第101回国会 法務委員会 第10号
昭和五十九年八月二日(木曜日)
   午前十時開会
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   委員の異動
 七月二十六日
    辞任         補欠選任
     寺田 熊雄君     小山 一平君
     安武 洋子君     宮本 顕治君
 七月二十七日
    辞任         補欠選任
     佐藤栄佐久君     藤田 正明君
     志村 哲良君     園田 清充君
     松岡満寿男君     安井  謙君
 八月一日
    辞任         補欠選任
     小山 一平君     寺田 熊雄君
     宮本 顕治君     安武 洋子君
 八月二日
    辞任         補欠選任
     園田 清充君     水谷  力君
     藤田 正明君     佐藤栄佐久君
     安井  謙君     竹山  裕君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         大川 清幸君
    理 事
                前田 勲男君
                山田  譲君
                飯田 忠雄君
    委 員
                海江田鶴造君
                佐藤栄佐久君
                竹山  裕君
                土屋 義彦君
                徳永 正利君
                名尾 良孝君
                水谷  力君
                寺田 熊雄君
                安武 洋子君
                柳澤 錬造君
                中山 千夏君
   国務大臣
       法 務 大 臣  住  栄作君
   政府委員
       内閣法制局長官  茂串  俊君
       内閣法制局第一
       部長       前田 正道君
       法務大臣官房長  根岸 重治君
       法務省民事局長  枇杷田泰助君
       法務省刑事局長  筧  榮一君
       法務省矯正局長  石山  陽君
       法務省保護局長  吉田 淳一君
       法務省訟務局長  藤井 俊彦君
       法務省入国管理
       局長       田中 常雄君
       自治省行政局選
       挙部長      小笠原臣也君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局総務局長   山口  繁君
       最高裁判所事務
       総局刑事局長   小野 幹雄君
       最高裁判所事務
       総局家庭局長   猪瀬愼一郎君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        奥村 俊光君
   説明員
       人事院事務総局
       給与局給与第三
       課長       三上 元章君
       人事院事務総局
       職員局職員課長  北村  勇君
       警察庁刑事局刑
       事企画課長    三上 和幸君
       警察庁警備局外
       事課長      赤木 孝志君
       通商産業省産業
       政策局消費経済
       課長       糟谷  晃君
       通商産業省機械
       情報産業局産業
       機械課長     田辺 俊彦君
       自治省行政局選
       挙部選挙課長   浅野大三郎君
       自治省行政局選
       挙部政治資金課
       長        山崎宏一郎君
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  本日の会議に付した案件
○検察及び裁判の運営等に関する調査
 (公職選挙法と違憲判決に関する件)
 (登記所における常直制度に関する件)
 (再審に伴う裁判のあり方に関する件)
 (憲法と罰則規定の関係に関する件)
 (二重国籍者の取扱いに関する件)
 (消費者保護対策に関する件)
 (政治献金に関する件)
 (簡易裁判所の再配置に関する件)
 (難民問題に関する件)
 (少年犯罪とその防止対策に関する件)
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○委員長(大川清幸君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 去る七月二十七日、佐藤栄佐久君、志村哲良君及び松岡満寿男君が委員を辞任され、その補欠として藤田正明君、園田清充君及び安井謙君が選任されました。
 また、本日、園田清充君、藤田正明君及び安井謙君が委員を辞任され、その補欠として水谷力君、佐藤栄佐久君及び竹山裕君が選任されました。
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○委員長(大川清幸君) 次に、検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
○徳永正利君 私は、きょう質問に立ちますのは、国会も終末になりまして、選挙法の改正、定数是正の問題が提案の運びになるということを待っておったわけでございますが、いろいろなことがあるようでございまして、その段階に至らない。しかし、それまでの様子をずっと私は新聞あるいは報道その他で見ておりますと、何か最高裁の判決が出るぞと、それを中心に物を考えていろいろと議論がされているような感じがしてならないのであります。そこで、私はきょうはそういう観点も踏まえてひとつ関係の皆様方に御答弁をいただき、質疑の中で私の考えも明らかにしたいと思っております。
 御承知のように、議員定数の配分を問題とする訴訟が選挙のたびに出てきているわけでございます。去年は御承知のように相次いで最高裁の大法廷の判決がありました。これに対して国会は、先ほど申し上げましたように定数是正を重要な課題として作業をしておるようでございます。きょうは自治大臣がお見えになりませんが、自治大臣もいろいろ努力しているようでございますし、また法務大臣も、係属中の訴訟で事によると違憲判決が出るんじゃないかということをあなたは六月十九日の記者会見でおっしゃっている。
 その内容はいろいろ新聞の報道するところによりますと大同小異でございますけれども、去年の衆議院選挙の問題について東京高裁の判決は今年
秋ごろになるだろう、判決内容について法務事務当局は一歩進んで今度は違憲と決めつけられてくることと判断しておる、また判決はいわゆる選挙結果そのものは有効とする事情判決になるのではないかということを法務大臣はつけ加えて言っておられるのでございます。いろいろな考えはあると思いますけれども、私は、法務大臣は記者会見でどういう背景の上に立って述べられたのか、さらにまた昨年の衆議院の定数是正問題に対する五十八年判決をどのように受けとめておられるか、お聞きしたいと思います。
○国務大臣(住栄作君) 昨年の十二月に衆議院選挙が行われたわけでございますが、この選挙に対し、二十二の選挙区においていわゆる定数是正の訴えが提起されております。今も御指摘のように、法務省としては国の利害に関する訴訟を預かる立場にございます。この訴えを受けて、選挙管理委員会の代理人としての立場で法廷に出ておるわけでございますが、ちょうどあの六月十九日ごろ、口頭弁論の最終日の予定も入っておりましたので、そういう事情、それから高裁における決審の見通し等につきまして官房長官に、非常に重大な問題でございますので、そういう立場で御報告を申し上げました。そしてその後の記者会見におきまして、そういう選挙の訴訟の進行状況ないしは昨年十一月の最高裁判決等をも踏まえて、今度の選挙訴訟も大変厳しいものがあると、こういうことを付言いたしました。私の立場としてこの訴訟の代理人という立場にございますので、そういう立場で私は申し上げたつもりでございます。
○徳永正利君 あなたは法務大臣でありながら選挙結果そのものは有効とする事情判決になるだろうという判決の予想までしていらっしゃる。私は今度出る判決は事情判決があるいは無効判決がどちらかだと思うんです。しかし、どういうお考えから事情判決が出るだろうというような予想を立てて、しかも記者会見でおっしゃったのか。このことは、これをやり出すと切りがございませんから、よく言葉は慎んでいただきたいと思います。
 そこで、法制局長官に、まず五十一年の最高裁の判決、それと五十八年の判決の重要な二、三相違点があると私は思うのです。五十八年の判決を政府、国会としてどういうふうに受けとめるべきであるかということをひとつお伺いしたいと思います。
○政府委員(茂串俊君) ただいま御質問のございました最高裁の昭和五十一年四月の判決と昭和五十八年十一月の判決の重要な相違点を申し上げますと、前者は訴訟の対象となった昭和四十七年十二月当時の定数配分規定を違憲であると断定したのに対しまして、昭和五十八年のいわゆる後者の判決は、昭和五十五年六月の選挙当時の定数配分規定について、当該選挙当時は憲法上是正が要求される合理的期間内にあったことを理由といたしまして、当該規定は違憲でないとした点が一番基本的に違う点でございます。また、判決の対象となった定数配分規定について言いますと、前者の判決の場合には昭和五十年改正前の規定であって、既に法改正が行われた、いわゆる手当済みであったわけでございますが、それに対しまして昭和五十八年の判決、後者の判決の場合には昭和五十年改正の現行規定でありまして、判決のときまでに法改正が行われていないという点がその相違点であろうかと思います。
 なお、昭和五十八牛の最高裁判決につきましては厳粛に受けとめておるわけでございまして、現行の定数配分規定について、この判決自体が「できる限り速やかに改正されることが強く望まれる」としております以上、早急に定数配分規定の改正が行われるべきものであると考えております。
○徳永正利君 私は最高裁の判決を尊重するにやぶさかではございません。ただしかし、やみくもに尊重するということじゃなくて、国会は憲法に定められた国権の最高機関としてのやはり自覚の上に立って、国会としてその論理を納得した上で私は尊重し、これに対処していかなければならないだろうと思います。政府としてもこの点は同感だろうと思いますけれども、ひとつ法務大臣、どうお考えかちょっとお考えをお聞かせいただきたいと思います。
○国務大臣(住栄作君) もちろん私の立場といたしましても最高裁の判決、これは厳粛に受けとめなければならない、そういう立場にございます。それと同時に、先ほども申し上げましたように、国の利害に関する争訟を預かる立場といたしまして、私どもは、高裁においてもあるいは最高裁においても、その選挙について理論的には主張すべきものは主張して、その上での判決でございますけれども、私ども、さらにその根拠につきましては訟務局長の方から説明させますけれども、そういう立場に立ってこの争訟に臨んでおる、こういうことについても御理解いただきたいと思うわけでござ。います。
○徳永正利君 私としては昭和五十一年と去年の最高裁の判決について理論的にまだどうも納得のいかぬ点が多々あるわけでございます。これらの判決を中心に政府の見解をただしながら、お考えをお聞きしながら、まあただすと言っては大変恐縮でございますが、政府のお考えもお聞きして、専門家のお考えもお聞きして、法律には私は大変暗い、幼稚なもので、ひとつ素朴な意見を述べて、その上に立って、質疑を通じて国会としての対処を、どうあるべきかを考えてみたいと思うのでございます。
 私は、一番前段に申し上げましたように、最高裁がこう言っているからこれは大変だということじゃなくて、一体この問題は本質はどこにあるのか、最高裁が言おうが言うまいが、どこにあるのかということをみんなが一遍真剣につかんで、国会は国会としての対処の覚悟、責任を私は果たしていかなければならぬ、このことが実は言いたいわけでございまして、この点について二、三御質問を申し上げたいと思います。
 定数配分規定を問題とする訴訟で、公職選挙法二百四条に基づく選挙無効訴訟として実は提起されておるわけでございます。これはもう今までも議論が繰り返され、学界でもいろいろな方々の意見もありするわけでございますが、選挙法の規定の違憲を理由とすることは全然予想してなかったと私は思うんです。民衆訴訟は明文の規定であって、規定にあるところの「場合に限り、」ということに、ちゃんとそういうふうに書いてある。これを認めることは法律に矛盾しておるし、現行法体系を崩すものじゃないかと思うわけでございますが、この点は法務大臣と、法制局長官の御意見を後でお伺いしたいと思います。
○政府委員(藤井俊彦君) ただいま御指摘のありました公職選挙法二百四条の問題は、昭和五十一年の大法廷判決の訴訟、それから昨年の昭和五十八年の最高裁の大法廷判決のありました訴訟におきましても最も重要な争点となったところでございます。
 この点につきまして、選挙管理委員会の代理人といたしまして私どもは次のように主張しているのであります。
 民衆訴訟がいわゆる法律上の争訟の場合に該当せず、法律をもって特に裁判所の権限に属せしめた訴訟であることは裁判所法三条一項、行政事件訴訟法五条、四十二条の各規定によって明らかであります。選挙訴訟が民衆訴訟に属することは行政事件訴訟法五条で明定されているところでありますから、選挙の効力を争う訴訟につきましては、この法律の定める公職選挙法二百四条以下の規定に従い、その規定の範囲内においてのみ訴えの提起が認められ、右範囲外の事項につきましては訴訟で争うことが禁じられていると言うべきであります。
 そして公職選挙法二百五条、百九条、三十四条、二百十九条等の規定にかんがみますならば、選挙無効訴訟は、当該選挙を管理執行する選挙管理委員会が法規に適合しない行為をした場合、その是正のため当該選挙の効力を失わせ、改めて再選挙を義務づけるところにその本旨があるのでありまして、この訴訟で争い得る事項も、当該選挙区の選挙管理委員会が選挙法規を正当に適用する
ことによりその違法を是正し、適法な再選挙を行い得るものに限られるのであります。したがいまして、選挙管理委員会においてこれを是正し、適法な再選挙を実施することができないような議員定数配分規定自体の違憲を主張して選挙の効力を争う訴えのごときものは許されないものと解さざるを得ないのであります。
 選挙法規の違憲無効を主張して選挙の効力を争う訴訟は、公職選挙法二百四条の定める訴訟の立法趣旨を逸脱するものでありまして、法律が新たにこれを認める特別の争訟制度を採用しない限り、これを不適法な訴えとして却下すべきものである、こういうふうに主張したのであります。この主張に対しましては、最高裁判所におかれましては、ごく少数の同旨の御意見が示されましたのにとどまりまして、多数の意見とはならなかったのでございます。
 去年十一月に最高裁の判決がございましてから、先ほどから出ておりますように、十二月十八日、衆議院の総選挙がございました。その後、先ほど大臣が申されましたように数多くのいわゆる定数訴訟が提起されております。この訴訟におきましてこの主張を我々は維持すべきかどうか随分検討いたしました。そしてその結果、維持すべきであるということで、現在それぞれこの訴訟においてもただいま申し上げました主張を維持して主張し続けているところでございます。
 以上でございます。
○政府委員(茂串俊君) ただいま訟務局のお立場からする御意見がございましたが、御指摘の訴訟につきましては既に昭和三十九年の大法廷判決、これは参議院議員の定数配分にかかわるものでございますが、この判決以降幾たびかの最高裁判決におきましてお尋ねのような訴訟が公選法二百四条の規定に基づいて認められるということが既に定着しているわけでございます。
 この点につきまして昭和五十一年の最高裁判決は詳細にその理由を述べておるわけでございますが、その要点を申し述べますと、「およそ国民の基本的権利を侵害する国権行為に対しては、できるだけその是正、救済の途が開かれるべきであるという憲法上の要請に照らしてお考えるときは、前記公選法の規定」、これはすなわち公選法二百四条の規定でございますが、この規定が「定める訴訟において、同法の議員定数配分規定が選挙権の平等に違反することを選挙無効の原因として主張することを殊更に排除する趣旨であるとすることは、決して当を得た解釈ということはできない。」というようなことを述べておるわけでございまして、その意味におきまして、最高裁のこの確立した取り扱いにつきまして私どもの立場から批判がましいことを申し上げるわけにいきませんので、御了承を願いたいと思います。
○徳永正利君 きょうは相手が法務大臣と法制局長官でございまして、どうもなかなかやりにくいわけでございます。答えも答えにくいだろうと思うわけでございますが、そしはそれとしまして、今長官がお読み上げいただいた、また法務省が最初前段に述べられたことは、今度の訴訟においても同じことを維持していくということには私は敬意を表するものでございます。
 私がこれを今読みながら、どうも判決文というのはわかりにくくて、もう少し我々素人にわかるように書いてくれればいいんですけれども、ひっくり返してみてもなかなか読みにくいというようなことでございます。私は私なりに、いろいろ最高裁は言ってするわけなんです。要するに投票価値の不平等が基本的人権の侵害であるという限りにおいては、公職選挙法が憲法を理由として選挙の効力を争う訴訟を認めてないのは一つは法の欠陥じゃないかという考えがあるんじゃないかと思うんです。選挙の効力を争うには二百四条しかないじゃないか、こういうのが大体俗に言う結論じゃないかと私は思うのでございます。このような見解から無理やりにあかぬ扉をこじあけて踏み込んできたように思えてならないのです。
 ところが、公職選挙法の立案者は、公職選挙法の実体規定の効力を争う訴えを許してしまうと判決いかんによっては国会の機能喪失という重大な事件に陥ることをちゃんとやっぱり念頭に置いておったと思うんです。だから、これは欠陥ではなくて深遠な配慮だった、そこが出発点において私は違うところでございます。公選法は国会機能の基本法でありまして、憲法の委任による国会の立法的裁量権に属するものであり、統治行為の作用であるとすら言う人も中にはおる。これを尊重すべきは当然であり、あえて言うならば私はその配慮は政治的パニックを防ぐ防壁だというふうに考えるわけでございますが、この点について法務大臣、法制局長官の御意見を伺いたいと思います。
○政府委員(藤井俊彦君) 今の御指摘の点につきまして、公選法に規定がないのはそれなりに深い意味があるのではないかという御指摘でございます。その点も私どもといたしましては昭和五十八年、去年の十一月判決のありました訴訟におきまして今御指摘のような主張を展開しているところであります。少し詳しく申し上げます。
 議会主義を採用する現憲法のもとにおいては、その議会構成因子たる議員定数、選挙区、選挙区別定数を含む選挙制度の基本問題は、国家統治機構に関する高度の政治問題として常に政党並びに国民の真摯な関心事であり、議員定数配分問題も、これまた高度な政治問題として、歴史的、社会的事情等を踏まえ、時代に適応するよう政治ないし立法の分野で解決さるべき性質の問題でありまして、他の国家機関がみだりにこれに介入すべき筋合いのものではないのであります。
 憲法四十三条二項は「両議院の議院の定数は、法律でこれを定める。」と規定し、同四十七条は「選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。」と規定しており、これに徹すれば、選挙制度に関する事項は同四十四条ただし書きに言う「人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入」によって差別しない限りにおいて立法府において自由にこれを決し得るものとしているわけでありまして、選挙制度が高度の政治問題に属することを憲法自体が明らかにしているものと言わなければならないのであります。したがいまして、立法府は選挙区別定数の決定につき、人口数、歴史的沿革、行政区画別議員数の振り合い等の諸般の事情を勘案し、その自由な意思によりこれを決し得るものであります。
 公職選挙法は定数是正措置に関する規定を欠いておりますけれども、この規定を欠いているのは単なる制度上、立法上の欠陥などとは解し得ず、かかる問題は政治の分野で解決すべしとの観点により、むしろその規定を置かなかったものと解するのが正しい解釈論と言わなければならない、こういう主張をいたしておったわけであります。現在もしているわけでございます。ただ、残念ながら先ほど申しましたように最高裁判所におきましてこの主張も多数説とはなり得なかったのであります。
○政府委員(茂串俊君) ただいま法務御当局の立場からする見解が述べられたわけでございますが、私どもといたしましては、最高裁判所の確立した取り扱いがあります場合には、それについて批判がましいことを述べる立場にないことを御了承いただきたいと思うのでございますが、いずれにしましても最高裁判所は国会議員の議員定数配分規定の効力を争う訴訟につきまして、先ほど申し上げましたようにたびたび判決を下しておるわけでございますが、どの判決におきましてもいわゆる統治行為の理論を用いておりませんで、この自由権につきまして統治行為の理論によらないということは既に最高裁判所の確立した取り扱いとなっているというふうに考えております。
○徳永正利君 五十一年の判決はいわゆる事情判決を採用しております。下級審もこれに大体倣って、まあ倣わぬところもありますけれども、大体倣っておるところが多いようでございます。しかしながら公選法は明らかに選挙無効訴訟への行政事件訴訟法三十一条は「準用せず、」と規定している。事情判決の法理という法の一般原則であるとしておりますけれども、論拠がどうも不十分であ
ります。やはり現在の訴訟理論を逸脱するものではないだろうかというふうに考えますが、御意見を伺いたいと思います。
○政府委員(藤井俊彦君) 御指摘のように、公職選挙法は二百十九条におきまして行政事件訴訟法三十一条は準用しないというふうにしておるわけでございます。したがいまして、公職選挙法の法規が我々選挙管理委員会の代理人としての立場から見まして、この法規がそのとおり当初の、まあ当初と申しますか、我々の考えているような形で解釈運用されますならばそういうことになるわけであります。しかしながら、この二百四条が、配分規定が違憲であるという点につきましていわゆる定数違憲訴訟で適用になるということになりますと、それではそのまま違憲という判決をしてしまっていいものかどうか、これは法と裁判の本質にかかわる問題でございまして、違憲の状態を救済する必要性と、それからそれに伴って生ずるであろう憲法上の混乱、政治上の問題、そういうことを比較考量せざるを得ないのであろうというふうに考えるわけであります。
 この点に関します私どもの従来主張しておりました内容は次のとおりであります。
 原審の判決が本件訴えをもって公職選挙法二百四条の規定する訴訟として適法であるとしたことは、先ほど申しておりますように不服であります。しかし、仮に百歩譲って、公職選挙法二百四条の規定する訴訟としてこれが適法なものとされ、かつ議員定数配分規定が違憲であるとされるならば、その場合に選挙無効の判決をすると国政の混乱を来し、憲法の所期するところに反する結果となるのでありますから、このような場合に事情判決の法理を適用して選挙無効宣言を回避することは、それなりに理由のあるところであります。このように私どもは考えて、従来訴訟で主張してきたところであります。
○政府委員(茂串俊君) 私どもといたしましては最高裁判決の判示するところに従ってお答えをするほかないわけでございますが、いわゆる事情判決につきましては、昭和五十一年判決におきまして行政事件訴訟法三十一条につきまして、「この規定は法政策的考慮に基づいて定められたものではあるが、しかしそこには、行政処分の取消の場合に限られない一般的な法の基本原則に基づくものとして理解すべき要素も含まれていると考えられるのである。」というふうに述べますとともに、事情判決の主たる理由といたしまして、「本件選挙が憲法に違反する議員定数配分規定に基づいて行われたものであることは上記のとおりであるが、そのことを理由としてこれを無効とする判決をしても、これによって直ちに違憲状態が是正されるわけではなく、かえって憲法の所期するところに必ずしも適合しない結果を生ずる」ことになる等の事情を挙げておるわけでございます。
○徳永正利君 法律というものは重宝なもので、いかようにも解釈の方法があるようでございまして、私ども素人にはなかなか納得しかねるものがございます。したがって、このような無理な論理を引っ張り出して使わなければならなかった基本的な理由は定数配分規定の違憲を問題とする訴訟を明文に配して認めることにあったと思うわけです。法律がこれを認めていないのはこの問題が前にも申しましたように政治の基本に触れるからであり、それなりの理由があったと思うのであります。
 そこで、私は次に投票価値の不平等と定数配分問題についてお尋ねしたいと思いますが、裁判所は投票価値の不平等の判断基準として選挙区の議員一人当たり人口の最大と最小を比較してこの格差を計算しているわけでございます。小選挙区では確かに私はこの格差というものは意味を持つと思います。しかし中選挙区制となるとどうも同意するわけにはいかない。外国、例えばアメリカとかドイツなどの考えをそのまま輸入してきて基準としたのでは私は適切じゃないじゃないかと思うのでございます。これは法務省というよりも法制局長官、どういうふうにお考えか、私の考えに対して御所見を承りたいと思います。
○政府委員(茂串俊君) 中選挙区制のあり方等につきまして御所見がございましたが、この点につきましても確かに中選挙区制の利点等につきまして、昭和五十一年の最高裁の判決で触れるところもあるわけでございますが、いずれにせよ、この五十一年判決を通じて見ますると、最高裁の判決は定数配分規定の合憲性の判断基準についてただ人口の比較だけを唯一の基準としておるわけではないわけでございまして、「衆議院議員の選挙における選挙区割と議員定数の配分の決定には、極めて多種多様で、複雑微妙な政策的及び技術的考慮要素が含まれており、それらの諸要素のそれぞれをどの程度考慮し、これを具体的決定にどこまで反映させることができるかについては、もとより厳密に一定された客観的基準が存在するわけのものではないから、結局は、国会の具体的に決定したところがその裁量権の合理的な行使として是認されるかどうかによって決するほかはなく、」というふうに述べておるわけでございまして、最高裁の判例におきましても、人口の比較だけが唯一の基準ではないということをはっきりと判示しておるわけでございまして、その他のいろいろな要素を勘案した上で合理的な範囲内で国会が具体的にお決めになるべきであるということを判示されておるのであります。
 なお、この点につきまして法制局の意見はどうかという御質問でございますが、それにつきましては、この最高裁の判決の評価にわたる点もございますので、この席では差し控えさしていただきたいと思います。
○徳永正利君 確かにおっしゃるとおりのことを言っているわけでございますが、しかし人口の最大最小を比較して格差としておる、判断基準としておることには私は間違いないと思うんです。定数配分は一定の客観的な基準がないといって、今おっしゃったように判示しているわけなんです。しかも合理的限界を超えるというような判断もしている。これは論理の矛盾が私はここに出てきていると思うんです。投票価値の不平等がある程度を超えれば違憲となるということを言っている。司法の分野というのは、平等か不平等かを争っているのに、どっちだということを尋ねておるのに、シロとクロどっちとも言えぬけれどもというような、灰色なんていうようなものは私は司法の分野ではあってはいかぬと思うんです。これはシロか、これはクロか、どちらでございましょう、どっちかということを争う場合に、シロでもクロでもないがまあ灰色だというようなことは私は司法の分野ではあり得ないと思います。違法適法の分かれる限界点を理論的に根拠を明確にして、違憲合憲を言うべきだと私は思う。その点について法務大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
○政府委員(藤井俊彦君) ただいま委員の御指摘の点も、選挙管理委員会の代理人といたしまして、従来の訴訟でるる主張をしているところであります。
 これも少し長くなりますけれども、恐れ入りますが、衆議院議員の選挙における選挙区割りと議員定数の配分の決定には、極めて多種多様で複雑困難な政策的及び技術的考慮要素が含まれており、それらの諸要素のそれぞれをどの程度考慮し、これを具体的決定にどこまで反映させるかは国会の極めて高度な政治的裁量にゆだねられているのであります。三権分立を基本原則といたします現憲法下において、政治問題とされた事項につき司法権が介入し得る場合は、少なくともその司法的決定に必要な明確な基準が存在する場合に限られ、名以外の場合は司法判断不適合として司法審査を抑制しなければならないものであります。
 ある選挙区の議員一人当たりの人口を他の選挙区のそれと比較した場合において、その格差がいかなる数値を超えれば選挙権に極端な不平等を生ぜしめたと言えるかは、もともと人口差以外の諸要素も総合勘案の上、決せられなければならない問題であります。それにもかかわらず人口数のみを根拠とすれば、その格差が数値をもって示されるものである以上、あいまいな不明確な基準は許されないのでありまして、一たんその数値をたと
えわずかでも超えれば、これを違法としなければならない厳密性を求められるべきものであります。いかなる数値をもってその基準とするかは、しかしながらにわかに定めがたいのであり、さらにその上、前記人口以外の諸要素を考慮した場合、司法がこれを定めることはおよそ不可能と言わなけれぱならないのであります。
 選挙区別定数の是非につきましては、これを決定するに必要な明確な基準がないのでありますから、司法は立法を尊重し、その判断を抑制しなければならないものであるという主張を提出してきておるわけであります。
○徳永正利君 議員定数配分は、先ほど法制局長官も解説といいますか、ございましたように、単に人口比例のみによるべきではなくて、従来の定数の沿革とか選挙区の大小、行政区画の歴史的な沿革その他諸要素を総合的に考慮してなさるべきものであると思います。最高裁もそういうふうに判示しているんです。ところが、最高裁の言うとおりだとするならば、私も最高裁が諸要素を総合してやれということには全く同感なんです。思うんですが、総合的な考慮は一体どうなされるべきであるか、最高裁はこれを示すことはできぬと思うんです。だから裁量権というような言葉に逃げられるわけでございますが、私は最高裁判所がこれを示すことはできないと思います。
 したがって、定数配分問題は司法は具体的な判断を下す資料を持ち合わせていない、また最高裁の認めるとおり総合的な考慮を必要とし、その要素としてもすぐれてこの問題には政治的な事項が多い問題だと思います。結局は司法の判断にはなじまないものだというふうに私は考えるのでございますが、法制局長官どうでございましょう。私の考えは間違っているでしょうか。
○政府委員(茂串俊君) 先生の御質問、いずれも大変な難問でございまして御答弁しにくいのでございますが、いずれにせよ最高裁判所は国会議員の議員定数配分規定の効力を争う訴訟につきまして、どういう資料に基づいて判断をしたかということは私つまびらかにしておりませんけれども、いずれにしましても当局としましては最高裁判所がこのような判断をするのになじまないといったようなことを述べる立場にないということを御了察願いたいと思います。
○徳永正利君 大変よくわかりましたが、それじゃ、法務省の御見解をちょっと伺いたいと思います。
○政府委員(藤井俊彦君) 私どもといたしましても最高裁の裁判がいいか悪いかということをこの席で論評する筋合いではないわけでございますけれども、先ほどから申し述べておりますように、訴訟の代理人といたしましては従来このような事項は司法判断になじまない、いわゆる投票価値の平等というのは政治努力目標であって、それが憲法の要求するものであるとは言えないという主張を提出して訴訟に対処しているところであります。
○徳永正利君 それはなかなか法制局長官もお答えしにくいようでございますから、そこで置いておきましょう。
 今度は配分規定の違憲と無効の問題でございます。五十一年の判決は配分規定を違憲としたが、選挙の効力は維持した。訴訟は具体的な事件の解決をするものであって、かつ違憲判決の個別的効力説に従ってまいりますと、無効であっても対象選挙区の選挙のみ無効となるわけでございますから、配分規定全体を違憲と判断しても事情判決というのは必要ないんじゃないかというふうにも考えられるわけでございますが、これはいかがなものでしょうか。
○政府委員(藤井俊彦君) 現在、昨年十二月十八日の総選挙につきまして提起されております無効訴訟は、当初先ほど大臣が申し上げましたように、二十四件、二十二選挙区、その選挙区の議員数は八十四名であります。現在はその後一人死亡されまして、二十三件、二十一選挙区、当該選挙区の議員数は八十名となっておるわけであります。
 私は、八十人の衆議院議員が国会議員の資格を無効判決によって失効されれば、ゆゆしき問題であると思います。仮に千歩万歩を譲りまして、八十人が欠けても衆議院は成立し得るのだというふうに考えるといたしましても、昨年十二月十八日の総選挙ではたまたま二十四件の訴訟、二十二選挙区についての無効訴訟が出たにとどまるわけでございますけれども、将来総選挙があった場合に、この無効判決を目指しまして、全国あらゆる選挙区で無効訴訟が出た場合にはどうなるかということを考えますと、今委員御指摘のようなことで、一部の選挙区が無効になるだけではないかということは言えないのではないか、最高裁判所の指摘されておるのもそういう意味であるというふうに理解いたしております。
○政府委員(茂串俊君) 先ほどから申し上げておりますように、私どもの立場からしますと最高裁の判示するところによって御答弁するほかないわけでございますが、御指摘の点につきましては、昭和五十一年判決は「仮に一部の選挙区の選挙のみが無効とされるにとどまった場合でも、もともと同じ憲法違反の瑕疵を有する選挙について、そのあるものは無効とされ、他のものはそのまま有効として残り、しかも、右公選法の改正を含むその後の衆議院の活動が、選挙を無効とされた選挙区からの選出議員を得ることができないままの異常な状態の下で、行われざるをえないこととなるのであって、このような結果は、憲法上決して望ましい姿ではなく、また、その所期するところでもない」と述べた上で、行政事件訴訟法第三十一条について検討を加えました上で、「本件選挙は憲法に違反する議員定数配分規定に基づいて行われた点において違法である旨を判示するにとどめ、選挙自体はこれを無効としないこととするのが、相当」であるというふうに判示をしておるわけでございます。
○徳永正利君 訟務局長の言われたことは、ちょっと私は勘違いしているのかもわかりませんが、今度の今係属中のこの無効訴訟にしましても、千葉一区が、埼玉一区ですか、大変な格差がある、こういうことは違憲じゃないかと、神奈川県の人が。おれのところも現にそれほどの大きな差はないけれども、このくらいの格差を持っているということを言っているわけなんですね。そうしますと、この訴えというのは、三・六四ですか、一番大きな引っ張り出したそこを争っているんじゃなくて、自分のところの選挙区も争って、その数が八十になる、こういうことなんですか。
○政府委員(藤井俊彦君) 先ほど申しました現在係属しております二十三件の無効訴訟の主張の内容は全く同じというわけではございません。若干事件によって異なる主張を述べているのもございますけれども、ほとんどと言っていいくらい共通している主張の内容は、昭和五十八年十二月十八日の選挙で最大格差は四・四一であった、そうであるならば、この定数配分規定が違憲であるから、この違憲の配分規定に従ってなされた選挙は無効であった、したがいまして一番格差の少ないところを見てみますと、訴訟を起こしているところで二・四三というところもあるわけでございます。これは東京三区がたしか二・四三だと思いますけれども、この二・四三と申しますと、最高裁判所が言っておられます二・九二になった場合には違憲状態は解消されたのだということになりますと、この二・四三という選挙区だけを見ますと何か問題がないようにも見えますけれども、そうではございませんので、去年の十二月十八日に行われた選挙の基礎になっている公職選挙法の配分規定が違憲であるから、我が選挙区は二・四三であっても憲法違反として無効になる、そういう御主張をなすっているわけであります。おわかりいただけましたでしょうか。
○徳永正利君 この点ちょっと私勘違いがございましたが、今の御説明でわかりました。
 いつでしたか、ことしの四月四日の衆議院の法務委員会で、社会党の稲葉誠一君がいわゆる可分、不可分説について法制局の見解をただしているわけなんです。それに対して内閣法制局前田第
一部長がいわゆる不可分説をとっている。もう一遍長官から可分、不可分についての明快なお示しをひとつお聞きしたいと思います。
○政府委員(茂串俊君) ただいま御指摘のございました当局の前田一部長の答弁についてでございますが、いろいろ稲葉委員とのやりとりのニュアンスの問題はあろうかと思いますけれども、第一部長はあくまでも昭和五十一年の最高裁判決の内容に即してその内容を御説明するという形で御答弁を申し上げておるわけでございまして、したがいまして、先ほども申しましたように、五十一年判決では、多数説ではいわゆる不可分説をとっております。その点を前田一部長は御紹介と申しますか答弁として申し上げたわけでございまして、このような最高裁の判決に従うべきであるということは私どもの立場は従来から言っておりますように当然だと心得ておりまして、前田一部長もそういう意味で答弁を申し上げているはずでございます。
○徳永正利君 やっぱり長官ともなると答弁もなかなか慎重になってくると思います。
 そこで、私は、その最高裁が言っている違憲であっても無効ではないということですね。違憲であるけれども無効ではない、憲法に違反している公選法で選挙をやったけれども、しかし無効ではない。どうもこういう結論というものは、こういう論理というものは、憲法九十八条からしても、それから国民の法感情からしても大変私はおかしいと思うんです。憲法に違反している選挙法で選挙しても結果は無効ではない、これよくわからないんです。判決は結果的には一般的憲法判断を実は行っているわけでございます。違憲立法審査権を一般的に行使したのと全く同じじゃないですか。同じじゃなかろうかと思うのであります。いずれもどうも日本のいわゆる法体系になじまない筋書きのように考えられて仕方がないわけでございますが、これは訟務局長からひとつ、後でまた長官もこれについてちょっと御所見を承りたいと思います。
○政府委員(藤井俊彦君) 今のお尋ねの点につきましては、先ほども事情判決の点でお答えいたしましたとおり、公職選挙法の二百四条が適用可能である、適用できるという前提といいますか、その解釈をとりますならば、その二百四条によった訴訟におきまして違憲だからすべて無効としてしまうべきか、違憲ではあるけれども、なお同じように違憲であるというのが憲法上の要請であるならば、それと並び立つような、同列するような憲法上の要請、政治の安定とか混乱を避けるとか、そういう要請も考慮すべきではないか、その点の両者の比較権衡を図るというのも、またこれ法の解釈に当たりましてはとるべき基本的な姿勢でございまして、御指摘のようにまで解さなくてもよろしかろうかと思っております。
○政府委員(茂串俊君) 憲法九十八条の関係の御質問でございますが、この点につきましては昭和五十一年判決がかなり詳細にそれについての意見を申し述べておるわけでございまして、その主要な点を申し上げますと、憲法九十八条一項の趣旨を述べた上で、「憲法に違反する法律は、原則としては当初から無効であり、また、これに基づいてされた行為の効力も否定されるべきものであるが、しかし、これは、このように解することが、通常は憲法に違反する結果を防止し、又はこれを是正するために最も適切であることによるのであって、右のような解釈によることが、必ずしも憲法違反の結果の防止又は是正に特に資するところがなく、かえって憲法上その他の関係において極めて不当な結果を生ずる場合には、むしろ右の解釈を貫くことがかえって憲法の所期するところに反することとなるのであり、このような場合には、おのずから別個の、総合的な視野に立つ合理的な解釈を施さざるをえないのである。」と判示しているわけでございまして、このような判示を御紹介することによって御答弁にかえさしていただきたいと思います。
○徳永正利君 私は、憲法九十八条をそのまままともに読んでみますと、どうもいろいろな持っていき方があるようでございますけれども、「この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」というふうに明確に書いてあるもので、私はそういう疑問が起きるわけでございます。
 そこで、去年の衆議院についての判決ではまだその猶予期間内にあるから違憲ではないという結論のようであります。最高裁の考え方からすれば、今日の段階、現段階では既に猶予期間は過ぎたというふうに考えるべきか、あるいはまだ猶予期間にあるというふうに考えたらいいものだろうかどうだろうかということがこれ一つです。そこで定数配分規定が改正されないまま選挙を行うことになった場合には、一体前段を踏まえてどういうふうに考えるべきであろうかということでございます。ひとつこれは法制局長官からお答えをいただきたいと思います。
○政府委員(茂串俊君) ただいま御指摘の点につきましては、昨年十一月の最高裁の判決に言う合理的期間がいつまでであるかということにつきましては、この判決自身明示しておりませんから、現時点がその合理的期間内にあるかどうかということにつきまして断定的な意見を申し上げることはできないわけでございますが、現行の定数配分規定が昭和五十年の法改正後既に九年たっております。また昭和五十五年の選挙当時からしますと四年を経過しております。こういう点からいたしまして、仮に現時点が合理的期間内にあるといたしましても、今後それほど長い猶予期間があるものとは考えられないということは明らかでございまして、いずれにしても早急な法改正が行われるべきであるというふうに考えておる次第でございます。
 それから、仮に合理的期間についていつまでであるかということが明示されていないとして、その法改正がされない限りにおいては定数配分規定が違憲となるかどうかについては明確に言うことができないわけでございますが、いずれにしましても、お尋ねの選挙が合憲であるかどうかの点につきましては訴訟が提起された場合に裁判所が判断する問題でございまして、ただいまの段階で私行政府に属する者としてお答えするのはいかがかというふうに考えております。
○徳永正利君 これは多分に政治的な問題も絡むわけでございまして、法務大臣は記者会見ではこういうことは頭に入れて、もう猶予期間は来たぞ、まごまごしていると、だから次に出る判決は恐らく違憲判決であろうということを言われたと思うんです。法務大臣は一体この猶予期間というのをどういうふうに感じておられますか。どういうふうな腹づもりで事を考えておられるか、それちょっとお聞かせいただきたいと思います。
○国務大臣(住栄作君) それは最高裁がどういうように考えるか、推測の限りではございません。結局議院としては前回の四十七年判決とか五十年の法改正、そういうような事情等も頭に入れながら、やっぱり国会として合理的な判断をすべきじゃないか、いつまでもこれはほうっておくべき問題ではないんじゃなかろうかと、こういうように考えるわけでございます。
○徳永正利君 これに関連する問題でございますけれども、定数配分規定が改正されなくても解散総選挙を行うことは政治的な面にはいろいろ議論もあるでしょう。あると思いますけれども、憲法上は何ら問題はなく可能であるというふうに思いますか。法制局長官どうでございますか。
○政府委員(茂串俊君) 昨年十一月の最高裁の判決が定数配分規定につきまして「できる限り速やかに改正されることが強く望まれる」としております以上、早急に定数配分規定の改正が行われるべきことはあえて言うまでもないところでございます。ただ、昨年十一月の最高裁判決におきましても、定数配分規定改正のためのいわゆる合理的期間の終期は必ずしも明らかになっておらないということは先ほど申し上げたとおりでございまして、法改正前でありましても緊急に民意を問う必要が生じた場合には、純粋の法律論だけから言え
ば衆議院の解散権は憲法上民意を問うための手段として内閣に与えられた重要な権能でございますから、法改正前であることを理由として解散権の行使が否定されるということにはならないというふうに私どもは考えております。
○徳永正利君 よくわかりました。私もそうだと思います。
 さらに、改正されないままに解散がある、または任期満了となった場合に、総選挙はできないという一部の実は意見もあるわけでございます。しかし現行法で選挙を行うよりほかに仕方がないのでございますから、それ以外に道はない。その選挙についても、定数配分規定全体が違憲であるとする判決の解釈に基づいて選挙は無効ではないかと言うことはできないと思いますが、その点を法制局長官のひとつ御見解を承りたいと思います。
○政府委員(茂串俊君) 次の選挙という意味が必ずしも実は私はっきりわからないのでございますけれども、それが衆議院の解散に伴う選挙ということでございましたら、それはただいま御答弁申し上げたとおりでございますし、また仮に任期満了に伴う選挙ということでございましたら任期満了までにまだかなりの期間があるわけでございますから、その間に法改正が行われるものと私どもは確信いたしておる次第でございます。
○徳永正利君 その辺のいわゆる基本的な物の考え方についてはまだ後でいろいろ申し述べたいと思いますが、また仮に判決が当該選挙区の選挙を無効とした場合、いわゆる一部の選挙区の選挙を無効とした場合は三十日以内に再選挙をやらなければならぬわけなんです。実際上改正は間に合わぬと思うんです。現行法でやっぱり再選挙をやらなければならぬ。またその無効を指摘された当該選挙区のみについて再選挙が仮に行われることになると、先ほど法制局長官の話にもございましたように、いわゆる新旧両規定に基づく議員定数が混在して国会の中に出てくる。そうすると、また投票価値の平等の問題が議論になってくるわけだと思うわけでございます。それにしても、判決によらずに解釈によって選挙を無効とすることはやはり同じように私はできないというふうに思いますが、これはひとつ長官どうでございましょうか。
○政府委員(茂串俊君) 仮に判決によって選挙が無効とされた場合に一体どうなるのだろうかという御質問でございますが、その場合に一体再選挙をやるべきかどうかとか、どのような形でやらなければならないかどうかということとか、あるいは定数配分規定の改正手続、それから改正内容等につきましてどのように考えるべきかということは何分にも判決の内容とも密接に関連する問題でございますし、また国会の審議にもかかわる極めて難しい問題でございますので、この席で行政府に属する私として意見を申し述べることは差し控えさしていただきたいと思います。
○徳永正利君 私はいろいろなわかったようなわからぬようなものを持ち回ってここまで来たわけでございますけれども、仮に改正されないまま選挙が行われ、再びまた訴訟が起きる、同じような事態が繰り返されていくのじゃなかろうか、そういった場合に現行制度のもとで何か両者の不一致を解決する方法があるのかないのか、あるとすればどういう点にあるかについて、これは長官でございましょうか、長官の方は余り明確な答弁はしにくいだろうと思いますが、これは堂々回りをやったときに何かやる方法があるのか。それは国会の定数をみずから是正して全部一対一にしておけば問題ないじゃないかということだろうと思いますけれども、そういうそっけない結論でなくて、こういうことでぐるぐる繰り返される、しかも最高裁は明確にどこからは違憲である、どこからは合憲であるというようなことを明示してない、とするならば、これは堂々めぐりをぐるぐる回るような問題が起きてくるんじゃないかと思うわけなんです。これを整合するような、不一致を解決するような手があるのかないのか。ちょっと長官いかがでございましょう。
○政府委員(茂串俊君) これまた大変にむずかしい微妙な問題でございますが、やはり基本的には一日も早く定数が是正されまして、本来の最高裁が所期しているような姿に手当てがされるということが基本でございます。最高裁の昨年十一月の判決におきましても、なるべく早い機会に一日も早く定数是正がなされることを強く要望するというような異例の判示までなされておるわけでございまして、やはり国会の良識におかれまして一日も早く定数の是正が図られることが何よりの解決策ではなかろうかと思います。
 ただ先ほど申しましたように、いろいろな事情でこのようないわゆる事情判決のような形がいつまでも繰り返し行われる事態はどうかということは、もちろんこれは甚だ不自然な形でございますけれども、これにつきましては裁判所が今後判例の積み重ねによりましていろいろとお考えになる点であろうかと思いまして、私の立場では今この席で一体どういう特効薬があるのかと言われましても、にわかにはお答えしがたい点であることを御了承願いたいと思います。
○徳永正利君 私はどう考えてみてもこのように定数配分規定について司法判断にゆだねるということは現行法制上予想していないことだと思うんです。それは法の不備の問題ではなくて、少なくとも定数配分については司法判断になじむものではない、国会がみずから判断して解決すべきものであるという考え方に違いないというふうに私は思っているわけでございます。この点についてはひとつ大臣どういうふうにお考えになるか、お聞かせいただきたいと思います。
○国務大臣(住栄作君) 私の立場からも、大変難しいデリケートな問題ですから、とやかく申し上げにくいことは御理解いただきたいと思うのでございます。いずれにいたしましても選挙権の価値をめぐっての争いでございますし、その平等性が著しく崩れるということにつきましても、これは政治に対する不信を招くということにもなります。そういうことでもございますし、その堂々めぐりのぐるぐる回りの状況を考えてみますと、これは極めておかしくなるのでございますが、判決も言っておりますように、できるだけ早くそういう状態を解消するのが望ましい。と同時に、やはり今徳永先生も御指摘のように法律制度としても争訟の問題についていろいろ疑問のある点があるということについても私は否定できない。そういう意味から、先ほど訟務局長もお答えしておりますように、私どもとしても代理人としていろいろな主張をしておるわけでございますから、定数是正ということばかりでなくて、できるだけ早い機会にそういう制度面についても私は真剣な議論、慎重な議論が必要じゃないか、そういうものを含めて今後訴訟になじむかなじまないか、こういうような問題も起きないように何か考えていかなければならぬのじゃないかなと、こういうようにも思っておるわけでございまして、そういう点の検討も必要じゃないかと考えております。
○徳永正利君 私は定数配分と、いわゆる国会議員、代表ということについて御所見を承りたいと思います。
 定数配分を考えますときに、投票価値の平等を最重要の絶対の基準とするについては政治のあり方の基本にかかわる問題でございます。これが含まれておると思うのでございます。憲法四十三条は国会議員は全国民の代表であることを規定しております。これは第一に議員は等しくすべての国民の代表者であって、特定の選挙区の代表者ではない、第二には議員は選挙区の選挙民の指令に拘束されない、これを意味すると解されております。いわゆる純粋代表であり、これは憲法の前文からも私は読み取れると思うのであります。ところが投票価値の平等を最大の基準とすることは、これが唯一無比じゃなくて、国民の最大の基準とすることは、国民の政治的意思をできる限り忠実に国会に反映させよう、そして代表者と国民との政治的意思の類似を数的にもまた量的にも一致させていこうという思想に結びつくものではないだろうかと思います。
 これを絶対の基準、最大絶対の基準ということ
にするならば、私はもう選挙制度としては比例代表制よりほかにはないだろうと思うんです。さらにこれを突き詰めていきますと、代表者は特定の選挙区などの代表を意味することにもつながらざるを得ない。強制委任を認めることにもなり、国民の厳粛な信託によるいわゆる国政というにふさわしくないものになりかねないのではないかということの一面も持っておると思うのであります。このような事態になれば近代議会制の根幹に触れる問題であり、憲法四十三条にも反することになるのではないだろうかというふうに考えるのであります。
 もちろん国会には国民の多様な意思が反映されることが望ましいことは言をまちません。憲法四十三条の解釈にしても純粋代表に限られるとまでは言い切れないものがあるだろうと思います。自由主義的民主主義から現代の大衆社会における民主主義とでも申しますか、そういう変化も時の流れも考慮に入れなければならないだろうと思います。しかしながら、少なくともどのような方向に行くべきかということを判断するのは、国民の信託を受けた代表者であり、それを構成する国会であるべきであると思うのであります。司法が憲法の解釈としてこれが唯一絶対として判断すべきものではないんじゃなかろうかと私は思います。
 したがって、国会がこの問題を適切に処理することこそ、国民の代表者としてその負託にこたえる道であり、国権の最高機関である国会の責務である。これは政府、国会一体になってこの問題は真剣に取り組まなければならぬ、最高裁がどう言ったから、今度の選挙までにまだ時間がある、多分この国会のあと四日か一週間ぐらいでは解散はないだろうというのじゃなくて、そういうような考えではなくて、これが最高裁が言おうが言うまいが、やはりこういう問題には真剣に私は取りかかって、取り組んでいかなければならない重大な問題だと思うのであります。この点について、これは中に、内容にも触れておるわけでございますが、法務大臣と法制局長官の私の考えに何か御指摘のところがあればお考えを承りたいと思います。
○政府委員(茂串俊君) 法務大臣のお答えになります前に、私、選挙制度の基本的なあり方についての御質問でございますので、これも昭和五十一年の最高裁判決に照らしてお答えを申し上げたいと思います。
 この選挙制度のあり方につきましては、ただいま申し上げました最高裁判決におきましても「代表民主制の下における選挙制度は、選挙された代表者を通じて、国民の利害や意見が公正かつ効果的に国政の運営に反映されることを目標」とするものであるというふうに述べておるわけでございまして、したがいまして、選挙制度の仕組みとして比例代表制度しかあり得ないかどうかということは別といたしまして、選挙制度の仕組みが国民の多様な意思を反映するようなものであるべきことは当然のことであると考えております。
 それから、ただいま国権の最高機関たる国会の立場で、当然に良識を持ってこの定数是正の問題については取り組み、また適正な解決を図るべきであるという御意見が述べられましたが、その点につきましては私も全く同感でございます。
○国務大臣(住栄作君) 現行の選挙制度をどうするのが一番いいのか、こういうことにつきまして今御意見が述べられたわけでございますが、私は、この点については御意見は基本的にはもう当然なことだろうと。いやしくも国権の最高機関である国会、同じく司法、最高裁の判断、これも三権の最高の判断が示されておるわけでございまして、その関係は別といたしましても三権の司法の最高の判断が示されておる、こういうことも十分頭に入れておかなければならないし、その中に述べられている意見も十分酌み取っていかなければならぬと思いますけれども、最終的には、判決も言っておりますように、これはもうこの選挙制度、統治権というようなこととも密接に関係し、あるいはそのものとさえ考えられるような問題でございますので、私は合理的な納得の得られるようなそういう制度が速やかに確立されるように、これは国会、政府がもちろん協力して一体となって考えていかなければならない、そしてまた速やかにそういう結論を得て実施に移していかなければならない、これは議会制民主主義の発展のためにも極めて必要なことだと考えております。
○徳永正利君 これからは大変俗な問題の質問でございますが、法制局長官、この定数配分規定が違憲だ、それから規定もこれに基づく選挙も無効だという判決がどこかの時点で出た場合、選挙も無効だし、それから規定はもちろん違憲だと。先ほども言ったように、私は今度の判決というのは違憲の判決になるだろうと思うのです。これは想像のつくところなんです、法務大臣も言っているようでございますが。その判決は事情判決になるかあるいは無効判決になるか、どっちかに王手飛車がかけられてくるんじゃないかと思うわけです。法務大臣は判決は多分大丈夫だろう、選挙の効力までつぶさぬだろうと、こう言っておられるようです。これはあなたが言われたのかどうか知らぬけれども、新聞にはそう書いてある。いずれにしても法務大臣の意に反して無効判決が出た場合、一体どういうことになっていくのだろうか。これは重大事件だ重大事件だと今までも言っておりましたが、これはどうなっていくんでしょう。衆議院議員がおらなくなるんでしょうか。その辺はどういう順序であり、それが国政を維持するには次にはどういう段階に行かなければいかぬだろうかと思うんでございますが、まずその最初の一点をお伺いいたします。
○政府委員(茂串俊君) 将来どのような最高裁の判断が下るかということは私全く予測がつかないわけでございまして、現に昨年十一月の判決の少数意見の中には、このような事態が起こった場合には常に事情判決で処理すべきであるという意見もありますし、また一方には将来事情によっては選挙自体を無効とする判決を下すことにもなりかねないというような御意見もあるやに伺っておるわけでございまして、その辺非常にデリケートな難しい問題であろうかと思うのでございますが、仮に無効の判決が出た場合どうなるかという点につきましては、これはまだその判決がどのような判断のもとでそういう結論を得るかという、そういった判決の内容自体を子細に見ませんと、この段階で非常に宙の議論として、こうなるああなるということを申し上げるのは、事柄が重大でありますだけにこの席で私が申し上げるということが非常に困難であるということで御了承をいただきたいと思います。
○徳永正利君 それなら、私がこういうふうになるんじゃなかろうかということを申し上げますから、お聞きいただいて、何かございましたらひとつ御指摘をいただきたいと思います。
 私はおっしゃるように判決の内容によることももちろんだろうと思います。しかし最悪の場合には選挙法は無効である、そして選挙結果も無効である、事情判決はやらなくて、数名の最高裁の裁判官が言っておられるように、無効判決をやるべきだという議論もあるようでございますから、事情判決を維持すべきだというのはたった一人の少数意見なんです。それはもうよく御存じのとおりだろうと思います。もし無効判決が出ると、私はどう考えても衆議院議員の存在がなくなるんじゃないかというような気がするんです。また先ほど法制局長官は非常に慎重な答弁をされましたからですけれども、衆議院における前田正道政府委員の答弁を見ましても、これは不可分説をとっておる。全部の定数配分がいわゆる無効になるんだ、違憲になるんだ、だからこれは無効になるんだということを言っておられるんです。
 そうなりますと、一体国政というものはどういうふうに動いていくんだろうか。衆議院がなくなるんですから、参議院は存在して参議院で処理しなければならない。参議院の緊急集会というのがそういう場合に大体召集できるのかどうか、憲法上参議院の緊急集会というのはあり得るのかどうか、その辺がまた憲法問題が私は出てくるだろうと思います。この辺はどうでございますか。
○政府委員(茂串俊君) まさにそういういろいろ難しい問題が発生してくるわけでございまして、これは国権の最高機関であられる国会の構成、活動、機能の問題に非常に絡む問題でございますだけに、そういった仮定の論で、例えばそのような判決が出たらどうなるかというところまで私ども実は研究はしておりませんし、また恐らく先ほども申し上げましたように、判決の中でどういうような判示がなされるか、そういう点も、仮にそういう判断が下されたとしましても、その内容を十分に検討した上でなければ軽々にこの席でいわば学者的な議論として意見を申し上げるわけにはまいらないということで御了承をお願い申し上げます。
○徳永正利君 大変立派な答弁でございます。私はそうだろうと思うんです。がしかし、そういう学者の説というものはもう世の中に敷衍していっているわけでございます。参議院の緊急集会できるか、何か強引に解釈でやる道を考えるのだろうか、いろいろなことが言われておるわけでございますが、これはもう大変な大問題、そういうことが、一番最初に私が申し上げたいわゆる二百四条問題がそこにひっかかってはね返ってくるわけでございます。どうも法務大臣もそういうようなことがあっては大変なことで、よもやそんなことになる心配はないだろうということで、多分事情判決になるだろうというようなことがその辺からぽろっと私は本音が出てきたんじゃないかと思うんですが、あの事情判決になるだろうと言われたのは本当ですか。法務大臣、どうなんですか。
○国務大臣(住栄作君) 私は昨年十二月の選挙についてそれなりの考え方といいますか、昨年十二月の選挙をどう見るか、こういうことが争われておるわけでございます。それと今の問題は、これから衆議院の解散が今の選挙法のままで行われた場合、そういうことについてはどうだろうか、この点については私もそれはその選挙が、先ほど法制局長官からも話がありましたように任期満了の選挙になるのか、あるいはそうでないのか、いろいろそのときの情勢というものがあるわけでございますから、そういう点についてまでどうのこうの言っておるわけではないわけでございます。少なくとも昨年の選挙について、それは合理的な期間内として判断するかどうか、こういうことはこれはいずれ遠からず裁判所の方で判断を示すだろうと思いますが、これからその後の選挙についてどうだということについては、私は全く推測の限りでもございません。そのときの状況によって、またこれいろいろな判断も出てくるのじゃないか。しかし、いずれにいたしましてもそういうことが司法の意思として既に伝わっておるわけでございますから、できるだけ定数問題については合理的な判断の上で対処することが一番大事なことじゃないか、こう考えておるわけでございます。
○徳永正利君 いや、私がお聞きしたのはそういうことではないんですけれども、まあいいです。この問題にはいろいろな難しい関連の問題があるし、現に政府においても、また党においても改正をしなければならぬといって頭を抱えているようでございますから、これは政府、党が一体になって、おれは所管ではないというんじゃなくて、解決しなければならぬ問題だと思うんです。それから、先ほども申し上げましたように、判決は恐らくこの秋には去年の係属中の高裁の判決が出るだろう、これは恐らくみんなそういうふうに予想しているだろうと思います。しかし高裁の判決が出ると判決はやがて最高裁に持っていかれるだろう、上告するだろう、そうすると上告の最高裁の判決は少なくとも半年は早くてもかかるだろうなんというような、そういう計算から事を運んではいけないということを私は繰り返して言っているわけなんです。
 きょうは自治大臣が御都合でお見えにならなかったわけですが、実は私は、法務大臣、法務省に余り中心にし過ぎだし、法制局長官にも御迷惑な答弁をお願いしたわけですが、自治大臣がこれは主役であったわけなんです。それがおいでにならないものですから質問を省いたわけでございますが、今までの大体の質疑の経過を選挙部長はよく自治大臣に御報告になって、新聞の報ずるところによると、おれは一生懸命やっているんだけれども、どうもだれがどうだとかこうだとかじゃなくて、これはもう本当に主務大臣として私は真剣にかかってもらいたいと思うのでございます。
 最後に、今までの質疑で意を尽くしませんでしたけれども、一応の問題点は指摘したつもりでございます。そこで、私は結びとして我々の大先輩であり、九十歳の高齢にもかかわらずこの問題の研究に情熱を傾けられて先年亡くなられた我々の大先輩である青木一男先生の述べられた言葉を紹介いたしたいと思います。「これ等の問題を根本的に解決する途は最高裁が五十一年判例を破棄し、選挙法違憲の判決を取消すことであり他に方法はない。よって最高裁の大英断によって問題の根本解決を図られん事を望むものである」、これは青木さんは極めて明快な結論を出しておられるわけでございますが、青木先生はさらに語を継いで、こういうことも言っていらっしゃる。「この国政上の基本問題について国会と裁判所の対立は憂慮に堪えない。又裁判所が違法な違憲判決を繰り返すことも、違憲の公選法で選挙を繰り返すことも、裁判所が事情判決で違法な選挙の効力を維持することも、法治国家の限界点にきていると考える。」と、大要このような旨を述べられておるのであります。
 私は、何はともあれ、最高裁の指摘した問題というのは、これは大きな政治問題であることには間違いはございません。国民の政治への信頼をより高くつなぎとめるためにも、早急に解決を図らなければならないと思うのであります。また参議院においても既に現に議員数と人口比率の逆転している県もあります。こういう問題については合憲の判決があったからといって、これを腕組みして見ているべきものではないだろうと思うのです。早い機会にこれは改めなければならない、そういう問題であると思います。
 この点については自治大臣の私は最後の所見を求めたいと思っておりましたけれども、お見えになりませんから、政府を代表して国務大臣、住法務大臣のひとつ御所見を承りたいと思います。
○国務大臣(住栄作君) 私が政府を代表してということでございますが、法務大臣でございますので、その資格で出ておるわけでございますから、そしてまた現実にこの関係者として非常にデリケートな立場にあるわけでございます。しかし衆議院議員として考えてみますと、私は今おっしゃいましたように、いずれにしても基本的な人権の投票権の行使について大変争われておるわけでございまして、これは政治に対する信頼、こういう観点から見ても大変残念なことであると思います。したがいまして、そういう事態を早く解消するということは、議員としても当然真剣に取り組まなければなりませんし、また私は国務大臣の一人としてもそういう立場でそういう状態の解決に努力をしていかなければならない、こういうように私の考えを申し上げまして、お答えにさしていただきたいと思います。
○徳永正利君 私はるるいろいろのことを申し上げましたけれども、住国務大臣はひとつ総理にも、こういう問題はこういう重大な背景があるんだということはもう言わぬでもわかっていることと思いますけれども、参議院においてこういう問題が提起されたということは十分ひとつ何かの機会にお伝えいただきたいと思います。
 また、きょうは自治省を代表して政府委員として選挙部長がお見えになっておりますが、自治省を代表してひとつ今までの質疑に対する御感想、御決意を承りたいと思います。
○政府委員(小笠原臣也君) 国会議員の定数是正の問題につきまして大変貴重な御意見を拝聴さしていただきまして感謝申し上げる次第でございます。
 この問題は選挙制度の基本、根幹に係る問題でございまして、政府といたしましても極めて重要かつ緊急な問題であると認識しておる次第でございます。申し上げるまでもなく、裁判所の判断に
よってどうこうということではなく、政府、国会、挙げて取り組まなければならない性質の問題であろうかと思っておるわけでございます。昨年の最高裁の判決以来、国会における各党においても既に検討が進められておるように承知いたしておりますし、具体的な案も一部発表されておるように私ども承っておるわけでございます。今後なお政府といたしましても各党間の論議がさらに煮詰っていくように期待をいたし、また努力をしてまいるつもりでございますけれども、各党間において論議がなされた結果、定数是正の実現の方向に向かって動き出すことを選挙を管理する立場にある自治省といたしましてもぜひお願いを申し上げたい。
 それから、先ほど先生の方からいろいろと御指摘のありました問題点、それから定数是正にもっと積極的に取り組めという御指摘につきましては、十分自治大臣にお伝え申し上げたいと、かように考えておる次第でございます。
○徳永正利君 終わります。
○委員長(大川清幸君) ちょっと速記とめて。
   〔速記中止〕
○委員長(大川清幸君) 速記を起こしてください。
 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時四十五分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時一分開会
○委員長(大川清幸君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、検察及び裁判の運営等に関する調査を議題とし、質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
○山田譲君 私は、時間もありませんから、きょうは主として登記所の問題でいろいろ御質問申し上げたいと思うわけであります。登記所の問題と、もう一つは、最近特に顕著にありましたいわゆる死刑から無罪になったというふうな例が三件ほど出たわけでありますが、その件についてちょっといろいろお伺いしたいと思います。主としてその二つについて御質問申し上げたいと思うんです。
 最初、登記所の常直制度、登記所には常直制度というのがあるようであります。それで、まず最初にお伺いしたいのは、常直制度をとっている登記所が現在何カ所あるか、一応私どももそれなりに調べてみたわけですが、そちらの方からひとつはっきりと常直制度をとっている登記所が幾つありますということをお答えいただきたいと思うんです。
○説明員(北村勇君) お答えいたします。
 常直勤務を行いますに当たりましては人事院の承認が必要でございますが、人事院で現在承認しておりますのは、法務局の出張所関係の七百五官署と厚生省の教護院関係の二カ所でございます。
○山田譲君 それでは、人事院からお答えがありましたからついでにお伺いしたいんですが、その七百五カ所、それから二カ所というのがいわゆる厚生省関係の教護院というんですか、のようでありますけれども、一体どういう勤務の態様なんですか。
○説明員(北村勇君) 法務局の出張所におきましては、法務局出張所の所長さんが庁舎に附属する居住室において私生活を営みながら、登記簿の保管ですとか電話の収受ですとか、そういうようなことをなさる勤務でございます。それから教護院の方につきましてはよろしゅうございますでしょうか。
○山田譲君 教護院もお願いします。
○説明員(北村勇君) 教護院の方につきましては、教護院に収容されております児童たちを、家庭的な生活を営みながらこの生徒たちを指導する、こういう意味合いで、寮長さんとか寮母さんという方たちが夜児童たちと一緒に泊まり込んでお仕事をなさっている、こういうことでございます。
○山田譲君 そうすると、教護院の常直というのは今おっしゃったように子供たちと一緒に住んで、子供たちの指導を夜中もしなければならない、こういうことで常直制度が認められているかと思うんですけれども、登記所の方はちょっと質が違うと思うんですが、登記所の方はどういうことで常直にしているんですか。
○説明員(北村勇君) お答えいたします。
 登記所の方では登記簿というような重要な書類を保管されておられるわけでございまして、こういうものが火災とか盗難とかに遭いますと国民の生活の基本的な秩序を乱すというようなことがございまして、そういう観点から日曜でも夜間でもこの書類の保全ということに努めていただいているわけでございますけれども、そのためには通常ですと普通の宿日直勤務をやっていただければよろしいわけでございますけれども、登記所は所在地が非常に都会からかけ離れたところにあるとか、あるいは人数の構成上宿日直をやりますと非常に職員の負担がかかるというようなことから、庁舎に附属する建物の中に住んでいただきまして、私生活を営みながらそういう登記簿等の保管に努めていただいている、こういうことでございます。
○山田譲君 そうすると、重ねてお聞きしますけれども、教護院の場合は仕事の性質が昼間と同じような延長であるというふうに考えていいかと思うんだけれども、登記所の場合はそうじゃなくて、夜は留守になるから泥棒が入ったり火事になったりするから困るのでやらせようと、いわゆる宿日直のようなものであって、ちょっと労働の質が違うと思うんですけれども、そこら辺はどういうものですか。
○説明員(北村勇君) 私どもの考え方といたしましては、常直勤務というものは、庁舎に附属する建物に住みまして私生活を営みながら文書の収受でございますとか庁舎の管理でございますとか、こういうことを行う勤務でございまして、その限りにおきましては登記所の常直勤務も教護院の常直勤務も同じでございます。ただ、先生お気になさっておられるところは、仮に教護院の児童が逃亡するような場合に教護院の寮長さん寮母さんは庁舎の保管というようなことだけではおさまらないのではないかと、こういう御心配かと思いますが、そういう場合には別途質と量が固まりがあった場合には、常直勤務のほかに超過勤務命令を出しまして超過勤務手当を払っていく、こういうような体制をとっているところでございます。
○山田譲君 人事院の方、大体わかりました。
 それで、法務省の方に聞きたいんですけれども、常直の場合はどういう勤務になっているんですか、昼間はもちろん仕事しているわけだけれども、夜は。
○政府委員(枇杷田泰助君) 常直勤務と申しましても、二十四時間といいますか、夜も昼もずっと起きて当たるというわけではございませんで、私生活を営みながら宿日直勤務につくということでございますので、普通は仕事が終わりましたら庁舎の方の玄関を閉めて、そして点検をして、後は自宅で、自宅の方の居住室と申しますけれども、そこの方で私生活を営みながら時折庁舎の関係を見回ったり注意をしたりするというような形態の勤務でございます。
○山田譲君 その時折見回ったり何とかということですけれども、それはある程度業務命令として、勤務なんだから業務命令でやるんだろうけれども、こういう仕事をしてください、常直者はつまり夜は何時と何時に何回くらい中を見回りなさいとか、そういうことは決まっていないんですか。
○政府委員(枇杷田泰助君) これは一律的に何時に回るとか何回回るとかというようなことは決めておりません。勤務者のいわば良識といいますか、それからまたいろいろな時期的な要素もございます。お祭りの多いようなときには夜遅くまで近所に人が来るとかというようなこともございますので、そういうようなことを勘案しながら常直勤務についている者がその状況に応じてしかるべ
き方法でやるということで行われているものと承知しております。
○山田譲君 私は例えばの話をしたのであって、つまり常直者はこういうことをしなさいということは当然決まっていなければおかしいでしょう。それはどういうことが決まっているかということを聞いているわけです。つまり全然何もしないでいて、ただ自分の生活だけしていればいいのか、それとも夜中に見回らなければならないような勤務形態になっておるかどうか、そこなんですよ。
○政府委員(枇杷田泰助君) 常直勤務と申しますのは、登記簿その他の物品あるいは庁舎の管理、保全のためにおるわけでございます。そのほかにも電話の収受等がございますが、そういうふうなことを行うために必要な措置をとる。ですから、何と申しましょうか、勤務時間が終わってから居住室部分の方に全く閉じこもってしまって、後は何が起ころうとそれは関係ないというふうな、そういうものではございませんで、常に私生活を行いながら同じ屋根の下の庁舎、そういうものについていつも注意をするということでございます。具体的にはそれを一日に何回回るとかいうような細かいところまでは一律的なものは決めておりませんけれども、目的はそういうことでございますので、したがって、いわば常時何かの物音がすればすぐに飛んでいくというような体制になければいけないという、そういう勤務でございます。
○山田譲君 つまりそれは細かく決まっていないにしても、やはり何か物音が聞こえれば飛んでいくとか、火が燃えていれば飛んでいくとか、一種のそういう勤務の義務があって当然常直には手当がつくわけでしょう。その手当は幾らくらいですか。
○政府委員(枇杷田泰助君) 一カ月一万一千円でございます。
○山田譲君 これ一万一千円と決められたのは人事院ですね。人事院はどういう根拠で一万一千円を決められたんですか。
○説明員(三上元章君) お答えいたします。
 この常直勤務体制につきましては昭和三十九年に従来から行われた常直勤務に対しまして手当を設けたわけでございますが、その際、民間におけるこれと類似の業務を調査いたしまして、そこで支給されている手当を参考に決めたという経緯がございます。当時月額三千円ということでございました。
○山田譲君 そうすると、民間のものを基準にして決められた、こういうことですか。
○説明員(三上元章君) そうでございます。
○山田譲君 民間のどういうところですか。
○説明員(三上元章君) 民間におきましても、例えば工場とかそれから寮とかに付設しましてやはり同じように私生活を営みながら管理しているという業務がございまして、それを調査いたしまして額を算出したわけでございます。
○山田譲君 そうする上、一万一千円をやるから、そこに住んで、そのかわりやっぱりさっき局長言われたような形でもって夜は番をしろ、こういうことになっていると思うんです。つまりそういろいろなことはやらないにしても、とにかくそこに住んで夜中は絶えず気を配っているという、そういう義務が常直者にはある、その義務に対して一万一千円の手当を多い少ないは別として出していますと、こういうことだと思うんですけれども、そうすると特に登記所の中には一人庁というのがありますね、一人しかいないというところ。そうすると、その人は一人庁でなくても同じかもしれないけれども、つまり常直者という者は四六時中三百六十五日そこに住んでいなければいけない、夜は夜で番をしなければいけない、こういうことになるかと思うんですけれども、それはそれでいいんですか。
○政府委員(枇杷田泰助君) 常直勤務についております者はおっしゃるとおりいわば二十四時間三百六十五日拘束されているといいますか、勤務時間は勤務につき、それ以外の時間は宿直あるいは日直勤務につくという状態であるわけでございます。ただ、そういうふうなことで貫き通すわけにはもちろんまいりませんので、したがいまして、できる限り休暇もとれるようにするというような措置を講じて、年に六日間は警備会社の方からの巡回方式によって宿日直勤務から解放する期間をつくるとか、あるいは代直者を派遣するとか、あるいは日常の業務をあわせまして代理事務を行う者を派遣するとかというふうな措置を講じておりまして、現実には三百六十五日丸々勤務につきっ放しというふうな状況からはなるべく解放したいという措置は講じております。
○山田譲君 いずれにしても、基準法上はこういう勤務は認められていないわけですね。せいぜい宿日直でありまして、しかも宿日直は一月に何回以上やらしてはいかぬというふうな基準まで設けてやっているくらいで、こういう四六時中三百六十五日の勤務というふうな、そういう形のものは基準法上は認められていないんです。国家公務員だけについてこういうやり方、しかも国家公務員いっぱいいますけれども、さっきの教護院の話は別としまして、登記所だけが依然としてこういう制度を持っているということについてはちょっと普通の民間では考えられないようなケースだと思うんだけれども、そこら辺はどういうものですか。これはやっぱりどうしても必要だとお思いですか。
○政府委員(枇杷田泰助君) 御指摘のとおり、私どももこの常直勤務というものは近代的な勤務形態ではない、望ましい形態ではないというふうに考えております。ただ、一方登記所というものが地方にたくさん分散して置かなければならないという要素がございます。それを維持してまいりますと少人数の出張所、しかも隣の庁からはかなり距離の離れたところに登記所が置かれるということになります。そうしますと交代制の宿直勤務をとるということはできない。それからまた機械警備的なもの、あるいは警備会社に委託しての警備に切りかえるということも、そういうところでは会社のサービス地域からはかなり外れるというふうなことがあります。一方、普通の庁舎だけではなくて、登記簿という非常に重要なものを保管しておるわけでございますので、だれかがそれを保管するというふうな措置をとらざるを得ないということの苦しい結論といたしまして常直制度というものがあるわけでございます。
 しかしながら、これは望ましい制度であるとは考えておりませんので、地元の事情の許す限りこの数を減らすため整理統合いたしまして多人数庁に切りかえていくとかということによって常置庁を減らしていく、また一方では常直勤務の方の勤務形態が少しでも緩和できるように、解放すると言うと言葉が適切でないかもしれませんけれども、常直勤務から外れる日を一日でも多くするというような措置を講じながら、だんだんと常直勤務を減らしていく、あるいは質を少しずついいものにしていくというような努力をする以外はないというふうに考えておるところでございます。
○山田譲君 たまたま常直関係の規則、人事院規則十五―九ですか、これを見ますと、第一条でもって各庁の長は常直勤務とかそういうことをさせた場合には「職員の健康及び福祉を害しないように考慮しなければならない。」、こう書いてあるわけですね。人事院はこれはどういうことを考えておられるわけですか、この健康及び福祉を害しないようにするにはどうすればいいかということを考えていらっしゃるか。
○説明員(北村勇君) 常直勤務は、先生御指摘のとおり正規の勤務時間を超えて行われるいわゆる時間外勤務でございますので、この量とか質とかが重荷になってはならぬという観点から、十五―九の第一条では健康、福祉を考えなさい、こう言っているわけでございます。ただ、常直勤務は実際に庁舎に附属する居住室でずっと生活を営みながらやらなければいけないという問題がありますものですから、なかなかそこに対する配慮も難しいわけでございますけれども、今法務省でお答えいただきましたように、月に何回かは夫婦で連れ立って外にお出かけいただくとか、私生活にゆとりのあるような配慮をしていただくというような
ことも考えておるわけでございます。
○山田譲君 今人事院で一般的にそういうことを言われたわけですけれども、法務省当局としては具体的に登記所の常直勤務者に対して健康と福祉を害しないようにどういうことを考えていらっしゃるか、そこのところをお聞かせください。
○政府委員(枇杷田泰助君) まず、常置庁に配置する場合には本人の健康状態とか家族状況とかというものも十分勘案した人事配置、人事異動計画を立てます。それからまた配置しました後でも、いわゆる定期の健康診断などはこれは必ず受けるようにする、そのために庁舎をあけなければならないような事態が生ずる場合にはその期日に代理の者を派遣するというような措置をとりまして、必ず健康診断を受けるようにする、それからまた局とかあるいは支局単位で行われますレクリエーションなどにも積極的に参加するような措置を講ずるというふうなこともしておりますし、先ほど来申し上げておりますように、年に何日かは全く庁舎をあけて夫婦があるいは国へ帰るとか、旅行するとかというふうなこともできるような日をつくるというような措置を講じておるわけでございます。
○山田譲君 実は私も見て回ったわけですけれども、常直制度なんというものは私は今どきやっているとは思っていなかったんですが、そういう制度があるというので、それなりに登記簿というふうな非常に重要なものを預っているわけですから、職員の皆さんもなかなか大事なものだからその面倒を見ることについてそう負担を感じていることもないような、そこはもう非常に私ども感心だと思ったんですが、だけれども、それにしても四六時中、しかも三百六十五日、今おっしゃったような六日ぐらいの休みはあるにしても、絶えず精神的な負担というものは非常に大きなものがあるのじゃないかと思うんですね。人間ですから、つい職場を離れる、職場というか自分の家へ帰るとかなんとか、そういうこともあるわけで、そのたびに代直かなんか頼まなければならない、あるいはガードマン頼まなければならない。
 そういうことになりますと、現実のガードマンなんかのいないような山間僻地のところが大体多いわけでしょうから、まずガードマンは無理である、そうすると本局の方かなんかに頼んで代直者をお願いする、そういうことをやらなければならないわけで、これはまず代置する方にとってもえらい遠いところまで行って代置しなければならない。こういうことになると非常に精神的負担が余計加わってきて、なかなかその点大変ですと、こういうような話がなされました。これは当然だと思うんですけれども、そこでかわりに行った場合はどういうやり方をするんですか。つまりその人が二日ばかりあけたい、かわりの人だれかよこしてくれと、かわりの人来る場合はその人に対してはどういう扱いをしていらっしゃるわけですか。
○政府委員(枇杷田泰助君) かわりに行く者につきましては、もちろんそれは旅費で、旅行命令という形で処理をいたしますので、旅費が支給をされることになります。そして実際上泊まる場所の問題がございますが、庁舎にある程度余裕があってベッドのようなものが置けるようなところはそこで泊まるということもございますけれども、それがない場合には常時私生活をしているような居住室のところへ、最近のあれでは客間というほど専用的なものはございませんけれども、比較的家族が日常使っていないような部屋に、そこに泊まってもらうというふうなことで処置をしているように聞いております。
○山田譲君 かわりにやってくれといっても、非常にへんぴなところですから、なかなかかわりも見つからない、そのためについ出たくても出られないというふうな状況もあるようであります。
 それで、試みに聞きますけれども、七百五カ所が今の登記所の常直をやっているところのようですけれども、その他の登記所はどういうことやっているんですか。
○政府委員(枇杷田泰助君) その他の庁の多くは警備会社と契約を結びまして、そして機械を配置いたしまして、そして何か事故があればすぐに警備会社の方に連絡できるような機械警備、それから巡回警備、そういうものを組み合わせて宿日直にかえるという措置をとっております。なお、一部そういうところでなくて、普通の交代制の宿日直勤務についている庁も若干あろうかと思いますけれども、おおむね常直勤務以外の庁は機械警備、巡回警備によって宿日直にかえるという措置をとっておるというふうに御理解いただいて間違いないと思います。
○山田譲君 そうすると、全部で今登記所の数は幾つですか。
○政府委員(枇杷田泰助君) 本局、支局全部合わせまして千二百四十ぐらいだったと思います。
○山田譲君 そうすると、七百五カ所の残りは全部そのようなやり方でやっている、こういうことになりますね。警備会社の人が来れば、細かい話で恐縮ですけれども、あれ幾らぐらいになるんですか。
○政府委員(枇杷田泰助君) ちょっと今その関係の資料を持ち合わせておりません。何といいますか、規模その他によって若干単価が違うかと思いますが、もちろん常直手当よりは高いものにつきますが、普通の交代制の宿日直勤務の手当と大体見合うぐらいな金頼じゃなかったかと思います。
○山田譲君 いずれにしましても、一万一千円が月額ですから、これを三十で割れば日に四百円にもならないわけですけれども、それよりもガードマン使った方がそれはどうしても高くなると思うんですが、どうですか、この点は。
○政府委員(枇杷田泰助君) ガードマンを使えばもちろん高いものになると思います。
○山田譲君 いずれにしましても、一万一千円の額の問題もありますけれども、とにかく一人だけをずっと二十四時間勤務、しかも三百六十五日置いて、そして非常な精神的な負担をかけるというふうなやり方は私はどうも余り感心しないわけですね。だから、できるだけ今後もこういうやり方については減らす方向で努力してもらいたいというふうに思いますけれども、その点いかがなものでしょうか。
○政府委員(枇杷田泰助君) 私どももなるべく減らす方向にしたいというふうに考えております。
○山田譲君 登記所を見ますと、新しくつくった建物でもやはり必ず宿舎をくっつけてつくっているようなんですけれども、あれはやっぱりどうしても必要なものなんですか。
○政府委員(枇杷田泰助君) これは全部の出張所がそういうわけじゃございませんけれども、常直勤務が予定されている庁につきましては生活を営むための居住室というものが当然つかないといけないわけでございます。これは宿舎ではございませんで、居住室と言っておりまして、宿舎料が要らない関係になります。これが庁舎と宿舎と切り離しますと、なかなか宿舎整備というのが、またこれは全く予算の技術的な問題でございますけれども、別々になって必ずしもついていかないということがあります。したがいまして、居住室制度というのは、ある一面ではもちろん非近代的な望ましいものではございませんけれども、そのために少なくとも所長がそこで国から無料の宿舎を与えられてそこで住めるという、そういう面でのメリットはあるということになるわけでございまして、したがいまして、これから常直制度というものをだんだんなくしていく方向にいきますと、これからは居住室のつかない庁舎が建っていくことなろうと思いますが、そのかわり機械警備ができるか、あるいは交代制の勤務ができるかという条件が一方で満たされなければなりませんので、どこまでいけるかわかりませんけれども、そういうような状況のもとでいろいろな施策を考えてまいりたいと思っております。
○山田譲君 登記所には非常に重要な書類があるわけですけれども、倉庫がありますね。その倉庫については相当配慮してつくっているわけじゃないんですか。つまり防火設備とか、あるいは泥棒が入らないようにするとかいうことで相当万全を期して倉庫をつくっているというふうに思われる
んですが、その点どうですか。
○政府委員(枇杷田泰助君) 最近つくっております庁舎はそういう防火だとかあるいは侵入が簡単にできないような、そういう構造のものにしておりますけれども、全国的にはまだまだ古い庁舎がたくさんございまして、殊に常直勤務をしております庁におきましては木造のものもかなりあります。それから事務室部分と書庫の部分とが延焼しないようにということで殊さらに離して建てているというようなものもなくはないわけでございます。したがいまして、何と申しましょうか、仮に常直勤務を続けるにいたしましても、庁舎を耐火性のものにして、そして外部からは勝手に侵入できないような構造にすることによって夜間眠っている間もそんなに気を使わないでも済むという、その程度を和らげる措置にだんだん切りかえていきたいということも考えておるところでございます。
○山田譲君 何回も言いますけれども、ぜひそういうことを努力してもらいたいと思うんですよ。あなたの方でもってもうかなり常直の問題については問題意識は随分前から持っていらっしゃるようで、私が今申し上げたようなことも、あなた方の書かれた「民事月報」というんですか、これにも大分常直制度についての問題点なんか書いてあるわけです。だから、そういうことはよくわかっているはずですから、ひとつこれからも努力をしていただきたいと思うと同時に、とにかく常直というふうなことで四六時中何となく気が休まらないというふうな、そういうやり方は私はやっぱり一つの職員に対する労務管理上も余りうまいとは言えない、こういうふうに思うわけです。それで、ですからガードマンでやるかどうかは別として、私は本来きっき言った倉庫をきちっとすればガードマンだって頼まなくてもいいような、それは役所としては重要な書類を持っている役所というのはほかにもいっぱいあるわけなんだけれども、登記所だけがそれをやっているというのはどうも理解しにくい話ですから、そういう方向でひとつ今後も努力をしていってもらいたいと、こういうふうに思いますから、よろしくお願いします。
 人事院の方、結構でございます。
 次は、最近非常に問題になったところですからよく御存じだと思いますが、免田事件、財田川事件、松山事件、この三つの事件が相次いで再審の結果死刑から無罪になった、こういう非常にショッキングな裁判があったわけです。これはお聞きしますけれども、かつてこのような、もう明治以降になりましょうけれども、裁判の結果死刑から無実になったというふうなことが例があるかないか、それをまず教えてください。
○政府委員(筧榮一君) 古い話は私もよく存じませんが、最近に今委員御指摘のように三つの事件が相次いで無罪になったというふうな事例は今までなかったかと思っております。
○山田譲君 昔裁判のやり方も違ったからちょっと同一に議論できないかもしれませんけれども、いずれにしてもこの事件が三つとも非常に時を同じくして出てきたということは、私どもどうしてもこれは単なる偶然とは言えないというふうに感じざるを得ないわけです。
 それで、まず法務大臣にぜひこれはお伺いしたいと思うんですが、こういう判決があったことについてどういう御感想をお持ちであるかということなんです。そして、できましたら、やっぱりこれどうしてこういうものが起きたというふうなことについてお考えがあれば示してもらいたいし、それと同時に、今後どうすることによってこういう事件をなくしていきたいというふうな思いを持っていらっしゃるかどうか、まず法務大臣にお伺いしたいと思うんです。
○国務大臣(住栄作君) 御指摘のように、去年の秋から死刑という重大な事件について再審が開始され、再審の結果、覆って無罪、こういうのが続いております。いずれも三十年以上あるいは三十年前後の古い事件でございまして、それにしても戦後の事件処理の結果がそういうことになっておるわけでございます。刑事訴訟法の制度が変わっか変わらないかということはさることながら、それから終戦後の混乱時代の問題であるとか、そういうことは別といたしまして、いずれにしても真実がないということで覆されたわけでございます。私どもこれ大変重大に受けとめておるわけでございます。免田、財田川、松山、それぞれの事件について、再審の判決もデリケートなところでいろいろ違ってはおりますけれども、無罪という結論が出たことは事実でございます。私どもがそういうことを、この判決をよく検討してみた上で、いろいろ捜査の関係あるいは公判維持の関係、そういうことについて深刻な反省を加えていかなければならぬ、再検討もしていかなければならない、二度とこういうことのないようにするのはこれは当然でございます。それは事件処理の上でのことでございますが、それと同時にいろいろな制度面についても検討すべき点がないのか、あるとすればどういうことだ、それからどうするんだ、こういうようなことも深刻に検討していかなければならない、こういうように考えておるわけなんです。
○山田譲君 詳しく説明をしていただきましてありがとうございました。
 ついでと言っては失礼ですけれども、刑事局長もどうお考えでしょうか。今大きなことは大臣がおっしゃったからいいんですが、もう少し細かい点で、つまりあなたが考えていらっしゃるどうしてそういうことになったかというふうな問題意識、これは当然それがあれば、したがって今後はこういう点を注意しなければいけないとかいうことをお考えがあればお聞かせいただきたいと思うし、もし単なる偶然ですから特別に制度的には問題ないと思いますというならば、それでもいいから返事をしていただきたいと思うんです。
○政府委員(筧榮一君) 今大臣から申し上げましたとおりでございますが、御指摘の三つの判決、それぞれ事案も違いますしニュアンスも違いますけれども、その判決の中で捜査あるいは公判の経過におけるいろいろの問題点が指摘されているところでございます。
 いろいろ違う面はございますが、大きく言いまして、例えば自白の信用性の問題、あるいは鑑定の信用性の問題、あるいは証拠の検討が不十分であった、あるいは捜査の徹底を欠いだというような面が共通して指摘されているところでございます。これらの指摘を率直に受けとめまして、私どもとしては、検察当局におきましてもこれらの三つの事件、そもそも捜査の段階から終局の段階に至るまでのすべての経過を今具体的に検討を続けているところでございます。その検討をして、どういう点に問題点があったのか、抽象的に今申し上げたとおりでございますが、それぞれの事件においてどういう経過でどういうところが問題であろうかということを逐一検討いたしまして、その検討の上に立って今後捜査を徹底し、あるいは証拠を十分に検討するというためにはどういうふうにすればいいかということを考えているところでございます。
 それから、さらに制度面におきましても、現行の再審制度が果たして改正すべき点がないかどうか、この再審制度の根幹と申しますか、全般にわたりましてもう一回見直しをやっておるところでございます。その結果に基づいて適切な措置をとりたいというふうに考えております。
○山田譲君 裁判所側いかがですか。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) この点に関しましては、本年の四月七日でございましたか、当委員会でやはり山田委員の御質問に対しまして私どもの事務総長からお答えしたところでもございますが、無事を罰してはならないということはもう刑事裁判の鉄則でございます。裁判官はそういうことがないようにということで日夜努力を重ねているところでございます。昨年七月いわゆる免田事件、また本年三月には財田川事件、また今回松山事件ということで、相次いで再審、無罪という結果になりましたということにつきましては、私どもといたしましてもこの事態を深刻に
受けとめておるところでございます。
 その原因ということでございますが、私どもも判決をいろいろ検討してみているわけでございますが、何分にもその微妙なところというのは現に証拠に当たってみなければわからないというところがあるわけでございます。特に私ども司法行政の立場、事務当局といたしましてはその証拠資料に当たるという機会がないものでございますので、その点は非常に難しい面があるわけでございます。ただ、裁判官はこれまでも正しい事実認定というために努力してきたということは私ども確信しておりますし、今後もそうであろうと思いますが、こういう事実認定の問題、どういう点に問題があるのかというようなことにつきまして、やはり日ごろいろいろな体験をしておられるそういうものをやはり裁判官の間でいろいろ持ち寄って、そういうものを協議していただくというようなことも非常に有益ではなかろうかというふうに考えて、私どもといたしましてはそういう御協議の場を提供して、今いろいろ御協議願ったりしているわけでございます。
 いろいろ例えば事実認定といいましても、いわゆる証拠の評価の問題あるいは鑑定で、これは当時の科学的な水準ではそういう結果が出たのだけれども、その後科学の進歩発達によってその鑑定の結果が動いてきたというような場合、いろいろあるようでございます。今申しましたような科学の発達に基づいて結果が違ってきたというのはまあいたし方ないわけでございますけれども、当時原裁判のときに証拠が発見されなかった、新たにそれが後に発見されて、それが確定裁判を覆すに至ったというような事件につきましては、そういう証拠がなぜ原裁判の時点で出なかったのかどうか、そういう点も含めて大いに反省しなければいけないのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
 これは省みて他を言うということではないわけでございまして、そう受け取られては甚だ恐縮でございますが、現行法は当事者の訴訟活動によって実体的真実を発見するという当事者主義をとっているわけでございまして、裁判所が職権で調べるという面にもおのずから限度があるわけでございます。そういうこともございますので、何とか原裁判における訴訟活動を活発にして、その中でなるべく証拠は十分なものを原裁判の段階で出していただくようにするということがまず先決ではなかろうか、そのように考えているわけでございます。
○山田譲君 私たちの立場で個々の裁判を云々批判するわけにもいかないわけですが、見てみますと、非常に私ども素人には特にわかりにくい面があるわけです。
 どういうことかといいますと、免田事件について言えば昭和二十三年十二月二十九日、事件が起きまして、これがそのわずか三年後に、昭和二十六年十二月二十五日、このときに死刑が確定をしているわけですね。そうしてその再審の結果、再審が開始されましたのが昭和五十四年ですから、昭和二十六年に死刑確定してから何年ですか、二十年以上たってやっと再審が開始された。しかもそれは第六次の請求に基づいてやっているわけですから、それまで五次にわたって請求をしていたわけですね。だがそれは認められなかった。結果的に再審の結果無罪が決まったのが免田事件について言えば五十八年七月十五日であった。こういうことなんです。
 財田川事件について言えば、これは昭和二十五年二月二十八日に起こった事件で、やはり七年くらいの後に昭和三十二年一月二十二日に死刑が確定しているんです。ところが、それから二十年以上もたって、しかもこれは第二次の請求が認められて再審が開始された、抗告もしたようでありますが、結果的には五十九年三月十二日に無罪が決まった。
 松山事件で言いますと、これは昭和三十年十月十八日に事件が起きて、五年後の昭和三十五年十一月一日にはもはや死刑が確定しているわけです。これもやっぱり第二次の請求が認められて再審が決まったのは昭和五十四年十二月六日、結果的にはつい最近の五十九年七月十一日に無罪ということになったということで、ずっと見ますと、私ども素人に特に奇異に思われるのは、この死刑確定までの時間が非常に短いわけですね。三年あるいは五年といった程度でもって死刑が確定されてしまう。ところが、その後の再審のところになりますと、これはまた大体二十年、三十年というふうな年月を経てやっと無罪が決まったというふうなことになるわけで、どうしてもこの辺がわからないわけですね。
 こんなに早く死刑を確定して、そして再審についてこれだけ三十年もかけなければ結果が出ないというのは一体どういうことなのかということを不思議に思うわけですけれども、この辺ひとつちょっと教えていただけないでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 先ほどもちょっと申し上げましたが、具体的にどうしてどうなったのかということにつきましては、具体的な記録を十分に検討しなければ私どもも何とも申し上げるわけにはいかないことでございます。ただ一般的に申し上げますと、要するに有罪が確定してしまいますと、あとは刑訴法四百三十五条でいろいろ要件を定めているわけでございますが、その再審の要件にかなうかどうかというまず法律判断が前提になるわけでございまして、これにかなうということで初めて再審開始がされるという法の建前になっているわけでございます。
 例えば免田事件で申し上げますと、第一次の請求は申し立てた申し立ての理由の記載がなかったというような、これは形式的なことで、それから二回目も、これも何か理由の記載がなかったということで、形式的なことのようでございます。二十九年に内容が出ているわけでございますが、結局これは一遍開始決定がありましたけれども、これは法律違反であるということで抗告審で取り消されたというようなことがありまして、要するに要件に当たらないのだということであったようであります。要するに、ここにいろいろ書いてあります例えば新たな証拠が発見されたというのか、あるいは偽証等があったというのかというような、そういう法律判断の面でいろいろ判断が分かれたというふうに理解しておるわけでございます。
○山田譲君 いろいろもちろん判断して、ただじんぜんとして時間を費やしたとは思いませんけれども、それにしても死刑確定までの時間はばかに短くて、後の再審の方はやたらに長いというのは、どうもつまりそう言っては失礼ですけれども、裁判所の方に一たん決まったことはもうなかなか変えたくないという、そういうような気持ちが基本にあって、それで何となく時間をだらだらと過ごしちゃった、こういうことはないんですか。まさかあるとは言えないと思うけれども、何となくそういうものが、まあ余りにも長いものですからね。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 一審から、要するに原裁判の一審から判決までが非常に早いじゃないかという仰せでございますが、これは必ずしもそうではないと思います。これはもう標準から見ましても決して短過ぎるということではございません。現にただいまですと九割近いものは一年以内に処理されるということでございますので、むしろそういうことではないと思いますが、ただ、二十何年たってということでございますが、これは二十何年かかってその再審の開始決定の理由があるかどうかを判断していたわけではございませんで、申し立てがあったら、それはそのときはない、また証拠を新たに出してもらって、それも四百三十五条の六号には当たらない、こういう判断を繰り返して二十数年たったということでございます。
○山田譲君 それに関連して、私が非常にこれ大事なことだと思いますのは、やっぱり逮捕したときに取り調べに当たる警察官、あるいはその後は送検してしまえば検事になるかと思いますけれども、そういう人たちの取り調べの仕方に非常に問題がありはしないかという気がしてならないわけ
です。
 これはテレビのことですから当てになりませんが、たまたまテレビなんかでよく刑事物というやつを見ていますと、もうやたらに大きな声を立てておどかしたり、あるいは机をたたいたり、そうかと思うと、いやに猫なで声を出して早く自白すれば早く楽にしてやるとか何とかと言って、いろいろな言い方、大体パターンがあって、同じようなみんなやり方やっていますけれども、ああいうやり方で、本人が、何というのか、精神的な拷問をかけられたような状態で、もう面倒くさいから、やらないけれどもやったことにしてやろうというようなことで、やりもしないことをやったというふうに自白して、早く楽になりたいという気持ちでそうしてしまうというふうな、そういうことがあるんじゃないかというふうな気がしてならないんです。私も入ってああいう調べを受けたことがないからわかりませんが、少なくもテレビなんかで見ている限りは非常にそういうやり方をやっている。
 私は、そんなおどかしたりなだめたりしなくても、静かにやっていっても、やっぱりちゃんとした証拠さえそろえればもう恐れ入りましたということになると思うんだけれども、どうもああいうやり方を見ていますと、あのやり方じゃ、本当にやったかやらないか、本当のところはわからないんじゃないか、しかも、そこでもって調べたものがずっと裁判所まで行くわけでしょうから、だから、やっぱり最初の調べ方そのものにどうも問題がありはしないかという気がしてなりません。もちろんああいうテレビですからおもしろおかしくやっているのかもしれませんけれども、そこのところはどんなものですか。これは警察庁の方見えているようですから警察にお伺いしたいと思うんですが。
○説明員(三上和幸君) テレビドラマ等で相当厳しい取り調べがあるがということでございますけれども、警察の活動というのは国民の信頼と支持によって初めて成り立つものでございます。したがいまして、被疑者の取り調べ等、警察の捜査におきましては法の定めに従いまして適正に行われるよう常々指導をいたしておるところでありますが、一部のテレビ番組等で確かに人権侵害にわたるような行為が放映されているということもございます。現実の取り調べにおいてはそういったようなことはございませんし、またないように指導をいたしておるところでございます。
○山田譲君 まさかありますというふうには言えないと思うけれども、それにしてもそういうような調べ方、つまり私は勘ぐったのだけれども、取り調べの手引みたいなものがあって、こういうときにはおどかすとか、こういうときにはお茶を出して気を静ましてやれとか、何かそういったものがあって、それで取り調べに当たられる方はそういうものも研修を受けて、そのパターンに従ってやっていくというふうな、そういうことはないんですか。
○説明員(三上和幸君) 取り調べにつきましては事件も異なりますし、また相手も異なるわけでございます。一律的なマニュアルによって、それに従ってやるということは大体なかなか行われるものでもございません。したがいまして、そのような意味でのマニュアルといいましょうか、そういう手引書というものはございません。
○山田譲君 さっきの死刑から無罪になったという例なんか見ても、やはり精神的な拷問の結果、これはもうしようがないから、実際やったかやらないかもうわからなくなっちゃって、ついもう私がやりましたというようなふうに取り調べの過程で持っていってしまった、こういうようなおそれはないですか。
○説明員(三上和幸君) 被疑者の取り調べを行いますには、各種の捜査をした上で、こういった捜査の積み上げに基づいて被疑者の取り調べを行うという段取りになりますので、先ほどからいろいろとお話もございましたけれども、私どもとしては証を得て人を求むといいましょうか、そういう形で捜査を展開しておりますので、今お話しのような形で精神的な拷問を加えているというようなことの取り調べはいたしてはおらないというふうに考えております。
○山田譲君 やっぱりこれは一つは人の問題でもあるし、相手も相当なしたたかな人がいるわけでしょうから、そう穏やかに物を言えと言っても無理かもしれないけれども、どうもあのテレビのようなやり方でやりますと、私さっき言ったように、精神的な拷問状態にやられて、何でもいいからやらないことでもやったと言って早くこの場から逃れて楽になろうというふうな、そういった調子になるような取り調べが行われるおそれはありはしないか、こういうことなんですよ。
 この点はあなたの方で調べられて、詳しい調書を書いて、それを今度は送検するわけですね。それを受けて検事さんが扱うわけでしょうけれども、そのとき検事さんは今度どうなんですか。その調べられたものとは別に全く白紙の状態でまた調べをしていくのか、それともある程度今まで調べられたこと、それを前提にして調べていくのか。その辺はどんなものですか。
○政府委員(筧榮一君) 警察から送致を受けます場合には、警察からの捜査関係の書類が送られてまいりますので、それを担当検事も目にすることは事実でございます。しかし常々私ども言われておりますことは、その場合でも自分の目でもう一回聞き直して、本当かどうか真の供述を得るようにという心構えでやっているわけでございます。
○山田譲君 だから、取り調べというのは非常に大事なものだと思うんですけれども、その点もう一遍警察の方にお伺いしますが、非常に大事な取り調べですから、だからテレビのああいうのはうそであるというのはそれで結構ですけれども、少なくともああいったやり方で相手をもうろうとさした状態の中で白状させるというふうな、そういうやり方はぜひともこれはもうあってはならないことだし、十分注意していらっしゃることだとは思うんですけれども、たまたま今度の死刑が無罪になったというような例を見てみますと、どうもそういうこともやはり取り調べの段階であったんじゃないか。ちゃんとした証拠を調べて、それでそれに基づいてきちんと科学的に取り調べが行われるということがなくて、単に刑事さんの勘なりあるいは経験というふうなものでだんだん誘導していってしまうというおそれが、まあおそれというか、ことがあったんじゃないかというふうに勘ぐられてならないけれども、そこのところはもう一遍ひとつはっきりお答えいただきたいと思うんです。
○説明員(三上和幸君) 先ほど来問題になっております再審無罪事件等につきまして、当時の警察としては全力を尽くして捜査をしたというふうに考えてはおりますが、結果として、結論として無罪ということになっておりますし、また裁判所の判決の中でもいろいろと捜査上の問題点等につきましても指摘をされておるところでございますので、そういった内容につきましても真摯に受けとめて十分な捜査を行うように指導してまいりたいと考えておりますが、取り調べにつきましては真実を究明するといいましょうか、そういう点で大変大事な捜査手法の一つであるということは現在の刑事訴訟法のもとにおいても変わらない事実でございます。
 したがいまして、相手方の任意の自白を得るということ、それから自白を得たものに対する検証を十分行うということになりますれば、今御指摘のありましたような、例えば虚偽の自白があったというような場合につきましても、そういう裏づけの捜査の徹底によりましてそういった事実は浮かんでこないということになれば、それが虚偽のものであるということがわかるというふうに思います。我々としても緻密な捜査というものを十分推進するように指導に努めてまいりたいと考えております。
○山田譲君 時間がなくなったものですから、あとちょっとくだらない話のようで恐縮なんですが、この間、十日くらい前でしたか、私夜暇だったものですから、ふらっとテレビをつけてみまし
たら、ちょうど愛染恭子という有名な女優、まあ知らない方もいらっしゃるかもしれませんが、愛染恭子さんと三枝という司会者か何か知りませんが、あれが対談をしていたわけですね。おもしろそうだなと思って聞いていましたら、ちょっと聞き捨てならないことを愛染恭子氏が言っていたわけです。
 それはどういうことかというと、あの人は何か大阪ですか、わいせつ物陳列か何かで留置場に入れられて、留置場でもって四日だか何かいたというんですが、そのときのことを語るというタイトルもありましたけれども、その中で四日間すごく楽に過ごしたようなことを言っているわけですね、楽しく過ごしたようなことを。しかもそのときに刑事さんたちが部屋へやってきて私のサインを求めにきたというんですね。まあ考えようによっては随分さばけた刑事さんだと思うけれども、しかしこれは考えようによっては非常にゆゆしき問題である。少なくとも留置場に入っている人に対してサインを求めたなんというのはけしからぬ話じゃないか。得々として愛染恭子はそれを言っていましたけれども、三枝もそれを聞いて笑っていましたが、私は情けない感じがしたんですよ。それは本当かどうか、そこのところはどうですか。
○説明員(三上和幸君) 愛染恭子の事件で昨年の一月二十六日に大阪府警が、また同年の七月十日に神奈川県警察において逮捕、取り調べをしたことは事実でございます。その際に取り調べの警察官がサインをねだったとかいうような事実につきましては、両府県警察に対して調査をさせましたけれども、そのような事実はないという報告を受けております。
○山田譲君 これ最後ですが、もし事実がないとすると愛染恭子がああいう場所ででたらめを言ったかということになって、それはとんでもないやろうだという話だと思うんですね。だから、警察としてはそういういいかげんなこと言ってもらっちゃ警察の威信にかかわる、こういうことで大いに抗議がなんかしてもらえるかどうか。どうですか、そこは。
○説明員(三上和幸君) 御指摘のテレビ、私も見ておりませんけれども、そういうような事実がない場合でありましても、それが余りに興味本意等で反論をする要もないといいましょうか、そういうような場合に私どもとしても特別な措置をとっておらないというのが状況でございます。もちろん特に措置を要するようなものがございますれば適時適切に対処をしてまいりたいと考えております。
○山田譲君 終わります。
○飯田忠雄君 本日は三つの点でお尋ねをいたしたいと思います。第一の問題は命令につけられた罰則の法的効果の問題でございます。第二の問題は二重国籍者の公民権についてでございます。第三の問題は公職選挙法を刑事訴訟法理論で制約することは正しいか、こういう問題でございます。
 時間の関係で簡単なものから御質問申しますが、総理府令とかあるいは省令に罰則がつけられておることがございます。これは行政組織法の十二条四項に法律の委任がなければ罰則を設けることができない、こういう規定がございますが、逆に言えば法律の委任があれば命令で罰則を決めてもいいと、こうあります。ところが、憲法三十一条でございますが、これによりますと法律に定める手続によらなければ刑罰を科せられない、こうはっきり明文があるわけであります。法律に定める手続ということは命令の手続ではだめだということでございますが、そこで命令に罰則がつけられておる場合にそれが合憲的であると言い得るための要件はどういうことでありましょうか、お尋ねをいたします。これは実は後でまたいろいろな問題をお聞きするときにはいろいろ管庁にお尋ねしますが、この問題について法務省、それから法制局おいででしたら法制局の御答弁をお願いいたします。
○政府委員(前田正道君) 昭和三十七年五月三十日の最高裁の判決によりますれば、「憲法三一条はかならずしも刑罰がすべて法律そのもので定められなけれぱならないとするものでなく、法律の授権によってそれ以下の法令によって定めることもできると解すべきで、このことは憲法七三条六号但書によっても明らかである。ただ、法律の授権が不特定な一般的の白紙委任的なものであってはならないことは、いうまでもない。」と判示しておりますとおり、不特定な一般的な白紙委任的なものであってはならないということが基準だと思います。
○飯田忠雄君 法務省どうですか。
○政府委員(筧榮一君) ただいま法制局から御答弁のあったとおりだと思います。
○飯田忠雄君 ただいま白紙委任的ではだめだというお話でございましたが、ここに海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律というのがございまして、その五十四条を見ますと、法律の条文読むよりも簡単に申し上げたいと思いますが、いろいろの命令で所要の経過措置を決める場合、つまり命令を制定したり命令を改廃したりする場合に経過措置が必要だ、その経過措置を命令で定める場合に、その命令で罰則を定めてもよろしいよと、こういう規定でございます。この規定からいきますと、法律の委任という形が極めて漠然として包括的に委任されたものであるとしか読めないわけでありますが、この点についてどのようにお考えですか。これはどちらでもいいです。法制局、法務省どちらでもいいですが、御答弁願います。
○政府委員(前田正道君) ただいま委員御指摘になりました海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の第五十四条は「この法律の規定に基づき、命令を制定し、又は改廃する場合においては、その命令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置及び経過措置に関する罰則を含む。)を定めることができる。」という経過措置に関する規定を設けておりますが、これがただいま御指摘の罰則に絡む問題だと存じますけれども、その場合の可罰事項と申しますか、その範囲につきましては、それぞれが委任をいたしました一定の事項に関します命令の改廃に付随しまして必要となる経過措置で、しかも第五十四条が規定しておりますように、「その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内」でと、そういうものに限られておりますから、その意味におきまして白紙委任的なものではないと存じます。それからまた、経過措置に関する罰則と申しますのは、その罰の限度につきましても同じく「合理的に必要と判断される範囲内において、」という制限がかぶっておりますので、これも白紙委任的なものではないというふうに存じます。
 ただ、問題は具体的に定めてないということは経過措置が必要となるという場合があるということが考えられますことから、このような定め方をせざるを得ないということにあると存じます。
○飯田忠雄君 ただいまおっしゃった「合理的に必要と判断される範囲内」でという言葉ですが、これは一体どなたが判断なさるんでしょう。命令をつくるときにどなたの判断で命令をつくられるのか。その点いかがですか。つまり客観的な一体標準があるのか、命令をつくる人が勝手に自分の判断で命令をつくられる、合理的と判断されるということなのか。もし自分の判断でやられるということであれば、これは客観的な標準にならないので、こういう委任の仕方はどうも包括委任ではない、個別委任だとは言い得ないと言わざるを得ぬのですが、この点につきまして前にもお尋ねしたけれども、政府御当局は一応一たんできた法律だから何とかして合憲、合法的に解釈してしまおうという御努力が見られることはよく私もわかるんです。国会が誤って規定したその国会の過ちを一心にひっかぶって御弁解なさっている姿というものは涙ぐましいほどのものだと、私どもはわかっているので、これ以上もう追及することはいたしません。
 そこで、一般論としてお尋ねいたします。もし包括的な委任の仕方で罰則が命令によって決められておる、そういうものがある場合に、その罰則
に基づいて法務省は検察官がこれを起訴するように御指導なさっているのかなさっていないのか。また警察ではそういう罰則違反がある場合に犯罪として捜査をされるのかどうか。また裁判所はこういうはっきりと最高裁が既に疑問を呈しておるような罰則に基づいて有罪の判決をすることを憲法三十一条に違反しないとお考えになっておるのか。こういう点についてお尋ねいたします。
○政府委員(筧榮一君) 今御指摘の海洋汚染防止法につきましては、先ほど申し上げましたとおり憲法に違反するものではないというふうに考えております。一般にそのほかに憲法に違反する命令の罰則があるかどうか、あくまでも仮定の問題でございます。強いて言えばそういうものが絶対にないとは言えないかもしれませんが、もしそういうことを検察庁で罰則を見ました担当検事がこれはどうもそういう憲法違反の疑いがあるという疑義を持ちました場合には上司に相談する、あるいは上司を通じて関係省庁と協議を遂げるというようなことで、合憲であるという判断に立ち至れば当然それに基づいて処理をすることになりますし、疑いが政府部内でも残るということであればその条令を改めるなり何なりの措置がとられるということに、あくまで仮定の問題としてはそういうことになろうかと思います。
○説明員(三上和幸君) 警察は個々の法令につきまして一般的に違憲かどうかというような判断をする立場にございません。したがいまして、適法な手続で成立をした罰則がありまして、それが裁判等によりまして明確に違憲、違法とされない以上、法的効力があるものとしてそれぞれの法令に従って犯罪として捜査をしていくというのが通常であろうかと思います。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 裁判所といたしましては、もし起訴されました場合には、その公訴を受けた裁判所が判断するということでございまして、私ども事務当局の立場にあるものは何ともお答えしかねる問題でございますので、御理解いただきたいと思います。
○飯田忠雄君 裁判官は憲法と法律だけに拘束されるというのが法律にはっきり明文があるわけです。そうしますと、命令で罰則が制定されておる、こういう場合に、命令で制定された罰則は明らかにこれは命令なのであって法律ではないはずなんです。そういう法律でないもので有罪の判決を下す場合、憲法三十一条に違反しないと言うためには相当の根拠のある判断が必要だと思います。そういうことを常にやっておられるかどうか、お尋ねいたします。最高裁の方でそういう裁判官に対する教育などやっておられるかどうかという立場でもかまいませんが。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) あくまでもこれは裁判の中身の問題でございますので、当該その裁判官がどのように判断するのか、これは例えば憲法に反する命令であればそれは従わないということになると思いますし、またこれは合憲であると言えばそれを適用するということにもなろうかと思いますので、何ともその結果具体的な問題についてどうなるというようなことは私どもの立場から申しかねるところでございます。
○飯田忠雄君 それでは法解釈の問題ですが、一つの例を挙げますと、今読みました海洋汚染防止法の五十四条のところで、所要の経過措置に罰則を命令で決めることができると書いてありますが、私は法律学者として専門的にいろいろ考察してきた結果、この五十四条については明らかに包括委任であると解釈せざるを得ないわけです。ところが、政府の方は全部そうではないと強弁をされる。少なくともこういう罰則の問題は基本的人権の保障であります憲法三十一条が法定手続を厳格に明文で書いておるのに、その点をあいまいな形で勝手な行政官的な解釈をして済ましていいものかどうか私は疑問だと思います。裁判所も行政官と同じ解釈だとおっしゃればもう何をか言わんやです。この点についての最高裁の御見解はいかがですか。
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 法令が合憲か違憲かということはもう申すまでもないかと思いますが、これは裁判所が具体的な事件を通じて判断することでございまして、最高裁判所が事前にこれが違憲であるとか合憲だとかいう意見を表明するという立場にないことはもとよりでございますし、また私ども事務当局でございまして、これはただいま裁判事務としてこれを扱っているわけではございません。これはまた私が現場で裁判をしておりますときにこういう問題が来れば、それは当然裁判官として判断するわけでございますが、ただいま事務当局としてその見解を述べる立場にはないということで御理解いただきたいと思います。
○飯田忠雄君 わかりました。この問題はこの辺にしておきます。
 それで、次の第二番目の二重国籍の公民権についてお尋ねをいたしますが、最近我が国の国籍法が改正になりました。父系主義に母系主義も加えまして父母両系主義になりましたので、したがって、従来日本国籍のなかった人が日本国籍を取得することになってまいりました。この問題に関連しまして、国籍の問題はこれは国家主権に関連する問題で、各国が自由に自分の立場から国籍法を決めておるわけです。そこで、我が国の国籍法がどうあろうとも、外国で別の国籍法をおつくりになることは自由であります。そうしますと、外国の国籍法によって事実上二重国籍となる場合が考えられるわけですが、今日そういうことになるようなおそれのある外国の立法を御研究になっておれば御開陳を願いたいと思います。これは法務省。
○政府委員(枇杷田泰助君) 過日御審議いただきました国籍法の改正によりまして、二重国籍が我が国においてもかなりふえるであろうということが予測されますが、同時に他国におきましても国籍法の改正をいたしますと、それに伴って重国籍が生ずるということは考えられるわけでございますが、ただ、各国の方でこれから例えば父母両系血統主義に改めていくとかということになりますと、将来に向かって重国籍者がふえていくということは当然考えられると思います。そういうふうな傾向は血統主義をとっている国におきましては傾向としてありますので、今後ともふえてまいろうかと思います。ただ、過去にさかのぼって父母両系血統主義のようなものを適用していくというようなことになりますと、現在は日本国籍を一つしか持っていない人が重国籍を持つというふうなことも、それはあり得ないわけではございませんが、そのような過去にさかのぼって当然に自国の国籍をも与えていくというふうな改正の動きがあるというようなことは具体的には私どもまだ承知しておらないところでございます。
○飯田忠雄君 理論的にそういうことがあり得るというお話でございましたが、それではそれでいいんですが、旧国籍法、明治三十二年法律第六十六号というのがございますが、その旧国籍法の第十六条は帰化人、その子、日本人の養子、入夫、こういう者が国務大臣とか大審院長、会計検査院長、帝国議会の議員となることを制限しておるわけです。こういう規定を旧国籍法が定めた理由はどういう理由であるとお考えになっておるでしょうか、お尋ねします。これは法務省、自治省どっちでもいいです。
○政府委員(枇杷田泰助君) 旧国籍法の十六条にただいま御指摘のような条文があるわけでございますが、これは国の重要な意思決定あるいは国権の重要な作用を担当する者につきましては、かつて外国人であったという方については適当でないということを考えてこういう規定を設けただろうと思います。そのようなかつて外国人であった者については適当でないという考え方は、まだ十分に日本人になり切っていないのではないかという危惧がある、そういう者が国の意思を決める重要な地位に立つというふうなことは若干危険ではないかというような発想からこのような規定が設けられたというふうに古い書物などには書いておるところでございます。私どももそういうことで置かれた規定であろうというふうに想像いたしております。
○飯田忠雄君 それでは、現在の我が国の国情から言いまして二重国籍者、これは前は外国人、まあ前は外国人じゃないとしても現在同時に外国人である、そういう人ですね。日本人であると同時に外国人であるという場合に、旧国籍法で心配されたようなことがないと言い得るかどうか、大変疑問が存在すると思いますが、この点についてはいかがお考えですか。これは法務省にお尋ねします。
○政府委員(枇杷田泰助君) 旧国籍法にはただいま御指摘のような規定がございましたけれども、現在の国籍法にはそのような規定は設けられておりません。さらに二重国籍がふえることになるであろうというふうな予想をしておりますこのたびの改正法におきましても、このような規定を設けることをしておらないわけでございます。それは旧国籍法のようなそういう危惧の念というものをこれは持つ必要はないだろう、殊に非常に民主主義というものが強く打ち出されました新憲法下におきましては、そのようなもし他国籍もあわせ持つ者とか、あるいはかつて外国人であった方であっても、これは要するに国民の意思、そういうようなものによって重要な国権の作用を果たす者が選ばれていくということでありますから、そういうところで実質的にチェックできるであろうというふうなことも考慮されているところだと思いますが、現在ではそういうような危惧を法律上とる必要はないという立場にあるものと考えております。
○飯田忠雄君 二重国籍ということは、御承知のように現在日本人であると同時に外国人だと、こういうことですね。日本人と外国人とが同居しているわけなんですが、人間の心というものはなかなか外からわからないんです。日本人と外国人が同居している場合に、その人の心は日本人なのか外国の方を向いているのかはっきりしないでしょう。そういうはっきりしない人が我が国の総理大臣になる、国会議員になるということでいいのかどうか、日本の政治を左右することになることが、それで日本の国家主権は守られるかという問題に関連するんですが、その点はいかがですか。
○政府委員(枇杷田泰助君) 確かに国の重要な地位に立つということは、国の将来をも決めるようなそういう意思決定をする立場にあるわけでございますので、したがいまして、日本の国というものを考え、そして日本の国民全体が連帯意識を持つ、そういうような考え方の強い方が望ましいことは当然だろうと思います。それを二重国籍者であるからといって、当然にそういう考え方がないだろうというふうに一つのパターンを決めて法律上制限をするということまでは必要ないだろう、それは日本国籍を持っておられる方であっても、場合によっては今申し上げましたような点においては十分でないという方もおられるかもしれません。ですから、それは個々の方の問題であって、法律的に一つのパターンを決めて、そしてある資格を奪うというふうなことはいかがなものであろうかというのが現行法の考え方でございます。
○飯田忠雄君 二重国籍者は日本の国籍の選択宣言をすることになりますね。そういう選択宣言をしないで二重国籍のままでおるという場合、外国の国籍を離脱する手続をとらないような人、こういう人について今度の国籍法はどうなっておりますか。
○政府委員(枇杷田泰助君) 御承知のとおり、今度の改正法におきましては選択の宣言をした人は外国の方の国籍の離脱に努めなければならないと規定いたしておりますが、しかし外国の国籍の方を離脱できるかどうかはこれは当該外国の国籍法の規定によって左右されるわけでございます。そういうことでございますので、離脱しなければそれによって直ちに日本の国籍の方を喪失させるとかというような効力を認めるということは適当ではございません。したがいまして、御本人の努力と、それから各国の法制とによってなるべく外国の国籍を早期に離脱するようにということを期待するということにとどめております。それ以上のことは酷なことにもなりますので、改正法におきましても要求はしておらないところでございます。
○飯田忠雄君 日本国民とそれから外国人というものは違うでしょう。外国国籍を持っておる者と日本国籍だけの者と同じであるかどうか、この点私は非常に御答弁を聞いておりまして不思議に思いますが、日本国籍を持っておって同時に外国国籍を持っておるということは外国の立場から見れば外国人なんですよ。アメリカの立場から見ればアメリカ人なんです。日本人じゃない、日本から見て日本人だけれども。そういう場合に心が両方を向いておる人を、それをただ抽象的に日本国籍を持っておるから日本人だということで、日本の政治的な責任を任せていいといったようなそういう理論がどうして出てくるのか、私は非常に不思議に思うんですよ。外国でこういうような場合にどういう措置をとっておられますか、御研究になったことがありましたらお知らせください。
○政府委員(枇杷田泰助君) 確かに世界の国籍法の一つの理念といたしまして国籍唯一の原則というものがございます。一人の人間は一つの国籍を持つのが望ましいという考え方でございまして、これは私どももそのとおりだろうと思います。したがいまして、なるべく一つの国籍になる、日本の国籍に固まるかあるいは他国の国籍一つだけになるかということが望ましいという考え方でおることは過日の改正法の御審議の際にも繰り返し申し上げた点でございますが、ただそういう原則がありましても、実際上各国の国籍法がまちまちでございます。万国を共通する国籍法があるわけではございませんために、当人の方が一つの国籍にしたいとしてもそれができないという場合があります。
 我が国の方では日本の国籍の方を失いたいというならば二重国籍者についてはいつでも離脱ができるという法制になっておりますからよろしいのですけれども、外国では必ずしもそうでないというようなことがございますために、その解決の方法として選択の宣言とか、あるいは留保とか、そういうふうな制度でいろいろなことを考えておるわけでございますけれども、また外国の方でも国籍唯一の原則というのはやはり一つの原則として考えているようでございまして、その法制をとるところもいろいろありますが、ただ具体的にはなかなかそれを解消するという妙案がないというところから事実上断念しているところもあるようでございますし、あるいは我が国と同じような選択の制度、あるいはそして他国において選択の宣言をすれば自国の国籍を喪失させるというような法制をとっているところも若干あるわけでございまして、今後国籍法の改正を考えておる国もかなりあるようでございますので、どういうふうな方向に行くかはわかりませんけれども、やはり国籍唯一の原則というものを、自国の法制並びに戸籍制度等、要するに国民の把握の仕方との絡み合わせからいろいろなことが各国の実情において工夫されていくものだと思います。
○飯田忠雄君 先ほど旧国籍法のところでお尋ねしましたが、旧国籍法でも選挙権を制限しているのじゃないんですよ。国の重要な職、国務大臣とか、現在で言うならば最高裁長官とかあるいは国会議員、そういうものになるのを禁止しておるだけであって、選挙権そのものを一般的に禁止しているんじゃないですよ。そういうことは、なぜ旧国籍法がそういう制限をとったかといえば、やはり国の主権擁護のためであると解きざるを得ないわけですね。
 そこで、二重国籍者に被選挙権を無制限で認めるということは政治上障害が起こらないと合理的に判断させる根拠がありますか、お尋ねします。これは今法務省ばかりお尋ねしましたので、自治省のお方と内閣法制局のお方に御答弁を願います。
○説明員(浅野大三郎君) 被選挙権につきましては公職選挙法第十条で規定しているわけでございまして、一定年齢以上の日本国民は衆議院議員または参議院議員の被選挙権を有するということを定めております。一方で二重国籍の者を排除する
という規定もございませんから、日本国籍のほか他の国の国籍を有する二重国籍者が国会議員となるということも現行法上可能ということになっております。
 お尋ねは、一体それで政治上障害が起こらないという合理的理由があるかどうかということでございますが、大変難しい問題でございます。ただ、私どもといたしましては、これまでのところそういう二重国籍者が選挙権を行使する、あるいは選挙によって選ばれる、公職についたことにょりまして何らかの障害が生じたという事例は承知しておらないところでございます。
○政府委員(前田正道君) ただいまの問題につきましては過日委員から当局に対しましてもお尋ねがあり、その際、担当部長の方から、重要な問題でございますのでしばらく検討さしていただきたいというふうにお答えしたように記憶をいたしておりますので、私から答弁いたしますことは差し控えさせていただきたいと存じます。
○飯田忠雄君 これはまだ法制局の方で正確な御返事はいただいてないんですよ。それでお尋ねしたんですが。
 それで、私がなぜこういう問題を取り上げるかといいますと、重大な問題でしょう。政治上の障害が一体起こらないかどうかという問題、例えば以前は外交官の奥さんに外国人をとることを禁止した時代がある。それは外交上の秘密が漏れるからですよ。例えば総理大臣が二重国籍者、例えばソビエトと日本と両方の国籍を持っているという場合に、結局強い方の国家主権に奉仕するという傾向になりがちです。日本の利益を侵害してでも強い方の外国の利益を図るということになりがちなんです。そういうことで一体日本国民の利益が擁護されるかという根本問題があるわけですよ。これは現実にそんなばかなことは起こらぬと、こういうふうに皆さんお考えかもしれませんが、二重国籍者であるならば起こる。
 例えば現在でも外国で複合民族の国においてはいろいろの民族の人が政治の衝に当たられます。この場合には単一国籍しか持ってないんですよ。あれが二重国籍を持っているならば大変問題が起こってくると思いますよ。殊に二重国籍者に外交問題を担当させ得るかというと、これは大変疑問が私はあると思います。こういうような重大問題を架空のことと考えておられることはこれは困りますよ、選挙権、被選挙権の問題は当然起こってくるんですから。
 そこでお尋ねしますが、外国の国籍法によって事実上二重国籍となる人、こういう人の年齢が今後公職選挙法に言うところの選挙権、被選挙権を有する年齢、そういう年齢になる場合は全くないとお考えなのか、あるいはあるとお考えなのか、お尋ねいたします。これは法務省と自治省にお尋ねします。
○政府委員(枇杷田泰助君) 私どもは国籍法を担当しておりますけれども、私どもが考えております国籍法というのは国籍の取得と喪失のことを決める法律であるということでございまして、二重国籍者が日本の国籍と同時に外国の国籍を併有しているということから他の分野におきましていろいろな問題が仮に出るとすれば、それはその法域でしかるべく措置をすればいいという考え方をとっておるわけでございまして、ただいま御指摘の選挙権、被選挙権の問題につきまして直接に私どもがお答えする立場にないということで御了解をいただきたいと思います。
○説明員(浅野大三郎君) 国籍法のことにつきまして私は所管ではございませんが、先ほどの御答弁をお聞きしておりましても、当然二重国籍ということは今後とも起こり得る状況にあるようでございます。そういうことでございますと、そういう二重国籍を持った方が公職選挙法で定める一定の年齢に達しまして、それによって選挙権、被選挙権を有するということはあり得るというふうに考えております。
○飯田忠雄君 それでは、問題を変えましてお尋ねいたします。
 今時国際政治と国内政治と分かれておりますが、国際政治の問題に関連しますが、国際政治をやる上におきましてはいろいろなことが起こりますね。外国の情報も欲しいし、外国をこちらの意のままに動かしたいということも起こってくる。そのためにいろいろの人が使われますね。これを普通はスパイと言うておりますが、スパイという言葉が妥当かどうかわからぬけれども、通常そう言うておりますが、そういう国際政治におけるスパイの役割をどのようにお考えになっておるか、スパイの任務をどのように理解しておられるか、こういう問題につきまして法務省と警察庁と自治省にお尋ねをいたします。
○説明員(赤木孝志君) 先生御承知のごとく、一般に国家というものは自国の国益のために、外交活動はもとよりでございますが、あらゆる機会を通じまして必要とするところの情報を収集しようとしておりますし、かつ関係国に対しまして各種の働きかけを行うわけでございます。一部の国につきましてはこういったこれらの情報収集活動あるいは工作活動というものを非公然あるいは非合法な形で推進をしておりまして、これらを指して一般にスパイ活動と称しておる、かように理解をしておるところでございます。
○政府委員(筧榮一君) 今警察庁当局から御答弁があったように理解いたしております。
○説明員(浅野大三郎君) ちょっと私どもの所管から申しますと所管外のことになりますので、お答えを差し控えることをお許しいただきたいと存じます。
○飯田忠雄君 これは戦前の話ですが、ゾルゲ事件というのが起こりました。このゾルゲという方は戦争が終わりましてからスターリンが国家の英雄と褒めたたえた人です。このゾルゲ、この人はドイツ国籍、これは裁判の判決文によりますとドイツ国籍を持っておったと書いてある。そしてこの人はドイツ大使に非常に取り入りまして、そしてドイツ大使館には自由に入ることができたといいますが、実際はコミンテルンのスパイであったわけですね。これは判決文に書いてある。私は判決文を読ましていただいた。書いてあるんですよ。この方は非常に合法的にやっております。
 この方の任務は日本政府の方針が北進論であるか南進論であるかを見極めること、つまりソビエトを攻める意思があるかどうかを見極めること、それからもう一つは日本政府をして南に向かわせること、北進論を放棄して南進論をとらせること、こういう任務を持ってやっておられましたね。これも判決録に書いてある。そのために尾崎秀実という日本人の方ですが、これは満鉄の調査員だったと書いてありますが、この人が非常に頭がよくて立派なのでそれと仲よくいたしまして、その方を近衛総理の参与に推薦したんですね。近衛総理の参与になった。そして参与ですからこれは非常に内閣に信任があります。総理大臣も信任して何でもしゃべる、総理大臣が。それをゾルゲに伝え、ゾルゲは通信員にそれを与えてスターリンに伝える、こういうことをやっておったのですね。そして尾崎氏を通じまして日本政府が南進論に向かうようないろいろの情報を提供し、あるいは議論を持ちかけ、やっていったんです。その結果が御承知のような、当時の言葉で言えば大東亜戦争ということになってしまったわけでしょう。
 このスパイの任務というのは、実に恐ろしいことをたくらむものですね。あの当時、本当に日本は本気になって戦争をやるかどうかまだ腹を決めてない。そのときに戦争をやる腹を決めさしたのもゾルゲです。しかも南方に兵を進めることをやらしたのもゾルゲです。こういうことはこれがスパイの実際の本領ですね。いろいろの道がどうなっているとか、だれがどうなったというようなことを探るのは、そんなものはどうでもいいことなんです。施設の問題は今日ではスパイ衛星が全部探知しておりますので、それで足りるわけです。しかし総理大臣の心の中はわからない。総理大臣の心を知るための工作ということは必要です。それから、日本の総理大臣をしてある国のために努力させるという方向に持っていく、そういう工作も必要なんですね。そのためにいろいろのことが
行われておる。
 今後そういうことを行うことに最もよいのは、どういう人が最もいいのか。日本政府が二重国籍者を疑いもなく自分の味方の者であって差別しないで厚遇するというそういう空気をつくり出し、そのできたところでそういう人を頼りにしていくという問題ですね。日本政府の政策をそれによって決定させるように計らっていくということ、こういうことが現実に行われることなんです。いろいろの本を読みましても、そういうことは過去においてもありましたし、今後においても十分行われる。
 こういうような問題があるのに、この二重国籍の問題、被選挙権の問題、二重国籍の人が総理大臣になっても構わない、差別してないのだといったようなそういう考え方、こういう考え方に問題はありはしないか。国家がなくなりまして、一つになって、国連のもとに総合されて一つになる、世界国家になった暁は別ですよ。今日はそうではなくて主権国家が対立してお互いにしのぎを削り合い、あわよくば相手を倒してしまおうとねらっておる現段階において、こういう国際情勢という条件を踏まえた上でどう処置するかということを少なくとも国の政治をあずかる人は考えていただかないと日本国民は不幸なことになります。だからこの問題を私は取り上げているんです。
 こういう問題について、ここでは皆さん方まだ仲間同士で十分御相談になっていないので、お答えになることは難しかろうと思います。だから追及はいたしません。これは真剣に私は考えていただきたいと思うわけです。そういうことをまず注文しましてこの問題はこれにとどめます。時間が大分進んでしまったのでその次の問題に入りますが、時間がないからあるだけやります。
 公職選挙法という法律、これは憲法の委任法であるということは憲法の四十四条をごらんになればわかる、はっきりしているんです。ですから、この公職選挙法の地位というものは憲法に直属するところの基本法なんですね。その地位というものは決して刑法だとか刑事訴訟法だとか民法だとか、そういう基本法の下に置かれるべき性質のものじゃないのです、と私は理解しておるんですが、そういう点について法務省、法制局あるいは自治省の御見解を承ります。御答弁を求めます。
○政府委員(前田正道君) 現在の憲法が国民主権主義を基本原理の一つとしておることは申し上げるまでもございません。その国民主権を具体的に実現いたしますためのいろいろ手続を定めているものが公職選挙法であると存じます。さればこそ公職選挙法の第一条は「この法律は、日本国憲法の精神に則り、」云々というふうに規定がしてあると思います。今御指摘の民法につきましてはこれまた憲法十三条、これに関係をするわけでございまして、十三条なり二十四条等に関係をするわけでございまして、いずれが上いずれが下という関係にはないと存じますが、いずれも憲法を頂点といたしまして我が国法の体系をつくり上げている重要な法律であると存じます。
○説明員(浅野大三郎君) 自治省といたしましても、ただいまの法制局からお答えがあったとおりに考えております。
○政府委員(枇杷田泰助君) 私どもも法制局の方からの御答弁と同じ考え方でございます。
○飯田忠雄君 従来公職選挙法の十一条に一般犯罪に関する問題で欠格要件が書いてありますね。一般犯罪を犯した人が立候補することについてこれを制限する欠格要件を決めておりますね。その公職選挙法の十一条は別に裁判の確定ということを書いてないんですよ。公職選挙法の第二百五十二条は、これは選挙犯罪に関するものですが、これははっきりと裁判の確定ということを欠格要件にしているんですね。同じ公職選挙法という法律の中で条文を書き分けています。十一条の方はこれは別に裁判確定ということを要件にしていない。選挙犯罪の方はしておるということになりますと、これは普通の法解釈の原則からいきますと、十一条の方はこれは一般犯罪に関する人については有罪の判決、禁錮以上の刑に処せられたという判決があれば、それで裁判が確定しようがしまいが、それだけで立候補の資格を失う、こういうことになるように私どもは解されるわけです。
 ここでちょっと断っておかなければいけませんが、私がこの問題を論議するのは、現実に現在参議院議員であったり衆議院議員であったり、あるいは県会議員であったり市会議員である人のことは言うておるのではありませんよ。現在議員になっておられる方は有効に立候補届けをして、それを国の機関が有効な届けとして受け付け、合憲的な選挙を行った上当選してこられた方です。そういう方はそれだけでもう資格があるのであって、たとえ公職選挙法の解釈が私の解釈のように、もう有罪判決があれば資格がないという解釈が成り立ったとしても現在の人には適用にならない。それはそういう法律の解釈よりも国民の意思によって合憲的に行われた選挙の方が強いからです。だから、そういう人について私は今資格がないと言うておるんじゃありませんよ。これまず断っておきませんと皆さん答弁が非常に慎重になってしまうからね。私は断っておきますが、――ああ、これはいかぬ。時間が来ちゃった。もうこの次にやります。時間が参りましたので、きょうはこれで終わります。
○安武洋子君 まず最初にリッカー問題でお伺いをいたします。リッカーの事実上の倒産に伴いまして前払い積立方式の契約者、この債権の保全が大変社会的な問題になっております。これらの小口契約者は一体どれくらいの人数がおりまして、金額は一体どれぐらいになっておりますのでしょうか、お尋ねいたします。
○説明員(糟谷晃君) 関係しておりますリッカー株式会社、それからその子会社でありますリッカーファミリークレジットという、この両社が前払い式の割賦取引を行っているわけでございますけれども、両社合わせまして契約件数で八十万四千件余り、それから消費者から預かっております前受け金残高は七十一億六千万円余りでございます。なお消費者の数につきましては、一人で二口、三口契約している人もございますので正確な数字は掌握しておりませんが、会社側の説明によりますと六十万人ないし七十万人というふうに聞いております。
○安武洋子君 八十万件で七十一億六千万円ですか、約六十万人というふうなことになりますと、一人当たりの金額というのはこれはもうごくわずかな金額になるというふうなことになります。
 そこで、私内容を見てみましたが、リッカーファミリーサークル、これが五コースございまして、毎月二千円から一万円まで五コースある。三十カ月かけまして六万円から三十万円掛けていく。あるいは前払い割賦積み立ての方でございますけれども、これはミシンとか電子レンジでございまして、毎月三千円から五千円掛けますと六万三千円という、ミシン、あるいは電子レンジでございますと六万九千八百円から十三万四千八百円、ミシンも十六万九千円というふうなミシンもございます。ということになりますと、それぞれ金額的に十万円台あるいは三十万円コースもありますから、どう考えましても八十万件で七十一億円、一件当たり九千円ほどというのはこれは余りにも不自然、たとえ一人が一口、二口というふうに入っておりましても、いまの六十万人が七十一億円でございますか、一万円余り、余りにもこれは不自然ではございませんか。積み立てのシステムから考えましても、私は不自然きわまりないと思いますので、内容を御調査なさるべきだというふうに思いますけれども、その点いかがでございましよう。
○説明員(糟谷晃君) ただいま先生御指摘のように、一件当たりにしますと前受け金は一万円弱でございまして、御指摘のような御疑問あるかと思いますが、私ども調べました限りではリッカーの場合もあるいはリッカーファミリークレジットの場合も同様でございますけれども、前払い式契約ということでお客様を見つけ、契約をいたしまして、時期を見て現金払いとかあるいはクレジットに切りかえるというケースが比率から言いますと
非常に大きい。まあお客様の方の御都合による場合もあるでしょうし、会社側のあれもあるかもしれませんが、結果的には最後まで前払いのまま商品を受け取るというケースが非常に少ないということがございます。
 それから、友の会の場合にも、こちらの場合には幾つかのコースがございますけれども、ある程度前払い金がたまったところでその金額に見合う商品にかえてもらうということとか、あるいは残金を支払って最初の予定どおりのコースにするとか、そういう形で最初から契約当時の前払い式というものを最後まで続けるといったケースが極めて少ないということから、こういう一人当たりの金額が少なくなっているというふうに私どもは理解をしております。
○安武洋子君 それでも、積み立て方式とそれからファミリーコースがありまして、途中で品物を受けたりあるいはまた途中からクレジットに切りかえるというふうにしましても、なお片方は六万円から三十万円、片方は五万円から十四万円とか、あるいは十三万円とか十六万円もありますし、非常に金額の高い品物なんですね。ですから私、一人がたった一万円弱というふうなことはどうしても解せないわけです。私は一度ここの点は御調査をしていただきとうございます。
 そこで法務省にお伺いいたしますが、こういうふうな消費者の積立金のような小口の債権、こういうものは和議法とか破産法においてどのように保護されておりますのでしょうか、お伺いいたします。
○政府委員(枇杷田泰助君) 私事実関係がよくわかりませんので抽象的なお答えになろうかと思いますが、そういう前払い金を積み立てておられる消費者の方々の法律的な地位と申しますのは双務契約の買い主の立場にございますので、したがいまして、なおその契約の履行を求め得る、要するに代金を払って品物を引き取るという権利がまだ残っているだろう、それから和議の関係では、割賦販売法によりまして和議の申し立て自体が契約の解除原因になりますので、解除をすればそこで積み立てた額の払い戻し請求権という形で債権が出てくるということになります。その後の方のいわば積み立てた金の返還請求権というものは、これは和議の場合には和議債権ということになるわけでございます。
○安武洋子君 私通産省に申し上げとうございますけれども、同じような債権と申しましても、こういうふうな小口の債権でございますね。これは大きなところの融資と同一にしてもらっては困ると思うんです。
 銀行とかいうふうなところは融資そのもので利益を追求いたしております。そして担保もとりますし、また融資先を選別もするというふうなことで、リスクについては十分に計算をして、そして融資を行っているというふうなことになります。ところが、一般の主婦が私は大半ではなかろうかと思いますけれども、しかも一般の主婦でも非常に固まったお金を出しにくいというふうな層が多いのではなかろうか、まあ月々三千円から一万円ぐらいなら何とかなるんじゃなかろうかというふうな主婦の人たち、こういう人たちが主になりまして出しているお金というふうな債権は、これは電気製品を買うとかミシンを買うとかというふうなことになるわけですけれども、こういう積立債権はやはり消費者を保護するという立場で考えていただくべき問題ではなかろうか。消費者保護の観点からどういうふうなことを考えておられるかということをお伺いいたしとうございます。
○説明員(糟谷晃君) 私ども前払い式の割賦取引につきましては、事前に消費者の金を預かるというところから、その前受金の保全については法律上もいろいろな配慮をしているところでございます。先生御承知のように総額の二分の一につきましては保全措置が法律上義務づけられているわけでございますけれども、残りの二分の一についてどうなるかというところが焦点かと存じます。
 私ども、このケースは和議手続が開始されたということで、その和議法との関係をどう考えたらいいのかは実は難しい問題になるわけでございますけれども、私どもこの小口債権、これは法律上は和議債権に入るようでございますけれども、もとをただせば個々の消費者が積み立てたお金でございますから、こういう小口債権について消費者保護の立場から何か特別の扱いがとれないものだろうかという希望を持っておりまして、ただ、そうは申しましても一方で和議法という厳然たる法律の枠組みの中に入ってしまっておりますので、その法律の枠組みの中でどこまでそういう小口債権が特別扱いできるかということに私ども今関心がございまして、裁判所の方とも密接な連絡をとりながら私どもの希望をお伝えして、可能な限り消費者の立場に立った扱いができないものだろうかということを御相談している段階でございます。
○安武洋子君 具体的に今どのようなことをお考えでございましょうか。
○説明員(糟谷晃君) 和議債権の中には今先生お尋ねの大口の債権者もおりましょうし、それから小口の債権者もいるわけでございますけれども、その中で消費者が契約を解除した場合に生じます前払い金の返還請求権、この債権について優先的な弁済ができないかどうかということについての意見調整をやっているところでございます。
○安武洋子君 消費者の保護という立場から、積立金、これは二分の一ということでなくて、全額リッカーとか日本割賦販売の責任で補償させるというふうに私はすべきだというふうに思いますけれども、御見解を伺います。
○説明員(糟谷晃君) 私どもこの事件が起こりましてがらまず真っ先にリッカーを呼んで指導いたしましたことは、まず前受金の総額がこれ以上広がる、多くなるということは避けたいということで、その趣旨に沿った行動をとるようにという指導をいたしました。それからもう一つは、既に契約をしているお客さんがいるわけでございまして、この方の救済というか、商品を手に入れるというのが最終目的でございますので、例えば残金を一括払いすることによって商品を手に入れることであるとか、あるいはクレジットへの切りかえをして商品を渡して代金を後払いにするとか、あるいは金額相当の他の商品をもって弁済に充てるとか、こういういろいろな方法があり得るわけでございますので、こういう形で消費者の救済を図ったらどうかということをリッカーに指導をしているということでございます。
 そういうことで事実上徐々に消費者の救済が進みますと、二分の一の保全措置というものがより大きな効果を持ってくるわけでございますので、そういう形で事実上の指導と、それから二分の一の前受金の保全措置、こういうものを組み合わせて消費者保護に当たっていきたいというふうに考えております。
○安武洋子君 では、和議手続が開始されました場合、この債権者集会に小口債権者、これは含まれるんでしょうか。
○政府委員(枇杷田泰助君) 幾ら金額が少なくても和議債権でありますので、その債権者は債権者集会で言う債権者に当たると思います。
○安武洋子君 それはそうでしょうけれども、全国に散らばっている八十万人、しかも家庭の主婦とか、そういう人たちが多いし、その人たちが集まってだれを代表者にするかというふうなことも、選出するというふうなこともなかなかできないでしょうから、八十万人をまた入れるところもございませんでしょうし、実際問題としてこの小口債権者の利益、これはだれが代表するというふうなことになるのでしょうか。
○政府委員(枇杷田泰助君) それは事実上確かに何十万人という方が集会に参加するということは不可能だろうと思います。ただ、それを法律的には個々の委任を受けた方がどなたか出てこられれば、それでも済むだろうと思いますけれども、法律上当然にだれが代表するということは、法制上当然には出てこないと思います。
○安武洋子君 ですから、法的には八十万件ですか、六十万人とおっしゃった。六十万人の人たち
がそれぞれ小口債権者というふうなことになるわけですけれども、実際問題としてその人たちが自分の利益を擁護するというふうな立場には立てないということになるんじゃないですか。
 そこで、私通産省にお聞きいたしますけれども、通産省がこういう小口債権者の言い分、これはきっちりとわきまえて、やっぱり代弁するという立場に立っていただかない限り、六十万人を実際に集めてだれを代表者にするとか、地域を分けるにしても、どの地域から代表者を出すとか、そんなことはとてもできる相談じゃないわけなんです。ですから、和議までのいろいろな過程もありますし、それから和議手続が開始されましたときのその後の問題もいろいろありますから、私はそういう全過程を通じまして一貫してやはり小口債権者の代弁者の姿勢というのを通産省がおとりいただく、そういうことでなければならないと思いますけれども、通産省の御見解をお伺いいたします。
○説明員(糟谷晃君) ただいまの小口債権者と和議債権者の関係でございますけれども、法務省の方でお答えになったとおりでございますけれども、私どもとしては関係する消費者が非常に多いということから、現在やっておりますのはその消費者の数を減らす、潜在的な和議債権者の数を減らすというところに一つ重点を置いてやっている面がございます。それは先ほどお話しましたように、代物弁済であるとか、あるいは残金の一括支払いによる商品の受理ということになりますと、そこで契約関係が終結するわけでございますので、こういう形で消費者の希望に応じつつ、かつ関係する消費者の数を減らしていくというのが現在私ども重点を置いてやっていることでございます。
 そういうことで債権者の数あるいは消費者の数が減ればそれだけいろいろな救済もやりやすいということで、その両面から取り組んでいるところでございますが、いずれにしましても小口の債権者、すなわち消費者でございますので、私どもできる限り力を尽くしてそういう消費者の利益が損なわれないように、これからも全力を挙げて取り組んでいきたいと考えております。
○安武洋子君 それは債権者を減らす手だてをとっていただくというのは結構なことなんです。ところが、六十万人もいるわけですから、ですから、こういうことは今までなかったような事態ですからね。六十万人をどんどん減らしてしまっても、しかしなかなかそういう人たちの利益は個人個人では擁護できないので、もう一度重ねてお願いをいたしますけれども、通産省がその人たち、小口債権者のお立場にしっかり立っていただく、その擁護の姿勢を貫いていただくということをお願いいたしておきます。
 今回の和議に至ります経過というのは極めて不自然でございます。報道によりますと、ツガミとか東邦生命グループ、これが再建に乗り出す話が和議申請以前から行われてきていると報道もされておりますし、また売るべき資産がありながらなかなか契約をまとめようとしなかったとも言われております。計画倒産の疑いも指摘をされているわけでございます。もし計画倒産というふうなことでございますと、これは極めて重大な問題でございます。幾十万という消費者を犠牲にして経営の危機を乗り切るというふうなことは、私はこれは許せないことだというふうに思うわけです。
 そこで、法務大臣にお伺いをいたしますけれども、計画倒産ではないかと、こう言われていることにつきましてどうお考えでございましょうか、お伺いをいたします。
○国務大臣(住栄作君) 実はせっかくのお尋ねでございますけれども、私事実関係についてはよく承知しておりませんので、特に今の質問に対してお答えするような材料も持っておりませんので、大変申しわけございませんが、御理解いただきたいと思います。
○説明員(田辺俊彦君) リッカーの和議申請問題に関しましては、二十三日に和議申請を行いまして地裁に受理されたわけでございます。私どもその原因につきましていろいろヒアリングを行い、調査をしているところでございますが、最大の原因はやはり家庭用ミシンの需要停滞、その中で経営多角化に向かった会社がとりわけホテル部門その他への進出が大変に予定どおりの成果を上げ得なかったということがあると思います。関連会社の経営難、借入金の増大といった点が問題だったかと思います。また、ミシンメーカーは、そういう需要停滞の中で、コンピューター化、技術革新の波の中でそれぞれ努力をしているわけですが、当該会社につきましては、そういう面、それから販売力の面、販売管理力の体制の不十分さ等々の総合的な要因で和議申請に至ったと考えております。
 先生お尋ねになられました計画倒産か否かにつきましては、私ども、新陣容、新しく経営陣が変わりつつありますが、それらの方々といろいろお話をしてまいりたいと思いますが、計画倒産か否かにつきましては、これはまた地裁等々の司法当局の審理を待たなければならないと思います。今のところは、私どもの調査の段階ではそういう事実関係について把握しているということではございません。
○安武洋子君 大臣は経過を御存じないということでございますが、ひとつ経過をよく御調査をいただきまして、重大な関心を払っていただきたいと思います。
 これは報道の中でも、和議申請をした上で再建に協力することにしたのは多額の債権の一部を切り捨てなければ負債の利子負担が大きく再建の成算が立たなかったためと見られるとか、あるいは金融機関の間には売るべき資産はまだあるし計画倒産ではないかという疑いが当初から出ていたとかというふうなことが言われているわけです。これが計画倒産だといたしますと、私は先ほども申し上げましたように、本当に幾十万という消費者、しかも零細な主婦たちが大変多いわけでございますね。一挙にたくさんのお金を出して品物を買うということはなかなかできがたいけれども、わずかのお金を積み立てて、そして家庭電気用品を買おうというふうな、そういうつつましやかに本当に計画を立てている、そういう人たちを巻き込む大きな問題になろうかと思うわけです。
 で、私はぜひ調査をしていただきたい。破産犯罪というふうな疑問を提起されてもおります。ですから私消費者を巻き込む、こういう重大事件に発展するということにもなりかねないわけですので、消費者保護、これをずっと念頭に置いていただきまして、そして事の推移を十分関心を持って見守っていただきたい、こう思いますので、大臣にもう一度御答弁をお願いいたします。
○国務大臣(住栄作君) 通産省とも十分連絡をとり相談しながら、私も重大な関心を持って対処してまいりたいと思います。
○安武洋子君 では、サラ金業界の政治献金についてお伺いをいたします。
 まず最初に刑事局長にお伺いをいたしますが、大阪のタクシー汚職事件では被告であった国会議員に対しまして、たとえ所属する委員会は違っておりましても、ある法案に関連いたしましてわいろを受け取る、こういうことは職務権限であると言えるというふうな判決がございました。そこで念のためにお伺いをいたしますけれども、自分の所属する委員会で、しかも議員立法、すなわち自分自身も参加をして作成するというふうな法案に関係をいたしまして、直接利害関係のある業界の団体、そしてもしくは個人からお金、わいろを受け取れば、これは職務権限の関連で受け取ったということは明白だと、こういうふうに思いますが、いかがでございましょうか。
○政府委員(筧榮一君) 大体安武委員御指摘のとおりだと思いますが、ただ職務権限があるということと、当該具体的な金員の授受がその職務と対価関係にあるということが、もう一つ要件があろうかと思います。その具体的な事実関係によって左右されると思います。ただ職務権限があるかないかという点については今先生御指摘のとおりかと思います。
○安武洋子君 では、自治省にお伺いをいたします。
 昭和五十五年度でございますが、山崎武三郎の会という政治団体に五十五年五月二十七日付で株式会社ジャシック、ここから百五十万円、それから株式会社山崎商事百五十万円、計三百万、この寄附が行われていると思いますけれども、間違いございませんでしょうか。――ちょっとお待ちください。済みません、委員長。資料を配らせていただきたいんですけれども、よろしゅうございましょうか。
○委員長(大川清幸君) はい、どうぞ。
   〔資料配布〕
○安武洋子君 じゃ、御答弁お願いいたします。
○説明員(山崎宏一郎君) 自治省に提出されました収支報告書によりますと、昭和五十五年に山崎武三郎の会に対しまして株式会社ジャシック及び株式会社山菱商事からそれぞれ百五十万円の寄附がなされております。
○安武洋子君 私、山崎と言い間違えました。ごめんなさい。正確には株式会社山菱商事でございます。
 この山崎武三郎の会という政治団体、これは名前のとおりに衆議院議員の山崎武三郎氏の政治団体でございます。一方株式会社ジャシック、それから株式会社山菱商事、この両社はいずれもサラ金会社でございます。これはサラ金会社の株式会社レイクの子会社なんです。この両社とも株式会社レイクと同じ住所でございますし、また役員が重複しているということを見ましても、この両社が株式会社レイクの子会社であるということは明白でございます。
 ちなみにレイクの住所でございますが、私はここに登記謄本を持ってきております。レイクの住所でございますが、大阪市東区淡路町二丁目二十番地でございます。そして株式会社山菱商事、この住所もまた同じく大阪市東区淡路町二丁目二十番地でございます。それからジャシック、この本社の住所もまた大阪市東区淡路町二丁目二十番地でございます。
 それからさらに、この山菱商事の代表取締役、これを見てみますと、浜田武雄氏、この方はレイクの代表取締役でございますし、それから取締役に谷口龍彦さん、それから監査役に大島直義さん、こういう方などもおられますが、これもレイクの方を見てみますと、レイクの役員を兼ねておられます。レイクの取締役谷口龍彦さん、監査役大島直義さんということで登記をされております。一方、ジャシックの場合でございます。これも取締役の浜田淑正さん、この方はレイクの取締役でもございます。しかもこのレイクといいますのは五十九年四月三日に合併をしておりますね。ジャシックがレイクに合併をしている。こういうことでございますので、レイクの子会社ということはこれはもう明白なことでございます。
 こういう事実に立って考えますときに、これは非常に重大なことではなかろうかというふうに思うわけです。ちょうどこの政治献金が行われておりました時期でございますけれども、これはサラ金問題が非常に問題になりまして全国的にも被害が広まりました。社会的な問題になりまして、各党が立法提案を行っているというふうなことで大変論議がされていた時期でございます。昭和五十三年三月二十三日には全国庶民金融業協会連合会で法制対策小委員会が設置をされております。それから昭和五十三年十二月二十二日には私ども共産党が議員立法を提案いたしております。それから続いて五十四年の五月二十二日には社会党の方で提案をなさっておりますし、また五十四年の五月二十九日、これは自民党、公明党、この両党が提案をされているわけです。そして五十八年の四月二十八日に国会でこの法案が成立をいたしまして、五十八年の十一月一日に法が施行されております。しかも山崎議員は自民党の政務調査会の財政部会のサラ金対策小委員会の委員でございます。そして山崎氏は大蔵政務次官を歴任して、当時は衆議院の大蔵委員でございます。五十五年から五十六年にかけまして大蔵委員会の理事という重責についておられます。
 山崎氏は、ここに私は日本金融新聞というのを持ってきておりますが、サラ金業界の業界紙でございますけれども、昭和五十六年四月一日付の記事が載っておりますが、この中にこの年の二月十七日に自民党の本部で開かれました全金連臨時総会、ここに国会報告を兼ねてごあいさつに出ておられます。その後で全金連の丸山会長といろいろ話をされているんですね。そのやりとりがこの新聞にも載っております。
  丸山会長「三月から四月にかけて全金連は全国の協会を挙げて各党に陳情しますので…」
 山崎代議士「三〜四月なんてトンデモナイ。今(二月)からやらないと。そういうことだから法案が遅れるのだ。ともかく法案の中身をできるだけ多くの議員に理解してもらわないと、この法案はあがりませんよ。死にもの狂いで…」
 丸山会長「わかりました」
 こうして全金連の波状的な与野党陳情攻勢は、二月二十五日から始まった。
こういうふうに報道されまして、これ御覧いただきましたらおわかりのように、ここに写真も載っております。この写真は「「陳情が三〜四月なんてトンデモナイ。二月からでないと! 中身を一人でも多くの議員に理解してもらわないと、法案はあがりませんよ。死にもの狂いで!」とハッパをかける山崎武三郎代議士。炎ロ山会長(二月十七日全金連臨時総会)」、こういうふうに写真に注釈もついてございます。
 こういうふうな一連の経過を見ましても、とりわけ山崎議員の場合職務権限があって、そしてなおかつサラ金法成立の陳情を受けておられる、そしてまたハッパもかけておられるわけですね。やはりサラ金法成立の陳情を受けて、そして請託があったと疑われても仕方がないという事実が次々とあるわけでございます。私は山崎氏に対するサラ金業者からの当該献金というのは単なる政治献金ではない、まさにわいろと見るべきではないかというふうに思うわけでございます。
 以上の私の指摘は捜査の端緒となり得るというふうに思いますけれども、検察当局においても調査をお願いしたい、こう思いますが、いかがでございましょうか。
○政府委員(筧榮一君) ただいま先生御指摘の点は、検察当局の方へしかるべく連絡をいたしたいと思います。
○安武洋子君 私、これは有責性、それから違法性もともに明白であるというふうに思うわけです。そして今挙げましたのは、きょうは一例だけでございますが、ほかにもございます。きょうは顕著な例を一つ挙げさせていただきました。そういうことで、ぜひ検察当局においても調査をお願いしたい、このことを強く申し上げまして、もう一度御答弁をいただきまして質問を変えたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
○政府委員(筧榮一君) ただいま申し上げましたように、先生御指摘の資料、事実等は検察当局へ伝達いたしたいと思います。
○安武洋子君 では、裁判所の再配置の問題につきましてお伺いをいたします。
 最高裁がこの二月に法曹三者協議の場に提起をなさいました「裁判所の適正配置について」、これは先月協議の議題とするということに決まったようでございます。この点についてお伺いをいたしますけれども、まず戦後全国に五百七十五カ所設置をされまして、身近な裁判所として発足してまいりました簡易裁判所の性格、理念、こういうものを最高裁判所としてはどのようにとらえておられるのか、また裁判所の再配置につきましての協議、これはこれから進められると思いますけれども、私はこの協議の基本として、いわゆる民衆裁判所、それから駆け込み裁判所、こういう表現にあらわされておりますように、簡易裁判所の性格をより充実させる、こういう基本的な立場を貫くことが必要ではなかろうかというふうに思います。どうお考えでございましょうか、御見解を伺います。
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 戦後の昭和
二十二年に簡易裁判所制度が発足したわけでございますが、これは委員御承知のとおり少額軽微な事件を簡易な手続で迅速に処理する裁判所という性格を持っておりまして、そういう観点から比較的国民に親しみやすい性格を持っておるわけでございます。当初は五百五十七庁設置されたわけでございまして、その後数がふえまして現在では五百七十五庁ということに相なっております。
 私ども今回問題提起をいたしましたのは、戦後の二十二年から現在までの四十年の間に人口の都市への集中であるとか、あるいは町村の統合による行政区画の変更であるとか、さらには交通事情の著しい好転というように社会事情が非常に大きく変わっております。ところが裁判所の配置は昭和二十二年当時のまま現在に至っているわけでございまして、そこからいろいろな問題が生じてきておる。御承知のとおり都市部の裁判所に事件は集中し、郡部の裁判所では事件が非常に少なくなっておる、あるいは行政区画の変更に伴いまして裁判所の管轄区域自体も減少しておるところもある。さらには人口動態の変化によりまして裁判所の所在地の町村よりも隣の町村の方に人口が集中しているというところもございます。
 それから、事件数が少ないがために裁判官一人を常駐させることができませんで、週一回、あるいは月二回填補で出向いて処理するのを当事者が待っていただかなければならない、そういう御不便さも生じてきておる。それから、そういうところには弁護士さんがいらっしゃいませんので、弁護士さん、検事さんあるいは裁判官が一緒になって填補しなければならないというロスも出てきておる。こういう問題はやはり現在の裁判所の配置が現在の社会事情にマッチしていないからではないだろうか。今日非常に交通事情がよくなっておりまして、日帰り行動圏というものが非常に拡大しております。そういう状況を踏まえて小規模な、ちょっと足を伸ばしていただくと常駐する裁判所に出向いていただくことも可能になっている。こういう状況下におきまして、小規模の裁判所の集約化を図って、場合によりますと管轄区域の見直しであるとか裁判所の所在地の変更というような点も多角的に検討いたしまして、それによって生じた人的物的余力というものを残った裁判所に振り向け、裁判所全体の充実強化を図りたいという見地から今回の問題提起をしているわけでございます。
 で、簡易裁判所の性格につきましては、先ほど申しましたような性格を変えるつもりは毛頭ございません。
○安武洋子君 庶民の大変身近な裁判所という立場で、私は、今社会事情の変更とか、ちょっと足を伸ばせばとかというふうなこともございましたけれども、ただ単なる効率性だけを問題にいたしまして再配置の物差しにするということはふさわしくないというふうに思うわけです。訴訟とか調停の件数だけをとらえまして小規模な簡易裁判所が統廃合されるのではないかという心配、これは地方に行きますと大変強うございます。
 例を挙げますと、兵庫県の八鹿町あたりでも民事事務移転庁になっておりますので、豊岡とか和田山に統合されはしまいかと住民が危惧をいたしております。
 八鹿簡裁は養父郡全部、それから美方町、村岡町、非常に広範囲なんです。みずから何も過疎になることを望んだわけではございません。むしろ町の発展のために一生懸命頑張ってきた。けれども、行政によって過疎にさせられてしまった。そうして、その中で行政サービスもおろそかになってきているのに、さらに司法サービスまで切り捨てられてしまうというふうなことになりますと、住民は全くたまったものではないわけなんです。国鉄のローカル線のように乗車効率だけとか、あるいは営業係数とかというふうな採算の観点からだけ切り捨てていく、こういうやり方を司法の中にも持ち込んでくるというふうなことになりますと、私はやはり大変なことではなかろうか。
 現に兵庫県にございます宝塚市、ここは二十四年四月に伊丹簡裁に全部事務移転されております。ところが現在の人口は十九万都市というふうに発展をしてきておりますし、ここは住宅地としてさらにもっと大きく発展しようとしております。そして隣接に川西市というのがございますが、ここは人口十三万五千人、簡裁ございません。しかしこの川西市は今もう住宅地としてこれもまた大変な勢いで発展しようとしているということでございます。そしてまた今言いました伊丹簡裁の隣接に三田市もございますけれども、ここは刑事のみ扱っておりまして、伊丹市、ここは人口十八万でございます。ここも簡裁だけだというふうなことになりますので、阪神の北、非常に広大な地域で人口が五十五万五千人、さらに増大する見込みというのが十分にあるところでございます。この地方で民事は全部伊丹に行かなければならないというふうなことになってしまっているわけです。
 ですから、私は後に災いを残すというふうなやり方というのは十分留意をしていただかなければならないのではないか。今の現状だけを固定的に考えて、そして採算だけ、効率だけというふうなことで考えていただいては困るというふうに思いますが、いかがでございましょうか。
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 今回の裁判所の配置の見直しの対象になる裁判所は余り利用されていない裁判所、逆に申しますと受件数の少ない裁判所が対象になるわけでございますけれども、ただ住民の利用度が低いとか、あるいは受件数が少ないと申しましても、その地域の実情は種々さまざまでございます。交通事情について申しますと、先ほど申しましたように比較的隣の裁判所へ行きやすいというところもございますし、なかなか交通事情がよくなくて隣の裁判所へ行くのに一日を要するというようなところもあるわけでございます。
 私ども配置の見直しをいたします際に、これはやはり国民の裁判所利用の便益につながる問題でございますから、単に効率性の観点からのみ律していこうとは考えておりません。やはりそれぞれ地域の実情がございます。先ほど御指摘のように人口がこれからますますふえていくようなところもございますし、そういうところにつきましては、いろいろ地域の実情を綿密に検討した上で、現在の社会事情それから比較的予測できる将来の社会事情にマッチした裁判所の配置ができるように、場合によりますと人口急増地帯への新設ということも考えなければなりませんし、場合によりますれば民訴事務移転の解除ということも将来の動向等も見きわめながら考えなければならない場合もあろうかと思いますけれども、その辺のところは十分綿密に検討して慎重に進めてまいりたいというように考えております。
○安武洋子君 重複する点もございますけれども、重ねてお願いいたしとうございますが、採算的な効率性というのでなくて、むしろ交通網も変化をいたしております。それで管轄が変わった方が、先ほどおっしゃったように、その地域に行くのに確かに便利がいいというふうなこととか、あるいは司法サービスがより向上するとか、また非常に飽和状態になっておりまして分割する方がより事が速く進んで住民が便利になるとか、また住民の利便性とかニーズにこたえるというふうな、やはり私は国民の司法へのニーズにきちっとこたえる、そこをまず重視するというふうな立場で再配置をぜひとらえていただきたい。もう一度重ねてお伺いいたします。
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 先ほども管轄区域の見直しということを申し上げましたけれども、それは今委員御指摘のように、管轄区域を分割して住民により利用していただきやすいように見直しをするということも含まれるわけでございます。私どもといたしましては時代の変化に適切にこたえ、国民に一層充実した司法サービスを提供できるような体制を築き上げたいというように考えております。
○安武洋子君 例を挙げます。神戸支部で申しますと、先ほどのように宝塚簡裁が伊丹に統合をされております。それで、その伊丹の隣接の三田簡
裁も、民事は伊丹にと事務移転されております。ところが交通の便は、これは三田から伊丹ということになりますと非常に悪いわけなんです。これはいわゆる国鉄とか私鉄とかという、そういう交通機関は何もございません。三田市といいますのは、これも人口が年々ふえまして、神戸市の北に隣接するわけですが、十万都市というような大規模なニュータウン計画、この建設計画を持っているわけなんです。ですから、これからどんどん人口がふえようというふうなところでございます。こういうふうな状況の変化から生じた事態、この改善を私は図るような再配置をしていただきたい、こう望みますが、この点はいかがでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 私どもが配置の見直しを検討するに当たりまして、先ほど御指摘のようないろいろな計画が地域によってございます。そういう計画もにらみ合わせて、今後の人口動態の変化というようなことも踏まえまして考えてまいりたいと思っているところでございます。
○安武洋子君 じゃ、最後にお願いをいたしておきますけれども、自治体とか住民にその結果だけ押しつけてしまう、そういうことは私はもう絶対にあってはならないというふうに思うわけです。ですから、その過程で十分に自治体、住民などにも協議をしていただきまして、合意を得て物事を行っていただきたい、このことをお願いいたしとうございますが、この点いかがでございますか。
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) この裁判所の適正配置の問題は、地元の自治体なり住民の方方の御理解を得なくては到底実現できない問題であることは私どもも十分認識しているところでございます。今後いろいろな機会をとらえまして、自治体なり関係各方面の御意見を十分伺い、かつ私どもの存念を十分御理解いただくように取り計らって進めてまいりたいというように考えております。
○安武洋子君 最後に申し上げておきますけれども、簡裁の統廃合は駆け込み裁判所とは矛盾をいたします。ですから統廃合とは切り離して管轄問題を考えていただきたい、この点を申し上げておきとうございますが、その点いかがでございますか。
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 先ほども申し上げましたように、国民の日帰り行動圏というものが昭和二十二年当時と比較いたしますと非常に広がっているわけでございます。そのような状況を前提にして再配置と申しますか適正配置の問題を考えなければならないわけでございますから、おのずから集約化の問題は当然出てこようと思っております。集約化の問題と切り離して管轄区域の見直しをするというわけにはまいりませんで、先ほど申しましたように集約化、それから管轄区域の見直し、あるいは新設、昇格の問題、さらには所在地の変更の問題、これらを多角的に検討してまいりたいというように考えております。
○安武洋子君 だから、最初に私申し上げた、自分で好んで過疎にした、住民はそうしたんじゃないわけなんです。そして件数が少ないといいますけれども、非常に広大な地域で、もう駆け込み裁判所だというふうな性格を忘れてもらっては困るということも申し上げたわけなんです。駆け込み裁判所的なものがはるか遠くに行かなくてはならないというふうなことになりますと、私は件数が少ないとかというふうなことで非常に不利益をこうむってしまう。やっぱり統廃合というふうな問題と切り離して管轄問題というふうなものは考えていただかないといけない。それでなければ住民の一人一人のやはりニーズにこたえていただくというふうなことはできない。このことを強く申し上げまして、ちょうど時間が参りましたので私の質問を終わらせていただきとうございますけれども、どちらにしましても統廃合と切り離して管轄問題は考えていただきたい、このことを主張して私の質問を終わります。
○柳澤錬造君 きょうは難民の問題についてこれから御質問してまいります。最初は総論的なことを若干お聞きして、それから今度具外的な点で二、三の人のことについてお聞きをしてまいります。
 最初は、昭和五十六年に難民条約を世界で八十九番目という大変おくれて批准をしたわけなんです。ともかく批准をされて三年たちました。あの難民条約を批准して、日本政府のいろいろおやりになっている態度というか取り扱いについて、お変わりになったんですか、それとも従来のままなんですか。その辺をまずお聞かせをいただきたいと思います。変わったとするならばどういう点が変わったのかということを知りたいんですから、その点をお答えいただきたい。
○政府委員(田中常雄君) お答えいたします。
 我が国に庇護を求めてきた難民につきましては事人道問題でございますので、かねてから特段な配慮をしてきたところでございます。五十七年において難民条約が批准発効いたしまして、その後、新たに法務省といたしましては難民の認定の作業をするということになり、また一時庇護上陸という制度も新たに設けたわけでございます。そして難民認定作業は、難民条約に照らし難民であると申請している人が果たして難民であるかないかを認定する作業でございまして、また一時庇護上陸というのは、御存じのようにベトナムから非常に大量のボートピープルが来るということでございますが、今日まで全員七千六百何十名かについて一時庇護上陸を与えているということでございます。
○柳澤錬造君 いや、局長、条約を批准したことによっていろいろ日本政府が今まで難民、流民の問題を扱ってきたのが変わったのか、変わらなかったのか。ボートピープルで七千六百幾らやったという、そこはわかっているわけなんです。難民条約ができた、それでよかった、それでいろいろな点でもって便宜を図ることができたしということがあったのかどうかということをお聞きしたかったんです。したがって、そこのところも含めて、その先の点でもうちょっと立ち入ってお聞きをしているわけだけれども、日本政府は難民の人たちというものを本当に温かく迎えてやろうというお気持ちがおありになるんですか。それとも、もうなるべくならば来てほしぐないんだ、それが本当の率直な気持ちなんだという気持ちでおるのか、その点はどちらなんですか。
○政府委員(田中常雄君) 難民条約批准以前におきましても、日本政府は事人道問題であるということにつきましてはしかるべく対処してきたと思います。しかし難民条約へ加入すればやはり気持ちの上においても一層人道的な配慮をし、難民条約に盛り込まれた趣旨というものを体してしかるべく措置していきたいということでございますもので、個々のケースについてもそれ以前よりますますいろいろ配慮が行われてきた、そういうふうに考えております。
 また、難民を温かく迎える気があるかどうかということでございますが、現在委員もよく御存じのように、世界には非常に大勢の難民がございまして、我が国といたしましても毎年約数千万ドルにわたって国連等の機関を通じてこれらの難民に対して援助の手を差し伸べておりますし、また我が国に庇護を求めてくる難民というものに対しても人道的見地に立ってできる限りの配慮をしている、温かく迎えているということでございます。
○柳澤錬造君 じゃ、こう解釈してよろしいんですね。難民条約ができた、いろいろあの中にあることについてはそれを遵守して、ここで人道上の問題として温かく迎えていく、そういう気持ちでやっておりますと。
 じゃ、そういう理解をさせていただいて、次にお聞きをしたいのは、難民問題にお取り組みになるについて形式主義で取り組まれているんですか、それとも実質主義で取り組まれているんですか、どちらなんですか。ここは後で大臣の方からもその辺の、どちらに重きを置いているのかお答えしていただきたいと思いますけれども、局長の方から最初にお伺いしたい。
○政府委員(田中常雄君) お答えいたします。
 余り私はこの仕事をしているときに当たって形式主義とか実質主義とか、そういう意識はございません。また委員が御指摘の形式主義または実質主義というのはどの点をお指しになっているのか実はよくわからないのでございますけれども、私なりに解釈して申し上げますと、条約難民につきましては当然のことながら条約の趣旨に従ってしかるべく対処していく、またその人が我が国に在留をしたいというならば、これは在留は当然許可されております。それから、条約難民に当たらない人でございましても、我が国において保護を与えるのがしかるべきと考える人に対しては在留特別を許可している、そういうことでございます。したがいまして、個々の事情を十分に勘案しながら案件の処理をしかるべくやっていく、また今後ともやっていきたい、そう考えている次第でございます。
○柳澤錬造君 大臣、もうちょっとひとつ。局長の方から、今形式主義か実質主義か、そんな区別はしていないが、どういう意味でそういうことを言われているのかというふうに言われましたので、私はなぜそういうことをお聞きするかということは、かなり私もこの難民の問題を扱ってきていつもぶち当たるのは、パスポートはどこの国のパスポートかということに非常にこだわる。
 ある難民の人なんかというのはラオスで十八年間も育っておって、生活をしておって、それで台湾へ寄って台湾におったのがたった二カ月、それで日本に入ってきて、いろいろずっとまた日本に長いことおるわけだけれども、それが私が法務省といろいろ話の中にぶつかるのは、この人は台湾パスポートですから台湾政府が保護すべき人なんです、何も私たちが面倒を見る必要はありませんと、こうなる。仮に日本に入ってくるについて、仮のパスポートをつくってもらっている。犯罪者が悪いことをしようというときににせのパスポートをつくるのと、本当に国が戦争なり政治体制の変革でもってもう脱走してきて、どこかでもってとりあえずのパスポートをつくってもらってやってくるのと、それは大臣違うということはおわかりでしょう。
 そういう意味で、いろいろな面で日本政府がおやりになっていることについて、だからどちらをおとりになっているのか。どうも形式主義過ぎやせぬかという気がするんです。何でもう少し実態を見て、実質を伴って判断してくださらないかなということでお聞きをしているわけなんで、今度は大臣の方からお考えを伺いたい。
○国務大臣(住栄作君) 私は、難民条約批准もしておりますし、日本がこの難民問題について人道上の配慮から、また特に日本の場合はアジア地域の難民でございますから、アジア地域の安定という観点からもこの問題について真剣に取り組まなければならない、こういうように思っております。
 形式主義か実質主義がという問題でございますが、ある人がいわゆる条約上の難民であるか、条約難民であるか、あるいはそれ以外のいわゆる流民、まあ私余りこの言葉好きじゃございませんが、流民がと、こういうような違いも扱いの上としてはとっておる。これは私はそういう意味で形式主義じゃないかとおっしゃることはよくわかります。しかし条約の難民として見るのか、流民として見るのか、これはまた別問題としまして、条約難民であれ流民であれ、日本においては実際上の扱いとしては差のないような扱いにしていかなければならない。また事実そういうような取り扱いをしておると思っておるわけでございまして、そういう意味で形式にとらわれているのじゃないかとおっしゃられればそういう面もなきにしもあらず、と同時に本当にその立場を考えてやっておる、こういうことであるならば、私は実質的なその実態というものを十分把握した上で処理がされておるし、また処理していかなければならない、こういうように考えております。
○柳澤錬造君 大臣、本当にありがとうございます。そういうお考えで法務省の中も取り扱うように御指導していただきたいと思うんです。
 それで、今度若干具体的な問題で触れていくんですが、昭和五十六年十一月十八日に、当時は奥野法務大臣だった。それで奥野法務大臣、私も大臣室でお会いして一時間以上も話をしたこともありますが、この難民の問題、大変いろいろの面で御配慮をしてくださった。そういう点で、衆議院の私どもの同僚の岡田正勝議員がこの難民の人たちの代表を伴って奥野法務大臣をお訪ねしてお礼を申し上げたわけなんです。そのときに、先ほども言ったように、いわゆる仮のパスポートで日本に入ってくる、いよいよ日本に住めるようになったんで、やっぱり自分の本当の名前のパスポートにしてほしいというようなことの話をしたときに、法務大臣もそれについて理解を示して、それはそういうふうにしてやったらいいじゃないかという善処の約束もしてくださったんです。
 ところが、ここに現実にタイのパスポートでソムチャイ・スリスラックさんという方で、本名はラオス人でリム・マハラさんなんです。ところが、大臣が変わってしまったせいか何なのかわからないんですけれども、そのまま依然としてパスポートを変えていただけない、本名におけるそういうことがしていただけないわけなんです。どうしてそのくらいのことがおやりになっていただけないのか。大臣が変わったからといって一回お約束したことは守ってほしいと思うんですけれども、その点はいかがなんですか。
○政府委員(田中常雄君) この件について私調べてみたのでございますが、外国人登録法の第十条の二に「登録の訂正」という項目がございまして、自分の氏名を訂正したい人はその旨市区町村に申し立てをすることになっております。
 そして、該当市役所にけさほど確認したのでございますけれど、このソムチャイさんというべきなんでございますか、マハラ・リムさんというのが本名らしいのでございますが、この方は訂正申告をいまだしてないわけでございます。ついては、その該当市役所に行きますと訂正申告の申立書というものがございますから、そこに自分がこれこれこういうのが本名であるということを申し立てていただきたいと思います。もちろん訂正申告をするときにはそれを疎明する資料があれば一番結構でございます。しかしインドシナの戦乱、動乱を逃れてきた人の中には自分の名前を疎明する資料は持ってないというケースがあるかもしれません。また、このリムさんがそのケースであるかないかは、そこまで私つまびらかにしておりませんけれども、ともかく疎明する資料があれば一緒に持っていって、そこの市役所で申し立てていただきたいと思います。なければ一種のその辺の事情をよく書いていただきたいと、そういうことであります。そうすると、市役所は必ず私のところへそれを送ってくると思いますから、そうしたら、その辺の事由をよく私読んで検討してみたいと考えております。
 ちなみに、この本名がマハラ・リムさんでございますか、市役所の登録にはマハラ・リムさんと書いてあるらしいのでございますが、それが本名だと言って登録したのか、通称名それであると言って登録したのか、その辺もよくわからないのでございますが、委員も御指摘になって、いまだにこれが本名になっていないということでございましたら、改めてこの申立書を該当市役所に、たしか川口市役所だったと思いますが、そこに出していただきたいと思います。
○柳澤錬造君 わかりました。大臣、よく聞いていてくださいね。もしも訂正申告が出てないとするならば、これは早速させます。それからパスポートも私見まして、今の名前のパスポートを書いたあれも、横文字のもわかっているわけですけれども、だからもう一度本人の方から訂正申告をさせるようにしますから。
 ただ、そこで局長にお願いしておきたいことは、大臣にも申し上げておきたいんですけれども、今田中局長も一言言っていましたけれども、そういう人たちは自分がラオス人なんだというその疎明資料を出せと言ったって、あるわけないんですね、丸裸でもって国を飛び出してきたんです
から。それじゃ、それを証拠立てる者だれかと言っても、これもおらないんです。かつてチャン・メィランさんなんかは裁判までなって、そしてお母さんを呼び寄せて、これは間違いなく私の娘ですと言って、幾らそのお母さんが言ったって裁判官はそれを認めない。いや、あなたはと言って、そのパスポートの名前しか認めないというのがあのときの裁判の姿だった。
 だから、このことについてはそういう点で、もうそれ以上申し上げませんで、むしろもう一回そういう訂正の手続をやらせますので、ただ間違いなくラオス人であり、リム・マハラだということの疎明資料を出せと言われても、そしはもうどうにもならないんだから、あるいは同じ友達でもおって、そういう者から証言させて、それをお認めになるかとか、そういうことをこれはぜひお考えいただきたいと思います。
 次に取り上げてお尋ねしていくのは、これもラオス人でリャン・ショウメイさん、若干経過を申し上げるのでお聞きになっていただきたいと思うんです。局長の方はあるいはおわかりかと思うんですけれども、大臣、お聞きをいただきたいと思うんです。
 一九五八年十月十五日にラオスで生まれて、一九七三年にラオスの情勢が悪化をしたので出国をして台湾に渡っているわけなんです。だから十五歳のときです。台湾で一カ月生活をして日本に入ったんです。エアピープルという形で、もちろんビザはそういう形ですから別な名前での観光ビザで入って、二回ほど行ったり来たりして、一九七六年六月九日に入ったときに、もうこれで日本で住もうということを決意して、したがって当然そう何回も延長してもらえないことはわかっていますので、わかりやすく言えば地下に潜ってしまった。一九七七年に腹膜炎を起こして一カ月ほど入院をしたんですけれども、その苦しんでいるときに小紙敬之さんという方と、これは日本人の男性ですけれども、知り合いまして、それで大変自分は親切にしていただいた、そして小紙さんと結婚しようという気になって、結婚するにはというんで、今度は自首する気持ちになったわけです。
 一九七八年の五月にそういう点でもって自首をしていったら、その場で即刻逮捕されて収容されちゃった。そのとき彼女は胆石症にかかっておりまして、それで小紙さんの方から医者の診断書までつけて、そうしてそんなに収容されたら体にさわると言っても一切聞き入れないでそのまま収容は続けられる。本人は食事もできないから、そのまま飯も食わぬ。とうとうそういう状態が十一日間も続いて、一応仮放免になったんです。そんな経過があって、一九八〇年の六月にその小紙敬之さんとリャン・ショウメイさんが結婚をするわけなんです。
 八二年、ですから二年前の六月十八日にリャン・ショウメイさんから当時の法務大臣に嘆願書が出されているんです。ごらんになったと思う。両親の方はインドシナ難民で転々としていってフランスの方に住んでいるわけなんです。それで、お父さんの方は工場労働者で働いておったんですけれども、体を悪くして大変な手術をして余り丈夫ではなくなってしまって、お母さんも病弱だ、そういうことで何とか一緒に暮らせるようにしてほしいという、そういうことで、言うならば両親が私たちの方へ来て、自分たちは結婚しているわけですから、この御主人というのは新聞の販売店をやっているわけです。だから、そういう形で一緒にお互いに難民だったりするから生活をするようにさしてほしいということを出したけれども、認められない。
 昨年、八三年の一月十日に今度は御主人の方から嘆願書が出された。これは、もう自分のところはそういう新聞配達のお店をやっているんでなかなか休めない、それで妻がいよいよ子供ができて出産をする、だから何とかしてフランスにいるお母さんに来て出産の手伝いをしてもらいたいといって出すのだけれども、これも認めていただけない。大分たってから、子供さんが生まれちゃってからやっと認められて、一度入ってくるんですけれども、そのまましばらくして帰される、そういう経過があるわけです。
 何でもうちょっと、先ほども難民の人たちというものは人道上から温かく迎える気持ちでございますというそういうお気持ちがあるんだから、だったら、どうしてもうちょっとこういうときにも、いろいろと法律的にああこういって、しゃくし定規で考えればあるんだろうけれども、もうちょっとそこのところを、だからさっきも言いましたように形式主義ではなくて実質主義で実態を見て、それでこの人たちのためにどうしてやったらいいんだと、そういう形で扱ってあげていただけなかったのかということです。
○政府委員(田中常雄君) お答えいたします。
 まず冒頭に一言申し上げたいのは、先ほどのリムさんと、それから今委員が御提起されたリャンさんでございますか、ともに在留特別許可になっております。ちなみに流民の在留特別許可の姿を申し上げますと、今日まで流民と思われる人が百六名在留を申請してまいりまして、そのうち百一名在留特別許可になっております。したがいまして法務省としては考えられるありとあらゆる人道的処置はとってきたと考えております。
 それから、このリャンさんのお母さんが出産予定に間に合わなかったというお話でございますが、その辺実は私よくわからないのでございますけれども、記録を調べてみますと五十八年一月二十五日に外務省から法務省に、パリの大使館からこれこれこういう査証の協議があったということが回ってまいりまして、その次の日の一月二十六日に許可しております。
 それで、当時の記録を読みますと、リャンさん、お嬢さんに当たる人は出産予定は一月三十一日ではなかったかと聞いております。そこの間においてどういうことが起きたのかよくわかりませんけれども、それからリャンさんのお母さんは日本へ来ましてから二回在留期間を更新いたしまして、計八カ月間日本に滞留しているという記録が残っております。
 それで、今度はリャンさんの御両親が日本へ移住したいという話なんでございますが、私が今まで聞いている限りにおいては、リャンさんの御両親はフランスに今定住しておりまして、お父さんはフランスで就職しており生活能力があると見られる、お母さんはまだ四十数歳の若い方でいらっしゃるということでございます。そして今から何年か前に日本へ移住したいという申請があったときには、その病歴に関する診断書というのが出たのでございますけれども、当時の担当官の記憶だと、それは十年ぐらい前の診断書であった、そしてその診断書は十年くらい前ということを別にしても、その診断書を見る限り特にどうという事態は考えられなかったということだそうでございます。
 しかしながら、入管としましてはいろいろこういう方が入国申請をするというときにどういうことをいろいろ基準として考えるかといいますと、御両親の年齢とか、それからフランスにおける生活能力とか健康状態、そういうことから判断しまして娘さん夫婦の扶養を受ける必要があるのかないのかというところがキーポイントになるのじゃないかと考えております。したがいまして、その後、十年前か何年前にしましてもそういう診断書云々はもう別といたしまして、ひとつとにかく具体的な査証申請を改めて御両親にしていただきたい、そのときに、先ほど私が申し上げましたような審査するめどになるようなポイントがどういうことなのかということを私も見てみたいと思います。それでリャンさん夫妻が扶養しなければならない必要性がなければ仕方がないし、あれば結構だと、今私はその点そういう疎明する資料を持っていませんもので白紙でございます。
○柳澤錬造君 ありがとうございます。そういう点で、これも、じゃ、もう一回きちんと。
 それから婦長、カナダとかフランスとか、あちらの方なんかは、そういう難民でばらばらになっているのが、どっちに寄るに促しても、ともかく一緒に住みたいというときには便宜を図ってちゃん
と住めるようにしてやっているわけなんです。だから、この場合もそういう形で、こちらが向こうへ行くのか、向こう側からこちらへ来るのか、それでその親たちがそうやっていて、父親がもう大手術をして体が弱くなっている、お母さんは前々から病弱だという、そういう点で心配で、実を言いますと今も気になってリャンさんは向こうへ行っているんです。恐らく今月の中ごろには帰ってくると思いますから、そういう点でまた最近の一番新しい状況もわかると思いますので、そういう点でそれなりのことをもう一回やらせるようにしたいと思いますが。
 時間もなくなっちゃったんで、もう一つ、リャンさんのようなのが、もう国籍法もこの前変えたからいろいろよくなったわけだけれども、これは御主人の方は日本人だから日本の戸籍に入ることは済んでいるんだけれども、今度は帰化をしようというと、帰化をしようというときに、じゃ、このリャンさんに、それもまたさっきのと同じように疎明資料を出せ、間違いなくこうこうのものをと言ったって何にもないわけなんです。そういうときにどういうふうに配慮をしてやるかということについても、そういう本当に温かい気持ちで、こうしてあげたいというお答えを聞かしていただきたいと思う。
○政府委員(枇杷田泰助君) この特定の方の事情はよくわかりませんけれども、私どもの帰化の場合の一般的な姿勢といたしましては、インドシナ半島三国につきましては向こうの国籍法の実情もわかりません。それから、したがって官公署の証明等もなかなかとれないという実情にありますので、現行法のもとにおきましても国籍法の解釈上は無国籍者であるという取り扱いで帰化を許可するというケースがかなりございます。したがいまして、現時点でもこの方についてはそういうことを配慮する余地が十分にあろうと思いますが、なお新法が施行されます明年一月一日からはその点を明文の上でも帰化がやりやすくなるような規定も設けられておりますので、従来よりもまた一歩こういう方の帰化が容易になろうかと思っております。
○柳澤錬造君 終わります。
○中山千夏君 前回の委員会で時間がなくなっちゃって残しました少年保護についての質問を続けたいと思っています。
 一番最初に、少年を勾留するということがありますね。この勾留というのは少年法の中に規定があって、成人の場合とは大分様子が違うというふうに決められているようです。少年法の四十三条三項では検察官はやむを得ない場合しか勾留を請求できないということが書いてありますし、それから四十八条の一項には裁判官はやむを得ない場合しか勾留状を発付できないというふうになっています。それからもう一つ、四十三条の一項の方では勾留の要件があって、身柄保全の必要がある場合には勾留にかわる観護措置を請求、発付できる、こういうのを見ますと、やっぱりなるべく少年の場合にはできる限り勾留は避けるのだという姿勢があると思うんですね。
 で、この発行をなさる立場の裁判所にお尋ねしたいわけなんですけれども、こういう規定からして少年に対してはなるべく勾留は避けるのだという考え方に立つということは、これは裁判所の方でもそういう姿勢で臨んでいらっしゃるんでしょうね。
○最高裁判所長官代理者(猪瀬愼一郎君) ただいまの御意見のとおりでございます。
○中山千夏君 それからもう一つ、逮捕ということがありますね。この逮捕の方は少年法には規定がなくて、警察の犯罪捜査規範というのですか、そういう方で規定がしてあって、やっぱりなるべくしないのだ、その規範の方ではなるべく少年は逮捕しないのであるというふうになっていますけれども、これもやはり裁判所でも同じお考えでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(猪瀬愼一郎君) 少年につきましてはやはり心身の未熟な状態にあるということから、その情操保護の必要もございますので、なるべく身柄の拘束は避ける運用をとるというのが基本的な考え方であろうかと思います。
○中山千夏君 少年法に勾留について「やむを得ない場合」とありますね。この「やむを得ない場合」というものの中身なんですけれども、いろいろ論もあるようですし、裁判官それぞれの御判断によって違うんでしょうけれども、大体のところこれはどういう場合に勾留状を発付するというふうに裁判所の方では考えていらっしゃるのか。
○最高裁判所長官代理者(猪瀬愼一郎君) 法律解釈の具体的な内容に関しましては事務当局の立場からの意見は差し控えさしていただきたいと思いますが、ただ一般に理解されているところを御紹介いたしますと、家庭裁判所に事件送致前の捜査の段階における勾留については、この「やむを得ない場合」というのは勾留の理由と必要が認められる場合であっても勾留にかわる観護措置によらず勾留によることがやむを得ない場合を指すものというふうに理解されているわけでございます。
 もう少しこれを具体的に申し上げますと、例えば勾留にかわる観護措置はその効力が十日というふうに制限されております関係から、事案の性質によっては当初から十日間で捜査を完了することが不可能であるというふうに明らかに予想されるような場合であるとか、あるいは勾留にかわる観護措置の場合には接見交通を制限することができない建前になっておりますので、事案によりまして面会等の接見交通を制限する必要のあるような場合であるとか、さらには共犯者が少年鑑別所に収容されておりまして、その者と通謀して罪証を隠滅するおそれがあると認められるような場合であるとか、また少年に膨大な証拠物等を示しながら取り調べる必要がある場合で、少年鑑別所にそれらの証拠物をすべて持ち込むのが不可能であると認められるというような場合などにやむを得ない事由があるというふうに判断されているようでございます。
○中山千夏君 法律のことは全くよくわからないんですけれども、今取り調べに必要な場合というのが最後で出ましたが、勾留ということ自体はこれは取り調べのための勾留というものではないんじゃないかと思うんですね。そうすると、その取り調べのために、取り調べの都合でもって勾留をするというようなことが起こるのは、ちょっと矛盾があるんじゃないかという気がするんですけれども、その辺はどうなんでしょう。
○最高裁判所長官代理者(猪瀬愼一郎君) 勾留の要件につきましては、刑事訴訟法の六十条に掲げてございますように犯罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があって、そのほか逃亡のおそれがあるとか、罪証隠滅のおそれがあるとか、住居不定である、そういう事由が勾留の理由になっているわけでございます。やはり身柄を拘束することが捜査の遂行上必要であるというようなことでございますので、結局勾留の目的と申しますか、それは捜査の遂行等が基本にあるものと思います。
○中山千夏君 それで、なるべく少年の場合には勾留や逮捕はしないということにしては、数を見ますと結構これがあるんですね。もちろん成人の場合と比べればずっと少ないけれども、少年の場合は割とやったことがそう大したことじゃないという場合が多いわけでしょう。そういうことを考えると、少年の逮捕勾留というのは結構あるなという感じがするんですね。そうすると、これはどうも少年法というものの目的といいますか、理念といいますか、少年の健全な育成だとか、それから少年の環境をよくしていくのだとか、そういうことから離れて、だんだん何となく犯罪を犯した大人に対するのと同じような取り扱いの傾向になってきているんじゃないかしらという気がするんですけれども、その辺はどうでしょう。
○最高裁判所長官代理者(猪瀬愼一郎君) 少年事件のうち勾留された件数の割合は全体のうちの約四%程度でございまして、成人事件のうち勾留された件数の割合の六分の一以下という数字になっておりますので、これには少年であることへの考慮が反映しているものというふうに見てよろしい
のではなかろうかと思います。ただ、その件数が多いか少ないかという問題は単純にこれを言うことはできないのではなかろうかと思います。事案の内容等具体的に検討しませんとその辺については余り断定的なことは申せないかと思います。
○中山千夏君 わかりました。やっぱり少年を扱う場合には、この間もちょっと裁判官の数、それから調査官の数を伺ったんですけれども、とっても事件処理に皆さん大汗かいていらっしゃると思うんですね、人数からしても。そして事件はふえているわけですから、そんな中でとっても大変でしょうけれども、やっぱり少年の場合には何よりもその少年がこれからどんなふうに更生していくか、育っていくかということに重点を置いての勾留状であり、それから逮捕状でありというような考え方でやっていっていただきたいというふうにお願いして次の問題に移りたいと思います。
 矯正局にちょっとお伺いしたいんですけれども、一九七六年、昭和五十一年十二月八日に矯正局の「少年院運営の改善について」という通達がありまして、その中で短期処遇というものに触れられていますね。それまでやってきた処遇に加えて短期処遇というものが必要であるということになったのはどうしてなのか、短期処遇の目的ですか、その辺のところをちょっとお考えを聞かせてください。
○政府委員(石山陽君) この問題、今御指摘のように昭和五十一年の前任の局長通達で運用方針が定まりました。これを私どもが必要としました理由の一つに、今の少年非行の現状に対する行政上の施策の一環として、できるだけ実施可能なものは新しい理念に従って先取りしてまいりたいという実務側からの要望が実は根底にあったわけであります。
 と申しますのは、やはり少年の場合に、最近の少年非行の傾向を見てまいりますると、今最高裁の家庭局の方からいろいろ御説明がございましたように、少年については、我々実務家は家庭裁判所と連絡をとりつつ非常にきめ細かな配慮をしているつもりでございますけれども、非行少年は一向に少なくならない、そしていろいろと成人に比べても問題性の深い、いわば非行傾向の進んだ少年がどうしようもなくなってから初めて社会内処遇から施設内処遇へ移ってくる、こういう形では、速やかに悪の芽を摘み取り早く少年をもとへ戻すという刑事政策の理想からいっても及ばないのではないか、そういうような要望もございましたので、家庭裁判所にいろいろと御協力をお願いいたしまして、この制度が発足したわけでございます。
 ですから、端的に申しますると、短期処遇に処そうという少年は長期処遇を必要とする少年に比べますればまだまだ非行の傾向が進んでいない者、そういう少年たちを短期ではありまするけれども施設に収容いたしまして、そして問題群別に集中的なカリキュラムをつくって、それに沿う処遇をいたしまして速やかに処遇の効果を意図しようというねらいで始めた制度であります。現実にこういう方法で処遇をいたします場合に、いわゆる長期の処遇を必要とするような非行の傾向がある程度進んだ者に比べまして、やはり若いうちに、まあ非行の芽が若いという意味でございますが、そういう少年たちをそれなりに処遇することによってそれなりの効果を上げてきたというふうに私どもは考えておりまして、そろそろ十年近い実績になりまするけれども、今後ともいい方向にこれが発展できればというふうに考えておる次第でございます。
○中山千夏君 教育の方も私は全然素人ですし、それぞれ非常に経験も学問もおありの方たちがこういうのは効果があるというふうにお思いになったので、それなりに何かあるんだろうとは思うんですけど、ちょっと素人考えで考えますと、私もどういう子供を短期処遇に処すかというような矯正局の方の考えをやっぱりこの通達の中で読んだのですけれども、どうも分け方として、例えば犯罪傾向が進んでいないから短い間入れておくというのが、果たして本当にその少年の教育にとってそういう分け方がいいんだろうかしらという気がすごくするんですよ。何かちょっと余りにも単純過ぎる。教育という面から見た場合にそういう処遇が果たしてその子供にとっていいんだろうか。
 子供というのは少年問題のときにはいつも個別性ということが非常に言われますね。全くそのとおりで、たとえ犯罪傾向が大して進んでいなくても、少し長い間かけて教育しなければならない子もいるだろうし、それから子供によっては同じ程度の犯罪傾向であっても、お家にいて、そしてそれなりの手当てをしていった方がいいだろうと思われる子もいると思うんですね。それで、どうして短期が必要だったのかなという、例えば長期の場合でも少しは融通がきくわけでしょう。どうしてそういうふうに分けちゃったのかなと、そこがとても不思議だったんですけれども、どうでしょう。
○政府委員(石山陽君) この面は実は単純でないから、いろいろと私どもなりに工夫をいたしまして実務家同士の意見としてこういう制度を発足させたわけであります。
 例えば一つの傾向でわかりやすい例をとりますると、昔は少年が悪いことをするという動機、原因を手繰ってみますと、家庭が貧しい、あるいは生活に困ったためのやむを得ない盗み、これは少年、成人を通じて同じような犯罪の動機傾向がございました。ところが、ここ最近になりますると、いわば遊び型非行というような従来に全くなかった類型の少年非行の原因が出てきましたし、それから車社会のなせるわざでございまして、少年もいわゆる原動機付自転車あるいは軽四輪、あるいは普通の車、こういうふうに車社会という影響がありましたので、それによって暴走族でありまするとか、全く新しい形態の非行類型が出てきたわけであります。
 こういった問題の新しい進展に伴いまして、対象者の問題性をどういうふうに今日的にとらえて、それに速やかに適切に対処するか、これが私どもにとっては非常に問題でありまして、ですから私先ほど比較的進んでいないと申し上げました意味は、つまり長期処遇を必要とする少年たちに比べれば進んでいないという意味でございまして、実は家庭裁判所が慎重に御審議の上、短期でも処遇を必要とするという、少年になりますまでの前の段階では校内暴力、一般的な暴走族、そういったような経験が何回もあり、補導を受け、さらには審判にかけられ、それも最初は審判不開始とか不処分とかで、説得、訓育の立場で許された少年たちが何遍やってもまたもとに戻ってきてしまう、そういうような形でどうしても施設内処遇が必要であろうと、こういうふうになるわけでございます。
 それを考えますると、施設内処遇を必要とする段階だと認められる少年たちのうちに、例えば車社会に原因するもの、交通違反をよくやるがふだんの生活行状は大したことはない、つまりまあまあ普通だという子供もおりますし、それから、ふだんの生活態度が余りよくないところが原因になりまして車社会にのめり込んでしまっているという少年もあります。こういった問題別の少年非行の動機、原因をなるべく早期のうちに発見し、それに対する適切な対応を立ててやらないと、将来長期処遇を必要とするような非行が根深いものになって、問題点の改善が難しい少年をつくらないように、これがいわばきめ細かい少年保護行政の一環として必要じゃないか、これが私ども自分たちでいろいろ協議しました発想の源のわけでありまして、単純に入れればいいという意味で実はやっているわけでは全くないわけでございます。その辺のところでひとつ御理解をいただければというふうに思います。
○中山千夏君 今法務省の御判断の話が出たんですけれども、裁判所の方でほどうなんでしょう。この子は短期にというふうに指定をなさるときに、どういう考え方でやっていらっしゃるんですか。
○最高裁判所長官代理者(猪瀬愼一郎君) 従来保護処分の種類が保護観察のいわば上と申します
か、もう少し非行性の進んだ少年については少年院送致というのしかなかったわけであります。少年院の処遇は通常一年あるいは一年ちょっと程度の収容期間の処遇がなされているのが多かったかと思いますが、そういう状況でございますと、家庭裁判所の立場からしますと非常に処遇をする場合に困る場合も少なからずあったわけでございまして、裁判所ではかねてから保護処分の種類をもっとふやして個別的処遇を推し進めるのが望ましい、こういう意見を持っていたわけでございます。これは家事、少年審判の実務をやっております裁判官の強い意見でもございますし、調査官のまた意見でもあったわけでございます。
 最近、今法務省の矯正局長から御説明ございましたように遊び型の非行がふえてきた、あるいは最大の特徴は年少少年非行が著しくふえてきておる、こういう状況にあるわけでございまして、それらの少年のうちで、それほど非行性は進んではいない、しかし在宅処遇はなかなか困難であるという、いわば中間領域の少年も少なからずいるわけでございまして、そういう少年については家庭裁判所として少年院送致の決定を言い渡すわけですが、処遇勧告として短期の少年院での処遇を求めるということをしまして、その処遇勧告に基づいて少年院側の方で短期コースの処遇を行っておる、いわば裁判所と執行機関との有機的な連携を十分とりつつ実務運営をしておるわけでございまして、私どもの立場からすると、こういった短期処遇課程が設けられたということは非常に歓迎しておるところでございます。
 それから、さらにやはり在宅処遇ではなかなか困難な面があるという一つの要因としましては、家庭環境の問題があるわけでございまして、結局少年の教育ができましても少年は家庭環境に戻っていくということになるわけで、その家庭環境の問題が除去され改善されておりませんと、またその影響を多分に受けて再非行を犯すということにもなってくるわけでございまして、そういう少年院での処遇と合わせて家庭環境の調整ということも大事なことでございますが、そういういろいろなケースがあるわけでございますけれども、こういった従来乏しかった種類をふやして、そしてそれぞれそれに適した少年の処遇ができるようになるということは少年の健全育成を推し進めるという上から望ましいことと基本的に考えておるわけでございます。
○中山千夏君 お話を伺っても、やっぱりどうも、例えば家庭環境とってみましても、じゃ、短期の間で確かに家庭環境を離しておいて整備する必要があるというときに、それは短期でも長期でも同じことですね。長期かからないと家庭環境がよくならないという場合もあるだろうし、それから逆に考えると家庭環境なんというものがそんなに短期間に変わるというふうには私には思えないわけなんです。だから、きっと個別性というのは、例えば短期の少年院収容を必要とする子の中にもまた個別性があって、だから、もう何度も何度も捕まってだめだから短期にちょっとというようなものではないんじゃないかという気がするんですね。だけれども、私も実情についてよく知りませんので、少し実情を勉強してからまたこの問題は取り上げたいと思います。
 この通達の中に「処遇課程は、原則として四か月ないし五か月程度とし、早期に仮退院による保護観察への移行を考慮した処遇を行う。」と、保護観察との連携ということがうたわれていますね。これもやっぱり短期長期を問わずすごく大切なことだろうと思うんです。というのは、よく教育問題に詳しい方たちにお話を伺うと、例えば六年かかって非行に進んだ子供というのは、立ち直るまでに同じ年数だけ六年かかるんだということをよく聞くんですね。大抵子供というのは、多分突然少年院へ行かなければならないようなことになるというケースよりは、やはりある程度の年月がかかって、少年院にたどりついてと言ったら変ですけれども、行くようなことになって、それからまた同じぐらいの年月をかけて帰っていくのだろうから、少年院というのは少年の立ち直りの、それがたとえ長期であれ短期であれ、そこで全部済むのじゃなくて、その後がとても大事なんだろうという気がするんですね。
 その保護観察の中でとても大事な役割を果たしている保護観察官の状況というのはどうなんだろうと思いますと、これもまた裁判官や調査官と同じようにとても大変らしい。一つ保護観察官の一人が書いたものを見たんですけれども、こんなふうにありました。「〃貧しい予算と少ない人員〃といった制約の中で保護観察の専門家であるべき観察官は、一人平均一二八件(昭和五三年末現在)というケースロードに喘ぎながら、事務処理に忙殺され、ケースワーカーならぬデスクワーカーを余儀なくされている。そうしたことからいきおい、保護観察の実施は、ボランティアである保護司にその殆んど全てを依存することになる。」という、そういうふうなんですね。これは例えばこの五十三年当時よりも観察官の数というのはどうなんですか、ふえましたか、大分。
○政府委員(吉田淳一君) 五十三年当時の保護観察官の数は七百九十一名でございます。昭和五十九年度、今年度の保護観察官、これはいずれも保護観察所の保護観察官でございますが、八百十八名で、若干ふえております。
 今お尋ねの保護観察官の事務量、事務の負担の問題でございますけれども、御指摘のとおり、私どもといたしましても保護観察官の毎日の実際に担当している事件の数はかなり負担が過重になっているというふうに思っております。何とかそこを打開しなければいけないというふうに思っております。本年におきましてはいろいろそういう実情を説明いたしまして、こういう厳しい状況下ではございますけれども、合計二十一名の増員措置を得ておるのでございます。この二十一名の中には、いわゆる部門間配置転換というほかの省庁から受け入れた者の定員化の措置の四名が含まれております。計画削減が十六名ございますので、実質的にはそんなにふえないわけでありますけれども、今の状況では万やむを得ないことであるというふうに思っております。今後ともその辺については実情をよく説明いたしまして努力をしたいと考えております。
 ただ、今の点で一つだけ御説明しておきたい点は、なるほど保護司のボランティアの方々に保護観察を直接担当して実際にやってもらっているという例が大部分占めていることは事実でありますけれども、決して保護観察官は保護司さんに任せ切りというわけではないはずであります。事件を受けますと、まず事件の矯正からのいろいろな引き継ぎの書類もありますし、その前に環境調整などをいたしました書類もございますし、そういうような書類と、それからそれに基づいて本人に面接して処遇計画を立てる、そしてその処遇計画を保護司に連絡をする、そういうことでいろいろやっておりますし、直接自分で随時また会う場合もございますので、そういう実情につきましては御理解いただきたいと思います。
○中山千夏君 済みません。時間がないのでまた残っちゃうので急いでやります。
 今お話しのことは私もよくわかっています。ただ、やっぱり保護司さんに頼らなければならないというところは事実あるんだろうと思うんですよ。その保護司さんがとっても大事なわけなんですけれども、それがやっぱり五十三年当時のことで言えば実に二〇%近くが七十歳以上だと、だんだん高年齢化していくというんですね。そういう問題が法務委員会に入ってから何年か前に一度ここで取り上げられたのを私聞いたことがあるんです。それからやっぱりここにもそのことが書いてある。だから、その実情は今どうなのかということと、それからもう一つ、試験観察の場合の補導委託というのも大変重要だと思うんですね。それから審判後にも補導委託が行われているというふうに聞きます。これはやっぱり民間のボランティアですけれども、これを確保していくためにもやっぱり経費の問題は避けられなくて大変な問題だろうと思うんですね。それで、それぞれどの程度の補償をしているか、それからその推移というも
の、この二点、最初に保護司の実情と、それからあともう一つお答えいただいて私の質問を終わります。
○政府委員(吉田淳一君) 要点をお話しいたしますと、現在の保護司は約四万四千七百人おります。そのうち五十歳から六十九歳までの方を合わせますと約七割でございます。この年齢の点につきましては、少年の問題もちろんございますし、できるだけ活動力のある人にやってもらうという意味からも、なるべく年齢については高齢化を避けるようにということでやっております。しかし、こういう保護司さんのような仕事をしていただくのはある程度ゆとりがないとまたできないという点もございますので、そういう活動力のある方ならばということでなっていただいているのが実情でございます。なお、年齢制限等についても各庁でそれぞれ上限の年齢を定めるとか、最初になってもらう場合には六十以上の人には遠慮してもらうとか、そういうようないろいろな措置を講じておるところでございます。
 あと、補導委託の点につきましては法務省ではございませんので、裁判所の方からお願いいたします。
○最高裁判所長官代理者(猪瀬愼一郎君) 補導委託費の額が安過ぎるのではなかろうかという御質問かと思いますが、補導委託費の性質はこれは実費補償的な性質のものでございまして、これを個々の委託先に支給する支給額は、公平を期するために最高裁判所の定めました支給基準による定額を支払っております。その金額は支給基準によりましていろいろ違ってくるわけですが、今それらを捨象しましてならした平均単価で御紹介いたしますと、少年一人一日二千八百九十二円、一カ月にしまして八万六千七百八十六円、こういうことになります。この金額が委託先にとって十分な額と言い得るかどうかは議論の余地があろうかと思いますが、現在の国民生活から見まして一応必要最小限度額は満たしているのではなかろうかと、こう考えております。
 御参考までに東京二十三区内に居住する十九歳の男子、単身者の少年の補導委託費と、それから生活保護基準による生活保護費、これとを対照してみますというと、補導委託費は一カ月にしまして、これは定員二十人以下の委託先の場合でございますが、九万一千百七十円という金額になるのに対して、生活保護費は一カ月六万一千七百六十円ということでございますので、必要最小限度額は満たしているのではなかろうかと考えております。私どもとしましては、この補導委託に必要な経費については必要な予算額は毎年確保しているというふうに考えております。
○中山千夏君 ありがとうございました。終わります。
○委員長(大川清幸君) 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後四時五十分散会
     ―――――・―――――