第087回国会 本会議 第5号
昭和五十四年一月三十一日(水曜日)
   午前十時三分開議
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○議事日程 第五号
  昭和五十四年一月三十一日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第三日)
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○本日の会議に付した案件
 一、日程第一
 一、特別委員会の目的及び名称変更の件
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○議長(安井謙君) これより会議を開きます。
 日程第一 国務大臣の演説に関する件(第三日)
 昨日に引き続き、これより順次質疑を許します。二宮文造君。
   〔二宮文造君登壇、拍手〕
○二宮文造君 私は、公明党を代表して、さきの政府四演説に対して、総理並びに関係大臣に若干の質問をいたします。
 質問に当たりまして、私は、総理が総裁選に用意された「大平正芳の政策要綱資料」に目を通しました。マスコミを通じての、いわゆる大平語録なるものも丹念に読んだつもりです。さきの施政方針演説にも耳を傾けました。結論は、残念ながらよくわからないの一言に尽きます。
 官房長官によりますと、「大平政治はウエート・アンド・ウオッチ、見ながら待つ政治の典型だ。稲を育てるように、眼前の問題を処理することに力点を置いた政治家だ、一つずつ丁寧にやっていけば待ちの政治で十分だ」とのことですが、総理が太公望を決め込み、その周りで、景気は、失業は、生活はどうなると気をもむ国民はたまりません。具体的に何をしようとしているのかわからない。いや、総理の側から積極的にわからせようとしていない。国民に明確に方向を示すより、問題提起にとどめ、後は世論の盛り上がりを待つという形では、力の強い者がいつでも得をすることになりませんか。そんなところから、大平政治は逃げの政治ではないかとの批判も出ていますが、どうですか。
 また、総理は、「政治と国民との間に距離がないように、国民と一体になって苦楽をともにする政治が第一」と述べています。いい言葉です。そのまま胸にしまっておきたい気もします。しかし、石油ショック以来、六年越しの暗いトンネルの中で、さまざまな不安に包まれている多くの国民が、その言葉を額面どおりに受け取り、政治に信頼をつなぐかどうか。しかも、戦後三十余年に及ぶ保守政治は、財政、経済、産業、教育、福祉等々、国民生活のあらゆる分野に数多くの社会的な不公正を生み、それを押しつけ、現にその不公正のゆえに多くの国民は悩まされています。総理、公正のないところに信頼はありません。信頼ないところに合意もまた生まれてこないのです。原点を見失った総理の呼びかけも、しょせんは裏づけのない単なる政治用語として国民の前を素通りするのではないかと考えますが、どうですか。
 さらに、総理は、「政治が甘い幻想をまき散らすことは慎まなくてはならない。同時に、国民の方も余り過大な期待を政治に持ってほしくない」と述べております。総理は、政治のなし得る能力とその限界について率直に語ったつもりでしょうが、聞きようによっては、低成長、財政再建を理由に、弱者切り捨て、増税断行、物価値上げの免罪符のように響きます。
 これまで自民党の長期政権が続いてきました。一党独裁と言っても過言ではないでしょう。しかも、総理は、あの池田内閣を誕生させ、以来、重要閣僚、党要職をと、常に自民党政権とともに栄光の中を歩み続け、今日総理の座に着いています。いわば二十年にわたって政治のかじを握ってきたわけです。その功罪、明暗にはそれだけの責任を感ずるべきです。大地に耳を当てて大衆の声なき声を聞けとの政治の鉄則もあるのです。総理の見解を伺いたい。
 なお、焦眉の急を要するのは、ロッキード事件に次ぐダグラス・グラマン両社の航空機購入をめぐる疑惑解明です。米国証券取引委員会は、民間機だけでなく、直接防衛庁、運輸省をも巻き込むと思われるような疑惑を指摘しています。総理は、さきの演説で、事態解明に最善の努力をすると、まことにさりげなく二行余りに述べているだけですが、これほど総理の政治家としてのモラル、総理・総裁としてのリーダーシップを求められるものはないのです。
 そこで伺います。
 第一は、早急に国会調査団を米国に派遣するとともに、関係者の国会証人喚問に応ずるよう自民党に指示すること。ただし、これは昨日大体合意に達したようでございますが、しばしば総論賛成・各論反対という今日までの経緯がございます。速やかにこの要旨のとおり実現されるよう御指示を願いたい。
 第二は、SEC資料など全資料の入手及び国会提出を指示すること。
 第三に、特にE2Cについては、正式購入後に政治家、政府高官に成功報酬を支払う密約があったとされているにもかかわらず、純軍事的観点に名をかりて、五十四年度予算案に計上しています。疑惑解明が先決です。それまでは当然予算案から削除すべきです。
 第四に、ロッキード社のP3C、ダグラス社のF15についても、疑惑の可能性を残したまま採用が決定しています。同様に処置すべきです。
 第五に、かねて要求しております再発防止法の制定など、不正は不正として摘発できるよう法的整備と制度導入を検討すべきです。
 以上五点について、総理の決断を求めます。
 総理は、当面の経済運営として「物価の安定を保ちつつ、雇用の維持、拡大に努め、あわせて世界経済に対するわが国の責任を果たすとともに、財政再建の契機をつかむ」と述べました。しかし、提案された五十四年度予算案は、第一に、一般会計の対前年比伸び率は一二・六%で、四十年度以降の最低、また、財政投融資計画も対前年比一三・一%増にとどまって、四十三年度以降の最低です。第二に、国債は発行額、依存率ともに戦後最高を示し、したがって、国債費は対前年比二六・六%と最高に伸び、歳出構成比では一〇・六%を占めています。第三に、歳入の増加額四兆三千五十一億円の九九・五%が国債収入で、租税、印紙税収入の伸びは、前年の十三カ月予算のあおりを受けて、わずかに〇・二%の三百七十億円増にすぎません。第四に、地方財政関係費では、柱になる地方交付税交付金が対前年比二%、金額にして千八十六億円の減となり、地方の財源不足分四兆一千億円は地方債、資金運用部借り入れ、特例交付金で補給するという、借金財政に一層の拍車をかけています。そして第五には、以上の財政危機をキャンペーンすることによって、福祉後退、公共料金、負担金の一斉引き上げとともに、一般消費税を五十五年度のできるだけ早い機会に実施したいなど、ひたすら財政再建に目を向けた緊縮型、抑制型となっています。
 総理の言う、雇用拡大、物価安定、財政再建の三つのウサギは、どうやら増税そして財政再建の一点にしぼられたと見るべきです。しかし、経営者の中には「トンネルの先に明るさは見えてきているが、前の列車は日差しを受けても後ろの方はまだ暗い、後続列車にも景気をつけることが望ましい」と指摘する者もいます。
 そこでお伺いをしたい。
 第一は、総理の経済運営の手法で五十四年度六・三%程度の実質成長が可能か、景気回復への不安はないかということです。
 予算案で見る限り、公共事業関係費の五十四年度二二・五%の伸び率が五十三年度の三四・五%に比べて大幅ダウンしています。総理は、これまでの財政の下支えによる景気回復を手控え、民間にげたを預けるという基本姿勢を示していますが、しかし、民間需要は、住宅はすでに百五十万戸で頭打ちと言われ、設備投資にしましても、昨年の電力の二兆円前倒しというような事態は考えられない。個人消費も、所得の伸びが期待できない上に、公共料金値上げの追い打ち、社会保険料の負担増で家計が圧迫され、慎重にならざるを得ない等々から、内需の回復力は弱いとの見方が強く、現に民間予測機関の実質経済成長予測は四・五%ないし五・五%成長に集中していますが、総理の考えはどうですか。
 第二に、経済指標としての経済成長率について、実質六・三%の成長率は政府の公約なのか、努力の目安にすぎないのかということです。
 すでに五十三年度の七%成長については、政府部内の声として、当初からかさ上げがあったと言われていますし、また、さきの経済演説でも、数字は幅を持って見るのが当然だとしています。しかし、わが国では、これまで政府も、また国民も、成長率の見通し並びに実績を経済運営の尺度として重視をしてきました。公約ならば内閣の命運をかけた政策努力が出てくるでしょうし、また、それが目安にとどまるならば、情勢適応型の施策に陥って、国民はお先真っ暗になります。政府経済見通しは財政政策と財政規模の基本に置かれているはずです。したがって、政府が国民に対する公約として、その達成に責任を持つことが当然ですが、どうですか。
 第三に、財政再建を最優先課題にすることは、景気の現状からは二年早過ぎるということです。
 政府は、このほど八〇年代に向けての新経済社会七カ年計画の基本構想を示しました。成長率は実質六%弱、中身には、生活の安定、質的向上、福祉の充実等、きれいごとが随所にちりばめられていますが、結論は低福祉・高負担、増税路線による財政再建だけが目につく計画となっています。
 公明党では、さきに「福祉経済中期計画」を提案し、五十四年度、五十五年度を緊急経済再建政策実施期間と位置づけ、この期間、財政の役割りを強め、景気を着実な軌道に乗せ、安定成長への移行を確実にすべきだとしています。したがって、五十四年度予算は、生活関連公共投資の拡大、雇用策の拡充と徹底、社会保障の充実を中心に、結果として六・八%程度の実質成長を達成すべきだと考えてきました。政府のように財政の健全化それ自体を目的として一方的な増税に走れば、日本経済は停滞し、財政再建は逆に遠のくと考えますが、どうですか。
 第四に、政府は中期財政計画を策定中と聞きますが、いつごろ提示されますか。その際、これまでのような財政収支試算ではなく、国民生活はこうなるという、生活と社会像を示し、少なくとも主要経費別か、さらには、もう少し小さい段階で数字をとらえ、経費はこうなる、負担はこうなるというものを国民に示すことによってコンセンサスをつくる、それこそが総理の言う「信頼と合意の政治」ではないでしょうか。答弁を求めます。
 総理は、「今後とも率先して国際社会に受け入れられる経済運営に努める」として、対外経済政策に言及しています。事実三月には、ワシントンで国際通貨基金暫定委員会、四月、ジュネーブで東京ラウンド正式調印、五月、マニラで第五回国連貿易開発会議、六月、東京で先進国首脳会議と、メジロ押しに並んでいます。しかし、日本をめぐる国際経済環境は、一向に減らない経常収支黒字を中心に、五十三年度実質七%成長断念という総理の発言、あるいは五十四年度予算案に対する米国の不満などが伝えられ、きわめて厳しい状況にあります。
 そこで伺いたい。
 第一に、六・三%成長で国際摩擦激化の危険はないかということです。
 総理の発言について、カーター米大統領など米国側は、再三、成長率、経常収支、経済拡大の必要性について抗議をしたと聞きますし、その中で、東京サミットに悪影響を起こすのではないかとまで述べているようです。事実、それを裏書きするかのように、総理も、それまではたびたび当面の課題として、物価、雇用、財政再建の三本柱を挙げていましたが、去る二十日の「総理演説草案骨子の概要」というプリントには、当面の最重要課題として、景気回復、雇用創出、財政再建となっており、その辺の状況をほうふっとさせますが、真相はどうですか。
 さらに、牛場前対外経済相にかわって安川移動大使を米国に派遣したい意向のようですが、派遣のめどは立っていますか。
 第二に、総理は、東京サミットで為替安定圏構想を提唱し、暫定的に円・ドルレートを決め、上下五から一〇%の変動幅を設け、先進国首脳の合意により、その幅の中で通貨安定を図りたい考えのようですが、米国は、去る十一月に効果的なドル対策を措置したから議論する必要はないとしているようです。考えを明らかにしていただきたい。
 経常収支の黒字問題とともに諸外国から常に批判の的となってきた対外経済援助のあり方も、また大きな課題です。国際公約となっていた政府開発援助三年倍増計画は、目標より一年早く達成できるようですが、しかし、それでも国民総生産に占める援助比率は、〇・二九八%からわずかに〇・三一%への改善にとどまっています。また、日本の経済援助のあり方が、開発途上国の開発を促進するため、電力、運輸、交通、通信の整備、あるいは肥料工場など産業基盤整備を目的とするプロジェクト借款に偏りがちで、しかもひもつき借款が目立つと言われ、円高による借款返済の負担の増加もかなり反発を生んでいるようです。
 そこで伺います。
 第一に、政府は開発援助額を国民総生産の何%にまで引き上げようとしていますか。わが国として今後の自主的な計画はどうですか。また、ひもつき借款ではない、いわゆるアンタイド比率の引き上げ、返済条件の緩和が求められていますが、どうですか。
 第二に、開発途上国の公的対外債務残高は二千億ドルに達する模様で、一部は債務返済が困難な状況に陥っています。わが国はどう対処する考えですか。
 第三に、政府援助についての国際的傾向は無償化です。食糧増産援助、あるいは学校、病院など、社会開発分野の無償援助についても拡充が求められていますが、どうですか。
 あわせて、無償援助のための不況業種製品の買い上げは、五十四年度はどのように計画をされていますか。また、現行制度では輸出を禁止されている過剰米を無償供与する道を講じてはどうですか。
 第四に、政府は、第五回国連貿易開発会議までに、開発途上国が要望している一次産品共通基金制度、すなわち、農産物や鉱物資源の国際在庫をつくり、市況の乱高下を防ぐよう制度の実現を図る考えのようですが、見通しはどうですか。
 政府は、五十四年度予算案で見る限り、これまでの景気刺激型から一転、及び腰、半ばあきらめぎみの景気維持型路線を指向していますが、国内需要、中でもその五〇%以上を占める民間消費支出への影響は甚大です。内需の拡大が進まなければ、企業はますます減量経営に頼り、雇用不安は一層拡大します。中小企業の倒産も深刻です。それがまた内需に影響を与え、企業は再び輸出に走り出すことになり、貿易黒字は拡大し、円の急騰という悪循環に入り、日本経済は昨年以上の深刻な内憂外患に見舞われることになります。
 以下数点にわたり政府の考えを伺います。
 初めに、公共事業についてです。
 第一に、政府は相変わらず産業基盤優先型をとり、道路を主座にしています。しかし、インフレ傾向の中では地価や資材価格の値上がりに吸収されて、新たな設備投資への呼び水になるほどの投資効果は期待できません。政府は、この種公共事業の経済的波及効果を過大視してはいませんか。
 第二に、道路財源として、ガソリン税二五%引き上げを予定していますが、自動車関係諸税は、これまでも毎年のように新税の創設または増税が繰り返されています。再考を求めますが、どうですか。
 なお、これに関連して、新幹線整備五線の財源対策をめぐり、政府部内には、陸上公共輸送整備特別会計を新設して、自家用車を対象に公共輸送整備税を取るとの考えがあったようですが、経緯を説明願いたい。
 第三に、公共事業は、道路、新幹線よりも、地方の、しかも地元の雇用創出効果につながる公共住宅、病院、学校、下水道、公園、文化・スポーツ施設など、生活環境を豊かにするように重点を移行すべきです。それこそ、総理が提唱する「健康でゆとりのある田園都市づくり」にふさわしいと思いますが、どうですか。
 第四に、建設業界は、元請、一次、二次下請という重層下請になっており、下請代金の支払い条件が悪化する場合も少なくないのです。一定の基準を定め、指名停止なども含めて監視体制を強化すべきだと思いますが、どうですか。
 なお、昨年六月私が指摘した建設保証三社の運営のあり方、公共事業の前受け金にかかる保証料率が高過ぎるとの問題について、その後どう改善されましたか、報告を願います。
 次に、物価の問題です。
 国の一般会計の経常経費削減という柱は、国民に対しては、受益者負担、取りやすいところから取るというツケに変わりました。しかも、政府は一般消費税の導入を五十五年度中と予定し、その前にできるだけ公共料金の引き上げを済ましたいとの考えからか、五十四年はまさに公共料金値上げのラッシュです。二月からは消費者米価が四・二%上げ、五月、たばこが平均二一%、国鉄が平均八%の値上げを予定しています。また、医療関係では、健保法の改正とともに、薬代半額自己負担のほか、初診料、入院費がはね上がります。教育費では、国立学校の入学金を初め、私立学校の授業料も一斉値上げを決定しています。高速道路通行料も三五%程度値上げの予定です。公共料金の引き上げだけで消費者物価を二%近く押し上げると見られておりますが、それに加えて、ことしはOPEC、石油輸出国機構が原油値上げを決定していますので、物価上昇は一層高まりを見せる情勢です。不況下の家計はまさに火の車で、消費動向に大きく影響が見られます。
 そこで伺います。
 第一に、政府は五十四年度消費者物価の上昇率を四・九%程度に確約できますか。
 第二に、円高差益を消費者に還元するため、まず、政府が関与する物・サービスの価格あるいは料金の引き下げはもちろんのこと、民間輸入物資の差益還元にも努めるべきだと考えますが、実態の報告を願いたい。
 第三に、水産物流通市場における大手水産会社等の価格操作を監視し、あるいは牛肉価格の安定、値下げのため、畜産振興事業団のあり方を含め、輸入牛肉取扱指定店の拡大を図るなど、国民の要望が強いわけですが、どう対処しますか。
 第四に、公共料金値上げを厳しく抑制するとともに、公明党がかねて提案をしておりますように、受益者負担、所得応能負担、生活必需的なサービスの最低保障という三原則を適用、組み合わせた国民福祉料金体系を確立すべきだと思いますが、どうですか。
 次は、税制の問題です。
 国民と苦しみを分かち合いたいという総理の政治哲学が、きれいごとに終わっているのが税制改革です。また、甘えの構造は許されないと幾ら言葉を尽くしてみても、不公正と言えば直ちに「それは税制だ」とこだましてくるような現状が改革されない限り、むなしいことです。医師税制にしても、医療保険制度の抜本改正に伴う診療報酬体系に手をつけないままでは、今回のようなごまかしに終わるのは自明の理です。常に指摘をされる租税特別措置法の問題でも、企業会計原則の弾力化を駆使して、各種積立金制度の中で利益の費用化がまかり通っています。土地長期譲渡所得税の軽減は、金持ち優遇の非難が残るだけでなく、地価抑制、宅地供給にもつながらないと見るべきです。
 一方、サラリーマンの税負担は着実に重くのしかかっています。まず、年収三百万円、夫婦子供二人の標準世帯の場合、五%のベースアップで年収三百十五万円にふえます。しかし税金は、所得税が一万四千二百円、住民税が五千百十円多くなります。税引き後の収入の伸び率は四・五%、負担する税金の伸び率は一七・九%、所得税だけで言えば昨年より二三・六%はね上がる計算です。しかも、収入増の分は物価の値上がりで消えてしまい、消費に回す余裕はどこにも見当たりません。
 そこで、お伺いします。
 第一に、物価調整減税を実施し、あわせて教育費、住宅費の軽減を図るため、減税措置を構ずべきです。
 第二に、利子配当所得の総合課税化を進め、源泉税率の引き上げ、納税者番号制などによらずに、預貯金の名寄せ、無記名預金の廃止に努めるべきです。
 第三に、有価証券譲渡益に対する原則非課税制度を廃止して総合課税とし、また、有価証券取引税を二倍に引き上げることです。
 第四に、法人税関係の租税特別措置是正のため、各種準備金特別償却、税額控除の全項目を洗い直すべきです。
 第五に、一般消費税導入はやめるべきです。
 いま指摘をしましたような不公平税制の是正と、総理が意識的に触れていない行政改革を断行するなど、歳出歳入費目の徹底的な洗い直しをすることが先決です。答弁を求めます。
 次は、雇用の問題です。
 昨年十一月現在、完全失業者が百十六万人、失業率二・三一%に上っています。特に問題なのは中高年対策です。昨年十月の男子年齢別有効求人倍率によりますと、四十五歳から四十九歳までは〇・六二、つまり十人の求職者に対する求人は六人というわけです。それが五十歳から五十四歳までは〇・四六、五十五歳から五十九歳は〇・二と低下し、六十歳から六十四歳では〇・〇九、十人に一人しか求人がないのです。戦前、戦中、戦後にかけて、日本の人口構成の中で最も苦難の道を歩み続け、いまなお家計の中心を担っているこの中高年層の雇用問題は残酷そのものです。総理、未来に向けての生きがい論もいいでしょう。しかし、現実の足元のこの課題は、総理を先頭に、政治が必ず解決しなければならない緊急事態です決意をお伺いしたい。
 五十四年度予算案では、中高年雇用開発給付金の拡大など諸施策を織り込んだとしていますが、五十二年度の制度利用状況を見ますと、定年延長奨励金は、四十七億円のうち二億六千五百万円が支給されたにすぎませんし、高齢者雇用開発給付金にしても、六十億円のうち二十億円程度が給付されただけです。金の援助で雇用確保を図るには壁が厚過ぎるということです。
 そこでお伺いします。
 第一に、中高年齢者の雇用を促進するため、年齢差別禁止法を制定するとともに、六十五歳を目標に、当面六十歳定年制を実現すること。
 第二に、福祉、教育産業を中心に、第三次産業に雇用創出することが課題となっていますが、とりあえず、社会福祉、福祉関連サービス部門の雇用機会をふやすため、雇用開発給付金を支給するよう措置すること。
 第三に、産業構造の転換に対応できるよう、職業訓練所の増設、施設の整備が必要です。
 第四に、寡婦雇用促進法を制定すべきです。
 第五に、今日、各種資格、職種の監督官庁がばらばらで、しかも実態をつかんでいない。したがって、いまどの職種が不足しているかという情報は皆無に等しいと言われています。この種の情報を一元的に把握できるよう配慮すべきではないかと思いますが、どうですか。
 次に、国債の問題です。
 五十四年度の国債発行量は十五兆二千七百億円、これに政府保証債、地方債を含めた公共債の総発行額は二十六兆円、五十四年度末では百二十兆円、国民総生産の半分を超える量になります。すでに昨年あたりから、大量発行の重圧で消化不良現象が起きています。たとえば、五十三年初め発行された期間十年の利付国債の場合、表面利率は年六・一%、発行価格は九十九円五十銭で、この応募者利回りは年六・一八%でありました。ところが、本年一月現在、証券取引所の上場価格は九十六円七十五銭に値下がりをしています。国債管理政策の抜本的改正が要請されるゆえんです。
 第一に、国債発行に際しては、種類の多様化、たとえば、五年もの、三年ものの比重を高めるとともに、二年もの国債、さらには個人向け小口貯蓄国債を発行して、市中消化を円滑に進めるべきです。
 第二に、国債金利の自由化を推進するため、公開入札発行の徹底を図り、少なくとも御用金調達と言われる現行発行方式を改めること。
 第三に、金融機関等における国債の保有、処分に関する取引制限を撤廃するとともに、公社債市場の健全な育成を推進すること。
 第四に、金融政策における公開市場操作の適正化を図り、大量の国債発行が過剰流動性をもたらし、インフレにつながらないよう対処すべきですが、どうですか。
 総理は、演説の締めくくりとして「活力ある日本型福祉社会の建設」をうたい上げています。私ども公明党は、住宅、年金、教育、勤労、医療、公的扶助の六つに国民福祉の最低基準を決め、それに国民のあらゆる階層の生活向上と国土のナショナルミニマムを加えた全体計画を国民に提示して、生きがいと活力ある福祉社会の建設を目指しています。それに比べて総理は、「日本人の持つ自立自助の精神、思いやりのある人間関係、相互扶助の仕組みを守りながら、これに適正な公的福祉を組み合わせた公正で活力のある日本型福祉社会の建設に努める」というのです。最低基準の保障もなく、具体的なビジョン、手法も示されていません。まるで絵の映らないテレビに向かっているようなじれったさを感ずるのは私一人ではありますまい。
 総理は、また、都市と結合さした健康でゆとりのある田園都市構想を述べていますが、これもまたきわめて難解です。三全総の定住圏構想と同じなのか、違うのか。違うとするならば、三全総を見直し、新たな総合開発計画の策定を考えておられるのかどうか、明らかにしていただきたい。
 以下、関連する諮問題について尋ねます。
 まず、地方行財政です。
 地方自治三十年を経た今日、中央集権化体制の中で、国からのひもつき交付金や補助金にくるまれた地方自治体は下請機関そのもので、真の地方自治はいまだに確立していません。しかも、膨大な行政需要を抱え、一方では極端な財政難に落ち込み、地方財政はかつてない最大のピンチに立たされています。
 総理は、「田園都市計画によって、税財源、雇用機会、教育・文化機能を首都東京を初め地方自治体に配分し、福祉等の行政機能も大幅に地方に移譲する」と述べています。
 そこでお伺いします。
 第一に、総理は、地方自治体の機能を強化するための地方分権をどのように実施し、税の配分をどのように振り分けようと考えられるのか、より具体的に説明願いたい。
 第二に、総理は地方交付税の現状をどのように判断されますか。少なくとも交付税率現行三二%から四〇%を目標に引き上げるべきだと思いますが、どうですか。
 第三に、地方税について各種の非課税措置を洗い直し、大企業の法人事業税に外形標準課税方式を導入すべきではないでしょうか。
 第四に、国と地方団体の代表から成る地方超過負担調査会を設置して、現在七千億円にも達すると言われる超過負担の完全解消を図るべきです。
 第五に、地方債について、現行の統制をやめ、発行高、方法は各地方団体の責任で決定できるよう制度改正が必要だと思いますが、どうですか。
 なお、関連して、沖繩の当面の課題について三点、端的に伺います。
 第一に、県内の完全失業率は六%を超え、深刻な事態です。政府は県内の雇用創出についてどう対処されますか。
 第二に、県は、仮称ではありますが、「沖繩における軍用地の転用及び軍用地跡地の利用促進に関する特別措置法」の制定を望んでいますが、どうしますか。
 第三に、昨年十二月二十九日、名護市における演習中の米軍機関銃実弾乱射事件について、改善策が明示されないままとなっています。政府は、県民の生命の安全を図るため、どのように対策を講ずる考えですか、答弁を願います。
 次に、農業の問題です。
 田園都市づくりは、農村と切り離しては全く考えられません。しかも、今日、農村は処理し切れないほどの難問を抱えています。食糧確保は国民的課題ですし、反面、専業農家の所得保障は財政とのにらみ合いで壁につき当たっています。五十二年度の農家経済実態調査では、農家所得の農業依存度は二九・四%、ついに三〇%を割ってしまっています。米の生産調整、経常収支黒字の国際的外圧が農産物の輸入枠拡大に集中し、また、後継者問題など、農家経営は危機状態です。農家出身の総理が、事農業に関する発言はきわめて少ないのも奇妙ですけれども、それでも演説では「農業の再編成」と言い、政策要綱資料では、「二種兼業農家とは別に、専業農家の所得を確保する」とか、「土地出資による農業法人化の促進を検討する」とか、あるいは「食糧経済ももっと正常な姿に返す努力も相当差し迫った課題になっている」等々と述べています。
 そこで伺います。
 第一に、いま指摘した総理の発言は、それぞれ何を意味するのか。特に、第三項は食糧管理法のあり方にも言及したものではないかともとれますが、具体的に説明願いたい。
 第二に、米の生産調整はさらに強化されるようですが、画一的だとの批判もあり、政府はどう対処しますか。
 第三に、現在ミカンの潜在生産能力は年間四百七十万トン、適正生産量は三百五十万トンと見られています。その上、日米農産物交渉の結果、輸入枠は四年先には八万二千トンになります。ミカン農家は減反、品質の転換が強いられていますが、対策をどうしますか。
 第四に、同じく牛肉生産農家は、東京ラウンドで、四年先には十四万二千トンの輸入拡大が見込まれることによって、先行き不安に覆われています。世界の需給動向からは、国内生産体制の充実が必要と思われますが、山地酪農の見地から、国有林、公有林野の開放を含めて、対策を伺いたい。第五に、赤潮被害によりハマチ養殖漁業は壊滅的な打撃を受けています。防止対策を急ぎ、救済措置を講じて安定経営を推進すべきだと思いますが、どうですか。
 次は、住宅問題です。
 住宅は、総理の言う田園都市づくり、家庭基盤づくりの原点です。また、景気対策としても内需押し上げの牽引車と期待されてきました。しかし、所得の伸びの落ち込み、不況に伴う企業の住宅資金貸付枠の縮小、土地入手難などのため、民間経済予測機関の新設住宅着工戸数見通しでは、五十三年度は横ばいか微増、五十四年度は頭打ちという厳しい予測をしています。宅地供給の重要な隘路の一つは、高騰する関連公共公益施設の整備費です。最近は、区画街路まで含めて考えれば、総事業費の五〇%を超え、有効宅地率も約五〇%、大きな団地では四〇%台になって、そのまま地価にはね返っています。
 そこでお伺いします。
 第一に、住宅金融公庫融資限度額の拡大です。建物六百万円、土地六百万円、土地つき貸し付け千二百万円に引き上げるとともに、土地つき融資に傾斜的に配分すべきです。
 第二に、既存の中古住宅融資は、その範囲を全国に拡大し、一戸建て住宅を加えるとともに、住宅取得控除、不動産取得税の課税標準の特例を適用するなど、流通促進策を講ずるべきです。
 第三に、ひとり暮らしのお年寄り、婦人などの単身世帯に対して公営住宅を開放するよう法改正を求めます。
 第四に、住宅宅地に関連する公共施設整備促進事業費の対象事業に、義務教育施設、保育所、上水道を追加し、分譲価格引き下げに役立ててはどうですか。
 第五に、市街地整備基本計画の一定要件を備えた宅地開発については、融資、税制面にわたる優遇助成策を集中的に講ずる道を開いてはどうですか。
 次に、年金、医療問題です。
 総理は、「高齢化社会の到来に伴い、老人扶養は本来国ではなく、家庭がやるべきもの」として、国と家庭との役務分担を強調したと言われています。
 公明党は、年金制度の改善策として、夫婦二人で勤労者の平均賃金の七〇%保障を目指した国民基本年金構想を提唱しています。その後、政府の社会保障制度審議会あるいは年金制度基本構想懇談会でも改善策が提起され、その中には、全国民を対象にする基本年金の上に現行の各種年金を据える二階建て年金構想も含まれています。総理、役務分担を云々する以前に、まず、食べられる年金制度を確立することが必要ではないでしょうか。
 そこで伺います。
 第一に、年金の制度間格差と年金水準を明確にするために、わが党の国民基本年金制度の早期実現を図り、老齢・寡婦年金は勤労者の賃金を基礎として所得を保障する。
 第二に、老齢福祉年金は月額二万円に引き上げ、国民年金の給付額もそれに準じて引き上げる。
 第三に、年金に対する非課税を目指し、さしあたり老年者年金特別控除額を百十万円に引き上げる。
 第四に、医療保険制度は被用者保険と地域保険の二本立てとし、また、六十五歳以上を対象に老人保険制度を創設して、抜本改正を図る。
 第五に、在宅寝たきり老人及び身障者に対する保健指導、訪問看護を制度化する等々ですが、見解を伺います。
 次に、教育問題です。
 総理は、「これまでの単一な、画一的な教育から、個性豊かな教育へ、教育の多様化を図らなければならない」と言い、さきの演説でも、五十四年度文教予算案の中に盛られている目ぼしい項目と照合するかのように、「入試制度の改善、すぐれた教育者の確保、教育施設の整備等については、国公私立を問わず、責任を遂行する」と述べています。しかし、現状は全く画一的な入試地獄が毎年のように繰り返され、教育費の父兄負担は、これまた逐年ふえる一方です。初めての大学共通学力一次試験も、結局は第二次試験における足切りや学力試験の重視など、受験生にとっては二重三重の不安と負担に追い込まれるだけとなっています。
 まず、総理に、あなたの構想に照らして、このような現状をどう理解され、どう対処されようとするのか。
 第二に、幼児教育の観点から、幼稚園と保育所の一元化を推進し、私立への公費助成を拡充して、父兄負担を軽減するとともに、希望者全入の道を開くべきだと思いますが、どうですか。
 第三に、小学校の学級定員を四十名に削減する点について、政府の年次計画はどうですか。
 第四に、国立大学に当面夜間学部を設置し、将来においては昼夜開講制を導入すべきだとする意見がありますが、どうですか。また、勤労学生の所得税控除の対象範囲の拡大と額の引き上げが要望されていますが、どうですか。
 第五に、総理も国際児童年に触れていますが、お祭り騒ぎや行事だけに終わらせることなく、権利宣言や児童憲章にのっとった、たとえば教育相談室、家庭教育相談室などを制度化して、子供の明るい未来へのスタートの年とすべきだと考えますが、どうですか。
 最後に、私は総理に訴えたいことは、戦禍の地硫黄島は、戦後三十三年、復帰後十年の歳月を経た今日でも、旧島民の生まれ故郷に帰りたいという素朴な願いはかなえられず、また小笠原復興計画の対象からも除外されています。政府は、不発弾の処理がまだ終わっていない、しかも火山活動による地盤隆起があって安全性が確認できないとしていますが、この理由は説得力がなく、納得ができません。この際、政府は、旧島民の心情に思いをいたし、早急に復興計画を策定し、帰島の早期実現を図るべきであり、そのために、各省庁、旧島民、学者を含めた総合調査団を硫黄島に派遣すべきだと考えますが、総理の所見を伺って、私の質問を終わらせていただきます。
 長い時間、ありがとうございました。(拍手)
   〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
○国務大臣(大平正芳君) 最初に、私の政治は逃げの政治ではないかという御批判がございました。私は、行政の国民生活に対する過剰介入は国民の活力の活発な展開を阻むおそれがあり、国民の負担を伴うおそれがありまするので、これは避けなけりゃならぬと考えております。これは逃げの政治でなくて、国民を思うゆえの政治であると御理解をいただきたいと思います。
 また、公正のないところに信頼はなく、信頼がないところに合意は生まれてこないという御提言でございます。全く同感でございます。御趣旨を体して施政に当たるつもりでございます。
 それから、政治は甘い幻想をまき散らすことは慎まなければならない、国民に対しても余り大きな期待を持っていただかないようにということについて、これは弱者を切り捨てて増税、物価の値上げ等を行う免罪符にしようとするものではないかという大変厳しい御批判でございます。私の趣旨とするところは、行政、政治が当然やらなければならない役割りを果たさなければならぬと考えておるわけでございまして、社会的公正を確保いたしまして、構造改革の推進をするというようなことまでわれわれは忌避しようとするわけではないのでございまして、有言実行の趣旨を実行に移し、そして、たてまえと本音との乖離が生じないようにすることが政治の要諦ではないかと心得ておるからでございまして、さように御理解を賜れば幸せでございます。
 それから、その次には、外国飛行機の輸入をめぐる疑惑の解明につきまして国会が国政調査権の発動をされる場合に対しましては、いままでも申し上げましたとおり、政府としてできる限り協力することは当然の任務と心得ております。また、各党の間に申し合わせができました場合、自由民主党としてもこれを尊重してまいるつもりでございます。
 それから、SECの資料など全資料の入手と国会提出について申し述べろということでございます。すでに公開資料につきましては入手してございまするけれども、非公開の資料につきましては、入手の手順をいま踏んでおるところでございます。この資料の国会提出でございますけれども、入手につきましての条件がついておりますので、これを国会に提出するということはできないと思います。その他の資料につきましては、国会からの御要求があれば、法令の許す範囲におきまして最大限の御協力を申し上げるつもりです。
 それから、E2Cの予算を削減しろということでございますが、これはたびたび申し上げておるとおり、疑惑は疑惑として一方において解明しながら、この機種選定は慎重にやってまいったつもりでございまするし、その過程に私どもは疑惑を持っていないものでございますので、この予算の件につきましては、このままお認めをいただきたいものと考えております。
 それから、P3C、F15につきましても、疑惑を残したまま採用が決定しておるじゃないか、同様に措置すべきじゃないかということでございます。この両機種につきましても、純粋に防衛上の見地から専門家が分析、討議、検討いたしました結果、導入すべきものと判断いたしまして、五十三年度予算を通じまして国会においてお認めをいただいておるところでございます。
 それから、この種の事件の再発防止など不正の摘発ができる法的な整備と制度の導入を検討すべきではないかという御提言でございます。行政の腐敗防止につきましては、ロッキード事件を契機にいたしまして、当時、各界有識者の意見を徴するなどいたしまして、法改正や制度の検討等を内容とするロッキード事件再発防止策というものを閣議で決めておりまして、このラインに沿いましていま鋭意努力をいたしておるところでございます。一部は実現し、一部は検討中でございますことは御案内のとおりでございまして、ただいまこれと別個に再発防止法というようなものを構想いたしておりません。
 それから、その次に、経済運営についてのお尋ねがございますが、まず第一に、六・三%程度の実質成長は可能か、そして景気回復に不安はないかという御質問でございました。最近、内需は着実にふえておりまするし、生産、出荷も順調でございます。また、在庫整理もおかげでだんだん進んでまいっておりまして、民間の設備投資にも動意が見られてまいりまして、景気の先行きにはやや明るさが見えてまいりましたことでございます。したがいまして、私ども、この基調を定着させるように努力をしてまいりませば、景気の順調な回復は可能であろうと考えておりまして、六・三%の成長というものは、そういう努力の過程においてわれわれは実現できるものと思っております。もっとも、問題は経済のことでございますし、自由経済の体制のもとでございまするから、国の内外に大きな条件の変化がございます場合は別といたしまして、われわれといたしましては、そういう大きな条件変化がない限りにおきましては、この達成は可能であろうと思いますし、これを支えるもろもろの施策の推進によりまして、景気の回復は可能であると考えております。
 それから、この経済成長率は政府の公約なのか、努力目標なのかということでございます。政府は、内需の拡大を通じまして、国内には雇用の機会を拡大し、それから外に向かいましては経済の対外均衡を図ってまいるということは、われわれの公約と御承知願いたいと思うんでございまして、そういう努力を重ねました結果もたらされるものがいわゆる成長率であろうと理解いたしておるものでございます。
 それから、財政再建につきましての御所見がございました。財政再建に取りかかるのは、いまこのように経済が疲労いたしておるときは適切でない、二年ほど早いんじゃないかというお考えでございます。そういう有力な御意見が、二宮さんばかりでなく、学界、評論界等にもあることは私も承知いたしております。けれども、私どもといたしましては、このような財政状況を二年も手をこまねいて待っておるわけにはまいりません。財政を通じまして財政インフレの要因を生みかねない事態を放置するわけにはまいりませんので、私どもは、ことしから財政再建の前提条件をつくり上げにゃならぬという意味で予算の編成に取りかかったわけでございますし、明五十五年度は本格的な財政再建の年にしていただかなければならぬということで、ことし一年、財政再建をテーマにいたしまして、国会内外の論議を深めていただきたいというように念願いたしておるところでございます。
 それから、六%成長というようなことで、一体国際摩擦が激化する危険はないか、また、アメリカに派遣する予定の安川移動大使の派米のめどはどうかという御質問でございました。国際摩擦でございますが、わが国のこれまでの経済拡大を通じまして、対外均衡の方向に経済を持っていって国際責任を果たそうという誠意は、私は、各国はそれぞれ理解していただいておると思うのでございます。この理解がまだ十分でないところにつきましては、できるだけ手を尽くしまして御理解を求めなければならぬと考えておりまして、御指摘のように、近く安川大使を派遣することにいたしておりまして、具体的時期をいまアメリカ側と最終的に詰めておるところでございます。近日中に決定する予定でございます。
 それから、私が東京サミットで為替安定圏構想を提唱するというように伝えられておるがという御指摘でございますが、私は、まだそういう具体的な構想を提唱するつもりはございません。申し上げておりますことは、国際通貨につきましては、より安定した状態をつくるための条件というものを各国協力して考えなければならないのじゃないか、それに対しまして日本も日本として応分の貢献をしなければならぬとは考えておりますけれども、まだ考え方が為替安定圏構想というものにまで具体化いたしていないわけでございます。御指摘のように、アメリカにおきましては現在のフロート制でよろしいではないかという意向が強いことは承知いたしておるわけでございます。しかし、問題は、アメリカばかりでなく、世界全体の通貨当局との間に緊密な協力体制がとれるかとれないかということが問題なのでございまして、そういう協力体制をどうつくり上げるかという点に力点を置いて、これからの通貨外交を進めなければならぬと考えております。
 それから、次は経済協力についてのお尋ねがございました。開発援助額の国民総生産に対する割合、まだきわめて低位にあるじゃないかということでございます。これは、国際目標は〇・七%であることは御指摘のとおりでございまして、わが国がようやく〇・三一%までまいりましたけれども、この点につきましては、御指摘のように、これを高める努力を精力的に続けてまいるつもりでございます。
 アンタイドローンにつきましては、わが国は西独に続きまして米国に先んじてこれを一般にアンタイ化するという方向で踏み切っておりまして、この点につきましては国際的にも高く評価されておるわけでございます。
 それから、二宮さんの言われる条件の問題でございますが、無償資金協力の拡充の問題、それから金利、返済期間の延長等につきましては、極力努めてまいるつもりでございます。
 それからその次に、開発途上国の公的債務残高にどう対処するかということでございます。この点につきましては、わが国はUNCTADの理事会の場を中心にいたしまして、関係諸国と協力いたしまして南北問題の一環として合理的な解決に協力してまいるつもりでございますが、昨年三月には、国連貿易開発理事会におきまして、貧困開発途上国の公的債務の救済措置に関する決議案が採択されましたことは御案内のとおりでございます。わが国は右決議に沿った債務救済措置を速やかに実施するために、五十三年度補正予算から所要の経費を計上いたしまして、これに備えておるわけでございます。
 それから、無償援助の拡充の問題でございますが、五十四年度の予算につきましては、二カ国間の無償援助九百三十七億円、対前年度比六一・八%を増加計上いたしております。その中には、二宮さんの御指摘のように、不況業種の製品の買い上げも、開発途上国からの要請がございますならば供与し得るかと考えております。国内米の無償援助でございますけれども、これは、わが国の米価の形成構造から御推察がいただけますように、大変財政負担が大きくなるわけでございまするし、一方、ビルマ、タイ等の米の輸出国との競合も考えまして、この点については慎重を要するのではないかと考えております。
 それから、開発途上国が要望しておる一次産品の共通基金制度の実現をどう見通しておるかということでございます。御案内のように、わが国は、昨年十一月の交渉会議におきまして南北問の妥協成立を目指しまして積極的に努力をいたしまして、開発途上国にもそれ相当の評価を受けておると思っております。本件は多国間交渉で交渉されている問題でございますので、現段階でその帰趨を申し上げることは困難であろうと思いますけれども、わが国としては、三月に予定されておる次回交渉会議におきまして、南北双方にとって満足のいくような形での共通基金の早期設立を目指しまして最善の努力を払うつもりでございます。
 それから、公共事業の波及効果につきまして、これは過大視しておるのではないかという御指摘でございました。先ほども成長率に関連してのお答えの中で申し述べましたように、内需はきわめていま堅調に推移いたしております。生産も出荷も順調に伸びておるわけでございまして、これは、昨年の予算、補正予算等を通じまして公共事業が大幅に拡大された際、それを早期に実行に移した結果が出てきたものと思うのでございまして、公共事業の景気回復への波及効果というものはそれ相当に評価しなければならぬものと考えております。
 しかし、公共事業費の中で、これは生活環境、スポーツ、文化、住宅、病院、そういった方への配分に重点を置くべきでないかという御指摘でございました。事実、そういうことは国会におきましても前々から御議論があるところでございまして、政府におきましても、それを体しまして、公共事業配分の重点を漸次生活環境の改善、文教、福祉施設、体育施設、文化施設等に振り向けておりますこと、これは予算の配分の実態を御検討いただければ御理解いただけるかと思います。
 次には、物価政策につきましてのお尋ねでございます。物価上昇率を四・九%と見込んでおるようだが、これは確約できるかということでございます。もちろん、いま為替相場が安定いたしておりますようで、これまでのように円高の影響を大きく期待することが無理になってきております。原油の値上がりが予告されております。御指摘のように、公共料金の若干の改定も予定いたしておるわけでございますから、私ども、物価の安定基調を維持してまいるということにつきましては決して容易ならぬ事業であろうと考えておりまするけれども、物価や通貨供給量の動向を十分注意しながら、生活必需物資の安定供給を確保しながら諸施策を慎重に進めてまいれば、この目標は達成できない目標ではないと考えております。
 それから、円高差益の還元実態を報告せよということでございます。最近の物価動向を見ますと、卸売物価、小売物価とも近年になく落ちついておりますけれども、これには、仰せのように、円高差益が大きく影響いたしておることは申すまでもないのでございます。民間取扱物資につきましては、まず、主要の消費財等を中心とする輸入品価格動向調べというものがございます。これによりますと、輸入価格や、それから小売価格も円高のために漸次下がっておる傾向が出ております。例を挙げて申しますと、洋酒でございますとか、万年筆でございますとか、あるいはカラーフィルムというようなものも顕著にその値下げの実績が報告されております。それから石油製品、飼料等にも影響が出ております。たとえば灯油でございますが、灯油は前年同月比八・二%の低下でございます。ガソリンは一五・二%の引き下げになっております。電気・ガス料金につきましては、それぞれ一世帯当たり二百七十円、二百九十円の円高差益を還元いたしましたことは御承知のとおりであります。
 それから、公共料金の値上げを厳しく抑制して、国民福祉料金体系、公明党の主張されておる国民福祉料金体系を取り入れるつもりはないかということでございます。わが党とわが党の政府といたしましては、公共料金は、基本的には経営合理化を徹底いたしまして事業の健全な運営が確保されるような料金水準をまず考えなければならぬと考えておりまして、どうしてもこれを引き上げなければいかぬという場合におきまして、いわゆる受益者負担というものを原則に考えておるわけでございまして、せっかくの御提言でございますが、まだ国民福祉料金体系に同調する気持ちはございません。
 それから、税制改革に関連いたしまして、一般消費税の導入はやめるべきである、その前提といたしまして不公平税制の是正等についてなすべきことをやらなけりゃならぬじゃないかということでございます。私は、かねがね申し上げておりますように、こういう大きな歳入政策をお願いしようとすれば、不公平税制の是正ばかりでなく、歳出の洗い直しも徹底的にやりまして、国民の理解を求めなければならぬと存じておりまして、五十四年度の予算編成に当たりましても、そういう趣旨で、歳出の圧縮、それから節減、合理化、補助金の整理統合等いろいろいたしたわけでございまするし、また、不公平税制の是正でも主なるアイテムにつきまして、社会保険診療報酬の課税特例、それから有価証券譲渡益の課税強化、価格変動準備金の段階的な整理等、主なる項目についてはかなりの改善をいたしたつもりでございます。これにはまだ徹底しないという御批判はございますけれども、政府としては精いっぱいやったつもりでございますので、それなりの評価は賜りたいと考えております。
 それから次には雇用対策でございます。
 年齢差別禁止法の制定、六十五歳を目標にするが、当面は六十歳でよろしいけれども、そういう法を制定するつもりはないかということでございます。今後の高齢化社会の到来を考慮いたしますと、高年齢者の雇用の場の確保を図ることは大事でございまして、その意味で定年延長を図ることは必要であると考えておりまして、当面六十歳定年制が一般化することを目途に指導に努めておるところでございまして、われわれは、立法手段によらないで、労使の慣行を尊重しながら適切な行政指導を行ってまいりたいと考えております。
 それから、社会福祉、福祉関連サービス部門の雇用機会を増すために雇用開発給付金を支給するように措置せよと。これは、こういう限られた部門ばかりでなく、一般的に、五十四年度予算におきまして、雇用開発事業を創設して、中高年齢者雇用開発給付金制度の大幅な改善を図ったところでございまして、この制度を活用いたしまして御趣旨に沿いたいと考えております。
 職業訓練所の増設、施設の整備でございますが、仰せごもっともでございまして、その拡充整備に努めてまいるつもりでございます。
 寡婦雇用促進法を制定せよということでございますが、寡婦につきましては、保育等の家庭生活上負担があること、技能が十分でないこと等が雇用の障害になっておるなどからいたしまして、雇用の義務づけによって問題が解決できるとは考えられませんので、職業訓練、職業相談、職業指導等を徹底いたしまして御趣旨に沿うようにいたしたいと考えます。
 それから、各種資格、職種の監督官庁がばらばらで統一がとれていない、労働情報を一元的に掌握していないということについての御指摘でございまして、ごもっともでございまして、資格試験の内容その他いろいろ重複する部門もございまして、そういう点につきましては、各官庁間で調整を図ってまいりたいと思います。労働省の労働情報の掌握につきましては、今後ますますこれを強化しなければならぬと考えております。
 日本型福祉社会には具体的な最低基準保障がないじゃないかということでございますが、私は、わが国の社会保障はすでに制度的には欧米に遜色のない水準になっていっておると思うのでございます。なおこれをさらに引き上げていく、あるいは高年齢社会に合わしていくということにつきましては、もろもろの問題があるわけでございまして、これをどのようにやってまいるかということは、日本型の事情、精神、相互扶助の仕組み等に依存することはもとよりでございますけれども、できるだけ公的な負担をふやしてまいるように財政の許す限り努力してまいることが必要であると考えております。
 それから田園都市構想でございますが、これは、たびたび申し上げているように、新たな政策の提唱ではなくて、既存の政策をこの趣旨に合わすように考えていただく政策理念でございまして、したがって、いわゆる三全総の定住圏構想はいわばそのサブシステムみたいなものと御承知をいただきたいと思いますが、どのような田園都市構想を考えるかということでございまして、各方面の知謀をかりまして鋭意検討いたしまして、何とか政府部内に統一した実行可能なすぐれた構想を出したいものと、いませっかく検討、努力をいたしておるところでございます。
 それから地方自治体の問題につきましての御質問がございました。現在国と地方との間柄がこういう姿であっていいと思わないのでございまして、これを根本的に見直さなければならぬ時期が来ておることは二宮さんも御主張されるとおりであろうと考えておりますが、いま問題が大変流動的な段階でございますので、本格的な制度改革にまで移ることはできないのでございますけれども、今後国と地方との間の適切な機能分担を踏まえながら、両者の間の合理的な事務の配分、財源の配分等につきまして本格的な検討を加えていかなければならぬと考えております。したがって、交付税交付率をいまの段階で直ちに三二%から四〇%に持っていくというようなことはいま考えておりません。
 それから、地方税の各種非課税措置を洗い直して、大企業の法人事業税の外形標準課税方式を導入したらどうだという御指摘でございます。地方税の非課税措置等につきましては、来年度の税制改正に当たりましても見直していこうとしておるわけでございます。また、外形標準課税導入の問題でございますが、税制調査会の答申によりますと、地方消費税の新設等でこの問題は解決しようという意向も示されておるわけでございまして、今後の検討に待ちたいと思います。
 地方債につきましては、その許可制をやめて、地方公共団体の責任でやらすべきではないかということでございますが、民間部門と公共部門の資金需要の調整、地方公共団体相互間の資金配分を公正にしてまいること、それから他の財源措置の関連等もあって、地方債の発行額をどのように考えるかということもありまして、いまにわかにこの許可制をおろすというわけにはいけないことを御理解いただきたいと思います。
 沖繩県における雇用創出についてのお尋ねでございました。沖繩の場合は、最近やや低下の傾向を見ておるものの、五%台の失業率を記録いたしておるわけでございまして、全国平均の二倍半になっておるということは注目しなければならぬ事態であろうと思うのであります。このためには、まず基本的には、沖繩の産業を振興いたしまして、県内に雇用の機会をできるだけ確保するということに努めなければならぬと考えておりますが、同時に、広域的な職業紹介等によりまして県外就職の促進も図らなければならぬと考えております。
 それから、沖繩における軍用地の転用、それからその跡地の利用促進でございますが、そのために特別措置法を制定してはどうかということでございます。われわれといたしましては、基地の整理縮小にいま努めておりますし、この軍用地の跡地の利用促進にも十分配慮をいたしておるつもりでございますが、御指摘の立法の要請については慎重に検討さしていただきます。
 それから、名護市におきまして、米軍の機関銃実弾乱射事件がありまして、改善策が明示されていないじゃないかということでございますが、本件の事故につきましては政府も重大視しておるところでございまして、米側に対しまして遺憾の意を表しますとともに、原因の究明、再発防止について厳重に申し入れてありました。これに対しまして、米側は陳謝いたしますとともに、本件は発射角度の誤りによるものであり、今後は射場安全担当将校による監督を厳重にすること及び機関銃には所定の角度以上の発射角となることを防止する器材を取りつけること、それまでは本演習場においては同種の射撃は中止することを約束いたしました。政府としては、これらの措置が十分にとられ、万全のものとなることを求めていく所存でございます。
 それから、農業政策につきましては農林大臣からお答えをさしていただきたいと思いますが、私が食糧経済をもっと正常な姿に返す努力も相当差し迫った課題になっておるというようなことを総裁選挙の当時申し上げたことは事実でございます。これは食糧管理制度についてのみ言及したものではなくて、これも含めて、食糧全体につきまして国民に安定した価格で供給できるような体制をつくることが焦眉の問題ではないかという問題意識を申し上げたわけでございます。
 それから次には、教育についての御質問でございます。画一的な試験地獄、教育費の父兄負担の増高、大学共通学力一次試験などの現状をどう理解し、どう対処するかということでございます。大学入試の過熱等の現状につきましては、二宮さんと憂いを共通にいたしております。大学入試の改善につきましては、その第一歩である共通第一次学力試験におきまして、各界の理解を求めてこれをよりよいものに育てる努力を積み重ねてまいるつもりでございます。あわせて、学歴偏重の社会的風潮の是正、国公私立の各大学の充実など、あらゆる努力を続けてまいりたいと思います。また、教育費の負担の問題につきましては、育英奨学資金の拡充、私学に対する助成の充実等の施策を講じてまいるつもりでございます。
 それから、幼稚園、保育所の一元化を推進いたしまして、希望者の全入の道を開けという趣旨の御質問でございました。両施設の充実につきましては今後も努力するつもりでございます。私立幼稚園の父兄負担につきましては、五十四年度も就園奨励費補助、経常費助成費補助の充実によりましてその軽減に資することといたしております。さらに、従来から幼稚園施設費補助の充実などによりまして幼稚園の整備に努めておりまするけれども、入園を希望する四歳児及び五歳児が就園できるよう今後も努力してまいるつもりでございます。
 それから、小学校の学級定員四十名削減に対する年次計画についてのお尋ねでございます。いま、文部省におきまして、昭和五十三年五月一日現在における教職員の配置状況、過疎過密の学校の実態等について調査を行っておるところでございます。現在、その調査結果の集計作業が進められておるようでございます。この調査結果を踏まえまして慎重に検討さしていただくことにいたします。
 それから、国立大学に夜間部を設置してはどうか、また、勤労学生の所得税控除の対象範囲の拡大、その額の引き上げを希望される趣旨の御質問がございました。大学、短期大学の夜間部は、勤労青年に対しまして高等教育を受ける機会を提供するという意味で重要なものと承知いたしております。これまで同様、国立大学の夜間部につきましてもその充実を図ってまいりたいと考えております。また、働きながら勉強に励んでおりまする勤労学生に対しまして、その修学に伴う経済上の負担を軽減するために勤労学生控除が行われているところであり、五十四年度におきましては、所得税における控除額等については据え置きとしておりますけれども、住民税の面におきましてはその控除額の引き上げを行ったところでございます。
 国際児童年に対する対応策についてのお尋ねでございます。政府といたしましても、かねがね申し上げておるとおり、これが単なるお祭り騒ぎに終わることのないよう、児童の問題を国民全体で考える年とすべく、あらゆる努力を傾けるつもりでおります。
 それから最後に、硫黄島の問題についてのお尋ねでございます。硫黄島の旧島民の方々が帰島したいというお気持ちは十分お察しできるところでございますが、御案内のように、火山活動による地盤隆起など、安全性がまだ憂慮される段階でございますので、帰島につきましては慎重に対処しなければならぬと考えております。それとの関連で、総合調査団を派遣してはどうかという御意見でございますが、あわせて検討さしていただきます。(拍手)
   〔国務大臣金子一平君登壇、拍手〕
○国務大臣(金子一平君) 二宮さんにお答えいたします。
 まず、中期の財政計画をいつごろまでに提示できるかというお尋ねでございますが、昨年の九月から財政制度審議会で中期財政計画の御審議を願っておるのでございますけれども、関連する問題が広範にわたっておるものですから、いつまでに提示できるかという見通しはまだ立っておりません。ただ、財政収支試算、これは昨年提出いたしましたものでございますが、最近の新経済社会七カ年計画に基づいた財政収支試算は近日中に御提出申し上げまして、審議の参考にしていただきたいと考えております。
 それから、ガソリン税の引き上げを再考しろというお話でございまするけれども、現在の第八次道路整備五カ年計画に必要な財源を確保しなきゃならぬという点から、どうしても引き上げないと財源に不足を生ずるというふうな問題もございまするので、この点はどうか御了承賜りたいと思うのでございます。
 次に、新幹線整備五線の財源対策で公共輸送の整備税を検討したと言うが、経過を説明しろというふうなことでございまするけれども、これは、自家用車に対して課税する案が取り上げられておりましたけれども、受益者、また原因者負担として説明できるのかどうか、あるいは現在の自動車関係諸税との関係をどう考えるかというふうな点につきましていろいろ問題がございましたので、さらに検討を進めることにいたしております。
 次に、物価調整減税を実施し、教育費や住宅費の軽減を図るための減税措置を考えろということでございまするが、御承知のとおり、日本の所得税水準は課税最低限も世界各国に比べて一番高い水準にございますし、特に最近のような厳しい財政状況のもとにおきましては、所得税負担を軽減しなければならないような状況にもないと考えられておりますものですから、どうかこの点はひとつ、むずかしいというふうに御理解いただきたいと思うのでございます。教育費や住宅費のような特定の家計支出を取り出して一々税制上しんしゃくをするという問題につきましても、これはおのずから限度があると考えます。
 次に、利子配当所得の総合課税を進めて、無記名預金を廃止しろという御意見でございます。目下税制調査会におきまして、五十五年度の税制改正のときまでに結論を出していただくべく、努力をしておる最中でございます。ただ、無記名預金の制度を存続するかどうかの問題は、これはもう二十年も続いている制度で、なかなか厄介な問題なんですが、今後の課題として、広い観点から、角度から慎重に検討をしてまいりたいと考えております。
 それから、有価証券譲渡益に対する原則非課税の制度はやめろという御議論であります。有価証券の譲渡益につきましては、段階的に課税の強化を図っていくことが妥当であると考えまして、本年度の改正におきましても、その考え方に沿って課税を強化しておる状況でございます。
 それから、有価証券取引税を二倍にしろという御意見でございますが、これは、五十三年度に五割引き上げたばかりでございます。しばらく据え置きにした方が妥当ではなかろうかと考えておる次第でございます。
 次に、各種準備金、特別償却、税額控除の全項目について租税特別措置を見直せという仰せでございますが、こういったものにつきましては、個別項目ごとに洗い直しを行いました上、価格変動準備金の段階的整理を初め、三十項目にわたる整理合理化を今度の税制改正で行うことにしておるのでございまして、五十一年以来の四年間にわたりまして、企業課税関係の整理合理化は大半の項目について何らかの縮減が行われております。こういった税負担の公平に取り組んでまいりました政府の姿勢については、十分ひとつ評価していただきたいと思うのでございます。
 それから、国債の種類の多様化を図って市中消化を円滑に進めよという御意見、仰せ全くごもっともでございまして、こういった点から、公募入札を行ったり、国債の種類の多様化を図っておる次第でございます。
 それから、国債の金利自由化のため公開入札発行の徹底を図れという御意見でございますが、二年、三年、四年ものと中期の国債の範囲を広げて公募入札をやっておること、御承知のとおりでございます。
 それから次に、金融機関等に対する国債の保有、処分に関する取引制限を撤廃しろという御意見でございますが、現在、金融機関は、そのポジションや債券、資産の構成を勘案して、自主的に国債の市中売却を行っておるのでございまして、最近は売却額も相当ふえております。しかし、わが政府側としましては極力安定保有を期待しておるということでございます。
 それから、公社債市場の健全育成化を極力推進しろという仰せでございますが、流通市場の問題等の整備につきましては、今日いろいろな面で努力をしておることを申し上げておきたいと思います。
 最後に、公開市場操作の適正化を図り、インフレにつながらないように対処をしろということでございますが、日銀は国債、政保債を対象として買いオペを実施しておりますけれども、これは、経済成長に伴って必要な通貨の供給を目的として、そのときどきの金融情勢に応じて金融市場全体を調整していくという観点から行われておるものでございまして、このような観点を離れて、インフレにつながるような買いオペの拡大を図ることはないと考えております。
 それから、もう一つ申し上げておきますが、年金の非課税でございますけれども、さしあたり老年者の年金特別控除額を百十万円に引き上げよという仰せでございますが、現在六十五歳以上で所得額が一千万円以下の場合、年額七十八万円の老年者特別控除が設けられておりますけれども、これは特別控除額だけで見ますと七十八万円でございまするけれども、給与所得控除や基礎控除等を入れますると、二百十九万四千円になっておるんです。それから、配偶者が老人配偶者の場合は、二百二十九万六千円まで課税控除ができるということになっておりますので、この点もあわせて御了承を賜るようにお願いを申し上げます。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣渡海元三郎君登壇、拍手〕
○国務大臣(渡海元三郎君) お答えいたします。
 建設業における下請代金の支払いの適正化についてでありますが、かねてから通達等により元請業者を指導してまいっておりますが、特に昨印十一月には、元請・下請関係合理化指導要綱を策定し、建設業界に対して趣旨の徹底を図っているところであり、下請代金の額、支払いの時期及び方法等の内容を明示する建設工事標準下請契約約款の普及を強力に推進しております。これらの指導にもかかわらず、下請業者に不当なしわ寄せが及ぶ悪質な事例については、指名停止等の措置も辞さない所存でございます。
 保証事業会社の運営については、昨年十二月に約一三%の保証料率の引き下げを行ったところであります。また、保証事業会社の利益の還元策について、さらにその拡大を図るため、現在鋭意検討を進めているところであります。
 住宅金融公庫の住宅融資について、土地とともに住宅を求める方に対しては、昭和五十三年度においても重点的に融資限度の引き上げを図ったところでありますが、昭和五十四年度におきましても、土地融資づきの個人住宅建設について八百五十万円から九百五十万円に、また、分譲住宅の購入については七百五十万円から九百五十万円に貸付限度額の引き上げを図ることといたしております。すでにこの措置につきましては、去る二十九日から募集を開始しております第三回本年度の募集分につきましても適用をいたしております。
 中古住宅への住みかえを促進することでありますが、住宅金融公庫においても、昭和五十一年に貸付制度を創設し、逐年制度改正を図っているところであり、昭和五十四年度においては、貸付戸数及び貸付対象地域の拡大を図るとともに、貸付限度額の引き上げも図ることといたしております。また、税制面においても、登録免許税につきまして、既存住宅に係る特例を設けることといたしております。
 ひとり暮らしのお年寄り、婦人などの単身世帯に対して公営住宅を開放することでございますが、建設省といたしましては、地方公共団体、学識経験者等の協力を得て、単身者の居住の実情、希望、ひとり暮らしのための条件等について調査を行ってきたところであるが、これらの調査の結果を踏まえ、供給対象住宅、入居対象者、住宅の管理体制、入居継続の条件等について関係行政機関、地方公共団体とも協議し、前向きに検討を進めてまいりたいと考えております。
 住宅建設事業及び宅地開発事業に関連する義務教育施設等の公益施設について、通常の国庫補助事業によって行っておりますが、立てかえ施行制度その他の現行諸制度の活用により整備の促進を図ってまいりたいところでございます。したがって、これらの公益施設を住宅宅地関連公共施設整備促進事業の対象とすることは困難でございますが、必要に応じ関係省庁と協議して善処してまいりたいと考えております。
 良好な市街地の形成を図りつつ良質な宅地の供給を促進するため、公的機関による宅地開発を推進するとともに、都市計画と整合のとれた民間の優良な宅地開発につきましても、住宅金融公庫、日本開発銀行による融資、関連公共公益施設の整備に対する助成、これらの措置を講じてきたところでありますが、昭和五十四年度においては、これらの措置をさらに飛躍的に拡充するとともに、良質な宅地の供給に資する土地の取得を円滑にするための土地税制の改善を図ってまいりたいと考えております。(拍手)
   〔国務大臣渡辺美智雄君登壇、拍手〕
○国務大臣(渡辺美智雄君) 時間の関係もありますから、簡潔に答弁をいたします。
 まず第一でございますが、牛肉価格の安定というふうな点から、畜産事業団のあり方がいまのままでいいんでしょうかと、こういう御疑問だと思います。確かに消費者の一部あるいは評論家の中から御批判があることは承知をいたしております。せっかく安い牛肉が入ってきて何で差益金を取って高くして売るんだと、わかりやすく言えばそういうような御質問であります。これにつきましては、しかし、これは生産者と消費者とのまあ妥協の産物みたいなものではないかと。つまり、われわれは外国の輸入牛肉を安く出したいと、私もそう思っているんです。ところが、国内の価格が非常に高い。高いために結局差益金を取らなきゃならぬということで、やっぱりその差益金というものを取らざるを得ない。その点が批判を受けていると。しかしながら、一方、仮に暴騰した場合は輸入牛肉をたくさん放出する、それから暴落した場合にはやはり暴落しないように国内の買い支えをやると、こう両方やっておるものですから、なかなか割り切れないというようなことでございまして、まあ事業団のあり方等についてさらに合理化を進めるような点がありますならば、いろいろと御教示を受けまして、今後も事業団のあり方についての検討は進めてまいりたいと、かように考えております。
 それから輸入牛肉指定店の問題でございますが、指定店の問題につきましては、これは拡大をして、もっともっと数をふやせと、こういうふうな御意見かと存じますが、現在二千三百店ほどございます。したがって、それの適正に運営されているかどうかということをさらに検討いたしまして、十分御趣旨のように運営をしてまいりたいと、かように考えております。
 それから、総理の施政方針演説と政策要綱に書いてあるところの問題、いろんなことがございましたが、これにつきましては、まあ政策要綱を私は実は読んだことはないのです、これは。施政方針演説は一緒につくったわけですから……。しかし、政策要綱と施政方針演説は、よく見てみると物の考え方、大綱においては同じでございます。大体同じことが書いてあります。(発言する者多し)それは、前に読んだことはないけれども、いま読ましてもらったんです。ところが、大体これは同じでございます。したがいまして、その中にある再編成の問題も、それから二種兼業農家や専業農家の扱いの問題につきましては、私は、これは総理大臣がかねて言っているようなことであって、少しも変わったものはないと、かように考えておるわけでございます。
 それから米の生産調整の問題につきましても、これはなるべく画一的にならないように関係者の御協力を得て進めておるところでございます。
 それから、ミカンの過剰基調問題等について大変皆さんが心配をなさっておる、そういうふうなことにかんがみまして、日米交渉等の結果等もあるので、特に心配を与えてはいかぬと、こういうことでございますが、需給の均衡を図るため、果汁を学校給食に回すというようなことも新しく導入をしたり、いろんな点でこれは需要を拡大してまいりたいと、かように思う次第でございます。また、伐採とか抜根とかの経費の助成や、転換農家への利子補給、不測の事態に対する基金の造成、こういうようなこともやって、極力心配のないようにしていくつもりでございます。
 それから、東京ラウンド等によって今後牛肉その他の生産農家が非常に心配にならぬかと、その方で十分な措置を講じなさいという御趣旨だと存じますが、ごもっともでございまして、われわれも、飼料基盤の整備、経営の合理化、価格の安定、各般にわたって推進をしてまいる所存でございます。
 最後に、赤潮被害によるハマチ養殖業の問題で、非常な打撃を受ける、こういうふうなことにつきまして予防、発生防止、こういうようなことをやって、ともかく経営の安定を図っていかなければならぬ、それから救済措置も講ずべきだ、全くそれもそのとおりでございます。したがいまして、水質などの浄化、こういうようなものも各省にわたる問題でございますが、一緒になっていろいろ研究をして、発生しないような予防措置をどうしてやっていくか、特に南西海区水産研究所というのが広島にありますが、その中に新たに赤潮研究部、こういうようなものを設けて本格的に基礎的な調査検討、そういうものと取り組んでまいりたい、で、情報を交換したり、いろいろなことをやっていきたい。なお、生けすの移動、赤潮が突然発生して生けすを移動するとか、それを沈めるとか、そういうふうな技術的な研究もあわせてやってまいりたいと思っておる次第でございます。
 以上、簡単でございますが、答弁とさしていただきます。(拍手)
   〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕
○国務大臣(橋本龍太郎君) 二宮先生にお答えを申し上げます。
 先生御指摘のとおりに、確かに現在年金制度が老後の社会保障としてきわめて大きな国民の期待を受けておることは間違いございません。そうした中で、従来から私どもこの年金制度の改正を逐次実施をしてまいりました。いま私どもは、厚生年金の標準的な老齢年金の姿、これは平均標準報酬のおおむね六割というものを目途にいたしております。そこで、来年度におきましては、厚生年金等拠出制年金の老齢年金等につきまして、本年度の消費者物価上昇率が五%を超えておりませんけれども、特例をもってその上昇率に応じた年金額の改定を行った次第でありまして、その結果、厚生年金の標準的な老齢年金の額は月額十万八千円に達しております。なお、遺族年金につきましても、寡婦加算の引き上げ等あわせて実施をいたすことといたしております。また、老齢福祉年金の改善につきまして、従来から重点的に配慮してきたところでございます。来年度におきましても、物価上昇率を超えて九・一%の引き上げをいたしました。
 そこで、先生御指摘のように、老齢福祉年金を御提案の二万円という線まで引き上げるということになりますと、一つは、そのための財源をどう確保するか、同時に、実は、保険料を掛けておられる方々が受けられる拠出制の国民年金の経過年金を上回ってしまうという問題がございまして、その辺のバランスをどう考えるかという問題がございます。こうした点をも踏まえまして、今後の年金制度のあり方につきましては、公明党を初め各方面からちょうだいをしております御意見等をも参酌しつつ、現在、年金制度基本構想懇談会で審議を行われておりますので、その結論を踏まえて慎重な検討をいたしたいと考えております。
 また、医療保険制度の改正につきいろいろな考え方がございますが、その一つの考え方として、被用者保険制度を一元化し、被用者保険と地域保険の二本立てとする案というものも確かに考えられるわけであります。しかし、現行被用者保険の沿革、また国民世論の動向等考えますと、なかなかこの一元化というものには実現上の問題があろうかと存じます。おととし本院に対して厚生省は医療保険制度の抜本改正の手順をお示しをしたところであります。それを踏まえて、政府としては、むしろ医療保険制度全般にわたる平等な給付と公平な負担、すなわち社会的公正を実現する方向で改革を図りたい。現在御提案をいたしております健康保険法の一部改正案もこの考え方によって策定をいたした次第であります。
 また、六十五歳以上を対象にした老人保険制度を創設すべきであるという御指摘をいただきましたが、これについては、最初に、作業のおくれておりますことをおわびを申し上げます。これは、御承知のように、老人保健医療問題懇談会の意見書をちょうだいし、それに示された考え方を基調として総合的な対策を実現すべく目下具体案の検討をいたしておりますが、本格的な高齢化社会の到来というものを迎えるに当たりまして、非常に慎重な検討を要すること、また、医療給付、予防給付、さらにその他のサービス部門をどのように組み合わせるか等、関係団体との調整を要する分野等も非常に多岐にわたっておりますために、成案を得るに至っておりません。今後関係方面ともできるだけ早く全体の調整をいたしまして、具体案を取りまとめて実施できるようにいたしたいと考えております。
 また、在宅寝たきり老人及び身障者に対する保健指導、訪問看護についてのお尋ねがございました。確かに、わが国にいま三十一万余の在宅の寝たきり老人を抱えておる状況の中で、こうした方々を在宅のままでお世話をいたす条件を整備することはきわめて大事なことでございます。こうした観点から、在宅の寝たきり老人等につきましては、御承知のように、保健婦を家庭に派遣をし、看護方法とかリハビリテーションの方法などを指導する事業につき五十三年度からようやく一部の市町村でスタートをいたしました。五十四年度におきましても、この補助はさらに拡大を図ってまいります。また、五十四年度から新たな在宅寝たきり老人に対し入浴、給食等のサービスを行うと同時に、介護する家庭の苦労の軽減を図るための事業を創設することといたしました。また、在宅の重度身体障害者の方々につきましては、五十三年度から、従来の医師、看護婦による訪問診査指導に新たに作業療法士等による訪問指導を加えて、少しでもその充実を図ってまいりたいと考えております。しかし、これで万全でないことはそのとおりでありまして、御指摘の訪問看護の制度化につきまして、地域保健医療対策などとのかかわり、あるいは人材の確保等の実施体制上の問題につきなお検討を要する部分を残しておりますので、今後これらの事業の実施結果等も踏まえ、引き続き慎重に検討させていただきたいと存じております。
 以上です。(拍手)
○議長(安井謙君) これにて午後一時十分まで休憩いたします。
   午後零時五分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時十三分開議
○議長(安井謙君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 国務大臣の演説に対する質疑を続けます。宮本顕治君。
   〔宮本顕治君登壇、拍手〕
○宮本顕治君 私は、日本共産党を代表して、総理並びに関係大臣に質問をいたします。
 まず、総理の時代認識と政治姿勢について伺います。
 総理は、施政方針演説の中で、わが国の「経済的豊かさ」なるものをたたえながら、「物質文明自体は限界に来た」としておられます。しかし、果たしてそうでしょうか。確かに、戦後、わが国の国民総生産は急激な成長を遂げ、わが国の大企業の経済力の国際的な順位は非常に高まりました。しかし、こうした経済力が労働者、農民、その他多くの勤労者の人間らしい豊かな物質的保障として活用されていないところに、今日の時代の根本的特徴があるのであります。低賃金、低福祉、失業や就職難、住宅難、中小企業の連続的な倒産記録、社会資本の著しい不足などが示すように、国民の多くにとっては、物質文明の光が大いにむしろ不足しているのであります。国民に対して、足るを知れなどというのは、とんでもないことです。ことしに入っての世論調査が、物価、社会保障、雇用不安の解消を願っているのは偶然ではありません。「文化の重視」、「人間性の回復」、もちろん結構であります。しかし、それは、憲法第二十五条、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」、この保障をたな上げしては実現できるものではありません。そのためには、すでに久しいわが国の経済危機の実態に目を向けることを避けることはできないのであります。この危機は、総理の言われるように、「近代合理主義に基づく物質文明自体」の「限界」などというものではありません。それは、正しい意味での近代合理主義に反する大企業本位の高度成長政策の破綻によって、すなわち歴代自民党政府の国民不在の経済政策によって、もたらされたものではありませんか。
 以上の点について、総理の見解を求めます。
 総理の歴史観も大事な点が欠落しており、それは今後の政治にとって危険であります。わが国の社会は、この百年間、資本主義社会として歩んでまいりましたが、近代合理主義という点では、戦前の政治は全くそれに反しておりました。主権在民の思想を犯罪祝する暗黒支配のもと、無謀な軍国主義と侵略戦争がはびこったのであります。わが国百年の歴史を、総理のように、ただ「近代化の精華」などと単純化することは、歴史を誤ることになります。歴代の自民党政府の総理は、侵略戦争については、まともな反省を避けてまいりました。大平総理は、この前の戦争の性格についてどういう基本認識を持たれているか、お伺いしたいものであります。
 総理は、すでに国民的合意が形成されているものとして三点を挙げられました。
 まず、「議会制民主主義に基づく政治の運営」を挙げられる以上、四割の得票で八割の議席を占める、そのような議会制民主主義を形骸化する小選挙区制や、機密保護法による言論の自由の抑圧など持ち出すことはないと考えてよろしいかどうか、はっきりした答弁を求めるものであります。
 第二に、「自由市場経済」の原理なるものによりまして、それを盾として大企業の特権擁護を続ける保守路線に対しては、広範な国民の反対があることは明白であります。
 第三、安全保障問題については、日米軍事同盟の賛否をめぐる二つの道の対決は根深く、久しいものであります。安保条約下の日本がその拠点となった朝鮮戦争とベトナム戦争の歴史的経験、また、世界の非同盟運動が八十六カ国、十四億の人口を擁するに至っている現実から見ても、わが国のアメリカとの安全保障方式を絶対とすることは著しい独断であり、危険であります。これら国論を二分する問題点を率直に認め、それぞれの政治的潮流が、それぞれが是とする方向への国民的合意の広がりを正々堂々と求め合うことが民主政治の基本であります。わが国の運命に関する重大問題がすでに国民的合意として決着済みであるかのような総理の立論は、真実に反し、強引に過ぎると言わざるを得ません。そのことをお認めになるかどうか、お聞きしたいと思います。
 総理、新内閣成立以来、わずか二カ月足らずでありますが、この間、あなたの政治姿勢が問われる幾つかの重大な問題が相次いで起こっております。
 第一、ロッキード事件に続く航空機疑惑の新しい表面化は、日米軍事同盟のもとでの日米政財界上層の癒着の根深さで国民に衝撃を与えております。しかし、このさなかにも、あなたは、E2C機の購入の予算計上をやめるつもりはないと言い切っております。しかし、日商岩井とグラマン社のコンサルタントの間に報酬についての密約があったことを当事者がすでに告白しているではありませんか。防衛上必要ということだけでそういう強行措置をとることで、果たして国民の合意が得られると思いますか。強行した後疑惑が明白になった場合、どういう責任をとられるおつもりでありますか。
 第二、去る十二月出獄した金大中氏は、不屈な良心的な宗教家としての信念に立ちつつ、あなたに対して原状回復を要請いたしました。ところが、あなたは、わが国の主権はあの事件で侵害されていないと昨日も答弁されたのであります。しかし、金東雲一等書記官の指紋まではっきり証拠として残っており、外国の公権力による主権侵害の事実は明白ではありませんか。あなたは、事実に基づき、かつ良心に照らして、現在の態度を再検討するつもりはありませんか。そして、金大中氏の当然の要請にこたえるべきではありませんか。しかとお尋ねしたいところであります。
 第三、昨年十二月の国連総会での「核兵器持ち込み禁止決議」の採択に当たり、わが国の代表は賛成百五カ国に対して反対十八カ国の側に回り、世界の注目を浴びました。これは、わが国の国会決議に明白な非核三原則、すなわち「つくらず、持たず、持ち込ませず」の決議への明白な違反であります。福田内閣の置きみやげである日米共同作戦の指針の核抑止力についての合意に忠実であるために反対したのでありますか。それともまた、国会決議など無視しても構わないという姿勢でありますか。総理としての責任ある答弁を求めます。
 次に、経済問題についてお尋ねします。
 施政方針演説の中には、経済危機打開の積極的方針が全く見られません。日本経済の現状を働く多くの国民の側から見れば、百二十万の完全失業者、激しい就職難、連続四十カ月間続く中小企業の一千件以上の倒産、これらを初め、さまざまの生活難に満ちております。ところが、大企業の方から見れば、減量経営の成功、減収増益、相変わらずの大企業中心の大型プロジェクトの保障など、悪くない、というわけであります。そして、あなたの分析と展望はその側から日本経済を見ていますから、国民の大きな災いである不況、失業、倒産という言葉も、あなたの施政演説の中には出てこなかったのであります。これらの実態についてのあなたの認識を、まず伺います。
 総理の施政方針は、わが国の経済的難局を正面から見据えて、その国民的打開に取り組むのではなくて、「物質文明自体の限界」などの一面的な断定で問題の重要性を回避し、一方、未来については願望的なスローガンをばらまいております。たとえば「家庭基盤の充実」、「田園都市構想」、「公正で品格ある日本型福祉社会」など、言葉としては美しく結構なことであります。しかし、それがあなたの個人的な夢にとどまるのでなく国政の公約として言われる以上、政策の裏づけと整合性がなくてはなりません。それがあなたの演説には全くないではありませんか。あるならお示し願いたいものです。
 反対に、はっきりしていることは、政府の経済審議会の「七カ年計画」によれば、一般消費税導入その他によって、国民の租税負担は、昭和五十三年度一九・六%から昭和六十年度には二六・五%、社会保険の負担率は九%から一一%となっております。物価高、不況をもたらす一般消費税については、歴史上かつてない悪税として、わが党は断じて反対であります。われわれの計算によれば、国民の税負担は、法人税を除いて昭和六十年度には現在の二倍になります。まさに低福祉・高負担の方向こそ明白ではありませんか。結局、こうして行き着くところは、家庭基盤破壊の社会になるではありませんか。そのようになっても政府は余り介入しないで、家族主義のきずなで適当に処理せよというのが、あなたの「日本型福祉社会」の真の意味でありましょうか。
 今日の不況は、根本的には、大企業本位の高度成長政策の破綻によって、生産能力に対して国民の消費を含めた国内需要が及ばないところから起こっているのであります。したがって、国民総生産の五二%を占める個人消費、国民の購買力強化と、歴史的に軽視されてきた生活密着型の公共投資を二本柱として進めることが重要であります。そして、不急不要の政府支出を思い切って減らして、不健全な財政膨張を抑えることが急務であります。こうしたやり方こそ、国民生活を守り、経済の民主的立て直しをする基本であります。このための五カ年計画につきましては、わが党は、すでに発表した「日本経済への提言」の中で詳細に十分な数量的裏づけをもって提起したところであります。
 わが国の経済力は、長年大企業の保護と育成に向けられ、それは国家予算、税制、金融のあらゆる分野で至れり尽くせりであります。今度の予算案でも、二二・五%も伸びた一般公共事業費の中には大企業向けの大型プロジェクトが多く、庶民の生活防衛という見地から見れば不急不要のものが少なくないのであります。わが国の経済再建にとって特に緊要なことは、高度成長政策時代に特にその害悪を多くしている大企業本位のゆがんだ経済構造、それを守る諸法制を国民本位にうんと民主化することです。総理は、「租税特別措置の主な懸案事項について是正に努めた」と言われておりますが、まだ諸外国に例を見ない特権的減免税措置が大企業に与えられております。政府は、たとえば大企業が主として利用している各種の名目の引当金、受取配当非課税などによる特権的減免税を検討する用意はありませんか。
 わが党が大企業に対する民主的規制を強調するのは、わが国産業に負う大企業の社会的責任が大きいものであるからです。わが党は、決して大企業をつぶせなどと言っているのではありません。その巨大な経済力が国民の総意に基づいて規制されなければ、国民本位の経済運営はできないからであります。こうした措置によってこそ、大企業に働いている人も、むしろ本当に社会性ある生きがいを感ずることができるでしょう。与党である自民党その他が、大企業を規制するどころか、逆に大企業からの献金を政治資金とする以上、いかに公正を口にしても、その実現は不可能です。
 総理は、かねて政府と国民の間に甘えの風潮があると批判しておりますが、大企業と政府・自民党の関係こそ「甘え」の構造の最たるものではありませんか。大企業本位の諸構造に大胆にメスを入れることなしに、わが国の経済の民主化は期すべくもありません。また、相次ぐ汚職、疑獄も後を絶たないでしょう。さらに、政治浄化のためには、企業からの政治献金を禁止するよう、政治資金規正法を抜本的に改正する決意があるかどうか、改めて伺いたいものであります。
 また、この際、いま問題になっている日商岩井からの政治団体と個人への献金はこの十年間どうなっているか、自治大臣の答弁を求めます。
 「田園都市構想」についてですが、都市と農村のそれぞれの長所を結合する「田園都市」の構想は、人類の願望の一つであります。すでに百三十年前に、社会主義者であるエンゲルスも、それを可能とする条件に触れております。しかし、大企業の土地買い占め、乱開発を野放しにし、地価の高騰、都市の住宅難への積極的対応もなく、食糧自給率を低下させ、農民の出かせぎを余儀なくされている今日の政治のもとでは、それは夢想にすぎません。都市に田園を残したいのなら、まず、悪名高い宅地並み課税を廃止して、都市農業の振興の具体策をとるべきではありませんか。また、豊かな農村をつくるためには、何をつくっても引き合う総合的な価格保障を断行することが急務ではありませんか。
 次に、文化、教育の問題でお尋ねします。
 最近の青少年の自殺の増加は、まことに憂うべきものがあります。ことしは国際児童年というのに、わが国の青少年の自殺は世界で有数なものとなっております。この根本的背景には、わが国の社会の営利第一主義が生み出した荒廃があります。総理が、どのような動機からにせよ、文化の重視を言われる以上、具体的な責任ある対応をとるべきであります。たとえば、今回の政府予算案でも、憲法違反で生産的でない戦力のためには二兆円の予算をつけておきながら、教育費については、立法府の意思が明瞭な施策についても放任されております。すでに一九七四年五月の衆参画院文教委員会で、四十人学級への早期編制替えが決議されているのに、いまだにこれを実施しようとしないのは、どういうわけでありますか。行き届いた学校教育で落ちこぼれをなくすることは、少年のさまざまの悲劇をなくするだけでなく、民族の将来を担う青少年の健全な育成に欠くことのできないものであります。総理及び文部大臣の答弁を求めます。
 国際婦人年に続く「国連婦人の十年」も半ばを迎えようとしておりますが、わが国の真の男女平等は前途多難と言わなければなりません。加えて、最近労働基準法研究会の報告によって、むしろ母性保護の改悪の企てが進められておりますが、男女平等の欠かせない前提である母性保護を充実させる必要こそあれ、改悪はもってのほかであります。この点について、総理及び労働大臣の所信を伺います。
 元号の法制化は、その推進論者がみずから強調したように、天皇を元首化する企てなどと結びついた、すぐれて政治的な問題です。同時に、文化の面から見れば、戦後慣習化が著しいのはむしろ西暦ではありませんか。この西暦と元号といずれを使用しようと自由とすることこそ、学問、文化の要請としてふさわしい措置であります。元号法制化には、多くの文筆家や歴史学者が反対しているだけではありません。世論調査でも、慣習としては賛成できても法制化して強要することには反対という声が多いのは当然であります。法制化の強行は文化と自由に逆行するものです。強く再考を求める次第であります。
 最後に、外交問題についてお伺いいたします。
 先年来、ベトナム・カンボジア国境で紛争が相次ぎ、世界の心ある人々を憂慮させました。私も昨年訪問した東ヨーロッパの国々での首脳会談で、国境紛争は話し合いで解決をという態度をともに公表いたしました。
 事態の経過を見ますると、ベトナム側が一九七六年から何度も会談を提案しましたが、当時のポル・ポト政権はこれを拒否するだけでなく、一方的に外交関係も断絶したのであります。ベトナム側は、その後もそれぞれの武装勢力が国境から五キロ後退しようという具体案まで提案いたしましたが、ポル・ポト側は応じませんでした。わが党が現地で調査したところによれば、この三年半に及ぶポル・ポト軍の侵略回数は大小あわせて六千四百回、七万のポル・ポト軍の大半がこの国境に集中し、ベトナム側住民の死傷者は八千三百人、破壊された家屋一万三千余、国境地帯の住民数十万が疎開を余儀なくされたのであります。
 こういう状況が続いたときに、こういうときにこそ、深い憂慮と遺憾が国際的に広く声明されてこそ時宜にかなったと言えたでありましょう。一体、当時日本の政府はどういう態度をとったか、改めて伺うものであります。
 現在の事態を理解するには、第一にこの国境戦争と、第二にポル・ポト政権の社会主義に縁もゆかりもない暗黒支配へのカンボジア人民の抵抗、内戦という二つのことを知る必要があります。不法な侵略を繰り返した側が国境戦争で反撃され打撃を受けたとしても、これは国際法上に言えば自業自得であります。そして、救国民族統一戦線がごく短期間に全土を制するに至ったのは、カンボジアの民心がポル・ポト政権から全く離れていたからであります。外務大臣は昨日の答弁でベトナム側を明白に非難されましたが、それはどういう具体的根拠によるものか、お答え願いたいのであります。
 さらに、政府のベトナム援助の方針は、ベトナム国民への人道的な援助なのか、それとも、日本政府の政治的判断に左右された一種のひもつき援助ですか。三十年間他民族から押しつけられた戦争と自然災害に苦しんだ国民に対する人道的援助であるべきと私は考えているのであります。
 以上についての答弁を求めます。
 中国政府は、今回のカンボジアの事態にかこつけて、わが国に対して反ソ反ベトナムの共同の態度度表明や共同行動を強く求めております。日中平和友好条約の審議の際、覇権問題についての中国流の独特の解釈から一方的な態度を押しつけられる懸念はないかということを、わが党は再三政府にただしました。これに対して、政府は、第三国に対するわが国の態度に影響を受けないということを再三確言したのであります。この責任ある態度を今後とも政府はあくまで貫く決意であるかどうか。そうでないと、日米中関係は事実上の一種の軍事同盟ではないかという一部の懸念を裏づける結果になるでしょう。この問題について、総理及び関係閣僚の責任ある答弁を求めるものであります。
 以上で、私の代表質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
○国務大臣(大平正芳君) 最初に、私の時代認識についてのお尋ねでございました。私は、わが国の百余年にわたる近代化の歩みは、広く国民に経済的な豊かさをもたらしたものと見ております。私の言う「文化の重視」と「人間性の回復」は、国民の生存権をたな上げにして実現しようとするものではございませんで、すでに達成されました経済的な豊かさを維持し、さらにこれを向上させつつ、さらにそれをより洗練されたものにしようとするものでございます。歴代の政府が近代的合理主義に反する大企業本位の政策に終始したという御見解には賛同はいたしかねます。
 次に、私の歴史観についてのお尋ねでございました。百余年にわたる近代化の歴史におきましては、第二次世界大戦のように、国民のエネルギーを誤った方向にしむけた不幸な時期もありましたけれども、長期的に見まして、西洋の知識、技術を吸収いたしまして近代化を進めてまいったその成果は見るべきものがあると考えております。
 第三の、いま国民に広くコンセンサスができ上がっておると言っておる三つの問題についてお触れになりまして、議会制民主政治につきましては、小選挙区制あるいは機密保護法を持ち出す意思はあるかないかということでございました。そのようなことは考えておりません。
 それから第二の、自由市場経済でございますが、これは、私は国民の間には広くコンセンサスができ上がっておると思っております。宮本さんが御指摘になられます大企業の特権擁護に終始しておるということではなくて、われわれは、それぞれ手段を講じまして公正な競争を確保するという手だてを保障しておるつもりでございます。
 それから、日米安保体制につきまして一部に反対があることは承知いたしておりますけれども、この体制に対しまして国民の理解は年とともに熟しつつあるものと私は判断いたしております。
 それから、外国の飛行機の輸入に絡まる疑惑の解明でございますが、これは、いままでもたびたび申し上げておりまするように、疑惑の解明は解明として厳正にやってまいるつもりでございますが、E2Cの導入につきましては、われわれは正しい手順を経て、十分な検討を加えて決断いたしたものでございまして、これを予算化いたしたものでございますので、国民の合意が得られるよう努力したいと考えております。
 もし問題があることが明白になった場合どういう責任をとるかというお尋ねでございますが、いま解明が始まったばかりでございます。いまの段階においてのお答えは差し控えさしていただきたいと思います。
 金大中事件についてのお尋ねでございます。金大中事件につきましては、これまでの捜査の結果、韓国の公権力によるわが国の主権侵害を裏づけるような証拠を把握するに至っておりません。しかしながら、もし新たな証拠が出てまいりますならば、私どもとして問題を提起するにやぶさかではございません。
 国連で核持ち込み禁止決議に反対したのは日米共同作戦の指針の核抑止力についての合意によるのか、非核三原則についての国会決議を無視していいのかという意味の御質問でございました。核兵器と通常兵器との総和のバランスの上に相互抑止に基づきまして地域的な安全保障の枠組みが存在する現実の国際社会におきまして、核兵器の展開に一定の制限を加えるような措置は、かえって現実の国際的軍事バランスを不安定にし、平和の維持強化に資さないおそれがあるので反対した次第でございまして、指針とは無関係でございます。わが国は、かかるグローバルな観点から、独自の判断で本件決議案に反対したところでございまして、非核三原則に何ら変更がないことは投票理由説明におきましても明らかにしたところでございます。
 現在の経済状況をどう認識するかというお尋ねでございました。たびたび本院におきまして御説明申し上げておりますように、最近のわが国の経済は、物価が安定基調にございます。生産、出荷、在庫の状況も好転を見ておるわけでございまして、ただ、雇用の改善がいまだしの感があると考えておりまして、したがいまして、とりわけ内需の拡大による雇用機会の造出、あわせて雇用対策に力点を置いた予算を編成いたしておりますことを御理解をいただきたいと思います。
 それから、「田園都市構想」と「家庭基盤の充実」ということを私が提案、提起しておるわけでございますけれども、これは、自然と人間との調和を図り、暮らしの中に参加と連帯に生きる豊かな人間性を取り戻そうとする政策的理念でございまして、日本型の福祉社会建設の基礎となるようにいたしたいと私は考えておるものでございます。で、この構想につきましての理解がまだ十分できておりませんので、政府部内におきまして鋭意いま検討を遂げまして、宮本さんの言われるように、裏づけと整合性を持ったものにいたしたいと努力をいたしておるところでございます。
 それから、「七カ年計画」では租税、社会保険負担をふやしていると。結局、家庭基盤の充実というものは、日本型福祉社会を建設するに当たりまして重負担を、重い負担を結果的には課することになるのではないかということに対する懸念を表明されたわけでございます。私どもといたしましては、日本型福祉社会の建設に当たりましては、もとよりわが国固有の自立自助の精神、仕組み、思いやりのある人間関係を尊重していかなければなりませんけれども、同時に、これに対しまして適正な公的福祉政策を加味していかなければならぬことも当然心得ておるわけでございます。したがって、住宅政策にいたしましても、老人対策、母子対策等にいたしましても、これまで鋭意努力してきておるわけでございますが、他の予算を圧縮する中におきましても、こういった社会保障に対する支出につきましてはできるだけ多くの予算を配分いたしてあることで御理解をいただきたいと思います。
 それから、大企業からの政治資金をもらっている以上、大企業の規制も公正な政治もできないではないか、そういった甘えの構造は再検討すべきでないかという御指摘でございます。自由民主党の財政は、仰せのとおり、法人の献金に多くを依存していることは事実でございます。しかし、私どもといたしましては、できるだけそういった状況を改めるべく、いま、せっかく努力をいたしておるところでございます。しかし、すぐにこういった法人の献金を御遠慮するという状況でもございません。これは節度を持ったものにするように、甘えの状況をもってやるべきものとは絶対に考えておりませんので、私どもは厳正に、政治資金の受け入れ、その使用に当たってまいりたいと思います。改正政治資金規正法の適正な実施に対しまして真剣に対処したいと考えておる次第でございます。
 それから、宅地並み課税について、これを廃止せよということでございます。市街化区域の農地に対するいわゆる宅地並み課税は、周辺の宅地との税負担の均衡と宅地供給を促進するという見地から三大都市圏のA、B農地について実施されておりますことは御指摘のとおりでございますが、農地として一定期間保全することが適当な農地につきましては、減税の、減額の措置を講じるなど、現実的な扱いをいたしておるつもりでございます。昭和五十四年度以降につきましても、税制調査会の答申をもいただきまして、現行制度を継続いたしたいと考えております。
 都市農業振興策をとるべきでないかという御所見でございますが、都市の農業は、当分の間、立地条件を生かした野菜、中小家畜を主体とした畜産等の生産が行われておるものと考えます。このため、都市農業の特質に応じた営農を継続するための必要な施策を講じてまいるつもりであります。
 それから、総合的な農産物の価格保障を断行することが急務と思うがどうだということでございますが、農産物価格も基本的には需給と無関係ではないことは御理解いただけると思うのでございます。現在、それぞれの農産物の実態に即しながら、全農業産出額の約八割を占める農産物を対象に価格安定措置が講じられております。今後とも、生産事情や物価にも配慮いたしまして適正な価格形成を行ってまいるつもりでございます。
 それから、元号の法制化について再考を求められたわけでございます。これにつきましては、近く法案を提出して御審議をいただくことにいたしておりますが、法制化したといたしましても、国民に元号の使用を義務づけるというようなことは考えておりません。
 中国のベトナムに対する意思表示――ベトナム政策に対する意思表示についてのお尋ねでございました。わが国は、いずれの国であれ覇権を確立しようとする試みがあれば、わが国独自の立場において判断し、反対することになると思います。すなわち、いかなる行為が覇権であるか、覇権であると認定した場合どのような行動をとるかについては、わが国独自の立場で判断して、行動してまいるつもりであります。政府としては、かかる立場を一貫して貫いており、先般インドシナ問題に関し、符浩在京中国大使より中国側の立場に立っての説明があった際も、わが方のこの立場を十分先方に伝えたところでございます。(拍手)
   〔国務大臣澁谷直藏君登壇、拍手〕
○国務大臣(澁谷直藏君) 私への御質問は、日商岩井から政治団体や政治家個人への献金は、この十年間どうなっているかという御質問でございます。自治省は、自治大臣所管の政治団体からの収支報告を受けてこれを公表するものでございまして、特定の寄付者の政治献金のすべてについて承知している立場にはないことを最初に申し上げておきます。
 御質問の、日商岩井から昭和四十三年から昭和五十二年の十年間に寄付を受けた政治団体について、官報で公表されたところにより調査いたしましたところ、寄付を受けた団体数は二十五団体、その総額は約一億二千万円となっております。
 なお、現行法上、政治家個人の政治資金に関する収支報告及び公表の制度は、選挙運動に関するものを除いては設けられておりません。したがって、自治省としては、政治家個人に対するものについては把握する立場にはないことを御了承願いたいと存じます。
 以上であります。(拍手)
   〔国務大臣内藤誉三郎君登壇、拍手〕
○国務大臣(内藤誉三郎君) 衆参文教委員会で四十人学級への早期編制替えが決議されているのに、いまなお実施されてないのはなぜかと、こういうお尋ねでございますが、文部省としては、御指摘の附帯決議のなされたことは十分承知しておるところであります。今後の学級編制及び教職員定数の改善についての検討資料を得るために、昭和五十三年五月一日現在において、全国の公立学校の教職員の配置状況、過疎過密の実態等、詳細に悉皆調査をいたしておるところでございます。今後は、この調査結果をもとに慎重に検討してまいりたいと考えております。(拍手)
   〔国務大臣栗原祐幸君登壇、拍手〕
○国務大臣(栗原祐幸君) 男女平等と母性保護についてのお尋ねでございますけれども、労働基準法研究会の報告の中では、男女平等法を制定する必要がある、そのためには女性に対する保護措置の中で合理的なものは何かということが一つと、いま一つは、必要な母性保護につきましては、これは充実をしなけりゃならない、こういうふうに私どもは理解をしております。したがいまして、この研究会の報告の趣旨を踏まえまして、関係審議会の議を経て善処いたしたい、こう考えております。(拍手)
   〔国務大臣園田直君登壇、拍手〕
○国務大臣(園田直君) お答えをいたします。
 核兵器、通常兵器の総和の上で相互抑止に基づく地域的安全保障が存在する国際社会の現実の状態の中で、核兵器の展開に一定の制限を不用意に加えることは、かえってこのバランスを壊すおそれがあり、平和の維持と強化に必ずしも資するものではないというのが反対の理由であります。したがいまして、日米軍事行動指針とは無関係であり、非核三原則を崩すものではないことは、反対投票の際、その説明で明らかにしたところであります。
 インドシナ半島における紛争は、御承知のごとく、ベトナムとカンボジア・ポル・ポト政権との間は真っ向から意見が違っております。先般の国連安保理事会において、大多数の国々は、今度の紛争がベトナムの深い関与のもとに行われたということを主張いたしております。いずれにいたしましても、わが日本としては、紛争を力によって解決しようとし、国境紛争を越えて他国の現領土内に軍隊が入るということは断じて賛成のできざるところでございます。
 ベトナム、カンボジアに対する援助は二つございます。一つは災害による緊急援助、人道的立場、一つは民生の安定、すなわち東南アジアの平和に寄与するという意味で、わが国は経済協力をやっているわけであります。したがいまして、協力の当初から、ベトナムには東南アジアの平和と安定に寄与してもらうためにこの協力をやるということは明確にしており、かつまた非常に関心の強いASEANの国々にベトナムが不安を与えないよう強く要請してあるところであります。したがいまして、今度の紛争がおこりましてから、さらにこれを強く要請し、約束をした五十三年度分はすでに実行に移っておりますが、五十四年度分は、今回の予算で国会で予算の審議をお願いするわけでありますから、それとも見合わせ、ASEANの不安を持った国々ともよく意見を調整をし、今後のインドシナ半島における情勢を見守りつつ慎重にやる必要があると考えております。
 覇権に対する理解、覇権に対する反対行動、これは、委員長発言のとおり、第三国の影響をいささかも受けてならぬことはおっしゃるとおりであります。今後ともこれを一貫してやるつもりであります。
 結論を申し上げますると、わが日本は、中ソの対立を東南アジアの一角で断じて火を噴かしてはならぬ、こういうことを願いとして外交を進めておるわけであります。(拍手)
○議長(安井謙君) 答弁の補足があります。大平内閣総理大臣。
   〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
○国務大臣(大平正芳君) 租税特別措置法の是正をやったと言っているけれどもまだ不十分ではないか、大企業等に対する各種引当金の見直しなど当然考えなけりゃならぬのではないかという趣旨の御質疑でございました。租税特別措置法の是正につきましては、かねがね申し上げておりまするように、毎年、鋭意やっておるつもりでございます。五十四年度の税制改正に当たりましても、問題になりました社会保険診療報酬に対する課税の特例措置でございますとか、あるいは有価証券の譲渡益に対する課税の強化、あるいは価格変動準備金の段階的な整理等、主なる項目につきましてはかなりの程度改善を試みたつもりでございます。今後も、この問題につきましては鋭意検討を続けてまいるつもりでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(安井謙君) 向井長年君。
   〔向井長年君登壇、拍手〕
○向井長年君 私は、民社党を代表して、総理を初め各関係大臣に質問をいたします。
 昨年は、ロッキード問題を初めとし、不況、円高、中小企業の破産、倒産、失業者の続出等々、国民は政治不信の高まる中で年を越したと思います。不安な気持ちで新しい年を迎えたことと思うのであります。なお、昨年末自民党の激しい総裁選挙戦で、大平総理、あなたは待望の総裁・総理という、政治家としての最高の地位につかれたのであります。さぞかし満足のことと思います。しかし、総理、現在は国内外の諸情勢は複雑かつ不安定なときに当たり、あなたの責任はまことに重大であります。大平内閣に対して国民は期待感と不安感と、そして不信感と、複雑な気持ちで見守っておると思います。
 一つには、ロッキード問題がいまだ解明されないうちに大平内閣になって再びグラマン航空機購入をめぐって政府高官のまつわる疑念が発生し、国民は自民党内閣への不信をますます高めつつあるのであります。この事件については、総理自身が、えりを正して徹底的に真相究明を行う確固たる姿勢がなければなりません。ロッキード事件と異なり、今回は疑惑の対象が政府資金支出に絡むだけに、ただ司直の手にゆだねるだけではなく、国会の場において証人喚問等、真相を明確にし、政治的道義的責任の解明が今後十分行われなければ、国民は決して納得せず、大平内閣への不信はますます高まるでありましょう。総理の見解をお伺いいたします。
 二つには、総理、あなたは、「田園都市構想」、「家庭基盤の強化」、「日本型福祉社会の建設」、そして「信頼と合意」の政策の基盤及びキャッチフレーズを国民に発表をいたしておりますが、具体的には何をやろうとするのか、国民にはさっぱりわかりません。
 いよいよ八〇年代の幕あけの今日、政治の大きな課題は、総合社会安全保障であります。その一つは経済の安全保障であります。エネルギー問題の安全保障であります。なお、防衛の安全保障でなければなりません。
 いま、国民が素朴に強く望んでいること、あるいはまた知りたいことは、第一に、本年は景気がまくなるかどうかということであります。第二に、働く意欲を持ちながら仕事と場所がなく、失業と今後の雇用問題が少しでも解決されるかどうふということであります。第三に、五年来の不況の中で中小企業は今後どうなっていんであろう。第四は、本年は一斉に公共料金値上げが予想されるが、国民生活はいよいよ苦しくなるのではないか。第五は、高齢化社会に備えて社会福祉はいかに対処されるのであろうか。第六は、生産意欲を失いつつある農家にいかなる希望を与えるか、等々の諸問題に対して、総理は率直に国民の期待と要望にこたえられることができますか、所信をお伺いいたします。
 続いて、具体的にわが党の政策等を披瀝しつつ、お伺いいたします。
 第一に、大平内閣の発足に当たって、総理は安上がりの政府を目指すことを宣言し、行政の簡素化、効率化の方針を決定したことはまことに結構であり、この件については国民は大平内閣を一応評価したと思います。ところが、明年度予算や施策の上では、抽象的で、全く具体化されたものが見当たらないのであります。長期不況の中で民間企業は血のにじむような減量経営を実行している中で、政府機関が親方日の丸的運営では許されません。わが党は、前時代的なチープガバメントを求めているのではありません。すでに行政需要が実質的になくなったところ、あるいは減少したところ等から需要の高いところへの配置転換を含めた行政の簡素化、そして効率化の促進を求めておるのであります。まして、やがては財政再建のために国民に租税を初めとする負担を求めなければならない現状にあるとき、不公平税制の是正と並んで、行政機構の整備縮小、政策目的を終えた膨大な補助金整理の三点は、今日的な最大の政治課題と言っても過言ではありません。総理の所見をお伺いいたします。
 第二は、政府の経済運営であります。
 五十三年の重点目標は、長期不況のトンネルから脱出の条件をまずつくり出し、五十四年、五十五年度は経済の自律的発展力を相当回復させ、五十六年度以降は、財政均衡のため徐々に合理的な施策を講じて、国民負担の増にも応じ、昭和六十年代の初期には赤字国債の解消を実現するというのが、わが党の「インフレと失業なき福祉社会」建設への基本路線であり、不況克服を目指す経済戦略であることは周知のとおりであります。したがって、当面の最大問題である雇用の安定と、それを裏づけるに必要な景気の上昇を図るためには、五十三年、五十四年度は財政が積極的な役割りを果たすのが当然の考えであると思います。総理、経企長官の御所信をお伺いいたします。
 政府もまた、わが党の主張に同調して、五十三年度は雇用安定を主眼の政策目的を達成するための七%成長を目指し、内外にこれを公約いたしたのであります。もちろん、この七%成長目標には国民も大きな期待を寄せ、与野党にもほぼ合意が見られたところであります。むしろ私たちは、一兆円減税など積極的な内需拡大のための補完政策を要求したにもかかわらず、政府は楽観的に終始して、これを取り入れず、やがて政府自身も六%に予測を変更したのであります。民間機関はすべて五%台しか予測いたしておりません。政府は、尽くすべき政策手段をとらず、七%を断念したと言いますが、それは断念でなく、失敗と言うべきでありましょう。一%の成長不足が十万人以上の失業を生ずると言われるが、この点からしても、政府の責任はまことに重大であります。大平総理自身も、「七%という数字が問題ではない、要は国民生活や経済の中身をよくすることだ」と、責任逃れを述べておられるが、それなれば、総理、この間にどれだけ国民生活が改善向上したと言われるのか、事実をもって国民に説明を願いたいのであります。総理の見解をお伺いいたします。
 次に、政府の消極的な態度は、大平内閣の明年度予算案に顕著にあらわれております。それはまさに、大蔵官僚による行政ペースに乗せられ、政治の意志や政策目的が不明確であって、結局は「不況継続雇用悪化予算」と言わざるを得ないのであります。特に私が指摘したいのは、「財政再建と景気回復の両にらみ予算」と言われるが、「二兎を追う者は一兎をも得ず」のたとえのとおり、結果は明白であります。これを回避せんとされるならば、わが党が主張するように、年金のナショナルミニマムを保障する基礎年金を創設して、当面は、勤労者の平均可処分定期給与の一人三〇%、夫婦で四五%の給与を実現されるべきであると思います。これにより、福祉社会建設の長期的重点目標の一つを達成すると同時に、個人消費の伸びによる経済循環の回復に寄与するという、景気に対する短期目的をあわせて実現すべきであると思うが、総理並びに関係大臣にお伺いをいたします。
 また同時に、目下企業の減量経営により、既往の百三十万人に加えて二百万人を超える企業過剰雇用が失業者として顕在化するおそれがある情勢に対処し、政府が講じようとする雇用対策とあわせて、労働団体の共通の要求となっている雇用創出機構の新設により、地域の潜在需要、産業の研究開発等民間主体の企業化の促進、中高年齢者の雇用促進のため被雇用者一人につき五年間賃金の二分の一を補助する等の施策により、積極的に雇用機会の拡大を図ることが急務であり、政府もこの点に本腰を入れて取り組むべきであると思うが、総理、関係大臣の所信をお伺いいたします。
 なお、さらに少なくとも明年度は一兆円規模以上の減税及び年金、住宅問題等需要の拡大、それ相応の予算修正を要求することになると思われるが、総理は野党の予算修正に対していかなる態度で臨まれるか、見解を承りたいのであります。
 次に、エネルギー対策についてお伺いをいたします。
 わが国が二割近くも依存しているイランの国内事情によって、石油の供給に不安定信号が出されておりますが、政府は、今後の供給確保にどのような判断を持っておられるのか。政府筋では、一方では心配無用と言いながら、反面では節約が強調されている現状で、国民は大きな不安を感じております。わけても、メジャーを通ずる供給に大部分を依存している日本の実態から、メジャーを抱える米英仏などのエネルギー政策の枠の中で処理されるとすれば、イラン問題以後、供給構造に変化が生ずることによって日本がまともに不安定状態に陥る懸念があります。世界の石油戦略に対応していかに安定確保を図るのか、政府の確信ある方針を示していただきたいのであります。総理、通産大臣にお伺いいたします。
 エネルギーの第二点は、将来のエネルギー安定確保を図るためには、代替エネルギー開発を含めて、総投資約七十兆円、そのうち公的資金として五兆円から七兆円を必要とされているが、政府は、あと数年のうちにこれだけの資金調達をどのようにして行わんとするのか、全く不明確であります。わが党は、これまでのエネルギー関係財源及び今後の財源をエネルギー特別会計に総合一元化し、最も効率的な投資を行うよう主張する七のでありますが、総理、通産大臣の、今後いかなる方針で対処されるのか、お伺いをいたします。
 最近、海外では、発電所の建設遅延や燃料入手難などに起因した電力供給不足による経済の停滞や、大規模停電による社会生活の混乱を耳にいたしますが、現在のところ、わが国の電力は一応順調に、かつ安定に供給されており、それは社会的責任を重んずる労使の努力が高く評価されなければならぬと思います一しかし、わが国はもとより小資源国であり、また、諸般の事情により発電所立地がおくれがちであると思います。将来の電力供給を図るために、次の事項について政府の見解と具体的な推進策をお伺いをいたします。
 第一には、長期化したイランの政情不安で石油危機の再来が懸念され、最近、国際エネルギー機関、IEAでは、石油火力発電所の新設禁止等の提案が予定されておるようであるが、まことに重大なことであります。政府はこれにいかに対処する所存であるのか、お伺いをいたします。
 その第二は、電気事業審議会の暫定見通しでは、原子力発電の計画過大、LNG、石炭等、非石油燃料への依存計画がきわめて大きいが、実態は必ずしも進んでおりません。この原因は何か。かかる問題に対して政府は今後いかなる対策を講じようとするのか、通産大臣にお伺いをいたします。
 これに関して、原子力開発推進が不可欠であり、しかも、その中に核燃料サイクルの確立が急務であると思います。これは核拡散防止の問題とも関連して、国際核燃料サイクル評価検討会で画期的に進められていると聞いているが、政府は、わが国の自主的な核燃料サイクル確立のためには基本政策を貫くべきと思うが、御所見をお伺いいたします。
 第三に、石炭問題であります。将来の貴重な電力用燃料となるのであるが、炭鉱開発を含め、輸入石炭の確保方策、石炭火力発電所の立地を推進するため、環境問題の整備、コスト問題に対する国の政策等を早急に確立することが肝要であると思うが、いかがでありましょう。総理、通産大臣にお伺いをいたします。
 次に、私は、農業問題について若干質問をいたします。
 今後の農業政策展開についてでございますが、一昨年秋以来の急激な円高によって、最も広範な打撃を受けておるのは農業と言っても過言ではありません。しかし、国民の大多数を占める消費者から見れば、国内農畜産物価格の異常な高さに不満の声が上がっているのは御承知のとおりであります。一方、海外からは門戸開放が強く要求されているとともに、政府が率先しASEAN諸国に対して約束している一次産品に係る所得保障もやがては具体化されるとするならば、日本農業は従来型での存在は許されません。可能な限りの合理化、近代化は余儀なくされるでありましょう。こうした変革に伴う農業内部の混乱と利害関係を調整しつつ今後の農政を展開する必要があると思うが、総理、この一大改革路線の中で今後の農政をいかに対処しようとするのか、また、他にすぐれた手段があるとすれば、それを含めて御所見をお伺いをいたします。
 続いて、中小企業も農業と同様に、むしろ地域集中的に円高の不利益を受けている中小企業産地対策をどのように進めんとされるのか、お伺いをいたします。
 昨年の春以来、中小企業産地は、特定不況地域問題と時を一にして早急な対策が要求されておりましたが、政府は、企業城下町と言われる特定不況地域対策には応じましたが、中小企業産地振興対策は全く後回しの状態にあるのであります。政府の明年度予算案では、わずか六億四千万円程度の予算を計上されております。産地の拡大と産地の自主性を重んじ、効果的な対策が講じられるよう政府の財政援助額を大幅に追加すべきであると思うが、総理、関係大臣の積極的な回答をお願いいたします。
 さらに、外交問題でございますが、時間がございませんから、私は日ソ問題の一点にのみしぼって所見をただしたいと思います。
 日中条約以後のわが国外交の一つの重要課題は、日ソ関係の改善にあります。この点で最大の焦点は、日本側の要求する平和条約交渉とソ連の言う善隣友好条約との関係であります。これについて園田外相は、昨年末、両条約の並行審議を提案されたとのことであるが、それは日本政府の方針であるのか否や。また、この並行審議についてどのような見通しを持っているのかを明らかにしていただくとともに、わが国の悲願である北方領土の返還が困難化される意味合いを持つ日ソ関係の展開であっては断じて認めるわけにはまいりません。総理、外相の御所見をお伺いいたします。
 また、昨日の新聞報道によると、ソ連が国後、択捉島に基地を建設することについて日本政府はソ連政府に抗議の方針を決定したとあるが、事実かどうか、お伺いいたします。これは今後の日ソ関係に重大な影響を与えるものだけに、政府は毅然たる態度で進まれんことを強く望みたいと思います。
 次に、元号法制化問題について質問をいたします。
 総理府の世論調査によっても、約八割の国民が支持し、九割の国民が日常生活に親しく溶け込んでいる現状から、四十六都道府県議会が法制化要望決議案を政府並びに国会に提出されているにかんがみ、国民の多数が要求している元号法制化は今国会で早急に実現すべきと考えます。(拍手)一部の政党には、元号法制化を右傾化と言われるが、私は理解ができないのであります。単に国会対策上の理由をもって遅延することはいまや許されないと思います。法案の政府提出時期と、今国会において議了への総理の確固たる決意をお伺いいたしたいと思います。(拍手)
 なお、総理は施政方針の中で「文化の時代の到来」を強く提唱されておりますが、私もこの点を大きく評価をいたします。これについて、この際、具体的な問題に触れながら、総理の意向をただしたいと思います。
 それは、わが国民族の歴史、文化の発祥地である明日香をどう守るかということであります。最近、太安萬侶の墓碑が発見せられ、国民に多大の感動を与えておりましたが、地域の一農民が日本文化の源流を理解しておったればこそ、あの古墳を直ちに届け出て、この重大な発見につながったと思います。総理、これは届け出た一農民に対して文部大臣表彰を行ったらいかがでしょうか。いまこそ政府は、明日香保存の特別立法を直ちに制定し、これら一連の文化の原点をより完全に保存する糸口をつくり、他方、地域住民が誇りを持って遺跡を守るためにも、優遇措置を講ずべきであると思いますが、いかがでしょうか。(拍手)福田前総理も確約をいたしておるのであります。この問題について総理の率直な決意をお伺いをいたします。
○議長(安井謙君) 向井君、時間が超過しております。
○向井長年君(続) 以上、私の質問を終わるに当たり、総理に一言苦言を呈したいと思います。
 総理の施政方針は、外交、内政、経済等多岐にわたって美辞麗句が羅列されておりますが、抽象的であり、魂が入っておるとは思いません。そのことは明年度の予算案にあらわれております。総理の反省を促すものであります。
 総理、政治の要諦は、清潔、公正、平等、効率的でなければならないと思います。一部の圧力に屈することなく、指導性を持ち、これを実行するには、わが党がモットーとしている「知性と勇気」が必要であります。「信頼と合意」は国会対策上だけのものであってはなりません。国民に信頼される政治に邁進されんことを強く要求し、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
○国務大臣(大平正芳君) 外国航空機の輸入に絡まる疑惑解明でございますが、たびたび申し上げましたように、いささかも疑点を残さないように徹底的な解明に当たる決意でございます。また、国会の国政調査権の行使に対しましては、政府といたしましても、法令の許す範囲内で極力協力してまいるつもりでございます。
 第二の御質疑は、経済運営の基本にかかわる問題でございます。総合的な安全保障の問題、不況打開の問題、雇用の拡大の問題、物価安定の問題、社会保障の充実の問題、農村の安定の問題等広範にわたりましての決意を聞かれたわけでございます。私どもは、そういった問題につきまして、ただいまわれわれの手でできることは何であるかという目標を設定いたしまして五十四年度の予算案の編成をいたしたわけでございます。それは、第一に、仰せのような景気の回復を図りまして、雇用の安定を図ってまいることが第一でございます。それから、物価の安定基調を維持しながら、公共料金につきましても極力これを抑えまして、万やむを得ずやる場合におきましても微調整にとどめる決意であることでございます。第三は、国際社会に対するわが国の責任を果たすために、わが国経済の対外均衡を回復するように努めることであると考えております。また、新しい経済計画を七年の展望において策案いたしまして、不安定感の払拭に努めるというようなことを目標にいたしまして、いま御提案申し上げておる予算案を編成いたしたつもりでございます。われわれは、この成立を図り、その誠実な実行を通じまして所期の目的を達成いたしたいと思いますので、御協力を願いたいと思います。
 チープガバメントの趣旨に沿いまして、行政機構の整理縮小、補助金の整理、不公平税制の是正等に言及されました。
 行政機構の整理縮小につきましては、一昨年末に決定されました行政改革計画を着実に実行してまいるところでございますが、さらに、厳しい社会経済情勢が出てまいりましたので、一月十六日には、閣議で、機構、定員の膨張抑制と合理化、公社・現業等政府事業の合理化、適正な人事管理の推進等を決定したものでございまして、逐次その実施に当たってまいるつもりでございます。
 補助金の整理につきましては、従来からもその推進に当たっておりましたけれども、今度の予算編成におきましては、積極的に廃止、統合、メニュー化、いろいろの整理合理化を図っておるところでございます。
 税負担の公平確保につきましては、五十四年度税制改正に当たりまして、先ほども申し上げましたように、主なる租税特別措置につきましてかなりの見直し改善を行ったところでございます。これらの措置によりまして、税負担の公平につきましては、従来より批判の多かった事項についてかなりの解決が図られたものと考えております。
 当面の最大課題でございまする雇用の安定を図るため、景気の回復は財政主導型でいかなければならないではないかという御主張でございます。経済の自律的な回復がむずかしい状況でございますので、私どもといたしましては財政主導型にならざるを得ないと観念いたしまして、非常に財源が苦しいときでございますけれども、極力財源、資源を集めまして、雇用の拡充、景気の回復への道をつくり上げるべく努力をいたしたのがこの予算でございます。雇用の拡大に当たりましては、中高年齢層の雇用拡大に特に細心周到な配慮を加えてございます。
 次には、民社党の御主張でございまする基礎年金制度の創設に言及されまして、年金制度の改善につきましての御意見を求められたのでございます。昭和五十四年度におきましては、厚生年金及び国民年金につきまして、本年度の消費者物価上昇率に対応いたしまして、年金額の物価スライドの技術的な措置による給付改善を行うこととし、また、福祉年金につきましては、本年度の消費者物価の上昇率を上回る九%の引き上げを行っておりますることは御承知のとおりでございます。年金給付の水準は、老人の生活実態、各制度における長期的な給付と負担のバランス等を慎重に検討した上で設定すべきものでありますけれども、当面、景気回復という目的のために年金額の引き上げを行うことは、将来の膨大な財政負担を招き、年金制度の破綻を来すおそれがございますので、われわれはにわかに賛成いたしかねるところであります。
 今後の年金制度のあり方につきましては、民社党初め、各方面の御意見を承りておりますけれども、厚生省におきましても、伍金制度基本構想懇談会というものを設けまして、いま御審議を願っておるようでございまして、その結論も踏まえて、慎重に検討を進めてまいるつもりであります。
 雇用創出機構の新設等によりまして雇用対策を強化せよ、政府は中高年齢者に五年間賃金の二分の一を支払うことを考えてはどうかという御提言でございます。きのうもお答え申し上げましたように、雇用創出機構として新しいものをつくることに対しましては、いろいろな問題がございますので適当でないと考えておりますけれども、雇用創出に当たりまして、衆知を結集いたしまして、とりわけ中高年齢者の雇用の助成を強化すべしという趣旨には賛成でございます。政府といたしましても、来年度予算案におきまして、中高年齢者の雇用の拡大を中心とする雇用開発事業の創設、雇用問題政策会議等の必要な措置を講じておるところでございます。
 次に、エネルギー対策につきましてのお尋ねでございました。エネルギー対策につきまして、民間資金の導入は当然のことであるけれども、公的資金を五兆円ないし七兆円が必要だと言われているが、それをどうして調達するつもりかという御主張、御質問でございました。エネルギー政策の実行性を確保する上から申しまして、必要資金の確保がきわめて重要であることは御指摘のとおりでございます。そこで、民間資金の円滑な調達を図りますとともに、公的資金の確保にわれわれといたしましては鋭意努める所存でございます。当面緊急を要する石油対策につきましては、昨年から石油税を創設いたしまして、その充実に努めておるところでございます。その他、各種エネルギー対策にも多額の公的資金が必要でありますが、その財源対策につきましては、一般財源はもとより、必要に応じまして受益者負担の考え方も含め、その円滑な調達に努力してまいるつもりでございます。
 核燃料サイクルの確立に関する所見いかんということでございます。原子力開発利用を推進するためには、核燃料サイクルの確立が不可欠であります。政府としては、従来から海外ウラン資源の探鉱開発、ウラン濃縮技術の開発、使用済み燃料の再処理等を進めてきたところであります。今後もこれらの施策を積極的に進めまして、わが国の自主的な核燃料サイクルの確立に努めてまいりたいと思っております。同時に、核拡散防止に努めることもきわめて重要であります。原子力の平和利用と核拡散防止の両立を図るための国際的努力であるINFCEにも積極的に参加しておるところでございます。その際、核不拡散強化によってわが国の原子力の平和利用が損われてはならないとの基本的立場を貫くよう努力してまいりたいと思います。
 次に、農政について、その合理化、近代化をどのように進めるつもりかという御指摘でございました。今後農政を進めてまいるに当たりましては、農業の特性に応じて、地域の実情に応じまして適正な助成を行って、生産性の向上に努めなければならないことはもとよりでございます。そのためには、農業生産基盤の整備等を進めながら、生産性の高い近代的な農家を中核的な担い手として、農業生産の再編成を積極的に進めてまいるつもりでございます。
 中小企業の不況産地振興対策に財政援助を大幅に追加してはどうかという御提言でございます。昨年来の円相場の高騰によりまして深刻な影響を受けておる産地の中小企業等に対しましては、円相場高騰関連中小企業対策臨時措置法を制定いたしまして、総合的な緊急対策を講じてまいりましたことは御案内のとおりでございます。さらに、政府としては、こうした産地の中小企業における新商品開発等の活路開拓のための事業を強力に支援するため、新たに産地中小企業対策臨時措置法案を今国会に提出することとしております。昭和五十四年度におきましては、予算、財投、税制等を用いた総合的な産地中小企業振興対策を展開してまいるつもりでございます。
 元号の法制化について言及がございました。元号法制化につきましての法案は、近く御提案申し上げて御審議をお願いすることになっております。御協力を願いたいと思います。
 それから最後に、太安萬侶の墓碑が発見されました奈良市田原町此瀬の茶畑につきましては、現在奈良県の教育委員会が調査中でございまして、その調査結果を持ちまして、地元の意向も尊重しながら、適当な保存策を講じたいと思います。
 文部大臣表彰という御提案でございますが、何らかの形で御趣旨に沿うよう措置していきたいと考えております。
 また、飛鳥地方の歴史的風土の保存を助長するためにも、土地利用等に規制を加えられ、日常生活にも種々の制約を受けておる地域住民の生活との調和を図ることが重要であることは御指摘のとおりでございます。そのための施策につきましては、政府部内で鋭意検討を行っているところではございますけれども、できるだけ早期に結論を得まして、有効な対策を進めるよう努力してまいるつもりであります。(拍手)
   〔国務大臣小坂徳三郎君登壇、拍手〕
○国務大臣(小坂徳三郎君) お答え申し上げます。
 第一問でございますが、財政が積極的な役割りを果たすことについての所見ということでございましたが、ただいま総理からこの点につきましては御答弁がございました。私も、この点に関しては、きわめて苦しい中における財政の中でございますが、積極的な役割りを期待して今般の予算が編成されているものと存じております。
 次に、総理に対する御質問でございましたが、七%成長の下方修正について、どのような問題点があると思うのかという御質問がございましたが、ただいま総理からお答えがございませんでしたので、かわってお答えをさせていただきたいと思います。
 この七%実質成長は、国内需要の伸長を通じまして雇用の改善を図るとともに、国際収支の大幅な黒字の縮小を図るという、そのような政策目標を果たすための一つの目安として設定されたものでございまして、この成長率は、予想を超えた非常に急激な円高によりまして、海外要因等も踏まえて、その達成はきわめてむずかしくなって、われわれ現在の予測では、六%程度になるものと見込まれております。
 しかしながら、この目標に照らして現在の経済情勢を見ますと、国内経済は、緩やかではございますが着実に景気回復の傾向を示しております。内需の伸びは八%程度と、当初の見通しを一%程度上回る見込みに現在なっております。また、雇用面では、労働人口の増加が著しかったために、失業者数は増加いたしておりますが、就業者は六十七万人と、かなりの増加を見込むことができるようになっております。国際収支の面では、ドルベースでの経常収支の黒字は依然として大きいのでございますけれども、数量面におきましては、このところ顕著な改善を示しております。この結果、円ベースで見た経常収支は、五十二年度の三兆五千億から五十三年度は二兆七千億と、顕著に縮小の見込みでございまして、わが国は確実に対外均衡を回復しつつあるというふうに考えておるのでございます。さらに、物価も、消費者物価並びに卸売物価ともきわめて安定的に推移いたしておるわけでございます。
 政府といたしましては、このような事態を踏まえながら、七%の修正ということよりも、これらの政策をさらに推し進めながら、結果において日本の経済のさらに一段の向上、国民生活の充実を図ってまいりたいと思うものでございます。(拍手)
   〔国務大臣金子一平君登壇、拍手〕
○国務大臣(金子一平君) 向井さんにお答え申し上げますが、消費刺激のために一兆円の所得税減税をやったらどうかという御提言でございまするけれども、御高承のとおり、日本の所得税水準は先進国の課税水準から言えば、はるかに低いところにございまして、この際減税を考えることは適当でないと考えまするし、特に、減税財源とし考えられるのは公債発行による以外、ほかに道がございません。そういう状況でございますので、一兆円減税は明年度は不可能と考えております。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣江崎真澄君登壇、拍手〕
○国務大臣(江崎真澄君) お答え申し上げます。
 イランの政変が長期化して原油の安定供給が支障を来す、今後の対策いかん、こういう御質問でございまするが、御承知のように、一次エネルギーとしての原油の占める比率は、わが国の場合、七〇%でございます。そのうちの八〇%は中近東に依存をしておるわけであります。そのまた七〇%を御指摘のメジャーに依存しておるという状況でありまして、私どもとしては、将来長い安定供給のためには、やはり中国を含むアジア地域で、少なくとも昭和六十五年ごろまでには三割程度の供給がなされるように今後とも対策をしてまいりたいというふうに考えております。そうして、自主開発原油、GG原油等、いうところの政策原油をわが国の需要の三分の一程度以上にしていくことをきわめて重要な政策課題であるというふうに認識をいたしておる次第でございます。
 なお、節約を言うたり、一方、国民に向かって不安はないということを呼びかけておるが、矛盾ではないかという御指摘でございます。イランから石油が全然輸出されなくなった、船積みされなくなったのが十二月でございます。その時点で私ども直ちに節約を呼びかけようと思いましたが、需給はだぶつきぎみであるにもかかわらず、真冬に向かって灯油手当ての時期に入ります。便乗値上げなどがあってはなりませんし、様子を見てまいったのでありまするが、一月の中旬に通産省から警告を発し、一月の二十二日に、省資源・省エネルギー対策委員会において、まず、官公庁の節約、民間への節約の呼びかけ、待に一般消費者に節約をお願いしたわけでございます。わが国としては、もともと無資源国でありまする以上、エネルギーの節約の問題は長い将来にわたって十分心がけなければならない国民共通の課題であるという認識に立っておる次第でございます。
 次に、非石油系燃料への移行を目指せということを電事審などでもしきりに言っておるが、それはどうなのかという御指摘でございまするが、仰せのとおりであります。したがって、今後ともエネルギーの安定確保のために、原子力開発、石炭火力、LNG火力、水力、地熱等、石油にかわる電源の開発を積極的に推進し、特に電源の多様化を図ってまいりたいということで計画的に進めております。その資金対策いかんという点については総理からお答えがありましたので、答弁を省略さしていただきます。
 次に、エネルギー関係予算を一元化して効率をよくしろ、これは、電源特会であるとか石特会計であるとか原子力関係などなど、ばらばらだということを意味する御指摘だと思います。この行政面の統一を期してエネルギー庁を発足させたわけでありまするので、当然、この資金運用につきましても、エネルギー庁において十分ひとつ御趣旨を体して一元化し、効率的な運用を図ってまいりたいと思います。
 次に、核燃料サイクルの確立、これも総理からお答えがございましたので、答弁を省略さしていただきます。
 中小企業特定不況地域の問題に関して、産地対策が不十分ではないかという御指摘でございまするが、来年度予算には六億四千万円を対策いたしております。このほかにも、前の国会で御協力をいただきました円高関連の中小企業対策臨時措置法、これに基づきまして、きめ細かな総合対策をとっておるところであります。今後とも、政府、中小企業三金融機関等を積極的に活用いたしまして、御趣旨に沿うよう遺憾なきを期してまいりたいと思います。
 なお、不況業種を抱えておる産地の効果的対策のために積極的に財政措置をしろ――ごもっともであります。そこで、総理からもお答えがありましたが、今度の国会におきまして、産地中小企業対策臨時措置法、これは仮の名称でありまするが、こういう法案を用意いたしております。とりあえず全国三百地域ぐらいを現在考えておりまして、五十四年度には、そのうちまず最も困難な、また、困難ではあるが自主的に対策を講じようと思っておる熱心なところから九十地域ぐらいを指定いたしまして、産地の自主性を尊重し、新販路の開拓とか、あるいは再出発等につきまして計画的に、中小企業庁あるいは地方自治体、これが相談に乗りまして、新製品の開発とか販路の開拓等には積極的にひとつ取り組んでいこう、前向きに対策をしようという政策を準備し、法案をお願いしようとしております。そうして、これらには補助制度の創設を初め、振興のため低利長期の融資を図るほか、特別償却制度をとるなど、多面的な助成措置をとってまいりたいというふうに考えておりまするので、いずれまた御審議に供しまするときには御協力を賜りたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣園田直君登壇、拍手〕
○国務大臣(園田直君) お答えをいたします。
 日ソの間で、国民のかたい合意、揺るぎなき決意、すなわち北方四島返還の問題が大前提であることは御発言のとおりであります。私は、この問題、領土問題解決のために、ソ連側が誠意ある態度で前向きの姿勢を示されるならば、交渉の方法、話し合いの方法はいろいろあると考えております。考えてはおりますが、その姿勢が示されない前に、平和条約、善隣協力条約の並行審議を提案いたしてはおりません。ゆっくり話せばいろいろ考えがありましょうということを言っているだけでございます。
 なお、同島の中の国後、択捉に対する軍備強化に対し、これはわが国の固有の領土であるわけでありますから、外務大臣としては無関心でおり得るはずはありませんので、これに対する指示を事務当局にいたしました。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(安井謙君) 片山甚市君。
   〔片山甚市君登壇、拍手〕
○片山甚市君 私は、日本社会党を代表いたしまして、第八十七回国会の初めに当たり、私の考えるところを述べ、あわせて総理と各所管大臣の所信をただし、大平内閣の何たるかを国民の前に一層明らかにせんとするものであります。
   〔議長退席、副議長着席〕
 大平さん、あなたは、あなたなりの予算編成、施政方針などに、新大平時代をつくろうと名指揮者ぶりを発揮されたつもりでありましょうが、先般来の国会論議を通じて、その頼りなさ、言葉のあやでその場をしのいでいるという感を深めているのは、あなたがどうリーダーシップをとるのか明らかでなく、不透明な内容で、人々の痛みや、いら立ちや、ささやかな願いに具体的にこたえていないからであり、誠実な人柄の大平総理であるだけに、残念に思うものであります。
 さて、私は、日本国憲法の精神に立脚した政治こそ、まず総理の力強い所信でなければならないと確信するものであります。わが国の平和憲法は、人類の到達した偉大な成果の一つとして、私のみならず、日本民族の誇りでもあります。今次大戦中に私たちが経験したものは、それは実に筆舌に尽くしがたいものであって、その苦しみと悲しみの中からほとばしり出た人々の願い、二度と戦争はしたくないという国民の悲願、それが憲法九条にほかならない。これをいかに次の世代の国民に継承し、その理念のもとに国際社会の一員として尊敬されていくかということこそ、立国の基本ではありませんか。総理、いかがでございますか。
 まして、軍備増強を図ろうとする諸国間の軍事費は、一年間約四千億ドルの巨額に及び、水爆ミサイル三発で日本列島が消滅すると言われているときに、武器をもって武器を制する幻想の愚を犯すべきではありません。わが国が経済から福祉大国を、教育大国を、文化大国を目指すことによってのみ世界から守られることを、何よりもまず国民の前に総理は明らかにすべきであります。
 そうして私は提案したい。先進国首脳会議もよろしいが、安保理事国にも加えてもらえぬほど日本への不信の強い国際連合の場に、総理自身みずから臨み、日米安保条約の解消を含む非核武装宣言を行い、全面軍縮の推進とわが国の希求する世界平和を説き、人類の新しい時代をつくるために力を注いでいただくことであります。総理、いかがでございましょうか。
 また、今日なお戦時災害によって傷ついた人々が、心身ともにいやされぬまま放置されていますが、これらの人々に速やかな援護措置がなされるべきだと思いますが、いかがでございましょうか。
 次に、私は、大平内閣が「人間本位の社会」、「人間の尊厳の徹底した重視」を政治の基本に据えるのかどうかを聞きたいのであります。
 総理は、いまや経済中心から文化重視の時代が到来した、活力ある日本型福祉社会を建設したい、と言われる。まことにその言葉はりっぱでありますが、内容のないスローガンに間違いがありません。経済力の強化をすべての価値の上に置き、しかも、企業の利潤追求を原動力とした時代は過去のものであります。いまや「人間からの出発」の時代であり、社会をつくる成員が、まず人間としての目的と規範を合意させ合い、経済はしょせん手段にすぎないという立場に立って必要な改革を行うというなら、それが鈍牛のごときものであったとしても、私はその具体化に協力を惜しまないものであります。たとえば福祉について、一九七三年を福祉元年と銘打ったことを、あなたは閣僚の一人として、よもやお忘れではないでしょう。それは、元年があって四、五年がなく、七年目ではもうどこかに消えてしまっていて、これまでにとられた政策自身が、ばらまき福祉にも達しない、おこぼれ福祉であったにもかかわらず、新年度は足踏みどころか、全くの後退と言わざるを得ません。特に、新しい経済計画の初年度との説明入りでGNPの見通しを立てて経済企画庁長官に演説をさせる前に、まずは、しっかりと福祉社会への道のりと、詳しい社会保障の指標を示し、それに基づいて経済の進め方を説き、国民に協力を呼びかけることが総理にとって肝要ではないでしょうか。しかと総理に、経済中心主義からの転換と福祉社会への計画及び指標についてお答えいただきたいのであります。
 あわせて、私は、経済中心からの転換を覆う以上は、大企業の社会的責任が問われているにもかかわらず、生産と消費における決定権が依然として大企業の専制にゆだねられ、「金は要求しても介入は受けない」という理不尽なシステムがまかり通っていることを改め、消費者や零細自営業者、そして労働者の権利を拡充しつつ、民主主義を経済の分野にも拡大していかなければならないと確信してはばかりません。特に、労働者固有の権利にかかわる諸問題は、ILOなど国際機構の勧告や条約を積極的に批准し、たとえば消防職員の団結権など、非近代的な労使関係のまま放置されている当然の基本的権利などは速やかに確立させるべきであります。
 また、昨年末以来郵政事業は有史以来の大混乱を引き起こし、国民の信頼と期待を裏切ることとなったことはきわめて遺憾であります。このような事態を招いた原因は、政府みずからの手による人権侵害と差別、不当労働行為など陰湿な労務政策、組合弾圧政策にあり、その責任は挙げて郵政当局にあると言わざるを得ません。政府は、郵政事業の混乱が労働組合の違法行為によるものであるかのごとく言われていますが、まさに本末転倒、責任転嫁もはなはだしいと言わなければなりません。総理みずから「信頼と合意」を言う以上、かかる不当な労務政策を直ちにやめさせると同時に、その責任を明らかにし、政府の姿勢を正すべきであります。これらについて真剣に取り組む決意があるのかどうか、総理の御見解を求めます。
 さらに、婦人労働者の保護についてでありますが、わが党は、今国会に男女雇用平等法案を提案する予定でありますが、労基法研究会の保護切り捨てと平等実施の同時決着は問題であり、まず、憲法にある平等を優先させるべきだと考えますが、総理はいかがお考えでございましょうか。
 私は、「淡輪学園愛の家」という知恵おくれの子らの施設の理事長をやっています。これは、労働組合の役員をしていて、働く仲間の多くに呼びかけ、政府と違った血と心の通い合いが生まれ育っているものであります。私は、この子らの心と体のよみがえりをひたすらに願いつつ努めている中で、福祉とは決して施しでもなければ単なる助け合いでもない、まして、施設を建てさえすれば済むというものではない、この子たちのようなハンディを負った人たちの存在がごく自然な人間社会の姿なのであるとして受けとめ、彼らをみずからの分身として、はぐくんでいく社会をつくることだと確信しているのであります。たとえば、国立の福祉施設も全国に幾つかできましたが、舟はあっても船頭はなく、職場に誇りを持てなくて去っていく船乗りが後を絶たないという現実があります。各省間でなわ張り争いを繰り返す前に、やらねばならないことが山積みしていることを知らないとは言わせません。まして、国民に呼びかけて、総理、あなたの言うように「潤いのある人間の連帯」をつくろうということは至難の大業であります。なぜなのか。それは、一人一人を今日砂のようにばらばらにさせ、競争のるつぼに追い込み、ハンディを負った人たちを役に立たない者として隔離してきたのが、ほかならぬ経済中心の時代を組織してきたあなたたちだからであります。
 私は総理にただしたいのであります。あなたは、福祉の理念についてどのようにとらえ、政治の基本に据えようとされているのか。厚生大臣や厚生省に任せる前に、あなたは何を追求されたいのか、この機会に十分承っておきたいのであります。
 次いで、私は、「人間本位の社会」の建設を展望するとき、わが国が世界に例を見ない早いテンポで高齢化していく事態に基本的な焦点を置いて考えられなければならないと思います。
 大平さん、あなたは長い演説をされたけれども、人間のことから出発していないから、ここに目が据えられておりません。わが国の人口が二十一世紀初頭からいわゆる静止人口時代に入り、かつて地球上に経験しない高齢化社会を迎えると見られることは、今日の政治がよほどしっかりと受けとめねばならない問題であります。多くの人々が長い人生を歩むという喜ばしい人類社会の開幕は、国民一人一人の人生設計の問題であること以上に、家庭、企業、そして社会全体に対してさまざまな影響を与えることは想像にかたくないのであります。したがって、私は次の諸点を、まずお互いに確認し合わなければならないと申し上げます。
 それは、第一に、年金をもらうまでは健康で働いていられることを、空想ではなしに、現実に保障しなければなりません。
 第二に、年金の水準が「人間の尊重」を生かすに足りる、また、年金をもらいながらも新しい生きがいの場を設けていかなければなりません。
 第三に、これらの印金財源を進んで提供する立場の若い働く人々に、働きがいのある労働と負担にたえ得る賃金システム、また、一般的にも低賃金を排除する最低賃金制が欠かせないものとしてつくられなければなりません。
 第四に、競争競争で竹馬の友さえつくれない子供たちに、世代を支え合う共通の認識と自覚を高めるように、大人や、教育や、そして政治こそが体質を変えねばなりません。
 第五に、二世代の、老いた親と同居し、扶養しなければならない時代に、住宅や環境が保障され、ひとり暮らしや三十万を超える寝たきりの老人が守られなければならないのであります。しかも、これらは何年か先に対処すればよいという状況ではなくて、いま直ちに着手されねば間に合わないのであります。にもかかわらず、大平内閣はこれらに十分な配慮と対策がなされていないのであります。
 私は、以下、その焦点となる年金、雇用、医療の面にしぼり、課題を指摘いたしたいと思います。
 まず、年金についてであります。
 単に物価スライドをすれば足りるものではありません。進んで格差を是正し、最低をしっかりと保障しなければならない。老齢福祉年金がわずかに月一万八千円、いつまでこんな水準で放置しておくのですか。黒い翼の購入こそ取りやめて、今日まで戦争の傷跡を何らかの形で背負い、制度的にも不安定なまま老齢を迎えたこの人たちに、生きる希望の光を当ててあげるべきではありませんか。私は、最低月額四万円は直ちに保障されるべきであると考えます。そうして、年金水準の改善について緻密な年次計画を確立しなければなりません。それを可能にする公的年金制度の負担を含む改革について、お互いにまとめてまいろうではありませんか。低過ぎる定年を延長し、年金につなぐ方向は、少なくともここで直ちに内閣も確認すべきであります。
 次に、雇用についてであります。
 まず、六十歳以上への定年延長を明白に法によって企業に対し求めなければなりません。一方で中高年の失業者対策をと言いながら、働く意思と能力とは無関係に、五十五歳やそこいらの定年を理由に減量しようとする企業経営者に、厳しい警告を発すべきであります。延長を実施しない企業、中高年等の雇用率を満たさない企業への一切の国の財政、金融、税制にわたる特別措置は認められません。むしろ、雇用保険料を特別に引き上げるべきであります。また、減量やむなしの風潮は政府から改めるべきです。通産行政で減量経営を推進し、他方、労働行政で給付金を上げているこの縦割り行政を廃止をし、減量に当たっては、公的機関への届け出、協議という、企業専制を社会的にコントロールする勇気を国会は持たねばなりません。そのときこそ初めて、産業構造の転換も進めていくことができるものと深く確信するものであります。
 また、私は、一層企業に社会的責任を持たせるべきであると考えます。その最も基本となるのが、時間短縮、週休二日制の実施を初めとする仕事の分かち合いであります。ある都市銀行の調査によりますと、週休二日制・週四十時間労働、年次休暇の完全取得、時間外労働・休日労働の禁止により、約七百万人の雇用創出が可能だとしています。私は、総理が大蔵大臣のとき善処を約束した、金融機関が週休二日制の実施に踏み切るように、まず銀行法改正を、ここで総理、確認いたしたいのであります。
 また、国と自治体は思い切った雇用創出に当たるべきであります。雇用開発給付金で十万人というような前景気をあおる一方で、失業率が横ばいの見込みだと、恥ずることなく述べて、どうしてあなたは「近代を克服する」と言えますか。国自身も、たとえば重度福祉施設の介護に認めた一対一の原則、それをすぐ実施に移し、施設における入浴時間が一人二分そこそこであるものを、せめて五分ぐらいにまでするよう、福祉や生活に直結した要員措置をとろうではありませんか。そうして、地方自治体に十分な資金を提供し、一定の目標を示唆し、それぞれ雇用創出プランを、民主的な創意ある開発に加えた分権と自治によって具体化してまいろうではありませんか。
 次に、私は、総額十一兆円もの医療費の時代に、医療の荒廃を正すことが人間社会の生存にかかわる緊急な課題となっていることを、まことに遺憾に思うものであります。
 今日、医療は、もうかる事業としての枠組みに組み込まれ、良心的な数多い医師の存在や努力にもかかわらず、国民の信頼を決してつなぎとめていないのであります。医療は社会化されねばなりません。医療の社会化は、医師の社会的労働の価値を低からしめるものでなく、むしろ、無限に高めるものであり、所得の面でも、かえって人類最高の地位を確保されるべきものでありましょう。しかるに、開業医への医師優遇税制という他に例を見ない処遇の歴史に甘んじて、みずからの持つ社会的な役割りを忘れ、保険医という要請と患者という弱い立場の人間を盾に圧力をかけるがごとき一握りの医師会幹部のあり方は、一体国民のどれだけが支持しているのでしょうか。私は、一職能のエゴイズムのために政治があるのではないことを天下に宣言し、医師優遇税制の抜本改正をまず図るべきであります。いわんや、自民党・日本医師会間で昨年の末取り交わされた医療政策に関する基本方針の意味と具体的内容、及び、これが形ばかりの医師優遇税制是正の見返りと言われていることについて、昨日のわが党の代表質問に対する答弁は、全く不明確、無責任なものであり、断じて納得できません。改めて明確な答弁を求めます。
 政権を支える与党がこのように予算関連の重要法案を無視している以上、かの健保法改正案を一たん取り下げるべきが筋ではありませんか。総理、いかがでしょうか。
 私は、決して分立した今日の健康に関する保障のあり方を肯定しているものでなく、むしろ、それらの不公平を是正するに勇気を持って当たる所存であります。しかし、その改革は、断じて今日の一部職能団体幹部との野合によって実を結ぶものではないのであります。僻地や救急の医療、そうして医療被害の例を出すまでもなく、現実に国民の期待に背いている製薬産業を含む医療の荒廃ぶりを改める延長線にしか実現し得ないと確信してはばかりません。
 以上、私は急ぎ高齢化社会を展望した明確な総合的計画の樹立と緊急な課題を述べたのでありますが、大平さん、あなたはこれを実施できないと言われましょうか。それでどうして経済中心をやめて福祉社会の建設と言うのか、ひとつ、はっきりさせていただきたいものであります。
 さて次に、私は、情報化社会と言われる現代において、内閣と国会が国民に進んで責任を持たねばならないことがあると考えるのであります。
 これまで生産手段や労働力ばかりに目が向いていた総理も、文化と言う以上、この際、情報の持つ社会的意味合いの重要性を天下に呼び覚ましていかなければならないのではありませんか。そうして、「田園都市構想」と言う以上、情報が権力や大企業、そうして限られた都市に集中していることを改めていかなければならないと申し上げておきます。
 私は、コンピューターと通信回線による情報処理のシステム、つまりデータ通信システムが発達をし、産業はもちろん、行政、教育、医療など、国民経済のあらゆる分野で使われ、国民生活に重大な影響を及ぼすものとなっていることに留意したいのであります。
 このデータ通信について特に注目すべきことは、単に事務処理の効率化や省力化にとどまらず、それを利用するすべての活動がデータ通信によって制御されるということであります。とりわけ、最近の技術革新のもとで幾つものシステムを結合するコンピューター・ネットワークの方向が指向され、その制御範囲はきわめて広域化しつつあります。ここに管理社会化の問題があるのでありますが、同時に、個人の情報を扱うデータ通信システムでは、当然プライバシーの侵害が問題になり、欧米諸国では、行政や企業においても、コンピューター利用の常識としてプライバシー保護が言われ、法律も制定されているところであります。
 さらに近年、宇宙衛星が利用されるようになって、データ通信システムは海を渡り、空を飛び、国境を越えて稼働することになり、コンピューター・ネットワークは地球を覆う時代を迎えているのであります。たとえば、アメリカのGE社のデータ通信サービスは今日二十一カ国、五百都市に及んでいます。国際的ビッグビジネスの代表格であるIBMは、多国籍企業の利便を生かして、データ通信分野への進出をねらっています。
 このように、データ通信は急速に国際化の傾向を強めており、これによって、情報の流通もまた国際化し、プライバシー問題も国際間のデータ・フローの問題となっているのであります。つまり、日本にいながらアメリカのコンピューターが利用できるという便利さは、見方を変えて言えば、アメリカのデータ通信システムによってわが国が、情報はもちろん、分析や判断までコントロールされる、すなわち、データ通信システムを他国に依存することは、わが国が他国の情報植民地になるばかりか、まさにわが国の権益にもかかわる問題となるのであります。EC各国が共同のデータ通信システム、ユーロネットを開発したのも、アメリカの脅威に対抗しようという以外の何ものでもありません。
 わが党は、早くからこのことについて指摘をし、データ通信事業のあり方について国としての基本的な政策と一元的な対応の必要性を強調してまいったところであります。さきに、第八十四回国会における機情法制定に当たっても、この趣旨が各党の賛同を得て附帯決議されたところであります。しかるに、この附帯決議を無視したデータ通信振興法案なるものが上程されると取りざたされていますが、国としての基本政策を持たないまま、一省庁の事業振興法といった程度では、とうてい国際化の趨勢に対応し得るものではありません。必ずや将来に禍根を残すことは必至と言わなければなりません。各省庁間のなわ張り争いや、事業振興といった狭い視野でなく、この際、機情法に対する附帯決議に基づいて、速やかに国としての基本的な政策をプライバシー問題を含めて確立することが重要だと考えるものであります。そのことがない限り、データ通信事業の真の発展と国民生活への寄与はもとより、情報化社会に責任を持つことはできがたいと考えます。総理の御所見を伺います。
 最後に、私は、政治家たるの倫理として、総理の政治資金に関する所信と、議会制民主主義の上で遷延することの許されない本院定数是正に関する考えを伺いたいのであります。
 すでに本院でも、このたびのグラマン・ダグラスの疑惑究明が論ぜられ、総理の答弁を見守っだものの、ついに毅然たる宰相の態度が示されなかったことは、まことに遺憾とするものであります。確かに、政治は権力による価値の付与と価値の剥奪であり、利権が横行する条件を色濃く持っているでしょう。だからこそ、それにおぼれない政治家たるの倫理が問われているのであります。その責任はまことに大きいと言わなければなりません。
 私は、議員の席を得て以来、みずからの歳費を含む収支の実態を毎年公開してまいりました。総理、あなたは、三木総理以来の伝統を踏まえて、資産の公開をされたことを知っています。しかし、このようなわずかな試みだけで、政治不信のまなざしを避け、悲劇的な事実をぬぐい去ることはできません。よろしく国会議員はみずからの歳費と資産の公開を行って、毎年、国民に必要欠くべからざる経費の存在も御承知を願うとともに、他方、一点の曇りのなきを明らかにすべきであると考えますが、総理はこれにリーダーシップを発揮するお考えはないか、伺いたいのであります。
 また、本院地方区定数が改定されず、国民の一票の重みに著しい軽重の存在する事実は総理も十分御承知のとおりであります。多数党の党利党略を捨て、あなたが「信頼と合意」をもととした「安定と調和」を真に求められるのであれば、まず、この定数是正について、すでに各野党が合意する諸点に限ってでも実施するよう、野党総体が代表する国民多数の意思に基づいて要求いたします。総理、あなたの所信を鮮明にお示しいただきたいのであります。
 以上で私の質問を終わるに当たり、総理みずから経済中心の時代でないと言われたことを改めて心にとどめ、そして行政がよもや本末転倒、「冠履を貴んで頭足を忘る」のたぐいに陥りはしない新年度であることを確認いたし、代表質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
○国務大臣(大平正芳君) 片山さんの第一の御質問は、平和憲法の理念を否定する軍備拡大への道を歩んではならないと、所見を求められました。わが国の憲法が平和主義を基調としていることは言うまでもございませんが、自衛のための最小必要限度の自衛力を保持することはこの憲法の平和主義と矛盾するものではないと考えております。政府としては、この範囲を超えて防衛力を拡大するというようなことは慎んでまいるつもりであります。
 憲法第九条を次の世代にも継承するようにという趣旨の御提言でございます。平和主義を初めといたしまして、憲法の基本原則でありまする民主主義、国際協調主義、人権尊重等の思想は、あくまでも堅持すべきものと考えております。
 国連で安保の解消、軍縮、非核等について私自身が訴えたらどうかという御提言でございます。わが国は、従来より、国連その他の国際場裏におきまして、平和憲法のもとに平和国家として、また、核兵器不拡散条約の加盟国として、平和に徹するわが国の姿勢を明らかにいたしますとともに、核軍縮を中心とする軍縮の促進を強く訴えてきておるところであります。今後もその促進を強く訴えていく所存であります。
 日米安保体制を基礎とした米国との友好協力関係はわが国外交の基軸でありまして、わが国はもちろん、アジア、ひいては世界の平和と安定、繁栄のために大きく寄与しておると確信いたしております。政府としては、今後とも引き続き安保条約を堅持していく所存であり、国連の場等で安保解消を訴えるというような考えは持っておりません。
 戦時災害を受けた方々に対しまして具体的な温かい施策を考えなければいけないじゃないかということでございます。一般戦災者の援護につきましては、従来から一般社会保障の充実強化の中で対処していくということが適当であると政府は考え、そのラインに沿って努力をいたしておるつもりでございます。
 人間本位、文化重視、日本型福祉社会の内容を明らかにせよということでございました。私は、経済の成長が進みまして、それには相当の成果があったことは認めるものでございますけれども、経済成長が減速し、また、成長に伴うもろもろのデメリットが出てまいりましたことを認めなければならぬと思います。これからの時代は経済至上主義に基づいて事柄を解決することができなくなった、人間性を尊重して文化を充実するということを政治の基本に据えなければならなくなったという趣旨のことを述べたのでございます。それはまた同時に、日本型福祉社会を形成する場合の基本の軸にならなければならぬと考えております。
 経済は、それ自体が目的か、それとも福祉充実の手段と認識すべきかどうかという御質問でございます。経済それ自体は目的とは言えないでありましょうけれども、経済の健全な発展は、国民福祉を充実し、豊かで安定した国民生活を実現するための基礎的な前提条件であると心得ております。
 福祉元年から数えましてことしは七年目に当たるけれども、福祉に対する施策は乏しいじゃないかという意味の御質問でございました。社会保障は国民生活安定の中核と考えておりまして、これまでも必要な施策の充実を着実に図ってきたつもりでございますが、五十四年度の社会保障予算におきましても、社会的経済的にハンディキャップのある方々に対する施策の充実を初めといたしまして、各種年金、手当の引き上げ等、各般の施策の充実を図っておるつもりでございます。福祉をないがしろにはいささかもしていないつもりでございます。
 社会保障推進の計画及び具体的な目標を明らかにせよということでございます。雇用、財政等について厳しい状況であり、本格的な、御指摘の高齢化社会を迎えておるわけでございまして、将来の社会保障のあり方につきましては、国民の合意を得るためには長期的な展望を必要とすると考えておるわけでございまして、現在、厚生省におきましても、この問題を中心に御審議を願っておるわけでございます。その審議の状況を見ながら具体的な手法を検討してまいりたいと考えております。
 大企業の専制で市場メカニズムが働いていないではないかという御指摘でございまして、自由市場経済におきましては、そのままほうっておきますと御指摘のような懸念があるわけでございますが、私どもは、公正な競争社会、競争原理を働かすために、独禁法を初めといたしましてもろもろの施策を講じまして、さようなことにならぬように努めておるわけでございまするし、また一方、消費者の利益の擁護につきましても施策の充実を図っておるところでございまして、市場の奔放な行動に屈しておるわけでは決してございません。
 福祉の理念についてのお尋ねでございます。わが国が目指す福祉社会は、自立自助の精神、思いやりのある人間関係というものを基盤としながら、これに適切な公的な福祉施策を加味したものでなければならぬと私は考えております。
 それから、高齢化社会を展望いたしましていかなる課題認識を持っているか、高齢化社会に向けて年次計画を持った対応が必要であると思うがどうか、こういう趣旨の御質問でございます。仰せのように、いま本格的な高齢化社会が進んでおりまするし、これに対しまして、雇用対策の面からも、あるいは社会保障の面からも真剣に対応しなければならないことになっておりますことは御指摘のとおりでございます。そしてまた、これを年次計画的に対応していかなければならぬという政策の展開に当たりましては、年次計画的な対応が必要であるという御指摘も片山さんのおっしゃるとおりだと思うのでありまして、そういう趣旨に沿いまして私どもも高齢化社会に対応する措置を順次構えてまいるつもりでございます。
 それから、世代間の共通認識を深めるため二世代の住める住宅環境をつくれと、こういう御要求でございます。政府は、第三期の住宅建設五カ年計画の策定に当たりましては、特に住宅の質の向上に力点を置いたつもりでございます。老人同居世帯等につきましても、家族構成に応じた良好な水準の住宅を確保するよう努めておるところでございます。老人の同居する世帯に対しましては、現在、公営・公団住宅への入居の優遇、住宅金融公庫の割り増し貸し付け等を行っておりますけれども、今後ともこれらの施策の充実を図ってまいるつもりであります。
 共済年金の支給開始年齢の引き上げは、そういう企てがあるが、これはやめたらどうかという御趣旨の御質問でございます。共済年金の支給開始年齢の五十五歳から六十歳への引き上げは、将来の年金財政の健全性の確保という点を考慮いたしますと、早期に着手することが妥当であると政府は考えております。
 金融機関の週休二日制を実施せよということでございます。金融関係の週休二日制の問題は、法制面の手当てを要するほか、一般経済取引その他社会経済全般に与える影響はきわめて大きいものと考えております。非常に広範囲にわたる影響がございますので、目下関係省庁の間で慎重に検討しておるところでございます。政府としては、昨年四月に当院大蔵委員会理事会におきまして本件に関して行われた合意の趣旨を尊重しつつ検討し、かつ対処していきたいと考えております。
 自民党と医師会との間に取り交わされたメモの性格と内容を明らかにせよという御質問でございます。昨年十二月末自民党の齋藤幹事長と日本医師会の武見会長との間において合意された事項は、一つはプライマリーケアの重視、二つは政府管掌健康保険と組合管掌健康保険の間の負担・給付の不公平の是正という二点であったと承知をいたしております。一のプライマリーケア重視の方向につきましては、その重要性にかんがみまして、プライマリーケアのあり方を十分検討しつつ、適切な施策により対処してまいりたいと考えております。また、二の政府管掌健康保険と組合管掌健康保険間の不公平の是正も、きわめて重要な内容を含んでおると存じます。したがって、政府としては、自由民主党において結論が出た段階で、それを伺った上、慎重に対処したいと思っております。
 情報化社会に当たりまして、一国の権益に重大な影響を及ぼすようなデータ通信システムが普及してきた状況にかんがみまして、外国からの情報植民地化を防ぐためにプライバシーの保護を含め基本法をつくる考えはないかというお尋ねでございました。情報の働きの重要性につきましては私もよく認識いたしておるつもりでございます。また、国際協調時代における諸外国との情報流通はどうあるべきかについて、あるいはプライバシーの保護のあり方について、基本的人権の保障と表現の自由との関係をどのように考えていくかなどについては、きわめて重大な関心を持っております。このような課題に対しまして、高度に発達したわが国の情報化社会にふさわしい基本政策を確立すべく、今後とも努力をしてまいるつもりでございます。
 最後に、全国会議員の資産、歳費の公開を行うようリーダーシップを発揮するつもりはないかということでございます。私は、この種の問題は各議員の良識にまちたいと考えております。
 それから、参議院の定数是正の問題でございますが、これにつきましては、各党の間で公正な結論が出ることを期待いたしております。(拍手)
   〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕
○国務大臣(橋本龍太郎君) 片山先生の御質問のうち、総理の答弁に漏れておりました点、補足して御説明申し上げます。
 最初に、ひとり暮らしや寝たきり老人対策を充実せよというお話でありました。先生御承知のように、ひとり暮らし老人及び寝たきり老人に対しまして、従来から家庭奉仕員の派遣事業でありますとか、あるいは福祉電話の設置事業、寝たきり老人の短期保護事業等の在宅福祉対策の充実を行ってまいっております。それと同時に、老人ホーム等の施設の整備拡充を図ってまいりました。そこで、昭和五十四年度におきましては、これらの施策の一層の充実を図り、同時に、新たに在宅の虚弱の老人に対し、老人ホームを利用して、生活指導、食事、入浴等の各種サービスを行い、あわせて介護者の労苦の軽減を図ることを目的としたデーサービス事業を創設することといたしております。先生御指摘のとおりに、ひとり暮らしの老人、また、寝たきり老人に対する施策は、健康なお年寄りの生きがいの創造対策と並んで、老人対策のきわめて大きな課題でありますので、今後ともに努力してまいりたいと考えております。
 また、「人間の尊重」に足りる年金水準を目指せ、年次計画をつくれ、同時に、最低月額四万円の老齢福祉年金をという御意見をちょうだいをいたしました。御承知のとおりに、年金制度は、現在、老後の所得保障の中心として、国民の間にきわめて強い関心を持たれておることは事実であります。そこで、毎年、政府はそれなりの努力を払いながら改善をしてまいりました。そして、御承知のように、消費者物価が五%未満の上昇率でありましたけれども、特例をもって、本年、厚生年金また拠出制の国民年金等、物価スライドを実施いたしたところでございます。おかげさまで一応それは実現を見ることができました。また、老齢福祉年金、これは消費者物価の上昇率を超えて九・一%のアップをいたしましたけれども、それでも先生の四万円という線には実は半分に満たない一万八千円であります。ただ、そこで先生お考えをいただきたいことは、実は拠出制の経過年金の五年年金との間に二百八円しか、すき間がなくなっております。そこで、今後の問題として、一つは、この財源の問題と保険料を掛けた方とのバランスをどうするかという問題がございまして、現在、社会党等からも御意見をちょうだいしておりますが、年金制度基本構想懇談会において御審議を願っており、近いうちに答申をいただくという状況でありますので、それを踏まえて、また慎重な検討をいたしたいと考えております。
 また、先生が御自分で施設経営の実態から出た御意見として、重障児の福祉施設について入所者の処遇を十分考慮した要員配置をとれという御指摘をいただきました。重症心身障害児施設につきましては、措置費の上では一応適切な児童処遇が確保されるよう必要な手当てをしているところでありますが、重症心身障害児の特殊性にかんがみて、むしろ今後ともに積極的なそうした御意見をお寄せいただき、それを取り入れながら私どもは改善に努めてまいりたいと存じます。
 また、先生から医療の社会化を図れという御意見をちょうだいをいたしました。しかし、これは、私どもは自由主義社会というものを基調としておる政党の一員でございまして、医療の面におきましても自由開業医制というものを中心に据えながら、公私の医療機関がそれぞれの機能を連携を持って国民医療の確保に努めておるところでございます。今後とも、民間医療機関の活力を引き出しながらも、必要な分野について国公立の医療機関の機能を整備することによって、私どもは、救急医療あるいは僻地医療、また、各種の難病対策等を中心とする国民医療の確保にかかってまいりたいと考えておる次第でございます。
 また、先生から、健康保険法の改正案を取り下げるべきだという御意見をちょうだいをいたしました。しかし、一昨年十一月政府が国会に対して提示をいたしました十四項目にわたる医療保険制度の改革の基本的な方向に基づいて、負担の公平、また給付の平等、すなわち社会的な公正を確保すべく策定し、その第一段階として国会に提出をいたしました健康探険法改正案でありますので、どうか慎重に御審議をいただき、御可決あらんことをお願いをいたします。(拍手)
  〔国務大臣栗原祐幸君登壇、拍手〕
○国務大臣(栗原祐幸君) 一番最初の御質問は、社会福祉等の財源を受け持たなければならない若い人たちの働きがいがある賃金体系、これを考えるべきじゃないかと、なお、最低賃金についても考えろと、こういう問いでございます。御案内のとおり、わが国は年功序列賃金体系でございますから、したがいまして、いまの若い人たちがある意味において不満足だというようなことがあることは事実でございます。しかし、最近は、この体系に対しまして、個人の仕事や能力、そういうことを勘案をいたしまして、能力的な賃金体系もできつつございます。しかし、いずれにいたしましても、賃金の問題というのは労使の自主的な判断に任すべきであるというのが私どもの現代における考え方でございます。それから、民間の労働者に最低賃金が適用されておりますが、その金額も逐次毎年改定をされておりまするので、今後も、一般の賃金動向等の変化に応じまして、最低賃金の問題は解決をしていきたい、こう考えております。
 それから、定年制を少なくとも年金の受給できる年齢まで延長すべきだと思うがどうかということにつきましては、同感でございます。少なくとも、厚生年金にリンクするように行政指導を努めたい、強めたい、こう考えております。当面は六十歳定年ということを一般化するということでやりたいと考えております。
 それから、六十歳定年を確立して、それ以下の定年制を行う企業については警告をしたらどうか、こういうことでございますが、いままでから申し上げておりますとおりに、いわゆるいままでの企業の年功序列賃金体系というものがございますので、これとの関係で考えなきゃならないということでございまして、私どもといたしましては、明年度の五十四年度の予算で定年延長奨励金制度の活用をするとか、あるいは業種別の定年延長推進会議の開催等をいたしまして、指導においてやっていきたい、こう考えております。いまのところ、警告をするというようなことよりも、指導を徹底さしたい、こう考えております。
 それから、定年延長をしない身体障害者あるいは高年齢者、身体障害者あるいは高年齢者の雇用率ですね、そういったものを達成していない企業については、あらゆる援助を、国のあらゆる援助をとどめるべきじゃないかということでございまするけれども、これも、国の助成というのはそれぞれ目的があってやっておることでございまして、いま直ちにこれらの助成をとめるということは適当ではないのではないかと、とう考えております。それよりも、先ほど来から申し上げておりますとおり、年功的な賃金体系、そのネックをいかにして是正するかということが急務ではないかと、こう考えております。
 なお、週休二日制あるいは時間短縮、こういったことについて実施すべきじゃないかということでございますが、これは、きのうもお答えをいたしましたとおり、こういうことは長期にわたりまして雇用の維持、そういうものに大いに役立つと思いますので、これはひとつ行政指導で徹底をしていきたい。法律によることはいまのところ考えておりません。
 なお、総理に対しまして男女平等法案について見解を問うということでございますけれども、せっかくの御提案ではございますが、いまのところ、私どもといたしましては、労働基準法研究会の報告を尊重いたしまして、関係審議会で適切な議を経まして、その上で適切な処置をいたしたいと、こう考えておりますので、御了解をいただきたいと思います。
   〔国務大臣白浜仁吉君登壇、拍手〕
○国務大臣(白浜仁吉君) 今年末年始の郵政労使関係の問題については、私から答えさせていただきます。
 今年末年始の労使交渉においては、郵政事業の事業運営、人事管理の基本にかかわる重要な問題が争点になり、このため交渉が難航し、また、この間に組合の違法な闘争もあって、私どもとしては種々対策を講じながらも、郵便が大変混乱し、国民の皆様に御迷惑をおかけする結果となりました。この機会に国民の皆様に深くおわびする次第であります。今後は、労使双方がその社会的責任を十分自覚し、ルールに従い、信頼の上に立って平和裏に話し合いを進め、労使お互いに正すべきは正しつつ、相互の理解と信頼を深め、労使関係の正常化に努めてまいる所存であります。(発言する者多し、拍手)
   〔国務大臣澁谷直藏君登壇、拍手〕
○国務大臣(澁谷直藏君) すでに総理から答弁があったわけでございますが、補足して私からも御答弁申し上げます。
 一つは、政治家個人についても政治団体と同様にその収支を公開すべきではないかと、こういう御意見でございます。御承知のように、わが国の政治資金規正法は、政治家個人に対しては収支の公開を求めない、こういう点では一貫しております。昭和五十年の法改正においてもこの立場は変わっておりません。しかし、そうでございますので、今後これの規制措置をどうするかということについては慎重に検討してまいりたいと、かように考えております。
 それから参議院地方区の定数是正の問題でございますが、この点は、先般総理の答弁したとおりに考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(加瀬完君) 粕谷照美君。
   〔粕谷照美君登壇、拍手〕
○粕谷照美君 私は、日本社会党を代表して、教育問題を中心に、婦人労働問題、農政問題について質問をいたします。
 質問に先立ちまして、ダグラス・グラマン航空機不正輸入事件に関して、母親が家庭で子供に、教師が学校で子供たちに、日本の政治を信頼し、政治家を尊敬する教育ができるように、総理の毅然たる態度を求めたいのであります。
 政治の責任者が百万言の言葉を費やして道徳教育を説くよりも、この汚職の根源を大胆にえぐり出し、政治的責任を明らかにすることこそ、真に国民の信頼と合意をかち得る道と信ずるものでございます。総理の具体的な御決意をお願いいたします。
 第二に、大平内閣の教育に対する基本姿勢について伺います。
 今日、わが国における進学率は、高等学校九三%、大学三八%に達し、今後も上昇は続くものと思われます。しかし、残念ながら、このことを手放しで喜ぶわけにはまいりません。進学率とはうらはらに、教育の荒廃と言われる事態が進行しているからであります。先日の水戸における日教組の教育研究集会では、子供の、授業についていけない問題、非行の問題、健康が破壊されている問題のほかに、自殺をどうして防ぐかということが討論になっております。政府の青少年白書を見ましても、一九七七年には七百八十四人の未成年者が自殺し、その三割弱が原因を学業にあるとしていると報告されているのであります。このようないたいけな子供を自殺にまで追い込んでいる教育の荒廃を生み出している原因は一体何でありましょうか。私は、人間の価値が学歴や出身学校で判断されるという誤った学歴主義と、そのための差別、選別を行う学校教育に根差していると指摘せざるを得ません。文部大臣の御見解をお伺いいたします。
 文相は、一昨年、参議院予算委員会におきまして、戦後教育の失敗の原因の一つに、教育勅語を廃止したことを挙げております。そしてその後も、その復活が無理ならば教育憲章をつくりたいという趣旨の発言をしておられます。国会において排除、そして失効の決議を受けたこの教育勅語を、現職の大臣がわざわざ言挙げするのは、国会軽視、国会無視と言わざるを得ません。戦後教育の評価と教育勅語について、文部大臣、特に教育の根幹にかかわる問題でありますから、政府の見解を総理にもお願いをしたいと思います。教育界に信頼と合意は最も大切でありますので、具体的に、総理が教育に対する政治の側からの関与はできるだけ控えたいと言われたことを御説明いただきたいと思います。
 次は、入試制度についてであります。
 まず、高校について申し上げます。冒頭に触れましたように、高校は進学率が九三%を超し、準義務化されたと言うべき状態です。もはや、希望者の全員が入学することを保障する設置義務にすべき段階だと考えるのでありますが、このことは、中学校以下の教育を受験教育から解放して、生き生きとしたものにしたいからであります。文相は、現在行われている高校受験地獄の改善にどのような具体的な施策をとられるかを質問いたします。
 去る一月十三、十四の両日、初の国公立大学共通一次試験が行われました。諸悪の根源は大学入試にあると、意欲的に入試改革に取り組んでこられた文相であります。文部省在任当時に、進学適性検査、能研テストという二つの共通テストを実施されました。いずれも数年間で廃止になったという経緯も十分に御存じのはずであります。もともと共通一次試験実施は、高校教育の正常化、大学間格差の解消に目的があっただけに、高等学校がカリキュラムを変更し、共通一次シフトをしかざるを得なかったことや、頻繁な業者テストを初め、新たなる受験産業の進出など、以前から憂慮されていたことが現実のものとなったことを指摘しなければなりません。大臣が従来主張されておりました資格試験の構想は、わが党も政策として発表しております。しかし、参考にしてきた先進国におきましても、進学率が上昇し、新たなる問題が出てきているのであります。一体、大学入試センターは、大学入学試験のあり方について研究するという本来の設置目的を果たすために十分な機能を備えているのでありましょうか、はなはだ疑問になってまいりました。単なる共通一次試験の実施機関となっていたのではないでしょうか。文相は、今回の共通一次試験の結果と高校教育に及ぼした影響にかんがみ、今後の大学入試のあり方をどのように改革しようとされているのか、基本的構想を明らかにしていただきたいのであります。
 第三は、国際児童年と子供の人権についてであります。
 児童憲章第一条は、「すべての児童は、心身ともに、健やかにうまれ、育てられ、その生活を保障される。」と宣言しています。しかし、いま児童を取り巻く状況は、この憲章が述べている理念からは余りにも遠いものと言わざるを得ません。六〇年代から展開された間度経済成長政策は、子供たちの生命、健康安全を侵害する危機的な状況をつくり出しました。たとえば、サリドマイド、砒素ミルク、水俣、四日市ぜんそくなど、大企業や政治の責任がいま痛烈に問われているではありませんか。国際児童年を記念して種々の行事が行われることは必要であります。しかし、国際児童年本来の趣旨は、行事をやることにあるのではなく、児童の権利をどのように臨めていくか、その施策を講じるところにあると私は考えますが、総務長官のお考えを具体的にお伺いいたしたいと思います。
 次に、私は、国際児童年に当たり、政府が児童の就学前の教育、保育の充実のためにどのような施策を講じているかを伺います。
 御存じのように、乳幼児の幼稚園、保育所に在籍する者の比率は高まっています。しかし、まだまだ希望者の全員の入園を満たす数字とは言えません。しかも、ここには、幼稚園と保育所、公立と私立の格差問題があるわけです。保育料一つをとってみましても、東京で五十四年度には最高年額三十万円、最低でも十三万一千円と、きわめて大きな差があります。幼稚園児を持った若い父母のこの保育料に対する大きな家計費の圧迫に対して、どのように政府はこたえていくのでしょうか。私は、国際児童年に当たり、すべての子供たちに就学前の教育と福祉を一元化して、子供の発達を保障する段階に来ていると考えますが、政府は、それに向けての具体的プランを示すべきであろうと思います。文部大臣の御見解を賜りたいと思います。
 次は、児童年のことし四月から実施される養護学校義務化の問題に関係して質問いたします。
 私が文教委員派遣で昨年訪れました大分県立石垣原養護学校の校長室に、不自由な体で何カ月も何カ月もかかって仕上げた子供たちのすばらしい切り絵や刺しゅうなどの作品が展示されていました。校長先生は、このりっぱな作品を見てアメリカから視察に来られた方がぜひ譲ってくれ、こう申されましたけれども、だれ一人として手放さなかった、命を込めてつくったこの作品はみんなお母さんへの形身だ、遺品なのだと言って手放さないのですと説明をされました。また、他の学校の先生からは、筋ジストロフィーの青年が、死を予期しつつ、最後までベッドの中で素粒子論に関する文献を読んでいたという嵩高なお話も伺いました。障害児も発達への要求に限界はありません。教育の任務もまた尽きることはないのであります。
 憲法は、すべての国民にひとしく教育を受ける権利を保障しております。また、学校教育法は、障害児の就学権を保障するための学校設置義務を規定しています。にもかかわらず、二十六年間もの長い閥、多くの障害児は公教育から差別され続けてまいりました。ようやく迎えた養護学校義務化でありますが、ここに重大な問題が生じております。言うまでもなく、養護学校義務化とは、養護学校に何が何でも行かなければならない就学義務ではないはずであります。このことは、前砂田文相もたびたび国会答弁で明らかにしているところであります。しかるに、その後の文部省の通達を見ますと、その原則があいまいになり、実際上本人や親の意思を無視した振り分けが全国的に行われ、関係者の間でトラブルが起きているのはまことに遺憾にたえません。文部省はそういうことがないように具体的な指導をすべきであると思いますが、大臣の明確なる御答弁をお願いいたします。
 第四に、一人一人にわかる授業をするために、その条件の一つである学級編制基準の問題に移ります。
 子供が持つさまざまな能力も、それを引き出す条件に恵まれなければ、十分に花開くことはありません。御存じのように、わが国の一クラスの児童生徒数は四十五人を上限としております。これは、アメリカの小学校三十人、中学校二十七人、イギリスの四十人と三十人、フランスの初等科一年生二十五人、その他が三十人、中学校が三十人、西ドイツの四十人に比べても、はるかに劣っているわけです。つまり、わが国の一人の教師は、諸外国に比べて実に大ぜいの子供を抱えて悪戦苦闘しながら教育をしているわけです。したがって一学級の定数を四十名以下にという要求が高まってきたのは当然なことであります。私は、内藤文部大臣が昨年の十二月に日教組の槇枝委員長と会談をされて、学級編制基準の改善についての合意がなされたことに対して敬意を表するものであります。国民は、政府が、その後の衆議院文教委員会の定数小委員会報告を踏まえて四十人学級のための第五次計画は来年度から実施するのか、また、何カ年計画で行うのか、注目をしているところであります。文部大臣、四十名に最終的にするのか、第五次計画は来年度から始まるのか、この具体的な実施の方針について明確な御答弁を、あわせて、総理の教育条件整備への御決意もお願いをしたいと思います。
 第五は、家計を脅かし続ける教育費の高騰についてでありますが、昨年末発表されました文部省の教育費調査を見ましても、受験戦争時代を生き抜くための高額な教育投資の姿が浮き彫りにされています。また、総評の昨年の春闘資料によりますと、生活が苦しくなったと答えた世帯は六一・三%ですが、子供にかける費用を切り詰めていると答えたのはわずかに一二・四%にすぎません。希望する教育を経済的な理由などによって受けられなかったために非常に苦労してきました労働者が、せめて子供にだけは人並みの学校を卒業させたいとがんばっている姿が如実に示されている数字であります。憲法二十六条は「義務教育は、これを無償とする。」と高らかにうたっておりますが、その原則に逆行して父母負担が増大することはきわめて問題があります。特に、大蔵省は――大蔵大臣、よく聞いておいてください。予算編成の時期になると、必ずと言っていいほど、小中学校の教科書を無料から有償にしたいという意向を打ち出しておりますが、全く遺憾な話であります。文部大臣は、このことについてどのようにお考えになられますか。
 一方、所得階層別に全大学生の出身階層を文部省の学生生活調査報告によって調べてみましたところ、五十一年度の場合、全学生の約半数は最も高い所得層からの出身学生であり、しかも、その比率は、六年前に比べまして〇・四%も増加をしているのであります。また、最も低い所得層からの大学生はわずかに七・二%を占めるにすぎません。同じく、六年前に比べてみますと、この層からの学生は一・四%も減っているのです。いまや、貧しい者の大学進学が困難になり、金権教育の復活と言っても過言ではないと思います。
 私は、教育基本法第三条、教育の機会均等の原則が奪われようとしていることを強く指摘しておきたいと思います。
 五十四年度も、国立学校の入学金、検定料の値上げが予定されております。私立大学では、全私立の七割に当たる二百校が学生納付金の大幅な値上げを発表し、その平均額は六十五万円で、国立の三倍を示しております。特に、私立医科系の平均七百十万円、最高千五百三十万円、歯科系の平均八百六十七万円と最高千四百五十万円という天文学的な数字は、教育の機会均等を否定するものと言わざるを得ません。確かに、政府は奨学金の引き上げや枠の拡大、私学助成の拡大を計画をされております。しかし、この程度のことでは教育の機会均等を保障するものとは言えません。文部大臣は、この措置によって低所得者層の大学進学激減の歯どめができると思っておられますか、御意見をお伺いいたします。
 あわせて、前々から指摘されておりましたが、二年前の二月六日、岐阜歯科大学入学の内定通知を受けました予備校生が、父と母が金策に走っている姿を見るにたえないという遺書を残して、合格通知が来た日にガス自殺をしたという痛ましい事件がありました。これを契機に、裏口寄付金の徴収や不明朗な入学者の選抜方法、黒い疑惑に満ちた、およそ教育の場にふさわしくない事実が次々と摘発をされました。このような状態をつくり出してきた一部の悪徳学校を私は調査してみました。必ずと言っていいほど自民党の議員が役職員名簿に顔を出しているではありませんか。まことに残念なことであります。また、国会対策費なども公然と支出をされているところもありました。国民の高まる教育への要求をいいことにして、不正きわまりない金もうけ主義の学校屋の跳梁に対し、文部大臣の具体的な対処をお伺いいたしたいと思います。
 教育問題の最後に、生涯学習について見解を述べ、質問をいたします。
 政府は、今般放送大学の本年十月設立を決定しました。放送大学は、病気や家貧しきがゆえに学校に行けなかった者、女であるがゆえに大学へ行けなかった者などの多くの国民の高等教育を受ける機会を広げ、また、生涯学習の一翼を担うものとして期待され、注目も浴びております。この点については、わが党も賛成するにやぶさかでありませんが、放送大学の基本的性格や運営のあり方については、わが党ばかりではなくて、国民の中からも大きな不安の声が上がっております。政府は、この基本問題についてどのような考えで国会に提案をされようとするのか、明らかにしていただきたいと思います。
 最後に、放送大学とも関連いたしまして、国民の生涯学習権を具体的に保障する問題の一環として、早急にILO百四十号条約を批准して、教育有給休暇制度を実現すべきであると考えますが、文部大臣、労働大臣のお考えを伺います。
 次に、婦人労働政策について伺います。
 日本の職場には、男女差別定年制、共働き退職勧奨、夫の管理職昇進をえさにした妻への退職強要など、女性にのみ行われる差別事件は枚挙にいとまがありません。たまりかねた婦人たちは、住友セメントの鈴本節子さんの結婚退職事件を初め、若年定年制、共働きやパートタイマーの解雇のケースなど、次から次へと裁判闘争に持ち込み、そのほとんどが勝訴しているわけです。このことは、経営者側が違法行為をしていたということであります。しかし、同じ違法行為であっても、訴訟を起こさない人には不当な雇用差別がそのまままかり通るというのでは、納得できません。労働大臣、このような男女差別的労働条件の全国的な状況、政府がこれにどう対処していくかをお伺いしたいと思います。
 次に、賃金の男女差別について申し上げます。
 最近、三和銀行の男女差別賃金が労基法四条違反ということで、女子銀行員はさかのぼって二億六千万円の賃金支払いを受けるという勝利をかち取っています。秋田相互銀行、第一勧業銀行浜松支店なども同じ事例であります。このように多くの事例があることは、労働行政への不信を増大させています。労基法四条違反をなくするために、労働大臣は、男女同一賃金についてどのように実現をしていくかという具体的な方策を明らかにされたいと思います。
 このような情勢の中で、昨年十一月、労働基準法研究会報告が出されました。私は、女性保護の撤廃を条件に男女平等を実現しようという本報告の方向に大きな疑義を持つものであります。日本の女子現場労働者の過半数は中小企業に働き、最低の労働条件を強いられているのであります。これらの婦人にとって保護規定は頼みの綱であります。これを撤廃すれば、日本的労使関係の中では、残業、深夜業など無制限に女性の労働条件が悪化するおそれが強いと言わなければなりません。労働大臣は、婦人の労働現場についてどのような認識を持っておられるか、お伺いいたします。
 次に、保護と平等の問題についてであります。
 報告の中にも紹介されていますが、アメリカやイギリス、その他EC諸国においては、まず平等法が制定され、実際に動き出した後で保護の見直しが行われようとしています。しかも、女子の保護を男子に合わせるのではなくて、ILOの方向に沿って、男子の保護を時間外労働、深夜業、危険有害業務の制限にまで拡大することによって、女子だけを保護するということを解消する傾向をたどっているのであります。しかし、平等法を制定している国々でも、差別は短い期間でなくなるものではありません。時間をかけて男女平等の実現に取り組んでいる現状であります。したがって、日本の婦人労働者が保護切り捨てを前提とする本報告に反対するのは当然であります。
 わが党は、いわゆる男女平等法案を昨年第八十四国会に提案いたしました。本国会では、さらに内容を強化した法案を提案する予定でありますが、男女平等は、憲法に保障された基本的な人権として、何物にも優先をされなければなりません。政府は、雇用における男女平等法を早急に提案する意思があるのか、ありとすれば、その時期、その内容についてお伺いをいたします。
 また、婦人問題企画推進本部の最高責任者として、総理大臣にも婦人問題の基本的なお考えをお伺いいたしたいと思います。
 最後に、農業問題に移ります。
 農業問題は、総理の施政方針演説の中で「食糧の総合的な確保は政治の基本」と言われました。また、「生産可能なものは極力国内で生産する」と述べられました。諸外国と比べて著しく低い水準にあるわが国の穀物自給率及び家畜飼料の自給率を段階的に高めるための食糧自給率向上計画を立てて、何をいつまでにどれだけ生産するかを国民の前に明らかにすべきと考えますが、農林水産大臣の御答弁をお願いいたします。
 第二に、ほぼ全面的に輸入に頼っている大豆や麦などを国内生産に切りかえるためには、安定的な生産者価格補償制度の創設及び土地基盤整備の本格化が必要と思います。しかし、土地基盤整備などは事業実施の段階で業者中心の請負仕事となっているのが現状であります。そこには、生産農家の長い間の農業経営の中から出てきた創意工夫が生かされていない事例が見られます。そこで、実施計画の段階から生産農家を参加させる方式も含め、大臣のお考えを伺います。
 第三は、農業、漁業などが生命産業としての実効を上げるために不可欠な食糧の安全対策の確立についてであります。
 わが国においては、農薬の単位面積当たり使用量が群を抜いており、世界第一位であります。三百種類以上の化学物質が四千二百銘柄もの農薬として使用され、このため、土壌はもとより、海や川や湖に至るまで汚染をされています。こうした中で、サルや家畜にも大きな影響が出ています。今度は人間の番だと、国民の不安は大きく高まっています。汚染の実態はどのように把握され、その防止はどうなっているのかをお伺いいたします。
 昨年のベビーフードに対する放射線の違法照射事件で明らかになりましたように、現行法律では、家畜、魚類のえさということにすれば放射線は自由に照射できるのであります。そのえさで育ったものを人が食べるという経路が無視されているのではありませんか。農林水産省としては、ホウレンソウやジャガイモは農林水産省の管轄、違法照射は厚生省などと安閑としていてもらっては困ると国民は思っているのであります。いかがお考えでしょうか。
 次に、自然に近い食品が安定的に供給されるような援助、誘導措置を講ずることについて伺います。
 農業の基本方向としては、たとえば有機農業というように、健康、環境優先型食糧供給が求められていることは、すでに農林水産大臣も、胚芽米の需要が予期した以上に伸びていることからも十分理解されていると思うのですが、いかがでございましょうか。
 最後に、農作業中の農民の事故救済制度についてお伺いをいたします。
 私の友人の一人息子が、農作業中の祖母を手伝っているうちに、耕運機に巻き込まれ、片足切断に近い大けがをいたしました。幸い生命に別状はありませんでしたけれども、多額の医療費がかかりました。労働者の職場での事故に対しては労災補償があります。児童・生徒の学校における事故に対しては学校安全会があって救済されているわけです。しかし、農作業に従事する農民には一切の補償がありません。今日の機械化された農業、それに従事する農民層が老齢化し、婦人化している中で、農作業中の事故が非常に増大をしているわけです。政府は速やかに具体的対策を講ずべきでないかと考えます。すでに全国でも幾つかの自治体で条例化もされており、また、条例の制度化を求める農民の直接請求が出されたりしています。これは、農民にとっては切実な要求となっているからではないでしょうか。いかが農林水産大臣としてはお考えでしょうか。
 以上をもちまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
○国務大臣(大平正芳君) 粕谷さんの最初の御質問は、汚職、腐敗を防止する政治姿勢についてのお尋ねでございます。これにつきましては、政治をする主体である政治家並びに政党自身がモラルを高め、公私にわたって行動を慎まなければならぬわけでございまして、自由民主党といたしましても、その方向で党の改革に当たっておりまするし、政府におきましては、公務員全体につきまして綱紀の粛正、維持を訴えておるところでございます。不幸にして、いま問題になっておりまする外国航空機の輸入に絡まる疑惑でございますが、これにつきましては徹底的に解明いたしまして、いささかも疑惑を残すことのないようにいたすことが政治の姿勢だろうと考えております。
 次に、教育勅語礼賛とも言える文部大臣の言辞についてどう理解しているかと、その排除、失効の決議を行った国会を無視しておるのではないかというお尋ねでございます。教育に関する勅語は、戦後の諸改革が行われた際、国会におきましてすでに廃止されておるものであり、文部大臣の発言は、これを踏まえた上で、教育勅語の中にいにしえから今日に通ずる道徳の基本を示した部分があるということを述べたものでございまして、教育勅語の復活を意図したものではないと私は受けとめております。
 教育に関連する政策といたしまして二つのことをお尋ねになりました。
 一つは、教育に対して行政、政治は控え目でありたいというような趣旨のことを述べたが、これはどういう趣旨かということでございます。これは、申すまでもなく、教育界に活力のある教育の展開を保障するために、政治や行政が、はしの上げ下げに一々干渉するようなことは慎まなければならぬのじゃないかという趣旨を述べたものでございます。
 それから第二の御質問は、教育条件の整備についてどう考えておるかということでございます。これにつきましては、優良な教員の養成、確保でございますとか、あるいは教育費の軽減の措置でございますとか、教育施設の整備充実、そういった点につきましては、学校教育であれ、社会教育であれ、あるいは国公私立を問わず、懸命に努力してまいるつもりでございます。
 婦人問題に対する基本的な見解を述べろということでございます。わが国の諸法制は、男女平等を原則といたしまして、婦人は今日、国民生活の中であらゆる分野にわたりまして大きな役割りを果たされております。しかし、婦人の能力に対する偏見でございますとか、固定的な男女の役割り分担意識というものがまだ根強く残っておるようでございます。また、職場には男女の不平等が実態的に残っておる、政策決定についての婦人の参加も低調である、というのが実情であろうと思います。そういう問題もございますので、政府といたしましては、昭和五十二年一月に国内行動計画を策案いたしまして、その線に沿いまして施策を推進しておりますが、今後一層これを進めてまいるつもりであります。(拍手)
   〔国務大臣内藤誉三郎君登壇、拍手〕
○国務大臣(内藤誉三郎君) ただいま粕谷さんから児童・生徒の自殺、非行の頻発など、大きな問題として御指摘になられましたが、私も、これほど嘆かわしいことはないと思っております。一体その原因は何かというお尋ねでございますが、いろいろありますが、その一つは、学歴偏重と言われる社会的風潮、学校教育、特に家庭教育のあり方など、複雑に絡み合っているものと思っております。この問題を解決するためには、学校教育においては、教育内容や教育方法の改善、教師の指導力の向上、大学入試制度のあり方など、さまざまな角度から取り組む必要があります。先般小中高等学校の教育課程の基準の改善を行い、教育内容を精選して、基礎的基本的な事項を確実に身につけさせるようにしたことや、教師の現職教育の充実等を図っていることなどは、この趣旨に沿うものであります。
 第二番目に、文相は、戦後教育の失敗についてということで教育勅語を廃止したことを挙げた、これは一昨年参議院の予算委員会で質問したことをお指しになっておるんですが、私は、教育に関する勅語は戦後排除・失効の決議が衆参両院で行われたことは十分承知しておりまして、先日の発言は、その上に立って、教育勅語の中には形式を超えて昔から今日に通ずる道徳の基本を示した部分があるということを述べたにすぎないのであって、教育勅語の復活を意図じたものでは毛頭ございません。(拍手)
 第三に、中学校以下の教育を受験教育から解放するために高校を義務設置にすべきじゃないかという御意見がございましたが、現在、高校の入学者は九三%に上っておるのであります。これは事実上ほとんど全員が高校に入学している実情でありますが、希望者全員を入学させるためにこれを義務設置にするということについては、これは大変な問題でございまして、今後膨大な条件整備が必要とされ、高校進学率の地域格差もございますし、私立学校への依存度の高さなど、さまざまな問題がございますので、行財政的にも大変な問題があると考えておるのでございます。
 第四番目に、大学入試のあり方をどういうふうに改革していくかという基本的な構想についてお尋ねがございましたが、このたび実施された国公立大学の共通一次試験は、高校における一般的、基礎的な学習の達成度を、これを評価して、各大学がその特色に応じて行う第二次試験と合わせて、選抜の適正を期そうとするものであり、これにより高校教育の正常な発展にも資することを目的とするものであります。この共通一次学力試験を取り入れた入試改善については、各大学の行う第二次試験のあり方など、まだこれからさまざまな問題がありますが、その基本的なねらいがよりよく実現されるよう、今回の経験を踏まえて、関係者の意見を聞きながら改善を図るとともに、さらに、私学の参加についても努力してまいりたいと思っております。
 なお、この試験の実施の業務を担当する大学入試センターが設けられておりますが、今後この調査研究部門を中心として、広く、国公私立大学を含め、大学入試のあり方について今後調査研究を進めてまいりたいと思っております。
 それから次に、幼稚園と保育所の一元化、公立と私立の格差是正についての具体的なプランを示すべきだと思うがどうかというお話でございましたが、学校教育を行う幼稚園と保育に欠ける児童を保育する保育所とは、その目的、性格を異にしているのでありますが、現状では両施設とも不十分な普及状況にあるため、当面、幼稚園、保育所ともに、それぞれの目的、性格に沿って普及、充実を図ることが急務であると考え、その線に沿って努力しているところであります。
 なお、幼稚園及び保育所の関連については、行政管理庁の勧告もあるので、文部、厚生両省の間に学識経験者による懇談会を設けて検討しているところであり、今後その協議の推移を見ながら慎重に検討していくつもりでおります。
 また、公立と私立の格差是正については、就園奨励費の補助や私学の経常費助成等の手段によりまして充実に努めておる次第でございます。
 それから、養護学校の義務制に伴う問題でございますが、これがなかなか困難な問題でございますが、御承知のとおり、心身障害児に対しては、その障害の程度、種類に応じて適切な教育を行うことになっておりまして、昭和五十四年度においては養護学校の義務制も実施されることになっております。この趣旨に沿って、市町村及び都道府県の教育委員会は、就学時の健康診断を実施し、また、保護者から子供の生育歴や現在の心身の状況など実態を聞くとともに、医師、教職員等関係各方面の専門家でもって組織されておる就学指導委員会の意見を聞いて、心身の障害の種類と程度を慎重に判断するように指導しておるのでございます。特に、普通学校に入りますと、普通学校は心身障害児を原則として受け入れておりませんので、これは一般の人たちにまた大変な問題が起きますので、心身の状況によって適切な指導をしておるのでございます。
 それからその次に、第五次の定数改善は何年度から何年計画で行うか、方針を示せというお話でございますが、学級編制基準及び教職員定数改善については、教育上重要な問題であると考えておりまして、今後数年間に約百二十万人から百三十万人の児童・生徒が増加し、そのほとんどが過密県に集中する一方、児童・生徒の減少により教員定数が激減する過疎県もある等で、県によって異なった状況が見られますので、昭和五十三年度においては、過密過疎地域の学校の実態や全国的な教員配置の状況を詳細に調査をいたしておるのであります。特に、過疎過密の実態を調査しましてその集計作業を進めておりますので、調査結果を踏まえて、今後慎重に検討してまいりたいと考えております。
 それから、教科書の有償化についてどう考えるかということでございますが、御承知のとおりに、義務教育は無償の原則になっておりまして、義務教育教科書の無償給与制度は、昭和三十八年に実施されて以来、すでに十数年を経過しておるのであります。そのあり方については検討中であるが、昭和五十四年度予算においては、この制度は存続することにいたしたのでございます。
 それから、奨学金の引き上げや枠の拡大で、教育の機会均等を保障し、低所得者の大学進学激減の歯どめができると思うかと、こういうお尋ねでございますが、特に学生の就学を援助する施策としては、昭和五十四年度予算においては、日本育英会の修学奨励事業の貸与月額、貸与人員の大幅拡充を行いまして、そのほかに私学に対する経常費補助金の充実等を図ってまいりましたので、今後とも教育の機会均等を保障する見地から、入試のあり方の改善とあわせて一層努力してまいりたいと考えております。
 それから、一部歯科医学大学の不明朗な問題についてお尋ねがございましたが、これは、御指摘のとおり、まことに残念なことでございます。一部の私立の医歯学系の大学において、高額の入学時寄付金徴収と不公正な入学者選抜が行われ、社会不信を招いたことはまことに遺憾なことでございます。文部省としては、このような事例については事情調査に努めるとともに、昭和五十二年九月七日付指導通達に基づいて、適切な学校運営を確保するため、指導助言を重ねているところでございますが、二度とこういうことのないように、御迷惑をかけないようにやるつもりでございますから、よろしく御指導願います。
 それから、放送大学の基本的性格や運営のあり方についてのお尋ねがございましたが、放送大学は、今度の予算で、厳しい予算の中で特に大平内閣でお認めいただいたのであります。生涯教育機関として、広く社会人や家庭婦人に大学教育の機会を提供すること、第二番目に、高等学校卒業者に対し新しい進学の機会を提供すること、第三番目に、既存大学との連携協力を深めるために、単位互換制度の推進、教員の交流促進等により、わが国大学教育の改善に資すると思うのでございます。そういう目的を持った新しい大学であります。
 特に、放送大学の運営のあり方につきましては、既存の大学との十分な連携協力のもとに大学教育を行うものであること、これが一つ、第二番目には、放送を通じて広く教育内容を公にする、こういう点に留意して、その運営が適切に行われるように配慮してまいりたいと思うのであります。
 それから最後に、放送大学と関連して、有給教育休暇制度を早急に実現するようにというお尋ねでございますが、この問題は他省庁にもかかわるさまざまな問題があり、社会経済情勢等の見きわめも必要でございますので、今後慎重に検討してまいりたいと思うのでございます。(拍手)
   〔国務大臣三原朝雄君登壇、拍手〕
○国務大臣(三原朝雄君) 私に対するお尋ねは、国際児童年に当たって、児童の福祉増進施策について何を計画しておるかというお尋ねでございました。政府といたしましては、第一に、児童の福祉についての国民の認識を高めるための啓蒙活動が一つでございます。第二には、児童の福祉向上を図るための国内におきまする具体的な施策を拡充してまいりたい。第三には、ユニセフに対しまする拠出の増額等児童に関しまする国際協力を推進していこう。以上の三つの柱を中心にいたしまして努力をいたすことにいたしておるわけでございます。これらのうち、国内におきまするこの児童の施策につきましては、心身障害児対策でございまするとか、母子福祉関係の保健対策、児童のための施設の整備等、各般にわたりまして各省庁においてこれが充実を図ることに努める計画を持っておるわけでございます。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣栗原祐幸君登壇、拍手〕
○国務大臣(栗原祐幸君) お答えをいたします。
 ILOの百四十号条約を批准をして、有給教育休暇制度を早急に実現しろという御質問でございますが、本条約の趣旨は、すでに昭和五十年度より政府といたしまして実施をしております有給教育訓練休暇奨励給付金制度で取り上げているところでございますが、条約の規定の具体的な解釈について若干の問題点もありますので、今後検討を進めてまいりたい、こう考えております。
 それから、職場における男女差別、そういったことについての事例の把握を掌握しておるかということでございますが、御指摘のような男女差別定年制等の事例については、いろいろの機会をとらえまして婦人少年室で把握に努めているところではございますが、今後ともその把握と改善に努めてまいりたいと思います。
 それから、労働基準法四条違反の事例の把握はどうだということでございますが、労働基準法第四条では、賃金について性による差別的取り扱いを禁止しておりまするが、昭和五十二年の監督指導結果によりますと、四十五事業場に法令違反が認められております。これについてはそれぞれ是正を行うよう厳正な処置を講じているところでございます。労働基準監督機関といたしましては、今後とも、法に違反する事実を把握した場合には、これを厳しく是正させる方針で対処してまいりたいと思います。
 次に、このような男女差別についての対処いかんということでございますが、われわれといたしましても重大な関心を持っておりまするし、御案内のとおり、昭和五十二年度から差別解消のための年次計画を作成をいたしまして、男女の差別的な定年制等が解消されるよう指導を行うとともに、労働基準法四条に違反する事案につきましては、監督指導を行っているところでございます。
 それから、女子現場の労働者の大半が零細企業に属しておって、残業とか深夜作業などに従事しておる、保護規定を撤廃することはこれは労働条件を悪くすることではないかということでございますが、これは、先ほども申しましたとおり、昨年末の労働基準法研究会の報告を労働省といたしましては尊重しながら、関係審議会の審議を十分に経て適切な処置をいたしたい、こう考えておりますが、どのような対応をする場合でも、女子を含む労働者の労働条件が低下することがあってはならない、こう考えております。
 それから、政府は平等法制定の意図があるか、めどはどうかということでございますが、これも、いままで申し上げましたとおり、労働省といたしましては、との研究会の男女平等法の制定という提言は非常に画期的なものだと考えております。したがいまして、労使の代表者を含む審議会の審議を経まして、その趣旨をよくわきまえた上で善処をいたしたいと、こう考えておりますので、御了解いただきたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣渡辺美智雄君登壇、拍手〕
○国務大臣(渡辺美智雄君) お答えをいたします。
 食糧の確保は政治の基本である、そういうような観点からして、日本では特に穀物自給率が世界の中でもべらぼうに低い、これを高める必要がある、ついては食糧自給向上計画を立ててはいかがなものであるか、こういう御質問でございます。低いことは事実でございます。しかし、われわれとしても、極力国内でつくれるものは国内でつくる、こういう方針で増産計画は立てておるわけでございます。
   〔副議長退席、議長着席〕
しかしながら、実際は、自給率という問題になってまいりますと、たとえば牛、それから豚、鶏の消費が現在で一定ということになれば、国内で増産しますから自給率は高まりますが、それらの肉類の消費が仮に五%ずつ毎年伸びるということになれば、莫大な数量のえさを必要とするわけですから、とうてい追いついてはいけない。現在、千五、六百万トンのえさを食べて、使っておりますが、仮に家畜の数が一割ふえるということになれば、百五十万トンのえさがよけいに必要になる、大ざっぱの計算で。そうすると、百五十万トンということになると、仮にヘクタール三トンとしても五十万ヘクタールを一年ずつ伸ばさなきゃならぬということは、言うべくして不可能。その半分でもできない。したがって、結局、これは食生活の向上の問題と非常に密接な関係があるわけです。極力増産はするように努力をいたしますが、その点も御了解いただきたいわけであります。したがって、不足をするものは外国から安定的、多角的に導入をせざるを得ないということでございます。
 それから、その次は土壌の汚染の問題でございまして、農薬による土壌、水質の汚染、この問題は非常に重要な問題でございまして、やはり水質が汚染をするということは、家畜ばかりでなくて、人間にも魚にも重大な影響があるわけですから、われわれとしてはそういうような汚染に陥らないように、極力いろいろな行政指導をしておるわけでございます。最近は、環境庁の調査によりましても、そういうような農薬のための汚染の実例というものは非常に少なくなってきておると、こういう傾向がありまして、これは非常によい傾向である、こういうように思っておるわけでございます。農薬による家畜の汚染、一時BHCとかが牛乳の中に入っていたとかどうとかいう騒ぎがずいぶんあったんですが、最近の事例としてはそういうものが出ておりません。大変これも皆さんが気をつけてやっていただいておる結果であると、十分今後も注意をして、そういうものは出ないようにしてまいりたいと考えます。
 それから、食品とかえさに対する放射線の照射のことでございますが、これはバレイショに対しまして芽が出ないように世界各国でやっておるものですから、日本でも学者先生方の意見を聞いて、非常に世界の例から見ると少ない量の放射をいたしておるわけであります。これはまあ安全の範囲内でやっておるわけでございます。
 なお、えさについても放射線を使っているというふうなお話がいまあったんですが、私どもにおいては、そういう事実はいまのところ聞いておりません。仮にそういうような事態があった場合には、当然その安全性は審査をされなければならないし、その審査をされた結果それが有害であるということになれば、これは、えさの安全性の確保及び品質の改善に関する法律という法律もございますので、発売禁止なり製造禁止なり、速やかな手を打っていきたい。しかし、いまのところ、私どもはそういうようなものがえさとして売られておるということを実は聞いておらないわけでございます。
 それから、その次は有機農業、健康食品――いま健康食品ばやりでございますが、これは自然生態系を利用して農業というものは行われるので、水とか空気とかバクテリアとか、いろいろなそういうものを利用して行われるわけでありますから、それが本当は一番いいに決まっておるわけなんです。生産性を高めるために農薬、肥料というようなものを使われておるわけでございますが、これらについての安全性の確保という点については十分に今後とも気をつけてまいるつもりでございます。
 それから、農業機械による人身事故がある、一年間に大体四百人前後の実は死亡者があるのですから、大変なことではあるわけでございます。年によって違いますが。そこで、農業者だけを別に切り離して労働災害補償法みたいな保険――労災法みたいなのを農業者だけでつくったらどうだと、こういう御趣旨かと思うのですが、これは実はいろいろ研究をいたしまして、農業団体ともいろいろ交渉もし、いろいろ話し合いもしてみたんです。しかしながらその結果はなかなかむずかしい。少なくとも労災保険を適用するからには作業の安全基準というものをつくらなきゃならぬ。むちゃくちゃ、どんなことをやってもみんないいというわけにはいかない。当然、安全基準というものをつくらなきゃならぬ。ところが、農業の場合は非常にその安全基準がばらばらである。したがって、作業の機械や何かは、十三種類について、こういうふうな使い方で、こういう機械については労災法の特別加入は認めますということになっておるわけですが、それではカキの木に登っておっこったのはどうするんだ。じゃ、カキの木の大きさをこれくらいの大きさにするのか、これくらいのところまではいいのかという問題も、これは多いのです、非常に。(笑声)皆さんお笑いになっていますが、転落事故というのは案外多いのです、これは。だから、そういうようなむずかしい問題が実はある。それから、馬にけられたとか――馬の基準をどうするんだとかいうふうな問題も出てくる。なかなか実際にはむずかしい問題がたくさんあるのでありまして、そこでわれわれといたしましては、この問題は、やっぱり現在の労災法の中でひとつできるだけ加入をしてもらう、それからもう少し広めてもらうというようなことなど検討をしてまいりたい、かように考えておるわけであります。
 それから自治体の問題でございますが、自治体でこの条例をつくっておることはございますが、そういうようなこともありまして、国としてはすぐ直もにこれを右にならえというようなわけにはいきません。いきませんが、もう少し範囲を広げて何とかその適用者を救うような方法を考えてまいりたいと、かように存じます。
 以上でございます。(拍手)
○議長(安井謙君) 答弁の補足があります。内藤文部大臣。
   〔国務大臣内藤誉三郎君登壇、拍手〕
○国務大臣(内藤誉三郎君) 答弁漏れがありましたので、補足させていただきます。
 学級編制基準を四十人にするかしないかということでありますが、これは国会の決議もございますので、四十人にさしていただきます。ただ、その実施時期あるいは何年にかかるかというようなことは、いま文部省で悉皆調査をやっておりますから、その悉皆調査の結果を持って決めたいと思います。どうぞよろしく。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(安井謙君) 市川房枝君。
   〔市川房枝君登壇、拍手〕
○市川房枝君 私は、第二院クラブを代表して、総理及び関係大臣に若干の質問をしたいと存じます。もっとも、時間が十分間でございますので、詳細は別の機会に譲り、ここではポイントだけ伺うことにします。
 第一には、婦人関係問題について、総理及び労働大臣に伺いたいと存じます。
 大平総理の施政方針の演説の前半は、大平哲学をお述べになったようで、興味深く拝聴しました。しかし、「経済中心の時代から文化重視の時」に移ったと断定されているのは、引き続いての不況と雇用不安の現状を前にして、納得できません。その他了解しかねる点が多々ありますけれども、まず、私ども婦人に関係の深い家庭について総理に伺いたいと思います。
 総理は、「充実した家庭は、日本型福祉社会の基礎である」、「ゆとりと風格のある家庭の実現」とおっしゃっておりますが、その内容がはっきりいたしません。家庭外で雇用労働者として働いている婦人の数は、昭和二十五年ごろには約三百万人でありましたのが、五十三年度には千二百五十二万人、さらに、五十三年の九月末には史上最高の千二百八十四万人と増加しておりますが、その三分の二は既婚者でありまして、さらに、その中で母親が八四%も占めていると申します。なお、現在は家庭内にいるけれども、就職したいと希望している婦人が六百九十三万人あるという調査があります。この人たちももし就職したとしますと、家庭に残る主婦は全主婦の三分の一弱になってしまいます。このように、はなはだしい変貌を来した家庭の実情のもとで、どうして充実した家庭を築くのか、その具体案をお示しいただきたいと思います。
 総理の主張されるもう一つの「田園都市構想」の方は、会合も開かれ、予算の裏づけもあるようですが、「家庭基盤の充実」の方はどうなっておりましょうか、どこの役所が担当していますか、あるいは予算の裏づけがありますかどうか、総理から伺いたい。
 なお、関連して総理に伺いたいんですが、総理のお嬢さんの森田芳子さんが、「婦人公論」の二月号に、「父大平正芳のアとウの間」と、そういう題目で寄稿されておりますが、その中で、「父は昔から口癖のように「おなごは勉強せんでいい、可愛い女になれ、そして早くお嫁に行きなさい」」と言っていられたそうですが(笑声)総理は、いまもそのお考えでしょうか。もしそうだとしたら、総理にはもう一つ、婦人問題企画推進本部長という職がおありになりますが、その方の資格は足りない、落第だと、こう申し上げざるを得ないんでありますが(笑声)そこで、総理の現在の婦人観、あるいは本部長としての決意を伺いたいと思います。
 次には、グラマン・ダグラス・ロッキード問題と政治資金の問題について、総理及び大蔵大臣に伺いたいと思います。
 一昨日から両院においての各党派の代表質問の中心は、グラマン・ダグラスの問題になっているようですが、総理は、施政方針の中で、きわめて簡単に事態解決に最高の努力を、最善の努力をすると、わずか二行ぐらいでおっしゃっておりますが、これでは不十分で、はなはだ物足りないと存じます。
 前総理の逮捕にまで発展しましたロッキード問題は、いま公判の途中でありますが、国会でのロッキード特別委員会も開店休業だったようですが、ここで新しい委員会ができて、そして、国会で問題を取り上げるということになりましたですが、さてどういうことになりますか、余り期待が持てないんじゃないかと思うのですが、五十一年の十一月十二日でしたか、に開かれたロッキード問題閣僚連絡協議会というのがありまして、そこで、ロッキード問題の再発を防ぐための対策として五項目を決定していますが、ほとんど実行されておりません。それで、国民の間では、ロッキード事件は結局うやむやの中に葬られて、田中元総理も無罪になるんではないかと話し合っております。そこへ今度のグラマン・ダグラス事件が暴露されて、そしてまた、政府高官が金をもらう約束をしたとか何とか伝えられているので、憤慨というよりも、またかとあきれて、さらに政府、政治家への不信を深めております。総理はこの問題については消極的でおいでになるような印象を持つんですが、この際、ほかの委員の方の御質問に対してもお答えになっておりますけれども、もう一遍はっきりと総理の態度を伺いたいと思います。
 それからなお、ロッキード事件といい、今度のグラマン・ダグラス事件といい、アメリカで暴露され、そして日本で問題となりました。なぜ日本で摘発されないのかと国民はみんな疑問に思っております。
 米国でこの問題を取り上げたのは、SECすなわち証券取引委員会なのですが、日本にはこのような行政機関がありません。いや、終戦直後の昭和二十二年三月には、占領軍の助言で、米国のSECと同じような証券取引委員会が設置されていたのに、独立直後の二十七年八月に廃止され、大蔵省証券局に吸収されてしまったというわけですが、なぜ廃止されたのか。アメリカのSECについては、私はロッキードで渡米しましたときに、直接SECに行き、その幹部にも会って、そしてその機能を知ることができました。もう一度復活して、そして強化して、日本の側でも、こういう汚職といいますか、こういう問題が摘発できるというようにできないものでしょうか。国民は私はそれを望んでいると思います。この問題は大蔵大臣から御答弁をいただきたいと思います。
 このロッキード問題はもちろんのこと、グラマン・ダグラス事件でも、企業と政界、官界との癒着が暴露されたわけですが、これは、日本国内での政界と財界、官界との癒着が国際的に発展したんだと私は思っております。総理が総裁である自民党の政治資金の約九〇%近くまでが企業からの政治献金であったことは周知のとおりであります。五十年に改正された新政治資金規正法では、この政治献金を合法化し、賄賂だと罪になるけれども政治献金と言えば合法として逃げられる、そういう道を開いているところに私は重大な問題があると思います。
 それで、私どもは前から、企業からの政治献金は禁止し、個人からの献金に限定するよう主張してまいりましたけれども、実現せず今日に至りました。しかし、新政治資金規正法附則第八条において、「この法律の施行後五年を経過した場合においては、新法の施行状況を勘案し、政治資金の個人による拠出を一層強化するための方途及び会社、労働組合その他の団体が拠出する政治資金のあり方について、更に検討を加えるものとする。」という規定があることは総理も御存じだと思いますが、この法律の施行は五十一年の一月一日からでしたから、ことしちょうど四年目になります。政府の方ではすでにその準備に着手しておいでになるかと思いますが、あるいはまだかもしれないし、その状況を伺わせていただきたい。
 それから総理は、この条文の中の「政治資金の個人による拠出を一層強化する」とありますが、それに御賛成かどうかを伺いたい。
 最後に、私は大平総理に対して、これは希望といいますか、お願いを申し上げたいと思うのですが、私は、現在の日本の政治情勢は議会制民主主義政治の危機だと考え、心配をしている一人でございます。総理は、施政方針の演説の中でこの問題には全然お触れにならなかったようですが、金をかけないでもりっぱな人が当選をできるような選挙の実現と、それから増加している公務員の汚職の粛正、また、総理が総裁であられる自民党の派閥の解消あるいは金権体質等の改革等を実現して、そして国民の政治に対する不信を取り除くよう、この上とも切にお願いを申し上げたいと思います。
 これをもって終ります。(拍手)
   〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
○国務大臣(大平正芳君) 家庭の問題につきまして御質疑がございました。家庭を外にいたしまして職場を持たれる婦人が大変多くなっておることは、御指摘のとおりでございます。しかし、そういう方々も、一日のうち半分は家庭を基盤にした生活をされているはずでございます。私どもといたしましては、この家庭がわれわれにとりまして最大のオアシスでございまして、これが充実したものでありますことは社会の基礎であると考えております。したがって、「家庭基盤の充実」ということは、その成員であるわれわれがお互いに思いやりの精神を持ってつき合っていかなけりゃならぬことは当然でございますけれども、しかし、政府といたしましても、この自主的な努力に待つばかりでなく、雇用の機会の造出でございますとか、社会保障あるいは健康、住宅、余暇、教育、万般の施策におきまして、家庭の基盤の充実に役立つような施策を整えてまいる必要があると考えております。そういう政策の道標、理念といたしまして、「家庭基盤の充実」ということを提言いたしておるわけでございまして、その内容をどのようにつくり上げてまいるかということを、せっかくいま勉強をいたしておるところでございます。
 田園都市構想についても同様でございます。人間と自然との調和を図る、都市の持つ情報、教育その他の機能と、田舎の持つ自然と人間関係というものの結合を図って、住みよい定住圏、住みよい生活空間をつくり上げていくということは、だれが考えても大切なことと思うのでございます。そのために、政府もいろいろの施策を中央、地方を通じてやっておるわけでございますけれども、もう一度、この段階におきまして田園都市構想というものに検討を加えて、既存の政策の不足を補い、これをさらに再吟味いたしまして、その目標に近づく道はないだろうかということを提言いたしておるわけでございまして、いま政府部内におきまして、関係省庁との協力も得まして、施策の構想の検討、そしてそれをどう進めていくか等につきまして御相談をしておるところでございます。
 私が娘に対しまして、早く嫁に行けということを申し上げたのは事実でございます。(笑声)私は、娘を持つ父親といたしまして、できるだけ早く良縁を得て、身を固めてもらいたいという念願を持っておりましたので、「女に学問は要らない、早く嫁に行け」という言葉は、熟しない(笑声)御批判をいただく余地が十分あると思いますけれども、父親といたしまして、早く嫁に行って、全体として女の幸せを追求してもらいたいという(拍手)父親の気持ちはおくみ取りいただけるのではないかと思います。
 婦人に対しましてどう考えておるかということでございますが、私は、婦人は――ここに男性の方が多いようでございますけれども(笑声)男性よりは物事に誠実でございます。道義の感覚に鋭敏でございます。(笑声)とりわけ、子供をもうけるなどという手ごたえのある人生経験は、男にはできないことでございます。私は女性を尊敬いたしております。(拍手)
 ただ、この社会生活におきまして、婦人と男性との間の平等をどうして確保していくかということにつきましては、先ほど粕谷議員にもお答えいたしましたような状況で、まだ足らないところが多いので、五十二年の一月につくりました行動計画というものを踏まえて、今後努力してまいるつもりでございます。
 それから、グラマン・ダグラス問題についてのお尋ねでございました。いまこの問題に対しては解明が始まったばかりでございます。市川先生にお願いいたしたいのは、この究明を徹底的にやるようにという激励をちょうだいしたかったんでございますが、「あなたはどうも消極的である」などという、まだ解明が始まったばかりにそういうことをおっしゃるのは、いかがかと存じております。私ども、いささかも疑惑を残さないように解明に努めるつもりでございますので、これからの推移を御注視いただきたいと思うのでございます。
 それから、政治資金についてのお尋ねでございました。
 自由民主党が、現実の問題といたしまして、法人の寄付に多くを頼っておると。これは年々歳々改めまして漸次その比重は小さくしつつありますけれども、まだ半分以上を法人の寄付に頼っておるということは事実でございます。私どもは、それをできるだけ少なくするために努力を払っておるわけでございます。個人献金を主としたものにしなければならぬという道標を固めまして、その方向に漸次歩武を進めておるわけでございます。
 御指摘のように、現行政治資金規正法の中に、五年たちますとこれを見直すということに相なっておりますこと、御指摘のとおりでございます。ところが何分にも、いままで収支報告書はこの改正法律に基づきまして二回出ておるわけでございまして、今度三回目がこの春出ることになっておるわけでございますが、今後の公表の結果等を踏まえながら、五年後における見直しを研究してまいりたいと考えております。
 議会制民主政治を支えていくには、清潔な選挙、政治モラルの確保がなければいけない、政治不信を除去するところがなければいけないということ、御指摘のとおりでございまして、いかにかしてそういう御趣旨に沿うべく努力をいたしておりますが、力足りませんけれども、今後一層努力するつもりでございますので、御鞭撻をお願いしたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣金子一平君登壇、拍手〕
○国務大臣(金子一平君) 市川さんにお答えいたします。
 日本でもSECのような証券取引委員会をもう一度復活したらどうかということでございますが、証券取引委員会が二十七年に大蔵省の証券局に統合されましたのは、御承知のとおり、行政の一元化という立場から投資家保護の仕事を大蔵省にやらせようということでございまして、比較的うまくその点はいっておるんじゃないかと思うんでございまして、今日、証券取引委員会、かつてありましたような委員会を復活する必要はないと考えております。
 ただ、御指摘になりました復活の目的は、アメリカのSECがやっておるような準検察的な仕事が何とかしてできぬかということだろうと思うのであります。これは日本とアメリカは法律制度が大分違いまして、向こうのSECは、衡平法の弾力的運用をやり、過去長い判例法の積み重ねがありまして、あそこまでいっているんでございまして、こういった点につきましては、市川先生のお話も十分拝聴いたしましたので、私ども、これからどう対処するか、慎重に検討さしていただきたいと思います。
 以上でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(安井謙君) 有田一寿君。
   〔有田一寿君登壇、拍手〕
○有田一寿君 私は、新自由クラブを代表して、総理及び文部大臣に文教政策についてお尋ねをいたします。同時に、二、三の提言をいたしたいと思います。
 新自由クラブは、立党以来、教育最重視の方針を固め、それを「教育立国」という言葉で表現してまいりました。道徳国家の建設という意味でもございます。教育者の資質の向上、教育制度、教育内容の整備充実もさることながら、最も大切なことは、政治経済を含む社会全般に倫理感が浸透することではないかと考えるのでございます。自由社会の特色は、その社会に可能な限り最大限の自由を確保することでありましょう。ところが、国民の一人一人が無制限な自由を求め、また、それを許せば、力の強い者本位の社会になります。それを防いで、健康な公正な自由社会を実現するためには、二つの方法しか考えられません。一つは、法による外部からの規制、いま一つは、国民一人一人の自覚による自己規制です。法律の少ない社会ほど健康なよい社会であると言うことができると思うのであります。何々をすべがらずという禁止的な法律を数多くつくってみましても、裏をくぐる抜け道を完全にふさぐことはできません。道は仮に遠くても、教育の普及と教育水準の向上によって倫理感を高め、国民の中に、自己規制、責任感、相互扶助、思いやり等の精神を浸透させることによって、道徳的にすぐれた国家あるいは世界から信頼される国民になることができる、これが日本の今後の目標でなければならないと思うのでございます。
 そういう観点から、当面の教育政策について伺いますが、まず最初に、大学問題の現状について文部大臣に伺います。
 昭和四十四年の八月、大学紛争のさなかにつくられた大学の運営に関する臨時措置法というのがございます。つまり、学生がいつまでも紛争を続けていると学校閉鎖をしますぞという法律ですが、この法律は、その附則に明記してありますように、五年間の時限立法でございます。したがって、本来なら昭和四十九年八月十六日に終わっているはずでございます。時限立法であっても、廃止立法をしない限り永久に生き続けます。しかも有効でありますから、現在も自然延長中だということでありましょう。しかし、五年という条件つきで成立したものならば、五年たったら一応約束どおりきちんと廃止すべきものではないでしょうか。もうすでに十年たっております。なぜ廃止立法をお出しにならないのでしょうか。将来大学紛争が再び起こる事態になれば、そのときの状態を踏まえて必要な立法を行うべきであって、それを廃止せずにわざとほうっておいて、紛争が起これば、どっこいあの法律は生きていたということで取り締まろうという姿勢は、この法律が教育立法なるがゆえに、許されないと思うのでございます。特に、この法律が激しい論戦の末、五年という期限つきで成立したという経緯を考えるときに、廃止立法を提案するのが当然だと思いますが、いかがでしょうか。廃止なさるおつもりがおありなのかどうか。大平内閣の政治姿勢の一つの表現として、文部大臣からお伺いをいたしたいと思います。
 次に、東大紛争が起こって以来今日まで十年になります。その当時指摘された大学運営上の改革は果たしてなされたのかどうか、また、進んでいるのかどうか、文部大臣にお伺いをいたします。
 さらに、それに関連して、具体的な一例を挙げてお尋ねをいたします。
 昨年の東大文学部の火災事件で、文部大臣は、学長、文学部長、事務長らを懲戒処分にいたしました。これは当然のことと思います。ところで、学生については、十年前の安田講堂事件以来今日まで、この十年間に一人の処分を受けた者もいないということは、どうしたことでしょうか。処分すべき者は一人もいなかったのか、それとも、処分するに必要な学則が不十分なのか、あるいは、処分反対闘争が起こりそうだから、それを恐れてなさらないのか、そのいずれであるかをお示しいただきたい。東大は国立大学でございます。納税者である国民に対しても政府には責任がありましょう。教授会が結論を出さないし、機能していないから断固とした処置がとれないというのであれば、教授会に権限を与えている学校教育法第五十九条並びにその施行細則を改正すべきではないでしょうか。文部大臣からお答えをいただきたいと思います。
 次に、わが国の大学の入学時期、つまり学年の初めを九月にした方がよいのではないかということを提案さしていただきます。
 第一の理由は、高校三年の三学期が大学の共通一次テスト、二次テストのため犠牲になっている現状を改めたい。つまり、入試は高校卒業後の六月に実施した方がよいのではないかと思うのでございます。
 第二の理由は、ますます国際化が進む現状から見て、学生の交流、海外子女の帰国後の入学時期等を考えると、九月の方がよいということでございます。調べてみますと、四月入学制をとっている国は、世界二百八カ国の中で、日本のほかには、インド、パキスタン、パナマ、リヒテンシュタインの四カ国だけで、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、その他先進諸国はすべて九月ないし十月でございます。
 第三の理由は、七月、八月のうち、八月は慶休みとして、七月一カ月間を社会奉仕期間として、身体障害者の施設、老人ホーム、養護学校、その他地域社会への奉仕活動を行うことに充てたらどうかと思うわけでございます。その奉仕活動の終了者に大学入学志願の資格を与えるということも考えてよいのではないかと思いますが、甘えること、楽しむことだけに走ろうとする青年たちも、みずからが健康であることを感謝すべきでありますし、不自由な体の人たち、年老いた人たちに奉仕するということを経験し、その方々から感謝されることの喜びを味わうことは、さらに意味のあることだと思うのですが、いかがでしょうか。
 以上の理由から、九月新学年制をとることを提案さしていただきます。これは総理と文部大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
 次に、昨年十二月、日教組が全国統一ストを構えました。大平内閣になってからでございます。槇枝委員長は、このストを背景として内藤文相と交渉し、文相がその要求にこたえる約束をしたことにより、ストは中止されました。事務職員と養護教諭の増員分は今度の予算にそれぞれ六百人ずつ計千二百名増員分として計上されております。この内容については、よいことであって異論はありません。しかし、このやり方が文教行政の正しい姿と言えるでしょうか。日教組は次々にストを構えて政策要求をすることになると思われます。私は、今後の文教行政に悪例を残す重大なことだと考え、あえて本会議の席上でこの問題を提起するわけでございます。
 教員人材確保法によって一般公務員より二割五分以上も高い給与を受けることになった教師が、生活が苦しいという名分がなくなったために、今度は政策要求を政府に突きつける。そのたびごとに、何も関係のない子供の学習権を奪い、子供を人質に取って要求を通そうとする、この姿勢は許されてよいものでしょうか。これは国際児童年の精神とも違うのではないかと思うわけでございます。(拍手)もともと、公務員である教師のストは法で禁止されております。目的が善ならばいかなる手段を使ってもよいということを認めれば、もはや法治国とは言えないでしょう。自殺、非行化、落ちこぼれ等、教育の荒廃が深まってまいりましたが、道徳教育を否定し、学童を巻き込む日教組の姿勢の中にその大きな原因があると思うわけでございます。(拍手)
 最近、日教組のストに対しては国民は以前ほど騒がなくなりました。これはストを国民が認めたからではないのです。人質を取られている弱みから、先生に憎まれたくないというあきらめからでしょう。また、年中行事化したストに、心の中では批判しながらも、次第になれて免疫化した結果だと思うのです。「泣く子と地頭には勝てぬ」という言葉がございますが、巨大な組織と豊富な資金と物言えぬ子供を取り込んでのストに対しては、批判はしても、やめさせることができないというあきらめとあせりの気持ちが国民の中に芽生えつつあります。このことはまことに危険な徴候だと思うのでございます。(拍手)
 教員組合と一般の労働組合の間には根本的な差があります。親は、義務教育期間中は法律によって子供を学校に預けなければなりません。この預かった子供を取り込んで父兄に脅威を与えるという、この特殊の切り札を日教組は持っている。この独特の立場を利用して、ストを構えて政策の実行を迫るということは、卑劣ではないでしょうか。
○議長(安井謙君) 有田君、時間が超過しておりますから、簡単に願います。
○有田一寿君(続) 私は思います。あらゆる文教政策の中で、最も基本的で全国民が望んでいることは、日教組の姿勢を正してもらいたいということではないでしょうか。大平内閣はどう対処なさるおつもりか、教育界に倫理を確立する第一歩だと思いますので、総理と文部大臣に御返答をいただきたいと思うわけでございます。
 以上をもって、私の代表質問を終わらしていただきます。ありがとうございました。(拍手)
   〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
○国務大臣(大平正芳君) 東大紛争の現状をどう認識しておるかという御質問でございます。現在、東京大学はおおむね平穏な状態でございますけれども、なお文業部長室不法占拠火災事件簿、異常な事態が見られますことはまことに遺憾に存じます。大学がみずからの責任において、学問研究の府にふさわしい環境を確保する努力をさらに重ねるよう期待し、また、そういう方向に指導してまいりたいと思います。
 日教組の政策要求ストに関する見解いかん、特に法治国としてどう受けとめるかという御質問でございます。公務員である教職員のストライキは法律で禁止されておるところであり、特に政治スト、スケジュールストは違法性の強いものであると承知いたしております。教職員がこのような違法行為を行うことは、子供を学校に託しておる父兄を初めとする国民の信頼を著しく裏切るものであり、このような行為が後を絶たないことはまことに遺憾に存じます。このようなことのないよう、関係者に厳しい反省を求めたいと存じます。(拍手)
   〔国務大臣内藤誉三郎君登壇、拍手〕
○国務大臣(内藤誉三郎君) 有田さんの御質問の中で、大学の運営に関する臨時措置法の期限が到来しておるにもかかわらずどうしたんだというお話でございますが、法的措置について種々検討を重ねてまいりましたところ、まだ結論を得るに至らず今日に至りておるのでございます。同法の今後の取り扱いに関しては、学園の状況その他の事情を勘案しつつ、できるだけ早期に適切な措置を講ずることといたしたいと思っております。
 それから次に、大学紛争以来十年になるが、当時考えられた改革案は実施されているのかというお尋ねでございますが、筑波大学のような創設大学では改革を実施することもですが、既存の大学の場合は、大学の運営に当たって学長の補佐機関を設けるとか、あるいは学生の教育方法について改善を図られるなど、実施を見ているところもありますが、大きな改革は行われておりません。
 大学紛争以来学生の処分がなされていないのはなぜかというお尋ねでございますが、東京大学では、昭和四十四年に安田講堂の例の大学紛争がございました。その過程において、東京大学と学生代表との間に、正当な自治活動の規制となるべき処分は行わないこと等を内容とする確認書が交わされて、自来、御指摘のとおり、学生に対する処分は行われていないのでございます。しかしながら、先般文学部長室の出火事件に関する学生処分に関しては、すでに文学部教授会においてその責任を徹底的に糾明する旨を文学部長告示をもって明らかにしており、文学部教授会においても積極的に検討が進められているのでございます。
 文部省としては、かねて非違を犯した者に対する適切な措置について各大学を指導することにしておりますが、今後とも各大学の適正な対応を求めてやまないのでございます。
 それから、有田さんのお話の、大学の入学時期及び学研の始期を九月にしたらどうかというお尋ねでございますが、御指摘のとおり、大学の入学時期を九月とすることについてはいろいろな利点がございます。いまお述べになったような利点がございますので、十分これは検討すべき課題だと私も思っておりますが、問題点は、高等学校までの学年暦を変えずに、大学についてのみすべて九月新学期とすることについては、高校卒業から大難入学までの期間、青年をどのように扱うかという問題があるのでございます。そして、高校卒業者の進学、就職時期と関連するなど重要な問題がございますので、この点も十分見きわめる必要があると思っております。
 このような問題の重要性にかんがみ、文部省としては、今後いろいろな機会をとらえて広く各界各層の御意見を伺い、世論の動向をも勘案しながら検討を進めてまいりたいと考えております。
 最後に、日教組のストライキの問題でございますが、日教組が計画した全国統一ストは政治目的を達するために子供を人質にした教育ストである、このようなストについては、父兄はいたずらに、批判しながら中止をさせ得ないあきらめがあり、法治国家として危険な状態であると思うが、文相はどうするんだと、こういうお尋ねでございますが、公務員である教職員のストライキは、その目的のいかんを問わず法律で禁止されているところであり、このことはすでに最高裁判決においても憲法に違反しないことが明確にされておるところでございます。
 次代の国民を育成するという重要な使命を担っておる教職員がこのような違法な争議行為を行うことは、父兄の教育に対する信頼を著しく裏切ることになるばかりか、法秩序を守ることを教えるべき立場にある教職員自身がこれを破るということは許さるべきではないと考えるので、今後とも服務を厳正にして、国民の教育に対する期待にこたえてまいるように指導してまいりたいと考えております。(拍手)
○議長(安井謙君) これにて質疑は終了いたしました。
     ―――――・―――――
○議長(安井謙君) お諮りいたします。
 さきに設置いたしましたロッキード問題に関する調査特別委員会につきましては、この際、その目的を「航空機輸入に関し徹底的に調査し、その真相を解明するため」とし、その名称を「航空機輸入に関する調査特別委員会」と改めたいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(安井謙君) 御異議ないと認めます。
 本日は、これにて散会いたします。
   午後五時四十一分散会
     ―――――・―――――