第085回国会 外務委員会 第5号
昭和五十三年十月十八日(水曜日)
   午前九時開会
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   委員の異動
 十月十七日
    辞任         補欠選任
     立木  洋君     上田耕一郎君
     田  英夫君     秦   豊君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         菅野 儀作君
    理 事
                稲嶺 一郎君
                鳩山威一郎君
                戸叶  武君
                渋谷 邦彦君
    委 員
                安孫子藤吉君
                大鷹 淑子君
                玉置 和郎君
                秦野  章君
                二木 謙吾君
                降矢 敬義君
                前田 勲男君
                上田  哲君
                小野  明君
                田中寿美子君
                矢追 秀彦君
                上田耕一郎君
                和田 春生君
                秦   豊君
   国務大臣
       内閣総理大臣   福田 赳夫君
       外 務 大 臣  園田  直君
   政府委員
       外務省アジア局
       長        中江 要介君
       外務省アメリカ
       局長       中島敏次郎君
       外務省欧亜局長  宮澤  泰君
       外務省経済協力
       局長       武藤 利昭君
       外務省条約局長  大森 誠一君
       外務省国際連合
       局長       大川 美雄君
       文部省学術国際
       局長       篠澤 公平君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        山本 義彰君
   説明員
       運輸省海運局外
       航課長      塩田 澄夫君
       運輸省航空局監
       理部国際課長   寺嶋  潔君
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 本日の会議に付した案件
○日本国と中華人民共和国との間の平和友好条約
 の締結について承認を求めるの件(内閣提出、
 衆議院送付)
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○委員長(菅野儀作君) ただいまから外務委員会を開会いたします。委員の異動について御報告いたします。
 昨十七日、立木洋君及び田英夫君が委員を辞任され、その補欠として上田耕一郎君及び秦豊君がそれぞれ選任されました。
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○委員長(菅野儀作君) 質疑を始める前に各位に申し上げます。
 本日は、質疑時間が限られておりますので、質疑応答は簡明にお願いいたします。
 それでは、日本国と中華人民共和国との間の平和友好条約の締結について承認を求めるの件を議題といたします。
 前回に引き続き質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
○戸叶武君 日中平和友好条約の締結を心から祝福いたします。
 福田首相は、このたび、互恵平等の長期的な友好親善関係の基礎固めができたことはきわめて意義深い、日中両国が高い立場に立って双方の満足がいく結論を得たことは御同慶にたえないと感激に浸り、園田外相は、これひとえに与野党の人々を初め各界各層の先輩、友人の御苦労の賜りでありますと感謝しています。この二人の謙虚な態度には奥ゆかしさすら感ぜられるのであります。どうぞ今日抱いたその心を永久に忘れないで維持していただきたいと思うのであります。このことをお願いいたします。
○国務大臣(福田赳夫君) 今回の条約は、六年前の日中共同声明においてその締結交渉を始める、こういうことが約束されて、とにかく六年の日子を要したわけでございますが、それだけにこの条約は練りに練ったその成果である、このように考えます。問題は、今後が大事であることは御指摘のとおりでありますので、今後は永久に日中両国の関係は平和友好の関係でありたい、こう念願をいたしております。それを一つ一つ実行において示していきたい、こういうことが私の考えでございます。
○戸叶武君 福田首相は、ただいま、今後が大切だ、問題は今後の実行にあるということを明言されました。
 福田さんの心中には、日中平和友好条約が北京で調印されるや否や、明年東京で開催予定の、ボン・サミットから東京サミットへの道筋をすでに考えているのだと思うのであります。先般、大蔵官僚の先輩の祝賀会で、五十、六十花ならつぼみ、七十、八十花盛り、九十、百で実を結ぶ――ずいぶん欲の深い言葉でありますが、しかし、何かやはり福田さんに張り切っているものを感じておりますが、どうぞこの原点を忘れないで、余りいやらしい総裁選挙などに心を砕くことなく、日中両国において築いたこの歴史的な条約の精神を内外に徹底させるために献身されんことを祈りますが、お覚悟はできておるでしょうね。
○国務大臣(福田赳夫君) 激励でもあり、また御訓示でもあるお言葉、拝聴いたします。私はそのとおりの心がけでやってまいるつもりでございます。
○戸叶武君 さすが福田赳夫、なかなかたけだけしいところがある模様ですから安心いたします。
 次に、私たちは、日中平和条約の承認を国会で求めておられる日本政府の態度は、国会が国の最高機関としての慎重審議を重ねた上で、政府並びに与野党、国会のやりとりによって国民の合意を得るという構えだと思うのであります。国民の圧倒的な支持を求めることはすでに私は定まっていると思います。問題は、国民ではない、平和を念願し、戦争か平和かの課題に対して日本みずからが中国とともに手を携えて国際連合憲章、日本国憲法の武器を持って国際紛争を争わないというこの精神、これに徹する以外に実践の哲学はほかにないと思いますが、福田さんにはそのために全身全霊をささげるということをここで誓っていただきたいと思います。
○国務大臣(福田赳夫君) わが国の憲法は平和憲法とも言われる平和を目指しての憲法でございます。わが国は、いまや経済的に見ますれば世界の経済大国という地位を名実ともにかち得た立場にある、そのように思います。歴史の示すところによりますと、経済力がつく、経済大国になりますと軍事大国を目指す、そういうことでございまするけれども、私は、憲法が象徴するように、わが国はもう再び、いかに経済力がつきましても経済大国になりましても、軍事大国の道は選ばない、そういう決意をした国である、このことは私は新日本の国是である、このように考えておるわけであります。
 世界じゅうの国が軍備を持って相拮抗しておる、そういう中で、わが国の選択した道というものは非常にユニークな、本当に独特な道である、こういうふうに思いまするけれども、長いこれからの世界を考えまするときに、私は、そういう平和へ平和へという道は、これは世界のもうせきとめることのできない流れである、こういうふうに思うんであります。わが国が、そういうこれからの展望の中で、とにかくもう軍事大国にはならない、そういう道を選択したことは、私は、本当に長い長い歴史から見ますると、これは世界の先達というような立場にもある、このように考えるのでありまして、私は、そういう選択をし、そういう道を歩むわが日本のこの立場というものは、これらに対しましては誇りを持ってこれを推し進めるべきである、このような信念を持って国際社会に立ち臨みたい、このように考えております。
○戸叶武君 ただいまの福田首相の言明に対して、私は満腔の賛意を表します。人がいいからだまされちゃいかぬぞという声もありますが、だまされてもよいから私は福田さんの政治家としての生命をかけての発言に対して体を張ってその精神を野党であるが護持したいと考えております。
 福田さんがいま言われたように、いままでの世界の歴史は、経済大国になったものがいわゆる軍事大国の道を歩んできた。その過ちを日本も犯してきた。再びこの道をたどるまいと日本国憲法は決意した。天皇みずからも民族の象徴として人間天皇を宣言し、泣いて国民の心を心として再び軍備を持つことをしない、国際紛争に戦争というような手段に訴えないということを内外に声明したのであります。それにもかかわらず、国民挙げての一つの雄たけびと、天皇みずから体をふるわせながら国民の声に応じて宣言したこの宣言をもしも覆すようなことがあるならば、元号問題は論外であって、天皇は退位を迫られると同じであります。勅語にもそれを明言しております。平和憲法の際にもそうです。
 それにもかかわらず、戦争と戦争の間には、いつも次の戦争への道を歩むファシスト集団の台頭を許し、ドイツにおいても日本においてもその過ちをかねて犯してきたのであります。その中にあって、十字砲火を浴びることがあるといえども、日本の貫く不動の精神を護持しなければ、日本はどこの国からも信用されなくなるのです。外交の要諦は信義の一点であります。特に外交において相手から疑われるような――疑われてもいいが、不動の貫く精神を持たなければ、外交の威力というものは発揮されないと思いますが、重ねて福田さんの決意を促します。
○国務大臣(福田赳夫君) わが国は、ただいま申し上げましたように、もう平和に徹する、再び軍事大国にはならぬという選択をし決意をいたしたわけでありますから、この決意をいたした以上、その道を邁進しなければならない、このように思います。
 世界じゅうの国の動き、その現実を見ますと、いろいろな動きがあるようでありまするが、しかし、わが国はとにかく平和を願うんだ、世界を平和にするんだ、そういうたてまえでわが国の姿勢を貫き通さなきゃならぬ、このように思うわけであります。とにかく日本の憲法においてそういうことが込められておる、しかし、同時に、もう国民のコンセンサスはそこにある、このように思うのであります。私は、そのコンセンサスを踏まえて、平和に向かって勇往邁進する、そのような決意でございます。
○戸叶武君 日中平和友好条約締結後の前向きの歩み方でありますが、福田首相は米国との提携の緊密化を強調し、園田外務大臣は今後の一番の課題はソ連との調整にあるということを明言しております。どちらも半面の真理を語っておるんでしょうが、この福田首相の考え方と園田外務大臣の考え方にはギャップがあるのではないか。与党の中から園田の首を切れなどという声もありますが、そのようなことはよもないと思いますが、どうなんでしょうか。
○国務大臣(福田赳夫君) 人さまざまでございまするから、言葉遣いはいろいろ違うところもそれはあるかもしれませんけれども、基本的な外交姿勢、そういうものにつきまして、まだ私の信頼する外務大臣と私との間にいささかの変化はない、このように御承知願います。
○戸叶武君 さすがは福田さんと園田さんとは同心一体であるということがいまの言葉で証明されました。なかなか世の中はさまざまで、腹背から、前から後ろから、ちょうど彼岸に達する前の尼連禅河における祈りのように、虎狼の群れに追いかけられたり、紅蓮の炎に巻き込まれたりしておって、なかなか一国の総理大臣も右に左に揺れながら真ん中を走るということは容易なことではないということには私は同情申し上げますが、どうぞ揺れるのは勝手ですが、揺すぶるのも勝手ですが、日本の外交の基調だけは少しも崩さずに行ってもらいたいと思います。
 そこで、具体的な生の問題をぶっつけます。日本政府は、日中平和友好条約の締結に当たって、日中平和友好条約は軍事同盟条約でもなければ、安保条約でもないということを明言しております。名実ともに友好条約であります。しかしながら、そのときに中ソ軍事同盟の条約の解消を中国側に強く要求しておりますが、中ソ友好同盟条約は、御承知のように、ソ連なり中国がアメリカによってソ連、中国を敵視する日米軍事条約がつくられるのではないかという警戒心からその一年前につくられた条約でございます。このことは御承知と思いますが、この中ソ軍事同盟条約の解消を求めた日本がそれでは日米安保条約を今後どういうような形において処理されるか、いますぐとは言えないでしょうが、どういう手段によってそれを解消していくか。
 全方位外交におきましても、二十年前に、ドゴールさんの提案した全方位外交というものは、世界の平和共存体制確立のために役立つならばNATOの条約をも解消してもよいというところまで先取りをやっているのです。フランスと日本の置かれている立場と今日の二十年間の流れとに相違があり、国情にも違うところがあると思いますが、そこがミスター・フランスと言われたドゴールが一身をなげうって平和を求めた全方位外交の哲学と日本の福田さんのいまのような信念で平和へ平和への道を前進するんだという決意との中に、同じ全方位外交でもいろいろ違うところがあるんだなあという奇異な感を与えたならば、私は信用はなくなると思いますが、その辺のことはどのように配慮しておりますか。
○国務大臣(福田赳夫君) 日米安保条約は、これはどこの国を敵国としているわけでもないんです。わが国が外国から侵攻を受けるという際に日米共同してわが国またアジアの平和を守ろう、こういう性質のものであります。ところが、中ソ同盟条約、これはわが国を敵国と想定いたしまして、そうして共同行動をとろう、こういう約束を中ソ両国の間でしておる、こういうものでありまして、これはもう全然性格が違うものであります。日米安保条約は平和の保障のための条約である。しかるに、中ソ同盟条約は日本を敵国視し、そうしてこれに対して備えよう、こういう条約でありまして、根本的に違うんです。
 私は誤解のないように申し上げておきますが、わが国が中ソ同盟条約を廃棄せよ、こういうことを言ってきたわけじゃないのです。今度、日中平和友好条約を結ぶ、ところが、その結ぶ相手方の中国はソビエトとの間に日本を敵国視する条約を結んでおる、これは矛盾するじゃないか、矛盾を解消してもらいたい、こういうことを要請したわけでありまして、私はこの態度はもう当然の出方であった、このように思います。
 そういうことで、中ソ同盟条約と日米安保条約というものはもう基本的に違う。日米安全保障条約は、これは平和を求める条約である、中ソ同盟条約はさにあらず、日本を敵国視して、これに備えようという条約である、そういうことで、この両者の間には、何といいますか、根本的な違いがあり、わが国が中ソ同盟条約の存在は日中平和友好条約と矛盾するという主張をいたすことと、また日米安全保障条約を堅持していくという態度の間に私は矛盾はない、このように存じまするし、中国側におきましても、このことはよく理解をいたしております。
○戸叶武君 私は、いまから十八年前、一九六〇年の安保闘争のカンパニアを代表し、安保条約改定阻止国民会議の団長として国慶節に北京に参りました。そのとき河上丈太郎先生並びに浅沼君から託されたことは、浅沼君のアメリカ帝国主義は日中共同の敵だと叫んだあの真意を正しく、中国だけじゃなく、世界に知らせる役割りを果たしてくれというので、その任の重さに私も戸惑ったことがありますが、大胆率直に、中国に参りましても、周恩来さん、廖承志君、大学の後輩ですから、ともに腹を割って話し合って、われわれは参勤交代のために来たのではない、国と国との独立、自主の精神をもって平和への道を歩みたいと思っておるのである、われわれが安保条約を解消したときには、同時に、中国とソ連とが結んでいる軍事同盟条約を廃棄してもらいたい、このことを明記しなければ共同声明には少なくとも団長の私は応じないということを言って、廖承志君並びに周恩来さんの了解をも得ることができ、共同声明にそれを明記することもできたのであります。
 私たちは、在野の一政治家であります。しかし、この国に、中国に、世界に責任を求めるためには、一貫した一つの貫く精神を躍動したいと念じて今日までまいりました。福田さんのお話だと、日米安保条約は世間で誤解しているようなものでない、これも一つの主張でありますが、ときどき政府が過ちを犯そうとしたときに、野党は、国民は鼓を鳴らして、平和への道を歩め、アメリカの帝国主義の戦略の中に巻き込まれてはいけないということを叫びながら、一九六〇年の安保闘争に見られるように、いたいけな樺美智子が平和のために犠牲者となったごとく、政府に訴え通してきたから、この安保条約がいままでにおいては、はなはだ怪しいところもありますが、私はやはり平和への道から極端にそれることができなかったと思うのであります。
 いまなお、私たちは、この日中平和友好条約を信じながらも一抹の疑念が常に去来するのは、いままでの保守党内閣のもとにおける、特に与党の中における動きの中に、世界の信用を失墜させるような言動が公然として行われ、それが総裁選挙の駆け引きにまで使われるに至っては、国民に合意を求める政府並びに与党の姿勢として、その政治姿勢が正しいかどうか、人のやることは仕方がないと言うかもしれませんが、簡単にして要を得たる御回答を福田さんから求めます。
○国務大臣(福田赳夫君) 私は、いま、内外の政務に全身全霊をささげて取り組んでいるわけでありまして、十一月から始まる自由民主党総裁選挙なんというのは眼中にありませんから、その辺は誤解なくひとつお願い申し上げます。平和に徹する、この一念で内外の施策を進めていく所存でございます。
○戸叶武君 なるほど、福田さんの目を見ていると、いま言われた言葉のように、目の方は澄んでおりますが、取り巻きが必ずしもあなたと同じような心境にまで達しているかどうかはいささか不安な面もありますけれども、内政には干渉しないことにいたします。
 私は、浅沼稲次郎先輩とは、一九二三年五月十二日、いまから大分前でありますが、大正十二年五月十二日の日に、私も浅沼も反軍国主義運動ののろしを早稲田から上げて、半殺しの目に遭いました。くしくも一九二三年の五月十二日、くしくも一九六〇年十月十二日、浅沼君は日本の反動テロリストのために日比谷公会堂において刺殺されたのであります。くしくもことしの八月十二日、日中平和友好条約の締結が福田内閣のもとになされましたが、私は謙虚な形でこれを祝福いたしました。自民党たると社会党たるとを問わず、国を代表して平和へ平和への道を歩む者が日本憲法の精神を体している者でありまして、それだけに、あのときうまくだまされたでは浅沼君も死に切れないから、そこいらを私はしつこいがあなたにお尋ねしたんですが、目を見て大体安心いたしました、善意に解釈します。
 中国の近代化の前進を阻止されているときに、ソ連から米ソ接近の犠牲として中国が突き放され、アメリカも中国の言うことを聞き入れてくれないときに、周恩来さんは断腸の思いで浅沼稲次郎君に懇願したのであります。浅沼は死を決してアメリカ帝国主義は日中共同の敵だと宣言したが、アメリカ人民なり何なりを敵にしたのではないのであります。そこに浅沼死すとも浅沼精神は永遠に生きておるのであります。浅沼は命を捨てて日中のきずなとなろうとして死を急いだのです。河上先生が浅沼をいま殺してはいけない、おれが十字架にかかるから、戸叶君、つらい使いだが、この北京への使いは君やってくれと頼まれましたが、それを思うときに、十字架をながめながら歩んだ河上先生、みずから日中のくさびとなって死のしかばねとなった浅沼君のことを考えると、このことだけは国民にわれわれはだまされたという偽り事は述べられないのであります。
 あなたは総裁選挙のごときは眼中にない、それも私は認めます。どうぞその初心を貫いて、へたな生兵法は大けがのもとのような、いまにも危機感があって有事立法が必要などと言われるような亡霊に取り囲まれている風潮を断ち切っていただきたいことをお願いし、園田君だけでなく、武器なき日本の政治家は、戦争の危機を前にして、良馬は鞭影を見て走るがごとく、みずからの体をなげうって平和をつくり上げるということに専心去れんことを祈りまして、私の質問は五十分が半分に削られましたから、もうこれで私の質問は大体大ざっぱな目的は達し得たと思いますが、目だけでなく、これからは心の回答を求めて結びといたします。
 どうぞ福田さん、福田赳夫ともあるものが二枚舌は使わないという一つの決意のほどを、やわらかな言葉でもよろしゅうございますから、示してください。
○国務大臣(福田赳夫君) 細かい具体的な問題になりますと、いろいろ私も申し上げたい点もありますが、私は、日本国民が平和を求める、これはもうコンセンサスであるということを踏まえまして、この道を迷うことなく邁進いたすという決意であるということを申し上げます。
○上田哲君 日中条約締結に至る御努力に敬意を表します。
 締めくくりの討論をしなければなりませんので、非常に重要な点だけにしぼって、ひとつ御見解を問いたいと思います。
 二つの国が二つの立場をそれぞれ持ち合いながら一つの条約に結集したわけでありますから、認識の大きな相違があることは当然であります。そのいろんな認識の相違をどういうふうに乗り超え、運営していくかということに今後の日中関係、ひいてはアジア、世界の平和の関係があるわけでありますから、その問題をしぼってまいりますと、昨日までの外務大臣等々の御見解表明の中で大きな見解の相違がある、認識の相違があると。たとえばケ小平さんの言葉をかりれば、共同の敵があると、そうではないのだというような御見解等もございました。ひっきょうするところ、たとえばケ小平さんのお言葉をかりても、中ソ両国は対戦不可避であるという言葉があるわけであります。この認識を共通せよということになるので、これはたぐってまいりますと、中国共産党第十一回全国代表大会、これは最高機関でありますが、ここで華国鋒主席がどんなに努力をしても、軍備増強をしても、最終的には中ソの対戦は避けることはできないであろうという認識が述べられていて、これが中国要路の見解になっているわけであります。
 私は、認識の違いは当然だと思いますが、その認識をどのように理解し、埋め合っていくかというところに問題があるし、違うものは違うとはっきり言い合っていくことに今後の友好の一つの礎があると思うわけでありまして、この重要な一点にしぼってひとつお伺いしたいのでありますが、中国側の中ソ対戦不可避、ぜひ避けたいというようなことは別問題です。当然なことですから。そうではなくて、中ソ対戦不可避論というものに対して総理はどのような御見解をお持ちになるのでありましょうか。
○国務大臣(福田赳夫君) 客観的に見まして、中ソが非常に厳しい対立関係にある、これは私は率直にそのように考えております。ただ、それが高じまして中ソ戦争が起こるんだというようなことは私はよもやあるまいのじゃないか。中ソ両国の指導者とももう良識をもってこの緊張状態というものを解消するんじゃないか、このように考えます。
 同時に、私は、中ソ両国相戦うべからず、そういうことがあっては断じて相ならぬ、このような気持ちを持ちまして、間接的にいろいろ私どもも、世界の中の日本であり、世界の中の中国であり、世界の中のソビエトでありまするから、私どもといたしましても、そのような悲劇的な事態に至らないような客観情勢づくりにつきましては細心の配慮をいたしてまいりたい、このように考えております。
○上田哲君 結構であります。願望の問題ではなくて、あるいは努力の問題ではなくて、客観情勢の認識の問題として、中国とソビエトはしょせん戦わざるを得ないのだという認識ではなくて、これは避けられるべきものである、そこに日本の平和外交の道があり得るであろう、この認識は明らかにひとつ確立をしていただくということが明確になりましたので、これは結構だと思っております。
 次に、この日中条約がどういう意味を果たすかという問題にしぼって考えますと、局限してこれを申し上げるならば、この日中条約によって日本と中国とアメリカの関係が一つの新しい段階を迎えた、こういうことが客観的に言えるのだと思うんであります。逆に言えば、日本と中国とそしてアメリカを含めた一つの新しい関係論、段階を迎えていることを背景として、日中条約も成り立っているということも分析としては私は正しいだろうと思うのであります。
 そういうことの基本的な理解、認識となるものは、園田外務大臣も言われたように、中国側における安保条約への理解だという言葉がございましたけれども、この安保条約の理解という言葉は言葉としては誤解を招きやすい部分もありましょうけれども、その言葉に集中して言うならば、安保条約への理解という言葉を通じて日中米は一つの新段階の関係論を持つに至っておるだろうと思うんであります。
 そういうことになれば、きのうも外務大臣が自然の流れである、また、それを否定すべき何の情報も得ていないという、反射的でありますけれども、積極的な見解を述べられたように、米中関係の正常化ということはもう当然な流れである、来年にもそのことはほとんど決定的になるだろうというふうに見ているわけでありますけれども、そういう認識が出てくるであろう。第三に、それは、当然、日中の次は朝鮮半島の問題である、朝鮮半島の安寧の問題である、こういうふうになっていく意味を果たすのがこの日中条約締結の大きな意味であると私は考えていいと考えております。
 もう一遍申し上げます。
 日本と中国とアメリカの新段階、安保条約の理解というような言葉の中で  この理解という言葉には私たちは必ずしも好感を持つわけではありませんけれども、しかし、少なくとも客観的に言えば、そういう意味で日本と中国とアメリカの新段階、そしてその限りで米中関係の正常化、そして次は朝鮮半島問題、こういう状態に日中条約の締結が至ることになってきたのだと、この認識について御理解をいただきたいと思います。
○国務大臣(福田赳夫君) これはなかなかデリケートでむずかしいお尋ねでございますが、まず第一に、日中米、これの関係がこの日中平和友好条約を背景として結ばれたというか、あるいはそういう関係が強化されたというか、そのような御見解でございますが、そういう関係ではないと私は思うんです。
 あくまでも私どもの立場は、日中平和友好条約、これはいわゆる平和条約的内容で、これはもうすでに日中共同声明で一九七二年に決まっているんです。今度は何をしたか、今度の新しい条約で何をするかというと、日中は過去数十年にわたるようなああいう不幸な状態であっては相ならぬ、これから先々は友好条約で友好親善の関係を続けましょうということを誓い合った、こういうことでありまして、これがアメリカに対し、あるいはソビエトに対し、いままでわが国がとってきた関係にいささかの影響もある問題ではないんです。事は日中間の問題である、このように理解していただきたいものだ、このように考えるわけであります。
 それから……
○上田哲君 一つの段階は迎えたということですね。一つの段階は迎えたということですな、意義づけは別にしても。
○国務大臣(福田赳夫君) 上田さんが日中米というつながりからとらえて一つの段階を迎えたと、こういうことでありますが、私は、そういうふうに理解していただいては困る、こういうことを申し上げておるわけです。これは日中は日中の関係、日米は日米の関係、日ソは日ソの関係です。お互いそれぞれの国に対しまして平和友好の関係を増進したい。その中で日中間には平和友好条約がなかった、これをつくったわけなんです。
 いまお話しのソビエト連邦、この間にも平和条約これはまだ平和条約自体か出ていないんですね。ですから、この問題を処理しなければならぬという問題が次に出てきます。しかし、その処理がどういうふうに進められるかということにつきまして、私は日中平和友好条約が災いをなす、こういう関係にはない、こういうように確信をいたしております。その災いがないようにというために六年間にもわたって苦心に苦心をしてつくった条約である。
 それから北朝鮮との問題ですね、これは私は終局的には南北が平和的に統一されるということ、これが本当に望ましいことであるというふうに考えておるのです。とにかく一つの民族が二つに分かれておる、これは悲劇とも申すべき状態だろう、こういうふうに思いますが、そういう私の平和統一という観点から言いますれば、私は日中平和友好条約が締結された、これは私はその平和統一への一つの環境づくりにはなる、このように考えております。
○上田哲君 あと八分しかないわけですから、ひとつ追い込んでいきますから、総理もなるべく簡潔にお答えいただきたいと思います。
 つまり、要約するところ、この日中条約の締結は私は前向きにとらえたいのですよ。平和への一歩前進、二歩前進のためにとらえたいわけですから、その方向に向かっていろんな力学の変動が出てきているであろう、そのことの究極は朝鮮半島問題が次に来る。そして日本が朝鮮半島の平和のために努力する役割りを大きく担ってきたということは間違いないだろう、こういう認識を統一したいのでありますが、ひとつ簡単に一言で結構です。
○国務大臣(福田赳夫君) 南北の朝鮮、これが平和的に統一される、これは私は本当にわが国の立場からも、また広くアジアの立場からも望ましいことだと考えます。日中平和友好条約、これはそのための環境づくりといたしまして一つの大きな要素になる、このように確信をいたします。
○上田哲君 大変結構でありまして、ぜひその方向で進みたいと思うのであります。
 現にカーター政権以来、旅行制限撤廃とか、その他のいろんな手が打たれているわけですから、そういう意味で、日本がそれに積極的に果たす役割りをやはりこの日中条約というものは一歩進めることになったという認識を共通することができまして大変結構だと思います。これは御答弁をいただきたいが、時間を節約いたしましょう。
 より具体的に申し上げると、きのう、私は、園田外務大臣の御答弁、大変これも大いに評価したのでありますけれども、そのために日本が多角的に努力をしなければならない。次は米朝関係がありますから、アメリカと朝鮮民主主義人民共和国の問題がありますから、このために積極的に少しでも役に立ちたいといまそういう意思表示があったと思いますが、きのう園田外務大臣が非常に積極的に申し述べられたことは、たとえば日米安保条約の実質的な推進常設機関である日米安保協議委員会、この日米安保協議委員会はいまのところは日本の外務大臣と防衛庁長官、向こうは駐日大使と太平洋軍司令官、こういう形――まあ軍事色が非常に強いと批判を受けそうな、そういうものでないものに改組していきたいということも提起したいということが出ました。結構だと思うのであります。そうして、その下の合同委員会も運営について考えたいということがありました。大変結構だと思います。ならば、いつどういうふうにしていくのかということをひとつもう一歩踏み込んで、これは御両人お並びでありますから、この際、具体的に踏み込んでお答えをいただきたいと思います。
○国務大臣(園田直君) 私がきのう申し上げましたのは、まだ総理の御指示を受けてないが、そういう考え方で内部検討をやっておる。したがって閣僚レベルの会議を別に設けるか、あるいはいまの協議委員会を協議をして変更するか、こういうことはただいま検討中であります。
 なお、合同委員会の組織の見直しということでございますが、私は、この組織の見直しということよりも、まず地位協定の運用を改善すべきだと考えておるわけであります。地位協定の実際の運用を取り決めておる合同委員会の合意の中には古いものがあるので、これらの問題は基地周辺の環境の変化に照らして見直しを行うことが必要と考えております。この見地から、合同委員会の下部機構として、合同委員会の合意のうち見直しの必要なものについてそのための作業を行う分科会をまずつくって、そしてそこで早急な処理を要するものから見直しを行いたい、こう考えて、九月の二十六日に第一回会合を開催いたしました。合同委員会の組織については、まず、当面は、これの運用についての協議要綱として、逐次、日米安保の協議が真に日本と米国が理解し合えるようなものにしたい、まず、その程度のことをいま考えてやっている途中でございますから、まだ総理のお許しを得ている段階ではございません。
○上田哲君 さあもうあと四分になってしまいました。四分間で私は四問にしぼりますから、ひとつそういうぺ−スで効率的にお答えをいただきたいと思うのであります。
 いまのお話ですね、日米安保協議委員会の外務大臣、防衛庁長官、駐日大使、太平洋軍司令官というような機構を改めていく、そして合同委員会の運営についても地位協定を含めて考えていくんだということについて、ひとつ総理も前向きに平和的色彩を強めて進めていくんだということ、これはもうイエスだけで結構です。
○国務大臣(福田赳夫君) 日米安保協議委員会の構成を見ますと、ちょっと片手落ちというか、そういう感もしますので、双方ともが閣僚レベルのものにするかどうか、これは検討します。
○上田哲君 ぜひひとつ平和的色彩を強めるということで御努力をいただきたいと思います。
 そこで、障害となる一つの問題は、きのうも出たのでありますが、中国と朝鮮民主主義人民共和国との間にある友好協力相互援助条約、この第二条では、一方が武力攻撃を受けたときには、他方は全力でこれを武力で応援するということになっているわけであります。もし朝鮮半島に事態が起きれば、朝鮮民主主義人民共和国に対して中国は武力で応援をする。また韓国に対しては日本の軍事基地をアメリカのためにイエスと言う場合がある。これは非常にまずいのだということがはっきり出ておるわけでありまして、この辺についてはもう時間がありませんから、この具体的な内容の矛盾点を突くようなことは差し控えます。
 で、問題は、そういう問題は日中条約ができるのでありますから、この日中条約を一つのパイプとして、アメリカにも朝鮮民主主義人民共和国にも、朝鮮半島にそういう条約上の矛盾、状況上の矛盾が起きないようにしなければならぬというのはお互いに生じていると思うのであります。そこでケ小平さんもおいでになるわけでありますから、きのうも総理と相談するというふうに外務大臣のお約束がありましたので、ひとつこれは総理から、ぜひケ小平さんにそうした問題についてじっくり話をする、その問題の解決のためにじっくり話をするのだという腹構えを明示していただきたいと思います。
○国務大臣(福田赳夫君) 朝鮮半島の問題につきましては、日中間で相当大きな見解の隔たりがあるんです。これはもう園田外務大臣が北京へ行って身をもって痛感をいたしてきたという報告を受けておりますが、しかし、大事な問題でありまするから、この問題もとっくり話し合ってみます。
○上田哲君 ケ小平さんと。
○国務大臣(福田赳夫君) はい。
○上田哲君 最後に一つ。もう全く時間がありませんけれども、今国会、総理が御出席になって討議を交わされる最後の機会でありますから、どうしてもしっかりしておかなければならないのは有事立法の問題であります。
 私は、この有事立法というものと奇襲対処という問題というのは区別しなければならないと思っておりまして、これは別な話なんであります。これを一緒にひとつ議論するのが時間がないというのは非常に残念でありますけれども、この際ひとつまとめておきたいと思いますが、奇襲というような事態がまあ起きないだろうということはだれもがこのごろ言っているところであります。前の防衛局長でありました国防会議事務局長の久保さんも、これは科学的にあり得ないということを数日前にはっきり言っておられるわけでありますし、総理は万万万一ということを言われるわけであります。
 実は、九月の二十九日の参議院本会議では万万万万一と四つ言ったのであります。万万万万一なんでありまして、その万万万一ということになりますと、これは数学的に言いますと百年に一遍ということであります。万万万万一といいますと、これは百万年に一遍でありまして、これは冗談で私は言っているんじゃなくて、純数字的な確率の問題としては、総理がそういうことを議論されること自体は否定しないでおきましょう。しかし、百万年に一遍あることを今日この日中段階、この日本の実情に合わせて議論をするということは政治の選択課題ではない。スイスの例も出ますけれども、スイスは少なくとも戒厳令というものはやらないということになっているわけでありますが、そういう問題というのは政治の選択としてとるべきではないと私は思うのであります。で、奇襲問題というのは、そういう意味で今日の政治課題ではないんだということが一つ。
 もう一つ、本当は区別しなきゃいけないんですけれども、有事立法、特にこれは秘密保護法にしぼっていきたいのでありますが、そういう緊急事態――秘密保護法というのは一般人にも適用されるんだということになりますと、これは有事になってからの法律ではないのでありまして、有事を目指して平時の法律ということになってくるので、これは超国家主義であるとかファシズムであるとか、そういう政治権力が欲しいのだというふうな誤解も受けることになるのであります。私がことさらに申し上げたいのは、いま日本と中国の間に、日本海波静かに平和の道をここで子々孫々に至るまで確立しよう、それを全世界が見ている、アジアが見ているという状態の中で、日本が百万年に一遍というような事態を大きく拡大をして、いかにもその秘密保護法あるいは有事立法、超法規というような状態を声高に述べることは正しい選択ではないと思うのであります。
 私は、提案をしたい。全部撤回しろと言っても、それは総理もいろんな立場はおありでありましょうけれども、私は、ここでひとつ具体的に、国会の現実的な冷静な判断として、総理がそういう立場を数字で確率的におっしゃるのはそれとして、私たちは少なくとも実定法上、国家公務員法の第百条とかあるいは自衛隊法、それから日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法の三点にしぼって、そこまではいいと、踏み込んで。そこまではいいから、そこから先の秘密保護法等の問題については、この日中条約を審議しているこの臨時国会ではそこまでにとどめていただきたいということを率直にひとつ御提案を申し上げ、明快な冷静な総理の御判断をいただいて終わりたいと思います。
○国務大臣(福田赳夫君) ただいまの有事立法の検討を始める、こういうふうに言っておるんですが、機密保護法の問題につきましては、ただいまこれを検討するとは申し上げておらないんです。もとより今国会でこれを検討というか、それを始めるなんというようなことは毛頭考えておりません。まあ先々のことを皆さんから聞かれるものですからお答えしておる、こういうことでございます。
○上田哲君 はい、わかりました。
○稲嶺一郎君 日中平和友好条約締結に対する政府の熱意に対し深い敬意を表するとともに、この条約によってアジア・太平洋の安全が一層強化されることを期待するものでございまして、特にこれに関連する問題について私見を述べ、総理の御意見をお伺いいたしたいと存じます。
 わが国としては、全方位外交の立場に立ち、いずれの国とも友好関係を保ち、かつ、いずれの国に対しても覇権を確立することに反対するもので、まことに重要な意義を持つものでありますが、他面、アジア・太平洋諸国は、それぞれこの地域の安全を期待しているとはいえ、その安全の求め方はそれぞれ異なるものであって必ずしも一つではないのでございます。
 日中平和友好条約によって日本は対ソ関係についての立場を変えたものではないということを私は信じております。しかし、この条約の設定で国際情勢は変化しつつあります。すなわちアフガニスタンの政変、イランやニカラグアの擾乱があった中で、エジプト・イスラエル・アメリカの三国平和交渉が進展し、米ソ間のSALTII交渉の曙光が見えたことなどもその一つでございます。このように、日中平和友好条約は、日中間の問題だけにとどまることなく、大きく国際的な影響を持つものであります。これが第三国関係に対する日本の立場に変化はないといっても、第三国には第三国としての受け取り方があるのでございまして、アジア・太平洋の安全にとっていろいろ影響力も出ているのでございます。
 したがいまして、わが国としては、アジア・太平洋地域に大小を問わずいかなる戦争も絶対に起こらぬことを最大の原則とし、米ソ勢力の均衡を考慮しつつ、あくまでも核兵器の廃止を目標として国際的努力を払うとともに、すべてのアジア関係諸国間の平和を目的とし、日本とこれら諸国との友好を高め協力の場を拡大していかなくてはならないと存ずる次第でございます。
 目下、日中平和友好条約の締結によってこれらの諸国間に国際関係再編の動きさえ見られるのでございますが、この動きをこれら諸国に対する日本の友好と協力とによってアジア・太平洋の安全につないでいかなくてはならないのでございます。しかも、これを口頭禅にとどめることのないようにしなきゃなりません。これを可能にする道は、私は絶対に強者の原理ではない、無の原理、これは東洋の思想でございますが、無の原理でなきやならぬと思っています。これは無限循環の理であり総合の理でございます。これらの理を具体的政策として取り上げることによりまして初めて私はアジア・太平洋に平和が到来するということを信じて疑いません。
 このような前提に立ちまして、私は、これより三つの具体案を提示いたしまして、総理の御意見をお伺いいたしたいと存じます。
 一点目は、アジア・太平洋安全会議を組織することであります。
 中ソも含めた関係諸国によってこれを組織し、わが国としては、日中平和友好条約、将来の日ソ善隣友好条約等を総合する立場をとり、その他の諸国も同様な立場に立って、総合的にアジア・太平洋の安全について研究協議し、かつ、その実現に努力することにしなきゃならないと思います。もちろん、これには多くの障害のあることは言うまでもありませんが、しかし、ここ十年は新しい世界秩序の生まれる過渡期でございます。人類にとって最も危険な期間であって、一たび操作を誤るようなことがあるならば、私は大きな危機をこの地球上に招来することを恐れるものでございます。この会議成立の努力こそがこの危機到来を防ぐ重要手段となるものと見られ、さらに、そのことをもって新世紀における国際平和の一つの基盤となるものとしなくてはならないと思うのでございます。もちろん、一挙にこの組織を実現することは困難でありますが、これが組織の目標としつつ、最初はASEAN諸国、オーストラリア、ニュージーランドに日本を加え、核兵器を持たざる諸国の安全をいかにして求めるかを取り上げるよう努力すべきではないかと思います。
 この点について総理の御意見をお伺いいたしたいと存じます。
○国務大臣(福田赳夫君) まず、アジア・安全保障条約とも言うべき平和機構をアジア全域にわたって設定すべきではないかという御所見でございますが、そういうことができれば大変結構なことだと思います。ただ、世界の現実はそういう状態ではない。特に中ソ両国が非常ないま対立的な情勢にある。こういう中で中ソを含めて全アジアの平和安全保障条約と申しましても、なかなかこれは当面実現不可能な状態だ、このように思いますが、しかし、理想といたしましては、それは大変結構でございまするから、それは常に念頭に置いていくべき問題である、このように理解をいたしております。
 それから、今度は、大陸を除いて東南アジア諸国、この間に平和体制をつくるべきじゃないかということ、これは私は全く同感であり、これはまた現実性を持っている問題だと思うんです。もうすでにASEANという国ができた。それからまたASEANと深い関係にあるオーストラリア、ニュージーランド等の諸国があるわけであります。そういう国が私は相協力をいたしまして、平和とそれからその繁栄、発展を求めるということは大変大事なことである、そういうふうに考えまして、まず近きより始めよというか、やすきより始めよというか、ASEAN諸国に御承知のような動きが始まりましたので、あれが私は実を結ぶということになることを深く期待をいたしておるわけであります。私はASEAN諸国の内政に干渉するとか、そういう意図はございませんけれども、しかし、ASEAN諸国が自立への努力をASEAN自体においてこれを行うというに際しましては、わが国は進んで積極的なその自立への協力をしてまいりたい、このように考えますが、それがさらに拡大されまして、オーストラリア、ニュージーランド、日本、こういうような地域まで含めまして平和また繁栄の道が求められる、これはもう大変結構なことだと考えますので、また、その方向でアジア外交を進めてまいりたい、このように考えます。
○稲嶺一郎君 私は、総理が紀元二千年を目標としながら世界平和の確立に対して進んでいただくことをお願いする次第でございます。
 二番目は、アジア太平洋における重要資源の共同開発でございます。
 アジア・太平洋安全会議の工作を地につけ、その実質効果を求めるにはこれを裏づける経済工作が必要でございまして、そのためには関係諸国によって共同事業を起こすことが考えられます。この共同事業の推進によって別な角度から政治工作を促進し、アジア・太平洋の安全を求むべきでありましょう。
 言うまでもなく、国内の地域開発と海外の発展途上国開発とには相通じるものがございまして、国内開発を進めて消費力を増し国民経済の発展を求めることは、発展途上国の開発を進めて国際経済の発展を求めることと同じだと存ずる次第でございます。したがって国際経済の発展のために、戦争に使われる支出を仮にこの開発投資に回すほどの覚悟をするならば、国際経済の飛躍的発展を導き、その過程において国際不況は克服され、それはまた各国経済の好況を導くことになるのではないかと存じます。この視点からすると、すべての経済協力はアジア・太平洋の不況克服に役立ち、ひいては国際経済の好況につながるものでありますが、経済開発を大規模かつ効果的に進めるためには、多角的国際協力によって大規模プロジェクトを選択し、この開発を進めることは受益国にとって政治的にも大きく役立つものと言わなくてはなりません。
 この共同開発といたしましては、すでにアジアのハイウエーあるいはメコン川の開発などがありますが、特にアジアにあっては水を治める者は国を治めることと言われております。ESCAPの報告によりますと、これら地域の開発途上国で水の需要はますます増大しつつありますが、その中にあって洪水による被害はきわめて大きく、その被害額は年間平均三十億ドルに上り、さらに干害を加えるときわめて膨大なものとなるのでございまして、防災及び水利灌漑は最も重要な事業となっているのでございまして、水害の最も激しい流域を選択いたしまして、これを受益国と協力国による国際協力体としての事業団を組織し、融資にとどまることなく、この事業団によって直接開発事業を遂行することにすると、従来の障害は多く取り除かれて、その実効を上げることができると考えられます。この治水事業はこれら発展途上国の開発にとっては根本的な問題でございますが、関連国による協力事業団の結成について総理の御見解をお伺いいたします。
○国務大臣(福田赳夫君) わが国は世界の経済大国として、全世界の経済、これが安定し発展する、そのための努力をいたさなきゃなりませんけれども、そういう中でわが国が最も関心を持つべき地域はアジアである。そううい中で東南アジア諸国――オーストラリア、ニュージーランドを除きますと非常におくれた国々が多いわけであります。そういう国々の発展への自主自立の努力、これに対しましてはわが国は積極的にできるだけの協力をすべきである、このように考えておるわけであります。
 いまわが国はGNPが非常に大きい。ですからGNP対比で言うと、大きいと、こういうことを言うわけにもまいりませんけれども、しかし金額にするとGNPが大きいだけにもう十四億ドルにも上るODA援助をしておるわけでありますが、その約半分はアジアに向けられておるんです。その中でも東南アジアが非常に多いわけであります。そういう道を通じまして私は東南アジア諸国の自立回復にはわが国は大きな貢献をなしておる、こういうふうに思います。
 いわゆるASEANプロジェクト、こういうのがありますが、これも相手国の準備の整わないという事情でおくれておるものもありまするけれども、わが国の事情でおくれておるというものはございませんです。また、いろいろの約束がこれらの国となされておりまするから、ことごとくこれを実現をするというのみならず、ASEANだけをとってみますと、ASEAN諸国の自立のための財政的な側面、それに対する協力をするというところまでやっておるわけでありますが、とにかく世界平和にはわが国は貢献しなけりゃならぬけれども、その中で最も大きな関心を持つべき地域、これはアジア諸国であるという観念でこの上ともこれを推し進めてまいりたい、このように考えます。
○稲嶺一郎君 第三点目は、今日の世界というものが有限エネルギー、石油を中心といたしましてその争奪戦が現在行われつつある、これが私はいま世界の危機の要因になっておると思いますが、この点で無限エネルギー源の開発に最大の努力を払うことは私は世界平和とつながるものと思っております。しかも、この開発を国際協力によって進めるとするならば、一層その意義は深まるものでございまして、ここに南太平洋における水素エネルギーの国際共同開発を提唱いたしたいのでございます。
 この南太平洋の持つ条件、すなわち熱帯と無風帯を活用し、海上の水面の温水と海底の冷水の混流によって発電を行い、さらに、それから水素分離を行って、公害なき無限エネルギーの開発を国際協力事業団によって進めることでございます。もしこれができるならば、私は、現在世界の危機の一つの要因になっておりますところの有限エネルギーを無限エネルギーにかえることによって世界平和に非常なる貢献をすることと存じますが、総理の御意見を伺います。
○国務大臣(福田赳夫君) いま世界情勢が先々が非常に見通しが困難である。不透明時代とも言われまするし、また不確実時代とも言われる。その背景にはいろんなことがありますが、一番大きな問題は、展望しますと、これはエネルギー問題、これで、いまのままで進みまするとやがて相当困難な事態が来るのではあるまいか、そういうことがあると思うんです。そこで、私は、当面、とにかく石油時代でありまするから、石油の新しい鉱区の開発あるいは石油の節約でありますとか、そういう施策も進めなけりゃなりませんけれども、同時に、やはり石油代替エネルギーの開発、これへ本当に真剣にいまから努力していかなきゃならぬだろう、こういうふうに考えます。
 いまお話しの水素エネルギーという話でありますが、これが核融合エネルギーという意味でありますれば、これはもう大変大事な問題だと。いま私はカーター大統領とも話しまして、日米共同でそういう問題をやろうかと、こういう話を進めておる最中でございますが、この水素エネルギーに限らず、太陽熱エネルギーもある、地熱エネルギーもある、とにかく石油代替エネルギー、この開発は非常に重大だと思いますので、これは多少金がかかっても、これはもう惜しむべき問題じゃないと思うんです。これは不透明時代に挑戦をする、不確実時代を確実なものにする、こういう意味から大事なものであると思いますので、また精力的にこの問題には取り組んでまいりたい、このように考えます。
○稲嶺一郎君 代替エネルギーの問題につきましては、ただいま総理の御意見を伺いまして、大変うれしく存じます。ぜひこの問題について全力を挙げてひとつがんばっていただくようにお願いしたいと存じます。
 それから、次に、尖閣列島の問題でございますが、この問題につきましては外務大臣にも一昨日質問をいたしましたが、ただ、今後予想されることは、あるいは二百海里問題あるいは大陸だな問題あるいは開発の問題等いろいろございまして、恐らく、将来、何カ年か後にはきわめて困難なる問題が生じるんじゃないかということを感じ、私はそれを恐れるのでございます。
 それで、これに対処するには、わが国としては、腹の底からの決意をもって、また正しい姿勢をもってこの問題に当たる必要があるんじゃないか。さもない限り、わが国に対して重大なる損害を与えるようなことになりかねない時代になるんじゃないか、その意味におきまして総理の御決心をお伺いいたしたいと存じます。
○国務大臣(福田赳夫君) 尖閣列島は、歴史的に見ましても、また国際関係から見ましても、わが国の固有の領土であるということはもう明々白々でございます。しかるに、ことしの四月にああいう不幸な事件が起きたということはまことに残念でございますが、今回、園田外務大臣が北京に參りました際に、ケ小平副首相との間で、わが国のさような立場を踏まえて、再びああいう不幸な事件が起きないようにということを要請いたしましたところ、さような問題は自今もう起こしませんという確約を得ましたので、この問題は決着済みである、このように考えますが、これからいわゆるオフショアというか、海底油田の開発とかなんとか、いろいろそういう問題があろうと思いますが、これは日中平和友好条約、この精神を踏まえましてお互いに話し合いによって円満に事を進めなけりゃならぬ、このように考えております。
○稲嶺一郎君 最後の一点でございますが、日中学術センターの件でございますが、新聞によりますと、茅誠司先生がこの問題につきまして総理に提案をされたというお話でございますが、これはどういうふうにお考えですか。
○国務大臣(福田赳夫君) 日中科学技術のことにつきましては、向こうから専門家の人なんか参りまして、それぞれわが方の専門家との間で話はしておりまするけれども、まだどういう方向の具体的な施策をお互いにとるかというようなことにつきましてはまとまった段階までいっておりませんです。今後の問題です。
○稲嶺一郎君 終わります。
○玉置和郎君 総理、ソ連、中華人民共和国、ベトナム、キューバ、カンボジア、共産主義国がたくさんありますね。そういうところで党首が決めたことに対して、あなたは間違っておるということを公開の席上で言ったらどうなりますか、そういう国で。こういう共産主義国家で党首が、党首ってあなたのことですよ、もし共産主義国家の党首ならば、私のように、あなたのやったことは、党首、間違っていますよと、こういう全国民注視のところで言った場合に、私は恐らくちょんでしょうな、これは。どうですか。
○国務大臣(福田赳夫君) それはそれぞれの国の置かれた国際環境、それから国の生い立ち、いろいろありまするから、一概に私から感想を述べることはできませんが、ひとつお許しを願いたいと思います。
○玉置和郎君 私はなぜこういうことを先に聞くかといったらね、ここが大事なんです。日本国は共産主義国家とわけが違うぞということを言いたい、これなんですよ。われわれは議会制民主主義をとっておるんです。議会制民主主義の国で先輩国であるイギリスが教えておるのは、政党の中でも自由主義体制をとる政党は議員党員の個人の活動を色あせさせてはならぬというのが、これが議会政治の根本です。その意味において、わが自由民主党がとっておる政党政治はこの議会政治の根本義を踏み外していない。これは私があなたに対してこれから質問するんじゃない、むしろあなたの過ちをただすわけです。そういう自由がある。これどうですか。
○国務大臣(福田赳夫君) わが国は自由体制の国である、そして言論も、これも全く自由な立場を許されておる、こういう国でありまするから、もとより国会、こういうところにおける言論は、私は一まあ節度というもの、これはありますよ、ありまするけれども、言論は、本質的には私はこれは自由でなければならぬ、このように考えております。同時に、国会、いまのわが国のこの国会政治は政党政治という体系をとっておりまするから、政党の中における規律というものもある。その両面を踏まえて、良識を持って行動すべき立場にそれぞれの議員はある、このように考えております。
○玉置和郎君 私が歴史が好きなことは総理も御存じです。チャーチル、ルーズベルト、世界のいろんな指導者がおります。毛沢東さんもそうです。そういう人たちはほとんど歴史書を大事にしている。歴史の中にこそ政治家の教訓がある。未来は私は過去の中にある。現在も過去の中から学び取らねばならぬことがたくさんある。それだけに日本が誤った歴史をいま振り返ってみたんです。そうしたらこういうことがある。
 これは国会図書館のマイクロフィルムからとってきた当時の新聞、そうしてその当時の衆議院、貴族院の国会会議録、ちょうどこれをいまここに置きかえたら、ああなるほどなとわかるんです。「外交転換ここに完成」、これは昭和十五年の九月二十八日で「日独伊三国同盟成る」というんです。その次に「ガツチリ組んで十年の驀進」、これは「東京日日新聞」。それからその次に、よう似ているのがあるんです。「いまぞ成れり“歴史の誓”めぐる酒盃、万歳の怒濤」というような、「感激沸く総統官邸の調印“人を生かすの剣だ”」というような、「覆面脱いだ密使」というわけです。そしてここに「両氏に聴く」というので、白鳥大使だとか大島さんとか出てくる。ちょうどいま中江君だとか、あそこの何とか大使というの、あれそうなんです。それで、その次出てくるのは「盟邦独・伊両外相と結ぶ新枢軸の産声 颯爽たり松岡外相」というような、ちょうど園田さんと一緒だ(笑声)。これお互い笑い事じゃないですよ、こういうことをやってきたんです。
 そうして非常に大事なことは、外務省がのこのこ出ていって、ヒトラー総統に「我国民に呼かけん」という要請までしておる。ドイツで日本の大使がヒトラーのところへ行って、どうか日本国民に呼びかけてほしいと、ヒトラーは快諾をしておる。これがここにちゃんと載っているのだよ。それからここに「覇権」という言葉が出てくる。「覇権」というのは、当時の覇権国家はイギリス、これが一番覇権国家。それに対して日独伊はその覇権に反対する立場の国家なんです。よく似てますよ。ただ、似ていないところは、当時のこの国会会議録を読んだら、もう日一日、日がたつに従ってトーンダウンしてきて、最後には皆日独伊軍事同盟賛成の声、ただ貴族院だけが最後までがんばっておる。しかも少数になって二人ぐらいなっちゃった。なぜなったかといったら、その人は選挙をやらない人、勅選議員です。だから選挙というものがいかに政治家を堕落さすものであるかということもここで教えておる。そうですよ、これは総裁公選も含めて選挙というものは人間を堕落さす。
 だから、私がここで言いたいのは、このよう秘して歴史の教訓を学ぶときに大事なのは、これは私の好きな本ですが、池井優さんの「日本外交史概説」というやつ、そこに書いておるんですがね、第二次近衛内閣をつくるときに、近衛さんが外務大臣に松岡さんを選んだ、そのときのことが詳しく書いてあります。それを抜粋しますと、なぜ選んだかというのは「松岡の心臓と気力と詭弁的な能弁と術策が陸軍を押えるに役立つ」と書いてある。それをそのまま置きかえたら、園田さんの心臓と気力と詭弁的な能弁と術策が政党を抑えるに役立つと、こうなる。そうですよ。二番目には、三国軍事同盟をやらなければすぐ倒閣を口にする軍と、こうある。日中をやらなければすぐ福田内閣を倒すぞと口にする各政党、よく似てますよ。
 そこで、私は総理にもう済んだことを言っても仕方がない。大事なのは、あなたのこの国会のやりとりを見ておりまして、どうもやっぱり危険だなと思うのは極東の範囲の問題です。これはきのう幹事長にも聞いたんですが、幹事長は当時外務大臣として私の質問にこう答えた。「いまあなたの御指摘の、台湾並びにその周辺というのは非常に大事だと思っておるわけでございまして、日本の政府の立場は、安保条約を堅持していくということ、したがって、その関連取りきめも全然そこなわずに維持していきましょうという立場でおるわけでございます。そういう日本の立場を理解して、これに触れずに日中共同声明ができたわけでございます。私どもの立場ははっきりしておると思うんでございまして」と。
 ところが、あなたが社会党の何とかという女の人に答えて――土井たか子さんかな――安保条約は変質してきたというような答弁をしておられますがね、それで台湾条項についてはいろんな解釈をしておられますが、私たちはどう聞いておっても、これはあなたがアメリカとちゃんと理解も得ないでああいう先走った答弁ができるんだろうか、だんだんだんだん福田さんもケ小平に似てきたんじゃないかなという心配すらしていますよ。
 これはいけません、それはいけませんと言うの。私はあなたを信頼し、そして個人的には尊敬しておるんですよ。尊敬しているが、日中はこれは別ですよ。あなたは非常に危険な道を歩んでいる。それはあなたと私のやりとりの中に過去幾つか例があった。それはきょうは言うまい。あなたの意向を受けて、そして台北へ飛んだこともある。そういうときのあなたの考え方とどうもやっぱり、この日中条約をこのままにしておいたらソ連からも、それからまた中国からも揺すぶられてにっちもさっちもいかぬようになる、ここはひとつしんぼうしてくれと言われたのはもう数日前のように思い出します。
 いま大事なことは何かと言ったら、第二次大戦に突っ込んでいって破局を招いた、あの当時のことをもう一回じっくり思い出してみることです。そうして油で鉄でいろんな経済援助をしようとしておる日本の財界、この姿を、やはり当時の日独伊の関係の中にもやっぱり経済協力があります。そういうことを思い出して、どっかで歯どめをかけなかったら、日本国は軍事大国にならないと言ったって、隣の国は軍事大国になるんです。鉄と油が存分にあったら必ず軍事大国に歩んでいく世界の歴史を知らなきゃならぬ。日本国は幸い賢明な保守党の政治家の指導者がおったために、また私らみたいなやかましいのがおったために軍事大国にならなくて済んだ。しかし、中華人民共和国のような体質を持っておる国に対して、無制限に近いような考え方を持った経済援助がもしなされるならば、これは大変なことになる。
 私は、さっきあなたの答弁の中にあることを聞いて、これは大変なことだなと思ったのは、中ソ戦争不可避論を上田さんが言って、あなたは中ソ戦争はよもやあるまい、中ソも常識を持ってこういう問題は解消すべきである、こう言った。あなたと私の共通の友人で、あなたも聞かれたと思うが、実は、ソ連通の方が向こうへ行って何を聞いてきたかというと、ソ連は最近日本がソ連にかわって中国大陸へ経済援助してくれることでほっとしておると、そしてやがて四つの近代化を仕上げた暁に中ソ一枚岩になるかもわからない、こう言う。私の周辺にある中国研究家の大半は必ず中ソは手を結ぶ可能性がある、こう言っています。そのときにわれわれはどういうふうなことを考えたらいいのかというと、中ソという大変な力を持った二大国家が共産主義を信奉しておる、そして一緒になる。一緒になったときには、その力にアメリカは一体どう抗し得るのかということです。恐らくアメリカは逃げてしまうでしょう。その力に対抗してでも日本を同盟国家として、友邦国家として守っていくなんということは、これを考えたらもうこれは非常識です。当然、アメリカはアメリカモンロー主義で自分の国へ入ってしまうでしょう。そればかりじゃない、第一の防衛線であるヨーロッパに力を注ぐでしょう。
 そういうことを考えたときに、日中の今後のこの関係というものは非常に慎重を期さなければならない、こういうことを考えておりますので、どうかその全体を含めた御答弁、特に極東の範囲のところをやってください。
○国務大臣(福田赳夫君) 時間が制約されておるようですが、極東の範囲の問題ですね、これだけはお答えさしていただきたいんですが、私は、安保条約が日中平和友好条約によって変質した、そう申し上げておりません。これは、玉置さん、ゆっくり速記録の方を読んでもらいたいんです。新聞の見出しでなくて。私は日中平和友好条約によって、また、さかのぼれば日中共同声明によって、日米安保条約、これはいささかの影響もあるわけではない。したがって日米安保条約における極東の範囲、これは南はフィリピンから台湾周辺ということであると、このように、このことはいささかも変わりはないんです。
 ただ、さあそれじゃ台湾周辺で事が起こったと、米軍が日本の基地から発進するとき、イエスと言うのかノーと言うのか、こう言うから、これはイエスと言う場合もあるしノーと言う場合もある。ただし、日中平和友好条約、こういうものができたこういう今日の状態、それからいま台湾海峡が波高しというような状態ではない、そういうようなことをイエス・オア・ノーを言うその際には、背景として配慮していく考えである、こういうことを申し上げておるんでね、ちょっと誤解があるようでありますから、速記録をよくごらんになられることをお願い申し上げます。
○玉置和郎君 外務大臣ね、きのう、上田さんの質問に対して、米中正常化を否定する材料はない、こう言ったですね。そのことは、裏返しに読めば、肯定する材料もないということで理解していいですか。
○国務大臣(園田直君) 速記録に書いてありますとおりに、米中は、上海共同声明以来、接近しているようであるけれども、私としてはどのように接近しているかはわからない、来年やるということについてはそれを否定する情報はない、こういったことで、これができるという情報も持っていないわけであります。
○秦野章君 日中条約については、総理も外務大臣も非常に苦悩に満ちた選択をされたと思います。幾つかの伏在する懸念とそれから潜在的な危惧というものを感じながら選択をされざるを得ない、そういう私は立場であったと思うんですけれども、まさに問題はこれからだと、決してこれはユニークな条約ができて非常にりっぱなもので万万歳というようなものじゃないじゃないか。
 私は、その潜在的な危惧の問題で幾つもあるんですけれども、時間がありませんから、まず第一に、内政不干渉の問題を申し上げますが、これはいままでいろいろ討論が出ているんですけれども、中華人民共和国が内政不干渉というものを世界に宣明した一番最初はチベットに関する一九五四年の中印の協定のときでございます。このときすでに内政不干渉ということを言っているわけです。領土尊重と。ところが、それから三カ月後にはもう国境戦争が起きたんです。それから、その次にバンドン会議が一九五五年。その他、われわれの直接関係では日中共同声明が一九七二年に領土尊重、内政不干渉ということを掲げているわけですね。ところが、そうやって内外に内政不干渉を掲げながら、内政不干渉をやめたかといったら、やめてないんですよ、やめてない。
 一番手近なところは、最近、これはことしですよ、五十三年の七月三十一日、これは徐向前という国防部長の論文があるんです。七月三十一日の人民日報です。これを見ると、明らかに第二世界に日本とか西ドイツとかを指定して、これを争取する――争い取る。やっぱり世界大戦は避けられない。そこで三つの世界論の立場に立って第二世界を争取して広範な統一戦線を結成すると。
 それから北京放送。この北京放送が七月の十一日――これは、外務省、間違っていたら訂正してください、これは北京放送なんかちゃんととっているだろうから。日本語の北京放送ですよ。これは去年の七月ですけれども、相当なものだな、これ。革命の二つの手段ということで、要するに暴力革命でなきゃ革命は成功しないんだということを――余り時間がないから長々と言いませんけれども、革命の武装闘争の用意を整えなきゃだめだよということを日本向けの北京放送で言っているわけですね、言っているわけです。
 それから、これは私は驚くべきことだと思うんだけれども、中日友好協会の副会長の張香山氏が五十二年の五月に、友好協会ですよ、どういうことを言っているかといったら、これまたマルクス・レーニン主義の普遍的な真理を日本革命の具体的実践と結びつけること、これを真剣になし遂げなければ日本革命の勝利は――結びつければ日本革命の勝利は全く疑いない。結局、この革命というのは政府転覆でございますからね。こういうことを中日友好協会の幹部が五十二年の五月に訪中団にしゃべっているわけです。これは政府機関の情報だから、これも間違いないと思います。
 そういうようなことをずうっとやってきて、とにかくことしは日中条約を結んだ年なのにもかかわらず、そういう状況がことしでも出ている。日中共同声明後に出ている。これに対して、きのう、園田外務大臣は、ケ小平副主席と会って、余りそういうことをやられちゃ困るんだと、お互いに友好の障害になるじゃないかというようなことを言ったら、向こうが黙っていたと、こう言うんですよ。黙っていたというのは一体何事か。
 私は、本当に友好をやるんなら友好に邪魔になることはやめようじゃないかと、それが本当の友好だよと、ぜひそれはひとつやめてくださいよと、こういうことを政府は――下の方の役人や何かにやらせようだってこれはできないんですよ。この日中友好条約を締結したときに、本当に友好の始まりだというのであるならば、この機会をとらえて、中共の国家原則である内政不干渉というものを名実ともに実行させるというだけの政治的な見識と実行というものは政府にできるのであろうかということを、いままでの経過を見て、私ははなはだ疑わしく思うのでございますが、いかがでしょう。
○国務大臣(福田赳夫君) 日中平和友好条約は今後の友好関係を約束をしたものだと。しかし、いま秦野さんが御指摘されました相互内政不干渉、これが一番大事なんです。これは私はこれほど大事な問題はないというくらいに考えておるんです。
 ですから、私は、園田外務大臣が条約交渉のために中国へ出発するその際に、五つの注文を発したわけでありますが、その中で私が最も重視した問題は相互不可侵、これを強調してもらいたい、このことであります。私は、この相互内政不干渉、これができなけりゃ、友好友好と言ったって友好条約は中国がよく使うように名存実亡と、こういうことになっちゃうんです。私は、この条約が本当に平和友好条約としての機能を発揮するというためには、この不可侵、この問題以上に重要で大事な問題はない、そのように心得ています。
○秦野章君 近くケ小平副主席がおいでになるということでございますから、この間は園田外相に対して返事がなくて黙っていたということですから、せっかくお見えになるんですから、これに対して総理でも外務大臣でも、そういうことはひとつ、データがあるんですから、やめてもらいたいなと、親の心子知らずということもあるから、どうなんだろうということを、やっぱりトップの方がやらなきゃ、下にやらせるというのは無理なんですよ。それは大臣級が北京放送を聞いているわけじゃない。しかし、日本国民には日本語で、日本向け放送でもってどんどん入ってきているんですから、どうですか、これ、ケ小平が来られたときにそういう話をされますか、総理どうですか、雑談のうちでもいいんだから。
○国務大臣(福田赳夫君) この点はこの条約のかなめでございまするから、篤とお話をいたすつもりでございます。
○秦野章君 そうしたら、その際、資料も見てもらって、そしてそういうことをお話しになって、向こうがどう言ったか、どう答えたか、それをひとつ記者会見で発表していただきたい。これも国家経営の責任者としては当然やってもらわなきやならぬことだと思う。これは下任せじゃできない。中国のように自分が世界で一番偉い国だと思っているかもしれぬような相手にはよほどこっちが腹をくくってやらなければ、日中友好はいいけれども中身は空っぽじゃしようがないですから、そういうことをぜひ、いま総理におっしゃってもらってありがたいんだけれども、後で記者会見で国民にも知らしていただきたい、これをお願いします。
○国務大臣(福田赳夫君) そのような心得であります。
○秦野章君 次は、中ソ不可侵条約の問題なんですけれども、これは総理も大変気を使って、中ソ不可侵条約は日本を敵視しているということだから、これはどうなんだと、やめるべきではないか、廃棄すべきではないかという方向で、外務大臣も総理もそういう方向で期待を持って交渉されたというふうに国会でも答弁をされておるわけです。
 ところが、私はちょっと違うんですよ。これちょっと聞いていただきたいんだけれども、ドイツがソ連と日中条約みたいなものを結んだのが一九七〇年です。一九七〇年の独ソ条約というのは、これは平和条約的要素もあるけれども、日中友好条約みたいなものなんです。これは政府委員の方に説明してもらいたいけれども、時間がないから私がこれは間違いないから申しますけれども、ドイツとソ連が戦後の処理で条約を結んだ、日中友好条約のようなものを結んだんです。この結んだときに、それ以前に、実は、ソ連は、ワルシャワ条約が一九五五年、ポーランド、フィンランド、ユーゴスラビアとみんな条約を結んで、その条約の中には軍国主義ドイツとかドイツ国とか、こう書いてあるんです。そんなものを知らぬぶりして条約を結んだ、独ソ条約をね。平気なんです。
 私は、廃棄をしろ、廃棄をしろと、廃棄をすべきであるということを中国に追い込むことは、もう名存実亡と言っていればもういいんだから、そこから先はこれを追い込むことについて何のプラスがあるだろうか。それでなくても米中日、言うならば米中日協商というふうな、反ソ統一戦線というようなそういう声が一方においてあることもこれ事実ですよ。ソ連がどう思うか、何のメリットがあるだろうか。名存実亡と言ったんなら、もうそれ以上いいんです。これ。条約観が日本と違う。これは外務大臣とやりますからね、ちょっと違うんですよね、条約観が。だから私はソ連を追い込んで、これから得があるのかと。そして、それを言うことは米中日のやっぱりそういうものだなと、こう思わせるだけのことでしかないから、名存実亡と責任者が言ったのなら、しかもみんなに言ったのなら、外務大臣だけにこそこそ言ったんじゃないんだから、私は、それ以上追い込むことは、国益の立場で、全方位外交の立場で、日ソをこれから非常に重視していかなければならぬという立場で賢明ではない。この点は若干の軌道修正を必要とする、こう思うんでございますが、いかがですか。
○国務大臣(園田直君) その点は私も考えておりましたから、向こうで名存実亡こうこうだと言いましたけれども、これをそのまま言わずに、私は確証を得たということで発表したわけであります。
 なお、ソ連に対しても、この中ソ同盟条約を破棄しろとは言ってない。中の敵視条項は改正してもらいたい、こういうことを言っているわけであります。
○渋谷邦彦君 日中共同声明発出以来六年余り、ようやく曲折を経ながらも日中友好条約が批准、承認される、まず、このことに対して祝意を表したいと思うのであります。
 いままでもいろいろと議論がございました。今回の日中条約を取り囲むあるいは希望あるいは不安、疑惑等々ございます。言うなれば、アジア情勢に一石を投じた、その波紋というものはこれからどういう広がりを見せるか。言うまでもなく、これは時間の推移を見守っていかなければならないことは当然でございましょう。ただ、そうしたこれからの時間の推移もさることながら、日中条約の今後の運用、これはいろんな角度からいままでいろんな方々から述べられてもきました。しかし、何と申しましても、この日中条約に盛られた精神というものが適確に信頼感を持って誠実に運用されるかどうか、これが非常に大きな問題であろう。過去におけるさまざまな条約の締結というものがいろんな国でございましょう、しかし、必ずしもそれが希望する方向へ向かったという、そういうものがない場合も非常に多くあったわけでございます。われわれはせっかくこうした努力の結晶で、ともあれ日中間の平和友好を促進しようという試みのもとででき上がったわけでございますので、この点については新しい緊張激化というものを惹起させない方向で努力をすることは言うまでもないと思うのでありますけれども、この運用いかんによっては新たなそういう問題というものが起き得るその可能性もあるのではないだろうか。
 と申しますのは、衆参両院を通しましてしばしば問題にされてまいりました覇権の問題にいたしましても、日中両国間において判断し受けとめている認識の仕方というものはそれぞれ違います。こうした点を考えましても、果たしてこれがどういうふうに今後日中条約というものに基づいた展開がなされていくのであろうかというような心配が実はないわけでもございません。平和というものを口にしながらも、その平和というものの隠れみのを着ながら、実は、それが代理戦争をやってみたり、言うなれば覇権行為につながるのではないかというようなこともないではございません。現在、カンボジア、ベトナムの紛争に例を見るまでもなく、あるいは中東紛争に例を見るまでもなく、こうしたことがいまだに悲しい一つの現象として繰り広げられているわけでございます。
 こうした現実的な側面を考えた場合に、なるほど精神条項としては非常にすぐれた、しかも非常に短い文章でもってまとめられたなという印象はあるんですけれども、果たしてそういうような将来において、危惧する必要はないと言われればそれまでかもしれませんけれども、運用いかんによっては、そういう覇権を、もちろん日中間においては求めないということが第二条で明記されておりますが、ただ、他の国においても求めることには反対である、反対ではあるけれども、もしそうした具体的な事実が起こった場合にどういう一体制裁の措置があるのかというような問題につきましても、われわれはその辺の問題をどう一体対応し処理していかなければならないのかということまで考えざるを得ない側面もあるであろう。運用の仕方いかんによってそういうことの危惧はないかどうか、改めて総理という最高の立場におかれる判断をここに明確にお示しをいただきたい。
○国務大臣(福田赳夫君) 覇権行為ということにつきましては、力をもって相手国のその意に反して自国の主張を押しつけることである、こういうふうに理解するのが通念でございます。ただ、そういう世界的正義といいますか、の観念としての覇権行動、それをどういうふうに判断をするか、これはいろいろむずかしい問題が起こってくるというようなお話でございますが、それぞれの国、つまり日中両国それぞれがそれぞれの立場において判断をする、こういうことにいたしておるわけであります。そのことは条約第四条においても明記しておるとおり、第三国との関係においてこの条約はその立場に影響するものではない、こういうことをはっきり言っておるわけでありますから、私は、覇権、反覇権行動につきまして日中両国が相談し合って、あの国の行為が反覇権であるか、覇権行動であるかどうかというような、そんなような相談をするわけじゃないんです。たまたま、しかし、両国の見解が一致する、こういうようなことは結果においてはあり得ること、これはなしとしませんけれども、過程において相談して、そうして両国がもめるというようなことは予想しておりませんです。
○渋谷邦彦君 ただいまも問題がございました、この認識の相違によって生ずるいろんな考え方の相違、せっかく日本としては、この条約を軸にして新しいアジアの平和と繁栄を築くことに大変な役割りを果たすであろうという認識でやっていることだと私は思うんです。日中はもとよりでありますが。しかし、共同声明が出されて以後、さまざまな人がさまざまな発言をする。これはとりもなおさず、ソビエトはもちろん、あるいはASEAN諸国あるいはその他の国々に対しましても誤解を生むような、そういう言動もないではない。いま、総理は、特に具体的な事実については十分話し合って、そういう誤解を生じないように話し合うつもりである、こういうふうにおっしゃいました。もちろんそれは必要なことでございましょう。ただ、そういう認識の違いのずれというものが、今回の一つや二つの出来事にかかわらず、将来また発展するようなことになったら、これは取り返しがつかないという、最近の一連の動きの中でそういうことをやはり私も心配する一人でございます。
 特に、ポスト日中は日ソの問題が最大の課題であるという政府としての考え方もあるわけでございますが、そこに水をかけるような行き方になったんでは、せっかくここまで苦労し悩んだあげくの選択をしたというその結果が水泡に帰したのでは非常にまずいんではないか。やはりわれわれも努力をいたしますけれども、政府自身におきましても、むしろ願いたいことは、みじんもそういう誤解や不安を与えるというようなことのないような今後のコンセンサスというものがかなえられるかどうか、この点についてもう一遍整理をして政府の明快な一つの所信をお伺いしておきたいと思うんであります。
○国務大臣(福田赳夫君) わが国は、わが国の立場といたしまして、立場と申しますのは、もうとにかく強大な軍事力を持たないわが国といたしますと、全世界が平和でなければ、わが国の平和はないんです。同時に、わが国といたしましては、全世界の個々の国々との間に敵対関係を築くというようなことがあっては、わが国の平和は保てないんです。そのことを私は全方位平和外交と、こういうふうに申しておるわけでありますが、今度できました日中平和友好条約、この条約もその基本的なわが国の考え方と相背馳するものであってはならぬ、こういうことを粘り強く苦心をいたしてきておるところでありまして、その全方位平和外交というわが国の立場を損なうことなくこの条約ができた、こういうことで私は大変満足をしておるという次第でございます。
 いま、渋谷さんね、覇権行動の判断については両国で相談をするというようなお話がありましたが、両国は相談しないんですよ。これは一つ一つの覇権問題、これの判断はそれぞれ独自にお互いでするんです。結果において一致するという場合があるかもしらぬ。しかし、その判断はこれはもう条約第四条によって、わが国自体において判断すべき問題でありまするが、そういう苦心に苦心をして、ソビエトにもアメリカにも、この条約が排他的なものである、あるいは何かそれらの国を害するものである、こういうようなおそれのないようにというので苦心をして、そして第四条というものまで特に挿入した次第でございまして、知は、どこの国をとりましても、この条約について、自分の国を敵視しているんだとか、あるいけ自分の国に不利なものであるとか、そういうような疑いの起こる余地のないものにしておるわけでありますが、それにもかかわらず、一部の国に、この条約はわが国に対してどうも好ましからざるものであるというような不快の念を表明している国があるんですが、これはもう私どもは、そういういわれなき感想、それに対しましては粘り強くこれを説得いたしまして、誤解を解くようにいたす、このような方針でございます。
○渋谷邦彦君 大変制約を受けた時間の範囲でございますので、これからの答弁をひとつ簡潔にお願いをしたいと思うんであります。
 これはすでに政府側の答弁があった問題であろうかと思いますが、再確認ということで伺っておきたいと思うんです。
 今回のこの条約の年限でございますけれども、日本としては無制限ということを交渉の過程におきまして主張され、中国側は十年という期限をつけられた、その経過、そしてまた将来無制限というような方向へこの条約というものは持続されていくんだというふうに理解していいかどうか。
○国務大臣(園田直君) これは仰せのとおりでありまして、この条約は未来長期にわたることを両方期待しているわけでありますが、そのほかに十年たったら一方が廃棄通告をできるということをつけただけで、性質は長期にわたってやろう、こういうことでございます。
○渋谷邦彦君 日中以後は日ソであると、これはしばしば伺ってまいりました。ただし、残念ながら、この日中条約締結前後通じましてソビエトの日本に対する評価というものはむしろ冷却の方向へ急速に向いているという私ども認識をしておりまして、われわれの願望とはまことに反対の方向へそうした関係というものが進んでいるのではないかということを非常に心配するわけでございます。いままでも外務大臣初めいろいろな御努力もおありになった。にもかかわらず、なかなかその問題点の解消というところまで至らない、これは大変残念なことだというふうに思うわけです。
 私は、やはりそうした問題解消というものはいろいろなやり方というものがあるであろうと思うんですけれども、すでに一月に訪ソされた外務大臣からも、また先月、日ソ議連のメンバーが参りましたときにも、福田総理の伝言ということで相手側政府の最高首脳に首脳会談あるいは日本へ来日することの要請をされた。これはできるだけ早い機会にやはりそういう誤解を解く一環として積極的に取り組んでいただきたい。いわゆる両者の首脳会談、確かにこちらから一方交通的にもう鳩山さん時代から何回か訪ソをしております。私はそれはそれでいいと思うんです。かつてニクソンが全然国交のない中国へ訪中したという事例もあるわけでございますので、そういう感情にとらわれることなく、やはり日本として抱えている最大の問題は日ソ関係の改善であるという、これはもう申すまでもない、われわれもそういう認識を持っているわけでございますので、そういう突破口を開くということになれば、最高レベルのそういう話し合いというものがどうしても必要ではあるまいか、そのいま用意があるかどうか、具体的にこれからの段取りをどうされるおつもりなのか、まずそれから伺っておきたいと思います。
○国務大臣(福田赳夫君) 日中平和友好条約の締結によりまして、私どもは、ソビエトに対しまして何か不利な影響を及ぼしたというような立場はとっておりませんです。だけれども、それにもかかわらず、ソビエト連邦の方はこの条約に対して不快感を表明をいたしておるわけです。何も、そういうことでありますので、わが方に日中平和友好条約を結んだから負い目があるんだと、こういうような立場はとりませんけれども、従来ともソビエト連邦はわが国の隣邦である、そういうようなことで、経済上、貿易上、あるいは文化交流、技術交流、いろいろな面におきまして接触があるわけであり、友好の関係は年とともに進んでおるわけでございまするけれども、この日ソ間の友好親善の関係は、さらにこれを、日中平和友好条約とは切り離した問題ではありまするものの、推し進めてまいりたい、これが基本的な考え方なんです。
 さしあたりは日ソ外務大臣の定期会議というのがあるんです。で、ことしはソビエト連邦側から外務大臣がこちらにやってくる、こういう年になっておりますので、これをまずやってみるのが一番実際的じゃないか、このように考えます。首脳の往来、もとよりこれは結構なことでございまするけれども、ちょっと客観情勢上そういうことがすぐ実現するとは思われませんけれども、とにかく日ソ外相会談というのは予定されており、そして向こうからこっちへ来る番になっておるんですから、それを何とか早くことし年内に実現をする、これが実際的じゃあるまいか。それをいまソビエト側に対しまして要請をしておるという段階でございます。
○渋谷邦彦君 確かにソビエトが不快感をぬぐい切れないという状態は大変われわれとしても残念なことだと思うんですが、そういった不快感というものは実は相当深刻に受けとめているのではないだろうか。われわれのその受けとめ方がどうかということも、これはひとつ御判断をいただきたいのでありますが、これはすでにもう総理、外務大臣にも御報告がいっておると思うんですけれども、日ソ議員連盟の白浜団長が行かれたとき、コスイギンとの会談の中で幾つか問題があるんです。
 その中で特に申し上げたいことは、他国と結んだ条約を見れば、軍縮、相互理解で貫かれている、これはソビエト側の立場ですね。ソビエト自身がいろんな国々と条約を結んだ、その条約の精神というものは常に平和、軍縮、相互理解で貫かれているという問題があります。それから日中条約の中には平和、人間に対する尊重、人間生活の繁栄、これが全然盛り込まれていないんじゃないかという指摘。そしてまたさらに、軍縮、戦争に反対することの闘いを示したようなものが何にも盛られていない。さらに中国は軍需産業の基礎づくりに追われている。中でも冶金、エネルギー工業にはそれが見られる。日本は中国に強大なクレジットを与えている。このクレジットを利用して軍需産業をつくっているのではないか。中国はソ連に対し戦争を準備している。中国は非常に速いテンポで核兵器を備えるだろう。したがって日本が中国と同盟国になることは支持するわけにいかない。ゆえに日ソは日ソ、日中は日中と、いままで政府は一貫してそういう問題の取り扱い方について考え方を述べられてまいりました。しかし、それは分けるべき問題ではない。ワンパッケージの中で日中を考え、日ソも考えてくれという趣旨なんだろうと思うんです。
 こういったところにも、日本政府が、いまソビエト側で考えているものが一体那辺にあるのか。だからといって日中が仲よくする、友好関係を持続するということをわれわれは否定しているものではないというくだりもあるんです。だから、こういったことがどういうふうに整理をされるのか。いま申し上げた点であれば、相当の誤解があることは事実だろうと私は思うんです。こうした誤解を解くということが日ソ関係の改善へ一歩でも二歩でも前進する大きな役割りを果たすということは、これは常識でございましょう。
 したがって、私は、いまの点をさらに強く総理に、首脳会談の実現の方向へ持っていく。必ずしも首脳会談ということにはならないかもしれません、あるいは外務大臣レベルでも結構でございましょう。何とか早くその突破口をつくることによって中ソの大変緊迫したそういう状況に終止符を打つこともあるいは可能であるかもしれない。いろんなことが考えられるわけです。確かに日ソ、日中というふうに分けて考えられるようないま国際情勢の流れではないと私は思うんです。日中だけを考えていればいい、日ソだけを考えていればいいという問題ではございませんでしょう。日本もいやおうなしにあらゆる国際情勢の流れに対応し順応していかなければならない。ASEANのことも考えていかなければならない。そうしたことを考えたときには、いままで余りにもコンセンサスを得る機会というものが言うべくしてなかなかなかった。昨年あたりから福田総理を先頭に立てて、にわかにASEANを初め中東方面へと多元的なそういう外交の展開をやっていらっしゃることはまことに結構だと思うんですが、何と申しましても世界平和の大きな足がかりが日中であり、そして日ソであることは今日の常識でございます。その点を重ねて、私は、今後の日ソ外交推進に当たって、一日も早くそういう問題を解決するために取り組んでいただきたいということを希望するわけでございます。
○国務大臣(福田赳夫君) もうお話はまことに私も同感でございます。
 ソビエト連邦の方で非常に神経をとがらせるということは、これは日本が中国の軍事力の強化、これに協力するんじゃないか、こういう点にあるんじゃないかと思いますが、私は中国との間で友好親善を強化するという基本的考え方、これは堅持してまいりますけれども、しかし、中国の目指す四つの近代化、あの中で軍事力の強大化、この点につきましてはわが国は協力するわけにはまいりません。日中間のそういう問題になりますと、輸出入銀行がそのルートになるわけでありますが、輸出入銀行は断じてそういうようなことはいたしません。これはもう国際的なルールもあることですから、そのとおりに従ってやってまいります。
○渋谷邦彦君 確かに軍事力増強に日本は一役買うのではないか、そういった考え方はやっぱりこれは払拭しなけりゃならぬことは言うまでもないんですね。ただし、やはり四つの現代化というものを助ける一環として、それがあるいはという危惧を抱かざるを得ない。今後の経済交流、そういうものについても慎重な対処というものが今後強く私は望まれるに違いない。
 経済交流も結構でございましょう。昨日も問題提起がありましたけれども、むしろより深く理解をするということならば、私は、どちらかと言えば、文化交流に重点を置きながら、留学生の問題にしても理工科系統よりもむしろ文化系統のそういう留学生を日本としては歓迎するのがよろしいのではないだろうか。また日本から向こうへ行く場合も同様のことが私は言える。いろんなこれから具体的にそういう問題の整理というものが迫られてくると思いますし、間違っても軍事増強のためにソビエトを初め各国の不信を買うようなことがあってはならないという点については十分配慮をしていただきたい。
 関連もありますので、私はもう一点だけお伺いして私の質問を終わりますけれども、これもかねがねソビエトから提起されております日ソ善隣友好条約の締結をどうだと、ただ、この問題につきましては最近松前さんが行かれたときに、コスイギンはこういうことを言っておるんですね。もし日本側から対案があれば、その内容、名称にこだわらず、交渉に応ずる旨の見解を示したと、これはまた聞きでございますから正確のほどはわかりません。しかし、日ソについては四島返還ということが最大の前提条件であることは、われわれも十分承知をしておりますが、この内容、状況によっては考慮する余地がまだ考えられるかどうか。つまりソ連側がとりあえずの便法として二島の返還、残る国後あるいは択捉についてはその後において十分考慮するというような条件をつけながら、日ソ友好条約なら日ソ友好条約の締結をいかがなものだろうという呼びかけがあった場合、あるいはそれに対応する日本の対案がもしあった場合、それに応ずる用意があるかどうか、その一点だけを、この際、いままでのいろんな議論の中での決定版ともいうべきものをひとつお示しをいただきたい。
○国務大臣(福田赳夫君) これから日ソ平和条約締結問題が残っておるわけでございますが、これに先立って、いまお話しの善隣友好条約を結ぼうじゃないかという意向がソビエトにあるわけであります。中間的な措置として。しかし、わが国の基本的な態度は何といっても四島返還問題である。この四島返還を前提としてひとつ話し合いましょうというようなことであれば、それが善隣友好条約でありましょうが、あるいは平和条約でありましょうが、その交渉には慰んで応ずるという考えでございます。
○矢追秀彦君 一分ですから、私三十秒で聞きますので三十秒で答えてください。
 一つは、日中貿易の今後ですが、現在の中国の持っておる外貨の保有高、それから今後の支払い能力等を考えた場合、日本あるいはまた中国側の望んでいるような貿易の拡大が可能なのかどうか。もう一つは、軍事面を総理は絶対やらないとおっしゃっていますが、経済協力が間接的に軍事援助に結びつく可能性は十分あります。また、ココム規制の緩和を中国は熱望しておる。そういったことからも将来憂うべき状況になる可能性も私はゼロではないのではないかと思います。この点について総理はきちんとした歯どめと、それからいま申し上げた、いまは一生懸命ムードに乗って貿易をやろうとしておりますけれども、果たしてうまくいくのかどうか、その点の見通し。
 二番目に、いまソ連の問題が出ておりましたが、ソ連の提唱しております長期の経済協力に対する政府間の協定、これは日中も終わりましたし、今後、対ソ外交としては重要な柱になると思いますので、この経済協力協定を本気になって話し合われる気はないのか。今度十二月に向こうの代表が来られますけれども、その点、いかがですか、簡単で結構です。
○国務大臣(福田赳夫君) これからの日中間の貿易ですね、これはいままでよりも前進すると思うんです。ただ、中国では、わが国の必要とするものというと、やっぱり石油であり、あるいは石炭がうまく出れば石炭でありますとか、そういうものでありまするから、制約はあると思いまするけれども、とにかく一番近い国ですから貿易関係もできるだけこれを伸ばしていきたい、こういうふうに考えております。また、ココムは、とにかく時代が大分変わってきておりまするから、時代の流れに沿うて修正を要する点も多々ある、このように御理解を願いたいのであります。
 それから、もう一つは何でしたかな、もう一つ最後は。
○矢追秀彦君 日中では間接的に軍事協力になる可能性がないかということ。
○国務大臣(福田赳夫君) 日中間の貿易はあくまでも平和的な貿易でございますので、これが軍事力の強化につながっていくというようなおそれのあるものは、これはもういたさない。ただ、わが国は、たとえば製鉄所を設けるとか、そういうようなことは私どもといたしましては中国全体の民生のために役立つものという理解でこれを進めたい、こういうふうに考えております。
○矢追秀彦君 対ソの経済長期協定。
○国務大臣(福田赳夫君) それから、さらにソビエト連邦の方から長期貿易協定を結びたい、こういう話が前々からあるんですがね、これは日中間で長期貿易協定ができましたが、これと全然違うんです。日中間はこれは民間のものです。ソビエト連邦がいま申しておりますのは政府間で交渉しよう、協定をしよう、こういうことなんで、わが国はどこの国とも政府間で長期的な貿易協定をする、そんなことはやったことはありませんから、これは非常にむずかしい問題だと、こういうふうに考えております。
○上田耕一郎君 私は、これまでの日中関係を振り返りながら、本条約にも書かれております平和五原則に基づく本当の友好関係を願う立場で幾つか質問したいと思います。
 この半世紀にわたる日中関係は三つの不幸に彩られた、そう言うことができます。第一の不幸は、周知のような十五年間の侵略戦争です。日本人三百十万、中国国民は手数百万犠牲になったという侵略戦争だったわけで、私どもは戦前もこの侵略戦争に反対するだけでなく、当時日本の植民地だった台湾、それから中国の東北地方、当時満州と言いましたけれども、その解放を主張して闘いましたけれども、戦後、特に最近、どうも自民党政府はこれを侵略戦争だということをもうなかなか認めようとされない。総理はその点をはっきり認めた上で深い反省を行い、それから出発されようとしているのかどうか、まずお伺いします。
○国務大臣(福田赳夫君) まあ侵略戦争というと、あなたがおっしゃると何か特殊な意味があるんじゃないかというような感じがしますものですから、侵略戦争であるかどうかというと、私はそのとおりとは申し上げませんけれども、非常に私は中国に迷惑をかけた、非常に遺憾なことをしたと、こういう理解でございます。
○上田耕一郎君 侵略の定義は国連でも決まっておりますので、それに私は当てはまると思うんですけれども、やはりそこをはっきり認めるところから教訓が引き出される。
 大事な教訓の一つに、あの対中国戦争では、当時の軍部が、たとえば一九三一年には柳条溝事件、一九三七年には盧溝橋事件、こういういわば一種のでっち上げで日本全体を戦争に引き込むという教訓があったわけですね。ところが、政府は有事立法を奇襲対処を口実にして、下手をすると第一線の軍人が勝手に戦闘行為に入って日本全体を戦争に引き込んだり、あるいは秘密保護法などで軍事ファシズムへの道を進もうとしているとわれわれは思います。
 そこで、この臨時国会で日中平和友好条約とこの有事立法問題とが一緒に論議されているということは私は非常に不幸な事態だと思うんですけれども、首相は、その点、どうお考えになっていらっしゃるんですか。
○国務大臣(福田赳夫君) 確かにこの国会では日中平和友好条約の承認問題が論議されている、同時に、有事立法問題が皆さんからずいぶんお尋ねがあった。そういうことは事実でございまするけれども、これはもう全く別の問題です。日中平和友好条約は、これはもう多年の懸案がとにかく八月十二日に調印になった。それをなるべく早い国会で批准手続をできるようにするということは私はもう当然のことだと思うんです。それから有事立法問題、これは別に私ども声高らかにやっているわけじゃないんですよ。上田さんなんか有事立法、有事立法と言うものだから、しようない、私も有事立法とはこういうものだと、何もいますぐ有事があるというふうには考えない、これは万万万が一の場合に備えて準備をすることは当然である、こういうことを言っておるので、何も日中平和友好条約問題と有事立法問題、これはもう何らの関係がない、このようにしかと御理解を願います。
○上田耕一郎君 私は、日本国民は必ず福田内閣のこういう姿勢について正しい審判を下すだろうと考えております。
 日中関係のこの半世紀の中の第二の不幸は、戦後、一九四九年に中華人民共和国政府ができたにもかかわらず、二十数年にわたって日本政府がそれを承認しないで、わずか領土の一%の台湾、澎湖島にいる台湾政権を正統政府とみなして日華平和条約を結ぶ。そういう事態が続いたことが第二の不幸で、私どもは中華人民共和国政府を承認せよ、国交回復を直ちにせよ、で平和条約を結べということを主張し続けてきたわけですけれども、そういう不幸が第二番目の不幸だと思うんですね。そのことがいまだにまだ引き続いている。今度の国会の答弁をお伺いしておりますと、戦争を終了させる講和問題についてどうも政府の答弁は混乱しているんですね。この平和友好条約が講和条約でないと言われたり、あたかも若干その性格を持たれているかのような答弁もありました。
 そこで改めて日中間の戦争を終了させた講和について、日華平和条約、五二年ですね、それから七二年の日中共同声明、それからこの日中平和友好条約、この三つの関係ですね、ひとつ正確に外務大臣に改めて答えていただきたいと思うんです。
○国務大臣(園田直君) 戦争状態の終結は、日本政府としては、日華条約の締結によって終了したという立場をとっておりますが、いずれにいたしましても共同声明、今度の友好条約によって終結したものと考えます。
○上田耕一郎君 やはりまことに混乱しているんですね。この混乱から台湾問題、これが不明確になっている。これはもう私ども何回もお聞きしましたけれども、一つお伺いしたい。
 台湾はいま中華人民共和国政府の実効的支配が及んでいないかもしれませんけれども、しかし内政問題ですね。そうすると、この本条約を結んだ現在、なぜ台湾は中華人民共和国の領土だということを明確に、当然の私は平和五原則のイロハだと思うんですけれども、なぜ明確にできないんでしょうか、この点総理にお伺いします。
○国務大臣(福田赳夫君) 明確に申し上げます。
 この台湾の帰属問題につきましては、中国側は大陸と不可分の一体の領土である、こういう主張をいたしております。わが日本は、この問題につきましては、中国政府のその主張を理解し尊重する、このように申し上げておるわけであります。
○上田耕一郎君 それが不明確だと言うんで、七二年、大平外務大臣は、理解し尊重するというのは承認するということではないということを言っておりますのでね、そのあいまいさが、日華平和条約だけでなくて、台湾に対する内政条項を持っておる安保条約からも生まれておることはこの国会でもずっと出てきたとおりです。私は、この条約第二条で、そのいずれも覇権を求めるべきでないということを合意したわけですね。いずれも覇権を求めるべきでないということを日本側として真剣にやろうと思うなら、この日米安保条約、これをやっぱりやめて、いかなる軍事同盟にも入らない中立の国になること、この中立の道を進むことが、かつてあのような侵略戦争を行った日本として、そして絶対今後覇権を求めないということを約束する日本として、それを確実に保証できる道だと思いますけれども、首相の見解をお伺いいたします。
○国務大臣(福田赳夫君) 中立といいますと、二つの国が戦争するとか、あるいは多数の国が戦争状態に入るとか、その場合に、一つの国がどういう態度をとるか、こういうときに使われる、これが私は通例だと思うのです。私の言っている全方位平和外交というのはそうじゃない。わが国はもう強大な軍事力を持たないということを国是としておる。そうすると、まず第一に世界じゅうが平和でなければならぬ、そういう状態でないとわが国に平和も繁栄もない。同時に、わが国は、そういう中において世界じゅうのどの国とも平和友好の関係を保たなければならぬ、このように考えているんです。私は何も等距離外交をとれなんというような、そのようなことを言っているんじゃないんです。等距離外交じゃありません。平和友好のこの関係を、相手国の置かれておる国際的な立場等、いろいろわが国と当該相手国との間の事情は違います。違いますけれども、平和友好という関係におきましては、これをどこまでもどの国とも維持していきたい、これが私の考え方であります。
○上田耕一郎君 自民党政府が軍事同盟、安保条約、これを続けていくというのは一応自民党のたてまえとして私どもわからないわけではないけれども、残念なことに中国が安保条約支持に態度を変えている。これは私どもは社会主義国としてあるまじき態度だと思います。
 実は、中国のこうした態度とも結びついているのですけれども、日中関係の最近の第三番目の不幸は、きょうもこの委員会で問題になりましたけれども、この十数年来、例のプロレタリア文化大革命なるものとも結びついて、中国側が日本の運動に対して不当な大国主義的な干渉、覇権的行為に出てきていることであります。私ども日本共産党はそういうやり方に対しても断固反対しましたので、たとえば一九六七年には北京駐在のわが党の代表、赤旗特派員は肋骨を折られるような集団テロを北京空港で受けてそして追放されるというようなことさえあったわけです。こうしていま日中関係両党間は断絶しているわけですけれども、この十数年来日本に対する干渉が起きてきたということ、これは三番目の不幸だと思うのですね。
 日本共産党は、今回の条約について、日本側は中国の特殊な外交路線に同調しない、いかなる共同行動もない、また内政干渉には毅然とした対処をするという政府の言明があり、この言明が厳格に実行されるということを条件にしましてこの批准に賛成したのですが、情勢は複雑であって、この条約が批准されたとしても、すべての問題が解決されると、そう簡単にはわれわれ考えておりません。
 首相にお伺いしますけれども、もしアメリカ、中国の側から、あるいは安保条約をてこに、あるいはこの条約をてこにして、日本を対ソ戦略の思惑の中に引き込もうとするような動きが出てきた際、首相はどういう態度で対処されますか。
○国務大臣(福田赳夫君) 私どもは、日中平和友好条約は結びましたものの、中ソ紛争、対立、これに巻き込まれるようなことは断じていたしません。それから、仮に米中の間にいざこざができた、あるいは深い友好関係ができたということがありましても、わが国はわが国として独自の立場をとっていくのだ、こういうふうに御理解を願います。
○上田耕一郎君 私は三つの不幸を指摘しましたけれども、最初の二つの不幸は日本側が加害者なんですね、この三つ目の不幸は中国側が加害者なんですね。この三つの不幸を完全に解決するためにわれわれは努力したいのですけれども、最後に一問。
 これまで繰り返し行われたようないろいろな干渉行為、武装闘争の呼びかけとか、あるいは成田等々の暴力集団への激励など、そういうことが今後行われた際、政府は、毅然として対処すると言明されましたけれども、具体的にはどういう外交的措置をおとりになりますか、この点お伺いして私の質問を終わりたいと思います。内政干渉に対して具体的にどんな措置をおとりになるか。
○国務大臣(福田赳夫君) いままではいろいろなことがありましたけれども、今度日中、平和友好条約ができたんですからね、これはもうそういう状態において……
○上田耕一郎君 万万万が一あった場合です。
○国務大臣(福田赳夫君) 万一の場合といえども、中国がわが国の内政に干渉するというようなことは私はあり得ないと思うのです。何かそういう紛らわしい事態が起きたという際には、その際のその事案の態様に応じまして適宜な措置をとります。
○上田耕一郎君 終わります。
○和田春生君 今度の日中平和友好条約の締結は、日中共同声明以来、五年にわたる懸案が一応解決をされたという点において意義深いものだと思います。しかし、総理も御承知のように、およそ国家間の関係や条約には表と裏がありますし、また積極的な面とともにネガティブな面もあるわけであります。さらに二国間の関係の発展が二国間だけの関係にとどまらないで周辺諸国を含めて国際情勢にさまざまな波紋を描くこともしばしばあるわけであります。翻って、日中共同声明以来、中国側の政治体制と外交戦略の移り変わりや条約交渉のいきさつ、さらに政府の説明や答弁などを冷静に見詰めますと、そこには多くの疑念と問題点がはらまれているわけでございます。
 わずか十五分という限られた時間でありますから質問点をしぼりますが、第一は、覇権反対に関してであります。
 覇権反対を普遍的な原則にとどめたいとするわが国の立場と、反覇権の主たる敵をソ連とする、そうして反ソ統一戦線の結成を目指す中国の立場とには明らかに矛盾するものがあります。それにもかかわらず、条約第四条のいわゆる第三国条項でそれぞれの異なる立場を留保して、本質的な問題を回避したのではないかと考えるわけであります。それ以上に覇権条項が何のメリットがあるのでしょうか、まずその点を端的にお伺いしたいと思います。
○国務大臣(福田赳夫君) 言うまでもなく、中ソ関係、これは遺憾ながら対立関係にあるわけです。わが国の条約交渉におきましては、中国とソビエト連邦その他いろんな国がありますけれども、そういう間に起こるところの紛争に巻き込まれない、こういうことを旨としてやらなければならぬというので、その辺がこの条約の苦心のあったところでございまして、これが時間がかかったのもその辺にあるわけでありますが、私は、何か覇権条項を取り入れたということと第四条の第三国条項を入れたことは何か矛盾があるようなお話でございますが、そうじゃないんです。これはそういうことを踏まえまして、わが国の全方位外交、これの趣旨をどうしてもこの条約では貫き通さなきゃならぬ、そういう一念、これがあの条約になってあらわれておる、こういうことでありまして、反覇権ということは、これは国際的な公理といいますか原則といいますか、そういうものでありまするから、これは当然のことでございまして、特に私が強調いたしたい点は、第四条というものが入って、わが国の全方位外交、どこの国も敵視しないということが明確になったという点にあると思います。
○和田春生君 質問に端的にお答えいただきたいと思うのです。私は、そうまで苦労をして反覇権条項を条約に入れたことにそれ以上何のメリットがあるのですかとお伺いしたんです。お答えになりませんから、それはよろしいと思います。メリットは考えられないからだと思います。
 質問の第二に移ります。
 条約の締結を契機にいたしましてにわかに過熱現象を日中経済関係が呈しているわけであります。そのことと中国の四つの近代化政策、とりわけ科学技術と軍事力の近代化とのかかわりについてお伺いしたいと思うのです。
 先ほど来、総理の答弁をお聞きいたしておりましたが、経済力と軍事力には境界があるわけではありません。鉄鋼は軍備の主要材料であり、高度のコンピューター技術はハードウエア、ソフトウエアを含めて近代兵器の管理誘導システムに不可欠のものであります。中国は軍事力の近代化と増強のためにこそ西側、日本を含めて接近し、その経済協力を求めるという意図をいささかも隠そうとはしていないのであります。そのことと関連して日本の経済協力の発展が必然的にもたらすであろう中国の軍事力の増強が周辺諸国にもたらす影響を含めて、将来、日本にネガティブな影響をもたらすのではないか、そういう点に関して総理の御所見を承りたいと思いますが、一言つけ加えると、日本は平和国家であり、平和的に経済協力をして兵器を輸出しているわけじゃないからそれでよしとするようなひとりよがりの態度では、パワーポリティックスの今日の状況の中で、世界の国国から素直に理解されるとは思えませんので、その点も含めてお答えを願いたい、こういうふうに思います。
○国務大臣(福田赳夫君) 対外的な経済接触ですね、これは突き詰めていくといろいろ問題があると思うんですよ。いまわが国はソビエト連邦ともシベリア開発等を通じましていろいろの協力をしております。また、東欧諸国につきましても相当の接触があるわけでありますが、これは私どもは平和的な協力だと、こういうふうに理解しております。
 しかし、和田さんがおっしゃるように、これがめぐりめぐって軍事力とかかわりがあるんだというようなこととは考えませんけれども、その辺は節度といいますか、そういうところの問題じゃないかと思うんです。これから中国との経済交流も頻繁になっていきまするけれども、直接の軍事協力はいたしません。また軍事協力につながるということが明らかなような投資、そういうようなものにつきましてもこれは自制をいたします。しかし、中国のとにかく九億の民のための幸せにつながっていくんだというものが主体であるというようなものが、めぐりめぐって、さらにめぐって、軍事力につながるから、そういうことは阻止しなければならぬというようなかたくなな考え方もまた私はとらないんですが、その辺は節度を持っていたしたい、このように考えます。
○和田春生君 いまや日本は経済大国として大きな影響力を世界で持っているわけでありますから、わが国の主観的意図にかかわらず、パワーゲームの外に立つことはなかなかできないと思うんです。そうした点で深甚な配慮と対応を望みたいと思います。
 次に、質問の第三に移りますが、尖閣列島の問題であります。
 本件に関する総理初め政府側の答弁を聞いておりますと、まことに心もとない感じがしてなりません。中国のケ小平副総理を初め中国当局は、園田外務大臣との会談席上の言葉にかかわらず、尖閣列島確保の工作は長く久しく継続するきわめて重要なやりがいのある工作だという立場を公にしているわけでございます。
 そこで、伝えられるように、中国側が早晩二百海里経済水域実施の意向であるとしますなら、日本もこれに対応せざるを得ません。この場合、日本領土尖閣列島を基点として線引きをするのと、これを中国領土として線引きするのとでは、主権的権利の及ぶ海域につきまして面積約七万平方キロに及ぶ決定的な差異が出てくるわけであります。大陸だなと二百海里経済水域問題をめぐって日中間の深刻な紛争発生は避けがたいものだと思われますし、中国側が簡単に引き下がるとも思えないわけでございます。平和的な話し合いで解決したい、そういう抽象的な言葉で糊塗することは将来を誤るものであると思いますが、いかに対処していかれるのか、基本的な総理の見解を伺いたいと思います。
○国務大臣(福田赳夫君) 尖閣列島は、しばしば申し上げておるとおり、歴史的に見ましても、また国際社会の立場から見ましても、わが国の固有の領土であるということにつきましては一点の疑いも持っておらないわけであります。ですから、私どもは尖閣列島は日本の固有の領土だからこれを確認せいなんというような、そんなことを言う必要もないくらいに考えておるわけであります。ところが、不幸にして四月にああいう中国漁船のわが国領海侵犯問題が起こったわけですね。
○和田春生君 今後の対応を伺っているんです。過去のことじゃありません。
○国務大臣(福田赳夫君) そこで、園田外務大臣は、ケ小平副首相との会談におきまして、わが国のそのような立場を述べた上、再びあのような事件が起こらないようにということをだめ押しをしたわけでありますが、それに対して、明快に、さようなことは起こしませんと、こういうことがありましたので、これは私は万事そのように落着をしておるんだと。
 漁業水域のお話がありましたが、漁業水域は、もとよりわが国の固有の領土であるその尖閣諸島を基点として行うべきものである、このように考えております。
○和田春生君 私の指摘した問題点を総理は正確に御理解なさっていないと思うんですが、この問題は非常に深刻で重要な問題でありまして、日中間でとりわけ今後の重大な課題になると思われますので、場所を変えてお伺いをいたしたいと思います。
 そこで、最後の質問に移りたいと思いますが、台湾地域を含む東アの安全保障と中華民国政府との事実関係の将来については、本院質疑を通じて、現状に変化を期待せず、この現状を維持をすることが望ましいという政府の意図が十分読み取れたものと私は理解をいたしております。
 そこで、一言特につけ加えておきたいことがございます。現実問題として中華民国政府の統治下にある台湾等の地域に住む人々、その国籍を有する在日華僑など二千万に近い民族の大多数もまたがって日本の侵略と植民地支配により被害を受けているのであります。しかも、この人々とその国は、今日に至るまで、総理も御承知のように日本国と日本人に親愛感を持ち、よりよき交流を望み続けてきた点においては世界でも最たるものと言い得るわけでございます。こうした歴史的な事実と経過のゆえにこそ、いまなお多くの日本人は中華民国と台湾の人士に親近感を持って人事往来の経済関係もますます盛んなのであります。この事実関係を大切にするということは、今日、日中平和友好条約を締結したもとにあっても置き去りにしていいようなものではありません。それは国家間の公式関係やパワーゲームを越えて、日本人の心と生きざまの問題であると私は信ずるからであります。この点について総理の所信をお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
○国務大臣(福田赳夫君) そのように心得ております。
○秦豊君 本条約をめぐっては、衆参両院、特に総理に対する質問としては社民連の私がしんがりになります。
 総理、私はめったに政府側に対して敬意を払ったことがない、敬意を表したことがない。ところが、この条約については別格、まさに大変高い評価を、つまり戦後の日本外交が、三十二年、初めて自主的になし得た、つまり外交という名に値する初めての大きな成果であったと、したがって素直に敬意を表したいと思います。支持率もはね上がったし。
 そこで、衆参両院を通じましてもうほとんどあらゆる観点はすべて網羅されました。しかし、あえて私は二、三の点について総理と外務大臣のお考えを改めて伺っておきたい、こう思います。
 いまから申し上げることは私の持論でございますからお聞きを願いたいんですけれども、日中問題には、総理、私たちとして厳に心に刻みつけておかなければならない一つの大きな原点があると私は思うんです。それは歴史的な事実として日本が中国を一方的に侵したという、こういう膨大な事実、これを避けて、これを踏まえないで一あなたのお好きな言葉で言えば踏んまえないで通ることはできない、それが日中問題の原点だと、私はこう思う。つまり加害と被害という関係が原点だということを申し上げたいんです。
 そこで今度の日中平和友好条約なんですけれども、反覇権ということは、単なる日本外交の理念とか観念とか、ときとして願望の域にとどまるべきではなくて、私の申し上げた不幸な忌まわしい、どす黒い、そういう歴史に対する自戒、みずからへの戒め、また、みずからの戒め、自戒の意味が込められていると私は思うんです。この点については、まず外務大臣からお答えをいただき、次いで総理にぜひ伺いたい。いかがでしょう。
○国務大臣(園田直君) 私は、会談に際して、そういう発言をいたし、しかも、今後は、どこの国にもあったような隣国が侵し合うというような歴史では人類は生存できない、お互いに相手の繁栄に協力をし、その繁栄を分かち合うということで今後日中関係をやりたい、こういう意味で人類生存の再秩序のためにスタートするという気持ちでこの条約を締結しましょうと申し上げたわけであります。
○秦豊君 総理、私の原点論を含めてお答えをいただきたい。
○国務大臣(福田赳夫君) 私は、率直に申し上げまして、中国には大変十五カ年間にわたりまして迷惑をかけた、このように考えております。そういうことを再び犯してはならない、これはお互いにそうでなければならない、このように考える。私は、反覇権ということは、一番どこにあるかというと、もう両国ともどもに覇権行動はしちゃならぬ、世界の国のことも言っております。しかし、中心は両国の姿勢がそうでなければならぬということを言っているわけでありまして、これは厳粛にわが日本としては守り抜いていきたい、このような決意でございます。
○秦豊君 つまり、総理大臣も外務大臣も、私が提起した、私が解析した日中問題の原点ということには基本的に賛意を表されたとおとりしてよろしいですね。反覇権ということは、したがって私によれば日本国憲法、つまり憲法理念の国際化であるという把握をいたしているわけです。
 それで関連しまして、園田外相は、きのうの当委員会における質疑の中で、私ども社民連の田英夫委員に対して次のような答弁をされています。それは反覇権こそは今後の外交の基本原則になるだろう、こういう評価を外務大臣はされたわけです。確かに私もそう思うし、国際的に言えば一種の普遍的な公理にも値する高い次元の見解であろうと私は思っているんですが、これについては、福田総理、どういうふうな答弁が可能でしょう。
○国務大臣(福田赳夫君) 私も全くそのとおりに考えております。
○秦豊君 これはきょうのこの席からも二、三の議員の方が質問をされまして、やや重複の感はありますが、違った観点もあります。
 それは中国と日本との科学技術協力協定の問題です。すでにこの調査のためのミッションの派遣も日程に上っておりますし、早晩これは結ばれるというのは自明のことなんですけれども、実は、このことについて、ぜひ総理と外相に特にお聞きを願いたい私たちなりのいきさつがこれに絡んでおります。それは私たち社民連がこの四月に田英夫を団長にして楢崎、秦、こういうメンバーで北京に参りました。ところが、たまたまあの不幸な事件が起こった、尖閣列島問題です。中国政府は私たちを通じて日本政府に意思のアナウンスをしたかったんでしょう、耿ヒョウ副首相という対外関係の最高責任者、外相の上の外相とも言われている耿ヒョウ副首相が私たちの前にあらわれた。人民大会堂での会見の中で一時間半ほど向かい合った。そのときに尖閣列島問題が終わったから、私たちは次のようなことを言ったのです。
 それはわが国は償い切れないほどの惨禍をお国のほとんど全土にわたって振りまいた。ところが中国は賠償の請求はなすっていない。たとえしかしあなた方が賠償の請求はなさらなくても、その行為を私たちが忘れることがあってはならないと思う。そのような意味を込めて、私たちはたとえば今後の経済交流において基盤ともなるものはかっちりした協定ではないだろうか。特に四つの現代化を目指している中国にとって、軍事は当然らち外としても、たとえば科学技術、これがまさに根幹的な協力であろうから、科学技術協力協定というふうなものを仮に日本側が提案したら、あなた方はどう対応されるでしょうということを実は初めてお話をした。そうすると、耿ヒョウ副首相は感謝いたします。こういう対応であったわけです。
 そこで伺うんですけれども、もうすでに今年の一月はフランスと中国、それから今月十月に入りましてたしか西ドイツとイタリアともそれぞれまとまったようであります。かなり簡潔な協定になっているんですけれども、日本側はすでに草案ぐらいはもうおつくりになっているんですか、それとも草案もまだできていないというふうな段階でしょうか、いかがですか。
○国務大臣(園田直君) 科学技術の協力については、私にもケ小平副主席から非常におくれておるから協力を頼むという話がありました。河本通産大臣が前に参りましたときにも、この話が出たわけでありまして、ただいま御承知のとおり調査団が行っているわけであります。この調査団と向こうといろいろ意見交換をしつつ、そういう過程が来ますれば、そういうことで検討したいという準備をしておるわけでありますが、まだ向こうとこちらの意思が具体的に通じておりませんから、案は準備されておりません。
 なお、経済協力その他については、中国のみならず、賠償を放棄した国については、そういうことを考慮しつつ経済協力も行っております。
○秦豊君 余り漠々としたお話でもあれですから、草案を練る、交渉する、やがてまとめる、こういう手順が当然あるわけですが、遅くとも日中平和友好条約批准書交換一周年、明年のいまごろまでには遅くともまとまるでしょうね。早ければ来春というふうなめどは一応ひそかにお持ちですか、いかがでしょう。
○国務大臣(園田直君) 通産省のきのうの話では、鋭意努力をしているということでございます。
○秦豊君 かっちりいい協定をつくっていただきたいという私どもの期待と願望を特に申し上げておきたいと思います。
 次の問題なんですけれども、私は、実は、この春の予算委員会で河本通産大臣に次のようなことを質問したことがあります。つまり八百億ドル、一千億ドルにせよ、八年、十年の長期経済協定にせよ、日中間の経済交流を飛躍的に進められるか、あるいは進められないかポイントは幾つかあるだろう、しかし最大のポイントに収斂すれば、やはり大慶を初めとした中国の重い、ろう分やパラフィンの多い重質油の転換装置というものを、民間の投資にゆだねないで、国家投資として取り組むぐらいの決意と具体的な適応がないと、とてもとても民間ベースだけでは不可能だろう。もしこの重質油の引き受けが不可能な場合、たとえばやがて一千五百万トン、やがて三千万トンというふうな場合には、日中の経済交流の基本そのものが崩れるでしょうと。あとはOECDの長期金利の壁であるとか、あるいは言うまでもなく、いろんな委員の方がお触れになったココムリスト、ココムの壁というのはきわめて厚いわけなんですけれども。
 そこで具体的に伺いますが、メキシコ原油もよろしい、あるいは南方海域での共同開発もよろしいんですけれども、やはり日中に限定して考えた場合には、相当やはりこの重質油の転換装置では、一部の業界の試算では数千億円を要すると、三千万トンの引き受けのためには、これぐらいあるんですけれども、改めて総理に伺います。それはナショナルプロジェクトというふうなお気持ちで関係省庁を督励してでも実現したいというふうなお気持ち、方針はお持ちですか。
○国務大臣(園田直君) これは通産大臣からも答弁があったわけでありますが、通産大臣は財界とも相談し、万全を期してやっておる、こういうことを答弁したわけでございます。きょうは通産省から参っておりません、しかし所管は私の方でもございますので、さようお答えをいたしておきます。
○秦豊君 特に総理からも伺っておきたい。
○国務大臣(福田赳夫君) いま世界の石油事情は、軽質油がだんだん少なくなりまして、重質油のものが多いんです。それに対してわが国がどういうふうに対応するかという問題があります。それからもう一つは、わが国はとにかく遠いアラビアにその石油の大半を依存しているというこの状態を、分散というか、こういうふうにしたいという要請もあるんです。それらを踏まえて、いまこれに対してどういうふうにするかということを業界と通産省と相談をしておりますが、政府全体といたしまして積極的な姿勢で対処したい、このように考えます。
○秦豊君 いまどちらからか声があったように、確かにこれは中国と日本だけの関係では考えられません。供給先の多元化、これは安全保障上も必要でしょう、それは自明のことであります。しかし少なくとも日中間の長期の経済交流、協定の成否をトするのは、あくまで重質油の転換以外にないということを申し上げたかったわけです。もちろん新疆省に最近軽質油が発見された、かなり有望だというふうな報道があったにせよ、そういうことを申し上げたい。最後に、総理に、やはりあの国には、総理もよく御存じのように、いまは貧しいが、貧しいことを恥じない、貧しさを克服できないことをこそ恥とする誇り高い十億の民衆がいます。その十億の民衆と一億一千七百万のいよいよ本格的な交流が始まるんですけれども、今後の日中交流に当たって一番銘記しなければならない――もちろん反覇権はすでにあり得ていますけれども、日中交流に当たって、これだけは踏み外してはならないという総理としての基本的な認識あるいは御見解を伺っておいて、質問を終わりたいと思います。
○国務大臣(福田赳夫君) 私は、この条約の精神を踏んまえまして、これはもう本当に長きにわたって日中両国は友好でいきたいと思いますが、一番大事なことは何だと言うからね、やっぱり私は相互内政不干渉だと、こういうふうに考えております。
○秦豊君 終わります。
○委員長(菅野儀作君) 午前の審査はこの程度として、午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時五十六分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時二分開会
○委員長(菅野儀作君) ただいまから外務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、日本国と中華人民共和国との間の平和友好条約の締結について承認を求めるの件を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
○田中寿美子君 もうすでに非常にたくさんの方が発言なさって、ほとんど問題点が出されております。当委員会では大分タカ派的な発言もありましたし、否定的な発言もありましたけれども、私はやはり日中平和友好条約の締結を深く喜ぶという立場から、園田外相の御苦労、外務省当局関係者の御苦労に敬意を表します。
 問題は日中不再戦、子々孫々までの友好ということについては今後の私ども自身の課題であるということを深く銘記しなければならないと思っております。日本社会党は、いまの中国政権が樹立された直後から有志の者が日中友好運動をずっと続けておりました。私自身も国交回復よりはるかに以前から、五五年のバンドン会議の後で、アジア連帯委員会の運動とともに日中友好運動に携わってきた者として大変深い喜びをここに述べたいと思います。私は、社会党で言えば日中議員の一人だと思いますけれども、しかし絶対に一辺倒ではないということもここで申し上げておきたいと思います。
 昨日、田委員からも話が出ましたし、きょうは上田委員からも指摘されておりましたけれども、もうすでに終戦後三十三年たったいま、中国や朝鮮、東南アジアへの侵略戦争、加害者としての深い反省が忘れられつつあるんではないかというふうに私はいつも思っております。いまでこそ中国の幹部は過去は水に流そうというふうな言葉を使っておられますけれども、しかし、六〇年代の初め中国に私なんかも参りましたころには南京市などには行くことができなかった。あそこで日本軍による大量虐殺があったその傷跡が生々しいので行くのはとめられた。あるいはまた、日本が満州と呼んだ現在の中国の東北地方では炭鉱の溶鉱炉に、日本人の上役に口ごたえをしたというだけで溶鉱炉の中にけり込まれてしまったような話とか、あるいは食糧難で残飯を食べたために軍犬をけしかけられて傷を受けた年寄りの方、あるいは撫順の平頂山事件で、一九三二年に三千人を機銃掃射して殺したあの大虐殺の生き残りの人が二人おりましたけれども、そういう人たちの話を聞いたり、あるいは上海の紡績工場で生づめをはがされた女性たちの話などを聞いていると、もう顔が上げられないくらい私どもは涙を流さざるを得なかった。そういうような過去の日本軍国主義の残虐さを私どもは忘れてはいけないと思います。今日の南京のあの美しい並木道からはそういう状態は想像もできない。日本人が加害者としての、日本軍国主義が加害者としての歴史、これを忘れてはいけない。今日、笑顔で日中両国人民の世々代代の友好を誓っておりますけれども、それの背後に決して忘れてない人たちもあるということ、そして今後日本が本当にこの日中平和友好条約を結ぶに当たってよく理解しなきゃならないというふうに思います。
 私は昨日、田委員への園田外相の御答弁の中で、この条約に踏み切ったとき、それらの過去の歴史への深い反省というものがひそんでいたお言葉があったように伺っておりますし、今日もそのようなお言葉がありました。こういう意味で、今回の日中平和友好条約は、この過去の長い経過とともに、今後私どもが本当に心して真の平和友好条約になりますようにしなければならないと思います。もうすでに問題点はほとんど出され、また総括的なまとめも大分されておりますので、私は二、三だけまだはっきりと解明されていないなと思う点について質問をしたいと思います。
 これまでの外相、外務当局の答弁から、いまだにはっきりと国民の疑問を解いてしまっていない点がこの日中平和友好条約の性格についてあると思います。けさほども上田委員が触れられておりましたけれども、まず法的に言って、それから実質的に言ってどういう性格のものかということなんです。まず、国際法上では外務省当局が説明していらっしゃいますように、日華平和条約、一九五二年のサンフランシスコ講和条約の後の日華平和条約が成立した当時、台湾との間で結んだこの条約で決着した、戦後処理も終わったというふうに国際法上では見るべきだというのが外務当局のお考えですね。まずそれをお伺いします。
○政府委員(大森誠一君) ただいま先生がお述べになりましたように、わが国の立場といたしましては、日本と中国という国との間の戦争状態の終結の問題、あるいはその他の戦後処理の問題は、一九五二年の日華平和条約によって処理済みというのが私どもの法的立場でございます。
 で日中共同声明発出に際しましては、先般も申し上げましたように、中国側と日本側との間に、この点をめぐりまして法的な立場について見解の相違がございました。その見解の相違を日中国交正常化という大目的のために克服するということで双方が合意して作成されましたのが日中共同声明でございまして、この日中共同声明によりまして日中間の戦後処理の問題は最終的に解決を見た、このように判断いたしているわけでございます。
 なお、今回の日中平和友好条約とのかかわりについて申し上げれば、日中共同声明におきましては二つの側面があると存じます。一つは、先ほど申し上げました戦後処理にかかわる問題を最終的に解決するというそういう面と、日中間の今後の、将来に向かっての二国間の関係を律する指針とも言うべきものを定めたものと二つの面があるわけでございます。で今回の日中平和友好条約はいわゆる講和条約あるいは講和条約的性格のものではございません。他方におきまして、先ほど申し上げました日中共同声明が二つの面を持っているという第二番目の面、すなわち将来に向かっての日中両国の友好関係を律する指針とも言うべきもの、その点につきましては今度の日中平和友好条約におきましてもそれを取り入れておる。また今回の条約が日中共同声明第八項に基づいている、かような点から申しまして、その意味におきまして、今回の日中平和友好条約は日中共同声明のいわば延長上のものである、かような表現がし得る、こういうことでございます。
○田中寿美子君 日華平和条約というのは台湾政府と結んだものですから、現実的に言って中国政府を相手にしていないという意味で、全くこれは正しくないものであるために日中共同声明ということに結局はなったんだと思いますが、その中でほとんど戦後処理あるいは戦争終結一切を終わったと、いまの御説明でもありますように。ですから、講和的な意味で言えば賠償の問題だとかあるいは領土の問題が最終的に決着させられるべきものなんですけれども、幾分かその辺ははっきりさせないものを残したまま日中共同声明ですべて終止符を打ったというふうなことだと思います。そして、それに対して昨日も園田外務大臣は、今回の日中平和友好条約は日中共同声明の延長線上にあるという言葉を後から補足された、きょうは外務当局もそういう言葉をお使いになりました。延長線上にあるということは、共同声明が平和条約的な意味を持っているならば国会の承認を得るべきものであるけれども、それは得ませんでしたから、今回条約にして国会の承認を得るというふうに、昨日渋谷委員はワンパッケージという言葉を使われましたけれども、結局共同声明を条約化して追認させたものというふうに考えてよろしいですか、外務大臣。
○政府委員(大森誠一君) 先に私からお答え申し上げます。
 日中共同声明につきましては、これも先般来御説明申し上げておるところでございますが、わが国の法的立場にかんがみまして、この日中共同声明というものは国会の御承認を求める事柄を含んでいなかったということのために、国会の御承認を仰ぐことなく憲法第七十三条第二号に言うところの外交関係の処理ということでなされたわけでございます。その意味で、講和条約的な性格のものが後に残されたから、ワンパッケージとして今回条約を国会の御承認の対象として提出申し上げたというところはかかわりがない、かように存ずるわけでございます。
○国務大臣(園田直君) 事務当局と私の答弁が、いささか感じが違うような答弁でありますが、これは正直に申し上げますと、日本の政府は日華条約で終えんという立場をとったわけでありますが、革命政権でありますから国家継承権はとらない、これは無効であると中国は真っ向から否定しているわけであります。そしてまた、その意見は合意することなしに、それでは非常に大事な問題であるから両方ともこれを超法規的に克服して、共同声明でいこうじゃないかというのが御承知の本当のいきさつでございます。したがいまして、第一回の共同声明というのは、やはり講和条約的な性格を持つものでありますが、後のことを言っても仕方がありませんが、これはやっぱり私は国会にかけるべきであったなあという反省をしているわけであります。したがいまして、今度の結びました友好条約は、その共同声明に盛られた諸原則を条約に移しているわけでありますから、これはまた平和的条約でありますと、こう言うと日華戦争終結の問題をやったことになりますので、法的にまた矛盾が出てきます。そういうことで、事務当局の答弁と政治的に判断して答える私の答弁がいささか感触が違うかもわかりませんが、それが真実だと思って私は言っているわけでございます。
○田中寿美子君 それで今度、日中平和友好条約という平和という言葉が入っているわけですが、これは三木総理のときに、五十年の一月に衆議院の予算委員会で、親台湾の委員の方が平和というのは取れということを要求されました。しかし、どうしても必要だということを主張されている。それから福田総理は九月三十日の参議院の本会議で、平和友好の平和というのは特別の意味は何にもない、平和条約を意味しないということをおっしゃっている。つまり講和条約的な性格を持たせると大変いろいろ問題がめんどうになるから、そういうことだと思うんですが、平和という言葉を入れない友好条約というのはちょっと今度は意味がおかしくなるのではないか。つまり、いま言われたように講和条約的であるけれども講和条約じゃないというようなニュアンスを持たせて日中平和友好条約というものをつくり、そして将来にわたっての不再戦、友好ということを誓った、こういうふうに考えてよろしいでしまうか。
○政府委員(中江要介君) 平和友好条約の平和という字が議論になったことは先生の御指摘のとおりでございますけれども、なぜ平和友好条約になったかということにつきましては、これは共同声明のときから平和友好関係という字で、将来の日中関係は平和友好関係でいこうということがはっきりうたわれておったわけです。で共同声明の前文にもございますし、いわゆる平和五原則の第六項にもございますし、この条約が取り上げられております第八項にも「両国間の平和友好関係を強固にし、発展させる」、ですから共同声明が出されましたときから、中国の方でもこの平和友好条約の平和というものの中に特別の意味を持たせていたのではなくて、中国の方の考え方でも平和友好関係というものが将来の日中関係であるべきだという認識があったわけでございますので、一部の方が平和友好関係の平和を取れという御意見に対しましても、私どもはそれは取るわけにまいらない平和友好関係というのは将来を律する一つの考え方なんだ、こういうことで終始しておったわけでございます。
○国務大臣(園田直君) いまのお尋ねの平和をつけるかどうかということは、今度の会談では、私との会談でも事務当局の会談でも全然問題にならなかったわけであります。それは、すでに両国は先般の共同声明でこれは片づいたと見ておるからであります。しかし、わが方の国内事情のことから、私ちょっと気になるものでありますから、私の言い方と事務当局の言い方が感じが少し違う、こういうふうに御了解願いたいと思います。
○政府委員(大森誠一君) 一言私から、アジア局長が申されましたことにつきまして例を引いて補足いたしたいと存じます。
 平和友好条約というものが戦後処理の条約でないという前例といたしましては、一九六〇年に中国とネパールとの間に結ばれました条約がまさしく平和友好条約ということでございます。
○田中寿美子君 もうそういう話は事務当局から聞いています。私も別に講和条約と言えというふうに言っているわけじゃないんです。問題があるし、今後の取り組みが、たとえば経済協力などというのは賠償的な意味を含めて、最初に申し上げました自戒の意味を含めて積極的に協力するという意味だろうというふうにとっております。
 それでは、この友好条約に十年の期限がついているのは、ちょっと私はどういうわけかよく意味がわからないんです。平和条約にしてもあるいは友好条約にしても、普通は期限は無期限であるべきもの、それこそ子々孫々までの友好というならなぜ十年の期限が出たのか、一体これはどちらから言い出しものなのか、御説明いただきたいと思います。
○政府委員(中江要介君) まず認識の仕方といたしまして、十年がこの条約の期限であるというふうにおっしゃいましたけれども、これは御承知の上でおっしゃっておるんだと思うんですが、この条約は基本的には無期限、子々孫々の恒久的な条約である。これはもう中国も繰り返し子々孫々までということを申しておりますし、私どもも恒久的な平和友好関係。ですから無期限が原則、それで無期限の条約をつくったわけですが、そこに十年という期間が出てまいりましたのは、十年を経過した後は一年の予告で廃棄しようと思えば廃棄できるということが書いてあるわけで、十年で有効期間が終わるというわけじゃなくて永久に続くんだけれども、いきなり廃棄するというのはこれははなはだ不都合なことでありますので、廃棄をするときには一年の予告を付して廃棄するということでございますが、それも発効しましたすぐ翌年廃棄というようなことでは全く安定性がない。それでは何年ぐらいは少なくとも廃棄ができないようにしておいた方がいいだろうかということを中国側と日本側とで話し合いまして、中国側もこれは無期限の条約だ、日本の言うとおり中国も無期限の条約という認識だけれども、将来もし廃棄をしたくなったときでもそれは十年を経過してから、しかも一年の予告で廃棄させる、こういうことで合意を見たわけでございます。
○田中寿美子君 日米安保条約が十年ですね、そして予告をもってこれを――全く同じこと。普通平和条約とか講和条約とかというものには期限がない、だからそういう意味では、私はこれは日本側が言い出したのか、それとも中国の方が言い出したのか、私勘ぐってみますと、社会体制の異なった二つの国がこういう条約を結んだときに、反覇権ということが中心になっていますから、だからその覇権の対象が変わることだってあり得る、そういうようなことを中国の方では考えたのではないか。たとえば日本が、いまの状況を見ておりますと大変軍国主義的な傾向も出ているわけですが、あるいは日本が覇権国家とならないとも限らないという懸念はなしとしない、これは社会主義の国から見たらですね。そういう意味で、用心をしてそういうことを言い出したのかなと思ったんですが、そういうことはありませんでしたか。外務大臣、どうですか。
○国務大臣(園田直君) これは全くそういう意見は両方からございません。
○田中寿美子君 十年はどちらが……。
○政府委員(中江要介君) 交渉の中で、特定の案文についてどちらがどういう提案をして、どちらがどういう意見を述べたということは公にできないことになっておりますので申し上げられませんが、先ほど私が申し上げましたように、日中両国事務当局の間で十年が適当であろうということで合意がされたというふうに御了解いただきたいと思います。
○田中寿美子君 わかったようなわからないようなことですが、もうそれは余り深追いしません。
 次に、私は、朝鮮半島の緊張を緩和するために、一体、今後、日中後何をやるべきかという問題にしぼってお伺いしたいと思います。
 けさの総理の上田委員に対するお答えの中で、朝鮮に対する考え方は日中の間に非常に大きな開きがあったというふうに言っておりますが、どういう点に開きがあったんでしょうか。それはさもありなんと私は思います。なぜならば、中国は朝鮮民主主義人民共和国と親しい関係にある。そして日本は朴政権にしっかりと結びついて、韓国と結びついている国ですから、そういう意味で朝鮮の政策について違いがあるはずだと思いますが、外務大臣はしばしば日中以後の課題はソ連との緊張、それから朝鮮半島の緊張も問題だというふうにおっしゃっていますね。その朝鮮半島の平和と安定に関して話し合いによる平和統一ができるよう国際環境づくりに努力したいということをもう何遍もおっしゃっていますが、これをもう少し具体的に言っていただいて、そして中国との考え方の相違はどういう点にあったかを御説明いただきたいと思います。
○国務大臣(園田直君) 総理の答弁は私うかつにして気がつきませんでしたが、私の会談でも、それから事務的な折衝の間にも朝鮮半島の問題で議論をされたり、意見の相違があったことは全然ございません。総理の答弁はどういう意味か、後でまたお伺いしてみます。
○田中寿美子君 総理は、朝鮮半島の問題で上田哲さんが質問したときに、園田外相からも交渉の過程で朝鮮半島に関する考え方が日中の間で最も大きな開きがあったということを聞いていたというふうにおっしゃっています。
○国務大臣(園田直君) それは総理の言い違いで、ベトナムの問題ではないかと思いますが、朝鮮半島問題では全然議論もありませんし意見の相違もございません。総理にそういう報告をしたこともございません。
○田中寿美子君 それでは外務大臣にお伺いいたしますけれども、外務大臣は朝鮮半島の緊張を緩和するために国際環境をつくり出したいとおっしゃったですね。その具体的な方途として何を考えていらっしゃるか。まず七二年の七月四日の南北朝鮮の自主的平和統一に関する七・四共同声明というのがありますね、あれを支持なさいますか、どうですか。賛成していらっしゃいますか。
○政府委員(中江要介君) あの七・四声明が出ましたときに、日本政府はこれを支持するということを何度も申しておりますし、あの声明を支持するという政策には変わりはございません。
○田中寿美子君 それでは外務大臣、自主的というのは、他国の干渉によらないで民族自決権を生かして統一するということですね。それから南北の社会体制が違うけれども、その違いを乗り越えて単一の民族である朝鮮民族がいま骨肉が分かれるような分断をされている状態から、対話に一よって平和的にというのは、戦争に訴えないで再統一への道を開くということなのですが、それを支持していらっしゃるとすれば、緊張を緩和する方向というのは、私はそれによるべきだと思いますが、そのために日本政府はどういう具体的な緊張緩和のための政策をおとりになりますか。
○国務大臣(園田直君) 南北は民族自決の精神によって統一に向かうという機運が一時出てきましたが、その後中断されております。なおその後、米国初め各国が両国の対話の機会をつくろうとしておりましたが、これも行き詰まっておるような状態であります。今度の友好条約の締結について朝鮮半島の平和と安定がいい方に向かうか悪い方に向かうか、なかなか複雑でありますけれども、この友好条約締結によって朝鮮半島の緊張が激化していくとは私は考えておりません。何らかのいい影響を与えておる。そしてまた、これを取り巻く国々も南北の対話を願っておる、こういう状態でありますが、日本は、いままで御承知のとおりに共和国の方とは民間交流はありますが、政府の交流はほとんどないわけであります。したがいまして、今後関係諸国とも連絡をしつつ、この両方が対話のできるような国際環境づくり、そしてまた、日本と共和国との間にも事あるごとに機会をとらえて話ができ、相互理解を深めるようなことにしていきたいと考えております。
○田中寿美子君 たびたび外務大臣がおっしゃっているその統一を促進するような、緊張を緩和するための具体的環境づくりというのは、そういう抽象的な考えにすぎないのでは、これは大変問題があると思う。まず日本の対韓政策そのものが改められなければならないと私は思います。というのは、世界じゅうに知れ渡っております非民主的な人権抑圧の朴政権、その政策、それからKCIAと米日政界、財界の癒着というのはこれはもうすでに暴露されつつある。KCIAを通じての米日の韓国政界、財界との結びつき、こういう非民主的な政権に一方的に加担していて、そして北の共和国との話し合いができるという状況にはないはずなんですね。ですから、たとえば金大中氏事件だって、あの金大中氏の事件によって日本の主権が侵されただけでなくて、金大中氏の人権を侵しておいて、その原状回復もできない状況にあるというような対韓政策を改め、一方的にそういう政権にだけてこ入れするという、これを改めることがまず私は具体的に緊張を緩和する第一歩だと思うんですが、いかがですか。
○国務大臣(園田直君) 現職の外務大臣が隣国の政権について独裁政権であるとか非民主的であるとかという発言をできる立場にはございません。しかし、よく両方の実情を見ながら具体的な方法を講じていきたいと考えております。
○田中寿美子君 その辺の認識は十分していただかなければならないと思います。まあ共和国に言わせれば、日本がそういう非民主的な政権に加担しているからいつまでも民主化されないで、そして話し合いができにくいということなんですね。これは外務省に言わせればまた違うことをきのう、二、三日前もおっしゃっております。
 もう一つ、在韓米軍の問題なんですけれども、これの撤退が必要だと私は思います。カーター大統領が就任してから、在韓米軍を引き揚げていく、陸軍からまず引き揚げるということを言い出して、実際にはなかなかそれを引き揚げない。しかも日本の総理大臣は米軍があそこにおるようにということをむしろ要請して引きとどめているという、こういうことは民族自決に反すると私は思うんですね。朝鮮戦争の後、米軍が国連軍の名前でずっと韓国に駐留しているわけなんです。三十八度線にいらっしゃればよくおわかりですけれども、あそこのところ、いまはもう国連で七五年に国連軍解体決議というものが両側から、南側と北側と両方の支持派から提案され、それを採択されているわけですけれども、それで国連軍という名前をとって、いまはもう米軍そのものがいるわけですね。こういう状況でおります間は民族自決ということができないんじゃないか。だから米軍を引き揚げるというときに、引き揚げては困る困ると言って韓国が訴えれば日本も一緒になって米国にそういう進言をするというのはどうかと思うんですけれども、いかがですか。
○国務大臣(園田直君) 韓国から米国が撤退をするかどうかということは米韓両国間の問題でありますから、われわれが口をはさむべきことではないとは存じますけれども、そういうことによって統一が干渉されることがないようには期待をいたしております。
○田中寿美子君 口をはさむことでないとおっしゃるけれども、日本政府は米軍にとどまれということを進言しているわけですから、大変一方に加担し過ぎているということです。
 それから、ことしの三月七日から十七日まで米韓の合同演習のチーム・スピリット78、大変大規模なものがありましたけれども、あれなどは日韓米合同と言っていいくらいにこれは沖繩の基地から海兵隊、米軍は十万七千もあそこに兵員を動員して三十八度線のすぐそばで大演習をやって、大変これは朝鮮半島を異常に緊張させ挑発したと思うんですが、そういうときにやはり横田基地はランスミサイルを運ぶ中継基地になっておりますね。あそこを経由していく、沖繩からは海兵隊が飛んでいく。そして日米共同声明の路線で言いますと、これまでずっと韓国条項というのがあったんですが、韓国の安全は日本の安全だというふうなことを言っていたのが、三木・フォードの七五年の共同声明では新韓国条項になって朝鮮半島の安全は日本の安全であるというふうな言い方で、朝鮮半島全体に及ぼして、緊張が起こったら日本の自衛隊も出動しかねまじき声明が出されているわけですね。いま有事立法の問題なども含めて、これは明らかに朝鮮を、つまり北の共和国の方をねらっての、日本のある意味では軍事的な体制すらうかがえるというような状況、こういうことはなくさなければ緊張緩和のために努力すると言ってもちっとも緊張緩和にはならない。
 それから、日米安保条約を外務大臣は力の均衡による平和に移りつつある、移行しつつある、安保条約そのものがもういまや中ソを仮想敵国にするのでなくて、平和的なものになりつつあるかのように御説明がありますけれども、日米安保条約によって米軍が日本にもおりますし、それからその米軍の移動も、あるいはミサイルの核兵器すら運搬する基地になり得るということを考えますと、日米安保条約はちっともまだ平和的な要素には変わっていってない。こういうふうに思うのですがね。この辺をこういうことをやっていて緊張緩和になるのかどうか。
○国務大臣(園田直君) 国際情勢の変化、それから米国、日本のアジアの平和に対する情勢の認識は逐次変化しつつあると考えます。ただ現在の状況では均衡による平和という段階であって、均衡による平和から確信ある平和に移そうとしている段階でありますから、そこに中立、非武装でよいという考え方と、いざという場合にはこれが対抗できるという抑止力を整備しておく方が賢明であるという二つの分かれがあるわけでありまして、安保条約が締結された当時はやや性格が違うものであって、大陸侵略等の意図がなきにしもあらずであったわけでありますが、いまは全くアジアの平和と安定を守るという立場に変わってきておる。こういう認識でございます。
○田中寿美子君 ですから外務大臣、そういうふうに平和な性格に変えていくのであれば、そういう朝鮮を緊張させるような軍事的な体制の中に日本が組み込まれてはならないというふうにお考えになりませんですか。
○国務大臣(園田直君) この前の米韓合同演習というものは、朝鮮半島に対して脅威を与えるということではなくて、米軍がアジアから手を引くんだ、極東アジアの平和と安定に責任を持たないんだという不安がアジアの国々に出てきた。これに対してそのようなことはないという一つの政治的な演習であったと考えます。もう一つは、やはり均衡による平和で、これだけの備えがあるということをやったことであって、あれが直接朝鮮半島の緊張を高めたとは考えておりません。
○田中寿美子君 それは外務大臣、共和国の人たちは非常に緊張した。あのときは三十八度線のすぐそばに上陸作戦をしているわけですからね。ですから、外務大臣がおっしゃったような目的ではないということは明らかだと思います。
 私がお聞きしたいのは、自衛隊というものはそういうときに、いま有事立法が問題になっていますけれども、朝鮮に出動することがあり得てはならない。これはもう防衛庁の人が答えるべきことですけれども、外務大臣としては、いまの憲法下の自衛隊が海外に派兵されて、そして緊張を高めさしてアジアの脅威になるような、そういう働きに自衛隊を使うべきではないというふうにお考えですか、どうですか。
○国務大臣(園田直君) それは使うべきでもないし、また使うだけのことを許されてない。こう思います。
○田中寿美子君 私は、自衛隊の出動はあり得べきではないし、それから平和憲法に照らしてそういうことを絶対にしてはならないというふうに思います。
 で日米安保条約の結果こういうことになっているということについては、やはり日米安保条約を軍事的な同盟でない性格にしていくためには、安保条約じゃなくて、それこそ友好条約にしたらいいじゃないかというふうに私は思っておりますが、朝鮮のこの自主的平和統一という考え方は、民族自決によって、これは国連憲章でもそうだし、日中条約の平和五原則の中にもあるわけなんですが、朝鮮は一つであるべきだというふうに外相もお考えになるかどうか、つまり、二つの朝鮮政策というのがいまこのあたりに漂っているんですね。たとえばクロス承認論ですけれども、米国や日本などの資本主義国が、北の共和国を承認して外交関係を持つ、その代償としてソ連や中国などの社会主義国は韓国を承認して外交関係を持つ、いわゆる米日中ソのクロス承認論ですね。これは相当巷間伝えられているし、その運動をやっている人たちもいるわけです。自民党の中にもいらっしゃいますし、革新と言われる人の中にもいるわけなんですが、そのようなクロス承認論は外務大臣はおとりになりませんでしょうね。
○国務大臣(園田直君) 朝鮮半島が一つであるべきであるとは考えまするが、現実には南北は対立をしておるわけであります。しかも、世界の国々で北の方を承認している国と南の方を承認している国と二つに分かれておるわけでありますから、理想は理想として、現実には二つでございます。したがいまして、それが一つになるように、いろいろな交流を深めるとか、相互の理解を詰めるとか、こういうことをやるべきだと考えておるわけであります。
○田中寿美子君 クロス承認はどうですか。
○国務大臣(園田直君) これはそういう時期が来ることは理想ではありますが、いまの段階ではまだそこまで来ていないと判断をいたします。
○田中寿美子君 いまおっしゃることがよくわかりませんが、つまり米中日ソが互いにクロスして韓国と共和国を承認するということは、二つの朝鮮を認めることになりますが、そういう政策はおとりにならないでしょうねということを伺っているわけです。
○国務大臣(園田直君) 段階的には、韓国はすでに承認をしておりますし、それから共和国の方とも将来外交関係が始まり、承認ということになれば、ある段階においてはそういう段階が一時はあり得ると思います。
○田中寿美子君 ということは、クロス承認を認めていらっしゃるということになりますね。これは大変重大なことだと思います。いま共和国が一番いやがっていることばそのことであり、そして中国の朝鮮政策をお聞きになったと思いますけれども、華国鋒主席もそれからケ小平副主席も、共和国へ行って、ことし三十周年なんですが、行って、そして絶対に自主的平和統一を全面的に支持し、クロス承認論だとか二つの朝鮮、国連同時加盟、そういうことについては絶対に反対するということを声明しているんですけれども、その辺が日本と朝鮮問題に関する意見の違ったところではないかと私は想像していたんですが、日本の相当に共和国とも親しい方ですら、こういうクロス承認とか、あるいはたとえば宇都宮徳馬さんは矢次一夫さんとクロス訪問というふうなことを提案している。しかし、これは共和国に私は九月の末に行ったんですけれども、全く迷惑なことだ、自分たちが民族の自決によって、対話をして、民主的な方法で、体制は違ってもいい、向こうは資本主義、こっちは社会主義でもいいと、話し合いによってやろうとしているときに、周りの大国が小さい国の自決権を踏みにじってそういうことをやってもらうのは困るという考え方を持っているわけなんですが、何かいまのお話を聞いておりますと、過渡的にはそういうクロス承認をする時期もあるかのように聞こえますが、そうですか。
○政府委員(中江要介君) 朝鮮半島に対しては毎回申しておりますように、基本的にはこれは朝鮮半島の人たちが自分でお決めになることでございますから、先生もおっしゃいますように外から、言うなれば外の大国が何かを押しつけるということは、これはよくないことであるという認識は私どもも持っておるわけです。他方、現実を見ますと、御承知のように、先ほど大臣もおっしゃいましたが、いま世界じゅうでも五十三の国が南北両朝鮮をそれぞれ同時承認している。それから国連でも南北両方のオブザーバーが並んで認められている。また国際機関でも、十一の国際機関で南北両朝鮮が同時加盟というか席を並べている。こういう現実を見て、行く行くは話し合いによって統一を図っていただくことに何ら異議はないけれども、その間、それが実現するまでの間、いまのようにお互いににらみ合っているよりは平和的に共存してもらうための一つの方策として、クロス承認のようなことはどうだろうかということが、確かにおっしゃるようにそういう考えを持っておられる方もあるわけです。日本政府はどうかといいますと、基本的には、これは朝鮮半島の問題は朝鮮半島の人たちがみずからお決めになることである。いやがっている、それには反対している国なり政府なりに対して、それを押しつけるというようなことはこれは全く考えておらないということでございますので、いま現実の問題として、クロス承認を考えているかというと、それは考えていない、こういうことでございます。
○田中寿美子君 お答えから察しますと、ある程度そういうふうに動いていらっしゃるような気がしないでもないわけですけれども、これは大変よく気をつけていただきたいと思うのですね。周りの国が寄ってたかってやってあげるというのでなくて、私は外務大臣の御答弁をずっと聞いておりますと、統一が平和的にできるために国際環境をつくるようにしたいとおっしゃるのは、両方が話し合えるように、おぜん立てをしてあげるということなのかと思って聞いておりましたが、そうじゃなくて、いまはっきりと出ている米中日ソのクロス承認みたいなことになりますと、これは大変問題が違う。明らかに二つの朝鮮を推進していくということになりますので、そういうことを推進してもらうようなことはしていただかない方がいいと思います。よく新聞に報道されている米朝韓三国の会談の問題なんかも、これは共和国の方、金日成主席にもお会いしましたけれども、アメリカとの話し合いは提案しているし、いつでも話し合いはしたい。南ともいつでも話し合いをしたい。自分の方の国にもどんどん向こうの南の政府も来ていいし、自分の方からも行ってよろしいという提案をしている。ですから、それをできるような雰囲気を盛り立ててあげるということは、私は周りの国にも、日本にも大変責任があるからしたらいいと思うけれども、三者が一緒というのは、これは朝鮮戦争の経緯から言って、共和国はアメリカと休戦協定を結んでいるわけですから、あれを停戦協定にして平和条約を結びたいという考えがあるわけですからね。ですから、それを変なふうに周りからやってしまわないように、自決権を最も尊重した態度をとっていただきたいと思います。
 それは日中平和友好条約を結ぶに当たって、朝鮮の政策について何にもお話しにならなかったというのは、ちょっと私も奇異に聞こえますけれども、中国の態度はそういうことであるということをはっきり知っていただきたいと思いますし、また共和国の方で、日中平和友好条約をどう思っているか全然わからないと昨日中江局長が答えていられますけれども、共和国の労働党の幹部の方にお会いしましたら、アジアの主人はアジア人である。アジアの国々が仲よく手を結ぶということは非常に好ましい。アジアの平和と安全のために日中平和友好条約は好ましいと思いますというふうに言っておりますので、これは外務大臣もおっしゃっているように、日中平和友好条約が朝鮮の問題の解決に害をするようなことがあってはならないということを申し上げておきたいと思います。
 最後に、ASEAN諸国に及ぼす影響なんですが、この条約はアジアと世界の平和と安定に貢献するということをねらいにしているわけですね。それで、もうたびたび皆さんからも言われましたが、中国のASEAN政策はどのように思っていらっしゃいますか、そういう話はやっぱりなさいましたでしょう、周り全体の国際環境とか情勢については。
○国務大臣(園田直君) 朝鮮半島については議論はしなかったわけでありますが、ASEANの諸国に対する態度については意見を交換して合意をしたところであります。
 それは第一は、アジアの中心に位置する日本と中国が真に侵し侵さない、覇権行為を行わない、こういうことは一つの安心感があるわけでありますが、そこでASEANの国々は、今度の友好条約については祝意と期待と評価をいたしております。その反面、注意をしなければならぬことは二つあるわけでありまして、一つは日中が提携をして非常に強力になって、これが遠い将来に不安を与えるのではないかという軽い不安と、もう一つは日中の経済協力によって自分たちに対する協力が削減されるのではないか、こういう二つの不安があることは当然われわれは想像しなければならぬことでありますので、これについては日中両国でよく今後具体的に研究して、そういう不安は与えないようにいたしましょう、なおまた他の国々に対しては、日中友好条約を契機にしてアジアブロックイズムがつくられるというような考え方を与えないようにしましょう、こういう点は合意をしたところであり、ASEANの国々についてはそれぞれ使いをやり、あるいは文書を送り、以前からその理解に努めているところでございます。
○田中寿美子君 覇権というのは、単に軍事的政治的な支配を意味するだけじゃなくて、経済的な支配もやっぱり覇権行為になり得ると思います。そういう点では中国はASEANの中立化を望んでいるし、それからいまの中国の経済状況を私もつい最近見て非常に破壊が激しいと思っている。経済的にASEAN諸国に侵略するような力はとうていないと私は思っておりますけれども、日本はその点で、大変軍国主義化をASEAN諸国はやっぱり心配しているし、経済的な侵略も心配している。その点を、日中平和友好条約を結んだのを契機にして、ASEAN諸国だってみんな戦時中に迷惑をかけた国が多いですから、ぜひ日中平和友好条約がASEAN諸国にとっても安定と平和を意味するものでありますように、今後の私ども全体の心構えとしてしっかりとそれは肝に銘じておきたいと思います。これで終わります。
○秦野章君 今度の日中条約の中に潜在する懸念といいますか、そういうものについて午前中お尋ねをしたわけですけれども、引き続きその懸念の問題について私の意見を申し上げて、お答えをいただきたいと思います。
 中国のことし発布された新しい憲法ではやはりマルクス・レーニン主義でもあるし、プロレタリア国際主義というものを掲げて、全世界のプロレタリア階級の団結――全世界です。中国のじゃなくて全世界のプロレタリア階級の団結とか資本主義との闘いをうたい上げているわけですね。やっぱりこれは中国から見れば一つの大義名分であり一つの理想であるということだと思うんですよ。一方、今度は、日本側の方を考えてみた場合に、いわゆる資本主義社会といいますか、その中に若干出過ぎた経済的欲望みたいなものがあるわけですね。十月の「中央公論」を見ますと、財界の幹部の座談会が出ているんですけれども、この中を見ますと、レールは敷かれた、これから機関車は走るばかりだ、鉄なんかはもうアメリカの市場をしのぐようになるだろうというような非常に景気のいい財界首脳部の座談会があるわけですよ。そこには一片の倫理綱領的な、何といいますか、旧来高度成長の経過の中でエコノミックアニマルというような批判を受けた、その部分についてのそういう話題というものは全然ないわけなんです。さあいい市場ができた、こういうことになると、私は、共産主義の野望とそれから資本主義の欲望との便宜的な結婚に日中条約がなるという懸念がある。この点について、外務大臣、その懸念が全然ないのか、私はかなりあるんじゃなかろうかという感じがするんです。
 中国も二十一世紀には軍事大国になるような心意気でおるわけですけれども、反転してそれは日本の脅威になるという可能性がゼロでもない、そういうような懸念ですね。これは先のことだから、そんなことを言っておったらもうしようがないと言えばしようがないけれども、しかし、そういう懸念というものを国家経営の立場に立てばどうしたって考えて、それに対処するということを考えていかなきゃならぬ。そういう意味において、まず冒頭に、そのことをお尋ねしたいと思います。
○国務大臣(園田直君) これは中国との会談の中にも出てきたことでありますが、そういうことに対する懸念は私も発言をしておきました。中国は、また、自分の方の現代化と言っても、とても十年、二十年で成功するものではない、かつまたそれができ上がったとしても、わが方はこれを分配する人間というのは十億おるんだ、したがってそういう脅威を与えることはないという話はありましたけれども、やはりこれは国内だけではなくて、世界の国々でもそういう不安を持っていることがあるということを考えながら、今後、この友好条約の運営、実行については十分注意していかなきゃならぬと考えております。
○秦野章君 日中条約がきわめて、何といいますか、意図としては普遍的な原則を述べ、したがってまたきわめて抽象的な原則ですね。しかし、そのことのために一つの懸念は、かえって関係国、中国にしてもあるいは米国にしてもソ連にしても、日本以外の関係国が具体的につくり出していく国際関係に知らない間に日本が引きずり込まれていくというような、そういうやっぱり懸念があるんですよ。ブレジンスキーは大変な反ソの強力な性格を持った人らしいし、中国も覇権主義という問題については反ソである。日本がそれはどう言ったって、中国にとってはそうだろうと思うんですね。そういうソ連はソ連でとにかく米中日の反ソ戦線というふうに――日本はそんなことはないんだ、政府の外交努力で、それは日中の幕あけ、日中友好ということで強調されて、そういうことが国民にある程度理解をされてきた、そのことを私は評価することにやぶさかじゃありませんけれども、しかし、客観的に見たときに、そういう関係にだんだん引きずり込まれつつあるということは、これ認めないわけにもいかぬような気もするが、この点いかがですか。
○国務大臣(園田直君) その点は、私は考え方が違いますので、雰囲気で引きずり込まれておるとは考えておりません。今後、それが引きずり込まれるか、日本があくまで日本の自主性を保ちながら、この対決なり紛争あるいは混乱している国際情勢にどのように調和していくような役目を果たすかということが今後の責任だと考えております。
○秦野章君 外務大臣としては、当然、自主的外交、日本独自の外交ということを進めて、それに情熱をささげられることは私は当然だと思います。ただ、私は、世界の客観的な情勢の上から、そういう枠組みというか、要するに、下手をすると、この日本は世界戦略の道具になる危険もあるということを心の底に考えなくちゃ日本の独自外交というか自主外交は成り立たぬという、やっぱりこれ懸念なんでしょうね。世界戦略の道具になるという言い方は極端かもしらぬけれども、その危険が何%かはある。
 何せ大国の谷間に日本はありますから、共産主義大国がアジアにあって、それに接近して日本がある。自由諸国としてアメリカは日本と、言うならば日米関係は軸だと言っても一万五千キロ離れておる。日本列島がハワイの向こう側くらいに引っ越しできれば私は安全保障上一番いいと思うけれども、引っ越しできませんから、私は、この地理的な条件から言っても、その谷間の苦しさといいますか、そういうものをやっぱりこう感じて、日本の今後の行く手というものを考えたときに、その心配がぬぐえないわけでございますけれども、いま外務大臣がおっしゃったように、自主外交を進めていくんだ、あくまでもそんな世界戦略の道具にならないんだという、そういう心意気は結構ですが、しかし、それならそのための具体策はいかがですか、具体策は。具体的にどういう行動をとっていくか、当面の日本外交として。これは大臣でも局長でも結構です。
○国務大臣(園田直君) いま御発言のような不安が全然ないとは申し上げませんけれども、考え方の基礎が、私は歴史が再び繰り返すということではなくて、過去の歴史を繰り返してはならぬ、こういうことが先に立っているわけであります。したがいまして、厳しいものではありましょうけれども、それに対して日本は責任を果たしていかなきゃならぬ。
 その責任を果たす第一は、日本の外交の基軸である安保体制というものを、戦争が起こるための体制ではなくて、均衡による平和というものに持っていくという体制に逐次日米両方が協議をして進めていくことが第一。第二番目には、やはり日中、日ソに対する外交の方針に濃淡なしに善隣友好関係を逐次進めていく。いまは必ずしもそうではありませんが、これが一番大事である。次には、いかなる状態の場合にもアジアの中で紛争が起こらないようにする。こういうことに全精力を尽くすことが大事であると考えております。
○秦野章君 いまの大臣の御説明で私がちょっと異議があるのは、安保というものをだんだん戦争を避けるような方向の性格づけに持っていきたいとおっしゃるけれども、安保条約というものはそもそも防衛条約で、言うならば戦争抑止力として存在し、まさに防衛に徹するという、これは憲法からも来ているんですけれども、そういうことじゃありませんか。
○国務大臣(園田直君) そのとおりであると思います。私もそう考えております。しかし、国際情勢も逐次そっちの方に変化してきましたが、やはり日米はそういう意味で絶えず協議をして、これが国際情勢の混乱に巻き込まれないように、おっしゃるとおりに抑止力として防衛のための基軸である、こういうことに努力をしていく必要があると考えております。
○秦野章君 独自性ということ、日本の自主外交ということ、もちろん国際協力ということは自主性を失わない限度において協力をしていく、国際化の中で日本が生きていく、それは当然のことなんですけれども、具体策の中で、私は、ひとつ北方領土の問題で、まあ中国が盛んに日本の応援団のようなかっこうになっている。そしてこれはソ連の覇権主義だと言っている。北方領土問題は、わが政府においてはあれはソ連の覇権主義ではない、こう言っている。中国は覇権だと、こう言っている。もうすでに覇権主義においてばらばらというか別々ですね、これでいいんですね。
○国務大臣(園田直君) 中国はソ連を覇権と呼び、ソ連もまた中国をベトナム問題その他で覇権と呼んでおるわけでありますが、わが国はそれとは別個の立場でございますから。
○秦野章君 北方領土問題を解決することは非常に困難だと思いますけれども、これは日ソ間の問題なんだ、日中間の問題じゃない。日本が独自外交を進めていく場合に、これはその気持ちはありがたいような気持ちもせぬでもないけれども、やはり北方領土問題を中国が北海道へ来て応援したり、いろいろな機関紙で言ったり、要人までいろいろおっしゃるという、言うならば反ソ統一行動的な態度に出られるということは日本の独自外交にとって、これを私は内政干渉か内政干渉的であるような感じもするけれども、日本外交にとってプラスではない。日ソ問題というものは日本が正面切って外交をやっていくんだというふうに思いますので、この点については若干の調整が要るんじゃなかろうか。覇権主義というものを勝手に解釈するという、ばらばらになるということは、いまの日中条約の条文からいけば、その立場で仕方がないと言えば仕方がないけれども、日本に直接関連した問題については、特に対ソ問題については、そういう感じがするんですが、いかがですか。
○国務大臣(園田直君) 全く意見は同じでありまして、日ソの問題は日ソの問題であって、これに対して、これをよその国が覇権であるとかなんとかということを言われることはかえってこの問題の解決を困難にする、これは御意見のとおりであります。
○秦野章君 もしそうでありましたら、機会があったら、中国側にも、この点は、あなたの方はそういう解釈をするかもしらぬが、日本の問題なんだから、北方領土や日ソ問題をますますむずかしくするんだからと、そういうような交渉というか、そういう接触で話をされるというおつもりですか。
○国務大臣(園田直君) そういう考えはございます。
○秦野章君 次に、日本のやはり独自外交という問題、独自独自と言っても、先ほど申し上げるように、一種の同盟国とは協力をして、アメリカは世界戦略がもちろんあるわけですけれども、その世界戦略に日本の独自の判断である程度協力をしていくというようなことは私は当然だと思う。それは自主性を害するものじゃありませんが、この安保と日中がドッキングをしてしまったということではないだろうと思うんですけれども、これはずっと今日まで論議があるんですけれども、何だか安保と日中がドッキングしたような感じがするんですが、これはどうですか。
○政府委員(中江要介君) 累次申し上げておりますとおり、そういうものではございません。
○秦野章君 そうしますと、そもそもこの安保条約というものがあって、われわれはこれは抑止力として日本の安全保障のためにあるという解釈ですから、この安保条約というものは終始締結以来そういう姿勢で来たんであって、安保条約反対闘争、安保を廃棄しろ、安保があったら日本は軍国化するぞというような、中国にしてもソ連にしても宣伝がずいぶんあったわけですよ、共同声明が出る前ころまでは。私が警察にいたころも、とにかくスイッチをひねれば左翼勢力に対する非常な激励、そういうものがあった。それがころっと変わって安保もいい、こう言っている。日本の安保条約に対する考えが変わったんじゃなくて相手方が変わったんだ。こっちはちっとも変わっていないんだという認識でいいですね。
○政府委員(中江要介君) その点は、今回の交渉を通じて事務レベルでも大臣レベルでもはっきりと日本がなぜ日米安保を持っているかということは説明しております。その説明は、いま先生がおっしゃいましたように、一貫した考え方でございます。
○秦野章君 こっちが変わったんじゃなくて向こうが変わったんだ、相手が変わったんだということでございますが、そういうふうに相手というのは変わるんですよね。十年もたたぬうちにとにかく変わるということはこれからは絶対ない、これからは変わらないということがあるかどうか。これはまあちょっと予測はそう簡単にはできないという感じもしますけれども、いずれにしても、これに関連して安保と日中はドッキングじゃないんだという説明にさっきの中江君の答弁はなっていると思います。
 私は、余りこれを追及すると政府も困るかもしらぬから余り言いませんけれども、安保というものがあって、こっちはちっとも変わってない。そこへ日中ができた、運用ではできるだけこれは矛盾なく努力していこう、こういう答弁がずっとあった。それは運用は事実関係なんだ。論理としては、安保条約がきちっとあって、総理も言われるように、安保条約の事前協議で、たとえば台湾条項等でイエスもありノーもある、こうおっしゃる。これは論理ですね。その論理の中で、イエスがあるという論理は、同時に、論理のその次の論理はどういうことになるかというと、私は安保優先ということにならざるを得ないと思うんですよ。これは論理ですよ、法理ですよ。実際の台湾情勢その他昔とは変わったと、確かにそうだと思いますよ。しかし、私は論理を言っているわけだ、論理としては、そういうふうにきちっと。日本の外交というものは、全方位と言ったってやっぱり相手によって友好の度合いも違うし、等距離でもなければ、八方美人の相手を見ての全く等質的なものだというわけでもない。そこにおのずから優先順位があるというのが外交の基本的姿勢ではないか、こう思うんですがね。
○政府委員(中江要介君) いまのお話の用語によりますと、日米安保は日米安保ということですし、日中平和友好条約は日中平和友好条約ということで、それぞれに意義を見出して締結したわけでありますので、論理としては安保は安保、日中は日中ということで適用されていく。そのことは、じゃ論理の問題としてもう一歩突き詰めると、優先順位があるではないかというところになりますと、これは私は論理の問題としては優先順位は出てこない問題ではないか。つまり日米安保をどう適用するかというのは、これは日米安保の意義に基づいて日本は日本で対応していく、日中平和友好条約は日中関係をどう将来発展させるかということで適用されていく。それは論理的に結びつかない、むしろそれを関連づけるのはやはり政治といいますか、政策という問題ではなかろうか、こういうふうに思いますので、論理的に優先順位はどちらかという御質問は、私は論理的な答えの出ない問題ではないか、こういうふうに思います。
○秦野章君 その問題は、結局、事実判断と論理とを筋違えているというふうに私は思うし、また、そうでなければ政府も答弁ができないんだろうと思うんですよ。たとえば論理的にはイエスということもあるんですよ。それは中国の台湾は中国の領土だということを尊重し理解するということだけを言っているから、別に、そういう言い方をしていますからね、だから、その点で私はイエスということもあり得るということは、まあある意味で筋が通ったような感じはするけれども、しかし、そこらは私はちょっと問題がある。私はその論理というものはかなり薄っぺらな論理で、裏側の実態というものを見きわめた現実政治の論理からいけば、私自身は、そういうものではない、法理論と言っても、その法理の裏側にある実態というものを見て考えたときにはそうではなかろうというふうに私は思うんですけれども、これはその辺にしておきます。
 いずれにしても、独自性の外交ということの中で、日本はいろいろな国と条約を結ぶ、それぞれ忠実に履行していかなければならぬ。それは憲法上の義務である。しかし、国が違ったときに、たとえば米国と結び中国と結んだ条約がぶつかることは全然ないのかと言ったら、あり得ないことはないんですよ、論理的に。そのときにどっちを選択するかという問題は、私は必ずあると思うんだ、ぶつかったときに。たとえば台湾条項なんかで、もう米軍が出動するというような事態ではなくなったという判断がいまありますな、国防報告にもそう書いてある。それはいまはそうなんだ。そうでないような状況になったときに、たとえば米軍が出動して、日本にイエス、ノーを問うてきたときに、台湾条項でイエスもあればノーもあるというのがこれ論理的でしょう。しかし、イエスと言ったときには、多分、中国から見れば、米国は覇権主義になり、いかに安保そのものを認めても、日本は覇権主義にやっぱり協調したというか一緒になったというか、そういうことになる可能性があるが、これは事実上の問題で、そういう方向には持っていかないという努力というか、そういうことでひとつ理解をするほかはなかろう、こう思います。これ以上申し上げません。
 それからいま一つ、独自性といいますか、そういう日本の外交の一つの問題としては、対ソの問題ですね、対ソの問題で私は条約論をひとつ考えてみたいと思う。
 中国は、中ソ条約について、名存実亡という大変聞いたらびっくりするけれども、なるほどなという言葉を言われました。しかし、われわれの国で条約をどこかと結んでいた場合には、その条約を廃棄しない限り、名存実亡ということを政府の責任者が言うことは多分ないであろう、言えないだろう。何となれば条約を結んだら、これは憲法上守る義務があるから。これはもう法治国家、これはドイツ法学的思想だと思うんですよ、言うならば。やっぱり憲法、法律、条約という法規範というものをちゃんと決めて、そして条約を結んだら守っていくんだというドイツ法学的な思想が日本はとにかくまだあるわけですよ。まだあるというのはおかしいけれども、戦後は英米法的な思想が入ってきたというものの、そういう考えが私は支配的だと思う。それに対して全体主義国家というものは、条約を結んでも、条約そのものが一種の政治行為なんだ、政治行為そのものなんだと。確かに覊絆力は認めるでしょう、条約としての。しかし、これは政治的な必要性があれば生まれ、必要性がなくなれば破れる。まずこれは政治行為そのものだと言ってもいいくらいの条約観が全体主義国家にはあるだろう、その真ん中に英米法的な条約観が私はあるような気がする。それはネセシティということで条約というものも、これは法律もそうですけれども、法的覊絆力というものをその程度に見ている。不文法のところはそうですけれども、成文法のところでもそういう言うならば三つの種類があるような気がするんですよ。日本はドイツ系ですからね、これ六法全書や法律つくるのは。だから、これはやっぱり憲法、法律、条約――憲法でこれを守らなければいかぬ、こうなっているわけだ。
 ところが、全体主義国家へ行きますと、とにかく憲法に書いてありませんわ、政府は条約を守れなんてそんなことは。自分がつくったものは破ろうが破るまいが自由だと、極端なことを言えば。ドゴールの言葉に、私ちょっと持ってくるのを忘れたけれども、ドゴールが、これはかなりナショナリストというか国家の権威を重んじた人ですけれども、国家の利害というもので必要なら友好なんというものは一晩でできる、必要がなくなれば一晩で崩れるという、そういう言葉があるんですけれども、私はどうも条約というものに対するやっぱり条約観が違うんだろうと思うんですね。日本と中国は違いますよ、違うと見るべきですよ。ソ連も違うと見るべきですよ。そこで名存実亡というのは日本の役人なら、中江さん、あんたでも、外務大臣でもそうだけれども、条約を結んでおったら、そして現に相手国もちゃんと条約締約国として結んでいれば、名存実亡という言葉は出せないと思うよ。雑談のうちで出すことはできるけれども、公式には出せないと思う。しかし、中国は名存実亡ということを百尺竿頭一歩を進めて言ったわけだ。言ったことは日本にとって青天のへきれきかもしらぬけれども、中国なら言えるんだ、条約観が違うんだから。私はそこに中ソ条約についてのケ小平副主席の決断があったと思うので、それ以上を深追いして、そして廃棄をしろの、廃棄しないとまたずっと来年四月から以後継続してしまうのというようなことは言う必要がないというのが私の考えです。
 何となれば、ちょっと午前中は説明が足りなかったから私は言うんだけれども、独ソが友好条約を結んだんだが、その前にフィンランドだとかユーゴだとか、みんな条約をソ連と結んでいる。その条約の中にドイツを敵国――敵国とは言わぬけれども、ドイツはドイツはと、やっぱり中ソ条約と同じように、ある意味で敵国視している条文が入っていますよ。それでも平気で独ソ条約を結んだんだ。さすがにドイツはある意味で大人というか、相手国の条約観がわかっていたというか、そういうことがあると思う。
 私は、日本では、国内政治の問題もあったかと思うんだけれども、余り廃棄をがちゃがちゃ言うと、やっぱり対ソ外交にとってプラスは全然ない。それはもう日中が一緒になってやっているという印象をソ連が受けるということと、それからまた、やっぱり米中日の言うならば反ソ戦線ということを言っているんだから、その性格を強めるという効果しかないじゃないか。だから、私は、午前中も言ったんだけれども、むしろこれは、もう外相もそのお考えと思いますが、中ソ条約の問題については、中国の責任者が名存実亡と言っているのだから、それ以上深入りする必要はない。むしろソ連の方に言った方がいい。
 それから中ソ条約の一条をちょっと読んでください。
○政府委員(宮澤泰君) 中ソ条約の第一条でございます。
  第一条 両締約国は、日本国又は直接に若しくは間接に侵略行為について日本国と連合する他の国の侵略の繰り返し及び平和の破壊を防止するため、両国のなしうるすべての必要な措置を共同して執ることを約束する。
  締約国の一方が日本国又はこれと同盟している他の国から攻撃を受け、戦争状態に陥った場合には、他方の締約国は、直ちに執ることができるすべての手段をもつて軍事的及び他の援助を与える。
  また、締約国は、世界の平和及び安全を確保することを目的とするあらゆる国際的行動に誠実な協力の精神をもつて参加する用意があることを宣言し、かつ、これらの目的の最もすみやかな実現のために全力を尽す。
 以上でございます。
○秦野章君 第一条は、私に言わせれば、不能犯なんだ。日本がどうして侵略していくのか。安保条約があったって侵略の意図なんか……防衛条約でしょう、それを侵略する侵略すると言っているのは、不能犯を第一条に書いたんですよ。歯牙にかけることはない、あれは不能犯だよ、こういう姿勢が私は日本側としては当然の考えだと思うんだが、これはどうですか。
○政府委員(中江要介君) 現時点で、日本の性格、政策から見まして、いま先生がおっしゃいましたようなことになろうかと思いますが、あの条約が締結されました一九五〇年という年は、日本がまだ国際社会に正式に復帰しておらなかった。一九五二年に初めてあれしたわけですが、憲法は持っておりましたけれども、それに基づいてどういうふうな外交政策になるか、日本の防衛をどう考えるかということはまだ明らかでなかったわけでございます。
 したがいまして、いまの時点ではおっしゃるようなことがあるということは言えるかもしれませんが、締結した時点で果たして不能犯を相手にしたと言えるかどうか、これは、当時、ソ連も、中国もそうですか、日本をまだ独立の国と認めておらなかったわけでございます。
○秦野章君 あのね、憲法があったし、それから少なくともいまの問題だからね、いまの問題だから、不能犯ですよと、こう言えるわけです。
 それから二条を読んでください。
○政府委員(宮澤泰君)
  第二条 両締約国は、相互の合意の下に、第二次世界大戦の間同盟していた他の国とともに日本国との平和条約をできる限り短期間内に締結するために、努力することを約束する。
 以上でございます。
○秦野章君 いまのように、二条は中ソとも早く平和条約をつくろうじゃないか、こう言っている。二条なんか廃棄する必要はないわけだ、ここのところにおいてはね。だから、そういうことで、ドイツの大人の外交に学ぶというか、そういう方向でやっぱり行った方がいいんではないかというのが私の考えでございます。
 それから、対ソ外交についての一つの問題は、日本の国民のアンケート調査をとると、どこの国が好きか、どこの国がきらいかというアンケート調査をずっとこれ十年か二十年とっていますね。それで日本人というのは好きな国はアメリカだ、スイスだ、こういうことが、女性と男じゃちょっと違うけれども、きらいな国の中にやっぱりいつもソ連が入っちゃうんですよ。ソ連が好きだというのは一、二%で、ほとんどソ連がきらいな国だということになっている。その原因がどこにあるのかということを議論をしてもこれはしようがない、事実はそうなっている。そのことは、実は、対ソ外交についてよほど力を入れなきゃいかぬという、私はそういう能動外交に対する一つの根拠になるだろうと思います。アンケートは私は絶対とは思いませんけれども、そういうことにならざるを得ないというふうに思います。
 この対ソ外交について、いろいろいままで議論がございましたけれども、私は、一つの例で、外務大臣、まあこれはこれでいいのかなという感じもしないでもないけれども、たとえば開発融資なんか、開発融資でお金を中国にもソ連にも貸していこう、で中国の輸銀融資は新聞を見ると六・二五%ぐらいの金利でやろう、まあこれは国内のあれから見ればべらぼうに安いんですけれどもね。そうすると、同じ開発融資で森林資源なんかでソ連に貸している場合にはちょっと値段が高いんです。利子はね。ソ連はちょっと国が大きいからそれでいいんだと言っても、やっぱり日本や中国はアジアである――しかしアジアも何か余り変なアジア主義ができてしまうと問題だから、中ソ外交の日本側の外交スタンスというものは、どうしてもソ連がきらいだという意識もあるせいか、下手をするとそっちの方が軽くなるというおそれがある。これは非常に危険なことなんですよ、危険なことなんだ。だから、私は、等距離とは言わぬが、なるべくスタンスを基本的には崩さない方がいいという感じがするんですよ。そういう点で外務大臣いかがに思われますか。
○国務大臣(園田直君) 答弁がおくれますが、先ほどの中ソ同盟条約については御意見どおりにはいかなかったかもわかりませんが、私はあなたのおっしゃったような方針で、ソ連には中ソ同盟を破棄しろということは一言も迫っておりません。延長されるのかどうかは自由であるけれども日本を敵国視されるということは自粛してもらいたい、いうこう意見で、中国にもそういう意見を言ったわけであります。そうしたら、中国の方では、ああいう返答でありましたから、そのとき、私が、それは外で言ってもいいのかと言ったら、いいと言われましたけれども、それを私が、中国がまさしく正式の手続をとって通告するということを言えば、中ソの間の争いにはまることになりましたので、私は確証を得たという言葉で発表したわけであります。
 いまの開発金融の問題でありますが、まだ中国との間にも開発金融の問題は具体的には決まっておりません。ソ連からはまた要請もございません。しかし、ソ連も中国も開発金融について深い希望があることは察知されるわけでありまして、その場合に検討することではありますけれども、当然、いまおっしゃったように、両方に金利その他の優遇について差があってはならぬと私はただいま考えております。
○秦野章君 最後に、中国から留学生を大量に海外に派遣するという情報があるし、ある程度文部省あたりも接触をしておられるわけですが、さしあたりは、聞いてみると研修生四百名程度で、もうすでに大学を出た人たちを短期に講習していこう、これに対する受け入れというものは全国の大学で何とかなりそうだという話なんです。実は、中国から西側社会に留学生を大量に派遣するという、何といいますか、中国の放胆といえば放胆、大変なテクノクラートの養成と言っても、中国は実学的でしょうからマネジメントみたいなものも当然入るでしょう。いずれにしても大量の留学生を派遣するという中国の、特に西側社会にそれだけのことをやるというそうある種の勇気というか自信というか、これに対して日本側が受け入れる一体哲学は何だろうか。これは実は、私は本当は総理とか文部大臣の問題が大きいと思うんですけれども、しかし、安全保障の角度で考えますと、これは外務大臣として、特に有力な閣僚でいらっしゃるので、私の考えが間違っているかどうか聞いておいていただき、それで御所見を承りたいと思うんです。
 一番最初に申し上げたいのは、共産主義の野望と資本主義の欲望が便宜的に結婚したという程度の友好条約になってしまったら、これはたかが知れているし、もうどうにもならぬことだと思うんですね。そうじゃない、非常に大きな実験をやったんだと、またやっていかなきゃならぬのだという一つの意欲といいますか、そういうことでいきますと、この留学生問題というのは、要するに若い人でこれは未来の国家を担うんですから、こういう人たちを大量に西側社会に送って、特に日本がこれを受け入れるということについて旧来の留学生パターンで受けとめているようなことでは、これは下手をすりゃ反日文書をつくる程度になってしまうかもしらぬし、私は大したことはないと思うんですよ。
 ここで、私は、留学生問題というものを、まあ総理も言われますけれども、心と心というか、イデオロギーにとらわれないような、そういうような方向で日本の文化も理解してもらう。そういうような大量の留学生取け入れということについての新しいビジョンというか新しい実験というか、これはリスクがあるけれども、それに踏み切ろうというのか。もしそれに踏み切るならば、これはそれに恥ずかしくないだけの相当の巨大投資もしたらいいと思うんです。これは議員会館ぐらいのを三つ四つぶっ建てたって構わない。そして留学生についはASEANが先輩ですね、先輩のASEANをやっぱり大事にしなけりゃいかぬ。むしろこれはまぜくっちゃった方がいいかもわからぬですよ。そうして本当にアジア全体について、対決の哲学を離脱して、何か未来に向かっての新しい文化を築くんだというような心意気というものを日本の政治が持てるなら、大量の留学生を日本が消化するという、そういう政治を創造すべきである。これは政治なんです。教育だけれども政治なんですよ。それができないなら、中途半端なことなら私はやめた方がいいと思うんです。中途半端なことならろくなことはないから。
 ASEAN諸国の留学生でも日本は一つの経験を踏んでいった。しかし、これは私はそういうことについて日本に一体可能性があるであろうか。私は国際的な文化的な公共投資だと思うんです。景気回復の公共投資も結構だが、平和回復の公共投資であり、そして文化と国際化というものを、特にアジアの中で厳しく対立をし続けることを避けなければならぬ。それに備えて、未来の若者を留学生として消化していくということなら、何かここに新しい実験というようなことで、われわれの方も大きな自信と勇気を持って、そして文部省が、いままで留学生の投資は五十三年度は三十何億で大したことないですよ。今度留学生について宿舎や何かつくるからというので七十億か何か概算要求をしているようですけれども、これも大したことはないと思うんですよ、この日本の大予算から見たら。
 私は、外務大臣にはわかってもらえるような気がするんだ。国際的な文化的な投資で、景気回復より大事かもしれぬというような、そしてこれはまさに未来に向かっての安全保障という性格を持つはずなんです。そういう安全保障こそ大事なんだというようなことで、ひとつリーダーシップを自民党政府が発揮して、とてもこれは役所の仕組みや――文部省がやりゃいいと言ったってそれは無理なんです。実際無理ですよ、行政改革の例を見てもそうだけれども容易じゃないんだ。そして宿舎をつくったらこれは単なる物的施設ではない、そこには名だたる教育者がやっぱり館長に座る。そしてそこで寝て飯を食うんじゃない、そこで日本の文化を理解してもらう。そうして国が違った人たちもそこで話し合いをして、スキンシップでアジアというものを考えるということも可能でしょう。そういう管理体制も新しい管理体制で、留学生会館なんというものの管理体制なんというのはどうしようもなかった。そういうものを離脱して、ひとつそういうような方向の大理想を掲げることで果たしていけるのかどうか。
 私は、留学生については立法化の問題が、外務大臣、あると思うんですよ。余りつまらぬことを言っちゃいかぬ。昔、旧制高校は、聞いてみると聴講生で入れて、そして試験をやっていけば卒業さしたんです。いま入学試験は地獄なんです。これはまず試験を極楽にしてやらなければだめだ。そんなものはせぬでいいですよ、中で試験はある程度やらないといかぬでしょうが。それから卒業年限はいままで何年とかちゃんときっちり法律で書いてあるわけですね、それから入学資格の年まで。そういうもので私は立法化が必要だと思う。われわれも立法化の問題については研究するけれども、そういうことにして少し大手を広げて、オープンになって、これが安全保障の文化的な国際的な、まあ言うならば最もユニークな安全保障の中央突破なんだ、そういうような意気込みがあるのならひとつぜひやっていただきたい。こういうことでひとつ園田外相の推進力を期待したいと思うんですが、その所見をまず承りたい。
 いま一つは、アジア――有色人種のことばかりやっていると、またこれ白人世界ですからね、いま世界は。これまたなかなかむずかしいわけですよ。そこで、これは私が提案して文部省が通常国会にどうやら出すらしいけれども、外国人を日本の官公立大学の教授に正規に採用するということを立法化するわけです。これは先進国で日本だけそれをやってないわけですよ。学問の世界に国境を構えているんですよ。そういうことをやっておったら、これまた安全保障ではよろしくないわけです。だから、できればモスクワ大学と、たとえば東京大学でも外国語大学でもいいから、こういう教授の交流をやる。大学の封鎖性に横から風穴をあける。学問研究にも国際的競争原理を適用する。これは文部省の所管なんです。外国人を国公立大学に入れるのは。ところが文部省にやらしたって文部省だけでできない、これは外務省なんです。しかも安全保障であり国際化なんですよ。私は、できれば一番先にモスクワをやったらいいと思うんです。モスクワ大学では、聞いてみると、経済学はやっぱりいまや計量経済学らしいんだ、資本論なんか余り読ましていないらしい。やっぱりこういうんだったら、外大でもいい、そういう国際交流をやる。北京大学ともやったらいいと思いますよ。学問研究は何といっても私は大事であるし、そこらのところに、知識人とか指導者というものに安全保障についての新しい考え方をお互いに持っていくということが平和に対する非常に大きなファクターになるだろうと思います。
 もう時間が来てしまいましたから、私一人でしゃべっちゃったけれども、この考え方を、きょう文部省は局長しかおりませんけれども、ひとつ、外務大臣、私は平和を考えるときに、ある程度の軍事力がやっぱり必要悪として抑止力としてしようがない、そう思うんですよ。核も抑止力になっちゃった。しかし、未来を考えると、安全保障は非常に広範に考えていかなきゃいかぬが、いろいろな勉強やテクノクラートの教育なんかに国境なんか必要ない。聞いてみると、中国でももう出来高払いだとか、工場にはもう共産党の委員会をやめちゃって工場長制度にしたとか、いろいろ中の改革もあるようです。私は、そういうことでだんだん近づいていくという、資本主義と共産主義の収斂が簡単にできるとは思いません。ソルジェニーツィンのように、そんなことを言ったら曲学阿世だと、こう怒られちゃう。しかし、ガルブレイスなんか言ってますよ、やっぱり不可能じゃないだろうと。何かこの資本主義、社会主義の収斂の道ということを政治家が模索をしていく、学者も模索をしていく。いろいろな学説も出ていますけれども、私は、そういう意味において、学問研究についてぜひともひとつこの国際協力を西側諸国ともやらなければいかぬが共産主義諸国とやってよろしい。そういう方向で外務省、外務大臣がひとつ大きな推進力になっていただくことを心から要望しまして、その所見を伺い、特に中国の留学生の問題、ASEANを含めての問題、ひとつ決意のほどを伺って、私は終わります。
○国務大臣(園田直君) いま、当面、中国からの留学生が問題になっているわけでありますが、私が聞いたのは五百名、英国に二千名という話を直接聞いたわけでありますが、これは中国のみならずASEANの国々全般を考えてみましても、日本の学校で勉強した人が帰ってから必ずしもいい地位ではなく、しかも日本に対していい意識を持っていないという例はたくさんあるわけであります。かつまた、一方、外国の教師が日本に滞在しました場合には、この教師は非常に日本に対して郷愁を持ち、愛情を持ち、しかも自分の魂を生徒に打ち込むということで非常に成果を上げておると存じます。
 そういう意味において、今度の中国の留学生も、ただ友好関係を結んだから好意的に何でもかんでも早く受け入れたということではなくて、やはりそれだけの効果が上がり、特にいまおっしゃいましたように、留学生が来ることによって、対決からみんなが心を一つにして何か新しい時代を開く、そういう施設なり方針なり、そういうものを完備をしてやるということはきわめて大事であって、これは単に日中の問題ではなくて、すべての国々の留学生に対する基本方針だ、そのためには、いままでのように数名来た学生を簡単に世話する、こういう考え方は根本的に変え、一つの要綱なり法制化をしてやるべきことは全く御意見のとおりであります。
○矢追秀彦君 私の質問で最後でございますが、いままでたくさんの議論が尽くされてまいりまして、あるいはダブる場合があるかもわかりませんが、確認も含めまして少し質問したいと思います。
 最初に、覇権ということでございますが、まあいろいろ議論がされてまいりましたが、もう一つ定義がはっきりしていないような感じを受けます。これについて、中江局長からもう一度整理をした上できちんと説明をしていただきたい。
○政府委員(中江要介君) いままで申してまいりました覇権行為の私どもの考えておること、そしてその考えに中国側でも異議がなかった、その考え方を申し上げますと、覇権を求める行為とは、一国が他国の意思に反して力により自己の意思を押しつけようとするごとき行為を言うものであり、この点は国連憲章の原則にも反するものである、こういう考え方でございます。これは中国側でも交渉の過程で、私どもがこういう考え方に基づいて交渉してまいりまして、その過程を通じて中国側との間に見解の相違はない、こういうことであります。
 さらに、具体的にどのような行為が覇権に該当するのか、また現実の現在の国際社会で起きているさまざまの事象に対して、それが覇権であるかないかというような問題は中国との間では話し合ったことがない、こういうことでございます。
○矢追秀彦君 条約の性格から言いまして不可侵条約、軍事同盟的なものではないということをよく言われております。しかし、いまの覇権というのは力ということを言われました。この力というのはやはり軍事力を指す、あるいは戦争状態ということを指すのか、もっとそうでない場合も含まれるのか。というのは、たとえば中東で戦争が起こっている、あるいはアフリカで戦争が起こった、そういうふうなことでお互い大国が後ろから応援をする、そういったことを中国や日本はしない、こういうふうないわゆる戦争状態的なものなのか、そうでないその辺の限界ですね、線というのはどこで引かれるのですか。
○政府委員(中江要介君) ただいま申し上げましたように、中国との間でそういった問題については議論をしておりませんけれども、はっきりしておりますことは、軍事力はこれに入るということでございます。
○矢追秀彦君 中国と話をしていないという点が私も理解に苦しむわけですが、そうすれば今度は、いままでの答弁を聞いておりましても、お互いにいろいろ勝手に解釈するのだ、こういうことも言われておりますので、じゃ日本としていわゆる覇権というものはどういうことなのか。たとえば自衛隊の演習というのは覇権行為に入るのか入らぬのか、あるいは何か日本の経済的な進出が、これが経済侵略と仮に東南アジア諸国からとられた場合、これはヘゲモニーになるのかならないのか、日本側としては決められるわけですから、その辺はいかがですか。
○政府委員(中江要介君) 問題の要点は、力が何によって行われている力かということよりも、その一番の骨子は自分の意思を相手に押しつける、その押しつけるに当たって力を行使する、その力がどういうものであるかということについては、これは軍事力は当然入ると思いますが、それ以外に何かということは、中国との間でも話はしておりませんけれども、要するに自分の意思を相手に力で押しつけるようなこと、これが覇権行為であるという点については、これは日本はその考えで一貫しておりますし、中国もこれに対して異議がない、こういうことでございます。それ以上具体的にどうかという点は、中国との間で先ほど申し上げましたように詰めておりませんが、詰めるまでもない、これは原則的な考え方である、たとえば内政不干渉とか主権尊重とかいったようなものと同じような一般的な原則である、そういう認識においては完全に一致した、こういうことでございます。
○矢追秀彦君 大臣、私はこういったた点がちょっと不満なんですね。もう少し詰めてきていただいた方が将来のためによかったのではないか、そういう点では交渉の経過において少し甘さがあったのではないか、この点はお認めになるかどうか、これが一つ。
 それから、いま私の聞いた中国がどうあろうと、日本として覇権を求めないという立場の中に、特にいま問題になっておりますが、経済進出ですね、特に東南アジア諸国、かつて田中総理が東南アジアを訪れられたときのような反発は最近はないようでございますけれども、日本の経済進出が経済侵略、まさしくその力でねじ伏せた、こういうことを相手が考えた、こういう場合はどうなりますか。この二点。
○国務大臣(園田直君) 反覇権問題については、第一は、日本と中国が協議してそして統一した判断をするということではないということ、それから一つの覇権行為があった場合に、両方の覇権に対する反対行動は同一のものではない、共同してやるものではない、こういう点に重点が置かれて議論されたために、反覇権というものに対する具体的な概念についてもう少し突っ込んで話をすべきじゃないかという御意見でありますが、今後はそういう機会をとらえて、さらに手落ちのところは具体的に向こうの考え方、こっちの考え方は取り交わしたいと存じますが、基本的な考え方は明確にしてきたと存じております。
 それからもう一つは、経済的な覇権行為、いわゆる中国においてもアジアについてもその点は十分注意をするという話し合いはしてきました。
○矢追秀彦君 次に、これも午前中にも議論が出ておりました内政不干渉の問題ですが、これももう一つ私は定義といいますか、範囲というのがはっきりしない、いろいろな点が混同されてきておる、そういう感じもいたします。したがって、こういった点は内政干渉になる、これまでは内政干渉とは言わない、こういった点で二、三申し上げますので、この点についてお答えをいただきたいと思います。
 たとえば忠告をする、あるいは警戒をする、助言をする、また論戦、こういったことですね。これは内政干渉になるのかならないのか。あるいは経済、文化の進出ということは内政干渉になるのかならないのか。この辺はちょっと混同されているような感じがいたします。それともう一つは政党に対する批判、こういったことは内政干渉になるのかならないのか、その点お答えいただきたいと思います。
○政府委員(中江要介君) まさしくいま先生がおっしゃいましたように、内政干渉という言葉が常識的に使われております場合と、国際法上内政干渉になるかならないかという、そういう意味での内政不干渉の原則というものとの間に混同があることは私どももそう思います。常識的には口を差しはさむと内政に干渉するなというようなことをよく言うのですけれども、条約上内政不干渉の原則というようなものが規定されたときに、その内政に干渉しない、してはならないということの意味につきましては、これは国際法的には具体的にどういう行為がそれに当たるかということは、これは種々さまざまでございますけれども、確立された国際法規としての内政不干渉というものは一応はっきりした基準がございます。それは条約局長から説明していただいた方が適当だと思います。
○政府委員(大森誠一君) 国際法上の内政干渉という概念規定の仕方については種々あるところでございますけれども、一般には国際法上他の国家が自由に処理し得るとされている事項に立ち入って強制的にその国を自国の意思に従わせようとすることと解されておりまして、命令的な関与または介入という言葉であらわされることもございます。
○矢追秀彦君 そうなりますと、やはりかなり政府の意思といいますか国家の意思というのが働く、それがかなり力を持って干渉してくる、それ以外は内政干渉にならない、いろいろなことを、少々のことを言おうが内政干渉ではない、こういう感じを受けるのですが、その点はいかがですか。先ほど秦野委員の質問に出てきた、たとえば北京放送は内政干渉とは言わないということになりますが、その点はいかがですか。
○政府委員(中江要介君) 常識的には人のというか、自国の国内事項について他国がいろいろとコメントをし意見を述べることは、口を差しはさまれて愉快でないということがございまして、そういうことを干渉するなということはございますが、いま条約局長が言いましたような意味での国際法上の内政干渉になるかというと、先ほど例を引かれましたような北京放送、ああいう内容では国際法上の内政干渉になるとは私どもは考えない、こういうことでございます。
○矢追秀彦君 次に、これも先ほど議論が出ておりましたが、十年の期限、これは大変私は意味があるように思うわけですが、いままでの答弁を聞いておりますと、その心配はないんだ、十年たったら見直すのだという程度に言われておりますが、これはかなり私は重要な意味があると思うわけです。今後十年後中国がどう変わっておるか、こういうふうなことから考えまして、現在の中国の政権がそのまま安定したものである、かなり長期安定政権ということを見込んだ上であればこれはよろしいんですが、そういった点でこの十年というのはお互いに何かあるような気がしてならないんです。特に中国側の要望だということも先ほど聞きましたが、この点についてどうお考えですか。
○政府委員(中江要介君) まず、十年という期間が中国側の要望であるということは私どもは一度も申したことはございませんので、その点は誤解していただかないようにお願いいたしたいと思います。
 この十年という期間を決めるに当たって何らか日本なり中国なりが実質的な考慮といいますか、配慮というものがあってこういうことになったかという点につきましては、交渉の経緯の詳細は申し上げられませんけれども、交渉経緯から見てそういうことはなかったということだけははっきり申し上げることができます。日中間ではっきりしておりますのは、子々孫々恒久的な平和友好関係を打ち立てようという点では日中間には完全な意見の合意があったということであります。にもかかわらず、とりあえず十年間は廃棄できないようにして、それ以後は廃棄したければ一年の予告で廃棄できる道をあけたということは全く形式上の問題でございまして、そこに実質的な意味をくみ取る必要はないし、またそういう考えではなかったということであります。
 で相手の国の政権の安定性という問題は、これはそれこそそれぞれの国の国内事項でございますが、条約を締結する以上そのときに正統に代表している政権との間で条約を結ぶ、結ばれた以上はこれは国際約束でございますので、政権がいかようになりましても、遵守していくということが期待されるのが通例であるわけでございます。
○矢追秀彦君 次に、私が午前中に少し触れました日中貿易のことですが、この最初の問題の支払いの能力ですね、これはかなり厳しいものがあるのではないか。たしか昨年で二十億ドルですか、外貨の保有高は。そういった点で今後どんどんふえた場合どうなるのか。中国が外からお金を持ってくる、まあいろいろな方法がございますけれども、それでもなかなか厳しい状況になるのではないかと思いますが、これは外務大臣どうお考えでありますか。通産省はきょうは結構だと言ったんですけれども、ちょっと午前中議論をしてしまいましたので、大ざっぱな、経済の問題じゃなくて結構ですから。
○政府委員(中江要介君) これはおっしゃいますように、通商産業省の方が専門的に御検討になっている点でございますが、私どもも一般論として、いま矢追委員の御指摘のように中国側にいろいろの困難なり問題点があるということは推察できます。これから日中間に民間の長期貿易取り決めのみならず、政府間でいろいろ経済交流を進めていくに当たってそれをどう解決されるかというのは、これは中国の問題です。しかし、それについてはっきりした見通しなり確信を持ってわが方も対応しなければならないということで、通産省の方でもいろいろ御検討になっているというふうに聞いております。で、その問題点は意識している、こういうことでございます。
○矢追秀彦君 これは、外務大臣、まあ私も歴史の専門家ではありませんので詳しいことは論評できませんけれども、特に近代に入ってから中国というのは絶えず西欧の列強からいろいろな形でねらわれてきている、そして不幸にも日本が侵略をしたということもありますし、西欧の列強とて侵略はやってきたわけですし、特に中国のいろいろなことをめぐっていろいろなことが起こったことは事実です。これから、日本が中国と平和友好条約を結んだ、これは結構なことでそうなければならない。しかし私は、経済協力の面で日本の経済進出というものがよほど中国側の理解とそれから信頼関係を保ってやらないと、今度中国へ恐らくヨーロッパ諸国もこれに目をつけて相当売り込みに来ることは間違いありませんし、現に中国あたりもかなりいろいろな西欧諸国とは商売をやってきておるわけです。また、ひとついま世界が不景気ですから、中国が大きなマーケットだ、こういうことで来た場合、今度は中国もまた昔のように大変その食い物にされると言ったら語弊がありますけれども、そうあってはならぬと思います。そういう意味で、私は日本と中国との間の経済関係というものはきちんとしていかなきゃならぬ、そしてそういった西欧との売り込み競争というものが出てきた場合に、よほど何らかの形を私はとらなきゃならぬのじゃないかという気がしておるんですけれども、この点についてのいわゆるヨーロッパ諸国との競合といいますか、そういったことは首脳との話し合いでは出てきたのかどうか、また大臣としてはどうお考えですか。
○国務大臣(園田直君) 西欧諸国の方とお会いをしますと、まず第一に聞かれるのがいまの経済問題でありまして、友好条約締結によって日本と中国の貿易はどうなるかということを聞かれるわけであります。日本と他の国々の方との考え方がやや違うところは、日本としては中国を市場として考えていくべきときではない、西欧の諸国の方々はやはり市場としての方を重く見ておられるようであります。友好条約に対する不安もいささかあるようでありますから、中国は御承知のとおりに自力更生を言っておったが、自力更生の線を壊さないで自分たちは他国の協力を求めるんだ、こういう話であります。したがいまして、中国の方と話してきましたのは、この中国の現代化及びこれによって生ずる経済問題等を排他的に日本と中国だけがやるという印象を与えることは中国の現代化はおくれ、しかも実績は上がらない、したがいまして、排他的にならないように他国の協力も十分受けて、そして現代化をやられるべきであるというような話し合いをして帰ってまいりました。
○矢追秀彦君 次に、人的交流の大変疎外になっている問題で、航空機あるいは航路の面がございますけれども、これについて運輸省から現状と今後の拡大の方向性、またきちんとしたことがございましたら御報告願いたいと思います。
○説明員(寺嶋潔君) お答え申し上げます。
 現在、日中間には日本航空及び中国民航それぞれ週三便ずつ就航いたしております。このほかイラン航空、それからパキスタン航空が隔週二便ずつ運航しております。それからエールフランスも週一便の運航を行っております。計十一便週にございます。しかしながら、最近日中間の人的交流がきわめて活発になってまいりまして、本年四月以来の統計を見ますといわゆる座席占拠率が平均いたしましておおむね七〇%台を推移しておりまして、大変に込んでおるという状況で、利用者の方にもかなりの御不便をおかけしておるわけでございます。したがいまして、本年十一月より日中双方一便ずつ増便をいたしましてこれに対処したいというふうに考えております。
○矢追秀彦君 船の方は。
○説明員(塩田澄夫君) 日中の海運につきまして御説明申し上げます。
 貨物輸送についてでございますが、現在日本−中国間におきましては定期航路はございません。最近中国側から日本−中国間の定期航路の開設につきまして非公式な見解が伝えられておりますけれども、現在の両国間の実態にかんがみまして定期航路を早期に開設することが望ましいとは考えます。しかしながら、現在のところ実務面で詰めるべき問題点が幾つか残されておりまして、この問題につきましては日本側では日中海運輸送協議会、中国側では中国遠洋運輸総公司の間で民間レベルの協議を行っている段階でございまして、来月中に第二回の協議が予定されております。現在の日本−中国間の定期航路の開設は、まずいま申し上げましたように民間ベースで話し合ってもらうという段階でございまして、いまその進展の成果を見守っておる段階でございます。
○矢追秀彦君 外務大臣、ひとついまの二つの問題ですね、運輸大臣はいらっしゃいませんけれども、政府として前向きに取り組むべきだと思います。特に定期航路はいろいろあるかと思いますけれども、これは早急に実現した方がいいと思いますが、この二点いかがですか。
○国務大臣(園田直君) これは運輸省等も前向きに検討しているようでありまするし、よい方向へ前進すると考えておりますが、前向きに検討したいと考えております。
○矢追秀彦君 最後に、対ソ外交について少しだけお伺いしておきたいと思います。
 午前中総理は、ソ連との間に長期の経済協力の政府間協定はやらない、こういうことをはっきり言明されましたが、ソ連側は大変政府間協定に熱心であるわけです。あくまでも民間でこのままいかれるのか、この十二月にやっと合同委員会がやれるようになりまして、いままでなかなか開かれなかったのができつつあるわけで、ソ連側も経済協力にはかなり熱心だと思います。やはりこの経済協力の幅は広げていかなきゃならぬと思っております。いろいろな問題がたくさんございますけれども、この経済協力推進ですね、これに対する今後の取り組み、これをひとつお伺いしたいし、政府間協定というのはやはり今後とも一切やらないという方針ですか、重ねて。
○国務大臣(園田直君) ソ連に対する経済協力は、今後の話し合いを通じて積極的に進めていく所存でございます。そのために、まず関係経済閣僚会議を両方から提案をして話をしておりますが、これは構成その他でただいま両方で検討中でございます。なお、ソ連の方が短期の経済協力では困るので、長期の協力協定をしたいという希望があることはなかなか強い意見であるようであります。わが方では、いままで中国のやつは民間協定であって、ソ連と政府間協定をすることについては事務当局は相当強い意見であり、ソ連もああいうふうに言っておられますけれども、やはり大きな観点から見ると、今後の推移によって検討すべき問題であると考えております。
○矢追秀彦君 これも午前中に出ておりましたが、平和友好条約はなかなかむずかしい問題であるわけでして、ソ連側は善隣友好条約の草案を出してきておる。日本もすでに考え方はそれ以前に示してある。しかし、なかなか同じテーブルでこの議論がされてこない、非常に残念な状況だと思いますが、この善隣友好条約というのは、全然政府としては、もう極端に言いますといま門前払いの形をとられているわけです。今後ともその方針でいかれるのか、あるいは一応検討はする、しかしこれは反対である。そしてわが方の案はこれである。こういうことでいかれるのか、その辺の今後の方針といいますか、余りこういつた外交上の折衝は国会ではむずかしいかと思いますけれども、その点はいかがですか。
○国務大臣(園田直君) ソ連の善隣友好条約についてはこの前もお答えをいたしましたが、日本はあくまで未解決の問題、いわゆる北方四島の問題を含む平和条約を締結をして、その後が友好条約という順番であります。しかし、そういう話が進めば善隣友好条約に絶対に反対という、絶対に拒否するというつもりはありません。ただし、いま出されておる案はこれはいきさつから言ってもこれに全然領土問題が含まれていないという点がありますから、これには同意ができません、こうグロムイコ外務大臣には答えておきましたが、今後の話し合いの経過によってはいろいろな方法が出てくるかもわかりませんが、そのときはそのときで検討する所存でございます。
○矢追秀彦君 ということは、日本側としてはもういま言った、あくまでも北方四島を含む平和条約、しかしそのきちんとしたものはまだ出していないわけでしょう、出されたんですか。ただ四島返還を含む平和条約をつくるんだということは言っていても、きちんとした条文、まあ向こうは一応、私も中身は、ソ連大使館の翻訳も読んでおりますし、こちらでの翻訳と両方比べて読んでおりますけれども、ああいうふうに具体的に出てきておるわけです。日本側の具体的なものは余りお見受けはしてないわけですけれども、向こうに示されたやに承っておるんですけれども、これはやはり両国国民にも知らせて、きちんとして、もちろん善隣友好条約とは全然違う、私は大臣の意見に賛成ですけれども、その点はいかがですか。
○国務大臣(園田直君) 正月に参りましたときに、向こうからは善隣友好条約の案、こちらからは平和条約の案を同時に出しましたが、向こうはこれは受け取ったのでない、預かるだけだと、こう言うし、私の方も突っ返さないが預かるだけだ、こういうことが形式になっているわけでありますが、その後向こうは一方的に外交慣例を無視して発表しましたから、遺憾である、こう言ったら、向こうの方では出さぬという約束をした覚えはない、こういうことでありまして、それ以上追及はいたしませんでした。こちらからもちゃんと出してございます。
○矢追秀彦君 ソ連側の言い分とまたソ連独特のやり方でやられていることはよくわかるんですが、ひとつ何とか取っかかりをつくって、ソ連との平和条約交渉というものは早急にやっていただかないと、大変私は今後厳しい面が出てくる可能性もあると思いますし、そういう意味で、よくソ連の要人等と話しますと、日中平和友好条約は領土をたな上げにした、だから領土問題を含んでいない善隣友好条約も検討してもいいではないか、それを門前払いして何だ、こういうことをよく言ってくるわけです。それに対しても、いま大臣が言われたような立場は私は当然だと思いますけれども、何らかの形でこの対ソ外交の取っかかり、これはやはりこちらから積極的に、粘り強くいく以外にないと思うんですけれども、具体的にこの日中条約の批准の終わったその後、先ほども同僚委員の渋谷さんからも首脳会談の話がございましたが、今度はソ連が来る番ですね、だからきちんとした招待といいますか、交渉等はやられた方がいいと思うんですけれども、その点はいかがですか。
○国務大臣(園田直君) 今度の問題でソ連の側では非常な疑念を持っているわけでありますが、私とグロムイコ大臣と会っていろいろ意見を交換した結論は、まあこれはこんな話で終わろうということでありましたが、少なくともこの条約に盛られたものが反ソ条約でないということは理解をされて、しかし問題は、今後日本がどのようにやるかということが一番大事なんだ、よく注意をして見守るというところまではソ連は理解されたと私は判断をしております。したがいまして、この日ソの関係はきわめて大事でありますから、おっしゃるとおり粘り強く、方針を持ちながらやらなきゃならぬことは事実でありますけれども、やはり具体的なあの手この手、取っかかりを見つけて重点を置いてやらなきゃならぬことはお説のとおりであります。幸い事務的な定期会議あるいはその他の会議は逐次進んできておりまするし、それから人的交流も少しずつ出てきておりますから、いま仰せられた発言の趣旨に従い、重点を置いてこの関係を進めていきたいと考えております。
○矢追秀彦君 最後に、中ソ対立というのは非常に日本に大きな影響を及ぼしておりますので、これが一日も早くなくならないと困るわけですが、この中ソは一時、対立から雪解けになるということも言われ、しかし依然として対立状態のようにも言われますし、また、ある日突然和解ということが成立する可能性もある。政府としては、特に園田外務大臣個人として、両方に行かれたわけですから、今後どういうふうな、これはまあ予想はできませんけれども、中ソ対立はどうなっていくのか、この点の見通し。それからもう一つは、この中ソ対立を利用して何か日本が、特に政府が軍事力を増強することもいけませんし、またソ連を包囲するようなとられ方をするような私は外交もよくないと思いますし、やはりこの中ソ対立にはきちんとした距離を置きながら、しかもこれが余り激化しないように、この日中条約が結ばれた後ますます私は日本の立場というのが大事になってくると思いますので、この二点を最後にお伺いして質問を終わりたいと思います。
○国務大臣(園田直君) 中ソの対立については、これまた全く御意見のとおりでありまして、これはソ連に対してもわが方の明確なる意見を申し上げました。同じような意見を中国に対しても申し上げております。なおまた米国に対しても、ソ連が対決をしておる、ソ連において軍事的その他に有利な点があるように一見見えるけれども、この中ソの対立を利用して外交を進めていくとこれはきわめて危険である、冒険である、そういうことをしてはいかぬということで、わが日本はあえてこれはとらない、微力ではあるが中ソの対立が緩和する方向に努力をしたい、これについては米国のバンス国務長官も非常な深い理解を示しておられたところであります。見通しについては、これはなかなか予想がつかぬところでありますが、少なくとも、紆余曲折はあってもこの対立が激化をして火を噴くようなことはないであろう、またあってはならぬ、こう考えております。
○委員長(菅野儀作君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
○鳩山威一郎君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表して、ただいま議題となっております日中平和友好条約に対し、賛成の意を表するものであります。
 わが国と中国が過去の不幸な関係を清算して、国交を正常化して以来、六年が経過いたしましたが、この間、貿易協定を初め各種の実務協定が逐次締結され、両国間の関係があらゆる分野にわたって順調に発展してまいりましたのは、まことに喜ぶべきことであります。
 この日中両国間の平和と友好の関係の基礎を将来にわたって確固たるものとするための平和友好条約の締結交渉は、決して平たんな道のりではありませんでしたが、ついに双方の満足する形で妥結、調印を見るに至りましたことは慶賀にたえません。私は、この最後の大詰めの交渉を迎えるに当たって下された福田総理の御決断と、園田外務大臣を初めとする外交当局の精魂を傾けた御努力に対し、深甚なる敬意を表するものであります。
 私は、まずこの条約において、日中両国が主権及び領土保全の相互尊重、相互不可侵、内政不干渉、平等互恵並びに平和共存の諸原則に立って、恒久的な平和友好関係を発展させることを誓い、また、日中いずれも覇権を求めずと約束したことは、日中関係の発展の上からのみならず、アジアの平和と安定に寄与する上からもきわめて意義深いものであると考えます。
 交渉上の最大の難関が、いわゆる反覇権条項にあったことは言うまでもありませんが、「この条約は、第三国との関係に関する各締約国の立場に影響を及ぼすものではない。」との規定を置くことによって、わが国が中ソの対立に巻き込まれず、日米関係を基軸として、いずれの国とも体制のいかんを問わず親善友好関係を維持発展させるというわが国外交の基本的立場が将来にわたって確保されたことを高く評価するものであります。
 また、条約とは直接の関係はありませんが、過般、尖閣諸島周辺において生じた不幸な事件に関して、外務大臣がケ小平副主席から、中国政府として再びそのような事件を起こすことはないとの言明を得られたとのことでありますが、これは尖閣諸島に対するわが国の歴史的な実効支配を理解する発言を得られたものと一応了解いたします。
 また、中ソ同盟条約は、わが国を敵視した条約であり、日中平和友好条約にそぐわず、日ソ間の親善友好関係にもそぐわないものでありますが、今般、外務大臣が中国側との会談において、中国政府が来年四月にはこれを廃棄するために必要な措置をとるとの強い感触を得られたことも大きな成果であったと考えます。
 今回の条約の締結を契機として、わが国と中国との貿易、経済関係は一層の発展を見ることが期待されるのでありますが、中国は四つの近代化の促進のためにわが国の協力を熱望している現状でありますので、わが国といたしましても、平和外交の本旨にもとらない範囲で適切な協力をし、相互の繁栄によってこの条約の精神が生かされるように努めるべきであります。
 ソ連に対しましては、従来からの親善友好関係を促進するとのわが国の態度が不変である限り、この条約が決してソ連に向けられたものではないことについて、必ずやソ連の理解が得られるものと確信をいたします。政府におかれては、今後、経済文化交流等の分野で一層の発展を図り、相互の信頼を深める中で、領土問題の解決を含む平和条約の締結に向かって粘り強い努力を続けるべきであります。
 以上、私はこの条約に賛成する理由を申し上げましたが、政府におかれましても、この条約の締結をアジア外交の新たな出発点となし、一層揺るぎない、そして諸外国の信頼をかち得る外交を展開されんことを切望いたしまして、私の賛成討論といたします。
○戸叶武君 私は、日本社会党を代表し、今日のあるがままの現実に即して、未来に平和と安全と繁栄をもたらすべき日中平和友好条約の今後の実績に期待を置き、この条約の批准承認を与えることにいたしたいと思います。
 二十一世紀にあと二十二年後には手が届くところに来ました。第二次世界大戦からすでに三十三年を経過しております。本日承認されるであろう日中平和友好条約には十カ年の期限が付せられています。二十二年間の二十一世紀への長期的展望からすれば、この十カ年は中期的展望であります。
 現代はまさしくグローバルな時代で、世界の中の日本の進路をみずからの責任において私たちは真剣に平和外交路線のあり方を考えねばなりません。福田首相も平和への世界の潮流に従わなければならないと、このことを肯定しております。平和共存の道は、これを積極的に打開すべく前向きで努力しなければなりません。
 今日、有事立法や機密保護法が問題になっているのはまことに遺憾な次第であって、ファッショ台頭の危なさを感じさせられるのでありますが、第二次世界大戦への日本の突入を阻止できなかった最大の原因は、旧憲法における統帥権が害をなしたのであります。明治憲法の制定者伊藤博文は、明治十六年八月二十八日、いまから九十五年前にベルリンでウィルヘルム一世からその挿入の必要を勧告され、ゆがんだ憲法をつくり上げてしまったのであります。
 また、有事立法のねらいの危険さは、戦争勃発の際にシビリアンコントロールが不可能になるおそれがあることであります。具体的実例の一つ、一九三七年七月七日の日中戦争の蘆溝橋の銃声から、だれがあのような戦争拡大を予想したでありましょうか。あのときに参謀本部に不拡大主義者の作戦部長石原莞爾少将、陸軍省に柴山兼四郎軍務局長がおったが、前線の連隊長牟田口廉也大佐の強硬論に押し切られてしまったのであります。このような例があります。
 また、機密保護法のむなしさは、太平洋戦争勃発のきっかけとなった真珠湾の先制攻撃の失敗は何か、真珠湾の奇襲作戦はアメリカ側によってすでに日本の暗号は読み取られておったのであります。ルーズベルト夫人エリノアと仲の悪かったシカゴ・トルビューンのマコミックは、戦時中にこの真相を暴露し、また、ガンサーは「ルーズベルトの回想」の中において、この真相並びに米英ソ三国の巨頭によるヤルタ軍事秘密協定の真相を暴露しております。このむなしさを知るならば無用なことであります。日本の平和外交は、国連憲章と日本憲法の精神を根幹とし、権謀術策を弄するマキアベリズムの外交を排し、明朗濶達な平和外交を貫くべく日中両国がお互いに誓い合ったのであります。
 浅沼稲次郎先輩は、一九六〇年十月十二日、刺殺されて命を落とす前の最後の演説において、新しい安保体制の構想を提唱し、日本とアメリカとソビエトと中国の四国、いわば両陣営を貫いた、四カ国が中心となった安全保障をつくるべきだと主張していたのであります。浅沼の精神は脈々としていまなお生きております。
 今日、福田首相は、中ソを含めてのアジア安保条約は非常に困難であると回答しております。この問題は、言うはやすくなかなかむずかしいのが事実であります。しかしながら、平和共存体制をつくり上げるためには粘り強くこれを推し進めるべきであります。現在、米ソ両国は巨大国であるが、全世界から孤立するであろうことを極端に恐れております。米ソは提携し、あるいは抗争しておりますが、われわれ日本と中国の両国は率先して覇権主義を自制し、あらゆる国々の覇権主義に反対を誓って平和外交を推進する決意を持っております。
 福田首相は、米ソ両大国は軍事的に激突するならば、両国は自滅――全世界に甚大な迷惑をかけることを回避するであろうということを認めておるようであります。しかしながら、お互いにわれわれは、この支持国家の獲得に狂奔している米ソの反省を国際世論によって促さなければなりません。この不安定な歩みと対立、この中において、われわれは平和共存を目指して断固として前進するために、この日中平和友好条約の歴史的な価値を高く評価して承認する次第でございます。
○渋谷邦彦君 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま議題となりました日本国と中華人民共和国との間の平和友好条約の締結について承認を求めるの件について賛成の討論を行います。
 日中平和友好条約の締結は、日中国交正常化実現以来、六年越しの懸案であり、その早期締結はかねてより強く期待されてきたものであります。ようやく去る八月十二日に本条約が北京において調印され、ここに国会の承認を得、さらにケ小平中国副首相並びに黄華外相の訪日によって批准書交換の運びとなりましたことは、まことに喜ばしい限りであります。
 本条約は、申し上げるまでもなく、一九七二年の日中共同声明の原則と精神を条約とし、日中両国の恒久的平和友好関係を維持し発展させるものであるとともに、アジアと世界の平和に寄与するものであって、日中関係とアジアの歴史に新しいページを画するものであります。特に、日中両国がともに覇権を求めず、いかなる地域においても覇権を求めようとする国、または国の集団にも反対するという、いわゆる反覇権条項が条約として明文化されたものは本条約が初めてのものであって、その意義はきわめて大きいものがあると思うのであります。この原則は、わが国憲法の恒久平和主義に合致するものであるとともに、わが国の今後の平和外交の重要な原則となるべきものであります。同時に、世界の普遍的な平和原則として確立されるべきものと確信をいたします。
 本条約の締結によって、長年の懸案に一応の決着がつけられたことになりますが、むしろ真の日中平和友好関係は、本条約を出発点として今後の課題であるとの認識に立って、新たな決意のもとに日中平和友好関係の発展のために一層の努力を傾注するとともに、アジアの平和と繁栄のために全力を尽くすべきことを、この際、政府に強く求めるものであります。
 わが公明党は、今日まで本条約の早期締結を一貫して主張するとともに、全力を挙げて努力を重ねてまいりました。今後とも等距離中立外交の立場に立って、日中平和友好関係並びにアジアと世界の平和のために尽くす決意でありますことを表明し、賛成の討論を終わります。
○上田耕一郎君 私は、日本共産党を代表して、日中平和友好条約批准案件に賛成討論を行います。
 日中両国間の平和五原則に基づく真の友好関係の確立は、両国関係の不幸な歴史的過去と現状からも、またアジアの将来にとってもきわめて重要な課題であります。両国間の不幸な関係について言えば、十五年に及ぶ日本軍国主義の中国侵略戦争、戦後は二十数年にわたる中華人民共和国不承認の状態、そしてこの十数年来の中国側による大国主義的干渉を挙げなければなりません。
 日本共産党は、戦前、中国侵略戦争に断固反対し、戦後は中華人民共和国の承認と国交回復、真の友好関係発展のため努力するとともに、中国側の不当な干渉を許さず、自主独立の立場を守り抜いてまいりました。わが党は、日中両国民の真の友好を重視するゆえにこそ、こうした立場から本条約の問題点を徹底的に究明した上、賛成の態度を決めたのであります。
 まず指摘したいのは、日本政府が台湾政権を中国の正統政府とみなす虚構に固執して日華平和条約を結んだため、日中間の平和条約なしに本条約が結ばれたという異例の事態が生まれたことであります。両国間の領土問題の不明確さは、まさにそのためであり、わが党は、尖閣列島の日本領有権について疑点を残さない措置を要望するとともに、台湾が中華人民共和国の不可分の領土の一部であることを明確に承認するよう要求します。
 次に、わが党は、平和五原則を宣言した本条約第一条を、両国政府が誠実かつ厳粛に守り抜くことを要望するものです。それは第二条の反覇権条項、第四条の第三国条項の意義と運用に深くかかわるからであります。政府によれば、覇権とは力によって一国の意思を他国に押しつける行為だけでなく、政治的強制や干渉も含まれております。ところが、中国政府は三つの世界論に立って、特定の第三国への敵対を反覇権の内容とし、それを他国民に押しつけております。しかも反覇権条項を入れた最初の二国間条約となった本条約を米日中の準軍事同盟化とする指摘もあり、わが党はこれらの問題点を重視して究明しました。政府は、反覇権は特定の第三国を指したものではないこと、覇権行為の認定はそれぞれの立場とやり方で自主的に行うこと、本条約で日本と中国の共同行動が義務づけられることはあり得ないことについて、日中間の合意があると答弁しました。また日本外交が、この条約によって中国側の特殊な外交路線に拘束されることはなく、日中あるいは米日中の同盟につながることはあり得ないと言明しました。日本共産党は、これらの政府答弁が明確にした日中間の合意や、日本政府の公的解釈を確認し、そのことを条件として本批准案件に賛成するものであります。
 しかし、同時に本条約に反する幾つかの現実が存在していることを特に重視しなければなりません。最も重大なのは、中国側の政治的干渉、覇権行為が続けられていることであります。審議でも指摘したように、日本向け北京放送での武装闘争の呼びかけ、一部暴力集団の盲動に対する中国側の称賛や激励などという、許すことのできない覇権行為や、わが党とわが国の民主運動に対する干渉、国会、地方議会などが派遣する訪中代表団の内部構成への干渉行為が繰り返されています。日本共産党は、政府がこうした覇権行為に対し、今後は答弁で述べたように、毅然とした態度を貫くことを強く要望するものです。
 もう一つの重大な現実は、日米安保条約の極東条項、一九六九年の日米共同声明の台湾条項など、台湾をめぐる日米間の軍事的約束であります。日本が台湾攻撃の拠点となることは、平和五原則を真っ向からじゅうりんすることにほかなりません。政府は、台湾条項の廃棄など、本条約に即した誠実な態度を直ちに表明すべきであります。このように、本条約の成立は、日中両国間に存在していた不正常な関係が全面的に一掃されたことを意味していません。
 日本共産党は、わが国の将来と日中両国人民の真の友好、アジアの平和にかかわりを持つこれらの問題を正しく解決するために、引き続き国民とともに努力していく決意を表明して討論を終わります。
○和田春生君 私は、民社党を代表し、日中平和友好条約の承認に賛成の立場から討論を行います。
 このたび締結調印された本条約は、日中共同声明以来五年にわたる懸案がここに解決を見たという点において、まことに意義深いものと思います。この条約交渉に当たり、わが国の主張を生かすため、福田総理、園田外務大臣初め関係者各位の払われた御努力に心から敬意を表する次第であります。
 しかし、およそ国家間の関係や条約というものには表と裏があり、積極的な面とともにネガティブな面もあります。また、二国間関係の発展が当事国のみにとどまらず、周辺諸国を含め、国際情勢にさまざまな波紋を描くこともしばしば見受けられるところであります。その積極面にのみ目を奪われ、新たな期待感の波の中に看過し得ない問題点を埋没させてはなりません。
 翻って、日中共同声明以来の中国側の体制や外交戦略の幾変遷、条約交渉が難渋した経緯、本院審議における政府側の説明や答弁などを検証いたしますに、歓迎し首肯に値するものとともに、かなりの疑念も禁じ得ません。この条約の締結を評価しながらも、もろ手を挙げての賛意にためらいを感ずる国民が少なくないゆえんでもあります。しかし、いまこの時点に立って、承認か否認かの選択しかあり得ない調印済みの本条約について、その利害得失を大局的に勘案した場合、これを承認することにわが国益を開き、平和に寄与し得る道ありと判断し、賛成するものであります。したがって、あえて表現すれば、無条件ではない賛成というのが私どもの立場であります。
 その理由の第一は、条約第二条の反覇権条項であります。覇権反対が国際間の一般的、普遍的な原則として承認されることにはもとよりもろ手を挙げて賛成であります。しかし、われわれのこの主張と、反覇権の主要な敵をソ連とし社会帝国主義反対の統一戦線結成を目指す中国の立場との間には越えがたい決定的なみぞがあります。この彼我の間の深いみぞがあればこそ、条約交渉が難渋したという事実は何びとの目にも明らかなところであります。そのみぞは今回の友好条約締結によっても埋められておりません。第四条のいわゆる第三国条項を設けることによって、おのおのの立場を留保しながら本質的な問題の回避を図ったにすぎません。その点、政府の精力的な外交努力を多とするにやぶさかではありませんが、一方、反覇権条約の成立について、外交辞令は別とし、諸外国の論調の多くが中国外交の大成功と称していることも見逃がし得ないところであります。
 そのほか、日中経済関係と中国政府の四つの近代化政策、中ソ同盟条約と日ソ関係、尖閣列島の領有権問題と二百海里経済水域、米中関係、日米中、米ソ中関係、日韓関係、台湾地域を含むアジアの安全、パワーポリティックスとそれへのシーパワー、中華民国政府統治下国民との交流と日中平和友好条約の関係など、数多くの問題がありますが、すべて本院委員会におきまして論議が行われておりますので、この際割愛いたしたいと思います。
 いずれにせよ、この条約は問題の帰結ではなく、新たな課題の始まりであることにかんがみ、わが国政府と民間とを問わず、賢明かつ適切に対処することを切望しつつ私の賛成討論を終わります。
○秦豊君 私は、社会民主連合を代表し、この日中平和友好条約の締結を心から支持して賛成の討論を行います。
 まず私は、困難な条件を乗り越えて条約を締結に導かれた福田総理、園田外務大臣を初め、多くの関係者の皆さん並びに中国側の努力に対して改めて敬意を表したいと存じます。
 さらに、政界と民間を問わず、今日あることを信じ、また今日を目指して積み重ねられた数多くのすぐれた先人先輩たちのとうとい御労苦に対しましても深く感謝の念をささげたいと思います。
 私たちは、この条約によって大きな清算を果たすことができました。もちろん、一つの条約によって私たちが過去に犯したすべての歴史上の過ちをすべてぬぐい去れるわけではありません。しかし、少なくとも過去幾十年間にわたった日中間のゆがんだ不幸な関係がこれによって終えんを迎え、恒久の平和と友好を目指して新たな第一歩を踏み出すことの意義ははかり知れないほど大きいものがありましょう。
 さらに、この日中関係を一つの基軸として、北東アジアの国際関係は大きな、また好ましい転機を迎えます。特にこの条約が反覇権、覇権反対の原則を相互に確認し合ったことは、まさに言葉どおりの意味合いにおいて画期的な成果であろうと思います。日中間に交わされたこの原則こそは、今後の国際外交の新たな基本原則として次第に大きな波及効果を及ぼしましょう。特に私たちにとっての反覇権は、ほとんどアジアの全域に惨禍をもたらした私たち自身の歴史に対する厳しい自戒にほかなりません。
 私は、今回の日中平和友好条約こそは戦後の日本外交が初めてかち得た最大の成果であると考えます。日本外交が初めて外交の名に値する選択をみずから選びとったとさえ申せましょう。しかし言うまでもなく、私たちは、今後この条約の理念と精神を厳しく実践することを求められております。中国の人々は、中国自身の貧しさやさまざまな立ちおくれを隠そうとはしません。貧しさや立ちおくれを恥とは考えておらず、貧しさや立ちおくれを克服できないことを最大の恥と考えています。いまは貧しいが誇りに満ちた十億の民衆との新しい交流がこれから始まるわけでありますが、今後の日中関係の現実の局面では、むしろ越えねばならない制約や障害の方が多いかもしれません。しかし、日中双方が真摯な努力と謙虚さを失わない限り、大きな可能性が私たちの前途に開けていることを確信いたします。
 ケ小平副主席を団長とする中国側代表団の来日も四日後に迫っています。批准書交換の儀式が晴れやかにまた滞りなく済むことを祈り、本条約への賛成討論を終わります。
○委員長(菅野儀作君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
 これより採決に入ります。
 日本国と中華人民共和国との間の平和友好条約の締結について承認を求めるの件を問題に供します。
 本件に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
○委員長(菅野儀作君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(菅野儀作君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時四十八分散会