の産業論議というのは著しく短期的でたとえば構造不況業種問題と言われておるような問題に集中しておるのであるが、それにしても議論の中身が中小企業行政であるとかエネルギー行政であるとかに比べて非常に質が薄いのである、ましてや前向きの産業政策に関しては一体何があるのだろうか、著しく疑問に感ずるという御質問のように伺ったわけであります。その点は、御質問の中身は全くそのとおりだというふうに私も同意をするわけでありますが、ただ、恐らく政府のお立場としますと、目先の構造不況業種問題が余りにも深刻で、しかも手を打つのに二年ぐらいおくれてしまったという点がございますので、なかなか前向きの政策を考えるゆとりがなくなってしまったのだろうというふうに理解しているわけであります。
 それでは、いま前向きに何か考えたらいいではないかと、こういう御質問だと思うのでありますが、私はその点は時期的に見ましてちょっと早過ぎるという感じがするのであります。恐らく製造業に関しまして一体どういう展望を考えるのであるかということが問題の中心だと思うのでありますが、私はその点で製造業を大体四つぐらいに分けて考えたらいいのではないかという感じなんであります。
 第一は、乗用車を中心とします自動車、それから電気機械、それからさらに内需が堅調である薬品とか写真感光材料、それから一般機械の一部でたとえば自動販売機とかそういうものがございますが、こういうものは、しかし、今後ともずっと需要を支え続けるだろうか、需要の増加の中心になり続け得るだろうかといいますと、そうはいかないのじゃないかという感じがあるのであります。むしろ、この業種は、日本産業の国際化を担う、多国籍企業化を担う産業、そっちの方へ発展するだろう。二番目は、鉄鋼、それからプラント関係の一般機械でありまして、これは当分の間は雌伏を余儀なくされる、一九八〇年代になりましてやっと芽を吹くであろう。三番目が、いわゆる構造不況産業並びに、ちょっとジャンルは違いますが、かなり現在不況の影響を強く受けておる業種である。四番目が、食品工業その他の順調に内需の伸びをエンジョイする、しかし成長率はそう高くない業種である。そういうふうに四つに分けて個々にその中身を考えてみますと、ちょっとまだ前向きに雇用を吸収する中心になる業種というのは見つからない。たとえば機械にしましても、石油危機後かなり雇用を削減しておりますね。ピークに比べまして昨年末で九%ぐらい機械においてさえ雇用が削減されておるということで、これはなかなか簡単にはいかないだろうということであります。たとえば原子力産業なんかも、これは抜本的な対策を講じませんとむずかしいのじゃないか。もしいろいろ考えるのであれば、エネルギー対策も含めまして原子力産業対策あたりを本格的にやり直すべきではないか、そういう印象でございます。
○参考人(竹内宏君) 構造不況業種の問題につきましては幾つかの分け方があると思いますけれども、第一番目には、比較的あるいは経済が幾分立ち直ってくれば徐々に収益が回復していくものもあるかと思いますけれども、問題なのは第二、第三の業種で、第二番目と申しますのは、経済成長率が鈍化いたしますとそれに伴って規模が当然縮小してしまうものであります。よく加速度原理なんて申しますけれども、経済成長率が一〇%から五%に下がりますと資本財産業とか機械設備関係の内需は半分に減るわけであります。食品産業とかそういう消費財は五%で伸び、生産財の一部や資本財産業は輸出を伸ばさない限り半分に減るということでありますから、成長率が下がりますとそれに伴いまして集中的にしわを受ける業種があるということでございます。さらに、世界的に成長が鈍化するといいますか、将来に対する見通しが暗くなるとぎゅっと縮まる造船みたいなものがあります。このような問題と、それから第三番目には、これはある意味では発展途上国の追い上げとも言えますけれども、ある意味では国内での他の産業、つまり自動車とかカラーテレビとかそれらのものがどんどん輸出されますと、円高になりまして、その結果これらの繊維産業がまいってくる、そういうことだろうと思いますし、幾分内需が回復して産業が立ち直ってその結果価格が上がってきますと輸入がどっとふえる、そういうような深刻な問題があろうかと思います。現在までのところ、これらの業種からはき出されてきた人のほとんどは三次産業にバランス上では吸収されるというようなバランスになっていると思いますけれども、ただ、現在のような先行きの不安なときでございますと、さしあたってこれらの構造的不況業種について抜本的に打つ手はないというような感じでございます。さらに、現在技術進歩が特に著しいというようなものはございませんで、先ほど熊谷先生御指摘のような新幹線とかいろいろなもの以外にはさしあたって大きな投資機会はどうもないような感じがいたします。そういうことを考えますと、これらの産業はまあどうしようもないわけでありますから、その面で言いますと特に大きな施策を講じないで、できるだけ失業を防ぐというような考え方をせざるを得ないのじゃなかろうか。繊維でも、このままでいきますと、仮に三分の一に縮小いたしますと、家族も含めまして一千万人の人がおるわけでございますから、これにつきましてはドラスチックなことはどうもそういう面からできそうもないということになりますと、八方美人といいますか、それぞれ適当に血を流すというようなバランスが必要ではなかろうかという感じがするわけでございます。ただ、現在比較的成長が高いといいますか、他のものに比べて高いのは消費財とか三次産業でございますけれども、三次産業につきましては、現在アメリカと日本と一人当たりの資本を比べてみますと、製造業は匹敵しておりますけれども三次産業の多くは三分の一程度、流通サービス業では三分の一程度であるという面で、そういう面で三次産業のこういう時期になりますと見直しが必要かなあというような感じを持っているわけでございます。
○熊谷弘君 最後に、一言だけ、要望をかねまして。
 本日お並びの大臣は、「文芸春秋」によりますと、ベスト・アンド・プライテストだそうでございますけれども、私はそのベスト・アンド・プライテストにぜひお願いをしたいのは、予算審議を含めて国会での審議で上手に答えるということはもちろん大事だけれども、しかし、もっと踏み込んで国民に訴え、いま沈滞し不安にうつくつしている気持ちを明るい方向に向けていただくことが大事じゃないか。私は、宮澤長官がかつて池田総理大臣の秘書官であったときに、総理とそれこそ猛烈な論戦をやられて、タクシーだか車の中から追い出されたという記事を読んだことがございますけれども、それくらいの気持ちを、さあ働こう内閣の閣僚だけが一生懸命やるのじゃなくて、政府がしみ通るように末端までその気にさせるということが大事であり、その構えがあればこそ一億一千万の国民がこの難局にぶつかってがんばっていくという体制ができてくるというふうに思うわけであります。私がかつてその下で働きました河本通産大臣は、私が退職の日に、とにかく役所というのは上へいくと減点主義で採点をして元気がなくなるよと言っておられましたけれども、しかし、それでは困るわけでありまして、指導者としてひとつ政府の末端までやる気が起こるようなリーダーとしてがんばっていただきたい、そのことを要望いたしまして私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
    ―――――――――――――
○委員長(鍋島直紹君) 次に、大木正吾君。
○大木正吾君 最初に伺いますが、きょうの円の相場は幾らになったか、村山大蔵大臣から伺います。
○国務大臣(村山達雄君) 寄りつきが二百二十七円でございます。
○大木正吾君 余り細かな議論をしても仕方がないんですが、私の手元にいま入った情報ですと二百二十六円五十銭となっているわけですが、まあ五十銭はどっちでもいいんですけれども。二十五日に出しました政府の円高ドル安対策につきまして二、三伺いたいんですが、やっぱり結果を見ていますと、新幹線の凍結したものを少し解除するとか、あるいは住宅関係その他の発注を繰り上げるとか、そういった話ばかりが出ておりまして、新味がないですね。こういう状態で円高ドル安問題について果たして対応していけるでしょうか、これについて三大臣と牛場大臣に伺いたいんです。
○国務大臣(宮澤喜一君) 従来、ともすれば予算が成立をした、あるいは法律案が法律になったということで行政の方としてはこれで一つ仕事が済んだというふうに考えやすいものでございます。まあ普通のときでございますと、その予算を一年かけて執行する、その法律の政令をぼつぼつつくるというようなことでよろしいわけでございますけれども、いまはそういう時代でないので、予算が成立したと、それから実は本当の仕事が始まる、法律ができてそれを具体化するのは、本当の仕事はそれからだというようなことは大事なことだと考えておりまして、それも漫然としてでなく、やはり日限を切ってやることはやっていくということにいたしませんと、このような経済の大事なときに対処するのはむずかしいと、ほぼそのような意識からああいう対策を決定したわけでございます。
○国務大臣(河本敏夫君) 何しろこういう激動の時代で、内外の情勢が刻々に変わっておりますので、やはり変化する情勢に即応するためには絶えず経済対策閣僚が集まりまして、その都度情勢を分析して必要な対策を協議していくということは、これからも私は特に必要だと考えております。そういう意味におきまして、予算の成立を間近に控えまして一連の対策について協議をしたということは、それなりに大きな私は意義があったと考えております。
○国務大臣(村山達雄君) 特に為替相場の問題でございますが、やはり私は最終的には長期的に考えるべきものだと思っておるわけでございます。短期的にはそのときどきの為替市場の需給関係で決まるわけでございますので、乱高下をできるだけ抑えるということは当然でございますけれども、またある意味で言いますと、これが相場が安定した方が先行きについてそれぞれの覚悟が決まるわけでございます。そういう意味から申しまして、ことし、いまはちょうど輸出月でございますし、また決算期でもありますので、この実勢については乱高下を抑えるということに全力を上げるべきであって、実勢は今後一年間かかりまして徐徐に改善されてくるであろうと、このように考えているわけでございます。
○大木正吾君 牛場大臣に伺いますけれども、最近の新聞で拝見いたしますと、ストラウスさんと電話であるか何かわかりませんが、お話をされたという記事がございますけれども、それはドル安対策についての石油問題なども含めて話をされているかどうか、もう一つは、ECとの話が非常に抽象的な文書で一応まとまった形になっておりますが、これを喜んでいいのか、あるいは将来に対EC黒字が減るという方向で推移するかどうか、その辺のこと二つについて伺いたいんです。
○国務大臣(牛場信彦君) ストラウス氏とはときどき電話とか、それから手紙の交換なんかもしておりますけれども、いまのところは主としてジュネーブにおきますガットの東京ラウンド、これの交渉の促進についての意見交換を行っておりまして、特別私の方から為替の問題で先方に申し入れたことはございません。ただ四月の十日にまたジュネーブで会いますので、そのときには日本の状況はよく説明しておきたいと思っております。
 それから、ECとの話でございますけれども、これはああいう文書でございますから、できるだけ抽象的に書くほかないわけでございまして、ことにこのたびはマクロの問題も相当入っておりますので、これはもうアメリカと話したときと変わっておらない――その後もちろん国会における論議等を通じて先方は日本に対してもう少しはっきりしたことを言ってくれということはございましたですけれども、大体いままで政府の申してまいったラインでわが方の政策として表明したわけでございます。これに対するEC側の評価でございますけれども、大体プラスの評価をしておるということは認められるわけでございまして、さしあたり四月の初めにECの中の首脳会議がございまして、それにこの間参りましたハフェルカンプ氏が報告するわけでございます。その報告の結果は恐らくポジティブだろうということを彼もこの間申しておりました。そうでなかったらこういう声明は出さなかったろうということでございまして、ECの中にいろいろございますけれども、相当日本に対してやはり輸入制限をしろとかという力もございますので、それに対するブレーキには確かになるんじゃないかと考えております。
○大木正吾君 いま四大臣のお話がございましたけれども、大蔵大臣の話を伺いますと、そのうちいい線に行くだろうという話がございまして、また時間もかかるだろうという話もあるわけでございますが、並木さんと竹内さんに伺いたいのでございますけれども、どうも円が結局安くなっていくという傾向はほとんどないわけでございまして、民間の財界人の方々も二百二十円ということを予想する方々もございますが、両先生の御感触でもって円高ドル安問題の見通しについてもしお聞かせ願えればと思います。よろしくお願いいたします。
○参考人(並木信義君) 円高の問題に関しましては、ただいま御指摘がございましたように、私は経済学で言うラッチェット・イフェクト、何と訳しますか、要するに一度上がってしまいますとなかなか下がらない、そういう問題だろうという感じがするわけであります。なぜかといいますと、わが国と諸外国と物価上昇率が相当違いまして、今後恐らく日本は二%程度、アメリカが五ないし六%、ヨーロッパは当分の間七ないし八%の物価上昇は続くであろう、そういたしますと、その物価上昇率格差を是正するためだけでも円高が不可避であるという、そういう観測がございますから、一度上げちゃいますと後はなかなか下がらないということだと思うんであります。で、なぜそなったかという理由は、恐らく御議論はあったんだろうと思うのでありますが、最も基本的な理由は、昭和四十九年度から五十一年度までの三年間の調整期間で日本だけがさっさと調整をした、したがいまして、もし諸外国から日本の黒字についていろいろ議論がございますのであれば、日本が早目にちゃんと調整をしたその結果としてこうなったのであって、それでは日本がイタリア並みによろよろして赤字だったらいいんですかと、これは余り答えにはならないと思うのでありますが、本質はそういうことだと思うんであります。そういう点からまいりまして、政府が輸出総量、五十三年度は五十二年度の横ばいにするんだというふうにお考えのようでありますが、これはしかし仮にそのようにいたしましても、計算をいたしますと、仮に輸出量を横ばいにすることに成功したといたしましても、五十二年度との比較で考えまして五十三年度の経常収支は百億ドルの黒字にならざるを得ないのであります。これは計算の問題でございますからどなたでも計算できるんでありますが、そういう情勢でございますから、むしろ円高、黒字問題というのは、対策の問題と、それからもう一つはむしろ説明の問題、そちらの両方ではないかという感じでございます。
○参考人(竹内宏君) 円の推移でございますけれども、よく私どもの同業者で申しますのは、将来の円と株の推移を当てましたら、エコノミストとして一流ではなくて占い師として一流であると言われるぐらい当たらない問題でございます。これからも多分変動していくわけでありますけれども、その場合に世界の流れ、つまり投機家の流れがどう変わるか、マインドがどう変わるかというのが大変な一つの見通しでございまして、実際現在円を買ってドルを売ってくるような力といいますか、外にあるお金の数というのは六千億ドルとか七千億ドルとか言われておりますので、それらが円がさらに強くなるであろう、あるいは日本の計上収支の黒字がさらに積もるであろうというようなことを考えている間は、どうも強くなるということになりますし、そろそろ下がり出した、つまり経常収支の黒字の幅が縮まり出したということになって弱気になる、あるいはそのときアメリカがドルを買うような調整をするというようなことになりますと下がるというようなことでありまして、それらの金融的な要因が大変加わっているという感じがいたします。そうでございますから、一方的に円がどんどん上がるということではないだろう。あるいは秋口に下がるかもしれないというような一時的に考えを持っております。
 ただ中期的に見ますと、並木さんが御指摘のとおり、日本と欧米との物価上昇率の差が四%ありますと、年間で円が十円だけ上がるということになるわけでございまして、その間のインフレのギャップの差が続いている限り、どうしても自動的に上がっていくというような感じでございます。
 それからもう一つは、やはり現在のような需給ギャップがございまして供給能力が二〇%も多い場合ですと、どうしても輸出圧力がかかりがちでございます。企業はむしろ円レートの上がった分よりも、輸出のドル建て価格の上げ方を少なくするはずであります。それによって輸出数量を現在よりも落とさない、それによって操業度を保って収益の減退を免れるというような戦略をとりますと、どうしても仮に輸出数量横ばい、その結果、幾分値上げした分だけドル建ての輸入額はふえる、輸出数量横ばいといたしますと、それに伴う輸入数量も変わらないというようなことで、どうしても需給ギャップが残っている限り、円高の力が働きがちであるし、需給ギャップが残っている限り、物価上昇率は低いわけでございますから、どうしても円が上がる力が働き続けるだろうという感じがしております。
○大木正吾君 宮澤長官にお伺いしますが、ことしのドルの手持ちの残高の見通しなんですけれども、経済計画をつくったときには百億ドル前後という、こういう感触で私は受けとめておったんですが、現在百四十を超える勢いというふうに承っていますけれども、そういうふうに感じてよろしゅうございますか。
○政府委員(旦弘昌君) いま委員の御指摘になりました数字から推察いたしますと、経常収支の黒字のお話ではなかろうかと思いますが、現在のところ見通しといたしましては、政府の見通しは百億ドルでございますけれども、すでに二月末現在で百十七億ドルになっておりますので、三月のもし黒字が出ますとそれに上積みになるということでございまして、どの程度になるかということにつきましては差し控えさせていただきたいと思います。
○大木正吾君 宮澤長官、先ほど熊谷委員の御質問に対して答えられたのでございますけれども、五・三%の五十二年度の成長見通し、大体それに近づくと申したのかあるいは下回るのか、いまのお話で経常収支が四、五十億ドルも見通しを上回ってしまいますと、いろんな波及効果が出てくると思うんですけれども、その五・三%の成長度合いについてはこれは大きな狂いありませんか。
○国務大臣(宮澤喜一君) 五十二年度は四半期別で十−十二月末までが明らかになりまして一−三月が残されておるわけでございますけれども、ただいまのいろいろな情勢から判断いたしますと、かつて言われたように四%も低いところではないかというようなことはこれは明らかに誤りであって、私は五%台に乗っける可能性の方がはるかに高いと、こう考えております。
○大木正吾君 これは論争になりますが、私自身の判断ですと一−三月が大体二・一%ぐらい伸びませんと五%を超えないと、こういう感触なんでございますけれども、そういうことではないでしょうか。
○国務大臣(宮澤喜一君) 二・一%、一−三月が出ますとほぼ五・三ぐらいの数字になるはずでございます。
 そこで、過去を見ますと五十一年度の一−三が二・三であったと思います。その前の年の一−三が二・一であったかと思います。したがいまして仮に五十三年の一−三――五十二年度の一−三を二・一と考えることは、過去の趨勢から見ますとそんなに無理なことではない。ただ、そうなりますかどうか、そこのところは統計が出てみませんとわかりませんけれども、ただいまのような御計算そのものはそれで合っております。
○大木正吾君 結果的にはこれは後二、三日後に迫った問題で締めになりますからあれでございますけれども、五・三%を固定して考え、そして四十億ドルから五十億ドルの経常収支の黒字という見方に立ちますと、結果的には他の指標に相当の狂いが起きてくると考えざるを得ないんですが、たとえば春闘を例にとりますと賃金の上昇が非常にやっぱり渋い感じなんですね、ドラフトでもってなるべく取れるところはたくさん取れという話もあるようですけれども、見通しに対しましてはちょっとむずかしい、こういう感じもするんですけれども、住宅なりあるいは民間の設備投資などにつきましても、これは来年度のものじゃありませんが、来年度の問題を考え、長期を考える土台としまして宮澤長官に伺いたいのですが、こういったGNP内部における個人消費に響く賃金あるいは住宅の伸びですね、さらに民間の投資の伸び、そういったものをしっかり土台を踏まえませんと展望ははっきり出てきませんから伺うんですが、この辺の中身についての狂いや乖離は起きてこないでしょうか。
○国務大臣(宮澤喜一君) 先ほど私ひょっとして五十二年の一−三月と五十一年の一−三を逆に申し上げたかもしれませんので、そうでしたら速記の方の訂正をお願いいたします。五十二年の一月−三月でございます。これが二・一でございました。その一年前の一−三が二・三と、そういうことでございました。
 それでお尋ねでございますけれども、五十二年の十−十二月期を見ておりますと、これは実質で一%の成長があったわけでございます。ほぼまんべんなく各需要項目が出ておりまして、ただ、毎毎申し上げておりましたように、どうも消費の数字だけが思ったように、伸びが悪いという感じを申し上げましたし、持っておりましたが、少しそれに回復が見れるようでございまして、全国世帯で申しますと、一月は実質で二・八になっておりまして、十、十一と二回続けてマイナスが出ておりますのが多少回復をしてきているような感じがございますので、したがいまして、一−三がどうなりますかですが、まあまあ私はもう少しバランスのとれた成長が見られるのではないかと、消費が多少持ち直しておりますので、そういう観察をいたしております。
○大木正吾君 並木先生と竹内先生に伺いますけれども、大変に経常収支の黒字が伸びておりまして、結果的には他の国内的な指標に対する響きが出ざるを得ないと思いますけれども、政府が想定しましたこの七%の五十三年度、これは非常にスタートとしては大事な、中長期の見通しの土台でございますから、そういう点で、五十二年度の五・三%に行くのは私は危ないと見ておるんですが、その辺の感触と、同時に民間の研究機関がとられました七%成長、あるいは六十億ドルの経常収支黒字という問題に対する見解の政府との違いもあったようでございますが、現在はどういう所感でございましょうか、両人にお伺いします。
○参考人(並木信義君) 五十二年度及び五十三年度の成長率並びに経常収支の点でございますが、民間の調査機関はどう思っておるかというお尋ねでございますが、私が承知しておる限りにおきましては、五十二年度の成長率につきまして、恐らく大多数の意見が五%前後ということではないかという感じでございます。
 それから、経常黒字につきましては、ただいま旦局長がお話しになりましたような情勢ではないかと、これはまあ実績の見通しの問題でございますから異論はないというふうに思います。
 それから次に、五十三年度でございますが、恐らく民間の大方の見通しは七%を希望はしておるんでございましょうけれども、現在の情勢でございますと四%台ぐらいの意見が多いんではなかろうかということだと思うんであります。私は個人的には六%説でございますが、その場合も、しかし、夏から秋ごろにかけまして経済実態推移を見きわめまして必要な手を打ってという前提条件がつくわけであります。
 同じく、経常収支の黒字でございますが、これは先ほど計算の問題でと申し上げましたが、輸出の量を横ばわせましても、ドル価格の上昇がございますし、輸入面はこれは品目別にチェックをいたしましても、恐らく名目ドル価格で一〇%ぐらいしかふえないはずでございますから、経常黒字に翻訳いたしますと、ただいまの前提で百億ドルを超えるんではないかということでございます。
○参考人(竹内宏君) 来年度の見通し、政府の七%につきまして、いま民間の主流は多くは四%台ということでございます。ただ金融機関の立場で申し上げますと、金融機関では見通しは発表しておりません。と申しますのは、例年発表いたしますけれども、今回だけ発表しなかった理由は、現在のままでいったら七%は多少無理ではなかろうかということでございますけれども、さりとて現在の情勢から政府が七%というふうに出された根拠についてのガードの甘さを指摘したところでどうしようもない話でございます。でございますから、むしろ七%を達成するにはどういう施策が必要かというのが議論の中心だろうという感じがいたします。
 五十三年度をどう見るかにつきましては、最終需要につきまして財政以外につきましてはいずれも悲観的といいますか、なかなか伸びにくい状態でございますから、御案内のとおり、在庫をどう見るかということが論議の中心になっておりますのは、他の品目、項目が弱いということのうらはらの関係だろうと思います。
 在庫につきましては、在庫調整がどの程度進み、一段落した後どの程度積み増すかという点につきましては、これも数字の問題ではないわけで、むしろ企業家のマインドがどうなっているかというような、マインドの判定でございます。企業家が、マインドが弱いといたしますと、従来考えていたしました適正在庫をさらに下回るだけ在庫調整を進めるかもしれぬ。それからさらに企業家のマインドが弱いといたしますと、在庫が減りましても、それから在庫の積み増し、つまり生産の拡大に転ずるときに、これからも価格が当分上がらないだろう、それから金利負担が大きいという点を考えますと、在庫投資を積極的にやらないかもしれないというような意味の企業家のマインドがどうなっているかという点が大変な判断の差ではなかろうか。私どもですと、その辺企業家のマインドをやや弱く考えておりますので、どういたしましても、今年度あるいは七%をぜひ達成するためにはさらに政策的な、機動的な配慮が必要になってくるのではなかろうかという感じがするわけでございますし、七%を達成いたしませんと、経常の黒がふえてしまいますと、とにかく六十億ドルということよりも、むしろ減らすという方向、減らすということが世界のマインドを変えることでございますから、そういうことが重要ではなかろうかというふうに思っております。
○大木正吾君 両参考人の意見はよくわかりました。
 ですけれども、通産大臣に伺いたいのでございますけれども、政府自身がいままで円高問題、あるいは景気対策につきまして、打つ手が後手後手という批判はずいぶんと聞かされてきたわけなんでございますけれども、いまの五十二年度の見通しについても相当なてこ入れをして、二次補正もしながら、十五カ月予算も組みながら五%前後というような、私も並木さんと同じような見解なんでございますけれども、しかも加えて、七%成長ということ自身も、私は四%というような見方をいたしませんけれども、そういった状態で、つい最近とられました円高ドル安対策の内容といたしましても、余り新味がないと私は判断をするのです。通産大臣に伺いたいんですけれども、どうでしょう、これは早期に、早目に手を打つとしますと、まだ予算が審議中でございますから発言ができないかもしれませんけれども、早い時期に補正をするということの必要が起きるんじゃないでしょうか。
○国務大臣(河本敏夫君) 先ほどもちょっと申しましたが、何しろ内外の情勢が激変をしておる時代でございますから、積極財政を組んだということだけで、すべての政府の経済目標というものは達成されるものとは私どもは考えておりません。国民経済全体から見ますと、中央財政、地方財政あるいは財政投融資等入れましても、国民経済全体の三割以下でなかろうかと考えております。したがいまして、経済全体をながめまして、刻々やはり必要な対策を打ち出していくということがどうしても要求されるわけでございます。幸いにその点につきましては予算委員会におきまして、予算審議を通じまして政府が臨機応変の必要な対策を打ち出すということは約束しておるわけでございますから、その点は私は大きな進歩だと思います。
 そこでいまのお話は、一昨日決めた対策ではいろいろなことが不十分ではないか、補正予算を直ちに組む必要があるのではないかと、こういうお話でございますが、政府に与えられました権限といたしまして、財政投融資の弾力条項ということもこれは可能でありますし、あるいはまた場合によりますと、公共事業等予備費がございますし、そういうものをいま直ちに使用するかしないかは別といたしまして、補正予算を組まなくても臨機応変に政府がある程度の機動的に対処できる力というものがまだ残されておるわけでございます。どうしてもその力がなくなって新しい財源が必要であるということになれば話は別でありますが、そういう情勢でございますから、いずれにいたしましても、あらゆる場合を想定して臨機応変に必要な対策を打ち出していくということでございますから、そういう点につきましては、関係者が常に相談をいたしまして万遺漏ないように対応していかなければならぬと考えております。
○大木正吾君 通産大臣、ぜひ臨機応変にやっていただきたいのですが、臨機応変という中でいま出ました財投の問題、二千億前後の予備費の問題等だと思うのですけれども、そういう従来のタイプでの円高対策、ドル安対策をやっておったんでは――二十五日に御相談されたときに二百二十八円から九円でしょう。きょうは二百二十六円五十銭ですからね。だから、村山さんがおっしゃるみたいに、そのうちよくなるよという話じゃ、どうにもぼくら国民に対して申しわけないし、まして企業マインドは、とにかく積み増しの在庫もやろうなんという気持ちにならぬと思うのですよ。ですから、臨機応変ということをもう少し積極的に、量的に、質的に考える時期が――予算がこれから一週間後に終わったらすぐに手をつける、政府はそういう腹構えじゃないですか。
 三人の大臣から伺います。
○国務大臣(村山達雄君) まだ予算を御審議いただいているわけでございます。われわれは、この予算はまあ公共事業が中心ではございますけれども、それ以外の施設につきましても、また構造不況業種につきましても、中小企業対策につきましても、予算としてはできるだけのことは全部やったつもりでございます。したがって、これが執行の過程でどんどん消化してまいりますと、私は大体所期の七%の成長はできるのではないかと願っているわけでございますけれども、言うまでもなく世界経済の激動期でございますから、絶えず変化するわけでございます。その意味で機動的に大胆にやることについては少しもちゅうちょする旨はございません。しかしその問題はもう少し様子を見なければならぬと思っておるのでございます。
 おっしゃいました円高の問題は、先ほど参考人からもお話がございましたが、これはもう実勢の話が中心でございまして、少々そこで小手先でいろんなことをやってみても、結局落ちつくところへ落ちつくわけでございます。基本的な政策を進めていくことがやはり基本的な問題だと、かように考えているわけでございます。
○国務大臣(宮澤喜一君) 先ほど参考人からもお話がございまして、民間の成長の見通しは、五十三年度についてはまあ四%ぐらいのところに集中をしている。しかし五十二年度については、いまとなってはということかもしれませんが、五%内外ではないか、こういうことでございますが、そうであるとしますと、五十二年度と五十三年度と比べまして、明らかに五十三年度の成長の方がかなり低いということになります。それはどういう要因によるものであろうか、輸出は確かにある程度鈍化していけば、これはマイナス要因になりますけれども、しかも民間ではそんなになかなか政府の思うほど輸出は減らないぞということであるとしますと、たださえこのシェアは大きくはないのでありますから、どうもそれ以外のマイナス要因は何であろうかというふうにちょっと私いま伺いながら思っておったところです。これは一般の民間の考え方を御紹介になったのでございますから、参考人の御意見としておっしゃったわけではなかった。それはそのように承知しましたけれども、どうも考えてみまして、まあ七%ぐらいの成長というのは私はそんなに乱暴な話ではないというふうにやはり考えます。
 しかし、臨機応変ということは大事でございますから、先ほどもお話がありましたように、やはり財投でありますとか、公共事業予備費でありますとか、政府はいろいろな弾力性を予算なり財投なりの中に持っておりますし、また何よりも予算の執行をできるだけ早めていくということは、これはもう乗数効果等々から申しましても、いつ執行するかということは大変に大きな影響があるものでございますので、そういうことを急いでまいりたいと思っております。
○大木正吾君 後でまた河本さんに伺います。
 ちょっと話題を変えまして並木先生に伺いたいのですが、政府の出しました中長期の財政試算表につきまして、日経センターで独自なプランを持っているという話も伺ったのですが、概要で結構でございますからぜひ伺いたいのでございます。
○参考人(並木信義君) われわれが大体同じ期間、つまり昭和五十三年度から五十七年度までの五カ年につきまして試算を行ったわけでありますが、これは先ほど申し上げましたように、実質成長率は平均六・三という前提であります。ただ物価は、これは政府よりわれわれの方が多少低目に見ておるのでございますから、名目成長率はわれわれの方が多少低目でございます。
 で、大蔵省の財政収支試算というのは、御承知のとおりAからEまでケースを五つ並べております。一番その中身が明確でございますのはケースAでございます。B以下はその前提の置き方の必然性がよくわからない試算でございますので、ケースAに即して吟味をいたしましたが、たしか五十七年度末の国債残高が百二十二兆円強というのが大蔵省の試算結果でございます。われわれも大体似たような前提で計算をしたわけでございますが、恐らく百十兆円ぐらいになるのではないか。これはしかし物価の見通し等の前提が違いますから、私は基本的にその試算結果が違うというふうには見ていないわけでございまして、いずれにしましても、現在の国債発行の趨勢というのは、相当真剣にこの問題を考えないといけないことは間違いがない。結論の点につきましては大蔵省試算と同じでございます。ただ、途中の最終需要の見通しその他につきましては、大蔵省の方は中身はございませんのでこれはよくわからないということでございます。
○大木正吾君 まあそういった見方の違いが一つはあります。
 さらに私は大蔵大臣に伺いたいのですが、この試算表の弾性値の問題、税金の例の弾性値の問題で、たとえばここに手元に資料がございますが、四十一年から四十五年まで平均しますとまだ一・四%ですね。わりあいに景気がいいときの数字ですね。そして五十年、五十一年と四十九年以降はいずれも〇・九五とか〇・幾らで、ちょっと甘く見ても一・〇ぐらいにしかならない。それが大臣がよくおっしゃるケースCの例などを参考にしたり、あるいは経済見通しの企画庁の試算等で拝見いたしますと、二%台ぐらいまでいっている感じなんですけれども、その辺の狂いについてお話ししていただきたいと思います。
○政府委員(大倉眞隆君) 過去の経験値は大木委員がおっしゃいましたとおりでございます。四十一年度から四十五年度までという成長の高い時期の平均が一・四でございまして、四十七年度から五十一年度までとりますと一・〇八で、まあ一そこそこということでございます。したがいまして、財政収支試算では、いわゆる自然増収ベースを計算いたしますと、それはケースAでございますが、その場合には、間をとって一・二という形で試算をいたしております。
 ケースCは、弾性値がそのようになるであろうという試算ではございませんで、五十七年度に歳出水準をケースCのように維持しながらなお特例債依存から脱却するとすればこれだけの税収がどうしても必要であるという試算をしているわけでございまして、この増税を行った後の結果で数字が出てきておりますので、これはいわゆる弾性値とはいわば無縁のものでございます。
○大木正吾君 この委員会でその問題の議論をこれ以上やることは避けますけれども、こういったいろんな数字なりあるいは見通し等が出ているわけでございますけれども、肝心なことは、やっぱり従来の高成長期の対策と不況期の対策と内容的に結局余り変わっていないということが一つの私が申し上げたいことなんです。
 ですから、先ほど竹内先生もおっしゃったんですけれども、なぜ企業のマインドが弱いかという問題ですね。この場合も、常識的にはやっぱり個人消費あるいは住宅投資などが、盛んに笛を吹きますけれどもなかなかついてこれない状態にある。ですからそのマインドというものをもう少し民間にバトンタッチするにつきまして、私は考えを出しますと、通産大臣に伺いたいんですけれども、ぜひ在来の不況期のパターンじゃなしに、もう少し私は、東京都内にもずいぶんと、各官庁のなわ張りがございますけれども、空き地もあるし、古臭い学校もたくさんあるし、土地という外の制約条件を考えなくても、やっぱりもっとすぐ生きていける投資効果が出るものがあると思うんですね。
 それから同時に、村山さんにも申し上げておきたいんですが、減税問題についてもう一遍見直す必要があるんではないかということを申し上げておきたいんです。
 それから、労働大臣に実は御質問する時間がなくなってしまったんですけれども、宮澤長官がいつもおっしゃるとおり、三年、五年の中長期の中で一番困るのは雇用問題、こういう話があるわけですが、この雇用問題の法律案が実に錯綜しておりまして、やっぱり日本人の悪い癖でしょうか、わりあいに失業した場合に職安等に顔を出すことも恥ずかしがりまして、新聞広告でもって職探しをする方が多いわけですけれども、三年たって、五年たって、やっぱり失業状態が〇・八とかそういった状態で行くとしますれば、何らかの財政的な手をやっぱり打たなければいけない、こう考えているわけですが、大蔵大臣あるいは通産大臣、労働大臣から所見を承って私の質問を終わりたいと考えております。
○国務大臣(河本敏夫君) 当面、政府の掲げております幾つかの経済目標というものは、これは国内的には雇用問題を何とか目鼻をつけなければならぬということ。それからまた、日本が国際社会、国際経済の中に生きていくための幾つかの調整が必要でございますが、それを実現するための必要最小限度の政策でございますから、御指摘がございましたが、関係各省が従来の立場だけにとらわれないで、虚心坦懐に当面の諸問題をよく話し合って対処していく必要があろうと思います。
○国務大臣(村山達雄君) 今度とっております政策は、いま委員が挙げられました方向に対して少しでも前向きな、プラスになる効果を期待いたしているわけでございます。
 おっしゃるように、雇用問題は非常に大きな問題でございまして、いま最大の問題かと思いますが、当委員会におけるいろんな論議を踏まえまして、公共事業の実施に当たりましてはそういう点は十分配慮していくということで、いまきめ細かなあれをやっているわけでございます。一方、雇用対策等もいろいろ進めまして、構造不況業種に関してもその雇用問題について労働大臣と十分打ち合わすということでやっているわけでございます。
 ただ、委員がおっしゃった減税はどうだと、これはもう何遍も申し上げましたように、三七%という借金をしながらやるときには、われわれはやはりいまの公共投資を中心とする仕事の方が効果が大きいと、こういうふうに思っているので、そのことはいま考えないということを重ねて申し上げておきます。
○国務大臣(藤井勝志君) 大変どうも最近の内外の経済情勢の厳しい環境の中で、雇用問題というのはその裏目といいますか、盾の半面でございまして、これは現在、日本の経済、産業がまさに質的に構造変革を遂げておる、こういうときでありますから、とりあえず、われわれは雇用安定資金の制度を背景として、できるだけ失業が出ないようにして、そうしてこの再就職の道を求める。こういったことをしながらも、やはり産業構造そのものが変革しておりますから、これから伸びていく産業、新しく求められる職種、こういったものの情報を的確につかんで職業訓練、こういったものもひとつあわせてきめ細かく推進していく。こういう配慮が必要でございまして、そういうことによって私はやはりこれから進むべき日本経済社会の担い手のいわば配置が円滑に転換していく、こういうことに進めていくべきであると、こういうふうに考えますから、やはり職業訓練政策というものと雇用安定政策というものは、まさに表裏一体の運営として今後進めていくべきである。したがって、職業訓練法の改正をこれから御審議願うという準備を進めているゆえんもそこにあるわけでございまして、今後も大いに努力しなきゃならぬと思います。
○大木正吾君 終わります。どうもありがとうございました。(拍手)
    ―――――――――――――
○委員長(鍋島直紹君) 次に、多田省吾君。
○多田省吾君 私は、最初に五十三年度の経済見通しにつきまして、日経センターの並木先生にお尋ねしたいのでございます。
 先ほどのお話でも、民間の見通しとしては七%を希望していても四%台が多い、あるいは並木先生は個人的に夏から秋ごろ必要な手を打って六%だと、こういうふうにおっしゃいました。去年の十二月十四日、日経センターではいち早くGNPの伸びを五十三年度は四・四%、また経常収支の黒字は八十六億ドルと、このように見通しを発表されたわけでございます。その前提といたしまして、国債依存度を三六%、一般会計予算の伸びを一九・九%、やはり政府とほぼ同じような見通しだったわけでございます。その当時から見ますと、第二次補正を組んで十五カ月予算を組んだということ、あるいは経企庁の方では在庫調整が進んでいるとおっしゃること等がありますけれども、異常なマイナス要因といたしまして、御存じのように、円高が去年の十月ごろは二百六十円から二百四十円だったわけですが、ことしに入りまして、その二百四十円から、きょうなんかは九時十五分現在で二百二十六円五十銭ですか、そういう状況まで円高になったわけでございまして、これは大変なマイナス要因だと思います。それからもう一つのマイナス要因は、やはり企業収益が非常に悪化しているということで、これも大きなマイナス要因だと思います。こういったようなことを考えまして、並木先生としてはどのような手を打って六%とおっしゃるのか、また去年の十二月期にはどのように考えておられたのか、それから日経センターとしてのお考えはどうなのか、この辺をちょっとお尋ねをしたいわけでございます。
 それからもう一つは、やはり計上収支の黒字はいまのように量を横ばいするのでは百億ドルを超えると。じゃ政府見通しの六十億ドルにするためには一体どういう手を打ったらいいのか、その辺もお聞かせいただきたいと思います。
○参考人(並木信義君) ただいまの日経センターの見通しに関する御質問がございましたが、昨年十二月の四・四%と私が先ほど申しました六%との間の差は、主として財政がさらに有効な手を打つのであるという前提でございます。したがいまして、私が先ほど個人的意見なんだと申し上げました六%というのも、実はわれわれのセンターの見通しの一つでございます。ただ前提が違うわけでございます。したがいまして、前提を昨年の十二月のように置きますと、これは四%台にならざるを得ない。その理由といたしましては、これは皆さんのおっしゃっている点でございますが、やはり個人消費支出、それから民間設備投資、さらには在庫投資等が過大なんではないかという点でございます。技術的には、恐らく政府の総資本形成につきましてもこの決め方がはっきりしていないのではなかろうか。これは先ほど通産大臣がおっしゃいましたが、財投の点、それから同じく地方財政の点等につきましてどういうことになっておるのかよくわからない。
 私の六%の場合でございますと、これは一応は政府総資本形成の数字を政府見通しよりは高目に置いておるのでございますが、しかし具体的な措置によりまして数字というのはこれはぐるぐる変わるものでございますので、余り中身について立ち入ることは意味があるとは思いません。
 それから次に、経常収支の黒字の問題でございますが、これはわれわれの見通しでは、実は五十二年度の経常収支の黒字が百億ドルという前提で計算しましても、五十三、五十四と百億ドルぐらいにならざるを得ないのである、そういう見通しでございます。したがいまして、先ほど量が横ばいでも百億ドルだと言いましたのは、裏返しますと、恐らく量はふえるであろうというのが中にあるのでございます。
 対策はどうかという御質問でございましたが、当然目先的な対策というのは、私は個人的にはないわけではないと思いますが、それにはしかしいろいろな手を全部ワンセットとしてやりませんと、ばらばらにいろいろなことを言いましてもうまくいかない。やっぱりワンセットとして対策を考えざるを得ないので、私の意見を申し上げるのは差し控えたいと思いますが、二年ぐらい前から経常黒字に関しまして、この黒字が出るというのは見通しが可能であったわけでありますので、対外交渉上の説明の仕方がずっとまずかったんではないかという個人的意見はございます。
○多田省吾君 並木先生にもう一点お尋ねしたいのでございますが、去年の十二月ごろと比べて、私も先ほど申しましたように、マイナス要因としては円高、また企業収益の悪化ということが当然考えられる。そのほか経企庁等では、在庫投資が三−四月期に在庫調整が終わって、積み増しもぐんぐんと上昇するだろうという見通しですが、民間の予想では、七月から九月期にならないと在庫調整は終わらないし、また積み増しもほとんど企業マインドが低下しているので期待できない、こういうような声が多いわけでございますが、並木先生としてはこういったことをどのようにお考えでございますか。
○参考人(並木信義君) 見通しの数字につきまして先ほど申し上げた点をもう一つ補足しますと、いま特に在庫の点の御質問がございましたが、在庫につきましては、政府が主として製造業の製品在庫に着目して議論をしておるわけでありますが、これを製品のみならず原材料、仕掛かり品並びに流通在庫まで含めたような、そういう在庫ストック概念に基づく計算をいたしまして、それと実質GNPとの比をとりまして、別の種類の在庫率概念を算出して計算をいたしますと、やはり在庫投資の回復というストーリーはちょっと早過ぎたのではないかという印象でございます。
○多田省吾君 次に、竹内先生にお尋ねいたします。
 成長見通しの七%は政府のガードの甘さが指摘できると。そしてどうしたらできるかということを主眼に置いているので、金融機関としては五十三年度の実質経済成長率の見通しについては発表してないというお話でございましたが、もしこの七%達成のために必要なお考えがございましたならば、ひとつおっしゃっていただきたいと思います。
 それからもう一つは、経常収支の黒字の問題につきまして、外国では七%成長を期待し、六十億ドルの経常収支の黒字まで下げることを期待していると思いますけれども、どちらかといえば、外国では成長率七%を達成できなくても黒字六十億ドルは達成してもらいたいと。たとえ日本が七%の実質経済成長率を達成したとしても、経常収支の黒字が、いま並木先生がおっしゃったような、百億ドルをこのままでは超えてしまうだろうと。昨年五月のロンドン会議において、福田総理が経常収支の赤字七億ドルを約束されて、その後六十五億ドル黒字に修正した。これは大変な修正だと思うんです。これはもうエコノミストとしても占い師としてもこれは大失格だと思いますし、政治家としても大失格だと思うんです。それを今度は百億ドルに修正した。この三月期においては百四十億ドルを突破するだろうと、こういう姿でございますから、経常収支問題については外国では相当厳しく日本を見ていると思います。
 そういうことで、私は外国から見たこの経常収支の黒字問題というのは、大変厳しく見ているだろうと思いますが、この問題もどのようにお考えになっているのか、お尋ねしたいと思います。
○参考人(竹内宏君) 第一番目は、七%を達成するにはどうしたらいいかという御質問と思いますけれども、これはなかなか困難でございまして、一つは、企業マインドをどう変えるかということでございます。そういうことになりますと、先ほど何人かの先生の御指摘になりましたように、日本経済がこれから当分大丈夫であるというような確信を起業家に与えなければならないということでございます。ではその確信がどうしたら与えられるかということになりますと、やはり公共投資中心、社会資本の充実を中心とした何らか長期的な見通し、あるいは列島改造論の変形のようなものかと思いますけれども、そのような何らかのはっきりした見通しがないと、なかなか企業家マインドは動きにくいという感じがするわけでございます。
 それで、さらに現在は、従来でございますと企業家は設備を多目につくって、内需が足りなくなった場合には輸出によって調整して操業度を上げるということでございますけれども、昨今の情勢で輸出の増大がいろんなことでほぼうまくいかないということになりますと、どうしても企業家マインドは減量という、つまり安全を求めて減量ということになりますので、何らかの国家的な大きなプロジェクトが必要になるのではなかろうかという感じを持っております。
 それから、第二番目の点でございますけれども、経常収支は、あるいは諸外国で六十億ドルということを完全に期待しているかどうかという点になりますと、はなはだ私もよくわかりません。
  〔委員長退席、理事内藤誉三郎君着席〕
ただ、重要なことは、とにかく減らすということで、それが減らす方向に働けば、六十億ドルではなくてもあるいは評価されるのではなかろうかというように思っております。
○多田省吾君 通産大臣と大蔵大臣に御質問したいのでございますが、一昨二十五日、政府では七項目の輸入増大の、あるいは内需増大の対策を発表したわけでございますが、今度もまた、きょうの為替相場の動きを見ますと、大蔵大臣が先ほどおっしゃったように、きょうは寄りつきが二百二十七円で、午前九時十五分には二百二十六円五十銭、それから、現在聞きますと二百二十六円十銭と、非常な円高になっているわけでございます。前にも日銀が、公定歩合の引き下げとか、あるいは短期資金の流入規制をやった直後もやはり円高が非常に進んでおります。今度もやはり政府の対策を見まして、これは大したことがない対策だと、根本的な対策じゃないということでこのような円高になっておると思います。また、円高対策には、やはりドル防衛をアメリカに強く要請するとかいろいろありますけれども、やはり経常収支の黒字が二月度においても三月中においても減らないと、こういうことがやはり円高急騰の大きな原因になっているのだろうと思います。そういうことで、政府のやはり民需拡大の政策の弱さ、あるいは輸出、輸入に対する考え方の甘さというものが、いつまでたっても円高の急騰の情勢をとめることができないんじゃないか、このように思いますが、通産大臣、また大蔵大臣はどのようにお考えになっておりますか。
○国務大臣(河本敏夫君) 一昨日も大体の方向を明らかにしたわけでございますが、輸出につきましては、大体数量ベースで横並びということで五十三年度を行政指導をしていこうと、こういう考え方でございます。輸入につきましては、いま一連の景気対策を進めておりますので、後半には相当な成果が上がってくるであろうと私どもも期待をしておりますが、やはり事は緊急を要しますので、先般決めました緊急輸入対策のほかに、さらに一層拡大した緊急輸入対策というものを考え出す必要があるのではないか。そして、抜本的にはやはり景気の回復、景気の回復による輸入する力の拡大と、この三つだと思います。もちろん、それ以外にアメリカの経済との関係が非常に大きいわけでございますので、それに対しては来月、適切な対応策を考えていこうと、こういうことでございますが、一昨日決まりました線を確実に進めていくということが当面の課題であると考えております。
○多田省吾君 通産大臣、先ほど日経センターの並木先生も、量の規制だけではやっぱりドル上昇ということで、量を横ばいするだけでは、ドル上昇があるので、百億ドルを五十三年度も超えるようになるだろうというような見通しを述べられておりますが、それに対してどうお考えですか。
○国務大臣(河本敏夫君) 先ほど並木さんのお話をいろいろお伺いしておったんですが、並木さんは、数量が仮に横並びであっても、ドル価格に換算をすると、値上がり等のことを考慮すると、相当ドルベースでは金額が大きくなるのではないかと、こういうお話でございます。その点は私どもも大体数量は横並びであっても、ドルベースではほぼ八%前後ぐらいはふえるであろうと、このようにいまのところ想定をしております。したがいまして、もう何もやらなければ、これは経常収支は五十三年度もあるいは予定どおりいかないかもわからぬと私は思います。そこで必要な対策を、先ほど申し上げましたようにこれから強力に進めていこうと。そうして経常収支六十億ドルという目標を達成するということは、これは内外からも期待が非常に強いわけでありますし、その方向はぜひ実現をするということを一昨日も確認をしたわけであります。ほっておいたのではこれはだめでありますから、必要な対策をとっていこうと、こういうことでございます。
○国務大臣(村山達雄君) 先ほども申し述べましたように、この問題は、やっぱり長期的に考えていくのが私は基本だと思うわけでございまして、やはり内需の拡大によりまして輸入需要をふやし、また輸出需要を国内に向けていくということはやはり一番基本であろうと思うわけでございます。一昨日決まりました、輸出数量もずっと抑えていき、それから輸入も拡大するという問題、これはやはり一つの線として考えられる線ではないかと。で、いま円高でございまして、いま価格効果が出ているところでございますが、やがて内需の拡大とともに、それはどっちみち考えますと、輸出するものにとっては割高になるわけでございますから、やがては数量効果が出てくるはずでございます。それが内需の拡大と結びついて有効な手段になるのではないかと、かように考えておるのでございます。
 当面の円高につきましては、少しでもプラスの方向ということで短資の流入規制をいたしまして、それはそれなりに効果が出たわけでございまして、大体三月に規制をやるまでの間、一日に外資が二百五十億ぐらい入ってきておったのが、いま五分の一の五十億ぐらいになっておるわけでございますから、それはそれなりに私は効果は出ていると思うのです。しかし、ただ為替相場というものは、やはり為替の需給関係で決まるわけでございまして、いまちょうど二月、三月期というやつは輸出月でございます。それが強く反映しているわけでございます。そのことは、現在の現物相場と先物相場の差を見ておりましても、まだ先物相場の方は相当高い。これがやがて先ほど申し上げましたような効果があらわれてまいりますと、その点が徐々に是正されてくるであろうと。先物の方が金利差よりももうちょっと安くなってくれば、これはまた、いろんな手があるわけでございます。心理的に、先物の方がずっと金利を超えて高いという心理が働く限り、それは結局実勢によって決まるわけでございますけれども、なかなか手の打ちようがないと、こういうことだろうと思うのです。
○多田省吾君 最後に牛場大臣に。
 日経センターの並木先生は、輸出量が横ばいでも、ドル価格の上昇によって百億ドルは超えてしまうと。また通産大臣も、いまのままでは同じように八%前後の上昇になるだろうと、こういうことですと、私は政府見通しの経常収支黒字六十億ドルというのは非常に達成困難だと。こうなりますと、夏口あたりからまた海外の厳しい批判が高まるのじゃないか、これをどのように考えられるか。
 また宮澤経企庁長官には、経企庁では在庫調整が三、四月期になるだろうということで、七%達成に自信を持つ一つの大きな要因とされておるようでございますけれども、セメント等は、公共投資の大型化によってある程度は在庫調整が進んでおるようでありますけれども、その他の品目は非常に見通しが暗いというようなことで、おおむね七月−九月期あたりが、またその後がやっと在庫調整の時期だろうと見ておりますが、いまもその経企庁の見通しは変わらないかどうか、その辺をお聞きをしたいと思います。
○国務大臣(牛場信彦君) アメリカとかECとかの話を通じまして感じますことは、前から申し上げておったんですけれども、日本にとりましては特に経常収支の黒字の削減を期待したい、七%成長もさることながら、経常収支の黒字、それの削減も内需の拡大によってと、こういうことだったわけでございまして、したがいまして、これはもう非常に大事な、日本としてやらなきゃならないことになってきておるわけでございます。三月まではどうも余りいい結果が出ておりませんでございますけれども、しかし、円高の影響その他も四月以降になりましてだんだん出てくると思われます。
 それから輸入の拡大につきましては特に緊急の措置をとるということですでに一回発表いたしましたが、引き続いてそれについて研究してまいるということでございまして、もちろん検討だけじゃなくて行動をとってまいるということでございまして、ことしの秋ぐらいになれば何とかしてやはり基調の変化が出てくるんじゃないか、変化が出てくれば、またこれ将来にわたって実際にも数字の上にも大きく変化が出てくることが期待できるんじゃないかというふうに考えておる次第でございます。
○国務大臣(宮澤喜一君) 非鉄金属でありますとか、ことに石油、石炭――石油の場合にはこれはその備蓄を意識的にいたしておりますからどうしてもそうなるわけでございますが、在庫の調整が遅いというのはそういう部分に確かにございますけれども、全体として、ことに製品在庫などを考えますと、いわゆる在庫調整というのは大体ここらあたり、この一、二カ月、そのあたりはどうでもよろしゅうございますが、ほぼ私は従来申しておりますような調整過程を終わるのではないかと思っております。
○多田省吾君 終わります。(拍手)
    ―――――――――――――
○理事(内藤誉三郎君) 次に、栗林卓司君。
○栗林卓司君 宮澤長官にお尋ねしたいのですけれども、経済の成長率を考えますときに、一つは中期的な可能性といいますか、期待値として議論する成長率の問題があると思います。先ほど参考人の並木さんが六から七%ではあるまいかと、まことにごもっともな感じがいたしますし、またあるいは雇用問題とか産業の改革、構造改善を考えると、七%ぐらいは目標性を含めながら追及していかなければいけないんではないんだろうか、こういう議論が一つあります。その意味で、今日五十三年度で七%の経済成長率目標をということは私はわかる気がします。ただ、それはそれとして、さしあたっていま見通しを立てるとしたら何%ぐらいなんだろうか、また別な議論もあるんではないだろうか。仮にそれが五%と出た場合、七と言いながら五というのはけしからぬというんではなくて、だったら何を足そうかという議論をしていけばいいんでありますから、目標あるいは期待値としての成長率の議論の問題と、さしあたっていま現状の条件で見通したらどれぐらいだろうかということはおのずから別な議論ではないんだろうかと思いますけれども、こういう議論というのは政府として御迷惑なんでしょうか。
○国務大臣(宮澤喜一君) 七%程度を五十三年度に申し上げておりますのは、これは経済運営の基本としてこれを目標にしてやっていく、それは実現が可能であるというふうに私どもは考えておるわけでございます。
 それから、先ほど並木参考人が長期的には六・二%ぐらいとおっしゃったと思いますが、私はそれは大体いいところではないかなという感じで承っておりました。
 なお、政府の見通しが七%であるが、そういうわけにはいかないよ、こういうことをなおしなければならぬではないかと国会から御指摘がございますことはもう私どもとしては十分承って、私どもに至りませんところは考えていかなければならないわけでございますので、迷惑とかなんとかいうことはもちろんさらさらございません。
○栗林卓司君 私が伺っていますのは、七%という成長率目標を立てた、結構であります。政府として何とかして達成したい、それも結構なんです。ただ、いま現在で、いまある材料で考えていくと見通しは何%ぐらいなんだろうかという議論がもう一つあっていいんじゃないですか。その場合に、長官とすると何%ぐらいにいま目算を立てておいでになりますか。
○国務大臣(宮澤喜一君) 重ねて申し上げるようでございますけれども、五十三年度の七%は、政府が経済見通しをいたしました段階において達成可能である、そのために財政などを初めこのような施策をとろうとしておるわけでございます。お尋ねの意味は、その後に急激な円高が出てきて云云ということと関連があるかと思いますが、確かにこの急激なこの際の円高というのは、順調な成長にはことに不安要因がやはり障害ではございます。ございますが、しかし、だからといって七%の見通しというのを改めなければならないというふうにただいま私は考えておりません。
○栗林卓司君 くどいことを伺っているようですけれども、七%という目標を変えろと言っているんではないんです。ただ、見通しと目標というのは違う話じゃないか。なぜこうお伺いするかといいますと、どなたに伺っても、七%が見通しの問題として達成できるであろうとおっしゃる人は一人もいない。で、先日ここで公聴会を開きまして、与党がお呼びになりました公述人の方が、いや現状で考えると五十三年度はせいぜい五十二年度ちょぼちょぼではないかというお話を伺うわけです。で、それが仮に五%だったからけしからぬということを私は言ってないんです、だったら、また知恵を出せばいいわけですから。いま現在の見通しと七%という目標が一緒なんですという言い方はかえって国民に不安を与えるんじゃないか。一体これがどうなんだと伺いますと、総理が何とおっしゃるかというと、いやあれほど円高になるとはわしは思わなかった、不明と言われても仕方がない。通産大臣にお尋ねをしますと、内外にわたって激動期である。長官に伺いますと、もう少し模様を見てみなきゃわかんない。この一連の姿が国民に何を与えているだろうか。どうお考えですか。
○国務大臣(宮澤喜一君) もともとから言えば、五十二年度の五・三%というのはどだい無理な話だということが二、三カ月前までのいわゆる民間の方々のお考えであったわけで、このごろはさすがにそうまではおっしゃいませんで、まあそれができるともおっしゃいませんけれども、少なくとも五%内外だなというぐらいまではだんだんこう事実がはっきりしてまいりますと見方が変わってくるわけでございます。で、七%というのはその線上で私どもは考えておるわけでありまして、私も決してこだわって申し上げるわけではございませんが、年度はこれから実は始まろうとしているわけであって、この十二カ月の間の日本経済が七%の成長をするかしないかと言えば、これは努力次第でできる。それはただ努力目標というのでは政府の経済見通しはございませんで、できる蓋然性が相当高くなければこれは見通しという経済運営の基本の指針となりませんので、見通しであると同時に蓋然性が高いというものとして私どもは御説明を申し上げておるわけでございます。
○栗林卓司君 いま私どももそうですけれども、国民が求めているのは率直な見解だろうと思います。いまの長官のお答えを伺っていましても、要するに何が何だかわからない。しかも、現実に円高がどういう影響を与えているかというと、相当深刻であろう。で影響はというと、深刻だという認識が出てこない。やっぱり七%は努力すればできるんだというこの堂々めぐりが私はかえって先行きに対する不安感、不透明感を高めているんではないかと思うからくどくお尋ねをしているんです。
 で、この円高に対する評価ですけれども、先般ECとの協議が持たれて、最後に共同のドキュメントが出ましたけれども、その冒頭のところに何と書いてあったかというと、いや日本は円高で深刻な打撃を受けていると書いてありますね。同じような率直さで国会に対してもおっしゃるべきではないんでしょうか。
○国務大臣(宮澤喜一君) 深刻な影響を与えておるということはもうそのとおりでございますから、ECの声明にもそう書いておりますが、だからといって七%というものがむずかしくなるというふうには私は必ずしも思いませんので、それだけの余分な努力が必要であるとは考えますけれども、やりようによって七%というものは決して夢のようなものではない、現実性の、蓋然性の高いものだとやはり私は考えます。
○栗林卓司君 質問の意のあるところはおくみ取りいただきたいと思います。
 牛場大臣にお尋ねをしたいんですけれども、私、いま変動相場制の一番悪い面が出ているんではなかろうかと思います。物価が安定しているものですから円高に追い込まれる。するとますます物価は下がってくるし、しかも円高のデフレ圧力で輸出ドライブがかかってくる。片一方のインフレ国はどうかというと、ドル安と仮定して申し上げますと、さらにインフレを助長をしながらさらにドル安へと悪循環していく、こういう状況の中で一体どうしていったらいいんだろうかという今日の問題なんですけれども、先ほど並木参考人も言われましたけれども、海外の評判を聞いてみると、どうも日本は調整をうまくやり過ぎてしまったんだ、だからなんだということがあるようですけれども、
  〔理事内藤誉三郎君退席、委員長着席〕
おれたちが病人なんだからおまえたちも病人になれと言われたんではたまったものではないし、かといって、産油国が抱えている黒字の見返りとしての赤字をどうするか、この問題もわれわれとして捨ておくわけにいかぬ。そうやって考えてまいりますと、時間がありませんので縮めて結論だけお尋ねしますけれども、いまわれわれがしなければいけない相当大きな仕事というのは、ECとの共同声明の最後にもありましたけれども、一つはアンタイドの援助を思い切ってふやすことではないんだろうか、これが一つです。それからもう一つは、経常収支が余りに議論されるんだけれども、本当は基礎収支において議論がされなければいけないんではないんだろうか、この二点をお尋ねしたいと思います。
 ただ、いま私はアンタイドの援助をふやせと言いましたけれども、援助の先を見ますと、実は返済能力において非常に疑問がある国がメジロ押しになっている。そこの中で計算高い話をしていくと、アンタイドの援助をふやすということはわが国のさしあたっての国益にかなうんだろうか、そんな不満も一面ではあるわけですけれども、そうは言いながら、世界の中の日本とすると相当思い切ってアンタイドの援助をふやす、これからの通貨議論は基礎収支を基礎にしてもらいたいということが一番いいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(牛場信彦君) 援助の問題につきまして、特にECの方は日本に対してアンタイドの援助をふやしてくれということを申しております。これは現在までの日本の成績が必ずしもよくないということに起因しているわけでございまして、日本としてもちろんこれはやらなきゃならないんでありますが、将来大規模なそういうことをやろうとすれば、これどうしたって国際協力ということが必要になってまいりますので、これはドイツのような黒字国ともよく打ち合わせまして、そういうようなアイデアを打ち出すかどうか、これはこれからの先の一つの大きな問題であろうと思います。そういうような国際的な、多角的な協力ということが、やはりこれから先の、これはもう援助という言葉はこのごろ低開発国の方でいやがっておりまして、経済協力ということになるわけでございますが、そういうことを進めていきます上において非常に大事なことだと思っておる次第でございます。
 それからもう一つは、これは日本側のかねての主張でございまして、私もアメリカ、ことにアメリカ側と会うときには必ずこれを申しておりまして、それでいかなきゃいけないんじゃないかということで。ところが先方の言い分は、現在の問題は経常収支の問題なんだと、これは石油の値上がりから起こっている事態であるし、かつ第一回の、さきおととしの暮れでございますね、ランブイエにおける首脳会議以来、基礎収支の問題を主として議論しようということになっておるんだから、いまのところはどうしてもそれでいかないとだめだということを申しておりますけれども、ドイツあたりでもやはり日本と同じ考えで、基礎収支ということを主として考えるべきだということでございまして、これはだんだんそういう考えを浸透させていかなきゃいけないと思っている次第でございます。
○栗林卓司君 終わります。(拍手)
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○委員長(鍋島直紹君) 次に、山田勇君。
○山田勇君 限られた時間でございますので、質疑の方を全部述べさしていただいて、御答弁を一括していただきたいと思います。
 いままでの質疑を聞いておりますと、民間レベルでは七%の成長は絶対と言ってもいいほど不可能だというふうに聞いております。四%がやっとではないかと、こういうことでございますが、両参考人にお尋ねをいたしますが、そのできない要因、原因というものはどこにあるのかということをお尋ねいたします。これからの七%達成のために政府がいかに努力しても達成不可能なものか、民間と政府がいろんな形で力を合わせれば可能性があるのか、どのような政府の施策と民間との協力が必要なのか、その辺をはっきりとお答えをしていただきたいと思います。
 また、近畿地域産業構造懇談会が最近まとめた昭和六十年を目指す長期ビジョンは、近畿の復権ということをテーマにいろんな考え方、構想を打ち出しておりますが、裏返して見ますと、中央に対する地方の側から見たわが国の産業構造のひずみを指摘しております。近畿の経済は総体的に付加価値の低い素材産業の比重が高く、したがって、不況産業業種が多いわけでございますが、過去の高度成長を進めていた時代では中央に中枢管理機能が集まっていることが大いに役立ったことでしょうが、低成長、福祉優先となってきた現在、また将来に向けては、経済面からも文化面からも、東京中心主義を改める必要があるんではないかと考えますが、このことは近畿復権を地域的なエゴイズムだけで考えることなく、大きな視野、観点に立ったわが国経済の安定成長の中でとらえ、東京と地方との情報格差を少なくし、適切な機能の分散を図り、日本全体の経済発展をバランスのとれたものにすることは必要ではないかと思います。
 そこで長官にお尋ねいたしますが、関西新空港が経済閣僚の中でも促進されるというふうなことを新聞で発表されております。その辺もあわせて御答弁をいただきたいと思います。
○参考人(並木信義君) 理由は、いままで申し上げましたように、家計消費支出が少し過大ではないだろうか、それから同じく民間設備投資、在庫投資等が過大ではないかと思われる点であります。
 それから七%成長率を達成するについて何が一体支障になるだろうかという点でございますが、これはもう五十三年度並びに五十四年度は財政依存型成長経済でしかあり得ないことは自明でございますから、どうやって財政が成長率を支えるかという点でございます。この点で最大の問題は、やはり財政当局の歳出並びに歳入の弾力性に対する感覚の問題、当然これはその先に財政再建政策をめぐる増税が可能かどうかという判断が伴うだろうと思うんでございますが、もっぱらこの歳入歳出、増税に関する社会的なもろもろの判断が一番中心になる問題だろうというふうに思います。
○参考人(竹内宏君) 政府と民間との差は、いま並木さんが言った点と全く同じでございます。その考え方の基礎になっているものは、財政がかなり刺激されても民間部門が動きそうもないということで、設備投資も個人消費も住宅投資も在庫投資も、いずれも財政からの刺激によってそこに大いに動意が見られるか、少ししか見られないかというところの判断の差でございます。で、民間の見通しでございますと、政府が現在お考えになっている政策そのままをおやりになったら七%は行かないのではなかろうかということで、政府はさらにこれは政策手段をお持ちになっておりますから、その点は民間はその政策手段の発動について予想することができませんので、わかっている範囲から申し上げると、七%は困難であるというような見方が多数説でございますし、以上のことがまあ差の主たる要因でございます。
 それから第二番目に、では達成するにはどうしたらいいかということでございますけれども、やはり五十三年度、五十四年度は、まだある種の日本経済の大変困難な時期といいますか、危機的な時期にあるというように考えられますので、これに対しましては相当思い切った対策が必要ではなかろうかと、ある意味では目をつぶったような対策が必要ではなかろうかということでございます。で、民間にダイレクトに効くような方法、つまり三次産業まで含めた企業設備投資減税等、従来検討されなかったようなことも動員される必要があるのではなかろうかというように考えております。
○国務大臣(宮澤喜一君) 関西地方の問題は、いわゆる一眼レフ、二眼レフという議論で長いこと論じられてまいりまして、私もそれに参画したこともございます。私は山田委員の言われますこと、基本的に賛成でございます。一説には、中枢管理機能がどうしても東京であるからという議論がございますけれども、今日のような交通、通信、ことにコンピューターのオンラインなどを考えてみますと、昔と違いまして、決定に参画することも可能でございますし、決定をすぐにまた知って実行に移すということも可能であって、中枢管理機能がどうこうということは私は致命的な問題ではないように今日考えます。で、ございますから、やはり文化施設等々もつくっていくということも大事なことでございますし、それに関連して関西新空港のことを仰せになりました。これはまあ歴史的に見て、かつての関西の隆盛を築きました一つの理由は私は神戸港であったと思います。これはいろんな意味で機能が小さくなっております。その以前は堺の港でなかったかと思いますので、そういう観点からいたしますと、やはり関西新空港というのは、今後に向かって大きな機能をそういう意味で果たす、そういう観点からもせんだって取り上げたわけでございます。
○山田勇君 終わります。(拍手)
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○委員長(鍋島直紹君) 次に、柿沢弘治君。
○柿沢弘治君 七%成長論と六十億ドルについては、きょうも各委員から質問がありましたが完全なすれ違い。後は、できるかできないかはもう閻魔大王の御判断に任せる以外にない。内閣が続いているかどうかわかりませんけれども、もし続いている場合には舌を抜かれないように、宮澤大臣、ぜひ御準備をいただきたいというふうに思う。それ以外言いようがありません。
 いま円レートについては二百二十円台が、三月の輸出駆け込み期に定着をしておりますが、これが二百十円台になるのはいつとお見通しでございますか、村山大臣。
○国務大臣(村山達雄君) これはわかりませんし、また申し上げるべき筋合いではないと思います。
○柿沢弘治君 私の聞いているところでは、六月以降、アメリカの西海岸の港湾労務者のストライキがあるということで、日本からのアメリカ向けの輸出は、いま五月に集中をしている、船積みの契約ができ上がりつつあるというふうに聞いております。その意味で、三月の輸出期に続いて、五月に輸出の大幅増があるということが予想され、懸念されるわけですが、通産大臣、その辺の見通しはいかがでございますか。
○国務大臣(河本敏夫君) 五月後半、または六月初めに港湾ストがあるかもわからぬと、こういう情報が伝わっておりまして、そのために、いま御指摘をされましたような傾向は若干出ております。
○柿沢弘治君 ちょうど総理が訪米をされる時期にぶつかると思いますが、多分その時期に三月と同じような状況が出てくるだろう。そこで、二百十円台に円レートが上がっていくということが予想されるわけですが、それに対する政府の対策は全くできていないというふうに考えざるを得ません。これでは日本経済のかじ取りとして十分なことをやっているとは思えないと言わざるを得ないと思います。
 それから、アメリカ経済の、カーター大統領の経済政策について、最近変化が出てきているということも聞いておりますが、宮澤長官、何か御意見はございますか。
○国務大臣(宮澤喜一君) その最後のお尋ねは、結局、先ほども申し上げたことで恐縮ですけれども、アメリカ国民にとってはドルが基軸通貨であるということは何物をも意味しないので、自分たちの通貨であれば十分だということでございますから、問題は結局、最近になってどうもアメリカ国内が、いろんな事情がございますけれどもインフレになってきたと。そこで、通貨というものはこれでいいのかという問題が、国民の問題として、あるいは政治の問題として出てきておると。そのことは私どもが通貨問題を議論するための共通の基盤を少しずつつくり上げるのに一つの要素になるのではないかと、このようには見ております。
○柿沢弘治君 いま日本はドル減らしだ、国際収支の大幅黒字だといって、対策に大わらわになっておりますが、夏以降のアメリカ経済は、いままでの雇用拡大を第一順位とする政策からインフレ抑制に移るであろうという見通しが、最近一週間ぐらい出てきていると思います。その意味で、夏以降の米経済の金融引き締め、それによる経済成長率の鈍化、こうしたものに対していま日本経済はどういう対応をしようとしているのか、その辺について政府の見通しが全くない。五十三年度の経済としては、いまのままでは公共事業も上半期に息切れをする、下半期に輸出が伸び悩む、下半期の停滞と不況は目に見えているように思います。その点に対するもう少し先回りをした対策をとってもらいたい。いつも後手後手に回って、これからやりますということでは進まない状態になっていると思いますが、その点について宮澤長官の御判断はいかがでございますか。
○国務大臣(宮澤喜一君) そこのところは私も同じことを考えておるんでございますけれども、日本にとっては悪くはないなと見ておるわけでありまして、つまり、仮に従来ずっと雇用中心に考えてきたけれども、先ほどもおっしゃいました、私も申し上げましたようなことで、ちょっとインフレの方が問題かなあということになってまいって、経済成長率が理屈を言えば少し落ちてくるということは、わが国との輸出入の関係で考えますと、これはいろいろな表現の仕方がございますけれども、悪くはないなと私は実は思っておるわけでございます。
○柿沢弘治君 黒字減らしの点では悪くはないかもしれませんけれども、経済成長率の点では非常に問題が出てくると思います。
 次に並木参考人、竹内参考人にお伺いをいたしますが、両参考人とも、経済の問題を文明、文化から説き起こす大変な評論家でいらっしゃいます。その意味でお伺いをしたいわけですが、どうも量の議論に偏り過ぎている、それを直すためにひとつ質の議論をしてみたらどうだ。まあデノミと譲位を組み合わせて目先を変えるという議論がありますが、そのデノミと譲位に加えて、国内では首都の移転、そして対外的には思い切った新世紀に向けての海外での記念事業、まあ経済協力と言ってもいいと思いますが、そうした形で日本経済の体質を変えていく必要があると思いますが、両参考人の御意見を伺いたい。
 それと同時に、経済政策、これから一生懸命やっていくというお話がございましたけれども、そんなことでは間に合わない。補正予算でも間に合わない。参議院で審議中の予算を、もし参議院が独自性を発揮するというのであればもう一度修正をするということも考えられると思いますが、その点について両参考人及び大蔵大臣の所見を伺いたいと思います。
○委員長(鍋島直紹君) 柿沢君、時間が来ました。
○参考人(並木信義君) ただいまの御質問、大変多岐にわたるわけでございますが、まず第一点の、内外にわたる文化的大事業というのは、私はまあテーマがございましたら大いに賛成であるというふうに思います。ただ、それよりもっと経済的な問題につきまして、実は現在議論されておりますのはきわめて短期的な点でございまして、問題であるその経済の面におきまして、もう少し長期的な展望、たとえば農業の構造改革であるとか、輸入との関連で見ました流通業の問題、輸入増加策の問題――私はまあ試算をしまして、マキシマムにやりましてもせいぜい年間二十億ドルぐらいにしかならないという感じでございますから、まあそういう点をもう少し地道にお詰めになる必要があるんではないかというのが、むしろその経済の問題としてやることはまだあるという感じでございます。
 それから次に、今後の政策という点でございますが、これは必要がありましたならばやはり何らかの手を打つべきであるというふうに思います。
○参考人(竹内宏君) 第一番目のデノミでございますけれども、現在のところいろいろ打つ手がなかなか見つからないといいますか、技術進歩がとまっておりますので、そういうときになりますと、やはり流れを変えるような手はいろいろある、流れを変え得るような、気分を変え得るような手はいろいろ打つ必要があるというふうに思われるわけでございます。
 それから首都の移転等いろんな問題につきましては、やはり何といいますか、たとえば現在の経済の最大の問題である土地の問題につきましても、果たして日本で絶対的に土地が不足しているかなあというようなことで、交通体系との関係で土地が一時的に不足しているかわからないというような面で、土地全体も広く見直す必要があるというような感じがしておるわけでございます。
 それからさらに、経済協力その他思い切ったことが必要かと思いますけれども、この際も、やはり最大の問題はカントリーリスクの問題がございますけれども、カントリーリスクを、つまり、その国の安全性について、投資する際あるいは援助する際の安全性について、一体どうしたらわかるかということが最大の問題ではなかろうかということでございます。この点につきましてはやや議論をし切れないいろいろ複雑な問題が絡んでいるので、なかなか言いにくい問題ではなかろうかと思います。
○国務大臣(村山達雄君) 激動する世界経済でございますから、これからも毎日毎日、本当にわれわれは注意深く見て臨機応変にやらなけりゃならぬことは全く同じでございます。そのために予備費もございますし、弾力条項もございまして、私は十分対処し得ると思っておるところでございまして、いまのところ予算の修正をするとか、そんなことは考えておりません。
○柿沢弘治君 終わります。(拍手)
○委員長(鍋島直紹君) 以上で経済展望に関する質疑は終了いたしました。
 並木参考人及び竹内参考人には、本日は大変御多忙中にもかかわらず本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。(拍手)
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○委員長(鍋島直紹君) この際、昨日二十六日の新東京国際空港管制室破壊事件に関しまして緊急質問を行います。
 まず、政府側に報告を求めます。福永運輸大臣。
○国務大臣(福永健司君) 過激派グループによる成田空港乱入事件につきましては、いろいろ御心配を煩わし、恐縮に存じます。
 昨三月二十六日午後一時半ごろ、過激派グループの一部十名が新東京空港事務所管制塔に乱入し、一時的に十六階の管制室を占拠して、同室内外の機器類を損壊いたしましたが、午後四時ごろまでに犯人は全員逮捕されました。
 なお、この際、管制塔において業務に従事しておりました管制官五名は、管制塔屋上に避難いたしまして、午後三時三十分までに全員無事に救出されました。
 運輸省におきましては、事件発生後の午後二時過ぎ、とりあえず航空局内に対策本部を設けまして現地の指導に当たりましたが、次いで、私を長とする対策本部を設置いたしまして、施設の破損状況の確認に努めるとともに、当面の事態に対応する措置を講じました。
 さらに続いて、調査団十名を現地に派遣いたしまして、タワー内の機器の破損状況につきまして点検調査を実施いたしました。
 二十七日午前三時過ぎ、先に派遣した調査団の帰着を待って、さらに技術的側面からの検討を加えました。その結果、管制室内の管制卓、マイクロ回線その他の機器に相当な被害のあることが判明いたしましたが、現地におきましては現場検証もなお完了していなかったことや、夜間のために十分な照明も得られなかったこと等から、なお検討の基礎となるべき部分について不明確な点もありましたので、引き続き本日朝、関連メーカー等をも加えた調査団を派遣し、現在調査を続行しているところであります。
 今回の事件が成田空港の開港スケジュールに及ぼす影響につきましては、さらに技術上の精査が必要でありますが、運輸省といたしましては、航空交通の安全の確保を第一に、かつ成田開港予定をも念頭に、早急にその対応策を進め、明朝の関係閣僚会議で結論を得たいと考えております。
○委員長(鍋島直紹君) 次に、加藤国家公安委員長。
○国務大臣(加藤武徳君) 昨日、ただいま運輸大臣が報告をいたしましたような事犯が生じましたことは、警察といたしましてきわめて遺憾に存じておるのであります。
 そこで、事犯の概要と警察の対処いたしました措置並びに今後の方針につきまして、その概要を御報告いたしたいと思います。
 空港反対同盟、極左暴力集団等空港反対派は、三月二十六日午後零時三十四分から三里塚第一公園で極左暴力集団約四千五百名を含む約八千名を集めまして、三・二六三里塚空港開港阻止全国大結集集会を開催いたし、その後、岩山コース、大清水コースの各コースに分かれてデモ行進を行い、岩山コースは午後三時四十四分、また、大清水コースは午後三時四十五分にそれぞれ終了いたしました。
 一方、前記集会デモとは別個に、第四インター日本支部を中心とする極左暴力集団約千五百名は、午前十時三十分ごろから同十一時四十七分ごろまでの間、菱田小学校跡地で結集し、三グループに分かれて同所を出発、午後零時四十二分ごろに桜川駐車場で火炎びん約十本を投てきしたのを手始めに、同時刻ごろから午後一時四十一分ごろまでの約一時間の間に、
 一、同日午後零時五十分ごろ京成新空港駅前のマンホールの傍らに火炎びんを所持した約二十名のグループがあらわれ、職務質問を行った空港署員五人に対し火炎びん数本を投てきした上、同所から一たん管理棟方向に逃走、その後、約十五人が管理棟裏出入り口からガードマンに火炎びんを投げつけて同株内に侵入、うち一人は、十一階に至り管制室に侵入、飛行場灯火制御装置等の諸機器を破壊するとともに、書類を窓から散布、また、四人は、十四階のマイクロ通信室に至り、マイクロ波集計装置等を破壊し、さらに、五人は、エレベーターホール内に侵入するなどいたしました。
 二、また、同日午後一時十五分ごろ、九人グループがトラック二台に分乗し、折から警戒警ら中のパトカー一台に追従接近の上、火炎びんを投てきしながら空港内に侵入、一台は空港署の門柱に衝突して停車、さらに一台はターミナルビル一階南ウィング入り口に停車の後、それぞれの車両に火炎びんを投てきして炎上させました。
 三、さらに、同日午後一時四十五分ごろ、約三百名のグループが各自背中に鉄パイプを背負い、火炎びんを所持し、小型トラック二台を先頭にして八の一ゲート方向から八の二ゲート前に至り、火炎びんを投てきしながら空港内に侵入いたしました。これら十一件に上る不法事案を同時多発的に敢行し、火炎びん、鉄パイプ等により警察官三十一名に軽傷を負わせました。
 警察の措置といたしましては、千葉県警察では、三月二十二日正午から空港警察署に、警察本部長を長とする警備本部を設置して指揮体制を確立するとともに、三月二十六日当日は、県外支援部隊約一万人を含む警察官一万三千人を動員し、うち、集会、デモ警備に約一千名、空港警備に約二千名、重防警備に約二千名、沿線、沿道警備に約一千八百名、横堀要塞警備に約一千名等を配置して所要の警戒警備に当たり、空港管理棟侵入事件等同時多発の不法事案に対しましてはパトカー乗務員等の制服警察官が威嚇のため拳銃十八発を使用したほか、ガス弾、放水等により規制、排除措置を講じてまいりました。なお、六十名を公務執行妨害罪、凶器準備集合罪、建造物侵入罪、火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反、暴力行為等処罰に関スル法律違反で現行犯逮捕したのを初め、計被疑者百十五名、男子が九十六名と女子十九を検挙するなどの措置を講じました。
 今後の方針といたしましては、今回の極左暴力集団の行為は無法きわまりないものであり、断じて許されるべきものではありませんが、警察は今回の事案の問題点を十分に検討し、指導体制を強化する等、早急に必要な措置を講じて、今後の開港に向けてさらに警備の万全を期する方針であります。
○委員長(鍋島直紹君) それでは、これより質疑を行います。戸塚進也君。
○戸塚進也君 ただいま御説明のありました昨日の事件は、まことに遺憾であります。国民の怒りと不安はいまや頂点に達していると思います。私は、成田空港の平穏、安全な開港の実現、並びに不法行為を繰り返して法治国家の秩序を根底から覆そうとする過激派に対する厳重な対策、国際的な信用の失墜のない万全の施策、これを強く政府に要望して、以下簡単に質疑いたしますが、関連で玉置委員もいたしますから、私のお尋ねは一括でお尋ねをして、両大臣、関係政府当局から御答弁願います。
 まず、運輸大臣にお尋ねいたしますが、ただいまの御説明を伺いますと、安全の確保を念頭に開港日程も十分考え、明朝の閣議で最終的に決意するということでありますが、現在の大臣の御心境としては予定どおり開港したい、こういう強い御意思で進んでおられるかどうか、この点についてお尋ねをいたします。
 次に、昨日の空港の被害は概算どの程度であったか、これを伺います。
 運輸大臣の最後は、国際的な信頼を失墜するということが一番重大であります。もちろん、これは航空会社のことも含めます。こういう国際的なゆゆしい問題でありますから、この事態の処理の連絡、あるいはまた開港の日程等について、意思疎通を十分国際的にも行うよう配慮すべきだと思いますが、いかがお考えか、以上運輸大臣に伺います。
 次に、国家公安委員長、政府当局に伺います。
 まず、昨日の警察の警備体制には率直に申して甘さがあったのではないかと私どもは思います。それは、赤ヘルの四百人があの中心部へわあっと来るなんということは、私どもは、一体成田はどうなっているんだろうかと、まあ警察は大変でしょう、一生懸命警備していただいていることは十分わかりますが、これはやはり甘さがあった。これを十分反省していただかなきゃならぬと思います。なお、これを教訓として、どのような警備体制をとろうとしておるか、さらに、警備に当たって法的に何か問題があるのか、これについてお聞かせください。
 次に、昨日の事件に破防法の適用を検討していると聞きましたが、この見通しはどうか、お伺いいたします。
 次に、こういうゆゆしい事態でありますから、過激派対策の緊急立法、こういうこともあえて必要ではないか。私はこれは厳重に取り締まるべきだと思うが、これについていかがお考えか。
 次に、全国から千葉県に派遣された警察官のうち、機動隊を除く一般の警察官に対して、二週間分だけでも概算五億円の経費がかかる。これを全部千葉県に負担させようというので、千葉県知事から抗議が来ているはずです。こんな国際的な国家的な大きな問題ですから、この警備費については全額政府で負担すべきではないかと思うが、いかがお考えになるか。
 最後に、羽田空港の警備体制、あるいはまた重要なその他の機関、構造物等についての警備も、これは彼らは成田だけじゃない、羽田もやろう、こういう意思もあるかもしれませんから、厳重にして安全を期するべきだ。その点についてお考えを両大臣から伺います。
○国務大臣(福永健司君) まず、安全確保につきましては、先刻も申し上げましたように、私どもはこれを第一義的に考えております。皆さんの御支援等も得つつ、おおむね今日まで何とかなるところへ来たところへこういう事件が起こりました。はなはだ残念に存じますが、こういうことが起こったからというので不十分な体制で開港をするということについては、これは厳に戒めなければならぬことでございます。したがって、われわれは、航空交通の安全ということについては最も大きな重点を置きつつ対処しなければならないと思います。その反面、すでに予定をして今日まで来ておりまして、もしいち安全を確保しつついろいろの点を考慮しながら開港ができるということならばなるべく開港したいというのが現時点においても私の願いであります。だがしかし、そういう願いのゆえに間違いを生じては断じてならない。そういう観点でただいま諸般の技術面等からも念入りに検討をいたしまして対処することを考えておる。したがって、明朝結論を出すつもりでありますが、見方によってはぐずぐずしているというようにおしかりがあるかもしれませんけれども、こういう点を十分考えて現在のようなことになっていることについて御理解をいただきたいと思います。
 二番目の被害等についての概要は、これを金銭的にどうというのはまだちょっと無理ではございますが、しかし、重要機材等についておおむねどういうことであるかということにつきましては、私に続きまして政府委員からお答えさせることにいたします。
 第三点の国際信用上示唆のある御発言等も加えて御質問がございました。この点につきましては、私どももこれは非常に大事なことであり、この事件があるなしにかかわらず考えていたことでもございます。と申しますことは、外国からは、日本はなかなかいろいろなことのある国だから大丈夫かというようなことを事実言ってきているのがすでに前からもあったようなことでございます。しかし、こういうことでこんなことが起ころうなどとはそれは外国の人も予想してそういうことを言ったわけではございませんが、いずれにしても、こういうことになりました現時点において、開港はしたがそんな物騒なところじゃ、飛行機もうっかりやれないじゃないかというような危惧を外国に持たせるというようなことであってはこれはとんでもないことでございます。そういう意味からも、心配はないという体制を確立して、安心をしてもらえるように先ほどから御注意のあったこと等も念頭に置いて今後対処していきたいと考える次第でございます。
○政府委員(高橋寿夫君) 被害状況の概要を申し上げます。
 管制塔の十六階にある管制室の中の状況でございますが、管制卓と申しましてテーブルでございます、これが三つございまして、そこで管制官が仕事をするわけでございますが、このスイッチ、送受話器等パネル面上の施設一式全部破損されております。それから二番目に、レーダー関係、これは空港の表面を探知するレーダーが全破損。それから空港監視レーダー、これはフライトディスプレーと言いまして、この光る部分、これが破損されております。三番目に、飛行場の灯火を制御するテーブル、これがスイッチ、表示灯など一式全部破損されております。それから風向風速計等は全部破損。管制塔窓ガラス十五枚中三枚破損であります。
 それから次に十四階のマイクロ回線用機器でございますが、成田から筑波のマイクロ中継基地向けのマイクロ波中継装置、これが相当被害がございますが、回路面ではどうなっておりますかは目下調査中でございます。パラボラの空中線、これが一部破損されております。次に山田というところに向かってのマイクロ波中継装置につきましても一部破損されております。
 そのほかの場内の心臓部であります管制用施設等につきましては異常はございません。
○国務大臣(加藤武徳君) 先ほど説明をいたしましたように、二十六日の警備体制は、反対阻止闘争側は三里塚第一公園に大集会を持ちますことと、そしてB滑走路南端横堀鉄塔地域へ向こうが勢力を結集いたしました陽動作戦を展開することと、菱田小学校跡地に千五百名の過激派グループが結集いたすと、かようなことのほかに、十一件にわたるいわゆる陽動作戦を展開いたしておりまして、そこで警備体制が甘かったではないかと、かような御指摘でございますが、端的に申しますならば、十分に手が回らなかった点があろうかと思うのでありますが、しかし、三派に分かれて管制塔をねらったのでありますけれども、第九ゲートの場合も制圧することができ、また第八ゲート二の場合も制圧することができたのでありますが、しかし、マンホールの所在等を十分に確認し得なかった点、いま一つは管制塔を直接守る体制をもっと徹底してやっておりましたらと、かような反省がありますようなことでございまして、今後はさようなことについて万全の体制をとっていかなければならぬと、かように考えております。
 それから法的な点はどうかと、かような点でありますけれども、御承知の現在の警察は、いわゆる自治体警察でございまして、そして全国から機動隊を結集しはいたしましたものの、さほど昨日よりも時間のない時点で結集いたしまして、したがって現場になれておらない警察官もおりますし、また指揮命令の点で必ずしも十分徹底しなかったと、かような点等がございまして、かようなことは今後反省材料として十分に今回のことを生かしていかなければならぬと、かように考えております。
 それから破防法の関係や緊急立法につきましては、法務省からも答弁があるかと思いますけれども、政府委員から答弁をいたしたいと、かように考えておるのであります。
 それから警備に要しました経費につきましては、国費がたてまえでございますから、そう多くの負担を地元にかけるようなことにはならぬと考えておりますし、なお、これに対しましては補助金等の措置がございます。
 最後の御指摘の羽田の警備その他についてでございますけれども、かような事犯に省みまして、十分に警戒体制をとらなければならぬと、このことを痛感いたしておるようなことであります。
○政府委員(三井脩君) 破防法の適用については考えておりません。今後緊急立法の必要があるかどうか、これは検討対象と考えております。
○委員長(鍋島直紹君) 関連質疑を許します。玉置君。
○玉置和郎君 時間が四分しかありませんから、提案になるかもわかりませんが、五つにしぼって聞きます。
 「よど号」事件、浅間山荘事件、クアラルンプール事件、今度の成田事件と、こういうことを考えていきますと、今度の問題はやはり一連の関連性があるのかないのか、その辺の判断。
 二番目には、一万四千人を全国各地から集めておりまするが、いつまでもこの一万四千人を集めてやれる体制ではありません。それだけに、国際空港の信用、日本国の信用ということになった場合に、この国際空港の警察署というものをどのようにしていくのか、そういうお考え方があるのかないのか、そういうことを聞きたい。
 それから管制機能ですが、大臣、けさ私は聞いたところですが、アメリカでは地上に三つあるというのです、それから上空に三つあるというのです。いついかなるときでも一つ二つやられても十分管制機能が果たせるような措置をしておるということを前防衛庁長官の三原さんから聞いた。こういうふうな対策は今後とられるつもりかどうか。
 それから四番目は、私はやっぱりどう見ても、きのうのテレビを見ておりますと、地元農民というか、地元の本当の農家の方々が奥さんも初め参加しておられる。ゲリラというものはいわゆる住民の中に隠れた場合にはなかなか退治できないというのは、古今東西の教訓です。それだけに、こうした地元農民の対策というものを、それぞれ国務大臣でございますので、しっかり閣議で話をされて、地元農民の対策を確立してほしい。これは私の要望でもあります。
 それから最後にお二人の大臣にお聞きしますが、失礼ですが、きのうどこにおったですか。特に自治大臣にお聞きしますが、警備で一万四千人が出ておるときに、あなたはどこにおられたですか。それはなぜ言うかといったら、警備の手薄だとか何だとかこれから野党の諸君が言うでしょう。言うよりも一番大事なことは、政治家の姿勢の問題である。政治家がいままで立法において、行政府がいわゆる立法において手抜きをした、そうして一部の反対者に迎合してきた、これが今日のいまわしい事犯を起こしておるのです。政治家の姿勢は政策に優先するということを私はここで強くお訴えをいたします。関連質問というものになるかどうかわかりませんが、要望を申し上げておきます。
○国務大臣(福永健司君) まず政治姿勢の点から申し上げたいと思います。
 私は、土曜日にはいろいろございまして、国会の終わった後、ドル対策あるいは不況対策等で相当時間を費やしまして、遅く自宅に帰りました。朝のうち、いろいろのことがありましたので連絡を密にいたしておりました。午後になりまして、どうもああした動きがあり出しましたので、私は、日曜でございますが、急遽運輸省に出かけてまいりまして、先ほど申し上げたように、事態の進行とともに対策本部を初め航空局につくりました後、私を長とするもので対処し、自来ゆうべは徹宵をいたしました。もっとも一時間ぐらいは寝たかもしれません。そういうことで、いままでも私いろいろな事態に対処してきておりますだけに、こういう際にどうあるべきかということには私は私なりの信念を貫いたつもりであります。どうぞひとつ、御不満はございますかもしれませんが、御指摘の政治姿勢等については万遺憾なきを期してまいっているということを私はあえて申し上げておきたいと思います。
 それから私の方で申し上げます点といたしましては、農民の皆さんに対してということは、御指摘のとおり当然そうあるべきものでございます。いままでもその考え方で臨んでおりましたが、さらに今後もその点に意を用いてまいりたい、そういうように存じます。
 それから国際空港の信用云々の点につきましては、これはいろいろに関係するわけでございますけれども、大変大事なことでございますから、私どもといたしましては、先ほども申し上げましたような考え方で、わが国の信用に直ちにつながるものでございます、重視して臨みたいと存じます。
○玉置和郎君 管制機能の問題はどうですか。
○国務大臣(福永健司君) 管制機能の問題につきましては、専門的なことをちょっと航空局から申し上げます。
○委員長(鍋島直紹君) 時間が来ておりますので簡潔に願います。
○政府委員(高橋寿夫君) 私どものしております管制の施設は、アメリカの連邦航空安全庁――FAAというところのアドバイスで全部やっておりますのですが、いま先生のお尋ねのような管制塔のようなものを二重、三重ということはアメリカにもないと思うのであります。ただ、レーダーとかマイクロ回線等はできるだけダブルにしておりまして、したがって、きのうの被害によりましてもマイクロ回線等は何とかつないでいま運用しているという状況でございます。
○国務大臣(加藤武徳君) まず、最後にお尋ねの点でありますけれども、私はきのう終始自宅に待機をいたしておりまして、警察庁内部に設けられておりまする対策本部の連絡を逐次受けながらこれを総理や官房長官に報告をいたし、また適切な指示をいたしておったと、かようなことでございます。
 それから浅間山荘事件等との関連についての御質問でございますけれども、極左暴力集団でありますことは全く共通しておるのでございますが、しかし、逮捕いたしました者を徹底して調べましてさらに具体的な関連性を深めていかなければならぬと、かように考えております。
 それから成田に参りました各都道府県では第二機動隊を編成いたしまして治安の万全を期してはおりますものの、一万四千名がそう長期にわたりまして成田におりますことはきわめて困難な情勢だと、かように判断をいたしております。
○戸塚進也君 終わります。(拍手)
    ―――――――――――――
○委員長(鍋島直紹君) 次に、赤桐操君。
○赤桐操君 成田空港問題について以下お尋ねをいたしたいと思いますが、その前にわが党の基本的な立場を明らかにいたしておきたいと思います。
 まず第一に、社会党は国際空港無用論ではございません。さらにまた、昨日のような暴力を認めるものでもありません。ただし、今回の成田空港の開港につきましては、先般来本委員会においても指摘をしてまいりましたとおり、国際空港としては余りにも欠陥が多過ぎる。さらにまた、地元関係者においては抜きがたい不信感がつくり上げられております。こういう情勢の中で開港するということについては、少なくともこれは避けるべきじゃないかということを私はこの委員会でしばしば指摘してまいりました。しかし、政府は所定の方針に基づきましてこの空港を開港しようとしてきている。私どもは、これらの諸問題を完全に解決する、そうした措置がなされなくして開港はすべきでないと、こういうように主張するものでございます。
 以上三点について私の基本的な立場、わが党の立場を申し上げまして、以下御質問を申し上げたいと思います。
 昨日の警察の動員数は幾らでございましたか。成田空港における警備は、反対派に対する感情警備であると言っても過言ではないと思うのであります。そこには合理性がないと私は考える。具体的に申し上げるというと、昨日の段階で、鉄塔警備が重点であったのか、管理棟の警備が大切であったのか、空港の施設そのものが大切であったのか。千葉県公安委員会が空港施設の警備のために動員を要請したものであって、私は、昨日の行動とはいささか違うのではないかと、こういうように思います。その主目的を忘れているのではないか、ないしは逸脱しているのではないか、こういうように思いますが、公安委員長はどのようにお考えになりますか。
○政府委員(三井脩君) 細かい話でございますので私がまずお答えいたしますが、昨日の動員された警察官の数は一万三千人でございます。
 それからこの警察官の任務あるいは活動目的と申しますのは、言うまでもないことながら、空港警備に関連をいたしまして、違法行為を看過せずこれを取り締まるということでありまして、具体的に申せば、先ほど公安委員長から申しましたが、空港の安全確保、デモでの安全確保、それから横堀の要塞その他ゲリラ行動、及び東関道、鉄道等の警戒警備、並びにその他の重要防護対象の警戒というように、かなり多岐にわたっております。
○国務大臣(加藤武徳君) 動員数は先ほど警備局長が申したとおりでございまして、もとより警察の警備は空港を中心にいたしまして、事故がないことを期しての警戒体制でございます。
○赤桐操君 いま警備陣容を伺いまするというと、いわゆる過激派学生の倍を超える人員ではないかと思います。こうしたいまだかってない強化された警備の体制をもっていたしましても、あのような事件が発生するに至っております。なぜ治安があのように保つことができないのであるか。いかに警備を強化いたしましても空港の治安がこれによって保障され得ないということになっているのではないかと思いますが、この点いかがですか。
 私はここで一つ根本的な問題が忘れられているのではないかと思います。それは、地元農民に真実納得が得られてないということだと思うのです。この根本的なものを逸脱して、あるいはまたこれを避けて、ないしは忘れ去られて、いろいろ枝葉末節の問題をいかにやってみても、これは真の安全を確立することにはならないだろうと、こう思うのですが、この点どのようにお考えになりますか。
○国務大臣(福永健司君) 冒頭にお話がございました社会党さんのお考えの点については、前々からも拝聴いたしておりますし、私どもも念頭に置きつついままでも対処してきたところでございますが、いずれにしてもこういう事態になったことについては私は本当に遺憾であると存ずるわけでございます。
 地元の皆さんの納得を得るということ、これはもう御説のごとく当然必要でありまして、そういうことを念頭に置きつつ過去十数年にわたっていろいろ対処してきたのではございますが、現実に御指摘のような事態が起こっているということについては深く私どもも考えなければならないところでございます。私も、この仕事に携わったのはまだ必ずしも長くはありませんが、空港を選定する当時からの党の責任者の一人といたしまして、十数年を経てこういうことのあるということについては本当に残念に思うわけでございます。ただ、関係者が地元の皆さんに対して納得を得るということを等閑視したということではこれは決してございません。そういうことを念頭に置きつつ、まあどう表現するのがいいか、手際が余りよくなかったかというようなことについては考えなければならぬこともあるかもしれませんが、しかし、これはそういうことばかりぼろくそに言うだけでもなかなか解決がつかない。十数年もたっているということ等の陰にはやはり大変な苦労があるわけでございまして、いままでのいろいろやってきた諸君に対して私は決して不服を言う意味でなくて、みんなでそういうことを念じつつやってきたが、なおかつこういうことであるということについては本当に残念に存ずる次第でございまして、今後一層そういうことに意を用いてまいらなければならない、このことを申し上げたいと思います。
○国務大臣(加藤武徳君) 地元の皆さん方の十分な了解を得なければならぬ点は、私ども基本的には全く同様に考えておるのでございますけれども、しかし、十二年の間を回顧いたしまして、最初の段階では農民の皆さん方が強く反対しておられたことも事実でございますが、しかし、ここ数年の状況は、むしろ地元の方々ではございませんで、いわゆる過激派と言われる極左暴力集団がその犯行の中心になっておるのでございますから、ですから当時の状況とは現在はずいぶん質的に変化をいたしておる、かように警察は判断いたしておるところであります。
○赤桐操君 国家公安委員長のただいまの御答弁、その中に見られまする御認識では、この事態の解決は私はつかないと思う。また、運輸大臣の御答弁もございましたけれども、私は率直に申し上げますが、千葉県知事あるいは公団、運輸省が今日まで農民に対してその生活保障をめぐりどのような約束をしてこられましたか。多くの約束をしてきておるけれども、ほとんどこれは空手形ではありませんか。何が実行されておりますか。農民はその土地は生活の手段であります。しかし、生活の保障に値するそういう補償の方式がとられましたか。あるいはまた、転業した人々はどのような生活をしておりますか。私はこの中にすべての不信感が醸成されてきている最大の原因があったと思うし、今日抜きがたいものはそれだと私は考える。本格的な根本に触れるところの誠意あふれる対策がとられるべきではないかと私は思うけれども、この点についてどうか、これからおとりになる決意があるのかどうなのか、この点をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(福永健司君) いま赤桐さんお話しのようなことを初め、他にも約束はこうだがそのとおりいってないじゃないかということでいろいろお話を伺っております。私は、後を継いだ者といたしまして、前に責任者の約束したことは、これは守るべきであるというように当然考えております。その点についてまだ御理解を願えない、したがっていま御指摘のような不信感を醸成しているということについては、大変残念に思います。今後さらに、いままでも方法は講ぜられてきておりますが、私は徹頭徹尾誠意を貫いてこの種の問題の解決に精進いたしたいと、切にそう考える次第でございます。
○赤桐操君 最後に、私は日本社会党が三月二十七日に政府に対して申し入れいたしました申し入れの趣旨、すなわち、きわめて最悪の事態を予想いたし警告を今日までしてきたわけでありますが、したがってこういう不安な情勢の中での三月三十日の開港式典は取りやめるべきである。あるいはまた、四月二日からの運航開始については延期すべきであるということを主張してまいったところでありますが、これについてはどのようにお考えになりますか。
○国務大臣(福永健司君) 三月二十七日には八人の先生方がおいでをくだすって、私がお目にかかっていろいろお話を伺いました。私は、その中で触れておられます諸点について、私なりに重々考えさせていただき、そしゃくをさせていただかなければならぬと考え、それはそれに対していまも対策を講じつつあることでございます。そういうようなことから、この種の事態も起こっているというようなことであるから、三十日の開港式及び四月二日以後の手順を延ばすべきではないかというこういうお話でございますが、この点につきましては、先ほどからも申し上げておりますようにいろいろな点を考えまして明朝決めたいと思います。一刻も早い方がいいのではございますが、材料が整い、これに対する検討が加えられ、それについての決意をもって対処するということでございますが、ただいまのところ、それでは延ばしますとはまだちょっと申しかねるわけでございますが、だからといって何もかも予定どおりやるので変更はありませんともこれも私としては申し上げにくいところでございまして、いま苦悶中ではございますが、苦悶をしてやり損うというようなことが断じてないように、なるほどということになるようにいたしたいと考えておる次第でございます。(「二十四日だ、二十七日じゃないよ」と呼ぶ者あり)
○赤桐操君 開港式典並びに運行開始については、いまの御答弁では検討中であるということのようでございますが、こと国際空港であります。国内外の信を問われる問題であります。少なくとももうこの事態をめぐりまして二日以降の運航開始は不可能であるということはわかり切っていることであるし、三月三十日の開港式典にいたしましても、祝福される状態ではないでありましょう。これだけ怨嗟の中で行われようとしているのであります。このことについて、所管大臣としてのお考えは、少なくともこれを遂行するということは不可能であるとお考えだろうと思いますが、その点、重ねて伺いたいと思います。
○委員長(鍋島直紹君) 赤桐君、時間が来ました。
○国務大臣(福永健司君) 不可能であるという見方もございますが、何とか可能にさせたいという意味で私どもはいま苦悶もいたしておるわけでございます。
 先ほどの国際信用の点についてでございますが、これはそういう意味からのタイムリミットぎりぎりに明朝と、こういうことを考えております。確かに、一刻も早いほど、決定することは急がれる方がいいということには間違いございませんが、そういうことも念頭に置きつつその種のいま申し上げた処置をとりたいと考えております。
 先ほど二十七日と二十四日を、私、二十四日のことが強く頭にありますのでそれで申し上げましたが、あれは私が間違って発言をいたしました。御了承いただきたいと思います。
○赤桐操君 終わります。(拍手)
    ―――――――――――――
○委員長(鍋島直紹君) 次に、多田省吾君。
○多田省吾君 昨日の成田空港管制塔の破壊は大変遺憾で、過激派の暴挙は非難さるべきでございます。しかし、政府の政治責任というものもまことに重大であると思います。
 私は、昭和四十年の十二月、十三年前に、この予算委員会で、ときの富里空港問題が発生しましたときに、地元の理解を得よと強く反対しました。また、四十一年に至りましても、たびたび対案を出しながら新国際空港の必要性は認めながらも、地元の了解を得ないままに決定することのないように強く迫りました。しかし、政府は見切り発車をいたしましてこのような事態に陥ってしまいました。私は政府の責任は非常に重大であると思います。
 私は、運輸大臣にまず、いまも質問がありましたけれども、空港開港の見通しですね、私は絶対に安全を考えない見切り発車はすべきではない、このように思います。いまも、運輸大臣は、安全第一ということを言いながら、早期開港を念頭に置きとか、可能にさせたいとか、まだまだ見切り発車を頭に考えているようでございます。私は、一つには三十日セレモニーだけやってそうして運航開始をおくらせようとか、こういう考えもいけないと思いますし、また、いわゆる安全性が完全完璧でないのにもかかわらず拙速主義で早く開港するということは大変な問題になると思いますので、この点は絶対にしない、こういうお約束を願いたい、まずその点を質問します。
○国務大臣(福永健司君) 先刻私が申し上げましたように、安全確保ということが第一である、そして、ここまで来たことでもあるし、三十日及びそれ以後の手順についても何とかできればしたいという意味のことを申し上げました。これは正直な心境でございますが、ただし、これは決して、先ほども申し上げましたように、そういう希望があるがゆえに安全を無視してとか、安全を二の次にしてという意味では断じてございません。第一義としということはその言葉どおりに考えてまいっておる次第でございます。もとより完璧を期すべきものであるという考えに間違いはございません。見切り発車的な措置はするつもりはございません。ただ、私は、責任者といたしまして、何とかまあ三十日にないしそれ以後のことにということに対してもなお望みを持っているということは、これまた私なりの責任感から来るものでございまして、どうも危なそうだからさっさとこれはもう延ばすというような気持ちにはどうしてもなれないのです。しかし、先ほどからお話しのように、物の順序はよく考えております。安全第一ということを念頭に置いて今後対処いたします。ただいまのお言葉は重々私は伺って対処いたしたいと考えております。
○多田省吾君 地元農民の方々の納得の問題でございますが、これからどういう処置をとりますか。十二年前、富里はいま言いましたけれども、三里塚は御料牧場があるとか国有地が多いという理由で地元の了解を得ないままにすぐ政府は決定したのです。そういう暴挙がいま後を引いております。いまも、反対の方々を初め三百二十五戸のうち三百戸の方々が土地の売却に応じ、また、地元市町村の人たちも燃料輸送の危険性あるいは交通騒音の被害に脅えながらも協力をしている人もたくさんある。そういう方々に私は政府は謝罪をし、やっぱりなお了解を求める努力が必要だ、政治責任の上からも大事だと思いますが、どうですか。
○国務大臣(福永健司君) 過去いろいろのことにつきましては、一々私ここでそれがいいとか悪いとかということを申し上げる限りではございません。いまもいろいろお話を伺いました。この種の問題につきましては、私は誠意を尽くして対処したいと、誠心誠意これの解決に当たっていかなければならぬと思います。具体的にどの場所についてどうというようなことについては、これはまあいろいろあるわけでございますから、ただいまもお話のあったようなこと等を念頭に置きつつ対処してまいりたいと考えております。
○多田省吾君 警備の問題でお尋ねいたしますが、なぜ一番大事な心臓部とも言うべき管制塔の警備が手薄だったのか、また一万四千人の警備体制はいつまでやるのか、また恒久的な警備体制が今後ずっと必要だと思いますが、その点をどう考えているか。
○政府委員(三井脩君) 多数の警察官を動員して警備に当たったわけでございますが、結果として一番大事な管制塔においてあのような事態を惹起したということは警備において十分でなかったということでございまして、その考え方は空港の中に相手を入れない、不法侵入者をそこで完全に捕捉し措置をすると、こういうことでありまして、大部分はそうしたわけでありますけれども、最後の十名についてその点が抜かったということでありまして、その点が結果から見まして十分反省すべき点であると考えておるわけでございます。今後の問題につきましては、御指摘のような点があるわけでございますので、ただいまの情勢等を十分に検討いたしまして、対策、やり方を目下研究中でございます。
○多田省吾君 私は最後に運輸当局にお尋ねいたしますが、羽田から完全に成田に移転した場合にきのうのような事件が起これはどうするのかという問題です。これは大変な事態です。ですから、私は、国際線はすべて成田にするのじゃなくて、近距離国際線は羽田に置いておくべきであるとか、あるいは東京都が主張するような羽田空港の沖合に移転というような問題もございます。それをどうするのか。
 それから失われた国際信用をどう回復するか。航空局長あたりには外国の航空会社あたりから、もう成田には行かないというような話が来ているのじゃないかと思いますが、そういう反響をどう感じているか、お尋ねいたします。
○国務大臣(福永健司君) ある方面の、多田さんはいま近距離という御表現でございましたが、どこかの部分は羽田に置いてということは、これはまた別途考えなきゃならない問題がたくさんございまして、私は、ある一部近距離のものだけは残すということは、これは出てきそうな意見ではございますが、いまそうしようとは考えておりませんが、しかし、おっしゃる意味はよく考えておかなければなりません。ああいうことがあった際に羽田を使うについてはどうすべきかということについて、いままでも対処方策は講じてありますが、なお一層考えたいと思う次第でございます。
 沖合い移転等につきましては、私はそういう考え方で進めるべきであると思います。いま、東京都及び現地の区の方といろいろ話をしております。それぞれにお考え等もございまして、これはいろいろな点をよく考えて地元の納得を得つつ進めたいと思います。地元のためにも、いろいろまあ公園とかなんとかということと関連をいたしまして、持っていきようによっては地元のためにも大変いいことにもなろうかと思いますので、そういうことにいたしたいと思います。
 失われた国際信用をという点はまことにそのとおりでございますが、信用を回復するにつきましては、日本といたしましてはすべての点から誠意ある態度をもって対処して、よく理解されるように持っていかなければならぬと思いますが、なかんずく運輸関係については特にそういうことを念頭に置いて今後進めたいと考えておる次第でございます。
○政府委員(高橋寿夫君) 今日までのところ、外国の政府あるいは外国の航空会社からそのような抗議は来ておりません。
○多田省吾君 終わります。(拍手)
    ―――――――――――――
○委員長(鍋島直紹君) 次に、内藤功君。
○内藤功君 まず現状について若干質問したいと思いますが、警察庁にお伺いしたい。
 現在この空港周辺にはどのくらいの過激派暴力集団のセクト、それから常駐者がどのくらいおり、また常駐者の宿舎がどのくらいあるのか、これが一点です。
 それから二点目は、国または公団あるいは県名義の土地の上に耕作をしている、農作物や米、野菜などをつくっている、こういう面積がどのくらいあるかという問題。
 それから三番目には、いままで警備対策に要した経費は、これは大きな枠でいいですが、国、地方自治体、それぞれどのくらいの金額になっておるのか。
 それから四点目は、こういう暴力集団に対する成田空港にかかわる不法事犯についての被検挙者数、検挙された人の数、それからそのうち送検された人の数、これがどのくらいあるのか。
 以上の四点をまず現状把握の上で簡潔でいいですから明らかにしてください。
○政府委員(三井脩君) セクト及び宿舎等でございますが、いわゆる団結小屋は三十三ございます。したがって、セクトも細かく分ければ三十三ということでございます。常駐者の数は時によって相違がございますが、この闘争の始まる前あたりの安定した数は百六十でございます。
 それから不法耕作とおっしゃったわけでありますが、現在こういう季節でありますし、そういう不法耕作はございません。なお、不法耕作が今後行われないための措置は大部分行い得ました。
 この闘争が始まって以来の検挙者の数は、大ざっぱに言いまして二千六百、全部送検をいたしております。起訴の数はいまちょっと覚えておりません。
○内藤功君 経費はどうですか。
○政府委員(山田英雄君) 成田空港の反対闘争に関します警備の費用につきましては、ただいま進行中でございまして過去の分につきましての積算は済んでおりませんので、金額については御答弁できないわけでございますが、警備に要する費用として、一人の警察官を動員いたしました場合、日帰りの場合は約千円、宿泊を伴います場合には約三千五百円の予算が必要になるわけでございます。
○内藤功君 その正確な数字と、それからいままでの要した金額について、後で結構ですから、私の方に資料を出していただくように要求いたします。よろしいですね。
○委員長(鍋島直紹君) いいですか。
○内藤功君 そこで、運輸大臣にお伺いします。
 世界の国際空港が数ある中で、この成田空港予定地のごとく、空港予定地の周りに過激派暴力集団のいま言われた三十三カ所というような常駐者を含めた本拠があると。耕作はしていないと言ったけれども、これは夏場はやっておるんですね。野菜をつくって産直と称して売っていることもある。それはともかくとして、私ここに地図を持ってきた。ちょっとこれを見てください。これは空港の周りにそういう暴力集団の拠点のあるところを赤丸印で示してあるのですが、ぐるっとこう回っておるんです。世界の空港の中で、こういうようないわばハイジャックの予備軍の基地になるような場所をたくさん持っている空港、ぐるっと囲まれている空港がありますか。
○国務大臣(福永健司君) 私は、詳細に調べたわけではございませんが、そういう空港はよそにはないだろうと思います。日本はひどい国だと私は考えます。
○内藤功君 私は、こういう問題が解決されないまま、そのほか、まあ運輸委員会でやりますけれども、隣の自衛隊の飛行機の戦闘機の空域ともうすれすれでしょう。そういう危険があるというような問題を完全に解決されないまま見切り発車をしようとしたということがやっぱり大きな原因の一つにあると思うんですよ。私は、ですから、あした閣議がある、関係閣僚会議があるそうでありますが、安全の問題を言う大臣としてはあなたしかないんです、運輸大臣しか。あなたがぐずぐずしていたらだめなんです。どうですか。これは航空局当局でもいいですが、三月三十日なり四月二日までの間に機器類のここをこう直せば技術的に三月三十日に開港ができる、四月二日に運航ができるということが説明できますか。これはもう常識の問題でできないと思うのですね。だとしたら、これはもうはっきりと見切り発車はしないと。NOTAMを変更すればいいんですからね、技術的には。私はそうだと思う。どうでしょう。
○国務大臣(福永健司君) 安全の完璧を期して対処するということは先ほどからもいろいろ申し上げているわけでございますが、見切り発車という言葉が盛んに出てくるのでございますが、この言葉も、余りそういうことになりますと何もかもおくれてしまうということにもなりますので、なかなかむずかしいと思います。しかし、おっしゃる意味はわれわれは大いに意を体していかなければならぬと考えるわけでございまして、なお、機器類等につきましてお話がございました。私も、そういう点について、どういうものは何日までにどうなるかというようなことをゆうべも一晩中関係の諸君にやらしておったのでございますが、いかんせん相手方の方でも全部が全部同意することができませんでした、たとえばメーカー等につきまして、日曜日の晩でございますので。そういうことでございますが、いま逐次そういうのはどんどん進行していると思いますので、おおむねそういう御説明もできるようにだんだんなっていくと思いますが、正直申しましていまのところではまだ――そして、私ともから申しますと、日本は非常にそういうものが進歩いたしまして、いま全部日本製のもので間に合うようでございますが、いかんせんすぐにというわけにもいかぬものも中にはあるかもしれません。でございますが、そこいらを正確に把握した後にいまのことを決めたいというのでございまして、大体そうだからここでもう延ばすと決めればいいじゃないかというお話でございますが、ちょっと私はそこまでまいるわけにはいきませんが、閣議等でも私から当然主張すべきことについては御指摘もございましたので責任を持ってそういうふうにいたしたいと思います。
○内藤功君 そこで、最後の質問ですが、まとめてやってしまいますが、警察に対してはこれを聞きたいんです。あのコントロールタワーというのは、入り口に五人ぐらいしかガードマンがいない。そこから真っ正面にエレベーターが二つあって、十二階行きのと七階行きのがあって、こういうふうにして警備の観点からわざわざ分けておったはずだと思う。十二階まで行くと、らせん状の階段で十六階まで行くんですね。こういうところにいるコントロールタワーの職員の方、これは航空局の職員でありますが、この方々の安全のために、万一のときはここをこうふさいで、あるいはこう連絡して身を守るんだという指導はしていないのかという点が一つ。これはもう本当に職員の生命の問題です。
 それから次にもう一点お聞きしたいのは、二度と再び繰り返さない保障として、大軍を、あえて大軍と言うが、警察の一万何千というのを出してみたって、肝心かなめのところが防護できていない。これは相手がとにかく国際的なゲリラの戦術を勉強してきていて、しかもその指導者は、近代兵器を使う、近代手段を使うと言っている人なんですから、こういう人に対して頭を使うということがなかったのじゃないか。つまり、現地の力は使うけれども頭は使わない。つまり、幕僚ですね、指揮官に対する幕僚の点でこういう知恵が足りなかったのじゃないかと私は率直に言って思うんですよ。この二点は今後の安全について大事なんで、時間が来ちゃって済みませんが、私の質問を終わりますが、お答えをお願いします。
○政府委員(三井脩君) 管制官は無事屋上へ避難することができたということでありますので、それも避難の一つの方法であろうかと思います。それからその他の点についても今後とも研究してまいりたいと思います。
 それから大事なところが抜けておったではないかという点については、先ほど来申し上げておりますようなことで、今後とも十分検討をして、そういうことのないように努めてまいりたいと思っておる次第でございます。
○内藤功君 終わります。(拍手)
    ―――――――――――――
○委員長(鍋島直紹君) 次に、栗林卓司君。
○栗林卓司君 公安委員長にお尋ねします。
 今回の事件を反対派あるいは過激派グループがどう見ているかということなんですけれども、二十三日に空港反対同盟の戸村委員長がベイルートから帰ってまいりました。で、こういう話をしたと。これは新聞で知る限りでありますからそういう前提のあれですが、PLOなどから励ましを受けた、日本赤軍には会えなかったけれども、聞くところによるとわれわれの行動を日本赤軍は高く評価をしているようだ、いまやこれは単なる反対運動ではなくて内戦なんだ、われわれは成田空港を廃港に追い込むまでがんばると、こう新聞報道されておりますけれども、こういう受け取り方、見方に今日なっているのかどうか、御判断を伺います。
○国務大臣(加藤武徳君) 私は、戸村一作委員長が外国から帰りましての談話等も新聞で見たのでございますけれども、先ほども申しましたように、今回の成田の闘争はむしろ地元の皆さん方ではございませんで、いわゆる過激派と言われます革命を志向している連中の行動だと、かように断定をいたしておるのでございますけれども、反体制そして革命と、これが彼らのねらいであると思っておるのでありますから、根は非常に深いと、かように考えているところであります。
○栗林卓司君 運輸大臣にお尋ねしますけれども、いまのお話のように、反体制革命、わかりやすく言うと内戦を辞さないという構えで迫っているわけです。これに対して成田空港がどうかというと、これまで再々の御議論のように大変脆弱な空港でありまして、まず燃料輸送問題、交通アクセスの問題、もちろん横風の問題、濃霧の問題、どれをとってみてもまことにもって脆弱きわまりない。しかも、空港そのものの持っている広さ、それに対して内戦も辞さないと言っている人たちの攻撃に守り切れるのだろうか。大体、こうしたものは、開港式が終わると万事一段落と、こうなるのですけれども、成田空港の問題というのは開港してからが問題なんで、今度は一般市民を完全に巻き込む。それを考えると、あの空港の脆弱さ、攻撃をかけている方の鋭さ、これを考えると、これはとても守れたものではない、そう見ざるを得ないのじゃないでしょうか。
○国務大臣(福永健司君) 内戦も辞さないというようなものに対して内戦同様の手段をもって対抗するということは、これはまあ議論としてはあり得るかもしれませんけれども、われわれとしては彼らのような考えで対処するわけにはまいりません。あくまで平和に徹しつつこれに対処しなければならないということでございますから、そうしますとなかなか骨が折れると、こういうことでございまして、そういう点から、いまお話もございましたように、脆弱ではないかという見方も無理からぬことであるわけではございますが、しかし、いまも申し上げました、相手がどういう思想を持っていようと、どういう行動に出ようと、あえてしょうと、われわれは平和国日本として当然やるべきやり方でいかなければならぬということでございますが、それなるがゆえにお手上げでどうにもならぬということであってはまたならないと、こう思うわけでございまして、御指摘のように、まさに成田は開港してからがより一層問題であろうと、そういうことも私どもは重々考えて今後いろいろの方策を講じていかなければなりません。どういうことに対してはどうということございませんが、そういうことを重々念頭に置いて、今後国民各位からも安心していただけるように、圧倒的にほとんど全部に近い国民各位は、いまもお話がございましたような点については、安全を期し、いろいろな内戦的な事態が生じるようなことがあってはならぬというように強く念願しておられる。私どもはその気持ちを十分に体しまして今後諸般の施策を進めてまいりたいと考えております。
○栗林卓司君 お気持ちはそれとしまして、守れるのかということを伺ったんで、公安委員長にお尋ねしますけれども、限定された一カ所を守るというのは、これはやりようによってはいろいろ方法があると思います。成田空港の場合は、燃料輸送についてまた広がっている。現在ストックは有効で考えられるところは八日前後だと思いますけれども、じゃ、今度交通アクセスはというと、途中でトラック二、三台ひっくり返せばもうすぐ大渋滞になる。そういったものが全部空港機能に直結している。あそこの空港の周りに警察官を並べただけじゃどうにもならない。しかも、開港後本当の問題が起きるということを守れますか、いかがですか。
○国務大臣(加藤武徳君) 戸村一作氏の発言に端的にあらわれておりますように、革命を目指す過激派集団だと、かように私どもは認識をいたしておるのでございまして、したがって、きわめて広大なあの飛行場でございます、開港できればまあまあやむを得なかったというようなことでおさまりますような性格のものではないと、かように判断をいたしておりますので、開港いたしましてもその後の警備が大変だと、このことを痛感いたしております。
○栗林卓司君 運輸大臣に一つ仮定の質問をしますけれども、十分あり得ることだと思いますけれども、ハイジャックをされて、ハイジャック犯人の要求が成田の廃港であった場合にはどうしますか。
○国務大臣(福永健司君) 私どもといたしましてはそういう事態が絶対に起こらないようにということをまず考え、そういうように対処していかなければならないわけでございますが、まあどういう姿でどういうことが起こるかということはいろいろございましょうが、いずれにいたしましても私どもはそういうことが絶対にないようにということに徹するということがまず必要であろうと思います。しかし、それでもなおかつそういうことということになりますと、それはそれなりにやっぱり諸般の対策も講じていかなければなりません。私は、私の所管する運輸というその中においてもそういうことにも意を注いだ施設なりいろいろの人間の対処方策なり、そういうこともやっぱりある程度考えていかなければいかぬと、ある程度という言葉ではあるいは弱過ぎるかもしれませんが、考えていかなければならないと、そういうように存じております。
○栗林卓司君 私は、この成田窓港は、恐らくあしたの朝の結論がそうだと思いますけれども、とうてい開港するわけにいかぬと思います。しかも、今回の事件がなかったとしても、普通、空港の開港式というと、総理大臣が行ってテープを切るわけですけれども、切るかというと、これも新聞報道ですが、当初はそういう予定もあったけれども、「しかし、十八日には安倍官房長官が現地を視察、新空港周辺にいぜん厳重な警戒体制を敷かざるを得ない状況を確認したため、首相のテープ・カット出席を見合わせることを決めた」と。これがなくたって総理が満足に出られないような空港を開くといったって、それはむちゃです。お気持ちは再々でありますけれども、やっぱり私は一番いけないのは、何とかなる、何とかなるで決めてくるのが一番いけないと思う。経済問題だって同じですよ。何とかなる。結果は何にもなってこなかった。しかも、開港してから問題だということになると、政府のメンツはこの際捨てて、しかも、成田空港問題というのは、ボタンのかけ違いじゃないけれども、最初から問題があった。一遍白紙に戻しながら、どうしたらいいかという検討を私はすべきだと思います。片方では関西空港が賛成、反対がありながら少なくも不況対策でやれやれと言っているのに比べて、何という不幸な空港なのか。しかも、内陸空港というのは基本的に日本みたいな狭い国土では無理があるのじゃないか。羽田をどうするのかということを踏まえながら白紙に戻って、それは内戦も辞さないという連中に対する力に屈服したことにならない。最初からこれは間違っていた。その意味では、厳重な態度で見直しをしながら、いやしくも政府のメンツで国民を危険にさらすことだけは御遠慮賜りたい。御見解だけ伺います。
○委員長(鍋島直紹君) 時間が来ております。
○国務大臣(福永健司君) 白紙に戻ってという御表現でございますが、それをそのまま受け取りますと、成田はやめだというようにこう伝わりますが、私はそういう意味ではもうあそこまでいった成田をやめにしますというようなことは考えておりません。だがしかし、いろいろ心すべきことは十分していかなければならぬと思います。何とかなるというようなことではいかぬという御表現でございまして、それは何とかなるというので私はもう何とかなるということを前提にしていろいろ進めてということじゃございません。何とかするということでなければならぬと、こう思っております。そういう観点から、こうありたいというように私どもはずっと表現し続け、またそういうように対策を講じて進めてきておるところでございます。
○栗林卓司君 終わります。(拍手)
○委員長(鍋島直紹君) 以上で緊急質問は終了いたしました。
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○委員長(鍋島直紹君) 引き続き、財政展望に関する質疑を行います。中村太郎君。
○中村太郎君 時間がございませんので、参考人の先生方に簡潔にお答えをいただきたいと思うわけでございます。
 野口参考人にお伺いをいたしますけれども、いまの財政事情というものをどのように評価なさっているのか、これが第一点でございます。
 とにかく国債依存度三〇%、来年度は実質三七%、こういう状態でございます。これは各国にも例を見ません。こういう状態を今後とも続けていっていいのかどうか。一説には、なるほど公債依存度は高いけれども、GNPに対する対比はまだまだ外国に比べると低い、したがって公債の増発の余地はある。あるいはまた、税金は安い、税率は安い、貯蓄も高い、だから一時的には公債が累増しても増税によってこれは解消できるのではないか、したがっていまはまだまだそんなに心配したことはないというふうな意見もあります。これらの意見を踏まえて、参考人としては、一体現状をどう評価し、将来どうあるべきか、この点をまずお伺いいたしたいと思います。
○参考人(野口悠紀雄君) お答えいたします。結論的に申しますと、現在の日本の財政は非常に憂慮すべき状況にあるというふうに考えております。
 まず、その現状認識ですが、経済学者の一部には、現在の財政赤字というものは、景気が回復すればおのずから解消するもので、それほど恐れる必要はないということを言う方もいるわけですけれども、私はそういう見方はとりませんで、やはり景気が順調な状況に回復してもなお残るようなそういういわば構造的な赤字を抱えているのではないかというふうに考えております。この問題は、景気が順調に回復した状況というのをどういうふうに見るとか、あるいはその場合に税収あるいは歳出がどういうふうに反応するかというような見方にもよっているわけですけれども、私がそういうようなことに関して計量的なモデルを用いて計算しました結果では、やはり現在の赤字のかなりの部分は経済が順調な状況に回復してもなお残るというような結論を得ております。
 第二に、それではそういうものをどういうふうに評価したらいいか、あるいはどうすべきかという、どういうような問題が残るかということでございますけれども、現在のような赤字を放置した場合に、公債費が非常に膨張していきまして財政が硬直化していくというような予算編成上の問題があることは事実だと思いますが、それ以外にも、経済全体としても非常に大きな問題を引き起こすのではないかというふうに考えられるわけです。経済が完全雇用状態と言えるような状況に回復してもなおかつその赤字が残っているということはどういう状況かと申しますと、それは公債でそういう支出を支弁するということは、決してコストなしに支出を支弁することになるわけではありませんで、必ず何らかの用途に向かう資源がそこで削減されているということになるわけです。若干専門的な話になりまして恐縮でございますが、どういう資源配分が削減されるかということは、公債の消化の方法、あるいはそこでとられる金融政策等にも依存しておりますので、非常に複雑であるかと思います。
 第一の問題は、その複雑であるということでして、どういう資源の削減によって支出が賄われているかということが一般には必ずしもよく理解されないために あたかもその支出というのがコストなしで賄われるような錯覚に陥りやすい。つまり、財政支出というものは必ず負担を伴うわけですが、その負担が不明確になる。不明確になっていった場合に、支出を抑制するという節度が働かないで、ともするとむだな支出がなされるおそれがあるということが考えられると思います。それが一番大きな問題であるかというふうに私は思っております。
 それから第二の問題として複雑であるというふうに申したわけですけれども、あり得べき姿というのは予想できるわけでして、仮に公債が現在のような消化方法で消化されるというふうに考えますと、金融政策に非常に強い圧力がかかりまして、通貨の供給量が過大になる可能性がある。その場合にはインフレーションが起こる可能性が非常に強いわけでありまして、インフレーションというのは、申すまでもないことですが、経済的に一番弱い層にある人たちがそういう負担を背負っていくということになるわけで、そういう意味において非常に大きな問題を抱えているのではないかというふうに思っております。
○中村太郎君 まあお説のとおりだと思うのですけれども、いまお話にございましたように、仮に景気が回復をしてもいまの歳入歳出の構造に問題点があるのではなかろうかということはよく言われておるわけでございまするけれども、この点で改善策があるとすれば一体端的に何でございましょうか。いまの歳入歳出の構造そのものの欠陥といいましょうか、これはもう景気が仮に回復してもいまお述べになりましたように直ちに改善できるものではない、回復するものではないというふうに考えておるわけですが、いかがでございましょうか。
○参考人(野口悠紀雄君) お答えいたします。
 御指摘のように、現在の財政赤字の一番基本的な問題は、歳入と歳出というものの決定の構造に一種の差があるということであると思いますので、その両面にわたって、高度成長期につくられていったいろいろな制度でありますとか、あるいは意思決定の方式でありますとか、そういったようなものを抜本的に考え直す必要があるのではないかというふうに考えております。
○中村太郎君 大蔵大臣ね、いまの野口先生のお話があったとおりでございますが、これについては大蔵省としてはどういう検討をなされておるのですか、現状を。
○国務大臣(村山達雄君) それはいま野口参考人が言われたとおりでございまして、かねて言っておりますように、四十九年から今日までの普通歳入は大体九%しか伸びていない、年率で。歳出は一九%伸びているわけでございます。それはまさに高度成長時代と逆転しているわけでございまして、そのことは何を意味しているかと言えば、歳出構造は依然として高度成長時代のそのままの骨格を持っておる。歳入は、現実の減速経済、いまのような非常に停滞した経済でしか普通歳入は入らない。そういうことを意味しているのでございます。したがいまして、私たちはいち早くこの大きな公債から脱却しなければならない。特に特例債の発行を早くとめる必要があると、こういうことで、財政収支試算をお示しし、そして少しでもいまの財政がどんな異常な状況にあるかということを御理解願いたい、こう思っておるところでございます。
○中村太郎君 そこで、野口参考人に御意見を承りたいのですけれども、そうなりますると、これはまあ思い切って歳出を削減する、あるいは歳出が削減できないとすれば大幅な増税、しかしこれは二つともいまの景気冷え込みの中ではかえって逆効果が出てくる。言うならば景気浮揚策と全く二律背反だということなんですね。この現状から、大蔵省ではA、B、C、D、E案という財政収支試算というものを出しておりますけれども、一体このうちのどれを選択すべきであろうか、あるいはあのA、B、C、D、Eのほかにまだ何らか名案というようなものがあるのかどうか、その辺の御判断はいかがでございましょうか。
○参考人(野口悠紀雄君) お答えいたします。
 第一に、歳出削減ないしは大幅な増税というものが現在の経済状況を考えた場合に問題があるという御指摘でございましたが、それは確かに御指摘のとおりだというふうに存じますが、やはり短期的な問題と中長期的な問題を一応分けて考える必要があるのではないかというふうに思います。現在の経済情勢から考えまして、短期的な観点から見た場合に、財政が景気浮揚のためにいろいろなことをしなくてはいけないということは事実だと思いますが、それと並行して、やはり中長期的な問題として、先ほど申し上げましたように、日本の財政が大きな問題を抱えていることは事実だと思いますので、それに対処する何らかの手段がとられなければならないというふうに思っております。それで、具体的にそれではどういう手段がとられるべきかという御質問でございますが、これはもちろん歳出を削減するかあるいは増税をやるかという選択になるわけでして、これについては非常にいろいろな意見がございますし、なかなか簡単に割り切ったお答えをすることがむずかしい問題ではあるかと思いますけれども、私の個人的な意見といたしましては、先ほど申しましたように、現在の財政赤字の基本的な原因というものが、高度成長期につくられたいろいろな制度的なものがそのまま残っているということが問題であると思いますので、そういったものをまず徹底的に洗い直すということが必要ではないかと思うわけです。特に歳出面につきまして、わが国の予算のたとえばGNP比を見てみますと、四十年代まではかなりそれが安定した比率を示していたわけですけれども、四十年代の後半にかなり歳出のGNP比が上がっております。これはそのときに税の順調な増加があったということを背景にしてそういうものが起こってきたわけですけれども、そういったような財政の支出面でかなり膨張したという後遺症がまだ残っているのではないかと思いますので、そういったようなものを検討していくということが重要ではないかと思います。
 大蔵省の財政収支試算について五つの選択肢が示されているわけですが、それのどれがいいかというお尋ねでございますけれども、私自身は、あそこで示されたようなこととは若干違う考えを持っておりまして、単に数字の問題ではなくて、やはり一つ一つの支出の中身を、それが果たして現在どうしても必要なものかということを洗い直していくことが必要だというふうに考えておりますので、五つの選択肢のどれが一番いいというような観点からは物事を考えておりませんので、直接はその御質問にお答えすることができませんが、以上のように考えております。
○中村太郎君 そこで、政府では、五十三年度予算の編成で初めて予算の経常部門それから投資部門と二つに分けまして、経常部門の極力圧縮を図っていく、それから投資部門をその分だけ拡大を図っていくということで編成されたようでございますけれども、これもいろいろ御意見もあるようでございますが、こういう編成の仕方、いまお話にございました経費の洗い直しというものも当然この中に含まれておるのですけれども、この編成の方針、やり方というものに対してはどう評価なされますか。
○参考人(野口悠紀雄君) お答えいたします。
 先ほど申しましたように、財政は、短期的な問題と中長期的な問題、二つの問題を抱えているわけでございまして、そういったような二つの問題が一応区別される問題であるということを予算の表示方法の面でもはっきりと分けることが必要だというふうに私は前から考えておりまして、雑誌等でもそのような主張を前々からしておりましたので、それが現実の予算の表示方法に取り入れられたことを高く評価しております。
○中村太郎君 そこで、大蔵大臣、いまの経常部門の圧縮といいますか、節減といいましょうか、これはたとえば振替支出の社会福祉費、こういうものを減らしていくための一つの布石ではないかというような心配も一部にはあるようでございますが、この点についてはいかがでございましょうか。
 それから先ほどお話がございました、要するに収支試算ですね、あれは要するにいまお話にございましたようにいま直ちにあのうちのどれかを選択するではないと。しかし、少なくとも公債依存率を下げていくためには、これからの政策の中でいろいろ選択していくんですけれども、わけても中長期と短期に分けていくんだと。短期的には景気浮揚の問題、これがある。中長期では財政構造を改善していく、こういうことになると思うのですね。したがって、短期とは一体どのぐらいを指しているか、何年以降というものを中長期と考えて財政計画というものを立てなければならぬか、その辺の御検討がありますればお伺いしたいと思います。
○国務大臣(村山達雄君) 今度の試算は、経済審議会の暫定試算とのつり合いをとりながら、しかも五十七年度までに特例公債から脱却できるかどうかということを示すためにやった試算でございます。当然暫定試算の経済企画庁の企画委員会の方も中期経済計画に従っているわけでございまして、あの考え方を見ますと、主として年齢、これから高年齢層を控えまして、振替支出の増大は必至だと、こういうことが前提になっておるだろうと思うわけでございます。したがって、どのケースで言いましても、極端な削減型は別にいたしまして、Cケースをとってみましても、Aケースをとってみましても、振替支出の方は公共投資よりも伸びを多くしているということは、そういう点に整合性があると思っているわけでございまして、やはり必要とされる今後の重点的な歳出というものは見ながら、しかも特例債を脱却し、しかも六、七%の成長が可能であるかどうかということを試算いたしたわけでございます。
○中村太郎君 いずれにしても、公債依存度の減退ということは財政支出と増税とのうらはらの関係にあると思うのですよね。そこで、税金の問題が当然取り上げられなければならぬのですけれども、野口参考人にお伺いしたいのは、日本の税率というものはECあたりの諸外国に比較して非常に安いんだという意見もあります。しかし、一面、いやECの方は付加価値税を含んでいないんだ、これを入れれば日本と大体同率ではないかというような意見があるんですが、その辺はいかがでございましょうか。
○参考人(野口悠紀雄君) 租税負担率の国際比較についての数字をいろいろ見てみますと、やはり日本の場合に租税負担率が欧米諸国に比べて低い水準にあるということは事実であろうかと思います。
○中村太郎君 それに関連して、景気回復のために財政を使う場合に、いわゆる減税というようなこと、逆にこれは公共投資に充てるべきだという議論と、分かれていますね。政府の方では大体公共投資ということなんですけれども、公共投資か減税か、いまの場合二者択一でいく方がいいのか、あるいは両者併用でいく方が全体的には効果が上がっていくのかどうか。あるいはまた、その減税と公共投資の計数的な効果、需要創出効果というものがおわかりになれば御説明いただきたいと思うのです。
○参考人(野口悠紀雄君) お答えいたします。
 五十三年度予算におきましては、投資減税とかあるいは住宅ローン減税等において税を用いて景気浮揚を図るというような政策もなされてはおりますが、基本的には公共投資によって景気浮揚を図ろうという政策をとっているというふうに考えられます。まあ減税がいいか公共投資がいいかということも、これも非常にむずかしい問題でございまして、経済学者の中ではいろいろな考え方があるわけですが、私自身は減税の景気浮揚効果に関しては若干疑問を持っておりまして、もしお許しいただければもう少し詳しくお話ししたいと思いますが、一九六〇年代の後半から七〇年代の前半にかけましてアメリカでいろいろな減税政策がなされたわけですが、その効果が余り有効ではなかったのではないかというような議論がアメリカの経済学者の中でございまして、若干話が専門的になって恐縮ですが、消費関数について計量経済学的な観点からいろいろな研究がなされたわけでございます。そういう研究の結果、少なくとも短期的に見た場合には減税というのは貯蓄に回ってしまって消費には回らないのではないかというような研究結果が出ております。われわれも実は日本について同じような計量モデルの研究をしてみたわけですけれども、やはり同じような結論が出ております。もしそういう結論が正しいといたしますと、減税の景気浮揚効果は余り大きくないということになるわけでございます。ただし、このいま申しました結果は十分吟味されたものではございませんし、学会で広く承認された結果というわけでもございませんので、今後さらに検討が必要な課題ではないかというふうに考えております。
○中村太郎君 大蔵大臣、いまいろいろな御意見がありますけれども、いずれにしても、短期的に見れば、ここ数年はまだまだ大幅な公債に依存せざるを得ない、これはもうやむを得ないと思うのですけれども、この辺の御見解はいかがでございますか。
○国務大臣(村山達雄君) 収支試算でもお示ししているように、歳出を節減し、それから一般的な負担を求めるにいたしましても、なお相当大量の公債に依存せざるを得ない姿が描かれているわけでございます。あれはまあ一つの試算でございまして、実際にはそのときどきによってどのように財政計画を立てていくかというのは今後の問題でございますが、しかし、いずれにしましても、あの形で行きましても大変なことになることだけは御理解いただけるだろうと思うわけでございます。それは依存率だけの問題でなくて、残りました公債残高並びに利払いがどれぐらい財政を圧迫するかということはあそこに出ているわけでございますから、恐らくいまのままの歳出のようなものをやっていきますと、いわゆる既定経費だけを賄うのであって、一番必要なそのときどきに必要な政策的経費に配分される財源というものは非常に乏しくなるという姿はどのケースでも出ているだろうと思うのでございます。
○中村太郎君 まあ当分の間やっぱりこう高い国債依存度を継続せざるを得ないということになりますると、あの試算で示されておりまする五十七年度で特例公債から脱却するというのは、私は目標としてはわかりますけれども、いささか現実的には無理ではないかなあと思うのですね。少なくともあと二、三年ずらす、六十年ぐらいを目標として、なだらかな減額を図っていくという方がよりやりやすい。無理してやれば、結局どこかへそれははね返っていくのですから、結果的に同じことになりゃせんかなという感じも受けるのですけれども、そのようなお考えはありませんか。
○国務大臣(村山達雄君) 負担の増加、増税ということが一般にどうも好ましくないということは、これは承認せざるを得ないと思うのでございます。しかし、負担の増加を求めたから不景気にすぐつながるというこのまた認識もどんなものであろうか。問題は、どのようなところから負担の増を求めて、どのようなところに歳出を充てていくのか、そこの関係が一番むつかしいのでございまして、どうせ歳入は全額出すわけでございますから、だから、負担の求め方とその歳出のやり方によりまして私は景気をよくすることは可能であろうと、かように思っているわけでございます。しかし一般的に、負担の増というと、どこに来るのかわからぬけれども、かなわぬなあという感じを持っていることは事実であろう。そういう問題からまず決めて、これからだんだん国民の間で議論され、そして、延ばしたからといって問題が解決するわけでなくって、むしろ全体についてはより多くの規模の負担増を求めざるを得なくなるということでございますので、その辺はこれからの具体的な問題ではなかろうかと、こんな感じがしているわけでございます。
○中村太郎君 中島参考人にお伺いいたします。
 いまの膨大な国債残高、市中銀行にもものすごいものがある。しかも、なおかつ今後相当量の公債を発行せざるを得ない。従来から公債市場についてはいろいろな問題点が指摘をされております。一説には、日本じゃ公債市場はないんだと、もう管理政策はなっておらないというような御意見もあるわけでございますけれども、いまの現状を見て、公債管理政策の欠陥といいましょうか、あるいは公債のよりよい消化、流通を図るための手段、これはどういうようなことをやったらよいか、この辺について御見解を承りたいと思うのです。
○参考人(中島将隆君) お答えします。
 昭和五十年以降の大量国債発行以降、国債市場というのはずいぶんとそれ以前の市場と比べて大きな変化を示してまいりましたが、なおそこに従来のような硬直した性格を持っておるということを否定することができないと思います。まず、一つは、国債が強制的に金融機関に対して割当発行でなされていることが一つと、そしてまた、五十二年の春以降、国債流動化が部分的に進んでまいりましたが、この国債流動化についても、なおその売却額に制限があったり、売却先に制限があったり、さらには一年未満の国債については売却が阻止されておるといった、そうした性格を持っております。また、国債の発行条件の弾力化につきましても、金利体系が厳然として存在しておりますから、金融緩和下においてもなお国債発行条件の弾力化を十分には進めていくことができないという、そうした市場の特徴を示しておるかと思います。したがって、私は、そうした市場実勢に無関係に発行できるような発行形態は、これはやはり改善されなければならないし、さらに国債流動化についてはもっともっと推進していかなくてはならない。また、金利体系を維持するといったところから国債発行条件を人為的に決めてしまうというそうした発行条件の決め方というのはもっともっと弾力的にそれを取り扱わねばならない。現在の国債市場というのは金融緩和下においてもなおそのような特徴を示しておると私は思います。
○中村太郎君 大蔵大臣、いま中島参考人から強制割当の問題、流動化の問題、あるいは発行の条件弾力化の問題、あるいは金利の問題等々お話しでございましたね。大蔵省もこの面ではいまお話しございましたように、ここ数年はかなり改善を図ってきたと思うのです。しかし、御指摘のような点についてはこれから一体どうなさるのか、どういう検討なさっていくのか、お伺いしたいと思います。
○国務大臣(村山達雄君) 国債の発行条件につきましては、今後も幾多工夫を要するところがあるわけでございます。そういった努力のあらわれがこの一、二年続いているわけでございまして、応募者利回りをできるだけ国債についてもほかの有価証券より相対的に有利にするとか、あるいはまた消化先のニーズに合った多様化を図っていくことであるとか、あるいは市場の拡大、特に個人消化をねらいましてそのニーズに合うようなさまざまなことをいたしていることは御承知のとおりでございますし、また、市場を拡大する意味でいろいろな市場の気配相場を定期的に出していくとか、さらには国債を担保とする金融市場を広げることであるとか、さらには、いまお触れになったように流動化を図るために、ある程度従来の縛りを解きまして市中売却の自由化を求めていることであるとか、あるいは部分的ではありますけれども、いわば競争入札制度を一部導入しているとか、まあ漸次やっているところでございます。完全に自由化できるかどうかというところが一番ポイントなんでございますが、この点はなかなか全体の金利体系の問題がございまして、御承知のように日本は間接金融を中心にしているわけでございます。この点がやはり一番大きな問題になるわけでございまして、その預金の金利の自由化を出発点とするすべての自由化がいま直ちにできるかと、この問題に最後はつながってくるわけでございます、もしいますぐ考えて預金の完全なる自由化をやったとすれば、これは当然大口の預金が金利が高くなり、小口の預金はコストの関係から当然預金利子は低くなるでございましょう。それから住宅ローンあるいはは中小企業に対する金利が高くなることは当然でございます。それが果たしてすぐ自由化できるかどうか。さらにはいま金融のいろいろな系列が決まっているわけでございますけれども、恐らく金融機関の急激なる再編成が行われるに違いない。それが、いま実体経済の面で、金融を本当に必要とする人のために理論だけの問題でなくて現実に合うであろうかどうかと、こういうことを考えますと、いわゆる金融の自由化という問題は確かに一つの大きな利点があります。しかし、現実の日本のいまの金融構造から考えますと、それを急激にやることには大変なちゅうちょを感ずるわけでございまして、大変な社会混乱が出てくると思うのでございます。したがいまして、その問題は、そういう一つの金利機能を通じて資源の再配分あるいは競争条件、こういうプラス面があることはわれわれも十分知っておりますので、そのプラス面に着目しながら、やはり現実的な対応、しかも急いでやる必要があるであろうと、このように考えて、それらの問題を全部そういう問題点があるからといって一挙にやることにはやはり問題が現実的にあると、このような認識でおるわけでございます。
○中村太郎君 中島参考人、いま大蔵大臣がそういう御答弁があったわけですね。いまあなたがお聞きになっていて、いまの金利体系あるいはいまの金融機関の経営そのものを前提にすれば、いまの御意見になると思うのですね。この辺に根本的なメスを入れなければ、この問題は解決していけないと思うんですよ。その辺との関連で、いま現実としてとり得る金利の弾力化の問題ですね、あるいは流動化の問題は何が考えられるでしょうかね。直ちにいまこうすればいいじゃないかというような点があるとすればお答えをいただきたいと思うのです。
○参考人(中島将隆君) 金融緩和下にあって必要な対応策というのはずいぶんたくさんとられておりまして、先ほどお話しありましたように、それまで国債は売ることができなかったのに流動化が開始されたり、また国債市場価格がいままでの管理的な性格から弾力化してまいりまして、店頭取引の取引価格も弾力化してまいりました。また、国債強制借りかえ制度というのも廃止されて、国債市場というのは従来とは異なる自由制市場としての性格をいま示しておると思うのです。しかし、問題は金融が緩和しておるからこういうことが可能なのであって、それがタイトになったときにこれがどういう対応を示すのかということが問題であるわけです。したがって、その中で私は国債市場が自由制市場としての性格をずっと持ち続けていくためには、つまり国債流通市場が発展していくためには、国債市場が金融市場から隔離されたような性格を放棄する、その問題の核心となるのは、国債発行条件をそのときどきの金融情勢に従って弾力化していくという、その基本線がいかなる状況のときに置かれましても貫かれていく限り、国債流通市場というのは発展していくであろうと思うわけです。したがって、問題は、国債発行条件を硬直的なものではなしに弾力的に決定していく、その点が一番大切であろうかと思うわけです。
○中村太郎君 野口参考人にお伺いしますが、まあいずれにしても税の問題は避けて通れないと思います。この国会でもいろいろな論議がされておるわけでございますが、新規増税なりあるいはいまの一般税の値上げなり、これをやる前に当然行革等を通じてやっぱり経費の節減を図るという姿勢、あるいは不公平税制の是正、それが当然前提にならなければならぬと、これは一般的な世論でもあると思うんですよね。こういう点について参考に具体的に手法がありましたらば、何がこうだと、こうやればいいじゃないかというお気づきの点がありましたら、御教示願いたいと思うのです。
○参考人(野口悠紀雄君) お答えいたします。
 ただいまの御指摘のように、増税ということを考える前に、行政改革なりあるいは不公平税制の是正なりということが考えられなくてはならないという御指摘については、私は全く賛成でございます。先ほど申しましたように、ひとり行政改革の問題にとどまらず、歳出の内容についての徹底的な再検討が必要であるというふうに考えておりまして、実は先ごろアメリカの連邦政府の予算編成の状況を調査しに参ったわけですが、御承知のように、一九七九年度予算から、アメリカではゼロ・ベース予算というものを採用しておりまして、これはカーター大統領がジョージア州の知事のときに州の予算に導入した方法であるわけですけれども、その過去の行きがかりにとらわれないでゼロに戻って予算を編成していこうという考え方であるわけですけれども、いろいろ聞いた限りではかなりうまくいっているのではないかというような印象を受けたわけでございます。果たしてそのアメリカのゼロ・ベース予算の手法をそのまま日本に取り入れるということが適当かどうかはいろいろな環境の相違等から問題があるとは思うわけですけれども、一つの非常に参考になる手法なのではないかという印象を受けて帰ってまいりました。
○中村太郎君 それで、いわゆる不公平税制とは一体何か、不公平とは一体何かという観点から、いま両御参考人が、これは御専門内じゃないから失礼かもしれませんけれども、簡単にお考えになって、いま取り上げられているいろいろな例があるんだけれども、大体われわれの感触ではこれこれが不公平税制だと思うというものが、差し支えなければ、発表できれば、ひとつお聞かせをいただきたいと思うんです。
○参考人(野口悠紀雄君) お答えいたします。
 一般に不公平税制ということで論議の対象になっておりますものは、法人税におけるさまざまの特別措置ですとか、あるいは所得税におきまして社会保険診療の措置等があると思います。個々のものにつきましては、それぞれいろいろな事情があると思いますけれども、やはり、たとえば将来の税構造を考えていく場合に、国民が納得ができるような税制というものをつくっていくということは非常に重要なことであると思います。たとえば医師の社会保険診療の特例というようなものについては疑問が残らないような形の税制をつくっていくことが必要ではなかろうかというふうに思っております。
○参考人(中島将隆君) 具体的なことはよくわかりませんが、不公平税制の問題の所在については、ただいま述べられた野口参考人と同じ意見であります。
○中村太郎君 大蔵大臣、いまいろいろお答えをいただきましたように、とにかく不公平税制の是正、これがやはり一般増税を求むる前提でなければならぬ、あるいは経常支出の極力な圧縮、こういうことなんですね。これに対してどうなんでしょうか、大蔵省としてはどういう決意でいま臨んでいらっしゃるんですか。
○国務大臣(村山達雄君) 二つのことを申し上げたいと思うのでございます。
 一般に言われている不公平税制というものの中には、われわれが考えまして不公平税制のらち外になるべきものもずいぶん入っているわけでございます。つまり企業会計原則上当然認められているもの、まあしかしそれは不公平税制だと言う人もあります。それからまた、税制として個人と法人のいわゆる所得の二重課税の排除というのは世界的の方向でございます。その二重課税の排除そのものが不公平だという説もあるのでございます。これはしかし税制調査会で非常に慎重に検討いたしまして、それは不公平税制の問題ではなくて税制の立て方の問題だと、こういうことになっているわけでございます。したがいまして、問題は企業税制とそれから所得税――法人税と所得税に移るわけでございますが、法人税の方といたしましては主として税制限りの準備金の問題、これが大きな問題でございまして、それはそれぞれの政策目的でつくっているわけでございますけれども、つくったときはある程度不公平になるということは百も承知の上でつくっているわけでございますが、その政策目的とそれから公平という問題の選択を今後どのように考えていくのか、公平の方により重点を置いて考えていくのかどうかと、ここが一つの問題点。それから、どうしても一つ起こしますと既得権化する問題があるわけでございますので、政策目的を達したものについてはやはり勇敢に廃止していく、これが一つ大事な問題ではないか、そのような問題意識であろうと思うのでございます。
 所得税について言われますのは、社会診療報酬に対するあり方というものが一つ指摘されております。それからもう一つ、非常にこれはむずかしい問題なんでございますけれども、まあ理論的な問題として利子配当の総合課税と言われておるものがございます。いまのような源泉選択とか、あるいはフラットの税率ではなくて総合すべきである、これは事実でございますけれども、この問題は非常に実務的に実効をあらしめるためには相当の研究期間を要すると思っておるのでございますが、われわれもしかしそれを放置するわけにまいりませんので、いま鋭意検討しているところでございます。
 なお一つの問題は、証券のキャピタルゲインの問題等も取り上げておりますが、これまた非常にむずかしい問題でございまして、下手をしてやりますと、かえって不公平になるという問題を含んでおりますので、それぞれの問題のむずかしさ、それからそれの実効性というものを考えながらいま対応しているところでございます。しかし、さっき言ったような意味の、われわれの観点から見て不公平税制でないというものを除きまして、いわゆる実質的に不公平の税制については是正しなくちゃならぬということは全く同意見でございまして、鋭意取り組んでいるところでございます。
○中村太郎君 これはひとつ自信を持って御検討いただいて、国民の前に明らかにしていただきたいと思うのです。
 時間が来てしまいましたので……。まあ暫定財政収支試算ですから、ABCDEというのは。これはこれでもやむを得なかったと思うのですが、ただこれだけ出して、この中から国民は考えろというやり方は、ぼくは妥当でないと思うんですね。大蔵省は国家のシンクタンクなんですから、ここで何かが決まってこなければ決まってきませんよ。そういう意味で、私は財政計画、それから当然企画庁長官にも関係がある経済計画が前提にならなければなりませんけれども、こういうものを確立をする、樹立をする、これも検討なさっていますか、それだけお聞きして終わります。時間がありません。
○国務大臣(村山達雄君) 財政計画につきましては、当委員会におきましても、また衆議院の予算委員会におきましても、その必要性が強調されたところでございまして、これから鋭意検討するということを申し上げたのでございます。ただ、各国ともこれが導入されるまでにはおよそ十年ぐらいの歳月を要するわけでございますが、日本の方はそれよりもう少し早くやりたいと思っているのでございます。ただ、日本の場合はいわゆる経済計画があるものでございますから、それとの整合性を保ちながらやっていくという問題が一つございます。それからもう一つ、先ほどちょっと触れましたけれども、やはり長期計画のよさと、それから絶えず根っこから見直していくという問題とどのようにして調和させていくのか。歳出の問題でありましたけれども、これはどちらもローリングシステムで絶えず見直していくということは必要であろうかと、こんなふうに考えております。
○中村太郎君 終わります。(拍手)
    ―――――――――――――
○委員長(鍋島直紹君) 次に、福間知之君。
○福間知之君 中島参考人にまずお聞きしたいと思います。
 わが国の国債市場における最大の特徴というのは、参考人もしばしば触れておられるようでございますが、人為的な市場すなわち国債市場が金融市場から隔離されている、言いかえれば日銀信用によって保護された市場になっている点だと、こういうふうに言われているわけですけれども、もう少し具体的に所見を申し述べていただきたいと思うわけであります。
 それからもう一点は、今年度の場合でも、赤字国債が四兆九千三百五十億円、その他六兆何がしの建設国債、十一兆に近い国債の発行ということになっているわけであります。これが成長通貨の供給量というものを大き上回ってしまえば、これはもう言うところの国債市場の隔離政策を維持することは不可能になる、こういうことが考えられるわけでありまして、現在まあ金融が緩和しているということで、資金がだぶついているというので問題が表面化しないわけでありますけれども、財政インフレというふうな事態は将来の展望としてはやはり危惧されねばならぬと思うんですけれども、参考人はいかがお考えですか。
○参考人(中島将隆君) ただいまの問題を考える場合、ほぼ三つの時期に分けて考えることが問題の所在を明確にするという意味で便利ではなかろうかと思うわけです。
 まず第一の時期といいますのは、昭和五十年までの代用国債が発行される以前の状態でありまして、そのときまでは国債発行額が成長通貨供給量よりも下回っておりましたから、そうした条件のもとで初めて国債市場を金融市場から隔離することができたわけです。具体的には、金融機関に強制的に割り当て発行された国債も、一年後には全部日銀が吸収してしまうということによって隔離が可能であったわけで、そのことのために低利国債の価格維持が行われ、また流動化を阻止することができたんだと思うわけです。
 次の時期ですが、五十年から現在までの問題ですけれども、超金融緩和下にあって、先ほども少し感想を述べましたが、国債市場は従来のような硬直した人為的な市場という特徴を示していないわけです。つまり金融緩和下においては、低利でいままで発行されていた国債であっても金融機関にとっては非常に魅力的な投資対象となり、国債流動化も部分的に進められてきて、現在のところは人為的な性格をそれほど前面に出していないと思うわけです。しかし、そうした条件を支えておるのは、現在の需給ギャップとそしてもう一つ、円為替投機資金が流入することによってさらに債券市場を緩和させておるという現在の条件が、国債市場を統制的な市場から自由性市場としての性格を持つかのような外観を呈しておるんだと思うわけです。
 問題は、五十年以降の成長通貨供給量よりも国債発行額が非常に大幅になって、五十年以前のような状況を続けることができなくなったということであるわけです。現在のところは金融が緩和しておりますから、国債市場というのは自由性市場としての性格を呈しておりますけれども、問題は第三の時期、つまり現在のような金融緩和の状態が消滅したときにどうなるのかということでありまして、その中でなお国債発行条件というのを硬直的に決定する仕組みが残っていたり、あるいはまた国債の流動化も部分的な性格のものでしかないというふうになるならば、結局のところ金融機関は割り当てられた国債に対する代償要求をすることになりまして、その代償要求というのは、つまるところ日銀資金供給によってそれを救済せざるを得ないという方向になっていくかと思うわけです。ですから、こうした将来における財政インフレを回避するためには、現在のような発行条件、現在のような発行方法をできるだけ金融市場の制約に従って発行して消化するという、そうした方向に努力を続けなければならないと思うわけです。
○福間知之君 先般来大蔵省当局におきましても、いわゆる国債の銀行窓口販売に関しまして証取審に諮問をする、こういうふうな御意向を表明されたように聞きますが、この過程には証券界等のいろんな反応もあったように伺うわけですけれども、正確には大臣はどのような手順で諮問を開始されるわけですか。
○政府委員(田中敬君) 先般、新聞紙上で近く証取審を開いて窓販問題について諮問をするという報道がなされておりましたけれども、大蔵省といたしましては、まだいつどのような方法でこの問題を検討するかということは最終的に決めておりません。窓販問題につきましては、発行者である、あるいは国債管理政策当局である大蔵省の立場、あるいは今後非常に大量国債の発行が続いた中で自己資金に占める国債の比重が高まるであろう金融機関の立場、あるいは従来個人消化について努力をしてまいりました証券会社の立場、あるいはまた個人の金融資産として何を選ぶか選考するいわゆる一般個人投資家の立場、四つの立場がこの問題についてはあろうかと思いますので、それぞれの立場を十分検討しながら進めてまいりたいと存じております。いろいろ法律問題も言われておりますけれども、それも含めて検討してまいりたいと思っております。
○福間知之君 中島参考人、この窓販問題は古くて新しい課題として今日に至っているわけでございます。アメリカでも一九七一年には踏み切られたようでありまして、財務省なり連邦準備銀行の方との対立もあったやに聞いておるわけでございますが、日本と違ってアメリカの場合にはその他の金利が自由化されているという背景があったようであります。そうしますと、常識的に考えて、先ほど来大蔵大臣の答弁でもいろいろありましたが、一気にということは、それは混乱が予想されるという点でやや慎重にならざるを得ないわけですけれども、しかし、いままでこの問題は国会でも、特に私ども野党側は共通して積極的に進めるべきではないのかということを言ってまいりました。もう何年かこれはたっているわけです。この際国債を発行して十年以上たっているわけです。それがなかなか整備されないということは、やる気がないと言っても過言じゃないと思うんです。そういう点で参考人にお聞きをしたいんですが、参考人はこの窓販についての妥当性、あるいはまた、現実それに踏み切るとした場合に決断をしなきゃならぬ問題があろうと思うんです。しかも、それは大臣が先ほどおっしゃっているように、必要以上の混乱を惹起する危険があるので決断がとてもじゃないができにくいという事柄なのかどうか、参考人の所見を伺いたいと思います。
○参考人(中島将隆君) まず第一の問題の窓販問題を実現する妥当性ということですが、まず、その窓販問題がなぜ出てくるかということにつきましては、私は一定の合理的な根拠があると思うわけです。つまり金融機関の要求といいますのは、大量に国債が強制的に割り当てされる、そうすると低利で発行されるこうした国債は、もうこれ以上持たされるのはかなわない、たまったものではないという反応。また、国債の流動化もなお部分的ですから、国債の流通市場が整備されるのをもう待ってはいられないというそうしたところから、金融機関が大量に割り当てられる国債に対して、これを市中消化を拡大するために窓販を進めるということの合理的な根拠は一方であるわけです。しかしながら、他方市中消化を改大するために、果たして国債を銀行の窓口でやることが市中消化を拡大させる方向に行くのか、あるいはまた国債流通市場を整備するという目標にとって、窓販が果たしてそうした問題に答えることができるのかどうかという点については、私は重大な疑問を持つわけです。市中消化を拡大するためには、なるほど金融機関の窓口を利用することによって国債を買うことのできる場所を広げることができるという、そうした意味においてはなるほど市中消化拡大の一つの政策ではありましょうけれども、従来の国債市場の持っておる特徴を考えてみますとき、それが市中消化を拡大しない最も大きな理由というのは、発行条件が硬直的であり投資家にとって魅力的ではなかったこと。また国債の流動化も部分的であって、機関投資家も積極的に国債を買おうとしないという流動性の持つ問題。また、現在のところ発行されておる国債というのは十年ものの利付国債と、もう一つは割引国債のたった二つでありまして、国債の種類が多様化していない。そうした点にこそ国債の市中消化が拡大しない理由がある。したがって、問題を引き戻して考えてみますと、国債の発行条件を弾力化していく、そしてまた流動化を進めていく、国債種類の多様化を進めていくということが国債の市中消化を拡大する基本路線ではなかろうかと思うわけです。
 窓販問題についてさらに疑問を持ちますことは、果たして窓口販売を進めることによって公正な国債市場価格が形成されるであろうかということを非常に懸念するわけです。つまり国債を銀行の窓口で販売することになりますと、今度は売却先が国債を買い戻してくれと言ったときに銀行は買い取ることになりますけれども、その場合の価格をどういうふうにして決定するのか。はね返り玉の処理方法ということがまず大きな問題になってまいります。そうしますと、もしも銀行が、たとえば理論価格で買うというような事態が生じましたならば、銀行の窓口で形成される市場価格と、証券会社の店頭で形成される市場価格といったぐあいにいろんな価格が出てきて、流通市場は大きな混乱を免れないだろうと思うわけです。
 さらに指摘しておかなくちゃならない問題は、日本の間接金融構造優位のもとで国債の窓販を行うことが果たして流通市場の整備につながるのか、あるいはまた、金利弾力化ということが今後の日本経済にとって進むべき目標であるとするなら、そうした窓販はそうした金利体系の自由化、国債発行条件の弾力化を進めていく上にとって果たしてプラスになるのかという問題であります。つまり間接金融構造優位のもとでは銀行の圧倒的優位を主張することができますから、銀行は企業に対して融資ワンセットで国債を売却することも可能でしょうし、また買い戻し請求のあった国債については、その流動化の要求を阻止するということも可能だと思うわけです。したがって、そうした間接金融構造優位のもとでの銀行の国債窓販というのは、金利の弾力化を進めていくために、あるいはまた、国債流通市場の規模と深さを拡大していくために決してプラスになるものではなしに逆にマイナスの側面を拡大していくのではなかろうか。このように銀行の窓口販売問題については考えるわけです。
○福間知之君 証券取引法の六十五条二項によっては、銀行の国債窓販は認めていることになっているわけですね。
○政府委員(田中敬君) 銀行が窓販も含めまして証券業務、特に国債に関する証券業務を行うということは、証取法の六十五条二項によって認められている業務ではございませんでして、本来認められている業務であると、その根拠は銀行法五条の、「附随スル業務」として認められておる業務で、現に金融機関は国債の引き受けをいたしておりますが、これは何に基づいてやっておるのかというのは、証取法に根源があるのでございませんで、銀行法五条に基づく業務であると、かように考えております。
○福間知之君 中島参考人、いまおっしゃった御所見はわかるわけでございます。しからば、いわゆる硬直化したいまのこの国債発行を流動化していく、あるいはまた魅力のある、多様なニーズにこたえられるような商品をふやしていく、いろいろ考えられるべきことがあると思います。それは否定いたしませんが、ことしの場合でも、当局は新たな何か中期の国債を発行するとか、商品を考え出しているわけではないようであります。そうしますと、この中期試算じゃございませんけれど、Aのケースで五十七年度末に国債残高がほぼ百二十三兆円近くなって、Bの場合でも九十兆円というふうな残高になっていくわけでございますけども、仮にこれは期待していいことなんですが、景気が浮揚して資金需要が民間で旺盛になったというような場合に、日銀の買いオペで毎年毎年吸い上げていかなきゃならぬということになる。一刻も早くこの弾力化ということを進めるための前提になる諸種の条件を整備しなきゃいかぬ。ことしあたりからでも本当はそういうことを考えなければならぬかと思うのでございますが、現実にはそうではない。そして過去の長い古い一つの金融体系というもののしがらみから抜け切れないままに、国債だけが増長の一途をたどるということでありますから、なかなか参考人がおっしゃるような前提の条件というものが九〇%、九十何%整備されるという時期は近くには望めないわけですよ。だから、そういうことを誘発していくためにも、やはり長年の懸案であった自由化というものを決断すべきじゃないかと、多少の困難を克服する場面が必要であるとしても、いまは金融が一番緩和しているんですからやりやすいんじゃないのかと、そういう感じがするんですがね。
○参考人(中島将隆君) おっしゃいますように、いまこそ金利弾力化を進めていく大きな好機であろうと思うわけです。しかしながら、それがなぜ現実に国債の種類の多様化を進めるとかあるいは発行条件を完全に弾力化することができないのかと考えてまいりますと、それはやはりそこに阻止するものがあると、つまり、具体的には、日本には先ほど言いましたように厳然たる金利体系があって、その金利体系を守るというそうした政策がとられておるからこそ国債の種類の多様化を進めたり発行条件の弾力化を完全に進めることができないのだろうと思うわけです。そうした金利体系の所在ということを具体的に考えてまいりますと、たとえば現在、割引国債というのは総枠にして三千億ですか発行されておりますけれども、そうした割引国債の発行額をさらに膨張さしていくということは、国債の個人消化を進めていく上に私は大切な問題であると思うのですけれども、そうした割引国債の膨張というのは、他方における競合する商品がありますので、そうした割引国債のついても三千億でとどめられてしまうと、そうした仕組みそのものが問題であろうかと思うわけです。また、ことしの二月には事業債の単独引き下げが行われましたけれども、その場合事業債の乖離幅は〇・五%で、国債は〇・三%、金融債は〇・九%引き下げる市場条件があったのですけれども、国債も金融債も引き下げることができずに事業債だけ〇・二%の引き下げが可能であった。しかも〇・五%あるのに〇・二%までしか引き下げることができない。そうした仕組みというのは、その背後に国債の発行条件がまずあって、そうして金融債の発行条件というのは国債の発行条件よりも上でなければならないというそうした仕組み、それこそが問題であろうかと思うわけです。ですから、国債市場が金融市場の制約に従って運動していくためには、自由にいけますように、ことしの春日銀総裁は国債と金融債の逆転も考えなければならないというふうに発言されておられましたが、私もその点については全くそめように考えるわけです。
○福間知之君 参考人、海外の場合はその点はどうなっているんですか。
○参考人(中島将隆君) 海外のことは私よくわからないのですけれども、しかし、こうした厳然たる金利体系の存在というのは日本特有のことかと思います。
○福間知之君 大蔵大臣にお聞きします。
 いま参考人もるる所見を申されましたけれども、大量の国債発行時代にやむなく突入しているわけでありますけれども、金利の体系を自由化していく、なかんずく国債の発行条件の弾力化というようなことを一層促進していくという上で、近い将来に向かっての一つの金融体系に対する当局としての改革の展望といいますか、決意といいますか、伺いたいと思うのです。
○国務大臣(村山達雄君) 金利制度の弾力化については、今後鋭意実施に移してまいりたいと思っているところでございます。ただ、一般に自由化するかどうかというのは、さきに言ったような理由からいたしまして、一挙に自由化するということは非常にむずかしいだろうと思っております。
 それから、窓販の問題につきましては、先ほど理財局長がお答えしたようなわけでございまして、また、いま両参考人からそれぞれ違う種の意見が述べられているぐらいでございまして、非常にむずかしいところでございますので、慎重に検討してまいりたいと思います。
○福間知之君 先ほど野口参考人が申し述べられました点で二、三お伺いしたいと思います。
 高度成長期における財政、歳入、歳出というもののパターンが、今日なお影濃く残っているといいますか、引き継がれておるというところに財政の重要な問題がひそんでいると、こういうお話がありました。全く私もそのとおりだと思うわけであります。しかし一面、減速成長に入ったとはいえ、二百兆円を上回る水準のGNPの規模に比べれば財政そのもののスケールが必ずしも諸外国に比べて大きい方ではない。そういうことも言えるんじゃないかと思うんですが、その点どのように考えられているか。
 それから、歳入につきましては、もう先ほど来から申していますように、国債に完全にだっこされた財政、実質三七・八%という一般歳入に対するウエートを持つ国債発行でようやく歳入を賄っている、こういうような事態ですから、これをどうするかというのは別の角度からの議論がこれは必要だと思いますが、それはともかくといたしまして、そういう必要によってとにかく三十四兆三千億近い規模の予算が今回は組まれているわけであります。一方、歳出ということになりますと、簡単にそれを頭ごなしに一割五分なりそれ以上削減というわけにもいかない。特にことしのように、景気浮揚ということが財政の臨時異例の措置とまで言われた取り扱いによって、内外から一つの期待をかけられているということでございますので、歳出を簡単に削るというわけにはいかないんですが、これは野口参考人は御専門じゃないかしりませんが、私ども予算委員会で先日来から公共投資主導の景気浮揚策ということで財政というものが組まれているということをめぐってかなりの議論が続けられてきているわけであります。参考人が先ほどおっしゃったように、必ずしも私はここで公共事業による景気浮揚の効果と減税による景気浮上の効果とどっちがどうなんだということはもうお尋ねすることはいたしませんが、過去四年間の不況の中で公共事業はかなり力を入れてきたはずでありますけれども、もう一つ思わしい効果を上げ得ないままに来ているではないか。今日でも、特に昨年組まれた当初予算なり補正予算なりの結果、公共事業はかなりの金額がつけられているんだけれども、十二分にそれを消化し切れないままに来ているではないか。なかんずく五十三年度の公共事業は国、地方を合わせれば恐らく二十六兆円を上回る膨大な費用になっている。そのうちの六割以上はもう地方公共団体が手がけなければ工事は進捗しないいわば公共的な事業である、こういうふうに理解しているわけです。だから、いまの予算の持つ中味、性格、そういう面について、参考人は、当面の財政に寄せられている期待なりあるいはまた任務、役割りという面から言って、今回の予算はベターな予算だというお考えかどうか、お伺いしたいと思います。
○参考人(野口悠紀雄君) お答えいたします。二点御質問がございましたので、それぞれについてお答えいたします。
 最初に、財政のスケールというものを国際的に見た場合に、わが国の場合にはまだ低い水準にあるのではないかという御指摘でございましたが、確かにそういうような傾向があると思います。ただ、財政のスケールの国際比較と申しますのは非常にむずかしい問題でございまして、御承知のように財政制度というのが国によって非常に違いますので、どの範囲のものを財政としてとらえるかという問題があるわけでございます。たとえば、アメリカの場合に、連邦予算をとってみるのか、あるいは州や市の予算まで含めて考えてみるのかというような財政制度の違いによる問題がありますので、非常にむずかしいとは思いますが、一般的に申しまして、日本の場合に財政支出のスケールが国際的に見て低い水準にあるのは事実だと思います。ただし、これは低いからいいとかあるいは高いからいいとかいうふうに簡単に議論できる問題でもございませんで、支出の中身の問題というものを当然考えなくてはいけないわけです。で、わが国の場合、諸外国と比べてみました場合に二つの特徴があると思います。
 一つは、国防費、防衛費の支出が外国と比べてみますと低い水準にあるということです。これが財政支出のスケールを小さくするのに非常に大きな原因になっていると思います。それからもう一つは、社会保障関係の支出が、最近その比率を高めてはおりますけれども、ヨーロッパ諸国と比べてみると低い水準にあると思います。これは一つは、わが国の場合に社会保障、特に年金制度というものが比較的最近になってから整備されてきましたために、まだその本格的な支給が始まっていないというようなことがありますので、年金制度が成熟して年金の支給が本格的になされている西欧諸国と比べてみた場合には、それが原因となって支出の水準が低くなっているというふうに思われます。
 それから第二番目の御質問ですが、これは中長期的な問題というよりは短期的な景気浮揚の観点ということでの御指摘かと存じますが、これまで五十年以降果たして財政が景気浮揚のために十分な措置をとってきたかどうかということを国民所得ベースの数字で見てみますと、必ずしもそうは言えない面があるのではないかと思っております。たとえば、昭和五十年度には、国民所得ベースで見ました政府固定資本形成の伸びが対前年度比一〇・五%でして、これは四十九年度、この年は御承知のように総需要抑制策がとられたわけですが、その年の政府固定資本形成の伸びが二二・七%ということに比べてもかなり低い数字になっているのではないかと思います。それから五十一年度も政府固定資本形成の伸びが九・七%ということでかなり低い伸びになっている。つまりこれまで財政がどちらかといえば景気浮揚に対しては及び腰であったのではないかというふうにむしろ私は評価しております。その原因は中央政府と地方政府、あるいは中央政府の中でも一般会計と企業会計に分けて考えて見ますと非常に特徴的なことがございまして、それは昭和五十年度に政府固定資本形成の伸びが低かったのは、中央政府より主として地方政府が低かったということでして、地方政府の固定資本形成の伸びが前年度対比四・九%ということで非常に低い伸びになっております。これは地方財政の逼迫という問題があったために、おのおのの地方公共団体がどちらかといえば消極的な財政運営をしたということにあると思いますので、やはりこういったような数字から見ましても、単に国の一般会計の予算だけではなくて、中央と地方と連動をとった財政運営というものが必要なのではないかという気持ちを強くするわけです。
 それから五十一年度につきましては、これは地方財政の方はかなり回復してきているわけですけれども、中央政府の企業会計、これは政府関係機関、国鉄とか電電公社等の政府固定資本形成ですけれども、これが対前年度比マイナスということで、むしろふえるのではなくて減っているという事態になっております。この二つのこと、五十年度におきましては地方財政、五十一年度におきましては政府企業の固定資本形成が非常に低かったということがあって、財政全般がこの過去数年の間景気浮揚に対して必ずしも積極的には働いてこなかったのではないかというふうに私は評価しております。
 五十三年度におきましては、御指摘のように公共投資を中心にした景気浮揚というのが図られているわけでして、まあ減税がいいか公共投資がいいかという議論はここではなさらないということですので、主として公共投資に重点を置いて景気浮揚を図ったということについての私の感想を述べさせていただきたいと思うわけですが、やはりいまの不況の一番の大きな原因と申しますのは、民間の経済主体が将来に対する期待、エクスペクテーションを非常に暗いものとして持っている。つまり投資主体というのは将来の利潤、収益に対する期待が非常に低いわけですし、それから一方家計の方は将来の雇用不安とかあるいは所得がなかなか伸びないのではないかというようなことから、将来に対するその期待というものは非常に悪化しているというのが現状ではないかと思います。まさにそういう民間の経済主体が将来に対して明るい見通しを持てないというところが私は現在の不況の一番大きな原因ではないかというふうに考えておりますので、それに対する対策というのはやはり将来に対するビジョンを非常に明確に示して、民間の経済主体の将来に対する期待を明るいものにしていくということが非常に大切なのではないかと思うわけです。そういう意味から申しますと公共投資の対前年度伸び率を何%にするということももちろん大切ですが、それだけでは決して十分ではないわけでして、単に量的に公共投資を拡大するということではなくて、それが国民生活にどういうふうにつながっていくのか、それがたとえば企業にとってどういう意味を持つのか、あるいは一人一人の国民にとってどういう意味を持つのかということをやはり非常に明確なビジョンのもとに描いて、その中においてやはり景気浮揚というものを位置づけていく必要があるのではないかと思うわけです。
 そういう意味から申しますと、先ほど短期的な問題と中長期的な問題は一応別の問題であるというふうに思し上げたわけですけれども、やはり短期的な景気浮揚政策といえども、決して一年限りの一発勝負であってはいけないというふうに私は思うわけでして、長期的なビジョンのもとにしっかりと位置づけられたものでなければならないというふうに思っております。
 そういう点から申しますと、今年度の予算というのは確かに量的な面では非常にこれまでの財政運営に比べて思い切った政策がなされたとは思いますけれども、それが余りに、単に数字的に公共事業をふやすというようなことにとどまって、将来の明確なビジョンにどういうふうに結びつくのかということが必ずしもはっきりしてないところに一番大きな問題があるのではないかというふうに私は考えております。
○福間知之君 いまおっしゃられたように、地方の財政というのがここ数年極端に窮迫をしてきているということ、いま数字を挙げて時系列に御説明がありました。そのとおりだろうと思うわけです。それが私は今度の公共事業に多額の予算をつけ、あるいは景気回復への期待を込めても、一気に来年度そのような期待にこたえられるようになるのかというと、そうではないだろう、そういうふうな危惧を持っておるわけでございます。
 要するに、参考人が先ほどもおっしゃったように、短期的にはいずれにしろこの予算で景気浮揚を図っていくという意図が強くそこに示されておる。それはそれとして成果を何とか上げなきゃならぬと、こういうことでございますが、じゃ、中長期的にどうするかということが、よりまた国、社会全体としては大きな問題だと。で、いまのお話しにもありましたように、地方の財政というふうなものをやはり高度成長の時代とは違って抜本的に制度として改革をしなきゃならぬのじゃないか。いま地方の交付税率も国税の三二%ですか、私たちはこれをせめて四〇%程度まで引き上げるべきじゃないかと、こういうことを主張してきましたが、そういう点が中長期の展望としてやはり必要なのじゃないのか。この点いかがお考えでしょうか。
 それから、高度成長時代における歳出のパターンというふうなものを考えた場合に、それも改めなきゃならぬ。その中の一つにいま国会でも審議をしているわけですけれども、野口参考人も先ほどおっしゃられたように、法人税とかあるいはまた政策目的として設けられた税制である特別措置ですね。そういうものとか、あるいはまた社会保険診療報酬に対する特例措置だとか、そういうものをやはり思い切って直さなきゃならぬ。こういうふうに考えるわけでございますが、具体的にはそれはやはり参考人としては何か腹案を持ってられますか。どういうぐあいにすべきだというお考えを持ってられますか。これをお伺いしたいと思います。
○参考人(野口悠紀雄君) お答えいたします。
 地方財政が将来の日本の財政にとって非常に重要な意味を持つであろうという御指摘については私は全く同感でございます。ただし、具体的にどういうような内容のものを考えていったらいいかということでございますが、その点につきましては、私は個人的にはむしろ交付税率を引き上げるというようなことではない別の考え方を持っておりますので、御参考までに述べさしていただきたいと思うわけですが、私はまずやはり地方財政の重要性というものは十分認識されるべきだと思います。なぜそういうことを考えているかと申しますと、やはりその意思決定なりあるいは制度の改革なりというものを考えていく場合に、組織の大きさというものが私は非常に重要な要因ではないかというふうに思うわけです。国の制度においてもいろいろ改革しなければならない問題というのがたくさんあるわけですけれども、それがやはり非常にむずかしいというのは、国というものはやはり非常に大きな組織であるということが一つの大きな原因ではないかと思います。
 これにつきましては、私はいろいろ実証研究をやっているわけですが、そういう組織論的な観点から見まして、やはり意思決定の主体というものは余り大きなサイズのものになってはいけないのではないかという意見を持っているわけです。地方公共団体について、実は別のところでどういうような意思決定がなされているかというようなアンケート調査をして分析をしてみたことがあるわけですけれども、やはり県のレベルよりはむしろ市とかそういう比較的組織的な規模が小さいところの方がどちらかと言えば弾力的な対処をしているというような傾向が見てとれるわけです。そういったようなことから考えますと、やはり将来の国と地方との間のいろいろな分担というようなものを考えていった場合に、いろいろないま国がやっているような仕事というものを、可能な限り地方公共団体に移していった方がむしろ柔軟な対処ができるのではないかということを個人的には考えているわけです。ただし、その場合には大きな前提があるわけでして、それはおのおのの地方公共団体がやはり非常に制度的に財政的な責任をしっかりととらなくてはならないというような制度的な前提がある上で、そういういろいろな仕事を地方公共団体に移していくという、そのことを考えているわけです。
 そういったような点から考えますと、地方交付税の目的としてはいろいろなものがあるとは思いますけれども、その本来の意味における、まあ所得の発生する場所とその徴税地点が違うという調整を行うにとどめて、財源調整的な機能というのは余り持たせない方が個々の地方公共団体の財政的な責任というものを確立する意味ではむしろ望ましい制度ではないかというふうに私は個人的には思っているわけでして、そういった面から申しますと、現在の地方交付税の制度に検討の必要があるという点では福間委員と同じ考えを持つわけですが、内容については恐らく私自身の考え方は違う考え方ではないかというふうに思っております。
 それからもう一つ、将来の税制を考えていく場合に、御指摘のように特別措置等について徹底的な再検討が加えられなくてはならないというのは、私も全く同感でございます。ただ、将来の税収の中心的なものとして何を考えていくべきかというようなことを考えてみた場合には、やはりその特別措置を検討するということだけでは量的には恐らく確保できないわけですから、何らかの税制改正というものが考えられなくてはならないと思います。これはもちろん先ほど来申しておりますように、直ちに財政収支をバランスさせるために増税だというふうには私は考えておりませんで、その前にやはり歳出の徹底的な再検討が必要だというふうに考えているわけですが、仮に増税というものがどうしても避けられない、その場合にどういったようなものが選択されるべきかということを考えてみますと、やはり理論的に考えてみた場合には、一番望ましい税というのはやはり所得税であるということは事実ではないかと思います。
 したがって、所得税というものを理想的な形態に近づけていくということがまず第一になされなければならないことでして、そのためにはいろいろな論点があると思いますけれども、やはり課税ベースから落ちる所得がないような理想的な所得税をつくっていく、そしてそれを執行面においても確実に実行していくということが必要だと思いますが、ただ現実問題として考えてみますと、その課税ベースを拡大する場合に、所得の捕捉が非常にむずかしいたぐいの所得があることは事実と思いますので、そういったような所得を捕捉するコストというものも当然考えられなくてはならない。そういうコストとの比較において、水平的な負担の公平というものを補完できるような別の種類の税というものが考えられていくということは、ある意味ではやむを得ないのではないかというふうに思っております。
○福間知之君 野口参考人、いまのお話で地方公共団体に対する財源の移譲ですね。これは先ほど現行の三二%、国税に対して。それでは委譲されている事務の量に比べれば過少に過ぎるということで、絶対金額をふやさなきゃならぬという限りにおいてはどうお考えなのか。ちょっといまのお話でわかりにくかったんですが、地方公共団体自身が自前で収入をもっと上げるというふうなことをお考えになっているのかどうか。それはとても不可能だろうと私は思うんですけども、さしあたって現実的に見て交付税率を引き上げる、それで絶対額をふやすという必要を感じておられないのかどうかという点。
 それから二番目には、いろんな法人税あるいはまた所得税の不公正是正という問題、これは言うまでもない、同感だろうと思うんですけれども、最後に触れられたいわゆる一般的な増税ということに関して、すでに収支試算では、まあ中身のよしあしは別にして、財政は大変でござる、来年度あたりからは増税対策を考えなきゃいかぬぞというようなことが税調あたりでもすでに議論されておるわけでございまするから、だとするならば、参考人が最後におっしゃった、所得税で課税ベースを広げていって、より適切に捕捉をしてやっていくのがお考えのようですが、それだけでは、しかしとてもいまの財政を再建していくというのに力不足だろう。また所得税の上げ方につきましても、これはアメリカ型なりイギリス型なりいろいろあるようですが、政治的に判断をして、この際所得税の引き上げということは、政府・自民党、与党も非常にむずかしいということから、いわゆる一般消費税なるものの構想が浮上してきていると思うんです。しからば、その一般消費税というふうなものを検討する場合に所得税とあわせて検討すべきだと、こういうお考えなのかどうなのかということをお聞きをしたいと思います。
○参考人(野口悠紀雄君) 先ほど舌足らずのところがございましたので補足させていただきます。
 まず、国と地方との問題につきましては問題が二つあると思いますが、一つは、国対地方という観点において仕事の配分に応じた財源の配分をどういうふうに考えるかという問題と、それからもう一つは、それを行う手段として、地方交付税という形での公共団体間の財源調整的な意味を含む、そういうものを用いるのが適当かどうかという二つの問題があるわけでして、第一の点については、恐らく福間委員と私の申し上げていることと特に違った点はないのではないかと思いますが、その手段として交付税という制度を使うかどうかということに関しては、恐らく意見の相違があるのではないかと思います。私は交付税という制度を使うのは適当ではないのではないかというような意見を個人的には持っておるわけでございます。ただし、これは非常に、先ほど申しましたこともかなりどちらかと言えば極端な意見でございますので、その点は御了知いただきたいと思います。
 それからもう一つ、一般消費税についてですが、先ほど申しましたのは、財政学の理論的な観点から見た場合には所得税がやはり一番望ましい税であるということを申し上げたわけでして、御指摘のように、やはり実際に所得税を理想的なものに運営するということには非常に大きなコストがかかるわけでして、ある種の所得の捕捉というのは恐らく不可能に近いということも私は認めざるを得ないのではないかと思います。
 そういう意味からいきまして、財政学で言う水平的な公平というものを確保する意味から、一般消費税のようなものは当然考えられると思うわけです。ただし、一般消費税そのものをとってみた場合には、やはり負担の累進性が十分であるかどうかとかいうような問題点があると思いますので、それだけで考えることはできないで、やはり負担の累進性というような問題というのは、税体系全体の問題として考えていかなければならないのではないかというふうに思っております。
○福間知之君 いずれにいたしましても、参考人、いまことしの予算だけじゃなくて、まさにおっしゃるように、中長期の財政というものを展望したときに、減速成長時代にふさわしい財政あるいはまた中身を持った予算、こういうふうに私どもはしていく責任があると思うわけであります。
 国や地方を通じての財政の危機的な様相というようなものが深まっているわけでございまするし、一方また、ことしの財政に見られるように、大きな規模の経済を財政がどこまで主導できるのかということを考える場合に、それは、よほど中身について過去とは違った発想の転換というものを私たちはやるべきじゃないのかと、投資が投資を呼ぶというふうな景気対策はもう過去のものである。先ほども、中島んのでしたか野口さんでしたか、おっしゃらたましれように、ビジョンというものが必要だと。福祉の予算と言ってもいいと私は思うのですが、国民の生活を、単に賃金、所得だけじゃなくて、生活の環境あるいはまた将来の保障というふうな、長いスタンスでもって財政というものの効用をやっぱり図っていかなきゃならぬと思うわけであります。
 そういう点で、国民福祉の充実あるいはまた地方自治の真の拡充、そういうところに視点を置いた財政に転換をして、その限りで必要な制度、慣習というものを思い切って改革する、こういうことが私は必要だと思うんですが、ことしの予算はそういう点では、どちらかと言うと、従来の延長線上にあるにとどまっておって、しかも公共事業中心の景気浮揚策というところに力点を置き過ぎてはいないか、それがまた期待するようにいかないのじゃないかというのが私どもの感じなんですが、時間もございませんので、お二方の所見を伺いたいと思います。
○参考人(野口悠紀雄君) 先ほど感想を申し述べましたように、やはり今年度の予算の一番大きな問題点というのは、長期的なビジョンの中にうまく位置づけられていないということにあるのではないかと私思いますので、そういう意味から申しますと、やはりきょうの御審議のテーマであります財政収支試算というようなものも、もう少し中身を持った具体的なものにする必要があるのではないかというふうに考えるわけです。
 それは先ほど御議論がありましたような財政計画というようなものに移っていくわけでして、先ほど大蔵大臣の御答弁にありましたように、御検討中ということでありますので、私は早くそういうものが作成されることを望んでいるわけです。いろいろ技術的にむずかしい問題があるのは事実だと思いますし、特に長期的な経済展望をどうするかというのは非常にむずかしい問題だと思いますが、諸外国におきましても、イギリス、西ドイツあるいはアメリカ等でも、そういった問題は抱えながら、やはり五年間程度の財政見通しあるいは財政計画というものを作成して、それをもとにして年々の予算を検討しているというような状況だと思いますので、日本においても、そういう財政計画の策定というのが一日も早くできることを私は望んでおります。
○福間知之君 ちょっとついでに。中島参考人、ただいまの件と、それから先ほどちょっと聞き忘れたんですが、要するにCD、いわゆる譲渡可能な定期預金証書ですね、これは英米の銀行ではどういうふうな内容になっているのかということ。それから、この場合の金利はやっぱり自由金利という前提なのかどうかということについて。
 それからもう一点、野口参考人に。最後に触れられた四、五年先の財政計画ですか、こういうものを策定するとおっしゃられましたね。これは私なんかもいまそういうことを感じておるんですが、それは制度として、いまの法律の枠組みから言って、単年度主義のたてまえをとっているわが国財政、それとの関連についてどう考えるか、後ほどちょっと一言。
○参考人(中島将隆君) アメリカにおけるCDの内容につきましては、具体的に私存じておりませんのでお答えするわけにはまいりませんが、私はこの問題について、基本的にはわが国における短期債市場が十分に育成される条件が整っていないという、その点が最大の問題であろうかと思うわけです。短期債市場を現在育成していく条件、土台というのは現実にあるわけであって、つまり具体的には短期債市場というのは現先市場――条件つき債券売買市場によって代位されていると思うわけですけれども、そうした現先市場の拡大というのは、わが国において短期債市場を育成していく条件があるということを示しているものであり、短期債市場を育成していくという、そういう視点に立ってCDの問題も論じられるべきではないかと思うわけです。
 そうして最後の問題です。もう一つは、国債を金融市場の制約に従って発行する、政府資金を金融市場から調達しなければならない、そうした方向というのは、これまでの政策の一大転換を意味するものだと思うわけです。単に国債の発行条件を弾力化すればいいということだけではなしに、国債の発行条件を弾力化すればそれを取り巻いている諸条件、諸制度をすべて改革していかなくてはならない。一つの改革がすべての改革に連動していくという、そうした関係にあるわけであって、したがって、国債の発行条件を弾力化していくということは非常に困難であろうかと思いますけれども、私は、未曾有の非常な危機に混乱している今日、従来の経済哲学というものを根本的に転換する必要がある、発想の転換が必要であると思うわけです。日本の歴史を見てみましても、松方財政あるいは昭和期の高橋財政というのは、従来の考え方を根本的に転換して、直面した危機を乗り切った経験があるわけです。したがって、私たちはそうした現実を直視して、従来の発想を大きく転換して、これからあるべき一つの政策の体系を示すということが今日最も必要とされている問題ではなかろうかと思うわけです。
○委員長(鍋島直紹君) 野口参考人、時間が来ておりますので、簡単に。
○参考人(野口悠紀雄君) 簡単にお答え申し上げます。
 財政計画を策定している諸外国の例を見ますと、多年度予算をつくるということではございませんで、予算は単年度で毎年毎年つくって、その参考資料として多年度の財政計画を策定するという形式をとっているようでございます。私も、日本の場合ももし導入するとすれば、そういった方式が望ましいのではないかというふうに思っております。
○福間知之君 ありがとうございました。(拍手)
    ―――――――――――――
○委員長(鍋島直紹君) 次に、矢追秀彦君。
○矢追秀彦君 財政展望に入ります前に、牛場大臣と宮澤大臣にお伺いします。
 本日も二百二十六円台に円が高くなって突入したわけでございますが、いろいろ政府も対策を講じられ、ヨーロッパの方もアメリカに対してもいろいろやっておりながら、現状このように二百二十六円台という空前の高さになったわけですけれども、この現象をどうごらんになっておりますか。依然としてアメリカがドル防衛をやる気がないと、こういうふうに断定をしてもいいのではないかと私は思うのですが、問題になっておりました炭鉱ストライキも解決をしたようでございますし、そういうようなことで少しはと思いましたが、こんな状況です。その点について宮澤大臣はどうお考えですか。
○国務大臣(宮澤喜一君) アメリカの大衆あるいはその上に位つ政治にとって基軸通貨としてのドルという意識は、実は非常に薄いことは矢追委員がよく御承知のとおりで、私もしばしば申し上げております。しかし、最近のインフレーション等等によって、自分たちの問題として、この問題を少しずつ政治の課題として意識し始めたということも事実であろうと思います。もとよりアメリカ国民から言いますと、やはりカナダとかラテンアメリカとの取引関係が多うございますので、それらに対しては比較的ドルが減価していないということがございますけれども、それでもしかし、自分たちのインフレの問題としての認識が少しずつ強くなってきておる。そういう背景で、やはりだんだんお互いの問題になってきておるということを私ども見ておるわけでございますけれども、しかし、やはりアメリカの政治の優先順位から言えば、申し上げるまでもなく内外にたくさんの問題があって、この問題がいまやトップの優先の問題になったともいまだ言いにくいような現状であると思います、だんだんそうなりつつあると思いますけれども。したがいまして、私としましてはこの問題ですぐ日米間あるいは数カ国間の合意が出るということではなく、やはりそれは日米の首脳会談でありますとか、あるいはIMFの蔵相会議でありますとか、七月の各国の先進国首脳会議であるとか、そういうところへつながっていかなければならない問題であろう。しかし、そのときになって突然言い出しても事は遅いのであって、やはりいまからそういう問題意識を先進国がお互いに持つということが必要であろうという意味で、せんだって以来のことを申し上げておるわけでございます。
 今日あたりの市場が何を的確に反映しておりますか、私は存じませんけれども、各国ともいわゆる投機筋が為替をいじるということはお互いに迷惑なことであるということははっきりいたしておりますし、なお、アメリカ自身の問題にもなりつつあるということから、多少時間がかかりますことはもとより承知でありますが、やはりそういう方向に向かって問題提起をしていきたい、こう考えておる点では変わりはございません。
○矢追秀彦君 牛場大臣、先日ECといろいろ協議をされて、共同声明まで出されたわけでございますが、ECとしては、このドルについてはどのように見ておるか、特にドル安というふうに見ておるのか、あるいは円の問題と見ておるのか、その点はまずいかがですか。
○国務大臣(牛場信彦君) 今般の協議の際に特別に通貨問題についてそれほど深く話し合ったことはないのでございますが、日本の経済成長の達成あるいは国際収支の黒字削減のためには通貨情勢の安定が必要であるということはわが方が申しまして、ECも全くそのとおりだということを申しておったわけでございます。そのほかにドイツの中央銀行総裁なんかと前に話したこともあるんでございますけれども、ヨーロッパの考え、感じはマルクの問題と円の問題は別だという感じが強いと思います。といいますのは、日本の経常収支の黒字がどんどんふえておる、マルクの方は最近は大分減ってきております。そういうこともありまして、円の問題は必ずしもマルクの問題と一緒だという感じではないようでございます。
○矢追秀彦君 ということは、ECはドル安と見ていないのではないかと、いまの御答弁から伺うと思えるのですが、そういう点で特に西ドイツとアメリカの間にはいろんな話し合い等もされておるわけでございますから、そういう点等を考えますと、何か日本だけが集中砲火を浴びておるような感じがないでもないんですが、その点、牛場大臣はどうごらんになりますか。
○国務大臣(牛場信彦君) これは私の本当の私見でございまして、これは通貨当局からお答え申した方がいいと思うんでございますけれども、日本の円に集中砲火を浴びせているというような感じはどうもないと思うんでございますがね。
○矢追秀彦君 ちょっとあっさりされ過ぎていると思うんですけれどね。いまさっきの答弁で、余り問題にされなかったにせよ、日本の黒字ということが一番問題になっておるというふうに言われたわけですから、だから私はいまのようなことを伺ったわけです。こういうふうに日本が集中砲火を浴びていないという大臣の認識ですが、宮澤長官はどういう認識ですか。
○国務大臣(宮澤喜一君) この点がいまの段階で申しますと、と申しますのは、私は昨年の秋から後のころには、どうもアメリカにとっては円がもっと高いことが国益になるという意識が相当あったのではないかという疑いを持っておるんでございます。ところが、最近それを非常に露骨にやっぱりそう思っているかと聞いてみますと、いまそうは思っていないという答えが返ってくるわけでございます。過去にそうだったとは申しませんけれども、いまそう思っていない、真実そう思っていないということを申しますので、その点、私は牛場大臣の言われた印象と同じような印象を持っておるんでございますけれども、それならすぐにひとつ何か考えるかということになりますと、そこにはまだちょっと距離があると、こういう感じでございます。
○矢追秀彦君 牛場大臣にお伺いしますが、共同声明づくりは大変難航されたようですが、一番問題にしているのは、いま少し言われた黒字のことだと思いますが、これについて、特にECは日本が経済の七%成長を達成し、内需を拡大し、そして輸入を拡大してほしいのか、もちろんそれはそうだと思いますが、ECが一番望んでいるのは一体何なのか、内需拡大による場合は原料輸入ですよね。そうではなくて製品輸入のような気もするんですが、その点はいかがですか。
○国務大臣(牛場信彦君) ECの委員会といたしましては、拡大均衡を望んでいることは確かでございます。今回も、したがいまして日本側のいろいろな措置につきまして、特に製品輸入ですね、製品輸入の割り当てを上げてくれということを非常に強く要求しておったわけでございまして、ただ、ECといいますのは、御承知のとおり九カ国から成り立っているわけでございまして、九カ国の中には必ずしも日本に対して輸出をふやすことよりも日本からの輸入をむしろ遠慮してもらった方がいいという考えを持っている国もあるわけでございまして、なかなか向こうの中でも意見は簡単には一致しないようでございます。そのために非常に難航したということはあるのでございますが、委員会そのものは非常にこれは自由貿易を守ろうという意思の強い組織でございまして、自分の方の輸入制限につきましては非常に厳しくそれを反省しているという立場はあると同時に、相手方の輸入制限に対しては厳しくこれを批判すると、こういうことでずっとやってきているわけでございまして、われわれとしましても委員会のそういう立場を尊重し、そういう立場をとっている委員会に力をつけてやるということがこの際必要なことであると思って共同声明に至ったわけでございます。
○矢追秀彦君 これは宮澤長官と通産大臣にお伺いしますけれども、いま言われた製品輸入を強く望んでいる。しかし、現在の日本の経済の仕組みの中でなかなか製品輸入をふやすことはむずかしいと思うのですね。そのために消費の拡大でもうんと伸びればこれはまた別でしょうけれども、その点がこれからの見通しとしてどうなのか、両大臣からお伺いしたいと思います。
○国務大臣(宮澤喜一君) これは何分にもわが国が戦後できるだけのことは自分の国でやって外貨の節約をしようと。日本は資源のない国であるから云々ということでそういうふうに経済をつくってまいりましたから、ことに、まあヨーロッパの国と違いまして、周辺に水準の高い工業製品をつくる国が最近までなかったことも手伝いましてこういう経済をつくり上げたわけでございますので、そう急に様子が変わるということは私はむずかしいと存じますけれども、しかし、政府が先般来なるべく政府関係の契約にも国内メーカーと同じチャンスを外国メーカーにも与えるというようなことも決定いたしましたように、あるいはまた、たとえば医療機械でありますとか、原子力発電の周辺部分でありますとか、コンピューターの一部でありますとか、航空機あるいは航空機のエンジンのようにわが国自身がつくっていない、あるいは比較的多くない、強くないといったような分野についてこれはやはりお互いが問題を、わが国の置かれております問題を意識することによりまして外国からの輸入をふやしていこうという努力は、これは努力次第で私はかなりできてくるだろう。何分にもいままで過去三十年間考えてまいりました考え方とかなり方向が違うものでございますから、意識の転換ということがございませんとむずかしいことでございますが、まあ、ここに来ましてそういう考え方はかなり急速に広がっておりますからある程度時間をかけましたらそういう方に動いていけるのではないかと存じます。
○国務大臣(河本敏夫君) アメリカ、ECから製品輸入をふやすということは相当むずかしいわけでございますが、努力と工夫をすれば可能性はまだ相当残っております。先般もアメリカに対しましては池田ミッションを派遣をいたしまして相当全米各地で精力的に動きました結果、ある程度の成果も納めることができましたし、それからまたアメリカ側に対しても、もっとアメリカの製品を日本市場に販売するために工夫と努力をしてもらいたいということを強く要請をしております。先方からもこの秋には大型のミッションが日本に製品売り込みのためにやってくるはずでございます。
 それから、またECに対しましても、もう少しEC側から製品の日本市場での販売について工夫と努力をしてもらいたいということを強く要請をしております。それに対して、日本としてもできるだけの協力をするつもりであるということも先方に伝えてあります。でありますから、やはり工夫と努力によりましてある程度のものは私は増額することは可能であると考えております。
○矢追秀彦君 次に、財政の問題に入ります。
 野口参考人にお伺いをいたしますが、先ほど来いろいろ先生のお考え方を伺いましたが、参考人の場合は歳出の削減ということを一番強く言っておられるわけです。大蔵省の財政収支試算のケースでいきますと、どちらかというとBケースそのものじゃありませんけれども、Bケースに近いお考えではないかと思いますが、この歳出削減をやらなければならぬと私も思いますけれども、具体的におっしゃっておる中身についてはかなり現実にやろうとした場合むずかしい問題が出てくるのではないか。たとえば国鉄への助成一つ取り上げても現在の赤字というものをどう解消していくのか。これをやろうとしたら値上げあるいは合理化、人員を整理してしまう。そういうようなことでまたこれ失業が出てくるという問題も出てきますし、果たして国鉄への助成というものが現実に削れるのかどうか。また今度は新幹線も今度の経済対策ではふやす、一挙に拡大ということになってきておりますし、そういう点でどうなるのか。また中小企業の対策費等もこれはもっと削ってはどうかという一つのテーマに出ておりますけれども、いま円高でこのように大変あらしが吹いている中で可能なのかどうか。確かに中小企業対策費が後ろ向きであることは私も認めます。決して否定はいたしませんが、しかし、それもやらないでほうっておいたんではこれまた大変なことになってしまう。やはり最小限度の支えはしてあげなくちゃいけないのではないか。また食管についてもこれまた農民の立場というのがございまして、私のような都市に住んでいる場合であればたくさんの人から疑問も投げかけられますけれども、やはり農民の立場を考えればこれもある程度続けなければならぬ。そうなりますと社会保障という問題しか何か残らないような気がするんです。私学の助成も言っていらっしゃいますが、これとてもいま授業料がこれだけ高騰してきた中でこれを打ち切っていいものかどうか。そうなりますと、何となく社会保障というものを洗い直すということになって、一つには福祉切り捨てということが問題に出てこないか。その点まずお伺いしたいと思います。
○参考人(野口悠紀雄君) お答えいたします。
 最初に、大蔵省の財政収支試算のケースBに私の考え方が近いのではないかというような御意見でございますが、この財政収支試算のケースBの説明にも書いてあったかと思いますが、ケースBというのは非常に極端なケースでございまして、振替支出は名目値でずっと五十七年度まで固定してしまうとか、それから経常支出の中の地方交付税を除く部分についてもほとんど伸びないというようなことで、やはりこれはかなり極端なケースですので、私の考え方がこれに近いということではございません。その点は御了知いただきたいと思います。
 それから、私がこれまでいろいろ雑誌等に書きましたものをお読みいただきましたようで大変光栄に存じておりますが、いろいろなところで歳出の中身に問題があるということを議論したわけですけれども、そこでの論点は二つございまして、一つは、やはり高度成長期には税収の伸びというものが比較的順調であったためにわりあいとその財政支出を拡大する余裕があったと。で、そういうものがずっと続くというような前提のもとで、いろいろな制度ができたり、あるいはその政策が続けられているけれども、そういったようなものが安定成長時代に移っていった場合に、果たして高度成長と同じような形で残ることができるのかどうかということをやはり考えなくてはいけないということが一つでして、
  〔委員長退席、理事内藤誉三郎君着席〕
それからもう一つは、財政支出の出し方というようなことがあると思うんですけれども、たとえばいま御質問の中でございました、最終的には社会保障を切るということになって、その福祉切り捨てということになるのではないかというような御指摘があったわけですが、私はそのようには考えておりませんで、たとえば具体的にどういう例をとって申し上げたらいいかよくわからないわけですけれども、福祉ということをむしろ拡充するためにも、現在の支出の出し方が検討されなければならないようなものはあるのではないかという気持ちがしているわけです。適当な例かどうかわかりませんが、たとえば健康保険というものを考えてみますと、まあ御承知のように、現在国民健康保険に多額の国庫補助が出されているわけですけれども、果たして健康保険の本来の目的から見てみた場合に、ああいう出し方が適当なのかどうか、あるいはそれは財政支出の出し方というよりもむしろ健康保険の制度そのものの問題だと思います。つまり仮に健康保険の本来の目的というものが、非常に大量にかかった場合に非常に多額の医療費負担がかさんで、そのために家計が崩壊してしまうと、そういうようなものに対する保険として健康保険があるのだというような考え方に仮に立つとしますと、むしろ軽度の診療に関してはそれをまあ自己負担で賄っていって、むしろそういう家計の崩壊というようなことになるような多額の医療支出に対して保険的機能を発揮させるということが、私は本来のあり方ではないかというふうに考えておるわけなんですけれども、そういったような観点から見た場合に、現在の健康保険のあり方が適当かどうかというような問題があるのではないかと思います。
 それから、確かに私学の助成ですとか、あるいは国立大学の授業料というような、あるいは国鉄に対する助成というようなことについても言及しました。で、これは個々のそういう支出によって、まあ便益を受ける階層から見れば非常に重要なことですけれども、私はやはりこういう社会保障、広い意味での社会保障的な性格を持った経費というものは、そういう特定のグループを対象にして出されてはいけないのであって、たとえばその所得というものを、あるいは所得というものを指標にとられた場合には、その所得ということによって客観的に出されるような仕組みになっていなければいけない。ですから、たとえば私学の助成なり、国立大学の授業なりというものは、その大学に行っている方あるいは子弟を大学に出している家計がそういう便益を受けるわけですけれども、その負担というのは必ずだれかがしているわけです。そうした場合にその負担というのは、あるいは大学に子供を出せないような貧しい家庭がその税金を払うことによって負担しているのかもしれない。そういうようなことがもしあるとすれば、それはその本来の所得再分配のあり方から言って果たして適当なものかどうかというような問題があると思います。そういうように、特定のグループを対象にしたそういう所得保障的な経費というのは、所得再分配の全体としてのあり方を非常にあいまいなものにさせるという問題点があると思いますし、それから、これは経済学では非常によく言われることですけれども、本来市場があって価格がその資源配分を決定できるような分野に価格を動かすことによって介入した場合には、まあこれは若干専門的な話になって恐縮ですが、一種の資源の、社会全体から見てその資源のロスが生ずるという、そういう議論があるわけですけれども、そういう点から言っても、やはり広い意味での価格に介入するような政策というのは望ましくないのではないかと思います。
 それで、御指摘の中で、果たしてそういうものを現実に削れるかどうか。それは政治的に非常にむずかしい問題ではないかという御指摘がありましたが、私はそういう問題があるということは認識しているつもりでございますけれども、やはり私は財政学を研究する立場からそういうことを申し上げているわけでして、財政学の立場から社会全体として見た場合に、どういった支出の出し方が望ましいかということを第一義的には考えたいと思いますので、実際にそういうものが、そういう経費の削減がむずかしいということは承知しておりますが、やはりそういうものを乗り超えていかれることが、ここにお集まりの国会の皆様方やあるいは行政府に課せられた義務なのではないかというふうに考えております。
○矢追秀彦君 まあいまは社会保障費のことで医療の問題にも少しお触れになりましたが、私も現在の保険制度が決していいとは思っておりません。一番日本で問題なのは、いま高額の医療の費用を問題に出されましたけれども、社会保障と社会保険というのがごちゃごちゃになっておる。これが一番私は混乱の大もとだと、私自身個人的に思っているわけです。
 たとえば西ドイツであれば、高い保険料を払った人は高度な治療を受けるようになっているわけです。日本ではそうはなっていないわけです。しかし保障はきちんとしなきゃいけません。したがって、私は医療の問題だけではなくて、やはり最小限度の憲法第二十五条に保障されたいわゆる国民の健康で文化的な生活の確保というのは私は国の財政が責任を持ってめんどうを見ると、あとはその上に立った上で、いま先生の言われたいろんな歳出の矛盾といいますか、まあ卑近な言葉で言うと死に金というか、むだ金ですね、これはもう補助金も含めてやらなきゃならぬと思うんですけれども、やはり最小限度の生活保障ということは国として責任を持ってやる必要がある。その上に立っての先生の御議論ならある程度わかるんですけれども、どうも私の誤解かもしれませんが、聞いておりますと、何か効果のあることだけにお金を出していく。効果のないことには余り出さない方がいいんじゃないかというふうに聞こえてならないのですけれども、その点再度お伺いしたいと思います。
○参考人(野口悠紀雄君) お答えいたします。
 舌足らずの点がございましたので補足さしていただきますが、御指摘のように最低生活あるいは国民にとっての基礎的な生活を保障するということは、やはり所得再分配の面から財政が一番最初に考えなくちゃいけない問題だと思います。で、その点については、単に歳出の面だけではなくて、所得税、まあ広く税制一般の問題とも絡んで考えられなくてはならない問題だと思いますが、やはり御指摘のように、私は日本の社会保障の現実の制度は社会保障としての機能と保険としての機能が区別されないで、ごたごたになっているというのは御指摘のとおりだと思います。やはり理論的に言いますと、基礎的な生活を保障するという部分は、公的扶助制度というものを拡充することによってなされるべきであって、社会保険というのは、社会保険としての機能を前面に押し出すべきではないかというのが私の考えでございます。
 そういう基礎的な生活の保障ということをする部分というのは、一つの考え方は、そういう公的な扶助というものと所得税を結び合わせた形で負の所得税というものがアメリカ等で提案されているわけですけれども、先ほど申しましたいろいろな分野にばらまかれている所得保障的な経費を統合して、たとえば負の所得税というようなものに統合していくということは、理論的な観点から言えば必ずしも現在の日本の段階でも不可能ではないと思います。もちろんその実際の運用に当たっていろいろな問題があることは事実と思いますけれども、必ずしも負の所得税というのは財源的に不可能な制度ではないというふうに私は考えております。
○矢追秀彦君 時間の関係で大蔵大臣にお伺いしますが、野口参考人の御意見は、先ほど来るる御説明になりましたように、大きく分けて三つの選択、一つは公債に依存していく、二番目は増税をやる、三番目には歳出削減で、歳出削減から手をつけてはどうかという大体の御意見のように思うわけですが、政府としては財政収支試算では大体ケースCということを一応考えられておるということが当委員会でもいろいろ言われております。ということは二の増税をまず主体にやって財政再建をやっていこうと、こういうことになるわけです。現実問題として、来年度から一般消費税導入、政府のやりたいお気持ちはわからぬでもないんですけれども、なかなかこれはむずかしい問題だと思います。現在のこのような景気の状況、あるいは国民の消費も冷えておる、こういう事態になかなかむずかしいんではないか。といって、いま言われた歳出削減ということになりますと、これまたいろんな政治的な問題で、早速来年度からというのもむずかしいように私は思います。となると、結局、最終的には不本意かもしれませんけれども、ことしと同じようなスタイルでまた来年度の予算も組まれるのではないか。言うなればAケースですね、ケースAの方に、やりたくないでしょうけれども流れていくのではないか。これを大変私は懸念しておるわけですけれども、その点大蔵大臣どう思われますか。あわせて経済企画庁長官の御意見を伺います。
○国務大臣(村山達雄君) 来年度は具体的にどういう財政政策をとるかということは、ことし一年様子を見まして現実的に考えなくちゃならぬことは仰せのとおりでございますが、ただ、実はいままで毎年いろんな環境を考えて、ことしは負担の増を求めるべきではないじゃないか、歳出も切るべきではないじゃないかと、実はその連続であったわけでございます、四十九年から今日まで。それがここに来てしまったということでございますので、収支試算、そうなるというわけじゃございませんけれども、収支試算で示しておりますのは、
  〔理事内藤誉三郎君退席、委員長着席〕
やはり歳出を節減するということの裏には、やはり資源の効率化を考えているわけでございまして、先ほどから参考人もいろいろ述べられているように、本当にその資金が生きなくちゃならぬということを考えているわけでございます。それからまた、負担の増についても申し上げましたけれども、心理的には何税であれ、これはもうみんないやがることはわかっているわけですが、延ばすことの意味は一体何であろうかということもまた考えねばならぬ。仮に負担の増をやりましても、その求め方、その歳出の使い方によって、私は景気は悪くなるということは理論的には考えないのでございます。ただ、心理的に非常に大きな問題があるということは重々承知しているわけでございますが、しかし、どこかで踏み切っていかなければならぬ。来年も踏み切るべきではない、その次も踏み切るべきじゃない、これは一体行き着く先はどうなるのであろうか。われわれは第二次大戦前の状況を思い出しているのでございまして、ずうっと四〇%できて、ついにもう終戦間際になりますと六〇%から臨軍費を出しまして、一〇〇%以上全部出したと、一般会計から見ますとね。これが全部の日本の産業なりあるいは家計の破壊につながったことを想起しているわけでございます。どうもわが民族は、まあ言いますと器用といいますか、その場その場のことは非常にうまいけれども、大勢に流されるという点は、どうも考えてみて、われわれもやっぱり考えていかなければならぬのじゃないか、私自身を省みて、みずからむちうっているような気持ちでおるわけでございます。そのような考えでございます。何とかして早く解決の糸口を見出したいものだと、ただいまのところそのように念願しているわけでございます。
○国務大臣(宮澤喜一君) 財政が広い意味での経済にとって一つの手段であることは事実でありますから、この五十三年度のようにきわめて異例なことを財政がやろうとしておるわけでございますけれども、同時にまた、しかし財政は広い意味での経済の非常に大きな要素でもございます。しかも経験的には、財政からインフレーションが起こりやすいという要素でありますから、財政がどうなっていても経済がうまくいくということは、長期的には私は言えないであろうと思います。ことに大きなインフレーションは一番財政から起こりやすいわけでございますから、そうなれば長期にわたる経済の安定的な運営というものは困難になるわけでございますから、今年のような役割りをいつまでもこういう形で私は財政が果たしていて、長い意味で日本の経済がよくなるものとはやはり考えにくいので、そこは何かある時期において一つのめどというものを持たなければならないのではないかというふうに考えます。
○矢追秀彦君 時間がなくなりましたので、これで終わります。(拍手)
    ―――――――――――――
○委員長(鍋島直紹君) 次に、渡辺武君。
○渡辺武君 二十五日の日に、閣僚会議で七項目の経済対策が決まって、発表されました。ちょうど当日は円が一ドル二百二十八円、二百三十円台を割るというショッキングな事実があって、それを背景として出された経済対策でありますので、私、何かこの円の急騰にかなり効き目になる対策でも出たのかなと思って拝見したんですが、全くこれはもう一言で言えば新味のない対策、従来の政府の経済対策と内容上は変わりがないという印象を受けました。中身を読んでも、そのとおりだというふうに思います。
 一体、この七項目の経済対策、これがどのような効果を円対策上生ずると考えていらっしゃるか、まずお答えいただきたい。経済企画庁長官。
○国務大臣(宮澤喜一君) 渡辺委員のお言葉ではございますけれども、私ども、この二十五日の当面の経済対策を発表するということによって、それがすぐに為替市場に影響をするというようなふうにはもとより考えておりませんでした。私どもが今回いたしましたこの二十五日の決定は、まあありていに申しますと、予算を衆議院及び参議院で御審議をいただく、これは両院、ことに委員会において非常な長い時間と御努力を費やしていただくわけですけれども、私ども政府側にとりましても、これは非常に厳しい何カ月かでございまして、予算が上がりますとついやれやれという気持ちを持ちやすいので、そうしますと、執行とか、あるいはその他の法律案の政令づくりがどうしてもおくれます。これだけの予算でございますから、これを早期に執行するか、あるいは一年たって、一年のうちにやればいいかということでは国民経済に与える影響が非常に違いますので、予算が成立したときにはすぐにでも、もうできるだけ早くその執行が行われるようにということを中心にいたしましていろいろ対策を協議いたしました。したがいまして、このことは私どもが今年、五十三年度の予算が必ずわが国の経済を健全な成長に導くと信じておりますそのことを具体的に予算の成立とともに施策に移していこうという努力でございますから、少し長い目で見ますれば、これはわが国の経済運営に相当の影響を与えますことは確かであるというふうに考えておるわけでございます。
○渡辺武君 なかなか悠長な考え方をしているんですね。
 次に、ちょっと予備的に伺いたいんですが、この七項目の対策ですね、これに伴う財政措置、これはどういうものになりますか。新聞の報道によりますと、公共事業等予備費、これを使う、あるいはまた財政投融資の弾力条項を活用するというようなことが書かれておりますが、どのぐらいの規模でそれらを使おうというふうに考えておられるのか。
○国務大臣(村山達雄君) 二十五日の発表されたものにつきましては、将来構想は別にしまして、重立ったものは、大体金融サイドで片がつく問題が大部分であろうと思うのでございます。中には、ものによりましては現行予算の範囲内でやりくりして済む問題もあるであろう。主としてはやはり金融サイドの問題であろうと思います。
○渡辺武君 公共事業の契約率ですね、上半期に七〇%程度に持っていくんだと、こういうことに書いてありますが、もしこれが実現しますと、下半期公共事業、これは契約率三〇%しか残らないということになりますが、補正予算を考えておられるのですか。
○国務大臣(村山達雄君) 補正予算は考えておりません。そして七〇%というのはあくまでも契約率でございまして、工事ベースは別問題でございます。
○渡辺武君 これを拝見しますと、いま申しましたように公共事業の契約率上半期七〇%、それにさらにつけ加えて新幹線五線ですね、これの問題なども出ておりますし、本四架橋の問題なども出ております。相変わらず大企業本位の大型公共事業中心の経済対策を考えているというふうにしか考えられないわけですね。
 ところで、私伺いたいのですが、新幹線五線について、東北、上越以外の新幹線ですね、これは今年度じゃなくてもっと先の話になるんじゃないですか。この点はどうですか。
○国務大臣(村山達雄君) この問題は、計画を九月末までに早く決定しようじゃないかということでございまして、予算としては、着工ということになりますれば、もちろんもっと先の話でございます。
○渡辺武君 それから本四架橋ですね、児島−坂出ルートの話も出ていますけれども、これもことしじゅうの着工ということを考えているのですか、もっと先ということを考えているのですか。
○国務大臣(村山達雄君) これは五十三年度予算でもうすでについているわけでございます。しかし、なかなかいろんな問題がありまして、ともすると執行がおくれがちであるわけでございますので、それで早目にやろうということでおおよその期限的な目途をつけた、こういう意味でございます。
 ついでに申し上げますと、今後の公共事業は、御案内のように、生活関連の方がはるかに伸び率が高いわけでございますが、これは何といってもプロジェクトとしてはそんなに大きな問題でございませんので、この方の執行はみんながもう急ごうということで一致しておりますが、むずかしい問題についていま取り上げたと、こんな考えでございます。
○渡辺武君 そういう先の話のことまで、円が急騰して、だれもがこれは緊急の円対策だろうと思ってみる中に今年度施行するのじゃないものまで含まれている。これはまことに奇妙な話だなあという感がするのです。東北、上越新幹線以外のやつ、それから本四架橋の児島−坂出ルート、それから関西新空港だって今年度予算では調査費がついているだけでしょう。実際の実施はもっと先だと思うんですね。これが一体当面の円対策とどういう関係がありますか、伺いたいと思う。
○国務大臣(村山達雄君) 二十五日に決めましたのは、全部当面の円対策ということで決めたわけでないことをあらかじめ御承知願いたいのでございます。国民的要望のある問題につきまして、そして将来の日本の大きなプロジェクトにつきましてできるだけ早期に決定するということは、これは国民的の要望でもあると思うわけでございますので、そういう意味で取り決めているのでございます。
○渡辺武君 いま予算審議中ですけれども、しかし、この二月の成立しました補正予算、あれと結びついて十五カ月予算だと、切れ目のない予算の執行をするんだと、こういうことで提出しているわけでしょう、国会に。ところが、まさにその十五カ月予算の執行中に円はどんどん上がっているんですね。どちらもこの大型公共事業中心の予算であることは、いまさら指摘するまでもないことなんですが、これでは円の急騰を防ぐことはできないというのはすでにもう実証されていることだと思うんですね。そうして、いま明らかにしましたように、この七項目の対策、当面の円対策じゃないとおっしゃるけれども、しかし、だれだって円が二百三十円台が割れたというショッキングな事実を前にしては、何か有効な円対策を打ち出したなという感じでこれを見ますよ。ところが、そうじゃない。しかも、その中には先の先の話のことまでいかにも目玉対策か何かみたいに盛り込んでいる。これは政府の私は円対策がまさに手詰まり状態になってきている、このことをはっきり証明するものだと思うんです。こういうもう試験済みの効果のない対策ではもうだめだと思う。政策の発想を転換すべきだと思いますけれども、そういうおつもりはありますか。
○国務大臣(村山達雄君) 政府は、最初から述べておりますように、ことしのような積極的な予算の執行、特に内需の拡大、それによりまして急激に円対策に効いてくるとは初めから言っていないのでございます。これは徐々に効いてくる問題であるということは繰り返し述べているわけでございます。先般の公定歩合の引き下げについてもそういうことを言っているわけでございまして、円のさしあたりの問題は、まさに為替市場における実勢があらわれておると、それもやがてはだんだん来年度予算を執行するに従いましてその市場の中に吸収されていくであろうということを期待しているということは繰り返し申し上げているわけでございます。
○渡辺武君 そんな悠長なことをしていたら国民の方はたまらぬですよ、これ。輸出中小企業の実情を見てごらんなさい。二百三十円台割れして非常に深刻な状態に落ち込むというのは、これはもう私がいまさら指摘するまでもなく明らかなことだと思う。とんでもないですよ。しかも、その先の話を考えてみても、私はいまの政府の対策では結局のところ効果は上がらないだろうというふうに言わざるを得ません。
 なぜかと申しますと、円高には大きく言って私は二つの原因があると思う。一つは、アメリカのドルのたれ流し、国際収支の大幅な赤字、つまり外的な要因です。これに対して政府はドル安定政策をアメリカに要請するというようなことを口だけではあるでしょうけれども述べております。しかし、国内的な要因がもう一つある。私は、これはいまの深刻な不況と同じ根源を持っている、こういうふうに見て差し支えないと思うんです。なぜかと申しますと、この長らく続いた高度成長の中で、一方では大企業が巨大な生産力をつくった。他方ではその巨大な生産力をつくる基礎となって労働者の賃金がずっと抑えられてきているでしょう。GNPでは資本主義諸国の中ではアメリカに次ぐ世界第二番目だと言っているけれども、労働者の賃金の方はアメリカの二分の一の水準でしょう、西ドイツの三分の二の水準です。労働時間だってはるかに長い。中小企業の下請単価なんというものはもうすさまじく切り下げられている、そういう状況です。このために国内市場が狭くなって、そうしてこの深刻な不況、五年続きでなかなか解決できないという事態が一方で生まれ、同時に、その国内市場の狭さを輸出によってカバーしようということで低賃金、これに多少の近代的な技術をくっつけて物すごい集中豪雨的な輸出をやっている。これがいまの円高の一つの重要な原因になっているでしょう。
 深刻なこの経済危機と、そうして円高と、私は同じ根から出ていると思う。ところが、政府の方の経済政策は、先ほど申しましたように、大型公共事業をやりさえすれば何とかなるんだというこういう政策。全くこの根源に手を触れていない。ここに問題を解決できない私は根本の原因があると思う。
 私、この前の質問で建設省から御答弁いただきましたが、道路公団の工事、これの中小企業への発注割合は八・五%、国鉄新幹線、これの工事の中小企業への発注率は七%だというんです。本四連絡架橋について言えばわずか三・五%が中小企業に行っているだけだというんです。いまは大鳴門橋の工事が始まっています。ところが、その地元の徳島県で昨年中小企業がたくさん破産したけれども、その中で土建業者の破産が一番多いんです。何にも地元に仕事が来てない。みんな大手の建設業者が労働者をよそから引き連れてきてそうして仕事をしている。こんな状態で一体景気がよくなるのか、中小企業の状態がよくなるのか、労働者の状態がよくなるのか、よくなるはずないですよ。
 私、経済企画庁からこの資料をもらった。この前もちょっと申しましたけれども、生活基盤関連と産業基盤関連の公共投資、生産誘発効果と雇用誘発効果、これを調べてもらった。生産誘発効果についてはほとんど変わらないけれども、雇用誘発効果については、生活基盤関連の方がはるかに高いという数字が経済企画庁の資料ではっきり出ているんです。
 それから、もう一点申しましょう。私ども、だからこういう大型公共事業中心のこのやり方ではなくして、住宅だとか学校だとか、こういう特に生産誘発効果と雇用効果の高い公共事業に重点を振り向けるべきだ、国民の生活を擁護することと不況、円高を克服することとこの両面を同時にやるべきだと、こういうことを主張している。
 もう一つ、経済企画庁からいただいた資料ではっきりわかることは、個人消費支出とそうして公共事業とどちらが誘発効果、雇用効果が大きいか。個人消費支出の方は生産誘発効果は若干低いけれども、雇用誘発効果は一・四倍だと、こういうんです。したがって、いま賃金の引き上げ、労働時間の短縮、大幅な減税、社会保障の充実等等、国民の購買力をふやす、消費支出をふやす、こういう政策と生活密着型の公共投資に流れを転換する、こういう政策、これを行いさえすれば、私は不況の問題も円高の問題も同時並行的に解決できるんじゃないかと思う。その点、そういうことをおやりになるお気持ちがありますか。これは聞くのもむだかな。
○国務大臣(村山達雄君) これもしばしばお答えしたことで繰り返しになりますが、ことしの一般公共事業の伸び率は三四・五%でございます。で、一番やっぱり重点を置いているのは生活関連でございまして、住宅、下水道、環境等は四一・三%、それから治山治水等の国土保全関係三六・六%、それから基盤整備を中心とする農林漁業あるいは漁港あるいは林道、こういったもののグループが三七・一%、これに対しまして交通の関係の道路その他の関係を見ますと二八・八%ということで、おっしゃるように、今度の公共事業は雇用関係その他地場産業の関係を考えまして、生活関連に重点を置いていることはもう御承知のとおりでございます。
 先ほど申しました減税と公共投資の効果につきましてはしばしば申し上げましたが、やはり需要拡大という見地から申しますと、概括的に申しますれば、やはり公共事業の方がすぐれているであろうということは、常識的に申しましても、あるいはいろんなモデルを使いましても言えるところでございます。特に初年度効果が非常に高いわけでございます。円高の問題というのは基本的には内需の拡大につながる問題でございますので、円高の対策といたしましても、われわれは公共事業の方がすぐれているということは繰り返し申し上げているところでございます。
○渡辺武君 大臣、そんなことを言ってもだめですよ。日本の生活関連施設が国際的にいかに立ちおくれているか、あなた方が出した資料でもってはっきり出ているでしょう。それだけお留守にしてきた、基盤がそもそも低いのですよ。多少今度伸び率を上げても絶対額は余り大きくないです。そんなことは私も承知の上であなたに質問しているのだから、いまさらおっしゃっていただかなくても私はいいと思うのです。
 ところで、次に移りましょう。財政収支試算の問題に移ります。これに五つのケースが出ておりますが、その中のケースC、これが昭和五十五年度経済の暫定試算と整合性があるということですので、このケースC、つまり増税依存型というケースを取り上げて質問したいと思うのですが、このケースCの一番下に「増税額」という欄が特に出ていて、五十四年度から五十七年度までの四年間の増税額合計十兆三千三百億、こういうことになっている。私はこれは額が余り少な過ぎると思うのですけれども、どんな計算の仕方をしたのでしょう。
○政府委員(大倉眞隆君) ケースCの計算の過程でございますが、歳出につきましてはケースAと同様の歳出水準を維持することにいたします。その上で五十七年度に特例債をゼロにする……
○渡辺武君 いやいや、増税額の説明だけでいいです。
○政府委員(大倉眞隆君) いえ、そこから申し上げないといけないのですが――というために幾らの税収が必要かということを先にはじきます。それで四十四兆円の税収が必要になる。それと五十三年度の括弧の中の十八兆一千億とを結びまして、予定成長率とパラレルに結んでまいりますと、五十四年度の所要額二十二兆が出てまいります。この二十二兆円に達するために、ケースAと比べていただくと一番わかりいいと思うのでございますが、ケースAは増減税をしないという前提が試算してございますので、その差額が五十四年度の増収所要額になります。それが備考の五十四年度分で一兆九千と出ております。五十五年度は一兆九千億増税をしまして、二十二兆八千八百になりましたものから自然増収ベースを試算いたしまして、それと二十八兆八千億との差額を所要増税額に計算いたしております。それが二兆三千七百億でございます。そのように計算をした累計が十兆三千三百億でございます。
○渡辺武君 一言で言えば、この五十四年度から五十七年度までこのケースCによると毎年毎年増税をする、そうでしょう。しかも、その毎年毎年増税した分で前の年の新しい新税の自然増収ですね、次の年は自然増収になります。その分は含めないで計算した、こういうことになるわけでしょう。
○政府委員(大倉眞隆君) 計算の方法はおっしゃるとおりです。
○渡辺武君 だから少なく出るのですよ。さっきおっしゃったケースAは現在の税制で計算した四年間の税収だ、こういうので、私いまちょっと計算してみますと、税収総額四年間で百四兆七千七百億円になる。ところが、このケースC、これは毎年毎年新税を創設した。このケースCの税収総額を計算してみますと、百三十一兆四千六百億円になる。これは新税創設で新たな税収分が加わっているから、百三十一兆四千六百億円になるわけですから、これから現行税制での税収分、ケースAの百四兆七千七百億円を引けば、その差額分が四年間の増税による税収、こういうことになると思うのですが、これ計算したらどのくらいになりますか。
○政府委員(大倉眞隆君) ただいまの渡辺委員の試算されましたのは、恐らく経常部門の税収で御計算になったと思いますが、投資部門にも税収が入っておりますので、両者を合わせまして、おっしゃるような計算をいたしますと、五十四から五十七までの推計数の税収合計額が百三十七兆二千八百億。それからケースAの同様の税収合計額が百十兆五千九百億。したがいまして差額は二十六兆六千九百億という計算はできるわけでございます。
○渡辺武君 つまり国民の立場から言えば、現在の税制で税金を向こう四年間取られるのと、毎年毎年新税を創設して、それにさらに取られるのと、その後の方がこれは増税分になるんですよ。だからあなた方の十兆三千三百億なんてのは、これは過小評価だ。本当のところは、いまおっしゃった二十六兆六千九百億円ですか、これこそが四年間の増税額、こういうことになるでしょう。
○政府委員(大倉眞隆君) おっしゃったような前提で計算をいたしますと、二十六兆六千九百億になります。私どもがケースCの増税所要額を二十六兆六千九百億と表示いたしませんでしたのは、先ほど申し上げたような計算をいたしまして、毎年度新たに負担増加を求めなくてはならない金額、それの累計を表示しているわけでございます。
 なぜこういう考え方をとったかと申しますと、渡辺委員のような考え方をとりますと、たとえば四十九年度の二兆円の減税は、ことしまでに十兆円の累積減税効果を持つという説明をしなくてはなりません。すると、それは恐らくわかりにくいだろうと、非常に。いままで十兆円の減税があったんですよと言ってみましても、四十九年度に二兆円減税があったことは知っているけれども、それが十兆円になっているんだというふうにはなかなか受け取っていただけないんではないか。それは同じことの裏表でございますから、私どもはやはり新規に負担増をお願いする金額が幾らになるかということを試算としてお示ししたわけでございます。
○渡辺武君 取る方の立場と、取られる方の立場じゃ物の感じ方も違いますから、取られる方はたまったもんじゃないですよ。これは計算してみますと、まず、人口一人当たりを見ますと、五十三年度の十五万七千円の税負担が、五十七年度には一人三十六万八千円、約二・三四倍になる。大変な増税ですよ。
 それで、経済企画庁長官に伺いますが、昭和五十五年度経済の暫定試算、これを見てみますと、一番下の項ですね、お持ちですか。
○国務大臣(宮澤喜一君) はい。
○渡辺武君 一番下の項に財政収支という項目があります。ここには収入と支出とその差額、これだけが出ているんですね。中身が出ていないんですよ。政府収入、一体税金がどのくらいで、社会保険負担、これがどのくらいか、これは出てないんですが、どういうことになりますか、数字を出してほしい。
○政府委員(喜多村治雄君) 今回の暫定試算は、計画のいわゆるフォローアップでございます。したがいまして大まかに描くという趣旨で行われたものでございますので、経済計画で行われましたような、政府として確たる政策方向を決めたものでもございませんし、歳出におきましても、関係各省の合意を得た上でではございませんので、単なる想定にすぎないということで、ここでは明示しなかったという経緯でございます。
 そこで、大体、どの程度のものが述べられておるかということでございますが、歳出の方から申しますと、政府の固定資産形成は、大体、経済計画が考えられておりますようなものよりもやや上回った状態でございますし……
○渡辺武君 いや、最後の財政収支のところだけ聞いているんです。
○政府委員(喜多村治雄君) はい。それじゃ計画と、それに関連いたしまして申し上げます。
 経済計画では、税及び税外負担では五十五年に六十兆とほぼ申しておりましたところが、今回の暫定試算では五十五兆程度でございます。社会保険負担は、計画では五十五年度十六兆程度と申しておりましたのが、十七兆程度でございまして、税の負担は相当大幅に落ちておりますが、社会保険の負担は若干上回っておると、こういうことでございます。
○渡辺武君 何でもっと端的に数字は言うことできないんですか。これの基礎になっているこの五十年代前期経済計画ですね、これですと、税及び税外負担、これは国民所得比で四十八年から五十年度平均二〇・四%に比べて、五十五年度は三%程度アップするんだ。社会保険負担は同じく四十八年から五十年度平均六・一%に比べて一・五%程度アップするんだということがはっきり書かれている。何でこの暫定試算にはこれが書いてないのか。どうなるんですか、税負担率とそれから社会保険の負担率。あなた方は内部では計算して持っているはずですよ。はっきり国会へ出しなさいよ、そのくらいのことは。答弁してください。
○政府委員(喜多村治雄君) さっき申し上げましたような事情でもって外部につきましては公表しなかりたわけでございますけれども、内部の単なる計算の過程の一つとして数字を持っておることはそのとおりでございます。
 そこで、そういった意味での数字を申し上げますならば、税及び税外負担――税外負担というのは社会保険負担ではございませんで、いわゆる国民所得上の税外負担でございますけれども、これを計画では二五・七%と、いま先生お話がありましたとおりでございますが、それが二四・二%程度でございます。それから社会保険負担は……
○渡辺武君 それは何年のこと。
○政府委員(喜多村治雄君) 五十五年でございます。
○渡辺武君 五十七年は。
○政府委員(喜多村治雄君) 五十七年度につきましては二七%台でございます。
○渡辺武君 二七・幾つですか。
○政府委員(喜多村治雄君) 二七・七、八でございます。
○渡辺武君 社会保険負担は。
○政府委員(喜多村治雄君) 社会保険負担は、経済計画では先ほどお話がございました七・一%でございましたけれども、七・五%というのが五十五年でございますし、五十七年度につきましては、上昇幅が八%程度になる予定でございます。
○渡辺武君 はっきり、程度と言わないで、八・何%ですか。
○政府委員(喜多村治雄君) いや、これは確たるものがございませんので、その程度と申し上げておるわけでございます。
○渡辺武君 時間ばかりかかってかなわぬ。もう端的に答えていただきたいですね。
 それで、こうして国民の税負担率、社会保険負担率を高めて物すごい増税をやって金をかき集めて、使い道の方はどうかと、私それを伺いたいんですが、今回のこの財政収支試算の五つのケース、これ全部投資部門と経常部門に分けられている。一体、なぜこういうふうに分けたのか、その理由をおっしゃっていただきたい。
○国務大臣(村山達雄君) 幾つかの意味があるわけでございます。一つは、経常部門の歳入を賄うのが特例債であるということ。したがって、そのかわり財源は一般の税負担その他の普通歳入であるということでございます。第二の理由は、投資部門におきましては、いま日本がおくれております社会資本、これが身がわりに残るわけでございますし、一方、全然残らないわけでございます。第三番目は、経常部門の方はなかなか急激には減らせないいろんな制度の問題を含めているわけでございます。投資部門の方は民間需要が起きてまいりますれば、それとの見合いで調整できるわけでございますから、そういう意味で、この三つのものを区別していくということは今後の政策を立てる上で非常に一つの手がかりになるであろう、こういうことで分けているわけでございます。
○渡辺武君 この五ケースとも見ますと、まず投資部門は、全部のケースについて大体この金額は一定している。調整されているのは経常経費ですね。特に社会保障費等々の国民の福祉にかかわる費用、これは支出切り詰め型の場合は、先ほどもお話が出ていましたけれども、もう五十四年から五十七年まで全部支出額が同じと、物すごい切り詰めようになっている。
 そこで、大臣、伺いたいんですが、五十三年度予算の説明の中で、経常経費と投資的経費に分けて、そしてこういうふうに言っているんですね、「経常的経費について、特に緊要な施策の充実に重点的に配意しつつ、経費の節減合理化に努め、極力その規模を抑制する」。ところが、投資的経費については、これは「切れ目のない執行を図りつつ積極的に規模の拡大を図る。」、こうなっている。こういうやり方ですね、今年度、五十三年度予算は。これを今後やっぱり五十七年度まで続けようと、こういう意図だと見て差し支えないですか。
○国務大臣(村山達雄君) 今年度につきましては、おっしゃるとおりでございます。そういう意味で臨時異例の予算編成をしたと言っているわけでございます。
 五十四年度以降の具体的計画につきましては、前々から言っているようにこれからの問題でございますけれども、一つの試算で示しているわけでございます。しかし、その試算そのものは経済審議会の企画委員会の暫定試算と整合性を持ってその歳出水準を決めておる。しかも、その中で特例債の脱却が可能であるかどうかということを検算して見ているわけでございます。いま渡辺さんが言われましたのは、恐らくBケースを言っているのでございましょうけれども、Aケース、Bケースというのは極端な場合をあらわしているわけでございまして、私たちが試算として示した方で言いますと、Cが一番整合性を持っている、それをモディファイしたらDとかEになる、こういう形でございます。Bケースは極端な例を示しまして、これは経済企画庁の暫定試算とは関係ございません。
○委員長(鍋島直紹君) 渡辺君、時間が参りました。
○渡辺武君 はい。最後に一言だけ。
○委員長(鍋島直紹君) 簡単に願います。
○渡辺武君 しかも、その投資的経費の方で四条公債を出している。ところが、その公債の元利の償還、これは経常経費の方に出ているんですね。だから、社会保障費その他は、これはまず投資的経費を優先的に確保して、その投資的経費を賄うために出した公債の元金と利払い、これでまた圧迫される、こういう形になっておるんですね。財政計画をこんなの出されたって国民は賛成しませんよ。こういうやり方は私はやっぱり改めるべきだと思う。最後にその点を伺ってやめます。
○国務大臣(村山達雄君) 公債は、四条公債を発行したときには見返りになりますから、当然これは普通の企業会計で申しましても、あるいは国民経済概念で申しましても、それは投資的経費ということは言えましょう。しかし、赤字公債であれ、あるいは建設公債であれ、それの元利償還費というものは何にも見合わないわけでございまして、これは単純に財政の歳出項目に立つわけでございますから、これが投資部門に入るはずはないのでございます。その点は企業会計でも全く同様でございます。
○渡辺武君 参考人の方、ちょっと質問時間がなくなって済みませんでした。終わります。(拍手)
    ―――――――――――――
○委員長(鍋島直紹君) 次に、栗林卓司君。
○栗林卓司君 私は、特例債の問題は、ほうっておいていい問題だとは毛頭思いません。問題の発端を考えますと、たしか昭和五十年度に約四兆円の歳入欠陥が立ちました。中心は法人税と申告所得税約三兆円だったと思います。理由は、収益率が大変落ちたということだと思うんです。それからずっと財政再建問題を考えるたびに、収益率が戻ったら三兆円ぐらいはまた税収が――そのときの時点ですから、いまですともう少し率を掛けて計算すればふくらむのかもしれませんけども、何がしかのものは税収が回復をするんだろう、こう考えながら来たんですけれども、従来、いろいろお伺いしながら納得のいく答えが出なかったものですから、きょうは各大臣おそろいなものですから、この点伺いたいと思うんですけども、景気がよくなってくる、収益率がよくなってくると、そのことを理由にして税収は回復をする、こう考えることは間違いありませんか。
○国務大臣(村山達雄君) それはもう、その限りにおいてはそのとおりだろうと思います。
○栗林卓司君 そこで、いまの収益率を見ますと、はかばかしい回復をしていないわけでありまして、昭和四十年の不況あるいは四十六年の不況に比べておおむね二、三割減の低水準で低迷していると思います。実体経済がこの姿である限りは、これはとても増収は期待できない。
 問題は、四十九年並みの収益率にとは言わないまでも、正常な水準までに収益率はいつごろ回復するんだろうか。この点の見通しは、大蔵大臣としてはどうお立てになりますか。
○国務大臣(村山達雄君) 確たる見通しが非常につきにくいのでございます。しかし、今度の五十三年度予算の執行によりまして、その手がかりをつかみたい。総理が言っているトンネルの先が見えるというのも、まあマクロ的に言えば同じようなことを意味しているのではなかろうか、このように考えているわけでございます。
○栗林卓司君 本当はそれでは困るんでありまして、その見通しが立たないうちに財政再建論、増税論をやっても、本当は私は意味がないんじゃないか。本当は、いまの段階で、多少腰だめながら大体これぐらいになると収益率は戻ってくるであろうという見通しを立てながら、私は考えていくのが本当ではないんだろうか。そんな目で――これは企画庁長官としては、ミクロ経済の問題ですけれども、収益率は正常状態に昭和何年度ぐらいになったら戻るとごらんになりますか。
○国務大臣(宮澤喜一君) 正常な収益率とは何かということがそもそも定義のむずかしいことだと存じておりますから、それに正確にお答えすることはちょっと困難だと思います。かつての高度成長経済時代のような収益率というものは、それはなかなかもうむずかしいのではないか。最近で申しますと、私どもは五十三年の九月期の決算は三月期の決算よりは少しはよくなるのではないか程度のことは考えております。
○栗林卓司君 では、もう少し具体的にお尋ねしますと、四十年不況の一番ボトムあるいは四十六年不況の一番ボトムよりも現在はさらに下だ、どう考えても正常ではない。そこで四十年不況のボトムなり四十六年不況のボトムの水準までには、これは早く回復しなけりゃいかぬと思いますけども、それは何年度ぐらいになりましょうか。
○国務大臣(宮澤喜一君) 恐らく、会社の一年決算で申しましたら、あと二期ぐらいはかかるのではないかと思いますが、しかし、これは正確なデータで予測をして申し上げているわけではございませんので、わが国経済が大体そのぐらいなテンポで正常に返っていくのではないかと考えておるわけでございます。
○栗林卓司君 同じことを通産大臣にお尋ねしますけれども、財政当局と話しておりますと、とにかく収益率がどうあろうとこの赤字はという話になるんですけれども、赤字を生み出したもとの低収益率を考えると、それがいつまでも続くと今度は実体経済がもたない。その意味では、二期か三期かは別にして早くしなきゃいかぬ。同じことをお尋ねするわけですけれども、せめて四十年不況、四十六年の不況のボトムよりは上回っていきたい。それだけで二割から三割はふえるわけであります。大体いつごろとごらんになっていますか。
○国務大臣(河本敏夫君) 私も、大体、企画庁の長官と同じ考え方でございますが、五十三年度の操業率は大体五十二年度よりも七、八%上がりまして八二、三%を期待しておるわけであります。新しい統計方法では若干違うようでありますが、ほぼ八二、三%。それから五十四年度はもちろんことしの年末に決まることでございますが、当然ある程度引き上げられると思います。あるいは八七、八%ぐらいの目標を設定されるのではないかと考えておりますが、そうなれば、まずまず私は景気は立ち直ったと、こういう感じを一般に与えるのではないか、このように期待をいたしております。
○栗林卓司君 そこで、大蔵大臣に戻ってお尋ねをするわけですけれども、なかなか先のことは予測はしづらいとしても、先ほど来お尋ねしておりますのは、財政赤字があるんだけど、中は見てみると、循環的なものと構造的なものと観念的に二つに分けられるという議論があって、具体的にどう分かれるかという計算がついぞないんです。これはやはりひとつ詰めていかないと地についた財政再建論にならないんじゃないか。いま企画庁長官と通産大臣にお尋ねをしますと、恐らくこんな感じだと思いますけれども、来年度の秋ごろになると相当やはり回復がはだに感じられるようになるんじゃないかというようなころ合い。そうなってくると、五十四年、五十五年で財政再建を考えていくときに、循環的赤字が減るということを織り込んで私たちは考えていいんじゃないか。ではそれは一体どれぐらいか。当然財政当局とすると、関係各省と相談をしながらその試算もお出しになるべきだと思いますが、いかがですか。
○政府委員(大倉眞隆君) ただいまおっしゃったような物の考え方というのは非常に大事な点だと思うのでございますが、今回お出ししております収支試算は、五十七年度を目標にして、その間の計数の動きは一応GNPとパラレルに置くという前提で、ある意味では機械的に計算いたしております。いま栗林委員がおっしゃたような事態に幸いにしてなってくれますと、それはたとえば五十四年度の対GNP弾性値が恐らくは一・二より若干上にいってくれるであろう。そうなりますと、先ほど渡辺委員に御説明したような計算過程からしまして、五十四年度での所要税収額は、あの機械計算よりは少なくて済むかもしれない、そういう関係に立っておると思います。
○栗林卓司君 いまお答えのとおりでございまして、腰だめで一・二以外の弾性値を使えと言われても、計算する側はたまったものじゃないからまあ一・二で計算するわけだけど、じゃそれを踏まえてどういう財政再建論議をやるかというと、先ほど来私が申し上げているように、五十四年度の実体経済はどうなんだろうか、五十五年度はどうなんだろうか、そのときの結果として期待し得る弾性値はどうなんだろうかということまで入ってこないと、これはなかなか議論にならない。
 そこで、この間お出しになりました財政収支試算はなかなか急いだ作業でございましたけれども、これからはその構造的赤字があることは間違いないんでありますから、真剣に増税論議をせざるを得ない。そのときに、循環的に赤字が大体どれぐらいかという展望はあわせてお出しになる必要があるという意味で、ぜひその作業をやっていただきたいというお願いを込めて申し上げているわけでありますけれども、いかがですか。
○国務大臣(村山達雄君) 御趣旨の点はよく承っておきますが、果たしてそのようにいけるかどうか非常にむずかしいだろうと思うのでございます。一般論を申しますと、従来のような循環的要素は非常に少なくなりつつある。世界経済が同時性になっておる関係で非常にむずかしくなっているような感じがいたします。
○栗林卓司君 こういう話になると必ずそういう答えが返るんですけれども、そんなことになったら実体経済がもたないですよ。収益率が回復しなかったら、いつまでたったって公債発行のいわば悪循環から足が洗えないでしょう。その意味でも、いまのお答えは、一見慎重な財政責任者の御発言のように見えて、私はそうではないとかねがね思うものですから改めて申し上げたわけで、要望を重ねておきます。
 次に、お伺いしたいのは、どっちにしても構造的な赤字がある。それは歳出の削減か増税かどっちかで対応せざるを得ない。削減の方はこの際おくとして、増税論議で伺いたいんですけれども、この間政府税調が出した中間答申を見ると、本来は所得税に求めるべきであるけれども、そうはいかないから一般消費税と、こう書いてありました。なぜなんだということをある雑誌で今度は財政関係の方の御発言を拾いますと、いまの所得税というのは、税を公平に取っているという自信を徴税担当者として持ち切れない。したがって、そこに大きなさらに増税を乗せていくということになるとやはり問題が出るんで、この際は一般消費税と、こうありました。私なりにこれを短絡して考えたのは、実は架空名義預金の問題を含めて所得の把握がなかなかむずかしい、だからいまの所得税はと、こうなるんだけど、本来は、所得税が税の再配分効果を含めて一番政策的意味合いを深く持っているわけですから、したがって増税をと言うんだったら、それを担い得るような所得税をどうつくり上げていくのか、むしろそちらの方に真剣に取り組むのがいま差し迫った課題ではないんだろうかと思いますが、いかがですか。
○政府委員(大倉眞隆君) 税調の中期答申で、本来の物の考え方としては、所得税に負担の増加を求める方が税制としては理論的であろうし、また負担の実態からしても十分にその理由はあるということをまずおっしゃりながら、なおかつ、選択としては、税制調査会としては一般消費税の導入をより詰めて検討をするという方に多数意見にまとまりましたのは、その所得税についていまおっしゃったように自信が持てないという御趣旨ではございません。また、財政当局者がそういう発言をしたとは私思っておりません。場合によって、ほかの方がおっしゃっているかもしれませんが、財政当局でそういうことを申し上げたことはございません。
 税調が一般消費税を選ばざるを得ないではないかという御議論の根底にありましたのは、理屈はそうであっても、また負担の現状はそうであっても、そうでなくても所得税は減税という声しか出てこない。いまの状態ですら減税という声が強い。それを考えれば、所得税で一般的な負担の増加を求めるということには現実に非常に困難があるのではないか。特に、いま提案されようとしている所得税の負担の増加は、一部で言われておりますように、ごく一部の高額所得者だけでは片づかないので、中小所得者を含めて――高額所得者はもちろんなんですが、中小所得者を含めて広く負担を求めざるを得ないので、それはやはり現実的であるまい、そういう御判断であったわけでございます。所得税そのものにいまいろいろの問題を抱えており、特に資産所得の総合課税について具体的、現実的な作業を進めるべしということは、別途税調の強い意思として私どもも答申を受けておりまして、そのための勉強は鋭意続けております。
○栗林卓司君 先ほどの財政関係の方のという記事を思い出しますと、私が税務署長をやっていたときの経験に照らしてと、こうおっしゃったんです。私はそれを別に難詰するつもりはありません。所得の把握がきわめて困難だというのは隠れた常識でありますから、なるほどそうであろうかと思って読んだんでありまして、ただ、そこで、いまの資産所得との総合課税の問題も含めて、これは大臣にお尋ねをしておきたいんですけれども、国民背番号制というのは大変評判の悪い言葉でありますが、ただ、背番号制とは言わないけれども、国民の所得が把握しやすい仕組みをどう考えるか、これはもはや避けては通れないんじゃないか。たしか五十五年までが配当利子分離課税の総合化の日限だと思いましたけれども、それもこれも含めて、私は国民背番号制という言葉で言っておるんじゃありませんけれども、いろんな知恵のしぼり方がある。これだけコンピューターが発達しているんでありますから、それやこれやで所得をどうやって把握するかということについて、従来なかなか触れられなかった分野に大胆にもうお互いに議論を起こしていくべき時期に来ているんじゃないかと思いますが、いかがですか。
○委員長(鍋島直紹君) 時間が来ております。
○国務大臣(村山達雄君) いまおっしゃったことは、いま背番号制をも含めて検討しているところでございます。ただ、背番号制にいたしますと大変なコンピューターが要るわけでございますし、どこまで一体金融機関にお願いできるのか。仮に背番号をつくってみても、幾らでもまた違う番号を借りてくることは可能なわけでございますので、最後はやはり実務的にどこまで一体詰められるのかということでございまして、背番号がすべてを解決する問題でないことはもう当然だろうと思うわけでございます。そういう非常にむずかしい問題がありますので、現在、部内におきまして、また金融機関には金融機関として独自の立場で御検討願いまして、この夏ごろにはすり合わせをやってみて一歩前進したい、このような非常に実務的な立場で、じみに、しかしできるだけ早く結論を出したいと鋭意作業をしているところでございます。
○栗林卓司君 終わります。(拍手)
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○委員長(鍋島直紹君) 次に、山田勇君。
○山田勇君 不況脱出、景気回復のための財政主導型、公共事業優先の大型予算が組まれ、何が何でも七%の成長を達成しようとするわけですが、連日の円高はとどまるところを知りません。こんな情勢の中で、各都道府県、市町村など自治体も、来年度予算を政府に右へならえの景気刺激型に組んでいるわけですが、長引く不況で税収の伸びが鈍り、五十年度以降借金財政が続いております。いまここで景気浮揚のためとはいえ、国の公共事業に連動する補助事業、また自治体独自の建設事業を目いっぱい推進するため地方債を発行するわけですが、都道府県全体で地方債が前年度より三七%もふえ、歳入予算規模の一〇・二%に達する。このことは健全財政という観点からすれば決して好ましいことではありません。ところが、かねがね健全財政の指導的な立場の自治省が水ぶくれ予算にハッパをかけているという状態です。
 もちろん、政府、自治体一体となっての行動でなければ目的達成はむずかしいことはわかりますが、こうした集中的な公共事業ラッシュがうまくさばかれて景気浮揚につながれば問題はありませんが、せっかくの予算も技術職員の不足や資金がうまく流れていくのかといった不安材料も大変ございます。果たして消化ができるのかといった批判も強まっております。景気回復は国民の願いでもありますが、借金してどんどん公共事業を促進させても、一部の土建業者をもうけさせるだけの結果に終わり、残るのは国民への大きな負担だけということではわれわれ国民も浮かばれません。借金返済に充てる公債費が都道府県歳出予算の五・四%に当たるそうですが、これでは新年度の借金の中から半分近くは返済に回され、実質的な公共事業は大して期待できないんではないかと思います。景気は回復しない、膨大な借金だけが国民の負担として残る、こんな結果にならないのか、心配をせずにおられませんが、また、自治体に対する健全財政の指導ということを将来どのように自治大臣はお考えになっているのか、お聞かせ願いたいと思います。もし時間があれば野口参考人にもぜひこの地方自治財政についての御意見を聞かしていただければ幸いでございます。
○国務大臣(加藤武徳君) 御承知のように、公共事業の七割を超えますものは地方がやっていかなければならぬのでございますし、かつまた、景気の浮揚のためには地方の単独事業も五兆円を超えますような事業を予定いたしておるのでございまして、これらの公共事業の消化は決して容易ではないのでございますけれども、地方といたしましてはおのおの工夫をこらしながらこれが消化に努めてまいっておるところでございます。そして景気をよくし、また雇用不安を解消してまいりますためには、地方も大型の予算を組まざるを得ない。そのためには四兆円を超えますような普通会計債の借り入れがあるのでありまして、かつまたいままでの借金の元利償還が二兆三千億近くにも相なるのでありますから、御指摘がございましたように、借入金の半分を超えますものが償還財源に充てられざるを得ない、かような差し引きの計算に相なるのでございます。
 しかし、国におきまして景気をよくいたしますために公共事業をやらなければならぬと同様に、地方におきましても、またそのことが雇用不安を解消するゆえにつながってくるのでありますから、当然、国と同じような基調で推進をいたしており、ことに地方におきましては大型の事業といいますよりも、たとえば生活道路でありますとか下水でありますとか、かような国民生活に密着をいたします事業を鋭意やってまいるのでありますから、このことは地方の需要にもまたこたえ得る、かような考え方を持っておるのでございます。
 そこで、自治省といたしましては、従来からも健全財政を指導してまいりました。今回もまた、かような予算を組みながらも、事務、事業等の見直しをやってまいらなければなりませんし、また定数管理等につきましても心を配ってまいりまして、従来以上に健全財政のための指導は強化してまいる、かようなつもりでございます。
○参考人(野口悠紀雄君) 先ほども若干触れましたように、過去の財政運営を、国だけではなくて地方公共団体も含めて見た場合に、たとえば五十年度において地方財政における財政支出が必ずしも十分でなかったというようなこともあると思いますので、やはり現在時点において地方財政も景気浮揚のために大きな役割りを担わなくてはいけないというふうに考えております。
 先ほどの御指摘の中で、地方債の依存が高まってきつつあるのではないかという御指摘があったわけですが、地方公共団体は団体個々には非常にいろいろ差があると思いますので、一概にこう数字で論じるのは問題があるかと思いますが、単純に公債依存度というような数字で見てみますと、まだ国と比べてみた場合には地方の方が公債依存の度合いが少ないのではないかと思いますので、地方債の活用の余地というのはまだあるのではないかというふうに思っております。
○山田勇君 終わります。(拍手)
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○委員長(鍋島直紹君) 次に、柿沢弘治君。
○柿沢弘治君 きょうの午前中と午後と四人の参考人のお話をいろいろ伺っておりまして、みんな四人とも大体私と同じ世代、そういう意味では非常に若い方々が多うございまして、どうもこちら側と比べても学界の方が若返りが進んでいるような感じがいたします。それがやはり実力の世界だと思いますが、ひとつ財政のこれからの見通しを立てる上で制度的な硬直というものが大きな障害になっていないだろうか。その点で、アメリカと日本とを単純に比較するわけにはいかないと思いますけれども、アメリカの予算制度を勉強して来られたということでございますので、野口参考人からその辺をお聞かせいただければ幸いでございます。
○参考人(野口悠紀雄君) お答えいたします。
 三月の上旬から中旬にかけまして、アメリカの予算制度をいろいろ勉強をしに行ってまいったわけでございますが、いろいろなことを感じてまいりました。たくさんございますが、時間の関係で二つだけ申し述べさしていただきたいと思いますけれども、第一は、やはりアメリカの議会の予算の審議能力というものが非常に最近増強されつつあるということでございます。もともとアメリカの場合には大統領の提出する予算が勧告であって、歳出小委員会が非常に細かい審議を行っていたという事情はあるわけですけれども、御承知のように、一九七四年に予算法が改正されまして、上院下院に予算委員会というのができて、予算全体を経済的な情勢とも関連を持ちながら審議をしているということで、私が強く感じましたのは、予算委員会のスタッフ機能が非常に充実しているということです。予算委員会自身に非常に有能なスタッフを集めておりますし、それ以外に議会予算局、コングレショナル・バジェット・オフィスというのができておりまして、そこに非常に有能な経済学者がたくさん集まっておりまして、大統領府の行政予算庁のスタッフが大体六百人ぐらいだったと思いますが、議会の方にも二百人ぐらいのスタッフがおりまして、非常にいろいろ作業をしている。たとえば情報を得る場合に、将来のコストの推計なんかを行政府に聞くんじゃないかというふうに思って尋ねたんですが、独自のモデルを開発してやっているというようなことを聞きまして、非常に印象深かったわけです。
 それからもう一つは、いま柿沢委員の御指摘にありましたように、アメリカのスタッフが非常に若いわけですね。日本の場合と比べてどうというわけではありませんが、アメリカの行政予算局長マッキンタイヤーというのは三十六歳です。そのスタッフは二十代の人もたくさん活躍しているというような状態で、ゼロベース予算のように最初から見直すというようなことは、やはりそういう若い人たちが失敗を恐れずにいろいろやっているところから出てきたエネルギーじゃないかというような印象を強く持って帰ってまいりました。
 以上でございます。
○柿沢弘治君 どうもゼロベース予算にしても、それから国会の予算審議のあり方にしても、日本も曲がり角に来ているように思います。予算委員会の審議状況でも、実際に予算の内容に触れるということが少ないままで通過をしてしまう。これでは本当の意味の国会の審議権というものが発揮をされていないように思うわけでございます。
 その辺で、国会の予算の問題でございますが、大蔵省も関係のある話でございますから、国会のスタッフの充実についてもっと配慮をしていただきたい。大蔵大臣、何か御意見がございますでしょうか。
○国務大臣(村山達雄君) 賛成でございます。
○柿沢弘治君 大変心強い答弁がございましたので、五十三年度予算の修正はちょっと間に合わないかもしれませんが五十四年度にはぜひお願いを申し上げたいと思います。
 それと同時に、やはり医療費を初めとして、先ほど野口参考人もお話がありましたように、さまざまな補助金の大口の補助金というものの位置づけ、そうしたものを見直していく必要があると思うんです。しかし、野口参考人は非常にそれに対して悲観的な見通しを持っている。そうすると、結局三年、五年後の財政の姿はどうなるんだろうかという点について、現在の政治の状況、それから行政のあり方も含めて、忌憚のない見通しを聞かせていただければ、ぜひ聞かせていただきたいわけですが、いかがですか。
○参考人(野口悠紀雄君) 非常にむずかしい御質問でございます。
 私がこれまでいろいろのところで書いたりなんかしてきましたことは、現在のような制度が残っている限り、財政の現在の問題を解決するのはむずかしいのではないかということを申し上げてきたわけでして、それは裏を返して言えば、現在のいろいろな制度なり、あるいは意思決定の仕組みなりというものが、安定成長に即したように変わらなければならないということを主張していることでもあるわけですけれども、先ほどの議論の過程でもございましたように、現実にそういうものが政治的に果たしてうまくいくかどうかということは、私自身は何も申し上げることはないわけでして、そういったものを変えていく努力というようなものを、柿沢委員を初め皆さんにお願いしたいというふうに思っているわけです。
○柿沢弘治君 私が前に経済企画庁におりましたときに、もう少しやはり経済計画なり経済見通しと連動した予算編成をすべきではないかということを主張したことがあります。実際に行われているんだという見方もあると思いますけれども、どうも見通しの方が財政に引きずられているというのが私たちの現状認識でございますが、その辺についてもっと政策主導型の、計画主導型の予算編成というものが考えられていいのではないかと思いますが、その辺、企画庁長官、実際の企画庁長官として行政をやっておられる立場から何か御意見がありましたらお伺いしたいと思います。
○委員長(鍋島直紹君) 柿沢君、残念ですが、時間が来ております。
○国務大臣(宮澤喜一君) 私どもが日本の経済を中長期にわたってどのぐらい予測し得る能力があるかということについて、私もかなり長いこと何回かその仕事をやってみまして正直に感じますことは、高度成長期には高度成長期なりにそれがむずかしく、また昨今のような状況になりますと、それなりにむずかしいということでございます。それでも、しかし、何にも見通しがないよりはあった方がいいだろう、幾らかでも国民のお役に立つだろうと思ってやっておりますし、予測方法もできるだけ改善をしたいと努力はしてまいりました。しかし、やってみればみますほど、予測能力が不足であると申しますか、実際の日本経済の動きはなかなか簡単な予測を超えるものがあるということをつくづく感じておりまして、したがって何かやはり国民にお役に立つことと、逆にお役に立たないようなことをしてはならないという気持ちが片方でございます。
 たまたま、いま財政計画についてお話がございましたが、これはもう長期的にどうかしなければならないという財政の現状は明らかでございますから、そういうことにもお役に立つようなごく粗っぽいデッサンでも、方向としては間違いないものをやはり考えていきたいということは、これまた痛切に考えております。具体的になりますと、どうしても数字を使わなければ予測というものは成り立ちにくい、そうしますと数字がひとり歩きをするというようなこともございますので、両方の面から、私、非常にむずかしいが、しなければならない、しかし、それはどうやったらいいだろうかということをつくづくと実は感じておるような偽らない心境を申し上げたわけでございます。
○柿沢弘治君 中島参考人にも向いたいことがあったのですが、時間がありませんので失礼いたします。終わります。(拍手)
○委員長(鍋島直紹君) 以上で財政展望に関する質疑は終了いたしました。
 中島参考人及び野口参考人には、本日、御多忙中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表しまして衷心より御礼を申し上げます。(拍手)
 明日は午前十時から委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
  午後五時三十六分散会