第091回国会 社会労働委員会 第9号
昭和五十五年五月七日(水曜日)
   午前十時十分開会
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   委員の異動
 四月二十五日
    辞任         補欠選任
     初村滝一郎君     長田 裕二君
 四月二十六日
    辞任         補欠選任
     井上  計君     柄谷 道一君
 四月二十八日
    辞任         補欠選任
     長田 裕二君     丸茂 重貞君
     長谷川 信君     田代由紀男君
 五月六日
    辞任         補欠選任
     柄谷 道一君     井上  計君
 五月七日
    辞任         補欠選任
     石本  茂君     高橋 圭三君
     片山 甚市君     田中寿美子君
     小笠原貞子君     沓脱タケ子君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         久保  亘君
    理 事
                遠藤 政夫君
                浜本 万三君
                小平 芳平君
    委 員
                高橋 圭三君
                竹内  潔君
                玉置 和郎君
                福島 茂夫君
                丸茂 重貞君
                森下  泰君
                片山 甚市君
                田中寿美子君
                高杉 廸忠君
                安恒 良一君
                渡部 通子君
                沓脱タケ子君
                井上  計君
                前島英三郎君
                下村  泰君
       発  議  者  田中寿美子君
   国務大臣
       厚 生 大 臣  野呂 恭一君
   政府委員
       厚生省公衆衛生
       局長       大谷 藤郎君
       厚生省医務局長  田中 明夫君
       厚生省社会局長  山下 眞臣君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        今藤 省三君
   説明員
       科学技術庁原子
       力局核燃料課長  吉村 晴光君
       科学技術庁原子
       力安全局原子力
       安全課長     辻  榮一君
       科学技術庁原子
       力安全局防災環
       境対策室長    穂波  穣君
       資源エネルギー
       庁公益事業部原
       子力発電課長   西中真二郎君
       資源エネルギー
       庁公益事業部原
       子力発電安全管
       理課長      向 準一郎君
       労働省労働基準
       局安全衛生部労
       働衛生課長    林部  弘君
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  本日の会議に付した案件
○原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律
 の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送
 付)
○雇用における男女の平等取扱いの促進に関する
 法律案(田中寿美子君外二名発議)
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○委員長(久保亘君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 去る四月二十四日、山中郁子君が委員を辞任され、その補欠として小笠原貞子君が選任されました。
 また、去る四月二十八日、長田裕二君及び長谷川信君が委員を辞任され、その補欠として丸茂重貞君及び田代由紀男君が選任されました。
 また、昨六日、柄谷道一君が委員を辞任され、その補欠として井上計君が選任されました。
 また、本日、小笠原貞子君が委員を辞任され、その補欠として沓脱タケ子君が選任されました。
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○委員長(久保亘君) 次に、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案の趣旨説明及び衆議院における修正部分の説明はすでに聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○浜本万三君 原爆の関係法案につきまして質問をいたします。
 今日、戦後三十五年たっておるわけなんですが、被爆者の皆さんは非常に老齢化いたしまして、前々から生活苦と病苦、孤独の三重苦に悩まされておったわけなんですが、老齢化いたしますとなおその度合いは強くなっておると思います。しかし、政府が依然として現行二法で援護しておりまして、いわゆる国家補償による援護措置を講じられていないことについて被爆者の皆さんは非常に強い不満を持っておられると思います。しかし、幸いなことに最近に至りまして国民運動も高揚いたしますとともに社会情勢も変化いたしまして、政府もそのような情勢変化に対応されまして積極的な施策をとられるようになっております。
 特に、小沢厚生大臣のときには現行法の見直し論というのを発表されましたし、前の厚生大臣の橋本さんは五十四年一月に社会保障制度審議会にこの問題を諮問されるということになりました。そしてさらに、五十四年六月には原爆被爆者基本問題懇談会に基本問題についての諮問をされるようになったわけでございまして、大きな変化を示しておると思います。これは政府関係者の非常な努力もあったろうと思いまして、この席をかりて一応評価をいたすところでございます。したがいまして、情勢も相当に変化しておりまするし、また三十八年の東京地裁における判決、また五十三年三月の最高裁における判決等を参照いたしますると一層国家補償による援護措置を早急に実現しなければならないと思うわけでございます。そういう立場に立ちまして、以下質問をいたしたいと思います。
 まず第一番に質問をいたしたいと思いますのは、基本懇の答申の見通しとそれから厚生省の態度というような問題について御質問をいたしたいと思います。
 被爆者に対する制度の基本理念について明確にするために、被爆者対策基本問題懇談会で基本問題の検討をされておるわけなんでございますが、昨年審議いたしました際にも、この結論を一年以内の早い機会に出されるように大臣の方で要望もされておると思うんでございますが、この基本問題懇談会の作業の状態はどのようになっておる
 か、いままでの経過と見通しにつきまして御説明
 をいただきたいと思います。
○政府委員(大谷藤郎君) 原爆被爆者対策基本問題懇談会は、昨年六月以来七回開催されまして、その間、昨年の十二月には被爆者関係団体からの意見聴取を行われました。またことしの四月には広島、長崎に行かれまして被爆者みずからの意見聴取を行われる等鋭意検討を進められているところでございます。この五月にはもう一度、昨年十二月の意見聴取に引き続きまして、被爆者関係団体からこの問題について詳しく意見をお聞きになる予定になっております。その後、引き続いて懇談会で検討が行われるというふうな過程になっております。
○浜本万三君 五月に再度行われます被爆者の意見聴取というものは、前回に比べて内容はどのように変わってくるわけでございましょうか。
○政府委員(大谷藤郎君) 前回は第一回の意見聴取でございまして、その後、先生方の間でもいろいろ御意見を交わされておりまして、また先ほども申し上げましたように四月に現地へもおいでになりまして、それらを踏まえた上でもう一度この関係団体の意見も聞きたいということになっているわけでございます。
○浜本万三君 今度のときには、朝鮮人被爆者の方々からも意見を聞くような手はずになっておるわけですか。
○政府委員(大谷藤郎君) 予定には入っておりません。
○浜本万三君 これはぜひ検討をしていただきたいと思うんですが、後で外国人被爆者の援護措置の問題について再度お尋ねをするときに、もう一回御質問をいたしたいと思います。
 次の問題は、先般の衆議院の審議の段階におきまして厚生大臣は、基本懇の答申を十分尊重して五十六年度予算に反映するようにいたしたい、かような御答弁をなさっておられるわけでございますが、現在の段階でどのような答申が出されるか予測できておるとするならば大臣の所見を承りたいと思います。なお、基本理念について明確にするということでございますので、恐らく部分的な問題を取り上げることにはならないというふうに思うわけでございますが、もし審議の過程でおわかりになっておれば、内容の見通しについてお話をいただきたいと思います。
○国務大臣(野呂恭一君) 今回五月の二十日に被爆者関係団体から意見を聴取いたしますのが第八回の御会合であろうと思うのでありますが、今日までの会合で私は二度ほど出まして、原爆被爆者の対策について一番問題点は、その基本理念を明確にしなければ今後この被爆者対策をさらに推し進めることにいろいろな問題があるであろうということでございますから、かなり強く、早くひとつ御検討をいただきたい、この諮問期間は一年をめどにということでありますし、その内容いかんによりましては、五十六年度の予算に間に合わすべきものは間に合わしたいし、また、引き続いて検討すべきものは検討しながら具体的に基本懇の答申を尊重して実施をいたしてまいりたいということを申し述べておるわけでございます。したがいまして、今日の段階においてどういう内容なのかということは、私どもは答申の結果が出なければいま申し上げるべき段階ではございませんし、これから本格的に取りまとめの作業に入られるものだというふうに期待をいたしておるわけでございます。
 なお、答申の時期等につきましても、基本懇自身の問題でございますので、明確にいつには結論を出されるであろうということを申し上げることはいかがなものかと思いますが、私どもとしてはできる限り早い機会にお願いをいたしたいということを申し述べておるわけでございまして、基本懇の結論が出ました段階におきましては、政府といたしましては適切に対処していく所存でございます。
○浜本万三君 基本懇の答申を尊重し、五十六年度の予算に盛るようにできるだけ努力をしたいという趣旨に私は解したわけなんでございますが、その場合に基本的理念の変革ということで、これを反映した新しい立法の準備またはこれに基づく予算措置ということになりますと、相当時間的な余裕がないとむずかしいのではないかという心配があるわけなんでございますが、非常に切迫した時間の中で、答申を受けてからの政府の部内での作業日程というものについてはどのようにお考えでしょうか。
○国務大臣(野呂恭一君) いま申し上げましたとおり、基本懇の答申の内容は出されてみなければわかりませんし、これは私どもから審議の内容に触れるわけにはまいりませんけれども、その中で直ちに実施できるものでありますればこれはぜひとも五十六年の予算に間に合わしたい。しかし、基本的に大きい問題であるということでありますならばこれはひとつ検討さしていただきたいというふうに、その答申の内容によって柔軟な態度で進めてまいりたいというふうに考えるわけでございます。
○浜本万三君 いまの大臣のお話を承って、あるいはそういうことになるかもわかりませんが、したがって、答申が出るまでにそういうことがあるとするならば、厚生大臣としての意見を基本懇の方に申し上げるような日程はございませんか。
○国務大臣(野呂恭一君) せっかく基本懇という諮問機関を設けたわけでございます。したがって、基本懇の御意見を承りたいという趣旨のものでありますだけに厚生省がみずから意見を述べるということは、むしろ基本懇を諮問機関として設けておる趣旨を妨げることにもなりはしないかということでございまして、あえて厚生省として意見を申し上げる考えはございません。
○浜本万三君 七人委員会に、基本懇の方に諮問中のことでございますから、これ以上立ち入った御質問をすることも差し控えたいと思うんでございますが、私の希望といたしましては、基本懇の方で国家補償に基づく援護措置ができるような結論を一日も早く出していただくようにお願いを申し上げますと同時に、被爆者の納得のいくような施策が早急に立てられるように、厚生大臣の方とされましても御配慮をいただくように要望いたしたいと思います。
 それから、次の問題は、健康診断地域の地域拡大の問題についてお尋ねをいたしたいと思うんでございますが、この地域拡大の問題を基本懇の方に諮問をしたといううわさが流れておるわけなんでございますが、実際はどうなんでしょうか。
○国務大臣(野呂恭一君) 被爆者の地域の問題でございますが、基本懇の審議の中で私からもお願いを申し上げまして、全体の検討の中でこの地域問題についても御検討をいただきたいという形で諮問をしておることは事実でございます。
○浜本万三君 そうすると、大臣の方では健康診断地域の拡大について基本懇に諮問をされたと言うんですが、性格的に考えてみますと、これは基本懇で御審議なさる基本問題ではないように思うんでございますが、それをあえて基本懇の方に御諮問なさったという意味は何か特別な理由があるわけですか。
○国務大臣(野呂恭一君) 被爆者に対する対応として、この地域の問題も私どもとしては基本的な問題でなかろうかというふうに考えるわけでございまして、したがいまして、あえてこれを拡大したいとか、あるいは現状がいけないんだとかというようなことを諮問をいたしておるわけでございません。被爆地域についても基本的にこの問題についてのお考えをいただきたい、そういう意味でございます。
○浜本万三君 大臣もなかなかむずかしい御答弁をなさっておられるわけでありますが、いきさつを私どもが承っておるところによりますと、長崎県の方から地域拡大について陳情があった。自民党の原爆問題小委員会の方で御論議になったがなかなか意見が合わなかった。そこで大臣が長崎、広島の両県知事にいろんな事情をお聞きになった。そこでも結論が出なかった。したがって大臣は、先ほど御答弁ございましたように、援護の対象者の範囲を決めるんだという形で基本懇に諮問をなさったというお話を承っておるわけなんでありますが、そういういろんないきさつを伺いますと、何か政治的なお話があったのではないかという推測もできるわけなんでございますが、それはございませんでしたですか。
○国務大臣(野呂恭一君) 御指摘のように、両県知事にお越しをいただきまして私はいろいろな意見を聞いたことは事実でございます。ただ、被爆地域の範囲をどのように定めるかということは従来いろいろ政治的ないきさつもあったかと考えるわけでございますが、やはり被爆者援護対策の具体的な広がりというものを決める一つの枠組みとして私は制度の基本的な問題ではなかろうか、こういう考え方、改めてひとつそういう基本的な問題としてこの地域という問題についてお考えを承りたい、こういう意味でございます。
○浜本万三君 そうなりますと、前の厚生省の態度と変わっているんです。この前、広島あるいは長崎等から健康診断地域の拡大について厚生省に陳情等が行われましたときには、科学的根拠がないというのが最大の理由であったわけです。そこで科学的な根拠がないというので、第一回は五十年の初め、広島の場合には広大の竹下教授に調査を依頼いたしまして調査をした結果、五十一年には黒い雨地域についての健康診断地域の拡大が認められたわけです。そこでさらに、小雨地域についても同様に健康診断地域の拡大をお願いするという陳情がなされたんですが、その際にも同様に科学的根拠がないということでお断りになったわけなんでございますが、長崎との関係で言えば、大臣の答弁といままでのいきさつが少し変化をしておるように思うんですが、その間の事情はどういうことでしょうか。
○政府委員(大谷藤郎君) 健康診断特例地域の指定につきましては、残留放射能の有無等について科学的に検討して行うべきものであるという私どもの考え方は変わっておらないわけでございます。昭和五十一年に実施いたしました残留放射能の調査によりましてもまた五十三年の調査によりましても、現在指定されている地域を特に拡大するということについては科学的根拠が乏しいという考え方には変わっておらないわけでございます。しかし、いろいろと御意見もございまして、この被爆地域の範囲をどのように定めるかという問題は、被爆者援護対策の具体的な広がりを決める枠組みといたしまして制度の基本的な問題にもかかわるのではなかろうかということで、この問題について全体としてお考えをいただくということで大臣が基本懇にお願いをされたというわけでございます。
○浜本万三君 そういたしますと、基本懇の方で健康診断地域の拡大の問題について答申されれば大臣は答申を尊重されるということでございますから、そのとおり健康診断地域の拡大を認めるということになりますか。
○国務大臣(野呂恭一君) 答申が出されてまいりませんと、どういうふうに対応するかということは明らかに申し上げるわけにはまいりませんが、しかし、基本的には基本懇のお考えというものを十分尊重することにおいては私は当然であると考えております。
○浜本万三君 基本懇の答申を尊重されるということになったわけですが、問題はそうすると、いままでの科学的根拠というものについては、その場合どういう認識に立たざるを得ないんですか。
○国務大臣(野呂恭一君) もちろん健康診断の特例地域の指定というものは、お話しになりましたとおり五十一年にあるいは五十三年にいろいろな調査の結果が出ておるわけでございますから、いまのところ拡大の科学的根拠が乏しいのではないかというのが従来の経緯であろうかと思いますが、基本懇が現地の御意見も聞きあるいはその他の団体の御意見も聞き、そして総合的な判断の上でなお科学的にはこういう判断を示すことが正しいのではないかというような御指摘がございますれば、当然そういう意味においての基本懇の考え方を私どもは十分尊重していかなければならないという姿勢でございます。
○浜本万三君 科学的根拠も尊重するようなお話なんでございますが、科学的根拠ということになりますと、長崎の場合には比較的資料が少ないわけでございまして、私はよく存じませんのですが、広島の場合には被爆直後の気象関係の資料とか、あるいは五十年調査及び五十三年調査というものが一つの参考になるというふうに思うんです。
 私は、五十三年十一月八日、中国新聞で竹下教授が発表された内容を拝見しておるんでございますが、そのときに竹下教授は約三百地点の土を取りまして、千葉の放射線医学総合研究所に送って分析をしていただいた結果について、次のように発表をされておるわけです。「竹下教授は「誤差を考慮しても、〃大雨〃地域と〃小雨〃地域の残留放射能に差がないことがわかった。セシウムを対象の調査方法には限界があるが、中国の核実験による影響も考え、より厳密なデータにするためには、長崎や山陰地方との比較をすれば、原爆による放射能量を正確に推定できる」」というふうに話しておられるわけでございまして、その測定の結果の残留放射能というのは大雨地域と大差はない、非常に高濃度のものであったということを発表されておるわけなんです。そういう科学的根拠というものを地域拡大の参考にすべきだというのが私の主張なんでございますが、これについてはどのような御見解でしょうか。
○政府委員(大谷藤郎君) いま先生御指摘の、竹下先生がどういう資料でお話しになっているのかちょっと私どもよく承知いたさないのでございますけれども、私どもの五十一年、五十三年調査におきましては、小雨地域と他の地域との間に格別これを特例地域として指定するだけの科学上の差があるというふうには調査結果から出ておらないと理解しているわけでございます。
○浜本万三君 いずれにいたしましても、先ほど大臣から御答弁いただきましたように、私どもは科学的根拠というものが広島の小雨地域もあるので、したがって健康診断地域に入れていただきたいという希望を持っておるわけなんですが、基本懇に諮問された以上は基本懇で出される答申を待つんだというお話がございますから、私どもといたしましては基本懇の答申がございました暁にはそれを尊重していただきまして地域拡大について十分配慮していただきたい、かように思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(野呂恭一君) 基本懇の答申の内容についていま推定はできませんけれども、出されました基本懇の御意見を十分尊重いたしまして対処してまいりたいと考えております。
○浜本万三君 それから次は、外国人被爆者の問題につきましてお尋ねをしたいと思います。
 まずお尋ねをいたしたいと思いますのは、いわゆる広島、長崎で被爆いたしました外国人被爆者はどの程度であったのか。また、そのうち生存者数でありますとか死傷者数でありますとかいうようなものが、もしわかっておれば推定値を御説明いただきたいと思うんです。
○政府委員(大谷藤郎君) 韓国の被爆者につきましては約二万人ということを聞いておりますけれども、正確な数字は把握されていないというふうに承知いたしております。
○浜本万三君 韓国の被爆者というのは、それは韓国にいる人の被爆者ですか。
○政府委員(大谷藤郎君) 現在韓国に居住されておられる方でございます。
○浜本万三君 では、そういう質問でなかったんです。広島、長崎で被爆された外国人被爆者の数ということでございましたんですが、これは私の方で大体調べましたところによりますと、韓国人の場合を主として例にとって申し上げますと、広島県下では大体八万数千人がおられて三万二千人から四万人が被爆をされて、死亡者が一万二千から二万人であった。長崎の場合には、七万人の在住者のうち被爆者が一万三、四千人、死亡者が三千人から四千人であったというふうに聞いておるんですが、間違いございませんか。
○政府委員(大谷藤郎君) 私ども正確な数字は把握いたしておりません。
○浜本万三君 厚生省としてはそういう資料をつかんでおいていただきたいと思うんでございますが、特に韓国人の場合には、私が申し上げるまでもなく戦時中徴用されまして強制的に日本に来て労働に参加しておった人が非常に多いわけなので、そういう道義的責任におきましてもはっきりした数字をつかんでおられる必要があると思うんですが、その点どうでしょうか。
○政府委員(大谷藤郎君) 現在のシステムでは国籍を記載するようなシステムになっておりませんで、私どもとしては把握をいたしておらないわけでございます。
○浜本万三君 できるだけそういうようなのは調べておいていただきたいというふうに希望を申し上げておきたいと思います。
 そうしますと、これもまたわからないというお答えになるかわかりませんが、現在、被爆者のうち手帳を交付されておる状況でありますとか、あるいは治療や援護を受けておる者はどのような状態になっておるか、もし把握されておればこれもお知らせいただきたいと思うんです。
○政府委員(大谷藤郎君) 特に韓国人の方だけを集計するということはいたしておらないわけでございます。先ほども申し上げましたように国籍を記載するというふうになっておりませんもので、これを把握することができないわけでございます。
○浜本万三君 これは長崎とか広島とかいう市におきましても、調べようと思えば調べられるのじゃございませんか。
○政府委員(大谷藤郎君) 原爆二法のたてまえが、国内に居住している方にこれをすべて給付するというたてまえになっておりまして、特に韓国人の方を識別するための記載というふうなことをいたしておりませんものですから、これにつきましては把握の仕方がないというふうになっております。
○浜本万三君 それでは話題を変えまして質問をいたしますが、最近韓国人に対する法律の適用条件というものが少し違っておるのじゃないかという受けとめ方をしておるのですが、たとえば治療の目的で入国した者に対して手帳を交付するとか、あるいは治療目的以外で入国した者にも手帳を交付するとかいうこともありましたし、さらに五十三年三月の最高裁の判決では、治療のために密入国した韓国人に対する手帳交付を拒否したことにつきましては、これは違法行為であるというふうに政府をたしなめられるような状態も出ておるわけでございます。これは若干外国人被爆者等に対する政府の対策が変化しておるのではないかというふうに思われますが、いかがでございましょうか。また、そのような条件がだんだん変化をしておるということは政府の補償責任を示しておることになるのではないかというふうに私は思うんでございますが、いかがでございましょうか。
○政府委員(大谷藤郎君) 従来、短期滞在の外国人被爆者に対しましては、被爆者健康手帳を交付する際に、居住関係の存在ということを要件といたしまして、適法な入国後おおむね一カ月以上滞在する者であれば居住関係を認めるということにしていたわけでございますけれども、五十三年四月からこの取り扱いを変更いたしまして、以後わが国に単に現住すればそれで足りるというふうな取り扱いにしたわけでございます。これにつきましては五十三年三月の孫振斗さんの訴訟、最高裁判決の趣旨というものを尊重いたしましてそういうふうな取り扱いにいたしたわけでございます。
○浜本万三君 ですから、変化をしておるというふうに受け取って差し支えないのじゃないかと思いますが、それはよろしいですね。
○政府委員(大谷藤郎君) そのようにおとりいただいてよろしいかと思います。
○浜本万三君 そこでお尋ねするわけなんですが、最近韓国人被爆者に日本に来ていただいて治療してもらおうではないかというような話が出ておるわけなんでございますが、これは具体的にどのように進められておられるのか、経過と現状についてお話をいただきたいと思います。
○政府委員(大谷藤郎君) 昨年来この問題につきましては韓国側と話を詰めておりまして、ことしの二月下旬に原爆専門の医師とわが方の厚生省の事務官を韓国へ派遣いたしまして、在韓被爆者の方で渡日治療を希望される方の選考をいたしまして、約十人ばかりがわが国の原爆医療をお受けになるために渡日されるという手順になっておりますが、その渡日の時期、方法等につきましては韓国側にお任せしてあるわけでございまして、現在までのところできるだけ早く行きたいというふうなことでございますが、まだ正確な日時を向こうからお知らせいただいておらないということでございます。
○浜本万三君 この窓口はどこになっていらっしゃるのですか。
○政府委員(大谷藤郎君) この問題は、当初は政治家のベースで向こうの方と話し合いがありまして、それが厚生省の方に話がございまして、私どもと韓国政府の間で話し合いましてやっておるというわけでございます。
○浜本万三君 私どもというのは厚生省と韓国政府のどこでございますか。
○政府委員(大谷藤郎君) 韓国政府の医政局でございます。
○浜本万三君 そういたしますと、先ほど政治家の方が話し合われた内容を韓国政府と厚生省で引き継いでやっておられるというお話なんですが、その政治家の方というのは正確に言えば自由民主党の当時韓国に行かれました木野晴夫団長、これは政調会副会長さんでございますが、それから韓国の民主共和党政策委員会の議長さん、このお二人のことを指していらっしゃるのですか。
○政府委員(大谷藤郎君) そのとおりでございます。
○浜本万三君 この協定書かメモかわかりませんが、合意した約束の内容によりますと、正確には四項目、前文に一項目重要なことが載っておるわけでございます。その前文の一項目というのは「韓國側は原爆被爆者を治療する病院建立の為に日本側が財政的、技術的支援をするやう、強く希望したことをつけ加える。」と、こういう条文になっておりまして、それを引き継ぎました韓国の核禁平和会報によりますと、病院建設の約束ができたんだという報道がされておるわけなんでございます。そのほか四つの約束事の中には、「韓國医師の日本派遣訓練」、「日本医師の韓國への派遣」、それから「在韓原爆被爆者の渡日治療」、以上三つのこと、そのほかは「以上の各項に関しては可能な事項から年内にも實施するものとする。」という約束になっておるわけなんですが、この中で私が聞きたいことは、前文に書いておる病院建設の問題、それから医師の交互派遣というのはこれは厚生省の所管ではないと思うんでございますが、それらも引き継いで厚生省の方で韓国政府と話し合いをされておるのかどうかという点でございます。
○政府委員(大谷藤郎君) ただいまのお話の点のうち、病院建設の問題あるいは韓国医師の日本派遣の問題につきましては、私どもとしては外交的な協力のベースで行われるべきものであるというふうに考えておりまして、そのほかの日本側が迎えました渡日治療につきましては厚生省ベースで話し合っているわけでございます。
○浜本万三君 これは国務大臣としての厚生大臣にちょっと伺うのですが、大体政府の約束事の出発が両国政府の政治家によって最初の口火が切られたわけなんでございますが、これはわれわれから考えますと正常なことではないというふうには思うんですが、大臣はどのようにお考えでしょうか。
○国務大臣(野呂恭一君) 当時、私も自民党の政調副会長、筆頭副会長をいたしておりまして、木野君を団長として自民党が派遣をしたことについて承知をいたしておるわけでございます。むしろこれは政党同士の政策委員会での話し合い、その結果をメモにいたしたものでございまして、したがいまして、厚生省としてはその内容の実現について厚生省の立場としてできるだけ可能な範囲内で十分検討をしたい、また実現をしてまいりたいというふうに考えておることは事実でございます。ただし、党と党との話し合いのメモでございますので、政府としてはこれを尊重するも、直ちに実施できるものもありまた長期にわたって検討しなきゃならないものもあり、厚生省独自で判断できないものもあろうかと思いますが、いずれにしても日韓両国の政策のいろいろの話し合いの場におきまして、原爆被爆者に対しては道義的にも十分措置をする姿勢は私は間違っていないというふうに判断をするのでございます。
○浜本万三君 私は、これは悪いということをちっとも言っていないんです。要するに一つの問題は、メモとして公表されておるのかどうか知りませんけれども、約束されておるこの事柄というものは一体どういう性格を持つのかということを非常に疑問に思うわけなんです。特にこのメモの中で列記されておる一つは渡日治療のことなんで、これは当然厚生省の所管に人道的な立場からいってもなると思うんでありますが、病院建設につきましてもあるいは所管外とは言えない事情があるわけなんですね。したがって私は、病院建設とか渡日治療という厚生省の所管にかかわる問題について、この文章の性格ははっきりしておきませんと問題があると思っているわけです。しかもこれは、単に政治家が行ってお約束をされたという問題だけでなしに、このときには舘山企画課長も随行されまして相談に乗っておられる節もうわさとしてはあるわけなんでございますから、厚生省が全然政治家の約束だと言って逃げることはできないと思うんです。
 そこで私は、こういう文章によって一連の動きがあるとするならば、文章の性格をきちっとして、厚生省はこれに対してどういうふうな対応をしておるかということを明らかにしていただかないと問題が生じるのではないかと思いまして、重ねて質問をするわけなんです。
○国務大臣(野呂恭一君) 先ほども申しましたとおり、在韓被爆者に対して政党間での意見の交換を行って、そして合意に達した事項について取り交わしたメモであるという認識の上に立ちまして厚生省としてはその内容の実現については、厚生省の立場において可能な限り協力をしていきたいという考えでございまして、御指摘のようにその位置づけというものは確かに政党間の、しかも政策委員会の間におきまする意見交換の結果出てきたものであるということでございます。その点は十分踏まえまして厚生省としては進めてまいりたいと考えておるわけでございます。
○浜本万三君 まだはっきりしない点はたくさんあるんですが、病院のことについては向こう側の会報によると、相当これは金額まで明示いたしまして確実性があるような報道をなされておるんですが、これは厚生省としてはどういう御見解ですか。
○政府委員(大谷藤郎君) 病院建設等の問題につきましては、先ほどからも申し上げておりますように、海外協力の一環として行われるべきものでございまして、これにつきましては外務省の方でプライオリティーとかいろいろな点があるかと思いますが、もしそういうふうなことで病院建設を進められるということであれば、厚生省としては大いにこれは協力するという気持ちは持っておるわけでございます。しかしいずれにいたしましても、全体の海外協力の中で外務省としては真剣にお考えになっているというふうに私どもは理解しているわけでございます。
○浜本万三君 それでは、渡日治療の具体的な問題についてお伺いするんですが、この会報によりますと相当詳しい報告が書かれておるわけなんです。ちょっと私、韓国文はよくわかりませんが、大体漢字が書いてありますから推測をして申し上げますと、韓国としては渡日治療の対象者十二名をお決めになっていらっしゃるのです。これは恐らく三人の方を厚生省から派遣されていろいろ打ち合わせた結果決まったんじゃないかというふうに思います。
 そこで韓国側は、韓国の代表者が渡日治療の十二名の方を引率をいたしまして福岡ないしは下関に連れておいでになることになっております。そこで日本の厚生省の職員に引き継ぐということに文章上はなっておるわけです。厚生省は、渡日治療対象者を全員入院させて、そして被爆者健康手帳を交付して治療するんだというくだりが書いておるわけなんでございますが、そこのところはこの会報のとおり間違いございませんか。
○政府委員(大谷藤郎君) 日本政府にまだそこまでの正確な情報は届いておりません。
 私どもとしましては、この問題は国内においでになった場合は先ほど申し上げましたように、孫振斗判決以来の情勢を踏まえましてこれに対処いたしたいというふうに考えておるわけでございます。
○浜本万三君 おいでになったらということでちょっとひっかかりがあるのですが、韓国側は、たとえばいま下関か福岡まで連れてこられるということが書いてあるのですが、どこまで連れてきたらという意味なんですか。
○政府委員(大谷藤郎君) 一応昨年の話し合いでは、国内の病院まで韓国側が責任を持っておいでになるというふうな話し合いになっておると私どもは理解しておるのでございますけれども、これは具体的な話し合いになりました段階でもう一度詰めたいというふうに考えておるわけでございます。
○浜本万三君 これは非常に細かいことなんで、聞くのもおかしいのですけれども、うわさによると向こう側はこの文章のとおり下関ないしは福岡まで引率をして連れておいでになる。ところが、そこから原爆病院まで入院させる間の旅費の問題が問題になっておるという話を聞いておるわけなんです。はなはだみみっちい話なんですが、その旅費の問題が問題になっておるということになると、そこのところがネックならば、もうちょっと厚生省は早くお話をつけたらどうかなという気持ちを私は持っているのですが、それはどうなんですか。
○政府委員(大谷藤郎君) 先ほど申し上げましたように、昨年韓国政府との話し合いにおきましては病院まで韓国政府が連れてこられるというふうに私どもは理解しておりまして、韓国政府から、下関から現場の病院までどうなるか、それは困るというふうな話は実はまだ聞いておりません。
○浜本万三君 それじゃこれは水かけ論になりますからこれ以上は質問をいたしませんが、要するに私が入手した情報によると、非常にみみっちい話で話が進んでいないということになっているわけなんです。ですから早く韓国側と話をしていただきまして、入院をさしてあげるならば早く入院をさしてあげてほしいというように思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(野呂恭一君) いまお答え申し上げておりますとおり、受け入れの際の最終的な事務的詰めをこれから行わなきゃならぬ問題があろうかと思います。向こう側の御要望に対しましては十分その意向を踏まえて対処してまいりたい、かように考えます。
○浜本万三君 それからもう一つお尋ねをするのですが、これは一回にとどまらず、さらに次の希望者を渡日治療のために派遣するということが約束されておるやに聞いておるのですが、今後の問題としてはどういうお考えで対処されるつもりですか。
○政府委員(大谷藤郎君) ただいまのところは、二回目以降につきましては韓国政府と詰めておらないわけでございますけれども、約十人の方が病院で治療を受けられまして、国内の事情等もいろいろあろうかと思いますのでそういった治療の状況等を踏まえまして、それ以降の問題については改めて韓国政府とお話し合いをしたいと考えているわけでございます。
○浜本万三君 この点については、厚生省の五十五年度予算にもないんですが、韓国の場合には原爆被爆者協議会の方に、大体日本の金にして三千万円ほど補助金を出して渡日治療のために使用したいという考え方が出ているようでございますが、これが実質上制度化されました場合に、五十六年度以降の厚生省の予算にこの受け入れのための予算をお組みになるつもりですか。
○政府委員(大谷藤郎君) 私どもは、先ほども申し上げましたように十人の方の治療を見ながら、引き続いて韓国被爆者の方々についてお力添えしたいというふうな気持ちを持っておるわけでございますが、予算につきましては、現在、原爆医療費全体の枠組みの中で考えていくというふうな考え方をいたしているわけでございます。
○浜本万三君 だから、そういう予算を組むんですかどうするんですか。その項目として枠組みの中に入れるんですか。
○政府委員(大谷藤郎君) 予算の立て方といたしましては、いまの医療費の中で運営できるというふうに理解しているわけでございます。
○浜本万三君 アメリカの例の医師派遣等は放影研の予算からおやりになったんですね。そういうやり方ですか。
○政府委員(大谷藤郎君) これは医療費と手当の問題でございますので、既存の大きな枠がございますので、その中で泳ぎたいというふうに考えているわけでございます。
○浜本万三君 わかりました。それは、いずれにしましても、さっき大臣に申し上げましたように、多少十分な意思統一ができていないように思いますから、早急にひとつもつれたひもがあればそれを解いていただきまして、韓国被爆者の渡日治療ができるように配慮をしてもらいたいと思います。
 それから次は、資料整備のことについてお伺いしたいと思うんですが、広島には例の俗称原対協というのがございまして、被爆者の健康診断等をやっておられるところなんでございますが、そこの資料が非常に多くなっておるわけでございます。私はいろいろそこの仕事を拝見いたしまして、これは何とか資料の整備について国の方でも援助をしてもらわないと困るのではないかということを思ったわけでございます。
 そこでお伺いをするんですが、被爆者に対する健康診断は、原爆による後遺症というものがどのような形で発現するかわからない点が非常に多いと思います。日常の健康管理や健康指導について適切に処理されることが望まれておるわけなんでございますが、そのためには被爆者の健康診断に関する資料の保存ということと、それからその資料を適切に活用することが望まれるわけなんですが、現在、それらの資料というものはどういうふうに全体的に管理されておるか、御承知ならばお答えをいただきたいと思います。
○大谷委員(大谷藤郎君) 現在の法律によりまして、カルテがそのまま保存されているわけでございます。
○浜本万三君 広島の場合には、主として健康診断をやっていただいております原対協の方で、健康診断個人表――これはカルテでしょうが――の保存管理は、広島は非常に最近多くなっておるわけでございます。原対協の資料によりますと、大体その総数が二百五十万枚にも及んでおるようでございまして、年々しかも二十万枚増加しておるような状態でございます。そういう資料の保管につきまして、非常に大切なことではないかと思うのでございますが、国の方でこれらについて援助をされるお気持ちはないか、お尋ねをしたいと思うのです。
○政府委員(大谷藤郎君) 確かに先生御指摘のように、被爆者のカルテや健診データなどにつきまして、これをマイクロフィルム化して保存して活用するということは非常に大事なことであるというふうに考えるわけでございますが、ただ、改めて特に国が保存費用について助成をするかどうかは大変むずかしい問題かと思うわけでございます。と申しますのは、現在、多少不十分でございますけれども一応そういうものも含めまして助成をしているわけでございまして、いま改めて保存費用を国が助成するというふうなことについては、私どもとしてはむずかしいことであるというふうに考えておるわけでございます。
○浜本万三君 結局こういう資料というものは、来診者の場合には、診察の際に個人別のホルダーが当所の医師に供覧をされる。当所というのはその広島の健診をしておる場所でございますが、当所の医師はこれによって過去の検査成績や健康歴というものを知りまして、当日の検査成績とあわせて受診被爆者に対して適切な健康管理や健康指導を行うことになる、こう思うのです。
 したがいまして、その整理、保存ということは非常に大切なものになっておるわけなんですが、現在、広島の原対協の収納のスペースというものが非常に狭くて、収納し切れないような状態になっておるようでございます。そこで将来、被爆者のために必要な資料とするならば、これを磁気テープに収録をいたしまして保存し、みんながこれを被爆者のために活用できるという体制を確立することが必要ではないかと思っているわけです。現在、原対協では心電図だけは磁気テープにとっておられるらしいのでございますが、他のものはすべてファイルにとじまして保管をしておるという状態でございますので、どうしても磁気テープにとるような措置を講じたい。そのために国の助成というものを必要としているわけなんですが、再度これはぜひひとつ善処してもらいたいと思いますが、いかがでしょうか。
○政府委員(大谷藤郎君) 私が申し上げるのはまことにあれなんでございますけれども、原対協の方にはいろんな施設整備としてお年玉等からもそういうふうなことをやっておりまして、いま特に国の方からマイクロフィルム化についての助成措置をやるというふうには私どもとしては考えておらないわけでございます。
○浜本万三君 お年玉その他でやっておると言われるのですが、それも一つの方法だろうと思うのですが、いずれにしても、そういう要望に対しまして前向きに取り組むように考え方を変えてもらいたいと思いますが、これは大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(野呂恭一君) 十分慎重に検討させていただきまして、前向きで進めていくような方法をとってまいりたいと考えます。
○浜本万三君 それではその次に、健康管理手当の認定制度の変更ということが最近の新聞で発売されておるわけなんでございますが、公平認定のために審査委員会をつくる、これは申請の多い都道府県に設置したいということが新聞に載っておったのを拝見したわけなんですが、現在、健康管理手当の認定状況はどうなっておるでしょうか、お尋ねをいたしたいと思います。
○政府委員(大谷藤郎君) 現在、全国で十四万七千七百三十人というふうになっておるわけでございます。
○浜本万三君 この中で都道府県にアンバランスがあるということではないかと思うんでございますが、特に認定の多い都道府県、認定の少ない都道府県というものをできれば例示してもらいたいと思います。
○政府委員(大谷藤郎君) 徳島県の九一・八%、長崎県の五七・一%、少ないところでは宮崎県の七・五%、岐阜県の八・八%、このようにパーセントに非常な格差がございます。
○浜本万三君 これは、認定を却下した理由などは詳しく厚生省に来ておるんですか。
○政府委員(大谷藤郎君) これは各県当局にお任せしておりまして、厚生省まで上がっておりません。
○浜本万三君 認定率のいいところ、悪いところ、それはどういう理由かという点について、厚生省で判断をされるとどういうことになりますか。
○政府委員(大谷藤郎君) 申請に対しまして、よほどの例外的な問題というのは、私どもとしては非常に少ないのではなかろうか。大体全国同じような割合でされているのではなかろうかというふうに考えているわけでございます。この一番の大きい原因は、何といいましても申請数のアンバランスが一番大きい問題でございます。
○浜本万三君 そうすると、委員会をおつくりになる都道府県というのは、具体的に言いますとどこになりますか。
○政府委員(大谷藤郎君) 実はまだ決めておりませんのですが、私どもとしては、認定件数の非常に多い県につきましてこれを設けたいというふうに考えているわけでございます。
○浜本万三君 新聞によりますと、申請件数の多い広島、長崎、山口、大阪などの各府県に委員会を設けて申請のチェックに踏み切ったと書いてあるのですが、そういう都道府県ですか。
○政府委員(大谷藤郎君) いま先生がおっしゃいましたような大体そういう府県を考えているわけでございます。
○浜本万三君 そうしますと、委員会の構成などはどのようにお考えですか。
○政府委員(大谷藤郎君) 健康管理手当の申請を十分手落ちなく、偏らない判断での認定について実効を期するために、特に数の多い県につきまして専門委員会を設けるという、とでございますけれども、この方には多年の経験を有する専門医師というものをできるだけ選んで、知事からこれを指定するという形でやりたいというふうに思っております。
○浜本万三君 何名ぐらいですか。
○政府委員(大谷藤郎君) 大体三名ないし四名程度の専門医をお願いしようということになっております。
○浜本万三君 八条の認定の場合にも過去いろいろ問題がございまして、たとえば認定の資料を公表しろということにつきまして、厚生省もいままで渋ってこられたわけなんですが、この場合には認定の資料というものは公表されるわけですか。
○政府委員(大谷藤郎君) 先生のお話は、個人の資料の問題かと思いますけれども、それにつきましては発表いたしません。
○浜本万三君 私もちょっと心配しますのは、認定の枠を狭めるのではないかという心配が一つございます。認定患者の認定につきましても過去そういう批判があったわけなんでございまして、健康管理手当におきましても、三名ないし四名の医師によって合議をするということになってまいりますると、従来よりも認定の枠が狭まってくるのではないか、被爆者の皆さんから言えば御不満だろうというように思います。そこで私どもは、公正な認定をしておるんだというためにもこの資料を公表するということを前々からお願いをしてきたところなんでございますが、そういう心配はございませんか。
○政府委員(大谷藤郎君) できるだけそういうことのないよう指導してまいりたいというふうに考えます。
○浜本万三君 認定の枠を狭めないようにひとつ配慮をしてもらいたいということ。
 それからもう一つは、先ほど厚生大臣からもお話がございましたように、基本懇の答申によって国家補償による援護法が制定できるんではないかというような、ある意味では被爆者に希望を持っていただいているような状況の中で、健康管理手当でまたこういうふうに認定制度をつくって認定をおやりになるということになりますと、大変不信感が出るのではないかというように思いますので、私といたしましては、従来の枠を狭めないように公正に、被爆者の立場をよく尊重していただいて認定をしていただくようにお願いをしたいと思いますが、再度ひとつそれに対する考え方を述べてもらいたいと思います。
○政府委員(大谷藤郎君) できるだけ先生の御趣旨の意を体して指導をしてまいりたいというふうに考えます。
○浜本万三君 もう時間がないので、次は放影研の移転に関する問題につきましてお尋ねをいたしたいと思います。
 情報を伺いますと、最近、広島にある放影研につきましても長崎の放影研につきましても、それぞれ理由は違いますけれども、その位置を変わらなきゃならぬ、こういう事情ができておるようでございます。それで広島の場合には、特に政令都市に四月一日から移行いたしましたので、その公園整備計画の一環といたしまして、放影研が移転を余儀なくされておるわけでございます。広島市の計画をしております公園整備計画によりますと、第一期が昭和五十五年度から昭和五十六年度、それから第二期計画は昭和五十六年度から五十七年度、つまり五十六年から七年にわたっていろんな事業が計画をされておるわけでございます。ことしはもうすでに五十五年でございますので、五十七年ということになってまいりますと、早急にこの計画に対応した措置を講じなきゃならぬというように思いますが、この点についてはどのように条件を把握されて、そうしてどういうふうにされようとしておるのか、お答えいただきたいと思います。
○政府委員(大谷藤郎君) まだ正式に地元の間で話が煮詰まってこちらへ要望が上がってきているという段階ではございませんが、このような要望に対しましては、これは十分検討する必要があるというふうに考えております。
○浜本万三君 昭和五十五年三月十日付で広島の市議会が議長に出した意見書等によりますと、早急に立ち退いていただくように書かれておるわけなんでございますが、そういう意見書の内容でありますとかというものは承知されておりますか。
○政府委員(大谷藤郎君) 市議会からの要望につきましては承知いたしております。
○浜本万三君 それでいま放影研と厚生省の間ではどのような御相認をなさっていらっしゃるわけですか。
○政府委員(大谷藤郎君) まだ放影研との間では具体的な話し合いは行っておりません。
○浜本万三君 放影研はどのように対処しようとしておるわけですか。
○政府委員(大谷藤郎君) 放影研の方でも市議会のそういった要望については承知いたしておるそうでございますけれども、まだ放影研としての姿勢を固めて厚生省の方に相認に来るという段階にはなっておらないということでございます。
○浜本万三君 放影研の事務責任者等に話を伺いましても、放影研自体としてはいろんな考え方を持っておるけれども、何しろお金を持っていないんだ、したがって軽々に発言ができないんだということを言っておられるんです。これは事実だろうと思うんですが、そうすると財布のひもを握っておられる厚生省の方が積極的に放影研の姿勢が発表できるような援助をしなければならぬと思うんですが、その点いかがでしょうか。
○政府委員(大谷藤郎君) この問題につきましては地元の正式の要望を待ちまして検討いたしたい、かように考えます。
○浜本万三君 地元の要望といいましても、さっき言いましたようなことでみんな意見を言うべきものが言えないという事情なんですから、厚生省の方で積極的に意見が言えるような体制をつくってやってもらいたいというように思います。それで広島の場合には、長崎も同じことなんですが、調査研究の場所とそれから治療をするところ、そういうものはやっぱり一元一体化の運営をすべきだという在来の考え方を私は持っているわけなんです。そうすると、広島の場合にもせっかく放影研が移転をしなきゃならぬということになってまいりますると、そういう考え方に沿うようなところに移転をさせる必要があるのではないかと思っております。
 たとえば、広島の場合には旧原爆病棟というものがいまあいておりまして、そこを改築すればそういう考え方が実現できない状態でもないというように思っております。一元一体化ということはすでに幾たびかの参議院の附帯決議の中にも衆議院の附帯決議でも述べられておりまするし、この際そういう点を考えながら、五十六年度ではこういう問題に対処するために調査費等をつけるというようなことをしてもらいたいと思うんですが、いかがですか。
○政府委員(大谷藤郎君) 先生御指摘のように、放影研が研究、診療機関等との連携を図って事業を進めていくというのは大変重要なことであると考えます。ただ移転の問題につきましては、私どもとしてもいま申し上げるだけの情報を持ち合わせておりませんので、できるだけ地元の方と連絡をとりましてこの問題に対処していきたいというふうに考える次第でございます。
○浜本万三君 それから長崎の方は、これは国道三十一号線の拡幅の問題に関連することでございますから、広島の放影研よりもより話は進んでおるんじゃないかと思いますが、どうなっておるでしょうか。
○政府委員(大谷藤郎君) 長崎の方につきましてはいろんな案がございまして、事務的に向こうの方でいろいろ進めているわけでございまして、もう少し事態が煮詰まってから私どもの方に話をするというふうに聞いておるわけでございます。
○浜本万三君 ここも時間がないので、簡単に私の意見だけを言って厚生省の方の見解を承りたいんですが、ここの場合もなかなか家主さんとそれからたな子の放影研、あるいは地元の組合と意見が合わないように私は聞いております。
 それで、二つのことを厚生省の方に特に指摘いたしまして考えてもらいたいと思うんですが、一つは、もうたな子の考え方はやめまして放影研で独立の家屋を建てたらどうかということです。たとえば、現在家主の方が言ってきております家賃は、現在の一千万円に対しまして約五倍の五千万を言ってきておるそうでございます。五千万の家賃を一カ月出すということになりますと、これは建てかえた方がいいんじゃないかという考え方も出るわけでございます。
 それからもう一つは、移転を予定されておる地区というのが町の中心地からいえば外れておりますので、むしろ今度建てられるところは原爆病院の一角に建設されたらどうかという考え方を持っておるわけです。これは大体原爆病院が二千七百坪ほどあるそうでございますので、しかも地形を伺いますと三百坪ほどの用地は十分可能であるというふうに考えられますので、一元一体化の考え方を実現するためにもこの際、原爆病院の敷地内に放影研を移転し建物も新しく別に建てるという考え方で進めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○政府委員(大谷藤郎君) 現在この問題は、先生は家主とたな子とおっしゃいましたが、非常にいろいろ微妙な問題も錯綜いたしておりますし、先生のお話はお伺いいたしておきまして、私どもとしても現地からの相談に乗っていきたいというふうに考えます。
○浜本万三君 大臣にここで私の方から希望を申し上げてお答えをいただきたいと思うんですが、さっき申しましたように、放影研は広島の方は記念事業としての公園整備にひっかかりますし、それから長崎の方も道路の拡幅にひっかかっておるわけでございます。しかも、これは早急に問題の解決をしなきゃならぬという時期に来ておりまするので、放影研が本当に計画を立てて他と折衝ができるようなそういう厚生省の援助をしてもらいたいと思うんですが、放影研の担当者をお呼びいただきまして、真剣に相談に乗ってもらいまして話を具体的に進めていただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
○国務大臣(野呂恭一君) 放影研と治療機関とが一元一体化の立場に立って十分連携をとることは、大変御指摘のように重要な問題であると思い、ます。しかし、広島、長崎それぞれ具体的な問題につきましては放影研等の意見を十分尊重しながら、前向きにこれをどうしていくことが機能的にいいのかということについて十分検討さしていただきたいと思います。
○浜本万三君 十分検討をいただきまして、関係者が不安のないように対処していただきたいということを重ねてお願い申し上げたいと思います。
 それから、時間があと五分しかないのでもう一つだけお尋ねをしたいと思いますのは、広島の原爆被爆者特別養護ホームというのがございまして、これが非常に手狭になっておるわけでございます。昨年長崎も百床ほどふやされたようでございますので、広島の場合にも長崎の被爆者と比べますると相当人員も多いようでございますので、この際、県、市の方から厚生省の方に用地を決めましてお願いに参りました場合には、五十六年度で積極的にそれが実現できるようにお力添えをいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○政府委員(大谷藤郎君) まだ私どもその話は聞いておりませんけれども、県、市から具体的な要望が出されました時点におきましてこれは検討してまいりたいと思います。
○浜本万三君 ちょっと実態だけ申し上げておきますと、広島の場合には特別養護ホームに入りたいといって待機しておられる方が非常に多いわけなんです。手元に来ております資料だけを見ますと、原爆養護ホーム、老人ホームを加えまして在宅待機者が七十一名おられます。それから他の養護ホームを加えますと二百七名ほどおられるわけでございまして、非常に養護ホームに入りたいといって待機しておる人が多いということ。しかも、待機をされておる待機期間というのが非常に長うございまして、たとえば特別養護ホームの場合には平均いたしまして三百十九日、約一年間待たなきゃならぬというような状態でございます。したがいまして、広島の特養の整備は急がれなければならないというふうに思いますので、特にこれは大臣の方からそういう趣旨におこたえいただく答弁をいただきたいと思います。
○国務大臣(野呂恭一君) 局長からお答え申し上げておりますとおり、広島の原爆養護ホームの増床について県なり市から御要望がございましたならば、十分検討さしていただきましてその実現に努力をいたしたいと思います。
○片山甚市君 私は、本法案審議に当たりまして、各般にわたる質疑については浜本議員から詳細に述べられておりますので重複を避けまして、特に原爆被爆者と共通する問題として原子力発電による放射能被曝の現状を明らかにするとともに、原爆による放射線被爆者対策が過去の問題ではなく、今日ではより一層深刻な課題となっているということについてただしていきたいと思います。
 そこで、先ほど大臣からお話がありましたように、原爆被爆者援護法は国家補償の精神に基づく援護対策、すなわち原爆被爆者援護法制定が今日重要か課題になっておるということで、第八十四国会においては当時の小沢大臣、昨年の第八十七国会では橋本大臣がそれぞれ必要性を述べられております。特に昨年の五月の二十二日に本委員会において橋本厚生大臣から、今日までかたくなとも言えるほどに国家補償に門戸を閉ざしてきたが、最高裁の孫振斗さんの判決あるいは制度審の意見などを踏まえ、この際原爆被爆者対策の基本理念を問い直してみたい、との積極的なお話があり、当然のことでございますけれども、今日までの政府の姿勢からいえば思い切って一歩踏み出した発言として評価しておる。このような立場で、政府が約束をいたしました、一年以内に速やかな時期にということで附帯決議をつけました問題については、先ほど大臣から御答弁がありましたが、特に七人委員会の関係もございますから、これを踏まえて原爆被爆者の期待にこたえてもらいたいと思います。特に私は後の質問に関係しますから、引き続き質疑をしておきたいと思います。
 去る三月二十五日の本委員会で、公明、共産、民社、二院クラブ及び参議院クラブの御同意を得て戦時災害援護法の制定を共同提案いたしました立場から、今日までは単に原爆被爆者のその特殊性のみの対策を講じてきたのでありますけれども、戦争によるところの被害者は戦時災害援護法で明らかなとおり、空襲による人たちに対しても手厚い対策が必要だということについてはここで繰り返しませんが、特につけ加えておきます。
 今日、最近の国際情勢からとりわけエネルギー確保について皮相的な受けとめをして、省エネルギーかさもなくば物理的な手段で確保する、すなわち相手からむしり取ってくる、言葉を強めて言えば武力侵略さえも正当化しかねないような動きがありますが、厚子力発電による使用済み燃料、すなわち核燃料の再処理の副産物プルトニウムのように、加工の工夫さえすれば原爆製造が可能でありますから、無神経に原発を受けとめられては大変であります。私たちは、過去の戦争の残骸が今日まで及んでいることを先ほどから浜本委員からお話をいただいています。
 そういう意味で、特に国との関係のあるものについては、戦争の被害者については血税で何らかの補償がされておりますけれども、しかし空襲等によって死傷したものに対しては国は何の責任も感じておりません。そういう関係で戦時災害者、とりわけ原爆被爆者の人々が老齢化したという立場からもう待てないということで、何としてもこの問題を解決してもらいたい。ところが、七人委員会は御承知のように全員出席という制約がありますと同時に、著名な方々でありますから日時が十分とれないのではないか。そういうことで先ほどからのお話によりますならば、近いうちに答申をいただくように二回も督促をしたようでありますが、私たちは速やかに結論を出していただくように大臣の一層の努力をまずお答えを願いたい。
 二つ、まず答弁を願いたいと思います。
○国務大臣(野呂恭一君) 原爆被爆者対策につきましては、大変私は大事な問題であるということは言うまでもないわけでございます。いままでのいろいろな機関におきまする御指摘等もございますために、昨年から基本問題懇談会において鋭意検討が進められておりますことは御指摘のとおりでございます。なるべく早くその結論を得て、この基本懇のお考えを十分尊重しながら被爆者の援護対策を進めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
 なお、原発の問題につきましては、その安全性について十分配慮しなきゃならぬことは言うまでもないわけでございます。これは科学技術庁の方において十分努力を願っておるわけでございます。私どもはこの関連の上に立ちましても、原爆被爆者に対しての対策が過ちなきよう期してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
○片山甚市君 私は、第二の原爆として原子力発電の被曝問題がこれから起こってくると憂慮をする立場から、原爆被爆者援護法の制定をお願いしながらも、これから先ほど申しました原発についての質問に移りたいと思います。
 原発とは、すなわち原子力発電による放射線の被曝者をなくする、その前提に立つ原子力発電があり得るのかどうかという立場でありますから、お答えを願いたい。
 第八十七国会における本委員会において、私の質問に橋本厚生大臣はこう答えられました。わが国のエネルギー政策に原子力が大きなウエートを占めざるを得ない条件があることを十分承知しております、その場合でも最大限の安全対策は考えていかなければならない、と答えておられますが、大臣の現状認識はどうでありましょうか。いま安全について十分に考えたいとおっしゃっています。ところが原発周辺の労働者あるいは地域住民に対して特別の配慮を払うべき事態はいまないのかどうか、お答えを願いたいと思うんです。
○国務大臣(野呂恭一君) 先ほども申し上げましたとおり、原発の安全性ということは大変大事な問題でございまして、特にエネルギーの少ない日本におきまして、代替エネルギーの開発ということで原発というものの大きな位置づけがあるわけでございますが、しかしその前提条件におきましては何と申しましても、安全性を確保するということはもう最大の課題であると考えるわけでございまして、そういう点につきまして厚生省といたしましても十分配慮をなされるべきであり、科学技術庁などにおきましてもこの確保の問題については御検討いただいているわけでありまして、厚生省としても十分配慮しながらいろいろな意見を交換し、その安全性確保に努めてまいりたい。これは政府一体となって問題を究明してまいらなければならないものだ、かように考えているわけでございます。
○片山甚市君 大臣は安全を大切にしていきたいと言われました。そこで、放射線の管理は今日まで、たとえばレントゲンでも放射線治療でも人体の影響を十分に配慮されてきたはずでございますが、最近で報道されましたものを見ると、四月三十日、名古屋の名鉄病院と周辺住民との間で、立入調査も含めた放射能公害防止協定が結ばれたと聞いておりますが、その内容はどういうものかということが一つであります。
 しかしその一方で去る三月九日の報道に見ますと、日立造船系列の日立造船非破壊検査株式会社においてずさんな放射線管理が摘発されている。同社の社長は初歩的なミスだったと言っております。スリーマイル島原発の大事故の原因を、原子力安全委員会などでは職員の単純ミスで済まそうとしているようであると同じく、それほどに管理者の立場にある者が安易に扱わせてきたのかということの結論だと考えられます。
 通産省や科学技術庁は、常に事業とか採算とかコストとか、あるいは人間否定の合理化とか技術開発にしか頭が働かないのがあたりまえであります。彼らが人間を大事にしようと思っていないことは事実である。そういう者に何を言ってもむだでありますが、厚生省や労働省はそうでない。人間の命を大事にしよう、労働者に雇用を与えようとそのときの安全労働を第一に考える。こういうことで労働省とか厚生省というのは最もわが国における省庁の中でも人間尊重の省だと思います。そういう立場からいま指摘した二つの例などを見ても、環境衛生や労働安全についてどのようにお考えになっているのか。
 事実、真に国民に受け入れられる安全なものなら、原子力発電というようなものは都心の近いところに火力発電をつくったりガス施設をつくるようにやってもらったらどうか。遠い田舎へまで持っていくのはなぜなのか。前にも聞いたんですが、人のおらないところへ行ってこっそりやっておるが、あれはやはり危険ではないのか。こういうことに落ちつくのであります。
 初めの二つについてまずお答え願い、最後のなぜ東京のど真ん中に原子力発電所をつくっていただいて、いかに安全かということを見せつけてくれないのか、お聞きいたします。
○政府委員(田中明夫君) 最初の名古屋の名鉄病院の件につきまして、私からお答えいたします。
   〔委員長退席、理事浜本万三君着席〕
 名鉄病院と周辺の住民との間におきましてRIの医薬品、放射性医薬品の使用に関連いたしまして協定が結ばれたということは一応県の方から報告を受けておりますが、その詳しい内容につきましてはまだ聴取するに至っておりませんので、残念ながら詳しい内容についてはお答えできません。
○説明員(林部弘君) 二つ目の日立造船非破壊検査株式会社大阪事業所の事案でございますが、この事案に関しましては、昨年の五月に事故を起こしておりまして、それが本年の三月に再び事故を起こしたという事例でございます。
 昨年の五月に発生をいたしました被曝事故につきましては、所轄の監督署の方で災害調査を行いまして、その段階で判明いたしましたことは、ガンマー線照射装置の取り扱い、つまり操作上のミス、それから管理上の不備に基づくものでございまして、この件につきましては改善の指示をいたしておったところでございます。それが今年の三月に再び同じように被曝管理措置が必ずしも十分でなかったと考えられるような事件を起こしたわけでございまして、私どもといたしましては、電離放射線障害防止規則に基づいて厳しい措置をとるということだけが必ずしも万全の措置と考えるわけではございませんけれども、きわめて基本的な操作上の注意を怠って再々そのような事故を起こしたということでございますので、そういったことの重大性というものを十分認識をしていただくという意味で厳しい措置をとる必要があるのではないかということで、送検の可能性ということについて現在、そのような方向で検討いたしておるという段階でございます。
○説明員(辻榮一君) 日立造船非破壊検査株式会社の関係につきまして、私から科学技術庁のとりました措置について御説明申し上げます。
 同事故につきましては、先ほど労働省の方から御説明のあったとおりでございますが、科学技術庁といたしましてはこれにつきまして非常に重要な放射線障害防止法の違反があるということを認めまして、実は同所につきましては、事故の起こりました三月四日以降自主的に事業の停止をしていったわけでございますが、四月二十四日付でさらに十五日間の使用の停止を命ずるという行政処分をいたしました。
 なお、このほか一般にRI事業所の安全規制につきましてはさらに一層の強化を図るという趣旨から、今国会に放射線障害防止法の一部改正を御提案いたしまして先般採決いただいたところでございまして、RI事業所の安全規制についてはこれに基づきましてさらに一層の努力を続けていきたいと考えております。
○片山甚市君 私は先ほど申しましたように、社長が申し上げることは単純な初歩的なミスであるというような言い方をする。管理が行き届かない、初歩的なミスだということを言われましても、放射線の問題でありますからそういうことは許されることではない、こういうように私の見解を述べておきます。従業員というのはやっぱり監督する立場が問題、態度が問題だろう。初歩的だろうとなんだろうと間違いは間違いである。言いわけはやめた方がいいと思います。
 そこで私は、環境衛生、安全労働の両面から今後ますます放射能による重大な課題が提起されていると思うので、この際、関係者の真剣な対策を求めたいのです。大体、人間が自然放射能以上に被曝した場合、いかに許容範囲を設定しようとも放射線量を蓄積するという問題を考えれば、何らかの影響を受けるという大原則を否定できるかどうか、前提をつけずに一言お答え願いたいんです。
○説明員(辻榮一君) 放射線の被曝と人体への影響の関係についてでございますが、この点につきましては、放射線医学の国際的権威で構成されておりますところの国際放射線防護委員会、われわれはこれを一CRPと約称しておりますが、ここがいろいろな勧告を出しておりまして、一九七七年に出しましたパブリケーション26という勧告におきまして放射線による人体への影響を二つに分類しております。すなわち白内障、皮膚紅斑、脱毛等のいわゆる非確率的影響と、白血病、乳がん、遺伝的影響等の確率的影響の二つに区分していろいろ検討をしているわけでございます。
 そのうち、いま問題とされておりますのは非確率的な影響についてでございますが、この影響の発現する最低の線量、すなわち閾値というものについてでございますが、これは非確率的な影響の部分につきましては一応存在するということで、その影響の程度は線量の増加とともに重くなるということがはっきりしておりまして、たとえば白内障では千五百レム以上で発症するというようなことが言われておるわけでございます。しかしながら、白血病であるとか遺伝的影響などのような確率的な影響につきましては、現在のところ線量と発生頻度との間にいわゆる閾値、それ以下では障害が発生しないような低い線量値というものが実際にあるかどうかということは明らかにはなっていないところでございます。
 これにつきましては、ICRPにおきましては放射線被曝の影響について閾値があるかないかわからないのだけれども、考え方としては安全サイドに立った前提ということで閾値が存在するという仮定を置きまして、従来から放射線利用の経験及び放射線被曝の影響等の研究等の知見に基づきまして、放射線障害発生のリスクを社会的に容認できるレベルに抑える必要があるという基本的な考え方で諸般の安全基準の勧告をいたしておるわけでございまして、わが国の放射線安全被曝管理の基準は、このICRPの定めました許容被曝線量を用いて実施しているというのが現状でございます。
○片山甚市君 私が聞いたのは、自然放射能以上に被曝した場合、何らかの影響を受けるという原則に立っておるかどうかということを聞いたのですが、許容量なら何とかいけるという話になっておるようでありますが、納得できません。前提をつけてそういうことを否定しようといたしましても、私はすでに本委員会における質疑で厚生省医務局長から、放射能は医学的見地から可能な限り自然放射能に近い数値に被曝量を引き下げていくことが最もよい、と明快に答えていただいております。そういう意味で放射能被曝の許容線量などというもので不自然な環境を固定化するがごときことは、命の尊厳や人間の未来を否定する行為であると思います。
 そこで、許容線量の問題点は改めて意見を述べるといたしまして、まず原発労働者の被曝データのここ数年の傾向はどうなっているか、御説明願いたい。
○説明員(向準一郎君) わが国の原子力発電所におきます放射線従事者の総数でございますが、昭和五十一年度約二万人でございます。昭和五十二年度が約二万五千人、それから昭和五十三年度が約三万四千人でございまして、これらの従事者の総被曝線量につきましては五十一年度が約六千二百レム、それから昭和五十二年度が約八千百レム、昭和五十三年度が約一万三千レムというふうになっております。
○片山甚市君 私の手元の資料によると、総被曝線量が急激にふえておるというように見られます。その理由は何だろうかというと、原子炉の基数がふえたとか従事する労働者の数がふえたなどということでは済まされないと思います。
 一九七〇年度に五百六十一人レムであった総被曝線量が七八年度では一万三千二百一人レムということであります。このままでいけば八〇年代前半で十万人レムということになるであろうと思います。八〇年代で十万人レムを超えるとすれば、専門家の言葉をかりて言いますと放射能障害増加の危険を予言しているものと思います。被害者総数がふえているということ、高線量被曝を単に計数的に薄める意味であっては、被曝者を一層拡散していることでしかないのではないか。個人当たりの平均線量も七七年度の〇・三二レムが七八年度では〇・三九レムと増加しているのでありますが、このデータを見てどう思われますか。労働省として労働安全の視点からどうとられるか、お聞きいたします。
○説明員(林部弘君) 私どもの立場といたしましては、先ほども申し上げましたが、電離放射線障害防止規則に基づいて事業場に対しまして監督指導している立場でございますが、先ほど先生のおっしゃいましたような、大変御不満かと思いますが、一応許容される限度というものを設けましてその限度の中に被曝線量をおさめてもらう。そして、それはぎりぎりいっぱいそこまでかぶってもいいという考え方ではございませんで、許容限度の中でできるだけ放射線作業の作業の方法等を工夫するということによって、被曝線量の低減化を図るという方向で監督指導してきているわけでございますので、その限度といたしましては、すでに先生御承知のように、国際放射線防護委員会の勧告を基礎といたしました年五レム、三カ月三レムというものを一つのガイドラインといたしまして監督指導をしているという現状でございます。
○片山甚市君 実はいま労働省が、年間五レムという範囲ならば安全だとおっしゃっている。後日悔いを残さないように私が警告しておることについて覚えてほしい。何回も言いますけれども、放射能は蓄積をするものであるということですから大変厳しいことだと思います。そのぐらいのことをしても大したことはないと思っているようですが、アメリカの原子力規制委員会――NRCの公表データによると、総被曝線量がスリーマイル島の原発事故でも三千三百人レムだと言っています。一年間とはいえ、東京電力福島第一原発では八千四十七人レムであります。事故でもない、いわゆる定期点検での被曝であることを考えると、あの事故が一年に二回以上起こっているという単純計算が成り立ちます。それに福島第一は七七年度で三千二百三十人レムであったことから、一年間に二・六倍の被曝線量の増となっております。これを異常と言わないでおけましょうか、どうでしょう。
 ここの職場の下請労働者の個人当たりの年間平均被曝線量は〇・七四レムです。非職業人の許容線量の〇・五レムを大幅に上回っております。許容線量までは安全だという論拠に問題があるのに、それを超えた職場環境にある人々をデータの上のことだということで見逃すことは絶対できない。人道問題だと思います。
 資源エネルギー庁などでは、三カ月三レムという許容量――炉のうちの作業では一日千ミリ、炉の外6は三百ミリレム――がありますが、これを超えていなければ安全だと言っておるそうですが、原研や動燃などの研究者や専門家の多い施設では年間で一・五レム以上の被曝者は一人もいない、これは七八年度科学技術庁の統計によりますが、とのことであります。たとえば東海村の原研では、平均線量は一人当たり〇・〇四レムであることと比較してどうお考えですか。いま申しましたのは東京電力福島第一原発でこれだけのことがあるんですが、原研とか動燃とか、あるいはその専門家のところ、東海村の原研等では非常に軽いんです。なぜでしょう。
○説明員(向準一郎君) いま先生から御指摘ございました福島第一原子力発電所の被曝線量の件でございますが、原子力発電所を定期検査をやる際に、いろいろ補修改良工事を実施いたすわけでございます。それで福島の発電所につきましては、先生御承知のとおり、応力腐食割れ工事ということをここ二、三年やっております。これはいろいろな発電所でそういうような事象が見つけられましたので、予防的措置ということで配管等の取りかえをやっておるわけでございますが、こういうような大々的な補修工事がなされておることによりまして放射線の従事者の数がふえておりますし、総線量もふえておるわけでございますが、これはここ二、三年の工事でこの工事は終わるわけでございますので、通常の定期検査の工事というふうになるわけでございます。そういうことで多くなっているわけでございますが、こういうような補修工事をいたします。
 それから今回、給水スパージャーの取りかえということで炉内工事もございます。そういうことで高い線量、特に計画被曝線量でいま先生お話がございましたように、一日千ミリレムというような計画被曝線量も使って炉内の工事をやっておるわけでございますが、われわれといたしましては放射線従事者の被曝線量を可能な限り低減するということで電気事業者をいろいろ指導はしております。
   〔理事浜本万三君退席、委員長着席〕
それで、いま先生お話がございましたように、そういうふうに総線量は多くなってはございますが、一人一人の許容被曝線量というのは法律で定められたものを厳重に遵守しておるわけでございます。
○片山甚市君 遵守しておって大丈夫だと言っておるのだから、後日、先ほど申しましたように原爆被爆者と同じような状態が、大臣、起こらなければよろしゅうございます。こんなものは十年なり十五年なり二十年たってから起こるのでありまして、ベンジジンと同じでありまして、ぽつぽつ悪くなるんです。一遍には悪くならない。皆さんがもう死んでしまってから後で騒ぐのでありますから、皆さんが生きておる間に起こらぬかもわからないんです。こういうような素人だまし、われわれのような者は余り科学的な知識がないから、いろいろとむずかしいことを言われるとそうかなと思う。ここはそれでよろしいけれども、しかし、私の後ろには学者がおりますから、帰ってからあなたの方が本当のことを言っておるのかどうかわかるんですから。――わかりますか。これは私が調べておるのと違うんです。学者の諸君と研究して聞いておるだけのことであって、それでときどき私も質問が詰まっておるわけです。それでいまお聞きしておきましょう。
 そこで、データによりますと、被曝者数の内訳を見ると、下請労務者が圧倒的に多い。原発や元請企業は労働協約上被曝のリスクの高い職場における保護が十分になされておりますとすれば、たとえば東京電力、東芝では一日三百ミリが許容限度であり、それ以上のところにはその職場へ入らないということになります。定期検査では先ほど申しますように定格線量で一日炉内で千ミリレムを受けることができる。初めからそれでは東京電力とか東芝という職員はエリートで、入らずに、仕事しないで、それでけがをするような危いところについては下請にやらしておる、こういうような考えに立っておると思う。鬼畜という、鬼とか畜生とかいう言葉がありますが、非常にけしからぬと思います。安全労働確保は結局発注者の責任である、こういう意味で、労働行政としては先ほど言うように安全だとおっしゃっておるようでありますが、保護対策をどういうふうにとられるのか、いま申し上げたところのデータは全く私が見ておって納得できるものでないので、真剣な対応をしようとしているのかどうか、これはひとつ明確にお答えを願いたいと思います。
○説明員(林部弘君) いま先生の御指摘のございましたような協約があるという話は私ども聞いておらないわけでございますが、電力会社によりましては、原子炉施設の保安でございますとか点検でございますとかいったような通常の作業につきまして、被曝管理上の目標値というものを三百ミリレム、これは多分一週間か八日間ぐらいの数字じゃないかと思うわけでございますが、ということで定めているという例があるというようなことは、いろいろな保安規程にそういう例があるというようなことを承知いたしておりますので、そういうような一つの目安というものをお持ちになっているというふうには理解をいたしております。
 ただ、こういった作業と申しますのは通常の放射線作業というふうに考えられるわけでございますが、すでに先ほど先生御指摘のように、だんだん原子炉ができまして年限がたってまいりますと、いろいろと定期検査でありますとかあるいけ改修工事といったようなものも必要になってくると思います。そういった定期検査時等におきましては、原子炉施設の補修とか改造のために特殊な工事を行う必要があるという場合が出てくるということが容易に想像できるわけでございまして、そういう特殊な工事を請け負う立場の事業場あるいは事業者というものも存在するわけでございます。
 そういう場合に、そういったどちらかと言えば被曝線量が大きくなる可能性のあります労働者に対しましては、どうしても通常作業の被曝管理目標値を超えるような被曝が起こる作業というものも含まれる可能性があるわけでございますので、そういうことにつきましては極力先ほど申しました年五レム、三カ月三レムを守ればいいということだけではなくて、できるだけ作業方法等に工夫をしていただきまして被曝線量の低減化を図る、また短期間の労使間の契約で転々と職場を変えます労働者の場合にはできるだけ通年の蓄積線量というものを正確に把握して、過剰な線量をこうむらないようにするといったような点について指導いたしております。
 また、先ほど請負関係の事業の問題につきましては、私どもの立場といたしましては安全衛生法の中でできるだけいろいろな管理能力、処理能力の大きい大手の事業主に対しましては、元方事業者としての責任をできるだけ果たしていただく、そういうことによって零細で管理能力の不十分な事業者あるいはその事業者に属する労働者の被曝管理あるいは作業管理等につきましては、定期検査等の時期に監督を行いまして必要な指導、指示を行うということで、できるだけ労働者のための安全衛生を担保してまいりたいというふうに考えているところでございます。
○片山甚市君 それじゃ、福島第一原発のようなところはここだけしかない、ほかにはこういう例はいまない、こういうように答えられたことになりますか。
○説明員(向準一郎君) 現在、稼働中の原子力発電所は二十一基ございますが、それがそれぞれ法令に基づきまして毎年一回定期検査をやるわけでございます。その定期検査の際にいま福島発電所でございましたような補修改良工事と同様なものがございます。そういうときにはやはり計画被曝線量等を百ミリとかあるいは二百ミリとか、あるいは五百ミリとかいう一日の線量を設定いたしまして作業を計画的に実施するということはございます。
○片山甚市君 それじゃ、福島第一原発だけでないということはわかりました。原発ジプシーという形で人買いが来てこういうことをやらしておるということをよく聞きます。現実にわかっていませんからそういうことのないように、先ほど監督をよく労働省はされておる、りっぱなことだ、口をたたいていますから、そのとおり口をたたいただけのことをやってもらいたい。後日だれが来てやったかわからぬような人がおったということのないように、名前もわかるし顔もわかるし、ちゃんと何時間やったかもわかるし、追跡調査もできるようになっておるはずである。なければいま言ったことはうそですから。答えは要りません。労働省というのは人の命を大事にするところです、そうですね。ですからゆめゆめいま言ったことについては忘れぬように、しっかりやっておると言ったんだから。しっかりやってないと思っておるから質問しておるんです。
 そこで、内部被曝についてのデータはどうなっておりますか。ないというのと、調査していないというのでは大きな違いがあります。ましてや健康上きわめて重要な意味を持つものがありますから、これだけ被曝の機会が増加していて、ないということは一挙には信じがたい。どうなっておるんですか。内部被曝についてのデータはございますか。
○説明員(向準一郎君) 原子力発電所の法令で定められております許容被曝線量におきましては、外部被曝と内部被曝とを加算しましての基準でございます。それから従事者の呼吸する空気あるいは飲料水、飲用します水中の放射能濃度につきましてもそれぞれ許容濃度が定まっております。それで実際に原子力発電所で昭和五十三年度でございますが、全原子力発電所で延べ三万五千人の従事者が約十万回のホール・ボデー・カウンターで内部被曝を測定しておりますが、有意な内部被曝の例はないというふうに報告を受けております。
○片山甚市君 内部被曝を調査したデータはある、こういうことですね。イエス、ノー。
○説明員(向準一郎君) 有意な内部被曝の例がないという報告を受けております。
○片山甚市君 調査したということですね。
○説明員(向準一郎君) 原子力発電所の被曝の実績というのは、法令に基づきましてわれわれは報告を受けることになっております。そういう中でそういうような有意な内部被曝はないという報告を受けておるわけでございます。
○片山甚市君 私は、内部被曝と外部被曝を分けて内部被曝についてだけ聞いてみました。双方合算してということについては私は聞いておりませんから。内部被曝だけどうですかと聞いた。これについていまのところ内部被曝については憂慮すべきものはないということで、あるということは、内部被曝も調査をしたということになりますね。
○説明員(向準一郎君) 外部被曝と内部被曝を足しまして評価するわけでございますが、足しまして評価すべき有意な内部被曝がないという報告を受けております。
○片山甚市君 わかりました。
 それでは、七八年度労働者の被曝データによると、悪名の高い先ほど申しました福島第一原発の一号炉のは一基だけで全国の総被曝線量の二六%。その時分は原子炉は十九基ございました。このことは、総被曝線量が原発基数の増によるものという理由を否定しておるということではないか。そうして、沸騰水型原子炉での被曝が圧倒的に多いことは、構造上酸素濃度が高いため腐食性障害が起きやすいのは当然であると指摘されておりますが、そうすると定期点検による被曝が際立って増加しておるということは、これらの原発の老朽化が一層進み深刻な状態に近づきつつある証拠ではないか。だから、下請労働者はもっともっと被曝要員として確保されていくということになるんじゃないか。これからも危険性が増大しているのに、何の規制強化もしないままさらに被曝労働者がふえ続けることになるのではないだろうかと考えますが、これでよいでしょうか、お答え願いたいと思います。
○説明員(向準一郎君) BWR――沸騰水型では補修改造工事というので配管の応力腐食割れ工事というのが計画的に各発電所で行われておりますので、それによります改造工事等によります被曝線量がここ二、三年ふえておるのは事実でございます。
 それからPWR――加圧水型につきましても、やはり蒸気発生器の問題等でいろいろ改造工事等がございますので、そういうような特殊工事はあるわけでございますが、炉型的にいいましてBWR全部一次系とつながっております。そういう意味で各配管のそういうような工事をいたします場合に被曝線量がふえるのは事実でございますが、しかし先ほどお答えいたしましたように、許容被曝線量を十分下回るように放射線被曝管理がなされておりますし、今後もわれわれとしてそれが十分下回るように指導していきたいというふうに考えております。
○片山甚市君 いま申し上げたように、福島の東電の第一原発だけで二六%を占めておるということについて憂慮すべきでないかと言ったけれども、それには答えなかったから答えは要りませんが、非常に憂慮します。一基だけで日本国じゅうの被曝線量の二六%、そういうのは大変だと思います。
 下請労働者の被曝の予防や教育、訓練の実態はひどいものと聞いております。どの程度事前の教育、訓練がなされておるのか、被曝労働者すべてについて資料を示してもらいたい。聞いた話では、
 一時間程度スライドを見て現場に入って仕事をするそうでありますが、これらは、下請企業の責任よりも、危険作業を弱い立場に押しつけ、事業を推し進めようとする方向に問題があると思います。といいますのはいわゆる発注者の側に責任があると思いますが、この点はいかがでしょう。
○説明員(向準一郎君) 下請労働者の被曝につきましての教育でございますが、これは請負事業者が従事者を作業に従事させるときに、当該業務におきます安全または衛生を確保するために管理区域入退域の手順とか、あるいは放射線被曝線量の瀬定器の取り扱い方法、あるいは各種防護具の使用方法等について教育を行っております。それからまた、外部放射線や強い雰囲気におきます特殊な作業を実施させるときには、作業時間の短縮による被曝を低減させるという意味からモックアップ設備等による作業訓練を行っていると聞いております。
 なお、電気事業者は請負事業者との請負契約の際に、仕様書におきまして原子力発電所の従事者に対する保安教育を義務づけるとともに、従事者として指定する場合、保安教育の受講条件として下請労働者に対する被曝管理の徹底を図っているところでございます。
○片山甚市君 時間が来ましたから、質問をする事項がたくさんあるのですが、老朽化したたとえば福島第一原発などの耐用年数はどうなっておるのか、また廃炉になったときはどうするのか。
○説明員(西中真二郎君) ただいまのお尋ねでございますが、私ども福島第一が老朽化したというふうに必ずしも考えておるわけではございませんけれども、大体原子力発電所の耐用年数は、現在考えておりますところでは二十五年とか三十年とかという程度は寿命があるのじゃないかというふうに考えておるわけでございますが、いずれにしましてもそういった意味で老朽化してまいりますれば、いずれ廃炉処分ということになるわけでございます。
 廃炉措置もいろいろございまして、たとえば密閉管理と申しまして、原子炉はそのままにいたしまして、中をきれいにして十分管理をするというふうな方式もございますし、あるいは完全に解体してしまうというふうな方式もございます。その中間的な方式もあるわけでございますが、いろいろそういう方式がございまして、それぞれ実態に応じましていずれかの方式をとっていくということになるわけでございます。
 先ほど申し上げましたように、まだ原子炉の寿命は日本の場合で申しますと、いま当面廃炉処分にするという原子炉が出てくるというふうには私ども考えていないわけでございますけれども、いずれ将来取り組まなくちゃいかぬ問題でございますので、現在いろいろ本件の重要性にかんがみまして長期的に検討を進めておるという段階でございます。
 なお、廃炉に関しましては、これまでのところほかのアメリカ等でございますけれども、原子力の先進各国におきまして小規模なものではございますけれども原子炉の廃炉の例も幾つかございますので、その辺も十分勉強いたしまして、実際に日本の原子炉、日本の商業用原子炉の廃炉処分をいたすまでの段階に十分な勉強を続けて適切に対処してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
○片山甚市君 核燃料輸送時には、周辺の住民及び運搬経路の自治体に事前の了解を取りつけてやられておるのかどうか。これは原子力の平和利用の三原則から言いまして当然秘密にすべきでないと考えます。
 もう一つは、政府は原子力発電を初め原子力産業に力を入れておりますけれども、今日のこのデータに接する限り、私は九〇年代には累積線量が百万人レムに達することも予想されるという専門家の意見を本当だと考えます。そこで、一九九五年には日本政府として原発を七千八百万キロワット発電を目指しておる。現在二十一基で千四百九十五万二千キロワット発電するんですが、これらは大変大きな被曝線量を伴うものと思う。こういうことで私は、労働安全あるいは環境保全という立場から、慎重に安全の問題からエネルギーについてソフトの面から検討を加えてもらいたいという立場で質問したいと思います。いかがですか。
○説明員(辻榮一君) 最初の核燃料輸送の問題についてまず御説明さしていただきます。
 核燃料輸送には、新燃料輸送と使用済みの核燃料の輸送がございますが、これらにつきましては原子炉等規制法上、発送地を管轄する都道府県の公安委員会に事前に届け出るということが義務づけられておりまして、届け出を受けました都道府県公安委員会は、通過地及び目的地を管轄いたしまするところの都道府県公安委員会に必要な連絡を行うという措置をとっております。
 地方公共団体への連絡につきましては、まず使用済み燃料の輸送の場合は、原子力発電所あるいは再処理施設の立地する県及び関係市町村と原子力事業者との安全協定に基づきまして、立地県及び関係市町村に対して送り出し、または搬入に際して連絡がなされているというふうに承知いたしております。
 次に、新燃料の輸送の場合は、加工業者からの送り出しの際の県及び市町村に対する連絡の有無、これは当該県及び市町村によって若干異なっておるようでございまして、また原子力発電所への搬入時の県及び市町村に対する連絡の有無につきましても、原子力発電所の立地県によって異なっているというふうに承知しております。
○片山甚市君 最後に、とりあえず総被曝線量を、一人当たり平均被曝線量を含めてでございますが、五レムというのを半減させることについて検討願えないだろうか。学者の説によると大変厳しいそれぞれの意見がありますが、時間がございませんから、年間一ミリレムあるいはアメリカのICRPの内部被曝専門委員会座長モーガン氏から言えば、いまの五レムを半分にしたらどうだ、こういう提案もありますから、日本でも、やはりアメリカの言うことを何でもよく聞く日本ですから、どうですか。
○説明員(辻榮一君) 先ほどから御説明をいたしているところでございますが、原子力施設の従業員及び一般公衆に対する許容被曝線量は、先ほど申し上げました国際放射線防護委員会の勧告に基づきまして、わが国の放射線審議会の審議を経まして法令で定めたものでございます。原子炉設置者等に対しましてこの許容被曝線量を超えないように必要な設備の対策、放射線管理の実施を義務づけ、万全の安全規制を行っているところでございます。ICRPが勧告しました許容被曝線量は、医学的データ、動物実験のデータ等を幅広く検討いたしまして、この線量以下であれば放射線被曝による身体的及び遺伝的障害のリスクが社会的に容認できるようなきわめて低いレベルの線量であるということで勧告をされているわけでございます。したがいまして、この基準は国際的にも広くこれで行われているところでございまして、現在のところ安全規制としてはこの基準が妥当であると考えております。しかしながら政府といたしましては、従来から被曝線量以内でありましても、やはりできるだけ不必要な被曝は避けるということが必要であろうという認識を持っておるわけでございまして、そのように指導してきておるところでございまして、今後ともこの方針で事業者を指導してまいるという考え方を持っております。
○片山甚市君 非常に時間を超過して済みません。
 厚生大臣にお伺いするんですが、私がいままで言ったのは、原爆被爆者援護法の制定を要求する立場から、再び原子力発電に関して放射能の被害が起こらないようにするために万全の措置をとることがわれわれ政治に携わる者の責任だという立場です。そういう意味で、区々たるものは言いません、言うわけではありませんが、ひとつ大臣、私が申し上げた第二の原爆になるような原子力発電をつくらせない、むしろそれについては慎重に、私が言ったようにエネルギーのソフト化の問題を十分に検討してもらいたい、こういうことについて厚生省の人命を預かる立場からの一言御意見を賜って終わります。
○国務大臣(野呂恭一君) 先ほども申し上げましたとおり、原発におきまする安全性の確保ということは大変大事な問題であることはいろいろ御論議願ったわけでございまして、政府一体となってこの問題に対処いたしてまいりたいと考えます。
○委員長(久保亘君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。
   午後零時二十七分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時三十七分開会
○委員長(久保亘君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。
 午前に引き続き、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○渡部通子君 被爆者問題は毎年この委員会で議論をされておりますし、それからまた、今回は特に基本問題懇談会の答申を待ってという時期にございますので、大変質問としてはやりにくい時期にあるわけなんでございますけれども、多くの戦後処理の中で、私がいまさらここで申し上げるまでもなく、被爆者の問題ということは傑出して国が責任をとらなければならないという大変特質のある問題ですし、またその重要性というものはこれから未来の世界に対してますます増すばかりでございまして、この被爆者問題だけは国としても重々お考えをいただきたいということを前提とさせていただきます。先ほども申したように、きっと厚生省側の御答弁は、いま答申が出るまでということになると思いますけれども、問題点だけを順次若干お尋ねをいたします。
 御承知のように、被爆者の問題につきましては今日三十五年を経ておりまして、原爆医療法、それから原爆特別措置法の二つの法律によって対策が進められてはまいりました。しかし、いまだに関係の県や市あるいは団体等から援護制定の確立を訴えなければならないというこの背景を厚生省としてどうお考えですか、まずそれを伺っておきます。
○政府委員(大谷藤郎君) 先生御案内のように、原爆被爆者対策につきましては、被爆者が放射能を浴びられ健康上特別の配慮を必要とするという特殊事情に着目いたしまして、原爆医療法及び原爆特別措置法によりまして対策を推進しておるところでございますけれども、先ほどからのお話のようにいろいろございますので、現在、被爆者対策の基本理念につきまして原爆被爆者対策基本問題懇談会で御検討いただいているわけでございまして、厚生省といたしましては本懇談会の結論を尊重いたしまして対処してまいりたいと考えている次第でございます。
○渡部通子君 現行の原爆二法は、御承知のように生存被爆者対策に限られておりますけれども、いままでもずっと議論を続けられておりましたように、これを死没者の遺族に対して何らかの対策も必要ではないかと思いますが、いかがですか。
○政府委員(大谷藤郎君) 現在この被爆者対策のいわゆる原爆二法によりますのは、被爆者が原爆放射能の影響を受け健康上特別の状態に置かれているということに着目いたしておりまして、このような事情にない被爆者の遺族の方々に対して遺族年金及び弔慰金を支給するということにつきましては、他の一般戦災死亡者との関係もありまして困難であるというふうに考えている次第でございます。
○渡部通子君 困難だとはっきりおっしゃいましたけれども、先ほどからそちらでもおっしゃっているように被爆者という立場、それは国家責任という重要度から考えてその点を御考慮いただきたいというのがこっちの意見であります。答申が出るまでということでしょうから、一応それにとどめておきます。
 次に、諸手当について所得制限が行われていますけれども、これも考え直す必要をお認めになりませんか。
○政府委員(大谷藤郎君) 諸手当につきましての所得制限の問題につきましては、過去におきましても、たとえば四十三年−四十七年度の七五%から現在の九六%というぐあいに支給制限の限度額というのをだんだん上げる努力を厚生省としては図ってきたところでございます。しかしながら、この所得制限の撤廃の問題につきましても、先ほど来申し上げておりますように、やはりこの制度の基本的なあり方に根本的には関係するわけでございますので、原爆被爆者対策基本問題懇談会の結論を待ちまして私たちとしてもこれに根本的に対処してまいりたい、かように考えている次第でございます。
○渡部通子君 さらに、特別手当について生活保護の収入認定から外す御検討はなさいませんか。
○政府委員(山下眞臣君) 先生よく御承知のとおり、原爆の各種手当のおおむねのものは収入認定から外しておるわけでございますが、特別手当につきましては、御承知のとおりに額も相当でございまして、生活保護的な色彩が大変強いということで生活保護法上収入認定をいたしておるわけでございます。しかしながら、特別手当の受給者、特に原爆の認定患者でございますので、一般の方に比べましてあるいは交通費でありますとか保健薬の購入でありますとか、栄養補給だとか特別の事由があるということで、それに対応するために別途放射線障害者加算という加算制度を設けて対応いたしているわけでございます。五十四年八月からは認定患者につきまして二万六千円という加算、これは各種の加算の中でも最高の加算をいたしておるわけでございます。こういったことで対応をいたしてまいりたい。本日御審議いただきましてこの法案を成立させていただきますれば、今年度もまた八月からこの手当の額を引き上げることに相なるわけでございます。そういう場合におきましては、被爆者の方が置かれております実態なりあるいは他の障害者加算の状況との均衡ということも考慮しながら、現行の放射線障害者加算の額の改善ということにつきまして努力をさしていただきたいと考えておる次第でございます。
○渡部通子君 被爆者が年々老齢化しているということは大きな問題だと思います。そこで、健康診断の体制もお年を召すにつれてこれは充実していかなければならないと思いますけれども、その点の御用意はございますか。
○政府委員(大谷藤郎君) 先生御指摘のように被爆者の老齢化が進んでおりますが、健康診断の問題は非常に大事でございまして、現在も医療法に基づきまして定期的に二回、また被爆者の希望によりましてはさらに二回、一般検査、さらには精密検査というふうに実施いたしておりまして、今後ともこれにつきましては大事な問題として重要視してまいりたいと考えております。
○渡部通子君 昨年に実施した被爆二世の健康診断の内容、実施状況はどうでございましたか。また今年度以降も実施する御予定はおありでしょうか。
○政府委員(大谷藤郎君) 被爆者の二世の方々は健康面での不安を持っておられる方が多いわけでございまして、今年度被爆者二世の健康診査を実施いたしたわけでございます。しかし、まだおおよそ現在のところ一般検査につきましては一万七千件、またさらに精密検査を受けられた方は三千件というふうになっておりますけれども、全体の集計につきましてはまだ完了しておらないわけでございます。五十五年度につきましても、引き続き二世の方の健診を実施いたしたいと考えております。
○渡部通子君 その昨年度の集計といいますか、一応まとめて出されるのはいつごろでございますか。
○政府委員(大谷藤郎君) できるだけ急いであれしたいと考えておりますが、何分全国にわたっておりますので、いま直ちに何月ごろというのはちょっと申し上げかねますが、できるだけ早くまとめたいというふうに考えております。
○渡部通子君 もう一点伺っておきますが、原爆による疾病の認定が厳しいということがいろんな声で上がってきておりますが、それをどういう形で行って、どの辺が多少なりとも緩和していたがけないかどうか、改善の余地を考えていられるのかどうか、あるいはその認定というのが今後どのくらい出てくるような見通しでお考えになっていらっしゃるのか、その辺の御意見を伺っておきかいと思います。
○政府委員(大谷藤郎君) 認定の問題につきましては、厚生省に原爆医療審議会の認定委員会を設けておりまして、ここで専門家の方々の学問的な見地からの意見に基づいて厳重なる認定を行っているわけでございまして、これにつきましては従来からも一貫した客観的な考え方で対処してきているわけでございます。
○渡部通子君 そういう漠然とした話ではなくって、具体的に認定基準というものを多少なりとも考えていただけるのかどうか、それから今後そういう認定患者がどのくらい出てくるかというような見通しをお持ちかどうか、その辺を伺いたい。
○政府委員(大谷藤郎君) 認定の基準と申しますのは、医学的に原爆放射能の影響に基づく疾病ということで専門家の方々に御認定いただいているわけでございます。確かに先生御指摘のように、認定件数は昭和四十三年、四十四年ごろの二百件に比べまして、最近は五十四年度の三十七件あるいは五十三年度の五十八件というふうに少なくなってきておりますけれども、これは以前のものにつきましてはやはり原爆との関係が高かった、最近はそれが残っております部分につきまして出てきているわけでございまして、どうしても認定の件数は少なくなっている。認定の基準につきましては決してこれを変えているというふうなことではなしに、従来と同じような放射能の影響ということで医学的に御審査をいただいているわけでございます。
○渡部通子君 私、いままで問題点をぽんぽんぽんと列挙的に伺ったわけでございますけれども、今回基本問題懇談会の答申がどう出てくるかということを大変注目したいと思うんですけれども、少なくもいま列挙いたしましたような問題点に対して前向きの答申が出てこなければ、いま懇談会をやっていただいている意味もないんではないかと私は思うわけでございます。それで毎度毎度、毎年この委員会でも問題になっておりますように、現行の原爆二法というものが一本化して国家補償の精神に基づく援護対策というシステムにすべきではないかという議論がずっとここ続いているわけでございますけれども、私はやはり被爆者たちにとって一番問題なのは、それは確かに医療費も大変、生活も大変、しかしながら精神上の苦痛に対して報いてあげられる道というものは、国が国家補償としてのはっきりした態度を出すという以外に、原爆で苦しんだ方々に対する精神に報いる道はないのではないかと思うわけでございます。
 そういうわけで、毎度議論になっておりますけれども、私の申し上げました国家補償の精神に立つという制度、システム化というものに対する厚生大臣の御所感を伺っておきたいと思います。
○国務大臣(野呂恭一君) 原爆被爆者に対する厚生省としての対応、むしろ私は、国としての責任ある対策というものが打ち立てられなければならないことは論をまたない点でございます。したがいまして、すでに御指摘のように基本問題懇談会に今後被爆者対策をどういう方向で進めていくべきか、いわゆる基本理念、国家補償ということなのかあるいは社会保障なのか、その基本理念について御意見を承るようにいたしておるわけでございます。現行法も一般的な社会保障制度ではなくして、これは特別の社会保障制度として今日まで被爆者に対しては十分その御苦労に対しまして対応してきたつもりでございます。しかし一歩進めて、国の責任において国家補償の精神に基づく援護法を制定することが望ましいという御指摘でございますが、一般戦災者等の問題もあるわけでございまして、これらを十分慎重に考慮しなければならないと考えますが、いずれにしてもそう遠くない時期に基本問題懇談会から答申がなされるわけでありまして、その答申が出ました暁におきまして、政府としては十分この点を尊重いたしまして、被爆者に対しての積極的な援護策を講じてまいらなければならないものだと考えるわけでございます。
○渡部通子君 重ねて伺っておきますけれども、大平総理が去る四月二十七日、広島市における記者会見で、この懇談会が、これは新聞報道ですけれども、八月にも答申を予定している被爆者対策について、一般戦災者とのバランスからこれまで国家補償の立場で踏み切れなかったけれども、同懇談会の結論を尊重したい、こう言われているわけでございます。これは国家補償の立場に立った答申が出ればこれに従う可能性の大きいことを示したと、報道で見る限りそういう方向というものが流れているわけでございます。ぜひこういう方向に一歩前進の答申が出ていただきたいと私も願っておりますが、いま厚生大臣も全く白紙のような御答弁をなさいましたので、この総理の期待感も含めてもう一度この点を伺っておきたいと思います。
○国務大臣(野呂恭一君) 基本問題懇談会の答申につきましては、その内容をいま私どもは承知はいたしておりません。今後これが詰められていくことでございますので、その結果を待って、その答申の内容については政府としては積極的に趣旨・を尊重してまいりたいということには変わりはございません。ただ、いまどういうことが論議され、あるいは見通しはどうなのかということに対しましては申し上げるべき段階ではもちろんございません。もし国家補償としてこれは処遇すべきであるということが出ますならば、その意見はもちろん尊重してまいらなければならないと考えております。
○渡部通子君 次に、関連した問題に移らせてい、ただきますが、放射性廃棄物の処理処分について少しお尋ねをしておきたいと思います。
 まず、現在稼働いたしております原発を初め関係施設から出される低レベルの放射性廃棄物の保管数量及び今後の予測はどうなっていきますでしょうか。
○説明員(向準一郎君) 原子力発電所の固体放射性廃棄物の貯蔵状況でございますが、昭和五十五年二月二十九日現在で、二百リットルのドラムかん本数にいたしまして総計で約十八万本でございます。これに対しまして貯蔵設備の能力が総計で約三十二万本ございます。貯蔵設備は各発電所ごとに規模も異なっておりますが、いずれも当面の運転から発生いたします放射性廃棄物を保管する能力を十分有しておりますし、また必要に応じまして廃棄物貯蔵庫というのは増設されることになっております。
○渡部通子君 概略的なお答えはわかりましたけれども、放射性廃棄物の処分方法や現在までの検討状況について、私も専門外ですからちょっと知らせていただきたい。
○説明員(穂波穣君) 放射性廃棄物の処理処分方策につきましては、昭和五十一年に原子力委員会が処理処分の基本方針というのを定めております。簡単に申し上げますと、種々の原子力施設から出てまいります低レベルの方射性廃棄物につきましては、地中処分及び海洋処分で対応する、高レベルのものにつきましては地中処分で対応するといった面の基本方針でございます。
○渡部通子君 その辺の地中とか海洋とかというところは限定した場所なんですか。
○説明員(穂波穣君) 高レベルの地中処分あるいは低レベルの地中処分につきましては、いま鋭意その処分方策及び処分地点を探索中でございまして、まだ決定しておりません。
 低レベルの放射性廃棄物の海洋投棄に関しましては、昭和四十七年から種々の海洋調査を行っておりまして、大体四海域を選定しております。そのうち、北緯三十度、東経百四十七度にございます海域がいまのところ最も有望視されておりまして、これにつきまして昭和五十六年に低レベルの試験的海洋投棄をするという方策でいま鋭意検討、あるいは推進をしている次第でございます。
○渡部通子君 本国会でも商工委員会等で種々法案論議がなされておりましたけれども、低レベルの放射性廃棄物については、具体的に海洋の選定等について漁業資源やあるいは海流の状況といった件をめぐってどのような検討がなされ、安全対策が十分とお考えになっていらっしゃるのかどうか、伺っておきたい。
○説明員(穂波穣君) われわれが海域選定します折に、昭和四十七年から海洋調査を行っておりますが、まず漁業に与える影響が少ないこと、つまりその辺にわれわれが通常食します海産生物が繁殖し、あるいは卵を産むような稚魚が存在するとかそういうところはない海域であること、あるいは廃棄物を捨てます際に、海底が平たんでやわらかいことであることとか、はっきり申し上げますと沿岸重要魚種、稚仔魚の分布域を避けること、深海漁業への影響を避けること、あるいは深層流――底の水の流れでございますが、その流れが少ないこと、あるいは下から上に上がってくる水の流れが低いこと、先ほど申し上げました平たんなやわらかい海底であること、それから重要なことでございますがその海域が地震帯には入っていないこと、こういった条件を付しまして昭和四十七年から種々の海洋調査をやっている次第でございます。
 先ほども申し上げました北緯三十度、東経百四十七度の海域と申しますのは、四つの海域を選びまして種々の海洋調査をしました結果、最も適当な海域であるといまのところ考えております。
○渡部通子君 いまのところまだ海洋投棄というものはなされていないんですか。いつごろから始まるんですか。いま四地域を選定なすって、それで安全対策は十分と認定されたのかどうか。それからそうなった場合に、いつごろからそういう海洋投棄というものを始める御予定でいらっしゃるのか。
○説明員(穂波穣君) 私どもが原子力行政を行うに際しまして、最も重要なことは放射線による影響でございます。したがいまして、科学技術庁におきまして昭和五十一年の八月に試験的海洋処分の環境安全評価に関する報告というのをつくりました。その際にわれわれが想定しました種々の安全評価は、さらに原子力安全委員会において再び評価されまして、これが昭和五十四年の十一月に安全評価が出されましたが、この場合、たとえば今度の試験的海洋投棄は約五百キュリーの放射性廃棄物を含む固形体を捨てることにしておりますが、これらのセメントで固化しましたドラムかんが海底に着底後直ちに破損する、したがって、五百キュリーという放射性核種がその時点において全部海洋中に出てしまうという非常に厳しい側の安全評価を行っている次第でございます。
 こういった安全評価の結果、被曝線量という形でその影響があらわされるわけでございますが、一応ICRPの勧告あるいはわが国の許容被曝線量としております年間五百ミリレムという数字に比べまして約七けた低い数字、こういうふうな評価が出ております。
○渡部通子君 いま原発から出た廃棄物は、ドラムかんでコンクリート詰めにされて原発施設内に積まれているわけでございますね。その管理状況というのはどういうふうに行われているのか。
○説明員(向準一郎君) 原子力発電所におきます固体廃棄物の貯蔵施設の管理状況でございますが、放射性廃棄物がドラムかんとセメントあるいはアスファルトで一体的に固形化されておりまして、その当該ドラムかんが放射性廃棄物であるということを示します標識をつけておりますのと、内容物が確認できますように整理番号が表示されております。それで、この固体廃棄物貯蔵施設は管理区域として設定しておりまして、人の立ち入り制限の措置を講じておりますとともに、放射線の遮蔽物の側壁におきます放射線量率を毎日一回測定、記録することになっておりまして、十分な安全を確保しつつ管理しているわけでございます。
○渡部通子君 そういう公式な御答弁をいただくと、そういうものかなとも思います。このドラムかんについてはどのような条件が備わっていれば安全対策上十分と言えるのかどうか、この辺が一番問題だと思うんですけれども。
○説明員(向準一郎君) 現在、固体廃棄物が貯蔵されておりますドラムかんといいますのは、JISの定めております金属容器を使用いたしまして、腐食防止のために内外に塗装をいたしました物を使っております。
 それから、保管場所は建屋内で風雨にさらされるということがないわけでございますので、長期的保管に耐えるものでございます。それで、われわれ原子力発電所の定期検査を毎年一回やっておりますが、その際にもドラムかんの保管状況というのを確認しておりますが、特に問題となるという点はございません。
○渡部通子君 そうしますと、一番気をつけなければならない点はかんの腐食、さびとかあるいはいびつ状態になったことですね、そういう状態で出てきたようなとき、今後海洋投棄をされるといたしますと、そういうものに対してどのようなチェックをするのか。かなり長い間積まれていたドラムかん、それはさびがついていたりあるいは運ぶときにいびつになったりというような状況、そのドラムかんが海洋投棄をされるということになると大変心配な点も出てくるんですけれども、その辺海洋投棄の場合は検査はどういうことになりますか。
○説明員(穂波穣君) お答えいたします。
 まず、海洋投棄いたします固体廃棄物と申しますのは、私どもが定めました基準によりまして必ずセメント固化にいたします。それを二百リッターのドラムかんの中に詰めるわけでございます。これが約四千メーター、五千メーターの海底に入るわけでございますので、そういう五百気圧なり高い気圧で圧縮されて壊れることがないかというようなことがまず一番の懸念でございます。これは先ほど申し上げました放射線の影響という面で非常に安全サイドに立ちまして、着底後直ちに壊れるという評価はやっておりますものの、現実にはそういうのは理論的な考え方でございまして、安全を確保するためにはそういう固化物が十分な強度あるいは耐腐食性を持つことが重要なところでございます。したがいまして、陸上試験でございますけれども、いろいろ模擬水槽を用いまして七百気圧あるいは五百気圧あたりで加圧してそのドラムかんが壊れることがないか、こういう実験もやっております。
 それからまた、セメントの中に分布しております放射性核種が長年月にわたりますと外へ浸出して出てくるわけでございます。こういった実験も原子力研究所等におきましてやっている次第でございます。
 それから、私どもはそういったものの安全性を担保するために今回計画しております試験的海洋処分におきまして、実際の投棄物に深海においても十分その健全性が保たれるようなカメラをつけまして、着底後においてドラムかんがどういう性状を示すであろうかということを確認することにしております。
 なお、海洋投棄後の付近の海洋調査も試験的海洋処分におきましては二、三年続け、その結果を待ってから本格的処分に移る、こういうような体制をとることにしております。
○渡部通子君 海洋投棄をしたいという廃棄物の申請が出た場合、特に原研あるいは東海発電所、敦賀発電所、このあたりでは稼働してから十年以上たっております。したがってドラムかんが投棄後海中で十分耐え得る保証があるのかどうか、素人考えで非常に心配になるわけでございますが、海中でのドラムかんの耐用年数といったもののはっきりしたデータがおありなんでしょうか。
○説明員(穂波穣君) 非常に長年月にわたります深海におけるデータとしては、残念ながらそうたくさんあるわけではございません。ただ、米国がかつて行いましたカリフォルニア沖あるいは大西洋におきます海洋投棄の後、潜水艇を使いましてそれを引き揚げて調査をした結果がございます。それは投棄後十年から十五年を経たものを引き揚げているわけでございますが、浸食は一部に見られるものの、さしてドラムかんの形態を損なうほどの浸食ではないというような報告が得られております。このような現状でございます。
 一方、ドラムかんの中に入っております放射性核種も、低レベル廃棄物の海洋投棄に関しましては長半減期の核種であるアルファ核種を努めて低くし、長いもので三十年ぐらいのべ−タ・ガンマ核種を主体として海洋投棄することにしておりますので、かなりの期間はドラムかん及びセメント固化体でもてば、その中に入っている放射性核種は自然の減衰によりまして次第に減少していくということも、一種の安全性を担保する一つの自然的な担保ではないかと思っております。
○渡部通子君 ここは科学技術の委員会でもありませんので、それ以上突っ込まないで私は伺う程度にしておきますけれども、ともかく原発はつくったわ、トイレがないなどと悪口を言われますように、廃棄物処理というものが本当に安全なのかどうか、みんなドラムかん詰めにして十年か何か知りませんけれども、施設内に置いておいてそれをやがては地中か海洋かに捨てるということですから、大丈夫なのかしらとだれしもが不安を持つのは当然だろうと思います。その点はお役所でひとつ厳しくやっていただく以外にないわけでございまして、これ以上の議論はいたしませんけれども、ひとつくれぐれも安全対策第一にお考えをいただきたい、こうお願いをしておきたいと思います。
 そこで、政府の放射性廃棄物対策について若干お尋ねをいたしておきますが、原子力委員会では五十一年の十月に、放射性廃棄物についての基本方針というのを発表しておられます。特にその中で、低レベル廃棄物処理の基準を早急に整備するといっておられますけれども、現在どのような状況になっているのか。めどとしてはどうお考えでございますか。
○説明員(穂波穣君) お答えいたします。
 低、中レベルの放射性廃棄物対策につきましては、先ほど申し上げました海洋処分用のセメント固化処理につきましては、五十四年の一月に基準化を行っております。これは科学技術庁の告示第九号でございます。また、その他のセメント固化体以外の多重構造固化体あるいはアスファルト固化体につきましては、専門機関への委託を含めまして基準化にかかわる検討を現在進めてきているところでございます。
 めどと申しますと、現在のところ私どもはセメント固化体による海洋投棄しか考慮をしておりません。仮に多重構造固化体あるいはアスファルト固化体を海洋投棄する場合にはこれは基準化が必要でございます。一応私どもは昭和五十六年に行います試験的海洋投棄ではセメント固化体しか考えておりません。多重構造固化体あるいはアスファルト固化体につきましてはまだ種々の実験あるいは研究等が必要かと考えておりますので、そのめどにつきましてはいまのところちょっと申し上げかねる次第でございます。
○渡部通子君 次に、処分には、先ほどからも御説明ありますが陸地処分と海洋処分をあわせ行うと書いてございますけれども、どんな方法で、手順はどういうふうになっているのか、その見通し等をお教えいただきたいと思います。
○説明員(穂波穣君) 低レベルの海洋処分につきましては、先ほどから申し上げてございますように、昭和四十七年から種々の試験研究あるいは海洋投棄に関する海洋調査をやっておりまして、この五十六年に試験的海洋投棄をやらしていただこうと思っております。それでその後の海洋調査を二、三年続けまして、その海洋調査の結果を踏まえまして本格投棄に移っていこうとしているのが低レベルの海洋投棄の手段でございます。
 低レベルの地中処分につきましては、現在秋田県の尾去沢というところで一つのモデルケースとしまして、実際の放射性廃棄物は使っておりませんけれども、固化体を用いました研究を行っております。実際の放射性廃棄物の地中処分につきましては、現在環境整備センターの方におきましてサイトと申しますか、その処理処分の地域をただいま選定している次第でございます。来年度あたりにはかなりの候補地点がしぼられるというふうな次第でございます。
○渡部通子君 ただいまの御答弁の中で、秋田県でいま模擬廃棄物をやっていらっしゃるというお話でございましたけれども、その成果ですね、結果が出るのはいつごろになるんですか。
○説明員(穂波穣君) ただいま御指摘のございました秋田県の尾去沢でやっておりますフィールド試験は五十三年度から開始しているものでございます。これは五十五年度で終了する予定になっておりますので、来年度にはその成果が公表されることと存じております。
○渡部通子君 次に、陸地処分は海洋処分に適さないものあるいは回収可能な状態で処分しておく必要があるもの、これを施設に貯蔵し、あるいは地中に処分するものとする、こうありますけれども、施設に貯蔵するというのはどういうことですか。
○説明員(穂波穣君) 施設に貯蔵するものの中に二つの形態があると思います。一つは全く大きな構造物であって、通常施設に入れておいたらいいといったようなものでございます。もう一つ、いま先生御指摘の施設に当分貯蔵するというのは、たとえば中レベルの放射性廃棄物あるいは高レベルの放射性廃棄物かと思います。この中レベルあるいは高レベルの放射性廃棄物につきましては、最終的にどういう形にしてどういう処分をしたらいいかというのはただいま検討中でございまして、種々の試験研究が行われている次第でございます。それで、中レベルあるいは高レベルの廃棄物の発生量と申しますのは、低レベルの放射性廃棄物の発生量に比べて格段と低うございますので、当面の間そういう施設に貯蔵保管しておくという形で対処していくという形でございます。
○渡部通子君 高レベルの廃棄物については、廃棄物処理の基本方針の中で、半永久的に人間の生活圏から隔離し、安全に管理するということでございますけれども、半永久的に人間の生活圏から隔離する、そして安全に保管するというのは具体的にはどういうことなのか。それからこれの最終処分は国が責任を持つと言ってありますけれども、どういう形で具体的に責任を持つとおっしゃっていらっしゃるのか。
○説明員(吉村晴光君) 原子力委員会で定めております考え方でございますけれども、半永久的に生活圏から隔離をするということは、深い地層の中に閉じ込めるということによって通常の生活圏とかけ離れたところに管理をしていこうという考え方でございます。それから高レベルの処分につきまして国が責任を負うということを言っておりますが、こういう高レベル廃棄物の処分につきましては、非常に長い間にわたって安全性の管理を行う必要があるということがございますので、そういう場合には私企業に任せてしまうということではやはり安全管理上問題があるということから、最終的には国が責任を負うという基本的な考え方を示したものでございます。なお、その場合にも必要な経費につきましては発生者負担の原則によるという考え方を示しております。
 いまお尋ねの、具体的にどういうことかというお話でございますが、ここで決めておりますのは具体的なことではございませんで、基本方針だけでございまして、これらの具体的な内容と方策につきましては、現在、高レベル廃棄物の処理及び処分の研究開発が進んでおるという実情を踏まえまして、その研究開発の進展の状況を見ながら具体的に内容を決めていこうということを言っておるものでございます。
○渡部通子君 いま、わずかな問題点を伺ってまいりましたけれども、海洋投棄もそれから地中投棄もこれから始まるんではないかという段階でございますね。それに関してはどうか漁業者あるいは地域住民、そういう方たちの不安がなくなるような、その点をよく配慮していただきたい。
 それから、きょうは被爆者問題のこの委員会の中で関連して伺いましたけれども、あらゆる意味で放射能がどこか、魚でも地中でもめぐりめぐってやがては人体にということは、あらゆる点からいま警戒をしなければならないときだと思いますので、そういった点によく配慮していただいて、とにかくドラムかん詰めをした廃棄物が、やがて耐用年数を過ぎてどこかへ投棄をしなきやならかいという事態がもう間近に迫っているわけでございますから、これは社会労働委員会の立場からも、そういった点についてはよろしく専門家の方たちに重々安全性第一という点でお願いをしたい、そういう意味で私は今回この質問をさせていただきました。
 以上で終わります。
○沓脱タケ子君 それでは、限られた時間でございますので、被爆者援護法の制定についての問題点から伺っていきたいと思います。
 一九七七年には国連NGOの被爆者問題の国際シンポジウムを初め、一九七八年には国連軍縮特別総会ということで、被爆後三十数年たちまして国際的な問題としてもクローズアップをされてきている。今日、全国的に被爆者団体また平和団体、市民団体等が中心になりまして、被爆者援護法の制定を要望する二千万人署名というのが運動として展開をされています。きょうも日本原水協の幹事の方々が大臣にも申し入れがございましたように、今日では国民挙げての要求になっておるわけでございます。
 ところが一方、わが国の被爆者対策を振り返ってみますと、何といってもおくれは確かに否めないと思うのでございます。昭和三十二年に原爆医療法に関する法律が制定をされ、四十三年には特別措置法が成立をするという状況でございますが、大臣、いまから振り返ってみましてやっぱり国の対策がおくれてきたなということをお感じになっておられるのかどうか、御感想をまずお伺いをしたいと思うんです。そういう観点に立って、被爆者が被爆者援護法の制定を一貫して要求をされているということの心根というんですか、心を御理解いただけるのかどうか、その点を最初にお伺いをしておきたいと思います。
○国務大臣(野呂恭一君) 現行の医療法とかあるいは特別措置法など原爆二法の制定が、戦後十数年を経過してそれぞれ制定されたということは決して私はその対応が十分であったとは考えておりません。遅かったという事実は否めないと考えるわけでございます。しかもその内容につきましては、一般社会保障ではその対応ができないということで、特別の社会保障制度という立場でこの制度が発足したわけでございますが、しかしこうした現行法というものを見直し、あるいはまた、今後原爆被爆者に対して十分な対応処置を講じていく必要のあることは言うまでもないのであります。したがって、基本問題懇談会に今後どうすべきか、国家補償としての精神に基づく援護法の制定が必要なのかどうかといったその基本理念というものについて御意見を承っておるわけでございます。この基本懇の答申の内容を十分尊重しながら、あるいはその対応が遅かったという事実を反省しながら、積極的にその対策を進めてまいりたいというふうにいま考えるわけでございます。
○沓脱タケ子君 それで原爆被害の特徴、これはもう繰り返し論議をされておりますので、私は繰り返して申し上げるつもりはございませんけれども、その特徴というのは国連のNGO被爆問題シンポジウムの報告によりますと、非常に一般的な被害ではないという点を幾つか特徴づけておるんです。その点で瞬間的な奇襲性の問題だとかあるいは無差別性の問題だとか、あるいは根絶性という表現を使っています。根絶性とも言えるようなひどさあるいは全面的な被害、持続拡大性と、このシンポジウムの報告のまとめではおおむね五つに分けて言われておりますけれども、そういうふうに分析をされている事態というのは、原爆被害者に対しては命と暮らしと心の崩壊だということはかねがね言われてきたところでございます。そういう中で歴史上唯一の被爆国であるわが国といたしまして、これはアメリカに対して賠償請求権を放棄したという今日、世界平和の理念の具現としても、また被爆者へのなし得る最大の補償としても、国家補償の精神に基づく被爆者援護法の制定の必要性は今日ますます高まっていると思うわけでございます。
 午前中以来たびたびお伺いをしておりますが、基本問題懇談会の答申が出てからとおっしゃっておられるわけでございますが、私はこの御答申も非常に大事だと思います。同時に、政府自身の構えがやはり大事だと思いますが、そういう点で、本当に被爆者が要求しておられる国家補償の理念に基づくという被爆者援護法の制定に何とか踏み切りたいという気持ちをお持ちなのかどうかという点です。基本問題懇の答申を待ってという御意見はもう十分拝聴しておりますので、そのこととあわせて政府自身のお立場、基本的な姿勢というものをお伺いしておきたいと思います。
○国務大臣(野呂恭一君) 政府みずからが、基本懇の結論を待たずに積極的にこれに対応する考えはあるのかないのか、あるいはまた、国家補償の立場に立つ援護法制定に対して積極的に構えるべきではないのかというような御意見でございます。しかし、政府といたしましては現行法が特別な社会保障制度として制定をしたわけでございまして、その現行法がこれで十分であるとは考えておりませんだけに基本懇に答申を求めておるのでありまして、もしこれでいいのだという考え方であるならば、答申は求める必要はなかったと思います。やはり前向きにもつと、今日までの手抜かりはないのかな、国家補償の精神に基づく援護は一体どうあるべきかといった基本の理念というものを私どもは考えるに当たって、私的諮問機関とは言いながら厚生大臣の諮問機関としてその意見を求めておるわけでございます。これはそういう方向で検討をすべきものではないだろうかという考えも含めまして御意見を承る、したがって、答申が出ましたならばその趣旨を十分尊重してまいりたいという姿勢には変わりはございません。
○沓脱タケ子君 私は非常に大事な点だと思いますのは、政府が過去三十五年の反省に立って積極的な施策の対応をしていく、そのために、基本理念とおっしゃるけれども、基本理念というのはもうはっきりしてると思うんですが、具体的にどのように対応していくべきかという点について、基本懇で御意見を賜るということのお立場なのか、あるいはその基本問題懇談会から出てきた答申を見て、それからぼつぼつお考えになるのかというのでは大分違うと思うんです。そこがどっちなのかということははっきりしていただきたい。そこなんですね。
○国務大臣(野呂恭一君) 基本懇がどういう内容の答申をお出しになるかということはいま私どもとして推定はできませんけれども、政府がなぜ諮問機関である基本懇に諮問をしたのか、こういうことは基本懇も十分御理解をいただいておるはずでございますから、いま審議の過程で私どもはとやかく、こういう方向でなかろうかとかいう内容についてお尋ねし、得られる立場ではございません。したがって、政府の姿勢というものについても基本懇は十二分おわかりのはずであるというように私は期待をいたしておるわけでございます。
○沓脱タケ子君 国民的な要求になっておりますことですので、ぜひ積極的に期待にこたえるように対処していただきたい。そのことは具体的には援護法の具体化を特に強く御要望申し上げておきたいと思うんです。これは当然、各党ともの御要望でもございますし、私どももずいぶん長い間繰り返し指摘をしてきたところでございますし、今度こそは期待にこたえられるという姿にぜひやっていただきたいということを重ねて御要望申し上げておきます。
 次に、私はかねがね、現行法でも補充するべきところ、あるいは充実させるべきところというのはやるべきではないかと思っているんです。たとえば弔慰金とか遺族年金制度というのは、現行制度でも補足、充実してよい制度ではないかと思うんです。こういうことを前から言っておりますし、各党ともおっしゃっておられるわけですが、なぜこれができないんだろうかなというふうに思いますことは、被爆者の実態からなんです。たとえばこういう実例があるんです。
 大阪市の原爆被害者の会の相談員をなさっておられた三浦一江さんという方の手記集で「五〇〇米に生きる」というのが出版されております。この方が認定被爆者で、ことしの四月に胃がんで亡くなられました。ところが特別措置法では葬祭料八万円が出るだけなんです。この方の年譜なども、この「五〇〇米に生きる」にはきわめて詳細にお書きになっておられますが、時間の関係がありますから私は省略をいたしますけれども、これを見ましてしみじみ思うんです。だって、原爆に起因して病気にかかられて、胃がんになって手術もなさって、そして亡くなられているんです。ところが葬祭料だけだと、この措置では今日日本の社会の中の他の制度と比べてもいかにも不十分じゃないかということを感じるわけでございます。だって八万円といったら、今日では俗に言ったら棺おけ代だけなんですよ、本当に。そんなことでいいだろうか、どうしてこういう亡くなった方にせめて弔慰金ぐらいの制度はつくれないんだろうか。
 この方は結婚されたんだけれども、被爆者だということを隠して結婚をしておられて、一人だけ娘さんがおられるんですね。その娘さんにお子さんができて、お孫さんもできているんですが、結婚をされたんだけれども、被爆者だということを隠して結婚しているもんだから、この人の疾病というのはずっと体にいっぱいものができるんです。御主人が気持ち悪がって、結局気持ちが悪い、気持ちが悪いと言って飲んだくれてというふうなことで、ついには離婚をされるんです。そういう中で娘さんを育てられてお孫さんもできているという状況なんです。ところが、弔慰金もない、もちろんびた一銭の遺族年金もない。いかにも不十分じゃないかというふうに痛感をさせられるわけです。
 わが国では、他の先進諸国と比べますと原因者負担による補償制度というのは比較的おくれてきているんです。しかし、おくれてはいましたけれども、今日ではたとえば労災保険法あるいは公害健康被害補償法、こういうふうな原因者がはっきりしておる場合に死亡すれば、これは両方とも遺族年金というのは制度としてできているわけです。そういう点から見ますと、被爆者の場合は原因も原因者も非常にはっきりしているわけです。原因は原爆だ、原因者はアメリカだ、アメリカが落としたんだ、これだけはっきりしているわけだから、これは原因者負担で当然弔慰金や年金等の補償制度というようなものは確立されてなきゃおかしいわけです。
 しかし、これは賠償権を放棄したという関係で、アメリカの責任は今日追及できないという立場ですから、肩がわりをした政府がこれは原因者として補償するのは当然の理ではないかと思うんです。そういう点では被爆者の御要望というのは非常にささやかでもありますし、当然正当な要求であるというふうに思うわけですが、そういう点で直ちに援護法がということにならない、現行法ででもせめて弔慰金やあるいは年金制度ぐらいは拡充していくということが必要ではないのかという点を非常に痛感をするんですけれども、大臣、いかがでしょう。
○国務大臣(野呂恭一君) 原因者負担原則というものを生かして現行制度の中において工夫すべきではないか、もっと被爆者に対して手厚い援護を講ずべきではないかという御趣旨でございますが、確かに原爆被爆者の実態と、いうものは他と比べるものはないというほど深刻なものであることは私も拝察をいたすわけでございます。
 しかし、他の一般戦災者の原因、これの負担原則ということをまた適用いたしますならば、これはどこまでもそこの区切りをどうつけるかというところに非常に大変むずかしい問題もあるわけでございまして、私はこれこそ国民的合意に基づいて、そしてこの被爆者の要請に十分こたえるような方法をとっていくということで、これは一般戦災者とは違っておりますという基本理念というものの確立が必要ではないだろうか、そういう意味から基本懇に答申を求めておる、こういうことでございますので、いま直ちに現行法で弔慰金とかあるいは遺族年金を支給する制度をつくるということは大変むつかしい問題であると考えております。
○沓脱タケ子君 一般戦災者の問題との関連でむずかしいという御意見はかねがね出てるんです。しかし、たとえばいま私が申し上げたような実例を見たら、いかにもこれは不十分だとお思いになるでしょう。片方では公害患者なんかとはもう比較にならないほどの心も体も命も、すべて財産から崩壊をされるような口には尽くせない被害を受けている被害者、これは原爆に起因する疾病で亡くなって葬祭料の八万円ぽっきりでしょう。しかし、公害患者は公害病で亡くなった場合にはちゃんと年金制度が制度として確立されているんです。それと比べたって被爆者に対して、もう被爆後三十五年なんです。ああだこうだと言っている時代ではないというところが私は問題だと思うんです。そういう点では、本当に私は被爆者の御要望というのはささやかだということをもうたびたびお伺いをしてきて感じているんですが、せめて弔慰金あるいは年金制度というものを現行制度だってプラスしていくということだって考えていいんじゃないかと思うんです。これは来年から必ず被爆者援護法をつくりますとおっしゃるなら私はここでやかましく言いません。しかし、被爆者援護法が来年になるのか再来年になるのか基本問題懇の答申が出ぬとわからぬというんだから、これはちょっと来年から確実だなというふうに私はのみ込めない。それで重ねて申し上げているんですが、現行法の中でもあんまりひどいなと思うところは改善の措置をとるべきだということを申し上げたわけでございますが、大臣、やっぱりあきませんか。
○国務大臣(野呂恭一君) 御趣旨の点は十分に私も理解さしていただくわけでございますが、先ほどお答え申し上げましたとおり、基本懇の答申も決してそう遅いことではありませんので、ごく近い機会に得られるわけでございまして、またすでに基本懇の方々が現地視察をいたしました際におきましても、五十六年度いろいろ実施すべきものについては予算の編成に間に合うように意見を出したいということも述べていられるわけでございますから、私は決して政府の対応として、基本懇の結果を待ってやることにおいて遅いということではないのではないかというふうに考えておるわけでございます。
○沓脱タケ子君 あんまり的確に御答弁いただけていないんですが、きょうは時間が限られておりますのでね、そういう点がやっぱり問題だと田?りんです。
 いつも問題になりますもう一つは認定問題なんです。これも時間がありませんから詳しく申し上げるつもりはありませんが、被爆者総数が、いただいた資料によりますと、三十七万五百九十四人ですね。その中で特別手当をもらっておる認定患者が四千六百十一人です。これも厚生省からいただいた資料ですが、三十七万中四千六百人といったら一%余りなんです。いかにも少ない。そういう少ないというところに今日の原爆二法の問題点、被爆者の皆さん方の強い御要望というのがあると思うんですが、どういうことになっているかという点で、私はもう時間が限られていますから簡単に言いますが、たとえば安藤エミ子さんという方がいるんですが、この方は大阪の被爆者の会で御相談になった方なんです。
 この方は舟入病院の看護婦さんでありまして、爆心地から下五キロメートルで被爆をしている。顔全面と胸と右腕、左手に熱傷及び上半身無数のガラス傷という状況で、それで下顎から胸に高度なケロイド、それから右肘拘縮という状況なんです。こういう患者さんなんですが、この方は被爆地点が一・五キロですから、当然のこととして保険手当をもらっていらっしゃる。ところが健康管理手当について保健所へ相談に行ったんです。そうしたら、あなたは元気で内臓も丈夫だから適用されませんよと言われて、ずっと今日まで保険手当の制度ができてから保険手当をもらっているだけなんです。この人の拘縮の度合いというのはどんなかというと、こんなんです。ちょっと見てもらったらわかる。(写真を示す)原爆医療法によりますと、これは手術の時点で申請を出せば認定をされるケースです。この方は形成手術で治癒が、あるいはいまの機能障害というのがかなり軽快されるという状況ですから、原爆医療法八条によって認定されるケースだと思うんですけれども、どうですか。
○政府委員(大谷藤郎君) 先生御指摘の安藤さんのケースにつきましては、手術をされるという時点で認定されるというふうに私どもは考えております。
○沓脱タケ子君 そうしたら、これはたとえば入院をして手術をしますね。そうなると認定患者になりますから特別措置法ではお手当も出るんですね。そのお手当なんというのはどんなことになるんですか。これは入院して治療している間は特別手当ですか、治ったらどうなります。
○政府委員(大谷藤郎君) 治りましても、その病気のある間は特別手当が、半額になりますが出るわけでございます。
○沓脱タケ子君 そこで問題があるんです。これはほかの人のケースも言おう思ったけど、時間がないですからね、同じようなこといっぱいある。
 そしたら、このケロイドというんですか、熱傷性の癩痕、あるいは原爆による外傷性の癌痕というようなことで機能障害等写真のように余りかっこうのいい姿じゃないんですよ。そういう状態では今日の医学では形成手術がかなりできるわけでしょう。そういう人たちに積極的に行政指導をやって治療も受けさせる、それから手当もちゃんと支給できるように認定患者にするというようなことをどうしてしないんですか。そういうふうにやっているんですか。戦後三十五年もたって、いま申し上げた安藤さんは申請中なんですよ。三十五年たっていま申請しているんだ。こんなことで私は厚生省がまともに被爆者のために対処しているとはなかなか言い切れないと思うんですが、その点どうなんですか。
○政府委員(大谷藤郎君) 認定を申請されました時点におきまして、私どもとしてもできる限り都道府県を通じましてそういうように御指導申し上げているところでございます。
○沓脱タケ子君 ところが、この人は昭和二十六年からABCCの追跡調査を受けて、いま昭和二十六年以来大阪に来ているんです。それで毎年調査のために広島まで行っているんです。だれも言ってくれない。そんなばかげた話は私はないと思うんです。それで、いま申請をして認定患者になる、それで医療を受けて形成手術等をやって少しは見よくもなるし、機能障害もなくなる、本人にとってはありがたいと思うんです。同時に、その治療が終わっても認定患者として手当は半額になるけれどもいただける、ずいぶん助かると思うんです。ところが、手術した方がいいということを知らぬで苦労しているまだ万を数える被爆者がおりますが、この人たちのことをどう考えますか。私はこういう熱傷性の拘縮とかあるいは被爆による外傷性の拘縮その他機能障害といういうものについては、せめて手術をしてもせぬでも健康管理手当の対象になぜしないのかなとそれまた不思議なんです。
 健康管理手当を出す十一疾病の一覧表を見たら、内科の疾病ばっかりで外科は何にもないんです。これは一つ抜けています。こんなもの放射能の影響があるとかないとかいって、もう大論議であなたのところは審議会まで設けて公平を期すると言っているんだけど、そんなむずかしいことをせぬでも、熱傷性の拘縮やらケロイドなんていうのはもうだれでもわかるでしょう。そんなのをほったらかしておるんだから。十一疾病は内科系統ばっかりです、見せてもらったところでは。せめて外科的な表から見てわかる障害者についての疾病を十二番目に記載するということはできませんか。こうしてあげたらもっと形成手術等の対象者もふえるし、あるいはその人の機能障害も助かるというふうになるんじゃないかと思いますが、いかがでしょう。
○政府委員(大谷藤郎君) いろいろな手当につきましてこれは歴史的ないろいろの問題がございまして、健康管理手当につきましては、被爆者のうち原爆放射線の影響があると思われる関連疾病にかかっている者に対して、それらの者が日常保健上の注意を払うために必要な費用に充てるものとして支給するという考え方に立ちまして、原爆医療審議会の先生方にお諮りしてこの十一の疾病を決めてきた次第でございます。この問題につきましては先生のお話も十分留意さしてはいただきたいと思いますが、何分そういうわけで、いままで非常にぎりぎりと歴史的にいろんな分類がされてきているという点につきましても十分御了承いただきたいと思うわけでございます。
○沓脱タケ子君 時間がないんで、私もうちょっと突っ込んで言いたいんだけど、大体健康管理手当に該当する十一疾病といったら全部内科系疾患でしょう、局長御存じのように。それは眼科もあるけど内科系疾患だ。それで被爆者というのは爆風で吹き飛ばされている、熱傷を受けている、まあ外傷だってあるのはあたりまえでしょう。それで現に外傷が国民の目についてきたわけでしょう、戦後三十五年の間に。その外科的な疾患というのが何にも該当していないというのは、やはりおかしいと思うのです。だってケロイドだって潰瘍性のケロイドの方もあるでしょう。瘢痕の中にもいろんな機能障害の方もあるでしょう。しょうがないのかと思ってしんぼうしていなさる方はずいぶんいるんです。手術をちゃんとやったらその後は特別手当を死ぬまでもらえるんでしょう。せめてわずかの金でも。こんなものおかしいと思いますよ。ちゃんと治療してもらってよくなった人は手当をもらって、手当ももらわぬで病状で苦しんでいる人は何にももらえぬ、そんなあほな制度はありません。
 私はもうこれ以上申し上げませんから、これは医療審議会ですか、そこの先生方にもぜひ御相談をしていただいて御検討をいただきたい。そのことを特にお願いしますが、いかがでしょう。
○政府委員(大谷藤郎君) この問題につきましても、十分検討さしていただきたいと思います。
○沓脱タケ子君 時間がないから終わります。
○前島英三郎君 朝十時からいろいろな問題が提起され審議が続いておりますけれども、一通り整理いたしますと、原爆被爆者対策は昭和三十二年にできた原爆医療法、昭和四十三年にできた被爆者特別措置法、これら原爆二法によって進められているわけなんですが、原爆二法では満足のいく対策がなされない、そこで被爆者の人々は国家が補償する責任のあることを明確にした被爆者援護法の制定を要求してきた、整理していきますとそういうことになってまいりまして、国会におきましても全野党が共同して援護法案を提案をしてきたということでございます。
 こうした流れの中から昨年六月にいわゆる七人委員会――原爆被爆者対策基本問題懇談会、通称基本懇、基本懇というのが盛んにきょうの審議の中にも出てきておりますけれども、この原爆被爆者に対する問題についての基本理念、基本的なあり方を検討することにこの基本懇がなった、その結論はそろそろ出されることになっておる、その出される結論を待ちたい、待ちたいというのがきょういままでの審議の中でのたくさんな政府の答弁の中に聞かれる言葉なんですけれども、そもそも基本理念が被爆後三十五年も経過してからやっと明確にされるというのに私は率直に驚いてもいるんです。初めてこの問題を当委員会で私は質問さしていただくんですが、三十五年経過してから基本理念というのが明確化されるというのに大変驚いているわけなんです。これまで私もいろんな人の声を聞いてみた中では、昭和三十二年あるいは四十三年より前のことはどうなるのかという声が多いです。さらにその空白をどうやって償ってもらえるか、そういういわば怨嗟の声というのがきわめて多いわけなんです。国家に何もしてもらえないまま亡くなっていった人のことはじゃどうなるのか、その人たちに対する責任あるいは国の対処の仕方はどうなっているのか、気持ちはどうなのか、心はどうわれわれに向けてくれているのかという声も大変多かったわけなんです。
 基本理念を基本懇、七人委員会に答申してもらうことは大変よいことであると私は思いますし、一日も早く被爆者の願いに応じた答申を出してもらいたいというのが私の率直な気持ちなんですけれども、これまで国が十分にやってこなかった責任というものは、基本懇で幾ら答申が出ようがその問題は残るだろうと思うんです。やむを得なかったでは済まされない部分というものも大変あると思うんですけれども、その辺を含めまして再び大臣のお答えは同じになるかと思いますが、その辺の所信を改めてお伺いしたいと思うんです。
○国務大臣(野呂恭一君) 大変むずかしい御質問で、私はいま御理解いただけるようないい答弁ができないということを心配をいたすわけでございます。しかし、政府としては決して基本理念の確立を待ってそれからやったらいいのではないか、あるいは今日までの空白期間をもしそういう形の場合にどういうふうに扱うのかといういろいろの重大問題は確かに残されておると思います。それだけに、簡単に、原爆被爆者の実態を承知しながら行政の責任において、政府の責任においてどう踏み切っていくかということについては、いろいろ私は他の一般戦災者などとの比較も考えながらどうしていくかということに苦悶をしてきたのではなかろうかというふうに判断をいたします。同時に、こういう踏み切り方というものは国民的な合意というものが私は大変大事だ。単にいままでの行政がおくれてきたというだけではその解決の前向きに向く道ではないと考えますから、いままでのことも反省しながら基本懇の結論を待ちたいというのはそういう意味でございます。今後、その物差しに応じて積極的な被爆者対策を進めていかなきゃならぬという考え方でございます。
○前島英三郎君 過ぎ去った日をただひたすら責めているだけではないと思います。しかし、三十五年もたってそういう基本理念がようやく確立されようとする動きというものは、どう見たってこれは責められても仕方がないことだろうというふうに思うんです。すべて基本懇の結果待ちというのでも大変困るというふうにも私は思うんです。
 そこで、現行の原爆二法について具体的に幾つか質問さしていただきますと、まず認定の問題ですね、先ほど来認定の問題ではいろいろと御質疑がなされているわけなんですが、関係者の話を聞きますと、認定が厳しく手続も大変繁雑で困るという声が強いのです。手続については、基本懇の結論によって所得制限の問題などが解決されればこちらも簡素化されるという関係もあると思うんですけれども、認定についてはいろいろ問題があるのではないかというような気がするんです。
 認定申請の処理状況のデータを見ますと、こちらにございますが、四十九年度までと五十年度以後では認定率が線を引いたようにだっと下がっていくんです。関係者の声を数字が裏づけているように思える部分があるんです。昭和四十九年度から五十年度に移るときには約半分以下にだっと認定件数が下がっていきまして、そのかわり却下件数というのは四十九年を境にしましてまたがっと三けたに上っていくんです。平均では認定率は三三・四%というようになっているんですが、非常に関係者の話では認定が厳しく手続も繁雑、それによってあきらめざるを得ないという部分がとみにこの辺の数字も示しているのではないかという気がするんですが、その辺はどうですか。
○政府委員(大谷藤郎君) 第八条第一項の規定に基づく厚生大臣の認定は、もっぱら医学的見地から従来から行われてきているわけでございます。制度の始まりましたころは、原爆との関連の多い疾病の方が認定申請をされるということでこれは当然多かったわけでございますけれども、最近ではその件数が非常に減ってきておる。また残っておる少ないものにつきましても、これは原爆との関連の問題が非常にむずかしい事例というものになってきているというふうなことでございまして、当然最近になりますと数が少なくなってきているというわけでございます。しかし、重ねて申し上げますけれども、この認定の基準につきましては従来から医学的な客観的な事実で専門家の先生方に御判断をいただいてやってきておるということでございます。
○前島英三郎君 つまり、ケロイドの場合は手術をすれば認定されるということですね、手術をしない限り幾らひどくても認められないということなんですね。ですから、心が現行の制度の中には非常にないような気がするんです。ケロイドのある方というのは医学面ばかりではなくて社会的、心理的にもまさに特別の状態に置かれてきたと思います。これは当然なことなんです。医療を行う場合だけにかたくなに限定しまして運用するということは被爆者の実情にそぐわないのではないか。ケロイド隠しあるいは被爆をしたことを隠したというようなことを先ほど沓脱委員の方からも幾つかの事例が紹介されましたように、そういう意味では、社会的なこともやりますというような心の込もった運用というものを私は求めたいと思うんですけれども、その辺はいかがでしょうか。とにかくそうした形に、行動に出さないとそれが認定されない。しかもそれにはなかなか厳しいものが五十年度以降は出てきている。もっと心の込もった運用の仕方というものは今後の中においてはお考えにならないんでしょうか、いかがですか。
○政府委員(大谷藤郎君) 先ほども申し上げましたように、被爆者につきまして、特別の状態にあるという、放射能を多量に浴びて健康上、生活上悪条件下に置かれていて特別の配慮を必要とする状態というふうなことで認定疾病というものを考えてきたわけでございまして、瘢痕だけで生活されている、確かに先生御指摘のようにいろいろな社会的、精神的な面があろうかと思いますが、従来そういうふうな医学的な見地からそういう認定をやってきておるという経緯から、認定疾病には単なる瘢痕につきましてはこれを該当させていない。しかし、治療されますということになりますとこれを認定疾病に該当させるというふうなことで処理してきたわけでございます。
○前島英三郎君 老齢化が進んで、指定された医療機関に行くのが困難になってきたという人ももう三十五年経過していますと出てまいりますし、そういうことで情報に対する音痴な部分もありまして、そうなれば認定されるはずだったのに、いまさらもうこの年でケロイドを治すために別に行くことはないとあきらめている部分というのは非常に多いと思いますので、その辺も含めて老齢化が進んでいる現状、さらにまた医療機関についても広島市、長崎市の人はいいけれども、ほかの地区の人あるいは両県から離れている人というのは大変困っている人も多いというような状況もありますし、東京などでは、ある人は一般の病院でノイローゼと診断された人もあるというようななかなか奥深い部分にいろいろな障害が積り積っている部分というものもあるわけですから、その辺の配慮も今後なされるべきだというふうに思います。
 医者の目で特に異常がないように見えましても、被爆者にしてみますと、いつどんな異常があらわれるかわからないという不安を絶えず抱えていままでも生きてきたわけですし、今後もまた生きていかなければならないわけですから、指定医療機関の問題あるいは一般の医師の理解の問題という面についての対策もやるべきではないかと思うんですけれども、その辺はいかがでございますか。指定医療機関の問題、さらに、一般の医師に対するそうした指導の問題、いわゆる被爆者に対する医師の質の問題、取り組み方の問題という点はいかがでしょう。
○政府委員(大谷藤郎君) 先生御指摘のように、できる限り適切なる医療を受けていただくということは私どもとしても望ましく、できるだけそういうふうにやりたいと考えているわけでございまして、指定医療機関につきましても、また一般の疾病医療機関につきましてもできるだけ増加していくという方針で望んでおるわけでございます。
 また、原爆医療に対しまして一般のお医者さん方の理解と関心を深めていただくということのために、特に五十五年度予算では新たに医療機関医師の研修費というのを計上いたしまして、長崎で研修会を実施する予定にいたしておりますが、こういうふうなことを通じまして指定医療機関の量、質の確保ということに努力してまいりたいと考えておるわけでございます。
○前島英三郎君 医療機関の問題もありますが、その前に生活の問題なども相談業務の充実ということがきわめて大切なことだと思います。これは被爆者の問題のみならずいろんな意味で病院のケースワーカー、保健婦あるいは被爆者団体による相談受付など、いろいろな形態がいま現在あると思いますけれども、これらをもっともっと充実させて、実は一つの制度があったらこれがもう周知徹底するような、そしてまた制度にこぼれるようなことがあってはいけないと思いますし、何としても歴史的な中において非常に苦しんでいる方々にとって温かい心の込もった対策というのが早急に必要だろうと思います。とにかく六月ごろでしょうか、基本懇の答申が出されるということでありますけれども、それを待ってというのも何か不安が同居しながら待ち望んでいる声も大変多いわけですから、しっかりとそれに対する取り組みを最後に大臣にお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
○国務大臣(野呂恭一君) いろいろ御指摘になられた点は十分私ども反省をし、とりわけ原爆症の認定に当たりましては被爆者の実態に即応するような制度、運営ということが大変大事であると私どもは考えるわけでございまして、その他医療機関の数の問題あるいは医師の原爆者に対する理解なども深めながら、よらこの制度の改善、運用に努めてまいりたいと考えるわけでございます。
○委員長(久保亘君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(久保亘君) 御異議ないと認めます。
    ―――――――――――――
○委員長(久保亘君) 委員の異動について御報告いたします。
 本日、片山甚市君及び石本茂君が委員を辞任され、その補欠として田中寿美子君及び高橋圭三君が選任されました。
    ―――――――――――――
○委員長(久保亘君) それでは、これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もなければ、これより採決に入ります。
 原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。
 本案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(久保亘君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、浜本君から発言を求められておりますので、これを許します。浜本君。
○浜本万三君 ただいま可決されました原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党、日本共産党、民社党、参議院クラブ、第二院クラブ共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、次の事項について、その実現に努めるべきである。
 一、可及的速やかに原爆被爆者対策基本問題懇談会の答申を得るよう、最善の努力をするとともに、制度の基本的な改正が、次期通常国会までに行われるよう、資料の収集や調査など必要な作業を直ちに開始すること。
 二、特別手当については、生活保護の収入認定からはずすよう検討するとともに、各種手当の額の引上げ、所得制限の撤廃等制度の改善に努めること。
 三、原爆症の認定については、被爆者の実情に即応するよう、制度と運営の改善を行うこと。
 四、原爆病院の整備改善を行い、病院財政の助成に十分配慮し、その運営に当たつては、被爆者が必要とする医療を十分受けられるよう万全の措置を講ずるとともに、被爆者に対する家庭奉仕員制度の充実及び相談業務の強化を図ること。
 五、被爆者とその子及び孫に対する放射能の影響についての調査、研究及びその対策について十分配慮するとともに、原爆医療調査機関の一元一体化について検討し、その促進を図ること。
 六、放射線影響研究所の研究成果を、被爆者の健康管理と治療に、より役立てるため、運営の一層の改善、同研究所の移転、原爆病院との連携強化などにつき検討すること。
 右決議する。
 以上であります。
○委員長(久保亘君) ただいま浜本君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(久保亘君) 全会一致と認めます。よって、浜本君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、野呂厚生大臣から発言を求められておりますので、これを許します。野呂厚生大臣。
○国務大臣(野呂恭一君) ただいま御決議になりました附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重いたしまして努力をいたす所存でございます。
○委員長(久保亘君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(久保亘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
○委員長(久保亘君) 次に、雇用における男女の平等取扱いの促進に関する法律案を議題といたします。
 発議者田中寿美子君から趣旨説明を聴取いたします。田中君。
○田中寿美子君 雇用における男女の平等取扱いの促進に関する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 個人の尊厳と男女の平等は、国連憲章、世界人権宣言にうたわれております人類普遍の原理であります。わが国の憲法におきましても、すべて国民は個人として尊重され、法のもとに平等であって、性別によって政治的、経済的または社会的関係において差別されることがない旨を明定しております。また、一九七九年六月にわが国が批准しました国際人権規約におきましても、A規約及びB規約の双方において、経済的、社会的、文化的、政治的及び市民的権利において男女の平等を保障すべきである旨を規定しております。また、近くは、昨年十二月に第三十四回国連総会におきまして、女性に対するあらゆる形態の差別撤廃条約を採択しました。
 しかるに、わが国における法制は、雇用の分野を含めて実際に男女の平等を確保する上でいまだ不十分であることは否めません。アメリカでは、一九七二年に雇用機会平等法を、イギリスでは、一九七五年に性差別禁止法を制定しました。また、その他の欧米諸国でも、雇用の分野における女性の地位の平等化を目指して、各種の法律や制度を設けて国が積極的に対応しております。
 一九七五年の国際婦人年世界会議で採択された世界行動計画及びメキシコ宣言並びに同年のILO総会で採択された行動計画は、いずれも女子の労働における平等の権利を確認し、かつ、強調しておりますし、さらにILOの行動計画は、雇用における男女の機会及び待遇の均等を促進するため、国の制度として女子の参加を含む三者構成の委員会を設立すべきことを勧告しております。本年は、国連婦人の十年の中間年に当たり国連婦人の十年中間年世界会議の開催も予定されており、前期五年間の各国における男女平等化の実績についても評価が行われる予定であります。
 ところで、わが国における女子労働者の地位が、憲法の趣意に照らしおよそ満足すべきものとはほど遠い状況にあり、国際水準に照らしても改善すべき点が数多くあります。近年わが国の女子雇用者の数が、ますます増加の一途をたどり全雇用者の三分の一を占め、日本経済にとって欠くことのできない労働力となりつつあるにもかかわらず、雇用に関する不平等はむしろ増大しつつあります。こうした実情に効果的に対処し、かつ、また前叙のように女子の労働における地位の平等化を目指して活発な努力を示している国際的動向にも対応するため、国は当面の優先的政策課題として、雇用の分野における女子の差別的取り扱いを禁止するとともに、その差別的取り扱いからの救済制度を設けることにより、女子労働者の地位の平等化の促進を図る施策を推進していくべきものと考えます。われわれはここに雇用における男女の平等取扱いの促進に関する法律案を提案し、如上の政策課題に対応すべく、われわれの態度を明らかにすべきであるとの結論に達しました。
 次に、この法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。
 まず第一に、この法律案の骨子は、使用者等が女子を差別的に取り扱うことを法律上禁止する旨を明定することと、女子をそうした差別的取り扱いから救済するための制度を設けることの二点であります。なおここで重要でありますことは、この救済制度は、労働基準法において予定されておりますような官憲的保護により労働条件の適正化を図っていこうとするものと異なり、雇用における男女の平等は、女子労働者及び使用者双方のたゆみない自主的な努力によって実現されていくべきことを期待しつつ、それを補う支柱として、女子から申し立てがあった場合には、迅速かつ適正な手続により救済をしていこうとするものであることであります。
 第二に、差別的取り扱いの禁止については、まず労働条件等について「使用者は、労働者が女子であることを理由として、募集若しくは採用又は賃金、昇進、定年、退職その他の労働条件について、男子と差別してはならない。」と規定し、その他職業紹介、職業訓練等についての差別的取り扱いをも禁止する旨を定めております。具体的にどういう行為が差別的取り扱いであるかを判断していく上に必要な指針は、別に中央雇用平等委員会が定める準則において漸次展開されていくことが予定されております。
 第三に、救済機関であります雇用平等委員会は、中央に国家行政組織法第三条の委員会として中央雇用平等委員会を、都道府県に地方雇用平等委員会を設置し、それぞれの雇用平等委員会は、使用者委員、労働者委員及び公益委員の三者構成とし、各側委員の二分の一以上は女子でなければならないこととし、さらに中央雇用平等委員会の公益委員の任命につきましては、両議院の同意を得なければならないことといたしております。現行の労働委員会に類似した組織でありますが、二分の一以上の女子委員を含まなければならないとしている点が大きな特徴であります。
 第四に、差別的取り扱いからの救済手続は、次のとおりであります。
 原則として二審制を採用し、初審は地方雇用平等委員会が、再審査は中央雇用平等委員会が行うことといたしております。手続は、女子労働者から管轄地方雇用平等委員会に救済の申し立てがあったときに開始いたします。以後当事者の立ち会いのもとに審問を行い、証拠調べ、事実の調査を経て、申し立てに理由があると認められるときは、当該地方雇用平等委員会はその裁量により原職復帰、バックペイの支払い等女子労働者を差別的取り扱いから救済するために必要な措置を決定で命ずべきことにいたしております。この地方雇用平等委員会の決定に不服がある当事者は、さらに中央雇用平等委員会へ再審査の申し立てができることといたしております。なお、初審及び再審査いずれの手続におきましても、使用者委員、労働者委員は審問に参与できることにいたしております。また救済の申し立ての相手方当事者が職業安定機関であります場合には、決定にかえて勧告をすることにいたしております。
 第五に、取り消しの訴えとの関係についてでありますが、地方雇用平等委員会の決定に対しては出訴を認めず、ただ中央雇用平等委員会の決定に対してのみ東京高等裁判所へ取り消しの訴えを提起できることといたしました。女子労働者の差別的取り扱いからの救済の制度としては、使用者委員、労働者委員双方の参与のもとの審問手続が予定されている行政委員会方式が合理的であるとの判断から、こうした雇用平等委員会による救済の制度を設けました以上は、地方雇用平等委員会の決定に対し直ちに出訴の道を開くのは妥当でなく、中央雇用平等委員会による再審査を経由させるべきである、との趣意に出るものにほかなりません。
 このほか、中央雇用平等委員会の重要な権限の一つとして、雇用における男女の平等取り扱いの促進に関し講ずべき施策につき労働大臣に建議ができることにいたしております。また、中央雇用平等委員会による国会への事務処理状況の報告、地方雇用平等委員会による苦情相談に関する事務処理の取り扱い、啓発宣伝活動、不利益取り扱いの禁止等に関し所要の規定を整備いたしております。なお、この法律の規定は、国及び地方公共団体の公務員であります女子職員につきましても、労働条件に関します限りは適用があり、その差別的取り扱いに関しましても、雇用平等委員会の決定により原職復帰等の救済が与えられることにいたしております。最後に、救済手続の実効性を確保するため罰則を設けております。
 以上がこの法律案の提案理由及び内容の概要であります。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
○委員長(久保亘君) 以上をもって趣旨説明の聴取は終わりました。
 本案の自後の審査は後日に譲ります。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時二十六分散会